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「新拾遺和歌集」一覧

1912件


1あけわたる そらにしられて ひさかたの いはとのせきを はるやこゆらむ為藤
2あまのとの あくるをみれは はるはけふ かすみとともに たつにそありける光厳院
3いつしかと とやまのかすみ たちかへり けふあらたまる はるのあけほの定家
4うくひすの さへつるけさの はつねより あらたまりける はるそしらるる後嵯峨院
5はるたつと ひかけもそらに しられけり かすみそめたる みよしののやま亀山院
6たつひより はなとみよとて よしのやま ゆきのこすゑに はるやきぬらむ基俊
7やまさとは つもれるゆきの いつしかと きえぬややかて はるのはつはな俊頼(源経信男)
8たにのとは ゆきもこほりも とけやらす やまかけさむき はるのあらしに為氏
9ときしもあれ みねのかすみは たなひけと なほやまさむし ゆきのむらきえ永福門院
10はるのきる かすみのころも なほさむみ もとのゆきけの くもそたちそふ実兼
11はるはまた はつせのひはら かすめとも のこるゆきけに さゆるやまかせ実教
12あしひきの やまはかすみの あさみとり はるともしらす さゆるそらかな覚助法親王
13みよしのの やまのしらゆき きえぬまに ふるさとかけて たつかすみかな為定(御子左二条為道男)
14みよしのの たきのしらいと はるくれは あはにとけゆく うすこほりかな為相
15はるのくる あさけのかせの おとはかは たきついはねも こほりとくらし冬平
16はるかせに のさはのこほり かつきえて ふれとたまらぬ みつのあはゆき雅経
17そらにのみ ちりてみたるる あはゆきの きえすははなに まかひはてまし後宇多院
18はるたちて かせやふきとく けふみれは たきのみをより はなそちりける貫之
19ふくかせに さきてはちれと うくひすの しらぬはなみの はなにやあるらむ貫之
20こほりとく かせのおとにや ふるすなる たにのうくひす はるをしるらむ斉信
21たにちかき やとにきなくや うくひすの さとなれそむる はしめなるらむ頼政
22うくひすの たにのといてし あしたより とやまのかすみ たたぬひもなし師賢(藤原師信男)
23けさみれは みねにかすみは たちにけり たにのしたみつ いまやもるらむ忠通
24あさまたき やまのかすみを みわたせは よをさへこめて たちにけるかな通俊
25あさひかけ またいてやらぬ あしひきの やまはかすみの いろそうつろふ隆祐
26はるのたつ しるしはかりは かすめとも なほゆききえぬ みわのすきむら実重(三条公親)
27ふしのねの ゆきにははるも しられぬを けふりやそらに かすみそむらむ義詮
28ゆきもふり かすみもたてる よしのやま いつかたをかは はるとたのまむ能宣
29あつさゆみ はるになるらし かすかやま かすみたなひき みやこはるけし赤人
30いそのかみ ふるのやしろの はるのいろに かすみたなひく たかまとのやま師頼
31かすかのの かすみのころも やまかせに しのふもちすり みたれてそゆく定家
32はしひめの そてのあさしも なほさえて かすみふきこす うちのかはかせ俊成女
33たましまの このかはかみも しらなみの しらすかすめる ゆふくれのそら知家
34ゆきかへり みつのをかはを さすさをの みなれしあとも かすむはるかな為家
35みるめなき ならひしられて はるはなほ かすみにたとる しかのうらなみ基忠(鷹司兼平男)
36しかのうみの しらゆふはなの なみのうへに かすみをわけて うらかせそふく家隆
37もしほやく けふりもなみも うつもれて かすみのみたつ はるのあけほの為世(御子左藤原為氏男)
38あかしかた はるこくふねの しまかくれ かすみにきゆる あとのしらなみ後鳥羽院
39はるくれは きしうつなみは のとかにて かすみかかれる すみよしのまつ越前(嘉陽門院)
40いにしへの ねのひのみゆき あとしあれは ふりぬるまつや きみをまつらむ良経(九条兼実男)
41やまのかひ かすみわたれる あしたより わかなつむへき のへをまつらし好忠
42かすみたつ あしたのはらの ゆききえて わかなつむらし はるのさとひと尊氏
43しろたへの そてもまかはす ゆききえて わかなつむのは はるめきにけり定為
44かすかのは はるめきにけり しらゆきの きえすはありとも わかなつみてむ経継
45よをこめて わかなつみにと いそくまに はるかにすきぬ をきのやけはら公能
46いつかたに わかなつむらむ あしひきの やまさはみつは なほこほりつつ実雄
47たちかへり またきさらきの そらさえて あまきるゆきに かすむやまのは為兼
48たちかへり なほはるさむし たにかけや うちいてしなみの またこほるまて内経
49うめかかに ゆくてのそても うつるまて やまわけころも はるかせそふく為藤
50ひとりぬる くさのまくらの うつりかは かきねのうめの にほひなりけり西行
51たちよりて うめのにほひを かりころも そてにうつさむ ひとなとかめそ為世(御子左二条為氏男)
52つれなくて うめのたちえを すきにしを おもひのほかの ここちこそすれ小弁
53はるかせの にほふかたにや たとるらむ うめさくやとを とふひともなし為親
54このころは さけるさかさる おしなへて うめかかならぬ はるかせもなし尊氏
55うめかかは ねさめのとこに にほひきて まとにかたふく はるのよのつき実兼
56ふるさとの のきはのうめよ いくはるの こころをそむる つまとなりけむ伏見院
57うきよには よしなきうめの にほひかな いろにこころは そめしとおもふに伏見院
58かをたにも あくことかたき うめのはな いかにせよとか いろのそふらむ花山院
59うめのはな かたにのこらす ちりにけり うらみてなとか をしまさりけむ宇多天皇
60はるさめも ふりかはりゆく あさはのに たつみわこすけ いろもつれなし通光
61いたつらに ふりぬとおもひし はるさめの めくみあまねき みよにあひつつ家良
62はるさめの なこりのつゆの たまかつら みたれてむすふ あをやきのいと俊光
63あさみとり まついろまさる あをやきの いとよりはるは くるにやあるらむ匡房
64うちなひき はるさりくれは みちのへに そめてみたるる あをやきのいと基良
65さほひめの かすみのそては あをやきの いともておれる ころもなるらし公雄
66いけみつに なみはひまなく あらへとも やなきのいとは ほすひともなし素性
67はるかせに いけのこほりの とけしより むすひかへたる あをやきのいと読人不知
68あさみとり のへのあをやき いててみむ いとをふきくる かせはありやと人麿
69はるかすみ たなひくかたの ゆふつくよ きよくてるらむ たかまとのやま赤人
70かすむよの つきのかつらも このまより ひかりをはなと うつろひにけり為家
71あまのはら ふけゆくそらを なかむれは かすみてすめる はるのよのつき家隆
72かすむよは ゆふゐるくもの いつくとも やまのはしらて つきそまたるる後光厳院
73はるのよの おほろつきよに かへるかり たのむもとほき あききりのそら光厳院
74いつくとも みえこそわかね かりかねの きこゆるそらや なほかすむらむ良基(二条道平男)
75うらとほく ひかけのこれる ゆふなきに なみまかすみて かへるかりかね為道
76おほよとの うらよりをちに ゆくかりも ひとつにかすむ あまのつりふね知家
77みつくきの をかのみなとの なみのうへに かすかきすてて かへるかりかね素暹
78やまこゆる かりのはかせに あめはれて くもさへかへる あけほののそら基家
79われはいさ なれもしらしな はるのかり かへりあふへき あきのたのみは伏見院
80なににかは こころもとめむ はなをたに みすててかへる はるのかりかね道嗣
81たちかへる くものかよひち よそなから したふもしらし はるのかりかね内実
82おもひたつ くものかよひち とほからし あかつきふかく かへるかりかね基嗣
83はるきても つれなきはなの ふゆこもり またしとおもへは みねのしらくも良経(九条兼実男)
84おもかけに こひつつまちし さくらはな さけはたちそふ みねのしらくも定家
85やまさくら さきやらぬまは くれことに またてそみける はるのよのつき俊成(藤原俊忠男)
86くもとのみ みるたにあるを やまさくら いかにかすみの たちへたつらむ為遠
87あけわたる かすみのをちは ほのかにて のきのさくらに かせかをるなり後伏見院
88まかひこし くもをはよそに ふきなして みねのさくらに にほふはるかせ小宰相(土御門院)
89いりあひの おとはかすみに うつもれて くもこそかをれ をはつせのやま慈円
90さのみやは あさゐるくもの はれさらむ をのへのさくら さかりなるらし俊恵
91いまそしる くもにまかひし はなのいろは やまのはとほき よそめなりけり崇光院
92たかさこの をのへのくもの いろそへて はなにかさなる やまさくらかな為氏
93をちこちの さくらはくもに うつもれて かせのみはなの かににほひつつ為明
94やまかせの かすみのころも ふきかへし うらめつらしき はなのいろかな道家
95かすみたつ みねのさくらの あさほらけ くれなゐくくる あまのかはなみ定家
96あさひかけ うつろふみねの やまさくら そらさへにほふ はなのいろかな公宗(西園寺公衡男)
97みるままに なほくもふかし さくらさく とやまのはるの あけほののそら為定(御子左二条為道男)
98ひにそへて たちそかさなる みよしのの よしののやまの はなのしらくも讃岐(二条院)
99わけゆけは はなにかきりも なかりけり くもをかさぬる みよしののやま義詮
100さくらはな いまさかりなり ひさかたの くもにくもそふ かつらきのやま為秀
101さきのこす たえまもあらは やまさくら かさねてかかれ みねのしらくも慈勝
102みよしのの たかきのさくら さきぬらし そらよりかかる みねのしらくも為実(御子左二条為氏男)
103あらしふく とほやまさくら にほはすは しらてやなほも くもにまかへむ経教
104くもにいる おもかけつらし はなのえに なきてこつたふ はるのうくひす実教
105をりわひて かへらむものか かつらきの やまのさくらは くもゐなりとも忠見
106はるさめの ひかすふるのの さくらかり ぬれてそかへる はなそめのそて性助法親王
107やまひめの かすみのそてや うすからし へたてもはてぬ はなのしらくも邦省親王
108をはつせや かすみにまかふ はなのいろを ふしみのくれに たれなかむらむ後鳥羽院
109みのうさも なかむるからに わすられて はるのこころそ はなにのとけき法守法親王
110けふもまた おほみやひとの さくらはな のとけきはるの かさしにそさす為家
111ももしきや みかきかはらの さくらはな はるしたえすは にほはさらめや経信
112なれてみし くもゐのはなも よよふりて おもかけかすむ ここのへのはる伏見院
113きみゆゑと けふこそみつれ しかのやま かひあるはるに にほふさくらを後宇多院
114しかのやま かせをさまれる はるにあひて きみかみゆきを はなもまちけり後二条院
115さきちるも しるひともなき やとのはな いつのはるまて みゆきまちけむ永福門院
116よよをへて みゆきふりにし やとのはな かはらぬいろも むかしこふらし花園院
117あれはてし しかのふるさと きてみれは はるこそはなの みやこなりけれ為兼
118みよしのの はなはむかしの はるなから なとふるさとの やまとなりけむ為氏
119ふるさとの よしののさくら さきにけり いくよのはるの かたみなるらむ実経
120はなのいろの むかしにかへる はるなれは これをみるにも ものおもひもなし道家
121つねよりも めつらしきかな しらかはの はなもてはやす はるのみゆきは忠通
122そことなき はなのところも やまふかみ そらにしられて にほふはるかせ公賢
123みにかへて おもふもくるし さくらはな さかぬみやまに やともとめてむ秀能(藤原秀宗男)
124たつねてそ はなをもみまし このもとを すみかともせぬ わかみなりせは光俊(葉室光親男)
125さくをまち ちるををしむに ひかすへて さかりすくなき はなのころかな宰相典侍(後宇多院)
126くれはてて いろもわかれぬ はなのうへに ほのかにつきの かけそうつろふ光厳院
127さくらさく たかねをかけて いてにけり はなのかかみの はるのよのつき公雄
128あかすみる はなのにほひも ふかきよの くもゐにかすむ はるのつきかけ為家
129あかすみる やまさくらとの あけほのに なほあまりある ありあけのかけ後伏見院
130あたらよの ありあけのつきに ひとはこて やとのさくらに はるかせそふく経継
131たつたやま ゆふつけとりの おのかねを よふかきはなの いろにまつかな為藤
132としをへて をりけるひとも とはなくに はるをすくさぬ はなをみるかな中務
133またみせむ ひとしなけれは さくらはな いまひとえたを をらすなりぬる道済
134ひとえたの にほひはあかす かみかきや はなのこすゑを ゆきてなかめむ実定
135ひとえたを あかすおもはは さくらはな こすゑにのこる ほとをすくすな読人不知
136きてみよと さらにもいはし やまさくら のこりゆかしき ほとにやはあらぬ隆信
137こころをは まつさきたてつ やまさくら たつねゆくまも めかれすなとて寂蓮
138いへつとに をりつるはなも いたつらに かへさわするる やまさくらかな為明
139やまもりも いかかいふらむ いたつらに かせにまかする みねのさくらを花山院
140さけはかつ うつろふいろを あたなりと みてこそはなに かせはふくらめ小宰相(土御門院)
141ちるはなの こころもしらて はるかせの さそふをよそに うらみけるかな道嗣
142ふくかせの えたをならさぬ はるたにも なにをかことに はなのちるらむ後光厳院
143はなのかを さそはさりせは ふくかせを つらしとのみや おもひはてまし冬平
144ふくとしも よそにはみえて もろくちる はなにしらるる にはのはるかせ内侍(永福門院)
145やまさくら うつろふいろの はなのかに かすみのそても にほふはるかせ為世(御子左二条為氏男)
146よしのやま ふもとのさくら ちりぬらし たちものほらて きゆるしらくも重之
147あけわたる とやまのこすゑ ほのみえて はなにわかるる みねのよこくも公忠(藤原実忠男)
148はるのよは あけゆくかねの ひひきまて はなにかすめる をはつせのやま忠房親王
149けさはまた くれはとたのむ かけもなし さくらにくもる よものやまかせ通光
150たちかへる こころそつらき さくらはな ちるをはみしと おもひしものを俊頼(源経信男)
151おのつから ちるはならひの はなになほ うらみをそへて はるかせそふく有房(六条通有男)
152いささくら ちるをつらさに いひなさて こすゑのほかの さかりともみむ基任
153こすゑより ちりかふはなを さきたてて かせのしたゆく しかのやまみち新宰相(伏見院)
154そこきよき なかれたえせぬ みつのおもに はなのにほひを うつしてそみる読人不知
155なかれては いつくにはるの とまるらむ はなちりかかる やまかはのみつ崇光院
156よしのかは はなのしらなみ なかるめり ふきにけらしな やまおろしのかせ教長
157いけみつに はなのにしきを うつしては なみのあやをや たちかさぬらむ忠通
158くやしくそ うつろふはなを たをりつる あやなくそての ゆきとふりけり後二条院
159ちりつもる はなのしらゆき あともなし さかりまてとや ひともとひけむ実継
160ゆきとふる はなにしをりも うつもれて またふみまよふ はるのみやまち為世(御子左藤原為氏男)
161ふきみたる はなのしらゆき かきくれて あらしにまよふ はるのやまみち光厳院
162またさそふ このしたかせに かつきえて ふるとしもなき はなのしらゆき道性
163これもまた ありあけのかけと みゆるかな よしののやまの はなのしらゆき後嵯峨院
164たつねつつ けふみさりせは さくらはな ちりにけりとや よそにきかまし長実
165はるかすみ たなひくやまの さくらはな はやくみてまし ちりすきにけり人麿
166あすかかせ あすもふきなは たをやめの かさしのさくら ちりかすきなむ経継
167あかさりし こころにはるや とまるらむ なほおもかけの さらぬはなかな仲正
168としをへて わかみはあらす なりゆけと はなのすかたは かはらさりけり清輔
169いたつらに さきてちりぬる さくらはな むかしのはるの しるしなりけり具平親王
170やまたかみ さこそあらしは さそふとも あまりなるまて ちるさくらかな公相
171ちりまかふ はなはころもに かかれとも みなせをそおもふ つきのいるまは忠岑
172みなそこの かけもうかへは かかりひの あまたにみゆる はるのよひかな躬恒
173ちらぬまに ゆきてをみはや いにしへの いろはかはらし ゐてのやまふき実氏
174いくはるに ゐてのしたおひ めくりあひて さくやまふきの はなをみつらむ国冬
175よしのかは きしうつなみの たかけれは さけるやまふき ちらまくもをし良基(二条道平男)
176かはかせは いかにふくとも やまふきの ちりゆくみつを せきやとめまし
177かけうつす ゐてのたまかは そこきよみ やへにやへそふ やまふきのはな俊成(藤原俊忠男)
178そこきよき ゐてのかはへに かけみえて いまさかりなり やまふきのはな長能
179ちりぬれは くやしきものを おほゐかは きしのやまふき けふさかりなり季綱
180なかれゆく かはせのみつに かけみえて ちらぬもうかふ やまふきのはな基氏(足利尊氏男)
181やまふきの はなのかかみと なるみつに はるのひかすも うつるとそみる覚誉法親王
182ちりはつる やまふきのせに ゆくはるの はなにさをさす うちのかはをさ公経(藤原実宗男)
183やまたかみ まつにかかれる ふちのはな そらよりおつる なみかとそみる道済
184ふちのはな あたにちりなは ときはなる まつにかかれる かひやなからむ貫之
185なにゆゑに なほしたふらむ はなとりの あとなきのちの はるのわかれち実教
186はなゆゑに あかぬわかれは ならひけむ おもひしらすも かへるはるかな丹後(宜秋門院)
187うつりゆく つきひもしらぬ やまさとは はなをかきりに はるそくれぬる頓阿
188はなもちり とりものこらす ものことに またあらたまる はるのくれかな為藤
189はつせやま をのへのはなは ちりはてて いりあひのかねに はるそくれぬる尊円法親王
190はなはみな ちりはてにけり いまいくか ひかすはかりの はるをしたはむ尊氏
191すかのねの なかなかしひも いつのまに つもりてやすく はるはくるらむ為定(御子左二条為道男)
192をしむとて くるるひかすの ととまらは なほいかはかり はるをしたはむ為世(御子左藤原為氏男)
193みやひとの そてつきころも けふかへて なつきにけらし たかまとのやま基家
194きのふにも そらはかはらて もろひとの ころものいろに なつはきにけり尊氏
195けふもなほ かすむとやまの あさほらけ きのふのはるの おもかけそたつ崇光院
196なつころも たちかへてしも わすれぬは わかれしはるの はなそめのそて進子内親王
197なつころも はるにおくれて さくはなの かをたににほへ おなしかたみに家隆
198うくひすの わすれかたみの こゑはあれと はなはあとなき なつこたちかな光厳院
199はなさかぬ こすゑとみしは よしのやま はるにおくるる さくらなりけり読人不知
200なつあさき あをはのやまの あさほらけ はなにかをりし はるそわすれぬ為子(従二位)
201あをはのみ しけりにけりな かたをかの こすゑははなの かけとみしまに為藤
202わかれての のちしのへとや ゆくはるの ひかすにはなの さきあまるらむ家良
203わかそてに かみはゆるさぬ あふひくさ こころのほかに かけてみるかな後京極院
204もろかつら かかるためしは あらしかし けふふたはなる ちよをそふれは兵衛(上西門院)
205ふたはなる ちとせをそふる もろかつら しめのうちには ためしにそひく安芸(崇徳院)
206わすれすよ いのるみやまの あふひくさ かけしむかしは とほさかれとも宰相典侍(後宇多院)
207ほとときす なくへきころも あやにくに まてはやしのふ はつねなるらむ尊道法親王
208なへてよに またるるころの ほとときす さそしのひねは もらしかぬらむ為明
209しのひねと おもふものから ほとときす ききてはひとに まつかたるかな一条(昭慶門院)
210ひとつてと いはぬはかりそ ほとときす きくともなくて すきぬなるかな顕輔
211さたかなる ひとつてよりは ほとときす たとるはかりの ひとこゑもかな良基(二条道平男)
212まちかねて ややふけにける うたたねの ゆめちにかよふ ほとときすかな実房
213やよやなけ ありあけのそらの ほとときす こゑをしむへき つきのかけかは行家(藤原知家男)
214あくるよの つきかけしたふ ほとときす こゑさへくもの いつくなるらむ為嗣
215つきをたに あかすおもひて ねぬものを ほとときすさへ なきわたるかな貫之
216ひとしれぬ おもひやしけき ほとときす なつのよをしも なきあかすらむ読人不知
217つれなさの たくひならしと ありあけの つきにしもなく ほとときすかな実兼
218あかつきと おもはてしもや ほとときす またなかそらの つきになくらむ順徳院
219やまのはの つきになくよの ほとときす またれしよりも いこそねられね少将内侍(後深草院)
220ほとときす なきてすきゆく やまのはに いまひとこゑと つきそのこれる浄弁
221ほとときす まつよひすきて やまのはに いさよふつきの かけになくなり公蔭
222あかつきの おもひをそへて ほとときす なといひしらぬ そらになくらむ大弐(安喜門院)
223さのみやは こころあるへき ほとときす ねさめのそらに ひとこゑもかな後鳥羽院
224きくままに ほのかになりぬ ほとときす くものよそにや とほさかるらむ為教
225ほとときす ほのかになのる ひとこゑの あかてわかるる みねのよこくも忠季(藤原公蔭男)
226むらくもの たなひくそらの ほとときす たえたえにこそ こゑもきこゆれ仲綱
227さよふけて ねさめてきけは ほとときす なくなるこゑや いつこなるらむ道信
228はしひめの まつよふけてや ほとときす まきのをやまに はつねなくらむ有光
229ほとときす やまのしつくに たちぬれて まつとはしるや あかつきのこゑ定家
230つのくにの いくたのもりの ほとときす おのれすますは あきそとはまし定家
231ほとときす きなくをきけは おほあらきの もりこそなつの やとりなるらし信明
232よしさらは こころつくさて ほとときす おのかさつきの ころやまたまし頼重
233しはしたに かたらははこそ ほとときす こころつくしの ほともうらみめ定為
234みやこひと さこそまつとも ほとときす おなしみやまの ともなわすれそ花園院
235あかすなほ しはしかたらへ ほとときす いかにまたれし はつねとかしる後光厳院
236うちしのひ ことかたらはむ ほとときす あすをあやめの ねにはたつとも延光
237あやめくさ さつきのけふの ほとときす そてにはかけぬ ねをやそふらむ成久
238ほとときす おのかさつきの ときしらは あやめかりふく やとになかなむ経通(一条内経男)
239おしなへて しけるのさはの なつくさに しめひきわけて さなへとるなり氏久
240けふもまた うらかせあれて みなとたに つりせぬあまや さなへとるらむ宣時(北条)
241さととほき やまたのさなへ かへるさを いそかてとるや いそくなるらむ国冬
242さみたれの はるるをひまと をやまたに このゆふくれや さなへとるらむ邦省親王
243おほあらきの もりのうきたの さみたれに そてほしあへす さなへとるなり雅朝
244やまかけや たこのをかさを ふくかせも すすしきくれに さなへとるなり後二条院
245かせにちる はなたちはなを そてにうけて きみかためにと おもひけるかな赤人
246たかそての なこりをとめて たちはなの むかしかはらぬ かににほふらむ俊定(藤原経俊男)
247そてふれて みはしにちかく たちはなの にほひもいまは むかしなりけり公清
248しのふるも とほからぬみの むかしかな はなたちはなの ちかきまもりは実継
249こころには ちかきまもりの たちはなの たちなれしよそ とほさかりゆく光厳院
250たちはなの そてのかはかり むかしにて うつりにけりな ふるきみやこは定家
251ふくかせに むかしをのみや しのふらむ くにのみやこに のこるたちはな土御門院
252いつまてか われもしのはむ たちはなの したふくかせに のこるむかしを御匣(式乾門院)
253むらさめの なこりのつゆや こほるらむ かせにたまちる のきのたちはな雅孝
254おくつゆも むかしのそての なこりかは しのふくさおふる のきのたちはな為信
255ほとときす たれにむかしを しのへとて さのみおいその もりになくらむ氏村
256かくはかり つれなきものを ほとときす なくやさつきと たれかいひけむ直義
257うきくもの みねたちまよふ むらさめに さそはれいつる やまほとときす実氏
258つきかけは おもひたえたる さみたれの くもよりいつる ほとときすかな宮内卿(後鳥羽院)
259さみたれの ふるえのむらの とまやかた のきまてかかる たこのうらなみ定円(葉室光俊男)
260さみたれは いりえのまこも かりにこし わたりもみえす なりにけるかな河内(前斎宮)
261けふみれは かはなみたかし みよしのの むつたのよとの さみたれのころ義詮
262さみたれに やそうちかはを みわたせは あしろやいつく せせのうもれき信実
263くもくらき まきのをやまの さみたれに やそうちかはは みつまさるらし冬平
264さみたれの ふるのたかはし たかしとも みかさまさりて みえぬころかな基任
265なとりかは せせのうもれき うきしつみ あらはれてゆく さみたれのころ為定(御子左二条為道男)
266はれやらて ふるさみたれに あすかかは ふちはせになる ひまやなからむ具行
267ふちはせに かはるならひも あすかかは きこえぬみよの さみたれのころ内実
268さみたれの くものとたえの ゆふひかけ さすかはれまと みゆるそらかな通相
269さしもくさ さしもひまなき さみたれに いふきのたけの なほやもゆらむ家良
270さみたれに ふしのなるさは みつこえて おとやけふりに たちまさるらむ慈円
271ときしらぬ やまほとときす さつきまて ゆきにやふしの ねををしむらむ行氏(祝部行言男)
272あやにくに はつねまたれし ほとときす さつきはおのか ときとなくなり為氏
273あやにくに きくへきつきは かさなれと やまほとときす おとつれもせす顕仲(源)
274さつきやま ゆすゑふりたて ともすひに しかやはかなく めをあはすらむ崇徳院
275ともしする さつをのまゆみ はるはると かへるやまちの すゑそあけゆく基成
276ともしすと いりにしやまの ふかけれは あけてもかへる みちやたとらむ為藤
277ともしすと つゆわけころも たちぬれて こよひもあかす みやきののはら基氏(足利尊氏男)
278くるるより つゆとみたれて なつくさの しけみにしけく とふほたるかな為世(御子左藤原為氏男)
279いしはしる たきのしらいと よるよるは たまぬきちらし とふほたるかな盛徳
280とふほたる おもひはふしと なるさはに うつるかけこそ もえはもゆらめ公雄
281ひさかたの つきのかつらの ちかけれは ほしとそみゆる せせのかかりひ道命
282よかはたつ うふねのかかり さしもなと またるるつきの かけいとふらむ実教
283おほゐかは せせのうふねの かすかすに うきてそもゆる かかりひのかけ公宗母
284うかひふね うきてかかりの みえゆくや たつかはきりの たえまなるらむ後宇多院
285ひとりのみ ぬるとこなつの つゆけさは なみたにさへや いろをそふらむ伊勢
286われのみは あはれともいはし たれもみよ ゆふつゆかかる やまとなてしこ式子内親王
287のへにおく おなしつゆとも みえぬかな はすのうきはに やとるしらたま俊成(藤原俊忠男)
288みなかみは ゆふたちすらし やまかはの いはねにあまる たきのしらなみ通光
289かつらきや たかまのやまに ゐるくもの よそにもしるき ゆふたちのそら後醍醐院
290ゆふたちの なこりひさしき しつくかな しのたのもりの ちえのしたつゆ伏見院
291ひとかたに ききのこのはを ふきかへし ゆふたちおくる かせそすすしき伏見院
292なるかみの おとほのかなる ゆふたちの くもるかたより かせそはけしき為兼
293くもかかる ゆふひはそらに かけろふの をののあさちふ かせそすすしき覚誉法親王
294くさふかき まかきのつゆを つきにみて あきのこころそ かねておほゆる後伏見院
295くれたけの よをへてあきや ちかからむ はわけのかせの おとそすすしき尊氏
296なつころも たちよるそての すすしさに むすはてかへる やまのゐのみつ雲雅
297つきのゆく なみのしからみ かけとめよ あまのかはらの みしかよのそら後二条院
298まちいてて しはしすすしく みるつきの ひかりにやかて あくるみしかよ為世(御子左藤原為氏男)
299なつのよは つきこそあかね やまのはの あなたのさとに すむへかりけり業平
300あけやすき よのまならすは つきかけを あきのそらとや おもひはてまし為家
301あけやすき ならひたにうき みしかよの つきにはくもの かからすもかな実躬
302いたつらに ふくるはやすき おいかよも おもひしらるる なつのよのつき為綱
303ことのねに ひひきかよへる まつかせを しらへてもなく せみのこゑかな読人不知
304やまひこも こたへそあへぬ ゆふつくひ さすやをかへの せみのもろこゑ俊恵
305けふはまた しのにをりはへ みそきして あさのつゆちる せみのはころも和泉式部
306よるせなき みをこそかこて おもふこと なほおほぬさに なつはらへして行輔
307おほぬさや あさのゆふして うちなひき みそきすすしき かものかはかせ進子内親王
308なみかくる たもともすすし よしのかは みそきにやかて あきやきぬらむ実夏
309けふしはや かへるさすすし みそきかは ゆふなみかけて あきやたつらむ実兼
310あききぬと おもひもあへぬ あさけより はしめてすすし せみのはころも光厳院
311せみのはの うすきたもとに ふきかへて やかてみにしむ あきのはつかせ義詮
312あきかせの ふきにしひより かたをかの せみのなくねも いろかはるなり家隆
313すまのあまの そてになれぬる うらかせも あきとやけさは ふきかはるらむ為子(贈従三位)
314つねよりも あきになるをの まつかせは わきてみにしむ ものにそありける西行
315おほともの みつのはままつ かみさひて むかしなからの あきのはつかせ経信
316のきちかき まつのこすゑに おとつれて そてにしくるる あきのはつかせ宮内卿(後鳥羽院)
317あすかかせ おとふきかへて たをやめの そてにもけさや あきをしるらむ邦省親王
318たをやめの ころもをうすみ あきやたつ あすかにちかき かつらきのやま匡房
319こすゑふく かせよりあきの たつたやま したはにつゆや もらしそむらむ良経(九条兼実男)
320いとはやも つゆそみたるる たまたれの こすのおほのの あきのはつかせ寛尊法親王
321あきはまた あさちかすゑの ゆふかせに わかそてかけて つゆけかるらむ一条(徽安門院)
322ひとりゐて なかむるやとに あききぬと をきのうははの おとろかすらむ基俊
323いかなれは をきのはそよく かせのおとの あきときくより さひしかるらむ御匣(式乾門院)
324よもすから をきのはかせの たえせぬに いかてかつゆの たまとぬくらむ具平親王
325わきてなと をきのはにのみ のこるらむ ほとなくすくる にはのあきかせ後光厳院
326そてにのみ おきこそまされ をきのはの かせにたまらぬ あきのしらつゆ尊氏
327むかしたれ あきのあはれを しりそめて いまもなみたの つゆこほるらむ兵衛督(達智門院)
328あききぬと おもひもあへぬ ころもての たかならはしに つゆけかるらむ基忠(鷹司兼平男)
329おもひいてて ひとこそとはね やまさとの まかきのをきに あきかせそふく孝標女
330ひさかたの あまのかはきり たつときや たなはたつめの わたるなるらむ躬恒
331あまのかは かちおときこゆ ひこほしの たなはたつめと こよひあふらし赤人
332さはるへき ちきりならねと たなはたの くるるまつまや くるしかるらむ基嗣
333いくあきも たえぬちきりや たなはたの まつにかひある ひとよなるらむ道嗣
334ここのへの にはのともしひ かけふけて ほしあひのそらに つきそかたふく法守法親王
335いくとせを ゆきめくりても たなはたの ちきりはたえし よはのしたおひ行家(藤原知家男)
336たなはたの まれにあふせも としふれは わたりやなるる あまのかはなみ経顕(藤原定資男)
337あまのかは としのわたりは とほけれと なかれてはやく あきもきにけり崇光院
338かさねても うらみやはれぬ たなはたの あふよまとほの くものころもは忠季(藤原公蔭男)
339いつのまに もみちのはしを わたすらむ しくれぬさきの ほしあひのそら兼氏
340あまのかは おもふかなかに ふねはあれと かちよりゆくか かささきのはし宗尊親王
341いくあきか わたしきぬらむ あまのかは おのかよりはの かささきのはし後二条院
342たなはたの いほはたころも かさねても あきのひとよと なにちきりけむ経宣
343たなはたの くものころもの きぬきぬに かへるさつらき あまのかはなみ為家
344たなはたの あかぬわかれの かへるさに いまこむとしを またちきるらむ実俊(西園寺公宗男)
345かせふけは しのにみたるる かるかやも ゆふへはわきて つゆこほれけり俊成女
346ゆふされは をはなかたよる あきかせに みたれもあへぬ つゆのしらたま長方
347かせふけは まののいりえに よるなみを をはなにかけて つゆそみたるる瑒子内親王
348のへことに みたれてみゆる かるかやの つゆふきむすふ あきのやまかせ甲裴(輔仁親王家)
349おきあへぬ あさけのつゆに さきそめて こはきかすゑは はなそいろこき為子(従二位)
350あさなあさな みれともあかぬ あきはきの はなをはあめに たれぬらしけむ月花門院
351わすれすよ はきのとくちの あけたては なかめしはなの いにしへのあき光厳院
352ちくさなる はなのにしきを あきくれは みるひといかに たちうかるらむ具平親王
353うつらなく いはれののへの あきはきを おもふひととも みつるけふかな読人不知
354みやきのの つゆわけきつる そてよりも こころにうつる はきかはなすり隆淵
355はきかはな をりてをゆかむ みやきのや このしたかせに ちらまくもをし定為
356あきかせは すすしくなりぬ こまなへて いさみにゆかむ はきのはなみに人麿
357はるされは かすみかくれに みえさりし あきはきさけり をりてかささむ人麿
358わかかとに あきはきさけり このねぬる あさかせはやみ はなちりぬへし家持
359さをしかの しからむのへの はきかはな ころもにすらむ ちらまくもをし公蔭
360あきはきの つゆちるはなの すりころも うつろふつきも かけそみたるる後光厳院
361からころも すそののくさの しらつゆの むすへはとくる はなのしたひも為氏
362あきののは こころもしのに みたれつつ こけのそてにも はなやうつらむ俊成(藤原俊忠男)
363をみなへし にほひをそてに うつしては あやなくひとや われをとかめむ貫之
364あたしのの こころもしらぬ あきかせに あはれかたよる をみなへしかな基俊
365をみなへし よかれぬつゆを おきなから あたなるかせに なになひくらむ讃岐(二条院)
366なへてさく はなのなかにも をみなへし おほかるのへは すきうかりけり元輔(清原春光男)
367かけくらき まかきのもとの きりきりす くるるもまたて ねをやなくらむ実性
368こゑたえす あきのよすから なくむしは あさちかつゆそ なみたなりける上総(堀河院中宮)
369つゆふかき またあさあけの くさかくれ よのまのむしの こゑそのこれる伏見院
370ふるさとの まかきのむしや うらむらむ のへのかりねの よさむなるころ伏見院
371あさとあけて はなのひもとく いててみむ たちなかくしそ のへのあききり高遠
372かせさわく くさのまかきの はなすすき おほふはかりの そてかとそみる邦世親王
373ゆふくれの のへふきすくる あきかせに ちくさをつたふ はなのうへのつゆ道良女
374はきのうへの つゆとなりてや くもゐとふ かりのなみたも いろかはるらむ頓阿
375うつらなく あたのおほのの まくすはら いくよのつゆに むすほほるらむ顕季
376うつらなく ゆふへのそらを なこりにて のとなりにける ふかくさのさと定家
377ふかくさや わかふるさとも いくあきか のとなりはてて うつらなくらむ宗経(平経親男)
378たちとまる ひとはかたのの はなすすき なにとほにいてて まねくなるらむ兵衛(上西門院)
379ゆきかへり ふるさとひとに みをなして ひとりなかむる あきのゆふくれ梅壷女御(教通女生子)
380さらてたに ものおもふことの かきりなる ゆふへをときと あきかせそふく良基(二条道平男)
381おきあまる つゆはみたれて あさちふの をののしのはら あきかせそふく光吉
382あらあれて つゆやこほるる みちのくの しのふかはらに あきかせそふく兼経
383あらちやま ゆふきりはるる あきかせに やたののあさち つゆもとまらす隆教
384よをこめて くさはのつゆを わけゆけは ものおもふそてと ひとやみるらむ花山院
385あたなりな つゆもてむすふ のへのいほ まかきとたのむ きりのへたては為世(御子左藤原為氏男)
386はなすすき そてになみたの つゆそへて くるるよことに たれまねくらむ亀山院
387いまよりは はやいねかての あきかせに いろつきそむる にはのあさちふ雅有
388つきまつと ひとにはいひし いつはりの いまやまことの ゆふくれのそら家隆
389いてぬまに くもふきはらへ つきかけの いさよふみねの あきのゆふかせ公忠(藤原実忠男)
390あきかせは こすゑをはらふ ゆふくれに くももかからぬ やまのはのつき進子内親王
391あきかせの はらふもまたて むらくもの かかるをのへを いつるつきかけ為世(御子左藤原為氏男)
392はつせやま をのへのかねや ふけぬらむ いさよふくもに いつるつきかけ為藤
393おのつから たたよふくもも すむつきの ひかりにきえて はるるそらかな為明
394いてそむる つきのひかりに あしひきの やまのこのまも あらはれにけり通顕
395そらにすむ ひかりそおそき みねこえて まつはらつたふ あきのよのつき経有(一条内経男)
396おしてるや なにはのうらの ゆふなきに あしのすゑはを いつるつきかけ公相
397わたのはら しほちはそらと ひとつにて くものなみより いつるつきかけ頼輔
398かせわたる かとたのすゑに きりはれて いなはのくもを いつるつきかけ後醍醐院
399いつるより ひかりそしるき あきのつき くもらぬみよの ゆくすゑのそら良実
400きみかすむ はこやのやまを いつるより くもらぬつきは そらにみえつつ実雄
401ひさかたの そらにもくもの のこりなく をさまれるよの みゆるつきかな為遠
402なにたかき こよひはあきの なかそらに ひかりみちたる つきのさやけさ貞重
403おもひやる ちさとのほかの あきまても へたてぬそらに すめるつきかけ俊光女
404あしひきの やまたちのほる つきかけの ゆくかたとほき あきのそらかな知家
405つきをみて こころのままに あくかれは いつくかあきの すみかならまし三河内侍(二条院)
406さらしなや をはすてやまの つきはみし おもひやるたに なみたおちけり実房
407しかのあまの おもひもいれぬ そてまても あきはいろそふ つきやみるらむ小宰相(土御門院)
408みぬよまて こころにうかふ あきのよの つきやむかしの かかみなるらむ顕実母
409くものうへに なれしむかしの おもかけも わすれやすると つきにとははや公雄
410あきのつき むかしをいまに うつしても ややすみまさる やとのいけみつ実雄
411はちすはの たまかとそみる いけみつの にこりにしまぬ あきのよのつき後嵯峨院
412おほゐかは しもはかつらの つきかけに みかきておつる せせのしらたま土御門院
413かみよより いくよろつよに なりぬらむ おもへはひさし あきのよのつき後嵯峨院
414すみのほる こころやそらに たちそひて こよひのつきの かけとなるらむ俊恵
415ふきはらふ あらしのままに あらはれて このまさためぬ つきのかけかな為道
416あきかせの ねやすさましく ふくなへに ふけてみにしむ とこのつきかけ伏見院
417あれにけり しほくむあまの とまひさし しつくもそても つきやとるまて定家
418もろともに なみのうへにも やとるかな つきもあかしや とまりなるらむ重家
419みなれても いそちになりぬ よはのつき わきてしのはむ あきはなけれと家親
420みるままに おもひもはるる つきかけや こころをてらす かかみなるらむ頼康
421あまのはら ひかりさしそふ かささきの かかみとみゆる あきのよのつき為家
422ふけゆけは つきかけさむし かささきの よわたるはしに しもやさゆらむ宗尊親王
423いにしへの ますみのかかみ よよかけて かみちのやまに てらすつきかけ実任
424あしひきの やまのはたかく すむつきに まつふくかせの おとそふけゆく為藤
425あまのはら ふりさけみれは つききよみ あきのよいたく ふけにけるかな実朝
426なにはかた あしまをわけて こくふねの おとさへすめる あきのよのつき為業
427かすかのに あさゐるくもの あともなく くるれはすめる あきのよのつき家隆
428なにたかき あきのなかはの なかそらに くももおよはす すめるつきかな定宗(藤原家親男)
429いけみつに うつれるかけも のとかにて あきのよすから すめるつきかな摂津(二条太皇太后宮)
430たかせさす よとのわたりの ふかきよに かはかせさむき あきのつきかけ為氏
431しろたへの ふしのたかねに つきさえて こほりをしける うきしまかはら有長
432これもまた かみよはきかす たつたかは つきのこほりに みつくくるとは良経(九条兼実男)
433すきたてる かとたのおもの あきかせに つきかけさむき みわのやまもと浄弁
434つゆなから もりくるつきを かたしきて とはたのいほに いくよねぬらむ四条(安嘉門院)
435いかはかり ひかりそふらむ つきかけの よなよなみかく つゆのしらたま行経
436たれすみて あはれしるらむ ときはやま おくのいはやの ありあけのつき道済
437くさふかく さひしからむと すむやとの ありあけのつきに たれをまたまし深養父
438つきかけの さひしくもあるか たかまとの をのへのみやの ありあけのそら真昭
439よもすから われをさそひて つきかけの はてはゆくへも しらていりぬる清輔
440とまるへき かたをもしらす こきいてて つきをかきりの あきのふなひと読人不知
441なみのうへに うつれるつきは ありなから いこまのやまの みねそあけゆく為世(御子左藤原為氏男)
442なにはかた いりしほちかく かたふきて つきよりよする おきつしらなみ為藤
443あきかせの よとこをさむみ いねかてに ひとりしあれは つきかたふきぬ光厳院
444あしひきの やまのこからし ふくからに くもるときなき ありあけのつき後鳥羽院
445のへはみな おもひしよりも うらかれて くもまにほそき ありあけのつき寂蓮
446ひくらしの なくゆふくれの うきくもに むらさめそそく もりのしたくさ有家(藤原重家男)
447ひくらしの なくやまかけは くれぬらむ ゆふひかかれる みねのしらくも知家
448あきかせや しほせのなみに たちぬらむ あしのはそよく ゆふくれのそら後鳥羽院
449みたれあしの ほむけのかせの かたよりに あきをそよする まののうらなみ良経(九条兼実男)
450をしかなく をかへのわさた ほにいてて しのひもあへす つまやこふらむ後光厳院
451あきののの をはなかもとに なくしかも いまはほにいてて つまをこふらし後嵯峨院
452むすひおく のはらのつゆの はつをはな わかたまくらと しかやなくらむ定為
453つきかけの いるののすすき うちなひき あかつきつゆに しかそなくなる直義
454たかさこの をのへのつきに なくしかの こゑすみのほる ありあけのそら経継
455つまこひの なみたやおちて さをしかの あさたつをのの つゆとおくらむ義詮
456かねてより こころそいとと すみのほる つきまつみねの さをしかのこゑ西行
457をくらやま あきはこよひと さをしかの つまとふみねに すめるつきかけ為藤
458つれなさの ためしはしるや さをしかの つまとふやまの ありあけのそら為氏
459をしかなく とやまのすその ははそはら いろにいててや つまをこふらむ実氏
460しかのねそ そらにきこゆる ゆふきりの へたつるかたや をのへなるらむ師良(二条良基男)
461やまさとは きりたちこめて ひともなし あさたつしかの おとはかりして通俊
462さらてたに ねさめかなしき あきかせに よるしもなとか しかのなくらむ家清
463やまさとの しかのなくねそ なかきよの ねさめのともと ききなれにける実衡
464つまこふる さをしかのねに さよふけて みのたくひをも ありとしりぬる小町
465たかさこの まつをともとも なくさまて なほつまこひに しかそなくなる尊円法親王
466たかしまや まつのこすゑに ふくかせの みにしむときそ しかもなきける増基
467いろにいてて あきしもしかの なくなるは はなのをりとや つまはたのめし康資王母
468なにめてて つまやこふらむ をみなへし おほかるのへの さをしかのこゑ雅家
469さをしかの よはのくさふし あけぬれと かへるやまなき むさしののはら家隆
470しかのねの ふきくるかたに きこゆるは あらしやおのか たちとなるらむ清輔
471よをさむみ つまやこふらむ あしひきの やましたかせに しかそなくなる為理
472ゆふひさす たのものいなは うちなひき やまもととほく あきかせそふく為氏
473ゆふひさす たのものいなは すゑとほみ なひきもはてす よわるあきかせ花園院
474しらとりの とはたのほなみ ふきたてて もるいほさむき あきのやまかせ公賢
475あけわたる やまもととほく きりはれて たのもあらはに あきかせそふく公雄
476きりきりす かへのなかにそ こゑすなる よもきかそまに かせやさむけき兵衛(上西門院)
477あきをへて なるるまくらの きりきりす しるやいそちの なみたそふとは隆博
478あさちふや とこはくさはの きりきりす なくねもかるる のへのはつしも順徳院
479むしのねは あさちかつゆに うらかれて よさむにのこる ありあけのつき為実(御子左藤原為氏男)
480きけははや うらかれにけり あさちはら むしのねまても しもやおくらむ為世(御子左藤原為氏男)
481あきふかき あさちかにはの しものうへに かれてもむしの こゑそのこれる道平
482よをさむみ かれゆくをのの くさかけに よわりもはてぬ むしのこゑかな為藤
483なかつきの ありあけのかけに きこゆなり よをへてよわる まつむしのこゑ読人不知
484わきてなほ あはれにたへぬ ときそとや ゆふへはむしの ねにもたつらむ邦省親王
485あきくれは むしもやものを おもふらむ こゑもをします なきあかすかな花山院
486まつひとに いかにつけまし くものうへに ほのかにきゆる はつかりのこゑ信明
487あきかせも ふきたちにけり いまよりは くるかりかねの おとをこそまて醍醐天皇
488きりわけて かりはきにけり ひまもなく しくれはいまや のへをそむらむ家持
489かりなきて さむきあしたや やましろの いはたのをのも いろかはるらむ基家
490いまよりの あきのねさめよ いかならむ はつかりかねも なきてきにけり雅冬
491みつくきの をかのくすはを ふくかせに ころもかりかね さむくなくなり行意
492かりかねは くもゐかくれに なきてきぬ はきのしたはの つゆさむきころ伏見院
493ふるさとを くもゐになして かりかねの なかそらにのみ なきわたるかな相模
494なきわたる くもゐのかりも こころしれ こぬひとたのむ あきかせのころ寂蓮
495はつかりの なきわたりぬる くもまより なこりおほくて あくるつきかけ友則
496いくちさと あるみちなれや あきことに くもゐをたひと かりのなくらむ是則
497つらかりし はるのわかれは わすられて あはれとそきく はつかりのこゑ政村
498あまのかは とわたるかりや たなはたの わかれしなかに かよふたまつさ義政
499からすはに かくたまつさの ここちして かりなきわたる ゆふやみのそら西行
500はれやらぬ あさけのそらの きりのうちに つらこそみえね わたるかりかね親子(従三位)
501へたつとは みえてまちかく きこゆなり きりのうへゆく はつかりのこゑ後光厳院
502ゆふされは くもにみたれて とふかりの ゆくへさためす あきかせそふく実兼
503あきかせに やまとひこえて くるかりの はむけにきゆる みねのしらくも躬恒
504をやまたの おしねかりかね ほにあけて なくこゑきけは あきふけにけり実名(藤原公脩男)
505かりなきて よさむになれは はつしもの おくてのいなは いろつきにけり為信
506あきふかき つきのよさむに をりはへて しもよりさきと うつころもかな為藤
507さとひとの きぬたのおとも いそくまて つきやよさむの しもとみゆらむ具行
508ききわひぬ はつきなかつき なかきよの つきのよさむに ころもうつこゑ後醍醐院
509なかつきの つきもよさむの いねかてに おきゐてたれか ころもうつらむ公賢
510あくかれて つきみるほとの こころにも よさむわすれす うつころもかな為定(御子左二条為道男)
511よもすから あきのこころを なくさめて つきにうつなり あさのさころも行忠(藤原)
512とりのねの きこゆるまてに さとひとの ねぬよもしるく うつころもかな経賢
513たかために あさのさころも うちわひて ねられぬよはを かさねきぬらむ経朝
514つのくにの あしふくこやの よをさむみ ひまこそなけれ ころもうつこゑ内経
515さよころも たかねさめより うちそめて ちさとのゆめを おとろかすらむ実忠
516たちこむる きりのまかきの ゆふつくよ うつれはみゆる つゆのしたくさ為秀
517もろひとの けふここのへに にほふてふ きくにみかける つゆのことのは為家
518なかつきの とよのあかりは なのみして いまはむかしに きくのさかつき良基(鷹司道平男)
519さきぬれは よそにこそみれ きくのはな あまつくもゐの ほしにまかへて堀河中宮
520いつれをか はなとはわかむ なかつきの ありあけのつきに まかふしらきく貫之
521いくかへり ちとせのあきに あひぬらむ いろもかはらぬ しらきくのはな公能
522うつしうゑは ちよまてにほへ きくのはな きみかおいせぬ あきをかさねて行済
523にほひこそ まきれさりけれ はつしもの あしたのはらの しらきくのはな師房
524なにしおへは はなさへにほふ むらさきの ひともときくに おけるはつしも読人不知
525あまくもの よそにかりかね ききしより はたれしもふり さむしこのよは人麿
526ふるさとの はつもみちはを たをりもて けふそわかくる みぬひとのため人麿
527ときまちて おくるしくれの あまそそき あさかのやまは うつろひぬらむ読人不知
528はつしくれ またふらなくに かたをかの はしのたちえは いろつきにけり教実
529あきやまは しくれぬさきの したもみち かつかつつゆや そめはしむらむ為子(従二位)
530よそにみし くもやしくれて そめつらむ もみちしてけり かつらきのやま長綱(菅原重長男)
531いりひさす とよはたくもに わきかねつ たかまのやまの みねのもみちは崇徳院
532ゆふひかけ さすやたかねの もみちはは そらもちしほの いろそうつろふ覚助法親王
533はなならは うつろふいろや をしからむ ちしほをいそく あきのもみちは道嗣
534いつのまに ちしほそめけむ きのふより しくるとみえし みねのもみちは邦省親王
535しきしまや やまとにはあらぬ くれなゐの いろのちしほに そむるもみちは為家
536あしひきの やまのもみちや ぬしなくて さらせるあきの にしきなるらむ杲守
537いつのまに しつはたやまの はつしくれ そめてもみちの にしきおるらむ成国
538しくるれは いろまさりけり おくやまの もみちのにしき ぬれはぬれなむ清正
539くれなゐの やしほのあめは ふりくらし たつたのやまの いろつくみれは人麿
540をくらやま ききのもみちの くれなゐは みねのあらしの おろすなりけり清輔
541みつのあやを からくれなゐに おりかけて けふのみゆきに あへるもみちは公実
542あきふかく なりゆくときは おほゐかは なみのはなさへ もみちしにけり斉信
543みなそこに かけのみみゆる もみちはは あきのかたみに なみやをるらむ頼基(大中臣輔道男)
544やまひめの こころのままに そめなさは もみちにのこる まつやなからむ万秋門院(尚侍藤原瑣子朝臣)
545たかねより もみちふきおろす やまかせや ふもとのまつの しくれなるらむ信生
546かはらしな ときはのもりの むらしくれ よそのもみちに あきはみゆとも近衛(今出河院)
547かねてより うつろふあきの いろもなほ しくれてまさる かみなひのもり良瑜
548ふりつもる もみちのいろを みるときそ くれゆくあきは まつしられける定頼
549みやこいてて なににきつらむ やまさとの もみちはみれは あきくれにけり公任
550としことに とまらぬあきと しりなから をしむこころの こりすもあるかな読人不知
551あすもなほ くれゆくあきは あるものを をしむこころを けふつくしつる範兼
552くれはつる あきのかたみと あすやみむ そてになみたの つゆをのこして実俊(西園寺公宗男)
553いりひさす かたをなかめて わたのはら なみちのあきを おくるけふかな経正
554よわりゆく むしのねにさへ あきくれて つきもありあけに なりにけるかな通具
555ゆくあきの すゑののくさは うらかれて しもにのこれる ありあけのつき後醍醐院
556ありあけの ほのかにみえし つきたにも おくらぬそらに かへるあきかな家隆
557つゆわけし のへのささはら かせさえて またしもこほる ふゆはきにけり為世(御子左藤原為氏男)
558したはれし あきのなこりの つゆをたに ほしあへぬそてに ふるしくれかな内実
559したひこし あきのわかれの なみたより そてもほしあへぬ はつしくれかな後光厳院
560まきのやに ふゆこそきぬれ とはかりを おとつれすてて ゆくしくれかな光厳院
561このはちる うへやまかせの あらしより しくれになりぬ みねのうきくも有家(藤原重家男)
562さそはるる くものゆききの さためなき しくれはかせの こころなりけり公蔭
563ふきおくる かせのままなる うきくもの かさなるやまは しくれふるらし有房(六条通有男)
564たえたえに くものうきたつ やまのはに かせをしるへと ゆくしくれかな一条(昭慶門院)
565ふきよわる あらしのひまの うきくもや しはしやすらふ しくれなるらむ為藤
566みわやまは しくれふるらし かくらくの はつせのひはら くもかかるみゆ隆教
567うきくもを さそひもはてぬ やまかせに たちかへりふる むらしくれかな為理
568たまくしけ みむろのやまも ふゆきぬと あくるそらより ふるしくれかな基平(近衛兼経男)
569やまかせの ふくにまかせて さためなく このはさへふる かみなつきかな実重(三条公親男)
570いつくより ふきくるかせの さそふらむ こすゑもしらぬ にはのもみちは房経
571ふゆきては さゆるあらしの やまかせに つきてこのはの ふらぬひはなし実雄
572いつしかと ふゆをやつくる はつしくれ にはのこのはに おとつれてゆく永福門院
573ふきおくる あらしのそらの うきくもに しくれをそへて ふるこのはかな良冬
574むらしくれ おとをのこして すきぬなり このはふきまく みねのあらしに公明
575うきてゆく くものたよりの むらしくれ ふるほともなく かつはれにけり伏見院
576このはちる あさけのかせや さそふらむ しくれになりぬ うきくものそら覚助法親王
577しからきの とやまのもみち ちりはてて さひしきみねに ふるしくれかな秀能(藤原秀宗男)
578ゆくつきの したやすからぬ うきくもの あたりのそらは なほしくれつつ公雄
579うちしくれ ひとのそてをも ぬらすかな そらもやけふは あきをこふらむ俊成(藤原俊忠男)
580きくひとの そてさへぬれぬ このはちる おとはしくれに たくふのみかは実定
581いととしく ものおもふよの ひとりねに おとろくはかり ふるしくれかな赤染衛門
582ゆめちまて よはのしくれの したひきて さむるまくらに おとまさるなり為兼
583おとろかす このはのおとの なかりせは あくるそゆめの かきりならまし兼実
584ちしほまて そめしこすゑの のこりなく にはのおちはと いつなりにけむ宰相(瑒子内親王家)
585やまたかみ こすゑをさして なかれくる たきにたくへて おつるもみちは貫之
586みなかみに かせわたるらし おほゐかは もみちをむすふ たきのしらいと大輔(殷富門院)
587おほゐかは けふのみゆきに もみちはも なかれひさしき ゐせきにそみる祐家
588おほゐかは みつのなかれも みえぬまて ちるもみちはの うかふけふかな俊忠
589かはかみに しくれのみふる あしろには もみちはさへそ おちまさりける躬恒
590おちつもる もみちをみれは ひととせの あきのとまりは あしろなりけり貫之
591うちやまの あらしにおつる もみちはや あしろによるの にしきなるらむ如寂
592かみなつき あさひのやまも うちしくれ いまやもみちの にしきおるらむ俊綱(橘)
593きみみねは あさひのやまの もみちはも よるのにしきの ここちこそすれ紀伊(祐子内親王家)
594ささわくる たもとはかせの おとさえて しられすむすふ のへのゆふしも雅孝
595きくのはな ふゆののかせに ちりもせて けふまてとてや しもはおくらむ是則
596きくのはな こきもうすきも いままてに しものおかすは いろをみましや躬恒
597すかのねも うつろひかはる ふゆのひに ゆふしもいそく やまのしたくさ信実
598かせさゆる あさちかにはの ゆふひかけ くるれはやかて むすふしもかな実教
599なにはかた みきはのあしに しもさえて うらかせさむき あさほらけかな西行
600しもふかき まかきのをきの かれはにも あきのままなる かせのおとかな尊氏
601かきりあれは あきもかくやは ききわひし あらしにさやく しものしたをき後光厳院
602みわたせは ましるすすきも しもかれて みとりすくなき ゐなのささはら土御門院
603ふゆきぬと ともにかれゆく やまさとの ひとめやくさの ゆかりなるらむ為子(贈従三位)
604かりひとの いるののくさの しもかれに つかれのとりや かくれかぬらむ忠基(九条経教男)
605みしまのや くるれはむすふ やかたをの たかもましろに ゆきはふりつつ為家
606みなとえや あしのかれはに かせさえて しもよのつきに ちとりなくなり雅孝
607ひさきおふる かはらのちとり なくなへに いもかりゆけは つきわたるみゆ家持
608ふゆされは さほのかはかせ さゆるよの ふけたるつきに ちとりなくなり公顕
609なるみかた わたるちとりの なくこゑも うらかなしさは ありあけのそら光厳院
610うらとほく わたるちとりも こえさむし しものしらすの ありあけのそら後二条院
611わかかたや なみたかからし ともちとり ことうらになく こゑそきこゆる隆教
612ふけゆけは やまおろしさえて ささなみの ひらのみなとに ちとりなくなり宗尊親王
613にほとりは をろのはつをに あらねとも かかみのやまの かけになくなり為藤
614にほとりの かよひちもさそ たとるらし よひよひことの いけのこほりに義高
615あしかもの はらふつはさに なみこえて うはけのしもや なほこほるらむ兼好
616よもすから かものうはけを はらふかな いくたひしもの おくにかあるらむ実行
617すみわひて いけのあしまを たつかもの こほりにのこる あともはかなし道助法親王
618なかなかに しもよのそらや さむからむ こほりにかへる いけのをしとり行能
619しもにたに うはけはさゆる あしかもの たまものとこは つららゐにけり隆房
620さゆるよは ころもかたしく とこのしも そてのこほりに つきやとるなり為明
621さえまさる そてのあらしを かたしきて しもよのとこに つきをみるかな信専
622そてかへす あまつをとめも おもひいてよ よしののみやの むかしかたりを後醍醐院
623みのやまの しらたまつはき いつよりか とよのあかりに あひはしめけむ行家(藤原知家男)
624よさむなる とよのあかりの しものうへに つきさえわたる くものかけはし為家
625はやきせは こほりもやらて ふゆのよの かはおとたかく つきそふけゆく実教
626おのつから こほらぬひまも こほりけり つきかけさむき やまかはのみつ達智門院(奨子内親王)
627たつなみの おとはのこりて おきつかせ ふけひのうらに こほるつきかけ成光(祝部成国男)
628まののうらや いりうみさむき ふゆかれの をはなのなみに こほるつきかけ実超
629にほのうみや ひらのやまかせ さゆるよの そらよりこほる ありあけのつき慈能
630さゆるよの しもをかさねて そてのうへに やとれはこほる つきのかけかな時光
631かれはつる くさはのしもの しろたへに やとるもさむき つきのかけかな公敏
632いまはとて あさちかれゆく しものうへに つきかけさひし をののしのはら忠良
633あきのいろは あとなきのへの しものうへに なほみしままの つきそよかれぬ一条(昭慶門院)
634はれくもり うきたつくもの やまのはに かけさたまらぬ ふゆのよのつき公雄
635しくれてそ なかなかはるる かせませに このはふるよの やまのはのつき善成
636あきよりも さえにけらしな ふるゆきの つもりてはるる やまのはのつき成茂
637ひさかたの そらさえわたる ふゆのよは つきのひかりも ゆきかとそみる成仲
638さゆるよの ゆきけのそらの むらくもを こほりてつたふ ありあけのつき為世(御子左藤原為氏男)
639はつせかは ゐてこすなみの そのままに こほりてかかる せせのしからみ頓阿
640さゆるよは こほるもはやし よしのかは いはきりとほす みつのしらなみ為遠
641たちかへる おともきこえす ふゆかはの いしまにこほる みつのしらなみ為定(御子左二条為道男)
642たにかはや むすふこほりの したむせひ なかれもやらぬ おともさむけし崇光院
643おとたてし あらしやまつに のこるらむ ささなみこほる しかのからさき宣明
644かせさわく ならのおちはに たまちりて おとさへさむく ふるあられかな宣子(従二位)
645あさゆふの おとはしくれの ならしはに いつふりかはる あられなるらむ定家
646うたののや やとかりころも ききすたつ おともさやかに あられふるなり雅経
647たまもかる いちしのあまの ぬれころも ゆふひもさむく あられふるなり源承
648かせさむみ そらはゆきけに なりそめて かつかつにはに ちるあられかな後宇多院
649にはのおもに かれてのこれる ふゆくさの むらむらみえて つもるしらゆき為定(御子左二条為道男)
650いととまた ゆきにはあとも なかりけり ひとめかれにし にはのふゆくさ為子(従二位)
651いつくとも みきはそみえぬ いけみつの こほりにつつく にはのしらゆき賢俊
652よひのまの のきのしつくも おとたえて ふくれはこほる ゆきのむらきえ長舜
653さとわかぬ ゆきのうちにも すかはらや ふしみのくれは なほそさひしき良経(九条兼実男)
654はつゆきの ふらはといひし ひとはこて むなしくはるる ゆふくれのそら慈円
655はつゆきの にはにふりはへ さむきよを たまくらにして ひとりかもねむ家持
656みやこにも みちふみまよふ ゆきなれは とふひとあらし みやまへのさと好忠
657とはるへき みともおもはぬ やまさとに ともまつゆきの なにとふるらむ有房(六条通有男)
658かれはつる をののしのはら みちたえて あまりひかすの つもるゆきかな親清女
659いまよりは とたえもみえし しらゆきの つきてふりしく くめのいははし師信
660いととまた かきりもみえす むさしのや あまきるゆきの あけほののそら後嵯峨院
661おいかみの たくひとやせむ よよをへて ゆきをいたたく まつのこころは実泰
662たけくまの まつのみとりも うつもれて ゆきをみきとや ひとにかたらむ光行
663みつとりの かものかみやま さえくれて まつのあをはも ゆきふりにけり頼貞
664つきのこる まきのとやまの あけほのに ひかりことなる みねのしらゆき実兼
665しろたへの ひかりそまさる ふゆのよの つきのかつらに ゆきつもるらし後嵯峨院
666かさしをる そてもやけさは こほるらむ みわのひはらの ゆきのあけほの後鳥羽院
667ふゆのよの さゆるにしるし みよしのの やまのしらゆき いまそふるらし二条院
668ふりつもる ゆきをかさねて みよしのの たきつかふちに こほるしらなみ為氏
669おほゐかは そまやまかせの さむけきに いはうつなみを ゆきかとそみる左近(三条院女蔵人)
670こきかへる たななしをふね あともなし なにはのあしの ゆきのしたをれ兵衛内侍(順徳院)
671ふるゆきは それともみえす ささなみの よせてかへらぬ おきつしまやま知家
672よしのやま ゆきふりはてて としくれぬ かすみしはるは きのふとおもふに国冬
673いたつらに すきゆくものと おもひこし としのなにとて みにつもるらむ資季
674わきてしも をしむとなしに あはれなり ことしもかくて くれぬとおもへは花園院
675くれぬとて いまさらいそく ことしかな つきひのゆくも しらさりしみに高定
676いまさらに としのくれとも おとろかす いそきなれたる あさまつりこと後光厳院
677はたすすき をはなさかふき くろきもて つくれるやとは よろつよまてに元正天皇
678きみかよは なからのはしの はしめより かみさひにける すみよしのまつ道長
679きみかよは やそしまかくる なみのおとに かせしつかなり すみのえのまつ公経(藤原実宗男)
680かみよより あひおひのまつも けふしこそ ありてちとせの かひもしるらめ国助
681ときはなる たままつかえや いくちよも きみかよはひに かけをならへむ公明
682かせかよふ まつをうつして いけみつの なみもちとせの かすによるらし尊氏
683かそへしる よはひをきみか ためしにて ちよのはしめの はるにもあるかな為道
684さくはなも けふをみゆきの はしめにて なほゆくすゑも よろつよやへむ大納言典侍(後嵯峨院)
685よろつよの きみかかさしに をりをえて ひかりそへたる やまさくらかな通重
686きみかへむ ちとせのはるを かさぬへき ためしとみゆる やへさくらかな顕昭
687ちよふへき ためしときけは やへさくら かさねていとと あかすもあるかな覚性法親王
688あらたまの としのちとせの はるのいろを かねてみかきの はなにみるかな定家
689きみかため ひさしかるへき はるにあひて はなもかはらす よろつよやへむ兼季
690きみのみや ちとせのまつの はなのいろに とかへりまても なれむとすらむ為秀
691ちとせとも かきらぬきみか ともなれは まつもはなさく はるやかさねむ師平
692いろかへぬ はこやのやまの みねのまつ きみをそちよの ともとみるらむ公重(西園寺実衡男)
693ひさにへむ ともとやきみに ちきるらむ とかへりのまつの はなのさくまて経顕(藤原定資男)
694まつかえも やほよろつよの いろそそふ ちとせもあかぬ わかきみのため公蔭
695ゆくすゑを おもふもひさし ひめこまつ いまよりきみか ちよをちきりて忠季(藤原公蔭男)
696きみかへむ ちとせのはるの ゆくすゑも まつのみとりの いろにみゆらし実名(藤原公脩男)
697いくちよそ みとりをそへて あひおひの まつときみとの ゆくすゑのはる雅家
698いろかへぬ をのへのまつに ふくかせは よろつよよはふ こゑにそありける花園院
699つるかをか こたかきまつを ふくかせの くもゐにひひく よろつよのこゑ基氏(足利尊氏男)
700きみかすむ はこやのやまの たまつはき やちよさかえむ すゑそひさしき俊光
701よををさめ たみをあはれむ まことあらは あまつひつきの すゑもかきらし後光厳院
702よものうみ ななつのみちも わかきみの みよそをさまる はしめなりける尊氏
703よものうみ をさまりぬらし わかくにの やまとしまねに なみしつかなり後醍醐院
704ももとせに ちかつくひとそ おほからむ よろつよふへき きみかみよには俊成(藤原俊忠男)
705わかのうらに よるとしなみを かそへしる みよそうれしき おいらくのため経家(六条重家男)
706なからへて けさやうれしき おいのなみ やちよをかけて きみにつかへよ宮内卿(後鳥羽院)
707きみそなほ けふよりもまた かそふへき ここのかへりの とをのゆくすゑ右京大夫(建礼門院)
708かめやまの ここのかへりの ちとせをも きみかみよにそ そへゆつるへき俊成(藤原俊忠男)
709おほゐかは みかさやまさる かめやまの ちよのかけみる みゆきとおもへは敦賢親王
710きみかよは のとかにすめる いけみつに ちとせをちきる あきのつきかけ家良
711かけきよき いけのかかみに てるつきも くもるときなく よろつよやへむ行能
712あきらけき みかけになるる いけみつを つきにそみかく よろつよのあき信実
713きみかよの つきとあきとの ありかすに おくやくさきの よものしらつゆ定家
714きみかよに ちたひあふへき あきなれと けふのくれをは をしみかねつも行成
715あめつゆの めくみにそむる もみちはの ちしほはきみか ちよのかすかも実教
716さきそむる まかきのきくの つゆなから ちよをかさねむ あきそひさしき宰相典侍(後宇多天皇)
717きみかよの かすにかさなる ものならは きくはいくへも かきらさらまし公教
718むらさきの にはにみとりの いろそへて ゆくすゑとほき ちよのくれたけ経教
719よよをへし みかきのたけの たねなれは すゑもちとせの いろそそふへき冬平
720をさまれる くもゐのにはに きこゆなり こころとけたる たつのもろこゑ実俊(西園寺公宗男)
721つるのこの すたちはしむる けころもは ちよにやちよを かさねてそきむ弁乳母
722むしろたに ちとせをかねて すむつるも きみかよはひに しかしとそおもふ師光(源師頼男)
723としをへて つかさくらゐを ますかかみ ちよのかけをは きみそみるへき永縁
724よろつよに よろつよそへて ますかかみ きみかみかけに ならへてそみむ基俊
725わかきみは ひとをかかみと みかくなり こころくもらて ちよもつかへむ義詮
726わかのうらに ふたたひたまを みかくこそ あきらけきよの しるしなりけれ定煕
727あめつちと ともにひさしき しきしまの みちあるみよに あふかうれしさ法守法親王
728わかきみは をののえくちし としをへて たみのななよの すゑにあふまて国冬
729きみかよは とよあしはらの あきつすに みちひるしほの つきしとそおもふ有長
730はるかにそ いまゆくすゑを おもふへき なかをのむらの なかきためしに経衡
731みかみやま いはねにおふる さかきはの はかへもせすて よろつよやへむ匡房
732くもりなき たまたののへの たまひかけ かさすやとよの あかりなるらむ清輔
733はるはると くもりなきよを うたふなり つきてかさきの あまのつりふね清輔
734ときをえて ちたのむらひと いくちたひ とれともつきぬ さなへなるらむ時光
735しきしまの みちもいまこそ さかえけれ よろつをすてぬ きみかめくみに為定(御子左二条為道男)
736たちかへり なにとなこりを をしむらむ こころはひとに わかれやはする家良
737みとせまて なれしさへこそ うかりけれ せめてわかれの をしきあまりに宗尊親王
738あつまちの のはらしのはら わけゆかは こひむなみたを おもひおこせよ隆信
739とまるへき みちにもあらぬ わかれちは したふこころや せきとなるらむ仲実
740わかれちは せきもととめぬ なみたかな ゆきあふさかの なをはたのめと肥後(京極前関白家)
741くるるまも さためなきよと しりなから かへりこむひを まつそはかなき成通
742おほのうらの そのなかはまに よるなみの ゆたにそきみを おもふこのころ聖武天皇
743いはせのの あきはきしのき こまなへて こたかかりをも せてやわかれむ家持
744こぬひとを まつあきかせの ねさめには われさへあやな たひここちする兼輔
745もろこしへ ゆくひとよりも ととまりて からきおもひは われそまされる成尋母
746かきりある いのちなりせは めくりあはむ あきともせめて ちきりおかまし道我
747こきいつる あしわけをふね なとかまた なこりをとめて さはりたにせぬ為世(御子左藤原為氏男)
748なみのうへの つきのこらすは なにはえの あしわけをふね なほやさはらむ実教
749またいつと あひみむことを さためてか つゆのうきみを おきてゆくらむ行尊
750たのめおく あすのいのちも しらなくに はかなきものは ちきりなりけり土御門院
751たのますよ これはあるよの わかれとも またあふまての いのちしらねは実伊
752めにみえぬ こころはかりは おくれねと ひとりややまを けふはこゆらむ為家
753これをみよ こひしかるへき ゆくすゑを かねておもふに ぬるるたもとそ俊恵
754ものかはと きみかいひけむ とりのねの けさしもなとか かなしかるらむ経尹(藤原懐経男)
755ふるさとに たちかへるとも ゆくひとの こころはとめよ ふはのせきもり頼康
756あはれまた ことしもくれぬ おいかみの おとろへまさる ひなのわかれに基世
757ことのはに なけくとはみよ かかみやま したふこころに かけはなくとも為世(御子左藤原為氏男)
758ここにして いへやはいつこ しらくもの たなひくやまを こえてきにけり読人不知
759たまもかる としまをすきて なつくさの のしまかさきに ふねちかつきぬ人麿
760きみかため なみのたましく みつのはま ゆきすきかたし おりてひろはむ貞数親王
761あふさかを うちいててみれは あふみのうみ しらゆふはなに なみたちわたる読人不知
762とまりする をしまかいその なみまくら さこそはふかめ よさのうらかせ通具
763けふいくか なみのまくらに あけくれて やまのはしらぬ つきをみるらむ為藤
764わたのはら やそしまかけて しるへせよ はるかにかよふ おきのつりふね秀能(藤原秀宗男)
765すみたかは ふるさとおもふ ゆふくれに なみたをそふる みやことりかな俊成(藤原俊忠男)
766かきりなく とほくきにけり すみたかは こととふとりの なをしたひつつ後光厳院
767くさむすふ かりほのとこの あきのそて つゆやはぬらす ゆふくれのそら忠良
768ゆきなれぬ ひなのあらのの つゆわけて しをるるたひの ころもへにけり近衛(今出河院)
769ふるさとを わすれむとても いかかせむ たひねのあきの よはのまつかせ為兼
770あきのよも あまたたひねの くさまくら つゆよりつゆに むすひそへつつ為道
771おほえやま こえゆくすゑも たひころも いくののつゆに なほしをるらむ義詮
772つゆふかき のへのをささの かりまくら ふしなれぬよは ゆめもむすはす伏見院
773いつまてか くさのまくらの しらつゆの おくとはいそき ぬとはしをれむ為秀
774あつまのの つゆわけころも こよひさへ ほさてやくさに まくらむすはむ宗秀(藤原宗奉男)
775みやこをは よふかくいてて あふさかの せきにまたるる とりのこゑかな有忠
776せきのとも はやあけかたの とりのねに おとろかされて いそくたひひと資明
777あふさかの とりのねとほく なりにけり あさつゆわくる あはつののはら頓阿
778たれかまた つゆけきのへの かりねせむ むすひてすつる くさのまくらに宗経(平経親男)
779わけすくる ちくさのはなの すりころも おもひみたるる たひのそらかな後嵯峨院
780さくらいろに はるたちそめし たひころも けふみやきのの はきかはなすり有家(藤原重家男)
781わけゆけと はなのちくさの はてもなし あきをかきりの むさしののはら行春(二階堂時元男)
782しらかはの せきやをつきの もるかけは ひとのこころを とむるなりけり西行
783こよひこそ つきにこえぬれ あきかせの おとにのみきく しらかはのせき忠守
784あきかせに けふしらかはの せきこえて おもふもとほし ふるさとのやま基家
785あしからの やまちのつきに みねこえて あくれはそてに しもそのこれる成茂
786ゆくすゑは つきにやこえむ たひころも ひもゆふくれの さやのなかやま善了
787たひのそら いくゆふくれに まちいてて やまのはかはる つきをみつらむ兼好
788たひひとは またいてやらぬ せきのとに つきそさきたつ ありあけのそら為相
789われならぬ ひともやかかる たひねして ありあけのつきに ものおもふらむ家経(一条実経男)
790ふりすてて たれかはこえむ すすかやま せきやはよはの つきももりけり氏忠
791たひひとの よこほりふせる やまこえて つきにもいくよ わかれしつらむ家持
792さらぬたに みやここひしき あつまちに なかむるつきの にしへゆくかな後鳥羽院
793まつかねの あらしのまくら ゆめたえて ねさめのやまに つきそかたふく伏見院
794いほりさす はやまかはらの かりねには まくらになるる さをしかのこゑ頼実(藤原経宗男)
795まつかねの まくらにしかの こゑはして このまのつきを そてにみるかな丹後(宜秋門院)
796かりなきて あさかせさむし ふるさとに わかおもふいもや ころもうつらむ頼貞
797こよひもや さののをかへの あきかせに ささはかりしき ひとりかもねむ知家
798ささまくら よはのころもを かへさすは ゆめにもうとき みやこならまし長舜
799くさまくら つゆうちはらふ そのままに なみたかたしく よはのころもて業氏
800ふるさとに かよふたたちは ゆるさなむ たひねのよはの ゆめのせきもり実超
801くさまくら そてのみぬるる たひころも おもひたちけむ ことそくやしき顕輔
802しもさゆる たひねのとこの さひしさを いかにとたにも とふひともかな仲正
803たひならぬ われもころもを かたしきて おもひやれとも いかかとふへき読人不知
804からころも はるはるきぬる たひねにも そてぬらせとや またしくるらむ為家
805さととほき やまちのくもは しくれつつ ゆふひにいそく あきのたひひと為氏
806しくれつる くもをとやまに わけすてて ゆきにこえゆく あしからのせき兼直
807やすらはは なほそつもらむ ふるゆきに しひてやこえむ ふゆのやまみち承覚法親王
808かひかねは なほいかはかり つもるらむ はやゆきふかし さやのなかやま寂真
809かへるさは としさへくれぬ あつまちや かすみてこえし しらかはのせき隆博
810たひころも はるはるきぬる やつはしの むかしのあとに そてもぬれつつ為家
811やともかな さののわたりの さのみやは ぬれてもゆかむ はるさめのころ家長(源時長男)
812たのめおく やとしなけれは たひのそら くるるをみちの かきりにそゆく読人不知
813ゆきくれぬ こやにひとよの やととひて なにはのあしの かりねをやせむ季賢
814けふこそは よそになりぬれ かつらきや こえしたかまの みねのしらくも公順
815ふるさとを へたてきにけり たひころも かさなるやまの やへのしらくも通相
816たちかへり またもやこえむ みねのくも あともさためぬ よものあらしに雅経
817みやまちを ゆふこえくれて やともなし くもゐるみねに こよひかもねむ花園院
818みやこおもふ うつのやまみち こえわひぬ ゆめかとたとる こころまよひに尊円法親王
819つゆしけき つたのしけみを わけこえて をかへにかかる うつのやまみち定円(葉室光俊男)
820あけぬとて ふもとのさとは いてぬれと またきりくらき さよのなかやま斉時
821いつくにか やとをからまし いはねふみ かさなるやまに ひはくれにけり性厳
822たつたやま ゆふこえくれぬ おほともの みつのとまりに ふねやまつらむ家隆
823こきいてし みなとへたてて わたのはら かさなるくもに かかるしらなみ行親
824こくふねの ゆくへもしらぬ なみまより みゆるこしまや とまりなるらむ基嗣
825わたのはら おきこくふねの よるへなみ あまのすむてふ さとやとはまし為定(御子左二条為道男)
826いかにして ひともかよはむ わたのはら ふねとかせとの たよりならすは後宇多院
827みわたせは みとりのそらに なみかけて とまりもしらぬ ふなてしにけり公能
828ふしなれぬ とこのうらかせ みにしみて こころうきたつ なみのおとかな守覚法親王
829ふしなれぬ はままつかねの いはまくら そてうちぬらし かへるうらなみ定家
830こととひて いくたひすきぬ ともちとり あらいそなみの よるのうきねに実夏
831ふしわひぬ あしのはそよく みなとかせ さむくふくよの なみのまくらに杲守
832みにそしむ かかるところの よはもまた なれぬたひねを すまのうらかせ為子(贈従三位)
833かちまくら いかにさためて ゆめもみむ うきねになるる ひとにとははや基任
834ころもてを しきつのうらの うきまくら なみたもなみも かけぬよそなき覚寛
835うきまくら むすひもはてぬ ゆめちより やかてうつつに かへるなみかな行氏(平胤行男)
836おもひやれ なれたるあまの そてたにも なみのうきねは ぬるるならひを忠基(九条経教男)
837こころして とまひきおほへ うきくもも あめになるとの おきつふなひと成清
838ふねとめて かたしくそての うらかせを たゆたふなみの まくらにそきく源意(藤原源守男)
839ともさそふ むろのとまりの あさあらしに こゑをほにあけて いつるふなひと茂重
840うかりける あらいそなみの おとまても ならはぬたひに そてそしをるる貞重
841まとろまて つきをそみつる よるなみの あらきはまへの よはのかりねに兼氏
842いせしまや つきにをりしく はまをきの かりねもさむし あきのしほかせ源承
843をりしかむ ひまこそなけれ おきつかせ ゆふたつなみの あらきはまをき家隆
844くさのはに おきゐるつゆの きえぬまに たまかとみゆる ことのはかなさ人麿
845ひさかたの そらみることく あふきみし みこのみかとの あれまくをしも人麿
846かからむと おもひしもせは おほふねの とまるとまりに しめゆはましを額田王
847ふちころも おりけるいとは みつなれや ぬれはまされと かわくまもなし貫之
848ことのはに いひおくつゆも なかりけり しのひくさには ねをのみそなく重之
849かりそめの わかれならねは しのふくさ しのふにつけて つゆそこほるる輔親
850あしひきの やまほとときす このころは わかなくねをや ききわたるらむ道命
851いとへとも あまりうきみの なからへて ひとにおくるる かすつもるらむ赤染衛門
852なきひとに ゆきあふさかと おもひせは たえぬなみたは せきとめてまし新少将
853よのなかに うかりしあきと おもへとも くれゆくけふは をしくやはあらぬ公通
854かきりなく けふのくるるそ をしまるる わかれしあきの なこりとおもへは堀河(待賢門院)
855いろはみな むなしきものを たつたかは もみちなかるる あきもひととき定家
856こよひこそ おもひしりぬれ あさからす きみにちきりの あるみなりけり西行
857かかりける わかれをしらて やましろの とはにもきみを たのみけるかな信実
858いまはとて みしおもかけの さらになほ みにそふものと なりにけるかな秀茂
859あけくれは みをもはなれぬ おもかけの ありてなきこそ はかなかりけれ基平(近衛兼経男)
860ときのまも わすられはこそ なくさまめ おもかけはかり うきものはなし公豪
861おもひいてて みるもかなしき おもかけを なになかなかに うつしおきけむ如円
862あはれとも いふへきひとは さきたちて のこるわかみそ ありてかひなき左京大夫(永陽門院)
863ことわりの ならひたかはて たらちねの あととふみちは なにかかなしき円伊
864ことわりの たかはぬのみそ うかりける みにもかへてと おもふわかれは有忠
865しひてこそ よのならひとは おもひなせ あはれたくひも なきわかれかな頼時女
866よのうさも いかはかりかは なけかれむ はかなきゆめと おもひなさすは兵衛督(達智門院)
867よのなかの うつつのやみに みるゆめの おとろくほとは ねてかさめてか慈円
868きみたにも ありていとはは わひつつも みのうきのみや なけきならまし隆信
869ひとしれす おもひしことを ちきりおかて うきなをとめむ あとのかなしさ読人不知
870かよひける こころをしらて いとはせて のちはくやしき ねをのみそなく読人不知
871かきくらす そてのなみたに せきかねて ことのはたにも かきもやられす後伏見院
872いろふかき そてのなみたに ならふらし ちしほやちしほ そむるもみちは花園院
873おもへたた つらねしえたは くちはてて たのむかけなく なれるなけきを実継
874つねよりも しくれしくれて すみそめの ころもかなしき かみなつきかな大弐(安喜門院)
875あめとのみ ふるはなみたと おもひしに そらさへくるる きのふけふかな雅言
876かきくらす なみたはかりに ほしわひて ふりけるあめも わかぬそてかな邦長
877そらたにも なほかきくれて ふるあめに なみたのそてを おもひこそやれ源承
878おもひやれ そらもひとつに かきくれて あめもなみたも しほるたもとを行済
879おもはすよ よはのけふりと のほるまて ひとりたちそふ ちきりありとは境空
880さらにまた たちおくれしと したふかな もえしけふりの あとをたつねて吉子(従三位)
881きのふといひ けふとさきたつ ゆふけふり きえのこるみの あはれいつまて玄円
882たちのほる のへのけふりや なきひとの ゆきてかへらぬ かきりなるらむ澄経
883ぬきかふる ほとをもまたて ふちころも なけくなみたに くちやはてなむ経深
884このままに おもひやたたむ ぬきかへは なこりもかなし すみそめのそて行春(二階堂時元男)
885きしよりも ぬくそかなしき きみかため そめしころもの いろとおもへは長家
886おくりおきし のはらのつゆを そのままに ほさてくちぬる ふちころもかな広房(大江広房男)
887とほからぬ つひのすみかを いつくとて のへにひとよを あかしかぬらむ長明
888つゆきえし くさのゆかりを たつぬれは むなしきのへに あきかせそふく寿成門院
889おもひいつる はるのみやまの かけまても なみたにうかふ よはのつきかな俊顕
890くものうへと みしはのはらと なりぬれと むかしににたる つきのかけかな西花門院
891あきらけき こよひのつきに さそはれて むなしきそらに いまかへりぬる妙宗
892ゆくすゑを おもふにそての ぬるるかな つひにのかれぬ みちしはのつゆ高秀
893いまはわれ たれとともにか ならふへき ふるきまくらそ みるもかなしき久明親王
894しられしな おなしうきよの わかれちに よそのあはれも そてぬらすとは宰相典侍(後宇多院)
895なきあとの みそちあまりの みとせまて とふにそおいの うさもわするる栄運
896たまぬきし あやめのくさは ありなから よとこはあれむ ものとやはみし江侍従
897あやめくさ ことしはよそに みるそてに かはりてかかる わかなみたかな義詮
898またもこむ はるたにもうき わかれちに こそをかきりの あとそかなしき性威
899こひしさや たちまさるらむ かすみさへ わかれしとしを へたてはつれは出羽弁
900わかれにし としをはかすみ へたつれと そてのこほりは とけすそありける経信
901けふとても いそかれぬかな なへてよを おもひうみにし たなはたのいと上東門院(道長女彰子)
902なかきよの ためしとききし すみのえの まつのけふりと なるそかなしき頼忠
903もろともに こえましものを してのやま またおもふひと なきみなりせは成仲
904きみかため いとといのちの をしきかな かかるうきめを みせしとおもへは成仲女
905みつのおもに うかへるたまの ほともなく きゆるをよその ものとやはみる教長
906よそまても そてこそぬるれ あたしのや きえにしつゆの あきのあはれに慈道法親王
907ひかすふる のちもいまさら せきかねつ とふにつらさの そてのなみたは実性
908つゆのみを はかなきものと おもひしる こころそやかて むなしかりける師教(九条忠教男)
909すゑのつゆ あさちかもとを おもふにも わかみひとつの あきのむらさめ家隆
910あさかほの あたにはかなき いのちをは つとめてのみそ しはしたもたむ源信
911うつせみの よのはかなさを おもふには なほあたならぬ あさかほのはな頓阿
912うつせみは むなしきからも のこりけり きえてあとなき あさかほのつゆ為定(御子左二条為道男)
913なけくらむ こころをくみて かすかすに かくもかなしき みつくきのあと惟継
914かきなかす このみつくきの あとなくは したにそむせふ なけきならまし為藤
915とてもかく かりのよならは かりにたに なとなきひとの かへらさるらむ成光(祝部成国男)
916はかなくも これをかたみと なくさめて みにそふものは なみたなりけり宗尊親王
917きみもけに これそかきりの かたみとは しらてやちよの あとをとめけむ順徳院
918おなしよの わかれはなほそ しのはるる そらゆくつきの よそのかたみに順徳院
919あさほらけ こきゆくあとに きゆるあわの あはれまことに うきよなりけり隆信
920いはしみつ いはぬものから こかくれて たきつこころを ひとはしらなむ伊勢
921そらにしる ひとはあらしな しらゆきの きえてものおもふ わかこころとは人麿
922つくまのに おふるむらさき きぬにそめ いまたきすして いろにいてにけり笠女郎
923おもひあまる けふりやたちて おのつから こころのそらの くもとなるらむ円融院
924ひとしれぬ しのふのうらの ゆふけふり おもひたつより みはこかれつつ邦世親王
925ひとしれぬ こころはかりに さそはれて まよふこひちは とふかたもなし公賢
926ゆふくれの そらにはかなく ゆくくもの あとなきみちに おもひたつらむ行能
927かつらきや たかまのやまに さすしめの よそにのみやは こひむとおもひし家隆
928のにもあらす やまにもあらぬ こひちにも いるよりそてそ つゆけかりける大輔(殷富門院)
929かひかねに このはふきしく あきかせも こころのいろを えやはつたふる定家
930おのつから ふきかふかせの たよりにも おもふこころを つたへてしかな実明女
931このまより かけのみみゆる つきくさの うつしこころは そめてしものを読人不知
932つきくさの はつはなそめの したころも したにうつるを しるひとそなき経継
933かくとたに いはまにむせふ たにみつの もらさはかよふ こころともかな聖尊法親王
934たにかけや いはまをせはみ ゆくみつの わきかへるとも しるひとそなき定為
935もらすなよ このはにうつむ たにみつの そこのこころは わきかへるとも氏経
936わかそてに ありとやいはむ よしのかは たえすおつなる たきのみなかみ隆博
937あさきせそ なみはたつらむ よしのかは ふかきこころを きみはしらすや読人不知
938なみたかは いかなるみつか なかるらむ なとわかこひを けつひとのなき躬恒
939よしさらは もるにまかせむ なみたかは なかれのすゑに あふせありやと実直母
940やまかはの たきつこころも せきかねつ おもふにあまる そてのなみたに為氏
941そてにおつる たきのしらいと うちはへて くるしきなかに むすほほれつつ常顕
942せきかねて おつるはかりそ いまもなほ おとにはたてぬ そてのたきつせ兵衛督(達智門院)
943もらすへき ひまこそなけれ しのふやま しのひてかよふ たにのしたみつ小宰相(土御門院)
944しのふやま またことかたに みちもかな ふりぬるあとは ひともこそしれ兼好
945こひしなむ のちのよまての おもひては しのふこころの かよふはかりか忠度
946しはしこそ うのはなかきの ほとときす いつかたもとは さみたれのそら慈円
947ひとしれす おもひしのふの やまかせに ときそともなき つゆそこほるる俊成女
948いかにせむ しのふもちすり とにかくに おもひみたるる そてのなみたを実衡女
949からあゐの やしほのころも ふかけれと あらぬなみたの いろそまかはぬ知家
950うちつけに おもひそめける こころかな やかてちしほの そてのなみたは宣子(従二位)
951せきかへす なみたをかねて おもふかな くちなむそての はてはいかにと公雄
952せきかへす たよりたになく かなしきは そてにもしのふ なみたなりけり為子(贈従三位)
953つひにさて せくにくちぬる そてならは もらぬなみたの かひやなからむ常元
954いかにして なみたつつまむ かけやとす つきこそそての いろにいつとも為定(御子左二条為道男)
955たれゆゑの なみたとひとの おもふらむ しらせぬさきに ぬるるたもとを英時
956たもとこそ なみたほすまも かたからめ こころをさへに さのみしほらし為嗣
957ゆふしくれ もるやまかけに たちぬれて うつろふそての いろやまかへむ覚為
958こかれゆく よそのもみちに くらへみよ たもとにかかる あきのむらさめ実氏
959つゆはまつ いろにやいてむ おもふとも いはてしのふの もりのしたくさ義詮
960しられしな しのふのもりの したくさに おきそふつゆは むすほるるとも源承
961つもりては そてにもふちと なりやせむ なみたはきくの つゆならねとも隆博
962かくしつつ としもへにけり ことのはの ひとつてならぬ たよりまつまに教定(飛鳥井雅経男)
963いとせめて しのふるなかの たまつさは おもふかきりを かきもつくさす花園院
964ちらすなよ しのふのもりの ことのはに こころのおくの みえもこそすれ尊円法親王
965おもひつつ ここらのとしを しのふくさ しのふるほとに つみてけるかな輔親
966としをへて ちりのみつもる なみたかな とこうちはらふ ひとしなけれは深養父
967いひいてて つれなからすは としつきを しのひきつるや くやしからまし忠房親王
968ひとしれぬ なみたのたまの おのれのみ おもひくたけて としそへにける行氏(平胤行男)
969もらさしと なにしのふらむ かすならぬ みをしらてこそ おもひそめしか則祐
970せきかへす そてのなみたの たまかつら かけてもしらし いろしみえねは師賢(藤原師信男)
971つひにわか こころやいろに あらはれむ しはしはつつむ うきななりとも尊氏
972かくはかり しのはさりせは こひしさの ひとかたにのみ ものやおもはむ基任
973こひすてふ みをのそまひと あさゆふに たつなはかりの やむときもなし実兼
974あしかもの おりゐるいけの みつなみの たつことやすき わかななりけり実雄
975いかかせむ そらにかすみの たつなのみ はれぬこひちに まよひはてなは為道
976せめてなほ なくさむかたも ありなまし あふにしかふる うきななりせは瑒子内親王
977いつしかと わかなはたちぬ しきたへの まくらにたれか しらせそめけむ長秀
978もらさしと おさふるそてそ なかなかに ひとめにあまる なみたなりける行経
979あらはれて いつなにたたむ せきもりの うちぬるひまの かすもつもらは公宗母
980こえわふる あふさかやまの せきよりも よそにもるなそ くるしかりける光明
981うきひとの こころのせきと なりはてて なほこえかたき あふさかのやま重基(平)
982ふしのねや もえつつとはに なけきても ならぬおもひの はてそかなしき為氏
983するかなる やまはふしのね わかことや たえぬけふりに むすほほるらむ実氏
984ふしのねや たえぬけふりの ゆくへたに しらぬおもひの としのへぬらむ道助法親王
985ふしのねの とはにもゆれは うきひとや めつらしけなく おもひけつらむ為明
986ことうらに なひかぬほとそ ゆふけふり わかしたもえの たのみなりける頓阿
987なひきける わかみあさまの こころから くゆるおもひに たつけふりかな小侍従(太皇太后宮)
988うきなかは ちきりあさまの ゆふけふり わかためもゆと みやはとかめむ為定(御子左二条為道男)
989かみよより けふりたえせぬ ふしのねは こひやつもりて やまとなるらむ素暹
990ひとりぬる まくらのちりの つもりてや むなしきとこの やまとなるらむ寛耀
991あひおもはぬ いもをなにせむ うはたまの こよひもゆめに みえもこなくに人麿
992ゆめにたに みるへきものを ねさめつつ こふるこころは ゆくかたもなし元良親王
993おもひねの ゆめのうきはし とたえして さむるまくらに きゆるおもかけ俊成女
994うつつには わすれやはする うきことの ゆめこそさむる ほとなかりけれ公雄
995ひとはよも こころかよはし よひよひの わかおもひねの ゆめのうきはし義詮
996うきひとの こころにはあらて おもひつつ ぬれはそみゆる ゆめはたのまし為定(御子左二条為道男)
997まことなき ゆめのたたちの おもかけは たかいつはりに かよひそめけむ為信
998せめてなほ うつつにつらき なくさめと ぬるよのゆめを まつもはかなし為教
999ねぬるよの ゆめにこえける あふさかや ひともゆるさぬ せきちなるらむ成景
1000あきのよの とりのはつねは つれなくて なくなくみえし ゆめそみしかき定家
1001きえわふる しものころもを かへしても みしよまれなる ゆめのかよひち通光
1002なかきよに こほりかたしき ふしわひぬ まとろむほとの なみたならねは高倉(八条院)
1003あはぬよの つらさかさなる さむしろに かたしくものは なみたなりけり隆教
1004あふまてと うきにたへたる つきひさへ せめてつれなく くるるとしかな四条(安嘉門院)
1005あふまてと たのみしままに としくれて ちきりもしらす ゆくつきひかな為氏
1006あふまての ちきりもまたす なつひきの てひきのいとの こひのみたれは為家
1007あふことは なほかたいとに ぬくたまの こころよわくそ おもひみたるる内経
1008きえねたた なにそはあたの ことのはに かけてもつらき そてのしらたま高倉(八条院)
1009いたつらに としはへにけり たまのをの なからへはとも ちきりやはせし隆祐
1010たまささの はわけのつゆの きえぬへく おもふとまては しるひとやなき法守法親王
1011あきはきに おくしらつゆの きえかへり ひとをこひしと おもふころかな読人不知
1012しもかれの のへにあさふく かせのおとの みにしむはかり ものをこそおもへ赤染衛門
1013わかこひは くさはにあまる つゆなれや おきところなく みをなけくらむ良教
1014わかそては かりにもひめや くれなゐの あさはののらに かかるゆふつゆ式子内親王
1015うしとのみ ひとのこころを みしまえの いりえのまこも さそみたるらむ公実
1016ますかかみ こひしきひとは みえなくに わかおもかけの なにうつるらむ土御門院
1017わかなかは とほやまとりの ますかかみ よそにもひとの かけをやはみる定為
1018やまとりの をろのかかみの よそなから みしおもかけに ねこそなかるれ実直母
1019いつまてか よそにのみして あまくもの へたつるなかに こひわたるへき祐夏(鴨祐雄男)
1020あふまてと たのみをかけし たまのをの よわるはかりに としそへにける基嗣
1021ひとしれぬ おもひのたまの をたえなは なにしてあはぬ かすをとらまし伊勢大輔
1022こひしなぬ いのちはかりを おなしよの ちきりありとや なほたのままし寿成門院
1023みなといりの あしまをわけて こくふねも おもふなかには さはらさりけり但馬(藻璧門院)
1024あしまより なにはのうらを ひくふねの つなてなかくも こひわたるかな読人不知
1025なそもかく あまのとわたる あまをふね かちとるまなく ものおもふらむ基俊
1026よさのうみの あまのしわさと みしものを さもわかやくと しほたるるかな和泉式部
1027あふことは かたたのうらの おきつなみ たつなはかりや ちきりなるらむ道暁
1028しほたるる みをはおもはす ことうらに たつなくるしき ゆふけふりかな少将内侍(後深草院)
1029あふことも みにはなきさに よるなみの よそのみるめに ねこそなかるれ後伏見院
1030いつまてか おもひみたれむ いたつらに おきつたまもの みかくれにして時光
1031いかにせむ もろこしふねの よるかたも しらぬにさわく そてのみなとを為定(御子左二条為道男)
1032あふことは なみちはるかに こくふねの ほのみしひとに こひやわたらむ一条(徽安門院)
1033よるふねの たよりはなくて いたつらに わかみこかるる とこのうらなみ為秀女
1034はるたては そらのけしきの かはるかな つらきこころも かからましかは成助
1035へたてたる かすみのまより ちるはなは しのふにあまる こころとをしれ高遠
1036いかにして はなのしたひも とけにけむ ひとのこころは ありしなからに基俊
1037むらさきの こそめのおひの かたむすひ とけてぬるよの かきりしらせよ教実
1038かりそめに むすひすてける したおひを なかきちきりと なほやたのまむ民部卿典侍(後堀河院)
1039おもへとも えそいはしろの むすひまつ うちとけぬへき こころならねは祖月
1040すきたてる やともをしへす つらけれは みわのやまへを たれにとはまし伊尹
1041いのらすよ はつせのひはら しくれにも つゆにもそめぬ いろをみむとは行乗
1042みそきせし かみもうけすは たちかへり つらきひとをや またかこたまし公秀
1043かみたにも なひかぬなかの ゆふしては なににかくへき たのみなるらむ為連
1044こひしなぬ みのつれなさを いのるより おもひたえぬと かみやしるらむ為定(御子左二条為道男)
1045しくれする いくたのもりの はつもみち ひをへてまさる いろにこひつつ良基(二条道平男)
1046しくれゆく くものたえまの みねのまつ みすはつれなき ほともしられし行尹
1047あふことを しはしはかけし おきつなみ よそのみるめの たえもこそすれ為理
1048いもせやま なかるるたきの おとにのみ きかぬはかりを なほやたのまむ為藤
1049あふことの なきさにひろふ いしなれや みれはなみたの まつかかるらむ輔相
1050あまのかる みるめはよその ちきりにて しほひもしらぬ そてのうらなみ為兼
1051あまのたく もにすむむしに あらねとも われからこひに みをこかすかな為清
1052わかなかは うらよりをちに おくあみの ひけともよらぬ ほとそくるしき為世(御子左藤原為氏男)
1053うらみても としふるあまの つりのをの うけくにうかふ なみたとをしれ実氏
1054きよみかた あふことなみの せきもりは わかかよひちに うちもたゆます藤経(源)
1055せきもりの こころもしらす あふさかを わかかよひちと おもひけるかな長舜
1056きくもうし たれをなこその せきのなそ ゆきあふみちを いそくこころに為子(従二位為子)
1057いかにまた こころひとつの かよひちも すゑはなこその せきとなるらむ隆房
1058よとともに むねあひかたき わかこひの たくひもつらき けふのほそぬの伏見院
1059こひしきも つらきもおなし おもひにて やむときもなき わかこころかな読人不知
1060あはれてふ ことのはいかて みてしかな わひはつるみの なくさめにせむ実方
1061あたにおく つゆのなさけの ことのはに わかいのちさへ かかるはかなさ小少将
1062うきになほ たへけるとしを かそふれは わかつれなさの ほとそしらるる頼康
1063なからへて おなしうきよに ありとのみ きくやわかみの たのみなるらむ義詮
1064つれなさの かきりもしらす おなしよに いのちあらはと たのむはかなさ良憲
1065かひなしや うきになしても ひとかたに おもひもこりぬ こころよわさは為兼
1066あふまては むすはさりける さきのよの むくひしられて うきちきりかな隆長
1067よよかけて われさへつらし むくひありて うきにひかるる ちきりとおもへは公蔭
1068むくひある よともしらてや うきひとの こころのままに つれなかるらむ善源
1069あらましに なくさむほとの ちきりたに わかこころより おもひたえにき実教
1070あふにたに かへむいのちは かなしきに うきひとゆゑに みをやすつへき俊恵
1071こひしなむ のちのよとても いかならむ いきてつれなき ひとのこころは為氏
1072つれなしと よそにやみえむ あふことに ひとのかへねは いけるいのちを基任
1073あひみての のちのつらさを せめてなと なけくはかりの おもひてもなき家定
1074さりともと はかなくたのむ こころこそ つれなきなかの ちきりなりけれ定煕
1075あふことに かへもこそすれ をしからぬ わかいのちとは ひとにかたらし宗恵
1076とはれぬも うきみのとかと おもふこそ せめてもしたふ こころなりけれ信方
1077なにかおもふ しひてもいはし うきみをは いとふもさこそ くるしかるらめ大輔(殷富門院)
1078いせのうみの しほせになひく はまをきの ほとなきふしに なにしをるらむ寂蓮
1079せきとむる やまゐのみつの かけにたに みすはたもとを しほらましやは公相
1080ひとこころ あさきにまさる おもひかは うきせにきえぬ みつからもうし永福門院
1081ひとしれぬ こころのうちの おもひかは なかれてすゑの たのみたになし頼清
1082としをへて こひわたるみの くるしさを あはれとおもへ うちのはしひめ実継
1083おもひかね うちのかはをさ こととはむ みのうきふねも よるへありやと頼康
1084もかみかは ひとのこころの いなふねも しはしはかりと きかはたのまむ有家(藤原重家男)
1085みつのうへの あわときえなは こひせかは なかれてものは おもはさらまし御匣(式乾門院)
1086そこひなき ふちとなりても なみたかは したにこころの さわきやはせぬ為秀
1087あふせなき なみたのかはの みをつくし つらきしるしに くちやはてなむ公守
1088いかなれは ひとにこころを そめかはの わたらぬせにも そてぬらすらむ信聡
1089けふりたつ むろのやしまに あらぬみは こかれしことそ くやしかりける匡房
1090うきよをは なけきなからも すくしきて こひにわかみや たへすなりなむ忠度
1091さてしもそ いのちはいとと をしからむ あふにはかへし こひはしぬとも村基
1092あふことに かへぬいのちそ よそなから なかなかなかき ちきりなりける周清
1093みのうさを おもひもしらぬ ものならは なにをかこひの なくさめにせむ小侍従(太皇太后宮)
1094しきたへの まくらもうとく なるまてに さてもねぬよの つもりぬるかな帥(鷹司院)
1095こひわふる そてのなみたを そのままに ほさてかたしく よはのさむしろ頼隆
1096あふことは かたしきころも さむしろに ねぬよかさねて ぬるるそてかな宗範
1097ひとりぬる なみたのとこの ぬれころも あふよもしらて くちやはてなむ雅冬
1098いくよわれ おしあけかたの つきかけに ことわりならぬ ものおもふらむ按察(鷹司院)
1099おのつから なくさむやとて なかむれは つきみぬよりも ぬるるそてかな後醍醐院
1100ゆきあはむ ほとをはしらす すみよしの まつのたえまの ちきのかたそき土御門院
1101まつひとも こすゑにかかる うつせみの うきみからにや おとつれもせぬ新少将
1102はかなしや たかいつはりの なきよとて たのみしままの くれをまつらむ為家
1103さりともと こころひとつに たのむかな ひとのしるへき ゆふへならねは通成
1104わくらはに まてとたのむる ことのはの いつはりならぬ ゆふくれもかな道意(西園寺実兼男)
1105あきのあめに きりのはおつる ゆふくれを おもひすつるそ まつにまされる基家
1106いたつらに くらせるよひの さむしろは ゆめをたのみて ねむかたもなし信実
1107なけきわひ あふとはかりを いかにして くらせるよひの ゆめにたにみむ光吉
1108わひぬれは こよひもひとり ぬるかうちに みえつるゆめや しひてたのまむ貞世
1109これもまた まつとやいはむ さよころも かへすゆめちの たのみはかりに長雅
1110よしさらは またしとおもふ ゆふへこそ わかこころさへ たのみかたけれ冬平
1111いかたおろす そまやまかはの はやきせに さはらぬくれと おもはましかは広秀
1112おほゐかは ひとめもらさぬ けふやさは そまのいかたし くれをまつらむ馬内侍
1113まちなれし ゆふくれことに ささかにの いともくるしく ものをこそおもへ法守法親王
1114たのめしも またしるひとは なきものを おとになたてそ まつのゆふかせ一条(徽安門院)
1115このくれも おとになたてそ しのふやま こころひとつの みねのまつかせ宣明
1116なほさりの ことのはにのみ ききなれて たのむかはりの ゆふくれもなし雅久
1117いつはりの うきにもたへて またれけり みはならはしの ゆふくれのそら為冬
1118いつはりの ことのはまては たのむとも ちきらぬくれの またれすもかな藤子(従三位)
1119まつひとは こよひもいさや いりひさす とよはたくもの ゆふくれのそら忠幸
1120このくれに おとろかさすは かはりける ちきりもしらて なほやまたまし邦省親王
1121たのめねは いつはりとたに かこたれす わかなくさめに しひてまつよは為子(従三位)
1122ひとかたに まちもやせまし いつはりの うきにならはぬ ゆふへなりせは実兼
1123いつはりは またれしまての なさけにて なかなかつらく なるちきりかな国冬
1124いつはりの ちきりなりとも たのみてや かはらはかこつ ことのはにせむ万代(後醍醐院女蔵人)
1125かくはかり またれすもかな いつはりと おもひしままの こころなりせは尊道法親王
1126たのめこし うきいつはりを つらしとも いはぬにみゆる はなのいろかな読人不知
1127いはてたた あたにうつろふ はなにこそ とへとおもはぬ いろもみえしか家基(近衛基平男)
1128よのなかに たえていつはり なかりせは たのみぬへくも みゆるたまつさ読人不知
1129はかなしや くるるよことの いつはりに いつまてこりぬ こころなるらむ孝朝
1130はかなくて まつらむとこそ いつはりに ちきりしひとは おもひいつらめ為藤
1131いつはりの ちきりならすは おのつから ひともひとめの ひまやまつらむ浄弁
1132こぬまても なくさむものを いつはりの なきよなれとは たれかいひけむ宗尊親王
1133ちきれはと たのむもかなし いつはりの なきゆふくれに いつならひけむ為子(贈従三位)
1134いくよまて まちあかせとて うきひとの なほいつはりの かすつもるらむ廉仁王
1135いつまてか こぬよあまたと うらみても さすかまたれし ゆふへなりけむ隆博
1136いつはりの むなしきかすの つもるより ゆふくれをさへ うらみつるかな如雄
1137いつはりと おもはてたのむ くれもかな まつほとをたに なくさめにせむ則祐
1138ささかにの いとかきたえし ゆふへより そてにかかるは なみたなりけり基成
1139さりともと ゆふけのうらの こよひさへ あはすはたのむ かひやなからむ瑒子内親王
1140たのめても いかかとおもふ よひのまの あめにそいとと まちよわりぬる忠季(藤原公蔭男)
1141おのつから ひとまありとも つけてまし まことにかよふ こころとおもはは花園院
1142いつはりも かきりあらはと たのむよの いくたひふけて ひとりねぬらむ為相
1143ふけぬるを うらみむとたに おもふまに こぬよしらるる とりのこゑかな頓阿
1144またしとは おもふものから ふくるよの つらきやなにの こころなるらむ一条(照慶門院)
1145こよひさへ むなしくふくる ともしひの きえなてあすも あらむものかは光厳院
1146ふくるまて なほこそたのめ こよひそと いはぬをたにも まちしこころに良基(二条道平男)
1147よひのまは いててはらはむと おもひしに さきたつそての つゆそあやしき土御門院
1148うきひとの おもかけそへて たのむよも こぬよもひとり つきをみるかな邦省親王
1149つれなさの かきりをそしる たのめつつ こぬよのつきの ありあけのそら在夏
1150こよひまた むなしきそてに ふけぬとは なみたにやとる つきそしるらむ冬定
1151よひのまの しけきひとめの やすらひに まつほとすきて つきそふけゆく基氏(足利尊氏男)
1152たのめすは さてもねぬへき よひよひの つらさにかへて つきをみるかな顕実母
1153きみまつと ひとにはいはぬ いつはりも いくよになりぬ やまのはのつき是法
1154いつはりと おもひもしらす またるるや こころにたえぬ ちきりなるらむ信武
1155まてはこそ うらみもまされ いつはりに おもひなしてや うちもねなまし雅孝
1156まきのとを たたくくひなを それかとも おとろかぬまて とはぬきみかな師光(源師頼男)
1157まきのとは さしてこよひも あけにけり さはるといはて なにまたるらむ重直
1158あしまゆく いりえのふねの つなてなは さはるやよそに こころひくらむ長綱(菅原茂長男)
1159たのめつつ こぬよにかねて ならはすは けふやつらさの はしめならまし光行
1160たのめつつ こぬよのかすは つもれとも またしとおもふ こころたになし行広
1161おもひつつ ひるはかくても なくさめつ よるそわひしき ひとりぬるみは読人不知
1162いつはりと なにかかこたむ おもはねは とはぬそひとの まことなりける昌義
1163たちかへり なほこそたのめ いつはりも つもらはひとや おもひしるとて隆淵
1164せめてたた ふけゆくかねそ またれける わすれてこすは おとろかせとて国夏
1165たのめても こぬみのはまの おきつかせ なにいほさきの まつにふくらむ能誉
1166ゆめのこと なとかよるしも きみをみむ くるるまつまも さためなきよを忠見
1167ゆめとたに おもひもわかぬ ちきりかな やみのうつつの さたかならねは忠貞
1168うきなのみ たつあたなみの あさきせは かよふかひなき にほのしたみち寛耀
1169うきふしと なかなかなりぬ ささまくら むすふひとよの ゆめのちきりは読人不知
1170わすれしな ひとよのふしの ささまくら ひとこそかりに おもひなすとも良基(二条道平男)
1171こひしなは くやしかるへき ちきりかな いのちそひとの なさけなりける後宇多院
1172さすかまた かきりありける ちきりとや いのちつれなく たのみきつらむ為子(贈従三位)
1173かくてしも ありはつましき ちきりとや あふよをひとの なほしのふらむ経賢
1174あふさかの このしたかけの いはしみつ なかれてむすふ ちきりともかな為明
1175おのつから あふよまれなる ちきりをは しのはすとても たれかしるへき信実
1176さむしろの ちりははらはし あはぬよの つもれるかすも おもひしれとて宣子(従三位藤原)
1177うらむへき ことのはそなき くすかつら くるよはひとの うさもわすれて頓宗
1178まれにくる ひとのなみたも おちそひて あふよそそては ぬれまさりける基世女
1179おのつから きてもたのます なみたせく はないろころも かへりやすさは隆教
1180まてしはし またゆふくれと ちきるとも なほなくさまし けさのわかれち道平
1181おもひしれ またゆふくれの たのみたに なくなくをしき けさのなこりを時秀
1182そのままに さてもきえなて しらつゆの おきてかなしき みちのしはくさ為家
1183なくさむる ことのはもなほ たのまれす さてもわかるる きぬきぬのそら行忠(藤原)
1184きぬきぬの わかれをしたふ たまくらに なみたをそへて とりやなくらむ冬長
1185うしときく とりのねはかり のこりけり ひとはとまらぬ きぬきぬのそら成国
1186うつつとも ゆめともわかす とりのねに なきてわかるる しののめのそら基氏(足利尊氏男)
1187あまのとの あくるもしらて わかれちを たたとりのねに かこちつるかな尊円法親王
1188あふさかの ゆふつけとりは こころせよ またもこゆへき せきちならぬに義詮
1189おのつから あひみるゆめも さめゆけは これもわかれと とりやなくらむ盛徳
1190つゆしけき のかみのさとの かりまくら しをれていつる そてのわかれち為秀
1191ほともなく あけてわかれし あかつきは いととつゆこそ おきうかりしか仲文
1192くれにもと ちきりおけとも そまかはの いかたのとこは おきそわひぬる俊成(藤原俊忠男)
1193あひみても なこりをしまの あまひとは けさのおきにそ そてぬらしける良平
1194たなはたの きのふわかれし そてよりも あくれはけさそ わひしかりける赤染衛門
1195ぬるよさへ なかにありつる からころも うらみかはらて おきわかれつつ為理
1196うらむるも したふもおなし なみたにて あふよはさへに ぬるるそてかな成藤(祝部)
1197うつりかの のこるころもを かたしきて またねのとこも おきうかりけり読人不知
1198おもかけを のちしのへとや ありあけの つきにもひとの おきわかるらむ基隆(藤原基成男)
1199わすれすよ いまはといひし きぬきぬの おもかけのこす ありあけのつき顕詮
1200いまはまた とりのねはかり かたみにて ありあけのつきを なみたにそみる頼重
1201うきものと みしわかれちの ありあけに またやつれなく かけしたふらむ万秋門院
1202わするなと いまひとたひは いひてまし ありしわかれを かきりとおもはは後宇多院
1203みをすてて そへしこころの かひもなく こひしきことの なとのこるらむ為継
1204たまくらの うつりかのこる あさねかみ こころみたるる かたみなりけり師継
1205あさなあさな けつれはいとと みたれつつ わかくろかみの とけぬころかな躬恒
1206いつまてか しつはたおひの なからへて こころもとけぬ ちきりまつらむ業清(藤原)
1207なれそめし ちきりわするな したおひの またうちとくる ひとはありとも進子内親王
1208いかかせむ うへはつれなき したおひの わかれしみちに めくりあはすは定家
1209あひみても わするるほとに なりなまし ありしちきりの まことなりせは俊恵
1210あさからぬ ちきりのほとは としつきの つもるにつけて ひともしるらむ雅宗
1211つつむとて いそくけしきに あつさゆみ おしかへしても えこそちきらね行輔
1212ゆくすゑを たのめてもなほ ねをそなく しらぬいのちの こころよわさに真昭
1213ことのはも さためなきよと おもへとも ちきりしまての いのちともかな為秀女
1214ちきりおく こころのすゑも みるはかり こひにをしきは いのちなりけり実顕
1215あすしらぬ みにはたのます ゆくすゑを ちきるはひとの まことなりとも経清
1216うつろはぬ ちきりときくも たのまれす そのことのはの よにふりしより為定(御子左二条為道男)
1217ちきりこそ なほたのまるれ さりともと おもふかたには こころひかれて直義
1218はかなくて たのむこころを たよりとや うきいつはりも あるよなるらむ深守法親王
1219ありしよの ちきりよせめて ゆめならは おもひねをたに またましものを花園院
1220うつつには おもひたえゆく あふことを いかにみえつる ゆめちなるらむ俊成(藤原俊忠男)
1221おもひいつる ちきりのほとも みしかよの はるのまくらに ゆめはさめにき定家
1222おもひつつ いかにねしよを かきりにて またもむすはぬ ゆめちなるらむ少将(藻璧門院)
1223うしとみし ひとよのゆめの なこりより こころにさめぬ ものをこそおもへ花園院
1224あくるをも またぬちきりの かなしきは あふとみるよの ゆめのわかれち師賢(藤原師信男)
1225うはたまの ゆめかあらぬか あふことも たたひとよにて やみのうつつは性威
1226うつつには とはてとしふる みわのやま いかにまちみむ ゆめのかよひち資平
1227うきみには こえてのちこそ あふさかの やまもへたつる せきとなりけれ為藤
1228こえてしも くやしかりける あふさかの せきちをなにに ゆるしそめけむ経定女
1229いまのみも いもをはこひす おくやまの いはねこけおひて ひさしきものを人麿
1230とにかくに ひとはいへとも わかさちの のちせのやまの のちもあはむきみ坂上大嬢
1231のちせやま のちもあはむと おもふにそ しぬへきものを けふまてもあれ家持
1232たきものの くゆるこころは ありしかと ひとりはたへて ねられさりけり定方女
1233あはてこそ こひをいのりと たのみしか いまはたなにか いのちなるへき政村
1234さらぬたに あふことかたき わかこひを としさへいたく へたてゆくかな康資王母
1235おのつから またあふちきり ありとても なれしなからの よにはかへらし伏見院
1236きみかこと おもはぬひとの つらからは われはこころも あくかれなまし馬内侍
1237つらかりし こころくらへの ひとかたも よわらぬすゑは とほさかりつつ顕実母
1238たのまれぬ なかとはかねて いひしかと たたひとよとは おもひやはせし国夏
1239うきになほ こりすそたのむ いつはりを かこちてたえむ こころならねは道嗣
1240つれなきを うらみしそても ぬれしかと なみたのいろは かはりやはせし別当(皇嘉門院)
1241ことのはの かはるにつけて うきひとの こころのいろも まつしられつつ為秀
1242よしさらは しのふるほとに たえもせよ あらはれはうき なかのちきりは公宗母
1243よよかけて ちきりしまては かたくとも いのちのうちに かはらすもかな義詮
1244あふことは おもひたゆとも おなしよに ありとはかりを しらせてしかな恒明親王
1245おなしよに いけるはかりを ちきりにて またあふまては おもひたえにき聖承
1246あひみても へたつるなかに ゆくくもの なとたえたえに しくれそめけむ兼経
1247なかめやる そなたのそらの くもたにも あとなきはてそ きえてかなしき下野(後鳥羽院)
1248あたひとの こころのはなに まかへはや うきたるくもの あともさためぬ信実
1249しらきくも うつろひにけり うきひとの こころはかりと なにおもひけむ忠通
1250かみなひの もりならねとも かねてより うつろふいろの みゆるなかかな公清
1251つるのゐる まつとてなにか たのむへき いまはこすゑに なみもこえなむ堀河(待賢門院)
1252にほとりの したのかよひち たえさらは なみのうきすは うかれたりとも進子内親王
1253たのむそよ にほのうきすの うきなから したのかよひの たえぬはかりを為遠
1254にほとりの すむいけみつの たえもせは いかにしのへと かよひそめけむ兼氏
1255をやまたの なはしろみつに あらなくに なかれそめては たえむものかは実頼
1256わきもこか またもあふみの やすかはの やすきいもねす こひわたるかも読人不知
1257つひにまた いかなるせにか たえはてむ やましたみつの あさきちきりは公時(藤原実継男)
1258たにかはの いはまにもれし やまみつの またはいかなる せによとむらむ為藤
1259みくさゐし のなかのしみつ いまさらに すむともいさや もとのこころは為藤
1260ゆくみつの はなのかかみの かけもうし あたなるいろの うつりやすさは定家
1261うつりゆく こころそつらき ますかかみ たれゆゑかけと なるみなるらむ賢俊
1262ますかかみ たえにしいもを あひみすは わかこひやまし としはへぬとも人麿
1263わすれくさ わかみにつむと おもひしを ひとのこころに おふるなりけり小町
1264きのくにの あくらのはまの わすれかひ われはわすれし としはふるとも読人不知
1265つらかれと するかのうみの はまつつら くるよはまれに ひとそなりゆく行家(藤原知家男)
1266いかなれは なみたのあめは ひまなきを あふくまかはの せたえしぬらむ讃岐(二条院)
1267はつせかは むすふみなわの うきみよに きえかへりても たえしとそおもふ定為
1268はつせかは またあひみむと たのめてし しるしやいつら ふたもとのすき公兼
1269わかことや くめちのはしも なかたえて わたしわふらむ かつらきのかみ実方
1270いははしの たえにしなかを かつらきの かみならぬみは なほもまつかな和義
1271いまはたた おもひたえにし おもかけの はかなくかよふ ゆめのうきはし基幸
1272ねぬるよに あふとみつるも ゆめちにて いやはかななる ちきりなりけり実直母
1273おもひいつる こころひとつの かひもなし おなしよとたに しらぬちきりは為氏
1274さらはまた おなしこころに わすれなて なににおもはぬ ひとをこふらむ月花門院
1275わすれえぬ わかこころこそ いとはるれ はてうかりける ひとのちきりに近衛(今出河院)
1276おもひあまり むかしまてやは つらからぬ たかよにひとを わすれそめけむ家良
1277いかにして わすれむとおもふ こころにも なほかなはぬは なみたなりけり親清女
1278またもみぬ ゆめちなからは たえもせて つらきうつつに のこるたまのを行蓮
1279あふとみる ゆめもむなしく さめぬれは つらきうつつに またなりにけり行宗
1280おもひねに しはしなくさむ ゆめをたに ゆるさぬよはの かねのおとかな和氏
1281やかてなと むかしかたりに なりぬらむ みしはまちかき ゆめのかよひち実継
1282いかにせむ かよふゆめちも たのまれす おもひねならぬ よはしなけれは政元
1283あふことは ゆめになりにし とこのうへに なみたはかりそ うつつなりける惟明親王
1284しらさりき そのあかつきを かきりとも われにはつけの まくらならねは後光厳院
1285おもはしと おもふもものの くるしきを やすくやひとの わすれはつらむ御匣(式乾門院)
1286いまはたた おもひたえたる つらさにて ちきりくやしき ゆふくれのそら為氏
1287いまははや たえにしままの うつつにて みるなくさめの ゆめたにもなし為世(御子左藤原為氏男)
1288はかなくも おもひいつやと たのむかな わかならはしの こころよわさに高秀
1289はかなくて たえにしなかの なこりしも こころにとまる はてそかなしき内侍(永福門院)
1290まちしよに またたちかへる ゆふへかな いりあひのかねに ものわすれせて良基(二条道平男)
1291わかれちに ききしもいまは むかしにて いとはぬかねの ねをのみそなく道嗣
1292ひとりぬる しもよのかねの ひひきより あきにふけゆく ちきりをそしる為重
1293ならしはの なれしおもひや いまさらに かりはのをのの よそのあきかせ教実
1294いつまてか あふことかたき あらたかの たなれぬなかに こころおくらむ仲教
1295かはりゆく ひとのこころの あきかせに あふたのみたに なきちきりかな定宗(藤原家親男)
1296あさちはら なひくもおなし あきかせの うつろふいろに ふきかはるらむ杲守
1297かよひこし さとはふしみの あきかせに ひとのこころの あれまくもをし知家
1298つらきかな まちしにかはる ゆふくれを みはうきときと あきかせそふく亀山院
1299しらつゆの おきふしたれを こひつらむ われはききおはす いそのかみにて閑院
1300みしままの かたみなるへき つきたにも うきよりほかの おもかけそなき季雄
1301むらくもの そらゆくつきも あるものを たえたえにたに みえぬきみかな公忠(藤原実忠男)
1302おのつから おもひもいては わすれしと ちきりしままの つきやみるらむ栄子内親王
1303みをさらぬ おもかけはかり さやかにて つきのためうき わかなみたかな公雄
1304いかなれは たちもはなれぬ おもかけの みにそひなから こひしかるらむ寿暁
1305みるままに おつるなみたの たまつさは やるかたもなく かなしかりけり江侍従
1306きみかため われこそはひと なりはてめ しらたまつさは やけてかひなし貫之
1307たまもかる おきへはゆかし しろたへの まくらせしひと わすれかねつも宇合
1308いかにせむ うらのはつしま はつかなる うつつののちは ゆめをたにみす定家
1309あまをふね われをはよそに みくまのの うらよりをちに とほさかりつつ但馬(藻璧門院)
1310あしたゆく くるてふあまに こととはむ かれなてのこる みるめありやと経宣
1311おひかせに まかちしけぬき ゆくふねの はやくそひとは とほさかりぬる貞世
1312からあゐの やしほのころも ふりぬとも そめしこころの いろはかはらし為家
1313さよころも かけはなれても いととなほ ほさぬはそての なみたなりけり為量
1314つきくさに すれるころもの いろよりも うつるはやすき こころとそみる昭覚
1315しをるれは これをもあまの ころもとや ちきりしなかの まとほなるらむ師教(九条忠教男)
1316かさねても なれにしなかの さよころも へたつるものと いつなりにけむ達智門院
1317ねをそなく とほやまとりの ひとりねに なかきへたての なかのちきりは為実(御子左藤原為氏男)
1318よとともに みたれてそおもふ やまとりの をろのなかをの なかきつらさに後鳥羽院
1319よそにして みすはありとも ひとこころ わすれかたみに なほやしのはむ小町
1320ひとやりに あらぬものから うらむるは みのことわりも おもひしらすや高明
1321ものおもへは いもねられぬを あやしくも わするることを ゆめにみるかな深養父
1322みしやゆめ わかみやあらぬ ちきりしに かはるつらさそ さむるかたなき実家女
1323ゆめならて またもむすはぬ ちきりかな とけしひとよの なかのしたひも読人不知
1324すまのあまの しほなれころも なれきてそ まとほになるも うらみなりける実兼
1325はてはまた あまのすむてふ さとといへは しるへたになき みをうらみつつ為世(御子左藤原為氏男)
1326おくあみの ひくてあまたに そてぬれて さてもうらみぬ なみのまそなき知家
1327ことかたに ひくひとなくは たくなはの まとほにくるも よしやうらみし只帰
1328かれはてむ のちしのへとや なつくさの ふかくはひとの たのめおきけむ実朝
1329ともしする なつののしかの ねにたてぬ おもひもかくや くるしかるらむ氏兼
1330なひくとも ほにはいてしと しのすすき しのひしなかは しもかれにけり四条(安嘉門院)
1331たつぬへき しるしもいまは あとたえぬ ゆきのふるのの もすのくさくき基氏(足利尊氏男)
1332おのれのみ あまのさかてを うつたへに ふりしくこのは あとたにもなし定家
1333いまそうき かはるちきりの しらまゆみ なひきそめてし こころよわさは後光厳院
1334われにひく ちきりなりとも たのまれし あたちのまゆみ あたしこころは公賢
1335ひとはいさ あたちのまゆみ おしかへし こころのすゑを いかかたのまむ民部卿典侍(後堀河院)
1336なほいかに こひしなぬみの つらからむ のちのよちきる ひともありせは実教
1337こひしなは やすかりぬへき いのちさへ あふをかきりに としそへにける弁内侍(後深草院)
1338かはらしと おもへはこそは ちきるらめ わかかねことに いかかうらみむ少将内侍(後醍醐院)
1339いかはかり なほうからまし いつはりの なきよにかはる ちきりなりせは読人不知
1340いつはりに かはるもしらて いくとせか ちきりしままの みをたのむらむ公脩
1341ことのはの かよはすなれは いつはりと うらみしころを またしのふかな尊氏
1342うらむへき ひとめのひまも いくたひか かすならぬみに すくしきつらむ空暁
1343いへはけに わかみのみこそ うかりけれ つらきひとには ことのはもなし信実
1344しはしたた いかてやみまし つらさをも うきをもしらぬ みとはなるとも為親
1345なにとたた うらむるかひも なきなかに ことのはをのみ つくしきぬらむ寛尊法親王
1346ことのはの うつろふたにも うきなかに いまはこすゑの あきかせそふく長秀
1347ははそはら うつろふいろを つらしとも たれにいはたの もりのしたつゆ良尹
1348ことのはに さきたつそての なみたにそ たへぬうらみの ほとはしるらむ道嗣
1349おもかけは わかみにそへる つらさにて うらみぬつきに ぬるるそてかな経継
1350みてもなほ ものおもへとや うきひとの わかおもかけを つきにそへけむ為定(御子左二条為道男)
1351すむつきの なみたにくもる かけまても おもへはひとの つらさなりけり実前
1352ひとをこそ うらみはつとも おもかけの わすれぬつきを えやはいとはむ為藤
1353うらみわひ たへぬなみたに そほちつつ いろかはりゆく そてをみせはや肥後(京極前関白家)
1354ことのはを たのまさりせは としふとも ひとをつらしと おもはさらまし顕季
1355うらみても なほしたふかな こひしさの つらさにまくる ならひなけれは近衛(今出河院)
1356さてもまた あやしきまての ちきりかな うらみはかりを おもひてにして光厳院
1357ありはてぬ ならひはさそと なくさめて かはるちきりを なけかすもかな公賢
1358かつしたふ こころよわさは なかなかに うらみてなにの かひかあるへき公蔭
1359かすならぬ みのことわりに なくさめて うきをうらみぬ ほとそへにける実雄
1360かはらしと ちきりしすゑを たのみける わかはかなさそ いまはくやしき公信(源)
1361いととなほ うきにつけても おもふにも いふにもあまる ひとのつらさは為世(御子左藤原為氏男)
1362うきことも いくよかあらむ よしのかは よしやひとをも いまはうらみし親清女
1363わかそてに なみたのたきそ おちまさる ひとのうきせを みなかみにして中将(陽徳門院)
1364よしさらは なみたにくちね なかなかに かたみもつらし つけのをまくら禅助
1365いつはりの なくてすきにし むかしたに ひとのちきりを たのみやはせし少将内侍(後深草院)
1366うかるへき みをしるうへの こひしさは なににかしはし おもひしつめむ伏見院
1367みやまきの したはふくすの したもみち うらむるいろを しるひとそなき覚助法親王
1368しらせはや たけのまかきに はふくすの したにうらむる ふしのしけさを基隆(藤原基綱男)
1369あきかせに たままくくすの したつゆや うらみにたへぬ なみたなるらむ親清女妹
1370いまそしる まくすかはらに ふくかせの うらみもこひに かへるものとは道智
1371いかにせむ しきのはねかき かきたえて とはれぬかすの つもるうらみを覚空
1372まれにたに あふよもあらは うらみまし まくらのちりの つもるつらさを忠兼(藤原隆忠男)
1373たまかつら いかにねしよの たまくらに つらきちきりの かけはなれけむ為家
1374おのつから みしもちきりの かりころも うらむるかひや つひになからむ義詮
1375いまはたた うらむるまては みえすとも つらさをいかて おもひしらせむ帥(鷹司院)
1376そのかみは いかにしりてか うらみけむ うきこそなかき いのちなりけれ和泉式部
1377つらかりし ことのはをなと うらみけむ それをたにこそ きかすなりぬれ師光(源師頼男)
1378つらしとて うらみははてし まれにたに ひとのちきりの あらむかきりは読人不知
1379つらしとも うらみしほとは さてもなほ ひとのなこりの あるよなりけり全仁親王
1380わすれしの ことのはなくは なかなかに とはぬつきひを うらみさらまし後嵯峨院
1381さかきはの えたにやとかる ますかかみ くもりあらせて かへるみちかな春日明神
1382のちのよの くるしきことを おもへかし あはれこのよは ゆめとしらすや日吉地主権現
1383たのめつつ こぬとしつきを かさぬれは くちせぬちきり いかかたのまむ日吉
1384あれはつる わかやととはぬ うらみをは かくれてこそは ひとにしられめ熱田明神
1385くれなゐに ぬれつつけふや にほふらむ このはうつりて おつるしくれは道真
1386おもひかね たはかりことを せさりせは あまのいはとは ひらけさらまし経覧
1387みぬよまて こころそすめる かみかせや みもすそかはの あかつきのこゑ家隆
1388かみよより いくとせふりぬ すすかかは やそせのなみの あきのよのつき兼氏
1389くもりなき きみかやちよを てらすらし かみちのやまに いつるつかきけ達智門院
1390あはれとや かみのかかみも てらしみる いまはとおもふ きみかなこりを冷泉(花園院)
1391くもりなき やたのかかみや いはとあけし あまてるかみの みかけなるらむ広秀
1392いにしへに かみのみかけの うつりしや いまもくもらぬ かかみなるらむ成国
1393あめつちの ひらけしよりや ちはやふる かみのみくにと いひはしめけむ智行
1394あめつちの むかしをとへは あしはらや なほそのかみの よよそひさしき読人不知
1395かみもさそ あかすみるらむ さくらちる しめのみやもり あさきよめすな延季
1396ちるときや さかきのえたに かかるらむ かみのいかきの はなのしらゆふ国夏
1397さかきはに さきそふはなの しらゆふは かみもこころに かけてみるらむ脩久
1398かみかきや かけものとかに いはしみつ すまむちとせの すゑそひさしき為家
1399いはしみつ なかれのすゑを うけつきて たえすそすまむ よろつよまてに伏見院
1400のほるへき あとをそいのる をとこやま うつもれはつる みねのしらゆき有光
1401いはしみつ かみのこころに まかせてや わかゆくすゑを さためおきけむ亀山院
1402あとたれて いくよへぬらむ はこさきの しるしのまつも かみさひにけり顕朝
1403いはしみつ かみよのつきや にこりなき ひとのこころの そこにすむらむ光吉
1404のとかなる はるのまつりの はなしつめ かせをさまれと なほいのるらし良基(二条道平男)
1405ここのへの さくらかさして けふはまた かみにつかふる くものうへひと後醍醐院
1406みよのあとに なかれをうけて いはしみつ すめるをときと なほそつかふる親光
1407いはしみつ ふるきなかれの あとはあれと わかみひとつの せによとむかな幸清
1408あめのした みよをさまれと まもるらし くもをわけてし かみのちかひに遠久
1409ちはやふる かものみつかき きみかよを ひさしかれとそ いのりそめてし経久
1410のちのよも このよもかみに まかするや おろかなるみの たのみなるらむ深源
1411としへぬる わかかみやまの さかきはに いくへみしめを ひきかさねけむ教久
1412みつかきの ひさしきよより すむつきの かみさひまさる かけやそふらむ行氏(平胤行男)
1413いかはかり かみもうれしと みたらしや そこまてすめる きみかこころを和氏
1414よろつよと きみをいのりて ふるそては かけみたらしに かみやうくらむ氏久
1415みかさやま ふもとをめくる さほかはの さしていのりし みをたのむかな長能
1416かすかのの まつもわかみも おいにけり ふたはよりこそ つかへそめしか祐殖
1417ことわりの たかはぬみちを かすかやま かみのこころに きくもたのもし経顕(藤原定資男)
1418みかさやま さすかにいかか すてはてむ かさなるいへの ふちのすゑはを公親
1419くもりなく てらすひよしの かみかきに またひかりそふ あきのよのつき成繁
1420あとたるる かみよをとへは おほひえや をひえのすきに かかるしらくも成運
1421あひにあひて まもるひよしの かすかすに ななつのみちの くにさかゆらし行親
1422かみよより かはらぬまつも としふりて みゆきひさしき しかのからさき延全
1423おのつから つかへぬひまも こころこそ なほおこたらぬ ななのかみかき成豊
1424たのもしな いのるにつけて くもりなき ひよしのかけに みちそまよはぬ為世(御子左藤原為氏男)
1425かみかきや ちりにましはる ひかりこそ あまねくてらす ちかひなりけれ読人不知
1426さりともと ねてもさめても たのむかな おろかなるみを かみにまかせて雅朝
1427つかへつつ おもひしよりも みくまのの かみのめくみそ みにあまりぬる良瑜
1428かみかきに みよをさまれと いのるこそ きみにつかふる まことなりけれ行氏(祝部)
1429ちはやふる ゆきのしらやま わきてなほ ふかきたのみは かみそしるらむ読人不知
1430わかのうらに たまひろふへき みことのり みちをまもらは かみもうくらむ実兼
1431ためしなき ひかりをそふる たまつしま よよにもこえて かみやうくらむ国道(津守国助男)
1432しきしまや みちはたかへすと おもへとも ひとこそわかね かみはしるらむ俊成(藤原俊忠男)
1433かみやしる よのためとてそ みをもおもふ みのためにして よをはいのらす伏見院
1434みちのへの すきのしたはに ひくしめは みわすゑまつる しるしなるらし為家
1435きみかよを いのるこころの まことをは いつはりなしと かみはうくらむ常良
1436あきらけき あらひとかみの しるしあらは くもらぬみよを さそまもるらむ実俊(西園寺公宗男)
1437あはれとや あらひとかみも みつはさす おいきのまつの としへぬるみを実重(三条公親男)
1438わかきみの ちよのためとや みやゐして ひとよのまつも としをへぬらむ直氏
1439なからへむ よにもわすれし すみよしの きしになみたつ まつのあきかせ伊勢大輔
1440すみのえに やそしまかけて くるひとや まつをときはの ともとみるらむ隆季
1441うきことも なくさむみちの しるへにや よをすみよしと あまくたりけむ定家
1442すみよしの まつにましれる たまかきの あけもみとりも としはへにけり政村
1443いくよにか かみのみやゐの なりぬらむ ふりてひさしき すみよしのまつ為家
1444あらましの こころのうちの たむけくさ まつとしらすや すみよしのかみ為相
1445しきしまの みちをはみちと まもらなむ よにすみよしの かみならはかみ雲禅
1446きみかため たまてのきしに やはらくる ひかりのすゑは ちよもくもらし国平
1447ふきたつる にはひのまへの ふえのねを こころすみてや かみもきくらむ小弁
1448さよふけて しもはおくとも やまひとの をれるさかきは いろもかはらし中務
1449もろともに いちみのあめは かかれとも まつはみとりに ふちはむらさき普賢菩薩
1450あきらけく のちのほとけの みよまても ひかりつたへよ のりのともしひ伝教
1451むかしより かせにしられぬ ともしひの ひかりにはるる のちのよのやみ花山院
1452きえかたき むかしのひとの ともしひに おもふこころは おとりしもせし大弐三位
1453さむかいを ひとつこころと しりぬれは しふのきやうこそ すくにみちなれ慈覚
1454しろたへの ひかりにまかふ いろみてや ひもとくはなを かねてしるらむ清少納言女
1455いくたひか またよにいてし あきのつき あまねきかけは ひとももらさす通雅
1456めくりきて なほふるさとの いてかてを さそふもうれし みつのをくるま師継
1457かねてわか おもひしよりも よしのやま なほたちまさる はなのしらくも房観
1458さつきやみ このしたみちは くらきより くらきにまよふ ほとそくるしき尊円法親王
1459つまきとる やまのあきかせ いかはかり ならはぬそてに つゆこほるらむ忠良
1460わたつうみの そこまててらす つきかけに もれたるあまは さそうらみけむ行家(藤原知家男)
1461のりのはな ひらくるにはの ときのまに おくしらつゆの かすそそひける資名
1462いまもなほ すむなるものを わしのやま ひとのこころの くもそへたつる通成
1463にこりなき こころのみつに かけとめて ふたたひやとれ やまのはのつき良信
1464みなかみを おもひこそやれ たにかはの なかれもにほふ きくのしたみつ源承
1465たにのみつ みねのあらしを しのひきて のりのたききに あふそうれしき寂蓮
1466なきひとの わかれををしの ねにたつる おもひよいけの みつとたになれ為藤
1467このみちを しるへとたのむ あとしあらは まよひしやみも けふははるけよ定家
1468かつまたの いけのこころは むなしくて こほりもみつも なのみなりけり寂然
1469よにふれは きみにひかれて ありかたき いちみのあめに ちたひぬれぬる周防内侍
1470のりのみつ たえすはなとか くさもきも うるほふほとの しるしなからむ覚誉法親王
1471うつもれぬ のりのみなかみ あとしあれは よよのなかれは きみそしるらむ覚助法親王
1472のりのみつ くみてやみまし やまのゐの にこりやすきは こころなれとも宗成
1473やまかはの おなしなかれを むすひても なほあさからぬ ちきりをそしる宗明
1474たえぬへき みゐのなかれの のりのみつ みをはやなから いかてくままし静仁法親王
1475みなそこに しつむもおなし ひかりそと そらにしらるる あきのよのつき憲実
1476いまそみる よそちあまりの ことのはに あらはれさりし つゆのひかりを蘊賢
1477やまのはの くもにいりひは のこれとも すすしくなりぬ まつのしたかせ源忠
1478さまさまに とけともとかぬ ことのはを きかすしてきく ひとそすくなき夢窓
1479かりにこそ ときおくのりの ことわりに とまりてひとや なほまよふらむ直義
1480きえなはと つゆのいのちに たのむかな ふかきよもきの もとのちかひを円胤
1481きえぬへき のりのすゑには なりぬとも みをともしてそ きくへかりける赤染衛門
1482おろかなる こころのやみを てらせとや かかけおきけむ のりのともしひ尊道法親王
1483さのみなと くるしきうみに めくるらむ つりするあまの うけかたきみを慈勝
1484こころなき はるのあらしも やまさとの ぬしあるはなは よきてふかなむ宗尊親王
1485のりのみち むかしにかへる ときにあひて いまもかはらぬ をしへをそきく源全
1486よしあしの おもひをやめて さとりいる こころのおくも こころなりけり顕遍
1487うめのはな みよのほとけの ためにとて をりつるそてそ ひとなとかめそ後宇多院
1488いろもかも まことののりと ききしより はなにこころの なほうつるかな慈能
1489よしあしは ひとついりえの みをつくし ふかきみのりの しるしなりけり公澄
1490よのなかの つねとはみれと あきののの うつろひかはる ときそわひしき素性
1491いたつらに またこのたひも こゆるきの いそかてのりの ふねにおくるな欣子内親王
1492いつかけし ころものうらの たまとたに しらていくよか まよひきぬらむ性厳
1493おろかなる なみたをかけて なけくかな ころものうらの たまをしらねは読人不知
1494さらにまた たつねきぬれと すみなれし むかしのはなの みやこなりけり双救
1495にこらしな こころのみつの そこきよみ やへにはなさく むねのはちすは円伊
1496よしあしの ひとをわかしと はなはちす ここのしなまて さきかはるなり兼空
1497たのむそよ さきたつひとに ちきりてし おなしはちすの はなのなかはを顕詮
1498こころをも なほやみかかむ はちすはの つゆのたまたま のりにあひつつ読人不知
1499いつのまに いとふこころを かつみつつ はちすにおるは わかみなるらむ仁明天皇
1500なつころも ひとへににしを おもふかな うらなくみたを たのむみなれは源信
1501とほさかる こゑもをしまし ほとときす ききのこすへき よものそらかは雅経
1502なかきよの あかつきをまつ つきかけは いくへのくもの うへにすむらむ隆弁
1503さすかなほ わかやまのはに のこるかな やみちをてらす のりのつきかけ桓守
1504あともなき むろのやしまの ゆふけふり なひくとみしや まよひなるらむ守遍
1505ことのはを ちらさすもかな くもゐまて ふきつたへたる をののやまかせ栄海
1506おのつから のりのさかひに いるひとは それこそやかて さとりなりけれ兼実
1507こすゑさへ たのむかけなく かれにけり はなのすかたの ねにしかへれは崇徳院
1508いにしへの つるのはやしの みゆきかと おもひとくにそ あはれなりける瞻西
1509こころをは こころのそこに をさめおきて ちりもうこかぬ とこのうへかな良経(九条兼実男)
1510ゆめならは むそちのおいも すきにけり さめぬねふりそ ひさしかりける慈威
1511ほむかくの やまのたかねの かねのおとに なかきねふりを おとろかすかな心海
1512すかはらや たえぬるのりの あととめて またおとろかす かねのおとかな良信
1513まよひゆく ふかきやみちの わたりかは まことのせには きみのみそたつ慶政
1514ちきりあれは うきみなからそ たのもしき すくはむよよの かすにもれしと為道
1515にしへゆく つきにこころの すみぬれは うきよのなかは ねられさりけり院源
1516にしへとや みのりのかとを をしふらむ さきたちてゆく あきのよのつき土御門院
1517くもまより いさよふつきに あくかれて いととにしにも ゆくこころかな後嵯峨院
1518ふかきよの ひかりもこゑも しつかにて つきのみかほを さやかにそみる俊成(藤原俊忠男)
1519ひとむらは なほしくれつる くもはれて さはるかたなく すめるつきかけ慈慶
1520みをさらぬ こころのつきの わくらはに すむそさとりの はしめなりける良覚
1521よそにみる かけとはいはし こころにも そらにもおなし つきそいてぬる惟賢
1522たのむそよ みのりのこまを すすめても あとにまよふな をののふるみち寛伊
1523つたへおく おなしなかれの ふかけれは またせきいれつ たにかはのみつ尊道法親王
1524たにかはの よよにせきいれし あととてや たえぬなかれを いまもうくらむ桓豪
1525いまきくも なみたなりけり いにしへの すきたつほらの ふかきみのりは家平
1526いかはかり つとむることも なきものを こはたかために ひろふこのみそ和泉式部
1527あまのとの あくるほとなく くるはるに たちもおくれぬ あさかすみかな実経
1528あふさかの せきにはゆきも きえなくに いつくをはるの みちときぬらむ読人不知
1529うくひすの なくねをきけは やまふかみ われよりさきに はるはきにけり忠見
1530ふかくさや うつらのとこは あとたえて はるのさととふ うくひすのこゑ良経(九条兼実男)
1531はるきても かすみのみをは さゆるひに ふりくるゆきの あわときゆらむ為明
1532かせふけは みねのときはき つゆおちて そらよりきゆる はるのあはゆき順徳院
1533のへはまた こそみしままの ふゆかれに きゆるをはると あはゆきそふる覚誉法親王
1534やまかけは なほはるさむき しらゆきの きえぬかうへに けふもふりつつ時秀
1535あさあけの まとふきいるる はるかせに いつくともなき うめかかそする為世(御子左藤原為氏男)
1536くれなゐの いろにいてにけり うめのはな こむとたのめし ひとのとふまて親子(典侍親子朝臣)
1537はなのいろを よそにみすてて ゆくかりも おくるるつらは こころあるらし寂蓮
1538なれてうき のちのわかれを おもへはや はなよりさきに かりのゆくらむ成国
1539かすみゆく よものこのめも はるはると はなまつやまに かへるかりかね雅経
1540おいらくの なみたにくもる はるのよは つきもむかしや おもひいつらむ宗信
1541よこくもは みねにわかるる やまひめの かすみのそてに のこるつきかけ知家
1542のへにしく くさのみとりの すゑとほみ かすみをわけて ひはりおつなり花園院
1543もえいつる はるもあさのの わかくさに かくれもはてす ききすなくなり基氏(足利尊氏男)
1544はるやまの かすみのおくの よふことり よのかくれかに たれさそふらむ光厳院
1545あさほらけ つもれるゆきと みるまてに よしののやまは はなさきにけり有光
1546うゑおきし はるをみしかは やへさくら かさなるとしそ みにしられける円嘉
1547したひわひ あまたのはるを おくりても はなにおいぬる みこそをしけれ読人不知
1548ななそちの のちのはるまて なからへて こころにまたぬ はなをみるかな夢窓
1549たのまれぬ はなのこころと おもへはや ちらぬさきより うくひすのなく興風
1550たつねきて ちるをこそみれ やまさくら なにをたをりて いへつとにせむ兼舜
1551はるかせの さそふはおなし こすゑにも まつさくかたの はなやちるらむ尊胤法親王
1552ねにかへる はなかとみれは このもとを またふきたつる にはのはるかせ公蔭
1553やまさとは はなよりほかの とももなし ちりなむのちを いかにしのはむ基名
1554にはのおもは あとみえぬまて うつもれぬ かせよりつもる はなのしらゆき為兼
1555くらゐやま おとろのみちも ほととほし はなのほかなる みねのしひしは資明
1556いへのかせ ふきそつたへむ かすかやま すゑはのふちも かけなひくまて公秀
1557いたつらに なをのみとめて あつまちの かすみのせきも はるそくれぬる読人不知
1558みにつもる としのくれにも まさりけり けふはかりなる はるのをしさは小侍従(太皇太后宮)
1559かきりありて くれゆくはるは はなとりの いろにもねにも のこらさりけり和義
1560ほとときす まつにこころそ うつりぬる はないろころも ぬきかへしより少将(弾正尹邦省親王家)
1561しのふとも たたひとこゑは ほとときす さのみつれなき よはなかさねそ経忠(藤原家平男)
1562みしかよを いくよあかしつ ほとときす たたひとこゑの はつねまつとて崇光院
1563いたつらに またたつねまし ほとときす なかなくさとの さためなれけは桓覚
1564ゆめちかと たとるねさめの ほとときす たかまくらにか ききさたむらむ資連
1565ひとこゑの きかまほしさに ほとときす おもはぬやまに たひねをそする基俊
1566さらてたに さたかならぬを ほとときす いまひとこゑは とほさかりつつ為藤
1567ほとときす いつくにいまは やまかつの ききもとかめぬ はつねなくらむ家隆
1568いまもなほ つれなかりけり ほとときす おのかさつきの そらたのめして定宗(法印円宗男)
1569ほとときす さとなれぬへき さつきたに なほふかきよの しのひねそなく一条(徽安門院)
1570たまみつも しとろののきの あやめくさ さみたれなから あくるいくよそ定家
1571やまふかみ はれぬなかめの いととしく くもとちそふる さみたれのそら崇光院
1572おのつから はるるくもまの つきかけも またかきくらす さみたれのそら基冬母
1573なつやまの みねとひこゆる かささきの つはさにかかる ありあけのつき後鳥羽院
1574こもまくら たかせのよとの うかひふね ねなくにいくよ かかりさすらむ国冬
1575いかにせむ しけるにつけて いにしへの あとともみえぬ にはのなつくさ嗣定
1576なつくさの みちあるかたは しりなから ことしけきよに なほまよふらむ後光厳院
1577なつかりの あしやのさとの ゆふくれに ほたるやまかふ あまのいさりひ実氏
1578せきいるる いはまつたひの みつのおとに ゆふくれかけて かせそふきそふ雅孝
1579やまかせに たきのよとみも おとたてて むらさめそそく よはそすすしき帥(鷹司院)
1580くみてしる ひとやなからむ なつくさの しけみにしつむ ゐてのたまみつ伊平
1581なくせみの こゑよりほかは なつそなき みやまのおくの すきのしたかけ道平
1582いりひさす もりのしたはに つゆみえて ゆふたちすくる そらそすすしき行家(藤原知家男)
1583ゆふたちの はれぬるあとの やまのはに いさよふつきの かけそすすしき覚信
1584ひくらしの なくやまかけの すすしきに かせもあきなる ならのはかしは時朝(源)
1585まつかせの ゆふひかくれに ふくほとは なつすきにける そらかとそみる範永
1586あききぬと またしらつゆの おきもあへす まくらすすしき あかつきのとこ光厳院
1587あききても つゆおくそての せはけれは たなはたつめに なにをかさまし弁内侍(後深草院)
1588あきかせは すすしくふきぬ ひこほしの むすひしひもは いまやとくらむ仙覚
1589よそにたに まちこそわたれ あまのかは さそいそくらむ つまむかへふね経顕(藤原定資男)
1590つゆけさは さこそみやまの いほならめ こけのそてさへ あきやしるらむ安法
1591ふきまよふ かせのやとりの をきのはに むすひもとめぬ あきのしらつゆ師良(二条良基男)
1592のきちかき やましたをきの こゑたてて ゆふひかくれに あきかせそふく家隆
1593うゑおきし のきはのをきを ふくかせに たかとかならぬ ものそかなしき覚誉法親王
1594ねやちかき をきのはそよく かせのおとは ききなれてたに ゆめそおとろく乗基
1595むらさめの はるるゆふひの かけもりて このしたきよき つゆのいろかな永福門院
1596くさきにも あらぬそてさへ しをれけり うへやまかせの あきのゆふくれ成任
1597すみわふる ときこそありけれ しらくもの たなひくみねの あきのゆふくれ深守法親王
1598うきことも なにかはなけく しかりとて そむかれぬよの あきのゆふくれ読人不知
1599よのうきめ みえぬやまちの おくまても あきのあはれは のかれさりけり兼空
1600あきふかき やまのかけのの しはのとに ころもてうすし ゆふくれのそら伊勢
1601つねよりも ものおもふことの まさるかな うへもいひけり あきのゆふくれ元真
1602かすかなる たにのほらをそ おもひやる あきかせのみや ふきてとふらむ伊勢大輔
1603あさちふの をののあきかせ はらへとも あまりてつゆや なほむすふらむ宗時
1604ものおもはて いつれのとしの あきまてか つゆにたもとの しられさりけむ澄覚法親王
1605わきもこに ゆきあひのわせを かるときに なりにけらしも はきのはなさく人麿
1606さきかくす のもりかいほの ささのとも あらはにおける はきのあさつゆ家隆
1607はきかはな うつりにけりな しらつゆに ぬれにしそての いろかはるまて浄弁
1608いろかはる したはをかけて あきはきの はなのにしきは おりかさねつつ常顕
1609うゑしそて またもひまなく あきのたの かりかねさへそ なきわたりける貫之
1610ふるさとを くもゐのかりに こととはむ さらてこしちの おとつれもなし氏経
1611よそになほ つまをへたてて しらくもの ゆふゐるやまに しかそなくなる邦省親王
1612ふかきよの とはたのおもの しかのねを はるかにおくる あきのやまかせ尚長(祝部)
1613をくらやま もみちふきおろす こからしに またさそはるる さをしかのこゑ円照
1614ひとしれす をきのしたなる さをしかも ほにいつるあきや ねにはたつらむ中務
1615こりすなほ をしかなくなり つれもなき つまとしりても としはへぬらむ忠成(祝部親成男)
1616あきのよは ねさめののちも なかつきの ありあけのつきに しかそなくなる行能
1617きりきりす こゑかすかなる あかつきの かへにすくなき ありあけのかけ花園院
1618やへむくら しけれるにはに なくむしの つゆのやとりや なみたなるらむ俊定(藤原経俊男)
1619しもむすふ ひとよのほとに よわるなり をささかしたの まつむしのこゑ読人不知
1620あきさむき ころとやよわる あさちふの つゆのやとりの まつむしのこゑ高嗣
1621こぬひとは こころつくしの あきかせに あふたのみなき まつむしのこゑ為世(御子左藤原為氏男)
1622ゆふひかけ くものはたてに うつろひて つきまつほとの そらそさひしき経顕(藤原定資男)
1623あきかせの ふきそめしより あまのはら そらゆくつきの くもるよもなし家良
1624あきかせに よわたるつきの たかしやま ふもとのなみの おとそふけぬる寂恵
1625あきなから かけこそこほれ ふしのねの ゆきにうつろふ よなよなのつき基氏(足利尊氏男)
1626ふけゆけは くももあらしも をさまりて よわたるつきの かけそのとけき公豊
1627いたつらに わかよふけぬと なけきつる こころもはれて つきをみるかな為明
1628くまもなき つきみるほとや わひひとの こころのうちの はれまなるらむ登蓮
1629うたたねも つきにはをしき よはなれは なかなかあきは ゆめそみしかき尊氏
1630むしのねの よわるもさひし あけかたの つきかけうすき きりのまかきに小宰相(徽安門院)
1631あきさむく なりにけらしも やまさとの にはしろたへに てらすつきかけ道済
1632ありあけの つきまちいてて しろたへの ゆふつけとりも ときやしるらむ為明
1633くもゐより てりやまさると みつきよみ うらにてもみむ あきのよのつき定文
1634たにかはの なかれはあめと きこゆれと ほかよりはるる ありあけのつき孝標女
1635つきのうちの かつらのひとを おもふとて あめになみたの そひてふるらむ七条后
1636ひさかたの つきのかつらの もみちはは しくれぬときそ いろまさりける重茂
1637あきのよの しくれてわたる むらくもに たえたえはるる やまのはのつき経親(大江基親男)
1638おとはかり しくるとそきく つきかけの くもらぬよはの みねのまつかせ尊氏
1639まつにふく あらしのおとを ききわかて しくれにはるる つきかとそみる宗氏
1640いとふらむ くめちのかみの けしきまて おもかけにたつ よはのつきかな小侍従(太皇太后宮)
1641かすかのや くもらぬつきの かけなれは おとろのみちの あともまよはす定資
1642よもすから つゆのひかりを みかくなり たまのよこのの あきのつきかけ読人不知
1643みやきのの このしたつゆや おちぬらむ くさはにあまる あきのよのつき雅成親王
1644なにはかた しほひもつきは やとりけり あしのすゑはに つゆをのこして真昭
1645しきたへの とこのうらわの あまをふね うきねさためぬ つきやみるらむ頼遠
1646わたのはら つきもはてなき なみのうへに さてしもあけむ よこそをしけれ為秀
1647しかのうらや こほりくたけて あきかせの ふきしくなみに うかふつきかけ後二条院
1648そらにのみ たつかはきりも ひまみえて もりくるつきに あきかせそふく為冬
1649きりはらふ ひらのやまかせ ふくるよに ささなみはれて いつるつきかけ尊氏
1650あけぬとや つりするふねも いてぬらむ つきにさをさす しほかまのうら隆信
1651なかきよも あけなはつらし みつのえの うらしまかけて すめるつきかけ高宗
1652さやかなる つきさへうとく なりぬへし なみたのほかに みるよなけれは永福門院
1653わかやとの まかきにこむる あきのいろを さなからしもに しらせすもかな式子内親王
1654あけかたに よはなりぬらし すかはらや ふしみのたゐに しきそたつなる季経
1655うきことの かきりしられぬ ねさめかな しきのはねかき かすはかけとも為藤
1656おもへたた むなしきはしに あめをききて あけかたきよの あきのこころを伏見院
1657みたれてそ おともきこゆる よもすから しのふのころも つきにうつらし隆朝
1658つきくさの はなすりころも あきのよは やかてうつろふ かけにうつなり為定(御子左二条為道男)
1659とこのしも まくらのつきの さむきよに たへすやひとの ころもうつらむ仲顕
1660やまひこの おとはのさとの さよころも こなたかなたに うつかとそきく読人不知
1661うつりゆく まかきのきくの いろにこそ あきのひかすの ほともみえけれ寛尊法親王
1662いろそへむ みゆきをそまつ もみちはも ふりぬるやとの にはのけしきに伏見院
1663たつぬへき ほとこそいとと いそかるれ かつかつみする にはのもみちは花園院
1664つゆしもの いろともみえぬ くれなゐに いかてそめける このはなるらむ覚誉法親王
1665やまひめの てそめにいそく もみちはや しくれぬさきの にしきなるらむ玄勝
1666やまひめの いそくころもの あきのいろを そめはしめたる みねのもみちは為経(甘露寺藤原資経男)
1667ゆふつくひ しくれてのこる やまのはの うつろふくもに あきかせそふく後醍醐院
1668いまはたた よそにそみつる をくらやま みねのもみちの あきのさかりを実名(藤原公脩男)
1669いかにして ありしこころを なくさめむ もみちみにとも さそはれぬみは頼宗
1670なみのうへを こきつつゆけは やまちかみ あらしにちれる このはとやみむ貫之
1671をしとみる ありあけのつきの なこりをも おもひすててや あきはゆくらむ実教
1672うらかるる のへのをはなの そてのつゆ むすひすてても くるるあきかな為世(御子左藤原為氏男)
1673はれくもり しくれふりおける かたをかの ならのはさやき ふゆはきにけり公相
1674やまかせに すきゆくくもの あとまても なほなこりある むらしくれかな俊平(源泰光男)
1675ねさめして あくるまつまの たまくらに いくたひすくる しくれなるらむ俊顕
1676ぬれてなほ いろこそまされ おちはをも かさねてそむる しくれなりけり経顕(藤原定資男)
1677かみなつき しくれのあめの おりかけし にしきふきおろす さほのやまかせ大輔(殷富門院)
1678おほゐかは かけみしみつに なかるめり さそふあらしの やまのもみちは公忠(藤原実忠男)
1679もみちはの なかるるときは しらなみの たちにしなこそ かはるへらなれ貫之
1680とくきても みてましものを やましろの たかつきむらの ちりにけるかも黒人
1681のもやまも このはまれなる ふゆかれに あらしをのこす みねのまつはら時常
1682いせしまや うらかせそよく はまをきの しものかれはも かみさひにけり実兼
1683なにはえや しもにくちぬる あしのはは そよくともなき うらかせそふく聖尊法親王
1684ふゆかれの まののかやはら ほにいてし おもかけみせて おけるしもかな忠広
1685かせさゆる しものまかきの はなすすき かれしひとめに たれまねくらむ覚誉法親王
1686しもむすふ かれののをささ うちさやき あらしもつきも さえまさりつつ尊氏
1687ふゆふかみ さひしきいろは なほそひぬ かりたのおもの しものあけかた崇光院
1688ふゆのよの つきかけさむき たにのとに こほりをたたく やまおろしのかせ経継
1689なかきよの ねさめのなみた ほしやらて そてよりこほる ありあけのつき為藤
1690けさみれは たけのかけひを ゆくみつの あまるしつくそ かつこほりぬる宗久
1691さえまさる やまかせはかり おとたてて こほりにむせふ たにかはのみつ実俊(西園寺公宗男)
1692よしのかは たきつなかれも こほるなり やましたかせや さえまさるらむ長秀
1693ふゆのよの さむけきつきに かすみえて ふしみのさはに わたるみつとり乗功
1694むれてたつ かものうきねの あとはかり しはしこほらぬ にはのいけみつ実継
1695いつのまに むすふこほりそ あしかもの あしのいとなく さわくいけみつ公蔭
1696やましなの おとはのかはの さよちとり およはぬあとに ねをのみそなく公雄
1697ひとなみに なをやかくると わかのうらに なほあとしたふ ともちとりかな尊胤法親王
1698ひとしれぬ ねをのみなきて はまちとり あとをそかこつ わかのうらなみ信快
1699わかのうらに こころをとめて はまちとり あとまておもふ ねこそなかるれ通藤女
1700なにはかた つきのてしほの うらかせに よるへさためす なくちとりかな万代(後醍醐院女蔵人)
1701みたりあしの かれはのしもや おきつかせ ふけゆくつきに ちとりなくなり基氏(足利尊氏男)
1702とけてねぬ すまのせきもり よやさむき ともよふちとり つきになくなり義詮
1703たちかへり ちとりなくなる はまゆふの こころへたてて おもふものかは宇多天皇
1704うらつたふ しもよのちとり こゑさえて しほひのかたに ともさそふなり新大納言(延政門院)
1705あしろへと ちきりしひとの またこぬは いつこによりて ひをくらすらむ道因
1706ふるゆきに とたちたつねて けふいくか かたののみのを かりくらすらむ氏頼
1707おとにのみ ふるとはきけと たまささの うへにたまらす ちるあられかな顕氏(細川頼貞男)
1708かれのこる まかきのをきの ひとむらに またおとたてて ふるあられかな則祐
1709ぬきとめぬ をすてのやまの こけのうへに みたるるたまは あられなりけり敦有
1710しからきの とやまにふれる はつゆきに みやこのそらそ なほしくれける頼隆
1711とふひとの なさけのふかき ほとまては つもりもやらぬ にはのしらゆき夢窓
1712ふるゆきの ふみわけぬへき やとならは とはれぬみをや なほもうらみむ宗氏
1713ふみわけて たれかはとはむ くさのはら そこともしらす つもるしらゆき万代(後醍醐院女蔵人)
1714ささなみや うちいててみれは しろたへの ゆきをかけたる せたのなかはし惟賢
1715なにはかた まさこちとほく ひくしほの なかれひるまに つもるしらゆき盛徳
1716くもかかる かつらきやまに ふりそめて よそにつもらぬ けさのしらゆき道嗣
1717かさこしの みねのふふきも さえくれて きそのみさかを うつむしらゆき為重
1718いととなほ ゆききもたえて よをいとふ やまのかひある にはのしらゆき範空
1719あはれなり ふりつもりたる ゆきよりも わかみはまつや きえむとすらむ加賀左衛門
1720ふしのねに ふりつむゆきの としをへて きえぬためしと きみをこそみめ経信
1721ゆきはなほ うつみもはてぬ すみかまの けふりふきしく をののやまかせ忠季(藤原公蔭男)
1722すみかまに かよふゆききの あとはかり ゆきにそみゆる おほはらのやま尊氏
1723ほしうたふ こゑやくもゐに すみぬらむ そらにもやかて かけのさやけき伏見院
1724みしやいつそ とよのあかりの そのかみも おもかけとほき くものうへのつき後伏見院
1725ゆくとしも たちくるはるも あふさかの せきちのとりの ねをやまつらむ公継
1726ことしけき わかならはしに おきなれて きけはよふかき とりのこゑかな後光厳院
1727ほのかなる こゑそきこゆる ここのへの みやのほかにや とりはなくらむ後醍醐院
1728のとかなる おいのねさめの さひしきに とりのやこゑを かそへてそきく為世(御子左二条為氏男)
1729をさまれる ときをそつくる わかきみの よにあふさかの せきのとりのね氏経
1730こととひし みゆきのあとは よよふりて のこるかはへの まつそこたかき覚助法親王
1731まちこひし むかしはいまも しのはれて かたみひさしき みつのはままつ定家
1732うちつけに なきさのをかの まつかせを そらにもなみの たつかとそきく信明
1733よさのうら いりうみかけて みわたせは まつはらとほき あまのはしたて孝覚
1734きよみかた おきつしほせの ゆふなきに いりひうつろふ みほのまつはら行尹
1735なにはかた なみちはれゆく ゆふなきに いりひまちかき あはちしまやま花園院
1736まつらかた もろこしかけて みわたせは なみちもやへの すゑのしらくも後光厳院
1737なみまより ほのかにみゆる あまをふね くもとともにも きえわたるかな公通
1738あはれなり あまのまてかた いとまなみ たれもさてこそ よはつくせとも泰時
1739ふしのねを たこのうらより みわたせは けふりもそらに たたぬひそなき定為
1740よるのあめの くもふきはらふ あさあらしに はれてまちかき をちのやまのは光厳院
1741いたつらに みののをやまの まつことも なきわれなから としふりにけり亀山院
1742いまはわれ くるしきおいの さかこえて またわけわふる すすのしたみち道昭
1743くもかかる あをねかみねの こけむしろ いくよへぬらむ しるひとそなき顕季
1744いくよしも へたてぬものを くらゐやま のほりしあとに なとまよふらむ実教
1745ひにそへて くらゐのたかく なりゆけは やまのかひある きみとこそみれ成仲
1746くらゐやま またしゐしはの かけにゐて わかのほるへき みちはいそかす為邦
1747むさしのの わかむらさきの ころもては ゆかりまてこそ うれしかりけれ重家
1748おなしくは あけのころもの いろなから いかてくもゐに たちかへらまし朝尹
1749たくひなく あはれとそきく さよふけて くもゐにわたる たつのひとこゑ月花門院
1750あしへより しほみちくらし あまつかせ ふけひのうらに たつそなくなる順徳院
1751みしかとも たれともしらす なにはかた なみのよるにて かへりにしかは村上天皇
1752すみよしの まつとほのかに ききしかは みちにししほの よるかへりけむ忠見
1753たこのうらの なみはのとけし わかそてに たとへむかたの なきそかなしき読人不知
1754たちかへり わかのうらなみ このみよに おいてふたたひ なをそかけつる為世(御子左藤原為氏)
1755おきつなみ たかしのはまの しほかせに よやさむからし たつそなくなる善源
1756かくしつつ つもれはおいの みなせかは さのみやありて そてぬらすへき公宗母
1757かめやまの みねたちこえて みわたせは きよたきかはを おとすいかたし後嵯峨院
1758わたりする かはせのふねに さすさをの そのなはかりは とるもくるしな公賢
1759おほゐかは みなわさかまく いはふちに たたむいかたの すきかたのよや俊頼(源経信男)
1760よのなかに いひなかしてし たつたかは みるになみたそ あめとふりける宇多天皇
1761よよたえぬ せきのふちかは いかなれは しつむうきせに なをなかすらむ公忠(藤原実忠男)
1762いしまより いつるいつみそ むせふなる むかしをしのふ こゑにやあるらむ兼盛
1763みやこひと きかぬはなきを おとなしの たきとはたれか いひはしめけむ能因
1764いまたにも かかりといひし たきつせの そのをりまては むかしなりけむ西行
1765またよにも たちかへるかな すすきえぬ うきみわかはの みつのしらなみ定円(葉室光俊男)
1766またれつる このせもすきぬ きみかよに あふくまかはの なをたのめとも成久
1767さとのなを わかみにしれは やましろの うちのわたりそ いととすみうき紫式部
1768つくつくと うきよにむせふ かはたけの つれなきいろは よるかたもなし三条院
1769いへのかせ なほふきたえす とよあまり またかけなひく にはのくれたけ通相
1770くれたけの よよのきみには つかへきぬ おもひてのこす ひとふしもかな有範
1771むなしきを ともとはすれと くれたけの うきふしはかり みにそかすそふ為相
1772なからへて あれはそあへる きみかよに かすならすとも みをはいとはし家隆
1773おろかなる わかみにむけて おもふには きみかめくみの なほあまりぬる実泰
1774おいらくの しらかみまてに つかへきて けふのみゆきに あふかうれしさ有房(六条通有男)
1775つたへくる にはのをしへの かたはかり あとあるにたに なほまよひつつ為家
1776しきしまの みちはたたしき みちにしも こころつからや ふみまよふらむ崇光院
1777ちりのみに つもれるにはの をしへまて いともかしこく きこえあけてき為明
1778わかのうらに としふるたつの くもゐまて きこえあけける みちそかしこき実継
1779しきしまの みちのひかりと まきまきの うちにみかける たまをみるかな行家(藤原知家男)
1780いにしへの よよにかはらす つたへきて いまもあつむる やまとことのは為氏
1781いにしへの かしこきみちを まなへとも こころをかふる ひとそすくなき尊氏
1782みかさやま そのなをかけて みしあきも はるかになりぬ みねのつきかけ為藤
1783めくりあふ くもゐのつきに いくたひか いててつかへし あきをこふらむ為氏
1784こよひしも ひかりそへける くらゐやま かひあるあきの つきをみるかな道嗣
1785くらゐやま のほるわかみの いかなれは くもゐのつきに とほさかるらむ高範
1786よはひこそ いつよをこえめ くらゐやま たえにしあとに またのほるかな雅孝
1787ふたよまて うけつくきみを わかきみと あふくやそちの みこそふりぬれ公秀
1788ななそちの そてのなみたに やとりきて おいをはつきそ いとはさりける長通
1789むそちあまり おなしそらゆく つきをみて つもれるおいの ほとそしらるる長舜
1790みのうさの なくさむとしは なけれとも よるはすからに つきをみるかな邦省親王
1791おのつから ものおもふひとも なくさめと うきよにあきの つきやすむらむ為氏
1792わかやとの ものとたにみは あきのよの つきよよしとも ひとにつけまし恵慶
1793わかのうらに しつみはてにし すてふねも いまひとなみの よにひかれつつ為顕
1794もしほくさ かきおくかすは つもれとも またあらはるる ことのはそなき成実
1795かきとむる このみつくきの かはらすは なからむあとの かたみともみよ伏見院
1796わかみよに なからむのちに あはれとは たれかいはまの みつくきのあと後二条院
1797みるたひに おもひそいつる みつくきの あとはわすれぬ よよのかたみを行忠(藤原)
1798たれかすむ やとのつまとも しらなくに はかなくかける ささかにのあと経信
1799こころひく やとにくらして あつさゆみ かへらむほとを わすれぬるかな読人不知
1800あつさゆみ いてもかひなき みにしあれは けふのまとゐに はつれぬるかな慈応
1801あつさゆみ きみしまとゐに たくはねは ともはなれたる ここちこそすれ道命
1802いつよまて きみにつかへて としさむき まつのこころは ならひきにけり公賢
1803たかさこの をのへにみゆる まつのとは たかよをつくす すみかなるらむ実伊
1804まちいてて みるもつれなき わかみかな すむへきやまの ありあけのつき貞秀
1805あらましの こころはゆきて すみなから よそにみやまの くもそへたつる公賢
1806くもならて こたかきみねに ゐるものは うきよをそむく わかみなりけり戒仙
1807しのひねも おとなかりけり ほとときす こやしつかなる はやしなるらむ永観
1808たつねいる かひやなからむ やまふかく すむともすまぬ こころなりせは行冬
1809しはのとの しはしはかりの すまひそと なくさめてきく のきのまつかせ慈快
1810ともときく まつのあらしも おとせすは なほやまさとや さひしからまし頓阿
1811さひしさを おもひこそしれ やまさとの ともとききける まつのあらしに光厳院
1812たらちねの むかしのあとと おもはすは まつのあらしや すみうからまし為家
1813みやこひと とはぬほとをも おもひしれ みしよりのちの にはのまつかせ後鳥羽院
1814うきことを きかしとてすむ やまさとに またやいとはむ みねのまつかせ冬隆
1815あすしらぬ みはかくてもや やまふかみ みやこはやへの くもにへたてて光厳院
1816やまふかみ このはのつゆを うちはらひ いつまてされは きえのこるらむ高光
1817わひぬれは まつのあらしの さひしさも たへてすまるる やまのおくかな読人不知
1818たつねいる みやまのおくの かくれかは よのうきことや しるへなるらむ梁清
1819つねにすむ こころのうちの かくれかそ ひとのとひくる みちなかりける只帰
1820とふひとの あらはとまちし やまさとは なほよをすてぬ こころなりけり公敏
1821ひととはぬ ほともしられて やまさとは こけのみふかき にはのかよひち顕氏(細川頼貞男)
1822しをりせて いりにしみちの かひありて ひともとひこぬ やまのおくかな頼仲
1823さらぬたに ゆふくれつらき やまさとに とふひとかへる いはのかけはし少将(藻璧門院)
1824このままに たちもかへらし やまさとは おもひしよりも すみよかりけり尊什
1825やまふかみ またすむひとの あるにこそ みひとつならぬ うきよとはしれ禅守
1826かりそめに むすひししはの いほりにも すめはすまれて としそへにける禅隆
1827かりそめと おもひしほとに つくはねの すそわのたゐも すみなれにけり朝村
1828つくはねの すそわのたゐの あきのいほ このもかのもに けふりたつなり桓覚
1829もりあかす かとたのおもの いなむしろ ふきしくかせを まくらにそきく尊胤法親王
1830よのなかは あきのやまたの かりのいほ すみうしとても よしやいつまて顕実母
1831なへてよの うきにこえたる おいのなみ いつまてかかる みをなけかまし是法
1832のこりなき すゑをおもへは ななそちの あまりにもろき わかなみたかな頼仲
1833いたつらに おいにけるかな かすかのに ひくひともなき もりのしたくさ良冬
1834いつまてと おもふにつけて おいかみは なくさむほとの あらましもなし忠性
1835かきりあれは みのうきことも なけかれす おいをそひとは まつへかりける頓阿
1836いかにせむ うしとおもひし よのなかの おもかはりせて みこそおいぬれ長舜
1837いつまてと よをおもふにも そてぬれて おいのしるしそ なみたなりける邦省親王
1838かひなしや わかよはふけて いたつらに かかけもやらぬ のりのともしひ覚空
1839のちのよの やみをはるけよ あつめても みをはてらさぬ ほたるなりとも経深
1840つひにゆく みちはありとも しはしたに おいをととむる せきもりもかな成藤(藤原時藤男)
1841わひつつも なほすてやらぬ こころかな けにうきよとや おもはさるらむ光正
1842いくたひか うきよのほかに すてしみを またたちかへり なけきわふらむ宗祐
1843なへてよの うきはならひと おもひこし ことわりすきて みをなけくかな実遠(藤原公冬男)
1844あすかかは あすのふちせを しらぬこそ さためなきよの たのみなりけれ実家女
1845かくはかり うきはいかなる むくひそと みをこそかこて よをはうらみす直信
1846をりをりに ことこそかはれ みのうさを おもふこころの やすけなのよや法守法親王
1847あつまちの とつなのはしの くるしとも おもひしらてや よをわたるらむ宗遠
1848あふきつつ たのみしかけは かれはてぬ のこるくちきの みをいかにせむ内侍(永福門院)
1849かすならて なからへきつる うきみをも きみかためにと なほをしむかな直氏
1850そむかれぬ わかみのほとの つれなさも よのうきにこそ おもひしりぬれ雅朝
1851いきてよに すむとはいはし かすならぬ みとたにわれを しるひとそなき真俊
1852ありはつる よとしおもはは いかはかり かすならぬみの なほうからまし宗尋
1853よのなかの うきをもうしと なけくみに いとふこころの なとなかるらむ忠景
1854うきよとは おもひもしらて すきにけり かすならぬみを あるにまかせて通定
1855けふまては うきもつらきも しのひきぬ なほよをしたふ こころよわさに政村
1856うきよをも いとひそはてぬ をりをりに かはるこころの さためなけれは公寛
1857ささかにの いとひしかひも なきよかな かくてもなとか くるしかるらむ信生
1858なにをして くらすともなき つきひかな つもるはかりを みにかそへつつ国助
1859おもひつつ なほおとろかぬ うきよこそ ゆめとしりても かひなかりけれ行顕
1860うはたまの よるみるゆめを ゆめとのみ おもふこころそ いやはかななる和義
1861たれもみな またさめぬまの ゆめのよに こころをとむる ほとのはかなさ義高
1862たちかへり なほそかなしき よのなかの うきはゆめそと おもひなせとも経尹(藤原懐経男)
1863なにかおもふ なにかはなけく さめやらぬ ゆめのうちなる ゆめのうきよを後鳥羽院
1864うきもゆめ うからぬもまた まほろしの よをなくさむる われもはかなし光厳院
1865ゆめのこと すきしつきひの つもりきて しのふむかしと なりにけるかな読人不知
1866ゆめならは さむるうつつも あるへきを うつつなからの ゆめそはかなき雲雅
1867あはれなり きえはてぬとも うきならて なにをこのよの おもひてにせむ山田
1868よしあしを こころにたにも すてぬれは おなしうきよも すみよかりけり基久
1869すてはてぬ わかこころもて いくたひか よをうしとのみ うらみきぬらむ高広
1870あらましに いとふはいまも やすきよを まことにならは すてやかねまし普誥
1871うつつには またもかへらぬ いにしへを ふたたひみるは ゆめちなりけり彦良
1872くりかへし なにしのふらむ かすならて むかしもすきし しつのをたまき宣子(従三位)
1873うきよには さむるうつつの あらはこそ みしをゆめとも ひとにかたらめ円空
1874こひわたる よよのむかしも おもひつつ ぬれはやみゆる ゆめのうきはし源意(藤原源守男)
1875われなから こころやかはる うしといひて すきしむかしを またしのふかな義春
1876いにしへを きくにつけてそ しのはるる わかみしのちや うきよなるらむ道昌
1877しらさりき こころつくしの いにしへを みのおもひてと しのふへしとは守時女
1878なにしかも うさはかはらぬ おなしよの むかしになれは こひしかるらむ法守法親王
1879みをしらて いふはかひなき ことなれと たのめはひとをと おもふはかりそ顕輔
1880うらむとは しらてやしかの しきりには はきのはひえを しからみにする俊頼(源経信男)
1881うらめしと しかをないひそ はきかえも かるもにしつつ すくすとそみる仲実
1882ひとことに えてうれしきは のりのはな みよのほとけの やとのものとて慈円
1883なほちれと やまかせかよひ さそふらし くもはのこれと はなそとまらぬ読人不知
1884をかのへの ならのおちはに しくれふり ほのほのいつる とほやまのつき後鳥羽院
1885ささのはの つゆはしはしも きえのこる やよやはかなき みをいかにせむ俊頼(源経信男)
1886ちはやふる いつしのみやの かみのこま ひとなのりそや たたりもそする重之
1887あきののを わけつつゆけは はなもみな ちりかかるかや そてにしむらむ貫之
1888かみやまに いくよへぬらむ さかきはの ひさしくしめを ゆひかけてけり定家
1889くりかへし いのるこころを しひてなほ かみはもちひよ もりのしめなは具氏
1890ゆくつきも かけふけにけり かちまくら したうつなみの よるのとまりに読人不知
1891うしやうし はなにほふえたに かせかよひ ちりきてひとの こととひはせす読人不知
1892みつひたり まきのふちふち おちたきり ひをけさいかに よりまさるらむ頼政
1893うらみかね たえにしとこは むかしはや ふさすなりにき よはのさむしろ俊成(藤原俊忠男)
1894やまさとは あきをまつかせ ことしらふ のたかるしつは ちようたふなり俊成(藤原俊忠男)
1895すまのうら あまのとまやの あくるより やくしほとけさ たつけふりかな性助法親王
1896さひしくて ひとくともなき やまさとに いつはりしける うくひすのこゑ宗尊親王
1897たまやなき みとりのえたの よわけれは うくひすとむる ちからたになし千里
1898よしさらは しるへにもせむ けふはかり はなもてむかへ はるのやまかせ俊恵
1899あきことに かりくるいねは つみつれと おいにけるみそ おきところなき忠見
1900しらゆきの ふれるあしたの しらかゆは いとよくにたる ものにそありける仲文
1901おしはりて ゆみのふくろと しるしるや おもはぬやまの ものをいるらむ実方
1902たまたれの みすのうちより いてしかは そらたきものと たれもしりにき清輔
1903ゆふなきに ほつつしめなは くりさけて とまりけすらひ よするふなひと光俊(葉室光親男)
1904わかこひは めさへいつかは あふみなる やすきいをたに ぬるよしそなき行家(藤原知家男)
1905かせあらき やまたのいほの こもすたれ しくれをかけて もるこのはかな実兼
1906けふのひは くるるとやまの かきわらひ あけはまたみむ をりすきぬまに知家
1907あくるまを なほたたくこそ なつのよの こころみしかき くひななりけれ読人不知
1908ゆふかけし かみのきたのの ひとよまつ いまはほとけの みそきなりけり読人不知
1909たきつかはに みたれしたまの をたえして みつのいとすち こほりしにけり行家(藤原知家男)
1910みわたせは さほのかはらに くりかけて かせによらるる あをやきのいと西行
1911つらきかな やまのそまきの われなから うつすみなはに ひかぬこころは為家
1912おほゐかは かへらぬみつの うかひふね つかふとおもひし みよそこひしき公雄