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「千載和歌集」一覧

1288件


1はるのくる あしたのはらを みわたせは かすみもけふそ たちはしめける俊頼(源経信男)
2みむろやま たににやはるの たちぬらむ ゆきのしたみつ いはたたくなり国信
3ゆきふかき いはのかけみち あとたゆる よしののさとも はるはきにけり堀河(待賢門院)
4みちたゆと いとひしものを やまさとに きゆるはをしき こそのゆきかな匡房
5はるたては ゆきのしたみつ うちとけて たにのうくひす いまそなくなる顕綱
6やまさとの かきねにはるや しるからむ かすまぬさきに うくひすのなく隆国
7けふりかと むろのやしまを みしほとに やかてもそらの かすみぬるかな俊頼(源経信男)
8かすみしく はるのしほちを みわたせは みとりをわくる おきつしらなみ兼実
9わきもこか そてふるやまも はるきてそ かすみのころも たちわたりける匡房
10はるくれは すきのしるしも みえぬかな かすみそたてる みわのやまもと頼輔
11みわたせは そことしるしの すきもなし かすみのうちや みわのやまもと隆房
12ときはなる まつもやはるを しりぬらむ はつねをいはふ ひとにひかれて堀河(待賢門院)
13うらやまし ゆきのしたくさ かきわけて たれをとふひの わかななるらむ通俊
14かすかのの ゆきをわかなに つみそへて けふさへそての しをれぬるかな俊頼(源経信男)
15さきそむる うめのたちえに ふるゆきの かさなるかすを とへとこそおもへ俊忠
16うめかえに こころもゆきて かさなるを しらてやひとの とへといふらむ俊頼(源経信男)
17うめかえに ふりつむゆきは うくひすの はかせにちるも はなかとそみる顕輔
18かをるかの たえせぬはるは うめのはな ふきくるかせや のとけかるらむ雅実
19いまよりは うめさくやとは こころせむ またぬにきます ひともありけり師頼
20にほひもて わかはそわかむ うめのはな それともみえぬ はるのよのつき匡房
21うめのはな をりてかさしに さしつれは ころもにおつる ゆきかとそみる公能
22うめかかに おとろかれつつ はるのよの やみこそひとは あくからしけれ和泉式部
23さよふけて かせやふくらむ はなのかの にほふここちの そらにするかな道信
24はるのよは のきはのうめを もるつきの ひかりもかをる ここちこそすれ俊成(藤原俊忠男)
25はるのよは ふきまふかせの うつりかを きことにうめと おもひけるかな崇徳院
26うめかかは おのかかきねを あくかれて まやのあたりに ひまもとむなり俊頼(源経信男)
27うめかかに こゑうつりせは うくひすの なくひとえたは をらましものを実定
28うめかえの はなにこつたふ うくひすの こゑさへにほふ はるのあけほの守覚法親王
29かせわたる のきはのうめに うくひすの なきてこつたふ はるのあけほの実家(藤原公能男)
30むかしより ちらさぬやとの うめのはな わくるこころは いろにみゆらむ定房(源雅定男)
31よもやまに このめはるさめ ふりぬれは かそいろはとや はなのたのまむ匡房
32はるさめの ふりそめしより かたをかの すそののはらそ あさみとりなる基俊
33つれつれと ふれはなみたの あめなるを はるのものとや ひとはみるらむ和泉式部
34みやまきの かけののしたの したわらひ もえいつれとも しるひともなし基俊
35みこもりに あしのわかはや もえぬらむ たまえのぬまを あさるはるこま清輔
36はるくれは たのむのかりも いまはとて かへるくもちに おもひたつなり俊頼(源経信男)
37なかむれは かすめるそらの うきくもと ひとつになりぬ かへるかりかね良経(九条兼実男)
38あまつそら ひとつにみゆる こしのうみの なみをわけても かへるかりかね頼政
39かへるかり いくくもゐとも しらねとも こころはかりを たくへてそやる成仲
40はるはなほ はなのにほひも さもあらはあれ たたみにしむは あけほののそら季通(藤原宗通男)
41あさゆふに はなまつころは おもひねの ゆめのうちにそ さきはしめける崇徳院
42いつかたに はなさきぬらむと おもふより よものやまへに ちるこころかな堀河(待賢門院)
43やまさくら たつぬときくに さそはれぬ おいのこころの あくかるるかな師実
44かけきよき はなのかかみと みゆるかな のとかにすめる しらかはのみつ有仁
45よろつよの はなのためしや けふならむ むかしもかかる はるしなけれは実能
46たつねつる はなのあたりに なりにけり にほふにしるし はるのやまかせ崇徳院
47かへるさを いそかぬほとの みちならは のとかにみねの はなはみてまし忠通
48やまさくら にほふあたりの はるかすみ かせをはよそに たちへたてなむ中納言女王
49はなゆゑに かからぬやまそ なかりける こころははるの かすみならねと顕綱
50さくらはな おほくのはるに あひぬれと きのふけふをや ためしにはせむ師実
51はなさかり はるのやまへを みわたせは そらさへにほふ ここちこそすれ師通
52さきにほふ はなのあたりは はるなから たえせぬやとの みゆきとそみる基忠(藤原忠家男)
53たつねきて たをるさくらの あさつゆに はなのたもとの ぬれぬひそなき雅定
54かりにたに いとふこころや なからまし ちらぬはなさく このよなりせは実定
55みなひとの こころにそむる さくらはな いくしほとしに いろまさるらむ公光(藤原季成男)
56かつらきや たかまのやまの さくらはな くもゐのよそに みてやすきなむ顕輔
57やまさくら かすみこめたる ありかをは つらきものから かせそしらする教長
58かみかきの みむろのやまは はるきてそ はなのしらゆふ かけてみえける清輔
59よもすから はなのにほひを おもひやる こころやみねに たひねしつらむ覚性法親王
60さきぬやと しらぬやまちに たつねいる われをははなの しをるなりけり兼実
61くれはてぬ かへさはおくれ やまさくら たかためにきて まとふとかしる俊頼(源経信男)
62はなゆゑに しらぬやまちは なけれとも まとふははるの こころなりけり道因
63としをへて おなしさくらの はなのいろを そめますものは こころなりけり公時(藤原実国男)
64はなさかり よものやまへに あくかれて はるはこころの みにそはぬかな公衡(藤原公能男)
65よしのかは みかさはさしも まさらしを あをねをこすや はなのしらなみ顕昭
66ささなみや しかのみやこは あれにしを むかしなからの やまさくらかな読人不知
67ささなみや しかのはなその みるたひに むかしのひとの こころをそしる成仲
68たかさこの をのへのさくら さきぬれは こすゑにかくる おきつしらなみ成保
69おしなへて はなのさかりに なりにけり やまのはことに かかるしらくも西行
70よしのやま はなのさかりに なりぬれは たたぬときなき みねのしらくも寂念
71はるをへて にほひをそふる やまさくら はなはおいこそ さかりなりけれ仲正
72しらくもと みねのさくらは みゆれとも つきのひかりは へたてさりけり堀河(待賢門院)
73はなのいろに ひかりさしそふ はるのよそ このまのつきは みるへかりける兵衛(上西門院)
74をはつせの はなのさかりを みわたせは かすみにまかふ みねのしらくも重家
75ささなみや なからのやまの みねつつき みせはやひとに はなのさかりを範綱
76みよしのの はなのさかりを けふみれは こしのしらねに はるかせそふく俊成(藤原俊忠男)
77さきしより ちるまてみれは このもとに はなもひかすも つもりぬるかな白河院
78いけみつに みきはのさくら ちりしきて なみのはなこそ さかりなりけれ後白河院
79しらくもと みねにはみえて さくらはな ちれはふもとの ゆきにそありける伊通
80よしのやま はなはなかはに ちりにけり たえたえのこる みねのしらくも季通(藤原宗通男)
81やまさくら をしむこころの いくたひか ちるこのもとに ゆきかかるらむ周防内侍
82はるさめに ちるはなみれは かきくらし みそれしそらの ここちこそすれ長家
83ふめはをし ふまてはゆかむ かたもなし こころつくしの やまさくらかな赤染衛門
84やまさくら ちちにこころの くたくるは ちるはなことに そふにやあるらむ匡房
85はなのちる このしたかけは おのつから そめぬさくらの ころもをそきる仲実
86はるをへて はなちらましや おくやまの かせをさくらの こころとおもはは基俊
87あらしふく しかのやまへの さくらはな ちれはくもゐに ささなみそたつ公行(藤原実行男)
88はるかせに しかのやまこえ はなちれは みねにそうらの なみはたちける親隆
89さくらさく ひらのやまかせ ふくままに はなになりゆく しかのうらなみ良経(九条兼実男)
90ちりかかる はなのにしきは きたれとも かへらむことそ わすられにける実房
91あかなくに そてにつつめは ちるはなを うれしとおもふに なりぬへきかな実国
92さくらはな うきみにかふる ためしあらは いきてちるをは をしまさらまし通親
93みよしのの やましたかせや はらふらむ こすゑにかへる はなのしらゆき俊恵
94ひとえたは をりてかへらむ やまさくら かせにのみやは ちらしはつへき有房(源顕仲男)
95ちるはなを みにかふはかり おもへとも かなはてとしの おいにけるかな道因
96あかなくに ちりぬるはなの おもかけや かせにしられぬ さくらなるらむ覚盛
97やまさくら ちるをみてこそ おもひしれ たつねぬひとは こころありけり仲綱
98よそにてそ きくへかりける さくらはな めのまへにても ちらしつるかな道命
99さくらちる みつのおもには せきとむる はなのしからみ かくへかりけり能因
100やまかせに ちりつむはなの なかれすは いかてしらまし たにのしたみつ有仁
101はなのみな ちりてののちそ やまさとの はらはぬにはは みるへかりける俊実(藤原隆俊男)
102ふるさとは はなこそいとと しのはるれ ちりぬるのちは とふひともなし基俊
103ふくかせを なこそのせきと おもへとも みちもせにちる やまさくらかな義家
104したさゆる ひむろのやまの おそさくら きえのこりける ゆきかとそみる仲正
105かかみやま ひかりははなの みせけれは ちりつみてこそ さひしかりけれ親隆
106こころなき わかみなれとも つのくにの なにはのはるに たへすもあるかな季通(藤原宗通男)
107おもふこと ちえにやしけき よふことり しのたのもりの かたになくなり匡房
108こよひねて つみてかへらむ すみれくさ をののしはふは つゆしけくとも国信
109ききすなく いはたのをのの つほすみれ しめさすはかり なりにけるかな顕季
110みちとほみ いるののはらの つほすみれ はるのかたみに つみてかへらむ顕国
111はるふかみ ゐてのかはみつ かけそはは いくへかみえむ やまふきのはな匡房
112やまふきの はなさきにけり かはつなく ゐてのさとひと いまやとはまし基俊
113ここのへに やへやまふきを うつしては ゐてのかはつの こころをそくむ肥後(京極前関白家)
114よしのかは きしのやまふき さきぬれは そこにそふかき いろはみえける範綱
115くちなしの いろにそすめる やまふきの はなのしたゆく ゐてのかはみつ定経
116いかなれは はるをかさねて みつれとも やへにのみさく やまふきのはな広言
117やまふきの はなのつまとは きかねとも うつろふなへに なくかはつかな清輔
118いつかたに にほひますらむ ふちのはな はるとなつとの きしをへたてて康資王母
119ここのへに さけるをみれは ふちのはな こきむらさきの くもそたちける祐家
120としふれと かはらぬまつを たのみてや かかりそめけむ いけのふちなみ公能
121われもまた はるとともにや かへらまし あすはかりをは ここにくらして二条院
122はなはねに とりはふるすに かへるなり はるのとまりを しるひとそなき崇徳院
123いのちあらは またもあひみむ はるなれと しのひかたくて くらすけふかな具平親王
124なかむれは おもひやるへき かたそなき はるのかきりの ゆふくれのそら式子内親王
125くれてゆく はるはのこりも なきものを をしむこころの つきせさるらむ隆季
126いりひさす やまのはさへそ うらめしき くれすははるの かへらましやは雅通(源雅定男)
127いくかへり けふにわかみの あひぬらむ をしきははるの すくるのみかは定成(藤原明元男)
128みのうさも はなみしほとは わすられき はるのわかれを なけくのみかは仲綱
129いつかたと はるのゆくへは しらねとも をしむこころの さきにたつらむ経家(六条重家男)
130もろともに おなしみやこは いてしかと つひにははるに わかれぬるかな琳賢
131はなはみな よものあらしに さそはれて ひとりやはるの けふはゆくらむ静賢
132はなのはる かさなるかひそ なかりける ちらぬひかすの そははこそあらめ範玄
133をしめとも かひもなきさに はるくれて なみとともにそ たちわかれぬる覚忠
134つねよりも けふのくるるを をしむかな いまいくたひの はるとしらねは匡房
135けふくれぬ はなのちりしも かくそありし ふたたひはるは ものをおもふよ河内(前斎宮)
136なつころも はなのたもとに ぬきかへて はるのかたみも とまらさりけり匡房
137けふかふる せみのはころも きてみれは たもとになつは たつにそありける基俊
138あかてゆく はるのわかれに いにしへの ひとやうつきと いひはしめけむ実清(藤原公信男)
139むらむらに さけるかきねの うのはなは このまのつきの ここちこそすれ顕輔
140ゆふつくよ ほのめくかけも うのはなの さけるわたりは さやけかりけり実房
141たまかはと おとにききしは うのはなを つゆのかされる なにこそありけれ覚性法親王
142みてすくる ひとしなけれは うのはなの さけるかきねや しらかはのせき季通(藤原宗通男)
143うのはなの よそめなりけり やまさとの かきねはかりに ふれるしらゆき政平
144うのはなの かきねとのみや おもはまし しつのふせやに けふりたたすは敦経
145やきすてし ふるののをのの まくすはら たままくはかり なりにけるかな定通(藤原保実男)
146あふひくさ てるひはかみの こころかは かけさすかたに まつなひくらむ基俊
147かみやまの ふもとになれし あふひくさ ひきわかれても としそへにける式子内親王
148ほとときす まつはひさしき なつのよを ねぬにあけぬと たれかいひけむ公通
149ふたこゑと きかてややまむ ほとときす まつにねぬよの かすはつもりて道経
150ほとときす しのふるころは やまひこの こたふるこゑも ほのかにそする重保
151あやしきは まつひとからか ほとときす なかぬにさへも ぬるるそてかな道命
152ねさめする たよりにきけは ほとときす つらきひとをも まつへかりけり康資王母
153ほとときす またもやなくと またれつつ きくよしもこそ ねられさりけれ頼輔母
154またてきく ひとにとははや ほとときす さてもはつねや うれしかるらむ覚盛
155たつねても きくへきものを ほとときす ひとたのめなる よはのひとこゑ教長
156おもひやる こころもつきぬ ほとときす くものいくへの ほかになくらむ実家(藤原公能男)
157ほとときす なほはつこゑを しのふやま ゆふゐるくもの そこになくなり守覚法親王
158かさこしを ゆふこえくれは ほとときす ふもとのくもの そこになくなり清輔
159ひとこゑは さやかになきて ほとときす くもちはるかに とほさかるなり頼政
160おもふこと なきみなりせは ほとときす ゆめにきくよも あらましものを兼実
161ほとときす なきつるかたを なかむれは たたありあけの つきそのこれる実定
162なこりなく すきぬなるかな ほとときす こそかたらひし やととしらすや実国
163ゆふつくよ いるさのやまの こかくれに ほのかにもなく ほとときすかな宗家
164ほとときす ききもわかれぬ ひとこゑに よものそらをも なかめつるかな公光(藤原季成男)
165すきぬるか よはのねさめの ほとときす こゑはまくらに あるここちして俊成(藤原俊忠男)
166よをかさね ねぬよりほかに ほとときす いかにまちてか ひとこゑはきく道因
167こころをそ つくしはてつる ほとときす ほのめくよひの むらさめのそら長方
168みやこひと ひきなつくしそ あやめくさ たひねのとこの まくらはかりは雅頼
169さみたれに ぬれぬれひかむ あやめくさ ぬまのいはかき なみもこそこせ兼実
170のきちかく けふしもきなく ほとときす ねをやあやめに そへてふくらむ良通
171たたならぬ はなたちはなの にほひかな よそふるそては たれとなけれと五節(枇杷殿皇太后宮)
172かせにちる はなたちはなに そてしめて わかおもふいもか たまくらにせむ基俊
173うきくもの いさよふよひの むらさめに おひかせしるく にほふたちはな家基(藤原家光男)
174わかやとの はなたちはなに ふくかせを たかさとよりと たれなかむらむ親宗(平時信男)
175をりしもあれ はなたちはなの かをるかな むかしをみつる ゆめのまくらに公衡(藤原公能男)
176さみたれに はなたちはなの かをるよは つきすむあきも さもあらはあれ崇徳院
177さみたれに おもひこそやれ いにしへの くさのいほりの よはのさひしさ輔仁親王
178いととしく しつのいほりの いふせきに うのはなくたし さみたれそふる基俊
179おほつかな いつかはるへき わひひとの おもふこころや さみたれのそら俊頼(源経信男)
180さみたれに あささはぬまの はなかつみ かつみるままに かくれゆくかな顕仲(藤原資仲男)
181さみたれの ひかすへぬれは かりつみし しつやのこすけ くちやしぬらむ顕輔
182さみたれに みつのみつかさ まさるらし みをのしるしも みえすなりゆく親隆
183さみたれは たくものけふり うちしめり しほたれまさる すまのうらひと俊成(藤原俊忠男)
184ときしもあれ みつのみこもを かりあけて ほさてくたしつ さみたれのそら清輔
185さみたれは あまのもしほき くちにけり うらへにけふり たえてほとへぬ安芸(待賢門院)
186さみたれに むろのやしまを みわたせは けふりはなみの うへよりそたつ行頼(源光行男)
187さみたれは とまのしつくに そてぬれて あなしほとけの なみのうきねや仲正
188さみたれの くものはれまに つきさえて やまほとときす そらになくなり成保
189をちかへり ぬるともきなけ ほとときす いまいくかかは さみたれのそら資賢
190あふさかの やまほとときす なのるなり せきもるかみや そらにとふらむ師時
191いにしへを こひつつひとり こえくれは なきあふやまの ほとときすかな慶暹
192なとてかく おもひそめけむ ほとときす ゆきのみやまの のりのすゑかは俊頼(源経信男)
193さつきやみ ふたむらやまの ほとときす みねつつきなく こゑをきくかな俊忠
194ともしする みやきかはらの したつゆに しのふもちすり かわくよそなき匡房
195さつきやみ さやまのみねに ともすひは くものたえまの ほしかとそみる顕季
196さつきやみ しけきはやまに たつしかは ともしにのみそ ひとにしらるる顕綱
197ともしする ほくしのまつも きえなくに とやまのくもの あけわたるらむ行宗
198ともしする ほくしのまつも もえつきて かへるにまよふ しもつやみかな仲正
199やまふかみ ほくしのまつは つきぬれと しかにおもひを なほかくるかな読人不知
200ともしする ほくしをまつと おもへはや あひみてしかの みをはかふらむ重保
201むかしわか あつめしものを おもひいてて みなれかほにも くるほたるかな季通(藤原宗通男)
202あはれにも みさをにもゆる ほたるかな こゑたてつへき このよとおもふに俊頼(源経信男)
203あさりせし みつのみさひに とちられて ひしのうきはに かはつなくなり俊頼(源経信男)
204なつふかみ たまえにしける あしのはの そよくやふねの かよふなるらむ忠通
205はやせかは みをさかのほる うかひふね まつこのよにも いかかくるしき崇徳院
206みるかなほ このよのものと おほえぬは からなてしこの はなにそありける和泉式部
207とこなつの はなもわすれて あきかせを まつのかけにて けふはくれぬる具平親王
208はるあきも のちのかたみは なきものを ひむろそふゆの なこりなりける覚性法親王
209あたりさへ すすしかりけり ひむろやま まかせしみつの こほるのみかは公能
210やまかけや いはもるしみつ おとさへて なつのほかなる ひくらしのこゑ慈円
211ゆふされは たまゐるかすも みえねとも せきのをかはの おとそすすしき道経
212いはまもる しみつをやとに せきとめて ほかよりなつを すくしつるかな俊恵
213さらぬたに ひかりすすしき なつのよの つきをしみつに やとしてそみる顕昭
214せきとむる やましたみつに みかくれて すみけるものを あきのけしきは実快
215われなから ほとなきよはや をしからむ なほやまのはに ありあけのつき経家(六条重家男)
216なつのよの つきのひかりは さしなから いかにあけぬる あまのとならむ成仲
217ゆふたちの またはれやらぬ くもまより おなしそらとも みえぬつきかな俊恵
218こはきはら またはなさかぬ みやきのの しかやこよひの つきになくらむ敦仲
219なつころも すそののはらを わけゆけは をりたかへたる はきかはなすり顕昭
220あきかせは なみとともにや こえぬらむ またきすすしき すゑのまつやま親盛
221いはたたく たにのみつのみ おとつれて なつにしられぬ みやまへのさと教長
222いはまより おちくるたきの しらいとは むすはてみるも すすしかりけり盛方
223けふくれは あさのたちえに ゆふかけて なつみなつきの みそきをそする季通(藤原宗通男)
224いつとても をしくやはあらぬ としつきを みそきにすつる なつのくれかな俊成(藤原俊忠男)
225みそきする かはせにさよや ふけぬらむ かへるたもとに あきかせそふく読人不知
226あききぬと ききつるからに わかやとの をきのはかせの ふきかはるらむ侍従乳母
227あさちふの つゆけくもあるか あききぬと めにはさやかに みえけるものを守覚法親王
228あきのくる けしきのもりの したかせに たちそふものは あはれなりけり堀河(待賢門院)
229やへむくら さしこもりにし よもきふに いかてかあきの わけてきつらむ俊成(藤原俊忠男)
230あきはきぬ としもなかはに すきぬとや をきふくかせの おとろかすらむ寂然
231このはたに いろつくほとは あるものを あきかせふけは ちるなみたかな読人不知
232かみやまの まつふくかせも けふよりは いろはかはらて おとそみにしむ重政
233ものことに あきのけしきは しるけれと まつみにしむは をきのうはかせ行宗
234あきかせや なみたもよほす つまならむ おとつれしより そてのかわかぬ俊頼(源経信男)
235たなはたの こころのうちや いかならむ まちこしけふの ゆふくれのそら兼実
236たなはたの あまつひれふく あきかせに やそのふなつを みふねいつらし隆季
237たなはたの あまのはころも かさねても あかぬちきりや なほむすふらむ肥後(京極前関白家)
238こひこひて こよひはかりや たなはたの まくらにちりの つもらさるらむ河内(前斎宮)
239たなはたの あまのかはらの いはまくら かはしもはてす あけぬこのよは俊頼(源経信男)
240たなはたに はなそめころも ぬきかせは あかつきつゆの かくすなりけり崇徳院
241あまのかは こころをくみて おもふにも そてこそぬるれ あかつきのそら師房
242あきくれは おもひみたるる かるかやの したはやひとの こころなるらむ師頼
243おしなへて くさはのうへを ふくかせに まつしたをるる のへのかるかや甲斐(輔仁親王家)
244ふみしたき あさゆくしかや すきつらむ しとろにみゆる のちのかるかや道経
245あききぬと かせもつけてし やまさとに なほほのめかす はなすすきかな静賢
246いかなれは うははをわたる あきかせに したをれすらむ のへのかるかや読人不知
247ひともかな みせもきかせも はきのはな さくゆふかけの ひくらしのこゑ和泉式部
248あきやまの ふもとをこむる いへゐには すそののはきそ まかきなりける伊家
249みやきのの はきやをしかの つまならむ はなさきしより こゑのいろなる基俊
250こころをは ちくさのいろに そむれとも そてにうつるは はきかはなすり長覚
251つゆしけき あしたのはらの をみなへし ひとえたをらむ そてはぬるとも師頼
252をみなへし なひくをみれは あきかせの ふきくるすゑも なつかしきかな雅兼
253をみなへし なみたにつゆや おきそふる たをれはいとと そてのしをるる公光(藤原季成男)
254ふくかせに をれふしぬれは をみなへし まかきそはなの まくらなりける行家(藤原行国男)
255ゆふされは かやかしけみに なきかはす むしのねをさへ わけつつそゆく盛方
256さまさまに こころそとまる みやきのの はなのいろいろ むしのこゑこゑ俊頼(源経信男)
257あきくれは やとにとまるを たひねにて のへこそつねの すみかなりけれ俊頼(源経信男)
258のわきする のへのけしきを みるときは こころなきひと あらしとそおもふ季通(藤原宗通男)
259ゆふされは のへのあきかせ みにしみて うつらなくなり ふかくさのさと俊成(藤原俊忠男)
260なにとなく ものそかなしき すかはらや ふしみのさとの あきのゆふくれ俊頼(源経信男)
261さまさまの はなをはやとに うつしうゑつ しかのねさそへ のへのあきかせ兼実
262あきののの ちくさのいろに うつろへは はなそかへりて つゆをそめける守覚法親王
263くさきまて あきのあはれを しのへはや のにもやまにも つゆこほるらむ慈円
264はかなさを わかみのうへに よそふれは たもとにかかる あきのゆふつゆ堀河(待賢門院)
265たつたひめ かさしのたまの ををよわみ みたれにけりと みゆるしらつゆ清輔
266ゆふまくれ をきふくかせの おときけは たもとよりこそ つゆはこほるれ季経
267おほかたの つゆにはなにの なるならむ たもとにおくは なみたなりけり西行
268はなすすき まねくはさかと しりなから ととまるものは こころなりけり道命
269ときしもあれ あきふるさとに きてみれは にははのへとも なりにけるかな公任
270やとかれて いくかもあらぬに しかのなく あきののへとも なりにけるかな小弁
271いまはしも ほにいてぬらむ あつまちの いはたのをのの しののをすすき伊家
272ゆふされは をののあさちふ たまちりて こころくたくる かせのおとかな兼実
273ときはなる あをはのやまも あきくれは いろこそかへね さひしかりけり覚忠
274あきのよの こころをつくす はしめとて ほのかにみゆる ゆふつくよかな実家(藤原公能男)
275あきのつき たかねのくもの あなたにて はれゆくそらの くるるまちけり忠通
276こからしの くもふきはらふ たかねより さえてもつきの すみのほるかな俊頼(源経信男)
277いつこにも つきはわかしを いかなれは さやけかるらむ さらしなのやま隆源(藤原通宗男)
278いてぬより つきみよとこそ さえにけれ をはすてやまの ゆふくれのそら隆信
279くまもなき みそらにあきの つきすめは にはにはふゆの こほりをそしく雅頼
280つきみれは はるかにおもふ さらしなの やまもこころの うちにそありける実定
281あすもこむ のちのたまかは はきこえて いろなるなみに つきやとりけり俊頼(源経信男)
282たまよする うらわのかせに そらはれて ひかりをかはす あきのよのつき崇徳院
283さよふけて ふしのたかねに すむつきは けふりはかりや くもりなるへき公能
284いしはしる みつのしらたま かすみえて きよたきかはに すめるつきかけ俊成(藤原俊忠男)
285しほかまの うらふくかせに きりはれて やそしまかけて すめるつきかけ清輔
286おもひくま なくてもとしの へぬるかな ものいひかはせ あきのよのつき俊頼(源経信男)
287やまのはに ますみのかかみ かけたりと みゆるはつきの いつるなりけり基俊
288あきのよや あまのかはせは こほるらむ つきのひかりの さえまさるかな道経
289とほさかる おとはせねとも つききよみ こほりとみゆる しかのうらなみ重家
290つねよりも みにそしみける あきののに つきすむよはの をきのうはかせ頼実(藤原経宗男)
291なかめやる こころのはてそ なかりける あかしのおきに すめるつきかけ俊恵
292やほかゆく はまのまさこを しきかへて たまになしつる あきのよのつき長方
293いしまゆく みたらしかはの おとさえて つきやむすはぬ こほりなるらむ公時(藤原実国男)
294つきかけは きえぬこほりと みえなから ささなみよする しかのからさき顕家
295てるつきの かけさえぬれは あさちはら ゆきのしたにも むしはなきけり頼円
296あさちはら はすゑにむすふ つゆことに ひかりをわけて やとるつきかけ親盛
297ふけにける わかよのあきそ あはれなる かたふくつきは またもいてなむ清輔
298みのうさの あきはわするる ものならは なみたくもらて つきはみてまし頼輔
299おほかたの あきのあはれを おもひやれ つきにこころは あくかれぬとも紫式部
300たくひなく つらしとそおもふ あきのよの つきをのこして あくるしののめ成通
301てるつきの たひねのとこや しもとゆふ かつらきやまの たにかはのみつ俊頼(源経信男)
302はるかなる もろこしまても ゆくものは あきのねさめの こころなりけり大弐三位
303やまさとは さひしかりけり こからしの ふくゆふくれの ひくらしのこゑ仲実
304あきのよは まつをはらはぬ かせたにも かなしきことの ねをたてすやは季通(藤原宗通男)
305つゆさむみ うらかれもてく あきののに さひしくもある かせのおとかな時昌
306ゆふされは をののはきはら ふくかせに さひしくもあるか しかのなくなる正家(藤原家経男)
307みむろやま おろすあらしの さひしきに つまとふしかの こゑたくふなり肥後(京極前関白家)
308そまかたに みちやまとへる さをしかの つまとふこゑの しけくもあるかな公実
309あきのよは おなしをのへに なくしかの ふけゆくままに ちかくなるかな輔仁親王
310さをしかの なくねはのへに きこゆれと なみたはとこの ものにそありける俊頼(源経信男)
311さらぬたに ゆふへさひしき やまさとの きりのまかきに をしかなくなり堀河(待賢門院)
312みなとかは うきねのとこに きこゆなり いくたのおくの さをしかのこゑ範兼
313うきねする ゐなのみなとに きこゆなり しかのねおろす みねのまつかせ隆信
314よをこめて あかしのせとを こきいつれは はるかにおくる さをしかのこゑ俊恵
315みなとかは よふねこきいつる おひかせに しかのこゑさへ せとわたるなり道因
316みやきのの こはきかはらを ゆくほとは しかのねをさへ わけてきくかな覚延
317さをしかの つまよふこゑも いかなれや ゆふへはわきて かなしかるらむ修範
318きくままに かたしくそての ぬるるかな しかのこゑには つゆやそふらむ季能/秀能
319やまさとの あかつきかたの しかのねは よはのあはれの かきりなりけり慈円
320よそにたに みにしむくれの しかのねを いかなるつまか つれなかるらむ俊恵
321ゆふまくれ さてもやあきは かなしきと しかのねきかぬ ひとにとははや道因
322つねよりも あきのゆふへを あはれとは しかのねにてや おもひそめけむ政平
323さひしさを なににたとへむ をしかなく みやまのさとの あけかたのそら広言
324いかはかり つゆけかるらむ さをしかの つまこひかぬる をののくさふし長覚
325をのへより かとたにかよふ あきかせに いなはをわたる さをしかのこゑ寂蓮
326おとろかす おとこそよるの をやまたは ひとなきよりも さひしかりけれ読人不知
327わかかとの おくてのひたに おとろきて むろのかりたに しきそたつなる兼昌
328むしのねは あさちかもとに うつもれて あきはすゑはの いろにそありける寂蓮
329あきのよの あはれはたれも しるものを われのみとなく きりきりすかな兼宗
330さまさまの あさちかはらの むしのねを あはれひとつに ききそなしつる良経(九条兼実男)
331よをかさね こゑよわりゆく むしのねに あきのくれぬる ほとをしるかな公能
332あきふかく なりにけらしな きりきりす ゆかのあたりに こゑきこゆなり花山院
333さりともと おもふこころも むしのねも よわりはてぬる あきのくれかな俊成(藤原俊忠男)
334むしのねも まれになりゆく あたしのに ひとりあきなる つきのかけかな道性法親王
335くさもきも あきのすゑはは みえゆくに つきこそいろも かはらさりけれ式子内親王
336すむみつに さやけきかけの うつれはや こよひのつきの なになかるらむ俊家
337あきのつき ちちにこころを くたききて こよひひとよに たへすもあるかな読人不知
338さよふけて きぬたのおとそ たゆむなる つきをみつつや ころもうつらむ覚性法親王
339こひつつや いもかうつらむ からころも きぬたのおとの そらになるまて公実
340まつかせの おとたにあきは さひしきに ころもうつなり たまかはのさと俊頼(源経信男)
341たかために いかにうてはか からころも ちたひやちたひ こゑのうらむる基俊
342ころもうつ おとをきくにそ しられぬる さととほからぬ くさまくらとは俊盛
343ゆふきりや あきのあはれを こめつらむ わけいるそてに つゆのおきそふ宗円(法眼弁宗男)
344あきふかみ たそかれときの ふちはかま にほふはなのる ここちこそすれ崇徳院
345いかにして いはまもみえぬ ゆふきりに となせのいかた おちてきつらむ親隆
346けさみれは さなからしもを いたたきて おきなさひゆく しらきくのはな基俊
347しらきくの はにおくつゆに やとらすは はなとそみまし てらすつきかけ良通
348ゆきならは まかきにのみは つもらしと おもひとくにそ しらきくのはな行慶
349あさなあさな まかきのきくの うつろへは つゆさへいろの かはりゆくかな祐盛
350さえわたる ひかりをしもに まかへてや つきにうつろふ しらきくのはな家隆
351ことことに かなしかりけり うへしこそ あきのこころを うれへといひけれ季通(藤原宗通男)
352あきにあへす さこそはくすの いろつかめ あなうらめしの かせのけしきや基俊
353はつしくれ ふるほともなく しもとゆふ かつらきやまは いろつきにけり覚性法親王
354むらくもの しくれてそむる もみちはは うすくこくこそ いろにみえけれ覚延
355しくれゆく よものこすゑの いろよりも あきはゆふへの かはるなりけり定家
356おほろけの いろとやひとの おもふらむ をくらのやまを てらすもみちは道命
357きみみむと こころやしけむ たつたひめ もみちのにしき いろをつくせり小弁
358ふるさとに とふひとあらは もみちはの ちりなむのちを まてとこたへよ素意
359やまひめに ちへのにしきを たむけても ちるもみちはを いかてととめむ顕輔
360もみちはに つきのひかりを さしそへて これやあかちの にしきなるらむ後白河院
361やまおろしに うらつたひする もみちかな いかかはすへき すまのせきもり実定
362きよみかた せきにとまらて ゆくふねは あらしのさそふ このはなりけり実房
363もみちはを せきもるかみに たむけおきて あふさかやまを すくるこからし実守
364もみちはの みなくれなゐに ちりしけは なのみなりけり しらかはのせき親宗(平時信男)
365みやこには またあをはにて みしかとも もみちちりしく しらかはのせき頼政
366ささなみや ひらのたかねの やまおろし もみちをうみの ものとなしつる範兼
367たつたやま まつのむらたち なかりせは いつくかのこる みとりならまし清輔
368あきといへは いはたのをのの ははそはら しくれもまたす もみちしにけり覚盛
369にはのおもに ちりてつもれる もみちはは ここのへにしく にしきなりけり公重(藤原通季男)
370けふみれは あらしのやまは おほゐかは もみちふきおろす なにこそありけれ俊恵
371おほゐかは なかれておつる もみちかな さそふはみねの あらしのみかは道因
372いまそしる たむけのやまは もみちはの ぬさとちりかふ なにこそありけれ清輔
373たつたやま ふもとのさとは とほけれと あらしのつてに もみちをそみる成仲
374ふきみたる ははそかはらを みわたせは いろなきかせも もみちしにけり成保
375いろかへぬ まつふくかせの おとはして ちるはははその もみちなりけり朝仲
376ふるさとの にははこのはに いろかへて かはらぬまつそ みとりなりける広言
377ちりつもる このはもかせに さそはれて にはにもあきの くれにけるかな慈弁
378あきのたに もみちちりける やまさとを こともおろかに おもひけるかな俊頼(源経信男)
379ちりかかる たにのをかはの いろつくは このはやみつの しくれなるらむ兼実
380くれてゆく あきをはみつや さそふらむ もみちなかれぬ やまかはそなき公教
381もみちはの ちりゆくかたを たつぬれは あきもあらしの こゑのみそする崇徳院
382さらぬたに こころほそきを やまさとの かねさへあきの くれをつくなり覚忠
383からにしき ぬさにたちもて ゆくあきも けふやたむけの やまちこゆらむ瞻西
384あけぬとも なほあきかせは おとつれて のへのけしきよ おもかはりすな俊頼(源経信男)
385たつたやま ちるもみちはを きてみれは あきはふもとに かへるなりけり匡房
386こよひまて あきはかきれと さためける かみよもさらに うらめしきかな小大進(花園左大臣家)
387きのふこそ あきはくれしか いつのまに いはまのみつの うすこほるらむ公実
388いかはかり あきのなこりを なかめまし けさはこのはに あらしふかすは俊頼(源経信男)
389いつみかは みつのみわたの ふしつけに しはまもこほる ふゆはきにけり仲実
390ひまもなく ちるもみちはに うつもれて にはのけしきも ふゆこもりけり崇徳院
391さまさまの くさはもいまは しもかれぬ のへよりふゆや たちてきつらむ公能
392すむみつを こころなしとは たれかいふ こほりそふゆの はしめをもしる隆季
393あきのうちは あはれしらせし かせのおとの はけしさそふる ふゆはきにけり教長
394わきもこか うはものすその みつなみに けさこそふゆは たちはしめけれ小大進(花園左大臣家)
395いつのまに かけひのみつの こほるらむ さこそあらしの おとのかはらめ孝善
396とやまふく あらしのかせの おときけは またきにふゆの おくそしらるる和泉式部
397はつしもや おきはしむらむ あかつきの かねのおとこそ ほのきこゆなれ公能
398たかさこの をのへのかねの おとすなり あかつきかけて しもやおくらむ匡房
399ひさきおふる をののあさちに おくしもの しろきをみれは よやふけぬらむ基俊
400ふゆきては ひとよふたよを たまささの はわけのしもの ところせきまて定家
401しもさえて かれゆくをのの をかへなる ならのひろはに しくれふるなり基俊
402ねさめして たれかきくらむ このころの このはにかかる よはのしくれを馬内侍
403おとにさへ たもとをぬらす しくれかな まきのいたやの よはのねさめに定信
404まはらなる まきのいたやに おとはして もらぬしくれや このはなるらむ俊成(藤原俊忠男)
405このはちる とはかりききて やみなまし もらてしくれの やまめくりせは覚性法親王
406ひとりねの なみたやそらに かよふらむ しくれにくもる ありあけのつき兼実
407うたたねは ゆめやうつつに かよふらむ さめてもおなし しくれをそきく隆信
408やまめくる くものしたにや なりぬらむ すそののはらに しくれすくなり頼政
409しくれゆく をちのとやまの みねつつき うつりもあへす くもかくるらむ師光(源師頼男)
410あらしふく ひらのたかねの ねわたしに あはれしくるる かみなつきかな道因
411みやまへの しくれてわたる かすことに かことかましき たまかしはかな国信
412このはのみ ちるかとおもひし しくれには なみたもたへぬ ものにそありける俊頼(源経信男)
413ふりはへて ひともとひこぬ やまさとは しくれはかりそ すきかてにする肥後(京極前関白家)
414しくれつる まやののきはの ほとなきに やかてさしいる つきのかけかな定家
415たまつさに なみたのかかる ここちして しくるるそらに かりのなくなる読人不知
416みねこえに ならのはつたひ おとつれて やかてのきはに しくれきにけり仲頼
417あかつきの ねさめにすくる しくれこそ もらてもひとの そてぬらしけれ康宗
418ちりはてて のちさへかせを いとふかな もみちをふける みやまへのさと盛雅
419みやこたに さひしさまさる こからしに みねのまつかせ おもひこそやれ定頼女
420あさほらけ うちのかはきり たえたえに あらはれわたる せせのあしろき定頼
421やかたをの ましろのたかを ひきすゑて うたのとたちを かりくらしつる仲実
422ふるゆきに ゆくへもみえす はしたかの をふさのすすの おとはかりして隆源(藤原通宗男)
423ゆふまくれ やまかたつきて たつとりの はおとにたかを あはせつるかな俊頼(源経信男)
424いもかりと さほのかはへを わかゆけは さよかふけぬる ちとりなくなり長能
425すまのせき ありあけのそらに なくちとり かたふくつきは なれもかなしき俊成(藤原俊忠男)
426いはこゆる あらいそなみに たつちとり こころならすや うらつたふらむ道因
427しもさえて さよもなかゐの うらさむみ あけやらすとや ちとりなくらむ静賢
428しもかれの なにはのあしの ほのほのと あくるみなとに ちとりなくなり成保
429かたみにや うはけのしもを はらふらむ ともねのをしの もろこゑになく親房(源仲房男)
430みつとりを みつのうへとや よそにみむ われもうきたる よをすくしつつ紫式部
431みつとりの たまものとこの うきまくら ふかきおもひは たれかまされる匡房
432このころの をしのうきねそ あはれなる うはけのしもよ したのこほりよ崇徳院
433なにはかた いりえをめくる あしかもの たまものふねに うきねすらしも顕輔
434をしとりの うきねのとこや あれぬらむ つららゐにけり こやのいけみつ経房(藤原光房男)
435かものゐる いりえのあしは しもかれて おのれのみこそ あをはなりけれ道因
436おくしもを はらひかねてや しをれふす かつみかしたに をしのなくらむ重保
437あしかもの すたくいりえの つきかけは こほりそなみの かすにくたくる公光(藤原季成男)
438よをかさね むすふこほりの したにさへ こころふかくも やとるつきかな実重(平)
439いつくにか つきはひかりを ととむらむ やとりしみつも こほりゐにけり親宗(平時信男)
440ふゆくれは ゆくてにひとは くまねとも こほりそむすふ やまのゐのみつ成家
441つきのすむ そらにはくもも なかりけり うつりしみつは こほりへたてて道因
442つららゐて みかけるかけの みゆるかな まことにいまや たまかはのみつ崇徳院
443つきさゆる こほりのうへに あられふり こころくたくる たまかはのさと俊成(藤原俊忠男)
444さゆるよの まきのいたやの ひとりねに こころくたけと あられふるなり良経(九条兼実男)
445あさとあけて みるそさひしき かたをかの ならのひろはに ふれるしらゆき経信
446よをこめて たにのとほそに かせさむみ かねてそしるき みねのはつゆき崇徳院
447さえわたる よはのけしきに みやまへの ゆきのふかさを そらにしるかな季通(藤原宗通男)
448きゆるをや みやこのひとは をしむらむ けさやまさとに はらふしらゆき清輔
449しもかれの まかきのうちの ゆきみれは きくよりのちの はなもありけり資隆
450たとへても いはむかたなし つきかけに うすくもかけて ふれるしらゆき覚性法親王
451みやまちは かつふるゆきに うつもれて いかてかこまの あとをたつねむ教長
452おしなへて やまのしらゆき つもれとも しるきはこしの たかねなりけり通俊
453とやまには しはのしたはも ちりはてて をちのたかねに ゆきふりにけり顕綱
454ゆきふれは たにのかけはし うつもれて こすゑそふゆの やまちなりける俊頼(源経信男)
455ゆきつもる みねにふふきや わたるらむ こしのみそらに まよふしらくも二条院
456なみかけは みきはのゆきも きえなまし こころありても こほるいけかな守覚法親王
457やまさとの かきねはゆきに うつもれて のへとひとつに なりにけるかな実定
458あともたえ しをりもゆきに うつもれて かへるやまちに まとひぬるかな実房
459こえかねて いまそこしちを かへるやま ゆきふるときの なにこそありけれ頼政
460なみまより みえしけしきそ かはりぬる ゆきふりにけり まつかうらしま顕昭
461ふふきする なからのやまを みわたせは をのへをこゆる しかのうらなみ良清
462ふるゆきに のきはのたけも うつもれて ともこそなけれ ふゆのやまさと読人不知
463こまのあとは かつふるゆきに うつもれて おくるるひとや みちまとふらむ西住
464くれたけの をれふすおとの なかりせは よふかきゆきを いかてしらまし明兼
465ましはかる をののほそみち あとたえて ふかくもゆきの なりにけるかな為季(葉室為親男)
466ゆきふれは ききのこすゑに さきそむる えたよりほかの はなもちりけり俊恵
467ふるままに あとたえぬれは すすかやま ゆきこそせきの とさしなりけれ良通
468やまさとの かきねのうめは さきにけり かはかりこそは はるもにほはめ明快
469かきくらし こしちもみえす ふるゆきに いかてかとしの かへりゆくらむ実長
470さりともと なけきなけきて すくしつる としもこよひに くれはてにけり公光(藤原季成男)
471あはれにも くれゆくとしの ひかすかな かへらむことは よのまとおもふに相模
472かすならぬ みにはつもらぬ としならは けふのくれをも なけかさらまし広言
473をしめとも はかなくくれて ゆくとしの しのふむかしに かへらましかは光行
474ひととせは はかなきゆめの ここちして くれぬるけふそ おとろかれける俊宗
475みやこにて おくりむかふと いそきしを しりてやとしの けふはくれなむ親範(平範家男)
476むかしみし こころはかりを しるへにて おもひそおくる いきのまつはら実方
477わかれより まさりてをしき いのちかな きみにふたたひ あはむとおもへは公任
478なきよわる まかきのむしも とめかたき あきのわかれや かなしかるらむ紫式部
479かへりこむ ほともさためぬ わかれちは みやこのてふり おもひいてにせよ公実
480ゆくすゑを まつへきみこそ おいにけれ わかれはみちの とほきのみかは匡房
481わするなよ かへるやまちに あとたえて ひかすはゆきの ふりつもるとも俊頼(源経信男)
482かへりこむ ほとをはいつと いひおかし さためなきみは ひとたのめなり行尊
483たのむれと こころかはりて かへりこは これそやかての わかれなるへき顕輔
484かきりあらむ みちこそあらめ このよにて わかるへしとは おもはさりしを兵衛(上西門院)
485ゆくきみを ととめまほしく おもふかな われもこひしき みやこなれとも経衡
486としへたる ひとのこころを おもひやれ きみたにこふる はなのみやこを資通
487もろともに ゆくひともなき わかれちに なみたはかりそ とまらさりける道命
488なからへて あるへきみとし おもはねは わするなとたに えこそちきらね源心
489あはれとし おもはむひとは わかれしを こころはみより ほかのものかは読人不知
490わかれても おなしみやこに ありしかは いとこのたひの ここちやはせし和泉式部
491しのへとも このわかれちを おもふには からくれなゐの なみたこそふれ成尋母
492こころをも きみをもやとに ととめおきて なみたとともに いつるたひかな覚雅
493まてといひて たのめしあきも すきぬれは かへるやまちの なそかひもなき西住
494をしへおく かたみをふかく しのはなむ みはあをうみの なみになかれぬ入道前太政大臣
495あらすのみ なりゆくたひの わかれちに てなれしことの ねこそかはらね師長(藤原頼長男)
496わするなよ をはすてやまの つきみても みやこをいつる ありあけのそら頼実(藤原経宗男)
497わかれても こころへたつな たひころも いくへかさなる やまちなりとも定家
498ありあけの つきもしみつに やとりけり こよひはこえし あふさかのせき範永
499はりまちや すまのせきやの いたひさし つきもれとてや まはらなるらむ師俊
500あたらよを いせのはまをき をりしきて いもこひしらに みつるつきかな基俊
501なみのうへに ありあけのつきを みましやは すまのせきやに とまらさりせは国信
502よなよなの たひねのとこに かせさえて はつゆきふれる さやのなかやま実行
503みつのうへに うきねをしてそ おもひしる かかれはをしも なくにそありける和泉式部
504おもふこと なくてそみまし よさのうみの あまのはしたて みやこなりせは赤染衛門
505みやきひく あつさのそまを かきわけて なにはのうらを とほさかりぬる能因
506すみのえに まつらむとのみ なけきつつ こころつくしに としをふるかな有基
507わかれゆく みやこのかたの こひしきに いさむすひみむ わすれゐのみつ甲斐(前斎宮)
508さよふかき くもゐのかりも おとすなり われひとりやは たひのそらなる雅光
509かりころも そてのなみたに やとるよは つきもたひねの ここちこそすれ崇徳院
510まつかねの まくらもなにか あたならむ たまのゆかとて つねのとこかは崇徳院
511はなさきし のへのけしきも しもかれぬ これにてそしる たひのひかすは公能
512さらしなや をはすてやまに つきみると みやこにたれか われをしるらむ季通(藤原宗通男)
513みちすから こころもそらに なかめやる みやこのやまの くもかくれぬる堀河(待賢門院)
514ささのはを ゆふつゆなから をりしけは たまちるたひの くさまくらかな安芸(待賢門院)
515うらつたふ いそのとまやの かちまくら ききもならはぬ なみのおとかな俊成(藤原俊忠男)
516わたのはら はるかになみを へたてきて みやこにいてし つきをみるかな西行
517さためなき うきよのなかと しりぬれは いつこもたひの ここちこそすれ覚法法親王
518おほつかな いかになるみの はてならむ ゆくへもしらぬ たひのかなしさ師仲
519ひをへつつ ゆくにはるけき みちなれと すゑをみやこと おもはましかは修範
520かくはかり あはれならしを しくるとも いそのまつかね まくらならすは読人不知
521つきみれは まつみやここそ こひしけれ まつらむとおもふ ひとはなけれと道因
522あふさかの せきにはひとも なかりけり いはまのみつの もるにまかせて成仲
523こえてゆく ともやなからむ あふさかの せきのしみつの かけはなれなは定房(源雅定男)
524たひころも あさたつをのの つゆしけみ しほりもあへす しのふもちすり覚忠
525かせのおとに わきそかねまし まつかねの まくらにもらぬ しくれなりせは実房
526もしほくさ しきつのうらの ねさめには しくれにのみや そてはぬれける俊恵
527たまもふく いそやかしたに もるしくれ たひねのそても しほたれよとや仲綱
528くさまくら おなしたひねの そてにまた よはのしくれも やとはかりけり小侍従
529はるはると つもりのおきを こきゆけは きしのまつかせ とほさかるなり兼実
530わたのはら しほちはるかに みわたせは くもとなみとは ひとつなりけり頼輔
531あはれなる のしまかさきの いほりかな つゆおくそてに なみもかけけり俊成(藤原俊忠男)
532よしさらは いそのとまやに たひねせむ なみかけすとて ぬれぬそてかは守覚法親王
533たひのよに またたひねして くさまくら ゆめのうちにも ゆめをみるかな慈円
534くさまくら かりねのゆめに いくたひか なれしみやこに ゆきかへるらむ隆房
535いつもかく ありあけのつきの あけかたは ものやかなしき すまのせきもり兼覚
536たひねする すまのうらちの さよちとり こゑこそそての なみはかけけれ家隆
537かくしつつ つひにとまらむ よもきふの おもひしらるる くさまくらかな円玄
538たひねする このしたつゆの そてにまた しくれふるなり さよのなかやま覚弁
539たひねする いほりをすくる むらしくれ なこりまてこそ そてはぬれけれ資忠(藤原資信男)
540あられもる ふはのせきやに たひねして ゆめをもえこそ とほささりけれ親守/親宗(大中臣)
541かくはかり うきみのほとも わすられて なほこひしきは みやこなりけり康頼
542さつまかた おきのこしまに われありと おやにはつけよ やへのしほかせ康頼
543あつまちも としもすゑにや なりぬらむ ゆきふりにけり しらかはのせき印性
544いはねふみ みねのしひしは をりしきて くもにやとかる ゆふくれのそら寂蓮
545はるくれは ちりにしはなも さきにけり あはれわかれの かからましかは具平親王
546ゆきかへり はるやあはれと おもふらむ ちりにしひとの またもあはねは公任
547うゑおきし ひとのかたみと みぬたにも やとのさくらを たれかをしまぬ範永
548をしきかな かたみにきたる ふちころも たたこのころに くちはてぬへし和泉式部
549くちなしの そのにやわかみ いりにけむ おもふことをも いはてやみぬる道信
550おもひかね きのふのそらを なかむれは それかとみゆる くもたにもなし頼孝
551うつつとも ゆめともえこそ わきはてね いつれのときを いつれとかせむ花山院
552さくらはな みるにもかなし なかなかに ことしのはるは さかすそあらまし道済
553おくれしと おもへとしなぬ わかみかな ひとりやしらぬ みちをゆくらむ道命
554おいらくの いのちのあまり なかくして きみにふたたひ わかれぬるかな長能
555ひとこゑも きみにつけなむ ほとときす このさみたれは やみにまとふと上東門院
556あやめくさ なみたのたまに ぬきかへて をりならぬねを なほそかけつる弁乳母
557たまぬきし あやめのくさは ありなから よとのはあれむ ものとやはみし江侍従
558かなしさを かつはおもひも なくさめよ たれもつひには とまるへきかは大弐三位
559たれもみな とまるへきには あらねとも おくるるほとは なほそかなしき長家
560おほかたに さやけからぬか つきかけは なみたくもらぬ ひとにみせはや承香殿女御
561かなしさに そへてもものの かなしきは わかれのうちの わかれなりけり小弁命婦
562うきものの さすかにをしき ことしかな とほさかりなむ きみかわかれに宣旨(後一条院中宮)
563かなしさは いととそまさる わかれにし ことしもけふを かきりとおもへは長家
564いつかたの くもちとしらは たつねまし つらはなれけむ かりかゆくへを紫式部
565としをへて きみかみなれし ますかかみ むかしのかけは とまらさりけり道信
566つねよりも またぬれそひし たもとかな むかしをかけて おちしなみたに赤染衛門
567うつつとも おもひわかれて すくるまに みしよのゆめを なにかたりけむ上東門院
568みやこへと おもふにつけて かなしきは たれかはいまは われをまつらむ実基(源経房男)
569もろともに はるのはなをは みしものを ひとにおくるる あきそかなしき雅康
570はなとみし ひとはほとなく ちりにけり わかみもかせを まつとしらなむ匡房
571かわくよも なきすみそめの たもとかな くちなはなにを かたみにもせむ顕綱
572すみそめの たもとにかかる ねをみれは あやめもしらぬ なみたなりけり俊忠
573あやめくさ うきねをみても なみたのみ かからむそてを おもひこそやれ国信
574おもひやれ むなしきとこを うちはらひ むかしをしのふ そてのしつくを基俊
575むねにみつ おもひをたにも はるかさて けふりとならむ ことそかなしき苡子
576もろともに ありあけのつきを みしものを いかなるやみに きみまとふらむ有信
577うちならす かねのおとにや なかきよも あけぬなりとは おもひしるらむ慶範
578かきりありて ひとはかたかた わかるとも なみたをたにも ととめてしかな崇徳院
579ちりちりに わかるるけふの かなしさに なみたしもこそ とまらさりけれ兵衛(上西門院)
580かなしさを これよりけにや おもはまし かねてならはぬ わかれなりせは静厳
581すみそめの いろはいつれも かはらぬを ぬれぬやきみか ころもなるらむ勝範
582つねよりも むつましきかな ほとときす してのやまちの ともとおもへは鳥羽院
583こころさし ふかくそめてし ふちころも きつるひかすの あさくもあるかな雅通(源雅定男)
584たくひなく うきことみえし やとなれと そもわかるるは かなしかりけり伊通
585かそふれは むかしかたりに なりにけり わかれはいまの ここちすれとも有仁室
586たなはたに ことしはかさぬ しひしはの そてしもことに つゆけかりけり実家(藤原公能男)
587しひしはの つゆけきそては たなはたも かさぬにつけて あはれとやみむ三位
588ふるさとに けふこさりせは ほとときす たれとむかしを こひてなかまし覚性法親王
589つねにみし きみかみゆきを けふとへは かへらぬたひと きくそかなしき澄憲
590をしへおく そのことのはを みるたひに またとふかたの なきそかなしき実定
591とりへやま おもひやるこそ かなしけれ ひとりやこけの したにくちなむ成範
592かきりありて ふたへはきねは ふちころも なみたはかりを かさねつるかな貞憲
593みとせまて なれしはゆめの ここちして けふそうつつの わかれなりける季能/秀能
594いりぬるか あかぬわかれの かなしさを おもひしれとや やまのはのつき印性
595のへみれは むかしのあとや たれならむ そのよもしらぬ こけのしたかな修範
596なにことの ふかきおもひに いつみかは そこのたまもと しつみはてけむ範玄
597おもひきや けふうちならす かねのおとに つたへしふえの ねをそへむとは成清
598さきたたむ ことをうしとそ おもひしに おくれてもまた かなしかりけり静縁
599まつらむと おもははいかに いそかまし あとをみにたに まとふこころを親盛
600やまのはに たなひくくもや ゆくへなく なりしけふりの かたみなるらむ覚蓮
601としをへて むかしをしのふ こころのみ うきにつけても ふかくさのさと長真
602たらちめや とまりてわれを をしままし かはるにかはる いのちなりせは顕昭
603もろともに なかめなかめて あきのつき ひとりにならむ ことそかなしき西行
604みたれすと をはりきくこそ うれしけれ さてもわかれは なくさまねとも寂然
605このよにて またあふましき かなしさに すすめしひとそ こころみたれし西行
606いくちよと かきらさりける くれたけや きみかよはひの たくひなるらむ後白河院
607うゑてみる まかきのたけの ふしことに こもれるちよは きみそかそへむ公教
608わかともと きみかみかきの くれたけは ちよにいくよの かけをそふらむ俊成(藤原俊忠男)
609きみかよは あまのかこやま いつるひの てらむかきりは つきしとそおもふ伊通
610きみかため みたらしかはを わかみつに むすふやちよの はしめなるらむ俊頼(源経信男)
611ちとせまて をりてみるへき さくらはな こすゑはるかに さきそめにけり堀河院
612ほりうゑし わかきのうめに さくはなは としもかきらぬ にほひなりけり忠教(藤原師実男)
613ちとせすむ いけのみきはの やへさくら かけさへそこに かさねてそみる俊忠
614かみよより ひさしかれとや うこきなき いはねにまつの たねをまきけむ俊頼(源経信男)
615おちたきつ やそうちかはの はやきせに いはこすなみは ちよのかすかも俊頼(源経信男)
616ちはやふる いつきのみやの ありすかは まつとともにそ かけはすむへき師実
617ゆくすゑを まつそひさしき きみかへむ ちよのはしめの ねのひとおもへは肥後(京極前関白家)
618おくやまの やつをのつはき きみかよに いくたひかけを かへむとすらむ基俊
619きみかよを なかつきにしも しらきくの さくやちとせの しるしなるらむ忠通
620やへきくの にほひにしるし きみかよは ちとせのあきを かさぬへしとは有仁
621ちはやふる かみよのことも ひとならは とはましものを しらきくのはな実行
622ふくかせも ききのえたをは ならさねと やまはやちよの こゑそきこゆる崇徳院
623ちよふへき はしめのはると しりかほに けしきことなる はなさくらかな経宗
624しらくもに はねうちつけて とふたつの はるかにちよの おもほゆるかな二条院
625うこきなく なほよろつよそ たのむへき はこやのやまの みねのまつかけ式子内親王
626ももちたひ うらしまのこは かへるとも はこやのやまは ときはなるへし俊成(藤原俊忠男)
627いくちよと かきらぬたつの こゑすなり くもゐのちかき やとのしるしに公能
628ちとせふる をのへのこまつ うつしうゑて よろつよまての ともとこそみめ基房(藤原忠通男)
629よろつよも すむへきやとに うゑつれは まつこそきみか かけをたのまめ通能
630ふえのねの よろつよまてと きこえしを やまもこたふる ここちせしかな実定
631むれてゐる たつのけしきに しるきかな ちとせすむへき やとのいけみつ顕季
632みつかきの かつらをうつす やとなれは つきみむことそ ひさしかるへき成助
633きみかよに くらへていはは まつやまの まつのはかすは すくなかりけり孝善
634ちよとのみ おなしことをそ しらふなる なかたのやまの みねのまつかせ為政(善滋保章男)
635ちはやふる かみたのさとの いねなれは つきひとともに ひさしかるへし匡房
636すめらきの すゑさかゆへき しるしには こたかくそなる わかまつのもり永範
637きみかよの かすにはしかし かきりなき ちさかのうらの まさこなりとも俊綱(橘)
638あめつちの きはめもしらぬ みよなれは くもたのむらの いねをこそつけ範兼
639しもふれと さかえこそませ きみかよに あふさかやまの せきのすきもり永範
640ときはなる みかみのやまの すきむらや やほよろつよの しるしなるらむ季経
641なにはえの もにうつもるる たまかしは あらはれてたに ひとをこひはや俊頼(源経信男)
642またしらぬ ひとをはしめて こふるかな おもぬこころよ みちしるへせよ肥後(京極前関白家)
643わりなしや おもふこころの いろならは これそそれとも いはましものを河内(前斎宮)
644おもふより いつしかぬるる たもとかな なみたそこひの しるへなりける筑前(後二条関白家)
645もくつひの いそまをわくる いさりふね ほのかなりしに おもひそめてき長能
646いかにせむ おもひをひとに そめなから いろにいてしと しのふこころを輔仁親王
647ひとめみし ひとはたれとも しらくもの うはのそらなる こひもするかな実能
648つつめとも なみたにそての あらはれて こひすとひとに しられぬるかな雅定
649つつめとも たへぬおもひに なりぬれは とはすかたりの せまほしきかな成通
650おほかたの こひするひとに ききなれて よのつねのとや きみおもふらむ公能
651おもへとも いはてのやまに としをへて くちやはてなむ たにのうもれき顕輔
652たかさこの をのへのまつに ふくかせの おとにのみやは ききわたるへき顕輔
653あらいその いはにくたくる なみなれや つれなきひとに かくるこころは堀河(待賢門院)
654いはまゆく やましたみつを せきわひて もらすこころの ほとをしらなむ兵衛(上西門院)
655みこもりに いはてふるやの しのふくさ しのふとたにも しらせてしかな基俊
656おもふこと いはまにまきし まつのたね ちよとちきらむ いまはねさせよ長能
657おほつかな うるまのしまの ひとなれや わかことのはを しらぬかほなる公任
658ひとしれす ものおもふころの そてみれは あめもなみたも わかれさりけり頼宗
659たちしより はれすもものを おもふかな なきなやのへの かすみなるらむ俊頼(源経信男)
660なけきあまり しらせそめつる ことのはも おもふはかりは いはれさりけり明賢
661ひとしれぬ このはのしたの うもれみつ おもふこころを かきなかさはや実定
662こひしとも いはぬにぬるる たもとかな こころをしるは なみたなりけり雅通(源雅定男)
663おもへとも いはてしのふの すりころも こころのうちに みたれぬるかな頼政
664みちのくの しのふもちすり しのひつつ いろにはいてし みたれもそする寂然
665なにはめの すくもたくひの したこかれ うへはつれなき わかみなりけり清輔
666こひしなは よのはかなきに いひおきて なきあとまても ひとにしられし頼輔
667ひとしれぬ なみたのかはの みなかみや いはてのやまの たにのしたみつ顕昭
668いかにせむ みかきかはらに つむせりの ねにのみなけと しるひとのなき読人不知
669つれもなき ひとのこころや あふさかの せきちへたつる かすみなるらむ重保
670なみたかは うきねのとりと なりぬれと ひとにはえこそ みなれさりけれ清輔
671わかこひは をはなふきこす あきかせの おとにはたてし みにはしむとも通能
672よをいとふ はしとおもひし かよひちに あやなくひとを こひわたるかな仁昭
673たよりあらは あまのつりふね ことつてむ ひとをみるめに もとめわひぬる有仁
674またもなく たたひとすちに きみおもふ こひちにまとふ われやなになる伊通
675きみこふる みはおほそらに あらねとも つきひをおほく すくしつるかな伊房
676ことのねに かよひそめぬる こころかな まつふくかせに あらぬみなれと二条院
677はかなしや まくらさためぬ うたたねに ほのかにまよふ ゆめのかよひち式子内親王
678さきにたつ なみたとならは ひとしれす こひちにまとふ みちしるへせよ実定
679なからへは つらきこころも かはるやと さためなきよを たのむはかりそ頼輔
680もらさはや しのひはつへき なみたかは そてのしからみ かくとはかりは有房(源顕仲男)
681こひしさを うきみなりとて つつみしは いつまてありし こころなるらむ師光(源師頼男)
682たのめとや いなとやいかに いなふねの しはしとまちし ほともへにけり惟規
683かくはかり いろにいてしと しのへとも みゆらむものを たへぬけしきは賢智
684ひとしれす おもふこころは ふかみくさ はなさきてこそ いろにいてけれ重保
685ひをへつつ しけさはまさる おもひくさ あふことのはの なとなかるらむ国光
686おつれとも のきにしられぬ たまみつは こひのなかめの しつくなりけり清文
687ひとしれす おもひそめてし こころこそ いまはなみたの いろとなりけれ季貞
688いろみえぬ こころのほとを しらするは たもとをそむる なみたなりけり祐盛
689わかとこは しのふのおくの ますけはら つゆかかりても しるひとのなき定雅(大中臣雅光男)
690きみこふる なみたしくれと ふりぬれは しのふのやまも いろつきにけり成仲
691いかにせむ しのふのやまの したもみち しくるるままに いろのまさるを常陸(二条院前皇后宮)
692いつしかと そてにしくれの そそくかな おもひはふゆの はしめならねと重延
693あさましや おさふるそての したくくる なみたのすゑを ひとやみつらむ頼政
694しのひねの たもとはいろに いてにけり こころにもにぬ わかなみたかな別当(皇嘉門院)
695おなしくは かさねてしほれ ぬれころも さてもほすへき なきなならしを隆房
696なかれても すすきやすると ぬれころも ひとはきすとも みにはならさし読人不知
697ひとめをは つつむとおもふに せきかねて そてにあまるは なみたなりけり宗家
698つれなさに いはてたえなむと おもふこそ あひみぬさきの わかれなりけれ季能
699よそひとに とはれぬるかな きみにこそ みせはやとおもふ そてのしつくを実快
700つれなくそ ゆめにもみゆる さよころも うらみむとては かへしやはせし伊綱(藤原家基男)
701おもひいつる そのなくさめも ありなまし あひみてのちの つらさなりせは季経
702ともしする はやまかすその したつゆや いるよりそては かくしをるらむ俊成(藤原俊忠男)
703いかにせむ むろのやしまに やともかな こひのけふりを そらにまかへむ俊成(藤原俊忠男)
704おもひあまり ひとにとははや みなせかは むすはぬみつに そてはぬるやと公実
705はかなくも ひとにこころを つくすかな みのためにこそ おもひそめしか有仁
706こひそめし ひとはかくこそ つれなけれ わかなみたしも いろかはるらむ大弐(二条太皇太后宮)
707かかりける なみたとひとも みるはかり しほらしそてよ くちはてねたた雅兼
708うかりける ひとをはつせの やまおろしよ はけしかれとは いのらぬものを俊頼(源経信男)
709うれしくは のちのこころを かみもきけ ひくしめなはの たえしとそおもふ顕季
710むすひおく ふしみのさとの くさまくら とけてやみぬる たひにもあるかな顕仲(藤原資仲男)
711こひこひて かひもなきさに おきつなみ よせてはやかて たちかへれとや俊忠
712いかてわれ つれなきひとに みをかへて こひしきほとを おもひしらせむ実能
713たまもかる のしまのうらの あまたにも いとかくそては ぬるるものかは雅光
714あふことを そのとしつきと ちきらねは いのちやこひの かきりなるらむ重基(藤原有佐男)
715こひわたる なみたのかはに みをなけむ このよならても あふせありやと宗兼(藤原隆宗男)
716みちのくの とつなのはしに くるつなの たえすもひとに いひわたるかな親隆
717こひわたる けふのなみたに くらふれは きのふのそては ぬれしものかは後白河院
718あさまたき つゆをさなから ささめかる しつかそてたに かくはぬれしを実定
719しほたるる いせをのあまや われならむ さらはみるめを かるよしもかな実国
720よしさらは あふとみつるに なくさまむ さむるうつつも ゆめならぬかは実家(藤原公能男)
721いかはかり おもふとしりて つらからむ あはれなみたの いろをみせはや頼実(藤原経宗男)
722こひしなむ いのちをたれに ゆつりおきて つれなきひとの はてをみせまし俊恵
723せきかぬる なみたのかはの はやきせは あふよりほかの しからみそなき頼政
724わかこひは としふるかひも なかりけり うらやましきは うちのはしもり顕方
725なれてのち しなむわかれの かなしきに いのちにかへぬ あふこともかな道因
726にしききの ちつかにかきり なかりせは なほこりすまに たてましものを重保
727いかはかり こひちはとほき ものなれは としはゆけとも あふよなからむ教長
728なれてのち つらからましに くらふれは なきなはことの かすならぬかな越後(三宮家)
729あひみむと おもひなよりそ しらなみの たちけむなたに をしきみきはを三河(法性寺入道前関白家)
730こひしなむ みはをしからす あふことに かへむほとまてと おもふはかりそ道因
731いまはさは あひみむまては かたくとも いのちとならむ ことのはもかな顕輔
732ひとかたに なひくもしほの けふりかな つれなきひとの かからましかは忠盛
733こひわひぬ ちぬのますらを ならなくに いくたのかはに みをやなけまし道経
734いのちをは あふにかへむと おもひしを こひしぬとたに しらせてしかな寂超
735こひしとも またつらしとも おもひやる こころいつれか さきにたつらむ師光(源師頼男)
736あふならぬ こひなくさめの あらはこそ つれなしとても おもひたえなめ道因
737つれなさに いまはおもひも たえなまし このよひとつの ちきりなりせは顕昭
738うたたねの ゆめにあひみて のちよりは ひともたのめぬ くれそまたるる源慶
739あはれとも まくらはかりや おもふらむ なみたたえせぬ よはのけしきを朝恵
740ころもてに おつるなみたの いろなくは つゆともひとに いはましものを三河内侍(二条院)
741おもふこと しのふにいとと そふものは かすならぬみの なけきなりけり大輔(殷富門院)
742ゆきかへる こころにひとの なるれはや あひみぬさきに こひしかるらむ兼実
743あふことを さりともとのみ おもふかな ふしみのさとの なをたのみつつ家通
744なとやかく さもくれかたき おほそらそ わかまつことは ありとしらすや二条院
745そてのいろは ひとのとふまて なりもせよ ふかきおもひを きみしたのまは式子内親王
746あきはをし ちきりはまたる とにかくに こころにかかる くれのそらかな良経(九条兼実男)
747こひをのみ しくるるそらの うきくもは くもりもあへす そてぬらしけり成家
748いそかくれ かきはやれとも もしほくさ たちくるなみに あらはれやせむ家実
749くれにとも ちきりてたれか かへるらむ おもひたえたる あけほののそら家隆
750ちきりおく そのことのはに みをかへて のちのよにたに あひみてしかな読人不知
751たれゆゑか あくかれにけむ くもまより みしつきかけは ひとりならしを尾張(殷富門院)
752こえやらて こひちにまよふ あふさかや よをいてはてぬ せきとなるらむ家基(藤原家光男)
753たまくらの うへにみたるる あさねかみ したにとけすと ひとはしらしな西住
754わかそての しほのみちひる うらならは なみたのよらぬ をりもあらまし頼政
755しほたるる そてのひるまは ありやとも あはてのうらの あまにとははや静賢
756おもひきや ゆめをこのよの ちきりにて さむるわかれを なけくへしとは俊恵
757われゆゑの なみたとこれを よそにみは あはれなるへき そてのうへかな隆信
758あふことの かくかたけれは つれもなき ひとのこころや いはきなるらむ政平
759こひしなむ なみたのはてや わたりかは ふかきなかれと ならむとすらむ光行
760わかそては しほひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまそなき讃岐(二条院)
761かかりける なけきはなにの むくひそと しるひとあらは とはましものを成範
762こひしなむ ことそはかなき わたりかは あふせありとは きかぬものゆゑ重家
763いもかあたり なかるるかはの せによらは あわとなりても きえむとそおもふ範兼
764はかなしな こころつくしに としをへて いつともしらぬ あふのまつはら経房(藤原光房男)
765おもひねの ゆめたにみえて あけぬれは あはてもとりの ねこそつらけれ寂蓮
766よもすから ものおもふころは あけやらぬ ねやのひまさへ つれなかりけり俊恵
767いたつらに しをるるそてを あさつゆに かへるたもとと おもはましかは俊恵
768こひゆゑは さもあらぬひとそ うらめしき われよそならは とはましものを是忠(菅原)
769おもひせく こころのうちの しからみも たへすなりゆく なみたかはかな親盛
770おのつから つらきこころも かはるやと まちみむほとの いのちともかな静縁
771わすらるる うきなはさても たちにけり こころのうちは おもひわけとも維順女
772よとともに つれなきひとを こひくさの つゆこほれます あきのゆふかせ顕家
773こひしさを いかかはすへき おもへとも みはかすならす ひとはつれなし師光(源師頼男)
774こひしなは われゆゑとたに おもひいてよ さこそはつらき こころなりとも実国
775ひたすらに うらみしもせし さきのよに あふまてこそは ちきらさりけめ家通
776ますかかみ こころもうつる ものならは さりともいまは あはれとやみむ公衡(藤原公能男)
777いましはし そらたのめにも なくさめて おもひたえぬる よひのたまつさ通親
778そまかはの あさからすこそ ちきりしか なとこのくれを ひきたかふらむ盛方
779おもひきや しちのはしかき かきつめて ももよもおなし まろねせむとは俊成(藤原俊忠男)
780ちきりこし ことのたかふそ たのもしき つらさもかくや かはるとおもへは実方
781しらしかし おもひもいてぬ こころには かくわすられす われなけくとも相模
782つれもなく なりぬるひとの たまつさを うきおもひての かたみともせし長能
783やはらかに ぬるよもなくて わかれぬる よよのたまくら いつかわすれむ長能
784たなはたに かしつとおもひし あふことを そのよなきなの たちにけるかな左近(三条院女蔵人)
785うらめしや むすほほれたる したひもの とけぬやなにの こころなるらむ頼通
786したひもは ひとのこふるに とくなれは たかつらきにか むすほほるらむ弁乳母
787ひとりぬる われにてしりぬ いけみつに つかはぬをしの おもふこころを公実
788こひをのみ しつのをたまき くるしきは あはてとしふる おもひなりけり師時
789あさてほす あつまをとめの かやむしろ しきしのひても すくすころかな俊頼(源経信男)
790よとともに ゆくかたもなき こころかな こひはみちなき ものにそありける顕季
791たひころも なみたのいろの しるけれは つゆにもえこそ かこたさりけり覚雅
792みつしほに すゑはをあらふ なかれあしの きみをそおもふ うきみしつみみ公実
793わかこひは あまのかるもに みたれつつ かわくときなき なみのしたくさ俊忠
794なほさりに みわのすきとは をしへおきて たつぬるときは あはぬきみかな時昌
795たのめこし のへのみちしは なつふかし いつくなるらむ もすのくさくき俊成(藤原俊忠男)
796ふゆのひを はるよりなかく なすものは こひつつくらす こころなりけり忠通
797よろつよを ちきりそめつる しるしには かつかつけふの くれそひさしき後白河院
798けさとはぬ つらさにものは おもひしれ われもさこそは うらみかねしか後白河院
799かねてより おもひしことそ ふししはの こるはかりなる なけきせむとは加賀(待賢門院)
800こひしさは あふをかきりと ききしかと さてしもいとと おもひそひけり教長
801よそにして もときしひとに いつしかと そてのしつくを とはるへきかな顕輔
802なかからむ こころもしらす くろかみの みたれてけさは ものをこそおもへ堀河(待賢門院)
803よひのまも まつにこころや なくさむと いまこむとたに たのめおかなむ兵衛(上西門院)
804そなれきの そなれそなれて ふすこけの まほならすとも あひみてしかな安芸(待賢門院)
805ひとはいさ あかぬよとこに ととめつる わかこころこそ われをまつらめ頼政
806おもへたた いりやらさりし ありあけの つきよりさきに いてしこころを通親
807なにはえの あしのかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや こひわたるへき別当(皇嘉門院)
808こひこひて あふうれしさを つつむへき そてはなみたに くちはてにけり公衡(藤原公能男)
809きみやそれ ありしつらさは たれなれは うらみけるさへ いまはくやしき隆信
810すかたこそ ねさめのとこに みえすとも ちきりしことの うつつなりせは俊憲
811あつまやの あさきのはしら われなから いつふしなれて こひしかるらむ新肥前(前斎院)
812つつめとも まくらはこひを しりぬらむ なみたかからぬ よはしなけれは雅通(源雅定男)
813こひすれは もゆるほたるも なくせみも わかみのほかの ものとやはみる雅頼
814ひきかけて なみたをひとに つつむまに うらやくちなむ よはのころもは実定
815しほたるる いせをのあまの そてたにも ほすなるひまは ありとこそきけ親隆
816しはしこそ ぬるるたもとも しほりしか なみたにいまは まかせてそみる清輔
817よしさらは なみたにくちね からころも ほすもひとめを しのふかきりそ顕昭
818おもひわひ さてもいのちは あるものを うきにたへぬは なみたなりけり道因
819かすならぬ みにもこころの ありかほに ひとりもつきを なかめつるかな戸戸
820なみたにや くちはてなまし からころも そてのひるまと たのめさりせは清重
821かれはつる をささかふしを おもふにも すくなかりける よよのかすかな成親
822わけきつる をささかつゆの しけけれは あふみちにさへ ぬるるそてかな伊経
823おきてゆく なみたのかかる くさまくら つゆしけしとや ひとのあやめむ読人不知
824なみたをも しのふるころの わかそてに あやなくつきの やとりぬるかな読人不知
825しのひかね いまはわれとや なのらまし おもひすつへき けしきならねは良通
826しられても いとはれぬへき みならすは なをさへひとに つつむへしやは良経(九条兼実男)
827いつくより ふきくるかせの ちらしけむ たれもしのふの もりのことのは隆房
828おもひかね ゆめにみゆやと かへさすは うらさへそては ぬらささらまし頼政
829くりかへし くやしきものは きみにしも おもひよりけむ しつのをたまき師光(源師頼男)
830いとはるる みをうしとてや こころさへ われをはなれて きみにそふらむ隆親(藤原隆教男)
831あちきなく いはてこころを つくすかな つつむひとめも ひとのためかは光行
832くれなゐに しをれしそても くちはてぬ あらはやひとに いろもみすへき若水(皇太后宮)
833いのちこそ おのかものから うかりけれ あれはそひとを つらしともみる尾張(皇嘉門院)
834なにとかや しのふにはあらて ふるさとの のきはにしける くさのなそうき忠良
835みしゆめの さめぬやかての うつつにて けふとたのめし くれをまたはや小侍従(太皇太后宮)
836しるらめや おつるなみたの つゆともに わかれのとこに きえてこふとは二条院
837またしらぬ つゆおくそてを おもひやれ かことはかりの とこのなみたに読人不知
838かへりつる なこりのそらを なかむれは なくさめかたき ありあけのつき兼実
839わするなよ よよのちきりを すかはらや ふしみのさとの ありあけのそら俊成(藤原俊忠男)
840いかにして よるのこころを なくさめむ ひるはなかめに さてもくらしつ和泉式部
841これもみな さそなむかしの ちきりそと おもふものから あさましきかな和泉式部
842よそにては なかなかさても ありにしを うたてものおもふ きのふけふかな花山院
843おもひいてて たれをかひとの たつねまし うきにたへたる いのちならすは小式部
844まつとても かはかりこそは あらましか おもひもかけぬ あきのゆふくれ和泉式部
845ほとふれは ひとはわすれて やみぬらむ ちきりしことを なほたのむかな和泉式部
846たけのはに たまぬくつゆに あらねとも またよをこめて おきにけるかな実方
847このまより ひれふるそてを よそにみて いかかはすへき まつらさよひめ基俊
848まふしさす しつをのみにも たへかねて はとふくあきの こゑたてつなり仲実
849ふくかせに たへぬこすゑの はなよりも ととめかたきは なみたなりけり雅光
850あひみむと いひわたりしは ゆくすゑの ものおもふことの はしにそありける成通
851こひわひて あはれとはかり うちなけく ことよりほかの なくさめそなき伊与三位
852たちかへる ひとをもなにか うらみまし こひしさをたに ととめさりせは師時
853うつらなく しつやにおふる たまこすけ かりにのみきて かへるきみかな道経
854わかれては かたみなりける たまつさを なくさむはかり かきもおかせて雅通(源雅定男)
855わかそての なみたやにほの うみならむ かりにもひとを みるめなけれは兵衛(上西門院)
856あつまやの をかやののきの しのふくさ しのひもあへす しけるおもひに親隆
857こひをのみ しかまのいちに たつたみの たえぬおもひに みをやかへてむ俊成(藤原俊忠男)
858こひをのみ すかたのいけに みくさゐて すまてやみなむ なこそをしけれ安芸(待賢門院)
859つゆふかき あさまののらに をかやかる しつのたもとも かくはぬれしを清輔
860あふことは いなさほそえの みをつくし ふかきしるしも なきよなりけり清輔
861ひとつては さしもやはとも おもふらむ みせはやきみに なれるすかたを顕昭
862あさましや さのみはいかに しなのなる きそちのはしの かけわたるらむ実重(平昌隆男)
863ひとのうへと おもははいかに もとかまし つらきもしらす こふるこころを実重(平昌隆男)
864ちきりしも もろともにこそ ちきりしか わすれはわれも わすれましかは為通(藤原伊通男)
865きみにのみ したのおもひは かはしまの みつのこころは あさからなくに季行
866おもひきや としのつもるは わすられて こひにいのちの たへむものとは後白河院
867なけきあまり うきみそいまは なつかしき きみゆゑものを おもふとおもへは季通(藤原宗通男)
868みつくきは これをかきりと かきつめて せきあへぬものは なみたなりけり頼政
869たれもよも またききそめし うくひすの きみにのみこそ おとしはしむれ二条院
870うくひすは なへてみやこに なれぬらむ ふるすにねをは われのみそなく読人不知
871みせはやな つゆのゆかりの たまかつら こころにかけて しのふけしきを読人不知
872あふさかの なをわすれにし なかなれと せきやられぬは なみたなりけり読人不知
873つきまつと ひとにはいひて なかむれは なくさめかたき ゆふくれのそら範兼
874あしのやの かりそめふしは つのくにの なからへゆけと わすれさりけり為真/為実
875しらさりき くもゐのよそに みしつきの かけをたもとに やとすへしとは西行
876あふとみし そのよのゆめの さめてあれな なかきねふりは うかるへけれと西行
877あきかせの うきひとよりも つらきかな こひせよとては ふかさらめとも空人
878こころさへ われにもあらす なりにけり こひはすかたの かはるのみかは仲綱
879まちかねて さよもふけひの うらかせに たのめぬなみの おとのみそする三河内侍(二条院)
880ひとよとて よかれしとこの さむしろに やかてもちりの つもりぬるかな讃岐(二条院)
881なからへて かはるこころを みるよりも あふにいのちを かへてましかは兼実
882あふことの ありしところし かはらすは こころをたにも やらましものを雅頼
883うつりかに なにしみにけむ さよころも わすれぬつまと なりけるものを経房(藤原光房男)
884わすれぬや しのふやいかに あはぬまの かたみとききし あけくれのそら忠良
885おもひかね なほこひちにそ かへりぬる うらみはすゑも とほらさりけり俊恵
886みせはやな をしまのあまの そてたにも ぬれにそぬれし いろはかはらす大輔(殷富門院)
887やましろの みつののさとに いもをおきて いくたひよとに ふねよはふらむ頼政
888ひとしれす むすひそめてし わかくさの はなのさかりも すきやしぬらむ隆信
889いかなれは なかれはたえぬ なかかはに あふせのかすの すくなかるらむ顕家
890すみなれし さののなかかは せたえして なかれかはるは なみたなりけり仲綱
891いまさらに こひしといふも たのまれす これもこころの かはるとおもへは讃岐(二条院)
892こひそめし こころのいろの なになれは おもひかへすに かへらさるらむ小侍従(太皇太后宮)
893いせしまや いちしのうらの あまたにも かつかぬそては ぬるるものかは道因
894おもひきや うかりしよはの とりのねを まつことにして あかすへしとは俊恵
895からころも かへしてはねし なつのよは ゆめにもあかて ひとわかれけり俊恵
896みのうさを おもひしらてや やみなまし あひみぬさきの つらさなりせは静賢
897あふことは みをかへてとも まつへきを よよをへたてむ ほとそかなしき俊成(藤原俊忠男)
898おもひねの ゆめになくさむ こひなれは あはねとくれの そらそまたるる丹後(宜秋門院)
899こひわひて うちぬるよひの ゆめにたに あふとはひとの みえはこそあらめ成範
900わひつつは なれたにきみに とこなれよ かはさぬよはの まくらなりとも実家(藤原公能男)
901なけきつつ かはさぬよはの つもるには まくらもうとく ならぬものかは読人不知
902これはみな おもひしことそ なれしより あはれなこりを いかにせむとは忠良
903しぬとても こころをわくる ものならは きみにのこして なほやこひまし通親
904うたたねに はかなくさめし ゆめをたに このよにまたは みてややみなむ相模
905ねをなけは そてはくちても うせぬめり なほうきことそ つきせさりける和泉式部
906ともかくも いははなへてに なりぬへし ねになきてこそ みすへかりけれ和泉式部
907ありあけの つきみすひまに おきていにし ひとのなこりを なかめしものを和泉式部
908わするるは うきよのつねと おもふにも みをやるかたの なきそわひぬる紫式部
909ちはやふる かものやしろの かみもきけ きみわすれすは われもわすれし馬内侍
910うたかひし いのちはかりは ありなから ちきりしなかの たえぬへきかな大弐三位
911かりひとは とかめもやせむ くさしけみ あやしきとりの あとのみたれを相模
912やまよりも ふかきところを たつねみは わかこころにそ ひとはいるへき斉信
913いにしへも こえみてしかは あふさかは ふみたかふへき なかのみちかは経衡
914かりにそと いはぬさきより たのまれす たちとまるへき こころならねは赤染衛門
915ひとこころ なにをたのみて みなせかは せせのふるくひ くちはてぬらむ基俊
916うらみすは わすれぬひとも ありなまし おもひしらてそ あるへかりける隆源(藤原通宗男)
917まことにや みとせもまたて やましろの ふしみのさとに にひまくらする雅定
918うきひとを しのふへしとは おもひきや わかこころさへ なとかはるらむ堀河(待賢門院)
919うかりける よよのちきりを おもふにも つらきはいまの こころのみかは兵衛(上西門院)
920しるなれは いかにまくらの おもふらむ ちりのみつもる とこのけしきを親隆
921はかなくも こむよをかねて ちきるかな ふたたひおなし みともならしを実定
922おもひいてよ ゆふへのくもも たなひかは これやなけきに たへぬけふりと忠良
923こひしなは うかれむたまよ しはしたに わかおもふひとの つまにととまれ隆房
924きみこふと うきぬるたまの さよふけて いかなるつまに むすはれぬらむ小侍従(太皇太后宮)
925きみこふる こころのやみを わひつつは このよはかりと おもはましかは讃岐(二条院)
926かはりゆく けしきをみても いけるみの いのちをあたに おもひけるかな大輔(殷富門院)
927きみやあらぬ わかみやあらぬ おほつかな たのめしことの みなかはりぬる俊恵
928ものおもへとも かからぬひとも あるものを あはれなりける みのちきりかな西行
929なけけとて つきやはものを おもはする かこちかほなる わかなみたかな西行
930ひさかたの つきゆゑにやは こひそめし なかむれはまつ ぬるるそてかな寂超
931つらしとも うらむるかたそ なかりける うきをいとふは きみひとりかは祐盛
932おもひしる こころのなきを なけくかな うきみゆゑこそ ひともつらけれ隆親(藤原隆教男)
933おもふをも わするるひとは さもあらはあれ うきをしのはぬ こころともかな有房(源顕仲男)
934はかなくそ のちのよまてと ちきりける またきにたにも かはるこころを広言
935いとはるる そのゆかりにて いかなれは こひはわかみを はなれさるらむ仲頼
936おもひあまり うちぬるよひの まほろしも なみちをわけて ゆきかよひけり長明
937としふれと うきみはさらに かはらしを つらさもおなし つらさなるらむ中将(土御門前斎院)
938なけくまに かかみのかけも おとろへぬ ちきりしことの かはるのみかは崇徳院
939としふれと あはれにたへぬ なみたかな こひしきひとの かからましかは顕輔
940いまはたた おさふるそても くちはてて こころのままに おつるなみたか季通(藤原宗通男)
941おくやまの いはかきぬまの うきぬなは ふかきこひちに なにみたれけむ俊成(藤原俊忠男)
942しきしのふ とこたにたへぬ なみたにも こひはくちせぬ ものにそありける俊成(藤原俊忠男)
943あさゆふに みるめをかつく あまたにも うらみはたえぬ ものとこそきけ清輔
944なにせむに そらたのめとて うらみけむ おもひたえたる くれもありけり兵衛(上西門院)
945なほさりの そらたのめとて まちしよの くるしかりしそ いまはこひしき大輔(殷富門院)
946をしみかね けにしひしらぬ わかれかな つきもいまはの ありあけのそら兼実
947こひわふる こころはそらに うきぬれと なみたのそこに みはしつむかな実房
948おもひかね こゆるせきちに よをふかみ やこゑのとりに ねをそそへつる雅頼
949よにしらぬ あきのわかれに うちそへて ひとやりならす ものそかなしき通親
950ちきりしに あらすなるとの はまちとり あとたにみせぬ うらみをそする経家(六条重家男)
951しかはかり ちきりしなかも かはりける このよにひとを たのみけるかな定家
952あきのよを ものおもふことの かきりとは ひとりねさめの まくらにそしる顕昭
953よしさらは きみにこころは つくしてむ またもこひしき ひともこそあれ教長
954なきひとを おもひいてたる ゆふくれは うらみしことそ くやしかりける覚性法親王
955これをみよ むつたのよとに さてさして しをれししつの あさころもかは俊頼(源経信男)
956ささめかる あれたのさはに たつたみも みのためにこそ そてもぬるらめ俊頼(源経信男)
957ささのはに あられふるよの さむけきに ひとりはねなむ ものとやはおもふ馬内侍
958うらむへき こころはかりは あるものを なきになしても とはぬきみかな和泉式部
959かそへしる ひとなかりせは おくやまの たにのまつとや としをつままし道長
960ふえたけの よふかきこゑそ きこゆなる みねのまつかせ ふきやそふらむ斉信
961うはこほり あはにむすへる ひもなれは かさすひかけに ゆるむはかりそ清少納言
962たかさとの はるのたよりに うくひすの かすみにとつる やとをとふらむ紫式部
963いもとねて おきゆくあさの みちよりも なかなかものの おもはしきかな道信
964はるのよの ゆめはかりなる たまくらに かひなくたたむ なこそをしけれ周防内侍
965ちきりありて はるのよふかき たまくらを いかかかひなき ゆめになすへき忠家(藤原長家男)
966いかにして すきにしかたを すくしけむ くらしわつらふ きのふけふかな一条院皇后宮
967くものうへも くらしかねける はるのひを ところからとも なかめつるかな清少納言
968あひみむと おもひしことを たかふれは つらきかたにも さためつるかな選子内親王
969みそきせし かものかはなみ たちかへり はやくみしせに そてはぬれきや中将(選子内親王家)
970ちはやふる いつきのみやの たひねには あふひそくさの まくらなりけり実方
971かをるかに よそふるよりは ほとときす きかはやおなし こゑやしたると和泉式部
972きのふまて みたらしかはに せしみそき しかのうらなみ たちそかはれる実行
973みたらしや かけたえはつる ここちして しかのなみちに そてそぬれこし式子内親王
974やとせまて てならしたりし あつさゆみ かへるをみるに ねそなかれける伊通
975なにかそれ おもひすつへき あつさゆみ またひきかへす ときもありなむ雅定
976きのふみし しのふもちすり たれならむ こころのほとそ かきりしられぬ顕輔
977つゆしけき よもきかなかの むしのねを おほろけにてや ひとのたつねむ紫式部
978ひとしれぬ おほうちやまの やまもりは こかくれてのみ つきをみるかな頼政
979あきをへて ひかりをませと おもひしに おもはぬつきの かけにもあるかな実綱(藤原公教男)
980とふひとに おもひよそへて みるつきの くもるはかへる ここちこそすれ覚性法親王
981ささなみや くにつみかみの うらさひて ふるきみやこに つきひとりすむ忠通
982あまのかは そらゆくつきは ひとつにて やとらぬみつの いかてなからむ忠通
983ひとりゐて つきをなかむる あきのよは なにことをかは おもひのこさむ具平親王
984ものおもはぬ ひともやこよひ なかむらむ ねられぬままに つきをみるかな赤染衛門
985なかめつつ むかしもつきは みしものを かくやはそての ひまなかるへき相模
986ひとりのみ あはれなるかと われならぬ ひとにこよひの つきをみせはや和泉式部
987かくはかり うきよのなかの おもひいてに みよともすめる よはのつきかな雅通(源雅定男)
988すみわひて みをかくすへき やまさとに あまりくまなき よはのつきかな俊成(藤原俊忠男)
989はりまかた すまのつきよめ そらさえて ゑしまかさきに ゆきふりにけり親隆
990さよちとり ふけひのうらに おとつれて ゑしまかいそに つきかたふきぬ家基(藤原家光男)
991いかたおろす きよたきかはに すむつきは さをにさはらぬ こほりなりけり俊恵
992あまのはら すめるけしきは のとかにて はやくもつきの にしへゆくかな成保
993さひしさに あはれもいとと まさりけり ひとりそつきは みるへかりける顕昭
994いまよりは ふけゆくまてに つきはみし そのこととなく なみたおちけり清輔
995もろともに みしひといかに なりにけむ つきはむかしに かはらさりけり登蓮
996あかなくに またもこのよに めくりこは おもかはりすな やまのはのつき静賢
997はかなくも わかよのふけを しらすして いさよふつきを まちわたるかな仲正
998さきたちし ひとはやみにや まよふらむ いつまてわれも つきをなかめむ仲綱
999のこりなく わかよふけぬと おもふにも かたふくつきに すむこころかな堀河(待賢門院)
1000うきくもの かかるほとたに あるものを かくれなはてそ ありあけのつき近衛院
1001このまもる ありあけのつきの おくらすは ひとりややまの みねをいてまし覚性法親王
1002ことのねを ゆきにしらふと きこゆなり つきさゆるよの みねのまつかせ道性法親王
1003あかていらむ なこりをいとと おもへとや かたふくままに すめるつきかな長方
1004いかにせむ さらてうきよは なくさます たのみしつきも なみたおちけり定家
1005やまふかき まつのあらしを みにしめて たれかねさめに つきをみるらむ家隆
1006まつほとは いととこころそ なくさまぬ をはすてやまの ありあけのつき六条(八条院)
1007よをいとふ こころはつきを したへはや やまのはにのみ おもひいるらむ実修
1008さひしさも つきみるほとは なくさみぬ いりなむのちを とふひともかな隆親(藤原隆教男)
1009しもさゆる にはのこのはを ふみわけて つきはみるやと とふひともかな西行
1010すみなれし やとをはいてて にしへゆく つきをしたひて やまにこそいれ実重(平昌隆男)
1011ふるさとの いたゐのしみつ みくさゐて つきさへすます なりにけるかな俊恵
1012さもこそは かけととむへき よならねと あとなきみつに やとるつきかな家基(藤原家光男)
1013なにとなく なかむるそての かわかぬは つきのかつらの つゆやおくらむ親盛
1014ましはふく やとのあられに ゆめさめて ありあけかたの つきをみるかな公景
1015あしひきの やまのはちかく すむとても またてやはみる ありあけのつき静蓮
1016もろともに あきをやしのふ しもかれの をきのうははを てらすつきかけ康宗
1017ますけおふる やましたみつに やとるよは つきさへくさの いほりをそさす長真
1018ふかきよの つゆふきむすふ こからしに そらさえのほる やまのはのつき為忠(藤原知信男)
1019やまかせに まやのあしふき あれにけり まくらにやとる よはのつきかけ覚延
1020やまふかみ たれまたかかる すまひして まきのはわくる つきをみるらむ慈円
1021つきかけの いりぬるあとに おもふかな まよはむやみの ゆくすゑのそら慈円
1022このよにて むそちはなれぬ あきのつき してのやまちも おもかはりすな俊恵
1023こむよには こころのうちに あらはさむ あかてやみぬる つきのひかりを西行
1024いかなれは しつみなからに としをへて よよのくもゐの つきをみつらむ俊成(藤原俊忠男)
1025からくにに しつみしひとも わかことく みよまてあはぬ なけきをそせし基俊
1026ちきりおきし させもかつゆを いのちにて あはれことしの あきもいぬめり基俊
1027よのなかの ありしにもあらす なりゆけは なみたさへこそ いろかはりけれ俊頼(源経信男)
1028すききにし よそちのはるの ゆめのよは うきよりほかの おもひいてそなき覚審
1029はかなしな うきみなからも すきぬへき このよをさへも しのひかぬらむ経因
1030ゆくすゑを おもへはかなし つのくにの なからのはしも なはのこりけり俊頼(源経信男)
1031なにことも かはりゆくめる よのなかに むかしなからの はしはしらかな道命
1032けふみれは なからのはしは あともなし むかしありきと ききわたれとも道因
1033ひとこころ あらすなれとも すみよしの まつのけしきは かはらさりけり景基
1034しらくもに まかひやせまし よしのやま おちくるたきの おとせさりせは経忠(藤原師信男)
1035たきのおとは たえてひさしく なりぬれと なこそなかれて なほきこえけれ公任
1036ぬけはちる ぬかねはみたる あしひきの やまよりおつる たきのしらたま長能
1037みつのいろの たたしらくもと みゆるかな たれさらしけむ ぬのひきのたき顕房
1038あしたつに のりてかよへる やとなれは あとたにひとは みえぬなりけり能因
1039やまひとの むかしのあとを きてみれは むなしきゆかを はらふたにかせ清輔
1040おとにのみ ききしはことの かすならて なよりもたかき ぬのひきのたき良清
1041たえすたつ むろのやしまの けふりかな いかにつきせぬ おもひなるらむ顕方
1042かつらきや わたしもはてぬ ものゆゑに くめのいははし こけおひにけり師頼
1043いはおろす かたこそなけれ いせのうみの しほせにかかる あまのつりふね俊忠
1044たまもかる いらこかさきの いはねまつ いくよまてにか としのへぬらむ顕季
1045しほみては のしまかさきの さゆりはに なみこすかせの ふかぬひそなき俊頼(源経信男)
1046けふこそは みやこのかたの やまのはも みえすなるをの おきにいてぬれ実家(藤原公能男)
1047はりまかた すまのはれまに みわたせは なみはくもゐの ものにそありける実宗
1048はるはると おまへのおきを みわたせは くもゐにまかふ あまのつりふね頼実(藤原経宗男)
1049なにはかた しほちはるかに みわたせは かすみにうかふ おきのつりふね円玄
1050はるかすみ ゑしまかさきを こめつれは なみのかくとも みえぬけさかな重綱(藤原重基男)
1051ゆくとしは なみとともにや かへるらむ おもかはりせぬ わかのうらかな成仲
1052こころあらは にほひをそへよ さくらはな のちのはるをは いつかみるへき鳥羽院
1053はかなさを うらみもはてし さくらはな うきよはたれも こころならねは覚性法親王
1054やともやと はなもむかしに にほへとも ぬしなきいろは さひしかりけり尋範
1055いにしへに かはらさりけり やまさくら はなはわれをは いかかみるらむ基長
1056くものうへの はるこそさらに わすられね はなはかすにも おもひいてしを俊成(藤原俊忠男)
1057あまたたひ ゆきあふさかの せきみつに いまはかきりの かけそかなしき東三条院
1058いまはとて いりなむのちそ おもほゆる やまちをふかみ とふひともなし公任
1059うきよをは みねのかすみや へたつらむ なほやまさとは すみよかりけり公任
1060はなさかぬ たにのそこにも すまなくに ふかくもものを おもふはるかな和泉式部
1061たにのとを とちやはてつる うくひすの まつにおとせて はるのくれぬる道長
1062かくてたに なほあはれなる おくやまに きみこぬよよを おもひしらなむ道命
1063としことに なみたのかはに うかへとも みはなけられぬ ものにそありける公資
1064おもふこと なくてやはるを すくさまし うきよへたつる かすみなりせは仲正
1065ちるをみて かへるこころや さくらはな むかしにかはる しるしなるらむ西行
1066はなにそむ こころのいかて のこりけむ すてはててきと おもふわかみに西行
1067ほとけには さくらのはなを たてまつれ わかのちのよを ひととふらはは西行
1068このはるそ おもひはかへす さくらはな むなしきいろに そめしこころを寂然
1069よのなかを つねなきものと おもはすは いかてかはなの ちるにたへまし寂然
1070かくはかり うきよのすゑに いかにして はるはさくらの なほにほふらむ読人不知
1071ふりにけり むかしをしらは さくらはな ちりのすゑをも あはれとはみよ俊成(藤原俊忠男)
1072やまさくら はなをあるしと おもはすは ひとをまつへき しはのいほかは定宗(源顕定男)
1073いつくにて かせをもよをも うらみまし よしののおくも はなはちるなり定家
1074ふかくおもふ ことしかなはは こむよにも はなみるみとや ならむとすらむ季広
1075おいかよに やとにさくらを うつしうゑて なほこころみに はなをまつかな師教(源師頼男)
1076くらゐやま はなをまつこそ ひさしけれ はるのみやこに としはへしかと実守
1077かすかやま まつにたのみを かくるかな ふちのすゑはの かすならねとも公行(藤原実行男)
1078ものおもふ こころやみにも さきたちて うきよをいてむ しるへなるへき公光(藤原季成男)
1079かすならて としへぬるみは いまさらに よをうしとたに おもはさりけり俊恵
1080いつとても みのうきことは かはらねと むかしはおいを なけきやはせし道因
1081いにしへも そこにしつみし みなれとも なほこひしきは しらかはのみつ家基(藤原家光男)
1082あはれてふ ひともなきみを うしとても われさへいかか いとひはつへき盛方
1083かすならぬ みをうきくもの はれぬかな さすかにいへの かせはふけとも師尚
1084おもひやれ とよにあまれる ともしひの かかけかねたる こころほそさを匡範
1085よのうさを おもひしのふと ひともみよ かくてふるやの のきのけしきを公重(藤原通季男)
1086ひくひとも なくてすてたる あつさゆみ こころつよきも かひなかりけり是忠
1087いかてわれ ひまゆくこまを ひきとめて むかしにかへる みちをたつねむ三河内侍
1088いまはたた いけらぬものに みをなして うまれぬのちの よにもふるかな師光(源師頼男)
1089いかにせむ いせのはまをき みかくれて おもはぬいその なみにくちなは俊重
1090まきのとを みやまおろしに たたかれて とふにつけても ぬるるそてかな俊頼(源経信男)
1091をやまたの いほにたくひの ありなしに たつけふりもや くもとなるらむ盛長(橘)
1092やまさとの しはをりをりに たつけふり ひとまれなりと そらにしるかな肥後(二条太皇太后宮)
1093あきはつる かれののむしの こゑたえは ありやなしやを ひとのとへかし基俊
1094このよには すむへきほとや つきぬらむ よのつねならす もののかなしき道信
1095いのちあらは いかさまにせむ よをしらぬ むしたにあきは なきにこそなけ和泉式部
1096かすならて こころにみをは まかせねと みにしたかふは こころなりけり紫式部
1097あはれとも たれかはわれを おもひいてむ あるよにたにも とふひともなし兼房
1098ふるさとの いたまのかせに ねさめして たにのあらしを おもひこそやれ定頼
1099たにかせの みにしむことに ふるさとの このもとをこそ おもひやりつれ公任
1100いにしへは おもひかけきや とりかはし かくきむものと のりのころもを道長
1101おなしとし ちきりしあれは きみかきる のりのころもを たちおくれめや公任
1102むかしみし まつのこすゑは それなから むくらのかとを さしてけるかな弁乳母
1103やまさとの かけひのみつの こほれるは おときくよりも さひしかりけり輔仁親王
1104やまさとの さひしきやとの すみかにも かけひのみつの とくるをそまつ聡子内親王
1105このもとに かきあつめたる ことのはを わかれしあきの かたみとそみる近衛太皇太后宮
1106このもとは かくことのはを みるたひに たのみしかけの なきそかなしき実家(藤原公能男)
1107あとたえて よをのかるへき みちなれや いはさへこけの ころもきてけり守覚法親王
1108おもひいての あらはこころも とまりなむ いとひやすきは うきよなりけり守覚法親王
1109やとりする いはやのとこの こけむしろ いくよになりぬ ねこそいられね覚忠
1110みのほとを しらすとひとや おもふらむ かくうきなから としをへぬれは宗家
1111そむかはや まことのみちは しらすとも うきよをいとふ しるしはかりに忠良
1112そまかはに おろすいかたの うきなから すきゆくものは わかみなりけり別当(二条太皇太后宮)
1113おのつから あれはあるよに なからへて をしむとひとに みえぬへきかな定家
1114うしとても いとひもはてぬ よのなかを なかなかなにに おもひしりけむ丹後(宜秋門院)
1115のほるへき みちにそまとふ くらゐやま これよりおくの しるへなけれは倫円
1116もろひとの はなさくはるを よそにみて なほしくるるは しひしはのそて長方
1117うきせにも うれしきせにも さきにたつ なみたはおなし なみたなりけり顕方
1118このせにも しつむときけは なみたかは なかれしよりも なほまさりけり惟方
1119かくはかり うきみなれとも すてはてむと おもふになれは かなしかりけり空人
1120おもひきや しかのうらなみ たちかへり またあふみとも ならむものとは康頼
1121かくはかり うきよのなかを しのひても まつへきことの すゑにあるかは登蓮
1122おもひかね あくかれいてて ゆくみちは あゆくくさはに つゆそこほるる覚禅
1123ゆめとのみ このよのことの みゆるかな さむへきほとは いつとなけれと永縁
1124このよをは くものはやしに かとてして けふりとならむ ゆふへをそまつ良暹
1125うきことの まとろむほとは わすられて さむれはゆめの ここちこそすれ読人不知
1126いつくとも みをやるかたの しられねは うしとみつつも なからふるかな紫式部
1127うきゆめは なこりまてこそ かなしけれ このよののちも なほやなけかむ俊成(藤原俊忠男)
1128うつつをも うつつといかか さたむへき ゆめにもゆめを みすはこそあらめ季通(藤原宗通男)
1129いとひても なほしのはるる わかみかな ふたたひくへき このよならねは季通(藤原宗通男)
1130これやゆめ いつれかうつつ はかなさを おもひわかても すきぬへきかな兵衛(上西門院)
1131あすしらぬ みむろのきしの ねなしくさ なにあたしよに おひはしめけむ小大進(花園左大臣家)
1132をしからぬ いのちそさらに をしまるる きみかみやこに かへりくるまて成通
1133うきよをは すてていりにし やまなれと きみかとふにや いてむとすらむ覚忠
1134いはそそく みつよりほかに おとせねは こころひとつに すましてそきく守覚法親王
1135たれもみな つゆのみそかしと おもふにも こころとまりし くさのいほかな実国
1136なほさりに かへるたもとは かはらねと こころはかりそ すみそめのそて公衡(藤原公能男)
1137おほけなく うきよのたみに おほふかな わかたつそまに すみそめのそて慈円
1138さひしさを うきよにかへて しのはすは ひとりきくへき まつのかせかは寂蓮
1139つくつくと おもへはかなし あかつきの ねさめもゆめを みるにそありける大輔(殷富門院)
1140まとろみて さてもやみなは いかかせむ ねさめそあらぬ いのちなりける西住
1141さきたつを みるはなほこそ かなしけれ おくれはつへき このよならねと宣旨(六条院)
1142いまはとて かきなすことの はてのをの こころほそくも なりまさるかな式部(二条太皇太后宮)
1143おほゐかは となせのたきに みをなけて はやくとひとに いはせてしかな空人
1144とりへやま きみたつぬとも くちはてて こけのしたには こたへさらまし公景
1145わけわひて いとひしにはの よもきふも かれぬとおもふは あはれなりけり兼覚
1146よのなかの うきはいまこそ うれしけれ おもひしらすは いとはましやは寂蓮
1147よをそむき くさのいほりに すみそめの ころものいろは かへるものかは覚俊
1148おもひやれ ならはぬやまに すみそめの そてにつゆおく あきのけしきを通清
1149あかつきの あらしにたくふ かねのおとを こころのそこに こたへてそきく西行
1150いつくにか みをかくさまし いとひいてて うきよにふかき やまなかりせは西行
1151よのなかよ みちこそなけれ おもひいる やまのおくにも しかそなくなる俊成(藤原俊忠男)
1152おもふこと ありあけかたの しかのねは なほやまふかく いへゐせよとや良清
1153みるゆめの すきにしかたを さそひきて さむるまくらも むかしなりせは宗隆
1154はつせやま いりあひのかねを きくたひに むかしのとほく なるそかなしき有家(藤原重家男)
1155ちりつもる こけのしたにも さくらはな をしむこころや なほのこるらむ通親
1156うれしさを かへすかへすも つつむへき こけのたもとの せはくもあるかな雅兼
1157うれしさを よそのそてまて つつむかな たちかへりぬる あまのはころも季経
1158あしたつの くもちまよひし としくれて かすみをさへや へたてはつへき俊成(藤原俊忠男)
1159あしたつは かすみをわけて かへるなり まよひしくもち けふやはるらむ定長(藤原元房男)
1160もかみかは せせのいはかと わきかへり おもふこころは おほかれと俊頼(源経信男)
1161よのなかは うきみにそへる かけなれや おもひすつれと はなれさりけり俊頼(源経信男)
1162しきしまや やまとのうたの つたはりを きけははるかに ひさかたの崇徳院
1163ときしらぬ たにのうもれき くちはてて むかしのはるの こひしさに堀河(待賢門院)
1164あつまちの やへのかすみを わけきても きみにあはねは なほへたてたる仲正
1165かきたえし ままのつきはし ふみみれは へたてたる かすみもはれて俊頼(源経信男)
1166あつまちの のしまかさきの はまかせに わかひもゆひし いもかかほのみ顕輔
1167こまなへて いさみにゆかむ たつたかは しらなみよする きしのあたりを雅重
1168なにとなく ものそかなしき あきかせの みにしむよはの たひのねさめは仁上
1169よのほとに かりそめひとや きたりけむ よとのみこもの けさみたれたる和泉式部
1170あとたえて とふへきひとも おもほえす たれかはけさの ゆきをわけこむ定頼
1171さかきはは もみちもせしを かみかきの からくれなゐに みえわたるかな大弐三位
1172いけもふり つつみくつれて みつもなし うへかつまたに とりもゐさらむ肥後(京極前関白家)
1173わかこまを しはしとかるか やましろの こはたのさとに ありとこたへよ俊頼(源経信男)
1174みくらやま まきのやたてて すむたみは としをつむとも くちしとそおもふ俊頼(源経信男)
1175よとともに こころをかけて たのめとも われからかみの かたきしるしか俊頼(源経信男)
1176あきののに たれをさそはむ ゆきかへり ひとりははきを みるかひもなし頼輔母
1177あきはきり きりすきぬれは ゆきふりて はるるまもなき みやまへのさと堀河(待賢門院)
1178いなりやま しるしのすきの としふりて みつのみやしろ かみさひにけり有慶
1179なにしおはは つねはゆるきの もりにしも いかてかさきの いはやすくぬる登蓮
1180あやしくも はなのあたりに ふせるかな をらはとかめむ ひとやあるとて道命
1181うのはなよ いてことことし かけしまの なみもさこそは いはをこえしか俊頼(源経信男)
1182けふかくる たもとにねさせ あやめくさ うきはわかみに ありとしらすや道因
1183ともしして はこねのやまに あけにけり ふたよりみより あふとせしまに俊綱(橘)
1184なつのうちは はたかくれても あらすして おりたちにける むしのこゑかな江侍従
1185あきくれは あきのけしきも みえけるは ときならぬみと なににいふらむ輔仁親王
1186あさつゆを ひたけてみれは あともなし はきのうらはに ものやとはまし為頼
1187つはなおひし をののしはふの あさつゆを ぬきちらしける たまかとそみる小大進(花園左大臣家)
1188おちにきと かたらはかたれ をみなへし こよひははなの かけにやとらむ範玄
1189くれのあき ことにさやけき つきかけは とよにあまりて みよとなりけり政平
1190いたひさし さすやかややの しくれこそ おとしおとせぬ かたはわくなれ顕昭
1191ふえたけの あなあさましの よのなかや ありしやふしの かきりなるらむ基俊
1192したひくる こひのやつこの たひにても みのくせなれや ゆふととろきは俊頼(源経信男)
1193あふことの なけきのつもる くるしさを おへかしひとの こりはつるまて堀河(待賢門院)
1194ひとのあしを つむにてしりぬ わかかたへ ふみおこせよと おもふなるへし良喜
1195おそろしや きそのかけちの まろきはし ふみみるたひに おちぬへきかな空人
1196ふえたけの こちくとなにに おもひけむ となりにおとは せしにそありける心覚
1197やつはしの わたりにけふも とまるかな ここにすむへき みかはとおもへと道因
1198つらしとて さてはよもわれ やまからす かしらはしろく なるよなりとも安性
1199かみにおける もしはまことの もしなれは うたもよみちを たすけさらめや俊頼(源経信男)
1200けふもまた うまのかひこそ ふきつなれ ひつしのあゆみ ちかつきぬらむ赤染衛門
1201こくらくは はるけきほとと ききしかと つとめていたる ところなりけり空也
1202ここにきえ かしこにむすふ みつのあわの うきよにめくる みにこそありけれ公任
1203さためなき みはうきくもに よそへつつ はてはそれにそ なりはてぬへき公任
1204よのなかは みなほとけなり おしなへて いつれのものと わくそはかなき花山院
1205おほそらの あめはわきても そそかねと うるふくさきは おのかしなしな源信
1206もとめても かかるはちすの つゆをおきて うきよにまたは かへるものかは清少納言
1207つきかけの つねにすむなる やまのはを へたつるくもの なからましかは国房
1208いるつきを みるとやひとは おもふらむ こころをかけて にしにむかへは頼宗/俊房
1209たききつき けふりもすみて さりにけむ これやなこりと みるそかなしき瞻西
1210ゆめさめむ そのあかつきを まつほとの やみをもてらせ のりのともしひ敦家
1211よをてらす ほとけのしるし ありけれは またともしひも きえぬなりけり覚忠
1212みるままに なみたそおつる かきりなき いのちにかはる すかたとおもへは覚忠
1213ちとせまて むすひしみつも つゆはかり わかみのためと おもひやはせし覚雅
1214うれしくそ なをたもつたに あたならぬ みのりのはなに みをむすひける快修
1215わひひとの こころのうちを よそなから しるやさとりの ひかりなるらむ俊頼(源経信男)
1216ちかひをは ちひろのうみに たとふなり つゆもたのまは かすにいりなむ崇徳院
1217はかなくそ みよのほとけと おもひける わかみひとつに ありとしらすて教長
1218てるつきの こころのみつに すみぬれは やかてこのみに ひかりをそさす教長
1219かへりても いりそわつらふ まきのとを まとひいてにし こころならひに覚忠
1220ふるゆきは たにのとほそを うつむとも みよのほとけの ひやてらすらむ崇徳院
1221てらすなる みよのほとけの あさひには ふるゆきよりも つみやきゆらむ覚性法親王
1222ふるさとを ひとりわかるる ゆふへにも おくるはつきの かけとこそきけ式子内親王
1223ひとことに かはるはゆめの まとひにて さむれはおなし こころなりけり兼実
1224すめはみゆ にこれはかくる さためなき このみやみつに やとるつきかけ永範
1225いととしく むかしのあとや たえなむと おみふもかなし けさのしらゆき慈円
1226きみかなそ なほあらはれむ ふるゆきに むかしのあとは うつもれぬとも尊円
1227ひとりのみ くるしきうみを わたるとや そこをさとらぬ ひとはみるらむ良経(九条兼実男)
1228くれたけの むなしととける ことのはは みよのほとけの ははとこそきけ降信
1229むなしきも いろなるものと さとれとや はるのみそらの みとりなるらむ丹後(宜秋門院)
1230なかきよも むなしきものと しりぬれは はやくあけぬる ここちこそすれ師仲
1231わしのやま つきをいりぬと みるひとは くらきにまよふ こころなりけり西行
1232いさきよき いけにかけこそ うかひぬれ しつみやせむと おもふわかみを顕仲(源顕房男)
1233くちはつる そてにはいかか つつままし むなしととける みのりならすは寂超
1234みるほとは ゆめもゆめとも しられねは うつつもいまは うつつとおもはし資隆
1235おとろかぬ わかこころこそ うかりけれ はかなきよをは ゆめとみなから登蓮
1236あかつきを たかののやまに まつほとや こけのしたにも ありあけのつき寂蓮
1237おもひとく こころひとつに なりぬれは こほりもみつも へたてさりけり中将(式子内親王家)
1238たのもしき ちかひははるに あらねとも かれにしえたも はなそさきける時忠
1239はることに なけきしものを のりのには ちるかうれしき はなもありけり伊綱(藤原家基男)
1240みくさのみ しけきにこりと みしかとも さてもつきすむ えにこそありけれ季能
1241むさしのの ほりかねのゐも あるものを うれしくみつの ちかつきにける俊成(藤原俊忠男)
1242たにみつを むすへはうつる かけのみや ちとせをおくる ともとなりけむ顕昭
1243くちはてて あやふくみえし をはたたの いたたのはしも いまわたすなり泰覚
1244うらみける けしきやそらに みえつらむ をはすてやまを てらすつきかけ敦仲
1245ひのひかり つきのかけとそ てらしける くらきこころの やみはれよとて蓮上
1246さらにまた はなそふりしく わしのやま のりのむしろの くれかたのそら俊成(藤原俊忠男)
1247まちいてて いかにうれしく おもほえむ はつかあまりの やまのはのつき有安
1248あさまたき みのりのにはに ふるゆきは そらよりはなの ちるかとそみる清重
1249もちつきの くもかくれけむ いにしへの あはれをけふの そらにしるかな恵章
1250きよくすむ こころのそこを かかみにて やかてそうつる いろもすかたも俊秀
1251けふりたに しはしたなひけ とりへやま たちわかれにし かたみともみむ寂然
1252とりのねも なみのおとにそ かよふなる おなしみのりを きけはなりけり康頼
1253よをすくふ あとはむかしに かはらねと はしめたてけむ ときをしそおもふ定長(藤原元房男)
1254つねならぬ ためしはよはの けふりにて きえぬなこりを みるそうれしき明雲
1255みなひとを わたさむとおもふ こころこそ こくらくへゆく しるへなりけれ永観
1256みかさやま さしてきにけり いそのかみ ふるきみゆきの あとをたつねて上東門院
1257すみよしの なみもこころを よせけれは うへそみきはに たちまさりける経輔
1258おもふこと くみてかなふる かみなれは しほやにあとを たるるなりけり公教
1259みちのへの ちりにひかりを やはらけて かみもほとけの なのるなりけり崇徳院
1260あめのした のとけかれとや さかきはを みかさのやまに さしはしめけむ清輔
1261かみよより つもりのうらに みやゐして へぬらむとしの かきりしらすも隆季
1262かそふれは やとせへにけり あはれわか しつみしことは きのふとおもふに実定
1263いたつらに ふりぬるみをも すみよしの まつはさりとも あはれしるらむ俊成(藤原俊忠男)
1264ふりにける まつものいはは とひてまし むかしもかくや すみのえのつき実定
1265すみよしの まつのゆきあひの ひまよりも つきさえぬれは しもはおきけり俊恵
1266おしなへて ゆきのしらゆふ かけてけり いつれさかきの こすゑなるらむ実国
1267めつらしく みゆきをみわの かみならは しるしありまの いてゆなるへし資賢
1268うれしくも かみのちかひを しるへにて こころをおこす かとにいりぬる経房(藤原光房男)
1269すきかえを かすみこむれと みわのやま かみのしるしは かくれさりけり範玄
1270いままてに なとしつむらむ きふねかは かはかりはやき かみをたのむを実重(平昌隆男)
1271さりともと たのみそかくる ゆふたすき わかかたをかの かみとおもへは政平
1272さりともと たのむこころは かみさひて ひさしくなりぬ かものみつかき式子内親王
1273きみをいのる ねかひをそらに みてたまへ わけいかつちの かみならはかみ重保
1274きふねかは たまちるせせの いはなみに こほりをくたく あきのよのつき俊成(藤原俊忠男)
1275わかたのむ ひよしのかけは おくやまの しはのとまても さささらめやは慈円
1276いつとなく わしのたかねに すむつきの ひかりをやとす しかのからさき性憲
1277みゆきする たかねのかたに くもはれて そらにひよしの しるしをそみる師尚
1278ふかくいりて かみちのおくを たつぬれは またうへもなき みねのまつかせ西行
1279つきよみの かみしてらさは あたくもの かかるうきよも はれさらめやは為定(大中臣為仲男)
1280いはしみつ きよきなかれの たえせねは やとるつきさへ くまなかりけり能蓮
1281ときはなる かみなひやまの さかきはを さしてそいのる よろつよのため義忠(藤原為久男)
1282うこきなく ちよをそいのる いはややま とるさかきはの いろかへすして経衡
1283いにしへの かみのみよより もろかみの いのるいはひは きみかよのため匡房
1284かみうくる とよのあかりに ゆふそのの ひかけかつらそ はへまさりける永範
1285すめらきを やほよろつよの かみもみな ときはにまもる やまのなそこれ永範
1286みしまゆふ かたにとりかけ かみなひの やまのさかきを かさしにそする兼光(藤原資長男)
1287もろかみの こころにいまそ かなふらし きみをやちよと いのるよことは季経
1288ちとせやま かみのよませる さかきはの さかえまさるは きみかためとか光範