「新後撰和歌集」一覧
1613件
1 | さほひめの かすみのころも ふゆかけて ゆきけのそらに はるはきにけり | 為氏 |
2 | ふるゆきは ことしもわかす ひさかたの そらにしられぬ はるやきぬらむ | 実氏 |
3 | はるたつと かすみにけりな ひさかたの あまのいはとの あけほののそら | 実経 |
4 | きのふまて ふるさとちかく みよしのの やまもはるかに かすむはるかな | 家隆 |
5 | いつしかと かすまさりせは おとはやま おとはかりにや はるをきかまし | 清輔 |
6 | いそのかみ ふるのやまへも はるきぬと かすみやそらに たちかへるらむ | 弁内侍(後深草院) |
7 | ときわかぬ あらしもなみも いかなれは けふあらたまの はるをしるらむ | 土御門院 |
8 | つららゐし いはまのなみの おとはかは けさふくかせに はるやたつらむ | 知家 |
9 | はるやとき かすみやおそき けふもなほ きのふのままの みねのしらゆき | 伏見院 |
10 | はるやとき たにのうくひす うちはふき けふしらゆきの ふるすいつなり | 定家 |
11 | うちなひき はるたちきぬと うくひすの またさとなれぬ はつねなくなり | 顕輔 |
12 | はるきぬと たれかはつけし かすかやま きえあへぬゆきに うくひすのなく | 後鳥羽院 |
13 | またさかぬ のきはのうめに うくひすの こつたひちらす はるのあはゆき | 信実 |
14 | あさみとり よものこすゑは かすめとも かくれぬものは うくひすのこゑ | 実雄 |
15 | うくひすの きなかさりせは やまさとに たれとかはるの ひをくらさまし | 俊頼(源経信男) |
16 | まとちかき たけのさえたに きこゆなり はなまつほとの うくひすのこゑ | 寂蓮 |
17 | まつさける はなとやいはむ うちわたす をちかたのへの はるのあはゆき | 為家 |
18 | はるくれは ゆきともみえす おほそらの かすみをわけて はなそちりける | 後宇多院 |
19 | たかさこの をのへのかすみ たちぬれと なほふりつもる まつのしらゆき | 御匣(式乾門院) |
20 | あまのはら そらゆくかせの なほさえて かすみにこほる はるのよのつき | 家隆 |
21 | やまかはに ふゆのしからみ かけとめて なほかせさむく こほるはるかな | 道家 |
22 | うくひすの なきにしひより やまさとの ゆきまのくさも はるめきにけり | 良経(九条兼実男) |
23 | いまよりは わかなつむへき ふるさとの みかきかはらに ゆきはふりつつ | 実兼 |
24 | きえすとも のはらのゆきを ふみわけて わかあとよりや わかなつままし | 為世(御子左藤原為氏男) |
25 | わかなつむ ころもてぬれて かたをかの あしたのはらに あはゆきそふる | 道家 |
26 | さとひとは やまさはみつの うすこほり とけにしひより わかなつみつつ | 為氏 |
27 | そてぬらす のさはのみつに かけみれは ひとりはつまぬ わかななりけり | 弁内侍(後深草院) |
28 | いまははや わかなつむらし かけろふの もゆるはるひの のへのさとひと | 覚助法親王 |
29 | かすみたち このめはるさめ きのふまて ふるののわかな けさはつみてむ | 定家 |
30 | やまかせは なほさむからし みよしのの よしののさとは かすみそむれと | 亀山院 |
31 | たちのほる くももおよはぬ ふしのねに けふりをこめて かすむはるかな | 家良 |
32 | よそにみし くももさなから うつもれて かすみそかかる かつらきのやま | 雅有 |
33 | にほのうみや かすみてくるる はるのひに わたるもとほし せたのなかはし | 為家 |
34 | なにはかた つきのてしほの ゆふなきに はるのかすみの かきりをそしる | 順徳院 |
35 | なにはかた かりふくあしの やへかすみ ひまこそなけれ はるのあけほの | 為氏 |
36 | こきいつる いりえのをふね ほのほのと なみまにかすむ はるのあけほの | 公相 |
37 | わたのはら かすめるほとを かきりにて とほきなかめに かかるしらなみ | 公雄 |
38 | おとはして いさよふなみも かすみけり やそうちかはの はるのあけほの | 後宇多院 |
39 | たをやめの やなきのかつら はるかけて たまのかさしに ぬけるしらつゆ | 実兼 |
40 | みねのゆきは かすみもあへぬ やまさとに まつさくものと にほふうめかえ | 光俊(葉室光親男) |
41 | ここのへに にほふとならは うめのはな やとのこすゑに はるをしらせよ | 俊成(藤原俊忠男) |
42 | うめのはな にほふのへにて けふくれぬ やとのこすゑを たれたつぬらむ | 良経(九条兼実男) |
43 | このもとは やかてのきはに ちかけれは かせのさそはぬ うめかかそする | 後二条院 |
44 | さそはるる ひとやなからむ うめのはな にほひはよその しるへなりとも | 為藤 |
45 | をりてみる いろよりもなほ うめのはな ふかくそそての かはにほひける | 少将内侍(後深草院) |
46 | をらはまた にほひやちらむ うめのはな たちよりてこそ そてにうつさめ | 亀山院 |
47 | おもひたつ ほとはくもゐに ゆくかりの ふるさととほく かすむそらかな | 知家 |
48 | かへるかり こころのままに すきぬなり せきのほかなる くものかよひち | 慈円 |
49 | わきてなほ こしちのそらや かすむらむ かへるあとなき はるのかりかね | 少将(藻壁門院) |
50 | みなひとの いへちわするる はなさかり なそしもかへる はるのかりかね | 後嵯峨院 |
51 | たをやめの そてもほしあへす あすかかせ たたいたつらに はるさめそふる | 為家 |
52 | はるきても たれかはとはむ はなさかぬ まきのをやまの あけほののそら | 雅経 |
53 | はるかすみ たつをみしより みよしのの やまのさくらを またぬひはなし | 家良 |
54 | よしのやま ひとにこころを つけかほに はなよりさきに かかるしらくも | 西行 |
55 | けふもまた はなまつほとの なくさめに なかめくらしつ みねのしらくも | 実定 |
56 | しつかなる おいのこころの なくさめに ありしよりけに はなそまたるる | 基忠(鷹司兼平男) |
57 | おもひやれ きみかためにと まつはなの さきもはてぬに いそくこころを | 頼政 |
58 | あふことを いそかさりせは さきやらぬ はなをはしはし まちもしてまし | 小侍従(太皇太后宮) |
59 | いつしかと はなのしたひも とけにけり かすみのころも たつとみしまに | 良教 |
60 | やまさくら はやさきにけり かつらきや かすみをかけて にほふはるかせ | 為兼 |
61 | またれつる をのへのさくら いろみえて かすみのまより にほふしらくも | 隆博 |
62 | みかさやま たかねのはなや さきぬらむ ふりさけみれは かかるしらくも | 基忠(鷹司兼平男) |
63 | おとはやま はなさきぬらし あふさかの せきのこなたに にほふはるかせ | 宗尊親王 |
64 | けふもまた おなしやまちに たつねきて きのふはさかぬ はなをみるかな | 能清 |
65 | をりしれは こころやゆきて なかむへき くもゐるみねに まちしさくらを | 公経(藤原実宗男) |
66 | かよふらむ こころのいろを はなにみて うらみもはてし はるのやまさと | 隆衡 |
67 | ちりなれし こすゑはつらし やまさくら はるしりそむる はなをたつねむ | 家隆 |
68 | なかむれは よものしらくも かくらくの はつせのやまは はなにほふらし | 実氏 |
69 | かつらきや たかまのやまの みねつつき あさゐるくもや さくらなるらむ | 隆信 |
70 | よしのやま をのへのさくら さきぬれは たえすたなひく はなのしらくも | 後宇多院 |
71 | やまさくら さけるさかさる おしなへて さなからはなと みゆるしらくも | 為氏 |
72 | やまさくら にほひをなにに つつままし かすみのそてに あまるはるかせ | 公守 |
73 | よしのやま そらもひとつに にほふなり かすみのうへの はなのしらくも | 後二条院 |
74 | いつくより はなともわかむ やまたかみ さくらにつつく みねのしらくも | 基忠(鷹司兼平男) |
75 | しらくもの かからさりせは やまさくら かさねてはなの いろをみましや | 道玄 |
76 | やまたかみ かさなるくもの しろたへに さくらもまかふ はるのあけほの | 貞時 |
77 | みわたせは まつのたえまに かすみけり とほさとをのの はなのしらくも | 御匣(式乾門院) |
78 | よしのやま みねにたなひく しらくもの にほふははなの さかりなりけり | 公基 |
79 | やまかせは こころしてふけ たかさこの をのへのさくら いまさかりけり | 実雄 |
80 | ひさかたの ひかりのとかに さくらはな ちらてそにほふ はるのやまかせ | 家隆 |
81 | ふくかせも をさまれとおもふ よのなかに たえてさくらを さそはすもかな | 後宇多院 |
82 | ほかよりも ちらぬひかすや かさぬらむ わかここのへの やとのさくらは | 伏見院 |
83 | あはれにも むかしのはるの おもかけを みさへおいきの はなにみるかな | 基忠(鷹司兼平男) |
84 | はるさめの ふるのやまへの はなみても むかしをしのふ そてはぬれけり | 公雄 |
85 | ここのへに はるはなれにし さくらはな かはらぬいろを みてしのふかな | 後伏見院 |
86 | いつもたた はなにまかへて なかめはや はるのみかかる みねのくもかは | 長雅 |
87 | よしのやま みねたちかくす くもかとて はなゆゑはなを うらみつるかな | 兼宗 |
88 | よしのやま たなひくくもの とたえとも ほかにはみえぬ はなのいろかな | 光俊(葉室光親男) |
89 | このもとを たつねぬひとや よしのやま くもとははなの いろをみるらむ | 寂蓮 |
90 | おもひやる こころのゆきて たをるをは はなのあるしも えやはをしまむ | 公朝 |
91 | あくかるる こころはさても やまさくら ちりなむのちや みにかへるへき | 西行 |
92 | あつさゆみ はるのやまかせ こころあらは ちらさてはなの ありかしらせよ | 頼輔 |
93 | やまさくら またことかたに たつねみは わくるこころを はなやうらみむ | 行家(藤原知家男) |
94 | おいのみに くるしきやまの さかこえて なにとよそなる はなをみるらむ | 為家 |
95 | みよしのの おくまてはなに さそはれぬ かへらむみちの しをりたにせて | 下野(後鳥羽院) |
96 | たつねきて みすはたかねの さくらはな けふもくもとそ なほおもはまし | 家定 |
97 | みやこには かすみのよそに なかむらむ けふみるみねの はなのしらくも | 良経(九条兼実男) |
98 | いささらは よしののやまの やまもりと はなのさかりは ひとにいはれむ | 長方 |
99 | えそすきぬ これやすすかの せきならむ ふりすてかたき はなのかけかな | 定家 |
100 | かへらむと おもふこころの あらはこそ をりてもはなを いへつとにせめ | 俊恵 |
101 | きのふけふ なれぬるひとの こころをは はなのちりなむ のちそみるへき | 隆信 |
102 | さきぬれは かならすはなの をりにとも たのめぬひとの またれけるかな | 親子(典侍親子朝臣) |
103 | おのつから こそきてとひし ひとはかり おもひいつやと はなにまつかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
104 | とふひとは おもひたえたる やまさとに たかためとてか はなもさくらむ | 最信 |
105 | みやこひと しらすやいかに やまさとの はなよりほかに あるしありとは | 国助 |
106 | またもこむ はるをやひとに ちきらまし ことしにかきる はなのかけかは | 成茂 |
107 | なからへて またみむとのみ いくはるの はなにいのちを をしみきぬらむ | 信実 |
108 | あかすのみ みすててかへる さくらはな ちらぬもおなし わかれなりけり | 月花門院 |
109 | あたにさく みねのこすゑの さくらはな かせまつほとの くもかとそみる | 少将(藻壁門院) |
110 | かつらきや たかまのさくら なかむれは ゆふゐるくもに はるかせそふく | 実朝 |
111 | いまははや ちるとこたへは いかかせむ ひとにもとはし やまのさくらを | 長雅 |
112 | せめてなと ちるをまつまの ほとたにも うつろふいろの はなにみゆらむ | 定為 |
113 | なにとかく あたなるはなの いろをしも こころにふかく おもひそめけむ | 西行 |
114 | はるよりも はなはいくかも なきものを しひてもをしめ うくひすのこゑ | 順徳院 |
115 | はるかすみ またたちかへり たつねこむ はなはいくかも あらしふくころ | 実氏 |
116 | はるかせに さきぬるはなの みやきもり こころゆるすな やとのさくらを | 亀山院 |
117 | さくらはな よきてとおもふ かひもなく このひともとも はるかせそふく | 為道 |
118 | さてもなほ さそひやすると さくらはな たをりてかせの こころをもみむ | 冬平 |
119 | こころから ちるといふなの をしけれは うつろふはなに かせもいとはす | 為理 |
120 | はなたにも をしむとはしれ やまさくら かせはこころの なきよなりとも | 読人不知/祐臣 |
121 | いのちをそ ちるはなよりも をしむへき さすかにさかぬ はるしなけれは | 顕輔 |
122 | さくらはな おもふあまりに ちることの うきをはかせに おほせつるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
123 | ちれはこそ かせもさそへと おもへとも はなのうきには なさてみるかな | 道性 |
124 | あたにちる ほとをもまたて さくらはな つらくもさそふ はるのかせかな | 遊義門院 |
125 | うしとおもふ かせにそやかて さそはるる ちりゆくはなを したふこころは | 為子(贈従三位) |
126 | なにとまた かせふくことに うらみても はなにしられぬ ものおもふらむ | 親子(典侍親子朝臣) |
127 | はるきても かせよりほかは とふひとの なきやまさとに ちるさくらかな | 俊成女 |
128 | あたなりや うはのそらなる はるかせに さそはれやすき はなのこころは | 実重(三条公親男) |
129 | はることに さそはれてゆく はななれと さくらやかせの やとりしるらむ | 経朝女 |
130 | はなのいろを えやはととめむ あふさかの せきふきこゆる はるのあらしに | 兼氏 |
131 | たきのうへに おちそふなみは あらしふく みふねのやまの さくらなりけり | 重氏 |
132 | みよしのの はなのしらゆき ふるままに こすゑのくもを はらふやまかせ | 忠良 |
133 | あらしふく このもとはかり うつもれて よそにつもらぬ はなのしらゆき | 伏見院 |
134 | はなのちる やまのたかねの かすますは くもらぬそらの ゆきとみてまし | 良平 |
135 | さらぬたに おほろにみゆる はるのつき ちりかひくもる はなのかけかな | 有家(藤原重家男) |
136 | さくはなも おもひしよりは うつろひぬ よのまのあめの はるのあけほの | 実氏 |
137 | あすもなほ きえすはありとも さくらはな ふりたにそはむ にはのゆきかは | 家隆 |
138 | ちるはなを またふきさそふ はるかせに にはをさかりと みるほともなし | 為兼 |
139 | ゆくはるの ひかすそはなを さそひける かせはかりとは なにうらむらむ | 実教 |
140 | たつねはや しのふのおくの さくらはな かせにしられぬ いろやのこると | 定家 |
141 | ちりはてし はなよりのちの みねのくも わすれぬいろに のこるおもかけ | 道良女 |
142 | むらくもを なにかはいとふ よはのつき かすめるそらは たえまたになし | 顕氏(六条顕家男) |
143 | かねのおとは かすみのそこに あけやらて かせほのかなる はるのよのつき | 為家 |
144 | やまふきの まかきにはなの さくころや ゐてのさとひと はるをしるらむ | 万秋門院 |
145 | やまふきの はなのゆかりに あやなくも ゐてのさとひと むつましきかな | 崇徳院 |
146 | かけみゆる ゐてのかはなみ はやけれと うきてなかれぬ やまふきのはな | 家良 |
147 | やまふきの はなのしらつゆ むすほほれ いはぬもをしや はるのなこりは | 実兼 |
148 | はるかせは ふくともみえて たかさこの まつのこすゑに かかるふちなみ | 忠盛 |
149 | としをへて なほいくはるも みかさやま こたかくかかれ まつのふちなみ | 基忠(鷹司兼平男) |
150 | かけしあれは をられぬなみも をられけり みきはのふちの はるのかさしに | 順徳院 |
151 | つれなくて のこるならひを くれてゆく はるにをしへよ ありあけのつき | 為世(御子左藤原為氏男) |
152 | あらしふく はなのこすゑに あとみえて はるはすきゆく しかのやまこえ | 家隆 |
153 | くれてゆく はるのわかれは いかにそと はなををしまぬ ひとにとははや | 秀能(藤原秀宗男) |
154 | いまもなほ はなにはあかて おいかみに むそちあまりの はるそくれぬる | 隆弁 |
155 | くれてゆく はるのたむけや これならむ けふこそはなは ぬさとちりけれ | 後嵯峨院 |
156 | ゆくかたも しられぬはると しりなから こころつくしの けふにもあるかな | 公実 |
157 | たちかふる なこりやなほも のこるらむ はなのかうすき せみのはころも | 伏見院 |
158 | やましろの ときはのもりは なのみして したくさいそく なつはきにけり | 順徳院 |
159 | いかなれは ひかけにむかふ あふひくさ つきのかつらの えたをそふらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
160 | ことしとや ちきりおきけむ あふひくさ わきてこころに かけしかさしを | 為藤 |
161 | ほとときす ことかたらひし をりになと ことしをいつと ちきらさりけむ | 顕朝 |
162 | しのひねを いつくになきて ほとときす うのはなかきに なほまたるらむ | 忠良 |
163 | たつねつる をののしのはら しのひねも あまりほとふる ほとときすかな | 師継 |
164 | われききて ひとにかたらむ このさとに まつなきそめよ やまほとときす | 忠通 |
165 | またすとも われとなくへき ゆふくれを つれなくすくす ほとときすかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
166 | ふくるまて まつよのそらの ほとときす つきにをしまぬ ひとこゑもかな | 冬平 |
167 | さてもなほ ねていくよにか なりぬらむ やまほとときす いまやきなくと | 顕季 |
168 | ほとときす はつねきかせよ これをたに おいのねさめの おもひてにせむ | 経任(中御門藤原為経男) |
169 | ひとをわく はつねならしを ほとときす われにはなとか なほもつれなき | 伏見院 |
170 | ほとときす なにかこころを つくすらむ われきけとても なかぬものゆゑ | 亀山院 |
171 | まてとたに たのめもおかす ほとときす いつまてさのみ こころつくさむ | 実泰 |
172 | たちぬるる そてこそほさね ほとときす いまもつれなき もりのしつくに | 隆博 |
173 | しひてまつ わかこころこそ ほとときす きなかぬよりも つれなかりけれ | 時村 |
174 | ほとときす いつるあなしの やまかつら いまやさとひと かけてまつらむ | 定家 |
175 | こころとは みやまもいてし ほとときす またれてのみそ はつねなくなる | 少将(藻壁門院) |
176 | ほとときす われにまさりて まつひとの あれはやほかに はつねなくらむ | 宣時(北条) |
177 | まつひとを なとかたらはて ほとときす ひとりしのひの をかになくらむ | 覚寛 |
178 | あしひきの やまほとときす なきぬなり またましものを あけほののそら | 行家(藤原知家男) |
179 | しからきの とやまのすゑの ほとときす たかさとちかき はつねなくらむ | 隆祐 |
180 | ほかにまつ なきやしつらむ ほとときす われははつねを きくとおもへと | 頼輔 |
181 | いかになほ おとろかれまし ほとときす またれぬほとの はつねなりせは | 行氏(平胤行男) |
182 | さとことに なのるはおなし ほとときす きくひとからや はつねなるらむ | 実兼 |
183 | ほとときす おのかふるこゑ たちかへり そのかみやまに いまなのるらし | 為家 |
184 | まちあかす さよのなかやま なかなかに ひとこゑつらき ほとときすかな | 定家 |
185 | まちわひて ねぬよなからも ほとときす たたひとこゑは ゆめかとそきく | 読人不知 |
186 | ほとときす くもゐのよその ひとこゑは きかてやみぬと いはぬはかりそ | 長方 |
187 | ほとときす いまひとこゑを まちえてや なきつるかたを おもひさためむ | 長舜 |
188 | わきてまつ たれにかたらむ ほとときす さたかなりつる よはのひとこゑ | 雅孝 |
189 | ほとときす おとはのやまに ききつとは まつあふさかの ひとにかたらむ | 俊頼(源経信男) |
190 | なきすてて いなはのやまの ほとときす なほたちかへり まつとしらなむ | 経平(衣笠家良男) |
191 | ほとときす なれもこころや なくさまぬ をはすてやまの つきになくよは | 丹後(宜秋門院) |
192 | まてしはし よふかきそらの ほとときす またねさめせぬ ひともこそあれ | 教定(飛鳥井雅経男) |
193 | ほとときす すきつるさとの こととはむ おなしねさめの ひともありやと | 後醍醐院 |
194 | おのつから なくもよふかき ほとときす ねさめならては きくひとそなき | 氏久 |
195 | ほとときす あさくらやまの あけほのに とふひともなき なのりすらしも | 成仲 |
196 | ほとときす くものいつくに なくとたに しらてあけぬる みしかよのそら | 読人不知/宣平 |
197 | ほとときす まれにもたれか かたらはむ おのかなさけそ みにはしらるる | 基良 |
198 | われききて のちはかはらす ほとときす むかしいかなる ことかたりけむ | 良教 |
199 | むかしおもふ はなたちはなに おとつれて ものわすれせぬ ほとときすかな | 式子内親王 |
200 | さつきまつ おのかともとや ほとときす はなたちはなに ことかたるらむ | 実兼 |
201 | われならて むかしをしのふ ひとやあると はなたちはなに ことやとはまし | 基忠(鷹司兼平男) |
202 | たちはなに あやめのまくら にほふよそ むかしをしのふ かきりなりける | 俊成(藤原俊忠男) |
203 | かくれぬに おふるあやめも けふはなほ たつねてひかぬ ひとやなからむ | 顕輔 |
204 | かけてみよ きみにこころの ふかきえに ひけるかひなき うきねなれとも | 永福門院 |
205 | きみかよの ためしなるまて なかきねに ふかきこころの ほとそみえける | 遊義門院 |
206 | みちのへの やまたのみしめ ひきはへて なかきひつきの さなへとるなり | 為家 |
207 | さなへとる たこのをかさを そのままに ぬかてそかへる さみたれのころ | 信実 |
208 | いまはまた しのふのさとの しのふにも あらぬさつきの ほとときすかな | 為氏 |
209 | ほとときす きけともあかす たちはなの はなちるさとの さみたれのころ | 実朝 |
210 | さみたれの ほともこそふれ みよしのの みくまのすけを けふやからまし | 後鳥羽院 |
211 | さすさをに みつのみかさの たかせふね はやくそくたす さみたれのころ | 信実 |
212 | なとりかは せせにありてふ うもれきも ふちにそしつむ さみたれのころ | 為継 |
213 | たきつせに おちそふみつの おとはかは せくかたもなき さみたれのころ | 為氏 |
214 | さみたれに ゆふしほむかふ みなとかは せかれていとと みつまさりつつ | 為信 |
215 | なにはえや しほひのかたの あしのはも なほなみこゆる さみたれのころ | 行家(藤原知家男) |
216 | さみたれは たこのもすそや くちぬらむ ころもほすへき ひましなけれは | 匡房 |
217 | たちのほる けふりもくもに なりにけり むろのやしまの さみたれのころ | 家隆 |
218 | やまかつの あさけのけふり くもそへて はれぬいほりの さみたれのころ | 少将(藻壁門院) |
219 | さみたれに いりぬるいその くさよりも くもまのつきそ みらくすくなき | 兼氏 |
220 | みしかよは あしまにやとる ほともなし やかていりえの なつのつきかけ | 成久 |
221 | かせそよく のきはのたけに もるつきの よのまはかりそ なつもすすしき | 俊定(源具定男) |
222 | あまのとの あくるほとなき みしかよに ゆくかたとほく のこるつきかけ | 家良 |
223 | あしのやの かりねのとこの ふしのまも みしかくあくる なつのよなよな | 定家 |
224 | なつのよは うたたねなから あけなまし たたくくひなの おとせさりせは | 道因 |
225 | さつきやみ ほくしのまつを しるへにて いるさのやまに ともしをそする | 忠通 |
226 | のほりえぬ ほともしられて なつかはの はやせにふくる よはのかかりひ | 守誉 |
227 | かかりひの ひかりもうすく なりにけり たなかみかはの あけほののそら | 家経(一条実経男) |
228 | つきならて よかはにさせる かかりひも おなしかつらの ひかりとそみる | 為家 |
229 | むらさめの つゆおきとめて つきかけの すすしくやとる にはのなつくさ | 為子(従二位) |
230 | しけりゆく したにしみつは うつもれて まつてにむすふ のへのなつくさ | 秀茂 |
231 | わけわひて いまもひとめは かれぬへし しけるなつのの くさのふかさに | 実雄 |
232 | たまもかる のしまかさきの なつくさに ひともすさへぬ つゆそこほるる | 少将(藻壁門院) |
233 | ほたるとふ なにはのこやの ふくるよに たかぬあしひの かけもみえけり | 景綱 |
234 | ちはやふる かみたにけたぬ おもひとや みたらしかはに ほたるとふらむ | 按察(鷹司院) |
235 | ふけゆけは おなしほたるの おもひかは ひとりはもえぬ かけやみゆらむ | 信家(藤原長佐男) |
236 | たきつせに きえぬほたるの ひかりこそ おもひせくとは よそにしらるれ | 四条(安嘉門院) |
237 | いたつらに のさはにみゆる ほたるかな まとにあつむる ひとやなからむ | 後嵯峨院 |
238 | ゆふやみは おのかひかりを しるへにて このしたかくれ ゆくほたるかな | 俊光 |
239 | なつくさの しけみのはすゑ くるるより ひかりみたれて とふほたるかな | 実俊(西園寺公相男) |
240 | なつくさの いつれともなき まかきにも つゆのいろそふ とこなつのはな | 内実 |
241 | すすしさを ほかにもとはす やましろの うたのひむろの まきのしたかせ | 実兼 |
242 | ふくかせに ゆくかたみえて すすしきは ひかけへたつる ゆふたちのくも | 為方 |
243 | なつやまの ならのはかしは かせすきて みねたちのほる ゆふたちのくも | 為氏 |
244 | ひくらしの なくねにかせを ふきそへて ゆふひすすしき をかのへのまつ | 良経(九条兼実男) |
245 | ひくらしの こゑするやまの まつかけに いはまをくくる みつのすすしさ | 実定 |
246 | あかてなほ むすひやせまし つきかけも すすしくうつる やまのゐのみつ | 貞時 |
247 | まつかけの いはゐのみつの ゆふくれを たつねぬひとや あきをまつらむ | 惟明親王 |
248 | みつのおもに すむつきかけの すすしきは そらにやあきの かよひそむらむ | 経房(藤原光房男) |
249 | よしのかは たきついはなみ ゆふかけて ふるさとひとや みそきしつらむ | 基家 |
250 | しきたへの まくらにのみそ しられける またしののめの あきのはつかせ | 定家 |
251 | ころもての またうすけれは あさまたき みにしむものは あきのはつかせ | 顕輔 |
252 | たかそてに あきまつほとは つつみけむ けさはこほるる つゆのしらたま | 後嵯峨院 |
253 | すすしさそ きのふにかはる なつころも おなしたもとの あきのはつかせ | 雅有 |
254 | いつしかと ならすあふきを をきのはに やかてすすしき あきのはつかせ | 基家 |
255 | あききぬと おもひもあへぬ をきのはに いつしかかはる かせのおとかな | 為兼 |
256 | ふきはらふ まかきのをきの ゆふつゆを たもとにのこす あきのはつかせ | 隆祐 |
257 | おきそむる つゆこそあらめ いかにして なみたもそてに あきをしるらむ | 公世 |
258 | あはぬまの つきひをなにに なくさめて たなはたつめの ちきりまつらむ | 具氏 |
259 | まちわたる あふせへたつな ひさかたの あまのかはらの あきのゆふきり | 実氏 |
260 | けふといへは くるるもおそく ひこほしの ゆきあひのはしを まちわたりつつ | 雅成親王 |
261 | あまのかは ふかきちきりは たのめとも とたえそつらき かささきのはし | 丹後(宜秋門院) |
262 | あきことに とたえもあらし かささきの わたせるはしの なかきちきりは | 伏見院 |
263 | かささきの わたせるはしや たなはたの はねをならふる ちきりなるらむ | 長雅 |
264 | こきかへる ならひもかねて かなしきは くものころもの つまむかへふね | 公雄 |
265 | まれにあふ うらみもあらし たなはたの たえぬちきりの かきりなけれは | 後醍醐院 |
266 | いくあきも きみそうつして みかはみつ くもゐにたえぬ ほしあひのかけ | 為世(御子左藤原為氏男) |
267 | あきことに たえぬほしあひの さよふけて ひかりならふる にはのともしひ | 定家 |
268 | あきかせも そらにすすしく かよふなり あまつほしあひの よやふけぬらむ | 後伏見院 |
269 | ひこほしの ちきりたえせぬ あきをへて いくよかさねつ あまのはころも | 通重 |
270 | かへるさの そてぬらすらし かささきの よりはにかかる あまのかはなみ | 為相 |
271 | たまほこの みちのしはくさ うちなひき ふるきみやこに あきかせそふく | 後鳥羽院 |
272 | あきかせを おいのねさめに まちえても こほれやすきは なみたなりけり | 為氏 |
273 | さのみなと をきのはわたる あきかせを ききもすくさす そてぬらすらむ | 伊信 |
274 | ひとめみぬ やとのをきはら おとつれて あきとはかせの つてにこそしれ | 公親 |
275 | あきはたた ものおもへとや をきのはの かせもみにしむ ゆふへなるらむ | 亀山院 |
276 | ありてうき をきのはかせの おとつれは またれぬものを あきのゆふくれ | 弁内侍(後深草院) |
277 | をきのはを ふきすててゆく かせのおとに こころみたるる あきのゆふくれ | 西行 |
278 | かきほより をきのしけみを つたひきて こすのまさむき あきかせそふく | 国助 |
279 | ふるさとは ききしににたる をきのはの おとやむかしの にはのあきかせ | 行氏(平胤行男) |
280 | たれかまた あきかせならて ふるさとの にはのあさちの つゆもはらはむ | 宣時(北条) |
281 | いろかはる のへのあさちに おくつゆを すゑはにかけて あきかせそふく | 俊定(藤原経俊男) |
282 | わけすくる のちのささはら さらてたに とまらぬつゆに あきかせそふく | 隆教 |
283 | ゆふくれは あさはののらの つゆなから こすけみたれて あきかせそふく | 為藤 |
284 | やまふかき すまひからにや みにしむと みやこのあきの かせをとははや | 後嵯峨院 |
285 | みつくきの をかのまくすを あまのすむ さとのしるへと あきかせそふく | 定家 |
286 | おきもあへす みたれにけりな しらつゆの たままくくすに あきかせそふく | 後宇多院 |
287 | ふくかせに たへぬくさはの つゆよりも あきのこころそ おきところなき | 実兼 |
288 | さらにまた おいのなみたの つゆそそふ いつもなれにし あきのあはれに | 御匣(式乾門院) |
289 | ひとはみな こころのほかの あきなれや わかそてはかり おけるしらつゆ | 讃岐(二条院) |
290 | うつらなく のはらのあさち うちなひき ゆふつゆもろく あきかせそふく | 後二条院 |
291 | なかめわひ ゆくへもしらぬ ものそおもふ やへのしほちの あきのゆふくれ | 実朝 |
292 | ふちはかま きつつなれゆく たひひとの すそののはらに あきかせそふく | 土御門院 |
293 | ゆくひとも とまらぬのへの はなすすき まねきかねてや つゆこほるらむ | 惟明親王 |
294 | たのましな かせのままなる はなすすき こころとまねく たもとならねは | 道玄 |
295 | ゆふくれは をはなかすゑに つゆおちて なひくともなく あきかせそふく | 後伏見院 |
296 | ゆふされは あきかせふきて たかまとの をはなかうへの つゆそこほるる | 行家(藤原知家男) |
297 | たひひとの いるののすすき ほにいてて そてのかすそふ あきかせそふく | 実氏 |
298 | つゆむすふ きりのまかきの をみなへし みてすきかたき あきのゆふくれ | 道覚法親王 |
299 | あたにのみ いはれののへの をみなへし うしろめたくも おけるつゆかな | 読人不知 |
300 | あさまたき のはらしのはら わけきつる わかころもての はきかはなすり | 公相 |
301 | わけゆかは たかたもとにも うつるらむ わかしめしのの はきかはなすり | 守覚法親王 |
302 | いととまた をりてそまさる あきはきの はなのにしきの つゆのたてぬき | 亀山院 |
303 | たちこむる きりのまかきの あさあけに にはのまはきの はなそしをるる | 公顕 |
304 | このあきも なほたちなれて はきのとの はなこそおいの かさしなりけれ | 資宣 |
305 | ふるさとの にはのあきはき いまよりや したはのつゆも いろかはるらむ | 親清女 |
306 | なくしかの なみたをそへて こはきはら はなにもいとと つゆそあまれる | 久明親王 |
307 | ゆふされは のちのかるかや うちなひき みたれてのみそ つゆもおきける | 実朝 |
308 | いまもまた をりをわすれぬ はなならは ことしもむすへ あきのしらつゆ | 為世(御子左藤原為氏男) |
309 | うかりける たかならはしに あきくさの うつろふころは しかのなくらむ | 帥(鷹司院) |
310 | ははそはら いろつきぬらし やましろの いはたのをのに しかそなくなる | 忠景 |
311 | ゆふはやま けふこえくれは たひころも すそののかせに をしかなくなり | 実兼 |
312 | くれゆけと はやましけやま さはりおほみ あはてやしかの つまをこふらむ | 後嵯峨院 |
313 | ゆふくれは わきてあはれや しらるらむ つままつやまの さをしかのこゑ | 隆親(藤原隆衡男) |
314 | みやこより たつねてきけは をくらやま にしこそあきと しかもなくなれ | 国冬 |
315 | おもひあまる こころのほとも きこゆなり しのふのやまの さをしかのこゑ | 寂蓮 |
316 | あきののの をはなにましる しかのねは いろにやつまを こひわたるらむ | 信実 |
317 | みやきのの このしたつゆに たちぬれて いくよかしかの つまをこふらむ | 雅有 |
318 | ほかにまた のはなけれはや さをしかの ここにしもなく こゑのきこゆる | 後嵯峨院 |
319 | これもまた おいのともとそ なりにける ききてふるのの さをしかのこゑ | 隆親(藤原隆衡男) |
320 | しかのねを きくにつけても すむひとの こころしらるる をののやまさと | 西行 |
321 | うかりける わかみひとつの ゆふくれを たくひありとや しかもなくらむ | 読人不知/公順 |
322 | たへてなほ すきけるものを さをしかの こゑきかさりし あきのゆふへは | 一条(昭慶門院) |
323 | やまのはに またるるつきは いてやらて まつすみのほる さをしかのこゑ | 氏久 |
324 | こはきはら よさむのつゆの おきもせす ねもせてしかや つまをこふらむ | 宗尊親王 |
325 | かせすさふ をののしのはら つまこめて つゆわけぬるる さをしかのこゑ | 慶融 |
326 | いとふへき ものとはきかす やまたもる いほのねさめの さをしかのこゑ | 時村 |
327 | おもふこと のこらぬものは しかのねを ききあかしつる ねさめなりけり | 清輔 |
328 | たのむへき たかたまつさは なけれとも そらにまたるる はつかりのこゑ | 公雄女 |
329 | ふるさとを くもゐはるかに へたてきて いまそみやこに かりはなくなる | 帥(鷹司院) |
330 | しきしまや やまとひこえて くるかりの つはさあらはに すめるつきかけ | 土御門院 |
331 | あけかたの くもゐのかりの こゑはして とやまのきりに のこるつきかけ | 家良 |
332 | あけゆけは みちこそみゆれ たかせふね たつかはきりの そらにきえつつ | 実氏 |
333 | かさゆひの しまたちかくす あさきりに いやとほさかる たななしをふね | 土御門院 |
334 | あまのすむ いそへのとまや たえたえに きりふきのこす あきのうらかせ | 定為 |
335 | ふるさとは きりのまかきの へたてさへ あらはにみする あきのゆふかせ | 実兼 |
336 | きりふかき みやまのさとの しはのとに させともうすき ゆふひかけかな | 泰宗 |
337 | いてぬれと ひかりはなほそ またれける またくれはてぬ やまのはのつき | 兼氏 |
338 | くるるまの つきまちいつる やまのはに かかるくもなく あきかせそふく | 為道 |
339 | やまのはの よこきるくもに うつろひて いてぬとみゆる あきのよのつき | 公孝 |
340 | くもはらふ ゆふかせわたる ささのはの みやまさやかに いつるつきかけ | 宗尊親王 |
341 | あきかせの えたふきしをる このまより かつかつみゆる やまのはのつき | 順徳院 |
342 | かせのおとも なくさめかたき やまのはに つきまちいつる さらしなのさと | 小宰相(土御門院) |
343 | ほともなく くものこなたに いてにけり あらしにむかふ やまのはのつき | 宗宣(北条宣時男) |
344 | きりはるる ふしみのくれの あきかせに つきすみのほる をはつせのやま | 有房(六条通有男) |
345 | すみのほる つきのあたりは そらはれて やまのはとほく のこるうきくも | 為兼 |
346 | みねたかき まつのひひきに そらすみて あらしのうへに つきそなりゆく | 家経(一条実経男) |
347 | おもふこと ありてやみまし あきのつき くもふきはらふ かせなかりせは | 俊恵 |
348 | あきかせに ふはのせきやの あれまくも をしからぬまて つきそもりくる | 信実 |
349 | わきてなほ ひかりをそへて てるつきの かつらのさとに あきかせそふく | 実兼 |
350 | あまのかは くものなみなき あきのよは なかるるつきの かけそのとけき | 範兼 |
351 | はつせかは ゐてこすなみの おとよりも さやかにすめる あきのよのつき | 光俊(葉室光親男) |
352 | あきのよの つきもなほこそ すみまされ よよにかはらぬ しらかはのみつ | 為教 |
353 | またれつる あきはこよひと しらかはの なかれもきよく すめるつきかけ | 憲実 |
354 | まののうら よふねこきいつる おとふけて いりえのなみに つきそさやけき | 源承 |
355 | あきのよは ひらのやまかせ さえねとも つきにそこほる しかのうらなみ | 為子(従二位) |
356 | すみのえの つきにかみよの こととへは まつのこすゑに あきかせそふく | 家隆 |
357 | くもはらふ なこのいりえの しほかせに みなとをかけて すめるつきかけ | 具房 |
358 | くもりなく つきもれとてや かはくちの せきのあらかき まとほなるらむ | 後嵯峨院 |
359 | きよみかた くもをはとめぬ うらかせに つきをそやとす なみのせきもり | 資季 |
360 | もしほやく けふりもたえて まつしまや をしまのなみに はるるつきかけ | 後二条院 |
361 | しほかせの なみかけころも あきをへて つきになれたる すまのうらひと | 為氏 |
362 | もしほやく けふりなたてそ すまのあまの ぬるるそてにも つきはみるらむ | 国冬 |
363 | つきすめは あまのもしほの けふりたに たちものほらす うらかせそふく | 行家(藤原知家男) |
364 | いつかたに しほやくけふり なひくらむ そらふくかせは つきもくもらす | 少将(藻壁門院) |
365 | つきのかけ しきつのうらの まつかせに むすふこほりを よするなみかな | 俊成(藤原俊忠男) |
366 | うらひとの こほりのうへに おくあみの しつむそつきの しるしなりける | 国助 |
367 | ひさかたの くもゐをかけて おきつかせ ふきあけのはまは つきそさやけき | 最信 |
368 | あらしふく いこまのやまの くもはれて なかゐのうらに すめるつきかけ | 国信 |
369 | かせのおとも こころつくしの あきやまに このまさひしく すめるつきかけ | 為継 |
370 | ふきわくる あきかせなくは いかにして しけきこのまの つきはもらまし | 万秋門院 |
371 | つのくにの いくたのもりに ひとはこて つきにこととふ よはのあきかせ | 宗尊親王 |
372 | かすかのの のもりのかかみ これなれや よそにみかさの やまのはのつき | 公朝 |
373 | あくかれて ゆくすゑとほき かきりをも つきにみつへき むさしののはら | 師信 |
374 | つゆわくる のはらのはきの すりころも かさねてつきの かけそうつろふ | 能清 |
375 | みるままに こころそうつる あきはきの はなののつゆに やとるつきかけ | 亀山院 |
376 | をやまたの いなはかたより つきさえて ほむけのかせに つゆみたるなり | 後鳥羽院 |
377 | さをしかの つまとふをたに しもおきて つきかけさむし をかのへのやと | 定家 |
378 | つゆむすふ かとたのおしね ひたすらに つきもるよはは ねられやはする | 教定(飛鳥井雅経男) |
379 | かせわたる のへのをはなの ゆふつゆに かけもとまらぬ そてのつきかな | 重経 |
380 | すみなれて いくよのつきか やとるらむ さとはむかしの よもきふのつゆ | 大蔵卿(遊義門院) |
381 | かたそきの つきをむかしの いろとみて なほしもはらふ まつのあきかせ | 経国 |
382 | かみよより くもらぬかけや みつのえの よしののみやの あきのよのつき | 冬平 |
383 | こよひしも なとわかやとを とはさらむ つきにそみゆる ひとのこころは | 兼実 |
384 | みるひとの こころにまつそ かかりける つきのあたりの よはのうきくも | 亀山院 |
385 | たえたえに よそのそらゆく うきくもを つきにかけしと あきかせそふく | 実教 |
386 | やまのはを むらくもなから いてにけり しくれにましる あきのつきかけ | 行念 |
387 | なれてたれ しはしもゆめを むすふらむ つきをみやまの あきのあらしに | 有家(藤原重家男) |
388 | なかむるに なくさむことは なけれとも つきをともにて あかすころかな | 西行 |
389 | なれぬれは おいとなるてふ ことわりも みにしられける あきのつきかな | 実兼 |
390 | なかめきて はてはおいとそ なりにける つきはあはれと いはぬものゆゑ | 重綱(藤原) |
391 | よしやたた おいすもあらす それをたに おもふこととて つきをなかめむ | 宗成 |
392 | おもふこと ありしむかしの あきよりや そてをはつきの やととなしけむ | 雅有 |
393 | つかへこし あきはむそちに とほけれと くもゐのつきそ みるここちする | 為家 |
394 | みをなけく いそちのあきの ねさめにそ ふけぬるつきの かけはかなしき | 良覚 |
395 | あくかるる こころはきはも なきものを やまのはちかき つきのかけかな | 定家 |
396 | あきのよの ふかきあはれを ととめけり よしののつきの あけかたのそら | 俊成女 |
397 | わたのはら やまのはしらて ゆくつきは あくるそらこそ かきりなりけれ | 雅成親王 |
398 | もにすまぬ のはらのむしも われからと なかきよすから つゆになくなり | 良経(九条兼実男) |
399 | きりきりす そことはみえぬ にはのおもの くれゆくくさの かけになくなり | 後二条院 |
400 | よもすから ねをはなくとも きりきりす われよりまさる ものはおもはし | 公親 |
401 | なきあかす のはらのむしの おもひくさ をはなかもとや よさむなるらむ | 景綱 |
402 | あきのよは つらきところも さそなけに おほかるのへの まつむしのこゑ | 為子(贈従三位) |
403 | たかあきの つらさうらみて きりきりす くるれはのへの つゆになくらむ | 為氏 |
404 | たつねても たれとへとてか きりきりす ふかきよもきの つゆになくらむ | 親長 |
405 | かとたふく いなはのかせや さむからむ あしのまろやに ころもうつなり | 家隆 |
406 | なかめても こころのひまの あれはこそ つきにはひとの ころもうつらめ | 宣時(北条) |
407 | かせさむき すそののさとの ゆふくれに つきまつひとや ころもうつらむ | 為道 |
408 | たかさとと ききもわかれす ゆふつくよ おほつかなくも うつころもかな | 為方 |
409 | このころは あさのさころも うつたへに つきにそさねぬ あきのさとひと | 後宇多院 |
410 | あきかせに よさむのころも うちわひぬ ふけゆくつきの をちのさとひと | 定家 |
411 | ほかよりは おなしやととそ きこゆらむ かきねへたてて ころもうつこゑ | 後二条院 |
412 | あれはてて かせもたまらぬ ふるさとの よさむのねやに ころもうつなり | 道良女 |
413 | あきかせの みにしむころの さよころも うちもたゆます たれをまつらむ | 経継 |
414 | さとひとも さすかまとろむ ほとなれや ふけてきぬたの おとそすくなき | 為世(御子左藤原為氏男) |
415 | きくひとの みにしむあきの つまそとも おもひもいれす うつころもかな | 小宰相(土御門院) |
416 | よそにきく わかねさめたに なかきよを あかすやしつか ころもうつらむ | 為氏 |
417 | あはれにも ころもうつなり ふしみやま まつかせさむき あきのねさめに | 慈円 |
418 | さとつつき よはのあらしや さむからむ おなしねさめに ころもうつなり | 成茂 |
419 | たかさとも よさむはしるを あきかせに わかいねかてと うつころもかな | 家雅 |
420 | なかきよは さらてもさむる あかつきの ゆめをのこして うつころもかな | 最信 |
421 | よをさむみ ともにおきゐる つゆしもを そてにかさねて うつころもかな | 俊定(藤原経俊男) |
422 | ほともなく うつろふきくの つゆのまに ことしのあきも またやくれなむ | 亀山院 |
423 | うつろふも さかりをみする はななれは しもにをしまぬ にはのしらきく | 定為 |
424 | ゆくくもの うきたのもりの むらしくれ すきぬとみれは もみちしてけり | 兼氏 |
425 | かねてたに うつろふとみし かみなひの もりのこのはに しくれふるなり | 実兼 |
426 | ちはやふる かみなひやまの むらしくれ もみちをぬさと そめぬひはなし | 為家 |
427 | はつしくれ ひことにふれは やましろの いはたのもりは いろつきにけり | 家良 |
428 | みせはやな しくるるみねの もみちはの こかれてそむる いろのふかさを | 公澄 |
429 | ゆきてみむ あかぬこころの いろそへて そむるもふかき やまのもみちは | 基忠(鷹司兼平男) |
430 | たちよらむ もみちのかけの みちもなし したしはふかき あきのやまもと | 家教 |
431 | あさほらけ はれゆくやまの あききりに いろみえそむる みねのもみちは | 兼季 |
432 | いくしほと わかぬこすゑの もみちはに なほいろそふる ゆふつくひかな | 泰宗 |
433 | あきのいろは むすひもとめぬ ゆふしもに いととかれゆく にはのあさちふ | 実泰 |
434 | をしめとも あきはすゑのの しものしたに うらみかねたる きりきりすかな | 後鳥羽院 |
435 | なかつきの すゑののまくす しもかれて かへらぬあきを なほうらみつつ | 伏見院 |
436 | なかつきや あきのひかすも いまいくか のこるこすゑの もみちをかみむ | 達智門院 |
437 | ととまらぬ あきこそあらめ うたてなと もみちをさへに さそふあらしそ | 公顕 |
438 | たつたひめ わかるるあきの みちすから もみちのぬさを おくるやまかせ | 家清 |
439 | もみちはも けふをかきりと しくるなり あきのわかれの ころもてのもり | 定為 |
440 | ものことに わすれかたみの わかれにて そをたにのちと くるるあきかな | 定家 |
441 | はるかなる みねのくもまの こすゑまて さひしきいろの ふゆはきにけり | 良経(九条兼実男) |
442 | かきくらし くものはたてそ しくれゆく あまつそらより ふゆやきぬらむ | 後嵯峨院 |
443 | けさはまた そらにやふゆを しらすらむ そてにふりにし しくれなれとも | 道玄 |
444 | まとろまぬ すまのせきもり あけぬとて たゆむまくらも うちしくれつつ | 定家 |
445 | かみなつき しくれすとても あかつきの ねさめのそては かわくものかは | 雅有 |
446 | われはかり ほさぬそてかと かみなつき よそのねさめを しくれにそとふ | 隆博 |
447 | いまはたた おいのねさめに かこつかな むかしもききし おなししくれを | 資宣 |
448 | やまかせに たたよふくもの はれくもり おなしをのへに ふるしくれかな | 為兼 |
449 | やまかせの ふくにまかせて うきくもの かからぬかたも ふるしくれかな | 時範 |
450 | へたてつる をのへのくもは かつはれて いりひのよそに ゆくしくれかな | 久明親王 |
451 | まきのやに つもるこのはを けさみすは しくれとのみそ おもひはてまし | 宗尊親王 |
452 | しくれをは あきよりききし まきのやに ふゆきにけりと ふるこのはかな | 教範 |
453 | おとにこそ しくれもききし ふるさとの このはもるまて あれにけるかな | 隆信 |
454 | ちりはつる のちさへあとを さためぬは あらしのすゑの このはなりけり | 為家 |
455 | ふりかくす このはのしたの みなせかは いつくにみつの ありてゆくらむ | 尚長(丹波経長男) |
456 | まさきちる みやまのみちは うつもれて このはよりこそ ふゆこもりけれ | 源承 |
457 | こすゑには のこるいろなき ふゆかれの にはにのみきく かせのおとかな | 為相 |
458 | たのめおく ふるさとひとの あともなし ふかきこのはの しものしたみち | 道家 |
459 | しもかれの まかきのきくの はなかたみ めならふいろも みえぬころかな | 隆祐 |
460 | おのつから のこるもさひし しもかれの くさはにましる にはのしらきく | 師良(一条実経男) |
461 | つらかりし あきのわかれに つれなくも かれなてきくの なにのこるらむ | 良教 |
462 | はきかはな ちりにしをのの ふゆかれに しものふるえの いろそさひしき | 後二条院 |
463 | しもとなる あきのわかれの つゆのまに やかてかれゆく にはのふゆくさ | 公孝 |
464 | いつとても かかるひとめの やまさとは くさのはらにそ ふゆをしりける | 為家 |
465 | かれゆくも くさはにかきる ふゆならは ひとめはかりは なほやまたまし | 祐春 |
466 | ふゆかれは あとなきのへの ゆふくれに しもをふきしく かせそさむけき | 定房(藤原経長男) |
467 | しきしまや みむろのやまの いはこすけ それともみえす しもさゆるころ | 順徳院 |
468 | くちのこる このはすくなき やまかせに むすひさためぬ しものしたくさ | 通光 |
469 | よをかさね やまちのしもも しらかしの ときはのいろそ ふゆなかりける | 道家 |
470 | こすゑをは まはらになして ふゆかれの しものくちはに あらしふくなり | 宗秀(大江時秀男) |
471 | あさしもの かれはのあしの ひまをあらみ やすくやふねの みなといるらむ | 基家 |
472 | しもふかき のへのをはなは かれはてて わかそてはかり つきそやとれる | 経継 |
473 | みるままに くももこのはも さそはれて あらしにのこる みねのつきかけ | 実兼 |
474 | きよみかた せきもるなみは こほらぬに ひとりさえたる ふゆのつきかけ | 良実 |
475 | みしままに おもひやりてそ しのはるる とよのあかりの つきのおもかけ | 基忠(鷹司兼平男) |
476 | あまつそて ふるしらゆきに をとめこか くものかよひち はなそちりかふ | 家隆 |
477 | あかしかた つきのてしほや みちぬらむ すまのなみちに ちとりとわたる | 俊成(藤原俊忠男) |
478 | すまのせき あけかたちかき つきかけに うらのとわたる ちとりなくなり | 性助法親王 |
479 | まつしまや をしまのいそに よるなみの つきのこほりに ちとりなくなり | 俊成女 |
480 | せきのとは またあけやらて きよみかた そらよりかよふ さよちとりかな | 後二条院 |
481 | とほさかる しほひのかたの うらかせに ゆふなみたかく ちとりなくなり | 為経(甘露寺藤原資経男) |
482 | しかのうらの まつふくかせの さひしさに ゆふなみちとり たちゐなくなり | 公実 |
483 | かせさむみ よやふけぬらむ しなかとり ゐなのみなとに ちとりなくなり | 顕仲(藤原資仲男) |
484 | さゆるよは すまのうらなみ たちかへり おなしかたにも なくちとりかな | 為継 |
485 | わたのはら こきいてしふねの ともちとり やそしまかくれ こゑきこゆなり | 道助法親王 |
486 | よしのかは きよきかはうちの やまかせに こほらぬたきも よるはさえつつ | 道家 |
487 | よしのかは いはきりおつる たきつせの いつのよとみに こほりそむらむ | 実伊 |
488 | おのつから よとむこのはを そのままに さそひもはてす こほるやまかは | 邦長 |
489 | さえわたる せせのいはなみ とたえして あらしにはやく こほるやまかは | 定資 |
490 | ふゆされは あらしをさむみ やまかはの あさきせよりそ まつこほりける | 親子(従三位源) |
491 | おのつから こほりのこれる ほとはかり たえたえにゆく やまかはのみつ | 永福門院 |
492 | なつみかは かはおとたえて こほるよに やまかせさむく かもそなくなる | 伏見院 |
493 | あしかもの たまものとこの うきまくら さためぬなみに まかせてそゆく | 亀山院 |
494 | みつとりの しもうちはらふ はかせにや こほりのことは いととさゆらむ | 教長 |
495 | さえまさる をしのけころも いかならむ こほりもしもも よをかさねつつ | 為子(従二位) |
496 | さゆるよは おなしいりえも あしかもの さわかぬかたや まつこほるらむ | 氏久 |
497 | にほとりの したのかよひも たえぬらむ のこるなみなき いけのこほりに | 定家 |
498 | うらひとも よやさむからし あられふる かしまのさきの おきつしほかせ | 為氏 |
499 | おろかなる ひとのなみたに いつなれて あられもそての たまとみゆらむ | 宗尊親王 |
500 | はなすすき かれののくさの たもとにも たまちるはかり ふるあられかな | 知家 |
501 | あられふる おとそさひしき みかりする かたののみのの ならのはかしは | 通光 |
502 | けさのまに ふりこそかはれ しくれつる のちせのやまの みねのしらゆき | 公世 |
503 | きのふけふ みやこのそらも かせさえて とやまのくもに ゆきはふりつつ | 亀山院 |
504 | ときはきの しけきみやまに ふるゆきは こすゑよりこそ まつつもりけれ | 道覚法親王 |
505 | はてはまた まつのあらしも うつもれて しつかにつもる やまのしらゆき | 隆教 |
506 | しはしこそ ふくともかせは しられけれ ゆきにこもれる たかさこのまつ | 道瑜 |
507 | よもすから ふりつむゆきの あさほらけ にほはぬはなを こすゑにそみる | 師重(源師親男) |
508 | いつのまに とはすとひとを うらむらむ けさこそつもれ にはのしらゆき | 宣時(北条) |
509 | いかはかり けさふるゆきに またれまし とはれぬへしと おもふみならは | 顕氏(六条顕家男) |
510 | おなしくは ひかけのゆきの きえぬまを みせはやとのみ ひとそまたるる | 親世 |
511 | みせはやと まつらむとてそ いそきつる ひかけのゆきの あとをたつねて | 為氏 |
512 | あとつけて けさしもみつる ことのはに ふるもかひある やとのしらゆき | 基忠(鷹司兼平男) |
513 | かきりあれは ふかきみやまも いかならむ けふここのへに つもるしらゆき | 亀山院 |
514 | あとつけぬ ほとをもみせむ にはのゆき ひとのとふまて きえすもあらなむ | 後二条院 |
515 | とはれても またとふひとを まつほとに もとのあとさへ うつむしらゆき | 冬基 |
516 | ふるゆきに ゆききのみちも あとたえて いくかになりぬ をののさとひと | 祐盛 |
517 | くもふかき みねのあさけの いかならむ まきのとしらむ ゆきのひかりに | 良経(九条兼実男) |
518 | みにつもる としをはしらて しらゆきの ふるをよそにも おもひけるかな | 良教 |
519 | なかめても いくとせふりぬ たかまとの のかみのゆきの あけほののそら | 実兼 |
520 | あらちやま すそののあさち かれしより みねにはゆきの ふらぬひもなし | 宗尊親王 |
521 | いてぬより こほりてさゆる ひかりかな つきまつやまの みねのしらゆき | 忠長 |
522 | あさあけの ひかたをかけて しほつやま ふきこすかせに つもるしらゆき | 国助 |
523 | わかのうらに ふりつむゆきも けふしこそ よよにかはらぬ あとはみゆらめ | 基忠(鷹司兼平男) |
524 | なかめやる なみまやいつく しらゆきの またふりうつむ あはちしまやま | 雅言 |
525 | ならしはや かれはのすゑに ゆきちりて とたちのはらに かへるかりひと | 土御門院 |
526 | ふるゆきに ひとこそとはね すみかまの けふりはたえぬ おほはらのさと | 讃岐(二条院) |
527 | やまひとの すみやくならし ゆきふかき とほつをのへに けふりたつみゆ | 兼季 |
528 | くれはてて いまはかきりと ゆくとしの みちふりかくせ よはのしらゆき | 京極 |
529 | みにつもる ものなりけりと おもふより おいていそかぬ としのくれかな | 長舜 |
530 | すきやすき つきひのほとも いまさらに おもひしられて としそくれぬる | 実兼 |
531 | いそちあまり おくるとおもひし みのうへに またかへりける としのくれかな | 為家 |
532 | こころとや ゆくもかへるも なけくらむ ひとやりならぬ ひなのわかれち | 後嵯峨院 |
533 | きみかあたり みつつしのはむ あまさかる ひなのなかやま くもなへたてそ | 基俊 |
534 | ゆくひとの またあふさかの せきならは たむけのかみを なほやたのまむ | 定家 |
536 | はるはると ゆくすゑしらぬ わかれちは ととまるひとの まとふなりけり | 隆信 |
537 | いかにせむ とまらぬはるの わかれにも まさりてをしき ひとのなこりは | 宗尊親王 |
538 | めくりこむ ほとをまつこそ かなしけれ あかぬみやこの はるのわかれは | 隆弁 |
539 | おもひやれ さためなきよの わかれちは これをかきりと いはぬはかりそ | 読人不知/長舜 |
540 | おなしよの いのちのうちの みちたにも おくれさきたつ ほとそかなしき | 国助 |
541 | ちきりありて めくりあひぬる おなしよの いのちのうちの みちはへたつな | 為顕 |
542 | なからへて ありはてぬよの ほとをたに いきてわかれの みちそかなしき | 忠兼(藤原忠行男) |
543 | なからへて またあふまての いのちこそ あかぬわかれに そへてをしけれ | 読人不知 |
544 | つらしとも いはぬさへこそ かなしけれ わかれもひとの こころならねは | 実冬(藤原公光男) |
545 | よもすから わけつるみちの つゆよりも おもひおくにそ そてはぬれける | 教範 |
546 | たちかへる やまちもふかき しらつゆの おくるるそては ぬれまさりけり | 静仁法親王 |
547 | つきはかり おくるとひとや おもひけむ わかこころをも そへしやまちに | 国助 |
548 | みやこたに とほしとおもひし やまのはを いくへへたてむ みねのしらくも | 高弁 |
549 | たひころも よそにたつひは つらくとも ちきりしなかに こころへたつな | 隆博 |
550 | かへりこむ ほとはそのひと ちきれとも たちわかるるは いかかかなしき | 教長 |
551 | かへりこむ よのはかなさを おもはすは こよひやひとに ちきりおかまし | 光頼 |
552 | かへりゆく ひとのこころを おもふにも はなれかたきは みやこなりけり | 西行 |
553 | とりのねに せきのといつる たひひとを またよふかしと おくるつきかけ | 為家 |
554 | とりのねを ふもとのさとに ききすてて よふかくこゆる さやのなかやま | 読人不知 |
555 | かねのおとも きこえぬたひの やまちには あけゆくそらを つきにしるかな | 後鳥羽院 |
556 | すすわくる しのにをりはへ たひころも ほすひもしらす やまのしたつゆ | 順徳院 |
557 | いはねふみ かさなるやまの とほけれは わけつるくもの あともしられす | 亀山院 |
558 | かへりみる そのおもかけは たちそひて ゆけはへたつる みねのしらくも | 定家 |
559 | やまのはに しくるるくもを さきたてて たひのそらにも ふゆはきにけり | 白河院 |
560 | たひころも しくれてとまる ゆふくれに なほくもこゆる あしからのやま | 頼基(藤原頼平男) |
561 | やまたかみ けふはふもとに なりにけり きのふわけこし みねのしらくも | 家良 |
562 | たひころも あさたつやまの みねこえて くものいくへを そてにわくらむ | 貞時 |
563 | おもひやれ いくへのくもの へたてとも しらぬこころに はれぬなみたを | 三河(中務卿宗尊親王家) |
564 | うくつらき くものへたては うつつにて おもひなくさむ ゆめたにもみす | 宗尊親王 |
565 | ふるさとに おもひいつとも しらせはや こえてかさなる やまのはのつき | 為家 |
566 | わすられぬ おなしみやこの おもかけを つきこそそらに へたてさりけれ | 隆博 |
567 | みやこおもふ なみたをほさて たひころも きつつなれゆく そてのつきかけ | 読人不知 |
568 | たちよれは つきにそみゆる かかみやま しのふみやこの よはのおもかけ | 雅有 |
569 | こえかかる やまちのつきの いらぬまに さとまてゆかむ よはふけぬとも | 景綱 |
570 | つきにゆく さののわたりの あきのよは やとありとても とまりやはせむ | 国助 |
571 | つきみれは たひねのとこも わすられて つゆのみむすふ くさまくらかな | 寂蓮 |
572 | みやこにて みしおもかけそ のこりける くさのまくらの ありあけのつき | 良実 |
573 | さきたちて たれかくさはを むすひけむ とまるまくらに のこるしらつゆ | 基家 |
574 | みやこたに いまはよさむの あきかせに たひねのとこを おもひこそやれ | 氏久 |
575 | おとにこそ ふくともききし あきかせの そてになれぬる しらかはのせき | 頼範女 |
576 | きりふかき やまのしたみち わけわひて くれぬにとまる あきのたひひと | 守禅 |
577 | すききつる やまわけころも ほしやらて すそののつゆに なほやしをれむ | 顕資 |
578 | こよひかく しをるるそての つゆなから あすもやこえむ うつのやまみち | 範重 |
579 | たひころも しをれぬみちは なけれとも なほつゆふかし さやのなかやま | 俊成(藤原俊忠男) |
580 | たひころも ゆふしもさむき ささのはの さやのなかやま あらしふくなり | 家良 |
581 | ふるさとを いくよへたてて くさまくら つゆよりしもに むすひきぬらむ | 源承 |
582 | くさまくら むすふともなき ゆめをたに なにとあらしの おとろかすらむ | 久時 |
583 | ふるさとを いてしにまさる なみたかな あらしのまくら ゆめにわかれて | 定家 |
584 | いくよわれ かたしきわひぬ たひころも かさなるやまの みねのあらしに | 実雄 |
585 | おもひおく みやこのはなの おもかけの たちもはなれぬ やまのはのくも | 実雄 |
586 | よこくもは みねにわかれて あふさかの せきちのとりの こゑそあけぬる | 清兼 |
587 | きよみかた いそやまつたひ ゆきくれて こころとせきに とまりぬるかな | 有房(六条通有男) |
588 | さすらふる こころにみをも まかせすは きよみかせきの つきをみましや | 行意 |
589 | さらてたに かわかぬそてそ きよみかた しはしなかけそ なみのせきもり | 俊頼(源経信男) |
590 | きよみかた うらかせさむき よるよるは ゆめもゆるさぬ なみのせきもり | 為子(従二位) |
591 | きよみかた うちいててみれは いほはらの みほのおきつは なみしつかなり | 為氏 |
592 | なれきつる やまのあらしを ききすてて うらちにかかる たひころもかな | 為相 |
593 | みやことり いくよかここに すみたかは ゆききのひとに なのみとはれて | 清誉 |
594 | こころなる みちたにたひは かなしきに かせにまかせて いつるふなひと | 宗尊親王 |
595 | ふきおくる かせのたよりも しらすけの みなとわかれて いつるふなひと | 俊定(藤原経俊男) |
596 | こきいつる おきつしほちの あとのなみ たちかへるへき ほとそはるけき | 資季 |
597 | このころは あまのとまやに ふしなれて つきのてしほの ほとをしるかな | 心海 |
598 | すみよしの まつのいはねを まくらにて しきつのうらの つきをみるかな | 実定 |
599 | とまやかた まくらなかれぬ うきねには ゆめやはみゆる あらきはまかせ | 順徳院 |
600 | なれにける あしやのあまも あはれなり ひとよにたにも ぬるるたもとを | 順徳院 |
601 | みやこいてて ももよのなみの かちまくら なれてもうとき ものにそありける | 秀能(藤原秀宗男) |
602 | おのつから ふるさとひとも おもひいては たひねにかよふ ゆめやみゆらむ | 親清女妹 |
603 | おもひきや したひなれにし はるのかり かへるやまちに またむものとは | 忠資 |
604 | こしちには みやこのあきの ここちして さそなまつらむ はるのかりかね | 公雄 |
605 | ふるさとの おもかけそひし よはのつき またもろこしの かたみなりけり | 志遠 |
606 | さらぬたに とりのねまちし くさまくら すゑをみやこと なほいそくかな | 読人不知 |
607 | さそふへき みつのこしまの ひともなし ひとりそかへる みやここひつつ | 道家 |
608 | いりかたく さとりかたしと きくかとを ひらくははなの みのりなりけり | 俊成(藤原俊忠男) |
609 | こをおもふ おやのをしへの なかりせは かりのやとりに まよひはてまし | 経任(中御門藤原為経男) |
610 | たつねつる くもよりたかき やまこえて またうへもなき はなをみるかな | 了然 |
611 | ふけゆけは いつへきつきと きくからに かねてこころの やみそはれぬる | 後嵯峨院 |
612 | むすひおく よよのちきりも ふかくさの つゆのかことに ぬるるそてかな | 公紹 |
613 | かりそめの やとともしらて たつねこし まよひそみちの しるへなりける | 円世 |
614 | したにすむ もとのこころを しらぬかな のなかのしみつ みくさゐぬれは | 道宝 |
615 | なとかわれ ころものうらの たまさかに のりにあひても さとらさりけむ | 乗雅 |
616 | ころもてに つつみしたまの あらはれて うらなくひとに みゆるけふかな | 行尊 |
617 | ひとこゑを ききそめてこそ ほとときす なくによふかき ゆめはさめけれ | 公澄 |
618 | とふひとの あとなきしはの いほりにも さしくるつきの ひかりをそまつ | 俊成(藤原俊忠男) |
619 | やまひとの こけのむしろに みをかへて いかにちとせを しきしのひけむ | 有長 |
620 | たのまれぬ こころそみゆる きてもまた むかしきそらに かへるかりかね | 光俊(葉室光親男) |
621 | くさのいほ しはのあみとの すまひまて わかぬはつきの ひかりなりけり | 源為 |
622 | おほそらを みのりのかせや はらふらむ くもかくれにし つきをみるかな | 俊頼(源経信男) |
623 | あらさらむ のちのよかけし ちきりこそ たのむにつけて うれしかりけれ | 忠良 |
624 | ちきりおく そのゆくすゑの たのみあらは このよをうしと なにかなけかむ | 高倉(八条院) |
625 | わするなと いひてもそてや しをれけむ あとととむへき このよならねは | 寂蓮 |
626 | ゆくみつの ふかきなかれに しつみても あさせありとそ なほたのむへき | 光成(大炊御門光俊男) |
627 | はるのよの かすみやそらに はれぬらむ おほろけならぬ つきのさやけさ | 兼氏 |
628 | つゆしもの きえてそいろは まさりける あさひにむかふ みねのもみちは | 宗尊親王 |
629 | よよをへて たへなるのりの はなならは ひらけむときの ちきりたかふな | 大弐(安嘉門院) |
630 | ならひこし たへなるのりの はなゆゑに きみにとはるる みとそなりぬる | 忠源 |
631 | わしのやま のちのはるこそ またれけれ こころのはなの いろをたのみて | 聖忠 |
632 | わしのみね やとせのあきの つききよみ そのひかりこそ こころにはすめ | 後宇多院 |
633 | わしのやま みのりのにはに ちるはなを よしののみねの あらしにそみる | 良経(九条兼実男) |
634 | つねにすむ わしのたかねの つきたにも おもひしれとそ くもかくれける | 俊成(藤原俊忠男) |
635 | きさらきの なかはのそらの よはのつき いりにしあとの やみそかなしき | 西音 |
636 | やみちをは みたのみのりに まかせつつ はるのなかはの つきはいりにき | 湛空 |
637 | ここのへに ふりしくゆきは いにしへの のりのむしろの あとやみゆらむ | 道玄 |
638 | いにしへの あとをしらせて ふるゆきに たのむこころそ ふかくなりぬる | 亀山院 |
639 | おもひきや わかたつそまの かひありて まれなるあとを のこすへしとは | 公什 |
640 | しなしなに かはるこころの いろもみな はてはひとつの ちかひなりけり | 為方 |
641 | おろかなる こころにたねは なかりけり よものくさきの あるにまかせて | 公朝 |
642 | たれゆゑに このたひかかる みをうけて またありかたき のりにあふらむ | 覚源 |
643 | われとたた ゆきてこそみめ のりのみち ひとのをしへを しるへとはせし | 読人不知 |
644 | まよひしも ひとつくにそと さとるなる まことのみちの おくそゆかしき | 隆弁 |
645 | をしへおく のりのみちしは ふみみれは つゆもあたなる ことのはそなき | 公什 |
646 | なつくさの ことしけきよに まよひても なほすゑたのむ をののふるみち | 道順 |
647 | みをさらぬ こころのつきに くもはれて いつかまことの かけもみるへき | 覚助法親王 |
648 | まとかなる はつきのつきの おほそらに ひかりとなれる よものあききり | 後宇多院 |
649 | まよふへき やみちをちかく おもふにも みすてかたきは よはのつきかけ | 実経 |
650 | なかきよの ふけゆくつきを なかめても ちかつくやみを しるひとそなき | 良経(九条兼実男) |
651 | よもすから つきをなかめて ちきりおきし そのむつことに やみははれにき | 雅定 |
652 | すむとみえし こころのつきし あらはれは このよもやみの はれさらめやは | 西行 |
653 | いさきよく つきはこころに すむものと しるこそやみの はるるなりけれ | 小侍従(太皇太后宮) |
654 | くらきよの まよひのくもの はれぬれは しつかにすめる つきをみるかな | 行尊 |
655 | なかきよの やみちにまよふ みなりとも ねふりさめなは きみをたつねむ | 見仏 |
657 | かけきよき ななへのうゑき うつりきて るりのとほそも はなかとそみる | 俊成(藤原俊忠男) |
658 | よしのかは はなのいはなみ なにたてて よるせをはるの とまりとそきく | 俊誉 |
659 | みそちあまり ふたつのすかた たへなれは いつれもおなし はなのおもかけ | 師光(中原師重男) |
660 | みをさらぬ ひよしのかけを ひかりにて このよよりこそ やみははれぬれ | 成賢(祝部成茂男) |
661 | にしにのみ むかひのをかの ゆふつくひ ほかにこころの うつりやはする | 邦長 |
663 | くさのはら ひかりまちとる つゆにこそ つきもわきては かけやとしけれ | 頼重 |
664 | たちかへり またそしつまむ よにこゆる もとのちかひの なからましかは | 隆博 |
665 | いまさらに ほとけのみちを なにとかは もとのこころの ほかにもとめむ | 実氏 |
666 | おろかなる なみたのつゆの いかてなほ きえてはちすの たまとなるらむ | 後嵯峨院 |
667 | いひおきし わかことのはの かはらぬに ひとのまことは あらはれにけり | 後嵯峨院 |
668 | うれしさを さなからそてに つつむかな あふくみそらの つきをやとして | 道玄 |
669 | みよしのの みつわけやまの たきつせも すゑはひとつの なかれなりけり | 寿証 |
670 | あきふかく しくるるにしの やまかせに みなさそはれて ゆくこのはかな | 房厳 |
671 | ひとかたに たのみをかくる しらいとの くるしきすちに みたれすもかな | 禅空 |
672 | つゆのみに むすへるつみは おもくとも もらさしものを はなのうてなに | 式子内親王 |
673 | すみなれし あとをしのふる うれしさに もらさすすくふ みとはしらすや | 式子内親王 |
675 | ここにやり かしこによはふ みちはあれと わかこころより まよふとをしれ | 順空 |
676 | すみのほる つきのひかりを しるへにて にしへもいそく わかこころかな | 基俊 |
677 | ゆふくれの たかねをいつる つきかけも いるへきかたを わすれやはする | 能信 |
678 | めくりあふ わかみならすは いかかせむ そのあかつきの つきはいつとも | 唯教 |
679 | にしをおもふ こころありてそ つのくにの なにはわたりは みるへかりける | 良経(九条兼実男) |
680 | まれにとく みのりのあとを きてみれは うききにあへる かめゐなりけり | 安芸(郁芳門院) |
681 | よのなかを いとふあまりに とりのねも きこえぬやまの ふもとにそすむ | 公能 |
682 | まれにたに あへはわかれの かなしきに しらてやしかの つまをこふらむ | 守誉 |
683 | いろもかも むなしきものと をしへすは あるをありとや おもひはてまし | 帥(鷹司院) |
684 | よしのやま わきてみるへき いろもなし くももさくらも はるかせそふく | 定円(葉室光俊男) |
685 | ゆめのうちに もとめしのりの ひとことも まことなきこそ うつつなりけれ | 良実 |
686 | ちかひあれは そらゆくつきの みやこひと そてにみつなる ひかりをそみる | 俊成女 |
687 | さめやらぬ うきよのほかの さとりそと みしはきのふの ゆめにそありける | 公守 |
688 | かすならす うまれけるみの ことわりに さきのよまての つらさをそしる | 円勇 |
689 | ゆくへなき みをうちかはの はしはしら たててしものを ひとわたせとは | 雅経 |
690 | むらくもに かくるるつきは ほともなく やかてさやけき ひかりをそみる | 忠源 |
691 | まよはしな いりぬとみゆる つきもなほ おなしそらゆく かけとしりなは | 了然 |
692 | なかつきの ありあけのつきと もろともに いりけるみねを おもひこそやれ | 寂然 |
693 | さとるへき みちとてさらに みちもなし まよふこころも まよひならねは | 範憲 |
694 | くさのはに むすはぬさきの しらつゆは なにをたよりに おきはしめけむ | 心海 |
695 | うきよには きえなはきえね はちすはに やとらはつゆの みともなりなむ | 基俊 |
696 | おもひきや そてにつつみし ほたるをも ころものうらに かくるたまとは | 近衛(今出川院) |
697 | ことのはも およはぬのりの まことをは こころよりこそ つたへそめしか | 見性 |
698 | いつはりの こころあらしと おもふこそ たもてるのりの まことなりけり | 忠景 |
699 | むつのみち まよふとおもふ こころこそ たちかへりては しるへなりけれ | 師継 |
700 | いかにせむ のりのふなても しらぬみは くるしきうみに またやしつまむ | 教良 |
701 | みをおもふ ひとこそけには なかりけれ うかるへきよの のちをしらねは | 円空 |
702 | みなひとの さらぬわかれを おもふこそ うきみをいとふ かきりなりけれ | 慈円 |
703 | ゆくすゑは まよふならひと しりなから みちをもとめぬ ひとそはかなき | 道潤 |
704 | さとりとて ほかにもとむる こころこそ まよひそめけむ はしめなるらめ | 慈道法親王 |
705 | しはしこそ ひとのこころに にこるとも すまてやむへき のりのみつかは | 実重(三条公親男) |
706 | ほかになき みのりのみつの きよけれは わかこころをそ くみてしるへき | 公守 |
707 | おなしくは なかれをわくる のりのみつの そのみなかみを いかてくままし | 公雄 |
708 | のりのみつ ひとつなかれを むすひても こころこころに すゑそなりゆく | 公澄 |
709 | こほりしも おなしこころの みつなれは またうちとくる はるにあふかな | 良信 |
710 | すみそめし もとのこころの きよけれは にこりもはてぬ たまのゐのみつ | 実聡 |
711 | よもすから まとのともしひ かかけても ふみみるみちに なほまよふかな | 実寿 |
712 | しるへせよ くらきやみちに まよふとも こよひかかくる のりのともしひ | 親清女妹 |
713 | いにしへの あとふみみむと かかけても こころにくらき のりのともしひ | 澄覚法親王 |
714 | ちはやふる ななよいつよの かみよより わかあしはらに あとをたれにき | 後宇多院 |
715 | かみもしれ つきすむよはの いすすかは なかれてきよき そこのこころを | 覚助法親王 |
716 | かみちやま ひくしめなはの ひとすちに たのむちきりは このよのみかは | 読人不知 |
717 | さかきもて やつのいしつほ ふみならし きみをそいのる うちのみやひと | 延成 |
718 | まきもくの たまきのみよに あとたれて みやゐふりぬる いすすかはかみ | 定忠 |
719 | くもりなき あまてるかみの ますかかみ むかしをいまに うつしてしかな | 行忠(度会) |
720 | きみかよを いのれはまもる かみちやま ふかきちかひと いふもかしこし | 読人不知 |
721 | いはしみつ きよきこころに すむときく かみのちかひは なほもたのもし | 後嵯峨院 |
722 | いはしみつ にこらしとおもふ わかこころ ひとこそしらね かみはうくらむ | 伏見院 |
723 | ちはやふる そのかみやまの なかにおつる みたらしかはの おとのさやけさ | 道玄 |
724 | すみそめし むかしをかみも わすれすは なほみたらしの すゑもにこらし | 禅助 |
725 | ちはやふる かみやしるらむ もろかつら ひとかたならす かくるたのみを | 後鳥羽院 |
726 | なもしるし いろをもかへぬ まつのをの かみのちかひは すゑのよのため | 後宇多院 |
727 | かみもまた きみかためとや かすかやま ふかきみゆきの あとのこしけむ | 雅経 |
728 | うつもれし おとろのみちを たつねてそ ふるきみゆきの あともとひける | 定家 |
729 | すきゆけと わすれぬものを かすかのの おとろにあまる つゆのめくみは | 公守 |
730 | みかさやま おひそふまつを きみかよの ちよのためしと かみやみるらむ | 道経 |
731 | あめのした をさまりぬらし みかさやま あまねくあふく かみのめくみに | 永福門院 |
732 | たれかまた あはれをかけむ ゆふたすき たのむかすかの ちかひならては | 実経 |
733 | いのりても しらぬわかみの ゆくすゑを あはれいかにと かみはみるらむ | 資宣 |
734 | をしほやま しらぬかみよは とほけれと まつふくかせに むかしをそきく | 教定(飛鳥井雅経男) |
735 | すみよしの うらわのまつの ふかみとり ひさしかれとや かみもうゑけむ | 宗尊親王 |
736 | かみかきや まつのみとりに かけそへて たむけにさける はなのしらゆふ | 為教 |
737 | いくかへり なみのしらゆふ かけつらむ かみさひにける すみよしのまつ | 俊成(藤原俊忠男) |
738 | すみよしの うらのまつかえ としをへて かみさひまさる かせのおとかな | 経任(中御門藤原為経男) |
739 | よよたえぬ みちにつけても すみよしの まつをそあふく たのむかけとは | 慶融 |
740 | みをかくす かけとそたのむ かみかきに おひそふまつの しけきめくみを | 棟国 |
741 | わかのうらの みちをはすてぬ かみなれは あはれをかけよ すみよしのなみ | 俊成(藤原俊忠男) |
742 | しきしまの みちまもりける かみをしも わかかみかきと おもふうれしさ | 国助 |
743 | あまくたる かみのめくみの しるしあらは ほしのくらゐに なほのほりなむ | 実国 |
744 | おもふこと みわのやしろに いのりみむ すきはたつぬる しるしのみかは | 俊成(藤原俊忠男) |
745 | ささなみや かみよのまつの そのままに むかしなからの うらかせそふく | 為氏 |
746 | からさきや きよきうらわに こきかへり かみのみふねの あとをしそおもふ | 成茂 |
747 | くもりなき よをてらさむと ちかひてや ひよしのみやの あとをたれけむ | 道玄 |
748 | あひにあひて ひよしのそらそ さやかなる ななつのほしの てらすひかりに | 成茂 |
749 | しはしたに はるるこころや なからまし ひよしのかけの てらささりせは | 慈円 |
750 | くもりなき かみのみむろに かけそへて むかふかかみの やまのはのつき | 源承 |
751 | さかきはや むそちあまりの あきのしも おきかさねても よをいのるかな | 国長 |
752 | かみかきに わかおいらくの ゆふかけて なほさしそふる みねのさかきは | 成賢(祝部成茂男) |
753 | いかてかは きみもにほひを そへさらむ かみにたむくる ももくさのはな | 慈円 |
754 | たむくへき こころはかりは ありなから はなにならへむ ことのはそなき | 俊成(藤原俊忠男) |
755 | たむけおく つゆのことはの かすかすに かみもあはれや かけてみるらむ | 忠長 |
756 | いのること かみよりほかに もらさねは ひとにしられす ぬるるそてかな | 公澄 |
757 | あとたれし もとのちかひを わすれすは むかしにかへれ わかのうらなみ | 為家 |
758 | かみたにも わかみちまもれ みしめなは よのひとことは ひくによるとも | 為氏 |
759 | としをへて いのるこころを しきしまの みちあるみよに かみもあらはせ | 行氏(祝部行言男) |
760 | みつかきの ひさしきよより ゆふたすき かけしこころは かみそしるらむ | 実朝 |
761 | ちはやふる かみもひかりを やはらけて くもらすてらせ あきのよのつき | 後宇多院 |
762 | さねこして さかきにかけし かかみこそ きみかときはの かけはみえけれ | 定家 |
763 | さかきはに しものしらゆふ かけてけり かみなひやまの あけほののそら | 公継 |
764 | いろかへぬ みむろのさかき としをへて おなしときはに よをいのるかな | 祐世(鴨祐幸男) |
765 | かみかきに おもふこころを ゆふしての なひくはかりに いかていのらむ | 成久 |
766 | あとたれて かみもいくよを まもるらむ おほみやところ いまもくちせす | 時村 |
767 | たちかへり すててしみにも いのるかな こをおもふみちは かみもしるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
768 | すめらきの かみのみことを うけきつる いやつきつきに よをおもふかな | 亀山院 |
769 | よをてらす かけとおもへは くまのやま こころのそらに すめるつきかな | 後鳥羽院 |
770 | ひとしれす おもひいるのの はなすすき みたれそめける そてのつゆかな | 実兼 |
771 | いりそむる しけきをささの つゆならて まつそてぬらす わかなみたかな | 為氏 |
772 | さもこそは またみぬこひの みちならめ おもひたつより まよひぬるかな | 隆信 |
773 | つらからは いかにせむとか ゆくすゑの こころもしらす おもひそむらむ | 具氏 |
774 | しられしな かすみにこめて かけろふの をののわかくさ したにもゆとも | 為家 |
775 | しるやいかに いはたのをのの しのすすき おもふこころは ほにいてすとも | 知家 |
776 | しられしな つゆかかりとも したをきの ほにいたすへき おもひならねは | 重綱(藤原) |
777 | ほのかなる なにはのあしひ いかなれは たきそむるより みをこかすらむ | 為綱 |
778 | むねにみつ おもひはあれと ふしのねの けふりならねは しるひともなし | 按察(鷹司院) |
779 | しるらめや かつらきやまに ゐるくもの たちゐにかかる わかこころとは | 式子内親王 |
780 | あはれとも たれかはこひを なくさめむ みよりほかには しるひともなし | 隆信 |
781 | うきみには たえぬなけきに おもなれて ものやおもふと とふひともなし | 長明 |
782 | こひわひて なけかはいろに いてぬへし みにもしられぬ こころともかな | 冬忠 |
783 | かひなしや しられぬなかに なからへて こころひとつの たのみはかりは | 兼行 |
784 | ひとしれす おもふこころの くるしさを いろにいててや しらせそめまし | 大納言典侍(後嵯峨院) |
785 | なみたこそ しのははよそに みえすとも おさふるそてを ひとやとかめむ | 政村 |
786 | せきかへし おさふるそてに としふりて ひとめにしらぬ なみたともかな | 為子(従二位) |
787 | したにのみ いはまのみつに むせかへり もらさぬさきに そてそぬれける | 匡房 |
788 | なにたてる おとはのたきも おとにのみ きくよりそては ぬるるものかは | 有家(藤原重家男) |
789 | はるかすみ かすみのうらを ゆくふねの よそにもみえぬ ひとをこひつつ | 定家 |
790 | おのつから かけてもそてに しらすなよ いはせのもりの あきのしらつゆ | 行意 |
791 | わかこひは いはせのもりの したくさの みたれてのみも すくるころかな | 土御門院 |
792 | しられしな さてもしのふの もりのつゆ もりてなみたの そてにみえすは | 基忠(鷹司兼平男) |
793 | したにこそ しのふのつゆの みたるとも そてのほかには いかかもらさむ | 成茂 |
794 | いろみえぬ これやしのふの すりころも おもひみたるる そてのしらつゆ | 実氏 |
795 | こころのみ かきりしられぬ みたれにて いくとしつきを しのふもちすり | 後嵯峨院 |
796 | みちのくに みたれてすれる かりころも なをたにたつな ひとにしられし | 為家 |
797 | ふしのねの けたぬけふりも たたはたて みのおもひたに ひとししらすは | 資季 |
798 | うらかせに たくものけふり なひくとも しらるなひとに こころよわさを | 基家 |
799 | あまのたく うらのしほやの ゆふけふり おもひきゆとも ひとにしらるな | 為教 |
800 | かはらやの けふりはしたに むせふとも おもひありとは ひとにしらせし | 有家(藤原重家男) |
801 | われのみと くゆるけふりの したもえに ひとはやすくや おもひけつらむ | 宣子(従三位藤原) |
802 | ものおもふ あたなはたたし ゆふけふり なひかぬなかに こひはしぬとも | 実兼 |
803 | いかにせむ しのふにたへぬ いのちにて のちのうきなの よにものこらは | 読人不知 |
804 | しのひつつ このよつきなは おもふこと こけのしたにや ともにくちなむ | 有家(藤原重家男) |
805 | いかにせむ そてにひとめを もるやまの つゆもしくれも いろにいてなは | 成良 |
806 | おもひねと ひともこそしれ うはたまの ゆめにもこよひ みつとかたらし | 近衛(今出河院) |
807 | うはたまの ゆめのうきはし あはれなと ひとめをよきて こひわたるらむ | 少将内侍(後深草院) |
808 | よしさらは なみたゆるさむ しるとても ひとにいふへき まくらならねは | 内実 |
809 | みせはやな くたけておもふ なみたとも よもしらたまの かかるたもとを | 伏見院 |
810 | ひとしれぬ おもひのいろの したそめに しほるなみたの そてをみせはや | 公経(藤原実宗男) |
811 | くれなゐの なみたのいろも まかふやと あきはしくれに そてやかさまし | 亀山院 |
812 | あきののの はきのしけみに ふすしかの ふかくもひとに しのふころかな | 俊成(藤原俊忠男) |
813 | このころは のへのをしかの ねにたてて なかぬはかりと いかてしらせむ | 後宇多院 |
814 | おとたてぬ ものからひとに しらせはや ゑにかくたきの わきかへるとも | 為家 |
815 | もらさはや やまもとかけて せくいけの いひいてかたき こころありとも | 為氏 |
816 | せきかねぬ ものおもふそての みなとかは いまはつつまぬ なをやなかさむ | 実雄 |
817 | うもれきの さてやくちなむ なとりかは あらはれぬへき せせはすきにき | 国助女 |
818 | かくれぬの いりえにおふる あしのねの したのみたれは くるしかりけり | 読人不知 |
819 | みくさゐる いたゐのしみつ いたつらに いはぬをくみて しるひとはなし | 澄覚法親王 |
820 | いかにせむ こころのうちの しからみに あまりてかかる そてのなみたを | 重村 |
821 | われなから いかにこころの なりぬらむ ひとめもしらす ぬるるそてかな | 家良 |
822 | おのつから もらさはなほも いかならむ せくたにそてに あまるなみたを | 為藤 |
823 | せきかぬる なみたはあらし もろともに しのふはおなし こころなりとも | 国冬 |
824 | しのふるは おもふなかたに くるしきを つらきにそへて せくなみたかな | 読人不知/隆遍 |
825 | ひとしれぬ こころにたつる にしききの くちぬるいろや そてにみゆらむ | 隆房 |
826 | つれなきも いはねはこそと おもはすは としつきいかて なからへもせむ | 後嵯峨院 |
827 | われならぬ しのふのやまの まつのはも としへていろに いつるものかは | 有教 |
828 | なつやまの しけみかしたに はふくすの いつあらはれて うらみたにせむ | 素暹 |
829 | いろにいてて のちもいくよか つらからむ しのふはかりに としそへにける | 基忠(鷹司兼平男) |
830 | いはておもふ こころのうちの あらましに みをなくさめて なほやしのはむ | 読人不知 |
831 | ひとしれす おもふとたにも いはぬまの こころのうちを いかてみせまし | 道平 |
832 | しのふるも ためしあらしと くるしきを あらはれはまた いかかなけかむ | 後嵯峨院 |
833 | うきみとて さのみはいかか つつむへき いはてくやしき こともこそあれ | 顕昭 |
834 | つらしとも いひてこころや なくさむと しのはてたにも ひとをこひはや | 為経(甘露寺藤原資経男) |
835 | われはかり うきななれはと しのふとも こころかよはぬ ひとやもらさむ | 万秋門院 |
836 | としをふる なみたなりとも おのつから もらさはそての ひまもあらまし | 通忠 |
837 | よしさらは そてのなみたは もらはもれ たれゆゑとたに ひとのしらすは | 淑文 |
838 | つつむとて われとはいはぬ おもひをも なみたやよその ひとにしらせむ | 成久 |
839 | せきかねて なみたはそてに あまるとも わかこころとは いかかもらさむ | 冬平 |
840 | せかてたた あらましものを なかなかに つつめはあまる わかなみたかな | 達智門院 |
841 | けふこそは そてにももらせ いつのまに やかてなみたの いろにみゆらむ | 丹後(宜秋門院) |
842 | もらさしと おもふこころも いさやかは せくにせかるる うきなならねは | 久世 |
843 | そてのうらの みなといりえの みをつくし くちすはなほや うきなたちなむ | 成茂 |
844 | みのための おもひとならは きえもせて わかうきなのみ たつけふりかな | 為時(北条時村男) |
845 | したもえの けふりのすゑよ そらにのみ たつななれとは おもはさりしを | 隆博 |
846 | しのふれと ものおもふひとは うきくもの そらにこひする なをのみそたつ | 師時 |
847 | こひすとも いかてかそらに なはたてし しのふるほとは そてにつつまて | 安芸(郁芳門院) |
848 | いかにして なみたとともに もりぬらむ そてのうちなる うきなならぬに | 為道 |
849 | こひすとも ひとはしらしな からころも そてにあまらぬ なみたなりせは | 煕時 |
850 | いはてたた おもひしまての あらましは うきみなからも なくさみそせし | 祐茂 |
851 | くやしくそ つらきこころを あらはさて しのひてすゑを たのまさりける | 読人不知 |
852 | ほのかにも しらせてけりな あつまなる かすみのうらの あまのいさりひ | 順徳院 |
853 | あしのやの こやのあまひと しほたれて そてほすひまも なきみなりけり | 静仁法親王 |
854 | いかさまに みをつくしてか なにはえに ふかきおもひの しるしみすへき | 為兼 |
855 | あまのすむ うらのたまもを かりそめに みしはかりにも ぬるるそてかな | 親長 |
856 | むらくもに かせふくよはの つきかけの はやくもみてし ひとそこひしき | 光俊(葉室光親男) |
857 | あきのたの わさほのかつら つゆかけて むすふちきりは かりにたになし | 雅経 |
858 | なからへは さてもあふよの たのみとて なほをしまるる わかいのちかな | 亀山院 |
859 | かきりある いのちのほとの つれなさも こひしなぬにそ おもひしらるる | 為氏 |
860 | こむよには ちきりありやと こひしなむ あふをかきりの いのちをしまて | 後宇多院 |
861 | つれなさの かきりをせめて しりもせは いのちをかけて ものはおもはし | 後宇多院 |
862 | こひしなぬ みのつれなさを なけきにて あひみむまては おもひたえにき | 家良 |
863 | あちきなく いつまてものを おもへとて うきにのこれる いのちなるらむ | 宗尊親王 |
864 | あはてこそ たたそのままに こひしなめ なかなかのちの つらさおもへは | 俊定(藤原経俊男) |
865 | ありてうき いのちにかへて ときのまも このよなからの あふこともかな | 為子(従二位) |
866 | なからへて つらきおもひは なからまし あふにいのちを かふるよならは | 業尹 |
867 | あふとみる ほとはうつつに かはらぬを さめてゆめそと おもはすもかな | 為実(御子左藤原為氏男) |
868 | これもまた たかいつはりの ゆめなれは かよはぬなかも あふとみゆらむ | 冬平 |
869 | うつつには あふよもしらす みるゆめを はかなしとては たのみこそせめ | 後二条院 |
870 | あふとみし ゆめのたたちに せきすゑて うちぬるひまも なきおもひかな | 静仁法親王 |
871 | あふことは たたおもひねの ゆめちにて うつつゆるさぬ よはのせきもり | 為兼 |
872 | あふとみる わかおもひねの おもかけを さめてもたのむ ほとそはかなき | 道平 |
873 | ぬるかうちを いかにたのみて はかなくも ちきらぬなかの ゆめをまつらむ | 盛継(伊豆) |
874 | おもかけの うきにかはらて みえもせは いかにせむとか ゆめをまつらむ | 長舜 |
875 | うたたねに つれなくみえし おもかけは ゆめとしりても なほやうらみむ | 実氏 |
876 | いかにせむ まとろむほとの ゆめにたに うしとみぬよの なくさめもかな | 基良 |
877 | さよころも かへすしるしの なくさめも ねられしまての ゆめにそありける | 行能 |
878 | おもひねの よはのころもを かへしても なくさむほとの ゆめをやはみる | 広茂 |
879 | なけきつつ ふしみのさとの ゆめにさへ むなしきとこを はらふまつかせ | 俊成女 |
880 | いはかねの こりしくやまの こけむしろ ぬるよもなしと なけくころかな | 資季 |
881 | しらせはや ひとをうらみの こひころも なみたかさねて ひとりぬるよを | 雅有 |
882 | うきものと わかれになして うらみはや つれなきなかの ありあけのつき | 読人不知/寿暁 |
883 | うきみにそ つれなかりける あつさゆみ いかなるかたに こころひくらむ | 伏見院 |
884 | よしさらは たたなかなかに つれなかれ うきにまけてや おもひよわると | 為氏 |
885 | つもれたた あはてつきひの かさならは しはしわするる をりもありやと | 道家 |
886 | よとともに われにはものを おもはせて さのみやひとの しらすかほなる | 隆房 |
887 | あふまての しるへそいまは たとらるる こころのかよふ みちはあれとも | 貞時 |
888 | のちはいさ あひみぬさきの つらさこそ おもひくらふる かたなかりけれ | 信実 |
889 | せめてなほ のちはうくとも あひみての つらさをなけく わかみともかな | 読人不知 |
890 | いまはたた いろにいててや うらみまし うきみをしらぬ なにはたつとも | 経尹(世尊寺経朝男) |
891 | いかにせむ なみたのかはの あさきせに あたなみかけて たつなはかりを | 為実(御子左藤原為氏男) |
892 | うきなをや なほたてそへむ にしききの ちつかにあまる ひとのつらさに | 師継 |
893 | なきなのみ をふのうらなし いたつらに ならぬこひする みこそつらけれ | 実氏 |
894 | うらかせの はけしきいその まつをみよ つれなきいろも なひきやはせぬ | 国冬 |
895 | かひなしや みるめはかりを ちきりにて なほそてぬるる ちかのうらなみ | 師良(一条実経男) |
896 | いせのうみの をののみなとの おのつから あひみるほとの なみのまもかな | 家良 |
897 | もしほやく あまのたくなは うちはへて くるしとたにも いふかたそなき | 後鳥羽院 |
898 | おのつから あふよもあらは すまのあまの しほやきころも まとほなりとも | 少将内侍(後深草院) |
899 | すまのあまの しほたれころも なみかけて よるこそそても ぬれまさりけれ | 長時 |
900 | みくまのの うらのはまゆふ いくよへぬ あはぬなみたを そてにかさねて | 範宗 |
901 | なみたかき ゆらのみなとを こくふねの しつめもあへぬ わかこころかな | 小侍従(太皇太后宮) |
902 | よるへなき たななしをふね くちもせて おなしいりえに みはこかれつつ | 少将(藻壁門院) |
903 | とははやな みぬめのうらに すむあまも こころのうちに ものやおもふと | 公経(藤原実宗男) |
904 | みにはまた まとほにたにも あまころも なれぬたもとの なとしをるらむ | 経継 |
905 | つれなくも なほあふことを まつしまや をしまのあまと そてはぬれつつ | 遊義門院 |
906 | たつたかは くれなゐくくる あきのみつ いろもなかれも そてのほかかは | 道家 |
907 | いかにして かけをもみまし さはたかは そてつくほとの ちきりなりとも | 家隆 |
908 | いたつらに なのみなかれて いさやまた あふせもしらぬ とこのやまかは | 甲斐(安嘉門院) |
909 | おもひかは せせのうたかた いたつらに あはてきえぬる なをなかせとや | 公親 |
910 | おもひかは いつまてひとに なひきもの したにみたれて あふせまつらむ | 延行 |
911 | なみたかは うきせにまよふ みつのあわの さすかにきえぬ みをいかにせむ | 秀能(藤原秀宗男) |
912 | としふれと わたらぬなかに なかるるを あふくまかはと たれかいひけむ | 成範 |
913 | ひとしれぬ こひちのはてや みちのくの あふくまかはの わたりなるらむ | 季宗(藤原成宗男) |
914 | よそにのみ なほいつまてか おもひかは わたらぬなかの ちきりたのまむ | 達智門院 |
915 | わかそての ものとはよしや いはしろの のへのしたくさ つゆふかくとも | 隆博 |
916 | あすかかは ゆききのをかの くすかつら くるしやひとに あはぬうらみは | 良実 |
917 | まよひゆく すゑはいかにと とふへきを わかこひちには あふひともなし | 素暹 |
918 | あふさかの せきのこなたの いかなれは またこえぬより くるしかるらむ | 道玄 |
919 | せきなくて たたあふさかの やまならは へたつるなかに ものはおもはし | 後二条院 |
920 | たれにかは あふさかやまの なのみして わかみにこえぬ せきとなるらむ | 師信 |
921 | いかにせむ よそのひとめの せきもりに かよふみちなき あふさかのやま | 実俊(西園寺公相男) |
922 | いこまやま へたつるなかの みねのくも なにとてかかる こころなるらむ | 為家 |
923 | よとともに もゆともいかか いふきやま さしもつれなき ひとにしらせむ | 為経(甘露寺藤原資経男) |
924 | こひしなむ のちせのやまの みねのくも きえなはよそに あはれともみよ | 読人不知 |
925 | ふしのねも たちそふくもは あるものを こひのけふりそ まかふかたなき | 讃岐(二条院) |
926 | けふりたつ むろのやしまや いつくそと とへなおもひの ゆくへしらせむ | 雅有 |
927 | まつしまや わかみのかたに やくしほの けふりのすゑを とふひともかな | 通光 |
928 | すまのうらの あまりにもゆる おもひかな しほやくけふり ひとはなひかて | 定家 |
929 | おもふこと ありそのうみの うつせかひ あはてやみぬる なをやのこさむ | 師頼 |
930 | つれなくも なほなからへて おもふかな うきなををしむ こころはかりに | 宮内卿(後鳥羽院) |
931 | うきひとの こころもしらす われはかり いのちあらはと みをいのるかな | 実教 |
932 | つれなさも よしやいのらし かみたにも うけすはのちの たのみなけれは | 為世(御子左藤原為氏男) |
933 | すみよしの かみにいのりし あふことの まつもひさしく なりにけるかな | 小侍従(太皇太后宮) |
934 | おもふこと たねしあれはと たのみても まつのねたくや あはてやみなむ | 宗成 |
935 | こひしなぬ みののをやまの つれなくも いつまてひとに まつときかれむ | 大蔵卿(遊義門院) |
936 | いとせめて まつにたへたる わかみそと しりてやひとの つれなかるらむ | 親子(典侍親子朝臣) |
937 | とへかしな あまのまてかた さのみやは まつにいのちの なからへもせむ | 為家 |
938 | つれなさの うきにしもなと なからへて おもひつきせぬ いのちなるらむ | 定覚 |
939 | こひしなむ のちにあふせの あるへくは なほをしからぬ いのちならまし | 基隆(藤原基綱男) |
940 | なからへて あらはとおもふ こころこそ ひともちきらぬ たのみなりけれ | 雲雅 |
941 | いかにせむ われのみひとを おもふとも こふともおなし こころならすは | 西円 |
942 | よしさらは こひしなすとも なからへて おなしよにたに ありときかれむ | 実兼 |
943 | われはかり いのちにかへて なけくとも をしまれぬへき みとはたのます | 為顕 |
944 | さてもまた あはてたえなは たまのをの いくよをかけて おもひみたれむ | 実重(三条公親男) |
945 | めくりあはむ こむよもしらぬ ちきりには みをかへてとも えこそたのまね | 頼重 |
946 | つらくとも なほうつせみの みをかへて のちのよまてや ひとをこひまし | 親長 |
947 | いけみつに つかはぬをしの うきまくら ならふかたなき こひもするかな | 良平 |
948 | ゆくみつに かすかくひとも わかことく あとなきこひに そてやぬれけむ | 資実 |
949 | ものおもへは まののこすけの すかまくら たえぬなみたに くちそはてぬる | 顕仲(藤原資仲男) |
950 | つれなさの ためしにひかむ あつさゆみ おもひよわらぬ こころつよさを | 家長(源時長男) |
951 | ものおもふ なみたのはても いかならむ あふをかきりの なくてやみなは | 聖兼 |
952 | たまかつら たえぬつらさの としをへて さのみやひとに おもひみたれむ | 実家(藤原実経男) |
953 | さりともと おもふこころに としふるは つらきもたえぬ ちきりなりけり | 性助法親王 |
954 | あふまてと たのむつきひの はてもなし うきをかきりの こころなかさに | 為信 |
955 | つれなさの うきにつけても かこつかな よよのむかしの しらぬむくひを | 良教 |
956 | さきのよに われにこころや つくしけむ むくひならては かからましやは | 実国 |
957 | さてもなほ ひとのこころを しらぬまは ちきるさへこそ おもひなりけれ | 家隆 |
958 | まことかと またおしかへし とふほとの ひとめのひまも なきちきりかな | 後二条院 |
959 | いつはりの あるよかなしき こころこそ たのましとたに おもひさためね | 為家 |
960 | たのめおく ひとのちきりそ ありはてぬ いのちまつまも うたかはれける | 帥(鷹司院) |
961 | あふことを しらぬたのみは かひなくて ちきりはかりに みをやかへてむ | 伏見院 |
962 | あちきなし たれもはかなき いのちもて たのめはけふの くれをたのめよ | 定家 |
963 | ひとつての いつはりにたに おのつから あはれをかくる ことのはもかな | 定円(葉室光俊男) |
964 | ちきりしも あらぬよにとは きかさりき こひしなてまつ いのちともかな | 為子(贈従三位) |
965 | さならては たのめもおかし いつはりの あるよそひとの なさけなりける | 定円(葉室光俊男) |
966 | いつはりを たのまてもまた いかかせむ かねてしらるる まことならねは | 光盛 |
967 | いつはりと おもひなからや ちきるらむ しらはやひとの したのこころを | 素暹 |
968 | おのつから いつはりならぬ ちきりをも わかこころとや たのまさるらむ | 能清 |
969 | たのむるを いのちになして すくすみは いつはりかとも よしやおもはし | 宗宣(北条宣時男) |
970 | さのみまた ひとのこころを うたかはは わかいつはりの ほとやしられむ | 成朝 |
971 | いつはりの ことのはそとて たのますは うきみにちきる ひとやなからむ | 資高 |
972 | けにおもふ こころのそこの しられねは ちきるままにも えやはたのまむ | 俊光 |
973 | さりともと おもひなからも まつほとは なほみのうさに うたかはれつつ | 実泰 |
974 | いつはりを たのむにこそは なりもせめ またすといかか ひとにきかれむ | 国道(津守国助男) |
975 | ちきりしを ひとのまことと たのみても またいかならむ ゆふくれのそら | 基平(近衛兼経男) |
976 | まちみはや よもいつはりに なりはてし しひてたのめし ゆふくれのそら | 大弐(安嘉門院) |
977 | さりともと このゆふくれの またるるや いひしをたのむ こころなるらむ | 久世 |
978 | となせかは こすいかたしの みなれさを さしてたのめし くれそまたるる | 源承 |
979 | くるるまを はかなくいそく こころかな あふにかへむと ちかふいのちに | 実冬(藤原公光男) |
980 | わすれても とはすもそなる ちきりおきし くれそとひとに おとろかさはや | 伏見院 |
981 | おもへたた たのめぬたにも またるるに こよひといひし こころつくしは | 道性 |
982 | いつはりを おもひしらぬに なしはてて またなほさりの くれをまつかな | 隆博 |
983 | ちきりしは たたなほさりの ゆふへとも しらてまちける ほとそはかなき | 経久 |
984 | こよひたに いかにゆふけの うらそとも ききさためてや ひとをまたまし | 定為 |
985 | ふけにける うらみやなほも のこるへき いつはりならぬ こよひなりとも | 読人不知 |
986 | ひとめよく みちはさこそと おもへとも なくさめかたく ふくるよはかな | 国助 |
987 | おもひやれ そらたのめせぬ つきたにも まつはこころを つくすものとは | 実時(藤原公蔭男) |
988 | まちわひて ふけゆくつきの かけのみや ねぬよのそての なみたとふらむ | 兼誉 |
989 | ふけぬるは こぬひとゆゑに うきものを またれかほにも いつるつきかな | 宗泰(北条宣時男) |
990 | かきくらす なみたしなくは こぬひとの つらさにかへて つきもみてまし | 親方 |
991 | ふけぬとも しはしはまたむ やまのはの つきみてのちも おもひいつやと | 一条(昭慶門院) |
992 | たのめても こぬひとつらき よひよひに いつはりしらて いつるつきかな | 道良女 |
993 | いつはりに ふけゆくほとの しらるれは まつよのつきの かけはなかめし | 後二条院 |
994 | たのめしは こよひもいかに なりぬらむ ふけぬるものを やまのはのつき | 親子(典侍親子朝臣) |
995 | やまのはに いるまてつきを なかむとも しらてやひとの ありあけのそら | 雅経 |
996 | かへるさの わかれのみかは まつひとの つれなきもうき ありあけのそら | 後嵯峨院 |
997 | ふけぬれは せめてたのみの なきままに こよひもあすの くれそまたるる | 為藤 |
998 | とはるへき そのあらましに まきのとを たのめぬよはも ささてあけぬる | 資季 |
999 | まちわひて こぬよむなしく あけゆけは なみたかすそふ しきのはねかき | 雅経 |
1000 | たのめすは うきみのとかと なけきつつ ひとのこころを うらみさらまし | 堀河(待賢門院) |
1001 | たのめぬを わかこころより まちかねて ひとのうきにや おもひなすへき | 道瑜 |
1002 | たのましと おもひなりても いつはりに かはらてまつは こころなりけり | 時常 |
1003 | うかりける ひとのことのは なけけとて なといつはりの あるよなるらむ | 具氏 |
1004 | ちきりしに かはるときくも つらからす さてもとはるる ならひなけれは | 冬基 |
1005 | うらみしよ おもへはひとの こぬまても なさけにこそは ちきりおきけめ | 円伊 |
1006 | なくさむる わかあらましに まちなれて さのみねぬよの かすやかさねむ | 実泰 |
1007 | きくたひに なこそのせきの なもつらし ゆきてはかへる みにしられつつ | 後嵯峨院 |
1008 | まちえても やかてわかれの ゆふへこそ とふさへつらき ちきりなりけれ | 師重(源師親男) |
1009 | ひとりねの とこになれこし つきかけを もろともにみる よはもありけり | 経任(中御門藤原為経男) |
1010 | つらかりし ときこそあらめ あひみての のちさへものは なとやかなしき | 小督(中務卿宗尊親王家) |
1011 | なけきわひ あふにかへむと おもひしは うかりしまての いのちなりけり | 源恵 |
1012 | うつつとも おもひさためぬ あふことを ゆめにまかへて ひとにかたるな | 聖兼 |
1013 | きみもまた あふとみるよの ゆめならは たれかわかれの まつはさむらむ | 家隆 |
1014 | うれしさを こよひつつまむ ためとてや そてはなみたに くちのこりけむ | 慈円 |
1015 | わすられむ のちのうきなを おもふにも あふとはよその ひとにしられし | 祐賢 |
1016 | しのふやま いはねのまくら かはすとも したゆくみつの もらさすもかな | 光俊(葉室光親男) |
1017 | いかかせむ まつほとすきて ふくるよに やかてなこりの をしきわかれを | 重経 |
1018 | かよひくる なのみありその はまちとり あとはしはしも なとかととめぬ | 万秋門院 |
1019 | こころある とりのねならは いかはかり いまひとときも うれしからまし | 国信 |
1020 | わかるれは おなしこころに うしとのみ ゆふつけとりの ねをそうらむる | 読人不知 |
1021 | あかつきの わかれもしらぬ とりのねは なにのつらさに なきはしめけむ | 頼重 |
1022 | せめてなほ のちのよをこそ たのめつれ なからへぬへき わかれならねは | 源承 |
1023 | あたになと おもひそめけむ あさつゆの おきわかれても きえぬいのちを | 盛房(平政氏男) |
1024 | あかつきの とこはくさはの なになれや つゆにわかれの なみたそふらむ | 通具 |
1025 | あふまての おもひはことの かすならて わかれそこひの はしめなりける | 寂蓮 |
1026 | あちきなく またありあけや つらからむ ことをかきりの わかれならすは | 親長 |
1027 | かへるさの わすれかたみの そてのつき それもとまらす あくるそらかな | 茂重 |
1028 | ありあけの つきはかたみに たのまれす くれまつまての みにもそはねは | 少将(藻壁門院) |
1029 | なからへて またあふことも しらぬみは これやかたみの ありあけのつき | 教良 |
1030 | かたみとて われこそみつれ おもかけを ひとはのこさぬ ありあけのつき | 実教 |
1031 | うつつこそ けさはなかなか かなしけれ かへるうらみは ゆめにみさりき | 慈円 |
1032 | われならぬ くすのうらはも けさみれは かへるとてこそ つゆもこほるれ | 俊恵 |
1033 | わけわひぬ そてのわかれの しののめに なみたおちそふ みちしはのつゆ | 御匣(式乾門院) |
1034 | もらすなよ みちのささはら ふみわけし ひとよのふしの つゆのたまくら | 成良 |
1035 | ありしよの のちはたかひに しのひきて かよふこころも しらぬなかかな | 久時 |
1036 | あひみても はかなきものは ゆくみつに かすかきとめぬ ちきりなりけり | 基平(近衛兼経男) |
1037 | ひとすちに たのむこころの なくもかな かはらはつらき みともこそなれ | 万秋門院 |
1038 | よよかけて なみこさしとは ちきるとも いさやこころの すゑのまつやま | 為氏 |
1039 | あさくとも たのみこそせめ なみたかは さてもあふせの かはりはてすは | 隆教 |
1040 | あふことを なほやたのまむ かたいとの くるよまれなる ちきりなりとも | 泰基 |
1041 | たかかたに こころをかけて したひもの まれにあふよも むすほほるらむ | 光成(大炊御門光俊男) |
1042 | おもひやる ひとのこころを へたてすは いくへもかかれ みねのしらくも | 内実 |
1043 | たつねても ゆくへしるへき ちきりかは もろこしふねの あとのしらなみ | 為信 |
1044 | わたつうみの そことしりても いかかせむ みるめはおのか こころならねは | 氏久 |
1045 | おもかけは をしへしやとに さきたちて こたへぬかせの まつにふくこゑ | 定家 |
1046 | いたつらに きえかへるとも しらせはや ゆきてはきぬる みちしはのつゆ | 有長 |
1047 | いたつらに まちみるひとも なかりけり とひてくやしき みわのやまもと | 師信 |
1048 | いもかすむ やとのこなたの ころもかは わたらぬをりも そてぬらしけり | 親盛 |
1049 | すみよしの きしのあたなみ かけてたに わするるくさは ありとしらすな | 経平(衣笠家良男) |
1050 | はまちとり かよふはかりの あとはあれと みぬめのうらに ねをのみそなく | 順徳院 |
1051 | わかせこを まつらのやまの くすかつら たまさかにたに くるよしもなし | 実朝 |
1052 | さとのあまの かりそめなりし ちきりより やかてみるめの たよりをそとふ | 雅顕 |
1053 | おとろかす かせにつけても こぬひとの つらさそまさる あきのゆふくれ | 時村 |
1054 | ゆくすゑを かけてちきりし うつつをは あとなきゆめと いかかなすへき | 為経(甘露寺藤原資経男) |
1055 | みしゆめの わすられぬたに うきものを なにかうつつに なしてなけかむ | 読人不知 |
1056 | いかにせむ いはまをつたふ やまみつの あさきちきりは すゑもとほらす | 家良 |
1057 | くやしくそ むすひそめける そのままに さてやまのゐの あさきちきりを | 為子(従二位) |
1058 | まれならむ ことをやかねて ちきりおきし たえてもたのむ こころなかさは | 信実 |
1059 | たなはたの あふよまれなる ちきりたに さすかにとしを へたてやはする | 実瑜 |
1060 | あふことを またはいつとも いはさりし わかれよりこそ かはりそめけめ | 読人不知 |
1061 | われさらは ひとよりさきに わすれなむ かはらむのちの つらさをもみて | 読人不知 |
1062 | あひみても またいかさまに なけけとて かはるつらさの あるよなるらむ | 忠兼(藤原忠行男) |
1063 | いたつらに あけぬくれぬと たまくしけ ふたたひあはぬ みこそつらけれ | 定雅(藤原忠経男) |
1064 | うきみには ちきりしままに たのむへき ひとのまことも なきよなりけり | 公守 |
1065 | はかなくも ひとのこころを またしらて とはるへきみと おもひけるかな | 公顕 |
1066 | いつまてか しきしのふへき そのままに わかちりはらふ とこのさむしろ | 後嵯峨院 |
1067 | かはらしと いひしはいつの ちきりにて よかるるとこに つきをみるらむ | 公雄女 |
1068 | くもるへき わかなみたとも しらてこそ つきをかたみと ちきりおきけめ | 近衛(今出河院) |
1069 | さてもまた いかなるよはの つきかけに うきおもかけを さそひそめけむ | 基良 |
1070 | おもひいてよ たかきぬきぬの あかつきも わかまたしのふ つきそみゆらむ | 定家 |
1071 | いかにせむ なくさむやとて なかむれは わかれしよはの ありあけのそら | 越前(嘉陽門院) |
1072 | おもひいてて つきもつらさの まさるかな みしやわかれの ありあけのそら | 為経(甘露寺藤原資経男) |
1073 | つれなくそ なほおもかけの のこりける またもみさりし ありあけのつき | 親長 |
1074 | うきなから さてもみにそふ おもかけの わすれぬのみや かたみなるらむ | 大蔵卿(遊義門院) |
1075 | わすれすよ しはしといひし かへるさの そてのわかれに のこるおもかけ | 行済 |
1076 | なれしよの とこはかはらぬ おもひねに またみるゆめの おもかけそなき | 家清女 |
1077 | うつつとて かたるはかりの ちきりかは あたなるゆめの ままのつきはし | 宣子(従三位藤原) |
1078 | わすれねよ ゆめそといひし かねことを なとそのままに たのまさりけむ | 為家 |
1079 | さらにまた あふをかきりと なけくかな みしはむかしの ゆめになしつつ | 国助 |
1080 | ねぬにみし ゆめはいかなる ちきりそと われたにひとを おとろかさはや | 経長(丹波経基男) |
1081 | あひみしは ひとよのゆめの くさまくら むすふもかりの ちきりなりけり | 聖勝 |
1082 | かりそめの ゆめよりのちは くさまくら またもむすはぬ ちきりなりけり | 珍覚 |
1083 | いかてなほ よはのころもを かへしても かさねしほとの ゆめをたにみむ | 家隆 |
1084 | さめぬれは もとのつらさの うつつにて なかなかなりや おもひねのゆめ | 師教(九条忠教男) |
1085 | おもひねの ゆめのうちにも なくさまて さむるうつつは なほそかなしき | 師宗 |
1086 | そのままに またもとはれぬ うつつこそ さてもゆめかと おもひなさるれ | ばい子内親王 |
1087 | くちねたた おなしなみたの そてのいろを またもみすへき ちきりならねは | 後宇多院 |
1088 | おもひかは あふせのいかに かはりてか またはなみたの ふちとなるらむ | 行家(藤原知家男) |
1089 | なみこゆる そてのみなとの うきまくら うきてそひとり ねはなかれける | 忠宗 |
1090 | つれなさは ありしにかへる つらさにて またもかさねぬ そてのうらなみ | 宗成 |
1091 | あふことは よそになるをの おきつなみ うきてみるめの よるへたになし | 観意 |
1092 | ふみみても うらみそふかき はまちとり まれになりゆく あとのつらさは | 大納言(昭訓門院) |
1093 | いかにせむ くもゐのかりの つてにたに みえすなりゆく ひとのたまつさ | 長成女 |
1094 | かりにたに こぬひとまつと さのみやは あきのわさたの いねかてにせむ | 澄舜 |
1095 | たえぬるか あふさかやまの さねかつら しられぬほとを なになけきけむ | 兼康 |
1096 | あとたゆる みちのささはら いつまてか よをへたてても ひとをまちけむ | 政国女 |
1097 | あひみてし のちせのやまの のちもなと かよはぬみちの くるしかるらむ | 良覚 |
1098 | そへてやる こころやきみに なれぬらむ とほさかるみは へたてはつとも | 宣子(従三位藤原) |
1099 | いははしの ちきりはよはの むかしにて たえまをとほく こひわたるかな | 源承 |
1100 | なかめても むかしにかはる こころかな ひとのとふへき ゆふへならねは | 基任 |
1101 | いまはとて おもひたえても あられねは またぬゆふへも そてはぬれけり | 守誉 |
1102 | おもひいては またおのつから とはるやと さすかにたえぬ ちきりをそまつ | 親教 |
1103 | そのままに おもひもこりは いかかせむ うきをしらぬそ ちきりなりける | 実教 |
1104 | もろともに わすれしとのみ ちきりしは わかみひとつの まことなりけり | 読人不知 |
1105 | われをたに わするなとこそ ちきりしか いつよりかはる こころなるらむ | 為兼 |
1106 | おもひわひ いまひとたひは うらみはや こころのままに わすれもそする | 為子(贈従三位) |
1107 | あやにくに うらみはなほや つらからむ かはりそめぬる ひとのこころは | 為理 |
1108 | あはぬよの つもるつらさは しきたへの まくらのちりそ まつしらせける | 時春 |
1109 | よなよなの まくらのちりに よそへても しらせやせまし つもるうらみを | 重員 |
1110 | よそなから つれなかりしは なかなかに うきみのほとも しられやはせし | 丹後(宜秋門院) |
1111 | いかにせむ つらきかきりを みてもまた なほしたはるる こころよわさを | 遊義門院 |
1112 | うとくなる ちきりをひとに かこちても うきはわかみに なほのこりけり | 読人不知 |
1113 | うきなから なほこそたのめ つれなさの さてはてさりし こころならひに | 読人不知/寿暁 |
1114 | おなしよに いけるをうしと おもふみの こころににぬは いのちなりけり | 読人不知 |
1115 | さきたたぬ みはおなしよに なからへて かはるをみるも うきいのちかな | 行氏(平胤行男) |
1116 | いかにせむ いまはたおなし よのなかに ありとはひとに しられすもかな | 親子(典侍親子朝臣) |
1117 | なからへて いけるいのちの つれなさを きかるはかりの ひとつてもかな | 家良 |
1118 | こひこひて そなたになひく けふりあらは いひしちきりの はてとなかめよ | 式子内親王 |
1119 | はつせかは またみむとこそ たのめしか おもふもつらし ふたもとのすき | 俊成(藤原俊忠男) |
1120 | ひとははや いひしちきりも かはるよに むかしなからの みこそつらけれ | 後醍醐院 |
1121 | こころこそ むかしにもあらす かはるとも ちきりしことを わすれすもかな | 公顕 |
1122 | はかなくそ わすれはてしと たのみける むかしのままの こころならひに | 実重(三条公親男) |
1123 | わすれしと いひしはかりの ことのはや つらきかなかの なさけなるらむ | 読人不知 |
1124 | ことのはに そへてもいまは かへさはや わすらるるみに のこるおもかけ | 為子(贈従三位) |
1125 | いつはりの ことのはたにも なきときそ けにたえはつる ちきりとはしる | 後二条院 |
1126 | なほさりに ひとたひちきる いつはりも なかきうらみの ゆふくれのそら | 信実 |
1127 | まちなれし ちきりはよその ゆふくれに ひとりかなしき いりあひのかね | 後伏見院 |
1128 | よそにたに おもひもいてし はしたかの のもりのかかみ かけもみえねは | 為氏 |
1129 | わすらるる わかみをあきの つらさとて つきさへかはる かけそかなしき | 隆親(藤原隆衡男) |
1130 | たのめこし ひとのこころは かはれとも われやわするる やまのはのつき | 甲斐(安嘉門院) |
1131 | とはすなる ひとのかたみと なくさめむ かはらてやとれ そてのつきかけ | 冬基 |
1132 | いとひしも いまはよそなる あかつきを かはらぬねにや とりはなくらむ | 右京大夫(正親町院) |
1133 | みのうへの わかれをしらぬ あかつきも なほとりのねに ぬるるそてかな | 親子(従三位源) |
1134 | わすれすよ あかぬなこりに たちわかれ みしをかきりの よこくものそら | 実兼 |
1135 | きぬきぬの あかつきはかり うきものと いひしもいまは むかしなりけり | 基平(近衛兼経男) |
1136 | つらかりし あかつきことの わかれたに みになきものと いまはなりぬる | 家定 |
1137 | さてもその ありしはかりを かきりとも しらてわかれし われやはかなき | 公顕 |
1138 | おもかけの うきみにそはぬ なかならは われもやひとを わすれはてまし | 宗秀(藤原宗泰男) |
1139 | わすらるる ならひありとは しりなから やかてとまては おもはさりしを | 俊光 |
1140 | なほさりに おもひいてても いつまてか とはるるほとの ちきりなりけむ | 為綱 |
1141 | うきなから おとろかさはや いまさらに おもひいつへき ちきりならねは | 為藤 |
1142 | またはよも おもひもいてし はなすすき かれにしなかは ほのめかすとも | 長経 |
1143 | よひよひに かよひしみちそ たえにける うきみをなかの せきもりにして | 読人不知/国兼 |
1144 | いはみかた わかみのよそに こすなみの さのみやとはに かけてこふへき | 国助 |
1145 | しらなみの かけてもひとに ちきりきや ことうらにのみ みるめかれとは | 家良 |
1146 | わすれゆく ひとのちきりは かりこもの おもはぬかたに なにみたれけむ | 為兼 |
1147 | そのかみに たちかへりてや いのらまし またもあふひの なをたのみつつ | 久宗 |
1148 | かけてなほ たのむもかなし あふひくさ いまはよそなる そのなはかりに | 親清女 |
1149 | あたなりと はなのなたてに いひなして うつろふひとの こころをそみる | 京極 |
1150 | めくりあふ つきひをそらに かそへても はなにそかかる いのちなかさは | 実兼 |
1151 | めくりあふ うきみにはるは かはれとも はなにはかかる いろもみえけり | 資宣女 |
1152 | つきくさの はなのこころや うつるらむ きのふにもにぬ そてのいろかな | 土御門院 |
1153 | つきくさの はなすりころも かへすよは うつろふひとそ ゆめにみえける | 公朝 |
1154 | かたみこそ あたのおほのの はきのつゆ うつろふいろは いふかひもなし | 定家 |
1155 | うつりゆく こころのいろの あきそとも いましらすけの まののはきはら | 行念 |
1156 | あきかせに なひくあさちの いろよりも かはるはひとの こころなりけり | 家隆 |
1157 | いろかはる こころのあきの ときしもあれ みにしむくれの をきのうはかせ | 俊成女 |
1158 | なかなかに おもひもいれぬ みのあきを もみちよなにの いろにみすらむ | 宰相典侍(後宇多院) |
1159 | うきみには いかにちきりて ことのはの しくれもあへす いろかはるらむ | 実秀(藤原公隆男) |
1160 | ちきりおきし こころこのはに あらねとも あきかせふけは いろかはりけり | 頼舜 |
1161 | むすはすよ しもおきまよふ ふゆくさの かるるをひとの ちきりなれとは | 房厳 |
1162 | これもまた よのならひそと おもはすは かはるつらさに なからへもせし | 経清 |
1163 | かはらしと ちきりしままの なかならは いのちののちや ひとにわかれむ | 行蓮 |
1164 | くやしきに ぬるるたもとの さよころも おもひかへすも かひなかりけり | 俊平(源泰光男) |
1165 | いまはたた なれてすきにし つきひさへ おもひいてては くやしかりけり | 家定 |
1166 | としつきの つもれはとても こひしさの なとわすられぬ こころなるらむ | 実遠(藤原公冬男) |
1167 | いまそしる わすられさりし としつきは なにのつらさに ものおもひけむ | 読人不知 |
1168 | あはぬまを うらみしころの こひしきは いかになりぬる なかのちきりそ | 内実 |
1169 | いまはさは なににいのちを かけよとて ゆめにもひとの みえすなるらむ | 讃岐(二条院) |
1170 | おもひねの こころのうちを しるへにて むかしのままに みるゆめもかな | 基忠(鷹司兼平男) |
1171 | いたつらに としのみこえて あふさかの せきはむかしの みちとなりにき | 宗尊親王 |
1172 | やすらひに いてにしひとの かよひちを ふかきのはらと けふはみるかな | 良経(九条兼実男) |
1173 | いはさりき わかみふるやの しのふくさ おもひたかへて たねをまけとは | 定家 |
1174 | かれはてし ひとはむかしの わすれくさ わすれすそてに のこるつゆかな | 読人不知 |
1175 | つらかりし こころのあきも むかしにて わかみにのこる くすのうらかせ | 伏見院 |
1176 | おもへたた のへのまくすも あきかせの ふかぬゆふへは うらみやはする | 公雄 |
1177 | むかしみし ふるののさはの わすれみつ なにいまさらに おもひいつらむ | 寂超 |
1178 | われなから つらくなるみの しほひかた うらみしすゑそ とほさかりぬる | 国平 |
1179 | おもふには たくひなるへき いせのあまも ひとをうらみぬ そてそぬれける | 家隆 |
1180 | とははやな うらみなれたる さとのあまも ころもほすまは なきおもひかと | 亀山院 |
1181 | いつまての つらさなりけむ からころも なかにへたてし よはのうらみは | 光俊(葉室光親男) |
1182 | つらくとも さのみはいかに からころも うきみをしらて ひとをうらみむ | 家平 |
1183 | やまかつの しつはたおひの いくかへり つらきうらみに むすほほるらむ | 行能 |
1184 | ことわりと こひしきまては おもひしに つらきにたにも ぬるるそてかな | 道洪 |
1185 | うらみこし こころもいまは なきものを たたこひしさの ねのみなかれて | 宗尊親王 |
1186 | うらみての のちさへひとの こひしきや つらさにこりぬ こころなるらむ | 忠資 |
1187 | いかにせむ おもひたえたる このころは うらみしほとの なくさみもなし | 教良 |
1188 | いとはるる うきみのほとを しのはすは つらきたくひも ひとにとはまし | 祐春 |
1189 | みをつまは おもひしらすも なからまし ひとはうらみに ならはさりけり | 実房 |
1190 | われさへに わするとひとや おもふらむ あまりになれは いはぬつらさを | 行氏(平胤行男) |
1191 | ひとすちに みをうらむへき ちきりかな ひとやはいひし ものおもへとは | 経国 |
1192 | いまはまた いかにいはまし うらみての のちさへつらき ひとのこころを | 頼重 |
1193 | うきをなほ しのふわかみの つれなさは ひとのつらさに おとりやはする | 性助法親王 |
1194 | ひとつてに いへともいとと つれなきは わかおもふほとや うらみさるらむ | 後二条院 |
1195 | はかなくも おもひもすてぬ わかみかな うらむるまての たのみのこして | 後二条院 |
1196 | つきもせす うらみさらまし うきひとに わすらるるみの おもひしられは | 師教(九条忠教男) |
1197 | よしさらは うらみははてし かすならぬ みのとかにこそ おもひなすとも | 読人不知/国任 |
1198 | ひとをのみ なほうらむとや おもふらむ みをかこちても おつるなみたを | 実承 |
1199 | つらくとも これをかきりと いひやらむ けにみをすては ひとやをしむと | 為世(御子左藤原為氏男) |
1200 | いのちたに つらさにたへぬ みなりせは このよなからは うらみさらまし | 有房(六条通有男) |
1201 | あふことに かへしいのちの ままならは ひとのつらさも またはなけかし | 伏見院 |
1202 | よしさらは ひとのつらさも ありてうき いのちのとかと なしてうらみし | 讃岐(後照念院関白太政大臣家) |
1203 | さのみやは つらさにたへて なからへむ かきりあるよの いのちなりとも | 宣時(北条) |
1204 | うらむとも せめてしらする なかならは あはれをかくる をりもあらまし | 読人不知 |
1205 | とはれぬを うしともせめて いひてまし たたなほさりの つらさなりせは | 経平女 |
1206 | かくはかり おもふにまけぬ つらさこそ みをしるなかも うらみられけれ | 為宗 |
1207 | つらしとて おもひすつるも かなはぬを やすくそひとの わすれはてける | 大納言典侍(後嵯峨院) |
1208 | としつきは あはぬうらみと おもひしに うらみてあはす いつなりにけむ | 後嵯峨院 |
1209 | ゆくすゑを ちきりしよりそ うらみまし かかるへしとも かねてしりせは | 基忠(鷹司兼平男) |
1210 | うらみても なほおなしよに ありふるや つらさをしらぬ いのちなるらむ | 冬平 |
1211 | うきなから なれぬるものは としつきの つらさをかこつ なみたなりけり | 基平(近衛兼経男) |
1212 | いくとせの かさしをりけむ いにしへの みわのひはらの こけのかよひち | 定家 |
1213 | いくよとも しられぬものは しらくもの うへよりおつる ぬのひきのたき | 家隆 |
1214 | くむひとは またいにしへに なりぬとも のなかのしみつ おもひわするな | 寂蓮 |
1215 | ありしよを こふるなみたの つゆそおく いまもさかのの みちのささはら | 通成 |
1216 | すみよしの まつふくかせも かはらねは きしうつなみや むかしなるらむ | 秀能(藤原秀宗男) |
1217 | いかにして おもふかたには かよふらむ かせにしたかふ あまのつりふね | 公雄 |
1218 | くれぬとて わかすむかたに かへるなり あしやのおきの あまのつりふね | 実重(三条公親男) |
1219 | あまのすむ さとのしるへや これならむ くるれはみゆる いさりひのかけ | 後二条院 |
1220 | かせふけは なみこすいその いはねまつ いくしほそむる みとりなるらむ | 読人不知 |
1221 | ねのひとて けふひきそむる こまつはら こたかきまてを みるよしもかな | 後嵯峨院 |
1222 | かけしけき そのふのたけの そのままに こそふりつみし ゆきそのこれる | 良覚 |
1223 | きえのこる ゆきにつけてや わかやとを はなよりさきに ひとのとふらむ | 月花門院 |
1224 | いろかをも しるひとみよと さくうめの はなのこころに まかせてそをる | 為子(従二位) |
1225 | いろかをも しるひとならぬ わかために をるかひなしと はなやおもはむ | 為道 |
1226 | こころある ひとはとひこて わかそてに うめかかをしき はるのゆふかせ | 斉時 |
1227 | あけぬとて たかなはたたし かへるかり よふかきそらを なにいそくらむ | 義政 |
1228 | まよはしな こしちのそらは かすむとも かへりなれたる はるのかりかね | 禅助 |
1229 | しかのあまの つりするそては みえわかて かすむなみちに かへるかりかね | 国助 |
1230 | ゆくさきも あともかすみの なかそらに しはしはみえて かへるかりかね | 源恵 |
1231 | よをすつる みのかくれかの ふるさとに おとさへしのふ にはのはるさめ | 実兼 |
1232 | われはかり まつとはいはし やまさくら はなもうきみを いとひもそする | 経朝 |
1233 | くもとたに さたかにはみす やまさくら とほきこすゑや なほかすむらむ | 時直 |
1234 | ありとたに ひとにしられぬ やとなれは はなさきぬとも たれかとひこむ | 能清 |
1235 | あはれいまは みをいたつらの なかめして わかよふりゆく はなのしたかけ | 伏見院 |
1236 | おもひやれ おいてなくさむ はなたにも しをるるけさの あめのつらさを | 覚助法親王 |
1237 | さくはなの さかりをみても やまかけに ふりはてぬへき みをなけくかな | 為綱 |
1238 | なかめつつ わかみもふりぬ やまさくら よそちあまりの はるをかさねて | 宗泰(藤原時宗男) |
1239 | としことに はなはさけとも ひとしれぬ わかみひとつそ はるなかりける | 師光(源師頼男) |
1240 | いたつらに ちりなはをしき はなゆゑに わかためならす ひとをまつかな | 玄覚 |
1241 | ちりはてて のちはなにせむ やまさとの はなみよとてそ ひとはまたれし | 親世 |
1242 | つらしとて そむくうきよの ほかまても はなそわかみを なほさそひける | 道洪 |
1243 | いのちをも をしむこころや なからまし はなにこのよを おもひおかすは | 光行 |
1244 | さくらはな ちらすはやかて みよしのの やまやいとはぬ すみかならまし | 国平 |
1245 | いくはるも わかたつそまに いほしめて やまのかひある はなをこそみめ | 公澄 |
1246 | はるのみやに つかへしままの としをへて いまはくもゐの はなをみるかな | 源恵 |
1247 | ここのへに いろをかさねて にほふらし はなもときしる みよにあひつつ | 良助法親王 |
1248 | いまそみる きみかこころも をりをえて はるのときしる はなのひとえた | 後二条院 |
1249 | としことの みゆきをちきる はるなれは いろをそへてや はなもさくらむ | 公豪 |
1250 | あはれとて はなみしことを かそふれは ここらのとしの はるそへにける | 兼朝 |
1251 | いまよりの こころかよはは おもひいてよ かならすはなの をりならすとも | 漸空 |
1252 | ちよくならて またほりうつす やともかな ためしにゆるせ やへのさくらき | 公経(藤原実宗男) |
1253 | さくらはな をりしるひとの やとにうゑて いくめくりとも はるそかきらぬ | 道助法親王 |
1254 | さけはかつ ちるもたえまの みえぬかな はなよりほかの いろしなけれは | 淑氏 |
1255 | さくはなの こころつからの いろをたに みはてぬほとに はるかせそふく | 範藤 |
1256 | このはるも またちるはなを さきたてて をしからぬみの なほのこりつつ | 澄覚法親王 |
1257 | なからへて いけらはのちの はるとたに ちきらぬさきに はなそちりぬる | 弁内侍(後深草院) |
1258 | ひととはぬ やとのさくらの いかにして かせにはつらく しられそめけむ | 国長 |
1259 | さきなはと はなにたのめし ひとはこて とふにつらさの はるかせそふく | 範憲 |
1260 | あめはるる くものかへしの やまかせに しつくなからや はなのちるらむ | 時村 |
1261 | みなかみや はなのこかけを なかれけむ さくらをさそふ はるのかはなみ | 貞時 |
1262 | ちりやすき はなのこころを しれはこそ あらしもあたに さそひそめけむ | 祐春 |
1263 | ちりぬれは ふくもこすゑの さひしさに かせもやはなを おもひいつらむ | 雲雅 |
1264 | なみたにそ またやとしつる はるのつき うきはかはらぬ もとのみにして | 時清 |
1265 | めくりあふ はるはいそちの おいかよに ことわりすきて かすむつきかな | 基忠(鷹司兼平男) |
1266 | かすむたに こころつくしの はるのつき くもれといのる よはもありけり | 能海 |
1267 | なはしろの はるのかとたに せくみつの みちあるかたに みをやまかせむ | 兼氏 |
1268 | うきことも いふにそつらき やまふきは こころありける はなのいろかな | 宣時(北条) |
1269 | わすれめや かすかののへに くろきもて つくれるやとの のきのふちなみ | 基忠(鷹司兼平男) |
1270 | かすかやま こたかきみねの ふちのはな すゑはもはるに あはさらめやは | 行尊 |
1271 | はなみむと ちきりしひとを まつほとに あやなくはるの くれにけるかな | 師尚 |
1272 | ちりのこる のちのやよひの やへさくら かさなるはるの はなとこそみれ | 景房 |
1273 | なれてなほ あかぬなこりの かなしきは かさなるはるの わかれなりけり | 道玄 |
1274 | かみやまに そのなをかけよ ふたはくさ みつのくらゐの あとをたつねて | 経久 |
1275 | かけていのる しるしあらせよ あふひくさ かさせるあとは かみもわすれし | 忠景 |
1276 | まつことを ならひになして ほとときす なくへきころも つれなかりけり | 貞重 |
1277 | わひひとの こころにならへ ほとときす うきにそやすく ねはなかれける | 読人不知/能誉 |
1278 | ありあけの つきにもなかす ほとときす つれなきほとの かきりしらせて | 覚守 |
1279 | みしかよも なほねさめして ほとときす はつねはおいの のちにこそきけ | 時遠 |
1280 | としをへて わかかみやまの ほとときす おなしはつねを いまもきくかな | 遠久 |
1281 | ほとときす ひとにかたらぬ をりにしも はつねきくこそ かひなかりけれ | 西行 |
1282 | なくかたに まつあくかれて ほとときす こゆるやまちの すゑもいそかす | 時藤(平清時あるいは時直男) |
1283 | いつまてか あはれときかむ ほとときす おもへはたれも ねこそなかるれ | 光俊(葉室光親男) |
1284 | いろふかき なみたをかりて ほとときす わかころもての もりになくなり | 雅成親王 |
1285 | いつまてか あやめはかりの なかきねを なみたもしらぬ そてにかけけむ | 宗尊親王 |
1286 | いまもまた さつきまちける たちはなに むかしわすれぬ ほとはしらなむ | 師宗 |
1287 | いへのかせ かはらすともに つたへきて むかしのあとに にほふたちはな | 俊定(藤原経俊男) |
1288 | みつまさる よとのかはをさ さすさをの すゑもおよはぬ さみたれのころ | 観意 |
1289 | かきくらし たたよふくもの ゆくかたも みえすなりぬる さみたれのころ | 茂重 |
1290 | かせわたる あしのすゑはに おくつゆの たまらすみえて とふほたるかな | 季茂 |
1291 | こひしさの みよりあまれる おもひをは よはのほたるに よそへてもみよ | 親清女妹 |
1292 | われはまた ひるもおもひの きえはこそ よはのほたるに みをもたくへめ | 親清女 |
1293 | おもふこと むなしきからに うつせみの こかくれはつる みこそつらけれ | 忠定(藤原兼宗男) |
1294 | いととまた ひかりやそはむ しらつゆに つきまちいつる ゆふかほのはな | 国助 |
1295 | かせのおとは またふきかへぬ くさのはの つゆにそあきの いろはみえける | 朝宗 |
1296 | なれぬれは つらきこころも ありとてや たなはたつめの まれにあふらむ | 空人 |
1297 | わすられぬ むかしのあきを おもひねの ゆめをはのこせ にはのまつかせ | 御匣(式乾門院) |
1298 | つゆのみの おきところこそ なかりけれ のにもやまにも あきかせそふく | 雅成親王 |
1299 | むすひおく つゆもしつくも あたしのの よもきかもとを はらふあきかせ | 通海 |
1300 | よなよなの なみたしなくは こけころも あきおくつゆの ほとはみてまし | 為家 |
1301 | わかそての たくひとみるも かなしきは おひてつゆけき もりのしたくさ | 公朝 |
1302 | いまはよに たれかはわれを まねくへき なさけありける はなすすきかな | 基顕 |
1303 | ひとそうき もとのこころは かはれとも ふるえのはきは いまもさくなり | 忠景 |
1304 | なににわか おいのなみたの かかるらむ ふるえのはきも つゆそこほるる | 公雄 |
1305 | としをへて もろくなりゆく なみたかな いつかかきりの あきのゆふくれ | 実承 |
1306 | せきのとを ささてもみちや へたつらむ あふさかやまの あきのゆふきり | 秀長(藤原秀弘男) |
1307 | あめはるる たかねはそらに あらはれて やまもとのほる ふしのかはきり | 性助法親王 |
1308 | すみなれし つきはむかしの あきかせに ふるさとさむき にはのあさちふ | 定意 |
1309 | われなから いつをなみたの たえまとて みのほとしらす つきをみるらむ | 基家 |
1310 | いかなれは なかむるそての しくるらむ くももかからぬ やまのはのつき | 師忠(二条良実男) |
1311 | なさけとや なみたのかかる そてにしも なかきよすから つきやとるらむ | 遊義門院 |
1312 | おもふこと けになくさむる つきならは こけのたもとは あきやほさまし | 光俊(葉室光親男) |
1313 | みのうさの わするるつきの かけならは あきのこころは なくさみなまし | 季広 |
1314 | あきをへて なれゆくつきの ますかかみ つもれはおいの かけをみるかな | 国平 |
1315 | なからへて いまいくとせか つきをみむ ことしもあきは なかはすくなり | 良守 |
1316 | さたかなる ゆめかうつつか ななそちの あきをまちえて みつるつきかけ | 実氏 |
1317 | わすれすよ おもひやいつる くもゐにて ともにみしよの あきのつきかけ | 弁内侍(後深草院) |
1318 | われのみや かけもかはらむ あすかかは ふちせもおなし つきはすめとも | 後嵯峨院 |
1319 | おほかたの なこそふけひの うらならめ かたふかてすめ あきのよのつき | 読人不知 |
1320 | いるまても つきみむとてそ すみそめし なにおふあきの にしのやまさと | 性助法親王 |
1321 | つれなくも めくりあひぬる いのちかな むそちのあきの ありあけのつき | 静仁法親王 |
1322 | あきのひの やまのはとほく なるままに ふもとのまつの かけそすくなき | 順徳院 |
1323 | みやこひと おもひおこせよ こけふかき まつのとほその あきのあはれを | 光子(典侍) |
1324 | きかさりし あらしのかせも みにそひぬ いまはすみかの あきのやまさと | 信実 |
1325 | あきふかく なりゆくままに ころもうつ おとはのさとや よさむなるらむ | 頼泰(平親秀男) |
1326 | わかいほは あらしのままに すみなして つゆもしくれも もらぬまそなき | 性助法親王 |
1327 | かねてより そてもしくれて すみそめの ゆふへいろます やまのもみちは | 後嵯峨院 |
1328 | よをのこす おいのなみたの わかそてに なほほしかたく ふるしくれかな | 公雄 |
1329 | としをへて ふりぬるみとは しるものを なにゆゑそての またしくるらむ | 教範 |
1330 | よそにみし たかねのくもの いつのまに このさとかけて しくれきぬらむ | 宗秀(大江時秀男) |
1331 | もみちはの あけのそほふね こきよせよ ここそとまりと きみもみるまて | 為道 |
1332 | ふきたつる このはのしたも このはにて かせたにわけぬ たにのかよひち | 寂恵 |
1333 | ふゆかはの こほりのひまを ゆくみつの またよとむこそ このはなりけれ | 親範(藤原範宗または親之男) |
1334 | うすこほり あやふきみとは おもへとも ふみみてよをも わたりけるかな | 忠源 |
1335 | わかのうらや いつよかさねて はまちとり ななたひおなし あとをつけつる | 為世(御子左藤原為氏男) |
1336 | わかよには あつめぬわかの うらちとり むなしきなをや あとにのこさむ | 伏見院 |
1337 | うらちとり なにはのことの たちゐにも おいのなみには ねそなかれける | 実兼 |
1338 | あはれにも おいのねさめの ともちとり わかよふけぬる つきになくなり | 公朝 |
1339 | いかなれは くものうへには ちりなから にはにのみふる ゆきをみるらむ | 頼政 |
1340 | こころさし ふかくもにはに つもりなは なとかくもゐの ゆきもみさらむ | 読人不知 |
1341 | きえもせて としをかさねよ いまもよに ふりてのこれる やとのしらゆき | 公雄 |
1342 | きえのこる あととてひとに とはるるも なほたのみなき にはのしらゆき | 為家 |
1343 | すききつる あとにまかせむ かすかのの おとろのみちは ゆきふかくとも | 実泰 |
1344 | はるはまつ とはれしものを やまふかみ ゆきふりにける みこそつらけれ | 秀能(藤原秀宗男) |
1345 | いまさらに なにとかゆきの うつむらむ わかみよにふる みちはたえにき | 光俊(葉室光親男) |
1346 | ふりまさる ゆきにつけても わかみよに うつもれてのみ つもるとしかな | 慶融 |
1347 | ふゆさむみ あらしになひく すみかまの けふりにましる みねのうきくも | 信顕 |
1348 | あすしらぬ よのはかなさを おもふにも をしかるましき としのくれかは | 小督(中務卿宗尊親王家) |
1349 | なにとまた くれゆくとしを いそくらむ はるにあふへき みともしらぬに | 通成 |
1350 | わかみよに うきもはてある としならは ちかつくはるも いそかれやせむ | 為相 |
1351 | ほともなく いそちのなみも こゆるきの いそきなれたる としのくれかな | 読人不知 |
1352 | なかめつる こころのやみも はるはかり かつらのさとに すめるつきかけ | 俊忠 |
1353 | よもすから ひとりまちいてて なかむれは うきことのみそ ありあけのつき | 基俊 |
1354 | いつかわれ なみたにぬるる かけならて そてよりほかの つきをみるへき | 覚助法親王 |
1355 | おもひやれ さらてもぬるる こけのそて あかつきおきの つゆのしけさを | 性助法親王 |
1356 | なれきつる あかつきおきの かねのおとも ひとよはかりに なるそかなしき | 憲基 |
1357 | いつまてと きくにつけても かなしきは おいのねさめの あかつきのかね | 御匣(式乾門院) |
1358 | しつかなる ねさめよふかき あかつきの かねよりつつく とりのこゑこゑ | 亀山院 |
1359 | かくしこそ ちとせもまため まつかえの あらししつかに すめるやまさと | 後宇多院 |
1360 | みねのあらし ふもとのかはの おとをのみ いつまてともと あかしくらさむ | 遊義門院 |
1361 | みとせへし なちのおやまの かひあらは たちかへりみむ たきのしらなみ | 道瑜 |
1362 | おほはらや おほろのしみつ くみてしれ すますこころも としへぬるみを | 読人不知 |
1363 | わするなよ なかれのすゑは わかるとも ひとつみやまの たにかはのみつ | 蓮生法師 |
1364 | すまはまた すまれこそせめ やまさとは かけひのみつの あるにまかせて | 為氏 |
1365 | しつかなる くさのいほりの あめのよを とふひとあらは あはれとやみむ | 御匣(式乾門院) |
1366 | よのうきに くらふるときそ やまさとは まつのあらしも たへてすまるる | 土御門院 |
1367 | さひしさも たれにかたらむ やまかけの ゆふひすくなき にはのまつかせ | 亀山院 |
1368 | きくままに いかにこころの すみぬらむ むかしのあとの みねのまつかせ | 為氏 |
1369 | とはるるや むかしのあとの かひならむ わかやまさとの にはのまつかせ | 道玄 |
1370 | まつかせの おとをきかてや やまさとを うきよのほかと ひとはいひけむ | 読人不知/長村 |
1371 | とへかしな くものころもを かさねても あらしさむけき みねのいほりを | 国助 |
1372 | すみわひは たちかへるへき ふるさとを へたてなはてそ みねのしらくも | 盛徳 |
1373 | すみそめし あとなかりせは をくらやま いつくにおいの みをかくさまし | 為家 |
1374 | やまさとに よをいとはむと おもひしは なほふかからぬ こころなりけり | 道玄 |
1375 | おもふには ふかきやまちも なきものを こころのほかに なにたつぬらむ | 泰時 |
1376 | とはれねは よのうきことも きこえこす いとふかひある やまのおくかな | 実伊 |
1377 | よのうさを なけくこころの みにそはは やまのおくにも すまむものかは | 読人不知 |
1378 | おもひいる よしののおくも いかならむ うきよのほかの やまちならねは | 道良女 |
1379 | よをうしと おもひもいれぬ つきたにも すみけるものを やまのおくには | 基輔(坊門清親男) |
1380 | ちきりあらは またやたつねむ よしのやま つゆわけわひし すすのしたみち | 覚助法親王 |
1381 | いまはよし うきよのさかと しりぬれは またことやまに やとはもとめし | 顕意 |
1382 | うきことの きこえこさらむ やまかけを たれにとひてか みをかくさまし | 在藤 |
1383 | さひしさも みのならはしの やまさとに たちかへりては すむこころかな | 為信 |
1384 | よをいとふ やまのおくにも すまれぬや わかみにそへる こころなるらむ | 心円 |
1385 | さひしさも さすかなれゆく しはのとは しはしそひとの こぬもまたれし | 実家(藤原実経男) |
1386 | さととほき やとのましはの ゆふけふり たたぬもなほそ さひしかりける | 御匣(式乾門院) |
1387 | やまふかみ むかしやひとの かよひけむ こけのしたなる たにのかけはし | 最信 |
1388 | おもひいつる ひとはありとも たれかこの こけふりにける みちをたつねむ | 実房 |
1389 | まよはしな かよひなれたる やまひとの つまきのみちは しをりせすとも | 右衛門督(惟康親王家) |
1390 | おろかなる こころはなほも まよひけり をしへしみちの あとはあれとも | 基政(藤原基綱男) |
1391 | おもひのみ みちゆくしほの あしわけに さはりもはてぬ わかのうらふね | 国助 |
1392 | おくれても あしわけをふね いりしほに さはりしほとを なにかうらみむ | 観意 |
1393 | あしはらの あととはかりは しのへとも よるかたしらぬ わかのうらなみ | 実兼 |
1394 | わかのうらに ひとりおいぬる よるのつるの このためおもふ ねこそなかるれ | 為氏 |
1395 | わかのうらに こをおもふとて なくつるの こゑはくもゐに いまそきこゆる | 亀山院 |
1396 | たらちねの おやのいさめの かすかすに おもひあはせて ねをのみそなく | 為家 |
1397 | つたへおく ことのはにこそ のこりけれ おやのいさめし みちしはのつゆ | 長有 |
1398 | いかにして まとにとしへし ふえたけの くもゐにたかく ねをつたへけむ | 良教 |
1399 | いへのかせ ふくとはすれと ふえたけの よよにおよはぬ ねそなかれける | 政秋 |
1400 | かせさわく あらいそなみに ひくあみの おきところなき みをうらみつつ | 有長 |
1401 | あひみてし のちはいかこの うみよりも ふかしやひとを おもふこころは | 頼朝 |
1402 | たのむこと ふかしといはは わたつうみも かへりてあさく なりぬへきかな | 慈円 |
1403 | きえやらて なみにたたよふ うたかたの よるへしらぬや わかみなるらむ | 性助法親王 |
1404 | よとむなよ さほのかはみつ むかしより たえぬなかれの あとにまかせて | 内実 |
1405 | いなふねも のほりかねたる もかみかは しはしはかりと いつをまちけむ | 嗣房 |
1406 | のほりえぬ よとのいかたの つなてなは このせはかりを ひくひともかな | 実重(三条公親男) |
1407 | うきになほ たへてつれなき すゑのまつ こゆるなみをも えこそうらみね | 資宣 |
1408 | たまほこの みちあるみよの くらゐやま ふもとにひとり なほまよふかな | 教良 |
1409 | そのかみに たのめしことの たかはねは なへてむかしの よにやかへらむ | 後宇多院 |
1410 | ちきりこし こころのすゑは しらねとも このひとことや かはらさるらむ | 万秋門院 |
1411 | しらさりき かしひのかさし としふりて すきにしあとに かへるへしとは | 経任(中御門藤原為経男) |
1412 | くりかへし なほうきものは かすならて わかみおいその もりのしめなは | 兼泰 |
1413 | みひとつの うきにかきらぬ このよそと おもひなせとも ぬるるそてかな | 基頼 |
1414 | おもふとも それによるへき よならぬを なになけかるる こころなるらむ | 基忠(鷹司兼平男) |
1415 | ことわりと おもひなすへき こころさへ みをわすれては なほなけくかな | 久世 |
1416 | さりともと はなかくよをも たのむかな あるへきほとは みゆるわかみを | 師光(源師頼男) |
1417 | なかなかに うきもつらきも しられすは こころのままに よをやすくさむ | 忠宗 |
1418 | とにかくに われからものを おもふかな みよりほかなる こころならねは | 具氏 |
1419 | おほかたの よをもうらみし こころたに うきみにかなふ ならひなりせは | 御匣(式乾門院) |
1420 | うしといふも たたおほかたの ならひとや こころをしらぬ ひとはおもはむ | 久時 |
1421 | よしさらは あるにまかせて すくしてむ おもふにかなふ うきよならねは | 尊深 |
1422 | おろかなる こころをいかに なくさめて うきはむくひと おもひわかまし | 行生 |
1423 | うしとても みにかこつへき かたそなき このよひとつの むくひならねは | 実家(藤原実経男) |
1424 | ゆくすゑの なにかゆかしき こしかたに うきみのほとは おもひしりにき | 道玄 |
1425 | なからへは うきことやなほ かすそはむ むかしもいまも ものそかなしき | 時茂 |
1426 | よのなかに なほもつれなく なからへて うきをしらぬは いのちなりけり | 円勇 |
1427 | ゆくすゑも さこそとおもへは あらましの なくさめたにも なきわかみかな | 円道 |
1428 | せめてわか みのなくさめの なきままに うきためしをそ いまはかそふる | 基顕 |
1429 | よのなかを うらむるとしは なけれとも みのうきときそ なみたおちける | 道洪 |
1430 | うきことを おもひつつけて ねぬるよは ゆめのうちにも ねそなかれける | 定意 |
1431 | いつとても かはらすゆめは みしかとも おいのねさめそ そてはぬれける | 能清 |
1432 | ものをのみ おもひなれたる おいかみに ねさめせられぬ あかつきもかな | 時広 |
1433 | はかなくも わかあらましの ゆくすゑを まつとせしまに みこそおいぬれ | 実伊 |
1434 | みてもまた ありしにもにぬ おもかけや おいをますみの かかみなるらむ | 為教 |
1435 | いかにせむ かかみのそこに みつはくむ かけもむかしの ともならなくに | 長明 |
1436 | あくかれて よのうきたひに ととまらぬ こころのともや なみたなるらむ | 忠良 |
1437 | にこりえの あしまにやとる つきみれは けにすみかたき よこそしらるれ | 時元 |
1438 | みちのへに しけるをささの ひとふしも こころとまらぬ このよなりけり | 道玄 |
1439 | こころなき いつみのそまの みやきたに ひくひとあれは くちはてぬよを | 通光 |
1440 | あつさゆみ こころのひくに まかせすは いまもすくなる よにやかへらむ | 宗宣(北条宣時男) |
1441 | あちきなく おもひしらるる よのうさも みのかすならは なほやなけかむ | 為信 |
1442 | なからへて いかになるへき はてそとも われさへしらぬ みのゆくへかな | 実兼 |
1443 | なにことに しはしうきみの わすられて おもひなくさむ こころなるらむ | 忠成 |
1444 | よをうしと なになけきけむ そむかれぬ こころそみをは おもはさりける | 祐世(中臣祐賢男) |
1445 | よのなかの うきにつけても つらからし みをひとかすに おもひなさすは | 時村 |
1446 | とにかくに おもひしことの かはるよは わかこころとて たのみやはする | 為子(従二位) |
1447 | ありへても たかいとふへき うきよとて なほみをすてぬ こころなるらむ | 宗成 |
1448 | こころから うきをしのひて いとはぬや なけくへきみの むくひなるらむ | 少将(永陽門院) |
1449 | よのひとの かすにもあらは いかならむ うきにたになほ そむかれぬみは | 能円 |
1450 | いとはしな さてもなからむ のちはまた こひしかるへき このよならすや | 雅経 |
1451 | いつかわれ そむかさりけむ いにしへを くやしきものと おもひしるへき | 行家(藤原知家男) |
1452 | あはれなと みをうきものと いとひても なほすてやらぬ こころなるらむ | 資平 |
1453 | そむくへき ことわりしらぬ こころこそ うきよにみをは をしみとめけれ | 盛久 |
1454 | うきよとて そむきはてても いかかせむ あらましにたに かはるこころを | 良心 |
1455 | よのなかを うしといひても かひそなき そむかれぬもの こころよわさに | 静仁法親王 |
1456 | まつことの あるたにさため なきものを なにをたのむと すくすなるらむ | 大輔(殷富門院) |
1457 | あはれいつ わかあらましの かきりにて そむきはつへき うきよなるらむ | 高定 |
1458 | いかかせむ いとふともなほ よのなかを なけくこころの もとのみならは | 時常 |
1459 | いとへとも なほなからふる いのちこそ うきよにのこる つらさなりけれ | 道洪 |
1460 | いのちをは いかなるひとの をしむらむ うきにはいける みこそつらけれ | 心海 |
1461 | うしとのみ いとふさへこそ あはれなれ あるものとやは みをおもふへき | 寂蓮 |
1462 | はかなくも おもひすててし おなしみを よにありかほに なほなけくらむ | 定為 |
1463 | なみたこそ こころもしらね すてしより なにのうらみか みにはのこらむ | 道性 |
1464 | つかへこし よよのむかしの なこりとて のこるはかりに みをやかこたむ | 内実 |
1465 | いかかせむ せきのふちかは よよをへて つかへしあとに うきせのこさは | 実家(藤原実経男) |
1466 | よよかけて おもひをくらの やまみつの いかににこれは すますなりけむ | 公雄 |
1467 | やまみつに ふたたひかけを やとしても にこらぬよこそ みにしられけれ | 公雄 |
1468 | みちあれと なにはのことも おもへとも あしわけをふね すゑそとほらぬ | 後嵯峨院 |
1469 | むくふへき よのことわりは おもへとも たみのちからを たすけやはする | 良実 |
1470 | ふしておもひ おきてもなけく よのなかに おなしこころと たれをたのまむ | 後宇多院 |
1471 | わすれすと たれにいひてか なくさめむ こころにうかふ むかしかたりを | 基忠(鷹司兼平男) |
1472 | むかしとて かたるはかりの とももなし みののをやまの まつのふるきは | 為家 |
1473 | おいてみる わかかけのみや かはるらむ むかしなからの ひろさはのいけ | 道玄 |
1474 | おもひいての なきひとたにも いにしへを しのふならひは ありとこそきけ | 源恵 |
1475 | かくてまた うきみのはての いかならむ すきにしかたは おもひてもなし | 読人不知 |
1476 | たちかへり またいにしへを こふるかな たのみしすゑの うきにつけては | 兼氏 |
1477 | たれもみな むかしをしのふ ことわりの あるにすきても ぬるるそてかな | 政長 |
1478 | いやしきも よきもさかりの すきぬれは おいてこひしき むかしなりけり | 国助 |
1479 | としつきの へたつるままに こしかたの わすられはせて なほそこひしき | 忠能 |
1480 | おもひいても なきいにしへを しのふこそ うきをわするる こころなるらめ | 基良女 |
1481 | ひとはいさ こひしからてや こしかたを むかしとはかり おもひいつらむ | 行氏(平胤行男) |
1482 | しのふへき ならひとおもふ ことわりに すきてこひしき むかしなりけり | 禅助 |
1483 | そのことの ゆゑとはなしに こひしきは わかみにすきし むかしなりけり | 忠資 |
1484 | なからへて わかみにすきし むかしをも こころならては たれかしのはむ | 読人不知 |
1485 | まとろまぬ うつつなからに みるゆめは おもひつつくる むかしなりけり | 雅有 |
1486 | あはれにも みしよにかよふ ゆめちかな まとろむほとや むかしなるらむ | 読人不知/公順 |
1487 | みしことを ねさめのとこに おとろけは おいのまくらの ゆめそみしかき | 慶融 |
1488 | いくかへり あきのよなかき ねさめにも むかしをひとり おもひいつらむ | 通有 |
1489 | ものおもはて なかめしあきの ありかほに なにとむかしの つきをこふらむ | 実経 |
1490 | いたつらに かくてはひとり みさらまし こよひのつきの むかしなりせは | 基顕 |
1491 | あめのした ちよにやちよと いのるこそ よゐのむかしに かはらさりけれ | 禅助 |
1492 | なにとかく おもひもわかて しのふらむ すきにしかたも おなしうきよを | 読人不知/国藤 |
1493 | いかなれは こひしとおもふ いにしへの つきひにそへて とほさかるらむ | 基政(高階) |
1494 | としつきは いはてこころに おもひこし このよをいまそ そむきはてぬる | 盛長(惟宗) |
1495 | いまさらに そてのいろにや しらるらむ かねてもそめし こころなれとも | 公親 |
1496 | みをすてし わかすみそめは なけかれて よそにかなしき そてのいろかな | 公雄 |
1497 | なにゆゑか よそになけかむ こころより おもひたちぬる すみそめのそて | 為氏 |
1498 | よをすつる ひとかたをこそ なけきつれ ともにそむくと きくそかなしき | 為世(御子左藤原為氏男) |
1499 | としたけぬ ひとたにそむく よのなかに おいてつれなく いかかのこらむ | 宣時(北条) |
1500 | なにとまた こころにものを おもふらむ かからしとてそ よをはいとひし | 読人不知 |
1501 | ねぬにみる このよのゆめよ いかならむ おとろけはとて うつつともなし | 景綱 |
1502 | いかかせむ このよのゆめの さめやらて またかさならむ なかきねふりを | 源承 |
1503 | ゆめのよに まよふときかは うつつにも なほなくさまぬ わかれならまし | 家経(一条実経男) |
1504 | みしひとの すてていてにし ゆめのよに とまるなけきそ さむるまもなき | 邦長 |
1505 | よそにきく ひとはおとろく ゆめのよを われのみさめす なほなけくかな | 親子(典侍親子朝臣) |
1506 | あたしのや かせまつつゆを よそにみて きえむものとも みをはおもはす | 為道 |
1507 | おもひいる みやまかくれの こけのそて かすならすとて おかぬつゆかは | 経乗 |
1508 | ひとよりも したふこころは きみもさそ あはれとこけの したにみるらむ | 道洪 |
1509 | あはれなり わかみにちかき とりへのの けふりをよそに いつまてかみむ | 光子(典侍) |
1510 | おくれしと おもふこころや なきひとの まよふやみちの ともとなるらむ | 氏忠 |
1511 | あとをとふ ひとたになくは ともちとり しらぬうらちに なほやまよはむ | 通成 |
1512 | おもひきや このあきまてに なれなれて いまなきあとを とはむものとは | 性瑜 |
1513 | ゆきとまる いつくをつひの やととてか とへともひとに ちきりおくへき | 家良 |
1514 | いきてこそ あるにもあらぬ みなりとも なきひとかすに いつかとはれむ | 聖勝 |
1515 | とはすとて おろかなるにや おもふらむ こころをかへて なけきこしみを | 為氏 |
1516 | とはれぬも なけきにそへて つらかりき こころをかふる ほとをしらねは | 基忠(鷹司兼平男) |
1517 | かねてなと いとふこころの なかるらむ つひにゆくへき みちときけとも | 慈順 |
1518 | きみもまた ちきりありてや たかのやま そのあかつきを ともにまつらむ | 貞空 |
1519 | つひにゆく みちをまことの わかれにて うきよにさらは かへらすもかな | 行氏 |
1520 | をしめとも さらぬならひの いのちにて うきはこのよの わかれなりけり | 秀茂 |
1521 | かきりそと きくそかなしき あたしよの わかれはさらぬ ならひなれとも | 宗尊親王 |
1522 | かくつらき わかれもしらて あたしよの ならひとはかり なにおもふらむ | 素暹 |
1523 | たらちねの ありしそのよに あはれなと おもふはかりも つかへさりけむ | 道玄 |
1524 | あふさかの せきにはあらて しるしらす つひにゆくなる みちそかなしき | 覚寛 |
1525 | きのふまて かけとたのみし さくらはな ひとよのゆめの はるのやまかせ | 定家 |
1526 | かなしさの きのふのゆめに くらふれは うつろふはなも けふのやまかせ | 家隆 |
1527 | さもこそは みやまかくれの はるならめ うきよもしらぬ はなのいろかな | 氏久 |
1528 | すみそめに さかぬもつらし やまさくら はなはなけきの ほかのものかは | 親世 |
1529 | はきかはな おなしにほひに さきにけり うかりしあきの つゆもさなから | 行宗 |
1530 | みるたひに つゆけさまさる はきかはな をりしりかほに なににほふらむ | 読人不知 |
1531 | かくはかり なきあとしのふ ひともあらし わかよののちの あきのやまさと | 家経(一条実経男) |
1532 | やまさとは そてのもみちの いろそこき むかしをこふる あきのなみたに | 慈円 |
1533 | きえぬまも みるそはかなき なきひとの むかしのあとに つもるしらゆき | 斉時 |
1534 | あとしのふ こころをいかて あらはさむ かかるみのりの しるへならすは | 基忠(鷹司兼平男) |
1535 | おほゐかは ゆくせのなみも おなしくは むかしにかへれ きみかかけみむ | 亀山院 |
1536 | はかなくも これをかたみと なくさめて みにそふものは なみたなりけり | 実経 |
1537 | あるよにも かくやはそひし おもかけの たちもはなれぬ きのふけふかな | 国助 |
1538 | うかりける はるのわかれと おもふにも なみたにくるる けふのかなしさ | 良覚 |
1539 | かけてたに おもひやはせし あやめくさ なかからぬよの かたみなれとも | 定為 |
1540 | なかはなる つきのかつらの おもかけを おもひいててや かきくもるらむ | 実氏 |
1541 | かきくもる なみたもかなし いまさらに なかはのつきは そてにやとさし | 河浪(東二条院半物) |
1542 | めくりあふ こそのこよひの つきみてや なきおもかけを おもひいつらむ | 実冬(藤原公光男) |
1543 | こよひとて なみたのひまは なきものを いかなるひとの つきをみるらむ | 教範 |
1544 | めくりあふ これやむかしの あとそとも いつかみやこの つきにみるへき | 時範 |
1545 | たらちねの おやのみしよの あきならは つきにもそては しほらさらまし | 祐親 |
1546 | こひしのふ むかしのあきの つきかけを こけのたもとの なみたにそみる | 行済 |
1547 | ふりにける としのみとせの あきのあめ さらにゆふへの そらそかなしき | 実雄 |
1548 | もろともに みしよのあきの おもかけも わすれぬつきに ねをのみそなく | 隆博 |
1549 | いまさらに かなしきものは とほさかる わかれののちの つきひなりけり | 大弐(安嘉門院) |
1550 | わかれにし のちのみとせの はるのつき おもかけかすむ よはそかなしき | 兼孝 |
1551 | かすむよの そらよりもなほ すみそめの そてにそくもる はるのつきかけ | 行実 |
1552 | さこそけに ゆめのわかれの かなしさは わするるまなき うつつなるらめ | 為氏 |
1553 | なにとまた おとろかすらむ うつつとは おもひもわかぬ ゆめのわかれち | 行済 |
1554 | おとろかす きみによりてそ なかきよの ひさしきゆめは さむへかりける | 成通 |
1555 | おとろかぬ こころなりせは よのなかを ゆめそとかたる かひなからまし | 西行 |
1556 | なにかその ひとのあはれも よそならむ うきよのほかに すまぬみなれは | 景綱 |
1557 | くれたけの うきひとふしに みはすてつ まぬいかさまに よをそむかまし | 弁内侍(後深草院) |
1558 | もろともに ゆくへきみちに さきたちて さためなきよの しるへをそする | 蓮生法師 |
1559 | みにしれは くもゐのかりの ひとつらも おくれさきたつ ねをやなくらむ | 公守 |
1560 | こととへよ たれかしのはむ ほとときす なからむあとの やとのたちはな | 三河(中務卿宗尊親王家) |
1561 | このよにて かたらひおかむ ほとときす してのやまちの しるへともなれ | 堀河(待賢門院) |
1562 | あしひきの やまほとときす けふしこそ むかしをこふる ねにはなくらめ | 師頼 |
1563 | さみたれの ひかすはよそに すきなから はれぬなみたや そてぬらすらむ | 実兼 |
1564 | なそもかく つゆのいのちと いひおきて きゆれはひとの そてぬらすらむ | 如円 |
1565 | はかなくも きえのこりては なけくかな たれもゆくへき みちしはのつゆ | 乗雅 |
1566 | なにとして うきみひとつの のこるらむ おなしむかしの ひとはなきよに | 興信 |
1567 | きみゆゑと みにをしまれし いのちこそ おくれてのこる けふはつらけれ | 兼氏 |
1568 | たらちねの さらぬわかれの なみたより みしよわすれす ぬるるそてかな | 慶融 |
1569 | わかみいかに するかのやまの うつつにも ゆめにもいまは とふひとのなき | 慶融 |
1570 | こけのしたに うつもれぬなを のこしつつ あととふそてに つゆそこほるる | 読人不知 |
1571 | かめのをの いはねをおつる しらたまの かすかきりなき ちよのゆくすゑ | 後鳥羽院 |
1572 | きみかすむ かめのをやまの たきつせは ちよをこころに さそまかすらむ | 実氏 |
1573 | つかへこし ふるきなかれの いけみつに なほちよまてと まつかせそふく | 良経(九条兼実男) |
1574 | ちとせまて こかたきかけの たねしあれは いはにそみゆる まつのゆくすゑ | 通方 |
1575 | いはのうへに かねてうゑける たねしあれは ちとせのまつも ためしとそみる | 公経(藤原実宗男) |
1576 | きみかよの ためしになにを おもはまし かはらぬまつの いろなかりせは | 西行 |
1577 | まつのはな とかへりさける きみかよに なにをあらそふ つるのよはひそ | 基俊 |
1578 | ふたはなる ねのひのこまつ ゆくすゑに はなさくまては きみそみるへき | 行宗 |
1579 | かすかのの ねのひのまつに ちきりおかむ かみにひかれて ちよふへきみは | 伏見院 |
1580 | はるののの はつねのまつの わかはより さしそふちよの かけはみえけり | 土御門院 |
1581 | かすかやま めくみもしるき まつかえに さこそさかえめ きたのふちなみ | 道平 |
1582 | あさゆふに ちとせのこゑそ きこえける まつとたけとに かよふあらしは | 惟明親王 |
1583 | このころは あきつしまひと ときをえて きみかひかりの つきをみるかな | 良経(九条兼実男) |
1584 | しほのやま さしてのいその あきのつき やちよすむへき かけそみえける | 雅言 |
1585 | みかさやま いのるこころの くもらねは つきひとともに ちよやめくらむ | 亀山院 |
1586 | いくちよそ そてふるやまの みつかきも およはぬいけに すめるつきかけ | 定家 |
1587 | ちちのあき さやけきつきの かけまても かしこきみよに すめるいけみつ | 公経(藤原実宗男) |
1588 | きみかため くもらぬかけに すむつきの さやかにちよの あきそしらるる | 公守 |
1589 | ちとせとも かきらぬみよの ためしとや あきをちきりて つきもすむらむ | 経任(中御門藤原為経男) |
1590 | もろともに おなしくもゐに すむつきの なれてちとせの あきそひさしき | 亀山院 |
1591 | いくちよも かくこそはみめ すむつきの かけもくもらぬ あきのゆくすゑ | 伏見院 |
1592 | さきにけり きみかみるへき ゆくすゑは とほさとをのの あきはきのはな | 俊成女 |
1593 | ひさしかれ なひくいなはの すゑまても とはたのおもの よよのあきかせ | 家衡 |
1594 | きくのつゆ つもりてふちと なるまてに おいせぬはなを きみのみそみむ | 実経 |
1595 | きみかよに にほふやまちの しらきくは いくたひつゆの ぬれてほすらむ | 良経(九条兼実男) |
1596 | あたらしき はるをちかしと さきくさの みつはよつはそ かねてしらるる | 公経(藤原実宗男) |
1597 | たのむかな はるときみとし まちかくは みつはよつはの ちよのとなりを | 定家 |
1598 | うつろはて よろつよにほへ やまさくら はなもときはの やとのしるしに | 景綱 |
1599 | みなかみも すゑもはるけし おほゐかは きみすむやとの たえぬなかれに | 実兼 |
1600 | あしたつの くもゐにかよふ こゑのうちに かねてもしるし ちよのゆくすゑ | 後宇多院 |
1601 | くさかえの いりえのたつも もろこゑに ちよにやちよと そらになくなり | 亀山院 |
1602 | なみのうへに くすりもとめし ひともあらは はこやのやまに みちしるへせよ | 寂蓮 |
1603 | つくつゑに むそちこえゆく ことしより ちとせのさかの すゑそひさしき | 遊義門院 |
1604 | としへぬる おいきのはなも このはるの みゆきにあひて ちよやかさねむ | 兼平 |
1605 | ここのそち ふるかひありて きみかため けふのみゆきも よろつよのはる | 忠教(九条忠家男) |
1606 | ももとせに きみかななそち あひにあひて ともにやちよの はるやまつらむ | 後宇多院 |
1607 | いはひそむる けふをやちよの はしめにて ちきるよはひの すゑそはるけき | 伏見院 |
1608 | よよのあとに なほたちこゆる おいのなみ よりけむとしは けふのためかも | 実兼 |
1609 | あめのした のとけかるへし なにはかた たみののしまに みそきしつれは | 経国 |
1610 | かみよより いのるまことの しるしには いはとのやまの さかきをそとる | 家光 |
1611 | たまつはき かはらぬいろを わかよとて みかみのやまそ ときはなるへき | 経光 |
1612 | さかきとる みかみのやまに ゆふかけて いのるひつきの なほやさかえむ | 兼仲 |
1613 | このたひは かへりこむとも いそかれす いなはのやまの まつひともなし | 祖意法師 |
1614 | かきりなく とほくなりゆく みやこかな すみたかはらの わたりしてけり | 後嵯峨院 |
1615 | ひとこゑも かかるうきみに うれしきは すてぬほとけの ちかひなりけり | 彰空 |
1616 | かへるかり たかならはしの つらさより みやこのはるに わかれそめけむ | 雅有 |
1617 | ぬはたまの よはのまくらに おくしもの かさなるままに みこそふりぬれ | 基氏(藤原基家男) |