「千載和歌集」一覧
2131件
1 | いつるひの おなしひかりに わたつうみの なみにもけふや はるはたつらむ | 定家 |
2 | をさまれる みよのはしめに たつはるは くものうへこそ のとかなりけれ | 実兼 |
3 | やまかはの こほりもとけて はるかせに としたちかへる みつのしらなみ | 後宇多院 |
4 | たちかへり はるはきにけり ささなみや こほりふきとく しかのうらかせ | 為家 |
5 | あさひさす かけものとかに ひさかたの そらよりはるの いろやみゆらむ | 実氏 |
6 | みかさやま さすやあさひの まつのはに かはらぬはるの いろはみえけり | 土御門院 |
7 | あらたまの としのあけゆく やまかつら かすみをかけて はるはきにけり | 順徳院 |
8 | うくひすの なくねややかて つけつらむ かすみのころも はるきたりとは | 安芸(郁芳門院) |
9 | はるのたつ けふうくひすの はつこゑを なきてたれにと まつきかすらむ | 躬恒 |
10 | はるたちて ねのひになれは うちむれて いつれのひとか のへにこさらむ | 貫之 |
11 | やまさとは たにのうくひす うちはふき ゆきよりいつる こそのふるこゑ | 定家 |
12 | かすかやま みねのあさひの はるのいろに たにのうくひす いまやいつらむ | 定家 |
13 | たにふかき ふるすをいつる うくひすの こゑきくときそ はるはきにける | 亀山院 |
14 | おしなへて そらにしらるる はるのいろを おのかねのみと うくひすそなく | 後醍醐院 |
15 | いへゐして ききそなれぬる うめのはな さけるをかへの うくひすのこゑ | 後宇多院 |
16 | うくひすの ふるすにたれか ことつてし うめさくやとを わきてとへとは | 高倉(八条院) |
17 | けさみれは はるきにけらし わかやとの かきねのうめに うくひすのなく | 道済 |
18 | うめかえに なくうくひすの こゑきけと やまにはけふも ゆきはふりつつ | 躬恒 |
19 | ふるすをは みやこのはるに すみかへて はなになれゆく たにのうくひす | 惟明親王 |
20 | うめかえに ふりつむゆきを はらふには あやなくはなの ちりにけるかな | 道因 |
21 | かすかのの くさのはつかに ゆききえて またうらわかき うくひすのこゑ | 良経(九条兼実男) |
22 | かけろふの もゆるはるひの あさみとり かすめるそらも ゆきはふりつつ | 為氏 |
23 | あさみとり かすめるそらは はるなから やまかせさむく ゆきはふりつつ | 実兼 |
24 | いつしかと またるるはなは さきやらて はるともみえす ゆきはふりつつ | 後伏見院 |
25 | はるとたに またしらゆきの ふるさとは あらしそさむき みよしののやま | 伏見院 |
26 | みよしのは なほやまさむし きさらきの そらもゆきけの のこるあらしに | 後二条院 |
27 | はるのたつ あとこそみゆれ あさひかけ さすやをかへに きゆるしらゆき | 後嵯峨院 |
28 | したもえや まついそくらむ しらゆきの あささはをのの わかなつむなり | 為家 |
29 | しろたへの そてにわかなを つみためて ゆきまのくさの いろをみるかな | 実氏 |
30 | そてのうへに かつふるゆきを はらひつつ つもらぬさきと わかなつむなり | 後宇多院 |
31 | わかなつむ そてこそぬるれ けぬかうへに ふるののはらの ゆきまたつねて | 実兼 |
32 | いつくとも のへをはわかす しらゆきの きゆるかたより わかなをそつむ | 実重(三条公親男) |
33 | あたらしき はるくることに ふるさとの かすかののへに わかなをそつむ | 能宣 |
34 | おしなへて いさはるののに ましりなむ わかなつみくる ひともあふやと | 深養父 |
35 | はるのこし あしたのはらの やへかすみ ひをかさねてそ たちまさりける | 相模 |
36 | みわたせは かすみそたてる たかさこの まつのあらしの おとはかりして | 順徳院 |
37 | たかさこの をのへのまつの あさかすみ たなひくみれは はるはきにけり | 信実 |
38 | はるかすみ たちにしひより かつらきや たかまのやまは よそにたにみす | 実氏 |
39 | はるはまた かすみにきえて ときしらぬ ゆきともみえす ふしのしはやま | 道性 |
40 | ころもての たかなみやまの あさかすみ たちかさねても はるはきにける | 為氏 |
41 | けふりさへ かすみそへけり なにはひと あしひたくやの はるのあけほの | 為世(御子左藤原為氏男) |
42 | のとかなる はるのひかりに まつしまや をしまのあまの そてやほすらむ | 良経(九条兼実男) |
43 | はるはまつ なひきにけりな さほひめの そむるてひきの あをやきのいと | 信実 |
44 | あさみとり たまぬきみたる あをやきの えたもとををに はるさめそふる | 定家 |
45 | きえやすき こすゑのゆきの ひまことに うつもれはてぬ うめかかそする | 後醍醐院 |
46 | けぬかうへに ふるかとそみる うめかえの はなにあまきる はるのあはゆき | 為定(御子左二条為道男) |
47 | ふきまよふ よそのこすゑの うめかかに わかそてにほふ はるのゆふかせ | 道良女/道良 |
48 | かをとめて とはれやすると わかやとの うめのたちえに はるかせそふく | 覚助法親王 |
49 | ことならは いろをもみせよ うめのはな かはかくれなき よはのはるかせ | 後嵯峨院 |
50 | なにはえや ふゆこもりせし うめかかの よもにみちくる はるのしほかせ | 為家 |
51 | うめかかや まつうつるらむ かけきよき たましまかはの はなのかかみに | 定家 |
52 | わかやとの うめさきたりと つけやらは こてふににたり ちりぬともよし | 読人不知 |
53 | わかやとに さかりにさける うめのはな ちるへくなりぬ みむひともかな | 読人不知 |
54 | かへるさを よしやうらみし はるのかり さそふるさとの ひともまつらむ | 隆博 |
55 | わかれけむ こしちのあきの なこりさへ おもひしらるる はるのかりかね | 良教 |
56 | かへるかり ゆくらむかたを やまのはの かすみのよそに おもひやるかな | 国助 |
57 | おなしくは そらにかすみの せきもかな くもちのかりを しはしととめむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
58 | かへるさの みちもやまよふ ゆふくれの かすむくもゐに きゆるかりかね | 永福門院 |
59 | よしのやま みねとひこえて ゆくかりの つはさにかかる はなのしらくも | 後京極院 |
60 | あつさゆみ はるゆくかりも まてしはし はななきさとに こころひくとも | 実兼 |
61 | ゆきとふる はなをこしちの そらとみて しはしはとまれ はるのかりかね | 宗尊親王 |
62 | はるさめの いろはこしとも みえなくに のへのみとりを いかてそむらむ | 友則 |
63 | のもやまも おなしみとりに そめてけり かすみよりふる このめはるさめ | 良経(九条兼実男) |
64 | いまよりは またるるはなの おもかけに たつたのやまの みねのしらくも | 為子(贈従三位) |
65 | まつほとに ひかすはかりは うつりきて はなよりさきの はるそひさしき | 冬平 |
66 | さのみやは またさきやらぬ はなゆゑに みまくほしさの やまちくらさむ | 兼氏 |
67 | さかぬより はなはこころに かかれとも それかとみゆる くもたにもなし | 為家 |
68 | はなをまつ おもかけみゆる あけほのは よものこすゑに かをるしらくも | 式子内親王 |
69 | たれにかは をりてもみせむ なかなかに さくらさきぬと われにきかすな | 和泉式部 |
70 | ふるあめの あまねくうるふ はるなれは はなさかぬひは あらしとそおもふ | 鳥羽院 |
71 | おとにきく よしののさくら みにゆかむ つけよやまもり はなのさかりは | 人麿 |
72 | さくらはな またみぬさきに みよしのの やまのかひある みねのしらくも | 慈円 |
73 | さくらはな はやさかりなり ももしきの おほみやひとは いまかさすらし | 伏見院 |
74 | をとめこか かつらきやまの さくらはな こころにかけて みぬときそなき | 実雄 |
75 | さほひめの はつはなそめの そてのいろも あらはれてさく やまさくらかな | 公雄 |
76 | はなのいろも ひとつにかすむ やまのはの よこくもにほふ はるのあけほの | 定為 |
77 | やまさくら けふはさかりに なりにけり きのふにまさる みねのしらくも | 実泰 |
78 | やまさくら くものはたての はるかせに あまつそらなる はなのかそする | 雅有/実泰 |
79 | やまふかみ のきはにかかる しらくもの やへにかさなる はなさくらかな | 実氏 |
80 | よしのやま かすみのうへに ゐるくもや みねのさくらの こすゑなるらむ | 丹後(宜秋門院) |
81 | やまさくら さくよりそらに あくかるる ひとのこころや みねのしらくも | 俊成(藤原俊忠男) |
82 | たつねてそ はなとしりぬる はつせやま かすみのおくに みゆるしらくも | 良経(九条兼実男) |
83 | きみかため しらぬやまちを たつねつつ おいのかさしの はなをみるかな | 実経 |
84 | たつねける しらぬやまちの さくらはな けふここのへの かさしとそみる | 亀山院 |
85 | ゆくさきの くもはさくらに あらはれて こえつるみねの はなそかすめる | 為世(御子左藤原為氏男) |
86 | かくはかり をしとおもふひを くれぬとて はなみてかへる ひとさへそうき | 後嵯峨院 |
87 | なかしとも おもはてくれぬ ゆふひかけ はなにうつろふ はるのこころは | 為家 |
88 | はるのひは はなにこころの あくかれて ものおもふひとと みえぬへきかな | 重之女 |
89 | おもひねの こころやゆきて たつぬらむ ゆめにもみつる やまさくらかな | 清輔 |
90 | てるつきも ひかりをそへよ はるならて いつかははなと ともにみるへき | 兼実 |
91 | ほのほのと あけゆくやまの さくらはな かつふりまさる ゆきかとそみる | 順徳院 |
92 | みよしのの やまにいりけむ やまひとと なりみてしかな はなにあくやと | 実朝 |
93 | よしのやま まかふさくらの いろならは よそにやみまし みねのしらくも | 談天門院 |
94 | あらしやま ふもとのはなの こすゑまて ひとつにかかる みねのしらくも | 為氏 |
95 | しらくもの へたつるかたや やまとりの をのへにかかる さくらなるらむ | 有房(六条通有男) |
96 | おほはらや をしほのさくら さきぬらし かみよのまつに かかるしらくも | 為実(御子左藤原為氏男) |
97 | さきにけり とやまのみねの さくらはな たなひくくもに いろそうつろふ | 万秋門院 |
98 | しらくもは たちもわかれて よしのやま はなのおくより あくるしののめ | 経継 |
99 | みよしのや をのへのはなに いるつきの ひかりをのこす やまさくらかな | 貞時 |
100 | かすみつる をちのたかねも あらはれて ゆふひにみゆる やまさくらかな | 俊光 |
101 | はなのいろは なほくれやらて はつせやま をのへのかねの こゑそきこゆる | 師信 |
102 | かつらきや たかまのかすみ たちこめて よそにもみえぬ はなのいろかな | 邦省親王 |
103 | やまさくら はなのほかなる にほひさへ なほたちそふは かすみなりけり | 実兼 |
104 | さきつつく はなはそれとも みえわかて かすみのまより にほふしらくも | 覚助法親王 |
105 | みやまきの しけみのさくら さきなから えたにこもれる はなとこそみれ | 国助 |
106 | みのはるを いつとかまたむ ここのへの みはしのさくら よそにのみみて | 実泰 |
107 | いにしへの くもゐのさくら たねしあれは またはるにあふ みよそしらるる | 為教/冬教 |
108 | ももしきや みはしのはなは いにしへの いつまてうめの にほひなりけむ | 冬平 |
109 | ふるさとに むかしわすれす さくはなは たかよのはるを おもひいつらむ | 後宇多院 |
110 | ささなみや しかのふるさと あれまくを いくよのはなに をしみきぬらむ | 為藤 |
111 | はなゆゑに しかのふるさと けふみれは むかしをかけて はるかせそふく | 後鳥羽院 |
112 | すみすてし わかふるさとを きてみれは はなはかりこそ むかしなりけれ | 性助法親王 |
113 | へたてゆく むかしのはるの おもかけに またたちかへる はなのしらくも | 兼氏 |
114 | としことに きつつわかみる さくらはな かすみもいまは たちなかくしそ | 中務 |
115 | ふくかせを いとひてのみも すくすかな はなみぬとしの はるしなけれは | 俊頼(源経信男) |
116 | いきてこそ ことしもみつれ やまさくら はなにをしきは いのちなりけり | 宣時(北条) |
117 | はなをみて なくさむよりや みよしのの やまをうきよの ほかといひけむ | 為家 |
118 | いかはかり ひとをまたまし やとからに とはれぬはなと おもひしらすは | 四条(安嘉門院) |
119 | よしさらは かせにもちりね さくらはな みるわれならて とふひともなし | 少将(藻壁門院) |
120 | おのつから はなのをりのみ とふひとの こころのいろを いかかたのまむ | 読人不知 |
121 | たちかへり いさまたゆかむ やまさくら はなのにほひの うしろめたさに | 長家 |
122 | みねつつき にほふさくらを わかものと をりてやきつる はるのひくらし | 白河院 |
123 | をしむとて いくかもあらし やまさくら こころのままに をりてかへらむ | 顕輔 |
124 | いかはかり まつもをしむも はなゆゑは ひとのこころを みよしののやま | 公継 |
125 | たれもみな はなにかへさや わするらむ けふはやまちに あふひともなし | 実教 |
126 | たつねつる しるへとたのむ やまひとの かへるもしらす はなをみるかな | 定為 |
127 | ぬれつつも あかすそみつる やまさくら かをるのきはの はなのしつくに | 順助法親王 |
128 | ちるをこそ うしともかこて さくはなの にほひはさそへ はるのやまかせ | 長舜 |
129 | あたにさく はなのつらさに ならはすは ちらぬよりまつ ものはおもはし | 宗宣(北条宣時男) |
130 | あたにちる ものからいかて さくらはな のとけきはるの いろをみすらむ | 隆信 |
131 | かせのまに ちらすはありとも やまさくら いくかをはなの さかりとかみむ | 為氏 |
132 | はるかせは ふくともちるな さくらはな はなのこころを われになしつつ | 通俊 |
133 | かすみたつ やまのさくらは いたつらに ひとにもみえて はるやすくらむ | 花山院 |
134 | うつろはて しはしはまかふ やまさくら ちれはよそなる みねのしらくも | 為経(甘露寺藤原資経男) |
135 | いとはしよ そらにあらしの さそはすは よものこすゑの はなをみましや | 師教(九条忠教男) |
136 | あたなりと うつろふはなに かこつかな ちらぬをかせも さそひやはする | 後醍醐院 |
137 | はなとみる よそめはかりの しらくもも はらふはつらき はるのやまかせ | 守覚法親王 |
138 | わかきつる あとたにみえす さくらはな ちりのまかひの はるのやまかせ | 定家 |
139 | みやこには ちりにしものを やまさくら われをまつとや かせもよきけむ | 弁乳母 |
140 | あたなりと かねてしりにき さくらはな をしむほとたに のとけかるらむ | 朝忠 |
141 | ちるときは うしとみれとも わすれつつ はなにこころの なほとまるかな | 貫之 |
142 | たをりても なほうつろはは さくらはな こころつからの うさやわすれむ | 読人不知 |
143 | はるかせは はなちるへくも ふかぬひに おのれうつろふ やまさくらかな | 雅経 |
144 | さくらはな ちらてもおなし たむけやま ぬさとなふきそ はるのゆふかせ | 国助 |
145 | ちるはなの あかぬいろかを みにかへて さもしたはるる やまさくらかな | 道良 |
146 | なれてみる おいきのはなよ ちりやすき わかなみたには ならはさらなむ | 実兼 |
147 | あめはるる のきはのはなに かせすきて つゆもたまらす ちるさくらかな | 冬平 |
148 | たちかへり かせをのみこそ うらみつれ ふかすははなも ちらしとおもへは | 恒明親王 |
149 | はなよりも つきをそこよひ をしむへき いりなはいかか ちるをたにみむ | 俊恵 |
150 | をしとたに いはれさりけり さくらはな ちるをみるまの こころまとひに | 俊頼(源経信男) |
151 | はるかせの ふきまふときは さくらはな ちりぬるえたに さくかとそみる | 経信 |
152 | よしのかは はなのしからみ かけてけり をのへのさくら いまやちるらむ | 通雄 |
153 | ちるはなの なみをいはねに ふきこして かせにそまさる やまかはのみつ | 氏久 |
154 | おもひやる こころのはなも いけみつに うつるはかりの いろやみゆらむ | 実氏 |
155 | けふこすは あすともまたし さくらはな いたつらにのみ ちらはちらなむ | 公経(藤原実宗男) |
156 | あすはまた いかになかめむ ちりはてぬ けふたにつらき はなのこすゑを | 兼康 |
157 | ふくかせを うらみははてし やまさくら こころとちらは はなのなもうし | 邦長 |
158 | なれてみる わかなこりをは をしまてや さそふあらしに はなのちるらむ | 貞時 |
159 | きのふみし こすゑのはなは このねぬる あさけのかせに ふれるしらゆき | 斉時 |
160 | わきてなと おなしこすゑの はるかせに かたえのこして はなのちるらむ | 実超 |
161 | ちりのこる みきはのさくら かけみえて はなのなみたつ はるかせそふく | 泰宗 |
162 | さくらはな ちりのこるらし よしのやま あらしのあとに かかるしらくも | 国冬 |
163 | かせわたる くものはやしの やまさくら はなのところそ ゆきとふりぬる | 定為 |
164 | ゆきとのみ ふりこそまされ やまさくら うつろふはなの はるのこのもと | 為氏 |
165 | ちりまかふ おもかけをたに おもひやれ たつねぬやとの はなのしらゆき | 伏見院 |
166 | とはてしも みるそかひある よそまても ちりくるにはの はなのしらゆき | 実兼 |
167 | けふもまた とはてくれぬる ふるさとの はなはゆきとや いまはちるらむ | 良経(九条兼実男) |
168 | よしのやま くもらぬゆきと みるまてに ありあけのそらに はなそちりける | 後鳥羽院 |
169 | かつらきや たかまのあらし ふきぬらし そらにしらるる はなのしらゆき | 家隆 |
170 | たつねこぬ さきにはちらて やまさくら みるをりにしも ゆきとふるらむ | 顕季 |
171 | やまさとは とひくるひとの あともなし ふりつむはなは ゆきとみれとも | 実氏 |
172 | ちらぬまに こゆへかりける やまちとも あとつけかたき はなにこそしれ | 為道 |
173 | うつろふも こころつからの はなならは さそふあらしを いかかうらみむ | 伏見院 |
174 | あはれなと かせにこころの なきよとて はるさくはなを ちらしはつらむ | 少将(藻壁門院) |
175 | そてのうへに あかぬいろかは ととめおけ くれなははるの はなのかたみに | 公経(藤原実宗男) |
176 | あとたえて しつけきやとに さくはなの ちりはつるまて みるひとそなき | 千里 |
177 | うくひすの はかせにはなや ちりぬらむ はるくれかたの こゑになくなり | 読人不知 |
178 | さのみやは はるのみやまの はなをみむ はやすみのほれ くものうへのつき | 後醍醐院 |
179 | おいてこそ なみたもくもれ はるのよの つきはいつより かすみそめけむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
180 | かすむよの つきにそさらに しのはるる わするはかりの はるのむかしは | 覚助法親王 |
181 | はるのよは かすみにくもる そらなれと なみたいとはて つきやみるへき | 時村 |
182 | くもるとは みえぬものから ひさかたの そらにかすめる はるのよのつき | 少将内侍(後深草院) |
183 | つらしとは うらみさらまし はるのよの つきをへたてぬ かすみなりせは | 読人不知 |
184 | みすもあらす みもせぬかけの なかそらに あやなくかすむ はるのよのつき | 為氏 |
185 | つきかけを かすみにこめて やまのはの またあけやらぬ しののめのそら | 伏見院 |
186 | ひとりのみ みつつそしのふ やまふきの はなのさかりに あふひともなし | 躬恒 |
187 | やまふきの はなこそいはぬ いろならめ もとのまかきを とふひともかな | 為家 |
188 | くれぬとて ひともとまらぬ まかきには さくやまふきの はなのなもをし | 小宰相(土御門院) |
189 | さくらはな ちりにしのちは やまふきの さけるまかきに のこるはるかな | 後宇多院 |
190 | くれはつる はるのなこりを をしとたに えやはいはねの やまふきのはな | 公雄 |
191 | ゆくはるを をしとはいはぬ いろなから こころにうつる やまふきのはな | 覚円 |
192 | やまふきの はないろころも さらすてふ かきねやゐての わたりなるらむ | 後鳥羽院 |
193 | ゆくはるは さてもとまらし やまふきの はなにかけたる ゐてのしからみ | 為氏 |
194 | まつかえは みとりすくなく うつもれて むらさきかくる いけのふちなみ | 後宇多院 |
195 | いくはるも はなのさかりを まつかえに ひさしくかかれ やとのふちなみ | 房実 |
196 | ふたはより ちきりおきてや ふちなみの こたかきまつに かかりそめけむ | 公親 |
197 | おきつかせ ふくともみえぬ たかさこの をのへのまつに かかるふちなみ | 隆信 |
198 | わかやとの かけとそたのむ ふちのはな たちよりくとも なみにをらるな | 伊勢 |
199 | むらさきに にほふふちなみ うちはへて まつにそちよの いろはかかれる | 朝忠 |
200 | ときはなる はなとそみゆる わかやとの まつにこたかく さけるふちなみ | 兼盛 |
201 | さくらはな ちりたにせすは おほかたの はるををしとは おもはさらまし | 能宣 |
202 | ゆくはるの ひかすにはなも うつりきて のこりすくなき やまさくらかな | 景綱 |
203 | いかにして しはしととめむ さくらはな ちりなはなけの はるのひかすを | 実雄 |
204 | ひとかたの わかれをせめて ととめはや はなとはるとの おなしなこりを | 家定 |
205 | ゆくはるも なほこのもとに たちとまれ にはのさくらの ちりのまかひに | 内経 |
206 | ちりかかる はなをさそひて ゆくみつの かへらぬなみに はるそくれぬる | 雲雅 |
207 | ふきおろす あらしのやまに はるくれて ゐせきにむせふ はなのしらなみ | 兼季 |
208 | ちりかかる はなのかけみし やまのゐの あかてもはるの くれにけるかな | 公経(藤原実宗男) |
209 | いたつらに はるくれにけり はなのいろの うつるををしむ なかめせしまに | 後鳥羽院 |
210 | はるをのみ をしみしほとに なつころも たつひにはやく なりにけるかな | 家良 |
211 | きのふをは はなのかけにて くらしてき けふこそいにし はるはをしけれ | 和泉式部 |
212 | またちらぬ はなにこころを なくさめて はるすきぬとも おもはさりけり | 赤染衛門 |
213 | あさひやま ふもとのさとの うのはなを さらせるぬのと おもひけるかな | 顕輔 |
214 | かみまつる うつきのはなも さきにけり やまほとときす ゆふかけてなけ | 讃岐(二条院) |
215 | すみのえの まつはひさしき ほとときす とほさとをのに ひとこゑもかな | 御匣(式乾門院) |
216 | はつねをは わかかたになけ ほとときす ことうらにまつ ひとはありとも | 読人不知 |
217 | みやまいてむ まつはつこゑは ほとときす よふかくまたむ わかやとになけ | 元方 |
218 | ほのかにも きかぬかきりは ほとときす まつひとのみそ ねられさりける | 公任 |
219 | ほとときす はつねまたるる ときにこそ みしかきよはも あかしかねけれ | 少将内侍(後深草院) |
220 | あけやすき なつのよなれと ほとときす まつにいくたひ ねさめしつらむ | 新少将(芬陀利花院前関白内大臣家) |
221 | まちかねて まとろむよはの ほとときす ゆめならてきく ひとこゑもなし | 雅孝 |
222 | われならぬ ひとにもかくや ほとときす さのみはつねの つれなかるらむ | 公顕 |
223 | ほとときす ひともきかすは つれなさを わかみひとつと うらみさらまし | 冬平 |
224 | ひとことに ききつとかたる ほとときす なとわかために なほまたるらむ | 師重(源師親男) |
225 | たつねはや しのふのやまの ほとときす こころのおくの ことやかたると | 達智門院 |
226 | ほとときす なほいそかるる はつねかな みやこのひとの きかぬさきにと | 慈道法親王 |
227 | あたひとの いつのちきりに ならひけむ またれてとはぬ ほとときすかな | 近衛(今出河院) |
228 | たのめおく ときとはなしに ほとときす ゆふへはわきて なほまたるらむ | 伏見院 |
229 | はつこゑを さてもやきくと ほとときす またてとしふる ひとにとははや | 顕昭 |
230 | まつほとの こころもくるし ほとときす いかておもひの ほかにきかまし | 実房 |
231 | つれなさを ならひになさて ほとときす ことしははやく はつねなかなむ | 時元 |
232 | ほとときす さつきまつまの しのひねも あらはれぬへき むらさめのそら | 泰宗 |
233 | われにこそ つれなしとても ほとときす かたふくつきに ねをはをしまし | 季雄 |
234 | ありあけの つきにはまたし ほとときす つれなきかけに ならひもそする | 兼季 |
235 | つれなさを いつとたのみて ほとときす なほありあけの つきにまつらむ | 俊定(藤原経俊男) |
236 | つれなさを つきにそかこつ ほとときす まつにむなしき ありあけのそら | 伏見院 |
237 | からころも たつたのやまの ほとときす うらめつらしき けさのはつこゑ | 基俊 |
238 | ききそむる かひこそなけれ ほとときす またれぬよはは あらしとおもへは | 安法 |
239 | ほとときす よふかきこゑは つきまつと おきていをねぬ ひとそききける | 伊勢 |
240 | ほとときす ありあけのつきの いりかたに やまのはいつる よはのひとこゑ | 寂蓮 |
241 | ほとときす なくこゑきけは やまさとに つねよりことに ひとそまたるる | 道済 |
242 | やまふかく たつねていれは ほとときす わけつるくもの あとになくなり | 行済 |
243 | またれつる みにこそたのめ ほとときす かたらふこゑは たれとなけれと | 為藤 |
244 | われとまた いさかたらはむ ほとときす まちつるほとの こころつくしを | 後嵯峨院 |
245 | なほさりに なきてやすくる ほとときす まつはくるしき こころつくしを | 為定(御子左二条為道男) |
246 | ほとときす ひとこゑとこそ おもひしに まちえてかはる わかこころかな | 宣時(北条) |
247 | はつこゑの のちはなかなか ほとときす なかぬたえまそ なほまたれける | 長舜 |
248 | いつくにも またれしものを いまはまた なかぬさとなき ほとときすかな | 国助女 |
249 | わかためは はつねなれとも ほとときす たれかふたたひ いまはきくらむ | 覚助法親王 |
250 | なきすくる ならしのをかの ほとときす ふるさとひとに ことやつてまし | 後宇多院 |
251 | つまこひを しのひかねてや ほとときす けふはいはせの もりになくらむ | 定為 |
252 | いつしかと まちつるよりも ほとときす ききてそいとと しつこころなき | 弁典侍(祐子内親王家) |
253 | まつことは はつねまてかと おもひしに ききふるされぬ ほとときすかな | 西行 |
254 | ひととはて おのれそなのる ほとときす くれゆくそらを すくるひとこゑ | 師実 |
255 | まとろまは きかすやあらまし ほとときす さもよふかくも なきわたるかな | 高遠 |
256 | あけはまつ ひとにかたらむ ほとときす よふかくやとを なきてすくなり | 通俊 |
257 | ゆめかとそ おとろかれぬる ほとときす またもきかぬは よはのひとこゑ | 摂津(二条太皇太后宮) |
258 | あけかたに はつねはききつ ほとときす まつとしもなき おいのねさめに | 兵衛(上西門院) |
259 | すすかやま あけかたちかき あまのとを ふりいててなく ほとときすかな | 雅有 |
260 | あけかたに なきてそきぬる ほとときす つれなきよはと なにうらみけむ | 家平 |
261 | あかつきの とりのやこゑに ひとこゑを なきそへてゆく ほとときすかな | 良信 |
262 | ほとときす あかてききつる なこりより ねさめののちは またそねられぬ | 新宰相(伏見院) |
263 | ほとときす こゑもたかねの よこくもに なきすててゆく あけほののそら | 永福門院 |
264 | ほとときす ひとこゑゆゑに むさしのの のをなつかしみ すきもやられす | 実雄 |
265 | ほとときす しはしやすらへ すかはらや ふしみのさとの むらさめのそら | 定家 |
266 | やすらはは しはしはきかむ ほとときす あしのまろやの かりねなりとも | 道家 |
267 | なにはかた あしふくこやの のきはにも けふやあやめの ひまなかるらむ | 邦長 |
268 | さつききぬ みとしろをたに しめはへて かみのみやひと さなへとるらむ | 成茂 |
269 | ほとときす しのはぬこゑを きくよりや やまたのさはに さなへとるらむ | 頼宗 |
270 | あしひきの やましたみつを ひきかけし すそわのたゐに さなへとるなり | 公継 |
271 | みわたせは とはやまをたの まつかけに みとりをそへて とるさなへかな | 定為 |
272 | したくさは うゑぬにしける おほあらきの もりのうきたに さなへとるなり | 国道(津守国助男) |
273 | まちかくも はなたちはなの にほふかな むかしはとほき やとののきはに | 経継 |
274 | ふるさとに いかにむかしを しのへとて はなたちはなの かせにちるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
275 | そてふれし むかしのひとそ しのはるる はなたちはなの かをるゆふへは | 基俊 |
276 | かせかよふ よはのねさめの たまくらに そてのかそへて にほふたちはな | 雅貞/維貞 |
277 | たちはなの かけふむみちを すきやらて しはしまたるる ほとときすかな | 定房(藤原経長男) |
278 | ほとときす こころしてなけ たちはなの はなちるさとの ゆふくれのそら | 後鳥羽院 |
279 | ほとときす あやめのねにも あらなくに さつきをかけて なとまたるらむ | 為子(贈従三位) |
280 | さつきこそ なれかときなれ ほとときす いつをまてとて こゑをしむらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
281 | ほとときす おのかさつきの あめはれて むらくもまよふ そらになくなり | 一条(昭慶門院) |
282 | さみたれに けふりたえても あまひとの なほしほたるる そてのうらなみ | 成賢(祝部成茂男) |
283 | たつねはや いはてのやまの たにみつも おとたてつへき さみたれのころ | 国助 |
284 | やまかはの いはにせかるる おともなし うへこすなみの さみたれのころ | 為世(御子左藤原為氏男) |
285 | やまのゐも まさるみかさに にこるらし かけさへみえぬ さみたれのころ | 為世(御子左藤原為氏男) |
286 | いけみつの みきはもみえす なりにけり にはになみこす さみたれのころ | 実性 |
287 | ひかすへて なみやこすらむ さみたれは くもまもみえす ふるのたかはし | 宗秀(大江時秀男) |
288 | さみたれに なかれてくたる やまかはの みをのそまきは よとむせもなし | 宗成 |
289 | もかみかは みかさまさりて さみたれの しはしはかりも はれぬそらかな | 冬平 |
290 | さみたれは いくさきふかし いはたかは わたるせことに みつまさりつつ | 為家 |
291 | たつたかは みきはのなみも たちそひぬ みむろのやまの さみたれのころ | 道家 |
292 | みつまさる ふもとのかはの おとそひて なほみねふかき さみたれのくも | 道昭 |
293 | あまのかは まさるみかさは しらねとも くものなみたつ さみたれのそら | 為藤 |
294 | さみたれは あまのかくやま そらとちて くもそかかれる みねのまさかき | 定家 |
295 | みてもなほ あかぬよのまの つきかけを おもひたえたる さみたれのそら | 俊成女 |
296 | あけやすき そらにそいとと なくさまぬ をはすてやまの みしかよのつき | 貞重 |
297 | なつくさの あかつきおきの つゆのまに うつれはあくる やまのはのつき | 為氏 |
298 | なつのよも かけそすすしき ひさかたの つきのいつくに あきやとるらむ | 後嵯峨院 |
299 | なつのよの あけゆくほとも はやせさす うかはのかかり かけしらむなり | 師員 |
300 | うかひふね くたすほとなき みしかよの かはせにのこる かかりひのかけ | 通雄 |
301 | おほゐかは うふねくたせる あかつきの つきはそらにそ さしのほりける | 実兼 |
302 | うかひふね せせさしのほる しらなみに うつりてくたる かかりひのかけ | 為世(御子左藤原為氏男) |
303 | あさなあさな みつのうへのに かるくさの きのふのあとは かつしけりつつ | 順徳院 |
304 | なつくさは ひことにふかく なりゆけと かれにしひとの とはぬやとかな | 躬恒 |
305 | なつくさの つゆわけころも このころも あかつきおきは そてそすすしき | 雅経 |
306 | なつくさの はなのえことに おくつゆを さつきのたまに ぬきてととめむ | 後宇多院 |
307 | しけりあふ なつののくさの ふかけれは わけゆくひとそ よそにしられぬ | 宣子(従三位藤原) |
308 | いまはみの ことしけからぬ やとにしも なほみちとつる にはのなつくさ | 後伏見院 |
309 | ふみわけて とふへきひとも なきみには やとからしける にはのなつくさ | 亀山院 |
310 | あさみとり くさのわかはと みしのへの はやなつふかく しけるころかな | 公守女 |
311 | なつくさの しけみにましる をきのはは したにやあきの かせをまつらむ | 行房 |
312 | かせそよく あしまのほたる ほのみえて なみのよるまつ ほとそすすしき | 後伏見院 |
313 | なつふかく しけるなにはの あしまにも さはらてゆくは ほたるなりけり | 俊定(藤原経俊男) |
314 | おほゐかは そらにもゆるや かかりひに あらぬほたるの おもひなるらむ | 為子(贈従三位) |
315 | かりてほす あさかのぬまの くさのうへに かつみたるるは ほたるなりけり | 為氏 |
316 | ほたるとふ おほろのしみつ かすかにも しらはやおのか もゆるこころを | 国冬 |
317 | かやりひの したやすからぬ けふりこそ あたりのやとも なほくるしけれ | 為家 |
318 | もろともに みむひともかな ひとりのみ をれはかひなき とこなつのはな | 高明 |
319 | こころして うをしもしるく なてしこの はなのさかりを いまもみるかな | 惟成 |
320 | このさとも ふりぬとおもふ ゆふたちの くもるはかりに すきにけるかな | 家良 |
321 | なるかみの おとにもしるし まきもくの ひはらのやまの ゆふたちのそら | 行家(藤原知家男) |
322 | おきつなみ おとふきたてて しほかせの みなとにかかる ゆふたちのくも | 為氏 |
323 | かきくらす そらともみえす ゆふたちの すきゆくくもに いりひさしつつ | 後嵯峨院 |
324 | ひとむらは やかてすきぬる ゆふたちの なほくものこる そらそすすしき | 能清 |
325 | ゆふたちは すきぬるみねの むらくもに しはしほのめく よひのいなつま | 実兼 |
326 | ほともなく はれつるかたに うつりきて ひかけにかかる ゆふたちのくも | 成久 |
327 | あききぬと いはぬはかりそ なつころも すそののはらの ならのしたかけ | 祐賢 |
328 | すすしさは たちよるからに しられけり あきかせちかき ころもてのもり | 為氏 |
329 | ゆふされは しののをささを ふくかせの またきにあきの けしきなるかな | 頼通 |
330 | なつころも かとりのうらの うたたねに なみのよるよる かよふあきかせ | 定家 |
331 | なつころも かさぬはかりに すすしきは むすふいつみに あきやまつらむ | 兵衛(上西門院) |
332 | せきいるる にはのしみつは それなから あきをこころに まかせやはせぬ | 兼氏 |
333 | ゆふくれの このしたかせに あめすきて つゆもたまらぬ せみのはころも | 為道 |
334 | しはしたに たえまもなきは なつやまの こすゑにつつく せみのもろこゑ | 寂蓮 |
335 | をちこちの こすゑにせみの こゑはして やまちすすしき まつのしたかせ | 道順 |
336 | しけりあふ のきはのこすゑ あけたては せみのをりはへ なかぬひもなし | 内経 |
337 | みそきする よはのかはなみ おとふけて あけぬよりふく そてのあきかせ | 道平 |
338 | わきてまた すすしかりけり みたらしや みそきにふくる よはのかはかせ | 公宗母 |
339 | そこきよき かはせのみつの あさのはに しらゆふかけて みそきをそする | 公相 |
340 | みなかみに あきやたつらむ みそきかは またよひなから かせのすすしき | 俊成(藤原俊忠男) |
341 | みそきかは せせのたまもの みかくれて しられぬあきや こよひたつらむ | 後鳥羽院 |
342 | いつしかと かたしくそてに おくつゆの たまくらすすし あきのはつかせ | 実兼 |
343 | けさみれは つゆそひまなき あしのやの こやのひとよに あきやきぬらむ | 宗尊親王 |
344 | きのふより をきのしたはに かよひきて けさあらはるる あきのはつかせ | 惟明親王 |
345 | いつのまに あきかせたちて おほともの みつのはままつ おとまさるらむ | 道家 |
346 | あまのかは みつかけくさの いくあきか かれなてとしの ひとよまつらむ | 為相 |
347 | たなはたの ふなのりすらし あまのかは きよきつきよに くもたちわたる | 家持 |
348 | ひこほしと たなはたつめと こよひあふ あまのかはらに なみたつなゆめ | 赤人 |
349 | あまのかは わたりてのちそ たなはたの ふかきこころも おもひしるらむ | 読人不知 |
350 | あまのかは たえしとそおもふ たなはたの おなしくもゐに あはむかきりは | 為家 |
351 | ほしあひの そらのひかりと なるものは くもゐのにはに てらすともしひ | 良経(九条兼実男) |
352 | たなはたの つゆのちきりの たまかつら いくあきかけて むすひおくらむ | 有房(六条通有男) |
353 | つゆおきて なかむるほとを おもひやれ あまのかはらの あかつきのそら | 選子内親王 |
354 | あけゆけは かはせのなみの たちかへり またそてぬらす あまのはころも | 実兼 |
355 | たなはたの くものころもを ふくかせに そてのわかれは たちもとまらす | 兼氏 |
356 | ちきりありて おなしふつきの かすそはは こよひもわたせ あまのかはふね | 定房(藤原経長男) |
357 | あさつゆの をかのかやはら やまかせに みたれてものは あきそかなしき | 後鳥羽院 |
358 | わするなよ けふはむかしの あきまても このゆふくれの をきのうはかせ | 後鳥羽院 |
359 | いくかへり なれてもかなし をきはらや すゑこすかせの あきのゆふくれ | 定家 |
360 | さひしさに あきのあはれを そへてけり あれたるやとの をきのうはかせ | 讃岐(二条院) |
361 | わかそては をきのうははの なになれや そよめくからに つゆこほるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
362 | をきのはに おけるしらつゆ たまかとて そてにつつめは たまらさりけり | 花山院 |
363 | わきてなほ ゆふへはつゆの をきのはに なみたもそよと あきかせそふく | 公雄 |
364 | ふきむすふ をきのはわけに ちるつゆを そてまてさそふ あきのゆふかせ | 慶融 |
365 | ゆふされは のへのあさちに ふくかせの いろこそみえね つゆそこほるる | 実兼 |
366 | むらさめの のわきのつゆの たますたれ そてもふきまく あきのゆふかせ | 為氏 |
367 | むらさめに きりのはおつる にはのおもの ゆふへのあきを とふひともかな | 伏見院 |
368 | やとことの ゆふくれとはむ あきといへは われにかきらす ものやおもふと | 後二条院 |
369 | さひしさを かねてならはぬ やとならは あきのゆふへを いかてしのはむ | 定資 |
370 | いまさらに なにかうしとも わきていはむ おもひのみそふ あきのゆふくれ | 覚助法親王 |
371 | ものおもはぬ ひとはよそにや なかむらむ うきみひとつの あきのゆふくれ | 経長女 |
372 | いかにせむ ものおもふそての なみたたに ほさてつゆそふ あきのゆふくれ | 久時 |
373 | おのつから なみたほすまも わかそてに つゆやはおかぬ あきのゆふくれ | 実重(三条公親男) |
374 | みなせやま ゆふかけくさの したつゆや あきゆくしかの なみたなるらむ | 通光 |
375 | あきにあへぬ そてのなみたや くさはまて このころしるき つゆとなるらむ | 遊義門院 |
376 | むすひおきし あきのさかのの いほりより とこはくさはの つゆにぬれつつ | 定家 |
377 | しらつゆの おくよりみつる はなすすき ほにいててかせに なひきぬるかな | 師輔 |
378 | はなすすき たかなみたとも しらつゆの そてにみたるる あきのゆふくれ | 国道(津守国助男) |
379 | ふちはかま なににほふらむ すみすてて のとなるにはは たれかきてみむ | 道性 |
380 | あきののに いろいろさける はなみれは かへらむほとそ いつとしられぬ | 公忠(源国紀男) |
381 | しめのうちの はなのにほひを すすむしの おとにのみやは ききふるすへき | 読人不知 |
382 | いろいろの はなはさかりに にほふとも のはらのかせの おとにのみきけ | 選子内親王 |
383 | わかやとの にはのあきはき さきにけり あさおくつゆの いろかはるまて | 教定(飛鳥井雅経男) |
384 | たかまとの はきさきぬらし みやひとの そてつきころも つゆそうつろふ | 邦省親王 |
385 | いろふかく うつりにけりな かりひとの まそてにわくる はきのあさつゆ | 氏久 |
386 | わかそてを けさもほしあへす あすかかは ゆききのをかの はきのしらつゆ | 家隆 |
387 | むさしのは なほゆくすゑも あきはきの はなすりころも かきりしられす | 読人不知 |
388 | あさなあさな おくとみしまに しらすけの まののはきはら つゆそうつろふ | 万秋門院 |
389 | そてにこそ みたれそめけれ かすかのの わかむらさきの はきかはなすり | 為定(御子左二条為道男) |
390 | たかまとの のへのあきかせ ふくたひに たもとにうつす はきかはなすり | 後宇多院 |
391 | たかまとの のちのあきはき さきにけり たひゆくひとの そてにほふらむ | 行意 |
392 | さしすきの くるすのをのの はきのはな ちらむときにし ゆきてたむけむ | 旅人 |
393 | おもふとち いさみにゆかむ みやきのの はきはかなちる あきのゆふくれ | 実定 |
394 | あきはきの したにかくれて なくしかの なみたやはなの いろをそむらむ | 忠岑 |
395 | つゆむすふ はきのしたはや みたるらむ あきののはらに をしかなくなり | 相模 |
396 | さをしかの つまこひまさる こゑすなり まののはきはら さかりすくらし | 小弁 |
397 | むらさきの ゆかりのいろを たつねてや はきさくのへに しかのなくらむ | 道平 |
398 | をしかなく はきのにしきの からころも きつつなれにし つまやこふらむ | 忠房親王 |
399 | あきくさの いろつくみれは かたをかの あしたのはらに しかそなくらむ | 為継 |
400 | はつせやま このはいろつく あきかせに まついねかたの さをしかのこゑ | 知家 |
401 | ゆふされは こぬつまよりも あきかせを つらきものとや しかのなくらむ | 定円(葉室光俊男) |
402 | われたにも ねにたてつへき ゆふくれを さそつまこひに しかはなくらむ | 経継 |
403 | たかさこの をのへのしかは つれもなき まつをためしに つまやこふらむ | 定為 |
404 | あきをしる しかのねのみか たかさこの まつのあらしも ふかぬひはなし | 行念 |
405 | をくらやま みねのあきかせ ふかぬひは あれともしかの なかぬよはなし | 宗尊親王 |
406 | さをしかの みねのたちとも あらはれて つまとふやまを いつるつきかけ | 民部卿典侍(後堀河院) |
407 | つきゆゑに わかこころこそ そらならめ しかのねさへに すみのほるかな | 経房(藤原光房男) |
408 | やまふかみ たえたえかよふ しかのねに このまのつきも あはれそひけり | 貞時 |
409 | さそはれて おなしみやまや いてつらむ すそののつきに しかそなくなる | 景綱 |
410 | つきみれは あきのおもひも なくさむを なとよとともに しかはなくらむ | 基任 |
411 | よそにきく われさへかなし さをしかの なくねをつくす ありあけのそら | 実泰 |
412 | はなすすき ほのかにきけは あききりの たちののすゑに をしかなくなり | 実兼 |
413 | をやまたの いほたちかくす あききりに もるひとなしと しかそなくなる | 為世(御子左藤原為氏男) |
414 | あききりに たちかくれつつ なくしかは ひとめよきてや つまをこふらむ | 覚助法親王 |
415 | やまたもる しつかねさめの をりをりや またしかのねの とほさかるらむ | 桓守 |
416 | よさむなる たなかのゐとの あきかせに いなはをわけて しかそなくなる | 基忠(鷹司兼平男) |
417 | ふかくなる あきのあはれを ねにたてて みねのをしかも なきまさるかな | 後宇多院 |
418 | なくしかの こゑもをします たかさこの をのへのあきや よさむなるらむ | 万秋門院 |
419 | ふかきよの あはれはたれも しるものを おのれはかりと しかやなくらむ | 宗泰(北条宣時男) |
420 | よそにまた なみたをそへて きくとたに しらしなしかの ねをはなくとも | 季雄 |
421 | をかへなる いなはのかせに しもおきて よさむのしかや つまをこふらむ | 少将(藻壁門院) |
422 | ちりにけり しかなくのへの こはきはら したはのいろも もみちあへぬに | 亀山院 |
423 | はきのうへの つゆはいつより おきつらむ いまそくもゐの かりはなくなる | 行家(藤原知家男) |
424 | かりなきて はきのしたはの いろつくは わかそてよりや ならひそめけむ | 蓮生法師 |
425 | やまかせの さむきあさけに みねこえて いくつらすきぬ あきのかりかね | 宗宣(北条宣時男) |
426 | ふるさとを おもひおきつつ くるかりの たひのこころは そらにそありける | 躬恒 |
427 | ゆきかよふ くもゐはみちも なきものを いかてかかりの まよはさるらむ | 人麿 |
428 | ものやおもふ くものはたての ゆふくれに あまつそらなる はつかりのこゑ | 後鳥羽院 |
429 | あきかせに きつつよさむや かさぬらむ とほやますりの ころもかりかね | 為藤 |
430 | あきやまの ふもとをめくる ゆふきりに うきてすきゆく はつかりのこゑ | 基忠(鷹司兼平男) |
431 | きりはるる むろのやしまの あきかせに のこりてたつは けふりなりけり | 宗秀(藤原宗泰男) |
432 | かりころも すそののきりは はれにけり をはなかそてに つゆをのこして | 頼重 |
433 | わけまよふ のはらのきりの したつゆに なみたならても そてはぬれけり | 読人不知 |
434 | ひかけさす まかきのはなの いろいろに つゆをかさねて はるるあさきり | 定為 |
435 | たちこめて ひかけへたつる ほとはかり きりのまかきに のこるあさかほ | 長雅 |
436 | うちむれて ふもとをくたる やまひとの ゆくさきくるる のへのゆふきり | 永福門院 |
437 | さとひとの をしむこころは しらねとも やまのあなたの つきそまたるる | 公雄 |
438 | ゆふくれは つきまつとても ものそおもふ くものはたての あきのやまのは | 隆祐 |
439 | もろともに まつへきつきを またすして ひとりもそらを なかめけるかな | 実方 |
440 | あきかせに みねゆくくもを いてやらて まつほとすくる いさよひのつき | 為家 |
441 | またれつる やまをはいてて たかさこの をのへのまつに つきそいさよふ | 実兼 |
442 | くるるまの そらにひかりは うつろひて またみねこえぬ あきのよのつき | 為世(御子左藤原為氏男) |
443 | やまのはの くるれはやかて かけみえて またれぬほとに いつるつきかな | 実教 |
444 | いてやらぬ ほとたにあるを やまとりの をのへのつきに くもなへたてそ | 讃岐(後照念院関白太政大臣家) |
445 | くるるまの あらしはなにを はらふらむ かねてくもなき やまのはのつき | 信実 |
446 | ゆふくれの そらもさやかに すみわたる つきのためにや あきもきぬらむ | 頼宗 |
447 | まちいつる をのへのつきも さやかにて たなひくくもに あきかせそふく | 源承 |
448 | まきもくの あなしのかはに かけみえて ひはらをいつる あきのよのつき | 淑氏 |
449 | あまつかせ くもふきとつな をとめこか そてふるやまの あきのつきかけ | 国夏 |
450 | あめはるる しつかふせやの いたまより つきそもりきて そてぬらしける | 貞文 |
451 | かすかやま みねのあらしに くもはれて てるつきかけを いくよみつらむ | 摂津(二条太皇太后宮) |
452 | くもはみな はれにしままの あきかせに いくよもおなし つきそさやけき | 信実 |
453 | はてはまた とよはたくもの あともなし こよそのつきの あきのうらかせ | 国冬 |
454 | つきをみて ちさとのほかを おもふかな こころそかよふ しらかはのせき | 俊成(藤原俊忠男) |
455 | あきのよは せきのとさしも ゆるさなむ ゆきとまるへき つきのかけかは | 為藤 |
456 | こよひしも くもゐのつきに ひかりそふ あきのみやまを おもひこそやれ | 永福門院 |
457 | むかしみし あきのみやまの つきかけを おもひいててや おもひやるらむ | 後醍醐院 |
458 | ひさかたの そらにかかれる あきのつき いつれのさとも かかみとそみる | 経信 |
459 | つきみれは ころもてさむし さらしなや をはすてやまの みねのあきかせ | 実朝 |
460 | つくつくと なかむるからに みにしむは つきよりあきの かせやふくらむ | 実兼 |
461 | ものおもふ ひとのためとや あきのつき うきをわするる かけをみすらむ | 実教 |
462 | いつまてか ともとみるへき おいらくの みのゆくすゑは つきそしるらむ | 実承 |
463 | なれてみる おなしひかりの つきのみや むそちのあきの ともとなるらむ | 読人不知/長円法師 |
464 | おいかよに あきのこころも はれにけり むそちちかつく やまのはのつき | 後宇多院 |
465 | つかへつつ みるそかひある かけなひく わかみいそちの あきのよのつき | 通重 |
466 | いにしへに すみこしままの かけならは つきはいくよの あきをしるらむ | 資宣女 |
467 | ふりにける やとはむかしの なこりにて つきもかはらぬ かけそひさしき | 通光/通基 |
468 | あきのよの つきにいくたひ なかめして ものおもふことの みにつもるらむ | 雅経 |
469 | よのなかの うきにつけても なかむれは つきをかこつに なりぬへきかな | 大輔(殷富門院) |
470 | ゆくすゑを いかにせよとて ことしまた つきみるそての ぬれまさるらむ | 但馬(藻壁門院) |
471 | あきをへて やとりなれぬる わかそての つきはなみたも いとはさりけり | 実教 |
472 | いかはかり つきみるひとに いとはれむ よそまてくもる なみたなりせは | 公朝 |
473 | ひととはぬ みやまのあきの さひしさを たへてもすめる よはのつきかな | 時遠 |
474 | なかきよは くものいつくも あけやらて つゆにそやとる のへのつきかけ | 国道(津守国助男) |
475 | おくつゆの いととふかくさ さとはあれて つきのすむのと なりにけるかな | 少将内侍(後醍醐院) |
476 | たつねても わすれぬつきの かけそとふ よもきかにはの つゆのふかさを | 俊成女 |
477 | あきはきの はなののつゆに かけとめて つきもうつろふ いろやそふらむ | 達智門院 |
478 | このはふく あきかせさむみ あしひきの やまへにひとり つきをみるかな | 光俊(葉室光親男) |
479 | つゆしもの そめぬいろさへ まさりけり かつらのさとの あきのよのつき | 公雄 |
480 | さとのなも あらはにしるし なかつきの つきのかつらの あきのこよひは | 為家 |
481 | つきかけの とほさかりゆく やまのはに のこるともなき よそのうきくも | 有長 |
482 | みむろやま みねにやくもの はれぬらむ かみなひかはに つきそさやけき | 少将(藻壁門院) |
483 | となせかは たまちるせせの つきをみて こころそあきに うつりはてぬる | 定家 |
484 | おほゐかは こほりもあきは いはこえて つきになかるる みつのしらなみ | 維貞 |
485 | かせわたる にほのみつうみ そらはれて つきかけきよし おきつしまやま | 冬平 |
486 | すみのえの まつのあきかせ おとつれて そらにふけゆく よはのつきかけ | 為氏 |
487 | すみよしの まつもわかみも ふりにけり あはれとおもへ あきのよのつき | 公経(藤原実宗男) |
488 | くもりなき かけもかはらす むかしみし ままのいりえの あきのよのつき | 為教 |
489 | おいぬれは むかしはかりも なかめぬを こころかはると つきやおもはむ | 寂恵 |
490 | もろこしの なみちわけゆく ふなひとは こころのこらぬ つきやみるらむ | 泰時 |
491 | すむつきの かけさしそへて いりえこく あしわけをふね あきかせそふく | 為藤 |
492 | ほにいつる をきのうはかせ うちそよき いりえよさむに すめるつきかけ | 後二条院 |
493 | ふけゆけは まつかせさむし おほともの みつのとまりの あきのよのつき | 宗尊親王 |
494 | しらさりき あきのしほちを こくふねの いかはかりなる つきをみるらむ | 定家 |
495 | わたつうみの かさしのなみも しろたへに つきもてみかく あきのうらかせ | 定為 |
496 | あかしかた なみのちさとの すゑはれて つきはかきりも みえぬそらかな | 忠守 |
497 | いせのうみや しほせはるかに くもはれて つきにそかかる あきのうらなみ | 冬教 |
498 | なみかくる をしまのとまや あきをへて あるしもしらす つきやすむらむ | 国助 |
499 | ふるさとと おもふはかりそ なにはかた むかしにかはる つきのかけかは | 観意 |
500 | なにはかた うらよりをちの つきかけに なみもへたてぬ あはちしまやま | 為氏 |
501 | とふひとも あらしふきそふ みやまへに このはわけくる あきのよのつき | 道助法親王 |
502 | あきふかき とこのやまかせ みにしみて つきかけさむき よはのたまくら | 承鎮法親王 |
503 | あれにけり わかふるさとの かけのいほ みしよのままに つきはすめとも | 長舜 |
504 | たきすさふ けふりやのこる あきのたの かひやかうへに かすむつきかけ | 定為 |
505 | ひとよりも まつこそみつれ ここのへの くもゐにすめる よゐのつきかけ | 慈道法親王 |
506 | いまははや ちかきまもりに なれしみも よそにみはしの くものうへのつき | 有忠 |
507 | ささたけの おほみやひとは とひもこて はわけのつきを ひとりこそみれ | 為実(御子左藤原為氏男) |
508 | むさしのや いるへきみねの とほけれは そらにひさしき あきのよのつき | 久明親王 |
509 | あきのよの つきはいつくと わかねとも わかやまにすむ かけそさやけき | 仁澄 |
510 | ささなみや ひらのやまかせ さよふけて つきかけさむし しかのからさき | 実朝 |
511 | かはかせに ありあけのつきを まちいてて ねぬよふけぬる うちのはしひめ | 国助 |
512 | ふけゆけは かねのひひきも あらしやま そらにきこえて すめるつきかな | 為道 |
513 | あけやらぬ かねのひひきは ほのかにて はつせのひはら つきそかたふく | 隆博 |
514 | かねのおとに ねさめてみれは あかつきの まとにそつきは かたふきにける | 頼実女 |
515 | なかきよも しはしとおもふ うたたねの まくらのうへに つきそかたふく | 俊光 |
516 | あかしかた おきにかたふく つきかけに くもこそなけれ なみそかかれる | 為世(御子左藤原為氏男) |
517 | やまのはの みえぬはかりそ わたつうみの なみにもつきは かたふきにけり | 素暹 |
518 | つきのいる やまのあなたの さとひとと こよひはかりは みをやなさまし | 恵慶 |
519 | くもかかる みねたにとほき ものならは いるよのつきは のとけからまし | 実方 |
520 | そてのうへに なれてもかなし おくやまの まつのはわけの ありあけのつき | 後鳥羽院 |
521 | いかかせむ なかきならひの あきのよも つきをしみれは あくるやすさよ | 為道 |
522 | あかすみて あくるなこりの をしけれは つきにもつらき とりのこゑかな | 景綱 |
523 | くさむらの そこまてつきの てらせはや なくむしのねの かくれさるらむ | 順 |
524 | あはれとは いつれをわきて あきののに おほかるむしの こゑをきかまし | 隆博 |
525 | このくれと たのむるひとも なきやとに そのこととなく まつむしそなく | 師教(九条忠教男) |
526 | ふけてこそ つらさもみえめ まつむしの くるるよりなと ねにはたつらむ | 公宗母 |
527 | くさのはら くるるよことの あきかせに ひとをやたのむ まつむしのこゑ | 家隆 |
528 | ゆふされは よもきかねやの きりきりす まくらのしたに こゑそきこゆる | 顕仲(源顕房男) |
529 | きりきりす おもふこころを いかにとも たかひにしらて なきあかすかな | 為家 |
530 | つゆふかき よさむのあきの きりきりす くさのまくらに うらみてそなく | 後醍醐院 |
531 | こころとや なきよわるらむ きりきりす おのかなみたの つゆのよさむに | 実教 |
532 | いととまた むしやうらむる あさちはら おきそふしもの よさむかさねて | 公賢 |
533 | しもむすふ あさちかはらの きりきりす かれはともにと ねをやなくらむ | 基任 |
534 | いろかはる あさちかすゑは つゆちりて むしのねさむく あきかせそふく | 読人不知 |
535 | あさちふの しもよのむしも こゑすみて あれたるにはそ つきはさひしき | 基家 |
536 | むしのねは かはらぬあきの うらみにて すみすててける あさちふのやと | 通親 |
537 | したはちる をののはきはら ふくかせに とこあれぬとや うつらなくらむ | 実泰 |
538 | をやまたの いほもるしつの あきのそて やとかるつゆそ おきあかしける | 俊成女 |
539 | よさむなる かりほのつゆの いねかてに やまたをもると ころもうつこゑ | 為道 |
540 | ころもうつ きぬたのおとも たかまとの やまのこのはに あきかせそふく | 道家 |
541 | たかまとの をのへもさむき あきかせに そてつきころも たれかうつらむ | 定為 |
542 | あきそとも わかぬときはの さとひとは たたよさむにや ころもうつらむ | 兼誉 |
543 | をはなふく かりいほさむき あきかせに うちのみやこは ころもうつなり | 顕盛 |
544 | ふるさとの つきをいくよか みよしのの やまかせさむみ ころもうつらむ | 師信 |
545 | ふかくさや きりのまかきに たれすみて あれにしさとに ころもうつらむ | 雅経 |
546 | をちこちに ころもうつなり さとひとの よさむやおなし こころなるらむ | 俊光 |
547 | いそくなる あきのきぬたの おとにこそ よさむのたみの こころをもしれ | 後醍醐院 |
548 | よさむなる すまのあまひと いまよりや かせにうらみて ころもうつらむ | 実兼 |
549 | あきさむく なるをのうらの あまひとは なみかけころも うたぬよもなし | 貞重 |
550 | ささなみや にほてるあまの ぬれころも うらかせさむく うたぬよもなし | 為氏 |
551 | あちきなく いそかぬよその まくらまて ゆめちとほさす うつころもかな | 俊成女 |
552 | おとろかす きぬたのおとに さよころも かへすほとなき うたたねのゆめ | 伏見院 |
553 | うちあかす きぬたのおとの かなしきは なかきよさむの ねさめなりけり | 遊義門院 |
554 | よもすから つきみるひとの いねかてに あかつきかけて うつころもかな | 忠房親王 |
555 | たれゆゑか かたふくまての つきかけに ねなましひとの ころもうつらむ | 邦長 |
556 | しつかうつ よそのきぬたの おとのみそ あきのねさめの ともとなりける | 宣子(従三位藤原) |
557 | ぬれつつや しひてうつらむ しらつゆの あかつきおきの あさのさころも | 雲雅 |
558 | そてのうへの つゆもみたるる あきかせに たれかしのふの ころもうつらむ | 隆博 |
559 | のこりける あきのひかすを かそへつつ しものよなよな うつころもかな | 亀山院 |
560 | しろたへの そてのはつしも つきさえて いととよさむに うつころもかな | 源承 |
561 | やまかはの みつのみなかみ たつねきて ほしかとそみる しらきくのはな | 俊成(藤原俊忠男) |
562 | ちりはてて はななきときの きくなれは うつろふいろの をしくもあるかな | 興風 |
563 | あきふかき まかきはしもの いろなから おいせぬものと にほふしらきく | 覚助法親王 |
564 | やまひとの ちとせのあきを ゆつりおきて きみかためにと さけるしらきく | 後醍醐院 |
565 | ゆくすゑは なほなかつきの きくのえに かさなるちよを きみにゆつらむ | 後宇多院 |
566 | ゆくすゑの あきをかさねて ここのへに ちよまてめくれ きくのさかつき | 冷泉(花園院) |
567 | のこりける あきのひかすも あるものを うつりなはてそ にはのしらきく | 内侍(永福門院) |
568 | わかそてに つゆをのこして なかつきや すゑののをはな うらかれにけり | 道平 |
569 | なかつきも すゑののはらの はなすすき ほのかにのこる あきのいろかな | 時敦 |
570 | したつゆの そむるはいろの うすけれは もみちもあきの しくれをやまつ | 成久 |
571 | つのくにの いくたのもりの はつしくれ あすさへふらは もみちしぬへし | 教実 |
572 | そめてけり みむろのやまの はつもみち しくれもつゆも いろにいてつつ | 通雄 |
573 | いとはやも そめていろこき もみちかな このひともとや まつしくるらむ | 経継 |
574 | たまほこの みちのゆくての はしもみち をちこちひとや をりてかささむ | 為藤 |
575 | つゆしくれ いかにそめてか しのふやま ききのこのはの いろにいつらむ | 内経 |
576 | しくれゆく くものとたえは ひかけにて にしきをさらす みねのもみちは | 雅孝 |
577 | をくらやま こころにそむる もみちはは しくれのほかの いろやまさらむ | 公雄 |
578 | つゆしもの かさなるやまの もみちはは ちしほののちも いろやそふらむ | 為信 |
579 | いろふかき みやまかくれの もみちはを あらしのかせの たよりにそみる | 顕季 |
580 | もみちはの ちりくるあきは おほゐかは わたるふちせも みえすそありける | 元輔(清原春光男) |
581 | みなそこに かけしうつれは もみちはの いろもふかくや なりまさるらむ | 貫之 |
582 | たつたかは みねのもみちの ちらぬまは そこにそみつの あきはみえける | 家隆 |
583 | たつたかは みつのあきをや いそくらむ もみちをさそふ みねのあらしに | 為子(贈従三位) |
584 | うつりゆく ははそのもみち ひととはは いかにいはたの をののあきかせ | 為嗣 |
585 | ちりつもる にはのもみちは のこるとも あきのひかすは とまりしもせし | 花園院 |
586 | おほゐかは なかれてはやき このはにも とまらぬあきの いろはみえけり | 実泰 |
587 | いかたしよ あきのなこりの おほゐかは このくれしはし いそかすもかな | 師行 |
588 | しもふかく うつろひゆくを あきのいろの かきりとみする しらきくのはな | 伏見院 |
589 | ゆくあきの なこりおもはぬ ときたにも あかすやはみぬ ありあけのつき | 為理 |
590 | いかかまた おもひすてては すくすへき とまらぬあきの わかれなりとも | 後二条院 |
591 | めにみえぬ こころはかりに したへとも みをしわかねは あきそとまらぬ | 為世(御子左藤原為氏男) |
592 | あすしらぬ みをはおもはて めくりこむ あきのわかれを なにをしむらむ | 兵衛(上西門院) |
593 | まつしまの あまのころもて あきくれて いつかはほさむ つゆもしくれも | 定家 |
594 | しくれゆく そらにもしるし かみなつき くもりもあへす ふゆやきぬらむ | 後宇多院 |
595 | いつしかと けさはしくれの おとはやま あきをのこさす ちるもみちかな | 後伏見院 |
596 | かみなつき しくれとともに ふりまかふ このはもふゆの はしめなりけり | 家隆 |
597 | けさとても おなしくもゐを かみなつき ときしりかほに ふるしくれかな | 実経 |
598 | もしほやく けふりをくもの たよりにて しくれをいそく すまのうらかせ | 宗尊親王 |
599 | かつらきや たかねにかかる うきくもは よそにしらるる しくれなりけり | 性助法親王 |
600 | そらはなほ しくれそまさる うきくもの たなひくやまの みねのあらしに | 為藤 |
601 | すきやらて おなしをのへや しくるらむ くもふきかへす まつのあらしに | 親房(北畠師重男) |
602 | ふかきよの ねさめのゆめの なこりまて またおとろかす むらしくれかな | 公孝 |
603 | ゆふしくれ すきゆくやまの たかねより むらくもわけて いつるつきかけ | 公賢 |
604 | しはしこそ しくれてくもれ うきくもの あとはかかみの やまのはのつき | 実超 |
605 | もみちはを さそふあらしの たひことに こすゑのつきの かけそしくるる | 行深 |
606 | くもかかる みねはしくれて あらしふく ふもとにふるは このはなりけり | 俊光 |
607 | かみなつき ふくやあらしの やまたかみ くもにしくれて ちるこのはかな | 公明 |
608 | おのつから ふかぬたえまも あらしやま なにさそはれて ちるこのはかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
609 | ちはやふる かみなつきとは しらねはや もみちをぬさと かせのふくらむ | 道命 |
610 | あふさかの せきのもみちの からにしき ちらすはそてに かさねましやは | 隆房 |
611 | ちりまかふ もみちのいろに やまもとの あけのそほふね なほこかるらし | 亀山院 |
612 | からにしき たつたのかはの もみちはに みつのあきこそ なほのこりけれ | 公雄 |
613 | かきねなる くさもひとめも しもかれぬ あきのとなりや とほさかるらむ | 後嵯峨院 |
614 | つゆおきし いろともみえす かれはてて まかきものへも しものしたくさ | 俊光 |
615 | にはのおもに あとなきしもの やへむくら かれてもさはる ひとめなりけり | 為藤 |
616 | しもむすふ くさのたもとの はなすすき まねくひとめも いまやかれなむ | 国助 |
617 | かくはかり みにしむいろは あきもあらし しもよのつきの こからしのかせ | 政長 |
618 | ふくかせも あけかたさむき ふゆのよの あさちかしもに つきそさやけき | 兼季 |
619 | おくしもも ひとつにさえて ふゆかれの をののあさちに こほるつきかけ | 清兼 |
620 | あきのいろは とほさとをのに しもかれて つきそかたみの ありあけのそら | 範宗 |
621 | あらしやま ふもとのかねは こゑさえて ありあけのつきそ みねにかかれる | 後宇多院 |
622 | くさもきも ふゆかれさむく しもふりて のやまあらはに はるるつきかけ | 後二条院 |
623 | つかへこし とよのあかりは としをへて またやしもよの つきをみるへき | 経継 |
624 | くれやすき しものまかきの ひかけにも とはれぬころの つもるをそみる | 定家 |
625 | おきまよふ しものまかきは わすれねと ひかけにのこる いろそすくなき | 公経(藤原実宗男) |
626 | うらつたふ あともなくさの はまちとり ゆふしもみちて そらになくなり | 師信 |
627 | なにはかた ゆふなみたかく かせたちて うらわのちとり あともさためす | 実衡 |
628 | なにはかた みきはのちとり さゆるよは あしまのしもに うらみてそなく | 隆親(藤原隆衡男) |
629 | なにはえの あしのうきねの なかきよに あかつきとほく なくちとりかな | 国平 |
630 | さえわたる よはのうらかせ おとふけて かたふくつきに ちとりなくなり | 重村 |
631 | さよふけて あしのすゑこす はまかせに うらかなしくも なくちとりかな | 公能 |
632 | ともさそふ みなとのちとり こゑすみて こほりにさゆる あけかたのつき | 和泉式部 |
633 | しもかれの あしまのつきの あけかたを なきてちとりの わかれぬるかな | 敏行 |
634 | かよふらむ ことうらひとの ねさめまて おもひしられて なくちとりかな | 為道 |
635 | さゆるよの こほりとちたる いけみつに かものあをはも しもやおくらむ | 恒明親王 |
636 | やまかけや なつみのかはに なくかもの おのかはかせに なみそこほれる | 定房(藤原経長男) |
637 | たにふかみ やまかせさむき たきつせの なかなるよとや まつこほるらむ | 後醍醐院 |
638 | ふゆかはの はやせのなみの おのつから こほらぬひまに やとるつきかけ | 宣子(従三位藤原) |
639 | ふけゆけは いはこすなみや こほるらむ かはせのつきの かけそのとけき | 行家(藤原知家男) |
640 | もみちはの かけみしみつの うすこほり とまらぬいろを なにふすふらむ | 秀能(藤原秀宗男) |
641 | いさやかは いまやこほりも しきたへの とこのやまかせ さむくふくなり | 時元 |
642 | うちよする なみもこほりて みなとえの あしのはさむく むすふあさしも | 重綱(藤原) |
643 | しもかれの あしまのかせは よさむにて こほりによわる なみのおとかな | 性助法親王 |
644 | あしろきに いさよふなみを たよりにて やそうちかはは まつこほりつつ | 後二条院 |
645 | ふねもかな いさよふなみの おとはして またよはふかし うちのあしろき | 為家 |
646 | おとたてて のきはにさやく ささたけの よのまのかせに あられふるなり | 実兼 |
647 | をかのへの ならのおちはや くちぬらむ いまはおとせて ふるあられかな | 忠房親王 |
648 | ころもてに あられみたれて かかるなり はらははそてに たまやくたけむ | 雲雅 |
649 | あらしふく すそののひかけ さえくれて くものたよりに あられふるなり | 為氏 |
650 | くものうへの ありあけのつきも かけさえて ふるやあられの たましきのには | 為氏 |
651 | よのほとに つもりにけらし きのふまて みさりしやまの みねのしらゆき | 為顕 |
652 | みやこには あらしはかりの さゆるひも とやまをみれは ゆきふりにけり | 後伏見院 |
653 | ははそはら しくれしいろも あとたえて いはたのをのに ゆきはふりつつ | 澄覚 |
654 | のもやまも うつもれにけり たかまとの をのへのみやの ゆきのあけほの | 国冬 |
655 | はれぬれは のこるやまなく つもりけり くもまにみつる みねのしらゆき | 時有 |
656 | かせさむみ こほれるくもの みねつつき こえゆくすゑに つもるしらゆき | 道昭 |
657 | よしのやま みねのあらしも いまよりは さむくひことに つもるしらゆき | 定為 |
658 | いととまた ふゆこもりせる みよしのの よしののおくの ゆきのふるさと | 後二条院 |
659 | あまのはら そらかきくらし ふるゆきに おもひこそやれ みよしののやま | 紀伊(祐子内親王家) |
660 | あすかかは かはおとたかし うはたまの よかせをさむみ ゆきそふるらし | 家持 |
661 | つもれたた みちはたゆとも やまさとに ひをふるゆきを ともとたのまむ | 俊成(藤原俊忠男) |
662 | けぬかうへに つもらはつもれ ふるゆきの みのしろころも うちもはらはし | 後宇多院 |
663 | ふきおろす あらしのすゑの やまかけは ふるほとよりも つもるしらゆき | 承覚法親王 |
664 | たかさこの をのへのあらし ふくほとは ふれとつもらぬ まつのしらゆき | 為世(御子左藤原為氏男) |
665 | ゆきをれの おとたにいまは たえにけり うつもれはつる みねのまつはら | 隆祐 |
666 | とふひとを まつとたのみし こすゑさへ うつもれはつる ゆきのふるさと | 国助 |
667 | ふりまさる としをかさねて みつるかな ならひのをかの まつのしらゆき | 禅助 |
668 | したをれの おとこそしけく きこえけれ しのたのもりの ちえのしらゆき | 国助女 |
669 | ちえにさく はなかとそみる しらゆきの つもるしのたの もりのこすゑは | 重経 |
670 | ちりつもる はなかとみえて さくらあさの をふのしたくさ ゆきふりにけり | 顕盛 |
671 | よしのやま ふもとにふらぬ ゆきならは はなかとみてや たつねいらまし | 西行 |
672 | けふりたつ ふしのたかねに ふるゆきは おもひのほかに きえすそありける | 相模 |
673 | やまふかみ けふりをたにと おもひしを しはとるみちも ゆきにたえつつ | 政国女 |
674 | ふゆふかき あこきのあまの もしほきに ゆきつみそへて さゆるうらかせ | 国助 |
675 | ふゆかれの をはなおしなひ ふるゆきに いりえもこほる まののうらかせ | 宗行 |
676 | うらかせに かへらぬなみと みゆるかな おなしみきはに ふれるしらゆき | 為氏 |
677 | たつたかは こほりのうへに かけてけり かみよもきかぬ ゆきのしらゆふ | 国冬 |
678 | かみかきに ゆきのしらゆふ うちはへて なひくとみゆる まつのしたをれ | 読人不知 |
679 | ゆきにたに あとまつかたそ なかりける あたにもこえぬ かみのいかきは | 達智門院 |
680 | つのくにの こやのあしふき うつもれて ゆきのひまたに みえぬころかな | 覚助法親王 |
681 | わけきつる あとともみえす ささのはの みやまもさやに つもるしらゆき | 信雅 |
682 | つたへこし よよのあとをも たつねみつ たけのそのふの にはのしらゆき | 慈道法親王 |
683 | ふかくさや たけのしたみち わけすきて ふしみにかかる ゆきのあけほの | 冬平 |
684 | さゆるよの かせはおとせて あけにけり たけのはうつむ けさのしらゆき | 大夫(延明門院) |
685 | かねのおとに いまやあけぬと なかむれは なほくもふかし みねのしらゆき | 家隆 |
686 | いくへとは わけてもしらし あらちやま くももかさなる みねのしらゆき | 為実(御子左藤原為氏男) |
687 | ふりくらす けふさへゆきに あとたえは あすかのさとを たれかとふへき | 兼氏 |
688 | よしさらは ひととはすとも にはのおもに あとなきゆきを ひとりこそみめ | 遠衡 |
689 | こぬひとを けさはうらみし われたにも あとつけかたき にはのしらゆき | 兼信 |
690 | かよふらむ こころもいさや しらゆきの あとみぬほとは いかかたのまむ | 長舜 |
691 | しられしな とはぬをひとの なさけとは われこそみつれ にはのしらゆき | 家良 |
692 | ふみわけむ わかあとさへに をしけれは ひとをもとはぬ にはのしらゆき | 為世(御子左藤原為氏男) |
693 | しはしこそ ひとのなさけも またれしか あまりなるまて つもるゆきかな | 実兼 |
694 | しらゆきの ふるのなかみち なかなかに とふひとつらき あとそのこれる | 国夏 |
695 | うつみひの きえぬはかりを たのめとも なほしもさゆる とこのさむしろ | 定家 |
696 | くものうへに ねまちのつきは ふけにけり のふしのそても しもむすふまて | 実兼 |
697 | けふもまた をしむとなれは くれはとり あやにくにのみ すくるとしかな | 氏久 |
698 | つきひのみ たたいたつらに こゆるきの いそくにつけて くるるとしなみ | 教定(飛鳥井雅経男) |
699 | かきりある つきひはかねて しりなから おとろかれぬる としのくれかな | 実泰 |
700 | いにしへは いそくはかりの こころにて くれゆくとしを なけきやはせし | 宣時(北条) |
701 | おもへたた ふりぬるのちの としのくれ いにしへたにも をしまれしみに | 基忠(鷹司兼平男) |
702 | そらにこそ つきひもめくれ さのみなと むなしきとしの みにつもるらむ | 定為 |
703 | つもりゆく としのおもはむ ことわりも はかなくくるる けふそしらるる | 高倉(八条院) |
704 | ひとかたに おもひそはてぬ はるをまつ こころにをしき としのくれかな | 守覚法親王 |
705 | よよたえす のりのしるしを つたへきて あまねくてらす ひのもとのくに | 後宇多院 |
706 | ふちなみの さかりはすきぬ あしひきの やまほとときす なとかきなかぬ | 読人不知 |
707 | あすかかは かはよとさらす たつきりの おもひすくへき こひにあらなくに | 赤人 |
708 | これもまた ひとえたのこれ しをれても さけるひさしさ はなのかたみそ | 実兼 |
709 | こまわたす ひとせもみえす やへこほり うはなみなきは ふかきみなそこ | 為氏 |
710 | ふゆかれを ちくさおしなひ はてはみな かせにゆきさへ またつもるらし | 為氏 |
711 | いかにまた ひとりあかすか しのふてふ ひとはつらしな おもひこりねよ | 兼実 |
712 | ふたはにて わかひきうゑし まつのきの えたさすはるに あひにけるかな | 好忠 |
713 | はなのかの えたにしとまる ものならは くるるはるをも をしまさらまし | 好忠 |
714 | なにことも すつるみなれと よのなかの えさるましきは きみゆゑとしれ | 伊勢 |
715 | うくひすは はなのしるへを もとむめり さくらむかたの かせもふかなむ | 国助 |
716 | よをすつと いかていふらむ けふあすも ものはなにゆゑ おもふわかみそ | 隆信 |
717 | なにはひと あしのわかはや ほさてたく みとりにかすむ ゆふけふりかな | 俊成(藤原俊忠男) |
718 | さよころも かへすかひなき みにはたた きみをうらみて そてそぬれぬる | 実兼 |
719 | まはらなる ねやをとめては もりくれと やとるほとなき なつのよのつき | 実泰 |
720 | かみやまに いくよへぬらむ さかきはの ひさしくしめを ゆひかけてけり | 定家 |
721 | つゆなから いろもかはらす すりころも ちくさのはなの みやきののはら | 為氏 |
722 | わすれすよ しものしたなる はなすすき をしきかたみの あきのおもかけ | 実兼 |
723 | いにしへよ いかにすきこし かたなれは しのへとかへる みちなかるらむ | 実重(三条公親男) |
724 | あふことに かへむいのちも かへりみす たたみをすてて こふるはかなさ | 国助 |
725 | ほともなく とくさむくのは なりにけり むしのこゑこゑ よわりゆくまて | 俊頼(源経信男) |
726 | おしなへて よものくさきの いろつくは やますしくれの ふれはなりけり | 公守 |
727 | はるたつと きくにつけても かすかのの わかなをなとか ひとのわするる | 紀伊(祐子内親王家) |
728 | たもとには にほはさりせは うめのはな ひきかくしても をるへきものを | 大弐三位 |
729 | あをやきの うちたれかみを みせむとや いつへきかとに まちたてるらむ | 頼政 |
730 | そらはまた あまけになれや はるのよの つきもかすみの そてかさをきて | 実兼 |
731 | きみかため かせをそいとふ このはるは はなゆゑとのみ なにおもひけむ | 行尊 |
732 | まねくとて さのみもひとの ととまらは をはなかもとや ところなからむ | 信実 |
733 | みたれたる なをのみそたつ かるかやの おくしらつゆを ぬれてきぬらむ | 大弐三位 |
734 | わかことく はたおるむしも ねをやなく ひとのつらさを たてぬきにして | 読人不知 |
735 | やまのはを いつるのみこそ さやけけれ うみなるつきの くらけなるかな | 弁乳母 |
736 | よるよるは きぬたのおとを さそひきて かせそまくらに ころもうちける | 為世(御子左藤原為氏男) |
737 | しつのめか きなれころもの あきあはせ はやくもいそく つちのおとかな | 知家 |
738 | さほやまの あらしそやかて ぬかせける もみちのにしき みにはきたれと | 康資王母 |
739 | ははききは おもてふせやと おもへはや ちかつくままに かくれゆくらむ | 俊頼(源経信男) |
740 | ふりかくる ひたひのかみの かたみたれ とくとたのむる けふのくれかな | 知家 |
741 | のせてやる わかこころさへ ととめおきて ねたくもかへす むなくるまかな | 頼政 |
742 | ますらをの すけのあみかさ うちたれて めをもあはせす ひとそなりゆく | 家良 |
743 | いくへつつ いくつかさねて たのままし かりのこのよの ひとのこころは | 和泉式部 |
744 | かちひとの のわきにあへる ふかみのの けをふくよこそ くるしかるらめ | 為家 |
745 | よをすてて ひとにもみえす しられねは われこそいまは かくれみのなれ | 光俊(葉室光親男) |
746 | きみかうた しかまのいちと みしかとも かちのなきこそ あやしかりけれ | 俊恵 |
747 | ゆきかへる ものとしるしる あやしくも わかれといへは をしまるるかな | 敦忠 |
748 | みちのくは よをうきしまも ありといふ せきこゆるきの いそかさらなむ | 小町 |
749 | おくれしと いはぬなみたも たむけには ととめかねつる ものにそありける | 忠見 |
750 | もみちをも はなをもをれる こころとは たむけのやまの かみやしるらむ | 貫之 |
751 | みやこなる ひとのかすには あらねとも あきのつきみは おもひいてなむ | 恵慶 |
752 | きみかため いのりてたてる からころも わかれのそてや たむけなるらむ | 清正 |
753 | きみかゆく くもちおくれぬ あしたつは いのるこころの しるへなりけり | 中務 |
754 | つゆのこと はかなきみをは おきなから きみかちとせを いのりやるかな | 高光 |
755 | まちつけむ いのちををしむ わかれちは きみをもみをも いのるとをしれ | 頼輔 |
756 | わかれちそ いまはなくさむ きみかかく まつとしきかは ちよもへぬへし | 季広 |
757 | なほさりに かへらむほとを ちきるかな いのちをしらぬ わかれなれとも | 円嘉 |
758 | かきくらし ゆくそらもなき わかれちは とまるもとまる こころならしを | 信生 |
759 | いまさらに わかるとなにか おもふらむ われこそさきに いへをいてしか | 蓮生法師 |
760 | あつさゆみ ひきととめても みてしかな いなはこひしと おもふへけれは | 公任 |
761 | みなれよと そふるかかみの かけたにも くもらてすくせ ひとわするとも | 馬内侍 |
762 | あさきりに よとのわたりを ゆくふねの しらぬわかれも そてぬらしけり | 土御門院 |
763 | ゆくこまの あとたにもなし たひひとの かちののはらに しけるなつくさ | 実雄 |
764 | うらうらの すゑのとまりは しらねとも おなしいそへを いつるともふね | 家平 |
765 | けさはみな まほにそかくる おひかせの ふくひとかたに いつるともふね | 為世(御子左藤原為氏男) |
766 | はるかなる なみちへたてて こくふねは ゆくともみえす とほさかりつつ | 氏村 |
767 | てるつきを くもなかくしそ しまかけに わかふねよせむ とまりしらすも | 読人不知 |
768 | なにはかた こきいつるふねの はるはると わかれくれとも わすれかねつも | 読人不知 |
769 | かへりみる みやこやいつく わたのはら くものなみちは はてもしられす | 花園院 |
770 | なにはかた おなしいりえに ふねとめて いくよあしまの つきをみつらむ | 定房(藤原経長男) |
771 | なみたそふ そてのみなとを たよりにて つきもうきねの かけやとしけり | 国助 |
772 | ねさめして いくよあかしの うらかせを なみのまくらに ひとりきくらむ | 忠成女 |
773 | まとろまて こよひやひとり あかしかた なみのまくらに かよふうらかせ | 秀賢 |
774 | はるはると なみちのすゑに こきくれて しらぬみなとに とまるふなひと | 通重 |
775 | なこのうらに とまりをすれは しきたへの まくらにたかき おきつしらなみ | 後二条院 |
776 | ふねとむる としまかいその うらひとも うきてよわたる ならひをそしる | 公顕 |
777 | たひひとも たたぬひもなき あつまちの ゆききになるる たこのうらなみ | 斉時 |
778 | かりそめと おもひなからも たひころも たちわかるれは そてそしをるる | 行朝 |
779 | たひころも みやこへいそく みちならは いとかくそては しほらさらまし | 右衛門督(惟康親王家) |
780 | たひひとの こころつくしの みちなれや ゆききゆるさぬ もしのせきもり | 承覚法親王 |
781 | いまもかく とさしやささぬ たひひとの みちひろきよに あふさかのせき | 公顕 |
782 | あつまちの かたになこその せきのなは きみをみやこに すめとなりけり | 慈円 |
783 | みやこには きみにあふさか ちかけれは なこそのせきは とほきとをしれ | 頼朝 |
784 | たひころも あかつきふかく たちにけり はるかにきても あふひとそなき | 寂信 |
785 | みやこをは ひとりいてしを いかにして うきことはかり みにはそふらむ | 了然 |
786 | みやこいてて いくよになりぬ くさまくら むすふかりねの つゆをのこして | 重顕(藤原頼重男)/重名 |
787 | かりねとも いまはおもはし ひかすへて むすひなれぬる くさのまくらを | 有高 |
788 | たひねとは おもはさらなむ くさまくら あやめにこよひ むすひかへつつ | 公朝 |
789 | かりそめの あやめにそへて くさまくら こよひたひねの ここちこそせね | 為道 |
790 | ふしなれぬ たひねのまくら ほともなく あかつきまたて ゆめそさめぬる | 宗直 |
791 | ゆめむすふ たひねのいほの くさまくら ならはぬほとの そてのつゆかな | 貞時 |
792 | ゆめをたに みつとはいはし なにはなる あしのしのやの よはのあきかせ | 為氏 |
793 | かりねする まののいりえの あきのよに かたしくそては をはななりけり | 親長 |
794 | ささまくら いくののすゑに むすひきぬ ひとよはかりの つゆのちきりを | 宗尊親王 |
795 | すきかてに のなかのしみつ かけみても もとすみなれし かたそわすれぬ | 斉時 |
796 | わけきつる やまちのつゆの ぬれきぬは ほさてかたしく のへのかりいほ | 円位/円伊 |
797 | いまこむと むすふちきりも あたにのみ おもひおかるる みちしはのつゆ | 読人不知 |
798 | ふるさとは つゆもわすれす くさまくら むすふかりねの よはをかさねて | 重顕(藤原頼重男) |
799 | たひころも かさなるそての つゆしくれ きのふもほさす けふもかわかす | 実兼 |
800 | いそきつる みちのゆくては くらきよに さとをしらせて とりのなくなる | 実兼 |
801 | たひころも たつよりそての なみたにて むすふまくらも のへのゆふつゆ | 永福門院 |
802 | くれはつる あらしのそこに こたふなり やととふやまの いりあひのかね | 永福門院 |
803 | いまそきく ゆふこえくれて はつせやま ひはらのおくの いりあひのかね | 道我 |
804 | くれすとて さとのつつきは うちすきぬ これよりすゑに やとやなからむ | 基忠(鷹司兼平男) |
805 | いつくとも さためぬたひは ゆきくるる さとをかきりに やとやからまし | 成瑜/読人不知 |
806 | つゆわけて やとかりころも いそけとも さとはとほちの のへのゆふくれ | 宣子(従三位藤原) |
807 | ゆくさきの ちかつくほとは ふるさとの とほさかりぬる ひかすにそしる | 道平 |
808 | たひころも ゆふこえかかる やまのはに ゆくさきみえて いつるつきかけ | 了雲 |
809 | ゆきくれて ふもとののへに やととへは こえつるやまを つきもいてけり | 淑文 |
810 | あまつそら おなしくもゐに すむつきの なとかたひねは さひしかるらむ | 宗秀(大江時秀男) |
811 | くさまくら つゆのやととふ つきかけに ほさぬたひねの そてやかさまし | 忠景 |
812 | つきもまた したひきにけり われはかり やとるとおもふ のへのかりいほ | 宣子(従三位藤原) |
813 | したひくる かけはたもとに やつるとも おもかはりすな ふるさとのつき | 土御門院 |
814 | したひきて またふみなれぬ やまちにも みやこにてみし つきそともなふ | 遊義門院 |
815 | よもすから かよふゆめちは たえはてて つきをみやこの かたみにそみる | 兼氏 |
816 | ときしもあれ なかめすてにし なかつきの つきをみやこの なこそをしけれ | 忠盛/忠守 |
817 | いつくにも なほおもかけの みにそへは つきのみやこを おもひこそやれ | 雅孝 |
818 | ぬれつつも なほそわけゆく たひころも あさたつやまの まきのしたつゆ | 清忠(藤原俊輔男) |
819 | ひとりゆく さよのなかやま なかそらに あきかせさむく ふくるつきかけ | 観意 |
820 | みやことて くものたちゐに しのへとも やまのいくへを へたてきぬらむ | 定家 |
821 | あかつきの せきのあききり たちこめて みやこへたつる あふさかのやま | 基行 |
822 | きよみかた なみのせきもり とめすとも つきをみすてて たれかすくへき | 成茂 |
823 | よをこめて やまちはこえぬ ありあけの つきよりのちの ともやなからむ | 光吉 |
824 | たひひとの とこのやまかせ ゆめたえて まくらにのこる ありあけのつき | 師員 |
825 | こけむしろ たたひとへなる いはかねの まくらにさむき とこのやまかせ | 景久 |
826 | かりねする こよひはかりの いはかねに いたくなふきそ みねのこからし | 少将(藻壁門院) |
827 | つきまちて なほこえゆかむ ゆふやみは みちたとたとし さやのなかやま | 為氏 |
828 | こえやらて やととひかぬる ときしもあれ あらしふきそふ さやのなかやま | 範貞 |
829 | ことのはも およはぬふしの たかねかな みやこのひとに いかかかたらむ | 有房(六条通有男) |
830 | たちまよふ あさまのやまの みねのくも けふりをひとの みやはとかめむ | 国道(津守国助男) |
831 | ゆくすゑも あともさなから うつもれて くもをそわくる あしからのやま | 広房(大江広茂男) |
832 | あきかせは おもふかたより ふきそめて みやここひしき しらかはのせき | 邦長 |
833 | ゆくひとも えそすきやらぬ ふきかへす ころものせきの けさのあらしに | 為子(贈従三位) |
834 | ゆきのうちに むかしのみちを たつぬれは まよはぬこまの あとそしらるる | 後醍醐院 |
835 | ゆきのもる すまのせきやの いたひさし あけゆくつきも ひかりとめけり | 定家 |
836 | みやこたに しくるるころの むらくもに そなたのそらの ゆきけをそしる | 慶融 |
837 | みやこたに はれぬしくれに おもひやれ こしちはゆきの ふらぬひそなき | 頼重 |
838 | うちまやま けさこえゆけは たひひとの ころもてさむし ゆきはふりつつ | 能円 |
839 | ふみわくる あとよりほかは たひひとの かよふかたなき のへのしらゆき | 寂恵 |
840 | なれきつる としとともにも かへらすは なみたはかりや みにはそはまし | 成茂 |
841 | かへるさの たひねのゆめに みえやせむ おもひおくれぬ こころはかりは | 義行 |
842 | かへるさに おもひおくれぬ こころとも たひねのゆめに みえはたのまむ | 為氏 |
843 | ふるさとの ゆめのかよひち せきもゐは なにをたひねの なくさめにせむ | 為相 |
844 | ゆめをたに むすひもはてす くさまくら かりねのとこの よはのあらしに | 経継 |
845 | いはかねの まくらはさしも なれにしに なにおとろかす まつのあらしそ | 土御門院 |
846 | ふるさとに かよふゆめちも ありなまし あらしのおとを まつにきかすは | 良経(九条兼実男) |
847 | すきにける やまはももへを へたつれと ひとよにかよふ わかゆめちかな | 後宇多院 |
848 | いつこをか いへちとわきて たのむへき なへてこのよを たひとおもへは | 後宇多院 |
849 | あとたれし かみよにうゑは すみよしの まつもちとせを すきにけらしも | 後嵯峨院 |
850 | いくちよと またゆくすゑを ちきるらむ けふまちえたる すみよしのまつ | 為経(甘露寺藤原資経男) |
851 | すみのえや けふのみゆきを まつとてそ かみもちとせの たねはまきけむ | 為教 |
852 | すみよしの まつのちとせも みゆきする けふのためとや かみはうゑけむ | 公守 |
853 | ちとせとも いのるしるしの ことのはを むすひやしつる すみよしのまつ | 実氏 |
854 | すみよしの まつもはなさく みよにあひて とかへりまもれ しきしまのみち | 為藤 |
855 | さらぬたに あささはをのの わすれみつ わすれはてても いくかへぬらむ | 経国 |
856 | おもひいてよ かみよもみきや あまのはら そらもひとつに すみのえのつき | 俊成(藤原俊忠男) |
857 | みやゐせし かみよおもへは かたそきの ゆきあひのしもは としふりにけり | 読人不知/文知/文智 |
858 | ちきりありて つかふるかみの みしめなは なほよよかけて みにたのむかな | 国道(津守国助男) |
859 | みかきおく あとをおもはは たまつしま いまもあつむる ひかりをもませ | 為家 |
860 | しきしまの やまとことのは わかよまて うけけるかみの すゑもたのもし | 為氏 |
861 | わかのうらや もにうつもれし たまもいま ひかりをそへて かみそみるらし | 讃岐(後照念院関白太政大臣家) |
862 | わかのうらに たてしちかひの みやはしら いくよもまもれ しきしまのみち | 国助 |
863 | ひとすちに うきをもいかに なけかまし かみにまかせぬ わかみなりせは | 国助 |
864 | うもれきの みはいたつらに ふりぬとも かみたにはるの めくみあらはせ | 為氏 |
865 | みかさやま おいきもいまは はなさきて よよにかはらす はるにあひぬる | 実聡/実超/実聴 |
866 | みかさやま はるのめくみの あまねくは ふちのすゑはも なほやさかえむ | 雅孝 |
867 | てらせなほ やまはみかさの あさひかけ あふくこころも くもりやはする | 内実 |
868 | なかなかに さしてもいはし みかさやま おもふこころは かみもしるらむ | 定家 |
869 | かすかやま ふかくたのみし なつくさの しけきめくみそ みにあまりぬる | 実氏 |
870 | ひとよりは あはれとおもへ かすかやま しかもたのみを かくるとしつき | 後二条院 |
871 | のほるへき あとをはすてし かすかやま いまひとさかは かみにまかせむ | 定資 |
872 | かすかやま あまつこやねの ますかかみ うつりしかけの つきをみるかな | 祐茂 |
873 | さかきはに しらゆふかけて つもりけり みかさのもりの けさのはつゆき | 実聡 |
874 | たのもしな さほのかはせの かみさひて みきはのちとり やちよとそなく | 良経(九条兼実男) |
875 | よよかけて かみにつかふる なとりかは かかるせまてと みをそいのりし | 祐春 |
876 | ふたはより かみをそたのむ をしほやま われもあひおひの まつのゆくすゑ | 秀房 |
877 | おもひやる そてもぬれけり いはたかは わたりなれにし せせのしらなみ | 公順 |
878 | いまもなほ あはれをかけよ みくまのや むかしのあとは かみもわすれし | 禅助 |
879 | いなりやま いのるしるしの かひもあらは すきのはかさし いつかあひみむ | 後宇多院 |
880 | ふゆされは みわのすきむら かみさひて こすゑにかかる ゆきのしらゆふ | 経継 |
881 | ゆきふれは みわのすきむら ゆふかけて ふゆこそかみの しるしみえけれ | 実兼 |
882 | ちはやふる かみのみむろの ますかかみ かけていくよの かけをこふらむ | 家隆 |
883 | かみかきや みむろのやまの ほとときす ときはかきはの こゑときかはや | 忠通 |
884 | もろかつら かたかたかくる こころをは あはれともみし かものみつかき | 紀伊(祐子内親王家) |
885 | きみのみや ちとせもあかす ききふりむ わかかみやまの まつむしのこゑ | 氏久 |
886 | いくちよか なきてへぬらむ ちはやふる そのかみやまの まつむしのこゑ | 資季 |
887 | くもりなき きみかみよにそ ちはやふる かみもひよしの かけをそふらむ | 桓守 |
888 | きみまもる かみもひよしの かけそへて くもらぬみよを さそてらすらむ | 仁澄 |
889 | さりともと てらすひよしを たのむかな くもらすとおもふ こころはかりに | 慈円 |
890 | あさからぬ めくみにしりぬ のちのよの やみもひよしの てらすへしとは | 兼誉 |
891 | わすれしな おもひしままに みるつきの ちきりありける ななのかみかき | 慈勝 |
892 | みちまもる ななのやしろの めくみこそ わかななそちの みにあまりけれ | 為世(御子左藤原為氏男) |
893 | いにしへに かみのみふねを ひきかけし こすゑやいまの からさきのまつ | 行氏(祝部行言男) |
894 | みなひとの たのみをかけて かみかきに いのれはなひく まつのしらゆふ | 慶宗 |
895 | おほかたの よをしつかにと いのるこそ かみのこころに まつかなふらめ | 家基(近衛基平男) |
896 | あめつちの ひらけそめける かみよより たえぬひつきの すゑそひさしき | 道平 |
897 | かたふかぬ はやひのみねに あまくたる あめのみまこの くにそわかくに | 後宇多院 |
898 | わかくにに うちとのかみと あらはれて つたへしのりを いままもるらむ | 後宇多院 |
899 | にこりなき かみのこころを あらはして みもすそかはや なかれそめけむ | 公顕 |
900 | いすすかは たえぬなかれの そこきよみ かみよかはらす すめるつきかけ | 伏見院 |
901 | すむつきの かけをうつして いすすかは にこらぬよにも かへるなみかな | 恵助法親王 |
902 | いすすかは とほきむかしの かみよまて こころにうかふ よはのつきかけ | 最信 |
903 | すめらきの あまつみおやの みことのり つかへていのる とよのみやひと | 行忠(度会) |
904 | かみちやま かけのこくさは もえにけり すゑはももれぬ はるのめくみに | 氏忠 |
905 | いせのうみや いまもあまてる かみかせに みちあるなみの よるへをそまつ | 源承 |
906 | いのりこし しるしあらはせ いはしみつ かみもわかみを おもひすてすは | 貞重 |
907 | ここのへの けふのかさしの さくらはな かみもむかしの はるはわすれし | 師重(源師親男) |
908 | よのためも あふくとをしれ をとこやま むかしはかみの くにならすやは | 後二条院 |
909 | よをおもふ わかすゑまもれ いはしみつ きよきこころの なかれひさしく | 後宇多院 |
910 | ふけぬるか まゆみつきゆみ おしかへし うたふかくらの もとすゑのこゑ | 為世(御子左藤原為氏男) |
911 | そらさえて またしもふかき あけかたに あかほしうたふ くものうへひと | 定家 |
912 | よはふなる おとたかやまの さかきはの いろにかはらぬ きみかみよかな | 匡房 |
913 | ちはやふる みかみのやまの さかきはを かをかくはしみ とめてこそみれ | 顕輔 |
914 | ひさかたの あまのいはとの やまのはに とこやみはれて いつるつきかけ | 俊光 |
915 | ひにそへて かけはかはれと おほそらの つきはひとつそ すみまさりける | 後宇多院 |
916 | つきのため なにをいとはむ くもきりも さはらぬかけは いつもさやけし | 後宇多院 |
917 | さとりいる とをのこころの ひらけてそ おもひのままに よはすくひける | 後宇多院 |
918 | かくはかり たるまをしれる きみなれは たたかたまてそ いたるなりけり | 弘法 |
919 | くわむねむの こころしすめは やまかせも しやうらくかしやう とこそきこゆれ | 智弁 |
920 | しかのなみ くくうむかとは たたねとも きけはこころそ すみわたりける | 明尊 |
921 | きりになほ まよひしほとそ あきのよの つきをへたつる さはりとはみし | 実乗/実承 |
922 | きりはれて くもらぬにしの やまのはに かかるもきよき つきのかけかな | 守禅 |
923 | みかつきの くもゐにたかく いてぬれは かすみもきりも たちそへたてぬ | 公澄 |
924 | くもりなく いにしへいまを へたてぬは こころにみかく かかみなりけり | 了然 |
925 | ますかかみ うつしおこする すかたをは みことにみよの ほとけとそみる | 覚鑁 |
926 | おしなへて たれもほとけに なりぬとは かかみのかけに けふこそはみれ | 鳥羽院 |
927 | みつのよに つねにすむへき ことわりは ちらぬさくらの いろそみせける | 後宇多院 |
928 | みつのよに ちるもちらぬも ここのへの はなのいろをは きみそみるへき | 禅助 |
929 | むなしとも ありともいはし いまさらに まことののりの ふたつなけれは | 道我 |
930 | はるのくる かたをてらして のりのはな ひらくるときを よにそしらする | 尊円法親王 |
931 | むかしみし はるのひかりの かはらねは いまもみのりの はなそさくらむ | 有長 |
932 | すみそめの そてにもふかく うつりけり をりをりなるる はなのにほひは | 親瑜 |
933 | をしますよ あけほのかすむ はなのかけ これもおもひの したのふるさと | 定家 |
934 | わかこころ みつのくるまに かけつるは おもひのいへを うしとなりけり | 近衛院 |
935 | しらてこそ むすひおきけめ あけまきの いとけなかりし ほとのちきりを | 定為 |
936 | ひとときに そそきしあめに うるひつつ みくさふたきも えたさしてけり | 源信 |
937 | いかはかり うれしかりけむ さらてたに こむよのことは しらまほしきを | 俊成(藤原俊忠男) |
938 | しつかなる いほりをしめて いりぬれは ひとかたならぬ ひかりをそみる | 俊成(藤原俊忠男) |
939 | いけみつの そこよりいつる はちすはの いかてにこりに しますなりけむ | 俊成(藤原俊忠男) |
940 | きりふかき あきのみやまの このもとに ことのはのみそ ちりのこりける | 惟方 |
941 | しはしこそ かけをもかくせ わしのやま たかねのつきは いまもすむなり | 隆淵 |
942 | みぬひとの ためとやわしの やまさくら ふたたひとける はなのしたひも | 成運 |
943 | つねならぬ よにふるはては きえぬとや けにみをすてし ゆきのやまみち | 為家 |
944 | きかぬまは むなしきそらの ほとときす けふはまことの はつねなりけり | 忠源 |
945 | くまもなき つきをうつして すむみつの いろもそらにそ かはらさりける | 瞻西 |
946 | くさのはの つゆもひかりの あれはとて たまといひては いかかひろはむ | 厳教 |
947 | くさのはを いかなるひとの むすひてか とかてもつゆの みをはおきけむ | 頼齢/頼験 |
948 | くもはれて そらもひかりも みえわかす ひとつにすめる あきのよのつき | 良信 |
949 | にこりなき もとのこころに まかせてそ かけひのみつの きよきをもしる | 覚懐 |
950 | はれやらぬ こころのやみの ふかきよに まとろまてみる ゆめそかなしき | 実寿 |
951 | おしなへて こころひとつと しりぬれは うきよにめくる みちもまとはす | 顕俊 |
952 | みなれさを いはまになみは ちかへとも たゆますのほる うちのかはふね | 定家 |
953 | おろかなる こころからこそ わかそてに かけけるたまを なみたとはみれ | 道良女 |
954 | まよひこし たまのゆくへも あらはれぬ みをうつせみの うすきたもとに | 憲実 |
955 | いかにして うらみしそてに やとりけむ いてかたくみし ありあけのつき | 西行 |
956 | いにしへに かはらすいまも てらすなる わしのみやまの つきをこひつつ | 道基 |
957 | すゑのよを てらしてこそは きさらきの なかはのつきは くもかくれけれ | 澄世 |
958 | みをかへて あまたにみえし すかたこそ ひとをもらさぬ ちかひなりけれ | 定資 |
959 | あひかたき のりのうききを えたるみは くるしきうみに なにかしつまむ | 頼輔 |
960 | つひにまた いかなるみちに まよふとも ちきりしままに しるへわするな | 兼氏 |
961 | いまはまた とふへきみちそ なかりける こころのおくを たつねきはめて | 忠源 |
962 | さこそけに うつすひかりも てらすらめ みのりのはなの さとりひらけて | 禅助 |
963 | むかしおもふ みのりのはなの つゆことに なみたやそへて かきなかすらむ | 氏久 |
964 | たねまきし こころのみつに つきすみて ひらけやすらむ むねのはちすも | 俊成(藤原俊忠男) |
965 | たとへこし あふきもさこそ わするらめ つきをもつきと わかぬこころに | 後嵯峨院 |
966 | にしへゆく つきをやよそに おもふらむ こころにいらぬ ひとのためには | 西行 |
967 | おのつから こころにのこる ちりもなし きよきなかれの やまかはのみつ | 為氏 |
968 | はるやとき みやまさくらに さきたちて みやこのはなは まつそひらけし | 円胤 |
969 | ゆふつくひ いりえのあしの ひとすちに たのむこころは みたれさりけり | 照空 |
970 | そこきよく すますこころの みつのおもに むすふこほりを かさねてそみる | 為家 |
971 | つきかけの いたらぬさとは なけれとも なかむるひとの こころにそすむ | 源空 |
972 | みちもなく わすれはてたる ふるさとに つきはたつねて なほそすみける | 蓮生法師 |
973 | くもとみて すきこしあとの やまさくら にほひにいまそ はなとしりぬる | 順空 |
974 | ふえのねに ことのしらへの かよへるは たなひくくもに かせやふくらむ | 俊頼(源経信男) |
975 | くるしとも うしともものを おもひしは みしゆめのよの こころなりけり | 俊頼(源経信男) |
976 | こくらくの はちすのうへに おくつゆを わかみのたまと おもはましかは | 成賢 |
977 | さとりゆく こころのたまの ひかりにて うきよのやみを てらせとそおもふ | 聖覚 |
978 | ふかしとも おもひなはてそ のりのみつ そのみなもとは くみもつくさし | 道宝 |
979 | むすふての しつくそきよき たにかはの なかれはすゑも にこらさりけり | 桓守 |
980 | ちりのこる のりのはやしの こすゑには ことはのはなの いろそすくなき | 澄俊 |
981 | おもひきや にはのしらゆき ふみわけて たえにしみちの あとつけむとは | 定海 |
982 | おもはすよ かしこきよよの のりのみち おろかなるみに つたふへしとは | 禅助 |
983 | たつねいる うたののかせを うけてこそ のりをつたへし やとはしめけれ | 後宇多院 |
984 | わかやまに ちよをかさねし かひもなく うすきはみつの ころもなりけり | 道玄 |
985 | なかきよに まよふさはりの くもはれて つきのみかほを みるよしもかな | 堀河(待賢門院) |
986 | まよひこし やみのうつつを なけきても こころのつきを たのむはかりそ | 公紹 |
987 | ありあけは もとみしそらの つきそとも しるこそやかて さとりなりけれ | 成運 |
988 | にこりえの みつのこころは すますとも やとれるつきの かけはくもらし | 宣子(従三位藤原) |
989 | てらしける ひかりもよその かけならて もとみしつきの みやこなりけり | 達智門院 |
990 | まよふへき やみもあらしな みをさらぬ こころのつきの くもりなけれは | 宰相典侍(後宇多院) |
991 | おのつから のりのみちある よのなかに またたちかへり まよはすもかな | 談天門院 |
992 | めくりあふ ちきりもうれし ときおける のりのくるまの あとたえぬよに | 親源 |
993 | とほるへき みちはさすかに あるものを しらはやとたに ひとのおもはぬ | 慈円 |
994 | ひさかたの そらのつきひの めくるこそ まとひをてらす はしめなりけれ | 後宇多院 |
995 | やはらくる ひかりをみても はるのひの くもらぬもとの さとりをそしる | 範憲 |
996 | あきらけき みのりにあへる かひもなく うきよのやみに なほやまよはむ | 良信 |
997 | はしめなく まよひそめける なかきよの ゆめをこのたひ いかてさまさむ | 永福門院 |
998 | たつねいる みちこそいまも かたからめ まよふをさそと しるひとのなき | 実兼 |
999 | まよひをは たかをしへより しりそめて まことのみちの うたかはるらむ | 承覚法親王 |
1000 | さとるへき みちもこころの うちなれは よそになしては いかかまよはむ | 禅助 |
1001 | うけかたき みをしほりてそ まよひこし もとのさとりの みちはしりける | 俊誉 |
1002 | よをてらす ひかりはひとを わかねとも わかみにくらき のりのともしひ | 実教 |
1003 | かかけおく のりのともしひ のちのよの なかきやみちの しるへともなれ | 忠源 |
1004 | いかかして ひかりそへまし ともすれは きえなむとする のりのともしひ | 範憲 |
1005 | きえぬへき のりのともしひ みるたひに かかくるひとの なきそかなしき | 覚円 |
1006 | きえぬへき のりのともしひ かかけても たかののやまの あくるをそまつ | 性助法親王 |
1007 | たかのやま みゆきのあとは おほけれと まことのみちは いまそみえける | 道順 |
1008 | そこきよき こころのみつの すみぬれは なかるるすゑも にしへこそゆけ | 覚鑁母 |
1009 | のりつめる ひとをしわたす ふねなれは にしのなかれに さをやさすらむ | 覚鑁 |
1010 | ともにこそ やまはいてしか おなしくは にしにとさそへ あきのよのつき | 漸空 |
1011 | さのみよも いるつきかけも したはれし にしにこころを かけぬみならは | 彰空 |
1012 | かねておもふ むかへのくもの あらましも こころにうかふ にしのやまのは | 如空 |
1013 | よをすてて あみたほとけを たのむみは をはりおもふそ うれしかりける | 永観 |
1014 | こくらくの みたのちかひに すくはれて もるへきひとも あらしとそおもふ | 千観 |
1015 | むらさきの くもをもかくし まちみはや いほりののきに かかるふちなみ | 実兼 |
1016 | むらさきの くもゐをねかふ みにしあれは かねてむかへを ちきりこそおけ | 在良 |
1017 | ふちのはな わかまつくもの いろなれは こころにかけて けふもなかめつ | 覚法法親王 |
1018 | むらさきの くものおりゐる やまさとに こころのつきや へたてなからむ | 基俊 |
1019 | へたてなき こころのつきは むらさきの くもとともにそ にしへゆきける | 覚性法親王 |
1020 | むかしより みくにはるかに つたはれる のりそこのよの まもりなりける | 道玄 |
1021 | あまくもの はるはるみえし みねよりも たかくそきみを おもひそめてし | 元良親王 |
1022 | おもふより やかてこころそ うつりぬる こひはいろなる ものにそありける | 俊成(藤原俊忠男) |
1023 | しらさりし わかこひくさや しけるらむ きのふはかかる そてのつゆかは | 良経(九条兼実男) |
1024 | かきりあれは さつきのたこの そてたにも おりたたぬより かくはしほらし | 公雄 |
1025 | おもひそむる こころのいろを むらさきの くさのゆかりに たつねつるかな | 後宇多院 |
1026 | やまとりの はつをのかかみ ひとめみし おもかけさらす ひとのこひしき | 後宇多院 |
1027 | おちそむる なみたはそてに あらはれて つつみならはぬ ほとやみゆらむ | 基忠(鷹司兼平男) |
1028 | あひみすは みをうらなみの いかならむ うちつけにたに ぬるるそてかな | 公顕 |
1029 | わたるより そてこそぬるれ なかれての ちきりもしらぬ なかかはのみつ | 行房 |
1030 | さそとたに ほのめかさはや なにはひと をりたくこやの あしのしのひに | 為氏 |
1031 | けふりたに たてすはしらし あまのたく あしのしのひの したむせふとも | 盛徳 |
1032 | かりにたに うへになたてそ あしのやの したたくけふり おもひきゆとも | 実俊(西園寺公相男) |
1033 | しらすへき ひまこそなけれ あしかきの まちかきなかの しけきひとめに | 宗緒母 |
1034 | しられしと おもふこころや なかなかに ひとのとかむる いろにいつらむ | 重顕(藤原頼重男) |
1035 | きみにさへ しのひはつへき なみたかは いつのひとまに そてをみせまし | 一条(昭慶門院) |
1036 | せきかへし なほこそつつめ わかそてに しのひはつへき なみたならねと | 公宗母 |
1037 | おもひあまる こころをなにに つつままし なみたはしはし そてにせくとも | 為世(御子左藤原為氏男) |
1038 | なみたをも なにかつつまむ わかそてに かかるをひとの あはれともみは | 親子(典侍親子朝臣) |
1039 | としをへて われのみしるは くれなゐの そてにふりぬる なみたなりけり | 御匣(式乾門院) |
1040 | ひとしれぬ おもひはふかく そむれとも いろにいてねは かひなかりけり | 兼宗 |
1041 | ひとしれぬ こころにあまる なみたこそ いろにいてぬへき はしめなりけれ | 公顕 |
1042 | おちまさる なみたとひとに しられすは おさふるそての いろかはるとも | 宣旨(後京極院) |
1043 | まくらたに しるてふことの なくもかな ひとめはかりを せめてつつまむ | 為子(贈従三位) |
1044 | われはかり おもふもくるし たまかつら かけてもひとは しらしものゆゑ | 師久 |
1045 | こひしとも いはぬにおつる なみたをは そてよりほかに しるひとそなき | 親清四女 |
1046 | くちはてむ のちこそあらめ そてにせく なみたよしはし ひとにしらるな | 重村 |
1047 | せくそての くちすはなにに かこてとて なほもりぬへき なみたなるらむ | 実性 |
1048 | わかそての なみたはかさし ほとときす なきてはよそに もらしもそする | 光吉 |
1049 | ひとしれす もゆるおもひは それとみよ そてにつつまぬ ほたるなりとも | 為信 |
1050 | よもすから もゆるほたるに みをなして いかておもひの ほともみせまし | 為道 |
1051 | もゆとたに ひとにしられぬ おもひこそ ほたるよりけに みさをなりけれ | 国夏 |
1052 | しられしな とほやまとりの よそにのみ をのへへたてて ねをはなくとも | 信氏 |
1053 | よそなから しらせてしかな みかりのの ましろのたかの こひのこころを | 基俊 |
1054 | わきかへり いはまのみつの いははやと おもふこころを いかてもらさむ | 堀河(待賢門院) |
1055 | しられしな いはかきふちの いはてのみ ふかきこころに こひわたるとは | 清兼 |
1056 | おくやまの いはもとこすけ ねをふかみ なかくやしたに おもひみたれむ | 実伊 |
1057 | しらせはや いはもるみつの たよりにも たえすこころの したにせくとは | 亀山院 |
1058 | もらしわひ むせふおもひの ありとたに たれにいはせの やまのしたみつ | 為道 |
1059 | すみよしの なみうつきしの くさなれや ひとめわすれて ぬるるたもとは | 兼氏 |
1060 | ひとしれす ぬるるたもとに くらへはや なみよせかくる みつのはままつ | 大輔(殷富門院) |
1061 | いかにせむ くちきのさくら おいぬとも こころのはなは しるひともなし | 実氏 |
1062 | しらせはや なみたもいまは くれなゐの うすはなさくら いろにいてつつ | 読人不知 |
1063 | これをみよ うへはつれなき なつくさも したはかくこそ おもひみたるれ | 清少納言 |
1064 | かよふへき みちさへたえて なつくさの しけきひとめを なけくころかな | 後醍醐院 |
1065 | しられしな くさはのつゆに あらぬみの よるはおきゐて ものおもふとも | 宰相典侍(後宇多院) |
1066 | ほしわひぬ をののしのはら しのひかね ひとめにあまる そてのしらつゆ | 実重(三条公親男) |
1067 | えそしらぬ にほのしたみち みかくれて かよふこころの ありやなしやと | 為相 |
1068 | いけみつの そこのたまもの みかくれて なひくこころを たれによすらむ | 後宇多院 |
1069 | うきにはふ あしのしたねの みこもりに かくれてひとを こひぬひはなし | 為家 |
1070 | またしらぬ ひとのこころを たとるまに いはてつきひの つもりぬるかな | 後醍醐院 |
1071 | かくとたに いはてのもりの こからしに よそよりちらむ ことのはもうし | 為実(御子左藤原為氏男) |
1072 | おもふこと いはてのもりの ことのはは しのふるいろの ふかきとをしれ | 国基 |
1073 | おもひかね こころひとつは くるしきは ひとにいはての もりのしめなは | 為方 |
1074 | おほのなる みかさのもりの ゆふたすき かけてもしらし そてのしくれは | 国冬 |
1075 | かみなひの いはせのもりの いはすとも そてのしくれを とふひともかな | 性助法親王 |
1076 | おもひあまり いかにいはせの もりのつゆ そめしこころの ほとをみせまし | 兵衛佐(新陽明門院) |
1077 | きえそむる ゆきまのわかな それとたに もえてしらるる おもひなりせは | 宗成 |
1078 | わかこひは みやまかくれの うもれきの くちはてぬとも ひとにしられし | 冬平 |
1079 | ひとしれぬ そてのなみたや みちのくの いはてしのふの やまのしたつゆ | 通雄 |
1080 | いたつらに ほすひまなくて くちねとや ひとにしられぬ なみのしたくさ | 読人不知 |
1081 | おもひつつ いはねはいとと こころのみ さわくはそての みなとなりけり | 少将内侍(後深草院) |
1082 | しられしな そてのみなとに よるなみの うへにはさわく こころならねは | 祐臣 |
1083 | ぬるとても しほくむあまの そてならは ひとめつつまて しほりこそせめ | 公朝 |
1084 | ひとめのみ しのふのうらに おくあみの したにはたえす ひくこころかな | 兼氏 |
1085 | いかにせむ そてにあまれる なみたかは せかぬによとむ ならひともかな | 為親 |
1086 | ひとしれぬ こころにあまる なみたかは そてよりほかの しからみもかな | 時敦 |
1087 | よにもらむ なこそつらけれ あふせなき なみたのかはは そてにせくとも | 公雄 |
1088 | せきわふる なみたのかはは はやくとも うきなはかりは なかさすもかな | 頼泰(藤原) |
1089 | いかにして くちたにはてむ なとりかは せせのうもれき あらはれぬまに | 少将内侍(後醍醐院) |
1090 | なかれては ひとのためうき なとりかは よしやなみたに しつみはつとも | 久明親王 |
1091 | ことうらに なひくけふりも あるものを わかしたもえの ゆくかたそなき | 政村 |
1092 | したもえの おもひをそらに しのはすは ふしのけふりは たちもおよはし | 成茂 |
1093 | なにたたむ のちそかなしき ふしのねの おなしけふりに みをまかへても | 為家 |
1094 | こひしなむ のちもたつなの かなしきに けふりにまかへ よはのうきくも | 宗成 |
1095 | しらせはや きえなむのちの けふりにも たちそふはかり おもふこころを | 維貞 |
1096 | われはかり こかれておもふ かひもなし こひのけふりの よそにみえねは | 基明 |
1097 | つきもせぬ わかしたもえの けふりこそ たつとはよそに しられさりけれ | 経清 |
1098 | したもえの おもひのけふり すゑつひに うきななからや そらにたつらむ | 為定(御子左二条為道男) |
1099 | しられしな すくもたくひの ゆふけふり なにはたてしと しのふおもひを | 小督(昭訓門院) |
1100 | もしほやく けふりになるる あまころも うきめをつつむ そてやぬれなむ | 斎宮女御 |
1101 | たちまよふ かすみのうらの ゆふけふり それともよそに しるひとそなき | 行意 |
1102 | ひとめをも いまはつつまし はるかすみ のにもやまにも なはたたはたて | 躬恒 |
1103 | そらにもや ひとはしるらむ よとともに あまつくもゐを なかめくらせは | 高明 |
1104 | うはたまの よるのゆめたに まさしくは わかおもふことを ひとにみせはや | 中務 |
1105 | したにのみ おもふこころを そのままに ことのはならて いかてしらせむ | 読人不知 |
1106 | おもひおく うきなこそなほ かなしけれ きゆともつゆの みをはをします | 近衛(今出河院) |
1107 | もらぬまに こひしなはやと おもふこそ いのちにまさる うきななりけれ | 為子(贈従三位) |
1108 | こひしなむ のちにもかたる ひともかな おなしよにこそ しのひはつとも | 能誉 |
1109 | しらせての つらさをせめて なけかはや いはねはとても ものやおもはぬ | 円伊 |
1110 | いはておもふ こころのうちの くるしさも しらせてのちは なくさみやせむ | 実任 |
1111 | つゆとたに たれにこたへむ わかそての なみたのたまは とふひともなし | 読人不知 |
1112 | もらさしと こころにはせく おもひをも そてにしらする わかなみたかな | 宣子(従三位藤原) |
1113 | いはしたた さてしもつひに よにもらは なきなとひとの おもふはかりに | 冬平 |
1114 | うしとても あふにしかへは なとりかは よしあらはれよ せせのうもれき | 政長 |
1115 | くちぬとも たれかはしらむ よとともに ほさぬたもとや たにのうもれき | 為実(御子左藤原為氏男) |
1116 | さのみなと たかまのやまの みねのくも よそなからたつ うきななるらむ | 実兼 |
1117 | こひすてふ うきなはそらに たつくもの かかるつらさに きえやはてなむ | 師継 |
1118 | うきみには なひかぬうらの ゆふけふり なきなはかりを なにとたつらむ | 頼範女 |
1119 | こひすてふ みをのそまひと あさゆふに たつなはかりは やむときもなし | 実兼 |
1120 | しのふへき ものともひとの おもはぬは かすならぬみの うきななりけり | 二条(後光明照院前関白家) |
1121 | たれをかは かこちたにせむ せきわふる わかなみたより もらすうきなは | 宣子(従三位藤原) |
1122 | せきかぬる こころのうちの たきつせや はてはなみたの かはとなるらむ | 雅朝 |
1123 | もらさしと せくかひもなし なみたかは よとまぬそてに かくるしからみ | 談天門院 |
1124 | もるとても なみたのほかは いかかせむ うきなはそてに つつむものかは | 実兼 |
1125 | しのへはと おもひなすにも なくさみき いかにせよとて もれしうきなそ | 後醍醐院 |
1126 | いたつらに たつなもくるし あまのかる みるめはよその そてのうらなみ | 公親 |
1127 | みるめなき いそのいはなみ よるしこそ うちあらはれて ねはなかれけれ | 実兼 |
1128 | おもひかは いはもとすけを こすなみの ねにあらはれて ぬるるそてかな | 頼舜 |
1129 | もらさしと ちかひしものを たむけやま ぬさとちりぬる ことのはそうき | 円世 |
1130 | いかにせむ もらしそめつる なみたにも おもふはかりの いろしみえすは | 兼胤 |
1131 | せきかぬる よはのたもとに かけとめて なみたのほとも つきそしるらむ | 清隆 |
1132 | なほさりに しのふとひとや おもふらむ せきかねてこそ もらすなみたを | 冬基 |
1133 | とにかくに こころひとつを つくはやま しけきひとめに もるなみたかな | 実雄 |
1134 | なみたこそ そてにもみゆれ ひとしれす いひしちきりの いかてもりけむ | 為理 |
1135 | わかこひの ころものうらの たまならは あらはれぬるも うれしからまし | 忠実 |
1136 | おくやまの このはかくれに ゆくみつの おとききしより つねにわすれす | 人麿 |
1137 | ゆふされは やまのはいつる つきくさの うつしこころも きみにそめてき | 読人不知 |
1138 | ひとこふる こころはそらに なきものを いつくよりふる しくれなるらむ | 宗于 |
1139 | いひそめぬ ほとはなかなか ありにしを しつこころなき きのふけふかな | 信明 |
1140 | あはれてふ なけのなさけの かかりなは そをたにそての かわくまにせむ | 崇徳院 |
1141 | わたるらむ たなはたよりも あまのかは おもひやるみそ そてはぬれける | 範永 |
1142 | わたのはら あとなきなみの ふなひとも たよりのかせは ありとこそきけ | 後鳥羽院 |
1143 | わかこひは いそまにわくる いさりふね ほのかにかよふ なみのまもかな | 後鳥羽院 |
1144 | かけをたに いかてかみまし ちきりこそ うたてあさかの やまのゐのみつ | 為氏 |
1145 | なみたかは したにもかよふ こころあらは なかれてすゑの あふせたのまむ | 後醍醐院 |
1146 | みにあまる おもひありやと ひととはは わかなみたにも なくさみなまし | 実兼 |
1147 | おもひしる ひとたにあらは なみたにそ なけくこころの いろをみせまし | 範行 |
1148 | まつのはの かはらぬいろを うらみても なほしくるるは なみたなりけり | 邦省親王 |
1149 | いつよりか あきのもみちの くれなゐに なみたのいろの ならひそめけむ | 宗尊親王 |
1150 | とへかしな いはたのをのの ははそはら しつくもつゆも ほさぬたもとを | 澄守 |
1151 | たくへはや なみたのそらの うきくもに ものおもふみの そてのしくれを | 覚助法親王 |
1152 | いつまてか ゆくへさためぬ うきくもの うきてたちゐに ものをおもはむ | 永福門院 |
1153 | そらにしれ くもまにみえし みかつきの よをへてまさる こひのこころを | 実兼 |
1154 | すむつきの おなしそらゆく くもなれや よそなからたに いとはるるみは | 実教 |
1155 | よるよるは ゑしかたくひの こかれても ひとをくもゐに おもふころかな | 為藤 |
1156 | ふしのねの けふりのすゑは あとなくて もゆるおもひそ みをもはなれぬ | 亀山院 |
1157 | ときしらぬ こひはふしのね いつとなく たえぬおもひに たつけふりかな | 丹後(宜秋門院) |
1158 | いかにせむ かかるおもひの きえやらて もえまさるへき のちのうきよを | 経信 |
1159 | あまのたく うらのけふりの すゑたにも おもふかたには なひかぬそうき | 師信 |
1160 | いつまてか あまのしわさと おもひけむ わかみたくもの うらのけふりを | 公順 |
1161 | いせのうみの あまのもしほひ たくなはの くるれはいとと もえまさりつつ | 兵衛督(達智門院) |
1162 | こひわひて もえむけふりの すゑもうし さのみあはての うらのもしほひ | 為道女 |
1163 | いかかせむ あはてのうらに よるなみの よるたにひとを みるゆめもかな | 季宗(荒木田氏成男) |
1164 | あふことは なみよるいその うつせかひ つひにくたけて ものおもへとや | 通時 |
1165 | わかそてに うらわのなみは かくれとも とひもこぬよの はまのなそうき | 資明 |
1166 | まつしまや をしまのあまに たつねみむ ぬれてはそての いろやかはると | 知家 |
1167 | まつしまや をしまのあまの すてころも おもひすつれと ぬるるそてかな | 忠定(藤原兼宗男) |
1168 | おもはすよ みぬめのうらに よるなみを まなくもそてに かけむものとは | 隆博 |
1169 | あまころも ぬれそふそての うらみても みるめなきさに もしほたれつつ | 雅有 |
1170 | しらせはや みるめはからて あさゆふに なみこすそての うらみありとも | 為道 |
1171 | よそにたに みぬめのうらの あまひとや たたいたつらに そてぬらすらむ | 師光(藤原) |
1172 | なにかせむ かれなてあまの いたつらに たえぬうらみの みるめはかりは | 公恵 |
1173 | わかこひは しかつのうらの あまなれや みるめはなくて そてのぬるらむ | 成久 |
1174 | さのみやは からぬものゆゑ わたつうみの うらのみるめに そてぬらすへき | 内経 |
1175 | くちねたた そてのうらなみ かけてたに ひとをみるめは ちきりなけれは | 親子(従三位源) |
1176 | ふかきえに なかれしやらぬ みたれあしの うきふしなから さてやくちなむ | 覚助法親王 |
1177 | ものおもふ こころのうちは みたれあしの うきふししけき ころにもあるかな | 小兵衛督(永福門院) |
1178 | なにはえや あしまかくれの みをつくし あふよさはらぬ しるしともかな | 尊親 |
1179 | なにはえや おなしあしまを こくふねも おもはぬかたや なほさはるらむ | 公雄 |
1180 | あしかきの まちかけれとも いたつらに みとせあひみぬ ちきりなりけり | 後宇多院 |
1181 | おのつから かよふはかりの ことのはに つゆのいのちを かけてこそまて | 覚助法親王 |
1182 | あふまてと たれゆゑをしむ いのちとて いけるをひとの なほいとふらむ | 実重(三条公親男) |
1183 | あふことを なほさりともと おもふこそ いのちもしらぬ たのみなりけれ | 宣時(北条) |
1184 | あひみての のちもつらさの かはらすは たたこのままに こひやしなまし | 実教 |
1185 | なからふる いのちのみこそ はかなけれ ゆくすゑとたに ちきりやはする | 実前 |
1186 | ありてよに なからへはこそ おのつから ひとのちきりの すゑもたのまめ | 公宗母 |
1187 | あはれわか こひにいのちを かけはしの さていつまてか たのみわたらむ | 為継 |
1188 | いたつらに すくるはよその つきひにて わかみにたのむ ゆふくれもなし | 忠長 |
1189 | さのみやは ひとのつらさの としつきを しなぬいのちの うきになすへき | 俊定(源具定男) |
1190 | さりともと おもふはかりの なくさめに いきてつれなき みをなけくかな | 良実 |
1191 | こひわふる みのためつらき いのちにて ちきりもしらぬ おなしよそうき | 為氏 |
1192 | たえぬへき いのちをこひの うらみにて あらはあふよの すゑもたのます | 定為 |
1193 | しぬはかり おもふといひて としもへぬ いままていける みとはしられし | 長舜 |
1194 | いたつらに なみたをかけて さよころも かさねぬとこに としそへにける | 新兵衛督(邦良親王家) |
1195 | としつきの つもるもなにか をしまれむ ひとのこころの つれなからすは | 為躬 |
1196 | つれもなき ひとのこころは うきものを われたにいかに おもひよわらむ | 為子(贈従三位) |
1197 | こひしさの うきにわするる ものならは つれなきひとを うらみさらまし | 雲雅 |
1198 | あふことは かたののみのの まくすはら うらみもあへす つゆそこほるる | 為実(大中臣)/為貫 |
1199 | おもひしる こころもなくて つれなきは うきにやひとの ならはさるらむ | 秀長(藤原秀弘男) |
1200 | たえぬへき いのちなりとも ゆくすゑを ちきらはなにも なからへやせむ | 浄道 |
1201 | のちのよと ちきりもおかは いそかまし あふにはかへぬ いのちなりとも | 宰承 |
1202 | あひみるも たかためなれは たまのをの たえぬへきまて ひとをこふらむ | 道洪 |
1203 | あふまてと おもふいのちの いたつらに たたこひしなむ みこそをしけれ | 兼誉 |
1204 | こひしなむ いのちのはてを いかかせむ のちさへひとの あはれしらすは | 宣平 |
1205 | こひしなは われゆゑとたに おもひしれ さこそつれなき こころなりとも | 冬隆 |
1206 | つれなさを なけかむための いのちとは なからへてこそ おもひしりぬれ | 親長 |
1207 | いのちこそ つれなかりけれ あひみすは たへてあるへき ここちやはせし | 実衡 |
1208 | いのちをは のちにすつとも つれなさの つらきかきりは いきてこそみめ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1209 | いかにせむ なほつれなくて あふことを いのちにたにも ひとのかへすは | 為世(御子左藤原為氏男) |
1210 | こころにも みにもまかせぬ いのちをは あふにかへむと いかかちきらむ | 有房(六条通有男) |
1211 | こひしなむ いのちのさきに あふといふ なきなをたにも たつときかはや | 後二条院 |
1212 | おのつから はかなきよにも ありふるは こひせぬひとの いのちなりけり | 家隆 |
1213 | いかてなほ こひしぬはかり こふるみを ひとつてにたに さそときかれむ | 家良 |
1214 | おもひかね もらしてのちも つれなきに いつをまつへき ちきりなるらむ | 公賢/公実 |
1215 | のちのよの むくひをいかて しらせまし さてもやひとの おもひよわると | 宣時(北条) |
1216 | よよかけて おもへはつらき むくひかな たかこころより つれなかりけむ | 為定(御子左二条為道男) |
1217 | まよふへき のちのうきみを おもふにも つらきちきりは このよのみかは | 後京極院 |
1218 | なにゆゑか おなしよまては めくりきて ちきりなきみと つれなかるらむ | 為子(贈従三位) |
1219 | とにかくに おもへはとても かひもなし くるしやちきり あるにまかせむ | 国冬 |
1220 | かすならぬ みをこそかこて ゆふたすき かけしちきりの うきにつけても | 為藤 |
1221 | さかきはに かみのゆふして かけてたに つれなきいろを えやはいのらむ | 為氏 |
1222 | よそにのみ みわのかみすき いかなれは いのるしるしの なきよなるらむ | 周防(永嘉門院) |
1223 | つれもなき ひとをはおきて いのるとも あはすはまたや かみをうらみむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1224 | かみかきや よるへのみつも なのみして いのるちきりの なとよとむらむ | 達知門院 |
1225 | きふねかは うきとしつきの かかれとは いのらぬものを そてのしらたま | 後宇多院 |
1226 | なかれての よをはたのます きふねかは たまちるなみに みをくたきつつ | 為実(御子左藤原為氏男) |
1227 | たえねたた いしまつたひに ゆくみつの すゑもあふせの たのみなけれは | 祐世(中臣祐賢男) |
1228 | いととまた なみたはふちと なりにけり あふせもしらぬ なかかはのみつ | 時見 |
1229 | こまとむる ひのくまかはに あらはこそ こひしきひとの かけをたにみめ | 国助女 |
1230 | あふみちに かよひなれたる こまもかな つれなきなかの こひのしるへに | 為氏 |
1231 | とふほたる わかかけみせて くらへはや けたぬおもひは たれかまさると | 承覚法親王 |
1232 | とふとりの こころはそらに あくかれて ゆくへもしらぬ ものをこそおもへ | 好忠 |
1233 | はしたかの かりはのをのに たつとりの あはてはなにに みをもかへまし | 宗尊親王 |
1234 | ねをそなく とほやまとりの ますかかみ みてはかひなく ものおもふとて | 宗尊親王 |
1235 | あふことは とほやまとりの おなしよに こころなかくて ねをのみそなく | 実兼 |
1236 | かくてしも よをはつくさむ やまとりの はつかりころも くちはてぬとも | 通光 |
1237 | うみやまの はてもこひちと おもふには あはれこころを いつちやらまし | 亀山院 |
1238 | あふみにか あるといふなる とこのやま とことはにこそ みまくほしけれ | 盛明親王 |
1239 | あふさかや かよふこころは せきもゐす ゆるさぬなかは ひとめなりけり | 兼康 |
1240 | いそのかみ ふるのたかはし たかために うきをわすれて こひわたるらむ | 道玄 |
1241 | うきなかは あすのちきりも しらたまの をたえのはしは よしやふみみし | 後伏見院 |
1242 | いかかせむ うきみなかみの なみたかは あふせもしらて しつみはてなは | 覚助法親王 |
1243 | わたりえぬ なみたのかはの せをはやみ みさへなかると いかてしらせむ | 少将(万秋門院) |
1244 | ものおもふ なみたのかはの みをつくし ふかきしるしは そてにみゆらむ | 祐春 |
1245 | わかなみた よしやよしのの かはとなれ いもせのやまの かけやうつると | 国平 |
1246 | いかなれは うきなはかりの なとりかは あふせをよそに ききわたるらむ | 広茂 |
1247 | あふせなき ふちとなりても さらはなと よとまぬそての なみたなるらむ | 行氏(平胤行男) |
1248 | いつまてか ぬるるそてにも やとるへき あふよはしると つきにとははや | 俊文 |
1249 | あふとみる ゆめはさめぬる うたたねに のこるそそての なみたなりける | 祐親 |
1250 | おもひねの ゆめのかよひち かはらねは なけくこころの ほとはみゆらむ | 経尹(世尊寺経朝男) |
1251 | あふことは おなしうつつの つらさにて ぬるよをたのむ ゆめたにもなし | 為氏 |
1252 | さすかまた こころやかよふ つれもなき ひとをゆめちに あひみつるかな | 雅有 |
1253 | つらしとて うらみもはてす さよころも かへせはひとそ ゆめにみえける | 祐治 |
1254 | おもひねの まくらにみえし おもかけは ゆめとしりても なほそこひしき | 成兼 |
1255 | はかなくも なほやたのまむ あふとみる ゆめをうつつの なくさめにして | 時実 |
1256 | はかなくも たのみけるかな おもひねの みるよのゆめの ちきりはかりを | 読人不知 |
1257 | よなよなの ゆめはかよへと あふさかの せきそうつつの へたてなりける | 読人不知 |
1258 | あふことの ゆめはかりにも なくさまは うつつにものは おもはさらまし | 読人不知 |
1259 | あきのよを まとろまてのみ あかすみは ゆめちとたにも たのまさりけり | 是則 |
1260 | よをかさね まとろまてこそ あかしつれ ねすはとちきる ひともなきよに | 公実 |
1261 | なつひきの てひきのいとの うちはへて くるしきこひは よるそまされる | 後伏見院 |
1262 | うちとけぬ ちきりそつらき こひをのみ しつはたおひの むすほほれつつ | 有房(六条通有男) |
1263 | いまはたた さてうちとけよ したおひの むすひすつへき ちきりならねは | 定為 |
1264 | あふまての いのちをひとに ちきらすは うきにたへても えやはしのはむ | 弁内侍(後深草院) |
1265 | さためなき いのちもいかに をしまれむ ちきりしすゑを たのむみならは | 為子(贈従三位) |
1266 | なほさりに たのめしことを いのちにて いけるはかりの かひやなからむ | 房観/房親 |
1267 | たのましな いのちもしらぬ よのなかに ひとのちきりは まことなりとも | 宗宣(北条宣時男) |
1268 | ゆくすゑの ちきりもよしや なからへて まつへきほとの いのちならねは | 按察(中務卿恒明親王家) |
1269 | いのちあらは よそにそきかむ ゆくすゑも みにはたのまぬ ちきりなりけり | 為子(贈従三位) |
1270 | ちきりしを まつとせしまの としつきに つもるなみたの いろをみせはや | 師重(源師親男) |
1271 | いつはりと かねてはしらぬ ことのはを かはらむまては たのみこそせめ | 為理 |
1272 | おのつから いひしちきりの ままならは みはつるまての いのちともかな | 後醍醐院 |
1273 | いつはりの なきよなりとも いかかせむ ちきらてとはぬ ゆふくれのそら | 順徳院 |
1274 | さりともと なほたのまるる ゆふくれを ちきりしままに とふひともかな | 亀山院 |
1275 | たのみける こころとひとの しるはかり いつはりをたに まつときかれむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1276 | まこともや そのかねことに ましるらむ いつはりはかり あるよならねは | 実重(三条公親男) |
1277 | ひとこころ きのふにかはる いつはりに しらすやすゑの よよのかねこと | 実兼 |
1278 | ちきれとも なほいつはりと うたかひし こころのすゑそ まことなりける | 師重(源師親男) |
1279 | たのめはそ かはるもつらき かねてより なといつはりと おもはさりけむ | 能信 |
1280 | いつはりと おもひなからも ことのはに かかるはつゆの いのちなりけり | 行源/行深 |
1281 | ちきりしも なほたのまれす いつはりと おもひそめにし こころならひに | 貞時 |
1282 | まちよわる こころやあると あきかせの みにさむからぬ ゆふくれもかな | 宣時(北条) |
1283 | わかための おとつれとたに おもははや ひとまつよひの をきのうはかせ | 円世 |
1284 | いろにいてて いはぬはかりそ をしほやま まつとはかせの たよりにもきけ | 実兼 |
1285 | たのめおく たかまことより ゆふくれの またるるものに おもひそめけむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1286 | さのみやは わかいつはりに なしはてむ つらくはまたぬ こころともかな | 宗円(高階泰重男) |
1287 | たのめても こぬひとをまつ ゆふくれに こころをつくす いりあひのかね | 隆長 |
1288 | いつはりと おもひもはては いかかせむ まつをたのみの ゆふくれのそら | 経長女 |
1289 | わかこひは けふりとたにも しらせはや こぬゆふくれの そらのうきくも | 源承 |
1290 | こぬくれの つらきむくひも みせてまし またるるほとの わかみなりせは | 国冬 |
1291 | いかかせむ つきのしるへは たのめとも ちきりしよはと おもひいてすは | 為道 |
1292 | いつはりの まことにならむ ゆふへまて あはれいくよの つきかみるへき | 国助 |
1293 | しらせはや たのむるよひの まつのとに ふけゆくつきの こころつくしを | 宰相典侍(後宇多院) |
1294 | いまこむと ちきりしほとも ふけにけり こよひもさてや やまのはのつき | 政国女 |
1295 | まちかねて なみたかわかぬ わかそてに やとるもつらく ふくるつきかな | 春衡 |
1296 | とはれつる いつのならひの ありかほに こよひふけぬと またなけくらむ | 資名 |
1297 | おのつから おもひもいては とふはかり ふけぬるよはと いかてしらせし | 為子(贈従三位) |
1298 | しはしたに ふけぬになして なくさめむ まつよのかねの こゑなきかせそ | 俊兼 |
1299 | つくつくと ひとりなかめて ふけにけり まきのとささぬ いさよひのつき | 景綱 |
1300 | まちわふる こころつくしの ほとをたに みせはやよはの つきそふけゆく | 宣時(北条) |
1301 | あちきなく まつよひふくる つきかけを ふけぬになして なほたのむかな | 実超 |
1302 | つきのみそ おなしまくらに やとりける こよひもひとは そらたのめして | 仁澄 |
1303 | たのめすは ねなましつきと なかめても うきいつはりに ふくるそらかな | 後二条院 |
1304 | せめてたた いつはりとたに おもははや たのめてふくる よはのつらさを | 伏見院 |
1305 | きみまつと いくよのしもを かさぬらむ ねやへもいらぬ おなしたもとに | 後醍醐院 |
1306 | かそへても いつまてひとり またれけむ ももよもすきぬ しちのはしかき | 為世(御子左藤原為氏男) |
1307 | きみこすは たれとかさねむ からころも つまふくかせに よはふけにけり | 隆康 |
1308 | あふことを こよひこよひと たのめすは なかなかはるの ゆめはみてまし | 家持 |
1309 | しらせはや つかはぬをしの うきぬなは いかなるせせに みたれゆくらむ | 道綱母 |
1310 | たのめつつ まつよむなしき うたたねを しらてやとりの おとろかすらむ | 後京極院 |
1311 | こよひこそ つらさなからに あけぬとも まちけりとたに いかてしらせむ | 実兼 |
1312 | あきたもる しつかかりほの いなむしろ いなてふよはそ とこはつゆけき | 実兼 |
1313 | おもひかね ゆきてはかへる みちしはの つゆをかさぬる そてのうへかな | 淑氏 |
1314 | おもひきや なみたにしほる そてになほ みをしるあめを そへむものとは | 小宰相(土御門院) |
1315 | かきりあれは いまそかさぬる せきかへし なみたにくちし よはのころもて | 後二条院 |
1316 | かかるへき ちきりもしらす きのふまて よそにもひとを おもひけるかな | 大納言(昭訓門院) |
1317 | もろともに うちとけられぬ にひまくら かはせるよはも くるしかりけり | 泰宗 |
1318 | わするなよ むすふひとよの にひまくら ゆめはかりなる ちきりなりとも | 読人不知/基世 |
1319 | こよひさへ おなしひとめを いとふかな あふにまきるる なみたならねは | 為道 |
1320 | かたみとも のちにこそみめ しのひつつ あふよのつきよ くもかくれせよ | 実兼 |
1321 | つれなさに すてしいのちも をしまれて あふにかはるは こころなりけり | 為世(御子左藤原為氏男) |
1322 | このままに うきみにさめぬ ゆめならは うつつにかへて またやなけかむ | 光俊(葉室光親男) |
1323 | いかにせむ うつつもゆめと たとられて あふにもまよふ わかこころかな | 頼重 |
1324 | かりそめの こよひはかりの ゆめならて またみるまての ちきりともかな | 良兼 |
1325 | ひとはよも さむるなこりも をしからし こころかよはぬ ゆめのちきりは | 実超 |
1326 | しのひつつ たたときのまに あふほとの こころまよひそ ゆめにかはらぬ | 兼季 |
1327 | ふけてとふ たたなほさりの ちきりこそ こぬにはまさる うらみなりけれ | 光忠 |
1328 | こよひたに おもひしらるる みのほとを いまよりのちと いかかちきらむ | 実任 |
1329 | なくさむる そのかねことも よしやいま しのはれぬへき わかれならねは | 康衡 |
1330 | きぬきぬに ならはいかにと おもふより よふかくおつる わかなみたかな | 光俊(葉室光親男) |
1331 | とりのねの うきにもせめて なさしとや あくるをまたぬ わかれなるらむ | 具行 |
1332 | なかなかに むなしきよりも うきものを ふけてあふよの とりのこゑこゑ | 親子(従三位源) |
1333 | さらてたに わかれをいそく うきひとの こころにかなふ とりのこゑかな | 実教 |
1334 | うきひとの こころにいそく わかれちを よそなるとりの ねにかこつかな | 家雅 |
1335 | うらみしよ あけぬととりは つけすとも さてとまるへき わかれならねは | 公恵 |
1336 | したひわひ なくはならひの わかれちに なにとかとりの ねをもかこたむ | 道性 |
1337 | あけぬとも こころなるへき わかれちを なととりのねに かこちそめけむ | 少将内侍(後醍醐院) |
1338 | ひとはなほ なからへぬへき こころかと のちをちきるも うきわかれかな | 後醍醐院 |
1339 | ゆくすゑの ふかきちきりも よしやたた かかるわかれの いまなくもかな | 遊義門院 |
1340 | あやにくに さてもやひとの やすらふと をしまてみはや つらきわかれを | 有忠 |
1341 | しはしとも ひとはととめぬ わかれちの われのみつらき あかつきのそら | 寂恵 |
1342 | しはしとて なほいかはかり したはまし これをかきりの わかれなりせは | 成久 |
1343 | つらしとや おもひはてまし またこむと いひてかへらぬ わかれなりせは | 秀長(藤原秀弘男)/季長 |
1344 | のちとたに たのめもおかは わかれちの いまのつらさは なくさみなまし | 基祐 |
1345 | わかれちの のちをはいかに ちきるとも なくさみぬへき わかこころかは | 読人不知 |
1346 | あけぬとも しはしはなほや したはまし しのふるなかの わかれならすは | 貞康 |
1347 | くもれたた のちにしのはむ かけもうし わかかへるさの ありあけのつき | 宗秀(藤原宗泰男) |
1348 | つきたにも おもかけとめよ きぬきぬの そてのわかれを したふなみたに | 宗行 |
1349 | わかれちの うきにたへすは いきてよに またありあけの つきやみさらむ | 隆博 |
1350 | うきものと またはいふとも わかれちに ふたたひみはや ありあけのつき | 通顕 |
1351 | ありあけの つきさへうしや いかなれは わかれかなしき そらにみゆらむ | 広義門院 |
1352 | きぬきぬの そてのなみたを かたみにて おもかけとむる ありあけのつき | 後宇多院 |
1353 | みるままに これやかきりと かなしきは わかるるそての ありあけのつき | 後宇多院 |
1354 | こひこひて あふよもやかて わかれちの なみたにくるる ありあけのそら | 後醍醐院 |
1355 | おきわかれ なみたくもらぬ つきならは そてになこりの かけはみてまし | 冬平 |
1356 | しののめの みねにもくもは わかれけり わかきぬきぬの なこりのみかは | 道平 |
1357 | せきもりは あかつきはかり うちもねよ わかかよひちを しのふわかれに | 後二条院 |
1358 | こころにも あらてそいそく せきもりの うちぬるほとと おもふわかれは | 師信 |
1359 | こころから いくたひそてに かけつらむ こりぬわかれの しののめのつゆ | 教定(飛鳥井雅経男) |
1360 | このねぬる あしたのはらの つゆけさは おきわかれつる なみたなりけり | 後嵯峨院 |
1361 | おとにのみ ききしはさても なくさみき なとかけさしも そてのつゆけき | 朝光 |
1362 | なみたかと みるしもかなし わきもこか かへるあさけの みちしはのつゆ | 実兼 |
1363 | とけてぬる はなたのおひの ひとすちに かへるいろこそ けさはつらけれ | 久世 |
1364 | おきわかれ かへるたもとの いつのまに けささへやかて つゆけかるらむ | 定経 |
1365 | おもひやれ あたなるゆめに むすほほれ さむるかたなき けさのこころを | 読人不知 |
1366 | とりのねに おきわかれつる きぬきぬの なみたかわかぬ けさのとこかな | 遊義門院 |
1367 | わかれては またよはふかき とりのねを ひとりなこりの とこにきくかな | 永福門院 |
1368 | いまはとて おのかきぬきぬ たちわかれ とりのねおくる しののめのみち | 覚助法親王 |
1369 | わすれはや はかなきゆめの なこりゆゑ けさのまくらに のこるおもかけ | 隆博 |
1370 | けふたにも なくさめかたき こころには いかてすくしし むかしなりけむ | 輔親 |
1371 | いたつらに たちかへりにし しらなみの なこりにそての ひるときそなき | 素性 |
1372 | すまのあまの しほやきころも おのれのみ なれてもかかる そてのなみかな | 道家 |
1373 | いかにせむ うきなかかはの あさきせに むすふちきりの さてもたえなは | 俊光女 |
1374 | おもひのみ ますたのいけの うきぬなは たえぬちきりそ くるしかりける | 俊成女 |
1375 | あまのかは おなしわたりに ありなから けふもくもゐの よそにきくかな | 和泉式部 |
1376 | よしやまた さてもたえすは あまのかは おなしあふせに たくへこそせめ | 兼氏 |
1377 | うつろはむ ひとのこころも しらきくの かはらぬいろと なにたのむらむ | 家基(近衛基平男) |
1378 | たのましな うつろひぬへき しらきくの しもまつほとの ちきりはかりは | 為世(御子左藤原為氏男) |
1379 | われにのみ うつりはつとも つきくさの うすはなこころ いかかたのまむ | 国道(津守国助男) |
1380 | あたにのみ うつろふいろの つらけれは ひとのこころの はなはたのまし | 長舜 |
1381 | はなかつみ かつみてもなほ たのまれす あさかのぬまの あさきこころは | 公雄 |
1382 | なからへは わかこころたに しらぬみの ひとのちきりを えやはたのまむ | 能清 |
1383 | おもかけを おもひもいつな ますかかみ またこそひとも こころうつらは | 宗秀(藤原宗泰男) |
1384 | ひくかたは あまたありとも あつさゆみ もとのこころの かはらすもかな | 利行 |
1385 | かかれとは いのらさりしを みしめなは あらぬこころの たれにひくらむ | 宗泰(藤原時宗男) |
1386 | ちはやふる かみのいかきも こえぬへし おほみやひとの みまくほしさに | 読人不知 |
1387 | こひしくは きてもみよかし ちはやふる かみのいさむる みちならなくに | 業平 |
1388 | うきくもに みをしなさねは ひさかたの つきへたつとも おもはさりけり | 兼輔 |
1389 | わかれても いくありあけを しのふらむ ちきりていてし ふるさとのつき | 土御門院 |
1390 | つきにしも とふへきものと おもはぬを なとみるからに なみたそふらむ | 実泰 |
1391 | いまさらに おもひいつるも たのまねは まつともいはし ゆふくれのそら | 後醍醐院 |
1392 | ともねせぬ かものうはけの よるのしも おきあかしつる そてをみせはや | 後鳥羽院 |
1393 | なにはめの あしのしのやの しのすすき ひとよのふしも わすれやはする | 俊成(藤原俊忠男) |
1394 | きのふけふ あしまのをふね さはりきて あすをあふよと またちきるかな | 祐春 |
1395 | きぬきぬの わかれたにうき とりのねを こぬよのとこに ききやあかさむ | 行朝 |
1396 | もろともに みしをなこりの はれまにて こぬよはくもる そてのつきかけ | 円勇 |
1397 | みしままの そてになみたは はれやらて こぬよはつらき つきのかけかな | 忠守 |
1398 | おもかけも なみたにはては くもりけり つきさへひとの ちきりわすれて | 道義 |
1399 | ほしわふる わかそてかたれ よはのつき ひとはなみたの ほかにみるとも | 基有 |
1400 | おもかけそ いつしかかはる ますかかみ みさりしよりも くもるなみたに | 為藤 |
1401 | いととなほ あひみてのちも かかれとは たかならはしの そてのなみたそ | 親房(北畠師重男) |
1402 | ありしよを こふるうつつは かひなきに ゆめになさはや またもみゆやと | 為氏 |
1403 | なけくとも さめてののちに かひなきは またみぬゆめの ちきりなりけり | 為世(御子左藤原為氏男) |
1404 | わかれては わすれやすらむ ふるさとの ひとのこころを みるゆめもかな | 基任 |
1405 | ひとこころ いかなるひまに かよひけむ またはゆるさぬ よはのせきもり | 為信 |
1406 | ひとはよも ひとにかたらし ありしよの ゆめをゆめとも おもひいてすは | 公雄 |
1407 | つらかりし そのつれなさの ままならは なかなかかかる ものはおもはし | 師教(九条忠教男) |
1408 | みるもうし おきてわかれし ありあけの そらにかはらて のこるつきかけ | 忠良 |
1409 | よそにても おなしこころに ありあけの つきはみるやと たれにとはまし | 和泉式部 |
1410 | あきやまに あさたつきりの みねこめて はれすもひとを おもふころかな | 是則 |
1411 | あきはきの したにかよひし しかのねも いまはかひなく なりやしぬらむ | 師輔 |
1412 | かりにたに とはれぬさとの あきかせに わかみうつらの とこはあれにき | 定家 |
1413 | ものおもふ なみたをそへて おくつゆに わかみのあきと ぬるるそてかな | 弁内侍(後深草院) |
1414 | さそとたに おもひもいてし あきのたの かりにもかくと おとろかさすは | 為氏 |
1415 | いそのかみ ふるのわさたに つなはへて ひくひとあらは ものはおもはし | 讃岐(二条院) |
1416 | たのめおきし ことのはさへに しもかれて わかみむなしき あきのゆふくれ | 道家 |
1417 | かれはつる ちきりもつらし あとたえて ふるののみちの しものしたくさ | 俊成女 |
1418 | わけなれし をののあさちふ しもかれて かよひしみちの いつたえにけむ | 覚助法親王 |
1419 | いろかはる ひとのこころの あさちはら いつよりあきの しもはおくらむ | 公脩 |
1420 | たつねても とはるるほとの あともなし ひとはかれにし にはのよもきふ | 道良女 |
1421 | かはらすは たつねもみはや みわのやま ありしこすゑの すきのしるしを | 内侍(達智門院) |
1422 | きえねたた わすれかたみの ことのはも あるかなきかの そてのしらつゆ | 道玄 |
1423 | ぬれてほす ひまこそなけれ こひころも みをしるあめの はれぬおもひに | 慈慶 |
1424 | ことのはの うつろふあきの しくれには わかみひとつの そてそぬれける | 広房(大江広茂男) |
1425 | つきくさの はないろころも たかそての なみたよりまつ うつりそめけむ | 親教 |
1426 | うつりゆく ひとのこころの あきのいろに むかしなからの ことのはそなき | 公敏 |
1427 | みのあきそ かこつかたなき ことのはに つゆもかからす なりぬとおもへは | 実泰 |
1428 | つゆはかり かけしなさけも ととまらす かれゆくなかの みちのしはくさ | 読人不知 |
1429 | あさことに ほすかたもなし からころも よなよなそての そほちまされは | 読人不知 |
1430 | ほすかたも ありとこそきけ からころも うすくなりゆく ひとのたもとは | 侍従(本院) |
1431 | たちかへり いくたひそてを ぬらすらむ よそになるみの おきつしらなみ | 雅朝 |
1432 | あふことも いまはなくさの はまかせに なほなみさわく そてをみせはや | 教定(藤原教頼男) |
1433 | しられしな あまのもしほき こりすまに なほしたもえの たえぬおもひは | 時元 |
1434 | ひとこころ あさかのぬまの みをつくし ふかきしるしも かひやなからむ | 雲雅 |
1435 | あふことも いまはかたみの うらなみに とほさかりゆく あまのつりふね | 経朝 |
1436 | いかにせむ うきなかかはの みつをあさみ せたえかちなる こころほそさを | 宣子(従三位藤原) |
1437 | なかれてと ちきりしすゑの いかなれは ありしにかはる なかかはのみつ | 観意 |
1438 | あひみても ひとのこころの かはるせに またそてぬらす なかかはのみつ | 唯教 |
1439 | とにかくに かはるそやすき あすかかは ふちせやひとの こころなるらむ | 貞重 |
1440 | なつむしの かけみしさはの わすれみつ おもひいてても みはこかれつつ | 定顕(源) |
1441 | みつとりに あらぬなみたの うきねして ぬれつついまは なかぬひもなし | 重時 |
1442 | ふかきえの うきにしをるる あしのねの よよのちきりも くちやしぬらむ | 雅経 |
1443 | わすれくさ こころなるへき たねたにも わかみになとか まかせさるらむ | 宗宣(北条宣時男) |
1444 | いかにして おもひたえなむ わすれゆく ひとのこころを わかみともかな | 経長(丹波経基男) |
1445 | かくてたた とはぬはかりは つらくとも こころよりたに わすれはてすは | 冬平 |
1446 | わすらるる みをうきものと おもひしる こころひとつの なとなかるらむ | 宗氏 |
1447 | おのつから またもやとふと またれしは つらさになれぬ こころなりけり | 雅孝 |
1448 | くやしくそ ちきりおきける なからへて かはるこころの はてをみるにも | 通顕 |
1449 | おもひやる こころはかりの かよひちは よひよひことの せきもりもなし | 読人不知 |
1450 | せくそての いろさへかはる なみたかな みしにもあらぬ ひとのちきりは | 為経(甘露寺藤原資経男) |
1451 | ふかくのみ おもひそめにし ままならて こころのいろの なとかはるらむ | 治部卿(瓊子内親王家) |
1452 | いつかたに またあきかせの かはるらむ なひきそめにし をののしのはら | 国助 |
1453 | ことのはは たよりあらはと おもひしを ことかたにのみ あきかせそふく | 師継 |
1454 | つれなくも なほしたはるる こころかな おもひたえねと つらきちきりを | 実俊(西園寺公相男) |
1455 | あひみしも ひとのこころの ほかなれや またつれなさに かへるちきりは | 実前 |
1456 | いけみつの いひたえぬとや おもふらむ ふかきこころは いつかかはらむ | 定頼 |
1457 | やまのゐの あさきなからも たのみしは かけみしまての ちきりなりけり | 邦長 |
1458 | なにゆゑに そてぬらすらむ ひとこころ あささはみつの おもひたえなて | 為道 |
1459 | ふかからぬ ひとのちきりに いにしへの のなかのみつは むすひたえにき | 甲斐(安嘉門院) |
1460 | つひにさて たえけるものを みなせかは ありてゆくみつ いまはたのまし | 為世(御子左藤原為氏男) |
1461 | かはふねの みをさかのほる つなてなは たえにしのちも みはこかれつつ | 為藤 |
1462 | かつらきや くめのいははし なかたえて かよはぬひとの ちきりをそしる | 公相 |
1463 | こひわたる こころはかりや たえさらむ くめちのはしの よるのちきりは | 兼氏 |
1464 | あふことは をたえのはしの はしはしら またたちかへり こひわたるかな | 久明親王 |
1465 | おもはすよ そをたにのちの かたみにて うかりしふしも しのはれむとは | 冬教 |
1466 | もろともに おもふかなかの いかならむ つらきたにこそ こひしかりけれ | 禅心 |
1467 | かくはかり おもふといふを たのまぬは たれにつらさを ならひそめけむ | 義行 |
1468 | いのちをは あふにかへてし なかなれは あるものとたに ひとはおもはし | 国助 |
1469 | はかなくも このよはかりを ちきりける またあふまても しらぬいのちに | 公茂 |
1470 | おなしよを たのむかたには あらねとも なれしなこりそ わすれかねぬる | 永福門院 |
1471 | こひしなむ のちをたのまむ このよこそ みしかかりける ちきりなりとも | 兼季 |
1472 | たえなはと ちかひしすゑの いのちさへ わかいつはりに なからへにけり | 冬平 |
1473 | せめてなと そのあかつきを かきりそと いひてもひとの わかれさりけむ | 貞俊(平時俊男) |
1474 | いまははや よそにのみきく あかつきも おなしねにこそ とりはなくなれ | 宣時(北条) |
1475 | もろともに いとひなれにし とりのねを ひとりきくにも そてはぬれけり | 公茂 |
1476 | やまとりの はつをのかかみ それならは へたつるひとの かけをみてまし | 行家(藤原知家男) |
1477 | いまさらに いかかはすへき にひまくら としのみとせを まちわひぬとも | 讃岐(二条院) |
1478 | うちはらふ ちりのみつもる さむしろも なけくかすには しかしとそおもふ | 道綱母 |
1479 | いまははや まちならひこし ゆふくれを むかしになして ぬるるそてかな | 泰氏 |
1480 | いまさらに くへきよひとも たのまれす ちきりたえにし ささかにのいと | 棟国 |
1481 | なつひきの てひきのいとの わくらはに とはれしなかそ いまはたえぬる | 宗行 |
1482 | とはすとて いつまてひとを うらみけむ おもひたえては ことのはもなし | 貞忠 |
1483 | こぬまても こころひとつを なくさめて たのみしほとの いつはりもなし | 為道 |
1484 | はかなくそ ひとよふたよの へたてをも みにならはすと むかしうらみし | 後二条院 |
1485 | おのつから おもひいつやと たのむかな つらきこころの はてはみしかと | 後京極院 |
1486 | いつなれし おもかけそとも かこたれす たたみにそふを なくさめにして | 万秋門院 |
1487 | めくりあふ つきはかはらぬ おもかけを いかなるくもの たちへたつらむ | 覚円 |
1488 | おもかけの わすれぬはかり かたみにて まちしににたる やまのはのつき | 為氏 |
1489 | もろともに まちいてしよの おもかけも さらにこひしき やまのはのつき | 隆博 |
1490 | くれをたに なほまちわひし ありあけの ふるきわかれと なりにけるかな | 順徳院 |
1491 | つきもなほ みしおもかけや かはるらむ なきふるしてし そてのなみたに | 順徳院 |
1492 | いつまてか しらぬかたみの つきかけを やとすなみたに そてやくちなむ | 信実 |
1493 | つきをたに みしよのかけと おもひいてよ ちきりのすゑは あらすなるとも | 隆博 |
1494 | おのつから ともにみしよの おもかけも むかしになりぬ あきのよのつき | 為道 |
1495 | めくりあふ つきをそのよの かたみとも ひとはかけても おもひいてしを | 兵衛督(花園院) |
1496 | いろかはる つきのかつらの かけよりや あきのこころは うつりはてけむ | 実重(三条公親男) |
1497 | わすらるる わかみそあらぬ めくりあふ つきはむかしの かけもかはらて | 公明 |
1498 | おのつから おもひやいつる うきひとの こころしらせよ よはのつきかけ | 雅孝 |
1499 | もろともに みしをかたみの おもかけに つきそなみたを なほさそひける | 行済 |
1500 | うきなから いまはかたみの よはのつき せめてなみたに くもらすもかな | 義円 |
1501 | ひとはよも おもひもいてし あふことは みしをかきりの ありあけのつき | 経継 |
1502 | ありあけの つきこそみしに かはらねと わかれしひとは かけたにもなし | 広義門院 |
1503 | ありあけの つきとともには いてしかと きみかかけをそ ととめさりけり | 基俊 |
1504 | かきりとも しらてわかれし ありあけの つきをかたみと いくよみるらむ | 為綱 |
1505 | おもひいつる ありあけのつきも かきくれて うかりしなかは かたみたになし | 近衛(今出河院) |
1506 | もろともに なかめしよはの つきはかり おもかけのこる かたみとそなる | 泰宗 |
1507 | わすれすよ やへくもかくれ いるつきの へたてしなかに のこるおもかけ | 斉時 |
1508 | うきひとは かけはなれにし そてのうへに つきなれはとて いかかやとさむ | 親子(従三位源) |
1509 | もろともに みしをかたみの つきたにも くちなはそてに かけやたえなむ | 良教 |
1510 | いかにみし このまのつきの なこりより こころつくしの おもひそふらむ | 国助 |
1511 | ひとりわか なみたにくらす つきかけを たれとさやかに ひとのみるらむ | 行家(藤原知家男) |
1512 | そのままに ゆめのたたちも たえにけり いかにさためし よはのまくらそ | 行家(藤原知家男) |
1513 | かたしきの そてのみぬれて いたつらに みしよのゆめは またもむすはす | 隆弁 |
1514 | まれにみし ゆめのちきりも たえにけり ねぬよやひとの つらさなるらむ | 貞資(平時国男) |
1515 | おとろかす ちきりはさこそ かたからめ みしよをたにも ゆめになせとや | 祐春 |
1516 | あふゆめに つらさをなほや そへつらむ さむるうつつに ものおもへとて | 行氏(平胤行男) |
1517 | むすはても あらましものを なれしよの ちきりをいまの ゆめとしりせは | 為相 |
1518 | みすもあらす さめにしゆめの わかれより あやなくとむる ひとのおもかけ | 近衛(今出河院) |
1519 | いかなれは みしよのゆめを うつつとも おもひあはせぬ ちきりなるらむ | 後京極院 |
1520 | われのみそ おもひあはする そのままに またみぬゆめの むかしかたりは | 実重(三条公親男) |
1521 | いまはたた ゆめとそなれる いつまてか おもひいてしも うつつなりけむ | 家親 |
1522 | おなしよに みしはうつつも かひなくて ゆめはかりなる ひとのおもかけ | 亀山院 |
1523 | ゆめにても またあふことや かたからむ まとろまれぬそ せめてかなしき | 為実(御子左藤原為氏男) |
1524 | おのつから みしやそのよの おもかけも いかなるゆめの ちきりなりけむ | 成良 |
1525 | あひみしは ゆめかとつねに なけかれて ひとにかたらま ほしきころかな | 重之女 |
1526 | あかすして わかれしひとを ゆめにみて うつつにさへも おつるなみたか | 貫之 |
1527 | たちかへり おもひすつれと いそのかみ ふりにしこひは わすれさりけり | 友則 |
1528 | としたにも とをとてよつは へにけるを いくたひひとを たのみきぬらむ | 業平 |
1529 | としつきは むかしにもあらす なりぬれと こひしきときは かはらさりけり | 宗于/宗行 |
1530 | わすられぬ ものからつらき としつきは いかなるなかの へたてなるらむ | 少将内侍(後深草院) |
1531 | さりともと なほたのみしは としつきを へたてぬほとの つらさなりけり | 為明 |
1532 | ひとよたに なほへたてしと おもひしに うきとしつきの つもりぬるかな | 後伏見院 |
1533 | としつきの あはぬつらさを かさねても なほたちかへる そてのうらなみ | 亀山院 |
1534 | つらくのみ みゆるきみかな やまのはに かせまつくもの さためなきよに | 兼盛 |
1535 | うきことの しけさまされる なつやまの したゆくみつの おともかよはす | 敦忠 |
1536 | かけてたに またいかさまに いはみかた なほなみたかし あきのしほかせ | 定家 |
1537 | すゑのまつ あたしこころの ゆふしほに わかみをうらと なみそこえぬる | 信実 |
1538 | いつしかと わかまつやまの いまはとて こゆなるなみに ぬるるそてかな | 元良親王 |
1539 | わすれしと ちきりしなかの すゑのまつ たかつらさにか なみはこゆらむ | 為氏 |
1540 | わすらるる みののをやまの つれなくも まつときかれむ なこそをしけれ | 為氏 |
1541 | こえなれし あとともみえす たちかへり つらきのちせの やまのはのくも | 定為 |
1542 | なへてたた すくさぬつきも かこたれぬ つらきひとゆゑ くもるなみたに | 公雄 |
1543 | いまはたた つらきかたみと いとへとも そてをはなれぬ つきのかけかな | 時敦 |
1544 | つらしとも うきひとならは いひてまし みしよにかはる そてのつきかけ | 貞時 |
1545 | くもるとも みさりしものを とはぬまの うらみにかはる そてのつきかけ | 斉時 |
1546 | つれなくて なにとうきよに のこるらむ おもひもいてぬ ありあけのつき | 宗朝 |
1547 | いかにせむ くもるなみたの ますかかみ うらみしよりそ かけはたえにし | 家良 |
1548 | よしさらは なみたにくもれ みるたひに かはるかかみの かけもはつかし | 成実(藤原親実男) |
1549 | うらみても かひこそなけれ あまをとめ いさりたくひの もえこかれつつ | 後宇多院 |
1550 | なもつらし またもみぬめの うらなみの あさゆふそてに かかるはかりは | 後伏見院 |
1551 | しほたるる そてこそあらめ あまのすむ うらみよとての みるめなりけり | 土御門院 |
1552 | おのつから とへかしひとの あまのすむ さとのしるへに おもふこころを | 家隆 |
1553 | いかにせむ よそになるとの おきつなみ はてはよるへも しらぬうらみを | 時元 |
1554 | くちねたた しほくむあまの ぬれころも うらみはてぬと ひとにしらせむ | 円世 |
1555 | おもひしる ひともなきさに やくしほの からきうらみに みをこかすかな | 重綱(藤原) |
1556 | みをはさて おもひそすてし うつせかひ むなしきこひの うらみせしまに | 為実(御子左藤原為氏男) |
1557 | うらみわひ われからぬるる たもとかな もにすむむしに あらぬみなれと | 師継 |
1558 | なきわひて みをうつせみと なりぬれは うらむるこゑも いまはきこえし | 興風 |
1559 | はかなしや こひもうらみも うつせみの むなしきよには ねのみなかれて | 後宇多院 |
1560 | うつつには ちきりたえぬる おもひねの ゆめになしても なほやうらみむ | 光成(大炊御門光俊男) |
1561 | こころひく かたこそしらね わすらるる みをはうきたの もりのしめなは | 行済 |
1562 | かれはては おもひたえなて まくすはら なににのこれる うらみなるらむ | 親教 |
1563 | とへかしな たえぬうらみの まくすはら かせまつほとの つゆはいかにと | 通重 |
1564 | みのうさに おもひかへせは まくすはら たたうらみよと あきかせそふく | 実兼 |
1565 | あきかせに うらみわふとも まくすはら つゆこほるとは ひとにしらせし | 大弐(安嘉門院) |
1566 | あまのすむ さとのとまやの くすかつら ひとかたにやは うらかせもふく | 為家 |
1567 | わすれくさ つみにこしかと すみよしの きしにしもこそ そてはぬれけれ | 俊成(藤原俊忠男) |
1568 | いかにせむ みをすみのえの くさのなに おもひなしてや とふひとのなき | 親子(典侍親子朝臣) |
1569 | うきひとの こころのたねの わすれくさ いつわかなかに しけりそめけむ | 氏之 |
1570 | うきなかに かれはてぬるを おもひくさ なにになみたの つゆかかるらむ | 経久 |
1571 | ほしわふる おなしたもとの あきかせに ありしよりなほ つゆそこほるる | 時邦 |
1572 | うかりける ひとのこころの わすれみつ なとふかからぬ ちきりなるらむ | 円蓮 |
1573 | ちきりしは さてやまのゐの わすれみつ わすれしのちの みるかけもなし | 貞煕 |
1574 | ことわりと おもふにつけて かなしきは わすらるるみの つらさなりけり | 政国女姉 |
1575 | いまさらに わすらるるみそ かこたるる かねておもひし つらさなれとも | 経定(藤原) |
1576 | むすひけむ あたしちきりそ うかりける つひにたえぬる なかとなるにも | 実衡 |
1577 | かくはかり けにたえはてむ つらさとも しはしはしらて うらみさりしを | 懐世 |
1578 | うらみても かひこそなけれ ことわりと おもひしるへき こころならねは | 読人不知 |
1579 | おもひいてて またとふまては かたくとも わすられしみと いかてしらせむ | 後醍醐院 |
1580 | ひとすちに わすれもはては いかかせむ うきためしにや おもひいつらむ | 読人不知 |
1581 | よしさらは おもひないてそ なかなかに うきみしらるる むかしかたりを | 為藤 |
1582 | おのつから おもひいつとも かひそなき ちきりしままの こころならすは | 為定(御子左二条為道男) |
1583 | かかるへき ちきりをなとか むすひけむ さきのよしらて ひとはうらみし | 信実 |
1584 | ひともいさ つらきかたにや かこつらむ われはうらみて とはぬつきひを | 実兼 |
1585 | わすらるる ひとはよそにて としつきの つもるをとかに なにかそふらむ | 定為 |
1586 | わすられぬ あふせはよその なのみして わかなかかはの みつからそうき | 少将(永陽門院) |
1587 | たえはつる ちきりをひとり わすれぬも うきもわかみの こころなりけり | 権大納言典侍(後醍醐院) |
1588 | うきをたに おもひもしらぬ こころにて われさへみをも わすれけるかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
1589 | われはかり さのみおもふも かこそなき けにつらくなる ひとのこころは | 実泰 |
1590 | わすれむと おもふものから したふこそ つらさもしらぬ こころなりけれ | 花園院 |
1591 | つらきをも けにおもひしる なかならは いとかくひとを したはさらまし | 覚助法親王 |
1592 | つらさをも おもひとかめぬ わかみこそ せめてうらむる こころなりけれ | 経宣 |
1593 | はてはまた わかみにかへる うらみかな しはしそひとの うきもしられし | 秀行 |
1594 | ちきらすよ うきおもかけを のこしおきて わすらるるみの かたみなれとは | 祐敦 |
1595 | わすらるる うきみのほとを しらぬかな ひとをつらしと おもふはかりに | 読人不知 |
1596 | うきみには つらさもしらて いまはたた ひとをうらみぬ こころともかな | 基夏 |
1597 | わすれゆく ひとはかりこそ つらからめ みをさへさのみ なにうらむらむ | 折節/節折(前斎宮) |
1598 | こひしさは さもこそあらめ なにとまた つらきかたには わすれさるらむ | 冬平 |
1599 | たちかへり ひとのつらさを うらむれは うきみのとかを しるそかひなき | 冬平 |
1600 | うらむるも こふるこころの ほかならて おなしなみたそ せくかたもなき | 為家 |
1601 | うらみわひ かかるとたにも しらせはや つらさにたへぬ そてのなみたを | 師賢(藤原師信男) |
1602 | つらしとも よそのひとめを かこたはや しのふよりこそ いひもたえしか | 読人不知 |
1603 | わすらるる のちさへなほも したはれて ひとのつらさを しらぬみそうき | 貞直/貞宣 |
1604 | いのちこそ うきにつれなき われならめ うらみによわる こころともかな | 祐夏(鴨祐雄男) |
1605 | ありてよに のこるうらみも なからまし あふをかきりの いのちなりせは | 為理 |
1606 | いのちたに つらさにたへぬ みなりせは このよなからは うらみさらまし | 有房(六条通有男) |
1607 | かすかすに うきよりほかは なにをかは おもひいてても ひとをしのはむ | 師教(九条忠教男) |
1608 | たえにしも わかこころそと いひなして ひとのつらさを よにはもらさし | 冬隆 |
1609 | つらしとも いはてこころに おもふこそ しのひなれぬる うらみなりけれ | 惟継 |
1610 | つらしとも うしともいはし わかそての なみたにおもふ いろはみゆらむ | 宣時(北条) |
1611 | わかおもふ こころのうちを しらせはや ひとのつらさも うらみはてまし | 範秀 |
1612 | うらみすは くやしからまし ことのはも またはかよはぬ なかのちきりに | 為藤 |
1613 | おのつから うらみしほとの たのみたに いまはよそなる みをなけくかな | 公守 |
1614 | なにせむに うしともひとを うらみけむ さてもつらさは まさるものゆゑ | 俊成(藤原俊忠男) |
1615 | うらむへき かたたにいまは なきものを いかてなみたの みにのこるらむ | 和泉式部 |
1616 | つらからむ ことのはもかな わひつつは うらみてたにも なくさめにせむ | 顕輔 |
1617 | かすかやま ふりさけみれは みねにおふる まつはこたかく としふりにけり | 基忠(鷹司兼平男) |
1618 | たれしかも まつのこころに たくへけむ われにあひおひの みをあはせつつ | 後宇多院 |
1619 | としもへぬ なにをかいまは かくてみの おいとなるをの まつことにせむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1620 | いたつらに おいのねさめの なかきよは わかなみたにそ とりもなきける | 為家 |
1621 | いたつらに やこゑのとりは なれにけり つかへてきかむ あかつきもかな | 為実(御子左藤原為氏男) |
1622 | あさゆふに あふくこころに かかるかな なからのやまの みねのしらくも | 雲雅 |
1623 | わけいれは ふかきみやまの たかねより おちくるたきの おとのさやけさ | 後宇多院 |
1624 | やまひめの てたまもゆらに おりはへて ちひろにさらす ぬのひきのたき | 公経(藤原実宗男) |
1625 | あまをふね いまやいつらむ おほしまの なたのしほかせ ふきすさふなり | 資平 |
1626 | ほりえには たましかましを おほふねの みふねこかむと かねてしりせは | 諸兄 |
1627 | あしのやの なたのしほちを こくふねの あとなきなみに くもそかかれる | 読人不知 |
1628 | なにはかた あしへはるかに はるるひは こゑものとかに たつそなくなる | 後二条院 |
1629 | すみよしの きしのいはねに むすこけの みとりにまつの いろやそふらむ | 為経(甘露寺藤原資経男) |
1630 | あさひかけ さすやをかへの まつのゆきも きえあへぬまに はるはきにけり | 読人不知 |
1631 | いととまた たみやすかれと いはふかな わかみよにたつ はるのはしめは | 後宇多院 |
1632 | たにかけに あらはれそむる うくひすの おなしふるすに ねこそなかるれ | 為藤 |
1633 | ここのへの たけのそのよも わすられす ききてなれにし うくひすのこゑ | 基忠(鷹司兼平男) |
1634 | わかみよに ふりゆくとしを かさねきて いくはるききつ うくひすのこゑ | 資季 |
1635 | いたつらに わかみよにふる やまかけに なほはるしらて のこるしらゆき | 公紹 |
1636 | はるくれは とやまのみゆき きえにけり わかおいらくの としはつもれと | 実兼 |
1637 | やまはなほ みゆきしふれと かけろふの もゆるのはらの はるのさわらひ | 実綱(藤原公道男) |
1638 | かはのせに みたれてうつる あをやきの みとりはなみの いろかとそみる | 公守女 |
1639 | たかさとに まつさくうめの にほひきて かせのたよりに ひとさそふらむ | 時村 |
1640 | さきのこる おいきのうめに しのふかな なにはのはるの むかしかたりを | 念阿 |
1641 | いろもかも わすれはてにし すみそめの そてにおとろく うめのしたかせ | 実兼 |
1642 | うゑおきし うめのそのふや あれぬらむ にほひもよその ふるさとのはる | 土御門院 |
1643 | ふきおくる おほろつきよの はるかせに うめかかのみそ かすまさりける | 家隆 |
1644 | いまはとて くもゐをいてし いさよひの むつきのつきの かけそわすれぬ | 実重(三条公親男) |
1645 | すまのあまの もしほのけふり そのままに かすみなれたる はるのよのつき | 宗秀(大江時秀男) |
1646 | あはれなる いそちののちの なみたかな むかしもかすむ つきはみしかと | 実超 |
1647 | かすむよの つきはむかしの はるなから もとのみならぬ すみそめのそて | 道洪 |
1648 | ふるさとに なきてなけくと ことつてよ みちゆきふりの はるのかりかね | 秀能(藤原秀宗男) |
1649 | かへるかり こしちのそらの しらくもに みやこのはなの おもかけやたつ | 覚寛 |
1650 | はるさめは よものくさきを わかねとも しけきめくみは わかみなりけり | 公経(藤原実宗男) |
1651 | あさみとり あまねきめくみ いろにいてて のなるくさきに はるさめそふる | 後二条院 |
1652 | おいかみの なほなからへて ことしまた ふたたひはるの はなやみるへき | 後宇多院 |
1653 | はなをみし みのおもひてを いささらは むそちのはると ひとにかたらむ | 禅助 |
1654 | のちにまた たれかしのはむ うゑおきし はなはやとせの はるそへにける | 家経(一条実経男) |
1655 | はなははや したひもとけて からころも たつたのやまに にほふはるかせ | 能信 |
1656 | あふさかの やまのさくらや さきぬらむ くもまにみゆる せきのすきむら | 宗宣(北条宣時男) |
1657 | たれかまた はなかとよそに たとるらむ わけつるあとの みねのしらくも | 隆氏 |
1658 | にほはすは はなのところも しらくもの かさなるやまも なほやまよはむ | 長舜 |
1659 | わけいりて これよりおくと おもはねは みやまははなを のとかにそみる | 道順 |
1660 | あくかるる こころのままに たつねきて やまちのはてを はなにみるかな | 能誉 |
1661 | たちまかふ いろもにほひも ひとつにて はなにへたてぬ みねのしらくも | 宗秀(大江時秀男) |
1662 | よしさらは さなからはなと いひなさむ おなしこすゑの みねのしらくも | 行親 |
1663 | よしのやま おなしさくらの いろなから をられぬはなや みねのしらくも | 重泰 |
1664 | をらすとも ひとにかたらむ やまさくら みるおもかけを いへつとにして | 行氏(祝部行言男) |
1665 | おいらくの かさしにをらむ さくらはな このはるはかり ひとなとかめそ | 祐親 |
1666 | めつらしき ものかはあやな さくらはな ここらのはるに あかすもあるかな | 山田 |
1667 | しのふへき ひとなきみこそ かなしけれ はなはあはれと たれかみさらむ | 赤染衛門 |
1668 | ありてよの うきをしれはや やまさくら よしののおくの はなとなりけむ | 国助 |
1669 | このもとの くれぬるのちも やまさくら のこるははなの ひかりなりけり | 泰宗 |
1670 | さくらいろに やまわけころも うつろひぬ かつちりかかる はなのしたみち | 定成(藤原経朝男) |
1671 | さくらはな ゆきとやまちに ふりしけは うへこそひとの ふみたかへけれ | 肥後(京極前関白家) |
1672 | ゆきとふる はなならねとも いにしへを こふるなみたに まかふとをしれ | 俊忠 |
1673 | はなちると かけてもいはし うくひすの いととおとせす なりもこそすれ | 具平親王 |
1674 | さためなき よをうちかはの たきつせに ことわりしれと ちるさくらかな | 万秋門院 |
1675 | ことしなほ ちりゆくはなを をしむまて のこるへきみと おもひやはせし | 光俊(葉室光親男) |
1676 | またとたに おいてたのまぬ わかれには いよいよちるも をしきはなかな | 行氏(平胤行男) |
1677 | みのよその はるとやかせも おもふらむ やとにとめしと はなさそふなり | 順西/読人不知 |
1678 | ふくかせの さそははせめて いかかせむ こころとはなの ちるそかなしき | 師親 |
1679 | はなはみな ちりはてぬらし つくはねの このもとことに つもるしらゆき | 兼誉 |
1680 | やまふきの はなもこころの あれはこそ いはぬいろには さきはしめけめ | 業平(在原)/業尹(藤原) |
1681 | すみそめの たもとははるの よそなから なつたちかはる いろたにもなし | 為顕 |
1682 | ななそちの なつにかかれる ふちのはな かさしておいの なみにまかへむ | 公雄 |
1683 | つきとみて よるもやこえむ ゆふくれの まかきのやまに さけるうのはな | 伏見院 |
1684 | みをかくす かひこそなけれ うのはなの うきよへたてぬ おなしかきほは | 定為 |
1685 | よのなかを いとふやとには うゑおきて みをうのはなの かけにかくさむ | 慶融 |
1686 | むかしこそ こころにかかれ あふひくさ かみのみあれに いつかさしけむ | 基氏(藤原基家男) |
1687 | みちありて みたれすもかな なつくさの ことしけきよに またもましらは | 後宇多院 |
1688 | さゆりはの しられぬやとと なりやせむ あとなきにはの くさのしけみに | 実経 |
1689 | おろかなる おいのなみたの つゆけきは ゆふひのかけの やまとなてしこ | 経継 |
1690 | つれなさを われもかたらむ ほとときす おなしこころに まつひともかな | 定宣(賀茂) |
1691 | まちわふる やまほとときす ひとこゑも なかぬにあくる みしかよのそら | 時香 |
1692 | おもひねの ゆめのたたちの ほとときす さめてもおなし こゑをきかはや | 忠顕 |
1693 | ふるさとに たれききつらむ ほとときす のきはのくさの しのふはつねを | 景綱 |
1694 | このさとを なきてすきつる ほとときす よそにもこよひ たれかきくらむ | 資名 |
1695 | まつほとの こころかよはは ほとときす おなしはつねを ひともきくらむ | 宗俊 |
1696 | まとろまて まちつるものを ほとときす ゆめかとききて おとろかれぬる | 尊空 |
1697 | よひのまの つきまちいつる やまのはに こゑもほのめく ほとときすかな | 頼氏(藤原頼広男) |
1698 | ほとときす はつかのつきの やまのはを いててよふかき そらになくなり | 義政 |
1699 | ひとこゑを ひとにはつけす ほとときす ききさためむと おもふこころに | 真浄 |
1700 | きけはまつ そてこそぬるれ ほとときす おのれやひとに なみたかすらむ | 長経 |
1701 | ふるさとと おもひなすてそ ほとときす なれもむかしの こゑはかはらし | 隆祐 |
1702 | ほとときす はなたちはなに きこゆなり むかしわすれぬ よよのふるこゑ | 時親(藤原) |
1703 | とにかくに むかしをかけし きのふより そてのうきねは なほもかわかす | 為子(贈従三位) |
1704 | われのみと むかしをかけし そてのうへに けふはうきねを またそそへつる | 万秋門院 |
1705 | あやめくさ かけはなれても すみそめの そてにはあらぬ ねそかかりける | 実兼 |
1706 | すみそめの そてにかこちて あやめくさ おもはぬかたそ かけはなれける | 読人不知 |
1707 | たちはなの はなもにほはぬ やとならは なににむかしを おもひいてまし | 宗円(高階泰重男) |
1708 | ゆくすゑに さてもやひとの しのふとて わかそてふるる のきのたちはな | 宗宣(北条宣時男) |
1709 | にほひくる はなたちはなの そてのかに このさとひとも むかしこふらし | 成賢(祝部成茂男) |
1710 | さみたれの くさのいほりの よるのそて しつくもつゆも さてやくちなむ | 為家 |
1711 | かくてしも よにふるみこそ あはれなれ くさのいほりの さみたれのそら | 西音 |
1712 | しほくまぬ ひまたにそてや ぬらすらむ あまのとまやの さみたれのころ | 貞宗 |
1713 | さみたれの くものとたえの やまのはに しはしみえつる つきのかけかな | 広房(大江広茂男) |
1714 | みしかよの つきにうらこく ふなひとの なみちほとなく あくるしののめ | 真昭 |
1715 | あつめこし まとのほたるの ひかりもて おもひしよりも みをてらすかな | 有房(六条通有男) |
1716 | かせわたる なつみのかはの ゆふくれに やまかけすすし ひくらしのこゑ | 忠宗 |
1717 | みそきかは なつゆくみつの はやきせに かけてすすしき なみのしらゆふ | 静仁法親王 |
1718 | すすしさは ゆふくれかけて むすふての そてにせかるる やまのしたみつ | 後二条院 |
1719 | みそきせて はやいくとせに なりぬらむ いのるへきみの いのちならねは | 右衛門督(惟康親王家) |
1720 | みしまえの たまえのあしの ひとよにも おとこそかはれ あきのはつかせ | 経平母 |
1721 | おもひやる よそまてくるし たなはたの くれまつほとの けふのこころは | 時夏女/時夏母 |
1722 | いかにせむ あきにもあらぬ ゆふへたに ものおもふみは ぬるるたもとを | 良信 |
1723 | さのみなと なみたのとかと かこつらむ つゆにもぬるる おいのたもとを | 興信 |
1724 | しらたまか なにそととはむ うちわたす をちかたのへの あきのゆふつゆ | 国夏/国基 |
1725 | あはれとも おほかたにこそ おもひしか いまはうきみの あきのゆふくれ | 宗尊親王 |
1726 | ふくかせの うきになしてや かこたまし ゆふへはまさる あきのあはれを | 伏見院 |
1727 | いつしかと はつあきかせの ふきしより そてにたまらぬ つゆのしらたま | 後二条院 |
1728 | ひととはて としふるのきの わすれくさ みをあきかせに つゆそこほるる | 良信 |
1729 | こころなき わかころもてに おくつゆや くさのたもとの たくひなるらむ | 道玄 |
1730 | よのなかは あきのくさはを ふくかせの つゆもこころそ とまらさりける | 性助法親王 |
1731 | わけわひし つゆのかけても おもひきや きみなきやとの にはのよもきふ | 実氏 |
1732 | たつねきて ひとのわけけむ しらつゆの やかてそてにも かかりぬるかな | 読人不知 |
1733 | あれにける ふしみのさとの あさちはら むなしきつゆの かかるそてかな | 式子内親王 |
1734 | つゆをたに はらひかねたる をやまたの いほもるそてに すくるむらさめ | 実重室 |
1735 | いくよわれ いなはのかせを みにしめて つゆもるいほに ねさめしつらむ | 実泰 |
1736 | あききても とはれすとてや つのくにの いくたのもりに しかのなくらむ | 承空 |
1737 | わひひとの あきのねさめは かなしきに しかのねとほき やまさともかな | 近衛(今出河院) |
1738 | まつひとも なきやとなれと あきかせの ふきくるよはは いこそねられね | 読人不知 |
1739 | あしひたく なにはのこやに たつけふり つきまつよひの そらなへたてそ | 政国女 |
1740 | かつはるる きりのたえまの あきかせを たよりになして いつるつきかけ | 親範(藤原範宗または親之男) |
1741 | あらしふく みねにかかれる うきくもの はるるかたより いつるつきかけ | 行胤 |
1742 | かへるさの そてまてつきは したひきぬ ひとはおくらぬ あきのやまちに | 道性 |
1743 | としへぬる まつのとほそは くちぬとも ひとりやすまむ やまのはのつき | 国平 |
1744 | くもはみな あらしのやまの ふもとにて かつらのさとに つきそくまなき | 頼景 |
1745 | あきをへて ひともこぬみの はまかせに いくよのつきの ひとりすむらむ | 親長 |
1746 | しかのあまの つりするそてに つきさえて くもふきかへす ひらのやまかせ | 行観/行親 |
1747 | かこつへき ことわりもなき なみたかな つきみぬそての ぬれぬものかは | 実兼 |
1748 | ちきりおく つきのころさへ すきゆけは めくりあふへき たのみたになし | 親世 |
1749 | やまのはの つきははつかに なりぬれと めくりあふへき ちきりをそまつ | 為氏 |
1750 | よもすから そてのなみたに なれにけり ものおもふころの あきのつきかけ | 成久 |
1751 | やとるとも そてわくあきの つきならは うきみなくさむ かけやなからむ | 行氏(平胤行男) |
1752 | うきことを おもへはくもる なみたかな みをわすれてそ つきはみるへき | 本如 |
1753 | いととなほ なみたをそへて みのために うきをしらする つきのかけかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
1754 | くもはれて のとけきそらの あきのつき おもひなきよの ひかりとそみる | 覚助法親王 |
1755 | みるままに ひかりもよそに なりにけり かつらきやまの ありあけのつき | 保能 |
1756 | たれかまた こころとむらむ きみよかた せきもるなみの あきのよのつき | 静伊 |
1757 | さやかなる なをはととめて きよみかた かたふくつきに せきもりそなき | 祐殖 |
1758 | おもかけそ なほのこりける いもかしま かたみのうらの ありあけのつき | 忠能 |
1759 | かたしきの そてのあきかせ よをさむみ ねさめてきけは ころもうつなり | 清寿 |
1760 | しもむすふ すすのしのやの あさころも うつにつけてや よさむなるらむ | 経親(大江基親男) |
1761 | わかそてに もとよりふかき いろをみよ みねのこのはは いまそしくるる | 基良 |
1762 | いろまさる ほとこそみえね むらしくれ そめてくれぬる やまのもみちは | 清兼 |
1763 | みのうさを おもへはいとと よをあきの そてのしくれの はるるまそなき | 永胤 |
1764 | かせはやみ あきはてかたの くすのはの うらみつつのみ よをもふるかな | 元輔(清原春光男) |
1765 | いつくにも おとらしものを わかやとの よをあきはつる けしきはかりは | 孝標女 |
1766 | よをすつる すみかにもなほ をしむかな おもひなれにし あきのなこりを | 実冬(藤原公忠男) |
1767 | くれてゆく あきのなこりを をしほやま しかもこよひや なきあかすらむ | 師宗 |
1768 | あけぬとて みねにわかるる よこくもを そらにのこして ふるしくれかな | 成朝 |
1769 | なかきよの おいのねさめの なみたたに かわかぬそてに ふるしくれかな | 公雄 |
1770 | けふよりの しくれよなにの ためならむ このははあきに そめつくしてき | 後伏見院 |
1771 | いかにせむ たのむこかけの しくれにも ふりてなれにし あきのなみたを | 基良 |
1772 | しからきの とやまにかかる うきくもの ゆくかたみえて ふるしくれかな | 広茂 |
1773 | すきやすき しくれをかせに さきたてて くものあとゆく ふゆのよのつき | 祐臣 |
1774 | とたえして よそになりぬと みるくもの またしくれくる かつらきのやま | 尚長(丹波経長男) |
1775 | さらてたに しきれかさなる やまのはに なほくもおくる よそのこからし | 貞広 |
1776 | わかみさへ おいそのもりの こからしに このはよりなほ ふるしくれかな | 俊光 |
1777 | ちるたひに もとこしみちは うつもれて このはのうへを かよふやまひと | 秀長(藤原秀弘男) |
1778 | こけころも なほそてさむし みのうへに ふりゆくしもを はらひすてても | 経清 |
1779 | ふくとても あきにやかへる おくしもの したはふくすに のこるゆふかせ | 道性 |
1780 | なにはえや あさおくしもに をれふして のこるともなき よよのあしはら | 為家 |
1781 | かけろふの をののくさはの かれしより あるかなきかと とふひともなし | 土御門院 |
1782 | あまをとめ そてふるよはの かせさむみ つきをくもゐに おもひやるかな | 永福門院 |
1783 | さえくらす あらしのそらの くもまより かけもゆきけに こほるつきかな | 兼信 |
1784 | うらかせや ふきまさるらむ こゆるきの いそのなみまに ちとりなくなり | 読人不知 |
1785 | みつしほに うらのひかたは みえわかて なみよりうへに たつちとりかな | 範秀 |
1786 | いにしへの わかのうらちの ともちとり あとふむほとの ことのはもかな | 経国 |
1787 | しのふへき ひともやあると はまちとり かきおくあとを よにのこすかな | 御匣(式乾門院) |
1788 | にほのうみや みきはのちとり こゑたてて かへらぬなみに むかしこひつつ | 亀山院 |
1789 | むかしより いまもかはらす たのみつる こころのあとそ ゆきにみるへき | 亀山院 |
1790 | たのみつる こころのいろの あとみえて ゆきにしらるる きみかことのは | 性助法親王 |
1791 | いまはよに ふりはてにける おいかみの やまとしたかく つもるしらゆき | 行済 |
1792 | ふるゆきも いくへかうつむ よしのやま みしはむかしの すすのしたみち | 覚助法親王 |
1793 | つもれたた いりにしやまの みねのゆき うきよにかへる みちもなきまて | 頓阿 |
1794 | ふりにける あとともみえす かつらきや とよらのてらの ゆきのあけほの | 読人不知 |
1795 | きえすとて たのむへきかは おいかよの ふくるにのこる ねやのうつみひ | 為家 |
1796 | おいとなる つらさもしらて いそかれし むかしのとしの くれそこひしき | 基任 |
1797 | ゆきめくる としはかきりも なきものを くるるをはてと なにかおもはむ | 国冬 |
1798 | このふゆも こほりをふみて くれにけり いつかこころの はるにあふへき | 氏久 |
1799 | かかみやま みてもものうき しもゆきの かさなるままに くるるとしかな | 覚助法親王 |
1800 | いまはみの ゆきにつけても いたつらに つもれはおいの としもふりつつ | 為氏 |
1801 | あふきみる そらなるほしの かすよりも ひまなきものは こころなりけり | 亀山院 |
1802 | こころすむ はこやのやまの あきのつき ふたたひよをも てらしつるかな | 後宇多院 |
1803 | さすかまた くもらしとおもふ こころをは はこやのやまの つきやみるらむ | 定房(藤原経長男) |
1804 | つかふへき みちをおもへは きみかため こころくもらて つきをみるかな | 公守 |
1805 | くらゐやま みはしもなから かけみれは のほらぬみねに つきそさやけき | 能清 |
1806 | すみそめの そてになみたを ほしわひて つきもみしよに かけかはるなり | 公雄 |
1807 | みのうさを なけくなみたや くもるらむ つきたにそてに かけもやとさす | 亀山院 |
1808 | うきなから このよはさても すみそめの そてにはつきの くもらすもかな | 宰相典侍(後宇多院) |
1809 | むかしみし かけにそかはる むそちあまり おいぬるのちの あきのよのつき | 実聡 |
1810 | みのうさを なくさめとてや かすならぬ そてにもつきの かけやとすらむ | 実重室 |
1811 | いつまてか たへてすむへき よをうしと おもはぬつきも やまにこそいれ | 道意(西園寺実兼男) |
1812 | なみたにも なにくもるらむ よのうきめ みえぬやまちの あきのよのつき | 帥(談天門院) |
1813 | やまのはに いそきないりそ ゆふつくよ うきみたにこそ よにはすみけれ | 顕仲(藤原資仲男) |
1814 | よをあきの やまのあらしの はけしきに いかてかすめる ありあけのつき | 秀能(藤原秀宗男) |
1815 | すまはやと おもふみやまの おくまても ともとなるへき つきのかけかな | 基忠(鷹司兼平男) |
1816 | つくつくと おもへはこれも かりのよを わかすみかとて なにいそくらむ | 氏久 |
1817 | いかにして おもひたたまし よのうさを へたつるくもの ふかきやまちに | 兼氏 |
1818 | みやこひと とははとはなむ おなしくは はなのさかりの をりをすくさて | 道玄 |
1819 | おのつから はらふひとなき ふるさとの にははあらしに まかせてそみる | 広義門院 |
1820 | よよへぬる ほともしられて ふるさとの のきはにたかき まつのひともと | 道昭 |
1821 | なにとまた わかたつそまき としをへて すみえぬやまに こころひくらむ | 浄弁/道昭 |
1822 | うきよたに こころにやすく のかれなは なにかはやまの おくももとめむ | 時直 |
1823 | あらましの うきよのほかの くさのいほ すまておもふも さひしかりけり | 読人不知 |
1824 | おもひやる ほとのはるけき やまさとは そてつゆけくも なりまさるかな | 師輔 |
1825 | おもひきや くさのいほりの つゆけさを つひのすみかと たのむへしとは | 行尊 |
1826 | いまはとて いりにしやまの あをつつら なほもくるしき このよなりけり | 了然 |
1827 | やまかけの まつにさひしき あらしこそ きかしとすれと しひてふきけれ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1828 | みねつつき まつのこすゑを ふきすきて あらしもとはぬ たにかけのいほ | 静澄 |
1829 | ひとよりも なほやまふかく すむいほに けによをいとふ ほとはみゆらむ | 宗厳 |
1830 | やまふかく たつぬるひとの ありとても くさのとさしを たれかをしへむ | 少将(藻壁門院) |
1831 | たつねきて みるもはかなき すまひかな いはねにむすふ くさのいほりは | 後宇多院 |
1832 | まはらなる ましはのとほそ あけくれは みねのあらしの なにたたくらむ | 家良 |
1833 | よをうさの なくさむまては なけれとも すみなれにける やまのおくかな | 家経(一条実経男) |
1834 | やまさとに にこるみつをは せきいれし すまぬこころの みえもこそすれ | 国助 |
1835 | のかれても もとのこころの かはらねは なほやまさとも うきよなりけり | 良宋 |
1836 | やまかけは うきよのほかと おもへとも なみたはなれぬ すみそめのそて | 良雲 |
1837 | こころにも あらてすまるる やまさとを うきよいとふと ひとやおもはむ | 一条(延政門院) |
1838 | やまさとの さひしさをたに しのはすは おきところなき わかみならまし | 尊円 |
1839 | やまふかみ ひとのゆききや たえぬらむ こけにあとなき いはのかけみち | 宣時(北条) |
1840 | やまかけや たれにとはるる やととてか あとなきにはの こけもはらはむ | 時俊 |
1841 | こけのしたの こころのやみや はれぬらむ けふみをてらす あけのころもに | 師員 |
1842 | うれしさを つつみならひし そてにまた そのみにあまる けふとこそみれ | 慈円 |
1843 | そてになほ ふたたひつつむ うれしさを わかみひとつと おもふものかは | 公経(藤原実宗男) |
1844 | おもふとも いはてほとへむ つきひには こころのくまも あらしとそおもふ | 談天門院 |
1845 | ことのはに いはぬつきひは つもれとも おもひいてはと たのみこそせめ | 達智門院 |
1846 | いまはさは おもひしりぬや わすれみつ たゆるはたれも おなしつらさを | 実国 |
1847 | とふひとに ありとはえこそ いひはてね われやはわれと おとろかれつつ | 清少納言 |
1848 | けふはなほ ぬるるのみこそ うれしけれ あめかしたにし ふるみとおもへは | 朝光 |
1849 | これをたに あたにはおかし あきのしも ちかきまもりの かたみとおもへは | 公守 |
1850 | あきはつる かとたのなるこ いつまてと ひくひともなき よにのこるらむ | 実重(三条公親男) |
1851 | いたつらに すくるつきひは はやせかは おいのなみには しからみはなき | 栄算 |
1852 | あらたまの ことしもかくて こゆるきの いそちのなみを そてにかけつつ | 行能 |
1853 | よものうみの しほくむあまの こころから やくとはかかる なけきをやつむ | 紫式部 |
1854 | うきよそと おもひすつれと いのちこそ さすかにをしき ものにはありけれ | 相模 |
1855 | いのちをは あたなるものと ききしかと うきみのためは なかくそありける | 清正 |
1856 | かきりある いのちのさすか なからへて なにのためとも なきわかみかな | 俊誉 |
1857 | いきてよの うきにつもれる としつきは みをしれとての いのちなりけり | 行氏(平胤行男) |
1858 | つれなくて よにありあけの つきもみつ たたわれはかり うきものはなし | 玄恵/玄忠 |
1859 | うきことに たへてつれなき いのちとも おいののちこそ おもひしりぬれ | 行済 |
1860 | いつまてと おもふもかなし おいかみの よわるにつけて もろきなみたは | 利行 |
1861 | はかなしや いまいくほとの いのちとて やそちあまりの みをなけくらむ | 丹波長有 |
1862 | いとへとも くるしかりける このよかな むそちのさかは さてもこゆれと | 公雄 |
1863 | みのうさの すきこしかたに かはらすは いまゆくすゑも いかになけかむ | 一条(昭慶門院) |
1864 | あらましに みをなくさめて すくせとや ゆくすゑしらぬ ならひなるらむ | 国藤 |
1865 | さりともと ゆくすゑまちし こころこそ みのほとしらぬ むかしなりけれ | 長経 |
1866 | みのほとを おもひつつけて うきときは ことわりにのみ ぬるるそてかな | 読人不知 |
1867 | いつまてと おもふにぬるる たもとかな あるもいのちの たのまれぬみは | 行政 |
1868 | かひなしや としをかさねて うきことの つもらむとての いのちはかりは | 基顕 |
1869 | はてはまた あすしらぬよを たのむかな けふまてはうき みをなけきつつ | 有忠 |
1870 | としつきの うきにたへける ならはしに なほゆくすゑも さてやすくさむ | 実教 |
1871 | なへてよに をしむいのちも をしからす かくてうきみの としをかさねて | 遊義門院 |
1872 | うきことは よにふるほとの ならひそと おもひもしらて なになけくらむ | 慈勝 |
1873 | かすならは よにもひとにも しられまし わかみのほとに あまるうれへを | 定為 |
1874 | ありはつる よとしおもはは いかはかり かすならぬみも なほうからまし | 公茂 |
1875 | みひとつの うきになしても なけかまし ひとのいとはぬ このよなりせは | 宗泰(藤原時宗男) |
1876 | うけかたき みをいたつらに なすものは のちのよしらぬ こころなりけり | 政長 |
1877 | かくてよに うきをむくひと おもひしる こころのなきを みにかこつかな | 延誠 |
1878 | いきていま なけくたにうし のちのよを いかにせむとて そむかさるらむ | 氏村 |
1879 | うきみには のちのよをさへ なけくかな なきあととはむ ひとしなけれは | 読人不知 |
1880 | いかにせむ つかへしままの あとにたに なほかすならて まよふわかみを | 親教 |
1881 | よそちあまり みよまてあはぬ なけきして たくひすくなく みそしつみぬる | 家経(一条実経男) |
1882 | よよのあとを おもふはかりに やすらひて をしかるましき みををしむかな | 道平 |
1883 | よよへぬる あととはひとに しらるとも みにしのはれむ ことのはそなき | 祐臣 |
1884 | あととめて ふみまよはしと おもふにも わかしきしまの みちそくるしき | 為世(御子左藤原為氏男) |
1885 | いまさらに なににこころの とまるそと おもへはいへの よよのたまつさ | 師宗 |
1886 | しるらめや こをおもふやみの よるのつる わかよふけゆく しもになくとは | 有長 |
1887 | ききなるる おいのねさめの とりのねに なみたをそへぬ あかつきそなき | 守誉 |
1888 | しつかなる ねさめならては よのなかの うきにみをしる ときやなからむ | 俊誉 |
1889 | なにことか おもひのこさむ あきのよの あくるまつまの おいのねさめに | 実承 |
1890 | こしかたの あかつきおきに ならはすは おいのねさめや なほうからまし | 良宋 |
1891 | ときのまの おいのねふりは さめぬれと のこるよなかき あかつきのそら | 円伊 |
1892 | うたたねの ゆめはほとなく さめにけり なかきねふりの かからましかは | 道意(西園寺実兼男) |
1893 | よよをへて まよひしゆめの さめやらて いつをかきりの ねふりなるらむ | 覚円 |
1894 | ゆめのうちの ゆめそとひとの をしふとも さめすはいかか うつつなるへき | 実香(藤原公敦男) |
1895 | こしかたの みのおもひても ゆめなれは うきをうつつと いまはなけかし | 行済 |
1896 | あたにみし ゆめにいくらも かはらぬは むそちすきにし うつつなりけり | 実重(三条公親男) |
1897 | たのみつつ くらせるよひも ねられねは おいのむかしに あふゆめそなき | 覚助法親王 |
1898 | かねのおとを ともとたのみて いくよかも ねぬはならひの をはつせのやま | 慈円 |
1899 | ふきまよふ あらしにかはる ひひきかな おなしふもとの いりあひのかね | 叡俊 |
1900 | かねのおとは あけぬくれぬと きけとなほ おとろかぬみの はてそかなしき | 実香(藤原公敦男) |
1901 | わかやとは のきはのたけの よよをへて かはらぬあとと みこそふりぬれ | 保能 |
1902 | これまても きみかためとそ うゑおきし いまここのへの にはのくれたけ | 冬平 |
1903 | よよをへて あとたえはてし くものうへに またたちかへる みちをしらはや | 長有 |
1904 | すみすてし やとはむかしの あとふりて のこるのきはの まつそひさしき | 親子(従三位源) |
1905 | くらゐやま かくてかはらぬ みねのまつ いまひとしほの はるをしらはや | 顕氏(六条顕家男)/頼氏(一条高能男) |
1906 | みつのやま たかくそのほる くもにふし あらしになれし みちにまかせて | 道昭 |
1907 | ふたよまて きみにあふみの かかみやま こころくもらは いかかみるへき | 経任(中御門藤原為経男) |
1908 | たちかへり またきみかよに あふさかの こゆるせきちに すゑもまよふな | 内実 |
1909 | さりともと おもひしあとは ふみそめつ みちあるみよの かすかののはら | 内経 |
1910 | いかにして むかしよりすむ しらかはの あとにこらすと ひとにしられむ | 俊定(藤原経俊男) |
1911 | われまては よよにかはらす つかへきぬ なほすゑたゆな せきのふちかは | 為世(御子左藤原為氏男) |
1912 | いまもなほ ふるきなかれの たえすして むかしをうつす せりかはのみつ | 公雄 |
1913 | つのくにの なにはのあしの よのなかを のとかにとおもふ わかこころかな | 亀山院 |
1914 | かくてしも あるへきみとは しらすけの まののはきはら つゆもおもはす | 公朝 |
1915 | なみたかは うきせをしはし すくしてや しつみもはてぬ みをはたのまむ | 禅隆 |
1916 | さのみやは みをうちかはの たまかしは きみのみよにも なほしつむへき | 道玄 |
1917 | ひとかたに しつむわかみの おもひかは かはるふちせは さもあらはあれ | 道性 |
1918 | とみすれは よるせもしらぬ かはふねの くたりやすきは うきみなりけり | 貞頼 |
1919 | としをのみ おもひつもりの おきつなみ かけてもよをは うらみやはする | 雅経 |
1920 | いたつらに こころはかりは よすれとも またなをかけぬ わかのうらなみ | 貞俊(平時俊男) |
1921 | このはるそ あつまになをは のこしける よよのあとある わかのうらなみ | 景綱 |
1922 | わかのうらに またもひろはは たまつしま おなしひかりの かすにもらすな | 忠景 |
1923 | もしほくさ かくかひあらは わかのうらに あとつけぬへき ことのはもかな | 経顕(藤原定資男) |
1924 | よをうみの なみのしたくさ いつまてか しつみはてぬと みをうらむへき | 業連 |
1925 | ゆくすゑの なをこそおもへ もしほくさ かきおくあとの くちぬたのみに | 朝棟 |
1926 | あらはれぬ なををしとりの みかくれて しつむうらみに ねこそなかるれ | 能信 |
1927 | たておきし ちかひもきよき はしはしら くちてやよよの ひとをわたさむ | 実氏 |
1928 | わたすへき たよりたになし はしはしら くちせぬなのみ いまものこりて | 順空 |
1929 | なにとよに うきみなからの はしはしら なほありかほに くちのこるらむ | 資直/資宣 |
1930 | としつきを ふるのたかはし いたつらに おもひてなくて よをやわたらむ | 実誉/実鑑 |
1931 | いかはかり うれしかるらむ とたえして またわたりぬる くものかけはし | 実定 |
1932 | とたえして またわたりぬる かけはしは けふふみみてそ いととうれしき | 隆信 |
1933 | よのなかは たたけふのこと おもほえて あはれむかしに なりもゆくかな | 朝忠 |
1934 | わすれすよ なれしくもゐの よはのつき ひかりをそての うへにやとして | 読人不知 |
1935 | いにしへの なこりやなほも へたてまし つきにおほえぬ むかしなりせは | 基忠(鷹司兼平男) |
1936 | みしことも かはらぬつきの おもかけや たためのまへの むかしなるらむ | 忠資 |
1937 | むかしをは おもひいつやと ふるさとの のきもるつきに ことやとはまし | 基平(近衛兼経男) |
1938 | なかめつつ なほもむかしを しのふへき つきをへたつる わかなみたかな | 後二条院 |
1939 | むかしをも わすれぬやとの つきなれや かはらぬかけに すみそめのそて | 慈道法親王 |
1940 | いくあきか かはらぬつきの やとならむ あとはむかしの にはのあさちふ | 雲禅 |
1941 | みしままの かけたにのこれ よはのつき あきはむかしの あきならすとも | 行乗 |
1942 | なにゆゑに かはらぬともと たのむらむ つきはむかしの あきもしのはし | 玄守 |
1943 | みれはまつ なみたなかるる みなせかは いつよりつきの ひとりすむらむ | 西音 |
1944 | むかしおもふ おいのなみたに そふものは わかみをあきの しくれなりけり | 基忠(鷹司兼平男) |
1945 | いにしへの のなかのしみつ くまねとも おもひいててそ そてぬらしける | 忠秀 |
1946 | ゆくとしは むそちつもりの うらかせに かへらぬおいの なみそかなしき | 顕範 |
1947 | いまはわか やそちあまりの とももなし たれとみしよの ことかたらまし | 長有 |
1948 | あはれなり おもひしよりも なからへて むかしをこふる おいのこころは | 基忠(鷹司兼平男) |
1949 | みすしらぬ むかしのひとの こひしきは このよをなけく あまりなりけり | 後鳥羽院 |
1950 | むかしまて とほくはいはし すきぬれは きのふのことも こひしかりけり | 雅有 |
1951 | あはれとも たれかはきかむ ひとしれぬ こころのうちの むかしかたりは | 少将(藻壁門院) |
1952 | かすかすに しのふへしとは おもひきや なほさりにこそ すきしむかしを | 慈勝 |
1953 | ゆくすゑも なほこしかたの ままならは いつをわかみの おもひてにせむ | 読人不知 |
1954 | わすられぬ そのおもひても なきものを なにゆゑしのふ むかしなるらむ | 岩蔵姫君 |
1955 | いまさらに むかしをなにと しのふらむ うきよとてこそ おもひすてしか | 盛徳 |
1956 | とほさかる ものとはいはし おもひいてて しのふこころに かへるむかしは | 貞長 |
1957 | おもひての なきをうきみに かこちても たかためしのふ むかしなるらむ | 基有 |
1958 | たけくまの まつをたのみに なからへて むかしをみきと たれにかたらむ | 基忠(鷹司兼平男) |
1959 | つかへこし むかしなりせは ふかくさの さとはくれぬと いそかさらまし | 実教 |
1960 | おいぬれは ぬるかうちにも いにしへの おなしことこそ ゆめにみえけれ | 行氏(祝部行言男) |
1961 | みるままに ゆめになりゆく いにしへを おもひしりても なにしのふらむ | 性助法親王 |
1962 | よをのこす ねさめのとこに おもふかな むかしをみつる ゆめのなこりを | 新宰相(伏見院) |
1963 | ひとよあふ ゆききのひとの うかれつま いくたひかはる ちきりなるらむ | 斉時 |
1964 | そむくよに いつおもひたつ みちもなし くるるひことに あすはたのめと | 行蓮 |
1965 | そむくへき ものそとよをは しりなから こころならてや たれもすくらむ | 源恵 |
1966 | やまふかく せめてはさそふ とももかな われとそむくは かたきよなれは | 読人不知 |
1967 | なにことを をしむとしもは なけれとも いとふにかたき うきよなりけり | 読人不知 |
1968 | いまさらに すつともなにか をしからむ もとよりよにも あるみならねは | 公顕女 |
1969 | すみわひて そむくへきよと おもひしる こころにいつか みをもまかせむ | 明玄 |
1970 | なけくへき よのことわりは なきものを おもふにもにぬ こころなるらむ | 道順 |
1971 | うきたひに なほよをかこつ こころこそ けにかすならぬ みをわすれけれ | 相真 |
1972 | うらむへき よにしあらねは なかなかに かすならぬみそ すみよかりける | 時夏 |
1973 | かくてみの うきにつけても いとはすは けによをすつる をりやなからむ | 基久 |
1974 | さためなき ならひならすは よのなかの うきにややかて いとひはてまし | 宗直 |
1975 | いとひても のちはいかにと おもふこそ なほよにとまる こころなりけれ | 景綱/重綱(藤原) |
1976 | よをすつる かすにさへこそ もれにけれ うきみのすゑを なほたのむとて | 頼氏(藤原頼広男) |
1977 | いとひても こころをすてぬ ものならは うきよへたつる やまやなからむ | 教定(飛鳥井雅経男) |
1978 | ひとすちに やまのおくとも いそかれす すみはてぬへき こころならねは | 祐春 |
1979 | うきよをは いとひそはてぬ あらましの こころはやまの おくにすめとも | 隆泰 |
1980 | いつまてか すまてこころに かかるへき ふかきみやまの みねのしらくも | 一条(昭慶門院) |
1981 | すてはてむ のちこそひとに よのうきを いはていとひし みともしられめ | 時常 |
1982 | ありはてぬ うきよのなかの かりのやと いつくにわきて こころととめむ | 兼季 |
1983 | しつかやに かこふやしはの かりのよは すみうしとても あはれいつまて | 後伏見院 |
1984 | ありとても うきみはよしや よしのかは はやくこのよを いとひはてなむ | 示証 |
1985 | うきことも ありはてぬよと おもはすは いつをかきりに みをなけかまし | 厳教 |
1986 | いまははや よをもうらみす みひとつの うきになしてそ ねはなかれける | 宣時女 |
1987 | みこそはや こころのままに なりにけり うしとおもひし よをのかれつつ | 定円(葉室光俊男)/定宗 |
1988 | なけかしよ うきみにそへる うきよとも しらてそやまの おくはもとめし | 公雄 |
1989 | すてしよの しるしやなにそ いまもなほ うきみはなれぬ わかなみたかな | 公雄 |
1990 | いけるみの ためとはかりに みしひとの なかきよまての ともとなりける | 実兼 |
1991 | いけるみの うさもわすれて のちのよの ともときくにそ いまはうれしき | 読人不知 |
1992 | いかにして なくさむものそ うきよをも そむかてすくす ひとにとははや | 兼好 |
1993 | よのなかを いてぬとなとか つけさりし おくれしとおもふ こころあるものを | 実定 |
1994 | ひとをさへ みちひくほとの みなりせは よをいてぬとは つけもしてまし | 寂蓮 |
1995 | うれしくそ またみぬやまの おくもみし よのうきときの やともとむとて | 実氏 |
1996 | おなしよを すつるこころの へたてなく ともにもとめむ みちそうれしき | 実兼 |
1997 | たつねいる おなしみちにと いそきてそ ころものいろも おもひそめにし | 実俊(西園寺公相男) |
1998 | いかにせむ つらきところの かすそへて よしののおくも すみよからすは | 実経 |
1999 | おいのみに よしののみねの すすわけて うきよをいつる みちはしりにき | 静仁法親王 |
2000 | なからへて ありはつましき ことわりを おもふよりこそ うきよなりけれ | 宗宣(北条宣時男) |
2001 | いくほとも あらしものゆゑ なからへて なにとうきよの ゆめをみるらむ | 順助法親王 |
2002 | さめやすき おいのねふりの ゆめにこそ いやはかななる ほとはみえけれ | 基氏(藤原基家男) |
2003 | つもりゆく わかよのほとの としつきは たたときのまの うたたねのゆめ | 覚助法親王 |
2004 | うつつたに おもふにたかふ ゆくすゑを みしゆめとても いかかたのまむ | 冬隆 |
2005 | ななそちの ゆめよりのちの いかならむ なかきねふりの はてそかなしき | 澄舜 |
2006 | こころをは ゆめのうちにそ なくさむる うつつはつらき うきよなれとも | 仁澄 |
2007 | いかにして うつつのうさを なくさめむ ゆめてふものを みぬよなりせは | 盛徳 |
2008 | よのなかは たたかりそめの くさまくら むすふともなき ゆめとこそみれ | 守誉 |
2009 | ゆめとのみ おもひなしてや やみなまし うきよしたはぬ こころなりせは | 御匣(式乾門院) |
2010 | ぬるかうちに ゆめをもゆめと おもはねは しらすいつれか うつつなるらむ | 実重(三条公親男) |
2011 | おとろかて こころのままに みるほとは ゆめもうつつに かはらさりけり | 為連/読人不知 |
2012 | よをわたる うつつもさそと あたにみて おもひしらるる ゆめのうきはし | 読人不知 |
2013 | よのなかは いつかはゆめと おもはねと うつつすくなき ころにもあるかな | 具平親王 |
2014 | きえはてし いくよのひとの あとならむ そらにたなひく くももかすみも | 良経(九条兼実男) |
2015 | ひとのよの ならひをしれと あきつのに あさゐるくもの さためなきかな | 後宇多院 |
2016 | たきつせに はやくおちくる みつのあわの ありとはみえて なきよなりけり | 覚仁法親王 |
2017 | おもひきや あふひをよその かさしにて たれもなみたの かかるへしとは | 大弐(修明門院) |
2018 | かたみそと みるになみたそ かかりける あふひはよその かさしとおもふに | 通忠母 |
2019 | おもへたた おいのいのちの なかきねに またねをそへて なけくこころを | 基忠(鷹司兼平男) |
2020 | おもはすよ こそのうきねを かたみにて けふもろともに しのふへしとは | 家定 |
2021 | あさかほの つゆにいのちを くらふれは はなのにほひは ひさしかりけり | 師氏(藤原忠平男) |
2022 | あさかほの はなはまかきに うゑてみむ つねならぬよを おもひしるやと | 花園院 |
2023 | なにことか おもひもおかむ すゑのつゆ もとのしつくの かかるうきよに | 内侍(永福門院) |
2024 | わすらるる ときこそなけれ あたにみし ととせのゆめの あきのおもかけ | 道性 |
2025 | あききりの はれぬなけきも ふかかりき かくれしつきの あかつきのそら | 慈道法親王 |
2026 | すみなれし みやこのやとに つきをみは ひとりむかしの かけやしのはむ | 維貞 |
2027 | うきあきの おなしあはれに むかしとも いまともわかす ぬるるそてかな | 一条(昭慶門院) |
2028 | わすれすよ きえにしつゆの くさまくら たたそのたひの なかきわかれは | 実重(三条公親男) |
2029 | いまさらに とふにもあきの くさまくら きえにしつゆの たひそかなしき | 為世(御子左藤原為氏男) |
2030 | きえはてし つゆのかたみの ことのはに なみたをそへて ぬるるそてかな | 読人不知 |
2031 | けふかはる そてのいろにも つゆきえし あはれやさらに おきところなき | 伏見院 |
2032 | おもへたた たのみしかけも いろかはる みやまのおくの あきのかなしさ | 久明親王 |
2033 | たつねはや みぬいにしへの あきよりも きみかすむらむ やとはいかにと | 下野(後鳥羽院) |
2034 | みやこひと なにのいろにか たつねみむ しくれぬさきの あきのやまさと | 為家 |
2035 | くちぬへし おもひやるたに しをるなる うきみのさかの あきのたもとは | 為家 |
2036 | しくれさへ かかるあきこそ かなしけれ なみたひまなき ころのたもとに | 新宰相(伏見院) |
2037 | きくもうし なみたのほかの ゆふしくれ ぬるるをいとふ そてならねとも | 教範 |
2038 | いかはかり しくるとかしる めくりあふ あきさへはての なかつきのそら | 定為 |
2039 | なきあとは かたみたになほ ととまらて あきもわかれと ちるこのはかな | 為氏 |
2040 | たちよりて しくれもしはし すくすへき ははそのもりの かけたにもなし | 遠久 |
2041 | をしむへき ひかすもあきも くれぬとや つゆはなみたの いろをそふらむ | 行深 |
2042 | けふはまた なかきわかれを したひてや あきよりのちも しかのなくらむ | 宗宣(北条宣時男) |
2043 | なきあとを しのふむかしの ともちとり おもひやるたに ねはなかれけり | 公守 |
2044 | すみすてし ひとはむかしに なりはてて はなにあととふ やとそふりぬる | 業尹 |
2045 | ひとのよも わかみひとつに かなしきは おなしこころの やみちなりけり | 雅有 |
2046 | かなしさの つきひにそへて いまよりは わかみひとつに とまるへきかな | 信明 |
2047 | おくれゐて なけくたにこそ かなしけれ ひとりややみに きみまよふらむ | 読人不知 |
2048 | おもふらむ こころやいかに なへてよの さらぬわかれと いひはなすとも | 重家 |
2049 | いさやまた さらぬわかれも ならはねは なほさめやらぬ ゆめかとそおもふ | 俊恵 |
2050 | おもかけを こころにのこす おもひねの ゆめこそひとの かたみなりけれ | 道性 |
2051 | はかなしや これはゆめかと おとろかて なかきよすから さめぬこころは | 良教 |
2052 | ゆめのよを みてそおとろく うつつにて おくれさきたつ ならひありとは | 源恵 |
2053 | おとろけは ゆめをのみきく よなりけれ まとろむほとや うつつなるらむ | 氏久 |
2054 | うつつとも ゆめともわかぬ おもかけの みにそひなから わかれぬるかな | 貞房 |
2055 | しはしこそ うきをゆめとも たとりしか さめぬうつつの はてそかなしき | 兼胤 |
2056 | おとろかぬ こころそつらき めのまへに さためなきよの ゆめはみれとも | 慈寛 |
2057 | さむるより やかてなみたの みにそひて はかなきゆめに ぬるるそてかな | 宗秀(大江時秀男) |
2058 | かせにちる まくすかつゆは むすへとも きえにしひとそ またもかへらぬ | 憲淳 |
2059 | よしさらは このたひつきね わかなみた またもあるへき わかれならねは | 国冬 |
2060 | ききそふる よのはかなさに おとろかて さていつまての みとおもふらむ | 覚円 |
2061 | をりをりに あらましかはと おもひいつる こころそいまも かはらさりける | 忠性 |
2062 | こころたに かよははこけの したにても さそなあはれと みつくきのあと | 氏村 |
2063 | ゆくさきの みちもおほえす たかのやま これをわかれの はてとおもへは | 憲基 |
2064 | みゆきとは ききなれしかと このやまの けふりをはてと おもひやはせし | 覚守 |
2065 | とりへやま はれせぬみねの うきくもや なきかかすそふ けふりなるらむ | 御匣(式乾門院) |
2066 | たちのほる けふりもくもも きえにしを なみたのあめそ はるるよもなき | 久明親王 |
2067 | みにかへて とむるならひも ありもせは われそこよひの けふりならまし | 宗成 |
2068 | あはれなほ とまるいのちも あるものを かはるならひの なとなかるらむ | 蓮生法師 |
2069 | すゑとほく おもひしひとを さきたてて しはしうきよに のこるはかなさ | 道昭 |
2070 | おのつから とははおもひも なくさまて またなみたそふ すみそめのそて | 重綱(藤原) |
2071 | いととなほ なみたのいろの ふかきかな ふたたひきつる すみそめのそて | 読人不知 |
2072 | たちそめし ときはうかりし ふちころも またぬきかふる はてそかなしき | 基任 |
2073 | ことしわか きるへきものを あさころも よそなるさへそ いととつゆけき | 実泰 |
2074 | ぬきかふる そてのわかれの ふちころも みにそふつゆは さてもかわかし | 実氏 |
2075 | みそかあまり けふとふのりの ことのはに しるやなみたの つゆかかるとは | 小督(昭訓門院) |
2076 | わきてかく とはるるのりの ことのはや けふゆくみちの しるへなるらむ | 公宗母 |
2077 | なきかけの あととふけふの なこりさへ くれなはまたや とほさかりなむ | 宗秀(藤原宗泰男) |
2078 | いきてよに あらはとひとを おもふにも けふこそそては なほしをれけれ | 時仲 |
2079 | くらへはや たれかまさると ととせあまり おなしみとせの あきのなみたを | 道性 |
2080 | なきあとに なほたちのほる くらゐやま ありてきくよと おもはましかは | 雅有 |
2081 | ひさかたの あまのいはとの あけしより いつるあさひそ くもるときなき | 後嵯峨院 |
2082 | たみやすく くにゆたかなる みよなれは きみをちとせと たれかいのらぬ | 内実 |
2083 | いけみつに みきはのまつの うつるより つきもちとせの かけやそふらむ | 順徳院 |
2084 | ちきりても としのをなかき たまつはき かけにやちよの かすそこもれる | 土御門院 |
2085 | おなしくは やほよろつよを ゆつらなむ わかここのへの にはのくれたけ | 後二条院 |
2086 | ひくひとも なくてちとせを すくしける おいきのまつの かけにやすまむ | 道長 |
2087 | けふよりは ねのひのこまつ ひきうゑて やほよろつよの はるをこそまて | 匡房 |
2088 | ねのひする こまつかはらの あさみとり かすみにちよの かけそこもれる | 有家(藤原重家男) |
2089 | まつならて なにをかひかむ ゆくすゑの ちとせのはるの けふのねのひに | 後宇多院 |
2090 | ふけしこそ おもひもいつれ ゆきのうちに いはひそめてし ちよのはつはる | 後宇多院 |
2091 | つもるへき ちとせのはるも しられけり こそにかはらぬ けふのみゆきに | 実兼 |
2092 | たましきの にはのくれたけ いくちよも かはらぬはるの うくひすのこゑ | 伏見院 |
2093 | うくひすの こゑのうちにも こもりけり みかきのたけの よろつよのはる | 万秋門院 |
2094 | さくはなを かしらのゆきに まかへても ちよのかさしは をりにあふらし | 公任 |
2095 | ちよまての おほみやひとの かさしとや くもゐのさくら にほひそめけむ | 定家 |
2096 | のとかなる みよのはるしる いろなれや くもゐのさくら うつろひもせぬ | 実泰 |
2097 | ときすきて さらにはなさく ふちなみの たちさかえゆく いまにもあるかな | 伏見院 |
2098 | たちかへり きみかためとや ふちなみも またときすきて はるにあふらむ | 基忠(鷹司兼平男) |
2099 | いつかとて まちしあやめも いまよりそ きみかちとせを かけてつかへむ | 家基(近衛基平男) |
2100 | あやめくさ ひきくらへても つかふへき ためしはなかき よにやのこらむ | 伏見院 |
2101 | はきのとの はなのしたなる みかはみつ ちとせのあきの かけそうつれる | 良経(九条兼実男) |
2102 | いまやしる かりねなりつる まつむしの ひとよにちよを こめてなくとは | 円融院 |
2103 | かせわたる たみのくさはも としあれは きみにそなひく ちよのあきまて | 基良 |
2104 | かきりなき やまちのきくの かけなれは つゆもやちよを ちきりおくらむ | 定家 |
2105 | きみかよは きくのしたゆく たにのみつ なかれをくみて ちとせをそまつ | 顕綱 |
2106 | ちとせまて かはらぬあきは めくりきて うつろはぬよの きくのさかつき | 亀山院 |
2107 | みつかきの ひさしきよより あととめて けふかさすてふ しらきくのはな | 後宇多院 |
2108 | よろつよの あきのかたみに なるものは きみかよはひを のふるしらきく | 顕仲(藤原資仲男) |
2109 | ももしきや みかきのまつも ゆきふれは ちよのしるしの はなそさきける | 俊成(藤原俊忠男) |
2110 | かすかやま まつふくかせの たかけれは そらにきこゆる よろつよのこゑ | 為家 |
2111 | わかきみの くらゐのやまし たかけれは あふかぬひとは あらしとそおもふ | 忠通 |
2112 | あきらけき みよそしらるる くらゐやま またうへもなく あふくひかりに | 万代(後醍醐院女蔵人) |
2113 | ちよふへき きみかみゆきに くらゐやま またわけのほる みねのしひしは | 祐親 |
2114 | ちよふへき きみかすみかの さかのやま いまもむかしの あとそかしこき | 良覚 |
2115 | きみかよの ちとせをかけて かめのをの いはねにたえぬ たきのしらいと | 為信 |
2116 | きみかよを いはふこころは かめのをの いはねのまつに こけおふるまて | 小弁 |
2117 | いまもまた かめのをやまの みねのまつ たえぬみかけと なほあふくかな | 実兼 |
2118 | あつめおく ことはのはやし ちりもせて ちとせかはらし わかのうらまつ | 後宇多院 |
2119 | はるあきの かけをならへて みつるかな わかすめらきの おなしひかりに | 後宇多院 |
2120 | くもりなき みよのひかりは かくしこそ いつるあさひの のとかなりけれ | 基良 |
2121 | くもりなき つきひのかけも きみかよの ひさしかるへき すゑてらさなむ | 公顕 |
2122 | つきもひも ひかりをそへて あきらけき きみかみよをは さそてらすらむ | 為方 |
2123 | あきらけき ひかりそしるき よろつよの はしめとあふく あきのよのつき | 貞時 |
2124 | いまもなほ くもりなきよと いのるかな きみかためなる みつのかかみに | 雅有 |
2125 | わかのうらに みかけるたまを ひろひおきて いにしへいまの かすをみるかな | 為氏 |
2126 | よよふとも たえすそすまむ むかしより なかれひさしき さほのかはみつ | 重家 |
2127 | ゆくすゑも いくよのしもか おきそへむ あしまにみゆる つるのけころも | 定家 |
2128 | ちきりおかむ わかよろつよの ともなれや たけたのはらの つるのもろこゑ | 後宇多院 |
2129 | きみはたた こころのままの よはひにて ちとせよろつよ かすもかきらし | 為相 |
2130 | わかきみの ちとせのかけを かかみやま とよのあかりに みるかたのしさ | 読人不知 |
2131 | ときはなる ちちのまつはら いろふかみ こたかきかけの たのもしきかな | 匡房 |