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「続古今和歌集」一覧

1918件


1なにたかき あまのかくやま けふしこそ くもゐにかすめ はるやきぬらむ定家
2いかはかり としのかよひち ちかけれは ひとよのほとに ゆきかへるらむ清輔
3けさみれは かすみのころも おりかけて しつはたやまに はるはきにけり兼実
4あさあけの かすみのころも ほしそめて はるたちなるる あまのかくやま土御門院
5あさみとり かすみのころも いつのまに はるきにけりと けさはたつらむ為家
6いつくより はるはきぬらむ あまのとの あくるもまたす たつかすみかな後嵯峨院
7おほともの みつのはままつ かすむなり はやひのもとに はるやきぬらむ宗尊親王
8ひさかたの あまのとあけて いつるひや かみよのはるの はしめなりけむ道家
9はるかすみ たちはそむれと みよしのの やまにけふさへ ゆきはふりつつ貫之
10かせさむみ またゆききえぬ しからきの とやまかすみて はるはきにけり宗尊親王
11いまもなほ ころもてさえて あつさゆみ はるともいはす ゆきはふりつつ良実
12おとはかは ゆきけのなみも いはこえて せきのこなたに はるはきにけり定家
13こほりゐし みつのしらなみ いはこえて きよたきかはに はるかせそふく良経(九条兼実男)
14はるかせに いくへのこほり けさとけて よせぬにかへる しかのうらなみ後鳥羽院
15おとはかは たきのみなかみ ゆききえて あさひにいつる みつのしらなみ道家
16かすかのや またしもかれの はるかせに あをはすくなき をきのやけはら順徳院
17みわたせは わかなつむへく なりにけり くるすのをのの をきのやけはら長方
18わかなつむ をきのやけはら なほさえて そてにたまるは はるのあはゆき忠良
19きえそむる ゆきまもあらは とふひのに はやしたもえの わかなつみてむ実雄
20わかなつむ わかころもても しろたへに とふひののへは あはゆきそふる為家
21あさみとり かすみのころも はるはきぬ すそののわかな いまやつままし家良
22うちむれて わかなつむのの はなかたみ このめもはるの ゆきはたまらす家隆
23たかための わかなならねと わかしめし のさはのみつに そてはぬれつつ土御門院
24しらゆきの きえあへぬのへの こまつはら ひくてにはるの いろはみえけり土御門院
25ねのひして きみさかえぬる ためしには けふのみゆきを よにはのこさむ兼盛
26めつらしき きみかねのひの まつをこそ よろつよまての ためしにはひけ経実
27ねのひせし ちよのふるみち あととめて むかしをこふる まつもひかなむ後嵯峨院
28おほかたの はるのけしきに さそはれて しるへもまたぬ うくひすのこゑ後嵯峨院
29ももちとり けさこそきなけ ささたけの おほみやひとに はつねまたれて亀山院
30はるやとき くさはもみえぬ ゆきのうちに むすほほれたる うくひすのこゑ実氏
31うちきらし たまらぬゆきの はなのえに うつりにけりな うくひすのこゑ公経(藤原実宗男)
32うめかえに こそのやととふ うくひすの はつねもさむく あはゆきそふる道助法親王
33うくひすも はなにまかふる ゆきなれや をりもわかれぬ こゑのきこゆる上東門院
34うめかえに ふりかさなれる しらゆきを やへさくはなと おもひけるかな花山院
35くれなゐに にほはさりせは ゆききえぬ のきはのうめを いかてしらまし基俊
36さわらひは いまはをりにも なりぬらむ たるみのこほり いはそそくなり俊成(藤原俊忠男)
37はるやとき はなのみやこは なのみして ゆきけのつきは かせもにほはす家隆
38かさしをる みわのひはらの ゆふかすみ むかしやとほく へたてきぬらむ実氏
39あさみとり かすみにけりな いそのかみ ふるのにみえし みわのかみすき隆信
40やまのはに つきのいさよふ ゆふくれは ひはらかうへも かすみわたれり赤人
41ここにきて かすかのさとを みわたせは こまつかうへに かすみたなひく人麿
42はるきては かすみそうつむ しらゆきの ふりかくしてし みねのまつはら宗尊親王
43なみまより ゆふひかかれる たかさこの まつのうははは かすまさりけり順徳院
44みつしほに かくれぬいその まつのはも みらくすくなく かすむはるかな定家
45しほかまの うらのひかたの あけほのに かすみにのこる うきしまのまつ後鳥羽院
46こころあらむ ひとのためとや かすむらむ なにはのみつの はるのあけほの後鳥羽院
47みすはまた くやしからまし みつのえの うらしまかすむ はるのあけほの後嵯峨院
48はるのよの あけのそほふね ほのほのと いくやまもとを かすみきぬらむ良平
49あかしかた ゑしまをかけて みわたせは かすみのうへも おきつしらなみ俊成(藤原俊忠男)
50さほひめの とこのうらかせ ふきぬらし かすみのそてに かかるしらなみ光俊(葉室光親男)
51わたつうみの なみのちさとや かすむらむ やかぬしほせに たつけふりかな宗尊親王
52けふりたつ あまのとまやも みえぬまて かすみにけりな しほかまのうら経信
53なにはえの しほひのかたや かすむらむ あしまにとほき あまのいさりひ順徳院
54あしのやの なたのしほやの あまのとを おしあけかたそ はるはさひしき順徳院
55はるのよの おほろつきよの なこりとや いつるあさひも なほかすむらむ家隆
56はるのきる かすみやそらに かさぬらむ あまつをとめの あまのはころも道家
57きみさそふ しるへにそやる うくひすも きゐるのきはの うめのにほひを亀山院
58さきなはと またれしうめの はなのかに こぬひとたのむ はるのやまさと為氏
59とはるへき やととはなしに うめのはな ひとたのめなる かににほふらむ大納言典侍(後嵯峨院)
60けふもまた ひともとはてや くれなゐの こそめのうめの はなのさかりを宗尊親王
61のもやまも にほひにけりな くれなゐの こそめのうめの はなのしたかせ実氏
62たかさとの うめのたちえを すきつらむ おもひのほかに にほふはるかせ実氏
63うちわたす をちかたひとは こたへねと にほひそなのる のへのうめかえ定家
64はるかせの そらなるほとは うめのはな こすゑのほかも かににほひつつ義孝(藤原敦舒男)
65おもひいてて みにこさりせは うめのはな たれににほひの かをうつさまし伊勢
66わかやとに ふきくるかせの にほへるは かきねのうめの はなやちるらむ兼盛
67うめのはな ちりぬるまてに みえさりし ひとくとけさは うくひすそなく光孝天皇
68わかやとに さきたるうめを つきかけに よなよなきつつ みむひともかな人麿
69やまのはに かすめるつきは かたふきて よふかきまとに にほふうめかえ家良
70かすみとも くもともわかぬ ゆふくれに しられぬほとの はるさめそふる良経(九条兼実男)
71あさみとり そめかけたりと みるまてに はるのやなきは もえいてにけり赤人
72ぬれてほす みとりもふかし はるかせに なみよるきしの あをやきのいと通方
73ひとかたに なひきにけりな たにかせの ふきあけにたてる あをやきのいと宗尊親王
74つゆにたに むすほほれたる あをやきの いととみたれて はるかせそふく教定(飛鳥井雅経男)
75くもはなほ よものはるかせ ふきはらへ かすみにゆるす おほろつきよそ家隆
76うきみには さこそこころの はれさらめ みるかけさへに かすむつきかな親子(典侍親子朝臣)
77はるはなほ かすむにつけて ふかきよの あはれをみする つきのかけかな小宰相(土御門院)
78つきかけの かすむはうきを いかにして はるはあはれと おもひそめけむ顕朝
79あすかかせ かはおとふけて たをやめの そてにかすめる はるのよのつき宗尊親王
80さほひめの かすみのそても たれゆゑに おほろにやとる はるのつきかけ家隆
81つきのこる かたやまききす こゑたてて あくるもをしく かすむそらかな実氏
82ほのほのと かすめるやまの しののめに つきをのこして かへるかりかね家良
83かへりゆく こしちのゆきや さむからむ はるはかすみの ころもかりかね讃岐(二条院)
84たかなかに とほさかりゆく たまつさの はてはたえぬる はるのかりかね家隆
85いまはとて やまとひこゆる かりかねの なみたつゆけき はなのうへかな良経(九条兼実男)
86まちわふる とやまのはなは さきやらて こころつくしに かかるしらくも為家
87あたならぬ いろとおもはは さくらはな まつもこころは のとけからまし基平(近衛兼経男)
88みわたせは ふもとはかりに さきそめて はなもおくある みよしののやま宮内卿(後鳥羽院)
89よそにみる かつらきやまの しらくもに かせこそにほへ はなやさくらむ民部卿典侍(後堀河院)
90さくらはな さきぬるときは かつらきの やまのすかたに かかるしらくも家隆
91しらくもや はなよりうへに かかるらむ さくらそたかき かつらきのやま順徳院
92かつらきや たかまのやまの はなさかり くものよそなる くもをみるかな有家(藤原重家男)
93ゆくままに はなのこすゑに なりにけり よそにみえつる みねのしらくも清輔
94よしのやま はなよりおくの しらくもや かさなるみねの さくらなるらむ雅有
95しらくもの かかれるやまと みえつるは こほれてはなの にほふなりけり高遠
96さくらいろの はつはなそめの かりころも きつつやなれむ はるのこのもと実氏
97いつくにか はるのこころも ととむへき ゆききにさける やまさくらかな長能
98ひにみかく たまきのみやの さくらはな はるのひかりと うゑやおきけむ定家
99くももみな うすはなそめに なりにけり さくらにうつる はるのあけほの公相
100はることに おもひやられし みよしのの はなはけふこそ やとにさきけれ後嵯峨院
101さほひめも やまのさくらや かさすらむ かすみのそての はなにかかれる宗尊親王
102たをやめの ころものそてや にほふらむ をりはへかさす はなのしらくも教実
103はつせめの みねのさくらの はなかつら そらさへかけて にほふはるかせ為家
104やまさくら あくまていろを みつるかな はなちるへくも かせふかぬよに兼盛
105ふくかせも をさまれるよの うれしきは はなみるときそ まつおほえける後鳥羽院
106かつみても あかぬこころの いろならは うつるはかりや はなにそめまし行家(藤原知家男)
107くれやすき はるのひかけと おもふこそ はなみてあかぬ こころなりけれ経平(衣笠家良男)
108みてもなほ しつのをたまき なかきひの くるるもあかぬ やまさくらかな為経(甘露寺藤原資経男)
109ふくかせの さらぬならひも わすられて ちよともなけく はなのかけかな按察(鷹司院)
110さかぬまは たれかはとひし わかやとの はなこそひとの なさけなりけれ兼実
111けふこすは にはにやあとの いとはれむ とへかしひとの はなのさかりを良経(九条兼実男)
112めかれせぬ やとのさくらの はなさかり わかこころさへ ちるかたそなき後嵯峨院
113ちらぬまの はなのかけにて くらすひは おいのこころも ものおもひもなし良実
114はなみても はるのこころの のとけきは おいてよにふる すみかなりけり家良
115さくらかり かすみのしたに けふくれぬ ひとよやとかせ はるのやまもり定家
116はなのいろの をられぬみつに こすさをの しつくもにほふ うちのかはをさ定家
117いのちあれは おほくのはるに あひぬれと ことしはかりの はなはみさりつ顕輔
118かへりこぬ むかしをはなに かこちても あはれいくよの はるかへぬらむ実氏
119はしたかの すゑののはらの さくらかり しらふにはなの いろをまかへて後鳥羽院
120ふるさとの はなにむかしの こととはは いくよのひとの こころしらまし成範
121たのまれす はなのこころを おもへはや ちらぬさきより うくひすのなく元方
122かつみつつ あかすとおもへは さくらはな ちりなむのちそ かねてこひしき貫之
123このさとの さくらをくもと なかめつる みやこそかすむ はるのゆふくれ実氏
124なかめても みそふりまさる さくらはな やまとしたかき ゆきにまかへて実氏
125よしさらは ちるまてはみし やまさくら はなのさかりを おもかけにして為家
126ちきりおきし はなのころしも おもふかな としにまれなる ひとのつらさは月花門院
127さきたつる こころをしらて さくらはな たつねぬひとに なりやしぬらむ中宮(堀河院)
128よしのやま さくらにかかる ゆふかすみ はなもおほろの いろはありけり後鳥羽院
129ゆふやみは あなおほつかな つきかけの いてはやはなの いろもまさらむ人麿
130やすらはて ねなむものかは やまのはに いさよふつきを はなにまちつつ良経(九条兼実男)
131さきにほふ はなをひかりに さしそへて このまをいつる はるのよのつき道良
132あかすみる はなのこのまを もるつきに おもかけとめよ くものうへひと実氏
133ちりかかる はなのかかみの みつのおもに かさねてくもる はるのよのつき資平
134いまはとて つきもなこりや をしむらむ はなちるやまの ありあけのそら冬忠
135いまはとて はるのありあけに ちるはなや つきにもをしき みねのしらくも讃岐(二条院)
136いまはまた ゆきとふりつつ かかみやま みしにはかはる はなのかけかな知家
137すかのねの なかきひなれと さくらはな ちるこのもとは みしかかりけり躬恒
138にはのうへに ふきまふかせの なかりせは ちりつむはなを そらにみましや経信
139ふきのほる きそのみさかの たにかせに こすゑもしらぬ はなをみるかな長明
140うらむへき かせのやとりを しらねはや ちるをははなの うきになすらむ基平(近衛兼経男)
141やまさくら われとやあたに さきそめし はなのなたての はるかせそふく良実
142さらてたに しつこころなく ちるはなを あかすやかせの なほさそふらむ性助法親王
143ちりつもる はなのしらゆき ふきわけて かせこそにはの あとはみせけれ良教
144ふきはらふ このしたかせに かつきえて つもらぬにはの はなのゆきかな通具
145はるかせに しられぬはなや のこるらむ なほくもかかる をはつせのやま丹後(宜秋門院)
146もろともに なかむるをりの はなならは ちらすかせをも うらみさらまし枇杷皇太后宮
147ゆめのうちも うつろふはなに かせふけは しつこころなき はるのうたたね式子内親王
148おもひねの ゆめちににほふ はなをさへ しはしもみせぬ かせのおとかな忠良
149かすみつつ はなちるみねの あさほらけ のちにやかせの うさもしられむ丹後(宜秋門院)
150ちりぬとも いかてかしらむ やまさくら はるのかすみの たちしかくせは人麿
151ちるにたに あはましものを さくらはな またぬははなの つらさなりけり躬恒
152やまさくら おほふはかりの かひもなし かすみのそては はなもたまらす家隆
153やまひめの かすみのそてや しをるらむ はなこきたれて はるさめそふる後鳥羽院
154くらきよの あめにたくひて ちるはなを はるのみそれと おもひけるかな一条院
155みにかへて おもへはなにか したふへき はなをとめても おなしわかれを基家
156をしまれて とまるならひの はなならは さそふあらしに みをやかへまし実氏
157こころあらは かせもやひとを うらみまし をるはさくらの をしからぬかは俊頼(源経信男)
158よしのかは はなにもみつや まさるらむ ちれはおちそふ たきのしらなみ成茂
159みなそこに しつめるはなの かけみれは はるはふかくも なりにけるかな是則
160はるののに すみれつみにと こしわれそ のをなつかしみ ひとよねにけり赤人
161あさちふの をののしはふの ゆふつゆに すみれつむとて ぬるるそてかな後嵯峨院
162たまかはの きしのやまふき かけみえて いろなるなみに かはつなくなり後鳥羽院
163さきにほふ こしまかさきの やまふきや やそうちひとの かさしなるらむ光俊(葉室光親男)
164さきにけり なはしろみつに かけみえて たなかのゐとの やまふきのはな堀河(待賢門院)
165うつろへは はるはかきりの いろそとも いふにまされる やまふきのはな家良
166はやせかは なみのかけこす いはきしに こほれてさける やまふきのはな為家
167にほふより はるはくれゆく やまふきの はなこそはなの なかにつらけれ定家
168はるはたた かすみはかりの やまのはに あかつきかけて つきいつるころ定家
169なかめこし やまのすゑのの ゆふかすみ そのいろとなく をしきはるかな忠定(藤原兼宗男)
170さきにけり ぬれつつをりし ふちのはな いくかもあらぬ はるをしらせて宗尊親王
171ぬれつつも をりてかへらむ いしはしる たきついはねに かかるふちなみ家隆
172ときはなる まつのなたてに あやなくも かかれるふちの さきてちるかな貫之
173けふくれて あすになりなは ふちなみの かけてのみこそ はるをしのはめ醍醐天皇
174なにゆゑに はるのわかれは をしきそと とふへきはなの ちりにけるかな慈円
175ゆくはるの せきにしとまる ものならは あふさかやまの はなはちらしな後三条院
176まれにあふ やよひのつきの かすそへて はるにおくれぬ はなをみるかな光俊(葉室光親男)
177かそへては のこりいくかと またれつる わかれにはるの なりにけるかな光俊(葉室光親男)
178なからへて さてもいくたひ をしむらむ みにかへつへき はるのわかれを通雅
179あはれとは わかみのみこそ おもひけれ はかなくはるを すくしきぬれは千里
180おいぬれは はるのくるるも をしきかな いそくひかすも いのちならすや元方
181ひとはいさ おいぬるみには おほかたの はるのわかれも かなしかりけり実氏
182きのふまて なれしたもとの はなのかに かへまくをしき なつころもかな土御門院
183けふよりは ちよをかさねむ はしめとて まつひとへなる なつころもかな良経(九条兼実男)
184はなそめの そてさへけふは たちかへて さらにこひしき やまさくらかな宗尊親王
185くものゐる とほやまとりの おそさくら こころなかくも のこるいろかな宗尊親王
186たつねはや あをはのやまの おそさくら はなののこるか はるのとまるか後嵯峨院
187さくらたに ちりのこらはと いひしかと はなみてしもそ はるはこひしき俊頼(源経信男)
188あかさりし はるのへたてと みるからに かきねもつらき やとのうのはな宗尊親王
189さきてこそ へたてもみゆれ やまかつの あるかなきかに かこふうのはな家経(一条実経男)
190うのはなの まかきはくもの いつくとて あけぬるつきの かけやとすらむ為家
191をとめこか ゆふかみやまの たまかつら けふはあふひを かけやそふらむ家隆
192おもひやる かりねののへの あふひくさ きみをこころに かくるけふかな定家
193としをへて まつのをやまの あふひこそ いろもかはらぬ かさしなりけれ紀伊(祐子内親王家)
194なきぬとも ひとにかたらし ほとときす たたしのひねは われにきかせよ小弁
195つきよりも まちそかねつる ほとときす みやまをいてむ ほとをしらねは公任
196かくはかり まつちのやまの ほとときす こころしらてや よそになくらむ村上天皇
197なにゆゑに しのふなるらむ ほとときす こゑたてぬねは くるしきものを花山院
198みにしらは はつねきかせよ ほとときす さつきをまつも くるしかるらむ後嵯峨院
199うくひすの ふるすのたけの ほとときす よをかそへてや さつきまつらむ教実
200ほとときす なれよなにとて なくこゑの さつきまつまは つれなかるらむ具氏
201たのめぬを われのみまちて ほとときす つれなきものと いひやなすへき家良
202まちわひぬ いかなるさとの ねさめにか やまほとときす はつねなくらむ忠家(藤原教実男)
203ほとときす みわのかみすき すきやらて とふへきものと たれをまつらむ通光
204ほとときす まつゆふくれの むらさめは きなかぬさきに そてぬらしけり俊成(藤原俊忠男)
205まちあかす やとにはなかて ほとときす くもゐなからも すきぬなるかな■子内親王
206きかましや やまほとときす ひとこゑも まてとたのむる ひとなかりせは小左近
207ほとときす よふかきこゑは つきまつと おきていをねぬ ひとそききける躬恒
208ほとときす まつところには おともせて いつれのさとの つきになくらむ貫之
209まちわふる やとともしらす ほとときす くものいつくの つきになくらむ月花門院
210ひとこゑを あかすもつきに なきすてて あまのとわたる ほとときすかな宗尊親王
211ゆきやらて くらせるやまの ほとときす いまひとこゑは つきになくなり宗尊親王
212あしひきの やへやまこえて ほとときす うのはなかくれ なきわたるなり赤人
213わかことく ものおもふときや ほとときす みをうのはなの かけになくらむ敦忠
214うのはなの かけなかりせは ほとときす そらにやけふの はつねなかまし後鳥羽院
215かみやまに ゆふかけてなく ほとときす しひしはかくれ しはしかたらへ後鳥羽院
216さかきとり しめゆふもりの ほとときす うつきをかけて しのひねそなく為氏
217いまはまた ねにあらはれぬ ほとときす なみこすうらの まつとせしまに為家
218ひとよりも まつきけとてや ほとときす わかしめしのの かたになくらむ行家(藤原知家男)
219ほとときす なくひとこゑも あけやらす なほよをのこす おいのねさめに為家
220かはらすと ひとにかたらむ ほとときす むかしのこゑは われのみそきく実氏
221ふりにける あすかのさとの ほとときす なくねはかりや かはらさるらむ兼経
222あさとあけに たちいててきけは ほとときす やまのはみゆる かたになくなり信実
223あかてこそ とほさかるなれ ほとときす そをたにのちと たれにちきりて光俊(葉室光親男)
224またきかぬ ひとのためには ほとときす いくたひなくも はつねなりけり寂身
225くさのなに わすれやしぬる ほとときす さつきもとはぬ すみよしのさと国平
226さとわかす なけやさつきの ほとときす しのひしころは うらみやはせし小宰相(土御門院)
227ほとときす しのひしころの ひとこゑを いまはさつきと なきやふりなむ雅忠
228かきりなき なみたとみせて ほとときす おのかさつきの あめになくなり蓮生法師
229みかくれて おふるさつきの あやめくさ なかきためしに ひとはひかなむ貫之
230たまもかる いけのみきはの あやめくさ ひくへきほとに なりにけるかな堀河院
231みのうきに ひけるあやめの あちきなく ひとのそてまて ねをやかくへき和泉式部
232あやめおふる ぬまのいはかき かきくもり さもさみたるる きのふけふかな土御門院
233をやまたに まかするみつの あさみこそ そてはひつらめ さなへとるとて弁内侍(後深草院)
234くれかかる やまたのたこの ぬれころも ほさてやあすも さなへとるへき隆親(藤原隆衡男)
235ときすきは さなへもいたく おいぬへし あめにもたこは さはらさらなむ貫之
236けさたにも よをこめてとれ せりかはや たけたのさなへ ふしたちにけり読人不知
237さみたれは たなゐにもりし ささみつの あせこすまてに なりにけるかな崇徳院
238なつかりの あしのまろやの けふりたに たつそらもなき さみたれのころ教実
239さみたれに みつのみなかみ すみやらて さらすかひなき ぬのひきのたき行能
240たまほこや かよふたたちも かはとみて わたらぬなかの さみたれのころ定家
241おもひかは いかなるときの さみたれに せかてもみつの ふちとなるらむ少将(藻璧門院)
242さみたれに みかさまさりて うきぬれは さしてそわたる さののふなはし祐盛
243さみたれの つきてしふれは あすかかは おなしふちにて かはるせもなし雅成親王
244なかなかに しほくみたゆむ あまひとの そてやほすらむ さみたれのころ家隆
245さみたれは はれゆくそらの ほとときす おのかなくねは をやみたにすな家隆
246たかそての にほひをかせの さそひきて はなたちはなに うつしそめけむ土御門院
247むかしをは はなたちはなに しのひてむ ゆくすゑをしる そてのかもかな土御門院
248のきちかき はなたちはなの にほひきて ねぬよのゆめは むかしなりけり寂蓮
249にほひくる はなたちはなの そてのかに なみたつゆけき うたたねのゆめ俊成(藤原俊忠男)
250たをりつる はなたちはなに かをしめて わかたまくらに をしきそてかな讃岐(二条院)
251たかそての なみたなるらむ ふるさとの はなたちはなに つゆそこほるる慈円
252たちはなの はなちるさとの ほとときす かたこひしつつ なかぬひもなし旅人
253ともしして こよひもあけぬ たまくしけ ふたむらやまの みねのよこくも順徳院
254かたいとを よるよるみねに ともすひに あはすはしかの みをもかへしを定家
255はやせかは みをさかのほる かかりひの よとむとすれは あくるしののめ通光
256いさりひの うかへるかけと みえつるは なみのよるしる ほたるなりけり行成
257やきすてし あとともみえぬ なつくさに いまはたもえて ゆくほたるかな宗尊親王
258したもえや くるしかるらむ なくこゑも きこえぬむしの よはのおもひは帥(鷹司院)
259とふほたる おもひやなほも かくれぬの したはふあしの ねはしのへとも行家(藤原知家男)
260なつのよは まつひともなき まきのとも あけなからのみ あかしつるかな重之女
261つきのさす まきのいたとと しりなから たれあけよとて たたくくひなそ中務命婦
262てにむすふ いはゐのしみつ そこみえて かけもにこらぬ なつのよのつき実氏
263さらぬたに みるほともなき なつのよを またれていつる つきのかけかな覚性法親王
264あかつきの そらとはいはし なつのよは またよひなから ありあけのつき公相
265なつやまの ならのはそよき ふくかせに いりひすすしき ひくらしのこゑ後鳥羽院
266なくせみの はにおくつゆに あきかけて こかけすすしき ゆふくれのこゑ良経(九条兼実男)
267まつかせも はけしくなりぬ たかさこの をのへのくもの ゆふたちのそら宗尊親王
268かせさわく しのたのもりの ゆふたちに あめをのこして はるるむらくも実氏
269かやりひの けふりそのこる ゆふたちの くもはすきぬる をちのやまもと知家
270くれかたき なつのひくらし なかむれは そのこととなく ものそかなしき業平
271つゆをたに うちもはらはぬ とこなつは たかうきなかの はなにさくらむ行家(藤原知家男)
272みちのへの はにふのこやの ほとなきに あまりてかかる ゆふかほのはな政村
273さきにけり をちかたひとに こととひて なをしりそめし ゆふかほのはな小侍従(太皇太后宮)
274はしたての くらはしかはに かるくさの なかきひくらし すすむころかな後鳥羽院
275そまかはの やまかけくたす いかたしよ いかかうきねの とこはすすしき良経/兼実
276このころは なかるるみつを せきいれて こかけすすしき なかかはのやと光俊(葉室光親男)
277うちなひく しけみかしたの さゆりはの しられぬほとに かよふあきかせ定家
278ゆふすすみ みにしむはかり なりにけり あきのけしきの もりのしたかせ成実(藤原親実男)
279つのくにの なにはのさとの ゆふすすみ あしのしのひに あきかせそふく信実
280ゆふされは しののをささを ふくかせの またきにあきの けしきなるかな実能
281みそきかは さよふけかたに よるなみの かへるやなつの わかれなるらむ長雅
282なつくれて なかるるあさの ゆふはかは たれみなかみに みそきしつらむ家隆
283あすからは ゆくせのなみに みそきして はやくそとしの なかはすきぬる定家
284ときはいま あきそとおもへは ころもてに ふきくるかせの しるくもあるかな家持
285かきりあれは きのふにまさる つゆもなし のきのしのふの あきのはつかせ順徳院
286しらつゆの たましくをのの あさちはら かせよりさきに あきはきにけり実氏
287つゆむすふ ころもてすすし ねぬるよの みにしられてそ あきはきにける公基
288あききては いくかもあらしを ふくかせの みにしむはかり なりにけるかな式子内親王
289あききぬと いはぬをしるは ふくかせの みにしむときの こころなりけり少将内侍(後深草院)
290ふきそめて いくかもあらぬ あきかせに いとはやそての つゆけかるらむ実雄
291なみたより かつかつそてに つゆちりて まちしかひとの あきのはつかせ慈円
292もしほやく あまのとまやの しるへかは うらみてそふく あきのはつかせ定家
293みなとこす ゆふなみすすし いせのうみの をののふるえの あきのはつかせ宗尊親王
294うつせみの はにおくつゆも あらはれて うすきたもとに あきかせそふく雅経
295いまよりは すすしくなりぬ ひくらしの なくやまかけの あきのゆふかせ実朝
296まくすはひ をきのしけらぬ やとならは おそくやあきの かせをきかまし公実
297あききては かくこそありけれ ふくかせの おとさへつらき にはのをきはら亀山院
298みにしむは いかなるいろの つらさとも しらてかなしき あきのはつかせ兵衛佐(東二条院)
299ふけはこそ をきのうははも かなしけれ おもへはつらし あきのはつかせ政村
300をきのはに そよときこえて ふくかせに おつるなみたや つゆとおくらむ安法
301あきかせは さてもやものの かなしきと をきのはならぬ ゆふくれもかな家隆
302うらみよと なれるゆふへの けしきかな たのめぬやとの をきのうはかせ後鳥羽院
303ゆふされは まかきのをきを ふくかせの めにみぬあきを しるなみたかな土御門院
304あきのよの あやしきほとの たそかれに をきふくかせの おとをきくかな 斎宮女御
305ふきすくる おとはすれとも あきかせの やとるはをきの うははなりけり読人不知
306をきのはに ありけるものを はなゆゑに はるもうかりし かせのやとりは澄覚法親王
307ふきよれは みにもしみける あきかせを いろなきものと おもひけるかな友則
308あまのかは みつかけくさの あきかせに なひくをみれは ときはきにけり赤人
309あまのかは やすのかはらに ふねうけて あきかせふくと いもにつけこせ赤人
310あまのかは きりたちわたり けふけふと わかまつきみの ふなてすらしも房前
311くれをまつ くもゐのほとも おほつかな ふみみまほしき かささきのはし上東門院
312かささきの はしのたえまを くもゐにて ゆきあひのそらを なほそうらやむ東三条院
313あまのかは くもゐをわたる あきかせに ゆきあひをまつ かささきのはし道家
314あまのかは けふのふなては ほともなし ちきりそとほき わたりなりける素暹
315かささきの くもゐのはしの とほけれは わたらぬなかに ゆくつきひかな知家
316たなはたの こひやつもりて あまのかは まれなるなかの ふちとなるらむ宗尊親王
317いかはかり うれしからまし たなはたの まつよのかすの あふよなりせは顕房
318あふとても なれすやあらむ たなはたの まとほにきたる あまのはころも康資王母
319あまのかは またはつあきの みしかよを なとたなはたの ちきりそめけむ匡房
320いくとせの あきのひとよを かさぬらむ おもへはひさし ほしあひのそら亀山院
321あまのかは いかになかれて たなはたの としにあふせは かはらさるらむ為氏
322あまのかは もみちのはしや あきをへて わたれとたえぬ にしきなるらむ澄覚法親王
323たけのはに あさひくいとや たなはたの ひとよのふしの みたれなるらむ忠良
324あまのかは あかつきやみの かへるさに またたとらるる あさせしらなみ家経(一条実経男)
325たちかへる あまのかはなみ ふくかせの みにしむはかり つらきけふかな師時
326いとはやも さきにほふらし をやまたの かりほのやとの あきはきのはな実経
327あきはきの したはにつきの やとらすは あけてやつゆの かすをしらまし俊頼(源経信男)
328かりころも みたれにけりな あつさゆみ ひくまののへの はきのあさつゆ式子内親王
329きゆるたに をしけにみゆる あきはきの つゆふきおとす こからしのかせ大弐三位
330とへかしな にはのあきはき つゆけさの これよりまさる やとはあらしを按察(鷹司院)
331ひとりぬる とこはよさむの あきかせに したはいろつく にはのはきはら実雄
332はきのはな ちらはをしけむ あきのあめ しはしなふりそ いろのつくまて人麿
333はなのいろは こなたかなたに みゆれとも あきのこころは ひとつなりけり醍醐天皇
334さくはなを みれともあかぬ あきののは ゆきもやられす とまるともなし伊勢
335ゆふきりに ほのかにみゆる をみなへし われよりさきに つゆやむすはむ具平親王
336なにことを しのふのをかの をみなへし おもひしをれて つゆけかるらむ俊恵
337なひくとや ひとはみるらむ をみなへし おもふかたにそ かせもふきける読人不知
338をみなへし はなのたもとに つゆおきて たかゆふくれの ちきりまつらむ後鳥羽院
339しらつゆの たまくらののの をみなへし たれとかはせる けさのなこりそ経平(衣笠家良男)
340ゆくみつに かけをうつせる をみなへし したのこころを たれによすらむ時文
341うちまねく けしきことなる はなすすき ゆきすきかたく みゆるのへかな資綱
342ゆきすきぬ けしきともみす はなすすき まねくにとまる ひとしなけれは弁乳母
343はなすすき かせになひきて みたるるは むすひおきてし つゆやとくらむ深養父
344ものおもふ ひとのそてには あらねとも つゆけかりけり はなすすきかな親子(典侍親子朝臣)
345いとすすき こなたかなたに うゑおきて あたなるつゆの たまのをにせむ後嵯峨院
346とやまなる ならのはまては はけしくて をはなかすゑに よわるあきかせ宮内卿(後鳥羽院)
347はなすすき おほかるのへは からころも たもとゆたかに あきかせそふく宗尊親王
348ゆめちにそ さくへかりける おきてみむと おもふをまたぬ あさかほのはな宗尊親王
349しののめと ちきりてさける あさかほに たかかへるさの なみたおくらむ後鳥羽院
350おきてゆく たかかよひちの あさつゆそ くさのたもとも しほるはかりに定家
351なほふかく あはれやそはむ ふちはかま ぬしさためたる にほひとおもはは小宰相(土御門院)
352つゆのぬき あたにおるてふ ふちはかま あきかせまたて たれにかさまし土御門院
353ゆふくれは むくらのやとの しらつゆも おもひあれはや そてにおくらむ土御門院
354いかにせむ つゆははらはて あきかせの ふくにつけても ぬるるたもとを宗尊親王
355ふきはらふ のはらのかせの ゆふくれも そてにとまるは あきのしらつゆ実氏
356あきはなほ ゆふへよいかに こころにも しられぬつゆの そてにおくらむ顕朝
357このあきは むそちあまりに つゆそおく おいやゆふへの あはれとはなる知家
358ゆふまくれ しきたつさはの わすれみつ おもひいつとも そてはぬれなむ慈円
359あきよたた なかめすてても いてなまし このさとのみの ゆふへとおもはは定家
360いつもかく さひしきものか つのくにの あしやのさとの あきのゆふくれ家隆
361おほえすよ いつれのあきの ゆふへより つゆおくものと そてのなりけむ後鳥羽院
362みよしのの いはのかけちを ならしても なほうきときか あきのゆふくれ後鳥羽院
363そてのつゆを いかにかこたむ こととへと こたへぬそらの あきのゆふくれ後鳥羽院
364なかなかに かせもおとせぬ ゆふくれの みやまのあきは こころすみけり後鳥羽院
365ゆふくれは いかなるいろの かはれはか むなしきそらに あきのみゆらむ教家
366そてのうへに とすれはかかる なみたかな あないひしらす あきのゆふくれ宗尊親王
367なにことと こころにものは わかねとも あはれとそおもふ あきのゆふくれ良実
368なかむれは すすろにおつる なみたかな いかなるときそ あきのゆふくれ実氏
369われなから おもひもわかぬ なみたかな たそかれときの あきのならひは後嵯峨院
370いかなれは いつともわかぬ ゆふくれの かせさへあきは かなしかるらむ月花門院
371なみたさへ あきのものとは いつなりて くるれはひとの そてぬらすらむ小宰相(土御門院)
372いまよりも かさねてものの かなしくは たへてもいかか あきのゆふくれ重時
373ものをのみ さもおもはする さきのよの むくひやあきの ゆふへなるらむ信実
374ふくかせも わきてみにしむ ときそとは たかならはしの あきのゆふくれ公雄
375さひしさは いつくもおなし ことわりに おもひなされぬ あきのゆふくれ長時
376そのことと おもはてものの かなしきや あきのゆふへの ならひなるらむ経平(衣笠家良男)
377なくむしの こゑのいろには みえねとも うきはみにしむ あきのゆふくれ少将(藻璧門院)
378あきはこれ いかなるときそ われならぬ のはらのむしも つゆになくなり俊成(藤原俊忠男)
379つゆになく をはなかもとの きりきりす たかたまくらの なみたそふらむ宗尊親王
380あさちふの つゆふきむすふ こからしに みたれてもなく むしのこゑかな但馬(規子内親王家)
381ゆふされは つゆふきおとす あきかせに はすゑかたよる をののしのはら家良
382さとのあまの たくものけふり こころせよ つきのてしほの そらはれにけり後鳥羽院
383いてぬまの やまのあなたへ おもひこす こころやさきに つきをみるらむ頼政
384おほそらの くもものこさす ふきなして かせもつきまつ けしきなるかな後嵯峨院
385みしひとの たのめてふけし よひよひの つらさににたる やまのはのつき知家
386たれしかも くもゐはるかに とよくにの ゆふやまいつる つきをみるらむ知家
387つくはねの やまとりのをの ますかかみ かけていてたる あきのよのつき家隆
388たちのほる かはせのきりや はれぬらむ まきのをやまを いつるつきかけ実氏
389いつくより ゆきてはかへる つきなれは よなよなおなし やまをいつらむ光俊(葉室光親男)
390あなしふく ゆつきかたけに くもきえて ひはらのうへに つきわたるみゆ基家
391ふしのねの つきにあらしや はらふらむ かみたにけたぬ けふりなれとも後鳥羽院
392これをこそ くものうへとは おもひつれ はるかにつきの すみのほるかな崇徳院
393こころあらは ゑしのたくひも たゆむらむ こよひそあきの つきはみるへき順徳院
394ささなみや くにつみかみの ますかかみ かけてもすめる みよのつきかな道家
395いかなれは すまのせきやを もるつきの あかしのうらに なをととむらむ忠良
396きのくにや ゆらのみさきの つききよみ たまよせかくる おきつしらなみ師光(源師頼男)
397さとのなも ひさしくなりぬ やましろの とはにあひみむ あきのよのつき後嵯峨院
398すむつきの かけすさましく ふくるよに いととあきなる をきのうはかせ実氏
399おほつかな いかなるむかし さえそめて こよひのつきの なをのこしけむ俊頼(源経信男)
400みつのおもに かそへしあきの つきみれは そらにもいまそ なかはなりける帥(鷹司院)
401つきかけを こほりとみてや すきなまし いはもるみつの おとせさりせは登蓮
402のとかにも みゆるそらかな くもはれて いることおそき あきのよのつき侍従乳母
403おほそらも いけのおもても くもりなく こよひはみちて すめるつきかな師実
404こよひわれ よしののたけの たかねにて くももおよはぬ つきをみるかな行意
405くもこそは そらになからめ あつまのの けふりもみえぬ よはのつきかな実伊
406さしのほる ゐなのみなとの ゆふしほに ひかりみちたる あきのよのつき実氏
407かせわたる ゆらのみなとの ゆふしほに かけさしのほる つきのさやけさ政村
408しきたへの とこのうらわの なみまくら やとるやつきの うきねなるらむ定円(葉室光俊男)
409なにしおふ さかひやいつく あかしかた なほうらとほく すめるつきかな信実
410みなせかは こほるもつきの かけなれは なほありてゆく みつのしらなみ時直
411みるひとの こころはそらに あくかれて つきのかけのみ すめるやとかな経信母
412こころのみ もろこしまても うかれつつ ゆめちにとほき つきのころかな定家
413あちきなく なくさめかねつ さらしなや かからぬやまも つきはすむらむ後鳥羽院
414かきくもる こころいとふな よはのつき なにゆゑおつる あきのなみたそ良経(九条兼実男)
415たれとなく こころにひとの またるるや なかむるつきの さそふなるらむ慈円
416きみかこぬ なさけのほとも あらはさて しはしはつきに くものかかれな定家
417ひとをこそ またすもあらめ くもれとは いかかおもはむ あきのよのつき光俊(葉室光親男)
418ひととはぬ むくらのやとの つきかけに つゆこそみえね あきかせそふく宗尊親王
419そてのうへ まくらのしたに やとりきて いくとせなれぬ あきのよのつき定家
420いくめくり なれぬるあきを おもふにも おいてそつきに あはれそひける後嵯峨院
421なかめきて さのみつきせぬ なみたとも おいてしりぬる あきのよのつき家良
422あきのよの つきこそありけれ よのなかに いまもむかしの かたみはかりは為氏
423われならぬ くさはにつきの やとりてや そてよりほかの つゆをしるらむ行家(藤原知家男)
424つゆしけき はなのえことに やとりけり のはらやつきの すみかなるらむ俊成(藤原俊忠男)
425くさのはら のもせのつゆに やとかりて そらにいそかぬ つきのかけかな為家
426むさしのは つきのいるへき みねもなし をはなかすゑに かかるしらくも通方
427ふけゆけは あまつそらなる くももなし こころなかくそ つきはみるへき知家
428みるままに あきかせさむし あまのはら とわたるつきの よそふけにける為家
429やまのはは きよくみゆれと あまつそら たたよふくもの つきやかくさむ人麿
430うはたまの よはふけぬらし たまくしけ ふたかみやまに つきかたふきぬ家持
431なかきよは いつのひとまに ふけぬらむ めかれぬつきそ にしになりゆく公相
432わきてなほ ふけゆくかけの さやけきは にしこそあきと つきやすむらむ資平
433ありあけの そらにそにたる やまのはに いりかかりぬる つきのおもかけ後嵯峨院
434つきのいる こすゑはたかく あらはれて かはきりふかき をちのやまもと雅成親王
435あききりの あさたつやまに つまこめて またよふかしと しかのなくらむ為家
436ねられすや つまをこふらし しめのゆき むらさきのゆき しかそなくなる後嵯峨院
437よさむなる ほやのすすきの あきかせに そよさそしかも つまをこふらむ実経
438しのひかね つまやこふらむ さをしかの なみたもあまる をののしのはら基平(近衛兼経男)
439ややさむき をののあさちの あきかせに いつよりしかの なきはしめけむ資季
440いろかはる のはらのこはき たかあきに あらぬものゆゑ しかのなくらむ為氏
441あはてこし つまをこふとや あきののに ささわけてなく さをしかのこゑ弁内侍(後深草院)
442つれもなき つまをやたのむ あきかせの みにさむきよは しかもなくなり小宰相(土御門院)
443あきはきに みたるるつゆは なくしかの こゑよりおつる なみたなりけり貫之
444みやきのに しからむはきや ちりぬらむ あらはれてなく さをしかのこゑ順徳院
445ゆふされは をくらのやまに なくしかの こよひはなかす いねにけらしも舒明天皇
446このころの あきのあさけの きりかくれ つまよふしかの こゑのさやけさ人麿
447あまのかは あきのひとよの ちきりたに かたのにしかの ねをやなくらむ家隆
448やまさとは あきのねさめそ あはれなる そこともしらぬ しかのなくねに後白河院
449ともしせし はやましけやま しのひきて あきにはたへぬ さをしかのこゑ雅経
450をくらやま あきはならひと なくしかを いつともわかぬ なみたにそきく為家
451たれきけと こゑたかさこに さをしかの なかなかしよを ひとりなくらむ友則
452みかさやま つきさしのほる そらはれて みねよりたかき さをしかのこゑ道家
453をしかなく はやまのかけの ふかけれは あらしまつまの つきそすくなき定家
454われのみと こゑにもしかの たつるかな つきはひかりに みせぬあきかは定家
455つきかけに しかのねきこゆ たかさこの をのへのはきの はなやちるらむ兼盛
456あきのたの おしねいろつく いまよりや ねられぬいほの よさむなるらむ雅成親王
457ひたはへて もるしめなはの たわむまて あきかせそふく をやまたのいほ経信
458あしひきの やまたのいねの かたよりに つゆこきたれて あきかせそふく行念
459しらつゆの おくてのおしね うちなひき たなかのゐとに あきかせそふく実氏
460あききぬと くもゐのかりの こゑすなり こはきかもとや つゆけかるらむ権中納言(大宮院)
461はつかりの こゑにつけてや ひさかたの そらのあきをは ひとのしるらむ貫之
462あはれとも しらてやかりの すきつらむ ねさめにおつる おいのなみたを基家
463かりかねの きこゆるそらや あけぬらむ まくらにうすき まとのつきかけ家隆
464ふかくさや たかふるさとと しらねとも むかしわすれす ころもうつなり土御門院
465なかきよの あかつきかたの こからしに ねさめもしるく うつころもかな実氏
466うらかせや よさむなるらむ まつしまや あまのとまやに ころもうつなり通親
467こぬひとを まつよつもりの うらかせに とほさとをのは ころもうつなり具親
468まとほにて おともきこゆる すまのあまの しほやきころも うちすさふらし隆博
469まはきちる とほさとをのの あきかせに はなすりころも いまやうつらむ宗尊親王
470たかためと しらぬきぬたの おとにさへ なみたうちそふ よそのころもて静仁法親王
471さらてたに みにしむよはの あきかせに いかなるいろの ころもうつらむ少将(藻璧門院)
472いまよりは みにしむものと あきかせの ふくにつけてや ころもうつらむ成実(藤原親実男)
473やまひこの こたふるやとの さよころも わかうつおとや ほかにきくらむ後嵯峨院
474あきかせは いたらぬそても なきものを たかさとよりか ころもうつらむ順徳院
475さらしなや よわたるつきの さとひとも なくさめかねて ころもうつなり順徳院
476ひさかたの かつらのさとの さよころも をりはへつきの いろにうつなり定家
477あかしかた むかしのあとを たつねきて こよひもつきに そてぬらしつる為家
478かめのをの たきつかはなみ たまちりて ちよのかすみる あきのよのつき通成
479あきやまの よものくさきや しをるらむ つきはいろそふ あらしなれとも順徳院
480さをしかの いるののすすき しもかれて たまくらさむき あきのよのつき素暹
481かつらきや とよらのてらの あきのつき にしになるまて かけをこそみれ具氏
482なかきよも あかすそみつる ひさかたの あまのとわたる ありあけのつき後鳥羽院
483みかつきの ありあけのかけに かはるまて あきのいくよを なかめきぬらむ良経(九条兼実男)
484ありあけの つきはたもとに なかれつつ かなしきころの むしのこゑかな赤染衛門
485きけはなほ なきこそまされ つきかけの ふくるやむしの うらみなるらむ秀茂
486むしのねも いかにうらみて まくすはふ をののあさちの いろかはりゆく雅経
487むしのねも ほのかになりぬ はなすすき あきのすゑはに しもやおくらむ実朝
488うらかれて したはいろつく あきはきの つゆちるかせに うつらなくなり俊成女
489ふくかせも さそさむからし うつらなく かちののをのの あきのゆふくれ実経
490ふかくさの やまのすそのの あさちふに ゆふかせさむみ うつらなくなり寂超
491ふかくさや たけのはやまの ゆふきりに ひとこそみえね うつらなくなり家隆
492あきののに たひねせよとや ゆふきりの ゆくへきかたを たちへたつらむ後三条院
493すまのあまの もしほのけふり たちそひて ゆくかたしらぬ せきのゆふきり月花門院
494あききりの たえまたえまを なかむれは そらにうきたる つきそなかるる淑景舎女御
495たれをかも こころもうきて かはきりの そらにまつらむ うちのはしひめ後嵯峨院
496あけぬとも えこそおもはね かはきりの けさもをくらの やまのふもとは実経
497いととまた よをなかつきの なにたてて あくるもしらぬ やまのあききり知家
498ゆきてみぬ ひとのためにと おもはすは たれかをらまし にはのしらきく宇多天皇
499はつしもと ひとついろには みゆれとも かこそしるけれ しらきくのはな俊蔭/後蔭
500ゆふくれに かせのふかすは きくのはな にほふまかきを いかてしらまし白河院
501よそにゆく あきのひかすは うつろへと またしもうとき にはのしらきく土御門院
502いまよりや とやまのいろも かはるらむ あきかせさむし しからきのさと宗尊親王
503あきのいろを いかにまちみむ ときはやま しくれもつゆも そめしとおもへは公朝
504このさとは いつしくれけむ をくらやま ほかにいろみぬ みねのもみちは家良
505たつたひめ しくれぬさきの はつしほは なににそめたる みねのもみちそ基雅
506こゑたてて しかそなくなる かみなひの いはせのもりは もみちすらしも為氏
507いまよりの しくれもつゆも いかならむ うつろひそめし かみなひのもり実氏
508きのふけふ しくるとみゆる むらくもの かかれるやまは もみちしぬらし実氏
509しくれぬと みゆるそらかな かりなきて いろつくやまの あきのむらくも宗尊親王
510くちなしの ひとしほそめの うすもみち いはてのやまは さそしくれけむ為家
511ほかよりは しくれもいかか そめさらむ わかうゑてみる やまのもみちは後嵯峨院
512はつしくれ やまのこのまを もりそめて こころつくしの したもみちかな資平
513をくらやま いまひとたひも しくれなは みゆきまつまの いろやまさらむ光俊(藤原知家男)
514こもりえの はつせのやまは いろつきぬ しくれのあめは ふりにけらしも坂上郎女
515かすかのに しくれふるみゆ あすよりは もみちかささむ たかまとのやま真楯
516くもとなり あめとなりてや たつたひめ あきのもみちの いろをそむらむ俊成(藤原俊忠男)
517ははそはら しくるるかすの つもれはや みるたひことに いろかはるらむ白河院
518みるままに ならのはかしは もみちして さほのわたりの やまそしくるる信実
519みるままに うつろひにけり しくれゆく けしきのもりの あきのもみちは教良
520あさなあさな しくれてみゆる こすゑこそ とやまのまつの たえまなりけれ経平(衣笠家良男)
521あきのいろに しくれぬまつも なかりけり はふきあまたの かつらきのやま公経(藤原実宗男)
522しくるれと よそにのみきく あきのいろを まつにかけたる つたのもみちは俊成女
523そめてけり まなくときなく つゆしもの かさなるやまの みねのもみちは実雄
524したはまて つゆもしくれも そほちつつ もりけるやまは うつろひにけり基平(近衛兼経男)
525つゆしくれ もらぬみかさの やまのはも あきのもみちの いろはみえけり為経(藤原資経男)
526そめてけり つゆよりのちも しもとゆふ かつらきやまの あきのもみちは通氏
527なほもまた やまちのすゑの しくるれは これよりふかき もみちをやみむ帥(鷹司院)
528ふりまさる なみたもあめも そほちつつ そてのいろなる あきのやまかな定家
529むらしくれ いくしほそめて わたつうみの なきさのもりの もみちしぬらむ家良
530いろかへぬ みわのかみすき しくれつる しるしはよその もみちなりけり則俊
531あきかせに なひくあさちは しもかれて いろことになる みねのもみちは順徳院
532きのふみて けふみぬほとの かせのまに あやなくもろき みねのもみちは公経(藤原実宗男)
533きのふけふ ちりこそまされ みしひとの こころもとめぬ やとのもみちは後嵯峨院
534よもちらし きみかちとせの やとなれは いろそまさらむ あきのもみちは光俊(藤原知家男)
535うきしつみ ふちせなかるる もみちはは ふかくあさくそ いろもみえける伊勢
536をしめとも あきはとまらぬ たつたやま もみちをぬさと そらにたむけて読人不知
537たつたかは もみちなかれて ゆくあきの つひによるせや いつくなるらむ親子(典侍親子朝臣)
538さらてたに なかめわひぬる ゆふくれの あきのかたみと なるそかなしき実氏
539ゆくあきの つゆのかたみも とめしとや くさはをかせの ふきみたるらむ忠良
540ゆくあきの かたみとたにも ちきりおけ うつろふきくの はなのしらつゆ為氏
541あらしふく やまのこのはの そらにのみ さそはれてゆく あきのくれかな為氏
542そらもなほ あきのわかれや をしむらむ なみたににたる よはのむらさめ宗尊親王
543やまのはは かくこそあきも しくれしか なにをけさより ふゆといふらむ忠岑
544いつしかと ふりそふけさの しくれかな つゆもまたひぬ あきのなこりに俊成(藤原俊忠男)
545おきまよふ しものしたくさ かれそめて きのふはあきと みえぬのへかな土御門院
546をしみえぬ なみたのつゆを かたみにて そてにのこれる あきもはかなし基家
547あきはいぬ かせにこのはは ちりはてて やまさひしかる ふゆはきにけり実朝
548ふゆきぬと いはぬをしるも わかそての なみたにまかふ しくれなりけり宗尊親王
549いつもふる そてのしくれに わかねとも そらこそくもれ ふゆやきぬらむ具氏
550そてぬらす さよのねさめの はつしくれ おなしまくらに きくひともかな実定
551そてぬらす おいそのもりの しくれこそ うきにとしふる なみたなりけれ光俊(藤原知家男)
552わかそての ほすひまあれや かみなつき たえたえにこそ そらもしくるれ読人不知
553たつたやま いまはこのはも かみなつき しくれにそへて ふりまさるなり成賢(祝部成茂男)
554このはさへ やまめくりする ゆふへかな しくれをおくる みねのあらしに越前(嘉陽門院)
555ふくかせに ちるたにをしき さほやまの もみちこきたれ しくれさへふる家持
556みむろやま しくれこきたれ ふくかせに ぬれなからちる みねのもみちは後鳥羽院
557こすゑにて なほそそめまし ゆふしくれ もろともにふる このはならすは伊長
558しはのとに あめとしくるる このはかな なみたのほかに そてはぬれねと為教
559よひのまは もらぬこのはに そてぬれて しくれになりぬ あかつきのそら慈円
560このはちる いくたのもりの はつしくれ あきよりのちを とふひともかな後鳥羽院
561おほあらきの もりのもみちは ちりはてて したくさかるる ふゆはきにけり顕仲(藤原資仲男)
562もみちはの ちるをぬさとや たむくらむ あらしふくなり かみなひのもり延秀/延季
563みなひとの あかすのみみる もみちはを さそひにさそふ こからしのかせ枇杷皇太后宮
564なかれゆく もみちのいろの ふかけれは たつたのかはは ふちせともなし躬恒
565かせわたる かはせのみつの しからみに なほあきかけて のこるもみちは為氏
566となせかは おとにはたきと ききつれと みれはもみちの ふちにそありける俊房
567あらしふく やまのあなたの もみちはを となせのたきに おとしてそみる経信
568おほゐかは もみちのいろは かはるとも ふるきなかれの あとはみゆらむ順徳院
569もみちはは いりえのまつに ふりぬれと ちよのみゆきの あとはみえけり道家
570にはのおもに たかさそひおく このはとて つもれはかせの またはらふらむ忠経
571にはのおもに あきみしはなは しもかれて いろのちくさに ちるこのはかな公基
572このはちる やまこそあらめ ひさかたの そらなるつきも ふゆそさひしき重時
573このころは つきこそいたく もるやまの したはのこらぬ こからしのかせ雅経
574このはさへ ふかくなりゆく やまちかな あらしもおくや はけしかるらむ実氏
575ゆふつくひ さすやをかへの こからしに まつをのこして ちるもみちかな師継
576もみちちる やまはあさひの いろなから しくれてくたる うちのかはなみ公経(藤原実宗男)
577そめつくす いろのちしほの はてはまた しくれてともに ふるこのはかな公経/家良
578しくるへき けしきをみする やまかせに まつさきたちて ふるこのはかな宗尊親王
579ははそちる いはたのをのの こからしに やまちしくれて かかるむらくも宗尊親王
580いてやこの しくれおとせぬ あかつきも おいのねさめは そてやぬらさぬ俊恵
581さらすとて そてやはかわく かみなつき なにとしくれの ふりそはるらむ按察(鷹司院)
582みやまへの まきのいたやに もるしくれ なみたならねと そてぬらせとや月花門院
583いなふねも とまひきおほへ もかみかは しはしはかりの しくれなりとも基家
584すくもたく うらのとまやの あしすたれ そらもすすけて ふるしくれかな実氏
585さらにまた おもひありとや しくるらむ むろのやしまの うきくものそら信実
586かたしきの ころもてさむく しくれつつ ありあけのやまに かかるむらくも後鳥羽院
587しろたへの ころもふきほす こからしの やかてしくるる あまのかくやま雅経
588ゆくすゑは いつれのやまに かかるらむ しくれてわたる そらのうきくも公親
589かせはやみ うきたるくもの ゆきかへり そらにのみして ふるしくれかな宗尊親王
590ふくかせの やとすこのはの したはかり しもおきはてぬ にはのふゆくさ定家
591しもうつむ かりたのこのは ふみしたき むれゐるかりも あきをこふらし良経(九条兼実男)
592いつれそと くさのゆかりも とひわひぬ しもかれはつる むさしののはら土御門院
593のへはみな しもかれにけり むらすすき ほのかにみえし さともあらはに季保
594ささのはに むすへるしもの とけぬれは もとのつゆとも なりにけるかな匡衡
595ひかけさす かれののまくす しもとけて すきにしあきに かへるつゆかな宗尊親王
596かれはてむ のちしのへとや しらきくの うつろふふゆは いろまさるらむ顕朝
597ちりはてて はななきときの きくなれは うつろふいろの をしくもあるかな醍醐天皇
598うつろはむ ときやみわかむ ふゆのよの しももひとつに さけるしらきく
599かれかれに しもおきまよふ ふゆのひの ゆふかけやまの みちのしはくさ基家
600あさあらしの やまのかけなる かはのせに なみよるあしの おとのさむけさ後嵯峨院
601なにはえや よるみつしほの ほとみえて あしのかれはに のこるあさしも後鳥羽院
602おきつしま しほかせいかに さむからし しもおきまよふ つるのけころも資季
603ときつかせ さむくふくらし かすゐかた しほひのちとり よはになくなり為家
604こゑたてて ちとりなくなり ふるさとの さほのかはかせ よさむなるらし為氏
605しほかせも よやさむからし おきつなみ たかしのはまに ちとりなくなり雅言
606さゆるよの ねさめのちとり をりからや よそのたもとに なみたそふらむ公相
607なくちとり そてのみなとを とひこかし もろこしふねの よるのねさめに定家
608ゆふくれの うらもさためす なくちとり いかなるあまの そてぬらすらむ土御門院
609なみのよる いそのうきねの さよまくら こととひすてて ゆくちとりかな宗尊親王
610しもかれの よこののつつみ かせさえて いりしほとほく ちとりなくなり光俊(葉室光親男)
611わたのはら ふくれはさゆる しほかせに やそしまかけて ちとりなくなり通方
612うたたねと おもひつるまに ふゆのよの ちとりなくまて ふけにけるかな小弁
613こころとや ひとりあかしの うらちとり ともまとふへき よはのつきかは寂蓮
614はしたてや よさのふけひの さよちとり とほよるおきに さゆるつきかけ家良
615いせしまや はるかにつきの かけさえて とほきひかたに ちとりなくなり基政(藤原基綱男)
616たれかまた なみたのつらら そてさえて しもよのつきに ものおもふらむ行家(藤原知家男)
617かくれぬと みれはたえまに かけもりて つきもしくるる むらくものそら守覚法親王
618ふかきよの くもゐのつきや さえぬらむ しもにわたせる かささきのはし順徳院
619みちのくの のたのたまかは みわたせは しほかせこして こほるつきかけ順徳院
620くもはらふ ひらやまかせに つきさえて こほりかさぬる まののうらなみ経信
621みよしのの たきつはやせに すむつきや ふゆもこほらぬ こほりなるらむ素暹
622あしかもの はらひもあへぬ しものうへに くたけてかかる うすこほりかな真昭
623よはにふく はまかせさむみ まののうらの いりえのちとり いまそなくなる式子内親王
624をしほやま まつかせさむし おほはらの さえののぬまや さえまさるらむ中務
625はるはると いそのうらなみ さえくれて こほれるくもの ゆくかたもなし実経
626ふゆくれは すさのいりえの こもりぬも かせさむからし つららゐにけり顕朝
627ふゆくれは こほりとみつの なをかへて いはもるこゑを なとしのふらむ俊成(藤原俊忠男)
628ふゆさむみ しのふのやまの たにみつは おとにもたてす さそこほるらむ親子(典侍親子朝臣)
629このねぬる よのまのかせや さえぬらむ かけひのみつの けさはこほれる近衛院
630いけみつを いかにあらしの ふきわけて こほれるほとの こほらさるらむ良経(九条兼実男)
631さえくれぬ けふふくかせに あすかかは ななせのよとや こほりはてなむ道家
632ふちせこそ さためなからめ あすかかは こほりてかはる なみのおとかな良教
633あすかかは ゆくせのみつの うすこほり こころありてや よとみそむらむ後嵯峨院
634ころもての たなかみかはや こほるらむ みをのやまかせ さえまさるなり実雄
635よしのかは たきつかはかせ おとさえて いはとかしはに こほるしらなみ為氏
636あしろもり さそさむからし ころもての たなかみかはも こほるしもよに為家
637うちわたす こまなつむなり しろたへに こほるまつちの やまかはのみつ知家
638ふゆかはの ふちともならて よとめるは いかにせをせく こほりなるらむ実伊
639はやきせに めくるみなわの うきなから こほりてとまる やまかはのみつ実経
640かちひとの みきはのこほり ふみならし わたれとぬれぬ しかのおほわた寂蓮
641けふりたつ おもひもしたや こほるらむ ふしのなるさは おとむせふなり後鳥羽院
642さえくらす みやこはゆきも ましらねと やまのはしろき ゆふくれのあめ定家
643おしなへて しくれしまては つれなくて あられにおつる かしはきのもり土御門院
644はかなくも ひろへはきゆる たまささの うへにみたれて ふるあられかな小宰相(土御門院)
645ぬれつつも しひてとかりの あつさゆみ すゑのはらのに あられふるらし道家
646はしたかの すすのしのはら かりくれて いりひのをかに ききすなくなり土御門院
647いりひさす ゆふかりをのの したはれて くさとるとりの あともかくれす知家
648はしたかの みよりのつはさ みにそへて なほゆきはらふ うたのみかりは家隆
649さののをか こえゆくひとの ころもてに さむきあさけの ゆきはふりつつ道家
650ふゆふかく のはなりにけり あふみなる いふきのとやま ゆきふりぬらし好忠
651ふりそめて ともまつゆきは まちつけつ やとこそいとと あとたえにけれ俊成(藤原俊忠男)
652をはつせや みねのときはき ふきしをり あらしにくもる ゆきのやまもと定家
653なにはひと あしひたくやに ふるゆきの うつみのこすは けふりなりけり守覚法親王
654みくまのや いくへかゆきの つもるらむ あとたにみえす うらのはまゆふ季宗(藤原成宗男)
655ふるゆきの はれゆくあとの なみのうへに きえのこれるや あまのつりふね泰時
656けふいくか ふるのかみすき みえぬまて たむけにあける ゆきのしらゆふ隆親(藤原隆衡男)
657とふひとも えやはまちみむ みわのやま ゆきにはみちの あらしとおもへは弁内侍(後深草院)
658とへかしな あともいとはて またれけり またそらはれぬ にはのしらゆき隆祐
659やまさとは ゆきのうちこそ さひしけれ さらぬつきひも ひとはとはねと尊海
660ふみわくる われよりさきの あとをみは ゆきそやまちの しをりならまし行家(藤原知家男)
661まつひとの ゆききのをかも しらゆきの あすさへふらは あとやたえなむ家隆
662あけぬとて いてつるひとの あともなし たたときのまに つもるしらゆき定家
663いととまた かりにもひとの あとたえて つもれはゆきの ふかくさのさと為氏
664いそのかみ ふるののみゆき ふみわけて いまそむかしの あともみるへき為経(藤原資経男)
665あまのはら くもまもみえす ふるゆきの いくかともなき みよしののやま家良
666ひさかたの そらもまかひぬ くもかかる たかまのやまに ゆきのふれれは実定
667いたつらに けふもかさねて ふりしきぬ けぬかうへなる やまのしらゆき信実
668まかきたに やまかとみゆる ゆふくれは をのへにつつく にはのしらゆき亀山院
669たつぬへき ともこそなけれ やまかけや ゆきとつきとを ひとりみれとも俊成(藤原俊忠男)
670つもりゆく おいとなるとも いかてかは ゆきのうへなる つきをみさらむ家隆
671さらてたに それかとまかふ やまのはの ありあけのつきに ふれるしらゆき為家
672ききなれし あらしのおとは うつもれて ゆきにそなひく みねのまつはら家隆
673けさみれは ゆきもつもりの うらなれや はままつかえの なみにつくまて慈円
674つきかけの もりこしほとそ つもりける をのへのまつの ゆきのしたみち知家
675ここのへの おほうちやまの いかならむ かきりもしらす つもるゆきかな公相
676わすれめや くものかよひち たちかへり をとめのそてを つきにみしよは後鳥羽院
677くものうへの とよのあかりに つきさえて しもをかさぬる やまあゐのそて亀山院
678けふにあふ とよのあかりの ひかけくさ いつれのよより かけはしめけむ資季
679しらゆきの ふりにしあとに かはらねは こよひやかみも こころとくらむ後嵯峨院
680しらゆきの ふりにしあとを たつねても こよひそいのる みよのちとせを兼経
681みちしあれは ふりにしあとに たちかへり またあふさかの せきのしらゆき良実
682としのうちの ゆきをきことの はなとみて はるをおそしと きゐるうくひす為家
683はるちかく なりぬるふゆの おほそらは はなをかねてそ ゆきはふりける貫之
684をのやまや やくすみかまに こりうつむ つまきとともに つもるとしかな俊成(藤原俊忠男)
685たちかへり としのゆくへを たつぬれは あはれわかみに つもるなりけり教長
686あらいその いはたちのほり よるなみの はやくもかへる としのくれかな讃岐(二条院)
687なからふる いのちはかりの かことにて あまたすきぬる としのくれかな定家
688ひととせは ひとよはかりの ここちして やそちあまりを ゆめにみるかな俊成(藤原俊忠男)
689われたのむ ひとのねかひを てらすとて うきよにのこる みつのともしひ稲荷
690われをしれ しやかむにふつの よにいてて さやけきつきの よをてらすとは春日明神
691なてしこの うすくもこくも ひくるれは みむひとわきて おもひさためよ道真
692たけのよも わかよもともに おいにしを くちはさやにも おけるしもかな道真
693まつのいろは にしふくかせや そめつらむ うみのみとりを はつしほにして道真
694からふねに のりまもりにと こしかひは ありけるものを ここのとまりに新羅明神
695おとにきく きぬかさをかを またみねは まちつつそふる あめのみやには雨の宮の神
696われあらは よもきえはてし たかのやま かたきみのりの のりのともしひ高野山明神
697おしなへて あめのしたにも ちはやふる かみちのやまの かみはくもらし躬恒
698をくるまの にしきたむくる かみちやま まためくりあふ としもきにけり後嵯峨院
699みやはしら たつるこよひの あきのつき またいくたひか めくりあふへき延季
700かみかせに こころやすくそ まかせつる さくらのみやの はなのさかりは西行
701かみかせや いすすのかはの いそのみや とこよのなみの おとそのとけき師継
702かみさひて あはれいくよに なりぬらむ なみになれたる あさくまのみや越前(嘉陽門院)
703ひさかたの つきのかつらの をとこやま さやけきかけは ところからかも兼直
704いはしみつ すみけるつきの ひかりにそ むかしのそてを みるここちする後鳥羽院
705まつもおひ またもこけむす いはしみつ ゆくすゑとほく つかへまつらむ貫之
706いはしみつ こかくれたりし いにしへを おもひいつれは すむこころかな後嵯峨院
707つかふへき われをもすつな すめらきの ももよをまもる かみとこそきけ頼実(藤原経宗男)
708ひさにへて きみきみなれと まもるらし ひとのくにより わかくにのため長時
709いさきよき みたらしかはの そこふかく こころをくみて かみはしらなむ高遠
710きりふかき かものかはらに まよひしや けふのまつりの はしめなりけむ実経
711きみみすや さくらやまふき かさしきて かみのめくみに かかるふちなみ隆信
712あめのした うけけるかみの こころこそ けふのみゆきの のちにみえけれ少将内侍(後深草院)
713かくしこそ かものやしろの ゆふかつら かみをさまれは しももみたれね少将内侍(後深草院)/光俊(葉室光親男)
714いのりおきし わかかねことの いやましに さかゆくみよは かみそしるらむ延成
715をしほやま をのへのまつの あきかせに かみよもふりて すめるつきかけ信実
716なにはつに ふゆこもりせし はななれや ひらののまつに ふれるしらゆき家隆
717さかきさす しはのかきとの かすかすに なほかけそふる ゆきのしらゆふ実氏
718よをいのり きみをいのると かみかきに わかみをしらて としそへにける忠成(祝部親成男)
719きみをいのる たたひとことの かみのみや ふたこころなき ほとはしるらむ氏久
720かすかのに いはふみむろの うめのはな さきつつまてや かへりくるまて清行/清河
721そのかみや いのりおきけむ かすかのの おなしみちにも たつねゆくかな道長
722かすかやま かみのこころは しらねとも いのりしままに みをたのむかな実氏
723かすかやま たむくるしての おとさえて このまのつきに あきかせそふく実氏
724かすかのや こそのやよひの はなのかに そめしこころは かみそしるらむ順徳院
725ちきりあれや かすかのやまの まつにしも かかりそめける きたのふちなみ良経(九条兼実男)
726ちはやふる かみよにうゑし はこさきの まつはひさしき しるしなりけり行清
727みやゐせし そのはしめにも いそのかみ ふるのやしろと ひとやいひけむ経家(六条重家男)/知家(六条重家男)
728いかはかり わかのうらかせ みにしみて みやはしめけむ たまつしまひめ良経(九条兼実男)
729かねてより わかのうらちに あとたれて きみをやまちし たまつしまひめ隆信
730にしのうみや あはきのうらの しほちより あらはれいてし すみよしのかみ兼直
731みやゐせし としもつもりの うらさひて かみよおほゆる まつのかせかな良経(九条兼実男)
732かみかきに みそめしまつも おいにけり おもひしらるる としのほとかな資長
733みそきせし すゑとたにみよ すみよしの かみよむかしを わすれはてすは隆親(藤原隆衡男)
734すみよしの かみのみむろの ゆふたすき こころにものの かからすもかな親子(典侍親子朝臣)
735すみよしの きしのみつかき かみさひて そのよもしらぬ まつのいろかな家良
736けふやまた さらにちとせを ちきるらむ むかしにかへる すみよしのまつ公相
737かみよかみ なほすみよしと みそなはせ わかよにたつる みやはしらなり後嵯峨院
738くまのかは せきりにわたす すきふねの へなみにそての ぬれにけるかな後嵯峨院
739みくまのの かみくらやまの いはたたみ のほりはてても なほいのるかな実氏
740なちのやま はるかにおつる たきつせに すすくこころの ちりものこらし御匣(式乾門院)
741よろつよを かさぬるこゑに しるきかな かきりもしらぬ きみかみよとは通親
742ここにまた ひかりをわけて やとすかな こしのしらねや ゆきのふるさと良経(九条兼実男)
743さかきはの ちえたのむらに ゆふしてて とよのあかりの たむけにそとる家衡
744ふかみとり いはとのやまの さかきはを さしてそいのる よろつよのため経光
745さくらはな おいかくるやと かさしても かみのいかきに みこそふりぬれ成茂
746みをつみて てらしをさめよ ますかかみ たかいつはりも くもりあらすな顕輔
747たれゆゑに ちりにましはる ひかりそと とははやかみの いかかこたへむ土御門院
748わかくには よるひるまもる かみしあれは たのむそやかて いのるなりける道家
749あまくたる かみのかこやま いまもしそ きみかためにと みるもかしこき為家
750まもれたた よものやしろの あまつかみ きみゆゑにこそ あともたるらめ基家
751みつのかは ひとつのうみと なるときは しやりふつのみそ まつわたりける伝教
752こののりを たたひとことも とくひとは とものほとけの つかひならすや伝教
753わかいのち なかしとききて よろこへる ひとはかならす ほとけとそなる伝教
754くもしきて ふるはるさめは わかねとも あきのかきねは おのかいろいろ慈覚
755あめふれは にはにうかへる うたかたの ひさしからぬは わかみなりけり赤染衛門
756つねならぬ わかみはゆめの おなしくは うからぬことを みるよしもかな公任
757よもすから ほとけのみちを もとむれは わかこころにそ たつねいりぬる源信
758あかつきの かねのこゑこそ うれしけれ なかきうきよの あけぬとおもへは源信
759うしとても おもひほとけは ゆめのよを いとふはひとの さめぬなりけり教家
760まことしく ほとけのみちを たつぬれは たたよのつねの こころなりけり教家
761こころなき よもののやまの くさきまて われをすつれは わかみなりけり教家
762いるつきの かへりてやみは てらすとも うきよにめくる かけはととめし定修
763さとりゆく こころのうちに すむつきは いてているへき やまのはもなし隆専
764うきかけは やとりもはてし あしかもの さわくいりえの あきのよのつき光俊(葉室光親男)
765むねのつき こころのみつも よなよなの しつかなるにそ すみはしめける土御門院
766なにとかは つきやあらぬと たとるへき わかもとのみを おもひしりなは後嵯峨院
767おほそらを むなしとみれは いとゆふの あるにもあらす なきにしもなし後嵯峨院
768のりのはな いまもふるえに さきぬとは もとみしひとや おもひいつらむ後嵯峨院
769あさことの かかみのうへに みるかけの むなしかりける よにやとるかな良経(九条兼実男)
770あさちはら かせをまつまの すゑのつゆ つひにはそれも もとのしつくを有家(藤原重家男)
771かそふれは とをちのさとに おとろへて いそちあまりの としそへにける崇徳院
772おなしのに わかぬしくれは そむれとも くさもこのはも いろかはりつつ公豪
773なみたをや ころものたまと むすひけむ ありときくより ぬるるそてかな寂蓮
774うれしさは そてにつつみし たまそとも けふこそききて みにあまりぬれ快雅
775きくひとも はるかにこれを あふけとて そらにそのりを とくこゑはせし忠通
776そのかみの ちきりくちねは いくよとも しらぬすかたを そらにみるかな公任
777わたつうみの そこのたまもに やとかりて みなみのそらを てらすつきかけ定家
778なをたにも きかぬみのりを たもつまて いかてちきりを むすひおきけむ崇徳院
779いまそしる こころのそらに すむつきは わしのみやまの おなしたかねと俊恵
780わしのやま いかにすみける つきなれは いりてののちも よをてらすらむ顕昭
781かりそめに よはのけふりと のほりしや わしのたかねに かへるしらくも俊成(藤原俊忠男)
782ゆくすゑも なからのはしの くちすして つくるよもなく ひとをわたさむ読人不知
783よのすゑの ひともやみにや まとふとて いらしとちかふ ありあけのつき忠通
784まちえたる わしのたかねの ほとときす たたふたこゑそ よもにきこえし聖憲
785ななそちの はるをかさねて ときそめし のりのころもの はなのしたひも隆弁
786わしのやま むかしのはるは とほけれと みのりのはなは なほにほひけり時広
787ゆくみつに ととまるいろそ なかりける こころのはなは ちりつもれとも良実
788かくしつつ なかきねふりの さめやせむ まつあかつきは はるかなれとも良覚
789うけとめし みのりのみつの ゆくすゑに やまのかひある なをなかすかな成源
790むそちまて いのちをそおもふ のりのみつ このよにすまは くみやはつると家良
791いとふなよ くるしきうみに よるなみも みのりのみつの ほかにやはたつ後鳥羽院
792くみてとふ ひとなかりせは いかにして やまゐのみつの そこをしらまし崇徳院
793おとにきく たまのいつみの すゑよりや みのりのみつの なかれそめけむ宗尊親王
794よををさめ たみをたすくる こころこそ やかてみのりの まことなりけれ宗尊親王
795みるからに まつさきたちて おつるかな なみたやのりの しるへなるらむ道信
796しのひつつ いくたひかける たまつさも おもふほとには いはれさりけり思順
797おとつるる おとになかなか やまさとの さひしさまさる ゆふしくれかな思順
798いにしへは ふみみしかとも しらゆきの ふかきみちこそ あともおほえね貞慶
799よをすてて すまれぬみこそ かなしけれ かかるみやまの あとをみなから実氏
800うらむなよ はなとつきとを なかめても をしむこころは おもひすててき良経(九条兼実男)
801おもひいれは ひともわかみも よそならす こころのほかの こころなけれは道家
802こころとて けにはこころも なきものを さとるはなにの さとるなるらむ実伊
803つゆわくる はなすりころも かへりては むなしとみるそ いろはありける信生
804みわかはの きよきなかれに すすきてし わかなをここに またやけかさむ玄賓
805まことには ほとけのくにも よそならす まよふかきりそ うきよともみる後鳥羽院
806ちかひあれは いつつのさはり あらためて むつのみちをや ゆきわかれなむ知家
807いにしへに いかなるちきり ありてかは みたにつかふる みとなりにけむ永観
808こくらくを ねかふおもひの けふりこそ むかへのくもと やかてなるらめ源信
809むらさきの くものむかへを まつはなほ こころのつきの はれぬなりけり智海
810うきみをも すてぬちかひを まちわひぬ むかへのくもよ そらたのめすな具親
811いろいろの はなのにほひを あさことに よものほとけに たむけつるかな証慧
812こころなき うゑきものりを とくなれは はなもさとりを さそひらくらむ隆弁
813あたにちる はなみるたにも あるものを たからのうゑき おもひこそやれ花山院
814いとふへき よのことわりの くるしさも うきみよりこそ おもひしりぬれ道然
815さたかにも うきよのゆめを さとらすは やみのうつつに なほやまよはむ澄覚法親王
816なにことも むなしきゆめと きくものを さめぬこころに なけきつるかな清輔
817なかきよの ゆめのうちにも まちわひぬ さむるならひの あかつきのそら長恵
818けふひける こまはのりこそ かしこけれ ほとけのみちに あふさかのせき源信
819わしのやま ふたたひかけの うつりきて さかののつゆに ありあけのつき寂蓮
820なにめてし さかののあきの をみなへし これもほたいの たねとしらすや後嵯峨院
821ゆめさめて ころものうらを けさみれは たまかけなから まよひけるかな慈恵
822ささなみや あふみのをとめ あすよりは みやまかくれて みえすかもあらむ顕宗天皇
823ふるさとの もみちみにゆく たひひとは にしきをきてや ひるはこゆらむ醍醐天皇
824たひころも いかてたつらむと おもふより とまるそてこそ つゆけかりけれ村上天皇
825よろつよを いのりにたつる つかひをは わかれもいたく をしまさらなむ円融院
826ゆきめくり あひみまほしき わかれには いのちもともに をしまるるかな実資
827きみかよの はるかにみゆる たひなれは いのりてそゆく いきのまつはら高遠
828ゆきゆかす きかまほしきは いつかたに ふみさたむらむ あしのうらやま定頼
829おくれゐて われやはこひむ はるかすみ たなひくやまは きみしこえなは人麿
830あかすして けふのわかれを おもふこそ ゆくにまさりて かなしかりけれ
831あしからの やみちはみねと わかれなは こころのみこそ ゆきてかへらめ躬恒
832ひとひたに みねはこひしき きみかいなは としのよとせを いかてくらさむ躬恒
833あやめくさ けふしもなとか ひきわかれ たひねにひとの おもひたつらむ能宣
834いろいろに おもふこころを そめてこそ きみかたむけの ぬさとなしつれ能宣
835をしみつつ わかるるひとを みるときは わかなみたさへ とまらさりけり貫之
836あききりの たちてゆくらむ つゆけさに こころをそへて おもひやるかな選子内親王
837よそなから たつあさきりは なになれや のへにたもとは わかれぬものを斎宮女御
838くものなみ けふりのなみの たちへたて あひみむことの かたくもあるかな一条院皇后宮
839わかれなむ おほつかなさを かるかやの おもひみたるる あきのくれかな上総(堀河院中宮)
840わすられぬ わかみなりせは わかれちに いのちあらむと いひもしてまし重之女
841かへりこむ あすをまつへき わかみかは けふそやかての わかれなりける大輔(殷富門院)
842かへりこむ またあふさかと たのめとも わかれはとりの ねそなかれける為家
843わかるとも たちもはなれし ひとしれす そふるおもひの けふりはかりは月花門院
844なれきても わかるるみちの たひころも つゆよりほかに そてやぬれなむ長雅
845しらさりき たこのうらなみ そてひちて おいのわかれに かかるものとは頼政
846たまきはる いのちもしらす わかれぬる ひとをまつへき みこそおいぬれ元輔(清原春光男)
847たのめとも けふをかきりの わかれちは しらぬいのちの ほとそはかなき顕仲(藤原資仲男)
848ゆくすゑを いはひていつる わかれちに こころもなきは なみたなりけり孝行
849おもひわひ こころもゆかぬ みちにしも いつちさきたつ なみたなるらむ清輔
850なにしかも なをたのみけむ あふさかの せきにてしもそ ひとにわかるる隆信
851いとふとは てるひのもとに ききしかと もろこしまては おもはさりしを俊頼(源経信男)
852もろこしも なほすみうくは かへりこむ わすれなはてそ やへのしほかせ家隆
853かたみとも ちきらぬつきの かたふくを そなたのそらと なほしたふかな慶政
854とはねとも おなしみやこは たのまれき あはれくもゐを へたてつるかな行能
855わかれちに したふこころの おくれねは ひとりゆくとは おもはさらなむ伊勢大輔
856わかるれと かけをはそへつ ますかかみ としつきふとも おもひわするな成仲
857そへてやる こころのほかに なにのまた なほわかれちを なけくなるらむ恵慶
858ありあけの つきにこころは なくさまて めくりあふよを まつそかなしき祐盛
859けふやさは へたてはてつる はるかすみ はれぬおもひは いつとわかねと匡房
860くものゐる とやまのすゑの ひとつまつ めにかけてゆく みちそはるけき定家
861わすれすよ きよみかせきの なみまより かすみてみえし みほのうらまつ宗尊親王
862なほしはし みてこそゆかめ たかしやま ふもとにめくる うらのまつはら宗尊親王
863しらとりの さきさかやまの まつかけに やとりてゆかむ よもふけにけり為氏
864うちまやま あさかせさむし たひにして ころもかすへき いももあらなくに人麿
865やまみれは ちかつきぬるを ふるさとに いつともしらて まちやわふらむ安麿
866こすゑたに みえすなりゆく ふるさとを そなたとはかり おもひやるかな嘉言
867あるときは うきことしけき ふるさとに いそくやなにの こころなるらむ貞慶
868ちかつけは のちのささはら あらはれて またすゑかすむ ふたむらのやま道済
869ふるさとを みはてぬゆめの かなしきは ふるほともなき さよのなかやま泰時
870なみかくる のしまかさきに そてぬれて をはなかたしき ねぬるよはかな雅経
871たひひとは たもとすすしく なりにけり せきふきこゆる すまのうらかせ伊平
872あふさかを こえたにはてぬ あきかせに すゑこそおもへ しらかはのせき行平
873おもひやれ いくたのもりの あきかせに ふるさとこふる よはのねさめを寂蓮
874うはたまの くろかみやまを あさこえて このしたつゆに ぬれにけるかな修範
875よそにみし をささかうへの しらつゆを たもとにかくる ふたむらのやま人麿
876つゆしけき をののしのはら いかにまた あまりてたひの そてぬらすらむ頼朝
877かきりあれは われこそそはね たひころも たたむひよりは みをなはなれそ少将(藻璧門院)
878いせしまや あらきはまへの うらつたひ きのうみかけて みつるつきかな良守
879こよひわれ をはすてやまの ふもとにて つきまちわふと たれかしるへき覚忠
880いはみのや ゆふこえくれて みわたせは たかつのやまに つきそいさよふ為氏
881たかしやま ゆふこえくれて ふもとなる はまなのはしを つきにみるかな政村
882むさしのは ゆくすゑちかく なりにけり こよひそみつる やまのはのつき知家
883けふはまた くものなみより いてにけり きのふのくれの やまのはのつき後鳥羽院
884そてのうへに ぬるるかほなる ひかりかな つきこそたひの こころしりけれ俊成女
885ふるさとに おなしくもゐの つきをみは たひのそらをや おもひいつらむ堀河(待賢門院)
886つきをみは おなしそらとも なくさまて なとふるさとの こひしかるらむ光俊(葉室光親男)
887みやこをは やまのいくへに へたてきて ふしのすそのの つきをみるらむ資季
888みやこおもふ わかこころしれ よはのつき ほとはちさとの やまちこゆとも橘 忠幹
889すきつらむ みやこのことも とふへきに くものよそにも わたるつきかな顕輔
890たひねする そてにもつゆの おきそめて くさはにあまる つきをみるかな行念
891かるもかく ゐなののはらの かりまくら さてもねられぬ つきをみるかな隆祐
892ゆふつゆの いほりはつきを あるしにて やとりおくるる のへのたひひと定家
893たたくれね せきのとささぬ ころなれは つきにもこえむ あしからのやま家隆
894かけうつす そてはうきねの われからに つきそもにすむ むしあけのせと雅経
895たひねする いせのはまをき つゆなから むすふまくらに やとるつきかけ実朝
896あへしまの やまのいはかね かたしきて さぬるこよひの つきのさやけさ為家
897ふねとむる あかしのつきの ありあけに うらよりをちの さをしかのこゑ俊成(藤原俊忠男)
898たひころも あきのくさきに あらねとも なほやまかせに しをれてそゆく雅忠
899ふるさとに わかれしそても いかならむ しらぬたひねの あきのゆふつゆ家隆
900くさまくら たひにしあれは あきかせの さむきゆふへに かりなきわたる人麿
901あめふらは もみちのかけに やとりつつ たつたのやまに けふはくらさむ素性
902もろこしの こすゑもさひし ひのもとの ははそのもみち ちりやしぬらむ栄西
903あきもくれ みやこもとほく なりしより そらのしくれそ ひまなかりける斎宮女御
904みやこいてて やそせわたりし すすかかは むかしになれと わすれやはする御匣(式乾門院)
905ころもてに ゆふかせさむし しのはらや しくるるのへに やとはなくして行意
906みやこいてし ひかすはふゆに なりにけり しくれてさむき しらかはのせき秀茂
907そてぬらす をしまかいその とまりかな まつかせさむみ しくれふるなり俊成(藤原俊忠男)
908さえくらす さやのなかやま なかなかに これよりふゆの おくもまさらし家隆
909ひきむすふ くさはもしもの ふるさとは くるるひことに とほさかりつつ定家
910あられふる のちのささはら ふしわひて さらにみやこを ゆめにたにみす式子内親王
911ちとりなく そかのかはかせ みにしみて ますけかたしき あかすよはかな讃岐(二条院)
912あきまては ふしのたかねに みしゆきを わけてそこゆる あしからのせき光俊(葉室光親男)
913おなしくは こえてやみまし しらかはの せきのあなたの しほかまのうら行能
914とりのねに なほやまかけの くらけれは あけてをいてむ あしからのせき土御門院
915よをこむる すすのしのやの あさといてに やまかけくらき みねのまつかせ行意
916くもかかる いはのかけみち ふみみても あやふきものは このみなりけり道慶
917いつとても うきみはあとも さためぬに またうかれぬと なにおもふらむ厳雅
918ふみわけし むかしはゆめか うつのやま あとともみえぬ つたのしたみち雅経
919ふちしろの みさかをこゆと しろたへの わかころもては ぬれにけるかな読人不知
920おしてるや なにはをすきて うちなひく くさかのやまを けふみつるかな読人不知
921いはのうへの かたしきころも たたひとへ かさねやせまし みねのしらくも基家
922ふもととて みねよりみゆる さともなほ ゆききはとほき やまちなりけり教定(飛鳥井雅経男)
923くれぬとや われよりさきに とまるらむ いくののすゑに あふひとのなき公経(藤原実宗男)
924あふひとに とへとかはらぬ おなしなの いくかになりぬ むさしののはら下野(後鳥羽院)
925またしらぬ のはらのすゑの ゆふつくひ しはしなくれそ いほりさすまて信実
926いかにねて ゆめもむすはむ くさまくら あらしふくよの さやのなかやま宗尊親王
927うらかせに ものおもふとしは なけれとも なみのよるこそ ねられさりけれ高遠
928しほかせに とまのうはふき ひまみえて うきねのまくら あけぬこのよは信実
929あまのすむ いそのとまやの たひねには かるもそくさの まくらなりける兼実
930たひにして ものこひしきに やまもとの あけのそほふね おきにこくみゆ読人不知
931ふなてする おきつしほさゐ しろたへの かしひのわたり なみたかくみゆ家持
932かせふけは なみやたたむと まつほとに つたのほそえに うらかくれゐぬ赤人
933ゆくすゑの とまりやいつく わたのはら くものなみちに ひはくれにけり良実
934ふなひとの とまりはかせの こころにて いそくによらぬ なみのうへかな長時
935ふねよはふ ふしのかはとに ひはくれぬ よはにやすきむ うきしまのはら基政(藤原基綱男)
936さてもわれ いかになるみの うらなれは おもふかたには とほさかるらむ四条(安嘉門院)
937あはれなり なにとなるみの はてなれは またあくかれて うらつたふらむ光俊(葉室光親男)
938みやことり なにこととはむ おもふひと ありやなしやは こころこそしれ後嵯峨院
939このさとは すみたかはらも ほととほし いかなるとりに みやことはまし宗尊親王
940おもふひと ありやととへは みやことり ききもしられぬ ねをのみそなく道因/道円
941たをやめの そてふきかへす あすかかせ みやこをとほみ いたつらにふく志貴皇子
942みやこなる あれたるやとに ひとりねは たひにまさりて くるしかるへし旅人
943みるままに なくさみぬへき うみやまも みやこのほかは ものそかなしき俊成(藤原俊忠男)
944けふはなほ みやこもちかし あふさかの せきのあなたに しるひともかな隆祐
945ふくかせの めにみぬかたを みやことて しのふもかなし ゆふくれのそら土御門院
946しらくもを そらなるものと おもひしは またやまこえぬ みやこなりけり土御門院
947きみにより おもひならひぬ よのなかの ひとはこれをや こひといふらむ業平
948たれにより おもひみたるる こころそと しらぬそひとの つらさなりける躬恒
949みぬひとを こころひとつに たつぬれは またしらねとも こひしかりけり素性
950かきりなく またみぬひとの こひしきは むかしやふかく ちきりおきけむ定家
951けふよりや ひとにこころを おきつなみ かけてもしらぬ そてのうらかせ雅経
952いりそむる こひちはすゑや とほからむ かねてくるしき わかこころかな兼実
953しらせはや またいろみせぬ たつたやま そてにしくれの そむるこころを実氏
954くれなゐの こそめのころも ふりいてて こころのいろを しらせつるかな土御門院
955くれなゐの いろにうつりて こひねとも なみたのしるく みするなりけり是則
956おもふより たもとはふかく そめてけり こころのいろや なみたなるらむ忠良
957やまひめの そめぬころもも くれなゐの いろにいててや いまはこひまし民部卿典侍(後堀河院)
958ちしほにも あまるはかりや そめてまし いてぬるいろの きみにうつらは隆房
959いかにせむ そてよりほかに もるやまの したくさかけて いろにいてなは道家
960いろならは いつれかいかに うつるらむ みせはやみはや おもふこころを信実
961こひしとも いははおろかに なりぬへし こころをみする ことのはもかな俊成(藤原俊忠男)
962したにのみ しのふもちすり くるしきは こころのうちの みたれなりけり忠良
963したをきの ほにこそあらね つゆはかり もらしそそむる あきのはつかせ有家(藤原重家男)
964ひとこころ したにつれなき まつそうき うへにはゆきの うちとくれとも敏行
965しのふさへ こころにかなふ みならねは せくにつけても もるなみたかな公基
966みちのくの しのふのたかの とやこもり かりにもしらし おもふこころは宗尊親王
967いはておもふ こころのいろを ひととはは をりてやみせむ やまふきのはな宗尊親王
968しらすへき ひまこそなけれ なにはなる こやのしのひに おもふこころを宗尊親王
969しのふとも うはのそらにや しられまし こひにけふりの たつよなりせは後嵯峨院
970よとともに くゆるもくるし なにたてて あはてのうらの あまのもしほひ後鳥羽院
971わかこひは あまのいさりひ よるはもえ ひるはくるしき うらのあみなは家良
972いかてかは もろこしふねの ほのかにも わかこふらくを しらせそめまし良実
973たちかへり みなとにさわく しらなみの しらしなおなし ひとにこふとも為氏
974かけろふの いはかきふちの わきかへり うはなみたたぬ ものをこそおもへ公継
975みたるとも ひとしらめやも かけろふの いはかきふちの そこのたまもは政村
976やまかはの たきついはふち わきかへり ふかかりけりな そこのこころは基政(藤原基綱男)
977おくやまの いはかきぬまの いはすとも しれかしひとの ふかきこころを真昭
978おもへとも こころにこめて しのふれは そてたにしらぬ なみたなりけり顕朝
979つゆけさも ひとこそしらね さをしかの あさふすをのの くさかくれつつ知家
980またよひの はやまのほくし もえそめて しかまつとたに いかてしらせむ基家
981あきののに あさきりかくれ なくしかの ほのかにのみや ききわたりなむ実朝
982ひとしれす おもふこころは あきはきの したはのいろに いてぬへきかな兼祐/兼輔
983しるらめや おとにのみきく あきかせの みにしむはかり おもふこころを経平(衣笠家良男)
984なそやかく しのへはくるし はなすすき いかなるのへに ほにはいつらむ伊尹
985またみねは おもかけもなし なにしかも まののかやはら つゆみたるらむ顕朝
986おもひねの なみたなそへそ よはのつき くもるといはは ひともこそしれ少将(藻璧門院)
987われさへに またいつはりに なりにけり まつといひつる つきそかたふく後嵯峨院
988つくはやま こかくれおほき つきよりも しけきひとめは もるかたもなし基家
989とほやまた もるやひとめの しけけれは ほにこそいてね わすれやはする躬恒
990なにとまた まくらのちりを はらふらむ ならひなきみの ねやのあきかせ公経(藤原実宗男)
991しらせはや そこはかとなき うきくもの そらにみたるる こころまよひを行家(藤原知家男)
992しられしな たえすこころに かかるとも いはてのやまの みねのしらくも内侍(京極院)
993しくれつつ みねのあらしに ゆくくもの はやくもそらに こひわたるかな家隆
994かみなひの いはせのもりの はつしくれ しのひしいろは あきかせそふく順徳院
995こひわひぬ こころのおくの しのふやま つゆもしくれも いろにみせしと定家
996しくるるを おさふるそての したもみち みえぬちしほは とふひともなし信実
997いはすとも みゆらむそての はつしくれ そむるもみちの いろのふかさは基良
998とへかしな まきたつやまの ゆふしくれ いろこそみえね ふかきこころを土御門院
999ことのはの いろにいつへき あきそなき いはてとしふる そてのしくれは通氏
1000しくれにも つれなきまつは あるものを なみたにたへぬ そてのいろかな宗尊親王
1001いろにいてぬ おもひのみこそ ときはやま わかみしくれは ふるかひもなし宮内卿(後鳥羽院)
1002たくひなく ほさぬそてかな くさもきも つゆふきはらふ かせはあるよに親子(典侍親子朝臣)
1003ものおもふと われたにしらぬ ゆふくれの そてをもとめて おけるつゆかな行能
1004わかそてや まつのかけなる あきくさの うへはつれなき いろにいてなむ順徳院
1005かれねたた のきはのくさよ なかなかに そのなにつけて ひともこそしれ光俊(葉室光親男)
1006ひとしれす しのふのくさに おくつゆの みたれてのみや おもひきえなむ公相
1007とはぬをも たかつらさにか なしはてむ かたみにしのふ こころくらへに後嵯峨院
1008とはぬをも うきにやひとの なしはてむ しのふにつけて すくるつきひを通忠
1009あらいその いはねにかくる しらなみの うちもやすまぬ こひのみちかな冬忠
1010にほとりの かよへるみちも あるものを したにもなとか ひとのたのまぬ為継
1011にこりえに おふるすかこも みかくれて わかこふらくは しるひとそなき躬恒
1012おもふとも こふともいはし くちなしの いろにころもを そめてこそきめ読人不知
1013みくさゐて ありともみえぬ ぬまみつの したのこころを しるひとそなき読人不知
1014かりにても ひとはしらしな あしねはふ うきにとしふる したのこころは実氏
1015かくれぬの したはふあしの ねになけと ひとこそしらね そてはぬれつつ長雅
1016よにもらは わかこころをや うたかはむ またしらせたる ひとしなけれは行家(藤原知家男)
1017としへての のちにもこひの あらはれは しのひけりとや ひとにしられむ信実
1018みのうさの なみたになれぬ そてならは いかにいひてか こひをつつまむ俊成(藤原俊忠男)
1019せきかへし なほもるそての なみたかな しのふもよその こころならぬに通具
1020おろかにや しのふとひとの おもふらむ こころにかなふ なみたならぬを家良
1021かきりなく おもふなみたや かはとみて わたりかたくは なりまさるらむ伊勢
1022そてのうへに ほさぬなみたの いろみえは いかにせむとか ねのみなくらむ少将(藻璧門院)
1023いかにせむ おもひそめつる なみたより やかてちしほの いろにいてなは教定(飛鳥井雅経男)
1024そてのうへの ひとめしられし をりまては みさをなりける わかなみたかな西行
1025わかなみた よしののかはの よしさらは いもせのやまの なかになかれよ慈円
1026なにことも こころにこめて しのふるを いかてなみたの まつしりぬらむ和泉式部
1027おもひせく こころのたきの あらはれて おつとはそての いろにみえぬる雅経
1028おとなしの たきのみなかみ ひととはは しのひにしほる そてやみせまし為家
1029おとになほ たてぬもくるし おもひせく こころのうちに たきなくもかな弁内侍(後深草院)
1030かけろふの ほのめくかけを みてしより たれともしらぬ こひもするかな読人不知
1031よしやたた あしやのさとの なつのひに うきてよるてふ そのなはかりは為家
1032ちきりをは あさかのぬまと おもへはや かつみなからに そてのぬるらむ亀山院
1033うしつらし あさかのぬまの くさのなよ かりにもふかき えにはむすはて定家
1034なにはなる みつとはかりの ちきりにて おきふしあしの ねこそなかるれ実雄
1035おほつかな いかにあひみて すかのねの なかきはるひに こひわたるらむ赤人
1036うちとけて なきそしつへき ほとときす ひとにしられぬ はつねなれとも範永
1037なつころも ひとへにつらき ひとこふる わかこころこそ うらなかりけれ顕輔
1038あさなあさな きみにこころを おくしもの きくのまかきに いろはみえなむ好忠
1039かささきの ちかふるはしの まとほにて へたつるなかに しもやおくらむ好忠
1040かささきの くもゐのはしの よそにのみ かけてこころに こひやわたらむ読人不知
1041よそにみし ひとにおもひを つけそめて こころからこそ したにこかるれ読人不知
1042いまさらに ひとをはなにか つららゐる したにもしのふ みつからそうき順徳院
1043くれまたむ いのちもしらす いははしの よるとはたれか ちきりそめけむ行意
1044おなしよに たのむちきりの むなしくは みをかへてたに あふこともかな御匣(式乾門院)
1045いかはかり こひちはすゑの とほけれは おもひいりても としのへぬらむ季経
1046しもつけや むろのやしまに たつけふり おもひありとも いまこそはしれ読人不知
1047こひせむと なれるみかはの やつはしの くもてにものを おもふころかな読人不知
1048おほゐかは ゐせきをこえて ゆくみつの たえすもものを おもふころかな読人不知
1049あしひきの やまなしをかに ゆくみつの たえすそきみを こひわたるへき読人不知
1050いせのうみの なみまにくたす つりのをの うちはへひとを こひわたるかな読人不知
1051すまのうらに たまもかりほす あまころも そてひつしほの ひるときやなき読人不知
1052このやまの みねにちかしと わかみつる つきのそらなる こひもするかな人麿
1053かくしつつ さてややみなむ おほあらきの うきたのもりの しめならなくに人麿
1054さされいしの なかのおもひの うちつけに もゆともひとに しられぬるかな式子内親王
1055おもふこと いはてやみなは やましろの とはにくるしき みとやなりなむ元真
1056あしかきの まちかきかひも なかりけり こころかよはぬ なかのへたては亀山院
1057いつはりと かつしりなから けふまてに たのむやこひの あまりなるらむ顕輔
1058のちのよを ちきるとたにも いひおきて たたこひしぬる なをはのこさし顕家
1059いつまてか みたれてこひむ あふことの なほかたいとに ぬけるしらたま知家
1060いせのうみ みるめなきさは かひもなし なみたにひろふ そてのしらたま基良
1061おもひかね おつるなみたの たまたまも ほさてやそての はたはくちなむ弁内侍(後深草院)
1062いつまてか ときはのもりの みしめなは つれなきいろに かけてこふらむ家良
1063ひとめのみ しのふかはらに ゆふしめの こころのうちに くちやはてなむ家隆
1064おほそらに しめゆふよりも はかなきは つれなきひとを こふるなりけり元良親王
1065しぬはかり おもひけりとも あふことに みをかへてこそ ひとにしられめ隆昭
1066ももよまて あはていくへき いのちかは かきもはしめし しちのはしかき覚寛
1067いつかわれ かりそめにたに やとりきの ねもみぬものを うきなたつらむ行家(藤原知家男)
1068あふまての こひにいのちの なからへは うきをかきりの よをやつくさむ少将(藻璧門院)
1069あふことを みにかふはかり なけけとも つれなきものは いのちなりけり顕頼
1070つれなきを なほさりともと なくさむる わかこころこそ いのちなりけれ長方
1071これもみな むくひあるらむ さきのよに われゆゑきみも ものやおもひし長方
1072なにゆゑに けふまてものを おもはまし いのちにかへて あふよなりせは西行
1073くちはてむ そてのゆくへも しらぬまて あふをかきりと せくなみたかな実経
1074おのつから あふをかきりの いのちとて としつきふるも なみたなりけり為家
1075なかなかに さてもこころの いろみえは あふにはかへて みをやすてまし通成
1076いたつらに そのなもつらし あふさかの やまはわかみの せきちなりけり雅忠
1077ひとめもる せきよりほかに あふさかを こゆるやまちの なとなかるらむ行家(藤原知家男)
1078しなのなる あさまのやまの あさからぬ おもひのすゑそ けふりともなる土御門院
1079いつとてか わかこひさらむ しなのなる あさまのやまの けふりたゆとも貫之
1080くらへはや こひをするかの やまたかみ およはぬふしの けふりなりとも宗尊親王
1081ふしのねも たちそふくもは あるものを こひのけふりそ まかふかたなき讃岐(二条院)
1082いかなりし こひのけふりの きえやらて むろのやしまの なをのこしけむ俊成女
1083たえすたつ むろのやしまの けふりたに したはまことの おもひやはある寂蓮
1084たえすたつ もしほのうらの ゆふけふり いかなるときか おもひけたれむ光俊(葉室光親男)
1085これやこの あはてのうらに やくしほの けふりたえせぬ おもひなるらむ親清女
1086したむせふ あしひのけふり いかにして なにはたてしと おもひそむらむ俊定(源具定男)
1087しほかまの うらのけふりも あるものを たつなくるしき みのおもひかな知家
1088すみよしの ちきのかたそき としをへて またゆきあひも しらぬこひかな道家
1089たかためか あふのまつはら なをとめて われにつれなき いろをみすらむ良教
1090あきやまの まつのこすゑの むらしくれ つれなきなかは ふるかひもなし為教
1091あたなみの たかしのはまの そなれまつ なれすはかけて われこひめやも定家
1092あしのやの なたのしほくむ あまひとも しほるにそての いとまなきまて後鳥羽院
1093みのならむ ふちせもしらす いもせかは おりたちぬへき ここちのみして
1094あふことは いつにかあらむ あすかかは さためなきよそ おもひわひぬる村上天皇
1095おもひかは あふせまてとや みなわなす もろきいのちも きえのこるらむ御匣(式乾門院)
1096こひわひて なとしなはやと おもふらむ ひとのためなる いのちならぬに為氏
1097さもこそは みなとはそての うへならめ きみにこころの まつさわくらむ定家
1098ひとしれぬ そてのみなとの あたなみは なのみさわけと よるふねもなし良平女
1099なみたのみ もろこしふねも よりぬへし みはうきしつむ とこのうらなみ道家
1100なみたかは せきやるかたの なけれはや みをはなれては なかれさるらむ業平
1101なみたかは わたらぬなかの おもひねは みるもあたなる ゆめのうきはし長時
1102としをふる なみたよいかに あふことは なほいなふちの たきまされとや具氏
1103こひすてふ そてしのうらに ひくあみの めにたまらぬは なみたなりけり成実(藤原親実男)
1104あひみねは いつのならひの つらさとも しらてはいかに なみたおつらむ基家
1105そてのみと おもふなみたの くれなゐを こすゑにみする むらしくれかな実氏
1106さけはつむ ものとおもひし くれなゐは なみたのみする いろにそありける貫之
1107せくそての くれなゐくくる なみたかは わたらぬよりそ なかはたえける有長
1108ますかかみ おのかこころと くもりける なみたをしらて なにかこつらむ少将内侍(後深草院)
1109あふことを いつしかとのみ まつしまの かはらすひとを こひわたるかな人麿
1110むかしより おもふこころは ありそうみの はまのまさこの かすもしられす閑院大君
1111かたいとの あはてのうらの なみたかみ こなたかなたに よるふねもなし経家(藤原基家男)
1112かけてなほ たのむもかなし たまのをの あはすはなけの ちきりはかりに俊成女
1113よそにみて そてやぬれなむ ひたちなる たかまのうらの おきつしらなみ光俊(葉室光親男)
1114わかこひは やまとにはあらぬ からあゐの やしほのころも ふかくそめてき良経(九条兼実男)
1115おもひわひ ひとりやねなむ さよころも かへすならひの ゆめをたのみて俊平(源泰光男)
1116ぬるにこそ ゆめもみゆらめ さよころも かへすはあさき おもひなりけり兼宗
1117かつらきや わたしもはてぬ いははしも よるのちきりは ありとこそきけ家隆
1118かつらきの よるのちきりは かたくとも ふみたにみせよ くめのいははし匡房
1119われはまつ ひとはこすゑの ほとときす むなしきねをも なきくらすかな一条院
1120わかせこを まつちのやまの くすかつら たまさかにたに くるよしもなし実朝
1121やまひこは こたふるたにも あるものを おとせぬひとを まつかくるしさ朝光
1122いかさまに ねてあかせとて まつひとの こぬたにあるを あきかせそふく忠景
1123つのくにの こやのあしふき のわきして ひまこそあれと ひとにつけはや光俊(葉室光親男)
1124つれなさの つもるつきひを かそへても いまさらつらき としのくれかな公宗(洞院実雄男)
1125あらたまの としのくれまつ おほそらは くもるはかりの なくさめもなし定家
1126そまかはの あさきこころに ひかれつつ いくたひくれの さはりきつらむ高光
1127わかこひは せにゐるふねの みつをあさみ うきておもひの やるかたもなし実氏
1128ひろせかは そてつくはかり あさきせに こころふかめて われはおもはむ読人不知
1129かしはきの もりのしたくさ おいぬとも みをいたつらに なさすもあらなむ監命婦
1130かしはきの もりのしたくさ おいのよに かかるおもひは あらしとそおもふ遍昭
1131そてにおく つゆのゆくへを たつぬれは あはてこしよの みちのささはら後鳥羽院
1132あつまちの さののふなはし さのみやは つらきこころを かけてたのまむ家隆
1133われをきみ まつよもあらは いひてまし たのめてこぬは さそやつらきと公実
1134こひしなて こころつくしに いままても たのむれはこそ いきのまつはら親隆
1135こひしぬる はてをはしらて あふまての いのちををしく おもひけるかな信実
1136いつはりと おもひなからも たのむかな うきをしらぬは こころなりけり順徳院
1137うかりける こころをしらて やましろの ゐてのたまみつ なにたのみけむ実雄
1138あすしらぬ みにはたのます おのつから ちきりしままの ひかすなりとも按察(鷹司院)
1139なみたのみ いはぬをしると おもひしに わきてやとかる そてのつきかけ御匣(式乾門院)
1140こひせしと つきにややかて ちかはまし くもるなみたの うきにつけても少将内侍(後深草院)
1141なかむれは そらやはくもる あきのつき こひはこれまて うきなみたかな通具
1142つきをたに くもらぬそらに みしものを たかおもかけの かきくらすらむ下野(後鳥羽院)
1143かきくもれ たのむるよひの むらさめに さはらぬひとの こころをもみむ下野(後鳥羽院)
1144なくさめし つきにもはては ねをそなく こひやむなしき そらにみつらむ顕昭
1145こぬひとの なさけなりけり なかきよの ふくるまてみる やまのはのつき公朝
1146まつひとと ともにそみまし いつはりの なきよなりせは やまのはのつき宗尊親王
1147ありあけの つきをもいはし つれなさの ためしはひとの こころにそみる公相
1148あかつきの とりのうきねも またきかす わかみにしらぬ せきのななれは実氏
1149たまくしけ みむろとやまの さねかつら さねすはつひに ありとみましや鎌足
1150すすきとる あまのをふねの いさりひの ほのかにたにや いもにあはさらむ聖武天皇
1151おほはらの このいちしはの いつしかと わかおもふいもに こよひあひぬる志貴皇子
1152けふはまた ゆくすゑとほく ちきるかな つらきにかへし いのちなれとも実定
1153もらすなよ まくらのほかに しるひとも なくなくちきる よよのかねこと下野(後鳥羽院)
1154むすひおく ちきりはいまと おもへとも なほさきのよや はしめなりけむ信実
1155ならはねは あふよもおつる なみたかな うきにぬれにし そてのなこりに政村
1156うかるへき わかれをかねて したへとや またふかきよに とりのなくらむ行家(藤原知家男)
1157こひこひて まれにとけぬる したひもを ゆふつけとりの ねこそつらけれ景綱
1158あかつきの ゆふつけとりの おなしねに いくたひつらき わかれしつらむ基隆(藤原基綱男)
1159あけぬとて おなしこころに なくとりを つらきためしに なにおもひけむ道円
1160あきのよの ちよをひとよに なせりとも ことはのこりて とりやなきなむ読人不知
1161かきりとは おもはぬものを あかつきの わかれのとこの おきうかるらむ読人不知
1162きぬきぬの たもとにわけし つきかけは たかなみたにか やとりはつらむ信実
1163もろともに あかぬわかれの きぬきぬに いつれのそてか ぬれまさるらむ小侍従(太皇太后宮)
1164きぬきぬの わかれやさても かなしきと あかつきしらぬ とりのねもかな土御門院
1165をくるまの にしきのひもを ときかけて あまたはねすな たたひとよのみ允恭天皇
1166しはしたに なほひきとめよ あつさゆみ つれなくかへる けさのわかれち公相
1167やすらひに いてけるかたも しらとりの とはやままつの ねにのみそなく定家
1168くもれけふ いりあひのかねも ほととほし たのめてかへる はるのあけほの家隆
1169あさねかみ ひとのたまくら おきわかれ みたれてのちそ ものはかなしき家隆
1170たれかまつ けさみちしはを わけつらむ もとおくつゆも ひとのなみたか慈円
1171あかつきは いかにちきりて むかしより わかれかなしき ときとなりけむ忠成(祝部親成男)
1172おきわかれ かへるみちをは おくるとも つきはものをや おもはさるらむ保季
1173しのふへき これやかきりの つきならむ さためなきよの そてのわかれは基家
1174かたみとや そてのわかれに ととめけむ なみたにうかふ ありあけのつき真昭
1175ひさかたの あまのとなから みしつきの あかていりにし そらそこひしき実方
1176ねてまちし はつかのつきの はつかにも あひみしことを いつかわすれむ是則
1177われならぬ ひともありあけの そらをのみ おなしこころに なかめけるかな敦道親王
1178ひとりねの おきてかなしき あさしもの きえなてなにと よをかさぬらむ公経(藤原実宗男)
1179みにかへて いまひとたひと しのふこそ わかれをうしと おもはさりけれ親子(典侍親子朝臣)
1180みるゆめの さめてもさめす かなしきは いかにねしよの なこりなるらむ親子(典侍親子朝臣)
1181うきものと たれかいひけむ あかつきの わかれのみこそ かたみなりけれ俊成女
1182ありしよの わかれもいまの ここちして とりのねことに われのみそなく為家
1183あふことは おもひたえぬる あかつきも わかれしとりの ねにそなかるる重頼女
1184うつつにも わかれしかねの こゑなれは あふとみしよの ゆめもさめけり兼実
1185みてもなほ いかはかりなる なくさめに まとろむほとの ゆめをまつらむ家良
1186おもひねの ゆめにたになほ つらきよの なこりはなにに こひしかるらむ良実
1187はかなしや そのよのゆめを かたみにて うつつもしらぬ とこのさむしろ教実
1188ねさめまて なほそくるしき ゆきかへり あしもやすめぬ ゆめのかよひち有家(藤原重家男)
1189あふとみて いかにはかなく あけぬらむ うきよのゆめは さめぬならひを行意
1190おもひねに あひみるゆめの さむるこそ とりのねきかぬ わかれなりけれ雅経
1191うつつにて あるたにあるを ゆめにさへ あかてもひとの みえわたるかな小町
1192ゆめならは またみるよひも ありなまし なになかなかの うつつなるらむ小町
1193おもひつつ ぬるよもひとの つらきかな ゆめもうつつの みゆるなりけり亀山院
1194うかるへき みのよかたりを おもふにも なほくやしきは ゆめのかよひち御匣(式乾門院)
1195はかなくて みえつるゆめの おもかけを いかにねしよと またやしのはむ小宰相(土御門院)
1196くれなゐの なみたそいとと たのまれぬ うつるこころの いろとみゆれは紫式部
1197あきやまに こひするしかの こゑたてて なきそしぬへき きみかこぬよは読人不知
1198きみにしも あきをしらせぬ つのくにの いはてのもりを わかみともかな馬内侍
1199ときわかぬ なみたよいかに もるやまの したはのつゆも あきそそむなる伊平
1200かきりありて めくりあふへき いのちとも おもははこそは のちもたのまめ小督(中務卿親王家)
1201なからへむ ひとのこころは いさやかは いさわれはかり こひわたるとも亀山院
1202しくれする くもちのほしの かすかすに かくれあらはれ こひぬまそなき基家
1203あらはれて そてのうへゆく なとりかは いまはわかみに せくかたもなし定家
1204かきりあらむ いのちもさらに なからへし これよりまさる つきひへたては定家
1205ねられねは ゆめともみえす はるのよを あかしかねつる みこそつらけれ村上天皇
1206こころには わすれぬものを あひみすて ひかすもおほく つきそへにける駿河丸
1207おもはぬを おもふといはは おほのなる みかさのもりの かみそしるらむ百世
1208みくさゐる いたゐのしみつ としふりて こころのそこを くむひとそなき良経(九条兼実男)
1209しらつゆの あたなるたれに なれそめて われにもかかる こころおくらむ経平(衣笠家良男)
1210いかかせむ しなはともにと おもふみに おなしかきりの いのちならすは光俊(葉室光親男)
1211なにとなく おつるなみたに まかすれは そこともみえぬ ふてのあとかな俊成(藤原俊忠男)
1212みれはまつ そこはかとなく なけかれて なみたおちそふ ふてのあとかな読人不知
1213あらたまの としのみとせを まちわひて たたこよひこそ にひまくらすれ読人不知
1214わするなよ みとせののちの にひまくら さたむはかりの つきひなりとも定家
1215おしかへし おもへはひとそ つらからぬ これもむかしの ちきりなるらむ光頼
1216とへかしな このよはかりの なさけとて うきはむかしの むくひなりとも高倉(八条院)
1217まちなれし ゆふへのそらも かはれたた ひとのこころの あらすなるよに少将(藻璧門院)
1218いかならむ ときかはとのみ おもふかな ひとをわすれぬ こころなかさに信実
1219わすれしと いひしはかりの ことのはや たのまぬものの かたみなるらむ雅言
1220ゆふされは またれしものと おもふこそ こころにのこる かたみなりけれ忠成(大江)
1221おもひいてて ねこそなかるれ あふことの ありしむかしや つらさなるらむ定円(葉室光俊男)
1222そてこほる しもよのとこの さむしろに おもひたえても あかすころかな基綱(藤原基清男)
1223たかさこの やまのやまとり をのへなる はつをのたれを なかくこふらむ為家
1224ほかさまに なひくをみつつ しほかまの けふりやいとと もえまさるらむ侍従(本院)
1225うらむとや よそにはひとの おもふらむ こひしきほかの こころならぬに小督(宗尊親王家)
1226うらみても あまのあみなは くりかへし こひしきかたに ひくこころかな為家
1227なにとかは わかみをおきて あまのすむ さとのしるへを ひとにとふへき行家(藤原知家男)
1228しらせはや こひをするかの たこのうら うらみになみの たえぬひはなし良経(九条兼実男)
1229しかのあまの しほやきころも なるれとも こひてふものは わすれかねつも人麿
1230あふことの いまはかたほに なるふねの かせまつほとは よるかたもなし忠岑
1231さてもまた ひとのこころの つらきえに たななしをふね なほやこかれむ家良
1232みのうさを おもひしりぬる ものならは つらきこころを なにかうらみむ兼通
1233やまたかみ たにへにはへる たまかつら たゆることなく みるよしもかな読人不知
1234ちはやふる かみのたむけの ゆふたすき かけてやひとの ひとをこふらむ貫之
1235かけてのみ こひわたりつる からころも きてこそそては ぬれまさりけれ伊尹
1236かくはかり ありけるものを くれなゐの やしほのころも なににそめけむ宇多天皇
1237ときときそ しくれもしける よとともに わひつつふるは なみたなりけり師氏(藤原忠平男)
1238きみこふと わかなくなみた しきたへの まくらとほりて そてはぬれつつ人麿
1239ひとをこひ せめてなみたの こほるれは こなたかなたの そてそぬれける人麿
1240うはたまの わかくろかみを なきぬらし おもひみたれて こひわたるかな人麿
1241をきのはに みにしむかせは おとつれて こぬひとつらき ゆふくれのそら後鳥羽院
1242かせさむみ こころにもあらぬ うたたねは いととひとこそ こひしかりけれ国経(藤原長良男)
1243あきかせの ふかぬころたに あるものを こよひはいとと ひとそこひしき重之
1244わすれても あるへきものを なかなかに とふにつらさを おもひいてつる西院皇后宮
1245こひこひて いくよといふに しきたへの まくらのちりを またはらふらむ頼実(藤原経宗男)
1246たれにまた ちよにひとよの よかれして さすかにわれを おもひいつらむ兼宗
1247あまのかは あきのなぬかを なかめつつ くものよそにも おもひけるかな有家(藤原重家男)
1248あふことの まれなるものは あきをまつ もみちのはしと われとなりけり後嵯峨院
1249おのつから いかにねしよの ゆめたえて つらきひとこそ つきはみせけれ家隆
1250おもひあまり なかむるそらも かきくもり つきさへわれを いとひけるかな国信
1251ことならは くもゐのつきと なりななむ こひしきかけや そらにみゆると中務
1252やまのはに またれていつる つきかけの はつかにみえし よはのこひしさ定家
1253あひそめし よはさへつきの ころならて のちしのふへき かたみたになし実氏
1254うかりける ひとのこころの あさねかみ なにいたつらに みたれそめけむ後鳥羽院
1255あちきなく なにとみにそふ おもかけそ それともみえぬ やみのうつつに定家
1256おもかけは たちもはなれす からころも わかれしままの そてのなみたに大納言典侍(後嵯峨院)
1257たれしかも われをこふらむ したひもの むすひもあへす とくるこころは人麿
1258やまかはの いしまをわけて ゆくみつは ふかきこころも あらしとそおもふ人麿
1259ふりにける かはらのうへの まつかねの ふかくはいかか ひとをたのまむ俊成(藤原俊忠男)
1260われなから ちきりしらるる むかしかな いかにつらさを ひとにみえけむ右衛門佐(高松院)
1261くれたけの よよのちきりも しられけり うきふししけき こひのむくひに土御門院
1262なかしとも しらすやねのみ なかれつつ こころのうきに おふるあやめは頼宗母
1263あはぬまの みきはにおふる あやめくさ ねのみなかるる きのふけふかな実方
1264わひぬれは きのふならねと あやめくさ けふもたもとに ねをそかけける道信
1265わすれくさ おふるのへとは なるらめと こはしのふなり のちもたのまむ業平
1266たつぬれは そこともみえす なりにけり たのみしのへの もすのくさくき式子内親王
1267わかかとの のへのあきはき ちらさらは きみかかたみと みつつしのはむ家持
1268あきはきの したはにひとは あらねとも こころははやく うつろひにけり元方
1269ひにそへて しもかれゆけは くすのはの ありしはかりも えこそうらみね俊恵
1270まくすはら かせたにさむく ふきこすは みえぬひとをも うらみさらまし好忠
1271われなから かはるこころの ゆくすゑを しらてやひとの ちきりおきけむ良印
1272うつりゆく ひとのこころに したかはは なみたもそてに いろやかはらむ為義
1273つきくさの はなもあたにや おもふらむ ぬれぬにうつる ひとのこころを有教
1274いろかはる みののなかやま あきこえて またとほさかる あふさかのせき定家
1275なにとかく いろかはるらむ きにもあらす くさにもあらぬ ひとのことのは宗尊親王
1276いふきやま みねなるくさの さしもこそ わすれしとまて ちきりおきしか宗尊親王
1277いまはたた わするはかりの あふことを つらきにつけて しのはすもかな月花門院
1278うらみけむ こころさへこそ こひしけれ つらきになれぬ むかしとおもへは高倉(安嘉門院)
1279いまははや むかしかたりに なりなまし つらきにたへぬ わかみなりせは重家
1280いつはりを たのむはかりに なからへは つらきそひとの いのちなるへき通成
1281なほさりに これやかきりと いひしよの つらきまことに なりにけるかな宗尊親王
1282さはたかは ゐてなるあしの かりそめに あさしやちきり ひとよはかりは宗尊親王
1283ひとことの たのみかたさに なにはなる あしのうらはの うらみつるかな醍醐天皇
1284かりにこし ひとをこそまて はしたかの こひをわすれぬ こころならひに堀河(待賢門院)
1285はしたかの とかへるやまも しくるなり かはりやはてむ ひとのことのは小宰相(土御門院)
1286なきくらす なみたのつゆも むなしくて みをうつせみの あるかひもなし実氏
1287みをかへて なにしかおもふ うつせみの よはたのまれぬ ひとのこころを実雄
1288ふくかせに こそのさくらは ちらすとも あなたのみかた ひとのこころは業平
1289むさしのに おふとしきけは むらさきの そのいろならぬ くさもむつまし小町
1290あふさかの せきのあなたの いかなれは こえてもまよふ こひちなるらむ忠家(藤原教実男)
1291つらくとも さてしもはてし ちきりしに あらぬこころも さためなけれは式子内親王
1292つらしとも おもひなさすは なつころも たたひとへにや こひしからまし俊頼(源経信男)
1293おもひあまり みつのかしはに とふことの しつむにうくは なみたなりけり小侍従(太皇太后宮)
1294かくはかり おもふこころは ひまなきを いつくよりもる なみたなるらむ清輔
1295みちのくに ありてふかはの うもれきの いつあらはれて うきなとりけむ時清
1296みちのくに ありといふなる まつしまの まつにひさしく とはぬきみかな読人不知
1297まつかけて たのめしことは なけれとも なみのこゆるは なほそかなしき伊勢
1298あふことを いまやとまつに かかりてそ つゆのいのちの としもへにける兼盛
1299としへても なほあふことは かたをかの まつこそこひの いのちなりけれ実雄
1300それをたに こころのままの いのちとて やすくもこひに みをやかへてむ少将(藻璧門院)
1301あふまてと おもひおもひて はてはまた いけるをいとふ わかいのちかな公衡(藤原公能男)
1302あはさりし むかしをいまに くらへてそ うきはためしも ありとしらるる政村
1303さてもまた なほやうらみむ あつさゆみ いてやとひとを おもふものから知家
1304なからへて あるたにみには つれなきに うらむとまては ひとにきかれし行能
1305たのめはと おもふはかりに うきひとの こころもしらす うらみつるかな宗尊親王
1306つらからは つらきになして やみもせて したのおもひの なにしたふらむ道家
1307つらしとも おもひもはてぬ こころこそ なほこひしさの あまりなりけれ小督(宗尊親王家)
1308このよにて いかにわすれむ かたもなし こひはいのちや かきりなるらむ基家
1309こひしさの かきりたにある よなりせは としへてものは おもはさらまし是則
1310おもひたえ わひにしものを なかなかに なにかくるしく あひみそめけむ家持
1311よしさらは われもともにと したひもに むすふくさはは なほそつゆけき実経
1312さのみやは ひとのこころに まかすへき わするるくさの たねをしらはや惟明親王
1313うきにこそ けにいつはりは なかりけれ わするるかたの つらきまことに為氏
1314はるのよの ゆめにまさりて ものそおもふ ほのかにみえし つきのうつつは定家
1315しはしこそ こぬよあまたと かそへても なほやまのはの つきをまちしか良経(九条兼実男)
1316うらみても なきてもなにを かこたまし みしよのつきの つらさならては少将内侍(後深草院)
1317あはれまた いつれのよにか めくりあひて ありしありあけの つきをみるへき孝標女
1318すきにける としつきなにを おもひけむ いましもものの なけかしきかな堀河女御
1319きみをまた みすしらさりし いにしへの こひしきをさへ なけきつるかな式子内親王
1320とはるるに つけてそひとは つらかりし おもひたえては うらみやはする高倉(安嘉門院)
1321さてもなほ はかなかりける ちきりかな あはれむかしの よこそつらけれ忠良
1322いまはまた かけたにみえぬ うきひとの かたみのみつは なみたなりけり宗尊親王
1323みしひとを おとにもきかぬ たきつせの なにそはそてに たえすおつらむ隆祐
1324てにならす かひこそなけれ あつさゆみ ひけはなかのみ とほさかりつつ信実
1325まののうらの よとのつきはし つきもせす つらしとひとを ききわたるかな経朝
1326よひよひに はかなきゆめの なくさめも まくらさためて いつまてかみし小宰相(土御門院)
1327なみたこそ うつつのうさに あまりぬれ ゆめにもいまは ねのみなかれて政村
1328なかれてと たのめしことは ゆくすゑの なみたのうへを いふにそありける小町
1329あひみても なほかくれぬの いはこすけ いはてもなかき ねをのみそなく泰光(源師光男)
1330うきをしる こころはなにの こころにて なほまたひとの こひしかるらむ良平
1331いせのうみの あまのもしほき こりもせて おなしうらみに としそふりぬる家良
1332あしまゆく みなとのをふね さしもやは かよひしみちの さはりはつへき家良
1333なるみかた あさりにいつる あまならて みをうらみても そてはぬれけり読人不知
1334ひとこころ わかみのあきに なれはこそ うきことのはの しけくちるらめ小町
1335めのまへに たえすもみゆる つらさかな うきをむかしと おもふへきよに実方
1336つらからは もとのこころの わすれなて かさねてほさぬ そてのつゆかな道家
1337もろともに みしはむかしの ますかかみ うきかけはかり なにのこるらむ行家(藤原知家男)
1338なさけにも なとかとまちし よなよなは うきほとしらぬ わかみなりけり基家
1339しなはうし いけれはものの かなしきに こころをかへて あらぬみもかな公光(藤原季成男)
1340うきよをは あられはあるに まかせつつ こころよいたく ものなおもひそ西行
1341とへかしな なさけはひとの みのためを うきわれとても こころやはなき西行
1342きみこふと こころはちちに くたくるを なとかすならぬ わかみなるらむ好忠
1343しらさりき ちきりしなかは あとたえて ゆふくれはかり みにとまれとは実氏
1344いきてよに いつまてぬれむ たもとそと なみたはしるや あきのゆふくれ実氏
1345うきことを をりをりことに しのふれは つらきもひとの かたみなりけり伊勢
1346こひしさの なくさむかたや なからまし つらきこころを おもひませすは清輔
1347ひとすちに いとふつらさは わすられて こひしきにのみ ぬるるそてかな公衡(藤原公能男)
1348なさけあらは いかはかりかは おもはまし つらきをたにも しのふこころに通俊
1349おもはしと おもへとものの なけかれて われにもあらす なるこころかな知家
1350あふことの たえはいのちも たえなむと おもひしかとも あられけるみを右衛門佐(高松院)
1351こひをのみ しつのをたまき いやしきも おもひはおなし なみたなりけり土御門院
1352おもひいてよ このはのしたの わすれみつ うつりしいろに たえははつとも順徳院
1353あふことは さてややまたの わすれみつ ぬれにしそては ひるよなけれと大弐(修明門院)
1354わすれすは なほかきやらむ あかさりし たなゐのしみつ そてはぬるとも弁内侍(後深草院)
1355ちきりあらは またもむすはむ やまのゐの あかてわかれし かけなわすれそ少将内侍(後深草院)
1356いかてまた あかてやみにし おくやまの いはかきしみつ かけをたにみむ小宰相(土御門院)
1357こころにも まかせはとこそ たのまるれ たえたえなれと なかかはのみつ後嵯峨院
1358ちりをたに はらはぬとこの やまかはの いさやいつより おもひたえけむ宗尊親王
1359なかれてと おもひしものを ふしかはの いかさまにして すますなりけむ知家
1360わすれくさ たねあらはこそ しけるらめ のきはやひとの こころなるらむ宗尊親王
1361わするるも しのふもおなし ふるさとの のきはのくさの なこそつらけれ顕氏(六条顕家男)
1362さためなき こころとひとを みしかとも つらさはつひに かはらさりけり素暹
1363たのめすは おもひたえても やみなまし なになかなかの なさけなるらむ実房
1364なからへて さもうくつらき としつきを いかにすきける いのちなるらむ為教
1365たのめすは なかなかよにも なからへて ひさしくものは おもはさらまし俊成(藤原俊忠男)
1366もろこしの ひとまてとほく たつねはや かはかりつらき なかはありやと俊成(藤原俊忠男)
1367ちきりしに かはるつらさも なけかれす もとよりたのむ こころならねは政村
1368こころたに いかなるみにか かなふらむ おもひしれとも おもひしられす紫式部
1369すきにける むかしもいまの つらさにて うきおもひいてに ぬるるそてかな御匣(式乾門院)
1370わすらるる わかみにつらき むくひあらは つれなきひとも ものやおもはむ教定(飛鳥井雅経男)
1371うきみをは わすれはつとも ちきりおきし わかいつはりや おもひいつらむ按察(鷹司院)
1372ちかひてし いのちにかへて わするるは うきわれからに みをやすつらむ親子(典侍親子朝臣)
1373みをうしと おもひしりぬる ものならは つらきこころも なにかうらみむ侍従(本院)
1374なにことも ゆめときくよに さめやらて うつつにひとを うらみつるかな小侍従(太皇太后宮)
1375をりをりに かくとはみえて ささかにの いかにおもへは たゆるなるらむ読人不知
1376しもかれの あさちにまよふ ささかにの いかなるをりに かくとみゆらむ紫式部
1377うきをうしと おもはさるへき わかみかは なにとてひとの こひしかるらむ西行
1378あきかせに なひくさやまの くすかつら くるしやこころ うらみかねつつ後鳥羽院
1379まくすはら うらみしころの あきかせや かれかれになる はしめなりけむ宗尊親王
1380こひそめし こころをたれに かこたまし あはぬはひとの うきになせとも宗尊親王
1381おもひかね いまはわかみの つらきかな なとうきひとの こひしかるらむ匡房
1382あちきなや こはいかなりし ちきりにて つらきひとしも こひしかるらむ顕昭
1383ひとしれす こひわたるまに くちにける なからのはしを またやつくらむ隆房
1384いまこむと たのめしよはの ふけしこそ かはるつらさの はしめなりけめ備前(宗尊親王家)
1385あはさりし こひにやかねて ならひけむ のちのつらさに いけるこころは信実
1386たのめつつ こぬよをまちし いにしへを しのふへしとは おもひやはせし小侍従(太皇太后宮)
1387ありあけに わかれしままの としへても つれなくのこる わかいのちかな資季
1388うきなから みしおもかけの かはらぬや さすかになれし かたみなるらむ隆房
1389おもかけを うきみにそへて こひしなは のちのよまての つらさをやみむ少将(藻璧門院)
1390いさしらす なるみのうらに ひくしほの はやくそひとは とほさかりにし為家
1391かきくらし あめふるかはの うたかたの うたてほとなき よとはしらすや崇徳院
1392よのなかを なににたとへむ かせふけは ゆくへもしらぬ みねのしらくも
1393なにことを われなけくらむ かけろふの ほのめくよりも つねならぬよに孝標女
1394いまきなる とやまのみねに くもたにも しるくしたたは なにかなけかむ斉明天皇
1395ひとはいさ おもひやむとも たまかつら かけにみえつつ わすられぬかも倭太后
1396はるふかき みやまさくらも ちりぬれは よをうくひすの なかぬひそなき醍醐天皇
1397はることに はなはちるとも さきぬへし またあひかたき ひとのよそうき定方
1398あきかせに たくふこのはの いまはとて おのかちりちり なるそかなしき仁善子
1399ゆめかとそ わひてはおもふ たまさかに とふひとあれや またやさむると朝忠
1400あはれとも おもひそわかぬ うはたまの おなしゆめにて まとふみなれは好古
1401おもひいつる むかしはつゆか ふるさとの はなみることに そてのぬるらむ貫之
1402みるからに たもとそぬるる さくらはな そらよりほかの つゆやおくらむ実頼
1403おくれても こえけるものを してのやま さきたつことを なになけきけむ宣耀殿女御
1404ありしよを ゆめにみなして なみたさへ とまらぬやとそ かなしかりける紫式部
1405たれもみな きえのこるへき みならねと ゆきかくれぬる きみそかなしき伊周
1406しぬはかり なけくをとはぬ ひとよりも いままていける みこそつらけれ隆国/行成
1407みやこにて まつへきひとも おもほえす やまよりふかく いりやしなまし行成/隆国
1408あつさゆみ はるのやまへの かすむこそ こひしきひとの かたみなりけれ堀河院
1409のほりにし はるのかすみを したふとて そむるころもの いろもはかなし順徳院
1410いるつきの おほろのしみつ いかにして つひにすむへき かけをとむらむ順徳院
1411はるのよの みしかきゆめと ききしかと なかきおもひの さむるまもなし順徳院
1412ありしよの こひしきままに ふるさとの はなにむかひて ねをのみそなく上総(堀河院中宮)
1413あるしなき すみかにのこる さくらはな あはれむかしの はるやこひしき国基
1414をしむへき あるしをはなに さきたてて こころのままに ちるさくらかな心海
1415ねをそなく やよひのはなの かれしより をしへぬにはの あとをなかめて道家
1416おくれしと したひしつきひ うきなから けふもつれなく めくりあひつつ定家
1417かすみにし けふのつきひを へたてても なほおもかけの たちそはなれぬ道家
1418わかれにし むかしのはるを おもひいてて やよひのけふの そらそかなしき忠家(藤原教実男)
1419ほとときす なくこゑきかは まつとはむ してのやまちを ひとやこえしと道命
1420ゆふされは わきてなかめむ かたもなし けふりとたにも ならぬわかれは堀河(待賢門院)
1421あすまても あるへきみとも おもはねは けふひくらしの こゑそかなしき梅壷女御(後朱雀院女御藤原生子)
1422けふといへは あきのさかなる しらつゆも さらにやひとの そてぬらすらむ実氏
1423けふまても うきはみにそふ さかなれは みとせのつゆの かわくまそなき為家
1424かへにおふる くさのなかなる きりきりす いつまてつゆの みをやとすらむ雅成親王
1425きえぬへき つゆのうきみの おきところ いつれののへの くさはなるらむ大輔(殷富門院)
1426おとにきく むかしのあとや これならむ のへのをささに あきかせそふく公衡(藤原公能男)
1427あすしらぬ つゆのよにふる ひとにたに なほはかなしと みゆるあさかほ公任
1428はかなくも つきにこころの とまるかな すみはつましき みをはわすれて堀河(待賢門院)
1429むかしわか つらねしそては くちはてて なみたにのこる あきのよのつき忠定(藤原兼宗男)
1430なくなくも あととふわかの うらちとり いかなるなみに たちわかれけむ時直(平)
1431かなしさを なくさめよとて とふほとに まつわかそての ぬれにけるかな顕昭
1432おくれゐて おもひやるこそ かなしけれ たかののやまの けふのみゆきは俊成(藤原俊忠男)
1433かなしさは いひつくすへき かたもなし わかこころにて ひとをしらなむ成通
1434なきひとの かたみのけふり それたにも はてはむなしき そらにきえつつ顕氏(六条顕家男)
1435のほりにし けふりのあとを たつぬれは むなしくはらふ みねのまつかせ御匣(式乾門院)
1436おくつゆを いかにしほれと ふちころも ほさぬたもとに あきのきぬらむ忠景
1437ふちころも そてはほすへき ひまもなし なみたしくるる あきのわかれに忠兼(藤原忠行男)
1438なみたのみ かかるとおもふ すみそめの そてのうへにも ふるこのはかな仲業
1439ゆくあきを いのちあらはと たのめても ひとのわかれは まつかたもなし兼氏
1440はかなさは よのつねとても なくさめつ こひしきをこそ しのひわひぬれ道命
1441つねならぬ よのためしたに なかりせは なにによそへて あはれしらまし高弁
1442たれとても とまるへきかは あたしのの くさのはことに すかるしらつゆ西行
1443なけかすよ さはへのあしの うきふしも よしやいつまて あらしとおもへは大納言典侍(後嵯峨院)
1444よのなかに あるをありとは いとふとも なきをなしとは たれかしのはむ権大夫(七条院)
1445よのなかは かくこそみゆれ つくつくと おもへはかりの やとりなりけり高光
1446はかなくそ おくるるつゆの みをしらて ひとのあはれに そてぬらしける通雅
1447あはれにそ つゆのゆかりを たつねける きえにしあとに のこることのは大弐(安嘉門院)
1448つらかりし あきさへいまは むかしにて なみたしくるる かみなつきかな良実
1449いかにまた さらてもこけの したなるを かさねてうつむ けさのしらゆき定雅(藤原忠経男)
1450あめとなり くもとなりにし かたみにも まかふさくらの いろやみるらむ後嵯峨院
1451またもこむ はるのわかれを なけきしは せめておもひの なきよなりけり実雄
1452たちかへり つねなきよそと しりなから ひとのおもひに またなけくかな良実
1453いまさらに つねなきよをは おとろかて しりていとはぬ みをなけくかな実雄
1454ぬきすつる かひこそなけれ ふちころも いまもいろなる そてのなみたに実伊
1455いろいろに おもひこそやれ すみそめの たもともあけに なれるなみたを匡衡
1456なつとても ころもはかへし すてしよの かたみにきたる すみそめのそて基氏(藤原基家男)
1457ものおもふ やとのこすゑの もみちこそ なみたとともに とまらさりけれ実定
1458かつきえて とまらぬよとは しりなから はかなきかすも つもるゆきかな実経
1459かつきゆる ものともしらて あはゆきの よにふるはかり はかなきはなし慶政
1460しのはるる むかしのあとは なけれとも こそにかはらぬ けさのしらゆき道玄
1461いかなれは つらきならひの ゆめのよに さらぬわかれの うつつなるらむ覚宗
1462いまさらに おとろかれぬる こころかな ゆめよりのちも うつつならぬを尊家
1463おもひきや きみにおくるる みちしはに おいのなみたの つゆわけむとは湛空
1464あはれなと おなしけふりに たちそはて のこるおもひの みをこかすらむ為家
1465こころにも あらぬわかれは ありやせむ たれもしるよの いのちならねは深養父
1466かめのうへの やまをたつねし ひとよりも そらにこふらむ きみをこそおもへ尊子内親王
1467たつぬへき かたたにもなき わかれには こころをいつち やらむとそおもふ円融院
1468たらちねの なからむのちの かなしさを おもひしよりも なほそこひしき為家
1469みそきして ころもをとこそ おもひしか なみたをさへも なかしつるかな俊頼(源経信男)
1470これやもし ゆめなるらむと おもふこそ せめてはかなき たのみなりけれ能清
1471なきとこに まくらとまらは たれかみて つもらむちりを うちもはらはむ一条院皇后宮
1472うゑおきて あめときかする まつかせに のこれるひとは そてそぬれける能因
1473なきひとの こころととめし たきつせを いまはかたみの なみたにそかる実氏
1474ひとこゑの かねのおとこそ あはれなれ いかなるひとの をはりなるらむ澄覚法親王
1475つひのみち きのふはすきぬ けふもまた よもとおもふそ はかなかりける信実
1476われはまた むなしきゆめの さめぬまに たかあかつきと とりのなくらむ雅成親王
1477おほかたは おきあへぬつゆの いくよしも あらしわかみの そてのあきかせ雅経
1478かかるをも しらすやありけむ しらつゆの けぬへきほとも わすれやはする村上天皇
1479ゆきとまる やととさたむる かたもなし かせのうへなる ちりのみなれは尊快法親王
1480おもひいつる けふしもそらの かきくれて さこそなみたの あめとふるらめ宗尊親王
1481おくるるは よのことわりの みちなれと さらぬわかれは なほそかなしき基良
1482つひにゆく みちのわかれの あるものを いつまてとてか よををしむらむ知家
1483さきたたは さきたつひとそ なけかまし おいておくるる おいのおもひを惟方
1484うけれとも いけるはさても あるものを しぬるみのみそ かなしかりける貫之
1485めくりあふ むかしかたりの あきのつき なくさめかぬる わかこころかな慶政
1486かたかたに あはれなるへき このよかな あるをおもふも なきをしのふも西行
1487はつねとは おもはさらなむ ひととせに ふたたひきたる はるのうくひす後嵯峨院
1488ゆきふかき やまはかすめる いろもなし としのうちなる はるのあけほの実氏
1489けふといへは みそふりまさる あらたまの たかためとしの はしめなるらむ知家
1490かすかのの まつのふるえの かなしきは ねのひにあへと ひくひともなし俊成(藤原俊忠男)
1491まきもくの ひはらにたてる はるかすみ はれぬおもひは なくさまるやは人麿
1492あしひきの やまへにいまは やとりせし かすみもふかみ とふひともなし遍昭
1493しらさりき やまよりたかき よはひまて はるのかすみの たつをみむとは定家
1494つくつくと なかむるままに こひしきは かすめるかたや むかしなるらむ忠定(藤原兼宗男)
1495かすみにも ふしのけふりは まかひけり にたるものなき わかおもひかな土御門院
1496かすみさへ なほことうらに たちにけり わかみのかたは はるもつれなし後鳥羽院
1497しほみては あまのつりかと みゆるかな きしにみたるる あをやきのいと有仁
1498はるさめの あまねきみよの めくみとは たのむものから ぬるるそてかな基良
1499くさもきも ときにあひける はるさめに もれたるそては なみたなりけり基家
1500はなのかの にほふにものの かなしきは はるやむかしの かたみなるらむ長家
1501やとかへて にほひおとるな うめのはな むかしわすれぬ ひともあるよに馬内侍
1502そてふれは なほいかならむ うめのはな たちよるたにも ひととかめけり高定
1503いかにして はるのひかりも しらぬみに かすめるつきの そてにみゆらむ忠定(藤原兼宗男)
1504あきかせに またこそとはめ つのくにの いくたのもりの はるのあけほの順徳院
1505かへるかり くもゐはたれも なれしかと うらやましきは はるのかよひち土御門院
1506よのなかは いつくかいつく かへるかり なにふるさとへ いそくなるらむ基俊
1507ななそちに ひととせたらぬ おいかみの いつとたのみて はなをまつらむ実氏
1508はなさかぬ ときはのやまの みねにたに さくらをみせて かかるしらくも宗尊親王
1509みるたひに あはれこころの なくさみて うきにまきれぬ はなのいろかな民部卿(後一条関白〈実経〉家)
1510したにこそ ひとのこころも うつろふを いろにみせたる やまさくらかな宗尊親王
1511はなさきし ときのはるのみ こひしくて わかみやよひの そらそのとけき為家
1512われならて みしよのはるの ひとそなき わきてもにほへ くものうへのはな後鳥羽院
1513あはれわか きみかみよより みしはなの かはらぬいろに としのへにける雅経
1514いにしへの おほうちやまの さくらはな おもかけならて みぬそかなしき為家
1515なつかしき かにこそにほへ そてふれし よよのむかしの はなのしたかせ後嵯峨院
1516ふりにける よよのみゆきの あとなれと けふこそはなに いろはそへつれ隆親(藤原隆衡男)
1517なれゆくは うきよなれはや みよしのの やまのさくらも あかてちるらむ後鳥羽院
1518うきよをは はなみてたにと おもへとも なほすきかたく はるかせそふく光俊(葉室光親男)
1519なからへは わかよのはるの おもひいてに かたるはかりの はなさくらかな長方
1520あくかれし はるのこころを いまよりは やとにとめよと はなそさきける貞慶
1521さくらはな さきそふままに しらくもの かさなるやまに にほふはるかせ成賢(祝部成茂男)
1522みるひとそ むかしのいろは かはりける はなはおいきの はるもありけり隆衡
1523わきてみむ おいきははなも あはれなり いまいくたひか はるにあふへき西行
1524はなのいろの いまはさたかに みえぬかな おいははるこそ あはれなりけれ慶暹
1525おもかけの うつらぬときも なかりけり こころやはなの かかみなるらむ仙覚
1526むかしより こころにそめし はなのかは こけのそてまて かはらさりけり伊平
1527もろともに ありしむかしを おもひいてて はなみることに ねこそなかるれ伊勢
1528わかために なにのあたとて はるかせの をしむとしれる はなをふくらむ伊勢
1529をりふしの ゆくへもいまは しらぬみに はるこそかかる はなはみえしか実資
1530ねかはくは はなのしたにて はるしなむ そのきさらきの もちつきのころ西行
1531みてもなほ あかぬこころの あやにくに ゆふへはまさる はなのいろかな伊長
1532ちるはなは のちのはるとも またれけり またもくましき わかさかりはも清輔
1533さくらはな うつろふはるを あまたへて みさへふりぬる あさちふのやと定家
1534やまかけの ふるきのさくら おなしえも いかなるすゑに はなのさくらむ為綱
1535さくらはな ちるをかきりと おもふみは さくとみるまや いのちなるらむ政村
1536さけはちる ならひをしれは やまさくら さかりをみても をしまるるかな頼景
1537ひとしれぬ みやまかくれの さくらはな いたつらにちる はるやへぬらむ時茂
1538をしめとも たたおほかたの いつはりに おもひなしてや はなのちるらむ時広
1539あすしらぬ わかみなからも さくらはな うつろふいろそ けふはかなしき小宰相(土御門院)
1540やまのはに ややいりぬへき はるのひの こころなかきも かきりこそあれ土御門院
1541かくはかり くるるわかれを したふとも おもひもしらす はるやゆくらむ師継
1542よをすてて のちさへはるを をしむこそ むかしわすれぬ こころなりけれ知家
1543このはるの わかれやかきり とまるみの おいてひさしき いのちならねは知家
1544おいかよの わかみのはなの なこりまて ことしはいたく をしきはるかな家隆
1545けふみれは なつのころもに なりにけり うきはかはらぬ みをいかにせむ重之女
1546うのはなの さけるかきねに ときならて わかことそなく うくひすのこゑ小町
1547いつくより なきていつれは ほとときす やまのおくにも なほまたるらむ良覚
1548おとせぬは まつひとからか ほとときす たれをしへけむ かすならぬみを俊頼(源経信男)
1549うきみには つれなきやまの ほとときす たれにまたせて はつねきかまし素暹
1550あけぬれと なほもまたれて わきもこか こぬよにまさる ほとときすかな基政(藤原基綱男)
1551まちつけて ことしもききつ ほとときす おいはたのみの なきみなれとも頼輔
1552いまはとて みやまをいつる ほとときす いかなるやとに なかむとすらむ大輔(延喜皇后宮)
1553いささらは なみたくらへむ ほとときす われもうきよに なかぬひはなし雅成親王
1554いにしへを おもひいつれは ほとときす くもゐはるかに ねこそなかるれ為家
1555なつかりの あしふみしたく みつとりの よにたつそらも なきみなりけり静仁法親王
1556ふるかはの いりえのはしは なみこえて やまもとめくる さみたれのころ尊海
1557なつやまの おなしみとりの こすゑにも まつはしらるる かせのおとかな最信/良信
1558ゆふたちの またすきやらぬ みなとえの あしのはそよく かせのすすしさ時親(平)
1559ひとしれす ねこそなかるれ うつせみの みはなきものと おもひなせとも四条(安嘉門院)
1560みそきする たもとにふるる おほぬさの ひくてあまたに なひくかはかせ土御門院
1561なつはつる あかつきかたの まきのとは あけてののちそ すすしかりける兼通
1562さらてたに つゆほしやらぬ わかそての おいのなみたに あきはきにけり教定(飛鳥井雅経男)
1563ときしらぬ みともおもはし あきくれは たかそてよりも つゆけかりけり光俊(葉室光親男)
1564いくとせの なみたのつゆに しをれきぬ ころもふきほせ あきのはつかせ秀能(藤原秀宗男)
1565かせわたる をかのかやはら あきくれは こころみたれぬ ゆふくれそなき澄覚法親王
1566いせしまや わかのまつはら みわたせは ゆふしほかけて あきかせそふく道家
1567まつかけの いりうみかけて しらすけの みなとふきこす あきのしほかせ基家
1568ちきりけむ ほとはしらねと たなはたの たえせぬけふの あまのかはなみ頼通
1569いつしかと まちくらしけむ たなはたの けさはきのふや こひしかるらむ義孝(藤原敦舒男)
1570あきかせに のきはのをきの こたへすは ひとりやせまし むかしかたりを家隆
1571しをりして ゆくひともかな あきはきに はなのみたれて みちもしられす公実
1572なかつきの つつきのはらの あきくさに ことしはあまり おけるつゆかな行家(藤原知家男)
1573くさしけみ にはこそあれて としへぬれ わすれぬものは あきのしらつゆ恵慶
1574いにしへは みにしむあきも なかりしを おいてはものや かなしかるらむ道済
1575あきをへて かさなるとしの かすよりも なみたそおいの しるしなりける隆親(藤原隆衡男)
1576ふりにけり わかもとゆひの そのかみに みさりしいろの あきのはつしも兼康
1577くろかみは すちかはれとも こむらさき わかもとゆひの いろそつれなき後嵯峨院
1578おもふより つゆそとまらぬ こはきはら みさらむのちの あきのゆふかせ知家
1579あさかほの あしたのはなの つゆよりも あはれはかなき よにもふるかな道兼
1580ひとのよか つゆかなにそと みしほとに おもなれにける あさかほのはな英明女
1581ひとならぬ いはきもさらに かなしきは みつのこしまの あきのゆふくれ順徳院
1582あはれうき あきのゆふへの ならひかな ものおもへとは たれをしへけむ宗尊親王
1583わかこころ とまるところは なけれとも なほおくやまの あきのゆふくれ教家/康能
1584よそにゆく くもゐのかりの なみたさへ そてにしらるる あきのゆふくれ康能/教良
1585くさのはの つゆもわかみの うへなれは そてのみほさぬ あきのゆふくれ少将(藻璧門院)
1586かくはかり ものおもふあきの いくとせに なほのこりける わかなみたかな順徳院
1587ふしわふる まかきのたけの なかきよも なほおきあまる あきのしらつゆ順徳院
1588おほかたの うきみはときも わかねとも ゆふくれつらき あきかせそふく後鳥羽院
1589いかさまに あきのゆふへを なくさめむ よはそむけとも もとのみにして知家
1590いつまてと こころをとめて ありはてぬ いのちまつまの つきをみるらむ義政
1591うらみすよ くもれはとても あきのつき みのうきとかの なみたなりけり忠兼(藤原忠行男)
1592うきにのみ そてをやぬらす あきのつき こころすむにも なみたおちけり長雅
1593いくたひか わかみひとつに あきをへて そてのなみたに つきをみるらむ成実(藤原親実男)
1594みのうさを なけかぬあきの よはもあらは そてにくまなき つきはみてまし時茂
1595いかにして みをかへてみむ あきのつき なみたのはるる このよならねは雅成親王
1596おいらくの わかみのかけは かはれとも おなしむかしの あきのよのつき忠信
1597いととしく ものおもふよはの つきかけに むかしをこふる そてのつゆけさ東三条院
1598つきことに みるつきなれと このつきの こよひのつきに にるつきそなき村上天皇
1599いにしへは われたにしのふ あきのつき いかなるよよを おもひいつらむ為家
1600なくなくも わかよふけぬと みつるかな かたふくつきを そてにやとして実氏
1601さもこそは ねまちのつきの ころならめ いてもやられぬ くものうへかな承仁法親王
1602ふかきよの くもゐのつきや さえぬらむ しもにわたせる かささきのはし順徳院
1603うはたまの よはのまくらに おくしもの かさなるままに みこそふりぬれ基氏(藤原基家男)
1604つゆおかぬ そてにはつきの かけもなし なみたやあきの いろをしるらむ宗尊親王
1605くもれとは おもはぬものを あきのよの つきになみたの なとこほるらむ信実
1606きりはれは あすもきてみむ うつらなく いはたのをのは もみちしぬらむ順徳院
1607なつのひは かけにすすみし かたをかの ははそはあきそ いろつきにける能因
1608よそへても みれはなみたそ ふりまさる のこりすくなき にはのもみちは実氏
1609このはこそ かせのさそへは もろからめ なとかなみたも あきはおつらむ能清
1610くれてゆく あきををしまぬ そらたにも そてよりほかに なほしくるなり親行(源光行男)
1611やまたもる そほつのみこそ あはれなれ あきはてぬれは とふひともなし玄賓
1612そてぬれし ときをたにこそ なけきしか みさへしくれの ふりもゆくかな道綱母
1613しくれのみ おとはのさとは ちかけれと みやこのひとの ことつてはなし実雄
1614とはすとも おとはのさとの はつしくれ こころのいろは もみちにもみよ後嵯峨院
1615やまかはの こほりやうすく むすふらむ したにこのはそ みえてなかるる泰時
1616まきのやに このはしくれと ふりはてて そてにとまるは なみたなりけり覚寛
1617このはのみ そらにしられぬ しくれかと おもへはまたも ふるなみたかな具氏
1618ここにても そてぬらせとや よのうきめ みえぬやまちの なほしくるらむ宗尊親王
1619かみなつき しくれはかりを ふりぬとも わかみのよそに いつおもひけむ家良
1620かみなつき しくるるくもは はれにけり つれなくふるや わかみなるらむ家良
1621かせさわく ゆふへのそらの むらくもに おもひもあへす ふるしくれかな範忠
1622いたつらに なみたしくれて かみなつき わかみふりぬる もりのかしはき教定(飛鳥井雅経男)
1623しくれつつ さひしきやとの いたまより もるにもすきて ぬるるそてかな政村
1624かくはかり さためなきよに としふりて みさへしくるる かみなつきかな家隆
1625いかはかり ふもとのさとの しくるらむ とほやまうすく かかるむらくも順徳院
1626とやまにて よしののおくを おもふかな みゆきふるらし しくれふるなり行意
1627つもれたた さらにもたれか ふみわけむ このはふりにし にはのはつゆき具定
1628ふりそめて いくかともなき ゆきのうちに かつかつひとの とはぬやとかな伊信
1629かせはやみ あまきるゆきの くもまより こほれるつきの かけそさやけき親清女
1630あさなあさな よそにやはみる ますかかみ むかひのをかに つもるしらゆき知家
1631しろたへに ゆきもわかみも ふりはてぬ あはれなこりの ありあけのつき公経(藤原実宗男)
1632ふしのねは ゆきのうちにも あらはれて うつもれぬなに たつけふりかな近衛(今出河院)
1633つきもせす おなしうきよを をしむとや わかみにつもる としはみるらむ俊成女
1634おいぬれは はやくもとしの くるるかな むかしもおなし つきひなれとも信生
1635いたつらに つきひはゆきと つもりつつ わかみふりぬる としのくれかな通具
1636としといひて ことしさへまた くれにけり あはれおほくの おいのかすかな信実
1637わかのうらに しほみちくれは かたをなみ あしへをさして たつなきわたる赤人
1638みなとかせ さむくふくらし なこのえに つまよひかはし たつさはになく家持
1639なにはかた しほひにたちて みわたせは あはちのしまに たつわたるみゆ読人不知
1640かこのしま まつはらこしに みわたせは ありあけのつきに たつそなくなる後鳥羽院
1641をくろさき みつのこしまに あさりする たつそなくなる なみたつらしも後嵯峨院
1642ともつるの むれゐしことは むかしにて みしまかくれに ねをのみそなく成実(藤原親実男)
1643くさかえの いりえのたつの たつきなく ともなきねをや ひとりなくらむ忠家(藤原教実男)
1644すまのあまの うらこくふねの かちをたえ よるへなきみそ かなしかりける小町
1645さよふけて ほりえこくなる まつらふね かちおとたかし みをはやみかも人麿
1646そてのかや なほとまるらむ たちはなの こしまによせし よはのうきふね後嵯峨院
1647かきりあれは かすまぬうらの なみまより こころときゆる あまのつりふね隆祐
1648よをうみの あまのをふねの つなてなは こころのひくに みをなまかせそ泰時
1649あしねはふ いりえのをふね さすかなほ うきにたへても よをわたるかな円勇
1650たちかへり みてこそゆかめ ふしのねの めつらしけなき けふりなりとも宗尊親王
1651やまひとの ころもなるらし しろたへの つきにさらせる ぬのひきのたき良経(九条兼実男)
1652みなかみは いつこなるらむ しらくもの なかよりおつる ぬのひきのたき輔親
1653やまひめの みねのこすゑに ひきかけて さらせるぬのや たきのしらなみ俊頼(源経信男)
1654かせふけは あまのとまやの あれまくも をしまかいそに よするなみかな有家(藤原重家男)
1655あかしかた なみのおとにや かよふらむ うらよりをちの をかのまつかせ帥(鷹司院)
1656さととほみ しほやくうらは みえわかて けふりにかくる おきつしらなみ信実
1657おほうみは しまもあらなくに うなはらや たゆたふなみに たてるしらくも人麿
1658あかつきの ゆめにみえつつ かちしまの いはこすなみの くたけてそおもふ宇合
1659いなみのや やまもととほく みわたせは をはなにましる まつのむらたち土御門院
1660みわたせは しほかせあらし ひめしまや こまつかうれに かかるしらなみ宗尊親王
1661いつかたか しけりまさると わすれくさ よしすみよしの なからへてみよ清少納言
1662みつしほも きしへはるかに なりはてて いまはうらなる すみよしのまつ後嵯峨院
1663すゑたえぬ よしののかはの みなかみや いもせのやまの なかをゆくらむ醍醐天皇
1664えにふかく としはへにける まつなれと かかるみゆきは けふやみるらむ伊衡
1665このかはの いりえのまつは おいにけり ふるきみゆきの ことやとはまし是則
1666おほゐかは そこにもみゆる かめやまの かはらぬかけは いくよへぬらむ中務
1667わかやとの ものかあらぬか あらしやま あるにまかせて おつるたきつせ後嵯峨院
1668ありあけの そらにわかれし いもかしま かたみのうらに つきそのこれる後嵯峨院
1669はまきよく すむつきかけを あけぬとや ゆらのみなとに ふねよはふなり実定
1670つきかけの ふけひのうらの さよちとり のこるあとにも ねはなかれけり素俊
1671ふくかせも のとけきはなの みやことり をさまれるよの ことやとはまし少将内侍(後深草院)
1672はまちとり あとをみるにも そてぬれて むかしにかへる すまのうらなみ月花門院
1673いまさらに すまのうらちの もしほくさ かくにつけても ぬるるそてかな良平女
1674あさりすと いそにわかみし なのりそを いつれのしまの あまかかるらむ読人不知
1675いはしろの まつこともなき わかみさへ なにとうきよに むすほほるらむ資実
1676こころをは わかこころこそ なくさむれ あらましことの とはすかたりに家隆
1677おのつから ふるきにかへる いろしあらは はなそめころも つゆやわけまし後鳥羽院
1678よものうみ むかしにかへる なみのうへに はまひといまや みかりまつらむ道家
1679ひさかたの あめよりおろす たまほこの みちあるくにそ いまのわかくに後嵯峨院
1680よをてらす つきひのひかり みるたひに くもらしとおもふ こころこそつけ実氏
1681くもらしな ますみのかかみ かけそふる くすはのみやの はるのよのつき実経
1682おとはかは せきいれしみつに かけとめて ひとのこころを つきにみるかな公経(藤原実宗男)
1683われのみや いりえのなみに そてぬれて しつめるかけを つきにうれへむ為綱
1684むそちあまり みつるもかなし なにとして こころのとまる つきとなるらむ基家
1685なにことに こころをとめて ありあけの つきもうきよの そらにすむらむ新右衛門督(宗尊親王家)
1686あかすのみ おもひおかるる かなしさに このころいたく つきをみるかな信実
1687おほそらの むかしににたる つきかけを みやこにあらて みるそかなしき義懐
1688おくやまに みをはのかれぬ あはれまた こころをすつる みちをしらはや隆衡
1689うしとても またはいつちか あくかれむ やまよりふかき すみかなけれは忠良
1690はなすすき まねきもやまぬ やまさとに こころのかきり ととめつるかな兼家
1691ふくかせも とふにつらさの まさるかな なくさめかぬる あきのやまさと定雅(藤原忠経男)
1692さらてたに こころうかるる やまさとの ゆふくれことに あきかせそふく公基
1693こころたに うきよをふかく いとひなは なにかはやまの おくももとめむ宗尊親王
1694さきたてて こころはやまに すむものを いへをいてぬと いはぬはかりそ顕朝
1695やまふかく なにかいほりを むすふへき こころのうちに みはかくれけり定円(葉室光俊男)
1696すてしより やまのおくにと おもふみの すまれぬものは こころなりけり基氏(藤原基家男)
1697やまさとに いつしかひとの またるるや すみはつましき こころなるらむ基政(藤原基綱男)
1698たえすとふ かけひのみつの なさけこそ おとつれなから さひしかりけれ為家
1699やまふかく すむにもよらぬ こころかな つらきよをのみ なほしのひつつ土御門院
1700つゆしもの をくらのやまに いへゐして ほさてもそての くちぬへきかな定家
1701しりぬらむ ゆききにならす しほつやま よにふるみちは からきものそと紫式部
1702わりなしや ひとこそひとと いはさらめ みつからみをや おもひすつへき紫式部
1703よのなかよ いかかたのまむ あすかかは きのふのふちの あさせしらなみ少将(藻璧門院)/但馬(藻璧門院)
1704ふちはせに かはるとみれと あすかかは しつむみくつは うかふせもなし光行
1705すすかかは わかみふりぬる おいのなみ やそせもちかく ぬるるそてかな知家
1706おもふこと なほしきなみに おほしまの なるとはなくて としのへぬらむ知家
1707いつまてか そてうちぬらし ぬまみつの すゑもとほらぬ ものおもひけむ光俊(葉室光親男)
1708かすならて よにふるかはの うもれみつ ゆくかたもなく ぬるるそてかな頼重
1709うしとても みをはいつくに おくのうみの うのゐるいはも なみはかくらむ順徳院
1710なにことの いつあるへしと おもひてか かかるうきよに つれなかるらむ基家
1711ひにそへて なみたのつゆの しけけれは あたなるたまの をこそよわけれ貞慶
1712いにしへは よのうきはかり おほえしに おいをかさねて みをなけくかな政村
1713さりともと むかしはすゑも たのまれき おいそうきみの かきりなりける道円
1714きくひとも あはれとおもへ おいのなみ たちゐにつけて やすからぬみを実氏
1715むかしみし のはらはさとと なりにけり かすそふたみの かすはしらねと実氏
1716たかまとの をのへのみやの あさちはら あれにしのちも いくよへぬらむ真昭
1717みしよこそ おもひいてても しのはるれ しらぬむかしの なそやこひしき基政(藤原基綱男)
1718みつのおもに おひてみたるる うきくさは なみのうへにや たねをまきけむ躬恒
1719ひとはみな もとのこころそ かはりゆく のなかのしみつ たれかくむへき後鳥羽院
1720ゆくすゑは ゆかしけれとも こしかたの こひしきはかり おほえやはする頼輔
1721ねさめして おもひとくこそ かなしけれ うきよのゆめを いつまてかみむ頼輔
1722むかしいま おもひのこさぬ ねさめかな あかつきはかり ものわすれせて実氏
1723あかつきの とりのねきかぬ やまさとは ねさめそよはの ほとをしりける家良
1724みをおもふ ねさめのなみた ほさぬまに なきつつけたる とりのこゑかな為家
1725うきものと ねさめをたれに ならひてか あかつきことに とりのなくらむ隆弁
1726あけぬとて ゆふつけとりの こゑすなり たれかわかれの そてぬらすらむ定家
1727せきのとも あけかたちかく なりにけり いまなくとりは そらねならしな心円
1728あふさかの せきのあらしの はけしきに しひてそゐたる よをすきむとて蝉丸
1729うなはらや たゆたふなみの はてもなし いつくなるらむ くものをちかた実氏
1730あけわたる あしやのうみの なみまより ほのかにめくる きちのとほやま為家
1731いこまやま よそになるをの おきにいてて めにもかからぬ みねのあまくも家長(源時長男)
1732かせふけは いつれのしまと たのむらむ はるかにいつる あまのつりふね秀能(藤原秀宗男)
1733かせわたる はまなのはしの ゆふしほに さされてのほる あまのつりふね為家
1734つきいてて いまこそかへれ なこのえに ゆふへわするる あまのつりふね光俊(葉室光親男)
1735わかのうらや しらぬしほちに こきいてて みにあまるまて つきをみるかな光俊(葉室光親男)
1736ふけゆけは やまかけもなし よしのなる なつみのかはの あきのよのつき行実
1737わかみから ものおもふことも なくさまて うきよのままに つきをみるかな経平(衣笠家良男)
1738くさのいほを つきとともには いてぬれと かけかくすへき やまのはそなき胆空
1739くもゐより やとりなれにし あきのつき いかにかはれる なみたとかしる土御門院
1740つきはなほ みしよのかけや のこるらむ あるにもあらぬ そてのなみたに伊平
1741いくたひか あはれむかしと おもひいてて みのいたつらに つきをみるらむ良実
1742いにしへの おもかけをさへ さしそへて しのひかたくも すめるつきかな俊頼(源経信男)
1743いにしへを おもひいてつつ なかむれは やかてなみたに くもるつきかな師季(中原師綱男)
1744かそふれは としこそいたく おいにけれ よをへてみつる つきのつもりに西音
1745つきみては なれにしひとも こひしきに われをはたれか おもひいつらむ道命
1746いまはわれ つきもなかめし はれやらぬ こころたくはは くもりもそする隆俊
1747われもまた やまのはちかし ありあけの つきをあはれと なかめせしまに実定
1748ふりにける みわのひはらに こととはむ いくよのひとか かさしをりけむ知家
1749いにしへの ことはしらぬを われみても ひさしくなりぬ あまのかくやま惟明親王
1750としつもる をすてのやまの まきのはも ひさしくみねは こけおひにけり読人不知
1751あなしかは かはおとたかし まきもくの ゆつきかたけに くもたてるらし人麿
1752おちたきつ ちちのなかれは つもれとも かはらぬものは おきつしらなみ人麿
1753せりかはの なみもむかしに たちかへり みゆきたえせぬ さかのやまかせ俊成(藤原俊忠男)
1754けふをいかに みそなはすらむ むかしより みをはなれたる かけしなけれは良経(九条兼実男)
1755みははやく よはひもおいぬ かきのもとの ひさしきかけは わかきみのため後嵯峨院
1756をはたたの みやのふるみち いかならむ たえにしのちは ゆめのうきはし知家
1757たまきはる いのちはしらす まつかえを むすふこころは なかくとそおもふ土御門院
1758すみよしと たかいひおきし うらならむ さひしかりける まつのかせかな家持
1759いたつらに としもつもりの うらにおふる まつそわかみの たくひなりける基隆(藤原基綱男)
1760いたつらに わかみもふりぬ たかさこの をのへにたてる まつひとりかは頼政
1761よにあらは またかへりこむ つのくにの こかけのまつよ おもかはりすな能因
1762とへかしな たまくしのはに みかくれて もすのくさくき めちならすとも基俊
1763しらすやは いせのはまをき かせふけは をりふしことに こひわたるとは俊頼(源経信男)
1764ゆくすゑは うきよりほかに なにをかは むかしはとても ひとにかたらむ顕季
1765あかさりし むかしのことを かきつくる すすりのみつは なみたなりけり下野(後鳥羽院)
1766いにしへの こひしさいかに おほゆらむ きのふのことも わすらるるみに和泉式部
1767おもひいての ありきあらすは いにしへを こふるこころの うちそしるらむ信実
1768みつくきの むかしのあとに なかるるは みぬよをしのふ なみたなりけり信実
1769なかなかに おもひいててそ なくさむる わすられぬへき むかしならねは為家
1770なかなかに むかしそつらき あはれてふ ことをあまたに おもひいつれは仲敏
1771いきてかく きみにつかふる おいかみを たくひなしとは よひとさためよ長時
1772たらちねの こころのやみを しるものは こをおもふときの なみたなりけり実氏
1773ことのはは みにこそしらね たらちねの かたみはかりに とふひともかな基良
1774たらちねの あらましかはと おもふにそ みのためまても ねはなかれける隆祐
1775たらちねの みちのしるへの あとなくは なににつけてか よにつかへまし光俊(葉室光親男)
1776あとあれは おとろのみちも ふみそめつ いまゆくすゑの まよはすもかな為家
1777やくもたつ いつもやへかき けふまても むかしのあとは へたてさりけり高定
1778やくもたつ みちはふかきを あさかやま あさくもひとの おもひいるかな良経(九条兼実男)
1779いまもまた つもれることを とはるるは ちりにつけとや やまとことのは基家
1780いそのかみ ふるのなかみち たちかへり むかしにかよふ やまとことのは行家(藤原知家男)
1781わすられぬ もとのこころの ありかほに のなかのしみつ かけをたにみし具親
1782かけたえて ひとこそとはね いにしへの のなかのしみつ つきはすむらむ俊成女
1783そてぬらす かたみなりけり もしほくさ かきおくあとの わかのうらなみ教雅
1784みれとなほ のへにかれせぬ たまささの はわけのつゆは いつもきえせし秀茂
1785ささたけの わかよのほとの おもひいてに しのはれぬへき ひとふしもかな天暦贈太皇太后宮
1786いかにせむ みはいやしくて としたかき ひとをあはれと おもふよもかな後嵯峨院
1787かたるへき ひとしなけれは こしかたを こころにとひて ねをのみそなく家隆
1788なからへて ものはおもはし いまのまの うきにかきれる いのちなりせは実氏
1789なけくとて あはれをかくる ひともあらし なにになみたの うきをしるらむ通氏
1790くれたけの うきふししけく なりにけり さのみはよもと おもひしものを忠良
1791ひくるれは たけのそのふに ぬるとりの そこはかとなく ねをもなくかな俊頼(源経信男)
1792なにことに おもひきゆらむ あさつゆの うきわかみたに あれはあるよに俊頼(源経信男)
1793おもひおく つゆのよすかの しのふくさ きみをそたのむ みはきえぬとも基俊
1794ゆふくれの なからましかは しらくもの うはのそらなる ものはおもはし定家
1795くるるまも たのむものとは なけれとも しらぬそひとの いのちなりける土御門院
1796おもひわく みのことわりの しるしとて うきもうからす なるこころかな順徳院
1797むくらはふ やとたにあきは さひしきを いくへかとつる みねのしらくも行能
1798あはれしる ひとしなけれは よとともに わかおもふことを いはてやみぬる長明
1799ありわふる みはわれのみと おもひしに たかなつけける うきよなるらむ顕仲(藤原資仲男)
1800すませとも あさきせにたつ うはなみの しつめかたきは こころなりけり基隆(藤原基綱男)
1801いけるよに しのはるるなの あらはこそ くちなむこけの したにのこらめ俊定(源具定男)
1802よのなかを いつかたにとか うらむらむ ひとこそあさき こころなるらめ定通(土御門通親男)
1803ぬるかうちに おもひのほかの こともみつ ゆめよいかなる ものとしらはや宇多天皇
1804なにそこの ゆめてふものの ありそめて ぬるかうちにも みをなけくらむ後嵯峨院
1805さめてこそ はかなかりけれ ぬるかうちに ゆめをうつつと おもふこころは実経
1806まとろむも おなしこころの みれはこそ さめてもゆめの わすれさるらめ基平(近衛兼経男)
1807ゆめはなほ むかしにもまた かへりなむ ふたたひみぬは うつつなりけり家良
1808うつつこそ なほうかりけれ ゆめならは こふるむかしを またもみてまし宗尊親王
1809すきぬれは うつつもゆめに かはらぬを ぬるかうちとも おもひけるかな行家(藤原知家男)
1810なかきよに ねふりはさめて いかなれは このよをゆめと おもひなるらむ具房
1811ききなるる やそちあまりの かねのこゑ よひあかつきも あはれいつまて顕真
1812なほしはし いのちををしと おもふこそ おいをいとはぬ こころなりけれ信実
1813ななそちを すききつるたに ほとなきに いまいくかとて よをたのむらむ信実
1814いかにせむ みにななそちの すきにしを きのふもおもへは けふもくれぬる祐盛
1815いまそわれ しほみついその いはかねの のこりすくなき みとはなりぬる蓮生法師
1816けふそおもふ きみにあはてや やみなまし やそちあまりの よはひならすは隆弁
1817いつまてか なかきよからと かこちけむ おいのねさめは をりをわくかは昭平法親王
1818なかきよの ねさめにおもふ ほとはかり うきよをいとふ こころありせは後鳥羽院
1819ねさめする よはのこころの ままならは おもひさためぬ みとはなけかし小宰相(土御門院)
1820うつつにて ゆめなるものは なかきよの ねさめにおもふ むかしなりけり政村
1821としたけは いとふへきよと おもひしに おいのこころの なほとまりぬる公朝
1822なけくそよ かかみのかけの あさことに つもりてよする ゆきとなみとを時広
1823うきたひに そむきてもまた いかかせむ このよひとつの おもひならねは為家
1824さりとても そむきもはてす ひとことに たたいつはりの うきよなりけり順徳院
1825おもふこと なきたにやすく そむくよに あはれすてても をしからぬみを実経
1826つらきにも うきにもたへて としはへぬ いかなるときか よをはいとはむ越前(嘉陽門院)
1827なにことの まつなけかれて そむくへき みをもわするる こころなるらむ能清
1828そむくへき わかよやちかく なりぬらむ こころにかかる みねのしらくも知家
1829みはかりは なほもうきよを そむかはや こころはなかく きみにたかはて慈円
1830よのなかの そむきかたさに みのほとを おもひしらすと ひとにみえぬる俊頼(源経信男)
1831しりなから いとはぬよこそ かなしけれ わかためつらき みをおもふとて実氏
1832さてもまた いつくをつひの すみかとて いへをいてむと おもひたつらむ顕家
1833みをつめは そてそぬれぬる あまころも おもひたつらむ ほとのかなしさ東三条院
1834なけかしと かねてこころを せしかとも けふになるこそ かなしかりけれ赤染衛門
1835さらてたに ありしにもあらぬ おなしよを そむくときくそ いととかなしき四条(安嘉門院)
1836ありしにも あらぬたもとの あきのかせ いかなるいろに ふきかはるらむ為継
1837そてのうへは ありしにもあらぬ いろなから おなしみにしむ あきかせそふく仲能
1838ますかかみ しらぬおきなは みなれにき いまさらたとる おもかけもうし基良
1839うきたひの たたあらましと おもひしに ちきりありける すみそめのそて明教
1840そむきにし しるしはいつら たちかへり うきよにかくて すみそめのそて小侍従(太皇太后宮)
1841にしへゆく つきはたのみも ありなから こころのやみの はれかたのよや大弐(修明門院)
1842いるかたを うきよのほかに なくさめて つきにこころの やみははるけよ按察(鷹司院)
1843おもひやる こころはつねに かよふとも しらすやきみか ことつてもなき泰時
1844ひとしれす おもふこころの かよふこそ いふにまされる しるへなるらめ高弁
1845うつもれぬ のちのなさへや とめさらむ なすことなくて このよくれなは良経(九条兼実男)
1846うきなから なほつれなくて すくすとも あらしわかみの すゑのおもひて有家(藤原重家男)
1847みのうさの こころにあまる ときにこそ なみたはそてに おちはしめけれ按察(鷹司院)
1848うきよには かかれとてこそ うまれけめ ことわりしらぬ わかなみたかな土御門院
1849ひとすちに ひとやはつらき よのなかの うきにつけては みをそうらむる通忠
1850なへてよの ひとこそさらに つらからね わかこころたに みをはおもはす家良
1851うきことに なれぬるものは こころとて なほもつれなく よをやすくさむ寂身
1852ふかけれと ちひろのうみは ほとしりぬ ひとのおもひは さをもおよはす忠岑
1853あやしくも なくさめかたき こころかな をはすてやまの つきもみなくに小町
1854うきよとて いとひすてても いかかせむ そむかぬたにも かすならぬみを良教
1855いにしへは かくやおほえし まつことの なけれははやく ゆくつきひかな公朝
1856おもひいても またまつことも なけれとも さすかによこそ すてもやられね祐盛
1857よろこふも なけくもあたに すくるよを なとかはいとふ こころなからむ永観
1858いとひても なほいとふへき よのうさの おもふほとには おもはれぬかな伊平
1859いままても あるはおもひの ほかなれは みをなけくへき ことわりもなし光俊(葉室光親男)
1860なにゆゑに いままてよには ふるみそと こころのとへは ねこそなかるれ光俊(葉室光親男)
1861ふたはより まつのよはひを おもふには けふそちとせの はしめとはみる一条院
1862ふくかせの えたもならさぬ このころは はなもしつかに にほふなるへし花山院
1863つきもせす よはひひさしき かめやまの さくらはかせも ちらささりけり伊勢大輔
1864たつねきて あかぬこころに まかせなは ちとせやはなの かけにすくさむ亀山院
1865はなみても のとけかりけり いくちよと かきりもしらぬ はるのこころは親子(典侍親子朝臣)
1866うめかえに よよのむかしの はるかけて かはらすきゐる うくひすのこゑ後嵯峨院
1867いろいろに えたをつらねて さきにけり はなもわかよも いまさかりかも後嵯峨院
1868いろいろに さかえてにほへ さくらはな わかきみきみの ちよのかさしに実氏
1869もろひとの てことにかさす さくらはな あまたちとせの はるそしらるる公親
1870このはるそ こころのいろは ひらけぬる むそちあまりの はなはみしかと実氏
1871さきそむる かさしのはなの ちよをへて こたかくならむ かけをこそまて頼綱
1872ちよをへて そこまてすめる いけみつに ふかくもうつる はなのいろかな宗忠
1873としとしの みゆきかさなる やまさくら はなのところは はるもかきらし実雄
1874いくはるも ちらてそはなは にほふへき かせしつかなる くものうへとて基平(近衛兼経男)
1875みちよへて なるてふももの すゑのよの はなのさかりは きみのみそみむ時文
1876ふちなみの かけさしならふ みかさやま ひとにこえたる こすゑをそみる下野(後鳥羽院)
1877おもひやれ みかさのやまの ふちのはな さきならへつつ みつるこころは実氏
1878なかれての ゆくすゑとほき みつくきは きみかすむへき かすをこそかけ後朱雀院
1879たつのゐる いはかきぬまの あやめくさ ちきりてひかむ きみかためには師頼
1880いけみつに いはほとならむ さされいしの かすもあらはに すめるつきかけ雅経
1881きみかよの ちとせのかけを さしそへて つきやとれとや すめるいけみつ良平
1882よをてらす よもきかほらの つきかけは あきつしまねの ほかもくもらし雅真/雅具
1883くものうへの ほしかとみゆる きくなれは そらにそちよの あきはしらるる堀河(待賢門院)
1884ももしきに うつろひわたる きくのはな にほひそまさる よろつよのあき聖武天皇
1885あめつちも うけたるとしの しるしにや ふるしらゆきも やまとなるらむ後朱雀院
1886ゆきつもる まつはおいきと おもひしに さらにはなさく としのくれかな公相
1887かみかせや みもすそかはの なかれこそ つきひとともに すむへかりけれ良経(九条兼実男)
1888いかにいかか かそへやるへき やちとせの あまりひさしき きみかみよをは紫式部
1889きみをいのる けふのたふとさ かくしこそ をさまれるよは たのしきをつめ定家
1890しもゆきの しろかみまてに つかへきぬ きみのやちよを いはひおくとて定家
1891くりかへし きみをそいはふ おいぬれは おなしことのみ しつのをたまき家長(源時長男)
1892ふりぬとて なになけきけむ きみかよに おいといふものそ みはさかえける実氏
1893よろつよに つかへてそみむ つきもなほ かけをととむる せきのふちかは良実
1894いくちよの あきをへぬらむ をののえの くちしところの やまのはのつき公雄
1895きみかよは をののえくちし やまひとの ちたひかへらむ ときもかはらし俊成(藤原俊忠男)
1896おほゐかは ちよにひとたひ すむみつの けふのみゆきに あひにけるかな匡房
1897このたひと なみよせつくす たまつしま みかくみことを かみはうくらし基家
1898わかのうらに なみよせかくる もしほくさ かきあつめてそ たまもみえける後嵯峨院
1899いそのかみ ふるきをいまに ならへこし むかしのあとを またたつねつつ後鳥羽院
1900しきしまや やまとことはの うみにして ひろひしたまは みかかれにけり良経(九条兼実男)
1901きみかよは つもりのうらに あまくたる かみもちとせを まつとこそみれ俊恵
1902うこきなき いはほにねさす うみまつの ちとせをたれに なみのよすらむ恵慶
1903かきりなき ときしもきみに あふみなる しかのはままつ いくよふりなむ忠信
1904きみかよも わかよもつきし いしかはや せみのをかはの たえしとおもへは実朝
1905みやはしら ふとしきたてて よろつよに いまそさかえむ かまくらのさと実朝
1906きみかよは なからのはしを ちたひまて つくりかへても なほやふりなむ頼政
1907かみなひの やまのうへなる いはしみつ いはひてそくむ よろつよのため読人不知
1908ななたひの よしののかはの みをつくし きみかやちよの しるしともなれ行意
1909やほよろつ かみもさこそは まもるらめ てるひのもとの くにつみやこを為家
1910すめらきの くらゐのやまの こまつはら ことしやちよの はしめなるらむ宗尊親王
1911いけみつに くにさかえける まきもくの たまきのかせは いまものこれり実頼
1912てるつきの かつらのやまに いへゐして くもりなきよに あへるあきかな義忠(藤原為久男)
1913いはさかの やまのいはねの うこきなく ときはかきはに こけのむすかな匡房
1914をさまれる ときにあふみの やすかはは いくたひみよに すまむとすらむ永範
1915すかのねの なからのやまの みねのまつ ふきくるかせも よろつよのこゑ資実
1916けふよりそ ちちのまつはら ちきりおく はなはとかへり きみはよろつよ為長(菅原長守男)
1917ももしきは かめのうへなる やまなれは ちよをかさねよ つるのけころも通親
1918ひさかたの あまのかこやま そらはれて いつるつきひも わかきみのため家隆