「続古今和歌集」一覧
1918件
1 | なにたかき あまのかくやま けふしこそ くもゐにかすめ はるやきぬらむ | 定家 |
2 | いかはかり としのかよひち ちかけれは ひとよのほとに ゆきかへるらむ | 清輔 |
3 | けさみれは かすみのころも おりかけて しつはたやまに はるはきにけり | 兼実 |
4 | あさあけの かすみのころも ほしそめて はるたちなるる あまのかくやま | 土御門院 |
5 | あさみとり かすみのころも いつのまに はるきにけりと けさはたつらむ | 為家 |
6 | いつくより はるはきぬらむ あまのとの あくるもまたす たつかすみかな | 後嵯峨院 |
7 | おほともの みつのはままつ かすむなり はやひのもとに はるやきぬらむ | 宗尊親王 |
8 | ひさかたの あまのとあけて いつるひや かみよのはるの はしめなりけむ | 道家 |
9 | はるかすみ たちはそむれと みよしのの やまにけふさへ ゆきはふりつつ | 貫之 |
10 | かせさむみ またゆききえぬ しからきの とやまかすみて はるはきにけり | 宗尊親王 |
11 | いまもなほ ころもてさえて あつさゆみ はるともいはす ゆきはふりつつ | 良実 |
12 | おとはかは ゆきけのなみも いはこえて せきのこなたに はるはきにけり | 定家 |
13 | こほりゐし みつのしらなみ いはこえて きよたきかはに はるかせそふく | 良経(九条兼実男) |
14 | はるかせに いくへのこほり けさとけて よせぬにかへる しかのうらなみ | 後鳥羽院 |
15 | おとはかは たきのみなかみ ゆききえて あさひにいつる みつのしらなみ | 道家 |
16 | かすかのや またしもかれの はるかせに あをはすくなき をきのやけはら | 順徳院 |
17 | みわたせは わかなつむへく なりにけり くるすのをのの をきのやけはら | 長方 |
18 | わかなつむ をきのやけはら なほさえて そてにたまるは はるのあはゆき | 忠良 |
19 | きえそむる ゆきまもあらは とふひのに はやしたもえの わかなつみてむ | 実雄 |
20 | わかなつむ わかころもても しろたへに とふひののへは あはゆきそふる | 為家 |
21 | あさみとり かすみのころも はるはきぬ すそののわかな いまやつままし | 家良 |
22 | うちむれて わかなつむのの はなかたみ このめもはるの ゆきはたまらす | 家隆 |
23 | たかための わかなならねと わかしめし のさはのみつに そてはぬれつつ | 土御門院 |
24 | しらゆきの きえあへぬのへの こまつはら ひくてにはるの いろはみえけり | 土御門院 |
25 | ねのひして きみさかえぬる ためしには けふのみゆきを よにはのこさむ | 兼盛 |
26 | めつらしき きみかねのひの まつをこそ よろつよまての ためしにはひけ | 経実 |
27 | ねのひせし ちよのふるみち あととめて むかしをこふる まつもひかなむ | 後嵯峨院 |
28 | おほかたの はるのけしきに さそはれて しるへもまたぬ うくひすのこゑ | 後嵯峨院 |
29 | ももちとり けさこそきなけ ささたけの おほみやひとに はつねまたれて | 亀山院 |
30 | はるやとき くさはもみえぬ ゆきのうちに むすほほれたる うくひすのこゑ | 実氏 |
31 | うちきらし たまらぬゆきの はなのえに うつりにけりな うくひすのこゑ | 公経(藤原実宗男) |
32 | うめかえに こそのやととふ うくひすの はつねもさむく あはゆきそふる | 道助法親王 |
33 | うくひすも はなにまかふる ゆきなれや をりもわかれぬ こゑのきこゆる | 上東門院 |
34 | うめかえに ふりかさなれる しらゆきを やへさくはなと おもひけるかな | 花山院 |
35 | くれなゐに にほはさりせは ゆききえぬ のきはのうめを いかてしらまし | 基俊 |
36 | さわらひは いまはをりにも なりぬらむ たるみのこほり いはそそくなり | 俊成(藤原俊忠男) |
37 | はるやとき はなのみやこは なのみして ゆきけのつきは かせもにほはす | 家隆 |
38 | かさしをる みわのひはらの ゆふかすみ むかしやとほく へたてきぬらむ | 実氏 |
39 | あさみとり かすみにけりな いそのかみ ふるのにみえし みわのかみすき | 隆信 |
40 | やまのはに つきのいさよふ ゆふくれは ひはらかうへも かすみわたれり | 赤人 |
41 | ここにきて かすかのさとを みわたせは こまつかうへに かすみたなひく | 人麿 |
42 | はるきては かすみそうつむ しらゆきの ふりかくしてし みねのまつはら | 宗尊親王 |
43 | なみまより ゆふひかかれる たかさこの まつのうははは かすまさりけり | 順徳院 |
44 | みつしほに かくれぬいその まつのはも みらくすくなく かすむはるかな | 定家 |
45 | しほかまの うらのひかたの あけほのに かすみにのこる うきしまのまつ | 後鳥羽院 |
46 | こころあらむ ひとのためとや かすむらむ なにはのみつの はるのあけほの | 後鳥羽院 |
47 | みすはまた くやしからまし みつのえの うらしまかすむ はるのあけほの | 後嵯峨院 |
48 | はるのよの あけのそほふね ほのほのと いくやまもとを かすみきぬらむ | 良平 |
49 | あかしかた ゑしまをかけて みわたせは かすみのうへも おきつしらなみ | 俊成(藤原俊忠男) |
50 | さほひめの とこのうらかせ ふきぬらし かすみのそてに かかるしらなみ | 光俊(葉室光親男) |
51 | わたつうみの なみのちさとや かすむらむ やかぬしほせに たつけふりかな | 宗尊親王 |
52 | けふりたつ あまのとまやも みえぬまて かすみにけりな しほかまのうら | 経信 |
53 | なにはえの しほひのかたや かすむらむ あしまにとほき あまのいさりひ | 順徳院 |
54 | あしのやの なたのしほやの あまのとを おしあけかたそ はるはさひしき | 順徳院 |
55 | はるのよの おほろつきよの なこりとや いつるあさひも なほかすむらむ | 家隆 |
56 | はるのきる かすみやそらに かさぬらむ あまつをとめの あまのはころも | 道家 |
57 | きみさそふ しるへにそやる うくひすも きゐるのきはの うめのにほひを | 亀山院 |
58 | さきなはと またれしうめの はなのかに こぬひとたのむ はるのやまさと | 為氏 |
59 | とはるへき やととはなしに うめのはな ひとたのめなる かににほふらむ | 大納言典侍(後嵯峨院) |
60 | けふもまた ひともとはてや くれなゐの こそめのうめの はなのさかりを | 宗尊親王 |
61 | のもやまも にほひにけりな くれなゐの こそめのうめの はなのしたかせ | 実氏 |
62 | たかさとの うめのたちえを すきつらむ おもひのほかに にほふはるかせ | 実氏 |
63 | うちわたす をちかたひとは こたへねと にほひそなのる のへのうめかえ | 定家 |
64 | はるかせの そらなるほとは うめのはな こすゑのほかも かににほひつつ | 義孝(藤原敦舒男) |
65 | おもひいてて みにこさりせは うめのはな たれににほひの かをうつさまし | 伊勢 |
66 | わかやとに ふきくるかせの にほへるは かきねのうめの はなやちるらむ | 兼盛 |
67 | うめのはな ちりぬるまてに みえさりし ひとくとけさは うくひすそなく | 光孝天皇 |
68 | わかやとに さきたるうめを つきかけに よなよなきつつ みむひともかな | 人麿 |
69 | やまのはに かすめるつきは かたふきて よふかきまとに にほふうめかえ | 家良 |
70 | かすみとも くもともわかぬ ゆふくれに しられぬほとの はるさめそふる | 良経(九条兼実男) |
71 | あさみとり そめかけたりと みるまてに はるのやなきは もえいてにけり | 赤人 |
72 | ぬれてほす みとりもふかし はるかせに なみよるきしの あをやきのいと | 通方 |
73 | ひとかたに なひきにけりな たにかせの ふきあけにたてる あをやきのいと | 宗尊親王 |
74 | つゆにたに むすほほれたる あをやきの いととみたれて はるかせそふく | 教定(飛鳥井雅経男) |
75 | くもはなほ よものはるかせ ふきはらへ かすみにゆるす おほろつきよそ | 家隆 |
76 | うきみには さこそこころの はれさらめ みるかけさへに かすむつきかな | 親子(典侍親子朝臣) |
77 | はるはなほ かすむにつけて ふかきよの あはれをみする つきのかけかな | 小宰相(土御門院) |
78 | つきかけの かすむはうきを いかにして はるはあはれと おもひそめけむ | 顕朝 |
79 | あすかかせ かはおとふけて たをやめの そてにかすめる はるのよのつき | 宗尊親王 |
80 | さほひめの かすみのそても たれゆゑに おほろにやとる はるのつきかけ | 家隆 |
81 | つきのこる かたやまききす こゑたてて あくるもをしく かすむそらかな | 実氏 |
82 | ほのほのと かすめるやまの しののめに つきをのこして かへるかりかね | 家良 |
83 | かへりゆく こしちのゆきや さむからむ はるはかすみの ころもかりかね | 讃岐(二条院) |
84 | たかなかに とほさかりゆく たまつさの はてはたえぬる はるのかりかね | 家隆 |
85 | いまはとて やまとひこゆる かりかねの なみたつゆけき はなのうへかな | 良経(九条兼実男) |
86 | まちわふる とやまのはなは さきやらて こころつくしに かかるしらくも | 為家 |
87 | あたならぬ いろとおもはは さくらはな まつもこころは のとけからまし | 基平(近衛兼経男) |
88 | みわたせは ふもとはかりに さきそめて はなもおくある みよしののやま | 宮内卿(後鳥羽院) |
89 | よそにみる かつらきやまの しらくもに かせこそにほへ はなやさくらむ | 民部卿典侍(後堀河院) |
90 | さくらはな さきぬるときは かつらきの やまのすかたに かかるしらくも | 家隆 |
91 | しらくもや はなよりうへに かかるらむ さくらそたかき かつらきのやま | 順徳院 |
92 | かつらきや たかまのやまの はなさかり くものよそなる くもをみるかな | 有家(藤原重家男) |
93 | ゆくままに はなのこすゑに なりにけり よそにみえつる みねのしらくも | 清輔 |
94 | よしのやま はなよりおくの しらくもや かさなるみねの さくらなるらむ | 雅有 |
95 | しらくもの かかれるやまと みえつるは こほれてはなの にほふなりけり | 高遠 |
96 | さくらいろの はつはなそめの かりころも きつつやなれむ はるのこのもと | 実氏 |
97 | いつくにか はるのこころも ととむへき ゆききにさける やまさくらかな | 長能 |
98 | ひにみかく たまきのみやの さくらはな はるのひかりと うゑやおきけむ | 定家 |
99 | くももみな うすはなそめに なりにけり さくらにうつる はるのあけほの | 公相 |
100 | はることに おもひやられし みよしのの はなはけふこそ やとにさきけれ | 後嵯峨院 |
101 | さほひめも やまのさくらや かさすらむ かすみのそての はなにかかれる | 宗尊親王 |
102 | たをやめの ころものそてや にほふらむ をりはへかさす はなのしらくも | 教実 |
103 | はつせめの みねのさくらの はなかつら そらさへかけて にほふはるかせ | 為家 |
104 | やまさくら あくまていろを みつるかな はなちるへくも かせふかぬよに | 兼盛 |
105 | ふくかせも をさまれるよの うれしきは はなみるときそ まつおほえける | 後鳥羽院 |
106 | かつみても あかぬこころの いろならは うつるはかりや はなにそめまし | 行家(藤原知家男) |
107 | くれやすき はるのひかけと おもふこそ はなみてあかぬ こころなりけれ | 経平(衣笠家良男) |
108 | みてもなほ しつのをたまき なかきひの くるるもあかぬ やまさくらかな | 為経(甘露寺藤原資経男) |
109 | ふくかせの さらぬならひも わすられて ちよともなけく はなのかけかな | 按察(鷹司院) |
110 | さかぬまは たれかはとひし わかやとの はなこそひとの なさけなりけれ | 兼実 |
111 | けふこすは にはにやあとの いとはれむ とへかしひとの はなのさかりを | 良経(九条兼実男) |
112 | めかれせぬ やとのさくらの はなさかり わかこころさへ ちるかたそなき | 後嵯峨院 |
113 | ちらぬまの はなのかけにて くらすひは おいのこころも ものおもひもなし | 良実 |
114 | はなみても はるのこころの のとけきは おいてよにふる すみかなりけり | 家良 |
115 | さくらかり かすみのしたに けふくれぬ ひとよやとかせ はるのやまもり | 定家 |
116 | はなのいろの をられぬみつに こすさをの しつくもにほふ うちのかはをさ | 定家 |
117 | いのちあれは おほくのはるに あひぬれと ことしはかりの はなはみさりつ | 顕輔 |
118 | かへりこぬ むかしをはなに かこちても あはれいくよの はるかへぬらむ | 実氏 |
119 | はしたかの すゑののはらの さくらかり しらふにはなの いろをまかへて | 後鳥羽院 |
120 | ふるさとの はなにむかしの こととはは いくよのひとの こころしらまし | 成範 |
121 | たのまれす はなのこころを おもへはや ちらぬさきより うくひすのなく | 元方 |
122 | かつみつつ あかすとおもへは さくらはな ちりなむのちそ かねてこひしき | 貫之 |
123 | このさとの さくらをくもと なかめつる みやこそかすむ はるのゆふくれ | 実氏 |
124 | なかめても みそふりまさる さくらはな やまとしたかき ゆきにまかへて | 実氏 |
125 | よしさらは ちるまてはみし やまさくら はなのさかりを おもかけにして | 為家 |
126 | ちきりおきし はなのころしも おもふかな としにまれなる ひとのつらさは | 月花門院 |
127 | さきたつる こころをしらて さくらはな たつねぬひとに なりやしぬらむ | 中宮(堀河院) |
128 | よしのやま さくらにかかる ゆふかすみ はなもおほろの いろはありけり | 後鳥羽院 |
129 | ゆふやみは あなおほつかな つきかけの いてはやはなの いろもまさらむ | 人麿 |
130 | やすらはて ねなむものかは やまのはに いさよふつきを はなにまちつつ | 良経(九条兼実男) |
131 | さきにほふ はなをひかりに さしそへて このまをいつる はるのよのつき | 道良 |
132 | あかすみる はなのこのまを もるつきに おもかけとめよ くものうへひと | 実氏 |
133 | ちりかかる はなのかかみの みつのおもに かさねてくもる はるのよのつき | 資平 |
134 | いまはとて つきもなこりや をしむらむ はなちるやまの ありあけのそら | 冬忠 |
135 | いまはとて はるのありあけに ちるはなや つきにもをしき みねのしらくも | 讃岐(二条院) |
136 | いまはまた ゆきとふりつつ かかみやま みしにはかはる はなのかけかな | 知家 |
137 | すかのねの なかきひなれと さくらはな ちるこのもとは みしかかりけり | 躬恒 |
138 | にはのうへに ふきまふかせの なかりせは ちりつむはなを そらにみましや | 経信 |
139 | ふきのほる きそのみさかの たにかせに こすゑもしらぬ はなをみるかな | 長明 |
140 | うらむへき かせのやとりを しらねはや ちるをははなの うきになすらむ | 基平(近衛兼経男) |
141 | やまさくら われとやあたに さきそめし はなのなたての はるかせそふく | 良実 |
142 | さらてたに しつこころなく ちるはなを あかすやかせの なほさそふらむ | 性助法親王 |
143 | ちりつもる はなのしらゆき ふきわけて かせこそにはの あとはみせけれ | 良教 |
144 | ふきはらふ このしたかせに かつきえて つもらぬにはの はなのゆきかな | 通具 |
145 | はるかせに しられぬはなや のこるらむ なほくもかかる をはつせのやま | 丹後(宜秋門院) |
146 | もろともに なかむるをりの はなならは ちらすかせをも うらみさらまし | 枇杷皇太后宮 |
147 | ゆめのうちも うつろふはなに かせふけは しつこころなき はるのうたたね | 式子内親王 |
148 | おもひねの ゆめちににほふ はなをさへ しはしもみせぬ かせのおとかな | 忠良 |
149 | かすみつつ はなちるみねの あさほらけ のちにやかせの うさもしられむ | 丹後(宜秋門院) |
150 | ちりぬとも いかてかしらむ やまさくら はるのかすみの たちしかくせは | 人麿 |
151 | ちるにたに あはましものを さくらはな またぬははなの つらさなりけり | 躬恒 |
152 | やまさくら おほふはかりの かひもなし かすみのそては はなもたまらす | 家隆 |
153 | やまひめの かすみのそてや しをるらむ はなこきたれて はるさめそふる | 後鳥羽院 |
154 | くらきよの あめにたくひて ちるはなを はるのみそれと おもひけるかな | 一条院 |
155 | みにかへて おもへはなにか したふへき はなをとめても おなしわかれを | 基家 |
156 | をしまれて とまるならひの はなならは さそふあらしに みをやかへまし | 実氏 |
157 | こころあらは かせもやひとを うらみまし をるはさくらの をしからぬかは | 俊頼(源経信男) |
158 | よしのかは はなにもみつや まさるらむ ちれはおちそふ たきのしらなみ | 成茂 |
159 | みなそこに しつめるはなの かけみれは はるはふかくも なりにけるかな | 是則 |
160 | はるののに すみれつみにと こしわれそ のをなつかしみ ひとよねにけり | 赤人 |
161 | あさちふの をののしはふの ゆふつゆに すみれつむとて ぬるるそてかな | 後嵯峨院 |
162 | たまかはの きしのやまふき かけみえて いろなるなみに かはつなくなり | 後鳥羽院 |
163 | さきにほふ こしまかさきの やまふきや やそうちひとの かさしなるらむ | 光俊(葉室光親男) |
164 | さきにけり なはしろみつに かけみえて たなかのゐとの やまふきのはな | 堀河(待賢門院) |
165 | うつろへは はるはかきりの いろそとも いふにまされる やまふきのはな | 家良 |
166 | はやせかは なみのかけこす いはきしに こほれてさける やまふきのはな | 為家 |
167 | にほふより はるはくれゆく やまふきの はなこそはなの なかにつらけれ | 定家 |
168 | はるはたた かすみはかりの やまのはに あかつきかけて つきいつるころ | 定家 |
169 | なかめこし やまのすゑのの ゆふかすみ そのいろとなく をしきはるかな | 忠定(藤原兼宗男) |
170 | さきにけり ぬれつつをりし ふちのはな いくかもあらぬ はるをしらせて | 宗尊親王 |
171 | ぬれつつも をりてかへらむ いしはしる たきついはねに かかるふちなみ | 家隆 |
172 | ときはなる まつのなたてに あやなくも かかれるふちの さきてちるかな | 貫之 |
173 | けふくれて あすになりなは ふちなみの かけてのみこそ はるをしのはめ | 醍醐天皇 |
174 | なにゆゑに はるのわかれは をしきそと とふへきはなの ちりにけるかな | 慈円 |
175 | ゆくはるの せきにしとまる ものならは あふさかやまの はなはちらしな | 後三条院 |
176 | まれにあふ やよひのつきの かすそへて はるにおくれぬ はなをみるかな | 光俊(葉室光親男) |
177 | かそへては のこりいくかと またれつる わかれにはるの なりにけるかな | 光俊(葉室光親男) |
178 | なからへて さてもいくたひ をしむらむ みにかへつへき はるのわかれを | 通雅 |
179 | あはれとは わかみのみこそ おもひけれ はかなくはるを すくしきぬれは | 千里 |
180 | おいぬれは はるのくるるも をしきかな いそくひかすも いのちならすや | 元方 |
181 | ひとはいさ おいぬるみには おほかたの はるのわかれも かなしかりけり | 実氏 |
182 | きのふまて なれしたもとの はなのかに かへまくをしき なつころもかな | 土御門院 |
183 | けふよりは ちよをかさねむ はしめとて まつひとへなる なつころもかな | 良経(九条兼実男) |
184 | はなそめの そてさへけふは たちかへて さらにこひしき やまさくらかな | 宗尊親王 |
185 | くものゐる とほやまとりの おそさくら こころなかくも のこるいろかな | 宗尊親王 |
186 | たつねはや あをはのやまの おそさくら はなののこるか はるのとまるか | 後嵯峨院 |
187 | さくらたに ちりのこらはと いひしかと はなみてしもそ はるはこひしき | 俊頼(源経信男) |
188 | あかさりし はるのへたてと みるからに かきねもつらき やとのうのはな | 宗尊親王 |
189 | さきてこそ へたてもみゆれ やまかつの あるかなきかに かこふうのはな | 家経(一条実経男) |
190 | うのはなの まかきはくもの いつくとて あけぬるつきの かけやとすらむ | 為家 |
191 | をとめこか ゆふかみやまの たまかつら けふはあふひを かけやそふらむ | 家隆 |
192 | おもひやる かりねののへの あふひくさ きみをこころに かくるけふかな | 定家 |
193 | としをへて まつのをやまの あふひこそ いろもかはらぬ かさしなりけれ | 紀伊(祐子内親王家) |
194 | なきぬとも ひとにかたらし ほとときす たたしのひねは われにきかせよ | 小弁 |
195 | つきよりも まちそかねつる ほとときす みやまをいてむ ほとをしらねは | 公任 |
196 | かくはかり まつちのやまの ほとときす こころしらてや よそになくらむ | 村上天皇 |
197 | なにゆゑに しのふなるらむ ほとときす こゑたてぬねは くるしきものを | 花山院 |
198 | みにしらは はつねきかせよ ほとときす さつきをまつも くるしかるらむ | 後嵯峨院 |
199 | うくひすの ふるすのたけの ほとときす よをかそへてや さつきまつらむ | 教実 |
200 | ほとときす なれよなにとて なくこゑの さつきまつまは つれなかるらむ | 具氏 |
201 | たのめぬを われのみまちて ほとときす つれなきものと いひやなすへき | 家良 |
202 | まちわひぬ いかなるさとの ねさめにか やまほとときす はつねなくらむ | 忠家(藤原教実男) |
203 | ほとときす みわのかみすき すきやらて とふへきものと たれをまつらむ | 通光 |
204 | ほとときす まつゆふくれの むらさめは きなかぬさきに そてぬらしけり | 俊成(藤原俊忠男) |
205 | まちあかす やとにはなかて ほとときす くもゐなからも すきぬなるかな | 瑒子内親王 |
206 | きかましや やまほとときす ひとこゑも まてとたのむる ひとなかりせは | 小左近 |
207 | ほとときす よふかきこゑは つきまつと おきていをねぬ ひとそききける | 躬恒 |
208 | ほとときす まつところには おともせて いつれのさとの つきになくらむ | 貫之 |
209 | まちわふる やとともしらす ほとときす くものいつくの つきになくらむ | 月花門院 |
210 | ひとこゑを あかすもつきに なきすてて あまのとわたる ほとときすかな | 宗尊親王 |
211 | ゆきやらて くらせるやまの ほとときす いまひとこゑは つきになくなり | 宗尊親王 |
212 | あしひきの やへやまこえて ほとときす うのはなかくれ なきわたるなり | 赤人 |
213 | わかことく ものおもふときや ほとときす みをうのはなの かけになくらむ | 敦忠 |
214 | うのはなの かけなかりせは ほとときす そらにやけふの はつねなかまし | 後鳥羽院 |
215 | かみやまに ゆふかけてなく ほとときす しひしはかくれ しはしかたらへ | 後鳥羽院 |
216 | さかきとり しめゆふもりの ほとときす うつきをかけて しのひねそなく | 為氏 |
217 | いまはまた ねにあらはれぬ ほとときす なみこすうらの まつとせしまに | 為家 |
218 | ひとよりも まつきけとてや ほとときす わかしめしのの かたになくらむ | 行家(藤原知家男) |
219 | ほとときす なくひとこゑも あけやらす なほよをのこす おいのねさめに | 為家 |
220 | かはらすと ひとにかたらむ ほとときす むかしのこゑは われのみそきく | 実氏 |
221 | ふりにける あすかのさとの ほとときす なくねはかりや かはらさるらむ | 兼経 |
222 | あさとあけに たちいててきけは ほとときす やまのはみゆる かたになくなり | 信実 |
223 | あかてこそ とほさかるなれ ほとときす そをたにのちと たれにちきりて | 光俊(葉室光親男) |
224 | またきかぬ ひとのためには ほとときす いくたひなくも はつねなりけり | 寂身 |
225 | くさのなに わすれやしぬる ほとときす さつきもとはぬ すみよしのさと | 国平 |
226 | さとわかす なけやさつきの ほとときす しのひしころは うらみやはせし | 小宰相(土御門院) |
227 | ほとときす しのひしころの ひとこゑを いまはさつきと なきやふりなむ | 雅忠 |
228 | かきりなき なみたとみせて ほとときす おのかさつきの あめになくなり | 蓮生法師 |
229 | みかくれて おふるさつきの あやめくさ なかきためしに ひとはひかなむ | 貫之 |
230 | たまもかる いけのみきはの あやめくさ ひくへきほとに なりにけるかな | 堀河院 |
231 | みのうきに ひけるあやめの あちきなく ひとのそてまて ねをやかくへき | 和泉式部 |
232 | あやめおふる ぬまのいはかき かきくもり さもさみたるる きのふけふかな | 土御門院 |
233 | をやまたに まかするみつの あさみこそ そてはひつらめ さなへとるとて | 弁内侍(後深草院) |
234 | くれかかる やまたのたこの ぬれころも ほさてやあすも さなへとるへき | 隆親(藤原隆衡男) |
235 | ときすきは さなへもいたく おいぬへし あめにもたこは さはらさらなむ | 貫之 |
236 | けさたにも よをこめてとれ せりかはや たけたのさなへ ふしたちにけり | 読人不知 |
237 | さみたれは たなゐにもりし ささみつの あせこすまてに なりにけるかな | 崇徳院 |
238 | なつかりの あしのまろやの けふりたに たつそらもなき さみたれのころ | 教実 |
239 | さみたれに みつのみなかみ すみやらて さらすかひなき ぬのひきのたき | 行能 |
240 | たまほこや かよふたたちも かはとみて わたらぬなかの さみたれのころ | 定家 |
241 | おもひかは いかなるときの さみたれに せかてもみつの ふちとなるらむ | 少将(藻璧門院) |
242 | さみたれに みかさまさりて うきぬれは さしてそわたる さののふなはし | 祐盛 |
243 | さみたれの つきてしふれは あすかかは おなしふちにて かはるせもなし | 雅成親王 |
244 | なかなかに しほくみたゆむ あまひとの そてやほすらむ さみたれのころ | 家隆 |
245 | さみたれは はれゆくそらの ほとときす おのかなくねは をやみたにすな | 家隆 |
246 | たかそての にほひをかせの さそひきて はなたちはなに うつしそめけむ | 土御門院 |
247 | むかしをは はなたちはなに しのひてむ ゆくすゑをしる そてのかもかな | 土御門院 |
248 | のきちかき はなたちはなの にほひきて ねぬよのゆめは むかしなりけり | 寂蓮 |
249 | にほひくる はなたちはなの そてのかに なみたつゆけき うたたねのゆめ | 俊成(藤原俊忠男) |
250 | たをりつる はなたちはなに かをしめて わかたまくらに をしきそてかな | 讃岐(二条院) |
251 | たかそての なみたなるらむ ふるさとの はなたちはなに つゆそこほるる | 慈円 |
252 | たちはなの はなちるさとの ほとときす かたこひしつつ なかぬひもなし | 旅人 |
253 | ともしして こよひもあけぬ たまくしけ ふたむらやまの みねのよこくも | 順徳院 |
254 | かたいとを よるよるみねに ともすひに あはすはしかの みをもかへしを | 定家 |
255 | はやせかは みをさかのほる かかりひの よとむとすれは あくるしののめ | 通光 |
256 | いさりひの うかへるかけと みえつるは なみのよるしる ほたるなりけり | 行成 |
257 | やきすてし あとともみえぬ なつくさに いまはたもえて ゆくほたるかな | 宗尊親王 |
258 | したもえや くるしかるらむ なくこゑも きこえぬむしの よはのおもひは | 帥(鷹司院) |
259 | とふほたる おもひやなほも かくれぬの したはふあしの ねはしのへとも | 行家(藤原知家男) |
260 | なつのよは まつひともなき まきのとも あけなからのみ あかしつるかな | 重之女 |
261 | つきのさす まきのいたとと しりなから たれあけよとて たたくくひなそ | 中務命婦 |
262 | てにむすふ いはゐのしみつ そこみえて かけもにこらぬ なつのよのつき | 実氏 |
263 | さらぬたに みるほともなき なつのよを またれていつる つきのかけかな | 覚性法親王 |
264 | あかつきの そらとはいはし なつのよは またよひなから ありあけのつき | 公相 |
265 | なつやまの ならのはそよき ふくかせに いりひすすしき ひくらしのこゑ | 後鳥羽院 |
266 | なくせみの はにおくつゆに あきかけて こかけすすしき ゆふくれのこゑ | 良経(九条兼実男) |
267 | まつかせも はけしくなりぬ たかさこの をのへのくもの ゆふたちのそら | 宗尊親王 |
268 | かせさわく しのたのもりの ゆふたちに あめをのこして はるるむらくも | 実氏 |
269 | かやりひの けふりそのこる ゆふたちの くもはすきぬる をちのやまもと | 知家 |
270 | くれかたき なつのひくらし なかむれは そのこととなく ものそかなしき | 業平 |
271 | つゆをたに うちもはらはぬ とこなつは たかうきなかの はなにさくらむ | 行家(藤原知家男) |
272 | みちのへの はにふのこやの ほとなきに あまりてかかる ゆふかほのはな | 政村 |
273 | さきにけり をちかたひとに こととひて なをしりそめし ゆふかほのはな | 小侍従(太皇太后宮) |
274 | はしたての くらはしかはに かるくさの なかきひくらし すすむころかな | 後鳥羽院 |
275 | そまかはの やまかけくたす いかたしよ いかかうきねの とこはすすしき | 良経/兼実 |
276 | このころは なかるるみつを せきいれて こかけすすしき なかかはのやと | 光俊(葉室光親男) |
277 | うちなひく しけみかしたの さゆりはの しられぬほとに かよふあきかせ | 定家 |
278 | ゆふすすみ みにしむはかり なりにけり あきのけしきの もりのしたかせ | 成実(藤原親実男) |
279 | つのくにの なにはのさとの ゆふすすみ あしのしのひに あきかせそふく | 信実 |
280 | ゆふされは しののをささを ふくかせの またきにあきの けしきなるかな | 実能 |
281 | みそきかは さよふけかたに よるなみの かへるやなつの わかれなるらむ | 長雅 |
282 | なつくれて なかるるあさの ゆふはかは たれみなかみに みそきしつらむ | 家隆 |
283 | あすからは ゆくせのなみに みそきして はやくそとしの なかはすきぬる | 定家 |
284 | ときはいま あきそとおもへは ころもてに ふきくるかせの しるくもあるかな | 家持 |
285 | かきりあれは きのふにまさる つゆもなし のきのしのふの あきのはつかせ | 順徳院 |
286 | しらつゆの たましくをのの あさちはら かせよりさきに あきはきにけり | 実氏 |
287 | つゆむすふ ころもてすすし ねぬるよの みにしられてそ あきはきにける | 公基 |
288 | あききては いくかもあらしを ふくかせの みにしむはかり なりにけるかな | 式子内親王 |
289 | あききぬと いはぬをしるは ふくかせの みにしむときの こころなりけり | 少将内侍(後深草院) |
290 | ふきそめて いくかもあらぬ あきかせに いとはやそての つゆけかるらむ | 実雄 |
291 | なみたより かつかつそてに つゆちりて まちしかひとの あきのはつかせ | 慈円 |
292 | もしほやく あまのとまやの しるへかは うらみてそふく あきのはつかせ | 定家 |
293 | みなとこす ゆふなみすすし いせのうみの をののふるえの あきのはつかせ | 宗尊親王 |
294 | うつせみの はにおくつゆも あらはれて うすきたもとに あきかせそふく | 雅経 |
295 | いまよりは すすしくなりぬ ひくらしの なくやまかけの あきのゆふかせ | 実朝 |
296 | まくすはひ をきのしけらぬ やとならは おそくやあきの かせをきかまし | 公実 |
297 | あききては かくこそありけれ ふくかせの おとさへつらき にはのをきはら | 亀山院 |
298 | みにしむは いかなるいろの つらさとも しらてかなしき あきのはつかせ | 兵衛佐(東二条院) |
299 | ふけはこそ をきのうははも かなしけれ おもへはつらし あきのはつかせ | 政村 |
300 | をきのはに そよときこえて ふくかせに おつるなみたや つゆとおくらむ | 安法 |
301 | あきかせは さてもやものの かなしきと をきのはならぬ ゆふくれもかな | 家隆 |
302 | うらみよと なれるゆふへの けしきかな たのめぬやとの をきのうはかせ | 後鳥羽院 |
303 | ゆふされは まかきのをきを ふくかせの めにみぬあきを しるなみたかな | 土御門院 |
304 | あきのよの あやしきほとの たそかれに をきふくかせの おとをきくかな | 斎宮女御 |
305 | ふきすくる おとはすれとも あきかせの やとるはをきの うははなりけり | 読人不知 |
306 | をきのはに ありけるものを はなゆゑに はるもうかりし かせのやとりは | 澄覚法親王 |
307 | ふきよれは みにもしみける あきかせを いろなきものと おもひけるかな | 友則 |
308 | あまのかは みつかけくさの あきかせに なひくをみれは ときはきにけり | 赤人 |
309 | あまのかは やすのかはらに ふねうけて あきかせふくと いもにつけこせ | 赤人 |
310 | あまのかは きりたちわたり けふけふと わかまつきみの ふなてすらしも | 房前 |
311 | くれをまつ くもゐのほとも おほつかな ふみみまほしき かささきのはし | 上東門院 |
312 | かささきの はしのたえまを くもゐにて ゆきあひのそらを なほそうらやむ | 東三条院 |
313 | あまのかは くもゐをわたる あきかせに ゆきあひをまつ かささきのはし | 道家 |
314 | あまのかは けふのふなては ほともなし ちきりそとほき わたりなりける | 素暹 |
315 | かささきの くもゐのはしの とほけれは わたらぬなかに ゆくつきひかな | 知家 |
316 | たなはたの こひやつもりて あまのかは まれなるなかの ふちとなるらむ | 宗尊親王 |
317 | いかはかり うれしからまし たなはたの まつよのかすの あふよなりせは | 顕房 |
318 | あふとても なれすやあらむ たなはたの まとほにきたる あまのはころも | 康資王母 |
319 | あまのかは またはつあきの みしかよを なとたなはたの ちきりそめけむ | 匡房 |
320 | いくとせの あきのひとよを かさぬらむ おもへはひさし ほしあひのそら | 亀山院 |
321 | あまのかは いかになかれて たなはたの としにあふせは かはらさるらむ | 為氏 |
322 | あまのかは もみちのはしや あきをへて わたれとたえぬ にしきなるらむ | 澄覚法親王 |
323 | たけのはに あさひくいとや たなはたの ひとよのふしの みたれなるらむ | 忠良 |
324 | あまのかは あかつきやみの かへるさに またたとらるる あさせしらなみ | 家経(一条実経男) |
325 | たちかへる あまのかはなみ ふくかせの みにしむはかり つらきけふかな | 師時 |
326 | いとはやも さきにほふらし をやまたの かりほのやとの あきはきのはな | 実経 |
327 | あきはきの したはにつきの やとらすは あけてやつゆの かすをしらまし | 俊頼(源経信男) |
328 | かりころも みたれにけりな あつさゆみ ひくまののへの はきのあさつゆ | 式子内親王 |
329 | きゆるたに をしけにみゆる あきはきの つゆふきおとす こからしのかせ | 大弐三位 |
330 | とへかしな にはのあきはき つゆけさの これよりまさる やとはあらしを | 按察(鷹司院) |
331 | ひとりぬる とこはよさむの あきかせに したはいろつく にはのはきはら | 実雄 |
332 | はきのはな ちらはをしけむ あきのあめ しはしなふりそ いろのつくまて | 人麿 |
333 | はなのいろは こなたかなたに みゆれとも あきのこころは ひとつなりけり | 醍醐天皇 |
334 | さくはなを みれともあかぬ あきののは ゆきもやられす とまるともなし | 伊勢 |
335 | ゆふきりに ほのかにみゆる をみなへし われよりさきに つゆやむすはむ | 具平親王 |
336 | なにことを しのふのをかの をみなへし おもひしをれて つゆけかるらむ | 俊恵 |
337 | なひくとや ひとはみるらむ をみなへし おもふかたにそ かせもふきける | 読人不知 |
338 | をみなへし はなのたもとに つゆおきて たかゆふくれの ちきりまつらむ | 後鳥羽院 |
339 | しらつゆの たまくらののの をみなへし たれとかはせる けさのなこりそ | 経平(衣笠家良男) |
340 | ゆくみつに かけをうつせる をみなへし したのこころを たれによすらむ | 時文 |
341 | うちまねく けしきことなる はなすすき ゆきすきかたく みゆるのへかな | 資綱 |
342 | ゆきすきぬ けしきともみす はなすすき まねくにとまる ひとしなけれは | 弁乳母 |
343 | はなすすき かせになひきて みたるるは むすひおきてし つゆやとくらむ | 深養父 |
344 | ものおもふ ひとのそてには あらねとも つゆけかりけり はなすすきかな | 親子(典侍親子朝臣) |
345 | いとすすき こなたかなたに うゑおきて あたなるつゆの たまのをにせむ | 後嵯峨院 |
346 | とやまなる ならのはまては はけしくて をはなかすゑに よわるあきかせ | 宮内卿(後鳥羽院) |
347 | はなすすき おほかるのへは からころも たもとゆたかに あきかせそふく | 宗尊親王 |
348 | ゆめちにそ さくへかりける おきてみむと おもふをまたぬ あさかほのはな | 宗尊親王 |
349 | しののめと ちきりてさける あさかほに たかかへるさの なみたおくらむ | 後鳥羽院 |
350 | おきてゆく たかかよひちの あさつゆそ くさのたもとも しほるはかりに | 定家 |
351 | なほふかく あはれやそはむ ふちはかま ぬしさためたる にほひとおもはは | 小宰相(土御門院) |
352 | つゆのぬき あたにおるてふ ふちはかま あきかせまたて たれにかさまし | 土御門院 |
353 | ゆふくれは むくらのやとの しらつゆも おもひあれはや そてにおくらむ | 土御門院 |
354 | いかにせむ つゆははらはて あきかせの ふくにつけても ぬるるたもとを | 宗尊親王 |
355 | ふきはらふ のはらのかせの ゆふくれも そてにとまるは あきのしらつゆ | 実氏 |
356 | あきはなほ ゆふへよいかに こころにも しられぬつゆの そてにおくらむ | 顕朝 |
357 | このあきは むそちあまりに つゆそおく おいやゆふへの あはれとはなる | 知家 |
358 | ゆふまくれ しきたつさはの わすれみつ おもひいつとも そてはぬれなむ | 慈円 |
359 | あきよたた なかめすてても いてなまし このさとのみの ゆふへとおもはは | 定家 |
360 | いつもかく さひしきものか つのくにの あしやのさとの あきのゆふくれ | 家隆 |
361 | おほえすよ いつれのあきの ゆふへより つゆおくものと そてのなりけむ | 後鳥羽院 |
362 | みよしのの いはのかけちを ならしても なほうきときか あきのゆふくれ | 後鳥羽院 |
363 | そてのつゆを いかにかこたむ こととへと こたへぬそらの あきのゆふくれ | 後鳥羽院 |
364 | なかなかに かせもおとせぬ ゆふくれの みやまのあきは こころすみけり | 後鳥羽院 |
365 | ゆふくれは いかなるいろの かはれはか むなしきそらに あきのみゆらむ | 教家 |
366 | そてのうへに とすれはかかる なみたかな あないひしらす あきのゆふくれ | 宗尊親王 |
367 | なにことと こころにものは わかねとも あはれとそおもふ あきのゆふくれ | 良実 |
368 | なかむれは すすろにおつる なみたかな いかなるときそ あきのゆふくれ | 実氏 |
369 | われなから おもひもわかぬ なみたかな たそかれときの あきのならひは | 後嵯峨院 |
370 | いかなれは いつともわかぬ ゆふくれの かせさへあきは かなしかるらむ | 月花門院 |
371 | なみたさへ あきのものとは いつなりて くるれはひとの そてぬらすらむ | 小宰相(土御門院) |
372 | いまよりも かさねてものの かなしくは たへてもいかか あきのゆふくれ | 重時 |
373 | ものをのみ さもおもはする さきのよの むくひやあきの ゆふへなるらむ | 信実 |
374 | ふくかせも わきてみにしむ ときそとは たかならはしの あきのゆふくれ | 公雄 |
375 | さひしさは いつくもおなし ことわりに おもひなされぬ あきのゆふくれ | 長時 |
376 | そのことと おもはてものの かなしきや あきのゆふへの ならひなるらむ | 経平(衣笠家良男) |
377 | なくむしの こゑのいろには みえねとも うきはみにしむ あきのゆふくれ | 少将(藻璧門院) |
378 | あきはこれ いかなるときそ われならぬ のはらのむしも つゆになくなり | 俊成(藤原俊忠男) |
379 | つゆになく をはなかもとの きりきりす たかたまくらの なみたそふらむ | 宗尊親王 |
380 | あさちふの つゆふきむすふ こからしに みたれてもなく むしのこゑかな | 但馬(規子内親王家) |
381 | ゆふされは つゆふきおとす あきかせに はすゑかたよる をののしのはら | 家良 |
382 | さとのあまの たくものけふり こころせよ つきのてしほの そらはれにけり | 後鳥羽院 |
383 | いてぬまの やまのあなたへ おもひこす こころやさきに つきをみるらむ | 頼政 |
384 | おほそらの くもものこさす ふきなして かせもつきまつ けしきなるかな | 後嵯峨院 |
385 | みしひとの たのめてふけし よひよひの つらさににたる やまのはのつき | 知家 |
386 | たれしかも くもゐはるかに とよくにの ゆふやまいつる つきをみるらむ | 知家 |
387 | つくはねの やまとりのをの ますかかみ かけていてたる あきのよのつき | 家隆 |
388 | たちのほる かはせのきりや はれぬらむ まきのをやまを いつるつきかけ | 実氏 |
389 | いつくより ゆきてはかへる つきなれは よなよなおなし やまをいつらむ | 光俊(葉室光親男) |
390 | あなしふく ゆつきかたけに くもきえて ひはらのうへに つきわたるみゆ | 基家 |
391 | ふしのねの つきにあらしや はらふらむ かみたにけたぬ けふりなれとも | 後鳥羽院 |
392 | これをこそ くものうへとは おもひつれ はるかにつきの すみのほるかな | 崇徳院 |
393 | こころあらは ゑしのたくひも たゆむらむ こよひそあきの つきはみるへき | 順徳院 |
394 | ささなみや くにつみかみの ますかかみ かけてもすめる みよのつきかな | 道家 |
395 | いかなれは すまのせきやを もるつきの あかしのうらに なをととむらむ | 忠良 |
396 | きのくにや ゆらのみさきの つききよみ たまよせかくる おきつしらなみ | 師光(源師頼男) |
397 | さとのなも ひさしくなりぬ やましろの とはにあひみむ あきのよのつき | 後嵯峨院 |
398 | すむつきの かけすさましく ふくるよに いととあきなる をきのうはかせ | 実氏 |
399 | おほつかな いかなるむかし さえそめて こよひのつきの なをのこしけむ | 俊頼(源経信男) |
400 | みつのおもに かそへしあきの つきみれは そらにもいまそ なかはなりける | 帥(鷹司院) |
401 | つきかけを こほりとみてや すきなまし いはもるみつの おとせさりせは | 登蓮 |
402 | のとかにも みゆるそらかな くもはれて いることおそき あきのよのつき | 侍従乳母 |
403 | おほそらも いけのおもても くもりなく こよひはみちて すめるつきかな | 師実 |
404 | こよひわれ よしののたけの たかねにて くももおよはぬ つきをみるかな | 行意 |
405 | くもこそは そらになからめ あつまのの けふりもみえぬ よはのつきかな | 実伊 |
406 | さしのほる ゐなのみなとの ゆふしほに ひかりみちたる あきのよのつき | 実氏 |
407 | かせわたる ゆらのみなとの ゆふしほに かけさしのほる つきのさやけさ | 政村 |
408 | しきたへの とこのうらわの なみまくら やとるやつきの うきねなるらむ | 定円(葉室光俊男) |
409 | なにしおふ さかひやいつく あかしかた なほうらとほく すめるつきかな | 信実 |
410 | みなせかは こほるもつきの かけなれは なほありてゆく みつのしらなみ | 時直 |
411 | みるひとの こころはそらに あくかれて つきのかけのみ すめるやとかな | 経信母 |
412 | こころのみ もろこしまても うかれつつ ゆめちにとほき つきのころかな | 定家 |
413 | あちきなく なくさめかねつ さらしなや かからぬやまも つきはすむらむ | 後鳥羽院 |
414 | かきくもる こころいとふな よはのつき なにゆゑおつる あきのなみたそ | 良経(九条兼実男) |
415 | たれとなく こころにひとの またるるや なかむるつきの さそふなるらむ | 慈円 |
416 | きみかこぬ なさけのほとも あらはさて しはしはつきに くものかかれな | 定家 |
417 | ひとをこそ またすもあらめ くもれとは いかかおもはむ あきのよのつき | 光俊(葉室光親男) |
418 | ひととはぬ むくらのやとの つきかけに つゆこそみえね あきかせそふく | 宗尊親王 |
419 | そてのうへ まくらのしたに やとりきて いくとせなれぬ あきのよのつき | 定家 |
420 | いくめくり なれぬるあきを おもふにも おいてそつきに あはれそひける | 後嵯峨院 |
421 | なかめきて さのみつきせぬ なみたとも おいてしりぬる あきのよのつき | 家良 |
422 | あきのよの つきこそありけれ よのなかに いまもむかしの かたみはかりは | 為氏 |
423 | われならぬ くさはにつきの やとりてや そてよりほかの つゆをしるらむ | 行家(藤原知家男) |
424 | つゆしけき はなのえことに やとりけり のはらやつきの すみかなるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
425 | くさのはら のもせのつゆに やとかりて そらにいそかぬ つきのかけかな | 為家 |
426 | むさしのは つきのいるへき みねもなし をはなかすゑに かかるしらくも | 通方 |
427 | ふけゆけは あまつそらなる くももなし こころなかくそ つきはみるへき | 知家 |
428 | みるままに あきかせさむし あまのはら とわたるつきの よそふけにける | 為家 |
429 | やまのはは きよくみゆれと あまつそら たたよふくもの つきやかくさむ | 人麿 |
430 | うはたまの よはふけぬらし たまくしけ ふたかみやまに つきかたふきぬ | 家持 |
431 | なかきよは いつのひとまに ふけぬらむ めかれぬつきそ にしになりゆく | 公相 |
432 | わきてなほ ふけゆくかけの さやけきは にしこそあきと つきやすむらむ | 資平 |
433 | ありあけの そらにそにたる やまのはに いりかかりぬる つきのおもかけ | 後嵯峨院 |
434 | つきのいる こすゑはたかく あらはれて かはきりふかき をちのやまもと | 雅成親王 |
435 | あききりの あさたつやまに つまこめて またよふかしと しかのなくらむ | 為家 |
436 | ねられすや つまをこふらし しめのゆき むらさきのゆき しかそなくなる | 後嵯峨院 |
437 | よさむなる ほやのすすきの あきかせに そよさそしかも つまをこふらむ | 実経 |
438 | しのひかね つまやこふらむ さをしかの なみたもあまる をののしのはら | 基平(近衛兼経男) |
439 | ややさむき をののあさちの あきかせに いつよりしかの なきはしめけむ | 資季 |
440 | いろかはる のはらのこはき たかあきに あらぬものゆゑ しかのなくらむ | 為氏 |
441 | あはてこし つまをこふとや あきののに ささわけてなく さをしかのこゑ | 弁内侍(後深草院) |
442 | つれもなき つまをやたのむ あきかせの みにさむきよは しかもなくなり | 小宰相(土御門院) |
443 | あきはきに みたるるつゆは なくしかの こゑよりおつる なみたなりけり | 貫之 |
444 | みやきのに しからむはきや ちりぬらむ あらはれてなく さをしかのこゑ | 順徳院 |
445 | ゆふされは をくらのやまに なくしかの こよひはなかす いねにけらしも | 舒明天皇 |
446 | このころの あきのあさけの きりかくれ つまよふしかの こゑのさやけさ | 人麿 |
447 | あまのかは あきのひとよの ちきりたに かたのにしかの ねをやなくらむ | 家隆 |
448 | やまさとは あきのねさめそ あはれなる そこともしらぬ しかのなくねに | 後白河院 |
449 | ともしせし はやましけやま しのひきて あきにはたへぬ さをしかのこゑ | 雅経 |
450 | をくらやま あきはならひと なくしかを いつともわかぬ なみたにそきく | 為家 |
451 | たれきけと こゑたかさこに さをしかの なかなかしよを ひとりなくらむ | 友則 |
452 | みかさやま つきさしのほる そらはれて みねよりたかき さをしかのこゑ | 道家 |
453 | をしかなく はやまのかけの ふかけれは あらしまつまの つきそすくなき | 定家 |
454 | われのみと こゑにもしかの たつるかな つきはひかりに みせぬあきかは | 定家 |
455 | つきかけに しかのねきこゆ たかさこの をのへのはきの はなやちるらむ | 兼盛 |
456 | あきのたの おしねいろつく いまよりや ねられぬいほの よさむなるらむ | 雅成親王 |
457 | ひたはへて もるしめなはの たわむまて あきかせそふく をやまたのいほ | 経信 |
458 | あしひきの やまたのいねの かたよりに つゆこきたれて あきかせそふく | 行念 |
459 | しらつゆの おくてのおしね うちなひき たなかのゐとに あきかせそふく | 実氏 |
460 | あききぬと くもゐのかりの こゑすなり こはきかもとや つゆけかるらむ | 権中納言(大宮院) |
461 | はつかりの こゑにつけてや ひさかたの そらのあきをは ひとのしるらむ | 貫之 |
462 | あはれとも しらてやかりの すきつらむ ねさめにおつる おいのなみたを | 基家 |
463 | かりかねの きこゆるそらや あけぬらむ まくらにうすき まとのつきかけ | 家隆 |
464 | ふかくさや たかふるさとと しらねとも むかしわすれす ころもうつなり | 土御門院 |
465 | なかきよの あかつきかたの こからしに ねさめもしるく うつころもかな | 実氏 |
466 | うらかせや よさむなるらむ まつしまや あまのとまやに ころもうつなり | 通親 |
467 | こぬひとを まつよつもりの うらかせに とほさとをのは ころもうつなり | 具親 |
468 | まとほにて おともきこゆる すまのあまの しほやきころも うちすさふらし | 隆博 |
469 | まはきちる とほさとをのの あきかせに はなすりころも いまやうつらむ | 宗尊親王 |
470 | たかためと しらぬきぬたの おとにさへ なみたうちそふ よそのころもて | 静仁法親王 |
471 | さらてたに みにしむよはの あきかせに いかなるいろの ころもうつらむ | 少将(藻璧門院) |
472 | いまよりは みにしむものと あきかせの ふくにつけてや ころもうつらむ | 成実(藤原親実男) |
473 | やまひこの こたふるやとの さよころも わかうつおとや ほかにきくらむ | 後嵯峨院 |
474 | あきかせは いたらぬそても なきものを たかさとよりか ころもうつらむ | 順徳院 |
475 | さらしなや よわたるつきの さとひとも なくさめかねて ころもうつなり | 順徳院 |
476 | ひさかたの かつらのさとの さよころも をりはへつきの いろにうつなり | 定家 |
477 | あかしかた むかしのあとを たつねきて こよひもつきに そてぬらしつる | 為家 |
478 | かめのをの たきつかはなみ たまちりて ちよのかすみる あきのよのつき | 通成 |
479 | あきやまの よものくさきや しをるらむ つきはいろそふ あらしなれとも | 順徳院 |
480 | さをしかの いるののすすき しもかれて たまくらさむき あきのよのつき | 素暹 |
481 | かつらきや とよらのてらの あきのつき にしになるまて かけをこそみれ | 具氏 |
482 | なかきよも あかすそみつる ひさかたの あまのとわたる ありあけのつき | 後鳥羽院 |
483 | みかつきの ありあけのかけに かはるまて あきのいくよを なかめきぬらむ | 良経(九条兼実男) |
484 | ありあけの つきはたもとに なかれつつ かなしきころの むしのこゑかな | 赤染衛門 |
485 | きけはなほ なきこそまされ つきかけの ふくるやむしの うらみなるらむ | 秀茂 |
486 | むしのねも いかにうらみて まくすはふ をののあさちの いろかはりゆく | 雅経 |
487 | むしのねも ほのかになりぬ はなすすき あきのすゑはに しもやおくらむ | 実朝 |
488 | うらかれて したはいろつく あきはきの つゆちるかせに うつらなくなり | 俊成女 |
489 | ふくかせも さそさむからし うつらなく かちののをのの あきのゆふくれ | 実経 |
490 | ふかくさの やまのすそのの あさちふに ゆふかせさむみ うつらなくなり | 寂超 |
491 | ふかくさや たけのはやまの ゆふきりに ひとこそみえね うつらなくなり | 家隆 |
492 | あきののに たひねせよとや ゆふきりの ゆくへきかたを たちへたつらむ | 後三条院 |
493 | すまのあまの もしほのけふり たちそひて ゆくかたしらぬ せきのゆふきり | 月花門院 |
494 | あききりの たえまたえまを なかむれは そらにうきたる つきそなかるる | 淑景舎女御 |
495 | たれをかも こころもうきて かはきりの そらにまつらむ うちのはしひめ | 後嵯峨院 |
496 | あけぬとも えこそおもはね かはきりの けさもをくらの やまのふもとは | 実経 |
497 | いととまた よをなかつきの なにたてて あくるもしらぬ やまのあききり | 知家 |
498 | ゆきてみぬ ひとのためにと おもはすは たれかをらまし にはのしらきく | 宇多天皇 |
499 | はつしもと ひとついろには みゆれとも かこそしるけれ しらきくのはな | 俊蔭/後蔭 |
500 | ゆふくれに かせのふかすは きくのはな にほふまかきを いかてしらまし | 白河院 |
501 | よそにゆく あきのひかすは うつろへと またしもうとき にはのしらきく | 土御門院 |
502 | いまよりや とやまのいろも かはるらむ あきかせさむし しからきのさと | 宗尊親王 |
503 | あきのいろを いかにまちみむ ときはやま しくれもつゆも そめしとおもへは | 公朝 |
504 | このさとは いつしくれけむ をくらやま ほかにいろみぬ みねのもみちは | 家良 |
505 | たつたひめ しくれぬさきの はつしほは なににそめたる みねのもみちそ | 基雅 |
506 | こゑたてて しかそなくなる かみなひの いはせのもりは もみちすらしも | 為氏 |
507 | いまよりの しくれもつゆも いかならむ うつろひそめし かみなひのもり | 実氏 |
508 | きのふけふ しくるとみゆる むらくもの かかれるやまは もみちしぬらし | 実氏 |
509 | しくれぬと みゆるそらかな かりなきて いろつくやまの あきのむらくも | 宗尊親王 |
510 | くちなしの ひとしほそめの うすもみち いはてのやまは さそしくれけむ | 為家 |
511 | ほかよりは しくれもいかか そめさらむ わかうゑてみる やまのもみちは | 後嵯峨院 |
512 | はつしくれ やまのこのまを もりそめて こころつくしの したもみちかな | 資平 |
513 | をくらやま いまひとたひも しくれなは みゆきまつまの いろやまさらむ | 光俊(藤原知家男) |
514 | こもりえの はつせのやまは いろつきぬ しくれのあめは ふりにけらしも | 坂上郎女 |
515 | かすかのに しくれふるみゆ あすよりは もみちかささむ たかまとのやま | 真楯 |
516 | くもとなり あめとなりてや たつたひめ あきのもみちの いろをそむらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
517 | ははそはら しくるるかすの つもれはや みるたひことに いろかはるらむ | 白河院 |
518 | みるままに ならのはかしは もみちして さほのわたりの やまそしくるる | 信実 |
519 | みるままに うつろひにけり しくれゆく けしきのもりの あきのもみちは | 教良 |
520 | あさなあさな しくれてみゆる こすゑこそ とやまのまつの たえまなりけれ | 経平(衣笠家良男) |
521 | あきのいろに しくれぬまつも なかりけり はふきあまたの かつらきのやま | 公経(藤原実宗男) |
522 | しくるれと よそにのみきく あきのいろを まつにかけたる つたのもみちは | 俊成女 |
523 | そめてけり まなくときなく つゆしもの かさなるやまの みねのもみちは | 実雄 |
524 | したはまて つゆもしくれも そほちつつ もりけるやまは うつろひにけり | 基平(近衛兼経男) |
525 | つゆしくれ もらぬみかさの やまのはも あきのもみちの いろはみえけり | 為経(藤原資経男) |
526 | そめてけり つゆよりのちも しもとゆふ かつらきやまの あきのもみちは | 通氏 |
527 | なほもまた やまちのすゑの しくるれは これよりふかき もみちをやみむ | 帥(鷹司院) |
528 | ふりまさる なみたもあめも そほちつつ そてのいろなる あきのやまかな | 定家 |
529 | むらしくれ いくしほそめて わたつうみの なきさのもりの もみちしぬらむ | 家良 |
530 | いろかへぬ みわのかみすき しくれつる しるしはよその もみちなりけり | 則俊 |
531 | あきかせに なひくあさちは しもかれて いろことになる みねのもみちは | 順徳院 |
532 | きのふみて けふみぬほとの かせのまに あやなくもろき みねのもみちは | 公経(藤原実宗男) |
533 | きのふけふ ちりこそまされ みしひとの こころもとめぬ やとのもみちは | 後嵯峨院 |
534 | よもちらし きみかちとせの やとなれは いろそまさらむ あきのもみちは | 光俊(藤原知家男) |
535 | うきしつみ ふちせなかるる もみちはは ふかくあさくそ いろもみえける | 伊勢 |
536 | をしめとも あきはとまらぬ たつたやま もみちをぬさと そらにたむけて | 読人不知 |
537 | たつたかは もみちなかれて ゆくあきの つひによるせや いつくなるらむ | 親子(典侍親子朝臣) |
538 | さらてたに なかめわひぬる ゆふくれの あきのかたみと なるそかなしき | 実氏 |
539 | ゆくあきの つゆのかたみも とめしとや くさはをかせの ふきみたるらむ | 忠良 |
540 | ゆくあきの かたみとたにも ちきりおけ うつろふきくの はなのしらつゆ | 為氏 |
541 | あらしふく やまのこのはの そらにのみ さそはれてゆく あきのくれかな | 為氏 |
542 | そらもなほ あきのわかれや をしむらむ なみたににたる よはのむらさめ | 宗尊親王 |
543 | やまのはは かくこそあきも しくれしか なにをけさより ふゆといふらむ | 忠岑 |
544 | いつしかと ふりそふけさの しくれかな つゆもまたひぬ あきのなこりに | 俊成(藤原俊忠男) |
545 | おきまよふ しものしたくさ かれそめて きのふはあきと みえぬのへかな | 土御門院 |
546 | をしみえぬ なみたのつゆを かたみにて そてにのこれる あきもはかなし | 基家 |
547 | あきはいぬ かせにこのはは ちりはてて やまさひしかる ふゆはきにけり | 実朝 |
548 | ふゆきぬと いはぬをしるも わかそての なみたにまかふ しくれなりけり | 宗尊親王 |
549 | いつもふる そてのしくれに わかねとも そらこそくもれ ふゆやきぬらむ | 具氏 |
550 | そてぬらす さよのねさめの はつしくれ おなしまくらに きくひともかな | 実定 |
551 | そてぬらす おいそのもりの しくれこそ うきにとしふる なみたなりけれ | 光俊(藤原知家男) |
552 | わかそての ほすひまあれや かみなつき たえたえにこそ そらもしくるれ | 読人不知 |
553 | たつたやま いまはこのはも かみなつき しくれにそへて ふりまさるなり | 成賢(祝部成茂男) |
554 | このはさへ やまめくりする ゆふへかな しくれをおくる みねのあらしに | 越前(嘉陽門院) |
555 | ふくかせに ちるたにをしき さほやまの もみちこきたれ しくれさへふる | 家持 |
556 | みむろやま しくれこきたれ ふくかせに ぬれなからちる みねのもみちは | 後鳥羽院 |
557 | こすゑにて なほそそめまし ゆふしくれ もろともにふる このはならすは | 伊長 |
558 | しはのとに あめとしくるる このはかな なみたのほかに そてはぬれねと | 為教 |
559 | よひのまは もらぬこのはに そてぬれて しくれになりぬ あかつきのそら | 慈円 |
560 | このはちる いくたのもりの はつしくれ あきよりのちを とふひともかな | 後鳥羽院 |
561 | おほあらきの もりのもみちは ちりはてて したくさかるる ふゆはきにけり | 顕仲(藤原資仲男) |
562 | もみちはの ちるをぬさとや たむくらむ あらしふくなり かみなひのもり | 延秀/延季 |
563 | みなひとの あかすのみみる もみちはを さそひにさそふ こからしのかせ | 枇杷皇太后宮 |
564 | なかれゆく もみちのいろの ふかけれは たつたのかはは ふちせともなし | 躬恒 |
565 | かせわたる かはせのみつの しからみに なほあきかけて のこるもみちは | 為氏 |
566 | となせかは おとにはたきと ききつれと みれはもみちの ふちにそありける | 俊房 |
567 | あらしふく やまのあなたの もみちはを となせのたきに おとしてそみる | 経信 |
568 | おほゐかは もみちのいろは かはるとも ふるきなかれの あとはみゆらむ | 順徳院 |
569 | もみちはは いりえのまつに ふりぬれと ちよのみゆきの あとはみえけり | 道家 |
570 | にはのおもに たかさそひおく このはとて つもれはかせの またはらふらむ | 忠経 |
571 | にはのおもに あきみしはなは しもかれて いろのちくさに ちるこのはかな | 公基 |
572 | このはちる やまこそあらめ ひさかたの そらなるつきも ふゆそさひしき | 重時 |
573 | このころは つきこそいたく もるやまの したはのこらぬ こからしのかせ | 雅経 |
574 | このはさへ ふかくなりゆく やまちかな あらしもおくや はけしかるらむ | 実氏 |
575 | ゆふつくひ さすやをかへの こからしに まつをのこして ちるもみちかな | 師継 |
576 | もみちちる やまはあさひの いろなから しくれてくたる うちのかはなみ | 公経(藤原実宗男) |
577 | そめつくす いろのちしほの はてはまた しくれてともに ふるこのはかな | 公経/家良 |
578 | しくるへき けしきをみする やまかせに まつさきたちて ふるこのはかな | 宗尊親王 |
579 | ははそちる いはたのをのの こからしに やまちしくれて かかるむらくも | 宗尊親王 |
580 | いてやこの しくれおとせぬ あかつきも おいのねさめは そてやぬらさぬ | 俊恵 |
581 | さらすとて そてやはかわく かみなつき なにとしくれの ふりそはるらむ | 按察(鷹司院) |
582 | みやまへの まきのいたやに もるしくれ なみたならねと そてぬらせとや | 月花門院 |
583 | いなふねも とまひきおほへ もかみかは しはしはかりの しくれなりとも | 基家 |
584 | すくもたく うらのとまやの あしすたれ そらもすすけて ふるしくれかな | 実氏 |
585 | さらにまた おもひありとや しくるらむ むろのやしまの うきくものそら | 信実 |
586 | かたしきの ころもてさむく しくれつつ ありあけのやまに かかるむらくも | 後鳥羽院 |
587 | しろたへの ころもふきほす こからしの やかてしくるる あまのかくやま | 雅経 |
588 | ゆくすゑは いつれのやまに かかるらむ しくれてわたる そらのうきくも | 公親 |
589 | かせはやみ うきたるくもの ゆきかへり そらにのみして ふるしくれかな | 宗尊親王 |
590 | ふくかせの やとすこのはの したはかり しもおきはてぬ にはのふゆくさ | 定家 |
591 | しもうつむ かりたのこのは ふみしたき むれゐるかりも あきをこふらし | 良経(九条兼実男) |
592 | いつれそと くさのゆかりも とひわひぬ しもかれはつる むさしののはら | 土御門院 |
593 | のへはみな しもかれにけり むらすすき ほのかにみえし さともあらはに | 季保 |
594 | ささのはに むすへるしもの とけぬれは もとのつゆとも なりにけるかな | 匡衡 |
595 | ひかけさす かれののまくす しもとけて すきにしあきに かへるつゆかな | 宗尊親王 |
596 | かれはてむ のちしのへとや しらきくの うつろふふゆは いろまさるらむ | 顕朝 |
597 | ちりはてて はななきときの きくなれは うつろふいろの をしくもあるかな | 醍醐天皇 |
598 | うつろはむ ときやみわかむ ふゆのよの しももひとつに さけるしらきく | 順 |
599 | かれかれに しもおきまよふ ふゆのひの ゆふかけやまの みちのしはくさ | 基家 |
600 | あさあらしの やまのかけなる かはのせに なみよるあしの おとのさむけさ | 後嵯峨院 |
601 | なにはえや よるみつしほの ほとみえて あしのかれはに のこるあさしも | 後鳥羽院 |
602 | おきつしま しほかせいかに さむからし しもおきまよふ つるのけころも | 資季 |
603 | ときつかせ さむくふくらし かすゐかた しほひのちとり よはになくなり | 為家 |
604 | こゑたてて ちとりなくなり ふるさとの さほのかはかせ よさむなるらし | 為氏 |
605 | しほかせも よやさむからし おきつなみ たかしのはまに ちとりなくなり | 雅言 |
606 | さゆるよの ねさめのちとり をりからや よそのたもとに なみたそふらむ | 公相 |
607 | なくちとり そてのみなとを とひこかし もろこしふねの よるのねさめに | 定家 |
608 | ゆふくれの うらもさためす なくちとり いかなるあまの そてぬらすらむ | 土御門院 |
609 | なみのよる いそのうきねの さよまくら こととひすてて ゆくちとりかな | 宗尊親王 |
610 | しもかれの よこののつつみ かせさえて いりしほとほく ちとりなくなり | 光俊(葉室光親男) |
611 | わたのはら ふくれはさゆる しほかせに やそしまかけて ちとりなくなり | 通方 |
612 | うたたねと おもひつるまに ふゆのよの ちとりなくまて ふけにけるかな | 小弁 |
613 | こころとや ひとりあかしの うらちとり ともまとふへき よはのつきかは | 寂蓮 |
614 | はしたてや よさのふけひの さよちとり とほよるおきに さゆるつきかけ | 家良 |
615 | いせしまや はるかにつきの かけさえて とほきひかたに ちとりなくなり | 基政(藤原基綱男) |
616 | たれかまた なみたのつらら そてさえて しもよのつきに ものおもふらむ | 行家(藤原知家男) |
617 | かくれぬと みれはたえまに かけもりて つきもしくるる むらくものそら | 守覚法親王 |
618 | ふかきよの くもゐのつきや さえぬらむ しもにわたせる かささきのはし | 順徳院 |
619 | みちのくの のたのたまかは みわたせは しほかせこして こほるつきかけ | 順徳院 |
620 | くもはらふ ひらやまかせに つきさえて こほりかさぬる まののうらなみ | 経信 |
621 | みよしのの たきつはやせに すむつきや ふゆもこほらぬ こほりなるらむ | 素暹 |
622 | あしかもの はらひもあへぬ しものうへに くたけてかかる うすこほりかな | 真昭 |
623 | よはにふく はまかせさむみ まののうらの いりえのちとり いまそなくなる | 式子内親王 |
624 | をしほやま まつかせさむし おほはらの さえののぬまや さえまさるらむ | 中務 |
625 | はるはると いそのうらなみ さえくれて こほれるくもの ゆくかたもなし | 実経 |
626 | ふゆくれは すさのいりえの こもりぬも かせさむからし つららゐにけり | 顕朝 |
627 | ふゆくれは こほりとみつの なをかへて いはもるこゑを なとしのふらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
628 | ふゆさむみ しのふのやまの たにみつは おとにもたてす さそこほるらむ | 親子(典侍親子朝臣) |
629 | このねぬる よのまのかせや さえぬらむ かけひのみつの けさはこほれる | 近衛院 |
630 | いけみつを いかにあらしの ふきわけて こほれるほとの こほらさるらむ | 良経(九条兼実男) |
631 | さえくれぬ けふふくかせに あすかかは ななせのよとや こほりはてなむ | 道家 |
632 | ふちせこそ さためなからめ あすかかは こほりてかはる なみのおとかな | 良教 |
633 | あすかかは ゆくせのみつの うすこほり こころありてや よとみそむらむ | 後嵯峨院 |
634 | ころもての たなかみかはや こほるらむ みをのやまかせ さえまさるなり | 実雄 |
635 | よしのかは たきつかはかせ おとさえて いはとかしはに こほるしらなみ | 為氏 |
636 | あしろもり さそさむからし ころもての たなかみかはも こほるしもよに | 為家 |
637 | うちわたす こまなつむなり しろたへに こほるまつちの やまかはのみつ | 知家 |
638 | ふゆかはの ふちともならて よとめるは いかにせをせく こほりなるらむ | 実伊 |
639 | はやきせに めくるみなわの うきなから こほりてとまる やまかはのみつ | 実経 |
640 | かちひとの みきはのこほり ふみならし わたれとぬれぬ しかのおほわた | 寂蓮 |
641 | けふりたつ おもひもしたや こほるらむ ふしのなるさは おとむせふなり | 後鳥羽院 |
642 | さえくらす みやこはゆきも ましらねと やまのはしろき ゆふくれのあめ | 定家 |
643 | おしなへて しくれしまては つれなくて あられにおつる かしはきのもり | 土御門院 |
644 | はかなくも ひろへはきゆる たまささの うへにみたれて ふるあられかな | 小宰相(土御門院) |
645 | ぬれつつも しひてとかりの あつさゆみ すゑのはらのに あられふるらし | 道家 |
646 | はしたかの すすのしのはら かりくれて いりひのをかに ききすなくなり | 土御門院 |
647 | いりひさす ゆふかりをのの したはれて くさとるとりの あともかくれす | 知家 |
648 | はしたかの みよりのつはさ みにそへて なほゆきはらふ うたのみかりは | 家隆 |
649 | さののをか こえゆくひとの ころもてに さむきあさけの ゆきはふりつつ | 道家 |
650 | ふゆふかく のはなりにけり あふみなる いふきのとやま ゆきふりぬらし | 好忠 |
651 | ふりそめて ともまつゆきは まちつけつ やとこそいとと あとたえにけれ | 俊成(藤原俊忠男) |
652 | をはつせや みねのときはき ふきしをり あらしにくもる ゆきのやまもと | 定家 |
653 | なにはひと あしひたくやに ふるゆきの うつみのこすは けふりなりけり | 守覚法親王 |
654 | みくまのや いくへかゆきの つもるらむ あとたにみえす うらのはまゆふ | 季宗(藤原成宗男) |
655 | ふるゆきの はれゆくあとの なみのうへに きえのこれるや あまのつりふね | 泰時 |
656 | けふいくか ふるのかみすき みえぬまて たむけにあける ゆきのしらゆふ | 隆親(藤原隆衡男) |
657 | とふひとも えやはまちみむ みわのやま ゆきにはみちの あらしとおもへは | 弁内侍(後深草院) |
658 | とへかしな あともいとはて またれけり またそらはれぬ にはのしらゆき | 隆祐 |
659 | やまさとは ゆきのうちこそ さひしけれ さらぬつきひも ひとはとはねと | 尊海 |
660 | ふみわくる われよりさきの あとをみは ゆきそやまちの しをりならまし | 行家(藤原知家男) |
661 | まつひとの ゆききのをかも しらゆきの あすさへふらは あとやたえなむ | 家隆 |
662 | あけぬとて いてつるひとの あともなし たたときのまに つもるしらゆき | 定家 |
663 | いととまた かりにもひとの あとたえて つもれはゆきの ふかくさのさと | 為氏 |
664 | いそのかみ ふるののみゆき ふみわけて いまそむかしの あともみるへき | 為経(藤原資経男) |
665 | あまのはら くもまもみえす ふるゆきの いくかともなき みよしののやま | 家良 |
666 | ひさかたの そらもまかひぬ くもかかる たかまのやまに ゆきのふれれは | 実定 |
667 | いたつらに けふもかさねて ふりしきぬ けぬかうへなる やまのしらゆき | 信実 |
668 | まかきたに やまかとみゆる ゆふくれは をのへにつつく にはのしらゆき | 亀山院 |
669 | たつぬへき ともこそなけれ やまかけや ゆきとつきとを ひとりみれとも | 俊成(藤原俊忠男) |
670 | つもりゆく おいとなるとも いかてかは ゆきのうへなる つきをみさらむ | 家隆 |
671 | さらてたに それかとまかふ やまのはの ありあけのつきに ふれるしらゆき | 為家 |
672 | ききなれし あらしのおとは うつもれて ゆきにそなひく みねのまつはら | 家隆 |
673 | けさみれは ゆきもつもりの うらなれや はままつかえの なみにつくまて | 慈円 |
674 | つきかけの もりこしほとそ つもりける をのへのまつの ゆきのしたみち | 知家 |
675 | ここのへの おほうちやまの いかならむ かきりもしらす つもるゆきかな | 公相 |
676 | わすれめや くものかよひち たちかへり をとめのそてを つきにみしよは | 後鳥羽院 |
677 | くものうへの とよのあかりに つきさえて しもをかさぬる やまあゐのそて | 亀山院 |
678 | けふにあふ とよのあかりの ひかけくさ いつれのよより かけはしめけむ | 資季 |
679 | しらゆきの ふりにしあとに かはらねは こよひやかみも こころとくらむ | 後嵯峨院 |
680 | しらゆきの ふりにしあとを たつねても こよひそいのる みよのちとせを | 兼経 |
681 | みちしあれは ふりにしあとに たちかへり またあふさかの せきのしらゆき | 良実 |
682 | としのうちの ゆきをきことの はなとみて はるをおそしと きゐるうくひす | 為家 |
683 | はるちかく なりぬるふゆの おほそらは はなをかねてそ ゆきはふりける | 貫之 |
684 | をのやまや やくすみかまに こりうつむ つまきとともに つもるとしかな | 俊成(藤原俊忠男) |
685 | たちかへり としのゆくへを たつぬれは あはれわかみに つもるなりけり | 教長 |
686 | あらいその いはたちのほり よるなみの はやくもかへる としのくれかな | 讃岐(二条院) |
687 | なからふる いのちはかりの かことにて あまたすきぬる としのくれかな | 定家 |
688 | ひととせは ひとよはかりの ここちして やそちあまりを ゆめにみるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
689 | われたのむ ひとのねかひを てらすとて うきよにのこる みつのともしひ | 稲荷 |
690 | われをしれ しやかむにふつの よにいてて さやけきつきの よをてらすとは | 春日明神 |
691 | なてしこの うすくもこくも ひくるれは みむひとわきて おもひさためよ | 道真 |
692 | たけのよも わかよもともに おいにしを くちはさやにも おけるしもかな | 道真 |
693 | まつのいろは にしふくかせや そめつらむ うみのみとりを はつしほにして | 道真 |
694 | からふねに のりまもりにと こしかひは ありけるものを ここのとまりに | 新羅明神 |
695 | おとにきく きぬかさをかを またみねは まちつつそふる あめのみやには | 雨の宮の神 |
696 | われあらは よもきえはてし たかのやま かたきみのりの のりのともしひ | 高野山明神 |
697 | おしなへて あめのしたにも ちはやふる かみちのやまの かみはくもらし | 躬恒 |
698 | をくるまの にしきたむくる かみちやま まためくりあふ としもきにけり | 後嵯峨院 |
699 | みやはしら たつるこよひの あきのつき またいくたひか めくりあふへき | 延季 |
700 | かみかせに こころやすくそ まかせつる さくらのみやの はなのさかりは | 西行 |
701 | かみかせや いすすのかはの いそのみや とこよのなみの おとそのとけき | 師継 |
702 | かみさひて あはれいくよに なりぬらむ なみになれたる あさくまのみや | 越前(嘉陽門院) |
703 | ひさかたの つきのかつらの をとこやま さやけきかけは ところからかも | 兼直 |
704 | いはしみつ すみけるつきの ひかりにそ むかしのそてを みるここちする | 後鳥羽院 |
705 | まつもおひ またもこけむす いはしみつ ゆくすゑとほく つかへまつらむ | 貫之 |
706 | いはしみつ こかくれたりし いにしへを おもひいつれは すむこころかな | 後嵯峨院 |
707 | つかふへき われをもすつな すめらきの ももよをまもる かみとこそきけ | 頼実(藤原経宗男) |
708 | ひさにへて きみきみなれと まもるらし ひとのくにより わかくにのため | 長時 |
709 | いさきよき みたらしかはの そこふかく こころをくみて かみはしらなむ | 高遠 |
710 | きりふかき かものかはらに まよひしや けふのまつりの はしめなりけむ | 実経 |
711 | きみみすや さくらやまふき かさしきて かみのめくみに かかるふちなみ | 隆信 |
712 | あめのした うけけるかみの こころこそ けふのみゆきの のちにみえけれ | 少将内侍(後深草院) |
713 | かくしこそ かものやしろの ゆふかつら かみをさまれは しももみたれね | 少将内侍(後深草院)/光俊(葉室光親男) |
714 | いのりおきし わかかねことの いやましに さかゆくみよは かみそしるらむ | 延成 |
715 | をしほやま をのへのまつの あきかせに かみよもふりて すめるつきかけ | 信実 |
716 | なにはつに ふゆこもりせし はななれや ひらののまつに ふれるしらゆき | 家隆 |
717 | さかきさす しはのかきとの かすかすに なほかけそふる ゆきのしらゆふ | 実氏 |
718 | よをいのり きみをいのると かみかきに わかみをしらて としそへにける | 忠成(祝部親成男) |
719 | きみをいのる たたひとことの かみのみや ふたこころなき ほとはしるらむ | 氏久 |
720 | かすかのに いはふみむろの うめのはな さきつつまてや かへりくるまて | 清行/清河 |
721 | そのかみや いのりおきけむ かすかのの おなしみちにも たつねゆくかな | 道長 |
722 | かすかやま かみのこころは しらねとも いのりしままに みをたのむかな | 実氏 |
723 | かすかやま たむくるしての おとさえて このまのつきに あきかせそふく | 実氏 |
724 | かすかのや こそのやよひの はなのかに そめしこころは かみそしるらむ | 順徳院 |
725 | ちきりあれや かすかのやまの まつにしも かかりそめける きたのふちなみ | 良経(九条兼実男) |
726 | ちはやふる かみよにうゑし はこさきの まつはひさしき しるしなりけり | 行清 |
727 | みやゐせし そのはしめにも いそのかみ ふるのやしろと ひとやいひけむ | 経家(六条重家男)/知家(六条重家男) |
728 | いかはかり わかのうらかせ みにしみて みやはしめけむ たまつしまひめ | 良経(九条兼実男) |
729 | かねてより わかのうらちに あとたれて きみをやまちし たまつしまひめ | 隆信 |
730 | にしのうみや あはきのうらの しほちより あらはれいてし すみよしのかみ | 兼直 |
731 | みやゐせし としもつもりの うらさひて かみよおほゆる まつのかせかな | 良経(九条兼実男) |
732 | かみかきに みそめしまつも おいにけり おもひしらるる としのほとかな | 資長 |
733 | みそきせし すゑとたにみよ すみよしの かみよむかしを わすれはてすは | 隆親(藤原隆衡男) |
734 | すみよしの かみのみむろの ゆふたすき こころにものの かからすもかな | 親子(典侍親子朝臣) |
735 | すみよしの きしのみつかき かみさひて そのよもしらぬ まつのいろかな | 家良 |
736 | けふやまた さらにちとせを ちきるらむ むかしにかへる すみよしのまつ | 公相 |
737 | かみよかみ なほすみよしと みそなはせ わかよにたつる みやはしらなり | 後嵯峨院 |
738 | くまのかは せきりにわたす すきふねの へなみにそての ぬれにけるかな | 後嵯峨院 |
739 | みくまのの かみくらやまの いはたたみ のほりはてても なほいのるかな | 実氏 |
740 | なちのやま はるかにおつる たきつせに すすくこころの ちりものこらし | 御匣(式乾門院) |
741 | よろつよを かさぬるこゑに しるきかな かきりもしらぬ きみかみよとは | 通親 |
742 | ここにまた ひかりをわけて やとすかな こしのしらねや ゆきのふるさと | 良経(九条兼実男) |
743 | さかきはの ちえたのむらに ゆふしてて とよのあかりの たむけにそとる | 家衡 |
744 | ふかみとり いはとのやまの さかきはを さしてそいのる よろつよのため | 経光 |
745 | さくらはな おいかくるやと かさしても かみのいかきに みこそふりぬれ | 成茂 |
746 | みをつみて てらしをさめよ ますかかみ たかいつはりも くもりあらすな | 顕輔 |
747 | たれゆゑに ちりにましはる ひかりそと とははやかみの いかかこたへむ | 土御門院 |
748 | わかくには よるひるまもる かみしあれは たのむそやかて いのるなりける | 道家 |
749 | あまくたる かみのかこやま いまもしそ きみかためにと みるもかしこき | 為家 |
750 | まもれたた よものやしろの あまつかみ きみゆゑにこそ あともたるらめ | 基家 |
751 | みつのかは ひとつのうみと なるときは しやりふつのみそ まつわたりける | 伝教 |
752 | こののりを たたひとことも とくひとは とものほとけの つかひならすや | 伝教 |
753 | わかいのち なかしとききて よろこへる ひとはかならす ほとけとそなる | 伝教 |
754 | くもしきて ふるはるさめは わかねとも あきのかきねは おのかいろいろ | 慈覚 |
755 | あめふれは にはにうかへる うたかたの ひさしからぬは わかみなりけり | 赤染衛門 |
756 | つねならぬ わかみはゆめの おなしくは うからぬことを みるよしもかな | 公任 |
757 | よもすから ほとけのみちを もとむれは わかこころにそ たつねいりぬる | 源信 |
758 | あかつきの かねのこゑこそ うれしけれ なかきうきよの あけぬとおもへは | 源信 |
759 | うしとても おもひほとけは ゆめのよを いとふはひとの さめぬなりけり | 教家 |
760 | まことしく ほとけのみちを たつぬれは たたよのつねの こころなりけり | 教家 |
761 | こころなき よもののやまの くさきまて われをすつれは わかみなりけり | 教家 |
762 | いるつきの かへりてやみは てらすとも うきよにめくる かけはととめし | 定修 |
763 | さとりゆく こころのうちに すむつきは いてているへき やまのはもなし | 隆専 |
764 | うきかけは やとりもはてし あしかもの さわくいりえの あきのよのつき | 光俊(葉室光親男) |
765 | むねのつき こころのみつも よなよなの しつかなるにそ すみはしめける | 土御門院 |
766 | なにとかは つきやあらぬと たとるへき わかもとのみを おもひしりなは | 後嵯峨院 |
767 | おほそらを むなしとみれは いとゆふの あるにもあらす なきにしもなし | 後嵯峨院 |
768 | のりのはな いまもふるえに さきぬとは もとみしひとや おもひいつらむ | 後嵯峨院 |
769 | あさことの かかみのうへに みるかけの むなしかりける よにやとるかな | 良経(九条兼実男) |
770 | あさちはら かせをまつまの すゑのつゆ つひにはそれも もとのしつくを | 有家(藤原重家男) |
771 | かそふれは とをちのさとに おとろへて いそちあまりの としそへにける | 崇徳院 |
772 | おなしのに わかぬしくれは そむれとも くさもこのはも いろかはりつつ | 公豪 |
773 | なみたをや ころものたまと むすひけむ ありときくより ぬるるそてかな | 寂蓮 |
774 | うれしさは そてにつつみし たまそとも けふこそききて みにあまりぬれ | 快雅 |
775 | きくひとも はるかにこれを あふけとて そらにそのりを とくこゑはせし | 忠通 |
776 | そのかみの ちきりくちねは いくよとも しらぬすかたを そらにみるかな | 公任 |
777 | わたつうみの そこのたまもに やとかりて みなみのそらを てらすつきかけ | 定家 |
778 | なをたにも きかぬみのりを たもつまて いかてちきりを むすひおきけむ | 崇徳院 |
779 | いまそしる こころのそらに すむつきは わしのみやまの おなしたかねと | 俊恵 |
780 | わしのやま いかにすみける つきなれは いりてののちも よをてらすらむ | 顕昭 |
781 | かりそめに よはのけふりと のほりしや わしのたかねに かへるしらくも | 俊成(藤原俊忠男) |
782 | ゆくすゑも なからのはしの くちすして つくるよもなく ひとをわたさむ | 読人不知 |
783 | よのすゑの ひともやみにや まとふとて いらしとちかふ ありあけのつき | 忠通 |
784 | まちえたる わしのたかねの ほとときす たたふたこゑそ よもにきこえし | 聖憲 |
785 | ななそちの はるをかさねて ときそめし のりのころもの はなのしたひも | 隆弁 |
786 | わしのやま むかしのはるは とほけれと みのりのはなは なほにほひけり | 時広 |
787 | ゆくみつに ととまるいろそ なかりける こころのはなは ちりつもれとも | 良実 |
788 | かくしつつ なかきねふりの さめやせむ まつあかつきは はるかなれとも | 良覚 |
789 | うけとめし みのりのみつの ゆくすゑに やまのかひある なをなかすかな | 成源 |
790 | むそちまて いのちをそおもふ のりのみつ このよにすまは くみやはつると | 家良 |
791 | いとふなよ くるしきうみに よるなみも みのりのみつの ほかにやはたつ | 後鳥羽院 |
792 | くみてとふ ひとなかりせは いかにして やまゐのみつの そこをしらまし | 崇徳院 |
793 | おとにきく たまのいつみの すゑよりや みのりのみつの なかれそめけむ | 宗尊親王 |
794 | よををさめ たみをたすくる こころこそ やかてみのりの まことなりけれ | 宗尊親王 |
795 | みるからに まつさきたちて おつるかな なみたやのりの しるへなるらむ | 道信 |
796 | しのひつつ いくたひかける たまつさも おもふほとには いはれさりけり | 思順 |
797 | おとつるる おとになかなか やまさとの さひしさまさる ゆふしくれかな | 思順 |
798 | いにしへは ふみみしかとも しらゆきの ふかきみちこそ あともおほえね | 貞慶 |
799 | よをすてて すまれぬみこそ かなしけれ かかるみやまの あとをみなから | 実氏 |
800 | うらむなよ はなとつきとを なかめても をしむこころは おもひすててき | 良経(九条兼実男) |
801 | おもひいれは ひともわかみも よそならす こころのほかの こころなけれは | 道家 |
802 | こころとて けにはこころも なきものを さとるはなにの さとるなるらむ | 実伊 |
803 | つゆわくる はなすりころも かへりては むなしとみるそ いろはありける | 信生 |
804 | みわかはの きよきなかれに すすきてし わかなをここに またやけかさむ | 玄賓 |
805 | まことには ほとけのくにも よそならす まよふかきりそ うきよともみる | 後鳥羽院 |
806 | ちかひあれは いつつのさはり あらためて むつのみちをや ゆきわかれなむ | 知家 |
807 | いにしへに いかなるちきり ありてかは みたにつかふる みとなりにけむ | 永観 |
808 | こくらくを ねかふおもひの けふりこそ むかへのくもと やかてなるらめ | 源信 |
809 | むらさきの くものむかへを まつはなほ こころのつきの はれぬなりけり | 智海 |
810 | うきみをも すてぬちかひを まちわひぬ むかへのくもよ そらたのめすな | 具親 |
811 | いろいろの はなのにほひを あさことに よものほとけに たむけつるかな | 証慧 |
812 | こころなき うゑきものりを とくなれは はなもさとりを さそひらくらむ | 隆弁 |
813 | あたにちる はなみるたにも あるものを たからのうゑき おもひこそやれ | 花山院 |
814 | いとふへき よのことわりの くるしさも うきみよりこそ おもひしりぬれ | 道然 |
815 | さたかにも うきよのゆめを さとらすは やみのうつつに なほやまよはむ | 澄覚法親王 |
816 | なにことも むなしきゆめと きくものを さめぬこころに なけきつるかな | 清輔 |
817 | なかきよの ゆめのうちにも まちわひぬ さむるならひの あかつきのそら | 長恵 |
818 | けふひける こまはのりこそ かしこけれ ほとけのみちに あふさかのせき | 源信 |
819 | わしのやま ふたたひかけの うつりきて さかののつゆに ありあけのつき | 寂蓮 |
820 | なにめてし さかののあきの をみなへし これもほたいの たねとしらすや | 後嵯峨院 |
821 | ゆめさめて ころものうらを けさみれは たまかけなから まよひけるかな | 慈恵 |
822 | ささなみや あふみのをとめ あすよりは みやまかくれて みえすかもあらむ | 顕宗天皇 |
823 | ふるさとの もみちみにゆく たひひとは にしきをきてや ひるはこゆらむ | 醍醐天皇 |
824 | たひころも いかてたつらむと おもふより とまるそてこそ つゆけかりけれ | 村上天皇 |
825 | よろつよを いのりにたつる つかひをは わかれもいたく をしまさらなむ | 円融院 |
826 | ゆきめくり あひみまほしき わかれには いのちもともに をしまるるかな | 実資 |
827 | きみかよの はるかにみゆる たひなれは いのりてそゆく いきのまつはら | 高遠 |
828 | ゆきゆかす きかまほしきは いつかたに ふみさたむらむ あしのうらやま | 定頼 |
829 | おくれゐて われやはこひむ はるかすみ たなひくやまは きみしこえなは | 人麿 |
830 | あかすして けふのわかれを おもふこそ ゆくにまさりて かなしかりけれ | 凝 |
831 | あしからの やみちはみねと わかれなは こころのみこそ ゆきてかへらめ | 躬恒 |
832 | ひとひたに みねはこひしき きみかいなは としのよとせを いかてくらさむ | 躬恒 |
833 | あやめくさ けふしもなとか ひきわかれ たひねにひとの おもひたつらむ | 能宣 |
834 | いろいろに おもふこころを そめてこそ きみかたむけの ぬさとなしつれ | 能宣 |
835 | をしみつつ わかるるひとを みるときは わかなみたさへ とまらさりけり | 貫之 |
836 | あききりの たちてゆくらむ つゆけさに こころをそへて おもひやるかな | 選子内親王 |
837 | よそなから たつあさきりは なになれや のへにたもとは わかれぬものを | 斎宮女御 |
838 | くものなみ けふりのなみの たちへたて あひみむことの かたくもあるかな | 一条院皇后宮 |
839 | わかれなむ おほつかなさを かるかやの おもひみたるる あきのくれかな | 上総(堀河院中宮) |
840 | わすられぬ わかみなりせは わかれちに いのちあらむと いひもしてまし | 重之女 |
841 | かへりこむ あすをまつへき わかみかは けふそやかての わかれなりける | 大輔(殷富門院) |
842 | かへりこむ またあふさかと たのめとも わかれはとりの ねそなかれける | 為家 |
843 | わかるとも たちもはなれし ひとしれす そふるおもひの けふりはかりは | 月花門院 |
844 | なれきても わかるるみちの たひころも つゆよりほかに そてやぬれなむ | 長雅 |
845 | しらさりき たこのうらなみ そてひちて おいのわかれに かかるものとは | 頼政 |
846 | たまきはる いのちもしらす わかれぬる ひとをまつへき みこそおいぬれ | 元輔(清原春光男) |
847 | たのめとも けふをかきりの わかれちは しらぬいのちの ほとそはかなき | 顕仲(藤原資仲男) |
848 | ゆくすゑを いはひていつる わかれちに こころもなきは なみたなりけり | 孝行 |
849 | おもひわひ こころもゆかぬ みちにしも いつちさきたつ なみたなるらむ | 清輔 |
850 | なにしかも なをたのみけむ あふさかの せきにてしもそ ひとにわかるる | 隆信 |
851 | いとふとは てるひのもとに ききしかと もろこしまては おもはさりしを | 俊頼(源経信男) |
852 | もろこしも なほすみうくは かへりこむ わすれなはてそ やへのしほかせ | 家隆 |
853 | かたみとも ちきらぬつきの かたふくを そなたのそらと なほしたふかな | 慶政 |
854 | とはねとも おなしみやこは たのまれき あはれくもゐを へたてつるかな | 行能 |
855 | わかれちに したふこころの おくれねは ひとりゆくとは おもはさらなむ | 伊勢大輔 |
856 | わかるれと かけをはそへつ ますかかみ としつきふとも おもひわするな | 成仲 |
857 | そへてやる こころのほかに なにのまた なほわかれちを なけくなるらむ | 恵慶 |
858 | ありあけの つきにこころは なくさまて めくりあふよを まつそかなしき | 祐盛 |
859 | けふやさは へたてはてつる はるかすみ はれぬおもひは いつとわかねと | 匡房 |
860 | くものゐる とやまのすゑの ひとつまつ めにかけてゆく みちそはるけき | 定家 |
861 | わすれすよ きよみかせきの なみまより かすみてみえし みほのうらまつ | 宗尊親王 |
862 | なほしはし みてこそゆかめ たかしやま ふもとにめくる うらのまつはら | 宗尊親王 |
863 | しらとりの さきさかやまの まつかけに やとりてゆかむ よもふけにけり | 為氏 |
864 | うちまやま あさかせさむし たひにして ころもかすへき いももあらなくに | 人麿 |
865 | やまみれは ちかつきぬるを ふるさとに いつともしらて まちやわふらむ | 安麿 |
866 | こすゑたに みえすなりゆく ふるさとを そなたとはかり おもひやるかな | 嘉言 |
867 | あるときは うきことしけき ふるさとに いそくやなにの こころなるらむ | 貞慶 |
868 | ちかつけは のちのささはら あらはれて またすゑかすむ ふたむらのやま | 道済 |
869 | ふるさとを みはてぬゆめの かなしきは ふるほともなき さよのなかやま | 泰時 |
870 | なみかくる のしまかさきに そてぬれて をはなかたしき ねぬるよはかな | 雅経 |
871 | たひひとは たもとすすしく なりにけり せきふきこゆる すまのうらかせ | 伊平 |
872 | あふさかを こえたにはてぬ あきかせに すゑこそおもへ しらかはのせき | 行平 |
873 | おもひやれ いくたのもりの あきかせに ふるさとこふる よはのねさめを | 寂蓮 |
874 | うはたまの くろかみやまを あさこえて このしたつゆに ぬれにけるかな | 修範 |
875 | よそにみし をささかうへの しらつゆを たもとにかくる ふたむらのやま | 人麿 |
876 | つゆしけき をののしのはら いかにまた あまりてたひの そてぬらすらむ | 頼朝 |
877 | かきりあれは われこそそはね たひころも たたむひよりは みをなはなれそ | 少将(藻璧門院) |
878 | いせしまや あらきはまへの うらつたひ きのうみかけて みつるつきかな | 良守 |
879 | こよひわれ をはすてやまの ふもとにて つきまちわふと たれかしるへき | 覚忠 |
880 | いはみのや ゆふこえくれて みわたせは たかつのやまに つきそいさよふ | 為氏 |
881 | たかしやま ゆふこえくれて ふもとなる はまなのはしを つきにみるかな | 政村 |
882 | むさしのは ゆくすゑちかく なりにけり こよひそみつる やまのはのつき | 知家 |
883 | けふはまた くものなみより いてにけり きのふのくれの やまのはのつき | 後鳥羽院 |
884 | そてのうへに ぬるるかほなる ひかりかな つきこそたひの こころしりけれ | 俊成女 |
885 | ふるさとに おなしくもゐの つきをみは たひのそらをや おもひいつらむ | 堀河(待賢門院) |
886 | つきをみは おなしそらとも なくさまて なとふるさとの こひしかるらむ | 光俊(葉室光親男) |
887 | みやこをは やまのいくへに へたてきて ふしのすそのの つきをみるらむ | 資季 |
888 | みやこおもふ わかこころしれ よはのつき ほとはちさとの やまちこゆとも | 橘 忠幹 |
889 | すきつらむ みやこのことも とふへきに くものよそにも わたるつきかな | 顕輔 |
890 | たひねする そてにもつゆの おきそめて くさはにあまる つきをみるかな | 行念 |
891 | かるもかく ゐなののはらの かりまくら さてもねられぬ つきをみるかな | 隆祐 |
892 | ゆふつゆの いほりはつきを あるしにて やとりおくるる のへのたひひと | 定家 |
893 | たたくれね せきのとささぬ ころなれは つきにもこえむ あしからのやま | 家隆 |
894 | かけうつす そてはうきねの われからに つきそもにすむ むしあけのせと | 雅経 |
895 | たひねする いせのはまをき つゆなから むすふまくらに やとるつきかけ | 実朝 |
896 | あへしまの やまのいはかね かたしきて さぬるこよひの つきのさやけさ | 為家 |
897 | ふねとむる あかしのつきの ありあけに うらよりをちの さをしかのこゑ | 俊成(藤原俊忠男) |
898 | たひころも あきのくさきに あらねとも なほやまかせに しをれてそゆく | 雅忠 |
899 | ふるさとに わかれしそても いかならむ しらぬたひねの あきのゆふつゆ | 家隆 |
900 | くさまくら たひにしあれは あきかせの さむきゆふへに かりなきわたる | 人麿 |
901 | あめふらは もみちのかけに やとりつつ たつたのやまに けふはくらさむ | 素性 |
902 | もろこしの こすゑもさひし ひのもとの ははそのもみち ちりやしぬらむ | 栄西 |
903 | あきもくれ みやこもとほく なりしより そらのしくれそ ひまなかりける | 斎宮女御 |
904 | みやこいてて やそせわたりし すすかかは むかしになれと わすれやはする | 御匣(式乾門院) |
905 | ころもてに ゆふかせさむし しのはらや しくるるのへに やとはなくして | 行意 |
906 | みやこいてし ひかすはふゆに なりにけり しくれてさむき しらかはのせき | 秀茂 |
907 | そてぬらす をしまかいその とまりかな まつかせさむみ しくれふるなり | 俊成(藤原俊忠男) |
908 | さえくらす さやのなかやま なかなかに これよりふゆの おくもまさらし | 家隆 |
909 | ひきむすふ くさはもしもの ふるさとは くるるひことに とほさかりつつ | 定家 |
910 | あられふる のちのささはら ふしわひて さらにみやこを ゆめにたにみす | 式子内親王 |
911 | ちとりなく そかのかはかせ みにしみて ますけかたしき あかすよはかな | 讃岐(二条院) |
912 | あきまては ふしのたかねに みしゆきを わけてそこゆる あしからのせき | 光俊(葉室光親男) |
913 | おなしくは こえてやみまし しらかはの せきのあなたの しほかまのうら | 行能 |
914 | とりのねに なほやまかけの くらけれは あけてをいてむ あしからのせき | 土御門院 |
915 | よをこむる すすのしのやの あさといてに やまかけくらき みねのまつかせ | 行意 |
916 | くもかかる いはのかけみち ふみみても あやふきものは このみなりけり | 道慶 |
917 | いつとても うきみはあとも さためぬに またうかれぬと なにおもふらむ | 厳雅 |
918 | ふみわけし むかしはゆめか うつのやま あとともみえぬ つたのしたみち | 雅経 |
919 | ふちしろの みさかをこゆと しろたへの わかころもては ぬれにけるかな | 読人不知 |
920 | おしてるや なにはをすきて うちなひく くさかのやまを けふみつるかな | 読人不知 |
921 | いはのうへの かたしきころも たたひとへ かさねやせまし みねのしらくも | 基家 |
922 | ふもととて みねよりみゆる さともなほ ゆききはとほき やまちなりけり | 教定(飛鳥井雅経男) |
923 | くれぬとや われよりさきに とまるらむ いくののすゑに あふひとのなき | 公経(藤原実宗男) |
924 | あふひとに とへとかはらぬ おなしなの いくかになりぬ むさしののはら | 下野(後鳥羽院) |
925 | またしらぬ のはらのすゑの ゆふつくひ しはしなくれそ いほりさすまて | 信実 |
926 | いかにねて ゆめもむすはむ くさまくら あらしふくよの さやのなかやま | 宗尊親王 |
927 | うらかせに ものおもふとしは なけれとも なみのよるこそ ねられさりけれ | 高遠 |
928 | しほかせに とまのうはふき ひまみえて うきねのまくら あけぬこのよは | 信実 |
929 | あまのすむ いそのとまやの たひねには かるもそくさの まくらなりける | 兼実 |
930 | たひにして ものこひしきに やまもとの あけのそほふね おきにこくみゆ | 読人不知 |
931 | ふなてする おきつしほさゐ しろたへの かしひのわたり なみたかくみゆ | 家持 |
932 | かせふけは なみやたたむと まつほとに つたのほそえに うらかくれゐぬ | 赤人 |
933 | ゆくすゑの とまりやいつく わたのはら くものなみちに ひはくれにけり | 良実 |
934 | ふなひとの とまりはかせの こころにて いそくによらぬ なみのうへかな | 長時 |
935 | ふねよはふ ふしのかはとに ひはくれぬ よはにやすきむ うきしまのはら | 基政(藤原基綱男) |
936 | さてもわれ いかになるみの うらなれは おもふかたには とほさかるらむ | 四条(安嘉門院) |
937 | あはれなり なにとなるみの はてなれは またあくかれて うらつたふらむ | 光俊(葉室光親男) |
938 | みやことり なにこととはむ おもふひと ありやなしやは こころこそしれ | 後嵯峨院 |
939 | このさとは すみたかはらも ほととほし いかなるとりに みやことはまし | 宗尊親王 |
940 | おもふひと ありやととへは みやことり ききもしられぬ ねをのみそなく | 道因/道円 |
941 | たをやめの そてふきかへす あすかかせ みやこをとほみ いたつらにふく | 志貴皇子 |
942 | みやこなる あれたるやとに ひとりねは たひにまさりて くるしかるへし | 旅人 |
943 | みるままに なくさみぬへき うみやまも みやこのほかは ものそかなしき | 俊成(藤原俊忠男) |
944 | けふはなほ みやこもちかし あふさかの せきのあなたに しるひともかな | 隆祐 |
945 | ふくかせの めにみぬかたを みやことて しのふもかなし ゆふくれのそら | 土御門院 |
946 | しらくもを そらなるものと おもひしは またやまこえぬ みやこなりけり | 土御門院 |
947 | きみにより おもひならひぬ よのなかの ひとはこれをや こひといふらむ | 業平 |
948 | たれにより おもひみたるる こころそと しらぬそひとの つらさなりける | 躬恒 |
949 | みぬひとを こころひとつに たつぬれは またしらねとも こひしかりけり | 素性 |
950 | かきりなく またみぬひとの こひしきは むかしやふかく ちきりおきけむ | 定家 |
951 | けふよりや ひとにこころを おきつなみ かけてもしらぬ そてのうらかせ | 雅経 |
952 | いりそむる こひちはすゑや とほからむ かねてくるしき わかこころかな | 兼実 |
953 | しらせはや またいろみせぬ たつたやま そてにしくれの そむるこころを | 実氏 |
954 | くれなゐの こそめのころも ふりいてて こころのいろを しらせつるかな | 土御門院 |
955 | くれなゐの いろにうつりて こひねとも なみたのしるく みするなりけり | 是則 |
956 | おもふより たもとはふかく そめてけり こころのいろや なみたなるらむ | 忠良 |
957 | やまひめの そめぬころもも くれなゐの いろにいててや いまはこひまし | 民部卿典侍(後堀河院) |
958 | ちしほにも あまるはかりや そめてまし いてぬるいろの きみにうつらは | 隆房 |
959 | いかにせむ そてよりほかに もるやまの したくさかけて いろにいてなは | 道家 |
960 | いろならは いつれかいかに うつるらむ みせはやみはや おもふこころを | 信実 |
961 | こひしとも いははおろかに なりぬへし こころをみする ことのはもかな | 俊成(藤原俊忠男) |
962 | したにのみ しのふもちすり くるしきは こころのうちの みたれなりけり | 忠良 |
963 | したをきの ほにこそあらね つゆはかり もらしそそむる あきのはつかせ | 有家(藤原重家男) |
964 | ひとこころ したにつれなき まつそうき うへにはゆきの うちとくれとも | 敏行 |
965 | しのふさへ こころにかなふ みならねは せくにつけても もるなみたかな | 公基 |
966 | みちのくの しのふのたかの とやこもり かりにもしらし おもふこころは | 宗尊親王 |
967 | いはておもふ こころのいろを ひととはは をりてやみせむ やまふきのはな | 宗尊親王 |
968 | しらすへき ひまこそなけれ なにはなる こやのしのひに おもふこころを | 宗尊親王 |
969 | しのふとも うはのそらにや しられまし こひにけふりの たつよなりせは | 後嵯峨院 |
970 | よとともに くゆるもくるし なにたてて あはてのうらの あまのもしほひ | 後鳥羽院 |
971 | わかこひは あまのいさりひ よるはもえ ひるはくるしき うらのあみなは | 家良 |
972 | いかてかは もろこしふねの ほのかにも わかこふらくを しらせそめまし | 良実 |
973 | たちかへり みなとにさわく しらなみの しらしなおなし ひとにこふとも | 為氏 |
974 | かけろふの いはかきふちの わきかへり うはなみたたぬ ものをこそおもへ | 公継 |
975 | みたるとも ひとしらめやも かけろふの いはかきふちの そこのたまもは | 政村 |
976 | やまかはの たきついはふち わきかへり ふかかりけりな そこのこころは | 基政(藤原基綱男) |
977 | おくやまの いはかきぬまの いはすとも しれかしひとの ふかきこころを | 真昭 |
978 | おもへとも こころにこめて しのふれは そてたにしらぬ なみたなりけり | 顕朝 |
979 | つゆけさも ひとこそしらね さをしかの あさふすをのの くさかくれつつ | 知家 |
980 | またよひの はやまのほくし もえそめて しかまつとたに いかてしらせむ | 基家 |
981 | あきののに あさきりかくれ なくしかの ほのかにのみや ききわたりなむ | 実朝 |
982 | ひとしれす おもふこころは あきはきの したはのいろに いてぬへきかな | 兼祐/兼輔 |
983 | しるらめや おとにのみきく あきかせの みにしむはかり おもふこころを | 経平(衣笠家良男) |
984 | なそやかく しのへはくるし はなすすき いかなるのへに ほにはいつらむ | 伊尹 |
985 | またみねは おもかけもなし なにしかも まののかやはら つゆみたるらむ | 顕朝 |
986 | おもひねの なみたなそへそ よはのつき くもるといはは ひともこそしれ | 少将(藻璧門院) |
987 | われさへに またいつはりに なりにけり まつといひつる つきそかたふく | 後嵯峨院 |
988 | つくはやま こかくれおほき つきよりも しけきひとめは もるかたもなし | 基家 |
989 | とほやまた もるやひとめの しけけれは ほにこそいてね わすれやはする | 躬恒 |
990 | なにとまた まくらのちりを はらふらむ ならひなきみの ねやのあきかせ | 公経(藤原実宗男) |
991 | しらせはや そこはかとなき うきくもの そらにみたるる こころまよひを | 行家(藤原知家男) |
992 | しられしな たえすこころに かかるとも いはてのやまの みねのしらくも | 内侍(京極院) |
993 | しくれつつ みねのあらしに ゆくくもの はやくもそらに こひわたるかな | 家隆 |
994 | かみなひの いはせのもりの はつしくれ しのひしいろは あきかせそふく | 順徳院 |
995 | こひわひぬ こころのおくの しのふやま つゆもしくれも いろにみせしと | 定家 |
996 | しくるるを おさふるそての したもみち みえぬちしほは とふひともなし | 信実 |
997 | いはすとも みゆらむそての はつしくれ そむるもみちの いろのふかさは | 基良 |
998 | とへかしな まきたつやまの ゆふしくれ いろこそみえね ふかきこころを | 土御門院 |
999 | ことのはの いろにいつへき あきそなき いはてとしふる そてのしくれは | 通氏 |
1000 | しくれにも つれなきまつは あるものを なみたにたへぬ そてのいろかな | 宗尊親王 |
1001 | いろにいてぬ おもひのみこそ ときはやま わかみしくれは ふるかひもなし | 宮内卿(後鳥羽院) |
1002 | たくひなく ほさぬそてかな くさもきも つゆふきはらふ かせはあるよに | 親子(典侍親子朝臣) |
1003 | ものおもふと われたにしらぬ ゆふくれの そてをもとめて おけるつゆかな | 行能 |
1004 | わかそてや まつのかけなる あきくさの うへはつれなき いろにいてなむ | 順徳院 |
1005 | かれねたた のきはのくさよ なかなかに そのなにつけて ひともこそしれ | 光俊(葉室光親男) |
1006 | ひとしれす しのふのくさに おくつゆの みたれてのみや おもひきえなむ | 公相 |
1007 | とはぬをも たかつらさにか なしはてむ かたみにしのふ こころくらへに | 後嵯峨院 |
1008 | とはぬをも うきにやひとの なしはてむ しのふにつけて すくるつきひを | 通忠 |
1009 | あらいその いはねにかくる しらなみの うちもやすまぬ こひのみちかな | 冬忠 |
1010 | にほとりの かよへるみちも あるものを したにもなとか ひとのたのまぬ | 為継 |
1011 | にこりえに おふるすかこも みかくれて わかこふらくは しるひとそなき | 躬恒 |
1012 | おもふとも こふともいはし くちなしの いろにころもを そめてこそきめ | 読人不知 |
1013 | みくさゐて ありともみえぬ ぬまみつの したのこころを しるひとそなき | 読人不知 |
1014 | かりにても ひとはしらしな あしねはふ うきにとしふる したのこころは | 実氏 |
1015 | かくれぬの したはふあしの ねになけと ひとこそしらね そてはぬれつつ | 長雅 |
1016 | よにもらは わかこころをや うたかはむ またしらせたる ひとしなけれは | 行家(藤原知家男) |
1017 | としへての のちにもこひの あらはれは しのひけりとや ひとにしられむ | 信実 |
1018 | みのうさの なみたになれぬ そてならは いかにいひてか こひをつつまむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1019 | せきかへし なほもるそての なみたかな しのふもよその こころならぬに | 通具 |
1020 | おろかにや しのふとひとの おもふらむ こころにかなふ なみたならぬを | 家良 |
1021 | かきりなく おもふなみたや かはとみて わたりかたくは なりまさるらむ | 伊勢 |
1022 | そてのうへに ほさぬなみたの いろみえは いかにせむとか ねのみなくらむ | 少将(藻璧門院) |
1023 | いかにせむ おもひそめつる なみたより やかてちしほの いろにいてなは | 教定(飛鳥井雅経男) |
1024 | そてのうへの ひとめしられし をりまては みさをなりける わかなみたかな | 西行 |
1025 | わかなみた よしののかはの よしさらは いもせのやまの なかになかれよ | 慈円 |
1026 | なにことも こころにこめて しのふるを いかてなみたの まつしりぬらむ | 和泉式部 |
1027 | おもひせく こころのたきの あらはれて おつとはそての いろにみえぬる | 雅経 |
1028 | おとなしの たきのみなかみ ひととはは しのひにしほる そてやみせまし | 為家 |
1029 | おとになほ たてぬもくるし おもひせく こころのうちに たきなくもかな | 弁内侍(後深草院) |
1030 | かけろふの ほのめくかけを みてしより たれともしらぬ こひもするかな | 読人不知 |
1031 | よしやたた あしやのさとの なつのひに うきてよるてふ そのなはかりは | 為家 |
1032 | ちきりをは あさかのぬまと おもへはや かつみなからに そてのぬるらむ | 亀山院 |
1033 | うしつらし あさかのぬまの くさのなよ かりにもふかき えにはむすはて | 定家 |
1034 | なにはなる みつとはかりの ちきりにて おきふしあしの ねこそなかるれ | 実雄 |
1035 | おほつかな いかにあひみて すかのねの なかきはるひに こひわたるらむ | 赤人 |
1036 | うちとけて なきそしつへき ほとときす ひとにしられぬ はつねなれとも | 範永 |
1037 | なつころも ひとへにつらき ひとこふる わかこころこそ うらなかりけれ | 顕輔 |
1038 | あさなあさな きみにこころを おくしもの きくのまかきに いろはみえなむ | 好忠 |
1039 | かささきの ちかふるはしの まとほにて へたつるなかに しもやおくらむ | 好忠 |
1040 | かささきの くもゐのはしの よそにのみ かけてこころに こひやわたらむ | 読人不知 |
1041 | よそにみし ひとにおもひを つけそめて こころからこそ したにこかるれ | 読人不知 |
1042 | いまさらに ひとをはなにか つららゐる したにもしのふ みつからそうき | 順徳院 |
1043 | くれまたむ いのちもしらす いははしの よるとはたれか ちきりそめけむ | 行意 |
1044 | おなしよに たのむちきりの むなしくは みをかへてたに あふこともかな | 御匣(式乾門院) |
1045 | いかはかり こひちはすゑの とほけれは おもひいりても としのへぬらむ | 季経 |
1046 | しもつけや むろのやしまに たつけふり おもひありとも いまこそはしれ | 読人不知 |
1047 | こひせむと なれるみかはの やつはしの くもてにものを おもふころかな | 読人不知 |
1048 | おほゐかは ゐせきをこえて ゆくみつの たえすもものを おもふころかな | 読人不知 |
1049 | あしひきの やまなしをかに ゆくみつの たえすそきみを こひわたるへき | 読人不知 |
1050 | いせのうみの なみまにくたす つりのをの うちはへひとを こひわたるかな | 読人不知 |
1051 | すまのうらに たまもかりほす あまころも そてひつしほの ひるときやなき | 読人不知 |
1052 | このやまの みねにちかしと わかみつる つきのそらなる こひもするかな | 人麿 |
1053 | かくしつつ さてややみなむ おほあらきの うきたのもりの しめならなくに | 人麿 |
1054 | さされいしの なかのおもひの うちつけに もゆともひとに しられぬるかな | 式子内親王 |
1055 | おもふこと いはてやみなは やましろの とはにくるしき みとやなりなむ | 元真 |
1056 | あしかきの まちかきかひも なかりけり こころかよはぬ なかのへたては | 亀山院 |
1057 | いつはりと かつしりなから けふまてに たのむやこひの あまりなるらむ | 顕輔 |
1058 | のちのよを ちきるとたにも いひおきて たたこひしぬる なをはのこさし | 顕家 |
1059 | いつまてか みたれてこひむ あふことの なほかたいとに ぬけるしらたま | 知家 |
1060 | いせのうみ みるめなきさは かひもなし なみたにひろふ そてのしらたま | 基良 |
1061 | おもひかね おつるなみたの たまたまも ほさてやそての はたはくちなむ | 弁内侍(後深草院) |
1062 | いつまてか ときはのもりの みしめなは つれなきいろに かけてこふらむ | 家良 |
1063 | ひとめのみ しのふかはらに ゆふしめの こころのうちに くちやはてなむ | 家隆 |
1064 | おほそらに しめゆふよりも はかなきは つれなきひとを こふるなりけり | 元良親王 |
1065 | しぬはかり おもひけりとも あふことに みをかへてこそ ひとにしられめ | 隆昭 |
1066 | ももよまて あはていくへき いのちかは かきもはしめし しちのはしかき | 覚寛 |
1067 | いつかわれ かりそめにたに やとりきの ねもみぬものを うきなたつらむ | 行家(藤原知家男) |
1068 | あふまての こひにいのちの なからへは うきをかきりの よをやつくさむ | 少将(藻璧門院) |
1069 | あふことを みにかふはかり なけけとも つれなきものは いのちなりけり | 顕頼 |
1070 | つれなきを なほさりともと なくさむる わかこころこそ いのちなりけれ | 長方 |
1071 | これもみな むくひあるらむ さきのよに われゆゑきみも ものやおもひし | 長方 |
1072 | なにゆゑに けふまてものを おもはまし いのちにかへて あふよなりせは | 西行 |
1073 | くちはてむ そてのゆくへも しらぬまて あふをかきりと せくなみたかな | 実経 |
1074 | おのつから あふをかきりの いのちとて としつきふるも なみたなりけり | 為家 |
1075 | なかなかに さてもこころの いろみえは あふにはかへて みをやすてまし | 通成 |
1076 | いたつらに そのなもつらし あふさかの やまはわかみの せきちなりけり | 雅忠 |
1077 | ひとめもる せきよりほかに あふさかを こゆるやまちの なとなかるらむ | 行家(藤原知家男) |
1078 | しなのなる あさまのやまの あさからぬ おもひのすゑそ けふりともなる | 土御門院 |
1079 | いつとてか わかこひさらむ しなのなる あさまのやまの けふりたゆとも | 貫之 |
1080 | くらへはや こひをするかの やまたかみ およはぬふしの けふりなりとも | 宗尊親王 |
1081 | ふしのねも たちそふくもは あるものを こひのけふりそ まかふかたなき | 讃岐(二条院) |
1082 | いかなりし こひのけふりの きえやらて むろのやしまの なをのこしけむ | 俊成女 |
1083 | たえすたつ むろのやしまの けふりたに したはまことの おもひやはある | 寂蓮 |
1084 | たえすたつ もしほのうらの ゆふけふり いかなるときか おもひけたれむ | 光俊(葉室光親男) |
1085 | これやこの あはてのうらに やくしほの けふりたえせぬ おもひなるらむ | 親清女 |
1086 | したむせふ あしひのけふり いかにして なにはたてしと おもひそむらむ | 俊定(源具定男) |
1087 | しほかまの うらのけふりも あるものを たつなくるしき みのおもひかな | 知家 |
1088 | すみよしの ちきのかたそき としをへて またゆきあひも しらぬこひかな | 道家 |
1089 | たかためか あふのまつはら なをとめて われにつれなき いろをみすらむ | 良教 |
1090 | あきやまの まつのこすゑの むらしくれ つれなきなかは ふるかひもなし | 為教 |
1091 | あたなみの たかしのはまの そなれまつ なれすはかけて われこひめやも | 定家 |
1092 | あしのやの なたのしほくむ あまひとも しほるにそての いとまなきまて | 後鳥羽院 |
1093 | みのならむ ふちせもしらす いもせかは おりたちぬへき ここちのみして | 篁 |
1094 | あふことは いつにかあらむ あすかかは さためなきよそ おもひわひぬる | 村上天皇 |
1095 | おもひかは あふせまてとや みなわなす もろきいのちも きえのこるらむ | 御匣(式乾門院) |
1096 | こひわひて なとしなはやと おもふらむ ひとのためなる いのちならぬに | 為氏 |
1097 | さもこそは みなとはそての うへならめ きみにこころの まつさわくらむ | 定家 |
1098 | ひとしれぬ そてのみなとの あたなみは なのみさわけと よるふねもなし | 良平女 |
1099 | なみたのみ もろこしふねも よりぬへし みはうきしつむ とこのうらなみ | 道家 |
1100 | なみたかは せきやるかたの なけれはや みをはなれては なかれさるらむ | 業平 |
1101 | なみたかは わたらぬなかの おもひねは みるもあたなる ゆめのうきはし | 長時 |
1102 | としをふる なみたよいかに あふことは なほいなふちの たきまされとや | 具氏 |
1103 | こひすてふ そてしのうらに ひくあみの めにたまらぬは なみたなりけり | 成実(藤原親実男) |
1104 | あひみねは いつのならひの つらさとも しらてはいかに なみたおつらむ | 基家 |
1105 | そてのみと おもふなみたの くれなゐを こすゑにみする むらしくれかな | 実氏 |
1106 | さけはつむ ものとおもひし くれなゐは なみたのみする いろにそありける | 貫之 |
1107 | せくそての くれなゐくくる なみたかは わたらぬよりそ なかはたえける | 有長 |
1108 | ますかかみ おのかこころと くもりける なみたをしらて なにかこつらむ | 少将内侍(後深草院) |
1109 | あふことを いつしかとのみ まつしまの かはらすひとを こひわたるかな | 人麿 |
1110 | むかしより おもふこころは ありそうみの はまのまさこの かすもしられす | 閑院大君 |
1111 | かたいとの あはてのうらの なみたかみ こなたかなたに よるふねもなし | 経家(藤原基家男) |
1112 | かけてなほ たのむもかなし たまのをの あはすはなけの ちきりはかりに | 俊成女 |
1113 | よそにみて そてやぬれなむ ひたちなる たかまのうらの おきつしらなみ | 光俊(葉室光親男) |
1114 | わかこひは やまとにはあらぬ からあゐの やしほのころも ふかくそめてき | 良経(九条兼実男) |
1115 | おもひわひ ひとりやねなむ さよころも かへすならひの ゆめをたのみて | 俊平(源泰光男) |
1116 | ぬるにこそ ゆめもみゆらめ さよころも かへすはあさき おもひなりけり | 兼宗 |
1117 | かつらきや わたしもはてぬ いははしも よるのちきりは ありとこそきけ | 家隆 |
1118 | かつらきの よるのちきりは かたくとも ふみたにみせよ くめのいははし | 匡房 |
1119 | われはまつ ひとはこすゑの ほとときす むなしきねをも なきくらすかな | 一条院 |
1120 | わかせこを まつちのやまの くすかつら たまさかにたに くるよしもなし | 実朝 |
1121 | やまひこは こたふるたにも あるものを おとせぬひとを まつかくるしさ | 朝光 |
1122 | いかさまに ねてあかせとて まつひとの こぬたにあるを あきかせそふく | 忠景 |
1123 | つのくにの こやのあしふき のわきして ひまこそあれと ひとにつけはや | 光俊(葉室光親男) |
1124 | つれなさの つもるつきひを かそへても いまさらつらき としのくれかな | 公宗(洞院実雄男) |
1125 | あらたまの としのくれまつ おほそらは くもるはかりの なくさめもなし | 定家 |
1126 | そまかはの あさきこころに ひかれつつ いくたひくれの さはりきつらむ | 高光 |
1127 | わかこひは せにゐるふねの みつをあさみ うきておもひの やるかたもなし | 実氏 |
1128 | ひろせかは そてつくはかり あさきせに こころふかめて われはおもはむ | 読人不知 |
1129 | かしはきの もりのしたくさ おいぬとも みをいたつらに なさすもあらなむ | 監命婦 |
1130 | かしはきの もりのしたくさ おいのよに かかるおもひは あらしとそおもふ | 遍昭 |
1131 | そてにおく つゆのゆくへを たつぬれは あはてこしよの みちのささはら | 後鳥羽院 |
1132 | あつまちの さののふなはし さのみやは つらきこころを かけてたのまむ | 家隆 |
1133 | われをきみ まつよもあらは いひてまし たのめてこぬは さそやつらきと | 公実 |
1134 | こひしなて こころつくしに いままても たのむれはこそ いきのまつはら | 親隆 |
1135 | こひしぬる はてをはしらて あふまての いのちををしく おもひけるかな | 信実 |
1136 | いつはりと おもひなからも たのむかな うきをしらぬは こころなりけり | 順徳院 |
1137 | うかりける こころをしらて やましろの ゐてのたまみつ なにたのみけむ | 実雄 |
1138 | あすしらぬ みにはたのます おのつから ちきりしままの ひかすなりとも | 按察(鷹司院) |
1139 | なみたのみ いはぬをしると おもひしに わきてやとかる そてのつきかけ | 御匣(式乾門院) |
1140 | こひせしと つきにややかて ちかはまし くもるなみたの うきにつけても | 少将内侍(後深草院) |
1141 | なかむれは そらやはくもる あきのつき こひはこれまて うきなみたかな | 通具 |
1142 | つきをたに くもらぬそらに みしものを たかおもかけの かきくらすらむ | 下野(後鳥羽院) |
1143 | かきくもれ たのむるよひの むらさめに さはらぬひとの こころをもみむ | 下野(後鳥羽院) |
1144 | なくさめし つきにもはては ねをそなく こひやむなしき そらにみつらむ | 顕昭 |
1145 | こぬひとの なさけなりけり なかきよの ふくるまてみる やまのはのつき | 公朝 |
1146 | まつひとと ともにそみまし いつはりの なきよなりせは やまのはのつき | 宗尊親王 |
1147 | ありあけの つきをもいはし つれなさの ためしはひとの こころにそみる | 公相 |
1148 | あかつきの とりのうきねも またきかす わかみにしらぬ せきのななれは | 実氏 |
1149 | たまくしけ みむろとやまの さねかつら さねすはつひに ありとみましや | 鎌足 |
1150 | すすきとる あまのをふねの いさりひの ほのかにたにや いもにあはさらむ | 聖武天皇 |
1151 | おほはらの このいちしはの いつしかと わかおもふいもに こよひあひぬる | 志貴皇子 |
1152 | けふはまた ゆくすゑとほく ちきるかな つらきにかへし いのちなれとも | 実定 |
1153 | もらすなよ まくらのほかに しるひとも なくなくちきる よよのかねこと | 下野(後鳥羽院) |
1154 | むすひおく ちきりはいまと おもへとも なほさきのよや はしめなりけむ | 信実 |
1155 | ならはねは あふよもおつる なみたかな うきにぬれにし そてのなこりに | 政村 |
1156 | うかるへき わかれをかねて したへとや またふかきよに とりのなくらむ | 行家(藤原知家男) |
1157 | こひこひて まれにとけぬる したひもを ゆふつけとりの ねこそつらけれ | 景綱 |
1158 | あかつきの ゆふつけとりの おなしねに いくたひつらき わかれしつらむ | 基隆(藤原基綱男) |
1159 | あけぬとて おなしこころに なくとりを つらきためしに なにおもひけむ | 道円 |
1160 | あきのよの ちよをひとよに なせりとも ことはのこりて とりやなきなむ | 読人不知 |
1161 | かきりとは おもはぬものを あかつきの わかれのとこの おきうかるらむ | 読人不知 |
1162 | きぬきぬの たもとにわけし つきかけは たかなみたにか やとりはつらむ | 信実 |
1163 | もろともに あかぬわかれの きぬきぬに いつれのそてか ぬれまさるらむ | 小侍従(太皇太后宮) |
1164 | きぬきぬの わかれやさても かなしきと あかつきしらぬ とりのねもかな | 土御門院 |
1165 | をくるまの にしきのひもを ときかけて あまたはねすな たたひとよのみ | 允恭天皇 |
1166 | しはしたに なほひきとめよ あつさゆみ つれなくかへる けさのわかれち | 公相 |
1167 | やすらひに いてけるかたも しらとりの とはやままつの ねにのみそなく | 定家 |
1168 | くもれけふ いりあひのかねも ほととほし たのめてかへる はるのあけほの | 家隆 |
1169 | あさねかみ ひとのたまくら おきわかれ みたれてのちそ ものはかなしき | 家隆 |
1170 | たれかまつ けさみちしはを わけつらむ もとおくつゆも ひとのなみたか | 慈円 |
1171 | あかつきは いかにちきりて むかしより わかれかなしき ときとなりけむ | 忠成(祝部親成男) |
1172 | おきわかれ かへるみちをは おくるとも つきはものをや おもはさるらむ | 保季 |
1173 | しのふへき これやかきりの つきならむ さためなきよの そてのわかれは | 基家 |
1174 | かたみとや そてのわかれに ととめけむ なみたにうかふ ありあけのつき | 真昭 |
1175 | ひさかたの あまのとなから みしつきの あかていりにし そらそこひしき | 実方 |
1176 | ねてまちし はつかのつきの はつかにも あひみしことを いつかわすれむ | 是則 |
1177 | われならぬ ひともありあけの そらをのみ おなしこころに なかめけるかな | 敦道親王 |
1178 | ひとりねの おきてかなしき あさしもの きえなてなにと よをかさぬらむ | 公経(藤原実宗男) |
1179 | みにかへて いまひとたひと しのふこそ わかれをうしと おもはさりけれ | 親子(典侍親子朝臣) |
1180 | みるゆめの さめてもさめす かなしきは いかにねしよの なこりなるらむ | 親子(典侍親子朝臣) |
1181 | うきものと たれかいひけむ あかつきの わかれのみこそ かたみなりけれ | 俊成女 |
1182 | ありしよの わかれもいまの ここちして とりのねことに われのみそなく | 為家 |
1183 | あふことは おもひたえぬる あかつきも わかれしとりの ねにそなかるる | 重頼女 |
1184 | うつつにも わかれしかねの こゑなれは あふとみしよの ゆめもさめけり | 兼実 |
1185 | みてもなほ いかはかりなる なくさめに まとろむほとの ゆめをまつらむ | 家良 |
1186 | おもひねの ゆめにたになほ つらきよの なこりはなにに こひしかるらむ | 良実 |
1187 | はかなしや そのよのゆめを かたみにて うつつもしらぬ とこのさむしろ | 教実 |
1188 | ねさめまて なほそくるしき ゆきかへり あしもやすめぬ ゆめのかよひち | 有家(藤原重家男) |
1189 | あふとみて いかにはかなく あけぬらむ うきよのゆめは さめぬならひを | 行意 |
1190 | おもひねに あひみるゆめの さむるこそ とりのねきかぬ わかれなりけれ | 雅経 |
1191 | うつつにて あるたにあるを ゆめにさへ あかてもひとの みえわたるかな | 小町 |
1192 | ゆめならは またみるよひも ありなまし なになかなかの うつつなるらむ | 小町 |
1193 | おもひつつ ぬるよもひとの つらきかな ゆめもうつつの みゆるなりけり | 亀山院 |
1194 | うかるへき みのよかたりを おもふにも なほくやしきは ゆめのかよひち | 御匣(式乾門院) |
1195 | はかなくて みえつるゆめの おもかけを いかにねしよと またやしのはむ | 小宰相(土御門院) |
1196 | くれなゐの なみたそいとと たのまれぬ うつるこころの いろとみゆれは | 紫式部 |
1197 | あきやまに こひするしかの こゑたてて なきそしぬへき きみかこぬよは | 読人不知 |
1198 | きみにしも あきをしらせぬ つのくにの いはてのもりを わかみともかな | 馬内侍 |
1199 | ときわかぬ なみたよいかに もるやまの したはのつゆも あきそそむなる | 伊平 |
1200 | かきりありて めくりあふへき いのちとも おもははこそは のちもたのまめ | 小督(中務卿親王家) |
1201 | なからへむ ひとのこころは いさやかは いさわれはかり こひわたるとも | 亀山院 |
1202 | しくれする くもちのほしの かすかすに かくれあらはれ こひぬまそなき | 基家 |
1203 | あらはれて そてのうへゆく なとりかは いまはわかみに せくかたもなし | 定家 |
1204 | かきりあらむ いのちもさらに なからへし これよりまさる つきひへたては | 定家 |
1205 | ねられねは ゆめともみえす はるのよを あかしかねつる みこそつらけれ | 村上天皇 |
1206 | こころには わすれぬものを あひみすて ひかすもおほく つきそへにける | 駿河丸 |
1207 | おもはぬを おもふといはは おほのなる みかさのもりの かみそしるらむ | 百世 |
1208 | みくさゐる いたゐのしみつ としふりて こころのそこを くむひとそなき | 良経(九条兼実男) |
1209 | しらつゆの あたなるたれに なれそめて われにもかかる こころおくらむ | 経平(衣笠家良男) |
1210 | いかかせむ しなはともにと おもふみに おなしかきりの いのちならすは | 光俊(葉室光親男) |
1211 | なにとなく おつるなみたに まかすれは そこともみえぬ ふてのあとかな | 俊成(藤原俊忠男) |
1212 | みれはまつ そこはかとなく なけかれて なみたおちそふ ふてのあとかな | 読人不知 |
1213 | あらたまの としのみとせを まちわひて たたこよひこそ にひまくらすれ | 読人不知 |
1214 | わするなよ みとせののちの にひまくら さたむはかりの つきひなりとも | 定家 |
1215 | おしかへし おもへはひとそ つらからぬ これもむかしの ちきりなるらむ | 光頼 |
1216 | とへかしな このよはかりの なさけとて うきはむかしの むくひなりとも | 高倉(八条院) |
1217 | まちなれし ゆふへのそらも かはれたた ひとのこころの あらすなるよに | 少将(藻璧門院) |
1218 | いかならむ ときかはとのみ おもふかな ひとをわすれぬ こころなかさに | 信実 |
1219 | わすれしと いひしはかりの ことのはや たのまぬものの かたみなるらむ | 雅言 |
1220 | ゆふされは またれしものと おもふこそ こころにのこる かたみなりけれ | 忠成(大江) |
1221 | おもひいてて ねこそなかるれ あふことの ありしむかしや つらさなるらむ | 定円(葉室光俊男) |
1222 | そてこほる しもよのとこの さむしろに おもひたえても あかすころかな | 基綱(藤原基清男) |
1223 | たかさこの やまのやまとり をのへなる はつをのたれを なかくこふらむ | 為家 |
1224 | ほかさまに なひくをみつつ しほかまの けふりやいとと もえまさるらむ | 侍従(本院) |
1225 | うらむとや よそにはひとの おもふらむ こひしきほかの こころならぬに | 小督(宗尊親王家) |
1226 | うらみても あまのあみなは くりかへし こひしきかたに ひくこころかな | 為家 |
1227 | なにとかは わかみをおきて あまのすむ さとのしるへを ひとにとふへき | 行家(藤原知家男) |
1228 | しらせはや こひをするかの たこのうら うらみになみの たえぬひはなし | 良経(九条兼実男) |
1229 | しかのあまの しほやきころも なるれとも こひてふものは わすれかねつも | 人麿 |
1230 | あふことの いまはかたほに なるふねの かせまつほとは よるかたもなし | 忠岑 |
1231 | さてもまた ひとのこころの つらきえに たななしをふね なほやこかれむ | 家良 |
1232 | みのうさを おもひしりぬる ものならは つらきこころを なにかうらみむ | 兼通 |
1233 | やまたかみ たにへにはへる たまかつら たゆることなく みるよしもかな | 読人不知 |
1234 | ちはやふる かみのたむけの ゆふたすき かけてやひとの ひとをこふらむ | 貫之 |
1235 | かけてのみ こひわたりつる からころも きてこそそては ぬれまさりけれ | 伊尹 |
1236 | かくはかり ありけるものを くれなゐの やしほのころも なににそめけむ | 宇多天皇 |
1237 | ときときそ しくれもしける よとともに わひつつふるは なみたなりけり | 師氏(藤原忠平男) |
1238 | きみこふと わかなくなみた しきたへの まくらとほりて そてはぬれつつ | 人麿 |
1239 | ひとをこひ せめてなみたの こほるれは こなたかなたの そてそぬれける | 人麿 |
1240 | うはたまの わかくろかみを なきぬらし おもひみたれて こひわたるかな | 人麿 |
1241 | をきのはに みにしむかせは おとつれて こぬひとつらき ゆふくれのそら | 後鳥羽院 |
1242 | かせさむみ こころにもあらぬ うたたねは いととひとこそ こひしかりけれ | 国経(藤原長良男) |
1243 | あきかせの ふかぬころたに あるものを こよひはいとと ひとそこひしき | 重之 |
1244 | わすれても あるへきものを なかなかに とふにつらさを おもひいてつる | 西院皇后宮 |
1245 | こひこひて いくよといふに しきたへの まくらのちりを またはらふらむ | 頼実(藤原経宗男) |
1246 | たれにまた ちよにひとよの よかれして さすかにわれを おもひいつらむ | 兼宗 |
1247 | あまのかは あきのなぬかを なかめつつ くものよそにも おもひけるかな | 有家(藤原重家男) |
1248 | あふことの まれなるものは あきをまつ もみちのはしと われとなりけり | 後嵯峨院 |
1249 | おのつから いかにねしよの ゆめたえて つらきひとこそ つきはみせけれ | 家隆 |
1250 | おもひあまり なかむるそらも かきくもり つきさへわれを いとひけるかな | 国信 |
1251 | ことならは くもゐのつきと なりななむ こひしきかけや そらにみゆると | 中務 |
1252 | やまのはに またれていつる つきかけの はつかにみえし よはのこひしさ | 定家 |
1253 | あひそめし よはさへつきの ころならて のちしのふへき かたみたになし | 実氏 |
1254 | うかりける ひとのこころの あさねかみ なにいたつらに みたれそめけむ | 後鳥羽院 |
1255 | あちきなく なにとみにそふ おもかけそ それともみえぬ やみのうつつに | 定家 |
1256 | おもかけは たちもはなれす からころも わかれしままの そてのなみたに | 大納言典侍(後嵯峨院) |
1257 | たれしかも われをこふらむ したひもの むすひもあへす とくるこころは | 人麿 |
1258 | やまかはの いしまをわけて ゆくみつは ふかきこころも あらしとそおもふ | 人麿 |
1259 | ふりにける かはらのうへの まつかねの ふかくはいかか ひとをたのまむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1260 | われなから ちきりしらるる むかしかな いかにつらさを ひとにみえけむ | 右衛門佐(高松院) |
1261 | くれたけの よよのちきりも しられけり うきふししけき こひのむくひに | 土御門院 |
1262 | なかしとも しらすやねのみ なかれつつ こころのうきに おふるあやめは | 頼宗母 |
1263 | あはぬまの みきはにおふる あやめくさ ねのみなかるる きのふけふかな | 実方 |
1264 | わひぬれは きのふならねと あやめくさ けふもたもとに ねをそかけける | 道信 |
1265 | わすれくさ おふるのへとは なるらめと こはしのふなり のちもたのまむ | 業平 |
1266 | たつぬれは そこともみえす なりにけり たのみしのへの もすのくさくき | 式子内親王 |
1267 | わかかとの のへのあきはき ちらさらは きみかかたみと みつつしのはむ | 家持 |
1268 | あきはきの したはにひとは あらねとも こころははやく うつろひにけり | 元方 |
1269 | ひにそへて しもかれゆけは くすのはの ありしはかりも えこそうらみね | 俊恵 |
1270 | まくすはら かせたにさむく ふきこすは みえぬひとをも うらみさらまし | 好忠 |
1271 | われなから かはるこころの ゆくすゑを しらてやひとの ちきりおきけむ | 良印 |
1272 | うつりゆく ひとのこころに したかはは なみたもそてに いろやかはらむ | 為義 |
1273 | つきくさの はなもあたにや おもふらむ ぬれぬにうつる ひとのこころを | 有教 |
1274 | いろかはる みののなかやま あきこえて またとほさかる あふさかのせき | 定家 |
1275 | なにとかく いろかはるらむ きにもあらす くさにもあらぬ ひとのことのは | 宗尊親王 |
1276 | いふきやま みねなるくさの さしもこそ わすれしとまて ちきりおきしか | 宗尊親王 |
1277 | いまはたた わするはかりの あふことを つらきにつけて しのはすもかな | 月花門院 |
1278 | うらみけむ こころさへこそ こひしけれ つらきになれぬ むかしとおもへは | 高倉(安嘉門院) |
1279 | いまははや むかしかたりに なりなまし つらきにたへぬ わかみなりせは | 重家 |
1280 | いつはりを たのむはかりに なからへは つらきそひとの いのちなるへき | 通成 |
1281 | なほさりに これやかきりと いひしよの つらきまことに なりにけるかな | 宗尊親王 |
1282 | さはたかは ゐてなるあしの かりそめに あさしやちきり ひとよはかりは | 宗尊親王 |
1283 | ひとことの たのみかたさに なにはなる あしのうらはの うらみつるかな | 醍醐天皇 |
1284 | かりにこし ひとをこそまて はしたかの こひをわすれぬ こころならひに | 堀河(待賢門院) |
1285 | はしたかの とかへるやまも しくるなり かはりやはてむ ひとのことのは | 小宰相(土御門院) |
1286 | なきくらす なみたのつゆも むなしくて みをうつせみの あるかひもなし | 実氏 |
1287 | みをかへて なにしかおもふ うつせみの よはたのまれぬ ひとのこころを | 実雄 |
1288 | ふくかせに こそのさくらは ちらすとも あなたのみかた ひとのこころは | 業平 |
1289 | むさしのに おふとしきけは むらさきの そのいろならぬ くさもむつまし | 小町 |
1290 | あふさかの せきのあなたの いかなれは こえてもまよふ こひちなるらむ | 忠家(藤原教実男) |
1291 | つらくとも さてしもはてし ちきりしに あらぬこころも さためなけれは | 式子内親王 |
1292 | つらしとも おもひなさすは なつころも たたひとへにや こひしからまし | 俊頼(源経信男) |
1293 | おもひあまり みつのかしはに とふことの しつむにうくは なみたなりけり | 小侍従(太皇太后宮) |
1294 | かくはかり おもふこころは ひまなきを いつくよりもる なみたなるらむ | 清輔 |
1295 | みちのくに ありてふかはの うもれきの いつあらはれて うきなとりけむ | 時清 |
1296 | みちのくに ありといふなる まつしまの まつにひさしく とはぬきみかな | 読人不知 |
1297 | まつかけて たのめしことは なけれとも なみのこゆるは なほそかなしき | 伊勢 |
1298 | あふことを いまやとまつに かかりてそ つゆのいのちの としもへにける | 兼盛 |
1299 | としへても なほあふことは かたをかの まつこそこひの いのちなりけれ | 実雄 |
1300 | それをたに こころのままの いのちとて やすくもこひに みをやかへてむ | 少将(藻璧門院) |
1301 | あふまてと おもひおもひて はてはまた いけるをいとふ わかいのちかな | 公衡(藤原公能男) |
1302 | あはさりし むかしをいまに くらへてそ うきはためしも ありとしらるる | 政村 |
1303 | さてもまた なほやうらみむ あつさゆみ いてやとひとを おもふものから | 知家 |
1304 | なからへて あるたにみには つれなきに うらむとまては ひとにきかれし | 行能 |
1305 | たのめはと おもふはかりに うきひとの こころもしらす うらみつるかな | 宗尊親王 |
1306 | つらからは つらきになして やみもせて したのおもひの なにしたふらむ | 道家 |
1307 | つらしとも おもひもはてぬ こころこそ なほこひしさの あまりなりけれ | 小督(宗尊親王家) |
1308 | このよにて いかにわすれむ かたもなし こひはいのちや かきりなるらむ | 基家 |
1309 | こひしさの かきりたにある よなりせは としへてものは おもはさらまし | 是則 |
1310 | おもひたえ わひにしものを なかなかに なにかくるしく あひみそめけむ | 家持 |
1311 | よしさらは われもともにと したひもに むすふくさはは なほそつゆけき | 実経 |
1312 | さのみやは ひとのこころに まかすへき わするるくさの たねをしらはや | 惟明親王 |
1313 | うきにこそ けにいつはりは なかりけれ わするるかたの つらきまことに | 為氏 |
1314 | はるのよの ゆめにまさりて ものそおもふ ほのかにみえし つきのうつつは | 定家 |
1315 | しはしこそ こぬよあまたと かそへても なほやまのはの つきをまちしか | 良経(九条兼実男) |
1316 | うらみても なきてもなにを かこたまし みしよのつきの つらさならては | 少将内侍(後深草院) |
1317 | あはれまた いつれのよにか めくりあひて ありしありあけの つきをみるへき | 孝標女 |
1318 | すきにける としつきなにを おもひけむ いましもものの なけかしきかな | 堀河女御 |
1319 | きみをまた みすしらさりし いにしへの こひしきをさへ なけきつるかな | 式子内親王 |
1320 | とはるるに つけてそひとは つらかりし おもひたえては うらみやはする | 高倉(安嘉門院) |
1321 | さてもなほ はかなかりける ちきりかな あはれむかしの よこそつらけれ | 忠良 |
1322 | いまはまた かけたにみえぬ うきひとの かたみのみつは なみたなりけり | 宗尊親王 |
1323 | みしひとを おとにもきかぬ たきつせの なにそはそてに たえすおつらむ | 隆祐 |
1324 | てにならす かひこそなけれ あつさゆみ ひけはなかのみ とほさかりつつ | 信実 |
1325 | まののうらの よとのつきはし つきもせす つらしとひとを ききわたるかな | 経朝 |
1326 | よひよひに はかなきゆめの なくさめも まくらさためて いつまてかみし | 小宰相(土御門院) |
1327 | なみたこそ うつつのうさに あまりぬれ ゆめにもいまは ねのみなかれて | 政村 |
1328 | なかれてと たのめしことは ゆくすゑの なみたのうへを いふにそありける | 小町 |
1329 | あひみても なほかくれぬの いはこすけ いはてもなかき ねをのみそなく | 泰光(源師光男) |
1330 | うきをしる こころはなにの こころにて なほまたひとの こひしかるらむ | 良平 |
1331 | いせのうみの あまのもしほき こりもせて おなしうらみに としそふりぬる | 家良 |
1332 | あしまゆく みなとのをふね さしもやは かよひしみちの さはりはつへき | 家良 |
1333 | なるみかた あさりにいつる あまならて みをうらみても そてはぬれけり | 読人不知 |
1334 | ひとこころ わかみのあきに なれはこそ うきことのはの しけくちるらめ | 小町 |
1335 | めのまへに たえすもみゆる つらさかな うきをむかしと おもふへきよに | 実方 |
1336 | つらからは もとのこころの わすれなて かさねてほさぬ そてのつゆかな | 道家 |
1337 | もろともに みしはむかしの ますかかみ うきかけはかり なにのこるらむ | 行家(藤原知家男) |
1338 | なさけにも なとかとまちし よなよなは うきほとしらぬ わかみなりけり | 基家 |
1339 | しなはうし いけれはものの かなしきに こころをかへて あらぬみもかな | 公光(藤原季成男) |
1340 | うきよをは あられはあるに まかせつつ こころよいたく ものなおもひそ | 西行 |
1341 | とへかしな なさけはひとの みのためを うきわれとても こころやはなき | 西行 |
1342 | きみこふと こころはちちに くたくるを なとかすならぬ わかみなるらむ | 好忠 |
1343 | しらさりき ちきりしなかは あとたえて ゆふくれはかり みにとまれとは | 実氏 |
1344 | いきてよに いつまてぬれむ たもとそと なみたはしるや あきのゆふくれ | 実氏 |
1345 | うきことを をりをりことに しのふれは つらきもひとの かたみなりけり | 伊勢 |
1346 | こひしさの なくさむかたや なからまし つらきこころを おもひませすは | 清輔 |
1347 | ひとすちに いとふつらさは わすられて こひしきにのみ ぬるるそてかな | 公衡(藤原公能男) |
1348 | なさけあらは いかはかりかは おもはまし つらきをたにも しのふこころに | 通俊 |
1349 | おもはしと おもへとものの なけかれて われにもあらす なるこころかな | 知家 |
1350 | あふことの たえはいのちも たえなむと おもひしかとも あられけるみを | 右衛門佐(高松院) |
1351 | こひをのみ しつのをたまき いやしきも おもひはおなし なみたなりけり | 土御門院 |
1352 | おもひいてよ このはのしたの わすれみつ うつりしいろに たえははつとも | 順徳院 |
1353 | あふことは さてややまたの わすれみつ ぬれにしそては ひるよなけれと | 大弐(修明門院) |
1354 | わすれすは なほかきやらむ あかさりし たなゐのしみつ そてはぬるとも | 弁内侍(後深草院) |
1355 | ちきりあらは またもむすはむ やまのゐの あかてわかれし かけなわすれそ | 少将内侍(後深草院) |
1356 | いかてまた あかてやみにし おくやまの いはかきしみつ かけをたにみむ | 小宰相(土御門院) |
1357 | こころにも まかせはとこそ たのまるれ たえたえなれと なかかはのみつ | 後嵯峨院 |
1358 | ちりをたに はらはぬとこの やまかはの いさやいつより おもひたえけむ | 宗尊親王 |
1359 | なかれてと おもひしものを ふしかはの いかさまにして すますなりけむ | 知家 |
1360 | わすれくさ たねあらはこそ しけるらめ のきはやひとの こころなるらむ | 宗尊親王 |
1361 | わするるも しのふもおなし ふるさとの のきはのくさの なこそつらけれ | 顕氏(六条顕家男) |
1362 | さためなき こころとひとを みしかとも つらさはつひに かはらさりけり | 素暹 |
1363 | たのめすは おもひたえても やみなまし なになかなかの なさけなるらむ | 実房 |
1364 | なからへて さもうくつらき としつきを いかにすきける いのちなるらむ | 為教 |
1365 | たのめすは なかなかよにも なからへて ひさしくものは おもはさらまし | 俊成(藤原俊忠男) |
1366 | もろこしの ひとまてとほく たつねはや かはかりつらき なかはありやと | 俊成(藤原俊忠男) |
1367 | ちきりしに かはるつらさも なけかれす もとよりたのむ こころならねは | 政村 |
1368 | こころたに いかなるみにか かなふらむ おもひしれとも おもひしられす | 紫式部 |
1369 | すきにける むかしもいまの つらさにて うきおもひいてに ぬるるそてかな | 御匣(式乾門院) |
1370 | わすらるる わかみにつらき むくひあらは つれなきひとも ものやおもはむ | 教定(飛鳥井雅経男) |
1371 | うきみをは わすれはつとも ちきりおきし わかいつはりや おもひいつらむ | 按察(鷹司院) |
1372 | ちかひてし いのちにかへて わするるは うきわれからに みをやすつらむ | 親子(典侍親子朝臣) |
1373 | みをうしと おもひしりぬる ものならは つらきこころも なにかうらみむ | 侍従(本院) |
1374 | なにことも ゆめときくよに さめやらて うつつにひとを うらみつるかな | 小侍従(太皇太后宮) |
1375 | をりをりに かくとはみえて ささかにの いかにおもへは たゆるなるらむ | 読人不知 |
1376 | しもかれの あさちにまよふ ささかにの いかなるをりに かくとみゆらむ | 紫式部 |
1377 | うきをうしと おもはさるへき わかみかは なにとてひとの こひしかるらむ | 西行 |
1378 | あきかせに なひくさやまの くすかつら くるしやこころ うらみかねつつ | 後鳥羽院 |
1379 | まくすはら うらみしころの あきかせや かれかれになる はしめなりけむ | 宗尊親王 |
1380 | こひそめし こころをたれに かこたまし あはぬはひとの うきになせとも | 宗尊親王 |
1381 | おもひかね いまはわかみの つらきかな なとうきひとの こひしかるらむ | 匡房 |
1382 | あちきなや こはいかなりし ちきりにて つらきひとしも こひしかるらむ | 顕昭 |
1383 | ひとしれす こひわたるまに くちにける なからのはしを またやつくらむ | 隆房 |
1384 | いまこむと たのめしよはの ふけしこそ かはるつらさの はしめなりけめ | 備前(宗尊親王家) |
1385 | あはさりし こひにやかねて ならひけむ のちのつらさに いけるこころは | 信実 |
1386 | たのめつつ こぬよをまちし いにしへを しのふへしとは おもひやはせし | 小侍従(太皇太后宮) |
1387 | ありあけに わかれしままの としへても つれなくのこる わかいのちかな | 資季 |
1388 | うきなから みしおもかけの かはらぬや さすかになれし かたみなるらむ | 隆房 |
1389 | おもかけを うきみにそへて こひしなは のちのよまての つらさをやみむ | 少将(藻璧門院) |
1390 | いさしらす なるみのうらに ひくしほの はやくそひとは とほさかりにし | 為家 |
1391 | かきくらし あめふるかはの うたかたの うたてほとなき よとはしらすや | 崇徳院 |
1392 | よのなかを なににたとへむ かせふけは ゆくへもしらぬ みねのしらくも | 順 |
1393 | なにことを われなけくらむ かけろふの ほのめくよりも つねならぬよに | 孝標女 |
1394 | いまきなる とやまのみねに くもたにも しるくしたたは なにかなけかむ | 斉明天皇 |
1395 | ひとはいさ おもひやむとも たまかつら かけにみえつつ わすられぬかも | 倭太后 |
1396 | はるふかき みやまさくらも ちりぬれは よをうくひすの なかぬひそなき | 醍醐天皇 |
1397 | はることに はなはちるとも さきぬへし またあひかたき ひとのよそうき | 定方 |
1398 | あきかせに たくふこのはの いまはとて おのかちりちり なるそかなしき | 仁善子 |
1399 | ゆめかとそ わひてはおもふ たまさかに とふひとあれや またやさむると | 朝忠 |
1400 | あはれとも おもひそわかぬ うはたまの おなしゆめにて まとふみなれは | 好古 |
1401 | おもひいつる むかしはつゆか ふるさとの はなみることに そてのぬるらむ | 貫之 |
1402 | みるからに たもとそぬるる さくらはな そらよりほかの つゆやおくらむ | 実頼 |
1403 | おくれても こえけるものを してのやま さきたつことを なになけきけむ | 宣耀殿女御 |
1404 | ありしよを ゆめにみなして なみたさへ とまらぬやとそ かなしかりける | 紫式部 |
1405 | たれもみな きえのこるへき みならねと ゆきかくれぬる きみそかなしき | 伊周 |
1406 | しぬはかり なけくをとはぬ ひとよりも いままていける みこそつらけれ | 隆国/行成 |
1407 | みやこにて まつへきひとも おもほえす やまよりふかく いりやしなまし | 行成/隆国 |
1408 | あつさゆみ はるのやまへの かすむこそ こひしきひとの かたみなりけれ | 堀河院 |
1409 | のほりにし はるのかすみを したふとて そむるころもの いろもはかなし | 順徳院 |
1410 | いるつきの おほろのしみつ いかにして つひにすむへき かけをとむらむ | 順徳院 |
1411 | はるのよの みしかきゆめと ききしかと なかきおもひの さむるまもなし | 順徳院 |
1412 | ありしよの こひしきままに ふるさとの はなにむかひて ねをのみそなく | 上総(堀河院中宮) |
1413 | あるしなき すみかにのこる さくらはな あはれむかしの はるやこひしき | 国基 |
1414 | をしむへき あるしをはなに さきたてて こころのままに ちるさくらかな | 心海 |
1415 | ねをそなく やよひのはなの かれしより をしへぬにはの あとをなかめて | 道家 |
1416 | おくれしと したひしつきひ うきなから けふもつれなく めくりあひつつ | 定家 |
1417 | かすみにし けふのつきひを へたてても なほおもかけの たちそはなれぬ | 道家 |
1418 | わかれにし むかしのはるを おもひいてて やよひのけふの そらそかなしき | 忠家(藤原教実男) |
1419 | ほとときす なくこゑきかは まつとはむ してのやまちを ひとやこえしと | 道命 |
1420 | ゆふされは わきてなかめむ かたもなし けふりとたにも ならぬわかれは | 堀河(待賢門院) |
1421 | あすまても あるへきみとも おもはねは けふひくらしの こゑそかなしき | 梅壷女御(後朱雀院女御藤原生子) |
1422 | けふといへは あきのさかなる しらつゆも さらにやひとの そてぬらすらむ | 実氏 |
1423 | けふまても うきはみにそふ さかなれは みとせのつゆの かわくまそなき | 為家 |
1424 | かへにおふる くさのなかなる きりきりす いつまてつゆの みをやとすらむ | 雅成親王 |
1425 | きえぬへき つゆのうきみの おきところ いつれののへの くさはなるらむ | 大輔(殷富門院) |
1426 | おとにきく むかしのあとや これならむ のへのをささに あきかせそふく | 公衡(藤原公能男) |
1427 | あすしらぬ つゆのよにふる ひとにたに なほはかなしと みゆるあさかほ | 公任 |
1428 | はかなくも つきにこころの とまるかな すみはつましき みをはわすれて | 堀河(待賢門院) |
1429 | むかしわか つらねしそては くちはてて なみたにのこる あきのよのつき | 忠定(藤原兼宗男) |
1430 | なくなくも あととふわかの うらちとり いかなるなみに たちわかれけむ | 時直(平) |
1431 | かなしさを なくさめよとて とふほとに まつわかそての ぬれにけるかな | 顕昭 |
1432 | おくれゐて おもひやるこそ かなしけれ たかののやまの けふのみゆきは | 俊成(藤原俊忠男) |
1433 | かなしさは いひつくすへき かたもなし わかこころにて ひとをしらなむ | 成通 |
1434 | なきひとの かたみのけふり それたにも はてはむなしき そらにきえつつ | 顕氏(六条顕家男) |
1435 | のほりにし けふりのあとを たつぬれは むなしくはらふ みねのまつかせ | 御匣(式乾門院) |
1436 | おくつゆを いかにしほれと ふちころも ほさぬたもとに あきのきぬらむ | 忠景 |
1437 | ふちころも そてはほすへき ひまもなし なみたしくるる あきのわかれに | 忠兼(藤原忠行男) |
1438 | なみたのみ かかるとおもふ すみそめの そてのうへにも ふるこのはかな | 仲業 |
1439 | ゆくあきを いのちあらはと たのめても ひとのわかれは まつかたもなし | 兼氏 |
1440 | はかなさは よのつねとても なくさめつ こひしきをこそ しのひわひぬれ | 道命 |
1441 | つねならぬ よのためしたに なかりせは なにによそへて あはれしらまし | 高弁 |
1442 | たれとても とまるへきかは あたしのの くさのはことに すかるしらつゆ | 西行 |
1443 | なけかすよ さはへのあしの うきふしも よしやいつまて あらしとおもへは | 大納言典侍(後嵯峨院) |
1444 | よのなかに あるをありとは いとふとも なきをなしとは たれかしのはむ | 権大夫(七条院) |
1445 | よのなかは かくこそみゆれ つくつくと おもへはかりの やとりなりけり | 高光 |
1446 | はかなくそ おくるるつゆの みをしらて ひとのあはれに そてぬらしける | 通雅 |
1447 | あはれにそ つゆのゆかりを たつねける きえにしあとに のこることのは | 大弐(安嘉門院) |
1448 | つらかりし あきさへいまは むかしにて なみたしくるる かみなつきかな | 良実 |
1449 | いかにまた さらてもこけの したなるを かさねてうつむ けさのしらゆき | 定雅(藤原忠経男) |
1450 | あめとなり くもとなりにし かたみにも まかふさくらの いろやみるらむ | 後嵯峨院 |
1451 | またもこむ はるのわかれを なけきしは せめておもひの なきよなりけり | 実雄 |
1452 | たちかへり つねなきよそと しりなから ひとのおもひに またなけくかな | 良実 |
1453 | いまさらに つねなきよをは おとろかて しりていとはぬ みをなけくかな | 実雄 |
1454 | ぬきすつる かひこそなけれ ふちころも いまもいろなる そてのなみたに | 実伊 |
1455 | いろいろに おもひこそやれ すみそめの たもともあけに なれるなみたを | 匡衡 |
1456 | なつとても ころもはかへし すてしよの かたみにきたる すみそめのそて | 基氏(藤原基家男) |
1457 | ものおもふ やとのこすゑの もみちこそ なみたとともに とまらさりけれ | 実定 |
1458 | かつきえて とまらぬよとは しりなから はかなきかすも つもるゆきかな | 実経 |
1459 | かつきゆる ものともしらて あはゆきの よにふるはかり はかなきはなし | 慶政 |
1460 | しのはるる むかしのあとは なけれとも こそにかはらぬ けさのしらゆき | 道玄 |
1461 | いかなれは つらきならひの ゆめのよに さらぬわかれの うつつなるらむ | 覚宗 |
1462 | いまさらに おとろかれぬる こころかな ゆめよりのちも うつつならぬを | 尊家 |
1463 | おもひきや きみにおくるる みちしはに おいのなみたの つゆわけむとは | 湛空 |
1464 | あはれなと おなしけふりに たちそはて のこるおもひの みをこかすらむ | 為家 |
1465 | こころにも あらぬわかれは ありやせむ たれもしるよの いのちならねは | 深養父 |
1466 | かめのうへの やまをたつねし ひとよりも そらにこふらむ きみをこそおもへ | 尊子内親王 |
1467 | たつぬへき かたたにもなき わかれには こころをいつち やらむとそおもふ | 円融院 |
1468 | たらちねの なからむのちの かなしさを おもひしよりも なほそこひしき | 為家 |
1469 | みそきして ころもをとこそ おもひしか なみたをさへも なかしつるかな | 俊頼(源経信男) |
1470 | これやもし ゆめなるらむと おもふこそ せめてはかなき たのみなりけれ | 能清 |
1471 | なきとこに まくらとまらは たれかみて つもらむちりを うちもはらはむ | 一条院皇后宮 |
1472 | うゑおきて あめときかする まつかせに のこれるひとは そてそぬれける | 能因 |
1473 | なきひとの こころととめし たきつせを いまはかたみの なみたにそかる | 実氏 |
1474 | ひとこゑの かねのおとこそ あはれなれ いかなるひとの をはりなるらむ | 澄覚法親王 |
1475 | つひのみち きのふはすきぬ けふもまた よもとおもふそ はかなかりける | 信実 |
1476 | われはまた むなしきゆめの さめぬまに たかあかつきと とりのなくらむ | 雅成親王 |
1477 | おほかたは おきあへぬつゆの いくよしも あらしわかみの そてのあきかせ | 雅経 |
1478 | かかるをも しらすやありけむ しらつゆの けぬへきほとも わすれやはする | 村上天皇 |
1479 | ゆきとまる やととさたむる かたもなし かせのうへなる ちりのみなれは | 尊快法親王 |
1480 | おもひいつる けふしもそらの かきくれて さこそなみたの あめとふるらめ | 宗尊親王 |
1481 | おくるるは よのことわりの みちなれと さらぬわかれは なほそかなしき | 基良 |
1482 | つひにゆく みちのわかれの あるものを いつまてとてか よををしむらむ | 知家 |
1483 | さきたたは さきたつひとそ なけかまし おいておくるる おいのおもひを | 惟方 |
1484 | うけれとも いけるはさても あるものを しぬるみのみそ かなしかりける | 貫之 |
1485 | めくりあふ むかしかたりの あきのつき なくさめかぬる わかこころかな | 慶政 |
1486 | かたかたに あはれなるへき このよかな あるをおもふも なきをしのふも | 西行 |
1487 | はつねとは おもはさらなむ ひととせに ふたたひきたる はるのうくひす | 後嵯峨院 |
1488 | ゆきふかき やまはかすめる いろもなし としのうちなる はるのあけほの | 実氏 |
1489 | けふといへは みそふりまさる あらたまの たかためとしの はしめなるらむ | 知家 |
1490 | かすかのの まつのふるえの かなしきは ねのひにあへと ひくひともなし | 俊成(藤原俊忠男) |
1491 | まきもくの ひはらにたてる はるかすみ はれぬおもひは なくさまるやは | 人麿 |
1492 | あしひきの やまへにいまは やとりせし かすみもふかみ とふひともなし | 遍昭 |
1493 | しらさりき やまよりたかき よはひまて はるのかすみの たつをみむとは | 定家 |
1494 | つくつくと なかむるままに こひしきは かすめるかたや むかしなるらむ | 忠定(藤原兼宗男) |
1495 | かすみにも ふしのけふりは まかひけり にたるものなき わかおもひかな | 土御門院 |
1496 | かすみさへ なほことうらに たちにけり わかみのかたは はるもつれなし | 後鳥羽院 |
1497 | しほみては あまのつりかと みゆるかな きしにみたるる あをやきのいと | 有仁 |
1498 | はるさめの あまねきみよの めくみとは たのむものから ぬるるそてかな | 基良 |
1499 | くさもきも ときにあひける はるさめに もれたるそては なみたなりけり | 基家 |
1500 | はなのかの にほふにものの かなしきは はるやむかしの かたみなるらむ | 長家 |
1501 | やとかへて にほひおとるな うめのはな むかしわすれぬ ひともあるよに | 馬内侍 |
1502 | そてふれは なほいかならむ うめのはな たちよるたにも ひととかめけり | 高定 |
1503 | いかにして はるのひかりも しらぬみに かすめるつきの そてにみゆらむ | 忠定(藤原兼宗男) |
1504 | あきかせに またこそとはめ つのくにの いくたのもりの はるのあけほの | 順徳院 |
1505 | かへるかり くもゐはたれも なれしかと うらやましきは はるのかよひち | 土御門院 |
1506 | よのなかは いつくかいつく かへるかり なにふるさとへ いそくなるらむ | 基俊 |
1507 | ななそちに ひととせたらぬ おいかみの いつとたのみて はなをまつらむ | 実氏 |
1508 | はなさかぬ ときはのやまの みねにたに さくらをみせて かかるしらくも | 宗尊親王 |
1509 | みるたひに あはれこころの なくさみて うきにまきれぬ はなのいろかな | 民部卿(後一条関白〈実経〉家) |
1510 | したにこそ ひとのこころも うつろふを いろにみせたる やまさくらかな | 宗尊親王 |
1511 | はなさきし ときのはるのみ こひしくて わかみやよひの そらそのとけき | 為家 |
1512 | われならて みしよのはるの ひとそなき わきてもにほへ くものうへのはな | 後鳥羽院 |
1513 | あはれわか きみかみよより みしはなの かはらぬいろに としのへにける | 雅経 |
1514 | いにしへの おほうちやまの さくらはな おもかけならて みぬそかなしき | 為家 |
1515 | なつかしき かにこそにほへ そてふれし よよのむかしの はなのしたかせ | 後嵯峨院 |
1516 | ふりにける よよのみゆきの あとなれと けふこそはなに いろはそへつれ | 隆親(藤原隆衡男) |
1517 | なれゆくは うきよなれはや みよしのの やまのさくらも あかてちるらむ | 後鳥羽院 |
1518 | うきよをは はなみてたにと おもへとも なほすきかたく はるかせそふく | 光俊(葉室光親男) |
1519 | なからへは わかよのはるの おもひいてに かたるはかりの はなさくらかな | 長方 |
1520 | あくかれし はるのこころを いまよりは やとにとめよと はなそさきける | 貞慶 |
1521 | さくらはな さきそふままに しらくもの かさなるやまに にほふはるかせ | 成賢(祝部成茂男) |
1522 | みるひとそ むかしのいろは かはりける はなはおいきの はるもありけり | 隆衡 |
1523 | わきてみむ おいきははなも あはれなり いまいくたひか はるにあふへき | 西行 |
1524 | はなのいろの いまはさたかに みえぬかな おいははるこそ あはれなりけれ | 慶暹 |
1525 | おもかけの うつらぬときも なかりけり こころやはなの かかみなるらむ | 仙覚 |
1526 | むかしより こころにそめし はなのかは こけのそてまて かはらさりけり | 伊平 |
1527 | もろともに ありしむかしを おもひいてて はなみることに ねこそなかるれ | 伊勢 |
1528 | わかために なにのあたとて はるかせの をしむとしれる はなをふくらむ | 伊勢 |
1529 | をりふしの ゆくへもいまは しらぬみに はるこそかかる はなはみえしか | 実資 |
1530 | ねかはくは はなのしたにて はるしなむ そのきさらきの もちつきのころ | 西行 |
1531 | みてもなほ あかぬこころの あやにくに ゆふへはまさる はなのいろかな | 伊長 |
1532 | ちるはなは のちのはるとも またれけり またもくましき わかさかりはも | 清輔 |
1533 | さくらはな うつろふはるを あまたへて みさへふりぬる あさちふのやと | 定家 |
1534 | やまかけの ふるきのさくら おなしえも いかなるすゑに はなのさくらむ | 為綱 |
1535 | さくらはな ちるをかきりと おもふみは さくとみるまや いのちなるらむ | 政村 |
1536 | さけはちる ならひをしれは やまさくら さかりをみても をしまるるかな | 頼景 |
1537 | ひとしれぬ みやまかくれの さくらはな いたつらにちる はるやへぬらむ | 時茂 |
1538 | をしめとも たたおほかたの いつはりに おもひなしてや はなのちるらむ | 時広 |
1539 | あすしらぬ わかみなからも さくらはな うつろふいろそ けふはかなしき | 小宰相(土御門院) |
1540 | やまのはに ややいりぬへき はるのひの こころなかきも かきりこそあれ | 土御門院 |
1541 | かくはかり くるるわかれを したふとも おもひもしらす はるやゆくらむ | 師継 |
1542 | よをすてて のちさへはるを をしむこそ むかしわすれぬ こころなりけれ | 知家 |
1543 | このはるの わかれやかきり とまるみの おいてひさしき いのちならねは | 知家 |
1544 | おいかよの わかみのはなの なこりまて ことしはいたく をしきはるかな | 家隆 |
1545 | けふみれは なつのころもに なりにけり うきはかはらぬ みをいかにせむ | 重之女 |
1546 | うのはなの さけるかきねに ときならて わかことそなく うくひすのこゑ | 小町 |
1547 | いつくより なきていつれは ほとときす やまのおくにも なほまたるらむ | 良覚 |
1548 | おとせぬは まつひとからか ほとときす たれをしへけむ かすならぬみを | 俊頼(源経信男) |
1549 | うきみには つれなきやまの ほとときす たれにまたせて はつねきかまし | 素暹 |
1550 | あけぬれと なほもまたれて わきもこか こぬよにまさる ほとときすかな | 基政(藤原基綱男) |
1551 | まちつけて ことしもききつ ほとときす おいはたのみの なきみなれとも | 頼輔 |
1552 | いまはとて みやまをいつる ほとときす いかなるやとに なかむとすらむ | 大輔(延喜皇后宮) |
1553 | いささらは なみたくらへむ ほとときす われもうきよに なかぬひはなし | 雅成親王 |
1554 | いにしへを おもひいつれは ほとときす くもゐはるかに ねこそなかるれ | 為家 |
1555 | なつかりの あしふみしたく みつとりの よにたつそらも なきみなりけり | 静仁法親王 |
1556 | ふるかはの いりえのはしは なみこえて やまもとめくる さみたれのころ | 尊海 |
1557 | なつやまの おなしみとりの こすゑにも まつはしらるる かせのおとかな | 最信/良信 |
1558 | ゆふたちの またすきやらぬ みなとえの あしのはそよく かせのすすしさ | 時親(平) |
1559 | ひとしれす ねこそなかるれ うつせみの みはなきものと おもひなせとも | 四条(安嘉門院) |
1560 | みそきする たもとにふるる おほぬさの ひくてあまたに なひくかはかせ | 土御門院 |
1561 | なつはつる あかつきかたの まきのとは あけてののちそ すすしかりける | 兼通 |
1562 | さらてたに つゆほしやらぬ わかそての おいのなみたに あきはきにけり | 教定(飛鳥井雅経男) |
1563 | ときしらぬ みともおもはし あきくれは たかそてよりも つゆけかりけり | 光俊(葉室光親男) |
1564 | いくとせの なみたのつゆに しをれきぬ ころもふきほせ あきのはつかせ | 秀能(藤原秀宗男) |
1565 | かせわたる をかのかやはら あきくれは こころみたれぬ ゆふくれそなき | 澄覚法親王 |
1566 | いせしまや わかのまつはら みわたせは ゆふしほかけて あきかせそふく | 道家 |
1567 | まつかけの いりうみかけて しらすけの みなとふきこす あきのしほかせ | 基家 |
1568 | ちきりけむ ほとはしらねと たなはたの たえせぬけふの あまのかはなみ | 頼通 |
1569 | いつしかと まちくらしけむ たなはたの けさはきのふや こひしかるらむ | 義孝(藤原敦舒男) |
1570 | あきかせに のきはのをきの こたへすは ひとりやせまし むかしかたりを | 家隆 |
1571 | しをりして ゆくひともかな あきはきに はなのみたれて みちもしられす | 公実 |
1572 | なかつきの つつきのはらの あきくさに ことしはあまり おけるつゆかな | 行家(藤原知家男) |
1573 | くさしけみ にはこそあれて としへぬれ わすれぬものは あきのしらつゆ | 恵慶 |
1574 | いにしへは みにしむあきも なかりしを おいてはものや かなしかるらむ | 道済 |
1575 | あきをへて かさなるとしの かすよりも なみたそおいの しるしなりける | 隆親(藤原隆衡男) |
1576 | ふりにけり わかもとゆひの そのかみに みさりしいろの あきのはつしも | 兼康 |
1577 | くろかみは すちかはれとも こむらさき わかもとゆひの いろそつれなき | 後嵯峨院 |
1578 | おもふより つゆそとまらぬ こはきはら みさらむのちの あきのゆふかせ | 知家 |
1579 | あさかほの あしたのはなの つゆよりも あはれはかなき よにもふるかな | 道兼 |
1580 | ひとのよか つゆかなにそと みしほとに おもなれにける あさかほのはな | 英明女 |
1581 | ひとならぬ いはきもさらに かなしきは みつのこしまの あきのゆふくれ | 順徳院 |
1582 | あはれうき あきのゆふへの ならひかな ものおもへとは たれをしへけむ | 宗尊親王 |
1583 | わかこころ とまるところは なけれとも なほおくやまの あきのゆふくれ | 教家/康能 |
1584 | よそにゆく くもゐのかりの なみたさへ そてにしらるる あきのゆふくれ | 康能/教良 |
1585 | くさのはの つゆもわかみの うへなれは そてのみほさぬ あきのゆふくれ | 少将(藻璧門院) |
1586 | かくはかり ものおもふあきの いくとせに なほのこりける わかなみたかな | 順徳院 |
1587 | ふしわふる まかきのたけの なかきよも なほおきあまる あきのしらつゆ | 順徳院 |
1588 | おほかたの うきみはときも わかねとも ゆふくれつらき あきかせそふく | 後鳥羽院 |
1589 | いかさまに あきのゆふへを なくさめむ よはそむけとも もとのみにして | 知家 |
1590 | いつまてと こころをとめて ありはてぬ いのちまつまの つきをみるらむ | 義政 |
1591 | うらみすよ くもれはとても あきのつき みのうきとかの なみたなりけり | 忠兼(藤原忠行男) |
1592 | うきにのみ そてをやぬらす あきのつき こころすむにも なみたおちけり | 長雅 |
1593 | いくたひか わかみひとつに あきをへて そてのなみたに つきをみるらむ | 成実(藤原親実男) |
1594 | みのうさを なけかぬあきの よはもあらは そてにくまなき つきはみてまし | 時茂 |
1595 | いかにして みをかへてみむ あきのつき なみたのはるる このよならねは | 雅成親王 |
1596 | おいらくの わかみのかけは かはれとも おなしむかしの あきのよのつき | 忠信 |
1597 | いととしく ものおもふよはの つきかけに むかしをこふる そてのつゆけさ | 東三条院 |
1598 | つきことに みるつきなれと このつきの こよひのつきに にるつきそなき | 村上天皇 |
1599 | いにしへは われたにしのふ あきのつき いかなるよよを おもひいつらむ | 為家 |
1600 | なくなくも わかよふけぬと みつるかな かたふくつきを そてにやとして | 実氏 |
1601 | さもこそは ねまちのつきの ころならめ いてもやられぬ くものうへかな | 承仁法親王 |
1602 | ふかきよの くもゐのつきや さえぬらむ しもにわたせる かささきのはし | 順徳院 |
1603 | うはたまの よはのまくらに おくしもの かさなるままに みこそふりぬれ | 基氏(藤原基家男) |
1604 | つゆおかぬ そてにはつきの かけもなし なみたやあきの いろをしるらむ | 宗尊親王 |
1605 | くもれとは おもはぬものを あきのよの つきになみたの なとこほるらむ | 信実 |
1606 | きりはれは あすもきてみむ うつらなく いはたのをのは もみちしぬらむ | 順徳院 |
1607 | なつのひは かけにすすみし かたをかの ははそはあきそ いろつきにける | 能因 |
1608 | よそへても みれはなみたそ ふりまさる のこりすくなき にはのもみちは | 実氏 |
1609 | このはこそ かせのさそへは もろからめ なとかなみたも あきはおつらむ | 能清 |
1610 | くれてゆく あきををしまぬ そらたにも そてよりほかに なほしくるなり | 親行(源光行男) |
1611 | やまたもる そほつのみこそ あはれなれ あきはてぬれは とふひともなし | 玄賓 |
1612 | そてぬれし ときをたにこそ なけきしか みさへしくれの ふりもゆくかな | 道綱母 |
1613 | しくれのみ おとはのさとは ちかけれと みやこのひとの ことつてはなし | 実雄 |
1614 | とはすとも おとはのさとの はつしくれ こころのいろは もみちにもみよ | 後嵯峨院 |
1615 | やまかはの こほりやうすく むすふらむ したにこのはそ みえてなかるる | 泰時 |
1616 | まきのやに このはしくれと ふりはてて そてにとまるは なみたなりけり | 覚寛 |
1617 | このはのみ そらにしられぬ しくれかと おもへはまたも ふるなみたかな | 具氏 |
1618 | ここにても そてぬらせとや よのうきめ みえぬやまちの なほしくるらむ | 宗尊親王 |
1619 | かみなつき しくれはかりを ふりぬとも わかみのよそに いつおもひけむ | 家良 |
1620 | かみなつき しくるるくもは はれにけり つれなくふるや わかみなるらむ | 家良 |
1621 | かせさわく ゆふへのそらの むらくもに おもひもあへす ふるしくれかな | 範忠 |
1622 | いたつらに なみたしくれて かみなつき わかみふりぬる もりのかしはき | 教定(飛鳥井雅経男) |
1623 | しくれつつ さひしきやとの いたまより もるにもすきて ぬるるそてかな | 政村 |
1624 | かくはかり さためなきよに としふりて みさへしくるる かみなつきかな | 家隆 |
1625 | いかはかり ふもとのさとの しくるらむ とほやまうすく かかるむらくも | 順徳院 |
1626 | とやまにて よしののおくを おもふかな みゆきふるらし しくれふるなり | 行意 |
1627 | つもれたた さらにもたれか ふみわけむ このはふりにし にはのはつゆき | 具定 |
1628 | ふりそめて いくかともなき ゆきのうちに かつかつひとの とはぬやとかな | 伊信 |
1629 | かせはやみ あまきるゆきの くもまより こほれるつきの かけそさやけき | 親清女 |
1630 | あさなあさな よそにやはみる ますかかみ むかひのをかに つもるしらゆき | 知家 |
1631 | しろたへに ゆきもわかみも ふりはてぬ あはれなこりの ありあけのつき | 公経(藤原実宗男) |
1632 | ふしのねは ゆきのうちにも あらはれて うつもれぬなに たつけふりかな | 近衛(今出河院) |
1633 | つきもせす おなしうきよを をしむとや わかみにつもる としはみるらむ | 俊成女 |
1634 | おいぬれは はやくもとしの くるるかな むかしもおなし つきひなれとも | 信生 |
1635 | いたつらに つきひはゆきと つもりつつ わかみふりぬる としのくれかな | 通具 |
1636 | としといひて ことしさへまた くれにけり あはれおほくの おいのかすかな | 信実 |
1637 | わかのうらに しほみちくれは かたをなみ あしへをさして たつなきわたる | 赤人 |
1638 | みなとかせ さむくふくらし なこのえに つまよひかはし たつさはになく | 家持 |
1639 | なにはかた しほひにたちて みわたせは あはちのしまに たつわたるみゆ | 読人不知 |
1640 | かこのしま まつはらこしに みわたせは ありあけのつきに たつそなくなる | 後鳥羽院 |
1641 | をくろさき みつのこしまに あさりする たつそなくなる なみたつらしも | 後嵯峨院 |
1642 | ともつるの むれゐしことは むかしにて みしまかくれに ねをのみそなく | 成実(藤原親実男) |
1643 | くさかえの いりえのたつの たつきなく ともなきねをや ひとりなくらむ | 忠家(藤原教実男) |
1644 | すまのあまの うらこくふねの かちをたえ よるへなきみそ かなしかりける | 小町 |
1645 | さよふけて ほりえこくなる まつらふね かちおとたかし みをはやみかも | 人麿 |
1646 | そてのかや なほとまるらむ たちはなの こしまによせし よはのうきふね | 後嵯峨院 |
1647 | かきりあれは かすまぬうらの なみまより こころときゆる あまのつりふね | 隆祐 |
1648 | よをうみの あまのをふねの つなてなは こころのひくに みをなまかせそ | 泰時 |
1649 | あしねはふ いりえのをふね さすかなほ うきにたへても よをわたるかな | 円勇 |
1650 | たちかへり みてこそゆかめ ふしのねの めつらしけなき けふりなりとも | 宗尊親王 |
1651 | やまひとの ころもなるらし しろたへの つきにさらせる ぬのひきのたき | 良経(九条兼実男) |
1652 | みなかみは いつこなるらむ しらくもの なかよりおつる ぬのひきのたき | 輔親 |
1653 | やまひめの みねのこすゑに ひきかけて さらせるぬのや たきのしらなみ | 俊頼(源経信男) |
1654 | かせふけは あまのとまやの あれまくも をしまかいそに よするなみかな | 有家(藤原重家男) |
1655 | あかしかた なみのおとにや かよふらむ うらよりをちの をかのまつかせ | 帥(鷹司院) |
1656 | さととほみ しほやくうらは みえわかて けふりにかくる おきつしらなみ | 信実 |
1657 | おほうみは しまもあらなくに うなはらや たゆたふなみに たてるしらくも | 人麿 |
1658 | あかつきの ゆめにみえつつ かちしまの いはこすなみの くたけてそおもふ | 宇合 |
1659 | いなみのや やまもととほく みわたせは をはなにましる まつのむらたち | 土御門院 |
1660 | みわたせは しほかせあらし ひめしまや こまつかうれに かかるしらなみ | 宗尊親王 |
1661 | いつかたか しけりまさると わすれくさ よしすみよしの なからへてみよ | 清少納言 |
1662 | みつしほも きしへはるかに なりはてて いまはうらなる すみよしのまつ | 後嵯峨院 |
1663 | すゑたえぬ よしののかはの みなかみや いもせのやまの なかをゆくらむ | 醍醐天皇 |
1664 | えにふかく としはへにける まつなれと かかるみゆきは けふやみるらむ | 伊衡 |
1665 | このかはの いりえのまつは おいにけり ふるきみゆきの ことやとはまし | 是則 |
1666 | おほゐかは そこにもみゆる かめやまの かはらぬかけは いくよへぬらむ | 中務 |
1667 | わかやとの ものかあらぬか あらしやま あるにまかせて おつるたきつせ | 後嵯峨院 |
1668 | ありあけの そらにわかれし いもかしま かたみのうらに つきそのこれる | 後嵯峨院 |
1669 | はまきよく すむつきかけを あけぬとや ゆらのみなとに ふねよはふなり | 実定 |
1670 | つきかけの ふけひのうらの さよちとり のこるあとにも ねはなかれけり | 素俊 |
1671 | ふくかせも のとけきはなの みやことり をさまれるよの ことやとはまし | 少将内侍(後深草院) |
1672 | はまちとり あとをみるにも そてぬれて むかしにかへる すまのうらなみ | 月花門院 |
1673 | いまさらに すまのうらちの もしほくさ かくにつけても ぬるるそてかな | 良平女 |
1674 | あさりすと いそにわかみし なのりそを いつれのしまの あまかかるらむ | 読人不知 |
1675 | いはしろの まつこともなき わかみさへ なにとうきよに むすほほるらむ | 資実 |
1676 | こころをは わかこころこそ なくさむれ あらましことの とはすかたりに | 家隆 |
1677 | おのつから ふるきにかへる いろしあらは はなそめころも つゆやわけまし | 後鳥羽院 |
1678 | よものうみ むかしにかへる なみのうへに はまひといまや みかりまつらむ | 道家 |
1679 | ひさかたの あめよりおろす たまほこの みちあるくにそ いまのわかくに | 後嵯峨院 |
1680 | よをてらす つきひのひかり みるたひに くもらしとおもふ こころこそつけ | 実氏 |
1681 | くもらしな ますみのかかみ かけそふる くすはのみやの はるのよのつき | 実経 |
1682 | おとはかは せきいれしみつに かけとめて ひとのこころを つきにみるかな | 公経(藤原実宗男) |
1683 | われのみや いりえのなみに そてぬれて しつめるかけを つきにうれへむ | 為綱 |
1684 | むそちあまり みつるもかなし なにとして こころのとまる つきとなるらむ | 基家 |
1685 | なにことに こころをとめて ありあけの つきもうきよの そらにすむらむ | 新右衛門督(宗尊親王家) |
1686 | あかすのみ おもひおかるる かなしさに このころいたく つきをみるかな | 信実 |
1687 | おほそらの むかしににたる つきかけを みやこにあらて みるそかなしき | 義懐 |
1688 | おくやまに みをはのかれぬ あはれまた こころをすつる みちをしらはや | 隆衡 |
1689 | うしとても またはいつちか あくかれむ やまよりふかき すみかなけれは | 忠良 |
1690 | はなすすき まねきもやまぬ やまさとに こころのかきり ととめつるかな | 兼家 |
1691 | ふくかせも とふにつらさの まさるかな なくさめかぬる あきのやまさと | 定雅(藤原忠経男) |
1692 | さらてたに こころうかるる やまさとの ゆふくれことに あきかせそふく | 公基 |
1693 | こころたに うきよをふかく いとひなは なにかはやまの おくももとめむ | 宗尊親王 |
1694 | さきたてて こころはやまに すむものを いへをいてぬと いはぬはかりそ | 顕朝 |
1695 | やまふかく なにかいほりを むすふへき こころのうちに みはかくれけり | 定円(葉室光俊男) |
1696 | すてしより やまのおくにと おもふみの すまれぬものは こころなりけり | 基氏(藤原基家男) |
1697 | やまさとに いつしかひとの またるるや すみはつましき こころなるらむ | 基政(藤原基綱男) |
1698 | たえすとふ かけひのみつの なさけこそ おとつれなから さひしかりけれ | 為家 |
1699 | やまふかく すむにもよらぬ こころかな つらきよをのみ なほしのひつつ | 土御門院 |
1700 | つゆしもの をくらのやまに いへゐして ほさてもそての くちぬへきかな | 定家 |
1701 | しりぬらむ ゆききにならす しほつやま よにふるみちは からきものそと | 紫式部 |
1702 | わりなしや ひとこそひとと いはさらめ みつからみをや おもひすつへき | 紫式部 |
1703 | よのなかよ いかかたのまむ あすかかは きのふのふちの あさせしらなみ | 少将(藻璧門院)/但馬(藻璧門院) |
1704 | ふちはせに かはるとみれと あすかかは しつむみくつは うかふせもなし | 光行 |
1705 | すすかかは わかみふりぬる おいのなみ やそせもちかく ぬるるそてかな | 知家 |
1706 | おもふこと なほしきなみに おほしまの なるとはなくて としのへぬらむ | 知家 |
1707 | いつまてか そてうちぬらし ぬまみつの すゑもとほらぬ ものおもひけむ | 光俊(葉室光親男) |
1708 | かすならて よにふるかはの うもれみつ ゆくかたもなく ぬるるそてかな | 頼重 |
1709 | うしとても みをはいつくに おくのうみの うのゐるいはも なみはかくらむ | 順徳院 |
1710 | なにことの いつあるへしと おもひてか かかるうきよに つれなかるらむ | 基家 |
1711 | ひにそへて なみたのつゆの しけけれは あたなるたまの をこそよわけれ | 貞慶 |
1712 | いにしへは よのうきはかり おほえしに おいをかさねて みをなけくかな | 政村 |
1713 | さりともと むかしはすゑも たのまれき おいそうきみの かきりなりける | 道円 |
1714 | きくひとも あはれとおもへ おいのなみ たちゐにつけて やすからぬみを | 実氏 |
1715 | むかしみし のはらはさとと なりにけり かすそふたみの かすはしらねと | 実氏 |
1716 | たかまとの をのへのみやの あさちはら あれにしのちも いくよへぬらむ | 真昭 |
1717 | みしよこそ おもひいてても しのはるれ しらぬむかしの なそやこひしき | 基政(藤原基綱男) |
1718 | みつのおもに おひてみたるる うきくさは なみのうへにや たねをまきけむ | 躬恒 |
1719 | ひとはみな もとのこころそ かはりゆく のなかのしみつ たれかくむへき | 後鳥羽院 |
1720 | ゆくすゑは ゆかしけれとも こしかたの こひしきはかり おほえやはする | 頼輔 |
1721 | ねさめして おもひとくこそ かなしけれ うきよのゆめを いつまてかみむ | 頼輔 |
1722 | むかしいま おもひのこさぬ ねさめかな あかつきはかり ものわすれせて | 実氏 |
1723 | あかつきの とりのねきかぬ やまさとは ねさめそよはの ほとをしりける | 家良 |
1724 | みをおもふ ねさめのなみた ほさぬまに なきつつけたる とりのこゑかな | 為家 |
1725 | うきものと ねさめをたれに ならひてか あかつきことに とりのなくらむ | 隆弁 |
1726 | あけぬとて ゆふつけとりの こゑすなり たれかわかれの そてぬらすらむ | 定家 |
1727 | せきのとも あけかたちかく なりにけり いまなくとりは そらねならしな | 心円 |
1728 | あふさかの せきのあらしの はけしきに しひてそゐたる よをすきむとて | 蝉丸 |
1729 | うなはらや たゆたふなみの はてもなし いつくなるらむ くものをちかた | 実氏 |
1730 | あけわたる あしやのうみの なみまより ほのかにめくる きちのとほやま | 為家 |
1731 | いこまやま よそになるをの おきにいてて めにもかからぬ みねのあまくも | 家長(源時長男) |
1732 | かせふけは いつれのしまと たのむらむ はるかにいつる あまのつりふね | 秀能(藤原秀宗男) |
1733 | かせわたる はまなのはしの ゆふしほに さされてのほる あまのつりふね | 為家 |
1734 | つきいてて いまこそかへれ なこのえに ゆふへわするる あまのつりふね | 光俊(葉室光親男) |
1735 | わかのうらや しらぬしほちに こきいてて みにあまるまて つきをみるかな | 光俊(葉室光親男) |
1736 | ふけゆけは やまかけもなし よしのなる なつみのかはの あきのよのつき | 行実 |
1737 | わかみから ものおもふことも なくさまて うきよのままに つきをみるかな | 経平(衣笠家良男) |
1738 | くさのいほを つきとともには いてぬれと かけかくすへき やまのはそなき | 胆空 |
1739 | くもゐより やとりなれにし あきのつき いかにかはれる なみたとかしる | 土御門院 |
1740 | つきはなほ みしよのかけや のこるらむ あるにもあらぬ そてのなみたに | 伊平 |
1741 | いくたひか あはれむかしと おもひいてて みのいたつらに つきをみるらむ | 良実 |
1742 | いにしへの おもかけをさへ さしそへて しのひかたくも すめるつきかな | 俊頼(源経信男) |
1743 | いにしへを おもひいてつつ なかむれは やかてなみたに くもるつきかな | 師季(中原師綱男) |
1744 | かそふれは としこそいたく おいにけれ よをへてみつる つきのつもりに | 西音 |
1745 | つきみては なれにしひとも こひしきに われをはたれか おもひいつらむ | 道命 |
1746 | いまはわれ つきもなかめし はれやらぬ こころたくはは くもりもそする | 隆俊 |
1747 | われもまた やまのはちかし ありあけの つきをあはれと なかめせしまに | 実定 |
1748 | ふりにける みわのひはらに こととはむ いくよのひとか かさしをりけむ | 知家 |
1749 | いにしへの ことはしらぬを われみても ひさしくなりぬ あまのかくやま | 惟明親王 |
1750 | としつもる をすてのやまの まきのはも ひさしくみねは こけおひにけり | 読人不知 |
1751 | あなしかは かはおとたかし まきもくの ゆつきかたけに くもたてるらし | 人麿 |
1752 | おちたきつ ちちのなかれは つもれとも かはらぬものは おきつしらなみ | 人麿 |
1753 | せりかはの なみもむかしに たちかへり みゆきたえせぬ さかのやまかせ | 俊成(藤原俊忠男) |
1754 | けふをいかに みそなはすらむ むかしより みをはなれたる かけしなけれは | 良経(九条兼実男) |
1755 | みははやく よはひもおいぬ かきのもとの ひさしきかけは わかきみのため | 後嵯峨院 |
1756 | をはたたの みやのふるみち いかならむ たえにしのちは ゆめのうきはし | 知家 |
1757 | たまきはる いのちはしらす まつかえを むすふこころは なかくとそおもふ | 土御門院 |
1758 | すみよしと たかいひおきし うらならむ さひしかりける まつのかせかな | 家持 |
1759 | いたつらに としもつもりの うらにおふる まつそわかみの たくひなりける | 基隆(藤原基綱男) |
1760 | いたつらに わかみもふりぬ たかさこの をのへにたてる まつひとりかは | 頼政 |
1761 | よにあらは またかへりこむ つのくにの こかけのまつよ おもかはりすな | 能因 |
1762 | とへかしな たまくしのはに みかくれて もすのくさくき めちならすとも | 基俊 |
1763 | しらすやは いせのはまをき かせふけは をりふしことに こひわたるとは | 俊頼(源経信男) |
1764 | ゆくすゑは うきよりほかに なにをかは むかしはとても ひとにかたらむ | 顕季 |
1765 | あかさりし むかしのことを かきつくる すすりのみつは なみたなりけり | 下野(後鳥羽院) |
1766 | いにしへの こひしさいかに おほゆらむ きのふのことも わすらるるみに | 和泉式部 |
1767 | おもひいての ありきあらすは いにしへを こふるこころの うちそしるらむ | 信実 |
1768 | みつくきの むかしのあとに なかるるは みぬよをしのふ なみたなりけり | 信実 |
1769 | なかなかに おもひいててそ なくさむる わすられぬへき むかしならねは | 為家 |
1770 | なかなかに むかしそつらき あはれてふ ことをあまたに おもひいつれは | 仲敏 |
1771 | いきてかく きみにつかふる おいかみを たくひなしとは よひとさためよ | 長時 |
1772 | たらちねの こころのやみを しるものは こをおもふときの なみたなりけり | 実氏 |
1773 | ことのはは みにこそしらね たらちねの かたみはかりに とふひともかな | 基良 |
1774 | たらちねの あらましかはと おもふにそ みのためまても ねはなかれける | 隆祐 |
1775 | たらちねの みちのしるへの あとなくは なににつけてか よにつかへまし | 光俊(葉室光親男) |
1776 | あとあれは おとろのみちも ふみそめつ いまゆくすゑの まよはすもかな | 為家 |
1777 | やくもたつ いつもやへかき けふまても むかしのあとは へたてさりけり | 高定 |
1778 | やくもたつ みちはふかきを あさかやま あさくもひとの おもひいるかな | 良経(九条兼実男) |
1779 | いまもまた つもれることを とはるるは ちりにつけとや やまとことのは | 基家 |
1780 | いそのかみ ふるのなかみち たちかへり むかしにかよふ やまとことのは | 行家(藤原知家男) |
1781 | わすられぬ もとのこころの ありかほに のなかのしみつ かけをたにみし | 具親 |
1782 | かけたえて ひとこそとはね いにしへの のなかのしみつ つきはすむらむ | 俊成女 |
1783 | そてぬらす かたみなりけり もしほくさ かきおくあとの わかのうらなみ | 教雅 |
1784 | みれとなほ のへにかれせぬ たまささの はわけのつゆは いつもきえせし | 秀茂 |
1785 | ささたけの わかよのほとの おもひいてに しのはれぬへき ひとふしもかな | 天暦贈太皇太后宮 |
1786 | いかにせむ みはいやしくて としたかき ひとをあはれと おもふよもかな | 後嵯峨院 |
1787 | かたるへき ひとしなけれは こしかたを こころにとひて ねをのみそなく | 家隆 |
1788 | なからへて ものはおもはし いまのまの うきにかきれる いのちなりせは | 実氏 |
1789 | なけくとて あはれをかくる ひともあらし なにになみたの うきをしるらむ | 通氏 |
1790 | くれたけの うきふししけく なりにけり さのみはよもと おもひしものを | 忠良 |
1791 | ひくるれは たけのそのふに ぬるとりの そこはかとなく ねをもなくかな | 俊頼(源経信男) |
1792 | なにことに おもひきゆらむ あさつゆの うきわかみたに あれはあるよに | 俊頼(源経信男) |
1793 | おもひおく つゆのよすかの しのふくさ きみをそたのむ みはきえぬとも | 基俊 |
1794 | ゆふくれの なからましかは しらくもの うはのそらなる ものはおもはし | 定家 |
1795 | くるるまも たのむものとは なけれとも しらぬそひとの いのちなりける | 土御門院 |
1796 | おもひわく みのことわりの しるしとて うきもうからす なるこころかな | 順徳院 |
1797 | むくらはふ やとたにあきは さひしきを いくへかとつる みねのしらくも | 行能 |
1798 | あはれしる ひとしなけれは よとともに わかおもふことを いはてやみぬる | 長明 |
1799 | ありわふる みはわれのみと おもひしに たかなつけける うきよなるらむ | 顕仲(藤原資仲男) |
1800 | すませとも あさきせにたつ うはなみの しつめかたきは こころなりけり | 基隆(藤原基綱男) |
1801 | いけるよに しのはるるなの あらはこそ くちなむこけの したにのこらめ | 俊定(源具定男) |
1802 | よのなかを いつかたにとか うらむらむ ひとこそあさき こころなるらめ | 定通(土御門通親男) |
1803 | ぬるかうちに おもひのほかの こともみつ ゆめよいかなる ものとしらはや | 宇多天皇 |
1804 | なにそこの ゆめてふものの ありそめて ぬるかうちにも みをなけくらむ | 後嵯峨院 |
1805 | さめてこそ はかなかりけれ ぬるかうちに ゆめをうつつと おもふこころは | 実経 |
1806 | まとろむも おなしこころの みれはこそ さめてもゆめの わすれさるらめ | 基平(近衛兼経男) |
1807 | ゆめはなほ むかしにもまた かへりなむ ふたたひみぬは うつつなりけり | 家良 |
1808 | うつつこそ なほうかりけれ ゆめならは こふるむかしを またもみてまし | 宗尊親王 |
1809 | すきぬれは うつつもゆめに かはらぬを ぬるかうちとも おもひけるかな | 行家(藤原知家男) |
1810 | なかきよに ねふりはさめて いかなれは このよをゆめと おもひなるらむ | 具房 |
1811 | ききなるる やそちあまりの かねのこゑ よひあかつきも あはれいつまて | 顕真 |
1812 | なほしはし いのちををしと おもふこそ おいをいとはぬ こころなりけれ | 信実 |
1813 | ななそちを すききつるたに ほとなきに いまいくかとて よをたのむらむ | 信実 |
1814 | いかにせむ みにななそちの すきにしを きのふもおもへは けふもくれぬる | 祐盛 |
1815 | いまそわれ しほみついその いはかねの のこりすくなき みとはなりぬる | 蓮生法師 |
1816 | けふそおもふ きみにあはてや やみなまし やそちあまりの よはひならすは | 隆弁 |
1817 | いつまてか なかきよからと かこちけむ おいのねさめは をりをわくかは | 昭平法親王 |
1818 | なかきよの ねさめにおもふ ほとはかり うきよをいとふ こころありせは | 後鳥羽院 |
1819 | ねさめする よはのこころの ままならは おもひさためぬ みとはなけかし | 小宰相(土御門院) |
1820 | うつつにて ゆめなるものは なかきよの ねさめにおもふ むかしなりけり | 政村 |
1821 | としたけは いとふへきよと おもひしに おいのこころの なほとまりぬる | 公朝 |
1822 | なけくそよ かかみのかけの あさことに つもりてよする ゆきとなみとを | 時広 |
1823 | うきたひに そむきてもまた いかかせむ このよひとつの おもひならねは | 為家 |
1824 | さりとても そむきもはてす ひとことに たたいつはりの うきよなりけり | 順徳院 |
1825 | おもふこと なきたにやすく そむくよに あはれすてても をしからぬみを | 実経 |
1826 | つらきにも うきにもたへて としはへぬ いかなるときか よをはいとはむ | 越前(嘉陽門院) |
1827 | なにことの まつなけかれて そむくへき みをもわするる こころなるらむ | 能清 |
1828 | そむくへき わかよやちかく なりぬらむ こころにかかる みねのしらくも | 知家 |
1829 | みはかりは なほもうきよを そむかはや こころはなかく きみにたかはて | 慈円 |
1830 | よのなかの そむきかたさに みのほとを おもひしらすと ひとにみえぬる | 俊頼(源経信男) |
1831 | しりなから いとはぬよこそ かなしけれ わかためつらき みをおもふとて | 実氏 |
1832 | さてもまた いつくをつひの すみかとて いへをいてむと おもひたつらむ | 顕家 |
1833 | みをつめは そてそぬれぬる あまころも おもひたつらむ ほとのかなしさ | 東三条院 |
1834 | なけかしと かねてこころを せしかとも けふになるこそ かなしかりけれ | 赤染衛門 |
1835 | さらてたに ありしにもあらぬ おなしよを そむくときくそ いととかなしき | 四条(安嘉門院) |
1836 | ありしにも あらぬたもとの あきのかせ いかなるいろに ふきかはるらむ | 為継 |
1837 | そてのうへは ありしにもあらぬ いろなから おなしみにしむ あきかせそふく | 仲能 |
1838 | ますかかみ しらぬおきなは みなれにき いまさらたとる おもかけもうし | 基良 |
1839 | うきたひの たたあらましと おもひしに ちきりありける すみそめのそて | 明教 |
1840 | そむきにし しるしはいつら たちかへり うきよにかくて すみそめのそて | 小侍従(太皇太后宮) |
1841 | にしへゆく つきはたのみも ありなから こころのやみの はれかたのよや | 大弐(修明門院) |
1842 | いるかたを うきよのほかに なくさめて つきにこころの やみははるけよ | 按察(鷹司院) |
1843 | おもひやる こころはつねに かよふとも しらすやきみか ことつてもなき | 泰時 |
1844 | ひとしれす おもふこころの かよふこそ いふにまされる しるへなるらめ | 高弁 |
1845 | うつもれぬ のちのなさへや とめさらむ なすことなくて このよくれなは | 良経(九条兼実男) |
1846 | うきなから なほつれなくて すくすとも あらしわかみの すゑのおもひて | 有家(藤原重家男) |
1847 | みのうさの こころにあまる ときにこそ なみたはそてに おちはしめけれ | 按察(鷹司院) |
1848 | うきよには かかれとてこそ うまれけめ ことわりしらぬ わかなみたかな | 土御門院 |
1849 | ひとすちに ひとやはつらき よのなかの うきにつけては みをそうらむる | 通忠 |
1850 | なへてよの ひとこそさらに つらからね わかこころたに みをはおもはす | 家良 |
1851 | うきことに なれぬるものは こころとて なほもつれなく よをやすくさむ | 寂身 |
1852 | ふかけれと ちひろのうみは ほとしりぬ ひとのおもひは さをもおよはす | 忠岑 |
1853 | あやしくも なくさめかたき こころかな をはすてやまの つきもみなくに | 小町 |
1854 | うきよとて いとひすてても いかかせむ そむかぬたにも かすならぬみを | 良教 |
1855 | いにしへは かくやおほえし まつことの なけれははやく ゆくつきひかな | 公朝 |
1856 | おもひいても またまつことも なけれとも さすかによこそ すてもやられね | 祐盛 |
1857 | よろこふも なけくもあたに すくるよを なとかはいとふ こころなからむ | 永観 |
1858 | いとひても なほいとふへき よのうさの おもふほとには おもはれぬかな | 伊平 |
1859 | いままても あるはおもひの ほかなれは みをなけくへき ことわりもなし | 光俊(葉室光親男) |
1860 | なにゆゑに いままてよには ふるみそと こころのとへは ねこそなかるれ | 光俊(葉室光親男) |
1861 | ふたはより まつのよはひを おもふには けふそちとせの はしめとはみる | 一条院 |
1862 | ふくかせの えたもならさぬ このころは はなもしつかに にほふなるへし | 花山院 |
1863 | つきもせす よはひひさしき かめやまの さくらはかせも ちらささりけり | 伊勢大輔 |
1864 | たつねきて あかぬこころに まかせなは ちとせやはなの かけにすくさむ | 亀山院 |
1865 | はなみても のとけかりけり いくちよと かきりもしらぬ はるのこころは | 親子(典侍親子朝臣) |
1866 | うめかえに よよのむかしの はるかけて かはらすきゐる うくひすのこゑ | 後嵯峨院 |
1867 | いろいろに えたをつらねて さきにけり はなもわかよも いまさかりかも | 後嵯峨院 |
1868 | いろいろに さかえてにほへ さくらはな わかきみきみの ちよのかさしに | 実氏 |
1869 | もろひとの てことにかさす さくらはな あまたちとせの はるそしらるる | 公親 |
1870 | このはるそ こころのいろは ひらけぬる むそちあまりの はなはみしかと | 実氏 |
1871 | さきそむる かさしのはなの ちよをへて こたかくならむ かけをこそまて | 頼綱 |
1872 | ちよをへて そこまてすめる いけみつに ふかくもうつる はなのいろかな | 宗忠 |
1873 | としとしの みゆきかさなる やまさくら はなのところは はるもかきらし | 実雄 |
1874 | いくはるも ちらてそはなは にほふへき かせしつかなる くものうへとて | 基平(近衛兼経男) |
1875 | みちよへて なるてふももの すゑのよの はなのさかりは きみのみそみむ | 時文 |
1876 | ふちなみの かけさしならふ みかさやま ひとにこえたる こすゑをそみる | 下野(後鳥羽院) |
1877 | おもひやれ みかさのやまの ふちのはな さきならへつつ みつるこころは | 実氏 |
1878 | なかれての ゆくすゑとほき みつくきは きみかすむへき かすをこそかけ | 後朱雀院 |
1879 | たつのゐる いはかきぬまの あやめくさ ちきりてひかむ きみかためには | 師頼 |
1880 | いけみつに いはほとならむ さされいしの かすもあらはに すめるつきかけ | 雅経 |
1881 | きみかよの ちとせのかけを さしそへて つきやとれとや すめるいけみつ | 良平 |
1882 | よをてらす よもきかほらの つきかけは あきつしまねの ほかもくもらし | 雅真/雅具 |
1883 | くものうへの ほしかとみゆる きくなれは そらにそちよの あきはしらるる | 堀河(待賢門院) |
1884 | ももしきに うつろひわたる きくのはな にほひそまさる よろつよのあき | 聖武天皇 |
1885 | あめつちも うけたるとしの しるしにや ふるしらゆきも やまとなるらむ | 後朱雀院 |
1886 | ゆきつもる まつはおいきと おもひしに さらにはなさく としのくれかな | 公相 |
1887 | かみかせや みもすそかはの なかれこそ つきひとともに すむへかりけれ | 良経(九条兼実男) |
1888 | いかにいかか かそへやるへき やちとせの あまりひさしき きみかみよをは | 紫式部 |
1889 | きみをいのる けふのたふとさ かくしこそ をさまれるよは たのしきをつめ | 定家 |
1890 | しもゆきの しろかみまてに つかへきぬ きみのやちよを いはひおくとて | 定家 |
1891 | くりかへし きみをそいはふ おいぬれは おなしことのみ しつのをたまき | 家長(源時長男) |
1892 | ふりぬとて なになけきけむ きみかよに おいといふものそ みはさかえける | 実氏 |
1893 | よろつよに つかへてそみむ つきもなほ かけをととむる せきのふちかは | 良実 |
1894 | いくちよの あきをへぬらむ をののえの くちしところの やまのはのつき | 公雄 |
1895 | きみかよは をののえくちし やまひとの ちたひかへらむ ときもかはらし | 俊成(藤原俊忠男) |
1896 | おほゐかは ちよにひとたひ すむみつの けふのみゆきに あひにけるかな | 匡房 |
1897 | このたひと なみよせつくす たまつしま みかくみことを かみはうくらし | 基家 |
1898 | わかのうらに なみよせかくる もしほくさ かきあつめてそ たまもみえける | 後嵯峨院 |
1899 | いそのかみ ふるきをいまに ならへこし むかしのあとを またたつねつつ | 後鳥羽院 |
1900 | しきしまや やまとことはの うみにして ひろひしたまは みかかれにけり | 良経(九条兼実男) |
1901 | きみかよは つもりのうらに あまくたる かみもちとせを まつとこそみれ | 俊恵 |
1902 | うこきなき いはほにねさす うみまつの ちとせをたれに なみのよすらむ | 恵慶 |
1903 | かきりなき ときしもきみに あふみなる しかのはままつ いくよふりなむ | 忠信 |
1904 | きみかよも わかよもつきし いしかはや せみのをかはの たえしとおもへは | 実朝 |
1905 | みやはしら ふとしきたてて よろつよに いまそさかえむ かまくらのさと | 実朝 |
1906 | きみかよは なからのはしを ちたひまて つくりかへても なほやふりなむ | 頼政 |
1907 | かみなひの やまのうへなる いはしみつ いはひてそくむ よろつよのため | 読人不知 |
1908 | ななたひの よしののかはの みをつくし きみかやちよの しるしともなれ | 行意 |
1909 | やほよろつ かみもさこそは まもるらめ てるひのもとの くにつみやこを | 為家 |
1910 | すめらきの くらゐのやまの こまつはら ことしやちよの はしめなるらむ | 宗尊親王 |
1911 | いけみつに くにさかえける まきもくの たまきのかせは いまものこれり | 実頼 |
1912 | てるつきの かつらのやまに いへゐして くもりなきよに あへるあきかな | 義忠(藤原為久男) |
1913 | いはさかの やまのいはねの うこきなく ときはかきはに こけのむすかな | 匡房 |
1914 | をさまれる ときにあふみの やすかはは いくたひみよに すまむとすらむ | 永範 |
1915 | すかのねの なからのやまの みねのまつ ふきくるかせも よろつよのこゑ | 資実 |
1916 | けふよりそ ちちのまつはら ちきりおく はなはとかへり きみはよろつよ | 為長(菅原長守男) |
1917 | ももしきは かめのうへなる やまなれは ちよをかさねよ つるのけころも | 通親 |
1918 | ひさかたの あまのかこやま そらはれて いつるつきひも わかきみのため | 家隆 |