「続拾遺和歌集」一覧
1461件
1 | あらたまの としはひとよの へたてにて けふよりはると たつかすみかな | 為家 |
2 | おしなへて けさはかすみの しきしまや やまともろひと はるをしるらし | 良経(九条兼実男) |
3 | はるたつと そらにしるきは かすかやま みねのあさひの けしきなりけり | 俊成(藤原俊忠男) |
4 | あまのはら かすみてかへる あらたまの としこそはるの はしめなりけれ | 家隆 |
5 | ひさかたの あまきるゆきの ふりはへて かすみもあへす はるはきにけり | 雅経 |
6 | みゆきふる をのへのかすみ たちかへり とほきやまへに はるはきにけり | 知家 |
7 | いまもなほ ゆきはふりつつ あさかすみ たてるやいつこ はるはきにけり | 公基 |
8 | ふりつもる まつのかれはの ふかけれは ゆきまもおそき たにのかけくさ | 順徳院 |
9 | しからきの とやまのこすゑ そらさえて かすみにふれる はるのしらゆき | 家隆 |
10 | かすめとも またはるかせは そらさえて はなまちかほに ふれるあはゆき | 亀山院 |
11 | にはのおもは つもりもやらす かつきえて そらにのみふる はるのあはゆき | 師継 |
12 | はるなれと なほかせさゆる やまかけに こほりてのこる こそのしらゆき | 実経 |
13 | しらゆきは ふるすなからも うくひすの なくねにはるや あらたまるらむ | 少将内侍(後深草院) |
14 | はるかせや うめのにほひを さそふらむ ゆくへさためぬ うくひすのこゑ | 具親 |
15 | うめかえに なくうくひすや しるへして はなのたよりに ひとのとふらむ | 長家 |
16 | をりてこそ はなもわかるれ うめかえに おなしいろそふ はるのあはゆき | 亀山院 |
17 | さきにける かきねのうめは いろみえて かつちるゆきに はるかせそふく | 良教 |
18 | はるかせや なほさむからし うめのはな さきそふえたに ゆきはふりつつ | 公経(藤原実宗男) |
19 | けふはたた おもひもよらて かへりなむ ゆきのふりつむ のへのわかなを | 西行 |
20 | きえなくに またやみやまを うつむらむ わかなつむのも あはゆきそふる | 定家 |
21 | しろたへの そてにそまかふ みやこひと わかなつむのの はるのあはゆき | 後鳥羽院 |
22 | いそのかみ ふるののさはの あとしめて はるやむかしと わかなつみつつ | 基家 |
23 | いまよりは はるになりぬと かけろふの したもえいそく のへのわかくさ | 読人不知 |
24 | はるのきる かすみのつまや こもるらむ またわかくさの むさしののはら | 土御門院 |
25 | たちなるる とふひののもり おのれさへ かすみにたとる はるのあけほの | 定家 |
26 | かみよより かすみもいくへ へたてきぬ やまたのはらの はるのあけほの | 公経(藤原実宗男) |
27 | あつさゆみ やののかみやま はるかけて かすみはそらに たなひきにけり | 行能 |
28 | はるかなる ふもとはそこと みえわかて かすみのうへに のこるやまのは | 為氏 |
29 | くもゐより のとかにかすむ やまのはの あらはれわたる はるのあけほの | 基氏(藤原基家男) |
30 | さほひめの なにおふやまも はるくれは かけてかすみの ころもほすらし | 為家 |
31 | みなかみは くものいつくも みえわかす かすみておつる ぬのひきのたき | 実雄 |
32 | いせのうみ はるかにかすむ なみまより あまのはらなる あまのつりふね | 行意 |
33 | たこのうらの かせものとけき はるのひは かすみそなみに たちかはりける | 道因 |
34 | はるかすみ たなひくうらは みつしほに いそこすなみの おとのみそする | 俊頼(源経信男) |
35 | よさのうらの かすみはれゆく たえまより こすゑそみゆる まつのむらたち | 隆信 |
36 | たちわたる かすみになみは うつもれて いそへのまつに のこるうらかせ | 為世(御子左藤原為氏男) |
37 | うらとほき なにはのはるの ゆふなきに いりひかすめる あはちしまやま | 宗尊親王 |
38 | みるままに なみちはるかに なりにけり かすめはとほき うらのはつしま | 実氏 |
39 | こきかへる たななしをふね みえぬまて おなしいりえに かすむはるかな | 弁内侍(後深草院) |
40 | えたかはす やなきかしたに あとたえて みとりにたとる はるのかよひち | 実経 |
41 | あをやきの いとをみとりに よりかけて あはすははるに なにをそめまし | 公経(藤原実宗男) |
42 | あをやきの いとよりつたふ しらつゆを たまとみるまて はるさめそふる | 実朝 |
43 | うめのはな こころをそむる ほとはかり にほひはそてに とまりやはする | 頼実(藤原経宗男) |
44 | そてふれは いろまてうつれ くれなゐの はつはなそめに さけるうめかえ | 後嵯峨院 |
45 | あさかすみ うめのたちえは みえねとも そなたのかせに かやはかくるる | 隆季 |
46 | うめかかは はななきさとも にほふらし かきねつつきの はるのゆふかせ | 実雄 |
47 | うめのはな にほふあたりの はるかせや まつひとさそふ しるへなるらむ | 資平 |
48 | まきのとを あけてよふかき うめかかに はるのねさめを とふひともかな | 公経(藤原実宗男) |
49 | いろかをも しるひとなしと おもふらむ はなのこころを きてもとへかし | 月花門院 |
50 | たれにかも むかしをとはむ ふるさとの のきはのうめも はるをこそしれ | 実朝 |
51 | あけてみぬ たかたまつさも いたつらに またよをこめて かへるかりかね | 信実 |
52 | あとたえて かすみにかへる かりかねの いまいくかあらは ふるさとのそら | 教実 |
53 | たちわたる かすみへたてて かへるやま きてもとまらぬ はるのかりかね | 性助法親王 |
54 | はるさめに つはさしをれて ゆくかりの くもにあとなき ゆふくれのそら | 尊快法親王 |
55 | けふみすは あすもたつねむ やまさくら よのまのほとに さきもこそすれ | 公通 |
56 | をとめこか そてふるやまを きてみれは はなのたもとは ほころひにけり | 清輔 |
57 | ちきりしに あらぬつらさの やまさくら ひとりはえこそ たつねさりけれ | 少将内侍(後深草院) |
58 | しらくもの いろはひとつを さくらはな さきぬとにほふ はるのやまかせ | 為家 |
59 | さくらはな さくとみしまに たかさこの まつをのこして かかるしらくも | 順徳院 |
60 | たちかへり とやまそかすむ たかさこの をのへのさくら くももまかはす | 雅経 |
61 | さくらさく やまはかすみに うつもれて みとりのそらに のこるしらくも | 公経(藤原実宗男) |
62 | やまひめの かすみのそてや にほふらし はなにうつろふ よこくものそら | 通光 |
63 | くもまより みねのさくらを いつるひの そらもうつろふ はなのいろかな | 基家 |
64 | くれなゐの うすはなそめの やまさくら ゆふひうつろふ くもかとそみる | 雅成親王 |
65 | さくらはな かすみあまきる やまのはに ひもかけろふの ゆふくれのそら | 道家 |
66 | はなのかは そこともしらす にほひきて とほやまかすむ はるのゆふくれ | 宗尊親王 |
67 | おのつから かせのつてなる はなのかの そこともしらす かすむはるかな | 公親 |
68 | かせかをる このしたみちは すきやらて はなにそくらす しかのやまこえ | 良教 |
69 | くれぬとて なかめもすてす さくらはな うつろふやまに いつるつきかけ | 隆季 |
70 | たつぬらむ こすゑにうつる こころかな かはらぬはなを つきにみれとも | 土御門院 |
71 | はるのよは こすゑにやとる つきのいろを はなにまかへて あかすみるかな | 肥後(京極前関白家) |
72 | あはれしる ひとはとひこて やまさとの はなにかたふく あたらよのつき | 後鳥羽院 |
73 | はるくれは さくらこきませ あをやきの かつらきやまそ にしきなりける | 家隆 |
74 | しろたへに ゆふかけてけり さかきはに さくらさきそふ あまのかくやま | 俊成(藤原俊忠男) |
75 | よしのやま はなのさかりや けふならむ そらさへにほふ みねのしらくも | 俊成(藤原俊忠男) |
76 | やまさくら をられぬみねも なかりけり くものころもの はなそめのそて | 隆祐 |
77 | をるそても うつりにけりな さくらはな こほれてにほふ はるのあさつゆ | 公守 |
78 | このもとに おくるひかすの つもりなは ふるさとひとや はなをうらみむ | 光俊(葉室光親男) |
79 | ふくかせの さそふにほひを しるへにて ゆくへさためぬ はなのころかな | 後嵯峨院 |
80 | いつくとも はるはかすみそ なかりける こころをさそふ はなにまかせて | 忠盛 |
81 | ほのほのと あけゆくやまの たかねより かすみににほふ はなのしらくも | 泰時 |
82 | はるはまた はなのみやこと なりにけり さくらににほふ みよしののやま | 俊成女 |
83 | よしのやま いくよのはるか ふりぬらむ をのへのはなを くもにまかへて | 為氏 |
84 | いまもまた むかしなからの はるにあひて ものおもひなく はなをみるかな | 経任(中御門藤原為経男) |
85 | ここのへの まちかきやとの やへさくら はるをかさねて きみそみるへき | 資季 |
86 | いたつらに みるひともなき やへさくら やとからはるや よそにすきなむ | 道家 |
87 | はるはなほ こぬひとまたし はなをのみ こころのとかに みてをくらさむ | 具平親王 |
88 | むかしたれ あれなむのちの かたみとて しかのみやこに はなをうゑけむ | 後鳥羽院 |
89 | ちらぬまは をのへのさくら ゆきてみぬ ひともしのへと にほふはるかせ | 基家 |
90 | おのつから かせのやとせる しらくもの しはしとみゆる やまさくらかな | 弁内侍(後深草院) |
91 | としをへて まつもをしむも やまさくら はなにこころを つくすなりけり | 西行 |
92 | ささなみや なからのさくら なかきひに ちらまくをしき しかのうらかせ | 重時 |
93 | あたなりと いひはなすとも さくらはな たかなはたたし みねのはるかせ | 雅経 |
94 | かせかよふ おなしよそめの はなのいろに くももうつろふ みよしののやま | 為世(御子左藤原為氏男) |
95 | はつせやま うつろはむとや さくらはな いろかはりゆく みねのしらくも | 家隆 |
96 | みわたせは いろのちくさに うつろひて かすみをそむる やまさくらかな | 蓮生法師 |
97 | わかさりし とやまのさくら ひかすへて うつれはかはる みねのしらくも | 雅言 |
98 | やまたかみ うつろふはなを ふくかせに そらにきえゆく みねのしらくも | 知家 |
99 | さくらいろの くものはたての やまかせに はなのにしきの ぬきやみたれむ | 成実(藤原親実男) |
100 | かすみたつ はるのころもの ぬきをうすみ はなそみたるる よものやまかせ | 雅経 |
101 | すゑのまつ やまもかすみの たえまより はなのなみこす はるはきにけり | 慈円 |
102 | ひとしれす われやまちつる やまさくら みるをりにしも ちりはしむらむ | 基俊 |
103 | ふくかせも のとけきみよの はるにこそ こころとはなの ちるはみえけれ | 式子内親王 |
104 | くもよりも よそになりゆく かつらきの たかまのさくら あらしふくらし | 信実 |
105 | たちまかふ おなしたかまの やまさくら くものいつこに はなのちるらむ | 為家 |
106 | ゆふされは おほつかなしや やまさくら ちりかふはなの ゆくへみえねは | 匡房 |
107 | ちりかかる はなゆゑけふは くれぬれは あさたつみちも かひなかりけり | 通俊 |
108 | たれゆゑに あくかれそめし やまちとて われをはよそに はなのちるらむ | 澄覚法親王 |
109 | いまはとて ちるこそはなの さかりなれ こすゑもにはも おなしにほひに | 亀山院 |
110 | やまさくら ちるをもなにか をしみけむ おなしこすゑに かへすはるかせ | 通成 |
111 | ねにかへる はなともみえす やまさくら あらしのさそふ にはのしらゆき | 教定(飛鳥井雅経男) |
112 | たつねこむ はるよりのちの あともかな しかのみやこの はなのしらゆき | 実兼 |
113 | けふとても さくらはゆきと ふるさとの あとなきにはを はなとやはみる | 俊成女 |
114 | とふひとの またれしものを にはのおもに あとをしむまて ちるさくらかな | 経平(衣笠家良男) |
115 | うちよする なみにちりかふ はなみれは こほらぬいけに ゆきそつもれる | 俊明 |
116 | よしのかは ゆきけのみつの はるのいろに さそふともなき はなのしたかせ | 順徳院 |
117 | よしのかは たきのうへなる やまさくら いはこすなみの はなとちるらし | 蓮生法師 |
118 | つくはねの みねのさくらや みなのかは なかれてふちと ちりつもるらむ | 雅有 |
119 | はつせかは はなのみなわの きえかてに はるあらはるる せせのしらなみ | 実氏 |
120 | やまかはに はるゆくみつは よとめとも かせにとまらぬ はなのしからみ | 通光 |
121 | ちるはなに せせのいはまや せかるらむ さくらにいつる はるのやまかは | 後鳥羽院 |
122 | あしひきの みやまかくれに ちるはなを さそひていつる たにかはのみつ | 蓮生法師 |
123 | ふくかせは やとりもしらす たにかはの はなのゆくへを ゆきてうらみむ | 道助法親王 |
124 | うつろふも めにみぬかせの つらさにて ちりぬるはなを たれにかこたむ | 少将(藻壁門院) |
125 | さきまかふ はなのあたなは ふりはてて くもにとまらぬ はるのやまかせ | 弁内侍(後深草院) |
126 | たちかくす かすみそつらき やまさくら かせたにのこす はるのかたみを | 肥後(京極前関白家) |
127 | みるままに かつちるはなを たつぬれは のこれるはるそ すくなかりける | 公任 |
128 | ゆきとのみ ふるのやまへは うつもれて あをはそはなの しるしなりける | 順徳院 |
129 | はるのよの かすみのまより やまのはを ほのかにみせて いつるつきかけ | 為氏 |
130 | ところから ひかりかはらは はるのつき あかしのうらは かすますもかな | 後嵯峨院 |
131 | はれままつ こころはかりを なくさめて かすめるつきに よそふけにける | 実経 |
132 | をしむへき くものいつくの かけもみす かすみてあくる はるのよのつき | 実氏 |
133 | はるくれは うきたのもりに ひくしめや なはしろみつの たよりなるらむ | 家隆 |
134 | をちこちの なはしろみつに せきかけて はるゆくかはは すゑそわかるる | 光俊(葉室光親男) |
135 | よしのかは をられぬみつに そてぬれて なみにうつろふ きしのやまふき | 知家 |
136 | をりてみむ ことたにをしき やまふきの はなのうへこす ゐてのかはなみ | 惟明親王 |
137 | ちりぬへき ゐてのやまふき けふこすは はなのさかりや ひとにとはまし | 読人不知 |
138 | たまもかる ゐてのかはかせ ふきにけり みなわにうかふ やまふきのはな | 実朝 |
139 | ちれはかつ なみのかけたる しからみや ゐてこすかせの やまふきのはな | 為家 |
140 | いつはりの はなとそみゆる まつやまの こすゑをこえて かかるふちなみ | 為家 |
141 | ふかみとり いろもかはらぬ まつかえは ふちこそはるの しるしなりけれ | 後嵯峨院 |
142 | いかにして ときはのまつの おなしえに かかれるふちの はなにさくらむ | 小宰相(土御門院) |
143 | しひてなほ そてぬらせとや ふちのはな はるはいくかの あめにさくらむ | 定家 |
144 | さとわかす おなしゆふへに ゆくはるを われそわかれと たれをしむらむ | 基家 |
145 | つれもなく くれぬるそらを わかれにて ゆくかたしらす かへるはるかな | 定家 |
146 | あらたまの としをかさねて かへつれと なほひとへなる なつころもかな | 後嵯峨院 |
147 | けふとてや おほみやひとの しろたへに かさねてきたる せみのはころも | 実雄 |
148 | やまかくれ ひとはとひこす さくらはな はるさへすきぬ たれにみせまし | 赤染衛門 |
149 | ほとときす しのふころとは しりなから いかにまたるる はつねなるらむ | 家良 |
150 | われはまた ゆめにもきかす ほとときす まちえぬほとは ぬるよなけれは | 実定 |
151 | ほとときす ねぬよのかすは おもひしれ たかさとわかす ねをはなくとも | 政村 |
152 | ほとときす まつとはかりの みしかよに ねなましつきの かけそあけゆく | 為家 |
153 | ありあけの つきにそたのむ ほとときす いひしはかりの ちきりならねと | 兼氏 |
154 | まちわひて こよひもあけぬ ほとときす たかつれなさに ねをならひけむ | 宗尊親王 |
155 | たつねきて けふもやまちに くれにけり こころつくしの ほとときすかな | 通基 |
156 | いにしへの たかならはしに ほとときす またてはきかぬ はつねなるらむ | 基氏(藤原基家男) |
157 | やとことに たれかはまたぬ ほとときす いつこをわきて はつねなくらむ | 兼実 |
158 | またてきく ひともやあらむ ほとときす なかぬにつけて みこそしらるれ | 経信 |
159 | またねとも ものおもふひとは おのつから やまほとときす まつそききつる | 和泉式部 |
160 | しろたへの ころもほすより ほとときす なくやうつきの たまかはのさと | 家隆 |
161 | しるしらす たれきけとてか ほとときす あやなくけふは はつねなくらむ | 光俊(葉室光親男) |
162 | ひとこゑの おほつかなきに ほとときす われもききつと いふひともかな | 信実 |
163 | ひとこゑの あかぬなこりを ほとときす きかぬになして なほやまたまし | 隆博 |
164 | はるかなる たたひとこゑに ほとときす ひとのこころを そらになしつつ | 道済 |
165 | ほとときす たたひとこゑと ちきりけり くるれはあくる なつのよのつき | 良平 |
166 | ほとときす くものいつくに やすらひて あけかたちかき つきになくらむ | 後鳥羽院 |
167 | おもひしれ ありあけかたの ほとときす さこそはたれも あかぬなこりを | 良経(九条兼実男) |
168 | おとつれむ ことをそまちし ほとときす かたらふまては おもはさりしを | 俊恵 |
169 | やまかつと なりてもなほそ ほとときす なくねにあかて としはへにける | 寂超 |
170 | ほとときす おとろかすなり さらぬたに おいのねさめは よふかきものを | 頼政 |
171 | さつきまつ なにはのうらの ほとときす あまのたくなは くりかへしなけ | 能因 |
172 | あやめくさ ひとよはかりの まくらたに むすひもはてぬ ゆめのみしかさ | 雅具 |
173 | あやめくさ いつのさつきに ひきそめて なかきためしの ねをもかくらむ | 亀山院 |
174 | ほにいてむ あきをけふより かそへつつ いほしろをたに さなへとるなり | 隆房 |
175 | あらたまの としあるみよの あきかけて とるやさなへに けふもくれつつ | 定家 |
176 | たちはなの かけふむみちは むかしにて そてのかのこる よよのふるさと | 師継 |
177 | たちはなの にほふさつきの ほとときす いかにしのふる むかしなるらむ | 通忠 |
178 | くれかかる しのやののきの あめのうちに ぬれてこととふ ほとときすかな | 如願 |
179 | ほとときす ふりいててなけ おもひいつる ときはのもりの さみたれのそら | 実経 |
180 | みわたせは かすみしほとの やまもなし ふしみのくれの さみたれのころ | 実伊 |
181 | はれやらぬ ひかすをそへて やまのはに くももかさなる さみたれのそら | 実兼 |
182 | ぬれてほす ひまこそなけれ なつかりの あしやのさとの さみたれのころ | 家良 |
183 | みつしほの なかれひるまも なかりけり うらのみなとの さみたれのころ | 為家 |
184 | なのみして いはなみたかく きこゆなり おとなしかはの さみたれのころ | 忠資 |
185 | さみたれは ふるかはのへに みつこえて なみまにたてる ふたもとのすき | 雅有 |
186 | さみたれは くもまもなきを かはやしろ いかにころもを しのにほすらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
187 | ゆふやみに あさせしらなみ たとりつつ みをさかのほる うかひふねかな | 後嵯峨院 |
188 | またさらに はつねとそまつ ほとときす おなしさつきも つきしかはれは | 公実 |
189 | あつまやの まやののきはの みしかよに あまりほとなき なつのつきかけ | 亀山院 |
190 | すすしさに あかすもあるかな いしまゆく みつにかけみる なつのよのつき | 高定 |
191 | なかむれは すすしかりけり なつのよの つきのかつらに かせやふくらむ | 顕季 |
192 | なつふかき みつののまこも かりねして ころもてうすき よはのつきかけ | 有長 |
193 | てにならす あふきのかせも わすられて ねやもるつきの かけそすすしき | 但馬(藻壁門院) |
194 | ふけぬとも おもはぬほとの うたたねに やかてあけゆく なつのよのそら | 覚寛 |
195 | なつくさに ましるさゆりは おのつから あきにしられぬ つゆやおくらむ | 道助法親王 |
196 | いそのかみ ふるのなかみち いまさらに ふみわけかたく しけるなつくさ | 資季 |
197 | おのつから のなかのしみつ しるひとも わするはかりに しけるなつくさ | 信実 |
198 | なつくさの ふかきおもひも あるものを おのれはかりと とふほたるかな | 土御門院 |
199 | よるはもえ ひるはきえゆく ほたるかな ゑしのたくひに いつならひけむ | 宗尊親王 |
200 | うつもれぬ これやなにはの たまかしは もにあらはれて とふほたるかな | 如願 |
201 | あしのやの あまのなはたく いさりひの それかとはかり ゆくほたるかな | 知家 |
202 | をささはら しのにみたれて とふほたる いまいくよとか あきをまつらむ | 土御門院 |
203 | あはちしま ゆふたちすらし すみよしの うらのむかひに かかるむらくも | 基家 |
204 | たにかはの なかれをみても しられけり くもこすみねの ゆふたちのそら | 寂蓮 |
205 | かきくもる ほとこそなけれ あまくもの よそになりゆく ゆふたちのそら | 実経 |
206 | ゆふたちの はれゆくみねの このまより いりひすすしき つゆのたまささ | 後鳥羽院 |
207 | ゆふたちの なこりのつゆそ おきまさる むすふはかりの にはのなつくさ | 御匣(式乾門院) |
208 | つゆふかき にはのあさちに かせすきて なこりすすしき ゆふたちのそら | 為教 |
209 | つゆまかふ ひかけになひく あさちふの おのつからふく なつのゆふかせ | 雅経 |
210 | をりはへて ねになきくらす せみのはの ゆふひもうすき ころもてのもり | 為氏 |
211 | ゆふされは のなかのまつの したかけに あきかせさそふ ひくらしのこゑ | 慈円 |
212 | なつふかき いたゐのみつの いはまくら あきかせならぬ あかつきそなき | 順徳院 |
213 | なつはつる みそきもちかき かはかせに いはなみたかく かくるしらゆふ | 定家 |
214 | みそきする ぬさもとりあへす みなつきの そらにしられぬ あきかせそふく | 公経(藤原実宗男) |
215 | けさかはる あきとはかせの おとはやま おとにきくより みにそしみける | 亀山院 |
216 | けさはまた くさはのたまの かすそひて つゆふきむすふ あきのはつかせ | 道家 |
217 | せみのはの こすゑにうすき なつころも かはらすなから あきはきにけり | 為経(甘露寺藤原資経男) |
218 | かせのおとも いつかはるらむ あきはきて またあさちふの をののしのはら | 行能 |
219 | いつしかと をきのうははも おとつれて そてにしらるる あきのはつかせ | 後鳥羽院 |
220 | あしのはの おとにもしるし つのくにの こやふきそむる あきのはつかせ | 少将内侍(後深草院) |
221 | さらてたに なつをわするる まつかけの いはゐのみつに あきはきにけり | 後嵯峨院 |
222 | をかのへや いつともわかぬ まつかせの みにしむほとに あきはきにけり | 通忠 |
223 | いそのかみ ふるののまつの おとまても むかしをのこす あきのはつかせ | 基家 |
224 | いつしかと かせわたるなり あまのかは うきつのなみに あきやたつらむ | 隆弁 |
225 | たなはたの くものころもの あきかせに あふたのみとや こよひまつらむ | 経平(衣笠家良男) |
226 | ちきりけむ こころのほとも ひこほしの ゆきあひのそらに たれかしるへき | 上総(堀河院中宮) |
227 | あさからぬ ちきりとそおもふ あまのかは あふせはとしの ひとよなれとも | 実家(藤原実経男) |
228 | としにまつ ならひそつらき あまのかは あふせはちかき わたりなれとも | 隆康 |
229 | ひこほしの かさしのたまや あまのかは みつかけくさの つゆにまかはむ | 後鳥羽院 |
230 | かさねても あかぬおもひや まさるらむ けさたちかへる あまのはころも | 堀河(待賢門院) |
231 | たちかへる けさのなみたに たなはたの かさしのたまの かすやそふらむ | 顕昭 |
232 | いまよりの つゆをはつゆと をきのはに なみたかつちる あきかせそふく | 国助 |
233 | をきのはに かせまつほとの ゆふくれを おとつれかへて ひとのとへかし | 実氏 |
234 | あきのよは ひとまつとしも なけれとも をきのはかせに おとろかれつつ | 顕季 |
235 | かりひとの いるののつゆの しらまゆみ すゑもとををに あきかせそふく | 順徳院 |
236 | をとめこか たまものすそや しをるらむ のしまかさきの あきのゆふつゆ | 順徳院 |
237 | むしのねも わかみひとつの あきかせに つゆわけわふる をののしのはら | 俊成女 |
238 | ゆふくれは わかみひとつの あきにしも あらぬものゆゑ ぬるるそてかな | 基忠(鷹司兼平男) |
239 | こころから なかめてものを おもふかな わかためにうき あきのそらかは | 澄覚法親王 |
240 | ふちはかま あらしたちぬる いろよりも くたけてものは われそかなしき | 俊成(藤原俊忠男) |
241 | からころも すそのににほふ ふちはかま きてみぬさきに ほころひにけり | 長覚 |
242 | いつかたに こころをよせて をみなへし あきかせふけは まつなひくらむ | 読人不知 |
243 | そてかへる をちかたひとは わけすきて のこるをはなに あきかせそふく | 隆祐 |
244 | ゆふきりの まかきのあきの はなすすき をちかたならぬ そてかとそみる | 順徳院 |
245 | あきやまの すそののすすき うちなひき くれゆくかせに うつらなくなり | 家隆 |
246 | はきかはな たれにかみせむ うつらなく いはれののへの あきのゆふくれ | 師継 |
247 | さらぬたに こころおかるる はきかえに つゆもあたなる あきのゆふかせ | 公守 |
248 | はきかはな うつろふにはの あきかせに したはもまたて つゆはちりつつ | 土御門院 |
249 | こころありて つゆやおくらむ のへよりも にほひそまさる あきはきのはな | 範永 |
250 | みやきのの このしたつゆも いろみえて うつりそまさる あきはきのはな | 亀山院 |
251 | みやきのの もとあらのこはき いまよりや うつろふいろに しかのなくらむ | 忠兼(藤原忠行男) |
252 | いろかはる こはきかもとは つゆちりて あきののかせに をしかなくなり | 実兼 |
253 | かたをかの すそののくれに しかなきて こはきいろつく あきかせそふく | 経国 |
254 | あきはきの さきてちりぬる ゆふつゆに なほたちぬれて しかそなくなる | 蓮生法師 |
255 | つまこふる しかのなみたや あきはきに こほるるほとに おけるしらつゆ | 基俊 |
256 | いかにふく あきのゆふへの かせなれは しかのねなから みにはしむらむ | 少将内侍(後深草院) |
257 | よをさむみ かりはのをのに なくしかの なれはまさらぬ つまをこふらし | 光成(大炊御門光俊男) |
258 | つゆにふす のへのちくさの あけほのに おきぬれてゆく さをしかのこゑ | 後鳥羽院 |
259 | あきかせに とやまのしかは こゑたてて つゆふきむすふ をののあさちふ | 俊成女 |
260 | あきされは やまのをのへに こゑたてて しかもゆふへは ものやかなしき | 定雅(藤原忠経男) |
261 | たかさこの まつのあらしは よさむにて つきにふけぬる さをしかのこゑ | 成良 |
262 | あしひきの やまかせさむき つきかけに さよふけぬとや しかのなくらむ | 通成 |
263 | いろかはる みをあきやまと なくしかの なみたもふかき みねのあさきり | 後鳥羽院 |
264 | きりふかき やまのをのへに たつしかは こゑはかりにや ともをしるらむ | 公実 |
265 | あききりの そらになくなる はつかりは かすみしはるや おもひいつらむ | 為頼 |
266 | いまよりの ころもかりかね あきかせに たかよさむとか なきてきぬらむ | 為氏 |
267 | いまよりは くもゐのかりも こゑたてて あきかせさむく なりまさるなり | 覚仁法親王 |
268 | とほさかる こゑはかりして ゆふくれの くものいつくに かりのなくらむ | 亀山院 |
269 | ゆふされは きりたつそらに かりなきて あきかせさむし をののしのはら | 少将(藻壁門院) |
270 | かりなきて ゆふきりたちぬ やまもとの わさたをさむみ あきやきぬらむ | 信実 |
271 | むらさめの くものたえまに かりなきて ゆふひうつろふ あきのやまのは | 実伊 |
272 | みわたせは やまのすそのに きりはれて ゆふひにむかふ まつのむらたち | 良実 |
273 | とへかしな ゆふきりうすき すきのはの たえたえのこる あきのやまもと | 頼宗 |
274 | しののめの よこくもなから たちこめて あけもはなれぬ みねのあききり | 為世(御子左藤原為氏男) |
275 | ふしみやま ふもとのきりの たえまより はるかにみゆる うちのかはなみ | 実氏 |
276 | あさほらけ あらしのやまは みねはれて ふもとをくたる あきのかはきり | 為家 |
277 | ふねよする をちかたひとの そてみえて ゆふきりうすき あきのかはなみ | 宗尊親王 |
278 | ほのほのと わかすむかたは きりこめて あしやのさとに あきかせそふく | 定家 |
279 | まつほとの そらにこころを つくせとや なほいてやらぬ あきのよのつき | 御匣(式乾門院) |
280 | かたしきの そてのあきかせ さよふけて なほいてかての やまのはのつき | 知家 |
281 | やまのはを いててさやけき つきになほ ひかりをそへて あきかせそふく | 少将内侍(後深草院) |
282 | あまのはら くもふきはらふ あきかせに やまのはたかく いつるつきかけ | 後鳥羽院 |
283 | いつるより くもふきはらふ まつかせに やかてくまなき やまのはのつき | 教良 |
284 | あしひきの やまのはきよく そらすみて くもをはよそに いつるつきかけ | 実兼 |
285 | むらくもの かかるとみゆる やまのはを はるかにいてて すめるつきかけ | 時村 |
286 | なかむれは みやこのそらの うきくもを へたてていつる やまのはのつき | 資実 |
287 | わきてこの こころつくしは あきそとも このまのつきの かけよりそしる | 後嵯峨院 |
288 | としをへて ひかりさしそへ かすかなる やまはみかさの あきのよのつき | 公相 |
289 | よそまては なにかいとはむ かつらきや つきにかからぬ みねのしらくも | 宗尊親王 |
290 | いまこそは いたゐのみつの そこまても のこるくまなく つきはすみけれ | 蓮生法師 |
291 | むかしより なにおふあきの なかはとて つきはこよひそ すみまさりける | 忠教(九条忠家男) |
292 | としをへて くものうへにて みしあきの かけもこひしき もちつきのこま | 後嵯峨院 |
293 | ゆふくれの つきよりさきに せきこえて このしたくらき きりはらのこま | 知家 |
294 | あふさかや とりのそらねの せきのとも あけぬとみえて すめるつきかな | 為家 |
295 | あふさかの せきのしみつの なかりせは いかてかつきの かけをとめまし | 顕輔 |
296 | つきかけも よさむになりぬ はしひめの ころもやうすき うちのかはかせ | 信実 |
297 | はしひめの かたしくそても よやさむき つきにさえたる うちのかはなみ | 為経(甘露寺藤原資経男) |
298 | あらしやま そらなるつきは かけさえて かはせのきりそ うきてなかるる | 亀山院 |
299 | かけやとす つきのかつらも ひとつにて そらよりすめる あきのかはみつ | 為氏 |
300 | ちりつもる もみちならねと たつたかは つきにもみつの あきはみえけり | 能清 |
301 | たつたかは いはこすなみの こほるかと またきなきなの つきにみゆらむ | 親子(典侍親子朝臣) |
302 | てるつきの ひかりとともに なかれきて おとさへすめる やまかはのみつ | 慈円 |
303 | いしはしる たきついはねの あきのつき やとるとすれと かけもとまらす | 通光 |
304 | せきとむる いはまのみつに すむつきや むすへはとくる こほりなるらむ | 公継 |
305 | みふねこく ほりえのあしに おくつゆの たましくはかり つきそさやけき | 政村 |
306 | よふねこく ゆらのみなとの しほかせに おなしとわたる あきのつきかけ | 忠景 |
307 | おもひやる うらのはつしま おなしくは ゆきてやみまし あきのよのつき | 清時 |
308 | ささしまや よわたるつきの かけさえて いそこすなみに あきかせそふく | 実冬(藤原公光男) |
309 | すまのうらや せきのとかけて たつなみを つきにふきこす あきのしほかせ | 為氏 |
310 | きよみかた つきのそらには せきもゐす いたつらにたつ あきのうらなみ | 民部卿典侍(後堀河院) |
311 | きよみかた つきすむよはの むらくもは ふしのたかねの けふりなりけり | 登蓮 |
312 | よさむなる いくたのもりの あきかせに とはれぬさとも つきやみるらむ | 家良 |
313 | いなはふく あしのまろやの あきかせに ねぬよをさむみ すめるつきかけ | 蓮生法師 |
314 | ひとりすむ かとたのいほの つきかけに わかいねかてを とふひともなし | 師継 |
315 | かせのおとも ふきまさるなり さらてたに わかいねかての あきのよのつき | 阿仏 |
316 | つきみても あきやむかしと しのはれて もとのみなから みこそつらけれ | 家経(一条実経男) |
317 | あきをへて とほさかりゆく いにしへを おなしかけなる つきにこひつつ | 為家 |
318 | いにしへの かせもかはらぬ わかやとは すみなれてこそ つきもみるらめ | 後嵯峨院 |
319 | なかむれは むそちのあきも おほえけり むかしをさへや つきはみすらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
320 | なかむれは わかこころさへ はてもなく ゆくへもしらぬ つきのかけかな | 式子内親王 |
321 | かささきの とわたるはしも しろたへの はつしもいそく あきのつきかけ | 家良 |
322 | さらぬたに ふくるはをしき あきのよの つきよりにしに のこるしらくも | 良経(九条兼実男) |
323 | つきにゆく とほやますりの かりころも しをるるつゆに よはふけにけり | 通光 |
324 | なかしとも なにおもひけむ やまとりの をのへにかかる あきのよのつき | 信家(藤原長佐男) |
325 | くれたけの はやまのきりの あけかたに なほよをこめて のこるつきかけ | 定円(葉室光俊男) |
326 | かねのおとも あけはなれゆく やまのはの きりにのこれる ありあけのつき | 如願 |
327 | やまとほき かとたのすゑは きりはれて ほなみにしつむ ありあけのつき | 良経(九条兼実男) |
328 | あきのたの ほむけかたより ふくかせに やまもとみえて はるるゆふきり | 光俊(葉室光親男) |
329 | ゆふひさす かとたのあきの いなむしろ わさほかりしき いまやほすらむ | 基家 |
330 | つゆしもの おくてのいなは いろつきて かりいほさむき あきのやまかせ | 為氏 |
331 | をやまたの いほもるしつか ころもては つゆもよすから おきあかしけり | 家長/長家 |
332 | さらしなの やまのあらしも こゑすみて きそのあさきぬ つきにうつなり | 順徳院 |
333 | かへるへき こしのたひひと まちわひて みやこのつきに ころもうつなり | 良経(九条兼実男) |
334 | おきあかす つゆさへさむき つきかけに なれていくよか ころもうつらむ | 性助法親王 |
335 | あきかせの みにしみそむる さとひとや まつおとつれて ころもうつらむ | 経家(藤原基家男) |
336 | なへてふく しつかささやの あきかせを おのかよさむと うつころもかな | 教実 |
337 | なみよする みつのはまへの うらかせに こよひもさむく ころもうつなり | 成賢(祝部成茂男) |
338 | うらかせや なほさむからし なにはひと あしひたくやに ころもうつなり | 実伊 |
339 | ころもうつ おとそよふかく きこゆなる とほさとをのの かせのたよりに | 国平 |
340 | あきはきの うつろふのへの かりいほに たれいねかての ころもうつらむ | 高定 |
341 | いかにせむ ぬれぬやとかす ひともなき かたののみのの あきのむらさめ | 基家 |
342 | うらかるる あしのすゑはに かせすきて いりえをわたる あきのむらさめ | 実氏 |
343 | さをしかの ふすやくさむら うらかれて したもあらはに あきかせそふく | 定家 |
344 | みしまのの あさちかうはは あきかせに いろつきぬやと うつらなくらむ | 基家 |
345 | あかすみし はなのさかりは はやすきて したはかれゆく にはのあきはき | 蓮生法師 |
346 | あきかせに ほすゑなみよる かるかやの したはにむしの こゑよわるなり | 西行 |
347 | むしのねも かれかれになる なかつきの あさちかすゑの つゆのさむけさ | 為経(甘露寺藤原資経男) |
348 | くさのはら はつしもまよふ つきかけを よさむになして むしやなくらむ | 家基(近衛基平男) |
349 | くみてこそ ちとせもかねて しられけれ ぬれてほすてふ きくのしたみつ | 後嵯峨院 |
350 | つゆしもの おきあへぬまに そめてけり はやまかすその あきのもみちは | 道家 |
351 | おくつゆや そめはしむらむ あきやまの しくれもまたぬ みねのもみちは | 兼経 |
352 | あらしやま けふのためとや もみちはの しくれもまたて いろにいつらむ | 資平 |
353 | ふきしをる うへやまかせの あらしやま またきこのはの いろそしくるる | 実雄 |
354 | しくれゆく くものよそなる もみちはも ゆふひにそむる かつらきのやま | 宮内卿(後嵯峨院) |
355 | もみちはに よそのひかけは のこれとも しくれにくるる あきのやまもと | 公雄 |
356 | ゆふつくひ うつろふそらの くもまより ひかりさしそふ みねのもみちは | 実氏 |
357 | たつたひめ いまやこすゑの からにしき おりはへあきの いろそしくるる | 家良 |
358 | たつたやま このはいろつく ほとはかり しくれにそはぬ あきかせもかな | 少将(藻壁門院) |
359 | しくれふる いくたのもりの もみちはは とはれむとてや いろまさるらむ | 景綱 |
360 | みむろやま あきのこのはの いくかへり したくさかけて なほしくるらむ | 為教 |
361 | もみちはを いまひとしほと ことつてむ しくるるくもの すゑのやまかせ | 亀山院 |
362 | もるやまも このしたまてそ しくるなる わかそてのこせ のきのもみちは | 定家 |
363 | えたかはす よそのもみちに うつもれて あきはまれなる やまのときはき | 後嵯峨院 |
364 | あきことに たれかそむらむ ぬししらぬ からくれなゐの ころもてのもり | 顕輔 |
365 | やまひめの こひのなみたや そめつらむ くれなゐふかき ころもてのもり | 実定 |
366 | たつたかは ちらぬもみちの かけみえて くれなゐこゆる せせのしらなみ | 良経(九条兼実男) |
367 | こけのうへに あらしふきしく からにしき たたまくをしき もりのかけかな | 良経(九条兼実男) |
368 | たむけやま ぬさはむかしに なりぬとも なほちりのこれ みねのもみちは | 師光(中原師重男) |
369 | もみちはの またちりはてぬ このもとを たのむかけとや しかのなくらむ | 道玄 |
370 | たつたやま このはふきしく あきかせに おちていろつく まつのしたつゆ | 順徳院 |
371 | もみちちる かはせのきりの おのれのみ うきてなかれぬ あきのいろかな | 実氏 |
372 | みつよりや くれゆくあきは かへるらむ もみちなかれぬ やまかはそなき | 公教 |
373 | となせかは もみちをかくる しからみも よとまぬみつに あきそくれゆく | 性助法親王 |
374 | さをしかの こゑよりほかも をくらやま ゆふひのかけに あきそくれぬる | 為氏 |
375 | あきはつる いろのかきりと かつみても あかすしくれの ふるなみたかな | 実経 |
376 | ととめおく つゆのかたみは そてぬれて ゆくかたしらぬ あきのわかれち | 家良 |
377 | よもすから をしむたもとの つゆのみや あけなはあきの なこりなるへき | 公衡(藤原公能男) |
378 | おもへとも こよひはかりの あきのそら ふけゆくくもも うちしくれつつ | 式子内親王 |
379 | ふゆのきて もみちふきおろす みむろやま あらしのすゑに あきそのこれる | 後鳥羽院 |
380 | ふゆのくる かみなひやまの むらしくれ ふらはともにと ちるこのはかな | 弁内侍(後深草院) |
381 | ふゆきぬと けさはいはたの ははそはら おとにたてても ふるしくれかな | 知家 |
382 | しくれとも なにしかわかむ かみなつき いつもしのたの もりのしつくは | 通親 |
383 | おとつれて なほすきぬるか いつくにも こころをとめぬ はつしくれかな | 小侍従(太皇太后宮) |
384 | ふきまよふ かせにまかせて やまのはに しくるるくもは あともさためす | 実兼 |
385 | あくるよの とやまふきこす こからしに しくれてつたふ みねのうきくも | 雅有 |
386 | けふもまた くれぬとおもへは あしひきの やまかきくもり ふるしくれかな | 秀能(藤原秀宗男) |
387 | はれくもり おなしそらなる うきくもの かさなるかたは なほしくれつつ | 実経 |
388 | やまかせに しくれやとほく なりぬらむ くもにたまらぬ ありあけのつき | 順徳院 |
389 | そめのこす このはもあらは かみなつき なほもしくれの いろはみてまし | 在匡 |
390 | かみなつき しくるるままに はれゆくや こすゑにたへぬ このはなるらむ | 寂蓮 |
391 | とまるへき ものともみえぬ このはかな しくれにそへて あらしふくなり | 政村 |
392 | あらしふく このはにおとを さきたてて しくれもやらぬ むらくものそら | 家教 |
393 | かみなつき くもらてふるや まきのやの しくれにたくふ このはなるらむ | 亀山院 |
394 | むらくもの うきてそらゆく やまかせに このはのこらす ふるしくれかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
395 | むらくもの あとなきかたも しくるるは かせをたよりの このはなりけり | 宗尊親王 |
396 | こからしの かせにみたるる もみちはや くもによそなる しくれなるらむ | 御匣(式乾門院) |
397 | たつたやま あきはかきりの いろとみし このははふゆの しくれなりけり | 忠兼(藤原忠行男) |
398 | もみちはの あきのなこりの かたみたに われとのこさぬ こからしのかせ | 為氏 |
399 | おほゐかは ゐせきにあきの いろとめて くれなゐくくる せせのいはなみ | 亀山院 |
400 | もみちはの ふりにしよより おほゐかは たえぬみゆきの あとをみるかな | 具親 |
401 | はしひめの たもとやいろに いてぬらむ このはなかるる うちのあしろき | 土御門院 |
402 | ふるさとの はらはぬにはに あととちて このはやしもの したにくちなむ | 良経(九条兼実男) |
403 | みしあきの つゆをはしもに おきかへて はなのあとなき にはのふゆくさ | 政長 |
404 | いろみえぬ かれののくさの あとまても つゆのなこりと むすふはつしも | 為子(従二位) |
405 | いまよりは くさはにおきし しらつゆも こほれるしもと むすひかへつつ | 資季 |
406 | かみなつき くれやすきひの いろなれは しものしたはに かせもたまらす | 定家 |
407 | みむろやま あきのしくれに そめかへて しもかれのこる ききのしたくさ | 順徳院 |
408 | さらぬたに かれゆくやとの ふゆくさに あかすもむすふ よはのしもかな | 実経 |
409 | ひとめより やかてかれにし わかやとの あさちかしもそ むすほほれゆく | 土御門院 |
410 | しもふかき にはのあさちの しをれはに あさかせさむし をかのへのさと | 読人不知 |
411 | しもかれの あさちいろつく ふゆのには をはなそあきの かたみなりける | 小侍従(太皇太后宮) |
412 | あきのいろの はてはかれのと なりぬれと つきはしもこそ ひかりなりけれ | 良経(九条兼実男) |
413 | もみちせし よものやまへは あれはてて つきよりほかの あきそのこらぬ | 実氏 |
414 | さゆるよも よとまぬみつの はやせかは こほるはつきの ひかりなりけり | 長雅 |
415 | ささのはの さやくしもよの やまかせに そらさへこほる ありあけのつき | 基綱(藤原基清男) |
416 | やまあゐの をみのころもて つきさえて くもゐのにはに いつるもろひと | 公相 |
417 | をとめこか そてしろたへに しもそおく とよのあかりも よやふけぬらむ | 後嵯峨院 |
418 | まつさむき みつのはまへの さよちとり ひかたのしもに あとやつけつる | 土御門院 |
419 | ゆふされは くたけてものや おもふらむ いはこすなみに ちとりなくなり | 内侍(京極院) |
420 | てるつきの かけにまかせて さよちとり かたふくかたに うらつたふなり | 良経(九条兼実男) |
421 | よをさむみ すさのいりえに たつちとり そらさへこほる つきになくなり | 公猷 |
422 | しほかせに よさのうらまつ おとさえて ちとりとわたる あけぬこのよは | 俊恵 |
423 | さゆるよの うきねのかもの こもまくら こほりやかねて むすひおくらむ | 寂蓮 |
424 | かたしきの しもよのそてに おもふかな つららのとこの をしのひとりね | 丹後(宜秋門院) |
425 | やまかはの もみちのうへの うすこほり このまもりくる つきかとそみる | 公経(藤原実宗男) |
426 | さえゆけは たにのしたみつ おとたえて ひとりこほらぬ みねのまつかせ | 忠良 |
427 | ささなみや しかのからさき こほるよは まつよりほかの うらかせもなし | 宣時(北条) |
428 | いはまもる なみのしからみ かけとめて なかれもやらす こほるやまかは | 頼重 |
429 | せきあまる なみのおとさへ よとむなり けさはこほりの ゐてのしからみ | 知家 |
430 | かせわたる うちのかはなみ さゆるよに こほりをかくる せせのあしろき | 公相 |
431 | さえくれて あられふるよの ささまくら ゆめをのこさぬ かせのおとかな | 具房 |
432 | あられふる みわのひはらの やまかせに かさしのたまの かつみたれつつ | 実伊 |
433 | あられふる まさきのかつら くるるひの とやまにうつる かけそみしかき | 雅経 |
434 | あけわたる みねのうきくも たえたえに やまかせさむみ あられふるらし | 為継 |
435 | さゆるよの あらしのかせに ふりそめて あくるくもまに つもるしらゆき | 為氏 |
436 | しかのうらや しはししくれの くもなから ゆきになりゆく やまおろしのかせ | 慈円 |
437 | このころは しくれもゆきも ふるさとに ころもかけほす さほのかはかせ | 雅経 |
438 | やまかはの こほりもうすき みつのおもに むらむらつもる けさのはつゆき | 順徳院 |
439 | けさはまた かさねてふゆを みつるかな かれののうへに ふれるしらゆき | 慈円 |
440 | あきのいろを はらふとみえし こからしの もりのこすゑは ゆきもたまらす | 知家 |
441 | けさはなほ ゆきにそひとは またれける とはぬならひを おもひしれとも | 道良 |
442 | けふたにも みちふみわけぬ しらゆきの あすさへふらは ひともまたれし | 実氏 |
443 | おのつから とふにつらさの あとをたに みてうらみはや にはのしらゆき | 光俊(葉室光親男) |
444 | あとをしむ たかならはしの やまちとて つもれるゆきを とふひとのなき | 少将(藻壁門院) |
445 | あとはみな もとよりたえし やまさとの このはのうへを うつむしらゆき | 教雅 |
446 | みわのやま よのまのゆきに うつもれて したはそすきの しるしなりける | 公衡(藤原公能男) |
447 | やたののの あさちかはらも うつもれぬ いくへあらちの みねのしらゆき | 為家 |
448 | つもれとも こほらぬほとは ふきたてて かせにあまきる みねのしらゆき | 道洪 |
449 | やまかせの おとさへうとく なりにけり まつをへたつる みねのしらゆき | 寂蓮 |
450 | まつとせし かせのつてたに たえはてて いなはのやまに つもるしらゆき | 隆博 |
451 | かみやまの まつもともとそ おもふらむ ふりすはけふの みゆきみましや | 氏久 |
452 | たかまとの をのへのゆきに あとたえて ふりにしみやは ひともかよはす | 蓮生法師 |
453 | ましはかる みちやたえなむ やまかつの いやしきふれる よはのしらゆき | 頼氏(一条高能男) |
454 | たこのあまの やとまてうつむ ふしのねの ゆきもひとつに ふゆはきにけり | 信実 |
455 | いせしまや うらのひかたに ふるゆきの つもりもあへす しほやみつらむ | 政村 |
456 | かきくらし ふるしらゆきに しほかまの うらのけふりも たえやしぬらむ | 忠通 |
457 | やほかゆく はまのまさこち はるはると かきりもみえす つもるしらゆき | 後嵯峨院 |
458 | ふるゆきに いくののみちの すゑまては いかかふみみむ あまのはしたて | 右京大夫(正親町院) |
459 | あたにのみ つもりしゆきの いかにして くもゐにかかる やまとなりけむ | 周防内侍 |
460 | ここのへと いふはかりにや かさぬらむ みかきのうちの よはのしらゆき | 少将内侍(後深草院) |
461 | なかめやる ころもてさむく ふるゆきに ゆふやみしらぬ やまのはのつき | 定家 |
462 | あはてこそ むかしのひとは かへりけれ ゆきとつきとを ともにみしかな | 隆房 |
463 | やまのはは それともみえす うつもれて ゆきにかたふく ありあけのつき | 通氏 |
464 | いたつらに ことしもくれぬ とのへもる そてのこほりに つきをかさねて | 秀能(藤原秀宗男) |
465 | としつきは さてもよとまぬ あすかかは ゆくせのなみの なにこほるらむ | 通雅 |
466 | ふゆのそら ひかけみしかき ころなれは いととほとなく くるるとしかな | 覚寛 |
467 | つもりゆく つきひのほとを おもふにも こしかたをしき としのくれかな | 覚助法親王 |
468 | くれゆくを をしむこころの ふかけれは わかみにとしは とまるなりけり | 成仲 |
469 | ゆくとしを をしめはみには とまるかと おもひいれてや けふをすきまし | 俊成(藤原俊忠男) |
470 | いつくにも をしみあかさぬ ひとはあらし こよひはかりの としとおもへは | 基俊 |
471 | あふさかの せきのすきむら ゆききえて みちあるみよに はるはきにけり | 家良 |
472 | いつしかと けさはこほりも とけにけり いかてみきはに はるをしるらむ | 俊頼(源経信男) |
473 | いけにおふる みくさのうへの はるのしも あるにもあらぬ よにもふるかな | 雅成親王 |
474 | ゆきはなほ ふゆにかはらす ふるさとに はるきにけりと うくひすそなく | 顕朝 |
475 | そむきにし みにはよそなる はるなれと なほうくひすの こゑそまたるる | 右京大夫(式乾門院)/左京大夫(式乾門院 |
476 | たにかけや ねのひにもるる いはねまつ たれにひかれて はるをしらまし | 兼氏 |
477 | くもゐより なれしやまちを いまさらに かすみへたてて なけくはるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
478 | いまはまた かすみへたてて おもふかな おほうちやまの はるのあけほの | 後嵯峨院 |
479 | やまのはの みえぬをおいに かこてとも かすみにけりな はるのあけほの | 為家 |
480 | なにはえや かすみのしたの みをつくし はるのしるしや みえてくちなむ | 家隆 |
481 | しほかせの おともたかしの はままつに かすみてかかる はるのゆふなみ | 親清女 |
482 | みてもまた たれかしのはむ ふるさとの おほろつきよに にほふうめかえ | 高倉(八条院) |
483 | をりてたに みせはやひとに うめのはな ありしいろかを わすれはてすは | 隆親(藤原隆衡男) |
484 | かそふれは のこるやよひも あるものを わかみのはるに けふわかれぬる | 為家 |
485 | かりかねは あきとちきりて かへるとも おいのいのちを いかかたのまむ | 公豪 |
486 | あきかせに あひみむことは いのちとも ちきらてかへる はるのかりかね | 隆祐 |
487 | あさほらけ かすみのひまの やまのはを ほのかにかへる はるのかりかね | 経家(藤原基家男) |
488 | はなのいろに ひとはるまけよ かへるかり ことしこしちの そらたのめして | 定家 |
489 | さきにけり まやののきはの さくらはな あまりほとふる なかめせしまに | 月花門院 |
490 | たよりあらは とへかしひとの あるしとて たのむはかりの はなならねとも | 小宰相(土御門院) |
491 | いまさらに はるとてひとも たつねこす たたやとからの はなのあるしは | 師良(一条実経男) |
492 | かへるさは とほさとをのの さくらかり はなにやこよひ やとをからまし | 仲敏 |
493 | ふきおくる あらしをはなの にほひにて かすみにかをる やまさくらかな | 如円 |
494 | ちらぬまの なみもさくらに うつろひぬ はなのかけゆく やまかはのみつ | 時清 |
495 | いにしへの はるのみやまの さくらはな なれしみとせの かけそわすれぬ | 基政(藤原基綱男) |
496 | いにしへの あるしわすれぬ ふるさとに はなもいくたひ おもひいつらむ | 厳雅 |
497 | みすしらぬ よよのむかしも しのはれて あはれとそおもふ しかのはなその | 道玄 |
498 | おもひいての はるとやひとに かたらまし はなになみたの かからさりせは | 隆親(藤原隆衡男) |
499 | ふりまさる よはひをはなに かそへても あかぬこころは たえぬはるかな | 基家 |
500 | としことに のちのはるとも しらさりし はなにいくたひ なれてみつらむ | 家良 |
501 | いつまてか くもゐのさくら かさしけむ をりわすれたる おいのはるかな | 信実 |
502 | よそちまて はなにこころを そめなから はるをしらても みこそおいぬれ | 公朝 |
503 | なからへて やそちのはるに あふことは はなみよとての いのちなりけり | 京月 |
504 | はるきてそ こころよわさも しられぬる はなになれゆく すみそめのそて | 真願 |
505 | かくはかり へかたきものを つきよりも はなこそよをは おもひしりけれ | 慈円 |
506 | さきてちる はなをもめてし これそこの あらしにいそく あたしよのなか | 土御門院 |
507 | おほかたの はるにしられぬ ならひゆゑ たのむさくらも をりやすくらむ | 定家 |
508 | あたにのみ おもひしひとの いのちもて はなをいくたひ をしみきぬらむ | 蓮生法師 |
509 | いのちをも たかためとてか をしみこし おもひしらすも ちるさくらかな | 行範(中原行兼男) |
510 | さらてたに うつろひやすき はなのいろに ちるをさかりと やまかせそふく | 長時 |
511 | ありてよの のちはうくとも さくらはな さそひなはてそ はるのやまかせ | 景綱 |
512 | はなはみな なかめせしまに ちりはてて わかみよにふる なくさめもなし | 静仁法親王 |
513 | たつねきて ふみみるへくも なきものを くもゐのにはの はなのしらゆき | 光行 |
514 | さそはれぬ けふそしりぬる ふみかよふ あとまていとふ はなのゆきとは | 宗円(法眼弁宗男) |
515 | さくらはな いまやちるらむ みよしのの やましたかせに ふれるしらゆき | 読人不知 |
516 | よしのかは みねのさくらの うつりきて ふちせもしらぬ はなのしらなみ | 泰綱 |
517 | ちりかかる かけもはかなく ゆくみつに かすかきあへぬ はなのしらなみ | 憲実 |
518 | ちりかかる はなのかかみと おもふにも みてすきかたき やまのゐのみつ | 長季 |
519 | たきかはの おつとはみえて おとせぬは みねのあらしに はなやちるらむ | 実経 |
520 | あらしふく こすゑうつろふ はなのいろの あたにものこる みねのしらくも | 宗泰(藤原時宗男) |
521 | さくらいろに うつろふくもの かたみまて なほあともなき はるかせそふく | 忠成(祝部親成男) |
522 | みにうとき はるとはしらぬ つきかけや わかなみたにも なほかすむらむ | 義政 |
523 | めくりあふ はるもむかしの よはのつき かはらぬそての なみたにそみる | 宗尊親王 |
524 | なかめきて としにそへたる あはれとも みにしられぬる はるのよのつき | 基家 |
525 | おいらくの こころもいまは おほろにて そてさへかすむ はるのよのつき | 隆弁 |
526 | すみよしの まつのしつえの ふちのはな いくとしなみを かけてさくらむ | 澄覚法親王 |
527 | かすかやま たにのまつとは くちぬとも こすゑにかへれ きたのふちなみ | 俊成(藤原俊忠男) |
528 | たちかへる はるをみせはや ふちなみは むかしはかりの こすゑならねと | 定家 |
529 | ことのはの かはらぬまつの ふちなみに またたちかへる はるをみせはや | 為家 |
530 | かすかやま いのりしすゑの よよかけて むかしかはらぬ まつのふちなみ | 為氏 |
531 | みはかくて むそちのはるを すくしきぬ としのおもはむ おもひてもなし | 高倉(八条院) |
532 | きくたひに なこりをしくそ なりまさる はるくれかたの うくひすのこゑ | 兼実 |
533 | かへるかり しはしやすらふ かたもなし くれゆくはるや そらにしるらむ | 成実(藤原親実男) |
534 | なからへて いまいくたひと たのまねは おいこそはるの わかれなりけれ | 光俊(葉室光親男) |
535 | かみまつる うつきののちと ちきりおきて われさへいそく はるのくれかな | 弁内侍(後深草院) |
536 | あをやきの いともみなこそ たえにけれ はるののこりは けふはかりとて | 和泉式部 |
537 | あをやきや はるとともには たえにけむ またなつひきの いとはなしやは | 大弐三位 |
538 | ゆふかけて うつきにまつる かみやまの ならのこかけに なつはきにけり | 読人不知 |
539 | かみやまに ひきのこさるる あふひくさ ときにあはても すきにけるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
540 | こひこひて はつねはききつ ほとときす ありしむかしの やとなわすれそ | 泰時 |
541 | すきぬとて うらみもはてし ほとときす まつらむさとも みにしられつつ | 行能女 |
542 | まちなれし おほうちやまの ほとときす いまはくもゐの よそにきくかな | 基忠(鷹司兼平男) |
543 | ならのはの なにおふみやの ほとときす よよにふりにし ことかたらなむ | 公朝 |
544 | しるひとも みにはなきよの ほとときす かたらひあかせ おいのねさめに | 静仁法親王 |
545 | ほとときす なくねをそへて すきぬなり おいのねさめの おなしなみたに | 為氏 |
546 | つれもなき わかれはしらし ほとときす なにありあけの つきになくらむ | 実基女 |
547 | あやめくさ けふとていとと かけそへつ いつともわかぬ そてのうきねに | 為子(従二位) |
548 | いにしへを しのふとなしに ふるさとの ゆふへのあめに にほふたちはな | 実朝 |
549 | ももしきや にはのたちはな おもひいてて さらにむかしの しのはるるかな | 土御門院 |
550 | たちはなは たかそてのかと わかねとも おいのねさめそ むかしこひしき | 公豪 |
551 | あさきせは あたなみそへて よしのかは ふちさへさわく さみたれのころ | 景家 |
552 | いかにせむ わかみふりゆく さみたれに たのむみかさの やまそかひなき | 雅有 |
553 | さみたれの くもゐるやまの ほとときす はれぬおもひの ねをやなくらむ | 親行(源光行男) |
554 | ほとときす みやまにかへる こゑすなり みをかくすへき ことやつてまし | 慶融 |
555 | くさふかき なつののみちに まよひても よのことわりそ さらにしらるる | 実雄 |
556 | きふねかは やましたかけの ゆふやみに たまちるなみは ほたるなりけり | 春誓 |
557 | たちかへり あつめしまとに きてみれは むかしわすれす とふほたるかな | 道宝 |
558 | みそきする あさのゆふして なみかけて すすしくなりぬ かものかはかせ | 通成 |
559 | みそきかは ゆくせもはやく なつくれて いはこすなみの よるそすすしき | 為家 |
560 | ふかきよの おいのねさめの まくらより つゆおきそめて あきはきにけり | 教定(飛鳥井雅経男) |
561 | なかめつつ またいかさまに なけけとて ゆふへのそらに あきのきぬらむ | 光俊(葉室光親男) |
562 | そてのうへに いつともわかぬ しらつゆの くさはにむすふ あきはきにけり | 季宗(藤原成宗男) |
563 | いまよりは すすしくなりぬ かたをかの しののはわけの あきのはつかせ | 聖兼 |
564 | いろことに うつろひゆかは いかかせむ なひくあさちの あきのはつかせ | 延成 |
565 | あまのかは やそちにかかる おいのなみ またたちかへり けふにあひぬる | 為家 |
566 | かきなかす なみたなからそ たむけつる ものおもふそての つゆのたまつさ | 良平女 |
567 | をきのはの つゆのほかなる なみたさへ そてにくたけて あきかせそふく | 静仁法親王 |
568 | をきのはに むかしはかかる かせもなし おいはいかなる ゆふへなるらむ | 基家 |
569 | いにしへは おとろかされし をきのはに ふきくるかせを ねさめにそまつ | 為家 |
570 | あきのよの つゆよりほかの ゆめをたに むすひもはてぬ をきのうはかせ | 宗成 |
571 | かりねする くさのまくらの あきかせに なみたよりちる のへのしらつゆ | 実氏 |
572 | おもひおく なみたのつゆは いくあきか ことのはことに かすつもるらむ | 基良 |
573 | いかなりし あきになみたの おちそめて みはならはしと そてのぬるらむ | 実雄 |
574 | みのうさを しらすはあきの ならひとて ゆふへはかりや そてぬらさまし | 具氏 |
575 | おくつゆは いろもかはらぬ ゆふへかな わかみひとつの すみそめのそて | 後嵯峨院 |
576 | かすまさる うれへはあきの ゆふへとて ちちにくたくる そてのつゆかな | 家経(一条実経男) |
577 | いつまてと おもふにものの かなしきは いのちまつまの あきのゆふくれ | 忠兼(藤原忠行男) |
578 | なにゆゑに かかるつゆそと おもふにも そてさへつらき あきのゆふくれ | 親清女妹 |
579 | くさはのみ つゆけかるへき あきそとは わかそてしらて おもひけるかな | 景綱 |
580 | ゆふされは たまぬくのへの つゆなから かせにかつちる あきはきのはな | 読人不知 |
581 | ゆふされは なみたやあまる さをしかの いるののをはな そてそつゆけき | 親行(源光行男) |
582 | よそにきく くもゐのかりの たまつさに わかなみたをや かけてきつらむ | 四条(安嘉門院) |
583 | かはみつに とわたるかりの かけみえて かきなかしたる あきのたまつさ | 基家 |
584 | しるらめや きりたつそらに なくかりも はれぬおもひの たくひあるみを | 小宰相(土御門院) |
585 | はれすたつ みねのあさきり わけきても おもひつきすや かりのなくらむ | 隆博 |
586 | いまはまた たこのうらなみ うちそへて たたぬひもなき あきのゆふくれ | 行実 |
587 | くもはるる みかみのやまの あきかせに ささなみとほく いつるつきかけ | 浄助法親王 |
588 | いほむすふ ふしみのをたは なのみして ねられぬつきに あきかせそふく | 時明/時朝(宇都宮朝業男) |
589 | みのうさを つきになくさむ あきのよに たかためくもる なみたなるらむ | 長景 |
590 | せめてなと つきみるよはも みのほとの うきはかすそふ なみたおつらむ | 禅助 |
591 | みのうさの わすれやすると なかめつつ こよひもつきの ふけにけるかな | 澄覚法親王 |
592 | みのうさの さのみはいかに まさるそと まためくりあふ つきやみるらむ | 為家 |
593 | つきたにも おいのなみたの へたてすは むかしのあきの ともとみてまし | 実経 |
594 | ものおもふ あきはいかなる あきならむ あらしもつきも かはるものかは | 如願 |
595 | みしことの みなかはりゆく おいのみに こころなかきは あきのよのつき | 為家 |
596 | なにことも かはりのみゆく よのなかに おなしかけにて すめるつきかな | 西行 |
597 | あきのよも つねなるへしと おもひせは のとかにみまし やまのはのつき | 高弁 |
598 | みのうさも かはらぬそらの つきをみて なにかむかしの あきはこひしき | 公朝 |
599 | としをへて みしもむかしに なりにけり さとはみなせの あきのよのつき | 隆親(藤原隆衡男) |
600 | つきならて またたれにかは こととはむ みぬよのあきの むかしかたりを | 帥(鷹司院) |
601 | なかむれは そらやはかはる あきのつき みしよをうつせ そてのなみたに | 俊成女 |
602 | あきことの つきをくもゐの かたみにて みしよのひとの かはるおもかけ | 俊成女 |
603 | もろともに なれしくもゐは わすれぬに つきはわれをそ しらすかほなる | 讃岐(二条院) |
604 | くものうへの つきみしあきを おもふには あけのころもの いろもうらめし | 長綱(藤原長村男) |
605 | つかふとて みるよなかりし わかやとの つきにはひとり ねそなかれける | 為家 |
606 | むかしおもふ くさにやつるる のきはより ありしなからの あきのよのつき | 定家 |
607 | まつのとの あけかたちかき やまのはに いらてやすらふ あきのよのつき | 種成 |
608 | やまふかく こころのうちに ちきりても かはらてみつる あきのよのつき | 実経 |
609 | よをはさて なにゆゑすてし われなれは うきにとまりて つきをみるらむ | 光俊(葉室光親男) |
610 | そむきても うきよはなれぬ あきをへて おなしなみたに つきをみるかな | 源承 |
611 | つきはなほ みしにかはらぬ あきなから みこそうきよの ほかにいてぬれ | 道洪 |
612 | またすまむ やまさとありと おもひきや わかたつそまの あきのつきかけ | 定修 |
613 | いまはまた みによそへても したふかな なかはすきゆく あきのよのつき | 覚宗 |
614 | しはしなほ つきをもみむと おもへとも おいてのこりの あきそすくなき | 信実 |
615 | つきをみる やまちのあきの こけのそて ぬれてほすへき つゆのまもなし | 道玄 |
616 | いこまやま くもなへたてそ あきのつき あたりのそらは しくれなりとも | 順徳院 |
617 | はれゆけは ひかりそまさる あきのつき しはししくるる ほとはうけれと | 良暹 |
618 | かそふれは よそちあまりの あきのしも みのふりゆかむ はてをしらはや | 家長(源時長男) |
619 | しつかなる あきのねさめの みになくは おいのつらさも しられさらまし | 基家 |
620 | なかきよの ねさめのとこの きりきりす おなしまくらに ねをのみそなく | 読人不知 |
621 | すみなるる とこはくさはの きりきりす しもにかれゆく ねをやなくらむ | 忠時 |
622 | きりきりす なくをわかみの たくひにて しらぬおもひを あはれとそきく | 公朝 |
623 | まとろまぬ ほとをしらせて よもすから ものおもふひとや ころもうつらむ | 覚助法親王 |
624 | おいかよの ねさめかさなる うらみとも おもひしらてや ころもうつらむ | 良教 |
625 | いくとせか かさしきぬらむ みかさやま おなしふもとの あきのもみちは | 隆博 |
626 | ゆふしくれ このはをそむる ときしもあれ なとおりあへぬ にしきなるらむ | 弁内侍(後深草院) |
627 | わきてまた たちよるそても ほしやらす もみちのかけは なほしくれつつ | 慶融 |
628 | おもひやる かたこそなけれ めくりあはむ いのちもしらぬ あきのわかれは | 御匣(式乾門院) |
629 | ふゆのくる あらしをさむみ かみなひの みむろのやまや まつしくるらむ | 為継 |
630 | かねてたに このはしくれし かみなひの みむろのやまに ふゆはきにけり | 重名 |
631 | よそにのみ あらしのこゑは おとつれて まとうつものは このはなりけり | 寂蓮 |
632 | ふりはつる このはののちの ゆふしくれ まかふかたなく ぬるるそてかな | 資宣 |
633 | ははそはら しくるときけは わかそての かひなきいろそ まつかはりける | 土御門院 |
634 | いそちあまり おいそのもりの かみなつき しくれしくれて みこそふりぬれ | 資平 |
635 | かみなつき ふりそふそての しくれかな さらてももろき おいのなみたに | 静仁法親王 |
636 | いくたひか そてぬらすらむ むらしくれ ひとりふりぬる おいのねさめに | 隆弁 |
637 | そてぬらす ものとはきけと まきのやに すくるはをしき はつしくれかな | 延季 |
638 | うきみには なみたもそてに ふるものを しくれはかりと くもるそらかな | 定意 |
639 | よにふれは いととなけきの いろそへて しくれににたる わかなみたかな | 公朝 |
640 | かみなつき しくるるそらを なかめても いたつらにふる みをなけくかな | 円勇 |
641 | われならて またいたつらに ふりゆくは をのへのまつの しくれなりけり | 澄覚法親王 |
642 | あらしふく みねのうきくも たえたえに しくれてかかる かつらきのやま | 義宗 |
643 | いかはかり たかののおくの しくるらむ みやこはくもの はるるまもなし | 宗尊親王 |
644 | しくるらむ みやこのそらに おもひしれ たかのはゆきの くもそかさなる | 性助法親王 |
645 | たかのやま あかつきをまつ かねのおとも いくよのしもに こゑふりぬらむ | 心円 |
646 | つゆしもと おきふしいかて あかすらむ ならはぬたひの くさのまくらに | 選子内親王 |
647 | なかれゆく もみちをむすふ やまかはの こほりそあきの いろをととむる | 蓮生法師 |
648 | こやのいけの あしまのみつに かけさえて こほりをそふる ふゆのよのつき | 仙覚 |
649 | めつらしき ひかけをみても おもはすや しもかれはつる くさのゆかりを | 俊成(藤原俊忠男) |
650 | あられふる くものかよひち かせさえて をとめのかさし たまそみたるる | 義氏 |
651 | よのなかに ふれとかひなき みのほとは たまらぬゆきに よそへてそみる | 兵衛(上西門院) |
652 | さとひとの かよふはかりの みちをたに またふみわけぬ けさのしらゆき | 読人不知 |
653 | たかかよふ みちのせきとか なりぬらむ よひよひことに つもるしらゆき | 親子(典侍親子朝臣) |
654 | まつひとの とはぬひかすや つもるらむ あとたえはつる にはのしらゆき | 時茂 |
655 | あとつけて とはれぬにはの ゆきみれは よにふりにける ほとそしらるる | 基忠(鷹司兼平男) |
656 | かすかのに ふりにしよよの あととめて ゆきふみわくる みちをしらはや | 師良(一条実経男) |
657 | たれもみな おなしよにこそ ふるゆきの われひとりやは みちなかるへき | 良教 |
658 | たちかへり またつかふへき みちもかな としふりはつる やとのしらゆき | 為家 |
659 | ふゆきては ゆきのそこなる たかさこの まつをともとそ いととふりぬる | 為家 |
660 | よそにみる おいそのもりに ふるゆきの つもるとしさへ みにしられつつ | 読人不知 |
661 | ゆくすゑを はるかにまちし なくさめの たのみたになき としのくれかな | 民部卿典侍(後堀河院) |
662 | おもふこと まちよわりゆく ななそちの あまりかなしき としのくれかな | 家隆 |
663 | ことわりに きみこそいそく みちならめ をしむなみたは なとかとまらぬ | 大弐(二条太皇太后宮) |
664 | とまらしと おもふものから わかれちの こころつくしに なけかるるかな | 顕綱 |
665 | をしみかね なみたをぬさと たむけなは たひゆくひとの そてやしをれむ | 光俊(葉室光親男) |
666 | あふことを いつとかまたむ かへるやま ありとはかりの なをたのめとも | 経国 |
667 | たひころも きてもとまらぬ ものゆゑに ひとたのめなる あふさかのせき | 如願 |
668 | かつこえて けふはわかれの みちなれと またあふさかの なをやたのまむ | 景綱 |
669 | みやこをは そなたとはかり かへりみて せきこえかぬる みののなかやま | 読人不知 |
670 | ゆくすゑの そらはひとつに かすめとも やまもとしるく たつけふりかな | 頼景 |
671 | わすれすは しをれていてし はるさめの ふるさとひとも そてぬらすらむ | 如願 |
672 | しなかとり ゐなのささやの かりまくら みしかきよはも ふしうかりけり | 資季 |
673 | うつりゆく ひかすしられて なつくさの つゆわけころも あきかせそふく | 為家 |
674 | しらかはの せきまてゆかぬ あつまちも ひかすへぬれは あきかせそふく | 国助 |
675 | ゆふくれは ころもてさむき あきかせに ひとりやこえむ しらかはのせき | 観意 |
676 | たちわかれ みやこへたつる ころもてに あかつきおきの つゆそかさなる | 具房 |
677 | つゆふかき やまわけころも ほしわひぬ ひかすすくなき まきのしたみち | 最信 |
678 | ゆきくらす のはらのあきの くさまくら われよりさきに むすふつゆかな | 道玄 |
679 | くさまくら かりねのそてに つゆちりて をはなふきしく のへのあきかせ | 頼重 |
680 | つゆけさを ちきりやおきし くさまくら あらしふきそふ あきのたひねに | 俊成女 |
681 | つゆはらふ あさけのそては ひとへにて あきかせさむし さやのなかやま | 宗尊親王 |
682 | なかめつつ おもへはおなし つきたにも みやこにかはる さやのなかやま | 為家 |
683 | こえかかる やまちのすゑは しらねとも なかきをたのむ あきのよのつき | 泰綱 |
684 | つゆむすふ のはらのいほの ささまくら いくよかつきの かけになるらむ | 時村 |
685 | よひよひの たひねのとこは かはれとも おなしつきこそ そてになれぬれ | 実家(藤原実経男) |
686 | つきみれは まつふるさとそ わすられぬ おもひてもなき みやこなれとも | 行尊 |
687 | くさまくら ひとよのつゆを ちきりにて そてにわかるる のへのつきかけ | 道助法親王 |
688 | さらぬたに よふかくいそく たひひとを さそひていつる ありあけのつき | 為継 |
689 | たちまよふ みなとのきりの あけかたに まつはらみえて つきそのこれる | 宗尊親王 |
690 | あけぬとて やまちにかかる つきかけに かはりていつる あきのたひひと | 道家 |
691 | あさきりの たちにしひより たひころも ややはたさむみ かりもなくなり | 成茂 |
692 | あらしふく みねのこのはに ともなひて いつちうかるる こころなるらむ | 西行 |
693 | かりまくら ゆめもむすはす ささのやの ふしうきほとの よはのあらしに | 為教 |
694 | くさまくら こよひはかりの あきかせに ことわりなりや つゆのこほるる | 成範 |
695 | ぬれてほす やまちのすゑの たひころも しくるるそてに あきかせそふく | 右京大夫(正親町院) |
696 | しくれゆく やまわけころも けふもまた ぬれてほすへき やとやなからむ | 行円(二階堂行忠男) |
697 | しくれする こよひはかりそ かみなつき そてにもかかる なみたなりける | 道信 |
698 | たひひとの やとかりころも そてさえて ゆふしもむすふ をののしのはら | 定為 |
699 | ふゆのひの ゆくほともなき ゆふくれに なほさととほき むさしののはら | 知家 |
700 | はつゆきに われとはあとを つけしとて まつあさたたむ ひとをまつかな | 清輔 |
701 | わけくらす きそのかけはし たえたえに ゆくすゑふかき みねのしらゆき | 良経(九条兼実男) |
702 | あまのはら ひもゆふしほの からころも はるはるきぬる うらのまつかせ | 道家 |
703 | ゆふしほの いそこすなみを まくらとて かせにとまりの ひかすをそふる | 公継 |
704 | おきつなみ よするいそへの うきまくら とほさかるなり しほやみつらむ | 家隆 |
705 | とへかしな ゆらのみなとの かちまくら ゆくへもしらぬ なみのうきねを | 有教 |
706 | こきくるる うきねのとこの なみまくら よるとてゆめも えやはみえける | 成賢(祝部成茂男) |
707 | みちとほみ おもひしよりも ひはくれて ふけゆくやとは かすひともなし | 信実 |
708 | こえやらて けふはくらしつ あしからの やまかけとほき いはのかけみち | 光成(大炊御門光俊男) |
709 | あしからの やまのふもとに ゆきくれて ひとよやとかる たけのしたみち | 長時 |
710 | ゆくすゑを いそくこころに ねさめして とりのねまたぬ あかつきもなし | 玄覚 |
711 | けふりなき むろのやしまと おもひせは きみかしるへに われそたたまし | 親朝 |
712 | おきつなみ やそしまかけて すむちとり こころひとつを いかかたのまむ | 実朝 |
713 | はまちとり やそしまかけて かよふとも すみこしうらを いかかわすれむ | 素暹 |
714 | わけすきし むかしのあとの たえせねは いまみるみちの すゑもたのもし | 覚仁法親王 |
715 | いまもなほ むかしのあとを しるへにて またたつねいる みよしののやま | 良宝 |
716 | かへりみる あとにかさなる やまのはの とほきくもゐや みやこなるらむ | 行氏(平胤行男) |
717 | みやこいてし ひかすのみかは たひころも こえゆくやまも かさなりにけり | 経任(中御門藤原為経男) |
718 | みやこいてて たちかへるへき ほととほみ ころものせきを けふそこえゆく | 行宗 |
719 | たひひとの ころものせきの はるはると みやこへたてて いくかきぬらむ | 家良 |
720 | たちわかれ みやこをしのふ くさまくら むすふはかりの ゆめたにもなし | 良実 |
721 | ななそちの としふるままに すすかかは おいのなみよる かけそかなしき | 隆弁 |
722 | ふりはへて かくそたつぬる すすかやま こゆるひとたに おとつれねとも | 小弁 |
723 | きてもなほ かひこそなけれ たひころも たちしわかれを なにうらみけむ | 甲斐(安嘉門院) |
724 | いそきつる ことをはしらて ふるさとに まつらむひとや こころつくさむ | 朝光 |
725 | みやこひと つきひをそらに かそへても いくめくりとか われをまつらむ | 教実 |
726 | よろつよと かめのをやまの まつかけを うつしてすめる やとのいけみつ | 亀山院 |
727 | いけみつに まつのちとせを うつしても きみにふたたひ あふかうれしさ | 兼平 |
728 | ゆくすゑを かきらぬまつの よよをへて かけのとかなる にはのいけみつ | 公相 |
729 | いけみつの たえすすむへき みよなれは まつのちとせも とはにあひみむ | 為家 |
730 | ちえにさす まつのみとりは きみかよに あふへきはるの かすにそありける | 実基(徳大寺公継男) |
731 | ためしなき あまたみゆきの けふにあひて はなはやちよの いろにいつらむ | 顕朝 |
732 | ことしより みゆきにちきる やまさくら おもふもひさし よろつよのはる | 実雄 |
733 | かめのをの やまのかひある やまさくら よろつよふへき ためしとそみる | 公相 |
734 | なにたてて よろつよふへき かめのをの やまのさくらは けふさきにけり | 経任(中御門藤原為経男) |
735 | またれこし みかさのやまの さくらはな ひさしきはるの かさしにそさす | 公基 |
736 | ちよをへて すむへきいけの みつなれは うつれるはなの かけものとけし | 忠実 |
737 | さきつつく ふちさかえむと かすかやま まつにそきみを いはひかけつる | 実氏 |
738 | むかしより きみかためなる やとなれは われもちとせを まつむしのこゑ | 隆親(藤原隆衡男) |
739 | きみかすむ おなしくもゐの つきなれは そらにかはらぬ よろつよのかけ | 為家 |
740 | くものうへに かけをならへて ひさかたの つきそちとせの あきもすむへき | 実雄 |
741 | のとかなる ひかりをそへて いけみつに ちよもすむへき あきのよのつき | 俊忠 |
742 | わかのうらや むかしにかへる なみのうへに ひかりあまねき あきのよのつき | 経朝 |
743 | きみかよに ひかりをそへよ すゑとほき ちとせのあきの やまのはのつき | 蓮生法師 |
744 | いくあきと かきらぬつきの ひかりこそ きみかみかけの ためしなりけれ | 師忠(二条良実男) |
745 | たみやすき たのものいほの あきかせに いなはのくもは つきもさはらす | 資宣 |
746 | きみかため ちよをかさねて きくのはな ゆくすゑとほく けふこそはみれ | 頼通 |
747 | むすふへき すゑもかきらし きみかよに つゆのつもれる きくのしたみつ | 式子内親王 |
748 | いかはかり おいせぬあきを かさぬらむ ちよのかさしの しらきくのはな | 為経(甘露寺藤原資経男) |
749 | ちとせまて つもれるとしの しるしとて ゆきをかさぬる つるのけころも | 慈円 |
750 | あしたつの よはひしあらは きみかよの ちとせのかすは かそへとりてむ | 道長 |
751 | うなはらや かせをさまれる なみのうへに おもふもとほし みよのゆくすゑ | 実氏 |
752 | かすかすに みかくたまもの あらはれて みよしつかなる わかのうらなみ | 通雅 |
753 | きみにけふ ととせのかすを ゆつりおきて ここのかへりの よろつよやへむ | 定家 |
754 | かきりなき はこやのやまの かけなれは ちとせのさかも なほこえぬへし | 範光 |
755 | おいらくの さかゆくみちを てらすなり はこやのやまの みねのつきかけ | 有家(藤原重家男) |
756 | かけなひく ひかりはみにも あまるらむ のほるみかさの やまのはのつき | 公相 |
757 | おほはらや をしほのまつそ きみかよの いつもかはらぬ ためしなるへき | 長家 |
758 | きみまちて ふたたひすめる かはみつに ちよそふとよの みそきをそみし | 雅経 |
759 | としたけて おもひもよらす きみかよに またつかふへき みちのありとは | 隆親(藤原隆衡男) |
760 | かみしまの なみのしらゆふ かけまくも かしこきみよの ためしとそみる | 資実 |
761 | あきらけき みよのはしめの あさひやま あまてるかみの ひかりさしそふ | 為長(菅原長守男) |
762 | ときはなる かけはかはらし まきのむら あまのつゆしも いくよふるとも | 家光 |
763 | すすしさに ちとせをかねて むすふかな たまゐのみつの まつのしたかけ | 経光 |
764 | こひころも いかにそめける いろなれは おもへはやかて うつるこころそ | 俊成(藤原俊忠男) |
765 | ひまとめて いかてしらせむ たますたれ けふよりかかる こころありとも | 土御門院 |
766 | しらせても なほつれなくは いかかせむ いはぬをとかに ひとやこひまし | 家良 |
767 | こひしさを いつならひける なみたとて いはぬさきより そてのぬるらむ | 家基(近衛基平男) |
768 | まなくちる そてのしらたま たれゆゑに みたれそめぬる なみたとかしる | 家経(一条実経男) |
769 | きみにかく みたれそめぬと しらせはや こころのうちに しのふもちすり | 兼実 |
770 | いつまてか おもひみたれて すくすへき つれなきひとを しのふもちすり | 兼宗 |
771 | みこもりの たまえのあしの とにかくに おもひみたるる ほとはしられし | 為教 |
772 | おきつかせ ふきしくうらの あしのはの みたれてしたに ぬるるそてかな | 実氏 |
773 | をやまたの いほもるかひの ゆふけふり むせふおもひを やるかたそなき | 後鳥羽院 |
774 | しられしな くゆるけふりの たえすのみ こころにけたぬ おもひありとも | 少将(永陽門院) |
775 | しられしな たくものけふり したにのみ むせふおもひの せめてうきみは | 公基 |
776 | われはかり しのふるなかに もるものは おさふるそての なみたなりけり | 亀山院 |
777 | なにはかた あしのしのやの しのひねに ぬるるそてさへ ほすひまそなき | 実兼 |
778 | にこりえの みくさかくれの うきぬなは くるしとたにも しるひとはなし | 為家 |
779 | おなしくは もろこしふねも よりななむ しるひともなき そてのみなとに | 後嵯峨院 |
780 | やまのはに ふけていてたる つきかけの はつかにたにも いかてしらせむ | 為氏 |
781 | よひのまに うはのそらゆく みかつきの かけはかりみし ひとにこひつつ | 経朝 |
782 | めにはみて くもゐのよそに ゆくつきの たよりもしらぬ わかおもひかな | 小宰相(土御門院) |
783 | いとせめて しのふるよはの なみたとも おもひもしらて やとるつきかな | 後嵯峨院 |
784 | わかなみた つゆもちらすな まくらたに またしらすけの まののあきかせ | 後嵯峨院 |
785 | しられしな わかそてはかり しきたへの まくらたにせぬ よはのうたたね | 雅経 |
786 | なけくとも たれかはしらむ おもひねの われはかりみる ゆめのまくらを | 蓮生法師 |
787 | うつつには かたるたよりも なかりけり こころのうちを ゆめにみせはや | 教定(飛鳥井雅経男) |
788 | いはておもふ こころひとつの たのみこそ しられぬなかの いのちなりけれ | 為氏 |
789 | としふとも たれかはしらむ かくれぬの したにかよひて おもふこころを | 知家 |
790 | ひとしれす おもひしをれて くちねとや そてにとしふる わかなみたかな | 師継 |
791 | おもふこと いはてこころの うちにのみ つもるつきひを しるひとのなき | 弁内侍(後深草院) |
792 | さてもまた いはてとしふる ことのはは いつれのあきか いろにいつへき | 隆親(藤原隆衡男) |
793 | たかさこの をのへのまつの ゆふしくれ いろにそいてぬ としはふれとも | 性助法親王 |
794 | しられしな ちしほのこのは こかるとも しくるるくもの いろしみえねは | 定家 |
795 | そてのいろを さてのみひとに しらせすは こころにそめし かひやなからむ | 如願 |
796 | せくそての なみたのいろや くれなゐの ちしほのころも そめてくちなむ | 基良 |
797 | いかにせむ つつむひとめに せきかねて なみたもそての いろにいてなは | 為世(御子左藤原為氏男) |
798 | おもひせく そてよりおつる たきつせは いつのひとまの なみたなるらむ | 近衛(今出河院) |
799 | もらすなよ ひとめせかるる おもひかは つらさにまさる なみたなりとも | 大蔵卿(遊義門院) |
800 | せくそてに もらはうきなも たちぬへし みをもおもはぬ わかなみたかな | 蓮生法師 |
801 | いはぬをは しらぬならひと おもひしに なみたはかりの なとかかるらむ | 宗尊親王 |
802 | としへても かひなきものは ひとしれす われのみなけく おもひなりけり | 宗尊親王 |
803 | ひとしれぬ こころやかねて なれぬらむ あらましことの おもかけそたつ | 俊成(藤原俊忠男) |
804 | としをへて しけさまされと つくはねの みねはなけきの ほともしられし | 知家 |
805 | いかにせむ こひははてなき みちのくの しのふはかりに あはてやみなは | 為家 |
806 | いはてのみ しのふのやまに ゐるくもや こころのおくを なほへたつらむ | 宗成 |
807 | さもこそは みにあまりぬる こひならめ しのふこころの おきところなき | 隆房 |
808 | うへはかり つつむとみゆる たまつさは かへすにつけて たのまるるかな | 経房(藤原光房男) |
809 | あちきなく つつみもはてし たれゆゑと いろにはいてぬ そてのなみたを | 則俊 |
810 | いまはたた もらしやせまし なみたかは たれゆゑしのふ うきなならねは | 道良女 |
811 | なみたかは あふせはふちと よとむとも うきなもらさぬ しからみもかな | 雅有 |
812 | もらさしと おもふこころや せきかへす なみたのかはに かくるしからみ | 兼宗 |
813 | おもひかね なほよにもらは いかかせむ さのみなみたの とかになしても | 為氏 |
814 | みかさやま さしももらさぬ ことのはに あたにもつゆの かかるへきかは | 公基 |
815 | こころこそ かよはぬなかの せきならめ なとかなみたの ひとめもるらむ | 為家 |
816 | こひすとは なみたにしるし いまはたた きみてふことを しのふはかりそ | 兼実 |
817 | ひとしれす おもふこころを ちらすなと けふそいはせの もりのことのは | 頼輔 |
818 | おのつから かけてもそてに しらすなよ いはせのもりの あきのしたつゆ | 行意 |
819 | もらしても そてやしをれむ かすならぬ みをはつかしの もりのしつくは | 俊成(藤原俊忠男) |
820 | よしさらは ことのはをたに ちらさはや さのみいはての もりのしたかせ | 亀山院 |
821 | ひとしれす おもひしものを いかにして みえぬこころの いろにいつらむ | 親子(典侍親子朝臣) |
822 | みさをなる なみたなりせは からころも かけてもひとに しられさらまし | 西行 |
823 | あらいその なみよせかくる いはねまつ いはねとねには あらはれぬへし | 良経(九条兼実男) |
824 | にほとりの かくれもはてぬ さされみつ したにかよはむ みちたにもなし | 良経(九条兼実男) |
825 | せきかへし なほもいろにそ いてにける おもひによわる そてのしからみ | 後鳥羽院 |
826 | ひととはは よそのおもひと いひなさむ もしほのけふり かせにまかせて | 実経 |
827 | みるめなき うらよりをちに たつけふり われをはよそに なにこかるらむ | 実氏 |
828 | けふりたに おもひはかりは しるへせよ いそまのうらの あまのもしほひ | 行能 |
829 | おのつから なひくこころも ありなまし あはれたくもの けふりなりせは | 高定 |
830 | したもえに むせふおもひの ゆふけふり はてはむなしき なにやたちなむ | 家経(一条実経男) |
831 | いたつらに たつなはかりや ふしのねの ならぬおもひの けふりなるらむ | 為氏 |
832 | かひなしや およはぬはしの ゆふけふり たつなはかりに おもひきえなは | 公雄 |
833 | くらへても しらしなふしの ゆふけふり なほたちのほる おもひありとは | 忠信 |
834 | けふりたつ あさまのたけに あらねとも たえぬおもひに みをこかすかな | 有教女 |
835 | いたつらに たつやけふりの はてもなし あふをかきりと もゆるおもひは | 親長 |
836 | いたつらに おもひこかれて としもへぬ ひとをみぬめの うらのもしほひ | 親行(源光行男) |
837 | よとともに あまのなはたく いさりふね うきておもひの こかれてそふる | 実氏 |
838 | わかこひは なかたのうらの なひきもの こころはよれと あふよしもなし | 少将内侍(後深草院) |
839 | いせのうみの あみのうけなは わかかたに こころもひかぬ ひとにこひつつ | 雅言 |
840 | まとろむに こひしきことの なくさまは ねさめをさへは うらみさらまし | 俊頼(源経信男) |
841 | まとろめは ゆめにもみえぬ うつつには わするるほとの つかのまもなし | 頼朝 |
842 | ぬるかうちも うつつのままの つらさにて おもふかたには みるゆめもなし | 為教 |
843 | うつつこそ ぬるよひよひも かたからめ そをたにゆるせ ゆめのせきもり | 後鳥羽院 |
844 | さめてこそ のちうきものと おもふとも こひしきひとを ゆめにたにみむ | 高定 |
845 | あふとみは さてもおもひの なくさまて はかなきゆめは なほそかなしき | 伊信 |
846 | あふとみて たのむそかたき うたたねの ゆめてふものは まことならねは | 景家 |
847 | ぬるかうちに けにあふことも なきゆめを いかにみしより たのみそめけむ | 時村 |
848 | ぬるかうちに しはしなくさむ こころかな さめてはゆめと おもひしれとも | 宣時(北条) |
849 | わかそての なみたのいろの つゆならは ときはのもりも なほやそめまし | 雅有 |
850 | わかそてに かすかくはかり ゆくみつや はかなきこひの なみたなるらむ | 実伊 |
851 | こひをのみ しつやのこすけ つゆふかみ かりにもそての かわくまそなき | 忠良 |
852 | やまかつの おりたつさはの まこもくさ かりにのみこそ そてもぬるらめ | 有家(藤原重家男) |
853 | かせあらき すさのいりえに なみこえて あちきなきまて ぬるるそてかな | 実氏 |
854 | あさりする あまのころもに あらねとも しほたれまさる そてのうへかな | 実氏 |
855 | いくよとか そてのしからみ せきもみむ ちきりしひとは おとなしのたき | 土御門院 |
856 | ぬきとめよ あはすはなにを かたいとの みたれておつる たきのしらたま | 実氏 |
857 | としへぬる ならのをかはに みそきして いのりしせをも なほすくせとや | 道家 |
858 | きえぬへし さのみはいかか おもひかは なかるるみつの あはれともみよ | 実氏 |
859 | ねぬなはの ねぬなはかけて つらさのみ ますたのいけの みつからそうき | 為氏 |
860 | うらやまし たれあふさかの せきこえて わかるるとりの ねをなけくらむ | 重保 |
861 | みなひとを おなしこころに なしはてて おもふおもはぬ なからましかは | 和泉式部 |
862 | しるらめや てひきのいとの ひとすちに わくかたもなく おもふこころを | 経家(六条重家男) |
863 | おもひわひ つれなきなかは なからへて こひをいのちと なほやたのまむ | 読人不知 |
864 | なからへて あひみむことは いのちとも おもはぬひとや みにはかふらむ | 光俊(葉室光親男) |
865 | たのめおく ひとのこころも みるはかり うきにしにせぬ いのちともかな | 顕氏(六条顕家男) |
866 | ちきりおく なさけはかりを いつはりの なきよになして たのみけるかな | 御匣(式乾門院) |
867 | ちきりしは すゑもとほらぬ わすれみつ たのむやあさき こころなるらむ | 行氏(平胤行男) |
868 | いまはまた あかすたのめし かけもみす そこともしらぬ やまのゐのみつ | 為世(御子左藤原為氏男) |
869 | あふことの いつをかきりと たのまねは わかなみたさへ はてそしられぬ | 隆親(藤原隆衡男) |
870 | あふことは かせにわかるる うきくもの ゆくすゑとたに えこそたのまね | 蓮生法師 |
871 | こひわたる こころはそらに かよへとも あふはよそなる かささきのはし | 俊平(源泰光男) |
872 | さのみやは さののふなはし おなしよに いのちをかけて こひわたるへき | 国助 |
873 | あふまての いのちをひとに ちきらすは うきにたへても えやはしのはむ | 弁内侍(後深草院) |
874 | あふことに たれかはかへむ をしからて われたにいまは すつるいのちを | 親子(典侍親子朝臣) |
875 | たのましな あふにかへむと ちきるとも いまいくほとの おいのいのちは | 為家 |
876 | あふことに かへぬいのちも かきりあれは こひしねとてや ひとのつれなき | 時直 |
877 | おもふにも よらぬいのちの つれなさは なほなからへて こひやわたらむ | 宗尊親王 |
878 | あふことを いつともしらす なからへて いのちにそふは おもひなりけり | 義政 |
879 | あふまての いのちとたにも たのまれす ひとのつらさの はてをしらねは | 基頼 |
880 | おなしよを たのむはかりや つれなくて こひにたえたる いのちなるらむ | 政長 |
881 | いまはまた あすしらぬみも なけかれす このよにたのむ ちきりならねは | 覚助法親王 |
882 | かくこひむ むくひをひとの おもはてや のちのよしらす つれなかるらむ | 小督(中務卿親王家) |
883 | こりさらむ こころのはての つれなさも みをなからへて なほやみせまし | 信実 |
884 | こひしぬる はてをはしらて あふまての いのちををしく おもひけるかな | 信実 |
885 | たかをしむ いのちなれはか しぬはかり なけくになほも つれなかるらむ | 具氏 |
886 | おもはすに あはれつれなき いのちかな いけらはのちの たのみはかりに | 実雄 |
887 | いけるひの つらさにかへて あふことを またぬいのちと こひやしなまし | 蓮生法師 |
888 | いけるみの かひはなけれと こひしなは おなしよをたに なほやわかれむ | 能清 |
889 | こひしなむ いのちはひとの ためなれは あさちかはらの つゆをたにとへ | 高倉(安嘉門院) |
890 | こひしなは うきなはかりや ととまらむ わかみはこけの したにくつとも | 丹後(宜秋門院) |
891 | こひしなむ ゆくへをたにも おもひいてよ ゆふへのくもは それとなくとも | 実定 |
892 | かけてたに たのめぬなみの よるよるを まつもつれなき よさのうらかせ | 雅経 |
893 | つれなさを いかにしのひて すくしけむ くれまつほとも たへぬこころに | 堀河(待賢門院) |
894 | きみにより くれまつくさに おくつゆの かからぬほとは いかかたのまむ | 小大君 |
895 | まちわひて ひとりなかむる ゆふくれは いかにつゆけき そてとかはしる | 宗尊親王 |
896 | せめてわか こころひとつの なくさめに たのめぬくれも なほやまたまし | 阿仏 |
897 | ならひこし こぬよあまたに こりもせて またゆふくれと たのむはかなさ | 為子(従二位) |
898 | さりともと おもふかひなき よひよひの いつはりをたに たのみはてはや | 為家 |
899 | はかなしや わかこころなる まきのとを ささぬたのみに ひとのまたるる | 弁内侍(後深草院) |
900 | つらしなほ あしわけをふね さのみやは たのめしよはの またさはるへき | 家経(一条実経男) |
901 | たのめても むなしくふくる ほとみえて よそなるつきの かけさへそうき | 経任(中御門藤原為経男) |
902 | こぬひとの おもかけさそふ かひもなし ふくれはつきを なほうらみつつ | 真昭 |
903 | まちわひて ひとりありあけの つきかけは わかれしよりも なほうかりけり | 資季 |
904 | たのむそよ いひしはかりを ちきりにて ありあけまての なかつきのそら | 行済 |
905 | いまこむと たのめしひとの いつはりを いくありあけの つきにまつらむ | 宗尊親王 |
906 | いまこむと たのめぬよはの つきをたに なほまちいつる ありあけのそら | 実雄 |
907 | まちいつる かけさへつらし たのめても ひとはこぬよの ありあけのつき | 玄覚 |
908 | こぬまても まつはたのみの あるものを うたてあけゆく とりのこゑかな | 頼泰(平親秀男) |
909 | たのめても とはぬはひとの ならひにて まつやうきみの とかとなるらむ | 憲実 |
910 | いつはりに ならはさりせは ゆくすゑも たのむることに なくさみなまし | 堀河(待賢門院) |
911 | ゆめにたに まつとはみえし いつはりに こりぬこころは われさへそうき | 親子(典侍親子朝臣) |
912 | ちきりしを ゆめとたになほ わかぬかな おもひあはする うつつなけれは | 基忠(鷹司兼平男) |
913 | くるるよの ゆめをそいまは たのみける ひとのちきりも うつつならねは | 為信 |
914 | つかのまの やみのうつつも またしらぬ ゆめよりゆめに まよひぬるかな | 式子内親王 |
915 | なとりかは いかにせむとも またしらす おもへはひとを うらみけるかな | 定家 |
916 | つひにまた うきなやたたむ あふことは さてもかたたの うらのあたなみ | 宗成 |
917 | つれなしと かつうらみても あふことは なきさのまつの ねこそなかるれ | 公雄 |
918 | たまくらを かはすはかりの ちきりにも なほとけかたき よはのしたひも | 道経 |
919 | あひみての こころなかさを おもひやれ つらきにたにも わすれやはする | 国基 |
920 | なけきつつ おもひみたれし ならひとや あひみてもなほ そてのぬるらむ | 基平(近衛兼経男) |
921 | ゆくすゑを かねてそむすふ したひもの とけてあふよの なかのちきりに | 良実 |
922 | たまくらに むすふすすきの はつをはな かはすそてさへ つゆけかりけり | 為家 |
923 | つきくさの はなたのおひは とけそめぬ かへらぬいろを たれにとはまし | 家良 |
924 | なほさりに ゆきてかへらむ ひとよりも おくるこころや みちにまとはむ | 相模 |
925 | あふさかや わかれをとむる せきならは ゆふつけとりの ねをもうらみし | 忠景 |
926 | しぬはかり をしきわかれの あかつきや いのちにかへし むくひなるらむ | 蓮生法師 |
927 | はしめより あふはわかれと ききなから あかつきしらて ひとをこひける | 定家 |
928 | きぬきぬの なこりをつきに かこちても うしとそおもふ ありあけのそら | 亀山院 |
929 | つれなくて わかるるほとの つきかけも なほいひしらぬ ありあけのそら | 家経(一条実経男) |
930 | わかれちの ありあけのつきの うきにこそ たへていのちは つれなかりけれ | 為家 |
931 | いまそみる つらしとききし ありあけの つきをわかれの そてのなみたに | 道洪 |
932 | またいつと たのまぬものの うつつとも ゆめともなくて わかれぬるかな | 親子(典侍親子朝臣) |
933 | まとろまぬ ほとにみしかは けさはまた うきをゆめとも おもひなされす | 帥(鷹司院) |
934 | ちきりおく のちをまつへき いのちかは つらきかきりの けさのわかれに | 清時 |
935 | わかれつる なみたのほとを くらへはや かへるたもとと とまるまくらと | 俊成(藤原俊忠男) |
936 | とこのうへに おきつるけさの つゆよりも かへるわかみそ まつきえぬへき | 隆信 |
937 | つゆけさは おきわかるらむ とこよりも なかめわひぬる あけかたのそら | 讃岐(二条院) |
938 | わかなみた あふをかきりと おもひしに なほいひしらぬ そてのうへかな | 後嵯峨院 |
939 | こころにも あらぬたひねの まとろみに ほのみしゆめを ひとにかたるな | 定頼 |
940 | さたかなる ゆめとやなほも たのままし やみのうつつの ゆくへしらねは | 行実 |
941 | うつつとも たれかさためむ はかなくて まとふもつらき ゆめのかよひち | 内侍(京極院) |
942 | うたたねの ゆめともさらは まきれなて みしやうつつに のこるおもかけ | 道家 |
943 | おとろかす ひとしなけれは いまはたた みしはゆめかと たれにとはまし | 下野(後鳥羽院) |
944 | あふことを たえぬるゆめと おもふにも のこるつらさは うつつなりけり | 行氏(平胤行男) |
945 | ひとはいさ おもひもいてぬ よなよなも わかこころより ゆめやみゆらむ | 行念 |
946 | いまはまた たかゆめちにか かよふらむ おもひねにたに みるよはもなし | 家経(一条実経男) |
947 | うしとみる ゆめよりのちの こころをも うつつなからに いかてかたらむ | 後鳥羽院 |
948 | いかにして うつつのうさと なりにけむ みしやむかしの ゆめのかよひち | 宗尊親王 |
949 | ゆめそとも おもひなしてや やみなまし わすれぬほとに おとろかさすは | 経平(衣笠家良男) |
950 | ささたけの ひとよはかりの ちきりにも わすれぬふしの なにのこるらむ | 雅言 |
951 | いとせめて つらきちきりの いかなれは さすかにたえぬ としもへぬらむ | 親清女 |
952 | こころにも あらぬつきひは へたつとも いひしにたかふ つらさならすは | 隆博 |
953 | くもゐゆく つきをそたのむ わするなと いふへきなかの わかれならねは | 和泉式部 |
954 | おのつから いかなりしよの かたみとか くもまのつきも おもひいつらむ | 阿仏 |
955 | なかなかに おもかけさらぬ かたみにて いまはあたなる よはのつきかな | 後嵯峨院 |
956 | うしとても いまはあたなる なこりかは わすれかたみの ありあけのつき | 実氏 |
957 | はかなしや いひしはかりの かたみたに おもかけつらき ありあけのつき | 性助法親王 |
958 | つらかりし かけにかたみや のこるらむ なほうとまれぬ ありあけのつき | 高定 |
959 | たのめしも わすれぬものを ありあけの つきやつれなき かたみなるらむ | 通基母 |
960 | ありあけは なほそかなしき あふまての かたみとてこそ つきはみれとも | 親子(典侍親子朝臣) |
961 | めくりこし よよのちきりに そてぬれて これもむかしの うきなみたかな | 通具 |
962 | おなしよに またゆふくれを なけくかな こりぬうきみの こころよわさは | 実氏 |
963 | わするへき いまはわかみの なみたたに こころにかなふ ゆふくれそなき | 為家 |
964 | いまはたた わすれむとおもふ ゆふくれを ありしよりけに まつかせそふく | 基家 |
965 | さりともと しはしはまちし ゆふくれも いまはよそなる みのちきりかな | 親清女 |
966 | たのめしは ひとのむかしに なりはてて わかみにのこる ゆふくれのそら | 蓮生法師 |
967 | あふさかの みちやはかはる としふれは ひとのこころそ せきとなりける | 良教 |
968 | うきものと おもひもはてぬ とりのねに またあふさかの ゆききをそまつ | 具房 |
969 | あふことの たえまかちなる つらさかと おもひしほとの ちきりたになし | 少将(藻壁門院) |
970 | みしひとを おもひいつるも かなしきに ゆふへはつきの またれすもかな | 少将(藻壁門院) |
971 | なにとまた おもひたえても すくるみの つきみるからに そてのぬるらむ | 亀山院 |
972 | まちしよに おもひよそへて いくかへり やまのはいつる つきをみつらむ | 長方 |
973 | いかにせむ つきのとかとは おもはねと うきおもかけに おつるなみたを | 成茂 |
974 | こひこひて ほのかにひとを みかつきの はてはつれなき ありあけのそら | 道生 |
975 | なかむれは こひこそまされ わきもこか つらきこころや つきにそふらむ | 顕家 |
976 | うらみこし ひとのこころも とけやらす そてのこほりに はるはきぬれと | 土御門院 |
977 | わすれすよ かすみのまより もるつきの ほのかにみてし よはのおもかけ | 為兼 |
978 | わかこひは またゆききえぬ わかくさの いろにそいてぬ したにもえつつ | 読人不知 |
979 | あかさりし そてかとにほふ うめかかに おもひなくさむ あかつきのそら | 親子(典侍親子朝臣) |
980 | こころから あくかれそめし はなのかに なほものおもふ はるのあけほの | 定家 |
981 | われのみや のちもしのはむ うめのはな にほふのきはの はるのよのつき | 定家 |
982 | うきみをは わすれはつとも ふるさとの はなのたよりは おもひいてなむ | 匡房 |
983 | やまふきの はなさへつらし くちなしの いろにはなとか おもひそめけむ | 雅言 |
984 | しらせはや かみのしるしの あふひくさ なをのみかけて たのむこころを | 有長 |
985 | あふひてふ そのなはさこそ かけすとも けふのかさしの しるしとはみよ | 成茂 |
986 | なつのよと なにかうらみむ いつとても あふひとからに あかぬならひは | 実冬(藤原公光男) |
987 | はかなしや ゆめもほとなき なつのよの ねさめはかりの わすれかたみは | 俊成女 |
988 | しのひねの ほとはすきにき ほとときす なににつけてか いまはなかまし | 実方 |
989 | かくれぬに おふるあやめの われなれや しけきうきねも しるひとそなき | 後嵯峨院 |
990 | かわくまも なきひとりねの たまくらに いととあやめの ねをやそふへき | 赤染衛門 |
991 | さもこそは かりそめならめ あやめくさ やかてのきはに かれにけるかな | 周防内侍 |
992 | なつくさの したゆくみつの ありとたに むすはぬなかは しるひともなし | 教定(飛鳥井雅経男) |
993 | とふほたる それかあらぬか たまのをの たえぬはかりに ものおもふころ | 家長(源時長男) |
994 | つつめとも われさへみにそ あまりぬる ほたるよりけに もゆるおもひは | 慶融 |
995 | なつころも おりはへせみの ねにたてて うすくやなかの とほさかりなむ | 尚長(丹波経長男) |
996 | うらみても かひなきものは なつころも わかみにうすき ちきりなりけり | 読人不知 |
997 | たなはたに たえぬおもひは かはらねと あふよはくもの よそにこそきけ | 大輔(殷富門院) |
998 | かつみても こひしきものを たなはたの あきのためしと なにちきりけむ | 顕基 |
999 | あふことは けふもかたのの あまのかは このわたりこそ うきせなりけれ | 読人不知 |
1000 | かけてたに おもひもしらし あさちふの をののあさつゆ きえかへるとも | 資平 |
1001 | かせふけは たたよふくもの そらにのみ きえてものおもふ あきのゆふくれ | 光俊(葉室光親男) |
1002 | たのめとや おもひたえぬる よひよひを なほあきかせの まつにふくらむ | 良平女 |
1003 | おほつかな それかあらぬか あけくれの そらおほれする あさかほのはな | 紫式部 |
1004 | いつれそと いろわくほとに あさかほの あるかなきかに なるそかなしき | 読人不知 |
1005 | はつかりの とわたるかせの たよりにも あらぬおもひを たれにつたへむ | 定家 |
1006 | うかりける ひとのこころの あきかせに はきのしたはの いろもうらめし | 家経(一条実経男) |
1007 | まくすはら したははかりの あきならは おもひかへして うらみさらまし | 長雅 |
1008 | あきかせの ふくにまかせて まくすはら われとはひとを うらみやはする | 阿仏 |
1009 | みをあきの なみたはかりを たよりにて かたみもつらき そてのつきかけ | 公親 |
1010 | あきはきぬ ひとはつれなし いまよりの なかきよさむに まちつつやねむ | 読人不知 |
1011 | おとにのみ きくのはままつ したはさへ うつろふころの ひとはたのまし | 家隆 |
1012 | うつろはむ ものとやひとに ちきりおきし のちせのやまの あきのゆふつゆ | 知家 |
1013 | おほかたの ことのはまても いろかはる あきやいくたの もりのしらつゆ | 永光 |
1014 | ことのはも あきにはあへす うつれはや かはるつらさの いろをみすらむ | 信実 |
1015 | しくれゆく もみちのしたの かりまくら あたなるあきの いろにこひつつ | 道家 |
1016 | いまそしる われをふるせる ときそとも しくれてかはる あきのゆふくれ | 光俊(葉室光親男) |
1017 | ことのはも わかみしくれの そてのうへに たれをしのふの もりのこからし | 順徳院 |
1018 | ことのはの とはぬにふかき いろみても そてのしくれは ほすひまもなし | 道家 |
1019 | おもひやる こころのそらに なりぬれは けさやしくると みゆるなるらむ | 兼家 |
1020 | ひとりぬる ねさめのとこの さむけれは しくれのおとを たえすきくかな | 匡房 |
1021 | ひとりぬる かせのさむさに かみなつき しくれふりにし ひとそこひしき | 好忠 |
1022 | たれかまた ふるきまくらに おもひいてむ よなよなしもの おきわかれなは | 高倉(安嘉門院) |
1023 | いかにせむ おなしえならぬ ちきりのみ うきなををしの ねこそなかるれ | 少将内侍(後深草院) |
1024 | なみたせく そてのこほりを かさねても よはのちきりは むすひかねつつ | 雅経 |
1025 | ゆくとしの むなしきそては なみこえて ちきりしすゑの まつかひそなき | 実兼 |
1026 | おもひあまり そてにもなみは こえにけり ありしにかはる すゑのまつやま | 亀山院 |
1027 | あふことは かけてもいはし あたなみの こゆるにやすき すゑのまつやま | 道良 |
1028 | なみこさは いかにせむとか たのめけむ つらきなからの すゑのまつやま | 大納言典侍(後嵯峨院) |
1029 | はかなしな みつのはままつ おのつから みえこしゆめの なみのかよひち | 家隆 |
1030 | すゑまてと ちきりてとはぬ ふるさとに むかしかたりの まつかせそふく | 好忠 |
1031 | わすらるる みはならはしの ゆふくれも よそにはきかぬ にはのまつかせ | 長雅 |
1032 | ことうらに なひくけふりの つらさをも わかみのかたの なにたてよとや | 阿仏 |
1033 | なひくかと みえしもしほの けふりたに いまはあとなき うらかせそふく | 憲実 |
1034 | かひなしな いひしにかはる おなしよに あれはとたのむ いのちはかりは | 為家 |
1035 | みせはやな ありしにかはる ひとりねの わかたまくらに かかるなみたを | 親清女妹 |
1036 | きみゆゑは とこのやまなる なもつらし いさやかはらぬ こころともみす | 家隆 |
1037 | よそにのみ なるみのうらの うつせかひ たれあたひとに なをしらせけむ | 真昭 |
1038 | かへりては おもひしりぬや いはかとに うきてよりける きしのあたなみ | 紫式部 |
1039 | かはりゆく ちきりのほとの うきをたに うらむはかりの あふこともかな | 道良女 |
1040 | なにゆゑと こころのとはむ こともうし つらきをしたふ そてのなみたは | 御匣(式乾門院) |
1041 | つきくさの うつろひやすき こころをも かつしりなから なにうらむらむ | 資平 |
1042 | つきくさに うつろはむとや そめおきし ひとのこころも いろかはりゆく | 公経(藤原実宗男) |
1043 | いもとわれ はなたのおひの なかなれや いろかはるかと みれはたえぬる | 後嵯峨院 |
1044 | うつりゆく はなたのおひの むすほほれ いかなるいろに たえははつらむ | 道家 |
1045 | なれしよの かたみのころも うらみわひ なみたかさなる そてをみせはや | 長雅 |
1046 | あとたえて ひともかよはぬ ひとりねの ころものせきを もるなみたかな | 忠定(藤原兼宗男) |
1047 | としへぬる よとのつきはし ゆめにたに わたらぬなかと たえやはてなむ | 道家 |
1048 | わかれにし ままのつきはし なかたえて ふみかよふへき みちたにもなし | 良平女 |
1049 | はかなしや たかこころより とたえして みるよもしらぬ ゆめのうきはし | 雅忠 |
1050 | はかなしや われのみかよふ おもひねの ゆめちはかりの たえぬちきりは | 実経 |
1051 | しられしな たえにしなかの わすれみつ われのみひとを おもひいつとも | 公守 |
1052 | かよひこし のなかのしみつ かきたえて くまぬにしもそ そてはぬれける | 守覚法親王 |
1053 | いつまてか ひとのつらさの いつはりを こころつくしに なほたのみけむ | 読人不知 |
1054 | いつまての なさけなりけむ いつはりの ことのはさへそ いまはこひしき | 円範 |
1055 | うきなから しはしはみえし おもかけも いつのつきひか かきりなりけむ | 光俊(葉室光親男) |
1056 | あふことは おもひたえにし としつきの つもるにつけて わすれやはする | 伊長 |
1057 | あひみしは とほさかりゆく としつきを わすれすなけく わかこころかな | 大納言典侍(後嵯峨院) |
1058 | わすれては こひしきものを あひみしと いかにちかひし こころなりけむ | 帥(鷹司院) |
1059 | としへぬる ふるかはのへに たつすきの いつかはひとに またはあひみむ | 資季 |
1060 | たえはつる ちきりをしらて おなしよに またあひみむと おもひけるかな | 御匣(式乾門院) |
1061 | なからへて またあふまての たまのをよ たえぬしもこそ くるしかりけれ | 冬忠 |
1062 | かひもなし とへとしらたま みたれつつ こたへぬそての つゆのかたみは | 民部卿典侍(後堀河院) |
1063 | ありしよを おもひいてける こころこそ うきみをさらぬ かたみとはなれ | 兵衛佐(新陽明門院) |
1064 | よしさらは おのかものから かたみとて ほさしやそての なみたはかりも | 公雄 |
1065 | ますかかみ うつりしものを とはかりに とまらぬかけも かたみなりけり | 行能 |
1066 | つらしとて くもりなはてそ ますかかみ われたにひとの かけをわすれし | 光成(大炊御門光俊男) |
1067 | やまとりの をろのかかみに あらねとも うきかけみては ねそなかれける | 土御門院 |
1068 | みせはやな そてのわかれの そのままに なみたはかりの こころなかさを | 家良 |
1069 | さてもなほ おもかけたえぬ たまかつら かけてそこふる くるるよことに | 後鳥羽院 |
1070 | さのみやは つらきいのちの たまかつら としつきかけて なからへもせむ | 資宣 |
1071 | わすられぬ そのおもかけを みにそへて いつをまつまの いのちなるらむ | 基忠(鷹司兼平男) |
1072 | うしとみし ひとよりもなほ つれなきは わすらるるみの いのちなりけり | 兼泰 |
1073 | さてもなほ かきりあるよの ならひとて うきにまけぬは いのちなりけり | 円勇 |
1074 | のきはには たれうゑおきて わすれくさ いまはたつらき つまとなるらむ | 基平(近衛兼経男) |
1075 | かひもなし とはてとしふる よもきふの われのみしのふ もとのこころは | 実家(藤原実経男) |
1076 | としふれと こひしきことに そてぬれて ものわすれせぬ わかなみたかな | 通成 |
1077 | いかにして ちきりしことを わすれまし たのむよりこそ つらさをもしれ | 按察(鷹司院) |
1078 | おもかけを いかにわすれむ こころこそ つらしとおもふ をりもありしか | 実経 |
1079 | かねてより ひとのこころの つらからは ちきりしことを たのまましやは | 国基 |
1080 | いかにせむ そてのみぬれて いはみかた いはぬうらみは しるひともなし | 為綱 |
1081 | うきことは つもりのあまの あさゆふに うらむとたにも しらせてしかな | 後嵯峨院 |
1082 | なけかしよ そてのうらなみ たちかへり おもへはうきも ちきりなりけり | 実氏 |
1083 | こきいつる おきつなみまの あまをふね うらみしほとに とほさかりつつ | 資季 |
1084 | うらみても いくよになりぬ すみよしの まつはつれなき いろにこひつつ | 行範(中原行兼男) |
1085 | いまさらに なにかうらみむ わすれねと いひしにかなふ ひとのこころを | 光俊(葉室光親男) |
1086 | いつはりと なにしかひとを うらみけむ わすれすとたに いまはいはねは | 実経 |
1087 | かすかすに うきはわかみと おもふにも ひとをうらみむ ことのはそなき | 氏久 |
1088 | たれをかは みよりほかには うらむへき うきをいとはぬ ひとしなけれは | 定経 |
1089 | よしさらは わかみのとかに いひなさむ つらさをひとの おもひいてにして | 為教 |
1090 | みのとかに ひとのつらさを おもふこそ わすらるましき こころなりけれ | 頼氏(一条高能男) |
1091 | としふれと うきをおもひの しるへにて みになれぬるは つらさなりけり | 重氏 |
1092 | うらむへき ことのはもなく なりにけり つらしといふも かきりこそあれ | 忠家(藤原教実男) |
1093 | のちのよの つらきむくひを おもふにも ひとのためまて うきわかみかな | 近衛(今出河院) |
1094 | おちたきつ よしののかはや いもせやま つらきかなかの なみたなるらむ | 知家 |
1095 | いかはかり むかしをとほく へたてきぬ そのかみやまに かかるしらくも | 公経(藤原実宗男) |
1096 | かみよより としのいくとせ つもるらむ つきひをすくす あまのかくやま | 知家 |
1097 | としふとも よしののたきの しらいとは いかなるよにも たえしとそおもふ | 道経 |
1098 | みやたきの たきのみなかみ たつねみむ ふるきみゆきの あとやのこると | 道家 |
1099 | いまもまた ゆきてもみはや いそのかみ ふるのたきつせ あとをたつねて | 後嵯峨院 |
1100 | なみたとて からぬときさへ きてみれは そてにそかかる たきのしらたま | 親子(典侍親子朝臣) |
1101 | われみても むかしはとほく なりにけり ともにおいきの からさきのまつ | 為家 |
1102 | ゆききには たのむかけそと たちよりて いそちなれぬる しかのはままつ | 良覚 |
1103 | かひなしや いなはのやまの まつとても またかへりこむ むかしならねは | 為氏 |
1104 | いかにせむ わかみにこゆる しらなみの すゑのまつやま まつこともなし | 忠基(藤原高実男) |
1105 | たかさこの まつもかひなし たれをかも あはれなけきの しるひとにせむ | 忠定(藤原兼宗男) |
1106 | われのみか とけぬうらみは いにしへの よよにもありと いはしろのまつ | 実経 |
1107 | むかしより かよひしなかの あととめて こころへたつな あしからのせき | 実氏 |
1108 | ききわたる なからのはしも くちにけり みのたくひなる ふるきなそなき | 実氏 |
1109 | いたつらに きえかへりつつ やまかはの かはれいつれの よをたのむらむ | 道家 |
1110 | いかにせむ みをはやなから おもひかは うたかたはかり あるかひもなし | 教定(飛鳥井雅経男) |
1111 | みたらしや みはしつむとも なかきよに なをなかすへき うたかたもかな | 大弐(安嘉門院) |
1112 | おもひいてて たれかしのはむ はまちとり いはねかくれの あとのはかなさ | 少将(藻壁門院) |
1113 | いにしへの あとをはつけよ はまちとり むかしにかへる なみのたよりに | 顕尋 |
1114 | わかのうらに むかしをしのふ はまちとり あとおもふとて ねをのみそなく | 泰朝 |
1115 | わかのうらの なみのしたくさ いかにして つきにしらるる なをのこさまし | 定為 |
1116 | なみのうへに うかふこのはと みゆるかな こきはなれゆく あけのそほふね | 教長 |
1117 | わひひとの なみたはうみの なみなれや そてしのうらに よらぬひそなき | 俊頼(源経信男) |
1118 | かすならぬ みくつにましる うつせかひ ひろふにつけて そてそしをるる | 但馬(藻壁門院) |
1119 | すてやらぬ わかみのうらの うつせかひ むなしきよとは おもふものから | 越前(嘉陽門院) |
1120 | はかなくも をふのうらなし きみかよに ならはとみをも たのみけるかな | 実雄 |
1121 | なにはなる おなしいりえの あしのねも うきみのかたや しつみはてなむ | 為綱 |
1122 | なにかその なにはのあしの かりのよに うきふしとても おもひみたれむ | 資平 |
1123 | よとともに うきふししらぬ あしのやの あまのそてたに ほしそかねける | 基家 |
1124 | なにはかた むれたるとりの もろともに たちゐるものと おもはましかは | 紫式部 |
1125 | さはにのみ いくとしつきを かさぬらむ くもゐへたつる つるのけころも | 兼氏 |
1126 | ゆめにても おもはさりしを しらくもの かかるうきよに すまひせむとは | 好忠 |
1127 | わかこころ みにすまはれて ふるさとを いくたひいてて たちかへるらむ | 俊頼(源経信男) |
1128 | かきこもる やとのよそめは しつかにて あはれこころの いとまなきかな | 覚忠 |
1129 | よのなかを くるしきものと のかれきて くさのいほりや こころすむらむ | 実経 |
1130 | よをいとふ こころはさても すきぬへし かならすやまの おくならすとも | 円経 |
1131 | さてもなほ ありはつましき やまさとを うきよのほかと なにいそくらむ | 読人不知 |
1132 | ひとはいさ よのうきほかの やまとても わかこころから えやはすまれむ | 教定(飛鳥井雅経男) |
1133 | うしといひて やまちにふかく いりぬれと なほもこのよの つきをみるかな | 重時 |
1134 | うきよをは いてていりぬる やまかけに こころをかへて つきをみるかな | 良珍 |
1135 | われはかり すむとおもひし やまさとに つきもやとかる こけのさむしろ | 公澄 |
1136 | おくやまの いはまかくれの うもれみつ ありとはかりは すむかひもなし | 最信 |
1137 | やまふかく よにすみかぬる うもれみつ やるかたもなき わかこころかな | 忠定(藤原兼宗男) |
1138 | おのつから みやこにかよふ ゆめをさへ またおとろかす みねのまつかせ | 基平(近衛兼経男) |
1139 | やまふかみ まつのあらしに ききなれて さらにみやこや たひここちせむ | 覚盛 |
1140 | すみわひぬ ひとはおとせぬ しはのとに あらしはかりの ゆふくれのそら | 惟明親王 |
1141 | おのつから とひこしひとも かれかれに あとたえはつる やとのみちしは | 行清 |
1142 | とはれぬは いはねのこけに あらはれて みちたえはつる やまかけのいほ | 基氏(藤原基家男) |
1143 | いのりおきし すゑをそたのむ いにしへの あとにはいまも すみそめのそて | 道玄 |
1144 | うゑおきし むかしをさらに たのむかな のこるこすゑの けふのしたかけ | 光成(大炊御門光俊男) |
1145 | ふるさとの くちきのやなき いにしへの なこりはわれも あるかひそなき | 雅有 |
1146 | いかにせむ むかしのあとを たつねても およはぬみちを なほなけきつつ | 実経 |
1147 | わかやまの さかゆくみちを たつねつつ いかてむかしの あとをふままし | 慈助法親王 |
1148 | をしへおく ことのはにのみ かかるかな むかしのにはの つゆのなこりは | 公親 |
1149 | はなならぬ ことのはなれと おのつから いろもやあると きみひろはなむ | 西行 |
1150 | よをすてて いりにしみちの ことのはそ あはれもふかき いろはみえける | 俊成(藤原俊忠男) |
1151 | ふることは かたくなるとも かたみなる あとはいまこむ よにもわすれし | 道信 |
1152 | かすならぬ なをのみとこそ おもひしか かかるあとさへ よにやのこらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1153 | みつくきの あとはかりして いかなれは かきなかすらむ ひとはみえこぬ | 崇徳院 |
1154 | やまみつの ふかかれとても かきやらす きみにちきりを むすふはかりそ | 定家 |
1155 | あととめて とはるるかひも ありなまし むかしおほゆる すさひなりせは | 円嘉 |
1156 | いにしへの なかれのすゑの たえぬかな かきつたへたる みつくきのあと | 家隆 |
1157 | わかのうらに おいすはいかて もしほくさ なみのしわさも かきあつめまし | 為家 |
1158 | たえもせし むかしのよよの あととめて たちかへりぬる わかのうらなみ | 道洪 |
1159 | さしもなと あとあるみちに まよふらむ みかさのやまの なさへかはらて | 教良 |
1160 | さしのほる あととはみれと みかさやま つかふるほかの みちはたのます | 為教 |
1161 | くらゐやま ふもとはかりの みちをたに なほわけかたく かかるしらくも | 隆祐 |
1162 | なきかけの おやのいさめは そむきにき こをおもふみちの こころよわさに | 定家 |
1163 | ちきりあれは みのおもひての ひかけくさ このよをかけて またむすふかな | 為綱 |
1164 | うれしさを かさぬるそての かすことに そめますいろの こころにそしむ | 大輔(殷富門院) |
1165 | うれしさも なみたなりけり わかそては うきときはかり ぬるるものかは | 長景 |
1166 | ふりはつる おなしみとりの そてのうへに おちてなみたそ いろかはりける | 兼泰 |
1167 | つかへこし みはしもなから わかみちの なをやくもゐの よよにととめむ | 経長(丹波経基男) |
1168 | つかへこし よよのなかれを おもふにも わかみにたのむ せきのふちかは | 為兼 |
1169 | つかへつつ いへちいそかぬ よなよなの ふけゆくかねを くもゐにそきく | 良教 |
1170 | とりのねそ あかつきことに なれにける きみにつかふる みちいそくとて | 為氏 |
1171 | はからすよ よにありあけの つきにいてて ふたたひいそく とりのはつこゑ | 定家 |
1172 | もろこしも たくひやあると たつねはや みたひあひみる あきのみやひと | 実氏 |
1173 | ななそちの むなしきつきひ かそふれは うきにたへたる みのためしかな | 定家 |
1174 | ゆくすゑの おほつかなさや たちかへり このよにとまる こころなるらむ | 公衡(藤原公能男) |
1175 | たちかへり みちあるよには なりぬれと おもふおもひの すゑやまよはむ | 良経(九条兼実男) |
1176 | おもふほと こころをひとに しられねは うしといふにも ことわりはなし | 為家 |
1177 | たつぬれは ことわりはなし とにかくに ひとのなけきを わかうれへつつ | 泰時 |
1178 | おろかなる わかみといかて しりぬらむ おもひわくへき こころならぬに | 経平(衣笠家良男) |
1179 | かからすは おもひもしらて やみなまし わかみよりこそ うきよなりけれ | 御匣(式乾門院) |
1180 | ありはてぬ みたにこころに かなはぬに おもひのほかの よにもふるかな | 赤染衛門 |
1181 | あはれなと みにまかすへき こころさへ はてしらぬよの ならひなるらむ | 公世 |
1182 | とにかくに うきはこのよの ならひそと おもへはみをも うらみやはする | 親清女 |
1183 | はかなくそ うきはこのよの ならひとも ことわりしらて なほなけきける | 性助法親王 |
1184 | かすならぬ みはことわりと おもへとも なほうきときは よをそうらむる | 宣時(北条) |
1185 | おほかたの ならひにのみや なくさめむ わかみひとつの うきよならねは | 忠景 |
1186 | わかそては ほすまもあらし よのなかの うきにまかする なみたなりせは | 時遠 |
1187 | さてもなほ つきせぬものは かすならて わかみよにふる なみたなりけり | 則俊 |
1188 | うきものと おもひとりにし みのほとを しらておつるは なみたなりけり | 厳雅 |
1189 | しらさりき そてになかるる なみたかは うきておもひの かかりけるよを | 家隆 |
1190 | なにとまた さらになみたの こほるらむ うきはわかみの ねさめのみかは | 高定 |
1191 | なにとかは ひとにもいまは かたるへき みのうきほとは よそにみゆらむ | 能清 |
1192 | よやはうき ひとやはつらき おほかたの みをおもはぬは こころなりけり | 基家 |
1193 | うらむへき ひとはさなから むかしにて よにもしられぬ みとそなりゆく | 実経 |
1194 | みのうへを おもひなくさむ ほとそなき ひとをみるにも ためしやはある | 基氏(藤原基家男) |
1195 | なにことも よよのむくひと おもふにそ ひとのつらさも わすられにける | 忠家(藤原教実男) |
1196 | さきのよの むくひかなしき みのほとを しらすかほにや またなけくへき | 実氏 |
1197 | ありとても いまいくほとの ゆくすゑに わかみひとつを おもひわふらむ | 家良 |
1198 | おもひおく ことたになくは とにかくに をしかるへくも なきいのちかな | 俊恵 |
1199 | なにことも おもひすてたる みそやすき いのちはかりに よをはまかせて | 基家 |
1200 | なにことを よにはまつへき いのちとて なかくもかなと みをおもふらむ | 忠兼(藤原忠行男) |
1201 | かきりある いのちならすは よのうさに たへてもものを おもはさらまし | 御匣(式乾門院) |
1202 | なからへて いけるをいまは なけくかな うきはいのちの とかならねとも | 行経 |
1203 | みのほとの うきをもしらて つれなきは なほなからふる いのちなりけり | 教範 |
1204 | まつことの とにもかくにも あらはこそ なからへはやと みをもおもはめ | 心円 |
1205 | いまはわれ としののこりを さりともと たのみしほとの なくさめもなし | 兼朝 |
1206 | ゆくすゑを たのみてよをも すくすかな うきをはよそに おもひなしつつ | 時景 |
1207 | ゆくすゑも なほこしかたに かはらすは うきにそへてや おいをなけかむ | 乗雅 |
1208 | かすかすに またれしことは むなしくて おいそみをしる はしめなりける | 公朝 |
1209 | おいぬとて もろきなみたは くもれとも こころはつきに すみまさりけり | 静仁法親王 |
1210 | いかにせむ なくさむつきの なさけたに またみにいとふ おいとなりぬる | 信実 |
1211 | おいぬとて みをもなけかし ありあけの つきもさかりの ころはすきにき | 実氏 |
1212 | みるままに おいのかけこそ かなしけれ むそちあまりの ありあけのつき | 隆弁 |
1213 | うきものと おいのねさめを ききしかと かくてそみける ありあけのつき | 長綱(藤原長村男) |
1214 | ききわかぬ ゆふつけとりの こゑよりも おいのねさめそ ときはさたむる | 信実 |
1215 | あはれなり おいのねさめの とりのねに いまいくたひか よをのこすへき | 実経 |
1216 | いつとなく いまはならひの ねさめにて おいてしらるる あかつきのそら | 後嵯峨院 |
1217 | おいらくの かかみのやまの おもかけは いたたくゆきの いろやそふらむ | 実定 |
1218 | うきことは もとのみにして おいらくの かけのみかはる ますかかみかな | 仲業 |
1219 | かけうつす かかみをなにと うらむらむ おいはわかみに かはるすかたを | 時広 |
1220 | おいらくの かけみるたひに ますかかみ なほむかしこそ こひしかりけれ | 基俊 |
1221 | さりともと むかしはすゑを たのみきて おいそなけきの かきりなりける | 知家 |
1222 | ゆくとしの つもるはかりと おもひしに おいはなみたの かすもそひけり | 能清 |
1223 | たちよれは そてこそぬるれ としへぬる みさへおいその もりのしたつゆ | 道円 |
1224 | おいにける むそちのとしを かそへても のこりなきみを なほなけくかな | 承澄 |
1225 | かくてよに をしからぬみそ としへぬる うきやつれなき おいとなるらむ | 秀茂 |
1226 | うしとても こころひとつに すてやらて よにをしまれぬ みこそふりぬれ | 静仁法親王 |
1227 | おほかたの うきよはよしや いとはれす みのつらさにそ そてはぬれける | 良実 |
1228 | しりなから いとはぬよこそ かなしけれ わかためつらき みをおもふとて | 実氏 |
1229 | いくたひか こころのうちに そむくらむ まことにすてぬ このよなれとも | 右衛門督(中務卿宗尊親王家) |
1230 | あれはうく そむけはをしき よのなかを いつひとかたに おもひさためむ | 澄舜 |
1231 | なけくまに つきひそすくる そむきても みをかくすへき うきよならねは | 長綱(藤原長村男) |
1232 | なにとまた そむかれぬよの うきたひに まつなけかるる こころなるらむ | 頼重 |
1233 | おもふこと せめてむなしき はてはまた こころなるへき よをそそむかぬ | 兼氏 |
1234 | そのことに こころとまると なけれとも そむくとならは よをやをしまむ | 家良 |
1235 | こころから なけきけるこそ かなしけれ うきはならひの よをはそむかて | 尚長(丹波経長男) |
1236 | すてやらぬ こころからにや いてさらむ うきよのせきは もるひともなし | 政村 |
1237 | うきたひに をしからすとは いとへとも すてやられぬは わかみなりけり | 教良 |
1238 | つらしとて ひとをうらみむ ゆゑそなき わかこころなる よをはいとはて | 土御門院 |
1239 | さらてたに あるにもあらぬ みのほとを なきになしても なほやいとはむ | 基良 |
1240 | あちきなや たれまたみをは おもへとて こころにさへも いとひはつらむ | 寂蓮 |
1241 | うきみそと おもひそめつる こころより そてのいろさへ あらすなりぬる | 公雄 |
1242 | いかにわか むすひおきける もとゆひの しもよりさきに かはりはつらむ | 為顕 |
1243 | としつもる おいとはなにか なけきけむ うきよをいとふ しるへなりけり | 通成 |
1244 | おいてこそ よをそむくとは おもひしに さてしもとしの なほつもるかな | 信実 |
1245 | いつはりの なからむよをそ そむくへき いへをいつるも まことならねは | 信実 |
1246 | そむかはと むかしおもひし よのなかの なほうきときそ なくさめもなき | 忠兼(藤原忠行男) |
1247 | くらゐやま さかゆきこえて のちにこそ やすくはみちに おもひいりしか | 実房 |
1248 | たちかへる むかしならねは おもひいての なきにつけても なほそこひしき | 御匣(式乾門院) |
1249 | おのつから なほなからへて としふとも なにをむかしの みとかしのはむ | 家隆 |
1250 | わひぬれは ありてうきよそ をしまるる しのふむかしの なこりはかりに | 雅成親王 |
1251 | うきみこそ かはりはつとも よのなかの ひとのこころの むかしなりせは | 宗尊親王 |
1252 | わかみから とほさかりゆく むかしかと おもふにつけて おいそかなしき | 信実 |
1253 | おいぬれは しのふへしとも しらさりし わかいにしへそ さらにこひしき | 兼氏 |
1254 | しのふへき ものともしらて すくしてし つきひそいまは むかしなりける | 源恵 |
1255 | こしかたそ つきひにそへて しのはるる まためくりあふ むかしならねは | 政村 |
1256 | しのふれと かへらぬものを なにとまた むかしをいまに おもひいつらむ | 為成(藤原) |
1257 | あかつきの ねさめになにの さそふらむ われはみぬよの とほきむかしを | 義政 |
1258 | みしことの たためのまへに おほゆるは ねさめのほとの むかしなりけり | 為家 |
1259 | つかへこし よよのむかしを おもひねの あかつきつくる とりのねもうし | 伊平 |
1260 | つかへても をりをりそての ぬるるかな むかしのみよを しのふなみたに | 経任(中御門藤原為経男) |
1261 | いにしへの くもゐのつきは それなから やとりしみつの かけそかはれる | 俊成(藤原俊忠男) |
1262 | むかしをは おもかはりして おもへとも みしよわすれぬ つきのかけかな | 信実 |
1263 | ねぬにみし むかしのゆめの なこりとて おいのなみたに のこるつきかけ | 素暹 |
1264 | ゆめとてや いまはひとにも かたらまし いたつらにのみ すきしむかしを | 能清 |
1265 | かすならて としふるゆめに のこるみは きのふのあとを とふかひもなし | 基家 |
1266 | けふといひ きのふとくらす ゆめのうちに いそちあまりの すくるほとなさ | 教定(飛鳥井雅経男) |
1267 | いそちあまり わかよふけぬと おもふにも なほおとろかぬ ゆめそつれなき | 道宝 |
1268 | なかきよの はしめをはりも しらぬまに いくよのことを ゆめにみつらむ | 花山院 |
1269 | おもひねの みのあらましに みるゆめを いけるかきりの うつつともかな | 隆博 |
1270 | みるほとは おもひもわかぬ うたたねの ゆめはさめてそ はかなかりける | 光成(大炊御門光俊男) |
1271 | まとろまぬ ほとをうつつと おもひしは ゆめのよしらぬ こころなりけり | 家良 |
1272 | うつつにも ゆめにもあらぬ まほろしの ありてなきよを なになけくらむ | 澄覚法親王 |
1273 | おのつから おとろくひまも あらはこそ ゆめのよとたに おもひあはせめ | 聖兼 |
1274 | うたたねの ゆめにもうとく なりにけり おやのいさめの むかしかたりは | 親長 |
1275 | わかれをは ひとよのゆめと みしかとも おやのいさめそ たえてひさしき | 顕氏(六条顕家男) |
1276 | たらちねの おやのいさめの かたみとて ならひしことの ねをのみそなく | 公世 |
1277 | たらちねの あらはあるへき よはひそと おもふにつけて なほそこひしき | 能清 |
1278 | なをのこす こけのしたとも まちもせす あるよなからに うもれぬるみは | 為家 |
1279 | いかにせむ つひのけふりの すゑならて たちのほるへき みちもなきみを | 長明 |
1280 | みをかへて あらぬいのちの きえぬまを なきかすにたに たれかしのはむ | 俊成女 |
1281 | このよには ふたたひあはぬ わかれちに ととまるひとの なきそかなしき | 慈円 |
1282 | かたみとて をりをりことに みるものは なみたのたまの かさしなりけり | 光頼 |
1283 | いまこむと いひたにおかて しらつゆの かりのやとりを わかれぬるかな | 円融院 |
1284 | めつらしき はるのひかりを けふみても ゆきふるとしの そてはかわかす | 長家 |
1285 | としとしの はるのくさにも なくさまて かれにしひとの あとをこひつつ | 少将(藻壁門院) |
1286 | いろもかも あはれはしるや なきひとの こころととめし やとのうめかえ | 少将(藻壁門院) |
1287 | はることに なれこしひとの おもかけを またしのへとや はなのさくらむ | 読人不知 |
1288 | おもひきや ちりにしはなの かけならて このはるにさへ あはむものとは | 俊忠 |
1289 | あたにちる はなによそへて なきひとを おもへはおつる わかなみたかな | 良実 |
1290 | またくへき はるをなにとて をしむらむ ありしわかれよ いつかわすれむ | 国信 |
1291 | おもひきや かけしたもとの いろいろを けふはみのりの はなとみむとは | 民部卿典侍(後堀河院) |
1292 | けふまてに つゆのいのちの きえやらて みのりのはなと みるそかひなき | 道家 |
1293 | いまさらに よそのなみたの いろそそふ みのりのはなの つゆのことのは | 通方 |
1294 | つゆきえし のちしのへとや うゑおきて なみたいろそふ なてしこのはな | 師継 |
1295 | あはれなり くさのかけにも しらつゆの かかるへしとは おもはさりけむ | 忠家(藤原教実男) |
1296 | いつまてか あきのならひと おもひけむ うきなみたにそ そてはぬれける | 基平(近衛兼経男) |
1297 | なへてよの いろとはみれと ふちはかま わきてつゆけき やとにもあるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
1298 | おもへたた きえにしあとの あきかせに なみたかすそふ よもきふのつゆ | 定円(葉室光俊男) |
1299 | なきひとを しのふのつゆに そてぬれて あれゆくのきの つきをみるかな | 読人不知 |
1300 | かたみとて なかむはかりの こころたに あらはそつきの かけもくもらむ | 実瑜 |
1301 | このあきは なれしみかけの こひしくて そのよににたる つきをたにみす | 俊忠 |
1302 | きみこふる なみたにつきは みえねとも おもかけのみそ たちもはなれぬ | 師時 |
1303 | きみのみや むかしをこふる それなから わかみるつきも おなしこころを | 道長 |
1304 | いまはたた きみかみかけを たのむかな くもかくれにし つきをこひつつ | 公任 |
1305 | いまもなほ しくるるそては ほしやらす みしよのゆめの あきのわかれに | 定縁 |
1306 | そてぬらす むかしなからの ふるさとに なみたあらそふ ゆふしくれかな | 通忠女 |
1307 | あはれにも たつねけるかな ありしよに みしもろひとの おもかはりせて | 上総(堀河院中宮) |
1308 | あらぬよの とよのあかりに あふひとは みしおもかけを こひぬひそなき | 師時 |
1309 | たれもみな けふのみゆきに さそはれて きえにしあとを とふひとそなき | 堀河(待賢門院) |
1310 | いつのまに むかしのあとと なりぬらむ たたよのほとの にはのしらゆき | 為家 |
1311 | おもはすよ たたよのほとの にはのゆきに あとをむかしと しのふへしとは | 忠基(藤原高実男) |
1312 | ふりまさる あとこそいとと かなしけれ こけのうへまて うつむしらゆき | 基隆(藤原基綱男) |
1313 | ゆきふかき こけのしたにも わすれすは とふへきひとの あとやまつらむ | 良心 |
1314 | よのつねの としのくれとそ をしままし ゆめのうちなる ひかすならすは | 信実 |
1315 | さめやらて あはれゆめかと たとるまに はかなくとしの くれにけるかな | 忠良 |
1316 | ときのまも たちやはなれし いまはとて そはぬけふりの はてそかなしき | 長雅 |
1317 | ゆめそとは おもひなからも さめやらぬ こころそなかき まとひなりける | 少将(藻壁門院) |
1318 | あすしらぬ わかみのうさは おとろかて あはれをよそに きくそはかなき | 実房 |
1319 | たれもけに うきよのゆめと しりなから おとろかてのみ すくるはかなさ | 実国 |
1320 | さためなき このよのゆめの はかなさを いひあはせても なくさめしかな | 雅通(源雅定男) |
1321 | かなしさの なほさめかたき こころには いひあはせても ゆめかとそおもふ | 俊成(藤原俊忠男) |
1322 | わかみにて ならはさりせは なけくらむ ひとのこころを いかてしらまし | 永縁 |
1323 | うつもれぬ なのみのこして なきひとの いつくにつひの やとさたむらむ | 定円(葉室光俊男) |
1324 | めくりきて かたみとならは なくさまて おなしつきひは なほそかなしき | 禅空 |
1325 | ひとなみに あらぬたもとは かはらねと なみたはいろに なりにけるかな | 清輔 |
1326 | すみそめに あらぬそてたに かはるなり ふかきなみたの ほとはしらなむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1327 | かきりあれは われとはそめぬ ふちころも なみたのいろに まかせてそきる | 成茂 |
1328 | はかなさに いかてたへまし これそこの よのことわりと おもひなさすは | 慈円 |
1329 | ゆめのよに わかれてのちの こひしさを いかにせよとて きみになれけむ | 民部卿典侍(後堀河院) |
1330 | かなしさは またもたくひの あらはこそ いかはかりとも ひとにしらせめ | 大弐(安嘉門院) |
1331 | おもかけを わすれむとおもふ こころこそ わかれしよりも かなしかりけれ | 実氏 |
1332 | おいらくの つらきわかれは かすそひて むかしみしよの ひとそすくなき | 定家 |
1333 | かたみとて いまはなみたの たまつさを かきやるかたも なくなくそみる | 基良 |
1334 | みしひとの かけもなけれは ますかかみ むなしきことを いまやしるらむ | 澄憲 |
1335 | おもかけは あまたむかしの ふるさとに たちかへりても ねをのみそなく | 覚源 |
1336 | けふまても なからふへしと おもひきや わかれしままの こころなりせは | 親清女妹 |
1337 | おもひきや よそにききこし あふさかを わかれのみちに けふこえむとは | 国助 |
1338 | うつのやま うつつにてまた こえゆかは ゆめとみよとや あとのこしけむ | 蓮生法師 |
1339 | こととはて おもひしよりも みやことり ききてくやしき ねをやなくらむ | 寂蓮 |
1340 | みやことり ききてくやしき ゆめのうちを おとろかすにそ ねはなかれける | 読人不知 |
1341 | かひなくて さすかにたえぬ いのちかな こころをたまの をにしよらねは | 和泉式部 |
1342 | いつとても なみたのあめは をやまねと けふはこころの くもまたになし | 和泉式部 |
1343 | たにのとは またあけやらす おもふらむ たかきみねには ひかけさすなり | 後嵯峨院 |
1344 | ぬるよなく のりをもとむる ひともあるを ゆめのうちにて すくるみそうき | 選子内親王 |
1345 | さまさまに うまれきにける よよもみな おなしつきこそ むねにすみけれ | 良経(九条兼実男) |
1346 | すゑのつゆ もとのしつくを ひとつそと おもひはてても そてはぬれけり | 良経(九条兼実男) |
1347 | あさちふや ましるよもきの すゑはまて もとのこころの かはりやはする | 定家 |
1348 | くさのいほに としへしほとの こころには つゆかからむと おもひかけきや | 選子内親王 |
1349 | いかにして みやこのほかの くさのいほに しはしもとまる みとなりにけむ | 慈円 |
1350 | まよひける こころもはるる つきかけに もとめぬたまや そてにうつりし | 俊成(藤原俊忠男) |
1351 | たちかへり とかすはいかか からころも うらにかけたる たまもしらまし | 祐盛 |
1352 | あつめおく まとのほたるよ いまよりは ころものたまの ひかりともなれ | 公豪 |
1353 | いにしへは おのかさまさま ありしかと おなしやまにそ いまはいりぬる | 源信 |
1354 | わかために うきをしのふの すりころも みたれぬいろや こころなるらむ | 伊信 |
1355 | いにしへも いまもかはらぬ つきかけを くものうへにて なかめてしかな | 後嵯峨院 |
1356 | もとめける みのりのみちの ふかけれは こほりをたたく たにかはのみつ | 定家 |
1357 | きえやすき わかみにかへて たつねみむ たへなるのりの みちしはのつゆ | 乗雅 |
1358 | よよふりて たえぬちかひの ありかすに つもれるちりの ほとそひさしき | 源承 |
1359 | わしのやま くもるこころの なかりせは たれもみるへき ありあけのつき | 西行 |
1360 | すゑとほく なかれしみつに みなかみの つきせぬほとを しらせつるかな | 思順 |
1361 | つたひゆく いそちのすゑの やまのゐに みのりのみつを くみてしるかな | 慈円 |
1362 | ひとえたも われやははなに てもふれし をのへのさくら さけはこそちれ | 光俊(葉室光親男) |
1363 | のりのみち あとふむかひは なけれとも われもやそちの はるにあひぬる | 蓮生法師 |
1364 | きさらきや たききつきにし はるをへて のこるけふりは かすみなりけり | 円空 |
1365 | いかにせむ そのもちつきそ くもりぬる つるのはやしの よはのけふりに | 慈円 |
1366 | わかれけむ むかしにあはぬ なみたこそ なほさりならす かなしかりけれ | 赤染衛門 |
1367 | ふきかへす ころものうらの あきかせに けふしもたまを かくるしらつゆ | 良経(九条兼実男) |
1368 | ひとのみも わかみもむなし うつせみの たかうきよとて ねをはなくらむ | 実伊 |
1369 | あすかかは おなしなかれの みつもなほ ふちせはさすか ありとこそきけ | 公誉 |
1370 | あはれなり くもゐをわたる はつかりも こころあれはそ ねをはなくらむ | 光俊(葉室光親男) |
1371 | まちいてて いくたひつきを なかむとも おもひはれすは かひやなからむ | 読人不知 |
1372 | さとわかす なかむるひとの そてことに かけもをしまぬ やまのはのつき | 雅経 |
1373 | むねのうちの くもらぬつきに うつしてそ ふかきみのりを こころとはしる | 隆衡 |
1374 | むねのうちに すむつきかけの ほかにまた ふかきみのりの こころやはある | 心海 |
1375 | むねのうちに ありともしらぬ むかしたに あたにやはみし あきのよのつき | 慶政 |
1376 | みつのおもに ひかりをわけて やとるなり おなしみそらの あきのよのつき | 道宝 |
1377 | かけはまた あまたのみつに うつれとも すみけるつきは ふたつともなし | 読人不知 |
1378 | くもりなく こころのそこも うつるらむ もとよりきよき のりのかかみは | 覚源 |
1379 | はれくもる ひとのこころの うちまても そらにてらして すめるつきかな | 良覚 |
1380 | おもひわく むつのこころを はなれては まことをさとる みちやなからむ | 最信 |
1381 | いまはまた ほとけのために たをるかな おいのかさしの あきのしらきく | 基家 |
1382 | いろいろに かはるこすゑの もみちはも しくれならては そむるものかは | 良守 |
1383 | いろもかも こころのうちに あるものを をしむにいかて はなのちるらむ | 宗性 |
1384 | はるあきの はなももみちも おしなへて むなしきいろそ まことなりける | 道玄 |
1385 | あやなくも あらぬみやまと おもふかな このおくにこそ はなはさくなれ | 定円(葉室光俊男) |
1386 | おもひとく ふかきえにこそ しられけれ みつのほかなる こほりなしとは | 家良 |
1387 | みつのおもに うつりうつらぬ かけにこそ すみにこりける こころをはしれ | 後嵯峨院 |
1388 | まとのつき のきはのはなの をりをりは こころにかけて みをやたのまむ | 経平(衣笠家良男) |
1389 | くもりゆく ひとのこころの すゑのよを むかしのままに てらすつきかけ | 円空 |
1390 | ゆふひかけ さすかとみえて くもまより まかはぬはなの いろそちかつく | 禅空 |
1391 | よしさらは われとはささし あまをふね みちひくしほの なみにまかせて | 信生 |
1392 | うきよには なをととめしと おもへとも このひとかすに いかていらまし | 俊快 |
1393 | うらやまし いかなるそらの つきなれは こころのままに にしへゆくらむ | 源信 |
1394 | にしにのみ すむとないひそ しつかなる ひかりへたてぬ ありあけのつき | 定円(葉室光俊男) |
1395 | むつのみち あるしさためぬ ものゆゑに たれふるさとと いひはしめけむ | 蓮生法師 |
1396 | うけかたき むくひのほとの かひもなし まことのみちに またまよひなは | 源承 |
1397 | たつねきて まことのみちに あひぬるも まよふこころそ しるへなりける | 行円(二階堂行忠男) |
1398 | いにしへの みつのみなかみ いかにして ひとつなかれの すみにこりけむ | 少将(藻壁門院) |
1399 | もかりふね たたおなしえの よしあしを わくるそよよの まよひなりける | 則俊 |
1400 | くらくとも さすかひかりも ありぬへし ひとかたならぬ のりのともしひ | 公豪 |
1401 | なかきよの こころのやみの しるへせよ なほのこりける のりのともしひ | 後嵯峨院 |
1402 | いのりつる なみたにかへて おいかみの よにふるあめを あはれとはみよ | 隆弁 |
1403 | のりのあめ ありしむかしに かはらねは ちとせふるとも たえしとそおもふ | 允仲 |
1404 | かれのこる のりのことのは すゑまても すてぬめくみに いかてあふらむ | 聖憲 |
1405 | たにかはの わかひとなかれ かきとめて たえさりけりと ひとにしらせむ | 成源 |
1406 | かきとむる わかひとなかれ すゑうけて たえすつたへむ たにかはのみつ | 公澄 |
1407 | ぬししらて もみちはをらし しらなみの たつたのやまの おなしなもうし | 為家 |
1408 | やまのゐの あかぬかけみる ほかにまた あまれるみつを くみはにこさし | 信実 |
1409 | あさゆふに あふくこころを なほてらせ なみもしつかに みやかはのつき | 後鳥羽院 |
1410 | あとたれて いくよになりぬ かみかせや いすすのかはの ふるきなかれに | 有家(藤原重家男) |
1411 | かみかせや うちとのかみの みやはしら ちたひやきみか みよにたつへき | 家良 |
1412 | いさきよき したついはねの あさひかけ みかけれものは たまくしのつゆ | 兼直 |
1413 | にこりなき みよのなかれの いすすかは なみもむかしに たちかへるらし | 延成 |
1414 | あとたれて いくよへぬらむ あさくまや みやまをてらす あきのつきかけ | 延季 |
1415 | かみよより ひかりをとめて あさくまの かかみのみやに すめるつきかけ | 隆弁 |
1416 | をとこやま あとたれそめし そてのうへの ひかりとみえて うつるつきかけ | 行清 |
1417 | かみかきや よよにたえせぬ いはしみつ つきもひさしき かけやすむらむ | 長方 |
1418 | をとこやま おいてさかゆく ちきりあらは つくへきつゑも かみそきるらむ | 後嵯峨院 |
1419 | そのかみや ふりまさるらむ をとこやま よよのみゆきの あとをかさねて | 知家 |
1420 | いはしみつ たえぬなかれは みにうけつ わかよのすゑを かみにまかせむ | 亀山院 |
1421 | きみのみや くみてしるらむ いはしみつ きよきなかれの ちよのゆくすゑ | 通成 |
1422 | もろはくさ ひきつらねたる けふこそは なかきためしと かみもしるらめ | 肥後(京極前関白家) |
1423 | きみかよに かけをならへて さかきはの いろかはらしと かみやうゑけむ | 氏久 |
1424 | ちはやふる かみにたのみを かけおきし さかきのえたの をりそわすれぬ | 定通(土御門通親男) |
1425 | かみかきに いのりおきてし さかきはの ときはかきはは かけなひくまて | 季保 |
1426 | かみかきに さきそふはなを みてもまつ かせをさまれと よをいのるかな | 久世 |
1427 | ちはやふる わけいかつちの かみしあれは をさまりにける あめのしたかな | 良経(九条兼実男) |
1428 | おもひいつる そてにそかけは やとりける そのかみやまの ありあけのつき | 後鳥羽院 |
1429 | かすかやま みねのさかきは ときはなる みよのひかりも つきにみえつつ | 行能 |
1430 | くりかへし みかさのもりに ひくしめの なかきめくみを なほいのるかな | 祐賢 |
1431 | みかさやま あふくしるしに はるさめの ふりぬるみさへ なほたのむかな | 公親 |
1432 | かみたにも あはれをのこせ みかさやま はなのよそなる わかみなりとも | 師継 |
1433 | くもらしと おもふにつけて たのむかな みかさのやまの あきのつきかけ | 家経(一条実経男) |
1434 | しくれたに もらぬみかさの まつかえに きみかみゆきそ いろはそへける | 家基(近衛基平男) |
1435 | しもゆきを いたたくまてに つかへきて むそちみかさの やまにふりぬる | 祐茂 |
1436 | ちはやふる をしほのやまの みねにおふる まつそかみよの ことはしるらむ | 実雄 |
1437 | こからしも こころしてふけ しめのうちは ちらぬこすゑそ おほはらのやま | 周防内侍 |
1438 | すみよしの はままつかえの たえまより ほのかにみゆる はなのゆふして | 実定 |
1439 | なみたては しらゆふかくる すみよしの まつこそかみの さかきなりけれ | 兼実 |
1440 | すみよしの まつかねあらふ なみのおとを こすゑにかくる おきつしほかせ | 西行 |
1441 | すみよしの きしかたとほき まつかねに かみよをかけて よするしらなみ | 良教 |
1442 | すみよしの まつにむすひし ことのはに いのるちとせを かみやうけけむ | 国平 |
1443 | すみよしの きしにこころを とめつれは ちとせをそふる みゆきなるへし | 長家 |
1444 | みちあれと わかよをかみに ちきるとて けふふみそむる しかのやまこえ | 後嵯峨院 |
1445 | あまくたる かみをひよしに あふきてそ くもりなかれと よをいのりける | 実雄 |
1446 | ひよしとて たのむかけさへ いかなれは くもりなきみを てらささるらむ | 公豪 |
1447 | くもりなき ひよしのかけを たのますは いかてうきよの やみをいてまし | 澄覚法親王 |
1448 | いさきよき こころをくみて てらすこそ くもらぬかみの ひかりなりけれ | 成茂 |
1449 | かすみにし わしのたかねの はなのいろを ひよしのかけに うつしてそみる | 良仙 |
1450 | いにしへの こしちおほえて やまさくら いまもかはらす ゆきとふりつつ | 読人不知 |
1451 | かみかきや けふのみゆきの しるしとて をひえのすきは ゆふかけてけり | 成良 |
1452 | すゑのよの ちりにましはる ひかりこそ ひとにしたかふ ちかひなりけれ | 国長 |
1453 | おいかよを かみやうくらむ みしめなは おもへはなかき わかいのちかな | 氏久 |
1454 | ふりにける みかきにたてる まつかえに いくよのかせの かみさひぬらむ | 淑文 |
1455 | かみかきの くすのしたかせ のとかにて さこそうらみの なきよなるらめ | 定雅(藤原忠経男) |
1456 | いまもなほ ひさしくまもれ ちはやふる かみのみつかき よよをかさねて | 亀山院 |
1457 | くにやすく たみゆたかにと あさゆふに かけてそいのる かみのゆふして | 家経(一条実経男) |
1458 | ちはやふる かみのみむろに ひくしめの よろつよかけて いはふさかきは | 基氏(藤原基家男) |
1459 | さかきとり ますみのかかみ かけしより かみのくになる わかくにそかし | 後嵯峨院 |
1460 | さかきはの かはらぬいろに としふりて かみよひさしき あまのかくやま | 為家 |
1461 | いはたかは わたるこころの ふかけれは かみもあはれと おもはさらめや | 花山院 |