「新拾遺和歌集」一覧
1912件
1 | あけわたる そらにしられて ひさかたの いはとのせきを はるやこゆらむ | 為藤 |
2 | あまのとの あくるをみれは はるはけふ かすみとともに たつにそありける | 光厳院 |
3 | いつしかと とやまのかすみ たちかへり けふあらたまる はるのあけほの | 定家 |
4 | うくひすの さへつるけさの はつねより あらたまりける はるそしらるる | 後嵯峨院 |
5 | はるたつと ひかけもそらに しられけり かすみそめたる みよしののやま | 亀山院 |
6 | たつひより はなとみよとて よしのやま ゆきのこすゑに はるやきぬらむ | 基俊 |
7 | やまさとは つもれるゆきの いつしかと きえぬややかて はるのはつはな | 俊頼(源経信男) |
8 | たにのとは ゆきもこほりも とけやらす やまかけさむき はるのあらしに | 為氏 |
9 | ときしもあれ みねのかすみは たなひけと なほやまさむし ゆきのむらきえ | 永福門院 |
10 | はるのきる かすみのころも なほさむみ もとのゆきけの くもそたちそふ | 実兼 |
11 | はるはまた はつせのひはら かすめとも のこるゆきけに さゆるやまかせ | 実教 |
12 | あしひきの やまはかすみの あさみとり はるともしらす さゆるそらかな | 覚助法親王 |
13 | みよしのの やまのしらゆき きえぬまに ふるさとかけて たつかすみかな | 為定(御子左二条為道男) |
14 | みよしのの たきのしらいと はるくれは あはにとけゆく うすこほりかな | 為相 |
15 | はるのくる あさけのかせの おとはかは たきついはねも こほりとくらし | 冬平 |
16 | はるかせに のさはのこほり かつきえて ふれとたまらぬ みつのあはゆき | 雅経 |
17 | そらにのみ ちりてみたるる あはゆきの きえすははなに まかひはてまし | 後宇多院 |
18 | はるたちて かせやふきとく けふみれは たきのみをより はなそちりける | 貫之 |
19 | ふくかせに さきてはちれと うくひすの しらぬはなみの はなにやあるらむ | 貫之 |
20 | こほりとく かせのおとにや ふるすなる たにのうくひす はるをしるらむ | 斉信 |
21 | たにちかき やとにきなくや うくひすの さとなれそむる はしめなるらむ | 頼政 |
22 | うくひすの たにのといてし あしたより とやまのかすみ たたぬひもなし | 師賢(藤原師信男) |
23 | けさみれは みねにかすみは たちにけり たにのしたみつ いまやもるらむ | 忠通 |
24 | あさまたき やまのかすみを みわたせは よをさへこめて たちにけるかな | 通俊 |
25 | あさひかけ またいてやらぬ あしひきの やまはかすみの いろそうつろふ | 隆祐 |
26 | はるのたつ しるしはかりは かすめとも なほゆききえぬ みわのすきむら | 実重(三条公親) |
27 | ふしのねの ゆきにははるも しられぬを けふりやそらに かすみそむらむ | 義詮 |
28 | ゆきもふり かすみもたてる よしのやま いつかたをかは はるとたのまむ | 能宣 |
29 | あつさゆみ はるになるらし かすかやま かすみたなひき みやこはるけし | 赤人 |
30 | いそのかみ ふるのやしろの はるのいろに かすみたなひく たかまとのやま | 師頼 |
31 | かすかのの かすみのころも やまかせに しのふもちすり みたれてそゆく | 定家 |
32 | はしひめの そてのあさしも なほさえて かすみふきこす うちのかはかせ | 俊成女 |
33 | たましまの このかはかみも しらなみの しらすかすめる ゆふくれのそら | 知家 |
34 | ゆきかへり みつのをかはを さすさをの みなれしあとも かすむはるかな | 為家 |
35 | みるめなき ならひしられて はるはなほ かすみにたとる しかのうらなみ | 基忠(鷹司兼平男) |
36 | しかのうみの しらゆふはなの なみのうへに かすみをわけて うらかせそふく | 家隆 |
37 | もしほやく けふりもなみも うつもれて かすみのみたつ はるのあけほの | 為世(御子左藤原為氏男) |
38 | あかしかた はるこくふねの しまかくれ かすみにきゆる あとのしらなみ | 後鳥羽院 |
39 | はるくれは きしうつなみは のとかにて かすみかかれる すみよしのまつ | 越前(嘉陽門院) |
40 | いにしへの ねのひのみゆき あとしあれは ふりぬるまつや きみをまつらむ | 良経(九条兼実男) |
41 | やまのかひ かすみわたれる あしたより わかなつむへき のへをまつらし | 好忠 |
42 | かすみたつ あしたのはらの ゆききえて わかなつむらし はるのさとひと | 尊氏 |
43 | しろたへの そてもまかはす ゆききえて わかなつむのは はるめきにけり | 定為 |
44 | かすかのは はるめきにけり しらゆきの きえすはありとも わかなつみてむ | 経継 |
45 | よをこめて わかなつみにと いそくまに はるかにすきぬ をきのやけはら | 公能 |
46 | いつかたに わかなつむらむ あしひきの やまさはみつは なほこほりつつ | 実雄 |
47 | たちかへり またきさらきの そらさえて あまきるゆきに かすむやまのは | 為兼 |
48 | たちかへり なほはるさむし たにかけや うちいてしなみの またこほるまて | 内経 |
49 | うめかかに ゆくてのそても うつるまて やまわけころも はるかせそふく | 為藤 |
50 | ひとりぬる くさのまくらの うつりかは かきねのうめの にほひなりけり | 西行 |
51 | たちよりて うめのにほひを かりころも そてにうつさむ ひとなとかめそ | 為世(御子左二条為氏男) |
52 | つれなくて うめのたちえを すきにしを おもひのほかの ここちこそすれ | 小弁 |
53 | はるかせの にほふかたにや たとるらむ うめさくやとを とふひともなし | 為親 |
54 | このころは さけるさかさる おしなへて うめかかならぬ はるかせもなし | 尊氏 |
55 | うめかかは ねさめのとこに にほひきて まとにかたふく はるのよのつき | 実兼 |
56 | ふるさとの のきはのうめよ いくはるの こころをそむる つまとなりけむ | 伏見院 |
57 | うきよには よしなきうめの にほひかな いろにこころは そめしとおもふに | 伏見院 |
58 | かをたにも あくことかたき うめのはな いかにせよとか いろのそふらむ | 花山院 |
59 | うめのはな かたにのこらす ちりにけり うらみてなとか をしまさりけむ | 宇多天皇 |
60 | はるさめも ふりかはりゆく あさはのに たつみわこすけ いろもつれなし | 通光 |
61 | いたつらに ふりぬとおもひし はるさめの めくみあまねき みよにあひつつ | 家良 |
62 | はるさめの なこりのつゆの たまかつら みたれてむすふ あをやきのいと | 俊光 |
63 | あさみとり まついろまさる あをやきの いとよりはるは くるにやあるらむ | 匡房 |
64 | うちなひき はるさりくれは みちのへに そめてみたるる あをやきのいと | 基良 |
65 | さほひめの かすみのそては あをやきの いともておれる ころもなるらし | 公雄 |
66 | いけみつに なみはひまなく あらへとも やなきのいとは ほすひともなし | 素性 |
67 | はるかせに いけのこほりの とけしより むすひかへたる あをやきのいと | 読人不知 |
68 | あさみとり のへのあをやき いててみむ いとをふきくる かせはありやと | 人麿 |
69 | はるかすみ たなひくかたの ゆふつくよ きよくてるらむ たかまとのやま | 赤人 |
70 | かすむよの つきのかつらも このまより ひかりをはなと うつろひにけり | 為家 |
71 | あまのはら ふけゆくそらを なかむれは かすみてすめる はるのよのつき | 家隆 |
72 | かすむよは ゆふゐるくもの いつくとも やまのはしらて つきそまたるる | 後光厳院 |
73 | はるのよの おほろつきよに かへるかり たのむもとほき あききりのそら | 光厳院 |
74 | いつくとも みえこそわかね かりかねの きこゆるそらや なほかすむらむ | 良基(二条道平男) |
75 | うらとほく ひかけのこれる ゆふなきに なみまかすみて かへるかりかね | 為道 |
76 | おほよとの うらよりをちに ゆくかりも ひとつにかすむ あまのつりふね | 知家 |
77 | みつくきの をかのみなとの なみのうへに かすかきすてて かへるかりかね | 素暹 |
78 | やまこゆる かりのはかせに あめはれて くもさへかへる あけほののそら | 基家 |
79 | われはいさ なれもしらしな はるのかり かへりあふへき あきのたのみは | 伏見院 |
80 | なににかは こころもとめむ はなをたに みすててかへる はるのかりかね | 道嗣 |
81 | たちかへる くものかよひち よそなから したふもしらし はるのかりかね | 内実 |
82 | おもひたつ くものかよひち とほからし あかつきふかく かへるかりかね | 基嗣 |
83 | はるきても つれなきはなの ふゆこもり またしとおもへは みねのしらくも | 良経(九条兼実男) |
84 | おもかけに こひつつまちし さくらはな さけはたちそふ みねのしらくも | 定家 |
85 | やまさくら さきやらぬまは くれことに またてそみける はるのよのつき | 俊成(藤原俊忠男) |
86 | くもとのみ みるたにあるを やまさくら いかにかすみの たちへたつらむ | 為遠 |
87 | あけわたる かすみのをちは ほのかにて のきのさくらに かせかをるなり | 後伏見院 |
88 | まかひこし くもをはよそに ふきなして みねのさくらに にほふはるかせ | 小宰相(土御門院) |
89 | いりあひの おとはかすみに うつもれて くもこそかをれ をはつせのやま | 慈円 |
90 | さのみやは あさゐるくもの はれさらむ をのへのさくら さかりなるらし | 俊恵 |
91 | いまそしる くもにまかひし はなのいろは やまのはとほき よそめなりけり | 崇光院 |
92 | たかさこの をのへのくもの いろそへて はなにかさなる やまさくらかな | 為氏 |
93 | をちこちの さくらはくもに うつもれて かせのみはなの かににほひつつ | 為明 |
94 | やまかせの かすみのころも ふきかへし うらめつらしき はなのいろかな | 道家 |
95 | かすみたつ みねのさくらの あさほらけ くれなゐくくる あまのかはなみ | 定家 |
96 | あさひかけ うつろふみねの やまさくら そらさへにほふ はなのいろかな | 公宗(西園寺公衡男) |
97 | みるままに なほくもふかし さくらさく とやまのはるの あけほののそら | 為定(御子左二条為道男) |
98 | ひにそへて たちそかさなる みよしのの よしののやまの はなのしらくも | 讃岐(二条院) |
99 | わけゆけは はなにかきりも なかりけり くもをかさぬる みよしののやま | 義詮 |
100 | さくらはな いまさかりなり ひさかたの くもにくもそふ かつらきのやま | 為秀 |
101 | さきのこす たえまもあらは やまさくら かさねてかかれ みねのしらくも | 慈勝 |
102 | みよしのの たかきのさくら さきぬらし そらよりかかる みねのしらくも | 為実(御子左二条為氏男) |
103 | あらしふく とほやまさくら にほはすは しらてやなほも くもにまかへむ | 経教 |
104 | くもにいる おもかけつらし はなのえに なきてこつたふ はるのうくひす | 実教 |
105 | をりわひて かへらむものか かつらきの やまのさくらは くもゐなりとも | 忠見 |
106 | はるさめの ひかすふるのの さくらかり ぬれてそかへる はなそめのそて | 性助法親王 |
107 | やまひめの かすみのそてや うすからし へたてもはてぬ はなのしらくも | 邦省親王 |
108 | をはつせや かすみにまかふ はなのいろを ふしみのくれに たれなかむらむ | 後鳥羽院 |
109 | みのうさも なかむるからに わすられて はるのこころそ はなにのとけき | 法守法親王 |
110 | けふもまた おほみやひとの さくらはな のとけきはるの かさしにそさす | 為家 |
111 | ももしきや みかきかはらの さくらはな はるしたえすは にほはさらめや | 経信 |
112 | なれてみし くもゐのはなも よよふりて おもかけかすむ ここのへのはる | 伏見院 |
113 | きみゆゑと けふこそみつれ しかのやま かひあるはるに にほふさくらを | 後宇多院 |
114 | しかのやま かせをさまれる はるにあひて きみかみゆきを はなもまちけり | 後二条院 |
115 | さきちるも しるひともなき やとのはな いつのはるまて みゆきまちけむ | 永福門院 |
116 | よよをへて みゆきふりにし やとのはな かはらぬいろも むかしこふらし | 花園院 |
117 | あれはてし しかのふるさと きてみれは はるこそはなの みやこなりけれ | 為兼 |
118 | みよしのの はなはむかしの はるなから なとふるさとの やまとなりけむ | 為氏 |
119 | ふるさとの よしののさくら さきにけり いくよのはるの かたみなるらむ | 実経 |
120 | はなのいろの むかしにかへる はるなれは これをみるにも ものおもひもなし | 道家 |
121 | つねよりも めつらしきかな しらかはの はなもてはやす はるのみゆきは | 忠通 |
122 | そことなき はなのところも やまふかみ そらにしられて にほふはるかせ | 公賢 |
123 | みにかへて おもふもくるし さくらはな さかぬみやまに やともとめてむ | 秀能(藤原秀宗男) |
124 | たつねてそ はなをもみまし このもとを すみかともせぬ わかみなりせは | 光俊(葉室光親男) |
125 | さくをまち ちるををしむに ひかすへて さかりすくなき はなのころかな | 宰相典侍(後宇多院) |
126 | くれはてて いろもわかれぬ はなのうへに ほのかにつきの かけそうつろふ | 光厳院 |
127 | さくらさく たかねをかけて いてにけり はなのかかみの はるのよのつき | 公雄 |
128 | あかすみる はなのにほひも ふかきよの くもゐにかすむ はるのつきかけ | 為家 |
129 | あかすみる やまさくらとの あけほのに なほあまりある ありあけのかけ | 後伏見院 |
130 | あたらよの ありあけのつきに ひとはこて やとのさくらに はるかせそふく | 経継 |
131 | たつたやま ゆふつけとりの おのかねを よふかきはなの いろにまつかな | 為藤 |
132 | としをへて をりけるひとも とはなくに はるをすくさぬ はなをみるかな | 中務 |
133 | またみせむ ひとしなけれは さくらはな いまひとえたを をらすなりぬる | 道済 |
134 | ひとえたの にほひはあかす かみかきや はなのこすゑを ゆきてなかめむ | 実定 |
135 | ひとえたを あかすおもはは さくらはな こすゑにのこる ほとをすくすな | 読人不知 |
136 | きてみよと さらにもいはし やまさくら のこりゆかしき ほとにやはあらぬ | 隆信 |
137 | こころをは まつさきたてつ やまさくら たつねゆくまも めかれすなとて | 寂蓮 |
138 | いへつとに をりつるはなも いたつらに かへさわするる やまさくらかな | 為明 |
139 | やまもりも いかかいふらむ いたつらに かせにまかする みねのさくらを | 花山院 |
140 | さけはかつ うつろふいろを あたなりと みてこそはなに かせはふくらめ | 小宰相(土御門院) |
141 | ちるはなの こころもしらて はるかせの さそふをよそに うらみけるかな | 道嗣 |
142 | ふくかせの えたをならさぬ はるたにも なにをかことに はなのちるらむ | 後光厳院 |
143 | はなのかを さそはさりせは ふくかせを つらしとのみや おもひはてまし | 冬平 |
144 | ふくとしも よそにはみえて もろくちる はなにしらるる にはのはるかせ | 内侍(永福門院) |
145 | やまさくら うつろふいろの はなのかに かすみのそても にほふはるかせ | 為世(御子左二条為氏男) |
146 | よしのやま ふもとのさくら ちりぬらし たちものほらて きゆるしらくも | 重之 |
147 | あけわたる とやまのこすゑ ほのみえて はなにわかるる みねのよこくも | 公忠(藤原実忠男) |
148 | はるのよは あけゆくかねの ひひきまて はなにかすめる をはつせのやま | 忠房親王 |
149 | けさはまた くれはとたのむ かけもなし さくらにくもる よものやまかせ | 通光 |
150 | たちかへる こころそつらき さくらはな ちるをはみしと おもひしものを | 俊頼(源経信男) |
151 | おのつから ちるはならひの はなになほ うらみをそへて はるかせそふく | 有房(六条通有男) |
152 | いささくら ちるをつらさに いひなさて こすゑのほかの さかりともみむ | 基任 |
153 | こすゑより ちりかふはなを さきたてて かせのしたゆく しかのやまみち | 新宰相(伏見院) |
154 | そこきよき なかれたえせぬ みつのおもに はなのにほひを うつしてそみる | 読人不知 |
155 | なかれては いつくにはるの とまるらむ はなちりかかる やまかはのみつ | 崇光院 |
156 | よしのかは はなのしらなみ なかるめり ふきにけらしな やまおろしのかせ | 教長 |
157 | いけみつに はなのにしきを うつしては なみのあやをや たちかさぬらむ | 忠通 |
158 | くやしくそ うつろふはなを たをりつる あやなくそての ゆきとふりけり | 後二条院 |
159 | ちりつもる はなのしらゆき あともなし さかりまてとや ひともとひけむ | 実継 |
160 | ゆきとふる はなにしをりも うつもれて またふみまよふ はるのみやまち | 為世(御子左藤原為氏男) |
161 | ふきみたる はなのしらゆき かきくれて あらしにまよふ はるのやまみち | 光厳院 |
162 | またさそふ このしたかせに かつきえて ふるとしもなき はなのしらゆき | 道性 |
163 | これもまた ありあけのかけと みゆるかな よしののやまの はなのしらゆき | 後嵯峨院 |
164 | たつねつつ けふみさりせは さくらはな ちりにけりとや よそにきかまし | 長実 |
165 | はるかすみ たなひくやまの さくらはな はやくみてまし ちりすきにけり | 人麿 |
166 | あすかかせ あすもふきなは たをやめの かさしのさくら ちりかすきなむ | 経継 |
167 | あかさりし こころにはるや とまるらむ なほおもかけの さらぬはなかな | 仲正 |
168 | としをへて わかみはあらす なりゆけと はなのすかたは かはらさりけり | 清輔 |
169 | いたつらに さきてちりぬる さくらはな むかしのはるの しるしなりけり | 具平親王 |
170 | やまたかみ さこそあらしは さそふとも あまりなるまて ちるさくらかな | 公相 |
171 | ちりまかふ はなはころもに かかれとも みなせをそおもふ つきのいるまは | 忠岑 |
172 | みなそこの かけもうかへは かかりひの あまたにみゆる はるのよひかな | 躬恒 |
173 | ちらぬまに ゆきてをみはや いにしへの いろはかはらし ゐてのやまふき | 実氏 |
174 | いくはるに ゐてのしたおひ めくりあひて さくやまふきの はなをみつらむ | 国冬 |
175 | よしのかは きしうつなみの たかけれは さけるやまふき ちらまくもをし | 良基(二条道平男) |
176 | かはかせは いかにふくとも やまふきの ちりゆくみつを せきやとめまし | 順 |
177 | かけうつす ゐてのたまかは そこきよみ やへにやへそふ やまふきのはな | 俊成(藤原俊忠男) |
178 | そこきよき ゐてのかはへに かけみえて いまさかりなり やまふきのはな | 長能 |
179 | ちりぬれは くやしきものを おほゐかは きしのやまふき けふさかりなり | 季綱 |
180 | なかれゆく かはせのみつに かけみえて ちらぬもうかふ やまふきのはな | 基氏(足利尊氏男) |
181 | やまふきの はなのかかみと なるみつに はるのひかすも うつるとそみる | 覚誉法親王 |
182 | ちりはつる やまふきのせに ゆくはるの はなにさをさす うちのかはをさ | 公経(藤原実宗男) |
183 | やまたかみ まつにかかれる ふちのはな そらよりおつる なみかとそみる | 道済 |
184 | ふちのはな あたにちりなは ときはなる まつにかかれる かひやなからむ | 貫之 |
185 | なにゆゑに なほしたふらむ はなとりの あとなきのちの はるのわかれち | 実教 |
186 | はなゆゑに あかぬわかれは ならひけむ おもひしらすも かへるはるかな | 丹後(宜秋門院) |
187 | うつりゆく つきひもしらぬ やまさとは はなをかきりに はるそくれぬる | 頓阿 |
188 | はなもちり とりものこらす ものことに またあらたまる はるのくれかな | 為藤 |
189 | はつせやま をのへのはなは ちりはてて いりあひのかねに はるそくれぬる | 尊円法親王 |
190 | はなはみな ちりはてにけり いまいくか ひかすはかりの はるをしたはむ | 尊氏 |
191 | すかのねの なかなかしひも いつのまに つもりてやすく はるはくるらむ | 為定(御子左二条為道男) |
192 | をしむとて くるるひかすの ととまらは なほいかはかり はるをしたはむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
193 | みやひとの そてつきころも けふかへて なつきにけらし たかまとのやま | 基家 |
194 | きのふにも そらはかはらて もろひとの ころものいろに なつはきにけり | 尊氏 |
195 | けふもなほ かすむとやまの あさほらけ きのふのはるの おもかけそたつ | 崇光院 |
196 | なつころも たちかへてしも わすれぬは わかれしはるの はなそめのそて | 進子内親王 |
197 | なつころも はるにおくれて さくはなの かをたににほへ おなしかたみに | 家隆 |
198 | うくひすの わすれかたみの こゑはあれと はなはあとなき なつこたちかな | 光厳院 |
199 | はなさかぬ こすゑとみしは よしのやま はるにおくるる さくらなりけり | 読人不知 |
200 | なつあさき あをはのやまの あさほらけ はなにかをりし はるそわすれぬ | 為子(従二位) |
201 | あをはのみ しけりにけりな かたをかの こすゑははなの かけとみしまに | 為藤 |
202 | わかれての のちしのへとや ゆくはるの ひかすにはなの さきあまるらむ | 家良 |
203 | わかそてに かみはゆるさぬ あふひくさ こころのほかに かけてみるかな | 後京極院 |
204 | もろかつら かかるためしは あらしかし けふふたはなる ちよをそふれは | 兵衛(上西門院) |
205 | ふたはなる ちとせをそふる もろかつら しめのうちには ためしにそひく | 安芸(崇徳院) |
206 | わすれすよ いのるみやまの あふひくさ かけしむかしは とほさかれとも | 宰相典侍(後宇多院) |
207 | ほとときす なくへきころも あやにくに まてはやしのふ はつねなるらむ | 尊道法親王 |
208 | なへてよに またるるころの ほとときす さそしのひねは もらしかぬらむ | 為明 |
209 | しのひねと おもふものから ほとときす ききてはひとに まつかたるかな | 一条(昭慶門院) |
210 | ひとつてと いはぬはかりそ ほとときす きくともなくて すきぬなるかな | 顕輔 |
211 | さたかなる ひとつてよりは ほとときす たとるはかりの ひとこゑもかな | 良基(二条道平男) |
212 | まちかねて ややふけにける うたたねの ゆめちにかよふ ほとときすかな | 実房 |
213 | やよやなけ ありあけのそらの ほとときす こゑをしむへき つきのかけかは | 行家(藤原知家男) |
214 | あくるよの つきかけしたふ ほとときす こゑさへくもの いつくなるらむ | 為嗣 |
215 | つきをたに あかすおもひて ねぬものを ほとときすさへ なきわたるかな | 貫之 |
216 | ひとしれぬ おもひやしけき ほとときす なつのよをしも なきあかすらむ | 読人不知 |
217 | つれなさの たくひならしと ありあけの つきにしもなく ほとときすかな | 実兼 |
218 | あかつきと おもはてしもや ほとときす またなかそらの つきになくらむ | 順徳院 |
219 | やまのはの つきになくよの ほとときす またれしよりも いこそねられね | 少将内侍(後深草院) |
220 | ほとときす なきてすきゆく やまのはに いまひとこゑと つきそのこれる | 浄弁 |
221 | ほとときす まつよひすきて やまのはに いさよふつきの かけになくなり | 公蔭 |
222 | あかつきの おもひをそへて ほとときす なといひしらぬ そらになくらむ | 大弐(安喜門院) |
223 | さのみやは こころあるへき ほとときす ねさめのそらに ひとこゑもかな | 後鳥羽院 |
224 | きくままに ほのかになりぬ ほとときす くものよそにや とほさかるらむ | 為教 |
225 | ほとときす ほのかになのる ひとこゑの あかてわかるる みねのよこくも | 忠季(藤原公蔭男) |
226 | むらくもの たなひくそらの ほとときす たえたえにこそ こゑもきこゆれ | 仲綱 |
227 | さよふけて ねさめてきけは ほとときす なくなるこゑや いつこなるらむ | 道信 |
228 | はしひめの まつよふけてや ほとときす まきのをやまに はつねなくらむ | 有光 |
229 | ほとときす やまのしつくに たちぬれて まつとはしるや あかつきのこゑ | 定家 |
230 | つのくにの いくたのもりの ほとときす おのれすますは あきそとはまし | 定家 |
231 | ほとときす きなくをきけは おほあらきの もりこそなつの やとりなるらし | 信明 |
232 | よしさらは こころつくさて ほとときす おのかさつきの ころやまたまし | 頼重 |
233 | しはしたに かたらははこそ ほとときす こころつくしの ほともうらみめ | 定為 |
234 | みやこひと さこそまつとも ほとときす おなしみやまの ともなわすれそ | 花園院 |
235 | あかすなほ しはしかたらへ ほとときす いかにまたれし はつねとかしる | 後光厳院 |
236 | うちしのひ ことかたらはむ ほとときす あすをあやめの ねにはたつとも | 延光 |
237 | あやめくさ さつきのけふの ほとときす そてにはかけぬ ねをやそふらむ | 成久 |
238 | ほとときす おのかさつきの ときしらは あやめかりふく やとになかなむ | 経通(一条内経男) |
239 | おしなへて しけるのさはの なつくさに しめひきわけて さなへとるなり | 氏久 |
240 | けふもまた うらかせあれて みなとたに つりせぬあまや さなへとるらむ | 宣時(北条) |
241 | さととほき やまたのさなへ かへるさを いそかてとるや いそくなるらむ | 国冬 |
242 | さみたれの はるるをひまと をやまたに このゆふくれや さなへとるらむ | 邦省親王 |
243 | おほあらきの もりのうきたの さみたれに そてほしあへす さなへとるなり | 雅朝 |
244 | やまかけや たこのをかさを ふくかせも すすしきくれに さなへとるなり | 後二条院 |
245 | かせにちる はなたちはなを そてにうけて きみかためにと おもひけるかな | 赤人 |
246 | たかそての なこりをとめて たちはなの むかしかはらぬ かににほふらむ | 俊定(藤原経俊男) |
247 | そてふれて みはしにちかく たちはなの にほひもいまは むかしなりけり | 公清 |
248 | しのふるも とほからぬみの むかしかな はなたちはなの ちかきまもりは | 実継 |
249 | こころには ちかきまもりの たちはなの たちなれしよそ とほさかりゆく | 光厳院 |
250 | たちはなの そてのかはかり むかしにて うつりにけりな ふるきみやこは | 定家 |
251 | ふくかせに むかしをのみや しのふらむ くにのみやこに のこるたちはな | 土御門院 |
252 | いつまてか われもしのはむ たちはなの したふくかせに のこるむかしを | 御匣(式乾門院) |
253 | むらさめの なこりのつゆや こほるらむ かせにたまちる のきのたちはな | 雅孝 |
254 | おくつゆも むかしのそての なこりかは しのふくさおふる のきのたちはな | 為信 |
255 | ほとときす たれにむかしを しのへとて さのみおいその もりになくらむ | 氏村 |
256 | かくはかり つれなきものを ほとときす なくやさつきと たれかいひけむ | 直義 |
257 | うきくもの みねたちまよふ むらさめに さそはれいつる やまほとときす | 実氏 |
258 | つきかけは おもひたえたる さみたれの くもよりいつる ほとときすかな | 宮内卿(後鳥羽院) |
259 | さみたれの ふるえのむらの とまやかた のきまてかかる たこのうらなみ | 定円(葉室光俊男) |
260 | さみたれは いりえのまこも かりにこし わたりもみえす なりにけるかな | 河内(前斎宮) |
261 | けふみれは かはなみたかし みよしのの むつたのよとの さみたれのころ | 義詮 |
262 | さみたれに やそうちかはを みわたせは あしろやいつく せせのうもれき | 信実 |
263 | くもくらき まきのをやまの さみたれに やそうちかはは みつまさるらし | 冬平 |
264 | さみたれの ふるのたかはし たかしとも みかさまさりて みえぬころかな | 基任 |
265 | なとりかは せせのうもれき うきしつみ あらはれてゆく さみたれのころ | 為定(御子左二条為道男) |
266 | はれやらて ふるさみたれに あすかかは ふちはせになる ひまやなからむ | 具行 |
267 | ふちはせに かはるならひも あすかかは きこえぬみよの さみたれのころ | 内実 |
268 | さみたれの くものとたえの ゆふひかけ さすかはれまと みゆるそらかな | 通相 |
269 | さしもくさ さしもひまなき さみたれに いふきのたけの なほやもゆらむ | 家良 |
270 | さみたれに ふしのなるさは みつこえて おとやけふりに たちまさるらむ | 慈円 |
271 | ときしらぬ やまほとときす さつきまて ゆきにやふしの ねををしむらむ | 行氏(祝部行言男) |
272 | あやにくに はつねまたれし ほとときす さつきはおのか ときとなくなり | 為氏 |
273 | あやにくに きくへきつきは かさなれと やまほとときす おとつれもせす | 顕仲(源) |
274 | さつきやま ゆすゑふりたて ともすひに しかやはかなく めをあはすらむ | 崇徳院 |
275 | ともしする さつをのまゆみ はるはると かへるやまちの すゑそあけゆく | 基成 |
276 | ともしすと いりにしやまの ふかけれは あけてもかへる みちやたとらむ | 為藤 |
277 | ともしすと つゆわけころも たちぬれて こよひもあかす みやきののはら | 基氏(足利尊氏男) |
278 | くるるより つゆとみたれて なつくさの しけみにしけく とふほたるかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
279 | いしはしる たきのしらいと よるよるは たまぬきちらし とふほたるかな | 盛徳 |
280 | とふほたる おもひはふしと なるさはに うつるかけこそ もえはもゆらめ | 公雄 |
281 | ひさかたの つきのかつらの ちかけれは ほしとそみゆる せせのかかりひ | 道命 |
282 | よかはたつ うふねのかかり さしもなと またるるつきの かけいとふらむ | 実教 |
283 | おほゐかは せせのうふねの かすかすに うきてそもゆる かかりひのかけ | 公宗母 |
284 | うかひふね うきてかかりの みえゆくや たつかはきりの たえまなるらむ | 後宇多院 |
285 | ひとりのみ ぬるとこなつの つゆけさは なみたにさへや いろをそふらむ | 伊勢 |
286 | われのみは あはれともいはし たれもみよ ゆふつゆかかる やまとなてしこ | 式子内親王 |
287 | のへにおく おなしつゆとも みえぬかな はすのうきはに やとるしらたま | 俊成(藤原俊忠男) |
288 | みなかみは ゆふたちすらし やまかはの いはねにあまる たきのしらなみ | 通光 |
289 | かつらきや たかまのやまに ゐるくもの よそにもしるき ゆふたちのそら | 後醍醐院 |
290 | ゆふたちの なこりひさしき しつくかな しのたのもりの ちえのしたつゆ | 伏見院 |
291 | ひとかたに ききのこのはを ふきかへし ゆふたちおくる かせそすすしき | 伏見院 |
292 | なるかみの おとほのかなる ゆふたちの くもるかたより かせそはけしき | 為兼 |
293 | くもかかる ゆふひはそらに かけろふの をののあさちふ かせそすすしき | 覚誉法親王 |
294 | くさふかき まかきのつゆを つきにみて あきのこころそ かねておほゆる | 後伏見院 |
295 | くれたけの よをへてあきや ちかからむ はわけのかせの おとそすすしき | 尊氏 |
296 | なつころも たちよるそての すすしさに むすはてかへる やまのゐのみつ | 雲雅 |
297 | つきのゆく なみのしからみ かけとめよ あまのかはらの みしかよのそら | 後二条院 |
298 | まちいてて しはしすすしく みるつきの ひかりにやかて あくるみしかよ | 為世(御子左藤原為氏男) |
299 | なつのよは つきこそあかね やまのはの あなたのさとに すむへかりけり | 業平 |
300 | あけやすき よのまならすは つきかけを あきのそらとや おもひはてまし | 為家 |
301 | あけやすき ならひたにうき みしかよの つきにはくもの かからすもかな | 実躬 |
302 | いたつらに ふくるはやすき おいかよも おもひしらるる なつのよのつき | 為綱 |
303 | ことのねに ひひきかよへる まつかせを しらへてもなく せみのこゑかな | 読人不知 |
304 | やまひこも こたへそあへぬ ゆふつくひ さすやをかへの せみのもろこゑ | 俊恵 |
305 | けふはまた しのにをりはへ みそきして あさのつゆちる せみのはころも | 和泉式部 |
306 | よるせなき みをこそかこて おもふこと なほおほぬさに なつはらへして | 行輔 |
307 | おほぬさや あさのゆふして うちなひき みそきすすしき かものかはかせ | 進子内親王 |
308 | なみかくる たもともすすし よしのかは みそきにやかて あきやきぬらむ | 実夏 |
309 | けふしはや かへるさすすし みそきかは ゆふなみかけて あきやたつらむ | 実兼 |
310 | あききぬと おもひもあへぬ あさけより はしめてすすし せみのはころも | 光厳院 |
311 | せみのはの うすきたもとに ふきかへて やかてみにしむ あきのはつかせ | 義詮 |
312 | あきかせの ふきにしひより かたをかの せみのなくねも いろかはるなり | 家隆 |
313 | すまのあまの そてになれぬる うらかせも あきとやけさは ふきかはるらむ | 為子(贈従三位) |
314 | つねよりも あきになるをの まつかせは わきてみにしむ ものにそありける | 西行 |
315 | おほともの みつのはままつ かみさひて むかしなからの あきのはつかせ | 経信 |
316 | のきちかき まつのこすゑに おとつれて そてにしくるる あきのはつかせ | 宮内卿(後鳥羽院) |
317 | あすかかせ おとふきかへて たをやめの そてにもけさや あきをしるらむ | 邦省親王 |
318 | たをやめの ころもをうすみ あきやたつ あすかにちかき かつらきのやま | 匡房 |
319 | こすゑふく かせよりあきの たつたやま したはにつゆや もらしそむらむ | 良経(九条兼実男) |
320 | いとはやも つゆそみたるる たまたれの こすのおほのの あきのはつかせ | 寛尊法親王 |
321 | あきはまた あさちかすゑの ゆふかせに わかそてかけて つゆけかるらむ | 一条(徽安門院) |
322 | ひとりゐて なかむるやとに あききぬと をきのうははの おとろかすらむ | 基俊 |
323 | いかなれは をきのはそよく かせのおとの あきときくより さひしかるらむ | 御匣(式乾門院) |
324 | よもすから をきのはかせの たえせぬに いかてかつゆの たまとぬくらむ | 具平親王 |
325 | わきてなと をきのはにのみ のこるらむ ほとなくすくる にはのあきかせ | 後光厳院 |
326 | そてにのみ おきこそまされ をきのはの かせにたまらぬ あきのしらつゆ | 尊氏 |
327 | むかしたれ あきのあはれを しりそめて いまもなみたの つゆこほるらむ | 兵衛督(達智門院) |
328 | あききぬと おもひもあへぬ ころもての たかならはしに つゆけかるらむ | 基忠(鷹司兼平男) |
329 | おもひいてて ひとこそとはね やまさとの まかきのをきに あきかせそふく | 孝標女 |
330 | ひさかたの あまのかはきり たつときや たなはたつめの わたるなるらむ | 躬恒 |
331 | あまのかは かちおときこゆ ひこほしの たなはたつめと こよひあふらし | 赤人 |
332 | さはるへき ちきりならねと たなはたの くるるまつまや くるしかるらむ | 基嗣 |
333 | いくあきも たえぬちきりや たなはたの まつにかひある ひとよなるらむ | 道嗣 |
334 | ここのへの にはのともしひ かけふけて ほしあひのそらに つきそかたふく | 法守法親王 |
335 | いくとせを ゆきめくりても たなはたの ちきりはたえし よはのしたおひ | 行家(藤原知家男) |
336 | たなはたの まれにあふせも としふれは わたりやなるる あまのかはなみ | 経顕(藤原定資男) |
337 | あまのかは としのわたりは とほけれと なかれてはやく あきもきにけり | 崇光院 |
338 | かさねても うらみやはれぬ たなはたの あふよまとほの くものころもは | 忠季(藤原公蔭男) |
339 | いつのまに もみちのはしを わたすらむ しくれぬさきの ほしあひのそら | 兼氏 |
340 | あまのかは おもふかなかに ふねはあれと かちよりゆくか かささきのはし | 宗尊親王 |
341 | いくあきか わたしきぬらむ あまのかは おのかよりはの かささきのはし | 後二条院 |
342 | たなはたの いほはたころも かさねても あきのひとよと なにちきりけむ | 経宣 |
343 | たなはたの くものころもの きぬきぬに かへるさつらき あまのかはなみ | 為家 |
344 | たなはたの あかぬわかれの かへるさに いまこむとしを またちきるらむ | 実俊(西園寺公宗男) |
345 | かせふけは しのにみたるる かるかやも ゆふへはわきて つゆこほれけり | 俊成女 |
346 | ゆふされは をはなかたよる あきかせに みたれもあへぬ つゆのしらたま | 長方 |
347 | かせふけは まののいりえに よるなみを をはなにかけて つゆそみたるる | 瑒子内親王 |
348 | のへことに みたれてみゆる かるかやの つゆふきむすふ あきのやまかせ | 甲裴(輔仁親王家) |
349 | おきあへぬ あさけのつゆに さきそめて こはきかすゑは はなそいろこき | 為子(従二位) |
350 | あさなあさな みれともあかぬ あきはきの はなをはあめに たれぬらしけむ | 月花門院 |
351 | わすれすよ はきのとくちの あけたては なかめしはなの いにしへのあき | 光厳院 |
352 | ちくさなる はなのにしきを あきくれは みるひといかに たちうかるらむ | 具平親王 |
353 | うつらなく いはれののへの あきはきを おもふひととも みつるけふかな | 読人不知 |
354 | みやきのの つゆわけきつる そてよりも こころにうつる はきかはなすり | 隆淵 |
355 | はきかはな をりてをゆかむ みやきのや このしたかせに ちらまくもをし | 定為 |
356 | あきかせは すすしくなりぬ こまなへて いさみにゆかむ はきのはなみに | 人麿 |
357 | はるされは かすみかくれに みえさりし あきはきさけり をりてかささむ | 人麿 |
358 | わかかとに あきはきさけり このねぬる あさかせはやみ はなちりぬへし | 家持 |
359 | さをしかの しからむのへの はきかはな ころもにすらむ ちらまくもをし | 公蔭 |
360 | あきはきの つゆちるはなの すりころも うつろふつきも かけそみたるる | 後光厳院 |
361 | からころも すそののくさの しらつゆの むすへはとくる はなのしたひも | 為氏 |
362 | あきののは こころもしのに みたれつつ こけのそてにも はなやうつらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
363 | をみなへし にほひをそてに うつしては あやなくひとや われをとかめむ | 貫之 |
364 | あたしのの こころもしらぬ あきかせに あはれかたよる をみなへしかな | 基俊 |
365 | をみなへし よかれぬつゆを おきなから あたなるかせに なになひくらむ | 讃岐(二条院) |
366 | なへてさく はなのなかにも をみなへし おほかるのへは すきうかりけり | 元輔(清原春光男) |
367 | かけくらき まかきのもとの きりきりす くるるもまたて ねをやなくらむ | 実性 |
368 | こゑたえす あきのよすから なくむしは あさちかつゆそ なみたなりける | 上総(堀河院中宮) |
369 | つゆふかき またあさあけの くさかくれ よのまのむしの こゑそのこれる | 伏見院 |
370 | ふるさとの まかきのむしや うらむらむ のへのかりねの よさむなるころ | 伏見院 |
371 | あさとあけて はなのひもとく いててみむ たちなかくしそ のへのあききり | 高遠 |
372 | かせさわく くさのまかきの はなすすき おほふはかりの そてかとそみる | 邦世親王 |
373 | ゆふくれの のへふきすくる あきかせに ちくさをつたふ はなのうへのつゆ | 道良女 |
374 | はきのうへの つゆとなりてや くもゐとふ かりのなみたも いろかはるらむ | 頓阿 |
375 | うつらなく あたのおほのの まくすはら いくよのつゆに むすほほるらむ | 顕季 |
376 | うつらなく ゆふへのそらを なこりにて のとなりにける ふかくさのさと | 定家 |
377 | ふかくさや わかふるさとも いくあきか のとなりはてて うつらなくらむ | 宗経(平経親男) |
378 | たちとまる ひとはかたのの はなすすき なにとほにいてて まねくなるらむ | 兵衛(上西門院) |
379 | ゆきかへり ふるさとひとに みをなして ひとりなかむる あきのゆふくれ | 梅壷女御(教通女生子) |
380 | さらてたに ものおもふことの かきりなる ゆふへをときと あきかせそふく | 良基(二条道平男) |
381 | おきあまる つゆはみたれて あさちふの をののしのはら あきかせそふく | 光吉 |
382 | あらあれて つゆやこほるる みちのくの しのふかはらに あきかせそふく | 兼経 |
383 | あらちやま ゆふきりはるる あきかせに やたののあさち つゆもとまらす | 隆教 |
384 | よをこめて くさはのつゆを わけゆけは ものおもふそてと ひとやみるらむ | 花山院 |
385 | あたなりな つゆもてむすふ のへのいほ まかきとたのむ きりのへたては | 為世(御子左藤原為氏男) |
386 | はなすすき そてになみたの つゆそへて くるるよことに たれまねくらむ | 亀山院 |
387 | いまよりは はやいねかての あきかせに いろつきそむる にはのあさちふ | 雅有 |
388 | つきまつと ひとにはいひし いつはりの いまやまことの ゆふくれのそら | 家隆 |
389 | いてぬまに くもふきはらへ つきかけの いさよふみねの あきのゆふかせ | 公忠(藤原実忠男) |
390 | あきかせは こすゑをはらふ ゆふくれに くももかからぬ やまのはのつき | 進子内親王 |
391 | あきかせの はらふもまたて むらくもの かかるをのへを いつるつきかけ | 為世(御子左藤原為氏男) |
392 | はつせやま をのへのかねや ふけぬらむ いさよふくもに いつるつきかけ | 為藤 |
393 | おのつから たたよふくもも すむつきの ひかりにきえて はるるそらかな | 為明 |
394 | いてそむる つきのひかりに あしひきの やまのこのまも あらはれにけり | 通顕 |
395 | そらにすむ ひかりそおそき みねこえて まつはらつたふ あきのよのつき | 経有(一条内経男) |
396 | おしてるや なにはのうらの ゆふなきに あしのすゑはを いつるつきかけ | 公相 |
397 | わたのはら しほちはそらと ひとつにて くものなみより いつるつきかけ | 頼輔 |
398 | かせわたる かとたのすゑに きりはれて いなはのくもを いつるつきかけ | 後醍醐院 |
399 | いつるより ひかりそしるき あきのつき くもらぬみよの ゆくすゑのそら | 良実 |
400 | きみかすむ はこやのやまを いつるより くもらぬつきは そらにみえつつ | 実雄 |
401 | ひさかたの そらにもくもの のこりなく をさまれるよの みゆるつきかな | 為遠 |
402 | なにたかき こよひはあきの なかそらに ひかりみちたる つきのさやけさ | 貞重 |
403 | おもひやる ちさとのほかの あきまても へたてぬそらに すめるつきかけ | 俊光女 |
404 | あしひきの やまたちのほる つきかけの ゆくかたとほき あきのそらかな | 知家 |
405 | つきをみて こころのままに あくかれは いつくかあきの すみかならまし | 三河内侍(二条院) |
406 | さらしなや をはすてやまの つきはみし おもひやるたに なみたおちけり | 実房 |
407 | しかのあまの おもひもいれぬ そてまても あきはいろそふ つきやみるらむ | 小宰相(土御門院) |
408 | みぬよまて こころにうかふ あきのよの つきやむかしの かかみなるらむ | 顕実母 |
409 | くものうへに なれしむかしの おもかけも わすれやすると つきにとははや | 公雄 |
410 | あきのつき むかしをいまに うつしても ややすみまさる やとのいけみつ | 実雄 |
411 | はちすはの たまかとそみる いけみつの にこりにしまぬ あきのよのつき | 後嵯峨院 |
412 | おほゐかは しもはかつらの つきかけに みかきておつる せせのしらたま | 土御門院 |
413 | かみよより いくよろつよに なりぬらむ おもへはひさし あきのよのつき | 後嵯峨院 |
414 | すみのほる こころやそらに たちそひて こよひのつきの かけとなるらむ | 俊恵 |
415 | ふきはらふ あらしのままに あらはれて このまさためぬ つきのかけかな | 為道 |
416 | あきかせの ねやすさましく ふくなへに ふけてみにしむ とこのつきかけ | 伏見院 |
417 | あれにけり しほくむあまの とまひさし しつくもそても つきやとるまて | 定家 |
418 | もろともに なみのうへにも やとるかな つきもあかしや とまりなるらむ | 重家 |
419 | みなれても いそちになりぬ よはのつき わきてしのはむ あきはなけれと | 家親 |
420 | みるままに おもひもはるる つきかけや こころをてらす かかみなるらむ | 頼康 |
421 | あまのはら ひかりさしそふ かささきの かかみとみゆる あきのよのつき | 為家 |
422 | ふけゆけは つきかけさむし かささきの よわたるはしに しもやさゆらむ | 宗尊親王 |
423 | いにしへの ますみのかかみ よよかけて かみちのやまに てらすつきかけ | 実任 |
424 | あしひきの やまのはたかく すむつきに まつふくかせの おとそふけゆく | 為藤 |
425 | あまのはら ふりさけみれは つききよみ あきのよいたく ふけにけるかな | 実朝 |
426 | なにはかた あしまをわけて こくふねの おとさへすめる あきのよのつき | 為業 |
427 | かすかのに あさゐるくもの あともなく くるれはすめる あきのよのつき | 家隆 |
428 | なにたかき あきのなかはの なかそらに くももおよはす すめるつきかな | 定宗(藤原家親男) |
429 | いけみつに うつれるかけも のとかにて あきのよすから すめるつきかな | 摂津(二条太皇太后宮) |
430 | たかせさす よとのわたりの ふかきよに かはかせさむき あきのつきかけ | 為氏 |
431 | しろたへの ふしのたかねに つきさえて こほりをしける うきしまかはら | 有長 |
432 | これもまた かみよはきかす たつたかは つきのこほりに みつくくるとは | 良経(九条兼実男) |
433 | すきたてる かとたのおもの あきかせに つきかけさむき みわのやまもと | 浄弁 |
434 | つゆなから もりくるつきを かたしきて とはたのいほに いくよねぬらむ | 四条(安嘉門院) |
435 | いかはかり ひかりそふらむ つきかけの よなよなみかく つゆのしらたま | 行経 |
436 | たれすみて あはれしるらむ ときはやま おくのいはやの ありあけのつき | 道済 |
437 | くさふかく さひしからむと すむやとの ありあけのつきに たれをまたまし | 深養父 |
438 | つきかけの さひしくもあるか たかまとの をのへのみやの ありあけのそら | 真昭 |
439 | よもすから われをさそひて つきかけの はてはゆくへも しらていりぬる | 清輔 |
440 | とまるへき かたをもしらす こきいてて つきをかきりの あきのふなひと | 読人不知 |
441 | なみのうへに うつれるつきは ありなから いこまのやまの みねそあけゆく | 為世(御子左藤原為氏男) |
442 | なにはかた いりしほちかく かたふきて つきよりよする おきつしらなみ | 為藤 |
443 | あきかせの よとこをさむみ いねかてに ひとりしあれは つきかたふきぬ | 光厳院 |
444 | あしひきの やまのこからし ふくからに くもるときなき ありあけのつき | 後鳥羽院 |
445 | のへはみな おもひしよりも うらかれて くもまにほそき ありあけのつき | 寂蓮 |
446 | ひくらしの なくゆふくれの うきくもに むらさめそそく もりのしたくさ | 有家(藤原重家男) |
447 | ひくらしの なくやまかけは くれぬらむ ゆふひかかれる みねのしらくも | 知家 |
448 | あきかせや しほせのなみに たちぬらむ あしのはそよく ゆふくれのそら | 後鳥羽院 |
449 | みたれあしの ほむけのかせの かたよりに あきをそよする まののうらなみ | 良経(九条兼実男) |
450 | をしかなく をかへのわさた ほにいてて しのひもあへす つまやこふらむ | 後光厳院 |
451 | あきののの をはなかもとに なくしかも いまはほにいてて つまをこふらし | 後嵯峨院 |
452 | むすひおく のはらのつゆの はつをはな わかたまくらと しかやなくらむ | 定為 |
453 | つきかけの いるののすすき うちなひき あかつきつゆに しかそなくなる | 直義 |
454 | たかさこの をのへのつきに なくしかの こゑすみのほる ありあけのそら | 経継 |
455 | つまこひの なみたやおちて さをしかの あさたつをのの つゆとおくらむ | 義詮 |
456 | かねてより こころそいとと すみのほる つきまつみねの さをしかのこゑ | 西行 |
457 | をくらやま あきはこよひと さをしかの つまとふみねに すめるつきかけ | 為藤 |
458 | つれなさの ためしはしるや さをしかの つまとふやまの ありあけのそら | 為氏 |
459 | をしかなく とやまのすその ははそはら いろにいててや つまをこふらむ | 実氏 |
460 | しかのねそ そらにきこゆる ゆふきりの へたつるかたや をのへなるらむ | 師良(二条良基男) |
461 | やまさとは きりたちこめて ひともなし あさたつしかの おとはかりして | 通俊 |
462 | さらてたに ねさめかなしき あきかせに よるしもなとか しかのなくらむ | 家清 |
463 | やまさとの しかのなくねそ なかきよの ねさめのともと ききなれにける | 実衡 |
464 | つまこふる さをしかのねに さよふけて みのたくひをも ありとしりぬる | 小町 |
465 | たかさこの まつをともとも なくさまて なほつまこひに しかそなくなる | 尊円法親王 |
466 | たかしまや まつのこすゑに ふくかせの みにしむときそ しかもなきける | 増基 |
467 | いろにいてて あきしもしかの なくなるは はなのをりとや つまはたのめし | 康資王母 |
468 | なにめてて つまやこふらむ をみなへし おほかるのへの さをしかのこゑ | 雅家 |
469 | さをしかの よはのくさふし あけぬれと かへるやまなき むさしののはら | 家隆 |
470 | しかのねの ふきくるかたに きこゆるは あらしやおのか たちとなるらむ | 清輔 |
471 | よをさむみ つまやこふらむ あしひきの やましたかせに しかそなくなる | 為理 |
472 | ゆふひさす たのものいなは うちなひき やまもととほく あきかせそふく | 為氏 |
473 | ゆふひさす たのものいなは すゑとほみ なひきもはてす よわるあきかせ | 花園院 |
474 | しらとりの とはたのほなみ ふきたてて もるいほさむき あきのやまかせ | 公賢 |
475 | あけわたる やまもととほく きりはれて たのもあらはに あきかせそふく | 公雄 |
476 | きりきりす かへのなかにそ こゑすなる よもきかそまに かせやさむけき | 兵衛(上西門院) |
477 | あきをへて なるるまくらの きりきりす しるやいそちの なみたそふとは | 隆博 |
478 | あさちふや とこはくさはの きりきりす なくねもかるる のへのはつしも | 順徳院 |
479 | むしのねは あさちかつゆに うらかれて よさむにのこる ありあけのつき | 為実(御子左藤原為氏男) |
480 | きけははや うらかれにけり あさちはら むしのねまても しもやおくらむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
481 | あきふかき あさちかにはの しものうへに かれてもむしの こゑそのこれる | 道平 |
482 | よをさむみ かれゆくをのの くさかけに よわりもはてぬ むしのこゑかな | 為藤 |
483 | なかつきの ありあけのかけに きこゆなり よをへてよわる まつむしのこゑ | 読人不知 |
484 | わきてなほ あはれにたへぬ ときそとや ゆふへはむしの ねにもたつらむ | 邦省親王 |
485 | あきくれは むしもやものを おもふらむ こゑもをします なきあかすかな | 花山院 |
486 | まつひとに いかにつけまし くものうへに ほのかにきゆる はつかりのこゑ | 信明 |
487 | あきかせも ふきたちにけり いまよりは くるかりかねの おとをこそまて | 醍醐天皇 |
488 | きりわけて かりはきにけり ひまもなく しくれはいまや のへをそむらむ | 家持 |
489 | かりなきて さむきあしたや やましろの いはたのをのも いろかはるらむ | 基家 |
490 | いまよりの あきのねさめよ いかならむ はつかりかねも なきてきにけり | 雅冬 |
491 | みつくきの をかのくすはを ふくかせに ころもかりかね さむくなくなり | 行意 |
492 | かりかねは くもゐかくれに なきてきぬ はきのしたはの つゆさむきころ | 伏見院 |
493 | ふるさとを くもゐになして かりかねの なかそらにのみ なきわたるかな | 相模 |
494 | なきわたる くもゐのかりも こころしれ こぬひとたのむ あきかせのころ | 寂蓮 |
495 | はつかりの なきわたりぬる くもまより なこりおほくて あくるつきかけ | 友則 |
496 | いくちさと あるみちなれや あきことに くもゐをたひと かりのなくらむ | 是則 |
497 | つらかりし はるのわかれは わすられて あはれとそきく はつかりのこゑ | 政村 |
498 | あまのかは とわたるかりや たなはたの わかれしなかに かよふたまつさ | 義政 |
499 | からすはに かくたまつさの ここちして かりなきわたる ゆふやみのそら | 西行 |
500 | はれやらぬ あさけのそらの きりのうちに つらこそみえね わたるかりかね | 親子(従三位) |
501 | へたつとは みえてまちかく きこゆなり きりのうへゆく はつかりのこゑ | 後光厳院 |
502 | ゆふされは くもにみたれて とふかりの ゆくへさためす あきかせそふく | 実兼 |
503 | あきかせに やまとひこえて くるかりの はむけにきゆる みねのしらくも | 躬恒 |
504 | をやまたの おしねかりかね ほにあけて なくこゑきけは あきふけにけり | 実名(藤原公脩男) |
505 | かりなきて よさむになれは はつしもの おくてのいなは いろつきにけり | 為信 |
506 | あきふかき つきのよさむに をりはへて しもよりさきと うつころもかな | 為藤 |
507 | さとひとの きぬたのおとも いそくまて つきやよさむの しもとみゆらむ | 具行 |
508 | ききわひぬ はつきなかつき なかきよの つきのよさむに ころもうつこゑ | 後醍醐院 |
509 | なかつきの つきもよさむの いねかてに おきゐてたれか ころもうつらむ | 公賢 |
510 | あくかれて つきみるほとの こころにも よさむわすれす うつころもかな | 為定(御子左二条為道男) |
511 | よもすから あきのこころを なくさめて つきにうつなり あさのさころも | 行忠(藤原) |
512 | とりのねの きこゆるまてに さとひとの ねぬよもしるく うつころもかな | 経賢 |
513 | たかために あさのさころも うちわひて ねられぬよはを かさねきぬらむ | 経朝 |
514 | つのくにの あしふくこやの よをさむみ ひまこそなけれ ころもうつこゑ | 内経 |
515 | さよころも たかねさめより うちそめて ちさとのゆめを おとろかすらむ | 実忠 |
516 | たちこむる きりのまかきの ゆふつくよ うつれはみゆる つゆのしたくさ | 為秀 |
517 | もろひとの けふここのへに にほふてふ きくにみかける つゆのことのは | 為家 |
518 | なかつきの とよのあかりは なのみして いまはむかしに きくのさかつき | 良基(鷹司道平男) |
519 | さきぬれは よそにこそみれ きくのはな あまつくもゐの ほしにまかへて | 堀河中宮 |
520 | いつれをか はなとはわかむ なかつきの ありあけのつきに まかふしらきく | 貫之 |
521 | いくかへり ちとせのあきに あひぬらむ いろもかはらぬ しらきくのはな | 公能 |
522 | うつしうゑは ちよまてにほへ きくのはな きみかおいせぬ あきをかさねて | 行済 |
523 | にほひこそ まきれさりけれ はつしもの あしたのはらの しらきくのはな | 師房 |
524 | なにしおへは はなさへにほふ むらさきの ひともときくに おけるはつしも | 読人不知 |
525 | あまくもの よそにかりかね ききしより はたれしもふり さむしこのよは | 人麿 |
526 | ふるさとの はつもみちはを たをりもて けふそわかくる みぬひとのため | 人麿 |
527 | ときまちて おくるしくれの あまそそき あさかのやまは うつろひぬらむ | 読人不知 |
528 | はつしくれ またふらなくに かたをかの はしのたちえは いろつきにけり | 教実 |
529 | あきやまは しくれぬさきの したもみち かつかつつゆや そめはしむらむ | 為子(従二位) |
530 | よそにみし くもやしくれて そめつらむ もみちしてけり かつらきのやま | 長綱(菅原重長男) |
531 | いりひさす とよはたくもに わきかねつ たかまのやまの みねのもみちは | 崇徳院 |
532 | ゆふひかけ さすやたかねの もみちはは そらもちしほの いろそうつろふ | 覚助法親王 |
533 | はなならは うつろふいろや をしからむ ちしほをいそく あきのもみちは | 道嗣 |
534 | いつのまに ちしほそめけむ きのふより しくるとみえし みねのもみちは | 邦省親王 |
535 | しきしまや やまとにはあらぬ くれなゐの いろのちしほに そむるもみちは | 為家 |
536 | あしひきの やまのもみちや ぬしなくて さらせるあきの にしきなるらむ | 杲守 |
537 | いつのまに しつはたやまの はつしくれ そめてもみちの にしきおるらむ | 成国 |
538 | しくるれは いろまさりけり おくやまの もみちのにしき ぬれはぬれなむ | 清正 |
539 | くれなゐの やしほのあめは ふりくらし たつたのやまの いろつくみれは | 人麿 |
540 | をくらやま ききのもみちの くれなゐは みねのあらしの おろすなりけり | 清輔 |
541 | みつのあやを からくれなゐに おりかけて けふのみゆきに あへるもみちは | 公実 |
542 | あきふかく なりゆくときは おほゐかは なみのはなさへ もみちしにけり | 斉信 |
543 | みなそこに かけのみみゆる もみちはは あきのかたみに なみやをるらむ | 頼基(大中臣輔道男) |
544 | やまひめの こころのままに そめなさは もみちにのこる まつやなからむ | 万秋門院(尚侍藤原瑣子朝臣) |
545 | たかねより もみちふきおろす やまかせや ふもとのまつの しくれなるらむ | 信生 |
546 | かはらしな ときはのもりの むらしくれ よそのもみちに あきはみゆとも | 近衛(今出河院) |
547 | かねてより うつろふあきの いろもなほ しくれてまさる かみなひのもり | 良瑜 |
548 | ふりつもる もみちのいろを みるときそ くれゆくあきは まつしられける | 定頼 |
549 | みやこいてて なににきつらむ やまさとの もみちはみれは あきくれにけり | 公任 |
550 | としことに とまらぬあきと しりなから をしむこころの こりすもあるかな | 読人不知 |
551 | あすもなほ くれゆくあきは あるものを をしむこころを けふつくしつる | 範兼 |
552 | くれはつる あきのかたみと あすやみむ そてになみたの つゆをのこして | 実俊(西園寺公宗男) |
553 | いりひさす かたをなかめて わたのはら なみちのあきを おくるけふかな | 経正 |
554 | よわりゆく むしのねにさへ あきくれて つきもありあけに なりにけるかな | 通具 |
555 | ゆくあきの すゑののくさは うらかれて しもにのこれる ありあけのつき | 後醍醐院 |
556 | ありあけの ほのかにみえし つきたにも おくらぬそらに かへるあきかな | 家隆 |
557 | つゆわけし のへのささはら かせさえて またしもこほる ふゆはきにけり | 為世(御子左藤原為氏男) |
558 | したはれし あきのなこりの つゆをたに ほしあへぬそてに ふるしくれかな | 内実 |
559 | したひこし あきのわかれの なみたより そてもほしあへぬ はつしくれかな | 後光厳院 |
560 | まきのやに ふゆこそきぬれ とはかりを おとつれすてて ゆくしくれかな | 光厳院 |
561 | このはちる うへやまかせの あらしより しくれになりぬ みねのうきくも | 有家(藤原重家男) |
562 | さそはるる くものゆききの さためなき しくれはかせの こころなりけり | 公蔭 |
563 | ふきおくる かせのままなる うきくもの かさなるやまは しくれふるらし | 有房(六条通有男) |
564 | たえたえに くものうきたつ やまのはに かせをしるへと ゆくしくれかな | 一条(昭慶門院) |
565 | ふきよわる あらしのひまの うきくもや しはしやすらふ しくれなるらむ | 為藤 |
566 | みわやまは しくれふるらし かくらくの はつせのひはら くもかかるみゆ | 隆教 |
567 | うきくもを さそひもはてぬ やまかせに たちかへりふる むらしくれかな | 為理 |
568 | たまくしけ みむろのやまも ふゆきぬと あくるそらより ふるしくれかな | 基平(近衛兼経男) |
569 | やまかせの ふくにまかせて さためなく このはさへふる かみなつきかな | 実重(三条公親男) |
570 | いつくより ふきくるかせの さそふらむ こすゑもしらぬ にはのもみちは | 房経 |
571 | ふゆきては さゆるあらしの やまかせに つきてこのはの ふらぬひはなし | 実雄 |
572 | いつしかと ふゆをやつくる はつしくれ にはのこのはに おとつれてゆく | 永福門院 |
573 | ふきおくる あらしのそらの うきくもに しくれをそへて ふるこのはかな | 良冬 |
574 | むらしくれ おとをのこして すきぬなり このはふきまく みねのあらしに | 公明 |
575 | うきてゆく くものたよりの むらしくれ ふるほともなく かつはれにけり | 伏見院 |
576 | このはちる あさけのかせや さそふらむ しくれになりぬ うきくものそら | 覚助法親王 |
577 | しからきの とやまのもみち ちりはてて さひしきみねに ふるしくれかな | 秀能(藤原秀宗男) |
578 | ゆくつきの したやすからぬ うきくもの あたりのそらは なほしくれつつ | 公雄 |
579 | うちしくれ ひとのそてをも ぬらすかな そらもやけふは あきをこふらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
580 | きくひとの そてさへぬれぬ このはちる おとはしくれに たくふのみかは | 実定 |
581 | いととしく ものおもふよの ひとりねに おとろくはかり ふるしくれかな | 赤染衛門 |
582 | ゆめちまて よはのしくれの したひきて さむるまくらに おとまさるなり | 為兼 |
583 | おとろかす このはのおとの なかりせは あくるそゆめの かきりならまし | 兼実 |
584 | ちしほまて そめしこすゑの のこりなく にはのおちはと いつなりにけむ | 宰相(瑒子内親王家) |
585 | やまたかみ こすゑをさして なかれくる たきにたくへて おつるもみちは | 貫之 |
586 | みなかみに かせわたるらし おほゐかは もみちをむすふ たきのしらいと | 大輔(殷富門院) |
587 | おほゐかは けふのみゆきに もみちはも なかれひさしき ゐせきにそみる | 祐家 |
588 | おほゐかは みつのなかれも みえぬまて ちるもみちはの うかふけふかな | 俊忠 |
589 | かはかみに しくれのみふる あしろには もみちはさへそ おちまさりける | 躬恒 |
590 | おちつもる もみちをみれは ひととせの あきのとまりは あしろなりけり | 貫之 |
591 | うちやまの あらしにおつる もみちはや あしろによるの にしきなるらむ | 如寂 |
592 | かみなつき あさひのやまも うちしくれ いまやもみちの にしきおるらむ | 俊綱(橘) |
593 | きみみねは あさひのやまの もみちはも よるのにしきの ここちこそすれ | 紀伊(祐子内親王家) |
594 | ささわくる たもとはかせの おとさえて しられすむすふ のへのゆふしも | 雅孝 |
595 | きくのはな ふゆののかせに ちりもせて けふまてとてや しもはおくらむ | 是則 |
596 | きくのはな こきもうすきも いままてに しものおかすは いろをみましや | 躬恒 |
597 | すかのねも うつろひかはる ふゆのひに ゆふしもいそく やまのしたくさ | 信実 |
598 | かせさゆる あさちかにはの ゆふひかけ くるれはやかて むすふしもかな | 実教 |
599 | なにはかた みきはのあしに しもさえて うらかせさむき あさほらけかな | 西行 |
600 | しもふかき まかきのをきの かれはにも あきのままなる かせのおとかな | 尊氏 |
601 | かきりあれは あきもかくやは ききわひし あらしにさやく しものしたをき | 後光厳院 |
602 | みわたせは ましるすすきも しもかれて みとりすくなき ゐなのささはら | 土御門院 |
603 | ふゆきぬと ともにかれゆく やまさとの ひとめやくさの ゆかりなるらむ | 為子(贈従三位) |
604 | かりひとの いるののくさの しもかれに つかれのとりや かくれかぬらむ | 忠基(九条経教男) |
605 | みしまのや くるれはむすふ やかたをの たかもましろに ゆきはふりつつ | 為家 |
606 | みなとえや あしのかれはに かせさえて しもよのつきに ちとりなくなり | 雅孝 |
607 | ひさきおふる かはらのちとり なくなへに いもかりゆけは つきわたるみゆ | 家持 |
608 | ふゆされは さほのかはかせ さゆるよの ふけたるつきに ちとりなくなり | 公顕 |
609 | なるみかた わたるちとりの なくこゑも うらかなしさは ありあけのそら | 光厳院 |
610 | うらとほく わたるちとりも こえさむし しものしらすの ありあけのそら | 後二条院 |
611 | わかかたや なみたかからし ともちとり ことうらになく こゑそきこゆる | 隆教 |
612 | ふけゆけは やまおろしさえて ささなみの ひらのみなとに ちとりなくなり | 宗尊親王 |
613 | にほとりは をろのはつをに あらねとも かかみのやまの かけになくなり | 為藤 |
614 | にほとりの かよひちもさそ たとるらし よひよひことの いけのこほりに | 義高 |
615 | あしかもの はらふつはさに なみこえて うはけのしもや なほこほるらむ | 兼好 |
616 | よもすから かものうはけを はらふかな いくたひしもの おくにかあるらむ | 実行 |
617 | すみわひて いけのあしまを たつかもの こほりにのこる あともはかなし | 道助法親王 |
618 | なかなかに しもよのそらや さむからむ こほりにかへる いけのをしとり | 行能 |
619 | しもにたに うはけはさゆる あしかもの たまものとこは つららゐにけり | 隆房 |
620 | さゆるよは ころもかたしく とこのしも そてのこほりに つきやとるなり | 為明 |
621 | さえまさる そてのあらしを かたしきて しもよのとこに つきをみるかな | 信専 |
622 | そてかへす あまつをとめも おもひいてよ よしののみやの むかしかたりを | 後醍醐院 |
623 | みのやまの しらたまつはき いつよりか とよのあかりに あひはしめけむ | 行家(藤原知家男) |
624 | よさむなる とよのあかりの しものうへに つきさえわたる くものかけはし | 為家 |
625 | はやきせは こほりもやらて ふゆのよの かはおとたかく つきそふけゆく | 実教 |
626 | おのつから こほらぬひまも こほりけり つきかけさむき やまかはのみつ | 達智門院(奨子内親王) |
627 | たつなみの おとはのこりて おきつかせ ふけひのうらに こほるつきかけ | 成光(祝部成国男) |
628 | まののうらや いりうみさむき ふゆかれの をはなのなみに こほるつきかけ | 実超 |
629 | にほのうみや ひらのやまかせ さゆるよの そらよりこほる ありあけのつき | 慈能 |
630 | さゆるよの しもをかさねて そてのうへに やとれはこほる つきのかけかな | 時光 |
631 | かれはつる くさはのしもの しろたへに やとるもさむき つきのかけかな | 公敏 |
632 | いまはとて あさちかれゆく しものうへに つきかけさひし をののしのはら | 忠良 |
633 | あきのいろは あとなきのへの しものうへに なほみしままの つきそよかれぬ | 一条(昭慶門院) |
634 | はれくもり うきたつくもの やまのはに かけさたまらぬ ふゆのよのつき | 公雄 |
635 | しくれてそ なかなかはるる かせませに このはふるよの やまのはのつき | 善成 |
636 | あきよりも さえにけらしな ふるゆきの つもりてはるる やまのはのつき | 成茂 |
637 | ひさかたの そらさえわたる ふゆのよは つきのひかりも ゆきかとそみる | 成仲 |
638 | さゆるよの ゆきけのそらの むらくもを こほりてつたふ ありあけのつき | 為世(御子左藤原為氏男) |
639 | はつせかは ゐてこすなみの そのままに こほりてかかる せせのしからみ | 頓阿 |
640 | さゆるよは こほるもはやし よしのかは いはきりとほす みつのしらなみ | 為遠 |
641 | たちかへる おともきこえす ふゆかはの いしまにこほる みつのしらなみ | 為定(御子左二条為道男) |
642 | たにかはや むすふこほりの したむせひ なかれもやらぬ おともさむけし | 崇光院 |
643 | おとたてし あらしやまつに のこるらむ ささなみこほる しかのからさき | 宣明 |
644 | かせさわく ならのおちはに たまちりて おとさへさむく ふるあられかな | 宣子(従二位) |
645 | あさゆふの おとはしくれの ならしはに いつふりかはる あられなるらむ | 定家 |
646 | うたののや やとかりころも ききすたつ おともさやかに あられふるなり | 雅経 |
647 | たまもかる いちしのあまの ぬれころも ゆふひもさむく あられふるなり | 源承 |
648 | かせさむみ そらはゆきけに なりそめて かつかつにはに ちるあられかな | 後宇多院 |
649 | にはのおもに かれてのこれる ふゆくさの むらむらみえて つもるしらゆき | 為定(御子左二条為道男) |
650 | いととまた ゆきにはあとも なかりけり ひとめかれにし にはのふゆくさ | 為子(従二位) |
651 | いつくとも みきはそみえぬ いけみつの こほりにつつく にはのしらゆき | 賢俊 |
652 | よひのまの のきのしつくも おとたえて ふくれはこほる ゆきのむらきえ | 長舜 |
653 | さとわかぬ ゆきのうちにも すかはらや ふしみのくれは なほそさひしき | 良経(九条兼実男) |
654 | はつゆきの ふらはといひし ひとはこて むなしくはるる ゆふくれのそら | 慈円 |
655 | はつゆきの にはにふりはへ さむきよを たまくらにして ひとりかもねむ | 家持 |
656 | みやこにも みちふみまよふ ゆきなれは とふひとあらし みやまへのさと | 好忠 |
657 | とはるへき みともおもはぬ やまさとに ともまつゆきの なにとふるらむ | 有房(六条通有男) |
658 | かれはつる をののしのはら みちたえて あまりひかすの つもるゆきかな | 親清女 |
659 | いまよりは とたえもみえし しらゆきの つきてふりしく くめのいははし | 師信 |
660 | いととまた かきりもみえす むさしのや あまきるゆきの あけほののそら | 後嵯峨院 |
661 | おいかみの たくひとやせむ よよをへて ゆきをいたたく まつのこころは | 実泰 |
662 | たけくまの まつのみとりも うつもれて ゆきをみきとや ひとにかたらむ | 光行 |
663 | みつとりの かものかみやま さえくれて まつのあをはも ゆきふりにけり | 頼貞 |
664 | つきのこる まきのとやまの あけほのに ひかりことなる みねのしらゆき | 実兼 |
665 | しろたへの ひかりそまさる ふゆのよの つきのかつらに ゆきつもるらし | 後嵯峨院 |
666 | かさしをる そてもやけさは こほるらむ みわのひはらの ゆきのあけほの | 後鳥羽院 |
667 | ふゆのよの さゆるにしるし みよしのの やまのしらゆき いまそふるらし | 二条院 |
668 | ふりつもる ゆきをかさねて みよしのの たきつかふちに こほるしらなみ | 為氏 |
669 | おほゐかは そまやまかせの さむけきに いはうつなみを ゆきかとそみる | 左近(三条院女蔵人) |
670 | こきかへる たななしをふね あともなし なにはのあしの ゆきのしたをれ | 兵衛内侍(順徳院) |
671 | ふるゆきは それともみえす ささなみの よせてかへらぬ おきつしまやま | 知家 |
672 | よしのやま ゆきふりはてて としくれぬ かすみしはるは きのふとおもふに | 国冬 |
673 | いたつらに すきゆくものと おもひこし としのなにとて みにつもるらむ | 資季 |
674 | わきてしも をしむとなしに あはれなり ことしもかくて くれぬとおもへは | 花園院 |
675 | くれぬとて いまさらいそく ことしかな つきひのゆくも しらさりしみに | 高定 |
676 | いまさらに としのくれとも おとろかす いそきなれたる あさまつりこと | 後光厳院 |
677 | はたすすき をはなさかふき くろきもて つくれるやとは よろつよまてに | 元正天皇 |
678 | きみかよは なからのはしの はしめより かみさひにける すみよしのまつ | 道長 |
679 | きみかよは やそしまかくる なみのおとに かせしつかなり すみのえのまつ | 公経(藤原実宗男) |
680 | かみよより あひおひのまつも けふしこそ ありてちとせの かひもしるらめ | 国助 |
681 | ときはなる たままつかえや いくちよも きみかよはひに かけをならへむ | 公明 |
682 | かせかよふ まつをうつして いけみつの なみもちとせの かすによるらし | 尊氏 |
683 | かそへしる よはひをきみか ためしにて ちよのはしめの はるにもあるかな | 為道 |
684 | さくはなも けふをみゆきの はしめにて なほゆくすゑも よろつよやへむ | 大納言典侍(後嵯峨院) |
685 | よろつよの きみかかさしに をりをえて ひかりそへたる やまさくらかな | 通重 |
686 | きみかへむ ちとせのはるを かさぬへき ためしとみゆる やへさくらかな | 顕昭 |
687 | ちよふへき ためしときけは やへさくら かさねていとと あかすもあるかな | 覚性法親王 |
688 | あらたまの としのちとせの はるのいろを かねてみかきの はなにみるかな | 定家 |
689 | きみかため ひさしかるへき はるにあひて はなもかはらす よろつよやへむ | 兼季 |
690 | きみのみや ちとせのまつの はなのいろに とかへりまても なれむとすらむ | 為秀 |
691 | ちとせとも かきらぬきみか ともなれは まつもはなさく はるやかさねむ | 師平 |
692 | いろかへぬ はこやのやまの みねのまつ きみをそちよの ともとみるらむ | 公重(西園寺実衡男) |
693 | ひさにへむ ともとやきみに ちきるらむ とかへりのまつの はなのさくまて | 経顕(藤原定資男) |
694 | まつかえも やほよろつよの いろそそふ ちとせもあかぬ わかきみのため | 公蔭 |
695 | ゆくすゑを おもふもひさし ひめこまつ いまよりきみか ちよをちきりて | 忠季(藤原公蔭男) |
696 | きみかへむ ちとせのはるの ゆくすゑも まつのみとりの いろにみゆらし | 実名(藤原公脩男) |
697 | いくちよそ みとりをそへて あひおひの まつときみとの ゆくすゑのはる | 雅家 |
698 | いろかへぬ をのへのまつに ふくかせは よろつよよはふ こゑにそありける | 花園院 |
699 | つるかをか こたかきまつを ふくかせの くもゐにひひく よろつよのこゑ | 基氏(足利尊氏男) |
700 | きみかすむ はこやのやまの たまつはき やちよさかえむ すゑそひさしき | 俊光 |
701 | よををさめ たみをあはれむ まことあらは あまつひつきの すゑもかきらし | 後光厳院 |
702 | よものうみ ななつのみちも わかきみの みよそをさまる はしめなりける | 尊氏 |
703 | よものうみ をさまりぬらし わかくにの やまとしまねに なみしつかなり | 後醍醐院 |
704 | ももとせに ちかつくひとそ おほからむ よろつよふへき きみかみよには | 俊成(藤原俊忠男) |
705 | わかのうらに よるとしなみを かそへしる みよそうれしき おいらくのため | 経家(六条重家男) |
706 | なからへて けさやうれしき おいのなみ やちよをかけて きみにつかへよ | 宮内卿(後鳥羽院) |
707 | きみそなほ けふよりもまた かそふへき ここのかへりの とをのゆくすゑ | 右京大夫(建礼門院) |
708 | かめやまの ここのかへりの ちとせをも きみかみよにそ そへゆつるへき | 俊成(藤原俊忠男) |
709 | おほゐかは みかさやまさる かめやまの ちよのかけみる みゆきとおもへは | 敦賢親王 |
710 | きみかよは のとかにすめる いけみつに ちとせをちきる あきのつきかけ | 家良 |
711 | かけきよき いけのかかみに てるつきも くもるときなく よろつよやへむ | 行能 |
712 | あきらけき みかけになるる いけみつを つきにそみかく よろつよのあき | 信実 |
713 | きみかよの つきとあきとの ありかすに おくやくさきの よものしらつゆ | 定家 |
714 | きみかよに ちたひあふへき あきなれと けふのくれをは をしみかねつも | 行成 |
715 | あめつゆの めくみにそむる もみちはの ちしほはきみか ちよのかすかも | 実教 |
716 | さきそむる まかきのきくの つゆなから ちよをかさねむ あきそひさしき | 宰相典侍(後宇多天皇) |
717 | きみかよの かすにかさなる ものならは きくはいくへも かきらさらまし | 公教 |
718 | むらさきの にはにみとりの いろそへて ゆくすゑとほき ちよのくれたけ | 経教 |
719 | よよをへし みかきのたけの たねなれは すゑもちとせの いろそそふへき | 冬平 |
720 | をさまれる くもゐのにはに きこゆなり こころとけたる たつのもろこゑ | 実俊(西園寺公宗男) |
721 | つるのこの すたちはしむる けころもは ちよにやちよを かさねてそきむ | 弁乳母 |
722 | むしろたに ちとせをかねて すむつるも きみかよはひに しかしとそおもふ | 師光(源師頼男) |
723 | としをへて つかさくらゐを ますかかみ ちよのかけをは きみそみるへき | 永縁 |
724 | よろつよに よろつよそへて ますかかみ きみかみかけに ならへてそみむ | 基俊 |
725 | わかきみは ひとをかかみと みかくなり こころくもらて ちよもつかへむ | 義詮 |
726 | わかのうらに ふたたひたまを みかくこそ あきらけきよの しるしなりけれ | 定煕 |
727 | あめつちと ともにひさしき しきしまの みちあるみよに あふかうれしさ | 法守法親王 |
728 | わかきみは をののえくちし としをへて たみのななよの すゑにあふまて | 国冬 |
729 | きみかよは とよあしはらの あきつすに みちひるしほの つきしとそおもふ | 有長 |
730 | はるかにそ いまゆくすゑを おもふへき なかをのむらの なかきためしに | 経衡 |
731 | みかみやま いはねにおふる さかきはの はかへもせすて よろつよやへむ | 匡房 |
732 | くもりなき たまたののへの たまひかけ かさすやとよの あかりなるらむ | 清輔 |
733 | はるはると くもりなきよを うたふなり つきてかさきの あまのつりふね | 清輔 |
734 | ときをえて ちたのむらひと いくちたひ とれともつきぬ さなへなるらむ | 時光 |
735 | しきしまの みちもいまこそ さかえけれ よろつをすてぬ きみかめくみに | 為定(御子左二条為道男) |
736 | たちかへり なにとなこりを をしむらむ こころはひとに わかれやはする | 家良 |
737 | みとせまて なれしさへこそ うかりけれ せめてわかれの をしきあまりに | 宗尊親王 |
738 | あつまちの のはらしのはら わけゆかは こひむなみたを おもひおこせよ | 隆信 |
739 | とまるへき みちにもあらぬ わかれちは したふこころや せきとなるらむ | 仲実 |
740 | わかれちは せきもととめぬ なみたかな ゆきあふさかの なをはたのめと | 肥後(京極前関白家) |
741 | くるるまも さためなきよと しりなから かへりこむひを まつそはかなき | 成通 |
742 | おほのうらの そのなかはまに よるなみの ゆたにそきみを おもふこのころ | 聖武天皇 |
743 | いはせのの あきはきしのき こまなへて こたかかりをも せてやわかれむ | 家持 |
744 | こぬひとを まつあきかせの ねさめには われさへあやな たひここちする | 兼輔 |
745 | もろこしへ ゆくひとよりも ととまりて からきおもひは われそまされる | 成尋母 |
746 | かきりある いのちなりせは めくりあはむ あきともせめて ちきりおかまし | 道我 |
747 | こきいつる あしわけをふね なとかまた なこりをとめて さはりたにせぬ | 為世(御子左藤原為氏男) |
748 | なみのうへの つきのこらすは なにはえの あしわけをふね なほやさはらむ | 実教 |
749 | またいつと あひみむことを さためてか つゆのうきみを おきてゆくらむ | 行尊 |
750 | たのめおく あすのいのちも しらなくに はかなきものは ちきりなりけり | 土御門院 |
751 | たのますよ これはあるよの わかれとも またあふまての いのちしらねは | 実伊 |
752 | めにみえぬ こころはかりは おくれねと ひとりややまを けふはこゆらむ | 為家 |
753 | これをみよ こひしかるへき ゆくすゑを かねておもふに ぬるるたもとそ | 俊恵 |
754 | ものかはと きみかいひけむ とりのねの けさしもなとか かなしかるらむ | 経尹(藤原懐経男) |
755 | ふるさとに たちかへるとも ゆくひとの こころはとめよ ふはのせきもり | 頼康 |
756 | あはれまた ことしもくれぬ おいかみの おとろへまさる ひなのわかれに | 基世 |
757 | ことのはに なけくとはみよ かかみやま したふこころに かけはなくとも | 為世(御子左藤原為氏男) |
758 | ここにして いへやはいつこ しらくもの たなひくやまを こえてきにけり | 読人不知 |
759 | たまもかる としまをすきて なつくさの のしまかさきに ふねちかつきぬ | 人麿 |
760 | きみかため なみのたましく みつのはま ゆきすきかたし おりてひろはむ | 貞数親王 |
761 | あふさかを うちいててみれは あふみのうみ しらゆふはなに なみたちわたる | 読人不知 |
762 | とまりする をしまかいその なみまくら さこそはふかめ よさのうらかせ | 通具 |
763 | けふいくか なみのまくらに あけくれて やまのはしらぬ つきをみるらむ | 為藤 |
764 | わたのはら やそしまかけて しるへせよ はるかにかよふ おきのつりふね | 秀能(藤原秀宗男) |
765 | すみたかは ふるさとおもふ ゆふくれに なみたをそふる みやことりかな | 俊成(藤原俊忠男) |
766 | かきりなく とほくきにけり すみたかは こととふとりの なをしたひつつ | 後光厳院 |
767 | くさむすふ かりほのとこの あきのそて つゆやはぬらす ゆふくれのそら | 忠良 |
768 | ゆきなれぬ ひなのあらのの つゆわけて しをるるたひの ころもへにけり | 近衛(今出河院) |
769 | ふるさとを わすれむとても いかかせむ たひねのあきの よはのまつかせ | 為兼 |
770 | あきのよも あまたたひねの くさまくら つゆよりつゆに むすひそへつつ | 為道 |
771 | おほえやま こえゆくすゑも たひころも いくののつゆに なほしをるらむ | 義詮 |
772 | つゆふかき のへのをささの かりまくら ふしなれぬよは ゆめもむすはす | 伏見院 |
773 | いつまてか くさのまくらの しらつゆの おくとはいそき ぬとはしをれむ | 為秀 |
774 | あつまのの つゆわけころも こよひさへ ほさてやくさに まくらむすはむ | 宗秀(藤原宗奉男) |
775 | みやこをは よふかくいてて あふさかの せきにまたるる とりのこゑかな | 有忠 |
776 | せきのとも はやあけかたの とりのねに おとろかされて いそくたひひと | 資明 |
777 | あふさかの とりのねとほく なりにけり あさつゆわくる あはつののはら | 頓阿 |
778 | たれかまた つゆけきのへの かりねせむ むすひてすつる くさのまくらに | 宗経(平経親男) |
779 | わけすくる ちくさのはなの すりころも おもひみたるる たひのそらかな | 後嵯峨院 |
780 | さくらいろに はるたちそめし たひころも けふみやきのの はきかはなすり | 有家(藤原重家男) |
781 | わけゆけと はなのちくさの はてもなし あきをかきりの むさしののはら | 行春(二階堂時元男) |
782 | しらかはの せきやをつきの もるかけは ひとのこころを とむるなりけり | 西行 |
783 | こよひこそ つきにこえぬれ あきかせの おとにのみきく しらかはのせき | 忠守 |
784 | あきかせに けふしらかはの せきこえて おもふもとほし ふるさとのやま | 基家 |
785 | あしからの やまちのつきに みねこえて あくれはそてに しもそのこれる | 成茂 |
786 | ゆくすゑは つきにやこえむ たひころも ひもゆふくれの さやのなかやま | 善了 |
787 | たひのそら いくゆふくれに まちいてて やまのはかはる つきをみつらむ | 兼好 |
788 | たひひとは またいてやらぬ せきのとに つきそさきたつ ありあけのそら | 為相 |
789 | われならぬ ひともやかかる たひねして ありあけのつきに ものおもふらむ | 家経(一条実経男) |
790 | ふりすてて たれかはこえむ すすかやま せきやはよはの つきももりけり | 氏忠 |
791 | たひひとの よこほりふせる やまこえて つきにもいくよ わかれしつらむ | 家持 |
792 | さらぬたに みやここひしき あつまちに なかむるつきの にしへゆくかな | 後鳥羽院 |
793 | まつかねの あらしのまくら ゆめたえて ねさめのやまに つきそかたふく | 伏見院 |
794 | いほりさす はやまかはらの かりねには まくらになるる さをしかのこゑ | 頼実(藤原経宗男) |
795 | まつかねの まくらにしかの こゑはして このまのつきを そてにみるかな | 丹後(宜秋門院) |
796 | かりなきて あさかせさむし ふるさとに わかおもふいもや ころもうつらむ | 頼貞 |
797 | こよひもや さののをかへの あきかせに ささはかりしき ひとりかもねむ | 知家 |
798 | ささまくら よはのころもを かへさすは ゆめにもうとき みやこならまし | 長舜 |
799 | くさまくら つゆうちはらふ そのままに なみたかたしく よはのころもて | 業氏 |
800 | ふるさとに かよふたたちは ゆるさなむ たひねのよはの ゆめのせきもり | 実超 |
801 | くさまくら そてのみぬるる たひころも おもひたちけむ ことそくやしき | 顕輔 |
802 | しもさゆる たひねのとこの さひしさを いかにとたにも とふひともかな | 仲正 |
803 | たひならぬ われもころもを かたしきて おもひやれとも いかかとふへき | 読人不知 |
804 | からころも はるはるきぬる たひねにも そてぬらせとや またしくるらむ | 為家 |
805 | さととほき やまちのくもは しくれつつ ゆふひにいそく あきのたひひと | 為氏 |
806 | しくれつる くもをとやまに わけすてて ゆきにこえゆく あしからのせき | 兼直 |
807 | やすらはは なほそつもらむ ふるゆきに しひてやこえむ ふゆのやまみち | 承覚法親王 |
808 | かひかねは なほいかはかり つもるらむ はやゆきふかし さやのなかやま | 寂真 |
809 | かへるさは としさへくれぬ あつまちや かすみてこえし しらかはのせき | 隆博 |
810 | たひころも はるはるきぬる やつはしの むかしのあとに そてもぬれつつ | 為家 |
811 | やともかな さののわたりの さのみやは ぬれてもゆかむ はるさめのころ | 家長(源時長男) |
812 | たのめおく やとしなけれは たひのそら くるるをみちの かきりにそゆく | 読人不知 |
813 | ゆきくれぬ こやにひとよの やととひて なにはのあしの かりねをやせむ | 季賢 |
814 | けふこそは よそになりぬれ かつらきや こえしたかまの みねのしらくも | 公順 |
815 | ふるさとを へたてきにけり たひころも かさなるやまの やへのしらくも | 通相 |
816 | たちかへり またもやこえむ みねのくも あともさためぬ よものあらしに | 雅経 |
817 | みやまちを ゆふこえくれて やともなし くもゐるみねに こよひかもねむ | 花園院 |
818 | みやこおもふ うつのやまみち こえわひぬ ゆめかとたとる こころまよひに | 尊円法親王 |
819 | つゆしけき つたのしけみを わけこえて をかへにかかる うつのやまみち | 定円(葉室光俊男) |
820 | あけぬとて ふもとのさとは いてぬれと またきりくらき さよのなかやま | 斉時 |
821 | いつくにか やとをからまし いはねふみ かさなるやまに ひはくれにけり | 性厳 |
822 | たつたやま ゆふこえくれぬ おほともの みつのとまりに ふねやまつらむ | 家隆 |
823 | こきいてし みなとへたてて わたのはら かさなるくもに かかるしらなみ | 行親 |
824 | こくふねの ゆくへもしらぬ なみまより みゆるこしまや とまりなるらむ | 基嗣 |
825 | わたのはら おきこくふねの よるへなみ あまのすむてふ さとやとはまし | 為定(御子左二条為道男) |
826 | いかにして ひともかよはむ わたのはら ふねとかせとの たよりならすは | 後宇多院 |
827 | みわたせは みとりのそらに なみかけて とまりもしらぬ ふなてしにけり | 公能 |
828 | ふしなれぬ とこのうらかせ みにしみて こころうきたつ なみのおとかな | 守覚法親王 |
829 | ふしなれぬ はままつかねの いはまくら そてうちぬらし かへるうらなみ | 定家 |
830 | こととひて いくたひすきぬ ともちとり あらいそなみの よるのうきねに | 実夏 |
831 | ふしわひぬ あしのはそよく みなとかせ さむくふくよの なみのまくらに | 杲守 |
832 | みにそしむ かかるところの よはもまた なれぬたひねを すまのうらかせ | 為子(贈従三位) |
833 | かちまくら いかにさためて ゆめもみむ うきねになるる ひとにとははや | 基任 |
834 | ころもてを しきつのうらの うきまくら なみたもなみも かけぬよそなき | 覚寛 |
835 | うきまくら むすひもはてぬ ゆめちより やかてうつつに かへるなみかな | 行氏(平胤行男) |
836 | おもひやれ なれたるあまの そてたにも なみのうきねは ぬるるならひを | 忠基(九条経教男) |
837 | こころして とまひきおほへ うきくもも あめになるとの おきつふなひと | 成清 |
838 | ふねとめて かたしくそての うらかせを たゆたふなみの まくらにそきく | 源意(藤原源守男) |
839 | ともさそふ むろのとまりの あさあらしに こゑをほにあけて いつるふなひと | 茂重 |
840 | うかりける あらいそなみの おとまても ならはぬたひに そてそしをるる | 貞重 |
841 | まとろまて つきをそみつる よるなみの あらきはまへの よはのかりねに | 兼氏 |
842 | いせしまや つきにをりしく はまをきの かりねもさむし あきのしほかせ | 源承 |
843 | をりしかむ ひまこそなけれ おきつかせ ゆふたつなみの あらきはまをき | 家隆 |
844 | くさのはに おきゐるつゆの きえぬまに たまかとみゆる ことのはかなさ | 人麿 |
845 | ひさかたの そらみることく あふきみし みこのみかとの あれまくをしも | 人麿 |
846 | かからむと おもひしもせは おほふねの とまるとまりに しめゆはましを | 額田王 |
847 | ふちころも おりけるいとは みつなれや ぬれはまされと かわくまもなし | 貫之 |
848 | ことのはに いひおくつゆも なかりけり しのひくさには ねをのみそなく | 重之 |
849 | かりそめの わかれならねは しのふくさ しのふにつけて つゆそこほるる | 輔親 |
850 | あしひきの やまほとときす このころは わかなくねをや ききわたるらむ | 道命 |
851 | いとへとも あまりうきみの なからへて ひとにおくるる かすつもるらむ | 赤染衛門 |
852 | なきひとに ゆきあふさかと おもひせは たえぬなみたは せきとめてまし | 新少将 |
853 | よのなかに うかりしあきと おもへとも くれゆくけふは をしくやはあらぬ | 公通 |
854 | かきりなく けふのくるるそ をしまるる わかれしあきの なこりとおもへは | 堀河(待賢門院) |
855 | いろはみな むなしきものを たつたかは もみちなかるる あきもひととき | 定家 |
856 | こよひこそ おもひしりぬれ あさからす きみにちきりの あるみなりけり | 西行 |
857 | かかりける わかれをしらて やましろの とはにもきみを たのみけるかな | 信実 |
858 | いまはとて みしおもかけの さらになほ みにそふものと なりにけるかな | 秀茂 |
859 | あけくれは みをもはなれぬ おもかけの ありてなきこそ はかなかりけれ | 基平(近衛兼経男) |
860 | ときのまも わすられはこそ なくさまめ おもかけはかり うきものはなし | 公豪 |
861 | おもひいてて みるもかなしき おもかけを なになかなかに うつしおきけむ | 如円 |
862 | あはれとも いふへきひとは さきたちて のこるわかみそ ありてかひなき | 左京大夫(永陽門院) |
863 | ことわりの ならひたかはて たらちねの あととふみちは なにかかなしき | 円伊 |
864 | ことわりの たかはぬのみそ うかりける みにもかへてと おもふわかれは | 有忠 |
865 | しひてこそ よのならひとは おもひなせ あはれたくひも なきわかれかな | 頼時女 |
866 | よのうさも いかはかりかは なけかれむ はかなきゆめと おもひなさすは | 兵衛督(達智門院) |
867 | よのなかの うつつのやみに みるゆめの おとろくほとは ねてかさめてか | 慈円 |
868 | きみたにも ありていとはは わひつつも みのうきのみや なけきならまし | 隆信 |
869 | ひとしれす おもひしことを ちきりおかて うきなをとめむ あとのかなしさ | 読人不知 |
870 | かよひける こころをしらて いとはせて のちはくやしき ねをのみそなく | 読人不知 |
871 | かきくらす そてのなみたに せきかねて ことのはたにも かきもやられす | 後伏見院 |
872 | いろふかき そてのなみたに ならふらし ちしほやちしほ そむるもみちは | 花園院 |
873 | おもへたた つらねしえたは くちはてて たのむかけなく なれるなけきを | 実継 |
874 | つねよりも しくれしくれて すみそめの ころもかなしき かみなつきかな | 大弐(安喜門院) |
875 | あめとのみ ふるはなみたと おもひしに そらさへくるる きのふけふかな | 雅言 |
876 | かきくらす なみたはかりに ほしわひて ふりけるあめも わかぬそてかな | 邦長 |
877 | そらたにも なほかきくれて ふるあめに なみたのそてを おもひこそやれ | 源承 |
878 | おもひやれ そらもひとつに かきくれて あめもなみたも しほるたもとを | 行済 |
879 | おもはすよ よはのけふりと のほるまて ひとりたちそふ ちきりありとは | 境空 |
880 | さらにまた たちおくれしと したふかな もえしけふりの あとをたつねて | 吉子(従三位) |
881 | きのふといひ けふとさきたつ ゆふけふり きえのこるみの あはれいつまて | 玄円 |
882 | たちのほる のへのけふりや なきひとの ゆきてかへらぬ かきりなるらむ | 澄経 |
883 | ぬきかふる ほとをもまたて ふちころも なけくなみたに くちやはてなむ | 経深 |
884 | このままに おもひやたたむ ぬきかへは なこりもかなし すみそめのそて | 行春(二階堂時元男) |
885 | きしよりも ぬくそかなしき きみかため そめしころもの いろとおもへは | 長家 |
886 | おくりおきし のはらのつゆを そのままに ほさてくちぬる ふちころもかな | 広房(大江広房男) |
887 | とほからぬ つひのすみかを いつくとて のへにひとよを あかしかぬらむ | 長明 |
888 | つゆきえし くさのゆかりを たつぬれは むなしきのへに あきかせそふく | 寿成門院 |
889 | おもひいつる はるのみやまの かけまても なみたにうかふ よはのつきかな | 俊顕 |
890 | くものうへと みしはのはらと なりぬれと むかしににたる つきのかけかな | 西花門院 |
891 | あきらけき こよひのつきに さそはれて むなしきそらに いまかへりぬる | 妙宗 |
892 | ゆくすゑを おもふにそての ぬるるかな つひにのかれぬ みちしはのつゆ | 高秀 |
893 | いまはわれ たれとともにか ならふへき ふるきまくらそ みるもかなしき | 久明親王 |
894 | しられしな おなしうきよの わかれちに よそのあはれも そてぬらすとは | 宰相典侍(後宇多院) |
895 | なきあとの みそちあまりの みとせまて とふにそおいの うさもわするる | 栄運 |
896 | たまぬきし あやめのくさは ありなから よとこはあれむ ものとやはみし | 江侍従 |
897 | あやめくさ ことしはよそに みるそてに かはりてかかる わかなみたかな | 義詮 |
898 | またもこむ はるたにもうき わかれちに こそをかきりの あとそかなしき | 性威 |
899 | こひしさや たちまさるらむ かすみさへ わかれしとしを へたてはつれは | 出羽弁 |
900 | わかれにし としをはかすみ へたつれと そてのこほりは とけすそありける | 経信 |
901 | けふとても いそかれぬかな なへてよを おもひうみにし たなはたのいと | 上東門院(道長女彰子) |
902 | なかきよの ためしとききし すみのえの まつのけふりと なるそかなしき | 頼忠 |
903 | もろともに こえましものを してのやま またおもふひと なきみなりせは | 成仲 |
904 | きみかため いとといのちの をしきかな かかるうきめを みせしとおもへは | 成仲女 |
905 | みつのおもに うかへるたまの ほともなく きゆるをよその ものとやはみる | 教長 |
906 | よそまても そてこそぬるれ あたしのや きえにしつゆの あきのあはれに | 慈道法親王 |
907 | ひかすふる のちもいまさら せきかねつ とふにつらさの そてのなみたは | 実性 |
908 | つゆのみを はかなきものと おもひしる こころそやかて むなしかりける | 師教(九条忠教男) |
909 | すゑのつゆ あさちかもとを おもふにも わかみひとつの あきのむらさめ | 家隆 |
910 | あさかほの あたにはかなき いのちをは つとめてのみそ しはしたもたむ | 源信 |
911 | うつせみの よのはかなさを おもふには なほあたならぬ あさかほのはな | 頓阿 |
912 | うつせみは むなしきからも のこりけり きえてあとなき あさかほのつゆ | 為定(御子左二条為道男) |
913 | なけくらむ こころをくみて かすかすに かくもかなしき みつくきのあと | 惟継 |
914 | かきなかす このみつくきの あとなくは したにそむせふ なけきならまし | 為藤 |
915 | とてもかく かりのよならは かりにたに なとなきひとの かへらさるらむ | 成光(祝部成国男) |
916 | はかなくも これをかたみと なくさめて みにそふものは なみたなりけり | 宗尊親王 |
917 | きみもけに これそかきりの かたみとは しらてやちよの あとをとめけむ | 順徳院 |
918 | おなしよの わかれはなほそ しのはるる そらゆくつきの よそのかたみに | 順徳院 |
919 | あさほらけ こきゆくあとに きゆるあわの あはれまことに うきよなりけり | 隆信 |
920 | いはしみつ いはぬものから こかくれて たきつこころを ひとはしらなむ | 伊勢 |
921 | そらにしる ひとはあらしな しらゆきの きえてものおもふ わかこころとは | 人麿 |
922 | つくまのに おふるむらさき きぬにそめ いまたきすして いろにいてにけり | 笠女郎 |
923 | おもひあまる けふりやたちて おのつから こころのそらの くもとなるらむ | 円融院 |
924 | ひとしれぬ しのふのうらの ゆふけふり おもひたつより みはこかれつつ | 邦世親王 |
925 | ひとしれぬ こころはかりに さそはれて まよふこひちは とふかたもなし | 公賢 |
926 | ゆふくれの そらにはかなく ゆくくもの あとなきみちに おもひたつらむ | 行能 |
927 | かつらきや たかまのやまに さすしめの よそにのみやは こひむとおもひし | 家隆 |
928 | のにもあらす やまにもあらぬ こひちにも いるよりそてそ つゆけかりける | 大輔(殷富門院) |
929 | かひかねに このはふきしく あきかせも こころのいろを えやはつたふる | 定家 |
930 | おのつから ふきかふかせの たよりにも おもふこころを つたへてしかな | 実明女 |
931 | このまより かけのみみゆる つきくさの うつしこころは そめてしものを | 読人不知 |
932 | つきくさの はつはなそめの したころも したにうつるを しるひとそなき | 経継 |
933 | かくとたに いはまにむせふ たにみつの もらさはかよふ こころともかな | 聖尊法親王 |
934 | たにかけや いはまをせはみ ゆくみつの わきかへるとも しるひとそなき | 定為 |
935 | もらすなよ このはにうつむ たにみつの そこのこころは わきかへるとも | 氏経 |
936 | わかそてに ありとやいはむ よしのかは たえすおつなる たきのみなかみ | 隆博 |
937 | あさきせそ なみはたつらむ よしのかは ふかきこころを きみはしらすや | 読人不知 |
938 | なみたかは いかなるみつか なかるらむ なとわかこひを けつひとのなき | 躬恒 |
939 | よしさらは もるにまかせむ なみたかは なかれのすゑに あふせありやと | 実直母 |
940 | やまかはの たきつこころも せきかねつ おもふにあまる そてのなみたに | 為氏 |
941 | そてにおつる たきのしらいと うちはへて くるしきなかに むすほほれつつ | 常顕 |
942 | せきかねて おつるはかりそ いまもなほ おとにはたてぬ そてのたきつせ | 兵衛督(達智門院) |
943 | もらすへき ひまこそなけれ しのふやま しのひてかよふ たにのしたみつ | 小宰相(土御門院) |
944 | しのふやま またことかたに みちもかな ふりぬるあとは ひともこそしれ | 兼好 |
945 | こひしなむ のちのよまての おもひては しのふこころの かよふはかりか | 忠度 |
946 | しはしこそ うのはなかきの ほとときす いつかたもとは さみたれのそら | 慈円 |
947 | ひとしれす おもひしのふの やまかせに ときそともなき つゆそこほるる | 俊成女 |
948 | いかにせむ しのふもちすり とにかくに おもひみたるる そてのなみたを | 実衡女 |
949 | からあゐの やしほのころも ふかけれと あらぬなみたの いろそまかはぬ | 知家 |
950 | うちつけに おもひそめける こころかな やかてちしほの そてのなみたは | 宣子(従二位) |
951 | せきかへす なみたをかねて おもふかな くちなむそての はてはいかにと | 公雄 |
952 | せきかへす たよりたになく かなしきは そてにもしのふ なみたなりけり | 為子(贈従三位) |
953 | つひにさて せくにくちぬる そてならは もらぬなみたの かひやなからむ | 常元 |
954 | いかにして なみたつつまむ かけやとす つきこそそての いろにいつとも | 為定(御子左二条為道男) |
955 | たれゆゑの なみたとひとの おもふらむ しらせぬさきに ぬるるたもとを | 英時 |
956 | たもとこそ なみたほすまも かたからめ こころをさへに さのみしほらし | 為嗣 |
957 | ゆふしくれ もるやまかけに たちぬれて うつろふそての いろやまかへむ | 覚為 |
958 | こかれゆく よそのもみちに くらへみよ たもとにかかる あきのむらさめ | 実氏 |
959 | つゆはまつ いろにやいてむ おもふとも いはてしのふの もりのしたくさ | 義詮 |
960 | しられしな しのふのもりの したくさに おきそふつゆは むすほるるとも | 源承 |
961 | つもりては そてにもふちと なりやせむ なみたはきくの つゆならねとも | 隆博 |
962 | かくしつつ としもへにけり ことのはの ひとつてならぬ たよりまつまに | 教定(飛鳥井雅経男) |
963 | いとせめて しのふるなかの たまつさは おもふかきりを かきもつくさす | 花園院 |
964 | ちらすなよ しのふのもりの ことのはに こころのおくの みえもこそすれ | 尊円法親王 |
965 | おもひつつ ここらのとしを しのふくさ しのふるほとに つみてけるかな | 輔親 |
966 | としをへて ちりのみつもる なみたかな とこうちはらふ ひとしなけれは | 深養父 |
967 | いひいてて つれなからすは としつきを しのひきつるや くやしからまし | 忠房親王 |
968 | ひとしれぬ なみたのたまの おのれのみ おもひくたけて としそへにける | 行氏(平胤行男) |
969 | もらさしと なにしのふらむ かすならぬ みをしらてこそ おもひそめしか | 則祐 |
970 | せきかへす そてのなみたの たまかつら かけてもしらし いろしみえねは | 師賢(藤原師信男) |
971 | つひにわか こころやいろに あらはれむ しはしはつつむ うきななりとも | 尊氏 |
972 | かくはかり しのはさりせは こひしさの ひとかたにのみ ものやおもはむ | 基任 |
973 | こひすてふ みをのそまひと あさゆふに たつなはかりの やむときもなし | 実兼 |
974 | あしかもの おりゐるいけの みつなみの たつことやすき わかななりけり | 実雄 |
975 | いかかせむ そらにかすみの たつなのみ はれぬこひちに まよひはてなは | 為道 |
976 | せめてなほ なくさむかたも ありなまし あふにしかふる うきななりせは | 瑒子内親王 |
977 | いつしかと わかなはたちぬ しきたへの まくらにたれか しらせそめけむ | 長秀 |
978 | もらさしと おさふるそてそ なかなかに ひとめにあまる なみたなりける | 行経 |
979 | あらはれて いつなにたたむ せきもりの うちぬるひまの かすもつもらは | 公宗母 |
980 | こえわふる あふさかやまの せきよりも よそにもるなそ くるしかりける | 光明 |
981 | うきひとの こころのせきと なりはてて なほこえかたき あふさかのやま | 重基(平) |
982 | ふしのねや もえつつとはに なけきても ならぬおもひの はてそかなしき | 為氏 |
983 | するかなる やまはふしのね わかことや たえぬけふりに むすほほるらむ | 実氏 |
984 | ふしのねや たえぬけふりの ゆくへたに しらぬおもひの としのへぬらむ | 道助法親王 |
985 | ふしのねの とはにもゆれは うきひとや めつらしけなく おもひけつらむ | 為明 |
986 | ことうらに なひかぬほとそ ゆふけふり わかしたもえの たのみなりける | 頓阿 |
987 | なひきける わかみあさまの こころから くゆるおもひに たつけふりかな | 小侍従(太皇太后宮) |
988 | うきなかは ちきりあさまの ゆふけふり わかためもゆと みやはとかめむ | 為定(御子左二条為道男) |
989 | かみよより けふりたえせぬ ふしのねは こひやつもりて やまとなるらむ | 素暹 |
990 | ひとりぬる まくらのちりの つもりてや むなしきとこの やまとなるらむ | 寛耀 |
991 | あひおもはぬ いもをなにせむ うはたまの こよひもゆめに みえもこなくに | 人麿 |
992 | ゆめにたに みるへきものを ねさめつつ こふるこころは ゆくかたもなし | 元良親王 |
993 | おもひねの ゆめのうきはし とたえして さむるまくらに きゆるおもかけ | 俊成女 |
994 | うつつには わすれやはする うきことの ゆめこそさむる ほとなかりけれ | 公雄 |
995 | ひとはよも こころかよはし よひよひの わかおもひねの ゆめのうきはし | 義詮 |
996 | うきひとの こころにはあらて おもひつつ ぬれはそみゆる ゆめはたのまし | 為定(御子左二条為道男) |
997 | まことなき ゆめのたたちの おもかけは たかいつはりに かよひそめけむ | 為信 |
998 | せめてなほ うつつにつらき なくさめと ぬるよのゆめを まつもはかなし | 為教 |
999 | ねぬるよの ゆめにこえける あふさかや ひともゆるさぬ せきちなるらむ | 成景 |
1000 | あきのよの とりのはつねは つれなくて なくなくみえし ゆめそみしかき | 定家 |
1001 | きえわふる しものころもを かへしても みしよまれなる ゆめのかよひち | 通光 |
1002 | なかきよに こほりかたしき ふしわひぬ まとろむほとの なみたならねは | 高倉(八条院) |
1003 | あはぬよの つらさかさなる さむしろに かたしくものは なみたなりけり | 隆教 |
1004 | あふまてと うきにたへたる つきひさへ せめてつれなく くるるとしかな | 四条(安嘉門院) |
1005 | あふまてと たのみしままに としくれて ちきりもしらす ゆくつきひかな | 為氏 |
1006 | あふまての ちきりもまたす なつひきの てひきのいとの こひのみたれは | 為家 |
1007 | あふことは なほかたいとに ぬくたまの こころよわくそ おもひみたるる | 内経 |
1008 | きえねたた なにそはあたの ことのはに かけてもつらき そてのしらたま | 高倉(八条院) |
1009 | いたつらに としはへにけり たまのをの なからへはとも ちきりやはせし | 隆祐 |
1010 | たまささの はわけのつゆの きえぬへく おもふとまては しるひとやなき | 法守法親王 |
1011 | あきはきに おくしらつゆの きえかへり ひとをこひしと おもふころかな | 読人不知 |
1012 | しもかれの のへにあさふく かせのおとの みにしむはかり ものをこそおもへ | 赤染衛門 |
1013 | わかこひは くさはにあまる つゆなれや おきところなく みをなけくらむ | 良教 |
1014 | わかそては かりにもひめや くれなゐの あさはののらに かかるゆふつゆ | 式子内親王 |
1015 | うしとのみ ひとのこころを みしまえの いりえのまこも さそみたるらむ | 公実 |
1016 | ますかかみ こひしきひとは みえなくに わかおもかけの なにうつるらむ | 土御門院 |
1017 | わかなかは とほやまとりの ますかかみ よそにもひとの かけをやはみる | 定為 |
1018 | やまとりの をろのかかみの よそなから みしおもかけに ねこそなかるれ | 実直母 |
1019 | いつまてか よそにのみして あまくもの へたつるなかに こひわたるへき | 祐夏(鴨祐雄男) |
1020 | あふまてと たのみをかけし たまのをの よわるはかりに としそへにける | 基嗣 |
1021 | ひとしれぬ おもひのたまの をたえなは なにしてあはぬ かすをとらまし | 伊勢大輔 |
1022 | こひしなぬ いのちはかりを おなしよの ちきりありとや なほたのままし | 寿成門院 |
1023 | みなといりの あしまをわけて こくふねも おもふなかには さはらさりけり | 但馬(藻璧門院) |
1024 | あしまより なにはのうらを ひくふねの つなてなかくも こひわたるかな | 読人不知 |
1025 | なそもかく あまのとわたる あまをふね かちとるまなく ものおもふらむ | 基俊 |
1026 | よさのうみの あまのしわさと みしものを さもわかやくと しほたるるかな | 和泉式部 |
1027 | あふことは かたたのうらの おきつなみ たつなはかりや ちきりなるらむ | 道暁 |
1028 | しほたるる みをはおもはす ことうらに たつなくるしき ゆふけふりかな | 少将内侍(後深草院) |
1029 | あふことも みにはなきさに よるなみの よそのみるめに ねこそなかるれ | 後伏見院 |
1030 | いつまてか おもひみたれむ いたつらに おきつたまもの みかくれにして | 時光 |
1031 | いかにせむ もろこしふねの よるかたも しらぬにさわく そてのみなとを | 為定(御子左二条為道男) |
1032 | あふことは なみちはるかに こくふねの ほのみしひとに こひやわたらむ | 一条(徽安門院) |
1033 | よるふねの たよりはなくて いたつらに わかみこかるる とこのうらなみ | 為秀女 |
1034 | はるたては そらのけしきの かはるかな つらきこころも かからましかは | 成助 |
1035 | へたてたる かすみのまより ちるはなは しのふにあまる こころとをしれ | 高遠 |
1036 | いかにして はなのしたひも とけにけむ ひとのこころは ありしなからに | 基俊 |
1037 | むらさきの こそめのおひの かたむすひ とけてぬるよの かきりしらせよ | 教実 |
1038 | かりそめに むすひすてける したおひを なかきちきりと なほやたのまむ | 民部卿典侍(後堀河院) |
1039 | おもへとも えそいはしろの むすひまつ うちとけぬへき こころならねは | 祖月 |
1040 | すきたてる やともをしへす つらけれは みわのやまへを たれにとはまし | 伊尹 |
1041 | いのらすよ はつせのひはら しくれにも つゆにもそめぬ いろをみむとは | 行乗 |
1042 | みそきせし かみもうけすは たちかへり つらきひとをや またかこたまし | 公秀 |
1043 | かみたにも なひかぬなかの ゆふしては なににかくへき たのみなるらむ | 為連 |
1044 | こひしなぬ みのつれなさを いのるより おもひたえぬと かみやしるらむ | 為定(御子左二条為道男) |
1045 | しくれする いくたのもりの はつもみち ひをへてまさる いろにこひつつ | 良基(二条道平男) |
1046 | しくれゆく くものたえまの みねのまつ みすはつれなき ほともしられし | 行尹 |
1047 | あふことを しはしはかけし おきつなみ よそのみるめの たえもこそすれ | 為理 |
1048 | いもせやま なかるるたきの おとにのみ きかぬはかりを なほやたのまむ | 為藤 |
1049 | あふことの なきさにひろふ いしなれや みれはなみたの まつかかるらむ | 輔相 |
1050 | あまのかる みるめはよその ちきりにて しほひもしらぬ そてのうらなみ | 為兼 |
1051 | あまのたく もにすむむしに あらねとも われからこひに みをこかすかな | 為清 |
1052 | わかなかは うらよりをちに おくあみの ひけともよらぬ ほとそくるしき | 為世(御子左藤原為氏男) |
1053 | うらみても としふるあまの つりのをの うけくにうかふ なみたとをしれ | 実氏 |
1054 | きよみかた あふことなみの せきもりは わかかよひちに うちもたゆます | 藤経(源) |
1055 | せきもりの こころもしらす あふさかを わかかよひちと おもひけるかな | 長舜 |
1056 | きくもうし たれをなこその せきのなそ ゆきあふみちを いそくこころに | 為子(従二位為子) |
1057 | いかにまた こころひとつの かよひちも すゑはなこその せきとなるらむ | 隆房 |
1058 | よとともに むねあひかたき わかこひの たくひもつらき けふのほそぬの | 伏見院 |
1059 | こひしきも つらきもおなし おもひにて やむときもなき わかこころかな | 読人不知 |
1060 | あはれてふ ことのはいかて みてしかな わひはつるみの なくさめにせむ | 実方 |
1061 | あたにおく つゆのなさけの ことのはに わかいのちさへ かかるはかなさ | 小少将 |
1062 | うきになほ たへけるとしを かそふれは わかつれなさの ほとそしらるる | 頼康 |
1063 | なからへて おなしうきよに ありとのみ きくやわかみの たのみなるらむ | 義詮 |
1064 | つれなさの かきりもしらす おなしよに いのちあらはと たのむはかなさ | 良憲 |
1065 | かひなしや うきになしても ひとかたに おもひもこりぬ こころよわさは | 為兼 |
1066 | あふまては むすはさりける さきのよの むくひしられて うきちきりかな | 隆長 |
1067 | よよかけて われさへつらし むくひありて うきにひかるる ちきりとおもへは | 公蔭 |
1068 | むくひある よともしらてや うきひとの こころのままに つれなかるらむ | 善源 |
1069 | あらましに なくさむほとの ちきりたに わかこころより おもひたえにき | 実教 |
1070 | あふにたに かへむいのちは かなしきに うきひとゆゑに みをやすつへき | 俊恵 |
1071 | こひしなむ のちのよとても いかならむ いきてつれなき ひとのこころは | 為氏 |
1072 | つれなしと よそにやみえむ あふことに ひとのかへねは いけるいのちを | 基任 |
1073 | あひみての のちのつらさを せめてなと なけくはかりの おもひてもなき | 家定 |
1074 | さりともと はかなくたのむ こころこそ つれなきなかの ちきりなりけれ | 定煕 |
1075 | あふことに かへもこそすれ をしからぬ わかいのちとは ひとにかたらし | 宗恵 |
1076 | とはれぬも うきみのとかと おもふこそ せめてもしたふ こころなりけれ | 信方 |
1077 | なにかおもふ しひてもいはし うきみをは いとふもさこそ くるしかるらめ | 大輔(殷富門院) |
1078 | いせのうみの しほせになひく はまをきの ほとなきふしに なにしをるらむ | 寂蓮 |
1079 | せきとむる やまゐのみつの かけにたに みすはたもとを しほらましやは | 公相 |
1080 | ひとこころ あさきにまさる おもひかは うきせにきえぬ みつからもうし | 永福門院 |
1081 | ひとしれぬ こころのうちの おもひかは なかれてすゑの たのみたになし | 頼清 |
1082 | としをへて こひわたるみの くるしさを あはれとおもへ うちのはしひめ | 実継 |
1083 | おもひかね うちのかはをさ こととはむ みのうきふねも よるへありやと | 頼康 |
1084 | もかみかは ひとのこころの いなふねも しはしはかりと きかはたのまむ | 有家(藤原重家男) |
1085 | みつのうへの あわときえなは こひせかは なかれてものは おもはさらまし | 御匣(式乾門院) |
1086 | そこひなき ふちとなりても なみたかは したにこころの さわきやはせぬ | 為秀 |
1087 | あふせなき なみたのかはの みをつくし つらきしるしに くちやはてなむ | 公守 |
1088 | いかなれは ひとにこころを そめかはの わたらぬせにも そてぬらすらむ | 信聡 |
1089 | けふりたつ むろのやしまに あらぬみは こかれしことそ くやしかりける | 匡房 |
1090 | うきよをは なけきなからも すくしきて こひにわかみや たへすなりなむ | 忠度 |
1091 | さてしもそ いのちはいとと をしからむ あふにはかへし こひはしぬとも | 村基 |
1092 | あふことに かへぬいのちそ よそなから なかなかなかき ちきりなりける | 周清 |
1093 | みのうさを おもひもしらぬ ものならは なにをかこひの なくさめにせむ | 小侍従(太皇太后宮) |
1094 | しきたへの まくらもうとく なるまてに さてもねぬよの つもりぬるかな | 帥(鷹司院) |
1095 | こひわふる そてのなみたを そのままに ほさてかたしく よはのさむしろ | 頼隆 |
1096 | あふことは かたしきころも さむしろに ねぬよかさねて ぬるるそてかな | 宗範 |
1097 | ひとりぬる なみたのとこの ぬれころも あふよもしらて くちやはてなむ | 雅冬 |
1098 | いくよわれ おしあけかたの つきかけに ことわりならぬ ものおもふらむ | 按察(鷹司院) |
1099 | おのつから なくさむやとて なかむれは つきみぬよりも ぬるるそてかな | 後醍醐院 |
1100 | ゆきあはむ ほとをはしらす すみよしの まつのたえまの ちきのかたそき | 土御門院 |
1101 | まつひとも こすゑにかかる うつせみの うきみからにや おとつれもせぬ | 新少将 |
1102 | はかなしや たかいつはりの なきよとて たのみしままの くれをまつらむ | 為家 |
1103 | さりともと こころひとつに たのむかな ひとのしるへき ゆふへならねは | 通成 |
1104 | わくらはに まてとたのむる ことのはの いつはりならぬ ゆふくれもかな | 道意(西園寺実兼男) |
1105 | あきのあめに きりのはおつる ゆふくれを おもひすつるそ まつにまされる | 基家 |
1106 | いたつらに くらせるよひの さむしろは ゆめをたのみて ねむかたもなし | 信実 |
1107 | なけきわひ あふとはかりを いかにして くらせるよひの ゆめにたにみむ | 光吉 |
1108 | わひぬれは こよひもひとり ぬるかうちに みえつるゆめや しひてたのまむ | 貞世 |
1109 | これもまた まつとやいはむ さよころも かへすゆめちの たのみはかりに | 長雅 |
1110 | よしさらは またしとおもふ ゆふへこそ わかこころさへ たのみかたけれ | 冬平 |
1111 | いかたおろす そまやまかはの はやきせに さはらぬくれと おもはましかは | 広秀 |
1112 | おほゐかは ひとめもらさぬ けふやさは そまのいかたし くれをまつらむ | 馬内侍 |
1113 | まちなれし ゆふくれことに ささかにの いともくるしく ものをこそおもへ | 法守法親王 |
1114 | たのめしも またしるひとは なきものを おとになたてそ まつのゆふかせ | 一条(徽安門院) |
1115 | このくれも おとになたてそ しのふやま こころひとつの みねのまつかせ | 宣明 |
1116 | なほさりの ことのはにのみ ききなれて たのむかはりの ゆふくれもなし | 雅久 |
1117 | いつはりの うきにもたへて またれけり みはならはしの ゆふくれのそら | 為冬 |
1118 | いつはりの ことのはまては たのむとも ちきらぬくれの またれすもかな | 藤子(従三位) |
1119 | まつひとは こよひもいさや いりひさす とよはたくもの ゆふくれのそら | 忠幸 |
1120 | このくれに おとろかさすは かはりける ちきりもしらて なほやまたまし | 邦省親王 |
1121 | たのめねは いつはりとたに かこたれす わかなくさめに しひてまつよは | 為子(従三位) |
1122 | ひとかたに まちもやせまし いつはりの うきにならはぬ ゆふへなりせは | 実兼 |
1123 | いつはりは またれしまての なさけにて なかなかつらく なるちきりかな | 国冬 |
1124 | いつはりの ちきりなりとも たのみてや かはらはかこつ ことのはにせむ | 万代(後醍醐院女蔵人) |
1125 | かくはかり またれすもかな いつはりと おもひしままの こころなりせは | 尊道法親王 |
1126 | たのめこし うきいつはりを つらしとも いはぬにみゆる はなのいろかな | 読人不知 |
1127 | いはてたた あたにうつろふ はなにこそ とへとおもはぬ いろもみえしか | 家基(近衛基平男) |
1128 | よのなかに たえていつはり なかりせは たのみぬへくも みゆるたまつさ | 読人不知 |
1129 | はかなしや くるるよことの いつはりに いつまてこりぬ こころなるらむ | 孝朝 |
1130 | はかなくて まつらむとこそ いつはりに ちきりしひとは おもひいつらめ | 為藤 |
1131 | いつはりの ちきりならすは おのつから ひともひとめの ひまやまつらむ | 浄弁 |
1132 | こぬまても なくさむものを いつはりの なきよなれとは たれかいひけむ | 宗尊親王 |
1133 | ちきれはと たのむもかなし いつはりの なきゆふくれに いつならひけむ | 為子(贈従三位) |
1134 | いくよまて まちあかせとて うきひとの なほいつはりの かすつもるらむ | 廉仁王 |
1135 | いつまてか こぬよあまたと うらみても さすかまたれし ゆふへなりけむ | 隆博 |
1136 | いつはりの むなしきかすの つもるより ゆふくれをさへ うらみつるかな | 如雄 |
1137 | いつはりと おもはてたのむ くれもかな まつほとをたに なくさめにせむ | 則祐 |
1138 | ささかにの いとかきたえし ゆふへより そてにかかるは なみたなりけり | 基成 |
1139 | さりともと ゆふけのうらの こよひさへ あはすはたのむ かひやなからむ | 瑒子内親王 |
1140 | たのめても いかかとおもふ よひのまの あめにそいとと まちよわりぬる | 忠季(藤原公蔭男) |
1141 | おのつから ひとまありとも つけてまし まことにかよふ こころとおもはは | 花園院 |
1142 | いつはりも かきりあらはと たのむよの いくたひふけて ひとりねぬらむ | 為相 |
1143 | ふけぬるを うらみむとたに おもふまに こぬよしらるる とりのこゑかな | 頓阿 |
1144 | またしとは おもふものから ふくるよの つらきやなにの こころなるらむ | 一条(照慶門院) |
1145 | こよひさへ むなしくふくる ともしひの きえなてあすも あらむものかは | 光厳院 |
1146 | ふくるまて なほこそたのめ こよひそと いはぬをたにも まちしこころに | 良基(二条道平男) |
1147 | よひのまは いててはらはむと おもひしに さきたつそての つゆそあやしき | 土御門院 |
1148 | うきひとの おもかけそへて たのむよも こぬよもひとり つきをみるかな | 邦省親王 |
1149 | つれなさの かきりをそしる たのめつつ こぬよのつきの ありあけのそら | 在夏 |
1150 | こよひまた むなしきそてに ふけぬとは なみたにやとる つきそしるらむ | 冬定 |
1151 | よひのまの しけきひとめの やすらひに まつほとすきて つきそふけゆく | 基氏(足利尊氏男) |
1152 | たのめすは さてもねぬへき よひよひの つらさにかへて つきをみるかな | 顕実母 |
1153 | きみまつと ひとにはいはぬ いつはりも いくよになりぬ やまのはのつき | 是法 |
1154 | いつはりと おもひもしらす またるるや こころにたえぬ ちきりなるらむ | 信武 |
1155 | まてはこそ うらみもまされ いつはりに おもひなしてや うちもねなまし | 雅孝 |
1156 | まきのとを たたくくひなを それかとも おとろかぬまて とはぬきみかな | 師光(源師頼男) |
1157 | まきのとは さしてこよひも あけにけり さはるといはて なにまたるらむ | 重直 |
1158 | あしまゆく いりえのふねの つなてなは さはるやよそに こころひくらむ | 長綱(菅原茂長男) |
1159 | たのめつつ こぬよにかねて ならはすは けふやつらさの はしめならまし | 光行 |
1160 | たのめつつ こぬよのかすは つもれとも またしとおもふ こころたになし | 行広 |
1161 | おもひつつ ひるはかくても なくさめつ よるそわひしき ひとりぬるみは | 読人不知 |
1162 | いつはりと なにかかこたむ おもはねは とはぬそひとの まことなりける | 昌義 |
1163 | たちかへり なほこそたのめ いつはりも つもらはひとや おもひしるとて | 隆淵 |
1164 | せめてたた ふけゆくかねそ またれける わすれてこすは おとろかせとて | 国夏 |
1165 | たのめても こぬみのはまの おきつかせ なにいほさきの まつにふくらむ | 能誉 |
1166 | ゆめのこと なとかよるしも きみをみむ くるるまつまも さためなきよを | 忠見 |
1167 | ゆめとたに おもひもわかぬ ちきりかな やみのうつつの さたかならねは | 忠貞 |
1168 | うきなのみ たつあたなみの あさきせは かよふかひなき にほのしたみち | 寛耀 |
1169 | うきふしと なかなかなりぬ ささまくら むすふひとよの ゆめのちきりは | 読人不知 |
1170 | わすれしな ひとよのふしの ささまくら ひとこそかりに おもひなすとも | 良基(二条道平男) |
1171 | こひしなは くやしかるへき ちきりかな いのちそひとの なさけなりける | 後宇多院 |
1172 | さすかまた かきりありける ちきりとや いのちつれなく たのみきつらむ | 為子(贈従三位) |
1173 | かくてしも ありはつましき ちきりとや あふよをひとの なほしのふらむ | 経賢 |
1174 | あふさかの このしたかけの いはしみつ なかれてむすふ ちきりともかな | 為明 |
1175 | おのつから あふよまれなる ちきりをは しのはすとても たれかしるへき | 信実 |
1176 | さむしろの ちりははらはし あはぬよの つもれるかすも おもひしれとて | 宣子(従三位藤原) |
1177 | うらむへき ことのはそなき くすかつら くるよはひとの うさもわすれて | 頓宗 |
1178 | まれにくる ひとのなみたも おちそひて あふよそそては ぬれまさりける | 基世女 |
1179 | おのつから きてもたのます なみたせく はないろころも かへりやすさは | 隆教 |
1180 | まてしはし またゆふくれと ちきるとも なほなくさまし けさのわかれち | 道平 |
1181 | おもひしれ またゆふくれの たのみたに なくなくをしき けさのなこりを | 時秀 |
1182 | そのままに さてもきえなて しらつゆの おきてかなしき みちのしはくさ | 為家 |
1183 | なくさむる ことのはもなほ たのまれす さてもわかるる きぬきぬのそら | 行忠(藤原) |
1184 | きぬきぬの わかれをしたふ たまくらに なみたをそへて とりやなくらむ | 冬長 |
1185 | うしときく とりのねはかり のこりけり ひとはとまらぬ きぬきぬのそら | 成国 |
1186 | うつつとも ゆめともわかす とりのねに なきてわかるる しののめのそら | 基氏(足利尊氏男) |
1187 | あまのとの あくるもしらて わかれちを たたとりのねに かこちつるかな | 尊円法親王 |
1188 | あふさかの ゆふつけとりは こころせよ またもこゆへき せきちならぬに | 義詮 |
1189 | おのつから あひみるゆめも さめゆけは これもわかれと とりやなくらむ | 盛徳 |
1190 | つゆしけき のかみのさとの かりまくら しをれていつる そてのわかれち | 為秀 |
1191 | ほともなく あけてわかれし あかつきは いととつゆこそ おきうかりしか | 仲文 |
1192 | くれにもと ちきりおけとも そまかはの いかたのとこは おきそわひぬる | 俊成(藤原俊忠男) |
1193 | あひみても なこりをしまの あまひとは けさのおきにそ そてぬらしける | 良平 |
1194 | たなはたの きのふわかれし そてよりも あくれはけさそ わひしかりける | 赤染衛門 |
1195 | ぬるよさへ なかにありつる からころも うらみかはらて おきわかれつつ | 為理 |
1196 | うらむるも したふもおなし なみたにて あふよはさへに ぬるるそてかな | 成藤(祝部) |
1197 | うつりかの のこるころもを かたしきて またねのとこも おきうかりけり | 読人不知 |
1198 | おもかけを のちしのへとや ありあけの つきにもひとの おきわかるらむ | 基隆(藤原基成男) |
1199 | わすれすよ いまはといひし きぬきぬの おもかけのこす ありあけのつき | 顕詮 |
1200 | いまはまた とりのねはかり かたみにて ありあけのつきを なみたにそみる | 頼重 |
1201 | うきものと みしわかれちの ありあけに またやつれなく かけしたふらむ | 万秋門院 |
1202 | わするなと いまひとたひは いひてまし ありしわかれを かきりとおもはは | 後宇多院 |
1203 | みをすてて そへしこころの かひもなく こひしきことの なとのこるらむ | 為継 |
1204 | たまくらの うつりかのこる あさねかみ こころみたるる かたみなりけり | 師継 |
1205 | あさなあさな けつれはいとと みたれつつ わかくろかみの とけぬころかな | 躬恒 |
1206 | いつまてか しつはたおひの なからへて こころもとけぬ ちきりまつらむ | 業清(藤原) |
1207 | なれそめし ちきりわするな したおひの またうちとくる ひとはありとも | 進子内親王 |
1208 | いかかせむ うへはつれなき したおひの わかれしみちに めくりあはすは | 定家 |
1209 | あひみても わするるほとに なりなまし ありしちきりの まことなりせは | 俊恵 |
1210 | あさからぬ ちきりのほとは としつきの つもるにつけて ひともしるらむ | 雅宗 |
1211 | つつむとて いそくけしきに あつさゆみ おしかへしても えこそちきらね | 行輔 |
1212 | ゆくすゑを たのめてもなほ ねをそなく しらぬいのちの こころよわさに | 真昭 |
1213 | ことのはも さためなきよと おもへとも ちきりしまての いのちともかな | 為秀女 |
1214 | ちきりおく こころのすゑも みるはかり こひにをしきは いのちなりけり | 実顕 |
1215 | あすしらぬ みにはたのます ゆくすゑを ちきるはひとの まことなりとも | 経清 |
1216 | うつろはぬ ちきりときくも たのまれす そのことのはの よにふりしより | 為定(御子左二条為道男) |
1217 | ちきりこそ なほたのまるれ さりともと おもふかたには こころひかれて | 直義 |
1218 | はかなくて たのむこころを たよりとや うきいつはりも あるよなるらむ | 深守法親王 |
1219 | ありしよの ちきりよせめて ゆめならは おもひねをたに またましものを | 花園院 |
1220 | うつつには おもひたえゆく あふことを いかにみえつる ゆめちなるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1221 | おもひいつる ちきりのほとも みしかよの はるのまくらに ゆめはさめにき | 定家 |
1222 | おもひつつ いかにねしよを かきりにて またもむすはぬ ゆめちなるらむ | 少将(藻璧門院) |
1223 | うしとみし ひとよのゆめの なこりより こころにさめぬ ものをこそおもへ | 花園院 |
1224 | あくるをも またぬちきりの かなしきは あふとみるよの ゆめのわかれち | 師賢(藤原師信男) |
1225 | うはたまの ゆめかあらぬか あふことも たたひとよにて やみのうつつは | 性威 |
1226 | うつつには とはてとしふる みわのやま いかにまちみむ ゆめのかよひち | 資平 |
1227 | うきみには こえてのちこそ あふさかの やまもへたつる せきとなりけれ | 為藤 |
1228 | こえてしも くやしかりける あふさかの せきちをなにに ゆるしそめけむ | 経定女 |
1229 | いまのみも いもをはこひす おくやまの いはねこけおひて ひさしきものを | 人麿 |
1230 | とにかくに ひとはいへとも わかさちの のちせのやまの のちもあはむきみ | 坂上大嬢 |
1231 | のちせやま のちもあはむと おもふにそ しぬへきものを けふまてもあれ | 家持 |
1232 | たきものの くゆるこころは ありしかと ひとりはたへて ねられさりけり | 定方女 |
1233 | あはてこそ こひをいのりと たのみしか いまはたなにか いのちなるへき | 政村 |
1234 | さらぬたに あふことかたき わかこひを としさへいたく へたてゆくかな | 康資王母 |
1235 | おのつから またあふちきり ありとても なれしなからの よにはかへらし | 伏見院 |
1236 | きみかこと おもはぬひとの つらからは われはこころも あくかれなまし | 馬内侍 |
1237 | つらかりし こころくらへの ひとかたも よわらぬすゑは とほさかりつつ | 顕実母 |
1238 | たのまれぬ なかとはかねて いひしかと たたひとよとは おもひやはせし | 国夏 |
1239 | うきになほ こりすそたのむ いつはりを かこちてたえむ こころならねは | 道嗣 |
1240 | つれなきを うらみしそても ぬれしかと なみたのいろは かはりやはせし | 別当(皇嘉門院) |
1241 | ことのはの かはるにつけて うきひとの こころのいろも まつしられつつ | 為秀 |
1242 | よしさらは しのふるほとに たえもせよ あらはれはうき なかのちきりは | 公宗母 |
1243 | よよかけて ちきりしまては かたくとも いのちのうちに かはらすもかな | 義詮 |
1244 | あふことは おもひたゆとも おなしよに ありとはかりを しらせてしかな | 恒明親王 |
1245 | おなしよに いけるはかりを ちきりにて またあふまては おもひたえにき | 聖承 |
1246 | あひみても へたつるなかに ゆくくもの なとたえたえに しくれそめけむ | 兼経 |
1247 | なかめやる そなたのそらの くもたにも あとなきはてそ きえてかなしき | 下野(後鳥羽院) |
1248 | あたひとの こころのはなに まかへはや うきたるくもの あともさためぬ | 信実 |
1249 | しらきくも うつろひにけり うきひとの こころはかりと なにおもひけむ | 忠通 |
1250 | かみなひの もりならねとも かねてより うつろふいろの みゆるなかかな | 公清 |
1251 | つるのゐる まつとてなにか たのむへき いまはこすゑに なみもこえなむ | 堀河(待賢門院) |
1252 | にほとりの したのかよひち たえさらは なみのうきすは うかれたりとも | 進子内親王 |
1253 | たのむそよ にほのうきすの うきなから したのかよひの たえぬはかりを | 為遠 |
1254 | にほとりの すむいけみつの たえもせは いかにしのへと かよひそめけむ | 兼氏 |
1255 | をやまたの なはしろみつに あらなくに なかれそめては たえむものかは | 実頼 |
1256 | わきもこか またもあふみの やすかはの やすきいもねす こひわたるかも | 読人不知 |
1257 | つひにまた いかなるせにか たえはてむ やましたみつの あさきちきりは | 公時(藤原実継男) |
1258 | たにかはの いはまにもれし やまみつの またはいかなる せによとむらむ | 為藤 |
1259 | みくさゐし のなかのしみつ いまさらに すむともいさや もとのこころは | 為藤 |
1260 | ゆくみつの はなのかかみの かけもうし あたなるいろの うつりやすさは | 定家 |
1261 | うつりゆく こころそつらき ますかかみ たれゆゑかけと なるみなるらむ | 賢俊 |
1262 | ますかかみ たえにしいもを あひみすは わかこひやまし としはへぬとも | 人麿 |
1263 | わすれくさ わかみにつむと おもひしを ひとのこころに おふるなりけり | 小町 |
1264 | きのくにの あくらのはまの わすれかひ われはわすれし としはふるとも | 読人不知 |
1265 | つらかれと するかのうみの はまつつら くるよはまれに ひとそなりゆく | 行家(藤原知家男) |
1266 | いかなれは なみたのあめは ひまなきを あふくまかはの せたえしぬらむ | 讃岐(二条院) |
1267 | はつせかは むすふみなわの うきみよに きえかへりても たえしとそおもふ | 定為 |
1268 | はつせかは またあひみむと たのめてし しるしやいつら ふたもとのすき | 公兼 |
1269 | わかことや くめちのはしも なかたえて わたしわふらむ かつらきのかみ | 実方 |
1270 | いははしの たえにしなかを かつらきの かみならぬみは なほもまつかな | 和義 |
1271 | いまはたた おもひたえにし おもかけの はかなくかよふ ゆめのうきはし | 基幸 |
1272 | ねぬるよに あふとみつるも ゆめちにて いやはかななる ちきりなりけり | 実直母 |
1273 | おもひいつる こころひとつの かひもなし おなしよとたに しらぬちきりは | 為氏 |
1274 | さらはまた おなしこころに わすれなて なににおもはぬ ひとをこふらむ | 月花門院 |
1275 | わすれえぬ わかこころこそ いとはるれ はてうかりける ひとのちきりに | 近衛(今出河院) |
1276 | おもひあまり むかしまてやは つらからぬ たかよにひとを わすれそめけむ | 家良 |
1277 | いかにして わすれむとおもふ こころにも なほかなはぬは なみたなりけり | 親清女 |
1278 | またもみぬ ゆめちなからは たえもせて つらきうつつに のこるたまのを | 行蓮 |
1279 | あふとみる ゆめもむなしく さめぬれは つらきうつつに またなりにけり | 行宗 |
1280 | おもひねに しはしなくさむ ゆめをたに ゆるさぬよはの かねのおとかな | 和氏 |
1281 | やかてなと むかしかたりに なりぬらむ みしはまちかき ゆめのかよひち | 実継 |
1282 | いかにせむ かよふゆめちも たのまれす おもひねならぬ よはしなけれは | 政元 |
1283 | あふことは ゆめになりにし とこのうへに なみたはかりそ うつつなりける | 惟明親王 |
1284 | しらさりき そのあかつきを かきりとも われにはつけの まくらならねは | 後光厳院 |
1285 | おもはしと おもふもものの くるしきを やすくやひとの わすれはつらむ | 御匣(式乾門院) |
1286 | いまはたた おもひたえたる つらさにて ちきりくやしき ゆふくれのそら | 為氏 |
1287 | いまははや たえにしままの うつつにて みるなくさめの ゆめたにもなし | 為世(御子左藤原為氏男) |
1288 | はかなくも おもひいつやと たのむかな わかならはしの こころよわさに | 高秀 |
1289 | はかなくて たえにしなかの なこりしも こころにとまる はてそかなしき | 内侍(永福門院) |
1290 | まちしよに またたちかへる ゆふへかな いりあひのかねに ものわすれせて | 良基(二条道平男) |
1291 | わかれちに ききしもいまは むかしにて いとはぬかねの ねをのみそなく | 道嗣 |
1292 | ひとりぬる しもよのかねの ひひきより あきにふけゆく ちきりをそしる | 為重 |
1293 | ならしはの なれしおもひや いまさらに かりはのをのの よそのあきかせ | 教実 |
1294 | いつまてか あふことかたき あらたかの たなれぬなかに こころおくらむ | 仲教 |
1295 | かはりゆく ひとのこころの あきかせに あふたのみたに なきちきりかな | 定宗(藤原家親男) |
1296 | あさちはら なひくもおなし あきかせの うつろふいろに ふきかはるらむ | 杲守 |
1297 | かよひこし さとはふしみの あきかせに ひとのこころの あれまくもをし | 知家 |
1298 | つらきかな まちしにかはる ゆふくれを みはうきときと あきかせそふく | 亀山院 |
1299 | しらつゆの おきふしたれを こひつらむ われはききおはす いそのかみにて | 閑院 |
1300 | みしままの かたみなるへき つきたにも うきよりほかの おもかけそなき | 季雄 |
1301 | むらくもの そらゆくつきも あるものを たえたえにたに みえぬきみかな | 公忠(藤原実忠男) |
1302 | おのつから おもひもいては わすれしと ちきりしままの つきやみるらむ | 栄子内親王 |
1303 | みをさらぬ おもかけはかり さやかにて つきのためうき わかなみたかな | 公雄 |
1304 | いかなれは たちもはなれぬ おもかけの みにそひなから こひしかるらむ | 寿暁 |
1305 | みるままに おつるなみたの たまつさは やるかたもなく かなしかりけり | 江侍従 |
1306 | きみかため われこそはひと なりはてめ しらたまつさは やけてかひなし | 貫之 |
1307 | たまもかる おきへはゆかし しろたへの まくらせしひと わすれかねつも | 宇合 |
1308 | いかにせむ うらのはつしま はつかなる うつつののちは ゆめをたにみす | 定家 |
1309 | あまをふね われをはよそに みくまのの うらよりをちに とほさかりつつ | 但馬(藻璧門院) |
1310 | あしたゆく くるてふあまに こととはむ かれなてのこる みるめありやと | 経宣 |
1311 | おひかせに まかちしけぬき ゆくふねの はやくそひとは とほさかりぬる | 貞世 |
1312 | からあゐの やしほのころも ふりぬとも そめしこころの いろはかはらし | 為家 |
1313 | さよころも かけはなれても いととなほ ほさぬはそての なみたなりけり | 為量 |
1314 | つきくさに すれるころもの いろよりも うつるはやすき こころとそみる | 昭覚 |
1315 | しをるれは これをもあまの ころもとや ちきりしなかの まとほなるらむ | 師教(九条忠教男) |
1316 | かさねても なれにしなかの さよころも へたつるものと いつなりにけむ | 達智門院 |
1317 | ねをそなく とほやまとりの ひとりねに なかきへたての なかのちきりは | 為実(御子左藤原為氏男) |
1318 | よとともに みたれてそおもふ やまとりの をろのなかをの なかきつらさに | 後鳥羽院 |
1319 | よそにして みすはありとも ひとこころ わすれかたみに なほやしのはむ | 小町 |
1320 | ひとやりに あらぬものから うらむるは みのことわりも おもひしらすや | 高明 |
1321 | ものおもへは いもねられぬを あやしくも わするることを ゆめにみるかな | 深養父 |
1322 | みしやゆめ わかみやあらぬ ちきりしに かはるつらさそ さむるかたなき | 実家女 |
1323 | ゆめならて またもむすはぬ ちきりかな とけしひとよの なかのしたひも | 読人不知 |
1324 | すまのあまの しほなれころも なれきてそ まとほになるも うらみなりける | 実兼 |
1325 | はてはまた あまのすむてふ さとといへは しるへたになき みをうらみつつ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1326 | おくあみの ひくてあまたに そてぬれて さてもうらみぬ なみのまそなき | 知家 |
1327 | ことかたに ひくひとなくは たくなはの まとほにくるも よしやうらみし | 只帰 |
1328 | かれはてむ のちしのへとや なつくさの ふかくはひとの たのめおきけむ | 実朝 |
1329 | ともしする なつののしかの ねにたてぬ おもひもかくや くるしかるらむ | 氏兼 |
1330 | なひくとも ほにはいてしと しのすすき しのひしなかは しもかれにけり | 四条(安嘉門院) |
1331 | たつぬへき しるしもいまは あとたえぬ ゆきのふるのの もすのくさくき | 基氏(足利尊氏男) |
1332 | おのれのみ あまのさかてを うつたへに ふりしくこのは あとたにもなし | 定家 |
1333 | いまそうき かはるちきりの しらまゆみ なひきそめてし こころよわさは | 後光厳院 |
1334 | われにひく ちきりなりとも たのまれし あたちのまゆみ あたしこころは | 公賢 |
1335 | ひとはいさ あたちのまゆみ おしかへし こころのすゑを いかかたのまむ | 民部卿典侍(後堀河院) |
1336 | なほいかに こひしなぬみの つらからむ のちのよちきる ひともありせは | 実教 |
1337 | こひしなは やすかりぬへき いのちさへ あふをかきりに としそへにける | 弁内侍(後深草院) |
1338 | かはらしと おもへはこそは ちきるらめ わかかねことに いかかうらみむ | 少将内侍(後醍醐院) |
1339 | いかはかり なほうからまし いつはりの なきよにかはる ちきりなりせは | 読人不知 |
1340 | いつはりに かはるもしらて いくとせか ちきりしままの みをたのむらむ | 公脩 |
1341 | ことのはの かよはすなれは いつはりと うらみしころを またしのふかな | 尊氏 |
1342 | うらむへき ひとめのひまも いくたひか かすならぬみに すくしきつらむ | 空暁 |
1343 | いへはけに わかみのみこそ うかりけれ つらきひとには ことのはもなし | 信実 |
1344 | しはしたた いかてやみまし つらさをも うきをもしらぬ みとはなるとも | 為親 |
1345 | なにとたた うらむるかひも なきなかに ことのはをのみ つくしきぬらむ | 寛尊法親王 |
1346 | ことのはの うつろふたにも うきなかに いまはこすゑの あきかせそふく | 長秀 |
1347 | ははそはら うつろふいろを つらしとも たれにいはたの もりのしたつゆ | 良尹 |
1348 | ことのはに さきたつそての なみたにそ たへぬうらみの ほとはしるらむ | 道嗣 |
1349 | おもかけは わかみにそへる つらさにて うらみぬつきに ぬるるそてかな | 経継 |
1350 | みてもなほ ものおもへとや うきひとの わかおもかけを つきにそへけむ | 為定(御子左二条為道男) |
1351 | すむつきの なみたにくもる かけまても おもへはひとの つらさなりけり | 実前 |
1352 | ひとをこそ うらみはつとも おもかけの わすれぬつきを えやはいとはむ | 為藤 |
1353 | うらみわひ たへぬなみたに そほちつつ いろかはりゆく そてをみせはや | 肥後(京極前関白家) |
1354 | ことのはを たのまさりせは としふとも ひとをつらしと おもはさらまし | 顕季 |
1355 | うらみても なほしたふかな こひしさの つらさにまくる ならひなけれは | 近衛(今出河院) |
1356 | さてもまた あやしきまての ちきりかな うらみはかりを おもひてにして | 光厳院 |
1357 | ありはてぬ ならひはさそと なくさめて かはるちきりを なけかすもかな | 公賢 |
1358 | かつしたふ こころよわさは なかなかに うらみてなにの かひかあるへき | 公蔭 |
1359 | かすならぬ みのことわりに なくさめて うきをうらみぬ ほとそへにける | 実雄 |
1360 | かはらしと ちきりしすゑを たのみける わかはかなさそ いまはくやしき | 公信(源) |
1361 | いととなほ うきにつけても おもふにも いふにもあまる ひとのつらさは | 為世(御子左藤原為氏男) |
1362 | うきことも いくよかあらむ よしのかは よしやひとをも いまはうらみし | 親清女 |
1363 | わかそてに なみたのたきそ おちまさる ひとのうきせを みなかみにして | 中将(陽徳門院) |
1364 | よしさらは なみたにくちね なかなかに かたみもつらし つけのをまくら | 禅助 |
1365 | いつはりの なくてすきにし むかしたに ひとのちきりを たのみやはせし | 少将内侍(後深草院) |
1366 | うかるへき みをしるうへの こひしさは なににかしはし おもひしつめむ | 伏見院 |
1367 | みやまきの したはふくすの したもみち うらむるいろを しるひとそなき | 覚助法親王 |
1368 | しらせはや たけのまかきに はふくすの したにうらむる ふしのしけさを | 基隆(藤原基綱男) |
1369 | あきかせに たままくくすの したつゆや うらみにたへぬ なみたなるらむ | 親清女妹 |
1370 | いまそしる まくすかはらに ふくかせの うらみもこひに かへるものとは | 道智 |
1371 | いかにせむ しきのはねかき かきたえて とはれぬかすの つもるうらみを | 覚空 |
1372 | まれにたに あふよもあらは うらみまし まくらのちりの つもるつらさを | 忠兼(藤原隆忠男) |
1373 | たまかつら いかにねしよの たまくらに つらきちきりの かけはなれけむ | 為家 |
1374 | おのつから みしもちきりの かりころも うらむるかひや つひになからむ | 義詮 |
1375 | いまはたた うらむるまては みえすとも つらさをいかて おもひしらせむ | 帥(鷹司院) |
1376 | そのかみは いかにしりてか うらみけむ うきこそなかき いのちなりけれ | 和泉式部 |
1377 | つらかりし ことのはをなと うらみけむ それをたにこそ きかすなりぬれ | 師光(源師頼男) |
1378 | つらしとて うらみははてし まれにたに ひとのちきりの あらむかきりは | 読人不知 |
1379 | つらしとも うらみしほとは さてもなほ ひとのなこりの あるよなりけり | 全仁親王 |
1380 | わすれしの ことのはなくは なかなかに とはぬつきひを うらみさらまし | 後嵯峨院 |
1381 | さかきはの えたにやとかる ますかかみ くもりあらせて かへるみちかな | 春日明神 |
1382 | のちのよの くるしきことを おもへかし あはれこのよは ゆめとしらすや | 日吉地主権現 |
1383 | たのめつつ こぬとしつきを かさぬれは くちせぬちきり いかかたのまむ | 日吉 |
1384 | あれはつる わかやととはぬ うらみをは かくれてこそは ひとにしられめ | 熱田明神 |
1385 | くれなゐに ぬれつつけふや にほふらむ このはうつりて おつるしくれは | 道真 |
1386 | おもひかね たはかりことを せさりせは あまのいはとは ひらけさらまし | 経覧 |
1387 | みぬよまて こころそすめる かみかせや みもすそかはの あかつきのこゑ | 家隆 |
1388 | かみよより いくとせふりぬ すすかかは やそせのなみの あきのよのつき | 兼氏 |
1389 | くもりなき きみかやちよを てらすらし かみちのやまに いつるつかきけ | 達智門院 |
1390 | あはれとや かみのかかみも てらしみる いまはとおもふ きみかなこりを | 冷泉(花園院) |
1391 | くもりなき やたのかかみや いはとあけし あまてるかみの みかけなるらむ | 広秀 |
1392 | いにしへに かみのみかけの うつりしや いまもくもらぬ かかみなるらむ | 成国 |
1393 | あめつちの ひらけしよりや ちはやふる かみのみくにと いひはしめけむ | 智行 |
1394 | あめつちの むかしをとへは あしはらや なほそのかみの よよそひさしき | 読人不知 |
1395 | かみもさそ あかすみるらむ さくらちる しめのみやもり あさきよめすな | 延季 |
1396 | ちるときや さかきのえたに かかるらむ かみのいかきの はなのしらゆふ | 国夏 |
1397 | さかきはに さきそふはなの しらゆふは かみもこころに かけてみるらむ | 脩久 |
1398 | かみかきや かけものとかに いはしみつ すまむちとせの すゑそひさしき | 為家 |
1399 | いはしみつ なかれのすゑを うけつきて たえすそすまむ よろつよまてに | 伏見院 |
1400 | のほるへき あとをそいのる をとこやま うつもれはつる みねのしらゆき | 有光 |
1401 | いはしみつ かみのこころに まかせてや わかゆくすゑを さためおきけむ | 亀山院 |
1402 | あとたれて いくよへぬらむ はこさきの しるしのまつも かみさひにけり | 顕朝 |
1403 | いはしみつ かみよのつきや にこりなき ひとのこころの そこにすむらむ | 光吉 |
1404 | のとかなる はるのまつりの はなしつめ かせをさまれと なほいのるらし | 良基(二条道平男) |
1405 | ここのへの さくらかさして けふはまた かみにつかふる くものうへひと | 後醍醐院 |
1406 | みよのあとに なかれをうけて いはしみつ すめるをときと なほそつかふる | 親光 |
1407 | いはしみつ ふるきなかれの あとはあれと わかみひとつの せによとむかな | 幸清 |
1408 | あめのした みよをさまれと まもるらし くもをわけてし かみのちかひに | 遠久 |
1409 | ちはやふる かものみつかき きみかよを ひさしかれとそ いのりそめてし | 経久 |
1410 | のちのよも このよもかみに まかするや おろかなるみの たのみなるらむ | 深源 |
1411 | としへぬる わかかみやまの さかきはに いくへみしめを ひきかさねけむ | 教久 |
1412 | みつかきの ひさしきよより すむつきの かみさひまさる かけやそふらむ | 行氏(平胤行男) |
1413 | いかはかり かみもうれしと みたらしや そこまてすめる きみかこころを | 和氏 |
1414 | よろつよと きみをいのりて ふるそては かけみたらしに かみやうくらむ | 氏久 |
1415 | みかさやま ふもとをめくる さほかはの さしていのりし みをたのむかな | 長能 |
1416 | かすかのの まつもわかみも おいにけり ふたはよりこそ つかへそめしか | 祐殖 |
1417 | ことわりの たかはぬみちを かすかやま かみのこころに きくもたのもし | 経顕(藤原定資男) |
1418 | みかさやま さすかにいかか すてはてむ かさなるいへの ふちのすゑはを | 公親 |
1419 | くもりなく てらすひよしの かみかきに またひかりそふ あきのよのつき | 成繁 |
1420 | あとたるる かみよをとへは おほひえや をひえのすきに かかるしらくも | 成運 |
1421 | あひにあひて まもるひよしの かすかすに ななつのみちの くにさかゆらし | 行親 |
1422 | かみよより かはらぬまつも としふりて みゆきひさしき しかのからさき | 延全 |
1423 | おのつから つかへぬひまも こころこそ なほおこたらぬ ななのかみかき | 成豊 |
1424 | たのもしな いのるにつけて くもりなき ひよしのかけに みちそまよはぬ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1425 | かみかきや ちりにましはる ひかりこそ あまねくてらす ちかひなりけれ | 読人不知 |
1426 | さりともと ねてもさめても たのむかな おろかなるみを かみにまかせて | 雅朝 |
1427 | つかへつつ おもひしよりも みくまのの かみのめくみそ みにあまりぬる | 良瑜 |
1428 | かみかきに みよをさまれと いのるこそ きみにつかふる まことなりけれ | 行氏(祝部) |
1429 | ちはやふる ゆきのしらやま わきてなほ ふかきたのみは かみそしるらむ | 読人不知 |
1430 | わかのうらに たまひろふへき みことのり みちをまもらは かみもうくらむ | 実兼 |
1431 | ためしなき ひかりをそふる たまつしま よよにもこえて かみやうくらむ | 国道(津守国助男) |
1432 | しきしまや みちはたかへすと おもへとも ひとこそわかね かみはしるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1433 | かみやしる よのためとてそ みをもおもふ みのためにして よをはいのらす | 伏見院 |
1434 | みちのへの すきのしたはに ひくしめは みわすゑまつる しるしなるらし | 為家 |
1435 | きみかよを いのるこころの まことをは いつはりなしと かみはうくらむ | 常良 |
1436 | あきらけき あらひとかみの しるしあらは くもらぬみよを さそまもるらむ | 実俊(西園寺公宗男) |
1437 | あはれとや あらひとかみも みつはさす おいきのまつの としへぬるみを | 実重(三条公親男) |
1438 | わかきみの ちよのためとや みやゐして ひとよのまつも としをへぬらむ | 直氏 |
1439 | なからへむ よにもわすれし すみよしの きしになみたつ まつのあきかせ | 伊勢大輔 |
1440 | すみのえに やそしまかけて くるひとや まつをときはの ともとみるらむ | 隆季 |
1441 | うきことも なくさむみちの しるへにや よをすみよしと あまくたりけむ | 定家 |
1442 | すみよしの まつにましれる たまかきの あけもみとりも としはへにけり | 政村 |
1443 | いくよにか かみのみやゐの なりぬらむ ふりてひさしき すみよしのまつ | 為家 |
1444 | あらましの こころのうちの たむけくさ まつとしらすや すみよしのかみ | 為相 |
1445 | しきしまの みちをはみちと まもらなむ よにすみよしの かみならはかみ | 雲禅 |
1446 | きみかため たまてのきしに やはらくる ひかりのすゑは ちよもくもらし | 国平 |
1447 | ふきたつる にはひのまへの ふえのねを こころすみてや かみもきくらむ | 小弁 |
1448 | さよふけて しもはおくとも やまひとの をれるさかきは いろもかはらし | 中務 |
1449 | もろともに いちみのあめは かかれとも まつはみとりに ふちはむらさき | 普賢菩薩 |
1450 | あきらけく のちのほとけの みよまても ひかりつたへよ のりのともしひ | 伝教 |
1451 | むかしより かせにしられぬ ともしひの ひかりにはるる のちのよのやみ | 花山院 |
1452 | きえかたき むかしのひとの ともしひに おもふこころは おとりしもせし | 大弐三位 |
1453 | さむかいを ひとつこころと しりぬれは しふのきやうこそ すくにみちなれ | 慈覚 |
1454 | しろたへの ひかりにまかふ いろみてや ひもとくはなを かねてしるらむ | 清少納言女 |
1455 | いくたひか またよにいてし あきのつき あまねきかけは ひとももらさす | 通雅 |
1456 | めくりきて なほふるさとの いてかてを さそふもうれし みつのをくるま | 師継 |
1457 | かねてわか おもひしよりも よしのやま なほたちまさる はなのしらくも | 房観 |
1458 | さつきやみ このしたみちは くらきより くらきにまよふ ほとそくるしき | 尊円法親王 |
1459 | つまきとる やまのあきかせ いかはかり ならはぬそてに つゆこほるらむ | 忠良 |
1460 | わたつうみの そこまててらす つきかけに もれたるあまは さそうらみけむ | 行家(藤原知家男) |
1461 | のりのはな ひらくるにはの ときのまに おくしらつゆの かすそそひける | 資名 |
1462 | いまもなほ すむなるものを わしのやま ひとのこころの くもそへたつる | 通成 |
1463 | にこりなき こころのみつに かけとめて ふたたひやとれ やまのはのつき | 良信 |
1464 | みなかみを おもひこそやれ たにかはの なかれもにほふ きくのしたみつ | 源承 |
1465 | たにのみつ みねのあらしを しのひきて のりのたききに あふそうれしき | 寂蓮 |
1466 | なきひとの わかれををしの ねにたつる おもひよいけの みつとたになれ | 為藤 |
1467 | このみちを しるへとたのむ あとしあらは まよひしやみも けふははるけよ | 定家 |
1468 | かつまたの いけのこころは むなしくて こほりもみつも なのみなりけり | 寂然 |
1469 | よにふれは きみにひかれて ありかたき いちみのあめに ちたひぬれぬる | 周防内侍 |
1470 | のりのみつ たえすはなとか くさもきも うるほふほとの しるしなからむ | 覚誉法親王 |
1471 | うつもれぬ のりのみなかみ あとしあれは よよのなかれは きみそしるらむ | 覚助法親王 |
1472 | のりのみつ くみてやみまし やまのゐの にこりやすきは こころなれとも | 宗成 |
1473 | やまかはの おなしなかれを むすひても なほあさからぬ ちきりをそしる | 宗明 |
1474 | たえぬへき みゐのなかれの のりのみつ みをはやなから いかてくままし | 静仁法親王 |
1475 | みなそこに しつむもおなし ひかりそと そらにしらるる あきのよのつき | 憲実 |
1476 | いまそみる よそちあまりの ことのはに あらはれさりし つゆのひかりを | 蘊賢 |
1477 | やまのはの くもにいりひは のこれとも すすしくなりぬ まつのしたかせ | 源忠 |
1478 | さまさまに とけともとかぬ ことのはを きかすしてきく ひとそすくなき | 夢窓 |
1479 | かりにこそ ときおくのりの ことわりに とまりてひとや なほまよふらむ | 直義 |
1480 | きえなはと つゆのいのちに たのむかな ふかきよもきの もとのちかひを | 円胤 |
1481 | きえぬへき のりのすゑには なりぬとも みをともしてそ きくへかりける | 赤染衛門 |
1482 | おろかなる こころのやみを てらせとや かかけおきけむ のりのともしひ | 尊道法親王 |
1483 | さのみなと くるしきうみに めくるらむ つりするあまの うけかたきみを | 慈勝 |
1484 | こころなき はるのあらしも やまさとの ぬしあるはなは よきてふかなむ | 宗尊親王 |
1485 | のりのみち むかしにかへる ときにあひて いまもかはらぬ をしへをそきく | 源全 |
1486 | よしあしの おもひをやめて さとりいる こころのおくも こころなりけり | 顕遍 |
1487 | うめのはな みよのほとけの ためにとて をりつるそてそ ひとなとかめそ | 後宇多院 |
1488 | いろもかも まことののりと ききしより はなにこころの なほうつるかな | 慈能 |
1489 | よしあしは ひとついりえの みをつくし ふかきみのりの しるしなりけり | 公澄 |
1490 | よのなかの つねとはみれと あきののの うつろひかはる ときそわひしき | 素性 |
1491 | いたつらに またこのたひも こゆるきの いそかてのりの ふねにおくるな | 欣子内親王 |
1492 | いつかけし ころものうらの たまとたに しらていくよか まよひきぬらむ | 性厳 |
1493 | おろかなる なみたをかけて なけくかな ころものうらの たまをしらねは | 読人不知 |
1494 | さらにまた たつねきぬれと すみなれし むかしのはなの みやこなりけり | 双救 |
1495 | にこらしな こころのみつの そこきよみ やへにはなさく むねのはちすは | 円伊 |
1496 | よしあしの ひとをわかしと はなはちす ここのしなまて さきかはるなり | 兼空 |
1497 | たのむそよ さきたつひとに ちきりてし おなしはちすの はなのなかはを | 顕詮 |
1498 | こころをも なほやみかかむ はちすはの つゆのたまたま のりにあひつつ | 読人不知 |
1499 | いつのまに いとふこころを かつみつつ はちすにおるは わかみなるらむ | 仁明天皇 |
1500 | なつころも ひとへににしを おもふかな うらなくみたを たのむみなれは | 源信 |
1501 | とほさかる こゑもをしまし ほとときす ききのこすへき よものそらかは | 雅経 |
1502 | なかきよの あかつきをまつ つきかけは いくへのくもの うへにすむらむ | 隆弁 |
1503 | さすかなほ わかやまのはに のこるかな やみちをてらす のりのつきかけ | 桓守 |
1504 | あともなき むろのやしまの ゆふけふり なひくとみしや まよひなるらむ | 守遍 |
1505 | ことのはを ちらさすもかな くもゐまて ふきつたへたる をののやまかせ | 栄海 |
1506 | おのつから のりのさかひに いるひとは それこそやかて さとりなりけれ | 兼実 |
1507 | こすゑさへ たのむかけなく かれにけり はなのすかたの ねにしかへれは | 崇徳院 |
1508 | いにしへの つるのはやしの みゆきかと おもひとくにそ あはれなりける | 瞻西 |
1509 | こころをは こころのそこに をさめおきて ちりもうこかぬ とこのうへかな | 良経(九条兼実男) |
1510 | ゆめならは むそちのおいも すきにけり さめぬねふりそ ひさしかりける | 慈威 |
1511 | ほむかくの やまのたかねの かねのおとに なかきねふりを おとろかすかな | 心海 |
1512 | すかはらや たえぬるのりの あととめて またおとろかす かねのおとかな | 良信 |
1513 | まよひゆく ふかきやみちの わたりかは まことのせには きみのみそたつ | 慶政 |
1514 | ちきりあれは うきみなからそ たのもしき すくはむよよの かすにもれしと | 為道 |
1515 | にしへゆく つきにこころの すみぬれは うきよのなかは ねられさりけり | 院源 |
1516 | にしへとや みのりのかとを をしふらむ さきたちてゆく あきのよのつき | 土御門院 |
1517 | くもまより いさよふつきに あくかれて いととにしにも ゆくこころかな | 後嵯峨院 |
1518 | ふかきよの ひかりもこゑも しつかにて つきのみかほを さやかにそみる | 俊成(藤原俊忠男) |
1519 | ひとむらは なほしくれつる くもはれて さはるかたなく すめるつきかけ | 慈慶 |
1520 | みをさらぬ こころのつきの わくらはに すむそさとりの はしめなりける | 良覚 |
1521 | よそにみる かけとはいはし こころにも そらにもおなし つきそいてぬる | 惟賢 |
1522 | たのむそよ みのりのこまを すすめても あとにまよふな をののふるみち | 寛伊 |
1523 | つたへおく おなしなかれの ふかけれは またせきいれつ たにかはのみつ | 尊道法親王 |
1524 | たにかはの よよにせきいれし あととてや たえぬなかれを いまもうくらむ | 桓豪 |
1525 | いまきくも なみたなりけり いにしへの すきたつほらの ふかきみのりは | 家平 |
1526 | いかはかり つとむることも なきものを こはたかために ひろふこのみそ | 和泉式部 |
1527 | あまのとの あくるほとなく くるはるに たちもおくれぬ あさかすみかな | 実経 |
1528 | あふさかの せきにはゆきも きえなくに いつくをはるの みちときぬらむ | 読人不知 |
1529 | うくひすの なくねをきけは やまふかみ われよりさきに はるはきにけり | 忠見 |
1530 | ふかくさや うつらのとこは あとたえて はるのさととふ うくひすのこゑ | 良経(九条兼実男) |
1531 | はるきても かすみのみをは さゆるひに ふりくるゆきの あわときゆらむ | 為明 |
1532 | かせふけは みねのときはき つゆおちて そらよりきゆる はるのあはゆき | 順徳院 |
1533 | のへはまた こそみしままの ふゆかれに きゆるをはると あはゆきそふる | 覚誉法親王 |
1534 | やまかけは なほはるさむき しらゆきの きえぬかうへに けふもふりつつ | 時秀 |
1535 | あさあけの まとふきいるる はるかせに いつくともなき うめかかそする | 為世(御子左藤原為氏男) |
1536 | くれなゐの いろにいてにけり うめのはな こむとたのめし ひとのとふまて | 親子(典侍親子朝臣) |
1537 | はなのいろを よそにみすてて ゆくかりも おくるるつらは こころあるらし | 寂蓮 |
1538 | なれてうき のちのわかれを おもへはや はなよりさきに かりのゆくらむ | 成国 |
1539 | かすみゆく よものこのめも はるはると はなまつやまに かへるかりかね | 雅経 |
1540 | おいらくの なみたにくもる はるのよは つきもむかしや おもひいつらむ | 宗信 |
1541 | よこくもは みねにわかるる やまひめの かすみのそてに のこるつきかけ | 知家 |
1542 | のへにしく くさのみとりの すゑとほみ かすみをわけて ひはりおつなり | 花園院 |
1543 | もえいつる はるもあさのの わかくさに かくれもはてす ききすなくなり | 基氏(足利尊氏男) |
1544 | はるやまの かすみのおくの よふことり よのかくれかに たれさそふらむ | 光厳院 |
1545 | あさほらけ つもれるゆきと みるまてに よしののやまは はなさきにけり | 有光 |
1546 | うゑおきし はるをみしかは やへさくら かさなるとしそ みにしられける | 円嘉 |
1547 | したひわひ あまたのはるを おくりても はなにおいぬる みこそをしけれ | 読人不知 |
1548 | ななそちの のちのはるまて なからへて こころにまたぬ はなをみるかな | 夢窓 |
1549 | たのまれぬ はなのこころと おもへはや ちらぬさきより うくひすのなく | 興風 |
1550 | たつねきて ちるをこそみれ やまさくら なにをたをりて いへつとにせむ | 兼舜 |
1551 | はるかせの さそふはおなし こすゑにも まつさくかたの はなやちるらむ | 尊胤法親王 |
1552 | ねにかへる はなかとみれは このもとを またふきたつる にはのはるかせ | 公蔭 |
1553 | やまさとは はなよりほかの とももなし ちりなむのちを いかにしのはむ | 基名 |
1554 | にはのおもは あとみえぬまて うつもれぬ かせよりつもる はなのしらゆき | 為兼 |
1555 | くらゐやま おとろのみちも ほととほし はなのほかなる みねのしひしは | 資明 |
1556 | いへのかせ ふきそつたへむ かすかやま すゑはのふちも かけなひくまて | 公秀 |
1557 | いたつらに なをのみとめて あつまちの かすみのせきも はるそくれぬる | 読人不知 |
1558 | みにつもる としのくれにも まさりけり けふはかりなる はるのをしさは | 小侍従(太皇太后宮) |
1559 | かきりありて くれゆくはるは はなとりの いろにもねにも のこらさりけり | 和義 |
1560 | ほとときす まつにこころそ うつりぬる はないろころも ぬきかへしより | 少将(弾正尹邦省親王家) |
1561 | しのふとも たたひとこゑは ほとときす さのみつれなき よはなかさねそ | 経忠(藤原家平男) |
1562 | みしかよを いくよあかしつ ほとときす たたひとこゑの はつねまつとて | 崇光院 |
1563 | いたつらに またたつねまし ほとときす なかなくさとの さためなれけは | 桓覚 |
1564 | ゆめちかと たとるねさめの ほとときす たかまくらにか ききさたむらむ | 資連 |
1565 | ひとこゑの きかまほしさに ほとときす おもはぬやまに たひねをそする | 基俊 |
1566 | さらてたに さたかならぬを ほとときす いまひとこゑは とほさかりつつ | 為藤 |
1567 | ほとときす いつくにいまは やまかつの ききもとかめぬ はつねなくらむ | 家隆 |
1568 | いまもなほ つれなかりけり ほとときす おのかさつきの そらたのめして | 定宗(法印円宗男) |
1569 | ほとときす さとなれぬへき さつきたに なほふかきよの しのひねそなく | 一条(徽安門院) |
1570 | たまみつも しとろののきの あやめくさ さみたれなから あくるいくよそ | 定家 |
1571 | やまふかみ はれぬなかめの いととしく くもとちそふる さみたれのそら | 崇光院 |
1572 | おのつから はるるくもまの つきかけも またかきくらす さみたれのそら | 基冬母 |
1573 | なつやまの みねとひこゆる かささきの つはさにかかる ありあけのつき | 後鳥羽院 |
1574 | こもまくら たかせのよとの うかひふね ねなくにいくよ かかりさすらむ | 国冬 |
1575 | いかにせむ しけるにつけて いにしへの あとともみえぬ にはのなつくさ | 嗣定 |
1576 | なつくさの みちあるかたは しりなから ことしけきよに なほまよふらむ | 後光厳院 |
1577 | なつかりの あしやのさとの ゆふくれに ほたるやまかふ あまのいさりひ | 実氏 |
1578 | せきいるる いはまつたひの みつのおとに ゆふくれかけて かせそふきそふ | 雅孝 |
1579 | やまかせに たきのよとみも おとたてて むらさめそそく よはそすすしき | 帥(鷹司院) |
1580 | くみてしる ひとやなからむ なつくさの しけみにしつむ ゐてのたまみつ | 伊平 |
1581 | なくせみの こゑよりほかは なつそなき みやまのおくの すきのしたかけ | 道平 |
1582 | いりひさす もりのしたはに つゆみえて ゆふたちすくる そらそすすしき | 行家(藤原知家男) |
1583 | ゆふたちの はれぬるあとの やまのはに いさよふつきの かけそすすしき | 覚信 |
1584 | ひくらしの なくやまかけの すすしきに かせもあきなる ならのはかしは | 時朝(源) |
1585 | まつかせの ゆふひかくれに ふくほとは なつすきにける そらかとそみる | 範永 |
1586 | あききぬと またしらつゆの おきもあへす まくらすすしき あかつきのとこ | 光厳院 |
1587 | あききても つゆおくそての せはけれは たなはたつめに なにをかさまし | 弁内侍(後深草院) |
1588 | あきかせは すすしくふきぬ ひこほしの むすひしひもは いまやとくらむ | 仙覚 |
1589 | よそにたに まちこそわたれ あまのかは さそいそくらむ つまむかへふね | 経顕(藤原定資男) |
1590 | つゆけさは さこそみやまの いほならめ こけのそてさへ あきやしるらむ | 安法 |
1591 | ふきまよふ かせのやとりの をきのはに むすひもとめぬ あきのしらつゆ | 師良(二条良基男) |
1592 | のきちかき やましたをきの こゑたてて ゆふひかくれに あきかせそふく | 家隆 |
1593 | うゑおきし のきはのをきを ふくかせに たかとかならぬ ものそかなしき | 覚誉法親王 |
1594 | ねやちかき をきのはそよく かせのおとは ききなれてたに ゆめそおとろく | 乗基 |
1595 | むらさめの はるるゆふひの かけもりて このしたきよき つゆのいろかな | 永福門院 |
1596 | くさきにも あらぬそてさへ しをれけり うへやまかせの あきのゆふくれ | 成任 |
1597 | すみわふる ときこそありけれ しらくもの たなひくみねの あきのゆふくれ | 深守法親王 |
1598 | うきことも なにかはなけく しかりとて そむかれぬよの あきのゆふくれ | 読人不知 |
1599 | よのうきめ みえぬやまちの おくまても あきのあはれは のかれさりけり | 兼空 |
1600 | あきふかき やまのかけのの しはのとに ころもてうすし ゆふくれのそら | 伊勢 |
1601 | つねよりも ものおもふことの まさるかな うへもいひけり あきのゆふくれ | 元真 |
1602 | かすかなる たにのほらをそ おもひやる あきかせのみや ふきてとふらむ | 伊勢大輔 |
1603 | あさちふの をののあきかせ はらへとも あまりてつゆや なほむすふらむ | 宗時 |
1604 | ものおもはて いつれのとしの あきまてか つゆにたもとの しられさりけむ | 澄覚法親王 |
1605 | わきもこに ゆきあひのわせを かるときに なりにけらしも はきのはなさく | 人麿 |
1606 | さきかくす のもりかいほの ささのとも あらはにおける はきのあさつゆ | 家隆 |
1607 | はきかはな うつりにけりな しらつゆに ぬれにしそての いろかはるまて | 浄弁 |
1608 | いろかはる したはをかけて あきはきの はなのにしきは おりかさねつつ | 常顕 |
1609 | うゑしそて またもひまなく あきのたの かりかねさへそ なきわたりける | 貫之 |
1610 | ふるさとを くもゐのかりに こととはむ さらてこしちの おとつれもなし | 氏経 |
1611 | よそになほ つまをへたてて しらくもの ゆふゐるやまに しかそなくなる | 邦省親王 |
1612 | ふかきよの とはたのおもの しかのねを はるかにおくる あきのやまかせ | 尚長(祝部) |
1613 | をくらやま もみちふきおろす こからしに またさそはるる さをしかのこゑ | 円照 |
1614 | ひとしれす をきのしたなる さをしかも ほにいつるあきや ねにはたつらむ | 中務 |
1615 | こりすなほ をしかなくなり つれもなき つまとしりても としはへぬらむ | 忠成(祝部親成男) |
1616 | あきのよは ねさめののちも なかつきの ありあけのつきに しかそなくなる | 行能 |
1617 | きりきりす こゑかすかなる あかつきの かへにすくなき ありあけのかけ | 花園院 |
1618 | やへむくら しけれるにはに なくむしの つゆのやとりや なみたなるらむ | 俊定(藤原経俊男) |
1619 | しもむすふ ひとよのほとに よわるなり をささかしたの まつむしのこゑ | 読人不知 |
1620 | あきさむき ころとやよわる あさちふの つゆのやとりの まつむしのこゑ | 高嗣 |
1621 | こぬひとは こころつくしの あきかせに あふたのみなき まつむしのこゑ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1622 | ゆふひかけ くものはたてに うつろひて つきまつほとの そらそさひしき | 経顕(藤原定資男) |
1623 | あきかせの ふきそめしより あまのはら そらゆくつきの くもるよもなし | 家良 |
1624 | あきかせに よわたるつきの たかしやま ふもとのなみの おとそふけぬる | 寂恵 |
1625 | あきなから かけこそこほれ ふしのねの ゆきにうつろふ よなよなのつき | 基氏(足利尊氏男) |
1626 | ふけゆけは くももあらしも をさまりて よわたるつきの かけそのとけき | 公豊 |
1627 | いたつらに わかよふけぬと なけきつる こころもはれて つきをみるかな | 為明 |
1628 | くまもなき つきみるほとや わひひとの こころのうちの はれまなるらむ | 登蓮 |
1629 | うたたねも つきにはをしき よはなれは なかなかあきは ゆめそみしかき | 尊氏 |
1630 | むしのねの よわるもさひし あけかたの つきかけうすき きりのまかきに | 小宰相(徽安門院) |
1631 | あきさむく なりにけらしも やまさとの にはしろたへに てらすつきかけ | 道済 |
1632 | ありあけの つきまちいてて しろたへの ゆふつけとりも ときやしるらむ | 為明 |
1633 | くもゐより てりやまさると みつきよみ うらにてもみむ あきのよのつき | 定文 |
1634 | たにかはの なかれはあめと きこゆれと ほかよりはるる ありあけのつき | 孝標女 |
1635 | つきのうちの かつらのひとを おもふとて あめになみたの そひてふるらむ | 七条后 |
1636 | ひさかたの つきのかつらの もみちはは しくれぬときそ いろまさりける | 重茂 |
1637 | あきのよの しくれてわたる むらくもに たえたえはるる やまのはのつき | 経親(大江基親男) |
1638 | おとはかり しくるとそきく つきかけの くもらぬよはの みねのまつかせ | 尊氏 |
1639 | まつにふく あらしのおとを ききわかて しくれにはるる つきかとそみる | 宗氏 |
1640 | いとふらむ くめちのかみの けしきまて おもかけにたつ よはのつきかな | 小侍従(太皇太后宮) |
1641 | かすかのや くもらぬつきの かけなれは おとろのみちの あともまよはす | 定資 |
1642 | よもすから つゆのひかりを みかくなり たまのよこのの あきのつきかけ | 読人不知 |
1643 | みやきのの このしたつゆや おちぬらむ くさはにあまる あきのよのつき | 雅成親王 |
1644 | なにはかた しほひもつきは やとりけり あしのすゑはに つゆをのこして | 真昭 |
1645 | しきたへの とこのうらわの あまをふね うきねさためぬ つきやみるらむ | 頼遠 |
1646 | わたのはら つきもはてなき なみのうへに さてしもあけむ よこそをしけれ | 為秀 |
1647 | しかのうらや こほりくたけて あきかせの ふきしくなみに うかふつきかけ | 後二条院 |
1648 | そらにのみ たつかはきりも ひまみえて もりくるつきに あきかせそふく | 為冬 |
1649 | きりはらふ ひらのやまかせ ふくるよに ささなみはれて いつるつきかけ | 尊氏 |
1650 | あけぬとや つりするふねも いてぬらむ つきにさをさす しほかまのうら | 隆信 |
1651 | なかきよも あけなはつらし みつのえの うらしまかけて すめるつきかけ | 高宗 |
1652 | さやかなる つきさへうとく なりぬへし なみたのほかに みるよなけれは | 永福門院 |
1653 | わかやとの まかきにこむる あきのいろを さなからしもに しらせすもかな | 式子内親王 |
1654 | あけかたに よはなりぬらし すかはらや ふしみのたゐに しきそたつなる | 季経 |
1655 | うきことの かきりしられぬ ねさめかな しきのはねかき かすはかけとも | 為藤 |
1656 | おもへたた むなしきはしに あめをききて あけかたきよの あきのこころを | 伏見院 |
1657 | みたれてそ おともきこゆる よもすから しのふのころも つきにうつらし | 隆朝 |
1658 | つきくさの はなすりころも あきのよは やかてうつろふ かけにうつなり | 為定(御子左二条為道男) |
1659 | とこのしも まくらのつきの さむきよに たへすやひとの ころもうつらむ | 仲顕 |
1660 | やまひこの おとはのさとの さよころも こなたかなたに うつかとそきく | 読人不知 |
1661 | うつりゆく まかきのきくの いろにこそ あきのひかすの ほともみえけれ | 寛尊法親王 |
1662 | いろそへむ みゆきをそまつ もみちはも ふりぬるやとの にはのけしきに | 伏見院 |
1663 | たつぬへき ほとこそいとと いそかるれ かつかつみする にはのもみちは | 花園院 |
1664 | つゆしもの いろともみえぬ くれなゐに いかてそめける このはなるらむ | 覚誉法親王 |
1665 | やまひめの てそめにいそく もみちはや しくれぬさきの にしきなるらむ | 玄勝 |
1666 | やまひめの いそくころもの あきのいろを そめはしめたる みねのもみちは | 為経(甘露寺藤原資経男) |
1667 | ゆふつくひ しくれてのこる やまのはの うつろふくもに あきかせそふく | 後醍醐院 |
1668 | いまはたた よそにそみつる をくらやま みねのもみちの あきのさかりを | 実名(藤原公脩男) |
1669 | いかにして ありしこころを なくさめむ もみちみにとも さそはれぬみは | 頼宗 |
1670 | なみのうへを こきつつゆけは やまちかみ あらしにちれる このはとやみむ | 貫之 |
1671 | をしとみる ありあけのつきの なこりをも おもひすててや あきはゆくらむ | 実教 |
1672 | うらかるる のへのをはなの そてのつゆ むすひすてても くるるあきかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
1673 | はれくもり しくれふりおける かたをかの ならのはさやき ふゆはきにけり | 公相 |
1674 | やまかせに すきゆくくもの あとまても なほなこりある むらしくれかな | 俊平(源泰光男) |
1675 | ねさめして あくるまつまの たまくらに いくたひすくる しくれなるらむ | 俊顕 |
1676 | ぬれてなほ いろこそまされ おちはをも かさねてそむる しくれなりけり | 経顕(藤原定資男) |
1677 | かみなつき しくれのあめの おりかけし にしきふきおろす さほのやまかせ | 大輔(殷富門院) |
1678 | おほゐかは かけみしみつに なかるめり さそふあらしの やまのもみちは | 公忠(藤原実忠男) |
1679 | もみちはの なかるるときは しらなみの たちにしなこそ かはるへらなれ | 貫之 |
1680 | とくきても みてましものを やましろの たかつきむらの ちりにけるかも | 黒人 |
1681 | のもやまも このはまれなる ふゆかれに あらしをのこす みねのまつはら | 時常 |
1682 | いせしまや うらかせそよく はまをきの しものかれはも かみさひにけり | 実兼 |
1683 | なにはえや しもにくちぬる あしのはは そよくともなき うらかせそふく | 聖尊法親王 |
1684 | ふゆかれの まののかやはら ほにいてし おもかけみせて おけるしもかな | 忠広 |
1685 | かせさゆる しものまかきの はなすすき かれしひとめに たれまねくらむ | 覚誉法親王 |
1686 | しもむすふ かれののをささ うちさやき あらしもつきも さえまさりつつ | 尊氏 |
1687 | ふゆふかみ さひしきいろは なほそひぬ かりたのおもの しものあけかた | 崇光院 |
1688 | ふゆのよの つきかけさむき たにのとに こほりをたたく やまおろしのかせ | 経継 |
1689 | なかきよの ねさめのなみた ほしやらて そてよりこほる ありあけのつき | 為藤 |
1690 | けさみれは たけのかけひを ゆくみつの あまるしつくそ かつこほりぬる | 宗久 |
1691 | さえまさる やまかせはかり おとたてて こほりにむせふ たにかはのみつ | 実俊(西園寺公宗男) |
1692 | よしのかは たきつなかれも こほるなり やましたかせや さえまさるらむ | 長秀 |
1693 | ふゆのよの さむけきつきに かすみえて ふしみのさはに わたるみつとり | 乗功 |
1694 | むれてたつ かものうきねの あとはかり しはしこほらぬ にはのいけみつ | 実継 |
1695 | いつのまに むすふこほりそ あしかもの あしのいとなく さわくいけみつ | 公蔭 |
1696 | やましなの おとはのかはの さよちとり およはぬあとに ねをのみそなく | 公雄 |
1697 | ひとなみに なをやかくると わかのうらに なほあとしたふ ともちとりかな | 尊胤法親王 |
1698 | ひとしれぬ ねをのみなきて はまちとり あとをそかこつ わかのうらなみ | 信快 |
1699 | わかのうらに こころをとめて はまちとり あとまておもふ ねこそなかるれ | 通藤女 |
1700 | なにはかた つきのてしほの うらかせに よるへさためす なくちとりかな | 万代(後醍醐院女蔵人) |
1701 | みたりあしの かれはのしもや おきつかせ ふけゆくつきに ちとりなくなり | 基氏(足利尊氏男) |
1702 | とけてねぬ すまのせきもり よやさむき ともよふちとり つきになくなり | 義詮 |
1703 | たちかへり ちとりなくなる はまゆふの こころへたてて おもふものかは | 宇多天皇 |
1704 | うらつたふ しもよのちとり こゑさえて しほひのかたに ともさそふなり | 新大納言(延政門院) |
1705 | あしろへと ちきりしひとの またこぬは いつこによりて ひをくらすらむ | 道因 |
1706 | ふるゆきに とたちたつねて けふいくか かたののみのを かりくらすらむ | 氏頼 |
1707 | おとにのみ ふるとはきけと たまささの うへにたまらす ちるあられかな | 顕氏(細川頼貞男) |
1708 | かれのこる まかきのをきの ひとむらに またおとたてて ふるあられかな | 則祐 |
1709 | ぬきとめぬ をすてのやまの こけのうへに みたるるたまは あられなりけり | 敦有 |
1710 | しからきの とやまにふれる はつゆきに みやこのそらそ なほしくれける | 頼隆 |
1711 | とふひとの なさけのふかき ほとまては つもりもやらぬ にはのしらゆき | 夢窓 |
1712 | ふるゆきの ふみわけぬへき やとならは とはれぬみをや なほもうらみむ | 宗氏 |
1713 | ふみわけて たれかはとはむ くさのはら そこともしらす つもるしらゆき | 万代(後醍醐院女蔵人) |
1714 | ささなみや うちいててみれは しろたへの ゆきをかけたる せたのなかはし | 惟賢 |
1715 | なにはかた まさこちとほく ひくしほの なかれひるまに つもるしらゆき | 盛徳 |
1716 | くもかかる かつらきやまに ふりそめて よそにつもらぬ けさのしらゆき | 道嗣 |
1717 | かさこしの みねのふふきも さえくれて きそのみさかを うつむしらゆき | 為重 |
1718 | いととなほ ゆききもたえて よをいとふ やまのかひある にはのしらゆき | 範空 |
1719 | あはれなり ふりつもりたる ゆきよりも わかみはまつや きえむとすらむ | 加賀左衛門 |
1720 | ふしのねに ふりつむゆきの としをへて きえぬためしと きみをこそみめ | 経信 |
1721 | ゆきはなほ うつみもはてぬ すみかまの けふりふきしく をののやまかせ | 忠季(藤原公蔭男) |
1722 | すみかまに かよふゆききの あとはかり ゆきにそみゆる おほはらのやま | 尊氏 |
1723 | ほしうたふ こゑやくもゐに すみぬらむ そらにもやかて かけのさやけき | 伏見院 |
1724 | みしやいつそ とよのあかりの そのかみも おもかけとほき くものうへのつき | 後伏見院 |
1725 | ゆくとしも たちくるはるも あふさかの せきちのとりの ねをやまつらむ | 公継 |
1726 | ことしけき わかならはしに おきなれて きけはよふかき とりのこゑかな | 後光厳院 |
1727 | ほのかなる こゑそきこゆる ここのへの みやのほかにや とりはなくらむ | 後醍醐院 |
1728 | のとかなる おいのねさめの さひしきに とりのやこゑを かそへてそきく | 為世(御子左二条為氏男) |
1729 | をさまれる ときをそつくる わかきみの よにあふさかの せきのとりのね | 氏経 |
1730 | こととひし みゆきのあとは よよふりて のこるかはへの まつそこたかき | 覚助法親王 |
1731 | まちこひし むかしはいまも しのはれて かたみひさしき みつのはままつ | 定家 |
1732 | うちつけに なきさのをかの まつかせを そらにもなみの たつかとそきく | 信明 |
1733 | よさのうら いりうみかけて みわたせは まつはらとほき あまのはしたて | 孝覚 |
1734 | きよみかた おきつしほせの ゆふなきに いりひうつろふ みほのまつはら | 行尹 |
1735 | なにはかた なみちはれゆく ゆふなきに いりひまちかき あはちしまやま | 花園院 |
1736 | まつらかた もろこしかけて みわたせは なみちもやへの すゑのしらくも | 後光厳院 |
1737 | なみまより ほのかにみゆる あまをふね くもとともにも きえわたるかな | 公通 |
1738 | あはれなり あまのまてかた いとまなみ たれもさてこそ よはつくせとも | 泰時 |
1739 | ふしのねを たこのうらより みわたせは けふりもそらに たたぬひそなき | 定為 |
1740 | よるのあめの くもふきはらふ あさあらしに はれてまちかき をちのやまのは | 光厳院 |
1741 | いたつらに みののをやまの まつことも なきわれなから としふりにけり | 亀山院 |
1742 | いまはわれ くるしきおいの さかこえて またわけわふる すすのしたみち | 道昭 |
1743 | くもかかる あをねかみねの こけむしろ いくよへぬらむ しるひとそなき | 顕季 |
1744 | いくよしも へたてぬものを くらゐやま のほりしあとに なとまよふらむ | 実教 |
1745 | ひにそへて くらゐのたかく なりゆけは やまのかひある きみとこそみれ | 成仲 |
1746 | くらゐやま またしゐしはの かけにゐて わかのほるへき みちはいそかす | 為邦 |
1747 | むさしのの わかむらさきの ころもては ゆかりまてこそ うれしかりけれ | 重家 |
1748 | おなしくは あけのころもの いろなから いかてくもゐに たちかへらまし | 朝尹 |
1749 | たくひなく あはれとそきく さよふけて くもゐにわたる たつのひとこゑ | 月花門院 |
1750 | あしへより しほみちくらし あまつかせ ふけひのうらに たつそなくなる | 順徳院 |
1751 | みしかとも たれともしらす なにはかた なみのよるにて かへりにしかは | 村上天皇 |
1752 | すみよしの まつとほのかに ききしかは みちにししほの よるかへりけむ | 忠見 |
1753 | たこのうらの なみはのとけし わかそてに たとへむかたの なきそかなしき | 読人不知 |
1754 | たちかへり わかのうらなみ このみよに おいてふたたひ なをそかけつる | 為世(御子左藤原為氏) |
1755 | おきつなみ たかしのはまの しほかせに よやさむからし たつそなくなる | 善源 |
1756 | かくしつつ つもれはおいの みなせかは さのみやありて そてぬらすへき | 公宗母 |
1757 | かめやまの みねたちこえて みわたせは きよたきかはを おとすいかたし | 後嵯峨院 |
1758 | わたりする かはせのふねに さすさをの そのなはかりは とるもくるしな | 公賢 |
1759 | おほゐかは みなわさかまく いはふちに たたむいかたの すきかたのよや | 俊頼(源経信男) |
1760 | よのなかに いひなかしてし たつたかは みるになみたそ あめとふりける | 宇多天皇 |
1761 | よよたえぬ せきのふちかは いかなれは しつむうきせに なをなかすらむ | 公忠(藤原実忠男) |
1762 | いしまより いつるいつみそ むせふなる むかしをしのふ こゑにやあるらむ | 兼盛 |
1763 | みやこひと きかぬはなきを おとなしの たきとはたれか いひはしめけむ | 能因 |
1764 | いまたにも かかりといひし たきつせの そのをりまては むかしなりけむ | 西行 |
1765 | またよにも たちかへるかな すすきえぬ うきみわかはの みつのしらなみ | 定円(葉室光俊男) |
1766 | またれつる このせもすきぬ きみかよに あふくまかはの なをたのめとも | 成久 |
1767 | さとのなを わかみにしれは やましろの うちのわたりそ いととすみうき | 紫式部 |
1768 | つくつくと うきよにむせふ かはたけの つれなきいろは よるかたもなし | 三条院 |
1769 | いへのかせ なほふきたえす とよあまり またかけなひく にはのくれたけ | 通相 |
1770 | くれたけの よよのきみには つかへきぬ おもひてのこす ひとふしもかな | 有範 |
1771 | むなしきを ともとはすれと くれたけの うきふしはかり みにそかすそふ | 為相 |
1772 | なからへて あれはそあへる きみかよに かすならすとも みをはいとはし | 家隆 |
1773 | おろかなる わかみにむけて おもふには きみかめくみの なほあまりぬる | 実泰 |
1774 | おいらくの しらかみまてに つかへきて けふのみゆきに あふかうれしさ | 有房(六条通有男) |
1775 | つたへくる にはのをしへの かたはかり あとあるにたに なほまよひつつ | 為家 |
1776 | しきしまの みちはたたしき みちにしも こころつからや ふみまよふらむ | 崇光院 |
1777 | ちりのみに つもれるにはの をしへまて いともかしこく きこえあけてき | 為明 |
1778 | わかのうらに としふるたつの くもゐまて きこえあけける みちそかしこき | 実継 |
1779 | しきしまの みちのひかりと まきまきの うちにみかける たまをみるかな | 行家(藤原知家男) |
1780 | いにしへの よよにかはらす つたへきて いまもあつむる やまとことのは | 為氏 |
1781 | いにしへの かしこきみちを まなへとも こころをかふる ひとそすくなき | 尊氏 |
1782 | みかさやま そのなをかけて みしあきも はるかになりぬ みねのつきかけ | 為藤 |
1783 | めくりあふ くもゐのつきに いくたひか いててつかへし あきをこふらむ | 為氏 |
1784 | こよひしも ひかりそへける くらゐやま かひあるあきの つきをみるかな | 道嗣 |
1785 | くらゐやま のほるわかみの いかなれは くもゐのつきに とほさかるらむ | 高範 |
1786 | よはひこそ いつよをこえめ くらゐやま たえにしあとに またのほるかな | 雅孝 |
1787 | ふたよまて うけつくきみを わかきみと あふくやそちの みこそふりぬれ | 公秀 |
1788 | ななそちの そてのなみたに やとりきて おいをはつきそ いとはさりける | 長通 |
1789 | むそちあまり おなしそらゆく つきをみて つもれるおいの ほとそしらるる | 長舜 |
1790 | みのうさの なくさむとしは なけれとも よるはすからに つきをみるかな | 邦省親王 |
1791 | おのつから ものおもふひとも なくさめと うきよにあきの つきやすむらむ | 為氏 |
1792 | わかやとの ものとたにみは あきのよの つきよよしとも ひとにつけまし | 恵慶 |
1793 | わかのうらに しつみはてにし すてふねも いまひとなみの よにひかれつつ | 為顕 |
1794 | もしほくさ かきおくかすは つもれとも またあらはるる ことのはそなき | 成実 |
1795 | かきとむる このみつくきの かはらすは なからむあとの かたみともみよ | 伏見院 |
1796 | わかみよに なからむのちに あはれとは たれかいはまの みつくきのあと | 後二条院 |
1797 | みるたひに おもひそいつる みつくきの あとはわすれぬ よよのかたみを | 行忠(藤原) |
1798 | たれかすむ やとのつまとも しらなくに はかなくかける ささかにのあと | 経信 |
1799 | こころひく やとにくらして あつさゆみ かへらむほとを わすれぬるかな | 読人不知 |
1800 | あつさゆみ いてもかひなき みにしあれは けふのまとゐに はつれぬるかな | 慈応 |
1801 | あつさゆみ きみしまとゐに たくはねは ともはなれたる ここちこそすれ | 道命 |
1802 | いつよまて きみにつかへて としさむき まつのこころは ならひきにけり | 公賢 |
1803 | たかさこの をのへにみゆる まつのとは たかよをつくす すみかなるらむ | 実伊 |
1804 | まちいてて みるもつれなき わかみかな すむへきやまの ありあけのつき | 貞秀 |
1805 | あらましの こころはゆきて すみなから よそにみやまの くもそへたつる | 公賢 |
1806 | くもならて こたかきみねに ゐるものは うきよをそむく わかみなりけり | 戒仙 |
1807 | しのひねも おとなかりけり ほとときす こやしつかなる はやしなるらむ | 永観 |
1808 | たつねいる かひやなからむ やまふかく すむともすまぬ こころなりせは | 行冬 |
1809 | しはのとの しはしはかりの すまひそと なくさめてきく のきのまつかせ | 慈快 |
1810 | ともときく まつのあらしも おとせすは なほやまさとや さひしからまし | 頓阿 |
1811 | さひしさを おもひこそしれ やまさとの ともとききける まつのあらしに | 光厳院 |
1812 | たらちねの むかしのあとと おもはすは まつのあらしや すみうからまし | 為家 |
1813 | みやこひと とはぬほとをも おもひしれ みしよりのちの にはのまつかせ | 後鳥羽院 |
1814 | うきことを きかしとてすむ やまさとに またやいとはむ みねのまつかせ | 冬隆 |
1815 | あすしらぬ みはかくてもや やまふかみ みやこはやへの くもにへたてて | 光厳院 |
1816 | やまふかみ このはのつゆを うちはらひ いつまてされは きえのこるらむ | 高光 |
1817 | わひぬれは まつのあらしの さひしさも たへてすまるる やまのおくかな | 読人不知 |
1818 | たつねいる みやまのおくの かくれかは よのうきことや しるへなるらむ | 梁清 |
1819 | つねにすむ こころのうちの かくれかそ ひとのとひくる みちなかりける | 只帰 |
1820 | とふひとの あらはとまちし やまさとは なほよをすてぬ こころなりけり | 公敏 |
1821 | ひととはぬ ほともしられて やまさとは こけのみふかき にはのかよひち | 顕氏(細川頼貞男) |
1822 | しをりせて いりにしみちの かひありて ひともとひこぬ やまのおくかな | 頼仲 |
1823 | さらぬたに ゆふくれつらき やまさとに とふひとかへる いはのかけはし | 少将(藻璧門院) |
1824 | このままに たちもかへらし やまさとは おもひしよりも すみよかりけり | 尊什 |
1825 | やまふかみ またすむひとの あるにこそ みひとつならぬ うきよとはしれ | 禅守 |
1826 | かりそめに むすひししはの いほりにも すめはすまれて としそへにける | 禅隆 |
1827 | かりそめと おもひしほとに つくはねの すそわのたゐも すみなれにけり | 朝村 |
1828 | つくはねの すそわのたゐの あきのいほ このもかのもに けふりたつなり | 桓覚 |
1829 | もりあかす かとたのおもの いなむしろ ふきしくかせを まくらにそきく | 尊胤法親王 |
1830 | よのなかは あきのやまたの かりのいほ すみうしとても よしやいつまて | 顕実母 |
1831 | なへてよの うきにこえたる おいのなみ いつまてかかる みをなけかまし | 是法 |
1832 | のこりなき すゑをおもへは ななそちの あまりにもろき わかなみたかな | 頼仲 |
1833 | いたつらに おいにけるかな かすかのに ひくひともなき もりのしたくさ | 良冬 |
1834 | いつまてと おもふにつけて おいかみは なくさむほとの あらましもなし | 忠性 |
1835 | かきりあれは みのうきことも なけかれす おいをそひとは まつへかりける | 頓阿 |
1836 | いかにせむ うしとおもひし よのなかの おもかはりせて みこそおいぬれ | 長舜 |
1837 | いつまてと よをおもふにも そてぬれて おいのしるしそ なみたなりける | 邦省親王 |
1838 | かひなしや わかよはふけて いたつらに かかけもやらぬ のりのともしひ | 覚空 |
1839 | のちのよの やみをはるけよ あつめても みをはてらさぬ ほたるなりとも | 経深 |
1840 | つひにゆく みちはありとも しはしたに おいをととむる せきもりもかな | 成藤(藤原時藤男) |
1841 | わひつつも なほすてやらぬ こころかな けにうきよとや おもはさるらむ | 光正 |
1842 | いくたひか うきよのほかに すてしみを またたちかへり なけきわふらむ | 宗祐 |
1843 | なへてよの うきはならひと おもひこし ことわりすきて みをなけくかな | 実遠(藤原公冬男) |
1844 | あすかかは あすのふちせを しらぬこそ さためなきよの たのみなりけれ | 実家女 |
1845 | かくはかり うきはいかなる むくひそと みをこそかこて よをはうらみす | 直信 |
1846 | をりをりに ことこそかはれ みのうさを おもふこころの やすけなのよや | 法守法親王 |
1847 | あつまちの とつなのはしの くるしとも おもひしらてや よをわたるらむ | 宗遠 |
1848 | あふきつつ たのみしかけは かれはてぬ のこるくちきの みをいかにせむ | 内侍(永福門院) |
1849 | かすならて なからへきつる うきみをも きみかためにと なほをしむかな | 直氏 |
1850 | そむかれぬ わかみのほとの つれなさも よのうきにこそ おもひしりぬれ | 雅朝 |
1851 | いきてよに すむとはいはし かすならぬ みとたにわれを しるひとそなき | 真俊 |
1852 | ありはつる よとしおもはは いかはかり かすならぬみの なほうからまし | 宗尋 |
1853 | よのなかの うきをもうしと なけくみに いとふこころの なとなかるらむ | 忠景 |
1854 | うきよとは おもひもしらて すきにけり かすならぬみを あるにまかせて | 通定 |
1855 | けふまては うきもつらきも しのひきぬ なほよをしたふ こころよわさに | 政村 |
1856 | うきよをも いとひそはてぬ をりをりに かはるこころの さためなけれは | 公寛 |
1857 | ささかにの いとひしかひも なきよかな かくてもなとか くるしかるらむ | 信生 |
1858 | なにをして くらすともなき つきひかな つもるはかりを みにかそへつつ | 国助 |
1859 | おもひつつ なほおとろかぬ うきよこそ ゆめとしりても かひなかりけれ | 行顕 |
1860 | うはたまの よるみるゆめを ゆめとのみ おもふこころそ いやはかななる | 和義 |
1861 | たれもみな またさめぬまの ゆめのよに こころをとむる ほとのはかなさ | 義高 |
1862 | たちかへり なほそかなしき よのなかの うきはゆめそと おもひなせとも | 経尹(藤原懐経男) |
1863 | なにかおもふ なにかはなけく さめやらぬ ゆめのうちなる ゆめのうきよを | 後鳥羽院 |
1864 | うきもゆめ うからぬもまた まほろしの よをなくさむる われもはかなし | 光厳院 |
1865 | ゆめのこと すきしつきひの つもりきて しのふむかしと なりにけるかな | 読人不知 |
1866 | ゆめならは さむるうつつも あるへきを うつつなからの ゆめそはかなき | 雲雅 |
1867 | あはれなり きえはてぬとも うきならて なにをこのよの おもひてにせむ | 山田 |
1868 | よしあしを こころにたにも すてぬれは おなしうきよも すみよかりけり | 基久 |
1869 | すてはてぬ わかこころもて いくたひか よをうしとのみ うらみきぬらむ | 高広 |
1870 | あらましに いとふはいまも やすきよを まことにならは すてやかねまし | 普誥 |
1871 | うつつには またもかへらぬ いにしへを ふたたひみるは ゆめちなりけり | 彦良 |
1872 | くりかへし なにしのふらむ かすならて むかしもすきし しつのをたまき | 宣子(従三位) |
1873 | うきよには さむるうつつの あらはこそ みしをゆめとも ひとにかたらめ | 円空 |
1874 | こひわたる よよのむかしも おもひつつ ぬれはやみゆる ゆめのうきはし | 源意(藤原源守男) |
1875 | われなから こころやかはる うしといひて すきしむかしを またしのふかな | 義春 |
1876 | いにしへを きくにつけてそ しのはるる わかみしのちや うきよなるらむ | 道昌 |
1877 | しらさりき こころつくしの いにしへを みのおもひてと しのふへしとは | 守時女 |
1878 | なにしかも うさはかはらぬ おなしよの むかしになれは こひしかるらむ | 法守法親王 |
1879 | みをしらて いふはかひなき ことなれと たのめはひとをと おもふはかりそ | 顕輔 |
1880 | うらむとは しらてやしかの しきりには はきのはひえを しからみにする | 俊頼(源経信男) |
1881 | うらめしと しかをないひそ はきかえも かるもにしつつ すくすとそみる | 仲実 |
1882 | ひとことに えてうれしきは のりのはな みよのほとけの やとのものとて | 慈円 |
1883 | なほちれと やまかせかよひ さそふらし くもはのこれと はなそとまらぬ | 読人不知 |
1884 | をかのへの ならのおちはに しくれふり ほのほのいつる とほやまのつき | 後鳥羽院 |
1885 | ささのはの つゆはしはしも きえのこる やよやはかなき みをいかにせむ | 俊頼(源経信男) |
1886 | ちはやふる いつしのみやの かみのこま ひとなのりそや たたりもそする | 重之 |
1887 | あきののを わけつつゆけは はなもみな ちりかかるかや そてにしむらむ | 貫之 |
1888 | かみやまに いくよへぬらむ さかきはの ひさしくしめを ゆひかけてけり | 定家 |
1889 | くりかへし いのるこころを しひてなほ かみはもちひよ もりのしめなは | 具氏 |
1890 | ゆくつきも かけふけにけり かちまくら したうつなみの よるのとまりに | 読人不知 |
1891 | うしやうし はなにほふえたに かせかよひ ちりきてひとの こととひはせす | 読人不知 |
1892 | みつひたり まきのふちふち おちたきり ひをけさいかに よりまさるらむ | 頼政 |
1893 | うらみかね たえにしとこは むかしはや ふさすなりにき よはのさむしろ | 俊成(藤原俊忠男) |
1894 | やまさとは あきをまつかせ ことしらふ のたかるしつは ちようたふなり | 俊成(藤原俊忠男) |
1895 | すまのうら あまのとまやの あくるより やくしほとけさ たつけふりかな | 性助法親王 |
1896 | さひしくて ひとくともなき やまさとに いつはりしける うくひすのこゑ | 宗尊親王 |
1897 | たまやなき みとりのえたの よわけれは うくひすとむる ちからたになし | 千里 |
1898 | よしさらは しるへにもせむ けふはかり はなもてむかへ はるのやまかせ | 俊恵 |
1899 | あきことに かりくるいねは つみつれと おいにけるみそ おきところなき | 忠見 |
1900 | しらゆきの ふれるあしたの しらかゆは いとよくにたる ものにそありける | 仲文 |
1901 | おしはりて ゆみのふくろと しるしるや おもはぬやまの ものをいるらむ | 実方 |
1902 | たまたれの みすのうちより いてしかは そらたきものと たれもしりにき | 清輔 |
1903 | ゆふなきに ほつつしめなは くりさけて とまりけすらひ よするふなひと | 光俊(葉室光親男) |
1904 | わかこひは めさへいつかは あふみなる やすきいをたに ぬるよしそなき | 行家(藤原知家男) |
1905 | かせあらき やまたのいほの こもすたれ しくれをかけて もるこのはかな | 実兼 |
1906 | けふのひは くるるとやまの かきわらひ あけはまたみむ をりすきぬまに | 知家 |
1907 | あくるまを なほたたくこそ なつのよの こころみしかき くひななりけれ | 読人不知 |
1908 | ゆふかけし かみのきたのの ひとよまつ いまはほとけの みそきなりけり | 読人不知 |
1909 | たきつかはに みたれしたまの をたえして みつのいとすち こほりしにけり | 行家(藤原知家男) |
1910 | みわたせは さほのかはらに くりかけて かせによらるる あをやきのいと | 西行 |
1911 | つらきかな やまのそまきの われなから うつすみなはに ひかぬこころは | 為家 |
1912 | おほゐかは かへらぬみつの うかひふね つかふとおもひし みよそこひしき | 公雄 |