「玉葉和歌集」一覧
2818件
1 | けふにあけて きのふににぬは みなひとの こころにはるの たちにけらしも | 貫之 |
2 | にはもせに ひきつらなれる もろひとの たちゐるけふや ちよのはつはる | 俊頼(源経信男) |
3 | はるくれは ほしのくらゐに かけみえて くもゐのはしに いつるたをやめ | 定家 |
4 | あつさゆみ はるたつらしも もののふの やののかみやま かすみたなひく | 実兼 |
5 | はるきぬと おもひなしぬる あさけより そらもかすみの いろになりゆく | 伏見院 |
6 | はるかすみ かすみなれたる けしきかな むつきもあさき ひかすとおもふに | 為子(従二位) |
7 | いつしかも かすみにけらし みよしのや またふるとしの ゆきもけなくに | 基忠(鷹司兼平男) |
8 | よははやも はるにしあれや あしひきの やまへのとけみ かすみたなひく | 後伏見院 |
9 | とりのねも のとけきやまの あさあけに かすみのいろは はるめきにけり | 為兼 |
10 | かすしらす ひけるねのひの こまつかな ひともとにたに ちよはこもるを | 小弁 |
11 | きみかよを のへにいててそ いのりつる はつねのまつの すゑをはるかに | 俊成(藤原俊忠男) |
12 | ねのひする のへにこまつを ひきつれて かへるやまちに うくひすそなく | 能宣 |
13 | けふよりは きみにひかるる ひめこまつ いくよろつよか はるにあふへき | 兼実 |
14 | よもすから おもひやるかな はるさめに のへのわかなの いかにもゆらむ | 具平親王 |
15 | さとひとや わかなつむらし あさひさす みかさののへは はるめきにけり | 為家 |
16 | ゆきませに むらむらみえし わかくさの なへてみとりに なりにけるかな | 出羽(瑒子内親王家) |
17 | かすかのに またうらわかき さいたつま つまこもるとも いふひとやなき | 実氏 |
18 | のとかにも やかてなりゆく けしきかな きのふのひかけ けふのはるさめ | 伏見院 |
19 | まきもくの ひはらのやまの ふもとまて はるのかすみは たなひきにけり | 基俊 |
20 | まつのゆき きえぬやいつこ はるのいろに みやこののへは かすみゆくころ | 定家 |
21 | みわたせは むらのあさけそ かすみゆく たみのかまとも はるにあふころ | 後鳥羽院 |
22 | みねのゆき たにのこほりも とけなくに みやこのかたは かすみたなひく | 永福門院 |
23 | なにはかた いりえにたてる みをつくし かすむそはるの しるしなりける | 後嵯峨院 |
24 | かすみゆく なみちのふねも ほのかなり まつらかおきの はるのあけほの | 伏見院 |
25 | ももちとり こゑのとかにて をちこちの やまはかすめる はるのひくらし | 為子(従二位) |
26 | よをこめて かすみまちとる やまのはに よこくもしらて あくるそらかな | 公経(藤原実宗男) |
27 | かよふへき なみまもみえす あさほらけ かすみにうつむ しかのおほわた | 基氏 |
28 | はなおそき とやまのはるの あさほらけ かすめるほかは またいろもなし | 覚助法親王 |
29 | さえかへり やまかせあるる ときはきに ふりもたまらぬ はるのあはゆき | 為家 |
30 | うちきらし なほふるゆきも はるたつと いふはかりにや はなとみゆらむ | 家経(一条実経男) |
31 | ひかけみぬ みやまかくれに なかれきて ゆきけのみつの またこほりぬる | 公継 |
32 | あはゆきは ふりもやまなむ またきより またるるはるの ちるとまかふに | 為家 |
33 | なほさゆる あらしはゆきを ふきませて ゆふくれさむき はるさめのそら | 永福門院 |
34 | ゆきとみて はなとやしらぬ うくひすの まつほとすきて なかすもあるかな | 躬恒 |
35 | うちなひき はるたちぬらし わかかとの やなきのうれに うくひすなきつ | 人麿 |
36 | としふれと かはらぬものは うくひすの はるしりそむる こゑにそありける | 定頼 |
37 | うくひすも ちよをやちきる としをへて かはらぬこゑに はるをつくなり | 俊成(藤原俊忠男) |
38 | ふるゆきも うくひすのねも はるくれは うちとけやすき ものにそありける | 花山院 |
39 | うくひすの ねはのとけくて あしひきの やまのゆきこそ したきえにけれ | 元輔(清原春光男) |
40 | をさまれる みよのはるとや うくひすの なくねもけさは のとけかるらむ | 冬平 |
41 | たにかけの こほりもゆきも きえなくに まつうちとくる うくひすのこゑ | 教良 |
42 | わかやとの うめかえになく うくひすは かせのたよりに かをやとめこし | 朝忠 |
43 | しろたへの うめかえになく うくひすは ゆきふるすをや おもひいつらむ | 顕昭 |
44 | ゆきのうちも はるはしりけり ふるさとの みかきかはらの うくひすのこゑ | 為氏 |
45 | うちなひき はるさりくれは ひさきおふる かたやまかけに うくひすそなく | 実朝 |
46 | やまさとは うくひすなきぬ いまよりや みやこのそらも はるめきぬらむ | 親宗(平時信男) |
47 | はなもまた にほはぬころの あさなあさな なけやうくひす はるとおもはむ | 按察(鷹司院) |
48 | うくひすの けさなくときそ やまかつの かきほもはるに あふここちする | 下野(後鳥羽院) |
49 | ひとしれす まちしもしるく うくひすの こゑめつらしき はるにもあるかな | 兼盛 |
50 | はるかすみ たちへたつれと うくひすの こゑはかくれぬ ものとしらすや | 経盛 |
51 | はるかすみ へたてぬものを うくひすの こゑするかたを なとかとひこぬ | 公通 |
52 | まとちかき たけのはかせも はるめきて ちよのこゑある やとのうくひす | 貞時 |
53 | なほさりに ひとむらうゑし くれたけを ねくらにしめて うくひすそなく | 季経 |
54 | あめそそく そののくれたけ えたたれて ゆふへのとかに うくひすそなく | 実泰 |
55 | またさかぬ うめのこすゑに うくひすの のとけきこゑは いまそきこゆる | 花園院 |
56 | かすみたち なくうくひすの こゑきけは いまよりさかむ はなそまたるる | 教良女 |
57 | はることに なくとはすれと うくひすの こゑにはあかぬ ものにさりけり | 大弐(二条太皇太后宮) |
58 | はなはなほ えたにこもりて うくひすの こつたふこゑそ いろはありける | 守覚法親王 |
59 | おしなへて はるさめふりぬ わかやとの わかきのうめは はやもさかなむ | 実経 |
60 | しろたへの いろはまかひぬ あはゆきの かかれるえたの うめのはつはな | 後宇多院 |
61 | あさあけの まとふくかせは さむけれと はるにはあれや うめのかそする | 親子(従三位源) |
62 | しらゆきに ふりかくさるる うめのはな ひとしれすこそ にほふへらなれ | 貫之 |
63 | ふるゆきの したににほへる うめのはな しのひにはるの いろそみえける | 信明 |
64 | みにおはぬ かさしなりとも おなしくは わかきのうめの はなやをらまし | 信実 |
65 | うもれきの したにやつるる うめのはな かをたにちらせ くものうへまて | 紫式部 |
66 | いろにつき にほひにめつる こころとも うめかえよりや うつりそめけむ | 俊成(藤原俊忠男) |
67 | をるそてに にほひはとまる うめかえの はなにうつるは こころなりけり | 定家 |
68 | うめのはな うすくれなゐに さきしより かすみいろつく はるのやまかけ | 良経(九条兼実男) |
69 | やまさとの うめのたちえの ゆふかすみ かかるすまひを とふひとのなき | 慈円 |
70 | うめかえの はなのありかを しらねとも そてこそにほへ はるのやまかせ | 宮内卿(後鳥羽院) |
71 | やまさとは あらしにかをる まとのうめ かすみにむせふ たにのうくひす | 有家(藤原重家男) |
72 | すみそめの そてさへにほふ うめのはな うたてこころも いろになれとや | 寂蓮 |
73 | うめのはな さかぬかきねも にほふかな よそのこすゑに かせやふくらむ | 長方 |
74 | うめのはな にほひもゆきに うつもれは いかにわきてか けさはをらまし | 清輔 |
75 | きみみすは かひなからまし うめのはな にほひはゆきに うつもれすとも | 読人不知 |
76 | みるほとに ちらはちらなむ うめのはな しつこころなく おもひおこせし | 和泉式部 |
77 | やまかつの そののかきほの うめのはな はるしれとしも うゑすやありけむ | 順徳院 |
78 | あかなくの にほひをちらす うめかえの はなにいとはぬ にはのはるかせ | 亀山院 |
79 | いろもかも ことしのはるは うめのはな ふたたひにほふ ここちこそすれ | 公忠(源国紀男) |
80 | やとことに うめのはなちる ひさかたの そらよりゆきの ふるとみるまて | 旅人 |
81 | ちりのこる かきねかくれの うめかえに うくひすなきぬ はるのゆふくれ | 長家 |
82 | うめかえの しほめるはなに つゆおちて にほひのこれる はるさめのころ | 宗尊親王 |
83 | うめのはな くれなゐにほふ ゆふくれに やなきなひきて はるさめそふる | 為兼 |
84 | みねのかすみ ふもとのくさの うすみとり のやまをかけて はるめきにけり | 永福門院 |
85 | あつさゆみ おしてはるさめ ふるさとの みかきかはらそ うすみとりなる | 家隆 |
86 | なにとなく さへつるやまの とりのねも もののあはれは はるのあけほの | 寂蓮 |
87 | うちわたす さほのかはらの あをやきも いまははるへと もえにけるかも | 坂上郎女 |
88 | はるさめの うちふることに わかやとの やなきのすゑは いろつきにけり | 人麿 |
89 | わかやとの やなきのいとは ほそくとも くるうくひすの たえすもあらなむ | 道綱母 |
90 | のとかなる ゆふへのやまは みとりにて かすみになひく あをやきのいと | 後二条院 |
91 | やまもとの かすみのそこの うすみとり あけてやなきの いろになりぬる | 兼行 |
92 | さほひめの うちたれかみの たまやなき たたはるかせの けつるなりけり | 匡房 |
93 | はるくれは たまのみきりを はらひけり やなきのいとや とものみやつこ | 俊成(藤原俊忠男) |
94 | たまやなき にほふともなき えたなれと みとりのいろの なつかしきかな | 俊成(藤原俊忠男) |
95 | たまほこの みちならなくに はるはると よりてそみつる あをやきのいと | 後嵯峨院 |
96 | なみかくる たつたかはらの ふしやなき こすゑはそこの たまもなりけり | 俊恵 |
97 | やまのはも きえていくへの ゆふかすみ かすめるはては あめになりぬる | 伏見院 |
98 | へたてつる かすみややかて くもるらむ いこまのやまの はるさめのそら | 雅経 |
99 | つくつくと はるひのとけき にはたつみ あめのかすみる くれそさひしき | 道良女 |
100 | なへてよは くれこそゆくに はるさめの はるるかくもの ひまのしらめる | 新宰相(伏見院) |
101 | つれつれと あめふりくらす はるのひは つねよりなかき ものにそありける | 章義門院 |
102 | なかめする みとりのそらも かきくもり つれつれまさる はるさめそふる | 俊成(藤原俊忠男) |
103 | はるさめの ふるとはそらに みえねとも きけはさすかに のきのたまみつ | 宮内卿(後鳥羽院) |
104 | はるさめは くるひともなく あとたえぬ やなきのかとの のきのいとみつ | 俊成(藤原俊忠男) |
105 | あめはるる なこりもかすむ あさあけの やなきのいとに かかるしらつゆ | 公顕 |
106 | あさみとり やなきのえたの かたいともて ぬきたるたまの はるのあさつゆ | 為家 |
107 | ふるさとと あはれいつくを さためてか あきこしかりの けふかへるらむ | 経信 |
108 | はるかすみ なほたちかくせ かへるやま こえゆくかりの みちまとふかに | 師継 |
109 | かりかねの もみちにかけし たまつさを はなにつけてや もてかへるらむ | 重保 |
110 | あくるよの たのものかすみ わけすきて やまもとわたる はるのかりかね | 雅有 |
111 | すゑとほき わかはのしはふ うちなひき ひはりなくのの はるのゆふくれ | 定家 |
112 | あたらよの あはれをしるや よふことり つきとはなとの ありあけのそら | 家隆 |
113 | おのかつま こひわひにけり はるののに あさるききすの あさなあさななく | 実朝 |
114 | かりにくる ひともこそあれ はるののに あさなくきしの ちかくもあるかな | 順 |
115 | はるののに こころやらむと おもふとち いてこしけふは くれすもあらなむ | 人麿 |
116 | ひとりのみ なかむるやとの はるのひは さもくれかたき ものにそありける | 高遠 |
117 | ふるさとに いまかまつらむ かへるさの ときをわすれぬ はるのかりかね | 資季 |
118 | こしかたに かへるならひの またもあらは くもゐのかりに ねをやそへまし | 実兼 |
119 | あさなきに ゆきかふふねの けしきまて はるをうかふる なみのうへかな | 定家 |
120 | いつくより たちはしむらむ わたのはら かすみをわけて よするうらなみ | 実重(三条公親男) |
121 | やまのはは そこともわかぬ ゆふくれに かすみをいつる はるのよのつき | 宗尊親王 |
122 | くもりなく さやけきよりも なかなかに かすめるそらの つきをこそおもへ | 定頼 |
123 | くもみたれ はるのよかせの ふくなへに かすめるつきそ なほかすみゆく | 親子(従三位源) |
124 | なかむれは そこはかとなく かすむよの つきこそはるの けしきなりけれ | 後宇多院 |
125 | よよしとも ひとにはつけし はるのつき うめさくやとは かせにまかせて | 実兼 |
126 | しるしらす わきてはまたす うめのはな にほふはるへの あたらよのつき | 定家 |
127 | なにはかた おほろつきよの いりしほに あけかたかすむ あはちしまやま | 実伊 |
128 | しられすも こころのそこや はるになる ときなるころと はなのまたるる | 伏見院 |
129 | はなよいかに はるひうららに よはなりて やまのかすみに とりのこゑこゑ | 伏見院 |
130 | やまさむみ はなさくへくも なかりけり あまりかねても たつねきにける | 西行 |
131 | おほつかな いつれのやまの みねよりか またるるはなの さきはしむらむ | 西行 |
132 | ききのこころ はなちかからし きのふけふ よはうすくもり はるさめのふる | 永福門院 |
133 | ゆきてみむ いまははるさめ ふるさとに はなのひもとく ころもきにけり | 高倉(八条院) |
134 | はななれや かすみのまより はつせやま はつかにみゆる みねのしらくも | 家隆 |
135 | いましはや はなさきぬらし はつせやま あさゐるくもの みねにかをれる | 実兼 |
136 | やまさくら このよのまにや さきぬらし あさけのかすみ いろにたなひく | 伏見院 |
137 | おほかたの はなのさかりも ほともあらし にはのひときは さきそめにけり | 基忠(鷹司兼平男) |
138 | みわたせは しらゆふかけて さきにけり かみをかやまの はつさくらはな | 宗尊親王 |
139 | やまたかみ あさゐるくもと みえつるは よのまにさける さくらなりけり | 成仲 |
140 | たえたえに かかれるみねの しらくもや はやさきそむる さくらなるらむ | 経平(藤原家基男) |
141 | さかりをは なほまつえたの のこれとも あまたこすゑに はなそなりぬる | 道潤 |
142 | はなならし かすみてにほふ しらくもの はるはたちそふ みよしののやま | 後二条院 |
143 | いろいろの にしきとみゆる はなさくら はるのかすみや たちかさぬらむ | 定頼 |
144 | はなみにと むれつつひとの くるのみそ あたらさくらの とかにはありける | 西行 |
145 | なかむるに はなのなたての みならすは このもとにてや はるをくらさむ | 西行 |
146 | ささなみや なからのやまの はなさかり しかのうらかせ ふかすもあらなむ | 師俊 |
147 | とふひとも をらてをかへれ うくひすの はかせもつらき やとのさくらを | 式子内親王 |
148 | をちこちの やまはさくらの はなさかり のへはかすみに うくひすのこゑ | 永福門院 |
149 | はるかすみ あやななたちそ くものゐる とほやまさくら よそにてもみむ | 実雄 |
150 | みやこには くもとやみらむ わかやとの のきはにちかき やまのさくらを | 万秋門院 |
151 | さきましる はなをわけとや しらくもの やまをはなれて たちのほるらむ | 仲綱 |
152 | さきたちて たれみよしのの やまさくら しらぬしをりの あとつけてけり | 公経(藤原実宗男) |
153 | たかはるの くものなかめに くれぬらむ やとかるはなの みねのこのもと | 定家 |
154 | はつせやま をのへのはなは かすみくれて ふもとのひひく いりあひのこゑ | 憲淳 |
155 | はるさめの ふるきのさくら けふしこそ をりえてはなの いろもみえけれ | 亀山院 |
156 | つゆをおもみ こすゑたれたる いとさくら やなきかえたに さくかとそみる | 実兼 |
157 | みちのへや このしたことの やすらひに まつらむはなの やとやくれなむ | 伏見院 |
158 | のこりなく たつぬなれとも しめのうちの はなははなにも あらぬなるへし | 選子内親王 |
159 | かせをいたみ まつやまへをそ たつねつる しめゆふはなは ちらしとおもひて | 頼宗 |
160 | さくらはな あかぬにほひに さそはれて はるはやまちに ゆかぬひそなき | 師忠(源師房男) |
161 | あすもこむ けふもひくらし みつれとも あかぬははなの にほひなりけり | 伊通 |
162 | さくらはな ひくらしみつつ けふもまた つきまつほとに なりにけるかな | 為仲(橘義通男) |
163 | わかために をれやひとえた やまさくら いへつとにとは おもはすもあれ | 小侍従(太皇太后宮) |
164 | わりなしや ほかにもはなの なくはこそ ひときかもとに ひをもくらさめ | 顕昭 |
165 | はなのいろは あかしとそおもふ よろつよを さなからはるに なしてみるとも | 長方 |
166 | こたちをは つくろはすして さくらはな かさかくれにそ ううへかりける | 花山院 |
167 | いかにまた またせまたせて さくらはな みるほともなく ちらむとすらむ | 大弐(二条太皇太后宮) |
168 | みるほとは よのうきことも わすれけり またもはなをそ ううへかりける | 具平親王 |
169 | おいらくは こころのいろや まさるらむ としにそへては あかぬはなかな | 清輔 |
170 | ゆきめくり みれともあかす やまさくら われのみならは かへらましやは | 輔親 |
171 | ふるさとを たちなかくしそ はるかすみ はなのさかりは ゆきてみるへく | 贈皇后宮 |
172 | あたなりと おもひなすてそ またちらぬ はなよりさきに うつろひぬとて | 公任 |
173 | としをへて かはらすにほふ はななれと みるはることに めつらしきかな | 中務内侍(伏見院) |
174 | おもひそめき よつのときには はなのはる はるのうちにも あけほののそら | 為兼 |
175 | あたしいろに なほうとまれぬ さくらはな まつもをしむも ものをこそおもへ | 兼季 |
176 | ひととせに まれなるはるの うちもなほ あひみるはなの ころそすくなき | 為実(御子左藤原為氏男) |
177 | はなのうちに いかにちきりて さくらしも はるにことなる なをのこしけむ | 後伏見院 |
178 | おそくとき あまたこすゑを みるときそ はなのさかりの ほとはひさしき | 冬平 |
179 | をりかさす みちゆきひとの けしきにて よはみなはなの さかりをそしる | 永福門院 |
180 | とりのこゑ かすみのいろを しるへにて おもかけにほふ はるのやまふみ | 定家 |
181 | さくらはな にほふをみつつ かへるには しつこころなき ものにそありける | 兼輔 |
182 | たちかへり はなをそわれは うらみつる ひとのこころを とめぬとおもへは | 定方 |
183 | さくらはな をりてかささむ くろかみの かはれるいろに みえまかふへく | 躬恒 |
184 | ゆきかとそ よそにみつれと さくらはな をりてはにたる いろなかりけり | 小式部内侍 |
185 | さととほみ あまりおくなる やまちには はなみにとても ひとこさりけり | 孝標女 |
186 | さくらさく ならのみやこを みわたせは いつくもおなし やへのしらくも | 匡房 |
187 | やへにほふ はなをむかしの しるへにて みぬよをしたふ ならのふるさと | 範憲 |
188 | みよしのの やまのあなたの さくらはな ひとにしられぬ ひとやみるらむ | 順徳院 |
189 | なかめやる よものやまへも さくはなの にほひにかすむ きさらきのそら | 基平(近衛兼経男) |
190 | いまはよに おもひますへき かたもなし こころのとかに はなをたにみむ | 実経 |
191 | おいらくは わかみのほかの はるなれは はなみてたにも なみたおちけり | 雅有 |
192 | ことかたも またゆかしさに やまさくら おなしひときを しつかにもみす | 為守 |
193 | はるのよの あけゆくそらは さくらさく やまのはよりそ しらみそめける | 実房 |
194 | ほのほのと はなのよこくも あけそめて さくらにしらむ みよしののやま | 公経(藤原実宗男) |
195 | かすみかは はなうくひすに とちられて はるにこもれる やとのあけほの | 定家 |
196 | やまもとの とりのこゑこゑ あけそめて はなもむらむら いろそみえゆく | 永福門院 |
197 | あはれしはし このときすきて なかめはや はなののきはの にほふあけほの | 為子(従二位) |
198 | はるはたた くもれるそらの あけほのに はなはとほくて みるへかりける | 親子(従三位源) |
199 | をちかたの はなのかをりも ややみえて あくるかすみの いろそのとけき | 内侍(永福門院) |
200 | けさまては のこるかたえも さきそひて ゆふへにはなの さかりをそみる | 家基(近衛基平男) |
201 | なかめくらす いろもにほひも なほそひて ゆふかけまさる はなのしたかな | 宗秀(大江時秀男) |
202 | さかりなる みねのさくらの ひとついろに かすみもしろき はなのゆふはえ | 雅孝 |
203 | やまのはに いりひうつろふ くれなゐの うすはなさくら いろそことなる | 亀山院 |
204 | さきみてる はなのかをりの ゆふつくひ かすみてしつむ はるのとほやま | 実兼 |
205 | あくかるる こころのままに はなをみは はるはやまちや すみかならまし | 御匣(式乾門院) |
206 | ふくかせの さそはぬさきと またるるを とはすははなの なをややつさむ | 冬平 |
207 | たつねても いろをそふへき みならねは とふにつけてや はなもやつれむ | 為子(従二位) |
208 | たちこむる かすみのほかも やまさくら はなににほへる ゆふくれのそら | 貞時 |
209 | くもにうつる ひかけのいろも うすくなりぬ はなのひかりの ゆふはえのそら | 為顕 |
210 | めにちかき にはのさくらの ひときのみ かすみのこれる ゆふくれのいろ | 道良女 |
211 | やまのはの つきまつそらの にほふより はなにそむくる はるのともしひ | 定家 |
212 | はなかをり つきかすむよの たまくらに みしかきゆめそ なほわかれゆく | 為相 |
213 | いりあひの こゑするやまの かけくれて はなのこのまに つきいてにけり | 永福門院 |
214 | おほろなる かけとはなにか おもひけむ はなにうつろふ はるのよのつき | 公孝 |
215 | くれぬとも やとをはとはし やまさくら つきにもはなは みえぬものかは | 冬平 |
216 | ふたもとの はなのひかりを そへむとや かすまていつる はるのよのつき | 貞時 |
217 | ちりぬへき はなをのみこそ みにきつれ おもひもよらぬ あをやきのいと | 頼宗 |
218 | うくひすの きゐるはかせに ちるはなを のとけくみむと おもひけるかな | 重之 |
219 | ちりそむる はなのはつゆき ふりぬれは ふみわけまうき しかのやまこえ | 西行 |
220 | さくらさく たかねにかせや わたるらむ くもたちさわく をはつせのやま | 兼実 |
221 | やまふかき たにふきのほる はるかせに うきてあまきる はなのしらゆき | 為家 |
222 | くもとなり ゆきとふりしく やまさくら いつれをはなの いろとかもみむ | 実氏 |
223 | さそひゆく はなのこすゑの はるかせに くもらぬゆきそ そらにあまきる | 為教 |
224 | にはのおもは ふりしくゆきと みるなへに こすゑははなそ まれになりゆく | 俊言 |
225 | しらくもの たなひくいろも かつきえぬ はなちるやまの みねのはるかせ | 実兼 |
226 | ちるはうく かはなつかしき はなのえに いとひいとはぬ はるのやまかせ | 房実 |
227 | さとはみな ちりはてにしを あしひきの やまのさくらは またさかりなり | 躬恒 |
228 | あしひきの やまへをてらす さくらはな このはるさめに ちりぬらむかも | 読人不知 |
229 | はなならぬ なくさめもなき やまさとに さくらはしはし ちらすもあらなむ | 相模 |
230 | ここのへに うつささりせは やまさくら ひとりやこけの うへにちらまし | 宗忠 |
231 | えたしあらは またもさきなむ かせよりも をるひとつらき はなさくらかな | 教長 |
232 | うきよには ととめおかしと はるかせの ちらすははなを をしむなりけり | 西行 |
233 | はるのよの かすめるそらの つきかけに ちりしくはなの いろはまかひぬ | 後冷泉院 |
234 | ちりつもる にはにひかりを うつすより つきこそはなの かかみなりけれ | 光行 |
235 | みよしのの みねのはなその かせふけは ふもとにくもる はるのよのつき | 実氏 |
236 | あきもなほ しのはれぬへき ひかりかな はなしくにはの おほろよのつき | 久明親王 |
237 | はるかせに こころをしはし やとしおきて はなのをしさを しらせてしかな | 祐盛 |
238 | はることに さそふあらしの なくもかな ちよもとはなを みるひとのため | 道玄 |
239 | はなならて またなくさむる かたもかな つれなくちるを つれなくてみむ | 式子内親王 |
240 | わかみよに ふるともなしの なかめして いくはるかせに はなのちるらむ | 定家 |
241 | こすゑより あらしふきおろす そまかはの いかたをこゆる はなのしらなみ | 斉時 |
242 | にはのおもは うつみさたむる かたもなし あらしにかろき はなのしらゆき | 国助 |
243 | おもひきや そらにしられぬ ゆきもなほ くものうへまて ちらむものとは | 蓮生法師 |
244 | おもひやる なへてのはなの はるのかせ このひともとの うらみのみかは | 為兼 |
245 | みよしのの やまのあなたに ちるはなを ふきこすかせの たよりにそしる | 雅頼 |
246 | をしとおもふ はなのあるしを おきなから わかものかほに さそふかせかな | 有仁 |
247 | みつのおもに うきてなかるる さくらはな いつれをあわと ひとはみるらむ | 躬恒 |
248 | ふりくらす あめしつかなる にはのおもに ちりてかたよる はなのしらなみ | 基忠(鷹司兼平男) |
249 | すきうつる ときとかせとそ うらめしき はなのこころは ちらむともせし | 永福門院 |
250 | なへてよの はるのこころは のとけきに うつろひやすく はなのちるらむ | 後宇多院 |
251 | きのふこえし をのへのさくら ちりにけり けふかへるさの みちまとふまて | 実泰 |
252 | さくらはな こすゑさひしく ちりすきて のこれるえたに はるそすくなき | 師教(九条忠教男) |
253 | たちならふ みねのこすゑを ふくかせに まつよりもちる やまさくらかな | 為相 |
254 | ふきよわる あらしのにはの このもとに ひとむらしろく はなそのこれる | 家親 |
255 | もろくちる はなをはかろく ふきなして やなきにおもき はるのゆふかせ | 貞広 |
256 | かせにさそ ちるらむはなの おもかけの みぬいろをしき はるのよのやみ | 道良女 |
257 | むかしまて おもふもつらし はるかせに はなちらせとは たれをしへけむ | 顕昭 |
258 | はるかせの やまのたかねを ふきこせは こすゑもみえぬ はなそちりける | 経信 |
259 | のとかなる いりあひのかねは ひひきくれて おとせぬかせに はなそちりくる | 清雅 |
260 | ちるそうき おもへはかせも つらからす はなをわきても ふかはこそあらめ | 経正 |
261 | なかめつつ なれにしはるを かそへても ふりぬるみこそ はなにをしけれ | 覚助法親王 |
262 | いかにせむ みにもやくると やまさくら またるるはなも ちりはてぬへき | 中将(選子内親王家) |
263 | まちつけて ちりはてぬとも やまさくら しはしはにはを はらはさらなむ | 中務(選子内親王家) |
264 | はなをこそ ちらぬさきにと たつねつれ ゆきをわけても かへりぬるかな | 赤染衛門 |
265 | みよしのの いはもとさらす なくかはつ うへもなきけり このかはのせに | 読人不知 |
266 | さきいつる やへやまふきの いろぬれて さくらなみよる はるさめのには | 為子(従二位) |
267 | ゆきとのみ さくらはちれる このしたに いろかへてさく やまふきのはな | 為世(御子左藤原為氏男) |
268 | はるさめに ぬれぬれをらむ けふすきは ゐてのやまふき ちりもこそすれ | 基俊女 |
269 | やへにのみ ありとみえつる やまふきの ここのへちかく さきにけるかな | 忠見 |
270 | さくらちり はるのくれゆく ものおもひも わすられぬへき やまふきのはな | 俊成(藤原俊忠男) |
271 | はなはちり とりはまれなる ころにしも さくやまふきは こころありけり | 仁澄 |
272 | はなもちり とりもかへりぬ あはれてふ ことをあまたに くるるはるかな | 道玄 |
273 | ととまらぬ わかれのみかは はなとりの なこりにつけて をしきはるかな | 宗宣(北条宣時男) |
274 | いまはとて さくらなかるる よしのかは みつのはるさへ せくかたもなし | 公経(藤原実宗男) |
275 | はなとりの いろねもたえて くるるそらの かすみはかりに のこるはるかな | 公雄 |
276 | はるとてや やまほとときす なかさらむ あをはのききの むらさめのやと | 伏見院 |
277 | ぬれてをる ふちのしたかけ つゆちりて はるやいくかの ゆふくれのあめ | 基良 |
278 | いろふかく にほへるふちの はなゆゑに のこりすくなき はるをこそおもへ | 公忠(源国紀男) |
279 | ふちなみの はなさくみれは ほとときす なくへきときは ちかつきにけり | 赤人 |
280 | はなたにも ちりのこらなむ おのつから をしむにとまる はるかともみむ | 頼基(大中臣輔道男) |
281 | はなはたた かせのつらさに なしはてぬ はるをはなにの さそひてかゆく | 定成(藤原経朝男) |
282 | なれきつる はなのなこりも あはれなり みはななそちの はるのくれかた | 右京大夫(玄輝門院) |
283 | はるをしたふ なこりのはなも いろくれぬ とよらのてらの いりあひのそら | 実兼 |
284 | はるをしたふ こころのともそ あはれなる やよひのくれの うくひすのこゑ | 章義門院 |
285 | えたにちる はなこそあらめ うくひすの ねさへかれゆく はるのくれかな | 二条院讃岐 |
286 | くれてゆく はるののこりを なかむれは かすみのそこに ありあけのつき | 式子内親王 |
287 | をしめとも こよひもあけは ゆくはるを あすはかりとや あすはおもはむ | 頼政 |
288 | なかめやる とやまのあさけ このままに かすめやあすも はるをのこして | 為子(従二位) |
289 | とふとりの おくりのつはさ しをるらし くもちあめなる はるのわかれに | 伏見院 |
290 | としをへて はるのをしさは まされとも おいはつきひの はやくもあるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
291 | よもすから をしみをしみて あかつきの かねとともにや はるはつくらむ | 行慶/行広 |
292 | めくりゆかは はるにはまたも あふとても けふのこよひは のちにしもあらし | 為兼 |
293 | はなとりの あかぬわかれに はるくれて けさよりむかふ なつやまのいろ | 実兼 |
294 | いつしかと かへつるはなの たもとかな ときにうつるは ならひなれとも | 俊成(藤原俊忠男) |
295 | さくらいろの はなのたもとを たちかへて ふたたひはるの なこりをそおもふ | 忠良 |
296 | はるはすて またほとときす かたらはぬ けふのなかめを とふひともかな | 式子内親王 |
297 | おほゐかは いはなみはやく はるくれて いかたのとこに なつそきにける | 俊成女 |
298 | けふはいとと さくらもとこそ ゆかしけれ はるのかたみに はなやのこると | 周防内侍 |
299 | をしやなほ さくらやまふき ちりしをれ はるなりぬへき けふのけしきを | 伏見院 |
300 | のこりける みやまかくれの おそさくら なつさへかせを なほやいとはむ | 実氏 |
301 | うすみとり ましるあふちの はなみれは おもかけにたつ はるのふちなみ | 永福門院 |
302 | うのはなの ちらぬかきりは やまさとの このしたやみも あらしとそおもふ | 公任 |
303 | さかきとる ころとはしるし しろたへに ゆふかけわたす もりのうのはな | 為家 |
304 | うのはなの つゆにひかりを さしそへて つきにみかける たまかはのさと | 為教 |
305 | ときやいつ そらにしられぬ つきゆきの いろをうつして さけるうのはな | 覚助法親王 |
306 | つきかけの もるかとみえて なつこたち しけれるにはに さけるうのはな | 経親(平時継男) |
307 | ほとときす なくへきさとを さためねは けふもやまちを たつねくらしつ | 道済 |
308 | われききて ひとにはつけむ ほとときす おもふもしるく まつここになけ | 躬恒 |
309 | ほとときす いまやとおもふ やまのはに つきをまつこと なれをこそまて | 実氏 |
310 | ひとこそあれ やまほとときす おのれさへ なとわかやとに おとつれもせぬ | 公雄 |
311 | つきたにも こころつくさぬ やまのはに まつよひすくる ほとときすかな | 為氏 |
312 | ひとをわく なさけなりけり ほとときす わかねさめには おとつれもせす | 実俊(西園寺公相男) |
313 | なきぬへき くものけしきに まちなして いまやとたのむ ほとときすかな | 道潤 |
314 | このさとに をりはへきなけ ほとときす ほかにはをしむ はつねなりとも | 通重 |
315 | いまたにも なかてはあらし ほとときす むらさめすくる くものゆふくれ | 小兵衛督(章義門院) |
316 | なきぬへき ゆふくれことの あらましに きかてなれぬる ほとときすかな | 伏見院 |
317 | ふちなみの ちらまくをしみ ほとときす いまきのをかに なきてこゆなり | 読人不知 |
318 | かくはかり あめのふらくに ほとときす うのはなやまに なほかなくらむ | 人麿 |
319 | ほとときす そらにこゑして うのはなの かきねもしろく つきそいてぬる | 永福門院 |
320 | まちえても たれかはきかむ ほとときす たたひとこゑを さよふけてなく | 雅経 |
321 | なほさりに まつひとはみな ねぬるよの ふけてのちなく ほとときすかな | 斉時 |
322 | まつときは やまほとときす とほけれと ねさめのこゑは まくらにそきく | 重之女 |
323 | ほとときす くもゐのこゑを きくひとは こころもそらに なりそしにける | 読人不知 |
324 | ふくるよに おきてきかすは ほとときす はつかなるねを たれかしらまし | 読人不知 |
325 | さとなるる たそかれときの ほとときす きかすかほにて またなのらせむ | 西行 |
326 | いつしかと なきわたるなり ほとときす くもゐにてこそ まつへかりけれ | 周防内侍 |
327 | いくこゑか きみはききつる ほとときす いもねぬわれは かすもしられす | 大弐三位 |
328 | いなりやま こえてやきつる ほとときす ゆふかけてのみ こゑのきこゆる | 頼実(源頼国男) |
329 | いまよりは やとにてまたむ ほとときす たつねぬひとそ まつはききける | 康資王母 |
330 | ほとときす すきつるかたの くもまより なほなかめよと いつるつきかけ | 丹後(宜秋門院) |
331 | ほとときす こゑさやかにて すくるあとに をりしもはるる むらくものつき | 道良女 |
332 | ほとときす なきつるくもを かたみにて やかてなかむる ありあけのそら | 式子内親王 |
333 | わかための はつねとのみや ほとときす おなしねさめの ひとはきくらむ | 宣直 |
334 | いくこゑも なほきかましを ほとときす ねさめのさきも なきやしつらむ | 新宰相(伏見院) |
335 | ひとこゑは なほしもつらし ほとときす きかぬよりはと おもひなせとも | 道因 |
336 | あはれにも ともにふしみの さとにきて かたらひあかす ほとときすかな | 俊成(藤原俊忠男) |
337 | ともにきく ひとこそかはれ ほとときす ことしもこその こゑになくなり | 実氏 |
338 | きくたひに あはれとそおもふ ほとときす われにかたらふ こゑならねとも | 御匣(式乾門院) |
339 | ほとときす くものいつくそ むらさめの はれゆくあとの よはのひとこゑ | 煕時 |
340 | つきのこる ねさめのそらの ほとときす さらにおきいてて なこりをそきく | 為兼 |
341 | さつきまつ はなのかをりに そてしめて くもはれぬひの ゆふくれのあめ | 景綱 |
342 | あつまやの のきはにねさせ あやめくさ うゑぬしのふも おひすやはあらぬ | 経正 |
343 | けふといへは あやめはかりそ ふきそふる のきはふりぬる よもきふのやと | 公雄 |
344 | たにふかき いはねのあやめ きみかため なかきためしを ひきいてつるかな | 弁乳母 |
345 | あやめふく かやかのきはに かせすきて しとろにおつる むらさめのつゆ | 後鳥羽院 |
346 | しつかふく あやめのすゑを たよりにて すみかならふる のきのささかに | 宮内卿(後鳥羽院) |
347 | あやめふく のきはすすしき ゆふかせに やまほとときす ちかくなくなり | 讃岐 |
348 | みかきなす たまえのなみの ますかかみ けふよりかけや うつしそめけむ | 為家 |
349 | くれぬとて ちまちのさなへ とりとりに いそくもしるき たこのもろこゑ | 越前(嘉陽門院) |
350 | さひしとは たれかいひけむ やまさとを みせはやたこの さなへとるころ | 家隆 |
351 | をやまたに みゆるみとりの ひとむらや またとりわけぬ さなへなるらむ | 家教 |
352 | とききぬと おりたつたこの てもたゆく とるやさなへも いまいそくなり | 具顕 |
353 | ふりそむる そかのかはらの さみたれに またみつあさし ますけからなむ | 隆祐 |
354 | さみたれは はれぬとみゆる くもまより やまのいろこき ゆふくれのそら | 宗尊親王 |
355 | さみたれは いさらをかはを たよりにて そとものをたを みをになしぬる | 実家(藤原公能男) |
356 | さなへとる しつかをやまた ふもとまて くももおりたつ さみたれのころ | 為家 |
357 | さみたれは はれむとやする やまのはに かかれるくもの うすくなりゆく | 花園院 |
358 | なにはえや あまのたくなは ほしわひて けふりもしめる さみたれのころ | 後鳥羽院 |
359 | やまさとの ゆきにはあとも いとはれす とへかしひとの さみたれのころ | 慈円 |
360 | にはのおもも くもにへたたる しはかきの しはしひまあれ さみたれのそら | 定家 |
361 | さみたれに うききなかれて おほゐかは くたすいかたの かすそそひぬる | 公雄 |
362 | そまひとの とらぬまきさへ なかるなり にふのかはらの さみたれのころ | 宮内卿(後鳥羽院) |
363 | こまとめて かけみるみつや にこるらむ ひのくまかはの さみたれのころ | 祐茂 |
364 | さみたれに みつしまされは おとはかは せきいれぬやとも おつるたきつせ | 経正 |
365 | みやこひと こともやとふと まつのかと くもとちはつる さみたれのそら | 俊成(藤原俊忠男) |
366 | いたつらに くもゐるやまの まつのはの ときそともなき さみたれのそら | 定家 |
367 | はれやらぬ くもよりかけは もらねとも つきよはしるし さみたれのそら | 宗宣(北条宣時男) |
368 | さみたれの はれぬるよはの ほとときす つきとともにや やまをいてけむ | 雅孝 |
369 | さみたれの くもまののきの ほとときす あめにかはりて こゑのおちくる | 慈円 |
370 | さみたれの つきのほのかに みゆるよは ほとときすたに さやかにをなけ | 躬恒 |
371 | すきぬとも こゑのにほひは なほとめよ ほとときすなく やとのたちはな | 守覚法親王 |
372 | たちはなの はなちるさとの にはのあめに やまほとときす むかしをそとふ | 良経(九条兼実男) |
373 | たちはなの やとりをとはは ほとときす われにむかしの ことかたらなむ | 実兼 |
374 | さみたれの くもふきすさふ ゆふかせに つゆさへかをる のきのたちはな | 為道 |
375 | わすれすよ みきのつかさの そてふれし はなたちはなや いまかをるらむ | 亀山院 |
376 | とほちより ふきくるかせの にほひこそ はなたちはなの しるへなりけれ | 安芸(郁芳門院) |
377 | かかりひの かけしうつれは ぬはたまの よかはのそこは みつももえけり | 貫之 |
378 | おほゐかは うふねのかかり ほのみえて くたすやなみの よるそしらるる | 亀山院 |
379 | かつらひと つきのひかりの ささぬよも のほるうふねに さをはとるらし | 実兼 |
380 | くれのあめに かはせのみつや まさるらむ はやくそくたる かかりひのかけ | 道平 |
381 | ゆふやみの うかはのかかり くたしすきて あらぬほたるそ またもえてゆく | 宗秀(大江時秀男) |
382 | うかひふね さをさしつつき のほるらし あまたみえゆく かかりひのかけ | 俊言 |
383 | ゆふつくひ よそにくれぬる このまより さしくるつきの かけそすすしき | 後宇多院 |
384 | あまのはら くもゐはなつの よそなれや みれはすすしき つきのかけかな | 基顕 |
385 | いててのち またほともへぬ なかそらに かけしらみぬる みしかよのつき | 公守 |
386 | さえたもる かけそほとなき くれたけの よわたるつきの あけやすきころ | 基忠(鷹司兼平男) |
387 | よにかかる すたれにかせは ふきいれて にはしろくなる つきそすすしき | 教良女 |
388 | にはのうへの みつおとちかき うたたねに まくらすすしき つきをみるかな | 信実 |
389 | かたふかて つきのあけゆく みしかよは いるかたをしむ やまのはもなし | 俊平(源泰光男) |
390 | かせにもる このまのつきも すすしきは まつはらたかき やまかけのやと | 冬平 |
391 | つきかけも なつのよわたる いつみかは かはかせすすし みつのしらなみ | 俊成女 |
392 | なつのよは しつまるやとの まれにして ささぬとくちに つきそくまなき | 親子(従三位源) |
393 | またよひと おもへはしらむ よこくもに やかてまきるる みしかよのつき | 有忠 |
394 | くるるより なかむるたにも ほとなきに ゆふやみをしき みしかよのつき | 新宰相(伏見院) |
395 | つきかけの かすむもつらし よそまては けふりなたてそ よはのかやりひ | 基忠(鷹司兼平男) |
396 | ここのみと けふりをわけて すきゆけは またすゑくらき しつかかやりひ | 公守 |
397 | やみよりも すくなきよはの ほたるかな おのかひかりを つきにけたれて | 為守女 |
398 | くさふかき まとのほたるは かけきえて あくるいろある のへのしらつゆ | 雅有 |
399 | かきくらす さつきのさよの あまくもに かくれぬほしは ほたるなりけり | 覚延 |
400 | このまより みゆるはたにの ほたるかも いさりにあまの うみへゆくかも | 喜撰 |
401 | くさむらに ほたるみたるる ゆふくれは つゆのひかりそ わかれさりける | 宣旨(六条斎院) |
402 | ゆふまくれ かせにつれなき しらつゆは しのふにすかる ほたるなりけり | 惟明親王 |
403 | のきしろき つきのひかりに やまかけの やみをしたひて ゆくほたるかな | 宮内卿(後鳥羽院) |
404 | ふくかせに なひくさはへの くさのはに こほれぬつゆや ほたるなるらむ | 実房 |
405 | やまかけや くらきいはまの わすれみつ たえたえみえて とふほたるかな | 為理 |
406 | あつさゆみ やたのひろのの くさしけみ わけいるひとや みちまとふらむ | 教良 |
407 | ゆきなやむ うしのあゆみに たつちりの かせさへあつき なつのをくるま | 定家 |
408 | をちのそらに くもたちのほり けふしこそ ゆふたちすへき けしきなりけれ | 家親 |
409 | ゆふたちの なこりはかりの にはたつみ ひころもきかぬ かはつなくなり | 順徳院 |
410 | ゆふたちの なこりのしはふ みつこえて しはしなかるる にはのうたかた | 円伊 |
411 | ひをさふる ならのひろはに なくせみの こゑよりはるる ゆふたちのそら | 道助法親王 |
412 | やまたかみ こすゑにあらき かせたちて たによりのほる ゆふたちのくも | 実氏 |
413 | かせはやみ くものひとむら みねこえて やまみえそむる ゆふたちのあと | 伏見院 |
414 | ゆふたちの とほちをすくる くものしたに ふりこぬあめそ よそにみえゆく | 道良女 |
415 | とまるへき かけしなけれは はるはると ぬれてをゆかむ ゆふたちのあめ | 基氏 |
416 | ゆふたちの くもまのひかけ はれそめて やまのこなたを わたるしらさき | 定家 |
417 | たちのほり みなみのはてに くもはあれと てるひくまなき ころのおほそら | 定家 |
418 | かくてはや くれぬとみつる ゆふたちの ひかけたかくも はるるそらかな | 兼氏 |
419 | えたにもる あさひのかけの すくなさに すすしさふかき たけのおくかな | 為兼 |
420 | いりひさす みねのこすゑに なくせみの こゑをのこして くるるやまもと | 為世(御子左藤原為氏男) |
421 | くれかかる とほちのそらの ゆふたちに やまのはみせて てらすいなつま | 定成(藤原経朝男) |
422 | こほれおつる いけのはちすの しらつゆは うきはのたまと またなりにけり | 伏見院 |
423 | ゆふされは なみこすいけの はちすはに たまゆりすうる かせのすすしさ | 実房 |
424 | かはかせに うはけふかせて ゐるさきの すすしくみゆる やなきはらかな | 仲正 |
425 | みなつきの てるひといへと わかやとの ならのはかけは すすしかりけり | 行尊 |
426 | かけふかき そとものならの ゆふすすみ ひときかもとに あきかせそふく | 良経(九条兼実男) |
427 | あきちかき たにのまつかせ おとたてて ゆふやますすし いはのしたみつ | 実兼 |
428 | なつやまの みとりのききを ふきかへし ゆふたつかせの そてにすすしき | 兼季 |
429 | やまかせの ふくとしもなき ゆふくれも このしたかけは なほそすすしき | 一条(昭慶門院) |
430 | このころそ とふへかりける やまさとの みつせきとむる まつのしたかけ | 家経(一条実経男) |
431 | まつかけや このしたふかき いはまより すすしくつたふ やまかはのみつ | 公顕 |
432 | いはねつたふ みつのひひきは そこにありて すすしさたかき まつかせのやま | 宗秀(大江時秀男) |
433 | なつやまの いはかねきよく みつおちて あたりのくさの いろもすすしき | 仁澄 |
434 | しけりあふ このしたつつく みやまちは わけゆくそても すすしかりけり | 維貞 |
435 | たにかはの すすしきおとを きくなへに やましたかせも まつにふくなり | 家雅 |
436 | ふくかせの たけになるよは あききぬと おとろくはかり そてにすすしき | 有房(六条通有男) |
437 | ひくらしの こゑきくもりの したくさに あきまつつゆの むすひそめぬる | 成朝 |
438 | まつかせも すすしきほとに ふきかへて さよふけにけり たにかはのおと | 覚守 |
439 | かけうつす にはのましみつ むすふての しつくもつきも そてにすすしき | 円伊 |
440 | かせのおとに すすしきこゑを あはすなり ゆふやまかけの たにのしたみつ | 為子(従二位) |
441 | ほかにのみ なつをはしるや たきつせの あたりはあきの むらさめのこゑ | 伏見院 |
442 | さよふけて いはもるみつの おときけは すすしくなりぬ うたたねのとこ | 式子内親王 |
443 | つきのいろも あきちかしとや さよふけて まかきのをきの おとろかすらむ | 式子内親王 |
444 | あきちかき しつかかきねの くさむらに なにともしらぬ むしのこゑこゑ | 後鳥羽院 |
445 | つゆわけむ あきのあさけは とほからて みやこやいくか まののかやはら | 定家 |
446 | あしのはに ひとよのあきを ふきこして けふよりすすし いけのゆふかせ | 伏見院 |
447 | かせわたる かはせのなみの なつはらへ ゆふくれかけて そてそすすしき | 兼行 |
448 | ゆふされは あさのはなかる みよしのの たきつかはうちに みそきすらしも | 秀能(藤原秀宗男) |
449 | しののめの そらきりわたり いつしかと あきのけしきに よはなりにけり | 紫式部 |
450 | いつくにも あきはきぬれと やまさとの まつふくかせは ことにそありける | 公任 |
451 | こころあての おもひのいろそ たつたやま けさしもそめし ききのしらつゆ | 定家 |
452 | けさよりは ふきくるかせも おくつゆも そてにはしめて あきそしらるる | 為相 |
453 | くさのうへに あさおくにはの つゆみれは そてもすすしく あきはきにけり | 家良 |
454 | さひしさの あはれをそへぬ やともあらし よものくさきの あきのはつかせ | 信実 |
455 | あきあさき ひかけになつは のこれとも くるるまかきは をきのうはかせ | 慈円 |
456 | みにしみて ふきこそまされ ひくらしの なくゆふくれの あきのはつかせ | 為氏 |
457 | ふきまさる かせのままなる くすのはの うらめつらしく あきはきにけり | 実経 |
458 | かねてたに すすしかりしを かたをかの もりのこすゑの あきのはつかせ | 為子(贈従三位) |
459 | あきはきぬ とはかりこそは なかめつれ まかきのくれに はきのしたつゆ | 寂蓮 |
460 | ひとよりも わきてつゆけき たもとかな わかためにくる あきにはあらねと | 道玄 |
461 | あきのきて けふみかつきの くもまより こころつくしの かけそほのめく | 実氏 |
462 | あきにこそ またなりぬれと おもふより こころにはやく そふあはれかな | 親子(従三位源) |
463 | われもかなし くさきもこころ いたむらし あきかせふれて つゆくたるころ | 伏見院 |
464 | ひさかたの くもゐはるかに まちわひし あまつほしあひの あきもきにけり | 為家 |
465 | ひこほしの つまこひころも こよひたに そてのつゆほせ あきのはつかせ | 為時(北条時村男) |
466 | またれつる あまのかはらに あきたちて もみちをわたす なみのうきはし | 四条(安嘉門院) |
467 | にはのおもに ひかてたむくる ことのねを くもゐにかはす のきのまつかせ | 実兼 |
468 | ひこほしの つまむかへふね こきいつらし あまのかはらに きりのたてれは | 憶良 |
469 | こひわたる としはふれとも あまのかは まれにそかかる せにはあひける | 村上天皇 |
470 | あかれしの こころやふかき たなはたの としにひとたひ まれにのみあふ | 花山院 |
471 | おもひやり あまのかはらを なかむれは たえまかちなる くもそわたれる | 馬内侍 |
472 | ひこほしの まれにわたれる あまのかは いはこすなみの たちなかへりそ | 行尊 |
473 | なにとなく あきにしなれは ひこほしの あふよをたれに まつここちして | 公継 |
474 | あふことの としにかはらぬ たなはたは たのむひとよや いのちなるらむ | 覚助法親王 |
475 | つゆしけき そてをはかさし たなはたの なみたほすまの あきのひとよに | 政村 |
476 | たなはたの かへるたもとの しつくには あまのかはなみ たちやそふらむ | 俊頼(源経信男) |
477 | まれにあふ あきのなぬかの くれはとり あやなくやかて あけぬこのよは | 小侍従(太皇太后宮) |
478 | をきのはに かせのすすしき あききては くれにあやしき ものをこそおもへ | 元真 |
479 | このころの うらふくかせに そなれまつ かはらぬいろも あきはみえけり | 家隆 |
480 | やまかせに もろきひとはは かつおちて こすゑあきなる ひくらしのこゑ | 伏見院 |
481 | いほむすふ わさたのなるこ ひきかへて よさむになりぬ つゆのころもて | 実氏 |
482 | さらてたに みにしむあきの ゆふくれに まつをはらひて かせそすくなる | 式子内親王 |
483 | たかよより いかなるいろの ゆふへとて あきしもものを おもひそめけむ | 恵慶 |
484 | たれにかは あきのこころも うれへまし ともなきやとの ゆふくれのそら | 為実(御子左藤原為氏男) |
485 | かせにきき くもになかむる ゆふくれの あきのうれへそ たへすなりゆく | 永福門院 |
486 | たそかれに ものおもひをれは わかやとの をきのはそよき あきかせそふく | 実朝 |
487 | みやこひと いまとひこなむ ひとりきく のきはのすきの あきかせのくれ | 伏見院 |
488 | こけふかき ほらのあきかせ ふきすきて ふるきひはらの おとそかなしき | 土御門院 |
489 | ゆふつくひ さひしきかけは いりはてて かせのみのこる にはのをきはら | 実兼 |
490 | そてたれて いさみにゆかむ からころも すそののまはき ほころひぬらし | 道玄 |
491 | からころも つまとふしかの なくときは すそののはきの はなもさきけり | 実雄 |
492 | なかめすくす ひかすやあきに うつりぬる こはきかすゑそ はなになりゆく | 教良女 |
493 | さきやらぬ すゑはのはなは まれにみえて ゆふつゆしけき にはのはきはら | 章義門院 |
494 | たかまとの のへのあきはき このころの あかつきつゆに さきにけるかも | 家持 |
495 | さをしかの しかならはせる はきなれや たちよるからに おのれをれふす | 紫式部 |
496 | ちれはかつ かせのあとより おきかへて おつるともなき はきのしたつゆ | 冬平 |
497 | うゑさりし いまひともとも くやしきは はなさくのちの にはのはきはら | 為相 |
498 | こころをは いろとこゑとに わけとめつ はきにしかなく みやきののはら | 守覚法親王 |
499 | なひきかへる はなのすゑより つゆちりて はきのはしろき にはのあきかせ | 伏見院 |
500 | かすかすに つきのひかりも うつりけり ありあけのにはの つゆのたまはき | 実兼 |
501 | つゆおもる こはきかすゑは なひきふして ふきかへすかせに はなそいろそふ | 為兼 |
502 | しらつゆも こほれてにほふ たかまとの のへのあきはき いまさかりなり | 後嵯峨院 |
503 | をとめこか かさしのはきの はなのえに たまをかされる あきのしらつゆ | 為家 |
504 | あきはきの はなさきしより みやきのの このしたつゆの おかぬひそなき | 為経(甘露寺藤原資経男) |
505 | まはきはら つゆにうつろふ つきのいろも はなになりゆく あけほののには | 実兼 |
506 | このさとの まはきにすれる ころもてを ほさてみやこの ひとにみせはや | 俊成(藤原俊忠男) |
507 | あきはきの さくやはなのの つゆわけて ころもにすらむ ひとなとかめそ | 隆博 |
508 | よすからの のわきのかせの あとみれは すゑふすはきに はなそまれなる | 後伏見院 |
509 | しをりつる かせはまかきに しつまりて こはきかうへに あめそそくなり | 永福門院 |
510 | さとはあれて ときそともなき にはのおもも もとあらのこはき あきはみえけり | 定家 |
511 | まくすはら なひくあきかせ ふくことに あたのおほのの はきのはなちる | 読人不知 |
512 | あきかせは ひことにふきぬ たかまとの のへのあきはき ちらまくをしも | 読人不知 |
513 | さをしかの けさうらふれて なくなへに のはらのこはき はなちりぬへし | 基俊 |
514 | たかまとの のへのあきはき いたつらに ちりかすくらむ みるひとなしに | 金村 |
515 | つまこひに しかなくやまの あきはきは つゆしもさむみ さかりすきゆく | 広世 |
516 | わかをかの あきはきのはな かせをいたみ みるへくなりぬ みむひともかな | 旅人 |
517 | いつくより おくともしらぬ しらつゆの くるれはくさの うへにみゆらむ | 為兼 |
518 | みたれふす のへのちくさの はなのうへに いろさやかなる あきのしらつゆ | 為信 |
519 | おくつゆも なさけそふかき ももくさの はなのひもとく あさきりのには | 公顕 |
520 | むらさめの はるるひかけに あきくさの はなののつゆや そめてほすらむ | 貞重 |
521 | つきのこり つゆまたきえぬ あさあけの あきのまかきの はなのいろいろ | 実承 |
522 | うたてなと きりのあさけの をみなへし はなのすかたを たちかくすらむ | 行藤(藤原行有男) |
523 | ひとえたの はなのいろたに あるものを のへのにしきを おもひやらなむ | 頼宗 |
524 | みしひとも すみあらしてし ふるさとに ひとりつゆけき をみなへしかな | 崇徳院 |
525 | あきのあめに なかめしほとに をみなへし うつろふまても なりにけるかな | 具平親王 |
526 | しらつゆの おけるあしたの をみなへし はなにもはにも たまそかかれる | 読人不知 |
527 | かへりなは うらみもそする をみなへし こよひはのへに いさとまりなむ | 実頼 |
528 | なかきよを いかにあかして をみなへし あかつきおきの つゆけかるらむ | 中務(選子内親王家) |
529 | をはなのみ にはになひきて あきかせの ひひきはみねの こすゑにそきく | 永福門院 |
530 | いろいろの あきののへをは はなすすき まねかすとても たたやすくへき | 頼輔 |
531 | つきかけの いるののすすき ほのほのと やまのはならて あくるしののめ | 師員 |
532 | あきやまの ふもとのはらの むらすすき ほすゑかたより あきかせそふく | 実兼 |
533 | いろかはる はやまかみねに しかなきて をはなふきこす のへのあきかせ | 有家(藤原重家男) |
534 | はなすすき ほむけのいとを ふくかせに たまのをとけて つゆそみたるる | 経平(衣笠家良男) |
535 | またあきの うれへのいろに むかふなり をはなかかせに にはのつきかけ | 親子(従三位源) |
536 | うすきりの はるるあさけの にはみれは くさにあまれる あきのしらつゆ | 永福門院 |
537 | あきされは わかそてぬらす なみたより くさきのつゆも おくにやあるらむ | 後伏見院 |
538 | いりのこる くもまのつきは あけはてて なほひかりある にはのあさつゆ | 実兼 |
539 | かりひとの くさわけころも ほしもあへす あきのさかのの よものしらつゆ | 順徳院 |
540 | まつかせは いかてしるらむ あきのよの ねさめせらるる をりにしもふく | 具平親王 |
541 | ふきしをり とやまにひひく あきかせに のきはのまつも こゑあはすなり | 兼季 |
542 | ふきしをる よものくさきの うらはみえて かせにしらめる あきのあけほの | 内侍(永福門院) |
543 | あきされは いととおもひを ましはかる このさとひとも そてやつゆけき | 後鳥羽院 |
544 | つゆのいろ ましはのかせの ゆふけしき あすもやここに たへてなかめむ | 為兼 |
545 | ゆふされは のもせにすかく しらつゆの たまれはかてに あきかせそふく | 有家(藤原重家男) |
546 | さくらあさの をふのしたつゆ おきもあへす なひくくさはに あきかせそふく | 義景 |
547 | つゆけさの そてにかはらぬ くさはまて とははやあきは ものやおもふと | 基忠(鷹司兼平男) |
548 | おきあまる このしたつゆや そめつらむ くさはうつろふ みやきののはら | 清兼 |
549 | ものおもふと いはぬはかりそ つゆかかる くさきもあきの ゆふくれのいろ | 定成(藤原経朝男) |
550 | あきはきぬ しかはをのへに こゑたてつ よはのねさめを とふひとはなし | 有家(藤原重家男) |
551 | やへむくら あきのわけいる かせのいろを われさきにとそ しかはなくなる | 定家 |
552 | あきやまの みねゆくしかの ともをなみ きりにまとへる ゆふくれのこゑ | 慈円 |
553 | あきかせに もとあらのこはき つゆおちて やまかけさむみ しかそなくなる | 家隆 |
554 | やまとほき やとならなくに あきはきを しからむしかも なきもこぬかな | 貫之 |
555 | わかやとの あきはきのはな さくときそ をのへにしかの こゑたかくなく | 躬恒 |
556 | かりもきぬ はきもちりぬと さをしかの なくなるこゑは うらふれにけり | 読人不知 |
557 | くさかくれ みえぬをしかも つまこふる こゑをはえこそ しのはさりけれ | 頼政 |
558 | やとちかく つまとふしかの こゑのみそ あきのねさめの ともとなりける | 公相 |
559 | しかのねも をのへのかねも たゆむなり なみたはつきぬ あきのねさめに | 永光 |
560 | のやまにも あきのうれへや ひとつならし をしかつまとひ むしもなくなり | 後伏見院 |
561 | やたののや よさむのつきの おくなへに あさちいろつき をしかなくなり | 為子(従二位) |
562 | なくしかの こゑのしるへも かひそなき みちふみまよふ かすかののはら | 兼教 |
563 | つゆわくる このしたとほき かすかのの をはなかなかに さをしかのこゑ | 冬綱 |
564 | あらしふき まかきのはきに しかなきて さひしからぬは あきのやまさと | 俊成(藤原俊忠男) |
565 | をきのはの おともあやしき ゆふくれに しかのねをさへ そへてきくかな | 実宗 |
566 | あはれなる ときしもあきの ねさめかな つまとふしかの あけかたのそら | 通具 |
567 | ふけまさる ひとまつかせの くらきよに やまかけつらき さをしかのこゑ | 定家 |
568 | みやまちや あかつきかけて なくしかの こゑするかたに つきそかたふく | 土御門院 |
569 | しかのねを かきねにこめて きくのみか つきもすみけり あきのやまさと | 西行 |
570 | さをしかの こゑきくときの あきやまに またすみのほる よはのつきかけ | 少将(藻壁門院) |
571 | あしひきの やまたもるいほに ねさめして しかのねきかぬ あかつきそなき | 伊平 |
572 | ときはなる やまちはあきの ほかかとて なかむるくれも さをしかのこゑ | 越前(嘉陽門院) |
573 | はつをはな たかたまくらに ゆふきりの まかきもちかく うつらなくなり | 後鳥羽院 |
574 | わかために くるともきかぬ はつかりの そらにまたるる あきにもあるかな | 家良 |
575 | あきかせの さむきあさけに きにけらし くもにきこゆる はつかりのこゑ | 後二条院 |
576 | すむさとは くもゐならねと はつかりの なきわたりぬる ものにそありける | 伊勢 |
577 | きかさりし ものとはなしに かりかねの くるたひことに あはれといはるる | 重之女 |
578 | わかかとの いなはのかせに おとろけは きりのあなたに はつかりのこゑ | 式子内親王 |
579 | あきかせは くものうへまて ふきぬらし いまはたかりの こゑそきこゆる | 実経 |
580 | ころもうし はつかりかねの たまつさに かきあへぬものは なみたなりけり | 慈円 |
581 | したはちる やなきのこすゑ うちなひき あきかせたかし はつかりのこゑ | 宗尊親王 |
582 | ふるさとの あさちかすゑは いろつきて はつかりかねそ くもになくなる | 大弐(二条太皇太后宮) |
583 | やまのはの くものはたてを ふくかせに みたれてつつく かりのつらかな | 定家 |
584 | あきかせに ひかけうつろふ むらくもを われそめかほに かりそなくなる | 為家 |
585 | きかしたた あきかせさむき ゆふつくひ うつろふくもに はつかりのこゑ | 為家 |
586 | くもたかき ゆふへのそらの あきかせに つらものとかに わたるかりかね | 伏見院 |
587 | はたさむく かせもあきなる ゆふくれの くものはたてを わたるかりかね | 少将(永陽門院) |
588 | むらむらの くものそらには かりなきて くさはつゆなる あきのあけほの | 親子(従三位源) |
589 | あきのあめの ものさむくふる ゆふくれの そらにしをれて わたるかりかね | 永福門院 |
590 | ゆふされは いやとほさかり とふかりの くもよりくもに あとそきえゆく | 道家 |
591 | たれにかも ころもかりかね あきかせの さむきゆふへの そらになくらむ | 行家(藤原知家男) |
592 | かへるかり またしもあはしと おもひしに あはれにあきの くもになくなる | 俊成(藤原俊忠男) |
593 | かりかねの さむくなるより みつくきの をかのくすはは いろつきにけり | 人麿 |
594 | あきかせの さむくしなれは あさきりの やへやまこえて かりもきにけり | 伏見院 |
595 | あききりは たちわたれとも なくかりの こゑはそらにも かくれさりけり | 貫之 |
596 | あきのよの ころもかりかね なくからに ねさめのとこも かせそさむけき | 長家 |
597 | かりなきて さむきあさけに みわたせは きりにこもらぬ やまのはもなし | 宗尊親王 |
598 | あはれなる やまたのいほの ねさめかな いなはのかせに はつかりのこゑ | 讃岐 |
599 | みねこゆる こゑはあまたに きくかりも きりのひまゆく かすそすくなき | 宗秀(大江時秀男) |
600 | やまきはの きりはれそめて こゑはかり ききつるかりの つらそみえゆく | 実文 |
601 | つきかけの ふくるくもゐに おとつれて ひとつらすくる あきのかりかね | 為世(御子左藤原為氏男) |
602 | なきつくす のもせのむしの ねのみして ひとはおとせぬ あきのふるさと | 朔平門院 |
603 | ふりまさる あまよのねやの きりきりす たえたえになる こゑもかなしき | 永福門院 |
604 | つきすみて かせはたさむき あきのよの まかきのくさに むしのこゑこゑ | 花園院 |
605 | つきもまた かけみえそめぬ ゆふくれの まかきはむしの ねをのみそきく | 広義門院 |
606 | ふけゆけは むしのこゑのみ くさにみちて わくるひとなき あきのよののへ | 伏見院 |
607 | まつむしも なきやみぬなる あきののに たれよふとてか はなみにもこむ | 伊勢 |
608 | すすむしの こゑふりたつる あきのよは あはれにものの なりまさるかな | 和泉式部 |
609 | わけている そてにあはれを かけよとて つゆけきにはに むしさへそなく | 西行 |
610 | なくむしの こゑもみたれて きこゆなり やふかせわたる をかのかやはら | 通時 |
611 | つゆはおき かせはみにしむ ゆふくれを おのかときとや むしのなくらむ | 冬教 |
612 | ゆふつくよ こころもしのに しらつゆの おくこのにはに きりきりすなく | 湯原王 |
613 | くさふかみ きりきりすいたく なくやとの はきみにきみは いつかきまさむ | 人麿 |
614 | すすむしの こゑみたれたる あきののは ふりすてかたき ものにそありける | 敏行 |
615 | あはれしれと われをすすむる よはなれや まつのあらしも むしのなくねも | 高弁 |
616 | あきのよを ひとりやなきて あかさまし ともなふむしの こゑなかりせは | 西行 |
617 | なきあかす ともとはきけと きりきりす おもふこころは かよひしもせし | 為教 |
618 | うきよそと おもはぬむしの なくこゑも きくからかなし あきのゆふくれ | 読人不知 |
619 | のへにとる わかまつむしの なくこゑも なれしすみかを こひしくやおもふ | 後宇多院 |
620 | きりきりす ねさめのとこを とひかほに わきてまくらの したにしもなく | 少納言(後伏見院) |
621 | さひしさは わかやとからの あきならし あれたるにはに むしのこゑこゑ | 憲淳 |
622 | くれぬとや かたやまかけの きりきりす ゆふひかくれの つゆになくらむ | 実兼 |
623 | さととほき のなかのもりの したくさに くるるもまたぬ まつむしのこゑ | 家良 |
624 | いろいろに ほむけのかせを ふきかへて はるかにつつく あきのをやまた | 四条(安嘉門院) |
625 | をやまたの いなはおしなひ ふくかせに ほすゑをつたふ あきのしらつゆ | 実兼 |
626 | かりなきて やまかせさむし あきのたの かりほのいほの むらさめのそら | 光俊(葉室光親男) |
627 | をきのはに かはりしかせの あきのこゑ やかてのわきの つゆくたくなり | 定家 |
628 | よひのまの むらくもつたひ かけみえて やまのはめくる あきのいなつま | 伏見院 |
629 | わたつうみの とよはたくもに いりひさし こよひのつきよ すみあかくこそ | 天智天皇 |
630 | ももしきの おほみやひとの たちいてて あそふこよひの つきのさやけさ | 読人不知 |
631 | またくれぬ そらのひかりと みるほとに しられてつきの かけになりぬる | 伏見院 |
632 | やまのはを いてやらぬより かけみえて まつのしたてる いさよひのつき | 良教 |
633 | くるるまの まかきのたけを ふくかせの なひくにいつる あきのよのつき | 実氏 |
634 | まとあけて やまのはみゆる ねやのうちに まくらそはたて つきをまつかな | 信実 |
635 | ひさかたの つきそさやけき ももしきの おほみやひとや あくかれぬらむ | 家隆 |
636 | つまきこる とほやまひとは かへるなり さとまておくれ あきのみかつき | 順徳院 |
637 | たかさこの をのへはれたる ゆふくれに まつのはのほる つきのさやけさ | 宗尊親王 |
638 | あきかせは をのへのまつに おとつれて ゆふへのやまを いつるつきかけ | 後二条院 |
639 | あきのよの なかきほとをや たのむらむ いてていそかぬ やまのはのつき | 貞時 |
640 | くもはらふ とやまのみねの あきかせに まきのはなひき いつるつきかけ | 範宗 |
641 | やまもとの すそののこかけ またくらし わかすむみねを つきいつるほと | 貞広 |
642 | すみのほる たかねのつきは そらはれて やまもとしろき よはのあききり | 宣子(従三位藤原) |
643 | そらきよく つきさしのほる やまのはに とまりてきゆる くものひとむら | 永福門院 |
644 | はつせやま ひはらかあらし かねのこゑ よふかきつきに すましてそきく | 為子(従二位) |
645 | つきかけの いているみねは まつのあらし ふくれはのへに をきのうはかせ | 慈円 |
646 | おもひいれぬ ひとのすきゆく のやまにも あきはあきなる つきやすむらむ | 定家 |
647 | あきののの しのにつゆおく すすのいほは すすろにつきも ぬるるかほなる | 良経(九条兼実男) |
648 | やとるへき つゆをはのこせ よひのまの つきまつほとの のへのあきかせ | 宣時(北条) |
649 | かせにふす をきのうはかせ つゆなから つきしくにはの あきそさひしき | 親子(従三位源) |
650 | もろくちる はなのまかきの つゆのうへに やとるもをしき つきのかけかな | 隆教 |
651 | つゆをみかく あさちかつきは しつかにて むしのこゑのみ さよふかきやと | 伏見院 |
652 | きりきりす なくよりほかの おともなし つきかけふくる あさちふのやと | 教良女 |
653 | こよひこそ あきとおほゆれ つきかけに きりきりすなきて かせそみにしむ | 雅有 |
654 | にほのうみや あきのよわたる あまをふね つきにのりてや うらつたふらむ | 俊成女 |
655 | すまのうらや あまとふくもの あとはれて なみよりいつる あきのつきかけ | 道家 |
656 | うらとほき しらすのすゑの ひとつまつ またかけもなく すめるつきかな | 為家 |
657 | つきさゆる あかしのせとに かせふけは こほりのうへに たたむしらなみ | 西行 |
658 | わたのはら なみにもつきは かくれけり みやこのやまを なにいとひけむ | 西行 |
659 | なにはかた なみまをわけて いるつきの なほかけのこる あはちしまやま | 公相 |
660 | ささなみや うらかせふけて あきのよの なからのやまに つきそかたふく | 実兼 |
661 | きのうみや なみよりかよふ うらかせに とほやまはれて いつるつきかけ | 道珍 |
662 | きのくにや ゆらのみなとに かせたちて つきのてしほの くもはらふなり | 通雄 |
663 | もしほひも つきのよころは たきさして けふりなたてそ すまのうらひと | 実衡 |
664 | こきいつる すまのよふねの をちこちは さなからつきの かけのしらなみ | 為相女 |
665 | きよみかた ふしのけふりや きえぬらむ つきかけみかく みほのうらなみ | 後鳥羽院 |
666 | つきすめは たににそくもは しつむめる みねふきはらふ かせにしかれて | 西行 |
667 | うきくもに はやくちかひて ゆくつきの はれまになれは かけそしつまる | 為守 |
668 | はしたてや まつふきわたる うらかせに いりうみとほく すめるつきかけ | 茂重 |
669 | いそのかみ ふるのたかはし よよかけて つきもいくよか すみわたるらむ | 雅孝 |
670 | やまもとの とほきあたりは みえわかて つきにそしろき うちのかはなみ | 憲基 |
671 | あきのよは たつぬるやとに ひともなし たれもつきにや あくかれぬらむ | 讃岐 |
672 | いつくより いてしくもゐの つきなれは あきのみやをは よそにすむらむ | 実兼 |
673 | すみなるる あきのみやまの ほかにては くもゐのつきも みるそらそなき | 為子(従二位) |
674 | かせのおとも みにしむよはの あきのつき ふけてひかりそ なほまさりゆく | 花園院 |
675 | あまつかせ くもふきはらひ つねよりも さやけさまさる あきのよのつき | 長家 |
676 | あまくもの たなひけりとも みえぬよは ゆくつきかけそ のとけかりける | 貫之 |
677 | あきかせは よさむなりとも つきかけに くものころもは きせしとそおもふ | 公通 |
678 | あきかせは のきはのまつを しをるよに つきはくもゐを のとかにそゆく | 永福門院 |
679 | すみのほる つきのあたりは くもはれて よそにしくるる まつかせのこゑ | 実泰 |
680 | やまもとの しけきひはらの したはかり ひかりおよはぬ あきのよのつき | 道良 |
681 | よをいのる わかたつそまの みねはれて こころよりすむ あきのよのつき | 源恵 |
682 | あくかるる こころはそらに さそはれて ぬるよすくなき あきのよのつき | 後宇多院 |
683 | なかめわひ あくかれたちぬ わかこころ あきにかなしき つきのよなよな | 章義門院 |
684 | おのつから すまぬこころも すまれけり つきはなれてそ みるへかりける | 親子(従三位源) |
685 | なかめても たれをかまたむ つきよよし よよしとつけむ ひとしなけれは | 小侍従(太皇太后宮) |
686 | なかめわひ つきのさそふに まかすれは いつくにとまる こころともなし | 頼氏(藤原頼広男) |
687 | うみのはて そらのかきりも あきのよの つきのひかりの うちにそありける | 家隆 |
688 | ひともみぬ よしなきやまの すゑまてに すむらむつきの かけをこそおもへ | 西行 |
689 | こしかたは みなおもかけに うかひきぬ ゆくすゑてらせ あきのよのつき | 定家 |
690 | いかなりし ひとのなさけか おもひいつる こしかたかたれ あきのよのつき | 為兼 |
691 | あきそかはる つきとそらとは むかしにて よよへしかけを さなからそみる | 為兼 |
692 | そめかぬる ときはのもりの こすゑより つきこそあきの いろはみえけれ | 忠定(藤原兼宗男) |
693 | あきことに しのふこころも いろそへは みやこのつきよ なれしとそおもふ | 宗秀(大江時秀男) |
694 | よをうしと なにおもひけむ あきことに つきはこころに まかせてそみる | 俊成(藤原俊忠男) |
695 | あはれとは われをもおもへ あきのつき いくめくりかは なかめきぬらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
696 | うきみこそ いとひなからも あはれなれ つきをなかめて としのへぬれは | 西行 |
697 | なにとなく すきこしあきの かすことに のちみるつきの あはれとそなる | 定家 |
698 | あはれしる ひとにみせはや やまさとの あきのよふかき ありあけのつき | 孝標女 |
699 | しはのとや さしもさひしき みやまへの つきふくかせに さをしかのこゑ | 後鳥羽院 |
700 | こころすむ かきりなりけり いそのかみ ふるきみやこの ありあけのつき | 慈円 |
701 | こころゆく ほとまてのほれ くらゐやま なたかきあきの つきのしるへに | 少将内侍(後深草院) |
702 | いつかたへ くもゐのかりの すきぬらむ つきはにしにそ かたふきにける | 式子内親王 |
703 | みにつもる わかよのあきの ふけぬれは つきみてしもそ ものはかなしき | 道因 |
704 | あきのよも わかよもいたく ふけぬれは かたふくつきを よそにやはみる | 頼政 |
705 | ななそちに あまりかなしき なかめかな いるかたちかき やまのはのつき | 公経(藤原実宗男) |
706 | むかしみし つきにもそては ぬれしかと おいはさなから なみたなりけり | 公朝 |
707 | みはかくて さすかあるよの おもひいてに またこのあきも つきをみるかな | 隆博 |
708 | にはしろく さえたるつきも ややふけて にしのかきねそ かけになりゆく | 兼行 |
709 | ふしわひて つきにうかるる みちのへの かきねのたけを はらふあきかせ | 定家 |
710 | あきのよの そらすみわたる つきみれは ゆくともなくて かたふきにけり | 嘉言 |
711 | ふけぬとも ひとりおきゐむ なかめすてて つきよりさきに いらしとおもへは | 基顕 |
712 | ふけぬれと ゆくともみえぬ つきかけの さすかにまつの にしになりぬる | 後二条院 |
713 | ふけぬとも なかむるほとは おほえぬに つきよりにしの そらそすくなき | 伏見院 |
714 | あけぬるか わけつるあとに つゆしろし つきのかへさの のへのみちしは | 伏見院 |
715 | くもはるる いそやまあらし おとふけて おきつしほせに つきそかたふく | 冬平 |
716 | つきのこる いそへのまつを ふきわけて いるかたみする あきのうらかせ | 公雄 |
717 | ありあけは いるうらみなき やまのはの つらさにかはる あかつきのくも | 雅有 |
718 | あかつきに なりやしぬらむ をくらやま しかのなくねに つきかたふきぬ | 基俊 |
719 | またたくひ あらしのやまの ふもとてら すきのいほりに ありあけのつき | 俊成(藤原俊忠男) |
720 | しらみゆく そらのひかりに かけきえて すかたはかりそ ありあけのつき | 朔平門院 |
721 | をくらやま みやこのそらは あけはてて たかきこすゑに のこるつきかけ | 為家 |
722 | そらまては たちものほらて ありあけの つきにおよはぬ みねのあききり | 貞時 |
723 | きりはるる くもまにつきは かけみえて なほふりすさふ あきのむらさめ | 為顕 |
724 | いるつきの なこりのかけは みねにみえて まつかせくらき あきのやまもと | 定成(藤原経朝男) |
725 | おとにきく をくらのやまは つきかけの いりぬるときの なにこそありけれ | 信濃(四条太皇太后宮) |
726 | ゆふくれの にはすさましき あきかせに きりのはおちて むらさめそふる | 永福門院 |
727 | くもかかる たかねのひはら おとたてて むらさめわたる あきのやまもと | 宗尊親王 |
728 | かせにゆく みねのうきくも あとはれて ゆふひにのこる あきのむらさめ | 時春 |
729 | うきてわたる ゆふへのそらの くもくれて かせにそきほふ あきのむらさめ | 権中納言(今出河院) |
730 | まとちかき むかひのやまに きりはれて あらはれわたる ひはらまきはら | 土御門院 |
731 | しひてやは なほすきゆかむ あふさかの せきのわらやの あきのゆふきり | 実氏 |
732 | みねのくも ふもとのきりも いろくれて そらもこころも あきのまつかせ | 定家 |
733 | やまちには ひとやまとはむ かはきりの たちこぬさきに いさわたりなむ | 貫之 |
734 | あさほらけ まきのをやまは きりこめて うちのかはをさ ふねよはふなり | 通親 |
735 | まきのはの しつくそおつる あさきりの はれゆくやまの みねのあきかせ | 景綱 |
736 | わけわひて いつくさととも しらすけの まののかやはら きりこめてけり | 秀長(藤原秀弘男) |
737 | そともなる ならのはしをれ つゆおちて きりはれのほる あきのやまもと | 雅有 |
738 | あさひさす いこまのたけは あらはれて きりたちこむる あきしののさと | 実俊(西園寺公相男) |
739 | きよみかた なみちのきりは はれにけり ゆふひにのこる みほのうらまつ | 宗宣(北条宣時男) |
740 | あかしかた うらちはれゆく あさなきに きりにこきいる あまのつりふね | 後鳥羽院 |
741 | かりにきて たつあききりの あけほのに かへるなこりも ふかくさのさと | 基忠(鷹司兼平男) |
742 | さきたちて わたるひとたに みえぬまて ゆふきりふかし せたのなかはし | 実泰 |
743 | たちこむる あさけのきりの そのままに くもりてくるる あきのそらかな | 俊光 |
744 | きりふかみ そことみえねと かけうすき つきののほるや あきのやまきは | 実兼 |
745 | あききりの たえまをみれは あさつくひ むかひのをかは いろつきにけり | 実経 |
746 | そことしも ふもとはみえぬ あさきりに のこるもうすき あきのやまのは | 内経 |
747 | はなのいろは かくれぬほとに ほのかなる きりのゆふへの のへのをちかた | 為子(従二位) |
748 | ゆふひさす やまのははかり あらはれて きりにしつめる あきのかはなみ | 政長 |
749 | ほにいつる ふしみのをたを みわたせは いなはにつつく うちのかはなみ | 公相 |
750 | くれかかる ふしみのかとた うちなひき ほなみをわたる うちのかはふね | 為教 |
751 | しらつゆの おくてのいねも かりてけり あきはてかたに なりやしぬらむ | 頼基(大中臣輔道男) |
752 | あきをたに いつかとおもひし あらをたは かりほすほとに なりそしにける | 順徳院 |
753 | にはのむし よそのきぬたの こゑこゑに あきのよふかき あはれをそきく | 為相 |
754 | ふけぬるか このさとひとは おともせて とほやまもとに ころもうつなり | 道家 |
755 | ゆふきりに みちはまとひぬ ころもうつ おとにつきてや やとをからまし | 隆信 |
756 | あきかせは ふけにけらしな さととほき きぬたのおとの すみまさりゆく | 覚助法親王 |
757 | ふけゆけは ところところに きこえつる きぬたのおとそ まれになりゆく | 家教 |
758 | さよふけて ころもうつなり われならて またねぬひとは あらしとおもふに | 小弁 |
759 | いまよりは ころもうつなり あきかせの さむきゆふへの をかのへのさと | 後二条院 |
760 | つききよみ ちさとのほかに くもつきて みやこのかたに ころもうつなり | 俊成(藤原俊忠男) |
761 | ひさかたの つきもよさむに なるままに あきはふけぬと ころもうつなり | 長時 |
762 | くれかたの あきさりころも ぬきをうすみ たへぬよさむに いまそうつなる | 家清 |
763 | いりかたの つきのそらさへ ひひくまて とほちのむらは ころもうつなり | 実兼 |
764 | ころもうつ しつかふせやの いたまあらみ きぬたのうへに つきもりにけり | 良平 |
765 | しくれゆく はしのたちえに かせこえて こころいろつく あきのやまさと | 定家 |
766 | うつりゆく けしきのもりの したもみち あききにけりと みゆるいろかな | 有教 |
767 | をくらやま あきとはかりの うすもみち しくれてのちの いろそゆかしき | 新大納言(延政門院) |
768 | たれかそめし とやまのみねの うすもみち しくれぬさきの あきのひとしほ | 公経(藤原実宗男) |
769 | かたやまの ははそのこすゑ いろつきて あきかせさむみ かりそなくなる | 為氏 |
770 | ゆふつくひ むかひのをかの うすもみち またきさひしき あきのいろかな | 定家 |
771 | われもしか あかてかへりし つきかけの やまのはつらき なかめをそせし | 基俊 |
772 | あきふかき ねさめのしくれ ききわひて おきいててみれは むらくものつき | 新宰相(伏見院) |
773 | あきのあめの やみかたさむき やまかせに かへさのくもも しくれてそゆく | 為家 |
774 | いろいろに うつろふきくを くものうへの ほしとはいかて ひとのいふらむ | 後三条院 |
775 | むらさきに つらぬるそてや うつるらむ くものうへまて にほふしらきく | 実氏 |
776 | ももしきの おほみやひとの けふといへは かさしにさせる ちよのしらきく | 隆親(藤原隆衡男) |
777 | さきそめし うめよりきくに うつるまて はなのいくいろ なれてみつらむ | 斉時 |
778 | たみのとも いまはもとめし たちかへり はなのしつくに ぬれむとおもへは | 読人不知 |
779 | きくのはな しもにうつると をしみしは こきむらさきに そむるなりけり | 希世 |
780 | たつのすむ みきはのきくは しらなみの をれとつきせぬ かけそみえける | 中務(選子内親王家) |
781 | うすくこく うつろふいろも はつしもの みなしらきくと みえわたるかな | 大弐三位 |
782 | えたもはも それともみえす くれぬるに はなこそのこれ にはのしらきく | 慈順 |
783 | いこまやま あらしもあきの いろにふく てひきのいとの よるそくるしき | 定家 |
784 | やまもとの さとのしるへの うすもみち よそにもをしき あきのいろかな | 後鳥羽院 |
785 | そめやらぬ みむろのやまの うすもみち いまいくしほの しくれまつらむ | 教良 |
786 | あきやまの みとりのいろそ めつらしき もみちにましる まつのひともと | 兼季 |
787 | みむろやま ふもとのまつの むらむらに しくれわけたる あきのいろかな | 実超 |
788 | あききりや やまたちかくし そめつらむ はれていろこき みねのもみちは | 行能 |
789 | しくれもて おるてふあきの からにしき たちかさねたる ころもてのもり | 為氏 |
790 | わきてなほ もみちもいろや ふかからむ みやこのにしの あきのやまさと | 慈道法親王 |
791 | あきことに かみなひやまの もみちはは たれかたむけの にしきなるらむ | 宗家 |
792 | しくれする いはたのをのの ははそはら あさなあさなに いろかはりゆく | 匡房 |
793 | かりかねの なくなるなへに からころも たつたのやまは もみちしぬらし | 赤人 |
794 | つまかくす やののかみやま つゆしもに にほひそめたり ちらまくをしも | 人麿 |
795 | しらつゆの このはをわきて おくやまの ふかきもみちは いろもかはらし | 読人不知 |
796 | くれなゐの やしほのいろは もみちはに あきくははれる としにそありける | 読人不知 |
797 | うちむれて もみちたつぬと ひはくれぬ あるしもしらぬ やとやからまし | 長家 |
798 | あきふかき やまよりやまに わけいれは なほいろそへる もみちをそみる | 後伏見院 |
799 | むらむらに こすゑのいろも うつろひて ゆふひのやまに くもそしくるる | 為理 |
800 | しくれつる ほとよりもなほ いろこきは うつるいりひの をかのもみちは | 冬基 |
801 | やまもとの すそののこはき ちりぬれと にしきをのこす みねのもみちは | 生阿 |
802 | もみちはの をりをわすれぬ なさけにも なれにしくもの うへやこひしき | 二条(永福門院) |
803 | をりしらぬ みにはよそなる もみちはに いろをそへける あきのみやひと | 家基(近衛基平男) |
804 | としをへて こけにうもるる ふるてらの のきにあきある つたのいろかな | 慈円 |
805 | あれわたる にははちくさに むしのこゑ かきほはつたの ふるさとのあき | 為子(従二位) |
806 | たつねすて けふもくれなは もみちはを さそふあらしの かせやふきなむ | 月花門院 |
807 | たきのうへの みふねのやまの もみちはは こかるるほとに なりにけるかな | 隆源(藤原通宗男) |
808 | しくれゆく たつたのこすゑ うつろひて そめぬかはせも もみちしにけり | 雲雅 |
809 | もみちはは てりてみゆれと あしひきの やまはくもりて しくれこそふれ | 貫之 |
810 | かせさむみ いくよもへぬに むしのねの しもよりさきに かれにけるかな | 具平親王 |
811 | あきふくる あさちかにはの きりきりす よやさむからし こゑよわりゆく | 為教 |
812 | にはもせに こゑこゑききし むしのねの ときときよわき あきのくれかた | 宣子(従三位藤原) |
813 | ゆふつくひ いろさひまさる くさのしたに あるとしもなく よわるむしのね | 覚円 |
814 | なきよわる むくらかしたの きりきりす いまいくかとか あきをしるらむ | 師光(中原師重男)/師宗 |
815 | あきふかみ よわるはむしの こゑのみか きくわれとても たのみやはある | 西行 |
816 | やまのはの ゆふひのかけも たえたえに しくれてすくる あきのむらくも | 雅言 |
817 | はなすすき ほすゑにうつる ゆふひかけ うすきそあきの ふかきいろなる | 遊義門院 |
818 | はなすすき ほにいててまねく ころしもそ すきゆくあきは とまらさりける | 匡房 |
819 | のへとほき をはなにかせは ふきみちて さむきゆふひに あきそくれゆく | 親子(従三位源) |
820 | むしのねの よわるあさちは うらかれて はつしもさむき あきのくれかた | 静仁法親王 |
821 | くれてゆく あきのなこりは おしてるや なにはのあしも うらかれにけり | 久明親王 |
822 | すきゆくか つれなきあきの こころかな こひしかるへき のへのけしきを | 覚性法親王 |
823 | くものいろ のやまのくさき ものことに あはれをそへて あきそくれゆく | 為相女 |
824 | おほかたの ひかすのみかは くさもきも うつろふいろに あきそくれゆく | 兼季 |
825 | あきふかき やそうちかはの はやきせに もみちそくたる あけのそほふね | 順徳院 |
826 | なかつきの ありあけのつきも ふけにけり わかよのすゑを おもふのみかは | 讃岐 |
827 | かたしきの そてになれぬる つきかけの あきもいくよそ うちのはしひめ | 俊成女 |
828 | ゆくあきの わかれにそへて なかつきの ありあけのつきの をしくもあるかな | 家経(一条実経男) |
829 | けふのみと なこりおもはぬ ゆふへたに あきにはあへす ぬるるたもとを | 基忠(鷹司兼平男) |
830 | なかつきの ひかすはけふに すきぬとも こころにあきや あすものこらむ | 公雄 |
831 | うつろはて にはのしらきく のこらなむ あきのかたみと あすよりはみむ | 花園院 |
832 | くさきみな あすみさるへき いろもなし わかこころにそ あきはくれける | 実兼 |
833 | こころとめて くさきのいろも なかめおかむ おもかけにたに あきやのこると | 為兼 |
834 | われたにも かへるみちには ものうきに いかてすきぬる あきにかあるらむ | 公任 |
835 | やまかつの よもきかかきも しもかれて かせもたまらぬ ふゆはきにけり | 清輔 |
836 | うちしくれ たたよふくもの やまめくり はやくもふゆの けしきなるかな | 実兼 |
837 | ゆふくれの あはれはあきに つきにしを またしくれして このはちるころ | 教良女 |
838 | ねさめする とこにしくれは もりこねと おとにもそての ぬれにけるかな | 小大進(花園左大臣家) |
839 | おのつから おとするひとも なかりけり やまめくりする しくれならては | 西行 |
840 | しくるるも おとはかはらぬ いたまより このははつきの もるにそありける | 定家 |
841 | しくれつる このしたつゆは おとつれて やまちのすゑに くもそなりゆく | 宮内卿(後鳥羽院) |
842 | かせむせふ ひはらのしくれ かきくらし あなしのたけに かかるむらくも | 基家 |
843 | ふきすくる ひはらのやまの こからしに ききもわかれぬ むらしくれかな | 後嵯峨院 |
844 | むらしくれ すきゆくみねの くもまより ひかけうつろふ をちのやまもと | 公相 |
845 | かみなつき しくれとひわけ ゆくかりの つはさふきほす みねのこからし | 後鳥羽院 |
846 | をりしもあれ かへさものうき たひひとの こころをしりて ふるしくれかな | 小弁 |
847 | むらくもの たえまたえまに ほしみえて しくれをはらふ にはのまつかせ | 土御門院 |
848 | むらくもの たえまのそらに にしたちて しくれすきぬる をちのやまのは | 定家 |
849 | なかきよの ねさめのまとに おとつるる しくれはおいの ともにそありける | 頼輔 |
850 | うきてゆく くもまのそらの ゆふひかけ はれぬとみれは またしくるなり | 隆博 |
851 | そめかぬる しくれはよそに すきぬれと つれなきまつに のこるこからし | 慈道法親王 |
852 | あはれなる ときをゆふへと おもふより しくれにそひて ふるなみたかな | 心円 |
853 | かみなつき しくるるくもを たよりにて くるるはやすき ふゆのそらかな | 経朝 |
854 | ひとむらの しくれをさそふ やまかせに おくるるくもは のとかにそゆく | 俊兼 |
855 | ゆふくれの くもとひみたれ あれてふく あらしのうちに しくれをそきく | 伏見院 |
856 | あはちしま はるかにみつる うきくもも すまのせきやに しくれきにけり | 家隆 |
857 | むらくもの すきのいほりの あれまより しくれにかはる よはのつきかけ | 有家(藤原重家男) |
858 | おとたつる しくれはやすく すきのやに ねさめのそてそ ぬれてのこれる | 貞重 |
859 | うきくもを つきにあらしの ふきかけて ありあけのそらを ゆくしくれかな | 基盛 |
860 | あらしふき このはちりかふ ゆふくれに むらくもきほひ しくれふるなり | 治部卿(永福門院) |
861 | ちりつもる よものこのはに うつもれて あきみしみちは おもかけもなし | 定資 |
862 | おのつから そめぬこのはを ふきませて いろいろにゆく こからしのかせ | 為家 |
863 | ちりしける ははそのもみち それをさへ とめしとはらふ もりのしたかせ | 隆博 |
864 | かれはつる おちはかうへの ゆふしくれ そめしなこりの いろやわすれぬ | 忠定(藤原兼宗男) |
865 | ゆふひさす みねのしくれの ひとむらに みきりをすくる くものかけかな | 実兼 |
866 | ゆふしくれ あらしにはるる たかねより いりひにみえて ふるこのはかな | 読人不知 |
867 | ひとはこす ゆふへのあめは したたりて むなしきはしに ふるこのはかな | 読人不知 |
868 | もみちちる よはのねさめの やまさとは しくれのおとも わきそかねつる | 匡房 |
869 | しくれつる たかねのくもは はれのきて かせよりふるは このはなりけり | 慈円 |
870 | しくれゆく あともはれまは なかりけり このはふりそふ みねのあらしに | 守誉 |
871 | かみなつき あらしにましる むらさめに いろこきたれて ちるこのはかな | 順徳院 |
872 | しくれつる そらはゆきけに さえなりて はけしくかはる よものこからし | 少将(永陽門院) |
873 | そともなる ならのはかしは かれおちて しくれをうくる おとのさひしさ | 基忠(鷹司兼平男) |
874 | おとつれし やまのこのはは ふりはてて しくれをのこす みねのまつかせ | 憲実 |
875 | さそふへき このはもいまは のこらねは はけしくとても やまおろしのかせ | 宣時(北条) |
876 | もみちはの なかるるたきは くれなゐに そめたるいとを くるかとそみる | 忠岑 |
877 | こからしに このはのおつる やまさとは なみたさへこそ もろくなりぬれ | 西行 |
878 | やまちかき ところならすは ゆくみつの もみちせりとそ おとろかれまし | 貫之 |
879 | となせより なかすにしきは おほゐかは いかたにつめる このはなりけり | 俊頼(源経信男) |
880 | このはちる みやまのおくの かよひちは ゆきよりさきに うつもれにけり | 惟明親王 |
881 | かれつもる もとのおちはの うへにまた さらにいろにて ちるもみちかな | 為子(従二位) |
882 | ききなれし こすゑのかせは ふきかへて にはのこのはの おとさわくなり | 家教 |
883 | しものしたの おちはをかへす こからしに ふたたひあきの いろをみるかな | 貞房 |
884 | おほゐかは あきのなこりを たつぬれは いりえのみつに しつむもみちは | 実氏 |
885 | たつたかは なかるるみつも このころは ちるもみちゆゑ をしくそありける | 後宇多院 |
886 | あめとふる このはつもれる たにかはの みつはまさらて せたえしてけり | 為顕 |
887 | おちつもる このははかりの よとみにて せかれぬみつそ したになかるる | 宗泰(北条宣時男) |
888 | やまかはの いはまにつもる もみちはは さそふみつなき ほとそみえける | 実経 |
889 | あらしふく やそうちかはの なみのうへに このはいさよふ せせのあしろき | 惟明親王 |
890 | もみちはを おとすしくれの ふるなへに よさへそさむき ひとりしあれは | 人麿 |
891 | けふにありて あすはすきなむ かみなつき しくれにまよふ もみちかささむ | 人麿 |
892 | あらしこそ ふきこさりけれ みやちやま またもみちはの ちらてのこれる | 孝標女 |
893 | かみなつき もみちにふれる はつゆきは をりたかへたる はなかとそみる | 弁乳母 |
894 | いつしかと ふゆのけしきに たつたかは もみちとちませ うすこほりせり | 俊成(藤原俊忠男) |
895 | かみなつき こすゑのもみち にはのきく あきのいろとは なにおもひけむ | 実兼 |
896 | あきすきて のこれるいろも かみなつき しもをわけてそ をしむへらなる | 醍醐天皇 |
897 | おくしもに いろはみえねと きくのはな こむらさきにも なりにけるかな | 町尻子 |
898 | くさはみな しもにくちにし ふゆかれに ひとりあきなる にはのしらきく | 朔平門院 |
899 | のへはたた をささはかりの あをはにて さらてはなへて しもかれのいろ | 道輔 |
900 | さひしさは やとのならひを このはしく しものうへとも なかめつるかな | 式子内親王 |
901 | はかへせぬ いろしもさひし ふゆふかき しものあさけの をかのへのまつ | 為子(従二位) |
902 | ならのはに しもやおくらむと おもふにも ねてこそふゆの よをあかしつれ | 基俊 |
903 | むしのねの よわりはてぬる にはのおもに をきのかれはの おとそのこれる | 大輔(殷富門院) |
904 | はなにおく つゆにやとりし かけよりも かれののつきは あはれなりけり | 西行 |
905 | ふゆかれの すさましけなる やまさとに つきのすむこそ あはれなりけれ | 西行 |
906 | しをれふす かれはのすすき しもさえて つきかけこほる ありあけののへ | 雅孝 |
907 | おきてみれは あけかたさむき にはのおもの しもにしらめる ふゆのつきかけ | 家親 |
908 | くさのうへは なほふゆかれの いろみえて みちのみしろき のへのあさしも | 宗宣(北条宣時男) |
909 | やまかつの あさけのこやに たくしはの しはしとみれは くるるそらかな | 定家 |
910 | かせのおとの はけしくわたる こすゑより むらくもさむき みかつきのかけ | 永福門院 |
911 | しくれふる やまのはつかの くもまより あまりていつる ありあけのつき | 為家 |
912 | すみのほる そらにはくもる かけもなし こかけしくるる ふゆのよのつき | 為教 |
913 | ひとめさへ しもかれにける やとなれは いととありあけの つきそさひしき | 具平親王 |
914 | かはちとり なれもやものは うれはしき たたすのもりを ゆきかへりなく | 俊成(藤原俊忠男) |
915 | けふくれて あすかのかはの かはちとり ひにいくせをか なきわたるらむ | 躬恒 |
916 | うらまつの はこしにおつる つきかけに ちとりつまとふ すまのあけほの | 守覚法親王 |
917 | おのれたに こととひこなむ さよちとり すまのうきねに ものやおもふと | 良経(九条兼実男) |
918 | うらかせの さむくしふけは あまころも つまとふちとり なくねかなしも | 宗尊親王 |
919 | おきつしほ さしてのいその はまちとり かせさむからし よはにともよふ | 長方 |
920 | やまのはも みえぬあかしの うらちとり しまかくれゆく つきになくなり | 読人不知 |
921 | このゆふへ しほみちくらし なにはかた あしへのちとり こゑさわくなり | 後嵯峨院 |
922 | つききよみ さよふけゆけは いせしまや いちしのうらに ちとりなくなり | 実朝 |
923 | あはちしま せとのしほかせ さむからし つまとふちとり こゑしきるなり | 経盛 |
924 | さほかはに あそふちとりの さよふけて そのこゑきけは いねられなくに | 読人不知 |
925 | かはちとり つきよをさむみ いねすあれや ねさむることに こゑのきこゆる | 永福門院 |
926 | あまをふね さしてみちくる ゆふしほの いやましになく ともちとりかな | 道玄 |
927 | ふゆのよは しほかせさむみ かみしまの いそまのうらに ちとりなくなり | 国冬 |
928 | ひくなみの さそひやかへす ともちとり またいそとほく こゑのきこゆる | 源深 |
929 | よふねこく せとのしほあひに つきさえて をしまかいそに ちとりしはなく | 勝命 |
930 | きよみかた せきのとたたく うらかせに あけかたかけて なくちとりかな | 重時 |
931 | かせさむき ふけひのうらの さよちとり とほきしほひの かたになくなり | 為氏 |
932 | とこさえて ねられぬふゆの よをなかみ またるるかねの おとそつれなき | 章義門院 |
933 | たひまくら ふしみのさとの あさほらけ かりたのしもに たつそなくなる | 式子内親王 |
934 | つららゐる かりたのおもの ゆふくれに やまもととほく さきわたるみゆ | 雅有 |
935 | あさひさす こほりのうへの うすけふり またはれやらぬ よとのかはきし | 良経(九条兼実男) |
936 | ふるかはの いりえのみつの あさこほり かよひしふねの あとたにもなし | 実氏 |
937 | やまかはの みわたによとむ うたかたの あわにむすへる うすこほりかな | 為家 |
938 | はやきせは なほもなかれて やまかはの いはまによとむ みつそこほれる | 公雄 |
939 | さゆるよの いけのたまもの みかくれて こほりにすける なみのしたくさ | 道家 |
940 | たきかはの いはねつつきや こほるらむ はやせのなみの おとのよわれる | 覚助法親王 |
941 | たたひとへ うへはこほれる かはのおもに ぬれぬこのはそ かせになかるる | 道良女 |
942 | さゆるよの こほりのうへに ゐるかもは とけてねられぬ ねをのみやなく | 宗直/宣直 |
943 | あさあけの こほるなみまに たちゐする はおともさむき いけのむらとり | 広義門院 |
944 | ふちはせに かはるのみかは あすかかは きのふのなみそ けさはこほれる | 雅経 |
945 | さゆるひの しくれののちの ゆふやまに うすゆきふりて くもそはれゆく | 為兼 |
946 | しくれつる とやまのさとの さゆるよは よしののたけに はつゆきやふる | 道家 |
947 | よもすから さとはしくれて よこくもの わかるるみねに みゆるしらゆき | 実俊(西園寺公相男) |
948 | きのふけふ さとはしくれの ひまなくて みやまはゆきそ はやふりにける | 実泰 |
949 | いはのうへの こけのころもも うつもれす たたひとへなる けさのしらゆき | 実氏 |
950 | くもゐゆく つはさもさえて とふとりの あすかみゆきの ふるさとのそら | 土御門院 |
951 | けさみれは とほやましろし みやこまて かせのおくらぬ よはのはつゆき | 宗尊親王 |
952 | みわたせは あけわかれゆく くもまより をのへそしろき ゆきのとほやま | 久世 |
953 | さえこほる くもははれゆく あさあけの ひかけにみかく ゆきのやまのは | 内実 |
954 | しからきの とやまはかりに ふりそめて にはにはおそき ゆきにもあるかな | 万秋門院 |
955 | ふりつもる こすゑやけさは こほりぬる かせにもおちぬ まつのしらゆき | 冬平 |
956 | そらさむき とやまのくもは なほとちて さとよりはるる ゆきのあさあけ | 顕資 |
957 | はれそむる くものとたえの かたはかり ゆふひにみかく みねのしらゆき | 道平 |
958 | ときうつり つきひつもれる ほとなさに はなみしにはに ふれるしらゆき | 為家 |
959 | けさはまた あとみえぬまて つもりけり わかわけそむる みねのしらゆき | 貞時 |
960 | くれかかる ゆふへのそらに くもさえて やまのははかり ふれるしらゆき | 為氏 |
961 | ゆきふれは やまのはしらむ あけかたに くもまにのこる つきのさやけさ | 家平 |
962 | ふみわけし きのふのにはの あともなく またふりかくす けさのしらゆき | 俊光 |
963 | したこほる みやまのゆきの けぬかうへに いまいくへとか ふりかさぬらむ | 経平(衣笠家良男) |
964 | えたかはす こすゑにゆきは もりかねて このしたうすき まきのやまみち | 家定 |
965 | たれかくて すむらむとたに しらゆきの ふかきみやまの おくのいほかな | 有家(藤原重家男) |
966 | ゆくみつに うかふこのはの ひまをなみ こほらぬうへに つもるしらゆき | 後嵯峨院 |
967 | はやきせの みつのうへには ふりきえて こほるかたより つもるしらゆき | 道潤 |
968 | ささのはの さえつるなへに あしひきの やまにはゆきそ ふりつみにける | 貫之 |
969 | しほかせに たちくるなみと みるほとに ゆきをしきつの うらのまさこち | 為子(従二位) |
970 | あけわたる なみちのくもの たえまより むらむらしろき ゆきのとほやま | 隆康 |
971 | あしのはも しもかれはてて なにはかた いりえさひしき なみのうへかな | 基氏 |
972 | おほゐかは すさきのあしは うつもれて なみにうきたる ゆきのひとむら | 宗尊親王 |
973 | かせはらふ みきはのあしの をれかへり なひくすゑはは ゆきもたまらす | 実超 |
974 | よはのあらし はらひかねけり けさみれは ゆきのうつまぬ まつすきもなし | 仁澄 |
975 | みやきのや かれはたになき はきかえに をれぬはかりも つもるしらゆき | 土御門院 |
976 | したをれの たけのおとさへ たえはてぬ あまりにつもる ゆきのひかすに | 為世(御子左藤原為氏男) |
977 | あかつきに つもりやまさる そともなる たけのゆきをれ こゑつつくなり | 行房 |
978 | ふきはらふ あらしはよわる したをれに ゆきにこゑある まとのくれたけ | 伊平 |
979 | ゆふまくれ ふるともみえて しらゆきの つもれはなひく にはのくれたけ | 良信 |
980 | かきくらす のきはのそらに かすみえて なかめもあへす おつるしらゆき | 定家 |
981 | やまあらしの すきのははらふ あけほのに むらむらなひく ゆきのしらくも | 伏見院 |
982 | ふりつもる かちののはらの ゆきのうへに わくるあさけの そてのさむけさ | 隆博 |
983 | とふひとも なくてひかすそ つもりぬる にはにあとみぬ やとのしらゆき | 為方 |
984 | かさねても うつみなはてそ まれにとふ ひとのなさけの あとのしらゆき | 貞綱 |
985 | あまのかは やととふみちも たえぬらし かたののみのに つもるしらゆき | 資平 |
986 | はつせやま をのへのゆきけ くもはれて あらしにちかき あかつきのかね | 景綱 |
987 | ふるゆきの あめになりゆく したきえに おとこそまされ のきのたまみつ | 為家 |
988 | けさのまの ゆきはあとなく きえはてて かれののくちは あめしをるなり | 新大納言(延政門院) |
989 | しろたへの いろよりほかの いろもなし とほきのやまの ゆきのあけほの | 後宇多院 |
990 | ふりはれて つきのかけさす にはのゆきは うすきもふかく みゆるなりけり | 家基(近衛基平男) |
991 | ふりうつむ ゆきのすかたと みえつるを きえゆくかたそ たけになりゆく | 親子(従三位源) |
992 | ゆきうつむ そののくれたけ をれふして ねくらもとむる むらすすめかな | 西行 |
993 | へたてつる かきねのたけも をれふして ゆきにはれたる さとのひとむら | 雅孝 |
994 | ほしきよき よはのうすゆき そらはれて ふきとほすかせを こすゑにそきく | 伏見院 |
995 | ゆきふれは みちたえにけり よしのやま はなをはひとの たつねしものを | 俊成(藤原俊忠男) |
996 | はるならぬ はなもみよとや みよしのの たままつかえに ふれるしらゆき | 長方 |
997 | くもをいてて われにともなふ ふゆのつき かせやみにしむ ゆきやつめたき | 高弁 |
998 | つきかけは もりのこすゑに かたふきて うすゆきしろし ありあけのには | 永福門院 |
999 | そらはなほ またよふかくて ふりつもる ゆきのひかりに しらむやまのは | 為世(御子左藤原為氏男) |
1000 | こよひまた かせふきさえて きえやらぬ きのふのゆきに ふりそかさなる | 資高 |
1001 | あまのとの あくるそらかと みえつるは つもれるゆきの ひかりなりけり | 小弁 |
1002 | まきもくの たまきのみやに ゆきふれは さらにむかしの あしたをそみる | 俊成(藤原俊忠男) |
1003 | ふりにける あとにこころの ととまるは たかつのみやの ゆきのあけほの | 隆信 |
1004 | あともなき すゑののたけの ゆきをれに かすむやけふり ひとはすみけり | 定家 |
1005 | かせはらふ こすゑはかりは かつおちて しつえにのこる まつのしらゆき | 実重(三条公親男) |
1006 | かせののち あられひとしきり ふりすきて またむらくもに つきそもりくる | 為子(従二位) |
1007 | うきくもの ひとむらすくる やまおろしに ゆきふきませて あられふるなり | 為世(御子左藤原為氏男) |
1008 | ひとむらの くもにあられは まつおちぬ しくれしそらの ゆきになるころ | 実兼 |
1009 | あられふる くものたえまの ゆふつくひ ひかりをそへて たまそみたるる | 為藤 |
1010 | あらしふく みやまのいほの ささのはの さやくをきけは あられふるなり | 為家 |
1011 | ねやのうへは つもれるゆきに おともせて よこきるあられ まとたたくなり | 為兼 |
1012 | ふくかせの あらちのたかね ゆきさえて やたのかれのに あられふるなり | 家良 |
1013 | しからきの とやまのあられ ふりすさひ あれゆくころの くものいろかな | 定家 |
1014 | ここのへに よをかさねつる くものうへの ありあけのつきを いつかわすれむ | 少将内侍(後深草院) |
1015 | はなならぬ ゆきにもつらし あさきよめ またこころあれ とものみやつこ | 秀長(藤原秀弘男) |
1016 | をとめこか くものかよひち そらはれて とよのあかりも ひかりそへけり | 俊成(藤原俊忠男) |
1017 | たちましり そてつらねしも むかしかな とよのあかりの くものうへひと | 兼行 |
1018 | やまもとや いつくとしらぬ さとかくら こゑするもりは みやゐなるらし | 実兼 |
1019 | わすれめや にはひにつきの かけそへて くもゐにききし あさくらのこゑ | 基忠(鷹司兼平男) |
1020 | たきすさふ しもよのにはひ かけふけて くもゐにすめる あさくらのこゑ | 隆教 |
1021 | ゆきのうちに ふゆはいなはの みねのまつ つひにもみちぬ いろたにもなし | 順徳院 |
1022 | としのうちに さけるはなかと うめかえに をれはたもとに かかるしらゆき | 兼実 |
1023 | このはなき むなしきえたに としくれて まためくむへき はるそちかつく | 為兼 |
1024 | うめかえに わきてふらなむ しらゆきは はるよりさきの はなとみるへく | 清正 |
1025 | となへつる みよのほとけを しるへにて おのれもなのる くものうへひと | 為家 |
1026 | はるあきの すててわかれし そらよりも みにそふとしの くれそかなしき | 為家 |
1027 | はかなくて くれぬるとしを かそふれは わかみもすゑに なりにけるかな | 顕輔 |
1028 | としくれて とほさかりゆく はるしもそ ひとよはかりに へたてきにける | 実氏 |
1029 | ゆくつきひ かはのみつにも あらなくに なかるることも いぬるとしかな | 貫之 |
1030 | なそもかく つもれはおいと なるとしの くれをはいそく ならひなるらむ | 実定 |
1031 | うはたまの このよなあけそ しはしはも またふるとしの うちそとおもはむ | 実朝 |
1032 | みちもなく ふりつむゆきは うつめとも くれゆくとしは とまりやはする | 為教 |
1033 | すきぬれは わかみのおいと なるものを なにゆゑあすの はるをまつらむ | 肥後(京極前関白家) |
1034 | あはれなり かすにもあらぬ おいのみを なほたつねても つもるとしかな | 俊成(藤原俊忠男) |
1035 | としくるる けふのゆきけの うすくもり あすのかすみや さきたちぬらむ | 伏見院 |
1036 | ことしはや あすにあけなむ あしひきの やまにかすみの たてりやとみむ | 貫之 |
1037 | としくれて わかよふけゆく かせのおとに こころのうちの すさましきかな | 紫式部 |
1038 | しほかまの いそのいさこを つつみもて みよのかすとそ おもふへらなる | 忠岑 |
1039 | かそふれは またゆくすゑそ はるかなる ちよをかきれる きみかよはひは | 教通 |
1040 | めつらしき けふのまとゐは きみかため ちよにやちよに たたかくしこそ | 行成 |
1041 | みかへりの みそちをへても いくちよと かきらぬはるの すゑそひさしき | 実重(三条公親男) |
1042 | おいのなみ なほしつかなれ きみかよを ここのそちまて みつのはまかせ | 隆信 |
1043 | きみかよの はるにしあへは ときはなる まつのちとせも かけをそへけり | 頼実(藤原経宗男) |
1044 | よろつよを きみにゆつらむ ためとてや こけむすいはに まつもおひけむ | 安芸(郁芳門院) |
1045 | おほそらを めくるつきひの いくかへり いまゆくすゑに あはむとすらむ | 道綱母 |
1046 | かみのます やまたのはらの つるのこは かへるよりこそ ちよはかそへめ | 順 |
1047 | ひめこまつ おほかるのへに ねのひして ちよをこころに まかせたるかな | 道済 |
1048 | かすかのの ねのひのまつに ひかれきて としはつむとも わかなならなむ | 月花門院 |
1049 | ちちのはる よろつのあきに なからへて つきとはなとを きみそみるへき | 実朝 |
1050 | わかはさす まつのみとりに しるきかな みむろのやまの ちよのゆくすゑ | 季経 |
1051 | まつかけの うつれるやとの いけなれは みつのみとりも ちよやすむへき | 俊頼(源経信男) |
1052 | ひをとしに こよひそかふる いまよりや ももとせまての つきかけもみむ | 伊衡 |
1053 | いはひつる ことたまならは ももとせの のちもつきせぬ つきをこそみめ | 醍醐天皇 |
1054 | ひさしくも にほはむとてや うめのはな はるにかねては さきそめにけむ | 貫之 |
1055 | こころありて うゑたるやとの はななれは ちとせうつらぬ いろにそありける | 貫之 |
1056 | かせふけと えたもならさぬ きみかよに はなのときはを はしめてしかな | 出羽弁 |
1057 | ここのへに にほひをそふる さくらはな いくちよはるに あはむとすらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1058 | よろつよの ためしをきみに はしめおきて さきそふはなの はるそひさしき | 公宗(洞院実雄男) |
1059 | すめらきを ちよのはるとそ いのりつる わかゆくすゑに はなやさくとて | 親宗(平時信男) |
1060 | さくらはな おのかにほひも かひありて けふにしあへる はるやうれしき | 公衡(西園寺実兼男) |
1061 | くものうへ ここのかさねの やとのはる あらしもしらぬ はなそのとけき | 伏見院 |
1062 | ふくかせも をさまりにける きみかよの ちとせのかすは けふそかそふる | 後嵯峨院 |
1063 | かきりなき ちよのあまりの ありかすは けふかそふとも つきしとそおもふ | 弁内侍(後深草院) |
1064 | さしのほる ひかりにつけて みかさやま かけなひくへき すゑそみえける | 為氏 |
1065 | あめのした くもりなかれと てらすらし みかさのやまに いつるあさひは | 為藤 |
1066 | さくはなの かけにかくるる ひとおほみ ありしにまさる ふちのいろかも | 業平 |
1067 | ももしきに ねをしととめて きくのはな きみみぬあきは あらしとそおもふ | 大輔(殷富門院) |
1068 | あきのつき かけのとかにも みゆるかな こやなかきよの ためしなるらむ | 公任 |
1069 | しつかなる けしきそしるき つきかけの やほよろつよを てらすへけれは | 白河院 |
1070 | くもゐにて いくよろつよか なかむへき つきになれたる あきのみやひと | 季経 |
1071 | のとかなる よをみやかはの きよきせに すむもかひある あきのよのつき | 行能 |
1072 | くものうへに ひかりさしそふ あきのつき やとれるいけも ちよやすむへき | 為家 |
1073 | もろともに きみそすむへき ひさかたの あまてるつきの よろつよのあき | 定雅(藤原忠経男) |
1074 | わたつうみ よせてはかへる しきなみの かすかきりなき きみかみよかな | 讃岐 |
1075 | たまつはき はつねのまつを とりそへて きみをそいはふ しつのこやまて | 俊成(藤原俊忠男) |
1076 | ことのねは うへまつかせに かよひけり ちとせをふへき きみにひかれて | 大弐(二条太皇太后宮) |
1077 | わかのうらや なかくひさしき あとしあれは なほちよそへて たつもなくなり | 冬平 |
1078 | たのむそよ かみもうけひけ みしめなは なかくといのる きみかちとせを | 公誉 |
1079 | ゆくすゑの ひさしきみよに くらふれは むかしはちかし すみよしのまつ | 時広 |
1080 | よろつよを きみにまかせて まつかえの ふかきみとりも いろをそふらむ | 師重(源師親男) |
1081 | つかへつつ ゆくすゑとほく たのむかな たけのそのふに よよをかさねて | 禅助 |
1082 | おいらくの わかみもまつも よよをへて けふのみゆきに いろまさりけり | 兼経 |
1083 | ためしなき きみかちとせの とかへりも おひそふまつの かすにみゆらむ | 基忠(鷹司兼平男) |
1084 | きみかよは たかののやまの いはのむろ あけむあしたの のりにあふまて | 俊成(藤原俊忠男) |
1085 | よよたえす つきてひさしく さかえなむ とよあしはらの くにやすくして | 伏見院 |
1086 | きみかへむ ちよにやちよの すゑまても わかみかはらす つかへてしかな | 実雄 |
1087 | ふりにける やそちののちを かそへても のこるよはひの すゑそひさしき | 為教 |
1088 | あまつそら ほしのくらゐを かそへてそ ゆくすゑとほき みよはしらるる | 栄算 |
1089 | きみかため ななせのかはに みそきして やほよろつよを いのりそめぬる | 在藤 |
1090 | わかのうらに としへてすみし あしたつの くもゐにのほる けふのうれしさ | 重家 |
1091 | たかみくら くものとはりを かかくとて のほるみはしの かひもあるかな | 実兼 |
1092 | いにしへも たくひもあらし わかやとに えたをつらぬる かしはきのかけ | 光頼 |
1093 | くもりなき つきひのひかり いくめくり おなしくもゐに すまむとすらむ | 為子(従二位) |
1094 | わかのうらに ちちのたまもを かきつめて よろつよまても きみかみむため | 俊成(藤原俊忠男) |
1095 | みよまてに いにしへいまの なもふりぬ ひかりをみかけ たまつしまひめ | 後嵯峨院 |
1096 | あふみなる あさひのさとは けふよりそ よのさかゆへき ひかりみえける | 読人不知 |
1097 | やすみしる わかすめらきの みよにこそ さかゐのむらの みつもすみけれ | 匡房 |
1098 | きみかよは なからのやまの いはねまつ ちたひやちたひ はなのさくまて | 顕輔 |
1099 | きみかよは たみのこころの ひとかたに なひきてみゆる あをやきのむら | 顕輔 |
1100 | ゆふそのの ひかけのかつら かさしもて たのしくもあるか とよのあかりの | 俊成(藤原俊忠男) |
1101 | はつしくれ ふりにけらしな あすよりは あきさかやまの もみちかささむ | 頼資(藤原兼光男) |
1102 | そらはれて てらすつきひの あきらけき きみをそあふく いやたかのやま | 経光 |
1103 | うすくこく ちえたにさける ふちなみの さかりもひさし よろつよのはる | 俊光 |
1104 | いにしへに いまをくらふの さとひとは よよにこえたる みしねをそつく | 俊光 |
1105 | わかれての のちはしらぬを いかならむ ときにかまたは あはむとすらむ | 千里 |
1106 | きみををしむ こころのそらに かよへはや けふとまるへき あめのふるらむ | 貫之 |
1107 | しろたへの そてわかるへき ひをちかみ こころにむせひ なきのみそなく | 紀郎女 |
1108 | やまとほみ くもゐにかりの こえていなは われのみひとり ねにやなきなむ | 実朝 |
1109 | いりえこく をふねになひく あしのほは わかるとみれと たちかへりけり | 俊成(藤原俊忠男) |
1110 | さよふけて いまもなかなむ ほとときす わかれををしむ こゑときくへく | 清正 |
1111 | たのむらむ しるへもいさや ひとつよの わかれにたにも まとふこころは | 西行 |
1112 | わかれては いかにこひしと おもふらむ おのかこころそ ひとをしりける | 重之 |
1113 | まちつけむ いのちもしらぬ みにしあれは けふのわかれを かきりとそおもふ | 寂超 |
1114 | つかのまも わすれむものか いてかてに つきをしをりし そてのわかれは | 定家 |
1115 | わかるるか わひしきものは いつしかと あひみむことを おもふなりけり | 公忠(源国紀男) |
1116 | あききりの へたつるあまの はしたてを いかなるひまに ひとわたるらむ | 上東門院 |
1117 | われのみや いふへかりける わかれちに ゆくもとまるも おなしおもひを | 忠度 |
1118 | かへりこむ さためなきみは このたひや つひのわかれに ならむとすらむ | 頼輔 |
1119 | かへりきて とふひとあらは みすはかり ゑしまをこれに うつせとそおもふ | 惟方 |
1120 | かきりあれは やへのやまちを へたつとも こころはそらに かよふとをしれ | 匡房 |
1121 | かからすは なにかわかれの をしからむ なれぬるはかり くやしきはなし | 大弐(安嘉門院) |
1122 | わかれゆく ひとををしむと こよひより とほきゆめちに われやまとはむ | 貫之 |
1123 | わかれても けふよりのちは たまくしけ あけくれみへき かたみなりけり | 読人不知 |
1124 | くやしきは よしなくきみに なれそめて いとふみやこの しのはれぬへき | 西行 |
1125 | あつまのの けふりのたてる ところみて かへりみすれは つきかたふきぬ | 人麿 |
1126 | たつかねの きこゆるたゐに いほりして われたひなりと いもにつけこせ | 人麿 |
1127 | あしひきの やままつかねを まくらにて さぬるこよひは いへししのはる | 伏見院 |
1128 | いててこし みやこはくもに へたたりぬ すゑもかすみの いくへなるらむ | 式子内親王 |
1129 | なにとなく ものあはれにも みゆるかな かすみやたひの こころなるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1130 | みちのへの かすみふきとく やまかせに かすあらはるる はるのたひひと | 知家 |
1131 | かへるかり われもたひなる みやまちに みやこへゆかは ことはつてまし | 内侍(永福門院) |
1132 | うらやまし いかなるかりの はるくれは もとのこしちに たちかへるらむ | 全真 |
1133 | かりころも たちうきはなの かけにきて ゆくすゑくらす はるのたひひと | 定家 |
1134 | しけりあふ つたもかへても もみちして こかけあきなる うつのやまこえ | 宗尊親王 |
1135 | うちしくれ ふるさとおもふ そてぬれて ゆくさきとほき のちのしのはら | 四条(安嘉門院) |
1136 | たひひとも みなもろともに あさたちて こまうちわたす やすのかはきり | 四条(安嘉門院) |
1137 | よはのつき われのみおくる やまちそと なれしみやこの ともにつけこせ | 丹後(宜秋門院) |
1138 | あふさかや いそくせきちも よやふかき そてさへしめる すきのしたつゆ | 為実(御子左藤原為氏男) |
1139 | こえやせむ よはふかくとも あふさかの とりのねまたは つきもこそいれ | 行家(藤原知家男) |
1140 | あふさかの せきのとあくる しののめに みやこのそらは つきそのこれる | 能清 |
1141 | おもひやれ しはしとおもふ たひたにも なほふるさとは こひしきものを | 康頼 |
1142 | たひねして ものおもふほとに あきのよの ありあけのつきも いてにけるかな | 清正 |
1143 | とまるへき やとをはつきに あくかれて あすのみちゆく よはのたひひと | 為兼 |
1144 | あけやらぬ くさのまくらの つゆのうへに つきをのこして いつるたひひと | 俊兼 |
1145 | くさのいほ かりねのとこの おもひいては まくらにちかき さをしかのこゑ | 師宗 |
1146 | あさつゆを さきたつともに はらはせて おなしあとゆく のへのたひひと | 斉時 |
1147 | かりねする よのまのつゆに そほちつつ ひとりあさたつ のちのささはら | 為藤 |
1148 | つゆわけし そてになれきて あきのつき みやこもたひの なみたをそとふ | 宗宣(北条宣時男) |
1149 | こととへと こたへぬつきの すみたかは みやこのともと みるかひもなし | 為子(贈従三位) |
1150 | かりまくら をささかつゆの おきふしに なれていくよの ありあけのつき | 性助法親王 |
1151 | たひひとの わくるのはらの つゆおちて やとりもあへぬ あきのよのつき | 通成 |
1152 | つゆふかき のへのをはなの かりまくら かたしくそてに つきそこととふ | 長典 |
1153 | つきかけそ むかしのともに まさりける しらぬみちにも たつねきにけり | 行尊 |
1154 | しくれふる とやまのすゑは はれやらて くものうへゆく みねのつきかけ | 教範 |
1155 | みやこひと おなしつきをは なかむとも かくしもそては ぬれすやあるらむ | 俊恵 |
1156 | あはれとて しらぬやまちは おくりきと ひとにはつけよ ありあけのつき | 雅経 |
1157 | まとろまし こよひならては いつかみむ くろとのはまの あきのよのつき | 孝標女 |
1158 | はつかりの たひのそらなる こゑきけは わかみをおきて あはれとそおもふ | 中務(選子内親王家) |
1159 | あきかせの さむきあしたに さののをか こゆらむきみに きぬかさましを | 赤人 |
1160 | くさまくら かりねのいほの ほのほのと をはなかすゑに あくるしののめ | 公経(藤原実宗男) |
1161 | あさあけの やまわけころも ぬれてけり ふかきよたちの つゆのしめりに | 実兼 |
1162 | むすひおく やとこそかはれ くさまくら かりねはおなし よなよなのつゆ | 実重(三条公親男) |
1163 | あきのひの うすきころもに かせたちて ゆくひとまたぬ をちのしらくも | 定家 |
1164 | うちしくれ ものさひしかる あしのやの こやのねさめに みやここひしも | 実定 |
1165 | なにはかた あしのまろやの たひねには しくれはのきの しつくにそしる | 経盛 |
1166 | めにかけて いくかになりぬ あつまちや みくにをさかふ ふしのしはやま | 隆弁 |
1167 | こえきても なほすゑとほし あつまちの おくとはいはし しらかはのせき | 任弁 |
1168 | よそにのみ きみをあひみて ゆふたすき たむけのやまを あすかこえなむ | 読人不知 |
1169 | ささなみの なみくらやまに くもいては あめそふるてふ かへれわかせこ | 読人不知 |
1170 | ゆふたたみ たむけのやまを けふこえて いつれののへに いほりせむかも | 坂上郎女 |
1171 | みやこひと まつらむものを あふさかの せきまてきぬと つけややらまし | 中務(選子内親王家) |
1172 | こゆれとも おなしやまのみ かさなりて すきゆくたひの みちそはるけき | 花園院 |
1173 | くさまくら こけのむしろに かたしきて みやここひしみ あかすよはかな | 実泰 |
1174 | あらちやま ゆふこえくれて やたののの あさちかりしき こよひかもねむ | 後伏見院 |
1175 | おくれぬと いまはみえつる たひひとの やとかるのへに こゑそちかつく | 兼行 |
1176 | たひひとの ともしすてたる まつのひの けふりさひしき のちのあけほの | 宗尊親王 |
1177 | たひひとの ゆくかたかたに ふみわけて みちあまたある むさしののはら | 道平 |
1178 | くさまくら つゆはかりにや ぬれにけむ とまれるそては しをりしものを | 伊勢 |
1179 | なにたかき いはみのうみの おきつなみ ちへにかくれぬ やまとしまねは | 人丸 |
1180 | すみなれし ふるきみやこの こひしさは かみもむかしに おもひしるらむ | 重衡 |
1181 | たひころも きてはそてのみ つゆけきに おもひたたてそ あるへかりける | 肥後(京極前関白家) |
1182 | たひころも きなれのやまは なのみして なほうらかなし あきのゆふくれ | 公経(藤原実宗男) |
1183 | むかしこそ なにともなしに こひしけれ ふしみのさとに こよひやとりて | 能因 |
1184 | はしはしら それとはかりも みるへきに しらすなからも すきにけるかな | 小弁 |
1185 | ささかにの くもてあやふき やつはしを ゆふくれかけて わたりかねぬる | 四条(安嘉門院) |
1186 | かりそめと おもふたひねの ささのいほも よやなかからむ つゆのおきそふ | 俊成(藤原俊忠男) |
1187 | いつかわれ なれしみやこに たちかへり かかるたひねを ひとにかたらむ | 教実 |
1188 | くさまくら ささかきうすき あしのやは ところせきまて そてそつゆけき | 俊頼(源経信男) |
1189 | かせあらき しはのいほりは つねよりも ねさめそものは かなしかりける | 西行 |
1190 | しはのいほ しはしみやこへ かへらしと おもはむたにも あはれなるへし | 西行 |
1191 | いさここに こよひはさねむ たひころも やまおろしふきて そてはさゆとも | 実氏 |
1192 | のへのいほ いそのとまやの たひまくら ならはぬゆめは むすふともなし | 実雄 |
1193 | たひころも たもとかたしき こよひもや くさのまくらに われひとりねむ | 実朝 |
1194 | はつせかは さよのまくらに おとつれて あくるひはらに あらしをそきく | 慈円 |
1195 | いはかねを つたふかけちの たかけれは くものあととふ あしからのやま | 為家 |
1196 | あつまのの つゆわけころも はるはると きつつみやこを こひぬひもなし | 教定(飛鳥井雅経男) |
1197 | みやこにて またれしみねを こえきても なほやまよりそ つきはいてける | 景綱 |
1198 | まきのたつ いくへのやまを こえすきて さとちかくなる まつのしたみち | 俊兼 |
1199 | かへりみる くももいくへの みねこえて またゆくすゑも きりふかきやま | 俊光 |
1200 | とほやまの ふもとになひく ゆふけふり さとあるかたの しるへなりけり | 兼胤 |
1201 | わけゆけと またみねとほし たかせやま くもはふもとの あとにのこりて | 頼重 |
1202 | ゆきくれて やととふやまの をちかたに しるへうれしき いりあひのかね | 道昭 |
1203 | あめのあしも よこさまになる ゆふかせに みのふかせゆく のへのたひひと | 為子(従二位) |
1204 | とまるへき かたやいつこに ありまやま やとなきのへの ゆふくれのあめ | 伏見院 |
1205 | たひのそら あめのふるひは くれぬかと おもひてのちも ゆくそひさしき | 為兼 |
1206 | あめはれぬ たひのやかたに ひかすへて みやここひしき ゆふくれのそら | 慈円 |
1207 | かりそめと おもひしものを あすかゐの みまくさかくれ いくよねぬらむ | 惟明親王 |
1208 | ふるさとに さらはふきこせ みねのあらし かりねのよはの ゆめはさめぬと | 定家 |
1209 | けふいくか のやまのあらし みにしめて ふるさととほく わかれきぬらむ | 政村 |
1210 | くさまくら あまりよふかく たちにけり とりのはつねも いまそなくなる | 家良 |
1211 | わかせこを やまとへやると さよふけて あかつきつゆに われたちぬれぬ | 紀皇女 |
1212 | よをこめて いそきつれとも まつかねに まくらをしても あかしつるかな | 増基 |
1213 | いつくとも さしてもゆかす たかせふね うきよのなかを いてしはかりそ | 行尊 |
1214 | かへりみる わかふるさとの くものなみ けふりもとほし やへのしほかせ | 道良女 |
1215 | わけくたる ふもとのみちに かへりみれは またあとふかき みねのしらくも | 宗秀(大江時秀男) |
1216 | われのみと おもふやまちの ゆふくれに さきたつくもも あともさためす | 覚寛 |
1217 | しらはまに すみのいろなる しまつとり ふてもおよはは ゑにかきてまし | 四条(安嘉門院) |
1218 | むしあけの せとのあけほの みるをりそ みやこのことも わすられにける | 忠盛 |
1219 | ゆらのとや なみちのすゑは はるかにて ありあけのつきに わたるふなひと | 政村 |
1220 | なるみかた しほせのなみに いそくらし うらのはまちに かかるたひひと | 忠成(大江広元男) |
1221 | またしらぬ うきねのとこの なみよりも なれたるつきの そてぬらすらむ | 宮内卿(後鳥羽院) |
1222 | なみのおとを こころにかけて あかすかな とまもるつきの かけをともにて | 西行 |
1223 | いくたひか おなしねさめに なれぬらむ とまやにかかる すまのうらなみ | 行平 |
1224 | なにはかた ゆきかふふねの つなてなは くるともみえす あしのまもなみ | 忠見 |
1225 | あふみちの のしまかさきの はまかせに いもかむすひし ひもふきかへす | 人麿 |
1226 | しまつたひ としまのさきを こきゆけは やまとこひしく つるさはになく | 赤人 |
1227 | いそさきを こきてめくれは あふみちや やそのみなとに たつさはになく | 黒人 |
1228 | あまをとめ たななしをふね こきいつらし たひのやとりに かちのおときこゆ | 金村 |
1229 | またしらぬ なにはのうらの あしまわけ こきゆくかたや すみよしのうら | 輔親 |
1230 | あまのはら なみのなるとを こくふねの みやここひしき ものをこそおもへ | 重之 |
1231 | わたのはら めにみぬかせを しるへにて なみちのふねの ゆくもはかなし | 家良 |
1232 | いつくをか けふのとまりと たのむらむ かせにまかする おきつふなひと | 政秋 |
1233 | まつかうらの とまりのいそと きくものを なにもさはらす かへるなみかな | 行能 |
1234 | あしのやの かりねもちかく みつしほに いそこすなみを まくらにそきく | 宗俊 |
1235 | みやこにて ききわすれにし なみのおとに またたちかへり なれむとすらむ | 雅有 |
1236 | たつねても おなしとまりの うきねせむ なみちへたつな よはのともふね | 実氏 |
1237 | たつねみむ おなしうきねの とまりふね わかおもふかたに たよりありやと | 為家 |
1238 | とまりする ひとよのちきり こきわかれ おのかさまさま いつるふなひと | 後鳥羽院 |
1239 | かちまくら ひとよならふる ともふねも あすのとまりや おのかうらうら | 伏見院 |
1240 | みなとかせ さむきうきねの かちまくら みやこをとほみ いもゆめにみゆ | 為家 |
1241 | ものおもひ こしちのうらの しらなみも たちかへるならひ ありとこそきけ | 初君(遊女)/初若 |
1242 | ふねとむる みつのみまきの まこもくさ からてかりねの まくらにそしく | 俊成女 |
1243 | よをこめて またこきいつる ひともあれや あまたこゑする よそのともふね | 新宰相(伏見院) |
1244 | たちかへる つきひやいつを まつらふね ゆくへもなみの ちへにへたてて | 伏見院 |
1245 | つきかけを そてにかけても みつるかな すまのうきねの ありあけのなみ | 慈円 |
1246 | くれぬとて とまりをいそく うらなみに つきのみふねそ いてかはりぬる | 宗尊親王 |
1247 | すきゆけと ひとのこゑする やともなし いりえのなみに つきのみそすむ | 定家 |
1248 | おもへとも はかなきものは ふくかせの おとにもきかぬ こひにそありける | 友則 |
1249 | わかこころ かからはいかか ありへむと きのふけふにて しられぬるかな | 実家(藤原公能男) |
1250 | いまよりの なみたのはてよ いかならむ こひそむるたに そてはぬれけり | 為氏 |
1251 | ふくかせの おとにききつつ さくらはな めにはみえすも すくるはるかな | 村上天皇 |
1252 | たよりある かせもやふくと まつしまに よせてひさしき あまのはしふね | 清少納言 |
1253 | そのことと いはぬなみたの わひしきは たたにたもとの ぬるるなりけり | 貫之 |
1254 | ひとしれぬ こころたたすの かみならは おもふこころを そらにしらなむ | 篁 |
1255 | つのくにの うらのはつしま はつかにも みなくにひとの こひしきやなそ | 雅成親王 |
1256 | ひとしれぬ こころのうちの かねことを むなしくなさぬ ゆくすゑもかな | 長方 |
1257 | おもふより みしよりむねに たくこひを けふうちつけに もゆるとやしる | 式子内親王 |
1258 | ちきりありて あひみむことも しらぬよに はなかくひとを おもひそめぬる | 広義門院 |
1259 | まよひそむる こころひとつの ゆくへしも われにてしらぬ みのおもひかな | 公顕 |
1260 | おちたきつ おとにはたてし よしのかは みつのこころは わきかへるとも | 為家 |
1261 | あちきなく なみたはかりは もらさはや たれゆゑぬるる そてとみえすは | 基忠(鷹司兼平男) |
1262 | あしのやの しのひにもゆる わかおもひ さそともひとに いふひまそなき | 実兼 |
1263 | いかにせむ かくとはひとに いひかたみ しらせねはまた しるみちもなし | 為子(従二位) |
1264 | おもひよわり みこそはたへす なるとても ひとのしのはむ なをはもらさし | 教良女 |
1265 | よるとても こころのままに ねはなかし まくらならふる ひともこそしれ | 為守女 |
1266 | みしゆめを わかこころにも わすれめや とはすかたりに いはれもそする | 新大納言(延政門院) |
1267 | こころには ちへにおもへと ひとにいはぬ わかこひつまは みるよしもなし | 人麿 |
1268 | あきはきの はなののすすき ほにいてす わかこひわたる かくれつまはも | 読人不知 |
1269 | はるさめの さはにふること おともなく ひとにしられて ぬるるそてかな | 小町 |
1270 | あまくもの わりなきひまを もるつきの かけはかりたに あひみてしかな | 西行 |
1271 | いかにせむ みこもりぬまの したにのみ しのひあまりて いはまほしきを | 相模 |
1272 | あしへこく たななしをふね いくそたひ ゆきかへるらむ しるひとをなみ | 業平 |
1273 | したにのみ もえわたれとも としをへて わかおもひをは けつひともなし | 躬恒 |
1274 | わかこひは ひとしらぬまの あやめくさ あやめぬほとそ ねをもしのひし | 宮内卿(後鳥羽院) |
1275 | しのふとも つひにいろにや あらはれむ つねにはものを おもふみなれは | 遊義門院 |
1276 | いかにして ゆきてみたれむ みちのくの おもひしのふの ころもへにけり | 家隆 |
1277 | つつみあくる そてのなみたの いつみかは くちなむはては ころもかせやま | 家長(源時長男) |
1278 | なかにゆく よしののかはは あせななむ いもせのやまを こえてみるへく | 篁 |
1279 | いもせやま かけたにみえて やみぬへく よしののかはは にこれとそおもふ | 峰守女 |
1280 | みにあまる おもひやそらに みちのくの しのふかひなく たつけふりかな | 行能 |
1281 | おもふとは いろにいてしと しのふにそ くるしきことは なほまさりける | 兼季 |
1282 | さらにまた つつみまさると きくからに うさこひしさも いはすなるころ | 為兼 |
1283 | われもつつみ きみもしのひて いはぬまの つもるつきひそ かこつかたなき | 少将(永陽門院) |
1284 | いまはたた おもふこころを のこりなく しらするほとの ことのはもかな | 蓮生法師 |
1285 | おもふほとは うへにしらせぬ ふみのうちも なほつつまれて かきそさしぬる | 顕親門院 |
1286 | ひとまもとめ かくとしもなき たまつさを なみたなからそ おしつつみぬる | 伏見院 |
1287 | はつせかは ゐてこすなみの いはのうへに おのれくたけて ひとそつれなき | 良経(九条兼実男) |
1288 | よよをへて われやはものを おもふへき たたひとたひの あふことにより | 和泉式部 |
1289 | なにかよに くるしきものと ひととはは あはぬこひとそ いふへかりける | 深養父 |
1290 | おもへとも たへねといひし やまかはの あさましくこそ わすれかたけれ | 道信 |
1291 | うらみかね そむきはてなむと おもふにそ うきよにつらき ひともうれしき | 忠度 |
1292 | かくはかり つれなきひとと おなしよに うまれあひけむ ことさへそうき | 重保 |
1293 | うきひとよ われにもさらは をしへなむ あはれをしらぬ こころつよさを | 為子(従二位) |
1294 | つひにされは さてこのよをは すくせとや おもふこころを ちきりにはして | 広義門院 |
1295 | うらみしたふ ひといかなれや それはなほ あひみてのちの うれへなるらむ | 為兼 |
1296 | あはれてふ ことのはもこそ きこえくれ またてきえなむ つゆのかなしき | 順 |
1297 | おもへとも しるしもなしと しるものを なにかかはかり わかこひわたる | 坂上郎女 |
1298 | たまほこの みちゆきふりに おもはさる いもをあひみて こふるころかも | 坂上郎女 |
1299 | おくれては いくたのうみの かひもなし しつむみくつと ともになりなむ | 弁乳女/弁乳母 |
1300 | わするるは おなしうきなの これはたた くやしきことの そはぬはかりそ | 小侍従 |
1301 | くやしさの そふはかりたに なれにせは わするるまてに とはさらめやは | 経盛 |
1302 | あふことの このよなからは かたからは のちのよとたに ちきりてしかな | 匡房 |
1303 | あはすして いけらむことの かたけれは いまはわかみを ありとやはおもふ | 読人不知 |
1304 | あひみすて わかこひしなむ いのちをは さすかにひとや あはれとおもはむ | 貫之 |
1305 | おくつゆの たまつくりえに しけるてふ あしのすゑはの みたれてそおもふ | 実氏 |
1306 | かたいとの あはすはなけの あはれたに せめてはかけよ たまのをにせむ | 為子(贈従三位) |
1307 | かひなしや やまとりのをの おのれのみ こころなかくは こひわたれとも | 経継 |
1308 | いつをいかに まちみよとたに ちきらぬに たのむるこころ さもそつれなき | 為子(従二位) |
1309 | かけはかり みしをかことの ちきりにて むすはぬなかの やまのゐのみつ | 宗緒母 |
1310 | うきひとを みぬめのうらの あたなみは さのみかけても なにおもふらむ | 忠成女 |
1311 | うきなかは あらいそなみの うつせかひ おもひよらすは みをもくたかし | 実教 |
1312 | いかにして たれもゆききの あふさかに ひとにしられぬ みちたつねまし | 成賢(祝部成茂男) |
1313 | いそきても かならすひとに あふさかの せきにしあらは うれしからまし | 隆房 |
1314 | いたつらに ふけもゆくかな せめてたた これをまつよの かねときかはや | 雅有 |
1315 | むすひきと いひけるものを むすひまつ いかてかきみに とけてみゆへき | 小町 |
1316 | あふことを いまやいまやと まつのきの ときはにひとを こひわたるかな | 躬恒 |
1317 | こひしなは わすれぬへきを さすかなり いのちはかりに ものをおもふかな | 重之女 |
1318 | つらくとも わすれすこひむ かしまなる あふくまかはの あふせありやと | 順 |
1319 | をりをりは おもふこころも みゆらむを つれなやひとの しらすかほなる | 雅有 |
1320 | ちきりたに あらはとたのむ はかなさよ かくてやさきの よよもすきけむ | 大納言(昭訓門院) |
1321 | さきのよに たれむすひけむ したひもの とけぬつらさを みのちきりとは | 四条(安嘉門院) |
1322 | さきのよに ひとのこころを つくしける みのむくひこそ おもひしらるれ | 親方 |
1323 | あふとみる そのおもかけの みにそはは ゆめちをのみや なほたのむへき | 国時 |
1324 | よしさらは おもひもよわれ よそなから あるかひもなき いのちなかさは | 為定(御子左二条為道男) |
1325 | わかこひは いせをのあまの かりてほす みるめはかりを ちきりなれとや | 宗成 |
1326 | ゆふくれは おもひそいつる くもまゆく つきのほのかに ひとをみしより | 実俊(西園寺公相男) |
1327 | ゆのはらに なくあしたつは わかことく いもにこふれや ときわかすなく | 旅人 |
1328 | たちはなの かけふむみちの やちまたに ものをそおもふ いもにあはすして | 三方 |
1329 | うちわたす たけたのはらに なくたつの まなしときなし わかこふらくは | 坂上郎女 |
1330 | なくさむる こころはなしに くもかくれ なきゆくとりの ねのみしなかる | 憶良 |
1331 | うちたのむ きみかこころの つらからは のにもやまにも ゆきかくれなむ | 素性 |
1332 | あひおもはぬ ひとのこころは やまなれや いはほよりけに うこかさるらむ | 忠岑 |
1333 | あめやまぬ やまのあまくも たちゐにも やすきそらなく きみをこそおもへ | 貫之 |
1334 | なかつきの そのはつかりの たよりにも おもふこころは きこえこぬかも | 読人不知 |
1335 | もゆれとも むねのおもひは かひもなし けふりをみてそ ひともとひける | 忠良 |
1336 | しのふとも こふともしらぬ つれなさに われのみいくよ なけきてかねむ | 定家 |
1337 | しのはれす こひすはなにを ちきりとか うきにそへたる なけきをもせむ | 読人不知 |
1338 | いとはるる かたこそあらめ いまさらに よそのなさけは かはらさらなむ | 忠度 |
1339 | すまのあまの しほたれころも なみかけて よるこそそても ぬれまさりけれ | 長時 |
1340 | いもかうへは しはのいほりの あめなれや こまかにきくに そてのぬるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1341 | もしほやく うらのけふりを かせにみて なひかぬひとの こころをそおもふ | 慈円 |
1342 | かせのおとの きこえてすくる ゆふくれに わひつつあれと とふひともなし | 伏見院 |
1343 | ゆふくれは かならすひとを こひなれて ひもかたふけは すてにかなしき | 遊義門院 |
1344 | あしまより なにはのうらを ゆくふねの つなてなかくも こひわたるかな | 読人不知 |
1345 | わきもこに こひてすへなみ ゆめにみむと われはおもへと いこそねられね | 人麿 |
1346 | いとふてふ ことのはをたに つゆはかり みまくほしきや なにのこころそ | 高明 |
1347 | おもひかね つれなきひとの はてみむと あはれいのちの をしくもあるかな | 仲実 |
1348 | とにかくに こころひとつを つくしきて いつをおもひの はてとかはせむ | 達智門院 |
1349 | みにそはは なくさみぬへき おもかけに なとこひしさの なほまさるらむ | 俊言 |
1350 | あふまてと おもふたのみを いのちにて つれなくすくす われそはかなき | 基良女 |
1351 | おもほえす われになきなの たつたかは なかるるみつを かへしてしかな | 読人不知 |
1352 | ぬきすてむ かたなきものは からころも たちとたちぬる なにこそありけれ | 和泉式部 |
1353 | なみたかは うきなはかりを なかしても みはうたかたの まつやきえなむ | 永福門院 |
1354 | よしさらは なみたのしたに くちもせよ みさへなかるる とこのさむしろ | 民部卿典侍(後堀河院) |
1355 | うしろめた かせのさきなる もかりふね いつれのかたに よらむとすらむ | 輔親 |
1356 | つれなさの かきりをみむと おもふにそ うきにもをしき いのちなりける | 景綱 |
1357 | おもふらむ こころのほとを いかにして こころにこころ かへてしらまし | 読人不知 |
1358 | みをわけて おもふなかには なにとてか こころはかりを かへてしるへき | 惟方 |
1359 | いまこそは おもふあまりに しらせつれ いはてみゆへき こころならねは | 為家 |
1360 | うきてこそ なかれいつれと なみたかは こひしきせせに あはすもあるかな | 醍醐天皇 |
1361 | おもひいてぬ ときはなけれと したひもの なととけすのみ むすほほるらむ | 周子(更衣源) |
1362 | あきやまの このしたかくれ ゆくみつの われこそまされ おもふこころは | 鏡王女 |
1363 | なかむるを たのむことにて あかしてき たたかたふきし つきをのみみて | 実方 |
1364 | てるつきの ひかりはしはし よそならは おもかけにのみ またるへきかな | 円融院 |
1365 | なかむらむ ひとのこころも しらなくに つきをあはれと おもふよはかな | 遊義門院 |
1366 | をしますよ ひとよはかりの あふことに かへむいのちは さすかなれとも | 隆教 |
1367 | いはしたた しらはさすかにと おもひなす なくさめにこそ かかるたのみを | 永福門院 |
1368 | ひともつつみ われもかさねて とひかたみ たのめしよはは たたふけそゆく | 為兼 |
1369 | まちかほに ひとにはみえし とはかりに なみたのとこに しをれてそぬる | 為子(従二位) |
1370 | まとろまむ こころもなくて まつよひに やすくしつまる ひとさへそうき | 為相女 |
1371 | おもひあれは たのめぬよはも ねられぬを まつとやひとの よそにみるらむ | 重時 |
1372 | ゆめちには なこそのせきも なしといふに こひしきひとの なとかみえこぬ | 資子内親王 |
1373 | ひとのうへと みしつれなさの いまはまた われになりても なけかるるかな | 読人不知 |
1374 | つれなしと みつつつれなく しのふまに われもつれなき なをそたちぬる | 相模 |
1375 | あふことの むなしきなのみ のこしおきて みはなきかすに ききやなされむ | 常良 |
1376 | こひしてふ いつはりいかに つらからむ こころをみする ことのはならは | 読人不知 |
1377 | かささきの はねにしもふり さむきよを ひとりかねなむ きみをまちかね | 人麿 |
1378 | あしひきの やまのしつくに いもまつと われたちぬれぬ やまのしつくに | 大津皇子 |
1379 | おほかたの はるはきぬるに いかなれは したまつはなの おそくさくらむ | 円融院 |
1380 | ちきりしを わすれぬこころ そこにあれや たのまぬからに けふのひさしき | 伏見院 |
1381 | くらしかたき けふのなかめの こころにて またぬいくかを いかてすきけむ | 伏見院 |
1382 | まつことの こころにすすむ けふのひは くれしとすれや あまりひさしき | 為兼 |
1383 | おとせぬか うれしきをりも ありけるよ たのみさためて のちのゆふくれ | 永福門院 |
1384 | こよひそと まつゆふくれの たまつさは またさはるかと あけまくもうし | 新宰相(伏見院) |
1385 | おもひたえて またぬもかなし まつもくるし わすれつつある ゆふくれもかな | 花園院 |
1386 | ちきりしを よもとたのまぬ このゆふへ まつとはなしに しつこころなき | 遠子(掌侍) |
1387 | こぬひとを さらにうらみは ちきりしを たのみけりとや おもひなされむ | 能清 |
1388 | いかたおろす そまやまかはの あさきせは またこのくれも さこそさはらめ | 小侍従(太皇太后宮) |
1389 | ことのはは たたなさけにも ちきるらむ みえぬこころの おくそゆかしき | 道良女 |
1390 | さのみやと けふのたのみに おもひなせは きのふのうさそ いまはうれしき | 伏見院 |
1391 | こよひとへや のちのいくよは いくたひも よしいつはりに ならはなるとも | 伏見院 |
1392 | おのつから いつはりならぬ ことのはも あらはとたのむ よさへふけぬる | 実泰 |
1393 | ふけさらむ そのうれしさの あすよりも こよひのうちの ときのまもかな | 後伏見院 |
1394 | いまのまも いかにかおもひ なりぬると まつよひしもそ しつこころなき | 朔平門院 |
1395 | たのめおきし こよひはかりも せめてまつ かはるなかはる こころなりとも | 道輔 |
1396 | わひつつは いつはりにたに たのめよと おもひしことを こよひこりぬる | 実家(藤原公能男) |
1397 | おもへきみ ちきらぬよひの つきたにも ひとにしられて いつるものかは | 実方 |
1398 | さみたれの たそかれときの つきかけの おほろけにやは われひとをまつ | 躬恒 |
1399 | ひとしれす ひとまたさりし あきたにも たたにねられし つきのころかは | 相模 |
1400 | まそてもて ゆかうちはらひ きみまつと をりつるほとに つきかたふきぬ | 赤人 |
1401 | まつひとの みえぬからにや さよふけて つきにいるにも ねはなかるらむ | 伊勢 |
1402 | ことにいてて まつとはいはし おのつから いさよふつきに まかせてをみむ | 小弁 |
1403 | みをさらぬ おもかけはかり さきたちて ふけゆくつきに ひとそつれなき | 冬平 |
1404 | またぬたに くるれはいつる やまのはの つきをつれなき ひとにみせはや | 経任(中御門藤原為経男) |
1405 | まちわひて なみたかたしく そてのうへに こぬよのつきの かけそふけゆく | 煕時 |
1406 | とはむしも いまはうしやの あけかたも またれすはなき つきのよすから | 為兼 |
1407 | つきそうき かたふくかけを なかめすは まつよのふくる そらもしられし | 為相女 |
1408 | たのめねは ひとやはうきと おもひなせと こよひもつひに またあけにけり | 永福門院 |
1409 | なほこりす たのむかさしも うききはの こよひをみても あすのゆふくれ | 道良女 |
1410 | いつはりに ひとなたのめそ いまやとも まつほとはしも おもはれはこそ | 親子(従三位源) |
1411 | わかおもひ なくさまなくに なにしかも こぬものゆゑに たのめおきけむ | 花園院 |
1412 | まちよわり いまはとおもひ なるほとよ かねよりのちに とりもこゑして | 為子(従二位) |
1413 | おもひしをれ ぬるとしもなき ときのまに ねやのひまさへ しらみはてぬる | 新大納言(延政門院) |
1414 | ふけはつる かねよいまはの かなしさを しらてつれなき ひとやきくらむ | 兵衛佐(新陽明門院) |
1415 | たのめしを まつよのあめの あけかたに をやむしもこそ つらくきこゆれ | 小侍従(太皇太后宮) |
1416 | よのうちは まつにもつゆは かかりけり あくれはきゆる ものをこそおもへ | 道綱母 |
1417 | たれかれと われをなとひそ なかつきの つゆにぬれつつ きみまつわれそ | 人麿 |
1418 | おほつかな こよひはたれと ちきりてか あけなむくれを まてといふらむ | 成範 |
1419 | よしこよひ とはてもさらは あけななむ あすよりひとを うらみはつへく | 章義門院 |
1420 | ふけぬれと なほもちきりの すゑなれは うきにはなさて ひとそまたるる | 冬平 |
1421 | まきのとを さすなといひて たのめしも あらぬつらさに あくるしののめ | 弁内侍(後深草院) |
1422 | うきをしるも いくあかつきに なりぬらむ こよひもはやく とりなきぬなり | 実兼 |
1423 | いはてもや あられぬへきの こころみに きのふのそらは くらしかねてき | 家経(藤原広業男) |
1424 | くるほとの ひさしきからに おもひやる かたさへなくも なりぬへきかな | 醍醐天皇 |
1425 | とふほとの はるけきやまの ほとときす なくをもひとは きかすやあるへき | 能子(女御藤原) |
1426 | かすかのの ゆきのしたくさ ひとしれす とふひありやと われそまちつる | 斎宮女御 |
1427 | かるのいけの いりえめくれる かもすらに たまものうへに ひとりねなくに | 紀皇女 |
1428 | あたにのみ きみかむすへる したひもの とくるをひとに しらせさらなむ | 朝光 |
1429 | ときかへし ゐてのしたおひ ゆきめくり あふせうれしき たまかはのみつ | 俊成(藤原俊忠男) |
1430 | こひこひて あひみるよはの うれしきに ひころのうさは いはしとそおもふ | 実泰 |
1431 | いかにして ひころのうさの かきりをも あふよのうちに いひつくさまし | 忠房 |
1432 | とほつまと まくらかはして ねたるよは とりのねなくな あけはあくとも | 読人不知 |
1433 | あきのよを なかしとおもへと つもりにし こひをつくせは みしかかりけり | 人麿 |
1434 | ものおもひは けさこそまされ つらかりし ことはことにも あらぬなりけり | 小弁 |
1435 | よひのまの たたときのまの わかれにて とりのねかこつ うさまてもなし | 新大納言(延政門院) |
1436 | あかつきの あらしにむせふ とりのねに われもなきてそ おきわかれゆく | 良経(九条兼実男) |
1437 | ひきとめよ ありあけのつきの しらまゆみ かへるさいそく ひとのわかれち | 為家 |
1438 | むすひおく ちきりわするな したおひの したにそふかく われはたのみし | 重氏 |
1439 | わかるへき ときかやされは かきくらす わかなみたには あけぬよのそら | 読人不知 |
1440 | あかつきの わかれのきはに しられけり またとおもはぬ ひとのけしきは | 頼貞 |
1441 | ときのまの あふうれしさの ほともなく なこりをしたふ なみたにそなる | 道昭 |
1442 | いまはとて おきてわかるる とこのうへに とまるまくらも くれやまつらむ | 朔平門院 |
1443 | きぬきぬに わかれかねつる やすらひに あけすきぬへき かへるさのみち | 宣子(従三位藤原) |
1444 | わかれちの なこりのそらに つきはあれと いてつるひとの かけはとまらす | 内侍(永福門院) |
1445 | ゆくもぬれ とまるもしをる そてなれは きぬきぬにこそ つきもわかるれ | 真昭 |
1446 | うれしきに うきはそひける ならひかな まちみしよひに いまのわかれち | 新宰相(伏見院) |
1447 | あはぬよは こひつつもねき あかつきの わかれのみちに なとまとふらむ | 元良親王 |
1448 | みちすから われのみつらく なかむれと つきはわかれも しらすかほなる | 雅有 |
1449 | かへるさは おもかけをのみ みにそへて なみたにくらす ありあけのつき | 別当(皇嘉門院) |
1450 | おきてゆく ひとはつゆにも あらねとも けさはなこりの そてもかわかす | 和泉式部 |
1451 | きぬきぬの たもとにのこる つゆしあらは とめつるたまの ゆくへともみよ | 定為 |
1452 | しらつゆの ひたくるままに きえゆけは くれまつわれも いかかとそおもふ | 朝光 |
1453 | いかにせむ いかにかせまし いかにねて おきつるけさの なこりなるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1454 | いかにみし いかなるゆめの なこりそと あやしきまては われそなかむる | 読人不知 |
1455 | なけきわひ むなしくあけし そらよりも まさりてなとか けさはかなしき | 実氏 |
1456 | おもへとも なほあやしきは あふことの なかりしむかし なにおもひけむ | 村上天皇 |
1457 | かへるさの しののめくらき むらくもも わかそてよりや しくれそめつる | 為家 |
1458 | きぬきぬの しののめくらき わかれちに そへしなみたは さそしくれけむ | 四条(安嘉門院) |
1459 | つねよりも あはれなりつる なこりしも つらきかたさへ けふはそひぬる | 永福門院 |
1460 | けさのなこり はれぬゆふへの なかめより こよひはさてや おもひあかさむ | 永福門院 |
1461 | あけやすき ひとのわかれを うらみしに わかあかつきの いまはひさしき | 家教 |
1462 | しののめに おきてわかれし ひとよりは ひさしくとまる たけのはのつゆ | 和泉式部 |
1463 | なきなけき さもひとこひて なかめしと おもひいてよよ ゆふくれのそら | 遊義門院 |
1464 | こころにも しはしそこむる こひしさの なみたにあまる ゆふくれのそら | 親子(従三位源) |
1465 | いつはりの つらきゆふへを かさねても こころよわくそ ひとはこひしき | 内実 |
1466 | こひしさの なくさむかたと なかむれは こころそやかて そらになりゆく | 国時 |
1467 | こひわひて われとなかむる ゆふくれも なるれはひとの かたみかほなる | 定家 |
1468 | つれつれと そらそみらるる おもふひと あまくたりこむ ものならなくに | 和泉式部 |
1469 | いまのまの いのちにかへて けふのこと あすのゆふへを なけかすもかな | 和泉式部 |
1470 | あはれわか おもひのたゆむ ときもかな ねさめもつらし ゆふくれもうし | 雅有 |
1471 | そなたより ふきくるかせそ なつかしき いもかたもとに ふれやしぬらむ | 清輔 |
1472 | くもとつる やとののきはの ゆふなかめ こひよりあまる あめのおとかな | 慈円 |
1473 | つねよりも なみたかきくらす をりしもあれ くさきをみるも あめのゆふくれ | 永福門院 |
1474 | あめもよに ふりはへとはむ ひともなし なきにおとりて いけるみそうき | 生子(女御藤原) |
1475 | よるのあめの おとにたくへる きみなれや ふりしまされは われこひまさる | 伏見院 |
1476 | なけかすは ねなましものを よひよひに やすくふすゐの とこならすとも | 実氏 |
1477 | なかそらに ひとりありあけの つきをみて のこるくまなく みをそしりぬる | 和泉式部 |
1478 | たのめても ひとのちきりは むなしきに こととふつきそ そてによかれぬ | 朔平門院 |
1479 | あはれにも めくりあふよの つきかけを おもひいれすや ひとはみるらむ | 少将(永陽門院) |
1480 | うくつらき ひとのおもかけ わかなみた ともにそうかふ つきのよすから | 冷泉(花園院) |
1481 | みかつきの われてあひみし おもかけの ありあけまてに なりにけるかな | 為家 |
1482 | うきくもの よそになりにし つきなれは たえまありとも みえしとそおもふ | 読人不知 |
1483 | わかそては なみたありとも つけなくに まつしりかほに やとるつきかな | 覚助法親王 |
1484 | つきかけに みをやかへまし おもふてふ ひとのこころに いりてみるへく | 訶子(更衣源) |
1485 | あはれとも みるひとあらは おもはなむ つきのおもてに やとすこころを | 西行 |
1486 | こひうれへ ひとりなかむる よはのつき かはれやおなし かけもうらめし | 為子(従二位) |
1487 | よもすから こひなくそてに つきはあれと みしおもかけは かよひしもこす | 伏見院 |
1488 | うきなみの かかるとならは うとはまの うとくてひとに あらましものを | 為子(従二位) |
1489 | なみのよる しほのひるまも わすられす こころにかかる まつかうらしま | 為家 |
1490 | いせのうみや をふのみなとに ひくあみの うけくにひとを うらみてそふる | 泰綱 |
1491 | おのつから みるめもあらは わたつうみと あれにしとこを うらみしもせし | 資平 |
1492 | いかなれは くちぬるそてそ なみかかる いはねのまつも さてこそはあれ | 小侍従(太皇太后宮) |
1493 | こちかせに なひきもはてぬ あまふねの みをうらみつつ こかれてそふる | 斎宮女御 |
1494 | うらかくれ いりえにすつる われふねの われそくたけて ひとはこひしき | 伏見院 |
1495 | やまのゐの あさきこころを しりぬれは かけみむことは おもひたえにき | 堀河(待賢門院) |
1496 | わかためは しつくににこる やまのゐの いかなるひとに すまむとすらむ | 清輔 |
1497 | ふかきかはの そこのみくつに あらねとも おもひしつみて くちやはてなむ | 肥後(京極前関白家) |
1498 | ちとりなく さほのかはせの ささらなみ やむときもなし わかこふらくは | 大伴女郎 |
1499 | つれつれと なかむるころの こひしさは なくさめかたき ものにそありける | 定頼 |
1500 | いかにせむ こひしきことの まさるかな なかなかよそに きかましものを | 清少納言 |
1501 | みのうさの おもひしらるる ことわりに おさへられぬは なみたなりけり | 西行 |
1502 | いくほとも なからふましき よのなかに ものをおもはて ふるよしもかな | 西行 |
1503 | ときのまも われにこころの いかかなると たたつねにこそ とはまほしけれ | 為兼 |
1504 | さてしもは はてぬならひの あはれさの なれゆくままに なほおもはるる | 親子(従三位源) |
1505 | なほさりの ことはかよへと それしもそ いつまてかはと こころおかるる | 房子(従三位) |
1506 | つらからぬ こころそつらき よそにては いとこれほとの なけきやはせし | 丹後(宜秋門院) |
1507 | こひしさを あひみむまてと おもひしは こころのすゑを しらぬなりけり | 頼重 |
1508 | きみゆゑに しつまむのちの よをそおもふ ふかくていのちの たえもはてなは | 中納言典侍(伏見院) |
1509 | おもひけるか さすかあはれにと おもふより うきにまさりて なみたそおつる | 永福門院 |
1510 | おもふてふ そのことのはよ ときのまに いつはりにても きくこともかな | 親子(従三位源) |
1511 | きみゆゑに たへすなりにし みそとたに しらしとおもふも かねてかなしき | 後伏見院 |
1512 | わきもこか かたみのころも したにきて たたにあふまては われぬかめやも | 家持 |
1513 | なくなみた そらにもなとか ふらさらむ あまくもはれぬ ものをおもへは | 実頼女 |
1514 | ゆめをたに おもふこころに まかせなむ みるはこころの なくさむものを | 興風 |
1515 | こひしさの さむるよもなき こころには ゆめとそおもふ うつつなからも | 実方 |
1516 | おもひいつる ことはうつつか おほつかな みはててさめし あけくれのゆめ | 宣旨(二条院) |
1517 | みもはてて さめけむゆめを おもふにも これそうつつと いかてしらせむ | 頼通 |
1518 | おのつから うつつにさもや おもふらむ ゆめなれはとて たのまさらめや | 実兼 |
1519 | おもひねの ゆめにうれしき おもかけの さなからやかて うつつともかな | 家平 |
1520 | よにもらは たかみもあらし わすれねよ こふなよゆめそ いまはかきりに | 為家 |
1521 | つらからむ のちのこころを おもはすは あるにまかせて すきぬへきよを | 和泉式部 |
1522 | ゆくすゑと ちきりしことは かはるとも このころはかり とふひともかな | 和泉式部 |
1523 | ほとふへき いのちなりせは まことにや わすれはてぬと みるへきものを | 和泉式部 |
1524 | いへはよの つねのこととや おもふらむ われはたくひも あらしとおもふに | 重之女 |
1525 | さらてたに つゆけきころを なそもかく あきしもものを おもひそめけむ | 弁乳母 |
1526 | ひにそへて おもひのみそふ みのはてよ をしからぬしも あはれなるかな | 親子(従三位源) |
1527 | あらはあふ おなしよたのむ わかれちに いきていのちそ さらにくやしき | 為家 |
1528 | きえはてて みこそははひに なるとても ゆめのたましひ きみにあひそへ | 読人不知 |
1529 | たかためと おもふいのちに あらはこそ けぬへきみをも をしみととめめ | 読人不知 |
1530 | そてぬれて ほしそわつらふ からころも きみかたまくら ふれぬよはには | 兼通 |
1531 | ふるそては なみたにぬれて くちにしを いかにたちまふ わかみなるらむ | 隆房 |
1532 | こころこそ うとくもならめ みにそへる おもかけたにも われをはなるな | 実定 |
1533 | うらみても なくさめてまし なかなかに つらくてひとの あはぬとおもはは | 西行 |
1534 | つひにかかる うさにもならは なにかわか おもふこころの そこをみせけむ | 教良女 |
1535 | たまつさに たたひとふてと むかへとも おもふこころを ととめかねぬる | 永福門院 |
1536 | ものおもへは はかなきふての すさひにも こころににたる ことそかかるる | 為子(従二位) |
1537 | もえこかれ みをきるはかり わひしきは なけきのなかの おもひなりけり | 相模 |
1538 | あふことの かくてたえなは あはれわか よよのほたしと なりぬへきかな | 紀伊(祐子内親王家) |
1539 | さりともと たのむこころに はかされて しなれぬものは いのちなりけり | 能宣 |
1540 | おもへとも あひもおもはす おもふとき おもふひとをや おもはさりけむ | 躬恒 |
1541 | つくつくと みるにこころは くれはとり あやしとひとの めにやたつらむ | 隆房 |
1542 | ととめあへす やかてこほるる なみたゆゑ みせぬこころを ひとにみえぬる | 親子(従三位源) |
1543 | かはかりは なにゆゑおつる なみたそと われもあやしき ものをこそおもへ | 章義門院 |
1544 | せきやらぬ なみたよしはし おちとまれ さまてはひとに みえしとおもふに | 内侍(永福門院) |
1545 | かひあらし いはしよしとは おもへとも いまひとたひは うらみてもみむ | 花園院 |
1546 | なほさりの あたしことのは たのましと おもふものから またそなくさむ | 小兵衛督(章義門院) |
1547 | ふくかせの たよりにつけて こととはは うはのそらにや ひとのおもはむ | 茂重 |
1548 | われならぬ ひとにとくなと いひおきし きみかしたひも ゆるすなるかな | 清正 |
1549 | むすふとも とくともしらて したひもの よにみたれつつ ものをこそおもへ | 読人不知 |
1550 | ぬれそめし そてたにあるを おなしのの つゆをはさのみ いかかわくへき | 右京大夫(建礼門院) |
1551 | なこそとは たれかはいひし いはねとも こころにすうる せきとこそみれ | 和泉式部 |
1552 | よのなかを はかなきものと おもふにも まつおもひいつる きみにもあるかな | 花山院 |
1553 | さてもわか こころよわさの すさひゆゑ くやしきことを またやなけかむ | 下野(後鳥羽院) |
1554 | つれなさの ひとのむくひを いかにして おなしよなから おもひしらせむ | 忠兼(藤原忠行男) |
1555 | なほさりの たよりにとはむ ひとことに うちとけてしも みえしとそおもふ | 紫式部 |
1556 | いきてのよ しにてののちの のちのよも はねをかはせる とりとなりなむ | 村上天皇 |
1557 | あきになる ことのはたにも かはらすは われもかはせる えたとなりなむ | 宣耀殿女御 |
1558 | すむひとの かたかるへきに にこりえは こひちにかけも みえぬなりけり | 伊勢 |
1559 | ひとはしらし こころのそこの あはれのみ なくさめかたく なりまさるころ | 伏見院 |
1560 | あはれをも うきにのみこそ ひとはなすに われそうきをも あはれにはなす | 為子(従二位) |
1561 | つらきをは さらにもいはす ひとこころ あはれなるにも ものをこそおもへ | 永福門院 |
1562 | かくしつつ いかてかよには なからへむ なくさむはかり とふひともかな | 敏行 |
1563 | わかみには くるしきことも しりぬれは ものおもふひとの あはれなるかな | 花山院 |
1564 | うきひとの こころをのみや うらむへき わかみもものを おもひしるやは | 経盛 |
1565 | うきをしのひ つらきにたへて としへぬる つれなさをたに いかてしらせむ | 基忠(鷹司兼平男) |
1566 | かはるましき ひとのこころと おもひなして ありはてぬよを なけくはかなさ | 家定 |
1567 | こころにも そてにもとまる うつりかを まくらにのみや ちきりおくへき | 資盛 |
1568 | なほさりの なけのなさけを たのますは よしなきものは おもはさらまし | 肥後(京極前関白家) |
1569 | かすならぬ みははしたかの すすかやま とはぬになにの おとをかはせむ | 小馬命婦(藤原棟町女) |
1570 | ゆめちには なれしやとみゆ うつつには うつのやまへの つたふけるいほ | 俊成(藤原俊忠男) |
1571 | おもふひと みやこにおかぬ たひねもや なみたにそてを なほくたすらむ | 実房 |
1572 | たれゆゑと さらぬたひねの いほりたに みやこのかたは なかめしものを | 定家 |
1573 | わすれはや まつかせさむき なみのうへに けふしのへとも ちきらぬものを | 定家 |
1574 | まつらむと なにをしるしの すきにてか こころもしらぬ やとをたつねむ | 公光(藤原季成男) |
1575 | ひとしれぬ こころのうちの まつのみそ すきにもまさる しるしなりける | 小侍従(太皇太后宮) |
1576 | あなこひし ふきかふかせも ことつてよ おもひわひぬる くれのなかめを | 定家 |
1577 | おのつから あはれとかけむ ひとことに たれかはつてむ やへのしらくも | 定家 |
1578 | こひしさは なかめのすゑに かたちして なみたにうかふ とほやまのまつ | 実兼 |
1579 | なくさめむ かたこそなけれ あひみても あはてもなけく こひのくるしさ | 重之女 |
1580 | おもふてふ ことのよにたに ふりさらは わかいへるとそ きみにいはまし | 兼盛 |
1581 | わすられは ともにわするる ならひにて ひとりはものを おもはすもかな | 読人不知 |
1582 | わかたまを きみかこころに いれかへて おもふとたにも いはせてしかな | 忠岑 |
1583 | よしなしと おもふこころの かねてより あらましかはと いまそかなしき | 少将内侍(後深草院) |
1584 | ときのまも あらぬこころを ませはこそ いまさらひとを こひしとおもはめ | 家教 |
1585 | つれなさの そのままならは うきことに こひしきかたは そはすそあらまし | 実泰 |
1586 | おもはしと おもふはかりは かなはねは こころのそこよ おもはれすなれ | 遊義門院 |
1587 | なにことの かはるとなしに かはりゆく ひとのこころの あはれよのなか | 遊義門院 |
1588 | いかてかは ゆめにもひとの みえつらむ ものおもひそめし のちはねなくに | 朝光 |
1589 | あちきなや たかためおもふ ことなれは わかみにかへて ひとをこふらむ | 成道/成通 |
1590 | こひしとも いまはおもはす たましひの あひみぬさきに なくなりぬれは | 興風 |
1591 | とへかしと いつにもすきて おもふよを よしあすもとや ひとはねぬらむ | 親子(従三位源) |
1592 | おもひつつ ぬれはなるへし ゆめにさへ つらくみえつる けさのわひしさ | 盛明親王 |
1593 | おもひつつ こひつつはねし あふとみる ゆめはさめては わひしかりけり | 道綱母 |
1594 | はかなくも まくらさためす あかすかな ゆめかたりせし ひとをまつとて | 小町 |
1595 | うれしくて のちうきものは ぬるとこの わかみをはかる ゆめにそありける | 忠岑 |
1596 | とこのうみの わかみこすなみ よるとても うちぬるなかに かよふゆめかは | 為家 |
1597 | あくかるる たまのゆくへよ こひしとも おもはぬゆめに いりやかぬらむ | 伏見院 |
1598 | こひしさの ねてやわするると おもへとも またなこりそふ ゆめのおもかけ | 後二条院 |
1599 | みてしもに まさるうつつの おもひかな それとはかりの うたたねのゆめ | 公守女 |
1600 | なくなくも ひとをうらむと ゆめにみて うつつにそてを けにぬらしぬる | 為兼 |
1601 | おもふかたに みえつるゆめを なつかしみ けふはなかめて われこひまさる | 為兼 |
1602 | おのつから こころかよふと みるゆめも さむれはうさに またかへりぬる | 家基(近衛基平男) |
1603 | おのつから ひともなみたや しるからむ そてよりあまる うたたねのゆめ | 定家 |
1604 | きみゆゑに たえむいのちを なへてよの あはれとたにも なほかけしとや | 実定 |
1605 | なへてよの あはれはなとか かけさらむ たれゆゑたゆる いのちなりとも | 読人不知 |
1606 | おなしよに あるをたのみの いのちにて をしむもたれか ためとかはしる | 小侍従(太皇太后宮) |
1607 | あちきなし ありへしすへて うきよかな おもふこころに ひとはかなはす | 伏見院 |
1608 | わすられす おもはましかは わすれぬを わするるものと おもはましやは | 斎宮女御 |
1609 | わするらむ ことをはいさや しらねとも とはぬやそれと とひしはかりそ | 村上天皇 |
1610 | はるされは もすのくさくき みえすとも われはみやらむ きみかあたりを | 読人不知 |
1611 | とりのこゑ さへつりつくす はるひかけ くらしかたみに ものをこそおもへ | 永福門院 |
1612 | もろこゑに なくへきものを うくひすは むつきともまた しらすやあるらむ | 道綱母 |
1613 | にほひうすく さけるはなをも きみかため をりとしをれは いろまさりけり | 敦忠 |
1614 | をらさりし ときよりにほふ はななれは わかためふかき いろとやはみる | 雅子内親王 |
1615 | きみかため たをれるえたは はるなから かくこそあきの もみちしにけれ | 業平 |
1616 | おもふこと うすくやなると なつころも かふるたもとも なみたなりけり | 長雅 |
1617 | とほさかる みはうつせみの なつころも なれはまさらて あきかせそふく | 兼康 |
1618 | あけくれて ひころへにけり うのはなの うきよのなかに なかめせしまに | 読人不知 |
1619 | いととしく ひころへゆけは うのはなの うきにつけてや わすれはてぬる | 小馬命婦(藤原棟町女) |
1620 | わすれにし そのかみやまの あふひくさ けふたにかけて おもひいてすや | 読人不知 |
1621 | けふのみや おもひいつらむ あふひくさ われはこころに かけぬひそなき | 経盛 |
1622 | ここにても きけかしおなし しのひねを やまほとときす こゑもかはらし | 読人不知 |
1623 | さとにのみ なきわたるなる ほとときす わかまつときは なとかつれなき | 村上天皇 |
1624 | ほとときす なきてのみふる こゑをたに きかぬひとこそ つれなかりけれ | 斎宮女御 |
1625 | あはれといふ ひとはなくとも うつせみの からになるまて なかむとそおもふ | 忠岑 |
1626 | あやめくさ ひとにねたゆと おもひしは わかみのうきに おふるなりけり | 小町 |
1627 | そてぬれし そのよのあめの なこりより やかてはれせぬ さみたれのそら | 俊成(藤原俊忠男) |
1628 | さみたれに みたれそめにし われなれは ひとをこひちに ぬれぬへらなり | 躬恒 |
1629 | くれをまつ おもひはたれも あるものを ほたるはかりや みにあまるへき | 隆房 |
1630 | ゆくほたる おのれもえそふ かけみえて ひとのおもひも さそとつけこせ | 為実(御子左藤原為氏男) |
1631 | あまのかは なぬかをちきる こころならは ほしあひはかり かけをみよとや | 道綱母 |
1632 | たなはたに かしてこよひの いとまあらは たちよりこかし あまのかはなみ | 和泉式部 |
1633 | いむといへは しのふものから よもすから あまのかはこそ うらやまれつれ | 伊勢 |
1634 | けふとたに ちきらぬなかは あふことを くもゐにのみも ききわたるかな | 道長 |
1635 | あまつほし そらにはいかか さたむらむ おもひたゆへき けふのくれかは | 小侍従(太皇太后宮) |
1636 | くもゐには わたるとすれと とふかりの こゑききかたき あきにもあるかな | 読人不知 |
1637 | あきかせも ふきたちにけり いまよりは くるかりかねの おとをこそまて | 醍醐天皇 |
1638 | あしひきの やまへにおりて あきかせの ひことにふけは いもをしそおもふ | 家持 |
1639 | あきのたの しのにおしなひ おくつゆの きえやしなまし こひつつあらすは | 家持 |
1640 | あきはきに おきたるつゆの かせふきて おつるなみたを ととめかねつも | 山口女王 |
1641 | いつくにも あきのねさめの よさむならは こひしきひとも たれかこひしき | 伏見院 |
1642 | あきかせの よさむにふけは わすれにし ひともこひしく なるそかなしき | 少将内侍(後深草院) |
1643 | ものおもへは あきもおほろの つきかけに なみたうらみぬ ゆふくれそなき | 成実(藤原親実男) |
1644 | ものおもふ みはならはしの なかきよに つれなきひとよ ねさめたにせし | 為相女 |
1645 | ゆふされは ひとまつむしの なくなへに ひとりあるみそ おきところなき | 貫之 |
1646 | あきかせの いなはもそよと ふくなへに ほにいててひとそ こひしかりける | 貫之 |
1647 | われきても まねきやまねは はなすすき またくるひとの あるかとそおもふ | 朝光 |
1648 | ちきりおきし ことのはかはる よをみれは あきといふなの うらめしきかな | 定頼 |
1649 | なくしかの こゑきくことに あきはきの したはこかれて ものをこそおもへ | 重之 |
1650 | をきのはに かせのふきよる ゆふくれを おなしこころに なかめましかは | 道長 |
1651 | あきののに いろうつろへる をみなへし われたにゆきて をらむとそおもふ | 実頼 |
1652 | あきはきを ちらすしくれの ふるころは ひとりおきゐて こふるよそおほき | 人麿 |
1653 | ひさしくも なりにけるかな あきはきの ふるえのはなも ちりすくるまて | 光孝天皇 |
1654 | はるのひを なかしとなにに おもひけむ あきのくれこそ ひさしかりけれ | 弁乳母 |
1655 | あきもあまた すきけるきみと きくものを ひさしきくれは けふのみやしる | 道綱 |
1656 | かきくらし わかみぬあきの つきかけも くものうへには さやけかりけむ | 相模 |
1657 | なきこふる そてにはいかか やとすへき くもりならはぬ あきのよのつき | 家隆 |
1658 | てるつきは わかおもふひとの なになれや かけをしみれは もののかなしき | 花園院 |
1659 | あきにうつる こすゑもうしや ひとこころ かはりやすさの たくひとおもへは | 小兵衛督(章義門院) |
1660 | いかにせむ ひとのこころの あきのいろを うらみしとても くすのしたかせ | 長成女 |
1661 | ゆふひうつる こすゑのいろの しくるるに こころもやかて かきくらすかな | 右京大夫(建礼門院) |
1662 | われゆゑに ぬるるにはあらし おほかたの あきのさかなる つゆそおくらむ | 経正 |
1663 | をきのはに ふくあきかせを わすれつつ こひしきひとの くるかとそおもふ | 重之 |
1664 | あはれをは しらしとおもへと むしのねに こころよわくも なりぬへきかな | 重之 |
1665 | ちきりこし きみこそとはす なりぬれと やとにはたえす まつむしのこゑ | 弁乳母 |
1666 | いてひとの おもふといひし ことのはは しくれとともに ちりにけらしも | 読人不知 |
1667 | はつしくれ ふりしそむれは ことのはの いろのみまさる ころとこそしれ | 兼輔 |
1668 | きみこふる なみたはあきに かよへはや そらもたもとも ともにしくるる | 貫之 |
1669 | はるさめに はなさきしより あきかせに もみちちるまて ものをこそおもへ | 定頼 |
1670 | あられふり ならのおちはに かせふきて ものこひしらに さよそふけゆく | 公顕 |
1671 | おのつから かよふたまつさ それたには かきたえぬへく みえまさるかな | 教良女 |
1672 | うきなかの なさけまちみる たまつさよ さすかかよふも あはれいつまて | 隆博 |
1673 | なににかは いまはなくさの はまちとり ふみつたふへき たよりたになし | 久明親王 |
1674 | ひとやかはる わかこころにや たのみまさる はかなきことも たたつねにうき | 永福門院 |
1675 | かすならぬ ゆゑとおもへは たちかへり ひとのとかにも みをそうらむる | 為世(御子左藤原為氏男) |
1676 | こひしさを たかとかとてか かこつへき うきをはひとの うきになすとも | 自性 |
1677 | こころのみ かよふなかとは なりぬれと うきせきもりの たゆむよもなし | 親子(従三位源) |
1678 | わすれなむ いまはとおもふ ときにこそ ありしにまさる ものおもひはすれ | 読人不知 |
1679 | ちかひてし ことそともなく わすれなは ひとのうへまて なけくへきかな | 実方 |
1680 | みのうさも ひとのつらさも しりぬるを こはたかたれを こふるなるらむ | 和泉式部 |
1681 | うちたえて きみにあふひと いかなれや わかみもおなし よにこそはふれ | 西行 |
1682 | こひしさも みまくほしさも きみならて またはこころに おほえやはする | 為家 |
1683 | うきことも わかみにむけて ことわりと おもひなすには うらみしもなし | 後伏見院 |
1684 | をりをりの これやかきりも いくおもひ そのあはれをは しるひともなし | 為兼 |
1685 | いかにせむ ひとのつらさは まさりゆく よしやさらはと おもはれはせす | 為子(従二位) |
1686 | ききみるも さすかにちかき おなしよに かよふこころの なとかはるへき | 内侍(永福門院) |
1687 | われもかく みにしたかはぬ こころもて ひとのかはるを なにかうらむる | 家親 |
1688 | うきひとに うしとおもはれむ ひともかな おもひしらせて おもひしられむ | 登蓮 |
1689 | おほかたの さらぬならひの かなしさも あるおなしよの わかれにそしる | 為家 |
1690 | はかなさは あるおなしよも たのまれす たためのまへの さらぬわかれに | 四条(安嘉門院) |
1691 | とりならは あたりのききに こつたひて わひたるこゑに なかましものを | 忠岑 |
1692 | いさやまた かはるもしらす いまこそは ひとのこころを みてもならはめ | 和泉式部 |
1693 | うれしきは おもふかきりは いはれねと つらきはふかく うらみられけり | 家平 |
1694 | かきりあれは これよりうさの さのみやと おもひしうへに いくいろかそふ | 親子(従三位源) |
1695 | おもひあまり これもいかなる むくひそと わかさきのよの つらくもあるかな | 基忠(鷹司兼平男) |
1696 | まれにとふ ちきりもひとの なさけかは わかつれなくて まてはこそあれ | 実重(三条公親男) |
1697 | まさるかたの とたえもさすか ありけりと まれなるよはの なさけにそしる | 冬隆 |
1698 | ちきりしも つらさにかはる なかなれは うきもこころの はてそまたるる | 政村 |
1699 | さまさまに ゆくすゑかけし かねことも たたときのまの なさけなりけり | 公孝女 |
1700 | たちかへり またもしやとも たのまれす うききはみせし ひとのちきりは | 隆教 |
1701 | いまよりは あはてものをは おもふとも のちうきひとに みをはまかせし | 西行 |
1702 | たえなむと きみかしけるを しらすして またむかしとも おもひけるかな | 道信 |
1703 | われもひとも うらみたちぬる なかなれは いまはさこそと あはれなるかな | 伏見院 |
1704 | よしさらは うらみはてなむと おもふきはに ひころおほえぬ あはれさそそふ | 後伏見院 |
1705 | かくはかり うきかうへたに あはれなり あはれなりせは いかかあらまし | 永福門院 |
1706 | あはれにも こととほくのみ なりゆくよ ひとのうけれは われもうらみて | 為子(従二位) |
1707 | ことのはに いてしうらみは つきはてて こころにこむる うさになりぬる | 為兼 |
1708 | たえすたた うきたひことに うらみやらむ けにもとおもふ をりもこそあれ | 冬基 |
1709 | これもまた なさけみるよに なりやせむ ちきりしすゑも まことならねは | 万秋門院 |
1710 | さてもたた おもひならひし あはれにて つらさはやすく よわりゆくかな | 公守女 |
1711 | ひころより うきをもうしと えそいはぬ けにおもはすも なるかとおもふに | 親子(従三位源) |
1712 | いまさらに いかなるこまか なつくへき すさへぬくさと のかれにしみを | 道綱母 |
1713 | あれにける やとののきはの わすれくさ かくしけれとは ちきらさりしを | 伊勢 |
1714 | いのちたに こころなりせは ひとつらく ひとうらめしき よにへましやは | 和泉式部 |
1715 | いさやまた こひにしぬてふ こともなし われをやのちの ためしにはせむ | 順 |
1716 | よわりはつる いまはのきはの おもひには うさもあはれに なるにそありける | 永福門院 |
1717 | いくたひの いのちにむかふ なけきして うきはてしらぬ よをつくすらむ | 伏見院 |
1718 | こひしのひ さのみしたはて いまはたた われもわするる こころともかな | 家親 |
1719 | おもひこめて さてはおかれぬ こころなれは もしやとひとを うらみてそみる | 経親(平時継男) |
1720 | さのみかく なにかはしたふ やすくこそ ひとはわすれし なかのちきりを | 隆博 |
1721 | つらからは したはしとこそ おもひしか われさへかはる こころなりけり | 為子(贈従三位) |
1722 | くりかへし おもふこころは ありなから かひなきものは しつのをたまき | 匡房 |
1723 | うきにかく こひしさまさる ものならは いさつらからむ いかかおもふと | 実方 |
1724 | かならすも うらみてのちは くやしきを おもひあまれは またいはれぬる | 新宰相(伏見院) |
1725 | つらさをも しのひすくさて おもひとりし うらみそたゆる はしめなりける | 家定 |
1726 | あらはもし たのみもいつそ うさをのみ みきくいのちの はてそかなしき | 兼行 |
1727 | またすなる いくゆふくれに なかめたへて つれなのみやと さらにしそおもふ | 教良女 |
1728 | たへすならむ みをさへかけて かなしきは つらさをかきる いまのゆふくれ | 伏見院 |
1729 | ねにたかく なきそしぬへき うつせみの わかみからなる うきよとおもへは | 読人不知 |
1730 | うらむへき かたさへそなき うきことの つきひにそへて みえしまされは | 盛明親王 |
1731 | いまもおもふ のちもわすれし かりこもの みたれてのちそ われこひまさる | 人麿 |
1732 | いかならむ かみにぬさをも たむけはか わかおもふいもを ゆめにたにみむ | 人麿 |
1733 | つらけれは かくてやみなむと おもへとも ものわすれせぬ こひにもあるかな | 花山院 |
1734 | おもへとも ひかけのいとの くりかへし たえにしふしの つらくもあるかな | 顕綱 |
1735 | おもひとる みにはいまはの うらみなる およはぬうへの なくさめもうし | 伏見院 |
1736 | ちきりしも さのみはひとの わすれしを おもひなからや とはすなるらむ | 冬平 |
1737 | そのころは たのますききし ことのはも うきいまならは なさけならまし | 家平 |
1738 | さりともと おもふたのみも ほとすきぬ みしやなさけの かきりなりけむ | 宣子(従三位藤原) |
1739 | うしとおもひ こひしとおもふ そのあたり きかしやいまは みをなきにして | 新宰相(伏見院) |
1740 | あれはある いのちもさすか かきりあれや またひときはの おもひそふころ | 伏見院 |
1741 | あふことは またおのつから ありとても たのみしもとの ここちやはせむ | 光俊(葉室光親男) |
1742 | さてやさは こえにしものを いまさらに またはなこその せきもりそうき | 四条(安嘉門院) |
1743 | うきよりも わすれかたきは つらからて たたにたえにし なかにそありける | 和泉式部 |
1744 | ひともうく みもうきはての わかみをは たたおなしよに おかしとそおもふ | 親子(従三位源) |
1745 | なほいかに おもふこころそ かきりなく うきためしをは みはててしみを | 公守女 |
1746 | こころつきし よひあかつきの かねのおとも またすわかれて きくしもそうき | 長宣 |
1747 | よとともに おもかけにのみ たちなから またみえしとは なとおもふらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1748 | よそならは さてもやみなむ うきものは なれてもつらき ちきりなりけり | 俊成(藤原俊忠男) |
1749 | なほさりの ちきりはかりに なからへて はかなくなにを たのむいのちそ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1750 | せめてさらは いまひとたひの ちきりありて いははやつもる こひもうらみも | 為子(従二位) |
1751 | あさゆふは わすれぬままに みにそへと こころをかたる おもかけもなし | 為家 |
1752 | ありしよの こころなからに こひかへし いははやそれに いままてのみを | 為兼 |
1753 | いきてよに うきをみはてむ ためなれや いとふいのちの せめてひさしき | 俊兼 |
1754 | いとはれし いのちのはての きはになりて ありてやもしと またおほえける | 親子(従三位源) |
1755 | ありとても あふよもしらぬ いのちをは なにのたのみに なほをしむらむ | 教良女 |
1756 | ふたつある こころをわれも もたりけり うしとおもふに さてもわすれぬ | 実方 |
1757 | ききもせす われもきかれし いまはたた ひとりひとりか よになくもかな | 頼政 |
1758 | つらさをも えこそうらみね かすならぬ みをなけけとや いはむとおもへは | 季経 |
1759 | かよひける こころのほとは よをかさね みゆらむゆめに おもひあはせよ | 資盛 |
1760 | けにもその こころのほとや みえくらむ ゆめにもつらき けしきなりつる | 右京大夫(建礼門院) |
1761 | それとたに わすれやすらむ いまさらに かよふこころは ゆめにみゆとも | 定家 |
1762 | こほれおちし ひとのなみたを かきつめて われもしをりし よはそわすれぬ | 伏見院 |
1763 | おのつから しはしはかかる なさけもやと こころにまちし ほともすきぬる | 中納言典侍(伏見院) |
1764 | おなしよの ちきりをなほも まちかほに あらしやとても あるそつれなき | 内侍(永福門院) |
1765 | たえはてて またあふことの たのみたに いまはなくなく みをそうらむる | 長典 |
1766 | わひぬれは うしつらしとも いまはいはし なさけはかりを かけよとそおもふ | 家定 |
1767 | なかなかに むかしのゆめの ままならて おとろかしけむ ことそくやしき | 頼輔 |
1768 | ゆふされは ものおもひまさる みしひとの こととひしさま おもかけにして | 笠女郎 |
1769 | あひみねと わすれぬひとは つねよりも つねなきをりそ こひしかりける | 公任 |
1770 | そのままに そはましみまし いたつらに をしやあはれや よそのとしつき | 伏見院 |
1771 | うきをしる こころのほとも みゆやとて われもかきたえ すくすころかな | 俊兼 |
1772 | うきをしたふ こころなかさを またひとに おもひくらへて あはれとをしれ | 経親(平時継男) |
1773 | たえはてし そのとしつきに なからへて しひてさてもと いふもつれなし | 実泰 |
1774 | つらかれな さらはこひしき こころにも うらむるかたは ありもしなまし | 忠良 |
1775 | うけれとも わかみつからの なみたこそ あはれたえせぬ ものにはありけれ | 和泉式部 |
1776 | うらみても こひしきかたや まさるらむ つらさはよわる ものにそありける | 俊成(藤原俊忠男) |
1777 | つらきあまり うしともいはて すくすひを うらみぬにこそ おもひはてぬれ | 為兼 |
1778 | なみたこそ わかこころにも したかはね うきをうらみぬ そてのぬれゆく | 親子(従三位源) |
1779 | なみたこほれ こころみたれて いはれぬに うらみのそこそ いととくるしき | 伏見院 |
1780 | たのむへき かたもなけれは おなしよに あるはあるそと おもひてそふる | 和泉式部 |
1781 | みのうきに おもひあまりの はてはては おやさへつらき ものにそありける | 慶子(女御藤原) |
1782 | をしからぬ いのちもいまは なからへて おなしよをたに わかれすもかな | 定家 |
1783 | とにかくに いとはまほしき よなれとも きみかすむにも ひかれぬるかな | 西行 |
1784 | うつるかたの ふかきかきりを ひとのいふに わかみのうへそ つくつくとうき | 親子(従三位源) |
1785 | たえてすくす ひとのゆくへそ あはれなる いかになるとも きくみちもなし | 教良女 |
1786 | ゆふくれの そらこそいまは あはれなれ まちもまたれし ときそとおもへは | 小兵衛督(章義門院) |
1787 | をりをりは つらきこころも みしかとも たえはつへしと おもひやはせし | 冬平 |
1788 | なからへて あらはとまちし としつきの つもるそはては うらみなりける | 為藤 |
1789 | とはすなる つきひのかすに したかひて うらみもつもる ものにそありける | 家親 |
1790 | うきをうしと いはぬよりまつ さきたちて こころのそこを しるなみたかな | 朔平門院 |
1791 | こひしさに まとふこころと いひなから うきをしらすと ひとやみるらむ | 道信 |
1792 | うらみしと おもふおもひの ともすれは もとのこころに かへりぬるかな | 忠通 |
1793 | わするるを うらむるひとは なになれや おもふをいとふ よにこそありけれ | 重之女 |
1794 | かすならぬ みのことわりを しらさらは うらみつへくも みゆるきみかな | 相模 |
1795 | いまよりそ きみにはつらく なりぬへき うらむるかたに とふかとおもへは | 大弐(二条太皇太后宮) |
1796 | ふたたひや ものをおもはむ たちかへり かかるなさけの またかはりなは | 少納言(後伏見院) |
1797 | あらましの いまひとたひと まちえても おもひしことを えやははるくる | 内侍(永福門院) |
1798 | いとふとも おなしよはかり ゆるさなむ ありてよそにも おもひやるへく | 伏見院 |
1799 | いきてよに ありとはかりは きかるとも こひしのふとは たれかつたへむ | 伏見院 |
1800 | うらみても かひなきはての いまはたた うきにまかせて みるそかなしき | 新宰相(伏見院) |
1801 | うらむるも わかならひにそ たのまるる こひしきことの あるかとおもへは | 広言 |
1802 | かひもなき みをいたつらに なすものは うきをわすれぬ こころなりけり | 成助 |
1803 | こひしさも わするはかりの うきことに よわきはそての なみたなりけり | 俊成(藤原俊忠男) |
1804 | うらみかね いまはとはしと おもふより われもこころの かはりそめぬる | 清隆 |
1805 | よそにのみ ひとをつらしと なにかおもふ こころよわれを うきものとしれ | 小兵衛督(章義門院) |
1806 | めくりあはむ ありあけのつきを かたみそと いひしはかりを おもひてにして | 良実 |
1807 | おほかたは わすれはつとも わするなよ ありあけのつきの ありしひとこと | 定家 |
1808 | そてしきて ふししまくらを おもひいてて つきみることに ねをのみそなく | 中務(選子内親王家) |
1809 | うきになす みもたちかへり あはれなり なれしそかしの なこりとおもへは | 為子(従二位) |
1810 | かはるうへの なけのなさけは よしやきかし さらにこころの みたるるもうし | 為子(従二位) |
1811 | かはるよの うきにつけてそ いにしへの あはれなりしも おもひしらるる | 中務内侍(伏見院) |
1812 | あはれてふ ことのはいかて みてしかな わひはつるみの なくさめにせむ | 実方 |
1813 | とへかしな あはれよなかき このころの ねさめはいかに ものやおもふと | 親子(典侍親子朝臣) |
1814 | なれしよの なこりもさすか ありけむと しのはれそめし ころもこひしき | 伏見院 |
1815 | よこそなほ さためかたけれ よそなりし ときはうらみむ ものとやはみし | 和泉式部 |
1816 | こひしさに たへていのちの あらはこそ あはれをかけむ をりもまちみめ | 紀伊(祐子内親王家) |
1817 | あふたひに これやかきりと おほえしを けにありはてぬ なかとなりぬる | 遊義門院 |
1818 | いまさらに そのよもよほす くものいろよ わすれてたたに すきしゆふへを | 後伏見院 |
1819 | ささかにの いとはるかなる くもゐにも たえむなかとは おもひやはせし | 斎宮女御 |
1820 | かはらねは ふみこそみるに あはれなれ ひとのこころは あとはかもなし | 和泉式部 |
1821 | かすならぬ わかみをうらの はまちとり あとはかもなく なりにけるかな | 二条 |
1822 | ひとのみする おもかけならは いかはかり わかみにそふも うれしからまし | 伏見院 |
1823 | なかめつつ またはとおもふ くものいろを たかゆふくれと きみたのむらむ | 定家 |
1824 | ゆふくれは ひとのうへさへ なけかれぬ またれしころに おもひあはせて | 和泉式部 |
1825 | あらたまの としのはしめに あひくれと なとふりまさる わかみなるらむ | 花山院 |
1826 | しらゆきと みはふりぬれと あたらしき はるにあふこそ うれしかりけれ | 素性 |
1827 | やまさとの しはのとほそは ゆきとちて としのあくるも しらすやあるらむ | 肥後(京極前関白家) |
1828 | はるやとき とくるこほりの おそけれは なみのはなさへ なほそまたるる | 道瑜 |
1829 | はるもなほ なつみのかはの あさこほり またきえやらす やまかけにして | 西音 |
1830 | ひかけさす みなかみよりや とけぬらむ こほりをこゆる はるのかはなみ | 読人不知 |
1831 | あはれにも むそちのはるは むかへきぬ おくらむとしの かすそかなしき | 慈円 |
1832 | はるたつと きくにもものそ あはれなる はなまつほとも しらぬいのちは | 大輔(殷富門院) |
1833 | こころのみ とまりしのへの たよりにも まつとはいはて なとすくしけむ | 円融院 |
1834 | たれとなく しのふむかしの かたみにも ふるののさはに わかなをそつむ | 俊成女 |
1835 | みやこをは はるのかすみを わけつれと なほゆききえぬ やまちなりけり | 兼経 |
1836 | はるしらぬ こしちのゆきも われはかり うきにきえせぬ ものはおもはし | 俊成(藤原俊忠男) |
1837 | うちいつる なみかとそみる たにかはの こほるなきさに のこるしらゆき | 賢助 |
1838 | ときしらぬ たけのあみとの うちまても よははるなれや うくひすのなく | 実兼 |
1839 | はなさかぬ やとのこすゑに なかなかに はるとなつけそ うくひすのこゑ | 俊成(藤原俊忠男) |
1840 | さのみやは ものうきねにも ともなはむ わかはるつけよ やとのうくひす | 為相 |
1841 | さかぬまの はなまちすさふ うめかえに かねてこつたふ うくひすのこゑ | 時邦 |
1842 | うくひすの なくねたにせぬ わかやとは かすみそたちて はるとつけつる | 清正 |
1843 | ものおもへは こころのはるも しらぬみに なにうくひすの つけにきつらむ | 右京大夫(建礼門院) |
1844 | うくひすの またものうけに なくめるは けさもこすゑに ゆきやふるらむ | 重之女 |
1845 | つれつれと なかむるはるの うくひすは なくさめにたに なかはなかなむ | 元輔(清原春光男) |
1846 | やまふかみ かすみこめたる しはのいほに こととふものは たにのうくひす | 西行 |
1847 | つれつれと ものおもひをれは はるのひの めにたつものは かすみなりけり | 和泉式部 |
1848 | いせしまや こきゆくふねの あとはきえて なみちにうくは かすみなりけり | 定忠 |
1849 | あととほき そはのかけみち たえたえに かすみをつたふ はるのやまひと | 康衡 |
1850 | みやこへは いくへかすみの へたつらむ おもひたつへき かたもしられす | 和泉式部 |
1851 | われすまて はなのみやこの はるかすみ やとせははやく へたたりにけり | 光俊(葉室光親男) |
1852 | むかしへを おもふなみたの はるさめは わかたもとにそ わきてふりける | 重之 |
1853 | くさもきも あまねくめくむ はるさめに そてはぬれても かひなかりけり | 俊成(藤原俊忠男) |
1854 | なかめしをれ あきのあはれも おもひいてぬ あめしつかなる はるのゆふくれ | 貞広 |
1855 | はなゆゑは いとふならひの はるかせを まちとりかほに なひくあをやき | 為顕 |
1856 | うれしさも にほひもそてに あまりけり わかためをれる うめのはつはな | 信生 |
1857 | あたらよの なこりしれとや うめのはな かたふくつきに なほにほふらむ | 俊誉 |
1858 | うきみには いつともわかぬ なみたにて かすみをたとる はるのよのつき | 隆教 |
1859 | うめかかは みしよのはるの なこりにて こけのたもとに かすむつきかけ | 宗尊親王 |
1860 | つきもいま おほろのしみつ それなから おもかはりせる よにもすむかな | 雅具 |
1861 | しのひつま かへるなこりの うつりかを そてにあらそふ まとのうめかえ | 兼宗 |
1862 | ももちとり なくこゑすなり わかやとの そののうめかえ いまさかりかも | 顕盛 |
1863 | うめかかを またはうつさし はなのいろを かへてやつるる すみそめのそて | 公雄 |
1864 | うめのはな さくやのきはの あまそそき しつくもにほふ はるのゆふかせ | 行藤(藤原行有男) |
1865 | きりわけて あきはこしちの あまつかり かへるくもゐも またかすむなり | 中納言典侍(後伏見院) |
1866 | はるもなほ ゆきふるさとに かへるとや はなのにしきの ころもかりかね | 政連 |
1867 | おくれゆく そのひとつらは かすみえて さきたつかりの あとそかすめる | 煕時 |
1868 | われのみと こころつくさし やまさくら はなもさくへき ころはまつらむ | 宣時(北条) |
1869 | はなをまつ こころこそなほ むかしなれ はるにはうとく なりにしものを | 西行 |
1870 | かせをまつ ふるきのはなを みるにしも おいてもろきは なみたなりけり | 実兼 |
1871 | おいきには さくへきはなそ たのみなき はるにあひぬと ひとはいへとも | 道玄 |
1872 | もろひとの はるのころもに まつそみゆる こすゑにおそき はなのいろいろ | 為子(従二位) |
1873 | よをすつる ひとにはみせし やまさくら いろにしうつる こころつきけり | 高倉(八条院) |
1874 | おのれのみ あふかはるにもと おもふにも みねのさくらの いろそものうき | 後鳥羽院 |
1875 | われはたた きみをそをしむ かせをいたみ ちりなむはなは またもさきなむ | 有仁 |
1876 | くちにける みのうもれきは はるくれと はなをはよその ものとこそみれ | 親隆 |
1877 | はるのはな なかむるままの こころにて いくほともなき よをすくさはや | 慈円 |
1878 | をるひとも なきふるさとの はなのみそ むかしのはるを わすれさりける | 斎宮女御 |
1879 | わすられぬ みはしのはなの なこりかな みしはあまたの はるならねとも | 為相 |
1880 | としをへし はるのみやまの さくらはな くもゐにうつる いろをみるかな | 雅有 |
1881 | ちりちらす とふひともなき やまさとは はなもかひなき にほひなりけり | 月花門院 |
1882 | あちきなく はなのたよりに とはるれは みさへあたにも なりぬへきかな | 躬恒 |
1883 | よのなかは おとろへゆけと さくらはな いろはむかしの はるにそありける | 重之 |
1884 | かはかりの はなのにほひを おきなから またもみさらむ ことそかなしき | 顕輔 |
1885 | よのなかの うきもつらきも なくさめて はなのさかりは うれしかりけり | 花山院 |
1886 | はなさかり ちりにはすなる をくるまの わかみひとつそ やるかたもなき | 為家 |
1887 | はることの はなにこころは そめおきつ くもゐのさくら われをわするな | 弁内侍(後深草院) |
1888 | わすれすよ みはしのはなの このまより かすみてふけし くものうへのつき | 伏見院 |
1889 | おいかよは はやななそちの はなみても わかみさかりの はるそこひしき | 忠兼(藤原忠行男) |
1890 | みにしめて はなをもなにか をしむへき これもこのよの すさひとおもへは | 実定 |
1891 | はかなくも ちるなとはなを おもふかな あすみむことも さためなきよに | 顕仲(源顕房男) |
1892 | ふくかせの はなにあまきる かすみまて うらみかねたる はるのあけほの | 成実(藤原親実男) |
1893 | さくはなに おほふかすみの そてなれと かせをはえこそ へたてさりけれ | 泰基 |
1894 | かみかきに はなみてくらす はるならて むそちのおいの おもひてそなき | 祐春 |
1895 | けふしこそ なかしとおもひし はるのひも はなのこかけに あかすくれぬれ | 親方 |
1896 | をるひとの まれなるにこそ やまさくら とはれぬやとも なくさまれけれ | 円朝 |
1897 | やまさくら をらてかへらは なかなかに なかめすてつと はなやうらみむ | 長舜 |
1898 | としをへて はなのみやこの はるにあひて かせをこころに まかせてしかな | 泰時 |
1899 | ふくかせも きみかこころに まかせては みやこのとけき はなをこそみめ | 蓮生法師 |
1900 | みしよさへ わするはかりに さとはあれて はなもおいきの はるやふりぬる | 猷円 |
1901 | ふるさとの おいきのさくら きてみれは はなにむかしの はるそのこれる | 基頼 |
1902 | たつねきて かへるさまよふ みやまちは はなこそやかて しをりなりけれ | 淑氏 |
1903 | ちるはなを をのへのかねに かへりみて ゆふやまいつる はるのさとひと | 雲聖 |
1904 | みるままに かはるこすゑそ あはれなる わかみもはなも ふりぬとおもへは | 公経(藤原実宗男) |
1905 | すむひとも やともかはれる にはのおもに みしよをのこす はなのいろかな | 諄子内親王 |
1906 | かせふけは あたにちりかふ はなよりも おいのなみたそ もろくなりゆく | 雅言 |
1907 | ひとすちに かせのつらさに なさしとや のとかなるひも はなのちるらむ | 栄昭 |
1908 | をしみかね せめてもはなの ちるかたに またさそはれて ゆくこころかな | 朝貞 |
1909 | さらてたに こひしきものを むかしみし はなちるさとに ひとのまつなる | 頼宗 |
1910 | すきにける はなのいままて にほひせは けふのかさしに まつそをらまし | 実頼 |
1911 | なかむれは いととうらみそ ますけおふる をかへのをたを かへすゆふくれ | 後鳥羽院 |
1912 | みをかくす かたなきものは われならて またはやけのの ききすなりけり | 赤染衛門 |
1913 | はしたかの すすろにかかる すまひして のへのききすと ねをのみそなく | 紀伊(祐子内親王家) |
1914 | としをへて さきこそまされ はるのひの なにおふやまの まつのふちなみ | 祐親 |
1915 | おきつかせ ふきこすいその まつかえに あまりてかかる たこのうらふち | 宗泰(藤原時宗男) |
1916 | はなのいろは けふぬきかへつ いつかまた こけのたもとに ならむとすらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1917 | なにとかは いそきもたたむ なつころも うきみをかふる けふにしあらねは | 堀河(待賢門院) |
1918 | ゆふかけて おもはさりせは あふひくさ しめのほかにそ ひとをきかまし | 上東門院 |
1919 | しめのうちに なれさりしより ゆふたすき こころはきみに かけてしものを | 和泉式部 |
1920 | けふはいとと しのひそまさる みたらしや かはせのなみの かへりこぬよを | 為子(従二位) |
1921 | かみやまに あふひかさして くれぬれは つきのかつらの かけそまたるる | 久宗 |
1922 | ほとときす さのみはまたし うきみには かたらはしとそ ねもをしむらむ | 公雄 |
1923 | わかための なさけとそきく ほとときす まちあかすよの あけほののこゑ | 時敦 |
1924 | つれなくそ まつへかりける ほとときす ねぬよのつきの あけかたのそら | 公篤 |
1925 | ほとときす かたらふかたや やまのはに むらさめすきて つきそほのめく | 読人不知 |
1926 | ほとときす かたらふこゑも あはれなり むかしこひしき おいのねさめに | 基輔(坊門清親男) |
1927 | あらすなる うきよのはてに ほとときす いかてなくねの かはらさるらむ | 右京大夫(建礼門院) |
1928 | われもはや おいそのもりの ほとときす やよやむかしの ことかたらなむ | 良覚 |
1929 | なきすてて いつちいくたの ほとときす なこりをとむる もりのしたかけ | 読人不知 |
1930 | ほとときす おいそのもりに なくこゑを みによそへても あはれとそきく | 俊定(藤原経俊男) |
1931 | みをつめは あはれとそきく ほとときす よをへていかに おもへはかなく | 増基 |
1932 | ねをそへて なほこそしのへ あやめくさ わすれぬつまの けふのむかしを | 兼教 |
1933 | かすならぬ みはかくれぬの あやめくさ うきためしにや ひとにひかれむ | 読人不知 |
1934 | ゆくさきの みちもおほえぬ さつきやみ くらゐのやまに みはまよひつつ | 信実 |
1935 | おのつから はるるかとみる ほとたにも なほくものほる さみたれのそら | 頼清 |
1936 | かはなみは きしにおよひて さみたれの みかさにふねの さをそみしかき | 国道(津守国助男) |
1937 | あけぬるか うふねのかかり たきすてて けふりもしらむ みしかよのそら | 景久 |
1938 | よをかけて をちかためくる ゆふたちに こなたのそらは つきそすすしき | 泰宗 |
1939 | やとからや たをれるえたも ときしらて あきのこころの いろにいつらむ | 澄覚法親王 |
1940 | まつかねの いはたのきしの ゆふすすみ きみかあれなと おもほゆるかな | 西行 |
1941 | みつむすふ ゆふへよりなほ すすしきは ひむろにむかふ すきのしたかけ | 経久 |
1942 | やまかはの おなしなかれも ときはきの かけゆくみつは いろそすすしき | 惟継 |
1943 | つねよりも みるほとひさし なつのよの つきにはひとを まつへかりけり | 家経(藤原広業男) |
1944 | にこりなき いつみにうつる つきをみて すむらむひとの こころをそくむ | 紀伊(祐子内親王家) |
1945 | みそきせし きのふのせせの かはなみに あきたつかせや けふわたるらし | 公雄 |
1946 | やまさとに あきをしらする はけしさも きのふにまさる のきのまつかせ | 良宋 |
1947 | まつらかた やへのしほちの あきかせは もろこしよりや ふきはしむらむ | 道玄 |
1948 | なみたこそ まつこほれぬれ つゆはまた おきあへぬそての あきのはつかせ | 基任 |
1949 | したをきも かつほにいつる ゆふつゆに やとかりそむる あきのみかつき | 長清 |
1950 | ふきすつる なこりまてこそ かなしけれ のきはのをきの あきのゆふかせ | 読人不知 |
1951 | さきやらぬ まかきのはきの つゆをおきて われそうつろふ ももしきのあき | 伏見院 |
1952 | いかはかり つゆしけけれは あつまちの ことのはさへに そてのぬるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1953 | ものことに うれへにもるる いろもなし すへてうきよを あきのゆふくれ | 永福門院 |
1954 | ものおもひに けなはけぬへき つゆのみを あらくなふきそ あきのこからし | 為兼 |
1955 | あきにそふ うれへもかなし いつまてと おもふわかみの ゆふくれのそら | 具顕 |
1956 | ときわかす うきにうれへは そふものを あきのこころと たれかさためし | 近衛(今出河院) |
1957 | かせそよく をきのうははの つゆよりも たのもしけなき よをたのむかな | 赤染衛門 |
1958 | あきかせは むかしのひとに あらねとも ふきくるよひは あはれとそおもふ | 重之 |
1959 | ちかきのの のわきはおとも せさりきや をきふくかせを たれかききけむ | 重明親王女 |
1960 | ゆふまくれ かせものわきと ふきたては よものちくさそ しつこころなき | 為実(御子左藤原為氏男) |
1961 | けさもなほ のわきのなこり かせあれて あめふりそそく むらくものそら | 定兼 |
1962 | あきかせの すたれうこかし ふくなへに にはくさなひき きりきりすなく | 仁澄 |
1963 | あきのきて みにしむかせの ふくころは あやしきほとに ひとそこひしき | 月花門院 |
1964 | われはたた ときしもわかす こひしきを ひとはあきのみ おもひけるかな | 大納言典侍(後嵯峨院) |
1965 | いたつらに うつりもゆくか わきもこか ころもにすらむ あきはきのはな | 基政(藤原基綱男) |
1966 | をはなふく ほやのめくりの ひとむらに しはしさとある あきのみさやま | 盛久 |
1967 | おのつから あきのあはれを みにつけて かへるこさかの ゆふくれのうた | 定家 |
1968 | わかいへに ことしのあきも そめてけり みたひはなさく あさかほのいろ | 実兼 |
1969 | あさあけの すそののきりに たちしをれ やまちいそかぬ さをしかのこゑ | 重員 |
1970 | くさかくれ にはになれたる しかのねに ひとめまれなる ほとをしるかな | 守覚法親王 |
1971 | ひきかへて けふはみるこそ かなしけれ さやはまたれし もちつきのこま | 実氏 |
1972 | ものことに こそのおもかけ ひきかへて おのれつれなき もちつきのこま | 定家 |
1973 | つきみれは いととあはれそ まさりける うきよにすめる たくひとおもへは | 成範 |
1974 | さやけさは たかすむやとも かはらしと つきにむかひて おもひこそやれ | 重村 |
1975 | こころとめて たれかまことに なかむると こよひのそらの つきにとははや | 読人不知 |
1976 | ひさかたの つきはむかしの かかみなれや むかへはうかふ よよのおもかけ | 実兼 |
1977 | つきたにも われにともなふ かけなくは みやまのさとや すみうからまし | 実兼 |
1978 | いつとても おなしそらゆく つきのなと はるはおほろに あきはさやけき | 花園院 |
1979 | はなのはるは あたしいろにも うれへにき つきみるあきそ ものおもひもなき | 公蔭 |
1980 | あつまちの あきのそらにそ おもひいつる みやこにてみし はるあきのつき | 為成(冷泉為相男) |
1981 | いくほとと おもへはかなし おいのみの そてになれぬる あきのよのつき | 亀山院 |
1982 | あきをへて いくよもしらぬ ふるさとの つきはあるしに すみかはりつつ | 公経(藤原実宗男) |
1983 | われのみそ もとのみにして こひしのふ みしおもかけは あらぬよのつき | 為子(従二位) |
1984 | いつもかく つきにむかへる こころにて すまはうきよも なくさみなまし | 道潤 |
1985 | おもふこと なくてたにねぬ つきのよを ましていかにと とふひともかな | 高定 |
1986 | あきのつゆも つきのためとや ちきりおく ともにひかりを みかきかはして | 伊予 |
1987 | つきかけに わけいるのへの かへるさは つゆなきくさそ しをりなりける | 宗行 |
1988 | いつるにも いるにもおなし むさしのの をはなをわくる あきのよのつき | 能海 |
1989 | なかめこし みはいたつらに あきをへて ゆくすゑおもふ つきそかなしき | 為相 |
1990 | おもひいつや ひとめなかりし やまさとの つきとみつとの あきのおもかけ | 元輔(清原春光男) |
1991 | つきかけに さそはれぬへき きみならは こころつくしに またれさらまし | 郁芳門院 |
1992 | いつるより こころそらにて みるつきを いるまてしらぬ やともありけり | 式部命婦(後冷泉院) |
1993 | つゆわけし よもきのやとの ひかりにも いりくるつきの かけをこそみれ | 下野(四条太皇太后宮) |
1994 | おもひいる やまのおくまて みにそふは つきもみやこや すみうかれにし | 実兼 |
1995 | おもひいれぬ ひとはかくしも なかめしを こころよりこそ つきはすみけれ | 隆弁 |
1996 | おほえぬに おいのならひの かなしきは つきにこほるる なみたなりけり | 為家 |
1997 | なくなくも みしよのかけや おもひいつる つきのみやこの あきのかりかね | 秀茂/秀成 |
1998 | しきたへの まくらにおつる つきみれは あれたるやとも うれしかりけり | 清輔 |
1999 | くれをまつ つきよりさきに いかてかは くもゐをいてて きみかゆくへき | 少将内侍(後深草院) |
2000 | ややふくる わかよのほとの おもかけを くもゐのつきに いかかならへむ | 実雄 |
2001 | しらさりき うきみなからに めくりきて おなしくもゐの つきをみむとは | 近衛太皇太后宮 |
2002 | つきはいま とほきなみちに かたふきて いそやまかくれ よふねこくなり | 冬基 |
2003 | いかにせむ こころなくさむ つきたにも わかよをかけて ふけまさるかな | 為家 |
2004 | まつほとは やまのあなたに ふけぬれと いててもなかき あきのよのつき | 師員 |
2005 | つきをなほ みのうきことの なくさめと みしよのあきも むかしなりけり | 為顕 |
2006 | やまさとは のきはのみねの たかけれは まつのはなから つきそふけゆく | 道助法親王 |
2007 | はかなくて わかよすきぬと なかむれは つきもいまはの にしのやまのは | 忠良 |
2008 | むしのこと こゑたてぬへき よのなかに おもひむせひて すくるころかな | 崇徳院 |
2009 | なかきよの ともとそたのむ きりきりす われもつひには よもきふのもと | 大輔(殷富門院) |
2010 | あきくさの かれはかしたの きりきりす いつまてありて ひとにきかれむ | 基家 |
2011 | なかきよに なほあまりある おもひとや あけてもしはし むしのなくらむ | 基有 |
2012 | かれわたる をはなかすゑの あきかせに ひかけもよわき のへのゆふくれ | 読人不知 |
2013 | あきふかく なりゆくすまの うらかせに せきもるひとや よさむなるらむ | 宣時(北条) |
2014 | よのうきめ みえぬやまちの おくまても なほかなしきは あきのゆふくれ | 頼重 |
2015 | ゆふひさす みねのときはき そのいろの あきならぬしも あきにさひしき | 読人不知 |
2016 | みねくたる くもにたちそふ かはきりの はるるかたなき わかおもひかな | 為子(従二位) |
2017 | あけしらむ なみちのきりは ふきはれて とほしまみゆる あきのうらかせ | 景綱 |
2018 | けさのまの きりよりおくや しくれつる はれゆくあとの やまそいろこき | 仲覚 |
2019 | しくれつる くものかへしの あきかせに そめあへすちる みねのもみちは | 行念 |
2020 | もみちはの いろにもめてし このたひは いのるこころを わけしとおもへは | 幸平 |
2021 | つゆかかる やまちのそても ほさしたた けふわけすきむ あきのなこりに | 重経 |
2022 | くれてゆく あきたにわれな すてはてそ なへてのよこそ いろかはるとも | 実兼 |
2023 | あきはつる ひたのかけなは ひきすてて のこるたのもの いほのさひしさ | 宣方 |
2024 | ひとしれぬ しくれここちに かみなつき われさへそての そほちぬるかな | 具平親王 |
2025 | つゆおきし ききのこのはを ふくよりは よにもあらしの みをさそはなむ | 和泉式部 |
2026 | いかはかり しくれにそての しをるらむ もらぬいはやの むかしこひつつ | 良実 |
2027 | しくるへき こすゑのいろは つれなくて はなをやときの ものとなかめむ | 後伏見院 |
2028 | かきりなき はるあきとめる みやのうちは はなももみちも ときをわかめや | 為子(従二位) |
2029 | つれつれと なかめくらせは ふゆのひも はるのいくかに ことならぬかな | 和泉式部 |
2030 | さためなき しくれのあめの いかにして ふゆのはしめを そらにしるらむ | 真昭 |
2031 | おくやまの みねのしくれを わけゆけは ふかきたにより のほるしらくも | 秀能(藤原秀宗男) |
2032 | しかのうらや しくれてわたる うきくもに みかみのやまそ なかはかくるる | 読人不知 |
2033 | ときのまに たたひとしくれ ふりすきて あらしのみねは くもものこらす | 宗秀(藤原宗泰男) |
2034 | ゆくあきを したひしそての なみたより しくれそめてや ふゆのきぬらむ | 久時 |
2035 | たえすふく まつのあらしに ききなれて しくれもわかぬ やまかけのいほ | 泰朝 |
2036 | しくれつる くもはほとなく みねこえて やまのこなたに のこるこからし | 信雅 |
2037 | あきかせと ちきりしひとは かへりこす くすのうらはの しもかるるまて | 宗尊親王 |
2038 | かせさやく さよのねさめの さひしきは はたれしもふり つるさはになく | 俊成(藤原俊忠男) |
2039 | ふゆのよは かねよりさきの ひさしくて あかつきまたぬ ねさめをそする | 仁澄 |
2040 | をりしもあれ うれしくゆきの うつむかな かきこもりなむと おもふやまちを | 西行 |
2041 | やまかけや ともをたつねし あとふりて たたいにしへの ゆきのよのつき | 良経(九条兼実男) |
2042 | いかにして てにたにとらぬ みつくきの をかへのゆきに あとをつくらむ | 為家 |
2043 | きえやすき ゆきはしはしも とまらなむ うきことしけき われにかはりて | 貫之 |
2044 | ゆきのうちの もとのまつたに いろまされ かたえのききは はなもさくなり | 定家 |
2045 | おとたえて むせふみちには なやむとも うもれなはてそ ゆきのしたみつ | 実兼 |
2046 | いにしへは いとひしあとも またれけり おいてよにふる やとのしらゆき | 基忠(鷹司兼平男) |
2047 | ふみわけて けふこそみつれ みやこより おもひおこせし やまのしらゆき | 為家 |
2048 | ふみわけて とはるるゆきの あとをみて きみをそふかく かみはまもらむ | 源全 |
2049 | けふまては ゆきふみわけて かへるやま これよりのちや みちもたえなむ | 観意 |
2050 | うつもれて としのみとせを ふるゆきに ふみつたへてし あとやたえなむ | 澄覚法親王 |
2051 | しもこほり とちたるころの みつくきは えもかきやらぬ ここちのみして | 紫式部 |
2052 | あるかひも いまはなきさの はまちとり くちぬそのなの あとやのこらむ | 少将(藻壁門院) |
2053 | そのなのみ かたみのうらの ともちとり あとをしのはぬ ときのまもなし | 基忠(鷹司兼平男) |
2054 | わたるへき かはせやちかく なりぬらむ きりのあなたに ちとりなくなり | 忠守 |
2055 | あまをとめ かよふくもちは かはらねと わかたちなれし よのみこひしき | 為子(従二位) |
2056 | あまつかせ をとめのそても さゆるよは おもひいてても ねられさりけり | 定家 |
2057 | うつみひを よそにみるこそ あはれなれ きゆれはおなし はひとなるみを | 相模 |
2058 | いたつらに くれぬとはかり かそへきて いくとしつきの みにつもるらむ | 経尹(世尊寺経朝男) |
2059 | おもふことの あらたまるへき はるならは うきみもとしの くれやいそかむ | 章義門院 |
2060 | よをうらみ みをなけきつつ あけくれて としもこころも つきはてにけり | 堀河(待賢門院) |
2061 | としくれし そのいとなみは わすられて あらぬさまなる いそきをそする | 西行 |
2062 | かすかのの あさちかうへに おもふとち あそふけふをは わすられめやも | 読人不知 |
2063 | かすかのは ねのひわかなの はるのあと みやこのさかは あきはきのとき | 俊成(藤原俊忠男) |
2064 | おもふことを いかにしのひし たかよより いはてのさとと なをととむらむ | 為子(従二位) |
2065 | みつとのみ おもひしものを なかれくる たきはおほくの いとにそありける | 遍昭 |
2066 | きえはてぬ ゆきかとそみる たにかはの いはまをわくる みつのしらなみ | 赤染衛門 |
2067 | つきよよし かはおとすめり いさここに ゆくもとまるも あそひてかへらむ | 四綱 |
2068 | むかしみし きさのをかはを いまみれは いよいよきよく なりにけるかも | 家持 |
2069 | わくかこと めにはみゆれと わかやとの いしゐのみつは ぬるまさりけり | 伊勢 |
2070 | いもせかは むかしなからの なかならは ひとのゆききの かけはみてまし | 灌子(尚侍藤原灌子朝臣) |
2071 | うちかはの はやせになみの こゑすれは ふりくるあめを しるひともなし | 隆国 |
2072 | さすさをも およはすなれは ゆくみつに まかせてくたす よとのかはふね | 冬隆 |
2073 | せきとむる うちのかはせの あしろきに あまりてこゆる みつのしらなみ | 為氏 |
2074 | すすかかは やそせのなみは わけもせて わたらぬそての ぬるるころかな | 達智門院 |
2075 | いにしへに あらすなからの はしはしら ふりにしあとを しのはすもなし | 順徳院 |
2076 | さもあらはあれ なのみなからの はしはしら くちすはいまの ひともしのはし | 定家 |
2077 | をはたたの いたたのはしの とたえしを ふみなほしても わたるきみかな | 善信 |
2078 | くちぬへき いたたのはしの はしつくり おもふままにも わたしつるかな | 讃岐 |
2079 | よのなかは つねなきものと いまそしる ならのみやこの うつろふみれは | 読人不知 |
2080 | ささなみの しかのおほわた よとむとも むかしのひとに またあはめやも | 人麿 |
2081 | かせはやみ みほのうらわを こくふねの ふなひとさわく なみたつらしも | 読人不知 |
2082 | さそはるる なみのゆききに としもへぬ あまのなかせる うらのすてふね | 実氏 |
2083 | なにはかた なみのたよりは はるかにて しほひにとまる あまのすてふね | 為氏 |
2084 | すきかてに みれともあかぬ たまつしま うへこそかみの こころとめけれ | 崇徳院 |
2085 | くるるまに すすきつるらし ゆふしほの ひかたのうらに あまのそてみゆ | 為家 |
2086 | このゆふへ うらのしほかせ ふきあれて いりうみしろく なみさわくなり | 時藤(藤原行藤男) |
2087 | ゆふひさす なみのうへより たつけふり いかなるうらに もしほやくらむ | 隆祐 |
2088 | なにはかた かせのとかなる ゆふなきに けふりなひかぬ あまのもしほひ | 行家(藤原知家男) |
2089 | あかしかた なみちはるかに なるままに ひとこそみえね あまのつりふね | 順徳院 |
2090 | ゆふつくひ わたのみさきを こくふねの かたほにひくや むこのうらかせ | 実兼 |
2091 | うらとほく ならへるまつの このまより ゆふひうつれる なみのをちかた | 為子(従二位) |
2092 | あれぬひは おきつしほかせ のとかにて みるめをよする いそのうらなみ | 俊言 |
2093 | かちをたえ おほうみのはらに ゆくふねの あとはかもなき よをいかにせむ | 土御門院 |
2094 | なにはかた いりえのしほや みちぬらむ すゑはそのこる あしのむらたち | 公相 |
2095 | なにはえや なににつけても あしのねの うきみのほとそ あはれなりける | 按察(鷹司院) |
2096 | なみのうへに うつるゆふひの かけはあれと とほつこしまは いろくれにけり | 為兼 |
2097 | なみまより みゆるこしまの ひとつまつ われもとしへぬ ともなしにして | 雅有 |
2098 | なみたかし いかにかちとり みつとりの うきねやすへき なほやこくへき | 読人不知 |
2099 | かせをいたみ おきつしらなみ たかからし あまのつりふね はまにかへりぬ | 読人不知 |
2100 | かちのおとそ ほのかにすなる あまをとめ おきつもかりに ふなてすらしも | 読人不知 |
2101 | ゆふくれに なにはわたりを きてみれは たたうすすみの あしてなりけり | 行慶 |
2102 | みきはちかく みえつるふねの ゆくすゑは うかふこのはの なみのをちかた | 兼行 |
2103 | あさほらけ うらうらかけて みわたせは ちへのかすみに きゆるともふね | 新宰相(伏見院) |
2104 | とほつおきに あまたうかへる ふねのほの みえすそなれる かせかはるらし | 実兼 |
2105 | ゆふしほの さすにまかせて みなとえの あしまにうかふ あまのすてふね | 頼景 |
2106 | うらあれて かせよりのほる いりしほに おろさぬふねそ なみにうきぬる | 範秀 |
2107 | なみたたは おきのたまもも よりくへく おもふかたより かせはふかなむ | 躬恒 |
2108 | むこのうらの とまりなるらし いさりする あまのつりふね なみまよりみゆ | 人麿 |
2109 | みさこゐる あらいそなみや さわくらむ しほやくけふり なひくかたみゆ | 重之 |
2110 | けさみれは あまのをふねも かよふなり しほみつうらは こほらさるらし | 重之 |
2111 | さととしも よそにはみえぬ とほしまの まつにましりて たつけふりかな | 為相 |
2112 | なくなくも くもゐをこひて としふりぬ わかよふけひの うらのともつる | 伏見院 |
2113 | なこのうみに つまよひかはし なくたつの こゑうらかなし さよやふけぬる | 宗尊親王 |
2114 | あさりする たつそなくなる かこのしま まつはらとほく しほやみつらむ | 行家(藤原知家男) |
2115 | かもめゐる ふちえのうらの あさほらけ あれたるなみも こころすみけり | 隆祐 |
2116 | みつしほに うらのひかたも なみこえて そらにきこゆる あしたつのこゑ | 時綱(北条時員男) |
2117 | あしたつの なくねもとほく きこゆなり なみしつかなる まつかうらしま | 俊平(源泰光男) |
2118 | きよみかた うちいててみれは いほはらの みほのおきつは なみしつかなり | 為氏 |
2119 | おきつかせ あらきいそへに たつなみの かへるいはねに おつるたきつせ | 実氏 |
2120 | いはかねに よせてはかへる なみのまも なほおとのこす いそのまつかせ | 親範(藤原範宗または親之男) |
2121 | おきつかせ ふけゆくままに あかしかた とわたるつきの かけのさやけさ | 公基 |
2122 | いとふへき やまのはそなき あかしかた なみにかたふく ありあけのつき | 祐春 |
2123 | しほかせは なきさのまつに おとつれて つきそなみまに いりかかりぬる | 忠久 |
2124 | さよふかき のきはのみねに つきはいりて くらきひはらに あらしをそきく | 永福門院 |
2125 | ひはらもる ありあけのつきに きこゆなり をのへのてらの かねのひとこゑ | 覚性法親王 |
2126 | つきのいる まくらのやまは あけそめて のきはをわたる あかつきのくも | 伏見院 |
2127 | なかきよも はやあけかたや ちかからし ねさめのまとに つきそめくれる | 伏見院 |
2128 | にはのかけは またよふかしと みるほとに つきにしられて よはしらみけり | 親子(従三位源) |
2129 | にしになる つきはこすゑの そらにすみて まつのいろこき あけかたのやま | 時春 |
2130 | いくこゑに ゆめかおとろく あかつきの ねさめののちの かねそすくなき | 重顕(藤原頼重男) |
2131 | なにたてて やこゑといへと あけはつる ほとをかきりに とりもなくなり | 少将内侍(後深草院) |
2132 | さとさとの とりのはつねは きこゆれと またつきたかき あかつきのそら | 永福門院 |
2133 | やまふかみ とりのねきかぬ すみかには わかねさめより あくるをそしる | 実重室 |
2134 | かねのおと とりのねきかぬ ねさめには あかつきになる ほともわかれす | 基顕 |
2135 | ねさめして ときはいつとも しられぬに あくるかとりの こゑそきこゆる | 内侍(永福門院) |
2136 | うきはわか おいのねさめと おもへとも ゆふつけとりも あかつきそなく | 祐世(中臣祐賢男) |
2137 | あかつきの かねのひひきに ゆめさめて なほそののちも よはそひさしき | 久明親王 |
2138 | まとろまて さなからあかす よはもあるを ねさめとなれは なとかかなしき | 時元 |
2139 | むらむらに くものわかるる たえまより あかつきしるき ほしいてにけり | 為子(従二位) |
2140 | ほしのかけも そなたはうすき しののめに やまのはみえて くもそわかるる | 兼行 |
2141 | よこくもの わかるるやまの あくるより みちみえそむる まつのしたかせ | 清雅 |
2142 | おきてけさ またなにことを いとなまむ このよあけぬと からすなくなり | 読人不知 |
2143 | みるままに こころほそくも くるるかな いりあひのかねも つきはてぬなり | 山田 |
2144 | つくつくと ものをおもふに うちそへて をりあはれなる かねのおとかな | 西行 |
2145 | あたなれと けふのいのちも ありすきぬ いつをかきりそ いりあひのかね | 雅有 |
2146 | おとろかぬ わかゆふへこそ かなしけれ またけふもきく いりあひのかね | 邦長 |
2147 | いつまてか きかむとすらむ いりあひの かねてはしらぬ あはれよのなか | 経親(平時継男) |
2148 | あはれまた けふもゆふへに なりにけり あすとはまたぬ いのちなからに | 行生 |
2149 | ゆけとなほ またてらみえぬ まつはらの おくよりひひく いりあひのこゑ | 家雅 |
2150 | くもとりも かへるゆふへの やまかせに そとものたにの かけそくれぬる | 伏見院 |
2151 | をちかたの むかひのみねは いりひにて かけなるやまの まつそくれゆく | 親子(従三位源) |
2152 | やまもとの こかけはよると なかむれと をのへはいまた ゆふくれのいろ | 久明親王 |
2153 | みるままに やまはきえゆく あまくもの かかりもらせる まきのひともと | 永福門院 |
2154 | ふりそそく のきはのあめの ゆふくれに つゆこまかなる ささかにのいと | 資宣女 |
2155 | しらくもは ゆふへのやまに おりみたれ なかはきえゆく みねのすきむら | 伏見院 |
2156 | そよくれぬ ならのこのはに かせおちて ほしいつるそらの うすくものかけ | 定家 |
2157 | たちのほる つきのたかねの ゆふあらし とまらぬくもを なほはらふなり | 定成(藤原経朝男) |
2158 | いてそむる つきのあたりの えたわけて かけふきもらす みねのまつかせ | 為守女 |
2159 | みるひとに いかにせよとか つきかけの またよひのまに たかくなりゆく | 躬恒 |
2160 | つきをこそ なかめなれしか ほしのよの ふかきあはれを こよひしりぬる | 右京大夫(建礼門院) |
2161 | くらきよの やままつかせは さわけとも こすゑのそらに ほしそのとけき | 永福門院 |
2162 | おともなく よはふけすみて をちこちの さとのいぬこそ こゑあはすなれ | 為子(従二位) |
2163 | さよふけて やともるいぬの こゑたかし むらしつかなる つきのをちかた | 伏見院 |
2164 | ふけぬるか すきゆくやとも しつまりて つきのよみちに あふひともなし | 伏見院 |
2165 | やとはあれて かへのひまもる やまかせに そむけかねたる ねやのともしひ | 下野(後鳥羽院) |
2166 | ともしひの ひかりさひしき ねやのうちに さよもふけぬる ほとそしらるる | 兼子(従一位) |
2167 | きゆるかと みえつるよはの ともしひの またねさめても おなしかけなる | 新宰相(伏見院) |
2168 | つくつくと あけゆくまとの ともしひの ありやとはかり とふひともなし | 定家 |
2169 | きえやらて のこるかけこそ あはれなれ わかよふけそふ まとのともしひ | 家隆 |
2170 | あめのおとの きこゆるまとは さよふけて ぬれぬにしめる ともしひのかけ | 伏見院 |
2171 | ふりしめる あまよのねやは しつかにて ほのほみしかき ともしひのすゑ | 為子(従二位) |
2172 | あかしかね まとくらきよの あめのおとに ねさめのこころ しくしをれしつ | 永福門院 |
2173 | やまかせの ふきわたるかと きくほとに ひはらにあめの かかるなりけり | 永福門院 |
2174 | しつくまては またおちそめぬ やまかけの ひはらかうへに あめそきこゆる | 内侍(永福門院) |
2175 | のきくらき まきのはしをれ ふるあめの しつくもさひし やまかけのやと | 顕親門院 |
2176 | としへぬる やとをふるやと いふことは あめのさはらぬ なにこそありけれ | 花山院 |
2177 | みそきせし みゆきのそらも こころありて あめのしたこそ けふくもりけれ | 惟方 |
2178 | そらはれし とよのみそきに おもひしれ なほひのもとの くもりなしとは | 二条院 |
2179 | くものうへに ひひくをきけは きみかなの あめとふりぬる おとにそありける | 俊恵 |
2180 | ぬるるかと たちやすらへは まつかけや かせのきかする あめにそありける | 伏見院 |
2181 | ひひきくる まつのうれより ふきおちて くさにこゑやむ やまのしたかせ | 伏見院 |
2182 | はれゆくか たたよふくもの たえまより ほしみえそむる むらさめのそら | 宮内卿(後鳥羽院) |
2183 | こととはむ ふるきのまつよ なれのみや わかしのふよの むかしをもみし | 基忠(鷹司兼平男) |
2184 | よせかへり うらかせあらき ささなみに しつえをひたす しかのはままつ | 為道 |
2185 | なみのうへは あめにかすみて なかめやる おきのしらすに まつそのこれる | 為子(従二位) |
2186 | たにのとに ひかりそまつも たてりけり われのみともは なきかとおもへは | 西行 |
2187 | ひさにへて わかのちのよを とへよまつ あとしのふへき ひともなきみそ | 西行 |
2188 | ひとつまつ いくよかへぬる ふくかせの こゑのすめるは としふかきかも | 市原王 |
2189 | あめとのみ ふくまつかせは きこゆれと こゑにはひとも ぬれすそありける | 貫之 |
2190 | なみよする きしにとしふる まつのはの ひさしきこころ たれかしるらむ | 貫之 |
2191 | ふかみとり いりえのまつも としふれは かけさへともに おいにけるかな | 躬恒 |
2192 | いそのまつ いくひささにか なりぬらむ いたくこたかき かせのおとかな | 実朝 |
2193 | うちよする なみとをのへの まつかせは こゑたかさこや いつれなるらむ | 順 |
2194 | まつにふく あらしのおとも たかさこの うらちしくるる あきのゆふくれ | 厳教 |
2195 | むかしより たのむみきはの まつなれは なみもあはれを かくとしらすや | 兵衛(上西門院) |
2196 | ゆふくれの まつにふきたつ やまかせに のきはくもらぬ むらさめのこゑ | 伏見院 |
2197 | にはのおもの ひときのまつを ふくかせに いくむらさめの こゑをきくらむ | 道良女 |
2198 | ききわひぬ のきはのまつを ふきしをる あらしにこもる いりあひのこゑ | 親子(従三位源) |
2199 | かせたにも のきはのまつに こゑやみて ゆふへのとけき やまかけのやと | 為子(従二位) |
2200 | なかめやる みやこのかたは ひかけにて このやまもとは まつのゆふかせ | 家親 |
2201 | やまふかみ ゆふへのかねの こゑつきて のこるあらしの おとそさひしき | 慈順 |
2202 | やまさとに しはしはゆめも みえさりき なれてまとろむ みねのまつかせ | 忠景 |
2203 | やまふかき さとのしるへに なるものは いりあひのかねの こゑにそありける | 秀能(藤原秀宗男) |
2204 | さひしさは をかへのいほの あきのくれ まつかせならて おとつれもなし | 師教(九条忠教男) |
2205 | のかれえぬ ひとめはおなし みやこにて わかやますみそ なほあらはなる | 実兼 |
2206 | このさとは やまかけなれは ほかよりも くれはててきく いりあひのこゑ | 為世(御子左藤原為氏男) |
2207 | いほちかき つまきのみちや くれぬらむ のきはにくたる やまひとのこゑ | 為相 |
2208 | ふきたゆむ ひまこそいまは さひしけれ ききなれにける みねのまつかせ | 為子(贈従三位) |
2209 | やまさとの ゆふくれかたの さひしさを みねのあらしの おとろかすかな | 経信 |
2210 | このさとは くものやへたつ みねなれは ふもとにしつむ とりのひとこゑ | 良経(九条兼実男) |
2211 | やまかけや のきはのこけの したくちて かはらのうへに まつかせそふく | 良経(九条兼実男) |
2212 | をくらやま まつをむかしの ともとみて いくとせおいの よをおくるらむ | 為家 |
2213 | いくさとか あらしにつけて きこゆらむ わかすむてらの いりあひのかね | 後嵯峨院 |
2214 | わふとたに たれかはしらむ あともなき くものおくなる やまのすみかは | 覚助法親王 |
2215 | やまさとに わかみふりてそ かたかたに つもるみゆきの あともまちみる | 実兼 |
2216 | やまさとを うきよのほかの やとそとは すまておもひし こころなりけり | 宗尊親王 |
2217 | やまさとの こころしつかに すみよきは とふひともなし まつこともなし | 行円(行願寺開基卓上人) |
2218 | たにのみつ みねのたききに あけくれて いはほのなかも いとまなのよや | 顕範 |
2219 | ひととせの みやこのひとの そらたのめ おもひはてぬる ふゆのやまさと | 丹後(宜秋門院) |
2220 | ときはきの しけきみとりの したにして ひかけもみえぬ たにかけのやと | 花園院 |
2221 | やまかせは かきほのたけに ふきすてて みねのまつより またひひくなり | 為兼 |
2222 | やまあらしの すきぬとおもふ ゆふくれに おくれてさわく のきのまつかえ | 伏見院 |
2223 | いりかたの つきはすくなき しはのとに あけぬよふかき あらしをそきく | 教良女 |
2224 | をくらやま のきはのにしに ちかけれは ほかにはいらぬ つきそかくるる | 道平 |
2225 | なこりをは いはきにつけて おもふにも あらさらむよの あれまくもをし | 実氏 |
2226 | いつといはむ ゆふへのそらに ききはてむ わかすむやまの まつかせのおと | 実氏 |
2227 | うきたひの みのあらましに おもなれて すむここちする やまのおくかな | 光俊(葉室光親男) |
2228 | さひしさを よのうきかたに おもひかへて みやまのつきを ひとりみるかな | 実香(藤原公敦男) |
2229 | やまふかく またたかかよふ みちならむ これよりおくの みねのかけはし | 冬平 |
2230 | やまきはの たなかのもりに しめはへて けふさとひとは かみまつるなり | 為家 |
2231 | たきのおとも いかかきくらむ みやこたに ものあはれなる ころにもあるかな | 花山院 |
2232 | いくかへり くるともつきし かめのをの やまのいはねの たきのしらいと | 月花門院 |
2233 | たかをやま きよたきかはを そこにみて たにかけめくる まつのしたみち | 冬基 |
2234 | やまかせは ふけときこえす いはかねや たきりておつる たきのひひきに | 後伏見院 |
2235 | ひとりやは みえぬやまちも たつぬへき おなしこころに なけくうきよを | 和泉式部 |
2236 | さとひとの いほりにたける しひしはの けふりふきしく やまおろしのかせ | 後鳥羽院 |
2237 | かねのおとを まつにふきしく おひかせに つまきやおもき かへるやまひと | 定家 |
2238 | あはれなる とほやまはたの いほりかな しはのけふりの たつにつけても | 順徳院 |
2239 | としつきの かすをもしらし ふもとより つもれるちりの たかさこのやま | 内実 |
2240 | よのなかは いつみのそまき とるたみも ふるきをさらに ひきおこさなむ | 実氏 |
2241 | やまふかみ なるるかせきの けちかさに よをとほさかる ほとそしらるる | 西行 |
2242 | ひとりすむ おほろのしみつ ともとては つきをそやとす おほはらのさと | 寂然 |
2243 | たつたやま あらしのおとも たかやすの さとはあれにし てらとこたへよ | 阿一 |
2244 | なにしおはは あけすもあらなむ くらまやま みちみえすとて われはかへらし | 御形宣旨 |
2245 | あしひきの やまたのひたの おとたかみ こころにもあらぬ ねさめをそする | 道命 |
2246 | いほむすふ あきのやまたの ひたすらに いとへやこれは かりそめのよそ | 為子(従二位) |
2247 | いほりさす そとものをたに かせすきて ひかぬなるこの おとそきこゆる | 実泰 |
2248 | のこるまつ かはるこくさの いろならて すくるつきひも しらぬやとかな | 定家 |
2249 | はなのゆき このはしくれの いくとせを みはふるさとの にはにみるらむ | 実兼 |
2250 | われならて またうちはらふ ひともなき よもきかはらを なかめてそふる | 斎宮女御 |
2251 | むかしへの ふるきつつみは としふかき いけのなきさに みくさおひにけり | 赤人 |
2252 | よのなかを おもひのきはの しのふくさ いくよのやとと あれかはてなむ | 定家 |
2253 | まつにあらし あさちかつゆに つきのかけ それよりほかに とふひとはなし | 為子(従二位) |
2254 | くさのいほに こころはとめつ いつかまた やかてわかみも すまむとすらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
2255 | うちやまの むかしのいほの あととへは みやこのたつみ なそふりにける | 慶融 |
2256 | こけのむす のきはのまつは こたかくて みしにもあらぬ ふるさとのには | 盛継(伊豆) |
2257 | くもにふす みねのいほりの しはのとを ひとはおとせて たたくまつかせ | 宗秀(大江時秀男) |
2258 | さとひたる いぬのこゑにそ しられける たけよりおくの ひとのいへゐは | 定家 |
2259 | たかさとの いへゐなるらむ かたやまの ふもとにめくる たけのひとむら | 為氏 |
2260 | のちのよを おもひおきけむ くれたけの そのすゑまても あはれとはみよ | 慈道法親王 |
2261 | このきみの みよかしこしと くれたけの すゑすゑまても いかていはれむ | 後嵯峨院 |
2262 | くれたけの よよのむかしも しのはれて わすれぬふしの おほくもあるかな | 基忠(鷹司兼平男) |
2263 | そのよこそ なほこひしけれ ももしきや わかともとみし にはのくれたけ | 後伏見院 |
2264 | たのもより やまもとさして ゆくさきの ちかしとみれは はるかにそとふ | 伏見院 |
2265 | ゆふまくれ こたかきもりに すむはとの ひとりともよふ こゑそさひしき | 良経(九条兼実男) |
2266 | このうちも なほうらやまし やまからの みのほとかくす ゆふかほのやと | 寂蓮 |
2267 | とりとりの わかれのほとも かなしきに すへてこのよに またはかへらし | 選子内親王 |
2268 | ささかにの くものふるまひ あはれなり これもこころの すちはみえつつ | 後嵯峨院 |
2269 | のきちかき まかきのたけの すゑはより しのふにかよふ ささかにのいと | 土御門院 |
2270 | なさけみせて のこせるふみの たまのこゑ ぬしをととむる ものにそありける | 伏見院 |
2271 | するすみの いろしみえすは みつくきの なかれてのよの あとをとめめや | 伏見院 |
2272 | おもひける こころのみゆる たまつさは ぬしにかたらふ ここちこそすれ | 顕昭 |
2273 | いつはりの ことのはしけき よにしあれは おもふといふも まことならめや | 頼朝 |
2274 | なへてみな きみかなけきを とふかすに おもひなされぬ ことのはもかな | 西行 |
2275 | あらちをの かりゆくのへの くさたかみ ひくやまゆみの すゑはかりみゆ | 為子(従二位) |
2276 | やまひとの ましはにませて さすをはな かせふかねとも まねきてそゆく | 新大納言(延政門院) |
2277 | みるからに おつるなみたの たまくしけ みにつたふへき かたみなりけり | 内経 |
2278 | かたみとて かへすもよよの いへのかせ ふきつたへよと おもふとをしれ | 後二条院 |
2279 | つつみける おもひやなにそ からころも よにもるまての そてのしつくは | 伏見院 |
2280 | たかもらす なみたなるらむ からころも わかみにしらぬ そてのしつくは | 為子(従二位) |
2281 | あはれとは くもゐをかけて きこゆなり あしへのたつの こをおもふこゑ | 実氏 |
2282 | くもゐより としへてなれし あしたつの かへるわかれに ねをそそへつる | 伏見院 |
2283 | みちをゆつる きみにひかれて よつのをの そのねもたかき なをそあけぬる | 実兼 |
2284 | つたへこし みちもみちある みよにあひて たえせぬいへの あとたえめやは | 寂恵 |
2285 | むそちあまり おいぬるとしの しるしとて きみかなさけの みにあまるかな | 為氏 |
2286 | はなにさき みになりかはる よをすてて うきはのつゆと われそけぬへき | 道綱母 |
2287 | きみはなほ ちりにしはなの このもとに たちよらぬとは おもはさりけり | 二条院 |
2288 | はなちりし みちにこころは まとはれて このもとまても ゆかれやはせし | 上東門院 |
2289 | ことのはの つゆはかりたに かけよかし くさのゆかりの かすならすとも | 三河(法性寺入道前関白家) |
2290 | むらさきの いろにいてては いはねとも くさのゆかりを わすれやはする | 讃岐 |
2291 | ひとことに えてうれしきは のりのはな みよのほとけの やとのものとて | 慈円 |
2292 | もるやまの みねのもみちも ちりにけり はかなきいろの をしくもあるかな | 貫之 |
2293 | みねつつき やまへはなれす すむしかも みちたとるなり あきのゆふきり | 俊成(藤原俊忠男) |
2294 | いりあひの かねのおとこそ かなしけれ けふをむなしく くれぬとおもへは | 隆信 |
2295 | むさしのの くさはにやとる しらつゆの いくよあるへき ものならなくに | 伊勢 |
2296 | よのなかは みつにやとれる つきなれや すみはつへくも おもほえぬかな | 公任 |
2297 | ととまらぬ ひとのいのちと あしひきの やましたみつと いつれはやけむ | 雅成親王 |
2298 | もろともに きのふののへに いさゆきて かすみをたにも みてかへりなむ | 道命 |
2299 | くものうへの ものおもふはるは すみそめに かすむそらさへ あはれなるかな | 紫式部 |
2300 | あひにあひて ものおもふはるは かひもなし はなもかすみも めにしたたねは | 和泉式部 |
2301 | おもひやれ はるのひかりも てらしこぬ みやまのさとの ゆきのふかさを | 俊成(藤原俊忠男) |
2302 | くさもきも いろつきわたる はるさめに くちのみまさる ふちのころもて | 公任 |
2303 | ひねもすに ふるはるさめや いにしへを こふるたもとの しつくなるらむ | 高光 |
2304 | いかてかく うきよをしらて うめのはな ことしもおなし いろにさくらむ | 実房 |
2305 | ちりのこる はなたにあるを きみかなと このはるはかり とまらさりけむ | 通親 |
2306 | ここのへも はなのさかりに なるなかに わかみひとつや はるのよそなる | 実頼 |
2307 | いくほとか なからへてみむ やまさくら はなよりもろき いのちとおもへは | 亀山院 |
2308 | はるしらぬ うきみもかなし いにしへに つらねしえたの はなにわかれて | 兼教 |
2309 | なきひとを はなゆゑけふは しのひても のちのはるをは われもたのます | 兼忠 |
2310 | をしまれし こすゑのはなは ちりはてて いとふみとりの はのみのこれる | 上東門院 |
2311 | いかにいひ いかにとはむと おもふまに こころもつきて はるもくれにき | 俊成(藤原俊忠男) |
2312 | ほとときす こそみしきみも なきやとに いかになくらむ けふのはつこゑ | 伊尹 |
2313 | かなしさの かかるときやは またもありし うへもうつきと いひはしめけり | 長家 |
2314 | さらてたに ことしはそての ひまなきに かさねてしをる あきのつゆけさ | 長家 |
2315 | いはかけの けふりをきりに わきかねて そのゆふくれの ここちせしかな | 資業 |
2316 | いさきよき こころもしるし いるつきの なきかけをさへ きみにまかせて | 寂蓮 |
2317 | なきかけを みよとてつきの いりしより いととこころの やみにまとひぬ | 経房(藤原光房男) |
2318 | ひとりのみ なみまにやとる つきをみて むかしのともや おもかけにたつ | 全性 |
2319 | もろともに みしよのひとは なみのうへに おもかけうかふ つきそかなしき | 行盛(平基盛男) |
2320 | むらくもに ひかりかくるる つきみれは くさのすゑはの つゆもけぬめり | 実兼 |
2321 | やまさとの あきのわかれの かなしきは しかさへこゑも をしまさりけり | 実定 |
2322 | むしのねの よわるのみかは すくるあきを をしむわかみそ まつきえぬへき | 近衛院 |
2323 | うきよをは あきはててこそ そむきしか またはいかなる けふのわかれそ | 宗尊親王 |
2324 | あきかけて ふりにしやとの むらしくれ たのむかけなく ぬるるそてかな | 実伊 |
2325 | われさへそ そてはつゆけき ふちころも きみおりたちて きるそとおもへは | 侍従(本院) |
2326 | きりきりす あはれとそきく つひのわか よもきかもとの ともそとおもへは | 覚昭 |
2327 | けふはいかに なみたふりにし みやのうちも さらにしくれて そてぬらすらむ | 為信 |
2328 | なみたのみ いととふりそふ しくれには ほすひまもなき すみそめのそて | 御匣(式乾門院) |
2329 | おもひしれ あきのなかはの つゆけさを しくれにぬるる そてのうへにて | 静賢 |
2330 | ましてひと いかなることを おもふらむ しくれたにしる けふのあはれを | 出羽弁 |
2331 | ふるからに とまらすきゆる ゆきよりも はかなきひとを なににたとへむ | 村上天皇 |
2332 | あらぬよに ふるここちして かなしきに またとしをさへ へたてつるかな | 俊頼(源経信男) |
2333 | いつれのひ いかなるやまの ふもとにて もゆるけふりと ならむとすらむ | 選子内親王 |
2334 | ありしよに ゑしのたくひは きえにしを こはまたなにの けふりなるらむ | 清輔 |
2335 | きえにしを うしとはかりは みはかやま さきたつくもの ゆくへしらせよ | 忠経 |
2336 | とりへやま けふりのすゑや これならむ むらむらすこき そらのうきくも | 内侍(永福門院) |
2337 | なけきつつ あめもなみたも ふるさとの むくらのかとの いてかたきかな | 斎宮女御 |
2338 | やまふかみ とふひとなしと おもへとも ひとりすむみは けふそうれしき | 春花門院弁 |
2339 | ゆめのよは とふひとあらし とはかりの みちのしるへを まちやつけけむ | 定家 |
2340 | うかりける このよのゆめの さめぬまを みるもうつつの ここちやはせし | 宣陽門院 |
2341 | むかしにも かはらすすめる いけみつに かけたにみえぬ きみそかなしき | 季経 |
2342 | さきたつを あはれあはれと いひいひて とまるひとなき みちそかなしき | 親子(従三位源) |
2343 | うきみをは こととはすとも かかるよの かなしきことは しるやしらすや | 忠快(平教盛男) |
2344 | かなしさを よそのなけきと おもはねは ひとをとふへき ここちたにせす | 行盛(平基盛男) |
2345 | あるほとか あるにもあらぬ うちになほ かくうきことを みるそかなしき | 資盛 |
2346 | なかれゆく みつにたまなす うたかたの あはれあたなる このよなりけり | 西行 |
2347 | ふなをかの すそののつかの かすそへて むかしのひとに きみをなしつる | 西行 |
2348 | ひとりねに ありしむかしの おもほえて なほなきとこを もとめつるかな | 朱雀院 |
2349 | ときはなる いはやはいまも ありけれと すみけむひとそ つねなかりける | 博通 |
2350 | いはやとに たてるまつのき なれをみれは むかしのひとに あひみるかこと | 博通 |
2351 | かへりては まつたらちねを みしものを けふはたれにか あはむとすらむ | 道済 |
2352 | みちのへの よもきかもとそ あはれなる このよのはての すみかとおもへは | 六条(八条院) |
2353 | おくれゐて なみたさへこそ ととまらね みしもききしも のこりなきよに | 堀河(待賢門院) |
2354 | いかにせむ わかのちのよは さてもなほ むかしのけふを とふひともかな | 右京大夫(建礼門院) |
2355 | うきことの いつもそふみは なにとしも おもひあへても なみたおちけり | 右京大夫(建礼門院) |
2356 | おのつから おくれさきたつ こともあれと おいてととまる かすそすくなき | 源恵 |
2357 | いまはとて かたみのころも ぬきすてて いろかはるへき ここちこそせね | 生子(女御藤原) |
2358 | こそまては わけこしともも つゆときえて ひとりしをるる ふかくさののへ | 伏見院 |
2359 | うきときと わかれしまては おもひしに おなしつきひそ かたみなりける | 範藤 |
2360 | かさねきる ふちのころもを たよりにて こころのいろも そめよとそおもふ | 西行 |
2361 | みわたせは みなすみそめの ころもては たちゐにつけて ものそかなしき | 師房女 |
2362 | なきをこそ きみはこふらめ としふれは あるもかなしき ものにそありける | 躬恒 |
2363 | ふれはうし へしとてもまた いかかせむ あめのしたより ほかのなけれは | 和泉式部 |
2364 | いつまてと のとかにものを おもふらむ ときのまをたに しらぬいのちに | 兵衛(上西門院) |
2365 | めのまへに かくあれはつる いせのうみを よそのなきさと おもひけるかな | 出羽弁 |
2366 | いにしへの あまのすみけむ いせのうみも かかるなきさは あらしとそおもふ | 兼房 |
2367 | おくれしと おもふこころに そむけとも このよにとまる ほとそかなしき | 豊子(従三位藤原) |
2368 | いままてに よにありへむと おもはぬを そむくみちにも おくれぬるかな | 少将内侍(後一条院) |
2369 | ゆめのよに なれこしちきり くちすして さめむあしたに あふこともかな | 崇徳院 |
2370 | ふえたけの このよをなかく わかれにし きみかかたみの こゑそかなしき | 御匣(枇杷皇太后宮) |
2371 | たまつさの そのたまのをの たえしより いまはかたみの ねにそなかるる | 伏見院 |
2372 | いにしへを かくるなみたの たまつさの かたみのこゑに ねをそそへぬる | 永福門院 |
2373 | ひとのよは なほそはかなき ゆふかせに こほるるつゆは またもおきけり | 為子(従二位) |
2374 | みちかはる みゆきかなしき こよひかな かきりのたひと みるにつけても | 西行 |
2375 | わかれちは えそしたかはぬ むかしより つかへなれにし みゆきなれとも | 実兼 |
2376 | わかれにし ひとをかくても みてしかな ほとへてかへる たまもありけり | 定頼母 |
2377 | たちよらむ かたもしられす うつせみの むなしきとこの なみのさわきに | 兼輔 |
2378 | みかかれし たまのうてなを つゆふかき のへにうつして みるそかなしき | 西行 |
2379 | ふかくさの つゆふみわくる みちすから こけのたもとそ かつしをれゆく | 実兼 |
2380 | いにしへの つるのはやしの はるはあれと なほかめやまの あきそかなしき | 実時(藤原公蔭男) |
2381 | なくなくも したひてそみる なきひとの おもかけはかり ありあけのつき | 基平(近衛兼経男) |
2382 | ゆめかとも なにかおとろく さならても うつつなるへき このよならぬを | 隆博 |
2383 | さきたつも とまるもおなし ゆめのよを よそにおとろく みさへはかなき | 左衛門佐(章善門院) |
2384 | おなしよの めくみたえぬと なけきしに あとまてのこる なさけをそきく | 利行 |
2385 | おもひきや みとせのあきを すくしきて けふまたそてに つゆかけむとは | 行子(従二位) |
2386 | もみちはを あきのかたみと なかめても しくれとふるは なみたなりけり | 公顕 |
2387 | わけきつる そてのしつくか とりへのの なくなくかへる みちしはのつゆ | 俊成(藤原俊忠男) |
2388 | いかにして きえにしあきの しらつゆを はちすのうへの たまとみかかむ | 忠通 |
2389 | みしゆめの おなしうきよの たくひにも さめぬあはれそ いととかなしき | 兼教 |
2390 | としへても さめすかなしき なつのよの ゆめにゆめそふ あきのつゆけさ | 為子(従二位) |
2391 | よのうさに あきのつらさを かさねても ひとへにしをる すみそめのそて | 民部卿典侍(後堀河院) |
2392 | きえぬまの みをもしるしる あさかほの つゆとあらそふ よをなけくかな | 紫式部 |
2393 | さやかなる つきともいさや みえわかす たたかきくらす ここちのみして | 少将(枇杷皇太后宮) |
2394 | かけたにも とまらさりけり くものうへを たまのうてなと たれかいひけむ | 上東門院 |
2395 | さきはてす ちりにしはなの わかれより はるのやよひは うらみはててき | 長家 |
2396 | たれみよと なほにほふらむ さくらはな ちるををしみし ひともなきよに | 赤染衛門 |
2397 | いかはかり けふはさくらの はなみても あたになりにし ひとをこふらむ | 親世 |
2398 | ふしておもひ おきてもまとふ はるのゆめ いつかおもひの さめむとすらむ | 家隆 |
2399 | ねさめして おもひそいつる ほとときす くもゐにききし よるのひとこゑ | 三河内侍(二条院) |
2400 | はるのはな さきてはちりぬ あきのつき みちてはかけぬ あなうよのなか | 大輔(殷富門院) |
2401 | つゆきゆる うきよにあきの をみなへし ことしもしらぬ いろそかなしき | 中納言(建春門院) |
2402 | みてすきし おなしうきよの ゆめなれは とふにつけてそ われもかなしき | 親宗(平時信男) |
2403 | かきりなき うきよのゆめを みてしかな このかなしさも おとろかれぬを | 重家 |
2404 | かくれにし くもゐのつきを おもひいてて たれとむかしの あきをこふらむ | 惟方 |
2405 | かきくらす なみたはかりを ともとして かくれしつきを こひぬよそなき | 中納言典侍(二条院) |
2406 | あきになり かせのすすしく かはるにも なみたのつゆそ しのにちりける | 俊成(藤原俊忠男) |
2407 | わきてこの あきはいかなる あきなれは つゆそふそての またしくるらむ | 右京大夫(玄輝門院) |
2408 | ふかくさの やまのもみちに このあきは なけきのいろを そへてこそみれ | 経親(平時継男) |
2409 | ほとときす こととふからに いととしく むかしのけふを こひつつそなく | 行宗 |
2410 | きみこふる なけきのしけき やまさとは たたひくらしそ ともになきける | 堀河(待賢門院) |
2411 | またもこむ あきをまつへき たなはたの わかるるたにも いかかかなしき | 忠盛 |
2412 | おもはさりし ふちのたもとの あきのつゆ かかるちきりの あはれをそしる | 永福門院 |
2413 | よをすては つらきあきもや なくさむと おもひしそても つゆはかわかす | 兼行 |
2414 | ひとのよは おもへはなへて あたしのの よもきかもとの ひとつしらつゆ | 良経(九条兼実男) |
2415 | いはてのみ むかしのことは おもへとも おさへかたきは なみたなりけり | 惟方 |
2416 | けふかくて めくりあふにも かなしきは このよへたてし わかれなりけり | 全真 |
2417 | こひしのふ ひとにあふみの うみならは あらきなみにも たちましらまし | 右京大夫(建礼門院) |
2418 | いつかたの たにのけふりと なりにけむ あはれゆくへも なきそかなしき | 匡房 |
2419 | きけとなほ ゆめかなにそと たとられて うきもうつつの ここちこそせね | 忠良 |
2420 | あらしふく みやまのさとに きみをおきて こころもそらに けふはかへりぬ | 倫子(従一位) |
2421 | なへてにも あらぬわかれの かなしさは いかにとたにそ いはれさりける | 宣旨(後一条院中宮) |
2422 | かすならぬ なみたのつゆを かけてたに たまのかさりを そへむとそおもふ | 和泉式部 |
2423 | きみなくて かへるなみちに しをれこし そてのしつくを やもひやらなむ | 兵衛佐(崇徳院) |
2424 | そのをりに きてましものを ふちころも やかてそれこそ かきりなりけれ | 伊周 |
2425 | うつせみの よはつねなしと しるものを あきかせさむみ しのひつるかも | 家持 |
2426 | わかれにし はるのかたみの ふちころも たちかさねぬる あきそかなしき | 小一条院 |
2427 | ふたとせの あきのあはれは ふかくさや さかののつゆも またきえぬなり | 為兼 |
2428 | またほさぬ こそのたもとの あきかけて きえそふつゆも よそにやはおもふ | 伏見院 |
2429 | うかりしも かたみとおもふ あきにさへ かさねてまたや けふはわかれむ | 良助法親王 |
2430 | つかへつつ なれしむかしの ままならは こよひやよをは そむきはてまし | 雅有 |
2431 | とまるみは ありてかひなき わかれちに なとさきたたぬ いのちなりけむ | 四条(安嘉門院) |
2432 | かはらしな きえにしつゆの なこりとて そてほしわふる あきのおもひは | 三河(中務卿宗尊親王家) |
2433 | ならひそと しりてもうきは めのまへに ひとにおくるる わかれなりけり | 時村 |
2434 | こをおもふ みちこそやみと ききしかと おやのあとにも まよはれにけり | 選子内親王 |
2435 | なにゆゑに みやこのほかに たひねして しかのなくねに こゑをそふらむ | 弁乳母 |
2436 | をしむへき ひとはみしかき たまのをに うきみひとつの なかきよのゆめ | 定家 |
2437 | のちみむと きみかむすへる いはしろの こまつかうれを またみつるかも | 人麿 |
2438 | このもとに くちはてぬへき かなしさに ふりにしことの はをちらすかな | 俊成(藤原俊忠男) |
2439 | いへのかせ ふきつたへすは このもとに あたらもみちの くちやはてまし | 顕輔 |
2440 | やへむくら たえぬるみちと みえしかと わすれぬひとは なほたつねけり | 赤染衛門 |
2441 | みるたひに つゆかかれとは いひおかぬ ことのはいかて なみたおつらむ | 円俊 |
2442 | こころうつる なさけいつれと わきかねぬ はなほとときす つきゆきのとき | 永福門院 |
2443 | うれしのや うきよのなかの なくさめや はるのさくらに あきのつきかけ | 遊義門院 |
2444 | なかなかに よはひたけてそ いろまさる つきとはなとに そめしこころは | 公経(藤原実宗男) |
2445 | ひきかへて はなみるはるは よるはなく つきみむあきは ひるなからなむ | 西行 |
2446 | まほろしは たまのうてなに たつねきて むかしのあきの ちきりをそきく | 長方 |
2447 | くらしかね なかきおもひの はるのひに うれへともなふ うくひすのこゑ | 宣子(従三位藤原) |
2448 | いかてかく やともさためぬ なみのうへに うきものおもふ みとはなりけむ | 寂蓮 |
2449 | あきつしま ひとのこころを たねとして とほくつたへし やまとことのは | 為家 |
2450 | わかのうらや かきおくなかの もくつにも かくれぬたまの ひかりをそみる | 実兼 |
2451 | わかのうらに みちふみまよふ よるのつる このなさけにそ ねはなかれける | 為教 |
2452 | わかのうらの ともをはなれて さよちとり そのかすならぬ ねこそなかるれ | 為守 |
2453 | なくねをも よそにやはきく ともちとり すむうらゆゑそ とほさかるらむ | 貞時 |
2454 | わかのうらに あとつけなから はまちとり なにあらはれぬ ねをのみそなく | 祐臣 |
2455 | もしほひの けふりのすゑを たよりにて しはしたちよる わかのうらなみ | 基忠(鷹司兼平男) |
2456 | ひとなみに きみわすれすは わかのうらの いりえのもくつ かすならすとも | 俊成女 |
2457 | つかふるは おやのをしへと たのめとも みのためにうき よをいかにせむ | 為氏 |
2458 | ゆめはたた ぬるよのうちの うつつにて さめぬるのちの なにこそありけれ | 伏見院 |
2459 | ありてすき みえてさめぬる のちはたた うつつもゆめも かはらさりけり | 遊義門院 |
2460 | ぬるかうちは いまやむかしに かへるらむ むかしやいまの ゆめにみえつる | 実兼 |
2461 | うたたねの みしかきゆめの ほとはかり おいのまくらに むかしをそみる | 覚助法親王 |
2462 | ぬるかうちの ゆめははかなき ものといへと おもふこころの すゑはみえけり | 為仲(藤原為顕男) |
2463 | ゆめならて またはまことも なきものを たかなつけける うつつなるらむ | 義政 |
2464 | みのうさを おもひねにみる ゆめなれは うつつにかはる なくさめもなし | 国時 |
2465 | ことのはの つゆにおもひを かけしひと みこそはきゆれ こころきえめや | 小侍従(太皇太后宮) |
2466 | あさゆふに みておとろかぬ ゆめのよは さむるかきりも あらしとそおもふ | 実重室 |
2467 | やまふかく すまはともにと いふひとも まことにならは かはりもやせむ | 保季 |
2468 | をしむとて をしまれぬへき このよかは みをすててこそ みをもたすけめ | 西行 |
2469 | われそまつ いるへきみちに さきたてて したふへしとは おもはさりしを | 頼政 |
2470 | おなしよを そむくときけは いまさらに みのつれなさそ おもひしらるる | 為氏 |
2471 | とはれすは そむくうきよの おもひいても なきみのとかに なしやはてまし | 道洪 |
2472 | うきなから すめはすまるる よのなかを おもひとりける きみそかなしき | 兼経 |
2473 | みひとつを おもひすてしは やすけれと ひとのためには よこそをしけれ | 実兼 |
2474 | そむくよも かしこききみの しるへかな すててこそいる みちとききしに | 種成 |
2475 | すつるよの あとまてのこる もしほくさ かたみなれとや かきととめけむ | 宗尊親王 |
2476 | すつるよの かたみとみすは もしほくさ かきおくあとも かひやなからむ | 寂恵 |
2477 | なにことを そむきはてぬと おもふらむ このよはすてぬ みにこそありけれ | 能因 |
2478 | いとひえぬ うきみのみこそ かなしけれ いへをいてぬと ひとをきくにも | 伊綱(不詳) |
2479 | おもへとも さすかにみをは すてやらて ひとのあはれを とふそかなしき | 忠良 |
2480 | いとふへき かりのやとりは いてぬなり いまはまことの みちをたつねよ | 西行 |
2481 | なほさりに おもひもいらは こけころも かさなるやまを いかてわけまし | 通忠女 |
2482 | ことのねに なみたをそへて なかすかな たえなましかはと おもふあはれに | 西行 |
2483 | ゆめのうちに みしおもかけの かはらねは なほありしよの ここちこそすれ | 弁乳母 |
2484 | いかならむ やまのあなたの やとまても きみをそたのむ われなわすれそ | 実氏 |
2485 | けふもまた むかしかたりに なりぬとも わすれやはせむ よよのすゑまて | 道助法親王 |
2486 | うきみさへ みにさすらひて としもへぬ すむへきやまの おくはあれとも | 覚助法親王 |
2487 | あるもうく なきもかなしき よのなかを いかさまにかは おもひさためむ | 雅経 |
2488 | おもふとも つひにはそはし おなしくは うまれすしなて ともとならはや | 高弁 |
2489 | いとけなし おいてよわりぬ さかりには まきらはしくて つひにくらしつ | 高弁 |
2490 | うけかたき みをはいかかは すてむとて いままてよには めくるなりけり | 慶政 |
2491 | ゆみはりの つきみるよひは ほともなく いるやまのはそ わひしかりける | 高遠 |
2492 | しはしたに ここをはつきも すみうくや すたれのほかに かけおちてゆく | 親子(従三位源) |
2493 | もろともに かけかたふきて なかむれは つきもあはれと われをみるらむ | 読人不知 |
2494 | なれみるも いつまてかはと あはれなり わかよふけゆく ゆくすゑのつき | 為子(従二位) |
2495 | よのなかの うきをもしらす すむつきの かけはわかみの ここちこそすれ | 西行 |
2496 | みをあきの わかむかしをも おもひいつや なみたおちそふ そてのつきかけ | 読人不知 |
2497 | よのうさに おもひいるへき やまのはを すみうかれてや つきはいつらむ | 雅平女 |
2498 | おもふこと なくてなかめし むかしたに つきにこころの のこりやはせし | 実定 |
2499 | いつくにて いかなることを おもひつつ こよひのつきに そてしをるらむ | 右京大夫(建礼門院) |
2500 | よをすてて なほうきときの しるへせよ いりぬるやまの みねのつきかけ | 永光 |
2501 | すむかひも なくてくもゐに ありあけの つきはなにとか いるもしられむ | 小侍従(太皇太后宮) |
2502 | みのうさを うれへあはする とももあらは つきにはさのみ かこたさらまし | 房子(従三位) |
2503 | うきよおもふ しはのいほりの ひまをあらみ さそふかつきの にしにかたふく | 慈円 |
2504 | をはりおもふ こころのすゑの かなしきは つきみるにしの やまのはのくも | 慈円 |
2505 | ひさかたの そらさへちかき おくやまに つきとともにも いりにけるかな | 斎宮女御 |
2506 | くもかくれ さやかにみえぬ つきかけに まちみまたすみ ひとそこひしき | 選子内親王 |
2507 | いまはとて かけをかくさむ ゆふへにも われをはおくれ やまのはのつき | 式子内親王 |
2508 | すてていてし うきよはつきの すまてあれな さらにこころの とまらさらまし | 西行 |
2509 | われをとふ ひとこそなけれ むかしみし みやこのつきは おもひいつらむ | 増基 |
2510 | よつのをの しらへにつけて おもひいてよ なかはのつきに われもわすれし | 大夫(延子内親王家) |
2511 | よのなかの せめてはかなき ためしとや つきさへかりの やとりにそすむ | 高弁 |
2512 | けにやさそ にしにこころは いそかるる かたふくつきを いまはをしまし | 教長 |
2513 | つきみれは おいぬるみこそ かなしけれ つひにはやまの はにやかくれむ | 清少納言 |
2514 | にしへゆく つきのなにとて いそくらむ やまのあなたも おなしうきよを | 実定 |
2515 | たましひも わかみにそはぬ なけきして なみたひさしき よにそふりにし | 定家 |
2516 | なにとかく おきところなく なけくらむ ありはつましき つゆのいのちを | 丹後(宜秋門院) |
2517 | かすならて あるにもあらぬ うきみしも なとよのなかに おきところなき | 忠良 |
2518 | ふりはつる おいのねさめの なみたにそ みをしるそては ぬれまさりける | 信兼 |
2519 | あれはいとふ そむけはしたふ かすならぬ みとこころとの なかそゆかしき | 長明 |
2520 | たのみこし わかこころにも すてられて よにさすらふる みをいとふかな | 家隆 |
2521 | かからすは とまるこころも ありなまし うきそこのよの なさけなりける | 宗尊親王 |
2522 | みもつらく よもうらめしき ふしふしを わすれぬものは なみたなりけり | 実雄 |
2523 | うきもうく つらきもつらし しかはあれと しらぬになして よをすくすかな | 実重(三条公親男) |
2524 | しひてたか ととめおきける わかみとて なほすてやらぬ よをなけくらむ | 聖勝 |
2525 | あられける みをうたかひし やすらひに なにしかおそく よをのかれけむ | 読人不知 |
2526 | よしさらは あるにまかせむ あらましの はしめにはみな かはりゆくみを | 為相女 |
2527 | あつまにて みはふりぬとも ことのはを いかてくもゐに きこえあけまし | 政長 |
2528 | あすとたに またれぬほとの おいのみは いのちのうちの あらましもなし | 宣時(北条) |
2529 | いかにせむ そむきてのちの うきよをは すてなはとおもふ なくさめもなし | 宗尊親王 |
2530 | あはれけに のかれてもよは うかりけり いのちなからそ すつへかりける | 読人不知 |
2531 | たらちねの おいのよはひに うまれあひて ひさしくそはぬ みをそうらむる | 為相 |
2532 | なにとかく そむくこころの ふかからむ このよにこそは うまれたるみの | 慈円 |
2533 | いたつらに やすきわかみそ はつかしき くるしむたみの こころおもへは | 伏見院 |
2534 | もくつにも ひかりやそはむ わかのうらや かひあるけふの たまにましりて | 為相 |
2535 | わかのうらに しつむみくつよ みかかれむ たまのひかりを みるよしもかな | 為子(従二位) |
2536 | おろかなる みをはしれとも よよへぬる あとをそたのむ しきしまのみち | 隆博 |
2537 | たまつしま あはれとみすや わかかたに ふきたえぬへき わかのうらかせ | 為家 |
2538 | とにかくに きみかよをのみ いのるかな のりのためにも かみのためにも | 範憲 |
2539 | これのみそ ひとのくにより つたはらて かみよをうけし しきしまのみち | 為相 |
2540 | すみよしの まつのおもはむ ことのはを わかみにはつる しきしまのみち | 為藤 |
2541 | よしあしは わかぬみなれと よにすめは なにはのことも みてそひさしき | 資宣 |
2542 | わひつつも このみはかりは いかかせむ めくらむよよを おもふかなしさ | 実房 |
2543 | うらむとも なけくともよの おほえぬに なみたなれぬる そてのうへかな | 式子内親王 |
2544 | こころから こころにものを おもはせて みをくるしむる わかみなりけり | 西行 |
2545 | きみたにも みやこなりせは おもふこと まつかたらひて なくさみなまし | 増基 |
2546 | よのなかを おもふもくるし おもはしと おもふもみには おもひなりけり | 侍従(本院) |
2547 | いかにせむ いかにとすへき よのなかを そむけはかなし すめはうらめし | 和泉式部 |
2548 | よのなかに うきみはなくて をしとおもふ ひとのいのちを ととめましかは | 和泉式部 |
2549 | つくつくと あかしくらして としつきを つひにはいかか かそへなすへき | 花山院 |
2550 | たれとかは わきてもいはむ わかために うらめしからぬ ひとしなけれは | 俊頼(源経信男) |
2551 | いかてわれ すましとそおもふ すむからに うきことしけき このよなりけり | 惟規 |
2552 | いつかたに いかかそむかむ そむくとも よにはよならぬ ところありせは | 読人不知 |
2553 | つゆはかり おもひおくへき こころあらは きえぬさきにそ ひとはとはまし | 少輔命婦 |
2554 | なからへは さりともとおもふ こころこそ うきにつけつつ よわりはてぬれ | 忠度 |
2555 | なほかくて ありへむことは うきよりも よそのひとめの はつかしきかな | 忠良 |
2556 | うきなから いくはるあきを すくしきぬ つきとはなとを おもひいてにして | 読人不知 |
2557 | そむきても なほいとはしき よのなかを すてぬはまして さそなけくらむ | 覚円 |
2558 | いまそしる わかみのみにて あるときに ひともひととは おもふなりけり | 行尊 |
2559 | なけくとも いふともかひは あらしよを ゆめのことくに おもひなしてむ | 花山院 |
2560 | をしからぬ いのちなれとも こころにし まかせられねは うきよにそふる | 伊勢 |
2561 | みのうさに いととうきたる うきくさの ねなくはひとに みせしとそおもふ | 斎宮女御 |
2562 | なくさむる かたもなきさの はまちとり なにかうきよに あともととめむ | 孝標女 |
2563 | おのつから うきみわするる あらましに ありなくさめて よをやすくさむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
2564 | こころひく かたはかりにて なへてよの ひとになさけの あるひとそなき | 為子(従二位) |
2565 | あはれてふ ひとはなきさの さよちとり うきよにわひて ねをのみそなく | 為子(従二位) |
2566 | しつむみの たななしをふね いかなれは おなしえにたに かへらさるらむ | 長雅 |
2567 | みつまさる はやせのふねも わかことや のほりもやらぬ よをうれふらむ | 家親 |
2568 | いかにせむ こえゆくなみの したにのみ しつみはてぬる あまのすてふね | 為教 |
2569 | ねさめにそ さらにかそふる わかよには あかぬことなき みのおもひてを | 実兼 |
2570 | あらましの こころにみをそ まかせぬる たのむかひある みよのしるしに | 源恵 |
2571 | こしかたの ゆめうつつをそ わきかぬる おいのねふりの さむるよなよな | 公禅 |
2572 | みのうきか ひとのつらきか さりともと おもふひかすを とはてすきぬる | 忠快(平教盛男) |
2573 | をしむへき ひともなきよを すてやらて こころからこそ みをうれへけれ | 実時(藤原公蔭男) |
2574 | なにとまた みのうきことを なけくらむ なきになしても すてはてしよに | 親世 |
2575 | おもふらむ こころになりて みるときそ ひとのうれへも みにしられける | 斉時 |
2576 | すまはやと よそにおもひし いにしへの こころにはにぬ やまのおくかな | 道昭 |
2577 | うしとても たれをこのよに うらみまし たのめはとおもふ ひとしなけれは | 具氏 |
2578 | ゆくすゑも さそなうからむ みのはてを しらぬはかりそ たのみなれとも | 能清 |
2579 | むかしより うきよのなかと ききしかと けふはわかみの ためにそありける | 土御門院 |
2580 | をしむとも なかかるましき いのちもて よをとにかくに なけくはかなさ | 遊義門院 |
2581 | なににかは おいのねさめを なくさめむ ききみしことを おもひいてすは | 基忠(鷹司兼平男) |
2582 | はかなしと おもひもはてし ゆめちには またあひみける ひとのおもかけ | 読人不知 |
2583 | あはれなり いかにわかみの なるとても たれかはをしみ たれかしのはむ | 為子(従二位) |
2584 | あすかかは あすともしらぬ はかなさに よしなかれての よをもたのまし | 新宰相(伏見院) |
2585 | いせのうみの あまのうけなは うけかたき このみをまたは しつめすもかな | 伏見院 |
2586 | うつるとき すくるつきひを かそへても いつまてのみそ さらにかなしき | 朔平門院 |
2587 | ひともよも おもへはあはれ いくむかし いくうつりして いまになりけむ | 為子(従二位) |
2588 | なにしかも おもひみたるる つゆふかき のへのをかやの たたかりのよを | 伏見院 |
2589 | すてかねぬ なにゆゑをしき うきよそと こころにちたひ おもふものから | 内侍(永福門院) |
2590 | みのはてを このよはかりと しりてたに はかなかるへき のへのけふりを | 定家 |
2591 | まことふかく おもひいつへき とももかな あらさらむよの あとのなさけに | 慈円 |
2592 | こころさし きみにふかくて としもへぬ またうまれても またやいのらむ | 慈円 |
2593 | いかにして こころにおもふ ことわりを とほすはかりも ひとにかたらむ | 為家 |
2594 | あまつひの ひかりはきよく てらすよに ひとのこころの なとかくもれる | 後伏見院 |
2595 | をりにふれ ときにおほゆる かなしさを たくひあらしと なかめてそふる | 達智門院 |
2596 | はるのはな あきのもみちを みしともの なかははこけの したにくちぬる | 俊忠 |
2597 | いにしへを たれにかたりて なくさめむ わかことしのふ ひとのなけれは | 良実 |
2598 | みしほとの むかしをたにも かたるへき とももなきよに なりにけるかな | 則俊 |
2599 | すきてゆく つきひをかへす ものにあらは こひしきかたを またもみてまし | 永福門院 |
2600 | おもひいつる むかしはとほく なりはてて まつかたちかき みをいかにせむ | 三河内侍(二条院) |
2601 | めくりあふ あきのはつきの はつかにも みぬよをとへは そてそつゆけき | 為相 |
2602 | みのうさは そのよとてもと おもへとも なほこしかたは こひしかりけり | 家親 |
2603 | しのはるる むかしといふも おなしよの とほさかりゆく なにこそありけれ | 義行 |
2604 | ひとりして みるかきりをは わすれねと たれかはわれを おもひいてける | 小馬命婦(藤原棟町女) |
2605 | よをへても あふへかりける ちきりこそ こけのしたにも くちせさりけれ | 清輔 |
2606 | ふるきあとを こけのしたまて たつねすは のこれるかきの もとをみましや | 寂蓮 |
2607 | かたはかり そのなこりとて ありはらの むかしのあとを みるもなつかし | 為子(従二位) |
2608 | をしからぬ いのちもけふは をしきかな あらはあふよに あひもこそすれ | 行尊 |
2609 | われさりて のちにしのはむ ひとなくは とひてかへりね たかしまのいし | 高弁 |
2610 | くもゐにて ありしくもゐの こひしきは ふるきをしのふ こころなりけり | 弁内侍(後深草院) |
2611 | こしかたを ひとよのほとと みるゆめは さめてそとほき むかしなりける | 秀茂 |
2612 | いかなれは つらきむかしと おもへとも なほしのはるる ならひなるらむ | 行深 |
2613 | いまさらに かへらぬものと しりなから しのはすはなき むかしなりけり | 貞重 |
2614 | こころには わすれすしのふ いにしへも かたるはかりの おもひてそなき | 広範 |
2615 | むかしおもふ たかつのみやの あとふりて なにはのあしに かよふまつかせ | 慈円 |
2616 | なさけある むかしのひとは あはれにて みぬわかともと おもはるるかな | 伏見院 |
2617 | をしむへく かなしむへきは よのなかに すきてまたこぬ つきひなりけり | 伏見院 |
2618 | いせのうみの きよきなきさは さもあらはあれ われはにこれる みつにやとらむ | 善光寺阿弥陀如来 |
2619 | しをりせて みやまのおくの はなをみよ たつねいりては おなしにほひそ | 石清水八幡 |
2620 | たにかはの このはかくれの うもれみつ なかるるもゆく したたるもゆく | 石清水八幡 |
2621 | みたたのむ ひとはあまよの つきなれや くもはれねとも にしにこそゆけ | 真如堂阿弥陀如来 |
2622 | こくらくへ うまれむとおもふ こころにて なむあみたふと いふそみこころ | 石清水八幡 |
2623 | いかにせむ ひはくれかたに なりぬれと にしへゆくへき ひとのなきよを | 清水観音 |
2624 | はなころも かささきやまに いろかへて もみちのほらの つきをなかめよ | 粉川観音 |
2625 | ひとのこの そこのこころの にこれるは おやのなかれに すまぬとをしれ | 粉川観音 |
2626 | さきにたつ ひとのうへをは ききみすや むなしきそらの けふりとそなる | 地蔵菩薩 |
2627 | なにもみな いとはぬやまの くさきには あのくほたいの はなそさくへき | 天人 |
2628 | やまとりの ほろほろとなく こゑきけは ちちかとそおもふ ははかとそおもふ | 行基 |
2629 | うゐのよは いつらつねなる くさのはに むすへるつゆの かせまつかこと | 善珠 |
2630 | かくてしも あるはあるにも あらぬよも すてむとすれは またそかなしき | 慶政 |
2631 | かくはかり うけかたきみに つもるとしの くれやすきひの かけそかなしき | 慶政 |
2632 | なにしおはは わかよはここに つくしてむ ほとけのみくに ちかきわたりに | 花山院 |
2633 | あきらけき のりのともしひ なかりせは こころのやみの いかてはれまし | 選子内親王 |
2634 | めしひたる かめのうききに あふなれや たまたまえたる のりのはしふね | 高弁 |
2635 | こきゆかむ なみちのすゑを おもひやれは うきよのほかの きしにそありける | 高弁 |
2636 | しはのとに あけくれかかる しらくもを いつむらさきの いろにみなさむ | 源空上人 |
2637 | こしかたは しのはるれとも むつのみち めくりしあとに かへらすもかな | 基忠(鷹司兼平男) |
2638 | むつのみち よつのちまたの くるしみを いつかかはりて たすけはつへき | 行円(行願寺開基卓上人) |
2639 | よにこゆる ちかひのふねを たのむかな くるしきうみに みはしつめとも | 経長(丹波経基男) |
2640 | あともなき こころにみちを ふみかへて まよはぬもとの みやこをそおもふ | 憲淳 |
2641 | よよをへて にこりにしみし わかこころ きよたきかはに すすきつるかな | 兼経 |
2642 | ひとりのみ たつねいるさの やまふかみ まことのみちを こころにそとふ | 顕頼 |
2643 | のりのため のへしみやまの こけむしろ まついろいろの はなそふりしく | 雅通(源雅定男) |
2644 | ひとしれす のりにあふひを たのむかな たききつきにし あとにのこりて | 忠通 |
2645 | ひとふさを をりてたむくる はなのえに さとりひらくる みとそなるへき | 頼舜 |
2646 | よのなかに いてといてます ほとけをは たたひとことの ためとしらなむ | 行成 |
2647 | をくるまの のりのをしへを たのますは なほよにめくる みとやならまし | 宣時(北条) |
2648 | をりしりて みはやすひとや まれならむ わしのみやまの はなのひとえた | 真浄 |
2649 | あはれにそ わすれさりける いそちあまり ひなにやつれし すかたなれとも | 親盛 |
2650 | さまさまに ちちのくさきの たねはあれと ひとつあめにそ めくみそめぬる | 崇徳院 |
2651 | たねくちて ほとけのみちに きらはれし ひとをもすてぬ のりとこそきけ | 道長 |
2652 | ゆくすゑを きくうれしさに こしかたの うかりしよりも ぬるるそてかな | 読人不知 |
2653 | ころもてに ありとしりぬる うれしさに なみたのたまを かけそそへつる | 経正 |
2654 | ゑひのうちに つけしころもの たまそとも むかしのともに あひてこそきけ | 赤染衛門 |
2655 | かきなかす やまのいはねの わすれみつ いつまてこけの したにすみけむ | 実氏 |
2656 | わかねかひ ひとののそみも みつしほに ひかれてうかふ なみのしたくさ | 源承 |
2657 | むかしいま かかみをかけて しるのみか ゆくすゑとても くもりやはする | 読人不知 |
2658 | さきのひと なにかへたてむ おなしとき みなほとけにし ならむとすれは | 源信 |
2659 | しつかにて のりとくひとそ たのもしき われらみちひく つかひとおもへは | 源信 |
2660 | おほそらを てにとることは やすくとも のりにあふへき をりやなからむ | 源信 |
2661 | かたかたに わかぬひかりも あらはれて ゆくすゑとほく てらすつきかけ | 康能 |
2662 | かきつめし ことはのつゆの かすことに のりのうみには けふやいるらむ | 長方 |
2663 | たききこり みねのこのみを もとめてそ えかたきのりは ききはしめける | 俊成(藤原俊忠男) |
2664 | いつはりの なきことのはの すゑのつゆ のちのよかけて ちきりおくかな | 実聡 |
2665 | おほそらに わかぬひかりを あまくもの しはしへたつと おもひけるかな | 崇徳院 |
2666 | よよをへて なをたにきかて すくしこし のりにうれしく あひみつるかな | 行宗 |
2667 | かりそめの うきよはかりの こひにたに あふにいのちを をしみやはする | 勝命 |
2668 | つきかけの いるさへひとの ためなれは ひかりみねとも たのまさらめや | 崇徳院 |
2669 | いていると ひとはみれとも よとともに わしのみねなる つきはのとけし | 公任 |
2670 | いくかへり くるしきみちを すくしきて むかしのつゑに なほかかりけむ | 寂蓮 |
2671 | のりのはな ちらぬやとこそ なかりけれ わしのたかねの やまおろしのかね | 慈円 |
2672 | はるにあふ はなもいまこそ にほひけれ よそちあまりの わしのやまかせ | 公什 |
2673 | こをおもふ こころのやみを てらすとて けふかかけつる のりのともしひ | 実経女 |
2674 | はるのあめ あきのしくれと よにふるは はなやもみちの ためにそありける | 光俊(葉室光親男) |
2675 | よそちあまり なほしのひける ことのはを いまはにちらす わしのやまかせ | 猷円 |
2676 | ゆふくれの そらにたなひく うきくもは あはれわかみの はてにそありける | 小弁 |
2677 | ものことに おもひしとけは あともなし ゆめさめはつる あけほののそら | 隆寛 |
2678 | いつはりも まこともけには なかりけり まよひしほとの こころにそわく | 公朝 |
2679 | はるるよの くもゐのほしの かすかすに きよきひかりを ならへてそみる | 親長 |
2680 | くらかりし そらはさなから はれつきて またうへもなく すめるつきかな | 良経(九条兼実男) |
2681 | うけかふる とをのすかたの さまさまも たたこころより なすにそありける | 為子(従二位) |
2682 | くさのいほの つゆきえぬとや ひとはみる はちすのはなに やとりぬるみを | 資隆 |
2683 | むらさきの くもたなひきて はたちあまり いつつのすかた まちみてしかな | 為子(従二位) |
2684 | たれもみな わたるこころを はしとして かみなきみちに すすむなりけり | 教長 |
2685 | ひにそへて ふかきみちにそ いりにける うきよのなかを いてはてしより | 季広 |
2686 | をみなへし わかしめゆひし ひともとの ほかにこころを うつささらなむ | 長雅 |
2687 | しなしなに ひもとくのりの をしへにて いまそさとりの はなはひらくる | 実兼 |
2688 | あさなあさな ゆきのみやまに なくとりの こゑにおとろく ひとのなきかな | 良経(九条兼実男) |
2689 | かりそめに こころのやとと なれるみを あるものかほに なにおもふらむ | 永福門院 |
2690 | よもすから まとのうすきり きえつきて こころにみかく あきのつきかけ | 源恵 |
2691 | なかむれは こころのそこそ すみまさる みゐのしみつに うつるつきかけ | 道珍 |
2692 | よもすから のりをたむくる わかそての なみたにやとる かすかののつき | 覚円 |
2693 | みつのくに なかれたえせぬ のりのみつ わかてらならて くむひとそなき | 良信 |
2694 | あひかたき みのりのはなに むかひても いかてまことの さとりひらけむ | 為家 |
2695 | いかにせむ とをのさかひに たひたちて もとのみやこの とほさかりゆく | 道玄 |
2696 | くさまくら たたかりそめに まよひいてて あはれいくよの たひねしつらむ | 読人不知 |
2697 | ふたつなき たまをこめたる もとゆひの とくことかたき のりとこそきけ | 堀河(待賢門院) |
2698 | やよやまて かたふくつきに ことつてむ われもにしには いそくこころあり | 顕昭 |
2699 | よもすから にしにこころの ひくこゑに かよふあらしの おとそみにしむ | 忠源 |
2700 | あきらけき ひしりのみよに ふたかへり こころのたまを またみかくかな | 尊助法親王 |
2701 | おとろかす こころもほかに なかりけり われとそよはの ゆめはさめける | 実伊 |
2702 | もろともに ゆくへきみちの しるへとて つきもかたふく にしのやまのは | 円空上人 |
2703 | なにとして あともなきみの うきくもに こころのつきを へたてそめけむ | 聖戒 |
2704 | たかせふね くるしきうみの くらきにも のりしるひとは まとはさりけり | 覚性法親王 |
2705 | たつねいる みちとはきけと のりのかと ひらけぬものは こころなりけり | 実兼 |
2706 | あすよりは あたにつきひを おくらしと おもひしかとも けふもくらしつ | 慶政 |
2707 | やまふかみ こけのしたには うもるれと ひとをそわたる たにのかけはし | 盛弘 |
2708 | さなからや ほとけのはなに たをらまし しきみのえたに ふれるしらゆき | 後鳥羽院 |
2709 | たつねよと をしふるやとを よそにみて むつのみちには あしもやすめす | 雅成親王 |
2710 | うらにすむ あまのぬれきぬ ほしわひぬ さのみなかけそ おきつしらなみ | 蓮生法師 |
2711 | なかきよに まよふゆめちも さむはかり こころをあらふ たきのおとかな | 忠良 |
2712 | いさしらす このよをうしと いとひても またなにのみに ならむとすらむ | 師季(中原師綱男) |
2713 | うちかはの そこにしつめる うろくつを あみならねとも すくひつるかな | 道長 |
2714 | いけみつに すめるありあけの つきをみて にしのひかりを おもひやるかな | 武隈尼 |
2715 | てにむすひ こころにおもひ くちにいふ みのりのかひは けふそみえぬる | 尊助法親王 |
2716 | のりのみつ ふかきさとりを たねとして むねのはちすの はなそひらくる | 慶政 |
2717 | ふくかせに なみのたちゐは しけけれと みつよりほかの ものにやはある | 顕俊 |
2718 | をかみつる しるしやここに ととまらむ かみをしきてし あともきえねは | 高弁 |
2719 | たくひなき みのりのために をるはなは このひとえたも にほはさらめや | 摂津(二条太皇太后宮) |
2720 | かるるきも またはなのさく ちかひあれは わかみのならひ すゑもたのもし | 暹秀 |
2721 | たくひなき みのりをきくの はななれは つもれるつみは つゆものこらし | 忠通 |
2722 | さめぬまの まよひのうちの こころにて ゆめうつつとも なにかわくへき | 伏見院 |
2723 | むなしきを きはめをはりて そのうへに よをつねなりと またみつるかな | 為兼 |
2724 | けふはこれ なかはのはるの ゆふかすみ きえしけふりの なこりとやみむ | 伏見院 |
2725 | いにしへの はるのなかはを おもひいてて こころにくもる よはのつきかけ | 泰光(源師光男) |
2726 | つたへきて のこるひかりそ あはれなる はるのけふりに きえしよのつき | 家隆 |
2727 | のりのこゑに ききそわかれぬ なかきよの ねふりをさます あかつきのかね | 高弁 |
2728 | あまてらす つきのひかりは かみかきや ひくしめなはの うちとともなし | 伊勢大神宮 |
2729 | つくつくと おもひしとけは たたひとつ ほたいのみちそ このやまのみち | 春日明神 |
2730 | いさきよき ひこのたかねの いけみつに すまはこころの すまさらめやは | ひこの山の明神 |
2731 | とをかあまり よよといふよの みとひらき ひらくるみよは かくそたのしき | 賀茂御社 |
2732 | いよのくに うわのこほりの うをまても われこそはなれ よをすくふとて | 住吉明神 |
2733 | まちわひぬ いつかはここに きのくにや むろのこほりは はるかなれとも | 熊野神 |
2734 | われゆかむ ゆきてまもらむ はむにやたい しやかのみのりの あらむかきりは | 春日明神 |
2735 | よもすから ほとけのみなを となふれは ことひとよりも なつかしきかな | 新熊野明神 |
2736 | ちはやふる たまのすたれを まきあけて ねふつのこゑを きくそうれしき | 日吉聖真子 |
2737 | ちはやふる きみかいかきに まとゐせむ かたみにめくみ たるるとをしれ | 春日明神 |
2738 | たのもしき ちかひたかへて もろひとの まつためしには なれをひかせむ | 賀茂御社 |
2739 | いろふかく おもひけるこそ うれしけれ もとのちかひを さらにわすれし | 熊野神 |
2740 | ときのいたる をりをしらぬも あはれなり つとめてをみよ くるるひやなき | 大原野明神 |
2741 | ちかひてき あまのいはとを あけしより かたきねかひを かなふへしとは | 清水寺地主権現 |
2742 | まてしはし うらみなはてそ きみをまもる こころのほとは ゆくすゑをみよ | 熊野神 |
2743 | つらけれは つらしといひつ つらからて たのむとならは われもたのまむ | 清水寺地主権現 |
2744 | さくらはな ちらなむのちの かたみには まつにかかれる ふちをたのまむ | 熱田明神 |
2745 | かせはやみ なみのさわくに まかひつる ちとりのこゑは たえやしぬらむ | 道真 |
2746 | わかやとに ちもとのさくら はなさかは うゑおくひとの みもさかえなむ | 祇園 |
2747 | わかくには あまてるかみの ままなれは ひのもととしも いふにそありける | 良経(九条兼実男) |
2748 | かみかせや あさひのみやの みやうつし かけのとかなる よにこそありけれ | 実朝 |
2749 | みつかきや わかよのはしめ ちきりおきし そのことのはを かみやうけけむ | 後鳥羽院 |
2750 | めつらしき みゆきにゆつれ すみよしの かみのままなる まつのちとせを | 実兼 |
2751 | くもりなく いまもますみの かかみとは あまてるそらの ひかけにもしれ | 経顕(荒木田) |
2752 | かみにのみ つかふるみちの いへのかせ ふきつたへても よをいのるかな | 匡長 |
2753 | むかしより たのみしかみの ちかひにも もれぬわかみと いまそしりぬる | 良助法親王 |
2754 | かみよいかに みやこのつきに たひねして おもひやいつる しかのふるさと | 忠源 |
2755 | うきことの つひにたえすは かみにさへ うらみをのこす みとやなりなむ | 増基 |
2756 | ひとこそは わかこころをは しらねとも かみはあはれと なとかみさらむ | 行尊 |
2757 | いはしろの まつにちきりを むすひおきて よろつよまての めくみをそまつ | 後白河院 |
2758 | しもかれし かすかののへの くさのはも かみのめくみに またさかえけり | 良実 |
2759 | たのむへき かみとあらはれ みとなれり おほろけならぬ ちきりなるへし | 為兼 |
2760 | ひとはみな おくりむかふと いそくよを しめのうちにて あかしつるかな | 忠良 |
2761 | かみはよも おもひもすてし あふひくさ かけてふたたひ つかへつるみを | 隆良 |
2762 | ほとときす しめのあたりに なくこゑを きくわれさへに なのりせよとや | 少将内侍(後深草院) |
2763 | くもりなく わきてもそてに かけとめよ たのむみかさの やまのはのつき | 実氏 |
2764 | みかさやま ひはらまつはら みとりなる いろもてはやす あけのたまかき | 道良女 |
2765 | いはしみつ なかれのすゑの さかゆるは こころのそこの すめるゆゑかも | 後深草院 |
2766 | やはたやま さかゆくみねは こえはてて きみをそいのる みのうれしさに | 通光 |
2767 | きくたひに たのむこころそ すみまさる かものやしろの みたらしのこゑ | 定家 |
2768 | わかたのむ かものかはなみ たちかへり うれしきせせに あふよしもかな | 顕輔 |
2769 | うれしとも なかなかなれは いはしみつ かみそしるらむ おもふこころは | 忠盛 |
2770 | まことには かみそほとけの みちしるへ あとをたるとは なにゆゑかいふ | 慈円 |
2771 | たのもしな のりのまもりと ちかひてそ わかやまもとを かみはしめけむ | 良覚 |
2772 | をとこやま みねよりてらす つきかけは くもらぬひとの こころにそすむ | 頼舜 |
2773 | いはしみつ かさすふちなみ うちなひき きみにそかみも こころよせける | 読人不知 |
2774 | おほかたの よはうつるとも ますかかみ たのみをかけし かけなわすれそ | 弁内侍(後深草院) |
2775 | みかさやま もりのあたりは かみさひて つきすむのへに さをしかのこゑ | 冬基 |
2776 | あめのした かみのますてふ みかさやま かけにかくれぬ ひとはあらしな | 小弁 |
2777 | しきなみに たのみをかけし すみよしの まつもやいまは おもひすつらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
2778 | かすかやま かみのめくみは むかしにも こえてさかゆる きたのふちなみ | 祐賢 |
2779 | みかさやま かみはすてしと おもふこそ うきみにのこる たのみなりけれ | 泰方 |
2780 | かすかやま ちよのみゆきの かへるさに つきかけしたふ ありあけのそら | 弁内侍(後深草院) |
2781 | すめらきの ちよのみかけに かくれすは けふすみよしの まつをみましや | 朝子(従二位) |
2782 | いはしみつ なかれはふかき ちきりとも こよひやきみか くみてしるらむ | 公什 |
2783 | わするなよ くもはみやこを へたつとも なれてひさしき みくまののつき | 後白河院 |
2784 | しはしはも いかかわすれむ きみをまもる こころくもらす みくまののつき | 熊野のかんなき |
2785 | みくまのの みなみのやまの たきつせに みとせそぬれし こけのころもて | 良守 |
2786 | みつかきに ふるはつゆきを しろたへの ゆふしてかくと おもひけるかな | 増基 |
2787 | かしこまる してになみたの かかるかな またいつかはと おもふあはれに | 西行 |
2788 | うつしおく のりのみやまを まもるとて ふもとにやとる かみとこそきけ | 春誓 |
2789 | そのかみに いのりしすゑは わすれしを あはれはかけよ かものかはなみ | 俊成(藤原俊忠男) |
2790 | さりともと われはたのみし いにしへも うかるへきみと かみはしりけむ | 忠良 |
2791 | あまくたる かみやねかひを みつしほの みなとにちかき ちきのかたそき | 師光(中原師重男) |
2792 | きみかよを かみもさこそは みくまのの なきのあをはの ときはかきはに | 清寿 |
2793 | みなひとの いのるこころも ことわりに そむかぬみちを かみやうくらむ | 為守 |
2794 | かみかきに ひくしめなはの たえすして きみにつかへむ ことをしそおもふ | 雅経 |
2795 | いつのくに やまのみなみに いつるゆの はやきはかみの しるしなりけり | 実朝 |
2796 | ひとつにそ よをまもるらし あとたるる よものやしろの かみのこころは | 覚助法親王 |
2797 | かみよより みくさのたから つたはりて とよあしはらの しるしとそなる | 教良 |
2798 | たのむそよ かみのみかきの ひとよまつ まつにかひある いろをみるにも | 慈順 |
2799 | たのもしな ひかりをちりに ましへつつ あとをたるてふ くにつもろかみ | 実泰 |
2800 | すめらきも たのむみやゐと なりにけり たたやまかけの なこりはかりに | 為実(御子左藤原為氏男) |
2801 | たちかへる よとおもははや かみかせや みもすそかはの すゑのしらなみ | 慈円 |
2802 | きよみかた ふしのけふりや きえぬらむ つきかけみかく みほのうらなみ | 後鳥羽院 (099) |
2803 | ききのはな もえいつるくさの あさみとり いつれもはるの いろになりぬる | 道潤 |
2804 | あけぬとも をりやまとはむ うめのはな いつれともなく ゆきのふれれは | 躬恒 |
2805 | きてみへき ひともあらなくに わかやとの うめのはつはな ちりぬともよし | 赤人 |
2806 | おきのこる くさはもみえぬ ゆふつゆの わかそてにさへ またあまりぬる | 読人不知 |
2807 | やまのはを むらくもなから いてにけり しくれにましる あきのよのつき | 行念 |
2808 | よのなかは あすかかはにも ならはなれ きみとわれとか なかしたえすは | 小町 |
2809 | ここのへの うちはかはれと みかきもり おなしおもひそ いまもたくらむ | 公任 |
2810 | このよにて かたらひおかむ ほとときす してのやまちの しるへともなれ | 堀川(待賢門院) |
2811 | ひととせは みなはるなから すきななむ のとかにはなの いろもみるへく | 伏見院 |
2812 | をみのうらに ふなのりすらむ つまともの たまものすそに しほみつらむか | 人麿 |
2813 | いとへとも うきよのほかに ならぬみを たちはなるとも おもはさらなむ | 上東門院 |
2814 | うはたまの いもかくろかみ こよひもや わかなきとこに なひきてぬらむ | 人麿 |
2815 | いかにせむ いはまをつたふ やまみつの あさきちきりは すゑもとほらす | 家良 |
2816 | やまかはの いはまのなみの たかけれは かへらむことの かたくもあるかな | 御形宣旨 |
2817 | よもすから つきをなかめて ちきりおきし そのむつことに やみははれにき | 雅定 |
2818 | みつのうへに やとれるよはの つきかけの すみとくへくも あらぬわかみを | 公任 |