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「玉葉和歌集」一覧

2818件


1けふにあけて きのふににぬは みなひとの こころにはるの たちにけらしも貫之
2にはもせに ひきつらなれる もろひとの たちゐるけふや ちよのはつはる俊頼(源経信男)
3はるくれは ほしのくらゐに かけみえて くもゐのはしに いつるたをやめ定家
4あつさゆみ はるたつらしも もののふの やののかみやま かすみたなひく実兼
5はるきぬと おもひなしぬる あさけより そらもかすみの いろになりゆく伏見院
6はるかすみ かすみなれたる けしきかな むつきもあさき ひかすとおもふに為子(従二位)
7いつしかも かすみにけらし みよしのや またふるとしの ゆきもけなくに基忠(鷹司兼平男)
8よははやも はるにしあれや あしひきの やまへのとけみ かすみたなひく後伏見院
9とりのねも のとけきやまの あさあけに かすみのいろは はるめきにけり為兼
10かすしらす ひけるねのひの こまつかな ひともとにたに ちよはこもるを小弁
11きみかよを のへにいててそ いのりつる はつねのまつの すゑをはるかに俊成(藤原俊忠男)
12ねのひする のへにこまつを ひきつれて かへるやまちに うくひすそなく能宣
13けふよりは きみにひかるる ひめこまつ いくよろつよか はるにあふへき兼実
14よもすから おもひやるかな はるさめに のへのわかなの いかにもゆらむ具平親王
15さとひとや わかなつむらし あさひさす みかさののへは はるめきにけり為家
16ゆきませに むらむらみえし わかくさの なへてみとりに なりにけるかな出羽(■子内親王家)
17かすかのに またうらわかき さいたつま つまこもるとも いふひとやなき実氏
18のとかにも やかてなりゆく けしきかな きのふのひかけ けふのはるさめ伏見院
19まきもくの ひはらのやまの ふもとまて はるのかすみは たなひきにけり基俊
20まつのゆき きえぬやいつこ はるのいろに みやこののへは かすみゆくころ定家
21みわたせは むらのあさけそ かすみゆく たみのかまとも はるにあふころ後鳥羽院
22みねのゆき たにのこほりも とけなくに みやこのかたは かすみたなひく永福門院
23なにはかた いりえにたてる みをつくし かすむそはるの しるしなりける後嵯峨院
24かすみゆく なみちのふねも ほのかなり まつらかおきの はるのあけほの伏見院
25ももちとり こゑのとかにて をちこちの やまはかすめる はるのひくらし為子(従二位)
26よをこめて かすみまちとる やまのはに よこくもしらて あくるそらかな公経(藤原実宗男)
27かよふへき なみまもみえす あさほらけ かすみにうつむ しかのおほわた基氏
28はなおそき とやまのはるの あさほらけ かすめるほかは またいろもなし覚助法親王
29さえかへり やまかせあるる ときはきに ふりもたまらぬ はるのあはゆき為家
30うちきらし なほふるゆきも はるたつと いふはかりにや はなとみゆらむ家経(一条実経男)
31ひかけみぬ みやまかくれに なかれきて ゆきけのみつの またこほりぬる公継
32あはゆきは ふりもやまなむ またきより またるるはるの ちるとまかふに為家
33なほさゆる あらしはゆきを ふきませて ゆふくれさむき はるさめのそら永福門院
34ゆきとみて はなとやしらぬ うくひすの まつほとすきて なかすもあるかな躬恒
35うちなひき はるたちぬらし わかかとの やなきのうれに うくひすなきつ人麿
36としふれと かはらぬものは うくひすの はるしりそむる こゑにそありける定頼
37うくひすも ちよをやちきる としをへて かはらぬこゑに はるをつくなり俊成(藤原俊忠男)
38ふるゆきも うくひすのねも はるくれは うちとけやすき ものにそありける花山院
39うくひすの ねはのとけくて あしひきの やまのゆきこそ したきえにけれ元輔(清原春光男)
40をさまれる みよのはるとや うくひすの なくねもけさは のとけかるらむ冬平
41たにかけの こほりもゆきも きえなくに まつうちとくる うくひすのこゑ教良
42わかやとの うめかえになく うくひすは かせのたよりに かをやとめこし朝忠
43しろたへの うめかえになく うくひすは ゆきふるすをや おもひいつらむ顕昭
44ゆきのうちも はるはしりけり ふるさとの みかきかはらの うくひすのこゑ為氏
45うちなひき はるさりくれは ひさきおふる かたやまかけに うくひすそなく実朝
46やまさとは うくひすなきぬ いまよりや みやこのそらも はるめきぬらむ親宗(平時信男)
47はなもまた にほはぬころの あさなあさな なけやうくひす はるとおもはむ按察(鷹司院)
48うくひすの けさなくときそ やまかつの かきほもはるに あふここちする下野(後鳥羽院)
49ひとしれす まちしもしるく うくひすの こゑめつらしき はるにもあるかな兼盛
50はるかすみ たちへたつれと うくひすの こゑはかくれぬ ものとしらすや経盛
51はるかすみ へたてぬものを うくひすの こゑするかたを なとかとひこぬ公通
52まとちかき たけのはかせも はるめきて ちよのこゑある やとのうくひす貞時
53なほさりに ひとむらうゑし くれたけを ねくらにしめて うくひすそなく季経
54あめそそく そののくれたけ えたたれて ゆふへのとかに うくひすそなく実泰
55またさかぬ うめのこすゑに うくひすの のとけきこゑは いまそきこゆる花園院
56かすみたち なくうくひすの こゑきけは いまよりさかむ はなそまたるる教良女
57はることに なくとはすれと うくひすの こゑにはあかぬ ものにさりけり大弐(二条太皇太后宮)
58はなはなほ えたにこもりて うくひすの こつたふこゑそ いろはありける守覚法親王
59おしなへて はるさめふりぬ わかやとの わかきのうめは はやもさかなむ実経
60しろたへの いろはまかひぬ あはゆきの かかれるえたの うめのはつはな後宇多院
61あさあけの まとふくかせは さむけれと はるにはあれや うめのかそする親子(従三位源)
62しらゆきに ふりかくさるる うめのはな ひとしれすこそ にほふへらなれ貫之
63ふるゆきの したににほへる うめのはな しのひにはるの いろそみえける信明
64みにおはぬ かさしなりとも おなしくは わかきのうめの はなやをらまし信実
65うもれきの したにやつるる うめのはな かをたにちらせ くものうへまて紫式部
66いろにつき にほひにめつる こころとも うめかえよりや うつりそめけむ俊成(藤原俊忠男)
67をるそてに にほひはとまる うめかえの はなにうつるは こころなりけり定家
68うめのはな うすくれなゐに さきしより かすみいろつく はるのやまかけ良経(九条兼実男)
69やまさとの うめのたちえの ゆふかすみ かかるすまひを とふひとのなき慈円
70うめかえの はなのありかを しらねとも そてこそにほへ はるのやまかせ宮内卿(後鳥羽院)
71やまさとは あらしにかをる まとのうめ かすみにむせふ たにのうくひす有家(藤原重家男)
72すみそめの そてさへにほふ うめのはな うたてこころも いろになれとや寂蓮
73うめのはな さかぬかきねも にほふかな よそのこすゑに かせやふくらむ長方
74うめのはな にほひもゆきに うつもれは いかにわきてか けさはをらまし清輔
75きみみすは かひなからまし うめのはな にほひはゆきに うつもれすとも読人不知
76みるほとに ちらはちらなむ うめのはな しつこころなく おもひおこせし和泉式部
77やまかつの そののかきほの うめのはな はるしれとしも うゑすやありけむ順徳院
78あかなくの にほひをちらす うめかえの はなにいとはぬ にはのはるかせ亀山院
79いろもかも ことしのはるは うめのはな ふたたひにほふ ここちこそすれ公忠(源国紀男)
80やとことに うめのはなちる ひさかたの そらよりゆきの ふるとみるまて旅人
81ちりのこる かきねかくれの うめかえに うくひすなきぬ はるのゆふくれ長家
82うめかえの しほめるはなに つゆおちて にほひのこれる はるさめのころ宗尊親王
83うめのはな くれなゐにほふ ゆふくれに やなきなひきて はるさめそふる為兼
84みねのかすみ ふもとのくさの うすみとり のやまをかけて はるめきにけり永福門院
85あつさゆみ おしてはるさめ ふるさとの みかきかはらそ うすみとりなる家隆
86なにとなく さへつるやまの とりのねも もののあはれは はるのあけほの寂蓮
87うちわたす さほのかはらの あをやきも いまははるへと もえにけるかも坂上郎女
88はるさめの うちふることに わかやとの やなきのすゑは いろつきにけり人麿
89わかやとの やなきのいとは ほそくとも くるうくひすの たえすもあらなむ道綱母
90のとかなる ゆふへのやまは みとりにて かすみになひく あをやきのいと後二条院
91やまもとの かすみのそこの うすみとり あけてやなきの いろになりぬる兼行
92さほひめの うちたれかみの たまやなき たたはるかせの けつるなりけり匡房
93はるくれは たまのみきりを はらひけり やなきのいとや とものみやつこ俊成(藤原俊忠男)
94たまやなき にほふともなき えたなれと みとりのいろの なつかしきかな俊成(藤原俊忠男)
95たまほこの みちならなくに はるはると よりてそみつる あをやきのいと後嵯峨院
96なみかくる たつたかはらの ふしやなき こすゑはそこの たまもなりけり俊恵
97やまのはも きえていくへの ゆふかすみ かすめるはては あめになりぬる伏見院
98へたてつる かすみややかて くもるらむ いこまのやまの はるさめのそら雅経
99つくつくと はるひのとけき にはたつみ あめのかすみる くれそさひしき道良女
100なへてよは くれこそゆくに はるさめの はるるかくもの ひまのしらめる新宰相(伏見院)
101つれつれと あめふりくらす はるのひは つねよりなかき ものにそありける章義門院
102なかめする みとりのそらも かきくもり つれつれまさる はるさめそふる俊成(藤原俊忠男)
103はるさめの ふるとはそらに みえねとも きけはさすかに のきのたまみつ宮内卿(後鳥羽院)
104はるさめは くるひともなく あとたえぬ やなきのかとの のきのいとみつ俊成(藤原俊忠男)
105あめはるる なこりもかすむ あさあけの やなきのいとに かかるしらつゆ公顕
106あさみとり やなきのえたの かたいともて ぬきたるたまの はるのあさつゆ為家
107ふるさとと あはれいつくを さためてか あきこしかりの けふかへるらむ経信
108はるかすみ なほたちかくせ かへるやま こえゆくかりの みちまとふかに師継
109かりかねの もみちにかけし たまつさを はなにつけてや もてかへるらむ重保
110あくるよの たのものかすみ わけすきて やまもとわたる はるのかりかね雅有
111すゑとほき わかはのしはふ うちなひき ひはりなくのの はるのゆふくれ定家
112あたらよの あはれをしるや よふことり つきとはなとの ありあけのそら家隆
113おのかつま こひわひにけり はるののに あさるききすの あさなあさななく実朝
114かりにくる ひともこそあれ はるののに あさなくきしの ちかくもあるかな
115はるののに こころやらむと おもふとち いてこしけふは くれすもあらなむ人麿
116ひとりのみ なかむるやとの はるのひは さもくれかたき ものにそありける高遠
117ふるさとに いまかまつらむ かへるさの ときをわすれぬ はるのかりかね資季
118こしかたに かへるならひの またもあらは くもゐのかりに ねをやそへまし実兼
119あさなきに ゆきかふふねの けしきまて はるをうかふる なみのうへかな定家
120いつくより たちはしむらむ わたのはら かすみをわけて よするうらなみ実重(三条公親男)
121やまのはは そこともわかぬ ゆふくれに かすみをいつる はるのよのつき宗尊親王
122くもりなく さやけきよりも なかなかに かすめるそらの つきをこそおもへ定頼
123くもみたれ はるのよかせの ふくなへに かすめるつきそ なほかすみゆく親子(従三位源)
124なかむれは そこはかとなく かすむよの つきこそはるの けしきなりけれ後宇多院
125よよしとも ひとにはつけし はるのつき うめさくやとは かせにまかせて実兼
126しるしらす わきてはまたす うめのはな にほふはるへの あたらよのつき定家
127なにはかた おほろつきよの いりしほに あけかたかすむ あはちしまやま実伊
128しられすも こころのそこや はるになる ときなるころと はなのまたるる伏見院
129はなよいかに はるひうららに よはなりて やまのかすみに とりのこゑこゑ伏見院
130やまさむみ はなさくへくも なかりけり あまりかねても たつねきにける西行
131おほつかな いつれのやまの みねよりか またるるはなの さきはしむらむ西行
132ききのこころ はなちかからし きのふけふ よはうすくもり はるさめのふる永福門院
133ゆきてみむ いまははるさめ ふるさとに はなのひもとく ころもきにけり高倉(八条院)
134はななれや かすみのまより はつせやま はつかにみゆる みねのしらくも家隆
135いましはや はなさきぬらし はつせやま あさゐるくもの みねにかをれる実兼
136やまさくら このよのまにや さきぬらし あさけのかすみ いろにたなひく伏見院
137おほかたの はなのさかりも ほともあらし にはのひときは さきそめにけり基忠(鷹司兼平男)
138みわたせは しらゆふかけて さきにけり かみをかやまの はつさくらはな宗尊親王
139やまたかみ あさゐるくもと みえつるは よのまにさける さくらなりけり成仲
140たえたえに かかれるみねの しらくもや はやさきそむる さくらなるらむ経平(藤原家基男)
141さかりをは なほまつえたの のこれとも あまたこすゑに はなそなりぬる道潤
142はなならし かすみてにほふ しらくもの はるはたちそふ みよしののやま後二条院
143いろいろの にしきとみゆる はなさくら はるのかすみや たちかさぬらむ定頼
144はなみにと むれつつひとの くるのみそ あたらさくらの とかにはありける西行
145なかむるに はなのなたての みならすは このもとにてや はるをくらさむ西行
146ささなみや なからのやまの はなさかり しかのうらかせ ふかすもあらなむ師俊
147とふひとも をらてをかへれ うくひすの はかせもつらき やとのさくらを式子内親王
148をちこちの やまはさくらの はなさかり のへはかすみに うくひすのこゑ永福門院
149はるかすみ あやななたちそ くものゐる とほやまさくら よそにてもみむ実雄
150みやこには くもとやみらむ わかやとの のきはにちかき やまのさくらを万秋門院
151さきましる はなをわけとや しらくもの やまをはなれて たちのほるらむ仲綱
152さきたちて たれみよしのの やまさくら しらぬしをりの あとつけてけり公経(藤原実宗男)
153たかはるの くものなかめに くれぬらむ やとかるはなの みねのこのもと定家
154はつせやま をのへのはなは かすみくれて ふもとのひひく いりあひのこゑ憲淳
155はるさめの ふるきのさくら けふしこそ をりえてはなの いろもみえけれ亀山院
156つゆをおもみ こすゑたれたる いとさくら やなきかえたに さくかとそみる実兼
157みちのへや このしたことの やすらひに まつらむはなの やとやくれなむ伏見院
158のこりなく たつぬなれとも しめのうちの はなははなにも あらぬなるへし選子内親王
159かせをいたみ まつやまへをそ たつねつる しめゆふはなは ちらしとおもひて頼宗
160さくらはな あかぬにほひに さそはれて はるはやまちに ゆかぬひそなき師忠(源師房男)
161あすもこむ けふもひくらし みつれとも あかぬははなの にほひなりけり伊通
162さくらはな ひくらしみつつ けふもまた つきまつほとに なりにけるかな為仲(橘義通男)
163わかために をれやひとえた やまさくら いへつとにとは おもはすもあれ小侍従(太皇太后宮)
164わりなしや ほかにもはなの なくはこそ ひときかもとに ひをもくらさめ顕昭
165はなのいろは あかしとそおもふ よろつよを さなからはるに なしてみるとも長方
166こたちをは つくろはすして さくらはな かさかくれにそ ううへかりける花山院
167いかにまた またせまたせて さくらはな みるほともなく ちらむとすらむ大弐(二条太皇太后宮)
168みるほとは よのうきことも わすれけり またもはなをそ ううへかりける具平親王
169おいらくは こころのいろや まさるらむ としにそへては あかぬはなかな清輔
170ゆきめくり みれともあかす やまさくら われのみならは かへらましやは輔親
171ふるさとを たちなかくしそ はるかすみ はなのさかりは ゆきてみるへく贈皇后宮
172あたなりと おもひなすてそ またちらぬ はなよりさきに うつろひぬとて公任
173としをへて かはらすにほふ はななれと みるはることに めつらしきかな中務内侍(伏見院)
174おもひそめき よつのときには はなのはる はるのうちにも あけほののそら為兼
175あたしいろに なほうとまれぬ さくらはな まつもをしむも ものをこそおもへ兼季
176ひととせに まれなるはるの うちもなほ あひみるはなの ころそすくなき為実(御子左藤原為氏男)
177はなのうちに いかにちきりて さくらしも はるにことなる なをのこしけむ後伏見院
178おそくとき あまたこすゑを みるときそ はなのさかりの ほとはひさしき冬平
179をりかさす みちゆきひとの けしきにて よはみなはなの さかりをそしる永福門院
180とりのこゑ かすみのいろを しるへにて おもかけにほふ はるのやまふみ定家
181さくらはな にほふをみつつ かへるには しつこころなき ものにそありける兼輔
182たちかへり はなをそわれは うらみつる ひとのこころを とめぬとおもへは定方
183さくらはな をりてかささむ くろかみの かはれるいろに みえまかふへく躬恒
184ゆきかとそ よそにみつれと さくらはな をりてはにたる いろなかりけり小式部内侍
185さととほみ あまりおくなる やまちには はなみにとても ひとこさりけり孝標女
186さくらさく ならのみやこを みわたせは いつくもおなし やへのしらくも匡房
187やへにほふ はなをむかしの しるへにて みぬよをしたふ ならのふるさと範憲
188みよしのの やまのあなたの さくらはな ひとにしられぬ ひとやみるらむ順徳院
189なかめやる よものやまへも さくはなの にほひにかすむ きさらきのそら基平(近衛兼経男)
190いまはよに おもひますへき かたもなし こころのとかに はなをたにみむ実経
191おいらくは わかみのほかの はるなれは はなみてたにも なみたおちけり雅有
192ことかたも またゆかしさに やまさくら おなしひときを しつかにもみす為守
193はるのよの あけゆくそらは さくらさく やまのはよりそ しらみそめける実房
194ほのほのと はなのよこくも あけそめて さくらにしらむ みよしののやま公経(藤原実宗男)
195かすみかは はなうくひすに とちられて はるにこもれる やとのあけほの定家
196やまもとの とりのこゑこゑ あけそめて はなもむらむら いろそみえゆく永福門院
197あはれしはし このときすきて なかめはや はなののきはの にほふあけほの為子(従二位)
198はるはたた くもれるそらの あけほのに はなはとほくて みるへかりける親子(従三位源)
199をちかたの はなのかをりも ややみえて あくるかすみの いろそのとけき内侍(永福門院)
200けさまては のこるかたえも さきそひて ゆふへにはなの さかりをそみる家基(近衛基平男)
201なかめくらす いろもにほひも なほそひて ゆふかけまさる はなのしたかな宗秀(大江時秀男)
202さかりなる みねのさくらの ひとついろに かすみもしろき はなのゆふはえ雅孝
203やまのはに いりひうつろふ くれなゐの うすはなさくら いろそことなる亀山院
204さきみてる はなのかをりの ゆふつくひ かすみてしつむ はるのとほやま実兼
205あくかるる こころのままに はなをみは はるはやまちや すみかならまし御匣(式乾門院)
206ふくかせの さそはぬさきと またるるを とはすははなの なをややつさむ冬平
207たつねても いろをそふへき みならねは とふにつけてや はなもやつれむ為子(従二位)
208たちこむる かすみのほかも やまさくら はなににほへる ゆふくれのそら貞時
209くもにうつる ひかけのいろも うすくなりぬ はなのひかりの ゆふはえのそら為顕
210めにちかき にはのさくらの ひときのみ かすみのこれる ゆふくれのいろ道良女
211やまのはの つきまつそらの にほふより はなにそむくる はるのともしひ定家
212はなかをり つきかすむよの たまくらに みしかきゆめそ なほわかれゆく為相
213いりあひの こゑするやまの かけくれて はなのこのまに つきいてにけり永福門院
214おほろなる かけとはなにか おもひけむ はなにうつろふ はるのよのつき公孝
215くれぬとも やとをはとはし やまさくら つきにもはなは みえぬものかは冬平
216ふたもとの はなのひかりを そへむとや かすまていつる はるのよのつき貞時
217ちりぬへき はなをのみこそ みにきつれ おもひもよらぬ あをやきのいと頼宗
218うくひすの きゐるはかせに ちるはなを のとけくみむと おもひけるかな重之
219ちりそむる はなのはつゆき ふりぬれは ふみわけまうき しかのやまこえ西行
220さくらさく たかねにかせや わたるらむ くもたちさわく をはつせのやま兼実
221やまふかき たにふきのほる はるかせに うきてあまきる はなのしらゆき為家
222くもとなり ゆきとふりしく やまさくら いつれをはなの いろとかもみむ実氏
223さそひゆく はなのこすゑの はるかせに くもらぬゆきそ そらにあまきる為教
224にはのおもは ふりしくゆきと みるなへに こすゑははなそ まれになりゆく俊言
225しらくもの たなひくいろも かつきえぬ はなちるやまの みねのはるかせ実兼
226ちるはうく かはなつかしき はなのえに いとひいとはぬ はるのやまかせ房実
227さとはみな ちりはてにしを あしひきの やまのさくらは またさかりなり躬恒
228あしひきの やまへをてらす さくらはな このはるさめに ちりぬらむかも読人不知
229はなならぬ なくさめもなき やまさとに さくらはしはし ちらすもあらなむ相模
230ここのへに うつささりせは やまさくら ひとりやこけの うへにちらまし宗忠
231えたしあらは またもさきなむ かせよりも をるひとつらき はなさくらかな教長
232うきよには ととめおかしと はるかせの ちらすははなを をしむなりけり西行
233はるのよの かすめるそらの つきかけに ちりしくはなの いろはまかひぬ後冷泉院
234ちりつもる にはにひかりを うつすより つきこそはなの かかみなりけれ光行
235みよしのの みねのはなその かせふけは ふもとにくもる はるのよのつき実氏
236あきもなほ しのはれぬへき ひかりかな はなしくにはの おほろよのつき久明親王
237はるかせに こころをしはし やとしおきて はなのをしさを しらせてしかな祐盛
238はることに さそふあらしの なくもかな ちよもとはなを みるひとのため道玄
239はなならて またなくさむる かたもかな つれなくちるを つれなくてみむ式子内親王
240わかみよに ふるともなしの なかめして いくはるかせに はなのちるらむ定家
241こすゑより あらしふきおろす そまかはの いかたをこゆる はなのしらなみ斉時
242にはのおもは うつみさたむる かたもなし あらしにかろき はなのしらゆき国助
243おもひきや そらにしられぬ ゆきもなほ くものうへまて ちらむものとは蓮生法師
244おもひやる なへてのはなの はるのかせ このひともとの うらみのみかは為兼
245みよしのの やまのあなたに ちるはなを ふきこすかせの たよりにそしる雅頼
246をしとおもふ はなのあるしを おきなから わかものかほに さそふかせかな有仁
247みつのおもに うきてなかるる さくらはな いつれをあわと ひとはみるらむ躬恒
248ふりくらす あめしつかなる にはのおもに ちりてかたよる はなのしらなみ基忠(鷹司兼平男)
249すきうつる ときとかせとそ うらめしき はなのこころは ちらむともせし永福門院
250なへてよの はるのこころは のとけきに うつろひやすく はなのちるらむ後宇多院
251きのふこえし をのへのさくら ちりにけり けふかへるさの みちまとふまて実泰
252さくらはな こすゑさひしく ちりすきて のこれるえたに はるそすくなき師教(九条忠教男)
253たちならふ みねのこすゑを ふくかせに まつよりもちる やまさくらかな為相
254ふきよわる あらしのにはの このもとに ひとむらしろく はなそのこれる家親
255もろくちる はなをはかろく ふきなして やなきにおもき はるのゆふかせ貞広
256かせにさそ ちるらむはなの おもかけの みぬいろをしき はるのよのやみ道良女
257むかしまて おもふもつらし はるかせに はなちらせとは たれをしへけむ顕昭
258はるかせの やまのたかねを ふきこせは こすゑもみえぬ はなそちりける経信
259のとかなる いりあひのかねは ひひきくれて おとせぬかせに はなそちりくる清雅
260ちるそうき おもへはかせも つらからす はなをわきても ふかはこそあらめ経正
261なかめつつ なれにしはるを かそへても ふりぬるみこそ はなにをしけれ覚助法親王
262いかにせむ みにもやくると やまさくら またるるはなも ちりはてぬへき中将(選子内親王家)
263まちつけて ちりはてぬとも やまさくら しはしはにはを はらはさらなむ中務(選子内親王家)
264はなをこそ ちらぬさきにと たつねつれ ゆきをわけても かへりぬるかな赤染衛門
265みよしのの いはもとさらす なくかはつ うへもなきけり このかはのせに読人不知
266さきいつる やへやまふきの いろぬれて さくらなみよる はるさめのには為子(従二位)
267ゆきとのみ さくらはちれる このしたに いろかへてさく やまふきのはな為世(御子左藤原為氏男)
268はるさめに ぬれぬれをらむ けふすきは ゐてのやまふき ちりもこそすれ基俊女
269やへにのみ ありとみえつる やまふきの ここのへちかく さきにけるかな忠見
270さくらちり はるのくれゆく ものおもひも わすられぬへき やまふきのはな俊成(藤原俊忠男)
271はなはちり とりはまれなる ころにしも さくやまふきは こころありけり仁澄
272はなもちり とりもかへりぬ あはれてふ ことをあまたに くるるはるかな道玄
273ととまらぬ わかれのみかは はなとりの なこりにつけて をしきはるかな宗宣(北条宣時男)
274いまはとて さくらなかるる よしのかは みつのはるさへ せくかたもなし公経(藤原実宗男)
275はなとりの いろねもたえて くるるそらの かすみはかりに のこるはるかな公雄
276はるとてや やまほとときす なかさらむ あをはのききの むらさめのやと伏見院
277ぬれてをる ふちのしたかけ つゆちりて はるやいくかの ゆふくれのあめ基良
278いろふかく にほへるふちの はなゆゑに のこりすくなき はるをこそおもへ公忠(源国紀男)
279ふちなみの はなさくみれは ほとときす なくへきときは ちかつきにけり赤人
280はなたにも ちりのこらなむ おのつから をしむにとまる はるかともみむ頼基(大中臣輔道男)
281はなはたた かせのつらさに なしはてぬ はるをはなにの さそひてかゆく定成(藤原経朝男)
282なれきつる はなのなこりも あはれなり みはななそちの はるのくれかた右京大夫(玄輝門院)
283はるをしたふ なこりのはなも いろくれぬ とよらのてらの いりあひのそら実兼
284はるをしたふ こころのともそ あはれなる やよひのくれの うくひすのこゑ章義門院
285えたにちる はなこそあらめ うくひすの ねさへかれゆく はるのくれかな二条院讃岐
286くれてゆく はるののこりを なかむれは かすみのそこに ありあけのつき式子内親王
287をしめとも こよひもあけは ゆくはるを あすはかりとや あすはおもはむ頼政
288なかめやる とやまのあさけ このままに かすめやあすも はるをのこして為子(従二位)
289とふとりの おくりのつはさ しをるらし くもちあめなる はるのわかれに伏見院
290としをへて はるのをしさは まされとも おいはつきひの はやくもあるかな俊成(藤原俊忠男)
291よもすから をしみをしみて あかつきの かねとともにや はるはつくらむ行慶/行広
292めくりゆかは はるにはまたも あふとても けふのこよひは のちにしもあらし為兼
293はなとりの あかぬわかれに はるくれて けさよりむかふ なつやまのいろ実兼
294いつしかと かへつるはなの たもとかな ときにうつるは ならひなれとも俊成(藤原俊忠男)
295さくらいろの はなのたもとを たちかへて ふたたひはるの なこりをそおもふ忠良
296はるはすて またほとときす かたらはぬ けふのなかめを とふひともかな式子内親王
297おほゐかは いはなみはやく はるくれて いかたのとこに なつそきにける俊成女
298けふはいとと さくらもとこそ ゆかしけれ はるのかたみに はなやのこると周防内侍
299をしやなほ さくらやまふき ちりしをれ はるなりぬへき けふのけしきを伏見院
300のこりける みやまかくれの おそさくら なつさへかせを なほやいとはむ実氏
301うすみとり ましるあふちの はなみれは おもかけにたつ はるのふちなみ永福門院
302うのはなの ちらぬかきりは やまさとの このしたやみも あらしとそおもふ公任
303さかきとる ころとはしるし しろたへに ゆふかけわたす もりのうのはな為家
304うのはなの つゆにひかりを さしそへて つきにみかける たまかはのさと為教
305ときやいつ そらにしられぬ つきゆきの いろをうつして さけるうのはな覚助法親王
306つきかけの もるかとみえて なつこたち しけれるにはに さけるうのはな経親(平時継男)
307ほとときす なくへきさとを さためねは けふもやまちを たつねくらしつ道済
308われききて ひとにはつけむ ほとときす おもふもしるく まつここになけ躬恒
309ほとときす いまやとおもふ やまのはに つきをまつこと なれをこそまて実氏
310ひとこそあれ やまほとときす おのれさへ なとわかやとに おとつれもせぬ公雄
311つきたにも こころつくさぬ やまのはに まつよひすくる ほとときすかな為氏
312ひとをわく なさけなりけり ほとときす わかねさめには おとつれもせす実俊(西園寺公相男)
313なきぬへき くものけしきに まちなして いまやとたのむ ほとときすかな道潤
314このさとに をりはへきなけ ほとときす ほかにはをしむ はつねなりとも通重
315いまたにも なかてはあらし ほとときす むらさめすくる くものゆふくれ小兵衛督(章義門院)
316なきぬへき ゆふくれことの あらましに きかてなれぬる ほとときすかな伏見院
317ふちなみの ちらまくをしみ ほとときす いまきのをかに なきてこゆなり読人不知
318かくはかり あめのふらくに ほとときす うのはなやまに なほかなくらむ人麿
319ほとときす そらにこゑして うのはなの かきねもしろく つきそいてぬる永福門院
320まちえても たれかはきかむ ほとときす たたひとこゑを さよふけてなく雅経
321なほさりに まつひとはみな ねぬるよの ふけてのちなく ほとときすかな斉時
322まつときは やまほとときす とほけれと ねさめのこゑは まくらにそきく重之女
323ほとときす くもゐのこゑを きくひとは こころもそらに なりそしにける読人不知
324ふくるよに おきてきかすは ほとときす はつかなるねを たれかしらまし読人不知
325さとなるる たそかれときの ほとときす きかすかほにて またなのらせむ西行
326いつしかと なきわたるなり ほとときす くもゐにてこそ まつへかりけれ周防内侍
327いくこゑか きみはききつる ほとときす いもねぬわれは かすもしられす大弐三位
328いなりやま こえてやきつる ほとときす ゆふかけてのみ こゑのきこゆる頼実(源頼国男)
329いまよりは やとにてまたむ ほとときす たつねぬひとそ まつはききける康資王母
330ほとときす すきつるかたの くもまより なほなかめよと いつるつきかけ丹後(宜秋門院)
331ほとときす こゑさやかにて すくるあとに をりしもはるる むらくものつき道良女
332ほとときす なきつるくもを かたみにて やかてなかむる ありあけのそら式子内親王
333わかための はつねとのみや ほとときす おなしねさめの ひとはきくらむ宣直
334いくこゑも なほきかましを ほとときす ねさめのさきも なきやしつらむ新宰相(伏見院)
335ひとこゑは なほしもつらし ほとときす きかぬよりはと おもひなせとも道因
336あはれにも ともにふしみの さとにきて かたらひあかす ほとときすかな俊成(藤原俊忠男)
337ともにきく ひとこそかはれ ほとときす ことしもこその こゑになくなり実氏
338きくたひに あはれとそおもふ ほとときす われにかたらふ こゑならねとも御匣(式乾門院)
339ほとときす くものいつくそ むらさめの はれゆくあとの よはのひとこゑ煕時
340つきのこる ねさめのそらの ほとときす さらにおきいてて なこりをそきく為兼
341さつきまつ はなのかをりに そてしめて くもはれぬひの ゆふくれのあめ景綱
342あつまやの のきはにねさせ あやめくさ うゑぬしのふも おひすやはあらぬ経正
343けふといへは あやめはかりそ ふきそふる のきはふりぬる よもきふのやと公雄
344たにふかき いはねのあやめ きみかため なかきためしを ひきいてつるかな弁乳母
345あやめふく かやかのきはに かせすきて しとろにおつる むらさめのつゆ後鳥羽院
346しつかふく あやめのすゑを たよりにて すみかならふる のきのささかに宮内卿(後鳥羽院)
347あやめふく のきはすすしき ゆふかせに やまほとときす ちかくなくなり讃岐
348みかきなす たまえのなみの ますかかみ けふよりかけや うつしそめけむ為家
349くれぬとて ちまちのさなへ とりとりに いそくもしるき たこのもろこゑ越前(嘉陽門院)
350さひしとは たれかいひけむ やまさとを みせはやたこの さなへとるころ家隆
351をやまたに みゆるみとりの ひとむらや またとりわけぬ さなへなるらむ家教
352とききぬと おりたつたこの てもたゆく とるやさなへも いまいそくなり具顕
353ふりそむる そかのかはらの さみたれに またみつあさし ますけからなむ隆祐
354さみたれは はれぬとみゆる くもまより やまのいろこき ゆふくれのそら宗尊親王
355さみたれは いさらをかはを たよりにて そとものをたを みをになしぬる実家(藤原公能男)
356さなへとる しつかをやまた ふもとまて くももおりたつ さみたれのころ為家
357さみたれは はれむとやする やまのはに かかれるくもの うすくなりゆく花園院
358なにはえや あまのたくなは ほしわひて けふりもしめる さみたれのころ後鳥羽院
359やまさとの ゆきにはあとも いとはれす とへかしひとの さみたれのころ慈円
360にはのおもも くもにへたたる しはかきの しはしひまあれ さみたれのそら定家
361さみたれに うききなかれて おほゐかは くたすいかたの かすそそひぬる公雄
362そまひとの とらぬまきさへ なかるなり にふのかはらの さみたれのころ宮内卿(後鳥羽院)
363こまとめて かけみるみつや にこるらむ ひのくまかはの さみたれのころ祐茂
364さみたれに みつしまされは おとはかは せきいれぬやとも おつるたきつせ経正
365みやこひと こともやとふと まつのかと くもとちはつる さみたれのそら俊成(藤原俊忠男)
366いたつらに くもゐるやまの まつのはの ときそともなき さみたれのそら定家
367はれやらぬ くもよりかけは もらねとも つきよはしるし さみたれのそら宗宣(北条宣時男)
368さみたれの はれぬるよはの ほとときす つきとともにや やまをいてけむ雅孝
369さみたれの くもまののきの ほとときす あめにかはりて こゑのおちくる慈円
370さみたれの つきのほのかに みゆるよは ほとときすたに さやかにをなけ躬恒
371すきぬとも こゑのにほひは なほとめよ ほとときすなく やとのたちはな守覚法親王
372たちはなの はなちるさとの にはのあめに やまほとときす むかしをそとふ良経(九条兼実男)
373たちはなの やとりをとはは ほとときす われにむかしの ことかたらなむ実兼
374さみたれの くもふきすさふ ゆふかせに つゆさへかをる のきのたちはな為道
375わすれすよ みきのつかさの そてふれし はなたちはなや いまかをるらむ亀山院
376とほちより ふきくるかせの にほひこそ はなたちはなの しるへなりけれ安芸(郁芳門院)
377かかりひの かけしうつれは ぬはたまの よかはのそこは みつももえけり貫之
378おほゐかは うふねのかかり ほのみえて くたすやなみの よるそしらるる亀山院
379かつらひと つきのひかりの ささぬよも のほるうふねに さをはとるらし実兼
380くれのあめに かはせのみつや まさるらむ はやくそくたる かかりひのかけ道平
381ゆふやみの うかはのかかり くたしすきて あらぬほたるそ またもえてゆく宗秀(大江時秀男)
382うかひふね さをさしつつき のほるらし あまたみえゆく かかりひのかけ俊言
383ゆふつくひ よそにくれぬる このまより さしくるつきの かけそすすしき後宇多院
384あまのはら くもゐはなつの よそなれや みれはすすしき つきのかけかな基顕
385いててのち またほともへぬ なかそらに かけしらみぬる みしかよのつき公守
386さえたもる かけそほとなき くれたけの よわたるつきの あけやすきころ基忠(鷹司兼平男)
387よにかかる すたれにかせは ふきいれて にはしろくなる つきそすすしき教良女
388にはのうへの みつおとちかき うたたねに まくらすすしき つきをみるかな信実
389かたふかて つきのあけゆく みしかよは いるかたをしむ やまのはもなし俊平(源泰光男)
390かせにもる このまのつきも すすしきは まつはらたかき やまかけのやと冬平
391つきかけも なつのよわたる いつみかは かはかせすすし みつのしらなみ俊成女
392なつのよは しつまるやとの まれにして ささぬとくちに つきそくまなき親子(従三位源)
393またよひと おもへはしらむ よこくもに やかてまきるる みしかよのつき有忠
394くるるより なかむるたにも ほとなきに ゆふやみをしき みしかよのつき新宰相(伏見院)
395つきかけの かすむもつらし よそまては けふりなたてそ よはのかやりひ基忠(鷹司兼平男)
396ここのみと けふりをわけて すきゆけは またすゑくらき しつかかやりひ公守
397やみよりも すくなきよはの ほたるかな おのかひかりを つきにけたれて為守女
398くさふかき まとのほたるは かけきえて あくるいろある のへのしらつゆ雅有
399かきくらす さつきのさよの あまくもに かくれぬほしは ほたるなりけり覚延
400このまより みゆるはたにの ほたるかも いさりにあまの うみへゆくかも喜撰
401くさむらに ほたるみたるる ゆふくれは つゆのひかりそ わかれさりける宣旨(六条斎院)
402ゆふまくれ かせにつれなき しらつゆは しのふにすかる ほたるなりけり惟明親王
403のきしろき つきのひかりに やまかけの やみをしたひて ゆくほたるかな宮内卿(後鳥羽院)
404ふくかせに なひくさはへの くさのはに こほれぬつゆや ほたるなるらむ実房
405やまかけや くらきいはまの わすれみつ たえたえみえて とふほたるかな為理
406あつさゆみ やたのひろのの くさしけみ わけいるひとや みちまとふらむ教良
407ゆきなやむ うしのあゆみに たつちりの かせさへあつき なつのをくるま定家
408をちのそらに くもたちのほり けふしこそ ゆふたちすへき けしきなりけれ家親
409ゆふたちの なこりはかりの にはたつみ ひころもきかぬ かはつなくなり順徳院
410ゆふたちの なこりのしはふ みつこえて しはしなかるる にはのうたかた円伊
411ひをさふる ならのひろはに なくせみの こゑよりはるる ゆふたちのそら道助法親王
412やまたかみ こすゑにあらき かせたちて たによりのほる ゆふたちのくも実氏
413かせはやみ くものひとむら みねこえて やまみえそむる ゆふたちのあと伏見院
414ゆふたちの とほちをすくる くものしたに ふりこぬあめそ よそにみえゆく道良女
415とまるへき かけしなけれは はるはると ぬれてをゆかむ ゆふたちのあめ基氏
416ゆふたちの くもまのひかけ はれそめて やまのこなたを わたるしらさき定家
417たちのほり みなみのはてに くもはあれと てるひくまなき ころのおほそら定家
418かくてはや くれぬとみつる ゆふたちの ひかけたかくも はるるそらかな兼氏
419えたにもる あさひのかけの すくなさに すすしさふかき たけのおくかな為兼
420いりひさす みねのこすゑに なくせみの こゑをのこして くるるやまもと為世(御子左藤原為氏男)
421くれかかる とほちのそらの ゆふたちに やまのはみせて てらすいなつま定成(藤原経朝男)
422こほれおつる いけのはちすの しらつゆは うきはのたまと またなりにけり伏見院
423ゆふされは なみこすいけの はちすはに たまゆりすうる かせのすすしさ実房
424かはかせに うはけふかせて ゐるさきの すすしくみゆる やなきはらかな仲正
425みなつきの てるひといへと わかやとの ならのはかけは すすしかりけり行尊
426かけふかき そとものならの ゆふすすみ ひときかもとに あきかせそふく良経(九条兼実男)
427あきちかき たにのまつかせ おとたてて ゆふやますすし いはのしたみつ実兼
428なつやまの みとりのききを ふきかへし ゆふたつかせの そてにすすしき兼季
429やまかせの ふくとしもなき ゆふくれも このしたかけは なほそすすしき一条(昭慶門院)
430このころそ とふへかりける やまさとの みつせきとむる まつのしたかけ家経(一条実経男)
431まつかけや このしたふかき いはまより すすしくつたふ やまかはのみつ公顕
432いはねつたふ みつのひひきは そこにありて すすしさたかき まつかせのやま宗秀(大江時秀男)
433なつやまの いはかねきよく みつおちて あたりのくさの いろもすすしき仁澄
434しけりあふ このしたつつく みやまちは わけゆくそても すすしかりけり維貞
435たにかはの すすしきおとを きくなへに やましたかせも まつにふくなり家雅
436ふくかせの たけになるよは あききぬと おとろくはかり そてにすすしき有房(六条通有男)
437ひくらしの こゑきくもりの したくさに あきまつつゆの むすひそめぬる成朝
438まつかせも すすしきほとに ふきかへて さよふけにけり たにかはのおと覚守
439かけうつす にはのましみつ むすふての しつくもつきも そてにすすしき円伊
440かせのおとに すすしきこゑを あはすなり ゆふやまかけの たにのしたみつ為子(従二位)
441ほかにのみ なつをはしるや たきつせの あたりはあきの むらさめのこゑ伏見院
442さよふけて いはもるみつの おときけは すすしくなりぬ うたたねのとこ式子内親王
443つきのいろも あきちかしとや さよふけて まかきのをきの おとろかすらむ式子内親王
444あきちかき しつかかきねの くさむらに なにともしらぬ むしのこゑこゑ後鳥羽院
445つゆわけむ あきのあさけは とほからて みやこやいくか まののかやはら定家
446あしのはに ひとよのあきを ふきこして けふよりすすし いけのゆふかせ伏見院
447かせわたる かはせのなみの なつはらへ ゆふくれかけて そてそすすしき兼行
448ゆふされは あさのはなかる みよしのの たきつかはうちに みそきすらしも秀能(藤原秀宗男)
449しののめの そらきりわたり いつしかと あきのけしきに よはなりにけり紫式部
450いつくにも あきはきぬれと やまさとの まつふくかせは ことにそありける公任
451こころあての おもひのいろそ たつたやま けさしもそめし ききのしらつゆ定家
452けさよりは ふきくるかせも おくつゆも そてにはしめて あきそしらるる為相
453くさのうへに あさおくにはの つゆみれは そてもすすしく あきはきにけり家良
454さひしさの あはれをそへぬ やともあらし よものくさきの あきのはつかせ信実
455あきあさき ひかけになつは のこれとも くるるまかきは をきのうはかせ慈円
456みにしみて ふきこそまされ ひくらしの なくゆふくれの あきのはつかせ為氏
457ふきまさる かせのままなる くすのはの うらめつらしく あきはきにけり実経
458かねてたに すすしかりしを かたをかの もりのこすゑの あきのはつかせ為子(贈従三位)
459あきはきぬ とはかりこそは なかめつれ まかきのくれに はきのしたつゆ寂蓮
460ひとよりも わきてつゆけき たもとかな わかためにくる あきにはあらねと道玄
461あきのきて けふみかつきの くもまより こころつくしの かけそほのめく実氏
462あきにこそ またなりぬれと おもふより こころにはやく そふあはれかな親子(従三位源)
463われもかなし くさきもこころ いたむらし あきかせふれて つゆくたるころ伏見院
464ひさかたの くもゐはるかに まちわひし あまつほしあひの あきもきにけり為家
465ひこほしの つまこひころも こよひたに そてのつゆほせ あきのはつかせ為時(北条時村男)
466またれつる あまのかはらに あきたちて もみちをわたす なみのうきはし四条(安嘉門院)
467にはのおもに ひかてたむくる ことのねを くもゐにかはす のきのまつかせ実兼
468ひこほしの つまむかへふね こきいつらし あまのかはらに きりのたてれは憶良
469こひわたる としはふれとも あまのかは まれにそかかる せにはあひける村上天皇
470あかれしの こころやふかき たなはたの としにひとたひ まれにのみあふ花山院
471おもひやり あまのかはらを なかむれは たえまかちなる くもそわたれる馬内侍
472ひこほしの まれにわたれる あまのかは いはこすなみの たちなかへりそ行尊
473なにとなく あきにしなれは ひこほしの あふよをたれに まつここちして公継
474あふことの としにかはらぬ たなはたは たのむひとよや いのちなるらむ覚助法親王
475つゆしけき そてをはかさし たなはたの なみたほすまの あきのひとよに政村
476たなはたの かへるたもとの しつくには あまのかはなみ たちやそふらむ俊頼(源経信男)
477まれにあふ あきのなぬかの くれはとり あやなくやかて あけぬこのよは小侍従(太皇太后宮)
478をきのはに かせのすすしき あききては くれにあやしき ものをこそおもへ元真
479このころの うらふくかせに そなれまつ かはらぬいろも あきはみえけり家隆
480やまかせに もろきひとはは かつおちて こすゑあきなる ひくらしのこゑ伏見院
481いほむすふ わさたのなるこ ひきかへて よさむになりぬ つゆのころもて実氏
482さらてたに みにしむあきの ゆふくれに まつをはらひて かせそすくなる式子内親王
483たかよより いかなるいろの ゆふへとて あきしもものを おもひそめけむ恵慶
484たれにかは あきのこころも うれへまし ともなきやとの ゆふくれのそら為実(御子左藤原為氏男)
485かせにきき くもになかむる ゆふくれの あきのうれへそ たへすなりゆく永福門院
486たそかれに ものおもひをれは わかやとの をきのはそよき あきかせそふく実朝
487みやこひと いまとひこなむ ひとりきく のきはのすきの あきかせのくれ伏見院
488こけふかき ほらのあきかせ ふきすきて ふるきひはらの おとそかなしき土御門院
489ゆふつくひ さひしきかけは いりはてて かせのみのこる にはのをきはら実兼
490そてたれて いさみにゆかむ からころも すそののまはき ほころひぬらし道玄
491からころも つまとふしかの なくときは すそののはきの はなもさきけり実雄
492なかめすくす ひかすやあきに うつりぬる こはきかすゑそ はなになりゆく教良女
493さきやらぬ すゑはのはなは まれにみえて ゆふつゆしけき にはのはきはら章義門院
494たかまとの のへのあきはき このころの あかつきつゆに さきにけるかも家持
495さをしかの しかならはせる はきなれや たちよるからに おのれをれふす紫式部
496ちれはかつ かせのあとより おきかへて おつるともなき はきのしたつゆ冬平
497うゑさりし いまひともとも くやしきは はなさくのちの にはのはきはら為相
498こころをは いろとこゑとに わけとめつ はきにしかなく みやきののはら守覚法親王
499なひきかへる はなのすゑより つゆちりて はきのはしろき にはのあきかせ伏見院
500かすかすに つきのひかりも うつりけり ありあけのにはの つゆのたまはき実兼
501つゆおもる こはきかすゑは なひきふして ふきかへすかせに はなそいろそふ為兼
502しらつゆも こほれてにほふ たかまとの のへのあきはき いまさかりなり後嵯峨院
503をとめこか かさしのはきの はなのえに たまをかされる あきのしらつゆ為家
504あきはきの はなさきしより みやきのの このしたつゆの おかぬひそなき為経(甘露寺藤原資経男)
505まはきはら つゆにうつろふ つきのいろも はなになりゆく あけほののには実兼
506このさとの まはきにすれる ころもてを ほさてみやこの ひとにみせはや俊成(藤原俊忠男)
507あきはきの さくやはなのの つゆわけて ころもにすらむ ひとなとかめそ隆博
508よすからの のわきのかせの あとみれは すゑふすはきに はなそまれなる後伏見院
509しをりつる かせはまかきに しつまりて こはきかうへに あめそそくなり永福門院
510さとはあれて ときそともなき にはのおもも もとあらのこはき あきはみえけり定家
511まくすはら なひくあきかせ ふくことに あたのおほのの はきのはなちる読人不知
512あきかせは ひことにふきぬ たかまとの のへのあきはき ちらまくをしも読人不知
513さをしかの けさうらふれて なくなへに のはらのこはき はなちりぬへし基俊
514たかまとの のへのあきはき いたつらに ちりかすくらむ みるひとなしに金村
515つまこひに しかなくやまの あきはきは つゆしもさむみ さかりすきゆく広世
516わかをかの あきはきのはな かせをいたみ みるへくなりぬ みむひともかな旅人
517いつくより おくともしらぬ しらつゆの くるれはくさの うへにみゆらむ為兼
518みたれふす のへのちくさの はなのうへに いろさやかなる あきのしらつゆ為信
519おくつゆも なさけそふかき ももくさの はなのひもとく あさきりのには公顕
520むらさめの はるるひかけに あきくさの はなののつゆや そめてほすらむ貞重
521つきのこり つゆまたきえぬ あさあけの あきのまかきの はなのいろいろ実承
522うたてなと きりのあさけの をみなへし はなのすかたを たちかくすらむ行藤(藤原行有男)
523ひとえたの はなのいろたに あるものを のへのにしきを おもひやらなむ頼宗
524みしひとも すみあらしてし ふるさとに ひとりつゆけき をみなへしかな崇徳院
525あきのあめに なかめしほとに をみなへし うつろふまても なりにけるかな具平親王
526しらつゆの おけるあしたの をみなへし はなにもはにも たまそかかれる読人不知
527かへりなは うらみもそする をみなへし こよひはのへに いさとまりなむ実頼
528なかきよを いかにあかして をみなへし あかつきおきの つゆけかるらむ中務(選子内親王家)
529をはなのみ にはになひきて あきかせの ひひきはみねの こすゑにそきく永福門院
530いろいろの あきののへをは はなすすき まねかすとても たたやすくへき頼輔
531つきかけの いるののすすき ほのほのと やまのはならて あくるしののめ師員
532あきやまの ふもとのはらの むらすすき ほすゑかたより あきかせそふく実兼
533いろかはる はやまかみねに しかなきて をはなふきこす のへのあきかせ有家(藤原重家男)
534はなすすき ほむけのいとを ふくかせに たまのをとけて つゆそみたるる経平(衣笠家良男)
535またあきの うれへのいろに むかふなり をはなかかせに にはのつきかけ親子(従三位源)
536うすきりの はるるあさけの にはみれは くさにあまれる あきのしらつゆ永福門院
537あきされは わかそてぬらす なみたより くさきのつゆも おくにやあるらむ後伏見院
538いりのこる くもまのつきは あけはてて なほひかりある にはのあさつゆ実兼
539かりひとの くさわけころも ほしもあへす あきのさかのの よものしらつゆ順徳院
540まつかせは いかてしるらむ あきのよの ねさめせらるる をりにしもふく具平親王
541ふきしをり とやまにひひく あきかせに のきはのまつも こゑあはすなり兼季
542ふきしをる よものくさきの うらはみえて かせにしらめる あきのあけほの内侍(永福門院)
543あきされは いととおもひを ましはかる このさとひとも そてやつゆけき後鳥羽院
544つゆのいろ ましはのかせの ゆふけしき あすもやここに たへてなかめむ為兼
545ゆふされは のもせにすかく しらつゆの たまれはかてに あきかせそふく有家(藤原重家男)
546さくらあさの をふのしたつゆ おきもあへす なひくくさはに あきかせそふく義景
547つゆけさの そてにかはらぬ くさはまて とははやあきは ものやおもふと基忠(鷹司兼平男)
548おきあまる このしたつゆや そめつらむ くさはうつろふ みやきののはら清兼
549ものおもふと いはぬはかりそ つゆかかる くさきもあきの ゆふくれのいろ定成(藤原経朝男)
550あきはきぬ しかはをのへに こゑたてつ よはのねさめを とふひとはなし有家(藤原重家男)
551やへむくら あきのわけいる かせのいろを われさきにとそ しかはなくなる定家
552あきやまの みねゆくしかの ともをなみ きりにまとへる ゆふくれのこゑ慈円
553あきかせに もとあらのこはき つゆおちて やまかけさむみ しかそなくなる家隆
554やまとほき やとならなくに あきはきを しからむしかも なきもこぬかな貫之
555わかやとの あきはきのはな さくときそ をのへにしかの こゑたかくなく躬恒
556かりもきぬ はきもちりぬと さをしかの なくなるこゑは うらふれにけり読人不知
557くさかくれ みえぬをしかも つまこふる こゑをはえこそ しのはさりけれ頼政
558やとちかく つまとふしかの こゑのみそ あきのねさめの ともとなりける公相
559しかのねも をのへのかねも たゆむなり なみたはつきぬ あきのねさめに永光
560のやまにも あきのうれへや ひとつならし をしかつまとひ むしもなくなり後伏見院
561やたののや よさむのつきの おくなへに あさちいろつき をしかなくなり為子(従二位)
562なくしかの こゑのしるへも かひそなき みちふみまよふ かすかののはら兼教
563つゆわくる このしたとほき かすかのの をはなかなかに さをしかのこゑ冬綱
564あらしふき まかきのはきに しかなきて さひしからぬは あきのやまさと俊成(藤原俊忠男)
565をきのはの おともあやしき ゆふくれに しかのねをさへ そへてきくかな実宗
566あはれなる ときしもあきの ねさめかな つまとふしかの あけかたのそら通具
567ふけまさる ひとまつかせの くらきよに やまかけつらき さをしかのこゑ定家
568みやまちや あかつきかけて なくしかの こゑするかたに つきそかたふく土御門院
569しかのねを かきねにこめて きくのみか つきもすみけり あきのやまさと西行
570さをしかの こゑきくときの あきやまに またすみのほる よはのつきかけ少将(藻壁門院)
571あしひきの やまたもるいほに ねさめして しかのねきかぬ あかつきそなき伊平
572ときはなる やまちはあきの ほかかとて なかむるくれも さをしかのこゑ越前(嘉陽門院)
573はつをはな たかたまくらに ゆふきりの まかきもちかく うつらなくなり後鳥羽院
574わかために くるともきかぬ はつかりの そらにまたるる あきにもあるかな家良
575あきかせの さむきあさけに きにけらし くもにきこゆる はつかりのこゑ後二条院
576すむさとは くもゐならねと はつかりの なきわたりぬる ものにそありける伊勢
577きかさりし ものとはなしに かりかねの くるたひことに あはれといはるる重之女
578わかかとの いなはのかせに おとろけは きりのあなたに はつかりのこゑ式子内親王
579あきかせは くものうへまて ふきぬらし いまはたかりの こゑそきこゆる実経
580ころもうし はつかりかねの たまつさに かきあへぬものは なみたなりけり慈円
581したはちる やなきのこすゑ うちなひき あきかせたかし はつかりのこゑ宗尊親王
582ふるさとの あさちかすゑは いろつきて はつかりかねそ くもになくなる大弐(二条太皇太后宮)
583やまのはの くものはたてを ふくかせに みたれてつつく かりのつらかな定家
584あきかせに ひかけうつろふ むらくもを われそめかほに かりそなくなる為家
585きかしたた あきかせさむき ゆふつくひ うつろふくもに はつかりのこゑ為家
586くもたかき ゆふへのそらの あきかせに つらものとかに わたるかりかね伏見院
587はたさむく かせもあきなる ゆふくれの くものはたてを わたるかりかね少将(永陽門院)
588むらむらの くものそらには かりなきて くさはつゆなる あきのあけほの親子(従三位源)
589あきのあめの ものさむくふる ゆふくれの そらにしをれて わたるかりかね永福門院
590ゆふされは いやとほさかり とふかりの くもよりくもに あとそきえゆく道家
591たれにかも ころもかりかね あきかせの さむきゆふへの そらになくらむ行家(藤原知家男)
592かへるかり またしもあはしと おもひしに あはれにあきの くもになくなる俊成(藤原俊忠男)
593かりかねの さむくなるより みつくきの をかのくすはは いろつきにけり人麿
594あきかせの さむくしなれは あさきりの やへやまこえて かりもきにけり伏見院
595あききりは たちわたれとも なくかりの こゑはそらにも かくれさりけり貫之
596あきのよの ころもかりかね なくからに ねさめのとこも かせそさむけき長家
597かりなきて さむきあさけに みわたせは きりにこもらぬ やまのはもなし宗尊親王
598あはれなる やまたのいほの ねさめかな いなはのかせに はつかりのこゑ讃岐
599みねこゆる こゑはあまたに きくかりも きりのひまゆく かすそすくなき宗秀(大江時秀男)
600やまきはの きりはれそめて こゑはかり ききつるかりの つらそみえゆく実文
601つきかけの ふくるくもゐに おとつれて ひとつらすくる あきのかりかね為世(御子左藤原為氏男)
602なきつくす のもせのむしの ねのみして ひとはおとせぬ あきのふるさと朔平門院
603ふりまさる あまよのねやの きりきりす たえたえになる こゑもかなしき永福門院
604つきすみて かせはたさむき あきのよの まかきのくさに むしのこゑこゑ花園院
605つきもまた かけみえそめぬ ゆふくれの まかきはむしの ねをのみそきく広義門院
606ふけゆけは むしのこゑのみ くさにみちて わくるひとなき あきのよののへ伏見院
607まつむしも なきやみぬなる あきののに たれよふとてか はなみにもこむ伊勢
608すすむしの こゑふりたつる あきのよは あはれにものの なりまさるかな和泉式部
609わけている そてにあはれを かけよとて つゆけきにはに むしさへそなく西行
610なくむしの こゑもみたれて きこゆなり やふかせわたる をかのかやはら通時
611つゆはおき かせはみにしむ ゆふくれを おのかときとや むしのなくらむ冬教
612ゆふつくよ こころもしのに しらつゆの おくこのにはに きりきりすなく湯原王
613くさふかみ きりきりすいたく なくやとの はきみにきみは いつかきまさむ人麿
614すすむしの こゑみたれたる あきののは ふりすてかたき ものにそありける敏行
615あはれしれと われをすすむる よはなれや まつのあらしも むしのなくねも高弁
616あきのよを ひとりやなきて あかさまし ともなふむしの こゑなかりせは西行
617なきあかす ともとはきけと きりきりす おもふこころは かよひしもせし為教
618うきよそと おもはぬむしの なくこゑも きくからかなし あきのゆふくれ読人不知
619のへにとる わかまつむしの なくこゑも なれしすみかを こひしくやおもふ後宇多院
620きりきりす ねさめのとこを とひかほに わきてまくらの したにしもなく少納言(後伏見院)
621さひしさは わかやとからの あきならし あれたるにはに むしのこゑこゑ憲淳
622くれぬとや かたやまかけの きりきりす ゆふひかくれの つゆになくらむ実兼
623さととほき のなかのもりの したくさに くるるもまたぬ まつむしのこゑ家良
624いろいろに ほむけのかせを ふきかへて はるかにつつく あきのをやまた四条(安嘉門院)
625をやまたの いなはおしなひ ふくかせに ほすゑをつたふ あきのしらつゆ実兼
626かりなきて やまかせさむし あきのたの かりほのいほの むらさめのそら光俊(葉室光親男)
627をきのはに かはりしかせの あきのこゑ やかてのわきの つゆくたくなり定家
628よひのまの むらくもつたひ かけみえて やまのはめくる あきのいなつま伏見院
629わたつうみの とよはたくもに いりひさし こよひのつきよ すみあかくこそ天智天皇
630ももしきの おほみやひとの たちいてて あそふこよひの つきのさやけさ読人不知
631またくれぬ そらのひかりと みるほとに しられてつきの かけになりぬる伏見院
632やまのはを いてやらぬより かけみえて まつのしたてる いさよひのつき良教
633くるるまの まかきのたけを ふくかせの なひくにいつる あきのよのつき実氏
634まとあけて やまのはみゆる ねやのうちに まくらそはたて つきをまつかな信実
635ひさかたの つきそさやけき ももしきの おほみやひとや あくかれぬらむ家隆
636つまきこる とほやまひとは かへるなり さとまておくれ あきのみかつき順徳院
637たかさこの をのへはれたる ゆふくれに まつのはのほる つきのさやけさ宗尊親王
638あきかせは をのへのまつに おとつれて ゆふへのやまを いつるつきかけ後二条院
639あきのよの なかきほとをや たのむらむ いてていそかぬ やまのはのつき貞時
640くもはらふ とやまのみねの あきかせに まきのはなひき いつるつきかけ範宗
641やまもとの すそののこかけ またくらし わかすむみねを つきいつるほと貞広
642すみのほる たかねのつきは そらはれて やまもとしろき よはのあききり宣子(従三位藤原)
643そらきよく つきさしのほる やまのはに とまりてきゆる くものひとむら永福門院
644はつせやま ひはらかあらし かねのこゑ よふかきつきに すましてそきく為子(従二位)
645つきかけの いているみねは まつのあらし ふくれはのへに をきのうはかせ慈円
646おもひいれぬ ひとのすきゆく のやまにも あきはあきなる つきやすむらむ定家
647あきののの しのにつゆおく すすのいほは すすろにつきも ぬるるかほなる良経(九条兼実男)
648やとるへき つゆをはのこせ よひのまの つきまつほとの のへのあきかせ宣時(北条)
649かせにふす をきのうはかせ つゆなから つきしくにはの あきそさひしき親子(従三位源)
650もろくちる はなのまかきの つゆのうへに やとるもをしき つきのかけかな隆教
651つゆをみかく あさちかつきは しつかにて むしのこゑのみ さよふかきやと伏見院
652きりきりす なくよりほかの おともなし つきかけふくる あさちふのやと教良女
653こよひこそ あきとおほゆれ つきかけに きりきりすなきて かせそみにしむ雅有
654にほのうみや あきのよわたる あまをふね つきにのりてや うらつたふらむ俊成女
655すまのうらや あまとふくもの あとはれて なみよりいつる あきのつきかけ道家
656うらとほき しらすのすゑの ひとつまつ またかけもなく すめるつきかな為家
657つきさゆる あかしのせとに かせふけは こほりのうへに たたむしらなみ西行
658わたのはら なみにもつきは かくれけり みやこのやまを なにいとひけむ西行
659なにはかた なみまをわけて いるつきの なほかけのこる あはちしまやま公相
660ささなみや うらかせふけて あきのよの なからのやまに つきそかたふく実兼
661きのうみや なみよりかよふ うらかせに とほやまはれて いつるつきかけ道珍
662きのくにや ゆらのみなとに かせたちて つきのてしほの くもはらふなり通雄
663もしほひも つきのよころは たきさして けふりなたてそ すまのうらひと実衡
664こきいつる すまのよふねの をちこちは さなからつきの かけのしらなみ為相女
665きよみかた ふしのけふりや きえぬらむ つきかけみかく みほのうらなみ後鳥羽院
666つきすめは たににそくもは しつむめる みねふきはらふ かせにしかれて西行
667うきくもに はやくちかひて ゆくつきの はれまになれは かけそしつまる為守
668はしたてや まつふきわたる うらかせに いりうみとほく すめるつきかけ茂重
669いそのかみ ふるのたかはし よよかけて つきもいくよか すみわたるらむ雅孝
670やまもとの とほきあたりは みえわかて つきにそしろき うちのかはなみ憲基
671あきのよは たつぬるやとに ひともなし たれもつきにや あくかれぬらむ讃岐
672いつくより いてしくもゐの つきなれは あきのみやをは よそにすむらむ実兼
673すみなるる あきのみやまの ほかにては くもゐのつきも みるそらそなき為子(従二位)
674かせのおとも みにしむよはの あきのつき ふけてひかりそ なほまさりゆく花園院
675あまつかせ くもふきはらひ つねよりも さやけさまさる あきのよのつき長家
676あまくもの たなひけりとも みえぬよは ゆくつきかけそ のとけかりける貫之
677あきかせは よさむなりとも つきかけに くものころもは きせしとそおもふ公通
678あきかせは のきはのまつを しをるよに つきはくもゐを のとかにそゆく永福門院
679すみのほる つきのあたりは くもはれて よそにしくるる まつかせのこゑ実泰
680やまもとの しけきひはらの したはかり ひかりおよはぬ あきのよのつき道良
681よをいのる わかたつそまの みねはれて こころよりすむ あきのよのつき源恵
682あくかるる こころはそらに さそはれて ぬるよすくなき あきのよのつき後宇多院
683なかめわひ あくかれたちぬ わかこころ あきにかなしき つきのよなよな章義門院
684おのつから すまぬこころも すまれけり つきはなれてそ みるへかりける親子(従三位源)
685なかめても たれをかまたむ つきよよし よよしとつけむ ひとしなけれは小侍従(太皇太后宮)
686なかめわひ つきのさそふに まかすれは いつくにとまる こころともなし頼氏(藤原頼広男)
687うみのはて そらのかきりも あきのよの つきのひかりの うちにそありける家隆
688ひともみぬ よしなきやまの すゑまてに すむらむつきの かけをこそおもへ西行
689こしかたは みなおもかけに うかひきぬ ゆくすゑてらせ あきのよのつき定家
690いかなりし ひとのなさけか おもひいつる こしかたかたれ あきのよのつき為兼
691あきそかはる つきとそらとは むかしにて よよへしかけを さなからそみる為兼
692そめかぬる ときはのもりの こすゑより つきこそあきの いろはみえけれ忠定(藤原兼宗男)
693あきことに しのふこころも いろそへは みやこのつきよ なれしとそおもふ宗秀(大江時秀男)
694よをうしと なにおもひけむ あきことに つきはこころに まかせてそみる俊成(藤原俊忠男)
695あはれとは われをもおもへ あきのつき いくめくりかは なかめきぬらむ俊成(藤原俊忠男)
696うきみこそ いとひなからも あはれなれ つきをなかめて としのへぬれは西行
697なにとなく すきこしあきの かすことに のちみるつきの あはれとそなる定家
698あはれしる ひとにみせはや やまさとの あきのよふかき ありあけのつき孝標女
699しはのとや さしもさひしき みやまへの つきふくかせに さをしかのこゑ後鳥羽院
700こころすむ かきりなりけり いそのかみ ふるきみやこの ありあけのつき慈円
701こころゆく ほとまてのほれ くらゐやま なたかきあきの つきのしるへに少将内侍(後深草院)
702いつかたへ くもゐのかりの すきぬらむ つきはにしにそ かたふきにける式子内親王
703みにつもる わかよのあきの ふけぬれは つきみてしもそ ものはかなしき道因
704あきのよも わかよもいたく ふけぬれは かたふくつきを よそにやはみる頼政
705ななそちに あまりかなしき なかめかな いるかたちかき やまのはのつき公経(藤原実宗男)
706むかしみし つきにもそては ぬれしかと おいはさなから なみたなりけり公朝
707みはかくて さすかあるよの おもひいてに またこのあきも つきをみるかな隆博
708にはしろく さえたるつきも ややふけて にしのかきねそ かけになりゆく兼行
709ふしわひて つきにうかるる みちのへの かきねのたけを はらふあきかせ定家
710あきのよの そらすみわたる つきみれは ゆくともなくて かたふきにけり嘉言
711ふけぬとも ひとりおきゐむ なかめすてて つきよりさきに いらしとおもへは基顕
712ふけぬれと ゆくともみえぬ つきかけの さすかにまつの にしになりぬる後二条院
713ふけぬとも なかむるほとは おほえぬに つきよりにしの そらそすくなき伏見院
714あけぬるか わけつるあとに つゆしろし つきのかへさの のへのみちしは伏見院
715くもはるる いそやまあらし おとふけて おきつしほせに つきそかたふく冬平
716つきのこる いそへのまつを ふきわけて いるかたみする あきのうらかせ公雄
717ありあけは いるうらみなき やまのはの つらさにかはる あかつきのくも雅有
718あかつきに なりやしぬらむ をくらやま しかのなくねに つきかたふきぬ基俊
719またたくひ あらしのやまの ふもとてら すきのいほりに ありあけのつき俊成(藤原俊忠男)
720しらみゆく そらのひかりに かけきえて すかたはかりそ ありあけのつき朔平門院
721をくらやま みやこのそらは あけはてて たかきこすゑに のこるつきかけ為家
722そらまては たちものほらて ありあけの つきにおよはぬ みねのあききり貞時
723きりはるる くもまにつきは かけみえて なほふりすさふ あきのむらさめ為顕
724いるつきの なこりのかけは みねにみえて まつかせくらき あきのやまもと定成(藤原経朝男)
725おとにきく をくらのやまは つきかけの いりぬるときの なにこそありけれ信濃(四条太皇太后宮)
726ゆふくれの にはすさましき あきかせに きりのはおちて むらさめそふる永福門院
727くもかかる たかねのひはら おとたてて むらさめわたる あきのやまもと宗尊親王
728かせにゆく みねのうきくも あとはれて ゆふひにのこる あきのむらさめ時春
729うきてわたる ゆふへのそらの くもくれて かせにそきほふ あきのむらさめ権中納言(今出河院)
730まとちかき むかひのやまに きりはれて あらはれわたる ひはらまきはら土御門院
731しひてやは なほすきゆかむ あふさかの せきのわらやの あきのゆふきり実氏
732みねのくも ふもとのきりも いろくれて そらもこころも あきのまつかせ定家
733やまちには ひとやまとはむ かはきりの たちこぬさきに いさわたりなむ貫之
734あさほらけ まきのをやまは きりこめて うちのかはをさ ふねよはふなり通親
735まきのはの しつくそおつる あさきりの はれゆくやまの みねのあきかせ景綱
736わけわひて いつくさととも しらすけの まののかやはら きりこめてけり秀長(藤原秀弘男)
737そともなる ならのはしをれ つゆおちて きりはれのほる あきのやまもと雅有
738あさひさす いこまのたけは あらはれて きりたちこむる あきしののさと実俊(西園寺公相男)
739きよみかた なみちのきりは はれにけり ゆふひにのこる みほのうらまつ宗宣(北条宣時男)
740あかしかた うらちはれゆく あさなきに きりにこきいる あまのつりふね後鳥羽院
741かりにきて たつあききりの あけほのに かへるなこりも ふかくさのさと基忠(鷹司兼平男)
742さきたちて わたるひとたに みえぬまて ゆふきりふかし せたのなかはし実泰
743たちこむる あさけのきりの そのままに くもりてくるる あきのそらかな俊光
744きりふかみ そことみえねと かけうすき つきののほるや あきのやまきは実兼
745あききりの たえまをみれは あさつくひ むかひのをかは いろつきにけり実経
746そことしも ふもとはみえぬ あさきりに のこるもうすき あきのやまのは内経
747はなのいろは かくれぬほとに ほのかなる きりのゆふへの のへのをちかた為子(従二位)
748ゆふひさす やまのははかり あらはれて きりにしつめる あきのかはなみ政長
749ほにいつる ふしみのをたを みわたせは いなはにつつく うちのかはなみ公相
750くれかかる ふしみのかとた うちなひき ほなみをわたる うちのかはふね為教
751しらつゆの おくてのいねも かりてけり あきはてかたに なりやしぬらむ頼基(大中臣輔道男)
752あきをたに いつかとおもひし あらをたは かりほすほとに なりそしにける順徳院
753にはのむし よそのきぬたの こゑこゑに あきのよふかき あはれをそきく為相
754ふけぬるか このさとひとは おともせて とほやまもとに ころもうつなり道家
755ゆふきりに みちはまとひぬ ころもうつ おとにつきてや やとをからまし隆信
756あきかせは ふけにけらしな さととほき きぬたのおとの すみまさりゆく覚助法親王
757ふけゆけは ところところに きこえつる きぬたのおとそ まれになりゆく家教
758さよふけて ころもうつなり われならて またねぬひとは あらしとおもふに小弁
759いまよりは ころもうつなり あきかせの さむきゆふへの をかのへのさと後二条院
760つききよみ ちさとのほかに くもつきて みやこのかたに ころもうつなり俊成(藤原俊忠男)
761ひさかたの つきもよさむに なるままに あきはふけぬと ころもうつなり長時
762くれかたの あきさりころも ぬきをうすみ たへぬよさむに いまそうつなる家清
763いりかたの つきのそらさへ ひひくまて とほちのむらは ころもうつなり実兼
764ころもうつ しつかふせやの いたまあらみ きぬたのうへに つきもりにけり良平
765しくれゆく はしのたちえに かせこえて こころいろつく あきのやまさと定家
766うつりゆく けしきのもりの したもみち あききにけりと みゆるいろかな有教
767をくらやま あきとはかりの うすもみち しくれてのちの いろそゆかしき新大納言(延政門院)
768たれかそめし とやまのみねの うすもみち しくれぬさきの あきのひとしほ公経(藤原実宗男)
769かたやまの ははそのこすゑ いろつきて あきかせさむみ かりそなくなる為氏
770ゆふつくひ むかひのをかの うすもみち またきさひしき あきのいろかな定家
771われもしか あかてかへりし つきかけの やまのはつらき なかめをそせし基俊
772あきふかき ねさめのしくれ ききわひて おきいててみれは むらくものつき新宰相(伏見院)
773あきのあめの やみかたさむき やまかせに かへさのくもも しくれてそゆく為家
774いろいろに うつろふきくを くものうへの ほしとはいかて ひとのいふらむ後三条院
775むらさきに つらぬるそてや うつるらむ くものうへまて にほふしらきく実氏
776ももしきの おほみやひとの けふといへは かさしにさせる ちよのしらきく隆親(藤原隆衡男)
777さきそめし うめよりきくに うつるまて はなのいくいろ なれてみつらむ斉時
778たみのとも いまはもとめし たちかへり はなのしつくに ぬれむとおもへは読人不知
779きくのはな しもにうつると をしみしは こきむらさきに そむるなりけり希世
780たつのすむ みきはのきくは しらなみの をれとつきせぬ かけそみえける中務(選子内親王家)
781うすくこく うつろふいろも はつしもの みなしらきくと みえわたるかな大弐三位
782えたもはも それともみえす くれぬるに はなこそのこれ にはのしらきく慈順
783いこまやま あらしもあきの いろにふく てひきのいとの よるそくるしき定家
784やまもとの さとのしるへの うすもみち よそにもをしき あきのいろかな後鳥羽院
785そめやらぬ みむろのやまの うすもみち いまいくしほの しくれまつらむ教良
786あきやまの みとりのいろそ めつらしき もみちにましる まつのひともと兼季
787みむろやま ふもとのまつの むらむらに しくれわけたる あきのいろかな実超
788あききりや やまたちかくし そめつらむ はれていろこき みねのもみちは行能
789しくれもて おるてふあきの からにしき たちかさねたる ころもてのもり為氏
790わきてなほ もみちもいろや ふかからむ みやこのにしの あきのやまさと慈道法親王
791あきことに かみなひやまの もみちはは たれかたむけの にしきなるらむ宗家
792しくれする いはたのをのの ははそはら あさなあさなに いろかはりゆく匡房
793かりかねの なくなるなへに からころも たつたのやまは もみちしぬらし赤人
794つまかくす やののかみやま つゆしもに にほひそめたり ちらまくをしも人麿
795しらつゆの このはをわきて おくやまの ふかきもみちは いろもかはらし読人不知
796くれなゐの やしほのいろは もみちはに あきくははれる としにそありける読人不知
797うちむれて もみちたつぬと ひはくれぬ あるしもしらぬ やとやからまし長家
798あきふかき やまよりやまに わけいれは なほいろそへる もみちをそみる後伏見院
799むらむらに こすゑのいろも うつろひて ゆふひのやまに くもそしくるる為理
800しくれつる ほとよりもなほ いろこきは うつるいりひの をかのもみちは冬基
801やまもとの すそののこはき ちりぬれと にしきをのこす みねのもみちは生阿
802もみちはの をりをわすれぬ なさけにも なれにしくもの うへやこひしき二条(永福門院)
803をりしらぬ みにはよそなる もみちはに いろをそへける あきのみやひと家基(近衛基平男)
804としをへて こけにうもるる ふるてらの のきにあきある つたのいろかな慈円
805あれわたる にははちくさに むしのこゑ かきほはつたの ふるさとのあき為子(従二位)
806たつねすて けふもくれなは もみちはを さそふあらしの かせやふきなむ月花門院
807たきのうへの みふねのやまの もみちはは こかるるほとに なりにけるかな隆源(藤原通宗男)
808しくれゆく たつたのこすゑ うつろひて そめぬかはせも もみちしにけり雲雅
809もみちはは てりてみゆれと あしひきの やまはくもりて しくれこそふれ貫之
810かせさむみ いくよもへぬに むしのねの しもよりさきに かれにけるかな具平親王
811あきふくる あさちかにはの きりきりす よやさむからし こゑよわりゆく為教
812にはもせに こゑこゑききし むしのねの ときときよわき あきのくれかた宣子(従三位藤原)
813ゆふつくひ いろさひまさる くさのしたに あるとしもなく よわるむしのね覚円
814なきよわる むくらかしたの きりきりす いまいくかとか あきをしるらむ師光(中原師重男)/師宗
815あきふかみ よわるはむしの こゑのみか きくわれとても たのみやはある西行
816やまのはの ゆふひのかけも たえたえに しくれてすくる あきのむらくも雅言
817はなすすき ほすゑにうつる ゆふひかけ うすきそあきの ふかきいろなる遊義門院
818はなすすき ほにいててまねく ころしもそ すきゆくあきは とまらさりける匡房
819のへとほき をはなにかせは ふきみちて さむきゆふひに あきそくれゆく親子(従三位源)
820むしのねの よわるあさちは うらかれて はつしもさむき あきのくれかた静仁法親王
821くれてゆく あきのなこりは おしてるや なにはのあしも うらかれにけり久明親王
822すきゆくか つれなきあきの こころかな こひしかるへき のへのけしきを覚性法親王
823くものいろ のやまのくさき ものことに あはれをそへて あきそくれゆく為相女
824おほかたの ひかすのみかは くさもきも うつろふいろに あきそくれゆく兼季
825あきふかき やそうちかはの はやきせに もみちそくたる あけのそほふね順徳院
826なかつきの ありあけのつきも ふけにけり わかよのすゑを おもふのみかは讃岐
827かたしきの そてになれぬる つきかけの あきもいくよそ うちのはしひめ俊成女
828ゆくあきの わかれにそへて なかつきの ありあけのつきの をしくもあるかな家経(一条実経男)
829けふのみと なこりおもはぬ ゆふへたに あきにはあへす ぬるるたもとを基忠(鷹司兼平男)
830なかつきの ひかすはけふに すきぬとも こころにあきや あすものこらむ公雄
831うつろはて にはのしらきく のこらなむ あきのかたみと あすよりはみむ花園院
832くさきみな あすみさるへき いろもなし わかこころにそ あきはくれける実兼
833こころとめて くさきのいろも なかめおかむ おもかけにたに あきやのこると為兼
834われたにも かへるみちには ものうきに いかてすきぬる あきにかあるらむ公任
835やまかつの よもきかかきも しもかれて かせもたまらぬ ふゆはきにけり清輔
836うちしくれ たたよふくもの やまめくり はやくもふゆの けしきなるかな実兼
837ゆふくれの あはれはあきに つきにしを またしくれして このはちるころ教良女
838ねさめする とこにしくれは もりこねと おとにもそての ぬれにけるかな小大進(花園左大臣家)
839おのつから おとするひとも なかりけり やまめくりする しくれならては西行
840しくるるも おとはかはらぬ いたまより このははつきの もるにそありける定家
841しくれつる このしたつゆは おとつれて やまちのすゑに くもそなりゆく宮内卿(後鳥羽院)
842かせむせふ ひはらのしくれ かきくらし あなしのたけに かかるむらくも基家
843ふきすくる ひはらのやまの こからしに ききもわかれぬ むらしくれかな後嵯峨院
844むらしくれ すきゆくみねの くもまより ひかけうつろふ をちのやまもと公相
845かみなつき しくれとひわけ ゆくかりの つはさふきほす みねのこからし後鳥羽院
846をりしもあれ かへさものうき たひひとの こころをしりて ふるしくれかな小弁
847むらくもの たえまたえまに ほしみえて しくれをはらふ にはのまつかせ土御門院
848むらくもの たえまのそらに にしたちて しくれすきぬる をちのやまのは定家
849なかきよの ねさめのまとに おとつるる しくれはおいの ともにそありける頼輔
850うきてゆく くもまのそらの ゆふひかけ はれぬとみれは またしくるなり隆博
851そめかぬる しくれはよそに すきぬれと つれなきまつに のこるこからし慈道法親王
852あはれなる ときをゆふへと おもふより しくれにそひて ふるなみたかな心円
853かみなつき しくるるくもを たよりにて くるるはやすき ふゆのそらかな経朝
854ひとむらの しくれをさそふ やまかせに おくるるくもは のとかにそゆく俊兼
855ゆふくれの くもとひみたれ あれてふく あらしのうちに しくれをそきく伏見院
856あはちしま はるかにみつる うきくもも すまのせきやに しくれきにけり家隆
857むらくもの すきのいほりの あれまより しくれにかはる よはのつきかけ有家(藤原重家男)
858おとたつる しくれはやすく すきのやに ねさめのそてそ ぬれてのこれる貞重
859うきくもを つきにあらしの ふきかけて ありあけのそらを ゆくしくれかな基盛
860あらしふき このはちりかふ ゆふくれに むらくもきほひ しくれふるなり治部卿(永福門院)
861ちりつもる よものこのはに うつもれて あきみしみちは おもかけもなし定資
862おのつから そめぬこのはを ふきませて いろいろにゆく こからしのかせ為家
863ちりしける ははそのもみち それをさへ とめしとはらふ もりのしたかせ隆博
864かれはつる おちはかうへの ゆふしくれ そめしなこりの いろやわすれぬ忠定(藤原兼宗男)
865ゆふひさす みねのしくれの ひとむらに みきりをすくる くものかけかな実兼
866ゆふしくれ あらしにはるる たかねより いりひにみえて ふるこのはかな読人不知
867ひとはこす ゆふへのあめは したたりて むなしきはしに ふるこのはかな読人不知
868もみちちる よはのねさめの やまさとは しくれのおとも わきそかねつる匡房
869しくれつる たかねのくもは はれのきて かせよりふるは このはなりけり慈円
870しくれゆく あともはれまは なかりけり このはふりそふ みねのあらしに守誉
871かみなつき あらしにましる むらさめに いろこきたれて ちるこのはかな順徳院
872しくれつる そらはゆきけに さえなりて はけしくかはる よものこからし少将(永陽門院)
873そともなる ならのはかしは かれおちて しくれをうくる おとのさひしさ基忠(鷹司兼平男)
874おとつれし やまのこのはは ふりはてて しくれをのこす みねのまつかせ憲実
875さそふへき このはもいまは のこらねは はけしくとても やまおろしのかせ宣時(北条)
876もみちはの なかるるたきは くれなゐに そめたるいとを くるかとそみる忠岑
877こからしに このはのおつる やまさとは なみたさへこそ もろくなりぬれ西行
878やまちかき ところならすは ゆくみつの もみちせりとそ おとろかれまし貫之
879となせより なかすにしきは おほゐかは いかたにつめる このはなりけり俊頼(源経信男)
880このはちる みやまのおくの かよひちは ゆきよりさきに うつもれにけり惟明親王
881かれつもる もとのおちはの うへにまた さらにいろにて ちるもみちかな為子(従二位)
882ききなれし こすゑのかせは ふきかへて にはのこのはの おとさわくなり家教
883しものしたの おちはをかへす こからしに ふたたひあきの いろをみるかな貞房
884おほゐかは あきのなこりを たつぬれは いりえのみつに しつむもみちは実氏
885たつたかは なかるるみつも このころは ちるもみちゆゑ をしくそありける後宇多院
886あめとふる このはつもれる たにかはの みつはまさらて せたえしてけり為顕
887おちつもる このははかりの よとみにて せかれぬみつそ したになかるる宗泰(北条宣時男)
888やまかはの いはまにつもる もみちはは さそふみつなき ほとそみえける実経
889あらしふく やそうちかはの なみのうへに このはいさよふ せせのあしろき惟明親王
890もみちはを おとすしくれの ふるなへに よさへそさむき ひとりしあれは人麿
891けふにありて あすはすきなむ かみなつき しくれにまよふ もみちかささむ人麿
892あらしこそ ふきこさりけれ みやちやま またもみちはの ちらてのこれる孝標女
893かみなつき もみちにふれる はつゆきは をりたかへたる はなかとそみる弁乳母
894いつしかと ふゆのけしきに たつたかは もみちとちませ うすこほりせり俊成(藤原俊忠男)
895かみなつき こすゑのもみち にはのきく あきのいろとは なにおもひけむ実兼
896あきすきて のこれるいろも かみなつき しもをわけてそ をしむへらなる醍醐天皇
897おくしもに いろはみえねと きくのはな こむらさきにも なりにけるかな町尻子
898くさはみな しもにくちにし ふゆかれに ひとりあきなる にはのしらきく朔平門院
899のへはたた をささはかりの あをはにて さらてはなへて しもかれのいろ道輔
900さひしさは やとのならひを このはしく しものうへとも なかめつるかな式子内親王
901はかへせぬ いろしもさひし ふゆふかき しものあさけの をかのへのまつ為子(従二位)
902ならのはに しもやおくらむと おもふにも ねてこそふゆの よをあかしつれ基俊
903むしのねの よわりはてぬる にはのおもに をきのかれはの おとそのこれる大輔(殷富門院)
904はなにおく つゆにやとりし かけよりも かれののつきは あはれなりけり西行
905ふゆかれの すさましけなる やまさとに つきのすむこそ あはれなりけれ西行
906しをれふす かれはのすすき しもさえて つきかけこほる ありあけののへ雅孝
907おきてみれは あけかたさむき にはのおもの しもにしらめる ふゆのつきかけ家親
908くさのうへは なほふゆかれの いろみえて みちのみしろき のへのあさしも宗宣(北条宣時男)
909やまかつの あさけのこやに たくしはの しはしとみれは くるるそらかな定家
910かせのおとの はけしくわたる こすゑより むらくもさむき みかつきのかけ永福門院
911しくれふる やまのはつかの くもまより あまりていつる ありあけのつき為家
912すみのほる そらにはくもる かけもなし こかけしくるる ふゆのよのつき為教
913ひとめさへ しもかれにける やとなれは いととありあけの つきそさひしき具平親王
914かはちとり なれもやものは うれはしき たたすのもりを ゆきかへりなく俊成(藤原俊忠男)
915けふくれて あすかのかはの かはちとり ひにいくせをか なきわたるらむ躬恒
916うらまつの はこしにおつる つきかけに ちとりつまとふ すまのあけほの守覚法親王
917おのれたに こととひこなむ さよちとり すまのうきねに ものやおもふと良経(九条兼実男)
918うらかせの さむくしふけは あまころも つまとふちとり なくねかなしも宗尊親王
919おきつしほ さしてのいその はまちとり かせさむからし よはにともよふ長方
920やまのはも みえぬあかしの うらちとり しまかくれゆく つきになくなり読人不知
921このゆふへ しほみちくらし なにはかた あしへのちとり こゑさわくなり後嵯峨院
922つききよみ さよふけゆけは いせしまや いちしのうらに ちとりなくなり実朝
923あはちしま せとのしほかせ さむからし つまとふちとり こゑしきるなり経盛
924さほかはに あそふちとりの さよふけて そのこゑきけは いねられなくに読人不知
925かはちとり つきよをさむみ いねすあれや ねさむることに こゑのきこゆる永福門院
926あまをふね さしてみちくる ゆふしほの いやましになく ともちとりかな道玄
927ふゆのよは しほかせさむみ かみしまの いそまのうらに ちとりなくなり国冬
928ひくなみの さそひやかへす ともちとり またいそとほく こゑのきこゆる源深
929よふねこく せとのしほあひに つきさえて をしまかいそに ちとりしはなく勝命
930きよみかた せきのとたたく うらかせに あけかたかけて なくちとりかな重時
931かせさむき ふけひのうらの さよちとり とほきしほひの かたになくなり為氏
932とこさえて ねられぬふゆの よをなかみ またるるかねの おとそつれなき章義門院
933たひまくら ふしみのさとの あさほらけ かりたのしもに たつそなくなる式子内親王
934つららゐる かりたのおもの ゆふくれに やまもととほく さきわたるみゆ雅有
935あさひさす こほりのうへの うすけふり またはれやらぬ よとのかはきし良経(九条兼実男)
936ふるかはの いりえのみつの あさこほり かよひしふねの あとたにもなし実氏
937やまかはの みわたによとむ うたかたの あわにむすへる うすこほりかな為家
938はやきせは なほもなかれて やまかはの いはまによとむ みつそこほれる公雄
939さゆるよの いけのたまもの みかくれて こほりにすける なみのしたくさ道家
940たきかはの いはねつつきや こほるらむ はやせのなみの おとのよわれる覚助法親王
941たたひとへ うへはこほれる かはのおもに ぬれぬこのはそ かせになかるる道良女
942さゆるよの こほりのうへに ゐるかもは とけてねられぬ ねをのみやなく宗直/宣直
943あさあけの こほるなみまに たちゐする はおともさむき いけのむらとり広義門院
944ふちはせに かはるのみかは あすかかは きのふのなみそ けさはこほれる雅経
945さゆるひの しくれののちの ゆふやまに うすゆきふりて くもそはれゆく為兼
946しくれつる とやまのさとの さゆるよは よしののたけに はつゆきやふる道家
947よもすから さとはしくれて よこくもの わかるるみねに みゆるしらゆき実俊(西園寺公相男)
948きのふけふ さとはしくれの ひまなくて みやまはゆきそ はやふりにける実泰
949いはのうへの こけのころもも うつもれす たたひとへなる けさのしらゆき実氏
950くもゐゆく つはさもさえて とふとりの あすかみゆきの ふるさとのそら土御門院
951けさみれは とほやましろし みやこまて かせのおくらぬ よはのはつゆき宗尊親王
952みわたせは あけわかれゆく くもまより をのへそしろき ゆきのとほやま久世
953さえこほる くもははれゆく あさあけの ひかけにみかく ゆきのやまのは内実
954しからきの とやまはかりに ふりそめて にはにはおそき ゆきにもあるかな万秋門院
955ふりつもる こすゑやけさは こほりぬる かせにもおちぬ まつのしらゆき冬平
956そらさむき とやまのくもは なほとちて さとよりはるる ゆきのあさあけ顕資
957はれそむる くものとたえの かたはかり ゆふひにみかく みねのしらゆき道平
958ときうつり つきひつもれる ほとなさに はなみしにはに ふれるしらゆき為家
959けさはまた あとみえぬまて つもりけり わかわけそむる みねのしらゆき貞時
960くれかかる ゆふへのそらに くもさえて やまのははかり ふれるしらゆき為氏
961ゆきふれは やまのはしらむ あけかたに くもまにのこる つきのさやけさ家平
962ふみわけし きのふのにはの あともなく またふりかくす けさのしらゆき俊光
963したこほる みやまのゆきの けぬかうへに いまいくへとか ふりかさぬらむ経平(衣笠家良男)
964えたかはす こすゑにゆきは もりかねて このしたうすき まきのやまみち家定
965たれかくて すむらむとたに しらゆきの ふかきみやまの おくのいほかな有家(藤原重家男)
966ゆくみつに うかふこのはの ひまをなみ こほらぬうへに つもるしらゆき後嵯峨院
967はやきせの みつのうへには ふりきえて こほるかたより つもるしらゆき道潤
968ささのはの さえつるなへに あしひきの やまにはゆきそ ふりつみにける貫之
969しほかせに たちくるなみと みるほとに ゆきをしきつの うらのまさこち為子(従二位)
970あけわたる なみちのくもの たえまより むらむらしろき ゆきのとほやま隆康
971あしのはも しもかれはてて なにはかた いりえさひしき なみのうへかな基氏
972おほゐかは すさきのあしは うつもれて なみにうきたる ゆきのひとむら宗尊親王
973かせはらふ みきはのあしの をれかへり なひくすゑはは ゆきもたまらす実超
974よはのあらし はらひかねけり けさみれは ゆきのうつまぬ まつすきもなし仁澄
975みやきのや かれはたになき はきかえに をれぬはかりも つもるしらゆき土御門院
976したをれの たけのおとさへ たえはてぬ あまりにつもる ゆきのひかすに為世(御子左藤原為氏男)
977あかつきに つもりやまさる そともなる たけのゆきをれ こゑつつくなり行房
978ふきはらふ あらしはよわる したをれに ゆきにこゑある まとのくれたけ伊平
979ゆふまくれ ふるともみえて しらゆきの つもれはなひく にはのくれたけ良信
980かきくらす のきはのそらに かすみえて なかめもあへす おつるしらゆき定家
981やまあらしの すきのははらふ あけほのに むらむらなひく ゆきのしらくも伏見院
982ふりつもる かちののはらの ゆきのうへに わくるあさけの そてのさむけさ隆博
983とふひとも なくてひかすそ つもりぬる にはにあとみぬ やとのしらゆき為方
984かさねても うつみなはてそ まれにとふ ひとのなさけの あとのしらゆき貞綱
985あまのかは やととふみちも たえぬらし かたののみのに つもるしらゆき資平
986はつせやま をのへのゆきけ くもはれて あらしにちかき あかつきのかね景綱
987ふるゆきの あめになりゆく したきえに おとこそまされ のきのたまみつ為家
988けさのまの ゆきはあとなく きえはてて かれののくちは あめしをるなり新大納言(延政門院)
989しろたへの いろよりほかの いろもなし とほきのやまの ゆきのあけほの後宇多院
990ふりはれて つきのかけさす にはのゆきは うすきもふかく みゆるなりけり家基(近衛基平男)
991ふりうつむ ゆきのすかたと みえつるを きえゆくかたそ たけになりゆく親子(従三位源)
992ゆきうつむ そののくれたけ をれふして ねくらもとむる むらすすめかな西行
993へたてつる かきねのたけも をれふして ゆきにはれたる さとのひとむら雅孝
994ほしきよき よはのうすゆき そらはれて ふきとほすかせを こすゑにそきく伏見院
995ゆきふれは みちたえにけり よしのやま はなをはひとの たつねしものを俊成(藤原俊忠男)
996はるならぬ はなもみよとや みよしのの たままつかえに ふれるしらゆき長方
997くもをいてて われにともなふ ふゆのつき かせやみにしむ ゆきやつめたき高弁
998つきかけは もりのこすゑに かたふきて うすゆきしろし ありあけのには永福門院
999そらはなほ またよふかくて ふりつもる ゆきのひかりに しらむやまのは為世(御子左藤原為氏男)
1000こよひまた かせふきさえて きえやらぬ きのふのゆきに ふりそかさなる資高
1001あまのとの あくるそらかと みえつるは つもれるゆきの ひかりなりけり小弁
1002まきもくの たまきのみやに ゆきふれは さらにむかしの あしたをそみる俊成(藤原俊忠男)
1003ふりにける あとにこころの ととまるは たかつのみやの ゆきのあけほの隆信
1004あともなき すゑののたけの ゆきをれに かすむやけふり ひとはすみけり定家
1005かせはらふ こすゑはかりは かつおちて しつえにのこる まつのしらゆき実重(三条公親男)
1006かせののち あられひとしきり ふりすきて またむらくもに つきそもりくる為子(従二位)
1007うきくもの ひとむらすくる やまおろしに ゆきふきませて あられふるなり為世(御子左藤原為氏男)
1008ひとむらの くもにあられは まつおちぬ しくれしそらの ゆきになるころ実兼
1009あられふる くものたえまの ゆふつくひ ひかりをそへて たまそみたるる為藤
1010あらしふく みやまのいほの ささのはの さやくをきけは あられふるなり為家
1011ねやのうへは つもれるゆきに おともせて よこきるあられ まとたたくなり為兼
1012ふくかせの あらちのたかね ゆきさえて やたのかれのに あられふるなり家良
1013しからきの とやまのあられ ふりすさひ あれゆくころの くものいろかな定家
1014ここのへに よをかさねつる くものうへの ありあけのつきを いつかわすれむ少将内侍(後深草院)
1015はなならぬ ゆきにもつらし あさきよめ またこころあれ とものみやつこ秀長(藤原秀弘男)
1016をとめこか くものかよひち そらはれて とよのあかりも ひかりそへけり俊成(藤原俊忠男)
1017たちましり そてつらねしも むかしかな とよのあかりの くものうへひと兼行
1018やまもとや いつくとしらぬ さとかくら こゑするもりは みやゐなるらし実兼
1019わすれめや にはひにつきの かけそへて くもゐにききし あさくらのこゑ基忠(鷹司兼平男)
1020たきすさふ しもよのにはひ かけふけて くもゐにすめる あさくらのこゑ隆教
1021ゆきのうちに ふゆはいなはの みねのまつ つひにもみちぬ いろたにもなし順徳院
1022としのうちに さけるはなかと うめかえに をれはたもとに かかるしらゆき兼実
1023このはなき むなしきえたに としくれて まためくむへき はるそちかつく為兼
1024うめかえに わきてふらなむ しらゆきは はるよりさきの はなとみるへく清正
1025となへつる みよのほとけを しるへにて おのれもなのる くものうへひと為家
1026はるあきの すててわかれし そらよりも みにそふとしの くれそかなしき為家
1027はかなくて くれぬるとしを かそふれは わかみもすゑに なりにけるかな顕輔
1028としくれて とほさかりゆく はるしもそ ひとよはかりに へたてきにける実氏
1029ゆくつきひ かはのみつにも あらなくに なかるることも いぬるとしかな貫之
1030なそもかく つもれはおいと なるとしの くれをはいそく ならひなるらむ実定
1031うはたまの このよなあけそ しはしはも またふるとしの うちそとおもはむ実朝
1032みちもなく ふりつむゆきは うつめとも くれゆくとしは とまりやはする為教
1033すきぬれは わかみのおいと なるものを なにゆゑあすの はるをまつらむ肥後(京極前関白家)
1034あはれなり かすにもあらぬ おいのみを なほたつねても つもるとしかな俊成(藤原俊忠男)
1035としくるる けふのゆきけの うすくもり あすのかすみや さきたちぬらむ伏見院
1036ことしはや あすにあけなむ あしひきの やまにかすみの たてりやとみむ貫之
1037としくれて わかよふけゆく かせのおとに こころのうちの すさましきかな紫式部
1038しほかまの いそのいさこを つつみもて みよのかすとそ おもふへらなる忠岑
1039かそふれは またゆくすゑそ はるかなる ちよをかきれる きみかよはひは教通
1040めつらしき けふのまとゐは きみかため ちよにやちよに たたかくしこそ行成
1041みかへりの みそちをへても いくちよと かきらぬはるの すゑそひさしき実重(三条公親男)
1042おいのなみ なほしつかなれ きみかよを ここのそちまて みつのはまかせ隆信
1043きみかよの はるにしあへは ときはなる まつのちとせも かけをそへけり頼実(藤原経宗男)
1044よろつよを きみにゆつらむ ためとてや こけむすいはに まつもおひけむ安芸(郁芳門院)
1045おほそらを めくるつきひの いくかへり いまゆくすゑに あはむとすらむ道綱母
1046かみのます やまたのはらの つるのこは かへるよりこそ ちよはかそへめ
1047ひめこまつ おほかるのへに ねのひして ちよをこころに まかせたるかな道済
1048かすかのの ねのひのまつに ひかれきて としはつむとも わかなならなむ月花門院
1049ちちのはる よろつのあきに なからへて つきとはなとを きみそみるへき実朝
1050わかはさす まつのみとりに しるきかな みむろのやまの ちよのゆくすゑ季経
1051まつかけの うつれるやとの いけなれは みつのみとりも ちよやすむへき俊頼(源経信男)
1052ひをとしに こよひそかふる いまよりや ももとせまての つきかけもみむ伊衡
1053いはひつる ことたまならは ももとせの のちもつきせぬ つきをこそみめ醍醐天皇
1054ひさしくも にほはむとてや うめのはな はるにかねては さきそめにけむ貫之
1055こころありて うゑたるやとの はななれは ちとせうつらぬ いろにそありける貫之
1056かせふけと えたもならさぬ きみかよに はなのときはを はしめてしかな出羽弁
1057ここのへに にほひをそふる さくらはな いくちよはるに あはむとすらむ俊成(藤原俊忠男)
1058よろつよの ためしをきみに はしめおきて さきそふはなの はるそひさしき公宗(洞院実雄男)
1059すめらきを ちよのはるとそ いのりつる わかゆくすゑに はなやさくとて親宗(平時信男)
1060さくらはな おのかにほひも かひありて けふにしあへる はるやうれしき公衡(西園寺実兼男)
1061くものうへ ここのかさねの やとのはる あらしもしらぬ はなそのとけき伏見院
1062ふくかせも をさまりにける きみかよの ちとせのかすは けふそかそふる後嵯峨院
1063かきりなき ちよのあまりの ありかすは けふかそふとも つきしとそおもふ弁内侍(後深草院)
1064さしのほる ひかりにつけて みかさやま かけなひくへき すゑそみえける為氏
1065あめのした くもりなかれと てらすらし みかさのやまに いつるあさひは為藤
1066さくはなの かけにかくるる ひとおほみ ありしにまさる ふちのいろかも業平
1067ももしきに ねをしととめて きくのはな きみみぬあきは あらしとそおもふ大輔(殷富門院)
1068あきのつき かけのとかにも みゆるかな こやなかきよの ためしなるらむ公任
1069しつかなる けしきそしるき つきかけの やほよろつよを てらすへけれは白河院
1070くもゐにて いくよろつよか なかむへき つきになれたる あきのみやひと季経
1071のとかなる よをみやかはの きよきせに すむもかひある あきのよのつき行能
1072くものうへに ひかりさしそふ あきのつき やとれるいけも ちよやすむへき為家
1073もろともに きみそすむへき ひさかたの あまてるつきの よろつよのあき定雅(藤原忠経男)
1074わたつうみ よせてはかへる しきなみの かすかきりなき きみかみよかな讃岐
1075たまつはき はつねのまつを とりそへて きみをそいはふ しつのこやまて俊成(藤原俊忠男)
1076ことのねは うへまつかせに かよひけり ちとせをふへき きみにひかれて大弐(二条太皇太后宮)
1077わかのうらや なかくひさしき あとしあれは なほちよそへて たつもなくなり冬平
1078たのむそよ かみもうけひけ みしめなは なかくといのる きみかちとせを公誉
1079ゆくすゑの ひさしきみよに くらふれは むかしはちかし すみよしのまつ時広
1080よろつよを きみにまかせて まつかえの ふかきみとりも いろをそふらむ師重(源師親男)
1081つかへつつ ゆくすゑとほく たのむかな たけのそのふに よよをかさねて禅助
1082おいらくの わかみもまつも よよをへて けふのみゆきに いろまさりけり兼経
1083ためしなき きみかちとせの とかへりも おひそふまつの かすにみゆらむ基忠(鷹司兼平男)
1084きみかよは たかののやまの いはのむろ あけむあしたの のりにあふまて俊成(藤原俊忠男)
1085よよたえす つきてひさしく さかえなむ とよあしはらの くにやすくして伏見院
1086きみかへむ ちよにやちよの すゑまても わかみかはらす つかへてしかな実雄
1087ふりにける やそちののちを かそへても のこるよはひの すゑそひさしき為教
1088あまつそら ほしのくらゐを かそへてそ ゆくすゑとほき みよはしらるる栄算
1089きみかため ななせのかはに みそきして やほよろつよを いのりそめぬる在藤
1090わかのうらに としへてすみし あしたつの くもゐにのほる けふのうれしさ重家
1091たかみくら くものとはりを かかくとて のほるみはしの かひもあるかな実兼
1092いにしへも たくひもあらし わかやとに えたをつらぬる かしはきのかけ光頼
1093くもりなき つきひのひかり いくめくり おなしくもゐに すまむとすらむ為子(従二位)
1094わかのうらに ちちのたまもを かきつめて よろつよまても きみかみむため俊成(藤原俊忠男)
1095みよまてに いにしへいまの なもふりぬ ひかりをみかけ たまつしまひめ後嵯峨院
1096あふみなる あさひのさとは けふよりそ よのさかゆへき ひかりみえける読人不知
1097やすみしる わかすめらきの みよにこそ さかゐのむらの みつもすみけれ匡房
1098きみかよは なからのやまの いはねまつ ちたひやちたひ はなのさくまて顕輔
1099きみかよは たみのこころの ひとかたに なひきてみゆる あをやきのむら顕輔
1100ゆふそのの ひかけのかつら かさしもて たのしくもあるか とよのあかりの俊成(藤原俊忠男)
1101はつしくれ ふりにけらしな あすよりは あきさかやまの もみちかささむ頼資(藤原兼光男)
1102そらはれて てらすつきひの あきらけき きみをそあふく いやたかのやま経光
1103うすくこく ちえたにさける ふちなみの さかりもひさし よろつよのはる俊光
1104いにしへに いまをくらふの さとひとは よよにこえたる みしねをそつく俊光
1105わかれての のちはしらぬを いかならむ ときにかまたは あはむとすらむ千里
1106きみををしむ こころのそらに かよへはや けふとまるへき あめのふるらむ貫之
1107しろたへの そてわかるへき ひをちかみ こころにむせひ なきのみそなく紀郎女
1108やまとほみ くもゐにかりの こえていなは われのみひとり ねにやなきなむ実朝
1109いりえこく をふねになひく あしのほは わかるとみれと たちかへりけり俊成(藤原俊忠男)
1110さよふけて いまもなかなむ ほとときす わかれををしむ こゑときくへく清正
1111たのむらむ しるへもいさや ひとつよの わかれにたにも まとふこころは西行
1112わかれては いかにこひしと おもふらむ おのかこころそ ひとをしりける重之
1113まちつけむ いのちもしらぬ みにしあれは けふのわかれを かきりとそおもふ寂超
1114つかのまも わすれむものか いてかてに つきをしをりし そてのわかれは定家
1115わかるるか わひしきものは いつしかと あひみむことを おもふなりけり公忠(源国紀男)
1116あききりの へたつるあまの はしたてを いかなるひまに ひとわたるらむ上東門院
1117われのみや いふへかりける わかれちに ゆくもとまるも おなしおもひを忠度
1118かへりこむ さためなきみは このたひや つひのわかれに ならむとすらむ頼輔
1119かへりきて とふひとあらは みすはかり ゑしまをこれに うつせとそおもふ惟方
1120かきりあれは やへのやまちを へたつとも こころはそらに かよふとをしれ匡房
1121かからすは なにかわかれの をしからむ なれぬるはかり くやしきはなし大弐(安嘉門院)
1122わかれゆく ひとををしむと こよひより とほきゆめちに われやまとはむ貫之
1123わかれても けふよりのちは たまくしけ あけくれみへき かたみなりけり読人不知
1124くやしきは よしなくきみに なれそめて いとふみやこの しのはれぬへき西行
1125あつまのの けふりのたてる ところみて かへりみすれは つきかたふきぬ人麿
1126たつかねの きこゆるたゐに いほりして われたひなりと いもにつけこせ人麿
1127あしひきの やままつかねを まくらにて さぬるこよひは いへししのはる伏見院
1128いててこし みやこはくもに へたたりぬ すゑもかすみの いくへなるらむ式子内親王
1129なにとなく ものあはれにも みゆるかな かすみやたひの こころなるらむ俊成(藤原俊忠男)
1130みちのへの かすみふきとく やまかせに かすあらはるる はるのたひひと知家
1131かへるかり われもたひなる みやまちに みやこへゆかは ことはつてまし内侍(永福門院)
1132うらやまし いかなるかりの はるくれは もとのこしちに たちかへるらむ全真
1133かりころも たちうきはなの かけにきて ゆくすゑくらす はるのたひひと定家
1134しけりあふ つたもかへても もみちして こかけあきなる うつのやまこえ宗尊親王
1135うちしくれ ふるさとおもふ そてぬれて ゆくさきとほき のちのしのはら四条(安嘉門院)
1136たひひとも みなもろともに あさたちて こまうちわたす やすのかはきり四条(安嘉門院)
1137よはのつき われのみおくる やまちそと なれしみやこの ともにつけこせ丹後(宜秋門院)
1138あふさかや いそくせきちも よやふかき そてさへしめる すきのしたつゆ為実(御子左藤原為氏男)
1139こえやせむ よはふかくとも あふさかの とりのねまたは つきもこそいれ行家(藤原知家男)
1140あふさかの せきのとあくる しののめに みやこのそらは つきそのこれる能清
1141おもひやれ しはしとおもふ たひたにも なほふるさとは こひしきものを康頼
1142たひねして ものおもふほとに あきのよの ありあけのつきも いてにけるかな清正
1143とまるへき やとをはつきに あくかれて あすのみちゆく よはのたひひと為兼
1144あけやらぬ くさのまくらの つゆのうへに つきをのこして いつるたひひと俊兼
1145くさのいほ かりねのとこの おもひいては まくらにちかき さをしかのこゑ師宗
1146あさつゆを さきたつともに はらはせて おなしあとゆく のへのたひひと斉時
1147かりねする よのまのつゆに そほちつつ ひとりあさたつ のちのささはら為藤
1148つゆわけし そてになれきて あきのつき みやこもたひの なみたをそとふ宗宣(北条宣時男)
1149こととへと こたへぬつきの すみたかは みやこのともと みるかひもなし為子(贈従三位)
1150かりまくら をささかつゆの おきふしに なれていくよの ありあけのつき性助法親王
1151たひひとの わくるのはらの つゆおちて やとりもあへぬ あきのよのつき通成
1152つゆふかき のへのをはなの かりまくら かたしくそてに つきそこととふ長典
1153つきかけそ むかしのともに まさりける しらぬみちにも たつねきにけり行尊
1154しくれふる とやまのすゑは はれやらて くものうへゆく みねのつきかけ教範
1155みやこひと おなしつきをは なかむとも かくしもそては ぬれすやあるらむ俊恵
1156あはれとて しらぬやまちは おくりきと ひとにはつけよ ありあけのつき雅経
1157まとろまし こよひならては いつかみむ くろとのはまの あきのよのつき孝標女
1158はつかりの たひのそらなる こゑきけは わかみをおきて あはれとそおもふ中務(選子内親王家)
1159あきかせの さむきあしたに さののをか こゆらむきみに きぬかさましを赤人
1160くさまくら かりねのいほの ほのほのと をはなかすゑに あくるしののめ公経(藤原実宗男)
1161あさあけの やまわけころも ぬれてけり ふかきよたちの つゆのしめりに実兼
1162むすひおく やとこそかはれ くさまくら かりねはおなし よなよなのつゆ実重(三条公親男)
1163あきのひの うすきころもに かせたちて ゆくひとまたぬ をちのしらくも定家
1164うちしくれ ものさひしかる あしのやの こやのねさめに みやここひしも実定
1165なにはかた あしのまろやの たひねには しくれはのきの しつくにそしる経盛
1166めにかけて いくかになりぬ あつまちや みくにをさかふ ふしのしはやま隆弁
1167こえきても なほすゑとほし あつまちの おくとはいはし しらかはのせき任弁
1168よそにのみ きみをあひみて ゆふたすき たむけのやまを あすかこえなむ読人不知
1169ささなみの なみくらやまに くもいては あめそふるてふ かへれわかせこ読人不知
1170ゆふたたみ たむけのやまを けふこえて いつれののへに いほりせむかも坂上郎女
1171みやこひと まつらむものを あふさかの せきまてきぬと つけややらまし中務(選子内親王家)
1172こゆれとも おなしやまのみ かさなりて すきゆくたひの みちそはるけき花園院
1173くさまくら こけのむしろに かたしきて みやここひしみ あかすよはかな実泰
1174あらちやま ゆふこえくれて やたののの あさちかりしき こよひかもねむ後伏見院
1175おくれぬと いまはみえつる たひひとの やとかるのへに こゑそちかつく兼行
1176たひひとの ともしすてたる まつのひの けふりさひしき のちのあけほの宗尊親王
1177たひひとの ゆくかたかたに ふみわけて みちあまたある むさしののはら道平
1178くさまくら つゆはかりにや ぬれにけむ とまれるそては しをりしものを伊勢
1179なにたかき いはみのうみの おきつなみ ちへにかくれぬ やまとしまねは人丸
1180すみなれし ふるきみやこの こひしさは かみもむかしに おもひしるらむ重衡
1181たひころも きてはそてのみ つゆけきに おもひたたてそ あるへかりける肥後(京極前関白家)
1182たひころも きなれのやまは なのみして なほうらかなし あきのゆふくれ公経(藤原実宗男)
1183むかしこそ なにともなしに こひしけれ ふしみのさとに こよひやとりて能因
1184はしはしら それとはかりも みるへきに しらすなからも すきにけるかな小弁
1185ささかにの くもてあやふき やつはしを ゆふくれかけて わたりかねぬる四条(安嘉門院)
1186かりそめと おもふたひねの ささのいほも よやなかからむ つゆのおきそふ俊成(藤原俊忠男)
1187いつかわれ なれしみやこに たちかへり かかるたひねを ひとにかたらむ教実
1188くさまくら ささかきうすき あしのやは ところせきまて そてそつゆけき俊頼(源経信男)
1189かせあらき しはのいほりは つねよりも ねさめそものは かなしかりける西行
1190しはのいほ しはしみやこへ かへらしと おもはむたにも あはれなるへし西行
1191いさここに こよひはさねむ たひころも やまおろしふきて そてはさゆとも実氏
1192のへのいほ いそのとまやの たひまくら ならはぬゆめは むすふともなし実雄
1193たひころも たもとかたしき こよひもや くさのまくらに われひとりねむ実朝
1194はつせかは さよのまくらに おとつれて あくるひはらに あらしをそきく慈円
1195いはかねを つたふかけちの たかけれは くものあととふ あしからのやま為家
1196あつまのの つゆわけころも はるはると きつつみやこを こひぬひもなし教定(飛鳥井雅経男)
1197みやこにて またれしみねを こえきても なほやまよりそ つきはいてける景綱
1198まきのたつ いくへのやまを こえすきて さとちかくなる まつのしたみち俊兼
1199かへりみる くももいくへの みねこえて またゆくすゑも きりふかきやま俊光
1200とほやまの ふもとになひく ゆふけふり さとあるかたの しるへなりけり兼胤
1201わけゆけと またみねとほし たかせやま くもはふもとの あとにのこりて頼重
1202ゆきくれて やととふやまの をちかたに しるへうれしき いりあひのかね道昭
1203あめのあしも よこさまになる ゆふかせに みのふかせゆく のへのたひひと為子(従二位)
1204とまるへき かたやいつこに ありまやま やとなきのへの ゆふくれのあめ伏見院
1205たひのそら あめのふるひは くれぬかと おもひてのちも ゆくそひさしき為兼
1206あめはれぬ たひのやかたに ひかすへて みやここひしき ゆふくれのそら慈円
1207かりそめと おもひしものを あすかゐの みまくさかくれ いくよねぬらむ惟明親王
1208ふるさとに さらはふきこせ みねのあらし かりねのよはの ゆめはさめぬと定家
1209けふいくか のやまのあらし みにしめて ふるさととほく わかれきぬらむ政村
1210くさまくら あまりよふかく たちにけり とりのはつねも いまそなくなる家良
1211わかせこを やまとへやると さよふけて あかつきつゆに われたちぬれぬ紀皇女
1212よをこめて いそきつれとも まつかねに まくらをしても あかしつるかな増基
1213いつくとも さしてもゆかす たかせふね うきよのなかを いてしはかりそ行尊
1214かへりみる わかふるさとの くものなみ けふりもとほし やへのしほかせ道良女
1215わけくたる ふもとのみちに かへりみれは またあとふかき みねのしらくも宗秀(大江時秀男)
1216われのみと おもふやまちの ゆふくれに さきたつくもも あともさためす覚寛
1217しらはまに すみのいろなる しまつとり ふてもおよはは ゑにかきてまし四条(安嘉門院)
1218むしあけの せとのあけほの みるをりそ みやこのことも わすられにける忠盛
1219ゆらのとや なみちのすゑは はるかにて ありあけのつきに わたるふなひと政村
1220なるみかた しほせのなみに いそくらし うらのはまちに かかるたひひと忠成(大江広元男)
1221またしらぬ うきねのとこの なみよりも なれたるつきの そてぬらすらむ宮内卿(後鳥羽院)
1222なみのおとを こころにかけて あかすかな とまもるつきの かけをともにて西行
1223いくたひか おなしねさめに なれぬらむ とまやにかかる すまのうらなみ行平
1224なにはかた ゆきかふふねの つなてなは くるともみえす あしのまもなみ忠見
1225あふみちの のしまかさきの はまかせに いもかむすひし ひもふきかへす人麿
1226しまつたひ としまのさきを こきゆけは やまとこひしく つるさはになく赤人
1227いそさきを こきてめくれは あふみちや やそのみなとに たつさはになく黒人
1228あまをとめ たななしをふね こきいつらし たひのやとりに かちのおときこゆ金村
1229またしらぬ なにはのうらの あしまわけ こきゆくかたや すみよしのうら輔親
1230あまのはら なみのなるとを こくふねの みやここひしき ものをこそおもへ重之
1231わたのはら めにみぬかせを しるへにて なみちのふねの ゆくもはかなし家良
1232いつくをか けふのとまりと たのむらむ かせにまかする おきつふなひと政秋
1233まつかうらの とまりのいそと きくものを なにもさはらす かへるなみかな行能
1234あしのやの かりねもちかく みつしほに いそこすなみを まくらにそきく宗俊
1235みやこにて ききわすれにし なみのおとに またたちかへり なれむとすらむ雅有
1236たつねても おなしとまりの うきねせむ なみちへたつな よはのともふね実氏
1237たつねみむ おなしうきねの とまりふね わかおもふかたに たよりありやと為家
1238とまりする ひとよのちきり こきわかれ おのかさまさま いつるふなひと後鳥羽院
1239かちまくら ひとよならふる ともふねも あすのとまりや おのかうらうら伏見院
1240みなとかせ さむきうきねの かちまくら みやこをとほみ いもゆめにみゆ為家
1241ものおもひ こしちのうらの しらなみも たちかへるならひ ありとこそきけ初君(遊女)/初若
1242ふねとむる みつのみまきの まこもくさ からてかりねの まくらにそしく俊成女
1243よをこめて またこきいつる ひともあれや あまたこゑする よそのともふね新宰相(伏見院)
1244たちかへる つきひやいつを まつらふね ゆくへもなみの ちへにへたてて伏見院
1245つきかけを そてにかけても みつるかな すまのうきねの ありあけのなみ慈円
1246くれぬとて とまりをいそく うらなみに つきのみふねそ いてかはりぬる宗尊親王
1247すきゆけと ひとのこゑする やともなし いりえのなみに つきのみそすむ定家
1248おもへとも はかなきものは ふくかせの おとにもきかぬ こひにそありける友則
1249わかこころ かからはいかか ありへむと きのふけふにて しられぬるかな実家(藤原公能男)
1250いまよりの なみたのはてよ いかならむ こひそむるたに そてはぬれけり為氏
1251ふくかせの おとにききつつ さくらはな めにはみえすも すくるはるかな村上天皇
1252たよりある かせもやふくと まつしまに よせてひさしき あまのはしふね清少納言
1253そのことと いはぬなみたの わひしきは たたにたもとの ぬるるなりけり貫之
1254ひとしれぬ こころたたすの かみならは おもふこころを そらにしらなむ
1255つのくにの うらのはつしま はつかにも みなくにひとの こひしきやなそ雅成親王
1256ひとしれぬ こころのうちの かねことを むなしくなさぬ ゆくすゑもかな長方
1257おもふより みしよりむねに たくこひを けふうちつけに もゆるとやしる式子内親王
1258ちきりありて あひみむことも しらぬよに はなかくひとを おもひそめぬる広義門院
1259まよひそむる こころひとつの ゆくへしも われにてしらぬ みのおもひかな公顕
1260おちたきつ おとにはたてし よしのかは みつのこころは わきかへるとも為家
1261あちきなく なみたはかりは もらさはや たれゆゑぬるる そてとみえすは基忠(鷹司兼平男)
1262あしのやの しのひにもゆる わかおもひ さそともひとに いふひまそなき実兼
1263いかにせむ かくとはひとに いひかたみ しらせねはまた しるみちもなし為子(従二位)
1264おもひよわり みこそはたへす なるとても ひとのしのはむ なをはもらさし教良女
1265よるとても こころのままに ねはなかし まくらならふる ひともこそしれ為守女
1266みしゆめを わかこころにも わすれめや とはすかたりに いはれもそする新大納言(延政門院)
1267こころには ちへにおもへと ひとにいはぬ わかこひつまは みるよしもなし人麿
1268あきはきの はなののすすき ほにいてす わかこひわたる かくれつまはも読人不知
1269はるさめの さはにふること おともなく ひとにしられて ぬるるそてかな小町
1270あまくもの わりなきひまを もるつきの かけはかりたに あひみてしかな西行
1271いかにせむ みこもりぬまの したにのみ しのひあまりて いはまほしきを相模
1272あしへこく たななしをふね いくそたひ ゆきかへるらむ しるひとをなみ業平
1273したにのみ もえわたれとも としをへて わかおもひをは けつひともなし躬恒
1274わかこひは ひとしらぬまの あやめくさ あやめぬほとそ ねをもしのひし宮内卿(後鳥羽院)
1275しのふとも つひにいろにや あらはれむ つねにはものを おもふみなれは遊義門院
1276いかにして ゆきてみたれむ みちのくの おもひしのふの ころもへにけり家隆
1277つつみあくる そてのなみたの いつみかは くちなむはては ころもかせやま家長(源時長男)
1278なかにゆく よしののかはは あせななむ いもせのやまを こえてみるへく
1279いもせやま かけたにみえて やみぬへく よしののかはは にこれとそおもふ峰守女
1280みにあまる おもひやそらに みちのくの しのふかひなく たつけふりかな行能
1281おもふとは いろにいてしと しのふにそ くるしきことは なほまさりける兼季
1282さらにまた つつみまさると きくからに うさこひしさも いはすなるころ為兼
1283われもつつみ きみもしのひて いはぬまの つもるつきひそ かこつかたなき少将(永陽門院)
1284いまはたた おもふこころを のこりなく しらするほとの ことのはもかな蓮生法師
1285おもふほとは うへにしらせぬ ふみのうちも なほつつまれて かきそさしぬる顕親門院
1286ひとまもとめ かくとしもなき たまつさを なみたなからそ おしつつみぬる伏見院
1287はつせかは ゐてこすなみの いはのうへに おのれくたけて ひとそつれなき良経(九条兼実男)
1288よよをへて われやはものを おもふへき たたひとたひの あふことにより和泉式部
1289なにかよに くるしきものと ひととはは あはぬこひとそ いふへかりける深養父
1290おもへとも たへねといひし やまかはの あさましくこそ わすれかたけれ道信
1291うらみかね そむきはてなむと おもふにそ うきよにつらき ひともうれしき忠度
1292かくはかり つれなきひとと おなしよに うまれあひけむ ことさへそうき重保
1293うきひとよ われにもさらは をしへなむ あはれをしらぬ こころつよさを為子(従二位)
1294つひにされは さてこのよをは すくせとや おもふこころを ちきりにはして広義門院
1295うらみしたふ ひといかなれや それはなほ あひみてのちの うれへなるらむ為兼
1296あはれてふ ことのはもこそ きこえくれ またてきえなむ つゆのかなしき
1297おもへとも しるしもなしと しるものを なにかかはかり わかこひわたる坂上郎女
1298たまほこの みちゆきふりに おもはさる いもをあひみて こふるころかも坂上郎女
1299おくれては いくたのうみの かひもなし しつむみくつと ともになりなむ弁乳女/弁乳母
1300わするるは おなしうきなの これはたた くやしきことの そはぬはかりそ小侍従
1301くやしさの そふはかりたに なれにせは わするるまてに とはさらめやは経盛
1302あふことの このよなからは かたからは のちのよとたに ちきりてしかな匡房
1303あはすして いけらむことの かたけれは いまはわかみを ありとやはおもふ読人不知
1304あひみすて わかこひしなむ いのちをは さすかにひとや あはれとおもはむ貫之
1305おくつゆの たまつくりえに しけるてふ あしのすゑはの みたれてそおもふ実氏
1306かたいとの あはすはなけの あはれたに せめてはかけよ たまのをにせむ為子(贈従三位)
1307かひなしや やまとりのをの おのれのみ こころなかくは こひわたれとも経継
1308いつをいかに まちみよとたに ちきらぬに たのむるこころ さもそつれなき為子(従二位)
1309かけはかり みしをかことの ちきりにて むすはぬなかの やまのゐのみつ宗緒母
1310うきひとを みぬめのうらの あたなみは さのみかけても なにおもふらむ忠成女
1311うきなかは あらいそなみの うつせかひ おもひよらすは みをもくたかし実教
1312いかにして たれもゆききの あふさかに ひとにしられぬ みちたつねまし成賢(祝部成茂男)
1313いそきても かならすひとに あふさかの せきにしあらは うれしからまし隆房
1314いたつらに ふけもゆくかな せめてたた これをまつよの かねときかはや雅有
1315むすひきと いひけるものを むすひまつ いかてかきみに とけてみゆへき小町
1316あふことを いまやいまやと まつのきの ときはにひとを こひわたるかな躬恒
1317こひしなは わすれぬへきを さすかなり いのちはかりに ものをおもふかな重之女
1318つらくとも わすれすこひむ かしまなる あふくまかはの あふせありやと
1319をりをりは おもふこころも みゆらむを つれなやひとの しらすかほなる雅有
1320ちきりたに あらはとたのむ はかなさよ かくてやさきの よよもすきけむ大納言(昭訓門院)
1321さきのよに たれむすひけむ したひもの とけぬつらさを みのちきりとは四条(安嘉門院)
1322さきのよに ひとのこころを つくしける みのむくひこそ おもひしらるれ親方
1323あふとみる そのおもかけの みにそはは ゆめちをのみや なほたのむへき国時
1324よしさらは おもひもよわれ よそなから あるかひもなき いのちなかさは為定(御子左二条為道男)
1325わかこひは いせをのあまの かりてほす みるめはかりを ちきりなれとや宗成
1326ゆふくれは おもひそいつる くもまゆく つきのほのかに ひとをみしより実俊(西園寺公相男)
1327ゆのはらに なくあしたつは わかことく いもにこふれや ときわかすなく旅人
1328たちはなの かけふむみちの やちまたに ものをそおもふ いもにあはすして三方
1329うちわたす たけたのはらに なくたつの まなしときなし わかこふらくは坂上郎女
1330なくさむる こころはなしに くもかくれ なきゆくとりの ねのみしなかる憶良
1331うちたのむ きみかこころの つらからは のにもやまにも ゆきかくれなむ素性
1332あひおもはぬ ひとのこころは やまなれや いはほよりけに うこかさるらむ忠岑
1333あめやまぬ やまのあまくも たちゐにも やすきそらなく きみをこそおもへ貫之
1334なかつきの そのはつかりの たよりにも おもふこころは きこえこぬかも読人不知
1335もゆれとも むねのおもひは かひもなし けふりをみてそ ひともとひける忠良
1336しのふとも こふともしらぬ つれなさに われのみいくよ なけきてかねむ定家
1337しのはれす こひすはなにを ちきりとか うきにそへたる なけきをもせむ読人不知
1338いとはるる かたこそあらめ いまさらに よそのなさけは かはらさらなむ忠度
1339すまのあまの しほたれころも なみかけて よるこそそても ぬれまさりけれ長時
1340いもかうへは しはのいほりの あめなれや こまかにきくに そてのぬるらむ俊成(藤原俊忠男)
1341もしほやく うらのけふりを かせにみて なひかぬひとの こころをそおもふ慈円
1342かせのおとの きこえてすくる ゆふくれに わひつつあれと とふひともなし伏見院
1343ゆふくれは かならすひとを こひなれて ひもかたふけは すてにかなしき遊義門院
1344あしまより なにはのうらを ゆくふねの つなてなかくも こひわたるかな読人不知
1345わきもこに こひてすへなみ ゆめにみむと われはおもへと いこそねられね人麿
1346いとふてふ ことのはをたに つゆはかり みまくほしきや なにのこころそ高明
1347おもひかね つれなきひとの はてみむと あはれいのちの をしくもあるかな仲実
1348とにかくに こころひとつを つくしきて いつをおもひの はてとかはせむ達智門院
1349みにそはは なくさみぬへき おもかけに なとこひしさの なほまさるらむ俊言
1350あふまてと おもふたのみを いのちにて つれなくすくす われそはかなき基良女
1351おもほえす われになきなの たつたかは なかるるみつを かへしてしかな読人不知
1352ぬきすてむ かたなきものは からころも たちとたちぬる なにこそありけれ和泉式部
1353なみたかは うきなはかりを なかしても みはうたかたの まつやきえなむ永福門院
1354よしさらは なみたのしたに くちもせよ みさへなかるる とこのさむしろ民部卿典侍(後堀河院)
1355うしろめた かせのさきなる もかりふね いつれのかたに よらむとすらむ輔親
1356つれなさの かきりをみむと おもふにそ うきにもをしき いのちなりける景綱
1357おもふらむ こころのほとを いかにして こころにこころ かへてしらまし読人不知
1358みをわけて おもふなかには なにとてか こころはかりを かへてしるへき惟方
1359いまこそは おもふあまりに しらせつれ いはてみゆへき こころならねは為家
1360うきてこそ なかれいつれと なみたかは こひしきせせに あはすもあるかな醍醐天皇
1361おもひいてぬ ときはなけれと したひもの なととけすのみ むすほほるらむ周子(更衣源)
1362あきやまの このしたかくれ ゆくみつの われこそまされ おもふこころは鏡王女
1363なかむるを たのむことにて あかしてき たたかたふきし つきをのみみて実方
1364てるつきの ひかりはしはし よそならは おもかけにのみ またるへきかな円融院
1365なかむらむ ひとのこころも しらなくに つきをあはれと おもふよはかな遊義門院
1366をしますよ ひとよはかりの あふことに かへむいのちは さすかなれとも隆教
1367いはしたた しらはさすかにと おもひなす なくさめにこそ かかるたのみを永福門院
1368ひともつつみ われもかさねて とひかたみ たのめしよはは たたふけそゆく為兼
1369まちかほに ひとにはみえし とはかりに なみたのとこに しをれてそぬる為子(従二位)
1370まとろまむ こころもなくて まつよひに やすくしつまる ひとさへそうき為相女
1371おもひあれは たのめぬよはも ねられぬを まつとやひとの よそにみるらむ重時
1372ゆめちには なこそのせきも なしといふに こひしきひとの なとかみえこぬ資子内親王
1373ひとのうへと みしつれなさの いまはまた われになりても なけかるるかな読人不知
1374つれなしと みつつつれなく しのふまに われもつれなき なをそたちぬる相模
1375あふことの むなしきなのみ のこしおきて みはなきかすに ききやなされむ常良
1376こひしてふ いつはりいかに つらからむ こころをみする ことのはならは読人不知
1377かささきの はねにしもふり さむきよを ひとりかねなむ きみをまちかね人麿
1378あしひきの やまのしつくに いもまつと われたちぬれぬ やまのしつくに大津皇子
1379おほかたの はるはきぬるに いかなれは したまつはなの おそくさくらむ円融院
1380ちきりしを わすれぬこころ そこにあれや たのまぬからに けふのひさしき伏見院
1381くらしかたき けふのなかめの こころにて またぬいくかを いかてすきけむ伏見院
1382まつことの こころにすすむ けふのひは くれしとすれや あまりひさしき為兼
1383おとせぬか うれしきをりも ありけるよ たのみさためて のちのゆふくれ永福門院
1384こよひそと まつゆふくれの たまつさは またさはるかと あけまくもうし新宰相(伏見院)
1385おもひたえて またぬもかなし まつもくるし わすれつつある ゆふくれもかな花園院
1386ちきりしを よもとたのまぬ このゆふへ まつとはなしに しつこころなき遠子(掌侍)
1387こぬひとを さらにうらみは ちきりしを たのみけりとや おもひなされむ能清
1388いかたおろす そまやまかはの あさきせは またこのくれも さこそさはらめ小侍従(太皇太后宮)
1389ことのはは たたなさけにも ちきるらむ みえぬこころの おくそゆかしき道良女
1390さのみやと けふのたのみに おもひなせは きのふのうさそ いまはうれしき伏見院
1391こよひとへや のちのいくよは いくたひも よしいつはりに ならはなるとも伏見院
1392おのつから いつはりならぬ ことのはも あらはとたのむ よさへふけぬる実泰
1393ふけさらむ そのうれしさの あすよりも こよひのうちの ときのまもかな後伏見院
1394いまのまも いかにかおもひ なりぬると まつよひしもそ しつこころなき朔平門院
1395たのめおきし こよひはかりも せめてまつ かはるなかはる こころなりとも道輔
1396わひつつは いつはりにたに たのめよと おもひしことを こよひこりぬる実家(藤原公能男)
1397おもへきみ ちきらぬよひの つきたにも ひとにしられて いつるものかは実方
1398さみたれの たそかれときの つきかけの おほろけにやは われひとをまつ躬恒
1399ひとしれす ひとまたさりし あきたにも たたにねられし つきのころかは相模
1400まそてもて ゆかうちはらひ きみまつと をりつるほとに つきかたふきぬ赤人
1401まつひとの みえぬからにや さよふけて つきにいるにも ねはなかるらむ伊勢
1402ことにいてて まつとはいはし おのつから いさよふつきに まかせてをみむ小弁
1403みをさらぬ おもかけはかり さきたちて ふけゆくつきに ひとそつれなき冬平
1404またぬたに くるれはいつる やまのはの つきをつれなき ひとにみせはや経任(中御門藤原為経男)
1405まちわひて なみたかたしく そてのうへに こぬよのつきの かけそふけゆく煕時
1406とはむしも いまはうしやの あけかたも またれすはなき つきのよすから為兼
1407つきそうき かたふくかけを なかめすは まつよのふくる そらもしられし為相女
1408たのめねは ひとやはうきと おもひなせと こよひもつひに またあけにけり永福門院
1409なほこりす たのむかさしも うききはの こよひをみても あすのゆふくれ道良女
1410いつはりに ひとなたのめそ いまやとも まつほとはしも おもはれはこそ親子(従三位源)
1411わかおもひ なくさまなくに なにしかも こぬものゆゑに たのめおきけむ花園院
1412まちよわり いまはとおもひ なるほとよ かねよりのちに とりもこゑして為子(従二位)
1413おもひしをれ ぬるとしもなき ときのまに ねやのひまさへ しらみはてぬる新大納言(延政門院)
1414ふけはつる かねよいまはの かなしさを しらてつれなき ひとやきくらむ兵衛佐(新陽明門院)
1415たのめしを まつよのあめの あけかたに をやむしもこそ つらくきこゆれ小侍従(太皇太后宮)
1416よのうちは まつにもつゆは かかりけり あくれはきゆる ものをこそおもへ道綱母
1417たれかれと われをなとひそ なかつきの つゆにぬれつつ きみまつわれそ人麿
1418おほつかな こよひはたれと ちきりてか あけなむくれを まてといふらむ成範
1419よしこよひ とはてもさらは あけななむ あすよりひとを うらみはつへく章義門院
1420ふけぬれと なほもちきりの すゑなれは うきにはなさて ひとそまたるる冬平
1421まきのとを さすなといひて たのめしも あらぬつらさに あくるしののめ弁内侍(後深草院)
1422うきをしるも いくあかつきに なりぬらむ こよひもはやく とりなきぬなり実兼
1423いはてもや あられぬへきの こころみに きのふのそらは くらしかねてき家経(藤原広業男)
1424くるほとの ひさしきからに おもひやる かたさへなくも なりぬへきかな醍醐天皇
1425とふほとの はるけきやまの ほとときす なくをもひとは きかすやあるへき能子(女御藤原)
1426かすかのの ゆきのしたくさ ひとしれす とふひありやと われそまちつる斎宮女御
1427かるのいけの いりえめくれる かもすらに たまものうへに ひとりねなくに紀皇女
1428あたにのみ きみかむすへる したひもの とくるをひとに しらせさらなむ朝光
1429ときかへし ゐてのしたおひ ゆきめくり あふせうれしき たまかはのみつ俊成(藤原俊忠男)
1430こひこひて あひみるよはの うれしきに ひころのうさは いはしとそおもふ実泰
1431いかにして ひころのうさの かきりをも あふよのうちに いひつくさまし忠房
1432とほつまと まくらかはして ねたるよは とりのねなくな あけはあくとも読人不知
1433あきのよを なかしとおもへと つもりにし こひをつくせは みしかかりけり人麿
1434ものおもひは けさこそまされ つらかりし ことはことにも あらぬなりけり小弁
1435よひのまの たたときのまの わかれにて とりのねかこつ うさまてもなし新大納言(延政門院)
1436あかつきの あらしにむせふ とりのねに われもなきてそ おきわかれゆく良経(九条兼実男)
1437ひきとめよ ありあけのつきの しらまゆみ かへるさいそく ひとのわかれち為家
1438むすひおく ちきりわするな したおひの したにそふかく われはたのみし重氏
1439わかるへき ときかやされは かきくらす わかなみたには あけぬよのそら読人不知
1440あかつきの わかれのきはに しられけり またとおもはぬ ひとのけしきは頼貞
1441ときのまの あふうれしさの ほともなく なこりをしたふ なみたにそなる道昭
1442いまはとて おきてわかるる とこのうへに とまるまくらも くれやまつらむ朔平門院
1443きぬきぬに わかれかねつる やすらひに あけすきぬへき かへるさのみち宣子(従三位藤原)
1444わかれちの なこりのそらに つきはあれと いてつるひとの かけはとまらす内侍(永福門院)
1445ゆくもぬれ とまるもしをる そてなれは きぬきぬにこそ つきもわかるれ真昭
1446うれしきに うきはそひける ならひかな まちみしよひに いまのわかれち新宰相(伏見院)
1447あはぬよは こひつつもねき あかつきの わかれのみちに なとまとふらむ元良親王
1448みちすから われのみつらく なかむれと つきはわかれも しらすかほなる雅有
1449かへるさは おもかけをのみ みにそへて なみたにくらす ありあけのつき別当(皇嘉門院)
1450おきてゆく ひとはつゆにも あらねとも けさはなこりの そてもかわかす和泉式部
1451きぬきぬの たもとにのこる つゆしあらは とめつるたまの ゆくへともみよ定為
1452しらつゆの ひたくるままに きえゆけは くれまつわれも いかかとそおもふ朝光
1453いかにせむ いかにかせまし いかにねて おきつるけさの なこりなるらむ俊成(藤原俊忠男)
1454いかにみし いかなるゆめの なこりそと あやしきまては われそなかむる読人不知
1455なけきわひ むなしくあけし そらよりも まさりてなとか けさはかなしき実氏
1456おもへとも なほあやしきは あふことの なかりしむかし なにおもひけむ村上天皇
1457かへるさの しののめくらき むらくもも わかそてよりや しくれそめつる為家
1458きぬきぬの しののめくらき わかれちに そへしなみたは さそしくれけむ四条(安嘉門院)
1459つねよりも あはれなりつる なこりしも つらきかたさへ けふはそひぬる永福門院
1460けさのなこり はれぬゆふへの なかめより こよひはさてや おもひあかさむ永福門院
1461あけやすき ひとのわかれを うらみしに わかあかつきの いまはひさしき家教
1462しののめに おきてわかれし ひとよりは ひさしくとまる たけのはのつゆ和泉式部
1463なきなけき さもひとこひて なかめしと おもひいてよよ ゆふくれのそら遊義門院
1464こころにも しはしそこむる こひしさの なみたにあまる ゆふくれのそら親子(従三位源)
1465いつはりの つらきゆふへを かさねても こころよわくそ ひとはこひしき内実
1466こひしさの なくさむかたと なかむれは こころそやかて そらになりゆく国時
1467こひわひて われとなかむる ゆふくれも なるれはひとの かたみかほなる定家
1468つれつれと そらそみらるる おもふひと あまくたりこむ ものならなくに和泉式部
1469いまのまの いのちにかへて けふのこと あすのゆふへを なけかすもかな和泉式部
1470あはれわか おもひのたゆむ ときもかな ねさめもつらし ゆふくれもうし雅有
1471そなたより ふきくるかせそ なつかしき いもかたもとに ふれやしぬらむ清輔
1472くもとつる やとののきはの ゆふなかめ こひよりあまる あめのおとかな慈円
1473つねよりも なみたかきくらす をりしもあれ くさきをみるも あめのゆふくれ永福門院
1474あめもよに ふりはへとはむ ひともなし なきにおとりて いけるみそうき生子(女御藤原)
1475よるのあめの おとにたくへる きみなれや ふりしまされは われこひまさる伏見院
1476なけかすは ねなましものを よひよひに やすくふすゐの とこならすとも実氏
1477なかそらに ひとりありあけの つきをみて のこるくまなく みをそしりぬる和泉式部
1478たのめても ひとのちきりは むなしきに こととふつきそ そてによかれぬ朔平門院
1479あはれにも めくりあふよの つきかけを おもひいれすや ひとはみるらむ少将(永陽門院)
1480うくつらき ひとのおもかけ わかなみた ともにそうかふ つきのよすから冷泉(花園院)
1481みかつきの われてあひみし おもかけの ありあけまてに なりにけるかな為家
1482うきくもの よそになりにし つきなれは たえまありとも みえしとそおもふ読人不知
1483わかそては なみたありとも つけなくに まつしりかほに やとるつきかな覚助法親王
1484つきかけに みをやかへまし おもふてふ ひとのこころに いりてみるへく訶子(更衣源)
1485あはれとも みるひとあらは おもはなむ つきのおもてに やとすこころを西行
1486こひうれへ ひとりなかむる よはのつき かはれやおなし かけもうらめし為子(従二位)
1487よもすから こひなくそてに つきはあれと みしおもかけは かよひしもこす伏見院
1488うきなみの かかるとならは うとはまの うとくてひとに あらましものを為子(従二位)
1489なみのよる しほのひるまも わすられす こころにかかる まつかうらしま為家
1490いせのうみや をふのみなとに ひくあみの うけくにひとを うらみてそふる泰綱
1491おのつから みるめもあらは わたつうみと あれにしとこを うらみしもせし資平
1492いかなれは くちぬるそてそ なみかかる いはねのまつも さてこそはあれ小侍従(太皇太后宮)
1493こちかせに なひきもはてぬ あまふねの みをうらみつつ こかれてそふる斎宮女御
1494うらかくれ いりえにすつる われふねの われそくたけて ひとはこひしき伏見院
1495やまのゐの あさきこころを しりぬれは かけみむことは おもひたえにき堀河(待賢門院)
1496わかためは しつくににこる やまのゐの いかなるひとに すまむとすらむ清輔
1497ふかきかはの そこのみくつに あらねとも おもひしつみて くちやはてなむ肥後(京極前関白家)
1498ちとりなく さほのかはせの ささらなみ やむときもなし わかこふらくは大伴女郎
1499つれつれと なかむるころの こひしさは なくさめかたき ものにそありける定頼
1500いかにせむ こひしきことの まさるかな なかなかよそに きかましものを清少納言
1501みのうさの おもひしらるる ことわりに おさへられぬは なみたなりけり西行
1502いくほとも なからふましき よのなかに ものをおもはて ふるよしもかな西行
1503ときのまも われにこころの いかかなると たたつねにこそ とはまほしけれ為兼
1504さてしもは はてぬならひの あはれさの なれゆくままに なほおもはるる親子(従三位源)
1505なほさりの ことはかよへと それしもそ いつまてかはと こころおかるる房子(従三位)
1506つらからぬ こころそつらき よそにては いとこれほとの なけきやはせし丹後(宜秋門院)
1507こひしさを あひみむまてと おもひしは こころのすゑを しらぬなりけり頼重
1508きみゆゑに しつまむのちの よをそおもふ ふかくていのちの たえもはてなは中納言典侍(伏見院)
1509おもひけるか さすかあはれにと おもふより うきにまさりて なみたそおつる永福門院
1510おもふてふ そのことのはよ ときのまに いつはりにても きくこともかな親子(従三位源)
1511きみゆゑに たへすなりにし みそとたに しらしとおもふも かねてかなしき後伏見院
1512わきもこか かたみのころも したにきて たたにあふまては われぬかめやも家持
1513なくなみた そらにもなとか ふらさらむ あまくもはれぬ ものをおもへは実頼女
1514ゆめをたに おもふこころに まかせなむ みるはこころの なくさむものを興風
1515こひしさの さむるよもなき こころには ゆめとそおもふ うつつなからも実方
1516おもひいつる ことはうつつか おほつかな みはててさめし あけくれのゆめ宣旨(二条院)
1517みもはてて さめけむゆめを おもふにも これそうつつと いかてしらせむ頼通
1518おのつから うつつにさもや おもふらむ ゆめなれはとて たのまさらめや実兼
1519おもひねの ゆめにうれしき おもかけの さなからやかて うつつともかな家平
1520よにもらは たかみもあらし わすれねよ こふなよゆめそ いまはかきりに為家
1521つらからむ のちのこころを おもはすは あるにまかせて すきぬへきよを和泉式部
1522ゆくすゑと ちきりしことは かはるとも このころはかり とふひともかな和泉式部
1523ほとふへき いのちなりせは まことにや わすれはてぬと みるへきものを和泉式部
1524いへはよの つねのこととや おもふらむ われはたくひも あらしとおもふに重之女
1525さらてたに つゆけきころを なそもかく あきしもものを おもひそめけむ弁乳母
1526ひにそへて おもひのみそふ みのはてよ をしからぬしも あはれなるかな親子(従三位源)
1527あらはあふ おなしよたのむ わかれちに いきていのちそ さらにくやしき為家
1528きえはてて みこそははひに なるとても ゆめのたましひ きみにあひそへ読人不知
1529たかためと おもふいのちに あらはこそ けぬへきみをも をしみととめめ読人不知
1530そてぬれて ほしそわつらふ からころも きみかたまくら ふれぬよはには兼通
1531ふるそては なみたにぬれて くちにしを いかにたちまふ わかみなるらむ隆房
1532こころこそ うとくもならめ みにそへる おもかけたにも われをはなるな実定
1533うらみても なくさめてまし なかなかに つらくてひとの あはぬとおもはは西行
1534つひにかかる うさにもならは なにかわか おもふこころの そこをみせけむ教良女
1535たまつさに たたひとふてと むかへとも おもふこころを ととめかねぬる永福門院
1536ものおもへは はかなきふての すさひにも こころににたる ことそかかるる為子(従二位)
1537もえこかれ みをきるはかり わひしきは なけきのなかの おもひなりけり相模
1538あふことの かくてたえなは あはれわか よよのほたしと なりぬへきかな紀伊(祐子内親王家)
1539さりともと たのむこころに はかされて しなれぬものは いのちなりけり能宣
1540おもへとも あひもおもはす おもふとき おもふひとをや おもはさりけむ躬恒
1541つくつくと みるにこころは くれはとり あやしとひとの めにやたつらむ隆房
1542ととめあへす やかてこほるる なみたゆゑ みせぬこころを ひとにみえぬる親子(従三位源)
1543かはかりは なにゆゑおつる なみたそと われもあやしき ものをこそおもへ章義門院
1544せきやらぬ なみたよしはし おちとまれ さまてはひとに みえしとおもふに内侍(永福門院)
1545かひあらし いはしよしとは おもへとも いまひとたひは うらみてもみむ花園院
1546なほさりの あたしことのは たのましと おもふものから またそなくさむ小兵衛督(章義門院)
1547ふくかせの たよりにつけて こととはは うはのそらにや ひとのおもはむ茂重
1548われならぬ ひとにとくなと いひおきし きみかしたひも ゆるすなるかな清正
1549むすふとも とくともしらて したひもの よにみたれつつ ものをこそおもへ読人不知
1550ぬれそめし そてたにあるを おなしのの つゆをはさのみ いかかわくへき右京大夫(建礼門院)
1551なこそとは たれかはいひし いはねとも こころにすうる せきとこそみれ和泉式部
1552よのなかを はかなきものと おもふにも まつおもひいつる きみにもあるかな花山院
1553さてもわか こころよわさの すさひゆゑ くやしきことを またやなけかむ下野(後鳥羽院)
1554つれなさの ひとのむくひを いかにして おなしよなから おもひしらせむ忠兼(藤原忠行男)
1555なほさりの たよりにとはむ ひとことに うちとけてしも みえしとそおもふ紫式部
1556いきてのよ しにてののちの のちのよも はねをかはせる とりとなりなむ村上天皇
1557あきになる ことのはたにも かはらすは われもかはせる えたとなりなむ宣耀殿女御
1558すむひとの かたかるへきに にこりえは こひちにかけも みえぬなりけり伊勢
1559ひとはしらし こころのそこの あはれのみ なくさめかたく なりまさるころ伏見院
1560あはれをも うきにのみこそ ひとはなすに われそうきをも あはれにはなす為子(従二位)
1561つらきをは さらにもいはす ひとこころ あはれなるにも ものをこそおもへ永福門院
1562かくしつつ いかてかよには なからへむ なくさむはかり とふひともかな敏行
1563わかみには くるしきことも しりぬれは ものおもふひとの あはれなるかな花山院
1564うきひとの こころをのみや うらむへき わかみもものを おもひしるやは経盛
1565うきをしのひ つらきにたへて としへぬる つれなさをたに いかてしらせむ基忠(鷹司兼平男)
1566かはるましき ひとのこころと おもひなして ありはてぬよを なけくはかなさ家定
1567こころにも そてにもとまる うつりかを まくらにのみや ちきりおくへき資盛
1568なほさりの なけのなさけを たのますは よしなきものは おもはさらまし肥後(京極前関白家)
1569かすならぬ みははしたかの すすかやま とはぬになにの おとをかはせむ小馬命婦(藤原棟町女)
1570ゆめちには なれしやとみゆ うつつには うつのやまへの つたふけるいほ俊成(藤原俊忠男)
1571おもふひと みやこにおかぬ たひねもや なみたにそてを なほくたすらむ実房
1572たれゆゑと さらぬたひねの いほりたに みやこのかたは なかめしものを定家
1573わすれはや まつかせさむき なみのうへに けふしのへとも ちきらぬものを定家
1574まつらむと なにをしるしの すきにてか こころもしらぬ やとをたつねむ公光(藤原季成男)
1575ひとしれぬ こころのうちの まつのみそ すきにもまさる しるしなりける小侍従(太皇太后宮)
1576あなこひし ふきかふかせも ことつてよ おもひわひぬる くれのなかめを定家
1577おのつから あはれとかけむ ひとことに たれかはつてむ やへのしらくも定家
1578こひしさは なかめのすゑに かたちして なみたにうかふ とほやまのまつ実兼
1579なくさめむ かたこそなけれ あひみても あはてもなけく こひのくるしさ重之女
1580おもふてふ ことのよにたに ふりさらは わかいへるとそ きみにいはまし兼盛
1581わすられは ともにわするる ならひにて ひとりはものを おもはすもかな読人不知
1582わかたまを きみかこころに いれかへて おもふとたにも いはせてしかな忠岑
1583よしなしと おもふこころの かねてより あらましかはと いまそかなしき少将内侍(後深草院)
1584ときのまも あらぬこころを ませはこそ いまさらひとを こひしとおもはめ家教
1585つれなさの そのままならは うきことに こひしきかたは そはすそあらまし実泰
1586おもはしと おもふはかりは かなはねは こころのそこよ おもはれすなれ遊義門院
1587なにことの かはるとなしに かはりゆく ひとのこころの あはれよのなか遊義門院
1588いかてかは ゆめにもひとの みえつらむ ものおもひそめし のちはねなくに朝光
1589あちきなや たかためおもふ ことなれは わかみにかへて ひとをこふらむ成道/成通
1590こひしとも いまはおもはす たましひの あひみぬさきに なくなりぬれは興風
1591とへかしと いつにもすきて おもふよを よしあすもとや ひとはねぬらむ親子(従三位源)
1592おもひつつ ぬれはなるへし ゆめにさへ つらくみえつる けさのわひしさ盛明親王
1593おもひつつ こひつつはねし あふとみる ゆめはさめては わひしかりけり道綱母
1594はかなくも まくらさためす あかすかな ゆめかたりせし ひとをまつとて小町
1595うれしくて のちうきものは ぬるとこの わかみをはかる ゆめにそありける忠岑
1596とこのうみの わかみこすなみ よるとても うちぬるなかに かよふゆめかは為家
1597あくかるる たまのゆくへよ こひしとも おもはぬゆめに いりやかぬらむ伏見院
1598こひしさの ねてやわするると おもへとも またなこりそふ ゆめのおもかけ後二条院
1599みてしもに まさるうつつの おもひかな それとはかりの うたたねのゆめ公守女
1600なくなくも ひとをうらむと ゆめにみて うつつにそてを けにぬらしぬる為兼
1601おもふかたに みえつるゆめを なつかしみ けふはなかめて われこひまさる為兼
1602おのつから こころかよふと みるゆめも さむれはうさに またかへりぬる家基(近衛基平男)
1603おのつから ひともなみたや しるからむ そてよりあまる うたたねのゆめ定家
1604きみゆゑに たえむいのちを なへてよの あはれとたにも なほかけしとや実定
1605なへてよの あはれはなとか かけさらむ たれゆゑたゆる いのちなりとも読人不知
1606おなしよに あるをたのみの いのちにて をしむもたれか ためとかはしる小侍従(太皇太后宮)
1607あちきなし ありへしすへて うきよかな おもふこころに ひとはかなはす伏見院
1608わすられす おもはましかは わすれぬを わするるものと おもはましやは斎宮女御
1609わするらむ ことをはいさや しらねとも とはぬやそれと とひしはかりそ村上天皇
1610はるされは もすのくさくき みえすとも われはみやらむ きみかあたりを読人不知
1611とりのこゑ さへつりつくす はるひかけ くらしかたみに ものをこそおもへ永福門院
1612もろこゑに なくへきものを うくひすは むつきともまた しらすやあるらむ道綱母
1613にほひうすく さけるはなをも きみかため をりとしをれは いろまさりけり敦忠
1614をらさりし ときよりにほふ はななれは わかためふかき いろとやはみる雅子内親王
1615きみかため たをれるえたは はるなから かくこそあきの もみちしにけれ業平
1616おもふこと うすくやなると なつころも かふるたもとも なみたなりけり長雅
1617とほさかる みはうつせみの なつころも なれはまさらて あきかせそふく兼康
1618あけくれて ひころへにけり うのはなの うきよのなかに なかめせしまに読人不知
1619いととしく ひころへゆけは うのはなの うきにつけてや わすれはてぬる小馬命婦(藤原棟町女)
1620わすれにし そのかみやまの あふひくさ けふたにかけて おもひいてすや読人不知
1621けふのみや おもひいつらむ あふひくさ われはこころに かけぬひそなき経盛
1622ここにても きけかしおなし しのひねを やまほとときす こゑもかはらし読人不知
1623さとにのみ なきわたるなる ほとときす わかまつときは なとかつれなき村上天皇
1624ほとときす なきてのみふる こゑをたに きかぬひとこそ つれなかりけれ斎宮女御
1625あはれといふ ひとはなくとも うつせみの からになるまて なかむとそおもふ忠岑
1626あやめくさ ひとにねたゆと おもひしは わかみのうきに おふるなりけり小町
1627そてぬれし そのよのあめの なこりより やかてはれせぬ さみたれのそら俊成(藤原俊忠男)
1628さみたれに みたれそめにし われなれは ひとをこひちに ぬれぬへらなり躬恒
1629くれをまつ おもひはたれも あるものを ほたるはかりや みにあまるへき隆房
1630ゆくほたる おのれもえそふ かけみえて ひとのおもひも さそとつけこせ為実(御子左藤原為氏男)
1631あまのかは なぬかをちきる こころならは ほしあひはかり かけをみよとや道綱母
1632たなはたに かしてこよひの いとまあらは たちよりこかし あまのかはなみ和泉式部
1633いむといへは しのふものから よもすから あまのかはこそ うらやまれつれ伊勢
1634けふとたに ちきらぬなかは あふことを くもゐにのみも ききわたるかな道長
1635あまつほし そらにはいかか さたむらむ おもひたゆへき けふのくれかは小侍従(太皇太后宮)
1636くもゐには わたるとすれと とふかりの こゑききかたき あきにもあるかな読人不知
1637あきかせも ふきたちにけり いまよりは くるかりかねの おとをこそまて醍醐天皇
1638あしひきの やまへにおりて あきかせの ひことにふけは いもをしそおもふ家持
1639あきのたの しのにおしなひ おくつゆの きえやしなまし こひつつあらすは家持
1640あきはきに おきたるつゆの かせふきて おつるなみたを ととめかねつも山口女王
1641いつくにも あきのねさめの よさむならは こひしきひとも たれかこひしき伏見院
1642あきかせの よさむにふけは わすれにし ひともこひしく なるそかなしき少将内侍(後深草院)
1643ものおもへは あきもおほろの つきかけに なみたうらみぬ ゆふくれそなき成実(藤原親実男)
1644ものおもふ みはならはしの なかきよに つれなきひとよ ねさめたにせし為相女
1645ゆふされは ひとまつむしの なくなへに ひとりあるみそ おきところなき貫之
1646あきかせの いなはもそよと ふくなへに ほにいててひとそ こひしかりける貫之
1647われきても まねきやまねは はなすすき またくるひとの あるかとそおもふ朝光
1648ちきりおきし ことのはかはる よをみれは あきといふなの うらめしきかな定頼
1649なくしかの こゑきくことに あきはきの したはこかれて ものをこそおもへ重之
1650をきのはに かせのふきよる ゆふくれを おなしこころに なかめましかは道長
1651あきののに いろうつろへる をみなへし われたにゆきて をらむとそおもふ実頼
1652あきはきを ちらすしくれの ふるころは ひとりおきゐて こふるよそおほき人麿
1653ひさしくも なりにけるかな あきはきの ふるえのはなも ちりすくるまて光孝天皇
1654はるのひを なかしとなにに おもひけむ あきのくれこそ ひさしかりけれ弁乳母
1655あきもあまた すきけるきみと きくものを ひさしきくれは けふのみやしる道綱
1656かきくらし わかみぬあきの つきかけも くものうへには さやけかりけむ相模
1657なきこふる そてにはいかか やとすへき くもりならはぬ あきのよのつき家隆
1658てるつきは わかおもふひとの なになれや かけをしみれは もののかなしき花園院
1659あきにうつる こすゑもうしや ひとこころ かはりやすさの たくひとおもへは小兵衛督(章義門院)
1660いかにせむ ひとのこころの あきのいろを うらみしとても くすのしたかせ長成女
1661ゆふひうつる こすゑのいろの しくるるに こころもやかて かきくらすかな右京大夫(建礼門院)
1662われゆゑに ぬるるにはあらし おほかたの あきのさかなる つゆそおくらむ経正
1663をきのはに ふくあきかせを わすれつつ こひしきひとの くるかとそおもふ重之
1664あはれをは しらしとおもへと むしのねに こころよわくも なりぬへきかな重之
1665ちきりこし きみこそとはす なりぬれと やとにはたえす まつむしのこゑ弁乳母
1666いてひとの おもふといひし ことのはは しくれとともに ちりにけらしも読人不知
1667はつしくれ ふりしそむれは ことのはの いろのみまさる ころとこそしれ兼輔
1668きみこふる なみたはあきに かよへはや そらもたもとも ともにしくるる貫之
1669はるさめに はなさきしより あきかせに もみちちるまて ものをこそおもへ定頼
1670あられふり ならのおちはに かせふきて ものこひしらに さよそふけゆく公顕
1671おのつから かよふたまつさ それたには かきたえぬへく みえまさるかな教良女
1672うきなかの なさけまちみる たまつさよ さすかかよふも あはれいつまて隆博
1673なににかは いまはなくさの はまちとり ふみつたふへき たよりたになし久明親王
1674ひとやかはる わかこころにや たのみまさる はかなきことも たたつねにうき永福門院
1675かすならぬ ゆゑとおもへは たちかへり ひとのとかにも みをそうらむる為世(御子左藤原為氏男)
1676こひしさを たかとかとてか かこつへき うきをはひとの うきになすとも自性
1677こころのみ かよふなかとは なりぬれと うきせきもりの たゆむよもなし親子(従三位源)
1678わすれなむ いまはとおもふ ときにこそ ありしにまさる ものおもひはすれ読人不知
1679ちかひてし ことそともなく わすれなは ひとのうへまて なけくへきかな実方
1680みのうさも ひとのつらさも しりぬるを こはたかたれを こふるなるらむ和泉式部
1681うちたえて きみにあふひと いかなれや わかみもおなし よにこそはふれ西行
1682こひしさも みまくほしさも きみならて またはこころに おほえやはする為家
1683うきことも わかみにむけて ことわりと おもひなすには うらみしもなし後伏見院
1684をりをりの これやかきりも いくおもひ そのあはれをは しるひともなし為兼
1685いかにせむ ひとのつらさは まさりゆく よしやさらはと おもはれはせす為子(従二位)
1686ききみるも さすかにちかき おなしよに かよふこころの なとかはるへき内侍(永福門院)
1687われもかく みにしたかはぬ こころもて ひとのかはるを なにかうらむる家親
1688うきひとに うしとおもはれむ ひともかな おもひしらせて おもひしられむ登蓮
1689おほかたの さらぬならひの かなしさも あるおなしよの わかれにそしる為家
1690はかなさは あるおなしよも たのまれす たためのまへの さらぬわかれに四条(安嘉門院)
1691とりならは あたりのききに こつたひて わひたるこゑに なかましものを忠岑
1692いさやまた かはるもしらす いまこそは ひとのこころを みてもならはめ和泉式部
1693うれしきは おもふかきりは いはれねと つらきはふかく うらみられけり家平
1694かきりあれは これよりうさの さのみやと おもひしうへに いくいろかそふ親子(従三位源)
1695おもひあまり これもいかなる むくひそと わかさきのよの つらくもあるかな基忠(鷹司兼平男)
1696まれにとふ ちきりもひとの なさけかは わかつれなくて まてはこそあれ実重(三条公親男)
1697まさるかたの とたえもさすか ありけりと まれなるよはの なさけにそしる冬隆
1698ちきりしも つらさにかはる なかなれは うきもこころの はてそまたるる政村
1699さまさまに ゆくすゑかけし かねことも たたときのまの なさけなりけり公孝女
1700たちかへり またもしやとも たのまれす うききはみせし ひとのちきりは隆教
1701いまよりは あはてものをは おもふとも のちうきひとに みをはまかせし西行
1702たえなむと きみかしけるを しらすして またむかしとも おもひけるかな道信
1703われもひとも うらみたちぬる なかなれは いまはさこそと あはれなるかな伏見院
1704よしさらは うらみはてなむと おもふきはに ひころおほえぬ あはれさそそふ後伏見院
1705かくはかり うきかうへたに あはれなり あはれなりせは いかかあらまし永福門院
1706あはれにも こととほくのみ なりゆくよ ひとのうけれは われもうらみて為子(従二位)
1707ことのはに いてしうらみは つきはてて こころにこむる うさになりぬる為兼
1708たえすたた うきたひことに うらみやらむ けにもとおもふ をりもこそあれ冬基
1709これもまた なさけみるよに なりやせむ ちきりしすゑも まことならねは万秋門院
1710さてもたた おもひならひし あはれにて つらさはやすく よわりゆくかな公守女
1711ひころより うきをもうしと えそいはぬ けにおもはすも なるかとおもふに親子(従三位源)
1712いまさらに いかなるこまか なつくへき すさへぬくさと のかれにしみを道綱母
1713あれにける やとののきはの わすれくさ かくしけれとは ちきらさりしを伊勢
1714いのちたに こころなりせは ひとつらく ひとうらめしき よにへましやは和泉式部
1715いさやまた こひにしぬてふ こともなし われをやのちの ためしにはせむ
1716よわりはつる いまはのきはの おもひには うさもあはれに なるにそありける永福門院
1717いくたひの いのちにむかふ なけきして うきはてしらぬ よをつくすらむ伏見院
1718こひしのひ さのみしたはて いまはたた われもわするる こころともかな家親
1719おもひこめて さてはおかれぬ こころなれは もしやとひとを うらみてそみる経親(平時継男)
1720さのみかく なにかはしたふ やすくこそ ひとはわすれし なかのちきりを隆博
1721つらからは したはしとこそ おもひしか われさへかはる こころなりけり為子(贈従三位)
1722くりかへし おもふこころは ありなから かひなきものは しつのをたまき匡房
1723うきにかく こひしさまさる ものならは いさつらからむ いかかおもふと実方
1724かならすも うらみてのちは くやしきを おもひあまれは またいはれぬる新宰相(伏見院)
1725つらさをも しのひすくさて おもひとりし うらみそたゆる はしめなりける家定
1726あらはもし たのみもいつそ うさをのみ みきくいのちの はてそかなしき兼行
1727またすなる いくゆふくれに なかめたへて つれなのみやと さらにしそおもふ教良女
1728たへすならむ みをさへかけて かなしきは つらさをかきる いまのゆふくれ伏見院
1729ねにたかく なきそしぬへき うつせみの わかみからなる うきよとおもへは読人不知
1730うらむへき かたさへそなき うきことの つきひにそへて みえしまされは盛明親王
1731いまもおもふ のちもわすれし かりこもの みたれてのちそ われこひまさる人麿
1732いかならむ かみにぬさをも たむけはか わかおもふいもを ゆめにたにみむ人麿
1733つらけれは かくてやみなむと おもへとも ものわすれせぬ こひにもあるかな花山院
1734おもへとも ひかけのいとの くりかへし たえにしふしの つらくもあるかな顕綱
1735おもひとる みにはいまはの うらみなる およはぬうへの なくさめもうし伏見院
1736ちきりしも さのみはひとの わすれしを おもひなからや とはすなるらむ冬平
1737そのころは たのますききし ことのはも うきいまならは なさけならまし家平
1738さりともと おもふたのみも ほとすきぬ みしやなさけの かきりなりけむ宣子(従三位藤原)
1739うしとおもひ こひしとおもふ そのあたり きかしやいまは みをなきにして新宰相(伏見院)
1740あれはある いのちもさすか かきりあれや またひときはの おもひそふころ伏見院
1741あふことは またおのつから ありとても たのみしもとの ここちやはせむ光俊(葉室光親男)
1742さてやさは こえにしものを いまさらに またはなこその せきもりそうき四条(安嘉門院)
1743うきよりも わすれかたきは つらからて たたにたえにし なかにそありける和泉式部
1744ひともうく みもうきはての わかみをは たたおなしよに おかしとそおもふ親子(従三位源)
1745なほいかに おもふこころそ かきりなく うきためしをは みはててしみを公守女
1746こころつきし よひあかつきの かねのおとも またすわかれて きくしもそうき長宣
1747よとともに おもかけにのみ たちなから またみえしとは なとおもふらむ俊成(藤原俊忠男)
1748よそならは さてもやみなむ うきものは なれてもつらき ちきりなりけり俊成(藤原俊忠男)
1749なほさりの ちきりはかりに なからへて はかなくなにを たのむいのちそ為世(御子左藤原為氏男)
1750せめてさらは いまひとたひの ちきりありて いははやつもる こひもうらみも為子(従二位)
1751あさゆふは わすれぬままに みにそへと こころをかたる おもかけもなし為家
1752ありしよの こころなからに こひかへし いははやそれに いままてのみを為兼
1753いきてよに うきをみはてむ ためなれや いとふいのちの せめてひさしき俊兼
1754いとはれし いのちのはての きはになりて ありてやもしと またおほえける親子(従三位源)
1755ありとても あふよもしらぬ いのちをは なにのたのみに なほをしむらむ教良女
1756ふたつある こころをわれも もたりけり うしとおもふに さてもわすれぬ実方
1757ききもせす われもきかれし いまはたた ひとりひとりか よになくもかな頼政
1758つらさをも えこそうらみね かすならぬ みをなけけとや いはむとおもへは季経
1759かよひける こころのほとは よをかさね みゆらむゆめに おもひあはせよ資盛
1760けにもその こころのほとや みえくらむ ゆめにもつらき けしきなりつる右京大夫(建礼門院)
1761それとたに わすれやすらむ いまさらに かよふこころは ゆめにみゆとも定家
1762こほれおちし ひとのなみたを かきつめて われもしをりし よはそわすれぬ伏見院
1763おのつから しはしはかかる なさけもやと こころにまちし ほともすきぬる中納言典侍(伏見院)
1764おなしよの ちきりをなほも まちかほに あらしやとても あるそつれなき内侍(永福門院)
1765たえはてて またあふことの たのみたに いまはなくなく みをそうらむる長典
1766わひぬれは うしつらしとも いまはいはし なさけはかりを かけよとそおもふ家定
1767なかなかに むかしのゆめの ままならて おとろかしけむ ことそくやしき頼輔
1768ゆふされは ものおもひまさる みしひとの こととひしさま おもかけにして笠女郎
1769あひみねと わすれぬひとは つねよりも つねなきをりそ こひしかりける公任
1770そのままに そはましみまし いたつらに をしやあはれや よそのとしつき伏見院
1771うきをしる こころのほとも みゆやとて われもかきたえ すくすころかな俊兼
1772うきをしたふ こころなかさを またひとに おもひくらへて あはれとをしれ経親(平時継男)
1773たえはてし そのとしつきに なからへて しひてさてもと いふもつれなし実泰
1774つらかれな さらはこひしき こころにも うらむるかたは ありもしなまし忠良
1775うけれとも わかみつからの なみたこそ あはれたえせぬ ものにはありけれ和泉式部
1776うらみても こひしきかたや まさるらむ つらさはよわる ものにそありける俊成(藤原俊忠男)
1777つらきあまり うしともいはて すくすひを うらみぬにこそ おもひはてぬれ為兼
1778なみたこそ わかこころにも したかはね うきをうらみぬ そてのぬれゆく親子(従三位源)
1779なみたこほれ こころみたれて いはれぬに うらみのそこそ いととくるしき伏見院
1780たのむへき かたもなけれは おなしよに あるはあるそと おもひてそふる和泉式部
1781みのうきに おもひあまりの はてはては おやさへつらき ものにそありける慶子(女御藤原)
1782をしからぬ いのちもいまは なからへて おなしよをたに わかれすもかな定家
1783とにかくに いとはまほしき よなれとも きみかすむにも ひかれぬるかな西行
1784うつるかたの ふかきかきりを ひとのいふに わかみのうへそ つくつくとうき親子(従三位源)
1785たえてすくす ひとのゆくへそ あはれなる いかになるとも きくみちもなし教良女
1786ゆふくれの そらこそいまは あはれなれ まちもまたれし ときそとおもへは小兵衛督(章義門院)
1787をりをりは つらきこころも みしかとも たえはつへしと おもひやはせし冬平
1788なからへて あらはとまちし としつきの つもるそはては うらみなりける為藤
1789とはすなる つきひのかすに したかひて うらみもつもる ものにそありける家親
1790うきをうしと いはぬよりまつ さきたちて こころのそこを しるなみたかな朔平門院
1791こひしさに まとふこころと いひなから うきをしらすと ひとやみるらむ道信
1792うらみしと おもふおもひの ともすれは もとのこころに かへりぬるかな忠通
1793わするるを うらむるひとは なになれや おもふをいとふ よにこそありけれ重之女
1794かすならぬ みのことわりを しらさらは うらみつへくも みゆるきみかな相模
1795いまよりそ きみにはつらく なりぬへき うらむるかたに とふかとおもへは大弐(二条太皇太后宮)
1796ふたたひや ものをおもはむ たちかへり かかるなさけの またかはりなは少納言(後伏見院)
1797あらましの いまひとたひと まちえても おもひしことを えやははるくる内侍(永福門院)
1798いとふとも おなしよはかり ゆるさなむ ありてよそにも おもひやるへく伏見院
1799いきてよに ありとはかりは きかるとも こひしのふとは たれかつたへむ伏見院
1800うらみても かひなきはての いまはたた うきにまかせて みるそかなしき新宰相(伏見院)
1801うらむるも わかならひにそ たのまるる こひしきことの あるかとおもへは広言
1802かひもなき みをいたつらに なすものは うきをわすれぬ こころなりけり成助
1803こひしさも わするはかりの うきことに よわきはそての なみたなりけり俊成(藤原俊忠男)
1804うらみかね いまはとはしと おもふより われもこころの かはりそめぬる清隆
1805よそにのみ ひとをつらしと なにかおもふ こころよわれを うきものとしれ小兵衛督(章義門院)
1806めくりあはむ ありあけのつきを かたみそと いひしはかりを おもひてにして良実
1807おほかたは わすれはつとも わするなよ ありあけのつきの ありしひとこと定家
1808そてしきて ふししまくらを おもひいてて つきみることに ねをのみそなく中務(選子内親王家)
1809うきになす みもたちかへり あはれなり なれしそかしの なこりとおもへは為子(従二位)
1810かはるうへの なけのなさけは よしやきかし さらにこころの みたるるもうし為子(従二位)
1811かはるよの うきにつけてそ いにしへの あはれなりしも おもひしらるる中務内侍(伏見院)
1812あはれてふ ことのはいかて みてしかな わひはつるみの なくさめにせむ実方
1813とへかしな あはれよなかき このころの ねさめはいかに ものやおもふと親子(典侍親子朝臣)
1814なれしよの なこりもさすか ありけむと しのはれそめし ころもこひしき伏見院
1815よこそなほ さためかたけれ よそなりし ときはうらみむ ものとやはみし和泉式部
1816こひしさに たへていのちの あらはこそ あはれをかけむ をりもまちみめ紀伊(祐子内親王家)
1817あふたひに これやかきりと おほえしを けにありはてぬ なかとなりぬる遊義門院
1818いまさらに そのよもよほす くものいろよ わすれてたたに すきしゆふへを後伏見院
1819ささかにの いとはるかなる くもゐにも たえむなかとは おもひやはせし斎宮女御
1820かはらねは ふみこそみるに あはれなれ ひとのこころは あとはかもなし和泉式部
1821かすならぬ わかみをうらの はまちとり あとはかもなく なりにけるかな二条
1822ひとのみする おもかけならは いかはかり わかみにそふも うれしからまし伏見院
1823なかめつつ またはとおもふ くものいろを たかゆふくれと きみたのむらむ定家
1824ゆふくれは ひとのうへさへ なけかれぬ またれしころに おもひあはせて和泉式部
1825あらたまの としのはしめに あひくれと なとふりまさる わかみなるらむ花山院
1826しらゆきと みはふりぬれと あたらしき はるにあふこそ うれしかりけれ素性
1827やまさとの しはのとほそは ゆきとちて としのあくるも しらすやあるらむ肥後(京極前関白家)
1828はるやとき とくるこほりの おそけれは なみのはなさへ なほそまたるる道瑜
1829はるもなほ なつみのかはの あさこほり またきえやらす やまかけにして西音
1830ひかけさす みなかみよりや とけぬらむ こほりをこゆる はるのかはなみ読人不知
1831あはれにも むそちのはるは むかへきぬ おくらむとしの かすそかなしき慈円
1832はるたつと きくにもものそ あはれなる はなまつほとも しらぬいのちは大輔(殷富門院)
1833こころのみ とまりしのへの たよりにも まつとはいはて なとすくしけむ円融院
1834たれとなく しのふむかしの かたみにも ふるののさはに わかなをそつむ俊成女
1835みやこをは はるのかすみを わけつれと なほゆききえぬ やまちなりけり兼経
1836はるしらぬ こしちのゆきも われはかり うきにきえせぬ ものはおもはし俊成(藤原俊忠男)
1837うちいつる なみかとそみる たにかはの こほるなきさに のこるしらゆき賢助
1838ときしらぬ たけのあみとの うちまても よははるなれや うくひすのなく実兼
1839はなさかぬ やとのこすゑに なかなかに はるとなつけそ うくひすのこゑ俊成(藤原俊忠男)
1840さのみやは ものうきねにも ともなはむ わかはるつけよ やとのうくひす為相
1841さかぬまの はなまちすさふ うめかえに かねてこつたふ うくひすのこゑ時邦
1842うくひすの なくねたにせぬ わかやとは かすみそたちて はるとつけつる清正
1843ものおもへは こころのはるも しらぬみに なにうくひすの つけにきつらむ右京大夫(建礼門院)
1844うくひすの またものうけに なくめるは けさもこすゑに ゆきやふるらむ重之女
1845つれつれと なかむるはるの うくひすは なくさめにたに なかはなかなむ元輔(清原春光男)
1846やまふかみ かすみこめたる しはのいほに こととふものは たにのうくひす西行
1847つれつれと ものおもひをれは はるのひの めにたつものは かすみなりけり和泉式部
1848いせしまや こきゆくふねの あとはきえて なみちにうくは かすみなりけり定忠
1849あととほき そはのかけみち たえたえに かすみをつたふ はるのやまひと康衡
1850みやこへは いくへかすみの へたつらむ おもひたつへき かたもしられす和泉式部
1851われすまて はなのみやこの はるかすみ やとせははやく へたたりにけり光俊(葉室光親男)
1852むかしへを おもふなみたの はるさめは わかたもとにそ わきてふりける重之
1853くさもきも あまねくめくむ はるさめに そてはぬれても かひなかりけり俊成(藤原俊忠男)
1854なかめしをれ あきのあはれも おもひいてぬ あめしつかなる はるのゆふくれ貞広
1855はなゆゑは いとふならひの はるかせを まちとりかほに なひくあをやき為顕
1856うれしさも にほひもそてに あまりけり わかためをれる うめのはつはな信生
1857あたらよの なこりしれとや うめのはな かたふくつきに なほにほふらむ俊誉
1858うきみには いつともわかぬ なみたにて かすみをたとる はるのよのつき隆教
1859うめかかは みしよのはるの なこりにて こけのたもとに かすむつきかけ宗尊親王
1860つきもいま おほろのしみつ それなから おもかはりせる よにもすむかな雅具
1861しのひつま かへるなこりの うつりかを そてにあらそふ まとのうめかえ兼宗
1862ももちとり なくこゑすなり わかやとの そののうめかえ いまさかりかも顕盛
1863うめかかを またはうつさし はなのいろを かへてやつるる すみそめのそて公雄
1864うめのはな さくやのきはの あまそそき しつくもにほふ はるのゆふかせ行藤(藤原行有男)
1865きりわけて あきはこしちの あまつかり かへるくもゐも またかすむなり中納言典侍(後伏見院)
1866はるもなほ ゆきふるさとに かへるとや はなのにしきの ころもかりかね政連
1867おくれゆく そのひとつらは かすみえて さきたつかりの あとそかすめる煕時
1868われのみと こころつくさし やまさくら はなもさくへき ころはまつらむ宣時(北条)
1869はなをまつ こころこそなほ むかしなれ はるにはうとく なりにしものを西行
1870かせをまつ ふるきのはなを みるにしも おいてもろきは なみたなりけり実兼
1871おいきには さくへきはなそ たのみなき はるにあひぬと ひとはいへとも道玄
1872もろひとの はるのころもに まつそみゆる こすゑにおそき はなのいろいろ為子(従二位)
1873よをすつる ひとにはみせし やまさくら いろにしうつる こころつきけり高倉(八条院)
1874おのれのみ あふかはるにもと おもふにも みねのさくらの いろそものうき後鳥羽院
1875われはたた きみをそをしむ かせをいたみ ちりなむはなは またもさきなむ有仁
1876くちにける みのうもれきは はるくれと はなをはよその ものとこそみれ親隆
1877はるのはな なかむるままの こころにて いくほともなき よをすくさはや慈円
1878をるひとも なきふるさとの はなのみそ むかしのはるを わすれさりける斎宮女御
1879わすられぬ みはしのはなの なこりかな みしはあまたの はるならねとも為相
1880としをへし はるのみやまの さくらはな くもゐにうつる いろをみるかな雅有
1881ちりちらす とふひともなき やまさとは はなもかひなき にほひなりけり月花門院
1882あちきなく はなのたよりに とはるれは みさへあたにも なりぬへきかな躬恒
1883よのなかは おとろへゆけと さくらはな いろはむかしの はるにそありける重之
1884かはかりの はなのにほひを おきなから またもみさらむ ことそかなしき顕輔
1885よのなかの うきもつらきも なくさめて はなのさかりは うれしかりけり花山院
1886はなさかり ちりにはすなる をくるまの わかみひとつそ やるかたもなき為家
1887はることの はなにこころは そめおきつ くもゐのさくら われをわするな弁内侍(後深草院)
1888わすれすよ みはしのはなの このまより かすみてふけし くものうへのつき伏見院
1889おいかよは はやななそちの はなみても わかみさかりの はるそこひしき忠兼(藤原忠行男)
1890みにしめて はなをもなにか をしむへき これもこのよの すさひとおもへは実定
1891はかなくも ちるなとはなを おもふかな あすみむことも さためなきよに顕仲(源顕房男)
1892ふくかせの はなにあまきる かすみまて うらみかねたる はるのあけほの成実(藤原親実男)
1893さくはなに おほふかすみの そてなれと かせをはえこそ へたてさりけれ泰基
1894かみかきに はなみてくらす はるならて むそちのおいの おもひてそなき祐春
1895けふしこそ なかしとおもひし はるのひも はなのこかけに あかすくれぬれ親方
1896をるひとの まれなるにこそ やまさくら とはれぬやとも なくさまれけれ円朝
1897やまさくら をらてかへらは なかなかに なかめすてつと はなやうらみむ長舜
1898としをへて はなのみやこの はるにあひて かせをこころに まかせてしかな泰時
1899ふくかせも きみかこころに まかせては みやこのとけき はなをこそみめ蓮生法師
1900みしよさへ わするはかりに さとはあれて はなもおいきの はるやふりぬる猷円
1901ふるさとの おいきのさくら きてみれは はなにむかしの はるそのこれる基頼
1902たつねきて かへるさまよふ みやまちは はなこそやかて しをりなりけれ淑氏
1903ちるはなを をのへのかねに かへりみて ゆふやまいつる はるのさとひと雲聖
1904みるままに かはるこすゑそ あはれなる わかみもはなも ふりぬとおもへは公経(藤原実宗男)
1905すむひとも やともかはれる にはのおもに みしよをのこす はなのいろかな諄子内親王
1906かせふけは あたにちりかふ はなよりも おいのなみたそ もろくなりゆく雅言
1907ひとすちに かせのつらさに なさしとや のとかなるひも はなのちるらむ栄昭
1908をしみかね せめてもはなの ちるかたに またさそはれて ゆくこころかな朝貞
1909さらてたに こひしきものを むかしみし はなちるさとに ひとのまつなる頼宗
1910すきにける はなのいままて にほひせは けふのかさしに まつそをらまし実頼
1911なかむれは いととうらみそ ますけおふる をかへのをたを かへすゆふくれ後鳥羽院
1912みをかくす かたなきものは われならて またはやけのの ききすなりけり赤染衛門
1913はしたかの すすろにかかる すまひして のへのききすと ねをのみそなく紀伊(祐子内親王家)
1914としをへて さきこそまされ はるのひの なにおふやまの まつのふちなみ祐親
1915おきつかせ ふきこすいその まつかえに あまりてかかる たこのうらふち宗泰(藤原時宗男)
1916はなのいろは けふぬきかへつ いつかまた こけのたもとに ならむとすらむ俊成(藤原俊忠男)
1917なにとかは いそきもたたむ なつころも うきみをかふる けふにしあらねは堀河(待賢門院)
1918ゆふかけて おもはさりせは あふひくさ しめのほかにそ ひとをきかまし上東門院
1919しめのうちに なれさりしより ゆふたすき こころはきみに かけてしものを和泉式部
1920けふはいとと しのひそまさる みたらしや かはせのなみの かへりこぬよを為子(従二位)
1921かみやまに あふひかさして くれぬれは つきのかつらの かけそまたるる久宗
1922ほとときす さのみはまたし うきみには かたらはしとそ ねもをしむらむ公雄
1923わかための なさけとそきく ほとときす まちあかすよの あけほののこゑ時敦
1924つれなくそ まつへかりける ほとときす ねぬよのつきの あけかたのそら公篤
1925ほとときす かたらふかたや やまのはに むらさめすきて つきそほのめく読人不知
1926ほとときす かたらふこゑも あはれなり むかしこひしき おいのねさめに基輔(坊門清親男)
1927あらすなる うきよのはてに ほとときす いかてなくねの かはらさるらむ右京大夫(建礼門院)
1928われもはや おいそのもりの ほとときす やよやむかしの ことかたらなむ良覚
1929なきすてて いつちいくたの ほとときす なこりをとむる もりのしたかけ読人不知
1930ほとときす おいそのもりに なくこゑを みによそへても あはれとそきく俊定(藤原経俊男)
1931みをつめは あはれとそきく ほとときす よをへていかに おもへはかなく増基
1932ねをそへて なほこそしのへ あやめくさ わすれぬつまの けふのむかしを兼教
1933かすならぬ みはかくれぬの あやめくさ うきためしにや ひとにひかれむ読人不知
1934ゆくさきの みちもおほえぬ さつきやみ くらゐのやまに みはまよひつつ信実
1935おのつから はるるかとみる ほとたにも なほくものほる さみたれのそら頼清
1936かはなみは きしにおよひて さみたれの みかさにふねの さをそみしかき国道(津守国助男)
1937あけぬるか うふねのかかり たきすてて けふりもしらむ みしかよのそら景久
1938よをかけて をちかためくる ゆふたちに こなたのそらは つきそすすしき泰宗
1939やとからや たをれるえたも ときしらて あきのこころの いろにいつらむ澄覚法親王
1940まつかねの いはたのきしの ゆふすすみ きみかあれなと おもほゆるかな西行
1941みつむすふ ゆふへよりなほ すすしきは ひむろにむかふ すきのしたかけ経久
1942やまかはの おなしなかれも ときはきの かけゆくみつは いろそすすしき惟継
1943つねよりも みるほとひさし なつのよの つきにはひとを まつへかりけり家経(藤原広業男)
1944にこりなき いつみにうつる つきをみて すむらむひとの こころをそくむ紀伊(祐子内親王家)
1945みそきせし きのふのせせの かはなみに あきたつかせや けふわたるらし公雄
1946やまさとに あきをしらする はけしさも きのふにまさる のきのまつかせ良宋
1947まつらかた やへのしほちの あきかせは もろこしよりや ふきはしむらむ道玄
1948なみたこそ まつこほれぬれ つゆはまた おきあへぬそての あきのはつかせ基任
1949したをきも かつほにいつる ゆふつゆに やとかりそむる あきのみかつき長清
1950ふきすつる なこりまてこそ かなしけれ のきはのをきの あきのゆふかせ読人不知
1951さきやらぬ まかきのはきの つゆをおきて われそうつろふ ももしきのあき伏見院
1952いかはかり つゆしけけれは あつまちの ことのはさへに そてのぬるらむ俊成(藤原俊忠男)
1953ものことに うれへにもるる いろもなし すへてうきよを あきのゆふくれ永福門院
1954ものおもひに けなはけぬへき つゆのみを あらくなふきそ あきのこからし為兼
1955あきにそふ うれへもかなし いつまてと おもふわかみの ゆふくれのそら具顕
1956ときわかす うきにうれへは そふものを あきのこころと たれかさためし近衛(今出河院)
1957かせそよく をきのうははの つゆよりも たのもしけなき よをたのむかな赤染衛門
1958あきかせは むかしのひとに あらねとも ふきくるよひは あはれとそおもふ重之
1959ちかきのの のわきはおとも せさりきや をきふくかせを たれかききけむ重明親王女
1960ゆふまくれ かせものわきと ふきたては よものちくさそ しつこころなき為実(御子左藤原為氏男)
1961けさもなほ のわきのなこり かせあれて あめふりそそく むらくものそら定兼
1962あきかせの すたれうこかし ふくなへに にはくさなひき きりきりすなく仁澄
1963あきのきて みにしむかせの ふくころは あやしきほとに ひとそこひしき月花門院
1964われはたた ときしもわかす こひしきを ひとはあきのみ おもひけるかな大納言典侍(後嵯峨院)
1965いたつらに うつりもゆくか わきもこか ころもにすらむ あきはきのはな基政(藤原基綱男)
1966をはなふく ほやのめくりの ひとむらに しはしさとある あきのみさやま盛久
1967おのつから あきのあはれを みにつけて かへるこさかの ゆふくれのうた定家
1968わかいへに ことしのあきも そめてけり みたひはなさく あさかほのいろ実兼
1969あさあけの すそののきりに たちしをれ やまちいそかぬ さをしかのこゑ重員
1970くさかくれ にはになれたる しかのねに ひとめまれなる ほとをしるかな守覚法親王
1971ひきかへて けふはみるこそ かなしけれ さやはまたれし もちつきのこま実氏
1972ものことに こそのおもかけ ひきかへて おのれつれなき もちつきのこま定家
1973つきみれは いととあはれそ まさりける うきよにすめる たくひとおもへは成範
1974さやけさは たかすむやとも かはらしと つきにむかひて おもひこそやれ重村
1975こころとめて たれかまことに なかむると こよひのそらの つきにとははや読人不知
1976ひさかたの つきはむかしの かかみなれや むかへはうかふ よよのおもかけ実兼
1977つきたにも われにともなふ かけなくは みやまのさとや すみうからまし実兼
1978いつとても おなしそらゆく つきのなと はるはおほろに あきはさやけき花園院
1979はなのはるは あたしいろにも うれへにき つきみるあきそ ものおもひもなき公蔭
1980あつまちの あきのそらにそ おもひいつる みやこにてみし はるあきのつき為成(冷泉為相男)
1981いくほとと おもへはかなし おいのみの そてになれぬる あきのよのつき亀山院
1982あきをへて いくよもしらぬ ふるさとの つきはあるしに すみかはりつつ公経(藤原実宗男)
1983われのみそ もとのみにして こひしのふ みしおもかけは あらぬよのつき為子(従二位)
1984いつもかく つきにむかへる こころにて すまはうきよも なくさみなまし道潤
1985おもふこと なくてたにねぬ つきのよを ましていかにと とふひともかな高定
1986あきのつゆも つきのためとや ちきりおく ともにひかりを みかきかはして伊予
1987つきかけに わけいるのへの かへるさは つゆなきくさそ しをりなりける宗行
1988いつるにも いるにもおなし むさしのの をはなをわくる あきのよのつき能海
1989なかめこし みはいたつらに あきをへて ゆくすゑおもふ つきそかなしき為相
1990おもひいつや ひとめなかりし やまさとの つきとみつとの あきのおもかけ元輔(清原春光男)
1991つきかけに さそはれぬへき きみならは こころつくしに またれさらまし郁芳門院
1992いつるより こころそらにて みるつきを いるまてしらぬ やともありけり式部命婦(後冷泉院)
1993つゆわけし よもきのやとの ひかりにも いりくるつきの かけをこそみれ下野(四条太皇太后宮)
1994おもひいる やまのおくまて みにそふは つきもみやこや すみうかれにし実兼
1995おもひいれぬ ひとはかくしも なかめしを こころよりこそ つきはすみけれ隆弁
1996おほえぬに おいのならひの かなしきは つきにこほるる なみたなりけり為家
1997なくなくも みしよのかけや おもひいつる つきのみやこの あきのかりかね秀茂/秀成
1998しきたへの まくらにおつる つきみれは あれたるやとも うれしかりけり清輔
1999くれをまつ つきよりさきに いかてかは くもゐをいてて きみかゆくへき少将内侍(後深草院)
2000ややふくる わかよのほとの おもかけを くもゐのつきに いかかならへむ実雄
2001しらさりき うきみなからに めくりきて おなしくもゐの つきをみむとは近衛太皇太后宮
2002つきはいま とほきなみちに かたふきて いそやまかくれ よふねこくなり冬基
2003いかにせむ こころなくさむ つきたにも わかよをかけて ふけまさるかな為家
2004まつほとは やまのあなたに ふけぬれと いててもなかき あきのよのつき師員
2005つきをなほ みのうきことの なくさめと みしよのあきも むかしなりけり為顕
2006やまさとは のきはのみねの たかけれは まつのはなから つきそふけゆく道助法親王
2007はかなくて わかよすきぬと なかむれは つきもいまはの にしのやまのは忠良
2008むしのこと こゑたてぬへき よのなかに おもひむせひて すくるころかな崇徳院
2009なかきよの ともとそたのむ きりきりす われもつひには よもきふのもと大輔(殷富門院)
2010あきくさの かれはかしたの きりきりす いつまてありて ひとにきかれむ基家
2011なかきよに なほあまりある おもひとや あけてもしはし むしのなくらむ基有
2012かれわたる をはなかすゑの あきかせに ひかけもよわき のへのゆふくれ読人不知
2013あきふかく なりゆくすまの うらかせに せきもるひとや よさむなるらむ宣時(北条)
2014よのうきめ みえぬやまちの おくまても なほかなしきは あきのゆふくれ頼重
2015ゆふひさす みねのときはき そのいろの あきならぬしも あきにさひしき読人不知
2016みねくたる くもにたちそふ かはきりの はるるかたなき わかおもひかな為子(従二位)
2017あけしらむ なみちのきりは ふきはれて とほしまみゆる あきのうらかせ景綱
2018けさのまの きりよりおくや しくれつる はれゆくあとの やまそいろこき仲覚
2019しくれつる くものかへしの あきかせに そめあへすちる みねのもみちは行念
2020もみちはの いろにもめてし このたひは いのるこころを わけしとおもへは幸平
2021つゆかかる やまちのそても ほさしたた けふわけすきむ あきのなこりに重経
2022くれてゆく あきたにわれな すてはてそ なへてのよこそ いろかはるとも実兼
2023あきはつる ひたのかけなは ひきすてて のこるたのもの いほのさひしさ宣方
2024ひとしれぬ しくれここちに かみなつき われさへそての そほちぬるかな具平親王
2025つゆおきし ききのこのはを ふくよりは よにもあらしの みをさそはなむ和泉式部
2026いかはかり しくれにそての しをるらむ もらぬいはやの むかしこひつつ良実
2027しくるへき こすゑのいろは つれなくて はなをやときの ものとなかめむ後伏見院
2028かきりなき はるあきとめる みやのうちは はなももみちも ときをわかめや為子(従二位)
2029つれつれと なかめくらせは ふゆのひも はるのいくかに ことならぬかな和泉式部
2030さためなき しくれのあめの いかにして ふゆのはしめを そらにしるらむ真昭
2031おくやまの みねのしくれを わけゆけは ふかきたにより のほるしらくも秀能(藤原秀宗男)
2032しかのうらや しくれてわたる うきくもに みかみのやまそ なかはかくるる読人不知
2033ときのまに たたひとしくれ ふりすきて あらしのみねは くもものこらす宗秀(藤原宗泰男)
2034ゆくあきを したひしそての なみたより しくれそめてや ふゆのきぬらむ久時
2035たえすふく まつのあらしに ききなれて しくれもわかぬ やまかけのいほ泰朝
2036しくれつる くもはほとなく みねこえて やまのこなたに のこるこからし信雅
2037あきかせと ちきりしひとは かへりこす くすのうらはの しもかるるまて宗尊親王
2038かせさやく さよのねさめの さひしきは はたれしもふり つるさはになく俊成(藤原俊忠男)
2039ふゆのよは かねよりさきの ひさしくて あかつきまたぬ ねさめをそする仁澄
2040をりしもあれ うれしくゆきの うつむかな かきこもりなむと おもふやまちを西行
2041やまかけや ともをたつねし あとふりて たたいにしへの ゆきのよのつき良経(九条兼実男)
2042いかにして てにたにとらぬ みつくきの をかへのゆきに あとをつくらむ為家
2043きえやすき ゆきはしはしも とまらなむ うきことしけき われにかはりて貫之
2044ゆきのうちの もとのまつたに いろまされ かたえのききは はなもさくなり定家
2045おとたえて むせふみちには なやむとも うもれなはてそ ゆきのしたみつ実兼
2046いにしへは いとひしあとも またれけり おいてよにふる やとのしらゆき基忠(鷹司兼平男)
2047ふみわけて けふこそみつれ みやこより おもひおこせし やまのしらゆき為家
2048ふみわけて とはるるゆきの あとをみて きみをそふかく かみはまもらむ源全
2049けふまては ゆきふみわけて かへるやま これよりのちや みちもたえなむ観意
2050うつもれて としのみとせを ふるゆきに ふみつたへてし あとやたえなむ澄覚法親王
2051しもこほり とちたるころの みつくきは えもかきやらぬ ここちのみして紫式部
2052あるかひも いまはなきさの はまちとり くちぬそのなの あとやのこらむ少将(藻壁門院)
2053そのなのみ かたみのうらの ともちとり あとをしのはぬ ときのまもなし基忠(鷹司兼平男)
2054わたるへき かはせやちかく なりぬらむ きりのあなたに ちとりなくなり忠守
2055あまをとめ かよふくもちは かはらねと わかたちなれし よのみこひしき為子(従二位)
2056あまつかせ をとめのそても さゆるよは おもひいてても ねられさりけり定家
2057うつみひを よそにみるこそ あはれなれ きゆれはおなし はひとなるみを相模
2058いたつらに くれぬとはかり かそへきて いくとしつきの みにつもるらむ経尹(世尊寺経朝男)
2059おもふことの あらたまるへき はるならは うきみもとしの くれやいそかむ章義門院
2060よをうらみ みをなけきつつ あけくれて としもこころも つきはてにけり堀河(待賢門院)
2061としくれし そのいとなみは わすられて あらぬさまなる いそきをそする西行
2062かすかのの あさちかうへに おもふとち あそふけふをは わすられめやも読人不知
2063かすかのは ねのひわかなの はるのあと みやこのさかは あきはきのとき俊成(藤原俊忠男)
2064おもふことを いかにしのひし たかよより いはてのさとと なをととむらむ為子(従二位)
2065みつとのみ おもひしものを なかれくる たきはおほくの いとにそありける遍昭
2066きえはてぬ ゆきかとそみる たにかはの いはまをわくる みつのしらなみ赤染衛門
2067つきよよし かはおとすめり いさここに ゆくもとまるも あそひてかへらむ四綱
2068むかしみし きさのをかはを いまみれは いよいよきよく なりにけるかも家持
2069わくかこと めにはみゆれと わかやとの いしゐのみつは ぬるまさりけり伊勢
2070いもせかは むかしなからの なかならは ひとのゆききの かけはみてまし灌子(尚侍藤原灌子朝臣)
2071うちかはの はやせになみの こゑすれは ふりくるあめを しるひともなし隆国
2072さすさをも およはすなれは ゆくみつに まかせてくたす よとのかはふね冬隆
2073せきとむる うちのかはせの あしろきに あまりてこゆる みつのしらなみ為氏
2074すすかかは やそせのなみは わけもせて わたらぬそての ぬるるころかな達智門院
2075いにしへに あらすなからの はしはしら ふりにしあとを しのはすもなし順徳院
2076さもあらはあれ なのみなからの はしはしら くちすはいまの ひともしのはし定家
2077をはたたの いたたのはしの とたえしを ふみなほしても わたるきみかな善信
2078くちぬへき いたたのはしの はしつくり おもふままにも わたしつるかな讃岐
2079よのなかは つねなきものと いまそしる ならのみやこの うつろふみれは読人不知
2080ささなみの しかのおほわた よとむとも むかしのひとに またあはめやも人麿
2081かせはやみ みほのうらわを こくふねの ふなひとさわく なみたつらしも読人不知
2082さそはるる なみのゆききに としもへぬ あまのなかせる うらのすてふね実氏
2083なにはかた なみのたよりは はるかにて しほひにとまる あまのすてふね為氏
2084すきかてに みれともあかぬ たまつしま うへこそかみの こころとめけれ崇徳院
2085くるるまに すすきつるらし ゆふしほの ひかたのうらに あまのそてみゆ為家
2086このゆふへ うらのしほかせ ふきあれて いりうみしろく なみさわくなり時藤(藤原行藤男)
2087ゆふひさす なみのうへより たつけふり いかなるうらに もしほやくらむ隆祐
2088なにはかた かせのとかなる ゆふなきに けふりなひかぬ あまのもしほひ行家(藤原知家男)
2089あかしかた なみちはるかに なるままに ひとこそみえね あまのつりふね順徳院
2090ゆふつくひ わたのみさきを こくふねの かたほにひくや むこのうらかせ実兼
2091うらとほく ならへるまつの このまより ゆふひうつれる なみのをちかた為子(従二位)
2092あれぬひは おきつしほかせ のとかにて みるめをよする いそのうらなみ俊言
2093かちをたえ おほうみのはらに ゆくふねの あとはかもなき よをいかにせむ土御門院
2094なにはかた いりえのしほや みちぬらむ すゑはそのこる あしのむらたち公相
2095なにはえや なににつけても あしのねの うきみのほとそ あはれなりける按察(鷹司院)
2096なみのうへに うつるゆふひの かけはあれと とほつこしまは いろくれにけり為兼
2097なみまより みゆるこしまの ひとつまつ われもとしへぬ ともなしにして雅有
2098なみたかし いかにかちとり みつとりの うきねやすへき なほやこくへき読人不知
2099かせをいたみ おきつしらなみ たかからし あまのつりふね はまにかへりぬ読人不知
2100かちのおとそ ほのかにすなる あまをとめ おきつもかりに ふなてすらしも読人不知
2101ゆふくれに なにはわたりを きてみれは たたうすすみの あしてなりけり行慶
2102みきはちかく みえつるふねの ゆくすゑは うかふこのはの なみのをちかた兼行
2103あさほらけ うらうらかけて みわたせは ちへのかすみに きゆるともふね新宰相(伏見院)
2104とほつおきに あまたうかへる ふねのほの みえすそなれる かせかはるらし実兼
2105ゆふしほの さすにまかせて みなとえの あしまにうかふ あまのすてふね頼景
2106うらあれて かせよりのほる いりしほに おろさぬふねそ なみにうきぬる範秀
2107なみたたは おきのたまもも よりくへく おもふかたより かせはふかなむ躬恒
2108むこのうらの とまりなるらし いさりする あまのつりふね なみまよりみゆ人麿
2109みさこゐる あらいそなみや さわくらむ しほやくけふり なひくかたみゆ重之
2110けさみれは あまのをふねも かよふなり しほみつうらは こほらさるらし重之
2111さととしも よそにはみえぬ とほしまの まつにましりて たつけふりかな為相
2112なくなくも くもゐをこひて としふりぬ わかよふけひの うらのともつる伏見院
2113なこのうみに つまよひかはし なくたつの こゑうらかなし さよやふけぬる宗尊親王
2114あさりする たつそなくなる かこのしま まつはらとほく しほやみつらむ行家(藤原知家男)
2115かもめゐる ふちえのうらの あさほらけ あれたるなみも こころすみけり隆祐
2116みつしほに うらのひかたも なみこえて そらにきこゆる あしたつのこゑ時綱(北条時員男)
2117あしたつの なくねもとほく きこゆなり なみしつかなる まつかうらしま俊平(源泰光男)
2118きよみかた うちいててみれは いほはらの みほのおきつは なみしつかなり為氏
2119おきつかせ あらきいそへに たつなみの かへるいはねに おつるたきつせ実氏
2120いはかねに よせてはかへる なみのまも なほおとのこす いそのまつかせ親範(藤原範宗または親之男)
2121おきつかせ ふけゆくままに あかしかた とわたるつきの かけのさやけさ公基
2122いとふへき やまのはそなき あかしかた なみにかたふく ありあけのつき祐春
2123しほかせは なきさのまつに おとつれて つきそなみまに いりかかりぬる忠久
2124さよふかき のきはのみねに つきはいりて くらきひはらに あらしをそきく永福門院
2125ひはらもる ありあけのつきに きこゆなり をのへのてらの かねのひとこゑ覚性法親王
2126つきのいる まくらのやまは あけそめて のきはをわたる あかつきのくも伏見院
2127なかきよも はやあけかたや ちかからし ねさめのまとに つきそめくれる伏見院
2128にはのかけは またよふかしと みるほとに つきにしられて よはしらみけり親子(従三位源)
2129にしになる つきはこすゑの そらにすみて まつのいろこき あけかたのやま時春
2130いくこゑに ゆめかおとろく あかつきの ねさめののちの かねそすくなき重顕(藤原頼重男)
2131なにたてて やこゑといへと あけはつる ほとをかきりに とりもなくなり少将内侍(後深草院)
2132さとさとの とりのはつねは きこゆれと またつきたかき あかつきのそら永福門院
2133やまふかみ とりのねきかぬ すみかには わかねさめより あくるをそしる実重室
2134かねのおと とりのねきかぬ ねさめには あかつきになる ほともわかれす基顕
2135ねさめして ときはいつとも しられぬに あくるかとりの こゑそきこゆる内侍(永福門院)
2136うきはわか おいのねさめと おもへとも ゆふつけとりも あかつきそなく祐世(中臣祐賢男)
2137あかつきの かねのひひきに ゆめさめて なほそののちも よはそひさしき久明親王
2138まとろまて さなからあかす よはもあるを ねさめとなれは なとかかなしき時元
2139むらむらに くものわかるる たえまより あかつきしるき ほしいてにけり為子(従二位)
2140ほしのかけも そなたはうすき しののめに やまのはみえて くもそわかるる兼行
2141よこくもの わかるるやまの あくるより みちみえそむる まつのしたかせ清雅
2142おきてけさ またなにことを いとなまむ このよあけぬと からすなくなり読人不知
2143みるままに こころほそくも くるるかな いりあひのかねも つきはてぬなり山田
2144つくつくと ものをおもふに うちそへて をりあはれなる かねのおとかな西行
2145あたなれと けふのいのちも ありすきぬ いつをかきりそ いりあひのかね雅有
2146おとろかぬ わかゆふへこそ かなしけれ またけふもきく いりあひのかね邦長
2147いつまてか きかむとすらむ いりあひの かねてはしらぬ あはれよのなか経親(平時継男)
2148あはれまた けふもゆふへに なりにけり あすとはまたぬ いのちなからに行生
2149ゆけとなほ またてらみえぬ まつはらの おくよりひひく いりあひのこゑ家雅
2150くもとりも かへるゆふへの やまかせに そとものたにの かけそくれぬる伏見院
2151をちかたの むかひのみねは いりひにて かけなるやまの まつそくれゆく親子(従三位源)
2152やまもとの こかけはよると なかむれと をのへはいまた ゆふくれのいろ久明親王
2153みるままに やまはきえゆく あまくもの かかりもらせる まきのひともと永福門院
2154ふりそそく のきはのあめの ゆふくれに つゆこまかなる ささかにのいと資宣女
2155しらくもは ゆふへのやまに おりみたれ なかはきえゆく みねのすきむら伏見院
2156そよくれぬ ならのこのはに かせおちて ほしいつるそらの うすくものかけ定家
2157たちのほる つきのたかねの ゆふあらし とまらぬくもを なほはらふなり定成(藤原経朝男)
2158いてそむる つきのあたりの えたわけて かけふきもらす みねのまつかせ為守女
2159みるひとに いかにせよとか つきかけの またよひのまに たかくなりゆく躬恒
2160つきをこそ なかめなれしか ほしのよの ふかきあはれを こよひしりぬる右京大夫(建礼門院)
2161くらきよの やままつかせは さわけとも こすゑのそらに ほしそのとけき永福門院
2162おともなく よはふけすみて をちこちの さとのいぬこそ こゑあはすなれ為子(従二位)
2163さよふけて やともるいぬの こゑたかし むらしつかなる つきのをちかた伏見院
2164ふけぬるか すきゆくやとも しつまりて つきのよみちに あふひともなし伏見院
2165やとはあれて かへのひまもる やまかせに そむけかねたる ねやのともしひ下野(後鳥羽院)
2166ともしひの ひかりさひしき ねやのうちに さよもふけぬる ほとそしらるる兼子(従一位)
2167きゆるかと みえつるよはの ともしひの またねさめても おなしかけなる新宰相(伏見院)
2168つくつくと あけゆくまとの ともしひの ありやとはかり とふひともなし定家
2169きえやらて のこるかけこそ あはれなれ わかよふけそふ まとのともしひ家隆
2170あめのおとの きこゆるまとは さよふけて ぬれぬにしめる ともしひのかけ伏見院
2171ふりしめる あまよのねやは しつかにて ほのほみしかき ともしひのすゑ為子(従二位)
2172あかしかね まとくらきよの あめのおとに ねさめのこころ しくしをれしつ永福門院
2173やまかせの ふきわたるかと きくほとに ひはらにあめの かかるなりけり永福門院
2174しつくまては またおちそめぬ やまかけの ひはらかうへに あめそきこゆる内侍(永福門院)
2175のきくらき まきのはしをれ ふるあめの しつくもさひし やまかけのやと顕親門院
2176としへぬる やとをふるやと いふことは あめのさはらぬ なにこそありけれ花山院
2177みそきせし みゆきのそらも こころありて あめのしたこそ けふくもりけれ惟方
2178そらはれし とよのみそきに おもひしれ なほひのもとの くもりなしとは二条院
2179くものうへに ひひくをきけは きみかなの あめとふりぬる おとにそありける俊恵
2180ぬるるかと たちやすらへは まつかけや かせのきかする あめにそありける伏見院
2181ひひきくる まつのうれより ふきおちて くさにこゑやむ やまのしたかせ伏見院
2182はれゆくか たたよふくもの たえまより ほしみえそむる むらさめのそら宮内卿(後鳥羽院)
2183こととはむ ふるきのまつよ なれのみや わかしのふよの むかしをもみし基忠(鷹司兼平男)
2184よせかへり うらかせあらき ささなみに しつえをひたす しかのはままつ為道
2185なみのうへは あめにかすみて なかめやる おきのしらすに まつそのこれる為子(従二位)
2186たにのとに ひかりそまつも たてりけり われのみともは なきかとおもへは西行
2187ひさにへて わかのちのよを とへよまつ あとしのふへき ひともなきみそ西行
2188ひとつまつ いくよかへぬる ふくかせの こゑのすめるは としふかきかも市原王
2189あめとのみ ふくまつかせは きこゆれと こゑにはひとも ぬれすそありける貫之
2190なみよする きしにとしふる まつのはの ひさしきこころ たれかしるらむ貫之
2191ふかみとり いりえのまつも としふれは かけさへともに おいにけるかな躬恒
2192いそのまつ いくひささにか なりぬらむ いたくこたかき かせのおとかな実朝
2193うちよする なみとをのへの まつかせは こゑたかさこや いつれなるらむ
2194まつにふく あらしのおとも たかさこの うらちしくるる あきのゆふくれ厳教
2195むかしより たのむみきはの まつなれは なみもあはれを かくとしらすや兵衛(上西門院)
2196ゆふくれの まつにふきたつ やまかせに のきはくもらぬ むらさめのこゑ伏見院
2197にはのおもの ひときのまつを ふくかせに いくむらさめの こゑをきくらむ道良女
2198ききわひぬ のきはのまつを ふきしをる あらしにこもる いりあひのこゑ親子(従三位源)
2199かせたにも のきはのまつに こゑやみて ゆふへのとけき やまかけのやと為子(従二位)
2200なかめやる みやこのかたは ひかけにて このやまもとは まつのゆふかせ家親
2201やまふかみ ゆふへのかねの こゑつきて のこるあらしの おとそさひしき慈順
2202やまさとに しはしはゆめも みえさりき なれてまとろむ みねのまつかせ忠景
2203やまふかき さとのしるへに なるものは いりあひのかねの こゑにそありける秀能(藤原秀宗男)
2204さひしさは をかへのいほの あきのくれ まつかせならて おとつれもなし師教(九条忠教男)
2205のかれえぬ ひとめはおなし みやこにて わかやますみそ なほあらはなる実兼
2206このさとは やまかけなれは ほかよりも くれはててきく いりあひのこゑ為世(御子左藤原為氏男)
2207いほちかき つまきのみちや くれぬらむ のきはにくたる やまひとのこゑ為相
2208ふきたゆむ ひまこそいまは さひしけれ ききなれにける みねのまつかせ為子(贈従三位)
2209やまさとの ゆふくれかたの さひしさを みねのあらしの おとろかすかな経信
2210このさとは くものやへたつ みねなれは ふもとにしつむ とりのひとこゑ良経(九条兼実男)
2211やまかけや のきはのこけの したくちて かはらのうへに まつかせそふく良経(九条兼実男)
2212をくらやま まつをむかしの ともとみて いくとせおいの よをおくるらむ為家
2213いくさとか あらしにつけて きこゆらむ わかすむてらの いりあひのかね後嵯峨院
2214わふとたに たれかはしらむ あともなき くものおくなる やまのすみかは覚助法親王
2215やまさとに わかみふりてそ かたかたに つもるみゆきの あともまちみる実兼
2216やまさとを うきよのほかの やとそとは すまておもひし こころなりけり宗尊親王
2217やまさとの こころしつかに すみよきは とふひともなし まつこともなし行円(行願寺開基卓上人)
2218たにのみつ みねのたききに あけくれて いはほのなかも いとまなのよや顕範
2219ひととせの みやこのひとの そらたのめ おもひはてぬる ふゆのやまさと丹後(宜秋門院)
2220ときはきの しけきみとりの したにして ひかけもみえぬ たにかけのやと花園院
2221やまかせは かきほのたけに ふきすてて みねのまつより またひひくなり為兼
2222やまあらしの すきぬとおもふ ゆふくれに おくれてさわく のきのまつかえ伏見院
2223いりかたの つきはすくなき しはのとに あけぬよふかき あらしをそきく教良女
2224をくらやま のきはのにしに ちかけれは ほかにはいらぬ つきそかくるる道平
2225なこりをは いはきにつけて おもふにも あらさらむよの あれまくもをし実氏
2226いつといはむ ゆふへのそらに ききはてむ わかすむやまの まつかせのおと実氏
2227うきたひの みのあらましに おもなれて すむここちする やまのおくかな光俊(葉室光親男)
2228さひしさを よのうきかたに おもひかへて みやまのつきを ひとりみるかな実香(藤原公敦男)
2229やまふかく またたかかよふ みちならむ これよりおくの みねのかけはし冬平
2230やまきはの たなかのもりに しめはへて けふさとひとは かみまつるなり為家
2231たきのおとも いかかきくらむ みやこたに ものあはれなる ころにもあるかな花山院
2232いくかへり くるともつきし かめのをの やまのいはねの たきのしらいと月花門院
2233たかをやま きよたきかはを そこにみて たにかけめくる まつのしたみち冬基
2234やまかせは ふけときこえす いはかねや たきりておつる たきのひひきに後伏見院
2235ひとりやは みえぬやまちも たつぬへき おなしこころに なけくうきよを和泉式部
2236さとひとの いほりにたける しひしはの けふりふきしく やまおろしのかせ後鳥羽院
2237かねのおとを まつにふきしく おひかせに つまきやおもき かへるやまひと定家
2238あはれなる とほやまはたの いほりかな しはのけふりの たつにつけても順徳院
2239としつきの かすをもしらし ふもとより つもれるちりの たかさこのやま内実
2240よのなかは いつみのそまき とるたみも ふるきをさらに ひきおこさなむ実氏
2241やまふかみ なるるかせきの けちかさに よをとほさかる ほとそしらるる西行
2242ひとりすむ おほろのしみつ ともとては つきをそやとす おほはらのさと寂然
2243たつたやま あらしのおとも たかやすの さとはあれにし てらとこたへよ阿一
2244なにしおはは あけすもあらなむ くらまやま みちみえすとて われはかへらし御形宣旨
2245あしひきの やまたのひたの おとたかみ こころにもあらぬ ねさめをそする道命
2246いほむすふ あきのやまたの ひたすらに いとへやこれは かりそめのよそ為子(従二位)
2247いほりさす そとものをたに かせすきて ひかぬなるこの おとそきこゆる実泰
2248のこるまつ かはるこくさの いろならて すくるつきひも しらぬやとかな定家
2249はなのゆき このはしくれの いくとせを みはふるさとの にはにみるらむ実兼
2250われならて またうちはらふ ひともなき よもきかはらを なかめてそふる斎宮女御
2251むかしへの ふるきつつみは としふかき いけのなきさに みくさおひにけり赤人
2252よのなかを おもひのきはの しのふくさ いくよのやとと あれかはてなむ定家
2253まつにあらし あさちかつゆに つきのかけ それよりほかに とふひとはなし為子(従二位)
2254くさのいほに こころはとめつ いつかまた やかてわかみも すまむとすらむ俊成(藤原俊忠男)
2255うちやまの むかしのいほの あととへは みやこのたつみ なそふりにける慶融
2256こけのむす のきはのまつは こたかくて みしにもあらぬ ふるさとのには盛継(伊豆)
2257くもにふす みねのいほりの しはのとを ひとはおとせて たたくまつかせ宗秀(大江時秀男)
2258さとひたる いぬのこゑにそ しられける たけよりおくの ひとのいへゐは定家
2259たかさとの いへゐなるらむ かたやまの ふもとにめくる たけのひとむら為氏
2260のちのよを おもひおきけむ くれたけの そのすゑまても あはれとはみよ慈道法親王
2261このきみの みよかしこしと くれたけの すゑすゑまても いかていはれむ後嵯峨院
2262くれたけの よよのむかしも しのはれて わすれぬふしの おほくもあるかな基忠(鷹司兼平男)
2263そのよこそ なほこひしけれ ももしきや わかともとみし にはのくれたけ後伏見院
2264たのもより やまもとさして ゆくさきの ちかしとみれは はるかにそとふ伏見院
2265ゆふまくれ こたかきもりに すむはとの ひとりともよふ こゑそさひしき良経(九条兼実男)
2266このうちも なほうらやまし やまからの みのほとかくす ゆふかほのやと寂蓮
2267とりとりの わかれのほとも かなしきに すへてこのよに またはかへらし選子内親王
2268ささかにの くものふるまひ あはれなり これもこころの すちはみえつつ後嵯峨院
2269のきちかき まかきのたけの すゑはより しのふにかよふ ささかにのいと土御門院
2270なさけみせて のこせるふみの たまのこゑ ぬしをととむる ものにそありける伏見院
2271するすみの いろしみえすは みつくきの なかれてのよの あとをとめめや伏見院
2272おもひける こころのみゆる たまつさは ぬしにかたらふ ここちこそすれ顕昭
2273いつはりの ことのはしけき よにしあれは おもふといふも まことならめや頼朝
2274なへてみな きみかなけきを とふかすに おもひなされぬ ことのはもかな西行
2275あらちをの かりゆくのへの くさたかみ ひくやまゆみの すゑはかりみゆ為子(従二位)
2276やまひとの ましはにませて さすをはな かせふかねとも まねきてそゆく新大納言(延政門院)
2277みるからに おつるなみたの たまくしけ みにつたふへき かたみなりけり内経
2278かたみとて かへすもよよの いへのかせ ふきつたへよと おもふとをしれ後二条院
2279つつみける おもひやなにそ からころも よにもるまての そてのしつくは伏見院
2280たかもらす なみたなるらむ からころも わかみにしらぬ そてのしつくは為子(従二位)
2281あはれとは くもゐをかけて きこゆなり あしへのたつの こをおもふこゑ実氏
2282くもゐより としへてなれし あしたつの かへるわかれに ねをそそへつる伏見院
2283みちをゆつる きみにひかれて よつのをの そのねもたかき なをそあけぬる実兼
2284つたへこし みちもみちある みよにあひて たえせぬいへの あとたえめやは寂恵
2285むそちあまり おいぬるとしの しるしとて きみかなさけの みにあまるかな為氏
2286はなにさき みになりかはる よをすてて うきはのつゆと われそけぬへき道綱母
2287きみはなほ ちりにしはなの このもとに たちよらぬとは おもはさりけり二条院
2288はなちりし みちにこころは まとはれて このもとまても ゆかれやはせし上東門院
2289ことのはの つゆはかりたに かけよかし くさのゆかりの かすならすとも三河(法性寺入道前関白家)
2290むらさきの いろにいてては いはねとも くさのゆかりを わすれやはする讃岐
2291ひとことに えてうれしきは のりのはな みよのほとけの やとのものとて慈円
2292もるやまの みねのもみちも ちりにけり はかなきいろの をしくもあるかな貫之
2293みねつつき やまへはなれす すむしかも みちたとるなり あきのゆふきり俊成(藤原俊忠男)
2294いりあひの かねのおとこそ かなしけれ けふをむなしく くれぬとおもへは隆信
2295むさしのの くさはにやとる しらつゆの いくよあるへき ものならなくに伊勢
2296よのなかは みつにやとれる つきなれや すみはつへくも おもほえぬかな公任
2297ととまらぬ ひとのいのちと あしひきの やましたみつと いつれはやけむ雅成親王
2298もろともに きのふののへに いさゆきて かすみをたにも みてかへりなむ道命
2299くものうへの ものおもふはるは すみそめに かすむそらさへ あはれなるかな紫式部
2300あひにあひて ものおもふはるは かひもなし はなもかすみも めにしたたねは和泉式部
2301おもひやれ はるのひかりも てらしこぬ みやまのさとの ゆきのふかさを俊成(藤原俊忠男)
2302くさもきも いろつきわたる はるさめに くちのみまさる ふちのころもて公任
2303ひねもすに ふるはるさめや いにしへを こふるたもとの しつくなるらむ高光
2304いかてかく うきよをしらて うめのはな ことしもおなし いろにさくらむ実房
2305ちりのこる はなたにあるを きみかなと このはるはかり とまらさりけむ通親
2306ここのへも はなのさかりに なるなかに わかみひとつや はるのよそなる実頼
2307いくほとか なからへてみむ やまさくら はなよりもろき いのちとおもへは亀山院
2308はるしらぬ うきみもかなし いにしへに つらねしえたの はなにわかれて兼教
2309なきひとを はなゆゑけふは しのひても のちのはるをは われもたのます兼忠
2310をしまれし こすゑのはなは ちりはてて いとふみとりの はのみのこれる上東門院
2311いかにいひ いかにとはむと おもふまに こころもつきて はるもくれにき俊成(藤原俊忠男)
2312ほとときす こそみしきみも なきやとに いかになくらむ けふのはつこゑ伊尹
2313かなしさの かかるときやは またもありし うへもうつきと いひはしめけり長家
2314さらてたに ことしはそての ひまなきに かさねてしをる あきのつゆけさ長家
2315いはかけの けふりをきりに わきかねて そのゆふくれの ここちせしかな資業
2316いさきよき こころもしるし いるつきの なきかけをさへ きみにまかせて寂蓮
2317なきかけを みよとてつきの いりしより いととこころの やみにまとひぬ経房(藤原光房男)
2318ひとりのみ なみまにやとる つきをみて むかしのともや おもかけにたつ全性
2319もろともに みしよのひとは なみのうへに おもかけうかふ つきそかなしき行盛(平基盛男)
2320むらくもに ひかりかくるる つきみれは くさのすゑはの つゆもけぬめり実兼
2321やまさとの あきのわかれの かなしきは しかさへこゑも をしまさりけり実定
2322むしのねの よわるのみかは すくるあきを をしむわかみそ まつきえぬへき近衛院
2323うきよをは あきはててこそ そむきしか またはいかなる けふのわかれそ宗尊親王
2324あきかけて ふりにしやとの むらしくれ たのむかけなく ぬるるそてかな実伊
2325われさへそ そてはつゆけき ふちころも きみおりたちて きるそとおもへは侍従(本院)
2326きりきりす あはれとそきく つひのわか よもきかもとの ともそとおもへは覚昭
2327けふはいかに なみたふりにし みやのうちも さらにしくれて そてぬらすらむ為信
2328なみたのみ いととふりそふ しくれには ほすひまもなき すみそめのそて御匣(式乾門院)
2329おもひしれ あきのなかはの つゆけさを しくれにぬるる そてのうへにて静賢
2330ましてひと いかなることを おもふらむ しくれたにしる けふのあはれを出羽弁
2331ふるからに とまらすきゆる ゆきよりも はかなきひとを なににたとへむ村上天皇
2332あらぬよに ふるここちして かなしきに またとしをさへ へたてつるかな俊頼(源経信男)
2333いつれのひ いかなるやまの ふもとにて もゆるけふりと ならむとすらむ選子内親王
2334ありしよに ゑしのたくひは きえにしを こはまたなにの けふりなるらむ清輔
2335きえにしを うしとはかりは みはかやま さきたつくもの ゆくへしらせよ忠経
2336とりへやま けふりのすゑや これならむ むらむらすこき そらのうきくも内侍(永福門院)
2337なけきつつ あめもなみたも ふるさとの むくらのかとの いてかたきかな斎宮女御
2338やまふかみ とふひとなしと おもへとも ひとりすむみは けふそうれしき春花門院弁
2339ゆめのよは とふひとあらし とはかりの みちのしるへを まちやつけけむ定家
2340うかりける このよのゆめの さめぬまを みるもうつつの ここちやはせし宣陽門院
2341むかしにも かはらすすめる いけみつに かけたにみえぬ きみそかなしき季経
2342さきたつを あはれあはれと いひいひて とまるひとなき みちそかなしき親子(従三位源)
2343うきみをは こととはすとも かかるよの かなしきことは しるやしらすや忠快(平教盛男)
2344かなしさを よそのなけきと おもはねは ひとをとふへき ここちたにせす行盛(平基盛男)
2345あるほとか あるにもあらぬ うちになほ かくうきことを みるそかなしき資盛
2346なかれゆく みつにたまなす うたかたの あはれあたなる このよなりけり西行
2347ふなをかの すそののつかの かすそへて むかしのひとに きみをなしつる西行
2348ひとりねに ありしむかしの おもほえて なほなきとこを もとめつるかな朱雀院
2349ときはなる いはやはいまも ありけれと すみけむひとそ つねなかりける博通
2350いはやとに たてるまつのき なれをみれは むかしのひとに あひみるかこと博通
2351かへりては まつたらちねを みしものを けふはたれにか あはむとすらむ道済
2352みちのへの よもきかもとそ あはれなる このよのはての すみかとおもへは六条(八条院)
2353おくれゐて なみたさへこそ ととまらね みしもききしも のこりなきよに堀河(待賢門院)
2354いかにせむ わかのちのよは さてもなほ むかしのけふを とふひともかな右京大夫(建礼門院)
2355うきことの いつもそふみは なにとしも おもひあへても なみたおちけり右京大夫(建礼門院)
2356おのつから おくれさきたつ こともあれと おいてととまる かすそすくなき源恵
2357いまはとて かたみのころも ぬきすてて いろかはるへき ここちこそせね生子(女御藤原)
2358こそまては わけこしともも つゆときえて ひとりしをるる ふかくさののへ伏見院
2359うきときと わかれしまては おもひしに おなしつきひそ かたみなりける範藤
2360かさねきる ふちのころもを たよりにて こころのいろも そめよとそおもふ西行
2361みわたせは みなすみそめの ころもては たちゐにつけて ものそかなしき師房女
2362なきをこそ きみはこふらめ としふれは あるもかなしき ものにそありける躬恒
2363ふれはうし へしとてもまた いかかせむ あめのしたより ほかのなけれは和泉式部
2364いつまてと のとかにものを おもふらむ ときのまをたに しらぬいのちに兵衛(上西門院)
2365めのまへに かくあれはつる いせのうみを よそのなきさと おもひけるかな出羽弁
2366いにしへの あまのすみけむ いせのうみも かかるなきさは あらしとそおもふ兼房
2367おくれしと おもふこころに そむけとも このよにとまる ほとそかなしき豊子(従三位藤原)
2368いままてに よにありへむと おもはぬを そむくみちにも おくれぬるかな少将内侍(後一条院)
2369ゆめのよに なれこしちきり くちすして さめむあしたに あふこともかな崇徳院
2370ふえたけの このよをなかく わかれにし きみかかたみの こゑそかなしき御匣(枇杷皇太后宮)
2371たまつさの そのたまのをの たえしより いまはかたみの ねにそなかるる伏見院
2372いにしへを かくるなみたの たまつさの かたみのこゑに ねをそそへぬる永福門院
2373ひとのよは なほそはかなき ゆふかせに こほるるつゆは またもおきけり為子(従二位)
2374みちかはる みゆきかなしき こよひかな かきりのたひと みるにつけても西行
2375わかれちは えそしたかはぬ むかしより つかへなれにし みゆきなれとも実兼
2376わかれにし ひとをかくても みてしかな ほとへてかへる たまもありけり定頼母
2377たちよらむ かたもしられす うつせみの むなしきとこの なみのさわきに兼輔
2378みかかれし たまのうてなを つゆふかき のへにうつして みるそかなしき西行
2379ふかくさの つゆふみわくる みちすから こけのたもとそ かつしをれゆく実兼
2380いにしへの つるのはやしの はるはあれと なほかめやまの あきそかなしき実時(藤原公蔭男)
2381なくなくも したひてそみる なきひとの おもかけはかり ありあけのつき基平(近衛兼経男)
2382ゆめかとも なにかおとろく さならても うつつなるへき このよならぬを隆博
2383さきたつも とまるもおなし ゆめのよを よそにおとろく みさへはかなき左衛門佐(章善門院)
2384おなしよの めくみたえぬと なけきしに あとまてのこる なさけをそきく利行
2385おもひきや みとせのあきを すくしきて けふまたそてに つゆかけむとは行子(従二位)
2386もみちはを あきのかたみと なかめても しくれとふるは なみたなりけり公顕
2387わけきつる そてのしつくか とりへのの なくなくかへる みちしはのつゆ俊成(藤原俊忠男)
2388いかにして きえにしあきの しらつゆを はちすのうへの たまとみかかむ忠通
2389みしゆめの おなしうきよの たくひにも さめぬあはれそ いととかなしき兼教
2390としへても さめすかなしき なつのよの ゆめにゆめそふ あきのつゆけさ為子(従二位)
2391よのうさに あきのつらさを かさねても ひとへにしをる すみそめのそて民部卿典侍(後堀河院)
2392きえぬまの みをもしるしる あさかほの つゆとあらそふ よをなけくかな紫式部
2393さやかなる つきともいさや みえわかす たたかきくらす ここちのみして少将(枇杷皇太后宮)
2394かけたにも とまらさりけり くものうへを たまのうてなと たれかいひけむ上東門院
2395さきはてす ちりにしはなの わかれより はるのやよひは うらみはててき長家
2396たれみよと なほにほふらむ さくらはな ちるををしみし ひともなきよに赤染衛門
2397いかはかり けふはさくらの はなみても あたになりにし ひとをこふらむ親世
2398ふしておもひ おきてもまとふ はるのゆめ いつかおもひの さめむとすらむ家隆
2399ねさめして おもひそいつる ほとときす くもゐにききし よるのひとこゑ三河内侍(二条院)
2400はるのはな さきてはちりぬ あきのつき みちてはかけぬ あなうよのなか大輔(殷富門院)
2401つゆきゆる うきよにあきの をみなへし ことしもしらぬ いろそかなしき中納言(建春門院)
2402みてすきし おなしうきよの ゆめなれは とふにつけてそ われもかなしき親宗(平時信男)
2403かきりなき うきよのゆめを みてしかな このかなしさも おとろかれぬを重家
2404かくれにし くもゐのつきを おもひいてて たれとむかしの あきをこふらむ惟方
2405かきくらす なみたはかりを ともとして かくれしつきを こひぬよそなき中納言典侍(二条院)
2406あきになり かせのすすしく かはるにも なみたのつゆそ しのにちりける俊成(藤原俊忠男)
2407わきてこの あきはいかなる あきなれは つゆそふそての またしくるらむ右京大夫(玄輝門院)
2408ふかくさの やまのもみちに このあきは なけきのいろを そへてこそみれ経親(平時継男)
2409ほとときす こととふからに いととしく むかしのけふを こひつつそなく行宗
2410きみこふる なけきのしけき やまさとは たたひくらしそ ともになきける堀河(待賢門院)
2411またもこむ あきをまつへき たなはたの わかるるたにも いかかかなしき忠盛
2412おもはさりし ふちのたもとの あきのつゆ かかるちきりの あはれをそしる永福門院
2413よをすては つらきあきもや なくさむと おもひしそても つゆはかわかす兼行
2414ひとのよは おもへはなへて あたしのの よもきかもとの ひとつしらつゆ良経(九条兼実男)
2415いはてのみ むかしのことは おもへとも おさへかたきは なみたなりけり惟方
2416けふかくて めくりあふにも かなしきは このよへたてし わかれなりけり全真
2417こひしのふ ひとにあふみの うみならは あらきなみにも たちましらまし右京大夫(建礼門院)
2418いつかたの たにのけふりと なりにけむ あはれゆくへも なきそかなしき匡房
2419きけとなほ ゆめかなにそと たとられて うきもうつつの ここちこそせね忠良
2420あらしふく みやまのさとに きみをおきて こころもそらに けふはかへりぬ倫子(従一位)
2421なへてにも あらぬわかれの かなしさは いかにとたにそ いはれさりける宣旨(後一条院中宮)
2422かすならぬ なみたのつゆを かけてたに たまのかさりを そへむとそおもふ和泉式部
2423きみなくて かへるなみちに しをれこし そてのしつくを やもひやらなむ兵衛佐(崇徳院)
2424そのをりに きてましものを ふちころも やかてそれこそ かきりなりけれ伊周
2425うつせみの よはつねなしと しるものを あきかせさむみ しのひつるかも家持
2426わかれにし はるのかたみの ふちころも たちかさねぬる あきそかなしき小一条院
2427ふたとせの あきのあはれは ふかくさや さかののつゆも またきえぬなり為兼
2428またほさぬ こそのたもとの あきかけて きえそふつゆも よそにやはおもふ伏見院
2429うかりしも かたみとおもふ あきにさへ かさねてまたや けふはわかれむ良助法親王
2430つかへつつ なれしむかしの ままならは こよひやよをは そむきはてまし雅有
2431とまるみは ありてかひなき わかれちに なとさきたたぬ いのちなりけむ四条(安嘉門院)
2432かはらしな きえにしつゆの なこりとて そてほしわふる あきのおもひは三河(中務卿宗尊親王家)
2433ならひそと しりてもうきは めのまへに ひとにおくるる わかれなりけり時村
2434こをおもふ みちこそやみと ききしかと おやのあとにも まよはれにけり選子内親王
2435なにゆゑに みやこのほかに たひねして しかのなくねに こゑをそふらむ弁乳母
2436をしむへき ひとはみしかき たまのをに うきみひとつの なかきよのゆめ定家
2437のちみむと きみかむすへる いはしろの こまつかうれを またみつるかも人麿
2438このもとに くちはてぬへき かなしさに ふりにしことの はをちらすかな俊成(藤原俊忠男)
2439いへのかせ ふきつたへすは このもとに あたらもみちの くちやはてまし顕輔
2440やへむくら たえぬるみちと みえしかと わすれぬひとは なほたつねけり赤染衛門
2441みるたひに つゆかかれとは いひおかぬ ことのはいかて なみたおつらむ円俊
2442こころうつる なさけいつれと わきかねぬ はなほとときす つきゆきのとき永福門院
2443うれしのや うきよのなかの なくさめや はるのさくらに あきのつきかけ遊義門院
2444なかなかに よはひたけてそ いろまさる つきとはなとに そめしこころは公経(藤原実宗男)
2445ひきかへて はなみるはるは よるはなく つきみむあきは ひるなからなむ西行
2446まほろしは たまのうてなに たつねきて むかしのあきの ちきりをそきく長方
2447くらしかね なかきおもひの はるのひに うれへともなふ うくひすのこゑ宣子(従三位藤原)
2448いかてかく やともさためぬ なみのうへに うきものおもふ みとはなりけむ寂蓮
2449あきつしま ひとのこころを たねとして とほくつたへし やまとことのは為家
2450わかのうらや かきおくなかの もくつにも かくれぬたまの ひかりをそみる実兼
2451わかのうらに みちふみまよふ よるのつる このなさけにそ ねはなかれける為教
2452わかのうらの ともをはなれて さよちとり そのかすならぬ ねこそなかるれ為守
2453なくねをも よそにやはきく ともちとり すむうらゆゑそ とほさかるらむ貞時
2454わかのうらに あとつけなから はまちとり なにあらはれぬ ねをのみそなく祐臣
2455もしほひの けふりのすゑを たよりにて しはしたちよる わかのうらなみ基忠(鷹司兼平男)
2456ひとなみに きみわすれすは わかのうらの いりえのもくつ かすならすとも俊成女
2457つかふるは おやのをしへと たのめとも みのためにうき よをいかにせむ為氏
2458ゆめはたた ぬるよのうちの うつつにて さめぬるのちの なにこそありけれ伏見院
2459ありてすき みえてさめぬる のちはたた うつつもゆめも かはらさりけり遊義門院
2460ぬるかうちは いまやむかしに かへるらむ むかしやいまの ゆめにみえつる実兼
2461うたたねの みしかきゆめの ほとはかり おいのまくらに むかしをそみる覚助法親王
2462ぬるかうちの ゆめははかなき ものといへと おもふこころの すゑはみえけり為仲(藤原為顕男)
2463ゆめならて またはまことも なきものを たかなつけける うつつなるらむ義政
2464みのうさを おもひねにみる ゆめなれは うつつにかはる なくさめもなし国時
2465ことのはの つゆにおもひを かけしひと みこそはきゆれ こころきえめや小侍従(太皇太后宮)
2466あさゆふに みておとろかぬ ゆめのよは さむるかきりも あらしとそおもふ実重室
2467やまふかく すまはともにと いふひとも まことにならは かはりもやせむ保季
2468をしむとて をしまれぬへき このよかは みをすててこそ みをもたすけめ西行
2469われそまつ いるへきみちに さきたてて したふへしとは おもはさりしを頼政
2470おなしよを そむくときけは いまさらに みのつれなさそ おもひしらるる為氏
2471とはれすは そむくうきよの おもひいても なきみのとかに なしやはてまし道洪
2472うきなから すめはすまるる よのなかを おもひとりける きみそかなしき兼経
2473みひとつを おもひすてしは やすけれと ひとのためには よこそをしけれ実兼
2474そむくよも かしこききみの しるへかな すててこそいる みちとききしに種成
2475すつるよの あとまてのこる もしほくさ かたみなれとや かきととめけむ宗尊親王
2476すつるよの かたみとみすは もしほくさ かきおくあとも かひやなからむ寂恵
2477なにことを そむきはてぬと おもふらむ このよはすてぬ みにこそありけれ能因
2478いとひえぬ うきみのみこそ かなしけれ いへをいてぬと ひとをきくにも伊綱(不詳)
2479おもへとも さすかにみをは すてやらて ひとのあはれを とふそかなしき忠良
2480いとふへき かりのやとりは いてぬなり いまはまことの みちをたつねよ西行
2481なほさりに おもひもいらは こけころも かさなるやまを いかてわけまし通忠女
2482ことのねに なみたをそへて なかすかな たえなましかはと おもふあはれに西行
2483ゆめのうちに みしおもかけの かはらねは なほありしよの ここちこそすれ弁乳母
2484いかならむ やまのあなたの やとまても きみをそたのむ われなわすれそ実氏
2485けふもまた むかしかたりに なりぬとも わすれやはせむ よよのすゑまて道助法親王
2486うきみさへ みにさすらひて としもへぬ すむへきやまの おくはあれとも覚助法親王
2487あるもうく なきもかなしき よのなかを いかさまにかは おもひさためむ雅経
2488おもふとも つひにはそはし おなしくは うまれすしなて ともとならはや高弁
2489いとけなし おいてよわりぬ さかりには まきらはしくて つひにくらしつ高弁
2490うけかたき みをはいかかは すてむとて いままてよには めくるなりけり慶政
2491ゆみはりの つきみるよひは ほともなく いるやまのはそ わひしかりける高遠
2492しはしたに ここをはつきも すみうくや すたれのほかに かけおちてゆく親子(従三位源)
2493もろともに かけかたふきて なかむれは つきもあはれと われをみるらむ読人不知
2494なれみるも いつまてかはと あはれなり わかよふけゆく ゆくすゑのつき為子(従二位)
2495よのなかの うきをもしらす すむつきの かけはわかみの ここちこそすれ西行
2496みをあきの わかむかしをも おもひいつや なみたおちそふ そてのつきかけ読人不知
2497よのうさに おもひいるへき やまのはを すみうかれてや つきはいつらむ雅平女
2498おもふこと なくてなかめし むかしたに つきにこころの のこりやはせし実定
2499いつくにて いかなることを おもひつつ こよひのつきに そてしをるらむ右京大夫(建礼門院)
2500よをすてて なほうきときの しるへせよ いりぬるやまの みねのつきかけ永光
2501すむかひも なくてくもゐに ありあけの つきはなにとか いるもしられむ小侍従(太皇太后宮)
2502みのうさを うれへあはする とももあらは つきにはさのみ かこたさらまし房子(従三位)
2503うきよおもふ しはのいほりの ひまをあらみ さそふかつきの にしにかたふく慈円
2504をはりおもふ こころのすゑの かなしきは つきみるにしの やまのはのくも慈円
2505ひさかたの そらさへちかき おくやまに つきとともにも いりにけるかな斎宮女御
2506くもかくれ さやかにみえぬ つきかけに まちみまたすみ ひとそこひしき選子内親王
2507いまはとて かけをかくさむ ゆふへにも われをはおくれ やまのはのつき式子内親王
2508すてていてし うきよはつきの すまてあれな さらにこころの とまらさらまし西行
2509われをとふ ひとこそなけれ むかしみし みやこのつきは おもひいつらむ増基
2510よつのをの しらへにつけて おもひいてよ なかはのつきに われもわすれし大夫(延子内親王家)
2511よのなかの せめてはかなき ためしとや つきさへかりの やとりにそすむ高弁
2512けにやさそ にしにこころは いそかるる かたふくつきを いまはをしまし教長
2513つきみれは おいぬるみこそ かなしけれ つひにはやまの はにやかくれむ清少納言
2514にしへゆく つきのなにとて いそくらむ やまのあなたも おなしうきよを実定
2515たましひも わかみにそはぬ なけきして なみたひさしき よにそふりにし定家
2516なにとかく おきところなく なけくらむ ありはつましき つゆのいのちを丹後(宜秋門院)
2517かすならて あるにもあらぬ うきみしも なとよのなかに おきところなき忠良
2518ふりはつる おいのねさめの なみたにそ みをしるそては ぬれまさりける信兼
2519あれはいとふ そむけはしたふ かすならぬ みとこころとの なかそゆかしき長明
2520たのみこし わかこころにも すてられて よにさすらふる みをいとふかな家隆
2521かからすは とまるこころも ありなまし うきそこのよの なさけなりける宗尊親王
2522みもつらく よもうらめしき ふしふしを わすれぬものは なみたなりけり実雄
2523うきもうく つらきもつらし しかはあれと しらぬになして よをすくすかな実重(三条公親男)
2524しひてたか ととめおきける わかみとて なほすてやらぬ よをなけくらむ聖勝
2525あられける みをうたかひし やすらひに なにしかおそく よをのかれけむ読人不知
2526よしさらは あるにまかせむ あらましの はしめにはみな かはりゆくみを為相女
2527あつまにて みはふりぬとも ことのはを いかてくもゐに きこえあけまし政長
2528あすとたに またれぬほとの おいのみは いのちのうちの あらましもなし宣時(北条)
2529いかにせむ そむきてのちの うきよをは すてなはとおもふ なくさめもなし宗尊親王
2530あはれけに のかれてもよは うかりけり いのちなからそ すつへかりける読人不知
2531たらちねの おいのよはひに うまれあひて ひさしくそはぬ みをそうらむる為相
2532なにとかく そむくこころの ふかからむ このよにこそは うまれたるみの慈円
2533いたつらに やすきわかみそ はつかしき くるしむたみの こころおもへは伏見院
2534もくつにも ひかりやそはむ わかのうらや かひあるけふの たまにましりて為相
2535わかのうらに しつむみくつよ みかかれむ たまのひかりを みるよしもかな為子(従二位)
2536おろかなる みをはしれとも よよへぬる あとをそたのむ しきしまのみち隆博
2537たまつしま あはれとみすや わかかたに ふきたえぬへき わかのうらかせ為家
2538とにかくに きみかよをのみ いのるかな のりのためにも かみのためにも範憲
2539これのみそ ひとのくにより つたはらて かみよをうけし しきしまのみち為相
2540すみよしの まつのおもはむ ことのはを わかみにはつる しきしまのみち為藤
2541よしあしは わかぬみなれと よにすめは なにはのことも みてそひさしき資宣
2542わひつつも このみはかりは いかかせむ めくらむよよを おもふかなしさ実房
2543うらむとも なけくともよの おほえぬに なみたなれぬる そてのうへかな式子内親王
2544こころから こころにものを おもはせて みをくるしむる わかみなりけり西行
2545きみたにも みやこなりせは おもふこと まつかたらひて なくさみなまし増基
2546よのなかを おもふもくるし おもはしと おもふもみには おもひなりけり侍従(本院)
2547いかにせむ いかにとすへき よのなかを そむけはかなし すめはうらめし和泉式部
2548よのなかに うきみはなくて をしとおもふ ひとのいのちを ととめましかは和泉式部
2549つくつくと あかしくらして としつきを つひにはいかか かそへなすへき花山院
2550たれとかは わきてもいはむ わかために うらめしからぬ ひとしなけれは俊頼(源経信男)
2551いかてわれ すましとそおもふ すむからに うきことしけき このよなりけり惟規
2552いつかたに いかかそむかむ そむくとも よにはよならぬ ところありせは読人不知
2553つゆはかり おもひおくへき こころあらは きえぬさきにそ ひとはとはまし少輔命婦
2554なからへは さりともとおもふ こころこそ うきにつけつつ よわりはてぬれ忠度
2555なほかくて ありへむことは うきよりも よそのひとめの はつかしきかな忠良
2556うきなから いくはるあきを すくしきぬ つきとはなとを おもひいてにして読人不知
2557そむきても なほいとはしき よのなかを すてぬはまして さそなけくらむ覚円
2558いまそしる わかみのみにて あるときに ひともひととは おもふなりけり行尊
2559なけくとも いふともかひは あらしよを ゆめのことくに おもひなしてむ花山院
2560をしからぬ いのちなれとも こころにし まかせられねは うきよにそふる伊勢
2561みのうさに いととうきたる うきくさの ねなくはひとに みせしとそおもふ斎宮女御
2562なくさむる かたもなきさの はまちとり なにかうきよに あともととめむ孝標女
2563おのつから うきみわするる あらましに ありなくさめて よをやすくさむ為世(御子左藤原為氏男)
2564こころひく かたはかりにて なへてよの ひとになさけの あるひとそなき為子(従二位)
2565あはれてふ ひとはなきさの さよちとり うきよにわひて ねをのみそなく為子(従二位)
2566しつむみの たななしをふね いかなれは おなしえにたに かへらさるらむ長雅
2567みつまさる はやせのふねも わかことや のほりもやらぬ よをうれふらむ家親
2568いかにせむ こえゆくなみの したにのみ しつみはてぬる あまのすてふね為教
2569ねさめにそ さらにかそふる わかよには あかぬことなき みのおもひてを実兼
2570あらましの こころにみをそ まかせぬる たのむかひある みよのしるしに源恵
2571こしかたの ゆめうつつをそ わきかぬる おいのねふりの さむるよなよな公禅
2572みのうきか ひとのつらきか さりともと おもふひかすを とはてすきぬる忠快(平教盛男)
2573をしむへき ひともなきよを すてやらて こころからこそ みをうれへけれ実時(藤原公蔭男)
2574なにとまた みのうきことを なけくらむ なきになしても すてはてしよに親世
2575おもふらむ こころになりて みるときそ ひとのうれへも みにしられける斉時
2576すまはやと よそにおもひし いにしへの こころにはにぬ やまのおくかな道昭
2577うしとても たれをこのよに うらみまし たのめはとおもふ ひとしなけれは具氏
2578ゆくすゑも さそなうからむ みのはてを しらぬはかりそ たのみなれとも能清
2579むかしより うきよのなかと ききしかと けふはわかみの ためにそありける土御門院
2580をしむとも なかかるましき いのちもて よをとにかくに なけくはかなさ遊義門院
2581なににかは おいのねさめを なくさめむ ききみしことを おもひいてすは基忠(鷹司兼平男)
2582はかなしと おもひもはてし ゆめちには またあひみける ひとのおもかけ読人不知
2583あはれなり いかにわかみの なるとても たれかはをしみ たれかしのはむ為子(従二位)
2584あすかかは あすともしらぬ はかなさに よしなかれての よをもたのまし新宰相(伏見院)
2585いせのうみの あまのうけなは うけかたき このみをまたは しつめすもかな伏見院
2586うつるとき すくるつきひを かそへても いつまてのみそ さらにかなしき朔平門院
2587ひともよも おもへはあはれ いくむかし いくうつりして いまになりけむ為子(従二位)
2588なにしかも おもひみたるる つゆふかき のへのをかやの たたかりのよを伏見院
2589すてかねぬ なにゆゑをしき うきよそと こころにちたひ おもふものから内侍(永福門院)
2590みのはてを このよはかりと しりてたに はかなかるへき のへのけふりを定家
2591まことふかく おもひいつへき とももかな あらさらむよの あとのなさけに慈円
2592こころさし きみにふかくて としもへぬ またうまれても またやいのらむ慈円
2593いかにして こころにおもふ ことわりを とほすはかりも ひとにかたらむ為家
2594あまつひの ひかりはきよく てらすよに ひとのこころの なとかくもれる後伏見院
2595をりにふれ ときにおほゆる かなしさを たくひあらしと なかめてそふる達智門院
2596はるのはな あきのもみちを みしともの なかははこけの したにくちぬる俊忠
2597いにしへを たれにかたりて なくさめむ わかことしのふ ひとのなけれは良実
2598みしほとの むかしをたにも かたるへき とももなきよに なりにけるかな則俊
2599すきてゆく つきひをかへす ものにあらは こひしきかたを またもみてまし永福門院
2600おもひいつる むかしはとほく なりはてて まつかたちかき みをいかにせむ三河内侍(二条院)
2601めくりあふ あきのはつきの はつかにも みぬよをとへは そてそつゆけき為相
2602みのうさは そのよとてもと おもへとも なほこしかたは こひしかりけり家親
2603しのはるる むかしといふも おなしよの とほさかりゆく なにこそありけれ義行
2604ひとりして みるかきりをは わすれねと たれかはわれを おもひいてける小馬命婦(藤原棟町女)
2605よをへても あふへかりける ちきりこそ こけのしたにも くちせさりけれ清輔
2606ふるきあとを こけのしたまて たつねすは のこれるかきの もとをみましや寂蓮
2607かたはかり そのなこりとて ありはらの むかしのあとを みるもなつかし為子(従二位)
2608をしからぬ いのちもけふは をしきかな あらはあふよに あひもこそすれ行尊
2609われさりて のちにしのはむ ひとなくは とひてかへりね たかしまのいし高弁
2610くもゐにて ありしくもゐの こひしきは ふるきをしのふ こころなりけり弁内侍(後深草院)
2611こしかたを ひとよのほとと みるゆめは さめてそとほき むかしなりける秀茂
2612いかなれは つらきむかしと おもへとも なほしのはるる ならひなるらむ行深
2613いまさらに かへらぬものと しりなから しのはすはなき むかしなりけり貞重
2614こころには わすれすしのふ いにしへも かたるはかりの おもひてそなき広範
2615むかしおもふ たかつのみやの あとふりて なにはのあしに かよふまつかせ慈円
2616なさけある むかしのひとは あはれにて みぬわかともと おもはるるかな伏見院
2617をしむへく かなしむへきは よのなかに すきてまたこぬ つきひなりけり伏見院
2618いせのうみの きよきなきさは さもあらはあれ われはにこれる みつにやとらむ善光寺阿弥陀如来
2619しをりせて みやまのおくの はなをみよ たつねいりては おなしにほひそ石清水八幡
2620たにかはの このはかくれの うもれみつ なかるるもゆく したたるもゆく石清水八幡
2621みたたのむ ひとはあまよの つきなれや くもはれねとも にしにこそゆけ真如堂阿弥陀如来
2622こくらくへ うまれむとおもふ こころにて なむあみたふと いふそみこころ石清水八幡
2623いかにせむ ひはくれかたに なりぬれと にしへゆくへき ひとのなきよを清水観音
2624はなころも かささきやまに いろかへて もみちのほらの つきをなかめよ粉川観音
2625ひとのこの そこのこころの にこれるは おやのなかれに すまぬとをしれ粉川観音
2626さきにたつ ひとのうへをは ききみすや むなしきそらの けふりとそなる地蔵菩薩
2627なにもみな いとはぬやまの くさきには あのくほたいの はなそさくへき天人
2628やまとりの ほろほろとなく こゑきけは ちちかとそおもふ ははかとそおもふ行基
2629うゐのよは いつらつねなる くさのはに むすへるつゆの かせまつかこと善珠
2630かくてしも あるはあるにも あらぬよも すてむとすれは またそかなしき慶政
2631かくはかり うけかたきみに つもるとしの くれやすきひの かけそかなしき慶政
2632なにしおはは わかよはここに つくしてむ ほとけのみくに ちかきわたりに花山院
2633あきらけき のりのともしひ なかりせは こころのやみの いかてはれまし選子内親王
2634めしひたる かめのうききに あふなれや たまたまえたる のりのはしふね高弁
2635こきゆかむ なみちのすゑを おもひやれは うきよのほかの きしにそありける高弁
2636しはのとに あけくれかかる しらくもを いつむらさきの いろにみなさむ源空上人
2637こしかたは しのはるれとも むつのみち めくりしあとに かへらすもかな基忠(鷹司兼平男)
2638むつのみち よつのちまたの くるしみを いつかかはりて たすけはつへき行円(行願寺開基卓上人)
2639よにこゆる ちかひのふねを たのむかな くるしきうみに みはしつめとも経長(丹波経基男)
2640あともなき こころにみちを ふみかへて まよはぬもとの みやこをそおもふ憲淳
2641よよをへて にこりにしみし わかこころ きよたきかはに すすきつるかな兼経
2642ひとりのみ たつねいるさの やまふかみ まことのみちを こころにそとふ顕頼
2643のりのため のへしみやまの こけむしろ まついろいろの はなそふりしく雅通(源雅定男)
2644ひとしれす のりにあふひを たのむかな たききつきにし あとにのこりて忠通
2645ひとふさを をりてたむくる はなのえに さとりひらくる みとそなるへき頼舜
2646よのなかに いてといてます ほとけをは たたひとことの ためとしらなむ行成
2647をくるまの のりのをしへを たのますは なほよにめくる みとやならまし宣時(北条)
2648をりしりて みはやすひとや まれならむ わしのみやまの はなのひとえた真浄
2649あはれにそ わすれさりける いそちあまり ひなにやつれし すかたなれとも親盛
2650さまさまに ちちのくさきの たねはあれと ひとつあめにそ めくみそめぬる崇徳院
2651たねくちて ほとけのみちに きらはれし ひとをもすてぬ のりとこそきけ道長
2652ゆくすゑを きくうれしさに こしかたの うかりしよりも ぬるるそてかな読人不知
2653ころもてに ありとしりぬる うれしさに なみたのたまを かけそそへつる経正
2654ゑひのうちに つけしころもの たまそとも むかしのともに あひてこそきけ赤染衛門
2655かきなかす やまのいはねの わすれみつ いつまてこけの したにすみけむ実氏
2656わかねかひ ひとののそみも みつしほに ひかれてうかふ なみのしたくさ源承
2657むかしいま かかみをかけて しるのみか ゆくすゑとても くもりやはする読人不知
2658さきのひと なにかへたてむ おなしとき みなほとけにし ならむとすれは源信
2659しつかにて のりとくひとそ たのもしき われらみちひく つかひとおもへは源信
2660おほそらを てにとることは やすくとも のりにあふへき をりやなからむ源信
2661かたかたに わかぬひかりも あらはれて ゆくすゑとほく てらすつきかけ康能
2662かきつめし ことはのつゆの かすことに のりのうみには けふやいるらむ長方
2663たききこり みねのこのみを もとめてそ えかたきのりは ききはしめける俊成(藤原俊忠男)
2664いつはりの なきことのはの すゑのつゆ のちのよかけて ちきりおくかな実聡
2665おほそらに わかぬひかりを あまくもの しはしへたつと おもひけるかな崇徳院
2666よよをへて なをたにきかて すくしこし のりにうれしく あひみつるかな行宗
2667かりそめの うきよはかりの こひにたに あふにいのちを をしみやはする勝命
2668つきかけの いるさへひとの ためなれは ひかりみねとも たのまさらめや崇徳院
2669いていると ひとはみれとも よとともに わしのみねなる つきはのとけし公任
2670いくかへり くるしきみちを すくしきて むかしのつゑに なほかかりけむ寂蓮
2671のりのはな ちらぬやとこそ なかりけれ わしのたかねの やまおろしのかね慈円
2672はるにあふ はなもいまこそ にほひけれ よそちあまりの わしのやまかせ公什
2673こをおもふ こころのやみを てらすとて けふかかけつる のりのともしひ実経女
2674はるのあめ あきのしくれと よにふるは はなやもみちの ためにそありける光俊(葉室光親男)
2675よそちあまり なほしのひける ことのはを いまはにちらす わしのやまかせ猷円
2676ゆふくれの そらにたなひく うきくもは あはれわかみの はてにそありける小弁
2677ものことに おもひしとけは あともなし ゆめさめはつる あけほののそら隆寛
2678いつはりも まこともけには なかりけり まよひしほとの こころにそわく公朝
2679はるるよの くもゐのほしの かすかすに きよきひかりを ならへてそみる親長
2680くらかりし そらはさなから はれつきて またうへもなく すめるつきかな良経(九条兼実男)
2681うけかふる とをのすかたの さまさまも たたこころより なすにそありける為子(従二位)
2682くさのいほの つゆきえぬとや ひとはみる はちすのはなに やとりぬるみを資隆
2683むらさきの くもたなひきて はたちあまり いつつのすかた まちみてしかな為子(従二位)
2684たれもみな わたるこころを はしとして かみなきみちに すすむなりけり教長
2685ひにそへて ふかきみちにそ いりにける うきよのなかを いてはてしより季広
2686をみなへし わかしめゆひし ひともとの ほかにこころを うつささらなむ長雅
2687しなしなに ひもとくのりの をしへにて いまそさとりの はなはひらくる実兼
2688あさなあさな ゆきのみやまに なくとりの こゑにおとろく ひとのなきかな良経(九条兼実男)
2689かりそめに こころのやとと なれるみを あるものかほに なにおもふらむ永福門院
2690よもすから まとのうすきり きえつきて こころにみかく あきのつきかけ源恵
2691なかむれは こころのそこそ すみまさる みゐのしみつに うつるつきかけ道珍
2692よもすから のりをたむくる わかそての なみたにやとる かすかののつき覚円
2693みつのくに なかれたえせぬ のりのみつ わかてらならて くむひとそなき良信
2694あひかたき みのりのはなに むかひても いかてまことの さとりひらけむ為家
2695いかにせむ とをのさかひに たひたちて もとのみやこの とほさかりゆく道玄
2696くさまくら たたかりそめに まよひいてて あはれいくよの たひねしつらむ読人不知
2697ふたつなき たまをこめたる もとゆひの とくことかたき のりとこそきけ堀河(待賢門院)
2698やよやまて かたふくつきに ことつてむ われもにしには いそくこころあり顕昭
2699よもすから にしにこころの ひくこゑに かよふあらしの おとそみにしむ忠源
2700あきらけき ひしりのみよに ふたかへり こころのたまを またみかくかな尊助法親王
2701おとろかす こころもほかに なかりけり われとそよはの ゆめはさめける実伊
2702もろともに ゆくへきみちの しるへとて つきもかたふく にしのやまのは円空上人
2703なにとして あともなきみの うきくもに こころのつきを へたてそめけむ聖戒
2704たかせふね くるしきうみの くらきにも のりしるひとは まとはさりけり覚性法親王
2705たつねいる みちとはきけと のりのかと ひらけぬものは こころなりけり実兼
2706あすよりは あたにつきひを おくらしと おもひしかとも けふもくらしつ慶政
2707やまふかみ こけのしたには うもるれと ひとをそわたる たにのかけはし盛弘
2708さなからや ほとけのはなに たをらまし しきみのえたに ふれるしらゆき後鳥羽院
2709たつねよと をしふるやとを よそにみて むつのみちには あしもやすめす雅成親王
2710うらにすむ あまのぬれきぬ ほしわひぬ さのみなかけそ おきつしらなみ蓮生法師
2711なかきよに まよふゆめちも さむはかり こころをあらふ たきのおとかな忠良
2712いさしらす このよをうしと いとひても またなにのみに ならむとすらむ師季(中原師綱男)
2713うちかはの そこにしつめる うろくつを あみならねとも すくひつるかな道長
2714いけみつに すめるありあけの つきをみて にしのひかりを おもひやるかな武隈尼
2715てにむすひ こころにおもひ くちにいふ みのりのかひは けふそみえぬる尊助法親王
2716のりのみつ ふかきさとりを たねとして むねのはちすの はなそひらくる慶政
2717ふくかせに なみのたちゐは しけけれと みつよりほかの ものにやはある顕俊
2718をかみつる しるしやここに ととまらむ かみをしきてし あともきえねは高弁
2719たくひなき みのりのために をるはなは このひとえたも にほはさらめや摂津(二条太皇太后宮)
2720かるるきも またはなのさく ちかひあれは わかみのならひ すゑもたのもし暹秀
2721たくひなき みのりをきくの はななれは つもれるつみは つゆものこらし忠通
2722さめぬまの まよひのうちの こころにて ゆめうつつとも なにかわくへき伏見院
2723むなしきを きはめをはりて そのうへに よをつねなりと またみつるかな為兼
2724けふはこれ なかはのはるの ゆふかすみ きえしけふりの なこりとやみむ伏見院
2725いにしへの はるのなかはを おもひいてて こころにくもる よはのつきかけ泰光(源師光男)
2726つたへきて のこるひかりそ あはれなる はるのけふりに きえしよのつき家隆
2727のりのこゑに ききそわかれぬ なかきよの ねふりをさます あかつきのかね高弁
2728あまてらす つきのひかりは かみかきや ひくしめなはの うちとともなし伊勢大神宮
2729つくつくと おもひしとけは たたひとつ ほたいのみちそ このやまのみち春日明神
2730いさきよき ひこのたかねの いけみつに すまはこころの すまさらめやはひこの山の明神
2731とをかあまり よよといふよの みとひらき ひらくるみよは かくそたのしき賀茂御社
2732いよのくに うわのこほりの うをまても われこそはなれ よをすくふとて住吉明神
2733まちわひぬ いつかはここに きのくにや むろのこほりは はるかなれとも熊野神
2734われゆかむ ゆきてまもらむ はむにやたい しやかのみのりの あらむかきりは春日明神
2735よもすから ほとけのみなを となふれは ことひとよりも なつかしきかな新熊野明神
2736ちはやふる たまのすたれを まきあけて ねふつのこゑを きくそうれしき日吉聖真子
2737ちはやふる きみかいかきに まとゐせむ かたみにめくみ たるるとをしれ春日明神
2738たのもしき ちかひたかへて もろひとの まつためしには なれをひかせむ賀茂御社
2739いろふかく おもひけるこそ うれしけれ もとのちかひを さらにわすれし熊野神
2740ときのいたる をりをしらぬも あはれなり つとめてをみよ くるるひやなき大原野明神
2741ちかひてき あまのいはとを あけしより かたきねかひを かなふへしとは清水寺地主権現
2742まてしはし うらみなはてそ きみをまもる こころのほとは ゆくすゑをみよ熊野神
2743つらけれは つらしといひつ つらからて たのむとならは われもたのまむ清水寺地主権現
2744さくらはな ちらなむのちの かたみには まつにかかれる ふちをたのまむ熱田明神
2745かせはやみ なみのさわくに まかひつる ちとりのこゑは たえやしぬらむ道真
2746わかやとに ちもとのさくら はなさかは うゑおくひとの みもさかえなむ祇園
2747わかくには あまてるかみの ままなれは ひのもととしも いふにそありける良経(九条兼実男)
2748かみかせや あさひのみやの みやうつし かけのとかなる よにこそありけれ実朝
2749みつかきや わかよのはしめ ちきりおきし そのことのはを かみやうけけむ後鳥羽院
2750めつらしき みゆきにゆつれ すみよしの かみのままなる まつのちとせを実兼
2751くもりなく いまもますみの かかみとは あまてるそらの ひかけにもしれ経顕(荒木田)
2752かみにのみ つかふるみちの いへのかせ ふきつたへても よをいのるかな匡長
2753むかしより たのみしかみの ちかひにも もれぬわかみと いまそしりぬる良助法親王
2754かみよいかに みやこのつきに たひねして おもひやいつる しかのふるさと忠源
2755うきことの つひにたえすは かみにさへ うらみをのこす みとやなりなむ増基
2756ひとこそは わかこころをは しらねとも かみはあはれと なとかみさらむ行尊
2757いはしろの まつにちきりを むすひおきて よろつよまての めくみをそまつ後白河院
2758しもかれし かすかののへの くさのはも かみのめくみに またさかえけり良実
2759たのむへき かみとあらはれ みとなれり おほろけならぬ ちきりなるへし為兼
2760ひとはみな おくりむかふと いそくよを しめのうちにて あかしつるかな忠良
2761かみはよも おもひもすてし あふひくさ かけてふたたひ つかへつるみを隆良
2762ほとときす しめのあたりに なくこゑを きくわれさへに なのりせよとや少将内侍(後深草院)
2763くもりなく わきてもそてに かけとめよ たのむみかさの やまのはのつき実氏
2764みかさやま ひはらまつはら みとりなる いろもてはやす あけのたまかき道良女
2765いはしみつ なかれのすゑの さかゆるは こころのそこの すめるゆゑかも後深草院
2766やはたやま さかゆくみねは こえはてて きみをそいのる みのうれしさに通光
2767きくたひに たのむこころそ すみまさる かものやしろの みたらしのこゑ定家
2768わかたのむ かものかはなみ たちかへり うれしきせせに あふよしもかな顕輔
2769うれしとも なかなかなれは いはしみつ かみそしるらむ おもふこころは忠盛
2770まことには かみそほとけの みちしるへ あとをたるとは なにゆゑかいふ慈円
2771たのもしな のりのまもりと ちかひてそ わかやまもとを かみはしめけむ良覚
2772をとこやま みねよりてらす つきかけは くもらぬひとの こころにそすむ頼舜
2773いはしみつ かさすふちなみ うちなひき きみにそかみも こころよせける読人不知
2774おほかたの よはうつるとも ますかかみ たのみをかけし かけなわすれそ弁内侍(後深草院)
2775みかさやま もりのあたりは かみさひて つきすむのへに さをしかのこゑ冬基
2776あめのした かみのますてふ みかさやま かけにかくれぬ ひとはあらしな小弁
2777しきなみに たのみをかけし すみよしの まつもやいまは おもひすつらむ俊成(藤原俊忠男)
2778かすかやま かみのめくみは むかしにも こえてさかゆる きたのふちなみ祐賢
2779みかさやま かみはすてしと おもふこそ うきみにのこる たのみなりけれ泰方
2780かすかやま ちよのみゆきの かへるさに つきかけしたふ ありあけのそら弁内侍(後深草院)
2781すめらきの ちよのみかけに かくれすは けふすみよしの まつをみましや朝子(従二位)
2782いはしみつ なかれはふかき ちきりとも こよひやきみか くみてしるらむ公什
2783わするなよ くもはみやこを へたつとも なれてひさしき みくまののつき後白河院
2784しはしはも いかかわすれむ きみをまもる こころくもらす みくまののつき熊野のかんなき
2785みくまのの みなみのやまの たきつせに みとせそぬれし こけのころもて良守
2786みつかきに ふるはつゆきを しろたへの ゆふしてかくと おもひけるかな増基
2787かしこまる してになみたの かかるかな またいつかはと おもふあはれに西行
2788うつしおく のりのみやまを まもるとて ふもとにやとる かみとこそきけ春誓
2789そのかみに いのりしすゑは わすれしを あはれはかけよ かものかはなみ俊成(藤原俊忠男)
2790さりともと われはたのみし いにしへも うかるへきみと かみはしりけむ忠良
2791あまくたる かみやねかひを みつしほの みなとにちかき ちきのかたそき師光(中原師重男)
2792きみかよを かみもさこそは みくまのの なきのあをはの ときはかきはに清寿
2793みなひとの いのるこころも ことわりに そむかぬみちを かみやうくらむ為守
2794かみかきに ひくしめなはの たえすして きみにつかへむ ことをしそおもふ雅経
2795いつのくに やまのみなみに いつるゆの はやきはかみの しるしなりけり実朝
2796ひとつにそ よをまもるらし あとたるる よものやしろの かみのこころは覚助法親王
2797かみよより みくさのたから つたはりて とよあしはらの しるしとそなる教良
2798たのむそよ かみのみかきの ひとよまつ まつにかひある いろをみるにも慈順
2799たのもしな ひかりをちりに ましへつつ あとをたるてふ くにつもろかみ実泰
2800すめらきも たのむみやゐと なりにけり たたやまかけの なこりはかりに為実(御子左藤原為氏男)
2801たちかへる よとおもははや かみかせや みもすそかはの すゑのしらなみ慈円
2802きよみかた ふしのけふりや きえぬらむ つきかけみかく みほのうらなみ後鳥羽院 (099)
2803ききのはな もえいつるくさの あさみとり いつれもはるの いろになりぬる道潤
2804あけぬとも をりやまとはむ うめのはな いつれともなく ゆきのふれれは躬恒
2805きてみへき ひともあらなくに わかやとの うめのはつはな ちりぬともよし赤人
2806おきのこる くさはもみえぬ ゆふつゆの わかそてにさへ またあまりぬる読人不知
2807やまのはを むらくもなから いてにけり しくれにましる あきのよのつき行念
2808よのなかは あすかかはにも ならはなれ きみとわれとか なかしたえすは小町
2809ここのへの うちはかはれと みかきもり おなしおもひそ いまもたくらむ公任
2810このよにて かたらひおかむ ほとときす してのやまちの しるへともなれ堀川(待賢門院)
2811ひととせは みなはるなから すきななむ のとかにはなの いろもみるへく伏見院
2812をみのうらに ふなのりすらむ つまともの たまものすそに しほみつらむか人麿
2813いとへとも うきよのほかに ならぬみを たちはなるとも おもはさらなむ上東門院
2814うはたまの いもかくろかみ こよひもや わかなきとこに なひきてぬらむ人麿
2815いかにせむ いはまをつたふ やまみつの あさきちきりは すゑもとほらす家良
2816やまかはの いはまのなみの たかけれは かへらむことの かたくもあるかな御形宣旨
2817よもすから つきをなかめて ちきりおきし そのむつことに やみははれにき雅定
2818みつのうへに やとれるよはの つきかけの すみとくへくも あらぬわかみを公任