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「風雅和歌集」一覧

2211件


1あしひきの やまのしらゆき けぬかうへに はるてふけふは かすみたなひく為兼
2ここのへや たましくにはに むらさきの そてをつらぬる ちよのはつはる俊成(藤原俊忠男)
3たちそむる はるのひかりと みゆるかな ほしをつらぬる くものうへひと兼実
4あさひさす みもすそかはの はるのそら のとかなるへき よのけしきかな後鳥羽院
5やまのはを いつるあさひの かすむより はるのひかりは よにみちにけり実兼
6かすみたち こほりもとけぬ あめつちの こころもはるを おしてうくれは伏見院
7わかこころ はるにむかへる ゆふくれの なかめのすゑも やまそかすめる花園院
8のとかなる けしきをよもに おしこめて かすみそはるの すかたなりける進子内親王
9なにとなく こころそとまる やまのはに ことしみそむる みかつきのかけ定家
10みなひとの てことにひける まつのはの はかすをきみか よはひとはせむ能宣
11のへにいてて けふひきつれは ときわかぬ まつのすゑにも はるはきにけり中務(伊勢女)
12けふもなほ はるともみえす わかしめし のへのわかなは ゆきやつむらむ小弁
13めもはるに ゆきまもあをく なりにけり けふこそのへに わかなつみてめ
14はるやまの さきののすくろ かきわけて つめるわかなに あはゆきそふる基俊
15かすかのの ゆきのむらきえ かきわけて たかためつめる わかななるらむ俊頼(源経信男)
16いさやこら わかなつみてむ ねせりおふる あささはをのは さととほくとも俊成(藤原俊忠男)
17はるくれは ゆきけのさはに そてたれて またうらわかき わかなをそつむ崇徳院
18あさひやま のとけきはるの けしきより やそうちひとも わかなつむらし為家
19わかなつむ いくさとひとの あとならむ ゆきまあまたに のはなりにけり為定(御子左二条為道男)
20あまのはら おほふかすみの のとけきに はるなるいろの こもるなりけり光厳院
21まつらかた もろこしかけて みわたせは さかひはやへの かすみなりけり後鳥羽院
22いせしまや しほひのかたの あさなきに かすみにまかふ わかのまつはら後鳥羽院
23ふかくたつ かすみのうちに ほのめきて あさひこもれる はるのやまのは道良女
24いつるひの うつろふみねは そらはれて まつよりしたの やまそかすめる為相
25ゆふつくひ かすむすゑのに ゆくひとの すけのをかさに はるかせそふく順徳院
26ゆふくれの かすみのきはに とふとりの つはさもはるの いろにのとけき伏見院
27しつみはつる いりひのきはに あらはれぬ かすめるやまの なほおくのみね為兼
28のとかなる かすみのそらの ゆふつくひ かたふくすゑに うすきやまのは為子(従二位)
29なかめこし おとはのやまも いまさらに かすめはとほき あけほののそら実氏
30はつせやま かたふくつきも ほのほのと かすみにもるる かねのおとかな定家
31こらかてを まきもくやまに はるされは このはしのきて かすみたなひく人麿
32みよしのの よしののやまの はるかすみ たつをみるみる なほそゆきふる貫之
33たまらしと あらしのつてに ちるゆきに かすみかねたる まきのひとむら後伏見院
34かすみあへす なほふるゆきに そらとちて はるものふかき うつみひのもと定家
35はるかせに したゆくなみの かすみえて のこるともなき うすこほりかな家隆
36ちくまかは はるゆくみつは すみにけり きえていくかの みねのしらゆき順徳院
37はなやゆき かすみやけふり ときしらぬ ふしのたかねに さゆるはるかせ忠良
38はるへとは おもふものから かせませに みゆきちるひは いともさむけし伏見院
39あさあらしは そとものたけに ふきあれて やまのかすみも はるさむきころ永福門院
40かききゆる にはにはあとも みえわかて くさはにうすき はるのあはゆき基忠(鷹司兼平男)
41はるもいまた あさるききすの あとみえて むらむらのこる のへのしらゆき土御門院
42ひかけさす やまのすそのの はるくさに かつかつましる したわらひかな四条(安嘉門院)
43はるのいろは やなきのうへに みえそめて かすむものから そらそさむけき伏見院
44はなとりの なさけまてをそ おもひこむる ゆふやまふかき はるのかすみに後伏見院
45やまきはに うくひすなきて うちなひき はるとおもへは ゆきふりしきぬ人麿
46うちなひき はるさりくれは ささのはに をはうちふれて うくひすなくも読人不知
47つれつれと くらしわつらふ はるのひに なとうくひすの おとつれもせぬ道命
48うくひすの なくねをきけは やまふかみ われよりさきに はるはきにけり信明
49きりにむせふ やまのうくひす いてやらて ふもとのはるに まよふころかな土御門院
50たかためそ しつはたやまの なかきひに こゑのあやおる はるのうくひす知家
51うくひすの こゑものとかに なきなして かすむひかけは くれむともせす為兼
52つくつくと なかきはるひに うくひすの おなしねをのみ ききくらすかな徽安門院
53わかそのを やととはしめよ うくひすの ふるすははるの くもにつけてき俊成(藤原俊忠男)
54かすみたつ のかみのかたに ゆきしかは うくひすなきつ はるになるらし読人不知
55うめのはな さけるをかへに いへゐせは ともしくもあらし うくひすのこゑ読人不知
56うめのはな ちらまくをしみ わかそのの たけのはやしに うくひすなくも読人不知
57ささたけの よはにやきつる ねやちかき あさけのまとに うくひすのなく実兼
58あけぬれと おのかねくらを いてやらて たけのはかくれ うくひすそなく為世(御子左藤原為氏男)
59のとかなる かすみのいろに はるみえて なひくやなきに うくひすのこゑ教良女
60はるのいろは はなともいはし かすみより こほれてにほふ うくひすのこゑ良経(九条兼実男)
61はなならて みにしむものは うくひすの かをらぬこゑの にほひなりけり道因
62うめのはな にほふはるへの あさとあけに いつしかききつ うくひすのこゑ為基(京極為兼猶子)
63みちのへや たけふくかせの さむけきに はるをませたる うめかかそする伏見院
64うめのはな さくとしらすや みよしのの やまにともまつ ゆきのみゆらむ貫之
65ゆきのいろを うはひてさける うめのはな いまさかりなり みむひともかな家持
66やまもとの さとのつつきに さくうめの ひとへによこそ はるになりぬれ永福門院
67きさらきや なほかせさむき そてのうへに ゆきませにちる うめのはつはな後宇多院
68さきそめて はるをおそしと まちけらし ゆきのうちより にほふうめかえ公蔭
69ふりつみし ゆきもけなくに みやまへも はるしきぬれや うめさきにけり光明院
70ひとむらの かすみのそこに にほひゆく うめのこすゑの はなになるころ徽安門院
71うめかえに まつさくはなそ はるのいろを みにしめそむる はしめなりける俊成(藤原俊忠男)
72はるたちて さかはとおもひし うめのはな めつらしみにや ひとのをるらむ貫之
73うめのはな にほひをとめて をりつるに いろさへそてに うつりぬるかな具平親王
74やまかくれ にほへるはなの いろよりも をりけるひとの こころをそみる赤染衛門
75くれなゐの うめかえになく うくひすは こゑのいろさへ ことにそありける俊頼(源経信男)
76さきぬれは おほみやひとも うちむれぬ うめこそはるの にほひなりけれ慈円
77ももちとり さへつるはるの あさみとり のへのかすみに にほふうめかえ後鳥羽院
78いもかため ほつえのうめを たをるとて しつえのつゆに ぬれにけるかも人麿
79ひとことに をりかさしつつ あそへとも いやめつらしき うめのはなかも読人不知
80かすめとも かくれぬものは うめのはな かせにあまれる にほひなりけり為家
81うめのはな にほふさかりは やまかつの しつのかきねも なつかしきかな成仲
82にほふかの しるへならすは うめのはな くらふのやまに をりまとはまし中務(伊勢女)
83くもちゆく かりのはかせも にほふらむ うめさくやまの ありあけのそら定家
84うめかかは まくらにみちて うくひすの こゑよりあくる まとのしののめ為兼
85まとあけて つきのかけしく たまくらに うめかかあまる のきのはるかせ進子内親王
86のきのうめは たまくらちかく にほふなり まとのひまもる よはのあらしに尊氏
87たかさとそ かすみのしたの うめやなき おのれいろなる をちかたのはる花園院
88あめはるる かせはをりをり ふきいれて こすのまにほふ のきのうめかえ内侍(永福門院)
89わかなかめ なににゆつりて うめのはな さくらもまたて ちらむとすらむ光厳院
90みるままに しつえのうめも ちりはてぬ さもまちとほに さくさくらかな和泉式部
91みとりこき かすみのしたの やまのはに うすきやなきの いろそこもれる花園院
92はるさめに めくむやなきの あさみとり かつみるうちも いろそそひゆく公蔭
93いつはとも こころにときは わかなくに をちのやなきの はるになるいろ伏見院
94ひとかたに ふきつるかせや よわるらむ なひきもはてぬ あをやきのいと為世(御子左藤原為氏男)
95かすみわたる おのかやなきの ひともとに のとかにすさふ はるのゆふかせ実衡女
96ふくとなき かせにやなきは なひきたちて をちこちかすむ ゆふくれのはる儀子内親王
97はつかなる やなきのいとの あさみとり みたれぬほとの はるかせそふく公宗母
98ふねつなく かけもみとりに なりにけり むつたのよとの たまのをやなき土御門院
99ひろさはの いけのつつみの やなきかけ みとりもふかく はるさめそふる為家
100よしのかは いはなみはらふ ふしやなき はやくそはるの いろはみえける定円(葉室光俊男)
101はるはまつ なひくやなきの すかたより かせものとけく みゆるなりけり内侍(永福門院)
102あめそそく やなきかすゑは のとかにて をちのかすみの いろそくれゆく公宗(西園寺実衡男)
103このさとの むかひのむらの かきねより ゆふひをそむる たまのをやなき定家
104くりかへし としへてみれと あをやきの いとはふりせぬ みとりなりけり中務(伊勢女)
105きしのうへの やなきはいたく おいにけり いくよのはるを すくしきぬらむ嘉言
106ももしきの おほみやひとの かさしたる したりやなきは みれとあかぬかも人麿
107うめのはな さきたるそのの あをやきは かつらにすへく なりにけらしも読人不知
108よるひとも なきあをやきの いとなれは ふきくるかせに かつみたれつつ貫之
109あさみとり やなきのいとの うちはへて けふもしきしき はるさめそふる為基(京極為兼猶子)
110きのふけふ よはのとかにて ふるあめに やなきかえたそ したりまされる一条(徽安門院)
111はるのいろを もよほすあめの ふるなへに かれののくさも しためくむなり為兼
112あさみとり はつしほそむる はるさめに のなるくさきそ いろまさりける土御門院
113かきくれて ふりたにまされ つくつくと しつくさひしき のきのはるさめ公蔭
114みるままに のきのしつくは まされとも おとにはたてぬ にはのはるさめ親子(従三位源)
115はるさめは のきのいとみつ つくつくと こころほそくて ひをもふるかな俊成(藤原俊忠男)
116はるさめよ このはみたれし むらしくれ それはまきるる かたもありけり定家
117さひしさは はなよいつかの なかめして かすみにくるる はるさめのそら為兼
118なかめやる やまはかすみて ゆふくれの のきはのそらに そそくはるさめ兼行
119かすみくるる そらものとけき はるさめに とほきいりあひの こゑそさひしき教兼
120はれゆくか くもとかすみの ひまみえて あめふきはらふ はるのゆふかせ徽安門院
121はるかせは やなきのいとを ふきみたし にはよりはるる ゆふくれのあめ後伏見院
122うちわたす うちのわたりの よふかきに かはおとすみて つきそかすめる為兼
123かせになひく やなきのかけも そことなく かすみふけゆく はるのよのつき実明女
124なにとなく にはのこすゑは かすみふけて いるかたはるる やまのはのつき永福門院
125ねやまても はなのかふかき はるのよの まとにかすめる いりかたのつき内侍(永福門院)
126かりひとの あさふむをのの くさわかみ かくろへかねて ききすなくなり俊恵
127あさきりに しののにぬれて よふことり みふねのやまを なきわたるみゆ人麿
128ひともなき みやまのおくの よふことり いくこゑなかは たれかこたへむ尊氏
129つはくらめ すたれのほかに あまたみえて はるひのとけみ ひとかけもせす光厳院
130はるひかけ よはのとかにて それとなく さへつりかはす とりのこゑこゑ儀子内親王
131ひはりあかる やまのすそのの ゆふくれに わかはのしはふ はるかせそふく後二条院
132なにとなき くさのはなさく のへのはる くもにひはりの こゑものとけき永福門院
133はるふかき のへのかすみの したかせに ふかれてあかる ゆふひはりかな慈円
134かへるかり はねうちかはす しらくもの みちゆきふりは さくらなりけり為家
135かへるかり あきこしかすは しらねとも ねさめのそらに こゑそすくなき家隆
136わかるらむ なこりならても はるのかり あはれなるへき あけほののこゑ為秀
137いりかたの つきはかすみの そこにふけて かへりおくるる かりのひとつら内侍(永福門院)
138かりかねの はなのをりしも かへるらむ たつねてたにも ひとはをしむに康資王母
139なにとなく おもひそおくる かへるかり ことつてやらむ ひとはなけれと俊成(藤原俊忠男)
140はるになる さくらのえたは なにとなく はななけれとも なつかしきかな西行
141めくむより けしきことなる はななれは かねてもえたの なつかしきかな俊頼(源経信男)
142おもひやる こころやかねて なかむらむ またみぬはなの おもかけにたつ長明
143さかぬまの まちとほにのみ おほゆるは はなにこころの いそくなるらし師平母
144さきさかぬ こすゑのはなも おしなへて ひとつかをりに かすむゆふくれ朔平門院
145みるままに のきはのはなは さきそひて はるさめかすむ をちのゆふくれ右衛門督(永福門院)
146やとからや はるのこころも いそくらむ ほかにまたみぬ はつさくらかな為兼
147うちなひき はるはきぬらし やまきはの とほきこすゑの さきゆくみれは読人不知
148みわたせは かすかののへに かすみたち ひらくるはなは さくらはなかも人麿
149うくひすの こつたふうめの うつろへは さくらのはなの ときかたまけぬ人麿
150はるさめに あらそひかねて わかやとの さくらのはなは さきそめにけり家持
151やまさくら またれまたれて さきしより はなにむかはぬ ときのまもなし下野(後鳥羽院)
152みよしのの よしののさくら さきしより ひとひもくもの たたぬひそなき為定(御子左二条為道男)
153すみすてし しかのはなその しかすかに さくさくらあれは はるはきにけり道家
154ゆくすゑの はなかかれとて よしのやま たれしらくもの たねをまきけむ家隆
155かへりみる やまははるかに かさなりて ふもとのはなも やへのしらくも良経(九条兼実男)
156しらくもの やへたつみねと みえつるは たかまのやまの はなさかりかも匡房
157やまのかひ たなひきわたる しらくもは とほきさくらの みゆるなりけり貫之
158いつもみし はなのいろかは はつせやま さくらにもるる はるのひとしほ定家
159やまとほき かすみのにほひ くものいろ はなのほかまて かをるはるかな実兼
160はなかをる たかねのくもの ひとむらは なほあけのこる しののめのそら公宗女
161はなさかぬ やとのこすゑも なかりけり みやこのはるは いまさかりかも雅有
162はなみにと はるはむれつつ たまほこの みちゆくひとの おほくもあるかな直義
163やまさくら よそにみるとて すかのねの なかきはるひを たちくらしつる貫之
164またしらぬ ところまてかく きてみれと さくらはかりの はななかりけり貫之
165さくらはな あかぬこころの あやにくに みてもなほこそ みまくほしけれ行家(藤原知家男)
166さきみちて ちるへくもあらぬ はなさかり かをるはかりの かせはいとはす為秀
167なかめのこす はなのこすゑも あらしやま かせよりさきに たつねつるかな右衛門督(永福門院)
168みよしのの おほみやところ たつねみむ ふるきかさしの はなやのこると為相
169いそのかみ ふるさとにさく はななれと むかしなからに にほひけるかな中務(伊勢女)
170ふるさとに さけるものから さくらはな いろはすこしも あせすそありける貫之
171きみかすむ やとのこすゑの はなさかり けしきことなる くもそたちける俊成(藤原俊忠男)
172さくらはな いさやてことに たをりもて ともにちとせの はるにかささむ為氏
173すかのねの なかきひかけを あしひきの やまのさくらに あかてくれぬる良実
174さてもなほ あかすやあると やまさくら はなをときはに みるよしもかな家経(藤原広業男)
175おなしくは つきのをりさけ やまさくら はなみるはるの たえまあらせし西行
176かをりにほひ のとけきいろを はなにもて はるにかなへる さくらなりけり光厳院
177のとかなる うくひすのねに ききそめて はなにそはるの さかりをはみる公賢
178たれにかも けふをさかりと つけやらむ ひとりみまうき やまさくらかな顕昭
179としことに なかめぬはるは なけれとも あかぬははなの いろやそふらむ成茂
180けさはなほ さきそふにはの はなさかり うつろはぬまを とふひともかな寿成門院
181やまふかく たつねにはこて さくらはな なにしこころを あくからすらむ白河院
182さそはれぬ こころのほとは つらけれと ひとりみるへき はなのいろかは小侍従(太皇太后宮)
183かせをいとふ はなのあたりは いかかとて よそなからこそ おもひやりつれ右京大夫(建礼門院)
184こまとめて みるにもあかす さくらはな をりてかささむ こころゆくまて道済
185たひひとの ゆききのをかは なのみして はなにととまる はるのこのもと為家
186あすかゐの はるのこころは しらねとも やとりしぬへき はなのかけかな為実(御子左藤原為氏男)
187たちよらて すきぬとおもへと いとさくら こころにかかる はるのこのもと家基(近衛基平男)
188みぬかたの こすゑいかにと このさとの はなにあかても はなをこそおもへ為子(従二位)
189たつねゆく みちもさくらを みよしのの はなのさかりの おくそゆかしき為基(京極為兼猶子)
190こえやらて あかすこそみれ はるのひの なからのやまの はなのしたみち公重(西園寺実衡男)
191さくらさく とほちのむらの ゆふくれに はなをりかさし ひとかへるなり後伏見院
192くれぬとて たちこそかへれ さくらかり なほゆくさきに はなをのこして為世(御子左藤原為氏男)
193えたもなく さきかさなれる はなのいろに こすゑもおもき はるのあけほの伏見院
194さかりとは きのふもみえし はなのいろの なほさきかをる ききのあけほの兼行
195はななれや またあけやらぬ しののめの をちのかすみの おくふかきいろ親子(従三位源)
196やまのはの つきはのこれる しののめに ふもとのはなの いろそあけゆく教良女
197はなのうへに さすやあさひの かけはれて さへつるとりの こゑものとけき後伏見院
198ひらけそふ こすゑのはなに つゆみえて おとせぬあめの そそくあさあけ進子内親王
199はなのうへに しはしうつろふ ゆふつくひ いるともなしに かけきえにけり永福門院
200つくつくと かすみてくもる はるのひの はなしつかなる やとのゆふくれ親子(従三位源)
201ふくとなき かすみのしたの はるかせに はなのかふかき やとのゆふくれ家雅
202あしひきの やまにいりひの ときしもそ あまたのはなは てりまさりける花山院
203はなのうへの くれゆくそらに ひひききて こゑにいろある いりあひのかね伏見院
204そことなき かすみのいろに くれなりて ちかきこすゑの はなもわかれす徽安門院
205やまうすき かすみのそらは ややくれて はなののきはに にほふつきかけ進子内親王
206はなしろき こすゑのうへは のとかにて かすみのうちに つきそふけぬる為子(従二位)
207みねしらむ こすゑのそらに かけおちて はなのくもまに ありあけのつき忠良
208あたらよの なこりをはなに ちきりおきて さくらわけいる ありあけのつき後鳥羽院
209よろつよの はるひをけふに なせりとも なほあかなくに はなやちりなむ後嵯峨院
210としふれと かへらぬいろは はることに はなにそめてし こころなりけり崇徳院
211けふもなほ ちらてこころに のこりけり なれしきのふの はなのおもかけ道平
212あちきなく あたなるはなの にほひゆゑ うきよのはるに そむこころかな隆博
213つねよりも のとけくにほへ さくらはな はるくははれる としのしるしに顕季
214はるのこころ のとけしとても なにかせむ たえてさくらの なきよなりせは慈円
215おいかみは のちのはるとも たのまねは はなもわかよも をしまさらめや実兼
216うゑわたす わかよのはなも はるはへぬ ましてふるきの むかしをそおもふ伏見院
217あめのうちに ちりもこそすれ はなさくら をりてかささむ そてはぬるとも定頼
218をらすとて ちらてもはてし さくらはな このひとえたは いへつとにせむ俊恵
219たつねくる はなもちりなは やまさとは いととひとめや かれむとすらむ忠盛
220ゆきてたに いかてとくみむ わかやとの さくらはけふの かせにのこらし元真
221たつたやま みつつこえこし さくらはな ちりかすきなむ わかかへるとき家持
222みるひとの をしむこころや まさるとて はなをはかせの ちらすなりけり三河内侍(二条院)
223くもまよふ かせにあまきる ゆきかとて はらへはそてに はなのかそする但馬(藻壁門院)
224そてのゆき そらふくかせも ひとつにて はなににほへる しかのやまこえ定家
225けさみれは やとのこすゑに かせすきて しられぬゆきの いくへともなく式子内親王
226たかさこの まつのみとりも まかふまて をのへのかせに はなそちりける俊成女
227あしからの やまのあらしの あととめて はなのゆきふむ たけのしたみち為相女
228ひとしきり ふきみたしつる かせはやみて さそはぬはなも のとかにそちる為兼
229はるかせの ややふきよわる こすゑより ちりおくれたる はなそのとけき法守法親王
230うらみはや たのめしほとの ひかすをも またてうつろふ はなのこころを顕親門院
231あたなれと さきちるほとは あるものを とはれぬはなや なほうらむらむ花園院
232たのめこし きのふのさくら ふりぬとも とははやあすの ゆきのこのもと伏見院
233はなのゆき あすをもまたす たのめおきし そのことのはの あともなけれは実兼
234こすゑより よこきるはなを ふきたてて やまもとわたる はるのゆふかせ為子(従二位)
235ふきわたる はるのあらしの ひとはらひ あまきるはなに かすむやまもと徽安門院
236なからへむ ものともしらて おいかよに ことしもはなの ちるをみるらむ知家
237わかみよに ふるのやまへの やまさくら うつりにけりな なかめせしまに後鳥羽院
238しらくもの やへたつやまの さくらはな ちりくるときや はなとみゆらむ経信
239さくらはな うつろふいろは ゆきとのみ ふるのやまかせ ふかすもあらなむ尊円法親王
240いかにせむ はなもあらしも うきよかな さそふもつらし ちるもうらめし宣子(従三位藤原)
241はるふかみ あらしのやまの さくらはな さくとみしまに ちりにけるかな実朝
242ちるはなを をしむはかりや よのなかの ひとのこころの かはらさるらむ顕輔
243ひとすちに かせもうらみし をしめとも うつろふいろは はなのこころを高倉(安嘉門院)
244ちらさりし もとのこころは わすられて ふままくをしき はなのにはかな教長
245ちりぬとて なとてさくらを うらみけむ ちらすはみまし けふのにはかは定家
246すみれさく みちのしはふに はなちりて をちかたかすむ のへのゆふくれ親子(従三位源)
247ちりのこる はなおちすさふ ゆふくれの やまのはうすき はるさめのそら内侍(永福門院)
248つくつくと あめふるさとの にはたつみ ちりてなみよる はなのうたかた清雅
249ふきよする かせにまかせて いけみつの みきはにあまる はなのしらなみ為顕
250こすゑより おちくるはなも のとかにて かすみにおもき いりあひのこゑ花園院
251ふるさとの はなはまたてそ ちりにける はるよりさきに かへるとおもへと公任
252たつねくる ひとはみやこを わするれと ねにかへりゆく やまさくらかな俊成(藤原俊忠男)
253ねにかへる はなとはきけと みるひとの こころのうちに とまるなりけり重家
254ちるはなは うきくさなから かたよりて いけのみさひに かはつなくなり為実(御子左藤原為氏男)
255たきつせや いはもとしろく よるはなは なかるとすれと またかへるなり永福門院
256よしのかは いはせのなみに よるはなや あをねかみねに きゆるしらくも頼政
257こまとめて すきそやられぬ きよみかた ちりしくはなや なみのせきもり顕昭
258あめしをる やよひのやまの こかくれに のこるともなき はなのいろかな後伏見院
259うらみしな やまのはかけの さくらはな おそくさけとも おそくちりけり経信
260かせたにも さそひもはてぬ ひとえたの はなをはいかか をりてかへらむ道因
261おもたかや したはにましる かきつはた はなふみわけて あさるしらさき定家
262やふしわかぬ はるとやなれも はなのさく そのなもしらぬ やまのしたくさ花園院
263やまかはを なはしろみつに まかすれは たのもにうきて はなそなかるる四条(安嘉門院)
264さくらちる やましたみつを せきわけて はなになかるる をたのなはしろ儀子内親王
265はるのたの あせのほそみち たえまおほみ みつせきわくる なはしろのころ道良女
266みなそこの かはつのこゑも ものふりて こふかきいけの はるのくれかた光厳院
267せきかくる をたのなはしろ みつすみて あせこすなみに かはつなくなり後鳥羽院
268ますけおふる あらたにみつを まかすれは うれしかほにも なくかはつかな西行
269みかくれて すたくかはつの こゑなから まかせてけりな をたのなはしろ大輔(殷富門院)
270はるのたの なはしろみつを まかすれは すたくかはつの こゑそなかるる慈円
271さよふかく つきはかすみて みつおつる こかけのいけに かはつなくなり伏見院
272やまふきの はなのさかりは かはつなく ゐてにやはるも たちとまるらむ中務(伊勢女)
273むかしたれ うゑはしめたる やまふきの なをなかしけむ ゐてのたまみつ俊成(藤原俊忠男)
274よしのかは さくらなかれし いはまより うつれはかはる やまふきのいろ後鳥羽院
275すゑおもる はなはさなから みつにふして かはせにさける ゐてのやまふき公重(西園寺実衡男)
276かはのせに あきをやのこす もみちはの うすきいろなる やまふきのはな順徳院
277をりてたに ゆくへきものを よそにのみ みてやかへらむ ゐてのやまふき忠見
278わかやとの やへやまふきは ちりぬへし はなのさかりを ひとのみにこぬ元真
279うくひすの きなくやまふき うたかたも きみかてふれす はなちらめやも読人不知
280ふくかせに とまりもあへす ちるときは やへやまふきの はなもかひなし興風
281やまふきの はなのつゆそふ たまかはの なかれてはやき はるのくれかな後鳥羽院
282はるふかき のてらたちこむる ゆふかすみ つつみのこせる かねのおとかな慈円
283かすみわたる とほつやまへの はるのくれ なにのもよほす あはれともなき伏見院
284としことに はるをもしらぬ やとなれと はなさきそむる ふちもありけり公任
285むらさきの ふちさくころの あさくもり つねよりはなの いろそまされる覚円
286ふくかせに ふちえのうらを みわたせは なみはこすゑの ものにそありける俊頼(源経信男)
287ふちのはな おもへはつらき いろなれや さくとみしまに はるそくれぬる成実(藤原親実男)
288ちりうける やまのいはねの ふちつつし いろになかるる たにかはのみつ永福門院
289つつしさく かたやまかけの はるのくれ それとはなしに とまるなかめを実明女
290やまひとの つまきにさせる いはつつし こころありてや たをりくしつる慈円
291なにとなく みるにもはるそ したはしき しはふにましる はなのいろいろ後伏見院
292はるのなこり なかむるうらの ゆふなきに こきわかれゆく ふねもうらめし為兼
293このころの ふちやまふきの はなさかり わかるるはるも おもひおくらむ光厳院
294はるもはや あらしのすゑに ふきよせて いはねのこけに はなそのこれる進子内親王
295はなののちも はるのなさけは のこりけり ありあけかすむ しののめのそら教兼
296みにかへて なになけくらむ おほかたは ことしのみやは はるにわかるる大輔(殷富門院)
297ゆきてみむ みやまかくれの おそさくら あかすくれぬる はるのかたみに長能
298ととまらむ ことこそはるの かたからめ ゆくへをたにも しらせましかは俊頼(源経信男)
299をしとおもふ ひとのこころし おくれねは ひとりしもやは はるのかへらむ俊成(藤原俊忠男)
300こむとしも くへきはるとは しりなから けふのくるるは をしくそありける貫之
301きのふまて かすみしものを つのくにの なにはわたりの なつのあけほの良経(九条兼実男)
302はるくれし きのふもおなし あさみとり けふやはかはる なつやまのいろ後伏見院
303なつきては たたひとへなる ころもてに いかてかはるを たちへたつらむ為家
304さくらいろの ころもにもまた わかるるに はるをのこせる やとのふちなみ式子内親王
305さくらいろの ころもはうへに かふれとも こころにはるを わすれぬものを後二条院
306はなとりの はるにおくるる なくさめに まつまちすさふ やまほとときす花園院
307ほとときす まつとせしまに わかやとの いけのふちなみ うつろひにけり家隆
308ときしらぬ さとはたまかは いつとてか なつのかきねを うつむしらゆき定家
309あさまたき うのはなやまを みわたせは そらはくもらて つもるしらゆき経房(藤原光房男)
310なつあさき みとりのこたち にはとほみ あめふりしむる ひくらしのやと為兼
311うすくもる あをはのやまの あさあけに ふるとしもなき あめそそくなり公宗(西園寺公衡男)
312もろかつら またふたはより かけそめて いくよかへぬる かものみつかき実経
313あはれとや かみもみあれに あふひくさ ふたはよりこそ たのみそめしか兵衛督(花園院)
314あふひくさ かさすうつきの ほとときす ひとのこころに まつかかりつつ為家
315わかための こゑにもあらし ほとときす かたらへとしも なとおもふらむ按察(鷹司院)
316まちわひて ききやしつると ほとときす ひとにさへこそ とはまほしけれ頼実(源頼国男)
317としをへて おなしこゑなる ほとときす きかまほしさも かはらさりけり頼輔
318としをへて おなしねをなく ほとときす なにかはしのふ なにかまたるる徽安門院
319いつとても またすはあらねと おなしくは やまほとときす つきになかなむ直義
320ほとときす さやかにをなけ ゆふつくよ くもまのかけは ほのかなりとも公蔭
321いしはしる たきつかはなみ をちかへり やまほとときす ここになかなむ資季
322をりはへて いまここになく ほとときす きよくすすしき こゑのいろかな為兼
323まちえても たとるはかりの ひとこゑは ききてかひなき ほとときすかな道嗣
324くれたけの ふしみのさとの ほとときす しのふふたよの ことかたらなむ尊円法親王
325ほとときす ひとのまとろむ ほととてや しのふるころは ふけてこそなけ為兼
326わかためと ききやなさまし ほとときす ぬしさたまらぬ おのかはつねを為相
327やまふかく たつねきつれは ほとときす しのふるこゑも かくれさりけり肥後(京極前関白家)
328わすられぬ こそのふるこゑ こひこひて なほめつらしき ほとときすかな定家
329ほとときす まつよのかすは かさなれと こゑはつもらぬ ものにそありける俊頼(源経信男)
330ほとときす あかぬなこりを なかめおくる こころもそらに したひてそゆく俊言
331なほそまつ やまほとときす ひとこゑの なこりをくもに しはしなかめて為基(京極為兼猶子)
332あしひきの やまほとときす みやまいてて よふかきつきの かけになくなり実朝
333ほとときす よこくもかすむ やまのはの ありあけのつきに なほそかたらふ式子内親王
334ほとときす なこりしはしの なかめより なきつるみねは くもあけぬなり伏見院
335さとなるる やまほとときす いかなれは まつやとにしも おとせさるらむ成仲
336たつねつる かひはなけれと ほとときす かへるやまちに ひとこゑそなく季経
337たつねいる かへさはおくれ ほとときす たれゆゑくらす やまちとかしる後鳥羽院
338なほさりに やまほとときす なきすてて われしもとまる もりのしたかけ定家
339ゆふかけて いつちゆくらむ ほとときす かみなひやまに いまそなくなる仲実
340ことなつは いかかなきけむ ほとときす こよひはかりは あらしとそきく貫之
341ほとときす あかてすきぬる なこりをは つきなしとても なかめやはせぬ頼政
342とふひとも なきふるさとの たそかれに われのみなのる ほとときすかな堀河(待賢門院)
343またれつつ としにまれなる ほとときす さつきはかりの こゑなをしみそ定家
344あやめをは ふきそふれとも さみたれの ふるやののきは もるにそありける尊氏
345あやめくさ ひくひともなし やましろの とはになみこす さみたれのころ経継
346あふちさく こすゑにあめは ややはれて のきのあやめに のこるたまみつ経親(平時継男)
347あやめつたふ のきのしつくも たえたえに はれまにむかふ さみたれのそら冷泉(花園院)
348ゆふつくよ かけろふまとは すすしくて のきのあやめに かせわたるみゆ忠季(藤原公蔭男)
349くれかかる そとものをたの むらさめに すすしさそへて とるさなへかな公泰
350またとらぬ さなへのはすゑ なひくなり すたくかはつの こゑのひひきに慈円
351みわかはの みつせきいれて やまとなる ふるのわさたは さなへとるなり行家(藤原知家男)
352いまよりは さつききぬとや いそくらむ やまたのさなへ とらぬひそなき公相
353さなへとる たのものみつの あさみとり すすしきいろに やまかせそふく忠定(藤原兼宗男)
354ゆふひさす やまたのはらを みわたせは すきのこかけに さなへとるなり為忠(御子左二条為藤男)
355をやまたや さなへのすゑに かせみえて ゆくてすすしき すきのしたみち後伏見院
356かせわたる たのものさなへ いろさめて いりひのこれる をかのまつはら光厳院
357さなへとる やまもとをたに あめはれて ゆふひのみねを わたるうきくも進子内親王
358あめはるる をたのさなへの やまもとに くもおりかかる すきのむらたち一条(花園院)
359やまかけや たによりのほる さみたれの くもはのきまて たちみちにけり為子(従二位)
360かはつなく ぬまのいはかき なみこえて みくさうかるる さみたれのころ実泰
361さみたれに こえゆくなみは かつしかや かつみかくるる ままのつきはし雅経
362あすかかは ひとつふちとや なりぬらむ ななせのよとの さみたれのころ公雄
363さみたれに きしのあをやき えたひちて こすゑをわくる よとのかはふね隆教
364なかれそふ やまのしつくの さみたれに あさせもふかき たにかはのみつ俊平(源泰光男)
365たこのうらの もしほもやかぬ さみたれに たえぬはふしの けふりなりけり清輔
366かはやしろ しのになみこす さみたれに ころもほすてふ ひまやなからむ成実(藤原親実男)
367さみたれの はれままちいつる つきかけに のきのあやめの つゆそすすしき定為
368さみたれの くもをへたてて ゆくつきの ひかりはもらて のきのたまみつ良経(九条兼実男)
369さみたれに あたらつきよを すくしきて はるるかひなき ゆふやみのそら承覚法親王
370わかやとの はなたちはなや にほふらむ やまほとときす すきかてになく顕季
371つきかけに うふねのかかり さしかへて あかつきやみの よかはこくなり為藤
372おほゐかは うふねはそれと みえわかて やまもとめくる かかりひのかけ宗尊親王
373をしかまつ さつをのほくし ほのみえて よそにあけゆく はやましけやま為氏
374さつきやみ そこともしらぬ ともしすと はやまかすそに あかしつるかな義孝(藤原敦舒男)
375ますらをや はやまわくらむ ともしけち ほたるにまかふ ゆふやみのそら俊成(藤原俊忠男)
376かけしけき このしたやみの くらきよに みつのおとして くひななくなり永福門院
377こころある なつのけしきの こよひかな このまのつきに くひなこゑして後伏見院
378くひななく もりひとむらは こくらくて つきにはれたる のへのをちかた実明女
379まきのとを しひてもたたく くひなかな つきのひかりの さすとみるみる安芸(郁芳門院)
380まつのうへに つきのすかたも みえそめて すすしくむかふ ゆふくれのやま祝子内親王
381あめはるる のきのしつくに かけみえて あやめにすかる なつのよのつき良経(九条兼実男)
382しけりあふ にはのこすゑを ふきわけて かせにもりくる つきのすすしさ師平
383うたたねに すすしきかけを かたしきて すたれはつきの へたてともなし重資
384はしちかみ うたたねなから ふくるよの つきのかけしく とこそすすしき盛親
385あきよりも つきにそなるる すすむとて うたたねなから あかすよなよな新宰相(伏見院)
386やまみつの いはもるおとも さよふけて このまのつきの かけそすすしき道意(西園寺実兼男)
387よひのまに しはしたたよふ くもまより まちいててみれは あくるつきかけ隆祐
388なつのよは いはかきしみつ つきさえて むすへはとくる こほりなりけり重保
389ゆふたちの かせにわかれて ゆくくもに おくれてのほる やまのはのつき良経(九条兼実男)
390またよひの つきまつとても あけにけり みしかきゆめの むすふともなく後鳥羽院
391つきやいつる ほしのひかりの かはるかな すすしきかせの ゆふやみのそら伏見院
392すすみつる あまたのやとも しつまりて よふけてしろき みちのへのつき伏見院
393ほしおほみ はれたるそらは いろこくて ふくとしもなき かせそすすしき為子(従二位)
394なつのよの わひしきことは ゆめをたに みるほともなく あくるなりけり小町
395いにしへの のもりのかかみ あとたえて とふひはよはの ほたるなりけり寂蓮
396そこきよき たまえのみつに とふほたる もゆるかけさへ すすしかりけり基嗣
397つきうすき にはのましみつ おとすみて みきはのほたる かけみたるなり恒明親王
398いけみつは かせもおとせて はちすはの うへこすたまは ほたるなりけり順徳院
399ほたるとふ かたやまかけの ゆふやみは あきよりさきに かねてすすしも実経
400あきちかし くもゐまてとや ゆくほたる さはへのみつに かけのみたるる俊成女
401あきかせを かりにやつくる ゆふくれの くもちかきまて ゆくほたるかな式子内親王
402すすしやと かせのたよりを たつぬれは しけみになひく のへのさゆりは式子内親王
403やまふかみ ゆききえなはと おもひしに またみちたゆる やとのなつくさ秀能(藤原秀宗男)
404かたをかの あふちなみより ふくかせに かつかつそそく ゆふたちのあめ後鳥羽院
405ころもてに すすしきかせを さきたてて くもりはしむる ゆふたちのそら宮内卿(後鳥羽院)
406やまもとの をちのひかけは さたかにて かたへすすしき ゆふたちのくも為家
407とやまには ゆふたちすらし たちのほる くもよりあまる いなつまのかけ経顕(藤原定資男)
408まつをはらふ かせはすそのの くさにおちて ゆふたつくもに あめきほふなり為兼
409ゆきなやみ てるひくるしき やまみちに ぬるともよしや ゆふたちのあめ徽安門院
410にしのたつ ふもとのすきは くもにきえて みねよりはるる ゆふたちのあめ俊兼
411ふりよわる あめをのこして かせはやみ よそになりゆく ゆふたちのくも小宰相(徽安門院)
412ゆふたちの くもふきおくる おひかせに こすゑのつゆそ またあめとふる新右衛門督(宣光門院)
413ゆふたちの くもとひわくる しらさきの つはさにかけて はるるひのかけ花園院
414つきうつる まさこのうへの にはたつみ あとまてすすし ゆふたちのあめ実兼
415さらにまた ひかけうつろふ たけのはに すすしさみゆる ゆふたちのあと実泰
416ふるほとは しはしとたえて むらさめの すくるこすゑの せみのもろこゑ為守女
417かせたかき まつのこかけに たちよれは きくもすすしき ひくらしのこゑ光明院
418あめはれて つゆふきはらふ こすゑより かせにみたるる せみのもろこゑ進子内親王
419せみのこゑは かせにみたれて ふきかへす ならのひろはに あめかかるなり尊胤法親王
420くれはつる こすゑにせみは こゑやみて ややかけみゆる つきそすすしき恒明親王
421そらはれて こすゑいろこき つきのよの かせにおとろく せみのひとこゑ花園院
422なきすさふ ひまかときけは をちこちに やかてまちとる せみのもろこゑ隆信
423なくせみの こゑやむもりに ふくかせの すすしきなへに ひもくれぬなり新宰相(伏見院)
424ゆふつくひ こすゑによわく なくせみの はやまのかけは いまそすすしき為秀
425あめはれて くもふくかせに なくせみの こゑもみたるる もりのしたつゆ俊成女
426あしのはに かくれてすめは なにはなる こやのなつこそ すすしかりけれ好忠
427なつやまの しけみかしたに たきおちて ふもとすすしき みつのおとかな政村
428ふきわくる こすゑのつきは かけふけて すたれにすさふ かせそすすしき覚誉法親王
429みたれあしの したはなみより ゆくみつの おとせぬなみの いろそすすしき後鳥羽院
430かせかよふ やままつかねの ゆふすすみ みつのこころも くみてこそしれ兼季
431なつのひの ゆふかけおそき みちのへに くもひとむらの したそすすしき兼行
432ひのかけは たけよりにしに へたたりて ゆふかせすすし にはのくさむら祝子内親王
433やまかはの みなそこきよき ゆふなみに なひくたまもそ みるもすすしき慈成
434やまもとや このしためくる をくるまの すたれうこかす かせそすすしき公蔭
435もりかぬる つきはすくなき このもとに よふかきみつの おとそすすしき進子内親王
436こけあをき やまのいはねの まつかけに すすしくすめる みつのいろかな兼行
437なつふかき みねのまつかえ かせこえて つきかけすすし ありあけのやま慈円
438あさちふに あきまつほとや しのふらむ ききもわかれぬ むしのこゑこゑ寂蓮
439くさのすゑに はなこそみえね くもかせも のわきににたる ゆふくれのあめ永福門院
440むすふてに つきをやとして やまのゐの そこのこころに あきやみゆらむ通方
441まつにふく かせもすすしき やまかけに あきおほえたる ひくらしのこゑ公賢
442なくこゑも たかきこすゑの せみのはの うすきひかけに あきそちかつく伏見院
443みそきする かはせのなみの しらゆふは あきをかけてそ すすしかりける公雄
444みそきする ゆくせのなみも さよふけて あきかせちかし かものかはみつ基忠(鷹司兼平男)
445みなとかは なつのゆくては しらねとも なかれてはやき せせのゆふして順徳院
446あききても なほゆふかせを まつかねに なつをわすれし かけそたちうき定家
447かせのおとの にはかにかはる くれはとり あやしとおもへは あきはきにけり後嵯峨院
448しらつゆは またおきあへぬ うたたねの そてにおとろく あきのはつかせ但馬(藻壁門院)
449つゆならぬ なみたももろく なりにけり をきのはむけの あきのはつかせ隆教
450おちそむる きりのひとはの こゑのうちに あきのあはれを ききはしめぬる法守法親王
451ゆふくれの くもにほのめく みかつきの はつかなるより あきそかなしき公宗(西園寺公衡男)
452ゆふまくれ あきくるかたの やまのはに かけめつらしく いつるみかつき為家
453あききては けふそくもまに みかつきの ひかりまちとる はきのうはつゆ公蔭
454なかむれは このまうつろふ ゆふつくよ ややけしきたつ あきのそらかな式子内親王
455あきのいろは またこもりえの はつせやま なにをかことに つゆもおくらむ家隆
456やまさとは せみのもろこゑ あきかけて そとものきりの したはおつなり定家
457いろうすき ゆふひのやまに あきみえて こすゑによわる ひくらしのこゑ客子(従三位)
458かけよわき このまのゆふひ うつろひて あきすさましき ひくらしのこゑ俊実(藤原定資男)
459むらすすめ こゑするたけに うつるひの かけこそあきの いろになりぬれ永福門院
460けふははや とくくれななむ ひさかたの あまのかはきり たちわたるへく躬恒
461こころをは かすともなしに あまのかは よそのあふせに くれそまたるる実泰
462あふことを まとほにたのむ たなはたの ちきりやうすき あまのはころも隆康
463おもひやる こころもすすし ひこほしの つままつよひの あまのかはかせ清輔
464あまのはら ふりさけみれは あまのかは きりたちわたる きみはきぬらし読人不知
465めつらしく あふたなはたは よそひとも かけみまほしき よるにそありける伊勢
466おほかたを おもへはゆゆし あまのかは けふのあふせは うらやまれけり紫式部
467あまのかは あふせによする しらなみは いくよをへても かへらさらなむ匡房
468たなはたの あふせはかたき あまのかは やすのわたりも なのみなりけり重家
469たなはたの ちきりはあきの なのみして またみしかよは あふほとやなき道平
470としをへて かはらぬものは たなはたの あきをかさぬる ちきりなりけり義詮
471ふけぬなり ほしあひのそらに つきはいりて あきかせうこく にはのともしひ光厳院
472たなはたに こころをかして なけくかな あけかたちかき あまのかはかせ後嵯峨院
473いくとせか さかののあきの をみなへし つかふるみちに なれてみつらむ実教
474あきくれは はきもふるえに さくものを ひとこそかはれ もとのこころは惟方
475わかこころ またかはらすよ はつはきの したはにすかる つゆはかりたに顕昭
476あたしのの はきのすゑこす あきかせに こほるるつゆや たまかはのみつ俊頼(源経信男)
477さこそわれ はきのふるえの あきならめ もとのこころを ひとのとへかし四条(安嘉門院)
478まはきちる にはのあきかせ みにしみて ゆふひのかけそ かへにきえゆく永福門院
479かせふけは えたもとををに おくつゆの ちるさへをしき あきはきのはな定家
480しをれふす えたふきかへす あきかせに とまらすおつる はきのうはつゆ道良女
481ひとしをり あめはすきぬる にはのおもに ちりてうつろふ はきかはなすり公直母
482あきふかみ はなちるはきは もとすきて のこるすゑはの いろそさひしき盛親
483つゆにふす まかきのはきは いろくれて をはなそしろき あきかせのには尊氏
484にはのおもに ゆふへのかせは ふきみちて たかきすすきの すゑそみたるる伏見院
485みわたせは すそののをはな ふきしきて ゆふくれはけし やまおろしのかせ伏見院
486あきさむき ゆふひはみねに かけろひて をかのをはなに かせすさふなり進子内親王
487まねきやむ をはなかすゑも しつかにて かせふきとまる くれそさひしき親子(従三位源)
488ふきうつり なひくすすきの すゑすゑを のとかにわたる のへのゆふかせ花園院
489ゆふひさす とほやまもとの さとみえて すすきふきしく のへのあきかせ隆祐
490みをかくす やとにはうゑし はなすすき まねくたよりに ひともこそとへ慈道法親王
491あはれさも そのいろとなき ゆふくれの をはなかすゑに あきそうかへる為兼
492まねくとも たのむへしやは はなすすき かせにしたかふ こころなりけり重之女
493ふくかせの たよりならては はなすすき こころとひとを まねかさりけり季経
494うちしめり すすきのうれは おもりつつ にしふくかせに なひくむらさめ定家
495ここにのみ あはれやとまる あきかせの をきのうへこす ゆふくれのやと伏見院
496ふきすてて すきぬるかせの なこりまて おとせぬをきも あきそかなしき為兼
497にはしろき いさこにつきは うつろひて あきかせよわき はなのすゑすゑ法守法親王
498うすきりの そらはほのかに あけそめて のきのしのふに つゆそみえゆく俊兼
499あきそかし いかにあはれの とはかりに やすくもおける そてのつゆかな為守女
500ひかりそふ くさはのうへに かすみえて つきをまちける つゆのいろかな重顕(藤原頼重男)
501ふみわけて たれかはとはむ よもきふの にはもまかきも あきのしらつゆ秀能(藤原秀宗男)
502あはれむかし いかなるのへの くさはより かかるあきかせ ふきはしめけむ後鳥羽院
503むらくもに かけさたまらぬ あきのひの うつりやすくも くるるころかな覚円
504あさちはら あきかせふきぬ あはれまた いかにこころの ならむとすらむ家隆
505あきかせは とほきくさはを わたるなり ゆふひのかけは のへはるかにて伏見院
506さきのゐる あたりのくさは うらかれて のさはのみつも あきそさひしき為基(京極為兼猶子)
507むらさめの なかははれゆく くもきりに あきのひきよき まつはらのやま花園院
508ゆふつくひ いはねのこけに かけきえて をかのやなきは あきかせそふく永福門院
509あきかせに うきくもたかく そらすみて ゆふひになひく きしのあをやき為兼
510にはふかき やなきのかれは ちりみちて かきほあれたる あきかせのやと伏見院
511かはとほき ゆふひのやなき きしはれて さきのつはさに あきかせそふく光厳院
512かけよわき やなきかうれの ゆふつくひ さひしくうつる あきのいろかな重資
513たましまや おちくるあゆの かはやなき したはうちちり あきかせそふく家隆
514うすきりの やまもととほく しかなきて ゆふひかけろふ をかのへのまつ儀子内親王
515たひねする さやのなかやま さよなかに しかもなくなり つまやこひしき為仲(橘義通男)
516くれうつる まかきのはなは みえわかて きりにへたてぬ さをしかのこゑ為秀
517へたたらぬ をしかのこゑは まちかくて きりのいろより くるるやまもと一条(徽安門院)
518こからしに つきすむみねの しかのねを われのみきくは をしくもあるかな寂然
519ものおもへと するわさならし このまより おちたるつきに さをしかのこゑ良経(九条兼実男)
520いくあきの なみたさそひつ かすかのや ききてなれぬる さをしかのこゑ範憲
521あきはきの みたるるたまは なくしかの こゑよりおつる なみたなりけり貫之
522かせさむみ はたれしもふる あきのよは やましたとよみ しかそなくなる基俊
523よもすから つまとふしかを きくからに われさへあやな いこそねられね成通
524やまさとは みねのこのはに きほひつつ くもよりおろす さをしかのこゑ式子内親王
525をやまたの いほもるとこも よさむにて いなはのかせに しかそなくなる為藤
526はつかりは くもゐのよそに すきぬれと こゑはこころに とまるなりけり俊頼(源経信男)
527いろかはる やなきかうれに かせすきて あきのひさむき はつかりのこゑ為基(京極為兼猶子)
528ふきしをる ちくさのはなは にはにふして かせにみたるる はつかりのこゑ儀子内親王
529このねぬる あさかせさむみ はつかりの なくそらみれは こさめふりつつ道玄
530むらくもに よこきるかりの かすみえて あさひにきゆる みねのあききり実兼
531あさほらけ きりのはれまの たえたえに いくつらすきぬ あまつかりかね伏見院
532きりうすき あきのひかけの やまのはに ほのほのみゆる かりのひとつら為信
533ゆふひかけ さひしくみゆる やまもとの たのもにくたる かりのひとつら中納言典侍(後伏見院)
534ゆふきりの むらむらはるる やまきはに ひかけをわたる かりのひとつら覚誉法親王
535しをれきて みやこもおなし あききりに つはさやほさぬ あまつかりかね公重(西園寺実衡男)
536をくらやま ふもとのてらの いりあひに あらぬねなから まかふかりかね俊成(藤原俊忠男)
537はれそむる をちのとやまの ゆふきりに あらしをわくる はつかりのこゑ家隆
538うちむれて あまとふかりの つはさまて ゆふへにむかふ いろそかなしき伏見院
539くもとほき ゆふひのあとの やまきはに ゆくともみえぬ かりのひとつら花園院
540くもまもる いりひのかけに かすみえて とほちのそらを わたるかりかね良基(二条道平男)
541かりのなく とほちのやまは ゆふひにて のきはしくるる あきのむらくも徽安門院
542ゆふひうつる やなきのすゑの あきかせに そなたのかりの こゑもさひしき為兼
543あきかせに うすきりはるる やまのはを こえてちかつく かりのひとつら宗秀(大江時秀男)
544かりのなく ゆふへのそらの うすくもに またかけみえぬ つきそほのめく内侍(永福門院)
545あきかせの たかきみそらは くもはれて つきのあたりに かりのひとつら尊胤法親王
546つれてとふ あまたのつはさ よこきりて つきのしたゆく よはのかりかね伏見院
547はきのうへに かりのなみたの おくつゆは こほりにけりな つきにむすひて式子内親王
548まとしろき ねさめのつきの いりかたに こゑもさやかに わたるかりかね一条(徽安門院)
549あきのよの ねさめのほとを かりかねの そらにしれはや なきわたるらむ保憲女
550かりかねの きこゆるなへに みわたせは よものこすゑも いろつきにけり和泉式部
551くものうへに なきつるかりの さむきなへに ききのしたはは うつろはむかも読人不知
552けさのあさけ かりかねききつ かすかやま もみちにけらし わかこころいたし穂積皇子
553あさきりの おほつかなきに あきのたの ほにいててかりそ なきわたりける貫之
554いろかはる こすゑをみれは さほやまの あさきりかくれ かりはきにけり為家
555あまつかり きりのあなたに こゑはして かとたのすゑそ しもにあけゆく後伏見院
556きりきりす こゑはいつくそ くさもなき しらすのにはの あきのよのつき永福門院
557きりきりす つきをやしたふ にはとほく かたふくかたの かけになくなり定成(藤原経朝男)
558よひのまは まれにききつる むしのねも ふけてそしけき よもきふのには公賢
559わきてなと よるしもまさる うれへにて あくるをきはに むしのなくらむ章義門院
560のへのいろも かれのみまさる あさちふに のこるともなき まつむしのこゑ内実
561きりきりす おのかなくねも たえたえに かへのひまもる つきそかなしき公蔭
562むしのねは ならのおちはに うつもれて きりのまかきに むらさめのふる良経(九条兼実男)
563きりきりす なくよをさむみ おくつゆに あさちかうへそ いろかれてゆく兼行
564にはのむしは なきとまりぬる あめのよの かへにおとする きりきりすかな為兼
565よさむなる まくらのしたの きりきりす あはれにこゑの なほのこりける公顕
566なにとなく ものかなしくそ みえわたる とはたのおもの あきのゆふくれ西行
567つゆしけき とはたのおもの あきかせに たまゆらやとる よひのいなつま後鳥羽院
568あきのたの またはつかなる ほのうへを はるかにみする よひのいなつま公重(西園寺実衡男)
569ゆふひさす とやまのこすゑ あきさひて ふもとのをたも いろつきにけり公蔭
570をやまたの つゆのおくての いなむしろ つきをかたしく とこのひとりね実忠
571なにとなく やまたのいほの かなしきに あきかせさむみ うつらなくなり経房(藤原光房男)
572うちはらひ をののあさちに かるくさの しけみかすゑに うつらたつなり式子内親王
573いなつまの しはしもとめぬ ひかりにも くさはのつゆの かすはみえけり為秀
574あきのあめの はれゆくあとの くもまより しはしほのめく よひのいなつま実名(藤原公脩男)
575ゆふやみに みえぬくもまも あらはれて ときときてらす よひのいなつま為家
576にほひしらみ つきのちかつく やまのはの ひかりによわる いなつまのかけ伏見院
577つきをまつ くらきまかきの はなのうへに つゆをあらはす よひのいなつま徽安門院
578こゑたつる のきのまつかせ にはのむし ゆふくれかけて つきやもよほす後伏見院
579くさむらの むしのこゑより くれそめて まさこのうへそ つきになりぬる光厳院
580くさかくれ むしなきそめて ゆふきりの はれまののきに つきそみえゆく一条(花園院)
581かけうすき つきみえそめて にはのおもの くさにむしなく やとのゆふくれ新宰相(伏見院)
582ふきわくる たけのあなたに つきみえて まかきはくらき あきかせのおと祝子内親王
583たちならふ まつのこのまに みえそめて やまのはつかに つきそほのめく経顕(藤原定資男)
584いましはや またるるつきそ にほふらし むらくもしろき やまのはのそら良基(二条道平男)
585くまもなく ねやのおくまて さしいりぬ むかひのやまを のほるつきかけ徽安門院
586つきのほる ゆふへのやまに くもはれて みとりのそらを はらふあきかせ俊兼
587くれもあへす いまさしのほる やまのはの つきのこなたの まつのひともと花園院
588やまのはを いてぬとみゆる のちまても ふもとのさとは つきそまたるる■子内親王
589ほともなく まつよりうへに なりにけり このまもりつる ゆふくれのつき尊氏
590いつるより くももかからぬ やまのはを しつかにのほる あきのよのつき定宗(藤原家親男)
591のきちかき まつはらやまの あきかせに ゆふくれきよく つきいてにけり伏見院
592つきかけを むくらのかとに さしそへて あきこそきたれ とふひとはなし定家
593さよふけて ひとはしつまる まきのとに ひとりさしいる つきそさひしき経通(一条内経男)
594なかしてふ あきのももよを かさねても なかめあくへき つきのかけかは家親
595こころこそ あくかれやすく なりにけれ なかめうかるる つきのしるへに隆博
596ひたすらに いとひもはてし むらくもの はれまそつきは てりまさりける清輔
597うすくもの たたよふそらの つきかけは さやけきよりも あはれなりけり後鳥羽院
598つきかけの すみのほるあとの やまきはに たたひとなひき くもののこれる為子(従二位)
599あきはたた をきのはすくる かせのおとに よふかくいつる やまのはのつき通光
600まはきはら よふかきつきに みかかれて おきそふつゆの かすそかくれぬ実尹
601うちそよき たけのはのほる つゆならて つきふくるよの またおともなし実明女
602つきのゆく はれまのそらは みとりにて むらむらしろき あきのうきくも為基(京極為兼猶子)
603たえたえの くもまにつたふ かけにこそ ゆくともみゆれ あきのよのつき宗宣(北条宣時男)
604むらくもに かくれあらはれ ゆくつきの はれもくもりも あきそかなしき永福門院
605ふきしをる かせにしかるる くれたけの ふしなからみる にはのつきかけ永福門院
606つきのいろも あきにそめなす かせのよの あはれうけとる まつのおとかな為兼
607まつかせも そらにひひきて ふくるよの こすゑにたかき みやまへのつき内侍(永福門院)
608みるひとに もののあはれを しらすれは つきやこのよの かかみなるらむ崇徳院
609こころすむ あきのつきたに なかりせは なにをうきよの なくさめにせむ選子内親王
610あきをへて なみたおちそふ そてのつき いつをはれまと みるよはもなし為定(御子左二条為道男)
611わかこころ すめるはかりに ふけはてて つきをわすれて むかふよのつき花園院
612くもはれて すめはすみけり みるひとの こころやつきの こころなるらむ忠良
613わかそての つゆもなみたも あまりある あきのうれへは つきのみそとふ覚助法親王
614ふかきやまに すみけるつきを みさりせは おもひてもなき わかみならまし西行
615こころこそ ややすみまされ よのなかを のかれてつきは みるへかりけり道玄
616やまさとは つきもこころや とまるらむ みやこにすきて すみまさるかな崇徳院
617いつことて あはれならすは なけれとも あれたるやとそ つきはさやけき西行
618いほにもる つきのかけこそ さひしけれ やまたはひたの おとはかりして西行
619きりはるる をちのやまもと あらはれて つきかけみかく うちのかはなみ為秀
620かけははや とほきうらわに さきたちて いそやまいつる あきのよのつき定資
621きよみかた なみをかたしく たひころも またやはかかる つきをきてみむ俊成(藤原俊忠男)
622きよみかた ふしのけふりや きえぬらむ つきかけみかく みほのうらなみ後鳥羽院
623あれにける やととてつきは かはらねと むかしのかけは なほそゆかしき忠度
624ときはやま かはるこすゑは みえねとも つきこそあきの いろにいてけれ為氏
625くれのあき つきのすかたは たえねとも ひかりはそらに みちにけるかな顕輔
626みやまいてし あきのたひねの よころへて やともるつきや あるしまつらむ花園院
627すみよしの かみのおまへの はまきよみ ことうらよりも つきやさやけき俊言
628しはしみむ かたふくかたは そらはれて ふけはとたのむ むらくものつき宣子(従三位藤原)
629つゆふかき まかきのはなは うすきりて をかへのすきに つきそかたふく内侍(永福門院)
630かせにおつる くさはのつゆも かくれなく まかきにきよき いりかたのつき儀子内親王
631いるつきを かへすあらしは なかりけり いつるみねには まつのあきかせ慈円
632なかめやる あきのやまかせ こころあらは かたふくつきを ふきやかへさぬ重家
633つきはなほ なかそらたかく のこれとも かけうすくなる ありあけのには経顕(藤原定資男)
634かせになひく をはなかすゑに かけろひて つきとほくなる ありあけのには花園院
635かけきよき ありあけのつきは そらすみて しかのねたかき あかつきのやま新右衛門督(宣光門院)
636ありあけの つきはかたふく やまのはに しかのねたかき よはのあきかせ万秋門院
637つきならぬ ほしのひかりも さやけきは あきてふそらや なへてすむらむ実衡女
638ありあけの つきはたえたえ かけみえて きりふきわくる あきのやまかせ季雄
639むらくもの ひまゆくつきの かけはやみ かたふくおいの あきそかなしき実兼
640やまさとに ありあけのそらを なかめても なほやしられぬ あきのあはれは中務(選子内親王家)
641やまかせも しくれになれる あきのひに ころもやうすき をちのたひひと伏見院
642さすとなき ひかけはのきに うつろひて このはにかかる にはのむらさめ永福門院
643もろくなる やなきのしたは かつちりて あきものさむき ゆふくれのあめ新右衛門督(宣光門院)
644むらさめの くもふきすさふ ゆふかせに ひとはつつちる たまのをやなき順徳院
645ひとしきり あらしはすきて きりのはの しつかにおつる ゆふくれのには大納言(昭訓門院)
646ぬれておつる きりのかれはは おとおもみ あらしはかろき あきのむらさめ光厳院
647おちすさふ まきのしたつゆ なほふかし あめのなこりの きりのあさあけ公重(西園寺実衡男)
648たちそむる きりかとみれは あきのあめの こまかにそそく ゆふくれのそら為秀
649しをりつる のわきはやみて しののめの くもにしたかふ あきのむらさめ徽安門院
650ふきみたし のわきにあるる あさあけの いろこきくもに あめこほるなり一条(花園院)
651のわきたつ ゆふへのくもの あしはやみ しくれににたる あきのむらさめ為兼
652くさもきも のわきにしをる ゆふくれは そらにもくもの みたれてそゆく為名
653はとのなく すきのこすゑの うすきりに あきのひよわき ゆふくれのやま一条(花園院)
654やまかけや よのまのきりの しめりより またおちやまぬ ききのしたつゆ永福門院
655うすきりの あさけのこすゑ いろさひて むしのねのこる もりのしたくさ永福門院
656つのくにの ゐなののきりの たえたえに あらはれやらぬ こやのまつはら邦省親王
657あさひやま またかけくらき あけほのに きりのしたゆく うちのしはふね資明
658うちわたす はまなのはしの あけほのに ひとむらくもる まつのうすきり広秀
659あさひかけ うつるこすゑは つゆおちて そとものたけに のこるうすきり俊兼
660ひかけさす いなはかうへは くれやらて まつはらうすき きりのやまもと忠季(藤原公蔭男)
661おくみえぬ はやまのきりの あけほのに ちかきまつのみ のこるひとむら為相
662いりかかる をちのゆふひは かけきえて すそよりくるる うすきりのやま実兼
663きりふかき つまきのみちの かへるさに こゑはかりして くたるやまひと俊実(藤原定資男)
664いりあひは ひはらのおくに ひひきそめて きりにこもれる やまそくれゆく尊氏
665たちこめて をのへもみえぬ きりのうへに こすゑはかりの まつのむらたち為基(京極為兼猶子)
666あさあらしの みねよりおろす おほゐかは うきたるきりも なかれてそゆく為兼
667ふしみやま ふもとのいなは くもはれて たのもにのこる うちのかはきり実超
668いりうみの まつのひとむら くもりそめて しほよりのほる あきのゆふきり為成(冷泉為相男)
669なにはかた うらさひしさは あききりの たえまにみゆる あまのつりふね三河内侍(二条院)
670さえのほる ひひきやそらに ふけぬらむ つきのみやこも ころもうつなり家隆
671よをさむみ ねさめてきけは なかつきの ありあけのつきに ころもうつなり実朝
672ころもうつ よそのさとひと なれをしそ あはれとはおもふ あきのよさむに為定(御子左二条為道男)
673いまははや あけぬとおもふ かねのおとの のちしもなかき あきのよはかな道良女
674そめやらぬ こすゑのひかけ うつりさめて ややかれわたる やまのしたくさ内侍(永福門院)
675をかへなる はしのもみちは いろこくて よものこすゑは つゆのひとしほ御匣(新室町院)
676おのれとや いろつきそむる うすもみち またこのころは しくれぬものを直義
677みるままに もみちいろつく あしひきの やまのあきかせ さむくふくらし具定
678まなくふる しくれにいろや つくはやま しけきこすゑも もみちしにけり通成
679いろいろに ならひのをかの はつもみち あきのさかのの ゆききにそみる後宇多院
680あさきりの はれゆくをちの やまもとに もみちましれる たけのひとむら実明女
681しかのやま こえてみやれは はつしくれ ふるきみやこは もみちしにけり道玄
682あきされは おくつゆしもに あへすして みやこのやまは いろつきぬらむ読人不知
683おほゐかは やまのもみちを うつしもて からくれなゐの なみそたちける長家
684しくれつる とやまのくもは はれにけり ゆふひにそむる みねのもみちは良経(九条兼実男)
685ひかけさへ いまひとしほを そめてけり しくれのあとの みねのもみちは公清
686はれわたる ひかけにみれは やまもとの こすゑむらむら もみちしにけり清雅
687きりはるる たのものすゑに やまみえて いなはにつつく ききのもみちは花園院
688くれたけの めくれるさとを ふもとにて けふりにましる やまのもみちは花園院
689ゆふひうつる そとものもりの うすもみち さひしきいろに あきそくれゆく光明院
690もろこしも おなしそらこそ しくるらめ からくれなゐに もみちするころ後嵯峨院
691いろふかき やとのもみちの ひとえたに をりしるひとの なさけをそみる伏見院
692いろそへて みるへききみの ためとてそ わかやまさとの もみちをもをる覚助法親王
693とけてねぬ そてさへいろに いてねとや つゆふきむすふ みねのこからし式子内親王
694したもみち いろいろになる すすかやま しくれのいたく ふれはなるへし能宣
695よろつよを つむともつきし きくのはな なかつきのけふ あらむかきりは花山院
696なかつきの きくのさかつき ここのへに いくめくりとも あきはかきらし実雄
697ここのへに ちよをかさねて かさすかな けにをりえたる しらきくのはな公相
698めくりあふ つきひもおなし ここのへに かさねてみゆる ちよのしらきく隆祐
699ももしきや わかここのへの あきのきく こころのままに をりてかささむ後醍醐院
700よもすから ひかりはしもを かさぬれと つきにはきくの うつろはぬかな光行
701しもかれむ ことをこそおもへ わかやとの まかきににほふ しらきくのはな師時
702おくしもの そめまかはせる きくのはな いつれかもとの いろにはあるらむ貫之
703もすのゐる まさきのすゑは あきたけて わらやはけしき みねのまつかせ定家
704みるままに かへにきえゆく あきのひの しくれにむかふ うきくものそら進子内親王
705はつしもに かれゆくくさの きりきりす あきはくれぬと きくそかなしき匡房
706ほにいてて まねくとならは はなすすき すきゆくあきを えやはととめぬ教長
707まとふかき あきのこのはを ふきたてて またしくれゆく やまおろしのかせ後鳥羽院
708あきのあめの まとうつおとに ききわひて ねさむるかへに ともしひのかけ公宗女
709にはのおもに はきのかれはは ちりしきて おとすさましき ゆふくれのあめ覚円
710あきのあめに しをれておつる きりのはは おとするしもそ さひしかりける実衡女
711もろくなる きりのかれはは にはにおちて あらしにましる むらさめのおと永福門院
712としへたる みやまのおくの あきのそら ねさめしくれぬ あかつきそなき慶政
713なにとなく にはのよもきも したをれて さひゆくあきの いろそかなしき後鳥羽院
714ゆふひうすき かれはのあさち したすきて それかとよわき むしのひとこゑ伏見院
715うらかるる あさちかにはの きりきりす よわるをしたふ われもいつまて左京大夫(後伏見院)
716しるきかな あさちいろつく にはのおもに ひとめかるへき ふゆのちかさは式子内親王
717いとはやも おしねいろつく はつしもの さむきあさけに やまかせそふく隆朝
718ゆふしもの ふるえのはきの したはより かれゆくあきの いろはみえけり後伏見院
719なかつきや よさむのころの ありあけの ひかりにまかふ あさちふのしも為子(従二位)
720かせわたる まくすかはらに あきくれて かへらぬものは ひかすなりけり長雅
721としことに かはらぬけふの なけきかな をしみとめたる あきはなけれと登蓮
722やまをこえ みつをわたりて したふとも しらはそけふの あきのわかれち為相
723ゆくあきの なこりをけふに かきるとも ゆふへはあすの そらもかはらし実氏
724つきもみす かせもおとせぬ まとのうちに あきをおくりて むかふともしひ後伏見院
725おちつもる もみちはみれは おほゐかは ゐせきにとまる あきにそありける公任
726ふゆのきて しものふりはも あはれなり われもおいその もりのしたくさ基忠(鷹司兼平男)
727もみちはの みやまにふかく ちりしくは あきのかへりし みちにやあるらむ後二条院
728くさかれて さひしかるへき にはのおもに もみちちりしき きくもさきけり新宰相(伏見院)
729うきくもの あきよりふゆに かかるまて しくれすさへる とほやまのまつ実兼
730ゆふひさす おちはかうへに しくれすきて にはにみたるる うきくものかけ光厳院
731やまあらしに うきゆくくもの ひととほり ひかけさなから しくれふるなり儀子内親王
732ふりすさふ しくれのそらの うきくもに みえぬゆふひの かけそうつろふ盛親
733しくるとも よそにはみえす たえたえに とやまをめくる みねのうきくも為定(御子左二条為道男)
734しくれゆく くもまによわき ふゆのひの かけろひあへす くるるそらかな為相
735うきてゆく くものたえたえ かけみえて しくるるやまに ゆふひさすなり家雅
736しくれのあめ なにとふるらむ ははそはら ちりてののちは いろもまさらし教長
737やまあらしに このはふりそふ むらしくれ はるるくもまに みかつきのかけ進子内親王
738かみなつき くもままつまに ふけにけり しくるるころの やまのはのつき後鳥羽院
739つきのすかた なほありあけの むらくもに ひとそそきする しくれをそみる永福門院
740かみなつき くものゆくての むらしくれ はれもくもりも かせのまにまに公蔭
741をりをりに しくれおとして なかきよの ねやのいたまは まてとしらます新宰相(伏見院)
742とやまより しくれてわたる うきくもに このはふきませ ゆくあらしかな為仲(藤原為顕男)
743さそひはてし あらしののちの ゆふしくれ にはのおちはを なほやそむらむ左京大夫(永陽門院)
744かさとりの やまをたのみし かひもなく しくれにそてを ぬらしてそゆく頼基(大中臣輔道男)
745しくれゆく たたひとむらは はやくして なへてのそらは くもそのとけき為子(従二位)
746むらむらに こまつましれる ふゆかれの のへすさましき ゆふくれのあめ永福門院
747かれつもる ならのおちはに おとすなり かせふきまする ゆふくれのあめ進子内親王
748ふきわくる このはのしたも このはにて にはみせかぬる やまおろしのかせ伏見院
749しくるとも しられぬにはは このはぬれて さむきゆふひは かけおちにけり後伏見院
750こころして かせののこせる もみちはを たつぬるやまの かひにみるかな下野(四条太皇太后宮)
751もみちはの ちりしくときは ゆきかよふ あとたにみえぬ やまちなりけり貫之
752みなかみに しくれふるらし やまかはの せにももみちの いろふかくみゆ
753わかやとの ものなりなから おほゐかは せきもととめす ゆくこのはかな後嵯峨院
754かみなひの やましたかせの さむけくに ちりかひくもる よものもみちは後二条院
755かみかきの もりのこのはは ちりしきて をはなのこれる かすかののはら兵衛督(花園院)
756ふくかせの さそふともなき こすゑより おつるかれはの おとそさひしき内経
757いりあひの ひひきをおくる やまかせに もろきこのはの おとそましれる公宗(西園寺実衡男)
758いつのまに こけさへいろの かはるらむ けさはつしもの ふるさとのには実経
759あきみしは それとはかりの はきかえに しものくちはそ ひとはのこれる一条(徽安門院)
760ふゆかれの しはふのいろの ひととほり みちふみわくる のへのあさしも資明
761しもさむき あさけのやまは うすきりて こほれるくもに もるひかけかな祝子内親王
762しもこほる たけのはわけに つきさえて にはしつかなる ふゆのさよなか光明院
763ふきとほす こすゑのかせは みにしみて さゆるしもよの ほしきよきそら公蔭
764おくしもは ねやまてとほる あけかたの まくらにちかき かりのひとこゑ為基(京極為兼猶子)
765のこりつる みねのひかけも くれはてて ゆふしもさむし をかのへのさと淑文
766くれかかる ひかけはよそに なりにけり ゆふしもこほる もりのしたくさ源恵
767そらたかく すみとほるつきは かけさえて しはふにしろき しものあけかた実明女
768もみちせし をかへもいまは しろたへの しものくちはに つきそこほれる成茂
769くさはこそ おきそふしもに たへさらめ なににかれゆく やとのひとめそ実重(三条公親男)
770ふりはつる われをもすつな かすかのや おとろかみちの しものしたくさ実教
771あさちふや のこるはすゑの ふゆのしも おきところなく ふくあらしかな定家
772しもしろき かみのとりゐの あさからす なくねもさひし ふゆのやまもと家隆
773しもとくる ひかけのにはは このはぬれて くちにしいろそ またかはりぬる中納言典侍(後伏見院)
774そめかふる まかきのきくの むらさきは ふゆにうつろふ いろにそありける経家(六条重家男)
775にはのおもに おいのともなる しらきくは むそちのしもや なほかさぬへき後宇多院
776こむらさき のこれるきくは しらつゆの あきのかたみに おけるなりけり道信
777ふゆされは さゆるあらしの やまのはに こほりをかけて いつるつきかけ為世(御子左藤原為氏男)
778おほろなる ひかりもさむし しもくもり さえたるそらに ふくるよのつき隆教
779ふくとたに しられぬかせは みにしみて かせさえとほる しものうへのつき儀子内親王
780なかきよの しものまくらは ゆめたえて あらしのまとに こほるつきかけ覚助法親王
781こほるかと そらさへみえて つきのあたり むらむらしろき くももさむけし徽安門院
782もののふの やそうちかはの ふゆのつき いるてふなをは ならはさらなむ公相
783せたえする ふるかはみつの うすこほり ところところに みかくつきかけ為秀
784かねのおとに あくるかそらと おきてみれは しもよのつきそ にはしつかなる後伏見院
785ありあけの つきとしもとの いろのうちに おほえすそらも しらみそめぬる忠季(藤原公蔭男)
786ふきさゆる あらしのつての ふたこゑに またはきこえぬ あかつきのかね為兼
787あかつきや ちかくなるらむ もろともに かならすもなく かはちとりかな増基
788あふみちや のしまかさきの はまかせに ゆふなみちとり たちさわくなり顕輔
789ゆふくれの しほかせあらく なるみかた かたもさためす なくちとりかな経朝
790はるかなる おきのひかたの さよちとり みちくるしほに こゑそちかつく宣時(北条)
791なにはかた いりえにさむき ゆふひかけ のこるのさひし あしのむらたち通相
792みなといりの たななしをふね あとみえて あしのはむすふ うすこほりかな秀能(藤原秀宗男)
793ゆきなやむ たにのこほりの したむせひ すゑにみなきる みつそすくなき実兼
794ふゆふかき たにのしたみつ おとたえて こほりのうへを はらふこからし恵助法親王
795わきてなほ こほりやすらむ おほゐかは さゆるあらしの やまかけにして基嗣
796かせさむき やまかけなれは なつみかは むすふこほりの とくるひもなし為忠(御子左二条為藤男)
797さむきあめは かれののはらに ふりしめて やままつかせの おとたにもせす永福門院
798こすゑには ゆふあらしふきて さむきひの ゆきけのくもに かりなきわたる伏見院
799むれてたつ そらもゆきけに さえくれて こほりのとこに をしそなくなる式子内親王
800そらさむみ ゆきけもよほす やまかせの くものゆききに あられちるなり為相女
801かせのおとも さむきゆふひは みえなから くもひとむらに あられおつなり重資
802しもこほる のへのささはら かせさえて たまりもあへす ふるあられかな通顕
803しくれつつ よものもみちは ふりはてて あられそおつる にはのこのはに式子内親王
804ふりはるる にはのあられは かたよりて いろなるくもに そらそくれゆく為兼
805ゆふへより あれつるかせの さえさえて よふかきままに あられをそきく新宰相(伏見院)
806ふゆのよの ねさめにきけは かたをかの ならのかれはに あられふるなり永縁
807おとたつる そとものならの ひろはにも あまりてよそに ちるあられかな為定(御子左二条為道男)
808なかめやる をかのやなきは えたさひて ゆきまつそらの くれそさむけき章義門院
809うきくもの しくれくらして はるるあとに なかはゆきなる のきのやまのは為基(京極為兼猶子)
810まきもくの ひはらのあらし さえさえて ゆつきかたけに ゆきふりにけり実朝
811ゆきやこれ はらふたかまの やまかせに つれなきくもの みねにのこれる後鳥羽院
812はつゆきの まとのくれたけ ふしなから おもるうははの ほとそきこゆる定家
813ふりけるも まさこのうへは みえわかて おちはにしろき にはのうすゆき雅孝
814にははたた しもかとみれは をかのへの まつのはしろき けさのはつゆき道命/道全
815ささのはの うへはかりには ふりおけと みちもかくれぬ のへのうすゆき朝定
816あとたえて うつまぬしもそ すさましき しはふかうへの のへのうすゆき冷泉(花園院)
817あさひかけ さすやくもまの たえたえに うつるもこほる みねのしらゆき寂恵
818いつくとも つもるたかねは みえねとも くものたえたえ ふれるしらゆき道嗣
819たかねには けぬかうへにや つもるらむ ふしのすそのの けさのはつゆき公清
820たひひとの さきたつみちは あまたにて あとなきよりも まよふゆきかな為守
821なみかかる しつえはきえて いそのまつ こすゑはかりに つもるしらゆき重能
822ゆくさきは ゆきのふふきに とちこめて くもにわけいる しかのやまこえ為兼
823みやまには しらゆきふれり しからきの まきのそまひと みちたとるらし実朝
824ゆきのうちに けふもくらしつ やまさとは つまきのけふり こころほそくて基俊
825ふるままに ひはらもいとと こもりえの はつせのやまは ゆきつもるらし為定(御子左二条為道男)
826とりのこゑ まつのあらしの おともせす やましつかなる ゆきのゆふくれ永福門院
827みよしのや すすふくおとは うつもれて まきのははらふ ゆきのあさかせ国基/国守/国夏
828つまきこる やまちはゆきの ふかけれは よにふるみちも たえやしぬらむ俊恵
829いかはかり ふりつもるらむ おもひやる こころもふかき みねのしらゆき道家
830たつねいりし まことのみちの ふかきやまは つもれるゆきの ほともしられす慶政
831みやこへも みゆらむものを あはれとも とはぬそつらき みねのしらゆき道玄
832なかむへき そなたのやまも かきくれて みやこもゆきの はるるまもなし為顕
833とふひとの あとこそあらめ まつかせの おとさへたゆる やまのしらゆき宗経(平経親男)
834ふりつもる こすゑのゆきや こほるらし あさひももらぬ にはのまつかえ頼氏(藤原頼広男)
835やまのはの ゆきのひかりに くれやらて ふゆのひなかし をかのへのさと公経(藤原実宗男)
836ふりおもる のきはのまつは おともせて よそなるたにに ゆきをれのこゑ兼行
837やまおろしの こすゑのゆきを ふくたひに ひとくもりする まつのしたかけ為兼
838よもすから ふるほとよりも つもらぬは あらしやはらふ まつのしらゆき定資
839ゆふくれの みそれのにはや こほるらむ ほとなくつもる よはのしらゆき盛親
840はなよたた またうすくもる そらのいろに こすゑかをれる ゆきのあさあけ為子(従二位)
841ふれはかつ こほるあさけの ふるやなき なひくともなき ゆきのしらいと内侍(永福門院)
842あさひさす のきはのゆきは かつきえて たるひのすゑに おつるたまみつ道意(西園寺実兼男)
843をかのへや さむきあさひの さしそめて おのれとおつる まつのしらゆき後伏見院
844のもやまも ひとつにしらむ ゆきのいろに うすくもくらき あさあけのそら実兼
845うすくもり またはれやらぬ あさあけの くもにまかへる ゆきのとほやま徽安門院
846みゆきふる かれきのすゑの さむけきに つはさをたれて からすなくなり一条(花園院)
847とりかへる たにのとほそに ゆきふかし つまきこるをの みちやたえなむ後鳥羽院
848うすくもり をりをりさむく ちるゆきに いつるともなき つきもすさまし儀子内親王
849ふりすさふ ゆふへのゆきの そらはれて たけのはしろき のきのつきかけ覚実
850ふきかくる すたれもしろく なりにけり かせによこきる ゆふくれのゆき親行(藤原)
851うつもるる くさきにかせの おとはやみて ゆきしつかなる ゆふくれのには重資
852やまもとの たけはむらむら うつもれて けふりもさむき ゆきのあさあけ一条(花園院)
853みわたせは やまもととほき ゆきのうちに けふりさひしき さとのひとむら直義
854ふりつもる いろよりつきの かけになりて ゆふくれみえぬ にはのしらゆき伏見院
855くるるまて しはしははらふ たけのはに かせはよわりて ゆきそふりしく為兼
856みよしのの やまよりゆきは ふりくれと いつともわかぬ わかやとのたけ貫之
857いけのへの まつのすゑはに ふるゆきは いほへふりしけ あすさへもみむ読人不知
858うはたまの こよひのゆきに いさぬれむ あけむあしたに けなはをしけむ読人不知
859ものことに ふりのみかくす ゆきなれと みつにはいろも のこらさりけり貫之
860もろともに はかなきものは みつのおもに きゆれはきゆる あわのうへのゆき仲正
861ふりつもる ゆきまにおつる たきかはの いはねにほそき みつのしらなみ覚助法親王
862かつむすふ こほりのほとも あらはれて ゆきになりゆく にはのいけみつ行家(藤原知家男)
863ゆきふりて ふままくをしき にはのおもは たつねぬひとも うれしかりけり顕季
864わかこころ ゆきけのそらに かよふとも しらさりけりな あとしなけれは俊頼(源経信男)
865めくりあふ おなしつきひは おもひいつや よとせふりにし ゆきのあけほの伏見院
866つもれとも つかへしままの こころのみ ふりてもふりぬ ゆきのあけほの家基(近衛基衡男)
867ふりはれて こほれるゆきの こすゑより あかつきふかき とりのはつこゑ進子内親王
868ふりはるる あさけのそらは のとかにて ひかけにおつる ききのしらゆき覚誉法親王
869ひかけさす そなたのゆきの むらきえに かつかつおつる のきのたまみつ隆博
870みかりのに くさをもとめて たつとりの しはしかくるる ゆきのしたしは為相
871みかりする かたやまかけの おちくさに かくれもあへす たつききすかな公泰
872たにこしに くさとるたかを めにかけて ゆくほとおそき しはのしたみち為兼
873かせさゆる うちのあしろき せをはやみ こほりもなみも くたけてそよる為世(御子左藤原為氏男)
874やまふかき ゆきよりたつる ゆふけふり たかすみかまの しるへなるらむ雅孝
875をのやまは やくすみかまの したもえて けふりのうへに つもるしらゆき四条(安嘉門院)
876すみかまの けふりにはるを たちこめて よそめかすめる をののやまもと為家
877すみかまの けふりはかりを それとみて なほみちとほし をののやまさと貞時
878くれやらぬ にはのひかりは ゆきにして おくくらくなる うつみひのもと花園院
879うつみひに すこしはるある ここちして よふかきふゆを なくさむるかな俊成(藤原俊忠男)
880さむからし たみのわらやを おもふには ふすまのうちの われもはつかし光厳院
881くものうへの とよのあかりに たちいてて みはしのめしに つきをみしかな少将内侍(後深草院)
882をとめこか くものかよひち ふくかせに めくらすゆきそ そてにみたるる為藤
883おもかけも みるここちする むかしかな けふをとめこか そてのしらゆき亀山院
884しのふらし をとめかそての しらゆきも ふりにしあとの けふのおもかけ伏見院
885わすれすよ とよのあかりの をみころも きつつなれしは むかしなれとも公雄
886やまあゐの そてのつきかけ さよふけて しもふきかへす かものかはかせ為成(冷泉為相男)
887ことわりや あまのいはとも あけぬらむ くもゐのにはの あさくらのこゑ俊成(藤原俊忠男)
888のこりなく ことしもはやく くれたけの あらしにましる ゆきもすさまし右衛門督(永福門院)
889けふまては ゆきふるとしの そらなから ゆふくれかたは うちかすみつつ後鳥羽院
890いりかたの かけこそやかて かすみけれ はるにかかれる ありあけのつき宗尊親王
891おのつから かきねのくさも あをむなり しものしたにも はるやちかつく伏見院
892ひととせに ふたたひにほふ うめのはな はるのこころに あかぬなるへし貫之
893をしみこし はなやもみちの なこりさへ さらにおほゆる としのくれかな後鳥羽院
894あれぬひの ゆふへのそらは のとかにて やなきのすゑも はるちかくみゆ永福門院
895みのうさも かはりやすると よしさらは ことしはとしの くれもをしまし兼直
896ことしまた くれぬとおもへは いまさらに すきしつきひの をしくもあるかな良基(二条道平男)
897いたつらに けふさへくれは あすかかは またとしなみの かすやかさねむ為明
898くれぬとて なにかはいそく としをへて ひとのためなる はるとみなから知家
899とほくゆく きみをおくると おもひやる こころもともに たひねをやせむ貫之
900ひさかたの あめもこころに かなはなむ ふるとてひとの たちとまるへく貫之
901たひころも はるかにたては あききりの おほつかなさを いかになかめむ康資王母
902めにみえぬ こころをひとに たくへても やるかたなきは こころなりけり為定(御子左二条為道男)
903いつかたに ありあけのつきの さそふらむ そらにうかるる たひのこころを四条(安嘉門院)
904たひころも あさたつひとは たゆむなり きりにくもれる あけくれのそら順徳院
905あつさゆみ いるののくさの ふかけれは あさゆくひとの そてそつゆけき顕季
906あふさかの せきはあけぬと いてぬれと なほみちくらし すきのしたかけ定宗(藤原家親男)
907ふかきよに せきのといてて あしからの やまもとくらき たけのしたみち頼成(藤原頼重男)
908ふしのねを やまよりうへに かへりみて いまこえかかる あしからのせき行朝
909われのみと よふかくこゆる みやまちに さきたつひとの こゑそきこゆる朝定
910いはたたみ のほりわつらふ みねつつき くもにはつれて みゆるかけはし道全
911ゆくすゑは なほいくへとも しらくもの かさなるみねに またむかひぬる慈成
912くもきりに わけいるたには すゑくれて ゆふひのこれる みねのかけはし花園院
913わけきつる やままたやまは ふもとにて みねよりみねの おくそはるけき道昭
914やまたかみ いつれをわきて こえゆかむ あまたあとある いはのかけみち新大納言(延政門院)
915めにかけて くれぬといそく やまもとの まつのゆふひの いろそすくなき為兼
916ひとむらの さとのしるへに たつけふり ゆけともとほみ くるるそらかな行能
917ゆきくれて やととふすゑの さとのいぬ とかむるこゑを しるへにそする仲成
918ゆふまくれ まよふやまちは こえすきて やととふさとに いつるつきかけ本如
919こえなやみ わかゆきとまる ゆふやまの をのへのつきは いまそいつなる為子(従二位)
920ゆきとまる くさのまくらの つゆにしも われまちかほに やとるつきかな維貞
921あたらよの つきをひとりそ なかめつる おもはぬいそに なみまくらして公重(藤原通季男)
922よもすから とまもるつきを まくらにて うちもねられぬ なみのおとかな基輔(坊門清親男)
923とまりふね いりぬるいその なみのおとに こよひもゆめは みらくすくなし頼氏(藤原頼広男)
924よをこめて たひのやとりを たつひとは くまなきつきを あけぬとやおもふ公重(藤原通季男)
925ふきおろす ふしのたかねの あさあらしに そてしをれそふ うきしまかはら俊言
926やすかはと いかてかなには なかれけむ くるしきせのみ あるよとおもふに為兼
927みねのくも うらわのなみを めにかけて あらしをわくる さやのなかやま為兼
928ささのはの さやのなかやま なかきよも かりねのゆめは むすひやはする道家
929たかせやま まつのしたみち わけゆけは ゆふあらしふきて あふひともなし為兼
930あすもまた おなしみちにと ちきるかな とまりかはらぬ よはのたひひと聖尊法親王
931あまのはら やそしまかけて てるつきの みちたるしほに よふねこくなり公泰
932あしのはに あめふりかかる くらきよの いりえのふねに みやこをそおもふ俊兼
933いまむかふ かたはあかしの うらなから またはれやらぬ わかおもひかな尊氏
934うらやまし やまたのくろに みちもあれや みやこへかよふ をちのたひひと内侍(永福門院)
935うみやまの おもひやられし はるけさも こゆれはやすき ものにそありける道全
936なくさめに みつつもゆかむ きみかすむ そなたのやまを ゆきなへたてそ寂然
937おもひやれ みやこはるかに おきつなみ たちへたてたる こころほそさを崇徳院
938すききつる たひのあはれを かすかすに いかてみやこの ひとにかたらむ後鳥羽院
939ゆきうつる ところところの おもかけを こころにとむる たひのみちかな定忠
940つゆにふし あらしにそてを かさねきて のやまのたひも ひかすへにけり公蔭
941とふとりの なかめのすゑも みえぬまて みやこのそらを おもひこそやれ後伏見院
942わけきつる つゆのたもとは ほしわひぬ またさととほき のへのゆふくれ隆親(藤原隆衡男)
943ゆきすりの ころもにうつれ はきかはな たひのしるしと ひとにかたらむ経家(六条重家男)
944いさやこら やまとへはやく しらすけの まののはきはら たをりてゆかむ人麿
945しほつやま うちこえくれは わかのれる こまそつまつく いへこふらしも金村
946さとはなれ とほからなくに くさまくら たひとしおもへは なほこひにけり読人不知
947はるはると ゆくもとまるも おいぬれは またあふことを いかかとそおもふ頼政
948はかなくも かへらむほとを ちきるかな さらぬわかれに なりもこそすれ道因
949かへるまて えそまつましき きみかゆく すゑはるかなる わかみならねは頼政
950かへるとも のちにはまたと たのむへき このみのうたて あたにもあるかな寂然
951ふるさとを こふるなみたの なかりせは なにをかたひの みにはそへまし登蓮
952ふるさとに かよふこころの みちはあれと こえてあとなき みねのしらくも為定(御子左二条為道男)
953やまひめの もみちのにしき われにかせ ふるさとひとに きてもみゆへく有範
954あはれなと あひもおもはぬ ふるさとに たひねとなれは こひしかるらむ為家
955つゆなから むすふをささの かりまくら かりそめふしの いくよへぬらむ実雄
956いはしろの をかのかやねを むすふよも ゆめはみやこに かはらさりけり行能
957ふるさとに ちきりしひとも ねさめせは わかたひねをも おもひやるらむ為兼
958むすひすてて よなよなかはる たひまくら かりねのゆめの あともはかなし為兼
959たまかつま あへしまやまの ゆふつゆに たひねしかねつ なかきこのよを読人不知
960ちきりありて かかるおもひや つくはねの みねともひとの やかてこひしき公蔭
961しられしな おさふるそての なみたかは したにははやき みつのこころを良基(二条道平男)
962しはしこそ そてにもつつめ なみたかは たきつこころを いかてせかまし教長
963わかこひは はつもとゆひの こむらさき いつしかふかき いろにみえつつ後醍醐院
964きのふけふ くものはたてに なかむとて みもせぬひとの おもひやはしる定家
965ものおもふと われたにしらぬ このころの あやしくつねは なかめかちなる光明院
966ひとしれぬ こころのうちの おもひゆゑ つねはなかめの ひころにもにぬ冷泉(花園院)
967いはかねの こりしくやまに あらなくに いもかこころの われにうこかぬ公蔭
968ふかきえの あしのしたねよ よしさらは たたくちはてね みこもりにして親子(従三位源)
969うつもるる ゆきのしたくさ いかにして つまこもれりと ひとにしらせむ大弐三位
970よそにては はなのたよりと みえなから こころのうちに こころあるものを貫之
971あをやきの かつらきやまの よそなから きみにこころを かけぬひはなし家隆
972はつしくれ おもひそめても いたつらに まきのしたはの いろそつれなき為兼
973ひとしれす おもふこころは としへても なにのかひなく なりぬへきかな敦忠
974うちたえて なかめたにせす こひすてふ けしきをひとに みせしとおもへは国信
975つらからむ ときこそあらめ あちきなく いはてこころを くたくへしやは重家
976いひいてむ ことのはもなほ しのはれて こころにこむる わかおもひかな後二条院
977いつとなく すすりにむかふ てならひよ ひとにいふへき おもひならねは徽安門院
978なみたをは もらさすとても ものおもふ こころのいろの えやはかくれむ直義
979しのひかね こころにあまる おもひなれは いはてもいろに いてぬへきかな新右衛門督(宣光門院)
980しらせねは あはれもうさも またみぬに なみたまてには なにかこほるる公蔭
981ほのかなる おもかけはかり みかつきの われておもふと しらせてしかな師継
982わかそてに おほえすつきそ やとりける とふひとあらは いかかこたへむ実朝
983つきはたた むかふはかりの なかめかな こころのうちの あらぬおもひに祝子内親王
984かれねたた そのなもよしや しのふくさ おもふにまけは ひともこそしれ為氏
985ほとときす いまはさつきと なのるなり わかしのひねそ ときそともなき為家
986しのふれは ねにこそたてね さをしかの いるののつゆの けぬへきものを長明
987こえてまた こひしきひとに あふさかの せきならはこそ なをもたのまめ俊成女
988こひしなむ のちのあはれの ためはかり かくともせめて しらせてしかな公顕
989さてもわか おもふおもひよ つひにいかに なにのかひなき なかめのみして永福門院
990つらくとも つひのたのみは ありなまし あはぬためしの なきよなりせは頼輔
991しのふれと おもふおもひの あまりには いろにいてぬる ものにそありける嘉言
992わするやと しはしはかりは しのふるに こころよわきは なみたなりけり元真
993わひつつは たのめたにせよ こひしなむ のちのよまても なくさめにせむ俊頼(源経信男)
994みをかへて みるみちもかな つれなさの ひとにもかかる ひとのこころか進子内親王
995おのつから わかおもひねに みるゆめや ひとはゆるさぬ ちきりなるらむ公重(西園寺実衡男)
996わすられむ なをたにせめて なけかはや それもなれての のちそとおもへは定忠母
997つれもなき ひとのこころの せきもりは ゆめちまてこそ ゆるささりけれ少将内侍(後醍醐院)
998つれもなき うつつをゆめに ひきかへて うれしきゆめを うつつともかな惟方
999しらせねは つれなきいろも みえぬまの うからぬひとに ものをこそおもへ公宗(西園寺実衡男)
1000おもひあまり しられむとおもふ ことのはも なほひとつての なかそかなしき順徳院
1001つゆはかり たのむこころは なけれとも たれにかかれる われならなくに高明
1002とふことの はしめはけふに みゆらめと おもふこころは としそへにける輔親
1003おとにのみ きけはかひなし ほとときす ことかたらはむと おもふこころあり兼家
1004かたらはむ ひとなきさとに ほとときす かひなかるへき こゑなふるしそ道綱母
1005かくれなき にほのかよひち いまさらに あさきこころの みつからそうき兼氏
1006うめかかは しるへかほなる はるかせの たかゆくへとも なとやふきこぬ隆信
1007しらるへき ゆくへならねと うめかかに さそはれてこは いかかいとはむ読人不知
1008いろふかく そめしこころそ わすられぬ みやまのさとの うめのにほひに隆信
1009かへりにし こころのいろの あさけれは あたにそめける はなとこそみれ読人不知
1010あやしくも こころのうちそ みたれゆく ものおもふみとは なさしとおもふに永福門院
1011くやしくそ しはしひとまを ゆるしつる ととめかねける そてのなみたを実衡女
1012おほかたに なれしひころも うときかな かかるこころを おもひけるよと徽安門院
1013おもふかたに ききしひとまの ひとことよ さてもいかにと いふみちもなし永福門院
1014あちきなや ひとのうきなを たてしゆゑ わかおもひをは なきになしつる後伏見院
1015うちつけに あはれなるこそ あはれなれ ちきりならては かくやとおもへは花園院
1016おもふてふ ことはかくこそ おほえけれ またしらさりし ひとのあはれの徽安門院
1017あひおもふ こころとまては たのまねと うきなはひとも さそしのふらむ為忠(御子左二条為藤男)
1018なきなそと わかこころにも こたへはや そのよのゆめの かことはかりは新宰相(伏見院)
1019さてもとも とはれぬいまは またつらし ゆめなれとこそ いひしものから実明女
1020ゆめにたに みつとはいはし おのつから おもひあはする ひともこそあれ俊定(藤原経俊男)
1021なきなとも ひとにはいはし それをたに つらきかなかの おもひてにして宗宣(北条宣時男)
1022ゆめかなほ みたれそめぬる あさねかみ またかきやらむ すゑもしらねは右衛門督(永福門院)
1023けさよなほ あやしくかはる なかめかな いかなるゆめの いかかみえつる進子内親王
1024とにかくに はれぬおもひに むきそめて うきよりさきに もののかなしき永福門院
1025われはおもひ ひとにはしひて いとはるる これをこのよの ちきりなれとや光厳院
1026ねられねは ゆめにはあらし おもかけの こころにそひて みゆるなりけり進子内親王
1027さすかいかに ひとのおもはは やすからむ つつむかうへの ゆめのあふせも一条(徽安門院)
1028ことかよふ みちもさすかに なからめや たたうきなかそ しのふにはなる右衛門督(永福門院)
1029をりをりに ききみることの それもみな こひしきことの すさひにそなる為秀
1030こひしさに みのうきことも わするれは つらきもひとは うれしかりけり俊頼(源経信男)
1031おもはしと こころをもとく こころしも まとひまさりて こひしかるらむ保憲女
1032うつせみの ひとめをしけみ あはすして としのへぬれは いけりともなし読人不知
1033こころには もえておもへと うつせみの ひとめをしけみ いもにあはぬかも読人不知
1034ひとことを しけしといもに あはすして こころのうちに こふるこのころ読人不知
1035うつつには さらにもいはす ゆめにたに いもかたもとを まきぬとしみは家持
1036いかならむ ひのときにかも わきもこか もひきのすかた あさにけにみむ読人不知
1037かくはかり こひむとかねて しらませは いもをはみすそ あるへかりける読人不知
1038つつむなかの かさねてきかぬ ちきりこそ まつものからに たのみかたけれ永福門院
1039うれしとも ひとかたにやは なかめらるる まつよにむかふ ゆふくれのそら永福門院
1040たのましと おもふこころは こころにて くれゆくそらの またいそかるる冷泉(花園院)
1041かならすと さしもたのめぬ ゆふくれを われまちかねて われそかなしき親子(従三位源)
1042とはすとも さはるとせめて きかすなよ まつをたのみの ゆふくれのそら重能
1043とへかしと おもふこころの あらましに たのめぬくれそ そらにまたるる新宰相(伏見院)
1044たのまねと たのめしくれは まつといはむ あはれとおもふ かたもありやと新宰相(伏見院)
1045よしさらは またしとおもふ ゆふくれを またおとろかす いりあひのかね尊氏
1046くれにけり あまとふくもの ゆききにも こよひいかにと つたへてしかな永福門院
1047おのつから おもひもいては とはかりの わかあらましに まつそはかなき実衡女
1048たのまねは またぬになして みるよはの ふけゆくままに なとかかなしき為兼
1049よひのまは たれもひとめを つつめはと ふくるつらさを わすれてそまつ円伊
1050つつむなかは ひとめにさはる かたやあると ふけてしもこそ なほまたれけれ冬氏女
1051たのめすてて とはぬはさこそ やすくとも まつこころをは おもひやらなむ永福門院
1052いくゆふへ むなしきそらに とふとりの あすかならすと またやたのまむ後伏見院
1053みるもうし さすかさこそと まつくれに あすかならすの ひとのたまつさ進子内親王
1054おもかけは こころのうちに さきたちて ちきりしつきの かけそふけぬる冬平
1055ちきらぬに ひとまつなこそ をしからめ つきはかりをは みぬよはそなき下野(四条太皇太后宮)
1056ふけにける まきのいたとの やすらひに つきこそいつれ ひとはつれなし隆祐
1057わすれすは よよしとひとに つけすとも つきみるたひに まつとしらなむ和氏
1058ふけぬとも たれにかいはむ ひとしれす まつよのつきの よひすくるかけ公宗(西園寺実衡男)
1059まきのとを かせのならすも あちきなし ひとしれぬよの ややふくるほと永福門院
1060ひとはいさ あたしちきりの ことのはを まことかほにや まちふけぬらむ客子(従三位)
1061おもひとり うらみはてても かひそなき たのむれはまた またれのみして伏見院
1062われもひとも あはれつれなき よなよなよ たのめもやます まちもよわらす永福門院
1063ふけぬれと さはるときかぬ こよひをは たのみのうちに まつもはかなし新右衛門督(宣光門院)
1064ふけにけり またとはれてと むかふよの なみたににほふ ともしひのかけ花園院
1065いもまつと やまのしつくに たちぬれて そほちにけらし わかこひころも土御門院
1066ふけはてぬ たのめしをさへ わすれてや さはるとたにも おとつれもなき新宰相(伏見院)
1067さらにこそ あすのちきりも たのまれね すすまぬかたの さはりとおもへは尊胤法親王
1068さのみやと われさへはては つれなきに こよひはひとに まつとしられし春日(進子内親王家)
1069さはりあれは のちかならすの なくさめよ いくたひききて いくよまつらむ為子(従二位)
1070しひてなほ たのみやせまし いつはりの ちきりもさすか かきりありやと経顕(藤原定資男)
1071いつはりの あるよとたれも しりなから ちきりしままを たのむはかなさ資明
1072たまさかの ひとめのひまを まちえても おもふはかりは ちきりやはする経教
1073つもりける ほとをもひとに みゆはかり まつよのとこの ちりははらはし公宗母
1074おもひやる ねさめもいかか やすからむ たのめしよはの あらぬちきりは進子内親王
1075とはすなり いまよりかくや へたてゆかむ こよひはかりは さてあかすとも伏見院
1076いひしままの こよひたかはぬ こよひにて またあすならは うれしからまし永福門院
1077このくれの こころもしらて いたつらに よそにもあるか わかおもふひと永福門院
1078けふのあめよ はるるもわひし ふるもうし さはりならひし ひとをまつとて内侍(永福門院)
1079わかかたの さはりをしひて うらみねは あさかりけりと つらくこそなれ親子(従三位源)
1080たのめねは こぬをうしとは かこたねと かかるつきよを ひとりみよとや俊兼
1081なかなかに たのめさりせは さよころも かへすしるしは みえもしなまし資盛
1082よかれそむる ねまちのつきの つらさより はつかのかけも またやへたてむ為兼
1083むなしくて またあけぬるよ ひとよこそ けにもさはりの あるかともおもへ為子(従二位)
1084さりともと けふをはまちし きのふこそ よかれになれぬ こころなりけれ実衡女
1085さりともと なほまつものを いまはとて こころよわくそ とりはなくなる重保
1086むなしくて あけつるよはの おこたりを けふやとまつに またおともなし進子内親王
1087なにとなく こよひさへこそ またれけれ あかぬきのふの こころならひに永福門院
1088とはぬかな とふへきものを いかにあれは きのふもけふも またすきぬらむ永福門院
1089はりまかた うらみてのみそ すきしかと こよひとまりぬ あふのまつはら顕季
1090いまさらに くるしさまさる あふさかを せきこえなはと なにおもひけむ兼氏
1091あひもせす あはすもあらぬ けふやさは ことありかほに なかめくらさむ頼政
1092こころをは くもゐのつきに とめなから ゆくへもしらす あくかれよとや隆信
1093ゆくへなき つきもこころし かよひなは くものよそにも あはれとやみむ読人不知
1094あふことに みをはかへむと いひしかと さてしもをしき いのちなりけり重家
1095うきなかの それをなさけに ありしよの ゆめよみきとも ひとにかたるな為子(従二位)
1096いきてよの わすれかたみと なりやせむ ゆめはかりたに ぬともなきよは為家
1097あかさりし やみのうつつを かきりにて またもみさらむ ゆめそはかなき四条(安嘉門院)
1098あひみつる こよひのあはれ ゆめなれな さめてはものを おもはさるへく内侍(永福門院)
1099ゆめとてや かたりもせまし ひとしれす おもふもあかぬ よはのなこりを為子(従二位)
1100うつつにも あははかくこそと おもひねの ゆめはさめても うれしかりけり為基(京極為兼猶子)
1101まとろまぬ ときさへゆめの みえつるは こころにあまる ゆききなりけり為家
1102たましひは うつつのゆめに あくかれて みしもみえしも おもひわかれす四条(安嘉門院)
1103ぬるかうちに あふとみつるも たのまれす こころのかよふ ゆめちならねは長舜
1104ききてたに みこそこかるれ かよふなる ゆめのたたちの ちかのしほかま為家
1105みをこかす ちきりはかりか いたつらに おもはぬなかの ちかのしほかま四条(安嘉門院)
1106つつむなかは まれのあふよも ふけはてぬ ひとのしつまる ほとをまつまに一条(徽安門院)
1107かきみたす ねくたれかみの まゆすみも うつりにけりな さよのたまくら実兼
1108あひかたき きみにあへるよ ほとときす ことときよりは いまこそなかめ読人不知
1109からあゐの やしほのころも あさなあさな なれはすれとも いやめつらしみ読人不知
1110むかふなかの つらくしもなき けしきにそ ひころのうさも いはすなりぬる章義門院
1111わかために ふかきかたには いひなせと たかさはるよの すさひなるらむ一条(徽安門院)
1112あはれなり かかるひとまの ときのまも またいかならむ よにかとおもへは御匣(新室町院)
1113ひとにたに しのふるなかの あかつきを たれしらせてか とりのなくらむ四条(安嘉門院)
1114たまたまの こよひひとよは ゆめにして またいくつきひ こひむとすらむ徽安門院
1115わかれちを いそかすとりの こゑよりも またそらたかき つきそうれしき後伏見院
1116うかりける ひとこそあらめ あかつきの くもさへみねに なとわかるらむ公宗(西園寺実衡男)
1117ふけてとふ よはののこりは すくなきを またかへるさに なほいそくらむ法守法親王
1118さてもまた いつそとたにも いひかねて むせふなみたに おきわかれぬる忠季(藤原公蔭男)
1119きぬきぬを いそくわかれは よふかくて またねひさしき あかつきのとこ永福門院
1120あかつきを うきものとたに しらさりき まくらさためぬ ゆめのちきりは客子(従三位)
1121たまさかの よをさへわくる かたのあれや とりのねをたに きかぬわかれち光厳院
1122いてかてに またたちかへり をしむまに わかれのとくち あけすきぬなり進子内親王
1123あけぬるか またはいつかの とりのねに ひとのたのめを きくまてもなし親子(従三位源)
1124てにむすふ ほとたにあかぬ やまのゐの かけはなれゆく そてのしらたま定家
1125あけぬとて なくなくかへる みちしはの つゆはわかおく ものにそありける頼政
1126またやみむ またやみさらむ とはかりに おもかけくるる けさのわかれち後伏見院
1127われならぬ ひともやしのふ かへるさの よふかきみちに あへるをくるま実明女
1128やこゑなく かけのたれをの おのれのみ なかくやひとに おもひみたれむ為家
1129なこりをは さすかにかくる たまつさに またこのくれと なとかたのめぬ進子内親王
1130そのままの ゆめのなこりの さめぬまに またおなしくは あひみてしかな永福門院
1131いつとまつ ひかすはしはし なくさむを けさわかれぬる けふそわひしき親子(従三位源)
1132まれにみる ゆめのなこりは さめかたみ けさしもまさる ものをこそおもへ内侍(永福門院)
1133ひとはゆき きりはまかきに たちとまり さもなかそらに なかめつるかな和泉式部
1134たまゆらに きのふのゆふへ みしものを けふのあしたは こふへきものか読人不知
1135けさこそは わかれてきつれ いつのまに おほつかなくも おもふなるらむ元真
1136いかにせむ よにいつはりの あるままに わかかねことを ひとのたのまぬ後二条院
1137よしいまは たのますとても ことのはの かはるかすゑに おもひあはせは道平
1138かきりなく ふかきちきりを きくなかに ひとにもさその なからましかは徽安門院
1139なほゆかし おもふそといふ そのうちの ふかきかきりは われはかりかと実明女
1140ひとよまして こころのそこの あはれをは われにてしらぬ おくものこるを花園院
1141なるるまの あはれにつひに ひかれきて いとひかたくそ いまはなりぬる永福門院
1142かよひけりと おもひしられし ひとつまに こころのいろの そひまさるころ親子(従三位源)
1143こひうらみ きみにこころは なりはてて あらぬおもひも ませぬころかな宣子(従三位藤原)
1144あはれさらは わすれてみはや あやにくに わかしたへはそ ひとはおもはぬ進子内親王
1145まさるかたの ひとにいかなる ことのはの わかきかさりし きはをいふらむ実明女
1146さのみたた あはれなるしも たのまれす かくてはひとの はてしとおもへは別当(花園院)
1147うらみても おもひしらねは なかなかに なにかこころの いろをみえけむ高広
1148もらすより あたなるほとの しらるれは いひしちきりの すゑもたのます為理
1149ひとたひの あふせにかへし いのちなれは すてもをしみも きみにのみこそ冷泉(花園院)
1150なにかいふ のちのよまての かねことよ ひともおもはし われもたのます為名
1151はしめより たのましすへて たのむより つらきうらみは そふとおもへは兵衛督(花園院)
1152うきなから さすかにたえぬ ちきりをは なほもあはれに なしこそはせめ花園院
1153おもひけつ かきりこそあれ うきみそと しのふかうへも あまるつらさを儀子内親王
1154つらさをは うきみのとかと かこちつつ あはれをなほも さましかねぬる光明院
1155さはかりも こころととめて おもふかと うらむるにしも そふあはれかな冷泉(花園院)
1156おもひけりと たのみなりての のちしもそ はかなきことも ひとよりはうき為兼
1157おもひとりし きのふのうさは よわれはや けふはまつそと またいはれぬる為兼
1158ならひあらは けにもしやとも たのままし いつはりとしも みえぬことのは永福門院
1159さらはとて たのむになれは ひとこころ およはぬきはの おほくもあるかな花園院
1160ひとよされは たれかよかるる よかれとて あはぬたえまを うしといふらむ一条(徽安門院)
1161けにおもふ こころのうちは ことのはの およはぬうへも みゆらむものを法守法親王
1162かはかりも おもひけるよの あはれより われもこころを ゆるしたちぬる新右衛門督(宣光門院)
1163おもふかたに よしたたすへて おしこめて さのみはひとの こころをはみし永福門院
1164うきもちきり つらきもちきり よしさらは みなあはれにや おもひなさまし永福門院
1165うきにそふ あはれにわれも みたされて ひとかたにしも えこそさためね進子内親王
1166ひとはしらし いまはとおもひ とるきはは うらみのしたに よわきあはれも公宗女
1167さきのよを おもふさへこそ うれしけれ ちきりもけふの ちきりのみかは有家(藤原重家男)
1168ちきりしを たのめはつらし おもはねは なにをいのちの なくさめそなき為家
1169おしかへし あはれなるかな むくひありて うきもふたよの ちきりとおもへは公蔭
1170うきにしも あはれのそふよ これそこの のかれさりける ちきりとおもふに一条(花園院)
1171おもひとけは こころつからに かへれとも たたなほひとの うきにおほゆる忠季(藤原公蔭男)
1172みをしらぬ おもひとひとや おもふらむ うきをはおける うへのおもひを教良女
1173われもいひき つらくはいのち あらしとは うきひとのみや いつはりはする為子(従二位)
1174かきりなく うきものからに あはれなるは いつれわかみの こころなるらむ新宰相(伏見院)
1175いはねとも つらしとおもふ いろやみゆる なくさめかほに ひとのうらむる一条(徽安門院)
1176わひぬれは かくこそものは あはれなれ たえぬはかりの たまたまのよを公重(西園寺実衡男)
1177うからぬも ましてうきにも あはれあはれ よしなかりける ひとにちきるを徽安門院
1178あはれなる ふしもさすかに ありけるよ おもひいてなき ちきりとおもへと徽安門院
1179それまては おもひいれすやと おもふひとの うらむるふしそ さてはうれしき光厳院
1180われとひと あはれこころの かはるとて なとかはつらき なにかこひしき儀子内親王
1181かねてより うらみおかはや うきにならむ こころののちは かひもあらしを道平
1182つらけれと なほこひしきよ みのほとの うきをはしらぬ ひとのならひに公守女
1183あはれしらし つねのうらみに おもなれて これをまことの かきりなりとも公宗女
1184ひとのかよふ あはれになして あはれなるよ ゆめはわかみる おもひねなれと一条(徽安門院)
1185さめかたみ しはしうつつに なしかねぬ あはれなりつる ゆめのなこりを一条(花園院)
1186おもかけは のこるかたみの うつつにて またみぬゆめの さむるまもなし公雄
1187おのつから ゆめちはかりの あふことを かよふこころと たのむはかなさ懐世
1188おもひつくす こころよゆきて ゆめにみゆな そをたにひとの いとひもそする為子(従二位)
1189つらきをは よよのむくひと おもふにも ひとはうからて なほそこひしき俊兼
1190よよのちきり いかかむすひしと おもふたひに はしめてさらに ひとのかなしき光厳院
1191おほかたは たのむへくしも なきひとの うからぬにこそ おもひわひぬれ永福門院
1192それしもや うきみはひとに いとはれむ ふかきおもひの きはをみすとも兵衛督(花園院)
1193かはりゆく きのふのあはれ けふのうらみ ひとにこころの さためなのよや伏見院
1194おちけりな われたにしらぬ なみたかな まくらぬれゆく よはのひとりね徽安門院
1195そのゆくへ きけはなみたそ まつおつる うさこひしさも おもひわかねと右衛門督(永福門院)
1196おもはぬに なすこころしも いかなれや つねはなかめて なみたのみうく兵衛督(花園院)
1197あはれにも うさにもおつる わかなみた さものこりある ものにそありける兼季
1198つらけれと おもひしらぬに なすものを なにとなみたの さのみおつらむ家親
1199うきふしも おもひいれしと おもふみに なにゆゑさのみ おつるなみたそ公直母
1200なみたたに おもふかほとは こほれぬよ あまりくたくる いまのこころに伏見院
1201おもひおもひ なみたとまてに なりぬるを あさくもひとの なくさむるかな伏見院
1202せめてたた おもふあたりの ことをたに おなしこころに いふひともかな為子(従二位)
1203わたるせの さもさためなき なかかはよ しほのみちひる うらならなくに小宰相(徽安門院)
1204ひとこころ おもひみたるる かくなはの とにもかくにも むすほほれつつ覚助法親王
1205ゆふくれは おもひみたれて くもとりの あやにこひしき ひとのおもかけ為成(冷泉為相男)
1206くれなゐに そてそうつろふ こひしきや なみたのかはの いろにはあるらむ貫之
1207うらふれて ものなおもひそ あまくもの たゆたふこころ わかおもはなくに読人不知
1208こひしさの あまつみそらに みちぬれは なみたのあめは ふるにそありける実家(藤原公能男)
1209あまくもの たえまたえまを ゆくつきの みらくすくなき いもにこひつつ公蔭
1210そのままに おもひあはする かたそなき あたにみしよの うたたねのゆめ隆教
1211しらさりし よふかきかせの おともせす たまくらうとき あきのこなたは定家
1212きみゆゑに おもふおもひは おほうみの なみをはそてに かけぬまもなし公蔭
1213いせのうみ なきさにひろふ たまたまも そてほすまなき ものをこそおもへ伏見院
1214こひしさに なりたつなかの なかめには おもかけならぬ くさもきもなし伏見院
1215なにとなく うちもおかれぬ たまつさよ あはれなるへき ふしはなけれと公宗女
1216おもふほとは かかしとおもふ たまつさに なほともすれは すすむことのは儀子内親王
1217なほさりに ひとはみるらむ たまつさに おもふこころの おくはのこさむ新右衛門督(宣光門院)
1218かよふとて いかかたのまむ いたつらに すゑもとほらぬ みつくきのあと実性
1219ときはやま つゆももらさぬ ことのはの いろなるさまに いかてちりけむ読人不知
1220いろかへぬ ときはなりせは ことのはを かせにつけても ちらさましやは相模
1221これやさは あたちのまゆみ いまこそは おもひためたる こともかたらめ左近(三条院女蔵人)
1222かさしけむ ぬしはしらたま しらねとも てにとるからに あはれとそおもふ師継
1223しらたまか なにそとたとる ひともあらは なみたのつゆを いかかこたへむ公相
1224つれつれと なかめのみする このころは そらもひとこそ こひしかるらし定頼
1225ほとふれは わすれやしぬる はるさめの ふることのみそ われはこひしき朝光
1226いととしく ぬれのみまさる ころもてに あめふることを なににかくらむ馬内侍
1227かへるかり わかことつてよ くさまくら たひはいもこそ こひしかりけれ貫之
1228くひなたに たたくおとせは まきのとを こころやりにも あけてみてまし和泉式部
1229いかにして わするるものそ わきもこに こひはまされと わすられなくに読人不知
1230おほはらの ふりにしさとに いもをおきて われいねかねつ ゆめにみえつつ読人不知
1231わきもこに あふよしもなみ するかなる ふしのたかねの もえつつかあらむ読人不知
1232よのなかは あすかかはにも ならはなれ きみとわれとか なかしたえすは小町
1233けふはもし ひともやわれを おもひいつる われもつねより ひとのこひしき永福門院
1234そらのいろ くさきをみるも またかなし いのちにかくる ものをおもへは進子内親王
1235ものおもふ こころのいろに そめられて めにみるくもも ひとやこひしき為兼
1236こひあまる なかめをひとは しりもせし われとそめなす くものゆふくれ花園院
1237いましもあれ ひとのなかめも かからしを きゆるもをしき くものひとむら永福門院
1238それをたに おもひさまさし こひしさの すすむままなる ゆふくれのそら伏見院
1239ねられねは たたつくつくと ものをおもふ こころにかはる ともしひのいろ新宰相(伏見院)
1240まちすくす つきひのほとを あちきなみ たえなむとても たけからしみを光厳院
1241かくやはと おほえしきはも おほえけり すへてひとには なれてそあらまし教良女
1242いまはとて つらきになして みるひとの さてもいかにと いふしもそうき俊兼
1243こひしさも ひとのつらさも しらさりし むかしなからの わかみともかな為子(従二位)
1244ききそふる きのふにけふの うきふしに さめぬあはれも あやにくにして花園院
1245うらみたらは さこそあらめと おもふかたに おもひむせひて すくるころかな公蔭
1246いととこそ たのみところも なくならめ うきにはしはし おもひさためし伏見院
1247したふかたの すすむにつけて いとひまさる ひととわれとの なかそはるけき後伏見院
1248さためなき ひとのこころの いかなれは うきひとかたに かはりゆくらむ寛尊法親王
1249すへてこの なみたのひまや いつならむ あはれはあはれ うきはうしとて儀子内親王
1250おもひとれは さすかあはれも そふものを つねのうらみの なみたとやみる公蔭
1251つねはたた ひとりなかめて おほかたの ひとにさへこそ うとくなりゆけ花園院
1252いふきはは およはぬうさの そこふかみ あまるなみたを ことのはにして光厳院
1253おほかたの よはやすけなし ひとはうし わかみいつくに しはしおかまし永福門院
1254そことなき うらみそつねに おもほゆる いかにそひとの あらすなるころ花園院
1255かはりたつ ひとのこころの いろやなに うらみむとすれは そのふしとなき永福門院
1256これやさは かはるなるらむ そのふしと みえぬものから ありしにもにぬ儀子内親王
1257かはりたつ すへてうらみの そのうへに うさあはれさは かりのふしふし花園院
1258とはぬまを わすれすなから ほとふるや とほさかるへき はしめなるらむ恒明親王
1259くれなはと たのむるよはの ふけしより むなしくあくる うさそかさなる大納言(昭訓門院)
1260かはりゆく こころとみゆる そのうへの なけのなさけよ よしやいつまて覚誉法親王
1261かはるかと ひとにこころを とめてみれは はかなきふしも ありしにそにぬ内侍(永福門院)
1262うさはまして あはれとおもふ なかにしも かはるこころの いろはみゆるを実明女
1263ひとすちに うきよりもなほ うかりけり ありしにかはる ひとのなさけは右衛門督(永福門院)
1264かはるてふ ひとよけにこそ かかりけれ きのふみさりし けふのつらさは儀子内親王
1265うらみはてむ いまはよしやと おもふより こころよわくそ またあはれなる中納言典侍(後伏見院)
1266ひとはうく われのみさめぬ あはれにて つひのちきりの はてそゆかしき新右衛門督(宣光門院)
1267せめてわか おもふほとこそ かたくとも かけよやつねの なさけはかりは実煕
1268いかにせむ つねのつらさは つらさにて いまひとしほの さらにそふころ俊冬
1269つらしとも なほよのつねの うらみかは いつくにのこる こころよわさそ公宗母
1270つらしとも なかなかなれは いひもせて うらみけりとは いかてしらせむ進子内親王
1271おもひとる たたこのままの つらさにて またはあはれに かへらすもかな儀子内親王
1272あははやの たたひとかたを おもひにて わひぬるはては うさもしられす俊兼
1273あはれみせし ひとやはあらぬ うきやたれ われはかはらぬ もとのみにして冷泉(花園院)
1274ひとこそあれ われさへしひて わすれなは なこりなからむ それもかなしき花園院
1275ひとしれす われのみよわき こころかな このひとふしそ かきりとおもふに花園院
1276われのみは うさをもしひて しのふとも かはるかうへの ひとはいつまて右衛門督(永福門院)
1277うきにいとふ またおなしよを をしむとて いのちひとつを さためかねぬる徽安門院
1278いかにせむ くものゆくかた かせのおと まちなれしよに にたるゆふへを新大納言(延政門院)
1279たなはたの ちきれるあきも きにけるよ いつとさためぬ われそわひしき高明
1280まれにあふと いふたなはたも あまのかは わたらぬとしは あらしとそおもふ貫之
1281さらにこそ わすれしことの おもほゆれ けふほしあひの そらになかめて後伏見院
1282はれすのみ こころにものを おもふまに はきのはなさく あきもきにけり永福門院
1283あきなれは はきののもせに おくつゆの ひるまにさへも こひしきやなそ光孝天皇
1284はきのはの いろつくあきを いたつらに あまたかそへて すくしつるかな貫之
1285わかやとの あきのはきさく ゆふかけに いまもみてしか きみかすかたを読人不知
1286きみにこひ うらふれをれは あきかせに なひくあさちの つゆそけぬへき実朝
1287ものおもふに あはれなるかと われならぬ ひとにこよひの つきをとははや和泉式部
1288なかむらむ おなしつきをは みるものを かはすにかよふ こころなりせは小侍従(太皇太后宮)
1289こよひわか とはれましやは つきをみて かよふこころの そらにしるくは雅通(源雅定男)
1290おもふひと こよひのつきを いかにみるや つねにしもあらぬ いろにかなしき伏見院
1291さらさりし そのよはつきを いかかみし むかへはひとの うさになりゆく新宰相(伏見院)
1292あはれいかに おもふこころの あらさらむ なかめはつきに いまかよふとも公蔭
1293みるからに こひしさをのみ もよほして ひとをさそはぬ つきもうらめし為相
1294かはらぬも なかなかつらし もろともに みしよのつきは おなしおもかけ隆清
1295おもひいつる こころやきみは なかるらむ おなしありあけの つきをみるとも行尊
1296うきものと うらみてもなほ かなしきは おもかけさらぬ ありあけのつき通雄
1297われとこそ なかめなれにし やまのはに それもかたみの ありあけのつき良経(九条兼実男)
1298きみこふと しなえうらふれ わかをれは あきかせふきて つきかたふきぬ読人不知
1299いもをおもひ いのねられぬに あかつきの あさきりかくれ かりそなくなる読人不知
1300このくれに わかこひをれは さむきかり なきつつゆけは いもかりかゆく伏見院
1301あはれまた ゆめたにみえて あけやせむ ねぬよのとこは おもかけにして内侍(永福門院)
1302わすれむと おもふはおのか こころにて たかおとろかす なみたなるらむ順徳院
1303うしとても たれにかとはむ つれなくて かはるこころを さらはをしへよ定家
1304ひとにうつる こころをたにも をしへおけ さらはなくさむ かたもありやと兵衛督(花園院)
1305われなから われにかなはぬ こころなれや わすれむとすれは しひてこひしき定宗(藤原家親男)
1306うきにならふ こころかあはれ たまさかの ひとのなさけの いまはうれしき親行(藤原家親男)
1307わかこころ うらみにむきて うらみはてよ あはれになれは しのひかたきを為子(従二位)
1308かくてしも おもひやよわる とはかりに うきかうれしき かたもありけり忠季(藤原公蔭男)
1309うきかうへの なほもなさけの うちにこそ きみにいのちを すててきかれめ実明女
1310うきことを いかになへてに おもひなさむ うれしくとても いくほとのよに伏見院
1311うきもよし むくひなるらむと おもへとも みえぬよよには なくさまはこそ儀子内親王
1312ひとよりは みこそうけれと おもひなすに それしもものの かなしきものを新宰相(伏見院)
1313おなしよに いくたひものを おもへとて つらきにかへる こころなるらむ為定(御子左二条為道男)
1314うきゆゑも かくやはとおもふ ふしふしよ われこそひとを なほたのみけれ祝子内親王
1315つらさをも おもふはかりは えそいはぬ かこともとむる ひとのけしきに公蔭
1316ひきかへて かはるしもうし おもふいろを さのみはひとの なにかみせけむ直義
1317かはかりの うさならさりし ころたにも をりをりませし そこのうらみを兵衛督(花園院)
1318たえねはと おもふもかなし ささかにの いとはれなから かかるちきりは為家
1319ひとをひとの おもふかきりを みるにしも くらふとなしに みそあはれなる徽安門院
1320すへてたた ひとになれしと こりぬるも いつのためそと あはれなるかな永福門院
1321わひつつは ひとにまかせて うらみぬを うきをもしらぬ こころとやおもふ公宗(西園寺実衡男)
1322なほしはし うきをはうきに なしはてし かはるこころの かはりもそする宗秀(藤原宗泰男)
1323うきなかよ うらみのかすは つもれとも なさけとおもふ ひとふしもなし尊氏
1324いまははやと おもひしことも いくへたて へたつるはては ことのはもなし永福門院
1325なほしはし このひとふしは うらみはてし なしかとおもふ なさけもそみる永福門院
1326うきふしは かすにもあらす しつたまき くりかへしては なほそこひしき後嵯峨院
1327つらかりし きみにまさりて うきものは おのかいのちの なかきなりけり伊尹
1328こひしとも なにかいまはと おもへとも たたこのくれを しらせてしかな光厳院
1329まよひそめし ちきりおもふか つらきしも ひとにあはれの よよにかへるよ徽安門院
1330たちかへり これもゆめにて またたえは ありしにまさる ものやおもはむ永福門院
1331おのつから あふよありやと まつほとに おもひしよりも なからへにける公清室
1332なからへは おもひいててや とはるると いけるかひなき みををしむかな師直
1333なからへて あらはとたのむ いのちさへ こひよわるみは あすもしられす雅孝
1334なかなかに おもひたえなむと おもふこそ こひしきよりも くるしかりけれ清輔
1335しなはやと おもふさへこそ はかなけれ ひとのつらさは このよのみかは大輔(殷富門院)
1336ひとこころ うきにたへたる いのちこそ つれなきよりも つれなかりけれ実家(藤原公能男)
1337たまのをを かたをによりて ををよわみ みたるるときに こひさらめやも読人不知
1338たまかつら かけぬときなく こふれとも いかにかいもに あふときもなき読人不知
1339ますらをの うつしこころも いまはなし よるひるいはす こひしわたれは読人不知
1340つゆにたに こころおかるな なつはきの したはのいろよ それならすとも道信
1341すむとしも なくてたえにし わすれみつ なにゆゑさても おもひいてけむ読人不知
1342ひともみな むすふなれとも わすれみつ われのみあかぬ ここちこそすれ頼政
1343いかてわれ ひとをわすれむ わすれゆく ひとこそかくは こひしかりけれ二条院
1344ほとなくそ のこるかたえに うつしける ちりにしはなに そめしこころを為子(従二位)
1345さらはとて うらみをやめて みるなかの うきつまつまに たのみかねぬる永福門院
1346みるひとも ものをおもはぬ さまなれは こころのうちを たれにうれへむ永福門院
1347なけくらむ こふらむとたに おもひいてよ ひとにはひとの うつりはつとも公宗母
1348うしとのみ われさへすつる みのはては なほたれゆゑと かこたすもなし実衡女
1349いとふしも かこちかほにや おもひなさむ つれなしとたに かけしいのちを伏見院
1350なににかかる いのちそされは つれもなく われやはをしむ ひともいとふを重資
1351ひともさそ つれなきかたに おもふらむ したふににたる いのちなかさを公宗母
1352わすらるる わかみもひとも あらぬよに たかおもかけの なほのこるらむ資名
1353われさへに こころにうとき あはれさよ なれしちきりの なこりともなく祝子内親王
1354うきなから おもひいてける をりをりや ゆめにもひとの みえしなるらむ公宗母
1355またかよふ おなしゆめちも あるものを ありしうつつそ うたてはかなき為秀
1356おもひさます みをしるかたの ことわりも あまりうきには またわすれぬる為子(従二位)
1357おもひつらね さもうかりけると おもふのちに またこひしきそ ことわりもなき伏見院
1358ためしなく つらきかきりや このきはと おもひしうへの うさもありけり伏見院
1359おのつから おもひいつとも いまはたた うきかたのみや わすれさるらむ小宰相(徽安門院)
1360なみたこそ おのかものから あはれなれ そをたにひとの ゆくへとおもへは良基(二条道平男)
1361あふことは たえぬるなかに おなしよの ちきりはかりそ ありてかひなき直義
1362ひとこころ うきあまりには おほかたの よをさへかけて いとひたちぬる盛親
1363こひしなむ みをもあはれと たれかいはむ いふへきひとは つらきよなれは実衡女
1364おもふかたへ せめてはなひけ こひしなむ わかよののちの けふりなりとも恒明親王
1365いとひをしみ われのみみをは うれふれと こふなるはてを しるひともなし永福門院
1366さまさまの わかなくさめも ことつきて いまはとよわる ほとそかなしき永福門院
1367いくほとと おもふあはれも またかなし ひとのうきよを われもおもへは右衛門督(永福門院)
1368まちなれし むかしににたる くものいろよ あらぬなかめの くれそかなしき朔平門院
1369つきのよは くものゆふへも みなかなし そのよにあはぬ ときしなけれは永福門院
1370わすらるる そてにはくもれ よはのつき みしよににたる かけもうらめし邦省親王
1371とひこかし またおなしよの つきをみて かかるいのちに のこるちきりを定家
1372そなたより ふきくるかせの つてにたに なさけをかくる おとつれそなき顕氏(六条顕家男)
1373あふことは くちきのはしの たえたえに かよふはかりの みちたにもなし朝定
1374わひはつる のちはかたみと しのふかな うかりしままの ありあけのつき隆朝
1375おもひたえ またみるましき ゆめにしも のこるなこりの さめかたきかな家親
1376しらさりし ふかきかきりは うつりはつる ひとにてひとの みえけるものを光厳院
1377おとせすは おともやすると まつほとに たえはたえよと おもひけるかな惟方
1378つらからむ ひとをもなにか うらむへき みつからたにも いとはしきみを相摸
1379われなから われからそとは しりなから いまひとたひは ひとをうらみむ読人不知
1380わすれぬと きかはそわれも わするへき おなしこころに ちきりこしかは相如(藤原相信男)
1381ゆめにたに みえはこそあらめ かくはかり みえすてあるは こひてしねとか家持
1382きみにあはて ひさしくなりぬ たまのをの なかきいのちの をしけくもなし読人不知
1383しきたへの まくらせしひと こととへや そのまくらには こけおひにけり人麿
1384いまよりは あひもおもはし すきにける としつきさへに ねたくもあるかな花山院
1385おもふといふ すきにしみたに うかりしを そふるつらさを おもひこそやれ読人不知
1386うらむとも こふともよしや わすらるる みをあるものと ひとにきかれし実衡女
1387つひにさても うらみのうちに すきにしを おもひいつるそ おもひいてもなき永福門院
1388とりのゆく ゆふへのそらよ そのよには われもいそきし かたはさためき伏見院
1389なほもよに あるやとかくる ひとつてよ うきみのうさを さらにしれとや伏見院
1390はかなくて たえにしひとの うきよりも ものわすれせぬ みをそうらむる肥後(京極前関白家)
1391あかさりし にほひのこれる さむしろは ひとりぬるよも おきうかりけり大輔(殷富門院)
1392しられしな うきみかくれの あやめくさ われのみなかき ねにはなくとも左京大夫(永陽門院)
1393おもかけの とまるなこりよ それたにも ひとのゆるせる かたみならぬを伏見院
1394よそなりし そのよにひとは かへれとも みはあらためぬ ものをこそおもへ永福門院
1395うらみすは ひともなさけや のこさまし みをしりけりと おもふあはれに善成
1396うらみしを わかうきふしに なしやはつる それよりたえし なかそとおもへは宗光
1397かくそありし そのよまてはの あはれより さらになみたも ふるきたまつさ忠季(藤原公蔭男)
1398ひとのすてし あはれをひとり みにとめて なけきのこれる はてそひさしき永福門院
1399おのつから とひもとはれも ひとつての ことのはのみを きくまてにして新宰相(伏見院)
1400おもひくたす うさもあはれも いくうつり よはあらぬよの みはもとのみに伏見院
1401いまはたた みすしらさりし いにしへに ひとをもみをも おもひなさはや公顕室
1402うきなから みをもいとはし よのなかに あれはそひとを よそにてもみる隆信
1403たかちきり たかうらみにか かはるらむ みはあらぬよの ふるきゆふくれ為相
1404たのみありて まちしよまての こひしさよ それもむかしの いまのゆふくれ為子(従二位)
1405つねよりも あはれなりしを かきりにて このよなからは けにさてそかし永福門院
1406わひつつは おなしよにたにと おもふみの さらぬわかれに なりやはてなむ家長(源時長男)
1407なほさりの あはれもひとの かくはかり あひみしときに きえなましかは崇徳院
1408おのつから おもひやいつる とはかりの わかなくさめも よそのとしつき宣子(従三位藤原)
1409わすれしの ひとのたのめは かひなくて いけるはかりの としつきそうき為氏
1410あたらしき としのはしめの うれしきは ふるきひととち あへるなりけり兼輔
1411はるきぬと おもふはかりの しるしには こころのうちそ のとかなりける顕輔
1412かすますは はるともえやは しらとりの とはやままつに ゆきはふりつつ頼重
1413みるままに のきはのやまそ かすみゆく こころにしらぬ はるやきぬらむ内侍(永福門院)
1414としことに はるのわするる やとなれは うくひすのねも よきてきこえす元輔(清原治光男)
1415わかやとを とふとはなしに はるのきて にはにあとある ゆきのむらきえ夢窓
1416おのつから なほゆふかけて かみやまの たまくしのはに のこるしらゆき為家
1417はつくさは したにもゆれと かたをかの おとろかうへの ゆきはけなくに重時
1418くらゐやま むすほほれつる たにみつは このはるかせに とけにけらしな清輔
1419くらゐやま はるまちえたる たにみつの とくるこころは くみてしらなむ隆信
1420ゆきかかる そとものうめは おそけれと まつはるつくる うくひすのこゑ直宣
1421よよへても あかぬいろかは のこりけり はるやむかしの やとのうめかえ範憲
1422わすれしな やとはむかしに あとふりて かはらぬのきに にほふうめかえ内侍(永福門院)
1423くちのこる ふるきのきはの うめかえも またとはるへき はるをまつらし為世(御子左藤原為氏男)
1424はるかせの こころのままに さそへとも つきぬはうめの にほひなりけり教兼
1425のきちかき うめのにほひも ふかきよの ねやもるつきに かをるはるかせ久時
1426うめのはな うつるにほひは かはらねと あらぬうきよに すみそめのそて家親
1427あはれにも おのれうけてや かすむらむ たかなすときの はるならなくに伏見院
1428かすみにほふ ゆふひのかけは のとかにて くもにいろある やまのはのまつ花園院
1429たちかへり むかしのはるの こひしきは かすみをわけし かものあけほの俊成(藤原俊忠男)
1430よさのうみ かすみわたれる あけかたに おきこくふねの ゆくへしらすも長方
1431こころありて みるとしもなき なにはえの はるのけしきは をしくもあるかな寂然
1432しらみゆく かすみのうへの よこくもに ありあけほそき やまのはのそら道良女
1433しののめの かすみもふかき やまのはに のこるともなき ありあけのつき頼春
1434しののめの ややあけすくる やまのはに かすみのこりて くもそわかるる為子(従二位)
1435みぬよまて おもひのこさぬ なかめより むかしにかすむ はるのあけほの良経(九条兼実男)
1436おもひいては おなしなかめに かへるまて こころにのこれ はるのあけほの慈円
1437おもふこと たれにのこして なかめおかむ こころにあまる はるのあけほの定家
1438くれぬとて なかめすつへき なこりかは かすめるすゑの はるのやまのは為兼
1439ふしみやま あらたのおもの すゑはれて かすまぬしもそ はるのゆふくれ伏見院
1440ふみわくる ゆきまにいろは みえそめて もえこそやらね みちのしはくさ為藤
1441いまはよに ありてものうき みのほとを のへのわらひの をりをりそしる四条(安嘉門院)
1442かすみたつ みねのさわらひ これはかり をりしりかほの やともはかなし定家
1443たらちねの あとやむかしに あれなまし おとろのみちの はるにあはすは家隆
1444はるくさは またうらわかき をかのへの をささかくれに ききすなくなり慈成
1445おもひたつ みちのしるへか よふことり ふかきやまへに ひとさそふなり定家
1446うつしうゑし いろかもしるき うめのはな きみにそわきて みすへかりける読人不知
1447うつしうゑし やとのうめとも みえぬかな あるしからにそ はなもさきける経盛
1448おもふこと はるともみには おもはぬに ときしりかほに さけるはなかな赤染衛門
1449かくこそは はるまつうめは さきにけれ たとへむかたも なきわかみかな行宗
1450やへさくら ひらくるほとを たのまなむ おいきもはるに あはぬものかは崇徳院
1451ときわかぬ きみかはるとや たちはなの かけもさくらに なほうつるらむ為兼
1452おもひやれ きみかめくみの ときにあひて みにあまりぬる はなのひかりを実泰
1453はなにあかて つひにきえなは やまさくら あたりをさらぬ かすみとならむ俊成(藤原俊忠男)
1454たつねつる はなはかきりも なかりけり なほやまふかく かかるしらくも公朝
1455よしのやま はなのためにも たつねはや またわけそめぬ すすのしたみち覚誉法親王
1456はなとりの なさけはうへの すさひにて こころのうちの はるそものうき伏見院
1457はなとりに なほあくかるる こころかな おいのはるとも みをはおもはて為相
1458ときしあれは はなうくひすの なさけをも ほかにたつねぬ はるのやまさと憲淳
1459はなのいろの むかしなからに みえつれは ひとのやととも おもほえぬかな伊勢
1460はなゆゑに みゆきふりにし わたりとは おもひやいつる しらかはのみつ惟規
1461しめのうちは みをもくたかす さくらはな をしむこころを かみにまかせて中将(式子内親王家)
1462しめのほかも はなとしいはむ はなはみな かみにまかせて ちらさすもかな右京大夫(建礼門院)
1463はるかせの いはねのさくら ふくたひに なみのはなちる あさくまのみや定忠
1464よそにのみ おもふくもゐの はななれは おもかけならて みえはこそあらめ頼政
1465おもはさりし みこそくもゐの よそならめ なれにしはなは わすれしもせし読人不知
1466おもひいつや なれしくもゐの さくらはな みしひとかすに われをありきと三河内侍(二条院)
1467わすれめや むかしみはしの さくらはな いまはくもゐの よそのおもかけ公雄
1468めつらしき みとりのそても くものうへの はなにいろそふ はるのひとしほ為兼
1469うもれきと なりはてぬれと やまさくら をしむこころは くちすもあるかな俊成(藤原俊忠男)
1470そてふれし はるはむかしに へたてきて はなにそうとき こけのころもて兼行
1471たつぬとも おもはていりし おくやまの いほもるはなを ひとりこそみれ俊成女
1472よのうさは いつくもはなに なくさめは よしやよしのの おくもたつねし長舜
1473このもとに すみけるあとを みつるかな なちのたかねの はなをたつねて西行
1474ここのそち あまりおいぬる みにもなほ はなにあかぬは こころなりけり氏成
1475またはよも みはななそちの はるふりて はなもことしや かきりとそみる内侍(永福門院)
1476ひともみも またこむはるも しらぬよに かすむくもちを へたてすもかな花園院
1477ときすきし ふるきのさくら いまはよに まつへきはなの はるもたのます伏見院
1478ときしらぬ やとののきはの はなさかり きみたにとへな またたれをかは永福門院
1479はるうとき みやまかくれの なかめゆゑ とふへきはなの ころもわすれて花園院
1480あちきなく はるはいのちの をしきかな はなそこのよの ほたしなりける和泉式部
1481かせふけは まさらぬみつも いはこえて たきつかはせは はなのしらなみ如浄
1482やまふかく なほわけいりて たつぬれは かせにしられぬ はなもありけり貞行(源)
1483ちるはなを せめてたもとに ふきとめよ そをたにかせの なさけとおもはむ貞世
1484ちるまてに ひともとひこぬ このもとは うらみやつもる はなのしらゆき親清女
1485たまつさも ことつててまし はるのかり わかふるさとに かへるとおもはは和義
1486さひしさは むかしよりなほ まさりけり わかみふりぬる やとのはるさめ貞泰
1487はるといへは むかしたにこそ かすみしか おいのたもとに やとるつきかけ高国
1488おほろにも むかしのかけは なかりけり としたけてみる はるのよのつき家隆
1489ときわかぬ なみたにそては おもなれて かすむもしらぬ はるのよのつき土御門院
1490かくしつつ つもれはをしき はるのひを のとけきものと なにおもふらむ隆信
1491こころうつす なさけよこれも ゆめなれや はなうくひすの ひとときのはる徽安門院
1492かけうつす まつもこたかき はるのいけに みなそこかけて にほふふちなみ公守
1493そこきよき いけのみきはの まつかえに かけまてなひく はるのふちなみ実超
1494やまふきの はなのしからみ かくれとも はるはとまらぬ ゐてのたまかは長通女
1495なほさりの ことはのはなの あらましを まつとせしまに はるもくれぬる左京大夫(永陽門院)
1496さらぬたに こころほそきを ささかにの のきにいとひく ゆふくれのそら慈円
1497あつまやの まやののきはに あめすきて つゆぬきとむる ささかにのいと基平(近衛兼経男)
1498みあれきに ゆふしてかけし かみやまの すそののあふひ いつかわすれむ氏久
1499みやこには またしきほとの ほとときす ふかきやまちを たつねてそきく重成
1500たかためも つれなかりけり ほとときす ききつとかたる ひとしなけれは為連
1501ほとときす なくへきころと おもふより くもになかめぬ ゆふくれそなき朝元
1502まちえても おいはかひなし ほとときす おなしはつねも かすかにそきく忠源
1503さこそけに しのひねならめ ほとときす くらきあまよの くもになくらむ行信
1504あまくもの ゆふゐるみねの ほとときす よそになくねは きくかひもなし景綱
1505たつねいる みやまかくれの ほとときす うきよのほかの ことかたらなむ宗経(平経親男)
1506あつさゆみ ためらふほとに つきかけの いるをのみみて かへりぬるかな読人不知
1507けふとても あやめわくへき みならぬに なににかけてか ねのなかるらむ客子(従三位)
1508たちはなの かをりすすしく かせたちて のきはにはるる ゆふくれのあめ兼行女
1509ゆふかけて けふこそいそけ さなへとる みとしろをたの かみのみやひと成実(祝部成村男)
1510まつかけの みつせきいれて すみよしの きしのうへたに さなへとるなり宗長(安倍)
1511はれまなき こころのうちの たくひとや そらもかきくらす さみたれのころ教兼
1512みかくれて しけみはみえぬ さみたれに うきてのこれる よとのかりこも国夏
1513ほさてけふ いくかになりぬ あまころも たみののしまの さみたれのころ重茂
1514いましかも ゆふたちすらし あしひきの やまのはかくす くものひとむら顕氏(細川頼貞男)
1515ふしのねは はれゆくそらに あらはれて すそのにくたる ゆふたちのくも光吉
1516なつくさの ことしけきよに みたされて こころのすゑは みちもとほらす伏見院
1517あめそそく そとものましは かせすきて なつをわするる やまのゆふかけ雅有
1518むらさめは はれゆくあとの やまかけに つゆふきおとす かせのすすしさ読人不知
1519やまもとに ひかけおよはぬ こかくれの みつのあたりそ なつにしられぬ貞頼
1520ふけにけり またうたたねに みるつきの かけもすたれに とほくなりゆく儀子内親王
1521ますらをは しかまつことの あれはこそ しけきなけきも たへしのふらめ俊成(藤原俊忠男)
1522さつきやみ ともしにむかふ しかはかり あふもあはぬも あはれよのなか為家
1523あきちかき くさのしけみに かせたちて ゆふひすすしき もりのしたかけ基輔(坊門清親男)
1524こかけゆく いはねのしみつ そこきよみ うつるみとりの いろそすすしき貞懐
1525ひとむらの くもふきおくる やまかせに はれてもすすし ゆふたちのあと秀治
1526こころあらは まとのほたるも みをてらせ あつむるひとの かすならすとも光吉
1527いはまつたふ いつみのこゑも さよふけて こころをあらふ とこのすすしさ貞空
1528うゑてみし まかきはのへと あれはてて あさちにましる とこなつのはな隆信
1529こけころも そてのしつくを おきなから ことしもとりつ くさのうへのつゆ実兼
1530あまのかは とわたるふねの みなれさを さしてひとよと なとちきりけむ秀行
1531はつあきは またなかからぬ よはなれは あくるやをしき ほしあひのそら師冬
1532もちわふる みをもこころの あきかせに おきところなき そてのしらつゆ慶政
1533しられすも ゆふへのつゆの おきやそふ にはのこはきの すゑそかたふく只帰
1534おほかたの あきのなかめも わきてなほ やまとみつとの ゆふくれのいろ久明親王
1535ものにふれて なせるあはれは かすならす たたそのままの あきのゆふくれ貞広
1536ひかけのこる まかきのくさに なきそめて くるるをいそく きりきりすかな全成
1537なれてきく おいのまくらの きりきりす なからむあとの あはれをもとへ円伊
1538ゆふまくれ すかるなくのの かせのおとに ことそともなく ものそかなしき重保
1539かすかのに あきなくしかも しるへせよ をしへしみちの うつもるるみを為相
1540しかのねを いりあひのかねに ふきませて おのれこゑなき みねのまつかせ順徳院
1541はるかなる かとたのすゑは やまたえて いなはにかかる いりひをそみる伏見院
1542まつのおとを ことにしらふる あきかせは たきのいとをや すけてひくらむ貫之
1543みつあをき ふもとのいりえ きりはれて やまちあきなる くものかけはし良経(九条兼実男)
1544いりひさす うらよりをちの まつはらに きりふきかくる あきのしほかせ潤為
1545あきかせに うきたつくもは まとへとも のとかにわたる かりのひとつら尊氏
1546はれそむる みねのあさきり ひまみえて やまのはわたる かりのひとつら頼清
1547ほにいつる あきのいなはの くもまより やまもとみえて わたるかりかね宗行
1548あらしふく たかねのそらは くもはれて ふもとをめくる あきのむらさめ祐夏(中臣)
1549さひしさは のきはのをきの おとよりも きりのはおつる にはのあきかせ英時
1550そらはまた のこるひかけの うすきりに つゆみえそめて にはそくれゆく明通
1551すまのうらや なみちのすゑは きりはれて ゆふひにのこる あはちしまやま宗泰(藤原時宗男)
1552まつかせに つきのをのへは そらはれて きりのふもとに さをしかのこゑ尊氏
1553いまもかも たえせぬものか としことの あきのなかはの もちつきのこま公雄
1554ささなみや にほてるうらの あきかせに うきくもはれて つきそさやけき為親
1555はつせやま ひはらにつきは かたふきて とよらのかねの こゑそふけゆく尊氏
1556いねかてに なかめよとてや あきのつき ふけてはかけの さえわたるらむ国実(津守国夏男)
1557ふるさとは のきはふつたの すゑたれて さしいるつきの かけたにもなし経久
1558このころは つきにもなほそ なれまさる ねられぬままの おいのすさひに為守女
1559くものうへに なれみしつきそ しのはるる わかよふけゆく あきのなみたに懐通
1560おもひいつる むかしににたる つきかけそ ふるきをうつす かかみなりける種成
1561みのうれへ なくさむかとて みるつきや あきをかさねて おいとなるらむ長典
1562としことに あひみることは いのちにて おいのかすそふ あきのよのつき源全
1563せきいるる いしまのみつの あかてのみ やとかるつきを そてにみるかな道家
1564たちかへる そてにはつきの したふとも いしまのみつは あかぬたひかな民部卿典侍(後堀河院)
1565いのりきて つかふるよゐの あきもはや なれてみとせの くものうへのつき尊胤法親王
1566かくてこそ みるへかりけれ おくやまの むろのとほそに すめるつきかけ尊円法親王
1567そらきよく ありあけのつきは かけすみて こたかきすきに ましらなくなり儀子内親王
1568あきさむき ありあけのそらの ひとしくれ くもるもつきの なさけなりけり忠守
1569いとひこし うきよのほかの やまさとに つきはいつより すみなれにけむ恵助法親王
1570すみわひて いてしかたとは おもへとも つきにこひしき ふるさとのあき為守
1571なれてみる つきそしるらむ としをへて なくさめかたき あきのこころは隆淵
1572やまのはに いりなむとおもふ つきみつつ われはとなから あらむとやする貫之
1573ひさかたの つきのたよりに くるひとは いたらぬところ あらしとそおもふ貫之
1574つくつくと ことそともなき なかめして こよひのつきも かたふきにけり寂然
1575つきかけの くまなしとても わひひとの こころのやみの はれはこそあらめ重家
1576なかむれは みのうきことの おほゆるを うれへかほにや つきもみるらむ俊恵
1577なけくとて そてのつゆをは たれかとふ おもへはうれし あきのよのつき土御門院
1578むかしには ありしにもあらぬ そてのうへに たれとてつきの なみたとふらむ家隆
1579あはれさても なにのすさひの なかめして わかよのつきの かけたけぬらむ伏見院
1580くもふかき みとりのほらに すむつきの うきよのなかに かけはたえにき花園院
1581のこりなく おもひすててし よのなかに またをしまるる やまのはのつき主殿(四条太皇太后宮)
1582をちこちの きぬたのおとに いくさとも おなしよさむの あはれをそしる雅久
1583あれにける にはのかきほの こけのうへに つたはひかかる ふるさとのあき慈勝
1584ひとしほは たをりてのちも そめてけり しくれにかさす やまのもみちは成国(祝部)
1585うらかるる をはなかすゑの ゆふつくひ うつるもよわき あきのくれかた兼空
1586やまさむし あきもくれぬと つくるかも まきのはことに おけるあさしも千里
1587けふはなほ ひまこそなけれ かきくもる しくれここちは いつもせしかと和泉式部
1588ゆふつくひ くもひとむらに かけろひて しくれにかすむ をかのまつはら冬頼
1589おとはかり いたやののきの しくれにて くもらぬつきに ふるこのはかな成国(祝部)
1590かみなつき しくれにましる もみちはは ちりかふほとも いろやそふらむ賢俊
1591おちはにも あきのなこりを とめしとや またさそひゆく こからしのかせ尊胤法親王
1592さひしさよ きりのおちはは かせになりて ひとはおとせぬ やとのゆふくれ為子(従二位)
1593やまあらしに もろくおちゆく もみちはの ととまらぬよは かくこそありけれ後伏見院
1594なかめやる まさきのかつら ちりはてて めにかかるへき ものたにもなし慶政
1595かけよわき ゆふひうつろふ かたをかに のこるもすこき むらすすきかな守子内親王
1596かせかよふ まかきのをきの ふゆかれも いろこそかはれ おとはかはらす高範
1597むさしのは みなふゆくさの しをれはに しもはおくとも ねさへかれめや四条(安嘉門院)
1598みなとえの こほりにたてる あしのはに ゆふしもさやき うらかせそふく読人不知
1599さえとほる しもよのそらの ふくるままに こほりしつまる つきのいろかな尊什
1600かきくらし しくるとみれは かせさえて みそれになりぬ うきくものそら宰承
1601そらにのみ ちるはかりにて けふいくか ひをふるゆきの つもらさるらむ清子(贈従二位)
1602なにはかた みきはのゆきは あともなし たまれはかてに なみやかくらむ忠貞(惟宗)
1603いほむすふ やまちのゆきも としふりて うつもるるみは とふひともなし公雄
1604かそふれは まちもまたれも きみかため つかへふりぬる ゆきのやまさと兼季
1605たまほこの みちあるみよに ふるゆきは むかしのあとそ なほのこりける覚懐
1606はるきても はなをまつへき こすゑかは ゆきたにのこれ たにのうもれき為量
1607ふりにける あとをしよよに たつぬれは みちこそたえね せきのしらゆき冬平
1608ふりうつむ ゆきにひかすは すきのいほ たるひそしけき やまかけののき光厳院
1609ちとりなく さほのやまかせ こゑさえて かはきりしろく あけぬこのよは順徳院
1610さゆるよの いりうみかけて ともちとり つきにとわたる あまのはしたて隆勝
1611つかへこし あとにのこりて うらちとり あるかひもなき ねをのみそなく有忠
1612あとつけむ かたそしられぬ はまちとり わかのうらわの ともなしにして行春(紀)
1613こほりても おとはのこれる みなせかは したにやみつの ありてゆくらむ成藤(藤原時藤男)
1614やまかはの いはまにのこる もみちはの したにはすける うすこほりかな基雄
1615すみかまの けふりならねと よのなかを こころほそくも おもひたつかな俊頼(源経信男)
1616いかにせむ はひのしたなる うつみひの うつもれてのみ きえぬへきみを俊頼(源経信男)
1617おいとなる かすはわかみに ととまりて はやくもすくる としのくれかな静伊
1618みのうへに つもるつきひも いたつらに おいのかすそふ としのくれかな雲雅
1619ゆくすゑを おもふにつけて おいらくの みにはいまさら をしきとしかな煕明親王
1620いまはたた したふはかりの としのくれ あはれいつまて はるをまちけむ為相
1621やまひとの のきはのみちに いそかすは しらてやとしの くれをすきまし為基(京極為兼猶子)
1622こそもさそ またはかけしの おいのなみ こゆへきあすの はるもつれなし内侍(永福門院)
1623あかつきや またふかからし まつのうれに わかるともなき みねのしらくも為基(京極為兼猶子)
1624みるままに あまきるほしそ うきしつむ あかつきやみの むらくものそら実兼
1625ときははや あかつきちかく なりぬなり まれなるほしの そらそしつけき忠季(藤原公蔭男)
1626にしのそらは またほしみえて ありあけの かけよりしらむ をちのやまのは光明院
1627しらみまさる そらのみとりは うすくみえて あけのこるほしの かすそきえゆく一条(花園院)
1628やまふかみ おりゐるくもは あけやらて ふもとにとほき あかつきのかね祝子内親王
1629よからすは たかきこすゑに なきおちて つきしつかなる あかつきのやま光厳院
1630かねのおとに ゆめはさめぬる のちにしも さらにさひしき あかつきのとこ光厳院
1631まとちかき のきはのみねは あけそめて たによりのほる あかつきのくも親子(従三位源)
1632きききかす おなしひひきも みたるなり あらしのうちの あかつきのかね進子内親王
1633あけぬるか ねさめのまとの ひまみえて のこるともなき よはのともしひ冬通
1634はおとして わたるからすの ひとこゑに のきはのそらは くもあけぬなり花園院
1635たちそむる からすひとこゑ なきすきて はやししつかに あくるしののめ一条(徽安門院)
1636あさからす こゑするもりの こすゑしも つきはよふかき ありあけのかけ実明女
1637あふさかや あかつきかけて なくとりの こゑしろくなる せきのすきむら伏見院
1638さとさとの あけゆくおとは いそけとも のとかにしらむ やまのはのそら花園院
1639いてやらて あさひこもれる やまのはの あたりのくもそ まつにほひぬる為基(京極為兼猶子)
1640やとやとに たつるけふりの すゑあひて ひとむらかすむ さとのあさあけ為子(従二位)
1641をちかたの さとはあさひに あらはれて けふりにうすき たけのひとむら一条(徽安門院)
1642かせすさふ たけのさえたの ゆふつくひ うつりさためぬ かけそさひしき実明女
1643もりうつる たににひとすち ひかけみえて みねもふもとも まつのゆふかせ為兼
1644いりひさす みねのうきくも たなひきて はるかにかへる とりのひとこゑ順徳院
1645ゆふひかけ たのもはるかに とふさきの つはさのほかに やまそくれぬる光厳院
1646やまもとは まつくれそめて みねたかき こすゑにのこる ゆふひかけかな栄子内親王
1647ゆふやまや ふもとのひはら いろさめて のこるひかけそ みねにすくなき後伏見院
1648みわたせは くもまのひかけ うつろひて むらむらかはる やまのいろかな宗尊親王
1649ゆふひさす みねはみとりの うすくみえて かけなるやまそ わきていろこき徽安門院
1650ゆふつくひ いりぬるみねの いろこきに ひともとたてる まつそさひしき忠季(藤原公蔭男)
1651ゆふつくひ やまのあなたに なるままに くものはたてそ いろかはりゆく順徳院
1652やまのはの いろあるくもに まつすきて いりひのあとの そらそしつけき一条(花園院)
1653にしのそらの ゆふひのあとは さめやらて つきよりかはる くものいろかな一条(徽安門院)
1654つきはあれと またくれやらぬ そらなれや うつるもうすき にはのかけかな義詮
1655ひととはぬ たにのとほその しつけきに くもこそかへれ ゆふくれのやま行家(藤原知家男)
1656やまかせは たかねのまつに こゑやみて ゆふへのくもそ たににしつまる尊氏
1657こもりえの はつせのひはら ふきわけて あらしにもるる いりあひのかね為定(御子左二条為道男)
1658あめそそく まきのしつくは おちそひて くもふかくなる ゆふくれのやま重資
1659とりのゆく ゆふへのそらの はるはると なかめのすゑに やまそいろこき後伏見院
1660とひつれて とほさかりゆく からすはに くるるいろそふ をちかたのそら為基(京極為兼猶子)
1661かねのおとを ひとつあらしに ふきこめて ゆふくれしをる のきのまつかせ伏見院
1662ならひたつ まつのおもては しつかにて あらしのおくに かねひひくなり伏見院
1663やまのはの なかめにあたる ゆふくれに きかてきこゆる いりあひのおと伏見院
1664つれつれと なかめなかめて くるるひの いりあひのかねの こゑそさひしき祝子内親王
1665たつねいる やまちのすゑは ひともあはす いりあひのかねに あらしこそふけ後伏見院
1666かくしてそ きのふもくれし やまのはの いりひののちに かねのこゑこゑ永福門院
1667なにとなく ゆふへのそらを みるままに あやしきまては なそやわひしき為子(従二位)
1668なにとなく すきこしかたの なかめまて こころにうかふ ゆふくれのそら後鳥羽院
1669てらふかき ねさめのやまは あけもせて あまよのかねの こゑそしめれる伏見院
1670つくつくと ひとりきくよの あめのおとは ふりをやむさへ さひしかりけり儀子内親王
1671みなひとの いをぬるなへに うはたまの よるてふときそ よはしつかなる儀子内親王
1672おもひつくす こころにときは うつれとも おなしかけなる ねやのともしひ教良女
1673あはれにそ つきにそむくる ともしひの ありとはなしに わかよふけぬる為家
1674まきのやの ひまふくかせも こころせよ まとふかきよに のこるともしひ長雅
1675ともしひは あまよのまとに かすかにて のきのしつくを まくらにそきく徽安門院
1676ひとすちに おもひもはてし なほもこの うきよのともは つきこそありけれ後伏見院
1677よのなかは むなしきものと あらむとそ このてるつきは みちかけしける読人不知
1678ありしよに めくるみとしも おもはねと つきはむかしの ここちこそすれ行尊
1679むかしのみ なかむるままに こひしきは なれしくもゐの つきにやあるらむ敦経
1680いまはわれ またみるましき あはれさよ なれてつかへし くものうへのつき家親
1681そてのうへに かはらぬつきの かはるかな ありしむかしの かけをこひつつ秀能(藤原秀宗男)
1682なにとなく むかしこひしき わかそての ぬれたるうへに やとるつきかけ秀能(藤原秀宗男)
1683ときありて はなももみちも ひとさかり あはれにつきの いつもかはらぬ為子(従二位)
1684うきてたつ くもふきはらふ やまかせの をささにすくる おとのはけしさ覚助法親王
1685やまあひに おりしつまれる しらくもの しはしとみれは はやきえにけり永福門院
1686うすくこき やまのいろかと みるほとに そらゆくくもの かけそうつろふ基顕
1687おほそらに あまねくおほふ くものこころ くにつちうるふ あめくたすなり為兼
1688あらきあめの をやまぬほとの にはたつみ せきいれぬみつそ しはしなかるる為子(従二位)
1689えたくらき こすゑにあめの おとはして またつゆおちぬ まきのしたみち法守法親王
1690くもかかる とほやままつは みえすなりて まかきのたけに あめこほるなり光厳院
1691なかめつる くさのうへより ふりそめて やまのはきゆる ゆふくれのあめ内侍(永福門院)
1692ひとりあかす よものおもひは ききこめぬ たたつくつくと ふくるよのあめ後伏見院
1693よるのあめに こころはなりて おもひやる ちさとのねさめ ここにかなしも伏見院
1694みぬよまて おもふもさひし いそのかみ ふるのやまへの あめのゆふくれ有家(藤原重家男)
1695やままつは みるみるくもに きえはてて さひしさのみの ゆふくれのあめ儀子内親王
1696にしのたつ みねよりあめは はれそめて ふもとのまつを のほるしらくも親行(藤原)
1697あめはいま はれぬとみつる とほやまの まつにみたれて かかるしらくも公直母
1698あめはれて いろこきやまの すそのより はなれてのほる くもそまちかき内侍(永福門院)
1699やまもとや あめはれのほる くものあとに けふりのこれる さとのひとむら為基(京極為兼猶子)
1700たにかけや ましはのけふり こくみえて いりあひくらき やまのしたみち親子(従三位源)
1701たちのほる けふりさひしき やまもとの さとのこなたに もりのひとむら進子内親王
1702しらくもの やへたつみねも ちりひちの つもりてなれる やまにしあらすや実泰
1703みつのみね ふたつのみちを ならへおきて わかたつそまの なこそたかけれ慈順
1704うらかせは みなとのあしに ふきしをり ゆふくれしろき なみのうへのあめ伏見院
1705うらのまつ このまにみえて しつむひの なこりのなみそ しはしうつろふ後二条院
1706しつみはてぬ いりひはなみの うへにして しほひにきよき いそのまつはら永福門院
1707いそやまの かけなるうみは みとりにて ゆふひにみかく おきつしらなみ為基(京極為兼猶子)
1708しらなみの たかしのやまの ふもとより まさこふきまき うらかせそふく成茂
1709かつしかの ままのうらかせ ふきにけり ゆふなみこゆる よとのつきはし朝村
1710うちよする あらいそなみの あとなれや しほひのかたに のこるもくつは兵衛督(花園院)
1711わたのはら なみとそらとは ひとつにて いりひをうくる やまのはもなし定家
1712きよみかた いそやまもとは くれそめて いりひのこれる みほのまつはら冬隆
1713かせをいたみ よせくるなみに いさりする あまをとめこか ものすそぬれぬ読人不知
1714たまつしま みれともあかす いかにして つつみもたらむ みぬひとのため読人不知
1715いへつとに かひをひろふと おきへより よせくるなみに ころもてぬれぬ読人不知
1716ありかよふ なにはのみやは うみちかみ あまをとめこか のれるふねみゆ読人不知
1717なにはえに ゆふしほとほく みちぬらし みらくすくなき あしのむらたち実雄
1718つのくにの なにはよりそと いはすとも あしてをみても それとしらなむ国基
1719つのくにの なにはのさとの うらちかみ まかきをいつる あまのつりふね道家
1720あらいその まつのかけなる あまをふね つなきなからそ なみにたたよふ為相女
1721こきいてて むこのうらより みわたせは なみまにうかふ すみよしのまつ行尹
1722からさきや かすかにみゆる まさこちに まかふいろなき ひともとのまつ為子(従二位)
1723にほのうみや かすみてとほき あさあけに ゆくかたみえぬ あまのつりふね有光
1724あけわたる をしまのまつの このまより くもにはなるる あまのつりふね家隆
1725うらうらの くるるなみまに かすみえて おきにいてそふ あまのいさりひ基成
1726こきいつる ほともなみちに かすきえぬ おひかせはやき うらのつりふね為子(従二位)
1727ものとして はかりかたしな よわきみつに おもきふねしも うかふとおもへは為兼
1728かはむかひ またみつくらき あけほのに いつるかふねの おとそきこゆる兼行
1729こけむして ひとのゆききの あともなし わたらてとしや ふるのたかはし実忠
1730おほゐかは はるかにみゆる はしのうへに ゆくひとすこし あめのゆふくれ為兼
1731をかのへや なひかぬまつは こゑをなして したくさしをる やまおろしのかせ為兼
1732たにふかき まつのしつえに ふきとめて みやまのあらし こゑしつむなり為守女
1733やまひとの おへるましはの えたにさへ なほおとつれて ゆくあらしかな宣子(従三位藤原)
1734つれつれと やまかせすこき ゆふくれの こころにむかふ まつのひともと親子(従三位源)
1735みるとなき こころにもなほ あたりけり むかふみきりの まつのひともと為兼
1736いましもは あらしにまさる あはれかな おとせぬまつの ゆふくれのやま伏見院
1737としふかき すきのこすゑも かみさひて こくらきもりは みやゐなりけり公蔭
1738くれぬるか まかきのたけの むらすすめ ねくらあらそふ こゑさわくなり経平(藤原家基男)
1739みとりこき ひかけのやまの はるはると おのれまかはす わたるしらさき徽安門院
1740やまもとの たのもよりたつ しらさきの ゆくかたみれは もりのひとむら伏見院
1741たにかけや こふかきかたに かくろへて あめをもよほす やまはとのこゑ為相
1742かねのおと とりのねきかぬ おくやまの あかつきしるは ねさめなりけり忠嗣
1743ふきおろす のきはのやまの まつかせに たえてみしかき ゆめのかよひち隆教
1744しのはれむ ものともなしに をくらやま のきはのまつそ なれてひさしき定家
1745まつのかせ かけひのみつに ききかへて みやこのひとの おとつれはなし基忠(鷹司兼平男)
1746ちりのみそ おきところなき しらくもの たなひくやまの おくはあれとも慶運
1747やまふかき すまひはかりは かひもなし こころにそむく うきよならねは基任
1748やまふかき やとにはひとの おともせて たにしつかなる とりのひとこゑ慈成
1749やまもとの まつのかこひの あれまくに あらしよしはし こころしてふけ為氏
1750たたひとへ あたにかこへる しはのかき いとふこころに よをはへたてて俊実(藤原定資男)
1751わかやとは つまきこりゆく やまかつの しはしはかよふ あとはかりして式子内親王
1752ここにさへ あらしふけとは おもはすよ みのかくれかの のきのやままつ実衡女
1753やまのおく しつかにとこそ おもひしに あらしそさわく ひはらまきはら法守法親王
1754またひとの いほりならへぬ やまかけは おとするかせを ともときくかな公守女
1755ひともとと おもひてうゑし くれたけの にはみえぬまて しけるふるさと良海
1756つくろはぬ いはきをにはの すかたにて やとめつらしき やまのおくかな伏見院
1757われたにも せはしとおもふ くさのいほに なかはさしいる みねのしらくも仏国
1758やまかけや ちかきいりあひの こゑくれて そとものたにに しつむしらくも伏見院
1759あとたえて へたつるやまの くもふかし ゆききはちかき みやこなれとも花園院
1760やまさとを たれすみうしと いとひけむ こころのすめは さひしさもなし道玄
1761とふひとも またれぬほとに すみなれて みやまのおくは さひしさもなし宗秀(藤原宗泰男)
1762おくやまの いはほのまくら こけむしろ かくてもへなむ あはれよのなか家雅
1763ひとめこそ かれなはかれめ やまさとに かけひのみつの おとをたにせよ高倉(安嘉門院)
1764とはるやと またましいかに さひしからむ ひとめをいとふ おくやまのいほ儀子内親王
1765くちのこる のきのかけひを つたひきて にはにしたたる こけのしたみつ承覚法親王
1766をちかたの やまはゆふひの かけはれて のきはのくもは あめおとすなり伏見院
1767くもしつむ たにののきはの あめのくれ ききなれぬとりの こゑもさひしき進子内親王
1768ますらをか やまかたつきて すむいほの そともにわたす すきのまろはし順徳院
1769やまふかき くさのいほりの あめのよに おとせてふるは なみたなりけり忠良
1770やまさとは さひしとはかり いひすてて こころととめて みるひとやなき実明女
1771やまもとや いほののきはに くもおりて たのもさひしき あめのゆふくれ尊氏
1772おもひいる みやまのさとの しるしとて うきよへたつる まとのくれたけ後嵯峨院
1773このさとは そとものましは しけけれは ほかにもとめぬ つまきこるなり慈道法親王
1774あともなき しつかいへゐの たけのかき いぬのこゑのみ おくふかくして花園院
1775みをかくす みやまのおくの かよひちを ありとなつけそ たにのしたみつ実雄
1776いほむすふ やましたみつの こかくれに すますこころを しるひとそなき師信
1777あかたなの はなのかれはも うちしめり あさきりふかし みねのやまてら為家
1778つきはまた みねこえやらぬ やまかけに かつかつみゆる まつのしたみち為基(京極為兼猶子)
1779いなりやま にしにやつきの なりぬらむ すきのいほりの まとのしらめる頼政
1780やまかけや たけのあなたに いりひおちて はやしのとりの こゑそあらそふ伏見院
1781やまひとの わけいるほかの あともなし みねよりおくの しはのしたみち為子(従二位)
1782みわたせは つまきのみちの まつかけに しはよせかけて やすむやまひと宗尊親王
1783しはしなほ ふもとのみちの くらけれは つきまちいてて かへるやまひと公泰
1784ひとはいはし とりもこゑせぬ やまちにも あれはあらるる みにこそありけれ惟方
1785いかにして のなかのしみつ おもひいてて わするはかりに またなりぬらむ惟方
1786くるとあくと つゆけきこけの たもとかな もらぬいはやの なをはたのまし静仁法親王
1787われならぬ ひとにくますな ゆきすりに むすひおきつる たまのゐのみつ道信
1788わすれても くみやしつらむ たひひとの たかののおくの たまかはのみつ弘法
1789これそこの もろこしふねに のりをえて しるしをのこす まつのひともと阿一
1790ふるさとは あさちかしたに うつもれて くさのいほりと なりにけるかな惟方
1791としをへて あれこそまされ さかのやま きみかすみこし あとはあれとも寛尊法親王
1792いのちまつ かりのやとりの うちにたに すみさためたる かくれかもなし為守女
1793いくたひか かくすみすてて いてつらむ さためなきよに むすふかりいほ夢窓
1794さきのゐる いけのみきはに まつふりて みやこのほかの ここちこそすれ定家
1795やへむくら しけれるやとに つれつれと とふひともなき なかめをそする定頼
1796あまつそら てるひのしたに ありなから くもるこころの くまをもためや伏見院
1797てりくもり さむきあつきも ときとして たみにこころの やすむまもなし光厳院
1798たれもみな こころをみかけ ひとをしる きみかかかみの くもりなきよに資明
1799しつかなる よはのねさめに よのなかの ひとのうれへを おもふくるしさ直義
1800かみよより みちあるくにに つかへける ちきりもたえぬ せきのふちかは道家
1801いままては よよへてすみし しらかはの にこらしみつの こころはかりは経顕(藤原定資男)
1802あふきみて わかみをとへは あまのかは すめるみとりの いふこともなし後伏見院
1803さりともと あふきてそらを たのむかな つきひのいまた おちぬよなれは道玄
1804ゆくすゑの みちはまよはし かすかやま いつるあさひの かけにまかせて基平(近衛兼経男)
1805くもらしと おもふこころを みかさやま いつるあさひも そらにしるらむ内経
1806をさまれる あとをそしたふ おしなへて たかむかしとは おもひわかねと後醍醐院
1807をさまらぬ よのためのみそ うれはしき みのためのよは さもあらはあれ光厳院
1808くらゐやま かさなるゆきに あととめて まよはぬみちは なほそかしこき為継
1809みちしあらは いまもまよはて くらゐやま むかしのあとに なをのこさはや秀経
1810おいのみに いまひとさかの くらゐやま のほらぬしもそ くるしかりける実教
1811うれへなく たのしみもなし わかこころ いとなまぬよは あるにまかせて伏見院
1812なきにのみ みをなしはてし こころより あるにまかする よこそやすけれ為守女
1813いにしへは なけきしことも なけかれす うきにならひて としのへぬれは顕範
1814ひとはしらし かたやまかけの うもれみつ こころのそこは いかにすむとも重能
1815うきなから あるにまかする わかみこそ かくてもすつる このよなりけれ為明
1816みこそあらめ こころをちりの ほかになして うきよのいろに そましとそおもふ徽安門院
1817たにかはの みつのみなかみ よよをへて いまそかしこき なをなかすらむ尊円法親王
1818みなかみの すめるをうけて ゆくかはの すゑにもにこる なをはなかさし広秀
1819たかきやま ふかきうみにも まさるらし わかみにうくる きみかめくみは直義
1820のほるせの ありけるものを ひくひとの なきにもよらぬ よとのかはふね為相
1821しつむみと なになけきけむ さほかはの ふかきめくみの かかりけるよに内経
1822おなしくは おとろへさりし もとのみを いまにかへして よにつかへはや時藤(藤原行藤男)
1823いのちをは かろきになして もののふの みちよりおもき みちあらめやは致雄
1824ももしきや みきりのたけの ふしておもひ おきていのるも わかきみのため尊円法親王
1825すみわふる われこそつねに いそかるれ つきはなにゆゑ やまにいるらむ実衡女
1826なにことを おもひつつくと なけれとも あめのねさめは ものそかなしき慶政
1827いるたひに またはいてしと おもふみの なにゆゑいそく みやこなるらむ道玄
1828みのうさを こころひとつに なくさめて わかあらましを まつそはかなき邦省親王
1829いつまてと おもふはかりそ あたしよの うきになくさむ たのみなりける守誉
1830よのなかの うきはうれしき ものそとも いつすてはてて おもひあはせむ有淳
1831なれぬれは おもひもわかぬ みのうさを わすれぬものは なみたなりけり如円
1832なけくへき ことをあまたの みのうさに まつはなみたの なににおつらむ宗満
1833もしほくさ かきあつめたる わかのうらの そのひとなみに おもひいてすや惟方
1834いまもなほ なれしむかしは わすれぬを かけさらめやは わかのうらなみ俊成(藤原俊忠男)
1835かきつもる もくつのみして あるかひも なきさによする わかのうらなみ久時
1836わかのうらに こころをよせて としふれと もくつそつもる たまはひろはす宗秀(大江時秀男)
1837わかのうらの なみのかすには もれにけり かくかひもなき もしほくさかな実定
1838いへのかせ ふくともみえぬ このもとに かきおくことの はをちらすかな経盛
1839ことのはの むくさのうちに さまさまの こころそみゆる しきしまのみち直義
1840きみなくは いかにしてかは はるけまし いにしへいまの おほつかなさを俊成(藤原俊忠男)
1841かきたむる いにしへいまの ことのはを のこさすきみに つたへつるかな基俊
1842むすひなす すゑをこころに たたふれは ふかくみゆるを やまかはのみつ西行
1843しきしまの みちにわかなは たつのいちや いさまたしらぬ やまとことのは定家
1844わかのうらに みそうきなみの あまをふね さすかかさなる あとなわすれそ為家
1845わかのうらに たちのほるなる なみのおとは こさるるみにも うれしとそきく隆信
1846いかにして たちのほるらむ こゆへしと おもひもよらぬ わかのうらなみ頼政
1847たちかへる くもゐのたつに ことつてむ ひとりさはへに なくとつけなむ清輔
1848あしはらに はねやすむめる あしたつは もとのくもゐに かへらさらめや大弐三位
1849このうちを いつとしならは あしたつの なれしくもゐに なとやかへらぬ重家
1850またもこむ はるとはえこそ いはしみつ たちまふことも ありかたきよに定長(藤原通成男)
1851むかしみし くものかけはし かはらねと わかみひとつの とたえなりけり清輔
1852くもれよし なかはのつきの おもかけも とめてみるへき たもとならねは欣子内親王
1853いまさらに のほりそやらぬ くらゐやま くるしかるへき よよのあとかは為定(御子左二条為道男)
1854むかしたれ ひとのこころを しらいとの そむれはそまる いろになきけむ高弁
1855おもひたつ きそのあさぬの あさくのみ そめてやむへき そてのいろかは兼好
1856なにとなく はなやもみちを みるほとに はるとあきとは いくめくりしつ惟規
1857はなちらて つきはくもらぬ よなりせは ものをおもはぬ わかみならまし西行
1858ここのつの さはになくなる あしたつの こをおもふこゑは そらにきこゆや基俊
1859よそにても こをおもふたつの なくこゑを あはれとひとの きかさらめやは忠通
1860なからへて とはるへしとは おもひきや ひとのなさけも いのちなりけり高弁
1861うしとても いくほとのよと おもふおもふ なほそのうちも もののわひしき祝子内親王
1862うしとても うからすとても よしやたた いそちののちの いくほとのよは為相
1863おもひても なくてすきこし としつきの かすにまさるは なみたなりけり実教
1864ななそちの としなみこえて いまはみの なにをかすゑの まつことにせむ延全
1865あさゆふの こころのうちの ものうさを さてもあるみと ひとやしるらむ為相女
1866おもひしらは そむきもすへき みをおきて たかなにたてし うきよなるらむ小宰相(徽安門院)
1867いまさらに うしといふこそ おろかなれ かかるへきよの すゑとしらすや道玄
1868すてかぬる こころもわかみ そのうへに たかおもはせて いとはしきよそ新右衛門督(宣光門院)
1869おもふこと なくはいつまて すまむとて たためのまへの よをなけくらむ儀子内親王
1870はかなしと おもひなからも あらましに みをなくさめて としをふるかな雅孝
1871さこそはと おもひやられし そのをりの たひのあはれを さなからそみる公蔭
1872ことのはに いろはなけれと おもひやる こころをそへて あはれとやみる花園院
1873こころとは すみはてられぬ おくやまに わかあとうつめ やへのしらくも為基(京極為兼猶子)
1874ゆくすゑを たのむとひとや おもふらむ こころにもあらて よをすくすみを新宰相(光厳院)
1875うきよとは おもひなからに すてやらて あらましにのみ すくしつるかな秀能/秀信
1876うきよとは なへていふなる ことわりを わかみひとつに なしてこそおもへ仲教
1877うきことを おもはしとても いかかせむ さすかこころの なきみならねは浄道
1878をりをりの みのあらましも かはりけり わかこころさへ さためなのよや宣子(従三位藤原)
1879よのうさに おもひたちぬる やまさとは いさいつまてと ほともさためす道玄
1880あはれにそ よもきかにはの あともなき もとよりたれを まつみならねと実衡女
1881つくつくと おもへはかなし かすならぬ みをしるあめよ をやみたにせよ俊頼(源経信男)
1882なみたのみ ふるやののきの いたひさし もりくるつきそ そてにくもれる道昭
1883やまふかく みをかくしても よのなかを のかれはてぬは こころなりけり宗秀(藤原宗泰男)
1884かくはかり とりあつめたる みのうさに こころつよくも なかきいのちか山田
1885みはかくて のかれはてぬる よのなかを ひとのうへまて なほいとふかな読人不知
1886よをうしと おもひたつとも わかやまの ほかにはいかか すみそめのそて忠性
1887よをうみの あみのうけなは ひとすちに ひくへきひとも なきみなりけり公什
1888わかこころ たれにかいはむ いせのあまの つりのうけひく ひとしなけれは崇徳院
1889いかにせむ そむかはとこそ おもひしに すててもうきは このよなりけり道意(西園寺実兼男)
1890なけきをも とはぬつらさは つらけれと うれしきことは うれしとそきく読人不知
1891いふよりも いはておもふは まさるとて とはぬもとふに おとりやはせし惟方
1892こころたに わかおもふにも かなはぬに ひとをうらみむ ことわりそなき為子(従二位)
1893ものことに こころをとめは なににかは うきよのなかの しられさるへき儀子内親王
1894こころこそ みのせきもりと なりにけれ やすくいつへき このよなれとも四条(安嘉門院)
1895よのなかの うきたひことに なくさむる よしいくほとの なからましかは徽安門院
1896あらましの こころのままに みるゆめを おもひあはする うつつともかな寿成門院
1897あはれにも うつつにおもふ あらましの たたそのままに みつるゆめかな小宰相(徽安門院)
1898うたたねの はかなきゆめの うちにたに ちちのおもひの ありけるものを良経(九条兼実男)
1899ゆめにても うれしきことの みえつるは たたにうれふる みにはまされり千里
1900おほかたの うつつはゆめに なしはてつ ぬるかうちには なにをかもみむ後鳥羽院
1901なかきよの ゆめのうちにて みるゆめは いつれうつつと いかかさためむ永縁
1902ゆめそかし おもふままなる みなりとも うれしかるへき このよとやみる慈円
1903いつかたに おもひさためむ ゆめといひて おもふもみえす おもはぬもみゆ実泰
1904あたしよに ねてもさめても みることは いつれをゆめと こころにかわく公賢
1905もとよりの さなからゆめと みるうへは よしやかならす さめもさめすも花園院
1906おとろくも さこそとかなし うきゆめの さめぬまよひに よをやすてけむ左京大夫(永陽門院)
1907さめやらぬ うきよのゆめの なこりこそ すてぬるみにも なほのこりけれ為基(京極為兼猶子)
1908あかつきの かねはまくらに おとすれと うきよのゆめは さめむともせす公清室
1909なかきよに まよふやみちの いつさめて ゆめをゆめとも おもひあはせむ為子(従二位)
1910ぬるかうちに みるよりほかの うつつさへ いやはかななる ゆめになりぬる為基(京極為兼猶子)
1911おとろかぬ きのふのゆめの よをしらて またあらましの あすもはかなし為相女
1912みしひとも のこりすくなき おいかよに たれとむかしを かたりあはせむ基忠(鷹司兼平男)
1913あはれとて わかねさめとふ ひともかな おもふこころを いひもつくさむ頼貞
1914いまになり むかしにかへり おもふまに ねさめのかねも こゑつきぬなり内侍(永福門院)
1915いまやゆめ むかしやゆめと たとられて いかにおもへと うつつとそなき右京大夫(建礼門院)
1916きみもさは わたりかねける なみたかは わかみひとつの ふちとおもふに信成
1917ふたたひと かへるかたなき むかしにも ゆめちはかよふ ものにそありける隆信
1918うはたまの よるのころもを いにしへに かへすたのみの ゆめもはかなし忠房親王
1919さめてのち くやしきものは またもこぬ むかしをみつる ゆめにそありける儀子内親王
1920つくつくと すきにしかたを おもひねの ゆめそむかしの なこりなりける経通(一条内経男)
1921かへりこぬ むかしにかよふ ゆめちをは しはしもいかて さまさてをみむ恒明親王
1922おもひねの ゆめよりほかは たのまれす さらてはかへる むかしならねは宗親
1923みてもなほ おもひそまさる ふてのあと なかなかつらき かたみなりけり冬信
1924かたかたに なきてわかれし むらとりの ふるすにたにも かへりやはする成範
1925いにしへの いまみるはかり おほゆるは わかおいらくの ねさめなりけり基氏(藤原基家男)
1926いにしへに なせはこそあれ おもひいつる こころはいまの ものにそありける宗成
1927しつたまき かすにもあらぬ みなれとも つかへしみちは わすれしもせす秀能(藤原秀宗男)
1928こしかたの わすれかたきも またひとに かたるはかりの おもひいてはなし宰相典侍(後宇多院)
1929ことにいてて あはれむかしと いはるるも さらにみのうき ときにそありける頼氏(藤原頼広男)
1930をりをりに むかしをしのふ なみたこそ こけのたもとに いまもかわかね遠衡
1931うつつにて いまみることは まきるれと むかしのゆめそ わすれさりける為嗣
1932おいぬれは かつみることは わすられて とほきむかしの しのはるるかな宰相典侍(後宇多院)
1933おもひいての なきみなれとも いにしへを こふるはおいを いとふなりけり為継
1934へたたらぬ わかみのほとの いにしへも すきにしかたは なほそこひしき基嗣
1935すきぬれは けふをきのふと いひなして とほさかるこそ むかしなりけれ読人不知
1936あやにくに しのはるるみの むかしかな ものわすれする おいのこころに公雄
1937みしともは あるかすくなき おなしよに おいのいのちの なにのこるらむ範秀
1938そむかはや よしやよのなか とはかりの あらましにてや つひにすきなむ為子(従二位)
1939あさことに あはれをいとと ますかかみ しらぬおきなを いつまてかみむ資隆
1940はかなさは けふともしらぬ よのなかに さりともとのみ いつをまつらむ読人不知
1941おもひしる こころとならは いたつらに あたらこのよを すくささらなむ寂然
1942そむくとも なほやこころの のこらまし よにわすられぬ わかみなりせは宗尊親王
1943こをおもふ やみにそまよふ くはのかと うきよにかへる みちはとちても有忠
1944あきをまたて おもひたちにし こけころも いまよりつゆを いかてほさまし後伏見院
1945おもひやる こけのころもの つゆかけて もとのなみたの そてやくちなむ永福門院
1946かたかたに をしむへきよを おもひすてて まことのみちに いるそかしこき為兼
1947きえぬへき つゆのいのちを をしむとて すてかたきよを けふそむきぬる公衡(西園寺実兼男)
1948なからへて われもすむへき やとならは しはしとひとを いはましものを成範
1949あらましは さなからかはる みのはてに そむくはかりそ すゑとほりける為守女
1950わすられぬ むかしかたりも おしこめて つひにさてやの それそかなしき永福門院
1951はるけすて さてやとおもふ うらみのみ ふかきなけきに そへてかなしき内侍(永福門院)
1952あはれその うきはてきかて ときのまも きみにさきたつ いのちともかな内侍(永福門院)
1953なにことを まつことにてか すくさまし うきよをそむく みちなかりせは寂然
1954いまはわれ うきよをよそに すみそめの ゆふへのいろの あはれなるかな盛親
1955それとなき ゆふへのくもに ましりなは あはれたれかは わきてなかめむ堀河(待賢門院)
1956いなつまの ひかりのほとか あきのたの なひくすゑはの つゆのいのちは寂然
1957のちのよと いへははるかに きこゆるを いているいきの たゆるまつほと俊恵
1958いへはうし しぬるわかれの のかれぬを おもひもいれぬ よのならひこそ慈円
1959けふといへは わかれしひとの なこりより あやめもつらき ものをこそおもへ後二条院
1960けふはなほ あやめのくさの うきねにも いととみとせの つゆそかわかぬ為世(御子左二条為氏男)
1961あはれいつか それはむかしに なりにきと はかなきかすに ひとにいはれむ実重(三条公親男)
1962いとへとも みはあやにくに つれなくて よそのあはれを ききつもるかな冷泉(花園院)
1963つゆのみの きえはてぬとも ことのはに かけてもたれか おもひいつへき宣旨(郁芳門院)
1964なにことも むかしかたりに なりゆけは はなもみしよの いろやかはれる兵衛(上西門院)
1965かくはかり うつりゆくよの はななれと さくやとからは いろもかはらす堀河(二条太皇太后宮)
1966ふるさとの のきはににほふ はなたにも ものうきいろに さきすさひつつ遊義門院
1967はなはなほ はるをもわくや ときしらぬ みのみものうき ころのなかめを伏見院
1968かなしさは わかまたしらぬ わかれにて こころもまとふ しののめのみち宗尊親王
1969おのつから こけのしたにも みるやとて こころをとめし はなををりつる祐任
1970けふみれは みやまのはなは さきにけり なけきそはるも かはらさりける全玄
1971つゆけさは きのふのままの なみたにて あきをかけたる そてのはるさめ伏見院
1972かきくれし あきのなみたの そのままに なほそてしをる けふのはるさめ覚助法親王
1973つゆきえむ いつのゆふへも たれかしらむ とふひとなしの よもきふのには実衡女
1974おもへかし さらてももろき そてのうへに つゆおきあまる あきのこころを隆博
1975まこととも おほえぬほとの はかなさは ゆめかとたにも とはれやはする光俊(葉室光親男)
1976いまもなほ ゆめかとおもふ かなしさを たかまこととて おとろかすらむ宗成
1977つねならぬ うきよのさかの のへのつゆ きえにしあとを たつねてそとふ欣子内親王
1978ここのへに みしよのはるは おもひいつや かはらぬはなの いろにつけても実国
1979はるきても とはれさりける やまさとを はなさきなはと なにおもひけむ寂念
1980もろともに みしひともなき やまさとの はなさへうくて とはぬとをしれ仲正
1981ことししも あらぬかたにや したひまさる つらきわかれの はなとりのはる内侍(永福門院)
1982はなのちり はるのくるらむ ゆくへたに しらぬなけきの もとそかなしき花園院
1983ゆめならて あふよもいまは しらつゆの おくとはわかれ ぬとはまたれて定家
1984むそちあまり よとせのふゆの なかきよに うきよのゆめを みはてつるかな為守
1985ひとのよは ひさしといふも ひとときの ゆめのうちにて さもほともなき為子(従二位)
1986けふくれぬ あすありとても いくほとの あたなるよにそ うきもなくさむ右衛門督(永福門院)
1987きくたひに よそのあはれと おもふこそ なきひとよりも はかなかりけれ慈快
1988ひこほしの あふてふあきは うたてわれ ひとにわかるる ときにそありける伏見院
1989わすられぬ なみたはおなし たもとにて はやななとせの あきもきにけり久良親王
1990あまのかは ほしあひのそらは かはらねと なれしくもゐの あきそこひしき備前(近衛院)
1991すむとても たのみなきよと おもへとや くもかくれぬる ありあけのつき季経
1992あとしたふ かたみのひかす それたにも きのふのゆめに またうつりぬる為相
1993そのきはは たたゆめとのみ まとはれて さむるひかすに そふなこりかな頼氏(藤原頼広男)
1994さくはなの はるをちきりし はかなさよ かせのこのはの ととまらぬよに為相
1995めにちかき ひとのあはれに おとろけは よのことわりそ さらにかなしき花園院
1996みしひとの きのふのけふり けふのくも たちもとまらぬ よにこそありけれ宗尊親王
1997のこりゐて おもふもかなし あはれなと もえしけふりに たちおくれけむ左京大夫(永陽門院)
1998とほさかる なこりこそなほ かなしけれ うさはへたたる ひかすならねは為信
1999こひしさに しなはやとさへ おもふかな わたりかはにも あふせありやと長家
2000とほさかる ひかすにつけて かなしきは またもかへらぬ わかれなりけり範憲
2001うかりつる ふちのころもの かたみさへ わかるとなれは またそかなしき道意(西園寺実兼男)
2002いかかせむ あとのあはれは とはすとも わかれしひとの ゆくへたつねよ寂然
2003なきひとを しのふおもひの なくさまは あとをもちたひ とひこそはせめ西行
2004あきかせの みにしむはかり かなしきは つまなきとこの ねさめなりけり成仲
2005おくつゆも ひとつはちすに むすへとや けふりもおなし のへにきゆらむ清空
2006かなしくも かかるうきめを みくまのの うらわのなみに みをしつめける右京大夫(建礼門院)
2007おなしよと なほおもふこそ かなしけれ あるかあるにも あらぬこのよを右京大夫(建礼門院)
2008さもこそは あらすなりぬる よにしあらめ みやこもたひの ここちさへする全性
2009わかれこし ひともこころや かよふらむ ゆめのたたちは いまもへたてす公賢
2010いかにしのひ いかにかなけく うしとみし ゆめはみとせの けふのなこりを隆教
2011さめかたき おなしつらさの ゆめなから みとせのけふも なほそおとろく邦長
2012これやさは かさねしそての うつりかを くゆるおもひの けふりなるらむ澄憲
2013はかなくて きえにしあきの なみたをも たまとそみかく はちすはのつゆ後宇多院
2014みかきなす ひかりもうれし はちすはの にこりにしまぬ つゆのしらたま公賢
2015ゆめにさへ たちもはなれす つゆきえし くさのかけより かよふおもかけ四条(安嘉門院)
2016くやしくそ さらぬわかれに さきたちて しはしもひとに とほさかりぬる四条(安嘉門院)
2017ますかかみ てにとりもちて みれとあかぬ きみにおくれて いけりともなし読人不知
2018わかために きよとおもひし ふちころも みにかへてこそ かなしかりけれ赤染衛門
2019わかために うすかりしかと すみそめの いろをはふかく あはれとそおもふ能宣
2020かへるへき ほととたのめし わかれこそ いまはかきりの たひにはありけれ赤染衛門
2021さやかなる つきもなみたに くもりつつ むかしみしよの ここちやはする五節(上東門院)
2022きみにわか おくるるみちの かなしきは すくるつきひも はやきなりけり寂然/寂念
2023こをおもふ こころやゆきに まよふらむ やまのおくのみ ゆめにみえつつ俊成(藤原俊忠男)
2024うちもねす あらしのうへの たひまくら みやこのゆめに わくるこころは定家
2025おもひやる こけのしたたに かなしきに ふかくもゆきの なほうつむかな頓阿
2026このもとを むかしのかけと たのめとも なみたのあめに ぬれぬまそなき兵衛(上西門院)
2027やまさとの なきかけしたふ いけみつに むなしきふねそ さしてものうき後伏見院
2028きえつつき おくれぬあきの あはれしらは さきたつこけの したやつゆけき伏見院
2029おくれても かついつまてと みをそおもふ つらにわかるる あきのかりかね伏見院
2030こころとめし かたみのいろも あはれなり ひとはふりにし やとのもみちは伏見院
2031おもへたた つゆのあきより しをれきて しくれにかかる そてのなみたを伏見院
2032おもひやる おいのなみたの おちそひて つゆもしくれも ほすひまそなき基忠(鷹司兼平男)
2033ふかくさの つゆにかさねて しをれそふ うきよのさかの あきそかなしき為子(従二位)
2034あたしいろに こころはそめし やまかせに おつるもみちの ほともなきよに伏見院
2035おもひやれ ふかきなみたの ひとしほも いろにいてたる すみそめのそて慈道法親王
2036いろかはる そてのなみたの かきくらし よそもしくるる かみなつきかな尊円法親王
2037わかれにし そのちりちりの このもとに のこるひとはも あらしふくなり右衛門督(永福門院)
2038うらみても いまはかたみの あきのそら なみたにくれし みかつきのかけ顕親門院
2039ここのめくり はるはむかしに かはりきて おもかけかすむ けふのゆふくれ高弁
2040まちかねて なけくとつけよ みなひとに いつをいつとて いそかさるらむ善光寺阿弥陀如来
2041いそけひと みたのみふねの かよふよに のりおくれなは いつかわたらむ聖徳太子
2042ふたらくの うみをわたれる ものなれは みるめもさらに をしからぬかな粉川観音
2043ちりまかふ はなのにほひを さきたてて ひかりをのりの むしろにそしく西行
2044めうほふの たたひとつのみ ありけれは またふたつなし またみつもなし源信
2045こころをは みつのくるまに かけしかと ひとつそのりの ためしにはひく永縁
2046おとろかて けふもむなしく くれぬなり あはれうきみの いりあひのかね慶政
2047としふれと ゆくへもしらぬ たらちねよ こはいかにして たつねあひけむ経盛
2048いそちまて まよひきにける はかなさよ たたかりそめの くさのいほりに尊氏
2049われそうき いそちあまりの としふとも めくりあふへき わかれならねは尊円法親王
2050のりのあめは あまねくそそく ものなれと うるふくさきは おのかしなしな道長
2051くさくさの くさきのたねと おもひしを うるほすあめは ひとつなりけり行成
2052くさもきも たねはひとつを いかなれは ふたはみつはに めくみそめけむ行尊
2053なにめてて まよひもそする をみなへし にほふやとをは よきてゆかなむ為明
2054このよにて いりぬとみえし つきなれと わしのやまには すむとこそきけ輔親
2055みなひとを わたさむとおもふ ともつなの なかくもかなや よとのかはふね隆教
2056つはめなく のきはのゆふひ かけきえて やなきにあをき にはのはるかせ花園院
2057ここにのみ ありとやはみる いつくにも たへなるこゑに のりをこそきけ赤染衛門
2058おりたちて たのむとなれは あすかかは ふちもせになる ものとこそきけ忠度
2059のりまもる ちかひをふかく たてつれは すゑのよまても あせしとそおもふ赤染衛門
2060のりのため わかみをかへは をくるまの うきよにめくる みちやたえなむ覚実
2061たれもみな あたらいろかを なかむらし きのふもおなし はなとりのはる花園院
2062かりのとふ たかねのくもの ひとなひき つきいりかかる やまのはのまつ花園院
2063ふるさとと さたむるかたの なきときは いつくにゆくも いへちなりけり夢窓
2064すみなれし やとをははなに うかれきて かへるさしらぬ はるのたひひと実澄
2065くちのこる のりのことのは ふくかせは はかなきこけの したまてそゆく忠良
2066すすめこし ゑひのまくらの はるのゆめ みしよはやかて うつつなりけり慶政
2067まとのほかに したたるあめを きくなへに かへにそむける よはのともしひ花園院
2068なかきよの やみのうつつに まよふかな ゆめをゆめとも しらぬこころに寛胤法親王
2069さむるをも まつたのみたに なからまし なかきねふりの うちときかすは覚懐
2070むらくもの たえまのかけは いそけとも ふくるはおそき あきのよのつき覚実
2071そのままに たえまをしるは まことある みくにつたはる ことはなりけり後宇多院
2072わかうくる みのりはつねの ことのはの およはぬうへに とけるなるへし法守法親王
2073たつたかは もみちはなかる みよしのの よしののやまに さくらはなさく花園院
2074みるやいかに やまのこのはは おちつきて みちにあたれる とらのまたらを為基(京極為兼猶子)
2075よもすから こころのゆくへ たつぬれは きのふのそらに とふとりのあと仏国
2076いつるとも いるともつきを おもはねは こころにかかる やまのはもなし夢窓
2077さゆるよの そらたかくすむ つきよりも おきそふしもの いろはすさまし花園院
2078さきそむる やとのさくらの ひともとよ はるのけしきに あきそしらるる内侍(永福門院)
2079うきよかな よしののはなに はるのかせ しくるるそらに ありあけのつき慈円
2080こころさし ふかくくみてし ひろさはの なかれはすゑも たえしとそおもふ後宇多院
2081むかしより わしのたかねに すむつきの いらぬにまよふ ひとそかなしき慈円
2082みなひとの こころのうちは わしのやま たかねのつきの すみかなりけり道玄
2083よをてらす ひかりをいかて かかけまし けなはけぬへき のりのともしひ花園院
2084いたつらに おいをまつにそ なりぬへき ことしもかくて またくらしつつ慶政
2085さりともな ひかりはのこる よなりけり そらゆくつきひ のりのともしひ慈円
2086いにしへの なかれのすゑを うつしてや よかはのすきの しるしをもみる為家
2087そのままに なかれのすゑを うつしても なほいにしへの あとそゆかしき良覚
2088ありなから きえぬとみえて かなしきは けふのたむけの はなのしらゆき公守女
2089しつみこし うきみはいつか うかふへき ちかひのふねの のりにあはすは示証
2090のりのにはに ちらすもみちは やまひめの そむるもふかき えとやなるらむ為子(従二位)
2091のりのには そらにかくこそ きこえけれ くものあなたに はなやちるらむ慶政
2092あさまたき つゆけきはなを をるほとは たましくにはに たまそちりける俊成(藤原俊忠男)
2093ことうらに くちてすてたる あまをふね わかかたにひく なみもありけり道平
2094わたつうみを みなかたふけて あらふとも わかみのうちを いかてきよめむ教長
2095ふりにける ゆきのみやまは あともなし たれふみわけて みちをしるらむ法源
2096しるへする ゆきのみやまの けふにあひて ふるきあはれの いろをそへぬる為兼
2097にしをおもふ こころもおなし ゆめなれと なかきねふりは さめぬへきかな如空
2098こころをは かねてにしにそ おくりぬる わかみをさそへ やまのはのつき親子(従三位源)
2099にほへとも しるひともなき さくらはな たたひとりみて あはれとそおもふ慶政
2100ふかくそめし こころのにほひ すてかねぬ まとひのまへの いろとみなから伏見院
2101くもりなく みかけるたまの うてなには ちりもゐかたき ものにそありける片野尼
2102はむにやたいに をさめおきてし ほけきやうも ゆめとのよりそ うつつにはこし慈円
2103よのなかに ものおもふひとの あるといふは われをたのまぬ ひとにそありける鴨御祖明神
2104みかさやま くもゐはるかに みゆれとも しむによのつきは ここにすむかな春日明神
2105よのなかに ひとのあらそひ なかりせは いかにこころの うれしからまし春日明神
2106われかくて みかさのやまを うかれなは あめのしたには たれかすむへき春日明神
2107はもやまや をひえのすきの みやまゐは あらしもさむし とふひともなし日吉地主権現
2108うろよりも むろにいりぬる みちなれは これそほとけの みもとなるへき熊野神
2109もとよりも ちりにましはる かみなれは つきのさはりも なにかくるしき熊野神
2110かみちやま うちとのみやの みやはしら みはくちぬとも すゑをはたてよ後伏見院
2111うこきなき くにつまもりの みやはしら たてしちかひは きみかためかも実兼
2112よとみしも またたちかへる いすすかは なかれのすゑは かみのまにまに光厳院
2113やはらくる ひかりをみつの たまかきに ほかよりもすむ あきのよのつき公賢
2114かみかせに みたれしちりも をさまりぬ あまてらすひの あきらけきよは花園院
2115とこやみを てらすみかけの かはらぬは いまもかしこき つきよみのかみ後宇多院
2116すむつきも いくとせふりぬ いすすかは とこよのなみの きよきなかれに氏之
2117をしほゐを けふわかみつに くみそめて みあへたむくる はるはきにけり家行
2118よよをへて くむともつきし ひさかたの あめよりうつす をしほゐのみつ延誠
2119ふちなみを みもすそかはに せきいれて ももえのまつに かけよとそおもふ西行
2120ふちなみも みもすそかはの すゑなれは しつえもかけよ まつのももえに俊成(藤原俊忠男)
2121ふしておもひ あふきてたのむ かみちやま ふかきめくみを つかへてそまつ房継
2122かたそきの ちきはうちとに かはれとも ちかひはおなし いせのかみかせ朝棟
2123ひさかたの あまのいはふね こきよせし かみよのうらや いまのみあれの遠久
2124きみかため みくにうつりて きよきかはの なかれにすめる かものみつかき祐光
2125かたをかの いはねのこけち ふみならし うこきなきよを なほいのるかな惟久
2126あふきても たのみそなるる いにしへの かせをのこせる すみよしのまつ為兼
2127わかきみを まもらぬかみし なけれとも ちよのためしは すみよしのまつ国夏
2128おもひそめし ひとよのまつの たねしあれは かみのみやゐも ちよやかさねむ道平
2129みかさやま そのうちひとの かすなれは さしはなたすや かみはみるらむ肥後(京極前関白家)
2130そのかみを おもへはわれも みかさやま さしてたのみを かけさらめやも長通
2131かすならて あめのしたには ふりぬれと なほたのまるる みかさやまかな頼輔
2132ふりにける かみよもとほし をしほやま おなしみとりの みねのまつはら為氏
2133しつみぬる みはこかくれの いはしみつ さてもなかれの よにしたえすは後伏見院
2134たのむまこと ふたつなけれは いはしみつ ひとつなかれに すむかとそおもふ光厳院
2135いのること わたくしにては いはしみつ にこりゆくよを すませとそおもふ光厳院
2136いままては まよはてつきを みかさやま あふくひかりよ すゑもへたつな公賢
2137わかこころ くもらねはこそ みかさやま おもひしままに つきはみるらめ祐春
2138かはらしな あとはむかしに なりぬとも かみのたむけの よよのことのは祐植
2139はるのひも ひかりことにや てらすらむ たまくしのはに かくるしらゆふ俊成(藤原俊忠男)
2140なくさやま とるやさかきの つきもせす かみわさしけき ひのくまのみや俊文
2141あきらけき たまくしのはの しろたへに したつえたまて ぬさかけてけり慈勝
2142うかやふき なきさにあとを ととめしそ かみよをうけし はしめなりける光房
2143かすかやま おなしあとにと いのりこし みちをはかみも わすれさりけり祐臣
2144よをいのる こころをかみや うけぬらし おいらくまてに われそつかふる教久
2145ひさかたの あまつひよしの かみまつり つきのかつらも ひかりそへけり尊円
2146うまれきて つかふることも かみかきに ちきりあるみと なほたのむかな成国(祝部)
2147よよをへて あふくひよしの かみかきに こころのぬさを かけぬひそなき為相
2148ここのへに あまてるかみの かけうけて うつすかかみは いまもくもらし公賢
2149あまてらす みかけをうつす ますかかみ つたはれるよの くもりあらめや公蔭
2150かすかすに みにそふかけと てらしみよ みかくかかみに うつすこころを有長
2151あまくたる あらひとかみの しるしあれは よにたかきなは あらはれにけり師直
2152やまさくら ちりにひかりを やはらけて このよにさける はなにやあるらむ俊成(藤原俊忠男)
2153ひのもとは かみのみくにと ききしより いますかことく たのむとをしれ慈円
2154あまつかみ くにつやしろと わかれても まことをうくる みちはかはらし実兼
2155あまつかみ くにつやしろを いはひてそ わかあしはらの くにはをさまる後宇多院
2156かきりなき めくみをよもに しきしまの やまとしまねは いまさかゆなり為定(御子左二条為道男)
2157まことにや まつはとかへり はなさくと きみにそひとの とはむとすらむ俊成(藤原俊忠男)
2158おほよとの はまのまさこを きみかよの かすにとれとや なみもよすらむ俊頼(源経信男)
2159きみかよの ほとはさためし ちとせとも いふはおろかに なりぬへけれは行宗
2160をののえを くたすやまひと かへりきて みるともきみか みよはかはらし頼政
2161みかさやま みねたちのほる あさひかけ そらにくもらぬ よろつよのはる公相
2162いはといてし ひかけはいまも くもらねは かしこきみよを さそてらすらむ実雄
2163わかきみの やまとしまねを いつるひは もろこしまても あふかさらめや師継
2164あめのした たれかはもれむ ひのことく やふしもわかぬ きみかめくみに宗秀(大江時秀男)
2165ちよふへき かめのをやまの あきのつき くもらぬかけは きみかためかも俊定(藤原経俊男)
2166くもりなく てらしのそめる きみかよは つきひとともに つきしとそおもふ実泰
2167くもりなく たかまのはらに いてしつき やほよろつよの かかみなりけり実夏
2168いのりこし くもゐのつきも あきらけき みよのひかりに みをてらすかな慈道法親王
2169あたらしく あくるとしをは ももとせの はるのはしめと うくひすそなく貫之
2170ときしもあれ はるのはしめに おひたてる まつはやちよの いろもそへなむ能宣
2171ゆきふれは はなさきにけり ひめこまつ ふたはなからや ちよをへぬらむ顕昭
2172はるはると とほきにほひは うめのはな かせにそへてそ つたふへらなる能宣
2173いろかへぬ まつもなになり よろつよに ときはににほふ はなもさけれは長家
2174あかてけふ かへるとおもへと はなさくら をるへきはるや つきせさりける中務(伊勢女)
2175ちとせふる ためしをいまに はしめおきて はなのみゆきの はるそひさしき為氏
2176きみかよに あふもかひある いとさくら としのをなかく をりてかささむ実雄
2177さくらはな ちとせのはるの をりにあひて きみかときはの いろならはなむ通忠
2178けふよりは ちらてしにほへ さくらはな きみかちとせの はるをちきりて基平(近衛兼経男)
2179きみかため うつしうゑける はななれは ちよのみゆきの はるもかきらし実雄
2180さくらはな あまたちとせの かさしとや けふのみゆきの はるにあふらむ少将内侍(後深草院)
2181ゆくすゑを まつのみとりに ちきりおきて こたかくかかれ やとのふちなみ道教
2182ちよふへき くもゐのまつに みゆるかな ひとしほまさる はるのめくみは隆博
2183おほはらや かみよのまつの ふかみとり ちよもといのる すゑのはるけさ基忠(鷹司兼平男)
2184もろひとの いはふことのは みるをりそ おいきにはなの さくここちする成仲
2185うつしううる やとのあるしも このはなも ともにおいせぬ あきそかさねむ右京大夫(建礼門院)
2186かくしあらは ちとせのかすも そひぬらむ ふたたひみつる はこさきのまつ康資王母
2187かみちやま ももえのまつも さらにまた いくちよきみに ちきりおくらむ小宰相(土御門院)
2188きみかよの しるしとこれを みやかはの きしのすきむら いろもかはらす良経(九条兼実男)
2189ここのへの みかきにしける くれたけの おひそふかすは ちよのかすかも為定(御子左二条為道男)
2190ももしきや おひそふたけの かすことに かはらぬちよの いろそみえける尊氏
2191はるあきの みやゐいろそふ ときにあひて よろつよちきる たけとこそみれ為子(従二位)
2192あしたつは ちとせまてとや ちきるらむ かきらぬものを きみかよはひは永範
2193むかしいま ひろへるたまも かすかすに ひかりをそふる わかのうらなみ公相
2194ももとせに ととせおよはぬ こけのそて けふのこころや つつみかねぬる良経(九条兼実男)
2195きみかため またななそちを たもちても あかすやいのる かみにつかへむ成茂
2196よをてらす ひたかのそまの みやきもり しけきみかけに いまかあふらし光俊(葉室光親男)
2197みなかみに さためしすゑは たえもせす みもすそかはの ひとつなかれに花園院
2198あしはらや みたれしくにの かせをかへて たみのくさはも いまなひくなり花園院
2199くちなしの いろになかるる かはみつも とたひすむへき きみかみよかな公賢
2200みことのり みたれぬみちの さはりなく とよあしはらの くにそをさまる定忠
2201あひかたき みよにあふみの かかみやま くもりなしとは ひともみるらむ秀能(藤原秀宗男)
2202みつきもの たえすそなふる あつまちの せたのなかはし おともととろに兼盛
2203みつきもの はこふふなせの かけはしに こまのひつめの おとそたえせぬ匡房
2204きみかよは しつのかとたに かるいねの たかくらやまに みちぬへきかな匡房
2205くもりなき きみかみよには あかねさす ひおきのさとも にきはひにけり匡房
2206こまつはら したゆくみつの すすしきに ちとせのかすを むすひつるかな匡房
2207ふくかせは えたもならさて よろつよと よはふこゑのみ おとたかのやま俊成(藤原俊忠男)
2208くむひとの よはひもさこそ なかつきや なからのかはの きくのしたみつ隆博
2209きみかよの なかきためしに なかさはの いけのあやめも けふそひかるる俊光
2210すすしさを ますゐのしみつ むすふてに まつかよひくる よろつよのあき隆博
2211いはとあけし やたのかかみの やまかつら かけてうつしき あきらけきよは隆教