「風雅和歌集」一覧
2211件
1 | あしひきの やまのしらゆき けぬかうへに はるてふけふは かすみたなひく | 為兼 |
2 | ここのへや たましくにはに むらさきの そてをつらぬる ちよのはつはる | 俊成(藤原俊忠男) |
3 | たちそむる はるのひかりと みゆるかな ほしをつらぬる くものうへひと | 兼実 |
4 | あさひさす みもすそかはの はるのそら のとかなるへき よのけしきかな | 後鳥羽院 |
5 | やまのはを いつるあさひの かすむより はるのひかりは よにみちにけり | 実兼 |
6 | かすみたち こほりもとけぬ あめつちの こころもはるを おしてうくれは | 伏見院 |
7 | わかこころ はるにむかへる ゆふくれの なかめのすゑも やまそかすめる | 花園院 |
8 | のとかなる けしきをよもに おしこめて かすみそはるの すかたなりける | 進子内親王 |
9 | なにとなく こころそとまる やまのはに ことしみそむる みかつきのかけ | 定家 |
10 | みなひとの てことにひける まつのはの はかすをきみか よはひとはせむ | 能宣 |
11 | のへにいてて けふひきつれは ときわかぬ まつのすゑにも はるはきにけり | 中務(伊勢女) |
12 | けふもなほ はるともみえす わかしめし のへのわかなは ゆきやつむらむ | 小弁 |
13 | めもはるに ゆきまもあをく なりにけり けふこそのへに わかなつみてめ | 順 |
14 | はるやまの さきののすくろ かきわけて つめるわかなに あはゆきそふる | 基俊 |
15 | かすかのの ゆきのむらきえ かきわけて たかためつめる わかななるらむ | 俊頼(源経信男) |
16 | いさやこら わかなつみてむ ねせりおふる あささはをのは さととほくとも | 俊成(藤原俊忠男) |
17 | はるくれは ゆきけのさはに そてたれて またうらわかき わかなをそつむ | 崇徳院 |
18 | あさひやま のとけきはるの けしきより やそうちひとも わかなつむらし | 為家 |
19 | わかなつむ いくさとひとの あとならむ ゆきまあまたに のはなりにけり | 為定(御子左二条為道男) |
20 | あまのはら おほふかすみの のとけきに はるなるいろの こもるなりけり | 光厳院 |
21 | まつらかた もろこしかけて みわたせは さかひはやへの かすみなりけり | 後鳥羽院 |
22 | いせしまや しほひのかたの あさなきに かすみにまかふ わかのまつはら | 後鳥羽院 |
23 | ふかくたつ かすみのうちに ほのめきて あさひこもれる はるのやまのは | 道良女 |
24 | いつるひの うつろふみねは そらはれて まつよりしたの やまそかすめる | 為相 |
25 | ゆふつくひ かすむすゑのに ゆくひとの すけのをかさに はるかせそふく | 順徳院 |
26 | ゆふくれの かすみのきはに とふとりの つはさもはるの いろにのとけき | 伏見院 |
27 | しつみはつる いりひのきはに あらはれぬ かすめるやまの なほおくのみね | 為兼 |
28 | のとかなる かすみのそらの ゆふつくひ かたふくすゑに うすきやまのは | 為子(従二位) |
29 | なかめこし おとはのやまも いまさらに かすめはとほき あけほののそら | 実氏 |
30 | はつせやま かたふくつきも ほのほのと かすみにもるる かねのおとかな | 定家 |
31 | こらかてを まきもくやまに はるされは このはしのきて かすみたなひく | 人麿 |
32 | みよしのの よしののやまの はるかすみ たつをみるみる なほそゆきふる | 貫之 |
33 | たまらしと あらしのつてに ちるゆきに かすみかねたる まきのひとむら | 後伏見院 |
34 | かすみあへす なほふるゆきに そらとちて はるものふかき うつみひのもと | 定家 |
35 | はるかせに したゆくなみの かすみえて のこるともなき うすこほりかな | 家隆 |
36 | ちくまかは はるゆくみつは すみにけり きえていくかの みねのしらゆき | 順徳院 |
37 | はなやゆき かすみやけふり ときしらぬ ふしのたかねに さゆるはるかせ | 忠良 |
38 | はるへとは おもふものから かせませに みゆきちるひは いともさむけし | 伏見院 |
39 | あさあらしは そとものたけに ふきあれて やまのかすみも はるさむきころ | 永福門院 |
40 | かききゆる にはにはあとも みえわかて くさはにうすき はるのあはゆき | 基忠(鷹司兼平男) |
41 | はるもいまた あさるききすの あとみえて むらむらのこる のへのしらゆき | 土御門院 |
42 | ひかけさす やまのすそのの はるくさに かつかつましる したわらひかな | 四条(安嘉門院) |
43 | はるのいろは やなきのうへに みえそめて かすむものから そらそさむけき | 伏見院 |
44 | はなとりの なさけまてをそ おもひこむる ゆふやまふかき はるのかすみに | 後伏見院 |
45 | やまきはに うくひすなきて うちなひき はるとおもへは ゆきふりしきぬ | 人麿 |
46 | うちなひき はるさりくれは ささのはに をはうちふれて うくひすなくも | 読人不知 |
47 | つれつれと くらしわつらふ はるのひに なとうくひすの おとつれもせぬ | 道命 |
48 | うくひすの なくねをきけは やまふかみ われよりさきに はるはきにけり | 信明 |
49 | きりにむせふ やまのうくひす いてやらて ふもとのはるに まよふころかな | 土御門院 |
50 | たかためそ しつはたやまの なかきひに こゑのあやおる はるのうくひす | 知家 |
51 | うくひすの こゑものとかに なきなして かすむひかけは くれむともせす | 為兼 |
52 | つくつくと なかきはるひに うくひすの おなしねをのみ ききくらすかな | 徽安門院 |
53 | わかそのを やととはしめよ うくひすの ふるすははるの くもにつけてき | 俊成(藤原俊忠男) |
54 | かすみたつ のかみのかたに ゆきしかは うくひすなきつ はるになるらし | 読人不知 |
55 | うめのはな さけるをかへに いへゐせは ともしくもあらし うくひすのこゑ | 読人不知 |
56 | うめのはな ちらまくをしみ わかそのの たけのはやしに うくひすなくも | 読人不知 |
57 | ささたけの よはにやきつる ねやちかき あさけのまとに うくひすのなく | 実兼 |
58 | あけぬれと おのかねくらを いてやらて たけのはかくれ うくひすそなく | 為世(御子左藤原為氏男) |
59 | のとかなる かすみのいろに はるみえて なひくやなきに うくひすのこゑ | 教良女 |
60 | はるのいろは はなともいはし かすみより こほれてにほふ うくひすのこゑ | 良経(九条兼実男) |
61 | はなならて みにしむものは うくひすの かをらぬこゑの にほひなりけり | 道因 |
62 | うめのはな にほふはるへの あさとあけに いつしかききつ うくひすのこゑ | 為基(京極為兼猶子) |
63 | みちのへや たけふくかせの さむけきに はるをませたる うめかかそする | 伏見院 |
64 | うめのはな さくとしらすや みよしのの やまにともまつ ゆきのみゆらむ | 貫之 |
65 | ゆきのいろを うはひてさける うめのはな いまさかりなり みむひともかな | 家持 |
66 | やまもとの さとのつつきに さくうめの ひとへによこそ はるになりぬれ | 永福門院 |
67 | きさらきや なほかせさむき そてのうへに ゆきませにちる うめのはつはな | 後宇多院 |
68 | さきそめて はるをおそしと まちけらし ゆきのうちより にほふうめかえ | 公蔭 |
69 | ふりつみし ゆきもけなくに みやまへも はるしきぬれや うめさきにけり | 光明院 |
70 | ひとむらの かすみのそこに にほひゆく うめのこすゑの はなになるころ | 徽安門院 |
71 | うめかえに まつさくはなそ はるのいろを みにしめそむる はしめなりける | 俊成(藤原俊忠男) |
72 | はるたちて さかはとおもひし うめのはな めつらしみにや ひとのをるらむ | 貫之 |
73 | うめのはな にほひをとめて をりつるに いろさへそてに うつりぬるかな | 具平親王 |
74 | やまかくれ にほへるはなの いろよりも をりけるひとの こころをそみる | 赤染衛門 |
75 | くれなゐの うめかえになく うくひすは こゑのいろさへ ことにそありける | 俊頼(源経信男) |
76 | さきぬれは おほみやひとも うちむれぬ うめこそはるの にほひなりけれ | 慈円 |
77 | ももちとり さへつるはるの あさみとり のへのかすみに にほふうめかえ | 後鳥羽院 |
78 | いもかため ほつえのうめを たをるとて しつえのつゆに ぬれにけるかも | 人麿 |
79 | ひとことに をりかさしつつ あそへとも いやめつらしき うめのはなかも | 読人不知 |
80 | かすめとも かくれぬものは うめのはな かせにあまれる にほひなりけり | 為家 |
81 | うめのはな にほふさかりは やまかつの しつのかきねも なつかしきかな | 成仲 |
82 | にほふかの しるへならすは うめのはな くらふのやまに をりまとはまし | 中務(伊勢女) |
83 | くもちゆく かりのはかせも にほふらむ うめさくやまの ありあけのそら | 定家 |
84 | うめかかは まくらにみちて うくひすの こゑよりあくる まとのしののめ | 為兼 |
85 | まとあけて つきのかけしく たまくらに うめかかあまる のきのはるかせ | 進子内親王 |
86 | のきのうめは たまくらちかく にほふなり まとのひまもる よはのあらしに | 尊氏 |
87 | たかさとそ かすみのしたの うめやなき おのれいろなる をちかたのはる | 花園院 |
88 | あめはるる かせはをりをり ふきいれて こすのまにほふ のきのうめかえ | 内侍(永福門院) |
89 | わかなかめ なににゆつりて うめのはな さくらもまたて ちらむとすらむ | 光厳院 |
90 | みるままに しつえのうめも ちりはてぬ さもまちとほに さくさくらかな | 和泉式部 |
91 | みとりこき かすみのしたの やまのはに うすきやなきの いろそこもれる | 花園院 |
92 | はるさめに めくむやなきの あさみとり かつみるうちも いろそそひゆく | 公蔭 |
93 | いつはとも こころにときは わかなくに をちのやなきの はるになるいろ | 伏見院 |
94 | ひとかたに ふきつるかせや よわるらむ なひきもはてぬ あをやきのいと | 為世(御子左藤原為氏男) |
95 | かすみわたる おのかやなきの ひともとに のとかにすさふ はるのゆふかせ | 実衡女 |
96 | ふくとなき かせにやなきは なひきたちて をちこちかすむ ゆふくれのはる | 儀子内親王 |
97 | はつかなる やなきのいとの あさみとり みたれぬほとの はるかせそふく | 公宗母 |
98 | ふねつなく かけもみとりに なりにけり むつたのよとの たまのをやなき | 土御門院 |
99 | ひろさはの いけのつつみの やなきかけ みとりもふかく はるさめそふる | 為家 |
100 | よしのかは いはなみはらふ ふしやなき はやくそはるの いろはみえける | 定円(葉室光俊男) |
101 | はるはまつ なひくやなきの すかたより かせものとけく みゆるなりけり | 内侍(永福門院) |
102 | あめそそく やなきかすゑは のとかにて をちのかすみの いろそくれゆく | 公宗(西園寺実衡男) |
103 | このさとの むかひのむらの かきねより ゆふひをそむる たまのをやなき | 定家 |
104 | くりかへし としへてみれと あをやきの いとはふりせぬ みとりなりけり | 中務(伊勢女) |
105 | きしのうへの やなきはいたく おいにけり いくよのはるを すくしきぬらむ | 嘉言 |
106 | ももしきの おほみやひとの かさしたる したりやなきは みれとあかぬかも | 人麿 |
107 | うめのはな さきたるそのの あをやきは かつらにすへく なりにけらしも | 読人不知 |
108 | よるひとも なきあをやきの いとなれは ふきくるかせに かつみたれつつ | 貫之 |
109 | あさみとり やなきのいとの うちはへて けふもしきしき はるさめそふる | 為基(京極為兼猶子) |
110 | きのふけふ よはのとかにて ふるあめに やなきかえたそ したりまされる | 一条(徽安門院) |
111 | はるのいろを もよほすあめの ふるなへに かれののくさも しためくむなり | 為兼 |
112 | あさみとり はつしほそむる はるさめに のなるくさきそ いろまさりける | 土御門院 |
113 | かきくれて ふりたにまされ つくつくと しつくさひしき のきのはるさめ | 公蔭 |
114 | みるままに のきのしつくは まされとも おとにはたてぬ にはのはるさめ | 親子(従三位源) |
115 | はるさめは のきのいとみつ つくつくと こころほそくて ひをもふるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
116 | はるさめよ このはみたれし むらしくれ それはまきるる かたもありけり | 定家 |
117 | さひしさは はなよいつかの なかめして かすみにくるる はるさめのそら | 為兼 |
118 | なかめやる やまはかすみて ゆふくれの のきはのそらに そそくはるさめ | 兼行 |
119 | かすみくるる そらものとけき はるさめに とほきいりあひの こゑそさひしき | 教兼 |
120 | はれゆくか くもとかすみの ひまみえて あめふきはらふ はるのゆふかせ | 徽安門院 |
121 | はるかせは やなきのいとを ふきみたし にはよりはるる ゆふくれのあめ | 後伏見院 |
122 | うちわたす うちのわたりの よふかきに かはおとすみて つきそかすめる | 為兼 |
123 | かせになひく やなきのかけも そことなく かすみふけゆく はるのよのつき | 実明女 |
124 | なにとなく にはのこすゑは かすみふけて いるかたはるる やまのはのつき | 永福門院 |
125 | ねやまても はなのかふかき はるのよの まとにかすめる いりかたのつき | 内侍(永福門院) |
126 | かりひとの あさふむをのの くさわかみ かくろへかねて ききすなくなり | 俊恵 |
127 | あさきりに しののにぬれて よふことり みふねのやまを なきわたるみゆ | 人麿 |
128 | ひともなき みやまのおくの よふことり いくこゑなかは たれかこたへむ | 尊氏 |
129 | つはくらめ すたれのほかに あまたみえて はるひのとけみ ひとかけもせす | 光厳院 |
130 | はるひかけ よはのとかにて それとなく さへつりかはす とりのこゑこゑ | 儀子内親王 |
131 | ひはりあかる やまのすそのの ゆふくれに わかはのしはふ はるかせそふく | 後二条院 |
132 | なにとなき くさのはなさく のへのはる くもにひはりの こゑものとけき | 永福門院 |
133 | はるふかき のへのかすみの したかせに ふかれてあかる ゆふひはりかな | 慈円 |
134 | かへるかり はねうちかはす しらくもの みちゆきふりは さくらなりけり | 為家 |
135 | かへるかり あきこしかすは しらねとも ねさめのそらに こゑそすくなき | 家隆 |
136 | わかるらむ なこりならても はるのかり あはれなるへき あけほののこゑ | 為秀 |
137 | いりかたの つきはかすみの そこにふけて かへりおくるる かりのひとつら | 内侍(永福門院) |
138 | かりかねの はなのをりしも かへるらむ たつねてたにも ひとはをしむに | 康資王母 |
139 | なにとなく おもひそおくる かへるかり ことつてやらむ ひとはなけれと | 俊成(藤原俊忠男) |
140 | はるになる さくらのえたは なにとなく はななけれとも なつかしきかな | 西行 |
141 | めくむより けしきことなる はななれは かねてもえたの なつかしきかな | 俊頼(源経信男) |
142 | おもひやる こころやかねて なかむらむ またみぬはなの おもかけにたつ | 長明 |
143 | さかぬまの まちとほにのみ おほゆるは はなにこころの いそくなるらし | 師平母 |
144 | さきさかぬ こすゑのはなも おしなへて ひとつかをりに かすむゆふくれ | 朔平門院 |
145 | みるままに のきはのはなは さきそひて はるさめかすむ をちのゆふくれ | 右衛門督(永福門院) |
146 | やとからや はるのこころも いそくらむ ほかにまたみぬ はつさくらかな | 為兼 |
147 | うちなひき はるはきぬらし やまきはの とほきこすゑの さきゆくみれは | 読人不知 |
148 | みわたせは かすかののへに かすみたち ひらくるはなは さくらはなかも | 人麿 |
149 | うくひすの こつたふうめの うつろへは さくらのはなの ときかたまけぬ | 人麿 |
150 | はるさめに あらそひかねて わかやとの さくらのはなは さきそめにけり | 家持 |
151 | やまさくら またれまたれて さきしより はなにむかはぬ ときのまもなし | 下野(後鳥羽院) |
152 | みよしのの よしののさくら さきしより ひとひもくもの たたぬひそなき | 為定(御子左二条為道男) |
153 | すみすてし しかのはなその しかすかに さくさくらあれは はるはきにけり | 道家 |
154 | ゆくすゑの はなかかれとて よしのやま たれしらくもの たねをまきけむ | 家隆 |
155 | かへりみる やまははるかに かさなりて ふもとのはなも やへのしらくも | 良経(九条兼実男) |
156 | しらくもの やへたつみねと みえつるは たかまのやまの はなさかりかも | 匡房 |
157 | やまのかひ たなひきわたる しらくもは とほきさくらの みゆるなりけり | 貫之 |
158 | いつもみし はなのいろかは はつせやま さくらにもるる はるのひとしほ | 定家 |
159 | やまとほき かすみのにほひ くものいろ はなのほかまて かをるはるかな | 実兼 |
160 | はなかをる たかねのくもの ひとむらは なほあけのこる しののめのそら | 公宗女 |
161 | はなさかぬ やとのこすゑも なかりけり みやこのはるは いまさかりかも | 雅有 |
162 | はなみにと はるはむれつつ たまほこの みちゆくひとの おほくもあるかな | 直義 |
163 | やまさくら よそにみるとて すかのねの なかきはるひを たちくらしつる | 貫之 |
164 | またしらぬ ところまてかく きてみれと さくらはかりの はななかりけり | 貫之 |
165 | さくらはな あかぬこころの あやにくに みてもなほこそ みまくほしけれ | 行家(藤原知家男) |
166 | さきみちて ちるへくもあらぬ はなさかり かをるはかりの かせはいとはす | 為秀 |
167 | なかめのこす はなのこすゑも あらしやま かせよりさきに たつねつるかな | 右衛門督(永福門院) |
168 | みよしのの おほみやところ たつねみむ ふるきかさしの はなやのこると | 為相 |
169 | いそのかみ ふるさとにさく はななれと むかしなからに にほひけるかな | 中務(伊勢女) |
170 | ふるさとに さけるものから さくらはな いろはすこしも あせすそありける | 貫之 |
171 | きみかすむ やとのこすゑの はなさかり けしきことなる くもそたちける | 俊成(藤原俊忠男) |
172 | さくらはな いさやてことに たをりもて ともにちとせの はるにかささむ | 為氏 |
173 | すかのねの なかきひかけを あしひきの やまのさくらに あかてくれぬる | 良実 |
174 | さてもなほ あかすやあると やまさくら はなをときはに みるよしもかな | 家経(藤原広業男) |
175 | おなしくは つきのをりさけ やまさくら はなみるはるの たえまあらせし | 西行 |
176 | かをりにほひ のとけきいろを はなにもて はるにかなへる さくらなりけり | 光厳院 |
177 | のとかなる うくひすのねに ききそめて はなにそはるの さかりをはみる | 公賢 |
178 | たれにかも けふをさかりと つけやらむ ひとりみまうき やまさくらかな | 顕昭 |
179 | としことに なかめぬはるは なけれとも あかぬははなの いろやそふらむ | 成茂 |
180 | けさはなほ さきそふにはの はなさかり うつろはぬまを とふひともかな | 寿成門院 |
181 | やまふかく たつねにはこて さくらはな なにしこころを あくからすらむ | 白河院 |
182 | さそはれぬ こころのほとは つらけれと ひとりみるへき はなのいろかは | 小侍従(太皇太后宮) |
183 | かせをいとふ はなのあたりは いかかとて よそなからこそ おもひやりつれ | 右京大夫(建礼門院) |
184 | こまとめて みるにもあかす さくらはな をりてかささむ こころゆくまて | 道済 |
185 | たひひとの ゆききのをかは なのみして はなにととまる はるのこのもと | 為家 |
186 | あすかゐの はるのこころは しらねとも やとりしぬへき はなのかけかな | 為実(御子左藤原為氏男) |
187 | たちよらて すきぬとおもへと いとさくら こころにかかる はるのこのもと | 家基(近衛基平男) |
188 | みぬかたの こすゑいかにと このさとの はなにあかても はなをこそおもへ | 為子(従二位) |
189 | たつねゆく みちもさくらを みよしのの はなのさかりの おくそゆかしき | 為基(京極為兼猶子) |
190 | こえやらて あかすこそみれ はるのひの なからのやまの はなのしたみち | 公重(西園寺実衡男) |
191 | さくらさく とほちのむらの ゆふくれに はなをりかさし ひとかへるなり | 後伏見院 |
192 | くれぬとて たちこそかへれ さくらかり なほゆくさきに はなをのこして | 為世(御子左藤原為氏男) |
193 | えたもなく さきかさなれる はなのいろに こすゑもおもき はるのあけほの | 伏見院 |
194 | さかりとは きのふもみえし はなのいろの なほさきかをる ききのあけほの | 兼行 |
195 | はななれや またあけやらぬ しののめの をちのかすみの おくふかきいろ | 親子(従三位源) |
196 | やまのはの つきはのこれる しののめに ふもとのはなの いろそあけゆく | 教良女 |
197 | はなのうへに さすやあさひの かけはれて さへつるとりの こゑものとけき | 後伏見院 |
198 | ひらけそふ こすゑのはなに つゆみえて おとせぬあめの そそくあさあけ | 進子内親王 |
199 | はなのうへに しはしうつろふ ゆふつくひ いるともなしに かけきえにけり | 永福門院 |
200 | つくつくと かすみてくもる はるのひの はなしつかなる やとのゆふくれ | 親子(従三位源) |
201 | ふくとなき かすみのしたの はるかせに はなのかふかき やとのゆふくれ | 家雅 |
202 | あしひきの やまにいりひの ときしもそ あまたのはなは てりまさりける | 花山院 |
203 | はなのうへの くれゆくそらに ひひききて こゑにいろある いりあひのかね | 伏見院 |
204 | そことなき かすみのいろに くれなりて ちかきこすゑの はなもわかれす | 徽安門院 |
205 | やまうすき かすみのそらは ややくれて はなののきはに にほふつきかけ | 進子内親王 |
206 | はなしろき こすゑのうへは のとかにて かすみのうちに つきそふけぬる | 為子(従二位) |
207 | みねしらむ こすゑのそらに かけおちて はなのくもまに ありあけのつき | 忠良 |
208 | あたらよの なこりをはなに ちきりおきて さくらわけいる ありあけのつき | 後鳥羽院 |
209 | よろつよの はるひをけふに なせりとも なほあかなくに はなやちりなむ | 後嵯峨院 |
210 | としふれと かへらぬいろは はることに はなにそめてし こころなりけり | 崇徳院 |
211 | けふもなほ ちらてこころに のこりけり なれしきのふの はなのおもかけ | 道平 |
212 | あちきなく あたなるはなの にほひゆゑ うきよのはるに そむこころかな | 隆博 |
213 | つねよりも のとけくにほへ さくらはな はるくははれる としのしるしに | 顕季 |
214 | はるのこころ のとけしとても なにかせむ たえてさくらの なきよなりせは | 慈円 |
215 | おいかみは のちのはるとも たのまねは はなもわかよも をしまさらめや | 実兼 |
216 | うゑわたす わかよのはなも はるはへぬ ましてふるきの むかしをそおもふ | 伏見院 |
217 | あめのうちに ちりもこそすれ はなさくら をりてかささむ そてはぬるとも | 定頼 |
218 | をらすとて ちらてもはてし さくらはな このひとえたは いへつとにせむ | 俊恵 |
219 | たつねくる はなもちりなは やまさとは いととひとめや かれむとすらむ | 忠盛 |
220 | ゆきてたに いかてとくみむ わかやとの さくらはけふの かせにのこらし | 元真 |
221 | たつたやま みつつこえこし さくらはな ちりかすきなむ わかかへるとき | 家持 |
222 | みるひとの をしむこころや まさるとて はなをはかせの ちらすなりけり | 三河内侍(二条院) |
223 | くもまよふ かせにあまきる ゆきかとて はらへはそてに はなのかそする | 但馬(藻壁門院) |
224 | そてのゆき そらふくかせも ひとつにて はなににほへる しかのやまこえ | 定家 |
225 | けさみれは やとのこすゑに かせすきて しられぬゆきの いくへともなく | 式子内親王 |
226 | たかさこの まつのみとりも まかふまて をのへのかせに はなそちりける | 俊成女 |
227 | あしからの やまのあらしの あととめて はなのゆきふむ たけのしたみち | 為相女 |
228 | ひとしきり ふきみたしつる かせはやみて さそはぬはなも のとかにそちる | 為兼 |
229 | はるかせの ややふきよわる こすゑより ちりおくれたる はなそのとけき | 法守法親王 |
230 | うらみはや たのめしほとの ひかすをも またてうつろふ はなのこころを | 顕親門院 |
231 | あたなれと さきちるほとは あるものを とはれぬはなや なほうらむらむ | 花園院 |
232 | たのめこし きのふのさくら ふりぬとも とははやあすの ゆきのこのもと | 伏見院 |
233 | はなのゆき あすをもまたす たのめおきし そのことのはの あともなけれは | 実兼 |
234 | こすゑより よこきるはなを ふきたてて やまもとわたる はるのゆふかせ | 為子(従二位) |
235 | ふきわたる はるのあらしの ひとはらひ あまきるはなに かすむやまもと | 徽安門院 |
236 | なからへむ ものともしらて おいかよに ことしもはなの ちるをみるらむ | 知家 |
237 | わかみよに ふるのやまへの やまさくら うつりにけりな なかめせしまに | 後鳥羽院 |
238 | しらくもの やへたつやまの さくらはな ちりくるときや はなとみゆらむ | 経信 |
239 | さくらはな うつろふいろは ゆきとのみ ふるのやまかせ ふかすもあらなむ | 尊円法親王 |
240 | いかにせむ はなもあらしも うきよかな さそふもつらし ちるもうらめし | 宣子(従三位藤原) |
241 | はるふかみ あらしのやまの さくらはな さくとみしまに ちりにけるかな | 実朝 |
242 | ちるはなを をしむはかりや よのなかの ひとのこころの かはらさるらむ | 顕輔 |
243 | ひとすちに かせもうらみし をしめとも うつろふいろは はなのこころを | 高倉(安嘉門院) |
244 | ちらさりし もとのこころは わすられて ふままくをしき はなのにはかな | 教長 |
245 | ちりぬとて なとてさくらを うらみけむ ちらすはみまし けふのにはかは | 定家 |
246 | すみれさく みちのしはふに はなちりて をちかたかすむ のへのゆふくれ | 親子(従三位源) |
247 | ちりのこる はなおちすさふ ゆふくれの やまのはうすき はるさめのそら | 内侍(永福門院) |
248 | つくつくと あめふるさとの にはたつみ ちりてなみよる はなのうたかた | 清雅 |
249 | ふきよする かせにまかせて いけみつの みきはにあまる はなのしらなみ | 為顕 |
250 | こすゑより おちくるはなも のとかにて かすみにおもき いりあひのこゑ | 花園院 |
251 | ふるさとの はなはまたてそ ちりにける はるよりさきに かへるとおもへと | 公任 |
252 | たつねくる ひとはみやこを わするれと ねにかへりゆく やまさくらかな | 俊成(藤原俊忠男) |
253 | ねにかへる はなとはきけと みるひとの こころのうちに とまるなりけり | 重家 |
254 | ちるはなは うきくさなから かたよりて いけのみさひに かはつなくなり | 為実(御子左藤原為氏男) |
255 | たきつせや いはもとしろく よるはなは なかるとすれと またかへるなり | 永福門院 |
256 | よしのかは いはせのなみに よるはなや あをねかみねに きゆるしらくも | 頼政 |
257 | こまとめて すきそやられぬ きよみかた ちりしくはなや なみのせきもり | 顕昭 |
258 | あめしをる やよひのやまの こかくれに のこるともなき はなのいろかな | 後伏見院 |
259 | うらみしな やまのはかけの さくらはな おそくさけとも おそくちりけり | 経信 |
260 | かせたにも さそひもはてぬ ひとえたの はなをはいかか をりてかへらむ | 道因 |
261 | おもたかや したはにましる かきつはた はなふみわけて あさるしらさき | 定家 |
262 | やふしわかぬ はるとやなれも はなのさく そのなもしらぬ やまのしたくさ | 花園院 |
263 | やまかはを なはしろみつに まかすれは たのもにうきて はなそなかるる | 四条(安嘉門院) |
264 | さくらちる やましたみつを せきわけて はなになかるる をたのなはしろ | 儀子内親王 |
265 | はるのたの あせのほそみち たえまおほみ みつせきわくる なはしろのころ | 道良女 |
266 | みなそこの かはつのこゑも ものふりて こふかきいけの はるのくれかた | 光厳院 |
267 | せきかくる をたのなはしろ みつすみて あせこすなみに かはつなくなり | 後鳥羽院 |
268 | ますけおふる あらたにみつを まかすれは うれしかほにも なくかはつかな | 西行 |
269 | みかくれて すたくかはつの こゑなから まかせてけりな をたのなはしろ | 大輔(殷富門院) |
270 | はるのたの なはしろみつを まかすれは すたくかはつの こゑそなかるる | 慈円 |
271 | さよふかく つきはかすみて みつおつる こかけのいけに かはつなくなり | 伏見院 |
272 | やまふきの はなのさかりは かはつなく ゐてにやはるも たちとまるらむ | 中務(伊勢女) |
273 | むかしたれ うゑはしめたる やまふきの なをなかしけむ ゐてのたまみつ | 俊成(藤原俊忠男) |
274 | よしのかは さくらなかれし いはまより うつれはかはる やまふきのいろ | 後鳥羽院 |
275 | すゑおもる はなはさなから みつにふして かはせにさける ゐてのやまふき | 公重(西園寺実衡男) |
276 | かはのせに あきをやのこす もみちはの うすきいろなる やまふきのはな | 順徳院 |
277 | をりてたに ゆくへきものを よそにのみ みてやかへらむ ゐてのやまふき | 忠見 |
278 | わかやとの やへやまふきは ちりぬへし はなのさかりを ひとのみにこぬ | 元真 |
279 | うくひすの きなくやまふき うたかたも きみかてふれす はなちらめやも | 読人不知 |
280 | ふくかせに とまりもあへす ちるときは やへやまふきの はなもかひなし | 興風 |
281 | やまふきの はなのつゆそふ たまかはの なかれてはやき はるのくれかな | 後鳥羽院 |
282 | はるふかき のてらたちこむる ゆふかすみ つつみのこせる かねのおとかな | 慈円 |
283 | かすみわたる とほつやまへの はるのくれ なにのもよほす あはれともなき | 伏見院 |
284 | としことに はるをもしらぬ やとなれと はなさきそむる ふちもありけり | 公任 |
285 | むらさきの ふちさくころの あさくもり つねよりはなの いろそまされる | 覚円 |
286 | ふくかせに ふちえのうらを みわたせは なみはこすゑの ものにそありける | 俊頼(源経信男) |
287 | ふちのはな おもへはつらき いろなれや さくとみしまに はるそくれぬる | 成実(藤原親実男) |
288 | ちりうける やまのいはねの ふちつつし いろになかるる たにかはのみつ | 永福門院 |
289 | つつしさく かたやまかけの はるのくれ それとはなしに とまるなかめを | 実明女 |
290 | やまひとの つまきにさせる いはつつし こころありてや たをりくしつる | 慈円 |
291 | なにとなく みるにもはるそ したはしき しはふにましる はなのいろいろ | 後伏見院 |
292 | はるのなこり なかむるうらの ゆふなきに こきわかれゆく ふねもうらめし | 為兼 |
293 | このころの ふちやまふきの はなさかり わかるるはるも おもひおくらむ | 光厳院 |
294 | はるもはや あらしのすゑに ふきよせて いはねのこけに はなそのこれる | 進子内親王 |
295 | はなののちも はるのなさけは のこりけり ありあけかすむ しののめのそら | 教兼 |
296 | みにかへて なになけくらむ おほかたは ことしのみやは はるにわかるる | 大輔(殷富門院) |
297 | ゆきてみむ みやまかくれの おそさくら あかすくれぬる はるのかたみに | 長能 |
298 | ととまらむ ことこそはるの かたからめ ゆくへをたにも しらせましかは | 俊頼(源経信男) |
299 | をしとおもふ ひとのこころし おくれねは ひとりしもやは はるのかへらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
300 | こむとしも くへきはるとは しりなから けふのくるるは をしくそありける | 貫之 |
301 | きのふまて かすみしものを つのくにの なにはわたりの なつのあけほの | 良経(九条兼実男) |
302 | はるくれし きのふもおなし あさみとり けふやはかはる なつやまのいろ | 後伏見院 |
303 | なつきては たたひとへなる ころもてに いかてかはるを たちへたつらむ | 為家 |
304 | さくらいろの ころもにもまた わかるるに はるをのこせる やとのふちなみ | 式子内親王 |
305 | さくらいろの ころもはうへに かふれとも こころにはるを わすれぬものを | 後二条院 |
306 | はなとりの はるにおくるる なくさめに まつまちすさふ やまほとときす | 花園院 |
307 | ほとときす まつとせしまに わかやとの いけのふちなみ うつろひにけり | 家隆 |
308 | ときしらぬ さとはたまかは いつとてか なつのかきねを うつむしらゆき | 定家 |
309 | あさまたき うのはなやまを みわたせは そらはくもらて つもるしらゆき | 経房(藤原光房男) |
310 | なつあさき みとりのこたち にはとほみ あめふりしむる ひくらしのやと | 為兼 |
311 | うすくもる あをはのやまの あさあけに ふるとしもなき あめそそくなり | 公宗(西園寺公衡男) |
312 | もろかつら またふたはより かけそめて いくよかへぬる かものみつかき | 実経 |
313 | あはれとや かみもみあれに あふひくさ ふたはよりこそ たのみそめしか | 兵衛督(花園院) |
314 | あふひくさ かさすうつきの ほとときす ひとのこころに まつかかりつつ | 為家 |
315 | わかための こゑにもあらし ほとときす かたらへとしも なとおもふらむ | 按察(鷹司院) |
316 | まちわひて ききやしつると ほとときす ひとにさへこそ とはまほしけれ | 頼実(源頼国男) |
317 | としをへて おなしこゑなる ほとときす きかまほしさも かはらさりけり | 頼輔 |
318 | としをへて おなしねをなく ほとときす なにかはしのふ なにかまたるる | 徽安門院 |
319 | いつとても またすはあらねと おなしくは やまほとときす つきになかなむ | 直義 |
320 | ほとときす さやかにをなけ ゆふつくよ くもまのかけは ほのかなりとも | 公蔭 |
321 | いしはしる たきつかはなみ をちかへり やまほとときす ここになかなむ | 資季 |
322 | をりはへて いまここになく ほとときす きよくすすしき こゑのいろかな | 為兼 |
323 | まちえても たとるはかりの ひとこゑは ききてかひなき ほとときすかな | 道嗣 |
324 | くれたけの ふしみのさとの ほとときす しのふふたよの ことかたらなむ | 尊円法親王 |
325 | ほとときす ひとのまとろむ ほととてや しのふるころは ふけてこそなけ | 為兼 |
326 | わかためと ききやなさまし ほとときす ぬしさたまらぬ おのかはつねを | 為相 |
327 | やまふかく たつねきつれは ほとときす しのふるこゑも かくれさりけり | 肥後(京極前関白家) |
328 | わすられぬ こそのふるこゑ こひこひて なほめつらしき ほとときすかな | 定家 |
329 | ほとときす まつよのかすは かさなれと こゑはつもらぬ ものにそありける | 俊頼(源経信男) |
330 | ほとときす あかぬなこりを なかめおくる こころもそらに したひてそゆく | 俊言 |
331 | なほそまつ やまほとときす ひとこゑの なこりをくもに しはしなかめて | 為基(京極為兼猶子) |
332 | あしひきの やまほとときす みやまいてて よふかきつきの かけになくなり | 実朝 |
333 | ほとときす よこくもかすむ やまのはの ありあけのつきに なほそかたらふ | 式子内親王 |
334 | ほとときす なこりしはしの なかめより なきつるみねは くもあけぬなり | 伏見院 |
335 | さとなるる やまほとときす いかなれは まつやとにしも おとせさるらむ | 成仲 |
336 | たつねつる かひはなけれと ほとときす かへるやまちに ひとこゑそなく | 季経 |
337 | たつねいる かへさはおくれ ほとときす たれゆゑくらす やまちとかしる | 後鳥羽院 |
338 | なほさりに やまほとときす なきすてて われしもとまる もりのしたかけ | 定家 |
339 | ゆふかけて いつちゆくらむ ほとときす かみなひやまに いまそなくなる | 仲実 |
340 | ことなつは いかかなきけむ ほとときす こよひはかりは あらしとそきく | 貫之 |
341 | ほとときす あかてすきぬる なこりをは つきなしとても なかめやはせぬ | 頼政 |
342 | とふひとも なきふるさとの たそかれに われのみなのる ほとときすかな | 堀河(待賢門院) |
343 | またれつつ としにまれなる ほとときす さつきはかりの こゑなをしみそ | 定家 |
344 | あやめをは ふきそふれとも さみたれの ふるやののきは もるにそありける | 尊氏 |
345 | あやめくさ ひくひともなし やましろの とはになみこす さみたれのころ | 経継 |
346 | あふちさく こすゑにあめは ややはれて のきのあやめに のこるたまみつ | 経親(平時継男) |
347 | あやめつたふ のきのしつくも たえたえに はれまにむかふ さみたれのそら | 冷泉(花園院) |
348 | ゆふつくよ かけろふまとは すすしくて のきのあやめに かせわたるみゆ | 忠季(藤原公蔭男) |
349 | くれかかる そとものをたの むらさめに すすしさそへて とるさなへかな | 公泰 |
350 | またとらぬ さなへのはすゑ なひくなり すたくかはつの こゑのひひきに | 慈円 |
351 | みわかはの みつせきいれて やまとなる ふるのわさたは さなへとるなり | 行家(藤原知家男) |
352 | いまよりは さつききぬとや いそくらむ やまたのさなへ とらぬひそなき | 公相 |
353 | さなへとる たのものみつの あさみとり すすしきいろに やまかせそふく | 忠定(藤原兼宗男) |
354 | ゆふひさす やまたのはらを みわたせは すきのこかけに さなへとるなり | 為忠(御子左二条為藤男) |
355 | をやまたや さなへのすゑに かせみえて ゆくてすすしき すきのしたみち | 後伏見院 |
356 | かせわたる たのものさなへ いろさめて いりひのこれる をかのまつはら | 光厳院 |
357 | さなへとる やまもとをたに あめはれて ゆふひのみねを わたるうきくも | 進子内親王 |
358 | あめはるる をたのさなへの やまもとに くもおりかかる すきのむらたち | 一条(花園院) |
359 | やまかけや たによりのほる さみたれの くもはのきまて たちみちにけり | 為子(従二位) |
360 | かはつなく ぬまのいはかき なみこえて みくさうかるる さみたれのころ | 実泰 |
361 | さみたれに こえゆくなみは かつしかや かつみかくるる ままのつきはし | 雅経 |
362 | あすかかは ひとつふちとや なりぬらむ ななせのよとの さみたれのころ | 公雄 |
363 | さみたれに きしのあをやき えたひちて こすゑをわくる よとのかはふね | 隆教 |
364 | なかれそふ やまのしつくの さみたれに あさせもふかき たにかはのみつ | 俊平(源泰光男) |
365 | たこのうらの もしほもやかぬ さみたれに たえぬはふしの けふりなりけり | 清輔 |
366 | かはやしろ しのになみこす さみたれに ころもほすてふ ひまやなからむ | 成実(藤原親実男) |
367 | さみたれの はれままちいつる つきかけに のきのあやめの つゆそすすしき | 定為 |
368 | さみたれの くもをへたてて ゆくつきの ひかりはもらて のきのたまみつ | 良経(九条兼実男) |
369 | さみたれに あたらつきよを すくしきて はるるかひなき ゆふやみのそら | 承覚法親王 |
370 | わかやとの はなたちはなや にほふらむ やまほとときす すきかてになく | 顕季 |
371 | つきかけに うふねのかかり さしかへて あかつきやみの よかはこくなり | 為藤 |
372 | おほゐかは うふねはそれと みえわかて やまもとめくる かかりひのかけ | 宗尊親王 |
373 | をしかまつ さつをのほくし ほのみえて よそにあけゆく はやましけやま | 為氏 |
374 | さつきやみ そこともしらぬ ともしすと はやまかすそに あかしつるかな | 義孝(藤原敦舒男) |
375 | ますらをや はやまわくらむ ともしけち ほたるにまかふ ゆふやみのそら | 俊成(藤原俊忠男) |
376 | かけしけき このしたやみの くらきよに みつのおとして くひななくなり | 永福門院 |
377 | こころある なつのけしきの こよひかな このまのつきに くひなこゑして | 後伏見院 |
378 | くひななく もりひとむらは こくらくて つきにはれたる のへのをちかた | 実明女 |
379 | まきのとを しひてもたたく くひなかな つきのひかりの さすとみるみる | 安芸(郁芳門院) |
380 | まつのうへに つきのすかたも みえそめて すすしくむかふ ゆふくれのやま | 祝子内親王 |
381 | あめはるる のきのしつくに かけみえて あやめにすかる なつのよのつき | 良経(九条兼実男) |
382 | しけりあふ にはのこすゑを ふきわけて かせにもりくる つきのすすしさ | 師平 |
383 | うたたねに すすしきかけを かたしきて すたれはつきの へたてともなし | 重資 |
384 | はしちかみ うたたねなから ふくるよの つきのかけしく とこそすすしき | 盛親 |
385 | あきよりも つきにそなるる すすむとて うたたねなから あかすよなよな | 新宰相(伏見院) |
386 | やまみつの いはもるおとも さよふけて このまのつきの かけそすすしき | 道意(西園寺実兼男) |
387 | よひのまに しはしたたよふ くもまより まちいててみれは あくるつきかけ | 隆祐 |
388 | なつのよは いはかきしみつ つきさえて むすへはとくる こほりなりけり | 重保 |
389 | ゆふたちの かせにわかれて ゆくくもに おくれてのほる やまのはのつき | 良経(九条兼実男) |
390 | またよひの つきまつとても あけにけり みしかきゆめの むすふともなく | 後鳥羽院 |
391 | つきやいつる ほしのひかりの かはるかな すすしきかせの ゆふやみのそら | 伏見院 |
392 | すすみつる あまたのやとも しつまりて よふけてしろき みちのへのつき | 伏見院 |
393 | ほしおほみ はれたるそらは いろこくて ふくとしもなき かせそすすしき | 為子(従二位) |
394 | なつのよの わひしきことは ゆめをたに みるほともなく あくるなりけり | 小町 |
395 | いにしへの のもりのかかみ あとたえて とふひはよはの ほたるなりけり | 寂蓮 |
396 | そこきよき たまえのみつに とふほたる もゆるかけさへ すすしかりけり | 基嗣 |
397 | つきうすき にはのましみつ おとすみて みきはのほたる かけみたるなり | 恒明親王 |
398 | いけみつは かせもおとせて はちすはの うへこすたまは ほたるなりけり | 順徳院 |
399 | ほたるとふ かたやまかけの ゆふやみは あきよりさきに かねてすすしも | 実経 |
400 | あきちかし くもゐまてとや ゆくほたる さはへのみつに かけのみたるる | 俊成女 |
401 | あきかせを かりにやつくる ゆふくれの くもちかきまて ゆくほたるかな | 式子内親王 |
402 | すすしやと かせのたよりを たつぬれは しけみになひく のへのさゆりは | 式子内親王 |
403 | やまふかみ ゆききえなはと おもひしに またみちたゆる やとのなつくさ | 秀能(藤原秀宗男) |
404 | かたをかの あふちなみより ふくかせに かつかつそそく ゆふたちのあめ | 後鳥羽院 |
405 | ころもてに すすしきかせを さきたてて くもりはしむる ゆふたちのそら | 宮内卿(後鳥羽院) |
406 | やまもとの をちのひかけは さたかにて かたへすすしき ゆふたちのくも | 為家 |
407 | とやまには ゆふたちすらし たちのほる くもよりあまる いなつまのかけ | 経顕(藤原定資男) |
408 | まつをはらふ かせはすそのの くさにおちて ゆふたつくもに あめきほふなり | 為兼 |
409 | ゆきなやみ てるひくるしき やまみちに ぬるともよしや ゆふたちのあめ | 徽安門院 |
410 | にしのたつ ふもとのすきは くもにきえて みねよりはるる ゆふたちのあめ | 俊兼 |
411 | ふりよわる あめをのこして かせはやみ よそになりゆく ゆふたちのくも | 小宰相(徽安門院) |
412 | ゆふたちの くもふきおくる おひかせに こすゑのつゆそ またあめとふる | 新右衛門督(宣光門院) |
413 | ゆふたちの くもとひわくる しらさきの つはさにかけて はるるひのかけ | 花園院 |
414 | つきうつる まさこのうへの にはたつみ あとまてすすし ゆふたちのあめ | 実兼 |
415 | さらにまた ひかけうつろふ たけのはに すすしさみゆる ゆふたちのあと | 実泰 |
416 | ふるほとは しはしとたえて むらさめの すくるこすゑの せみのもろこゑ | 為守女 |
417 | かせたかき まつのこかけに たちよれは きくもすすしき ひくらしのこゑ | 光明院 |
418 | あめはれて つゆふきはらふ こすゑより かせにみたるる せみのもろこゑ | 進子内親王 |
419 | せみのこゑは かせにみたれて ふきかへす ならのひろはに あめかかるなり | 尊胤法親王 |
420 | くれはつる こすゑにせみは こゑやみて ややかけみゆる つきそすすしき | 恒明親王 |
421 | そらはれて こすゑいろこき つきのよの かせにおとろく せみのひとこゑ | 花園院 |
422 | なきすさふ ひまかときけは をちこちに やかてまちとる せみのもろこゑ | 隆信 |
423 | なくせみの こゑやむもりに ふくかせの すすしきなへに ひもくれぬなり | 新宰相(伏見院) |
424 | ゆふつくひ こすゑによわく なくせみの はやまのかけは いまそすすしき | 為秀 |
425 | あめはれて くもふくかせに なくせみの こゑもみたるる もりのしたつゆ | 俊成女 |
426 | あしのはに かくれてすめは なにはなる こやのなつこそ すすしかりけれ | 好忠 |
427 | なつやまの しけみかしたに たきおちて ふもとすすしき みつのおとかな | 政村 |
428 | ふきわくる こすゑのつきは かけふけて すたれにすさふ かせそすすしき | 覚誉法親王 |
429 | みたれあしの したはなみより ゆくみつの おとせぬなみの いろそすすしき | 後鳥羽院 |
430 | かせかよふ やままつかねの ゆふすすみ みつのこころも くみてこそしれ | 兼季 |
431 | なつのひの ゆふかけおそき みちのへに くもひとむらの したそすすしき | 兼行 |
432 | ひのかけは たけよりにしに へたたりて ゆふかせすすし にはのくさむら | 祝子内親王 |
433 | やまかはの みなそこきよき ゆふなみに なひくたまもそ みるもすすしき | 慈成 |
434 | やまもとや このしためくる をくるまの すたれうこかす かせそすすしき | 公蔭 |
435 | もりかぬる つきはすくなき このもとに よふかきみつの おとそすすしき | 進子内親王 |
436 | こけあをき やまのいはねの まつかけに すすしくすめる みつのいろかな | 兼行 |
437 | なつふかき みねのまつかえ かせこえて つきかけすすし ありあけのやま | 慈円 |
438 | あさちふに あきまつほとや しのふらむ ききもわかれぬ むしのこゑこゑ | 寂蓮 |
439 | くさのすゑに はなこそみえね くもかせも のわきににたる ゆふくれのあめ | 永福門院 |
440 | むすふてに つきをやとして やまのゐの そこのこころに あきやみゆらむ | 通方 |
441 | まつにふく かせもすすしき やまかけに あきおほえたる ひくらしのこゑ | 公賢 |
442 | なくこゑも たかきこすゑの せみのはの うすきひかけに あきそちかつく | 伏見院 |
443 | みそきする かはせのなみの しらゆふは あきをかけてそ すすしかりける | 公雄 |
444 | みそきする ゆくせのなみも さよふけて あきかせちかし かものかはみつ | 基忠(鷹司兼平男) |
445 | みなとかは なつのゆくては しらねとも なかれてはやき せせのゆふして | 順徳院 |
446 | あききても なほゆふかせを まつかねに なつをわすれし かけそたちうき | 定家 |
447 | かせのおとの にはかにかはる くれはとり あやしとおもへは あきはきにけり | 後嵯峨院 |
448 | しらつゆは またおきあへぬ うたたねの そてにおとろく あきのはつかせ | 但馬(藻壁門院) |
449 | つゆならぬ なみたももろく なりにけり をきのはむけの あきのはつかせ | 隆教 |
450 | おちそむる きりのひとはの こゑのうちに あきのあはれを ききはしめぬる | 法守法親王 |
451 | ゆふくれの くもにほのめく みかつきの はつかなるより あきそかなしき | 公宗(西園寺公衡男) |
452 | ゆふまくれ あきくるかたの やまのはに かけめつらしく いつるみかつき | 為家 |
453 | あききては けふそくもまに みかつきの ひかりまちとる はきのうはつゆ | 公蔭 |
454 | なかむれは このまうつろふ ゆふつくよ ややけしきたつ あきのそらかな | 式子内親王 |
455 | あきのいろは またこもりえの はつせやま なにをかことに つゆもおくらむ | 家隆 |
456 | やまさとは せみのもろこゑ あきかけて そとものきりの したはおつなり | 定家 |
457 | いろうすき ゆふひのやまに あきみえて こすゑによわる ひくらしのこゑ | 客子(従三位) |
458 | かけよわき このまのゆふひ うつろひて あきすさましき ひくらしのこゑ | 俊実(藤原定資男) |
459 | むらすすめ こゑするたけに うつるひの かけこそあきの いろになりぬれ | 永福門院 |
460 | けふははや とくくれななむ ひさかたの あまのかはきり たちわたるへく | 躬恒 |
461 | こころをは かすともなしに あまのかは よそのあふせに くれそまたるる | 実泰 |
462 | あふことを まとほにたのむ たなはたの ちきりやうすき あまのはころも | 隆康 |
463 | おもひやる こころもすすし ひこほしの つままつよひの あまのかはかせ | 清輔 |
464 | あまのはら ふりさけみれは あまのかは きりたちわたる きみはきぬらし | 読人不知 |
465 | めつらしく あふたなはたは よそひとも かけみまほしき よるにそありける | 伊勢 |
466 | おほかたを おもへはゆゆし あまのかは けふのあふせは うらやまれけり | 紫式部 |
467 | あまのかは あふせによする しらなみは いくよをへても かへらさらなむ | 匡房 |
468 | たなはたの あふせはかたき あまのかは やすのわたりも なのみなりけり | 重家 |
469 | たなはたの ちきりはあきの なのみして またみしかよは あふほとやなき | 道平 |
470 | としをへて かはらぬものは たなはたの あきをかさぬる ちきりなりけり | 義詮 |
471 | ふけぬなり ほしあひのそらに つきはいりて あきかせうこく にはのともしひ | 光厳院 |
472 | たなはたに こころをかして なけくかな あけかたちかき あまのかはかせ | 後嵯峨院 |
473 | いくとせか さかののあきの をみなへし つかふるみちに なれてみつらむ | 実教 |
474 | あきくれは はきもふるえに さくものを ひとこそかはれ もとのこころは | 惟方 |
475 | わかこころ またかはらすよ はつはきの したはにすかる つゆはかりたに | 顕昭 |
476 | あたしのの はきのすゑこす あきかせに こほるるつゆや たまかはのみつ | 俊頼(源経信男) |
477 | さこそわれ はきのふるえの あきならめ もとのこころを ひとのとへかし | 四条(安嘉門院) |
478 | まはきちる にはのあきかせ みにしみて ゆふひのかけそ かへにきえゆく | 永福門院 |
479 | かせふけは えたもとををに おくつゆの ちるさへをしき あきはきのはな | 定家 |
480 | しをれふす えたふきかへす あきかせに とまらすおつる はきのうはつゆ | 道良女 |
481 | ひとしをり あめはすきぬる にはのおもに ちりてうつろふ はきかはなすり | 公直母 |
482 | あきふかみ はなちるはきは もとすきて のこるすゑはの いろそさひしき | 盛親 |
483 | つゆにふす まかきのはきは いろくれて をはなそしろき あきかせのには | 尊氏 |
484 | にはのおもに ゆふへのかせは ふきみちて たかきすすきの すゑそみたるる | 伏見院 |
485 | みわたせは すそののをはな ふきしきて ゆふくれはけし やまおろしのかせ | 伏見院 |
486 | あきさむき ゆふひはみねに かけろひて をかのをはなに かせすさふなり | 進子内親王 |
487 | まねきやむ をはなかすゑも しつかにて かせふきとまる くれそさひしき | 親子(従三位源) |
488 | ふきうつり なひくすすきの すゑすゑを のとかにわたる のへのゆふかせ | 花園院 |
489 | ゆふひさす とほやまもとの さとみえて すすきふきしく のへのあきかせ | 隆祐 |
490 | みをかくす やとにはうゑし はなすすき まねくたよりに ひともこそとへ | 慈道法親王 |
491 | あはれさも そのいろとなき ゆふくれの をはなかすゑに あきそうかへる | 為兼 |
492 | まねくとも たのむへしやは はなすすき かせにしたかふ こころなりけり | 重之女 |
493 | ふくかせの たよりならては はなすすき こころとひとを まねかさりけり | 季経 |
494 | うちしめり すすきのうれは おもりつつ にしふくかせに なひくむらさめ | 定家 |
495 | ここにのみ あはれやとまる あきかせの をきのうへこす ゆふくれのやと | 伏見院 |
496 | ふきすてて すきぬるかせの なこりまて おとせぬをきも あきそかなしき | 為兼 |
497 | にはしろき いさこにつきは うつろひて あきかせよわき はなのすゑすゑ | 法守法親王 |
498 | うすきりの そらはほのかに あけそめて のきのしのふに つゆそみえゆく | 俊兼 |
499 | あきそかし いかにあはれの とはかりに やすくもおける そてのつゆかな | 為守女 |
500 | ひかりそふ くさはのうへに かすみえて つきをまちける つゆのいろかな | 重顕(藤原頼重男) |
501 | ふみわけて たれかはとはむ よもきふの にはもまかきも あきのしらつゆ | 秀能(藤原秀宗男) |
502 | あはれむかし いかなるのへの くさはより かかるあきかせ ふきはしめけむ | 後鳥羽院 |
503 | むらくもに かけさたまらぬ あきのひの うつりやすくも くるるころかな | 覚円 |
504 | あさちはら あきかせふきぬ あはれまた いかにこころの ならむとすらむ | 家隆 |
505 | あきかせは とほきくさはを わたるなり ゆふひのかけは のへはるかにて | 伏見院 |
506 | さきのゐる あたりのくさは うらかれて のさはのみつも あきそさひしき | 為基(京極為兼猶子) |
507 | むらさめの なかははれゆく くもきりに あきのひきよき まつはらのやま | 花園院 |
508 | ゆふつくひ いはねのこけに かけきえて をかのやなきは あきかせそふく | 永福門院 |
509 | あきかせに うきくもたかく そらすみて ゆふひになひく きしのあをやき | 為兼 |
510 | にはふかき やなきのかれは ちりみちて かきほあれたる あきかせのやと | 伏見院 |
511 | かはとほき ゆふひのやなき きしはれて さきのつはさに あきかせそふく | 光厳院 |
512 | かけよわき やなきかうれの ゆふつくひ さひしくうつる あきのいろかな | 重資 |
513 | たましまや おちくるあゆの かはやなき したはうちちり あきかせそふく | 家隆 |
514 | うすきりの やまもととほく しかなきて ゆふひかけろふ をかのへのまつ | 儀子内親王 |
515 | たひねする さやのなかやま さよなかに しかもなくなり つまやこひしき | 為仲(橘義通男) |
516 | くれうつる まかきのはなは みえわかて きりにへたてぬ さをしかのこゑ | 為秀 |
517 | へたたらぬ をしかのこゑは まちかくて きりのいろより くるるやまもと | 一条(徽安門院) |
518 | こからしに つきすむみねの しかのねを われのみきくは をしくもあるかな | 寂然 |
519 | ものおもへと するわさならし このまより おちたるつきに さをしかのこゑ | 良経(九条兼実男) |
520 | いくあきの なみたさそひつ かすかのや ききてなれぬる さをしかのこゑ | 範憲 |
521 | あきはきの みたるるたまは なくしかの こゑよりおつる なみたなりけり | 貫之 |
522 | かせさむみ はたれしもふる あきのよは やましたとよみ しかそなくなる | 基俊 |
523 | よもすから つまとふしかを きくからに われさへあやな いこそねられね | 成通 |
524 | やまさとは みねのこのはに きほひつつ くもよりおろす さをしかのこゑ | 式子内親王 |
525 | をやまたの いほもるとこも よさむにて いなはのかせに しかそなくなる | 為藤 |
526 | はつかりは くもゐのよそに すきぬれと こゑはこころに とまるなりけり | 俊頼(源経信男) |
527 | いろかはる やなきかうれに かせすきて あきのひさむき はつかりのこゑ | 為基(京極為兼猶子) |
528 | ふきしをる ちくさのはなは にはにふして かせにみたるる はつかりのこゑ | 儀子内親王 |
529 | このねぬる あさかせさむみ はつかりの なくそらみれは こさめふりつつ | 道玄 |
530 | むらくもに よこきるかりの かすみえて あさひにきゆる みねのあききり | 実兼 |
531 | あさほらけ きりのはれまの たえたえに いくつらすきぬ あまつかりかね | 伏見院 |
532 | きりうすき あきのひかけの やまのはに ほのほのみゆる かりのひとつら | 為信 |
533 | ゆふひかけ さひしくみゆる やまもとの たのもにくたる かりのひとつら | 中納言典侍(後伏見院) |
534 | ゆふきりの むらむらはるる やまきはに ひかけをわたる かりのひとつら | 覚誉法親王 |
535 | しをれきて みやこもおなし あききりに つはさやほさぬ あまつかりかね | 公重(西園寺実衡男) |
536 | をくらやま ふもとのてらの いりあひに あらぬねなから まかふかりかね | 俊成(藤原俊忠男) |
537 | はれそむる をちのとやまの ゆふきりに あらしをわくる はつかりのこゑ | 家隆 |
538 | うちむれて あまとふかりの つはさまて ゆふへにむかふ いろそかなしき | 伏見院 |
539 | くもとほき ゆふひのあとの やまきはに ゆくともみえぬ かりのひとつら | 花園院 |
540 | くもまもる いりひのかけに かすみえて とほちのそらを わたるかりかね | 良基(二条道平男) |
541 | かりのなく とほちのやまは ゆふひにて のきはしくるる あきのむらくも | 徽安門院 |
542 | ゆふひうつる やなきのすゑの あきかせに そなたのかりの こゑもさひしき | 為兼 |
543 | あきかせに うすきりはるる やまのはを こえてちかつく かりのひとつら | 宗秀(大江時秀男) |
544 | かりのなく ゆふへのそらの うすくもに またかけみえぬ つきそほのめく | 内侍(永福門院) |
545 | あきかせの たかきみそらは くもはれて つきのあたりに かりのひとつら | 尊胤法親王 |
546 | つれてとふ あまたのつはさ よこきりて つきのしたゆく よはのかりかね | 伏見院 |
547 | はきのうへに かりのなみたの おくつゆは こほりにけりな つきにむすひて | 式子内親王 |
548 | まとしろき ねさめのつきの いりかたに こゑもさやかに わたるかりかね | 一条(徽安門院) |
549 | あきのよの ねさめのほとを かりかねの そらにしれはや なきわたるらむ | 保憲女 |
550 | かりかねの きこゆるなへに みわたせは よものこすゑも いろつきにけり | 和泉式部 |
551 | くものうへに なきつるかりの さむきなへに ききのしたはは うつろはむかも | 読人不知 |
552 | けさのあさけ かりかねききつ かすかやま もみちにけらし わかこころいたし | 穂積皇子 |
553 | あさきりの おほつかなきに あきのたの ほにいててかりそ なきわたりける | 貫之 |
554 | いろかはる こすゑをみれは さほやまの あさきりかくれ かりはきにけり | 為家 |
555 | あまつかり きりのあなたに こゑはして かとたのすゑそ しもにあけゆく | 後伏見院 |
556 | きりきりす こゑはいつくそ くさもなき しらすのにはの あきのよのつき | 永福門院 |
557 | きりきりす つきをやしたふ にはとほく かたふくかたの かけになくなり | 定成(藤原経朝男) |
558 | よひのまは まれにききつる むしのねも ふけてそしけき よもきふのには | 公賢 |
559 | わきてなと よるしもまさる うれへにて あくるをきはに むしのなくらむ | 章義門院 |
560 | のへのいろも かれのみまさる あさちふに のこるともなき まつむしのこゑ | 内実 |
561 | きりきりす おのかなくねも たえたえに かへのひまもる つきそかなしき | 公蔭 |
562 | むしのねは ならのおちはに うつもれて きりのまかきに むらさめのふる | 良経(九条兼実男) |
563 | きりきりす なくよをさむみ おくつゆに あさちかうへそ いろかれてゆく | 兼行 |
564 | にはのむしは なきとまりぬる あめのよの かへにおとする きりきりすかな | 為兼 |
565 | よさむなる まくらのしたの きりきりす あはれにこゑの なほのこりける | 公顕 |
566 | なにとなく ものかなしくそ みえわたる とはたのおもの あきのゆふくれ | 西行 |
567 | つゆしけき とはたのおもの あきかせに たまゆらやとる よひのいなつま | 後鳥羽院 |
568 | あきのたの またはつかなる ほのうへを はるかにみする よひのいなつま | 公重(西園寺実衡男) |
569 | ゆふひさす とやまのこすゑ あきさひて ふもとのをたも いろつきにけり | 公蔭 |
570 | をやまたの つゆのおくての いなむしろ つきをかたしく とこのひとりね | 実忠 |
571 | なにとなく やまたのいほの かなしきに あきかせさむみ うつらなくなり | 経房(藤原光房男) |
572 | うちはらひ をののあさちに かるくさの しけみかすゑに うつらたつなり | 式子内親王 |
573 | いなつまの しはしもとめぬ ひかりにも くさはのつゆの かすはみえけり | 為秀 |
574 | あきのあめの はれゆくあとの くもまより しはしほのめく よひのいなつま | 実名(藤原公脩男) |
575 | ゆふやみに みえぬくもまも あらはれて ときときてらす よひのいなつま | 為家 |
576 | にほひしらみ つきのちかつく やまのはの ひかりによわる いなつまのかけ | 伏見院 |
577 | つきをまつ くらきまかきの はなのうへに つゆをあらはす よひのいなつま | 徽安門院 |
578 | こゑたつる のきのまつかせ にはのむし ゆふくれかけて つきやもよほす | 後伏見院 |
579 | くさむらの むしのこゑより くれそめて まさこのうへそ つきになりぬる | 光厳院 |
580 | くさかくれ むしなきそめて ゆふきりの はれまののきに つきそみえゆく | 一条(花園院) |
581 | かけうすき つきみえそめて にはのおもの くさにむしなく やとのゆふくれ | 新宰相(伏見院) |
582 | ふきわくる たけのあなたに つきみえて まかきはくらき あきかせのおと | 祝子内親王 |
583 | たちならふ まつのこのまに みえそめて やまのはつかに つきそほのめく | 経顕(藤原定資男) |
584 | いましはや またるるつきそ にほふらし むらくもしろき やまのはのそら | 良基(二条道平男) |
585 | くまもなく ねやのおくまて さしいりぬ むかひのやまを のほるつきかけ | 徽安門院 |
586 | つきのほる ゆふへのやまに くもはれて みとりのそらを はらふあきかせ | 俊兼 |
587 | くれもあへす いまさしのほる やまのはの つきのこなたの まつのひともと | 花園院 |
588 | やまのはを いてぬとみゆる のちまても ふもとのさとは つきそまたるる | 媋子内親王 |
589 | ほともなく まつよりうへに なりにけり このまもりつる ゆふくれのつき | 尊氏 |
590 | いつるより くももかからぬ やまのはを しつかにのほる あきのよのつき | 定宗(藤原家親男) |
591 | のきちかき まつはらやまの あきかせに ゆふくれきよく つきいてにけり | 伏見院 |
592 | つきかけを むくらのかとに さしそへて あきこそきたれ とふひとはなし | 定家 |
593 | さよふけて ひとはしつまる まきのとに ひとりさしいる つきそさひしき | 経通(一条内経男) |
594 | なかしてふ あきのももよを かさねても なかめあくへき つきのかけかは | 家親 |
595 | こころこそ あくかれやすく なりにけれ なかめうかるる つきのしるへに | 隆博 |
596 | ひたすらに いとひもはてし むらくもの はれまそつきは てりまさりける | 清輔 |
597 | うすくもの たたよふそらの つきかけは さやけきよりも あはれなりけり | 後鳥羽院 |
598 | つきかけの すみのほるあとの やまきはに たたひとなひき くもののこれる | 為子(従二位) |
599 | あきはたた をきのはすくる かせのおとに よふかくいつる やまのはのつき | 通光 |
600 | まはきはら よふかきつきに みかかれて おきそふつゆの かすそかくれぬ | 実尹 |
601 | うちそよき たけのはのほる つゆならて つきふくるよの またおともなし | 実明女 |
602 | つきのゆく はれまのそらは みとりにて むらむらしろき あきのうきくも | 為基(京極為兼猶子) |
603 | たえたえの くもまにつたふ かけにこそ ゆくともみゆれ あきのよのつき | 宗宣(北条宣時男) |
604 | むらくもに かくれあらはれ ゆくつきの はれもくもりも あきそかなしき | 永福門院 |
605 | ふきしをる かせにしかるる くれたけの ふしなからみる にはのつきかけ | 永福門院 |
606 | つきのいろも あきにそめなす かせのよの あはれうけとる まつのおとかな | 為兼 |
607 | まつかせも そらにひひきて ふくるよの こすゑにたかき みやまへのつき | 内侍(永福門院) |
608 | みるひとに もののあはれを しらすれは つきやこのよの かかみなるらむ | 崇徳院 |
609 | こころすむ あきのつきたに なかりせは なにをうきよの なくさめにせむ | 選子内親王 |
610 | あきをへて なみたおちそふ そてのつき いつをはれまと みるよはもなし | 為定(御子左二条為道男) |
611 | わかこころ すめるはかりに ふけはてて つきをわすれて むかふよのつき | 花園院 |
612 | くもはれて すめはすみけり みるひとの こころやつきの こころなるらむ | 忠良 |
613 | わかそての つゆもなみたも あまりある あきのうれへは つきのみそとふ | 覚助法親王 |
614 | ふかきやまに すみけるつきを みさりせは おもひてもなき わかみならまし | 西行 |
615 | こころこそ ややすみまされ よのなかを のかれてつきは みるへかりけり | 道玄 |
616 | やまさとは つきもこころや とまるらむ みやこにすきて すみまさるかな | 崇徳院 |
617 | いつことて あはれならすは なけれとも あれたるやとそ つきはさやけき | 西行 |
618 | いほにもる つきのかけこそ さひしけれ やまたはひたの おとはかりして | 西行 |
619 | きりはるる をちのやまもと あらはれて つきかけみかく うちのかはなみ | 為秀 |
620 | かけははや とほきうらわに さきたちて いそやまいつる あきのよのつき | 定資 |
621 | きよみかた なみをかたしく たひころも またやはかかる つきをきてみむ | 俊成(藤原俊忠男) |
622 | きよみかた ふしのけふりや きえぬらむ つきかけみかく みほのうらなみ | 後鳥羽院 |
623 | あれにける やととてつきは かはらねと むかしのかけは なほそゆかしき | 忠度 |
624 | ときはやま かはるこすゑは みえねとも つきこそあきの いろにいてけれ | 為氏 |
625 | くれのあき つきのすかたは たえねとも ひかりはそらに みちにけるかな | 顕輔 |
626 | みやまいてし あきのたひねの よころへて やともるつきや あるしまつらむ | 花園院 |
627 | すみよしの かみのおまへの はまきよみ ことうらよりも つきやさやけき | 俊言 |
628 | しはしみむ かたふくかたは そらはれて ふけはとたのむ むらくものつき | 宣子(従三位藤原) |
629 | つゆふかき まかきのはなは うすきりて をかへのすきに つきそかたふく | 内侍(永福門院) |
630 | かせにおつる くさはのつゆも かくれなく まかきにきよき いりかたのつき | 儀子内親王 |
631 | いるつきを かへすあらしは なかりけり いつるみねには まつのあきかせ | 慈円 |
632 | なかめやる あきのやまかせ こころあらは かたふくつきを ふきやかへさぬ | 重家 |
633 | つきはなほ なかそらたかく のこれとも かけうすくなる ありあけのには | 経顕(藤原定資男) |
634 | かせになひく をはなかすゑに かけろひて つきとほくなる ありあけのには | 花園院 |
635 | かけきよき ありあけのつきは そらすみて しかのねたかき あかつきのやま | 新右衛門督(宣光門院) |
636 | ありあけの つきはかたふく やまのはに しかのねたかき よはのあきかせ | 万秋門院 |
637 | つきならぬ ほしのひかりも さやけきは あきてふそらや なへてすむらむ | 実衡女 |
638 | ありあけの つきはたえたえ かけみえて きりふきわくる あきのやまかせ | 季雄 |
639 | むらくもの ひまゆくつきの かけはやみ かたふくおいの あきそかなしき | 実兼 |
640 | やまさとに ありあけのそらを なかめても なほやしられぬ あきのあはれは | 中務(選子内親王家) |
641 | やまかせも しくれになれる あきのひに ころもやうすき をちのたひひと | 伏見院 |
642 | さすとなき ひかけはのきに うつろひて このはにかかる にはのむらさめ | 永福門院 |
643 | もろくなる やなきのしたは かつちりて あきものさむき ゆふくれのあめ | 新右衛門督(宣光門院) |
644 | むらさめの くもふきすさふ ゆふかせに ひとはつつちる たまのをやなき | 順徳院 |
645 | ひとしきり あらしはすきて きりのはの しつかにおつる ゆふくれのには | 大納言(昭訓門院) |
646 | ぬれておつる きりのかれはは おとおもみ あらしはかろき あきのむらさめ | 光厳院 |
647 | おちすさふ まきのしたつゆ なほふかし あめのなこりの きりのあさあけ | 公重(西園寺実衡男) |
648 | たちそむる きりかとみれは あきのあめの こまかにそそく ゆふくれのそら | 為秀 |
649 | しをりつる のわきはやみて しののめの くもにしたかふ あきのむらさめ | 徽安門院 |
650 | ふきみたし のわきにあるる あさあけの いろこきくもに あめこほるなり | 一条(花園院) |
651 | のわきたつ ゆふへのくもの あしはやみ しくれににたる あきのむらさめ | 為兼 |
652 | くさもきも のわきにしをる ゆふくれは そらにもくもの みたれてそゆく | 為名 |
653 | はとのなく すきのこすゑの うすきりに あきのひよわき ゆふくれのやま | 一条(花園院) |
654 | やまかけや よのまのきりの しめりより またおちやまぬ ききのしたつゆ | 永福門院 |
655 | うすきりの あさけのこすゑ いろさひて むしのねのこる もりのしたくさ | 永福門院 |
656 | つのくにの ゐなののきりの たえたえに あらはれやらぬ こやのまつはら | 邦省親王 |
657 | あさひやま またかけくらき あけほのに きりのしたゆく うちのしはふね | 資明 |
658 | うちわたす はまなのはしの あけほのに ひとむらくもる まつのうすきり | 広秀 |
659 | あさひかけ うつるこすゑは つゆおちて そとものたけに のこるうすきり | 俊兼 |
660 | ひかけさす いなはかうへは くれやらて まつはらうすき きりのやまもと | 忠季(藤原公蔭男) |
661 | おくみえぬ はやまのきりの あけほのに ちかきまつのみ のこるひとむら | 為相 |
662 | いりかかる をちのゆふひは かけきえて すそよりくるる うすきりのやま | 実兼 |
663 | きりふかき つまきのみちの かへるさに こゑはかりして くたるやまひと | 俊実(藤原定資男) |
664 | いりあひは ひはらのおくに ひひきそめて きりにこもれる やまそくれゆく | 尊氏 |
665 | たちこめて をのへもみえぬ きりのうへに こすゑはかりの まつのむらたち | 為基(京極為兼猶子) |
666 | あさあらしの みねよりおろす おほゐかは うきたるきりも なかれてそゆく | 為兼 |
667 | ふしみやま ふもとのいなは くもはれて たのもにのこる うちのかはきり | 実超 |
668 | いりうみの まつのひとむら くもりそめて しほよりのほる あきのゆふきり | 為成(冷泉為相男) |
669 | なにはかた うらさひしさは あききりの たえまにみゆる あまのつりふね | 三河内侍(二条院) |
670 | さえのほる ひひきやそらに ふけぬらむ つきのみやこも ころもうつなり | 家隆 |
671 | よをさむみ ねさめてきけは なかつきの ありあけのつきに ころもうつなり | 実朝 |
672 | ころもうつ よそのさとひと なれをしそ あはれとはおもふ あきのよさむに | 為定(御子左二条為道男) |
673 | いまははや あけぬとおもふ かねのおとの のちしもなかき あきのよはかな | 道良女 |
674 | そめやらぬ こすゑのひかけ うつりさめて ややかれわたる やまのしたくさ | 内侍(永福門院) |
675 | をかへなる はしのもみちは いろこくて よものこすゑは つゆのひとしほ | 御匣(新室町院) |
676 | おのれとや いろつきそむる うすもみち またこのころは しくれぬものを | 直義 |
677 | みるままに もみちいろつく あしひきの やまのあきかせ さむくふくらし | 具定 |
678 | まなくふる しくれにいろや つくはやま しけきこすゑも もみちしにけり | 通成 |
679 | いろいろに ならひのをかの はつもみち あきのさかのの ゆききにそみる | 後宇多院 |
680 | あさきりの はれゆくをちの やまもとに もみちましれる たけのひとむら | 実明女 |
681 | しかのやま こえてみやれは はつしくれ ふるきみやこは もみちしにけり | 道玄 |
682 | あきされは おくつゆしもに あへすして みやこのやまは いろつきぬらむ | 読人不知 |
683 | おほゐかは やまのもみちを うつしもて からくれなゐの なみそたちける | 長家 |
684 | しくれつる とやまのくもは はれにけり ゆふひにそむる みねのもみちは | 良経(九条兼実男) |
685 | ひかけさへ いまひとしほを そめてけり しくれのあとの みねのもみちは | 公清 |
686 | はれわたる ひかけにみれは やまもとの こすゑむらむら もみちしにけり | 清雅 |
687 | きりはるる たのものすゑに やまみえて いなはにつつく ききのもみちは | 花園院 |
688 | くれたけの めくれるさとを ふもとにて けふりにましる やまのもみちは | 花園院 |
689 | ゆふひうつる そとものもりの うすもみち さひしきいろに あきそくれゆく | 光明院 |
690 | もろこしも おなしそらこそ しくるらめ からくれなゐに もみちするころ | 後嵯峨院 |
691 | いろふかき やとのもみちの ひとえたに をりしるひとの なさけをそみる | 伏見院 |
692 | いろそへて みるへききみの ためとてそ わかやまさとの もみちをもをる | 覚助法親王 |
693 | とけてねぬ そてさへいろに いてねとや つゆふきむすふ みねのこからし | 式子内親王 |
694 | したもみち いろいろになる すすかやま しくれのいたく ふれはなるへし | 能宣 |
695 | よろつよを つむともつきし きくのはな なかつきのけふ あらむかきりは | 花山院 |
696 | なかつきの きくのさかつき ここのへに いくめくりとも あきはかきらし | 実雄 |
697 | ここのへに ちよをかさねて かさすかな けにをりえたる しらきくのはな | 公相 |
698 | めくりあふ つきひもおなし ここのへに かさねてみゆる ちよのしらきく | 隆祐 |
699 | ももしきや わかここのへの あきのきく こころのままに をりてかささむ | 後醍醐院 |
700 | よもすから ひかりはしもを かさぬれと つきにはきくの うつろはぬかな | 光行 |
701 | しもかれむ ことをこそおもへ わかやとの まかきににほふ しらきくのはな | 師時 |
702 | おくしもの そめまかはせる きくのはな いつれかもとの いろにはあるらむ | 貫之 |
703 | もすのゐる まさきのすゑは あきたけて わらやはけしき みねのまつかせ | 定家 |
704 | みるままに かへにきえゆく あきのひの しくれにむかふ うきくものそら | 進子内親王 |
705 | はつしもに かれゆくくさの きりきりす あきはくれぬと きくそかなしき | 匡房 |
706 | ほにいてて まねくとならは はなすすき すきゆくあきを えやはととめぬ | 教長 |
707 | まとふかき あきのこのはを ふきたてて またしくれゆく やまおろしのかせ | 後鳥羽院 |
708 | あきのあめの まとうつおとに ききわひて ねさむるかへに ともしひのかけ | 公宗女 |
709 | にはのおもに はきのかれはは ちりしきて おとすさましき ゆふくれのあめ | 覚円 |
710 | あきのあめに しをれておつる きりのはは おとするしもそ さひしかりける | 実衡女 |
711 | もろくなる きりのかれはは にはにおちて あらしにましる むらさめのおと | 永福門院 |
712 | としへたる みやまのおくの あきのそら ねさめしくれぬ あかつきそなき | 慶政 |
713 | なにとなく にはのよもきも したをれて さひゆくあきの いろそかなしき | 後鳥羽院 |
714 | ゆふひうすき かれはのあさち したすきて それかとよわき むしのひとこゑ | 伏見院 |
715 | うらかるる あさちかにはの きりきりす よわるをしたふ われもいつまて | 左京大夫(後伏見院) |
716 | しるきかな あさちいろつく にはのおもに ひとめかるへき ふゆのちかさは | 式子内親王 |
717 | いとはやも おしねいろつく はつしもの さむきあさけに やまかせそふく | 隆朝 |
718 | ゆふしもの ふるえのはきの したはより かれゆくあきの いろはみえけり | 後伏見院 |
719 | なかつきや よさむのころの ありあけの ひかりにまかふ あさちふのしも | 為子(従二位) |
720 | かせわたる まくすかはらに あきくれて かへらぬものは ひかすなりけり | 長雅 |
721 | としことに かはらぬけふの なけきかな をしみとめたる あきはなけれと | 登蓮 |
722 | やまをこえ みつをわたりて したふとも しらはそけふの あきのわかれち | 為相 |
723 | ゆくあきの なこりをけふに かきるとも ゆふへはあすの そらもかはらし | 実氏 |
724 | つきもみす かせもおとせぬ まとのうちに あきをおくりて むかふともしひ | 後伏見院 |
725 | おちつもる もみちはみれは おほゐかは ゐせきにとまる あきにそありける | 公任 |
726 | ふゆのきて しものふりはも あはれなり われもおいその もりのしたくさ | 基忠(鷹司兼平男) |
727 | もみちはの みやまにふかく ちりしくは あきのかへりし みちにやあるらむ | 後二条院 |
728 | くさかれて さひしかるへき にはのおもに もみちちりしき きくもさきけり | 新宰相(伏見院) |
729 | うきくもの あきよりふゆに かかるまて しくれすさへる とほやまのまつ | 実兼 |
730 | ゆふひさす おちはかうへに しくれすきて にはにみたるる うきくものかけ | 光厳院 |
731 | やまあらしに うきゆくくもの ひととほり ひかけさなから しくれふるなり | 儀子内親王 |
732 | ふりすさふ しくれのそらの うきくもに みえぬゆふひの かけそうつろふ | 盛親 |
733 | しくるとも よそにはみえす たえたえに とやまをめくる みねのうきくも | 為定(御子左二条為道男) |
734 | しくれゆく くもまによわき ふゆのひの かけろひあへす くるるそらかな | 為相 |
735 | うきてゆく くものたえたえ かけみえて しくるるやまに ゆふひさすなり | 家雅 |
736 | しくれのあめ なにとふるらむ ははそはら ちりてののちは いろもまさらし | 教長 |
737 | やまあらしに このはふりそふ むらしくれ はるるくもまに みかつきのかけ | 進子内親王 |
738 | かみなつき くもままつまに ふけにけり しくるるころの やまのはのつき | 後鳥羽院 |
739 | つきのすかた なほありあけの むらくもに ひとそそきする しくれをそみる | 永福門院 |
740 | かみなつき くものゆくての むらしくれ はれもくもりも かせのまにまに | 公蔭 |
741 | をりをりに しくれおとして なかきよの ねやのいたまは まてとしらます | 新宰相(伏見院) |
742 | とやまより しくれてわたる うきくもに このはふきませ ゆくあらしかな | 為仲(藤原為顕男) |
743 | さそひはてし あらしののちの ゆふしくれ にはのおちはを なほやそむらむ | 左京大夫(永陽門院) |
744 | かさとりの やまをたのみし かひもなく しくれにそてを ぬらしてそゆく | 頼基(大中臣輔道男) |
745 | しくれゆく たたひとむらは はやくして なへてのそらは くもそのとけき | 為子(従二位) |
746 | むらむらに こまつましれる ふゆかれの のへすさましき ゆふくれのあめ | 永福門院 |
747 | かれつもる ならのおちはに おとすなり かせふきまする ゆふくれのあめ | 進子内親王 |
748 | ふきわくる このはのしたも このはにて にはみせかぬる やまおろしのかせ | 伏見院 |
749 | しくるとも しられぬにはは このはぬれて さむきゆふひは かけおちにけり | 後伏見院 |
750 | こころして かせののこせる もみちはを たつぬるやまの かひにみるかな | 下野(四条太皇太后宮) |
751 | もみちはの ちりしくときは ゆきかよふ あとたにみえぬ やまちなりけり | 貫之 |
752 | みなかみに しくれふるらし やまかはの せにももみちの いろふかくみゆ | 順 |
753 | わかやとの ものなりなから おほゐかは せきもととめす ゆくこのはかな | 後嵯峨院 |
754 | かみなひの やましたかせの さむけくに ちりかひくもる よものもみちは | 後二条院 |
755 | かみかきの もりのこのはは ちりしきて をはなのこれる かすかののはら | 兵衛督(花園院) |
756 | ふくかせの さそふともなき こすゑより おつるかれはの おとそさひしき | 内経 |
757 | いりあひの ひひきをおくる やまかせに もろきこのはの おとそましれる | 公宗(西園寺実衡男) |
758 | いつのまに こけさへいろの かはるらむ けさはつしもの ふるさとのには | 実経 |
759 | あきみしは それとはかりの はきかえに しものくちはそ ひとはのこれる | 一条(徽安門院) |
760 | ふゆかれの しはふのいろの ひととほり みちふみわくる のへのあさしも | 資明 |
761 | しもさむき あさけのやまは うすきりて こほれるくもに もるひかけかな | 祝子内親王 |
762 | しもこほる たけのはわけに つきさえて にはしつかなる ふゆのさよなか | 光明院 |
763 | ふきとほす こすゑのかせは みにしみて さゆるしもよの ほしきよきそら | 公蔭 |
764 | おくしもは ねやまてとほる あけかたの まくらにちかき かりのひとこゑ | 為基(京極為兼猶子) |
765 | のこりつる みねのひかけも くれはてて ゆふしもさむし をかのへのさと | 淑文 |
766 | くれかかる ひかけはよそに なりにけり ゆふしもこほる もりのしたくさ | 源恵 |
767 | そらたかく すみとほるつきは かけさえて しはふにしろき しものあけかた | 実明女 |
768 | もみちせし をかへもいまは しろたへの しものくちはに つきそこほれる | 成茂 |
769 | くさはこそ おきそふしもに たへさらめ なににかれゆく やとのひとめそ | 実重(三条公親男) |
770 | ふりはつる われをもすつな かすかのや おとろかみちの しものしたくさ | 実教 |
771 | あさちふや のこるはすゑの ふゆのしも おきところなく ふくあらしかな | 定家 |
772 | しもしろき かみのとりゐの あさからす なくねもさひし ふゆのやまもと | 家隆 |
773 | しもとくる ひかけのにはは このはぬれて くちにしいろそ またかはりぬる | 中納言典侍(後伏見院) |
774 | そめかふる まかきのきくの むらさきは ふゆにうつろふ いろにそありける | 経家(六条重家男) |
775 | にはのおもに おいのともなる しらきくは むそちのしもや なほかさぬへき | 後宇多院 |
776 | こむらさき のこれるきくは しらつゆの あきのかたみに おけるなりけり | 道信 |
777 | ふゆされは さゆるあらしの やまのはに こほりをかけて いつるつきかけ | 為世(御子左藤原為氏男) |
778 | おほろなる ひかりもさむし しもくもり さえたるそらに ふくるよのつき | 隆教 |
779 | ふくとたに しられぬかせは みにしみて かせさえとほる しものうへのつき | 儀子内親王 |
780 | なかきよの しものまくらは ゆめたえて あらしのまとに こほるつきかけ | 覚助法親王 |
781 | こほるかと そらさへみえて つきのあたり むらむらしろき くももさむけし | 徽安門院 |
782 | もののふの やそうちかはの ふゆのつき いるてふなをは ならはさらなむ | 公相 |
783 | せたえする ふるかはみつの うすこほり ところところに みかくつきかけ | 為秀 |
784 | かねのおとに あくるかそらと おきてみれは しもよのつきそ にはしつかなる | 後伏見院 |
785 | ありあけの つきとしもとの いろのうちに おほえすそらも しらみそめぬる | 忠季(藤原公蔭男) |
786 | ふきさゆる あらしのつての ふたこゑに またはきこえぬ あかつきのかね | 為兼 |
787 | あかつきや ちかくなるらむ もろともに かならすもなく かはちとりかな | 増基 |
788 | あふみちや のしまかさきの はまかせに ゆふなみちとり たちさわくなり | 顕輔 |
789 | ゆふくれの しほかせあらく なるみかた かたもさためす なくちとりかな | 経朝 |
790 | はるかなる おきのひかたの さよちとり みちくるしほに こゑそちかつく | 宣時(北条) |
791 | なにはかた いりえにさむき ゆふひかけ のこるのさひし あしのむらたち | 通相 |
792 | みなといりの たななしをふね あとみえて あしのはむすふ うすこほりかな | 秀能(藤原秀宗男) |
793 | ゆきなやむ たにのこほりの したむせひ すゑにみなきる みつそすくなき | 実兼 |
794 | ふゆふかき たにのしたみつ おとたえて こほりのうへを はらふこからし | 恵助法親王 |
795 | わきてなほ こほりやすらむ おほゐかは さゆるあらしの やまかけにして | 基嗣 |
796 | かせさむき やまかけなれは なつみかは むすふこほりの とくるひもなし | 為忠(御子左二条為藤男) |
797 | さむきあめは かれののはらに ふりしめて やままつかせの おとたにもせす | 永福門院 |
798 | こすゑには ゆふあらしふきて さむきひの ゆきけのくもに かりなきわたる | 伏見院 |
799 | むれてたつ そらもゆきけに さえくれて こほりのとこに をしそなくなる | 式子内親王 |
800 | そらさむみ ゆきけもよほす やまかせの くものゆききに あられちるなり | 為相女 |
801 | かせのおとも さむきゆふひは みえなから くもひとむらに あられおつなり | 重資 |
802 | しもこほる のへのささはら かせさえて たまりもあへす ふるあられかな | 通顕 |
803 | しくれつつ よものもみちは ふりはてて あられそおつる にはのこのはに | 式子内親王 |
804 | ふりはるる にはのあられは かたよりて いろなるくもに そらそくれゆく | 為兼 |
805 | ゆふへより あれつるかせの さえさえて よふかきままに あられをそきく | 新宰相(伏見院) |
806 | ふゆのよの ねさめにきけは かたをかの ならのかれはに あられふるなり | 永縁 |
807 | おとたつる そとものならの ひろはにも あまりてよそに ちるあられかな | 為定(御子左二条為道男) |
808 | なかめやる をかのやなきは えたさひて ゆきまつそらの くれそさむけき | 章義門院 |
809 | うきくもの しくれくらして はるるあとに なかはゆきなる のきのやまのは | 為基(京極為兼猶子) |
810 | まきもくの ひはらのあらし さえさえて ゆつきかたけに ゆきふりにけり | 実朝 |
811 | ゆきやこれ はらふたかまの やまかせに つれなきくもの みねにのこれる | 後鳥羽院 |
812 | はつゆきの まとのくれたけ ふしなから おもるうははの ほとそきこゆる | 定家 |
813 | ふりけるも まさこのうへは みえわかて おちはにしろき にはのうすゆき | 雅孝 |
814 | にははたた しもかとみれは をかのへの まつのはしろき けさのはつゆき | 道命/道全 |
815 | ささのはの うへはかりには ふりおけと みちもかくれぬ のへのうすゆき | 朝定 |
816 | あとたえて うつまぬしもそ すさましき しはふかうへの のへのうすゆき | 冷泉(花園院) |
817 | あさひかけ さすやくもまの たえたえに うつるもこほる みねのしらゆき | 寂恵 |
818 | いつくとも つもるたかねは みえねとも くものたえたえ ふれるしらゆき | 道嗣 |
819 | たかねには けぬかうへにや つもるらむ ふしのすそのの けさのはつゆき | 公清 |
820 | たひひとの さきたつみちは あまたにて あとなきよりも まよふゆきかな | 為守 |
821 | なみかかる しつえはきえて いそのまつ こすゑはかりに つもるしらゆき | 重能 |
822 | ゆくさきは ゆきのふふきに とちこめて くもにわけいる しかのやまこえ | 為兼 |
823 | みやまには しらゆきふれり しからきの まきのそまひと みちたとるらし | 実朝 |
824 | ゆきのうちに けふもくらしつ やまさとは つまきのけふり こころほそくて | 基俊 |
825 | ふるままに ひはらもいとと こもりえの はつせのやまは ゆきつもるらし | 為定(御子左二条為道男) |
826 | とりのこゑ まつのあらしの おともせす やましつかなる ゆきのゆふくれ | 永福門院 |
827 | みよしのや すすふくおとは うつもれて まきのははらふ ゆきのあさかせ | 国基/国守/国夏 |
828 | つまきこる やまちはゆきの ふかけれは よにふるみちも たえやしぬらむ | 俊恵 |
829 | いかはかり ふりつもるらむ おもひやる こころもふかき みねのしらゆき | 道家 |
830 | たつねいりし まことのみちの ふかきやまは つもれるゆきの ほともしられす | 慶政 |
831 | みやこへも みゆらむものを あはれとも とはぬそつらき みねのしらゆき | 道玄 |
832 | なかむへき そなたのやまも かきくれて みやこもゆきの はるるまもなし | 為顕 |
833 | とふひとの あとこそあらめ まつかせの おとさへたゆる やまのしらゆき | 宗経(平経親男) |
834 | ふりつもる こすゑのゆきや こほるらし あさひももらぬ にはのまつかえ | 頼氏(藤原頼広男) |
835 | やまのはの ゆきのひかりに くれやらて ふゆのひなかし をかのへのさと | 公経(藤原実宗男) |
836 | ふりおもる のきはのまつは おともせて よそなるたにに ゆきをれのこゑ | 兼行 |
837 | やまおろしの こすゑのゆきを ふくたひに ひとくもりする まつのしたかけ | 為兼 |
838 | よもすから ふるほとよりも つもらぬは あらしやはらふ まつのしらゆき | 定資 |
839 | ゆふくれの みそれのにはや こほるらむ ほとなくつもる よはのしらゆき | 盛親 |
840 | はなよたた またうすくもる そらのいろに こすゑかをれる ゆきのあさあけ | 為子(従二位) |
841 | ふれはかつ こほるあさけの ふるやなき なひくともなき ゆきのしらいと | 内侍(永福門院) |
842 | あさひさす のきはのゆきは かつきえて たるひのすゑに おつるたまみつ | 道意(西園寺実兼男) |
843 | をかのへや さむきあさひの さしそめて おのれとおつる まつのしらゆき | 後伏見院 |
844 | のもやまも ひとつにしらむ ゆきのいろに うすくもくらき あさあけのそら | 実兼 |
845 | うすくもり またはれやらぬ あさあけの くもにまかへる ゆきのとほやま | 徽安門院 |
846 | みゆきふる かれきのすゑの さむけきに つはさをたれて からすなくなり | 一条(花園院) |
847 | とりかへる たにのとほそに ゆきふかし つまきこるをの みちやたえなむ | 後鳥羽院 |
848 | うすくもり をりをりさむく ちるゆきに いつるともなき つきもすさまし | 儀子内親王 |
849 | ふりすさふ ゆふへのゆきの そらはれて たけのはしろき のきのつきかけ | 覚実 |
850 | ふきかくる すたれもしろく なりにけり かせによこきる ゆふくれのゆき | 親行(藤原) |
851 | うつもるる くさきにかせの おとはやみて ゆきしつかなる ゆふくれのには | 重資 |
852 | やまもとの たけはむらむら うつもれて けふりもさむき ゆきのあさあけ | 一条(花園院) |
853 | みわたせは やまもととほき ゆきのうちに けふりさひしき さとのひとむら | 直義 |
854 | ふりつもる いろよりつきの かけになりて ゆふくれみえぬ にはのしらゆき | 伏見院 |
855 | くるるまて しはしははらふ たけのはに かせはよわりて ゆきそふりしく | 為兼 |
856 | みよしのの やまよりゆきは ふりくれと いつともわかぬ わかやとのたけ | 貫之 |
857 | いけのへの まつのすゑはに ふるゆきは いほへふりしけ あすさへもみむ | 読人不知 |
858 | うはたまの こよひのゆきに いさぬれむ あけむあしたに けなはをしけむ | 読人不知 |
859 | ものことに ふりのみかくす ゆきなれと みつにはいろも のこらさりけり | 貫之 |
860 | もろともに はかなきものは みつのおもに きゆれはきゆる あわのうへのゆき | 仲正 |
861 | ふりつもる ゆきまにおつる たきかはの いはねにほそき みつのしらなみ | 覚助法親王 |
862 | かつむすふ こほりのほとも あらはれて ゆきになりゆく にはのいけみつ | 行家(藤原知家男) |
863 | ゆきふりて ふままくをしき にはのおもは たつねぬひとも うれしかりけり | 顕季 |
864 | わかこころ ゆきけのそらに かよふとも しらさりけりな あとしなけれは | 俊頼(源経信男) |
865 | めくりあふ おなしつきひは おもひいつや よとせふりにし ゆきのあけほの | 伏見院 |
866 | つもれとも つかへしままの こころのみ ふりてもふりぬ ゆきのあけほの | 家基(近衛基衡男) |
867 | ふりはれて こほれるゆきの こすゑより あかつきふかき とりのはつこゑ | 進子内親王 |
868 | ふりはるる あさけのそらは のとかにて ひかけにおつる ききのしらゆき | 覚誉法親王 |
869 | ひかけさす そなたのゆきの むらきえに かつかつおつる のきのたまみつ | 隆博 |
870 | みかりのに くさをもとめて たつとりの しはしかくるる ゆきのしたしは | 為相 |
871 | みかりする かたやまかけの おちくさに かくれもあへす たつききすかな | 公泰 |
872 | たにこしに くさとるたかを めにかけて ゆくほとおそき しはのしたみち | 為兼 |
873 | かせさゆる うちのあしろき せをはやみ こほりもなみも くたけてそよる | 為世(御子左藤原為氏男) |
874 | やまふかき ゆきよりたつる ゆふけふり たかすみかまの しるへなるらむ | 雅孝 |
875 | をのやまは やくすみかまの したもえて けふりのうへに つもるしらゆき | 四条(安嘉門院) |
876 | すみかまの けふりにはるを たちこめて よそめかすめる をののやまもと | 為家 |
877 | すみかまの けふりはかりを それとみて なほみちとほし をののやまさと | 貞時 |
878 | くれやらぬ にはのひかりは ゆきにして おくくらくなる うつみひのもと | 花園院 |
879 | うつみひに すこしはるある ここちして よふかきふゆを なくさむるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
880 | さむからし たみのわらやを おもふには ふすまのうちの われもはつかし | 光厳院 |
881 | くものうへの とよのあかりに たちいてて みはしのめしに つきをみしかな | 少将内侍(後深草院) |
882 | をとめこか くものかよひち ふくかせに めくらすゆきそ そてにみたるる | 為藤 |
883 | おもかけも みるここちする むかしかな けふをとめこか そてのしらゆき | 亀山院 |
884 | しのふらし をとめかそての しらゆきも ふりにしあとの けふのおもかけ | 伏見院 |
885 | わすれすよ とよのあかりの をみころも きつつなれしは むかしなれとも | 公雄 |
886 | やまあゐの そてのつきかけ さよふけて しもふきかへす かものかはかせ | 為成(冷泉為相男) |
887 | ことわりや あまのいはとも あけぬらむ くもゐのにはの あさくらのこゑ | 俊成(藤原俊忠男) |
888 | のこりなく ことしもはやく くれたけの あらしにましる ゆきもすさまし | 右衛門督(永福門院) |
889 | けふまては ゆきふるとしの そらなから ゆふくれかたは うちかすみつつ | 後鳥羽院 |
890 | いりかたの かけこそやかて かすみけれ はるにかかれる ありあけのつき | 宗尊親王 |
891 | おのつから かきねのくさも あをむなり しものしたにも はるやちかつく | 伏見院 |
892 | ひととせに ふたたひにほふ うめのはな はるのこころに あかぬなるへし | 貫之 |
893 | をしみこし はなやもみちの なこりさへ さらにおほゆる としのくれかな | 後鳥羽院 |
894 | あれぬひの ゆふへのそらは のとかにて やなきのすゑも はるちかくみゆ | 永福門院 |
895 | みのうさも かはりやすると よしさらは ことしはとしの くれもをしまし | 兼直 |
896 | ことしまた くれぬとおもへは いまさらに すきしつきひの をしくもあるかな | 良基(二条道平男) |
897 | いたつらに けふさへくれは あすかかは またとしなみの かすやかさねむ | 為明 |
898 | くれぬとて なにかはいそく としをへて ひとのためなる はるとみなから | 知家 |
899 | とほくゆく きみをおくると おもひやる こころもともに たひねをやせむ | 貫之 |
900 | ひさかたの あめもこころに かなはなむ ふるとてひとの たちとまるへく | 貫之 |
901 | たひころも はるかにたては あききりの おほつかなさを いかになかめむ | 康資王母 |
902 | めにみえぬ こころをひとに たくへても やるかたなきは こころなりけり | 為定(御子左二条為道男) |
903 | いつかたに ありあけのつきの さそふらむ そらにうかるる たひのこころを | 四条(安嘉門院) |
904 | たひころも あさたつひとは たゆむなり きりにくもれる あけくれのそら | 順徳院 |
905 | あつさゆみ いるののくさの ふかけれは あさゆくひとの そてそつゆけき | 顕季 |
906 | あふさかの せきはあけぬと いてぬれと なほみちくらし すきのしたかけ | 定宗(藤原家親男) |
907 | ふかきよに せきのといてて あしからの やまもとくらき たけのしたみち | 頼成(藤原頼重男) |
908 | ふしのねを やまよりうへに かへりみて いまこえかかる あしからのせき | 行朝 |
909 | われのみと よふかくこゆる みやまちに さきたつひとの こゑそきこゆる | 朝定 |
910 | いはたたみ のほりわつらふ みねつつき くもにはつれて みゆるかけはし | 道全 |
911 | ゆくすゑは なほいくへとも しらくもの かさなるみねに またむかひぬる | 慈成 |
912 | くもきりに わけいるたには すゑくれて ゆふひのこれる みねのかけはし | 花園院 |
913 | わけきつる やままたやまは ふもとにて みねよりみねの おくそはるけき | 道昭 |
914 | やまたかみ いつれをわきて こえゆかむ あまたあとある いはのかけみち | 新大納言(延政門院) |
915 | めにかけて くれぬといそく やまもとの まつのゆふひの いろそすくなき | 為兼 |
916 | ひとむらの さとのしるへに たつけふり ゆけともとほみ くるるそらかな | 行能 |
917 | ゆきくれて やととふすゑの さとのいぬ とかむるこゑを しるへにそする | 仲成 |
918 | ゆふまくれ まよふやまちは こえすきて やととふさとに いつるつきかけ | 本如 |
919 | こえなやみ わかゆきとまる ゆふやまの をのへのつきは いまそいつなる | 為子(従二位) |
920 | ゆきとまる くさのまくらの つゆにしも われまちかほに やとるつきかな | 維貞 |
921 | あたらよの つきをひとりそ なかめつる おもはぬいそに なみまくらして | 公重(藤原通季男) |
922 | よもすから とまもるつきを まくらにて うちもねられぬ なみのおとかな | 基輔(坊門清親男) |
923 | とまりふね いりぬるいその なみのおとに こよひもゆめは みらくすくなし | 頼氏(藤原頼広男) |
924 | よをこめて たひのやとりを たつひとは くまなきつきを あけぬとやおもふ | 公重(藤原通季男) |
925 | ふきおろす ふしのたかねの あさあらしに そてしをれそふ うきしまかはら | 俊言 |
926 | やすかはと いかてかなには なかれけむ くるしきせのみ あるよとおもふに | 為兼 |
927 | みねのくも うらわのなみを めにかけて あらしをわくる さやのなかやま | 為兼 |
928 | ささのはの さやのなかやま なかきよも かりねのゆめは むすひやはする | 道家 |
929 | たかせやま まつのしたみち わけゆけは ゆふあらしふきて あふひともなし | 為兼 |
930 | あすもまた おなしみちにと ちきるかな とまりかはらぬ よはのたひひと | 聖尊法親王 |
931 | あまのはら やそしまかけて てるつきの みちたるしほに よふねこくなり | 公泰 |
932 | あしのはに あめふりかかる くらきよの いりえのふねに みやこをそおもふ | 俊兼 |
933 | いまむかふ かたはあかしの うらなから またはれやらぬ わかおもひかな | 尊氏 |
934 | うらやまし やまたのくろに みちもあれや みやこへかよふ をちのたひひと | 内侍(永福門院) |
935 | うみやまの おもひやられし はるけさも こゆれはやすき ものにそありける | 道全 |
936 | なくさめに みつつもゆかむ きみかすむ そなたのやまを ゆきなへたてそ | 寂然 |
937 | おもひやれ みやこはるかに おきつなみ たちへたてたる こころほそさを | 崇徳院 |
938 | すききつる たひのあはれを かすかすに いかてみやこの ひとにかたらむ | 後鳥羽院 |
939 | ゆきうつる ところところの おもかけを こころにとむる たひのみちかな | 定忠 |
940 | つゆにふし あらしにそてを かさねきて のやまのたひも ひかすへにけり | 公蔭 |
941 | とふとりの なかめのすゑも みえぬまて みやこのそらを おもひこそやれ | 後伏見院 |
942 | わけきつる つゆのたもとは ほしわひぬ またさととほき のへのゆふくれ | 隆親(藤原隆衡男) |
943 | ゆきすりの ころもにうつれ はきかはな たひのしるしと ひとにかたらむ | 経家(六条重家男) |
944 | いさやこら やまとへはやく しらすけの まののはきはら たをりてゆかむ | 人麿 |
945 | しほつやま うちこえくれは わかのれる こまそつまつく いへこふらしも | 金村 |
946 | さとはなれ とほからなくに くさまくら たひとしおもへは なほこひにけり | 読人不知 |
947 | はるはると ゆくもとまるも おいぬれは またあふことを いかかとそおもふ | 頼政 |
948 | はかなくも かへらむほとを ちきるかな さらぬわかれに なりもこそすれ | 道因 |
949 | かへるまて えそまつましき きみかゆく すゑはるかなる わかみならねは | 頼政 |
950 | かへるとも のちにはまたと たのむへき このみのうたて あたにもあるかな | 寂然 |
951 | ふるさとを こふるなみたの なかりせは なにをかたひの みにはそへまし | 登蓮 |
952 | ふるさとに かよふこころの みちはあれと こえてあとなき みねのしらくも | 為定(御子左二条為道男) |
953 | やまひめの もみちのにしき われにかせ ふるさとひとに きてもみゆへく | 有範 |
954 | あはれなと あひもおもはぬ ふるさとに たひねとなれは こひしかるらむ | 為家 |
955 | つゆなから むすふをささの かりまくら かりそめふしの いくよへぬらむ | 実雄 |
956 | いはしろの をかのかやねを むすふよも ゆめはみやこに かはらさりけり | 行能 |
957 | ふるさとに ちきりしひとも ねさめせは わかたひねをも おもひやるらむ | 為兼 |
958 | むすひすてて よなよなかはる たひまくら かりねのゆめの あともはかなし | 為兼 |
959 | たまかつま あへしまやまの ゆふつゆに たひねしかねつ なかきこのよを | 読人不知 |
960 | ちきりありて かかるおもひや つくはねの みねともひとの やかてこひしき | 公蔭 |
961 | しられしな おさふるそての なみたかは したにははやき みつのこころを | 良基(二条道平男) |
962 | しはしこそ そてにもつつめ なみたかは たきつこころを いかてせかまし | 教長 |
963 | わかこひは はつもとゆひの こむらさき いつしかふかき いろにみえつつ | 後醍醐院 |
964 | きのふけふ くものはたてに なかむとて みもせぬひとの おもひやはしる | 定家 |
965 | ものおもふと われたにしらぬ このころの あやしくつねは なかめかちなる | 光明院 |
966 | ひとしれぬ こころのうちの おもひゆゑ つねはなかめの ひころにもにぬ | 冷泉(花園院) |
967 | いはかねの こりしくやまに あらなくに いもかこころの われにうこかぬ | 公蔭 |
968 | ふかきえの あしのしたねよ よしさらは たたくちはてね みこもりにして | 親子(従三位源) |
969 | うつもるる ゆきのしたくさ いかにして つまこもれりと ひとにしらせむ | 大弐三位 |
970 | よそにては はなのたよりと みえなから こころのうちに こころあるものを | 貫之 |
971 | あをやきの かつらきやまの よそなから きみにこころを かけぬひはなし | 家隆 |
972 | はつしくれ おもひそめても いたつらに まきのしたはの いろそつれなき | 為兼 |
973 | ひとしれす おもふこころは としへても なにのかひなく なりぬへきかな | 敦忠 |
974 | うちたえて なかめたにせす こひすてふ けしきをひとに みせしとおもへは | 国信 |
975 | つらからむ ときこそあらめ あちきなく いはてこころを くたくへしやは | 重家 |
976 | いひいてむ ことのはもなほ しのはれて こころにこむる わかおもひかな | 後二条院 |
977 | いつとなく すすりにむかふ てならひよ ひとにいふへき おもひならねは | 徽安門院 |
978 | なみたをは もらさすとても ものおもふ こころのいろの えやはかくれむ | 直義 |
979 | しのひかね こころにあまる おもひなれは いはてもいろに いてぬへきかな | 新右衛門督(宣光門院) |
980 | しらせねは あはれもうさも またみぬに なみたまてには なにかこほるる | 公蔭 |
981 | ほのかなる おもかけはかり みかつきの われておもふと しらせてしかな | 師継 |
982 | わかそてに おほえすつきそ やとりける とふひとあらは いかかこたへむ | 実朝 |
983 | つきはたた むかふはかりの なかめかな こころのうちの あらぬおもひに | 祝子内親王 |
984 | かれねたた そのなもよしや しのふくさ おもふにまけは ひともこそしれ | 為氏 |
985 | ほとときす いまはさつきと なのるなり わかしのひねそ ときそともなき | 為家 |
986 | しのふれは ねにこそたてね さをしかの いるののつゆの けぬへきものを | 長明 |
987 | こえてまた こひしきひとに あふさかの せきならはこそ なをもたのまめ | 俊成女 |
988 | こひしなむ のちのあはれの ためはかり かくともせめて しらせてしかな | 公顕 |
989 | さてもわか おもふおもひよ つひにいかに なにのかひなき なかめのみして | 永福門院 |
990 | つらくとも つひのたのみは ありなまし あはぬためしの なきよなりせは | 頼輔 |
991 | しのふれと おもふおもひの あまりには いろにいてぬる ものにそありける | 嘉言 |
992 | わするやと しはしはかりは しのふるに こころよわきは なみたなりけり | 元真 |
993 | わひつつは たのめたにせよ こひしなむ のちのよまても なくさめにせむ | 俊頼(源経信男) |
994 | みをかへて みるみちもかな つれなさの ひとにもかかる ひとのこころか | 進子内親王 |
995 | おのつから わかおもひねに みるゆめや ひとはゆるさぬ ちきりなるらむ | 公重(西園寺実衡男) |
996 | わすられむ なをたにせめて なけかはや それもなれての のちそとおもへは | 定忠母 |
997 | つれもなき ひとのこころの せきもりは ゆめちまてこそ ゆるささりけれ | 少将内侍(後醍醐院) |
998 | つれもなき うつつをゆめに ひきかへて うれしきゆめを うつつともかな | 惟方 |
999 | しらせねは つれなきいろも みえぬまの うからぬひとに ものをこそおもへ | 公宗(西園寺実衡男) |
1000 | おもひあまり しられむとおもふ ことのはも なほひとつての なかそかなしき | 順徳院 |
1001 | つゆはかり たのむこころは なけれとも たれにかかれる われならなくに | 高明 |
1002 | とふことの はしめはけふに みゆらめと おもふこころは としそへにける | 輔親 |
1003 | おとにのみ きけはかひなし ほとときす ことかたらはむと おもふこころあり | 兼家 |
1004 | かたらはむ ひとなきさとに ほとときす かひなかるへき こゑなふるしそ | 道綱母 |
1005 | かくれなき にほのかよひち いまさらに あさきこころの みつからそうき | 兼氏 |
1006 | うめかかは しるへかほなる はるかせの たかゆくへとも なとやふきこぬ | 隆信 |
1007 | しらるへき ゆくへならねと うめかかに さそはれてこは いかかいとはむ | 読人不知 |
1008 | いろふかく そめしこころそ わすられぬ みやまのさとの うめのにほひに | 隆信 |
1009 | かへりにし こころのいろの あさけれは あたにそめける はなとこそみれ | 読人不知 |
1010 | あやしくも こころのうちそ みたれゆく ものおもふみとは なさしとおもふに | 永福門院 |
1011 | くやしくそ しはしひとまを ゆるしつる ととめかねける そてのなみたを | 実衡女 |
1012 | おほかたに なれしひころも うときかな かかるこころを おもひけるよと | 徽安門院 |
1013 | おもふかたに ききしひとまの ひとことよ さてもいかにと いふみちもなし | 永福門院 |
1014 | あちきなや ひとのうきなを たてしゆゑ わかおもひをは なきになしつる | 後伏見院 |
1015 | うちつけに あはれなるこそ あはれなれ ちきりならては かくやとおもへは | 花園院 |
1016 | おもふてふ ことはかくこそ おほえけれ またしらさりし ひとのあはれの | 徽安門院 |
1017 | あひおもふ こころとまては たのまねと うきなはひとも さそしのふらむ | 為忠(御子左二条為藤男) |
1018 | なきなそと わかこころにも こたへはや そのよのゆめの かことはかりは | 新宰相(伏見院) |
1019 | さてもとも とはれぬいまは またつらし ゆめなれとこそ いひしものから | 実明女 |
1020 | ゆめにたに みつとはいはし おのつから おもひあはする ひともこそあれ | 俊定(藤原経俊男) |
1021 | なきなとも ひとにはいはし それをたに つらきかなかの おもひてにして | 宗宣(北条宣時男) |
1022 | ゆめかなほ みたれそめぬる あさねかみ またかきやらむ すゑもしらねは | 右衛門督(永福門院) |
1023 | けさよなほ あやしくかはる なかめかな いかなるゆめの いかかみえつる | 進子内親王 |
1024 | とにかくに はれぬおもひに むきそめて うきよりさきに もののかなしき | 永福門院 |
1025 | われはおもひ ひとにはしひて いとはるる これをこのよの ちきりなれとや | 光厳院 |
1026 | ねられねは ゆめにはあらし おもかけの こころにそひて みゆるなりけり | 進子内親王 |
1027 | さすかいかに ひとのおもはは やすからむ つつむかうへの ゆめのあふせも | 一条(徽安門院) |
1028 | ことかよふ みちもさすかに なからめや たたうきなかそ しのふにはなる | 右衛門督(永福門院) |
1029 | をりをりに ききみることの それもみな こひしきことの すさひにそなる | 為秀 |
1030 | こひしさに みのうきことも わするれは つらきもひとは うれしかりけり | 俊頼(源経信男) |
1031 | おもはしと こころをもとく こころしも まとひまさりて こひしかるらむ | 保憲女 |
1032 | うつせみの ひとめをしけみ あはすして としのへぬれは いけりともなし | 読人不知 |
1033 | こころには もえておもへと うつせみの ひとめをしけみ いもにあはぬかも | 読人不知 |
1034 | ひとことを しけしといもに あはすして こころのうちに こふるこのころ | 読人不知 |
1035 | うつつには さらにもいはす ゆめにたに いもかたもとを まきぬとしみは | 家持 |
1036 | いかならむ ひのときにかも わきもこか もひきのすかた あさにけにみむ | 読人不知 |
1037 | かくはかり こひむとかねて しらませは いもをはみすそ あるへかりける | 読人不知 |
1038 | つつむなかの かさねてきかぬ ちきりこそ まつものからに たのみかたけれ | 永福門院 |
1039 | うれしとも ひとかたにやは なかめらるる まつよにむかふ ゆふくれのそら | 永福門院 |
1040 | たのましと おもふこころは こころにて くれゆくそらの またいそかるる | 冷泉(花園院) |
1041 | かならすと さしもたのめぬ ゆふくれを われまちかねて われそかなしき | 親子(従三位源) |
1042 | とはすとも さはるとせめて きかすなよ まつをたのみの ゆふくれのそら | 重能 |
1043 | とへかしと おもふこころの あらましに たのめぬくれそ そらにまたるる | 新宰相(伏見院) |
1044 | たのまねと たのめしくれは まつといはむ あはれとおもふ かたもありやと | 新宰相(伏見院) |
1045 | よしさらは またしとおもふ ゆふくれを またおとろかす いりあひのかね | 尊氏 |
1046 | くれにけり あまとふくもの ゆききにも こよひいかにと つたへてしかな | 永福門院 |
1047 | おのつから おもひもいては とはかりの わかあらましに まつそはかなき | 実衡女 |
1048 | たのまねは またぬになして みるよはの ふけゆくままに なとかかなしき | 為兼 |
1049 | よひのまは たれもひとめを つつめはと ふくるつらさを わすれてそまつ | 円伊 |
1050 | つつむなかは ひとめにさはる かたやあると ふけてしもこそ なほまたれけれ | 冬氏女 |
1051 | たのめすてて とはぬはさこそ やすくとも まつこころをは おもひやらなむ | 永福門院 |
1052 | いくゆふへ むなしきそらに とふとりの あすかならすと またやたのまむ | 後伏見院 |
1053 | みるもうし さすかさこそと まつくれに あすかならすの ひとのたまつさ | 進子内親王 |
1054 | おもかけは こころのうちに さきたちて ちきりしつきの かけそふけぬる | 冬平 |
1055 | ちきらぬに ひとまつなこそ をしからめ つきはかりをは みぬよはそなき | 下野(四条太皇太后宮) |
1056 | ふけにける まきのいたとの やすらひに つきこそいつれ ひとはつれなし | 隆祐 |
1057 | わすれすは よよしとひとに つけすとも つきみるたひに まつとしらなむ | 和氏 |
1058 | ふけぬとも たれにかいはむ ひとしれす まつよのつきの よひすくるかけ | 公宗(西園寺実衡男) |
1059 | まきのとを かせのならすも あちきなし ひとしれぬよの ややふくるほと | 永福門院 |
1060 | ひとはいさ あたしちきりの ことのはを まことかほにや まちふけぬらむ | 客子(従三位) |
1061 | おもひとり うらみはてても かひそなき たのむれはまた またれのみして | 伏見院 |
1062 | われもひとも あはれつれなき よなよなよ たのめもやます まちもよわらす | 永福門院 |
1063 | ふけぬれと さはるときかぬ こよひをは たのみのうちに まつもはかなし | 新右衛門督(宣光門院) |
1064 | ふけにけり またとはれてと むかふよの なみたににほふ ともしひのかけ | 花園院 |
1065 | いもまつと やまのしつくに たちぬれて そほちにけらし わかこひころも | 土御門院 |
1066 | ふけはてぬ たのめしをさへ わすれてや さはるとたにも おとつれもなき | 新宰相(伏見院) |
1067 | さらにこそ あすのちきりも たのまれね すすまぬかたの さはりとおもへは | 尊胤法親王 |
1068 | さのみやと われさへはては つれなきに こよひはひとに まつとしられし | 春日(進子内親王家) |
1069 | さはりあれは のちかならすの なくさめよ いくたひききて いくよまつらむ | 為子(従二位) |
1070 | しひてなほ たのみやせまし いつはりの ちきりもさすか かきりありやと | 経顕(藤原定資男) |
1071 | いつはりの あるよとたれも しりなから ちきりしままを たのむはかなさ | 資明 |
1072 | たまさかの ひとめのひまを まちえても おもふはかりは ちきりやはする | 経教 |
1073 | つもりける ほとをもひとに みゆはかり まつよのとこの ちりははらはし | 公宗母 |
1074 | おもひやる ねさめもいかか やすからむ たのめしよはの あらぬちきりは | 進子内親王 |
1075 | とはすなり いまよりかくや へたてゆかむ こよひはかりは さてあかすとも | 伏見院 |
1076 | いひしままの こよひたかはぬ こよひにて またあすならは うれしからまし | 永福門院 |
1077 | このくれの こころもしらて いたつらに よそにもあるか わかおもふひと | 永福門院 |
1078 | けふのあめよ はるるもわひし ふるもうし さはりならひし ひとをまつとて | 内侍(永福門院) |
1079 | わかかたの さはりをしひて うらみねは あさかりけりと つらくこそなれ | 親子(従三位源) |
1080 | たのめねは こぬをうしとは かこたねと かかるつきよを ひとりみよとや | 俊兼 |
1081 | なかなかに たのめさりせは さよころも かへすしるしは みえもしなまし | 資盛 |
1082 | よかれそむる ねまちのつきの つらさより はつかのかけも またやへたてむ | 為兼 |
1083 | むなしくて またあけぬるよ ひとよこそ けにもさはりの あるかともおもへ | 為子(従二位) |
1084 | さりともと けふをはまちし きのふこそ よかれになれぬ こころなりけれ | 実衡女 |
1085 | さりともと なほまつものを いまはとて こころよわくそ とりはなくなる | 重保 |
1086 | むなしくて あけつるよはの おこたりを けふやとまつに またおともなし | 進子内親王 |
1087 | なにとなく こよひさへこそ またれけれ あかぬきのふの こころならひに | 永福門院 |
1088 | とはぬかな とふへきものを いかにあれは きのふもけふも またすきぬらむ | 永福門院 |
1089 | はりまかた うらみてのみそ すきしかと こよひとまりぬ あふのまつはら | 顕季 |
1090 | いまさらに くるしさまさる あふさかを せきこえなはと なにおもひけむ | 兼氏 |
1091 | あひもせす あはすもあらぬ けふやさは ことありかほに なかめくらさむ | 頼政 |
1092 | こころをは くもゐのつきに とめなから ゆくへもしらす あくかれよとや | 隆信 |
1093 | ゆくへなき つきもこころし かよひなは くものよそにも あはれとやみむ | 読人不知 |
1094 | あふことに みをはかへむと いひしかと さてしもをしき いのちなりけり | 重家 |
1095 | うきなかの それをなさけに ありしよの ゆめよみきとも ひとにかたるな | 為子(従二位) |
1096 | いきてよの わすれかたみと なりやせむ ゆめはかりたに ぬともなきよは | 為家 |
1097 | あかさりし やみのうつつを かきりにて またもみさらむ ゆめそはかなき | 四条(安嘉門院) |
1098 | あひみつる こよひのあはれ ゆめなれな さめてはものを おもはさるへく | 内侍(永福門院) |
1099 | ゆめとてや かたりもせまし ひとしれす おもふもあかぬ よはのなこりを | 為子(従二位) |
1100 | うつつにも あははかくこそと おもひねの ゆめはさめても うれしかりけり | 為基(京極為兼猶子) |
1101 | まとろまぬ ときさへゆめの みえつるは こころにあまる ゆききなりけり | 為家 |
1102 | たましひは うつつのゆめに あくかれて みしもみえしも おもひわかれす | 四条(安嘉門院) |
1103 | ぬるかうちに あふとみつるも たのまれす こころのかよふ ゆめちならねは | 長舜 |
1104 | ききてたに みこそこかるれ かよふなる ゆめのたたちの ちかのしほかま | 為家 |
1105 | みをこかす ちきりはかりか いたつらに おもはぬなかの ちかのしほかま | 四条(安嘉門院) |
1106 | つつむなかは まれのあふよも ふけはてぬ ひとのしつまる ほとをまつまに | 一条(徽安門院) |
1107 | かきみたす ねくたれかみの まゆすみも うつりにけりな さよのたまくら | 実兼 |
1108 | あひかたき きみにあへるよ ほとときす ことときよりは いまこそなかめ | 読人不知 |
1109 | からあゐの やしほのころも あさなあさな なれはすれとも いやめつらしみ | 読人不知 |
1110 | むかふなかの つらくしもなき けしきにそ ひころのうさも いはすなりぬる | 章義門院 |
1111 | わかために ふかきかたには いひなせと たかさはるよの すさひなるらむ | 一条(徽安門院) |
1112 | あはれなり かかるひとまの ときのまも またいかならむ よにかとおもへは | 御匣(新室町院) |
1113 | ひとにたに しのふるなかの あかつきを たれしらせてか とりのなくらむ | 四条(安嘉門院) |
1114 | たまたまの こよひひとよは ゆめにして またいくつきひ こひむとすらむ | 徽安門院 |
1115 | わかれちを いそかすとりの こゑよりも またそらたかき つきそうれしき | 後伏見院 |
1116 | うかりける ひとこそあらめ あかつきの くもさへみねに なとわかるらむ | 公宗(西園寺実衡男) |
1117 | ふけてとふ よはののこりは すくなきを またかへるさに なほいそくらむ | 法守法親王 |
1118 | さてもまた いつそとたにも いひかねて むせふなみたに おきわかれぬる | 忠季(藤原公蔭男) |
1119 | きぬきぬを いそくわかれは よふかくて またねひさしき あかつきのとこ | 永福門院 |
1120 | あかつきを うきものとたに しらさりき まくらさためぬ ゆめのちきりは | 客子(従三位) |
1121 | たまさかの よをさへわくる かたのあれや とりのねをたに きかぬわかれち | 光厳院 |
1122 | いてかてに またたちかへり をしむまに わかれのとくち あけすきぬなり | 進子内親王 |
1123 | あけぬるか またはいつかの とりのねに ひとのたのめを きくまてもなし | 親子(従三位源) |
1124 | てにむすふ ほとたにあかぬ やまのゐの かけはなれゆく そてのしらたま | 定家 |
1125 | あけぬとて なくなくかへる みちしはの つゆはわかおく ものにそありける | 頼政 |
1126 | またやみむ またやみさらむ とはかりに おもかけくるる けさのわかれち | 後伏見院 |
1127 | われならぬ ひともやしのふ かへるさの よふかきみちに あへるをくるま | 実明女 |
1128 | やこゑなく かけのたれをの おのれのみ なかくやひとに おもひみたれむ | 為家 |
1129 | なこりをは さすかにかくる たまつさに またこのくれと なとかたのめぬ | 進子内親王 |
1130 | そのままの ゆめのなこりの さめぬまに またおなしくは あひみてしかな | 永福門院 |
1131 | いつとまつ ひかすはしはし なくさむを けさわかれぬる けふそわひしき | 親子(従三位源) |
1132 | まれにみる ゆめのなこりは さめかたみ けさしもまさる ものをこそおもへ | 内侍(永福門院) |
1133 | ひとはゆき きりはまかきに たちとまり さもなかそらに なかめつるかな | 和泉式部 |
1134 | たまゆらに きのふのゆふへ みしものを けふのあしたは こふへきものか | 読人不知 |
1135 | けさこそは わかれてきつれ いつのまに おほつかなくも おもふなるらむ | 元真 |
1136 | いかにせむ よにいつはりの あるままに わかかねことを ひとのたのまぬ | 後二条院 |
1137 | よしいまは たのますとても ことのはの かはるかすゑに おもひあはせは | 道平 |
1138 | かきりなく ふかきちきりを きくなかに ひとにもさその なからましかは | 徽安門院 |
1139 | なほゆかし おもふそといふ そのうちの ふかきかきりは われはかりかと | 実明女 |
1140 | ひとよまして こころのそこの あはれをは われにてしらぬ おくものこるを | 花園院 |
1141 | なるるまの あはれにつひに ひかれきて いとひかたくそ いまはなりぬる | 永福門院 |
1142 | かよひけりと おもひしられし ひとつまに こころのいろの そひまさるころ | 親子(従三位源) |
1143 | こひうらみ きみにこころは なりはてて あらぬおもひも ませぬころかな | 宣子(従三位藤原) |
1144 | あはれさらは わすれてみはや あやにくに わかしたへはそ ひとはおもはぬ | 進子内親王 |
1145 | まさるかたの ひとにいかなる ことのはの わかきかさりし きはをいふらむ | 実明女 |
1146 | さのみたた あはれなるしも たのまれす かくてはひとの はてしとおもへは | 別当(花園院) |
1147 | うらみても おもひしらねは なかなかに なにかこころの いろをみえけむ | 高広 |
1148 | もらすより あたなるほとの しらるれは いひしちきりの すゑもたのます | 為理 |
1149 | ひとたひの あふせにかへし いのちなれは すてもをしみも きみにのみこそ | 冷泉(花園院) |
1150 | なにかいふ のちのよまての かねことよ ひともおもはし われもたのます | 為名 |
1151 | はしめより たのましすへて たのむより つらきうらみは そふとおもへは | 兵衛督(花園院) |
1152 | うきなから さすかにたえぬ ちきりをは なほもあはれに なしこそはせめ | 花園院 |
1153 | おもひけつ かきりこそあれ うきみそと しのふかうへも あまるつらさを | 儀子内親王 |
1154 | つらさをは うきみのとかと かこちつつ あはれをなほも さましかねぬる | 光明院 |
1155 | さはかりも こころととめて おもふかと うらむるにしも そふあはれかな | 冷泉(花園院) |
1156 | おもひけりと たのみなりての のちしもそ はかなきことも ひとよりはうき | 為兼 |
1157 | おもひとりし きのふのうさは よわれはや けふはまつそと またいはれぬる | 為兼 |
1158 | ならひあらは けにもしやとも たのままし いつはりとしも みえぬことのは | 永福門院 |
1159 | さらはとて たのむになれは ひとこころ およはぬきはの おほくもあるかな | 花園院 |
1160 | ひとよされは たれかよかるる よかれとて あはぬたえまを うしといふらむ | 一条(徽安門院) |
1161 | けにおもふ こころのうちは ことのはの およはぬうへも みゆらむものを | 法守法親王 |
1162 | かはかりも おもひけるよの あはれより われもこころを ゆるしたちぬる | 新右衛門督(宣光門院) |
1163 | おもふかたに よしたたすへて おしこめて さのみはひとの こころをはみし | 永福門院 |
1164 | うきもちきり つらきもちきり よしさらは みなあはれにや おもひなさまし | 永福門院 |
1165 | うきにそふ あはれにわれも みたされて ひとかたにしも えこそさためね | 進子内親王 |
1166 | ひとはしらし いまはとおもひ とるきはは うらみのしたに よわきあはれも | 公宗女 |
1167 | さきのよを おもふさへこそ うれしけれ ちきりもけふの ちきりのみかは | 有家(藤原重家男) |
1168 | ちきりしを たのめはつらし おもはねは なにをいのちの なくさめそなき | 為家 |
1169 | おしかへし あはれなるかな むくひありて うきもふたよの ちきりとおもへは | 公蔭 |
1170 | うきにしも あはれのそふよ これそこの のかれさりける ちきりとおもふに | 一条(花園院) |
1171 | おもひとけは こころつからに かへれとも たたなほひとの うきにおほゆる | 忠季(藤原公蔭男) |
1172 | みをしらぬ おもひとひとや おもふらむ うきをはおける うへのおもひを | 教良女 |
1173 | われもいひき つらくはいのち あらしとは うきひとのみや いつはりはする | 為子(従二位) |
1174 | かきりなく うきものからに あはれなるは いつれわかみの こころなるらむ | 新宰相(伏見院) |
1175 | いはねとも つらしとおもふ いろやみゆる なくさめかほに ひとのうらむる | 一条(徽安門院) |
1176 | わひぬれは かくこそものは あはれなれ たえぬはかりの たまたまのよを | 公重(西園寺実衡男) |
1177 | うからぬも ましてうきにも あはれあはれ よしなかりける ひとにちきるを | 徽安門院 |
1178 | あはれなる ふしもさすかに ありけるよ おもひいてなき ちきりとおもへと | 徽安門院 |
1179 | それまては おもひいれすやと おもふひとの うらむるふしそ さてはうれしき | 光厳院 |
1180 | われとひと あはれこころの かはるとて なとかはつらき なにかこひしき | 儀子内親王 |
1181 | かねてより うらみおかはや うきにならむ こころののちは かひもあらしを | 道平 |
1182 | つらけれと なほこひしきよ みのほとの うきをはしらぬ ひとのならひに | 公守女 |
1183 | あはれしらし つねのうらみに おもなれて これをまことの かきりなりとも | 公宗女 |
1184 | ひとのかよふ あはれになして あはれなるよ ゆめはわかみる おもひねなれと | 一条(徽安門院) |
1185 | さめかたみ しはしうつつに なしかねぬ あはれなりつる ゆめのなこりを | 一条(花園院) |
1186 | おもかけは のこるかたみの うつつにて またみぬゆめの さむるまもなし | 公雄 |
1187 | おのつから ゆめちはかりの あふことを かよふこころと たのむはかなさ | 懐世 |
1188 | おもひつくす こころよゆきて ゆめにみゆな そをたにひとの いとひもそする | 為子(従二位) |
1189 | つらきをは よよのむくひと おもふにも ひとはうからて なほそこひしき | 俊兼 |
1190 | よよのちきり いかかむすひしと おもふたひに はしめてさらに ひとのかなしき | 光厳院 |
1191 | おほかたは たのむへくしも なきひとの うからぬにこそ おもひわひぬれ | 永福門院 |
1192 | それしもや うきみはひとに いとはれむ ふかきおもひの きはをみすとも | 兵衛督(花園院) |
1193 | かはりゆく きのふのあはれ けふのうらみ ひとにこころの さためなのよや | 伏見院 |
1194 | おちけりな われたにしらぬ なみたかな まくらぬれゆく よはのひとりね | 徽安門院 |
1195 | そのゆくへ きけはなみたそ まつおつる うさこひしさも おもひわかねと | 右衛門督(永福門院) |
1196 | おもはぬに なすこころしも いかなれや つねはなかめて なみたのみうく | 兵衛督(花園院) |
1197 | あはれにも うさにもおつる わかなみた さものこりある ものにそありける | 兼季 |
1198 | つらけれと おもひしらぬに なすものを なにとなみたの さのみおつらむ | 家親 |
1199 | うきふしも おもひいれしと おもふみに なにゆゑさのみ おつるなみたそ | 公直母 |
1200 | なみたたに おもふかほとは こほれぬよ あまりくたくる いまのこころに | 伏見院 |
1201 | おもひおもひ なみたとまてに なりぬるを あさくもひとの なくさむるかな | 伏見院 |
1202 | せめてたた おもふあたりの ことをたに おなしこころに いふひともかな | 為子(従二位) |
1203 | わたるせの さもさためなき なかかはよ しほのみちひる うらならなくに | 小宰相(徽安門院) |
1204 | ひとこころ おもひみたるる かくなはの とにもかくにも むすほほれつつ | 覚助法親王 |
1205 | ゆふくれは おもひみたれて くもとりの あやにこひしき ひとのおもかけ | 為成(冷泉為相男) |
1206 | くれなゐに そてそうつろふ こひしきや なみたのかはの いろにはあるらむ | 貫之 |
1207 | うらふれて ものなおもひそ あまくもの たゆたふこころ わかおもはなくに | 読人不知 |
1208 | こひしさの あまつみそらに みちぬれは なみたのあめは ふるにそありける | 実家(藤原公能男) |
1209 | あまくもの たえまたえまを ゆくつきの みらくすくなき いもにこひつつ | 公蔭 |
1210 | そのままに おもひあはする かたそなき あたにみしよの うたたねのゆめ | 隆教 |
1211 | しらさりし よふかきかせの おともせす たまくらうとき あきのこなたは | 定家 |
1212 | きみゆゑに おもふおもひは おほうみの なみをはそてに かけぬまもなし | 公蔭 |
1213 | いせのうみ なきさにひろふ たまたまも そてほすまなき ものをこそおもへ | 伏見院 |
1214 | こひしさに なりたつなかの なかめには おもかけならぬ くさもきもなし | 伏見院 |
1215 | なにとなく うちもおかれぬ たまつさよ あはれなるへき ふしはなけれと | 公宗女 |
1216 | おもふほとは かかしとおもふ たまつさに なほともすれは すすむことのは | 儀子内親王 |
1217 | なほさりに ひとはみるらむ たまつさに おもふこころの おくはのこさむ | 新右衛門督(宣光門院) |
1218 | かよふとて いかかたのまむ いたつらに すゑもとほらぬ みつくきのあと | 実性 |
1219 | ときはやま つゆももらさぬ ことのはの いろなるさまに いかてちりけむ | 読人不知 |
1220 | いろかへぬ ときはなりせは ことのはを かせにつけても ちらさましやは | 相模 |
1221 | これやさは あたちのまゆみ いまこそは おもひためたる こともかたらめ | 左近(三条院女蔵人) |
1222 | かさしけむ ぬしはしらたま しらねとも てにとるからに あはれとそおもふ | 師継 |
1223 | しらたまか なにそとたとる ひともあらは なみたのつゆを いかかこたへむ | 公相 |
1224 | つれつれと なかめのみする このころは そらもひとこそ こひしかるらし | 定頼 |
1225 | ほとふれは わすれやしぬる はるさめの ふることのみそ われはこひしき | 朝光 |
1226 | いととしく ぬれのみまさる ころもてに あめふることを なににかくらむ | 馬内侍 |
1227 | かへるかり わかことつてよ くさまくら たひはいもこそ こひしかりけれ | 貫之 |
1228 | くひなたに たたくおとせは まきのとを こころやりにも あけてみてまし | 和泉式部 |
1229 | いかにして わするるものそ わきもこに こひはまされと わすられなくに | 読人不知 |
1230 | おほはらの ふりにしさとに いもをおきて われいねかねつ ゆめにみえつつ | 読人不知 |
1231 | わきもこに あふよしもなみ するかなる ふしのたかねの もえつつかあらむ | 読人不知 |
1232 | よのなかは あすかかはにも ならはなれ きみとわれとか なかしたえすは | 小町 |
1233 | けふはもし ひともやわれを おもひいつる われもつねより ひとのこひしき | 永福門院 |
1234 | そらのいろ くさきをみるも またかなし いのちにかくる ものをおもへは | 進子内親王 |
1235 | ものおもふ こころのいろに そめられて めにみるくもも ひとやこひしき | 為兼 |
1236 | こひあまる なかめをひとは しりもせし われとそめなす くものゆふくれ | 花園院 |
1237 | いましもあれ ひとのなかめも かからしを きゆるもをしき くものひとむら | 永福門院 |
1238 | それをたに おもひさまさし こひしさの すすむままなる ゆふくれのそら | 伏見院 |
1239 | ねられねは たたつくつくと ものをおもふ こころにかはる ともしひのいろ | 新宰相(伏見院) |
1240 | まちすくす つきひのほとを あちきなみ たえなむとても たけからしみを | 光厳院 |
1241 | かくやはと おほえしきはも おほえけり すへてひとには なれてそあらまし | 教良女 |
1242 | いまはとて つらきになして みるひとの さてもいかにと いふしもそうき | 俊兼 |
1243 | こひしさも ひとのつらさも しらさりし むかしなからの わかみともかな | 為子(従二位) |
1244 | ききそふる きのふにけふの うきふしに さめぬあはれも あやにくにして | 花園院 |
1245 | うらみたらは さこそあらめと おもふかたに おもひむせひて すくるころかな | 公蔭 |
1246 | いととこそ たのみところも なくならめ うきにはしはし おもひさためし | 伏見院 |
1247 | したふかたの すすむにつけて いとひまさる ひととわれとの なかそはるけき | 後伏見院 |
1248 | さためなき ひとのこころの いかなれは うきひとかたに かはりゆくらむ | 寛尊法親王 |
1249 | すへてこの なみたのひまや いつならむ あはれはあはれ うきはうしとて | 儀子内親王 |
1250 | おもひとれは さすかあはれも そふものを つねのうらみの なみたとやみる | 公蔭 |
1251 | つねはたた ひとりなかめて おほかたの ひとにさへこそ うとくなりゆけ | 花園院 |
1252 | いふきはは およはぬうさの そこふかみ あまるなみたを ことのはにして | 光厳院 |
1253 | おほかたの よはやすけなし ひとはうし わかみいつくに しはしおかまし | 永福門院 |
1254 | そことなき うらみそつねに おもほゆる いかにそひとの あらすなるころ | 花園院 |
1255 | かはりたつ ひとのこころの いろやなに うらみむとすれは そのふしとなき | 永福門院 |
1256 | これやさは かはるなるらむ そのふしと みえぬものから ありしにもにぬ | 儀子内親王 |
1257 | かはりたつ すへてうらみの そのうへに うさあはれさは かりのふしふし | 花園院 |
1258 | とはぬまを わすれすなから ほとふるや とほさかるへき はしめなるらむ | 恒明親王 |
1259 | くれなはと たのむるよはの ふけしより むなしくあくる うさそかさなる | 大納言(昭訓門院) |
1260 | かはりゆく こころとみゆる そのうへの なけのなさけよ よしやいつまて | 覚誉法親王 |
1261 | かはるかと ひとにこころを とめてみれは はかなきふしも ありしにそにぬ | 内侍(永福門院) |
1262 | うさはまして あはれとおもふ なかにしも かはるこころの いろはみゆるを | 実明女 |
1263 | ひとすちに うきよりもなほ うかりけり ありしにかはる ひとのなさけは | 右衛門督(永福門院) |
1264 | かはるてふ ひとよけにこそ かかりけれ きのふみさりし けふのつらさは | 儀子内親王 |
1265 | うらみはてむ いまはよしやと おもふより こころよわくそ またあはれなる | 中納言典侍(後伏見院) |
1266 | ひとはうく われのみさめぬ あはれにて つひのちきりの はてそゆかしき | 新右衛門督(宣光門院) |
1267 | せめてわか おもふほとこそ かたくとも かけよやつねの なさけはかりは | 実煕 |
1268 | いかにせむ つねのつらさは つらさにて いまひとしほの さらにそふころ | 俊冬 |
1269 | つらしとも なほよのつねの うらみかは いつくにのこる こころよわさそ | 公宗母 |
1270 | つらしとも なかなかなれは いひもせて うらみけりとは いかてしらせむ | 進子内親王 |
1271 | おもひとる たたこのままの つらさにて またはあはれに かへらすもかな | 儀子内親王 |
1272 | あははやの たたひとかたを おもひにて わひぬるはては うさもしられす | 俊兼 |
1273 | あはれみせし ひとやはあらぬ うきやたれ われはかはらぬ もとのみにして | 冷泉(花園院) |
1274 | ひとこそあれ われさへしひて わすれなは なこりなからむ それもかなしき | 花園院 |
1275 | ひとしれす われのみよわき こころかな このひとふしそ かきりとおもふに | 花園院 |
1276 | われのみは うさをもしひて しのふとも かはるかうへの ひとはいつまて | 右衛門督(永福門院) |
1277 | うきにいとふ またおなしよを をしむとて いのちひとつを さためかねぬる | 徽安門院 |
1278 | いかにせむ くものゆくかた かせのおと まちなれしよに にたるゆふへを | 新大納言(延政門院) |
1279 | たなはたの ちきれるあきも きにけるよ いつとさためぬ われそわひしき | 高明 |
1280 | まれにあふと いふたなはたも あまのかは わたらぬとしは あらしとそおもふ | 貫之 |
1281 | さらにこそ わすれしことの おもほゆれ けふほしあひの そらになかめて | 後伏見院 |
1282 | はれすのみ こころにものを おもふまに はきのはなさく あきもきにけり | 永福門院 |
1283 | あきなれは はきののもせに おくつゆの ひるまにさへも こひしきやなそ | 光孝天皇 |
1284 | はきのはの いろつくあきを いたつらに あまたかそへて すくしつるかな | 貫之 |
1285 | わかやとの あきのはきさく ゆふかけに いまもみてしか きみかすかたを | 読人不知 |
1286 | きみにこひ うらふれをれは あきかせに なひくあさちの つゆそけぬへき | 実朝 |
1287 | ものおもふに あはれなるかと われならぬ ひとにこよひの つきをとははや | 和泉式部 |
1288 | なかむらむ おなしつきをは みるものを かはすにかよふ こころなりせは | 小侍従(太皇太后宮) |
1289 | こよひわか とはれましやは つきをみて かよふこころの そらにしるくは | 雅通(源雅定男) |
1290 | おもふひと こよひのつきを いかにみるや つねにしもあらぬ いろにかなしき | 伏見院 |
1291 | さらさりし そのよはつきを いかかみし むかへはひとの うさになりゆく | 新宰相(伏見院) |
1292 | あはれいかに おもふこころの あらさらむ なかめはつきに いまかよふとも | 公蔭 |
1293 | みるからに こひしさをのみ もよほして ひとをさそはぬ つきもうらめし | 為相 |
1294 | かはらぬも なかなかつらし もろともに みしよのつきは おなしおもかけ | 隆清 |
1295 | おもひいつる こころやきみは なかるらむ おなしありあけの つきをみるとも | 行尊 |
1296 | うきものと うらみてもなほ かなしきは おもかけさらぬ ありあけのつき | 通雄 |
1297 | われとこそ なかめなれにし やまのはに それもかたみの ありあけのつき | 良経(九条兼実男) |
1298 | きみこふと しなえうらふれ わかをれは あきかせふきて つきかたふきぬ | 読人不知 |
1299 | いもをおもひ いのねられぬに あかつきの あさきりかくれ かりそなくなる | 読人不知 |
1300 | このくれに わかこひをれは さむきかり なきつつゆけは いもかりかゆく | 伏見院 |
1301 | あはれまた ゆめたにみえて あけやせむ ねぬよのとこは おもかけにして | 内侍(永福門院) |
1302 | わすれむと おもふはおのか こころにて たかおとろかす なみたなるらむ | 順徳院 |
1303 | うしとても たれにかとはむ つれなくて かはるこころを さらはをしへよ | 定家 |
1304 | ひとにうつる こころをたにも をしへおけ さらはなくさむ かたもありやと | 兵衛督(花園院) |
1305 | われなから われにかなはぬ こころなれや わすれむとすれは しひてこひしき | 定宗(藤原家親男) |
1306 | うきにならふ こころかあはれ たまさかの ひとのなさけの いまはうれしき | 親行(藤原家親男) |
1307 | わかこころ うらみにむきて うらみはてよ あはれになれは しのひかたきを | 為子(従二位) |
1308 | かくてしも おもひやよわる とはかりに うきかうれしき かたもありけり | 忠季(藤原公蔭男) |
1309 | うきかうへの なほもなさけの うちにこそ きみにいのちを すててきかれめ | 実明女 |
1310 | うきことを いかになへてに おもひなさむ うれしくとても いくほとのよに | 伏見院 |
1311 | うきもよし むくひなるらむと おもへとも みえぬよよには なくさまはこそ | 儀子内親王 |
1312 | ひとよりは みこそうけれと おもひなすに それしもものの かなしきものを | 新宰相(伏見院) |
1313 | おなしよに いくたひものを おもへとて つらきにかへる こころなるらむ | 為定(御子左二条為道男) |
1314 | うきゆゑも かくやはとおもふ ふしふしよ われこそひとを なほたのみけれ | 祝子内親王 |
1315 | つらさをも おもふはかりは えそいはぬ かこともとむる ひとのけしきに | 公蔭 |
1316 | ひきかへて かはるしもうし おもふいろを さのみはひとの なにかみせけむ | 直義 |
1317 | かはかりの うさならさりし ころたにも をりをりませし そこのうらみを | 兵衛督(花園院) |
1318 | たえねはと おもふもかなし ささかにの いとはれなから かかるちきりは | 為家 |
1319 | ひとをひとの おもふかきりを みるにしも くらふとなしに みそあはれなる | 徽安門院 |
1320 | すへてたた ひとになれしと こりぬるも いつのためそと あはれなるかな | 永福門院 |
1321 | わひつつは ひとにまかせて うらみぬを うきをもしらぬ こころとやおもふ | 公宗(西園寺実衡男) |
1322 | なほしはし うきをはうきに なしはてし かはるこころの かはりもそする | 宗秀(藤原宗泰男) |
1323 | うきなかよ うらみのかすは つもれとも なさけとおもふ ひとふしもなし | 尊氏 |
1324 | いまははやと おもひしことも いくへたて へたつるはては ことのはもなし | 永福門院 |
1325 | なほしはし このひとふしは うらみはてし なしかとおもふ なさけもそみる | 永福門院 |
1326 | うきふしは かすにもあらす しつたまき くりかへしては なほそこひしき | 後嵯峨院 |
1327 | つらかりし きみにまさりて うきものは おのかいのちの なかきなりけり | 伊尹 |
1328 | こひしとも なにかいまはと おもへとも たたこのくれを しらせてしかな | 光厳院 |
1329 | まよひそめし ちきりおもふか つらきしも ひとにあはれの よよにかへるよ | 徽安門院 |
1330 | たちかへり これもゆめにて またたえは ありしにまさる ものやおもはむ | 永福門院 |
1331 | おのつから あふよありやと まつほとに おもひしよりも なからへにける | 公清室 |
1332 | なからへは おもひいててや とはるると いけるかひなき みををしむかな | 師直 |
1333 | なからへて あらはとたのむ いのちさへ こひよわるみは あすもしられす | 雅孝 |
1334 | なかなかに おもひたえなむと おもふこそ こひしきよりも くるしかりけれ | 清輔 |
1335 | しなはやと おもふさへこそ はかなけれ ひとのつらさは このよのみかは | 大輔(殷富門院) |
1336 | ひとこころ うきにたへたる いのちこそ つれなきよりも つれなかりけれ | 実家(藤原公能男) |
1337 | たまのをを かたをによりて ををよわみ みたるるときに こひさらめやも | 読人不知 |
1338 | たまかつら かけぬときなく こふれとも いかにかいもに あふときもなき | 読人不知 |
1339 | ますらをの うつしこころも いまはなし よるひるいはす こひしわたれは | 読人不知 |
1340 | つゆにたに こころおかるな なつはきの したはのいろよ それならすとも | 道信 |
1341 | すむとしも なくてたえにし わすれみつ なにゆゑさても おもひいてけむ | 読人不知 |
1342 | ひともみな むすふなれとも わすれみつ われのみあかぬ ここちこそすれ | 頼政 |
1343 | いかてわれ ひとをわすれむ わすれゆく ひとこそかくは こひしかりけれ | 二条院 |
1344 | ほとなくそ のこるかたえに うつしける ちりにしはなに そめしこころを | 為子(従二位) |
1345 | さらはとて うらみをやめて みるなかの うきつまつまに たのみかねぬる | 永福門院 |
1346 | みるひとも ものをおもはぬ さまなれは こころのうちを たれにうれへむ | 永福門院 |
1347 | なけくらむ こふらむとたに おもひいてよ ひとにはひとの うつりはつとも | 公宗母 |
1348 | うしとのみ われさへすつる みのはては なほたれゆゑと かこたすもなし | 実衡女 |
1349 | いとふしも かこちかほにや おもひなさむ つれなしとたに かけしいのちを | 伏見院 |
1350 | なににかかる いのちそされは つれもなく われやはをしむ ひともいとふを | 重資 |
1351 | ひともさそ つれなきかたに おもふらむ したふににたる いのちなかさを | 公宗母 |
1352 | わすらるる わかみもひとも あらぬよに たかおもかけの なほのこるらむ | 資名 |
1353 | われさへに こころにうとき あはれさよ なれしちきりの なこりともなく | 祝子内親王 |
1354 | うきなから おもひいてける をりをりや ゆめにもひとの みえしなるらむ | 公宗母 |
1355 | またかよふ おなしゆめちも あるものを ありしうつつそ うたてはかなき | 為秀 |
1356 | おもひさます みをしるかたの ことわりも あまりうきには またわすれぬる | 為子(従二位) |
1357 | おもひつらね さもうかりけると おもふのちに またこひしきそ ことわりもなき | 伏見院 |
1358 | ためしなく つらきかきりや このきはと おもひしうへの うさもありけり | 伏見院 |
1359 | おのつから おもひいつとも いまはたた うきかたのみや わすれさるらむ | 小宰相(徽安門院) |
1360 | なみたこそ おのかものから あはれなれ そをたにひとの ゆくへとおもへは | 良基(二条道平男) |
1361 | あふことは たえぬるなかに おなしよの ちきりはかりそ ありてかひなき | 直義 |
1362 | ひとこころ うきあまりには おほかたの よをさへかけて いとひたちぬる | 盛親 |
1363 | こひしなむ みをもあはれと たれかいはむ いふへきひとは つらきよなれは | 実衡女 |
1364 | おもふかたへ せめてはなひけ こひしなむ わかよののちの けふりなりとも | 恒明親王 |
1365 | いとひをしみ われのみみをは うれふれと こふなるはてを しるひともなし | 永福門院 |
1366 | さまさまの わかなくさめも ことつきて いまはとよわる ほとそかなしき | 永福門院 |
1367 | いくほとと おもふあはれも またかなし ひとのうきよを われもおもへは | 右衛門督(永福門院) |
1368 | まちなれし むかしににたる くものいろよ あらぬなかめの くれそかなしき | 朔平門院 |
1369 | つきのよは くものゆふへも みなかなし そのよにあはぬ ときしなけれは | 永福門院 |
1370 | わすらるる そてにはくもれ よはのつき みしよににたる かけもうらめし | 邦省親王 |
1371 | とひこかし またおなしよの つきをみて かかるいのちに のこるちきりを | 定家 |
1372 | そなたより ふきくるかせの つてにたに なさけをかくる おとつれそなき | 顕氏(六条顕家男) |
1373 | あふことは くちきのはしの たえたえに かよふはかりの みちたにもなし | 朝定 |
1374 | わひはつる のちはかたみと しのふかな うかりしままの ありあけのつき | 隆朝 |
1375 | おもひたえ またみるましき ゆめにしも のこるなこりの さめかたきかな | 家親 |
1376 | しらさりし ふかきかきりは うつりはつる ひとにてひとの みえけるものを | 光厳院 |
1377 | おとせすは おともやすると まつほとに たえはたえよと おもひけるかな | 惟方 |
1378 | つらからむ ひとをもなにか うらむへき みつからたにも いとはしきみを | 相摸 |
1379 | われなから われからそとは しりなから いまひとたひは ひとをうらみむ | 読人不知 |
1380 | わすれぬと きかはそわれも わするへき おなしこころに ちきりこしかは | 相如(藤原相信男) |
1381 | ゆめにたに みえはこそあらめ かくはかり みえすてあるは こひてしねとか | 家持 |
1382 | きみにあはて ひさしくなりぬ たまのをの なかきいのちの をしけくもなし | 読人不知 |
1383 | しきたへの まくらせしひと こととへや そのまくらには こけおひにけり | 人麿 |
1384 | いまよりは あひもおもはし すきにける としつきさへに ねたくもあるかな | 花山院 |
1385 | おもふといふ すきにしみたに うかりしを そふるつらさを おもひこそやれ | 読人不知 |
1386 | うらむとも こふともよしや わすらるる みをあるものと ひとにきかれし | 実衡女 |
1387 | つひにさても うらみのうちに すきにしを おもひいつるそ おもひいてもなき | 永福門院 |
1388 | とりのゆく ゆふへのそらよ そのよには われもいそきし かたはさためき | 伏見院 |
1389 | なほもよに あるやとかくる ひとつてよ うきみのうさを さらにしれとや | 伏見院 |
1390 | はかなくて たえにしひとの うきよりも ものわすれせぬ みをそうらむる | 肥後(京極前関白家) |
1391 | あかさりし にほひのこれる さむしろは ひとりぬるよも おきうかりけり | 大輔(殷富門院) |
1392 | しられしな うきみかくれの あやめくさ われのみなかき ねにはなくとも | 左京大夫(永陽門院) |
1393 | おもかけの とまるなこりよ それたにも ひとのゆるせる かたみならぬを | 伏見院 |
1394 | よそなりし そのよにひとは かへれとも みはあらためぬ ものをこそおもへ | 永福門院 |
1395 | うらみすは ひともなさけや のこさまし みをしりけりと おもふあはれに | 善成 |
1396 | うらみしを わかうきふしに なしやはつる それよりたえし なかそとおもへは | 宗光 |
1397 | かくそありし そのよまてはの あはれより さらになみたも ふるきたまつさ | 忠季(藤原公蔭男) |
1398 | ひとのすてし あはれをひとり みにとめて なけきのこれる はてそひさしき | 永福門院 |
1399 | おのつから とひもとはれも ひとつての ことのはのみを きくまてにして | 新宰相(伏見院) |
1400 | おもひくたす うさもあはれも いくうつり よはあらぬよの みはもとのみに | 伏見院 |
1401 | いまはたた みすしらさりし いにしへに ひとをもみをも おもひなさはや | 公顕室 |
1402 | うきなから みをもいとはし よのなかに あれはそひとを よそにてもみる | 隆信 |
1403 | たかちきり たかうらみにか かはるらむ みはあらぬよの ふるきゆふくれ | 為相 |
1404 | たのみありて まちしよまての こひしさよ それもむかしの いまのゆふくれ | 為子(従二位) |
1405 | つねよりも あはれなりしを かきりにて このよなからは けにさてそかし | 永福門院 |
1406 | わひつつは おなしよにたにと おもふみの さらぬわかれに なりやはてなむ | 家長(源時長男) |
1407 | なほさりの あはれもひとの かくはかり あひみしときに きえなましかは | 崇徳院 |
1408 | おのつから おもひやいつる とはかりの わかなくさめも よそのとしつき | 宣子(従三位藤原) |
1409 | わすれしの ひとのたのめは かひなくて いけるはかりの としつきそうき | 為氏 |
1410 | あたらしき としのはしめの うれしきは ふるきひととち あへるなりけり | 兼輔 |
1411 | はるきぬと おもふはかりの しるしには こころのうちそ のとかなりける | 顕輔 |
1412 | かすますは はるともえやは しらとりの とはやままつに ゆきはふりつつ | 頼重 |
1413 | みるままに のきはのやまそ かすみゆく こころにしらぬ はるやきぬらむ | 内侍(永福門院) |
1414 | としことに はるのわするる やとなれは うくひすのねも よきてきこえす | 元輔(清原治光男) |
1415 | わかやとを とふとはなしに はるのきて にはにあとある ゆきのむらきえ | 夢窓 |
1416 | おのつから なほゆふかけて かみやまの たまくしのはに のこるしらゆき | 為家 |
1417 | はつくさは したにもゆれと かたをかの おとろかうへの ゆきはけなくに | 重時 |
1418 | くらゐやま むすほほれつる たにみつは このはるかせに とけにけらしな | 清輔 |
1419 | くらゐやま はるまちえたる たにみつの とくるこころは くみてしらなむ | 隆信 |
1420 | ゆきかかる そとものうめは おそけれと まつはるつくる うくひすのこゑ | 直宣 |
1421 | よよへても あかぬいろかは のこりけり はるやむかしの やとのうめかえ | 範憲 |
1422 | わすれしな やとはむかしに あとふりて かはらぬのきに にほふうめかえ | 内侍(永福門院) |
1423 | くちのこる ふるきのきはの うめかえも またとはるへき はるをまつらし | 為世(御子左藤原為氏男) |
1424 | はるかせの こころのままに さそへとも つきぬはうめの にほひなりけり | 教兼 |
1425 | のきちかき うめのにほひも ふかきよの ねやもるつきに かをるはるかせ | 久時 |
1426 | うめのはな うつるにほひは かはらねと あらぬうきよに すみそめのそて | 家親 |
1427 | あはれにも おのれうけてや かすむらむ たかなすときの はるならなくに | 伏見院 |
1428 | かすみにほふ ゆふひのかけは のとかにて くもにいろある やまのはのまつ | 花園院 |
1429 | たちかへり むかしのはるの こひしきは かすみをわけし かものあけほの | 俊成(藤原俊忠男) |
1430 | よさのうみ かすみわたれる あけかたに おきこくふねの ゆくへしらすも | 長方 |
1431 | こころありて みるとしもなき なにはえの はるのけしきは をしくもあるかな | 寂然 |
1432 | しらみゆく かすみのうへの よこくもに ありあけほそき やまのはのそら | 道良女 |
1433 | しののめの かすみもふかき やまのはに のこるともなき ありあけのつき | 頼春 |
1434 | しののめの ややあけすくる やまのはに かすみのこりて くもそわかるる | 為子(従二位) |
1435 | みぬよまて おもひのこさぬ なかめより むかしにかすむ はるのあけほの | 良経(九条兼実男) |
1436 | おもひいては おなしなかめに かへるまて こころにのこれ はるのあけほの | 慈円 |
1437 | おもふこと たれにのこして なかめおかむ こころにあまる はるのあけほの | 定家 |
1438 | くれぬとて なかめすつへき なこりかは かすめるすゑの はるのやまのは | 為兼 |
1439 | ふしみやま あらたのおもの すゑはれて かすまぬしもそ はるのゆふくれ | 伏見院 |
1440 | ふみわくる ゆきまにいろは みえそめて もえこそやらね みちのしはくさ | 為藤 |
1441 | いまはよに ありてものうき みのほとを のへのわらひの をりをりそしる | 四条(安嘉門院) |
1442 | かすみたつ みねのさわらひ これはかり をりしりかほの やともはかなし | 定家 |
1443 | たらちねの あとやむかしに あれなまし おとろのみちの はるにあはすは | 家隆 |
1444 | はるくさは またうらわかき をかのへの をささかくれに ききすなくなり | 慈成 |
1445 | おもひたつ みちのしるへか よふことり ふかきやまへに ひとさそふなり | 定家 |
1446 | うつしうゑし いろかもしるき うめのはな きみにそわきて みすへかりける | 読人不知 |
1447 | うつしうゑし やとのうめとも みえぬかな あるしからにそ はなもさきける | 経盛 |
1448 | おもふこと はるともみには おもはぬに ときしりかほに さけるはなかな | 赤染衛門 |
1449 | かくこそは はるまつうめは さきにけれ たとへむかたも なきわかみかな | 行宗 |
1450 | やへさくら ひらくるほとを たのまなむ おいきもはるに あはぬものかは | 崇徳院 |
1451 | ときわかぬ きみかはるとや たちはなの かけもさくらに なほうつるらむ | 為兼 |
1452 | おもひやれ きみかめくみの ときにあひて みにあまりぬる はなのひかりを | 実泰 |
1453 | はなにあかて つひにきえなは やまさくら あたりをさらぬ かすみとならむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1454 | たつねつる はなはかきりも なかりけり なほやまふかく かかるしらくも | 公朝 |
1455 | よしのやま はなのためにも たつねはや またわけそめぬ すすのしたみち | 覚誉法親王 |
1456 | はなとりの なさけはうへの すさひにて こころのうちの はるそものうき | 伏見院 |
1457 | はなとりに なほあくかるる こころかな おいのはるとも みをはおもはて | 為相 |
1458 | ときしあれは はなうくひすの なさけをも ほかにたつねぬ はるのやまさと | 憲淳 |
1459 | はなのいろの むかしなからに みえつれは ひとのやととも おもほえぬかな | 伊勢 |
1460 | はなゆゑに みゆきふりにし わたりとは おもひやいつる しらかはのみつ | 惟規 |
1461 | しめのうちは みをもくたかす さくらはな をしむこころを かみにまかせて | 中将(式子内親王家) |
1462 | しめのほかも はなとしいはむ はなはみな かみにまかせて ちらさすもかな | 右京大夫(建礼門院) |
1463 | はるかせの いはねのさくら ふくたひに なみのはなちる あさくまのみや | 定忠 |
1464 | よそにのみ おもふくもゐの はななれは おもかけならて みえはこそあらめ | 頼政 |
1465 | おもはさりし みこそくもゐの よそならめ なれにしはなは わすれしもせし | 読人不知 |
1466 | おもひいつや なれしくもゐの さくらはな みしひとかすに われをありきと | 三河内侍(二条院) |
1467 | わすれめや むかしみはしの さくらはな いまはくもゐの よそのおもかけ | 公雄 |
1468 | めつらしき みとりのそても くものうへの はなにいろそふ はるのひとしほ | 為兼 |
1469 | うもれきと なりはてぬれと やまさくら をしむこころは くちすもあるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
1470 | そてふれし はるはむかしに へたてきて はなにそうとき こけのころもて | 兼行 |
1471 | たつぬとも おもはていりし おくやまの いほもるはなを ひとりこそみれ | 俊成女 |
1472 | よのうさは いつくもはなに なくさめは よしやよしのの おくもたつねし | 長舜 |
1473 | このもとに すみけるあとを みつるかな なちのたかねの はなをたつねて | 西行 |
1474 | ここのそち あまりおいぬる みにもなほ はなにあかぬは こころなりけり | 氏成 |
1475 | またはよも みはななそちの はるふりて はなもことしや かきりとそみる | 内侍(永福門院) |
1476 | ひともみも またこむはるも しらぬよに かすむくもちを へたてすもかな | 花園院 |
1477 | ときすきし ふるきのさくら いまはよに まつへきはなの はるもたのます | 伏見院 |
1478 | ときしらぬ やとののきはの はなさかり きみたにとへな またたれをかは | 永福門院 |
1479 | はるうとき みやまかくれの なかめゆゑ とふへきはなの ころもわすれて | 花園院 |
1480 | あちきなく はるはいのちの をしきかな はなそこのよの ほたしなりける | 和泉式部 |
1481 | かせふけは まさらぬみつも いはこえて たきつかはせは はなのしらなみ | 如浄 |
1482 | やまふかく なほわけいりて たつぬれは かせにしられぬ はなもありけり | 貞行(源) |
1483 | ちるはなを せめてたもとに ふきとめよ そをたにかせの なさけとおもはむ | 貞世 |
1484 | ちるまてに ひともとひこぬ このもとは うらみやつもる はなのしらゆき | 親清女 |
1485 | たまつさも ことつててまし はるのかり わかふるさとに かへるとおもはは | 和義 |
1486 | さひしさは むかしよりなほ まさりけり わかみふりぬる やとのはるさめ | 貞泰 |
1487 | はるといへは むかしたにこそ かすみしか おいのたもとに やとるつきかけ | 高国 |
1488 | おほろにも むかしのかけは なかりけり としたけてみる はるのよのつき | 家隆 |
1489 | ときわかぬ なみたにそては おもなれて かすむもしらぬ はるのよのつき | 土御門院 |
1490 | かくしつつ つもれはをしき はるのひを のとけきものと なにおもふらむ | 隆信 |
1491 | こころうつす なさけよこれも ゆめなれや はなうくひすの ひとときのはる | 徽安門院 |
1492 | かけうつす まつもこたかき はるのいけに みなそこかけて にほふふちなみ | 公守 |
1493 | そこきよき いけのみきはの まつかえに かけまてなひく はるのふちなみ | 実超 |
1494 | やまふきの はなのしからみ かくれとも はるはとまらぬ ゐてのたまかは | 長通女 |
1495 | なほさりの ことはのはなの あらましを まつとせしまに はるもくれぬる | 左京大夫(永陽門院) |
1496 | さらぬたに こころほそきを ささかにの のきにいとひく ゆふくれのそら | 慈円 |
1497 | あつまやの まやののきはに あめすきて つゆぬきとむる ささかにのいと | 基平(近衛兼経男) |
1498 | みあれきに ゆふしてかけし かみやまの すそののあふひ いつかわすれむ | 氏久 |
1499 | みやこには またしきほとの ほとときす ふかきやまちを たつねてそきく | 重成 |
1500 | たかためも つれなかりけり ほとときす ききつとかたる ひとしなけれは | 為連 |
1501 | ほとときす なくへきころと おもふより くもになかめぬ ゆふくれそなき | 朝元 |
1502 | まちえても おいはかひなし ほとときす おなしはつねも かすかにそきく | 忠源 |
1503 | さこそけに しのひねならめ ほとときす くらきあまよの くもになくらむ | 行信 |
1504 | あまくもの ゆふゐるみねの ほとときす よそになくねは きくかひもなし | 景綱 |
1505 | たつねいる みやまかくれの ほとときす うきよのほかの ことかたらなむ | 宗経(平経親男) |
1506 | あつさゆみ ためらふほとに つきかけの いるをのみみて かへりぬるかな | 読人不知 |
1507 | けふとても あやめわくへき みならぬに なににかけてか ねのなかるらむ | 客子(従三位) |
1508 | たちはなの かをりすすしく かせたちて のきはにはるる ゆふくれのあめ | 兼行女 |
1509 | ゆふかけて けふこそいそけ さなへとる みとしろをたの かみのみやひと | 成実(祝部成村男) |
1510 | まつかけの みつせきいれて すみよしの きしのうへたに さなへとるなり | 宗長(安倍) |
1511 | はれまなき こころのうちの たくひとや そらもかきくらす さみたれのころ | 教兼 |
1512 | みかくれて しけみはみえぬ さみたれに うきてのこれる よとのかりこも | 国夏 |
1513 | ほさてけふ いくかになりぬ あまころも たみののしまの さみたれのころ | 重茂 |
1514 | いましかも ゆふたちすらし あしひきの やまのはかくす くものひとむら | 顕氏(細川頼貞男) |
1515 | ふしのねは はれゆくそらに あらはれて すそのにくたる ゆふたちのくも | 光吉 |
1516 | なつくさの ことしけきよに みたされて こころのすゑは みちもとほらす | 伏見院 |
1517 | あめそそく そとものましは かせすきて なつをわするる やまのゆふかけ | 雅有 |
1518 | むらさめは はれゆくあとの やまかけに つゆふきおとす かせのすすしさ | 読人不知 |
1519 | やまもとに ひかけおよはぬ こかくれの みつのあたりそ なつにしられぬ | 貞頼 |
1520 | ふけにけり またうたたねに みるつきの かけもすたれに とほくなりゆく | 儀子内親王 |
1521 | ますらをは しかまつことの あれはこそ しけきなけきも たへしのふらめ | 俊成(藤原俊忠男) |
1522 | さつきやみ ともしにむかふ しかはかり あふもあはぬも あはれよのなか | 為家 |
1523 | あきちかき くさのしけみに かせたちて ゆふひすすしき もりのしたかけ | 基輔(坊門清親男) |
1524 | こかけゆく いはねのしみつ そこきよみ うつるみとりの いろそすすしき | 貞懐 |
1525 | ひとむらの くもふきおくる やまかせに はれてもすすし ゆふたちのあと | 秀治 |
1526 | こころあらは まとのほたるも みをてらせ あつむるひとの かすならすとも | 光吉 |
1527 | いはまつたふ いつみのこゑも さよふけて こころをあらふ とこのすすしさ | 貞空 |
1528 | うゑてみし まかきはのへと あれはてて あさちにましる とこなつのはな | 隆信 |
1529 | こけころも そてのしつくを おきなから ことしもとりつ くさのうへのつゆ | 実兼 |
1530 | あまのかは とわたるふねの みなれさを さしてひとよと なとちきりけむ | 秀行 |
1531 | はつあきは またなかからぬ よはなれは あくるやをしき ほしあひのそら | 師冬 |
1532 | もちわふる みをもこころの あきかせに おきところなき そてのしらつゆ | 慶政 |
1533 | しられすも ゆふへのつゆの おきやそふ にはのこはきの すゑそかたふく | 只帰 |
1534 | おほかたの あきのなかめも わきてなほ やまとみつとの ゆふくれのいろ | 久明親王 |
1535 | ものにふれて なせるあはれは かすならす たたそのままの あきのゆふくれ | 貞広 |
1536 | ひかけのこる まかきのくさに なきそめて くるるをいそく きりきりすかな | 全成 |
1537 | なれてきく おいのまくらの きりきりす なからむあとの あはれをもとへ | 円伊 |
1538 | ゆふまくれ すかるなくのの かせのおとに ことそともなく ものそかなしき | 重保 |
1539 | かすかのに あきなくしかも しるへせよ をしへしみちの うつもるるみを | 為相 |
1540 | しかのねを いりあひのかねに ふきませて おのれこゑなき みねのまつかせ | 順徳院 |
1541 | はるかなる かとたのすゑは やまたえて いなはにかかる いりひをそみる | 伏見院 |
1542 | まつのおとを ことにしらふる あきかせは たきのいとをや すけてひくらむ | 貫之 |
1543 | みつあをき ふもとのいりえ きりはれて やまちあきなる くものかけはし | 良経(九条兼実男) |
1544 | いりひさす うらよりをちの まつはらに きりふきかくる あきのしほかせ | 潤為 |
1545 | あきかせに うきたつくもは まとへとも のとかにわたる かりのひとつら | 尊氏 |
1546 | はれそむる みねのあさきり ひまみえて やまのはわたる かりのひとつら | 頼清 |
1547 | ほにいつる あきのいなはの くもまより やまもとみえて わたるかりかね | 宗行 |
1548 | あらしふく たかねのそらは くもはれて ふもとをめくる あきのむらさめ | 祐夏(中臣) |
1549 | さひしさは のきはのをきの おとよりも きりのはおつる にはのあきかせ | 英時 |
1550 | そらはまた のこるひかけの うすきりに つゆみえそめて にはそくれゆく | 明通 |
1551 | すまのうらや なみちのすゑは きりはれて ゆふひにのこる あはちしまやま | 宗泰(藤原時宗男) |
1552 | まつかせに つきのをのへは そらはれて きりのふもとに さをしかのこゑ | 尊氏 |
1553 | いまもかも たえせぬものか としことの あきのなかはの もちつきのこま | 公雄 |
1554 | ささなみや にほてるうらの あきかせに うきくもはれて つきそさやけき | 為親 |
1555 | はつせやま ひはらにつきは かたふきて とよらのかねの こゑそふけゆく | 尊氏 |
1556 | いねかてに なかめよとてや あきのつき ふけてはかけの さえわたるらむ | 国実(津守国夏男) |
1557 | ふるさとは のきはふつたの すゑたれて さしいるつきの かけたにもなし | 経久 |
1558 | このころは つきにもなほそ なれまさる ねられぬままの おいのすさひに | 為守女 |
1559 | くものうへに なれみしつきそ しのはるる わかよふけゆく あきのなみたに | 懐通 |
1560 | おもひいつる むかしににたる つきかけそ ふるきをうつす かかみなりける | 種成 |
1561 | みのうれへ なくさむかとて みるつきや あきをかさねて おいとなるらむ | 長典 |
1562 | としことに あひみることは いのちにて おいのかすそふ あきのよのつき | 源全 |
1563 | せきいるる いしまのみつの あかてのみ やとかるつきを そてにみるかな | 道家 |
1564 | たちかへる そてにはつきの したふとも いしまのみつは あかぬたひかな | 民部卿典侍(後堀河院) |
1565 | いのりきて つかふるよゐの あきもはや なれてみとせの くものうへのつき | 尊胤法親王 |
1566 | かくてこそ みるへかりけれ おくやまの むろのとほそに すめるつきかけ | 尊円法親王 |
1567 | そらきよく ありあけのつきは かけすみて こたかきすきに ましらなくなり | 儀子内親王 |
1568 | あきさむき ありあけのそらの ひとしくれ くもるもつきの なさけなりけり | 忠守 |
1569 | いとひこし うきよのほかの やまさとに つきはいつより すみなれにけむ | 恵助法親王 |
1570 | すみわひて いてしかたとは おもへとも つきにこひしき ふるさとのあき | 為守 |
1571 | なれてみる つきそしるらむ としをへて なくさめかたき あきのこころは | 隆淵 |
1572 | やまのはに いりなむとおもふ つきみつつ われはとなから あらむとやする | 貫之 |
1573 | ひさかたの つきのたよりに くるひとは いたらぬところ あらしとそおもふ | 貫之 |
1574 | つくつくと ことそともなき なかめして こよひのつきも かたふきにけり | 寂然 |
1575 | つきかけの くまなしとても わひひとの こころのやみの はれはこそあらめ | 重家 |
1576 | なかむれは みのうきことの おほゆるを うれへかほにや つきもみるらむ | 俊恵 |
1577 | なけくとて そてのつゆをは たれかとふ おもへはうれし あきのよのつき | 土御門院 |
1578 | むかしには ありしにもあらぬ そてのうへに たれとてつきの なみたとふらむ | 家隆 |
1579 | あはれさても なにのすさひの なかめして わかよのつきの かけたけぬらむ | 伏見院 |
1580 | くもふかき みとりのほらに すむつきの うきよのなかに かけはたえにき | 花園院 |
1581 | のこりなく おもひすててし よのなかに またをしまるる やまのはのつき | 主殿(四条太皇太后宮) |
1582 | をちこちの きぬたのおとに いくさとも おなしよさむの あはれをそしる | 雅久 |
1583 | あれにける にはのかきほの こけのうへに つたはひかかる ふるさとのあき | 慈勝 |
1584 | ひとしほは たをりてのちも そめてけり しくれにかさす やまのもみちは | 成国(祝部) |
1585 | うらかるる をはなかすゑの ゆふつくひ うつるもよわき あきのくれかた | 兼空 |
1586 | やまさむし あきもくれぬと つくるかも まきのはことに おけるあさしも | 千里 |
1587 | けふはなほ ひまこそなけれ かきくもる しくれここちは いつもせしかと | 和泉式部 |
1588 | ゆふつくひ くもひとむらに かけろひて しくれにかすむ をかのまつはら | 冬頼 |
1589 | おとはかり いたやののきの しくれにて くもらぬつきに ふるこのはかな | 成国(祝部) |
1590 | かみなつき しくれにましる もみちはは ちりかふほとも いろやそふらむ | 賢俊 |
1591 | おちはにも あきのなこりを とめしとや またさそひゆく こからしのかせ | 尊胤法親王 |
1592 | さひしさよ きりのおちはは かせになりて ひとはおとせぬ やとのゆふくれ | 為子(従二位) |
1593 | やまあらしに もろくおちゆく もみちはの ととまらぬよは かくこそありけれ | 後伏見院 |
1594 | なかめやる まさきのかつら ちりはてて めにかかるへき ものたにもなし | 慶政 |
1595 | かけよわき ゆふひうつろふ かたをかに のこるもすこき むらすすきかな | 守子内親王 |
1596 | かせかよふ まかきのをきの ふゆかれも いろこそかはれ おとはかはらす | 高範 |
1597 | むさしのは みなふゆくさの しをれはに しもはおくとも ねさへかれめや | 四条(安嘉門院) |
1598 | みなとえの こほりにたてる あしのはに ゆふしもさやき うらかせそふく | 読人不知 |
1599 | さえとほる しもよのそらの ふくるままに こほりしつまる つきのいろかな | 尊什 |
1600 | かきくらし しくるとみれは かせさえて みそれになりぬ うきくものそら | 宰承 |
1601 | そらにのみ ちるはかりにて けふいくか ひをふるゆきの つもらさるらむ | 清子(贈従二位) |
1602 | なにはかた みきはのゆきは あともなし たまれはかてに なみやかくらむ | 忠貞(惟宗) |
1603 | いほむすふ やまちのゆきも としふりて うつもるるみは とふひともなし | 公雄 |
1604 | かそふれは まちもまたれも きみかため つかへふりぬる ゆきのやまさと | 兼季 |
1605 | たまほこの みちあるみよに ふるゆきは むかしのあとそ なほのこりける | 覚懐 |
1606 | はるきても はなをまつへき こすゑかは ゆきたにのこれ たにのうもれき | 為量 |
1607 | ふりにける あとをしよよに たつぬれは みちこそたえね せきのしらゆき | 冬平 |
1608 | ふりうつむ ゆきにひかすは すきのいほ たるひそしけき やまかけののき | 光厳院 |
1609 | ちとりなく さほのやまかせ こゑさえて かはきりしろく あけぬこのよは | 順徳院 |
1610 | さゆるよの いりうみかけて ともちとり つきにとわたる あまのはしたて | 隆勝 |
1611 | つかへこし あとにのこりて うらちとり あるかひもなき ねをのみそなく | 有忠 |
1612 | あとつけむ かたそしられぬ はまちとり わかのうらわの ともなしにして | 行春(紀) |
1613 | こほりても おとはのこれる みなせかは したにやみつの ありてゆくらむ | 成藤(藤原時藤男) |
1614 | やまかはの いはまにのこる もみちはの したにはすける うすこほりかな | 基雄 |
1615 | すみかまの けふりならねと よのなかを こころほそくも おもひたつかな | 俊頼(源経信男) |
1616 | いかにせむ はひのしたなる うつみひの うつもれてのみ きえぬへきみを | 俊頼(源経信男) |
1617 | おいとなる かすはわかみに ととまりて はやくもすくる としのくれかな | 静伊 |
1618 | みのうへに つもるつきひも いたつらに おいのかすそふ としのくれかな | 雲雅 |
1619 | ゆくすゑを おもふにつけて おいらくの みにはいまさら をしきとしかな | 煕明親王 |
1620 | いまはたた したふはかりの としのくれ あはれいつまて はるをまちけむ | 為相 |
1621 | やまひとの のきはのみちに いそかすは しらてやとしの くれをすきまし | 為基(京極為兼猶子) |
1622 | こそもさそ またはかけしの おいのなみ こゆへきあすの はるもつれなし | 内侍(永福門院) |
1623 | あかつきや またふかからし まつのうれに わかるともなき みねのしらくも | 為基(京極為兼猶子) |
1624 | みるままに あまきるほしそ うきしつむ あかつきやみの むらくものそら | 実兼 |
1625 | ときははや あかつきちかく なりぬなり まれなるほしの そらそしつけき | 忠季(藤原公蔭男) |
1626 | にしのそらは またほしみえて ありあけの かけよりしらむ をちのやまのは | 光明院 |
1627 | しらみまさる そらのみとりは うすくみえて あけのこるほしの かすそきえゆく | 一条(花園院) |
1628 | やまふかみ おりゐるくもは あけやらて ふもとにとほき あかつきのかね | 祝子内親王 |
1629 | よからすは たかきこすゑに なきおちて つきしつかなる あかつきのやま | 光厳院 |
1630 | かねのおとに ゆめはさめぬる のちにしも さらにさひしき あかつきのとこ | 光厳院 |
1631 | まとちかき のきはのみねは あけそめて たによりのほる あかつきのくも | 親子(従三位源) |
1632 | きききかす おなしひひきも みたるなり あらしのうちの あかつきのかね | 進子内親王 |
1633 | あけぬるか ねさめのまとの ひまみえて のこるともなき よはのともしひ | 冬通 |
1634 | はおとして わたるからすの ひとこゑに のきはのそらは くもあけぬなり | 花園院 |
1635 | たちそむる からすひとこゑ なきすきて はやししつかに あくるしののめ | 一条(徽安門院) |
1636 | あさからす こゑするもりの こすゑしも つきはよふかき ありあけのかけ | 実明女 |
1637 | あふさかや あかつきかけて なくとりの こゑしろくなる せきのすきむら | 伏見院 |
1638 | さとさとの あけゆくおとは いそけとも のとかにしらむ やまのはのそら | 花園院 |
1639 | いてやらて あさひこもれる やまのはの あたりのくもそ まつにほひぬる | 為基(京極為兼猶子) |
1640 | やとやとに たつるけふりの すゑあひて ひとむらかすむ さとのあさあけ | 為子(従二位) |
1641 | をちかたの さとはあさひに あらはれて けふりにうすき たけのひとむら | 一条(徽安門院) |
1642 | かせすさふ たけのさえたの ゆふつくひ うつりさためぬ かけそさひしき | 実明女 |
1643 | もりうつる たににひとすち ひかけみえて みねもふもとも まつのゆふかせ | 為兼 |
1644 | いりひさす みねのうきくも たなひきて はるかにかへる とりのひとこゑ | 順徳院 |
1645 | ゆふひかけ たのもはるかに とふさきの つはさのほかに やまそくれぬる | 光厳院 |
1646 | やまもとは まつくれそめて みねたかき こすゑにのこる ゆふひかけかな | 栄子内親王 |
1647 | ゆふやまや ふもとのひはら いろさめて のこるひかけそ みねにすくなき | 後伏見院 |
1648 | みわたせは くもまのひかけ うつろひて むらむらかはる やまのいろかな | 宗尊親王 |
1649 | ゆふひさす みねはみとりの うすくみえて かけなるやまそ わきていろこき | 徽安門院 |
1650 | ゆふつくひ いりぬるみねの いろこきに ひともとたてる まつそさひしき | 忠季(藤原公蔭男) |
1651 | ゆふつくひ やまのあなたに なるままに くものはたてそ いろかはりゆく | 順徳院 |
1652 | やまのはの いろあるくもに まつすきて いりひのあとの そらそしつけき | 一条(花園院) |
1653 | にしのそらの ゆふひのあとは さめやらて つきよりかはる くものいろかな | 一条(徽安門院) |
1654 | つきはあれと またくれやらぬ そらなれや うつるもうすき にはのかけかな | 義詮 |
1655 | ひととはぬ たにのとほその しつけきに くもこそかへれ ゆふくれのやま | 行家(藤原知家男) |
1656 | やまかせは たかねのまつに こゑやみて ゆふへのくもそ たににしつまる | 尊氏 |
1657 | こもりえの はつせのひはら ふきわけて あらしにもるる いりあひのかね | 為定(御子左二条為道男) |
1658 | あめそそく まきのしつくは おちそひて くもふかくなる ゆふくれのやま | 重資 |
1659 | とりのゆく ゆふへのそらの はるはると なかめのすゑに やまそいろこき | 後伏見院 |
1660 | とひつれて とほさかりゆく からすはに くるるいろそふ をちかたのそら | 為基(京極為兼猶子) |
1661 | かねのおとを ひとつあらしに ふきこめて ゆふくれしをる のきのまつかせ | 伏見院 |
1662 | ならひたつ まつのおもては しつかにて あらしのおくに かねひひくなり | 伏見院 |
1663 | やまのはの なかめにあたる ゆふくれに きかてきこゆる いりあひのおと | 伏見院 |
1664 | つれつれと なかめなかめて くるるひの いりあひのかねの こゑそさひしき | 祝子内親王 |
1665 | たつねいる やまちのすゑは ひともあはす いりあひのかねに あらしこそふけ | 後伏見院 |
1666 | かくしてそ きのふもくれし やまのはの いりひののちに かねのこゑこゑ | 永福門院 |
1667 | なにとなく ゆふへのそらを みるままに あやしきまては なそやわひしき | 為子(従二位) |
1668 | なにとなく すきこしかたの なかめまて こころにうかふ ゆふくれのそら | 後鳥羽院 |
1669 | てらふかき ねさめのやまは あけもせて あまよのかねの こゑそしめれる | 伏見院 |
1670 | つくつくと ひとりきくよの あめのおとは ふりをやむさへ さひしかりけり | 儀子内親王 |
1671 | みなひとの いをぬるなへに うはたまの よるてふときそ よはしつかなる | 儀子内親王 |
1672 | おもひつくす こころにときは うつれとも おなしかけなる ねやのともしひ | 教良女 |
1673 | あはれにそ つきにそむくる ともしひの ありとはなしに わかよふけぬる | 為家 |
1674 | まきのやの ひまふくかせも こころせよ まとふかきよに のこるともしひ | 長雅 |
1675 | ともしひは あまよのまとに かすかにて のきのしつくを まくらにそきく | 徽安門院 |
1676 | ひとすちに おもひもはてし なほもこの うきよのともは つきこそありけれ | 後伏見院 |
1677 | よのなかは むなしきものと あらむとそ このてるつきは みちかけしける | 読人不知 |
1678 | ありしよに めくるみとしも おもはねと つきはむかしの ここちこそすれ | 行尊 |
1679 | むかしのみ なかむるままに こひしきは なれしくもゐの つきにやあるらむ | 敦経 |
1680 | いまはわれ またみるましき あはれさよ なれてつかへし くものうへのつき | 家親 |
1681 | そてのうへに かはらぬつきの かはるかな ありしむかしの かけをこひつつ | 秀能(藤原秀宗男) |
1682 | なにとなく むかしこひしき わかそての ぬれたるうへに やとるつきかけ | 秀能(藤原秀宗男) |
1683 | ときありて はなももみちも ひとさかり あはれにつきの いつもかはらぬ | 為子(従二位) |
1684 | うきてたつ くもふきはらふ やまかせの をささにすくる おとのはけしさ | 覚助法親王 |
1685 | やまあひに おりしつまれる しらくもの しはしとみれは はやきえにけり | 永福門院 |
1686 | うすくこき やまのいろかと みるほとに そらゆくくもの かけそうつろふ | 基顕 |
1687 | おほそらに あまねくおほふ くものこころ くにつちうるふ あめくたすなり | 為兼 |
1688 | あらきあめの をやまぬほとの にはたつみ せきいれぬみつそ しはしなかるる | 為子(従二位) |
1689 | えたくらき こすゑにあめの おとはして またつゆおちぬ まきのしたみち | 法守法親王 |
1690 | くもかかる とほやままつは みえすなりて まかきのたけに あめこほるなり | 光厳院 |
1691 | なかめつる くさのうへより ふりそめて やまのはきゆる ゆふくれのあめ | 内侍(永福門院) |
1692 | ひとりあかす よものおもひは ききこめぬ たたつくつくと ふくるよのあめ | 後伏見院 |
1693 | よるのあめに こころはなりて おもひやる ちさとのねさめ ここにかなしも | 伏見院 |
1694 | みぬよまて おもふもさひし いそのかみ ふるのやまへの あめのゆふくれ | 有家(藤原重家男) |
1695 | やままつは みるみるくもに きえはてて さひしさのみの ゆふくれのあめ | 儀子内親王 |
1696 | にしのたつ みねよりあめは はれそめて ふもとのまつを のほるしらくも | 親行(藤原) |
1697 | あめはいま はれぬとみつる とほやまの まつにみたれて かかるしらくも | 公直母 |
1698 | あめはれて いろこきやまの すそのより はなれてのほる くもそまちかき | 内侍(永福門院) |
1699 | やまもとや あめはれのほる くものあとに けふりのこれる さとのひとむら | 為基(京極為兼猶子) |
1700 | たにかけや ましはのけふり こくみえて いりあひくらき やまのしたみち | 親子(従三位源) |
1701 | たちのほる けふりさひしき やまもとの さとのこなたに もりのひとむら | 進子内親王 |
1702 | しらくもの やへたつみねも ちりひちの つもりてなれる やまにしあらすや | 実泰 |
1703 | みつのみね ふたつのみちを ならへおきて わかたつそまの なこそたかけれ | 慈順 |
1704 | うらかせは みなとのあしに ふきしをり ゆふくれしろき なみのうへのあめ | 伏見院 |
1705 | うらのまつ このまにみえて しつむひの なこりのなみそ しはしうつろふ | 後二条院 |
1706 | しつみはてぬ いりひはなみの うへにして しほひにきよき いそのまつはら | 永福門院 |
1707 | いそやまの かけなるうみは みとりにて ゆふひにみかく おきつしらなみ | 為基(京極為兼猶子) |
1708 | しらなみの たかしのやまの ふもとより まさこふきまき うらかせそふく | 成茂 |
1709 | かつしかの ままのうらかせ ふきにけり ゆふなみこゆる よとのつきはし | 朝村 |
1710 | うちよする あらいそなみの あとなれや しほひのかたに のこるもくつは | 兵衛督(花園院) |
1711 | わたのはら なみとそらとは ひとつにて いりひをうくる やまのはもなし | 定家 |
1712 | きよみかた いそやまもとは くれそめて いりひのこれる みほのまつはら | 冬隆 |
1713 | かせをいたみ よせくるなみに いさりする あまをとめこか ものすそぬれぬ | 読人不知 |
1714 | たまつしま みれともあかす いかにして つつみもたらむ みぬひとのため | 読人不知 |
1715 | いへつとに かひをひろふと おきへより よせくるなみに ころもてぬれぬ | 読人不知 |
1716 | ありかよふ なにはのみやは うみちかみ あまをとめこか のれるふねみゆ | 読人不知 |
1717 | なにはえに ゆふしほとほく みちぬらし みらくすくなき あしのむらたち | 実雄 |
1718 | つのくにの なにはよりそと いはすとも あしてをみても それとしらなむ | 国基 |
1719 | つのくにの なにはのさとの うらちかみ まかきをいつる あまのつりふね | 道家 |
1720 | あらいその まつのかけなる あまをふね つなきなからそ なみにたたよふ | 為相女 |
1721 | こきいてて むこのうらより みわたせは なみまにうかふ すみよしのまつ | 行尹 |
1722 | からさきや かすかにみゆる まさこちに まかふいろなき ひともとのまつ | 為子(従二位) |
1723 | にほのうみや かすみてとほき あさあけに ゆくかたみえぬ あまのつりふね | 有光 |
1724 | あけわたる をしまのまつの このまより くもにはなるる あまのつりふね | 家隆 |
1725 | うらうらの くるるなみまに かすみえて おきにいてそふ あまのいさりひ | 基成 |
1726 | こきいつる ほともなみちに かすきえぬ おひかせはやき うらのつりふね | 為子(従二位) |
1727 | ものとして はかりかたしな よわきみつに おもきふねしも うかふとおもへは | 為兼 |
1728 | かはむかひ またみつくらき あけほのに いつるかふねの おとそきこゆる | 兼行 |
1729 | こけむして ひとのゆききの あともなし わたらてとしや ふるのたかはし | 実忠 |
1730 | おほゐかは はるかにみゆる はしのうへに ゆくひとすこし あめのゆふくれ | 為兼 |
1731 | をかのへや なひかぬまつは こゑをなして したくさしをる やまおろしのかせ | 為兼 |
1732 | たにふかき まつのしつえに ふきとめて みやまのあらし こゑしつむなり | 為守女 |
1733 | やまひとの おへるましはの えたにさへ なほおとつれて ゆくあらしかな | 宣子(従三位藤原) |
1734 | つれつれと やまかせすこき ゆふくれの こころにむかふ まつのひともと | 親子(従三位源) |
1735 | みるとなき こころにもなほ あたりけり むかふみきりの まつのひともと | 為兼 |
1736 | いましもは あらしにまさる あはれかな おとせぬまつの ゆふくれのやま | 伏見院 |
1737 | としふかき すきのこすゑも かみさひて こくらきもりは みやゐなりけり | 公蔭 |
1738 | くれぬるか まかきのたけの むらすすめ ねくらあらそふ こゑさわくなり | 経平(藤原家基男) |
1739 | みとりこき ひかけのやまの はるはると おのれまかはす わたるしらさき | 徽安門院 |
1740 | やまもとの たのもよりたつ しらさきの ゆくかたみれは もりのひとむら | 伏見院 |
1741 | たにかけや こふかきかたに かくろへて あめをもよほす やまはとのこゑ | 為相 |
1742 | かねのおと とりのねきかぬ おくやまの あかつきしるは ねさめなりけり | 忠嗣 |
1743 | ふきおろす のきはのやまの まつかせに たえてみしかき ゆめのかよひち | 隆教 |
1744 | しのはれむ ものともなしに をくらやま のきはのまつそ なれてひさしき | 定家 |
1745 | まつのかせ かけひのみつに ききかへて みやこのひとの おとつれはなし | 基忠(鷹司兼平男) |
1746 | ちりのみそ おきところなき しらくもの たなひくやまの おくはあれとも | 慶運 |
1747 | やまふかき すまひはかりは かひもなし こころにそむく うきよならねは | 基任 |
1748 | やまふかき やとにはひとの おともせて たにしつかなる とりのひとこゑ | 慈成 |
1749 | やまもとの まつのかこひの あれまくに あらしよしはし こころしてふけ | 為氏 |
1750 | たたひとへ あたにかこへる しはのかき いとふこころに よをはへたてて | 俊実(藤原定資男) |
1751 | わかやとは つまきこりゆく やまかつの しはしはかよふ あとはかりして | 式子内親王 |
1752 | ここにさへ あらしふけとは おもはすよ みのかくれかの のきのやままつ | 実衡女 |
1753 | やまのおく しつかにとこそ おもひしに あらしそさわく ひはらまきはら | 法守法親王 |
1754 | またひとの いほりならへぬ やまかけは おとするかせを ともときくかな | 公守女 |
1755 | ひともとと おもひてうゑし くれたけの にはみえぬまて しけるふるさと | 良海 |
1756 | つくろはぬ いはきをにはの すかたにて やとめつらしき やまのおくかな | 伏見院 |
1757 | われたにも せはしとおもふ くさのいほに なかはさしいる みねのしらくも | 仏国 |
1758 | やまかけや ちかきいりあひの こゑくれて そとものたにに しつむしらくも | 伏見院 |
1759 | あとたえて へたつるやまの くもふかし ゆききはちかき みやこなれとも | 花園院 |
1760 | やまさとを たれすみうしと いとひけむ こころのすめは さひしさもなし | 道玄 |
1761 | とふひとも またれぬほとに すみなれて みやまのおくは さひしさもなし | 宗秀(藤原宗泰男) |
1762 | おくやまの いはほのまくら こけむしろ かくてもへなむ あはれよのなか | 家雅 |
1763 | ひとめこそ かれなはかれめ やまさとに かけひのみつの おとをたにせよ | 高倉(安嘉門院) |
1764 | とはるやと またましいかに さひしからむ ひとめをいとふ おくやまのいほ | 儀子内親王 |
1765 | くちのこる のきのかけひを つたひきて にはにしたたる こけのしたみつ | 承覚法親王 |
1766 | をちかたの やまはゆふひの かけはれて のきはのくもは あめおとすなり | 伏見院 |
1767 | くもしつむ たにののきはの あめのくれ ききなれぬとりの こゑもさひしき | 進子内親王 |
1768 | ますらをか やまかたつきて すむいほの そともにわたす すきのまろはし | 順徳院 |
1769 | やまふかき くさのいほりの あめのよに おとせてふるは なみたなりけり | 忠良 |
1770 | やまさとは さひしとはかり いひすてて こころととめて みるひとやなき | 実明女 |
1771 | やまもとや いほののきはに くもおりて たのもさひしき あめのゆふくれ | 尊氏 |
1772 | おもひいる みやまのさとの しるしとて うきよへたつる まとのくれたけ | 後嵯峨院 |
1773 | このさとは そとものましは しけけれは ほかにもとめぬ つまきこるなり | 慈道法親王 |
1774 | あともなき しつかいへゐの たけのかき いぬのこゑのみ おくふかくして | 花園院 |
1775 | みをかくす みやまのおくの かよひちを ありとなつけそ たにのしたみつ | 実雄 |
1776 | いほむすふ やましたみつの こかくれに すますこころを しるひとそなき | 師信 |
1777 | あかたなの はなのかれはも うちしめり あさきりふかし みねのやまてら | 為家 |
1778 | つきはまた みねこえやらぬ やまかけに かつかつみゆる まつのしたみち | 為基(京極為兼猶子) |
1779 | いなりやま にしにやつきの なりぬらむ すきのいほりの まとのしらめる | 頼政 |
1780 | やまかけや たけのあなたに いりひおちて はやしのとりの こゑそあらそふ | 伏見院 |
1781 | やまひとの わけいるほかの あともなし みねよりおくの しはのしたみち | 為子(従二位) |
1782 | みわたせは つまきのみちの まつかけに しはよせかけて やすむやまひと | 宗尊親王 |
1783 | しはしなほ ふもとのみちの くらけれは つきまちいてて かへるやまひと | 公泰 |
1784 | ひとはいはし とりもこゑせぬ やまちにも あれはあらるる みにこそありけれ | 惟方 |
1785 | いかにして のなかのしみつ おもひいてて わするはかりに またなりぬらむ | 惟方 |
1786 | くるとあくと つゆけきこけの たもとかな もらぬいはやの なをはたのまし | 静仁法親王 |
1787 | われならぬ ひとにくますな ゆきすりに むすひおきつる たまのゐのみつ | 道信 |
1788 | わすれても くみやしつらむ たひひとの たかののおくの たまかはのみつ | 弘法 |
1789 | これそこの もろこしふねに のりをえて しるしをのこす まつのひともと | 阿一 |
1790 | ふるさとは あさちかしたに うつもれて くさのいほりと なりにけるかな | 惟方 |
1791 | としをへて あれこそまされ さかのやま きみかすみこし あとはあれとも | 寛尊法親王 |
1792 | いのちまつ かりのやとりの うちにたに すみさためたる かくれかもなし | 為守女 |
1793 | いくたひか かくすみすてて いてつらむ さためなきよに むすふかりいほ | 夢窓 |
1794 | さきのゐる いけのみきはに まつふりて みやこのほかの ここちこそすれ | 定家 |
1795 | やへむくら しけれるやとに つれつれと とふひともなき なかめをそする | 定頼 |
1796 | あまつそら てるひのしたに ありなから くもるこころの くまをもためや | 伏見院 |
1797 | てりくもり さむきあつきも ときとして たみにこころの やすむまもなし | 光厳院 |
1798 | たれもみな こころをみかけ ひとをしる きみかかかみの くもりなきよに | 資明 |
1799 | しつかなる よはのねさめに よのなかの ひとのうれへを おもふくるしさ | 直義 |
1800 | かみよより みちあるくにに つかへける ちきりもたえぬ せきのふちかは | 道家 |
1801 | いままては よよへてすみし しらかはの にこらしみつの こころはかりは | 経顕(藤原定資男) |
1802 | あふきみて わかみをとへは あまのかは すめるみとりの いふこともなし | 後伏見院 |
1803 | さりともと あふきてそらを たのむかな つきひのいまた おちぬよなれは | 道玄 |
1804 | ゆくすゑの みちはまよはし かすかやま いつるあさひの かけにまかせて | 基平(近衛兼経男) |
1805 | くもらしと おもふこころを みかさやま いつるあさひも そらにしるらむ | 内経 |
1806 | をさまれる あとをそしたふ おしなへて たかむかしとは おもひわかねと | 後醍醐院 |
1807 | をさまらぬ よのためのみそ うれはしき みのためのよは さもあらはあれ | 光厳院 |
1808 | くらゐやま かさなるゆきに あととめて まよはぬみちは なほそかしこき | 為継 |
1809 | みちしあらは いまもまよはて くらゐやま むかしのあとに なをのこさはや | 秀経 |
1810 | おいのみに いまひとさかの くらゐやま のほらぬしもそ くるしかりける | 実教 |
1811 | うれへなく たのしみもなし わかこころ いとなまぬよは あるにまかせて | 伏見院 |
1812 | なきにのみ みをなしはてし こころより あるにまかする よこそやすけれ | 為守女 |
1813 | いにしへは なけきしことも なけかれす うきにならひて としのへぬれは | 顕範 |
1814 | ひとはしらし かたやまかけの うもれみつ こころのそこは いかにすむとも | 重能 |
1815 | うきなから あるにまかする わかみこそ かくてもすつる このよなりけれ | 為明 |
1816 | みこそあらめ こころをちりの ほかになして うきよのいろに そましとそおもふ | 徽安門院 |
1817 | たにかはの みつのみなかみ よよをへて いまそかしこき なをなかすらむ | 尊円法親王 |
1818 | みなかみの すめるをうけて ゆくかはの すゑにもにこる なをはなかさし | 広秀 |
1819 | たかきやま ふかきうみにも まさるらし わかみにうくる きみかめくみは | 直義 |
1820 | のほるせの ありけるものを ひくひとの なきにもよらぬ よとのかはふね | 為相 |
1821 | しつむみと なになけきけむ さほかはの ふかきめくみの かかりけるよに | 内経 |
1822 | おなしくは おとろへさりし もとのみを いまにかへして よにつかへはや | 時藤(藤原行藤男) |
1823 | いのちをは かろきになして もののふの みちよりおもき みちあらめやは | 致雄 |
1824 | ももしきや みきりのたけの ふしておもひ おきていのるも わかきみのため | 尊円法親王 |
1825 | すみわふる われこそつねに いそかるれ つきはなにゆゑ やまにいるらむ | 実衡女 |
1826 | なにことを おもひつつくと なけれとも あめのねさめは ものそかなしき | 慶政 |
1827 | いるたひに またはいてしと おもふみの なにゆゑいそく みやこなるらむ | 道玄 |
1828 | みのうさを こころひとつに なくさめて わかあらましを まつそはかなき | 邦省親王 |
1829 | いつまてと おもふはかりそ あたしよの うきになくさむ たのみなりける | 守誉 |
1830 | よのなかの うきはうれしき ものそとも いつすてはてて おもひあはせむ | 有淳 |
1831 | なれぬれは おもひもわかぬ みのうさを わすれぬものは なみたなりけり | 如円 |
1832 | なけくへき ことをあまたの みのうさに まつはなみたの なににおつらむ | 宗満 |
1833 | もしほくさ かきあつめたる わかのうらの そのひとなみに おもひいてすや | 惟方 |
1834 | いまもなほ なれしむかしは わすれぬを かけさらめやは わかのうらなみ | 俊成(藤原俊忠男) |
1835 | かきつもる もくつのみして あるかひも なきさによする わかのうらなみ | 久時 |
1836 | わかのうらに こころをよせて としふれと もくつそつもる たまはひろはす | 宗秀(大江時秀男) |
1837 | わかのうらの なみのかすには もれにけり かくかひもなき もしほくさかな | 実定 |
1838 | いへのかせ ふくともみえぬ このもとに かきおくことの はをちらすかな | 経盛 |
1839 | ことのはの むくさのうちに さまさまの こころそみゆる しきしまのみち | 直義 |
1840 | きみなくは いかにしてかは はるけまし いにしへいまの おほつかなさを | 俊成(藤原俊忠男) |
1841 | かきたむる いにしへいまの ことのはを のこさすきみに つたへつるかな | 基俊 |
1842 | むすひなす すゑをこころに たたふれは ふかくみゆるを やまかはのみつ | 西行 |
1843 | しきしまの みちにわかなは たつのいちや いさまたしらぬ やまとことのは | 定家 |
1844 | わかのうらに みそうきなみの あまをふね さすかかさなる あとなわすれそ | 為家 |
1845 | わかのうらに たちのほるなる なみのおとは こさるるみにも うれしとそきく | 隆信 |
1846 | いかにして たちのほるらむ こゆへしと おもひもよらぬ わかのうらなみ | 頼政 |
1847 | たちかへる くもゐのたつに ことつてむ ひとりさはへに なくとつけなむ | 清輔 |
1848 | あしはらに はねやすむめる あしたつは もとのくもゐに かへらさらめや | 大弐三位 |
1849 | このうちを いつとしならは あしたつの なれしくもゐに なとやかへらぬ | 重家 |
1850 | またもこむ はるとはえこそ いはしみつ たちまふことも ありかたきよに | 定長(藤原通成男) |
1851 | むかしみし くものかけはし かはらねと わかみひとつの とたえなりけり | 清輔 |
1852 | くもれよし なかはのつきの おもかけも とめてみるへき たもとならねは | 欣子内親王 |
1853 | いまさらに のほりそやらぬ くらゐやま くるしかるへき よよのあとかは | 為定(御子左二条為道男) |
1854 | むかしたれ ひとのこころを しらいとの そむれはそまる いろになきけむ | 高弁 |
1855 | おもひたつ きそのあさぬの あさくのみ そめてやむへき そてのいろかは | 兼好 |
1856 | なにとなく はなやもみちを みるほとに はるとあきとは いくめくりしつ | 惟規 |
1857 | はなちらて つきはくもらぬ よなりせは ものをおもはぬ わかみならまし | 西行 |
1858 | ここのつの さはになくなる あしたつの こをおもふこゑは そらにきこゆや | 基俊 |
1859 | よそにても こをおもふたつの なくこゑを あはれとひとの きかさらめやは | 忠通 |
1860 | なからへて とはるへしとは おもひきや ひとのなさけも いのちなりけり | 高弁 |
1861 | うしとても いくほとのよと おもふおもふ なほそのうちも もののわひしき | 祝子内親王 |
1862 | うしとても うからすとても よしやたた いそちののちの いくほとのよは | 為相 |
1863 | おもひても なくてすきこし としつきの かすにまさるは なみたなりけり | 実教 |
1864 | ななそちの としなみこえて いまはみの なにをかすゑの まつことにせむ | 延全 |
1865 | あさゆふの こころのうちの ものうさを さてもあるみと ひとやしるらむ | 為相女 |
1866 | おもひしらは そむきもすへき みをおきて たかなにたてし うきよなるらむ | 小宰相(徽安門院) |
1867 | いまさらに うしといふこそ おろかなれ かかるへきよの すゑとしらすや | 道玄 |
1868 | すてかぬる こころもわかみ そのうへに たかおもはせて いとはしきよそ | 新右衛門督(宣光門院) |
1869 | おもふこと なくはいつまて すまむとて たためのまへの よをなけくらむ | 儀子内親王 |
1870 | はかなしと おもひなからも あらましに みをなくさめて としをふるかな | 雅孝 |
1871 | さこそはと おもひやられし そのをりの たひのあはれを さなからそみる | 公蔭 |
1872 | ことのはに いろはなけれと おもひやる こころをそへて あはれとやみる | 花園院 |
1873 | こころとは すみはてられぬ おくやまに わかあとうつめ やへのしらくも | 為基(京極為兼猶子) |
1874 | ゆくすゑを たのむとひとや おもふらむ こころにもあらて よをすくすみを | 新宰相(光厳院) |
1875 | うきよとは おもひなからに すてやらて あらましにのみ すくしつるかな | 秀能/秀信 |
1876 | うきよとは なへていふなる ことわりを わかみひとつに なしてこそおもへ | 仲教 |
1877 | うきことを おもはしとても いかかせむ さすかこころの なきみならねは | 浄道 |
1878 | をりをりの みのあらましも かはりけり わかこころさへ さためなのよや | 宣子(従三位藤原) |
1879 | よのうさに おもひたちぬる やまさとは いさいつまてと ほともさためす | 道玄 |
1880 | あはれにそ よもきかにはの あともなき もとよりたれを まつみならねと | 実衡女 |
1881 | つくつくと おもへはかなし かすならぬ みをしるあめよ をやみたにせよ | 俊頼(源経信男) |
1882 | なみたのみ ふるやののきの いたひさし もりくるつきそ そてにくもれる | 道昭 |
1883 | やまふかく みをかくしても よのなかを のかれはてぬは こころなりけり | 宗秀(藤原宗泰男) |
1884 | かくはかり とりあつめたる みのうさに こころつよくも なかきいのちか | 山田 |
1885 | みはかくて のかれはてぬる よのなかを ひとのうへまて なほいとふかな | 読人不知 |
1886 | よをうしと おもひたつとも わかやまの ほかにはいかか すみそめのそて | 忠性 |
1887 | よをうみの あみのうけなは ひとすちに ひくへきひとも なきみなりけり | 公什 |
1888 | わかこころ たれにかいはむ いせのあまの つりのうけひく ひとしなけれは | 崇徳院 |
1889 | いかにせむ そむかはとこそ おもひしに すててもうきは このよなりけり | 道意(西園寺実兼男) |
1890 | なけきをも とはぬつらさは つらけれと うれしきことは うれしとそきく | 読人不知 |
1891 | いふよりも いはておもふは まさるとて とはぬもとふに おとりやはせし | 惟方 |
1892 | こころたに わかおもふにも かなはぬに ひとをうらみむ ことわりそなき | 為子(従二位) |
1893 | ものことに こころをとめは なににかは うきよのなかの しられさるへき | 儀子内親王 |
1894 | こころこそ みのせきもりと なりにけれ やすくいつへき このよなれとも | 四条(安嘉門院) |
1895 | よのなかの うきたひことに なくさむる よしいくほとの なからましかは | 徽安門院 |
1896 | あらましの こころのままに みるゆめを おもひあはする うつつともかな | 寿成門院 |
1897 | あはれにも うつつにおもふ あらましの たたそのままに みつるゆめかな | 小宰相(徽安門院) |
1898 | うたたねの はかなきゆめの うちにたに ちちのおもひの ありけるものを | 良経(九条兼実男) |
1899 | ゆめにても うれしきことの みえつるは たたにうれふる みにはまされり | 千里 |
1900 | おほかたの うつつはゆめに なしはてつ ぬるかうちには なにをかもみむ | 後鳥羽院 |
1901 | なかきよの ゆめのうちにて みるゆめは いつれうつつと いかかさためむ | 永縁 |
1902 | ゆめそかし おもふままなる みなりとも うれしかるへき このよとやみる | 慈円 |
1903 | いつかたに おもひさためむ ゆめといひて おもふもみえす おもはぬもみゆ | 実泰 |
1904 | あたしよに ねてもさめても みることは いつれをゆめと こころにかわく | 公賢 |
1905 | もとよりの さなからゆめと みるうへは よしやかならす さめもさめすも | 花園院 |
1906 | おとろくも さこそとかなし うきゆめの さめぬまよひに よをやすてけむ | 左京大夫(永陽門院) |
1907 | さめやらぬ うきよのゆめの なこりこそ すてぬるみにも なほのこりけれ | 為基(京極為兼猶子) |
1908 | あかつきの かねはまくらに おとすれと うきよのゆめは さめむともせす | 公清室 |
1909 | なかきよに まよふやみちの いつさめて ゆめをゆめとも おもひあはせむ | 為子(従二位) |
1910 | ぬるかうちに みるよりほかの うつつさへ いやはかななる ゆめになりぬる | 為基(京極為兼猶子) |
1911 | おとろかぬ きのふのゆめの よをしらて またあらましの あすもはかなし | 為相女 |
1912 | みしひとも のこりすくなき おいかよに たれとむかしを かたりあはせむ | 基忠(鷹司兼平男) |
1913 | あはれとて わかねさめとふ ひともかな おもふこころを いひもつくさむ | 頼貞 |
1914 | いまになり むかしにかへり おもふまに ねさめのかねも こゑつきぬなり | 内侍(永福門院) |
1915 | いまやゆめ むかしやゆめと たとられて いかにおもへと うつつとそなき | 右京大夫(建礼門院) |
1916 | きみもさは わたりかねける なみたかは わかみひとつの ふちとおもふに | 信成 |
1917 | ふたたひと かへるかたなき むかしにも ゆめちはかよふ ものにそありける | 隆信 |
1918 | うはたまの よるのころもを いにしへに かへすたのみの ゆめもはかなし | 忠房親王 |
1919 | さめてのち くやしきものは またもこぬ むかしをみつる ゆめにそありける | 儀子内親王 |
1920 | つくつくと すきにしかたを おもひねの ゆめそむかしの なこりなりける | 経通(一条内経男) |
1921 | かへりこぬ むかしにかよふ ゆめちをは しはしもいかて さまさてをみむ | 恒明親王 |
1922 | おもひねの ゆめよりほかは たのまれす さらてはかへる むかしならねは | 宗親 |
1923 | みてもなほ おもひそまさる ふてのあと なかなかつらき かたみなりけり | 冬信 |
1924 | かたかたに なきてわかれし むらとりの ふるすにたにも かへりやはする | 成範 |
1925 | いにしへの いまみるはかり おほゆるは わかおいらくの ねさめなりけり | 基氏(藤原基家男) |
1926 | いにしへに なせはこそあれ おもひいつる こころはいまの ものにそありける | 宗成 |
1927 | しつたまき かすにもあらぬ みなれとも つかへしみちは わすれしもせす | 秀能(藤原秀宗男) |
1928 | こしかたの わすれかたきも またひとに かたるはかりの おもひいてはなし | 宰相典侍(後宇多院) |
1929 | ことにいてて あはれむかしと いはるるも さらにみのうき ときにそありける | 頼氏(藤原頼広男) |
1930 | をりをりに むかしをしのふ なみたこそ こけのたもとに いまもかわかね | 遠衡 |
1931 | うつつにて いまみることは まきるれと むかしのゆめそ わすれさりける | 為嗣 |
1932 | おいぬれは かつみることは わすられて とほきむかしの しのはるるかな | 宰相典侍(後宇多院) |
1933 | おもひいての なきみなれとも いにしへを こふるはおいを いとふなりけり | 為継 |
1934 | へたたらぬ わかみのほとの いにしへも すきにしかたは なほそこひしき | 基嗣 |
1935 | すきぬれは けふをきのふと いひなして とほさかるこそ むかしなりけれ | 読人不知 |
1936 | あやにくに しのはるるみの むかしかな ものわすれする おいのこころに | 公雄 |
1937 | みしともは あるかすくなき おなしよに おいのいのちの なにのこるらむ | 範秀 |
1938 | そむかはや よしやよのなか とはかりの あらましにてや つひにすきなむ | 為子(従二位) |
1939 | あさことに あはれをいとと ますかかみ しらぬおきなを いつまてかみむ | 資隆 |
1940 | はかなさは けふともしらぬ よのなかに さりともとのみ いつをまつらむ | 読人不知 |
1941 | おもひしる こころとならは いたつらに あたらこのよを すくささらなむ | 寂然 |
1942 | そむくとも なほやこころの のこらまし よにわすられぬ わかみなりせは | 宗尊親王 |
1943 | こをおもふ やみにそまよふ くはのかと うきよにかへる みちはとちても | 有忠 |
1944 | あきをまたて おもひたちにし こけころも いまよりつゆを いかてほさまし | 後伏見院 |
1945 | おもひやる こけのころもの つゆかけて もとのなみたの そてやくちなむ | 永福門院 |
1946 | かたかたに をしむへきよを おもひすてて まことのみちに いるそかしこき | 為兼 |
1947 | きえぬへき つゆのいのちを をしむとて すてかたきよを けふそむきぬる | 公衡(西園寺実兼男) |
1948 | なからへて われもすむへき やとならは しはしとひとを いはましものを | 成範 |
1949 | あらましは さなからかはる みのはてに そむくはかりそ すゑとほりける | 為守女 |
1950 | わすられぬ むかしかたりも おしこめて つひにさてやの それそかなしき | 永福門院 |
1951 | はるけすて さてやとおもふ うらみのみ ふかきなけきに そへてかなしき | 内侍(永福門院) |
1952 | あはれその うきはてきかて ときのまも きみにさきたつ いのちともかな | 内侍(永福門院) |
1953 | なにことを まつことにてか すくさまし うきよをそむく みちなかりせは | 寂然 |
1954 | いまはわれ うきよをよそに すみそめの ゆふへのいろの あはれなるかな | 盛親 |
1955 | それとなき ゆふへのくもに ましりなは あはれたれかは わきてなかめむ | 堀河(待賢門院) |
1956 | いなつまの ひかりのほとか あきのたの なひくすゑはの つゆのいのちは | 寂然 |
1957 | のちのよと いへははるかに きこゆるを いているいきの たゆるまつほと | 俊恵 |
1958 | いへはうし しぬるわかれの のかれぬを おもひもいれぬ よのならひこそ | 慈円 |
1959 | けふといへは わかれしひとの なこりより あやめもつらき ものをこそおもへ | 後二条院 |
1960 | けふはなほ あやめのくさの うきねにも いととみとせの つゆそかわかぬ | 為世(御子左二条為氏男) |
1961 | あはれいつか それはむかしに なりにきと はかなきかすに ひとにいはれむ | 実重(三条公親男) |
1962 | いとへとも みはあやにくに つれなくて よそのあはれを ききつもるかな | 冷泉(花園院) |
1963 | つゆのみの きえはてぬとも ことのはに かけてもたれか おもひいつへき | 宣旨(郁芳門院) |
1964 | なにことも むかしかたりに なりゆけは はなもみしよの いろやかはれる | 兵衛(上西門院) |
1965 | かくはかり うつりゆくよの はななれと さくやとからは いろもかはらす | 堀河(二条太皇太后宮) |
1966 | ふるさとの のきはににほふ はなたにも ものうきいろに さきすさひつつ | 遊義門院 |
1967 | はなはなほ はるをもわくや ときしらぬ みのみものうき ころのなかめを | 伏見院 |
1968 | かなしさは わかまたしらぬ わかれにて こころもまとふ しののめのみち | 宗尊親王 |
1969 | おのつから こけのしたにも みるやとて こころをとめし はなををりつる | 祐任 |
1970 | けふみれは みやまのはなは さきにけり なけきそはるも かはらさりける | 全玄 |
1971 | つゆけさは きのふのままの なみたにて あきをかけたる そてのはるさめ | 伏見院 |
1972 | かきくれし あきのなみたの そのままに なほそてしをる けふのはるさめ | 覚助法親王 |
1973 | つゆきえむ いつのゆふへも たれかしらむ とふひとなしの よもきふのには | 実衡女 |
1974 | おもへかし さらてももろき そてのうへに つゆおきあまる あきのこころを | 隆博 |
1975 | まこととも おほえぬほとの はかなさは ゆめかとたにも とはれやはする | 光俊(葉室光親男) |
1976 | いまもなほ ゆめかとおもふ かなしさを たかまこととて おとろかすらむ | 宗成 |
1977 | つねならぬ うきよのさかの のへのつゆ きえにしあとを たつねてそとふ | 欣子内親王 |
1978 | ここのへに みしよのはるは おもひいつや かはらぬはなの いろにつけても | 実国 |
1979 | はるきても とはれさりける やまさとを はなさきなはと なにおもひけむ | 寂念 |
1980 | もろともに みしひともなき やまさとの はなさへうくて とはぬとをしれ | 仲正 |
1981 | ことししも あらぬかたにや したひまさる つらきわかれの はなとりのはる | 内侍(永福門院) |
1982 | はなのちり はるのくるらむ ゆくへたに しらぬなけきの もとそかなしき | 花園院 |
1983 | ゆめならて あふよもいまは しらつゆの おくとはわかれ ぬとはまたれて | 定家 |
1984 | むそちあまり よとせのふゆの なかきよに うきよのゆめを みはてつるかな | 為守 |
1985 | ひとのよは ひさしといふも ひとときの ゆめのうちにて さもほともなき | 為子(従二位) |
1986 | けふくれぬ あすありとても いくほとの あたなるよにそ うきもなくさむ | 右衛門督(永福門院) |
1987 | きくたひに よそのあはれと おもふこそ なきひとよりも はかなかりけれ | 慈快 |
1988 | ひこほしの あふてふあきは うたてわれ ひとにわかるる ときにそありける | 伏見院 |
1989 | わすられぬ なみたはおなし たもとにて はやななとせの あきもきにけり | 久良親王 |
1990 | あまのかは ほしあひのそらは かはらねと なれしくもゐの あきそこひしき | 備前(近衛院) |
1991 | すむとても たのみなきよと おもへとや くもかくれぬる ありあけのつき | 季経 |
1992 | あとしたふ かたみのひかす それたにも きのふのゆめに またうつりぬる | 為相 |
1993 | そのきはは たたゆめとのみ まとはれて さむるひかすに そふなこりかな | 頼氏(藤原頼広男) |
1994 | さくはなの はるをちきりし はかなさよ かせのこのはの ととまらぬよに | 為相 |
1995 | めにちかき ひとのあはれに おとろけは よのことわりそ さらにかなしき | 花園院 |
1996 | みしひとの きのふのけふり けふのくも たちもとまらぬ よにこそありけれ | 宗尊親王 |
1997 | のこりゐて おもふもかなし あはれなと もえしけふりに たちおくれけむ | 左京大夫(永陽門院) |
1998 | とほさかる なこりこそなほ かなしけれ うさはへたたる ひかすならねは | 為信 |
1999 | こひしさに しなはやとさへ おもふかな わたりかはにも あふせありやと | 長家 |
2000 | とほさかる ひかすにつけて かなしきは またもかへらぬ わかれなりけり | 範憲 |
2001 | うかりつる ふちのころもの かたみさへ わかるとなれは またそかなしき | 道意(西園寺実兼男) |
2002 | いかかせむ あとのあはれは とはすとも わかれしひとの ゆくへたつねよ | 寂然 |
2003 | なきひとを しのふおもひの なくさまは あとをもちたひ とひこそはせめ | 西行 |
2004 | あきかせの みにしむはかり かなしきは つまなきとこの ねさめなりけり | 成仲 |
2005 | おくつゆも ひとつはちすに むすへとや けふりもおなし のへにきゆらむ | 清空 |
2006 | かなしくも かかるうきめを みくまのの うらわのなみに みをしつめける | 右京大夫(建礼門院) |
2007 | おなしよと なほおもふこそ かなしけれ あるかあるにも あらぬこのよを | 右京大夫(建礼門院) |
2008 | さもこそは あらすなりぬる よにしあらめ みやこもたひの ここちさへする | 全性 |
2009 | わかれこし ひともこころや かよふらむ ゆめのたたちは いまもへたてす | 公賢 |
2010 | いかにしのひ いかにかなけく うしとみし ゆめはみとせの けふのなこりを | 隆教 |
2011 | さめかたき おなしつらさの ゆめなから みとせのけふも なほそおとろく | 邦長 |
2012 | これやさは かさねしそての うつりかを くゆるおもひの けふりなるらむ | 澄憲 |
2013 | はかなくて きえにしあきの なみたをも たまとそみかく はちすはのつゆ | 後宇多院 |
2014 | みかきなす ひかりもうれし はちすはの にこりにしまぬ つゆのしらたま | 公賢 |
2015 | ゆめにさへ たちもはなれす つゆきえし くさのかけより かよふおもかけ | 四条(安嘉門院) |
2016 | くやしくそ さらぬわかれに さきたちて しはしもひとに とほさかりぬる | 四条(安嘉門院) |
2017 | ますかかみ てにとりもちて みれとあかぬ きみにおくれて いけりともなし | 読人不知 |
2018 | わかために きよとおもひし ふちころも みにかへてこそ かなしかりけれ | 赤染衛門 |
2019 | わかために うすかりしかと すみそめの いろをはふかく あはれとそおもふ | 能宣 |
2020 | かへるへき ほととたのめし わかれこそ いまはかきりの たひにはありけれ | 赤染衛門 |
2021 | さやかなる つきもなみたに くもりつつ むかしみしよの ここちやはする | 五節(上東門院) |
2022 | きみにわか おくるるみちの かなしきは すくるつきひも はやきなりけり | 寂然/寂念 |
2023 | こをおもふ こころやゆきに まよふらむ やまのおくのみ ゆめにみえつつ | 俊成(藤原俊忠男) |
2024 | うちもねす あらしのうへの たひまくら みやこのゆめに わくるこころは | 定家 |
2025 | おもひやる こけのしたたに かなしきに ふかくもゆきの なほうつむかな | 頓阿 |
2026 | このもとを むかしのかけと たのめとも なみたのあめに ぬれぬまそなき | 兵衛(上西門院) |
2027 | やまさとの なきかけしたふ いけみつに むなしきふねそ さしてものうき | 後伏見院 |
2028 | きえつつき おくれぬあきの あはれしらは さきたつこけの したやつゆけき | 伏見院 |
2029 | おくれても かついつまてと みをそおもふ つらにわかるる あきのかりかね | 伏見院 |
2030 | こころとめし かたみのいろも あはれなり ひとはふりにし やとのもみちは | 伏見院 |
2031 | おもへたた つゆのあきより しをれきて しくれにかかる そてのなみたを | 伏見院 |
2032 | おもひやる おいのなみたの おちそひて つゆもしくれも ほすひまそなき | 基忠(鷹司兼平男) |
2033 | ふかくさの つゆにかさねて しをれそふ うきよのさかの あきそかなしき | 為子(従二位) |
2034 | あたしいろに こころはそめし やまかせに おつるもみちの ほともなきよに | 伏見院 |
2035 | おもひやれ ふかきなみたの ひとしほも いろにいてたる すみそめのそて | 慈道法親王 |
2036 | いろかはる そてのなみたの かきくらし よそもしくるる かみなつきかな | 尊円法親王 |
2037 | わかれにし そのちりちりの このもとに のこるひとはも あらしふくなり | 右衛門督(永福門院) |
2038 | うらみても いまはかたみの あきのそら なみたにくれし みかつきのかけ | 顕親門院 |
2039 | ここのめくり はるはむかしに かはりきて おもかけかすむ けふのゆふくれ | 高弁 |
2040 | まちかねて なけくとつけよ みなひとに いつをいつとて いそかさるらむ | 善光寺阿弥陀如来 |
2041 | いそけひと みたのみふねの かよふよに のりおくれなは いつかわたらむ | 聖徳太子 |
2042 | ふたらくの うみをわたれる ものなれは みるめもさらに をしからぬかな | 粉川観音 |
2043 | ちりまかふ はなのにほひを さきたてて ひかりをのりの むしろにそしく | 西行 |
2044 | めうほふの たたひとつのみ ありけれは またふたつなし またみつもなし | 源信 |
2045 | こころをは みつのくるまに かけしかと ひとつそのりの ためしにはひく | 永縁 |
2046 | おとろかて けふもむなしく くれぬなり あはれうきみの いりあひのかね | 慶政 |
2047 | としふれと ゆくへもしらぬ たらちねよ こはいかにして たつねあひけむ | 経盛 |
2048 | いそちまて まよひきにける はかなさよ たたかりそめの くさのいほりに | 尊氏 |
2049 | われそうき いそちあまりの としふとも めくりあふへき わかれならねは | 尊円法親王 |
2050 | のりのあめは あまねくそそく ものなれと うるふくさきは おのかしなしな | 道長 |
2051 | くさくさの くさきのたねと おもひしを うるほすあめは ひとつなりけり | 行成 |
2052 | くさもきも たねはひとつを いかなれは ふたはみつはに めくみそめけむ | 行尊 |
2053 | なにめてて まよひもそする をみなへし にほふやとをは よきてゆかなむ | 為明 |
2054 | このよにて いりぬとみえし つきなれと わしのやまには すむとこそきけ | 輔親 |
2055 | みなひとを わたさむとおもふ ともつなの なかくもかなや よとのかはふね | 隆教 |
2056 | つはめなく のきはのゆふひ かけきえて やなきにあをき にはのはるかせ | 花園院 |
2057 | ここにのみ ありとやはみる いつくにも たへなるこゑに のりをこそきけ | 赤染衛門 |
2058 | おりたちて たのむとなれは あすかかは ふちもせになる ものとこそきけ | 忠度 |
2059 | のりまもる ちかひをふかく たてつれは すゑのよまても あせしとそおもふ | 赤染衛門 |
2060 | のりのため わかみをかへは をくるまの うきよにめくる みちやたえなむ | 覚実 |
2061 | たれもみな あたらいろかを なかむらし きのふもおなし はなとりのはる | 花園院 |
2062 | かりのとふ たかねのくもの ひとなひき つきいりかかる やまのはのまつ | 花園院 |
2063 | ふるさとと さたむるかたの なきときは いつくにゆくも いへちなりけり | 夢窓 |
2064 | すみなれし やとをははなに うかれきて かへるさしらぬ はるのたひひと | 実澄 |
2065 | くちのこる のりのことのは ふくかせは はかなきこけの したまてそゆく | 忠良 |
2066 | すすめこし ゑひのまくらの はるのゆめ みしよはやかて うつつなりけり | 慶政 |
2067 | まとのほかに したたるあめを きくなへに かへにそむける よはのともしひ | 花園院 |
2068 | なかきよの やみのうつつに まよふかな ゆめをゆめとも しらぬこころに | 寛胤法親王 |
2069 | さむるをも まつたのみたに なからまし なかきねふりの うちときかすは | 覚懐 |
2070 | むらくもの たえまのかけは いそけとも ふくるはおそき あきのよのつき | 覚実 |
2071 | そのままに たえまをしるは まことある みくにつたはる ことはなりけり | 後宇多院 |
2072 | わかうくる みのりはつねの ことのはの およはぬうへに とけるなるへし | 法守法親王 |
2073 | たつたかは もみちはなかる みよしのの よしののやまに さくらはなさく | 花園院 |
2074 | みるやいかに やまのこのはは おちつきて みちにあたれる とらのまたらを | 為基(京極為兼猶子) |
2075 | よもすから こころのゆくへ たつぬれは きのふのそらに とふとりのあと | 仏国 |
2076 | いつるとも いるともつきを おもはねは こころにかかる やまのはもなし | 夢窓 |
2077 | さゆるよの そらたかくすむ つきよりも おきそふしもの いろはすさまし | 花園院 |
2078 | さきそむる やとのさくらの ひともとよ はるのけしきに あきそしらるる | 内侍(永福門院) |
2079 | うきよかな よしののはなに はるのかせ しくるるそらに ありあけのつき | 慈円 |
2080 | こころさし ふかくくみてし ひろさはの なかれはすゑも たえしとそおもふ | 後宇多院 |
2081 | むかしより わしのたかねに すむつきの いらぬにまよふ ひとそかなしき | 慈円 |
2082 | みなひとの こころのうちは わしのやま たかねのつきの すみかなりけり | 道玄 |
2083 | よをてらす ひかりをいかて かかけまし けなはけぬへき のりのともしひ | 花園院 |
2084 | いたつらに おいをまつにそ なりぬへき ことしもかくて またくらしつつ | 慶政 |
2085 | さりともな ひかりはのこる よなりけり そらゆくつきひ のりのともしひ | 慈円 |
2086 | いにしへの なかれのすゑを うつしてや よかはのすきの しるしをもみる | 為家 |
2087 | そのままに なかれのすゑを うつしても なほいにしへの あとそゆかしき | 良覚 |
2088 | ありなから きえぬとみえて かなしきは けふのたむけの はなのしらゆき | 公守女 |
2089 | しつみこし うきみはいつか うかふへき ちかひのふねの のりにあはすは | 示証 |
2090 | のりのにはに ちらすもみちは やまひめの そむるもふかき えとやなるらむ | 為子(従二位) |
2091 | のりのには そらにかくこそ きこえけれ くものあなたに はなやちるらむ | 慶政 |
2092 | あさまたき つゆけきはなを をるほとは たましくにはに たまそちりける | 俊成(藤原俊忠男) |
2093 | ことうらに くちてすてたる あまをふね わかかたにひく なみもありけり | 道平 |
2094 | わたつうみを みなかたふけて あらふとも わかみのうちを いかてきよめむ | 教長 |
2095 | ふりにける ゆきのみやまは あともなし たれふみわけて みちをしるらむ | 法源 |
2096 | しるへする ゆきのみやまの けふにあひて ふるきあはれの いろをそへぬる | 為兼 |
2097 | にしをおもふ こころもおなし ゆめなれと なかきねふりは さめぬへきかな | 如空 |
2098 | こころをは かねてにしにそ おくりぬる わかみをさそへ やまのはのつき | 親子(従三位源) |
2099 | にほへとも しるひともなき さくらはな たたひとりみて あはれとそおもふ | 慶政 |
2100 | ふかくそめし こころのにほひ すてかねぬ まとひのまへの いろとみなから | 伏見院 |
2101 | くもりなく みかけるたまの うてなには ちりもゐかたき ものにそありける | 片野尼 |
2102 | はむにやたいに をさめおきてし ほけきやうも ゆめとのよりそ うつつにはこし | 慈円 |
2103 | よのなかに ものおもふひとの あるといふは われをたのまぬ ひとにそありける | 鴨御祖明神 |
2104 | みかさやま くもゐはるかに みゆれとも しむによのつきは ここにすむかな | 春日明神 |
2105 | よのなかに ひとのあらそひ なかりせは いかにこころの うれしからまし | 春日明神 |
2106 | われかくて みかさのやまを うかれなは あめのしたには たれかすむへき | 春日明神 |
2107 | はもやまや をひえのすきの みやまゐは あらしもさむし とふひともなし | 日吉地主権現 |
2108 | うろよりも むろにいりぬる みちなれは これそほとけの みもとなるへき | 熊野神 |
2109 | もとよりも ちりにましはる かみなれは つきのさはりも なにかくるしき | 熊野神 |
2110 | かみちやま うちとのみやの みやはしら みはくちぬとも すゑをはたてよ | 後伏見院 |
2111 | うこきなき くにつまもりの みやはしら たてしちかひは きみかためかも | 実兼 |
2112 | よとみしも またたちかへる いすすかは なかれのすゑは かみのまにまに | 光厳院 |
2113 | やはらくる ひかりをみつの たまかきに ほかよりもすむ あきのよのつき | 公賢 |
2114 | かみかせに みたれしちりも をさまりぬ あまてらすひの あきらけきよは | 花園院 |
2115 | とこやみを てらすみかけの かはらぬは いまもかしこき つきよみのかみ | 後宇多院 |
2116 | すむつきも いくとせふりぬ いすすかは とこよのなみの きよきなかれに | 氏之 |
2117 | をしほゐを けふわかみつに くみそめて みあへたむくる はるはきにけり | 家行 |
2118 | よよをへて くむともつきし ひさかたの あめよりうつす をしほゐのみつ | 延誠 |
2119 | ふちなみを みもすそかはに せきいれて ももえのまつに かけよとそおもふ | 西行 |
2120 | ふちなみも みもすそかはの すゑなれは しつえもかけよ まつのももえに | 俊成(藤原俊忠男) |
2121 | ふしておもひ あふきてたのむ かみちやま ふかきめくみを つかへてそまつ | 房継 |
2122 | かたそきの ちきはうちとに かはれとも ちかひはおなし いせのかみかせ | 朝棟 |
2123 | ひさかたの あまのいはふね こきよせし かみよのうらや いまのみあれの | 遠久 |
2124 | きみかため みくにうつりて きよきかはの なかれにすめる かものみつかき | 祐光 |
2125 | かたをかの いはねのこけち ふみならし うこきなきよを なほいのるかな | 惟久 |
2126 | あふきても たのみそなるる いにしへの かせをのこせる すみよしのまつ | 為兼 |
2127 | わかきみを まもらぬかみし なけれとも ちよのためしは すみよしのまつ | 国夏 |
2128 | おもひそめし ひとよのまつの たねしあれは かみのみやゐも ちよやかさねむ | 道平 |
2129 | みかさやま そのうちひとの かすなれは さしはなたすや かみはみるらむ | 肥後(京極前関白家) |
2130 | そのかみを おもへはわれも みかさやま さしてたのみを かけさらめやも | 長通 |
2131 | かすならて あめのしたには ふりぬれと なほたのまるる みかさやまかな | 頼輔 |
2132 | ふりにける かみよもとほし をしほやま おなしみとりの みねのまつはら | 為氏 |
2133 | しつみぬる みはこかくれの いはしみつ さてもなかれの よにしたえすは | 後伏見院 |
2134 | たのむまこと ふたつなけれは いはしみつ ひとつなかれに すむかとそおもふ | 光厳院 |
2135 | いのること わたくしにては いはしみつ にこりゆくよを すませとそおもふ | 光厳院 |
2136 | いままては まよはてつきを みかさやま あふくひかりよ すゑもへたつな | 公賢 |
2137 | わかこころ くもらねはこそ みかさやま おもひしままに つきはみるらめ | 祐春 |
2138 | かはらしな あとはむかしに なりぬとも かみのたむけの よよのことのは | 祐植 |
2139 | はるのひも ひかりことにや てらすらむ たまくしのはに かくるしらゆふ | 俊成(藤原俊忠男) |
2140 | なくさやま とるやさかきの つきもせす かみわさしけき ひのくまのみや | 俊文 |
2141 | あきらけき たまくしのはの しろたへに したつえたまて ぬさかけてけり | 慈勝 |
2142 | うかやふき なきさにあとを ととめしそ かみよをうけし はしめなりける | 光房 |
2143 | かすかやま おなしあとにと いのりこし みちをはかみも わすれさりけり | 祐臣 |
2144 | よをいのる こころをかみや うけぬらし おいらくまてに われそつかふる | 教久 |
2145 | ひさかたの あまつひよしの かみまつり つきのかつらも ひかりそへけり | 尊円 |
2146 | うまれきて つかふることも かみかきに ちきりあるみと なほたのむかな | 成国(祝部) |
2147 | よよをへて あふくひよしの かみかきに こころのぬさを かけぬひそなき | 為相 |
2148 | ここのへに あまてるかみの かけうけて うつすかかみは いまもくもらし | 公賢 |
2149 | あまてらす みかけをうつす ますかかみ つたはれるよの くもりあらめや | 公蔭 |
2150 | かすかすに みにそふかけと てらしみよ みかくかかみに うつすこころを | 有長 |
2151 | あまくたる あらひとかみの しるしあれは よにたかきなは あらはれにけり | 師直 |
2152 | やまさくら ちりにひかりを やはらけて このよにさける はなにやあるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
2153 | ひのもとは かみのみくにと ききしより いますかことく たのむとをしれ | 慈円 |
2154 | あまつかみ くにつやしろと わかれても まことをうくる みちはかはらし | 実兼 |
2155 | あまつかみ くにつやしろを いはひてそ わかあしはらの くにはをさまる | 後宇多院 |
2156 | かきりなき めくみをよもに しきしまの やまとしまねは いまさかゆなり | 為定(御子左二条為道男) |
2157 | まことにや まつはとかへり はなさくと きみにそひとの とはむとすらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
2158 | おほよとの はまのまさこを きみかよの かすにとれとや なみもよすらむ | 俊頼(源経信男) |
2159 | きみかよの ほとはさためし ちとせとも いふはおろかに なりぬへけれは | 行宗 |
2160 | をののえを くたすやまひと かへりきて みるともきみか みよはかはらし | 頼政 |
2161 | みかさやま みねたちのほる あさひかけ そらにくもらぬ よろつよのはる | 公相 |
2162 | いはといてし ひかけはいまも くもらねは かしこきみよを さそてらすらむ | 実雄 |
2163 | わかきみの やまとしまねを いつるひは もろこしまても あふかさらめや | 師継 |
2164 | あめのした たれかはもれむ ひのことく やふしもわかぬ きみかめくみに | 宗秀(大江時秀男) |
2165 | ちよふへき かめのをやまの あきのつき くもらぬかけは きみかためかも | 俊定(藤原経俊男) |
2166 | くもりなく てらしのそめる きみかよは つきひとともに つきしとそおもふ | 実泰 |
2167 | くもりなく たかまのはらに いてしつき やほよろつよの かかみなりけり | 実夏 |
2168 | いのりこし くもゐのつきも あきらけき みよのひかりに みをてらすかな | 慈道法親王 |
2169 | あたらしく あくるとしをは ももとせの はるのはしめと うくひすそなく | 貫之 |
2170 | ときしもあれ はるのはしめに おひたてる まつはやちよの いろもそへなむ | 能宣 |
2171 | ゆきふれは はなさきにけり ひめこまつ ふたはなからや ちよをへぬらむ | 顕昭 |
2172 | はるはると とほきにほひは うめのはな かせにそへてそ つたふへらなる | 能宣 |
2173 | いろかへぬ まつもなになり よろつよに ときはににほふ はなもさけれは | 長家 |
2174 | あかてけふ かへるとおもへと はなさくら をるへきはるや つきせさりける | 中務(伊勢女) |
2175 | ちとせふる ためしをいまに はしめおきて はなのみゆきの はるそひさしき | 為氏 |
2176 | きみかよに あふもかひある いとさくら としのをなかく をりてかささむ | 実雄 |
2177 | さくらはな ちとせのはるの をりにあひて きみかときはの いろならはなむ | 通忠 |
2178 | けふよりは ちらてしにほへ さくらはな きみかちとせの はるをちきりて | 基平(近衛兼経男) |
2179 | きみかため うつしうゑける はななれは ちよのみゆきの はるもかきらし | 実雄 |
2180 | さくらはな あまたちとせの かさしとや けふのみゆきの はるにあふらむ | 少将内侍(後深草院) |
2181 | ゆくすゑを まつのみとりに ちきりおきて こたかくかかれ やとのふちなみ | 道教 |
2182 | ちよふへき くもゐのまつに みゆるかな ひとしほまさる はるのめくみは | 隆博 |
2183 | おほはらや かみよのまつの ふかみとり ちよもといのる すゑのはるけさ | 基忠(鷹司兼平男) |
2184 | もろひとの いはふことのは みるをりそ おいきにはなの さくここちする | 成仲 |
2185 | うつしううる やとのあるしも このはなも ともにおいせぬ あきそかさねむ | 右京大夫(建礼門院) |
2186 | かくしあらは ちとせのかすも そひぬらむ ふたたひみつる はこさきのまつ | 康資王母 |
2187 | かみちやま ももえのまつも さらにまた いくちよきみに ちきりおくらむ | 小宰相(土御門院) |
2188 | きみかよの しるしとこれを みやかはの きしのすきむら いろもかはらす | 良経(九条兼実男) |
2189 | ここのへの みかきにしける くれたけの おひそふかすは ちよのかすかも | 為定(御子左二条為道男) |
2190 | ももしきや おひそふたけの かすことに かはらぬちよの いろそみえける | 尊氏 |
2191 | はるあきの みやゐいろそふ ときにあひて よろつよちきる たけとこそみれ | 為子(従二位) |
2192 | あしたつは ちとせまてとや ちきるらむ かきらぬものを きみかよはひは | 永範 |
2193 | むかしいま ひろへるたまも かすかすに ひかりをそふる わかのうらなみ | 公相 |
2194 | ももとせに ととせおよはぬ こけのそて けふのこころや つつみかねぬる | 良経(九条兼実男) |
2195 | きみかため またななそちを たもちても あかすやいのる かみにつかへむ | 成茂 |
2196 | よをてらす ひたかのそまの みやきもり しけきみかけに いまかあふらし | 光俊(葉室光親男) |
2197 | みなかみに さためしすゑは たえもせす みもすそかはの ひとつなかれに | 花園院 |
2198 | あしはらや みたれしくにの かせをかへて たみのくさはも いまなひくなり | 花園院 |
2199 | くちなしの いろになかるる かはみつも とたひすむへき きみかみよかな | 公賢 |
2200 | みことのり みたれぬみちの さはりなく とよあしはらの くにそをさまる | 定忠 |
2201 | あひかたき みよにあふみの かかみやま くもりなしとは ひともみるらむ | 秀能(藤原秀宗男) |
2202 | みつきもの たえすそなふる あつまちの せたのなかはし おともととろに | 兼盛 |
2203 | みつきもの はこふふなせの かけはしに こまのひつめの おとそたえせぬ | 匡房 |
2204 | きみかよは しつのかとたに かるいねの たかくらやまに みちぬへきかな | 匡房 |
2205 | くもりなき きみかみよには あかねさす ひおきのさとも にきはひにけり | 匡房 |
2206 | こまつはら したゆくみつの すすしきに ちとせのかすを むすひつるかな | 匡房 |
2207 | ふくかせは えたもならさて よろつよと よはふこゑのみ おとたかのやま | 俊成(藤原俊忠男) |
2208 | くむひとの よはひもさこそ なかつきや なからのかはの きくのしたみつ | 隆博 |
2209 | きみかよの なかきためしに なかさはの いけのあやめも けふそひかるる | 俊光 |
2210 | すすしさを ますゐのしみつ むすふてに まつかよひくる よろつよのあき | 隆博 |
2211 | いはとあけし やたのかかみの やまかつら かけてうつしき あきらけきよは | 隆教 |