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「新古今和歌集」一覧

1978件


1みよしのは やまもかすみて しらゆきの ふりにしさとに はるはきにけり良経(九条兼実男)
2ほのほのと はるこそそらに きにけらし あまのかくやま かすみたなひく後鳥羽院
3やまふかみ はるともしらぬ まつのとに たえたえかかる ゆきのたまみつ式子内親王
4かきくらし なほふるさとの ゆきのうちに あとこそみえね はるはきにけり宮内卿(後鳥羽院)
5けふといへは もろこしまても ゆくはるを みやこにのみと おもひけるかな俊成(藤原俊忠男)
6はるといへは かすみにけりな きのふまて なみまにみえし あはちしまやま俊恵
7いはまとちし こほりもけさは とけそめて こけのしたみつ みちもとむらむ西行
8かせませに ゆきはふりつつ しかすかに かすみたなひき はるはきにけり読人不知
9ときはいま はるになりぬと みゆきふる とほきやまへに かすみたなひく読人不知
10かすかのの したもえわたる くさのうへに つれなくみゆる はるのあはゆき国信
11あすからは わかなつまむと しめしのに きのふもけふも ゆきはふりつつ赤人
12かすかのの くさはみとりに なりにけり わかなつまむと たれかしめけむ忠見
13わかなつむ そてとそみゆる かすかのの とふひののへの ゆきのむらきえ教長
14ゆきてみぬ ひともしのへと はるののの かたみにつめる わかななりけり貫之
15さはにおふる わかなならねと いたつらに としをつむにも そてはぬれけり俊成(藤原俊忠男)
16ささなみや しかのはままつ ふりにけり たかよにひける ねのひなるらむ俊成(藤原俊忠男)
17たにかはの うちいつるなみも こゑたてつ うくひすさそへ はるのやまかせ家隆
18うくひすの なけともいまた ふるゆきに すきのはしろき あふさかのやま後鳥羽院
19はるきては はなともみよと かたをかの まつのうははに あはゆきそふる仲実
20まきもくの ひはらのいまた くもらねは こまつかはらに あはゆきそふる家持
21いまさらに ゆきふらめやも かけろふの もゆるはるひと なりにしものを読人不知
22いつれをか はなともわかむ ふるさとの かすかのはらに またきえぬゆき躬恒
23そらはなほ かすみもやらす かせさえて ゆきけにくもる はるのよのつき良経(九条兼実男)
24やまふかみ なほかけさむし はるのつき そらかきくもり ゆきはふりつつ越前(嘉陽門院)
25みしまえや しももまたひぬ あしのはに つのくむほとの はるかせそふく通光
26ゆふつくよ しほみちくらし なにはえの あしのわかはに こゆるしらなみ秀能(藤原秀宗男)
27ふりつみし たかねのみゆき とけにけり きよたきかはの みつのしらなみ西行
28うめかえに ものうきほとに ちるゆきを はなともいはし はるのなたてに重之
29あつさゆみ はるやまちかく いへゐして たえすききつる うくひすのこゑ赤人
30うめかえに なきてうつろふ うくひすの はねしろたへに あはゆきそふる読人不知
31うくひすの なみたのつらら うちとけて ふるすなからや はるをしるらむ惟明親王
32いはそそく たるみのうへの さわらひの もえいつるはるに なりにけるかな志貴皇子
33あまのはら ふしのけふりの はるのいろの かすみになひく あけほののそら慈円
34あさかすみ ふかくみゆるや けふりたつ むろのやしまの わたりなるらむ清輔
35なこのうみの かすみのまより なかむれは いりひをあらふ おきつしらなみ実定
36みわたせは やまもとかすむ みなせかは ゆふへはあきと なにおもひけむ後鳥羽院
37かすみたつ すゑのまつやま ほのほのと なみにはなるる よこくものそら家隆
38はるのよの ゆめのうきはし とたえして みねにわかるる よこくものそら定家
39しるらめや かすみのそらを なかめつつ はなもにほはぬ はるをなけくと中務
40おほそらは うめのにほひに かすみつつ くもりもはてぬ はるのよのつき定家
41をられけり くれなゐにほふ うめのはな けさしろたへに ゆきはふりつつ頼通
42あるしをは たれともわかす はるはたた かきねのうめを たつねてそみる敦家
43こころあらは とはましものを うめかかに たかさとよりか にほひきつらむ俊頼(源経信男)
44うめのはな にほひをうつす そてのうへに のきもるつきの かけそあらそふ定家
45うめかかに むかしをとへは はるのつき こたへぬかけそ そてにうつれる家隆
46うめのはな たかそてふれし にほひそと はるやむかしの つきにとははや通具
47うめのはな あかぬいろかも むかしにて おなしかたみの はるのよのつき俊成女
48みぬひとに よそへてみつる うめのはな ちりなむのちの なくさめそなき定頼
49はることに こころをしむる はなのえに たかなほさりの そてかふれつる大弐三位
50うめちらす かせもこえてや ふきつらむ かをれるゆきの そてにみたるる康資王母
51とめこかし うめさかりなる わかやとを うときもひとは をりにこそよれ西行
52なかめつる けふはむかしに なりぬとも のきはのうめは われをわするな式子内親王
53ちりぬれは にほひはかりを うめのはな ありとやそてに はるかせのふく有家(藤原重家男)
54ひとりのみ なかめてちりぬ うめのはな しるはかりなる ひとはとひこす高倉(八条院)
55てりもせす くもりもはてぬ はるのよの おほろつきよに しくものそなき千里
56あさみとり はなもひとつに かすみつつ おほろにみゆる はるのよのつき孝標女
57なにはかた かすまぬなみも かすみけり うつるもくもる おほろつきよに具親
58いまはとて たのむのかりも うちわひぬ おほろつきよの あけほののそら寂蓮
59きくひとそ なみたはおつる かへるかり なきてゆくなる あけほののそら俊成(藤原俊忠男)
60ふるさとに かへるかりかね さよふけて くもちにまよふ こえきこゆなり読人不知
61わするなよ たのむのさはを たつかりも いなはのかせの あきのゆふくれ良経(九条兼実男)
62かへるかり いまはのこころ ありあけに つきとはなとの なこそをしけれ良経(九条兼実男)
63しもまよふ そらにしをれし かりかねの かへるつはさに はるさめそふる定家
64つくつくと はるのなかめの さひしきは しのふにつたふ のきのたまみつ行慶
65みつのおもに あやおりみたる はるさめや やまのみとりを なへてそむらむ伊勢
66ときはなる やまのいはねに むすこけの そめぬみとりに はるさめそふる良経(九条兼実男)
67あめふれは をたのますらを いとまあれや なはしろみつを そらにまかせて勝命
68はるさめの ふりそめしより あをやきの いとのみとりそ いろまさりける躬恒
69うちなひき はるはきにけり あをやきの かけふむみちそ ひとのやすらふ高遠
70みよしのの おほかはのへの ふるやなき かけこそみえね はるめきにけり輔仁親王
71あらしふく きしのやなきの いなむしろ おりしくなみに まかせてそみる崇徳院
72たかせさす むつたのよとの やなきはら みとりもふかく かすむはるかな公経(藤原実宗男)
73はるかせの かすみふきとく たえまより みたれてなひく あをやきのいと大輔(殷富門院)
74しらくもの たえまになひく あをやきの かつらきやまに はるかせそふく雅経
75あをやきの いとにたまぬく しらつゆの しらすいくよの はるかへぬらむ有家(藤原重家男)
76うすくこき のへのみとりの わかくさに あとまてみゆる ゆきのむらきえ宮内卿(後鳥羽院)
77あらをたの こそのふるあとの ふるよもき いまははるへと ひこはえにけり好忠
78やかすとも くさはもえなむ かすかのを たたはるのひに まかせたらなむ忠見
79よしのやま さくらかえたに ゆきちりて はなおそけなる としにもあるかな西行
80さくらはな さかはまつみむと おもふまに ひかすへにけり はるのやまさと隆時
81わかこころ はるのやまへに あくかれて なかなかしひを けふもくらしつ貫之
82おもふとち そこともしらす ゆきくれぬ はなのやとかせ のへのうくひす家隆
83いまさくら さきぬとみえて うすくもり はるにかすめる よのけしきかな式子内親王
84ふしておもひ おきてなかむる はるさめに はなのしたひも いかにとくらむ読人不知
85ゆかむひと こむひとしのへ はるかすみ たつたのやまの はつさくらはな家持
86よしのやま こそのしをりの みちかへて またみぬかたの はなをたつねむ西行
87かつらきや たかまのさくら さきにけり たつたのおくに かかるしらくも寂蓮
88いそのかみ ふるきみやこを きてみれは むかしかさしし はなさきにけり読人不知
89はるにのみ としはあらなむ あらをたを かへすかへすも はなをみるへく公忠(源国紀男)
90しらくもの たつたのやまの やへさくら いつれをはなと わきてをりけむ道命
91しらくもの はるはかさねて たつたやま をくらのみねに はなにほふらし定家
92よしのやま はなやさかりに にほふらむ ふるさとさえぬ みねのしらゆき家衡
93いはねふみ かさなるやまを わけすてて はなもいくへの あとのしらくも雅経
94たつねきて はなにくらせる このまより まつとしもなき やまのはのつき雅経
95ちりちらす ひともたつねぬ ふるさとの つゆけきはなに はるかせそふく慈円
96いそのかみ ふるののさくら たれうゑて はるはわすれぬ かたみなるらむ通具
97はなそみる みちのしはくさ ふみわけて よしののみやの はるのあけほの季能
98あさひかけ にほへるやまの さくらはな つれなくきえぬ ゆきかとそみる有家(藤原重家男)
99さくらさく とほやまとりの したりをの なかなかしひも あかぬいろかな後鳥羽院
100いくとせの はるにこころを つくしきぬ あはれとおもへ みよしののはな俊成(藤原俊忠男)
101はかなくて すきにしかたを かそふれは はなにものおもふ はるそへにける式子内親王
102しらくもの たなひくやまの やへさくら いつれをはなと ゆきてをらまし師実
103はなのいろに あまきるかすみ たちまよひ そらさへにほふ やまさくらかな長家
104ももしきの おほみやひとは いとまあれや さくらかさして けふもくらしつ赤人
105はなにあかぬ なけきはいつも せしかとも けふのこよひに にるときはなし業平
106いもやすく ねられさりけり はるのよは はなのちるのみ ゆめにみえつつ躬恒
107やまさくら ちりてみゆきに まかひなは いつれかはなと はるにとはなむ伊勢
108わかやとの ものなりなから さくらはな ちるをはえこそ ととめさりけれ貫之
109かすみたつ はるのやまへに さくらはな あかすちるとや うくひすのなく読人不知
110はるさめは いたくなふりそ さくらはな またみぬひとに ちらまくもをし赤人
111はなのかに ころもはふかく なりにけり このしたかけの かせのまにまに貫之
112かせかよふ ねさめのそての はなのかに かをるまくらの はるのよのゆめ俊成女
113このほとは しるもしらぬも たまほこの ゆきかふそては はなのかそする家隆
114またやみむ かたののみのの さくらかり はなのゆきちる はるのあけほの俊成(藤原俊忠男)
115ちりちらす おほつかなきは はるかすみ たなひくやまの さくらなりけり成仲
116やまさとの はるのゆふくれ きてみれは いりあひのかねに はなそちりける能因
117さくらちる はるのやまへは うかりけり よをのかれにと こしかひもなく恵慶
118やまさくら はなのしたかせ ふきにけり このもとことの ゆきのむらきえ康資王母
119はるさめの そほふるそらの をやみせす おつるなみたに はなそちりける重之
120かりかねの かへるはかせや さそふらむ すきゆくみねの はなものこらぬ重之
121ときしもあれ たのむのかりの わかれさへ はなちるころの みよしののさと具親
122やまふかみ すきのむらたち みえぬまて をのへのかせに はなのちるかな経信
123このしたの こけのみとりも みえぬまて やへちりしける やまさくらかな師頼
124ふもとまて をのへのさくら ちりこすは たなひくくもと みてやすきまし顕輔
125はなちれは とふひとまれに なりはてて いとひしかせの おとのみそする範兼
126なかむとて はなにもいたく なれぬれは ちるわかれこそ かなしかりけれ西行
127やまさとの にはよりほかの みちもかな はなちりぬやと ひともこそとへ越前(嘉陽門院)
128はなさそふ ひらのやまかせ ふきにけり こきゆくふねの あとみゆるまて宮内卿(後鳥羽院)
129あふさかや こすゑのはなを ふくからに あらしそかすむ せきのすきむら宮内卿(後鳥羽院)
130やまたかみ みねのあらしに ちるはなの つきにあまきる あけかたのそら讃岐(二条院)
131やまたかみ いはねのさくら ちるときは あまのはころも なつるとそみる崇徳院
132ちりまかふ はなのよそめは よしのやま あらしにさわく みねのしらくも頼輔
133みよしのの たかねのさくら ちりにけり あらしもしろき はるのあけほの後鳥羽院
134さくらいろの にはのはるかせ あともなし とははそひとの ゆきとたにみむ定家
135けふたにも にはをさかりと うつるはな きえすはありとも ゆきかともみよ後鳥羽院
136さそはれぬ ひとのためとや のこりけむ あすよりさきの はなのしらゆき良経(九条兼実男)
137やへにほふ のきはのさくら うつろひぬ かせよりさきに とふひともかな式子内親王
138つらきかな うつろふまてに やへさくら とへともいはて すくるこころは惟明親王
139さくらはな ゆめかうつつか しらくもの たえてつねなき みねのはるかせ家隆
140うらみすや うきよをはなの いとひつつ さそふかせあらはと おもひけるをは俊成女
141はかなさを ほかにもいはし さくらはな さきてはちりぬ あはれよのなか実定
142なかむへき のこりのはるを かそふれは はなとともにも ちるなみたかな俊恵
143はなもまた わかれむはるは おもひいてよ さきちるたひの こころつくしを大輔(殷富門院)
144ちるはなの わすれかたみの みねのくも そをたにのこせ はるのやまかせ良平
145はなさそふ なこりをくもに ふきとめて しはしはにほへ はるのやまかせ雅経
146をしめとも ちりはてぬれは さくらはな いまはこすゑを なかむはかりそ後白河院
147よしのやま はなのふるさと あとたえて むなしきえたに はるかせそふく良経(九条兼実男)
148ふるさとの はなのさかりは すきぬれと おもかけさらぬ はるのそらかな経信
149はなはちり そのいろとなく なかむれは むなしきそらに はるさめそふる式子内親王
150たかたにか あすはのこさむ やまさくら こほれてにほへ けふのかたみに元輔(清原春光男)
151からひとの ふねをうかへて あそふてふ けふそわかせこ はなかつらせよ家持
152はななかす せをもみるへき みかつきの われていりぬる やまのをちかた是則
153たつねつる はなもわかみも おとろへて のちのはるとも えこそちきらね良暹
154おもひたつ とりはふるすも たのむらむ なれぬるはなの あとのゆふくれ寂蓮
155ちりにけり あはれうらみの たれなれは はなのあととふ はるのやまかせ寂蓮
156はるふかく たつねいるさの やまのはに ほのみしくもの いろそのこれる公経(藤原実宗男)
157はつせやま うつろふはなに はるくれて まかひしくもそ みねにのこれる良経(九条兼実男)
158よしのかは きしのやまふき さきにけり みねのさくらは ちりはてぬらむ家隆
159こまとめて なほみつかはむ やまふきの はなのつゆそふ ゐてのたまかは俊成(藤原俊忠男)
160いはねこす きよたきかはの はやけれは なみをりかくる きしのやまふき国信
161かはつなく かみなひかはに かけみえて いまかさくらむ やまふきのはな厚見王
162あしひきの やまふきのはな ちりにけり ゐてのかはつは いまやなくらむ興風
163かくてこそ みまくほしけれ よろつよを かけてにほへる ふちなみのはな醍醐天皇
164まとゐして みれともあかぬ ふちなみの たたまくをしき けふにもあるかな村上天皇
165くれぬとは おもふものから ふちのはな さけるやとには はるそひさしき貫之
166みとりなる まつにかかれる ふちなれと おのかころとそ はなはさきける貫之
167ちりのこる はなもやあると うちむれて みやまかくれを たつねてしかな道信
168このもとの すみかもいまは あれぬへし はるしくれなは たれかとひこむ行尊
169くれてゆく はるのみなとは しらねとも かすみにおつる うちのしはふね寂蓮
170こぬまても はなゆゑひとの またれつる はるもくれぬる みやまへのさと伊綱(藤原家基男)
171いそのかみ ふるのわさたを うちかへし うらみかねたる はるのくれかな俊成女
172まてといふに とまらぬものと しりなから しひてそをしき はるのわかれは読人不知
173しはのとを さすやひかけの なこりなく はるくれかかる やまのはのくも宮内卿(後鳥羽院)
174あすよりは しかのはなその まれにたに たれかはとはむ はるのふるさと良経(九条兼実男)
175はるすきて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかくやま持統天皇
176をしめとも とまらぬはるも あるものを いはぬにきたる なつころもかな素性
177ちりはてて はなのかけなき このもとに たつことやすき なつころもかな慈円
178なつころも きていくかにか なりぬらむ のこれるはなは けふもちりつつ道済
179をりふしも うつれはかへつ よのなかの ひとのこころの はなそめのそて俊成女
180うのはなの むらむらさける かきねをは くもまのつきの かけかとそみる白河院
181うのはなの さきぬるときは しろたへの なみもてゆへる かきねとそみる重家
182わすれめや あふひをくさに ひきむすひ かりねののへの つゆのあけほの式子内親王
183いかなれは そのかみやまの あふひくさ としはふれとも ふたはなるらむ小侍従(太皇太后宮)
184のへはいまた あさかのぬまに かるくさの かつみるままに しけるころかな雅経
185さくらあさの をふのしたくさ しけれたた あかてわかれし はなのななれは安芸(待賢門院)
186はなちりし にはのこのはも しけりあひて あまてるつきの かけそまれなる好忠
187かりにくと うらみしひとの たえにしを くさはにつけて しのふころかな好忠
188なつくさは しけりにけりな たまほこの みちゆくひとも むすふはかりに元真
189なつくさは しけりにけれと ほとときす なとわかやとに ひとこゑもせぬ醍醐天皇
190なくこゑを えやはしのはぬ ほとときす はつうのはなの かけにかくれて人麿
191ほとときす こゑまつほとは かたをかの もりのしつくに たちやぬれまし紫式部
192ほとときす みやまいつなる はつこゑを いつれのやとの たれかきくらむ弁乳母
193さつきやま うのはなつきよ ほとときす きけともあかす またなかむかも読人不知
194おのかつま こひつつなくや さつきやみ かみなひやまの やまほとときす読人不知
195ほとときす ひとこゑなきて いぬるよは いかてかひとの いをやすくぬる家持
196ほとときす なきつついつる あしひきの やまとなてしこ さきにけらしも能宣
197ふたこゑと なきつときかは ほとときす ころもかたしき うたたねはせむ経信
198ほとときす またうちとけぬ しのひねは こぬひとをまつ われのみそきく白河院
199ききてしも なほそねられぬ ほとときす まちしよころの こころならひに有仁
200うのはなの かきねならねと ほとときす つきのかつらの かけになくなり匡房
201むかしおもふ くさのいほりの よるのあめに なみたなそへそ やまほとときす俊成(藤原俊忠男)
202あめそそく はなたちはなに かせすきて やまほとときす くもになくなり俊成(藤原俊忠男)
203きかてたた ねなましものを ほとときす なかなかなりや よはのひとこゑ相模
204たかさとに とひもやくると ほとときす こころのかきり まちそわひにし紫式部
205よをかさね まちかねやまの ほとときす くもゐのよそに ひとこゑそきく内侍(周防)
206ふたこゑと きかすはいてし ほとときす いくよあかしの とまりなりとも公通
207ほとときす なほひとこゑは おもひいてよ おいそのもりの よはのむかしを範光
208ひとこゑは おもひそあへぬ ほとときす たそかれときの くものまよひに高倉(八条院)
209ありあけの つれなくみえし つきはいてぬ やまほとときす まつよなからに良経(九条兼実男)
210わかこころ いかにせよとて ほとときす くもまのつきの かけになくらむ俊成(藤原俊忠男)
211ほとときす なきているさの やまのはは つきゆゑよりも うらめしきかな頼実(藤原経宗男)
212ありあけの つきはまたぬに いてぬれと なほやまふかき ほとときすかな親宗(平時信男)
213すきにけり しのたのもりの ほとときす たえぬしつくを そてにのこして保季
214いかにせむ こぬよあまたの ほとときす またしとおもへは むらさめのそら家隆
215こゑはして くもちにむせふ ほとときす なみたやそそく よひのむらさめ式子内親王
216ほとときす なほうとまれぬ こころかな なかなくさとの よそのゆふくれ公経(藤原実宗男)
217きかすとも ここをせにせむ ほとときす やまたのはらの すきのむらたち西行
218ほとときす ふかきみねより いてにけり とやまのすそに こゑのおちくる西行
219をささふく しつのまろやの かりのとを あけかたになく ほとときすかな実定
220うちしめり あやめそかをる ほとときす なくやさつきの あめのゆふくれ良経(九条兼実男)
221けふはまた あやめのねさへ かけそへて みたれそまさる そてのしらたま俊成(藤原俊忠男)
222あかなくに ちりにしはなの いろいろは のこりにけりな きみかたもとに経信
223なへてよの うきになかるる あやめくさ けふまてかかる ねはいかかみる小少将(上東門院)
224なにことと あやめはわかて けふもなほ たもとにあまる ねこそたえせね紫式部
225さなへとる やまたのかけひ もりにけり ひくしめなはに つゆそこほるる経信
226をやまたに ひくしめなはの うちはへて くちやしぬらむ さみたれのころ良経(九条兼実男)
227いかはかり たこのもすそも そほつらむ くもまもみえぬ ころのさみたれ伊勢大輔
228みしまえの いりえのまこも あめふれは いととしをれて かるひともなし経信
229まこもかる よとのさはみつ ふかけれと そこまてつきの かけはすみけり匡房
230たまかしは しけりにけりな さみたれに はもりのかみの しめはふるまて基俊
231さみたれは おふのかはらの まこもくさ からてやなみの したにくちなむ兼実
232たまほこの みちゆくひとの ことつても たえてほとふる さみたれのそら定家
233さみたれの くものたえまを なかめつつ まとよりにしに つきをまつかな氏良
234あふちさく そとものこかけ つゆおちて さみたれはるる かせわたるなり忠良
235さみたれの つきはつれなき みやまより ひとりもいつる ほとときすかな定家
236ほとときす くもゐのよそに すきぬなり はれぬおもひの さみたれのころ後鳥羽院
237さみたれの くもまのつきの はれゆくを しはしまちける ほとときすかな讃岐(二条院)
238たれかまた はなたちはなに おもひいてむ われもむかしの ひととなりなは俊成(藤原俊忠男)
239ゆくすゑを たれしのへとて ゆふかせに ちきりかおかむ やとのたちはな通具
240かへりこぬ むかしをいまと おもひねの ゆめのまくらに にほふたちはな式子内親王
241たちはなの はなちるのきの しのふくさ むかしをかけて つゆそこほるる忠良
242さつきやみ みしかきよはの うたたねに はなたちはなの そてにすすしき慈円
243たつぬへき ひとはのきはの ふるさとに それかとかをる にはのたちはな読人不知
244ほとときす はなたちはなの かをとめて なくはむかしの ひとやこひしき読人不知
245たちはなの にほふあたりの うたたねは ゆめもむかしの そてのかそする俊成女
246ことしより はなさきそむる たちはなの いかてむかしの かににほふらむ家隆
247ゆふくれは いつれのくもの なこりとて はなたちはなに かせのふくらむ定家
248ほとときす さつきみなつき わきかねて やすらふこゑそ そらにきこゆる国信
249にはのおもは つきもらぬまて なりにけり こすゑになつの かけしけりつつ白河院
250わかやとの そともにたてる ならのはの しけみにすすむ なつはきにけり恵慶
251うかひふね あはれとそみる もののふの やそうちかはの ゆふやみのそら慈円
252うかひふね たかせさしこす ほとなれや むすほほれゆく かかりひのかけ寂蓮
253おほゐかは かかりさしゆく うかひふね いくせになつの よをあかすらむ俊成(藤原俊忠男)
254ひさかたの なかなるかはの うかひふね いかにちきりて やみをまつらむ定家
255いさりひの むかしのひかり ほのみえて あしやのさとに とふほたるかな良経(九条兼実男)
256まとちかき たけのはすさふ かせのおとに いととみしかき うたたねのゆめ式子内親王
257まとちかき いささむらたけ かせふけは あきにおとろく なつのよのゆめ公継
258むすふてに かけみたれゆく やまのゐの あかてもつきの かたふきにける慈円
259きよみかた つきはつれなき あまのとを またてもしらむ なみのうへかな通光
260かさねても すすしかりけり なつころも うすきたもとに やとるつきかけ良経(九条兼実男)
261すすしさは あきやかへりて はつせかは ふるかはのへの すきのしたかけ有家(藤原重家男)
262みちのへに しみつなかるる やなきかけ しはしとてこそ たちとまりつれ西行
263よられつる のもせのくさの かけろひて すすしくくもる ゆふたちのそら西行
264おのつから すすしくもあるか なつころも ひもゆふくれの あめのなこりに清輔
265つゆすかる にはのたまささ うちなひき ひとむらすきぬ ゆふたちのくも公経(藤原実宗男)
266とほちには ゆふたちすらし ひさかたの あまのかくやま くもかくれゆく俊頼(源経信男)
267にはのおもは またかわかぬに ゆふたちの そらさりけなく すめるつきかな頼政
268ゆふたちの くももとまらぬ なつのひの かたふくやまに ひくらしのこゑ式子内親王
269ゆふつくひ さすやいほりの しはのとに さひしくもあるか ひくらしのこゑ忠良
270あきちかき けしきのもりに なくせみの なみたのつゆや したはそむらむ良経(九条兼実男)
271なくせみの こゑもすすしき ゆふくれに あきをかけたる もりのしたつゆ讃岐(二条院)
272いつちとか よるはほたるの のほるらむ ゆくかたしらぬ くさのまくらに忠見
273ほたるとふ のさはにしける あしのねの よなよなしたに かよふあきかせ良経(九条兼実男)
274ひさきおふる かたやまかけに しのひつつ ふきけるものを あきのゆふかせ俊恵
275しらつゆの たまもてゆへる ませのうちに ひかりさへそふ とこなつのはな高倉院
276しらつゆの なさけおきける ことのはや ほのほのみえし ゆふかほのはな頼実(藤原経宗男)
277たそかれの のきはのをきに ともすれは ほにいてぬあきそ したにこととふ式子内親王
278くもまよふ ゆふへにあきを こめなから かせもほにいてぬ をきのうへかな慈円
279やまさとの みねのあまくも とたえして ゆふへすすしき まきのしたつゆ後鳥羽院
280いはゐくむ あたりのをささ たまこえて かつかつむすふ あきのゆふつゆ兼実
281かたえさす をふのうらなし はつあきに なりもならすも かせそみにしむ宮内卿(後鳥羽院)
282なつころも かたへすすしく なりぬなり よやふけぬらむ ゆきあひのそら慈円
283なつはつる あふきとあきの しらつゆと いつれかまつは おかむとすらむ忠岑
284みそきする かはのせみれは からころも ひもゆふくれに なみそたちける貫之
285かみなひの みむろのやまの くすかつら うらふきかへす あきはきにけり家持
286いつしかと をきのはむけの かたよりに そらやあきとそ かせもきこゆる崇徳院
287このねぬる よのまにあきは きにけらし あさけのかせの きのふにもにぬ季通(藤原宗通男)
288いつもきく ふもとのさとと おもへとも きのふにかはる やまおろしのかせ実定
289きのふたに とはむとおもひし つのくにの いくたのもりに あきはきにけり家隆
290ふくかせの いろこそみえね たかさこの をのへのまつに あきはきにけり秀能(藤原秀宗男)
291ふしみやま まつのかけより みわたせは あくるたのもに あきかせそふく俊成(藤原俊忠男)
292あけぬるか ころもてさむし すかはらや ふしみのさとの あきのはつかせ家隆
293ふかくさの つゆのよすかを ちきりにて さとをはかれす あきはきにけり良経(九条兼実男)
294あはれまた いかにしのはむ そてのつゆ のはらのかせに あきはきにけり通具
295しきたへの まくらのうへに すきぬなり つゆをたつぬる あきのはつかせ具親
296みつくきの をかのくすはも いろつきて けさうらかなし あきのはつかせ顕昭
297あきはたた こころよりおく ゆふつゆを そてのほかとも おもひけるかな越前(嘉陽門院)
298きのふまて よそにしのひし したをきの すゑはのつゆに あきかせそふく雅経
299おしなへて ものをおもはぬ ひとにさへ こころをつくる あきのはつかせ西行
300あはれいかに くさはのつゆの こほるらむ あきかせたちぬ みやきののはら西行
301みしふつき うゑしやまたに ひたはへて またそてぬらす あきはきにけり俊成(藤原俊忠男)
302あさきりや たつたのやまの さとならて あききにけりと たれかしらまし忠通
303ゆふくれは をきふくかせの おとまさる いまはたいかに ねさめせられむ具平親王
304ゆふくれは をきのはむけを ふくかせに ことそともなく なみたおちけり実定
305をきのはも ちきりありてや あきかせの おとつれそむる つまとなりけむ俊成(藤原俊忠男)
306あききぬと まつふくかせも しらせけり かならすをきの うははならねと権大夫(七条院)
307ひをへつつ おとこそまされ いつみなる しのたのもりの ちえのあきかせ経衡
308うたたねの あさけのそてに かはるなり ならすあふきの あきのはつかせ式子内親王
309てもたゆく ならすあふきの おきところ わするはかりに あきかせそふく相模
310あきかせは ふきむすへとも しらつゆの みたれておかぬ くさのはそなき大弐三位
311あさほらけ をきのうははの つゆみれは ややはたさむし あきのはつかせ好忠
312ふきむすふ かせはむかしの あきなから ありしにもにぬ そてのつゆかな小町
313おほそらを われもなかめて ひこほしの つままつよさへ ひとりかもねむ貫之
314このゆふへ ふりつるあめは ひこほしの とわたるふねの かいのしつくか赤人
315としをへて すむへきやとの いけみつは ほしあひのかけも おもなれやせむ長家
316そてひちて わかてにむすふ みつのおもに あまつほしあひの そらをみるかな長能
317くもまより ほしあひのそらを みわたせは しつこころなき あまのかはなみ輔親
318たなはたの あまのはころも うちかさね ぬるよすすしき あきかせそふく高遠
319たなはたの ころものつまは こころして ふきなかへしそ あきのはつかせ小弁
320たなはたの とわたるふねの かちのはに いくあきかきつ つゆのたまつさ俊成(藤原俊忠男)
321なかむれは ころもてすすし ひさかたの あまのかはらの あきのゆふくれ式子内親王
322いかはかり みにしみぬらむ たなはたの つままつよひの あまのかはかせ兼実
323ほしあひの ゆふへすすしき あまのかは もみちのはしを わたるあきかせ公経(藤原実宗男)
324たなはたの あふせたえせぬ あまのかは いかなるあきか わたりそめけむ堀河(待賢門院)
325わくらはに あまのかはなみ よるなから あくるそらには まかせすもかな斎宮女御
326いととしく おもひけぬへし たなはたの わかれのそてに おけるしらつゆ能宣
327たなはたは いまやわかるる あまのかは かはきりたちて ちとりなくなり貫之
328かはみつに しかのしからみ かけてけり うきてなかれぬ あきはきのはな匡房
329かりころも われとはすらし つゆしけき のはらのはきの はなにまかせて頼政
330あきはきを をらてはすきし つきくさの はなすりころも つゆにぬるとも永縁
331はきかはな まそてにかけて たかまとの をのへのみやに ひれふるやたれ顕昭
332おくつゆも しつこころなく あきかせに みたれてさける まののはきはら紀伊(祐子内親王家)
333あきはきの さきちるのへの ゆふつゆに ぬれつつきませ よはふけぬとも人麿
334さをしかの あさたつのへの あきはきに たまとみるまて おけるしらつゆ家持
335あきののを わけゆくつゆに うつりつつ わかころもては はなのかそする躬恒
336たれをかも まつちのやまの をみなへし あきとちきれる ひとそあるらし小町
337をみなへし のへのふるさと おもひいてて やとりしむしの こゑやこひしき元真
338ゆふされは たまちるのへの をみなへし まくらさためぬ あきかせそふく良平
339ふちはかま ぬしはたれとも しらつゆの こほれてにほふ のへのあきかせ公猷
340うすきりの まかきのはなの あさしめり あきはゆふへと たれかいひけむ清輔
341いとかくや そてはしをれし のへにいてて むかしもあきの はなはみしかと俊成(藤原俊忠男)
342はなみにと ひとやりならぬ のへにきて こころのかきり つくしつるかな経信
343おきてみむと おもひしほとに かれにけり つゆよりけなる あさかほのはな好忠
344やまかつの かきほにさける あさかほは しののめならて あふよしもなし貫之
345うらかるる あさちかはらの かるかやの みたれてものを おもふころかな是則
346さをしかの いるののすすき はつをはな いつしかいもか たまくらにせむ人麿
347をくらやま ふもとののへの はなすすき ほのかにみゆる あきのゆふくれ読人不知
348ほのかにも かせはふかなむ はなすすき むすほほれつつ つゆにぬるとも斎宮女御
349はなすすき またつゆふかし ほにいてては なかめしとおもふ あきのさかりを式子内親王
350のへことに おとつれわたる あきかせを あたにもなひく はなすすきかな六条
351あけぬとて のへよりやまに いるしかの あとふきおくる はきのしたかせ通光
352みにとまる おもひををきの うははにて このころかなし ゆふくれのそら慈円
353みのほとを おもひつつくる ゆふくれの をきのうははに かせわたるなり行宗
354あきはたた ものをこそおもへ つゆかかる をきのうへふく かせにつけても重之女
355あきかせの ややはたさむく ふくなへに をきのうははの おとそかなしき基俊
356をきのはに ふけはあらしの あきなるを まちけるよはの さをしかのこゑ良経(九条兼実男)
357おしなへて おもひしことの かすかすに なほいろまさる あきのゆふくれ良経(九条兼実男)
358くれかかる むなしきそらの あきをみて おほえすたまる そてのつゆかな良経(九条兼実男)
359ものおもはて かかるつゆやは そてにおく なかめてけりな あきのゆふくれ良経(九条兼実男)
360みやまちや いつよりあきの いろならむ みさりしくもの ゆふくれのそら慈円
361さひしさは そのいろとしも なかりけり まきたつやまの あきのゆふくれ寂蓮
362こころなき みにもあはれは しられけり しきたつさはの あきのゆふくれ西行
363みわたせは はなももみちも なかりけり うらのとまやの あきのゆふくれ定家
364たへてやは おもひありとも いかかせむ むくらのやとの あきのゆふくれ雅経
365おもふこと さしてそれとは なきものを あきのゆふへを こころにそとふ宮内卿(後鳥羽院)
366あきかせの いたりいたらぬ そてはあらし たたわれからの つゆのゆふくれ長明
367おほつかな あきはいかなる ゆゑのあれは すすろにものの かなしかるらむ西行
368それなから むかしにもあらぬ あきかせに いととなかめを しつのをたまき式子内親王
369ひくらしの なくゆふくれそ うかりける いつもつきせぬ おもひなれとも長能
370あきくれは ときはのやまの まつかせも うつるはかりに みにそしみける和泉式部
371あきかせの よもにふきくる おとはやま なにのくさきか のとけかるへき好忠
372あかつきの つゆはなみたも ととまらて うらむるかせの こゑそのこれる相模
373たかまとの のちのしのはら すゑさわき そそやこからし けふふきぬなり基俊
374ふかくさの さとのつきかけ さひしさも すみこしままの のへのあきかせ通具
375おほあらきの もりのこのまを もりかねて ひとたのめなる あきのよのつき俊成女
376ありあけの つきまつやとの そてのうへに ひとたのめなる よひのいなつま家隆
377かせわたる あさちかすゑの つゆにたに やとりもはてぬ よひのいなつま有家(藤原重家男)
378むさしのや ゆけともあきの はてそなき いかなるかせか すゑにふくらむ通光
379いつまてか なみたくもらて つきはみし あきまちえても あきそこひしき慈円
380なかめわひぬ あきよりほかの やともかな のにもやまにも つきやすむらむ式子内親王
381つきかけの はつあきかせと ふけゆけは こころつくしに ものをこそおもへ円融院
382あしひきの やまのあなたに すむひとは またてやあきの つきをみるらむ三条院
383しきしまや たかまとやまの くもまより ひかりさしそふ ゆみはりのつき堀河院
384ひとよりも こころのかきり なかめつる つきはたれとも わかしものゆゑ頼宗
385あやなくも くもらぬよひを いとふかな しのふのさとの あきのよのつき為仲(橘義通男)
386かせふけは たまちるはきの したつゆに はかなくやとる のへのつきかな忠通
387こよひたれ すすふくかせを みにしめて よしののたけに つきをみるらむ頼政
388つきみれは おもひそあへぬ やまたかみ いつれのとしの ゆきにかあるらむ重家
389にほのうみや つきのひかりの うつろへは なみのはなにも あきはみえけり家隆
390ふけゆかは けふりもあらし しほかまの うらみなはてそ あきのよのつき慈円
391ことわりの あきにはあへぬ なみたかな つきのかつらも かはるひかりに俊成女
392なかめつつ おもふもさひし ひさかたの つきのみやこの あけかたのそら家隆
393ふるさとの もとあらのこはき さきしより よなよなにはの つきそうつろふ良経(九条兼実男)
394ときしもあれ ふるさとひとは おともせて みやまのつきに あきかせそふく良経(九条兼実男)
395ふかからぬ とやまのいほの ねさめたに さそなこのまの つきはさひしき良経(九条兼実男)
396つきはなほ もらぬこのまも すみよしの まつをつくして あきかせそふく寂蓮
397なかむれは ちちにものおもふ つきにまた わかみひとつの みねのまつかせ長明
398あしひきの やまちのこけの つゆのうへに ねさめよふかき つきをみるかな秀能(藤原秀宗男)
399こころある をしまのあまの たもとかな つきやとれとは ぬれぬものから宮内卿(後鳥羽院)
400わすれしな なにはのあきの よはのそら ことうらにすむ つきはみるとも丹後(宜秋門院)
401まつしまや しほくむあまの あきのそて つきはものおもふ ならひのみかは長明
402こととはむ のしまかさきの あまころも なみとつきとに いかかしをるる大納言(七条院)
403あきのよの つきやをしまの あまのはら あけかたちかき おきのつりふね家隆
404うきみには なかむるかひも なかりけり こころにくもる あきのよのつき慈円
405いつくにか こよひのつきの くもるへき をくらのやまも なをやかふらむ千里
406こころこそ あくかれにけれ あきのよの よふかきつきを ひとりみしより道済
407かはらしな しるもしらぬも あきのよの つきまつほとの こころはかりは小少将(上東門院)
408たのめたる ひとはなけれと あきのよは つきみてぬへき ここちこそせね和泉式部
409みるひとの そてをそしほる あきのよは つきにいかなる かけかそふらむ範永
410みにそへる かけとこそみれ あきのつき そてにうつらぬ をりしなけれは相模
411つきかけの すみわたるかな あまのはら くもふきはらふ よはのあらしに経信
412たつたやま よはにあらしの まつふけは くもにはうとき みねのつきかけ通光
413あきかせに たなひくくもの たえまより もれいつるつきの かけのさやけさ顕輔
414やまのはに くものよこきる よひのまは いててもつきそ なほまたれける道因
415なかめつつ おもふもぬるる たもとかな いくよかはみむ あきのよのつき大輔(殷富門院)
416よひのまに さてもねぬへき つきならは やまのはちかき ものはおもはし式子内親王
417ふくるまて なかむれはこそ かなしけれ おもひもいれし あきのよのつき式子内親王
418くもはみな はらひはてたる あきかせを まつにのこして つきをみるかな良経(九条兼実男)
419つきたにも なくさめかたき あきのよの こころもしらぬ まつのかせかな良経(九条兼実男)
420さむしろや まつよのあきの かせふけて つきをかたしく うちのはしひめ定家
421あきのよの なかきかひこそ なかりけれ まつにふけぬる ありあけのつき忠経
422ゆくすゑは そらもひとつの むさしのに くさのはらより いつるつきかけ良経(九条兼実男)
423つきをなほ まつらむものか むらさめの はれゆくくもの すゑのさとひと宮内卿(後鳥羽院)
424あきのよは やとかるつきも つゆなから そてにふきこす をきのうはかせ通具
425あきのつき しのにやとかる かけたけて をささかはらに つゆふけにけり家長(源時長男)
426かせわたる やまたのいほを もるつきや ほなみにむすふ こほりなるらむ頼実(藤原経宗男)
427かりのくる ふしみのをたに ゆめさめて ねぬよのいほに つきをみるかな慈円
428いなはふく かせにまかせて すむいほは つきそまことに もりあかしける俊成女
429あくかれて ねぬよのちりの つもるまて つきにはらはぬ とこのさむしろ俊成女
430あきのたの かりねのとこの いなむしろ つきやとれとも しけるつゆかな定雅(大中臣雅光男)
431あきのたに いほさすしつの とまをあらみ つきとともにや もりあかすらむ顕輔
432あきのいろは まかきにうとく なりゆけと たまくらなるる ねやのつきかけ式子内親王
433あきのつゆや たもとにいたく むすふらむ なかきよあかす やとるつきかな後鳥羽院
434さらにまた くれをたのめと あけにけり つきはつれなき あきのよのそら通光
435おほかたに あきのねさめの つゆけくは またたかそてに ありあけのつき讃岐(二条院)
436はらひかね さこそはつゆの しけからめ やとるかつきの そてのせはきに雅経
437したもみち かつちるやまの ゆふしくれ ぬれてやひとり しかのなくらむ家隆
438やまおろしに しかのねたかく きこゆなり をのへのつきに さよやふけぬる実房
439のわきせし をののくさふし あれはてて みやまにふかき さをしかのこゑ寂蓮
440あらしふく まくすかはらに なくしかは うらみてのみや つまをこふらむ俊恵
441つまこふる しかのたちとを たつぬれは さやまかすそに あきかせそふく匡房
442みやまへの まつのこすゑを わたるなり あらしにやとす さをしかのこゑ惟明親王
443われならぬ ひともあはれや まさるらむ しかなくやまの あきのゆふくれ通親
444たくへくる まつのあらしや たゆむらむ をのへにかへる さをしかのこゑ良経(九条兼実男)
445なくしかの こゑにめさめて しのふかな みはてぬゆめの あきのおもひを慈円
446よもすから つまとふしかの なくなへに こはきかはらの つゆそこほるる俊忠
447ねさめして ひさしくなりぬ あきのよは あけやしぬらむ しかそなくなる道済
448をやまたの いほちかくなく しかのねに おとろかされて おとろかすかな西行
449やまさとの いなはのかせに ねさめして よふかくしかの こゑをきくかな師忠(源師房男)
450ひとりねや いととさひしき さをしかの あさふすをのの くすのうらかせ顕綱
451たつたやま こすゑまはらに なるままに ふかくもしかの そよくなるかな俊恵
452すきてゆく あきのかたみに さをしかの おのかなくねも をしくやあるらむ長家
453わきてなと いほもるそての しをるらむ いなはにかきる あきのかせかは慈円
454あきたもる かりいほつくり わかをれは ころもてさむし つゆそおきける読人不知
455あきくれは あさけのかせの てをさむみ やまたのひたを まかせてそきく匡房
456ほとときす なくさみたれに うゑしたを かりかねさむみ あきそくれぬる為政(善滋保章男)
457いまよりは あきかせさむく なりぬへし いかてかひとり なかきよをねむ家持
458あきされは かりのはかせに しもふりて さむきよなよな しくれさへふる人麿
459さをしかの つまとふやまの をかへなる わさたはからし しもはおくとも人麿
460かりてほす やまたのいねは そてひちて うゑしさなへと みえすもあるかな貫之
461くさはには たまとみえつつ わひひとの そてのなみたの あきのしらつゆ道真
462わかやとの をはなかすゑに しらつゆの おきしひよりそ あきかせもふく家持
463あきといへは ちきりおきてや むすふらむ あさちかはらの けさのしらつゆ恵慶
464あきされは おくしらつゆに わかやとの あさちかうはは いろつきにけり人麿
465おほつかな のにもやまにも しらつゆの なにことをかは おもひおくらむ村上天皇
466つゆしけみ のへをわけつつ からころも ぬれてそかへる はなのしつくに頼宗
467にはのおもに しけるよもきに ことよせて こころのままに おけるつゆかな基俊
468あきののの くさはおしなひ おくつゆに ぬれてやひとの たつねゆくらむ長実
469ものおもふ そてよりつゆや ならひけむ あきかせふけは たへぬものとは寂蓮
470つゆはそてに ものおもふころは さそなおく かならすあきの ならひならねと後鳥羽院
471のはらより つゆのゆかりを たつねきて わかころもてに あきかせそふく後鳥羽院
472きりきりす よさむにあきの なるままに よわるかこゑの とほさかりゆく西行
473むしのねも なかきよあかぬ ふるさとに なほおもひそふ まつかせそふく家隆
474あともなき にはのあさちに むすほほれ つゆのそこなる まつむしのこゑ式子内親王
475あきかせは みにしむはかり ふきにけり いまやうつらむ いもかさころも輔尹
476ころもうつ おとはまくらに すかはらや ふしみのゆめを いくよのこしつ慈円
477ころもうつ ねやまのいほの しはしはも しらぬゆめちに むすふたまくら公経(藤原実宗男)
478さとはあれて つきやあらぬと うらみても たれあさちふに ころもうつらむ良経(九条兼実男)
479まとろまて なかめよとての すさひかな あさのさころも つきにうつこゑ宮内卿(後鳥羽院)
480あきとたに わすれむとおもふ つきかけを さもあやにくに うつころもかな定家
481ふるさとに ころもうつとは ゆくかりや たひのそらにも なきてつくらむ経信
482かりなきて ふくかせさむみ からころも きみまちかてに うたぬよそなき貫之
483みよしのの やまのあきかせ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり雅経
484ちたひうつ きぬたのおとに ゆめさめて ものおもふそての つゆそくたくる式子内親王
485ふけにけり やまのはちかく つきさえて とをちのさとに ころもうつこゑ式子内親王
486あきはつる さよふけかたの つきみれは そてものこらす つゆそおきける道信
487ひとりぬる やまとりのをの したりをに しもおきまよふ とこのつきかけ定家
488ひとめみし のへのけしきは うらかれて つゆのよすかに やとるつきかな寂蓮
489あきのよは ころもさむしろ かさねても つきのひかりに しくものそなき経信
490あきのよは はやなかつきに なりにけり ことわりなりや ねさめせらるる花山院
491むらさめの つゆもまたひぬ まきのはに きりたちのほる あきのゆふくれ寂蓮
492さひしさは みやまのあきの あさくもり きりにしをるる まきのしたつゆ後鳥羽院
493あけほのや かはせのなみの たかせふね くたすかひとの そてのあききり通光
494ふもとをは うちのかはきり たちこめて くもゐにみゆる あさひやまかな公実
495やまさとに きりのまかきの へたてすは をちかたひとの そてもみてまし好忠
496なくかりの ねをのみそきく をくらやま きりたちはるる ときしなけれは深養父
497かきほなる をきのはそよき あきかせの ふくなるなへに かりそなくなる人麿
498あきかせに やまとひこゆる かりかねの いやとほさかり くもかくれつつ人麿
499はつかりの はかせすすしく なるなへに たれかたひねの ころもかへさぬ躬恒
500かりかねは かせにきほひて すくれとも わかまつひとの ことつてもなし読人不知
501よこくもの かせにわかるる しののめに やまとひこゆる はつかりのこゑ西行
502しらくもを つはさにかけて ゆくかりの かとたのおもの ともしたふなり西行
503おほえやま かたふくつきの かけさえて とはたのおもに おつるかりかね慈円
504むらくもや かりのはかせに はれぬらむ こゑきくそらに すめるつきかけ朝恵
505ふきまよふ くもゐをわたる はつかりの つはさにならす よものあきかせ俊成女
506あきかせの そてにふきまく みねのくもを つはさにかけて かりもなくなり家隆
507しもをまつ まかきのきくの よひのまに おきまよふいろは やまのはのつき宮内卿(後鳥羽院)
508ここのへに うつろひぬとも きくのはな もとのまかきを おもひわするな有仁室
509いまよりは またさくはなも なきものを いたくなおきそ きくのうへのつゆ定頼
510あきかせに しをるるのへの はなよりも むしのねいたく かれにけるかな具平親王
511ねさめする そてさへさむく あきのよの あらしふくなり まつむしのこゑ嘉言
512あきをへて あはれもつゆも ふかくさの さととふものは うつらなりけり慈円
513いりひさす ふもとのをはな うちなひき たかあきかせに うつらなくらむ通光
514あたにちる つゆのまくらに ふしわひて うつらなくなり とこのやまかせ俊成女
515とふひとも あらしふきそふ あきはきて このはにうつむ やとのみちしは俊成女
516いろかはる つゆをはそてに おきまよひ うらかれてゆく のへのあきかせ俊成女
517あきふけぬ なけやしもよの きりきりす ややかけさむし よもきふのつき後鳥羽院
518きりきりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ良経(九条兼実男)
519ねさめする なかつきのよの とこさむみ けさふくかせに しもやおくらむ公継
520あきふかき あはちのしまの ありあけに かたふくつきを おくるうらかせ慈円
521なかつきも いくありあけに なりぬらむ あさちのつきの いととさひゆく慈円
522かささきの くものかけはし あきくれて よはにはしもや さえわたるらむ寂蓮
523いつのまに もみちしぬらむ やまさくら きのふかはなの ちるををしみし具平親王
524うすきりの たちまふやまの もみちはは さやかならねと それとみえけり高倉院
525かみなひの みむろのこすゑ いかならむ なへてのやまも しくれするころ高倉(八条院)
526すすかかは ふかきこのはに ひかすへて やまたのはらの しくれをそきく後鳥羽院
527こころとや もみちはすらむ たつたやま まつはしくれに ぬれぬものかは俊成(藤原俊忠男)
528おもふこと なくてやみまし もみちはを あらしのやまの ふもとならすは輔尹
529いりひさす さほのやまへの ははそはら くもらぬあめと このはふりつつ好忠
530たつたやま あらしやみねに よわるらむ わたらぬみつも にしきたえけり宮内卿(後鳥羽院)
531ははそはら しつくもいろや かはるらむ もりのしたくさ あきふけにけり良経(九条兼実男)
532ときわかぬ なみさへいろに いつみかは ははそのもりに あらしふくらし定家
533ふるさとは ちるもみちはに うつもれて のきのしのふに あきかせそふく俊頼(源経信男)
534きりのはも ふみわけかたく なりにけり かならすひとを まつとなけれと式子内親王
535ひとはこす かせにこのはは ちりはてて よなよなむしは こゑよわるなり好忠
536もみちはの いろにまかせて ときはきも かせにうつろふ あきのやまかな公継
537つゆしくれ もるやまかけの したもみち ぬるともをらむ あきのかたみに家隆
538まつにはふ まさきのかつら ちりにけり とやまのあきは かせすさふらむ西行
539うつらなく かたのにたてる はしもみち ちらぬはかりに あきかせそふく親隆
540ちりかかる もみちのいろは ふかけれと わたれはにこる やまかはのみつ讃岐(二条院)
541あすかかは もみちはなかる かつらきの やまのあきかせ ふきそしくらし人麿
542あすかかは せせになみよる くれなゐや かつらきやまの こからしのかせ長方
543もみちはを さこそあらしの はらふらめ このやまもとも あめとふるなり公経(藤原実宗男)
544たつたひめ いまはのころの あきかせに しくれをいそく ひとのそてかな良経(九条兼実男)
545ゆくあきの かたみなるへき もみちはも あすはしくれと ふりやまかはむ兼宗
546うちむれて ちるもみちはを たつぬれは やまちよりこそ あきはゆきけれ公任
547なつくさの かりそめにとて こしやとも なにはのうらに あきそくれぬる能因
548かくしつつ くれぬるあきと おいぬれと しかすかになほ ものそかなしき能因
549みにかへて いささはあきを をしみみむ さらてももろき つゆのいのちを守覚法親王
550なへてよの をしさにそへて をしむかな あきよりのちの あきのかきりを頼実(藤原経宗男)
551おきあかす あきのわかれの そてのつゆ しもこそむすへ ふゆやきぬらむ俊成(藤原俊忠男)
552かみなつき かせにもみちの ちるときは そこはかとなく ものそかなしき高光
553なとりかは やなせのなみそ さわくなる もみちやいとと よりてせくらむ重之
554いかたしよ まてこととはむ みなかみは いかはかりふく やまのあらしそ資宗
555ちりかかる もみちなかれぬ おほゐかは いつれゐせきの みつのしからみ経信
556たかせふね しふくはかりに もみちはの なかれてくたる おほゐかはかな家経(藤原広業男)
557ひくるれは あふひともなし まさきちる みねのあらしの おとはかりして俊頼(源経信男)
558おのつから おとするものは にはのおもに このはふりしく たにのゆふかせ清輔
559このはちる やとにかたしく そてのいろを ありともしらて ゆくあらしかな慈円
560このはちる しくれやまかふ わかそてに もろきなみたの いろとみるまて通具
561うつりゆく くもにあらしの こゑすなり ちるかまさきの かつらきのやま雅経
562はつしくれ しのふのやまの もみちはを あらしふけとは そめすやありけむ大納言(七条院)
563しくれつつ そてもほしあへす あしひきの やまのこのはに あらしふくころ下野(後鳥羽院)
564やまさとの かせすさましき ゆふくれに このはみたれて ものそかなしき秀能(藤原秀宗男)
565ふゆのきて やまもあらはに このはふり のこるまつさへ みねにさひしき成茂
566からにしき あきのかたみや たつたやま ちりあへぬえたに あらしふくなり宮内卿(後鳥羽院)
567しくれかと きけはこのはの ふるものを それともぬるる わかたもとかな資隆
568ときしもあれ ふゆははもりの かみなつき まはらになりぬ もりのかしはき慶算
569いつのまに そらのけしきの かはるらむ はけしきけさの こからしのかせ国基
570つきをまつ たかねのくもは はれにけり こころあるへき はつしくれかな西行
571かみなつき ききのこのはは ちりはてて にはにそかせの おとはきこゆる覚忠
572しはのとに いりひのかけは さしなから いかにしくるる やまへなるらむ清輔
573くもはれて のちもしくるる しはのとや やまかせはらふ まつのしたつゆ隆信
574かみなつき しくれふるらし さほやまの まさきのかつら いろまさりゆく読人不知
575こからしの おとにしくれを ききわかて もみちにぬるる たもととそみる具平親王
576しくれふる おとはすれとも くれたけの なとよとともに いろもかはらぬ兼輔
577しくれのあめ そめかねてけり やましろの ときはのもりの まきのしたはは能因
578ふゆをあさみ またきしくれを おもひしを たえさりけりな おいのなみたも元輔(清原春光男)
579まはらなる しはのいほりに たひねして しくれにぬるる さよころもかな後白河院
580やよしくれ ものおもふそての なかりせは このはののちに なにをそめまし慈円
581ふかみとり あらそひかねて いかならむ まなくしくれの ふるのかみすき後鳥羽院
582しくれのあめ まなくしふれは まきのはも あらそひかねて いろつきにけり人麿
583よのなかに なほもふるかな しくれつつ くもまのつきの いてやとおもへは和泉式部
584をりこそあれ なかめにかかる うきくもの そてもひとつに うちしくれつつ讃岐(二条院)
585あきしのや とやまのさとや しくるらむ いこまのたけに くものかかれる西行
586はれくもり しくれはさため なきものを ふりはてぬるは わかみなりけり道因
587いまはまた ちらてもまかふ しくれかな ひとりふりゆく にはのまつかせ具親
588みよしのの やまかきくもり ゆきふれは ふもとのさとは うちしくれつつ俊恵
589まきのやに しくれのおとの かはるかな もみちやふかく ちりつもるらむ実房
590よにふるは くるしきものを まきのやに やすくもすくる はつしくれかな讃岐(二条院)
591ほのほのと ありあけのつきの つきかけに もみちふきおろす やまおろしのかせ信明
592もみちはを なにをしみけむ このまより もりくるつきは こよひこそみれ具平親王
593ふきはらふ あらしののちの たかねより このはくもらて つきやいつらむ丹後(宜秋門院)
594しもこほる そてにもかけは のこりけり つゆよりなれし ありあけのつき通具
595なかめつつ いくたひそてに くもるらむ しくれにふくる ありあけのつき家隆
596さためなく しくるるそらの むらくもに いくたひおなし つきをまつらむ泰光(源師光男)
597いまよりは このはかくれも なけれとも しくれにのこる むらくものつき具親
598はれくもる かけをみやこに さきたてて しくるとつくる やまのはのつき具親
599たえたえに さとわくつきの ひかりかな しくれをかくる よはのむらくも寂蓮
600いまはとて ねなましものを しくれつる そらともみえす すめるつきかな良暹
601つゆしもの よはにおきゐて ふゆのよの つきみるほとに そてはこほりぬ好忠
602もみちはは おのかそめたる いろそかし よそけにおける けさのしもかな慈円
603をくらやま ふもとのさとに このはちれは こすゑにはるる つきをみるかな西行
604あきのいろを はらひはててや ひさかたの つきのかつらに こからしのかせ雅経
605かせさむみ このははれゆく よなよなに のこるくまなき にはのつきかけ式子内親王
606わかかとの かりたのねやに ふすしきの とこあらはなる ふゆのよのつき大輔(殷富門院)
607ふゆかれの もりのくちはの しものうへに おちたるつきの かけのさむけさ清輔
608さえわひて さむるまくらに かけみれは しもふかきよの ありあけのつき俊成女
609しもむすふ そてのかたしき うちとけて ねぬよのつきの かけそさむけき通具
610かけとめし つゆのやとりを おもひいてて しもにあととふ あさちふのつき雅経
611かたしきの そてをやしもに かさぬらむ つきによかるる うちのはしひめ幸清
612なつかりの をきのふるえは かれにけり むれゐしとりは そらにやあるらむ重之
613さよふけて こゑさへさむき あしたつは いくへのしもか おきまさるらむ道信
614ふゆのよの なかきをおくる そてぬれぬ あかつきかたの よものあらしに後鳥羽院
615ささのはは みやまもさやに うちそよき こほれるしもを ふくあらしかな良経(九条兼実男)
616きみこすは ひとりやねなむ ささのはの みやまもそよに さやくしもよを清輔
617しもかれは そこともみえぬ くさのはら たれにとはまし あきのなこりを俊成女
618しもさゆる やまたのくろの むらすすき かるひとなしに のこるころかな慈円
619くさのうへに ここらたまゐし しらつゆを したはのしもと むすふふゆかな好忠
620かささきの わたせるはしに おくしもの しろきをみれは よそふけにける家持
621しくれつつ かれゆくのへの はななれは しものまかきに にほふいろかな醍醐天皇
622きくのはな たをりてはみし はつしもの おきなからこそ いろまさりけれ兼輔
623かけさへに いまはときくの うつろふは なみのそこにも しもやおくらむ是則
624のへみれは をはなかもとの おもひくさ かれゆくふゆに なりそしにける和泉式部
625つのくにの なにはのはるは ゆめなれや あしのかれはに かせわたるなり西行
626ふゆふかく なりにけらしな なにはえの あをはましらぬ あしのむらたち成通
627さひしさに たへたるひとの またもあれな いほりならへむ ふゆのやまさと西行
628あつまちの みちのふゆくさ しけりあひて あとたにみえぬ わすれみつかな康資王母
629むかしおもふ さよのねさめの とこさえて なみたもこほる そてのうへかな守覚法親王
630たちぬるる やまのしつくも おとたえて まきのしたはに たるひしにけり守覚法親王
631かつこほり かつはくたくる やまかはの いはまにむすふ あかつきのこゑ俊成(藤原俊忠男)
632きえかへり いはまにまよふ みつのあわの しはしやとかる うすこほりかな良経(九条兼実男)
633まくらにも そてにもなみた つららゐて むすはぬゆめを とふあらしかな良経(九条兼実男)
634みなかみや たえたえこほる いはまより きよたきかはに のこるしらなみ良経(九条兼実男)
635かたしきの そてのこほりも むすほほれ とけてねぬよの ゆめそみしかき良経(九条兼実男)
636はしひめの かたしきころも さむしろに まつよむなしき うちのあけほの後鳥羽院
637あしろきに いさよふなみの おとふけて ひとりやねぬる うちのはしひめ慈円
638みるままに ふゆはきにけり かものゐる いりえのみきは うすこほりつつ式子内親王
639しかのうらや とほさかりゆく なみまより こほりていつる ありあけのつき家隆
640ひとりみる いけのこほりに すむつきの やかてそてにも うつりぬるかな俊成(藤原俊忠男)
641うはたまの よのふけゆけは ひさきおふる きよきかはらに ちとりなくなり赤人
642ゆくさきは さよふけぬれと ちとりなく さほのかはらは すきうかりけり伊勢大輔
643ゆふされは しほかせこして みちのくの のたのたまかは ちとりなくなり能因
644しらなみに はねうちかはし はまちとり かなしきものは よはのひとこゑ重之
645ゆふなきに とわたるちとり なみまより みゆるこしまの くもにきえぬる実定
646うらかせに ふきあけのはまの はまちとり なみたちくらし よはになくなり紀伊(祐子内親王家)
647つきそすむ たれかはここに きのくにや ふきあけのちとり ひとりなくなり良経(九条兼実男)
648さよちとり こゑこそちかく なるみかた かたふくつきに しほやみつらむ季能
649かせふけは よそになるみの かたおもひ おもはぬなみに なくちとりかな秀能(藤原秀宗男)
650うらひとの ひもゆふくれに なるみかた かへるそてより ちとりなくなり通光
651かせさゆる をしまかいその むらちとり たちゐはなみの こころなりけり季経
652はかなしや さてもいくよか ゆくみつに かすかきわふる をしのひとりね雅経
653みつとりの かものうきねの うきなから なみのまくらに いくよへぬらむ河内(前斎宮)
654よしのなる なつみのかはの かはよとに かもそなくなる やまかけにして湯原王
655ねやのうへに かたえさしおほひ そともなる はひろかしはに あられふるなり能因
656ささなみや しかのからさき かせさえて ひらのたかねに あられふるなり忠通
657やたののに あさちいろつく あらちやま みねのあはゆき さむくあるらし人麿
658つねよりも しのやののきそ うつもるる けふはみやこに はつゆきやふる瞻西
659ふるゆきに まことにしのや いかならむ けふはみやこに あとたにもなし基俊
660はつゆきの ふるのかみすき うつもれて しめゆふのへは ふゆこもりせり長方
661ふれはかく うさのみまさる よをしらて あれたるにはに つもるはつゆき紫式部
662さむしろの よはのころもて さえさえて はつゆきしろし をかのへのまつ式子内親王
663ふりそむる けさたにひとの またれつる みやまのさとの ゆきのゆふくれ寂蓮
664けふはもし きみもやとふと なかむれと またあともなき にはのゆきかな俊成(藤原俊忠男)
665いまそきく こころはあとも なかりけり ゆきかきわけて おもひやれとも実定
666しらやまも としふるゆきや つもるらむ よはにかたしく たもとさゆなり公任
667あけやらぬ ねさめのとこに きこゆなり まかきのたけの ゆきのしたをれ範兼
668おとはやま さやかにみする しらゆきを あけぬとつくる とりのこゑかな高倉院
669やまさとは みちもやみえす なりぬらむ もみちとともに ゆきのふりぬる家経(藤原広業男)
670さひしさを いかにせよとて をかへなる ならのはしたり ゆきのふるらむ国房
671こまとめて そてうちはらふ かけもなし さののわたりの ゆきのゆふくれ定家
672まつひとの ふもとのみちは たえぬらむ のきはのすきに ゆきおもるなり定家
673ゆめかよふ みちさへたえぬ くれたけの ふしみのさとの ゆきのしたをれ有家(藤原重家男)
674ふるゆきに たくものけむり かききえて さひしくもあるか しほかまのうら兼実
675たこのうらに うちいててみれは しろたへの ふしのたかねに ゆきはふりつつ赤人
676ゆきのみや ふりぬとはおもふ やまさとに われもおほくの としそつもれる貫之
677ゆきふれは みねのまさかき うつもれて つきにみかける あまのかくやま俊成(藤原俊忠男)
678かきくもり あまきるゆきの ふるさとを つもらぬさきに とふひともかな小侍従(太皇太后宮)
679にはのゆきに わかあとつけて いてつるを とはれにけりと ひとやみるらむ慈円
680なかむれは わかやまのはに ゆきしろし みやこのひとよ あはれともみよ慈円
681ふゆくさの かれにしひとの いまさらに ゆきふみわけて みえむものかは好忠
682たつねきて みちわけわふる ひともあらし いくへもつもれ にはのしらゆき寂然/寂蓮
683このころは はなももみちも えたになし しはしなきえそ まつのしらゆき後鳥羽院
684くさもきも ふりまかへたる ゆきもよに はるまつうめの はなのかそする通具
685みかりする かたののみのに ふるあられ あなかままたき とりもこそたて崇徳院
686みかりすと とたちのはらを あさりつつ かたのののへに けふもくらしつ忠通
687みかりのは かつふるゆきに うつもれて とたちもみえす くさかくれつつ匡房
688かりくらし かたののましは をりしきて よとのかはせの つきをみるかな公衡(藤原公能男)
689なかなかに きえはきえなて うつみひの いきてかひなき よにもふるかな永縁
690ひかすふる ゆきけにまさる すみかまの けふりもさむし おほはらのさと式子内親王
691おのつから いはぬをしたふ ひとやあると やすらふほとに としのくれぬる西行
692かへりては みにそふものと しりなから くれゆくとしを なにしたふらむ兵衛(上西門院)
693へたてゆく よよのおもかけ かきくらし ゆきにふりぬる としのくれかな俊成(藤原俊忠男)/俊成女
694あたらしき としやわかみを とめくらむ ひまゆくこまに みちをまかせて隆季
695なけきつつ ことしもくれぬ つゆのいのち いけるはかりを おもひいてにして俊恵
696おもひやれ やそちのとしの くれなれは いかはかりかは ものはかなしき小侍従(太皇太后宮)
697むかしおもふ にはにうききを つみおきて みしにもあらぬ としのくれかな西行
698いそのかみ ふるののをささ しもをへて ひとよはかりに のこるとしかな良経(九条兼実男)
699としのあけて うきよのゆめの さむへくは くるともけふは いとはさらまし慈円
700あさことの あかゐのみつに としくれて わかよのほとの くまれぬるかな隆聖
701いそかれぬ としのくれこそ あはれなれ むかしはよそに ききしはるかは実房
702かそふれは としののこりも なかりけり おいぬるはかり かなしきはなし和泉式部
703いしはしる はつせのかはの なみまくら はやくもとしの くれにけるかな実定
704ゆくとしを をしまのあまの ぬれころも かさねてそてに なみやかくらむ有家(藤原重家男)
705おいのなみ こえけるみこそ あはれなれ ことしもいまは すゑのまつやま寂蓮
706けふことに けふやかきりと をしめとも またもことしに あひにけるかな俊成(藤原俊忠男)
707たかきやに のほりてみれは けふりたつ たみのかまとは にきはひにけり仁徳天皇
708はつはるの はつねのけふの たまははき てにとるからに ゆらくたまのを読人不知
709ねのひして しめつるのへの ひめこまつ ひかてやちよの かけをまたまし清正
710きみかよの としのかすをは しろたへの はまのまさこと たれかしきけむ貫之
711わかなおふる のへといふのへを きみかため よろつよしめて つまむとそおもふ貫之
712ゆふたすき ちとせをかけて あしひきの やまあゐのいろは かはらさりけり貫之
713きみかよに あふへきはるの おほけれと ちるともさくら あくまてそみむ師房
714すみのえの はまのまさこを ふむたつは ひさしきあとを とむるなりけり伊勢
715としことに おひそふたけの よよをへて かはらぬいろを たれとかはみむ貫之
716ちとせふる をのへのまつは あきかせの こゑこそかはれ いろはかはらす躬恒
717やまかはの きくのしたみつ いかなれは なかれてひとの おいをせくらむ興風
718いのりつつ なほなかつきの きくのはな いつれのあきか うゑてみさらむ貫之
719やまひとの をるそてにほふ きくのつゆ うちはらふにも ちよはへぬへし俊成(藤原俊忠男)
720かみなつき もみちもしらぬ ときはきに よろつよかかれ みねのしらくも元輔(清原春光男)
721やまかせは ふけとふかねと しらなみの よするいはねは ひさしかりけり伊勢
722くもりなく ちとせにすめる みつのおもに やとれるつきの かけものとけし紫式部
723いけみつの よよにひさしく すみぬれは そこのたまもも ひかりみえけり伊勢大輔
724きみかよの ちとせのかすも かくれなく くもらぬそらの ひかりにそみる顕房
725すみのえに おひそふまつの えたことに きみかちとせの かすそこもれる隆国
726よろつよを まつのをやまの かけしけみ きみをそいのる ときはかきはに康資王母
727あひおひの をしほのやまの こまつはら いまよりちよの かけをまたなむ大弐三位
728ねのひする みかきのうちの こまつはら ちよをはほかの ものとやはみる経信
729ねのひする のへのこまつを うつしうゑて としのをなかく きみそひくへき通俊
730きみかよは ひさしかるへし わたらひや いすすのかはの なかれたえせて匡房
731ときはなる まつにかかれる こけなれは としのをなかき しるへとそおもふ読人不知
732きみかよに あへるはたれも うれしきを はなはいろにも いてにけるかな範兼
733みにかへて はなもをしまし きみかよに みるへきはるの かきりなけれは三河内侍(二条院)
734あめのした めくむくさきの めもはるに かきりもしらぬ みよのすゑすゑ式子内親王
735おしなへて このめもはるの あさみとり まつにそちよの いろもこもれる良経(九条兼実男)
736しきしまや やまとしまねも かみよより きみかためとや かためおきけむ良経(九条兼実男)
737ぬれてほす たまくしのはの つゆしもに あまてるひかり いくよへぬらむ良経(九条兼実男)
738きみかよは ちよともささし あまのとや いつるつきひの かきりなけれは俊成(藤原俊忠男)
739わかみちを まもらはきみを まもるらむ よはひはゆつれ すみよしのまつ定家
740たかさこの まつもむかしに なりぬへし なほゆくすゑは あきのよのつき寂蓮
741もしほくさ かくともつきし きみかよの かすによみおく わかのうらなみ家長(源時長男)
742うれしさや かたしくそてに つつむらむ けふまちえたる うちのはしひめ隆房
743としへたる うちのはしもり こととはむ いくよになりぬ みつのみなかみ清輔
744ななそちに みつのはままつ おいぬれは ちよののこりは なほそはるけき清輔
745やほかゆく はまのまさこを きみかよの かすにとらなむ おきつしまもり実定
746かすかやま みやこのみなみ しかそおもふ きたのふちなみ はるにあへとは良経(九条兼実男)
747ときはなる きひのなかやま おしなへて ちとせをまつの ふかきいろかな読人不知
748あかねさす あさひのさとの ひかけくさ とよのあかりの かさしなるへし輔親
749すめらきを ときはかきはに もるやまの やまひとならし やまかつらせり資業
750とやかへる たかのをやまの たまつはき しもをはふとも いろはかはらし匡房
751くもりなき かかみのやまの つきをみて あきらけきよを そらにしるかな永範
752おほえやま こえていくのの すゑとほみ みちあるよにも あひにけるかな範兼
753あふみのや さかたのいねを かけつみて みちあるみよの はしめにそつく俊成(藤原俊忠男)
754かみよより けふのためとや やつかほに なかたのいねの しなひそめけむ経通(藤原資長男)
755たちよれは すすしかりけり みつとりの あをはのやまの まつのゆふかせ光範
756ときはなる まつゐのみつを むすふての しつくことにそ ちよはみえける資実
757すゑのつゆ もとのしつくや よのなかの おくれさきたつ ためしなるらむ遍昭
758あはれなり わかみのはてや あさみとり つひにはのへの かすみとおもへは小町
759さくらちる はるのすゑには なりにけり あままもしらぬ なかめせしまに兼輔
760すみそめの ころもうきよの はなさかり をりわすれても をりてけるかな実方
761あかさりし はなをやはるも こひつらむ ありしむかしを おもひいてつつ道信
762はなさくら またさかりにて ちりにけむ なけきのもとを おもひこそやれ成尋
763はなみむと うゑけむひとも なきやとの さくらはこその はるそさかまし嘉言
764たれもみな はなのみやこに ちりはてて ひとりしくるる あきのやまさと顕輔
765はなみては いとといへちそ いそかれぬ まつらむとおもふ ひとしなけれは実定
766はるかすみ かすみしそらの なこりさへ けふをかきりの わかれなりけり良経(九条兼実男)
767たちのほる けふりをたにも みるへきに かすみにまかふ はるのあけほの惟方
768かたみとて みれはなけきの ふかみくさ なになかなかの にほひなるらむ重家
769あやめくさ たれしのへとか うゑおきて よもきかもとの つゆときえけむ木綿四手(高陽院)
770けふくれと あやめもしらぬ たもとかな むかしをこふる ねのみかかりて兵衛(上西門院)
771あやめくさ ひきたかへたる たもとには むかしをこふる ねそかかりける九条院
772さもこそは おなしたもとの いろならめ かはらぬねをも かけてけるかな皇嘉門院
773よそなれと おなしこころそ かよふへき たれもおもひの ひとつならねは実資
774ひとりにも あらぬおもひは なきひとも たひのそらにや かなしかるらむ為頼
775おくとみし つゆもありけり はかなくて きえにしひとを なににたとへむ和泉式部
776おもひきや はかなくおきし そてのうへの つゆをかたみに かけむものとは上東門院
777あさちはら はかなくおきし くさのうへの つゆをかたみと おもひかけきや内侍(周防)
778そてにさへ あきのゆふへは しられけり きえしあさちか つゆをかけつつ斎宮女御
779あきかせの つゆのやとりに きみをおきて ちりをいてぬる ことそかなしき一条院
780わかれけむ なこりのつゆも かわかぬに おきやそふらむ あきのゆふつゆ大弐三位
781おきそふる つゆとともには きえもせて なみたにのみも うきしつむかな読人不知
782をみなへし みるにこころは なくさまて いととむかしの あきそこひしき実頼
783ねさめする みをふきとほす かせのおとに むかしはそての よそにききけむ和泉式部
784そてぬらす はきのうははの つゆはかり むかしわすれぬ むしのねそする忠実
785さらてたに つゆけきさかの のへにきて むかしのあとに しをれぬるかな俊忠
786かなしさは あきのさかのの きりきりす なほふるさとに ねをやなくらむ実定
787いまはさは うきよのさかの のへをこそ つゆきえはてし あととしのはめ俊成女
788たまゆらの つゆもなみたも ととまらす なきひとこふる やとのあきかせ定家
789つゆをたに いまはかたみの ふちころも あたにもそてを ふくあらしかな秀能(藤原秀宗男)
790あきふかき ねさめにいかか おもひいつる はかなくみえし はるのよのゆめ大輔(殷富門院)
791みしゆめを わするるときは なけれとも あきのねさめは けにそかなしき通親
792なれしあきの ふけしよとこは それなから こころのそこの ゆめそかなしき実家(藤原公能男)
793くちもせぬ そのなはかりを ととめおきて かれののすすき かたみにそみる西行
794ふるさとを こふるなみたや ひとりゆく ともなきやまの みちしはのつゆ慈円
795うきよには いまはあらしの やまかせに これやなれゆく はしめなるらむ俊成(藤原俊忠男)
796まれにくる よはもかなしき まつかせを たえすやこけの したにきくらむ俊成(藤原俊忠男)
797ものおもへは いろなきかせも なかりけり みにしむあきの こころならひに雅実
798ふるさとを わかれしあきを かそふれは やとせになりぬ ありあけのつき定通(藤原保実男)
799いのちあれは ことしのあきも つきはみつ わかれしひとに あふよなきかな能因
800けふこすは みてややままし やまさとの もみちもひとも つねならぬよに公任
801おもひいつる をりたくしはの ゆふけふり むせふもうれし わすれかたみに後鳥羽院
802おもひいつる をりたくしはと きくからに たくひしられぬ ゆふけふりかな慈円
803なきひとの かたみのくもや しをるらむ ゆふへのあめに いろはみえねと後鳥羽院
804かみなつき しくるるころも いかなれや そらにすきにし あきのみやひと相模
805てすさひの はかなきあとと みしかとも なかきかたみに なりにけるかな師房女
806たつねても あとはかくても みつくきの ゆくへもしらぬ むかしなりけり馬内侍
807いにしへの なきになかるる みつくきは あとこそそての うらによりけれ斎宮女御
808ほしもあへぬ ころものやみに くらされて つきともいはす まとひぬるかな道信
809みなそこに ちちのひかりは うつれとも むかしのかけは みえすそありける東三条院
810ものをのみ おもひねさめの まくらには なみたかからぬ あかつきそなき信明
811あふことも いまはなきねの ゆめならて いつかはきみを またはみるへき上東門院
812うしとては いてにしいへを いてぬなり なとふるさとに わかかへりけむ生子(女御藤原)
813はかなしと いふにもいとと なみたのみ かかるこのよを たのみけるかな道済
814ふるさとに ゆくひともかな つけやらむ しらぬやまちに ひとりまとふと後一条院中宮
815たまのをの なかきためしに ひくひとも きゆれはつゆに ことならぬかな長家
816こひわふと ききにたにきけ かねのおとに うちわすらるる ときのまそなき和泉式部
817たれかよに なからへてみむ かきとめし あとはきえせぬ かたみなれとも紫式部
818なきひとを しのふることも いつまてそ けふのあはれは あすのわかみを加賀少納言
819なきひとの あとをたにとて きてみれは あらぬさとにも なりにけるかな慶暹
820みしひとの けふりになりし ゆふへより なそむつましき しほかまのうら紫式部
821あはれきみ いかなるのへの けふりにて むなしきそらの くもとなりけむ弁乳母
822おもへきみ もえしけふりに まかひなて たちおくれたる はるのかすみを源三位
823あはれひと けふのいのちを しらませは なにはのあしに ちきらさらまし能因
824よもすから むかしのことを みつるかな かたるやうつつ ありしよやゆめ匡衡
825うつりけむ むかしのかけや のこるとて みるにおもひの ますかかみかな新少将
826かきとむる ことのはのみそ みつくきの なかれてとまる かたみなりける公通
827ありすかは おなしなかれは かはらねと みしやむかしの かけそわすれぬ雅定
828かきりなき おもひのほかの ゆめのうちは おとろかさしと なけきこしかな俊成(藤原俊忠男)
829みしゆめに やかてまきれぬ わかみこそ とはるるけふも まつかなしけれ良経(九条兼実男)
830よのなかは みしもききしも はかなくて むなしきそらは けふりなりけり清輔
831いつなけき いつおもふへき ことなれは のちのよしらて ひとのすくらむ西行
832みなひとの しりかほにして しらぬかな かならすしぬる ならひありとは慈円
833きのふみし ひとはいかにと おとろけと なほなかきよの ゆめにそありける慈円
834よもきふに いつかおくへき つゆのみは けふのゆふくれ あすのあけほの慈円
835われもいつそ あらましかはと みしひとを しのふとすれと いととそひゆく慈円
836たつねきて いかにあはれと なかむらむ あとなきやまの みねのしらくも寂蓮
837なきあとの おもかけをのみ みにそへて さこそはひとの こひしかるらめ西行
838あはれとも こころにおもふ ほとはかり いはれぬへくは とひこそはせめ西行
839つくつくと おもへはかなし いつまてか ひとのあはれを よそにきくへき実房
840おくれゐて みるそかなしき はかなさを うきみのあとと なにたのみけむ通親
841そこはかと おもひつつけて きてみれは ことしのけふも そてはぬれけり慈円
842たれもみな なみたのあめに せきかねぬ そらもいかかは つれなかるへき忠経
843みしひとは よにもなきさの もしほくさ かきおくたひに そてそしをるる行遍
844あらさらむ のちしのへとや そてのかを はなたちはなに ととめおきけむ成仲
845ありしよに しはしもみては なかりしを あはれとはかり いひてやみぬる兼房
846とへかしな かたしくふちの ころもてに なみたのかかる あきのねさめを通俊
847きみなくて よるかたもなき あをやきの いととうきよそ おもひみたるる国信
848いつのまに みをやまかつに なしはてて みやこをたひと おもふなるらむ顕輔
849ひさかたの あめにしをるる きみゆゑに つきひもしらて こひわたるらむ人麿
850あるはなく なきはかすそふ よのなかに あはれいつれの ひまてなけかむ小町
851しらたまか なにそとひとの とひしとき つゆとこたへて けなましものを業平
852としふれは かくもありけり すみそめの こはおもふてふ それかあらぬか醍醐天皇
853なきひとを しのひかねては わすれくさ おほかるやとに やとりをそする兼輔
854くやしくそ のちにあはむと ちきりける けふをかきりと いはましものを季縄
855すみそめの そてはそらにも かさなくに しほりもあへす つゆそこほるる具平親王
856くれぬまの みをはおもはて ひとのよの あはれをしるそ かつははかなき紫式部
857たまほこの みちのやまかせ さむからは かたみかてらに きなむとそおもふ貫之
858わすれなむ よにもこしちの かへるやま いつはたひとに あはむとすらむ伊勢
859きたへゆく かりのつはさに ことつてよ くものうはかき かきたえすして紫式部
860あききりの たつたひころも おきてみよ つゆはかりなる かたみなりとも能宣
861みてたにも あかぬこころを たまほこの みちのおくまて ひとのゆくらむ貫之
862あふさかの せきにわかやと なかりせは わかるるひとは たのまさらまし兼輔
863きならせと おもひしものを たひころも たつひをしらす なりにけるかな読人不知
864これやさは くものはたてに おるときく たつことしらぬ あまのはころも寂昭
865ころもかは みなれしひとの わかれには たもとまてこそ なみはたちけれ重之
866ゆくすゑに あふくまかはの なかりせは いかにかせまし けふのわかれを経重(高階明頼男)
867きみにまた あふくまかはを まつへきに のこりすくなき われそかなしき範永
868すすしさは いきのまつはら まさるとも そふるあふきの かせなわすれそ枇杷皇太后宮
869かみなつき まれのみゆきに さそはれて けふわかれなは いつかあひみむ恒佐
870わかれての のちもあひみむと おもへとも これをいつれの ときとかはしる千里
871もろこしも あめのしたにそ ありときく てるひのもとを わすれさらなむ成尋母
872わかれちは これやかきりの たひならむ さらにいくへき ここちこそせね道命
873あまのかは そらにきこえし ふなてには われそまさりて けさはかなしき加賀左衛門
874わかれちは いつもなけきの たえせぬに いととかなしき あきのゆふくれ隆家
875ととまらむ ことはこころに かなへとも いかにかせまし あきのさそふを実方
876みやこをは あきとともにそ たちそめし よとのかはきり いくよへたてつ匡房
877おもひいてて おなしそらとは つきをみよ ほとはくもゐに めくりあふまて後三条院
878かへりこむ ほとおもふにも たけくまの まつわかみこそ いたくおいぬれ基俊
879おもへとも さためなきよの はかなさに いつをまてとも えこそたのめね行尊
880ちきりおく ことこそさらに なかりしか かねておもひし わかれならねは読人不知
881かりそめの わかれとけふを おもへとも いさやまことの たひにもあるらむ俊恵
882かへりこむ ほとをやひとに ちきらまし しのはれぬへき わかみなりせは登蓮
883たれとしも しらぬわかれの かなしきは まつらのおきを いつるふなひと隆信
884はるはると きみかわくへき しらなみを あやしやとまる そてにかけつる俊恵
885きみいなは つきまつとても なかめやらむ あつまのかたの ゆふくれのそら西行
886たのめおかむ きみもこころや なくさむと かへらむことは いつとなくとも西行
887さりともと なほあふことも たのむかな してのやまちを こえぬわかれは西行
888かへりこむ ほとをちきらむと おもへとも おいぬるみこそ さためかたけれ道因
889かりそめの たひのわかれと しのふれと おいはなみたも えこそととめね俊成(藤原俊忠男)
890わかれにし ひとはまたもや みわのやま すきにしかたを いまになさはや成仲
891わするなよ やとるたもとは かはるとも かたみにしほる よはのつきかけ定家
892なこりおもふ たもとにかねて しられけり わかるるたひの ゆくすゑのつゆ惟明親王
893みやこをは こころのそらに いてぬとも つきみむたひに おもひおこせよ読人不知
894わかれちは くもゐのよそに なりぬとも そなたのかせの たよりすくすな行宗
895いろふかく そめたるたひの かりころも かへらむまての かたみともみよ顕綱
896とふとりの あすかのさとを おきていなは きみかあたりは みえすかもあらむ元明天皇
897いもにこひ わかのまつはら みわたせは しほひのかたに たつなきわたる聖武天皇
898いさことも はやひのもとへ おほともの みつのはままつ まちこひぬらむ憶良
899あまさかる ひなのなかちを こきくれは あかしのとより やまとしまみゆ人麿
900ささのはは みやまもそよに みたるなり われはいもおもふ わかれきぬれは人麿
901ここにありて つくしやいつこ しらくもの たなひくやまの にしにあるらし旅人
902あさきりに ぬれにしころも ほさすして ひとりやきみか やまちこゆらむ読人不知
903しなのなる あさまのたけに たつけふり をちこちひとの みやはとかめぬ業平
904するかなる うつのやまへの うつつにも ゆめにもひとに あはぬなりけり業平
905くさまくら ゆふかせさむく なりにけり ころもうつなる やとやからまし貫之
906しらくもの たなひきわたる あしひきの やまのかけはし けふやこえなむ貫之
907あつまちや さやのなかやま さやかにも みえぬくもゐに よをやつくさむ忠岑
908ひとをなほ うらみつへしや みやことり ありやとたにも とふをきかねは斎宮女御
909またしらぬ ふるさとひとは けふまてに こむとたのめし われをまつらむ輔昭
910しなかとり ゐなのをゆけは ありまやま ゆふきりたちぬ やとはなくして読人不知
911かみかせや いせのはまをき をりふせて たひねやすらむ あらきはまへに読人不知
912ふるさとの たひねのゆめに みえつるは うらみやすらむ またととはねは良利
913たちなから こよひはあけぬ そのはらや ふせやといふも かひなかりけり輔尹
914みやこにて こしちのそらを なかめつつ くもゐといひし ほとにきにけり御形宣旨
915たひころも たちゆくなみち とほけれは いさしらくもの ほともしられす澄成
916ふねなから こよひはかりは たひねせむ しきつのなみに ゆめはさむとも実方
917わかことく われをたつねは あまをふね ひともなきさの あととこたえよ行尊
918かきくもり ゆふたつなみの あらけれは うきたるふねそ しつこころなき紫式部
919さよふけて あしのすゑこす うらかせに あはれうちそふ なみのおとかな肥後(京極前関白家)
920たひねして あかつきかたの しかのねに いなはおしなひ あきかせそふく経信
921わきもこか たひねのころも うすきほと よきてふかなむ よはのやまかせ恵慶
922あしのはを かりふくしつの やまさとに ころもかたしき たひねをそする隆綱
923ありしよの たひはたひとも あらさりき ひとりつゆけき くさまくらかな赤染衛門
924やまちにて そほちにけりな しらつゆの あかつきおきの ききのしつくに国信
925くさまくら たひねのひとは こころせよ ありあけのつきも かたふきにけり師頼
926いそなれぬ こころそたへぬ たひねする あしのまろやに かかるしらなみ師賢(源資通男)
927たひねする あしのまろやの さむけれは つまきこりつむ ふねいそくなり経信
928みやまちに けさやいてつる たひひとの かさしろたへに ゆきつもりつつ経信
929まつかねに をはなかりしき よもすから かたしくそてに ゆきはふりつつ顕季
930みしひとも とふのうらかせ おとせぬに つれなくすめる あきのよのつき為仲(橘義通男)
931くさまくら ほとそへにける みやこいてて いくよかたひの つきにねぬらむ嘉言
932なつかりの あしのかりねも あはれなり たまえのつきの あけかたのそら俊成(藤原俊忠男)
933たちかへり またもきてみむ まつしまや をしまのとまや なみにあらすな俊成(藤原俊忠男)
934こととへよ おもひおきつの はまちとり なくなくいてし あとのつきかけ定家
935のへのつゆ うらわのなみを かこちても ゆくへもしらぬ そてのつきかけ家隆
936もろともに いてしそらこそ わすられね みやこのやまの ありあけのつき良経(九条兼実男)
937みやこにて つきをあはれと おもひしは かすにもあらぬ すさひなりけり西行
938つきみはと ちきりていてし ふるさとの ひともやこよひ そてぬらすらむ西行
939あけはまた こゆへきやまの みねなれや そらゆくつきの すゑのしらくも家隆
940ふるさとの けふのおもかけ さそひこと つきにそちきる さよのなかやま雅経
941わすれしと ちきりていてし おもかけは みゆらむものを ふるさとのつき良経(九条兼実男)
942あつまちの よはのなかめを かたらなむ みやこのやまに かかるつきかけ慈円
943いくよかは つきをあはれと なかめきて なみにをりしく いせのはまをき越前(嘉陽門院)
944しらさりし やそせのなみを わけすきて かたしくものは いせのはまをき丹後(宜秋門院)
945かせさむみ いせのはまをき わけゆけは ころもかりかね なみになくなり匡房
946いそなれて こころもとけぬ こもまくら あらくなかけそ みつのしらなみ定頼
947ゆくすゑは いまいくよとか いはしろの をかのかやねに まくらむすはむ式子内親王
948まつかねの をしまかいその さよまくら いたくなぬれそ あまのそてかは式子内親王
949かくしても あかせはいくよ すきぬらむ やまちのこけの つゆのむしろに俊成女
950しらくもの かかるたひねも ならはぬに ふかきやまちに ひはくれにけり永縁
951ゆふひさす あさちかはらの たひひとは あはれいくよに やとをかるらむ経信
952いつくにか こよひはやとを かりころも ひもゆふくれの みねのあらしに定家
953たひひとの そてふきかへす あきかせに ゆふひさひしき やまのかけはし定家
954ふるさとに ききしあらしの こゑもにす わすれぬひとを さやのなかやま家隆
955しらくもの いくへのみねを こえぬらむ なれぬあらしに そてをまかせて雅経
956けふはまた しらぬのはらに ゆきくれぬ いつれのやまか つきはいつらむ家長(源時長男)
957ふるさとも あきはゆふへを かたみとて かせのみおくる をののしのはら俊成女
958いたつらに たつやあさまの ゆふけふり さととひかぬる をちこちのやま雅経
959みやこをは あまつそらとも きかさりき なになかむらむ くものはたてを丹後(宜秋門院)
960くさまくら ゆふへのそらを ひととはは なきてもつけよ はつかりのこゑ秀能(藤原秀宗男)
961ふしわひぬ しののをささの かりまくら はかなのつゆや ひとよはかりに有家(藤原重家男)
962いはかねの とこにあらしを かたしきて ひとりやねなむ さよのなかやま有家(藤原重家男)
963たれとなき やとのゆふへを ちきりにて かはるあるしを いくよとふらむ業清(藤原良清男)
964まくらとて いつれのくさに ちきるらむ ゆくをかきりの のへのゆふくれ長明
965みちのへの くさのあをはに こまとめて なほふるさとを かへりみるかな成範
966はつせやま ゆふこえくれて やととへは みわのひはらに あきかせそふく禅性
967さらぬたに あきのたひねは かなしきに まつにふくなり とこのやまかせ秀能(藤原秀宗男)
968わすれなむ まつとなつけそ なかなかに いなはのやまの みねのあきかせ定家
969ちきらねと ひとよはすきぬ きよみかた なみにわかるる あかつきのくも家隆
970ふるさとに たのめしひとも すゑのまつ まつらむそてに なみやこすらむ家隆
971ひをへつつ みやこしのふの うらさひて なみよりほかの おとつれもなし兼実
972さすらふる わかみにしあれは きさかたや あまのとまやに あまたたひねぬ顕仲(藤原資仲男)
973なにはひと あしひたくやに やとかりて すすろにそての しほたるるかな俊成(藤原俊忠男)
974またこえむ ひともとまらは あはれしれ わかをりしける みねのしひしは雅縁
975みちすから ふしのけふりも わかさりき はるるまもなき そらのけしきに頼朝
976よのなかは うきふししけし しのはらや たひにしあれは いもゆめにみゆ俊成(藤原俊忠男)
977おほつかな みやこにすまぬ みやことり こととふひとに いかかこたへし丹後(宜秋門院)
978よのなかを いとふまてこそ かたからめ かりのやとりをも をしむきみかな西行
979よをいとふ ひととしきけは かりのやとに こころとむなと おもふはかりそ妙(遊女)
980そてにふけ さそなたひねの ゆめはみし おもふかたより かよふうらかせ定家
981たひねする ゆめちはゆるせ うつのやま せきとはきかす もるひともなし家隆
982みやこにも いまやころもを うつのやま ゆふしもはらふ つたのしたみち定家
983そてにしも つきかかれとは ちきりおかす なみたはしるや うつのやまこえ長明
984たつたやま あきゆくひとの そてをみよ ききのこすゑは しくれさりけり慈円
985さとりゆく まことのみちに いりぬれは こひしかるへき ふるさともなし慈円
986ふるさとへ かへらむことは あすかかは わたらぬさきに ふちせたかふな家基(藤原家光男)
987としたけて またこゆへしと おもひきや いのちなりけり さやのなかやま西行
988おもひおく ひとのこころに したはれて つゆわくるそての かへりぬるかな西行
989みるままに やまかせあらく しくるめり みやこもいまは よさむなるらむ後鳥羽院
990よそにのみ みてややみなむ かつらきや たかまのやまの みねのしらくも読人不知
991おとにのみ ありとききこし みよしのの たきはけふこそ そてにおちけれ読人不知
992あしひきの やまたもるいほに おくかひの したこかれつつ わかこふらくは人磨
993いそのかみ ふるのわさたの ほにはいてす こころのうちに こひやわたらむ人麿
994かすかのの わかむらさきの すりころも しのふのみたれ かきりしられす業平
995むらさきの いろにこころは あらねとも ふかくそひとを おもひそめつる醍醐天皇
996みかのはら わきてなかるる いつみかは いつみきとてか こひしかるらむ兼輔
997そのはらや ふせやにおふる ははききの ありとはみえて あはぬきみかな是則
998としをへて おもふこころの しるしにそ そらもたよりの かせはふきける高光
999としつきは わかみにそへて すきぬれと おもふこころの ゆかすもあるかな高明
1000もろともに あはれといはすは ひとしれぬ とはすかたりを われのみやせむ俊賢母
1001ひとつてに しらせてしかな かくれぬの みこもりにのみ こひやわたらむ朝忠
1002みこもりの ぬまのいはかき つつめとも いかなるひまに ぬるるたもとそ高遠
1003からころも そてにひとめは つつめとも こほるるものは なみたなりけり伊尹
1004あまつそら とよのあかりに みしひとの なほおもかけの しひてこひしき公任
1005あらたまの としにまかせて みるよりは われこそこえめ あふさかのせき伊尹
1006わかやとは そこともなにか をしふへき いはてこそみめ たつねけりやと侍従(本院)
1007わかおもひ そらのけふりと なりぬれは くもゐなからも なほたつねてむ兼通
1008しるしなき けふりをくもに まかへつつ よをへてふしの やまともえなむ貫之
1009けふりたつ おもひならねと ひとしれす わひてはふしの ねをのみそなく深養父
1010かせふけは むろのやしまの ゆふけふり こころのそらに たちにけるかな惟成
1011しらくもの みねにしもなと かよふらむ おなしみかさの やまのふもとを義孝(藤原敦舒男)
1012けふもまた かくやいふきの さしもくさ さらはわれのみ もえやわたらむ和泉式部
1013つくはやま はやましけやま しけけれと おもひいるには さはらさりけり重之
1014われならぬ ひとにこころを つくはやま したにかよはむ みちたにやなき能宣
1015ひとしれす おもふこころは あしひきの やましたみつの わきやかへらむ匡衡
1016にほふらむ かすみのうちの さくらはな おもひやりても をしきはるかな元輔(清原春光男)
1017いくかへり さきちるはなを なかめつつ ものおもひくらす はるにあふらむ能宣
1018おくやまの みねとひこゆる はつかりの はつかにたにも みてややみなむ躬恒
1019おほそらを わたるはるひの かけなれや よそにのみして のとけかるらむ宇多天皇
1020はるかせの ふくにもまさる なみたかな わかみなかみに こほりとくらし伊尹
1021みつのうへに うきたるとりの あともなく おほつかなさを おもふころかな伊尹
1022かたをかの ゆきまにねさす わかくさの ほのかにみてし ひとそこひしき好忠
1023あとをたに くさのはつかに みてしかな むすふはかりの ほとならすとも和泉式部
1024しものうへに あとふみつくる はまちとり ゆくへもなしと ねをのみそなく興風
1025あきはきの えたもとををに おくつゆの けさきえぬとも いろにいてめや家持
1026あきかせに みたれてものは おもへとも はきのしたはの いろはかはらす高光
1027わかこひも いまはいろにや いてなまし のきのしのふも もみちしにけり有仁
1028いそのかみ ふるのかみすき ふりぬれと いろにはいてす つゆもしくれも良経(九条兼実男)
1029わかこひは まきのしたはに もるしくれ ぬるともそての いろにいてめや後鳥羽院
1030わかこひは まつをしくれの そめかねて まくすかはらに かせさわくなり慈円
1031うつせみの なくねやよそに もりのつゆ ほしあへぬそてを ひとのとふまて良経(九条兼実男)
1032おもひあれは そてにほたるを つつみても いははやものを とふひとはなし寂蓮
1033おもひつつ へにけるとしの かひやなき たたあらましの ゆふくれのそら後鳥羽院
1034たまのをよ たえなはたえね なからへは しのふることの よわりもそする式子内親王
1035わすれては うちなけかるる ゆふへかな われのみしりて すくるつきひを式子内親王
1036わかこひは しるひともなし せくとこの なみたもらすな つけのをまくら式子内親王
1037しのふるに こころのひまは なけれとも なほもるものは なみたなりけり兼実
1038つらけれと うらみむとはた おもほえす なほゆくさきを たのむこころに伊尹
1039あめこそは たのまはもらめ たのますは おもはぬひとと みてをやみなむ読人不知
1040かせふけは とはになみこす いそなれや わかころもての かわくときなき貫之
1041すまのあまの なみかけころも よそにのみ きくはわかみに なりにけるかな道信
1042ぬまことに そてそぬれぬる あやめくさ こころににたる ねをもとむとて左近(三条院女蔵人)
1043ほとときす いつかとまちし あやめくさ けふはいかなる ねにかなくへき公任
1044さみたれは そらおほれする ほとときす ときになくねは ひともとかめす馬内侍
1045ほとときす こゑをはきけと はなのえに またふみなれぬ ものをこそおもへ道長
1046ほとときす しのふるものを かしはきの もりてもこゑの きこえけるかな馬内侍
1047こころのみ そらになりつつ ほとときす ひとたのめなる ねこそなかるれ馬内侍
1048みくまのの うらよりをちに こくふねの われをはよそに へたてつるかな伊勢
1049なにはかた みしかきあしの ふしのまも あはてこのよを すくしてよとや伊勢
1050みかりする かりはのをのの ならしはの なれはまさらて こひそまされる人麿
1051うとはまの うとくのみやは よをはへむ なみのよるよる あひみてしかな読人不知
1052あつまちの みちのはてなる ひたちおひの かことはかりも あはむとそおもふ読人不知
1053にこりえの すまむことこそ かたからめ いかてほのかに かけをみせまし読人不知
1054しくれふる ふゆのこのはの かわかすそ ものおもふひとの そてはありける読人不知
1055ありとのみ おとにききつつ おとはかは わたらはそてに かけもみえなむ読人不知
1056みつくきの をかのこのはを ふきかへし たれかはきみを こひむとおもひし読人不知
1057わかそてに あとふみつけよ はまちとり あふことかたし みてもしのはむ読人不知
1058ふゆのよの なみたにこほる わかそての こころとけすも みゆるきみかな兼輔
1059しもこほり こころもとけぬ ふゆのいけに よふけてそなく をしのひとこゑ元真
1060なみたかは みもうくはかり なかるれと きえぬはひとの おもひなりけり元真
1061いかにせむ くめちのはしの なかそらに わたしもはてぬ みとやなりなむ実方
1062たれそこの みわのひはらも しらなくに こころのすきの われをたつぬる実方
1063わかこひは いはぬはかりそ なにはなる あしのしのやの したにこそたけ小弁
1064わかこひは ありそのうみの かせをいたみ しきりによする なみのまもなし伊勢
1065すまのうらに あまのこりつむ もしほきの からくもしたに もえわたるかな清正
1066あるかひも なきさによする しらなみの まなくものおもふ わかみなりけり景明
1067あしひきの やましたたきつ いはなみの こころくたけて ひとそこひしき貫之
1068あしひきの やましたしけき なつくさの ふかくもきみを おもふころかな貫之
1069をしかふす なつののくさの みちをなみ しけきこひちに まとふころかな是則
1070かやりひの さよふけかたの したこかれ くるしやわかみ ひとしれすのみ好忠
1071ゆらのとを わたるふなひと かちをたえ ゆくへもしらぬ こひのみちかも好忠
1072おひかせに やへのしほちを ゆくふねの ほのかにたにも あひみてしかな師時
1073かちをたえ ゆらのみなとに よるふねの たよりもしらぬ おきつしほかせ良経(九条兼実男)
1074しるへせよ あとなきなみに こくふねの ゆくへもしらぬ やへのしほかせ式子内親王
1075きのくにや ゆらのみなとに ひろふてふ たまさかにたに あひみてしかな長方
1076つれもなき ひとのこころの うきにはふ あしのしたねの ねをこそはなけ師俊
1077なにはひと いかなるえにか くちはてむ あふことなみに みをつくしつつ良経(九条兼実男)
1078あまのかる みるめをなみに まかへつつ なくさのはまを たつねわひぬる俊成(藤原俊忠男)
1079あふまての みるめかるへき かたそなき またなみなれぬ いそのあまひと相模
1080みるめかる かたやいつくそ さをさして われにをしへよ あまのつりふね業平
1081したもえに おもひきえなむ けふりたに あとなきくもの はてそかなしき俊成女
1082なひかしな あまのもしほひ たきそめて けふりはそらに くゆりわふとも定家
1083こひをのみ すまのうらひと もしほたれ ほしあへぬそての はてをしらはや良経(九条兼実男)
1084みるめこそ いりぬるいその くさならめ そてさへなみの したにくちぬる讃岐(二条院)
1085きみこふと なるみのうらの はまひさき しをれてのみも としをふるかな俊頼(源経信男)
1086しるらめや このはふりしく たにみつの いはまにもらす したのこころを頼実(藤原経宗男)
1087もらすなよ くもゐるみねの はつしくれ このははしたに いろかはるとも良経(九条兼実男)
1088かくとたに おもふこころを いはせやま したゆくみつの くさかくれつつ実定
1089もらさはや おもふこころを さてのみは えそやましろの ゐてのしからみ大輔(殷富門院)
1090こひしとも いははこころの ゆくへきに くるしやひとめ つつむおもひは近衛院
1091ひとしれぬ こひにわかみは しつめとも みるめにうくは なみたなりけり有仁
1092ものおもふと いはぬはかりは しのふとも いかかはすへき そてのしつくを顕仲(源顕房男)
1093ひとしれす くるしきものは しのふやま したはふくすの うらみなりけり清輔
1094きえねたた しのふのやまの みねのくも かかるこころの あともなきまて雅経
1095かきりあれは しのふのやまの ふもとにも おちはかうへの つゆそいろつく通光
1096うちはへて くるしきものは ひとめのみ しのふのうらの あまのたくなは讃岐(二条院)
1097しのはしよ いしまつたひの たにかはも せをせくにこそ みつまさりけれ公継
1098ひともまた ふみみぬやまの いはかくれ なかるるみつを そてにせくかな下野(後鳥羽院)
1099はるかなる いはのはさまに ひとりゐて ひとめおもはて ものおもははや西行
1100かすならぬ こころのとかに なしはてし しらせてこそは みをもうらみめ西行
1101くさふかき なつのわけゆく さをしかの ねをこそたてね つゆそこほるる良経(九条兼実男)
1102のちのよを なけくなみたと いひなして しほりやせまし すみそめのそて重家
1103たまつさの かよふはかりに なくさめて のちのよまての うらみのこすな読人不知
1104ためしあれは なかめはそれと しりなから おほつかなきは こころなりけり読人不知
1105いはぬより こころやゆきて しるへする なかむるかたを ひとのとふまて隆房
1106なかめわひ それとはなしに ものそおもふ くものはたての ゆふくれのそら通光
1107おもひあまり そなたのそらを なかむれは かすみをわけて はるさめそふる俊成(藤原俊忠男)
1108やまかつの あさのさころも をさをあらみ あはてつきひや すきふけるいほ良経(九条兼実男)
1109おもへとも いはてつきひは すきのかと さすかにいかか しのひはつへき忠定(藤原兼宗男)
1110あふことは かたののさとの ささのいほ しのにつゆちる よはのとこかな俊成(藤原俊忠男)
1111ちらすなよ しののはくさの かりにても つゆかるるへき そてのうへかは俊成(藤原俊忠男)
1112しらたまか つゆかととはむ ひともかな ものおもふそてを さしてこたへむ元真
1113いつまての いのちもしらぬ よのなかに つらきなけきの やますもあるかな義孝(藤原敦舒男)
1114わかこひは ちきのかたそき かたくのみ ゆきあはてとしの つもりぬるかな公能
1115いつとなく しほやくあまの とまひさし ひさしくなりぬ あはぬおもひは基輔(藤原頼輔男)
1116もしほやく あまのいそやの ゆふけふり たつなもくるし おもひたえなて秀能(藤原秀宗男)
1117すまのあまの そてにふきこす しほかせの なるとはすれと てにもたまらす定家
1118ありとても あはぬためしの なとりかは くちたにはてね せせのうもれき寂蓮
1119なけかすよ いまはたおなし なとりかは せせのうもれき くちはてぬとも良経(九条兼実男)
1120なみたかは たきつこころの はやきせを しからみかけて せくそてそなき讃岐(二条院)
1121よそなから あやしとたにも おもへかし こひせぬひとの そてのいろかは右衛門佐(高松院)
1122しのひあまり おつるなみたを せきかへし おさふるそてよ うきなもらすな読人不知
1123くれなゐに なみたのいろの なりゆくを いくしほまてと われにとははや道因
1124ゆめにても みゆらむものを なけきつつ うちぬるよひの そてのけしきは式子内親王
1125さめてのち ゆめなりけりと おもふにも あふはなこりの をしくやはあらぬ実定
1126みにそへる そのおもかけも きえななむ ゆめなりけりと わするはかりに良経(九条兼実男)
1127ゆめのうちに あふとみえつる ねさめこそ つれなきよりも そてはぬれけれ実宗
1128たのめおきし あさちかつゆに あきかけて このはふりしく やとのかよひち忠良
1129しのひあまり あまのかはせに ことよせむ せめてはあきを わすれたにすな経家(六条重家男)
1130たのめても はるけかるへき かへるやま いくへのくもの したにまつらむ重政
1131あふことは いつといふきの みねにおふる さしもたえせぬ おもひなりけり家房
1132ふしのねの けふりもなほそ たちのほる うへなきものは おもひなりけり家隆
1133なきなのみ たつたのやまに たつくもの ゆくへもしらぬ なかめをそする俊忠
1134あふことの むなしきそらの うきくもは みをしるあめの たよりなりけり惟明親王
1135わかこひは あふをかきりの たのみたに ゆくへもしらぬ そらのうきくも通具
1136おもかけの かすめるつきそ やとりける はるやむかしの そてのなみたに俊成女
1137とこのしも まくらのこほり きえわひぬ むすひもおかぬ ひとのちきりに定家
1138つれなさの たくひまてやは つらからぬ つきをもめてし ありあけのそら有家(藤原重家男)
1139そてのうへに たれゆゑつきは やとるそと よそになしても ひとのとへかし秀能(藤原秀宗男)
1140なつひきの てひきのいとの としへても たえぬおもひに むすほほれつつ越前(嘉陽門院)
1141いくよわれ なみにしをれて きふねかは そてにたまちる ものおもふらむ良経(九条兼実男)
1142としもへぬ いのるちきりは はつせやま をのへのかねの よそのゆふくれ定家
1143うきみをは われたにいとふ いとへたた そをたにおなし こころとおもはむ俊成(藤原俊忠男)
1144こひしなむ おなしうきなを いかにして あふにかへつと ひとにいはれむ長方
1145あすしらぬ いのちをそおもふ おのつから あらはあふよを まつにつけても大輔(殷富門院)
1146つれもなき ひとのこころは うつせみの むなしきこひに みをやかへてむ高倉(八条院)
1147なにとなく さすかにをしき いのちかな ありへはひとや おもひしるとて西行
1148おもひしる ひとありあけの よなりせは つきせぬみをは うらみさらまし西行
1149わすれしの ゆくすゑまては かたけれは けふをかきりの いのちともかな儀同三司母
1150かきりなく むすひおきつる くさまくら いつこのたひを おもひわすれむ伊尹
1151おもふには しのふることそ まけにける あふにしかへは さもあらはあれ業平
1152きのふまて あふにしかへはと おもひしを けふはいのちの をしくもあるかな頼忠
1153あふことを けふまつかえの たむけくさ いくよしをるる そてとかはしる式子内親王
1154こひしさに けふそたつぬる おくやまの ひかけのつゆに そてはぬれつつ正清
1155あすまての いのちもかなと おもひしは くやしかりける わかこころかな西行
1156ひとこころ うすはなそめの かりころも さてたにあらて いろやかはらむ左近(三条院女蔵人)
1157あひみても かひなかりけり うはたまの はかなきゆめに おとるうつつは興風
1158なかなかに ものおもひそめて ねぬるよは はかなきゆめも えやはみえける実方
1159ゆめとても ひとにかたるな しるといへは たまくらならぬ まくらたにせす伊勢
1160まくらたに しらねはいはし みしままに きみかたるなよ はるのよのゆめ和泉式部
1161わすれても ひとにかたるな うたたねの ゆめみてのちも なからへしよを馬内侍
1162つらかりし おほくのとしは わすられて ひとよのゆめを あはれとそみし範永
1163けさよりは いととおもひを たきまして なけきこりつむ あふさかのやま高倉院
1164あしのやの しつはたおひの かたむすひ こころやすくも うちとくるかな俊頼(源経信男)
1165かりそめに ふしみののへの くさまくら つゆけかりきと ひとにかたるな読人不知
1166いかにせむ くすのうらふく あきかせに したはのつゆの かくれなきみを相模
1167あけかたき ふたみのうらに よるなみの そてのみぬれて おきつしまひと実方
1168あふことの あけぬよなから あけぬれは われこそかへれ こころやはゆく伊勢
1169あきのよの ありあけのつきの いるまてに やすらひかねて かへりにしかな敦道親王
1170こころにも あらぬわかみの ゆきかへり みちのそらにて きえぬへきかな道信
1171はかなくも あけにけるかな あさつゆの おきてののちそ きえまさりける醍醐天皇
1172あさつゆの おきつるそらも おもほえす きえかへりつる こころまとひに周子(更衣源)
1173おきそふる つゆやいかなる つゆならむ いまはきえねと おもふわかみを円融院
1174おもひいてて いまはけぬへし よもすから おきうかりつる きくのうへのつゆ伊尹
1175うはたまの よるのころもを たちなから かへるものとは いまそしりぬる実頼
1176みしかよの のこりすくなく ふけゆけは かねてものうき あかつきのそら清正
1177あくといへは しつこころなき はるのよの ゆめとやきみを よるのみはみむ清蔭
1178けさはしも なけきもすらむ いたつらに はるのよひとよ ゆめをたにみて和泉式部
1179こころから しはしとつつむ ものからに しきのはねかき つらきけさかな赤染衛門
1180わひつつも きみかこころに かなふとて けさもたもとを ほしそわつらふ師輔
1181たまくらに かせるたもとの つゆけきは あけぬとつくる なみたなりけり宇多天皇
1182しはしまて またよはふかし なかつきの ありあけのつきは ひとまとふなり惟成
1183おきてみは そてのみぬれて いととしく くさはのたまの かすやまさらむ実方
1184あけぬれと またきぬきぬに なりやらて ひとのそてをも ぬらしつるかな讃岐(二条院)
1185おもかけの わすらるましき わかれかな なこりをひとの つきにととめて西行
1186またもこむ あきをたのむの かりたにも なきてそかへる はるのあけほの良経(九条兼実男)
1187たれゆきて きみにつけまし みちしはの つゆもろともに きえなましかは成助
1188きえかへり あるかなきかの わかみかな うらみてかへる みちしはのつゆ朝光
1189あさほらけ おきつるしもの きえかへり くれまつほとの そてをみせはや花山院
1190にはにおふる ゆふかけくさの したつゆや くれをまつまの なみたなるらむ道経
1191まつよひの ふけゆくかねの こゑきけは あかぬわかれの とりはものかは小侍従(太皇太后宮)
1192これもまた なかきわかれに なりやせむ くれをまつへき いのちならねは知家
1193ありあけは おもひいてあれや よこくもの たたよはれつる しののめのそら西行
1194おほゐかは ゐせきのみつの わくらはに けふはたのめし くれにやはあらぬ元輔(清原春光男)
1195ゆふくれに いのちかけたる かけろふの ありやあらすや とふもはかなし読人不知
1196あちきなく つらきあらしの こゑもうし なとゆふくれに まちならひけむ定家
1197たのめすは ひとをまつちの やまなりと ねなましものを いさよひのつき後鳥羽院
1198なにゆゑと おもひもいれぬ ゆふへたに まちいてしものを やまのはのつき良経(九条兼実男)
1199きくやいかに うはのそらなる かせたにも まつにおとする ならひありとは宮内卿(後鳥羽院)
1200ひとはこて かせのけしきも ふけぬるに あはれにかりの おとつれてゆく西行
1201いかかふく みにしむいろの かはるかな たのむるくれの まつかせのこゑ高倉(八条院)
1202たのめおく ひともなからの やまにたに さよふけぬれは まつかせのこゑ長明
1203いまこむと たのめしことを わすれすは このゆふくれの つきやまつらむ秀能(藤原秀宗男)
1204きみまつと ねやへもいらぬ まきのとに いたくなふけそ やまのはのつき式子内親王
1205たのめぬに きみくやとまつ よひのまの ふけゆかてたた あけなましかは西行
1206かへるさの ものとやひとの なかむらむ まつよなからの ありあけのつき定家
1207きみこむと いひしよことに すきぬれは たのまぬものの こひつつそふる読人不知
1208ころもてに やまおろしふきて さむきよを きみきまさすは ひとりかもねむ人麿
1209あふことは これやかきりの たひならむ くさのまくらも しもかれにけり馬内侍
1210なれゆくは うきよなれはや すまのあまの しほやきころも まとほなるらむ斎宮女御
1211きりふかき あきののなかの わすれみつ たえまかちなる ころにもあるかな是則
1212よのつねの あきかせならは をきのはに そよとはかりの おとはしてまし安法女
1213あしひきの やまのかけくさ むすひおきて こひやわたらむ あふよしをなみ家持
1214あつまちに かるてふかやの みたれつつ つかのまもなく こひやわたらむ醍醐天皇
1215むすひおきし たもとたにみぬ はなすすき かるともかれし きみしとかすは敦忠
1216しものうへに けさふるゆきの さむけれは かさねてひとを つらしとそおもふ重之
1217ひとりふす あれたるやとの とこのうへに あはれいくよの ねさめしつらむ安法女
1218やましろの よとのわかこも かりにきて そてぬれぬとは かこたさらなむ重之
1219かけておもふ ひともなけれと ゆふされは おもかけたえぬ たまかつらかな貫之
1220いつはりを たたすのもりの ゆふたすき かけつつちかへ われをおもはは貞文
1221いかはかり うれしからまし もろともに こひらるるみも くるしかりせは鳥羽院
1222われはかり つらきをしのふ ひとやあると いまよにあらは おもひあはせむ兼実
1223たたたのめ たとへはひとの いつはりを かさねてこそは またもうらみめ慈円
1224つらしとは おもふものから ふししはの しはしもこりぬ こころなりけり家通
1225たのめこし ことのははかり ととめおきて あさちかつゆと きえなましかは読人不知
1226あはれにも たれかはつゆも おもはまし きえのこるへき わかみならねは雅通(源雅定男)
1227つらきをも うらみぬわれに ならふなよ うきみをしらぬ ひともこそあれ小侍従(太皇太后宮)
1228なにかいとふ よもなからへし さのみやは うきにたへたる いのちなるへき大輔(殷富門院)
1229こひしなむ いのちはなほも をしきかな おなしよにある かひはなけれと頼輔
1230あはれとて ひとのこころの なさけあれは かすならぬには よらぬなけきを西行
1231みをしれは ひとのとかとは おもはぬに うらみかほにも ぬるるそてかな西行
1232よしさらは のちのよとたに たのめおけ つらさにたへぬ みともこそなれ俊成(藤原俊忠男)
1233たのめおかむ たたさはかりを ちきりにて うきよのなかの ゆめになしてよ定家母
1234よひよひに きみをあはれと おもひつつ ひとにはいはて ねをのみそなく実頼
1235きみたにも おもひいてける よひよひを まつはいかなる ここちかはする読人不知
1236こひしさに しぬるいのちを おもひいてて とふひとあらは なしとこたへよ読人不知
1237わかれては きのふけふこそ へたてつれ ちよしもへたる ここちのみする伊尹
1238きのふとも けふともしらす いまはとて わかれしほとの こころまよひに恵子女王
1239たえぬるか かけたにみえは とふへきを かたみのみつは みくさゐにけり道綱母
1240かたかたに ひきわかれつつ あやめくさ あらぬねをやは かけむとおもひし陽明門院
1241ことのはの うつろふたにも あるものを いととしくれの ふりまさるらむ伊勢
1242ふくかせに つけてもとはむ ささかにの かよひしみちは そらにたゆとも道綱母
1243くすのはに あらぬわかみも あきかせの ふくにつけつつ うらみつるかな村上天皇
1244しもさやく のへのくさはに あらねとも なとかひとめの かれまさるらむ醍醐天皇
1245あさちおふる のへやかるらむ やまかつの かきほのくさは いろもかはらす読人不知
1246かすむらむ ほとをもしらす しくれつつ すきにしあきの もみちをそみる斎宮女御
1247いまこむと たのめつつふる ことのはそ ときはにみゆる もみちなりける村上天皇
1248たまほこの みちははるかに あらねとも うたてくもゐに まとふころかな朱雀院
1249おもひやる こころはそらに あるものを なとかくもゐに あひみさるらむ煕子女王(女御)
1250はるさめの ふりしくころか あをやきの いとみたれつつ ひとそこひしき後朱雀院
1251あをやきの いとみたれたる このころは ひとすちにしも おもひよられし生子(女御藤原)
1252あをやきの いとはかたかた なひくとも おもひそめてむ いろそかはらし後朱雀院
1253あさみとり ふかくもあらぬ あをやきは いろかはらしと いかかたのまむ生子(女御藤原)
1254いにしへの あふひとひとは とかむとも なほそのかみの けふそわすれぬ実方
1255かれにける あふひのみこそ かなしけれ あはれとみすや かものみつかき読人不知
1256あふことを はつかにみえし つきかけの おほろけにやは あはれともおもふ村上天皇
1257さらしなや をはすてやまの ありあけの つきすもものを おもふころかな伊勢
1258いつとても あはれとおもふを ねぬるよの つきはおほろけ なくなくそみし中務
1259さらしなの やまよりほかに てるつきも なくさめかねつ このころのそら躬恒
1260あまのとを おしあけかたの つきみれは うきひとしもそ こひしかりける読人不知
1261ほのみえし つきをこひしと かへるさの くもちのなみに ぬれてこしかな読人不知
1262いるかたは さやかなりける つきかけを うはのそらにも まちしよひかな紫式部
1263さしてゆく やまのはもみな かきくもり こころのそらに きえしつきかけ読人不知
1264いまはとて わかれしほとの つきをたに なみたにくれて なかめやはせし経衡
1265おもかけの わすれぬひとに よそへつつ いるをそしたふ あきのよのつき肥後(京極前関白家)
1266うきひとの つきはなにその ゆかりそと おもひなからも うちなかめつつ実定
1267つきのみや うはのそらなる かたみにて おもひもいては こころかよはむ西行
1268くまもなき をりしもひとを おもひいてて こころとつきを やつしつるかな西行
1269ものおもひて なかむるころの つきのいろに いかはかりなる あはれそむらむ西行
1270くもれかし なかむるからに かなしきは つきにおほゆる ひとのおもかけ高倉(八条院)
1271わすらるる みをしるそての むらさめに つれなくやまの つきはいてけり後鳥羽院
1272めくりあはむ かきりはいつと しらねとも つきなへたてそ よそのうきくも良経(九条兼実男)
1273わかなみた もとめてそてに やとれつき さりとてひとの かけはみえねと良経(九条兼実男)
1274こひわたる なみたやそらに くもるらむ ひかりもかはる ねやのつきかけ公経(藤原実宗男)
1275いくめくり そらゆくつきも へたてきぬ ちきりしなかは よそのうきくも通光
1276いまこむと ちきりしことは ゆめなから みしよににたる ありあけのつき通具
1277わすれしと いひしはかりの なこりとて そのよのつきは めくりきにけり有家(藤原重家男)
1278おもひいてて よなよなつきに たつねすは まてとちきりし なかやたえなむ良経(九条兼実男)
1279わするなよ いまはこころの かはるとも なれしそのよの ありあけのつき家隆
1280そのままに まつのあらしも かはらぬを わすれやしぬる ふけしよのつき宗円(法眼弁宗男)
1281ひとそうき たのめぬつきは めくりきて むかしわすれぬ よもきふのやと秀能(藤原秀宗男)
1282わくらはに まちつるよひも ふけにけり さやはちきりし やまのはのつき良経(九条兼実男)
1283こぬひとを まつとはなくて まつよひの ふけゆくそらの つきもうらめし有家(藤原重家男)
1284まつやまと ちきりしひとは つれなくて そてこすなみに のこるつきかけ定家
1285ならひこし たかいつはりも またしらて まつとせしまの にはのよもきふ俊成女
1286あとたえて あさちかすゑに なりにけり たのめしやとの にはのしらつゆ讃岐(二条院)
1287こぬひとを おもひたえたる にはのおもの よもきかすゑそ まつにまされる寂蓮
1288たつねても そてにかくへき かたそなき ふかきよもきの つゆのかことを通光
1289かたみとて ほのふみわけし あともなし こしはむかしの にはのをきはら保季
1290なこりをは にはのあさちに ととめおきて たれゆゑきみか すみうかれけむ行遍
1291わすれすは なれしそてもや こほるらむ ねぬよのとこの しものさむしろ定家
1292かせふかは みねにわかれむ くもをたに ありしなこりの かたみともみよ家隆
1293いはさりき いまこむまての そらのくも つきひへたてて ものおもへとは良経(九条兼実男)
1294おもひいてよ たかかねことの すゑならむ きのふのくもの あとのやまかせ家隆
1295わすれゆく ひとゆゑそらを なかむれは たえたえにこそ くももみえけれ範兼
1296わすれなは いけらむものかと おもひしに それもかなはぬ このよなりけり大輔(殷富門院)
1297うとくなる ひとをなにとて うらむらむ しられすしらぬ をりもありしに西行
1298いまそしる おもひいてよと ちきりしは わすれむとての なさけなりけり西行
1299あひみしは むかしかたりの うつつにて そのかねことを ゆめになせとや通親
1300あはれなそ こころのやみの ゆかりとも みしよのゆめを たれかさためむ公経(藤原実宗男)
1301ちきりきや あかぬわかれに つゆおきし あかつきはかり かたみなれとは通具
1302うらみわひ またしいまはの みなれとも おもひなれにし ゆふくれのそら寂蓮
1303わすれしの ことのはいかに なりにけむ たのめしくれは あきかせそふく丹後(宜秋門院)
1304おもひかね うちぬるよひも ありなまし ふきたにすさへ にはのまつかせ良経(九条兼実男)
1305さらてたに うらみむとおもふ わきもこか ころものすそに あきかせそふく有家(藤原重家男)
1306こころには いつもあきなる ねさめかな みにしむかせの いくよともなく読人不知
1307あはれとて とふひとのなと なかるらむ ものおもふやとの をきのうはかせ西行
1308わかこひは いまをかきりと ゆふまくれ をきふくかせの おとつれてゆく俊恵
1309いまはたた こころのほかに きくものを しらすかほなる をきのうはかせ式子内親王
1310いつもきく ものとやひとの おもふらむ こぬゆふくれの あきかせのこゑ良経(九条兼実男)
1311こころあらは ふかすもあらなむ よひよひに ひとまつやとの にはのまつかせ慈円
1312さとはあれぬ むなしきとこの あたりまて みはならはしの あきかせそふく寂蓮
1313さとはあれぬ をのへのみやの おのつから まちこしよひも むかしなりけり後鳥羽院
1314ものおもはて たたおほかたの つゆにたに ぬるれはぬるる あきのたもとを有家(藤原重家男)
1315くさまくら むすひさためむ かたしらす ならはぬのへの ゆめのかよひち雅経
1316さてもなほ とはれぬあきの ゆふはやま くもふくかせの みねにみゆらむ家隆
1317おもひいる ふかきこころの たよりまて みしはそれとも なきやまちかな秀能(藤原秀宗男)
1318なかめても あはれとおもへ おほかたの そらたにかなし あきのゆふくれ長明
1319ことのはの うつりしあきも すきぬれは わかみしくれと ふるなみたかな通具
1320きえわひぬ うつろふひとの あきのいろに みをこからしの もりのしたつゆ定家
1321こぬひとを あきのけしきや ふけぬらむ うらみによわる まつむしのこゑ寂蓮
1322わかこひは にはのむらはき うらかれて ひとをもみをも あきのゆふくれ慈円
1323そてのつゆも あらぬいろにそ きえかへる うつれはかはる なけきせしまに後鳥羽院
1324むせふとも しらしなこころ かはらやに われのみけたぬ したのけふりは定家
1325しられしな おなしそてには かよふとも たかゆふくれと たのむあきかせ家隆
1326つゆはらふ ねさめはあきの むかしにて みはてぬゆめに のこるおもかけ俊成女
1327こころこそ ゆくへもしらね みわのやま すきのこすゑの ゆふくれのそら慈円
1328さりともと まちしつきひそ うつりゆく こころのはなの いろにまかせて式子内親王
1329いきてよも あすまてひとは つらからし このゆふくれを とははとへかし式子内親王
1330あかつきの なみたやそらに たくふらむ そてにおちくる かねのおとかな慈円
1331つくつくと おもひあかしの うらちとり なみのまくらに なくなくそきく公経(藤原実宗男)
1332たつねみる つらきこころの おくのうみよ しほひのかたの いふかひもなし定家
1333みしひとの おもかけとめよ きよみかた そてにせきもる なみのかよひち雅経
1334ふりにけり しくれはそてに あきかけて いひしはかりを まつとせしまに俊成女
1335かよひこし やとのみちしは かれかれに あとなきしもの むすほほれつつ俊成女
1336しろたへの そてのわかれに つゆおちて みにしむいろの あきかせそふく定家
1337おもひいる みはふかくさの あきのつゆ たのめしすゑや こからしのかせ家隆
1338のへのつゆは いろもなくてや こほれつる そてよりすくる をきのうはかせ慈円
1339こひわひて のへのつゆとは きえぬとも たれかくさはを あはれとはみむ公衡(藤原公能男)
1340とへかしな をはなかもとの おもひくさ しをるるのへの つゆはいかにと通具
1341よのまにも きゆへきものを つゆしもの いかにしのへと たのめおくらむ俊忠
1342あたなりと おもひしかとも きみよりは ものわすれせぬ そてのうはつゆ道信
1343おなしくは わかみもつゆと きえななむ きえなはつらき ことのはもみし元真
1344いまこむと いふことのはも かれゆくに よなよなつゆの なににおくらむ和泉式部
1345あたことの はにおくつゆの きえにしを あるものとてや ひとのとふらむ長能
1346うちはへて いやはねらるる みやきのの こはきかしたは いろにいてしより読人不知
1347はきのはや つゆのけしきも うちつけに もとよりかはる こころあるものを惟成
1348よもすから きえかへりつる わかみかな なみたのつゆに むすほほれつつ花山院
1349きみかせぬ わかたまくらは くさなれや なみたのつゆの よなよなそおく光孝天皇
1350つゆはかり おくらむそては たのまれす なみたのかはの たきつせなれは読人不知
1351おもひやる よそのむらくも しくれつつ あたちのはらに もみちしぬらむ重之
1352みにちかく きにけるものを いろかはる あきをはよそに おもひしかとも顕房室
1353いろかはる はきのしたはを みてもまつ ひとのこころの あきそしらるる相模
1354いなつまは てらさぬよひも なかりけり いつらほのかに みえしかけろふ相模
1355ひとしれぬ ねさめのなみた ふりみちて さもしくれつる よはのそらかな伊尹
1356なみたのみ うきいつるあまの つりさをの なかきよすから こひつつそぬる光孝天皇
1357まくらのみ うくとおもひし なみたかは いまはわかみの しつむなりけり是則
1358おもほえす そてにみなとの さわくかな もろこしふねの よりしはかりに読人不知
1359いもかそて わかれしひより しろたへの ころもかたしき こひつつそぬる読人不知
1360あふことの なみのしたくさ みかくれて しつこころなく ねこそなかるれ読人不知
1361うらにたく もしほのけふり なひかめや よものかたより かせはふくとも読人不知
1362わするらむと おもふこころの うたかひに ありしよりけに ものそかなしき読人不知
1363うきなから ひとをはえしも わすれねは かつうらみつつ なほそこひしき読人不知
1364いのちをは あたなるものと ききしかと つらきかためは なかくもあるかな読人不知
1365いつかたに ゆきかくれなむ よのなかに みのあれはこそ ひともつらけれ読人不知
1366いままてに わすれぬひとは よにもあらし おのかさまさま としのへぬれは読人不知
1367たまみつを てにむすひても こころみむ ぬるくはいしの なかもたのまし読人不知
1368やましろの ゐてのたまみつ てにくみて たのみしかひも なきよなりけり読人不知
1369きみかあたり みつつををらむ いこまやま くもなかくしそ あめはふるとも読人不知
1370なかそらに たちゐるくもの あともなく みのはかなくも なりぬへきかな読人不知
1371くものゐる とほやまとりの よそにても ありとしきけは わひつつそぬる読人不知
1372ひるはきて よるはわかるる やまとりの かけみるときそ ねはなかれける読人不知
1373われもしか なきてそひとに こひられし いまこそよそに こゑをのみきけ読人不知
1374なつのゆく をしかのつのの つかのまも わすれすおもへ いもかこころを人麿
1375なつくさの つゆわけころも きもせぬに なとわかそての かわくときなき人麿
1376みそきする ならのをかはの かはかせに いのりそわたる したにたえしと八代女王
1377うらみつつ ぬるよのそての かわかぬは まくらのしたに しほやみつらむ深養父
1378あしへより みちくるしほの いやましに おもふかきみか わすれかねつる山口女王
1379しほかまの まへにうきたる うきしまの うきておもひの あるよなりけり山口女王
1380いかにねて みえしなるらむ うたたねの ゆめよりのちは ものをこそおもへ赤染衛門
1381うちとけて ねぬものゆゑに ゆめをみて ものおもひまさる こころにもあるかな
1382はるのよの ゆめにあひつと みえつれは おもひたえにし ひとそまたるる伊勢
1383はるのよの ゆめのしなしは つらくとも みしはかりたに あらはたのまむ盛明親王
1384ぬるゆめに うつつのうさも わすられて おもひなくさむ ほとそはかなき斎宮女御
1385かくはかり ねてあかしつる はるのよに いかにみえつる ゆめにかあるらむ能宣
1386なみたかは みもうきぬへき ねさめかな はかなきゆめの なこりはかりに寂蓮
1387あふとみて ことそともなく あけぬなり はかなのゆめの わすれかたみや家隆
1388ゆかちかし あなかまよはの きりきりす ゆめにもひとの みえもこそすれ基俊
1389あはれなり うたたねにのみ みしゆめの なかきおもひに むすほほれなむ俊成(藤原俊忠男)
1390かきやりし そのくろかみの すちことに うちふすほとは おもかけそたつ定家
1391ゆめかとよ みしおもかけも ちきりしも わすれすなから うつつならねは俊成女
1392はかなくそ しらぬいのちを なけきこし わかかねことの かかりけるよに式子内親王
1393すきにける よよのちきりも わすられて いとふうきみの はてそはかなき
1394おもひわひ みしおもかけは さておきて こひせさりけむ をりそこひしき俊成(藤原俊忠男)
1395なかれいてむ うきなにしはし よとむかな もとめぬそての ふちはあれとも相模
1396つらからは こひしきことは わすれなて そへてはなとか しつこころなき馬内侍
1397きみしまれ みちのゆききを さたむらむ すきにしひとを かつわすれつつ馬内侍
1398はなさかぬ くちきのそまの そまひとの いかなるくれに おもひいつらむ仲文
1399おのつから さこそはあれと おもふまに まことにひとの とはすなりぬる経信母
1400ならはねは ひとのとはぬも つらからて くやしきにこそ そてはぬれけれ教盛母
1401なけかしな おもへはひとに つらかりし このよなからの むくひなりけり尾張(皇嘉門院)
1402いかにして いかにこのよに ありへはか しはしもものを おもはさるへき和泉式部
1403うれしくは わするることも ありなまし つらきそなかき かたみなりける深養父
1404あふことの かたみをたにも みてしかな ひとはたゆとも みつつしのはむ素性
1405わかみこそ あらぬかとのみ たとらるれ とふへきひとに わすられしより小町
1406かつらきや くめちにわたす いははしの たえにしなかと なりやはてなむ能宣
1407いまはとも おもひなたえそ のなかなる みつのなかれは ゆきてたつねむ輔親
1408おもひいつや みののをやまの ひとつまつ ちきりしことは いつもわすれす伊勢
1409いてていにし あとたにいまた かはらぬに たかかよひちと いまはなるらむ業平
1410うめのはな かをのみそてに ととめおきて わかおもふひとは おとつれもせぬ業平
1411あまのはら そこともしらぬ おほそらに おほつかなさを なけきつるかな村上天皇
1412なけくらむ こころをそらに みてしかな たつあさきりに みをやなさまし斎宮女御
1413あはすして ふるころほひの あまたあれは はるけきそらに なかめをそする光孝天皇
1414おもひやる こころもそらに しらくもの いてたつかたを しらせやはせぬ致平親王
1415くもゐより とほやまとりの なきてゆく こゑほのかなる こひもするかな躬恒
1416くもゐなる かりたになきて くるあきに なとかはひとの おとつれもせぬ醍醐天皇
1417はるゆきて あきまてとやは おもひけむ かりにはあらす ちきりしものを村上天皇
1418はつかりの はつかにききし ことつても くもちにたえて わふるころかな高明
1419をみころも こそはかりこそ なれさらめ けふのひかけの かけてたにとへ惟成
1420すみよしの こひわすれくさ たねたえて なきよにあへる われそかなしき元真
1421みつのうへの はかなきかすも おもほえす ふかきこころし そこにとまれは村上天皇
1422なかきよの つきぬなけきの たえさらは なににいのちを かへてわすれむ伊尹
1423こころにも まかせさりける いのちもて たのめもおかし つねならぬよを敦忠
1424よのうきも ひとのつらきも しのふるに こひしきにこそ おもひわひぬれ元真
1425かすならは かからましやは よのなかに いとかなしきは しつのをたまき
1426ひとならは おもふこころを いひてまし よしやさこそは しつのをたまき惟成
1427わかよはひ おとろへゆけは しろたへの そてのなれにし きみをしそおもふ読人不知
1428いまよりは あはしとすれや しろたへの わかころもての かわくときなき読人不知
1429たまくしけ あけまくをしき あたらよを ころもてかれて ひとりかもねむ読人不知
1430あふことを おほつかなくて すくすかな くさはのつゆの おきかはるまて読人不知
1431あきのたの ほむけのかせの かたよりに われはものおもふ つれなきものを読人不知
1432はしたかの のもりのかかみ えてしかな おもひおもはす よそなからみむ読人不知
1433おほよとの まつはつらくも あらなくに うらみてのみも かへるなみかな読人不知
1434しらなみは たちさわくとも こりすまの うらのみるめは からむとそおもふ読人不知
1435さしてゆく かたはみなとの うらたかみ うらみてかへる あまのつりふね読人不知
1436としくれし なみたのつらら とけにけり こけのそてにも はるやたつらむ俊成(藤原俊忠男)
1437やまかけや さらてはにはに あともなし はるそきにける ゆきのむらきえ有家(藤原重家男)
1438あはれなり むかしのひとを おもふには きのふののへに みゆきせましや雅信
1439ひきかへて のへのけしきは みえしかと むかしをこふる まつはなかりき円融院
1440はるくれは そてのこほりも とけにけり もりくるつきの やとるはかりに行尊
1441たにふかみ はるのひかりの おそけれは ゆきにつつめる うくひすのこゑ道真
1442ふるゆきに いろまとはせる うめのはな うくひすのみや わきてしのはむ道真
1443おそくとく つひにさきぬる うめのはな たかうゑおきし たねにかあるらむ忠平
1444ももしきに かはらぬものは うめのはな をりてかさせる にほひなりけり公忠(源国紀男)
1445いろかをは おもひもいれす うめのはな つねならぬよに よそへてそみる花山院
1446うめのはな なににほふらむ みるひとの いろをもかをも わすれぬるよに大弐三位
1447はるかすみ たなひきわたる をりにこそ かかるやまへは かひもありけれ兼家
1448むらさきの くもにもあらて はるかすみ たなひくやまの かひはなにそも円融院
1449みちのへの くちきのやなき はるくれは あはれむかしと しのはれそする道真
1450むかしみし はるはむかしの はるなから わかみひとつの あらすもあるかな深養父
1451かきこしに みるあたひとの いへさくら はなちるはかり ゆきてをらはや円融院
1452をりにこと おもひやすらむ はなさくら ありしみゆきの はるをこひつつ朝光
1453よろつよを ふるにかひある やとなれや みゆきとみえて はなそちりくる肥後(京極前関白家)
1454えたことの すゑまてにほふ はななれは ちるもみゆきと みゆるなるらむ師通
1455はるをへて みゆきになるる はなのかけ ふりゆくみをも あはれとやおもふ定家
1456なれなれて みしはなこりの はるそとも なとしらかはの はなのしたかけ雅経
1457ふるさとと おもひなはてそ はなさくら かかるみゆきに あふよありけり読人不知
1458いさやまた つきひのゆくも しらぬみは はなのはるとも けふこそはみれ師光(源師頼男)
1459をるひとの それなるからに あちきなく みしわかやとの はなのかそする和泉式部
1460みてもまた またもみまくの ほしかりし はなのさかりは すきやしぬらむ高光
1461おいにける しらかもはなも もろともに けふのみゆきに ゆきとみえけり俊房
1462さくらはな をりてみしにも かはらぬに ちらぬはかりそ しるしなりける忠家(藤原長家男)
1463さもあらはあれ くれゆくはるも くものうへに ちることしらぬ はなしにほはは経信
1464さくらはな すきゆくはるの ともとてや かせのおとせぬ よるもちるらむ忠教(藤原師実男)
1465をしめとも つねならぬよの はななれは いまはこのみを にしにもとめむ鳥羽院
1466いまはわれ よしののやまの はなをこそ やとのものとも みるへかりけれ俊成(藤原俊忠男)
1467はるくれは なほこのよこそ しのはるれ いつかはかかる はなをみるへき俊成(藤原俊忠男)
1468てるつきも くものよそにそ ゆきめくる はなそこのよの ひかりなりける俊成(藤原俊忠男)
1469みせはやな しかのからさき ふもとなる なからのやまの はるのけしきを慈円
1470しはのとに にほはむはなは さもあらはあれ なかめてけりな うらめしのみや慈円
1471よのなかを おもへはなへて ちるはなの わかみをさても いつちかもせむ西行
1472みはとめつ こころはおくる やまさくら かせのたよりに おもひおこせよ安法
1473さくらあさの をふのうらなみ たちかへり みれともあかす やまなしのはな俊頼(源経信男)
1474しらなみの こゆらむすゑの まつやまは はなとやみゆる はるのよのつき加賀左衛門
1475おほつかな かすみたつらむ たけくまの まつのくまもる はるのよのつき加賀左衛門
1476よをいとふ よしののおくの よふことり ふかきこころの ほとやしるらむ幸清
1477をりにあへは これもさすかに あはれなり をたのかはつの ゆふくれのこゑ忠良
1478はるのあめの あまねきみよを たのむかな しもにかれゆく くさはもらすな有家(藤原重家男)
1479すめらきの こたかきかけに かくれても なほはるさめに ぬれむとそおもふ実行
1480やへなから いろもかはらぬ やまふきの なとここのへに さかすなりにし実方
1481ここのへに あらてやへさく やまふきの いはぬいろをは しるひともなし円融院
1482おのかなみに おなしすゑはそ しをれぬる ふちさくたこの うらめしのみや慈円
1483からころも はなのたもとに ぬきかへよ われこそはるの いろはたちつれ道長
1484からころも たちかはりぬる はるのよに いかてかはなの いろをみるへき上東門院
1485かみよには ありもやしけむ さくらはな けふのかさしに をれるためしは紫式部
1486ほとときす そのかみやまの たひまくら ほのかたらひし そらそわすれぬ式子内親王
1487たちいつる なこりありあけの つきかけに いととかたらふ ほとときすかな読人不知
1488いくちよと かきらぬきみか みよなれは なほをしまるる けさのあけほの家通
1489うめかえに をりたかへたる ほとときす こゑのあやめも たれかわくへき左近(三条院女蔵人)
1490うちわたす をちかたひとに こととへと こたへぬからに しるきはなかな小弁
1491さみたれの そらたにすめる つきかけに なみたのあめは はるるまもなし赤染衛門
1492さみたれは まやののきはの あまそそき あまりなるまて ぬるるそてかな俊成(藤原俊忠男)
1493ひとりぬる やとのとこなつ あさなあさな なみたのつゆに ぬれぬひそなき花山院
1494よそへつつ みれとつゆたに なくさます いかにかすへき なてしこのはな恵子女王
1495おもひあらは こよひのそらは とひてまし みえしやつきの ひかりなりけむ和泉式部
1496おもひあれは つゆはたもとに まかふかと あきのはしめを たれにとはまし大納言(七条院)
1497そてのうらの なみふきかへす あきかせに くものうへまて すすしからなむ中務
1498あきやくる つゆやまかふと おもふまて あるはなみたの ふるにそありける有常
1499めくりあひて みしやそれとも わかぬまに くもかくれにし よはのつきかけ紫式部
1500つきかけの やまのはわけて かくれなは そむくうきよを われやなかめむ三条院
1501やまのはを いてかてにする つきまつと ねぬよのいたく ふけにけるかな為時(藤原惟正男)
1502うきくもは たちかくせとも ひまもりて そらゆくつきの みえもするかな伊勢大輔
1503うきくもに かくれてとこそ おもひしか ねたくもつきの ひまもりにける正光
1504つきをなと またれのみすと おもひけむ けにやまのはは いてうかりけり範兼
1505おもひいつる ひともあらしの やまのはに ひとりそいりし ありあけのつき静賢
1506わかのうらに いへのかせこそ なけれとも なみふくいろは つきにみえけり範光
1507よもすから うらこくふねは あともなし つきそのこれる しかのからさき丹後(宜秋門院)
1508やまのはに おもひもいらし よのなかは とてもかくても ありあけのつき盛方
1509わすれしよ わするなとたに いひてまし くもゐのつきの こころありせは俊成(藤原俊忠男)
1510いかにして そてにひかりの やとるらむ くもゐのつきは へたてこしみを俊成(藤原俊忠男)
1511こころには わするるときも なかりけり みよのむかしの くものうへのつき公衡(藤原公能男)
1512むかしみし くもゐをめくる あきのつき いまいくとせか そてにやとさむ讃岐(二条院)
1513うきみよに なからへはなほ おもひいてよ たもとにちきる ありあけのつき経通(藤原泰通男)
1514みやこにも ひとやまつらむ いしやまの みねにのこれる あきのよのつき長能
1515あはちにて あはとはるかに みしつきの ちかきこよひは こころからかも躬恒
1516いたつらに ねてはあかせと もろともに きみかこぬよの つきはみさりき道済
1517あまのはら はるかにひとり なかむれは たもとにつきの いてにけるかな増基
1518たのめこし ひとをまつちの やまかせに さよふけしかは つきもいりにき読人不知
1519つきみはと いひしはかりの ひとはこて まきのとたたく にはのまつかせ良経(九条兼実男)
1520やまさとに つきはみるやと ひとはこす そらゆくかせそ このはをもとふ慈円
1521ありあけの つきのゆくへを なかめてそ のてらのかねは きくへかりける慈円
1522やまのはを いててもまつの このまより こころつくしの ありあけのつき業清(藤原良清男)
1523よもすから ひとりみやまの まきのはに くもるもすめる ありあけのつき長明
1524おくやまの このはのおつる あきかせに たえたえみねの くもそのこれる秀能(藤原秀宗男)
1525つきすめは よものうきくも そらにきえて みやまかくれに ゆくあらしかな秀能(藤原秀宗男)
1526なかめわひぬ しはのあみとの あけかたに やまのはちかく のこるつきかけ猷円
1527あかつきの つきみむとしも おもはねと みしひとゆゑに なかめられつつ花山院
1528ありあけの つきはかりこそ かよひけれ くるひとなしの やとのにはにも伊勢大輔
1529すみなれし ひとかけもせぬ わかやとに ありあけのつきの いくよともなく和泉式部
1530すむひとも あるかなきかの やとならし あしまのつきの もるにまかせて経信
1531おもひきや わかれしあきに めくりあひて またもこのよの つきをみむとは俊成(藤原俊忠男)
1532つきをみて こころうかれし いにしへの あきにもさらに めくりあひぬる西行
1533よもすから つきこそそてに やとりけれ むかしのあきを おもひいつれは西行
1534つきのいろに こころをきよく そめましや みやこをいてぬ わかみなりせは西行
1535すつとならは うきよをいとふ しるしあらむ われみはくもる あきのよのつき西行
1536ふけにける わかみのかけを おもふまに はるかにつきの かたふきにける西行
1537なかめして すきにしかたを おもふまに みねよりみねに つきはうつりぬ覚性法親王
1538あきのよの つきにこころを なくさめて うきよにとしの つもりぬるかな道経
1539あきをへて つきをなかめむ みとなれり いそちのやみを なになけくらむ慈円
1540なかめても むそちのあきは すきにけり おもへはかなし やまのはのつき隆信
1541こころある ひとのみあきの つきをみは なにをうきみの おもひいてにせむ光行
1542みのうさを つきやあらぬと なかむれは むかしなからの かけそもりくる讃岐(二条院)
1543ありあけの つきよりほかに たれをかは やまちのともと ちきりおくへき寂超
1544みやこなる あれたるやとに むなしくや つきにたつぬる ひとかへるらむ嘉言
1545おもひやれ なにをしのふと なけれとも みやこおほゆる ありあけのつき惟明親王
1546ありあけの おなしなかめは きみもとへ みやこのほかも あきのやまさと式子内親王
1547あまのとを おしあけかたの くもまより かみよのつきの かけそのこれる良経(九条兼実男)
1548くもをのみ つらきものとて あかすよの つきよこすゑに をちかたのやま忠経
1549いりやらて よををしむつきの やすらひに ほのほのあくる やまのはそうき保季
1550あやしくそ かへさはつきの くもりにし むかしかたりに よやふけにけむ行遍
1551ふるさとの やともるつきに こととはむ われをはしるや むかしすみきと寂超
1552すたきけむ むかしのひとは かけたえて やともるものは ありあけのつき忠盛
1553やへむくら しけれるやとは ひともなし まはらにつきの かけそすみける匡房
1554かもめゐる ふちえのうらの おきつすに よふねいさよふ つきのさやけさ顕仲(源顕房男)
1555なにはかた しほひにあさる あしたつも つきかたふけは こゑのうらむる俊恵
1556わかのうらに つきのてしほの さすままに よるなくつるの こゑそかなしき慈円
1557もしほくむ そてのつきかけ おのつから よそにあかさぬ すまのうらひと定家
1558あかしかた いろなきひとの そてをみよ すすろにつきも やとるものかは秀能(藤原秀宗男)
1559なかめよと おもはてしもや かへるらむ つきまつなみの あまのつりふね具親
1560しめおきて いまやとおもふ あきやまの よもきかもとに まつむしのなく俊成(藤原俊忠男)
1561あれわたる あきのにはこそ あはれなれ ましてきえなむ つゆのゆふくれ俊成(藤原俊忠男)
1562くもかかる とほやまはたの あきされは おもひやるたに かなしきものを西行
1563かせそよく しののをささの かりのよを おもふねさめに つゆそこほるる守覚法親王
1564あさちふや そてにくちにし あきのしも わすれぬゆめを ふくあらしかな通光
1565くすのはの うらみにかへる ゆめのよを わすれかたみの のへのあきかせ俊成女
1566しらつゆは おきにけらしな みやきのの もとあらのはきの すゑたわむまて允仲
1567をみなへし さかりのいろを みるからに つゆのわきける みこそしらるれ紫式部
1568しらつゆは わきてもおかし をみなへし こころからにや いろのそむらむ道長
1569やまさとに くすはひかかる まつかきの ひまなくものは あきそかなしき好忠
1570ももとせの あきのあらしは すくしきぬ いつれのくれの つゆときえなむ安法
1571あきはつる はつかのやまの さひしきに ありあけのつきを たれとみるらむ匡房
1572はなすすき あきのすゑはに なりぬれは ことそともなく つゆそこほるる行宗
1573よはにふく あらしにつけて おもふかな みやこもかくや あきはさひしき実定
1574よのなかに あきはてぬれは みやこにも いまはあらしの おとのみそする顕長
1575うつろふは こころのほかの あきなれは いまはよそにそ きくのうへのつゆ冷泉院
1576たのもしな ののみやひとの ううるはな しくるるつきに あへすなるとも
1577やまかはの いはゆくみつも こほりして ひとりくたくる みねのまつかせ読人不知
1578あさことに みきはのこほり ふみわけて きみにつかふる みちそかしこき通親
1579きみかよに あふくまかはの うもれきも こほりのしたに はるをまちけり家隆
1580あともなく ゆきふるさとは あれにけり いつれむかしの かきねなるらむ赤染衛門
1581つゆのいのち きえなましかは かくはかり ふるしらゆきを なかめましやは後白河院
1582そまやまの こすゑにおもる ゆきをれに たえぬなけきの みをくたくらむ俊成(藤原俊忠男)
1583ときすきて しもにきえにし はななれと けふはむかしの ここちこそすれ朱雀院
1584ほともなく さめぬるゆめの うちなれと そのよににたる はなのいろかな公任
1585みしゆめを いつれのよそと おもふまに をりをわすれぬ はなのかなしさ御形宣旨
1586おいぬとも またもあはむと ゆくとしに なみたのたまを たむけつるかな俊成(藤原俊忠男)
1587おほかたに すくるつきひを なかめしは わかみにとしの つもるなりけり慈覚
1588しらなみの はままつかえの たむけくさ いくよまてにか としのへぬらむ河島皇子
1589やましろの いはたのをのの ははそはら みつつやきみか やまちこゆらむ宇合
1590あしのやの なたのしほやき いとまなみ つけのをくしも ささすきにけり業平
1591はるるよの ほしかかはへの ほたるかも わかすむかたに あまのたくひか業平
1592しかのあまの しほやくけふり かせをいたみ たちはのほらて やまにたなひく読人不知
1593なにはめの ころもほすとて かりてたく あしひのけふり たたぬひそなき貫之
1594としふれは くちこそまされ はしはしら むかしなからの なたにかはらて忠岑
1595はるのひの なからのはまに ふねとめて いつれかはしと とへとこたへぬ恵慶
1596くちにける なからのはしを きてみれは あしのかれはに あきかせそふく実定
1597おきつかせ よはにふくらし なにはかた あかつきかけて なみそよすなる定頼
1598すまのうらの なきたるあさは めもはるに かすみにまかふ あまのつりふね孝善
1599あきかせの せきふきこゆる たひことに こゑうちそふる すまのうらなみ忠見
1600すまのせき ゆめをとほさぬ なみのおとを おもひもよらて やとをかりけり慈円
1601ひとすまぬ ふはのせきやの いたひさし あれにしのちは たたあきのかせ良経(九条兼実男)
1602あまをふね とまふきかへす うらかせに ひとりあかしの つきをこそみれ俊頼(源経信男)
1603わかのうらを まつのはこしに なかむれは こすゑによする あまのつりふね寂蓮
1604みつのえの よしののみやは かみさひて よはひたけたる うらのまつかせ季能
1605いまさらに すみうしとても いかならむ なたのしほやの ゆふくれのそら秀能(藤原秀宗男)
1606おほよとの うらにたつなみ かへらすは まつのかはらぬ いろをみましや斎宮女御
1607まつひとは こころゆくとも すみよしの さとにとのみは おもはさらなむ後冷泉院
1608すみよしの まつはまつとも おもほえて きみかちとせの かけそこひしき大弐三位
1609うちよする なみのこゑにて しるきかな ふきあけのはまの あきのはつかせ成仲
1610おきつかせ よさむになれや たこのうら あまのもしほひ たきすさふらむ越前(嘉陽門院)
1611みわたせは かすみのうちも かすみけり けふりたなひく しほかまのうら家隆
1612けふとてや いそなつむらむ いせしまや いちしのうらの あまのをとめこ俊成(藤原俊忠男)
1613すすかやま うきよをよそに ふりすてて いかになりゆく わかみなるらむ西行
1614よのなかを こころたかくも いとふかな ふしのけふりを みのおもひにて慈円
1615かせになひく ふしのけふりの そらにきえて ゆくへもしらぬ わかこころかな西行
1616ときしらぬ やまはふしのね いつとてか かのこまたらに ゆきのふるらむ業平
1617はるあきも しらぬときはの やまさとは すむひとさへや おもかはりせぬ元方
1618はなならて たたしはのとを さしておもふ こころのおくも みよしののやま慈円
1619よしのやま やかていてしと おもふみを はなちりなはと ひとやまつらむ西行
1620いとひても なほいとはしき よなりけり よしののおくの あきのゆふくれ家衡
1621ひとすちに なれなはさても すきのいほに よなよなかはる かせのおとかな通具
1622たれかはと おもひたえても まつにのみ おとつれてゆく かせはうらめし有家(藤原重家男)
1623やまさとは よのうきよりも すみわひぬ ことのほかなる みねのあらしに丹後(宜秋門院)
1624たきのおと まつのあらしも なれぬれは うちぬるほとの ゆめはみてまし家隆
1625ことしけき よをのかれにし みやまへに あらしのかせも こころしてふけ寂然
1626おくやまの こけのころもに くらへみよ いつれかつゆの おきまさるとも師氏(藤原忠平男)
1627しらつゆの あしたゆふへに おくやまの こけのころもは かせもさはらす高光
1628よのなかを そむきにとては こしかとも なほうきことは おほはらのさと読人不知
1629みをはかつ をしほのやまと おもひつつ いかにさためて ひとのいりけむ能宣
1630こけのいほり さしてきつれと きみまさて かへるみやまの みちのつゆけさ恵慶
1631あれはてて かせもさはらぬ こけのいほに われはなくとも つゆはもりけむ読人不知
1632やまふかく さこそこころは かよふとも すまてあはれを しらむものかは西行
1633やまかけに すまぬこころは いかなれや をしまれている つきもあるよに西行
1634たちいてて つまきをりこし かたをかの ふかきやまちと なりにけるかな寂蓮
1635おくやまの おとろかしたも ふみわけて みちあるよそと ひとにしらせむ後鳥羽院
1636なからへて なほきみかよを まつやまの まつとせしまに としそへにける讃岐(二条院)
1637いまはとて つまきこるへき やとのまつ ちよをはきみと なほいのるかな俊成(藤原俊忠男)
1638われなから おもふかものを とはかりに そてにしくるる にはのまつかせ有家(藤原重家男)
1639よをそむく ところとかきく おくやまは ものおもひにそ いるへかりける道命
1640よをそむく かたはいつくに ありぬへし おほはらやまは すみよかりきや和泉式部
1641おもふこと おほはらやまの すみかまは いととなけきの かすをこそつめ少将井尼
1642たれすみて あはれしるらむ やまさとの あめふりすさふ ゆふくれのそら西行
1643しをりせて なほやまふかく わけいらむ うきこときかぬ ところありやと西行
1644かさしをる みわのしけやま かきわけて あはれとそおもふ すきたてるかと大輔(殷富門院)
1645いつとなく をくらのやまの かけをみて くれぬとひとの いそくなるかな道命
1646さかのやま ちよのふるみち あととめて またつゆわくる もちつきのこま定家
1647さほかはの なかれひさしき みなれとも うきせにあひて しつみぬるかな忠実
1648かはるせも ありけるものを うちかはの たえぬはかりも なけきけるかな兼家
1649むかしより たえせぬかはの すゑなれは よとむはかりを なになけくらむ円融院
1650もののふの やそうちかはの あしろきに いさよふなみの ゆくへしらすも人麿
1651わかよをは けふかあすかと まつかひの なみたのたきと いつれたかけむ行平
1652みなかみの そらにみゆるは しらくもの たつにまかへる ぬのひきのたき師通
1653ひさかたの あまつをとめか なつころも くもゐにさらす ぬのひきのたき有家(藤原重家男)
1654むかしきく あまのかはらを たつねきて あとなきみつを なかむはかりそ良経(九条兼実男)
1655あまのかは かよふうききに こととはむ もみちのはしは ちるやちらすや実方
1656まきのいたも こけむすはかり なりにけり いくよへぬらむ せたのなかはし匡房
1657さためなき なにはたてれと あすかかは はやくわたりし せにこそありけれ中務
1658やまさとに ひとりなかめて おもふかな よにすむひとの こころつよさを慈円
1659やまさとに うきよいとはむ とももかな くやしくすきし むかしかたらむ西行
1660やまさとは ひとこさせしと おもはねと とはるることそ うとくなりゆく西行
1661くさのいほを いとひてもまた いかかせむ つゆのいのちの かかるかきりは慈円
1662わくらはに なとかはひとの とはさらむ おとなしかはに すむみなりとも行尊
1663よをそむく やまのみなみの まつかせに こけのころもや よさむなるらむ安法
1664いつかわれ こけのたもとに つゆおきて しらぬやまちの つきをみるへき家隆
1665いまはわれ まつのはしらの すきのいほに とつへきものを こけふかきそて式子内親王
1666しきみつむ やまちのつゆに ぬれにけり あかつきおきの すみそめのそて小侍従(太皇太后宮)
1667わすれしの ひとたにとはぬ やまちかな さくらはゆきに ふりかはれとも良経(九条兼実男)
1668かけやとす つゆのみしけく なりはてて くさにやつるる ふるさとのつき雅経
1669けふりたえて やくひともなき すみかまの あとのなけきを たれかこるらむ重保
1670やそちあまり にしのむかへを まちかねて すみあらしたる しはのいほりそ西日
1671やまさとに とひくるひとの ことくさは このすまひこそ うらやましけれ慈円
1672をののえの くちしむかしは とほけれと ありしにあらぬ よをもふるかな式子内親王
1673いかにせむ しつかそのふの おくのたけ かきこもるとも よのなかそかし俊成(藤原俊忠男)
1674あけくれは むかしをのみそ しのふくさ はすゑのつゆに そてぬらしつつ成仲
1675をかのへの さとのあるしを たつぬれは ひとはこたへす やまおろしのかせ慈円
1676ふるはたの そはのたつきに ゐるはとの ともよふこゑの すこきゆふくれ西行
1677やまかつの かたをかかけて しむるのの さかひにたてる たまのをやなき西行
1678しけきのを いくひとむらに わけなして さらにむかしを しのひかへさむ西行
1679むかしみし にはのこまつに としふりて あらしのおとを こすゑにそきく西行
1680すみなれし わかふるさとは このころや あさちかはらに うつらなくらむ行尊
1681ふるさとは あさちかすゑに なりはてて つきにのこれる ひとのおもかけ良経(九条兼実男)
1682これやみし むかしすみけむ あとならむ よもきかつゆに つきのかかれる西行
1683かけにとて たちかくるれは からころも ぬれぬあめふる まつのこゑかな貫之
1684いそのかみ ふりにしひとを たつぬれは あれたるやとに すみれつみけり能因
1685いにしへを おもひやりてそ こひわたる あれたるやとの こけのいしはし恵慶
1686わくらはに とはれしひとも むかしにて それよりにはの あとはたえにき定家
1687なけきこる みはやまなから すくせかし うきよのなかに なにかへるらむ赤染衛門
1688あきされは かりひとこゆる たつたやま たちてもゐても ものをしそおもふ人麿
1689あさくらや きのまろとのに わかをれは なのりをしつつ ゆくはたかこそ天智天皇
1690あしひきの こなたかなたに みちはあれと みやこへいさと いふひとそなき道真
1691あまのはら あかねさしいつる ひかりには いつれのぬまか さえのこるへき道真
1692つきことに なかるとおもひし ますかかみ にしのそらにも とまらさりけり道真
1693やまわかれ とひゆくくもの かへりくる かけみるときは なほたのまれぬ道真
1694きりたちて てるひのもとは みえすとも みはまとはれし よるへありやと道真
1695はなとちり たまとみえつつ あさむけは ゆきふるさとそ ゆめにみえける道真
1696おいぬとて まつはみとりそ まさりける わかくろかみの ゆきのさむさに道真
1697つくしにも むらさきおふる のへはあれと なきなかなしむ ひとそきこえぬ道真
1698かるかやの せきもりにのみ みえつるは ひともゆるさぬ みちへなりけり道真
1699うみならす たたへるみつの そこまてに きよきこころは つきそてらさむ道真
1700ひこほしの ゆきあひをまつ かささきの わたせるはしを われにかさなむ道真
1701なかれきと たつしらなみと やくしほと いつれかからき わたつみのそこ道真
1702ささなみの ひらやまかせの うみふけは つりするあまの そてかへるみゆ読人不知
1703しらなみの よするなきさに よをつくす あまのこなれは やともさためす読人不知
1704ふねのうち なみのしたにそ おいにける あまのしわさも いとまなのよや良経(九条兼実男)
1705さすらふる みはさためたる かたもなし うきたるふねの なみにまかせて匡房
1706いかにせむ みをうきふねの にをおもみ つひのとまりや いつくなるらむ増賀
1707あしかもの さわくいりえの みつのえの よにすみかたき わかみなりけり人麿
1708あしかもの はかせになひく うきくさの さためなきよを たれかたのまむ能宣
1709おいにける なきさのまつの ふかみとり しつめるかけを よそにやはみる
1710あしひきの やましたみつに かけみれは まゆしろたへに われおいにけり能因
1711なれみてし はなのたもとを うちかへし のりのころもを たちそかへつる道長
1712そのかみの たまのかさしを うちかへし いまはころもの うらをたのまむ東三条院
1713つきもせぬ ひかりのまにも まきれなて おいてかへれる かみのつれなさ太皇太后宮(冷泉院)
1714かはるらむ ころものいろを おもひやる なみたやうらの たまにまかはむ枇杷皇太后宮
1715まかふらむ ころものたまに みたれつつ なほまたさめぬ ここちこそすれ上東門院
1716しほのまに よものうらうら たつぬれと いまはわかみの いふかひもなし和泉式部
1717いにしへの あまやけふりと なりぬらむ ひとめもみえぬ しほかまのうら一条院皇后宮
1718みやこより くものやへたつ おくやまの よかはのみつは すみよかるらむ村上天皇
1719ももしきの うちのみつねに こひしくて くものやへたつ やまはすみうし高光
1720ゆめかとも なにかおもはむ うきよをは そむかさりけむ ほとそくやしき惟喬親王
1721くもゐとふ かりのねちかき すまひにも なほたまつさは かけすやありけむ斎宮女御
1722しらつゆは おきてかはれと ももしきの うつろふあきは ものそかなしき伊勢
1723あまつかせ ふけひのうらに ゐるたつの なとかくもゐに かへらさるへき清正
1724いにしへの なれしくもゐを しのふとや かすみをわけて きみたつねけむ読人不知
1725おほよとの うらにかりほす みるめたに かすみにたえて かへるかりかね定家
1726はまちとり ふみおくあとの つもりなは かひあるうらに あはさらめやは後白河院
1727たきつせに ひとのこころを みることは むかしにいまも かはらさりけり後朱雀院
1728あさからぬ こころそみゆる おとはかは せきいれしみつの なかれならねと内侍(周防)
1729ことのはの なかをなくなく たつぬれは むかしのひとに あひみつるかな忠見
1730ひとりねの こよひもあけぬ たれとしも たのまはこそは こぬもうらみめ為忠(長良流藤原知信男)
1731くさわけて たちゐるそての うれしさに たえすなみたの つゆそこほるる赤染衛門
1732うれしさは わすれやはする しのふくさ しのふるものを あきのゆふくれ伊勢大輔
1733あきかせの おとせさりせは しらつゆの のきのしのふに かからましやは経信
1734しのふくさ いかなるつゆか おきつらむ けさはねもみな あらはれにけり済時
1735あさちふを たつねさりせは しのふくさ おもひおきけむ つゆをみましや朝光
1736なからへむ としもおもはぬ つゆのみの さすかにきえむ ことをこそおもへ読人不知
1737つゆのみの きえはわれこそ さきたため おくれむものか もりのしたくさ小馬命婦(藤原棟町女)
1738いのちさへ あらはみつへき みのはてを しのはむひとの なきそかなしき和泉式部
1739さためなき むかしかたりを かそふれは わかみもかすに いりぬへきかな行尊
1740よのなかの はれゆくそらに ふるしもの うきみはかりそ おきところなき慈円
1741たのみこし わかふるてらの こけのしたに いつかくちなむ なこそをしけれ慈円
1742くりかへし わかみのとかを もとむれは きみもなきよに めくるなりけり行尊
1743うしといひて よをひたふるに そむかねは ものおもひしらぬ みとやなりなむ元輔(清原春光男)
1744そむけとも あめのしたをし はなれねは いつくにもふる なみたなりけり読人不知
1745おほそらに てるひのいろを いさめても あめのしたには たれかすむへき内匠(女蔵人)
1746かくしつつ ゆふへのくもと なりもせは あはれかけても たれかしのはむ内侍(周防)
1747おもはねと よをそむかむと いふひとの おなしかすにや われもなりなむ慈円
1748かすならぬ みをもこころの もちかほに うかれてはまた かへりきにけり西行
1749おろかなる こころのひくに まかせても さてさはいかに つひのおもひは西行
1750としつきを いかてわかみに おくりけむ きのふのひとも けふはなきよに西行
1751うけかたき ひとのすかたに うかひいてて こりすやたれも またしつむへき西行
1752そむきても なほうきものは よなりけり みをはなれたる こころならねは寂蓮
1753みのうさを おもひしらすは いかかせむ いとひなからも なほすくすかな寂蓮
1754なにことを おもふひとそと ひととはは こたへぬさきに そてそぬるへき慈円
1755いたつらに すきにしことや なけかれむ うけかたきみの ゆふくれのそら慈円
1756うちたえて よにふるみには あらねとも あらぬすちにも つみそかなしき慈円
1757やまさとに ちきりしいほや あれぬらむ またれむとたに おもはさりしを慈円
1758そてにおく つゆをはつゆと しのへとも なれゆくつきや いろをしるらむ通具
1759きみかよに あはすはなにを たまのをの なかくとまては をしまれしみを定家
1760おほかたの あきのねさめの なかきよも きみをそいのる みをおもふとて家隆
1761わかのうらや おきつしほあひに うかひいつる あはれわかみの よるへしらせよ家隆
1762そのやまと ちきらぬつきも あきかせも すすむるそてに つゆこほれつつ家隆
1763きみかよに あへるはかりの みちはあれと みをはたのます ゆくすゑのそら雅経
1764をしむとも なみたにつきも こころから なれぬるそてに あきをうらみて俊成女
1765うきしつみ こむよはさても いかにそと こころにとひて こたへかねぬる良経(九条兼実男)
1766われなから こころのはてを しらぬかな すてられぬよの またいとはしき良経(九条兼実男)
1767おしかへし ものをおもふは くるしきに しらすかほにて よをやすきまし良経(九条兼実男)
1768なからへて よにすむかひは なけれとも うきにかへたる いのちなりけり守覚法親王
1769よをすつる こころはなほそ なかりける うきをうしとは おもひしれとも兼宗
1770すてやらぬ わかみそつらき さりともと おもふこころに みちをまかせて公衡(藤原公能男)
1771うきなから あれはあるよに ふるさとの ゆめをうつつに さましかねても読人不知
1772うきなから なほをしまるる いのちかな のちのよとても たのみなけれは師光(源師頼男)
1773さりともと たのむこころの ゆくすゑも おもへはしらぬ よにまかすらむ季保
1774つくつくと おもへはやすき よのなかを こころとなけく わかみなりけり長延
1775かはふねの のほりわつらふ つなてなは くるしくてのみ よをわたるかな頼輔
1776おいらくの つきひはいとと はやせかは かへらぬなみに ぬるるそてかな覚弁
1777かきなかす ことのはをたに しつむなよ みこそかくても やまかはのみつ行能
1778みれはまつ いととなみたそ もろかつら いかにちきりて かけはなれけむ長明
1779おなしくは あれないにしへ おもひいての なけれはとても しのはすもなし季景
1780いつくにも すまれすはたた すまてあらむ しはのいほりの しはしなるよに西行
1781つきのゆく やまにこころを おくりいれて やみなるあとの みをいかにせむ西行
1782おもふことを なととふひとの なかるらむ あふけはそらに つきそさやけき慈円
1783いかにして いままてよには ありあけの つきせぬものを いとふこころは慈円
1784うきよいてし つきひのかけの めくりきて かはらぬみちを またてらすらむ慈円
1785ひとしれす そなたをしのふ こころをは かたふくつきに たくへてそやる承仁法親王
1786みちのくの いはてしのふは えそしらぬ かきつくしてよ つほのいしふみ頼朝
1787けふまては ひとをなけきて くれにけり いつみのうへに ならむとすらむ嘉言
1788みちしはの つゆにあらそふ わかみかな いつれかまつは きえむとすらむ実頼
1789なにとかや かへにおふなる くさのなよ それにもたくふ わかみなりけり皇嘉門院
1790こしかたを さなからゆめに なしつれは さむるうつつの なきそかなしき資実
1791ちとせふる まつたにくつる よのなかに けふともしらて たてるわれかな性空
1792かすならて よにすみのえの みをつくし いつをまつとも なきみなりけり俊頼(源経信男)
1793うきなから ひさしくそよを すきにける あはれやかけし すみよしのまつ俊成(藤原俊忠男)
1794かすかやま たにのうもれき くちぬとも きみにつけこせ みねのまつかせ家隆
1795なにとなく きけはなみたそ こほれぬる こけのたもとに かよふまつかせ丹後(宜秋門院)
1796みなひとの そむきはてぬる よのなかに ふるのやしろの みをいかにせむ斎宮女御
1797ころもての やまゐのみつに かけみえし なほそのかみの はるそこひしき実方
1798いにしへの やまゐのころも なかりせは わすらるるみと なりやしなまし通信
1799たちなから きてたにみせよ をみころも あかぬむかしの わすれかたみに加賀左衛門
1800あきのよの あかつきかたの きりきりす ひとつてならて きかましものを村上天皇
1801なかめつつ わかおもふことは ひくらしに のきのしつくの たゆるまもなし具平親王
1802こからしの かせにもみちて ひとしれす うきことのはの つもるころかな小町
1803あらしふく みねのもみちの ひにそへて もろくなりゆく わかなみたかな俊成(藤原俊忠男)
1804うたたねは をきふくかせに おとろけと なかきゆめちそ さむるときなき崇徳院
1805たけのはに かせふきよわる ゆふくれの もののあはれは あきとしもなし宮内卿(後鳥羽院)
1806ゆふくれは くものけしきを みるからに なかめしとおもふ こころこそつけ和泉式部
1807くれぬなり いくかをかくて すきぬらむ いりあひのかねの つくつくとして和泉式部
1808またれつる いりあひのかねの おとすなり あすもやあらは きかむとすらむ西行
1809あかつきと つけのまくらを そはたてて きくもかなしき かねのおとかな俊成(藤原俊忠男)
1810あかつきの ゆふつけとりそ あはれなる なかきねふりを おもふまくらに式子内親王
1811かくはかり うきをしのひて なからへは これよりまさる ものをこそおもへ和泉式部
1812たらちねの いさめしものを つれつれと なかむるをたに とふひともなし和泉式部
1813あはれとて はくくみたてし いにしへは よをそむけとも おもはさりけむ行尊
1814くらゐやま あとをたつねて のほれとも こをおもふみちに なほまよひぬる通親
1815むかしたに むかしとおもひし たらちねの なほこひしきそ はかなかりける俊成(藤原俊忠男)
1816ささかにの いとかかりける みのほとを おもへはゆめの ここちこそすれ俊頼(源経信男)
1817ささかにの そらにすかくも おなしこと またきやとりも いくよかはへむ遍昭
1818ひかりまつ えたにかかれる つゆのいのち きえはてねとや はるのつれなき高明
1819あらくふく かせはいかにと みやきのの こはきかうへを ひとのとへかし赤染衛門
1820うつろはて しはししのたの もりをみよ かへりもそする くすのうらかせ赤染衛門
1821あきかせは すこくふくとも くすのはの うらみかほには みえしとそおもふ和泉式部
1822をささはら かせまつつゆの きえやらす このひとふしを おもひおくかな俊成(藤原俊忠男)
1823よのなかを いまはのこころ つくからに すきにしかたそ いととこひしき慈円
1824よをいとふ こころのふかく なるままに すくるつきひを うちかそへつつ慈円
1825ひとかたに おもひとりにし こころには なほそむかるる みをいかにせむ慈円
1826なにゆゑに このよをふかく いとふそと ひとのとへかし やすくこたへむ慈円
1827おもふへき わかのちのよは あるかなきか なけれはこそは このよにはすめ慈円
1828よをいとふ なをたにもさは ととめおきて かすならぬみの おもひいてにせむ西行
1829みのうさを おもひしらてや やみなまし そむくならひの なきよなりせは西行
1830いかかすへき よにあらはやは よをもすてて あなうのよやと さらにおもはむ西行
1831なにことに とまるこころの ありけれは さらにしもまた よのいとはしき西行
1832むかしより はなれかたきは うきよかな かたみにしのふ なかならねとも兼実
1833おもひいてて もしもたつぬる ひともあらは ありとないひそ さためなきよに行尊
1834かすならぬ みをなにゆゑに うらみけむ とてもかくても すくしけるよを行尊
1835いつかわれ みやまのさとの さひしきに あるしとなりて ひとにとはれむ慈円
1836うきみには やまたのおしね おしこめて よをひたすらに うらみわひぬる俊頼(源経信男)
1837しつのをの あさなあさなに こりつむる しはしのほとも ありかたのよや山田
1838かすならぬ みはなきものに なしはてつ たかためにかは よをもうらみむ寂蓮
1839たのみありて いまゆくすゑを まつひとや すくるつきひを なけかさるらむ行遍
1840なからへて いけるをいかに もとかまし うきみのほとを よそにおもはは師光(源師頼男)
1841うきよをは いつるひことに いとへとも いつかはつきの いるかたをみむ高倉(八条院)
1842なさけありし むかしのみなほ しのはれて なからへまうき よにもふるかな西行
1843なからへは またこのころや しのはれむ うしとみしよそ いまはこひしき清輔
1844すゑのよも このなさけのみ かはらすと みしゆめなくは よそにきかまし西行
1845ゆくすゑは われをもしのふ ひとやあらむ むかしをおもふ こころならひに俊成(藤原俊忠男)
1846よのなかを おもひつらねて なかむれは むなしきそらに きゆるしらくも俊成(藤原俊忠男)
1847くるるまも まつへきよかは あたしのの すゑはのつゆに あらしたつなり式子内親王
1848つのくにの なからふへくも あらぬかな みしかきあしの よにこそありけれ花山院
1849かせはやみ をきのはことに おくつゆの おくれさきたつ ほとのはかなさ具平親王
1850あきかせに なひくあさちの すゑことに おくしらつゆの あはれよのなか蝉丸
1851よのなかは とてもかくても おなしこと みやもわらやも はてしなけれは蝉丸
1852しるらめや けふのねのひの ひめこまつ おひむすゑまて さかゆへしとは日吉
1853なさけなく をるひとつらし わかやとの あるしわすれぬ うめのたちえを道真
1854ふたらくの みなみのきしに たうたてて いまそさかえむ きたのふちなみ春日榎本明神
1855よやさむき ころもやうすき かたそきの ゆきあひのまより しもやおくらむ住吉明神
1856いかはかり としはへねとも すみのえの まつそふたたひ おひかはりぬる住吉明神
1857むつましと きみはしらなみ みつかきの ひさしきよより いはひそめてき住吉明神
1858ひとしれす いまやいまやと ちはやふる かみさふるまて きみをこそまて春日明神
1859みちとほし ほともはるかに へたたれり おもひおこせよ われもわすれし熊野神
1860おもふこと みにあまるまて なるたきの しはしよとむを なにうらむらむ熊野神
1861われたのむ ひといたつらに なしはては またくもわけて のほるはかりそ賀茂御社
1862かかみにも かけみたらしの みつのおもに うつるはかりの こころとをしれ賀茂御社
1863ありきつつ きつつみれとも いさきよき ひとのこころを われわすれめや石清水八幡
1864にしのうみ たつしらなみの うへにして なにすくすらむ かりのこのよを宇左八幡宮
1865しらなみに たまよりひめの こしことは なきさやつひの とまりなりけむ千古
1866ひさかたの あめのやへくも ふりわけて くたりしきみを われそむかへし淑望(紀長谷雄男)
1867とひかける あまのいはふね たつねてそ あきつしまには みやはしめける理平
1868やまとかも うみにあらしの にしふかは いつれのうらに みふねつなかむ理平
1869おくしもに いろもかはらぬ さかきはの かをやはひとの とめてきつらむ貫之
1870みやひとの すれるころもに ゆふたすき かけてこころを たれによすらむ貫之
1871かみかせや みもすそかはの そのかみよ ちきりしことの すゑをたかふな良経(九条兼実男)
1872ちきりありて けふみやかはの ゆふかつら なかきよまても かけてたのまむ定家
1873うれしさも あはれもいかに こたへまし ふるさとひとに とはれましかは読人不知
1874かみかせや いすすかはなみ かすしらす すむへきみよに またかへりこむ公継
1875なかめはや かみちのやまに くもきえて ゆふへのそらを いてむつきかけ後鳥羽院
1876かみかせや とよみてくらに なひくして かけてあふくと いふもかしこし後鳥羽院
1877みやはしら したついはねに しきたてて つゆもくもらぬ ひのみかけかな西行
1878かみちやま つきさやかなる ちかひありて あめのしたをは てらすなりけり西行
1879さやかなる わしのたかねの くもゐより かけやはらくる つきよみのもり西行
1880やはらくる ひかりにあまる かけなれや いすすかはらの あきのよのつき慈円
1881たちかへり またもみまくの ほしきかな みもすそかはの せせのしらなみ雅定
1882かみかせや いすすのかはの みやはしら いくちよすめと たてはしめけむ俊成(藤原俊忠男)
1883かみかせや たまくしのはを とりかはし うちとのみやに きみをこそいのれ俊恵
1884かみかせや やまたのはらの さかきはに こころのしめを かけぬひそなき越前(嘉陽門院)
1885いすすかは そらやまたきに あきのこゑ したついはねの まつのゆふかせ明親
1886ちはやふる かしひのみやの あやすきは かみのみそきに たてるなりけり読人不知
1887さかきはに そのゆふかひは なけれとも かみにこころを かけぬまそなき成清
1888としをへて うきかけをのみ みたらしの かはるよもなき みをいかにせむ内侍(周防)
1889つきさゆる みたらしかはに かけみえて こほりにすれる やまあゐのそて俊成(藤原俊忠男)
1890ゆふしての かせにみたるる おとさえて にはしろたへに ゆきそつもれる公通
1891きみをいのる こころのいろを ひととはは たたすのみやの あけのたまかき慈円
1892あとたれし かみにあふひの なかりせは なににたのみを かけてすきまし重保
1893おほみたの うるほふはかり せきかけて ゐせきにおとせ かはかみのかみ幸平
1894いしかはや せみのをかはの きよけれは つきもなかれを たつねてそすむ長明
1895よろつよを いのりそかくる ゆふたすき かすかのやまの みねのあらしに資仲
1896けふまつる かみのこころや なひくらむ してになみたつ さほのかはかせ兼実
1897あめのした みかさのやまの かけならて たのむかたなき みとはしらすや兼実
1898かすかのの おとろのみちの うもれみつ すゑたにかみの しるしあらはせ俊成(藤原俊忠男)
1899ちよまても こころしてふけ もみちはを かみもをしほの やまおろしのかせ伊家
1900をしほやま かみのしるしを まつのはに ちきりしはるは かへるものかは慈円
1901やはらくる かけそふもとに くもりなき もとのひかりは みねにすめとも慈円
1902わかたのむ ななのやしろの ゆふたすき かけてもむつの みちにかへすな慈円
1903おしなへて ひよしのかけは くもらぬに なみたあやしき きのふけふかな慈円
1904もろともの ねかひをみつの はまかせに こころすすしき してのおとかな慈円
1905さめぬれは おもひあはせて ねをそなく こころつくしの いにしへのゆめ慈円
1906さきにほふ はなのけしきを みるからに かみのこころそ そらにしらるる白河院
1907いはにむす こけふみならす みくまのの やまのかひある ゆくすゑもかな後鳥羽院
1908くまのかは くたすはやせの みなれさを さすかみなれぬ なみのかよひち後鳥羽院
1909たちのほる しほやのけふり うらかせに なひくをかみの こころともかな実能
1910いはしろの かみはしるらむ しるへせよ たのむうきよの ゆめのゆくすゑ読人不知
1911ちきりあれは うれしきかかる をりにあひぬ わするなかみも ゆくすゑのそら後鳥羽院
1912としふとも こしのしらやま わすれすは かしらのゆきを あはれともみよ顕輔
1913すみよしの はままつかえに かせふけは なみのしらゆふ かけぬまそなき道経
1914さかきはの しもうちはらひ かれすのみ すめともいのる かみのみまへに能宣
1915かはやしろ しのにをりはへ ほすころも いかにほせはか なぬかひさらむ貫之
1916なほたのめ しめちかはらの させもくさ わかよのなかに あらむかきりは清水観音
1917なにかおもふ なにとかなけく よのなかは たたあさかほの はなのうへのつゆ清水観音
1918やまふかく としふるわれも あるものを いつちかつきの いててゆくらむ伯耆太山
1919あしそよく しほせのなみの いつまてか うきよのなかに うかひわたらむ行基
1920あのくたら さみやさほたの ほとけたち わかたつそまに みやうかあらせたまへ伝教
1921のりのふね さしてゆくみそ もろもろの かみもほとけも われをみそなへ智証
1922しるへある ときにたにゆけ こくらくの みちにまとへる よのなかのひと智証/菩提寺講堂柱虫喰
1923しやくまくの こけのいはとの しつけきに なみたのあめの ふらぬひそなき日蔵
1924なむあみた ほとけのみてに かくるいとの をはりみたれぬ こころともかな法円
1925われたにも まつこくらくに うまれなは しるもしらぬも みなむかへてむ源信
1926にこりなき かめゐのみつを むすひあけて こころのちりを すすきつるかな上東門院
1927わたつうみの そこよりきつる ほともなく このみなからに みをそきはむる道長
1928かすならぬ いのちはなにか をしからむ のりとくほとを しのふはかりそ斉信
1929むらさきの くものはやしを みわたせは のりにあふちの はなさきにけり肥後(京極前関白家)
1930たにかはの なかれしきよく すみぬれは くまなきつきの かけもうかひぬ肥後(京極前関白家)
1931ねかはくは しはしやみちに やすらひて かかけやせまし のりのともしひ慈円
1932とくみのり きくのしらつゆ よるはおきて つとめてきえむ ことをしそおもふ慈円
1933こくらくへ またわかこころ ゆきつかす ひつしのあゆみ しはしととまれ慈円
1934わかこころ なほはれやらぬ あききりに ほのかにみゆる ありあけのつき公胤
1935おくやまに ひとりうきよは さとりにき つねなきいろを かせになかめて良経(九条兼実男)
1936いろにのみ そめしこころの くやしきは むなしととける のりのうれしさ小侍従(太皇太后宮)
1937むらさきの くもちにさそふ ことのねに うきよをはらふ みねのまつかせ寂蓮
1938これやこの うきよのほかの はるならむ はなのとほその あけほののそら寂蓮
1939はるあきも かきらぬはなに おくつゆは おくれさきたつ うらみやはある寂蓮
1940たちかへり くるしきうみに おくあみも ふかきえにこそ こころひくらめ寂蓮
1941いつくにも わかのりならぬ のりやあると そらふくかせに とへとこたへぬ慈円
1942おもふなよ うきよのなかを いてはてて やとるおくにも やとはありけり慈円
1943わしのやま けふきくのりの みちならて かへらぬやとに ゆくひとそなき慈円
1944おしなへて むなしきそらと おもひしに ふちさきぬれは むらさきのくも慈円
1945おしなへて うきみはさこそ なるみかた みちひるしほの かはるのみかは崇徳院
1946あさひさす みねのつつきは めくめとも またしもふかし たにのかけくさ崇徳院
1947そこきよく こころのみつを すまさすは いかかさとりの はちすをもみむ兼実
1948さらすとて いくよもあらし いさやさは のりにかへつる いのちとおもはむ経家(六条重家男)
1949ふかきよの まとうつあめに おとせぬは うきよをのきの しのふなりけり寂蓮
1950いにしへの しかなくのへの いほりにも こころのつきは くもらさりけむ慈円
1951みちのへの ほたるはかりを しるへにて ひとりそいつる ゆふやみのそら寂然
1952くもはれて むなしきそらに すみなから うきよのなかを めくるつきかな寂然
1953ふくかせに はなたちはなや にほふらむ むかしおほゆる けふのにはかな寂然
1954やみふかき このもとことに ちきりおきて あさたつきりの あとのつゆけさ寂然
1955けふすきぬ いのちもしかと おとろかす いりあひのかねの こゑそかなしき寂然
1956くさふかき かりはのをのを たちいてて ともまとはせる しかそなくなる家基(藤原家光男)
1957そむかすは いつれのよにか めくりあひて おもひけりとも ひとにしられむ寂然
1958あひみても みねにわかるる しらくもの かかるこのよの いとはしきかな季広
1959おとにきく きみかりいつか いきのまつ まつらむものを こころつくしに寂然
1960わかれにし そのおもかけの こひしきに ゆめにもみえよ やまのはのつき寂然
1961わたつうみの ふかきにしつむ いさりせて たもつかひある のりをもとめよ寂然
1962うきくさの ひとはなりとも いそかくれ おもひなかけそ おきつしらなみ寂然
1963さらぬたに おもきかうへの さよころも わかつまならぬ つまなかさねそ寂然
1964はなのもと つゆのなさけは ほともあらし ゑひなすすめそ はるのやまかせ寂然
1965うきもなほ むかしのゆゑと おもはすは いかにこのよを うらみはてまし讃岐(二条院)
1966わたすへき かすもかきらぬ はしはしら いかにたてける ちかひなるらむ俊成(藤原俊忠男)
1967いまそこれ いりひをみても おもひこし みたのみくにの ゆふくれのそら俊成(藤原俊忠男)
1968いにしへの をのへのかねに にたるかな きしうつなみの あかつきのこゑ俊成(藤原俊忠男)
1969しつかなる あかつきことに みわたせは またふかきよの ゆめそかなしき式子内親王
1970あふことを いつくにてとか ちきるへき うきみのゆかむ かたをしらねは選子内親王
1971たまかけし ころものうらを かへしてそ おろかなりける こころをはしる源信
1972ゆめやゆめ うつつやゆめと わかぬかな いかなるよにか さめむとすらむ赤染衛門
1973つねよりも けふのけふりの たよりにや にしをはるかに おもひやるらむ相模
1974けふはいとと なみたにくれぬ にしのやま おもひいりひの かけをなかめて伊勢大輔
1975にしへゆく しるへとおもふ つきかけの そらたのめこそ かひなかりけれ堀河(待賢門院)
1976たちいらて くもまをわけし つきかけは またぬけしきや そらにみえけむ西行
1977むかしみし つきのひかりを しるへにて こよひやきみか にしへゆくらむ瞻西
1978やみはれて こころのそらに すむつきは にしのやまへや ちかくなるらむ西行