「新古今和歌集」一覧
1978件
1 | みよしのは やまもかすみて しらゆきの ふりにしさとに はるはきにけり | 良経(九条兼実男) |
2 | ほのほのと はるこそそらに きにけらし あまのかくやま かすみたなひく | 後鳥羽院 |
3 | やまふかみ はるともしらぬ まつのとに たえたえかかる ゆきのたまみつ | 式子内親王 |
4 | かきくらし なほふるさとの ゆきのうちに あとこそみえね はるはきにけり | 宮内卿(後鳥羽院) |
5 | けふといへは もろこしまても ゆくはるを みやこにのみと おもひけるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
6 | はるといへは かすみにけりな きのふまて なみまにみえし あはちしまやま | 俊恵 |
7 | いはまとちし こほりもけさは とけそめて こけのしたみつ みちもとむらむ | 西行 |
8 | かせませに ゆきはふりつつ しかすかに かすみたなひき はるはきにけり | 読人不知 |
9 | ときはいま はるになりぬと みゆきふる とほきやまへに かすみたなひく | 読人不知 |
10 | かすかのの したもえわたる くさのうへに つれなくみゆる はるのあはゆき | 国信 |
11 | あすからは わかなつまむと しめしのに きのふもけふも ゆきはふりつつ | 赤人 |
12 | かすかのの くさはみとりに なりにけり わかなつまむと たれかしめけむ | 忠見 |
13 | わかなつむ そてとそみゆる かすかのの とふひののへの ゆきのむらきえ | 教長 |
14 | ゆきてみぬ ひともしのへと はるののの かたみにつめる わかななりけり | 貫之 |
15 | さはにおふる わかなならねと いたつらに としをつむにも そてはぬれけり | 俊成(藤原俊忠男) |
16 | ささなみや しかのはままつ ふりにけり たかよにひける ねのひなるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
17 | たにかはの うちいつるなみも こゑたてつ うくひすさそへ はるのやまかせ | 家隆 |
18 | うくひすの なけともいまた ふるゆきに すきのはしろき あふさかのやま | 後鳥羽院 |
19 | はるきては はなともみよと かたをかの まつのうははに あはゆきそふる | 仲実 |
20 | まきもくの ひはらのいまた くもらねは こまつかはらに あはゆきそふる | 家持 |
21 | いまさらに ゆきふらめやも かけろふの もゆるはるひと なりにしものを | 読人不知 |
22 | いつれをか はなともわかむ ふるさとの かすかのはらに またきえぬゆき | 躬恒 |
23 | そらはなほ かすみもやらす かせさえて ゆきけにくもる はるのよのつき | 良経(九条兼実男) |
24 | やまふかみ なほかけさむし はるのつき そらかきくもり ゆきはふりつつ | 越前(嘉陽門院) |
25 | みしまえや しももまたひぬ あしのはに つのくむほとの はるかせそふく | 通光 |
26 | ゆふつくよ しほみちくらし なにはえの あしのわかはに こゆるしらなみ | 秀能(藤原秀宗男) |
27 | ふりつみし たかねのみゆき とけにけり きよたきかはの みつのしらなみ | 西行 |
28 | うめかえに ものうきほとに ちるゆきを はなともいはし はるのなたてに | 重之 |
29 | あつさゆみ はるやまちかく いへゐして たえすききつる うくひすのこゑ | 赤人 |
30 | うめかえに なきてうつろふ うくひすの はねしろたへに あはゆきそふる | 読人不知 |
31 | うくひすの なみたのつらら うちとけて ふるすなからや はるをしるらむ | 惟明親王 |
32 | いはそそく たるみのうへの さわらひの もえいつるはるに なりにけるかな | 志貴皇子 |
33 | あまのはら ふしのけふりの はるのいろの かすみになひく あけほののそら | 慈円 |
34 | あさかすみ ふかくみゆるや けふりたつ むろのやしまの わたりなるらむ | 清輔 |
35 | なこのうみの かすみのまより なかむれは いりひをあらふ おきつしらなみ | 実定 |
36 | みわたせは やまもとかすむ みなせかは ゆふへはあきと なにおもひけむ | 後鳥羽院 |
37 | かすみたつ すゑのまつやま ほのほのと なみにはなるる よこくものそら | 家隆 |
38 | はるのよの ゆめのうきはし とたえして みねにわかるる よこくものそら | 定家 |
39 | しるらめや かすみのそらを なかめつつ はなもにほはぬ はるをなけくと | 中務 |
40 | おほそらは うめのにほひに かすみつつ くもりもはてぬ はるのよのつき | 定家 |
41 | をられけり くれなゐにほふ うめのはな けさしろたへに ゆきはふりつつ | 頼通 |
42 | あるしをは たれともわかす はるはたた かきねのうめを たつねてそみる | 敦家 |
43 | こころあらは とはましものを うめかかに たかさとよりか にほひきつらむ | 俊頼(源経信男) |
44 | うめのはな にほひをうつす そてのうへに のきもるつきの かけそあらそふ | 定家 |
45 | うめかかに むかしをとへは はるのつき こたへぬかけそ そてにうつれる | 家隆 |
46 | うめのはな たかそてふれし にほひそと はるやむかしの つきにとははや | 通具 |
47 | うめのはな あかぬいろかも むかしにて おなしかたみの はるのよのつき | 俊成女 |
48 | みぬひとに よそへてみつる うめのはな ちりなむのちの なくさめそなき | 定頼 |
49 | はることに こころをしむる はなのえに たかなほさりの そてかふれつる | 大弐三位 |
50 | うめちらす かせもこえてや ふきつらむ かをれるゆきの そてにみたるる | 康資王母 |
51 | とめこかし うめさかりなる わかやとを うときもひとは をりにこそよれ | 西行 |
52 | なかめつる けふはむかしに なりぬとも のきはのうめは われをわするな | 式子内親王 |
53 | ちりぬれは にほひはかりを うめのはな ありとやそてに はるかせのふく | 有家(藤原重家男) |
54 | ひとりのみ なかめてちりぬ うめのはな しるはかりなる ひとはとひこす | 高倉(八条院) |
55 | てりもせす くもりもはてぬ はるのよの おほろつきよに しくものそなき | 千里 |
56 | あさみとり はなもひとつに かすみつつ おほろにみゆる はるのよのつき | 孝標女 |
57 | なにはかた かすまぬなみも かすみけり うつるもくもる おほろつきよに | 具親 |
58 | いまはとて たのむのかりも うちわひぬ おほろつきよの あけほののそら | 寂蓮 |
59 | きくひとそ なみたはおつる かへるかり なきてゆくなる あけほののそら | 俊成(藤原俊忠男) |
60 | ふるさとに かへるかりかね さよふけて くもちにまよふ こえきこゆなり | 読人不知 |
61 | わするなよ たのむのさはを たつかりも いなはのかせの あきのゆふくれ | 良経(九条兼実男) |
62 | かへるかり いまはのこころ ありあけに つきとはなとの なこそをしけれ | 良経(九条兼実男) |
63 | しもまよふ そらにしをれし かりかねの かへるつはさに はるさめそふる | 定家 |
64 | つくつくと はるのなかめの さひしきは しのふにつたふ のきのたまみつ | 行慶 |
65 | みつのおもに あやおりみたる はるさめや やまのみとりを なへてそむらむ | 伊勢 |
66 | ときはなる やまのいはねに むすこけの そめぬみとりに はるさめそふる | 良経(九条兼実男) |
67 | あめふれは をたのますらを いとまあれや なはしろみつを そらにまかせて | 勝命 |
68 | はるさめの ふりそめしより あをやきの いとのみとりそ いろまさりける | 躬恒 |
69 | うちなひき はるはきにけり あをやきの かけふむみちそ ひとのやすらふ | 高遠 |
70 | みよしのの おほかはのへの ふるやなき かけこそみえね はるめきにけり | 輔仁親王 |
71 | あらしふく きしのやなきの いなむしろ おりしくなみに まかせてそみる | 崇徳院 |
72 | たかせさす むつたのよとの やなきはら みとりもふかく かすむはるかな | 公経(藤原実宗男) |
73 | はるかせの かすみふきとく たえまより みたれてなひく あをやきのいと | 大輔(殷富門院) |
74 | しらくもの たえまになひく あをやきの かつらきやまに はるかせそふく | 雅経 |
75 | あをやきの いとにたまぬく しらつゆの しらすいくよの はるかへぬらむ | 有家(藤原重家男) |
76 | うすくこき のへのみとりの わかくさに あとまてみゆる ゆきのむらきえ | 宮内卿(後鳥羽院) |
77 | あらをたの こそのふるあとの ふるよもき いまははるへと ひこはえにけり | 好忠 |
78 | やかすとも くさはもえなむ かすかのを たたはるのひに まかせたらなむ | 忠見 |
79 | よしのやま さくらかえたに ゆきちりて はなおそけなる としにもあるかな | 西行 |
80 | さくらはな さかはまつみむと おもふまに ひかすへにけり はるのやまさと | 隆時 |
81 | わかこころ はるのやまへに あくかれて なかなかしひを けふもくらしつ | 貫之 |
82 | おもふとち そこともしらす ゆきくれぬ はなのやとかせ のへのうくひす | 家隆 |
83 | いまさくら さきぬとみえて うすくもり はるにかすめる よのけしきかな | 式子内親王 |
84 | ふしておもひ おきてなかむる はるさめに はなのしたひも いかにとくらむ | 読人不知 |
85 | ゆかむひと こむひとしのへ はるかすみ たつたのやまの はつさくらはな | 家持 |
86 | よしのやま こそのしをりの みちかへて またみぬかたの はなをたつねむ | 西行 |
87 | かつらきや たかまのさくら さきにけり たつたのおくに かかるしらくも | 寂蓮 |
88 | いそのかみ ふるきみやこを きてみれは むかしかさしし はなさきにけり | 読人不知 |
89 | はるにのみ としはあらなむ あらをたを かへすかへすも はなをみるへく | 公忠(源国紀男) |
90 | しらくもの たつたのやまの やへさくら いつれをはなと わきてをりけむ | 道命 |
91 | しらくもの はるはかさねて たつたやま をくらのみねに はなにほふらし | 定家 |
92 | よしのやま はなやさかりに にほふらむ ふるさとさえぬ みねのしらゆき | 家衡 |
93 | いはねふみ かさなるやまを わけすてて はなもいくへの あとのしらくも | 雅経 |
94 | たつねきて はなにくらせる このまより まつとしもなき やまのはのつき | 雅経 |
95 | ちりちらす ひともたつねぬ ふるさとの つゆけきはなに はるかせそふく | 慈円 |
96 | いそのかみ ふるののさくら たれうゑて はるはわすれぬ かたみなるらむ | 通具 |
97 | はなそみる みちのしはくさ ふみわけて よしののみやの はるのあけほの | 季能 |
98 | あさひかけ にほへるやまの さくらはな つれなくきえぬ ゆきかとそみる | 有家(藤原重家男) |
99 | さくらさく とほやまとりの したりをの なかなかしひも あかぬいろかな | 後鳥羽院 |
100 | いくとせの はるにこころを つくしきぬ あはれとおもへ みよしののはな | 俊成(藤原俊忠男) |
101 | はかなくて すきにしかたを かそふれは はなにものおもふ はるそへにける | 式子内親王 |
102 | しらくもの たなひくやまの やへさくら いつれをはなと ゆきてをらまし | 師実 |
103 | はなのいろに あまきるかすみ たちまよひ そらさへにほふ やまさくらかな | 長家 |
104 | ももしきの おほみやひとは いとまあれや さくらかさして けふもくらしつ | 赤人 |
105 | はなにあかぬ なけきはいつも せしかとも けふのこよひに にるときはなし | 業平 |
106 | いもやすく ねられさりけり はるのよは はなのちるのみ ゆめにみえつつ | 躬恒 |
107 | やまさくら ちりてみゆきに まかひなは いつれかはなと はるにとはなむ | 伊勢 |
108 | わかやとの ものなりなから さくらはな ちるをはえこそ ととめさりけれ | 貫之 |
109 | かすみたつ はるのやまへに さくらはな あかすちるとや うくひすのなく | 読人不知 |
110 | はるさめは いたくなふりそ さくらはな またみぬひとに ちらまくもをし | 赤人 |
111 | はなのかに ころもはふかく なりにけり このしたかけの かせのまにまに | 貫之 |
112 | かせかよふ ねさめのそての はなのかに かをるまくらの はるのよのゆめ | 俊成女 |
113 | このほとは しるもしらぬも たまほこの ゆきかふそては はなのかそする | 家隆 |
114 | またやみむ かたののみのの さくらかり はなのゆきちる はるのあけほの | 俊成(藤原俊忠男) |
115 | ちりちらす おほつかなきは はるかすみ たなひくやまの さくらなりけり | 成仲 |
116 | やまさとの はるのゆふくれ きてみれは いりあひのかねに はなそちりける | 能因 |
117 | さくらちる はるのやまへは うかりけり よをのかれにと こしかひもなく | 恵慶 |
118 | やまさくら はなのしたかせ ふきにけり このもとことの ゆきのむらきえ | 康資王母 |
119 | はるさめの そほふるそらの をやみせす おつるなみたに はなそちりける | 重之 |
120 | かりかねの かへるはかせや さそふらむ すきゆくみねの はなものこらぬ | 重之 |
121 | ときしもあれ たのむのかりの わかれさへ はなちるころの みよしののさと | 具親 |
122 | やまふかみ すきのむらたち みえぬまて をのへのかせに はなのちるかな | 経信 |
123 | このしたの こけのみとりも みえぬまて やへちりしける やまさくらかな | 師頼 |
124 | ふもとまて をのへのさくら ちりこすは たなひくくもと みてやすきまし | 顕輔 |
125 | はなちれは とふひとまれに なりはてて いとひしかせの おとのみそする | 範兼 |
126 | なかむとて はなにもいたく なれぬれは ちるわかれこそ かなしかりけれ | 西行 |
127 | やまさとの にはよりほかの みちもかな はなちりぬやと ひともこそとへ | 越前(嘉陽門院) |
128 | はなさそふ ひらのやまかせ ふきにけり こきゆくふねの あとみゆるまて | 宮内卿(後鳥羽院) |
129 | あふさかや こすゑのはなを ふくからに あらしそかすむ せきのすきむら | 宮内卿(後鳥羽院) |
130 | やまたかみ みねのあらしに ちるはなの つきにあまきる あけかたのそら | 讃岐(二条院) |
131 | やまたかみ いはねのさくら ちるときは あまのはころも なつるとそみる | 崇徳院 |
132 | ちりまかふ はなのよそめは よしのやま あらしにさわく みねのしらくも | 頼輔 |
133 | みよしのの たかねのさくら ちりにけり あらしもしろき はるのあけほの | 後鳥羽院 |
134 | さくらいろの にはのはるかせ あともなし とははそひとの ゆきとたにみむ | 定家 |
135 | けふたにも にはをさかりと うつるはな きえすはありとも ゆきかともみよ | 後鳥羽院 |
136 | さそはれぬ ひとのためとや のこりけむ あすよりさきの はなのしらゆき | 良経(九条兼実男) |
137 | やへにほふ のきはのさくら うつろひぬ かせよりさきに とふひともかな | 式子内親王 |
138 | つらきかな うつろふまてに やへさくら とへともいはて すくるこころは | 惟明親王 |
139 | さくらはな ゆめかうつつか しらくもの たえてつねなき みねのはるかせ | 家隆 |
140 | うらみすや うきよをはなの いとひつつ さそふかせあらはと おもひけるをは | 俊成女 |
141 | はかなさを ほかにもいはし さくらはな さきてはちりぬ あはれよのなか | 実定 |
142 | なかむへき のこりのはるを かそふれは はなとともにも ちるなみたかな | 俊恵 |
143 | はなもまた わかれむはるは おもひいてよ さきちるたひの こころつくしを | 大輔(殷富門院) |
144 | ちるはなの わすれかたみの みねのくも そをたにのこせ はるのやまかせ | 良平 |
145 | はなさそふ なこりをくもに ふきとめて しはしはにほへ はるのやまかせ | 雅経 |
146 | をしめとも ちりはてぬれは さくらはな いまはこすゑを なかむはかりそ | 後白河院 |
147 | よしのやま はなのふるさと あとたえて むなしきえたに はるかせそふく | 良経(九条兼実男) |
148 | ふるさとの はなのさかりは すきぬれと おもかけさらぬ はるのそらかな | 経信 |
149 | はなはちり そのいろとなく なかむれは むなしきそらに はるさめそふる | 式子内親王 |
150 | たかたにか あすはのこさむ やまさくら こほれてにほへ けふのかたみに | 元輔(清原春光男) |
151 | からひとの ふねをうかへて あそふてふ けふそわかせこ はなかつらせよ | 家持 |
152 | はななかす せをもみるへき みかつきの われていりぬる やまのをちかた | 是則 |
153 | たつねつる はなもわかみも おとろへて のちのはるとも えこそちきらね | 良暹 |
154 | おもひたつ とりはふるすも たのむらむ なれぬるはなの あとのゆふくれ | 寂蓮 |
155 | ちりにけり あはれうらみの たれなれは はなのあととふ はるのやまかせ | 寂蓮 |
156 | はるふかく たつねいるさの やまのはに ほのみしくもの いろそのこれる | 公経(藤原実宗男) |
157 | はつせやま うつろふはなに はるくれて まかひしくもそ みねにのこれる | 良経(九条兼実男) |
158 | よしのかは きしのやまふき さきにけり みねのさくらは ちりはてぬらむ | 家隆 |
159 | こまとめて なほみつかはむ やまふきの はなのつゆそふ ゐてのたまかは | 俊成(藤原俊忠男) |
160 | いはねこす きよたきかはの はやけれは なみをりかくる きしのやまふき | 国信 |
161 | かはつなく かみなひかはに かけみえて いまかさくらむ やまふきのはな | 厚見王 |
162 | あしひきの やまふきのはな ちりにけり ゐてのかはつは いまやなくらむ | 興風 |
163 | かくてこそ みまくほしけれ よろつよを かけてにほへる ふちなみのはな | 醍醐天皇 |
164 | まとゐして みれともあかぬ ふちなみの たたまくをしき けふにもあるかな | 村上天皇 |
165 | くれぬとは おもふものから ふちのはな さけるやとには はるそひさしき | 貫之 |
166 | みとりなる まつにかかれる ふちなれと おのかころとそ はなはさきける | 貫之 |
167 | ちりのこる はなもやあると うちむれて みやまかくれを たつねてしかな | 道信 |
168 | このもとの すみかもいまは あれぬへし はるしくれなは たれかとひこむ | 行尊 |
169 | くれてゆく はるのみなとは しらねとも かすみにおつる うちのしはふね | 寂蓮 |
170 | こぬまても はなゆゑひとの またれつる はるもくれぬる みやまへのさと | 伊綱(藤原家基男) |
171 | いそのかみ ふるのわさたを うちかへし うらみかねたる はるのくれかな | 俊成女 |
172 | まてといふに とまらぬものと しりなから しひてそをしき はるのわかれは | 読人不知 |
173 | しはのとを さすやひかけの なこりなく はるくれかかる やまのはのくも | 宮内卿(後鳥羽院) |
174 | あすよりは しかのはなその まれにたに たれかはとはむ はるのふるさと | 良経(九条兼実男) |
175 | はるすきて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかくやま | 持統天皇 |
176 | をしめとも とまらぬはるも あるものを いはぬにきたる なつころもかな | 素性 |
177 | ちりはてて はなのかけなき このもとに たつことやすき なつころもかな | 慈円 |
178 | なつころも きていくかにか なりぬらむ のこれるはなは けふもちりつつ | 道済 |
179 | をりふしも うつれはかへつ よのなかの ひとのこころの はなそめのそて | 俊成女 |
180 | うのはなの むらむらさける かきねをは くもまのつきの かけかとそみる | 白河院 |
181 | うのはなの さきぬるときは しろたへの なみもてゆへる かきねとそみる | 重家 |
182 | わすれめや あふひをくさに ひきむすひ かりねののへの つゆのあけほの | 式子内親王 |
183 | いかなれは そのかみやまの あふひくさ としはふれとも ふたはなるらむ | 小侍従(太皇太后宮) |
184 | のへはいまた あさかのぬまに かるくさの かつみるままに しけるころかな | 雅経 |
185 | さくらあさの をふのしたくさ しけれたた あかてわかれし はなのななれは | 安芸(待賢門院) |
186 | はなちりし にはのこのはも しけりあひて あまてるつきの かけそまれなる | 好忠 |
187 | かりにくと うらみしひとの たえにしを くさはにつけて しのふころかな | 好忠 |
188 | なつくさは しけりにけりな たまほこの みちゆくひとも むすふはかりに | 元真 |
189 | なつくさは しけりにけれと ほとときす なとわかやとに ひとこゑもせぬ | 醍醐天皇 |
190 | なくこゑを えやはしのはぬ ほとときす はつうのはなの かけにかくれて | 人麿 |
191 | ほとときす こゑまつほとは かたをかの もりのしつくに たちやぬれまし | 紫式部 |
192 | ほとときす みやまいつなる はつこゑを いつれのやとの たれかきくらむ | 弁乳母 |
193 | さつきやま うのはなつきよ ほとときす きけともあかす またなかむかも | 読人不知 |
194 | おのかつま こひつつなくや さつきやみ かみなひやまの やまほとときす | 読人不知 |
195 | ほとときす ひとこゑなきて いぬるよは いかてかひとの いをやすくぬる | 家持 |
196 | ほとときす なきつついつる あしひきの やまとなてしこ さきにけらしも | 能宣 |
197 | ふたこゑと なきつときかは ほとときす ころもかたしき うたたねはせむ | 経信 |
198 | ほとときす またうちとけぬ しのひねは こぬひとをまつ われのみそきく | 白河院 |
199 | ききてしも なほそねられぬ ほとときす まちしよころの こころならひに | 有仁 |
200 | うのはなの かきねならねと ほとときす つきのかつらの かけになくなり | 匡房 |
201 | むかしおもふ くさのいほりの よるのあめに なみたなそへそ やまほとときす | 俊成(藤原俊忠男) |
202 | あめそそく はなたちはなに かせすきて やまほとときす くもになくなり | 俊成(藤原俊忠男) |
203 | きかてたた ねなましものを ほとときす なかなかなりや よはのひとこゑ | 相模 |
204 | たかさとに とひもやくると ほとときす こころのかきり まちそわひにし | 紫式部 |
205 | よをかさね まちかねやまの ほとときす くもゐのよそに ひとこゑそきく | 内侍(周防) |
206 | ふたこゑと きかすはいてし ほとときす いくよあかしの とまりなりとも | 公通 |
207 | ほとときす なほひとこゑは おもひいてよ おいそのもりの よはのむかしを | 範光 |
208 | ひとこゑは おもひそあへぬ ほとときす たそかれときの くものまよひに | 高倉(八条院) |
209 | ありあけの つれなくみえし つきはいてぬ やまほとときす まつよなからに | 良経(九条兼実男) |
210 | わかこころ いかにせよとて ほとときす くもまのつきの かけになくらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
211 | ほとときす なきているさの やまのはは つきゆゑよりも うらめしきかな | 頼実(藤原経宗男) |
212 | ありあけの つきはまたぬに いてぬれと なほやまふかき ほとときすかな | 親宗(平時信男) |
213 | すきにけり しのたのもりの ほとときす たえぬしつくを そてにのこして | 保季 |
214 | いかにせむ こぬよあまたの ほとときす またしとおもへは むらさめのそら | 家隆 |
215 | こゑはして くもちにむせふ ほとときす なみたやそそく よひのむらさめ | 式子内親王 |
216 | ほとときす なほうとまれぬ こころかな なかなくさとの よそのゆふくれ | 公経(藤原実宗男) |
217 | きかすとも ここをせにせむ ほとときす やまたのはらの すきのむらたち | 西行 |
218 | ほとときす ふかきみねより いてにけり とやまのすそに こゑのおちくる | 西行 |
219 | をささふく しつのまろやの かりのとを あけかたになく ほとときすかな | 実定 |
220 | うちしめり あやめそかをる ほとときす なくやさつきの あめのゆふくれ | 良経(九条兼実男) |
221 | けふはまた あやめのねさへ かけそへて みたれそまさる そてのしらたま | 俊成(藤原俊忠男) |
222 | あかなくに ちりにしはなの いろいろは のこりにけりな きみかたもとに | 経信 |
223 | なへてよの うきになかるる あやめくさ けふまてかかる ねはいかかみる | 小少将(上東門院) |
224 | なにことと あやめはわかて けふもなほ たもとにあまる ねこそたえせね | 紫式部 |
225 | さなへとる やまたのかけひ もりにけり ひくしめなはに つゆそこほるる | 経信 |
226 | をやまたに ひくしめなはの うちはへて くちやしぬらむ さみたれのころ | 良経(九条兼実男) |
227 | いかはかり たこのもすそも そほつらむ くもまもみえぬ ころのさみたれ | 伊勢大輔 |
228 | みしまえの いりえのまこも あめふれは いととしをれて かるひともなし | 経信 |
229 | まこもかる よとのさはみつ ふかけれと そこまてつきの かけはすみけり | 匡房 |
230 | たまかしは しけりにけりな さみたれに はもりのかみの しめはふるまて | 基俊 |
231 | さみたれは おふのかはらの まこもくさ からてやなみの したにくちなむ | 兼実 |
232 | たまほこの みちゆくひとの ことつても たえてほとふる さみたれのそら | 定家 |
233 | さみたれの くものたえまを なかめつつ まとよりにしに つきをまつかな | 氏良 |
234 | あふちさく そとものこかけ つゆおちて さみたれはるる かせわたるなり | 忠良 |
235 | さみたれの つきはつれなき みやまより ひとりもいつる ほとときすかな | 定家 |
236 | ほとときす くもゐのよそに すきぬなり はれぬおもひの さみたれのころ | 後鳥羽院 |
237 | さみたれの くもまのつきの はれゆくを しはしまちける ほとときすかな | 讃岐(二条院) |
238 | たれかまた はなたちはなに おもひいてむ われもむかしの ひととなりなは | 俊成(藤原俊忠男) |
239 | ゆくすゑを たれしのへとて ゆふかせに ちきりかおかむ やとのたちはな | 通具 |
240 | かへりこぬ むかしをいまと おもひねの ゆめのまくらに にほふたちはな | 式子内親王 |
241 | たちはなの はなちるのきの しのふくさ むかしをかけて つゆそこほるる | 忠良 |
242 | さつきやみ みしかきよはの うたたねに はなたちはなの そてにすすしき | 慈円 |
243 | たつぬへき ひとはのきはの ふるさとに それかとかをる にはのたちはな | 読人不知 |
244 | ほとときす はなたちはなの かをとめて なくはむかしの ひとやこひしき | 読人不知 |
245 | たちはなの にほふあたりの うたたねは ゆめもむかしの そてのかそする | 俊成女 |
246 | ことしより はなさきそむる たちはなの いかてむかしの かににほふらむ | 家隆 |
247 | ゆふくれは いつれのくもの なこりとて はなたちはなに かせのふくらむ | 定家 |
248 | ほとときす さつきみなつき わきかねて やすらふこゑそ そらにきこゆる | 国信 |
249 | にはのおもは つきもらぬまて なりにけり こすゑになつの かけしけりつつ | 白河院 |
250 | わかやとの そともにたてる ならのはの しけみにすすむ なつはきにけり | 恵慶 |
251 | うかひふね あはれとそみる もののふの やそうちかはの ゆふやみのそら | 慈円 |
252 | うかひふね たかせさしこす ほとなれや むすほほれゆく かかりひのかけ | 寂蓮 |
253 | おほゐかは かかりさしゆく うかひふね いくせになつの よをあかすらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
254 | ひさかたの なかなるかはの うかひふね いかにちきりて やみをまつらむ | 定家 |
255 | いさりひの むかしのひかり ほのみえて あしやのさとに とふほたるかな | 良経(九条兼実男) |
256 | まとちかき たけのはすさふ かせのおとに いととみしかき うたたねのゆめ | 式子内親王 |
257 | まとちかき いささむらたけ かせふけは あきにおとろく なつのよのゆめ | 公継 |
258 | むすふてに かけみたれゆく やまのゐの あかてもつきの かたふきにける | 慈円 |
259 | きよみかた つきはつれなき あまのとを またてもしらむ なみのうへかな | 通光 |
260 | かさねても すすしかりけり なつころも うすきたもとに やとるつきかけ | 良経(九条兼実男) |
261 | すすしさは あきやかへりて はつせかは ふるかはのへの すきのしたかけ | 有家(藤原重家男) |
262 | みちのへに しみつなかるる やなきかけ しはしとてこそ たちとまりつれ | 西行 |
263 | よられつる のもせのくさの かけろひて すすしくくもる ゆふたちのそら | 西行 |
264 | おのつから すすしくもあるか なつころも ひもゆふくれの あめのなこりに | 清輔 |
265 | つゆすかる にはのたまささ うちなひき ひとむらすきぬ ゆふたちのくも | 公経(藤原実宗男) |
266 | とほちには ゆふたちすらし ひさかたの あまのかくやま くもかくれゆく | 俊頼(源経信男) |
267 | にはのおもは またかわかぬに ゆふたちの そらさりけなく すめるつきかな | 頼政 |
268 | ゆふたちの くももとまらぬ なつのひの かたふくやまに ひくらしのこゑ | 式子内親王 |
269 | ゆふつくひ さすやいほりの しはのとに さひしくもあるか ひくらしのこゑ | 忠良 |
270 | あきちかき けしきのもりに なくせみの なみたのつゆや したはそむらむ | 良経(九条兼実男) |
271 | なくせみの こゑもすすしき ゆふくれに あきをかけたる もりのしたつゆ | 讃岐(二条院) |
272 | いつちとか よるはほたるの のほるらむ ゆくかたしらぬ くさのまくらに | 忠見 |
273 | ほたるとふ のさはにしける あしのねの よなよなしたに かよふあきかせ | 良経(九条兼実男) |
274 | ひさきおふる かたやまかけに しのひつつ ふきけるものを あきのゆふかせ | 俊恵 |
275 | しらつゆの たまもてゆへる ませのうちに ひかりさへそふ とこなつのはな | 高倉院 |
276 | しらつゆの なさけおきける ことのはや ほのほのみえし ゆふかほのはな | 頼実(藤原経宗男) |
277 | たそかれの のきはのをきに ともすれは ほにいてぬあきそ したにこととふ | 式子内親王 |
278 | くもまよふ ゆふへにあきを こめなから かせもほにいてぬ をきのうへかな | 慈円 |
279 | やまさとの みねのあまくも とたえして ゆふへすすしき まきのしたつゆ | 後鳥羽院 |
280 | いはゐくむ あたりのをささ たまこえて かつかつむすふ あきのゆふつゆ | 兼実 |
281 | かたえさす をふのうらなし はつあきに なりもならすも かせそみにしむ | 宮内卿(後鳥羽院) |
282 | なつころも かたへすすしく なりぬなり よやふけぬらむ ゆきあひのそら | 慈円 |
283 | なつはつる あふきとあきの しらつゆと いつれかまつは おかむとすらむ | 忠岑 |
284 | みそきする かはのせみれは からころも ひもゆふくれに なみそたちける | 貫之 |
285 | かみなひの みむろのやまの くすかつら うらふきかへす あきはきにけり | 家持 |
286 | いつしかと をきのはむけの かたよりに そらやあきとそ かせもきこゆる | 崇徳院 |
287 | このねぬる よのまにあきは きにけらし あさけのかせの きのふにもにぬ | 季通(藤原宗通男) |
288 | いつもきく ふもとのさとと おもへとも きのふにかはる やまおろしのかせ | 実定 |
289 | きのふたに とはむとおもひし つのくにの いくたのもりに あきはきにけり | 家隆 |
290 | ふくかせの いろこそみえね たかさこの をのへのまつに あきはきにけり | 秀能(藤原秀宗男) |
291 | ふしみやま まつのかけより みわたせは あくるたのもに あきかせそふく | 俊成(藤原俊忠男) |
292 | あけぬるか ころもてさむし すかはらや ふしみのさとの あきのはつかせ | 家隆 |
293 | ふかくさの つゆのよすかを ちきりにて さとをはかれす あきはきにけり | 良経(九条兼実男) |
294 | あはれまた いかにしのはむ そてのつゆ のはらのかせに あきはきにけり | 通具 |
295 | しきたへの まくらのうへに すきぬなり つゆをたつぬる あきのはつかせ | 具親 |
296 | みつくきの をかのくすはも いろつきて けさうらかなし あきのはつかせ | 顕昭 |
297 | あきはたた こころよりおく ゆふつゆを そてのほかとも おもひけるかな | 越前(嘉陽門院) |
298 | きのふまて よそにしのひし したをきの すゑはのつゆに あきかせそふく | 雅経 |
299 | おしなへて ものをおもはぬ ひとにさへ こころをつくる あきのはつかせ | 西行 |
300 | あはれいかに くさはのつゆの こほるらむ あきかせたちぬ みやきののはら | 西行 |
301 | みしふつき うゑしやまたに ひたはへて またそてぬらす あきはきにけり | 俊成(藤原俊忠男) |
302 | あさきりや たつたのやまの さとならて あききにけりと たれかしらまし | 忠通 |
303 | ゆふくれは をきふくかせの おとまさる いまはたいかに ねさめせられむ | 具平親王 |
304 | ゆふくれは をきのはむけを ふくかせに ことそともなく なみたおちけり | 実定 |
305 | をきのはも ちきりありてや あきかせの おとつれそむる つまとなりけむ | 俊成(藤原俊忠男) |
306 | あききぬと まつふくかせも しらせけり かならすをきの うははならねと | 権大夫(七条院) |
307 | ひをへつつ おとこそまされ いつみなる しのたのもりの ちえのあきかせ | 経衡 |
308 | うたたねの あさけのそてに かはるなり ならすあふきの あきのはつかせ | 式子内親王 |
309 | てもたゆく ならすあふきの おきところ わするはかりに あきかせそふく | 相模 |
310 | あきかせは ふきむすへとも しらつゆの みたれておかぬ くさのはそなき | 大弐三位 |
311 | あさほらけ をきのうははの つゆみれは ややはたさむし あきのはつかせ | 好忠 |
312 | ふきむすふ かせはむかしの あきなから ありしにもにぬ そてのつゆかな | 小町 |
313 | おほそらを われもなかめて ひこほしの つままつよさへ ひとりかもねむ | 貫之 |
314 | このゆふへ ふりつるあめは ひこほしの とわたるふねの かいのしつくか | 赤人 |
315 | としをへて すむへきやとの いけみつは ほしあひのかけも おもなれやせむ | 長家 |
316 | そてひちて わかてにむすふ みつのおもに あまつほしあひの そらをみるかな | 長能 |
317 | くもまより ほしあひのそらを みわたせは しつこころなき あまのかはなみ | 輔親 |
318 | たなはたの あまのはころも うちかさね ぬるよすすしき あきかせそふく | 高遠 |
319 | たなはたの ころものつまは こころして ふきなかへしそ あきのはつかせ | 小弁 |
320 | たなはたの とわたるふねの かちのはに いくあきかきつ つゆのたまつさ | 俊成(藤原俊忠男) |
321 | なかむれは ころもてすすし ひさかたの あまのかはらの あきのゆふくれ | 式子内親王 |
322 | いかはかり みにしみぬらむ たなはたの つままつよひの あまのかはかせ | 兼実 |
323 | ほしあひの ゆふへすすしき あまのかは もみちのはしを わたるあきかせ | 公経(藤原実宗男) |
324 | たなはたの あふせたえせぬ あまのかは いかなるあきか わたりそめけむ | 堀河(待賢門院) |
325 | わくらはに あまのかはなみ よるなから あくるそらには まかせすもかな | 斎宮女御 |
326 | いととしく おもひけぬへし たなはたの わかれのそてに おけるしらつゆ | 能宣 |
327 | たなはたは いまやわかるる あまのかは かはきりたちて ちとりなくなり | 貫之 |
328 | かはみつに しかのしからみ かけてけり うきてなかれぬ あきはきのはな | 匡房 |
329 | かりころも われとはすらし つゆしけき のはらのはきの はなにまかせて | 頼政 |
330 | あきはきを をらてはすきし つきくさの はなすりころも つゆにぬるとも | 永縁 |
331 | はきかはな まそてにかけて たかまとの をのへのみやに ひれふるやたれ | 顕昭 |
332 | おくつゆも しつこころなく あきかせに みたれてさける まののはきはら | 紀伊(祐子内親王家) |
333 | あきはきの さきちるのへの ゆふつゆに ぬれつつきませ よはふけぬとも | 人麿 |
334 | さをしかの あさたつのへの あきはきに たまとみるまて おけるしらつゆ | 家持 |
335 | あきののを わけゆくつゆに うつりつつ わかころもては はなのかそする | 躬恒 |
336 | たれをかも まつちのやまの をみなへし あきとちきれる ひとそあるらし | 小町 |
337 | をみなへし のへのふるさと おもひいてて やとりしむしの こゑやこひしき | 元真 |
338 | ゆふされは たまちるのへの をみなへし まくらさためぬ あきかせそふく | 良平 |
339 | ふちはかま ぬしはたれとも しらつゆの こほれてにほふ のへのあきかせ | 公猷 |
340 | うすきりの まかきのはなの あさしめり あきはゆふへと たれかいひけむ | 清輔 |
341 | いとかくや そてはしをれし のへにいてて むかしもあきの はなはみしかと | 俊成(藤原俊忠男) |
342 | はなみにと ひとやりならぬ のへにきて こころのかきり つくしつるかな | 経信 |
343 | おきてみむと おもひしほとに かれにけり つゆよりけなる あさかほのはな | 好忠 |
344 | やまかつの かきほにさける あさかほは しののめならて あふよしもなし | 貫之 |
345 | うらかるる あさちかはらの かるかやの みたれてものを おもふころかな | 是則 |
346 | さをしかの いるののすすき はつをはな いつしかいもか たまくらにせむ | 人麿 |
347 | をくらやま ふもとののへの はなすすき ほのかにみゆる あきのゆふくれ | 読人不知 |
348 | ほのかにも かせはふかなむ はなすすき むすほほれつつ つゆにぬるとも | 斎宮女御 |
349 | はなすすき またつゆふかし ほにいてては なかめしとおもふ あきのさかりを | 式子内親王 |
350 | のへことに おとつれわたる あきかせを あたにもなひく はなすすきかな | 六条 |
351 | あけぬとて のへよりやまに いるしかの あとふきおくる はきのしたかせ | 通光 |
352 | みにとまる おもひををきの うははにて このころかなし ゆふくれのそら | 慈円 |
353 | みのほとを おもひつつくる ゆふくれの をきのうははに かせわたるなり | 行宗 |
354 | あきはたた ものをこそおもへ つゆかかる をきのうへふく かせにつけても | 重之女 |
355 | あきかせの ややはたさむく ふくなへに をきのうははの おとそかなしき | 基俊 |
356 | をきのはに ふけはあらしの あきなるを まちけるよはの さをしかのこゑ | 良経(九条兼実男) |
357 | おしなへて おもひしことの かすかすに なほいろまさる あきのゆふくれ | 良経(九条兼実男) |
358 | くれかかる むなしきそらの あきをみて おほえすたまる そてのつゆかな | 良経(九条兼実男) |
359 | ものおもはて かかるつゆやは そてにおく なかめてけりな あきのゆふくれ | 良経(九条兼実男) |
360 | みやまちや いつよりあきの いろならむ みさりしくもの ゆふくれのそら | 慈円 |
361 | さひしさは そのいろとしも なかりけり まきたつやまの あきのゆふくれ | 寂蓮 |
362 | こころなき みにもあはれは しられけり しきたつさはの あきのゆふくれ | 西行 |
363 | みわたせは はなももみちも なかりけり うらのとまやの あきのゆふくれ | 定家 |
364 | たへてやは おもひありとも いかかせむ むくらのやとの あきのゆふくれ | 雅経 |
365 | おもふこと さしてそれとは なきものを あきのゆふへを こころにそとふ | 宮内卿(後鳥羽院) |
366 | あきかせの いたりいたらぬ そてはあらし たたわれからの つゆのゆふくれ | 長明 |
367 | おほつかな あきはいかなる ゆゑのあれは すすろにものの かなしかるらむ | 西行 |
368 | それなから むかしにもあらぬ あきかせに いととなかめを しつのをたまき | 式子内親王 |
369 | ひくらしの なくゆふくれそ うかりける いつもつきせぬ おもひなれとも | 長能 |
370 | あきくれは ときはのやまの まつかせも うつるはかりに みにそしみける | 和泉式部 |
371 | あきかせの よもにふきくる おとはやま なにのくさきか のとけかるへき | 好忠 |
372 | あかつきの つゆはなみたも ととまらて うらむるかせの こゑそのこれる | 相模 |
373 | たかまとの のちのしのはら すゑさわき そそやこからし けふふきぬなり | 基俊 |
374 | ふかくさの さとのつきかけ さひしさも すみこしままの のへのあきかせ | 通具 |
375 | おほあらきの もりのこのまを もりかねて ひとたのめなる あきのよのつき | 俊成女 |
376 | ありあけの つきまつやとの そてのうへに ひとたのめなる よひのいなつま | 家隆 |
377 | かせわたる あさちかすゑの つゆにたに やとりもはてぬ よひのいなつま | 有家(藤原重家男) |
378 | むさしのや ゆけともあきの はてそなき いかなるかせか すゑにふくらむ | 通光 |
379 | いつまてか なみたくもらて つきはみし あきまちえても あきそこひしき | 慈円 |
380 | なかめわひぬ あきよりほかの やともかな のにもやまにも つきやすむらむ | 式子内親王 |
381 | つきかけの はつあきかせと ふけゆけは こころつくしに ものをこそおもへ | 円融院 |
382 | あしひきの やまのあなたに すむひとは またてやあきの つきをみるらむ | 三条院 |
383 | しきしまや たかまとやまの くもまより ひかりさしそふ ゆみはりのつき | 堀河院 |
384 | ひとよりも こころのかきり なかめつる つきはたれとも わかしものゆゑ | 頼宗 |
385 | あやなくも くもらぬよひを いとふかな しのふのさとの あきのよのつき | 為仲(橘義通男) |
386 | かせふけは たまちるはきの したつゆに はかなくやとる のへのつきかな | 忠通 |
387 | こよひたれ すすふくかせを みにしめて よしののたけに つきをみるらむ | 頼政 |
388 | つきみれは おもひそあへぬ やまたかみ いつれのとしの ゆきにかあるらむ | 重家 |
389 | にほのうみや つきのひかりの うつろへは なみのはなにも あきはみえけり | 家隆 |
390 | ふけゆかは けふりもあらし しほかまの うらみなはてそ あきのよのつき | 慈円 |
391 | ことわりの あきにはあへぬ なみたかな つきのかつらも かはるひかりに | 俊成女 |
392 | なかめつつ おもふもさひし ひさかたの つきのみやこの あけかたのそら | 家隆 |
393 | ふるさとの もとあらのこはき さきしより よなよなにはの つきそうつろふ | 良経(九条兼実男) |
394 | ときしもあれ ふるさとひとは おともせて みやまのつきに あきかせそふく | 良経(九条兼実男) |
395 | ふかからぬ とやまのいほの ねさめたに さそなこのまの つきはさひしき | 良経(九条兼実男) |
396 | つきはなほ もらぬこのまも すみよしの まつをつくして あきかせそふく | 寂蓮 |
397 | なかむれは ちちにものおもふ つきにまた わかみひとつの みねのまつかせ | 長明 |
398 | あしひきの やまちのこけの つゆのうへに ねさめよふかき つきをみるかな | 秀能(藤原秀宗男) |
399 | こころある をしまのあまの たもとかな つきやとれとは ぬれぬものから | 宮内卿(後鳥羽院) |
400 | わすれしな なにはのあきの よはのそら ことうらにすむ つきはみるとも | 丹後(宜秋門院) |
401 | まつしまや しほくむあまの あきのそて つきはものおもふ ならひのみかは | 長明 |
402 | こととはむ のしまかさきの あまころも なみとつきとに いかかしをるる | 大納言(七条院) |
403 | あきのよの つきやをしまの あまのはら あけかたちかき おきのつりふね | 家隆 |
404 | うきみには なかむるかひも なかりけり こころにくもる あきのよのつき | 慈円 |
405 | いつくにか こよひのつきの くもるへき をくらのやまも なをやかふらむ | 千里 |
406 | こころこそ あくかれにけれ あきのよの よふかきつきを ひとりみしより | 道済 |
407 | かはらしな しるもしらぬも あきのよの つきまつほとの こころはかりは | 小少将(上東門院) |
408 | たのめたる ひとはなけれと あきのよは つきみてぬへき ここちこそせね | 和泉式部 |
409 | みるひとの そてをそしほる あきのよは つきにいかなる かけかそふらむ | 範永 |
410 | みにそへる かけとこそみれ あきのつき そてにうつらぬ をりしなけれは | 相模 |
411 | つきかけの すみわたるかな あまのはら くもふきはらふ よはのあらしに | 経信 |
412 | たつたやま よはにあらしの まつふけは くもにはうとき みねのつきかけ | 通光 |
413 | あきかせに たなひくくもの たえまより もれいつるつきの かけのさやけさ | 顕輔 |
414 | やまのはに くものよこきる よひのまは いててもつきそ なほまたれける | 道因 |
415 | なかめつつ おもふもぬるる たもとかな いくよかはみむ あきのよのつき | 大輔(殷富門院) |
416 | よひのまに さてもねぬへき つきならは やまのはちかき ものはおもはし | 式子内親王 |
417 | ふくるまて なかむれはこそ かなしけれ おもひもいれし あきのよのつき | 式子内親王 |
418 | くもはみな はらひはてたる あきかせを まつにのこして つきをみるかな | 良経(九条兼実男) |
419 | つきたにも なくさめかたき あきのよの こころもしらぬ まつのかせかな | 良経(九条兼実男) |
420 | さむしろや まつよのあきの かせふけて つきをかたしく うちのはしひめ | 定家 |
421 | あきのよの なかきかひこそ なかりけれ まつにふけぬる ありあけのつき | 忠経 |
422 | ゆくすゑは そらもひとつの むさしのに くさのはらより いつるつきかけ | 良経(九条兼実男) |
423 | つきをなほ まつらむものか むらさめの はれゆくくもの すゑのさとひと | 宮内卿(後鳥羽院) |
424 | あきのよは やとかるつきも つゆなから そてにふきこす をきのうはかせ | 通具 |
425 | あきのつき しのにやとかる かけたけて をささかはらに つゆふけにけり | 家長(源時長男) |
426 | かせわたる やまたのいほを もるつきや ほなみにむすふ こほりなるらむ | 頼実(藤原経宗男) |
427 | かりのくる ふしみのをたに ゆめさめて ねぬよのいほに つきをみるかな | 慈円 |
428 | いなはふく かせにまかせて すむいほは つきそまことに もりあかしける | 俊成女 |
429 | あくかれて ねぬよのちりの つもるまて つきにはらはぬ とこのさむしろ | 俊成女 |
430 | あきのたの かりねのとこの いなむしろ つきやとれとも しけるつゆかな | 定雅(大中臣雅光男) |
431 | あきのたに いほさすしつの とまをあらみ つきとともにや もりあかすらむ | 顕輔 |
432 | あきのいろは まかきにうとく なりゆけと たまくらなるる ねやのつきかけ | 式子内親王 |
433 | あきのつゆや たもとにいたく むすふらむ なかきよあかす やとるつきかな | 後鳥羽院 |
434 | さらにまた くれをたのめと あけにけり つきはつれなき あきのよのそら | 通光 |
435 | おほかたに あきのねさめの つゆけくは またたかそてに ありあけのつき | 讃岐(二条院) |
436 | はらひかね さこそはつゆの しけからめ やとるかつきの そてのせはきに | 雅経 |
437 | したもみち かつちるやまの ゆふしくれ ぬれてやひとり しかのなくらむ | 家隆 |
438 | やまおろしに しかのねたかく きこゆなり をのへのつきに さよやふけぬる | 実房 |
439 | のわきせし をののくさふし あれはてて みやまにふかき さをしかのこゑ | 寂蓮 |
440 | あらしふく まくすかはらに なくしかは うらみてのみや つまをこふらむ | 俊恵 |
441 | つまこふる しかのたちとを たつぬれは さやまかすそに あきかせそふく | 匡房 |
442 | みやまへの まつのこすゑを わたるなり あらしにやとす さをしかのこゑ | 惟明親王 |
443 | われならぬ ひともあはれや まさるらむ しかなくやまの あきのゆふくれ | 通親 |
444 | たくへくる まつのあらしや たゆむらむ をのへにかへる さをしかのこゑ | 良経(九条兼実男) |
445 | なくしかの こゑにめさめて しのふかな みはてぬゆめの あきのおもひを | 慈円 |
446 | よもすから つまとふしかの なくなへに こはきかはらの つゆそこほるる | 俊忠 |
447 | ねさめして ひさしくなりぬ あきのよは あけやしぬらむ しかそなくなる | 道済 |
448 | をやまたの いほちかくなく しかのねに おとろかされて おとろかすかな | 西行 |
449 | やまさとの いなはのかせに ねさめして よふかくしかの こゑをきくかな | 師忠(源師房男) |
450 | ひとりねや いととさひしき さをしかの あさふすをのの くすのうらかせ | 顕綱 |
451 | たつたやま こすゑまはらに なるままに ふかくもしかの そよくなるかな | 俊恵 |
452 | すきてゆく あきのかたみに さをしかの おのかなくねも をしくやあるらむ | 長家 |
453 | わきてなと いほもるそての しをるらむ いなはにかきる あきのかせかは | 慈円 |
454 | あきたもる かりいほつくり わかをれは ころもてさむし つゆそおきける | 読人不知 |
455 | あきくれは あさけのかせの てをさむみ やまたのひたを まかせてそきく | 匡房 |
456 | ほとときす なくさみたれに うゑしたを かりかねさむみ あきそくれぬる | 為政(善滋保章男) |
457 | いまよりは あきかせさむく なりぬへし いかてかひとり なかきよをねむ | 家持 |
458 | あきされは かりのはかせに しもふりて さむきよなよな しくれさへふる | 人麿 |
459 | さをしかの つまとふやまの をかへなる わさたはからし しもはおくとも | 人麿 |
460 | かりてほす やまたのいねは そてひちて うゑしさなへと みえすもあるかな | 貫之 |
461 | くさはには たまとみえつつ わひひとの そてのなみたの あきのしらつゆ | 道真 |
462 | わかやとの をはなかすゑに しらつゆの おきしひよりそ あきかせもふく | 家持 |
463 | あきといへは ちきりおきてや むすふらむ あさちかはらの けさのしらつゆ | 恵慶 |
464 | あきされは おくしらつゆに わかやとの あさちかうはは いろつきにけり | 人麿 |
465 | おほつかな のにもやまにも しらつゆの なにことをかは おもひおくらむ | 村上天皇 |
466 | つゆしけみ のへをわけつつ からころも ぬれてそかへる はなのしつくに | 頼宗 |
467 | にはのおもに しけるよもきに ことよせて こころのままに おけるつゆかな | 基俊 |
468 | あきののの くさはおしなひ おくつゆに ぬれてやひとの たつねゆくらむ | 長実 |
469 | ものおもふ そてよりつゆや ならひけむ あきかせふけは たへぬものとは | 寂蓮 |
470 | つゆはそてに ものおもふころは さそなおく かならすあきの ならひならねと | 後鳥羽院 |
471 | のはらより つゆのゆかりを たつねきて わかころもてに あきかせそふく | 後鳥羽院 |
472 | きりきりす よさむにあきの なるままに よわるかこゑの とほさかりゆく | 西行 |
473 | むしのねも なかきよあかぬ ふるさとに なほおもひそふ まつかせそふく | 家隆 |
474 | あともなき にはのあさちに むすほほれ つゆのそこなる まつむしのこゑ | 式子内親王 |
475 | あきかせは みにしむはかり ふきにけり いまやうつらむ いもかさころも | 輔尹 |
476 | ころもうつ おとはまくらに すかはらや ふしみのゆめを いくよのこしつ | 慈円 |
477 | ころもうつ ねやまのいほの しはしはも しらぬゆめちに むすふたまくら | 公経(藤原実宗男) |
478 | さとはあれて つきやあらぬと うらみても たれあさちふに ころもうつらむ | 良経(九条兼実男) |
479 | まとろまて なかめよとての すさひかな あさのさころも つきにうつこゑ | 宮内卿(後鳥羽院) |
480 | あきとたに わすれむとおもふ つきかけを さもあやにくに うつころもかな | 定家 |
481 | ふるさとに ころもうつとは ゆくかりや たひのそらにも なきてつくらむ | 経信 |
482 | かりなきて ふくかせさむみ からころも きみまちかてに うたぬよそなき | 貫之 |
483 | みよしのの やまのあきかせ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり | 雅経 |
484 | ちたひうつ きぬたのおとに ゆめさめて ものおもふそての つゆそくたくる | 式子内親王 |
485 | ふけにけり やまのはちかく つきさえて とをちのさとに ころもうつこゑ | 式子内親王 |
486 | あきはつる さよふけかたの つきみれは そてものこらす つゆそおきける | 道信 |
487 | ひとりぬる やまとりのをの したりをに しもおきまよふ とこのつきかけ | 定家 |
488 | ひとめみし のへのけしきは うらかれて つゆのよすかに やとるつきかな | 寂蓮 |
489 | あきのよは ころもさむしろ かさねても つきのひかりに しくものそなき | 経信 |
490 | あきのよは はやなかつきに なりにけり ことわりなりや ねさめせらるる | 花山院 |
491 | むらさめの つゆもまたひぬ まきのはに きりたちのほる あきのゆふくれ | 寂蓮 |
492 | さひしさは みやまのあきの あさくもり きりにしをるる まきのしたつゆ | 後鳥羽院 |
493 | あけほのや かはせのなみの たかせふね くたすかひとの そてのあききり | 通光 |
494 | ふもとをは うちのかはきり たちこめて くもゐにみゆる あさひやまかな | 公実 |
495 | やまさとに きりのまかきの へたてすは をちかたひとの そてもみてまし | 好忠 |
496 | なくかりの ねをのみそきく をくらやま きりたちはるる ときしなけれは | 深養父 |
497 | かきほなる をきのはそよき あきかせの ふくなるなへに かりそなくなる | 人麿 |
498 | あきかせに やまとひこゆる かりかねの いやとほさかり くもかくれつつ | 人麿 |
499 | はつかりの はかせすすしく なるなへに たれかたひねの ころもかへさぬ | 躬恒 |
500 | かりかねは かせにきほひて すくれとも わかまつひとの ことつてもなし | 読人不知 |
501 | よこくもの かせにわかるる しののめに やまとひこゆる はつかりのこゑ | 西行 |
502 | しらくもを つはさにかけて ゆくかりの かとたのおもの ともしたふなり | 西行 |
503 | おほえやま かたふくつきの かけさえて とはたのおもに おつるかりかね | 慈円 |
504 | むらくもや かりのはかせに はれぬらむ こゑきくそらに すめるつきかけ | 朝恵 |
505 | ふきまよふ くもゐをわたる はつかりの つはさにならす よものあきかせ | 俊成女 |
506 | あきかせの そてにふきまく みねのくもを つはさにかけて かりもなくなり | 家隆 |
507 | しもをまつ まかきのきくの よひのまに おきまよふいろは やまのはのつき | 宮内卿(後鳥羽院) |
508 | ここのへに うつろひぬとも きくのはな もとのまかきを おもひわするな | 有仁室 |
509 | いまよりは またさくはなも なきものを いたくなおきそ きくのうへのつゆ | 定頼 |
510 | あきかせに しをるるのへの はなよりも むしのねいたく かれにけるかな | 具平親王 |
511 | ねさめする そてさへさむく あきのよの あらしふくなり まつむしのこゑ | 嘉言 |
512 | あきをへて あはれもつゆも ふかくさの さととふものは うつらなりけり | 慈円 |
513 | いりひさす ふもとのをはな うちなひき たかあきかせに うつらなくらむ | 通光 |
514 | あたにちる つゆのまくらに ふしわひて うつらなくなり とこのやまかせ | 俊成女 |
515 | とふひとも あらしふきそふ あきはきて このはにうつむ やとのみちしは | 俊成女 |
516 | いろかはる つゆをはそてに おきまよひ うらかれてゆく のへのあきかせ | 俊成女 |
517 | あきふけぬ なけやしもよの きりきりす ややかけさむし よもきふのつき | 後鳥羽院 |
518 | きりきりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ | 良経(九条兼実男) |
519 | ねさめする なかつきのよの とこさむみ けさふくかせに しもやおくらむ | 公継 |
520 | あきふかき あはちのしまの ありあけに かたふくつきを おくるうらかせ | 慈円 |
521 | なかつきも いくありあけに なりぬらむ あさちのつきの いととさひゆく | 慈円 |
522 | かささきの くものかけはし あきくれて よはにはしもや さえわたるらむ | 寂蓮 |
523 | いつのまに もみちしぬらむ やまさくら きのふかはなの ちるををしみし | 具平親王 |
524 | うすきりの たちまふやまの もみちはは さやかならねと それとみえけり | 高倉院 |
525 | かみなひの みむろのこすゑ いかならむ なへてのやまも しくれするころ | 高倉(八条院) |
526 | すすかかは ふかきこのはに ひかすへて やまたのはらの しくれをそきく | 後鳥羽院 |
527 | こころとや もみちはすらむ たつたやま まつはしくれに ぬれぬものかは | 俊成(藤原俊忠男) |
528 | おもふこと なくてやみまし もみちはを あらしのやまの ふもとならすは | 輔尹 |
529 | いりひさす さほのやまへの ははそはら くもらぬあめと このはふりつつ | 好忠 |
530 | たつたやま あらしやみねに よわるらむ わたらぬみつも にしきたえけり | 宮内卿(後鳥羽院) |
531 | ははそはら しつくもいろや かはるらむ もりのしたくさ あきふけにけり | 良経(九条兼実男) |
532 | ときわかぬ なみさへいろに いつみかは ははそのもりに あらしふくらし | 定家 |
533 | ふるさとは ちるもみちはに うつもれて のきのしのふに あきかせそふく | 俊頼(源経信男) |
534 | きりのはも ふみわけかたく なりにけり かならすひとを まつとなけれと | 式子内親王 |
535 | ひとはこす かせにこのはは ちりはてて よなよなむしは こゑよわるなり | 好忠 |
536 | もみちはの いろにまかせて ときはきも かせにうつろふ あきのやまかな | 公継 |
537 | つゆしくれ もるやまかけの したもみち ぬるともをらむ あきのかたみに | 家隆 |
538 | まつにはふ まさきのかつら ちりにけり とやまのあきは かせすさふらむ | 西行 |
539 | うつらなく かたのにたてる はしもみち ちらぬはかりに あきかせそふく | 親隆 |
540 | ちりかかる もみちのいろは ふかけれと わたれはにこる やまかはのみつ | 讃岐(二条院) |
541 | あすかかは もみちはなかる かつらきの やまのあきかせ ふきそしくらし | 人麿 |
542 | あすかかは せせになみよる くれなゐや かつらきやまの こからしのかせ | 長方 |
543 | もみちはを さこそあらしの はらふらめ このやまもとも あめとふるなり | 公経(藤原実宗男) |
544 | たつたひめ いまはのころの あきかせに しくれをいそく ひとのそてかな | 良経(九条兼実男) |
545 | ゆくあきの かたみなるへき もみちはも あすはしくれと ふりやまかはむ | 兼宗 |
546 | うちむれて ちるもみちはを たつぬれは やまちよりこそ あきはゆきけれ | 公任 |
547 | なつくさの かりそめにとて こしやとも なにはのうらに あきそくれぬる | 能因 |
548 | かくしつつ くれぬるあきと おいぬれと しかすかになほ ものそかなしき | 能因 |
549 | みにかへて いささはあきを をしみみむ さらてももろき つゆのいのちを | 守覚法親王 |
550 | なへてよの をしさにそへて をしむかな あきよりのちの あきのかきりを | 頼実(藤原経宗男) |
551 | おきあかす あきのわかれの そてのつゆ しもこそむすへ ふゆやきぬらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
552 | かみなつき かせにもみちの ちるときは そこはかとなく ものそかなしき | 高光 |
553 | なとりかは やなせのなみそ さわくなる もみちやいとと よりてせくらむ | 重之 |
554 | いかたしよ まてこととはむ みなかみは いかはかりふく やまのあらしそ | 資宗 |
555 | ちりかかる もみちなかれぬ おほゐかは いつれゐせきの みつのしからみ | 経信 |
556 | たかせふね しふくはかりに もみちはの なかれてくたる おほゐかはかな | 家経(藤原広業男) |
557 | ひくるれは あふひともなし まさきちる みねのあらしの おとはかりして | 俊頼(源経信男) |
558 | おのつから おとするものは にはのおもに このはふりしく たにのゆふかせ | 清輔 |
559 | このはちる やとにかたしく そてのいろを ありともしらて ゆくあらしかな | 慈円 |
560 | このはちる しくれやまかふ わかそてに もろきなみたの いろとみるまて | 通具 |
561 | うつりゆく くもにあらしの こゑすなり ちるかまさきの かつらきのやま | 雅経 |
562 | はつしくれ しのふのやまの もみちはを あらしふけとは そめすやありけむ | 大納言(七条院) |
563 | しくれつつ そてもほしあへす あしひきの やまのこのはに あらしふくころ | 下野(後鳥羽院) |
564 | やまさとの かせすさましき ゆふくれに このはみたれて ものそかなしき | 秀能(藤原秀宗男) |
565 | ふゆのきて やまもあらはに このはふり のこるまつさへ みねにさひしき | 成茂 |
566 | からにしき あきのかたみや たつたやま ちりあへぬえたに あらしふくなり | 宮内卿(後鳥羽院) |
567 | しくれかと きけはこのはの ふるものを それともぬるる わかたもとかな | 資隆 |
568 | ときしもあれ ふゆははもりの かみなつき まはらになりぬ もりのかしはき | 慶算 |
569 | いつのまに そらのけしきの かはるらむ はけしきけさの こからしのかせ | 国基 |
570 | つきをまつ たかねのくもは はれにけり こころあるへき はつしくれかな | 西行 |
571 | かみなつき ききのこのはは ちりはてて にはにそかせの おとはきこゆる | 覚忠 |
572 | しはのとに いりひのかけは さしなから いかにしくるる やまへなるらむ | 清輔 |
573 | くもはれて のちもしくるる しはのとや やまかせはらふ まつのしたつゆ | 隆信 |
574 | かみなつき しくれふるらし さほやまの まさきのかつら いろまさりゆく | 読人不知 |
575 | こからしの おとにしくれを ききわかて もみちにぬるる たもととそみる | 具平親王 |
576 | しくれふる おとはすれとも くれたけの なとよとともに いろもかはらぬ | 兼輔 |
577 | しくれのあめ そめかねてけり やましろの ときはのもりの まきのしたはは | 能因 |
578 | ふゆをあさみ またきしくれを おもひしを たえさりけりな おいのなみたも | 元輔(清原春光男) |
579 | まはらなる しはのいほりに たひねして しくれにぬるる さよころもかな | 後白河院 |
580 | やよしくれ ものおもふそての なかりせは このはののちに なにをそめまし | 慈円 |
581 | ふかみとり あらそひかねて いかならむ まなくしくれの ふるのかみすき | 後鳥羽院 |
582 | しくれのあめ まなくしふれは まきのはも あらそひかねて いろつきにけり | 人麿 |
583 | よのなかに なほもふるかな しくれつつ くもまのつきの いてやとおもへは | 和泉式部 |
584 | をりこそあれ なかめにかかる うきくもの そてもひとつに うちしくれつつ | 讃岐(二条院) |
585 | あきしのや とやまのさとや しくるらむ いこまのたけに くものかかれる | 西行 |
586 | はれくもり しくれはさため なきものを ふりはてぬるは わかみなりけり | 道因 |
587 | いまはまた ちらてもまかふ しくれかな ひとりふりゆく にはのまつかせ | 具親 |
588 | みよしのの やまかきくもり ゆきふれは ふもとのさとは うちしくれつつ | 俊恵 |
589 | まきのやに しくれのおとの かはるかな もみちやふかく ちりつもるらむ | 実房 |
590 | よにふるは くるしきものを まきのやに やすくもすくる はつしくれかな | 讃岐(二条院) |
591 | ほのほのと ありあけのつきの つきかけに もみちふきおろす やまおろしのかせ | 信明 |
592 | もみちはを なにをしみけむ このまより もりくるつきは こよひこそみれ | 具平親王 |
593 | ふきはらふ あらしののちの たかねより このはくもらて つきやいつらむ | 丹後(宜秋門院) |
594 | しもこほる そてにもかけは のこりけり つゆよりなれし ありあけのつき | 通具 |
595 | なかめつつ いくたひそてに くもるらむ しくれにふくる ありあけのつき | 家隆 |
596 | さためなく しくるるそらの むらくもに いくたひおなし つきをまつらむ | 泰光(源師光男) |
597 | いまよりは このはかくれも なけれとも しくれにのこる むらくものつき | 具親 |
598 | はれくもる かけをみやこに さきたてて しくるとつくる やまのはのつき | 具親 |
599 | たえたえに さとわくつきの ひかりかな しくれをかくる よはのむらくも | 寂蓮 |
600 | いまはとて ねなましものを しくれつる そらともみえす すめるつきかな | 良暹 |
601 | つゆしもの よはにおきゐて ふゆのよの つきみるほとに そてはこほりぬ | 好忠 |
602 | もみちはは おのかそめたる いろそかし よそけにおける けさのしもかな | 慈円 |
603 | をくらやま ふもとのさとに このはちれは こすゑにはるる つきをみるかな | 西行 |
604 | あきのいろを はらひはててや ひさかたの つきのかつらに こからしのかせ | 雅経 |
605 | かせさむみ このははれゆく よなよなに のこるくまなき にはのつきかけ | 式子内親王 |
606 | わかかとの かりたのねやに ふすしきの とこあらはなる ふゆのよのつき | 大輔(殷富門院) |
607 | ふゆかれの もりのくちはの しものうへに おちたるつきの かけのさむけさ | 清輔 |
608 | さえわひて さむるまくらに かけみれは しもふかきよの ありあけのつき | 俊成女 |
609 | しもむすふ そてのかたしき うちとけて ねぬよのつきの かけそさむけき | 通具 |
610 | かけとめし つゆのやとりを おもひいてて しもにあととふ あさちふのつき | 雅経 |
611 | かたしきの そてをやしもに かさぬらむ つきによかるる うちのはしひめ | 幸清 |
612 | なつかりの をきのふるえは かれにけり むれゐしとりは そらにやあるらむ | 重之 |
613 | さよふけて こゑさへさむき あしたつは いくへのしもか おきまさるらむ | 道信 |
614 | ふゆのよの なかきをおくる そてぬれぬ あかつきかたの よものあらしに | 後鳥羽院 |
615 | ささのはは みやまもさやに うちそよき こほれるしもを ふくあらしかな | 良経(九条兼実男) |
616 | きみこすは ひとりやねなむ ささのはの みやまもそよに さやくしもよを | 清輔 |
617 | しもかれは そこともみえぬ くさのはら たれにとはまし あきのなこりを | 俊成女 |
618 | しもさゆる やまたのくろの むらすすき かるひとなしに のこるころかな | 慈円 |
619 | くさのうへに ここらたまゐし しらつゆを したはのしもと むすふふゆかな | 好忠 |
620 | かささきの わたせるはしに おくしもの しろきをみれは よそふけにける | 家持 |
621 | しくれつつ かれゆくのへの はななれは しものまかきに にほふいろかな | 醍醐天皇 |
622 | きくのはな たをりてはみし はつしもの おきなからこそ いろまさりけれ | 兼輔 |
623 | かけさへに いまはときくの うつろふは なみのそこにも しもやおくらむ | 是則 |
624 | のへみれは をはなかもとの おもひくさ かれゆくふゆに なりそしにける | 和泉式部 |
625 | つのくにの なにはのはるは ゆめなれや あしのかれはに かせわたるなり | 西行 |
626 | ふゆふかく なりにけらしな なにはえの あをはましらぬ あしのむらたち | 成通 |
627 | さひしさに たへたるひとの またもあれな いほりならへむ ふゆのやまさと | 西行 |
628 | あつまちの みちのふゆくさ しけりあひて あとたにみえぬ わすれみつかな | 康資王母 |
629 | むかしおもふ さよのねさめの とこさえて なみたもこほる そてのうへかな | 守覚法親王 |
630 | たちぬるる やまのしつくも おとたえて まきのしたはに たるひしにけり | 守覚法親王 |
631 | かつこほり かつはくたくる やまかはの いはまにむすふ あかつきのこゑ | 俊成(藤原俊忠男) |
632 | きえかへり いはまにまよふ みつのあわの しはしやとかる うすこほりかな | 良経(九条兼実男) |
633 | まくらにも そてにもなみた つららゐて むすはぬゆめを とふあらしかな | 良経(九条兼実男) |
634 | みなかみや たえたえこほる いはまより きよたきかはに のこるしらなみ | 良経(九条兼実男) |
635 | かたしきの そてのこほりも むすほほれ とけてねぬよの ゆめそみしかき | 良経(九条兼実男) |
636 | はしひめの かたしきころも さむしろに まつよむなしき うちのあけほの | 後鳥羽院 |
637 | あしろきに いさよふなみの おとふけて ひとりやねぬる うちのはしひめ | 慈円 |
638 | みるままに ふゆはきにけり かものゐる いりえのみきは うすこほりつつ | 式子内親王 |
639 | しかのうらや とほさかりゆく なみまより こほりていつる ありあけのつき | 家隆 |
640 | ひとりみる いけのこほりに すむつきの やかてそてにも うつりぬるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
641 | うはたまの よのふけゆけは ひさきおふる きよきかはらに ちとりなくなり | 赤人 |
642 | ゆくさきは さよふけぬれと ちとりなく さほのかはらは すきうかりけり | 伊勢大輔 |
643 | ゆふされは しほかせこして みちのくの のたのたまかは ちとりなくなり | 能因 |
644 | しらなみに はねうちかはし はまちとり かなしきものは よはのひとこゑ | 重之 |
645 | ゆふなきに とわたるちとり なみまより みゆるこしまの くもにきえぬる | 実定 |
646 | うらかせに ふきあけのはまの はまちとり なみたちくらし よはになくなり | 紀伊(祐子内親王家) |
647 | つきそすむ たれかはここに きのくにや ふきあけのちとり ひとりなくなり | 良経(九条兼実男) |
648 | さよちとり こゑこそちかく なるみかた かたふくつきに しほやみつらむ | 季能 |
649 | かせふけは よそになるみの かたおもひ おもはぬなみに なくちとりかな | 秀能(藤原秀宗男) |
650 | うらひとの ひもゆふくれに なるみかた かへるそてより ちとりなくなり | 通光 |
651 | かせさゆる をしまかいその むらちとり たちゐはなみの こころなりけり | 季経 |
652 | はかなしや さてもいくよか ゆくみつに かすかきわふる をしのひとりね | 雅経 |
653 | みつとりの かものうきねの うきなから なみのまくらに いくよへぬらむ | 河内(前斎宮) |
654 | よしのなる なつみのかはの かはよとに かもそなくなる やまかけにして | 湯原王 |
655 | ねやのうへに かたえさしおほひ そともなる はひろかしはに あられふるなり | 能因 |
656 | ささなみや しかのからさき かせさえて ひらのたかねに あられふるなり | 忠通 |
657 | やたののに あさちいろつく あらちやま みねのあはゆき さむくあるらし | 人麿 |
658 | つねよりも しのやののきそ うつもるる けふはみやこに はつゆきやふる | 瞻西 |
659 | ふるゆきに まことにしのや いかならむ けふはみやこに あとたにもなし | 基俊 |
660 | はつゆきの ふるのかみすき うつもれて しめゆふのへは ふゆこもりせり | 長方 |
661 | ふれはかく うさのみまさる よをしらて あれたるにはに つもるはつゆき | 紫式部 |
662 | さむしろの よはのころもて さえさえて はつゆきしろし をかのへのまつ | 式子内親王 |
663 | ふりそむる けさたにひとの またれつる みやまのさとの ゆきのゆふくれ | 寂蓮 |
664 | けふはもし きみもやとふと なかむれと またあともなき にはのゆきかな | 俊成(藤原俊忠男) |
665 | いまそきく こころはあとも なかりけり ゆきかきわけて おもひやれとも | 実定 |
666 | しらやまも としふるゆきや つもるらむ よはにかたしく たもとさゆなり | 公任 |
667 | あけやらぬ ねさめのとこに きこゆなり まかきのたけの ゆきのしたをれ | 範兼 |
668 | おとはやま さやかにみする しらゆきを あけぬとつくる とりのこゑかな | 高倉院 |
669 | やまさとは みちもやみえす なりぬらむ もみちとともに ゆきのふりぬる | 家経(藤原広業男) |
670 | さひしさを いかにせよとて をかへなる ならのはしたり ゆきのふるらむ | 国房 |
671 | こまとめて そてうちはらふ かけもなし さののわたりの ゆきのゆふくれ | 定家 |
672 | まつひとの ふもとのみちは たえぬらむ のきはのすきに ゆきおもるなり | 定家 |
673 | ゆめかよふ みちさへたえぬ くれたけの ふしみのさとの ゆきのしたをれ | 有家(藤原重家男) |
674 | ふるゆきに たくものけむり かききえて さひしくもあるか しほかまのうら | 兼実 |
675 | たこのうらに うちいててみれは しろたへの ふしのたかねに ゆきはふりつつ | 赤人 |
676 | ゆきのみや ふりぬとはおもふ やまさとに われもおほくの としそつもれる | 貫之 |
677 | ゆきふれは みねのまさかき うつもれて つきにみかける あまのかくやま | 俊成(藤原俊忠男) |
678 | かきくもり あまきるゆきの ふるさとを つもらぬさきに とふひともかな | 小侍従(太皇太后宮) |
679 | にはのゆきに わかあとつけて いてつるを とはれにけりと ひとやみるらむ | 慈円 |
680 | なかむれは わかやまのはに ゆきしろし みやこのひとよ あはれともみよ | 慈円 |
681 | ふゆくさの かれにしひとの いまさらに ゆきふみわけて みえむものかは | 好忠 |
682 | たつねきて みちわけわふる ひともあらし いくへもつもれ にはのしらゆき | 寂然/寂蓮 |
683 | このころは はなももみちも えたになし しはしなきえそ まつのしらゆき | 後鳥羽院 |
684 | くさもきも ふりまかへたる ゆきもよに はるまつうめの はなのかそする | 通具 |
685 | みかりする かたののみのに ふるあられ あなかままたき とりもこそたて | 崇徳院 |
686 | みかりすと とたちのはらを あさりつつ かたのののへに けふもくらしつ | 忠通 |
687 | みかりのは かつふるゆきに うつもれて とたちもみえす くさかくれつつ | 匡房 |
688 | かりくらし かたののましは をりしきて よとのかはせの つきをみるかな | 公衡(藤原公能男) |
689 | なかなかに きえはきえなて うつみひの いきてかひなき よにもふるかな | 永縁 |
690 | ひかすふる ゆきけにまさる すみかまの けふりもさむし おほはらのさと | 式子内親王 |
691 | おのつから いはぬをしたふ ひとやあると やすらふほとに としのくれぬる | 西行 |
692 | かへりては みにそふものと しりなから くれゆくとしを なにしたふらむ | 兵衛(上西門院) |
693 | へたてゆく よよのおもかけ かきくらし ゆきにふりぬる としのくれかな | 俊成(藤原俊忠男)/俊成女 |
694 | あたらしき としやわかみを とめくらむ ひまゆくこまに みちをまかせて | 隆季 |
695 | なけきつつ ことしもくれぬ つゆのいのち いけるはかりを おもひいてにして | 俊恵 |
696 | おもひやれ やそちのとしの くれなれは いかはかりかは ものはかなしき | 小侍従(太皇太后宮) |
697 | むかしおもふ にはにうききを つみおきて みしにもあらぬ としのくれかな | 西行 |
698 | いそのかみ ふるののをささ しもをへて ひとよはかりに のこるとしかな | 良経(九条兼実男) |
699 | としのあけて うきよのゆめの さむへくは くるともけふは いとはさらまし | 慈円 |
700 | あさことの あかゐのみつに としくれて わかよのほとの くまれぬるかな | 隆聖 |
701 | いそかれぬ としのくれこそ あはれなれ むかしはよそに ききしはるかは | 実房 |
702 | かそふれは としののこりも なかりけり おいぬるはかり かなしきはなし | 和泉式部 |
703 | いしはしる はつせのかはの なみまくら はやくもとしの くれにけるかな | 実定 |
704 | ゆくとしを をしまのあまの ぬれころも かさねてそてに なみやかくらむ | 有家(藤原重家男) |
705 | おいのなみ こえけるみこそ あはれなれ ことしもいまは すゑのまつやま | 寂蓮 |
706 | けふことに けふやかきりと をしめとも またもことしに あひにけるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
707 | たかきやに のほりてみれは けふりたつ たみのかまとは にきはひにけり | 仁徳天皇 |
708 | はつはるの はつねのけふの たまははき てにとるからに ゆらくたまのを | 読人不知 |
709 | ねのひして しめつるのへの ひめこまつ ひかてやちよの かけをまたまし | 清正 |
710 | きみかよの としのかすをは しろたへの はまのまさこと たれかしきけむ | 貫之 |
711 | わかなおふる のへといふのへを きみかため よろつよしめて つまむとそおもふ | 貫之 |
712 | ゆふたすき ちとせをかけて あしひきの やまあゐのいろは かはらさりけり | 貫之 |
713 | きみかよに あふへきはるの おほけれと ちるともさくら あくまてそみむ | 師房 |
714 | すみのえの はまのまさこを ふむたつは ひさしきあとを とむるなりけり | 伊勢 |
715 | としことに おひそふたけの よよをへて かはらぬいろを たれとかはみむ | 貫之 |
716 | ちとせふる をのへのまつは あきかせの こゑこそかはれ いろはかはらす | 躬恒 |
717 | やまかはの きくのしたみつ いかなれは なかれてひとの おいをせくらむ | 興風 |
718 | いのりつつ なほなかつきの きくのはな いつれのあきか うゑてみさらむ | 貫之 |
719 | やまひとの をるそてにほふ きくのつゆ うちはらふにも ちよはへぬへし | 俊成(藤原俊忠男) |
720 | かみなつき もみちもしらぬ ときはきに よろつよかかれ みねのしらくも | 元輔(清原春光男) |
721 | やまかせは ふけとふかねと しらなみの よするいはねは ひさしかりけり | 伊勢 |
722 | くもりなく ちとせにすめる みつのおもに やとれるつきの かけものとけし | 紫式部 |
723 | いけみつの よよにひさしく すみぬれは そこのたまもも ひかりみえけり | 伊勢大輔 |
724 | きみかよの ちとせのかすも かくれなく くもらぬそらの ひかりにそみる | 顕房 |
725 | すみのえに おひそふまつの えたことに きみかちとせの かすそこもれる | 隆国 |
726 | よろつよを まつのをやまの かけしけみ きみをそいのる ときはかきはに | 康資王母 |
727 | あひおひの をしほのやまの こまつはら いまよりちよの かけをまたなむ | 大弐三位 |
728 | ねのひする みかきのうちの こまつはら ちよをはほかの ものとやはみる | 経信 |
729 | ねのひする のへのこまつを うつしうゑて としのをなかく きみそひくへき | 通俊 |
730 | きみかよは ひさしかるへし わたらひや いすすのかはの なかれたえせて | 匡房 |
731 | ときはなる まつにかかれる こけなれは としのをなかき しるへとそおもふ | 読人不知 |
732 | きみかよに あへるはたれも うれしきを はなはいろにも いてにけるかな | 範兼 |
733 | みにかへて はなもをしまし きみかよに みるへきはるの かきりなけれは | 三河内侍(二条院) |
734 | あめのした めくむくさきの めもはるに かきりもしらぬ みよのすゑすゑ | 式子内親王 |
735 | おしなへて このめもはるの あさみとり まつにそちよの いろもこもれる | 良経(九条兼実男) |
736 | しきしまや やまとしまねも かみよより きみかためとや かためおきけむ | 良経(九条兼実男) |
737 | ぬれてほす たまくしのはの つゆしもに あまてるひかり いくよへぬらむ | 良経(九条兼実男) |
738 | きみかよは ちよともささし あまのとや いつるつきひの かきりなけれは | 俊成(藤原俊忠男) |
739 | わかみちを まもらはきみを まもるらむ よはひはゆつれ すみよしのまつ | 定家 |
740 | たかさこの まつもむかしに なりぬへし なほゆくすゑは あきのよのつき | 寂蓮 |
741 | もしほくさ かくともつきし きみかよの かすによみおく わかのうらなみ | 家長(源時長男) |
742 | うれしさや かたしくそてに つつむらむ けふまちえたる うちのはしひめ | 隆房 |
743 | としへたる うちのはしもり こととはむ いくよになりぬ みつのみなかみ | 清輔 |
744 | ななそちに みつのはままつ おいぬれは ちよののこりは なほそはるけき | 清輔 |
745 | やほかゆく はまのまさこを きみかよの かすにとらなむ おきつしまもり | 実定 |
746 | かすかやま みやこのみなみ しかそおもふ きたのふちなみ はるにあへとは | 良経(九条兼実男) |
747 | ときはなる きひのなかやま おしなへて ちとせをまつの ふかきいろかな | 読人不知 |
748 | あかねさす あさひのさとの ひかけくさ とよのあかりの かさしなるへし | 輔親 |
749 | すめらきを ときはかきはに もるやまの やまひとならし やまかつらせり | 資業 |
750 | とやかへる たかのをやまの たまつはき しもをはふとも いろはかはらし | 匡房 |
751 | くもりなき かかみのやまの つきをみて あきらけきよを そらにしるかな | 永範 |
752 | おほえやま こえていくのの すゑとほみ みちあるよにも あひにけるかな | 範兼 |
753 | あふみのや さかたのいねを かけつみて みちあるみよの はしめにそつく | 俊成(藤原俊忠男) |
754 | かみよより けふのためとや やつかほに なかたのいねの しなひそめけむ | 経通(藤原資長男) |
755 | たちよれは すすしかりけり みつとりの あをはのやまの まつのゆふかせ | 光範 |
756 | ときはなる まつゐのみつを むすふての しつくことにそ ちよはみえける | 資実 |
757 | すゑのつゆ もとのしつくや よのなかの おくれさきたつ ためしなるらむ | 遍昭 |
758 | あはれなり わかみのはてや あさみとり つひにはのへの かすみとおもへは | 小町 |
759 | さくらちる はるのすゑには なりにけり あままもしらぬ なかめせしまに | 兼輔 |
760 | すみそめの ころもうきよの はなさかり をりわすれても をりてけるかな | 実方 |
761 | あかさりし はなをやはるも こひつらむ ありしむかしを おもひいてつつ | 道信 |
762 | はなさくら またさかりにて ちりにけむ なけきのもとを おもひこそやれ | 成尋 |
763 | はなみむと うゑけむひとも なきやとの さくらはこその はるそさかまし | 嘉言 |
764 | たれもみな はなのみやこに ちりはてて ひとりしくるる あきのやまさと | 顕輔 |
765 | はなみては いとといへちそ いそかれぬ まつらむとおもふ ひとしなけれは | 実定 |
766 | はるかすみ かすみしそらの なこりさへ けふをかきりの わかれなりけり | 良経(九条兼実男) |
767 | たちのほる けふりをたにも みるへきに かすみにまかふ はるのあけほの | 惟方 |
768 | かたみとて みれはなけきの ふかみくさ なになかなかの にほひなるらむ | 重家 |
769 | あやめくさ たれしのへとか うゑおきて よもきかもとの つゆときえけむ | 木綿四手(高陽院) |
770 | けふくれと あやめもしらぬ たもとかな むかしをこふる ねのみかかりて | 兵衛(上西門院) |
771 | あやめくさ ひきたかへたる たもとには むかしをこふる ねそかかりける | 九条院 |
772 | さもこそは おなしたもとの いろならめ かはらぬねをも かけてけるかな | 皇嘉門院 |
773 | よそなれと おなしこころそ かよふへき たれもおもひの ひとつならねは | 実資 |
774 | ひとりにも あらぬおもひは なきひとも たひのそらにや かなしかるらむ | 為頼 |
775 | おくとみし つゆもありけり はかなくて きえにしひとを なににたとへむ | 和泉式部 |
776 | おもひきや はかなくおきし そてのうへの つゆをかたみに かけむものとは | 上東門院 |
777 | あさちはら はかなくおきし くさのうへの つゆをかたみと おもひかけきや | 内侍(周防) |
778 | そてにさへ あきのゆふへは しられけり きえしあさちか つゆをかけつつ | 斎宮女御 |
779 | あきかせの つゆのやとりに きみをおきて ちりをいてぬる ことそかなしき | 一条院 |
780 | わかれけむ なこりのつゆも かわかぬに おきやそふらむ あきのゆふつゆ | 大弐三位 |
781 | おきそふる つゆとともには きえもせて なみたにのみも うきしつむかな | 読人不知 |
782 | をみなへし みるにこころは なくさまて いととむかしの あきそこひしき | 実頼 |
783 | ねさめする みをふきとほす かせのおとに むかしはそての よそにききけむ | 和泉式部 |
784 | そてぬらす はきのうははの つゆはかり むかしわすれぬ むしのねそする | 忠実 |
785 | さらてたに つゆけきさかの のへにきて むかしのあとに しをれぬるかな | 俊忠 |
786 | かなしさは あきのさかのの きりきりす なほふるさとに ねをやなくらむ | 実定 |
787 | いまはさは うきよのさかの のへをこそ つゆきえはてし あととしのはめ | 俊成女 |
788 | たまゆらの つゆもなみたも ととまらす なきひとこふる やとのあきかせ | 定家 |
789 | つゆをたに いまはかたみの ふちころも あたにもそてを ふくあらしかな | 秀能(藤原秀宗男) |
790 | あきふかき ねさめにいかか おもひいつる はかなくみえし はるのよのゆめ | 大輔(殷富門院) |
791 | みしゆめを わするるときは なけれとも あきのねさめは けにそかなしき | 通親 |
792 | なれしあきの ふけしよとこは それなから こころのそこの ゆめそかなしき | 実家(藤原公能男) |
793 | くちもせぬ そのなはかりを ととめおきて かれののすすき かたみにそみる | 西行 |
794 | ふるさとを こふるなみたや ひとりゆく ともなきやまの みちしはのつゆ | 慈円 |
795 | うきよには いまはあらしの やまかせに これやなれゆく はしめなるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
796 | まれにくる よはもかなしき まつかせを たえすやこけの したにきくらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
797 | ものおもへは いろなきかせも なかりけり みにしむあきの こころならひに | 雅実 |
798 | ふるさとを わかれしあきを かそふれは やとせになりぬ ありあけのつき | 定通(藤原保実男) |
799 | いのちあれは ことしのあきも つきはみつ わかれしひとに あふよなきかな | 能因 |
800 | けふこすは みてややままし やまさとの もみちもひとも つねならぬよに | 公任 |
801 | おもひいつる をりたくしはの ゆふけふり むせふもうれし わすれかたみに | 後鳥羽院 |
802 | おもひいつる をりたくしはと きくからに たくひしられぬ ゆふけふりかな | 慈円 |
803 | なきひとの かたみのくもや しをるらむ ゆふへのあめに いろはみえねと | 後鳥羽院 |
804 | かみなつき しくるるころも いかなれや そらにすきにし あきのみやひと | 相模 |
805 | てすさひの はかなきあとと みしかとも なかきかたみに なりにけるかな | 師房女 |
806 | たつねても あとはかくても みつくきの ゆくへもしらぬ むかしなりけり | 馬内侍 |
807 | いにしへの なきになかるる みつくきは あとこそそての うらによりけれ | 斎宮女御 |
808 | ほしもあへぬ ころものやみに くらされて つきともいはす まとひぬるかな | 道信 |
809 | みなそこに ちちのひかりは うつれとも むかしのかけは みえすそありける | 東三条院 |
810 | ものをのみ おもひねさめの まくらには なみたかからぬ あかつきそなき | 信明 |
811 | あふことも いまはなきねの ゆめならて いつかはきみを またはみるへき | 上東門院 |
812 | うしとては いてにしいへを いてぬなり なとふるさとに わかかへりけむ | 生子(女御藤原) |
813 | はかなしと いふにもいとと なみたのみ かかるこのよを たのみけるかな | 道済 |
814 | ふるさとに ゆくひともかな つけやらむ しらぬやまちに ひとりまとふと | 後一条院中宮 |
815 | たまのをの なかきためしに ひくひとも きゆれはつゆに ことならぬかな | 長家 |
816 | こひわふと ききにたにきけ かねのおとに うちわすらるる ときのまそなき | 和泉式部 |
817 | たれかよに なからへてみむ かきとめし あとはきえせぬ かたみなれとも | 紫式部 |
818 | なきひとを しのふることも いつまてそ けふのあはれは あすのわかみを | 加賀少納言 |
819 | なきひとの あとをたにとて きてみれは あらぬさとにも なりにけるかな | 慶暹 |
820 | みしひとの けふりになりし ゆふへより なそむつましき しほかまのうら | 紫式部 |
821 | あはれきみ いかなるのへの けふりにて むなしきそらの くもとなりけむ | 弁乳母 |
822 | おもへきみ もえしけふりに まかひなて たちおくれたる はるのかすみを | 源三位 |
823 | あはれひと けふのいのちを しらませは なにはのあしに ちきらさらまし | 能因 |
824 | よもすから むかしのことを みつるかな かたるやうつつ ありしよやゆめ | 匡衡 |
825 | うつりけむ むかしのかけや のこるとて みるにおもひの ますかかみかな | 新少将 |
826 | かきとむる ことのはのみそ みつくきの なかれてとまる かたみなりける | 公通 |
827 | ありすかは おなしなかれは かはらねと みしやむかしの かけそわすれぬ | 雅定 |
828 | かきりなき おもひのほかの ゆめのうちは おとろかさしと なけきこしかな | 俊成(藤原俊忠男) |
829 | みしゆめに やかてまきれぬ わかみこそ とはるるけふも まつかなしけれ | 良経(九条兼実男) |
830 | よのなかは みしもききしも はかなくて むなしきそらは けふりなりけり | 清輔 |
831 | いつなけき いつおもふへき ことなれは のちのよしらて ひとのすくらむ | 西行 |
832 | みなひとの しりかほにして しらぬかな かならすしぬる ならひありとは | 慈円 |
833 | きのふみし ひとはいかにと おとろけと なほなかきよの ゆめにそありける | 慈円 |
834 | よもきふに いつかおくへき つゆのみは けふのゆふくれ あすのあけほの | 慈円 |
835 | われもいつそ あらましかはと みしひとを しのふとすれと いととそひゆく | 慈円 |
836 | たつねきて いかにあはれと なかむらむ あとなきやまの みねのしらくも | 寂蓮 |
837 | なきあとの おもかけをのみ みにそへて さこそはひとの こひしかるらめ | 西行 |
838 | あはれとも こころにおもふ ほとはかり いはれぬへくは とひこそはせめ | 西行 |
839 | つくつくと おもへはかなし いつまてか ひとのあはれを よそにきくへき | 実房 |
840 | おくれゐて みるそかなしき はかなさを うきみのあとと なにたのみけむ | 通親 |
841 | そこはかと おもひつつけて きてみれは ことしのけふも そてはぬれけり | 慈円 |
842 | たれもみな なみたのあめに せきかねぬ そらもいかかは つれなかるへき | 忠経 |
843 | みしひとは よにもなきさの もしほくさ かきおくたひに そてそしをるる | 行遍 |
844 | あらさらむ のちしのへとや そてのかを はなたちはなに ととめおきけむ | 成仲 |
845 | ありしよに しはしもみては なかりしを あはれとはかり いひてやみぬる | 兼房 |
846 | とへかしな かたしくふちの ころもてに なみたのかかる あきのねさめを | 通俊 |
847 | きみなくて よるかたもなき あをやきの いととうきよそ おもひみたるる | 国信 |
848 | いつのまに みをやまかつに なしはてて みやこをたひと おもふなるらむ | 顕輔 |
849 | ひさかたの あめにしをるる きみゆゑに つきひもしらて こひわたるらむ | 人麿 |
850 | あるはなく なきはかすそふ よのなかに あはれいつれの ひまてなけかむ | 小町 |
851 | しらたまか なにそとひとの とひしとき つゆとこたへて けなましものを | 業平 |
852 | としふれは かくもありけり すみそめの こはおもふてふ それかあらぬか | 醍醐天皇 |
853 | なきひとを しのひかねては わすれくさ おほかるやとに やとりをそする | 兼輔 |
854 | くやしくそ のちにあはむと ちきりける けふをかきりと いはましものを | 季縄 |
855 | すみそめの そてはそらにも かさなくに しほりもあへす つゆそこほるる | 具平親王 |
856 | くれぬまの みをはおもはて ひとのよの あはれをしるそ かつははかなき | 紫式部 |
857 | たまほこの みちのやまかせ さむからは かたみかてらに きなむとそおもふ | 貫之 |
858 | わすれなむ よにもこしちの かへるやま いつはたひとに あはむとすらむ | 伊勢 |
859 | きたへゆく かりのつはさに ことつてよ くものうはかき かきたえすして | 紫式部 |
860 | あききりの たつたひころも おきてみよ つゆはかりなる かたみなりとも | 能宣 |
861 | みてたにも あかぬこころを たまほこの みちのおくまて ひとのゆくらむ | 貫之 |
862 | あふさかの せきにわかやと なかりせは わかるるひとは たのまさらまし | 兼輔 |
863 | きならせと おもひしものを たひころも たつひをしらす なりにけるかな | 読人不知 |
864 | これやさは くものはたてに おるときく たつことしらぬ あまのはころも | 寂昭 |
865 | ころもかは みなれしひとの わかれには たもとまてこそ なみはたちけれ | 重之 |
866 | ゆくすゑに あふくまかはの なかりせは いかにかせまし けふのわかれを | 経重(高階明頼男) |
867 | きみにまた あふくまかはを まつへきに のこりすくなき われそかなしき | 範永 |
868 | すすしさは いきのまつはら まさるとも そふるあふきの かせなわすれそ | 枇杷皇太后宮 |
869 | かみなつき まれのみゆきに さそはれて けふわかれなは いつかあひみむ | 恒佐 |
870 | わかれての のちもあひみむと おもへとも これをいつれの ときとかはしる | 千里 |
871 | もろこしも あめのしたにそ ありときく てるひのもとを わすれさらなむ | 成尋母 |
872 | わかれちは これやかきりの たひならむ さらにいくへき ここちこそせね | 道命 |
873 | あまのかは そらにきこえし ふなてには われそまさりて けさはかなしき | 加賀左衛門 |
874 | わかれちは いつもなけきの たえせぬに いととかなしき あきのゆふくれ | 隆家 |
875 | ととまらむ ことはこころに かなへとも いかにかせまし あきのさそふを | 実方 |
876 | みやこをは あきとともにそ たちそめし よとのかはきり いくよへたてつ | 匡房 |
877 | おもひいてて おなしそらとは つきをみよ ほとはくもゐに めくりあふまて | 後三条院 |
878 | かへりこむ ほとおもふにも たけくまの まつわかみこそ いたくおいぬれ | 基俊 |
879 | おもへとも さためなきよの はかなさに いつをまてとも えこそたのめね | 行尊 |
880 | ちきりおく ことこそさらに なかりしか かねておもひし わかれならねは | 読人不知 |
881 | かりそめの わかれとけふを おもへとも いさやまことの たひにもあるらむ | 俊恵 |
882 | かへりこむ ほとをやひとに ちきらまし しのはれぬへき わかみなりせは | 登蓮 |
883 | たれとしも しらぬわかれの かなしきは まつらのおきを いつるふなひと | 隆信 |
884 | はるはると きみかわくへき しらなみを あやしやとまる そてにかけつる | 俊恵 |
885 | きみいなは つきまつとても なかめやらむ あつまのかたの ゆふくれのそら | 西行 |
886 | たのめおかむ きみもこころや なくさむと かへらむことは いつとなくとも | 西行 |
887 | さりともと なほあふことも たのむかな してのやまちを こえぬわかれは | 西行 |
888 | かへりこむ ほとをちきらむと おもへとも おいぬるみこそ さためかたけれ | 道因 |
889 | かりそめの たひのわかれと しのふれと おいはなみたも えこそととめね | 俊成(藤原俊忠男) |
890 | わかれにし ひとはまたもや みわのやま すきにしかたを いまになさはや | 成仲 |
891 | わするなよ やとるたもとは かはるとも かたみにしほる よはのつきかけ | 定家 |
892 | なこりおもふ たもとにかねて しられけり わかるるたひの ゆくすゑのつゆ | 惟明親王 |
893 | みやこをは こころのそらに いてぬとも つきみむたひに おもひおこせよ | 読人不知 |
894 | わかれちは くもゐのよそに なりぬとも そなたのかせの たよりすくすな | 行宗 |
895 | いろふかく そめたるたひの かりころも かへらむまての かたみともみよ | 顕綱 |
896 | とふとりの あすかのさとを おきていなは きみかあたりは みえすかもあらむ | 元明天皇 |
897 | いもにこひ わかのまつはら みわたせは しほひのかたに たつなきわたる | 聖武天皇 |
898 | いさことも はやひのもとへ おほともの みつのはままつ まちこひぬらむ | 憶良 |
899 | あまさかる ひなのなかちを こきくれは あかしのとより やまとしまみゆ | 人麿 |
900 | ささのはは みやまもそよに みたるなり われはいもおもふ わかれきぬれは | 人麿 |
901 | ここにありて つくしやいつこ しらくもの たなひくやまの にしにあるらし | 旅人 |
902 | あさきりに ぬれにしころも ほさすして ひとりやきみか やまちこゆらむ | 読人不知 |
903 | しなのなる あさまのたけに たつけふり をちこちひとの みやはとかめぬ | 業平 |
904 | するかなる うつのやまへの うつつにも ゆめにもひとに あはぬなりけり | 業平 |
905 | くさまくら ゆふかせさむく なりにけり ころもうつなる やとやからまし | 貫之 |
906 | しらくもの たなひきわたる あしひきの やまのかけはし けふやこえなむ | 貫之 |
907 | あつまちや さやのなかやま さやかにも みえぬくもゐに よをやつくさむ | 忠岑 |
908 | ひとをなほ うらみつへしや みやことり ありやとたにも とふをきかねは | 斎宮女御 |
909 | またしらぬ ふるさとひとは けふまてに こむとたのめし われをまつらむ | 輔昭 |
910 | しなかとり ゐなのをゆけは ありまやま ゆふきりたちぬ やとはなくして | 読人不知 |
911 | かみかせや いせのはまをき をりふせて たひねやすらむ あらきはまへに | 読人不知 |
912 | ふるさとの たひねのゆめに みえつるは うらみやすらむ またととはねは | 良利 |
913 | たちなから こよひはあけぬ そのはらや ふせやといふも かひなかりけり | 輔尹 |
914 | みやこにて こしちのそらを なかめつつ くもゐといひし ほとにきにけり | 御形宣旨 |
915 | たひころも たちゆくなみち とほけれは いさしらくもの ほともしられす | 澄成 |
916 | ふねなから こよひはかりは たひねせむ しきつのなみに ゆめはさむとも | 実方 |
917 | わかことく われをたつねは あまをふね ひともなきさの あととこたえよ | 行尊 |
918 | かきくもり ゆふたつなみの あらけれは うきたるふねそ しつこころなき | 紫式部 |
919 | さよふけて あしのすゑこす うらかせに あはれうちそふ なみのおとかな | 肥後(京極前関白家) |
920 | たひねして あかつきかたの しかのねに いなはおしなひ あきかせそふく | 経信 |
921 | わきもこか たひねのころも うすきほと よきてふかなむ よはのやまかせ | 恵慶 |
922 | あしのはを かりふくしつの やまさとに ころもかたしき たひねをそする | 隆綱 |
923 | ありしよの たひはたひとも あらさりき ひとりつゆけき くさまくらかな | 赤染衛門 |
924 | やまちにて そほちにけりな しらつゆの あかつきおきの ききのしつくに | 国信 |
925 | くさまくら たひねのひとは こころせよ ありあけのつきも かたふきにけり | 師頼 |
926 | いそなれぬ こころそたへぬ たひねする あしのまろやに かかるしらなみ | 師賢(源資通男) |
927 | たひねする あしのまろやの さむけれは つまきこりつむ ふねいそくなり | 経信 |
928 | みやまちに けさやいてつる たひひとの かさしろたへに ゆきつもりつつ | 経信 |
929 | まつかねに をはなかりしき よもすから かたしくそてに ゆきはふりつつ | 顕季 |
930 | みしひとも とふのうらかせ おとせぬに つれなくすめる あきのよのつき | 為仲(橘義通男) |
931 | くさまくら ほとそへにける みやこいてて いくよかたひの つきにねぬらむ | 嘉言 |
932 | なつかりの あしのかりねも あはれなり たまえのつきの あけかたのそら | 俊成(藤原俊忠男) |
933 | たちかへり またもきてみむ まつしまや をしまのとまや なみにあらすな | 俊成(藤原俊忠男) |
934 | こととへよ おもひおきつの はまちとり なくなくいてし あとのつきかけ | 定家 |
935 | のへのつゆ うらわのなみを かこちても ゆくへもしらぬ そてのつきかけ | 家隆 |
936 | もろともに いてしそらこそ わすられね みやこのやまの ありあけのつき | 良経(九条兼実男) |
937 | みやこにて つきをあはれと おもひしは かすにもあらぬ すさひなりけり | 西行 |
938 | つきみはと ちきりていてし ふるさとの ひともやこよひ そてぬらすらむ | 西行 |
939 | あけはまた こゆへきやまの みねなれや そらゆくつきの すゑのしらくも | 家隆 |
940 | ふるさとの けふのおもかけ さそひこと つきにそちきる さよのなかやま | 雅経 |
941 | わすれしと ちきりていてし おもかけは みゆらむものを ふるさとのつき | 良経(九条兼実男) |
942 | あつまちの よはのなかめを かたらなむ みやこのやまに かかるつきかけ | 慈円 |
943 | いくよかは つきをあはれと なかめきて なみにをりしく いせのはまをき | 越前(嘉陽門院) |
944 | しらさりし やそせのなみを わけすきて かたしくものは いせのはまをき | 丹後(宜秋門院) |
945 | かせさむみ いせのはまをき わけゆけは ころもかりかね なみになくなり | 匡房 |
946 | いそなれて こころもとけぬ こもまくら あらくなかけそ みつのしらなみ | 定頼 |
947 | ゆくすゑは いまいくよとか いはしろの をかのかやねに まくらむすはむ | 式子内親王 |
948 | まつかねの をしまかいその さよまくら いたくなぬれそ あまのそてかは | 式子内親王 |
949 | かくしても あかせはいくよ すきぬらむ やまちのこけの つゆのむしろに | 俊成女 |
950 | しらくもの かかるたひねも ならはぬに ふかきやまちに ひはくれにけり | 永縁 |
951 | ゆふひさす あさちかはらの たひひとは あはれいくよに やとをかるらむ | 経信 |
952 | いつくにか こよひはやとを かりころも ひもゆふくれの みねのあらしに | 定家 |
953 | たひひとの そてふきかへす あきかせに ゆふひさひしき やまのかけはし | 定家 |
954 | ふるさとに ききしあらしの こゑもにす わすれぬひとを さやのなかやま | 家隆 |
955 | しらくもの いくへのみねを こえぬらむ なれぬあらしに そてをまかせて | 雅経 |
956 | けふはまた しらぬのはらに ゆきくれぬ いつれのやまか つきはいつらむ | 家長(源時長男) |
957 | ふるさとも あきはゆふへを かたみとて かせのみおくる をののしのはら | 俊成女 |
958 | いたつらに たつやあさまの ゆふけふり さととひかぬる をちこちのやま | 雅経 |
959 | みやこをは あまつそらとも きかさりき なになかむらむ くものはたてを | 丹後(宜秋門院) |
960 | くさまくら ゆふへのそらを ひととはは なきてもつけよ はつかりのこゑ | 秀能(藤原秀宗男) |
961 | ふしわひぬ しののをささの かりまくら はかなのつゆや ひとよはかりに | 有家(藤原重家男) |
962 | いはかねの とこにあらしを かたしきて ひとりやねなむ さよのなかやま | 有家(藤原重家男) |
963 | たれとなき やとのゆふへを ちきりにて かはるあるしを いくよとふらむ | 業清(藤原良清男) |
964 | まくらとて いつれのくさに ちきるらむ ゆくをかきりの のへのゆふくれ | 長明 |
965 | みちのへの くさのあをはに こまとめて なほふるさとを かへりみるかな | 成範 |
966 | はつせやま ゆふこえくれて やととへは みわのひはらに あきかせそふく | 禅性 |
967 | さらぬたに あきのたひねは かなしきに まつにふくなり とこのやまかせ | 秀能(藤原秀宗男) |
968 | わすれなむ まつとなつけそ なかなかに いなはのやまの みねのあきかせ | 定家 |
969 | ちきらねと ひとよはすきぬ きよみかた なみにわかるる あかつきのくも | 家隆 |
970 | ふるさとに たのめしひとも すゑのまつ まつらむそてに なみやこすらむ | 家隆 |
971 | ひをへつつ みやこしのふの うらさひて なみよりほかの おとつれもなし | 兼実 |
972 | さすらふる わかみにしあれは きさかたや あまのとまやに あまたたひねぬ | 顕仲(藤原資仲男) |
973 | なにはひと あしひたくやに やとかりて すすろにそての しほたるるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
974 | またこえむ ひともとまらは あはれしれ わかをりしける みねのしひしは | 雅縁 |
975 | みちすから ふしのけふりも わかさりき はるるまもなき そらのけしきに | 頼朝 |
976 | よのなかは うきふししけし しのはらや たひにしあれは いもゆめにみゆ | 俊成(藤原俊忠男) |
977 | おほつかな みやこにすまぬ みやことり こととふひとに いかかこたへし | 丹後(宜秋門院) |
978 | よのなかを いとふまてこそ かたからめ かりのやとりをも をしむきみかな | 西行 |
979 | よをいとふ ひととしきけは かりのやとに こころとむなと おもふはかりそ | 妙(遊女) |
980 | そてにふけ さそなたひねの ゆめはみし おもふかたより かよふうらかせ | 定家 |
981 | たひねする ゆめちはゆるせ うつのやま せきとはきかす もるひともなし | 家隆 |
982 | みやこにも いまやころもを うつのやま ゆふしもはらふ つたのしたみち | 定家 |
983 | そてにしも つきかかれとは ちきりおかす なみたはしるや うつのやまこえ | 長明 |
984 | たつたやま あきゆくひとの そてをみよ ききのこすゑは しくれさりけり | 慈円 |
985 | さとりゆく まことのみちに いりぬれは こひしかるへき ふるさともなし | 慈円 |
986 | ふるさとへ かへらむことは あすかかは わたらぬさきに ふちせたかふな | 家基(藤原家光男) |
987 | としたけて またこゆへしと おもひきや いのちなりけり さやのなかやま | 西行 |
988 | おもひおく ひとのこころに したはれて つゆわくるそての かへりぬるかな | 西行 |
989 | みるままに やまかせあらく しくるめり みやこもいまは よさむなるらむ | 後鳥羽院 |
990 | よそにのみ みてややみなむ かつらきや たかまのやまの みねのしらくも | 読人不知 |
991 | おとにのみ ありとききこし みよしのの たきはけふこそ そてにおちけれ | 読人不知 |
992 | あしひきの やまたもるいほに おくかひの したこかれつつ わかこふらくは | 人磨 |
993 | いそのかみ ふるのわさたの ほにはいてす こころのうちに こひやわたらむ | 人麿 |
994 | かすかのの わかむらさきの すりころも しのふのみたれ かきりしられす | 業平 |
995 | むらさきの いろにこころは あらねとも ふかくそひとを おもひそめつる | 醍醐天皇 |
996 | みかのはら わきてなかるる いつみかは いつみきとてか こひしかるらむ | 兼輔 |
997 | そのはらや ふせやにおふる ははききの ありとはみえて あはぬきみかな | 是則 |
998 | としをへて おもふこころの しるしにそ そらもたよりの かせはふきける | 高光 |
999 | としつきは わかみにそへて すきぬれと おもふこころの ゆかすもあるかな | 高明 |
1000 | もろともに あはれといはすは ひとしれぬ とはすかたりを われのみやせむ | 俊賢母 |
1001 | ひとつてに しらせてしかな かくれぬの みこもりにのみ こひやわたらむ | 朝忠 |
1002 | みこもりの ぬまのいはかき つつめとも いかなるひまに ぬるるたもとそ | 高遠 |
1003 | からころも そてにひとめは つつめとも こほるるものは なみたなりけり | 伊尹 |
1004 | あまつそら とよのあかりに みしひとの なほおもかけの しひてこひしき | 公任 |
1005 | あらたまの としにまかせて みるよりは われこそこえめ あふさかのせき | 伊尹 |
1006 | わかやとは そこともなにか をしふへき いはてこそみめ たつねけりやと | 侍従(本院) |
1007 | わかおもひ そらのけふりと なりぬれは くもゐなからも なほたつねてむ | 兼通 |
1008 | しるしなき けふりをくもに まかへつつ よをへてふしの やまともえなむ | 貫之 |
1009 | けふりたつ おもひならねと ひとしれす わひてはふしの ねをのみそなく | 深養父 |
1010 | かせふけは むろのやしまの ゆふけふり こころのそらに たちにけるかな | 惟成 |
1011 | しらくもの みねにしもなと かよふらむ おなしみかさの やまのふもとを | 義孝(藤原敦舒男) |
1012 | けふもまた かくやいふきの さしもくさ さらはわれのみ もえやわたらむ | 和泉式部 |
1013 | つくはやま はやましけやま しけけれと おもひいるには さはらさりけり | 重之 |
1014 | われならぬ ひとにこころを つくはやま したにかよはむ みちたにやなき | 能宣 |
1015 | ひとしれす おもふこころは あしひきの やましたみつの わきやかへらむ | 匡衡 |
1016 | にほふらむ かすみのうちの さくらはな おもひやりても をしきはるかな | 元輔(清原春光男) |
1017 | いくかへり さきちるはなを なかめつつ ものおもひくらす はるにあふらむ | 能宣 |
1018 | おくやまの みねとひこゆる はつかりの はつかにたにも みてややみなむ | 躬恒 |
1019 | おほそらを わたるはるひの かけなれや よそにのみして のとけかるらむ | 宇多天皇 |
1020 | はるかせの ふくにもまさる なみたかな わかみなかみに こほりとくらし | 伊尹 |
1021 | みつのうへに うきたるとりの あともなく おほつかなさを おもふころかな | 伊尹 |
1022 | かたをかの ゆきまにねさす わかくさの ほのかにみてし ひとそこひしき | 好忠 |
1023 | あとをたに くさのはつかに みてしかな むすふはかりの ほとならすとも | 和泉式部 |
1024 | しものうへに あとふみつくる はまちとり ゆくへもなしと ねをのみそなく | 興風 |
1025 | あきはきの えたもとををに おくつゆの けさきえぬとも いろにいてめや | 家持 |
1026 | あきかせに みたれてものは おもへとも はきのしたはの いろはかはらす | 高光 |
1027 | わかこひも いまはいろにや いてなまし のきのしのふも もみちしにけり | 有仁 |
1028 | いそのかみ ふるのかみすき ふりぬれと いろにはいてす つゆもしくれも | 良経(九条兼実男) |
1029 | わかこひは まきのしたはに もるしくれ ぬるともそての いろにいてめや | 後鳥羽院 |
1030 | わかこひは まつをしくれの そめかねて まくすかはらに かせさわくなり | 慈円 |
1031 | うつせみの なくねやよそに もりのつゆ ほしあへぬそてを ひとのとふまて | 良経(九条兼実男) |
1032 | おもひあれは そてにほたるを つつみても いははやものを とふひとはなし | 寂蓮 |
1033 | おもひつつ へにけるとしの かひやなき たたあらましの ゆふくれのそら | 後鳥羽院 |
1034 | たまのをよ たえなはたえね なからへは しのふることの よわりもそする | 式子内親王 |
1035 | わすれては うちなけかるる ゆふへかな われのみしりて すくるつきひを | 式子内親王 |
1036 | わかこひは しるひともなし せくとこの なみたもらすな つけのをまくら | 式子内親王 |
1037 | しのふるに こころのひまは なけれとも なほもるものは なみたなりけり | 兼実 |
1038 | つらけれと うらみむとはた おもほえす なほゆくさきを たのむこころに | 伊尹 |
1039 | あめこそは たのまはもらめ たのますは おもはぬひとと みてをやみなむ | 読人不知 |
1040 | かせふけは とはになみこす いそなれや わかころもての かわくときなき | 貫之 |
1041 | すまのあまの なみかけころも よそにのみ きくはわかみに なりにけるかな | 道信 |
1042 | ぬまことに そてそぬれぬる あやめくさ こころににたる ねをもとむとて | 左近(三条院女蔵人) |
1043 | ほとときす いつかとまちし あやめくさ けふはいかなる ねにかなくへき | 公任 |
1044 | さみたれは そらおほれする ほとときす ときになくねは ひともとかめす | 馬内侍 |
1045 | ほとときす こゑをはきけと はなのえに またふみなれぬ ものをこそおもへ | 道長 |
1046 | ほとときす しのふるものを かしはきの もりてもこゑの きこえけるかな | 馬内侍 |
1047 | こころのみ そらになりつつ ほとときす ひとたのめなる ねこそなかるれ | 馬内侍 |
1048 | みくまのの うらよりをちに こくふねの われをはよそに へたてつるかな | 伊勢 |
1049 | なにはかた みしかきあしの ふしのまも あはてこのよを すくしてよとや | 伊勢 |
1050 | みかりする かりはのをのの ならしはの なれはまさらて こひそまされる | 人麿 |
1051 | うとはまの うとくのみやは よをはへむ なみのよるよる あひみてしかな | 読人不知 |
1052 | あつまちの みちのはてなる ひたちおひの かことはかりも あはむとそおもふ | 読人不知 |
1053 | にこりえの すまむことこそ かたからめ いかてほのかに かけをみせまし | 読人不知 |
1054 | しくれふる ふゆのこのはの かわかすそ ものおもふひとの そてはありける | 読人不知 |
1055 | ありとのみ おとにききつつ おとはかは わたらはそてに かけもみえなむ | 読人不知 |
1056 | みつくきの をかのこのはを ふきかへし たれかはきみを こひむとおもひし | 読人不知 |
1057 | わかそてに あとふみつけよ はまちとり あふことかたし みてもしのはむ | 読人不知 |
1058 | ふゆのよの なみたにこほる わかそての こころとけすも みゆるきみかな | 兼輔 |
1059 | しもこほり こころもとけぬ ふゆのいけに よふけてそなく をしのひとこゑ | 元真 |
1060 | なみたかは みもうくはかり なかるれと きえぬはひとの おもひなりけり | 元真 |
1061 | いかにせむ くめちのはしの なかそらに わたしもはてぬ みとやなりなむ | 実方 |
1062 | たれそこの みわのひはらも しらなくに こころのすきの われをたつぬる | 実方 |
1063 | わかこひは いはぬはかりそ なにはなる あしのしのやの したにこそたけ | 小弁 |
1064 | わかこひは ありそのうみの かせをいたみ しきりによする なみのまもなし | 伊勢 |
1065 | すまのうらに あまのこりつむ もしほきの からくもしたに もえわたるかな | 清正 |
1066 | あるかひも なきさによする しらなみの まなくものおもふ わかみなりけり | 景明 |
1067 | あしひきの やましたたきつ いはなみの こころくたけて ひとそこひしき | 貫之 |
1068 | あしひきの やましたしけき なつくさの ふかくもきみを おもふころかな | 貫之 |
1069 | をしかふす なつののくさの みちをなみ しけきこひちに まとふころかな | 是則 |
1070 | かやりひの さよふけかたの したこかれ くるしやわかみ ひとしれすのみ | 好忠 |
1071 | ゆらのとを わたるふなひと かちをたえ ゆくへもしらぬ こひのみちかも | 好忠 |
1072 | おひかせに やへのしほちを ゆくふねの ほのかにたにも あひみてしかな | 師時 |
1073 | かちをたえ ゆらのみなとに よるふねの たよりもしらぬ おきつしほかせ | 良経(九条兼実男) |
1074 | しるへせよ あとなきなみに こくふねの ゆくへもしらぬ やへのしほかせ | 式子内親王 |
1075 | きのくにや ゆらのみなとに ひろふてふ たまさかにたに あひみてしかな | 長方 |
1076 | つれもなき ひとのこころの うきにはふ あしのしたねの ねをこそはなけ | 師俊 |
1077 | なにはひと いかなるえにか くちはてむ あふことなみに みをつくしつつ | 良経(九条兼実男) |
1078 | あまのかる みるめをなみに まかへつつ なくさのはまを たつねわひぬる | 俊成(藤原俊忠男) |
1079 | あふまての みるめかるへき かたそなき またなみなれぬ いそのあまひと | 相模 |
1080 | みるめかる かたやいつくそ さをさして われにをしへよ あまのつりふね | 業平 |
1081 | したもえに おもひきえなむ けふりたに あとなきくもの はてそかなしき | 俊成女 |
1082 | なひかしな あまのもしほひ たきそめて けふりはそらに くゆりわふとも | 定家 |
1083 | こひをのみ すまのうらひと もしほたれ ほしあへぬそての はてをしらはや | 良経(九条兼実男) |
1084 | みるめこそ いりぬるいその くさならめ そてさへなみの したにくちぬる | 讃岐(二条院) |
1085 | きみこふと なるみのうらの はまひさき しをれてのみも としをふるかな | 俊頼(源経信男) |
1086 | しるらめや このはふりしく たにみつの いはまにもらす したのこころを | 頼実(藤原経宗男) |
1087 | もらすなよ くもゐるみねの はつしくれ このははしたに いろかはるとも | 良経(九条兼実男) |
1088 | かくとたに おもふこころを いはせやま したゆくみつの くさかくれつつ | 実定 |
1089 | もらさはや おもふこころを さてのみは えそやましろの ゐてのしからみ | 大輔(殷富門院) |
1090 | こひしとも いははこころの ゆくへきに くるしやひとめ つつむおもひは | 近衛院 |
1091 | ひとしれぬ こひにわかみは しつめとも みるめにうくは なみたなりけり | 有仁 |
1092 | ものおもふと いはぬはかりは しのふとも いかかはすへき そてのしつくを | 顕仲(源顕房男) |
1093 | ひとしれす くるしきものは しのふやま したはふくすの うらみなりけり | 清輔 |
1094 | きえねたた しのふのやまの みねのくも かかるこころの あともなきまて | 雅経 |
1095 | かきりあれは しのふのやまの ふもとにも おちはかうへの つゆそいろつく | 通光 |
1096 | うちはへて くるしきものは ひとめのみ しのふのうらの あまのたくなは | 讃岐(二条院) |
1097 | しのはしよ いしまつたひの たにかはも せをせくにこそ みつまさりけれ | 公継 |
1098 | ひともまた ふみみぬやまの いはかくれ なかるるみつを そてにせくかな | 下野(後鳥羽院) |
1099 | はるかなる いはのはさまに ひとりゐて ひとめおもはて ものおもははや | 西行 |
1100 | かすならぬ こころのとかに なしはてし しらせてこそは みをもうらみめ | 西行 |
1101 | くさふかき なつのわけゆく さをしかの ねをこそたてね つゆそこほるる | 良経(九条兼実男) |
1102 | のちのよを なけくなみたと いひなして しほりやせまし すみそめのそて | 重家 |
1103 | たまつさの かよふはかりに なくさめて のちのよまての うらみのこすな | 読人不知 |
1104 | ためしあれは なかめはそれと しりなから おほつかなきは こころなりけり | 読人不知 |
1105 | いはぬより こころやゆきて しるへする なかむるかたを ひとのとふまて | 隆房 |
1106 | なかめわひ それとはなしに ものそおもふ くものはたての ゆふくれのそら | 通光 |
1107 | おもひあまり そなたのそらを なかむれは かすみをわけて はるさめそふる | 俊成(藤原俊忠男) |
1108 | やまかつの あさのさころも をさをあらみ あはてつきひや すきふけるいほ | 良経(九条兼実男) |
1109 | おもへとも いはてつきひは すきのかと さすかにいかか しのひはつへき | 忠定(藤原兼宗男) |
1110 | あふことは かたののさとの ささのいほ しのにつゆちる よはのとこかな | 俊成(藤原俊忠男) |
1111 | ちらすなよ しののはくさの かりにても つゆかるるへき そてのうへかは | 俊成(藤原俊忠男) |
1112 | しらたまか つゆかととはむ ひともかな ものおもふそてを さしてこたへむ | 元真 |
1113 | いつまての いのちもしらぬ よのなかに つらきなけきの やますもあるかな | 義孝(藤原敦舒男) |
1114 | わかこひは ちきのかたそき かたくのみ ゆきあはてとしの つもりぬるかな | 公能 |
1115 | いつとなく しほやくあまの とまひさし ひさしくなりぬ あはぬおもひは | 基輔(藤原頼輔男) |
1116 | もしほやく あまのいそやの ゆふけふり たつなもくるし おもひたえなて | 秀能(藤原秀宗男) |
1117 | すまのあまの そてにふきこす しほかせの なるとはすれと てにもたまらす | 定家 |
1118 | ありとても あはぬためしの なとりかは くちたにはてね せせのうもれき | 寂蓮 |
1119 | なけかすよ いまはたおなし なとりかは せせのうもれき くちはてぬとも | 良経(九条兼実男) |
1120 | なみたかは たきつこころの はやきせを しからみかけて せくそてそなき | 讃岐(二条院) |
1121 | よそなから あやしとたにも おもへかし こひせぬひとの そてのいろかは | 右衛門佐(高松院) |
1122 | しのひあまり おつるなみたを せきかへし おさふるそてよ うきなもらすな | 読人不知 |
1123 | くれなゐに なみたのいろの なりゆくを いくしほまてと われにとははや | 道因 |
1124 | ゆめにても みゆらむものを なけきつつ うちぬるよひの そてのけしきは | 式子内親王 |
1125 | さめてのち ゆめなりけりと おもふにも あふはなこりの をしくやはあらぬ | 実定 |
1126 | みにそへる そのおもかけも きえななむ ゆめなりけりと わするはかりに | 良経(九条兼実男) |
1127 | ゆめのうちに あふとみえつる ねさめこそ つれなきよりも そてはぬれけれ | 実宗 |
1128 | たのめおきし あさちかつゆに あきかけて このはふりしく やとのかよひち | 忠良 |
1129 | しのひあまり あまのかはせに ことよせむ せめてはあきを わすれたにすな | 経家(六条重家男) |
1130 | たのめても はるけかるへき かへるやま いくへのくもの したにまつらむ | 重政 |
1131 | あふことは いつといふきの みねにおふる さしもたえせぬ おもひなりけり | 家房 |
1132 | ふしのねの けふりもなほそ たちのほる うへなきものは おもひなりけり | 家隆 |
1133 | なきなのみ たつたのやまに たつくもの ゆくへもしらぬ なかめをそする | 俊忠 |
1134 | あふことの むなしきそらの うきくもは みをしるあめの たよりなりけり | 惟明親王 |
1135 | わかこひは あふをかきりの たのみたに ゆくへもしらぬ そらのうきくも | 通具 |
1136 | おもかけの かすめるつきそ やとりける はるやむかしの そてのなみたに | 俊成女 |
1137 | とこのしも まくらのこほり きえわひぬ むすひもおかぬ ひとのちきりに | 定家 |
1138 | つれなさの たくひまてやは つらからぬ つきをもめてし ありあけのそら | 有家(藤原重家男) |
1139 | そてのうへに たれゆゑつきは やとるそと よそになしても ひとのとへかし | 秀能(藤原秀宗男) |
1140 | なつひきの てひきのいとの としへても たえぬおもひに むすほほれつつ | 越前(嘉陽門院) |
1141 | いくよわれ なみにしをれて きふねかは そてにたまちる ものおもふらむ | 良経(九条兼実男) |
1142 | としもへぬ いのるちきりは はつせやま をのへのかねの よそのゆふくれ | 定家 |
1143 | うきみをは われたにいとふ いとへたた そをたにおなし こころとおもはむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1144 | こひしなむ おなしうきなを いかにして あふにかへつと ひとにいはれむ | 長方 |
1145 | あすしらぬ いのちをそおもふ おのつから あらはあふよを まつにつけても | 大輔(殷富門院) |
1146 | つれもなき ひとのこころは うつせみの むなしきこひに みをやかへてむ | 高倉(八条院) |
1147 | なにとなく さすかにをしき いのちかな ありへはひとや おもひしるとて | 西行 |
1148 | おもひしる ひとありあけの よなりせは つきせぬみをは うらみさらまし | 西行 |
1149 | わすれしの ゆくすゑまては かたけれは けふをかきりの いのちともかな | 儀同三司母 |
1150 | かきりなく むすひおきつる くさまくら いつこのたひを おもひわすれむ | 伊尹 |
1151 | おもふには しのふることそ まけにける あふにしかへは さもあらはあれ | 業平 |
1152 | きのふまて あふにしかへはと おもひしを けふはいのちの をしくもあるかな | 頼忠 |
1153 | あふことを けふまつかえの たむけくさ いくよしをるる そてとかはしる | 式子内親王 |
1154 | こひしさに けふそたつぬる おくやまの ひかけのつゆに そてはぬれつつ | 正清 |
1155 | あすまての いのちもかなと おもひしは くやしかりける わかこころかな | 西行 |
1156 | ひとこころ うすはなそめの かりころも さてたにあらて いろやかはらむ | 左近(三条院女蔵人) |
1157 | あひみても かひなかりけり うはたまの はかなきゆめに おとるうつつは | 興風 |
1158 | なかなかに ものおもひそめて ねぬるよは はかなきゆめも えやはみえける | 実方 |
1159 | ゆめとても ひとにかたるな しるといへは たまくらならぬ まくらたにせす | 伊勢 |
1160 | まくらたに しらねはいはし みしままに きみかたるなよ はるのよのゆめ | 和泉式部 |
1161 | わすれても ひとにかたるな うたたねの ゆめみてのちも なからへしよを | 馬内侍 |
1162 | つらかりし おほくのとしは わすられて ひとよのゆめを あはれとそみし | 範永 |
1163 | けさよりは いととおもひを たきまして なけきこりつむ あふさかのやま | 高倉院 |
1164 | あしのやの しつはたおひの かたむすひ こころやすくも うちとくるかな | 俊頼(源経信男) |
1165 | かりそめに ふしみののへの くさまくら つゆけかりきと ひとにかたるな | 読人不知 |
1166 | いかにせむ くすのうらふく あきかせに したはのつゆの かくれなきみを | 相模 |
1167 | あけかたき ふたみのうらに よるなみの そてのみぬれて おきつしまひと | 実方 |
1168 | あふことの あけぬよなから あけぬれは われこそかへれ こころやはゆく | 伊勢 |
1169 | あきのよの ありあけのつきの いるまてに やすらひかねて かへりにしかな | 敦道親王 |
1170 | こころにも あらぬわかみの ゆきかへり みちのそらにて きえぬへきかな | 道信 |
1171 | はかなくも あけにけるかな あさつゆの おきてののちそ きえまさりける | 醍醐天皇 |
1172 | あさつゆの おきつるそらも おもほえす きえかへりつる こころまとひに | 周子(更衣源) |
1173 | おきそふる つゆやいかなる つゆならむ いまはきえねと おもふわかみを | 円融院 |
1174 | おもひいてて いまはけぬへし よもすから おきうかりつる きくのうへのつゆ | 伊尹 |
1175 | うはたまの よるのころもを たちなから かへるものとは いまそしりぬる | 実頼 |
1176 | みしかよの のこりすくなく ふけゆけは かねてものうき あかつきのそら | 清正 |
1177 | あくといへは しつこころなき はるのよの ゆめとやきみを よるのみはみむ | 清蔭 |
1178 | けさはしも なけきもすらむ いたつらに はるのよひとよ ゆめをたにみて | 和泉式部 |
1179 | こころから しはしとつつむ ものからに しきのはねかき つらきけさかな | 赤染衛門 |
1180 | わひつつも きみかこころに かなふとて けさもたもとを ほしそわつらふ | 師輔 |
1181 | たまくらに かせるたもとの つゆけきは あけぬとつくる なみたなりけり | 宇多天皇 |
1182 | しはしまて またよはふかし なかつきの ありあけのつきは ひとまとふなり | 惟成 |
1183 | おきてみは そてのみぬれて いととしく くさはのたまの かすやまさらむ | 実方 |
1184 | あけぬれと またきぬきぬに なりやらて ひとのそてをも ぬらしつるかな | 讃岐(二条院) |
1185 | おもかけの わすらるましき わかれかな なこりをひとの つきにととめて | 西行 |
1186 | またもこむ あきをたのむの かりたにも なきてそかへる はるのあけほの | 良経(九条兼実男) |
1187 | たれゆきて きみにつけまし みちしはの つゆもろともに きえなましかは | 成助 |
1188 | きえかへり あるかなきかの わかみかな うらみてかへる みちしはのつゆ | 朝光 |
1189 | あさほらけ おきつるしもの きえかへり くれまつほとの そてをみせはや | 花山院 |
1190 | にはにおふる ゆふかけくさの したつゆや くれをまつまの なみたなるらむ | 道経 |
1191 | まつよひの ふけゆくかねの こゑきけは あかぬわかれの とりはものかは | 小侍従(太皇太后宮) |
1192 | これもまた なかきわかれに なりやせむ くれをまつへき いのちならねは | 知家 |
1193 | ありあけは おもひいてあれや よこくもの たたよはれつる しののめのそら | 西行 |
1194 | おほゐかは ゐせきのみつの わくらはに けふはたのめし くれにやはあらぬ | 元輔(清原春光男) |
1195 | ゆふくれに いのちかけたる かけろふの ありやあらすや とふもはかなし | 読人不知 |
1196 | あちきなく つらきあらしの こゑもうし なとゆふくれに まちならひけむ | 定家 |
1197 | たのめすは ひとをまつちの やまなりと ねなましものを いさよひのつき | 後鳥羽院 |
1198 | なにゆゑと おもひもいれぬ ゆふへたに まちいてしものを やまのはのつき | 良経(九条兼実男) |
1199 | きくやいかに うはのそらなる かせたにも まつにおとする ならひありとは | 宮内卿(後鳥羽院) |
1200 | ひとはこて かせのけしきも ふけぬるに あはれにかりの おとつれてゆく | 西行 |
1201 | いかかふく みにしむいろの かはるかな たのむるくれの まつかせのこゑ | 高倉(八条院) |
1202 | たのめおく ひともなからの やまにたに さよふけぬれは まつかせのこゑ | 長明 |
1203 | いまこむと たのめしことを わすれすは このゆふくれの つきやまつらむ | 秀能(藤原秀宗男) |
1204 | きみまつと ねやへもいらぬ まきのとに いたくなふけそ やまのはのつき | 式子内親王 |
1205 | たのめぬに きみくやとまつ よひのまの ふけゆかてたた あけなましかは | 西行 |
1206 | かへるさの ものとやひとの なかむらむ まつよなからの ありあけのつき | 定家 |
1207 | きみこむと いひしよことに すきぬれは たのまぬものの こひつつそふる | 読人不知 |
1208 | ころもてに やまおろしふきて さむきよを きみきまさすは ひとりかもねむ | 人麿 |
1209 | あふことは これやかきりの たひならむ くさのまくらも しもかれにけり | 馬内侍 |
1210 | なれゆくは うきよなれはや すまのあまの しほやきころも まとほなるらむ | 斎宮女御 |
1211 | きりふかき あきののなかの わすれみつ たえまかちなる ころにもあるかな | 是則 |
1212 | よのつねの あきかせならは をきのはに そよとはかりの おとはしてまし | 安法女 |
1213 | あしひきの やまのかけくさ むすひおきて こひやわたらむ あふよしをなみ | 家持 |
1214 | あつまちに かるてふかやの みたれつつ つかのまもなく こひやわたらむ | 醍醐天皇 |
1215 | むすひおきし たもとたにみぬ はなすすき かるともかれし きみしとかすは | 敦忠 |
1216 | しものうへに けさふるゆきの さむけれは かさねてひとを つらしとそおもふ | 重之 |
1217 | ひとりふす あれたるやとの とこのうへに あはれいくよの ねさめしつらむ | 安法女 |
1218 | やましろの よとのわかこも かりにきて そてぬれぬとは かこたさらなむ | 重之 |
1219 | かけておもふ ひともなけれと ゆふされは おもかけたえぬ たまかつらかな | 貫之 |
1220 | いつはりを たたすのもりの ゆふたすき かけつつちかへ われをおもはは | 貞文 |
1221 | いかはかり うれしからまし もろともに こひらるるみも くるしかりせは | 鳥羽院 |
1222 | われはかり つらきをしのふ ひとやあると いまよにあらは おもひあはせむ | 兼実 |
1223 | たたたのめ たとへはひとの いつはりを かさねてこそは またもうらみめ | 慈円 |
1224 | つらしとは おもふものから ふししはの しはしもこりぬ こころなりけり | 家通 |
1225 | たのめこし ことのははかり ととめおきて あさちかつゆと きえなましかは | 読人不知 |
1226 | あはれにも たれかはつゆも おもはまし きえのこるへき わかみならねは | 雅通(源雅定男) |
1227 | つらきをも うらみぬわれに ならふなよ うきみをしらぬ ひともこそあれ | 小侍従(太皇太后宮) |
1228 | なにかいとふ よもなからへし さのみやは うきにたへたる いのちなるへき | 大輔(殷富門院) |
1229 | こひしなむ いのちはなほも をしきかな おなしよにある かひはなけれと | 頼輔 |
1230 | あはれとて ひとのこころの なさけあれは かすならぬには よらぬなけきを | 西行 |
1231 | みをしれは ひとのとかとは おもはぬに うらみかほにも ぬるるそてかな | 西行 |
1232 | よしさらは のちのよとたに たのめおけ つらさにたへぬ みともこそなれ | 俊成(藤原俊忠男) |
1233 | たのめおかむ たたさはかりを ちきりにて うきよのなかの ゆめになしてよ | 定家母 |
1234 | よひよひに きみをあはれと おもひつつ ひとにはいはて ねをのみそなく | 実頼 |
1235 | きみたにも おもひいてける よひよひを まつはいかなる ここちかはする | 読人不知 |
1236 | こひしさに しぬるいのちを おもひいてて とふひとあらは なしとこたへよ | 読人不知 |
1237 | わかれては きのふけふこそ へたてつれ ちよしもへたる ここちのみする | 伊尹 |
1238 | きのふとも けふともしらす いまはとて わかれしほとの こころまよひに | 恵子女王 |
1239 | たえぬるか かけたにみえは とふへきを かたみのみつは みくさゐにけり | 道綱母 |
1240 | かたかたに ひきわかれつつ あやめくさ あらぬねをやは かけむとおもひし | 陽明門院 |
1241 | ことのはの うつろふたにも あるものを いととしくれの ふりまさるらむ | 伊勢 |
1242 | ふくかせに つけてもとはむ ささかにの かよひしみちは そらにたゆとも | 道綱母 |
1243 | くすのはに あらぬわかみも あきかせの ふくにつけつつ うらみつるかな | 村上天皇 |
1244 | しもさやく のへのくさはに あらねとも なとかひとめの かれまさるらむ | 醍醐天皇 |
1245 | あさちおふる のへやかるらむ やまかつの かきほのくさは いろもかはらす | 読人不知 |
1246 | かすむらむ ほとをもしらす しくれつつ すきにしあきの もみちをそみる | 斎宮女御 |
1247 | いまこむと たのめつつふる ことのはそ ときはにみゆる もみちなりける | 村上天皇 |
1248 | たまほこの みちははるかに あらねとも うたてくもゐに まとふころかな | 朱雀院 |
1249 | おもひやる こころはそらに あるものを なとかくもゐに あひみさるらむ | 煕子女王(女御) |
1250 | はるさめの ふりしくころか あをやきの いとみたれつつ ひとそこひしき | 後朱雀院 |
1251 | あをやきの いとみたれたる このころは ひとすちにしも おもひよられし | 生子(女御藤原) |
1252 | あをやきの いとはかたかた なひくとも おもひそめてむ いろそかはらし | 後朱雀院 |
1253 | あさみとり ふかくもあらぬ あをやきは いろかはらしと いかかたのまむ | 生子(女御藤原) |
1254 | いにしへの あふひとひとは とかむとも なほそのかみの けふそわすれぬ | 実方 |
1255 | かれにける あふひのみこそ かなしけれ あはれとみすや かものみつかき | 読人不知 |
1256 | あふことを はつかにみえし つきかけの おほろけにやは あはれともおもふ | 村上天皇 |
1257 | さらしなや をはすてやまの ありあけの つきすもものを おもふころかな | 伊勢 |
1258 | いつとても あはれとおもふを ねぬるよの つきはおほろけ なくなくそみし | 中務 |
1259 | さらしなの やまよりほかに てるつきも なくさめかねつ このころのそら | 躬恒 |
1260 | あまのとを おしあけかたの つきみれは うきひとしもそ こひしかりける | 読人不知 |
1261 | ほのみえし つきをこひしと かへるさの くもちのなみに ぬれてこしかな | 読人不知 |
1262 | いるかたは さやかなりける つきかけを うはのそらにも まちしよひかな | 紫式部 |
1263 | さしてゆく やまのはもみな かきくもり こころのそらに きえしつきかけ | 読人不知 |
1264 | いまはとて わかれしほとの つきをたに なみたにくれて なかめやはせし | 経衡 |
1265 | おもかけの わすれぬひとに よそへつつ いるをそしたふ あきのよのつき | 肥後(京極前関白家) |
1266 | うきひとの つきはなにその ゆかりそと おもひなからも うちなかめつつ | 実定 |
1267 | つきのみや うはのそらなる かたみにて おもひもいては こころかよはむ | 西行 |
1268 | くまもなき をりしもひとを おもひいてて こころとつきを やつしつるかな | 西行 |
1269 | ものおもひて なかむるころの つきのいろに いかはかりなる あはれそむらむ | 西行 |
1270 | くもれかし なかむるからに かなしきは つきにおほゆる ひとのおもかけ | 高倉(八条院) |
1271 | わすらるる みをしるそての むらさめに つれなくやまの つきはいてけり | 後鳥羽院 |
1272 | めくりあはむ かきりはいつと しらねとも つきなへたてそ よそのうきくも | 良経(九条兼実男) |
1273 | わかなみた もとめてそてに やとれつき さりとてひとの かけはみえねと | 良経(九条兼実男) |
1274 | こひわたる なみたやそらに くもるらむ ひかりもかはる ねやのつきかけ | 公経(藤原実宗男) |
1275 | いくめくり そらゆくつきも へたてきぬ ちきりしなかは よそのうきくも | 通光 |
1276 | いまこむと ちきりしことは ゆめなから みしよににたる ありあけのつき | 通具 |
1277 | わすれしと いひしはかりの なこりとて そのよのつきは めくりきにけり | 有家(藤原重家男) |
1278 | おもひいてて よなよなつきに たつねすは まてとちきりし なかやたえなむ | 良経(九条兼実男) |
1279 | わするなよ いまはこころの かはるとも なれしそのよの ありあけのつき | 家隆 |
1280 | そのままに まつのあらしも かはらぬを わすれやしぬる ふけしよのつき | 宗円(法眼弁宗男) |
1281 | ひとそうき たのめぬつきは めくりきて むかしわすれぬ よもきふのやと | 秀能(藤原秀宗男) |
1282 | わくらはに まちつるよひも ふけにけり さやはちきりし やまのはのつき | 良経(九条兼実男) |
1283 | こぬひとを まつとはなくて まつよひの ふけゆくそらの つきもうらめし | 有家(藤原重家男) |
1284 | まつやまと ちきりしひとは つれなくて そてこすなみに のこるつきかけ | 定家 |
1285 | ならひこし たかいつはりも またしらて まつとせしまの にはのよもきふ | 俊成女 |
1286 | あとたえて あさちかすゑに なりにけり たのめしやとの にはのしらつゆ | 讃岐(二条院) |
1287 | こぬひとを おもひたえたる にはのおもの よもきかすゑそ まつにまされる | 寂蓮 |
1288 | たつねても そてにかくへき かたそなき ふかきよもきの つゆのかことを | 通光 |
1289 | かたみとて ほのふみわけし あともなし こしはむかしの にはのをきはら | 保季 |
1290 | なこりをは にはのあさちに ととめおきて たれゆゑきみか すみうかれけむ | 行遍 |
1291 | わすれすは なれしそてもや こほるらむ ねぬよのとこの しものさむしろ | 定家 |
1292 | かせふかは みねにわかれむ くもをたに ありしなこりの かたみともみよ | 家隆 |
1293 | いはさりき いまこむまての そらのくも つきひへたてて ものおもへとは | 良経(九条兼実男) |
1294 | おもひいてよ たかかねことの すゑならむ きのふのくもの あとのやまかせ | 家隆 |
1295 | わすれゆく ひとゆゑそらを なかむれは たえたえにこそ くももみえけれ | 範兼 |
1296 | わすれなは いけらむものかと おもひしに それもかなはぬ このよなりけり | 大輔(殷富門院) |
1297 | うとくなる ひとをなにとて うらむらむ しられすしらぬ をりもありしに | 西行 |
1298 | いまそしる おもひいてよと ちきりしは わすれむとての なさけなりけり | 西行 |
1299 | あひみしは むかしかたりの うつつにて そのかねことを ゆめになせとや | 通親 |
1300 | あはれなそ こころのやみの ゆかりとも みしよのゆめを たれかさためむ | 公経(藤原実宗男) |
1301 | ちきりきや あかぬわかれに つゆおきし あかつきはかり かたみなれとは | 通具 |
1302 | うらみわひ またしいまはの みなれとも おもひなれにし ゆふくれのそら | 寂蓮 |
1303 | わすれしの ことのはいかに なりにけむ たのめしくれは あきかせそふく | 丹後(宜秋門院) |
1304 | おもひかね うちぬるよひも ありなまし ふきたにすさへ にはのまつかせ | 良経(九条兼実男) |
1305 | さらてたに うらみむとおもふ わきもこか ころものすそに あきかせそふく | 有家(藤原重家男) |
1306 | こころには いつもあきなる ねさめかな みにしむかせの いくよともなく | 読人不知 |
1307 | あはれとて とふひとのなと なかるらむ ものおもふやとの をきのうはかせ | 西行 |
1308 | わかこひは いまをかきりと ゆふまくれ をきふくかせの おとつれてゆく | 俊恵 |
1309 | いまはたた こころのほかに きくものを しらすかほなる をきのうはかせ | 式子内親王 |
1310 | いつもきく ものとやひとの おもふらむ こぬゆふくれの あきかせのこゑ | 良経(九条兼実男) |
1311 | こころあらは ふかすもあらなむ よひよひに ひとまつやとの にはのまつかせ | 慈円 |
1312 | さとはあれぬ むなしきとこの あたりまて みはならはしの あきかせそふく | 寂蓮 |
1313 | さとはあれぬ をのへのみやの おのつから まちこしよひも むかしなりけり | 後鳥羽院 |
1314 | ものおもはて たたおほかたの つゆにたに ぬるれはぬるる あきのたもとを | 有家(藤原重家男) |
1315 | くさまくら むすひさためむ かたしらす ならはぬのへの ゆめのかよひち | 雅経 |
1316 | さてもなほ とはれぬあきの ゆふはやま くもふくかせの みねにみゆらむ | 家隆 |
1317 | おもひいる ふかきこころの たよりまて みしはそれとも なきやまちかな | 秀能(藤原秀宗男) |
1318 | なかめても あはれとおもへ おほかたの そらたにかなし あきのゆふくれ | 長明 |
1319 | ことのはの うつりしあきも すきぬれは わかみしくれと ふるなみたかな | 通具 |
1320 | きえわひぬ うつろふひとの あきのいろに みをこからしの もりのしたつゆ | 定家 |
1321 | こぬひとを あきのけしきや ふけぬらむ うらみによわる まつむしのこゑ | 寂蓮 |
1322 | わかこひは にはのむらはき うらかれて ひとをもみをも あきのゆふくれ | 慈円 |
1323 | そてのつゆも あらぬいろにそ きえかへる うつれはかはる なけきせしまに | 後鳥羽院 |
1324 | むせふとも しらしなこころ かはらやに われのみけたぬ したのけふりは | 定家 |
1325 | しられしな おなしそてには かよふとも たかゆふくれと たのむあきかせ | 家隆 |
1326 | つゆはらふ ねさめはあきの むかしにて みはてぬゆめに のこるおもかけ | 俊成女 |
1327 | こころこそ ゆくへもしらね みわのやま すきのこすゑの ゆふくれのそら | 慈円 |
1328 | さりともと まちしつきひそ うつりゆく こころのはなの いろにまかせて | 式子内親王 |
1329 | いきてよも あすまてひとは つらからし このゆふくれを とははとへかし | 式子内親王 |
1330 | あかつきの なみたやそらに たくふらむ そてにおちくる かねのおとかな | 慈円 |
1331 | つくつくと おもひあかしの うらちとり なみのまくらに なくなくそきく | 公経(藤原実宗男) |
1332 | たつねみる つらきこころの おくのうみよ しほひのかたの いふかひもなし | 定家 |
1333 | みしひとの おもかけとめよ きよみかた そてにせきもる なみのかよひち | 雅経 |
1334 | ふりにけり しくれはそてに あきかけて いひしはかりを まつとせしまに | 俊成女 |
1335 | かよひこし やとのみちしは かれかれに あとなきしもの むすほほれつつ | 俊成女 |
1336 | しろたへの そてのわかれに つゆおちて みにしむいろの あきかせそふく | 定家 |
1337 | おもひいる みはふかくさの あきのつゆ たのめしすゑや こからしのかせ | 家隆 |
1338 | のへのつゆは いろもなくてや こほれつる そてよりすくる をきのうはかせ | 慈円 |
1339 | こひわひて のへのつゆとは きえぬとも たれかくさはを あはれとはみむ | 公衡(藤原公能男) |
1340 | とへかしな をはなかもとの おもひくさ しをるるのへの つゆはいかにと | 通具 |
1341 | よのまにも きゆへきものを つゆしもの いかにしのへと たのめおくらむ | 俊忠 |
1342 | あたなりと おもひしかとも きみよりは ものわすれせぬ そてのうはつゆ | 道信 |
1343 | おなしくは わかみもつゆと きえななむ きえなはつらき ことのはもみし | 元真 |
1344 | いまこむと いふことのはも かれゆくに よなよなつゆの なににおくらむ | 和泉式部 |
1345 | あたことの はにおくつゆの きえにしを あるものとてや ひとのとふらむ | 長能 |
1346 | うちはへて いやはねらるる みやきのの こはきかしたは いろにいてしより | 読人不知 |
1347 | はきのはや つゆのけしきも うちつけに もとよりかはる こころあるものを | 惟成 |
1348 | よもすから きえかへりつる わかみかな なみたのつゆに むすほほれつつ | 花山院 |
1349 | きみかせぬ わかたまくらは くさなれや なみたのつゆの よなよなそおく | 光孝天皇 |
1350 | つゆはかり おくらむそては たのまれす なみたのかはの たきつせなれは | 読人不知 |
1351 | おもひやる よそのむらくも しくれつつ あたちのはらに もみちしぬらむ | 重之 |
1352 | みにちかく きにけるものを いろかはる あきをはよそに おもひしかとも | 顕房室 |
1353 | いろかはる はきのしたはを みてもまつ ひとのこころの あきそしらるる | 相模 |
1354 | いなつまは てらさぬよひも なかりけり いつらほのかに みえしかけろふ | 相模 |
1355 | ひとしれぬ ねさめのなみた ふりみちて さもしくれつる よはのそらかな | 伊尹 |
1356 | なみたのみ うきいつるあまの つりさをの なかきよすから こひつつそぬる | 光孝天皇 |
1357 | まくらのみ うくとおもひし なみたかは いまはわかみの しつむなりけり | 是則 |
1358 | おもほえす そてにみなとの さわくかな もろこしふねの よりしはかりに | 読人不知 |
1359 | いもかそて わかれしひより しろたへの ころもかたしき こひつつそぬる | 読人不知 |
1360 | あふことの なみのしたくさ みかくれて しつこころなく ねこそなかるれ | 読人不知 |
1361 | うらにたく もしほのけふり なひかめや よものかたより かせはふくとも | 読人不知 |
1362 | わするらむと おもふこころの うたかひに ありしよりけに ものそかなしき | 読人不知 |
1363 | うきなから ひとをはえしも わすれねは かつうらみつつ なほそこひしき | 読人不知 |
1364 | いのちをは あたなるものと ききしかと つらきかためは なかくもあるかな | 読人不知 |
1365 | いつかたに ゆきかくれなむ よのなかに みのあれはこそ ひともつらけれ | 読人不知 |
1366 | いままてに わすれぬひとは よにもあらし おのかさまさま としのへぬれは | 読人不知 |
1367 | たまみつを てにむすひても こころみむ ぬるくはいしの なかもたのまし | 読人不知 |
1368 | やましろの ゐてのたまみつ てにくみて たのみしかひも なきよなりけり | 読人不知 |
1369 | きみかあたり みつつををらむ いこまやま くもなかくしそ あめはふるとも | 読人不知 |
1370 | なかそらに たちゐるくもの あともなく みのはかなくも なりぬへきかな | 読人不知 |
1371 | くものゐる とほやまとりの よそにても ありとしきけは わひつつそぬる | 読人不知 |
1372 | ひるはきて よるはわかるる やまとりの かけみるときそ ねはなかれける | 読人不知 |
1373 | われもしか なきてそひとに こひられし いまこそよそに こゑをのみきけ | 読人不知 |
1374 | なつのゆく をしかのつのの つかのまも わすれすおもへ いもかこころを | 人麿 |
1375 | なつくさの つゆわけころも きもせぬに なとわかそての かわくときなき | 人麿 |
1376 | みそきする ならのをかはの かはかせに いのりそわたる したにたえしと | 八代女王 |
1377 | うらみつつ ぬるよのそての かわかぬは まくらのしたに しほやみつらむ | 深養父 |
1378 | あしへより みちくるしほの いやましに おもふかきみか わすれかねつる | 山口女王 |
1379 | しほかまの まへにうきたる うきしまの うきておもひの あるよなりけり | 山口女王 |
1380 | いかにねて みえしなるらむ うたたねの ゆめよりのちは ものをこそおもへ | 赤染衛門 |
1381 | うちとけて ねぬものゆゑに ゆめをみて ものおもひまさる こころにもあるかな | 篁 |
1382 | はるのよの ゆめにあひつと みえつれは おもひたえにし ひとそまたるる | 伊勢 |
1383 | はるのよの ゆめのしなしは つらくとも みしはかりたに あらはたのまむ | 盛明親王 |
1384 | ぬるゆめに うつつのうさも わすられて おもひなくさむ ほとそはかなき | 斎宮女御 |
1385 | かくはかり ねてあかしつる はるのよに いかにみえつる ゆめにかあるらむ | 能宣 |
1386 | なみたかは みもうきぬへき ねさめかな はかなきゆめの なこりはかりに | 寂蓮 |
1387 | あふとみて ことそともなく あけぬなり はかなのゆめの わすれかたみや | 家隆 |
1388 | ゆかちかし あなかまよはの きりきりす ゆめにもひとの みえもこそすれ | 基俊 |
1389 | あはれなり うたたねにのみ みしゆめの なかきおもひに むすほほれなむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1390 | かきやりし そのくろかみの すちことに うちふすほとは おもかけそたつ | 定家 |
1391 | ゆめかとよ みしおもかけも ちきりしも わすれすなから うつつならねは | 俊成女 |
1392 | はかなくそ しらぬいのちを なけきこし わかかねことの かかりけるよに | 式子内親王 |
1393 | すきにける よよのちきりも わすられて いとふうきみの はてそはかなき | 弁 |
1394 | おもひわひ みしおもかけは さておきて こひせさりけむ をりそこひしき | 俊成(藤原俊忠男) |
1395 | なかれいてむ うきなにしはし よとむかな もとめぬそての ふちはあれとも | 相模 |
1396 | つらからは こひしきことは わすれなて そへてはなとか しつこころなき | 馬内侍 |
1397 | きみしまれ みちのゆききを さたむらむ すきにしひとを かつわすれつつ | 馬内侍 |
1398 | はなさかぬ くちきのそまの そまひとの いかなるくれに おもひいつらむ | 仲文 |
1399 | おのつから さこそはあれと おもふまに まことにひとの とはすなりぬる | 経信母 |
1400 | ならはねは ひとのとはぬも つらからて くやしきにこそ そてはぬれけれ | 教盛母 |
1401 | なけかしな おもへはひとに つらかりし このよなからの むくひなりけり | 尾張(皇嘉門院) |
1402 | いかにして いかにこのよに ありへはか しはしもものを おもはさるへき | 和泉式部 |
1403 | うれしくは わするることも ありなまし つらきそなかき かたみなりける | 深養父 |
1404 | あふことの かたみをたにも みてしかな ひとはたゆとも みつつしのはむ | 素性 |
1405 | わかみこそ あらぬかとのみ たとらるれ とふへきひとに わすられしより | 小町 |
1406 | かつらきや くめちにわたす いははしの たえにしなかと なりやはてなむ | 能宣 |
1407 | いまはとも おもひなたえそ のなかなる みつのなかれは ゆきてたつねむ | 輔親 |
1408 | おもひいつや みののをやまの ひとつまつ ちきりしことは いつもわすれす | 伊勢 |
1409 | いてていにし あとたにいまた かはらぬに たかかよひちと いまはなるらむ | 業平 |
1410 | うめのはな かをのみそてに ととめおきて わかおもふひとは おとつれもせぬ | 業平 |
1411 | あまのはら そこともしらぬ おほそらに おほつかなさを なけきつるかな | 村上天皇 |
1412 | なけくらむ こころをそらに みてしかな たつあさきりに みをやなさまし | 斎宮女御 |
1413 | あはすして ふるころほひの あまたあれは はるけきそらに なかめをそする | 光孝天皇 |
1414 | おもひやる こころもそらに しらくもの いてたつかたを しらせやはせぬ | 致平親王 |
1415 | くもゐより とほやまとりの なきてゆく こゑほのかなる こひもするかな | 躬恒 |
1416 | くもゐなる かりたになきて くるあきに なとかはひとの おとつれもせぬ | 醍醐天皇 |
1417 | はるゆきて あきまてとやは おもひけむ かりにはあらす ちきりしものを | 村上天皇 |
1418 | はつかりの はつかにききし ことつても くもちにたえて わふるころかな | 高明 |
1419 | をみころも こそはかりこそ なれさらめ けふのひかけの かけてたにとへ | 惟成 |
1420 | すみよしの こひわすれくさ たねたえて なきよにあへる われそかなしき | 元真 |
1421 | みつのうへの はかなきかすも おもほえす ふかきこころし そこにとまれは | 村上天皇 |
1422 | なかきよの つきぬなけきの たえさらは なににいのちを かへてわすれむ | 伊尹 |
1423 | こころにも まかせさりける いのちもて たのめもおかし つねならぬよを | 敦忠 |
1424 | よのうきも ひとのつらきも しのふるに こひしきにこそ おもひわひぬれ | 元真 |
1425 | かすならは かからましやは よのなかに いとかなしきは しつのをたまき | 篁 |
1426 | ひとならは おもふこころを いひてまし よしやさこそは しつのをたまき | 惟成 |
1427 | わかよはひ おとろへゆけは しろたへの そてのなれにし きみをしそおもふ | 読人不知 |
1428 | いまよりは あはしとすれや しろたへの わかころもての かわくときなき | 読人不知 |
1429 | たまくしけ あけまくをしき あたらよを ころもてかれて ひとりかもねむ | 読人不知 |
1430 | あふことを おほつかなくて すくすかな くさはのつゆの おきかはるまて | 読人不知 |
1431 | あきのたの ほむけのかせの かたよりに われはものおもふ つれなきものを | 読人不知 |
1432 | はしたかの のもりのかかみ えてしかな おもひおもはす よそなからみむ | 読人不知 |
1433 | おほよとの まつはつらくも あらなくに うらみてのみも かへるなみかな | 読人不知 |
1434 | しらなみは たちさわくとも こりすまの うらのみるめは からむとそおもふ | 読人不知 |
1435 | さしてゆく かたはみなとの うらたかみ うらみてかへる あまのつりふね | 読人不知 |
1436 | としくれし なみたのつらら とけにけり こけのそてにも はるやたつらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1437 | やまかけや さらてはにはに あともなし はるそきにける ゆきのむらきえ | 有家(藤原重家男) |
1438 | あはれなり むかしのひとを おもふには きのふののへに みゆきせましや | 雅信 |
1439 | ひきかへて のへのけしきは みえしかと むかしをこふる まつはなかりき | 円融院 |
1440 | はるくれは そてのこほりも とけにけり もりくるつきの やとるはかりに | 行尊 |
1441 | たにふかみ はるのひかりの おそけれは ゆきにつつめる うくひすのこゑ | 道真 |
1442 | ふるゆきに いろまとはせる うめのはな うくひすのみや わきてしのはむ | 道真 |
1443 | おそくとく つひにさきぬる うめのはな たかうゑおきし たねにかあるらむ | 忠平 |
1444 | ももしきに かはらぬものは うめのはな をりてかさせる にほひなりけり | 公忠(源国紀男) |
1445 | いろかをは おもひもいれす うめのはな つねならぬよに よそへてそみる | 花山院 |
1446 | うめのはな なににほふらむ みるひとの いろをもかをも わすれぬるよに | 大弐三位 |
1447 | はるかすみ たなひきわたる をりにこそ かかるやまへは かひもありけれ | 兼家 |
1448 | むらさきの くもにもあらて はるかすみ たなひくやまの かひはなにそも | 円融院 |
1449 | みちのへの くちきのやなき はるくれは あはれむかしと しのはれそする | 道真 |
1450 | むかしみし はるはむかしの はるなから わかみひとつの あらすもあるかな | 深養父 |
1451 | かきこしに みるあたひとの いへさくら はなちるはかり ゆきてをらはや | 円融院 |
1452 | をりにこと おもひやすらむ はなさくら ありしみゆきの はるをこひつつ | 朝光 |
1453 | よろつよを ふるにかひある やとなれや みゆきとみえて はなそちりくる | 肥後(京極前関白家) |
1454 | えたことの すゑまてにほふ はななれは ちるもみゆきと みゆるなるらむ | 師通 |
1455 | はるをへて みゆきになるる はなのかけ ふりゆくみをも あはれとやおもふ | 定家 |
1456 | なれなれて みしはなこりの はるそとも なとしらかはの はなのしたかけ | 雅経 |
1457 | ふるさとと おもひなはてそ はなさくら かかるみゆきに あふよありけり | 読人不知 |
1458 | いさやまた つきひのゆくも しらぬみは はなのはるとも けふこそはみれ | 師光(源師頼男) |
1459 | をるひとの それなるからに あちきなく みしわかやとの はなのかそする | 和泉式部 |
1460 | みてもまた またもみまくの ほしかりし はなのさかりは すきやしぬらむ | 高光 |
1461 | おいにける しらかもはなも もろともに けふのみゆきに ゆきとみえけり | 俊房 |
1462 | さくらはな をりてみしにも かはらぬに ちらぬはかりそ しるしなりける | 忠家(藤原長家男) |
1463 | さもあらはあれ くれゆくはるも くものうへに ちることしらぬ はなしにほはは | 経信 |
1464 | さくらはな すきゆくはるの ともとてや かせのおとせぬ よるもちるらむ | 忠教(藤原師実男) |
1465 | をしめとも つねならぬよの はななれは いまはこのみを にしにもとめむ | 鳥羽院 |
1466 | いまはわれ よしののやまの はなをこそ やとのものとも みるへかりけれ | 俊成(藤原俊忠男) |
1467 | はるくれは なほこのよこそ しのはるれ いつかはかかる はなをみるへき | 俊成(藤原俊忠男) |
1468 | てるつきも くものよそにそ ゆきめくる はなそこのよの ひかりなりける | 俊成(藤原俊忠男) |
1469 | みせはやな しかのからさき ふもとなる なからのやまの はるのけしきを | 慈円 |
1470 | しはのとに にほはむはなは さもあらはあれ なかめてけりな うらめしのみや | 慈円 |
1471 | よのなかを おもへはなへて ちるはなの わかみをさても いつちかもせむ | 西行 |
1472 | みはとめつ こころはおくる やまさくら かせのたよりに おもひおこせよ | 安法 |
1473 | さくらあさの をふのうらなみ たちかへり みれともあかす やまなしのはな | 俊頼(源経信男) |
1474 | しらなみの こゆらむすゑの まつやまは はなとやみゆる はるのよのつき | 加賀左衛門 |
1475 | おほつかな かすみたつらむ たけくまの まつのくまもる はるのよのつき | 加賀左衛門 |
1476 | よをいとふ よしののおくの よふことり ふかきこころの ほとやしるらむ | 幸清 |
1477 | をりにあへは これもさすかに あはれなり をたのかはつの ゆふくれのこゑ | 忠良 |
1478 | はるのあめの あまねきみよを たのむかな しもにかれゆく くさはもらすな | 有家(藤原重家男) |
1479 | すめらきの こたかきかけに かくれても なほはるさめに ぬれむとそおもふ | 実行 |
1480 | やへなから いろもかはらぬ やまふきの なとここのへに さかすなりにし | 実方 |
1481 | ここのへに あらてやへさく やまふきの いはぬいろをは しるひともなし | 円融院 |
1482 | おのかなみに おなしすゑはそ しをれぬる ふちさくたこの うらめしのみや | 慈円 |
1483 | からころも はなのたもとに ぬきかへよ われこそはるの いろはたちつれ | 道長 |
1484 | からころも たちかはりぬる はるのよに いかてかはなの いろをみるへき | 上東門院 |
1485 | かみよには ありもやしけむ さくらはな けふのかさしに をれるためしは | 紫式部 |
1486 | ほとときす そのかみやまの たひまくら ほのかたらひし そらそわすれぬ | 式子内親王 |
1487 | たちいつる なこりありあけの つきかけに いととかたらふ ほとときすかな | 読人不知 |
1488 | いくちよと かきらぬきみか みよなれは なほをしまるる けさのあけほの | 家通 |
1489 | うめかえに をりたかへたる ほとときす こゑのあやめも たれかわくへき | 左近(三条院女蔵人) |
1490 | うちわたす をちかたひとに こととへと こたへぬからに しるきはなかな | 小弁 |
1491 | さみたれの そらたにすめる つきかけに なみたのあめは はるるまもなし | 赤染衛門 |
1492 | さみたれは まやののきはの あまそそき あまりなるまて ぬるるそてかな | 俊成(藤原俊忠男) |
1493 | ひとりぬる やとのとこなつ あさなあさな なみたのつゆに ぬれぬひそなき | 花山院 |
1494 | よそへつつ みれとつゆたに なくさます いかにかすへき なてしこのはな | 恵子女王 |
1495 | おもひあらは こよひのそらは とひてまし みえしやつきの ひかりなりけむ | 和泉式部 |
1496 | おもひあれは つゆはたもとに まかふかと あきのはしめを たれにとはまし | 大納言(七条院) |
1497 | そてのうらの なみふきかへす あきかせに くものうへまて すすしからなむ | 中務 |
1498 | あきやくる つゆやまかふと おもふまて あるはなみたの ふるにそありける | 有常 |
1499 | めくりあひて みしやそれとも わかぬまに くもかくれにし よはのつきかけ | 紫式部 |
1500 | つきかけの やまのはわけて かくれなは そむくうきよを われやなかめむ | 三条院 |
1501 | やまのはを いてかてにする つきまつと ねぬよのいたく ふけにけるかな | 為時(藤原惟正男) |
1502 | うきくもは たちかくせとも ひまもりて そらゆくつきの みえもするかな | 伊勢大輔 |
1503 | うきくもに かくれてとこそ おもひしか ねたくもつきの ひまもりにける | 正光 |
1504 | つきをなと またれのみすと おもひけむ けにやまのはは いてうかりけり | 範兼 |
1505 | おもひいつる ひともあらしの やまのはに ひとりそいりし ありあけのつき | 静賢 |
1506 | わかのうらに いへのかせこそ なけれとも なみふくいろは つきにみえけり | 範光 |
1507 | よもすから うらこくふねは あともなし つきそのこれる しかのからさき | 丹後(宜秋門院) |
1508 | やまのはに おもひもいらし よのなかは とてもかくても ありあけのつき | 盛方 |
1509 | わすれしよ わするなとたに いひてまし くもゐのつきの こころありせは | 俊成(藤原俊忠男) |
1510 | いかにして そてにひかりの やとるらむ くもゐのつきは へたてこしみを | 俊成(藤原俊忠男) |
1511 | こころには わするるときも なかりけり みよのむかしの くものうへのつき | 公衡(藤原公能男) |
1512 | むかしみし くもゐをめくる あきのつき いまいくとせか そてにやとさむ | 讃岐(二条院) |
1513 | うきみよに なからへはなほ おもひいてよ たもとにちきる ありあけのつき | 経通(藤原泰通男) |
1514 | みやこにも ひとやまつらむ いしやまの みねにのこれる あきのよのつき | 長能 |
1515 | あはちにて あはとはるかに みしつきの ちかきこよひは こころからかも | 躬恒 |
1516 | いたつらに ねてはあかせと もろともに きみかこぬよの つきはみさりき | 道済 |
1517 | あまのはら はるかにひとり なかむれは たもとにつきの いてにけるかな | 増基 |
1518 | たのめこし ひとをまつちの やまかせに さよふけしかは つきもいりにき | 読人不知 |
1519 | つきみはと いひしはかりの ひとはこて まきのとたたく にはのまつかせ | 良経(九条兼実男) |
1520 | やまさとに つきはみるやと ひとはこす そらゆくかせそ このはをもとふ | 慈円 |
1521 | ありあけの つきのゆくへを なかめてそ のてらのかねは きくへかりける | 慈円 |
1522 | やまのはを いててもまつの このまより こころつくしの ありあけのつき | 業清(藤原良清男) |
1523 | よもすから ひとりみやまの まきのはに くもるもすめる ありあけのつき | 長明 |
1524 | おくやまの このはのおつる あきかせに たえたえみねの くもそのこれる | 秀能(藤原秀宗男) |
1525 | つきすめは よものうきくも そらにきえて みやまかくれに ゆくあらしかな | 秀能(藤原秀宗男) |
1526 | なかめわひぬ しはのあみとの あけかたに やまのはちかく のこるつきかけ | 猷円 |
1527 | あかつきの つきみむとしも おもはねと みしひとゆゑに なかめられつつ | 花山院 |
1528 | ありあけの つきはかりこそ かよひけれ くるひとなしの やとのにはにも | 伊勢大輔 |
1529 | すみなれし ひとかけもせぬ わかやとに ありあけのつきの いくよともなく | 和泉式部 |
1530 | すむひとも あるかなきかの やとならし あしまのつきの もるにまかせて | 経信 |
1531 | おもひきや わかれしあきに めくりあひて またもこのよの つきをみむとは | 俊成(藤原俊忠男) |
1532 | つきをみて こころうかれし いにしへの あきにもさらに めくりあひぬる | 西行 |
1533 | よもすから つきこそそてに やとりけれ むかしのあきを おもひいつれは | 西行 |
1534 | つきのいろに こころをきよく そめましや みやこをいてぬ わかみなりせは | 西行 |
1535 | すつとならは うきよをいとふ しるしあらむ われみはくもる あきのよのつき | 西行 |
1536 | ふけにける わかみのかけを おもふまに はるかにつきの かたふきにける | 西行 |
1537 | なかめして すきにしかたを おもふまに みねよりみねに つきはうつりぬ | 覚性法親王 |
1538 | あきのよの つきにこころを なくさめて うきよにとしの つもりぬるかな | 道経 |
1539 | あきをへて つきをなかめむ みとなれり いそちのやみを なになけくらむ | 慈円 |
1540 | なかめても むそちのあきは すきにけり おもへはかなし やまのはのつき | 隆信 |
1541 | こころある ひとのみあきの つきをみは なにをうきみの おもひいてにせむ | 光行 |
1542 | みのうさを つきやあらぬと なかむれは むかしなからの かけそもりくる | 讃岐(二条院) |
1543 | ありあけの つきよりほかに たれをかは やまちのともと ちきりおくへき | 寂超 |
1544 | みやこなる あれたるやとに むなしくや つきにたつぬる ひとかへるらむ | 嘉言 |
1545 | おもひやれ なにをしのふと なけれとも みやこおほゆる ありあけのつき | 惟明親王 |
1546 | ありあけの おなしなかめは きみもとへ みやこのほかも あきのやまさと | 式子内親王 |
1547 | あまのとを おしあけかたの くもまより かみよのつきの かけそのこれる | 良経(九条兼実男) |
1548 | くもをのみ つらきものとて あかすよの つきよこすゑに をちかたのやま | 忠経 |
1549 | いりやらて よををしむつきの やすらひに ほのほのあくる やまのはそうき | 保季 |
1550 | あやしくそ かへさはつきの くもりにし むかしかたりに よやふけにけむ | 行遍 |
1551 | ふるさとの やともるつきに こととはむ われをはしるや むかしすみきと | 寂超 |
1552 | すたきけむ むかしのひとは かけたえて やともるものは ありあけのつき | 忠盛 |
1553 | やへむくら しけれるやとは ひともなし まはらにつきの かけそすみける | 匡房 |
1554 | かもめゐる ふちえのうらの おきつすに よふねいさよふ つきのさやけさ | 顕仲(源顕房男) |
1555 | なにはかた しほひにあさる あしたつも つきかたふけは こゑのうらむる | 俊恵 |
1556 | わかのうらに つきのてしほの さすままに よるなくつるの こゑそかなしき | 慈円 |
1557 | もしほくむ そてのつきかけ おのつから よそにあかさぬ すまのうらひと | 定家 |
1558 | あかしかた いろなきひとの そてをみよ すすろにつきも やとるものかは | 秀能(藤原秀宗男) |
1559 | なかめよと おもはてしもや かへるらむ つきまつなみの あまのつりふね | 具親 |
1560 | しめおきて いまやとおもふ あきやまの よもきかもとに まつむしのなく | 俊成(藤原俊忠男) |
1561 | あれわたる あきのにはこそ あはれなれ ましてきえなむ つゆのゆふくれ | 俊成(藤原俊忠男) |
1562 | くもかかる とほやまはたの あきされは おもひやるたに かなしきものを | 西行 |
1563 | かせそよく しののをささの かりのよを おもふねさめに つゆそこほるる | 守覚法親王 |
1564 | あさちふや そてにくちにし あきのしも わすれぬゆめを ふくあらしかな | 通光 |
1565 | くすのはの うらみにかへる ゆめのよを わすれかたみの のへのあきかせ | 俊成女 |
1566 | しらつゆは おきにけらしな みやきのの もとあらのはきの すゑたわむまて | 允仲 |
1567 | をみなへし さかりのいろを みるからに つゆのわきける みこそしらるれ | 紫式部 |
1568 | しらつゆは わきてもおかし をみなへし こころからにや いろのそむらむ | 道長 |
1569 | やまさとに くすはひかかる まつかきの ひまなくものは あきそかなしき | 好忠 |
1570 | ももとせの あきのあらしは すくしきぬ いつれのくれの つゆときえなむ | 安法 |
1571 | あきはつる はつかのやまの さひしきに ありあけのつきを たれとみるらむ | 匡房 |
1572 | はなすすき あきのすゑはに なりぬれは ことそともなく つゆそこほるる | 行宗 |
1573 | よはにふく あらしにつけて おもふかな みやこもかくや あきはさひしき | 実定 |
1574 | よのなかに あきはてぬれは みやこにも いまはあらしの おとのみそする | 顕長 |
1575 | うつろふは こころのほかの あきなれは いまはよそにそ きくのうへのつゆ | 冷泉院 |
1576 | たのもしな ののみやひとの ううるはな しくるるつきに あへすなるとも | 順 |
1577 | やまかはの いはゆくみつも こほりして ひとりくたくる みねのまつかせ | 読人不知 |
1578 | あさことに みきはのこほり ふみわけて きみにつかふる みちそかしこき | 通親 |
1579 | きみかよに あふくまかはの うもれきも こほりのしたに はるをまちけり | 家隆 |
1580 | あともなく ゆきふるさとは あれにけり いつれむかしの かきねなるらむ | 赤染衛門 |
1581 | つゆのいのち きえなましかは かくはかり ふるしらゆきを なかめましやは | 後白河院 |
1582 | そまやまの こすゑにおもる ゆきをれに たえぬなけきの みをくたくらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1583 | ときすきて しもにきえにし はななれと けふはむかしの ここちこそすれ | 朱雀院 |
1584 | ほともなく さめぬるゆめの うちなれと そのよににたる はなのいろかな | 公任 |
1585 | みしゆめを いつれのよそと おもふまに をりをわすれぬ はなのかなしさ | 御形宣旨 |
1586 | おいぬとも またもあはむと ゆくとしに なみたのたまを たむけつるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
1587 | おほかたに すくるつきひを なかめしは わかみにとしの つもるなりけり | 慈覚 |
1588 | しらなみの はままつかえの たむけくさ いくよまてにか としのへぬらむ | 河島皇子 |
1589 | やましろの いはたのをのの ははそはら みつつやきみか やまちこゆらむ | 宇合 |
1590 | あしのやの なたのしほやき いとまなみ つけのをくしも ささすきにけり | 業平 |
1591 | はるるよの ほしかかはへの ほたるかも わかすむかたに あまのたくひか | 業平 |
1592 | しかのあまの しほやくけふり かせをいたみ たちはのほらて やまにたなひく | 読人不知 |
1593 | なにはめの ころもほすとて かりてたく あしひのけふり たたぬひそなき | 貫之 |
1594 | としふれは くちこそまされ はしはしら むかしなからの なたにかはらて | 忠岑 |
1595 | はるのひの なからのはまに ふねとめて いつれかはしと とへとこたへぬ | 恵慶 |
1596 | くちにける なからのはしを きてみれは あしのかれはに あきかせそふく | 実定 |
1597 | おきつかせ よはにふくらし なにはかた あかつきかけて なみそよすなる | 定頼 |
1598 | すまのうらの なきたるあさは めもはるに かすみにまかふ あまのつりふね | 孝善 |
1599 | あきかせの せきふきこゆる たひことに こゑうちそふる すまのうらなみ | 忠見 |
1600 | すまのせき ゆめをとほさぬ なみのおとを おもひもよらて やとをかりけり | 慈円 |
1601 | ひとすまぬ ふはのせきやの いたひさし あれにしのちは たたあきのかせ | 良経(九条兼実男) |
1602 | あまをふね とまふきかへす うらかせに ひとりあかしの つきをこそみれ | 俊頼(源経信男) |
1603 | わかのうらを まつのはこしに なかむれは こすゑによする あまのつりふね | 寂蓮 |
1604 | みつのえの よしののみやは かみさひて よはひたけたる うらのまつかせ | 季能 |
1605 | いまさらに すみうしとても いかならむ なたのしほやの ゆふくれのそら | 秀能(藤原秀宗男) |
1606 | おほよとの うらにたつなみ かへらすは まつのかはらぬ いろをみましや | 斎宮女御 |
1607 | まつひとは こころゆくとも すみよしの さとにとのみは おもはさらなむ | 後冷泉院 |
1608 | すみよしの まつはまつとも おもほえて きみかちとせの かけそこひしき | 大弐三位 |
1609 | うちよする なみのこゑにて しるきかな ふきあけのはまの あきのはつかせ | 成仲 |
1610 | おきつかせ よさむになれや たこのうら あまのもしほひ たきすさふらむ | 越前(嘉陽門院) |
1611 | みわたせは かすみのうちも かすみけり けふりたなひく しほかまのうら | 家隆 |
1612 | けふとてや いそなつむらむ いせしまや いちしのうらの あまのをとめこ | 俊成(藤原俊忠男) |
1613 | すすかやま うきよをよそに ふりすてて いかになりゆく わかみなるらむ | 西行 |
1614 | よのなかを こころたかくも いとふかな ふしのけふりを みのおもひにて | 慈円 |
1615 | かせになひく ふしのけふりの そらにきえて ゆくへもしらぬ わかこころかな | 西行 |
1616 | ときしらぬ やまはふしのね いつとてか かのこまたらに ゆきのふるらむ | 業平 |
1617 | はるあきも しらぬときはの やまさとは すむひとさへや おもかはりせぬ | 元方 |
1618 | はなならて たたしはのとを さしておもふ こころのおくも みよしののやま | 慈円 |
1619 | よしのやま やかていてしと おもふみを はなちりなはと ひとやまつらむ | 西行 |
1620 | いとひても なほいとはしき よなりけり よしののおくの あきのゆふくれ | 家衡 |
1621 | ひとすちに なれなはさても すきのいほに よなよなかはる かせのおとかな | 通具 |
1622 | たれかはと おもひたえても まつにのみ おとつれてゆく かせはうらめし | 有家(藤原重家男) |
1623 | やまさとは よのうきよりも すみわひぬ ことのほかなる みねのあらしに | 丹後(宜秋門院) |
1624 | たきのおと まつのあらしも なれぬれは うちぬるほとの ゆめはみてまし | 家隆 |
1625 | ことしけき よをのかれにし みやまへに あらしのかせも こころしてふけ | 寂然 |
1626 | おくやまの こけのころもに くらへみよ いつれかつゆの おきまさるとも | 師氏(藤原忠平男) |
1627 | しらつゆの あしたゆふへに おくやまの こけのころもは かせもさはらす | 高光 |
1628 | よのなかを そむきにとては こしかとも なほうきことは おほはらのさと | 読人不知 |
1629 | みをはかつ をしほのやまと おもひつつ いかにさためて ひとのいりけむ | 能宣 |
1630 | こけのいほり さしてきつれと きみまさて かへるみやまの みちのつゆけさ | 恵慶 |
1631 | あれはてて かせもさはらぬ こけのいほに われはなくとも つゆはもりけむ | 読人不知 |
1632 | やまふかく さこそこころは かよふとも すまてあはれを しらむものかは | 西行 |
1633 | やまかけに すまぬこころは いかなれや をしまれている つきもあるよに | 西行 |
1634 | たちいてて つまきをりこし かたをかの ふかきやまちと なりにけるかな | 寂蓮 |
1635 | おくやまの おとろかしたも ふみわけて みちあるよそと ひとにしらせむ | 後鳥羽院 |
1636 | なからへて なほきみかよを まつやまの まつとせしまに としそへにける | 讃岐(二条院) |
1637 | いまはとて つまきこるへき やとのまつ ちよをはきみと なほいのるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
1638 | われなから おもふかものを とはかりに そてにしくるる にはのまつかせ | 有家(藤原重家男) |
1639 | よをそむく ところとかきく おくやまは ものおもひにそ いるへかりける | 道命 |
1640 | よをそむく かたはいつくに ありぬへし おほはらやまは すみよかりきや | 和泉式部 |
1641 | おもふこと おほはらやまの すみかまは いととなけきの かすをこそつめ | 少将井尼 |
1642 | たれすみて あはれしるらむ やまさとの あめふりすさふ ゆふくれのそら | 西行 |
1643 | しをりせて なほやまふかく わけいらむ うきこときかぬ ところありやと | 西行 |
1644 | かさしをる みわのしけやま かきわけて あはれとそおもふ すきたてるかと | 大輔(殷富門院) |
1645 | いつとなく をくらのやまの かけをみて くれぬとひとの いそくなるかな | 道命 |
1646 | さかのやま ちよのふるみち あととめて またつゆわくる もちつきのこま | 定家 |
1647 | さほかはの なかれひさしき みなれとも うきせにあひて しつみぬるかな | 忠実 |
1648 | かはるせも ありけるものを うちかはの たえぬはかりも なけきけるかな | 兼家 |
1649 | むかしより たえせぬかはの すゑなれは よとむはかりを なになけくらむ | 円融院 |
1650 | もののふの やそうちかはの あしろきに いさよふなみの ゆくへしらすも | 人麿 |
1651 | わかよをは けふかあすかと まつかひの なみたのたきと いつれたかけむ | 行平 |
1652 | みなかみの そらにみゆるは しらくもの たつにまかへる ぬのひきのたき | 師通 |
1653 | ひさかたの あまつをとめか なつころも くもゐにさらす ぬのひきのたき | 有家(藤原重家男) |
1654 | むかしきく あまのかはらを たつねきて あとなきみつを なかむはかりそ | 良経(九条兼実男) |
1655 | あまのかは かよふうききに こととはむ もみちのはしは ちるやちらすや | 実方 |
1656 | まきのいたも こけむすはかり なりにけり いくよへぬらむ せたのなかはし | 匡房 |
1657 | さためなき なにはたてれと あすかかは はやくわたりし せにこそありけれ | 中務 |
1658 | やまさとに ひとりなかめて おもふかな よにすむひとの こころつよさを | 慈円 |
1659 | やまさとに うきよいとはむ とももかな くやしくすきし むかしかたらむ | 西行 |
1660 | やまさとは ひとこさせしと おもはねと とはるることそ うとくなりゆく | 西行 |
1661 | くさのいほを いとひてもまた いかかせむ つゆのいのちの かかるかきりは | 慈円 |
1662 | わくらはに なとかはひとの とはさらむ おとなしかはに すむみなりとも | 行尊 |
1663 | よをそむく やまのみなみの まつかせに こけのころもや よさむなるらむ | 安法 |
1664 | いつかわれ こけのたもとに つゆおきて しらぬやまちの つきをみるへき | 家隆 |
1665 | いまはわれ まつのはしらの すきのいほに とつへきものを こけふかきそて | 式子内親王 |
1666 | しきみつむ やまちのつゆに ぬれにけり あかつきおきの すみそめのそて | 小侍従(太皇太后宮) |
1667 | わすれしの ひとたにとはぬ やまちかな さくらはゆきに ふりかはれとも | 良経(九条兼実男) |
1668 | かけやとす つゆのみしけく なりはてて くさにやつるる ふるさとのつき | 雅経 |
1669 | けふりたえて やくひともなき すみかまの あとのなけきを たれかこるらむ | 重保 |
1670 | やそちあまり にしのむかへを まちかねて すみあらしたる しはのいほりそ | 西日 |
1671 | やまさとに とひくるひとの ことくさは このすまひこそ うらやましけれ | 慈円 |
1672 | をののえの くちしむかしは とほけれと ありしにあらぬ よをもふるかな | 式子内親王 |
1673 | いかにせむ しつかそのふの おくのたけ かきこもるとも よのなかそかし | 俊成(藤原俊忠男) |
1674 | あけくれは むかしをのみそ しのふくさ はすゑのつゆに そてぬらしつつ | 成仲 |
1675 | をかのへの さとのあるしを たつぬれは ひとはこたへす やまおろしのかせ | 慈円 |
1676 | ふるはたの そはのたつきに ゐるはとの ともよふこゑの すこきゆふくれ | 西行 |
1677 | やまかつの かたをかかけて しむるのの さかひにたてる たまのをやなき | 西行 |
1678 | しけきのを いくひとむらに わけなして さらにむかしを しのひかへさむ | 西行 |
1679 | むかしみし にはのこまつに としふりて あらしのおとを こすゑにそきく | 西行 |
1680 | すみなれし わかふるさとは このころや あさちかはらに うつらなくらむ | 行尊 |
1681 | ふるさとは あさちかすゑに なりはてて つきにのこれる ひとのおもかけ | 良経(九条兼実男) |
1682 | これやみし むかしすみけむ あとならむ よもきかつゆに つきのかかれる | 西行 |
1683 | かけにとて たちかくるれは からころも ぬれぬあめふる まつのこゑかな | 貫之 |
1684 | いそのかみ ふりにしひとを たつぬれは あれたるやとに すみれつみけり | 能因 |
1685 | いにしへを おもひやりてそ こひわたる あれたるやとの こけのいしはし | 恵慶 |
1686 | わくらはに とはれしひとも むかしにて それよりにはの あとはたえにき | 定家 |
1687 | なけきこる みはやまなから すくせかし うきよのなかに なにかへるらむ | 赤染衛門 |
1688 | あきされは かりひとこゆる たつたやま たちてもゐても ものをしそおもふ | 人麿 |
1689 | あさくらや きのまろとのに わかをれは なのりをしつつ ゆくはたかこそ | 天智天皇 |
1690 | あしひきの こなたかなたに みちはあれと みやこへいさと いふひとそなき | 道真 |
1691 | あまのはら あかねさしいつる ひかりには いつれのぬまか さえのこるへき | 道真 |
1692 | つきことに なかるとおもひし ますかかみ にしのそらにも とまらさりけり | 道真 |
1693 | やまわかれ とひゆくくもの かへりくる かけみるときは なほたのまれぬ | 道真 |
1694 | きりたちて てるひのもとは みえすとも みはまとはれし よるへありやと | 道真 |
1695 | はなとちり たまとみえつつ あさむけは ゆきふるさとそ ゆめにみえける | 道真 |
1696 | おいぬとて まつはみとりそ まさりける わかくろかみの ゆきのさむさに | 道真 |
1697 | つくしにも むらさきおふる のへはあれと なきなかなしむ ひとそきこえぬ | 道真 |
1698 | かるかやの せきもりにのみ みえつるは ひともゆるさぬ みちへなりけり | 道真 |
1699 | うみならす たたへるみつの そこまてに きよきこころは つきそてらさむ | 道真 |
1700 | ひこほしの ゆきあひをまつ かささきの わたせるはしを われにかさなむ | 道真 |
1701 | なかれきと たつしらなみと やくしほと いつれかからき わたつみのそこ | 道真 |
1702 | ささなみの ひらやまかせの うみふけは つりするあまの そてかへるみゆ | 読人不知 |
1703 | しらなみの よするなきさに よをつくす あまのこなれは やともさためす | 読人不知 |
1704 | ふねのうち なみのしたにそ おいにける あまのしわさも いとまなのよや | 良経(九条兼実男) |
1705 | さすらふる みはさためたる かたもなし うきたるふねの なみにまかせて | 匡房 |
1706 | いかにせむ みをうきふねの にをおもみ つひのとまりや いつくなるらむ | 増賀 |
1707 | あしかもの さわくいりえの みつのえの よにすみかたき わかみなりけり | 人麿 |
1708 | あしかもの はかせになひく うきくさの さためなきよを たれかたのまむ | 能宣 |
1709 | おいにける なきさのまつの ふかみとり しつめるかけを よそにやはみる | 順 |
1710 | あしひきの やましたみつに かけみれは まゆしろたへに われおいにけり | 能因 |
1711 | なれみてし はなのたもとを うちかへし のりのころもを たちそかへつる | 道長 |
1712 | そのかみの たまのかさしを うちかへし いまはころもの うらをたのまむ | 東三条院 |
1713 | つきもせぬ ひかりのまにも まきれなて おいてかへれる かみのつれなさ | 太皇太后宮(冷泉院) |
1714 | かはるらむ ころものいろを おもひやる なみたやうらの たまにまかはむ | 枇杷皇太后宮 |
1715 | まかふらむ ころものたまに みたれつつ なほまたさめぬ ここちこそすれ | 上東門院 |
1716 | しほのまに よものうらうら たつぬれと いまはわかみの いふかひもなし | 和泉式部 |
1717 | いにしへの あまやけふりと なりぬらむ ひとめもみえぬ しほかまのうら | 一条院皇后宮 |
1718 | みやこより くものやへたつ おくやまの よかはのみつは すみよかるらむ | 村上天皇 |
1719 | ももしきの うちのみつねに こひしくて くものやへたつ やまはすみうし | 高光 |
1720 | ゆめかとも なにかおもはむ うきよをは そむかさりけむ ほとそくやしき | 惟喬親王 |
1721 | くもゐとふ かりのねちかき すまひにも なほたまつさは かけすやありけむ | 斎宮女御 |
1722 | しらつゆは おきてかはれと ももしきの うつろふあきは ものそかなしき | 伊勢 |
1723 | あまつかせ ふけひのうらに ゐるたつの なとかくもゐに かへらさるへき | 清正 |
1724 | いにしへの なれしくもゐを しのふとや かすみをわけて きみたつねけむ | 読人不知 |
1725 | おほよとの うらにかりほす みるめたに かすみにたえて かへるかりかね | 定家 |
1726 | はまちとり ふみおくあとの つもりなは かひあるうらに あはさらめやは | 後白河院 |
1727 | たきつせに ひとのこころを みることは むかしにいまも かはらさりけり | 後朱雀院 |
1728 | あさからぬ こころそみゆる おとはかは せきいれしみつの なかれならねと | 内侍(周防) |
1729 | ことのはの なかをなくなく たつぬれは むかしのひとに あひみつるかな | 忠見 |
1730 | ひとりねの こよひもあけぬ たれとしも たのまはこそは こぬもうらみめ | 為忠(長良流藤原知信男) |
1731 | くさわけて たちゐるそての うれしさに たえすなみたの つゆそこほるる | 赤染衛門 |
1732 | うれしさは わすれやはする しのふくさ しのふるものを あきのゆふくれ | 伊勢大輔 |
1733 | あきかせの おとせさりせは しらつゆの のきのしのふに かからましやは | 経信 |
1734 | しのふくさ いかなるつゆか おきつらむ けさはねもみな あらはれにけり | 済時 |
1735 | あさちふを たつねさりせは しのふくさ おもひおきけむ つゆをみましや | 朝光 |
1736 | なからへむ としもおもはぬ つゆのみの さすかにきえむ ことをこそおもへ | 読人不知 |
1737 | つゆのみの きえはわれこそ さきたため おくれむものか もりのしたくさ | 小馬命婦(藤原棟町女) |
1738 | いのちさへ あらはみつへき みのはてを しのはむひとの なきそかなしき | 和泉式部 |
1739 | さためなき むかしかたりを かそふれは わかみもかすに いりぬへきかな | 行尊 |
1740 | よのなかの はれゆくそらに ふるしもの うきみはかりそ おきところなき | 慈円 |
1741 | たのみこし わかふるてらの こけのしたに いつかくちなむ なこそをしけれ | 慈円 |
1742 | くりかへし わかみのとかを もとむれは きみもなきよに めくるなりけり | 行尊 |
1743 | うしといひて よをひたふるに そむかねは ものおもひしらぬ みとやなりなむ | 元輔(清原春光男) |
1744 | そむけとも あめのしたをし はなれねは いつくにもふる なみたなりけり | 読人不知 |
1745 | おほそらに てるひのいろを いさめても あめのしたには たれかすむへき | 内匠(女蔵人) |
1746 | かくしつつ ゆふへのくもと なりもせは あはれかけても たれかしのはむ | 内侍(周防) |
1747 | おもはねと よをそむかむと いふひとの おなしかすにや われもなりなむ | 慈円 |
1748 | かすならぬ みをもこころの もちかほに うかれてはまた かへりきにけり | 西行 |
1749 | おろかなる こころのひくに まかせても さてさはいかに つひのおもひは | 西行 |
1750 | としつきを いかてわかみに おくりけむ きのふのひとも けふはなきよに | 西行 |
1751 | うけかたき ひとのすかたに うかひいてて こりすやたれも またしつむへき | 西行 |
1752 | そむきても なほうきものは よなりけり みをはなれたる こころならねは | 寂蓮 |
1753 | みのうさを おもひしらすは いかかせむ いとひなからも なほすくすかな | 寂蓮 |
1754 | なにことを おもふひとそと ひととはは こたへぬさきに そてそぬるへき | 慈円 |
1755 | いたつらに すきにしことや なけかれむ うけかたきみの ゆふくれのそら | 慈円 |
1756 | うちたえて よにふるみには あらねとも あらぬすちにも つみそかなしき | 慈円 |
1757 | やまさとに ちきりしいほや あれぬらむ またれむとたに おもはさりしを | 慈円 |
1758 | そてにおく つゆをはつゆと しのへとも なれゆくつきや いろをしるらむ | 通具 |
1759 | きみかよに あはすはなにを たまのをの なかくとまては をしまれしみを | 定家 |
1760 | おほかたの あきのねさめの なかきよも きみをそいのる みをおもふとて | 家隆 |
1761 | わかのうらや おきつしほあひに うかひいつる あはれわかみの よるへしらせよ | 家隆 |
1762 | そのやまと ちきらぬつきも あきかせも すすむるそてに つゆこほれつつ | 家隆 |
1763 | きみかよに あへるはかりの みちはあれと みをはたのます ゆくすゑのそら | 雅経 |
1764 | をしむとも なみたにつきも こころから なれぬるそてに あきをうらみて | 俊成女 |
1765 | うきしつみ こむよはさても いかにそと こころにとひて こたへかねぬる | 良経(九条兼実男) |
1766 | われなから こころのはてを しらぬかな すてられぬよの またいとはしき | 良経(九条兼実男) |
1767 | おしかへし ものをおもふは くるしきに しらすかほにて よをやすきまし | 良経(九条兼実男) |
1768 | なからへて よにすむかひは なけれとも うきにかへたる いのちなりけり | 守覚法親王 |
1769 | よをすつる こころはなほそ なかりける うきをうしとは おもひしれとも | 兼宗 |
1770 | すてやらぬ わかみそつらき さりともと おもふこころに みちをまかせて | 公衡(藤原公能男) |
1771 | うきなから あれはあるよに ふるさとの ゆめをうつつに さましかねても | 読人不知 |
1772 | うきなから なほをしまるる いのちかな のちのよとても たのみなけれは | 師光(源師頼男) |
1773 | さりともと たのむこころの ゆくすゑも おもへはしらぬ よにまかすらむ | 季保 |
1774 | つくつくと おもへはやすき よのなかを こころとなけく わかみなりけり | 長延 |
1775 | かはふねの のほりわつらふ つなてなは くるしくてのみ よをわたるかな | 頼輔 |
1776 | おいらくの つきひはいとと はやせかは かへらぬなみに ぬるるそてかな | 覚弁 |
1777 | かきなかす ことのはをたに しつむなよ みこそかくても やまかはのみつ | 行能 |
1778 | みれはまつ いととなみたそ もろかつら いかにちきりて かけはなれけむ | 長明 |
1779 | おなしくは あれないにしへ おもひいての なけれはとても しのはすもなし | 季景 |
1780 | いつくにも すまれすはたた すまてあらむ しはのいほりの しはしなるよに | 西行 |
1781 | つきのゆく やまにこころを おくりいれて やみなるあとの みをいかにせむ | 西行 |
1782 | おもふことを なととふひとの なかるらむ あふけはそらに つきそさやけき | 慈円 |
1783 | いかにして いままてよには ありあけの つきせぬものを いとふこころは | 慈円 |
1784 | うきよいてし つきひのかけの めくりきて かはらぬみちを またてらすらむ | 慈円 |
1785 | ひとしれす そなたをしのふ こころをは かたふくつきに たくへてそやる | 承仁法親王 |
1786 | みちのくの いはてしのふは えそしらぬ かきつくしてよ つほのいしふみ | 頼朝 |
1787 | けふまては ひとをなけきて くれにけり いつみのうへに ならむとすらむ | 嘉言 |
1788 | みちしはの つゆにあらそふ わかみかな いつれかまつは きえむとすらむ | 実頼 |
1789 | なにとかや かへにおふなる くさのなよ それにもたくふ わかみなりけり | 皇嘉門院 |
1790 | こしかたを さなからゆめに なしつれは さむるうつつの なきそかなしき | 資実 |
1791 | ちとせふる まつたにくつる よのなかに けふともしらて たてるわれかな | 性空 |
1792 | かすならて よにすみのえの みをつくし いつをまつとも なきみなりけり | 俊頼(源経信男) |
1793 | うきなから ひさしくそよを すきにける あはれやかけし すみよしのまつ | 俊成(藤原俊忠男) |
1794 | かすかやま たにのうもれき くちぬとも きみにつけこせ みねのまつかせ | 家隆 |
1795 | なにとなく きけはなみたそ こほれぬる こけのたもとに かよふまつかせ | 丹後(宜秋門院) |
1796 | みなひとの そむきはてぬる よのなかに ふるのやしろの みをいかにせむ | 斎宮女御 |
1797 | ころもての やまゐのみつに かけみえし なほそのかみの はるそこひしき | 実方 |
1798 | いにしへの やまゐのころも なかりせは わすらるるみと なりやしなまし | 通信 |
1799 | たちなから きてたにみせよ をみころも あかぬむかしの わすれかたみに | 加賀左衛門 |
1800 | あきのよの あかつきかたの きりきりす ひとつてならて きかましものを | 村上天皇 |
1801 | なかめつつ わかおもふことは ひくらしに のきのしつくの たゆるまもなし | 具平親王 |
1802 | こからしの かせにもみちて ひとしれす うきことのはの つもるころかな | 小町 |
1803 | あらしふく みねのもみちの ひにそへて もろくなりゆく わかなみたかな | 俊成(藤原俊忠男) |
1804 | うたたねは をきふくかせに おとろけと なかきゆめちそ さむるときなき | 崇徳院 |
1805 | たけのはに かせふきよわる ゆふくれの もののあはれは あきとしもなし | 宮内卿(後鳥羽院) |
1806 | ゆふくれは くものけしきを みるからに なかめしとおもふ こころこそつけ | 和泉式部 |
1807 | くれぬなり いくかをかくて すきぬらむ いりあひのかねの つくつくとして | 和泉式部 |
1808 | またれつる いりあひのかねの おとすなり あすもやあらは きかむとすらむ | 西行 |
1809 | あかつきと つけのまくらを そはたてて きくもかなしき かねのおとかな | 俊成(藤原俊忠男) |
1810 | あかつきの ゆふつけとりそ あはれなる なかきねふりを おもふまくらに | 式子内親王 |
1811 | かくはかり うきをしのひて なからへは これよりまさる ものをこそおもへ | 和泉式部 |
1812 | たらちねの いさめしものを つれつれと なかむるをたに とふひともなし | 和泉式部 |
1813 | あはれとて はくくみたてし いにしへは よをそむけとも おもはさりけむ | 行尊 |
1814 | くらゐやま あとをたつねて のほれとも こをおもふみちに なほまよひぬる | 通親 |
1815 | むかしたに むかしとおもひし たらちねの なほこひしきそ はかなかりける | 俊成(藤原俊忠男) |
1816 | ささかにの いとかかりける みのほとを おもへはゆめの ここちこそすれ | 俊頼(源経信男) |
1817 | ささかにの そらにすかくも おなしこと またきやとりも いくよかはへむ | 遍昭 |
1818 | ひかりまつ えたにかかれる つゆのいのち きえはてねとや はるのつれなき | 高明 |
1819 | あらくふく かせはいかにと みやきのの こはきかうへを ひとのとへかし | 赤染衛門 |
1820 | うつろはて しはししのたの もりをみよ かへりもそする くすのうらかせ | 赤染衛門 |
1821 | あきかせは すこくふくとも くすのはの うらみかほには みえしとそおもふ | 和泉式部 |
1822 | をささはら かせまつつゆの きえやらす このひとふしを おもひおくかな | 俊成(藤原俊忠男) |
1823 | よのなかを いまはのこころ つくからに すきにしかたそ いととこひしき | 慈円 |
1824 | よをいとふ こころのふかく なるままに すくるつきひを うちかそへつつ | 慈円 |
1825 | ひとかたに おもひとりにし こころには なほそむかるる みをいかにせむ | 慈円 |
1826 | なにゆゑに このよをふかく いとふそと ひとのとへかし やすくこたへむ | 慈円 |
1827 | おもふへき わかのちのよは あるかなきか なけれはこそは このよにはすめ | 慈円 |
1828 | よをいとふ なをたにもさは ととめおきて かすならぬみの おもひいてにせむ | 西行 |
1829 | みのうさを おもひしらてや やみなまし そむくならひの なきよなりせは | 西行 |
1830 | いかかすへき よにあらはやは よをもすてて あなうのよやと さらにおもはむ | 西行 |
1831 | なにことに とまるこころの ありけれは さらにしもまた よのいとはしき | 西行 |
1832 | むかしより はなれかたきは うきよかな かたみにしのふ なかならねとも | 兼実 |
1833 | おもひいてて もしもたつぬる ひともあらは ありとないひそ さためなきよに | 行尊 |
1834 | かすならぬ みをなにゆゑに うらみけむ とてもかくても すくしけるよを | 行尊 |
1835 | いつかわれ みやまのさとの さひしきに あるしとなりて ひとにとはれむ | 慈円 |
1836 | うきみには やまたのおしね おしこめて よをひたすらに うらみわひぬる | 俊頼(源経信男) |
1837 | しつのをの あさなあさなに こりつむる しはしのほとも ありかたのよや | 山田 |
1838 | かすならぬ みはなきものに なしはてつ たかためにかは よをもうらみむ | 寂蓮 |
1839 | たのみありて いまゆくすゑを まつひとや すくるつきひを なけかさるらむ | 行遍 |
1840 | なからへて いけるをいかに もとかまし うきみのほとを よそにおもはは | 師光(源師頼男) |
1841 | うきよをは いつるひことに いとへとも いつかはつきの いるかたをみむ | 高倉(八条院) |
1842 | なさけありし むかしのみなほ しのはれて なからへまうき よにもふるかな | 西行 |
1843 | なからへは またこのころや しのはれむ うしとみしよそ いまはこひしき | 清輔 |
1844 | すゑのよも このなさけのみ かはらすと みしゆめなくは よそにきかまし | 西行 |
1845 | ゆくすゑは われをもしのふ ひとやあらむ むかしをおもふ こころならひに | 俊成(藤原俊忠男) |
1846 | よのなかを おもひつらねて なかむれは むなしきそらに きゆるしらくも | 俊成(藤原俊忠男) |
1847 | くるるまも まつへきよかは あたしのの すゑはのつゆに あらしたつなり | 式子内親王 |
1848 | つのくにの なからふへくも あらぬかな みしかきあしの よにこそありけれ | 花山院 |
1849 | かせはやみ をきのはことに おくつゆの おくれさきたつ ほとのはかなさ | 具平親王 |
1850 | あきかせに なひくあさちの すゑことに おくしらつゆの あはれよのなか | 蝉丸 |
1851 | よのなかは とてもかくても おなしこと みやもわらやも はてしなけれは | 蝉丸 |
1852 | しるらめや けふのねのひの ひめこまつ おひむすゑまて さかゆへしとは | 日吉 |
1853 | なさけなく をるひとつらし わかやとの あるしわすれぬ うめのたちえを | 道真 |
1854 | ふたらくの みなみのきしに たうたてて いまそさかえむ きたのふちなみ | 春日榎本明神 |
1855 | よやさむき ころもやうすき かたそきの ゆきあひのまより しもやおくらむ | 住吉明神 |
1856 | いかはかり としはへねとも すみのえの まつそふたたひ おひかはりぬる | 住吉明神 |
1857 | むつましと きみはしらなみ みつかきの ひさしきよより いはひそめてき | 住吉明神 |
1858 | ひとしれす いまやいまやと ちはやふる かみさふるまて きみをこそまて | 春日明神 |
1859 | みちとほし ほともはるかに へたたれり おもひおこせよ われもわすれし | 熊野神 |
1860 | おもふこと みにあまるまて なるたきの しはしよとむを なにうらむらむ | 熊野神 |
1861 | われたのむ ひといたつらに なしはては またくもわけて のほるはかりそ | 賀茂御社 |
1862 | かかみにも かけみたらしの みつのおもに うつるはかりの こころとをしれ | 賀茂御社 |
1863 | ありきつつ きつつみれとも いさきよき ひとのこころを われわすれめや | 石清水八幡 |
1864 | にしのうみ たつしらなみの うへにして なにすくすらむ かりのこのよを | 宇左八幡宮 |
1865 | しらなみに たまよりひめの こしことは なきさやつひの とまりなりけむ | 千古 |
1866 | ひさかたの あめのやへくも ふりわけて くたりしきみを われそむかへし | 淑望(紀長谷雄男) |
1867 | とひかける あまのいはふね たつねてそ あきつしまには みやはしめける | 理平 |
1868 | やまとかも うみにあらしの にしふかは いつれのうらに みふねつなかむ | 理平 |
1869 | おくしもに いろもかはらぬ さかきはの かをやはひとの とめてきつらむ | 貫之 |
1870 | みやひとの すれるころもに ゆふたすき かけてこころを たれによすらむ | 貫之 |
1871 | かみかせや みもすそかはの そのかみよ ちきりしことの すゑをたかふな | 良経(九条兼実男) |
1872 | ちきりありて けふみやかはの ゆふかつら なかきよまても かけてたのまむ | 定家 |
1873 | うれしさも あはれもいかに こたへまし ふるさとひとに とはれましかは | 読人不知 |
1874 | かみかせや いすすかはなみ かすしらす すむへきみよに またかへりこむ | 公継 |
1875 | なかめはや かみちのやまに くもきえて ゆふへのそらを いてむつきかけ | 後鳥羽院 |
1876 | かみかせや とよみてくらに なひくして かけてあふくと いふもかしこし | 後鳥羽院 |
1877 | みやはしら したついはねに しきたてて つゆもくもらぬ ひのみかけかな | 西行 |
1878 | かみちやま つきさやかなる ちかひありて あめのしたをは てらすなりけり | 西行 |
1879 | さやかなる わしのたかねの くもゐより かけやはらくる つきよみのもり | 西行 |
1880 | やはらくる ひかりにあまる かけなれや いすすかはらの あきのよのつき | 慈円 |
1881 | たちかへり またもみまくの ほしきかな みもすそかはの せせのしらなみ | 雅定 |
1882 | かみかせや いすすのかはの みやはしら いくちよすめと たてはしめけむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1883 | かみかせや たまくしのはを とりかはし うちとのみやに きみをこそいのれ | 俊恵 |
1884 | かみかせや やまたのはらの さかきはに こころのしめを かけぬひそなき | 越前(嘉陽門院) |
1885 | いすすかは そらやまたきに あきのこゑ したついはねの まつのゆふかせ | 明親 |
1886 | ちはやふる かしひのみやの あやすきは かみのみそきに たてるなりけり | 読人不知 |
1887 | さかきはに そのゆふかひは なけれとも かみにこころを かけぬまそなき | 成清 |
1888 | としをへて うきかけをのみ みたらしの かはるよもなき みをいかにせむ | 内侍(周防) |
1889 | つきさゆる みたらしかはに かけみえて こほりにすれる やまあゐのそて | 俊成(藤原俊忠男) |
1890 | ゆふしての かせにみたるる おとさえて にはしろたへに ゆきそつもれる | 公通 |
1891 | きみをいのる こころのいろを ひととはは たたすのみやの あけのたまかき | 慈円 |
1892 | あとたれし かみにあふひの なかりせは なににたのみを かけてすきまし | 重保 |
1893 | おほみたの うるほふはかり せきかけて ゐせきにおとせ かはかみのかみ | 幸平 |
1894 | いしかはや せみのをかはの きよけれは つきもなかれを たつねてそすむ | 長明 |
1895 | よろつよを いのりそかくる ゆふたすき かすかのやまの みねのあらしに | 資仲 |
1896 | けふまつる かみのこころや なひくらむ してになみたつ さほのかはかせ | 兼実 |
1897 | あめのした みかさのやまの かけならて たのむかたなき みとはしらすや | 兼実 |
1898 | かすかのの おとろのみちの うもれみつ すゑたにかみの しるしあらはせ | 俊成(藤原俊忠男) |
1899 | ちよまても こころしてふけ もみちはを かみもをしほの やまおろしのかせ | 伊家 |
1900 | をしほやま かみのしるしを まつのはに ちきりしはるは かへるものかは | 慈円 |
1901 | やはらくる かけそふもとに くもりなき もとのひかりは みねにすめとも | 慈円 |
1902 | わかたのむ ななのやしろの ゆふたすき かけてもむつの みちにかへすな | 慈円 |
1903 | おしなへて ひよしのかけは くもらぬに なみたあやしき きのふけふかな | 慈円 |
1904 | もろともの ねかひをみつの はまかせに こころすすしき してのおとかな | 慈円 |
1905 | さめぬれは おもひあはせて ねをそなく こころつくしの いにしへのゆめ | 慈円 |
1906 | さきにほふ はなのけしきを みるからに かみのこころそ そらにしらるる | 白河院 |
1907 | いはにむす こけふみならす みくまのの やまのかひある ゆくすゑもかな | 後鳥羽院 |
1908 | くまのかは くたすはやせの みなれさを さすかみなれぬ なみのかよひち | 後鳥羽院 |
1909 | たちのほる しほやのけふり うらかせに なひくをかみの こころともかな | 実能 |
1910 | いはしろの かみはしるらむ しるへせよ たのむうきよの ゆめのゆくすゑ | 読人不知 |
1911 | ちきりあれは うれしきかかる をりにあひぬ わするなかみも ゆくすゑのそら | 後鳥羽院 |
1912 | としふとも こしのしらやま わすれすは かしらのゆきを あはれともみよ | 顕輔 |
1913 | すみよしの はままつかえに かせふけは なみのしらゆふ かけぬまそなき | 道経 |
1914 | さかきはの しもうちはらひ かれすのみ すめともいのる かみのみまへに | 能宣 |
1915 | かはやしろ しのにをりはへ ほすころも いかにほせはか なぬかひさらむ | 貫之 |
1916 | なほたのめ しめちかはらの させもくさ わかよのなかに あらむかきりは | 清水観音 |
1917 | なにかおもふ なにとかなけく よのなかは たたあさかほの はなのうへのつゆ | 清水観音 |
1918 | やまふかく としふるわれも あるものを いつちかつきの いててゆくらむ | 伯耆太山 |
1919 | あしそよく しほせのなみの いつまてか うきよのなかに うかひわたらむ | 行基 |
1920 | あのくたら さみやさほたの ほとけたち わかたつそまに みやうかあらせたまへ | 伝教 |
1921 | のりのふね さしてゆくみそ もろもろの かみもほとけも われをみそなへ | 智証 |
1922 | しるへある ときにたにゆけ こくらくの みちにまとへる よのなかのひと | 智証/菩提寺講堂柱虫喰 |
1923 | しやくまくの こけのいはとの しつけきに なみたのあめの ふらぬひそなき | 日蔵 |
1924 | なむあみた ほとけのみてに かくるいとの をはりみたれぬ こころともかな | 法円 |
1925 | われたにも まつこくらくに うまれなは しるもしらぬも みなむかへてむ | 源信 |
1926 | にこりなき かめゐのみつを むすひあけて こころのちりを すすきつるかな | 上東門院 |
1927 | わたつうみの そこよりきつる ほともなく このみなからに みをそきはむる | 道長 |
1928 | かすならぬ いのちはなにか をしからむ のりとくほとを しのふはかりそ | 斉信 |
1929 | むらさきの くものはやしを みわたせは のりにあふちの はなさきにけり | 肥後(京極前関白家) |
1930 | たにかはの なかれしきよく すみぬれは くまなきつきの かけもうかひぬ | 肥後(京極前関白家) |
1931 | ねかはくは しはしやみちに やすらひて かかけやせまし のりのともしひ | 慈円 |
1932 | とくみのり きくのしらつゆ よるはおきて つとめてきえむ ことをしそおもふ | 慈円 |
1933 | こくらくへ またわかこころ ゆきつかす ひつしのあゆみ しはしととまれ | 慈円 |
1934 | わかこころ なほはれやらぬ あききりに ほのかにみゆる ありあけのつき | 公胤 |
1935 | おくやまに ひとりうきよは さとりにき つねなきいろを かせになかめて | 良経(九条兼実男) |
1936 | いろにのみ そめしこころの くやしきは むなしととける のりのうれしさ | 小侍従(太皇太后宮) |
1937 | むらさきの くもちにさそふ ことのねに うきよをはらふ みねのまつかせ | 寂蓮 |
1938 | これやこの うきよのほかの はるならむ はなのとほその あけほののそら | 寂蓮 |
1939 | はるあきも かきらぬはなに おくつゆは おくれさきたつ うらみやはある | 寂蓮 |
1940 | たちかへり くるしきうみに おくあみも ふかきえにこそ こころひくらめ | 寂蓮 |
1941 | いつくにも わかのりならぬ のりやあると そらふくかせに とへとこたへぬ | 慈円 |
1942 | おもふなよ うきよのなかを いてはてて やとるおくにも やとはありけり | 慈円 |
1943 | わしのやま けふきくのりの みちならて かへらぬやとに ゆくひとそなき | 慈円 |
1944 | おしなへて むなしきそらと おもひしに ふちさきぬれは むらさきのくも | 慈円 |
1945 | おしなへて うきみはさこそ なるみかた みちひるしほの かはるのみかは | 崇徳院 |
1946 | あさひさす みねのつつきは めくめとも またしもふかし たにのかけくさ | 崇徳院 |
1947 | そこきよく こころのみつを すまさすは いかかさとりの はちすをもみむ | 兼実 |
1948 | さらすとて いくよもあらし いさやさは のりにかへつる いのちとおもはむ | 経家(六条重家男) |
1949 | ふかきよの まとうつあめに おとせぬは うきよをのきの しのふなりけり | 寂蓮 |
1950 | いにしへの しかなくのへの いほりにも こころのつきは くもらさりけむ | 慈円 |
1951 | みちのへの ほたるはかりを しるへにて ひとりそいつる ゆふやみのそら | 寂然 |
1952 | くもはれて むなしきそらに すみなから うきよのなかを めくるつきかな | 寂然 |
1953 | ふくかせに はなたちはなや にほふらむ むかしおほゆる けふのにはかな | 寂然 |
1954 | やみふかき このもとことに ちきりおきて あさたつきりの あとのつゆけさ | 寂然 |
1955 | けふすきぬ いのちもしかと おとろかす いりあひのかねの こゑそかなしき | 寂然 |
1956 | くさふかき かりはのをのを たちいてて ともまとはせる しかそなくなる | 家基(藤原家光男) |
1957 | そむかすは いつれのよにか めくりあひて おもひけりとも ひとにしられむ | 寂然 |
1958 | あひみても みねにわかるる しらくもの かかるこのよの いとはしきかな | 季広 |
1959 | おとにきく きみかりいつか いきのまつ まつらむものを こころつくしに | 寂然 |
1960 | わかれにし そのおもかけの こひしきに ゆめにもみえよ やまのはのつき | 寂然 |
1961 | わたつうみの ふかきにしつむ いさりせて たもつかひある のりをもとめよ | 寂然 |
1962 | うきくさの ひとはなりとも いそかくれ おもひなかけそ おきつしらなみ | 寂然 |
1963 | さらぬたに おもきかうへの さよころも わかつまならぬ つまなかさねそ | 寂然 |
1964 | はなのもと つゆのなさけは ほともあらし ゑひなすすめそ はるのやまかせ | 寂然 |
1965 | うきもなほ むかしのゆゑと おもはすは いかにこのよを うらみはてまし | 讃岐(二条院) |
1966 | わたすへき かすもかきらぬ はしはしら いかにたてける ちかひなるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1967 | いまそこれ いりひをみても おもひこし みたのみくにの ゆふくれのそら | 俊成(藤原俊忠男) |
1968 | いにしへの をのへのかねに にたるかな きしうつなみの あかつきのこゑ | 俊成(藤原俊忠男) |
1969 | しつかなる あかつきことに みわたせは またふかきよの ゆめそかなしき | 式子内親王 |
1970 | あふことを いつくにてとか ちきるへき うきみのゆかむ かたをしらねは | 選子内親王 |
1971 | たまかけし ころものうらを かへしてそ おろかなりける こころをはしる | 源信 |
1972 | ゆめやゆめ うつつやゆめと わかぬかな いかなるよにか さめむとすらむ | 赤染衛門 |
1973 | つねよりも けふのけふりの たよりにや にしをはるかに おもひやるらむ | 相模 |
1974 | けふはいとと なみたにくれぬ にしのやま おもひいりひの かけをなかめて | 伊勢大輔 |
1975 | にしへゆく しるへとおもふ つきかけの そらたのめこそ かひなかりけれ | 堀河(待賢門院) |
1976 | たちいらて くもまをわけし つきかけは またぬけしきや そらにみえけむ | 西行 |
1977 | むかしみし つきのひかりを しるへにて こよひやきみか にしへゆくらむ | 瞻西 |
1978 | やみはれて こころのそらに すむつきは にしのやまへや ちかくなるらむ | 西行 |