「新続古今和歌集」一覧
2140件
1 | はるきぬと いふよりゆきの ふるとしを よもにへたてて たつかすみかな | 雅縁 |
2 | しかのうらや よせてかへらぬ なみのまに こほりうちとけ はるはきにけり | 後小松院 |
3 | いつしかと きのふのそらに かはれるは かすみややかて はるをしるらむ | 義教 |
4 | はるやまつ なみよりさきに たちぬらむ かすみそこゆる すゑのまつやま | 通成 |
5 | かすかのに けふもみゆきの ふりしくは くもちにはるや またこさるらむ | 深養父 |
6 | はるはなほ あさまのたけに そらさえて くもるけふりは ゆきけなりけり | 良経(九条兼実男) |
7 | はるかすみ たつもけふりの いろなれは なほときしらぬ ふしのしはやま | 雅家 |
8 | みかさやま みねもはるかに かすむなり かすかのさとの はるのあけほの | 義満 |
9 | まさかきの はるのみとりの いろなれや かすみそにほふ あまのかくやま | 後崇光院 |
10 | ふみわけし ゆきまのくさも それなから かすむのはらの まつのむらたち | 実氏 |
11 | ひとしほも またそめあへぬ かたさこの まつのみとりは かすみなりけり | 内経 |
12 | はるきては ひともとふへき みよしのに ゆきよりふかき あさかすみかな | 隆信 |
13 | みわたせは みねのはるひに ゆききえて あしたのはらに かすみたなひく | 匡房 |
14 | いつのまに たちかさぬらむ さほひめの かすみのころも ころもへすして | 道嗣 |
15 | ささなみも はるにかへりて しかのうらや みつうみとほく たつかすみかな | 尊氏 |
16 | まつはらの みえしやいつこ かすみたつ みほのおきつの はるのあけほの | 経賢 |
17 | あゆちかた しほひのうらを みわたせは はるのかすみそ またたちにける | 俊恵 |
18 | あしのやの なたのしほやに たつけふり さとわくはるの ゆふかすみかな | 忠定(藤原兼宗男) |
19 | ゆらのとや かすみをわけて こくふねの いととあとなき なみのうへかな | 公宗母 |
20 | しなのなる あさまのたけの をちこちに ひともとかめぬ かすみたつらし | 基家 |
21 | かすむより みとりもふかし まこもおふる みつのみまきの はるのかはなみ | 雅経 |
22 | はしひめの あさけのそてや まかふらむ かすみもしろき うちのかはなみ | 家隆 |
23 | なにはつの あしのやへかき あれぬれと かすみそはるは へたてなりける | 経継 |
24 | なにはかた しほやくけふり たちそひて かすみもなひく うらかせそふく | 雅世 |
25 | もしほやく けふりはよその うらかせに はるとやそらの なほかすむらむ | 重経 |
26 | いつしかと かすみにけりな しほかまの うらゆくふねの みえまかふまて | 俊頼(源経信男) |
27 | みちとほき いくののかすみ いくへとも ほとこそしらね はるのゆふくれ | 信実 |
28 | やとからむ すゑののさとの しるへたに かすみにまよふ ゆふけふりかな | 範宗 |
29 | はるさむみ なほふきあけの はまかせに かすみもはてぬ きちのとほやま | 雅縁 |
30 | あかしかた せとのしほかせ ふきにけり かすみもはてぬ おきつしらなみ | 義詮 |
31 | わかのうらの あしへのたつの こゑはかり なみにきこえて たつかすみかな | 行忠(藤原) |
32 | はるかすみ わけゆくままに をのへなる まつのみとりそ いろかはりぬる | 讃岐(二条院) |
33 | すかはらや ふしみのくれの おもかけに いつくのやまも たつかすみかな | 頓阿 |
34 | うちきらし ふれともゆきの かつきえて みやこののへは はるめきにけり | 実雄 |
35 | ふりつみし こそのしらゆき むらきえて あらはれそむる のへのかよひち | 俊光 |
36 | まれにたに ひともとひこぬ すきのいほの のきはにのこる はるのあはゆき | 後鳥羽院 |
37 | はるきても こかけつれなき ゆきのいろに ましてみやまの まつそしらるる | 覚助法親王 |
38 | おのつから のこるかうへに ふりそひて よそにつもらぬ はるのあはゆき | 賢俊 |
39 | ゆききゆる まかきのたけの はるかせに こほりておつる にはのあさつゆ | 経家(藤原定頼男) |
40 | あすかかは いはなみたかし かつらきの やまのしらゆき いまやけぬらし | 家隆 |
41 | よしのかは こほりとけゆく はるかせに あらはれそむる なみのはつはな | 御匣(式乾門院) |
42 | あさなあさな かすみもふかき たにのとに こゑうつもれぬ はるのうくひす | 四条(安嘉門院) |
43 | たにをいてて たかきにうつる うくひすは はなさくやとの あるしなりけり | 俊成(藤原俊忠男) |
44 | のとかなる ひかけとともに のきちかき こすゑにうつる うくひすのこゑ | 義教 |
45 | いつしかと さきにけらしな うくひすや えたにこもれる はなさそふらむ | 公能 |
46 | はるきても うめのたちえは かせさえて はなまちとほに うくひすそなく | 為明 |
47 | はるはまた あさかせさむき たにのとに ひかけまちえて うくひすそなく | 尭尋 |
48 | ふたはより ひきこそうゑめ みるひとの おいせぬものと まつをきくにも | 人麿 |
49 | ことしおひの ふたはのまつを ひきうゑて けふよりのちの ちよをかそへむ | 顕仲(藤原資仲男) |
50 | かそふれは まつよりとしそ おいにける われをたつねて ひとはひかなむ | 文範 |
51 | うつもるる わかなはそれと みえすとも のへにいててや ゆきままたまし | 実重(三条公親男) |
52 | いつまてか ふりにしゆきの きえやらて のへのわかなも したもえにせむ | 顕朝 |
53 | はるくれは ちよのふるみち ふみわけて たれせりかはの わかなつむらむ | 家隆 |
54 | たれかまた やまたのはらの ゆきわけて かみよのあとに わかなつむらむ | 基家 |
55 | かすみしく のへのみとりに しろたへの そてをかさねて わかなつむなり | 公賢 |
56 | ゆきもきえ こほりもとけて かはかみの こせのはるのは わかなつむなり | 為重 |
57 | うちわたす をちかたひとも はるとてや よとののさはに わかなつむらむ | 経嗣 |
58 | はつかなる のへのみとりに みえてけり はるのひかすを つまぬわかなは | 雅世 |
59 | をやまたの なはしろみつも せかぬまに まつおりたちて わかなをそつむ | 為藤 |
60 | かすみしく ひかたにあさる なにはめも こころあてにや いそなつむらむ | 守覚法親王 |
61 | むさしのの ゆかりのいろも とひわひぬ みなからかすむ はるのわかくさ | 定家 |
62 | こすゑには おそきみとりを まつみせて はるのけしきの もりのしたくさ | 重資 |
63 | もえいてて けふりみしかき はつくさの またうらわかき のへのいろかな | 雅孝 |
64 | はるきても つもりしゆきは きえやらて むらむらあをし のへのわかくさ | 後鳥羽院 |
65 | はるののに ゆきけのみつは なかるれと つれなくもゆる したわらひかな | 崇徳院 |
66 | やまかつの ときそともなき すさひにも をりはわすれぬ はるのさわらひ | 栄仁親王 |
67 | きえのこる かきねよりはや さきにけり ゆきにかさなる うめのはつはな | 尊胤法親王 |
68 | またきより かつちるはなと みゆるかな うめさくやとの はるのあはゆき | 実兼 |
69 | うめのはな それとはみえぬ やまもとの かすみそかをる はるのゆふくれ | 良基(二条道平男) |
70 | おのつから かせのたよりに とふひとも ありとやここに にほふうめかか | 満済 |
71 | たかさとを かせにうかれて たよりにも あらぬそてまて にほふうめかか | 雅有 |
72 | をちこちの にほひはいろに しられけり まきのとすくる うめのしたかせ | 定家 |
73 | くれなゐに にほへるいもか そてかけて をりまかへたる うめのはつはな | 行家(藤原知家男) |
74 | まつひとの しるへともなれ いたつらに うめかかさそふ のきのはるかせ | 公豊 |
75 | うめかかも たかたもとをか ちきるらむ おなしのきはの はるのゆふかせ | 土御門院 |
76 | いろもかも たくひはあらし さきみちて のきはにあまる うめのしたかせ | 後花園院 |
77 | さそひゆく かせのつてにも とはれねは にほふかひなき やとのうめかえ | 瓊子内親王 |
78 | とはてこそ みるもかひあれ うきみをも よそにへたてぬ うめのにほひは | 瑒子内親王 |
79 | たかさとを わきてたつねむ うめのはな さなからにほふ よものはるかせ | 為経(甘露寺藤原資経男) |
80 | なかむれは みぬいにしへの はるまても おもかけかをる やとのうめかえ | 式子内親王 |
81 | そてにまつ にほひそうつる あしかきの まちかきのきの うめのしたかせ | 尊氏 |
82 | かせにのみ まかせてはみし うめのはな をりてたもとに かをもうつさむ | 重之 |
83 | よしやたた たをらてすきむ うめのはな たちよるそても うつるにほひに | 為敦 |
84 | あまひとの しほくむそても にほふらし なにはのはるの うめのしたかせ | 邦省親王 |
85 | あれはてし なにはのさとの はるかせに いまはたおなし うめかかそする | 慶運 |
86 | しのふくさ おふるいたまは ありなから もるとしもなき はるさめのそら | 為定(御子左二条為道男) |
87 | はるさめに のきのいとみつ なかきひの かたふくほとも みえぬそらかな | 尭仁法親王 |
88 | はなとみて けふやぬれなむ はるさめに ゆけとかけなき みねのしらくも | 道助法親王 |
89 | さほやまの みねにかすみは たなひきて かはそひやなき はるめきにけり | 家良 |
90 | はるかせの ふかぬたえまも しらつゆの むすへはなひく あをやきのいと | 経顕(藤原定資男) |
91 | ぬきとめぬ たまかとそみる はるかせの つゆふきみたす あをやきのいと | 小宰相(徽安門院) |
92 | たつたかは みむろのきしの ふるやなき いかにのこりて はるをしるらむ | 家長(源時長男) |
93 | かすむよの ひかりをはなと にほふにそ つきのかつらの はるもしらるる | 為明 |
94 | はるのきる ころものぬきは しらねとも もるかけうすき よはのつきかな | 為遠 |
95 | たましまや かはせのなみの おとはして かすみにうかふ はるのつきかけ | 順徳院 |
96 | なかむれは こぬひとまたる はるのよの つきこそうたて そらたのめなれ | 実雄 |
97 | なにはかた あしのわかはに かせこえて かすみにしつむ なみのうへのつき | 進子内親王 |
98 | おほろなる ひかりはつきの とかならて かすみにかこつ はるのよのそら | 有忠 |
99 | わかそてに おいのなみたの ありとたに しらせぬつきの なとかすむらむ | 公雄 |
100 | いととなほ はれまもみえす はるのつき くもりそへたる おいのなみたに | 長舜 |
101 | ありあけの つきにわかれて ゆくかりは かへるさつらき ねをやなくらむ | 冬平 |
102 | とほさかる くもゐのかりの かけもみす かすみてかへる しかのうらなみ | 為家 |
103 | なこりあれや かすみのそてに しほなれて かへるいせをの あまつかりかね | 雅縁 |
104 | はるはまた わかすむかたに かへるなり あしやのあまの ころもかりかね | 後亀山院 |
105 | いひしらぬ なこりをひとに したはれて いまはとかへる はるのかりかね | 覚助法親王 |
106 | みやこには こころもとめす はるのかり こしちのやまの なこそつらけれ | 為氏 |
107 | ふるさとに まちみるひとも たとるらし かすみてうすき かりのたまつさ | 良基(二条道平男) |
108 | さよふくる まくらのうへに こゑたてて くもゐのかりの いつちゆくらむ | 経任(中御門藤原為経男) |
109 | あくかるる われにをしへよ はるのかり はなにもめてす かへるこころを | 覚誉法親王 |
110 | さきやらぬ はなをまつちの やまのはに ひとたのめなる はるのしらくも | 兼良 |
111 | さきてちる つらさはかねて ならひにき たかためなほも はなをまつらむ | 近衛(今出河院) |
112 | ゆくすゑは はなをかきりの やまちとも みえぬをのへの やへのしらくも | 忠光 |
113 | あやなくや くもにまかへむ みすもあらす みもせぬはなに やまちくらして | 公保 |
114 | さきそむる ひともとゆゑに やまのはの くもをみなから はなかとそみる | 義運 |
115 | はなのいろを それかとそおもふ をとめこか そてふるやまの はるのあけほの | 良経(九条兼実男) |
116 | ことしより ちらぬならひを しらせはや かせのとかなる はるのはつはな | 成茂 |
117 | ことしより さらにちきりて わかやとの はなにまつへき よろつよのはる | 義教 |
118 | くももきえ かすみもはれて あしひきの やまのさくらの いろそまかはぬ | 後花園院 |
119 | よこくもは みねにわかれて さくはなの いろもまかはぬ あけほののそら | 道嗣 |
120 | さきにけり けふはやまへの さくらはな かすみたたすは いそきみてまし | 深養父 |
121 | おもひたつ くものよそめの いつはりは あるようれしき やまさくらかな | 満元 |
122 | はなみむと おもひたつより かよひきて こころににほふ はるのやまかせ | 季能 |
123 | をちこちも おなしさかりに なりにけり まついつかたの はなをとはまし | 基嗣 |
124 | はるもいまは はなはさくらの ときそとや くもよりにほふ かつらきのやま | 俊成女 |
125 | きのふまて おもかけにみし しらくもの けふはいろそふ やまさくらかな | 実音 |
126 | きのふまて のこりしままに しからきの とやまのはなを ゆきかとそみる | 経賢 |
127 | たかさこの をのへのはなの よそめこそ きえあへぬまつの ゆきとみえけれ | 永助法親王 |
128 | みとりなる とやまのまつの たえまより あらはれてさく はなさくらかな | 家良 |
129 | このねぬる あさけのやまの まつかせは かすみをわけて はなのかそする | 定家 |
130 | あふみちや まののはまへに こまとめて ひらのたかねに はなをみるかな | 頼政 |
131 | さくらさく このしたかけの やとなれは ほかにたつねぬ みよしののさと | 後円融院 |
132 | よしのやま たきのしらいと くりかへし みてしもあかぬ はなのいろかな | 資教 |
133 | みよしのは いつくもはなの かけなれは わきてしをりの あともたつねす | 善成 |
134 | くれてこそ おとろかれぬれ とほしとも おもはてきつる はなのしたみち | 杲守 |
135 | みわたせは はなよりほかの くももなし なきたるあさの みよしののやま | 宗尊親王 |
136 | かつらきの はなのかおくる はるかせに よそなるくもも なほにほふらし | 宗宣(北条宣時男) |
137 | はなはなほ みねよりおくに さきそめて くもにあとなき しをりをそする | 後小松院 |
138 | へたてつる かすみはよそに なりはてて はなにこもれる しかのやまさと | 宮内卿(後鳥羽院) |
139 | みなひとの はなをたつねて いてぬれは はるのやともる うくひすのこゑ | 惟明親王 |
140 | わするなよ おなしこかけに たつねきて なれぬるけふの はなのまとゐを | 守覚法親王 |
141 | おほつかな はるはこころの はなにのみ いつれのとしか うかれそめけむ | 西行 |
142 | しろたへの たかねのさくら さきしより かすみもやらぬ つきのかけかな | 頓阿 |
143 | あたにやは ふもとのいほに なかむへき はなよりいつる みねのつきかけ | 通光 |
144 | さくらかり かへるやまちは くれはてて さらにやはなを つきにみるらむ | 法守法親王 |
145 | みやこひと そこともいはす うちむれて はなにやとかる しかのやまこえ | 後鳥羽院 |
146 | ききすなく おおはらやまの さくらはな かりにはあらて しはしみしかな | 実方 |
147 | いへちをは いそかぬものを ねにかへる ほとをもはなの わすれましかは | 信実 |
148 | かへるへき いへちおもはて やまさくら ことしはやとの のきはにそみる | 覚誉法親王 |
149 | はなさかり こすゑにかかる しらくもの うつろふかたや みよしののやま | 具通 |
150 | かさしつつ こころははなに なりぬれと おいのすかたの かくれやはする | 道意(二条良基男) |
151 | いろもかも なほみにしむと しらせはや おなしむかしの はなならすとも | 忠定(藤原兼宗男) |
152 | たちなれし かたならねとも わすれぬは よそにみはしの はなのおもかけ | 公賢 |
153 | ひとはなと とはてすくらむ かせにこそ しられしとおもふ やとのさくらを | 為秀 |
154 | よをいとふ こころならては すみぬへし はなのさかりの みよしののおく | 小宰相(徽安門院) |
155 | はるはなほ さきちるはなの なかにおつる よしののたきも なみやそふらむ | 義将 |
156 | やまさくら うつろふころは つゆなから こほれてにほふ はなのしたかせ | 実氏 |
157 | いろはくも にほひはかせに なりはてて おのれともなき やまさくらかな | 雅経 |
158 | をしとおもふ こころはかせの たよりにも あらぬものとや はなのちるらむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
159 | たつねこし しるへもあたに おもはねと さそふそつらき はなのしたかせ | 雅有 |
160 | たつねつる はなのこすゑを なかむれは うつろふくもに はるのやまかせ | 寂蓮 |
161 | やまたかみ ゆふゐるくもの あともなし ふきこすかせに はなやちるらむ | 実雅 |
162 | ゆきとのみ さそふもおなし かはかせに こほりてとまれ はなのしらなみ | 雅縁 |
163 | やまかせの ふきぬるからに おとはかは せきいれぬはなも たきのしらなみ | 雅経 |
164 | ありてうき はてをもしらす したふかな ちるはならひの はなとみなから | 実継 |
165 | したふそよ ありてはてうき ことわりも あたなるはなの いろにわすれて | 深守法親王 |
166 | うくひすの なきちらすらむ はるのはな いつしかきみと たをりかささむ | 家持 |
167 | なきとむる はなかとそおもふ うくひすの かへるふるすの たにのしらくも | 家隆 |
168 | とりはいま ねくらをしむる こすゑにも はなはとまらぬ はるかせそふく | 尭孝 |
169 | をしみにと きつるかひなく さくらはな みれはかつこそ ちりまさりけれ | 貫之 |
170 | ちるはなの をしさをしはし しらせはや こころかへせよ はるのやまかせ | 俊成(藤原俊忠男) |
171 | あたにちる さくらをかせの やとりにて ゆきてうらみぬ このもとそなき | 教雅 |
172 | かさせとも かくれぬおいに いまはたた ちりかひくもる はなをたのまむ | 経氏 |
173 | やそちまて わかみよにふる うらみさへ つもりにけりな はなのしらゆき | 浄弁 |
174 | いととうき みのしろころも うらみても かひなくつもる はなのしらゆき | 実遠(藤原季雄男) |
175 | このしたの にはのかよひち ふきわけて かせにあとある はなのしらゆき | 兼定 |
176 | よをかさね なれこしくもの したふしに いまはかたしく はなのしらゆき | 義重(斯波義将男) |
177 | はなにこし やまわけころも かせふけは かへるたもとそ ゆきになりぬる | 尊道法親王 |
178 | ゆきとのみ ふるからをのの さくらはな なほこのもとは わすれさりけり | 後嵯峨院 |
179 | めくりあふ けふはやよひの みかはみつ なになかれたる はなのさかつき | 家賢 |
180 | はるこまの のさはになるる けしきにて あしのわかはの ほとそしらるる | 俊成(藤原俊忠男) |
181 | かたをかの かすみもふかき こかくれに あさひまつまの ひはりなくなり | 良経(九条兼実男) |
182 | かすみつる そらこそあらめ くさのはら おちてもみえぬ ゆふひはりかな | 為尹 |
183 | さそはれぬ ともそとみてや ゆふひはり のさはのみつの かけにおつらむ | 雅縁 |
184 | まきもくの ひはらのやまの よふことり はなのよすかに きくひとそなき | 土御門院 |
185 | なけやなけ しのふのもりの よふことり つひにとまらむ はるならすとも | 順徳院 |
186 | からころも すそののききす うらむなり つまもこもらぬ をきのやけはら | 良経(九条兼実男) |
187 | むらさきの ねはふよこのの つほすみれ まそてにつまむ いろもむつまし | 俊成(藤原俊忠男) |
188 | たつたかは いはねのつつし かけみえて なほみつくくる はるのくれなゐ | 定家 |
189 | はるもはや すゑつむはなの くれなゐに さきてしらるる いはつつしかな | 雲雅 |
190 | くちなしの いはてのさとは やまふきの はなさくよりや なつけそめけむ | 後二条院 |
191 | いはておもふ こころのいろか いもせやま なかなるかはの やまふきのはな | 雅永 |
192 | おもふこと いはぬいろなる やまふきや ひとめつつみの かけにさくらむ | 尊胤法親王 |
193 | たまかはの なみにをらるる やまふきを われにもゆるせ ゐてのさとひと | 尊円法親王 |
194 | をしとたに いはぬいろとて やまふきの はなちるさとの はるそくれゆく | 尊氏 |
195 | さきかかる まつはのこらす うつもれて おのれこたかき はるのふちなみ | 重光(藤原資康男) |
196 | むらさきの くもかかりつる ふちをしも ふるさととなす ひとのこころよ | 広平親王 |
197 | きみませは くもゐににほふ ふちのはな ここにたちまひ をらむとそおもふ | 定方 |
198 | ことしはや わかむらさきに さきそめて みよにこえたる きたのふちなみ | 良基(二条道平男) |
199 | とかへりの はなのゆかりや むらさきの にはにいろそふ まつのふちなみ | 義教 |
200 | ふくからに まつのふちなみ なひくなり はるをはかせに まかせさらなむ | 国冬 |
201 | はるふかき いろにそうつる むらさきの ふちさくやとの いけのささなみ | 伏見院 |
202 | こころある あまやうゑけむ はることに ふちさきかかる まつかうらしま | 後嵯峨院 |
203 | このころは たこのふちなみ なみかけて ゆくてにかさす そてやぬれなむ | 土御門院 |
204 | ゆくはるの わすれかたみに すみのえの きしのふちなみ いまやさくらむ | 御匣(式乾門院) |
205 | むらさきの ねすりのころも はるくれて そてのなこりに かかるふちなみ | 雅縁 |
206 | これもまた かみやうゑけむ すみよしの まつにかかれる きしのふちなみ | 禅守 |
207 | おほかたの はるのわかれの つらさをも おもへははなの なこりなりけり | 冬平 |
208 | はなちると なにうらみけむ ふくかせの さそはぬはるも とまるものかは | 雅家 |
209 | きてみむと いひしはかりに うつろひぬ やよひのはなの はるのくれかた | 為氏 |
210 | はつせやま はなにはるかせ ふきはてて くもなきみねに ありあけのつき | 良経(九条兼実男) |
211 | はなもみな ちりにしやとの ふかみとり をしまぬいろを はるさめそふる | 順徳院 |
212 | あすよりは おのかなにたに ととまらし しはしなはれそ はるさめのそら | 為家 |
213 | いまはとて こゆらむかたも しらなみの あとなきはるの すゑのまつやま | 公宗母 |
214 | いまはまた はるのなかめも すゑのまつ なこりありあけの やまのはのつき | 知家 |
215 | やよひやま はるのなこりも ほのかなり なにそはありて ありあけのつき | 雅世 |
216 | くれはつる はるはいつくに かへるやま ありとしきかは ゆきてたつねむ | 実冬/実冬女 |
217 | くれぬとも かすみはのこれ しはのとの しはしもはるの わすれかたみに | 後鳥羽院 |
218 | のこりなき はるもなこりや したふらむ おのかかすみの そてのわかれに | 万秋門院 |
219 | けふくれぬ あすはなつみの かはよとに はるせきとむる やまかけもなし | 実遠(藤原季雄男) |
220 | よしさらは あたなるいろを なにたてて けさこそかへめ はなそめのそて | 後小松院 |
221 | けさよりは たもともうすく たちかへて はなのかとほき なつころもかな | 後花園院 |
222 | ふくかせも なほやいとはむ はなのかの うすきたもとに のこらましかは | 経嗣 |
223 | なつころも けふたちかふる そてもなほ きつつなれにし はなのかそする | 宗重 |
224 | さきぬやと いまこそとはめ やまさくら はるはつれなく みえしこすゑを | 頓阿 |
225 | それとたに しらせてしけれ やまさくら はなこそなつの こすゑなりとも | 義教 |
226 | しけるとも いまさらみえす やましろの ときはのもりの おなしみとりに | 経賢 |
227 | つきてふる ゆきかとそみる やまさくら ちりのまかひに さけるうのはな | 師嗣 |
228 | あさほらけ よしののさとの うのはなも なほありあけの つきかとそみる | 内経 |
229 | ちはやふる かものみつかき としをへて いくよのけふに あふひなるらむ | 定家 |
230 | いつしかと やまほとときす まつことや はるをわするる はしめなるらむ | 惟明親王 |
231 | たつねても いかにまちみむ ほとときす はつねつれなき みわのやまもと | 宗尊親王 |
232 | ほとときす まつよひすきて つれなくは あくるくもゐに ひとこゑもかな | 頼元 |
233 | ほとときす まつにつけてそ なつのよを ねぬにあけぬと おもひしりぬる | 通光 |
234 | ほとときす たれにつけてか つれなしと いはせのもりの むらさめのそら | 後二条院 |
235 | つれなさを かつはつらしと うらみても なほまたれける ほとときすかな | 隆博 |
236 | おきゐつつ いくよつもるを かきりにて やまほとときす つれなかるらむ | 大納言典侍(後嵯峨院) |
237 | たかさとに まつさそはれて ほとときす われにつれなき はつねなくらむ | 四条(安嘉門院) |
238 | いまはまた ききそめしより ほとときす あかぬこころに またぬひもなし | 為世(御子左藤原為氏男) |
239 | ほとときす ききつともなき はつねこそ ゆめにまさらぬ うつつなりけれ | 為兼 |
240 | たつねゆく やまほとときす いへつとに かたるはかりの ひとこゑもかな | 定為 |
241 | なけやなけ やまほとときす はるくれて ものさひしかる ひとのきかくに | 長能 |
242 | けふこすは みわのひはらの ほとときす ゆくてのこゑを たれかきかまし | 定家 |
243 | あくかれし ひとのこころも ほとときす さとなれそむる よはのひとこゑ | 寂蓮 |
244 | つつみえぬ なみたなりけり ほとときす こゑをしのふの もりのしたつゆ | 冬平 |
245 | きかはやと おもひしよりも ほとときす あかぬはつねは くるしかりけり | 幸清 |
246 | さかきとる うつききぬらし ほとときす そのかみやまに ゆふかけてなく | 後崇光院 |
247 | ほとときす さつきまつまの ねをそへて ものおもふやとの ねさめにそきく | 慶融 |
248 | ほとときす たたひとこゑも ほのかにて くもまのつきに なほまたれつつ | 性助法親王 |
249 | さのみやと おもひしかとも ほとときす きくにつけてそ ねはまたれける | 義詮 |
250 | ほとときす よそにすきゆく ひとこゑの またおとつれぬ ほとそつれなき | 義詮 |
251 | きけはなほ あかぬこころに ひとこゑの のちもまたるる ほとときすかな | 邦省親王 |
252 | またぬよの とりのはつねは さたかにて ねさめにたとる ほとときすかな | 尭尋 |
253 | ほとときす あかてすきゆく ありあけに いかなるとりの やこゑなくらむ | 実忠 |
254 | ほとときす しのふのみたれ かきりありて なくやさつきの ころもてのもり | 国冬 |
255 | なきすてて かけたにとめぬ やまのゐの あかてすきぬる ほとときすかな | 雲雅 |
256 | つきもいま みやまいつらし ほとときす ふけゆくそらに こゑのきこゆる | 後花園院 |
257 | たへてまつ ひとのためとや ほとときす あくるくもまの つきになくらむ | 実雅 |
258 | ほとときす はつかになきて すきにけり つきぬなこりの ありあけのそら | 静仁法親王 |
259 | すきぬるか やまほとときす ひとこゑの おほつかなさも はれぬくもゐに | 雅縁 |
260 | まつとしも いまはなけれと ほとときす なれしこころの そらにもあるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
261 | こころあらは ねをそへてなけ ほとときす あやめをむすふ よはのまくらに | 少将(邦省親王家) |
262 | めくりあふ おなしさつきの ほとときす ききふるしても なほそあかれぬ | 覚助法親王 |
263 | いかてかく おもふこころを ほとときす よふかくなきて きかせやはせぬ | 村上天皇 |
264 | ほとときす いつくにとまる こころもて やとのこすゑを なきてすくらむ | 読人不知 |
265 | さらてたに いそくやまちの ほとときす みやこのかたの くもになくなり | 下野(後鳥羽院) |
266 | おのれのみ しはしかたらへ ほとときす さやのなかやま あふひともなし | 少将(藻壁門院) |
267 | たひころも いくののつゆも ほすはかり やまほとときす なみたからなむ | 家俊 |
268 | かたしきの さよのまくらに かよふなり あやめにかをる のきのしたかせ | 実房 |
269 | あやめくさ なかきちきりを ねにそへて ちよのさつきと いはふけふかな | 定家 |
270 | ゆふたちの なこりのくもを ふくかせに とはたのさなへ すゑさわくなり | 良経(九条兼実男) |
271 | とききぬと やまたのたこの あさころも たたぬひもなく とるさなへかな | 満済 |
272 | なつきては こすゑはかりの みとりかは おなしときはの もりのしたくさ | 為秀 |
273 | なつくさの みとりもふかし いはしろの のへのしたつゆ むすふはかりに | 雅経 |
274 | いはしろの のへのなつくさ しけれたた たひねのまくら つゆむすふまて | 範宗 |
275 | みゆきせし ちよのふるみち あととちて たたいたつらに しけるなつくさ | 後小松院 |
276 | たひひとの ともよひかはす こゑすなり なつののくさに みちまとふらし | 隆信 |
277 | うちなひく のしまかさきの なつくさに ゆふなみかけて うらかせそふく | 宗尊親王 |
278 | しけさのみ ひことにまさる なつくさの かりそめにたに とふひともなし | 躬恒 |
279 | うたたねの とこよをかけて にほふなり ゆめのまくらの のきのたちはな | 為明 |
280 | ときしあれは しつのをたまき くるるよに むかしをいまと にほふたちはな | 雅永 |
281 | ことのはの はなたちはなに しのふそよ よよのむかしの かせのにほひを | 雅世 |
282 | たちよりて なかなかいまや うつさまし そてふれさりし のきのたちはな | 為遠 |
283 | さみたれは まやののきはも くちぬへし さこそうきたの もりのしめなは | 順徳院 |
284 | さみたれは もとのみきはも みつこえて なみにそさわく ゐてのうきくさ | 雅経 |
285 | なみこゆる みつのうへのの さみたれに なひくみくさや しののをすすき | 実継 |
286 | さみたれに みきはまさりて ひろせかは なにこそたてれ みつのしらなみ | 頓阿 |
287 | おちやまぬ のきのしつくに さみたれの はるるたえまも ふるかとそおもふ | 春日(進子内親王家) |
288 | はれすのみ かさなるくもは そらとちて おもひつきせぬ さみたれのころ | 定宗(藤原家親男) |
289 | はれぬへき そらかとみるも さみたれに かさなるくもの たえまなりけり | 公賢 |
290 | はれやらぬ くものやへやま みねとちて あくるもくらき さみたれのそら | 為家 |
291 | さらしえぬ いろかとそみる さみたれに にこりておつる ぬのひきのたき | 祐殖 |
292 | やまかはの みかさまさりて ひさかたの そらにもふかき さみたれのくも | 義教 |
293 | さみたれに よとのかはきし みつこえて あらぬわたりに ふねよはふらし | 定親 |
294 | かたしきの そてほしわひて さみたれの はれぬひかすや うちのはしひめ | 公冬 |
295 | くものゐる かつらきやまの さみたれに ききのしつくも まなくときなし | 雅縁 |
296 | ささわくる たもともいとと ほしやらす ゐなののはらの さみたれのころ | 雅顕 |
297 | ともしする はやまかみねの かりころも あきにもまさる そてのつゆかな | 家隆 |
298 | かたふけは やまかけくらき おほゐかは つきにもくたす うふねなりけり | 後嵯峨院 |
299 | いまさらに いやしきみをや しつのめか おもひくゆらむ かやりひのかけ | 尭仁法親王 |
300 | かやりひの つれなきころの したもえを こころよわくも ゆくほたるかな | 家隆 |
301 | やまかけの くらきかたより みえそめて なつみのかはに とふほたるかな | 公泰 |
302 | おもひせく こころしられて たきつせの なかなるよとに とふほたるかな | 光正 |
303 | とふほたる いはもるみつに やとるよは おもひやいとと わきかへるらむ | 基家 |
304 | いけみつの いひいてかたき おもひとや みをのみこかす ほたるなるらむ | 雅親 |
305 | ほたるとふ ほりえのなみの よることに しくてふたまの かすやそふらむ | 兼良 |
306 | あきちかき まかきのくさの つゆまても なほかすみえて ゆくほたるかな | 持之 |
307 | わかためと たたくくひなや おもふらむ ささねとあくる あまのいはとを | 教長 |
308 | くもりなき ひかりをそへて たましきの みきりにすめる なつのよのつき | 後光厳院 |
309 | いつるより くもらぬかけを みかはみつ うつすもきよき なつのよのつき | 実夏 |
310 | あけぬるか またはなさかぬ はきのとの つゆにもうつる なつのよのつき | 為重 |
311 | つきもなほ のこるみきりの あさきよめ なつさへしもを はらふとそみる | 尭孝 |
312 | やとりつる つきはのこりて みしかよの くものいつくも あくるそらかな | 尭尋 |
313 | すみのほる そらかとみれは なつのよの あくるひかりや つきにそふらむ | 尊道法親王 |
314 | ことしおひの たけのさえたの みしかよに はわけのつきも みるほとそなき | 後小松院 |
315 | なつかりの ゐなのささはら をりしきて みしかきよはの いやはねらるる | 俊成女 |
316 | ほとときす おのかさつきも すきぬとや かたらふこゑの とほさかりゆく | 満詮 |
317 | たつねみむ まほろしもかな ほとときす ゆくへもしらぬ みなつきのそら | 俊成(藤原俊忠男) |
318 | わかやとの なてしこのはな さきにけり たをりてひとめ みせむこもかな | 家持 |
319 | さきてこそ しつかかきねの かすならぬ なもあらはるれ ゆふかほのはな | 為盛 |
320 | なつのひも かたふくいけの はちすはに ゆふなみこゆる かせそすすしき | 隆源(油小路隆蔭男) |
321 | ゆふたちの くものころもは かさねても そらにすすしき かせのおとかな | 義教 |
322 | いととしく あへのいちひと さわくらし さかこえかかる ゆふたちのくも | 為明 |
323 | このさとは ふらぬもすすし かせすきて とほちにはるる ゆふたちのそら | 尊氏 |
324 | はれぬるか くもさへうすし なくせみの はつせのやまの ゆふたちのそら | 定為 |
325 | くるとあくと とけむこもなき ひむろやま いつかなかれし たにかはのみつ | 土御門院 |
326 | かきりあれは ふしのみゆきの きゆるひも さゆるひむろの やまのしたしは | 順徳院 |
327 | なにしおへは みきりにたえぬ みかはみつ きよくすすしき なかれなりけり | 良基(二条道平男) |
328 | またさかぬ はきのしたはに つゆちりて すすしくなりぬ むらさめのそら | 弁内侍(後深草院) |
329 | ひかけにそ みかさもとらむ みやきのや ぬれてすすしき つゆのこのした | 雅有 |
330 | しつかなる こころしすめは やまかけに わかみすすしき なつのゆふくれ | 後宇多院 |
331 | すすしさは なつのほかなる すみかかな やまのいはねの まつのしたみつ | 実衡女 |
332 | しはつやま ならのわかはに もるつきの かけさゆるまて よはふけにけり | 俊頼(源経信男) |
333 | なつのよの つきのかつらの したもみち かつかつあきの ひかりをそまつ | 讃岐(二条院) |
334 | かみかきの つきそすすしき なつとあきと ゆきあひのまの しもとみるまて | 善成 |
335 | ねぬるよの ゆめにもあきや かよふらむ あかつきおきの そてのうへのつゆ | 義持 |
336 | めにみえぬ あきやかよひて ゆふくれの まつにすすしき のきのしたかせ | 公雅 |
337 | よそまては しのふのもりの こかくれに かよふかあきの かせのすすしき | 雅縁 |
338 | せみのはの ころもてすすし なつみかは たちよるかたも やまかけにして | 定煕 |
339 | うつせみの なみたのつゆや むすふらむ しのたのもりの ちえのしたくさ | 範宗 |
340 | わすれては あきかとそおもふ かせわたる みねよりにしの ひくらしのこゑ | 通具 |
341 | きみかため けふのみそきに いつみかは よろつよすめと いのりつるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
342 | みそきして むすふかはなみ としふとも いくよすむへき みつのなかれそ | 定家 |
343 | さとひとは こよひこゆてふ みわかはの きよきなかれに みそきすらしも | 杲守 |
344 | みなつきの けふくれたけの よをりにそ きみかちとせの かすはそへける | 通親 |
345 | みそきかは ふけゆくなみの すすしきは あすのあきこそ まつたちぬらし | 光厳院 |
346 | たかみそき しらゆふなみの たつたかは あかつきかけて かよふあきかせ | 経通(藤原泰通男) |
347 | きのふこそ なつはくれしか あさといての ころもてさむし あきのはつかせ | 実朝 |
348 | みつくきの をかのくすはら ふきかへし ころもてうすき あきのはつかせ | 定家 |
349 | あききぬと ゆふつけとりの なくなへに けさやたつたの やまのしたかせ | 尊円法親王 |
350 | くさもきも いろつくあきの はつかせは ふきそむるより みにそしみける | 俊成(藤原俊忠男) |
351 | ふくからに みにしむかせの おとはやま せきちこえてや あきもきぬらむ | 承道法親王 |
352 | みにしめと ふきにけらしな たまもかる あさかのうらの あきのはつかせ | 伊成 |
353 | それとなく いまよりさひし くもまよふ ゆふへのそらの あきのはつかせ | 満詮 |
354 | たましきの つゆのうてなも ときにあひて ちよのはしめの あきはきにけり | 為家 |
355 | なにゆゑに きけはさひしき ものそとも ことわりしらぬ あきのはつかせ | 法守法親王 |
356 | さしもやは みにもしみける あきのたつ けしきはかりの をきのうはかせ | 民部卿(岡屋入道前摂政家) |
357 | このゆふへ かせよりあきの おとつれを をきのうははに ききそそめつる | 師良(二条良基男) |
358 | あききぬと をきのはならす かせのおとに こころおかるる つゆのうへかな | 貞世 |
359 | をかのへの ひとむらすすき ほにいてて まねくをみれは あきはきにけり | 範輔 |
360 | ふくかせに したはかつちる あをやきの かつらきやまに あきはきにけり | 通光 |
361 | かせのおとに のきはのをきの こたへすは あきのあはれを たれといはまし | 小大進(花園左大臣家) |
362 | をきにふく おとをきかすは まつかせを さひしとのみや おもひしめまし | 義教 |
363 | あききての かせのやとりは ここにのみ ありとやそよく にはのをきはら | 永助法親王 |
364 | なみたさへ ちちにくたけて かなしきは をきふくかせの あきのゆふくれ | 良覚 |
365 | うゑおきて こころつからに あきかせを ききこそわふれ にはのをきはら | 忠基(九条経教男) |
366 | あきかせに をきのはすさふ ゆふまくれ たかすみすてし やとのまかきそ | 良経(九条兼実男) |
367 | ふるさとの のきはのをきを ふくかせに みしよのつゆそ そてにこほるる | 道意(二条良基男) |
368 | つきかけも なほみにしめと をきのはに よふかきかせの おとそのこれる | 兼綱(藤原光業男) |
369 | ゆめさそふ かせのやとりと なりにけり まくらにちかき にはのをきはら | 為明 |
370 | あきかせに をきのはそよく まくらより あとなきものは うたたねのゆめ | 詮信 |
371 | いまよりの なかきよさむを いかかせむ ゆふつけとりの をきのうはかせ | 浄弁 |
372 | あまのはら そらなるかはの わたしもり あきにはあへす みふねよせなむ | 教実 |
373 | あまのかは かはおとすみて ひこほしの つまむかへふね まつやひさしき | 小宰相(土御門院) |
374 | あまのかは やそのふなても みるはかり くもなかくしそ ほしあひのそら | 四条(安嘉門院) |
375 | たなはたに まをのにひいと ひきかけて くることたえぬ ほしあひのそら | 師光(源師頼男) |
376 | むかしより いかにちきりて たなはたの ひとやりならぬ ものおもふらむ | 俊頼(源経信男) |
377 | たなはたの ゆきあひになひく はつをはな こよひはかりや たまくらにせむ | 為定(御子左二条為道男) |
378 | たなはたの あまのはころも つゆちりて ゆきあひのそらに あきかせそふく | 雅朝 |
379 | たなはたは うらめつらしく おもふらむ こよひはくもの ころもかへさて | 俊成(藤原俊忠男) |
380 | たなはたの こころやこよひ はれぬらむ くもこそなけれ ほしあひのそら | 慈円 |
381 | ほしあひの こよひはかりは あまくもの よそにへたてぬ ちきりなるらし | 実継 |
382 | たなはたを わたしてのちは あまのかは なみたかきまて かせもふかなむ | 兼輔 |
383 | あまつかせ あふくともゆめ きりたつな こはたなはたの おれるにしきそ | 為光 |
384 | としことに いのるなかにも たなはたの こよひはことに こころあるらし | 保光 |
385 | たなはたの なみたのつゆに あまのかは みつかけくさや なほなひくらむ | 尊氏 |
386 | ささわけし みちたにあるを あまのかは かへるあしたの そてをしそおもふ | 家隆 |
387 | たもとこそ おもひやらるれ たなはたの あけゆくそらの あまのはころも | 重之 |
388 | たちかへり おもへはとほき わたりかな あけゆくそらの あまのかはなみ | 師氏(平常顕男) |
389 | あまのかは あけゆくほとの つゆけさに いつくもおなし そらをなかめて | 道長 |
390 | わかやとの はきのしたはの けしきにて あきはいろにも いてにけるかな | 相摸 |
391 | あきくれは ものおもふとしは なけれとも はきのうははそ つゆけかりける | 花山院 |
392 | あきをへて ふるえにさける はきのとの はなもむかしの いろやかはらぬ | 後光厳院 |
393 | たかまとの のへのまはきを たよりにて ゆふつゆなから むすふかりいほ | 雅家 |
394 | さとはあれて とはれしそての いろもなし あきののらなる はきのゆふつゆ | 明魏 |
395 | ゆふきりも たつみやきのの あきはきは このしたやみの にしきなりけり | 家尹 |
396 | まはきはら ちくさのいとを くるすのに ひをへておるや にしきなるらむ | 雅縁 |
397 | あきののは はなのいろいろ おほかれと はきのにしきに しくものそなき | 頼輔 |
398 | ちりはてぬ はなこそあらめ あきののに こころをさへも のこしつるかな | 頼政 |
399 | きりはれぬ はなののこはき さきにけり ゆきかふひとの そてにほふまて | 顕季 |
400 | あけわたる のはらのきりの たえまより つゆにしをれて なひくあきはき | 雅孝 |
401 | すかのねの なかつきのよの あけたては つゆけさまさる あきはきのはな | 家良 |
402 | みやきのの あさつゆわけて あきはきの いろにみたるる しのふもちすり | 頓阿 |
403 | わきもこか かたちのをのの をみなへし おもひたはれぬ ひとやなからむ | 実名(藤原公脩男) |
404 | さくはなの おのかいろにや うつるらむ ちくさにかはる のへのゆふつゆ | 成光(祝部成国男) |
405 | おきあまる のへのちくさの つゆのまに さきてもはなの かすやそふらむ | 雅世 |
406 | あさなあさな おくしらつゆも うつろひぬ さきそふあきの はなのちくさに | 為氏 |
407 | あきののの はなのつゆとも しらさりつ ちくさのいとに ぬけるしらたま | 公任 |
408 | てにとれは そてさへにほふ をみなへし このしたつゆに ちらまくもをし | 人麿 |
409 | あきかせは よことにふきぬ たかさこの をのへのはきの ちらまくをしも | 家持 |
410 | たかまとの のへのあきはき ちりはてて いろなきつゆに あらしふくなり | 家衡 |
411 | あきののの はなわけころも みやこまて いろはやつさし みむひとのため | 三河内侍(二条院) |
412 | わたつうみの なきさのをかの はなすすき まねきそよする おきつしらなみ | 信明 |
413 | うちなひく いりえのをはな ほのみえて ゆふなみまかふ まののうらかせ | 良経(九条兼実男) |
414 | うつらなく のはらのひかけ ほのみえて をはなふきこす あきのゆふかせ | 為氏 |
415 | つゆしけき をはなくすはな ふくかせに たまぬきちらす あきのゆふくれ | 師光(源師頼男) |
416 | まくすはふ おなしまかきの はなすすき うらみぬそても しけきつゆかな | 小宰相(土御門院) |
417 | たまほこの みちのゆくての はつをはな わかそてかけて あきかせそふく | 満元 |
418 | すきかてに そてをかはして あきののの をはなにましり けふもくらしつ | 為忠(御子左二条為藤男) |
419 | うきことも なにをかことの ゆふへそと とははやひとに あきのならひを | 為敦 |
420 | それとなき あはれをあきの こころとは たかならはしの ゆふへなるらむ | 仲光 |
421 | よしさらは みをあきかせに すてはてて おもひもいれし ゆふくれのそら | 家長(源時長男) |
422 | いくあきか わかみひとつの ゆふくれと ちちにものおもふ としのへぬらむ | 成実(藤原親実男) |
423 | なかむれは かなしきものと しりなから なほうとまれぬ あきのゆふくれ | 隆信 |
424 | さひしさは なれぬるものと おもへとも またいまさらの あきのゆふくれ | 為尹 |
425 | そのいろと わかぬあはれも ふかくさや たけのはやまの あきのゆふくれ | 後崇光院 |
426 | ひたすらに こころなきみの あきならは ゆふへのそらに ものはおもはし | 為藤 |
427 | かたしきの ころもてさむき まつかせに あきのゆふへと しらせすもかな | 伊勢 |
428 | せみのこゑ むしのうらみそ きこゆなる まつのうてなの あきのゆふくれ | 定嗣 |
429 | あきかせに わかなみたさへ さそはれて をはなにあまる そてのゆふつゆ | 雅有 |
430 | あすかかせ いたつらにふく よひよひに あきそこととふ たをやめのそて | 亀山院 |
431 | かるもかく ゐなののはらの あきかせに こやのいけみつ ささなみそたつ | 雅光 |
432 | ふるさとや あれゆくにはの あさちはら つゆふかしとて たれかはらはむ | 伏見院 |
433 | おきあまる よのまのつゆも あさちふの おのかなみたと むしやなくらむ | 実重(三条公親男) |
434 | ふかきよの つゆにくさはは うつもれて むしのねたかし のへのつきかけ | 頓阿 |
435 | あきふかき をののあさちの つゆなから すゑはにあまる むしのこゑかな | 持信 |
436 | なかきよの おもひやかはる きりきりす おなしまくらの したになけとも | 義宝 |
437 | きりきりす おいのねさめを あはれとや まくらのしたに なきよわるらむ | 伊平 |
438 | しもむすふ のはらのあさち うらかれて むしのねよわる あきかせそふく | 義嗣 |
439 | あきふかき をののくすはら かれかれに うらみもよわる まつむしのこゑ | 教経 |
440 | あふさかや しみつにうつる かけもみす せきちへたつる きりはらのこま | 義将 |
441 | いかにせむ このまにたにも またみえぬ をのへのつきの こころつくしを | 国冬 |
442 | くるるよの まさきのかつら いろつきて とやまのつきに あきかせそふく | 雅有 |
443 | よそにたに くもこそみえね すみのほる たかまのやまの あきのよのつき | 実衡女 |
444 | あまつかせ みかくくもゐに てるつきの ひかりをうつす やとのいけみつ | 定家 |
445 | くもりなき くもゐのつきを みかはみつ ともにすむへき ちよのゆくすゑ | 義満 |
446 | くもをこそ そらにはらはめ つきやとす つゆをはのこせ にはのあきかせ | 公脩 |
447 | あきらけき ひかりそことに すみのほる かみよなからの やまのはのつき | 成光(祝部成国男) |
448 | ささなみや しかのうらかせ うみふけは にほてりまさる つきのかけかな | 後嵯峨院 |
449 | からさきや あきのこよひを なかむれは てるつきなみに うらかせそふく | 雅経 |
450 | まつひとは こぬかたしきの ころもてに つきをそやとす うちのはしひめ | 実教 |
451 | きみかよを そらにしりてや ひさかたの あまてるつきも かけをそふらむ | 俊頼(源経信男) |
452 | あきのよの つきとはよそに ききつれと ときにあへるは こよひなりけり | 公忠(源国紀男) |
453 | つきたにも そらにすますは あきのよの なかきをあかす ともやなからむ | 後光厳院 |
454 | さもこそは くもりなきよの つきならめ みるひとさへも すむこころかな | 成通 |
455 | やとちかき やまたのいほの いなむしろ たれしきなれて つきをみるらむ | 後鳥羽院 |
456 | いくよわれ いへちわすれて をののえの くちきのそまの つきをみるらむ | 浄弁 |
457 | あきのつき やまのはいてて たかしまの みをのうらわに かけそさやけき | 左京大夫(永陽門院) |
458 | みなせやま たまをみかきし あととめて わすれぬさとと つきやすむらむ | 雅縁 |
459 | かはみつの ありてよにすむ とももなし たれとみなせの やまのはのつき | 杲守 |
460 | くもりなき つきもますみの かかみやま なにあらはれて みゆるよはかな | 実雄 |
461 | おきつなみ いくあきかけて すみよしの まつのしつえに つきをよすらむ | 義種 |
462 | つきかけの ゆきもつもりの うらかせに なほあきさむし すみよしのまつ | 義教 |
463 | あまひとの ぬるよはなくて すむつきの かけのみやとる とこのうらなみ | 経賢 |
464 | わたのはら おきをふかめて すむつきの ひかりにいつる あまのつりふね | 為衡 |
465 | つきかけも やとりさためぬ しらつゆの たまえのあしに うらかせそふく | 公豊 |
466 | さらしなや をはすてやまの みねまても おもひやらるる よはのつきかけ | 有宗 |
467 | とふとりの あすかのさとの あきのつき よよへしかけは いまもかはらす | 公賢 |
468 | あきのよの つきにやはらふ わたつみと あれにしままの とこのうらかせ | 後小松院 |
469 | あきのあめ よひのむらくも あときえて はらふあらしに のこるつきかな | 順徳院 |
470 | ふけにけり あまのたくもの けふりさへ なたのしほやの よはのつきかけ | 後花園院 |
471 | すまのあまの こころやつきに なひくらむ けふりそよわる うらのしほかま | 雅有 |
472 | ふけにけり おきそふつゆも たまたれの こすのおほのの よはのつきかけ | 尭孝 |
473 | あきかせに よのふけゆけは ひさかたの あまのかはらに つきかたふきぬ | 実朝 |
474 | はらひこし にはのよもきの つゆのうへに とはれぬよはの つきをみるかな | 俊平(源泰光男) |
475 | ふるさとと あれにしにはの あさちふに さひしくもあるか すめるつきかけ | 帥(鷹司院) |
476 | わかこころ つきにたとへて なかむれは いととくまなき あきのそらかな | 欣子内親王 |
477 | つきかけも よさむになりぬ いまよりの ねさめをたれか とはむとすらむ | 行能 |
478 | ちとりなく かはかせさむみ つきさえて こほりはあきの ものにそありける | 俊成(藤原俊忠男) |
479 | つききよみ こほりはてたる やまかはの せせにつれなき みつのしらなみ | 寂蓮 |
480 | みてもまた たれしのへとて たかまとの をのへのみやに つきはすむらむ | 行房 |
481 | をきはらや つゆをあきかせ ふくからに たもとをならす ありあけのつき | 秀能(藤原秀宗男) |
482 | せきのとの あくるはをしき つきかけに なにそはとりの しひてなくらむ | 持基 |
483 | なかきよも なほあかすとや みしまえの あしまにやとる ありあけのつき | 通成 |
484 | すみなれて たれわかやとと なかむらむ よしののおくに ありあけのつき | 後鳥羽院 |
485 | ありはてぬ うきよをあきの くるかたに さそへとそおもふ やまのはのつき | 俊顕 |
486 | たえすふく まきのはわけの あきかせに みやまのつきや よさむなるらむ | 尊氏 |
487 | かすならて いほもるしつも つきやみる あふたのみある あきのちきりに | 小宰相(土御門院) |
488 | あくかるる こころのほとは つきもみよ ちさとのほかの ありあけのそら | 雅経 |
489 | ゆみはりの なかはのつきの かけよりも なほすみまさる よつのをのこゑ | 後小松院 |
490 | くものうへの なかはのつきに ひかれてや よつのをまても こゑはすむらむ | 義仁法親王 |
491 | やまさとの ねさめのとこの さむしろに いたまもりくる ありあけのつき | 義詮 |
492 | たかさこの まつはつれなき をのへより おのれあきしる さをしかのこゑ | 定家 |
493 | ふくかせも みにしむあきの ゆふくれに あはれをそふる しかのこゑかな | 通能 |
494 | つまこふる わかみひとつの あきとてや よなよなつきに しかのなくらむ | 御匣(式乾門院) |
495 | ふきおくる うらよりをちの しほかせに しかのねちかき あはちしまやま | 為氏 |
496 | すみよしの とほさとをのの はなすすき ほのかにききつ さをしかのこゑ | 読人不知 |
497 | たちぬるる このしたつゆに なくしかの こゑきくときの やまのゆふくれ | 雅経 |
498 | ゆふくれの やまのたかねに なくしかも あまつそらにや つまをこふらむ | 教定(飛鳥井雅経男) |
499 | あらしやま いりあひのかねに ねをそへて けふもくれぬと しかそなくなる | 実教 |
500 | しらつゆを ならしのをかの さねかつら わけくるしかや なみたそふらむ | 基家 |
501 | しひてなほ あきのこころを くたけとや ふしみのくれに しかのなくらむ | 成家 |
502 | あすしらぬ かりはのをのに なくしかは こよひはかりと つまやこふらむ | 良春 |
503 | さをしかの こゑのさやけみ きこゆるは ひとりやぬらむ をののくさふし | 経信 |
504 | たかさこの をのへのつきに あきふけて まつかせちかく しかそなくなる | 隆直 |
505 | ふしみやま ふもとのをたの いねかてに まつかせさむし さをしかのこゑ | 満詮 |
506 | ゆふしもの おくてのおしね ほにいてて さむきをかへに しかそなくなる | 静仁法親王 |
507 | やまたもる ひととはなしに ひたはへて ときそともなく ものをこそおもへ | 花山院 |
508 | こひつつも いなはかきわけ いへゐして ともしくもあらす あきのゆふかせ | 人麿 |
509 | みねにおふる まつにもいまや かよふらむ いなはのかせの ゆふくれのこゑ | 持世 |
510 | ゆふひさす あきのやまもと きりはれて とはたのいなは つゆそみたるる | 尊氏 |
511 | やまもとの いなはのすゑの あきのつゆ いくよつもりて よさむそはまし | 後二条院 |
512 | かせさむき かりほのとまの ひまをあらみ たれいねかてに やまたもるらむ | 実雄 |
513 | あききりの そらにへたてて きなくなり ひもゆふくれの ころもかりかね | 為明 |
514 | みよしのの たのむともなき たまつさを いくあきかけて かりのきぬらむ | 有家(藤原重家男) |
515 | としとしに ふるさといてて くるかりは こしちのあきや すみうかるらむ | 為邦 |
516 | きりはれて あさひうつろふ やまのはの くもにすきゆく はつかりのこゑ | 進子内親王 |
517 | あききりの やへにかさなる やまのはを こゑもへたてす かりはきにけり | 教定(飛鳥井雅経男) |
518 | みなとかせ ゆふしほはやき まつかけの いりえのなみに おつるかりかね | 雅有 |
519 | はつかりも おもふかたをや したふらむ なくねにまかふ あきのうらなみ | 実重(三条公親男) |
520 | かせさむき おいのねさめに ききなれて あきをかさぬる ころもかりかね | 冬平 |
521 | くもゐとふ かりのなみたも おちそひぬ あはれよふかき おいのねさめに | 満済 |
522 | みにさむく あきかせふきぬ うへしこそ ころもかりかね けさはなくなれ | 行家(藤原知家男) |
523 | ぬしやたれ たのもにおつる かりかねの いなはにむすふ つゆのたまつさ | 頼之 |
524 | ものおもふ くものはたてに なきそめて をりしもつらき あきのかりかね | 為子(贈従三位) |
525 | おしねほす みわのやまたに かりなきて ゆふひしくるる すきのむらたち | 道慶 |
526 | あしのはに おともかくれす つのくにの なにはのこやは ころもうつなり | 義詮 |
527 | ころもうつ なれもさこそは さむからし あかつきふかき しもにおきゐて | 進子内親王 |
528 | なかきよも ありあけのつきも みしゆめも のこるまくらに うつころもかな | 満輔 |
529 | さよふけて きぬたのおとの きこゆるは たれにしのふの ころもうつらむ | 定宗(藤原家親男) |
530 | いつくにも ころもうつなり あきかせや さとをはかれす よさむなるらむ | 俊顕 |
531 | かたいとの よるのころもを うつおとは こなたかなたの さともさためす | 後小松院 |
532 | こぬよひを まつもちきりの すゑそとや なれしかたみの ころもうつらむ | 為重 |
533 | さよころも いかにそめてか くさもきも うつろふころの しもにうつらむ | 頓宗 |
534 | さとひとは さそなころもを うちわひて ぬるよもゆめも まとほなるらむ | 持之 |
535 | うらかせも わかすむかたの よやさむき あしやのさとに ころもうつこゑ | 雅世 |
536 | さとはみな いてこしままに あれにけり たれふかくさに ころもうつらむ | 家隆 |
537 | いくよまて とふひとなしに ふるさとの あさちかしもに ころもうつらむ | 持元 |
538 | おきまよふ あきのよさむの そてのしも はらひもあへす うつころもかな | 義運 |
539 | かちひとの とはぬよさむに まちわひて こはたのさとは ころもうつなり | 為家 |
540 | かちひとの みちをそおもふ やましなの こはたのさとの あきのゆふきり | 良経(九条兼実男) |
541 | やまとりの うらみもあきや かさぬらむ やへたつきりの なかのへたてに | 順徳院 |
542 | をくらやま ふもとのをはな そてみえて たえたえはるる あきのあさきり | 公泰 |
543 | ときわかぬ まつのけふりに たちそひて なほはれかたき みねのあききり | 経教 |
544 | くれゆけは へたつるきりに ありまやま ありともやとや たつねかねまし | 為定(御子左二条為道男) |
545 | たひひとの あふさかやまは きりこめて ゆくもかへるも わかぬころかな | 為経(甘露寺藤原資経男) |
546 | けさはなほ ははそのいろも うすきりの したにまたるる さほのやまかせ | 雅縁 |
547 | あしからの やまたちかくす きりのうへに ひとりはれたる ふしのしらゆき | 慶運 |
548 | しらなみの おとはかりして みえぬかな きりたちわたる たまかはのさと | 顕季 |
549 | しかのうらや にほてるおきは きりこめて あきもおほろの ありあけのつき | 後鳥羽院 |
550 | なにはかた いそへのなみの おとすみて ゆふきりよする あきのしほかせ | 後鳥羽院 |
551 | もしほひの あかしのおきの ともふねも ゆくかたたとる あきのゆふきり | 定家 |
552 | あききりの まかきのしまの へたてゆゑ そこともみえぬ ちかのしほかま | 実量 |
553 | しきのたつ はおともさむく なりにけり かりたのおもは しもやおくらむ | 公宗母 |
554 | はしたかの とやののあさち ふみわけて おのれもかへる あきのかりひと | 順徳院 |
555 | はつしもの むすふもまたて まはきはら たかいねかてに いろかはるらむ | 邦省親王 |
556 | たひころも なれすはしらし おほかたの あきのあはれは おもひこしかと | 秀能(藤原秀宗男) |
557 | うつろふと みるもかはらて しらきくの まかきやつきの いろはそふらむ | 後光厳院 |
558 | わかてみる つきもあやなし よるはかり うつろふきくの まかきともかな | 為遠 |
559 | かきりなき よはひのみかは みるからに こころものふる しらきくのはな | 清輔 |
560 | なみとのみ うちこそみゆれ すみのえの きしにのこれる しらきくのはな | 是則 |
561 | あたらしく われのみやみむ きくのはな うつらぬさきに こむひともかな | 躬恒 |
562 | はなとみし まかきもいまは あれはてて しもににほへる きくのひともと | 義満 |
563 | おくしもに うつろはむとや あさなあさな いろかはりゆく しらきくのはな | 大納言典侍(後嵯峨院) |
564 | たれゆゑに うつろはむとか はつしもの たわわにおける しらきくのはな | 土御門院 |
565 | くさまくら ゆふかりころも ぬれにけり すそののつゆも いろかはりゆく | 通光 |
566 | なへてしも いろかはらねは ときはなる やまにはあきも しられさりけり | 貫之 |
567 | いてていにし ひとはかへらて くすのはの かせにうらむる ふるさとのあき | 良経(九条兼実男) |
568 | こころさへ うつりもゆくか たつたやま こすゑにあきの いろをたつねて | 俊成女 |
569 | たつねはや しのふのもりの ゆふしくれ いかにそめてか いろにいつらむ | 行房 |
570 | おなしえを わくそとはかり しらるるや そめあへぬいろの あきのもみちは | 為遠 |
571 | まつかせに をのへのかねは ひひけとも もみちにのこる ゆふつくひかな | 永助法親王 |
572 | しくれゆく あたちのはらの うすきりに またそめはてぬ あきそこもれる | 定家 |
573 | そめあへぬ もみちのいろの あさひやま ふかくもみえす うちのかはなみ | 隆教 |
574 | そめのこす いろかあらぬか まつかえの みとりをかはす ききのもみちは | 後光厳院 |
575 | やまひめや そめのこすらむ もみちはの かけよりおつる たきのしらいと | 経賢 |
576 | そむるより こころやつくす たつたひめ あらしふきそふ あきのこすゑに | 雅経 |
577 | いろふかき やしほのをかの もみちはに こころをさへも そめてみるかな | 頼輔 |
578 | あかなくに なほかさしてや かへらまし けふもくらせる やまのもみちは | 良基(二条道平男) |
579 | きみのみや あかすかもみむ をののえの くちにしやまの みねのもみちは | 実継 |
580 | たちよれは もみちのかけの すきかてに こころもとまる あきのいろかな | 長綱(菅原茂長男) |
581 | つゆなから つきもこのまを もるやまの したてるいろと もみちしてけり | 為敦 |
582 | もみちする いくたのもりの いくしほも あかぬいろとや なほしくるらむ | 義賢 |
583 | このころは つゆもしくれも ひまそなき さそこからしの もりのもみちは | 雅永 |
584 | しくれゆく あきのやまちは もみちはの うつろふいろや しるへなるらむ | 俊成女 |
585 | みしあきに いろこそまされ もみちはの うつろふかたや なほしくるらむ | 宰相典侍(後宇多院) |
586 | くもふかく みえてしくれし やまそとや そむるもいとと ちしほなるらむ | 為遠 |
587 | そめのこす こすゑもあらし はつせやま いりあひのかねに くもそしくるる | 雅孝 |
588 | みよしのの はなはくもにも まかひしを ひとりいろつく みねのもみちは | 良経(九条兼実男) |
589 | からにしき そめかけてけり さほやまの こすゑしくるる あきのもみちは | 為氏 |
590 | たつたひめ くものころもの うすもみち またおりあへぬ にしきとそみる | 尊胤法親王 |
591 | すきやすき しくれなれはや もみちはに そめかさねたる いろはみゆらむ | 為重 |
592 | ときしあれは いろをもそへつ いそちあまり すきしおいその もりのもみちは | 道朝法親王 |
593 | きりたちて あきはてぬめり もみちはも かせのこころに まかせてやみむ | 具平親王 |
594 | しくれつつ もみちちるみゆ かみなひの みむろのやまは あきのくれかも | 道意(西園寺実兼男) |
595 | かけやとす つきもしくれて みむろやま あきかせさむし くすのしたつゆ | 後花園院 |
596 | なかつきや つきさへいまは ありあけの かけにすくなき あきのいろかな | 崇光院 |
597 | なかつきの つきもありあけに なりぬれは あきくれはつる ゆふくれのそら | 有家(藤原重家男) |
598 | くれてゆく あきのなこりも やまのはに つきとともにや ありあけのそら | 寂蓮 |
599 | せきもりも とめぬひかすに あきくれて ありあけのつきの すまのうらなみ | 為秀 |
600 | もとゆひの しもおきそへて ゆくあきは つらきものから をしくもあるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
601 | なかつきは なのみなりけり はるなつの おなしひかすに くるるあきかな | 為経(甘露寺藤原資経男) |
602 | くれゆくを をしむとすれは あきのひの いととみしかき かけにもあるかな | 資明 |
603 | のもやまも しもおきかへて ゆくあきの なこりにのこる そてのしらつゆ | 為藤 |
604 | かみかきに ぬさとちりかふ もみちかな しめをもこえて あきやゆくらむ | 兼良 |
605 | うらかるる のはらのまくす ふくかせに かへるをみてや あきもゆくらむ | 実雅 |
606 | かきりあれは よをなかつきの ともしひも かかけつくして あきはいぬめり | 実名(藤原公脩男) |
607 | ふゆきぬと おもふはかりに やまさとの いととさひしく なりまさるかな | 道済 |
608 | はけしさも きのふにけふは まさきちる とやまのあらし ふゆやきぬらむ | 雅縁 |
609 | もみちせし あきはいなはの やまかせに まつのみのこる ふゆはきにけり | 家長(源時長男) |
610 | ふゆきぬと ゆふしもさむき あさちふの かれはのかせの おとそさひしき | 定為 |
611 | あきははや すきのいたやの はつしくれ おときくしもそ ふゆはさひしき | 栄仁親王 |
612 | むらしくれ ふるかたみえて やまのはに うつりさためぬ ゆふひかけかな | 後花園院 |
613 | たつたやま こすゑのもみち あきくれて つれなきまつに なほしくるなり | 後鳥羽院 |
614 | いたつらに なにしくるらむ まきもくの ひはらかみねは いろもかはらし | 公賢 |
615 | たちかへる をのへのくもに さそはれて またやまめくる ゆふしくれかな | 宗久 |
616 | ききわふる ねさめのとこの さよしくれ ふるほとよりも ぬるるそてかな | 満意 |
617 | うきものと おもひなれたる あかつきの まくらにすくる はつしくれかな | 秀能(藤原秀宗男) |
618 | かみなつき このはしくれぬ ころならは さのみねぬよの かすはつもらし | 小宰相(土御門院) |
619 | ゆきふらは みちもたえなむ やまさとを しくるるまては とふひともかな | 寂蓮 |
620 | そむるより ちきりやおきし もみちはの ちらはともにと ふるしくれかな | 聖尊法親王 |
621 | まさきちる あらしのすゑの うきくもや とやまをかけて なほしくるらむ | 満祐 |
622 | えたかはす このはをいかに さそふらむ つひにもみちぬ みねのまつかけ | 為信 |
623 | いまよりは なにをかあきの なこりとも みつつしのはむ このはちるころ | 光俊(葉室光親男) |
624 | やまひめの そめしこころや かはるらむ あきよりのちは ちるもみちかな | 実遠(藤原季雄男) |
625 | さそひける けさのあらしの ほとみえて しもよりうへに ちるもみちかな | 顕詮 |
626 | うつもれし にはのおちはに しもきえて またあらはるる あきのいろかな | 実清(三条西公時男) |
627 | ふくかせの さそひきにける もみちはや そてにこきいれし かたみなるらむ | 尊道法親王 |
628 | いくたかは みつのあきさへ ととまらて このはをおくる もりのしたかせ | 雅縁 |
629 | おほゐかは くれなゐふかく にほふかな をくらのやまの もみちちるらし | 顕季 |
630 | みなのかは みねよりおつる もみちはも つもりてなみを またやそむらむ | 義重(斯波義将男) |
631 | みなとかは もみちふきこす こからしに やまもとくたる あけのそほふね | 良心 |
632 | このほとは こまうちわたす やまかはも このはのそこに こゑむせふなり | 家隆 |
633 | このはのみ ちりしくころの やまかはに くれなゐくるる にほのかよひち | 雅世 |
634 | そてのうへの つゆをはしらす やとりこし つきそこほりて しもとみえける | 為定(御子左二条為道男) |
635 | なきそむる そとものとりも こゑさむみ しもにかたふく もりのつきかけ | 光厳院 |
636 | ふけゆけは なほかけさむし あさちふの しもにこほれる ふゆのよのつき | 公雅 |
637 | あまつそら しももみちぬる よはとてや つきにさえゆく かねのおとかな | 尭尋 |
638 | よそにゆく くものなみまて こほりけり さゆるしもよの つきのひかりに | 為盛 |
639 | ふくかせの ゐなのささはら よはふけて おきそふしもに こほるつきかけ | 行俊 |
640 | さひしさは いろもひかりも ふけはてて かれののしもに ありあけのつき | 亀山院 |
641 | いしはしる たきつやまかは はやきせに こほれるつきの かけそくたくる | 雅成親王 |
642 | とけやらぬ そてのこほりに かさねても なほさえまさる ねやのつきかけ | 御匣(式乾門院) |
643 | ありあけの のこるもうすき にはのおもに それかとはかり おけるはつしも | 兼敦 |
644 | いろふかく にほふきくかな あはれなる をりにをりける はなにやあるらむ | 醍醐天皇 |
645 | しもかるる ちくさのはなの まかきこそ あきみしよりも あはれなりけれ | 欣子内親王 |
646 | おもかけに あきのなこりを ととめおきて しものまかきに はなをみるかな | 讃岐(二条院) |
647 | しをれふす まかきのしもの したをきや おとせしかせの あきのふるさと | 為尹 |
648 | はなすすき くさのたもとも くちはてぬ なれてわかれし あきをこふとて | 定家 |
649 | かせさむみ よをへてしもも をかのへに のこるをはなの いろそすくなき | 公種 |
650 | たまくらの のへのくさはの しもかれに みはならはしの かせのさむけさ | 兼好 |
651 | あきのいろの うつろふのへを きてみれは あはれはかれぬ ものにそありける | 慈円 |
652 | あさちはら しものしたはは かれはてて みしにもあらぬ のへのいろかな | 家良 |
653 | うちなひく すゑはをかけて はしたかの とやののあさち しもむすふなり | 常顕 |
654 | なにはひと かりふくこやも よやさむき いりえのあしに しもをかさねて | 為藤 |
655 | しもはらふ ましはのあらし おとさえて のもりのかかみ つららゐにけり | 具親 |
656 | よしのかは たきのしらなみ こほりして いはねにおつる みねのまつかせ | 良経(九条兼実男) |
657 | くりためて けさやこほりに むすふらむ きよたきかはの せせのしらいと | 行意 |
658 | さゆるよは こほりのひまも なけれはや けさやまかはの おとたえぬらむ | 伊長 |
659 | さらてたに いしまをせはみ たにみつの ゆくかたもなく こほるころかな | 満詮 |
660 | ささなみや ひらのやまかせ さゆるひは みきはこほりて よるふねもなし | 後二条院 |
661 | こよひたれ ますけかたしき あかすらむ そかのかはらに ちとりなくなり | 良経(九条兼実男) |
662 | かはかせに ふけゆくつきの かけさえて しもよのちとり そらになくなり | 経継 |
663 | ふけゆけは なくねもとほし さよちとり またいつかたに ともしたふらむ | 満親 |
664 | かせさゆる このよやいたく ふけぬらむ かはおとすみて ちとりなくなり | 時煕 |
665 | かせをいたみ いそこすなみの しはしはも あととめかたく たつちとりかな | 知家 |
666 | ありあけの つきにむれたつ こゑなから ちとりなみよる おきつしほかせ | 雅経 |
667 | なみのうへに ともなしちとり うちわひて つきにうらむる ありあけのこゑ | 雅経 |
668 | なみさわく なこのみなとの うらかせに いりえのちとり むれてたつなり | 伏見院 |
669 | ふかきよに ねさめてきけは はりまかた いほのみなとに ちとりなくなり | 嘉言 |
670 | しほたるる あまのころもの うらちとり なくねにさへや そてぬらすらむ | 読人不知 |
671 | さらてたに ほさぬそてしの うらちとり いかにせよとて ねさめとふらむ | 持世 |
672 | あしきたの のさかのうらに なくちとり みしまにかよふ こゑそふけぬる | 道順 |
673 | わかのうらの あとをもそへよ ともちとり たひかさなれる かすにもれすは | 実継 |
674 | つきかけに あかしのうらを こきゆけは ちとりしはなく あけぬこのよは | 匡房 |
675 | あかしかた せとのしほかせ さよふけて しまかくれなく ともちとりかな | 雅顕 |
676 | しもとみて なほよやさむく なるみかた しほひのつきに ちとりなくなり | 義運 |
677 | むれてたつ はおとそさむき あしかもの さわくいりえは さそこほるらむ | 雅親 |
678 | みつとりの うきねもたえぬ うきくさの まくらをむすふ よはのこほりに | 為忠(御子左二条為藤男) |
679 | いけみつに つかはぬをしの いととなほ かけさへみえす こほるころかな | 宗継 |
680 | よもすから あらしふきそふ ささのはに さやくあられは おともわかれす | 実盛 |
681 | ささのはに こほりしつゆの しらたまか なにそとみれは あられちるなり | 持基 |
682 | かせさむみ たまとくたけて たきのうへの あさののくさに ちるあられかな | 公名 |
683 | ありまやま みねゆくくもに かせさえて あられおちくる ゐなのささはら | 定為 |
684 | みやこたに あられふるよは しからきの まきのとやまの おくそしらるる | 兼宗 |
685 | かせさむみ けふもみそれの ふるさとは よしののやまの ゆきけなりけり | 良経(九条兼実男) |
686 | しろたへの まさこのうへに ふりそめて おもひしよりも つもるゆきかな | 雅世 |
687 | あけわたる みねのさかきは しもやたひ おくかとみれは ゆきふりにけり | 実性 |
688 | ふるほとも あさちにましり さくはなの なひくとそみる けさのはつゆき | 尭孝 |
689 | こほりたに またやまみつに むすはねと ひらのたかねは ゆきふりにけり | 恵慶 |
690 | やまのはは ゆきのひかりに あらはれて なほいてかての ありあけのつき | 経賢 |
691 | ちるははな つもるはつきの ひかりにて おもかけわくる にはのしらゆき | 雅有 |
692 | さひしさを とひこぬひとの こころまて あらはれそむる ゆきのあけほの | 宮内卿(後鳥羽院) |
693 | ふゆきては さたかなりつる ときはきも またみえわかす つもるゆきかな | 義教 |
694 | さえくるる あらしはよそに おとたてて ゆきにこほれる みねのまつかえ | 公敏 |
695 | かきくれて さたかにもなき やまのはの はるるとみれは つもるゆきかな | 為之 |
696 | しをりせし しはのこすゑを ふみわけて やまちのゆきの ほとそしらるる | 成家 |
697 | ふみわけて わかこしかたも しらかしの しらぬやまちに ゆきはふりつつ | 雅顕 |
698 | ふきおろす あらしのおとも たかしまの みをのそまやま ゆきふりにけり | 幽提 |
699 | たつねくる ひとはおとせて みわのやま すきのこすゑの ゆきのしたをれ | 雅経 |
700 | よしのやま けさふるゆきや つもるらむ いりにしひとの あとたにもなし | 土御門院 |
701 | さかきはも とりにゆくへき かみやまの みちはゆきにや うつもれぬらむ | 好忠 |
702 | つくはやま はやましけやま おしなへて のこるかけなく つもるゆきかな | 親雅 |
703 | ゆきふれは かねてそみゆる かかみやま ちりかふはなの はるのおもかけ | 為子(贈従三位) |
704 | おとはやま みねのこすゑも みえぬまて せきのこなたは ゆきふりにけり | 少将(邦省親王家) |
705 | ゆふされは うらかせさむし あまをふね とませのやまに ゆきそふるらし | 実朝 |
706 | けぬかうへに なほふりしきて よしのやま ゆきさへふかき いはのかけみち | 良瑜 |
707 | とふひとも あきかせまてそ またれける いくたのもりの ゆきのゆふくれ | 行家(藤原知家男) |
708 | しろたへの のはらのゆきに うちわたす をちかたひとの そてまかふらし | 忠房親王 |
709 | たひひとの あさたつのちや つもるらむ あとこそみえね のへのしらゆき | 実教 |
710 | なかめやる さとたにひとの あとたえて のなかのまつに ゆきはふりつつ | 順徳院 |
711 | おほゐかは こほれるうへは きえやらて ゆきにかけたる せせのしからみ | 邦省親王 |
712 | しらなみの せきふきこゆる おとはして ゆきをそおくる すまのうらかせ | 実冬女 |
713 | ささなみや つりするあまの そてまても ゆきにそかへる しかのうらかせ | 兼治 |
714 | うちよする おきつしらなみ おとさえて ゆきになるみの うらかせそふく | 成胤 |
715 | きのうみや おきつなみまの くもはれて ゆきにのこれる うらのはつしま | 重光(藤原資康男) |
716 | ゆきふれは わかのまつはら うつもれて しほひのたつの こゑそさむけき | 雅永 |
717 | ふるゆきの きえすはありとも やまふかみ あすのひとめを えやはまちみむ | 尊道法親王 |
718 | ふみわけて とひくるほとは いとはぬを かへるあとこそ ゆきにをしけれ | 道嗣 |
719 | さらぬたに ひとめかれゆく やまさとに ものさひしかる にはのしらゆき | 但馬(藻壁門院) |
720 | けふいくか とふひとなしに あとたえて ゆきにこもれる やとのさひしさ | 直義 |
721 | よしさらは ゆきをもめてし いたつらに つもれとひとの おとつれもせす | 為藤 |
722 | しもゆきも さそこほるらむ ももしきや ふるきみかきの とよのあかりは | 弁内侍(後深草院) |
723 | くものうへ あまつひれふる をとめこか かさみのそてに あられたまちる | 宗重 |
724 | ふえたけの そのよはかみも おもひいつや にはひのかけに ふけしよのそら | 永福門院 |
725 | みつくきの をかへもしるく やかたをの たかひきすゑて いつるかりひと | 雅縁 |
726 | いはせのに とりふみたてて やかたをの たかをてにすゑ からぬひはなし | 顕朝 |
727 | みかりせし のもりのかかみ むかしをは うつさぬよにも なほやすむらむ | 後円融院 |
728 | みかりせし かりはのあとも いまはよに あはれかたのの ゆきのふるみち | 崇光院 |
729 | ゆきふかき かたののききす ふみたてて そらとるたかの あはぬひもなし | 為重 |
730 | はしたかの はらふうはけに たまちりて かたののはらに あられふるなり | 忠定(藤原兼宗男) |
731 | はしたかの をふさのすすを ならしはの なれはまさらて たつききすかな | 忠房親王 |
732 | すみかまの けふりはそらに たちそひて そらにしらるる おほはらのさと | 経継 |
733 | そらさゆる ゆきけのくもも すみかまの けふりにまかふ おほはらのやま | 為明 |
734 | よそにても さひしとはしれ おほはらや けふりをたたぬ すみかまのさと | 土御門院 |
735 | すみかまの けふりをさとの なにたてて よそにもしるき をののやまもと | 伊定 |
736 | かきくらす みねのふふきに すみかまの けふりのすゑそ むすほほれゆく | 良経(九条兼実男) |
737 | いそくへき はるのこころも しらぬみは のとかにおくる としのくれかな | 伏見院 |
738 | よのひとの いそくははるの ためなれは うしとみつつや としのゆくらむ | 覚助法親王 |
739 | すきやすき ひのくまかはの としのくれ みつかふこまの とまるせもなし | 深守法親王 |
740 | はるはると おもひしとしの すゑのまつ おいのなみこそ やすくこえけれ | 欣子内親王 |
741 | くれてゆく としはわかみに つもれとも かへらぬものは つきひなりけり | 実家(藤原公能男) |
742 | かひなしや はやななそちに みちのくの あたちのまゆみ はるにあふとも | 守遍 |
743 | かきりなく おいぬるのちの ひととせは みにつもるとも よしやなけかし | 慶運 |
744 | かくしつつ ゆくとしなみの あはれみに いまいくたひか こえむとすらむ | 公賢 |
745 | わかたのむ かみちのやまの まつのかせ いくよのはるも いろはかはらし | 後鳥羽院 |
746 | さとわかぬ はるのひかりを しりかほに やとをたつねて きゐるうくひす | 定家 |
747 | あたらしき はるのはしめに ひくまつの つもるかすをは きみそかそへむ | 輔親 |
748 | いにしへの ためしをひけは やちよまて いのちをのへの こまつなりけり | 順 |
749 | すみよしの まつはむかしの ふたはより ひさしきことの ためしにそひく | 実定 |
750 | みとりそふ おほうちやまの まつのはは やほよろつよの はるのかすかも | 後小松院 |
751 | きみかため いろそふまつに こととへは こむといふなる よろつよのはる | 雅縁 |
752 | ちとせへて はなさくまつの いととしく のとけきみつに かけそうつれる | 師実 |
753 | かけうつす みきはのまつの おなしえに やちよをかくる いけのささなみ | 後花園院 |
754 | いくはるも おなしことはの たままつに としのをそへて なほやちきらむ | 雅世 |
755 | にはのおもに こたかきまつの ふかみとり いくしほはるの いろにそめけむ | 忠業 |
756 | ここのへの おほうちやまも よはふなり はなさくはるは つきしとそおもふ | 為定(御子左二条為道男) |
757 | はなのいろは つきしとそおもふ ももしきや おほみやひとの ちよのかさしに | 兵衛内侍(順徳院) |
758 | さきにほふ くもゐのはなの もとつえに ももよのはるを なほやちきらむ | 後光厳院 |
759 | つかへつつ よはひはおいぬ ゆくすゑの ちとせもはなに なほやちきらむ | 良基(二条道平男) |
760 | やちよへむ きみにあひおひの はなのえは かせもならさぬ ここのへのはる | 為邦 |
761 | わかきみの ちよのかさしと みるからに けふこそさくら いろもそひけれ | 懐国 |
762 | さきそむる わかむらさきの ふちなみは ちとせをまつの はなにさりける | 丹後(宜秋門院) |
763 | むらさきの くもうちなひく ふちのはな ちとせのまつに かけてこそみれ | 兼盛 |
764 | そてふれて いくはるなれむ さくふちの まつよりあまる ちよのにほひに | 通陽門院 |
765 | きみかよに やまのはのほる つきかけの ゆくすゑとほく すめるそらかな | 読人不知 |
766 | あきのいけの つきのかつらも いくちよか ひかりをはなの かかみとはみむ | 道家 |
767 | よろつよも つきのひかりを しきしまや やまとしまねに すめるいけみつ | 家隆 |
768 | わかきみの ひかりそふへき よろつよを つきにまかせて すめるいけみつ | 師良(二条良基男) |
769 | つきかけの くもらぬにはの いけみつに すむへききみか ちよもみゆらし | 基隆(藤原基成男) |
770 | くさもきも なひくみよとは いけみつの たまもをみかく つきにみゆらし | 為忠(御子左二条為藤男) |
771 | きみかよの くもらぬかけを うつしてや くもゐのつきは てりまさるらむ | 宋縁 |
772 | あまのはら めくるつきひの さやかにも よろつよすめる くものうへかな | 経家(藤原定頼男) |
773 | あひにあふ きみをつきひと あふくにも よるひるわかす よをいのるかな | 満済 |
774 | まつのうへに ふるしらゆきの かつきえて ちよはかくれぬ ものにそありける | 道済 |
775 | いにしへの あともまれなる みゆきまて つもるかひある としのかすかな | 公衡(西園寺実兼男) |
776 | みにつもる としによろつよ とりそへて けふわかきみに たてまつるかな | 康資王母 |
777 | すみのえに はまのまさこの こけふりて いはほとならむ ほとをこそおもへ | 元輔(清原春光男) |
778 | きみかよは ちくまのかはの さされいしの こけむすいはと なりつくすまて | 式子内親王 |
779 | わかきみは ちとせのさかを こえぬとも なほゆくすゑそ ひさしかるへき | 有家(藤原重家男) |
780 | まつのはの つゆやつもりて たましきの にはにもちよの かすをそふらむ | 経嗣 |
781 | なへてたに まつのよはひは ひさかたの くもゐのにはに いくとせかへむ | 満基 |
782 | いくよとも かきりはいはし きみかへむ よはひをちきれ にはのまつかえ | 公行(今出川実直男) |
783 | かけたかき みかきのまつに みえてけり ちよにもこえむ きみかゆくすゑ | 為尹 |
784 | おほゐかは ひさしきことは かけうつす かめのをやまの まつそしるらむ | 経信 |
785 | ちとせをは まつとかめとに まかせつつ やほよろつよは いはておもはむ | 元輔(清原春光男) |
786 | かすかやま えたさしそむる まつのはは きみかちとせの かすにそありける | 資綱 |
787 | きみかよに かねてうゑける すみよしの まつふくかせは すゑもはるけし | 慈円 |
788 | まつかけに みやつくりせる すみよしの ひさしきよをは きみそみるへき | 国信 |
789 | かけたかき きりのこすゑに すむとりの こゑまちいてむ みよのかしこさ | 公保 |
790 | にしかはや みゆきのあとを かさねても ちよとそちきる つるのけころも | 光吉 |
791 | わかきみの みきりにちかく すむたつや ちとせのかすを かねてしるらむ | 公雅 |
792 | すゑとほき ちよのともとや わかきみに なれてみきりの たつもすむらむ | 実秀(藤原公仲男) |
793 | もろともに みきりのたつも よはふなり はこやのやまの よろつよのこゑ | 実秋 |
794 | むしろたの いつぬきかはの かはみつと すむてふたつと いつれひさしき | 後小松院 |
795 | たつのすむ いつぬきかはの しきなみに なほたちまさる みよのかすかな | 惟明親王 |
796 | すすかかは ふるきなかれを つたへきて なほすゑとほき きみかみよかな | 良平 |
797 | かみかせや みもすそかはの そこすみて なかれひさしき きみかみよかな | 丹後(宜秋門院) |
798 | きみかため のとかにすめる いはしみつ ちとせのかけや かねてみゆらむ | 雅経 |
799 | あさひさす かけにもちよを みかさやま みねなるまつの みとりのみかは | 持賢 |
800 | あめのした のとかなるよと なりにけり きみかめくみや よもにみちぬる | 雅孝 |
801 | わかきみの みかけるたまの ひかりもて みちをもよをも さそてらすらむ | 実夏 |
802 | をさまれる わかのうらかせ しつかにて ひろへるたまは ちよのかすかも | 公泰 |
803 | わかのうらに あつめてみかく たまほこの みちあるみよは ひかりそふらむ | 為明 |
804 | みなひとの こころもみかけ たまほこの みちあるときと くもりなきよに | 善成 |
805 | くもらしな あまつひつきの あとうけて むかしにかへる みよのみかけは | 実任 |
806 | すゑとほく なほこそあふけ しきしまの みちよりひろき きみかめくみを | 為遠 |
807 | きみやいま かはらぬいろに ちきるらむ たけのうてなの よろつよのかけ | 義教 |
808 | いけみつに うつりしかけの もろともに ひさしきよまて すまむとそおもふ | 長家 |
809 | よろつよと いはねをめくる なかれまて しつかにすめる にはのいけみつ | 満政 |
810 | わかきみの ちよのかすかも さみたれの たかののむらの のきのたまみつ | 匡房 |
811 | はるかせは えたもならさす しつかにて なひくはかりの あをやきのむら | 為長(菅原長守男) |
812 | しろたへの ゆふとりしてて かみまつる うつきににほふ はなかきのさと | 俊光 |
813 | よろつよの ためしにそつく たなかみや あきのはつほの なかひこのいね | 隆教 |
814 | とかへりの はなさきぬらし まつやまの こすゑをたかみ つもるしらゆき | 忠光 |
815 | いちしようの みのりをたもつ ひとのみそ みよのほとけの しとはなりける | 日吉十禅師 |
816 | うめのきの かれたるえたに とりのゐて はなさけさけと なくそわりなき | 清水観音 |
817 | うめのはな いろをもかをも みのりとは さとりひらけて みるひとそみる | 祐性 |
818 | よをいのる はるのはしめの のりなれは きみかみゆきの あとはありけり | 師継 |
819 | ともしひの ひかりをさして こたへすは みのりのはなを たれかまちみむ | 慈円 |
820 | いまそしる みのりのはなも ふるきよに ためしありける ひとのをしへを | 雅縁 |
821 | くちせしな たへなるのりの はなかつら なかきよかけて たのむちきりは | 万秋門院 |
822 | をりえても こころゆるすな やまさくら さそふあらしの ありもこそすれ | 仏国 |
823 | いそのかみ ふるののさくら はることに しるもしらぬも たつねてそとふ | 重阿 |
824 | むらさきの くものむかへを まつのとに こころをとほく かくるふちなみ | 慈澄 |
825 | なつころも のりのためにと ぬきつれは けふはすすしき みとそなりぬる | 顕仲(源顕房男) |
826 | うすくこき みのりのはなの いろはみな ひとつはちすの みとそなりぬる | 秀茂 |
827 | このよより はちすのいとに むすほほれ にしにこころの ひくわかみかな | 良経(九条兼実男) |
828 | きえぬへき いのちをつゆの かことにて おなしはちすと ちきりおくかな | 通成 |
829 | そてのうへに あたにむすひし しらつゆや うらなるたまの しるへなるらむ | 後鳥羽院 |
830 | にこりえも かけみるはかり すみかへて みつこそつきの こころなりけれ | 光吉 |
831 | いつまてか まよふこころの くまことに みのりのつきの かけをかくさむ | 慶運 |
832 | おもふより こころのやみも はれぬへし わしのたかねに ありあけのつき | 宮内卿(後鳥羽院) |
833 | さためなく ゆきかふそらの うきくもに こころまよはす ありあけのつき | 為理 |
834 | いるつきを したふこころの まことあらは ふたたひてらす かけはみてまし | 高範 |
835 | たかのやま そのあかつきを ちきりきて ここにもおなし つきやすむらむ | 宋縁 |
836 | つきはいり あさひはまたき なかそらの くらきにまとふ ひとそかなしき | 清輔 |
837 | なにとなく なみたのたまや こほれけむ みねのこのみを ひろふたもとに | 寂然 |
838 | かみなつき しくれふりおける みのりとて ならのみやこに のこることのは | 後嵯峨院 |
839 | ことのはを よそにもらすな ふくかせは よものこすゑを なほさそふとも | 道雅/道我 |
840 | はるかなる よものこすゑの ふゆこもり いかてさくへき はなとみゆらむ | 玄円 |
841 | みなひとの こころこころそ しられける ゆきふみわけて とふもとはぬも | 雅経 |
842 | むかしをも さやかにそみる いつるひに むかふひかりの くもりなけれは | 慈円 |
843 | とりのねも きこえぬやまに きたれとも まことのみちは なほとほきかな | 仲実 |
844 | むくひある みとはしらすや うきことの のかれぬままに よをうらむらむ | 盛徳 |
845 | いかにして さとるみのりの みちとたに まよひのうちは しるかたもなし | 為藤 |
846 | とにかくに みつのくるまの わかれても ひとつみちにや めくりあふらむ | 永助法親王 |
847 | みなひとの ゆきてうまるる やとりこそ うきよのさかの にしにありけれ | 後小松院 |
848 | ことはには みつととけとも ひとすちに まことをいたす こころなりけり | 後嵯峨院 |
849 | うつつとも いととたのまし としつきの すきにしかたは ゆめとなるよに | 道深法親王 |
850 | なかきよの ゆめはいかてか さまさまし おとするつゑに かからさりせは | 小弁 |
851 | なかきよの ゆめをゆめそと しるきみや さめてまよへる ひとをたすけむ | 高弁 |
852 | ゆめのうちに てらすひかりの なかりせは うきよのやみの いつかはるへき | 実瑜 |
853 | をののえも くちやしぬらむ わしのやま しはしとおもふ のりのむしろに | 経賢 |
854 | にしのうみ みちひくしほに まかせつつ われとはさらぬ のりのはやふね | 基家 |
855 | つらきをも うきをもしのふ おもひこそ こころのみちの まことなりけれ | 季保 |
856 | みるたひに いととなみたや ますかかみ むかしにもあらぬ かけにむかひて | 永縁 |
857 | しらすなる きよきかかみに うつりなは むかしにかはる かけもなけかし | 読人不知 |
858 | つくりこし つみをともにて しるひとも なくなくこゆる してのやまみち | 宣旨(二条院) |
859 | へたつなよ つひにはにしと たのむみの こころをやとす やまのはのくも | 為相 |
860 | やまのはの いりひをかへす たもとにも にしにこころを かくるとそみし | 頓阿 |
861 | やまのはの いりひをいかて かへしけむ われたににしに いそくこころを | 具行 |
862 | ひろさはの よよのなかれを いかにして せはきそてにも うけはしめけむ | 道我 |
863 | かかくへき すゑのひかりを おもふそよ つたへしのちの のりのともしひ | 道助/通助 |
864 | のりのふね ここをとまりと さためけむ かみのちかひは けふのためかも | 道意(二条良基男) |
865 | いまそしる えたをつらぬる このもとに さとりひらけし おやのこころは | 為定(御子左二条為道男) |
866 | まよひこし こころのやみを しるへにて こをおもふみちに つきをみるかな | 玄覚 |
867 | あらきうみ きひしきやまの なかなれと たへなるのりは へたてさりけり | 俊成(藤原俊忠男) |
868 | むかしきく わしのたかねの みねのくも けふのみのりの そらにみるかな | 道慶 |
869 | かひなしな ひとをわたさぬ のりのふね うきよのきしを こきはなれても | 明魏 |
870 | なかめつる はなももみちも ちりはてて こころのいろそ いまはむなしき | 読人不知 |
871 | すすしやと かはせのなみに たちよれは もゆるおもひの みつからそうき | 道玄 |
872 | さとりえぬ こころのやみの うつつこそ ゆめにまされる まよひなりけれ | 杲守 |
873 | はかなしと なにおもひけむ ねぬるよの ゆめそまことの しるへなりける | 公明 |
874 | くもりなく こころのちりを はらひてそ まよひしほとの やみははるけし | 宰相典侍(後宇多院) |
875 | とほからぬ もとのさとりの みやことり こととふひとの なきそかなしき | 読人不知 |
876 | たかのやま うきよのゆめも さめぬへし そのあかつきを まつのあらしに | 元可 |
877 | ほのかなる くものあなたの ふえのねも きけはほとけの みのりなりけり | 俊成(藤原俊忠男) |
878 | みのためと おもひていてぬ みちなれは こころはひとを そむきやはする | 寂然 |
879 | かきなかす のりのみつこそ うれしけれ こころのあかを すすくとおもへは | 季経 |
880 | くりかへし おもひつつけて なけくかな なにとまよひを しつのをたまき | 義持 |
881 | あつまちに たつひをたにも しらせねは ころものせきの あるそかひなき | 顕綱 |
882 | あふことの あらしにまかふ をふねゆゑ とまるわれさへ こかれぬるかな | 師輔 |
883 | あはつのの くすのすゑはの かへるまて ありやはつへき つゆのいのちは | 顕輔 |
884 | わかれにし ひとやはかへる あさちはら まねくをはなは よそめはかりそ | 隆房 |
885 | ゆくすゑに いきのまつはら なかりせは なににいのちを かけてまたまし | 俊頼(源経信男) |
886 | みやこにも ひさしくいきの まつはらの あらはあふよを まちもしてまし | 周防内侍 |
887 | おもひいてよ こよひのつきの ひかりをは たれもくもゐの よそになるとも | 実叡 |
888 | たひころも みやこのつきの おくらすは なにかわかれの かたみならまし | 頓阿 |
889 | いなはやま みねたちわかれ ゆくくもの かへらむほとは まつとたのめよ | 雅縁 |
890 | をしとおもふ こころやきみに たちそひて しらぬなみちを ともにゆくへき | 実宣 |
891 | まつほとの いつともしらぬ わかれちに そふるあふきの なをたのむかな | 紀伊(祐子内親王家) |
892 | わかれてふ なこそつらけれ たひころも たちはなれては ひかすへすとも | 俊成(藤原俊忠男) |
893 | うみやまを はるのかすみに へたててむ こころつくしそ かねてしらるる | 寂身 |
894 | うみやまの なみのいくへは かすむとも たのむこころの みちしかよはは | 読人不知 |
895 | たひころも たちおくれしと したふまに たむけぬつきも かけそいさよふ | 資有 |
896 | なからへむ みのはかなさも しらなみの たちかへれとも えこそちきらね | 行能 |
897 | わかそてに かかるなみたを ととめおきて ふねはのとかに こきやゆくらむ | 成尋母 |
898 | あひみむと おもふこころは ふかけれと われやなくなく またすなりなむ | 成尋母 |
899 | こころをは きみにたくふる たひなれは われもととまる ここちやはする | 重如(山口) |
900 | しぬはかり まことになけく みちならは いのちとともに のひよとそおもふ | あこ(傀儡) |
901 | しまかくれ こきゆくまても みるへきに またきへたつる はるのかすみか | 国基 |
902 | あふことを なににいのらむ かみなつき をりわひしくも わかれぬるかな | 則長(橘則光男) |
903 | おもひやれ あかつきことの わかれたに くれをまつまは いかかかなしき | 教長 |
904 | なそもかく わかれそめけむ ひたちなる かしまのおひの うらめしのよや | 俊頼(源経信男) |
905 | なにことも おもひもしらぬ みなれとも をしきはけふの わかれなりけり | 親隆 |
906 | わかるるも とまるもおなし みやきのの このしたつゆは かさもとりあへす | 長能 |
907 | かへりきて みるへきみとも たのまねは けふのわかれの あはれなるかな | 顕仲(源顕房男) |
908 | あすしらぬ みをたのむこそ あやふけれ しはしとおもふ わかれなれとも | 四条(安嘉門院) |
909 | われにあらぬ ひとのたむくる ぬさなれと いのりそそふる とくかへれとて | 冷泉院 |
910 | きみひとり をしむおもひに くらふれは やそうちひとの たむけなにそも | 助信 |
911 | いとへとも うきよのほかに ならぬみを たちはなるとは おもはさらなむ | 上東門院 |
912 | やまのはは とほくなるとも おほそらの くもまのつきを あふきてはみよ | 下野(四条太皇太后宮) |
913 | うゑおきて はなのみやこへ かへりなは こひしかるへき をみなへしかな | 粛子内親王 |
914 | たひひとの あかつきいそく せきのとは とりのねよりや あけはしむらむ | 為氏 |
915 | あふさかの ゆふつけとりは たひひとの たつをわかれと ねをやなくらむ | 邦省親王 |
916 | よをこめて こゆるせきちの とりのねや いそくにつけて とほさかるらむ | 盛家 |
917 | さとのなも なかなかとはて ゆきくるる ほとをかきりに いそくたひかな | 為盛 |
918 | ゆきくれて ひとよやとかる まつかねに なにとあらしの とこはらふらむ | 下野(後鳥羽院) |
919 | かへりみて ゆきもやられす たひのそら みやこのやまの のこるかきりは | 頓阿 |
920 | はるのよの つきはところも わかねとも なほすみなれし やとそこひしき | 和泉式部 |
921 | はるをあさみ たひのまくらに むすふへき くさはもわかき ころにもあるかな | 恵慶 |
922 | きりふかき やまのしつくや つもるらむ いはねにたえぬ こけのしたみつ | 道昭 |
923 | かりしくも うすきをはなの たもとかな まつかねさむき つゆのまくらに | 後小松院 |
924 | やとれつき つゆわけきつる たひころも たちしみやこの わすれかたみに | 後崇光院 |
925 | ふるさとを おもひやりつつ なかむれは こころひとつに くもるつきかけ | 登蓮 |
926 | ありあけの つきかけみれは すききつる たひのひかすそ そらにしらるる | 登蓮 |
927 | こえくらす やまわけころも さらてたに ほさぬたもとに ふるしくれかな | 時清 |
928 | おもひやる なみたなからや しくるらむ みやこのかたの やまのはのそら | 読人不知 |
929 | いととしく なけかしきよを かみなつき たひのそらにも ふるしくれかな | 増基 |
930 | たひころも いととひかたき よるのあめに やまのはとほく ましらなくなり | 師継 |
931 | すすかやま うまやつたひに せきこえて いくかになりぬ ふるさとのそら | 祖月 |
932 | かへりみる くものいつこか それならむ しらすつきひを ふるさとのそら | 氏数 |
933 | ゆくすゑも なほかさなれる やまのはの くものいつくを あすはこえまし | 円照 |
934 | こえなはと おもひしみねに きてみれは なほゆくすゑも やまちなりけり | 素暹 |
935 | みやこおもふ そてもかたかた ほしあへす あへのしまやま つゆふかくして | 通具 |
936 | きのふまて くものあなたに みしやまの いはねにこよひ ころもかたしく | 良経(九条兼実男) |
937 | わけまよふ たかねのくもを ふるさとの ひかすにそへて なほやへたてむ | 宗継 |
938 | けふもたた くるるはかりを かきりにて まつゆきとまる むさしののはら | 頼豊 |
939 | つきにこそ またさそはるれ さらてたに こころもとめぬ くさのまくらに | 雅縁 |
940 | ふるさとに おもふひとなき たひたにも くさのまくらは つゆけからすや | 兼実 |
941 | かりねする をかのささやの ふしうきも わかふるさとと おもはましかは | 光正 |
942 | すみうきも こころとまるも はかなきは ひとよのたひの やとりなりけり | 行久 |
943 | あふひとも またしらかはの せきこえて あきかせふくと たれにつてまし | 光俊(平) |
944 | きよみかた せきのとならて ゆふしほの ささぬさきにと いそくたひひと | 実継 |
945 | たひころも たつしらなみを よそにみて われそこえゆく すゑのまつやま | 実量 |
946 | くれやらて ひかけはなほも たかしやま おもふとまりや すきてゆかまし | 雅孝 |
947 | くれかかる やまのしたみち わけゆけは くもこそかへれ あふひとはなし | 尊円法親王 |
948 | ましはたく けふりのすゑを たつねきて やととふやまの くれそさひしき | 後伏見院 |
949 | みやまちや ゆふこえくれは さとみえて こなたかなたに けふりたつなり | 基忠(鷹司兼平男) |
950 | まつらやま ゆふこえくれは たましまの さとのつつきに たつけふりかな | 忠房親王 |
951 | こえくれて ひとりやねなむ さととほき やまのかけちの こけのさむしろ | 公豊 |
952 | むかしたに むかしといひし うつのやま こえてそしのふ つたのしたみち | 雅世 |
953 | うつのやま こえしむかしの あとふりて つたのかれはに あきかせそふく | 良経(九条兼実男) |
954 | みやこにや ことつてやらむ たひころも ひもゆふくれの うつのやまこえ | 宋親 |
955 | あしひきの やまのしつくの つゆをたに ほさてかたしく たひのころもて | 経朝 |
956 | かつらきや よそにおもひし みねのくも たもとにわくる あきのゆふくれ | 秀能(藤原秀宗男) |
957 | くれぬまに わけつるくもは あともなし つきにそこゆる みねのかけはし | 実教 |
958 | なかきよの さよのなかやま あけやらて つきにあさたつ あきのたひひと | 雅経 |
959 | うつのやま つきたにもらぬ つたのいほに ゆめちたえたる かせのおとかな | 家隆 |
960 | あつまのの ささやのとこの かりまくら ふしもならはぬ よをかさねつつ | 為氏 |
961 | あつまのの をかやかりしき さぬるよに つきふけゆけは みやこしそおもふ | 定為 |
962 | くさまくら わかふるさとの ほかにまた とほつあすかの みやここひしも | 尭孝 |
963 | ゆくすゑを くさのまくらに いそけとも なほふるさとに かへるゆめかな | 雅宗 |
964 | いかにねて みやこのゆめも みしまのの あさちかりしく つゆのたまくら | 杲守 |
965 | わけわひし のもせのくさの まくらより あとよりむすふ そてのつゆかな | 瑞禅 |
966 | ものおもふ たひねのくさの まくらより いろつきそむる のへのあきかせ | 家清 |
967 | むさしのは けふもはてなく ゆきくれぬ またやむすはむ くさのまくらを | 読人不知 |
968 | むさしのを けふこそわけて かきりなく とほくきにける たひはしらるれ | 為定(御子左二条為道男) |
969 | かへるさを おもへはひさし あつまちや すゑたにのこる たひのひかすに | 経嗣 |
970 | ふるさとは そなたとはかり みてたにも あかぬやまちを くもなへたてそ | 大納言典侍(後嵯峨院) |
971 | それとしも こえゆくほとは みえわかて すきつるあとは みねのしらくも | 公俊 |
972 | あけはまた ゆくへきみちと おもひねの ゆめにそこゆる さよのなかやま | 義宝 |
973 | くさまくら ゆふつゆはらふ ささのはの みやまもさやに いくよしをれぬ | 定家 |
974 | くさまくら ねられぬままの ありあけに つきをともとそ いそきたちぬる | 国平 |
975 | けふもまた かさなるやまを こえくれて くものそこなる いりあひのかね | 後宇多院 |
976 | こえくれて はやさとちかく なりにけり やまちのすゑの いりあひのかね | 公雄 |
977 | こえかぬる いはねのみちに やととへは なほやまふかき かねのおとかな | 為藤 |
978 | やつはしを ゆくひとことに とひみはや くもてにたれを こひわたるそと | 上総(堀河院中宮) |
979 | しるらめや みやこをたひに なしはては なほあつまちに とまるこころを | 堪覚 |
980 | あつまちに きみかこころは とまれとも われもみやこの かたをなかめむ | 侍従(傀儡) |
981 | なかれいつる なみたはかりを さきたてて ゐせきのやまを けふこゆるかな | 道命 |
982 | くさまくら おもひねにみる ふるさとの ひとはいかなる ゆめむすふらむ | 尭尋 |
983 | みやこおもふ のへのかりいほの たひころも これやうきよの つゆのしたふし | 公時(藤原実国男) |
984 | ふるさとを よふかくいてし おもかけの つきにたちそふ たひのそらかな | 経賢 |
985 | たひころも すそののをはな つゆわけて そてにみたるる つきのかけかな | 行忠(度会) |
986 | こまなつむ いはきのやまを こえかねて ひともこぬみの はまにかもねむ | 定家 |
987 | あはれなる みやきかはらの たひねかな かたしくそてに うつらなくなり | 季経 |
988 | さととほき とりのやこゑも ほのかなり やまちのつきの あけかたのそら | 実伊 |
989 | ほのかなる のてらのかねの こゑまても あはれにたへぬ あきのたひひと | 左京大夫(永陽門院) |
990 | おきなれて あけぬとやしる とりのねも きこえぬやまを いそくたひひと | 通成 |
991 | あへのしま うのすむいしに よるなみの まなくこのころ みやこおもほゆ | 読人不知 |
992 | ふるさとの ひとのおもかけ つきにみて つゆわけあかす まののかやはら | 宗尊親王 |
993 | かりねする ゐなのささはら うきふしも しらてやこよひ つきにあかさむ | 満詮 |
994 | つきもなほ おなしやととふ かけならは くさのまくらの つゆははらはし | 経賢 |
995 | たひねする あしのこやにて みるときも おもかはりせぬ あきのつきかな | 経信 |
996 | こくふねや とほさかるらむ かへりみる いそへのまつを こゆるしらなみ | 覚誉法親王 |
997 | ふるさとは うらよりうらに へたたりぬ あとなきなみの やへのしほかせ | 定為 |
998 | みねのくも いそへのなみは かはれとも なほふるさとの おもかけそたつ | 為家 |
999 | すみよしと きくにこころは ととまるを いかなるなみの たちかへるらむ | 成仲 |
1000 | まとろまぬ うきねのなみの まくらにも みるおもかけは みやこなりけり | 公宗母 |
1001 | とまやかた しほたれあかす こよひかな あまのかるもを ひしきものにて | 仲綱 |
1002 | ききあかす かねのみさきの うきまくら ゆめちもなみに いくよへたてぬ | 義重(斯波義将男) |
1003 | うきねして きけはあしやの うらかせに ひまこそなけれ おきつしらなみ | 読人不知 |
1004 | なみかくる をしまかいその かちまくら こころしてふけ やへのしほかせ | 有家(藤原重家男) |
1005 | ちとりなく よさのうらかせ こころせよ みやここひしき たひのねさめに | 隆信 |
1006 | わかこひは あまのたくもの したもえて またほのめかす ほともなきかな | 清輔 |
1007 | たてそむる あしのしのやの ゆふけふり やかてひまなき おもひにそたく | 雅永 |
1008 | いかなれは かつかつものを おもふらむ なこりもなくそ われはかなしき | 俊子 |
1009 | おもひかは いはまのなみの うちつけに せきあへぬそての たまそくたくる | 後小松院 |
1010 | みにはまた ならはぬものを あやしくも ききしににたる そてのうへかな | 季能 |
1011 | しられしな しのひのをかの はつくさの はつかなるより もゆるおもひは | 公忠(藤原実忠男) |
1012 | けふこそは きみをみあれの あふひくさ おもひかけつと しらせそめぬれ | 経家(六条重家男) |
1013 | いかにせむ とやまのまつの はつしくれ のちもつれなき いろにみえなは | 雲雅 |
1014 | おもひそむる もりのこのはの はつしくれ しくるとたにも ひとにしらせむ | 土御門院 |
1015 | なひかすは いかにせむとか すまのあまの たくものけふり おもひたつらむ | 兼良 |
1016 | つれなくて やみなむのちの くやしさに おもひそめても えこそもらさね | 俊定(藤原経俊男) |
1017 | みたれあしの ほのみしまえを ゆくふねの やかてこころに かかるしらなみ | 公保 |
1018 | いろにこそ いつとなけれと むらさきの ひともとゆゑに おもひそめてき | 能因 |
1019 | ひとめみし かたちのをのに かるくさの つかのまもなと わすれさるらむ | 範政 |
1020 | おもひそむる こころのいろの ひとしほに いくたひそての まつしをるらむ | 公重(西園寺実衡男) |
1021 | しるらめや ほのかにみえし みかつきの そらにもひとを こひわたるとは | 行家(藤原知家男) |
1022 | しるらめや やとのこすゑを ふきかはす かせにつけても おもふこころを | 俊成(藤原俊忠男) |
1023 | ふくかせの たよりありとも めにみえぬ こころのいろを いかかたくへむ | 直明王 |
1024 | なにかその こころのほかに しをりせむ たちかへるへき こひちならねは | 実房 |
1025 | あくかれて わかみにそはぬ こころこそ こひのたたちの しるへなりけれ | 俊長 |
1026 | みすやいかに ゆきのしたなる おもひたに もゆれはもゆる ふしのけふりを | 為重 |
1027 | ふしのねに たえぬけふりも こころせよ わかしたもえの おもひあるよに | 実雄 |
1028 | いかにせむ ふしのねにこそ たてねとも そてにおもひの たえぬけふりを | 継尊 |
1029 | ひとめもる こころのうちの せきなれは ゆくもかへるも たれかいさめむ | 実氏 |
1030 | みちのくの ころものせきか ひとしれぬ なみたおさふる われかたもとは | 寂照 |
1031 | いひいてむ ことのはならて せめてたた なみたはかりを もらすまもかな | 為敦 |
1032 | まくらさへ うきぬはかりに なりにけり よるをひとまと ゆるすなみたに | 為連 |
1033 | しるらめや のへのわかくさ したもえて きえあへぬゆきの ひまをまつとは | 蓮生法師 |
1034 | おもひのみ ますたのいけの みかくれに しらぬあやめの ねにみたれつつ | 順徳院 |
1035 | さてもいかに いはかきぬまの あやめくさ あやめもしらぬ そてのたまみつ | 後鳥羽院 |
1036 | さてもまた ひとしれすのみ きえわひぬ みしまかくれの あまのいさりひ | 知家 |
1037 | ひきまゆの いとかくみをも つつますは こひしきのみそ なけきならまし | 宣旨(六条院) |
1038 | うしとても おもひもたえぬ ものゆゑに さのみつらさを ひとにかたらし | 俊恵 |
1039 | もらさねは またつれなさも みえぬより なにゆゑそての かくしをるらむ | 直義 |
1040 | こころにそ なほせきかへす なみたかは そてにもおちは ひとやしるとて | 忠房親王 |
1041 | しられしな かすみのうらに こくふねの ほのかにかよふ こころありとも | 後花園院 |
1042 | しられしな しのふのやまの はつしくれ こころのおくに そむるもみちは | 明魏 |
1043 | ゆきかよふ こころあれはと なくさめて いととしのふの やまのしたみち | 義運 |
1044 | ひまそなき しのふのやまの ゆふしくれ いはてとしふる そてのなみたを | 満意 |
1045 | ましはこる しつのつまきと なのらせて われひとしれぬ おもひにそたく | 俊成(藤原俊忠男) |
1046 | うらむなよ よそのひとめを つつむとて こころのほかに とはぬつきひを | 宗尊親王 |
1047 | きえぬへき つゆたにかけし しのふくさ こころはかりの したのみたれは | 為家 |
1048 | いはてのみ ものおもふひとの そてなれや しのふのくさに むすふしらつゆ | 資忠(藤原資信男) |
1049 | ひとめのみ しのふのつゆの おきもせす ねもせぬこひに みたれてそふる | 煕貴 |
1050 | さてもまた なつのにおふる さゆりはの しられぬつゆは ほすかたもなし | 信実 |
1051 | よひのまは くさはのつゆに ことよせつ ひるのたもとを いかかしのはむ | 成通 |
1052 | みくさかる あらののすすき うらわかみ またほにいてぬ ものをこそおもへ | 秀茂 |
1053 | しのすすき あきのさかりの つゆよりも ほにいてぬまの そてをみせはや | 国助 |
1054 | ほにいてて かよふとまては みえすとも まねくをはなの そてとたにしれ | 頼益 |
1055 | こやのいけの みくさにしつむ あしのはの したにそそての くちはてぬへき | 秀能(藤原秀宗男) |
1056 | いけみつの ふかきこころを としふとも いひいたさすは いかてもらさむ | 永縁 |
1057 | みさひえの そこのたまもの みたるとも しらるなひとに ふかきこころを | 兼好 |
1058 | ねにたてぬ かりはのききす さのみやは おのかありかを しのひはつへき | 実甚 |
1059 | あしひきの やましたみつの わきかへり いろにはいてし こかくれてのみ | 後鳥羽院 |
1060 | わかこひは またしるひとも しらすけの まののあきはき つゆももらすな | 良経(九条兼実男) |
1061 | なみかかる そてとなみせそ いそやまの いはもとすけの ねにはたつとも | 善節 |
1062 | しらせはや おのれくたけて よしのかは いはうつなみの いはぬおもひを | 経嗣 |
1063 | いつよりか いもせのなかに おちそめて よしののたきを そてにせくらむ | 後小松院 |
1064 | はしたかの はやまかくれの つゆなれや しられぬこひに おつるなみたは | 実遠(藤原季雄男) |
1065 | あしひきの やまよりをちに ゐるくもの おもひきゆとも ひとしらめやは | 資季 |
1066 | あたなりや あさゐるみねの しらくもの しられぬひとに おもひきえなは | 資平 |
1067 | ひとしれぬ みをのそまきの いつまてか つれなきかたに こころひかまし | 後花園院 |
1068 | わたらても ぬるるとならは なとりかは かけてこそみめ そてのしからみ | 有忠 |
1069 | たまもかる いせをのあまの そてならは ぬるともひとは とかめさらまし | 重家 |
1070 | すまのあまに あらぬうきみも いつまてか そてほしわふと こたへたにせむ | 満祐 |
1071 | しのひかね しほひもしらぬ なみのおとを なほふきよする そてのうらかせ | 教実 |
1072 | しのふくさ はすゑのつゆの みたれあひて きえはきゆへき かきりをそまつ | 後小松院 |
1073 | しくるるを おさふるそての したもみち みえぬちしほは とふひともなし | 信実 |
1074 | しのふたに くるしきものを あらはれて のちのうきなを いかになけかむ | 行忠(藤原) |
1075 | ひとしれぬ こひにはみをも えそなけぬ ととまらむなを せめておもへは | 紀伊(一宮) |
1076 | あひおもふ こころまてこそ かたからめ うきなをせめて もらさすもかな | 読人不知 |
1077 | つゆたにも もらさしとおもふ ことのはを みねのあらしに まかすへしやは | 大弐三位 |
1078 | きえわひぬ つゆもなみたも いろにいてて とふへきほとの ちきりならねは | 永観 |
1079 | うかるへき ひとのこころも しらぬまに しのふはかりそ おもひなりける | 実性 |
1080 | なほさりに つつむこころも みえやせむ おさふるそての なみたもらさは | 為定(御子左二条為道男) |
1081 | せきあへぬ そてよりおちて うきことの かすにもあまる たきのしらたま | 為遠 |
1082 | しられしと ひろははそてに はかなくも おつるなみたの たまやみたれむ | 雅世 |
1083 | せきとめて つきみるほとの なみたさへ あまれはそてに かけもたまらす | 永能 |
1084 | たれゆゑの そてのなみたと しられすは やとるはかりの つきはいとはし | 基隆(藤原基成男) |
1085 | つきをたに みるとはみえし ものおもふ わかいねかてを ひともこそしれ | 経賢 |
1086 | なにゆゑに なかむるつきの くもるらむ そらにしられぬ そてのしくれを | 宰相典侍(後宇多院) |
1087 | こひころも いろにはいてし しもとゆふ まさきのつなの よるのしくれに | 道家 |
1088 | おもひそめし いろはかはらし みつとりの あをはのやまは なほしくるとも | 隆親(藤原隆衡男) |
1089 | しらつゆも もるてふやまの したそめに たえぬなけきの いろやみゆらむ | 基任 |
1090 | おもひあれは つれなきいろも かはりけり えやはいはねの まつのしたつゆ | 通光 |
1091 | ほにいてて いさみたれなむ いとすすき しのふからにそ ひともつれなき | 公重(西園寺実衡男) |
1092 | よしさらは おさふるそての つゆはかり もらしそめてや こころをもみむ | 定為 |
1093 | いまはたた ひとのうきなそ しのはるる みはなからへむ いのちならねは | 光正 |
1094 | ふしのねに けふりもゆきも としふりて きえぬおもひの ほとそしらるる | 雅言 |
1095 | ふしのねに たえぬはなほも けふりにて わかみひとつそ けなはけぬへき | 高国 |
1096 | いまはとて いろにいつとも としつきの こころにそめし ほとはしられし | 義将 |
1097 | おもへとも いはねはこそと なくさめて なからへにける われそつれなき | 光俊(平) |
1098 | つれなきも ひとめゆゑそと なくさめて しのふそこひの いのちなりける | 道平 |
1099 | そてのいろを おもひもしるや としをへて われのみつつむ なみたならねは | 満季 |
1100 | たつねいらむ みちもしられぬ しのふやま そてはかりこそ しをりなりけれ | 俊成(藤原俊忠男) |
1101 | さりともと たつねこしちの かひもなく あとをたにみて かへるやまかな | 雅兼 |
1102 | たつねかね ゆきけむかたも しらくもの こころそらなる こひもするかな | 為忠(長良流藤原知信男) |
1103 | たのめこし さとのしるへも とひかねて みぬめのよそに かへるなみかな | 定家 |
1104 | うきなかは くもゐのよその ほとときす きくよりやかて とほさかりつつ | 師嗣 |
1105 | おとはかは おとにきくより そてにはや せきいるるみつの ゆくかたもなし | 俊豊 |
1106 | おもへとも またみぬほとは みつしほに いりぬるいその ためしたになし | 兼宗 |
1107 | やまとりの はつをのかかみ かけをたに またみぬひとに こひつつそなく | 雅有 |
1108 | おもかけを よそにみつつや やまとりの はつをのかかみ へたてはつへき | 後小松院 |
1109 | かりにたに もしほのけふり なひかすは みるめのうらも かひやなからむ | 資教 |
1110 | みそつらき いせをのあまの やくしほも みるめかるまは こかれやはする | 国夏 |
1111 | わたつうみの おきつしほあひに かるくさの みるはかりにて あふよしはなみ | 雅成親王 |
1112 | ほのかにも ひとをみあれの あふひくさ こころにかけて こひぬひもなし | 秀茂 |
1113 | あふひてふ たたあらましの くさのなに かくるたのみも はかなかりけり | 章義門院 |
1114 | ひとよたに ねてこそゆかめ をみなへし つゆけきのへに そてはぬるとも | 範永 |
1115 | ささなみや よるへもしらす なりにけり あふはかたたの あまのすてふね | 道玄 |
1116 | めくりあはむ すゑをはしらて ひたちおひの かことたになき こひもするかな | 資平 |
1117 | おのつから あふよあらはの あらましも おもひたえぬる みのおもひかな | 通光 |
1118 | ゆめにたに みるよもなくて あくるよの かへすころもの そてのうらなみ | 家長(源時長男) |
1119 | たえねとや するわさならし かたいとの しひてくれとも あはぬつらさは | 行家(藤原知家男) |
1120 | ささわけし そてのためしの ぬれころも ほさていくよの みちしはのつゆ | 俊成女 |
1121 | よとともに きえぬおもひを しなのなる おなしけふりの あさましのみや | 家長(源時長男) |
1122 | あすしらぬ なみたのたまの おのつから あはてやさても おもひたえなむ | 公雄 |
1123 | いかにせむ あたなるたまの おのれのみ あふにかへても ひとしとけすは | 良春 |
1124 | あふことに かへむとおもふ たまのをの たえぬはかりや たのみなるらむ | 尊円法親王 |
1125 | あふことは いなおほせとりの なきしより あきかせつらき ゆふくれのそら | 道助法親王 |
1126 | かりならぬ こころそそらに なきわたる くものよそなる ひとをこふとて | 読人不知 |
1127 | いかにせむ うきなをかへて かこつとも つらきこころの ひとをわかすは | 為定(御子左二条為道男) |
1128 | あふことは なたのしほせに ゆくふねの いやとほさかる なかそかなしき | 宗尊親王 |
1129 | みをうらの あまのをふねも しるへせよ へたつるなかの やへのしほちに | 遠房 |
1130 | なけきつつ かたしくそてに くらふれは きよみかせきの なみはものかは | 師氏(藤原忠平男) |
1131 | いつまてか せきのなにのみ あふさかを ききてかひなき おもひならまし | 境空 |
1132 | はしりゐの みつをはそてに かけなから いつらはひとに あふさかのせき | 公蔭 |
1133 | はかなくも なほあふさかと たのむかな へたつるなかの なをわすれつつ | 為経(甘露寺藤原資経男) |
1134 | いとはるる わかみなこその せきのなは つれなきなかや はしめなるらむ | 為氏 |
1135 | こひわふる そてのみなとの なみまくら いくようきねの かすつもるらむ | 忠良 |
1136 | あふことも なきさのとまや いたつらに あれゆくなかは うらかせそふく | 読人不知 |
1137 | あまのすむ さととはきけと おきつなみ たちよるまても なきちきりかな | 経継 |
1138 | いたつらに けふりはかりそ なひきける あはてのうらの あまのいさりひ | 寂縁 |
1139 | ひとりねの ころもはうすき ちきりにて あはぬうらみの よをかさねける | 成国(祝部) |
1140 | かたいとの ふしみのさとは なのみして あひみぬこひは よるそくるしき | 忠基(藤原高実男) |
1141 | あふことは なほかたいとの よるのゆめ つらきためしに なとみたれけむ | 基家 |
1142 | あけぬまを たのむひとよの ちきりたに なほかけわふる くめのいははし | 長遠(菅原秀長男) |
1143 | をはたたの いたたのはしと こほるるは わたらぬなかの なみたなりけり | 兼氏 |
1144 | さのみよも つらかれとては つらからし うきはうきみの とかにそありける | 経顕(藤原定資男) |
1145 | とはぬよの つらきかすのみ つもりゆく まくらのちりの みをなけくかな | 定親 |
1146 | はかなくも さすかあふよを たのむかな うきにをしまぬ いのちなれとも | 冬平 |
1147 | つきひのみ うつりにけりな つれもなき こころのはなは いろもかはらて | 元秀 |
1148 | なけきわひ よそにつきひは くれたけの またふしなれぬ ひとにこひつつ | 実継 |
1149 | うきふしに またかへるとも せめてたた ひとよはなひけ いささむらたけ | 読人不知 |
1150 | このよには つれなきこひに みをかへて なかくやはれぬ やみにまよはむ | 少将内侍(後醍醐院) |
1151 | むくひあらは われもつれなき みとなりて こむよもひとに あはしとやする | 浄意 |
1152 | つらかりし いまのむくひに のちまても むなしきなかの ちきりをそみる | 重吉 |
1153 | こひしなむ のちもこころの かはらすは このよならても ものやおもはむ | 為子(従二位) |
1154 | つひにさて あはてこのよを すくしては たかつれなさの なをかのこさむ | 公宗母 |
1155 | ひのひかり あひみてきえむ あさつゆの きえぬさきにも あひみてしかな | 実頼 |
1156 | このよには ひとことしけし こむよにも あはむわかせこ いまならすとも | 高田女王 |
1157 | ひとしれす われこひしなは あちきなく いつれのかみに なきなおほせむ | 業平 |
1158 | こひしなむ あとにもなほそ のこるへき けふりにそはぬ うきななりせは | 為理 |
1159 | あさゆふに よとのかはをさ さすさての さてこひしなむ のちのよもうし | 村基 |
1160 | これそいま まさしやむくひ あるみとも わかさきのよを しらはうらみし | 雅有 |
1161 | しらせはや あふにしかへむ とはかりの たれゆゑならぬ いのちなかさを | 公雄 |
1162 | こひしなは あはぬためしに なりぬとも のちのよとたに おもはましかは | 実房 |
1163 | こひしなむ みこそをしけれ くやしとも つれなきひとの おもひしらすは | 頓阿 |
1164 | みをしれは なほこそうけれ いつのよに つれなかりける むくひなるらむ | 宗久 |
1165 | こひしなは もえむけふりを ひともみよ きみかかたにそ なほもなひかむ | 資隆 |
1166 | こひしなて なほつれなきや うきひとの こころにならふ いのちなるらむ | 道嗣 |
1167 | こひしぬと いひてもへぬる としつきの いのちやひとに うたかはるらむ | 胤行女 |
1168 | こひしなは くやしかるへき のちのよと しりなからこそ そてはぬれけれ | 康頼 |
1169 | よしさらは われもつれなく なからへて つらきこころの はてをたにみむ | 有高 |
1170 | おなしよに ありときかれし つれなくて たのむとなほや ひとのおもはむ | 師氏(平常顕男) |
1171 | おなしよに ありときくたに つれなきに こひしなむみの はてそかなしき | 経継 |
1172 | あはれけに こころにかかる あまくもの よそにやひとを おもひきえなむ | 実雄 |
1173 | いかにせむ こころへたつる うきくもの うきにつけても かかるおもひを | 公忠(藤原実忠男) |
1174 | うちとけよ たにのをかはの うすこほり つかはぬをしの したのおもひに | 有房(源顕仲男) |
1175 | なけきつつ ひとりやさねむ あしへゆく かものはかひも しもさゆるよに | 明魏 |
1176 | あまのとを あけぬとつくる とりのねも ひとりぬるよは さもあらはあれ | 家房 |
1177 | つれなしや いのるとすれと うきことの ありしにこゆる かみのいかきは | 実雅 |
1178 | たのましな いのるにつけて うきなかの たむけにあける かみのこころは | 為明 |
1179 | ひとしれぬ わかねきことを たのむとも いさやよるへの みつのこころは | 慶運 |
1180 | うきなかを かけていのらむ かみしまや いそまのうらの なみのしらゆふ | 尊円法親王 |
1181 | あふことを いのちにかへて いのらはや かみもあはれと おもふはかりに | 基嗣 |
1182 | あふことを かきりとおもふ いのちをは なかかれとしも いのらぬものを | 為信 |
1183 | なからへて あれはそものも おもふみを あひみむまてと なにいのるらむ | 為子(贈従三位) |
1184 | みそきかは あふせはよそに なりにけり つれなきひとを かみやうくらむ | 実教 |
1185 | いのりきて あふせしなくは きふねかは かみもむなしき なをやなかさむ | 義教 |
1186 | きふねかは みそきにそては くちぬとも なみのしらゆふ なほやかけまし | 資任 |
1187 | きふねかは あふせもなみに せしみそき はてはなみたの たまそちりかふ | 定顕(叡山横川宝蔵坊) |
1188 | みそきする わかなかかはの おほぬさは つひによるせや あふせなるらむ | 寂身/寂真 |
1189 | みそきをは いかにうけけむ おほぬさの よるせもしらぬ みのちきりかな | 為敦 |
1190 | ゆふたすき かけてつれなき ちきりゆゑ かみもなひかぬ ほとそしらるる | 宣子(従一位) |
1191 | こひせしと せしみそきこそ うけすとも あふせはゆるせ かものかはなみ | 実継 |
1192 | みのとかに おもひなすこそ こひせしの みそきをうくる しるしなりけれ | 雅縁 |
1193 | いかにせむ かみのうけける みそきとて みしおもかけも わすれはてなは | 兼好 |
1194 | すみよしの まつはいのるも かひなきに よしさはしけれ こひわすれくさ | 澄覚法親王 |
1195 | いせのあまの しほたれころも なれてたに あかぬみるめに みたれてそふる | 教定(飛鳥井雅経男) |
1196 | なれてこそ こころにかかれ たまたれの みすはわするる ひまもあらまし | 後嵯峨院 |
1197 | よそなから いははあはれも かけぬへし なかなかうとき みとやなりなむ | 師郷 |
1198 | あさゆふに うきおもかけを みなれさを さすかにさてや なくさみやせむ | 隆信 |
1199 | みるからに ひとのこころそ くまれぬる あさきためしの やまのゐのみつ | 親清 |
1200 | たのましな そこのこころを しらぬまの うきみにふかき おもひありとも | 為顕 |
1201 | おとはかは いひわたらすは いはなみの たちゐにものは おもはさらまし | 寂念 |
1202 | つつめとも せきしあへねは なみたかは しらせそめつる けふにもあるかな | 頼政 |
1203 | ひとこころ いまはわさたの ほになれは いなはのつゆの おもひけぬへし | 素性 |
1204 | うちとくる こころのおくも みえぬるに しのふのやまそ へたてなりける | 直義 |
1205 | つひにさて いろやかはらむ たのめおく ひとのことのは ときはならすは | 為定(御子左二条為道男) |
1206 | ちきりおく すゑのはらのの あつさゆみ ひきわかるとも たえむなかかは | 実教 |
1207 | ことのはを なほやたのまむ あたひとの こころのはなは うつろひぬとも | 崇賢門院 |
1208 | たまのをの なかきよまては ちきらしよ ひとのこころも あすしらぬみに | 道嗣 |
1209 | ものおもはぬ ひとたにあすを しらぬよに のちとはいかて ちきりおくらむ | 覚誉法親王 |
1210 | たのまむと おもふにつけて いつはりの あるよそつらき ひとのことのは | 有忠 |
1211 | むすひおく ちきりそつらき しらいとの くるしやなにに みたれそめけむ | 隆教 |
1212 | やすらひに たのめていてし あとしあれは なほまつものを にはのよもきふ | 良経(九条兼実男) |
1213 | あとたえて はてはあさちに なりぬとも たのめしやとの むかしわするな | 保季 |
1214 | つれなくて いくあきかせを ちきりきぬ きさやまかけの まつとせしまに | 順徳院 |
1215 | なほさりに おもひなしてや たのめけむ うきにたへたる いのちなかさを | 雅世 |
1216 | わするなよ さすかちきりを かはしまに へたつるとしの なみはこゆとも | 尭孝 |
1217 | しらなみの かけしちきりを わするなよ またことうらに こころよすとも | 為子(従二位) |
1218 | わするなよ ちきりしすゑを まつらかた ひれふるやまは へたてはつとも | 栄仁親王 |
1219 | さてもまた とほやまとりの おのつから まてとちきりし ほとそすきゆく | 成実(藤原親実男) |
1220 | いつはりの ありやなしやの ゆくすゑも なからへはこそ おもひあはせめ | 少将内侍(後醍醐院) |
1221 | はるかなる ひとまつほとは しのふれと しるくやみゆる わかころもては | 好忠 |
1222 | まちわふる こよひやいろに いてぬらむ またひとしれぬ ちきりなれとも | 和氏 |
1223 | このくれも とはれむことは よもきふの すゑはのかせの あきのはけしさ | 読人不知 |
1224 | をきのおとも さそあらましの ゆふくれに まくらのちりを はらふあきかせ | 蓮生法師 |
1225 | つきをのみ まつへきものを ひたすらに たのめぬくれと おもはましかは | 実忠 |
1226 | いかにせむ こぬよあまたの そてのつゆに つきをのみまつ ゆふくれのそら | 後鳥羽院 |
1227 | いまはたた こぬよあまたの さよふけて またしとおもふに まつかせのこゑ | 雅経 |
1228 | わひつつも えやはねらるる おのつから たのむるよはの あめのつらさに | 按察(鷹司院) |
1229 | わひつつも ぬるよのあめに たれかまた さはらぬものと ひとをまつらむ | 重氏 |
1230 | いととまた さはりこそせめ なほさりに たのめしよひの むらさめのそら | 公豊 |
1231 | ぬれつつも われやゆかむの よひのあめに やすらふほとを とふひともかな | 兼良 |
1232 | よしさらは とはれぬよはの むらさめを さはるになして なくさみもせむ | 公冬 |
1233 | ぬれつつも とふへきひとの こころかは そをたにくもれ むらさめのそら | 雅親 |
1234 | なほさりの ちきりはかりを たのみにて またいつはりの くれやまたまし | 雅朝 |
1235 | ふちなみの よるとたのめし ことのはを まつにかかりて ひをくらすかな | 成仲 |
1236 | いかかせむ こころくらへに なりはてて とはれすとはぬ ゆふくれのそら | 定為 |
1237 | いたつらに われやあかさむ まつひとの まつよふけぬと おとろかさすは | 直親 |
1238 | まちわふる わかこころにや ふけぬらむ なかむれはなほ よひのつきかけ | 雲雅 |
1239 | こひしさは つかのまたにも わりなきを いまふたよまて ひとりねよとや | 重家 |
1240 | とはぬよの つもるにつけて かはらしと いひしはかりを なほたのむかな | 満親 |
1241 | こぬよはの つもれるちりや わかなかに のちはいもせの やまとならまし | 成光(祝部成国男) |
1242 | こぬひとを なほこりすまに まつやまは いくよなみこす ちきりなるらむ | 兼好 |
1243 | よなよなを かさねてそなほ しられぬる まちよわるみも こころつよさも | 雅世 |
1244 | いつはりと おもひはすてし まつことの つもらはひとの とひもこそすれ | 雅孝 |
1245 | ふけぬとも なほこそまため われたにも いひしちきりを いかかわすれむ | 尊円法親王 |
1246 | ふけてたに なほそまたるる せきもりの うちぬるひまを ひとやとふとて | 実量 |
1247 | よひよひの わかかよひちを へたつとも ふけてはゆるす せきもりもかな | 為季(長良流藤原為盛男) |
1248 | うきなかに なもむつましき あふさかの せきちはゆるせ たひならすとも | 為遠 |
1249 | かくはかり ひとのかたむる あふさかを いかてこころの ゆきかへるらむ | 保憲女 |
1250 | くるるまの おそきをたにも なけくみの なほつらかれと ふくるよはかな | 頼之 |
1251 | ちきりしを まちつるよひの てすさひに かきなすことの ねそふけにける | 師継 |
1252 | ひとはいさ かはらぬいろに ちきりおきて わかまつかせの おとそふけゆく | 為之 |
1253 | かならすと いひしもいさや たのまれす まつよふけゆく とこのやまかせ | 宣子(従一位) |
1254 | たのめつつ きみかこぬよの ころもてや まちかねやまの しつくなるらむ | 成通 |
1255 | ふけぬれと まきのいたとの さすかなほ あけはてぬまは またれすもなし | 宣子(従三位藤原) |
1256 | たまさかに ちきりしよはも またふけぬ またれぬかねを おとつれにして | 為相 |
1257 | こぬひとの うきをもしらぬ かねのおとに ふけぬとまては うらみさらまし | 為藤 |
1258 | たのめおきし ひともきまさぬ あきのよは またとりのねを まつかくるしさ | 俊恵 |
1259 | ひとめには またぬになせと よもすから さてもいまはの とりのねそうき | 崇光院 |
1260 | おもひやれ あきのよすから ねさめして なけきあかせる そてのしつくを | 三河内侍(二条院) |
1261 | いつよりか あふひとからと かこたまし まつほとにたに あけやすきよを | 頓阿 |
1262 | ふけぬるも ならひあれはと またれつる ほとにもすきて つきそかたふく | 冬平 |
1263 | あちきなく たのめぬつきの かけもうし いひしはかりの ありあけのそら | 忠良 |
1264 | なかつきの ありあけのつきは いてにけり こひしきひとは かけもみえねと | 為仲(橘義通男) |
1265 | まつひとは こぬものゆゑに はなすすき ほにいててねたき こひもするかな | 実朝 |
1266 | かたしきの そてゆくみつの うすこほり おもひくたけて いくよねぬらむ | 忠定(藤原兼宗男) |
1267 | きふねかは かみにいのりし あふせこそ なかれてふかき なかとなりけれ | 忠守 |
1268 | ゆくすゑの ちきりそしらぬ みしめなは なひくまてこそ かみはうくとも | 経賢 |
1269 | ちきりあれは いまあふさかも こえてけり せきよわかれの さはりともなれ | 永助法親王 |
1270 | たのますは しかまのかちの いろをみよ あひそめてこそ ふかくなるなれ | 俊成(藤原俊忠男) |
1271 | あふことは ゆめにのみこそ またれしか うつつまてとは おもはさりしを | 俊恵 |
1272 | ゆめならて あひみつるかな さよころも こよひうらみぬ つまをかさねて | 有房(六条通有男) |
1273 | こよひこそ うきをもうしと いふへきに わすれてとくる なかのしたひも | 雅縁 |
1274 | もらすなよ したゆふひもの とけそめて またもむすはぬ ちきりもそある | 万秋門院 |
1275 | つれなさに たえけるよりも したひもの とけてこころは むすほほれつつ | 為敦 |
1276 | あらいその なみのしたなる なひきもの なひくになほそ おもひみたるる | 義詮 |
1277 | つれなさを うらみしよりも かはるなと ゆくすゑおもふ いまそくるしき | 覚誉法親王 |
1278 | なみたかは ゆくすゑたのむ あふせにそ いのちをかくる そてのしからみ | 実忠 |
1279 | あふよさへ ぬるるたもとに ゆくすゑの ちきりたのまぬ ほとやみゆらむ | 深守法親王 |
1280 | あふよさへ ものおもへとや ゆくすゑを さたかにひとの ちきらさるらむ | 公忠(藤原実忠男) |
1281 | かはくちの せきのあらかき あふことは まとほなりとも こころへたつな | 雅有 |
1282 | たちかへり またやへたてむ こよひさへ こころもとけぬ したひものせき | 公名 |
1283 | とりのねの つらきはかりを うつつにて ゆめにそこゆる あふさかのせき | 貞国 |
1284 | なからへて またもあひみむ このままの ちきりにかへぬ いのちともかな | 為子(贈従三位) |
1285 | うらみわひ かたみにしほる たもとかな たかことわりの なみたなるらむ | 光吉 |
1286 | もろともに みてしもかなし よはのつき のちしのふへき かけとおもへは | 実経女 |
1287 | いかはかり あひみむよはを かさねてか わかむつことの かきりしられむ | 為冬 |
1288 | のちのよと やかてこよひや ちきらまし あふにかへむと いのりこしみを | 清空 |
1289 | あふことを いまはかきりと おもふには いのちもともに たえぬへきかな | 頼輔 |
1290 | おもへとも みをしわけねは ひとかたは こころのほかの よかれをそする | 教長 |
1291 | うらむなよ ひとめをなけく をりをりは わかこころなる よかれならぬを | 後二条院 |
1292 | われはたた こむよのやみも さもあらはあれ きみたにおなし みちにまよはは | 長明 |
1293 | おもふたに けぬへきものを あさつゆの おきわかれなは なにここちせむ | 知家 |
1294 | いまさらに つつむもつらき わかれより をしとおもふよを なほやのこさむ | 後光厳院 |
1295 | たえてなほ おもふそつらき いまはとて わかるるときに のこるいのちは | 光俊(葉室光親男) |
1296 | をりをりの つらさをなにに わすれきて いまはたしたふ わかれなるらむ | 経氏 |
1297 | これとても みにそひはてむ かたみかは おきわかれゆく そてのつきかけ | 忠嗣 |
1298 | おきわかれ かへるなみたの そてのうへに またふかきよの つきそのこれる | 慈忠 |
1299 | きぬきぬの そてのなみたに かけとめて つきもわかるる ありあけのそら | 読人不知 |
1300 | いきてまた めくりやあはむ かくはかり つらきわかれの ありあけのつき | 公泰 |
1301 | あふことに かへむといひし ままならは なかきわかれと とりやなくらむ | 浄弁 |
1302 | みをしれは これをかきりの わかれそと いくあかつきか したひきぬらむ | 高範 |
1303 | ゆきめくり なほこのよにと たのむかな いのちをかきる わかれならねは | 持世 |
1304 | こひしなむ わかれをこそは なけきしか おもへはうれし きぬきぬのそら | 国夏 |
1305 | ふかきよの わかれといひて まきのとの あけぬにかへる みとはしられし | 為定(御子左二条為道男) |
1306 | かきくらす なみたのひまの あらはこそ いまのわかれの おもかけもみめ | 冷泉(花園院) |
1307 | むつことも またつきかけの ふかきよに なにいそくらむ ひとのわかれち | 治仁王 |
1308 | ありあけの つれなきよりも うきものは とりのねまたぬ わかれなりけり | 雅平女 |
1309 | かこたむと おもひしとりの こゑをさへ またてそいそく ひとのわかれち | 義将 |
1310 | さてもなほ ひとはわかれを いそくかと とりのねきかぬ あかつきもかな | 匡遠 |
1311 | わかれちを ことはのこらす したへとや かねてはとりの おとろかすらむ | 慶運 |
1312 | うたてなと ことはのこりて あくるよに ゆふつけとりは ねをつくすらむ | 定顕(叡山横川宝蔵坊) |
1313 | あくるまの かねをもまたぬ つらさかな よふかきとりの こゑにわかれて | 為相 |
1314 | おのつから まとろむほとに わすらるる こひをゆめこそ おとろかしつれ | 越前(嘉陽門院) |
1315 | ゆめちにも よるはこえしと みるはかり まくらのちりよ やまとたになれ | 隆祐 |
1316 | くやしくそ たたときのまの うたたねに またみぬゆめを むすひそめける | 為兼 |
1317 | うつつまて なこりにそへて うきものは ほとなきゆめの ちきりなりけり | 雅家 |
1318 | おもひねに わかこころから みるゆめも あふよはひとの なさけなりけり | 忠良 |
1319 | うらみわひ うちぬるほとの たまくらに あふとみえつる ゆめをしそおもふ | 茂成 |
1320 | みてもまた あとなきゆめの ちきりをは たかうきなかに むすひそめけむ | 信空 |
1321 | こころこそ ゆきてはかへれ あふとみる ゆめちはたれに いさなはれけむ | 頓宗 |
1322 | よしやその さむるわかれは つらくとも みるほとたにも ゆめとしらすは | 祐臣 |
1323 | かねのおとに あふとみえつる ゆめさめて こぬひとにさへ わかれぬるかな | 義詮 |
1324 | さむしろや あたりさひしき ねさめして ゆめのわかれも つゆけかりけり | 良平 |
1325 | はかなくて さめにしゆめの わかれまて おもへはつらし ありあけのつき | 澄覚母 |
1326 | ひとりぬる とほやまとりの ちきりたに かさなるみねを へたてやはする | 頓阿 |
1327 | なかめやる そなたのそらは つれなくて ひとりしくるる さよのなかやま | 保綱 |
1328 | まくらとて いくよのくさを むすひても いつかはきみに あふさかのせき | 丹後(宜秋門院) |
1329 | いかにせむ せめてはたひの そらたのめ むなしくまたむ ゆふくれもかな | 家衡 |
1330 | わすれしの ちきりはかりを むすひてや あはむひまての のへのゆふつゆ | 雅経 |
1331 | いのちやは あたのおほのの くさまくら はかなきゆめも をしからぬみを | 順徳院 |
1332 | つらしとも けさはたれにか かたらまし みしよのゆめの うつつならすは | 実氏 |
1333 | ゆふくれを たのむなさけの のこらすは けさそかきりの いのちならまし | 茂重 |
1334 | おもひあまり またとたのめし ことのはや くれまつほとの いのちならまし | 賢雅 |
1335 | けさもなほ とりなかすはと かこつかな かへるはひとの つらさなれとも | 成胤 |
1336 | あはてたに としへぬるみの いつのまに けさのわかれを したひわふらむ | 実勝 |
1337 | よもすから つらさをむすふ したひもの たれにとけてか けさはみゆらむ | 蓮生法師 |
1338 | またむすふ ちきりもしらて きえかへる のかみのつゆの しののめのそら | 後小松院 |
1339 | こひこひて よるはあふみの あさつまに きみもなきさと いふはまことか | 為忠(長良流藤原知信男) |
1340 | こひこひて あふになくさむ ならひとも わかれをしらぬ ひとやいひけむ | 伊長 |
1341 | ゆきやらて さそまよひけむ しらつゆの おきわかれにし あけくれのそら | 宗宣(北条宣時男) |
1342 | たちかへり あふよまてなほ ほさてみよ わかれしままの そてのうらなみ | 資明 |
1343 | わかれしは つらきなからの おもかけや しひてまたねの ゆめにみゆらむ | 実清(三条西公時男) |
1344 | まとろまぬ けさのまたねの とこにたに つらきわかれは ゆめかとそおもふ | 宗泰(藤原宗重男) |
1345 | あふことは あとたにもなき しらくもの そらにのみたつ なをいかにせむ | 公相 |
1346 | かつらきや たかまのくもの いかにして よそなるなかの なにはたつらむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1347 | いもせやま おもはぬなかに ゆくみつの たかつらさより なをなかすらむ | 資宣 |
1348 | いかにせむ たつなはかりは たかしまや みをのそまきの しけきおもひを | 実冬女 |
1349 | かしはきの もりてうきなに たちぬるや もえしけふりの はしめなりけむ | 読人不知 |
1350 | いまそなほ まさるなみたの たまかしは もにうつもれて なになけきけむ | 親雅 |
1351 | なみたこそ こころにかなふ ものならね おさふるそての なとゆるしけむ | 定資 |
1352 | ひとしれぬ そてにさへなほ つつみしを いかてよにもる なみたなるらむ | 公豊 |
1353 | いかなれは いろにいてても あはれとは ひとにしられぬ なみたなるらむ | 具行 |
1354 | そてにたに せかれぬものは なみたより ほかにもりぬる うきななりけり | 禅守 |
1355 | なみたをは あやなくそてに せきとめて うきなはかりや よそにもるらむ | 崇賢門院 |
1356 | なかそらに なすなよふしの ゆふけふり たつなにかへて おもふわかみを | 義教 |
1357 | うきなのみ たかせのよとの こもまくら かはさぬなかに なほやみたれむ | 雅永 |
1358 | なきなのみ たつことやすき あしかもの さわくいりえの みつからそうき | 忠定(藤原兼宗男) |
1359 | いつはりの あるをならひに さのみなと なきなをさへに ひとのたつらむ | 之盛 |
1360 | いととしく くちぬるそてに ぬれきぬを ひきかさねても なけくころかな | 俊頼(源経信男) |
1361 | いかにせむ しのふとすれと ねにたてて あさののききす かくれなきみを | 読人不知 |
1362 | ひとしれぬ をはなかもとは なかなかに かれにしのちそ あらはれにける | 慶運 |
1363 | おとにきく たこのうらなみ それならて こひすてふなの たたぬひそなき | 静仁法親王 |
1364 | くちねたた みらくすくなき うきなのみ よにみつしほの なみのしたくさ | 経嗣 |
1365 | たれとなく よせてはかへる なみまくら うきたるふねの あともとまらて | 良経(九条兼実男) |
1366 | あすかかは かはるつらさの うきせより やかてなみたの ふちとなりぬる | 為秀 |
1367 | あすかかは みつもまさらて かはるこそ ひとのこころの うきせなりけれ | 成光(祝部成国男) |
1368 | かきやれと こころのすゑの とほらぬは ちきりやあさき みつくきのあと | 雅久 |
1369 | ふかからぬ ちきりなからの かけたにも なとやまのゐに みえすなりけむ | 内経 |
1370 | みさこゐる いりえのみつは あさけれと たえぬをひとの こころともかな | 堀河(待賢門院) |
1371 | いまはたた あたちのまゆみ ひくてにも かはるこころの ほとそしらるる | 但馬(藻壁門院) |
1372 | うきみのみ おもひそよわる あつさゆみ ひくかたつよき ひとのこころに | 経顕(藤原定資男) |
1373 | あふことを いつとかまたむ いろかはる ひとのこころの あきのはきはら | 義運 |
1374 | しもむすふ まかきにのこる ふゆくさの かれもしぬへき ちきりなりけり | 読人不知 |
1375 | おのつから こころにもあらぬ たえまかと かはるをみても なほたのむかな | 一条(万秋門院) |
1376 | ひとこころ こなたかなたに よるいとの たたひとすちに たのむはかなさ | 宝城 |
1377 | よそにのみ おもひすてても かなしきは またぬゆふへの いりあひのかね | 為理 |
1378 | いつまてか こころつくしと なりにけむ わかみひとつに のこるゆふくれ | 資教 |
1379 | いまはみに おもひすてにし ゆふくれの ならひもしらぬ にはのまつかせ | 祐臣 |
1380 | ゆめにたに あひみぬなかを のちのよの やみのうつつに またやしたはむ | 慶運 |
1381 | おもひせく なみたのかはの よとはあれと たえむいのちの しからみそなき | 惟賢 |
1382 | しぬはかり おもふといへと めにみえぬ こころなれはや ひとのたのまぬ | 寂身 |
1383 | おなしくは おもふこころの おくのうみを ひとにしらせて しつみはてなむ | 義教 |
1384 | きみたにも せきととめすは よしのかは なかれてはやく すみもしてまし | 顕仲母 |
1385 | あらたまの としかへるまて あひみねは こころもしのに おもほゆるかな | 家持 |
1386 | あひみては はやみとせにも なりにけり ひとひもふへき ここちやはせし | 匡衡 |
1387 | なほさりの たまつさをたに まちもみす くもゐのかりの みたひくるまて | 頓阿 |
1388 | おほつかな たかこころより とけてまた むすほほれけむ よはのしたひも | 四条(安嘉門院) |
1389 | くもりゆく かかみのかけは とほさかる ひとのこころの みゆるなりけり | 尊胤法親王 |
1390 | ますかかみ うつりやすきは こころにて ともにみしよの おもかけそなき | 尊道法親王 |
1391 | うつりゆく ひとのこころは しらくもの たえてつれなき ちきりなりけり | 良経(九条兼実男) |
1392 | へたてゆく ひとのこころの おくにこそ またしらかはの せきはありけれ | 満元 |
1393 | かきたえて へたつるなかと なりにけり みしたまつさの もしのせきもり | 読人不知 |
1394 | いかなれは またたちかへり まよふらむ あふをかきりと ききしこひちに | 実継 |
1395 | たちかへり またしたふへき かたそなき うきみしられし のちのつらさは | 深守法親王 |
1396 | たちかへり さてこひしなは あふことに かへしいのちと おもひこそせめ | 杲守 |
1397 | なからへて いまさらなけく いのちこそ あふにかへたる つらさなりけれ | 雅親 |
1398 | いかさまに うらみよとてか あひみての のちさへひとの つれなかるらむ | 忠景 |
1399 | あたになと かはりはすらむ あひみるも このよひとつの ちきりならぬに | 直義 |
1400 | うかりける そのよのゆめを うつつにて うらむるほとの ちきりともかな | 実躬 |
1401 | かくしつつ うきみきえなは ありしよの ゆめをはかなみ あはれとをみよ | 公経(藤原実宗男) |
1402 | つゆのみの そのあかつきに きえすして たえぬうらみに むすほほれつつ | 良平 |
1403 | いまはたた かさねしさての うつりかも こころのうちに のこるはかりそ | 通成 |
1404 | またれしを かはるつらさと おもふまに やかてこぬよの つもりはてぬる | 弁内侍(後深草院) |
1405 | かきりそと わかれしときに いはぬこそ おもへはひとの なさけなりけれ | 読人不知 |
1406 | いろみえて うつろふひとの こころより はなはつれなき ものとしりにき | 成実(藤原親実男) |
1407 | たけくまの まつほとすきて とはぬかな むかしはみきと おもひいてすや | 為忠(御子左二条為藤男) |
1408 | よそなから ふるかはのへに たつすきも またあひみしと ちきりやはせし | 為藤 |
1409 | つれなくて またもあひみぬ ちきりさへ うきなにたてる ふたもとのすき | 定親 |
1410 | みるめさへ たえにしのちは あまのすむ さとそといひて とふかひもなし | 為遠 |
1411 | いせのうみの つりのうけなは たえぬれと またきえやらぬ あまのいさりひ | 教実 |
1412 | ちかひてし ひとのいのちの かなしきは たのむこころや なほのこるらむ | 覚助法親王 |
1413 | あふことを またとたのみて かへさりし いのちくやしき みのちきりかな | 国冬 |
1414 | おもひかは かけみしみつの うすこほり かさなるよはの つきもうらめし | 家隆 |
1415 | ほともなく なかれそとまる あふせかは かはるこころや ゐせきなるらむ | 盛方 |
1416 | もろともに ちりうちはらひ ねしとこの おもかけのこる よはのさむしろ | 宗宣(北条宣時男) |
1417 | きぬきぬに かこちしとりの したりをの そのままなかき ねにやたてまし | 雅縁 |
1418 | かひなしや そをたにのちの かたみとも おもはぬなかに かけはなれなは | 雅永 |
1419 | かひなしや にはひのかけに みしひとの わすれぬことの しるへはかりは | 親清女妹 |
1420 | こひをのみ しつのをたまき としをへて またくりかへし あふよしもかな | 実冬(藤原公光男) |
1421 | ありしよを みはてぬゆめの まくらにも なほうらめしき かねのおとかな | 通親 |
1422 | あひみしは ありしうつつを かきりにて いまはゆめにも ことのはそなき | 教実 |
1423 | しのふへき おもかけたにも みにそはす ありしひとよの やみのうつつは | 杲守 |
1424 | あたにのみ みしはひとよの たまくらに かへるゆめちの なとなかるらむ | 蘊堅(薀堅) |
1425 | あふとみる ゆめやむかしの ゆめならぬ うきひとりねは もとのみにして | 持之 |
1426 | いまはよし なれしはかりは あらすとも なほさりにたに とふよはもかな | 為秀/為藤 |
1427 | ありしよの おもかけのこる つきにさへ なみたくもりて とほさかりぬる | 頼之 |
1428 | ありしよの ゆめはなこりも なきものを またおとろかす やまのはのつき | 基綱(藤原基清男) |
1429 | なけきわひ せめてそのよを したへとや わすれしかけの つきにそふらむ | 為道 |
1430 | さらにまた なみたそくもる もろともに みしおもかけや つきにそふらむ | 談天門院 |
1431 | みるほとそ しはしなくさむ なけきつつ ねぬよのそらの ありあけのつき | 俊成女 |
1432 | つきみても なくさむかたそ なかりける たのまぬよはの ありあけのそら | 寂蓮 |
1433 | おもひいては たかなみたにも くもるらむ ちきりしつきの おなしかたみに | 読人不知 |
1434 | もろともに みしはむかしの そてのうへに いまはなみたを かこつつきかな | 読人不知 |
1435 | ありあけの つきをそのよの かたみにて なくさむほとの ちきりたになし | 光経 |
1436 | いまはよも あふにもかへし いたつらに をしまてすてむ おいのいのちは | 公雄 |
1437 | あふことを まつとはなしに としもへぬ おもひたえよと いはぬたのみに | 公宗母 |
1438 | あふことは いつをまてとも ちきらぬに なにをたのみに なからふるみそ | 小宰相(徽安門院) |
1439 | かくはかり おもひたえにし としつきの うきにまきれす ひとのこひしき | 顕朝 |
1440 | なからへむ ちきりのほとも しらたまの をたえのはしに かけてこひつつ | 賢俊 |
1441 | さりともと こころなかくや たのままし わかたまのをの あらむかきりは | 師嗣 |
1442 | いろかはる のちをたにとへ としのをに かけしなみたの たまはいかにと | 為重 |
1443 | としつきの ひとのちきりも あらぬよに なほいつまてと のこるいのちそ | 義持 |
1444 | たくひなき わかなけきさへ としふりぬ みののをやまの まつとせしまに | 実雅 |
1445 | としつきを ふるのわさたの いまさらに ほにいててひとを こひむものかは | 雅言 |
1446 | かかみやま としへぬるみと なりにけり うつりしなかに ものおもふとて | 経氏 |
1447 | さのみやは うきにとしへむ うきくさの ねもみぬひとを おもひたえなて | 知家 |
1448 | あきはきの したははよそに みしかとも ひとりねむとは おもはさりしを | 貫之 |
1449 | ものそおもふ したはいろつく はきのとの あくるいくよも いねかてにして | 頓阿 |
1450 | わきもこか きぬにはすらし まはきはら うつろふいろに ならひもそする | 兼良 |
1451 | あたひとの こころのはなは をられねは にほひをのこす なこりたにせし | 大輔(殷富門院) |
1452 | をみなへし たをるそてこそ にほひぬれ うしろめたしと いもやとかめむ | 通俊 |
1453 | みをしらて さのみうらみし ことのはそ わするるなかの はしめなりける | 公忠(藤原実忠男) |
1454 | はかなしや つらきはさらに つらからて おもはぬひとを なほおもふみは | 性助法親王 |
1455 | きのふといひ けふととはすは あすかかは あすやなみたの ふちとならまし | 経嗣 |
1456 | としもへぬ なみたのつゆの たまのをよ こなたかなたに おもひみたれて | 義将 |
1457 | としをへて おもひけりとも しるはかり かはるなみたの いろをみせはや | 新右衛門督(中務卿宗尊親王家) |
1458 | ひくかたに ひとのこころは つきゆみの おもひかへさぬ なかそくるしき | 尊氏 |
1459 | われはかり わするるよなく なけけとや うきおもかけを なほのこすらむ | 為定(御子左二条為道男) |
1460 | きみはかく わすれかひこそ ひろひけれ うらなきものは わかこころかな | 左近(三条院女蔵人) |
1461 | おなしよに またつれなくて ありやとも いつまてひとの おもひいてけむ | 為子(贈従三位) |
1462 | きくもうし こころのたねの わすれくさ いつよりかよに なをのこしけむ | 定為 |
1463 | かたみとや いまはいはまの わすれみつ むすひしそての ぬるるはかりを | 守遍 |
1464 | なほそうき われもわすれむ とはかりに おもひとちめぬ こころよわさは | 茂重 |
1465 | よそになる ひとのこころの うきくもや いもせのやまの へたてなるらむ | 資明 |
1466 | いへはなほ ひとこそうけれ いくよしも あらしわかみを なとわするらむ | 定円(葉室光俊男) |
1467 | わすれしと いひしちきりや おのつから おもひもいては くやしかるらむ | 浄弁 |
1468 | なほさりに なかむへしやは わすられて ものおもふころの ゆふくれのそら | 素明 |
1469 | おもひわひ うちぬるひまの かたけれは ゆめもよかるる とこのうへかな | 惟明親王 |
1470 | はかなくそ よるはすからに おきゐつつ まくらたにせて ひとをこひける | 為世(御子左藤原為氏男) |
1471 | ひとりのみ ぬるをならひの たまくらに すきまのかせは いとふよもなし | 尭尋 |
1472 | おなしよの たのみはかりの なくさめも かひなきほとの みをいとふかな | 進子内親王 |
1473 | ひとはなと かはりはてなて なかなかに つもるよかれを おとろかすらむ | 読人不知 |
1474 | かくやはと なにかうらみむ うしとても いひしにたかふ こころならすは | 顕朝 |
1475 | おしかへし なほやうらみむ あつさゆみ われにはひかぬ こころつよさを | 実躬 |
1476 | おしかへし うらみてもみむ つらかりし ひとのこころの かはりもそする | 貞秀 |
1477 | つれなきに おもひたえなて なほこふる わかこころをそ いまはうらむる | 兼房 |
1478 | つらしとも いははしたふに なりぬへし なかなかひとを うらみたにせし | 吉子(従三位) |
1479 | うらみても またたちかへり したふかな おもふにまくる こころよわさは | 定宗(藤原家親男) |
1480 | うきせのみ まさるなみたの かはやしろ ほさぬころもの うらみわひつつ | 杲守 |
1481 | さのみまた うらみしもせし したひもの したのこころの とけぬかきりは | 頼秀 |
1482 | みせはやと おもふなみたも ことのはも うらみそめては えこそととめね | 為信 |
1483 | ことのはを つくしてのちは たちかへり みをしるかひも なきうらみかな | 慶運 |
1484 | たれかなほ つらさはまさる あまのすむ さとのしるへを ともにたつねて | 為世(御子左藤原為氏男) |
1485 | ことのはは うきにつけても なきものを かこつやあさき こころなるらむ | 為藤 |
1486 | みにしらぬ つらさなれはや たちかへり われをもひとの なほかこつらむ | 為定(御子左二条為道男) |
1487 | なにゆゑに うらみもすらむ わかみこそ うきをもうしと おもひそめしに | 道我 |
1488 | おもかけは わすれかたみに なからへて わかためつらき よはのつきかな | 為氏 |
1489 | まちえても ひとのちきりそ うかりける おなしうらみの やまのはのつき | 教定(飛鳥井雅経男) |
1490 | ちきりのみ あさかのぬまの あやめくさ ふかきうらみに ねこそなかるれ | 遠久 |
1491 | あまころも なほいかならむ しほくまぬ みにたにぬるる そてのうらなみ | 忠房親王 |
1492 | あまのすむ さとのしるへを うらみても ゆくかたしらす たつけふりかな | 成実(藤原親実男) |
1493 | みにつもる うらみはさても あまのすむ さとのしるへや こころなるらむ | 通成 |
1494 | つらからは かれなてあまの さのみなと みをうらなみに そてぬらすらむ | 国助 |
1495 | うらみても なほたのむかな みをつくし ふかきえにある しるしとおもへは | 俊成(藤原俊忠男) |
1496 | たくひなく つれなきひとは さておきて いけるわかみの うらめしきかな | 大輔(殷富門院) |
1497 | みくまのの うらのはまゆふ うらみても つらきこころを いくへとかしる | 教実 |
1498 | うきみから ひとをつらしと しりぬれは ことわりなくも おつるなみたか | 甲斐(四条宮) |
1499 | かりそめの たえまをさへや うらむへき ことわりなきは なみたのみかは | 俊頼(源経信男) |
1500 | あはちしま とわたるふねの かちまにも われはわすれす きみをしそおもふ | 赤人 |
1501 | こころうき ものにそありける はるかすみ たなひくときに こひのしけきは | 坂上郎女 |
1502 | とへかしな なみたのとこに ふしわふる わかかたしきの そてのうらなみ | 実家女 |
1503 | つれなさを うらみよとてや ときはやま したはふくすに かせのふくらむ | 素暹 |
1504 | こころにも かなはさりける よのなかに うきめはみしと おもひけるかな | 小町 |
1505 | あまひとの たまもかりほす そてのうらに われたちぬれぬ なみのよるよる | 進子内親王 |
1506 | おきつしま とまるをふねの いかりなは いかてくるしき ほとをしらせむ | 為家 |
1507 | あたひとの こころそみえぬ わかそてに せきいれておとす たきはあれとも | 基家 |
1508 | うかりつる ひとのこころの たきつせに おちそふものは なみたなりけり | 尭尋 |
1509 | つらしとて おもひかへらぬ わかこひや なかるるみつの こころなるらむ | 教長 |
1510 | いまよりは なにをたのみに なからへむ なほいつはりも いのちなりけり | 嗣継 |
1511 | いかにせむ わすれわひぬる こひしさの みをしはなれぬ こころよわさを | 隆博 |
1512 | ひとしれす みにしむいろや くれなゐの なみたになるる そてのあきかせ | 親清 |
1513 | さてもうき たかこころとて ふくからに わかみをしをる あきのあらしそ | 読人不知 |
1514 | そてにもる なみたのはてよ しらたまか なにそはつゆの ちきりたになき | 満輔 |
1515 | まつかせの あやしきときは めにみえぬ ひとをあはれと おもふなりけり | 師輔 |
1516 | あきかせは はやふきたちぬ とはかりや こひせぬひとは よそにきくらむ | 俊恵 |
1517 | わかこひは ゆくかたもなき なかめより むなしきそらに あきかせそふく | 慈円 |
1518 | おもひのみ ますみのかかみ せめてさは うきおもかけは のこらすもかな | 通敏 |
1519 | まことにや ひとのくるには たえにけむ いくののさとの なつひきのいと | 兼房 |
1520 | あさなあさな くさはにしろく おくつゆの きえはともにと いひしきみはも | 読人不知 |
1521 | あはれなと いまはかけみぬ うもれみつ なかれてなほも そてぬらすらむ | 公相 |
1522 | おちつもる このはかくれの わすれみつ すむともみえす たえまのみして | 伊勢大輔 |
1523 | なかなかに たえぬるあとの わすれみつ よにすむとたに ひとにしられし | 公顕 |
1524 | かたみとて ととめもおかぬ おもかけを わすれはてしと おもふはかなさ | 雅孝 |
1525 | ひとかたに つれなきよりも つらきかな いまさらかはる ひとのこころは | 為尹 |
1526 | かはるてふ たねとしならは わすれくさ わすれてもまた ひとのとへかし | 慶深 |
1527 | あたにのみ ちかひしことの なりゆくは かみをもひとや わすれはつらむ | 忠房親王 |
1528 | つれなさに いひたえにしを いけみつの つつみあへぬは なみたなりけり | 定頼 |
1529 | なみたかは あふせもやかて たえはてぬ ひとめはかりを せくとせしまに | 公泰 |
1530 | としつきの つもるうらみを かこつまに いやとほさかる なかとなるらむ | 頼之 |
1531 | いまはとて おもひたえたる よこくもの わかれしそらそ かたみなりける | 秀能(藤原秀宗男) |
1532 | ふけしよの つらさににたる つきかけも いつまてまちし かたみなりけむ | 経忠(藤原家平男) |
1533 | たのめしは よよのちきりに なりはてて かたみのつきそ そてにのこれる | 行房 |
1534 | ちきりしも あらぬこのよに すむつきや むかしのそての なみたとふらむ | 実冬(藤原公忠男) |
1535 | なきなそと いひはてよとや つつみこし ちきりのすゑは とほさかるらむ | 為遠 |
1536 | ちきらすよ せくもひとめを おもひかは あさきになして かけたえむとは | 元康 |
1537 | わかことく おもひはいつや やまのはの つきかけをみて なけくこころを | 敦道親王 |
1538 | たえはてし ひとのこころそ なみたかは なほみなかみの はしめなりける | 実氏 |
1539 | うきたひに これそかきりと かこちしは はかなくたのむ こころなりけり | 兼好 |
1540 | まれにこし うらみはいまそ あさちはら あとたえはつる ひとのちきりに | 持之 |
1541 | かよひこし あとたにみえぬ まくすはら なほわかかたは あきかせそふく | 読人不知 |
1542 | いつはりの うきをうらみし ゆふくれの こひしきまてに なりにけるかな | 隆博 |
1543 | こまのあしも つまつくとてや あをつつら くるよもしらぬ なかとなりけむ | 為盛 |
1544 | こぬまても さすかまたれし まきのとに やすらふほとの なくさみもなし | 良実 |
1545 | うきなをも よそになしてや なくさめむ われをふるせる あきのゆふくれ | 隆敦/隆親(藤原隆衡男) |
1546 | さりともと まちしたのみの ゆふくれも いつよりよそに おもひたえけむ | 為氏 |
1547 | いつまてか まちわたりけむ たのめしも むかしかたりの ゆめのうきはし | 資平 |
1548 | とはれしは むかしかたりの ゆふくれに おもひもいれぬ をきのうはかせ | 知家 |
1549 | かれにけり ひとのこころの あきかせに はてはなけきの もりのことのは | 秀茂 |
1550 | たまさかに あふことのはも かれぬれは ふゆこそこひの かきりなりけれ | 俊忠 |
1551 | はつしもの をかのかけくさ かりにのみ かよひしあとは やかてかれにき | 為家 |
1552 | なかなかに またたのまるる よなりけり かはるへしとも ちきりやはせし | 具親 |
1553 | あとたえて ふかきなみたの いろまても とはれぬやまの あきそかなしき | 後鳥羽院 |
1554 | ひとこころ をたえのはしに たちかへり このはふりしく あきのかよひち | 定家 |
1555 | くちのこる いたたのはしも かよふよに たえにしなかは なににかけまし | 持基 |
1556 | おのつから くるとみしまに みちのくの とつなのはしの なかはたえにき | 為明 |
1557 | たえはつる ひとのちきりの かたいとは よるとてあはむ たのみたになし | 義重(斯波義将男) |
1558 | あしかきの まちかくみえし かよひちは たかうきかたに へたてはつらむ | 一条(万秋門院) |
1559 | をちこちの かせとそいまは なりなまし かひなきものは わかみなりけり | 朱雀院 |
1560 | はなよりも ちりちりになる みをしらて ちとせのはると たのみけるかな | 常陸乳母 |
1561 | つらしとや やまのさくらも おもふらむ しらすかほにて すくるはるかせ | 道命 |
1562 | おもはすよ はなをかたみの さかのやま ゆきにあととふ ちよのふるみち | 満元 |
1563 | つきかけの うきよにいてし けふしもあれ なとたらちねの くもかくれけむ | 雅有 |
1564 | ときしもあれ そてにうきねを かけそへて あめもなみたも はれぬそらかな | 高範 |
1565 | さみたれの そらもかきりは あるものを こころのやみの はるるまそなき | 顕頼 |
1566 | ほしわひぬ こそのなみたの ふちころも ころもわすれぬ さみたれのそら | 杲守 |
1567 | のこしおく あふきのかせも かなしきは わかれしくさの かけのしらつゆ | 後小松院 |
1568 | あきといへは たむけしことの ををたちて あらぬうきねに よをやつくさむ | 家綱女 |
1569 | なきひとの このよにかへる おもかけの あはれふけゆく あきのともしひ | 隆祐 |
1570 | くものうへに ゆくすゑとほく みしつきの ひかりきえぬと きくそかなしき | 右京大夫(建礼門院) |
1571 | とへかしな かけをならへて むかしみし ひとなきよはの つきはいかにと | 良経(九条兼実男) |
1572 | いにしへの かけなきやとに すむつきは こころをやりて とふとしらすや | 慈円 |
1573 | ふるさとに かはらすすめる つきみれは なほなきかけそ かなしかりける | 実伊 |
1574 | ききのいろも うつろひそめぬ はつしくれ さためなきよの なけきせしまに | 公時(藤原実継男) |
1575 | ははそはら ちりしわかれを おもひいてて けふこのもとに いかかしくるる | 雅孝 |
1576 | ははそはら ちりしわかれに おとらめや けふこのもとの そてのしくれは | 宰相典侍(後宇多院) |
1577 | むしのねを たつねしひとも ふゆくさの はてはのはらの けふりなりけり | 保綱 |
1578 | よのなかの すゑはにかかる つゆのみは もとのしつくを よそにやはみる | 宣旨(六条院) |
1579 | くさのはら ふきこすかせの すゑのつゆ たまらてもろき よのならひかな | 茂重 |
1580 | はかなしや あたにいのちの つゆきえて のへにやたれも おくりおかれむ | 西行 |
1581 | とりへのの けふりのすゑも あはれなり いつかはとおもふ こころほそさに | 宋縁 |
1582 | なきあとに かけをたにやは ととむへき かへらぬみつの あわときえなは | 守覚法親王 |
1583 | たのみこし のりのみふねの つなてなは ひくひともなき あとのかなしさ | 行能 |
1584 | あすかかは あすともいかか たのむへき たたよのなかは ゆめのうきはし | 国冬 |
1585 | よのなかを はかなきゆめと ききなから いつまてさめぬ こころなるらむ | 邦省親王 |
1586 | なかなかに おとろかさしと おもへとも さむるよもなき ゆめそかなしき | 尊快法親王 |
1587 | うしとみし そのよのゆめの さめやらて おとろかすにそ うつつともしる | 公豪 |
1588 | おなしよに あるをみぬたに こひしきに ゆめとなりにし ひとのかなしさ | 兼直 |
1589 | なきかすの あはれのみそふ ゆめのよに おとろかぬみの はてそかなしき | 隆教 |
1590 | あととへは そてそつゆけき たらちねの をしへしにはの こけのかよひち | 公泰 |
1591 | ことわりと おもふはかりに なくさみぬ やそちあまりの おいのわかれは | 秀茂 |
1592 | わかれては なからふへくも なかりしに あれはあらるる うきみなりけり | 西蓮(尼) |
1593 | つきひこそ あらぬそらなれ なきひとの おもかけのみそ かはらさりける | 斎宮女御 |
1594 | つくつくと おもへはこひし あるはなく なきはかすそふ ひとのおもかけ | 実伊 |
1595 | けふまては よそのあはれに ききなして なけくわかみも いくよかはへむ | 伊長 |
1596 | ききときく ひとはなくなる よのなかに けふもわかみは すきむとやする | 和泉式部 |
1597 | おもひやる こころはたちも おくれしを たたひとすちの けふりとやみし | 和泉式部 |
1598 | けふりたに たちもとまらて かきりある ひとのいのちの はてそかなしき | 広秀 |
1599 | うれしさの みにあまりぬる なみたこそ こけのしたにも つゆとおくらめ | 雅有 |
1600 | ここやさは つひのすみかと おもふにも またきつゆけき こけのうへかな | 師尚 |
1601 | あひおひの かけのくちきと おくれゐて ととせあまりは なにのこるらむ | 雅縁 |
1602 | くらゐやま あとはむかしに かへれとも かへらぬみちそ いまもかなしき | 義運 |
1603 | かきりとて いてしなかれに くらへても なかきわかれは なほそかなしき | 能清 |
1604 | ふえのねを なかきよまてに つたへすは むなしくなりし ひとやうらみむ | 寂恵 |
1605 | ともにこし みちはさなから うつのやま うつつもゆめと みるそかなしき | 頼業(宇都宮成綱男) |
1606 | あさこほり とけにけらしな としのうちに くみてしらるる はるのわかみつ | 為家 |
1607 | つららゐて むすほほれたる たきのいとも はるのくるにそ とけわたりける | 清輔 |
1608 | あさみとり かすむをみれは しかのうらや かみよのまつに はるはきにけり | 成国(祝部) |
1609 | はるははや こえぬるほとも みよしのの やまのはとほく たつかすみかな | 永行 |
1610 | けさのまは ひかりのとかに かすむひを ゆきけにかへす はるのゆふかせ | 順徳院 |
1611 | うちいてし なみのはつはな たちかへり たにかせさむく こほるはるかな | 禅守 |
1612 | きのうみや ゆらのみなとの あさほらけ かすみのそこに ふねこくらしも | 後小松院 |
1613 | すみよしの おきつしほあひは みえわかて かすみにうかふ あはちしまやま | 善成 |
1614 | はるきては あまのもしほの けふりまて かすみのうらの なにやたつらむ | 雅家 |
1615 | もしほやく けふりもおなし かすみえて くもゐにつつく うらのまつはら | 万代(後醍醐院女蔵人) |
1616 | ふしのねは そこともみえす たこのうらの もしほのけふり そらにかすみて | 成茂 |
1617 | さほひめの ころもをたれに かすゐかた うらなみとほく たつかすみかな | 持賢 |
1618 | ましはたく けふりをこめて やまもとの さとあるかたは なほかすむなり | 為相 |
1619 | くれたけの そのよのはるは よそなから むかしわすれぬ うくひすのこゑ | 覚誉法親王 |
1620 | かすかのや おなしおとろの みちにのみ わかなをわれも としをつみつつ | 実名(藤原公脩男) |
1621 | あさみとり のへのかすみや わかくさの したもえわたる けふりなるらむ | 公宗母 |
1622 | やまふかみ ひとこそとはね さきなはと いひしはかりの やとのうめかえ | 後亀山院 |
1623 | このもとを すきてそしらむ うめのはな さなからそてに うつるにほひは | 長方 |
1624 | いろもかも わすれしすみの ころもてに なにそはにほふ うめのしたかせ | 尋継 |
1625 | おともせて そてぬらせはや はるさめの ふるはなみたと ひとのいひけむ | 帥(鷹司院) |
1626 | かはきしの かけゆくみつに うちなひき なみのたまぬく あをやきのいと | 行長 |
1627 | なにはえや もにあらはれぬ ひかりかな かすみてやとる はるのよのつき | 為子(贈従三位) |
1628 | かこたしな はるやむかしの よはのつき わかみひとつに かすむかけかは | 詮信 |
1629 | こしかたに かへるはかたき よのなかを いかにならひて かりのゆくらむ | 宗尊親王 |
1630 | ちるはなも ねにこそかへれ こしちまて いかなるかりの おもひたつらむ | 実教 |
1631 | たかかたに ゆくともしらす みよしのの たのむのかりの はるのわかれは | 慶運 |
1632 | めくりあはむ あきをやそらに ちきるらむ みやこのつきに かへるかりかね | 宗秀(藤原宗泰男) |
1633 | うゑたてて おもひおくこそ あはれなれ みさらむはるの はなのゆくすゑ | 氏久 |
1634 | さきやらぬ はなのこすゑは たかさこの まつをともとや つれなかるらむ | 直明王 |
1635 | よをすつる こころをやまの しをりにて よしののおくの はなやたつねむ | 宋縁 |
1636 | いつくとも しらぬやまちの はなのかに やへたつくもを わけやつくさむ | 則祐 |
1637 | わけつくす かきりありとも やまさくら あかぬこころの おくはしられし | 妙藤 |
1638 | よしさらは まかひもはてよ やまさくら さかりまてこそ くもかともみれ | 為量 |
1639 | あひみむと いそきしものを きみはさは はなゆゑのみや われをまちける | 小侍従(太皇太后宮) |
1640 | よのなかは かくこそありけれ はなさかり やまかせふきて はるさめそふる | 頓阿 |
1641 | はなみるも くるしかりけり あをやきの いとよりよわき おいのちからは | 頼輔 |
1642 | わすれめや むよにつかへて はることに なれしくもゐの はなのおもかけ | 実躬 |
1643 | きみかすむ ここのかさねの はなさかり あらしのかせも きかぬはるかな | 秀長(菅原長綱男) |
1644 | うらむへき かせたにふかて ちるはなの さらぬわかれも うきならひかな | 実意 |
1645 | ふかぬまも ひかすうつろふ はななれは かせよりあとに ちりやそふらむ | 国博 |
1646 | うきみをも なくさめつるに さくらはな いかにせよとか かくはちるらむ | 能因 |
1647 | しらなみの たつたのやまは はるかせに はなちるころの なにこそありけれ | 守遍 |
1648 | さくらはな このもとことに ふきためて おのかものとや かせのみるらむ | 兵衛(上西門院) |
1649 | ゆくみつに なかるるはなの いろいろを わかかさしとは たれかみるらむ | 少将内侍(後深草院) |
1650 | たにかはに ゆくせのはなは かへらねと おのかふるすに うくひすそなく | 信実 |
1651 | はるにあふ かたえをみても なけくかな はなさかぬみの をふのうらなし | 国助 |
1652 | あれはてて さひしきやとの にはなれは ひとりすみれの はなそさきける | 崇徳院 |
1653 | よしのかは はやくもはるの ゆくみつに かけさへうつる やまふきのはな | 顕氏(細川頼貞男) |
1654 | はなちりて さひしきにはに たちかへり のきまてかかる はるのふちなみ | 通藤女 |
1655 | かみもいかに みかさのもりの ふちのはな おいのなみまて かくるたのみを | 実任 |
1656 | かすかやま こたかきまつに みえてけり かみよのはるを かくるふちなみ | 満輔 |
1657 | かすかやま よそになりぬる みにしあれと たちかへりみる きたのふちなみ | 道意(二条良基男) |
1658 | いかはかり ときしるひとの をしむらむ われたになけく はるのわかれを | 雅成親王 |
1659 | としとしに あかてわかれし なこりまて かこちそへつる おいのはるかな | 慶運 |
1660 | あかすして わかるるそての はなそめに こころをかへぬ なつころもかな | 賢俊 |
1661 | ときしらぬ みをうのはなの かきねこそ はるをはよそに へたてはてけれ | 善成 |
1662 | ほとときす まつとせしまに ふけにけり ねぬよのとこの やまのはのつき | 成賢(祝部成茂男) |
1663 | ほとときす なにはのことも かたらはて みしかきあしの よはそふけぬる | 師信 |
1664 | まつひとそ よそにくるしき ほとときす しのふこころの ほとはしらねと | 為定(御子左二条為道男) |
1665 | ほとときす おのかさつきの ころたにも なにとしのふの もりになくらむ | 宗宣(藤原宗泰あるいは宗重男) |
1666 | おのつから またぬよもなし ほとときす みはならはしの おいのねさめに | 成久 |
1667 | さのみなと つれなかるらむ ほとときす しのひはつへき はつねならぬに | 読人不知 |
1668 | こころなき ひともきけとや ほとときす いはきのやまに ねをはなくらむ | 読人不知 |
1669 | ゆふくれは なくねそらなる ほとときす くものはたてに たれをこふらむ | 氏久 |
1670 | いまはとて いなはのやまの ほとときす わすれかたみの ひとこゑもかな | 顕昭 |
1671 | そほちつつ ひきかくれとも かひなきは かすならぬまの あやめなりけり | 周防内侍 |
1672 | かみまつる みとしろをたに ひくしめの ゆふかくるまて とるさなへかな | 益久 |
1673 | なのみかる みちのしはくさ おいぬれは しけるにつけて たれかすさへむ | 雅縁 |
1674 | はるるかと さすかにみえて あまくもの よそになりゆく さみたれのそら | 善成 |
1675 | たかせさす うふねのかかり ほのほのと あけかたちかし みしかよのそら | 基冬 |
1676 | もしほやく あまのすみかの かやりひは わきてやたてぬ けふりなるらむ | 周清 |
1677 | うきくさの かせにたたよふ ぬまみつに かけさたまらて とふほたるかな | 為尹 |
1678 | けふそしる まとにあつめし なつむしの みをいたつらに なさぬものかは | 憲実 |
1679 | よるならて もゆともみえぬ ほたるかな いかにしのふる おもひなるらむ | 読人不知 |
1680 | ぬれてほす あまのころもの うらなみに みるめすくなき みしかよのつき | 雅世 |
1681 | そてせはき かとりのうらの あまころも やとるほとなく つきそあけゆく | 資雅 |
1682 | くれなゐの いろこそまされ ゆふつくひ さすやかきねの やまとなてしこ | 為親 |
1683 | あめふりて たまゐるつゆを はちすはの はなのひかりと おもひけるかな | 崇徳院 |
1684 | にこるとも すむともみえす はちすはの うきてひまなき にはのいけみつ | 親雅 |
1685 | えにふかき いつみのみつは ありなから むすはぬなつの いかてすきけむ | 出羽弁 |
1686 | ひをさふる ならのひろはに もりかへて こぬあきすすし もりのしたかせ | 善節 |
1687 | なくせみの はやますすしき ゆふくれに いててもうすき つきのかけかな | 仁杲 |
1688 | あめはるる とやまのききの ゆふかせに すすしくのこる せみのもろこゑ | 満輔 |
1689 | われのみと ねをやなくらむ うつせみの むなしきよとは たれもしれとも | 秀房 |
1690 | しはつやま かせふきすさふ ならのはに たえたえのこる ひくらしのこゑ | 守覚法親王 |
1691 | みたらしや むかしはわれも せしみそき こよひはかみも おもひいつらむ | 脩久 |
1692 | たつなみや あきをよすらむ みそきする けふからさきに かせそすすしき | 允仲 |
1693 | あさちふの をののしのはら かせそよき ひとしるらめや あきたちぬとも | 読人不知 |
1694 | あききぬと かみもしるらむ かたをかの もりのしたかせ おとかはりぬる | 夏久 |
1695 | あききぬと ほのみかつきの ひかりにそ かねてくまなき かけはしらるる | 通親 |
1696 | のきはなる このはのいろは おそけれと あきやとやまの かせそみにしむ | 教定(飛鳥井雅経男) |
1697 | ねさめとふ なそなならひの かせもうし あきもむかしの あきならぬみに | 通具 |
1698 | おもふにも すきてあはれの きこゆるは をきのはみたる あきのゆふかせ | 西行 |
1699 | をきのはに おとつれそむる あきかせの ふかぬそてさへ つゆそこほるる | 和氏 |
1700 | かせふけは つゆこそおつれ をきのはに むすはぬゆめの いかてさむらむ | 通敏 |
1701 | おいらくの あきのねさめの なかきよに たへてきくへき をきのかせかは | 重有 |
1702 | たなはたも あはれとやみる としをへて かすてふいとの なからふるみを | 資宣 |
1703 | たなはたの ちきりしことや あまのかは みをはやなから かはらさるらむ | 国量 |
1704 | あきのよを ことそともなく あけぬとは たなはたつめや おもひしるらむ | 親子(典侍親子朝臣) |
1705 | あきはきの はなすりころも うちしをれ ゆくてにかかる のへのゆふつゆ | 基之 |
1706 | したはまて いろつくのへの あきはきは はなにあまりて つゆやおくらむ | 遠村 |
1707 | をみなへし はなのしたひも うちとけて たれとふしみの のへにさくらむ | 道経 |
1708 | かけやとす くものいつくは しらねとも みるほともなき よひのいなつま | 経成(藤原経豊男) |
1709 | そてのつゆも ふりそふねやの あきのあめに いととひかたき しきたへのとこ | 読人不知 |
1710 | あきのよの なかきおもひの くるしきは ねぬにはあけぬ ものにそありける | 高遠 |
1711 | おもひやる ひとたにあれな すみなれぬ さかののあきの つゆはいかにと | 後亀山院 |
1712 | いろいろに ちくさのはなの さきしより よをへてかはる にはのつきかけ | 義満 |
1713 | かせわたる ふるえのはきも はなちりて つきにそのこる みやきののつゆ | 義持 |
1714 | もりかねて つきもこころや つくすらむ みやまのまつの しけきこのまを | 雅明 |
1715 | くれわたる みねのまつはら ほのほのと このましられて つきそいさよふ | 公綱 |
1716 | はつせやま つきにさひしき かねのおとを ひはらにおくる よはのあきかせ | 経顕(荒木田) |
1717 | さしのほる ひかりもきよし たきのうへの みふねのやまの あきのよのつき | 梵灯 |
1718 | あきかせの まつふくおとも うらさひて かみもこころや すみのえのつき | 宝密 |
1719 | ふねよはふ まののうらなみ はるはると つきもよわたる よとのつきはし | 尭尋 |
1720 | よるもなほ きそちのはしの あやふきを しらてやつきの すみわたるらむ | 義教 |
1721 | おもひいつる くもゐのつきの おもかけも よかはのみつに すましてそみる | 真縁 |
1722 | くもゐより なれにしつきの かひもなく みをてらすへき ときもすきぬる | 後小松院 |
1723 | なにことに つゆもこころの とまらまし つきをなかめぬ このよなりせは | 小侍従(太皇太后宮) |
1724 | なれきつる ひともすくなき よのなかに のこりてあきの つきをみるかな | 基家 |
1725 | やまのはに かたふくつきを ととめおきて をしからぬみの かはらましかは | 有房(源顕仲男) |
1726 | あはれとも おもひしらすは かひもあらし こころそつきの ひかりなりける | 光行 |
1727 | かみさひて いくよをすきぬ ふるさとと なりにしならの やまのはのつき | 光俊(葉室光親男) |
1728 | なかつきや あきのうらみを かさねても またくもりぬる よはのつきかな | 光俊(葉室光親男) |
1729 | つきのあきは なほなかつきと ちきりしを こよひもはれぬ わかこころかな | 兼直 |
1730 | むかしみし ほたるのかけは なにならて わかよのつきそ まとにかたふく | 実冬(藤原公忠男) |
1731 | めくりあはむ たのみをつきに ちきりても わかよふけゆく あきそはかなき | 成見/盛見 |
1732 | いまそしる きみのひかりに きりはれて またみをてらす つきをみむとは | 雅縁 |
1733 | いまははや すみなれぬへき やまさとに なほあくかるる つきのかけかな | 俊定(藤原経俊男) |
1734 | なかつきや つきもふけぬる かけみえて みをあきはつる みやまへのおく | 実音 |
1735 | なかつきや うきよのあきの つきみても ふかきみやまを おもひこそやれ | 実継 |
1736 | やまのはに つまとふしかの こゑなくは ひとりやつきの すみのほらまし | 国助 |
1737 | をくらやま みねたちならす ほとなれや つきのあたりの さをしかのこゑ | 宗仲 |
1738 | なきあかす おのかなみたの しくれにや ぬれてあさたつ さをしかのこゑ | 持春 |
1739 | ゆふくれは あきのさかのの しかのねに やまもとふかき つゆそこほるる | 忠定(藤原兼宗男) |
1740 | しくれゆく とやまのくもに なくしかの おもひやはれぬ あきのゆふくれ | 後円融院 |
1741 | あきのたの かりそめなから むすふいほに なれていくよの さをしかのこゑ | 資広 |
1742 | はきかはな うつろふころや かすかのの わかむらさきの ころもうつらむ | 俊豊 |
1743 | なかつきの ありあけのつきに あきふけて うつおとさむし あさのさころも | 雅親 |
1744 | さむしろに しもをかさねて こよひもや ころもうつらむ うちのさとひと | 雅顕 |
1745 | はしひめの かたしきころも たちこめて まつよをたとる うちのかはきり | 兼煕 |
1746 | たとふへき かたこそなけれ まつかえに ゆふきりわたる あまのはしたて | 為忠(長良流藤原知信男) |
1747 | はれやらぬ ゆふへのそらの あききりに さなからくるる をちのやまさと | 経継 |
1748 | あさほらけ のさはのきりの たえまより たつしらさきの こゑのさむけさ | 忠良 |
1749 | くすのはを ふくゆふかせに うらふれて たこのいりのに うつらなくなり | 孝広/季広 |
1750 | ひとりのみ つきとしもとに おきゐつつ やかてわかよも ふけやしにけむ | 良経(九条兼実男) |
1751 | くらきよの まとうつあめに おとろけは のきはのまつに あきかせそふく | 良経(九条兼実男) |
1752 | つゆさゆる あきのすゑはの あさちはら むしのねよりそ かれはしめける | 具親 |
1753 | あらしふく すすのしたくさ うらかれて よしののやまに しくれふるなり | 家隆 |
1754 | きのくにや あきさへしもを おきつかせ ふきあけのつきの ありあけのそら | 越前(嘉陽門院) |
1755 | むらさきの くもゐまてやは しられけむ あめのしたなる きくのしつくは | 読人不知 |
1756 | むらさきの くもにかよへる はななれは しつくのいろは わかしとそおもふ | 円融院 |
1757 | ことのはを たのむへしやは あきくれは いつれかいろの かはらさりける | 読人不知 |
1758 | しくれつる くもをかさねて をくらやま もみちもあきも ふかきいろかな | 雅宗 |
1759 | そめのこす かきりはまつに あらはれて もみちいろこき あきのやまのは | 房嗣 |
1760 | くれてゆく あきのわかれの みちそとや のはらのくさも いろかはるらむ | 教親 |
1761 | くさのはら つゆのかたみの おのつから きえすはありとも あきやくれなむ | 念阿 |
1762 | けふはまた たかゆふくれの わかれそと あきのなこりの をしかなくなり | 土御門院 |
1763 | ゆめさむる よはのしくれは ふゆきぬと おとろかしてや よそにすくらむ | 行文 |
1764 | ひとしくれ すきにけらしな みよしのの よしののたきつ いはたたくなり | 勝命 |
1765 | きくひとも なくてしくれや すきぬらむ かりたのいほに くもそかかれる | 師光(源師頼男) |
1766 | つくはねの このもかのもの やまかせに かたもさためす ちるこのはかな | 良瑜 |
1767 | のかれえぬ おいそのもりの もみちはは ちりかひくもる かひなかりけり | 兼好 |
1768 | わかやとの まかきにきくを うゑさらは はなみぬふゆや さひしからまし | 国基 |
1769 | いつしかと しもこそむすへ をささはら ふゆのひかすの ひとよふたよに | 亀山院 |
1770 | あかつきは をのへのてらに かせさえて しもにこたふる かねきこゆなり | 宣旨(六条院) |
1771 | のへのいろは あさおくしもに むすほほれ うらみによわる くすのしたかせ | 宗長(藤原頼経男) |
1772 | かすかのの ゆきまにたにも もえいてし くさはそしもに あへすかれぬる | 慶運 |
1773 | ふけゆけは おきそふしもは みえわかて つきにそなひく をののしのはら | 行観 |
1774 | よもすから こほれるつゆを ひかりにて にはのこのはに やとるつきかけ | 良経(九条兼実男) |
1775 | しもさむき あしのかれはは をれふして いつくかかけの みなとなるらむ | 国量 |
1776 | すすかかは こほりやせきと なりぬらむ やそせのみつも ゆきやらぬまて | 読人不知 |
1777 | かさねては ころもてさむし いつみかは ちとりなくよの あかつきのしも | 公継 |
1778 | おもひいつる むかしもとほく なるみかた たえぬなみたに なくちとりかな | 忠信 |
1779 | ひとしれぬ わかのうらみに なくちとり たえぬあとをも よにのこさはや | 経有(庭田重資男) |
1780 | いもかしま かたみのうらの さよちとり おもかけそへて つまやこふらむ | 読人不知 |
1781 | さしのほる かこのみなとの ゆふしほに まつはらこして ちとりなくなり | 国豊 |
1782 | おきつかせ ふけてはいとと つきかけも さむきしほひに ちとりなくなり | 読人不知 |
1783 | さためなき よをうきとりの みかくれて したやすからぬ おもひなりけり | 道誉 |
1784 | よはのしも はらひかねても みつとりの うきみひとつと ねをやなくらむ | 資連 |
1785 | いととなほ したにやかよふ いけみつの にほのうきすも かつこほりつつ | 資藤 |
1786 | あさこほり とけなむのちと ちきりおきて そらにわかるる いけのみつとり | 守覚法親王 |
1787 | みやまへを ゆふこえくれは しひしはの うれはにつたふ たまあられかな | 家房 |
1788 | しくれつる とやまのまつの いろよりも ふらぬゆきけの くもそつれなき | 禅信 |
1789 | かみなつき ふりしくゆきは かつきえて しくれにかへる そらのうきくも | 雅顕 |
1790 | めつらしく けさふりそむる ゆきをみて くれゆくとしそ そらにしらるる | 経信 |
1791 | わかみよに ことしけかりし あともなし むかしにかはる にはのしらゆき | 宗尊親王 |
1792 | わかのうらや おいきのまつに ふるゆきの つもれるとしも いまそかひある | 為定女 |
1793 | あまひとの ころもほすまも しらゆきの つもれはかかる そてのうらなみ | 経豊 |
1794 | ふるゆきを あまつをとめや たむくらむ しらゆふかくと みゆるさかきは | 寂念 |
1795 | はなならは さかぬこすゑも ましらまし なへてゆきふる みよしののやま | 仙覚 |
1796 | くちはつる なをたにのこせ かみやまに としもふるえの まつのしらゆき | 脩久 |
1797 | みかりせし よよのためしを しるへにて かたののとりの あとをたつねむ | 後花園院 |
1798 | けふもまた あまのかはなみ たちかへり おなしかたのに かりくらしつつ | 家豊 |
1799 | ふけぬれは みよのほとけの かすならぬ おほみやひとの なをもきくかな | 長明 |
1800 | ひととせも いまはすゑのの むらすすき しもふくよはの かせのさむけさ | 後鳥羽院 |
1801 | いまはさそ おもひしるらむ としといひて つもれはおいの こころほそさを | 秀茂 |
1802 | なにかせむ ありてうきみの としのくれ をしむはひとの ならひなれとも | 秀顕/季顕 |
1803 | ほとちかく きぬなるものを いかなれは はるにもあはて としのゆくらむ | 中務 |
1804 | はかなくて ことしもけふに なりにけり あはれにつもる わかよはひかな | 清輔 |
1805 | なみのうへも なかめはかきり あるものを こころのはてそ ゆくへしられぬ | 雅経 |
1806 | はるるひの うらうらとほく みわたせは おきにかすそふ あまのつりふね | 忠房親王 |
1807 | かきりなき なみちのすゑは ひとつにて そらにうきたる あまのつりふね | 公雄 |
1808 | なにはかた いりえのあしは しほこえて まつのみなひく うらかせそふく | 基親 |
1809 | いりひさす しほせのなみの すゑはれて ひかたにちかき うらのはつしま | 公豊 |
1810 | おきつかせ ふくにまかせて もしほやく けふりのすゑそ うらつたひゆく | 実教 |
1811 | あまのすむ かたやいつくと なかむれは さとのしるへに たつけふりかな | 秀能(藤原秀宗男) |
1812 | わたのはら こきはなれぬる ふなちには こころもえこそ つなかさりけれ | 俊成(藤原俊忠男) |
1813 | かせはやみ やへのしほちを ゆくふねは いくうらすくる とまりなるらむ | 義満 |
1814 | うらかせの まほもかたほも みえわかす なみちへたつる あまのつりふね | 持康 |
1815 | あかしかた しほかせあらき ゆふなみに とほしまかけて たつなきわたる | 成胤 |
1816 | せをはやみ あまりてこゆる たきかはの いはにくたくる みつのしらたま | 為子(従二位) |
1817 | くもかかる まきもひはらも たかしまの みをのそまやま いくよへぬらむ | 基家 |
1818 | みやきひく おともそらにや ひひくらむ たかねのくもの みをのそまやま | 為忠(御子左二条為藤男) |
1819 | かさしをる みわのひはらの すきのはや としふるいろの しるしなるらむ | 亀山院 |
1820 | あまつそら たかくはれつつ みえつるは くれゆくやまの とほきなりけり | 千里 |
1821 | ゆふひさす やまのたかねに あらはれて くもゐにたてる まつのひとむら | 常顕 |
1822 | たかさこの まつをいくよに なりぬとは すむてふつるや なれてしるらむ | 深守法親王 |
1823 | すみよしの まつのしつえの おきつなみ かくるこころを あはれとはしれ | 少将(邦省親王家) |
1824 | としをへて こけむすきしの そなれまつ みとりのいろも わかれやはする | 行冬 |
1825 | としへても いそうつなみに あらはれて いはほのこけは むすひまもなし | 義満 |
1826 | くものなみ けふりのなみも みえわかす しほやくうらの ゆふくれのそら | 実継 |
1827 | わかいほは たえすあらしの ならしはに なれはまさらて すみうかれつつ | 兼良 |
1828 | みやこにて そらにたたよふ うきくもの のきはのやまに かかるゆふくれ | 亀山院 |
1829 | さためなき こころやみえむ やまさとを さひしといひて またうかれなは | 覚助法親王 |
1830 | すみなれて われもふりぬる たにかけに のこるおいきの まつのひともと | 道意(二条良基男) |
1831 | さひしとも おもひけるかな やまさとは とはれむとての すみかならぬに | 為藤 |
1832 | やまさとの さひしさにたに たへぬみの うきよをいかて すくしきつらむ | 賢俊 |
1833 | おいらくの のかれてむすふ しはのいほは かとささすとも たれかとひこむ | 義教 |
1834 | さひしさを しのひそかぬる おくやまの いはかきしみつ なれてすめとも | 公名 |
1835 | やまのいろ みつのなかれも いにしへに なほおもかけの のこるやとかな | 実俊(西園寺公宗男) |
1836 | このままに すまはすむへき やまみつよ うきよのちりに にこらすもかな | 栄仁親王 |
1837 | さひしさを なににかこたむ かかれとて みをかくしてし みやまへのさと | 性助法親王 |
1838 | すみなるる ひとのこころは しらねとも やかてさひしき やまのかけかな | 義忠(畠山満則男) |
1839 | いつくをか かくれかにせむ しつかにて すむやまさとの なきよなりせは | 境空 |
1840 | やまふかみ ひとこそあらめ このさとは つきたにいたく またれけるかな | 邦省親王 |
1841 | ともなへよ さすかなれぬる よはのつき みをかくすへき やまのおくまて | 新右衛門督(宣光門院) |
1842 | にはのまつ めくれるたけを かきほにて かせのみたえぬ やまかけのいほ | 重資 |
1843 | をくらやま あとはむかしと きてみれは あれたるのきに まつかせそふく | 教定(飛鳥井雅経男) |
1844 | のかれこし みやまのいほや なかなかに さひしからすは うきよならまし | 浄阿 |
1845 | いかにせむ しはのいほりの しはしとて すみこしままの みさへふりぬる | 読人不知 |
1846 | たにふかみ たつるけふりの ひとすちに おもひはなるる うきよとをしれ | 満元 |
1847 | たちのほる けふりにしるし やまふかみ すむらむひとの こころほそさは | 明魏 |
1848 | かすかなる しはのいほりの ゆふけふり よにたえぬみそ よそにしらるる | 永助法親王 |
1849 | やまさとの けふりのすゑも なひくなよ たたやましはの こりはてしよに | 義運 |
1850 | あさゆふの けふりはかりを あるしにて ひとはおとせぬ おほはらのさと | 小侍従(太皇太后宮) |
1851 | ましはたく このやまもとの ゆふけふり こころほそくや よそにみゆらむ | 雅言 |
1852 | ましはたく けふりのいろも くれそめて やまもととほき いほのさひしさ | 直義 |
1853 | のかれきて ひとめをいとふ こころにも あまりさひしき やまのおくかな | 覚誉法親王 |
1854 | のかれきて しつかにきけは まつかせも うきよにかはる やまのおくかな | 季尹 |
1855 | わひつつも すめはすまるる やまさとに しひてあらしの おとをきくかな | 為理 |
1856 | あしひきの やまのふるみち あとたえて をのへのかねに つきそのこれる | 秀能(藤原秀宗男) |
1857 | とふひとは やまちのこけに あとたえて よもきかすゑに かせそよくなり | 忠良 |
1858 | みやこいてて ふかくいりにし おくやまに なほのこりける ゆめのかよひち | 讃岐(二条院) |
1859 | よをいとひ さむなるゆめの みちしらは われにつけこせ ふかきやまもり | 義運 |
1860 | やまふかく すむにもものの かなしきは うきよのほかよ いつくなるらむ | 栄子内親王 |
1861 | やまふかく すまむとまては なけれとも ことしけきよを よそにきかはや | 宗尊親王 |
1862 | やまふかく こころはすみて よのために またそむきえぬ うきみなりけり | 尊氏 |
1863 | こころこそ なほもすみえね やまさとに みをかくさはと なにおもひけむ | 尊円法親王 |
1864 | たつねきて またふみならす あともなし わかすむやまの いはのかけみち | 公泰 |
1865 | しをりせて ひとりわけこし おくやまに たれまつかせの にはにふくらむ | 良経(九条兼実男) |
1866 | やまさとは つまきこるをの おのれのみ かよひなれたる いはのかけみち | 義重(斯波義将男) |
1867 | やまのゐの みつのこころは あさけれと あかてとしふる しはのいほかな | 寂真 |
1868 | よをいとふ こころなくても やまみつの すみよきかたに いほやむすはむ | 尭尋 |
1869 | すむひとの こころをくみて おもふにも さそやまみつの にこらさるらむ | 按察(鷹司院) |
1870 | あれにけり まかきのこけの ふかみとり たかぬきかけし ころもなるらむ | 後嵯峨院 |
1871 | やまさとの まへのたなはし こけむして ゆききまれなる ほとそしらるる | 公忠(藤原実忠男) |
1872 | おもひいる いはほのうちの こけころも なほすてかたき よこそつらけれ | 為家 |
1873 | なほふかく おもひもいらは やまさとの ともをもすつる よとやなりなむ | 後小松院 |
1874 | あらましの こころのすゑは それなから おもはぬやまに すみそめのそて | 栄仁親王 |
1875 | うきよをも みねのしらくも へたてねは なほやまさとも そてそかわかぬ | 範兼 |
1876 | つねにきく よのうきことや やまさとに すみはてぬへき たよりなるらむ | 陵阿 |
1877 | いつかたに よをのかれまし やまさとも つらきところと まつかせそふく | 尊円法親王 |
1878 | をのへより まつのこすゑに そなれきて かとたのいなは かせそよくなり | 実房 |
1879 | あはれなり をたもるいほに おくりひの けふりやたみの おもひなるらむ | 後小松院 |
1880 | しつかもる かとたのいほの とまひさし ひさしくなりぬ あきはつるまて | 経教 |
1881 | かりそめの かりたのいほの ねさめにも わかみよにふる あめをきくかな | 俊栄 |
1882 | あきのたの いなおほせとりも なれにける かりほのいほを もるとせしまに | 読人不知 |
1883 | みなとたの いほもるほとや あまのこも かりそめなから やとさたむらむ | 杲守 |
1884 | をやまたの ひたのかけなは ひきむすひ かりいほつくる ときそきにける | 兼良 |
1885 | いくよしも あらしいまはと おもはすは なににかおいの うきをしのはむ | 尊玄 |
1886 | しはしたに うれしきそてに つつまはや うきにおつるも おなしなみたを | 顕昭 |
1887 | いつとなき あらましことに をしむへき わかゆくすゑの いそかるるかな | 経氏 |
1888 | いとはるる うきよになほや かへるへき のにもやまにも すまぬこころは | 通成 |
1889 | しきしまの みちあるよよの いにしへに なほたちこえむ あとをしそおもふ | 後花園院 |
1890 | いそちあまり みちあるみよに つかへすは いかてみたひの あとをつけまし | 経嗣 |
1891 | みなひとの こころのたねも かはらねは いまもむかしの わかのうらまつ | 読人不知 |
1892 | もくつそと みえてもましる ことのはや そのなはかりの わかのうらまつ | 雅家 |
1893 | たちかへり わかのうらなみ さそはすは かかるもくつの いかてしられむ | 義教 |
1894 | たちかへり おもへはさすか ふりにけり いそちなれぬる わかのうらなみ | 経継 |
1895 | ことのはの たまえのあしの よよまては およはぬなをも せめてかけはや | 永助法親王 |
1896 | かけてたに およはすなから よよのあと かへるもうれし わかのうらなみ | 雅世 |
1897 | わかのうらや ふりぬるよよの あとをたに うきわれからに なほたとるかな | 隆博 |
1898 | なけくそよ わかのうらなみ よよかけし あとをみるにも おろかなるみを | 為種 |
1899 | ちよくなれは おもひなすてそ しきしまの みちにものうき こころありとも | 良基(二条道平男) |
1900 | くもゐまて きこえけるかな わかのうらの あしへのたつの ねにもたてぬを | 頓阿 |
1901 | わかのうらや くもゐのともに さそはれて あしまかくれの たつもなくなり | 後崇光院 |
1902 | わかのうらの ちりにつけとや かきおかむ かひもなみまの もくつなれとも | 行文 |
1903 | わかのうらに みはななそちの おいのなみ いつたひおなし なをそかけつる | 雅孝 |
1904 | たまつしま いりえこきいつる いつてふね いつたひあひぬ かみやうくらむ | 頓阿 |
1905 | わかのうらや かせをたよりの しるへにも みそいてかての あまのつりふね | 秀茂 |
1906 | しきしまや やまとしたかく なるまてに なほみちしらぬ みをなけきつつ | 善成 |
1907 | たつねすは かひなからまし いにしへの よよのかしこき ひとのたまつさ | 通俊 |
1908 | たつねつつ かきあつめすは ことのはも おのかちりちり くちやはてまし | 摂津(二条太皇太后宮) |
1909 | きみみよと かきあつめたる たまつさを しるくもかせの つたへつるかな | 通俊 |
1910 | よしあしを きみしわかすは かきたむる ことのはくさの かひやなからむ | 範政 |
1911 | つたへおく あとにもまかふ ゆふかほの やとのあるしの しるへともなれ | 雅朝 |
1912 | こころあてに それかとはかり つたへきて ぬしさたまらぬ ゆふかほのやと | 忠守 |
1913 | ひとかすに あらすなるみの あまなれは いけるかひをも えこそひろはね | 顕昭 |
1914 | わかみのみ しつみやはてむ わたつうみの おきつしほあひの あはれよのなか | 道玄 |
1915 | よのなかを ゆめそとまては しりなから おとろきかたき みこそつらけれ | 心海 |
1916 | とにかくに うきよをゆめと しりなから さてもいとはぬ われやなになる | 隆季 |
1917 | うきよには そこのみくつと なりぬとも やかてしつむな かものかはみつ | 季経 |
1918 | のほるへき みちをおもへは くらゐやま またふもとなる わかみなりけり | 兼宗 |
1919 | いのりこし きみかめくみに くらゐやま よよにもこえて のほりぬるかな | 有世 |
1920 | おろかなる みにこそさらに しられぬれ ひとをしすてぬ きみかめくみは | 良基(二条道平男) |
1921 | ひとなみに よをやわたらむ さほかはの すむもにこるも わかぬみにして | 兼良 |
1922 | こころにも まかせぬものは つれなくて うきにたへたる いのちなりけり | 実冬女 |
1923 | いにしへを かかみとすれと おろかなる こころはなとか うつらさるらむ | 道嗣 |
1924 | みるたひに おいのなみたを そそくかな むかしのひとの ふてのすさひに | 読人不知 |
1925 | つかへこし みちこそたえね よよをへて いまもかきおく みつくきのあと | 兼治 |
1926 | しかまかは わたるいちひと こととはむ うきせをかふる みちはありやと | 為明 |
1927 | みをうちの まきのしまふね さしもなと のほりかねたる よをわたるらむ | 玄円 |
1928 | よしのかは よしやとおもふ このよをも わたりかねては またなけくかな | 雄運 |
1929 | いかなれは かすにもあらぬ みなせかは うきせなからに ありてゆくらむ | 光正 |
1930 | なををしむ こころやなほも すてかねむ のかれてやまの おくにすむとも | 和氏 |
1931 | ありあけの つきよりもなほ つれなきは うきよをいてぬ わかみなりけり | 時朝(宇都宮朝業男) |
1932 | とにかくに こころにものの かなはぬも ありはつましき よにそなくさむ | 公宗母 |
1933 | これもまた ありてなきよと おもふをそ うきをりふしの なくさめにする | 式子内親王 |
1934 | ありてよの はてうかりける ことわりも おもひしられて みこそおいぬれ | 杲守 |
1935 | まつことの あるひといかに をしむらむ かすならぬたに すてられぬよを | 行範(惟宗) |
1936 | うちかへし おもへはさらに なけかれす ふるのわさたの かりのこのよは | 読人不知 |
1937 | よをいのる みにしあらすは いかてわか きみにつかふる かすとなるへき | 成前 |
1938 | みひとつに かきるうきよと おもふこそ なけくあまりの こころなりけれ | 読人不知 |
1939 | おほかたの よのならひとも なくさます わかみのうさの たくひなけれは | 長舜 |
1940 | いかはかり くるしからまし まつことの うきみにもなほ あるよなりせは | 憲実 |
1941 | うきよとは おもひしりても そむきえぬ わかこころをや なほいとはまし | 公時(藤原実継男) |
1942 | かりのよの みをありかほに そむくこそ なかなかとむる こころなりけれ | 国道(津守国助男) |
1943 | うきはみの むくひとしらて おほかたの よのならひとも おもひけるかな | 雲雅 |
1944 | うきことは いろもかはらぬ おなしよに あはれいつまて いきのまつはら | 道順 |
1945 | むかしおもふ なみたのたまの おのつから としつきなかき ほとそしらるる | 師嗣 |
1946 | つれなくも いまはなにをか まつしまや をしまぬおいの なみをかさねて | 定助 |
1947 | つれなくて よはひはおいぬ たかさこの まつもわかみを しるひとにせよ | 明魏 |
1948 | いかはかり こひしからまし ゆめにたに みてもかへらぬ むかしなりせは | 頼豊 |
1949 | おいかみの ならひになりて おもひての なきもこひしき むかしなりけり | 聖遵 |
1950 | ふるほとは ことしけけれと としつきの すきつるかたそ あはれはかなき | 一条(徽安門院) |
1951 | たちかへり またこそみつれ かかみやま つれなきおいの かけをのこして | 隆弁 |
1952 | たまのをの あるへきほとは なからへぬ いまはたのみを なににかけまし | 師氏(平常顕男) |
1953 | ぬるかうちに かへるむかしの ゆめもかな みぬよのことを ひとにかたらむ | 基氏(足利尊氏男) |
1954 | ゆめのよに またしのふかな うつせみの うつつともなく すきしむかしを | 定顕(叡山横川宝蔵坊) |
1955 | つくつくと よよのむかしを おもひいてて わかみふりぬる ほとそしらるる | 右衛門督(永福門院) |
1956 | なにをよの おもひてにして はかなくも おなしむかしを みにしたふらむ | 珍秀 |
1957 | きのふより けふはかすそふ なみたかな いやとほさかる むかしかたりに | 読人不知 |
1958 | これまても おいそかなしき いにしへは みのゆくすゑを たのみしものを | 増珍 |
1959 | いにしへを おもへはみさへ ふりにけり まとうつあめの よはのねさめに | 貞行(平貞信男) |
1960 | うきをたに むかしといへは しのふかな おいはいかなる こころなるらむ | 俊長 |
1961 | いかてかは しのふこころの あさからむ またもあふへき むかしならねは | 家良 |
1962 | しのふへき むかしもみには なきものを なにをわすれぬ なみたなるらむ | 詮信 |
1963 | かへりこぬ むかしをなにと しのふらむ よのことわりに ものわすれして | 道基(二条良基男) |
1964 | おいかみは またたちかへり ねをそなく そむきてしよに ものわすれして | 実伊 |
1965 | おもひねは さもこそあらめ いかにして しらぬむかしの ゆめにみゆらむ | 秀長(菅原長綱男) |
1966 | なれしよの ともたにもなし いにしへの みえつるゆめを たれにかたらむ | 邦省親王 |
1967 | なにとなく すきこしかたそ あはれなる むかしもおなし ゆめのよなれと | 花園院 |
1968 | こしかたも いまゆくすゑの あらましも おもひのこさぬ あかつきのそら | 尊氏 |
1969 | きのふみし ゆめかとそおもふ ねさめして むかしをしのふ あかつきのそら | 公衡(藤原公能男) |
1970 | やまてらの いりあひよりも おいらくの ねさめかなしき かねのおとかな | 尊道法親王 |
1971 | あけわたる よかはのかねの おとはして くものやへたつ みねそよふかき | 公豊 |
1972 | やまのはに またかけとほき つきみれは あくるもをしき かねのおとかな | 御匣(式乾門院) |
1973 | かすかすに うきみしらるる ねさめして おもひつきせぬ かねのおとかな | 経賢 |
1974 | ゆくすゑを おもふねさめに ききそへて さすかおとろく かねのおとかな | 兼煕 |
1975 | つかふへき みちはしらねと おきなれて いそくはかりの かねのおとかな | 義将 |
1976 | みのおもひ しけきねさめに ききわひぬ あかつきことの しきのはねかき | 顕詮 |
1977 | あはれにも かならすおいの ねさめとて あかつきふかき ゆめそのこれる | 幸清 |
1978 | いにしへも ちかきねさめの そてのうへに やこゑのとりの なみたをそかる | 実氏 |
1979 | このころは とりのつかさも つけたえて われとおとろく あかつきのゆめ | 後小松院 |
1980 | とりのねの おとろかさすは いたつらに ぬるよのうさも おもひしらしを | 通敏(通俊) |
1981 | おいかみの ねさめにおつる なみたをは しらてやよその とりはなくらむ | 源意 |
1982 | ときしらぬ わかともならは あかつきを わかてやとりの ねをもなかまし | 禅守 |
1983 | あかつきの おいのなみたに さそはれて ゆふつけとりも ねをやそふらむ | 雅久 |
1984 | あけゆくを つくるのみかは をちかたの さとまてとりの ねにそしらるる | 元吉 |
1985 | きよみかた いそこくふねも せきのとの あくるをとりの ねにやしるらむ | 遠村 |
1986 | いまもなほ こころのやみに おとろきぬ つかへてなれし とりのやこゑを | 満季 |
1987 | あしたつの こをおもふやみの あけやらて あかつきふかく ねをやなくらむ | 行家(藤原知家男) |
1988 | なくつるの おもふこころは しらねとも よるのこゑこそ みにはしみけれ | 式子内親王 |
1989 | いかにせむ わかよふけひの うらみても こをおもふつるの おろかなるみを | 雅世 |
1990 | おくれゐて みちまよへとは わかのうらに よるなくつるや おもはさりけむ | 慶運 |
1991 | なかめやる けしきそいつも あはれなる とほやまもとの あけほののそら | 師光(源師頼男) |
1992 | いつるひの ひかりやそらに にほふらむ みねよりあくる あまのかくやま | 忠房親王 |
1993 | あめすくる のきのしつくの おとつれて つきなきよはの あはれをそしる | 師継 |
1994 | かかけても ひかりやそふと まとろまぬ かへにそみつる まとのともしひ | 為重 |
1995 | くれたけの よとこねちかき かせのおとに まとうつあめは ききもわかれす | 為遠 |
1996 | ここのへや にはのかはたけ かはらねは よよのあとある しるへとそおもふ | 後小松院 |
1997 | むかしおもふ こころをかはせ かはたけの みよにあひぬる みはふりぬとも | 雅縁 |
1998 | よよへぬる すゑはなりとも くれたけの そのふのいろは かはらすもかな | 道朝法親王 |
1999 | かせそよく にはのくれたけ よもすから みしよにかよふ ゆめたにもなし | 崇賢門院 |
2000 | いつまてか さとのなにおふ くれたけの ふしみにのみも わかよつくさむ | 崇光院 |
2001 | わすれすよ ふしみのさとの はるはると みゆきになれし たけのしたみち | 公秀 |
2002 | くれたけの みのうきふしの かすかすに わかよのほとを おもひしるかな | 為氏 |
2003 | うきふしの しけきみなれは かけなひく なさへかひなき まとのくれたけ | 公忠(藤原実忠男) |
2004 | くれたけの はにおくつゆや よのなかの うきふししけき なみたなるらむ | 禅守 |
2005 | いつみかは いつよりひとの すみたえて くにのみやこは あれはしめけむ | 兼氏 |
2006 | ささなみや しかのはままつ くちせぬそ ふるきみやこの かたみなりける | 実忠 |
2007 | ふしみやま むかしのあとは なのみして あれまくをしき よよのふるさと | 後崇光院 |
2008 | たちかへり とへはなみたの ふるさとに あはれいくたひ そてぬらすらむ | 資藤 |
2009 | あとみえて さすかにたえぬ ふるさとの いたゐのしみつ かけもかはらす | 為行(藤原為方男) |
2010 | まつのみや ならひのをかの ふもとてら のきはのつきも かけもらぬまて | 永助法親王 |
2011 | きかてたた あらましものを けふのひも はつせのてらの いりあひのかね | 通守 |
2012 | いたつらに このよもさてや はつせやま かねのおとにも おとろかぬみは | 秀房 |
2013 | みるままに かねのねとほく なりにけり くももかさなる みねのふるてら | 雅世 |
2014 | ひにみかき つきにそさらす しらたまの みたれておつる ぬのひきのたき | 実継 |
2015 | つのくにの いくたのかはの みなかみは いまこそみつれ ぬのひきのたき | 基隆(藤原基綱男) |
2016 | このよには よしこととはし すみたかは すみえぬかたの とりのなもうし | 隆祐 |
2017 | かくてよに ふるのたかはし ゆくすゑも きみをそたえす たのみわたらむ | 万秋門院 |
2018 | ききわたる さののふなはし かひもなし しらぬむかしを かけてこふれと | 為家 |
2019 | ゆきつるる しつかすかたは みえわかて つまきのましは やまちこゆなり | 忠守 |
2020 | みねのくも かはせのなみも ひとこころ けはしきよには たちもまさらし | 惟賢 |
2021 | いたつらに むそちのはるも すきにけり みやのうくひす こゑはかりして | 為忠(長良流藤原知信男) |
2022 | みてもなほ みをこそこかせ ときのまの けふりのうちに きゆるおもかけ | 行能 |
2023 | とちはつる まつのとほその ひかりとて たのむもかなし きくのうへのつゆ | 為秀 |
2024 | つゆしもに なへていろつく あきやまの ふもとのまつそ ひとりさめたる | 覚誉法親王 |
2025 | かすならぬ みをしやうさむに いれしかと またをさまれる よにそいてぬる | 業清(源) |
2026 | みちありと わかきみのよに いてはてて やまのおくには すむひともなし | 経任(中御門藤原為経男) |
2027 | やまふかく みつのなかれを たつねてそ このよのほかの ところをもみし | 詮政 |
2028 | うきみとは おもひなはてそ みよまてに しつみしたまも ときにあひけり | 宗尊親王 |
2029 | わかのうらの ちきりもふかし もしほくさ しつまむよよを すくへとそおもふ | 良経(九条兼実男) |
2030 | やまかはの なかれにちきる うたかたは いくよをふとも なにかしつまむ | 慈円 |
2031 | なかれてと たのめしかとも みつくきの かきたえぬへき あとのかなしさ | 右京大夫(建礼門院) |
2032 | はかなしな かしらのゆきは きえはてて はつかにのこる つゆのいのちよ | 範兼 |
2033 | はかなくて あはれとしつき ふるゆきを はらふときくに きえてこそおもへ | 大輔(殷富門院) |
2034 | みるからに なくさめかぬる こころとも しらすかほなる つきのかけかな | 後亀山院 |
2035 | いささらは こむよをかねて ちきりおかむ かきりもしらぬ つきのひかりに | 高倉(八条院) |
2036 | うきみにも ちきりありてや やとるらむ なみたいとはぬ そてのつきかけ | 浄弁 |
2037 | なかめきて ひさしくなりぬ あまのはら むなしきことそ かはらさりける | 隆祐 |
2038 | いたつらに こたへぬそらを あふきつつ あはれあなうと すくすなりけり | 土御門院 |
2039 | ぬるかうちに ももとせすきし ことわりも ゆめてふものそ まことなりける | 実氏 |
2040 | たのまれぬ ものとはしれと あらましに かはらぬゆめは なほそうれしき | 雅孝 |
2041 | はかなくも ゆめをうつつと おもふこそ まとろむほとの こころなりけれ | 為兼 |
2042 | さめぬるを ゆめとはさすか しりなから みるほとはなと うつつなりけむ | 頼之 |
2043 | おもふことを たれにいはまし もしほくさ かきつめてたに なくさみやせむ | 後小松院 |
2044 | しかのなみや うらわのつきの さゆるよに むかしこふらし やまのあきかせ | 後鳥羽院 |
2045 | すきたてる みわのやまもと なをとめて かさしをりけむ しるへをそとふ | 資平 |
2046 | こぬよはと いかかはつらき たかさこの しかのつまとふ きりのをちかた | 資平 |
2047 | ちるはなを あかすみれはや たひひとの しらぬやまちに ひをくらすらむ | 俊頼(源経信男) |
2048 | ふゆきても しはしはみつの おとつれし かけひもこほる よはのさひしさ | 澄覚法親王 |
2049 | おほさはの いけのけしきは ふりゆけと かはらすすめる あきのよのつき | 俊成(藤原俊忠男) |
2050 | わかそては まくりてにして かくせとも いかてかさめに ぬるとみるらむ | 俊頼(源経信男) |
2051 | いせしまや おきつしほかせ ふくからに しきなみにこそ たまもよりけれ | 実継 |
2052 | あまくもや そらにたゆたひ わたるらむ てるひのえしも さやけからぬは | 好忠 |
2053 | あきのこころ ならはしとのみ おもふやとに しはしなつけそ をきのうはかせ | 慈円 |
2054 | ねのひすと はるののことに たつぬれは まつにひかるる ここちこそすれ | 崇徳院 |
2055 | あやなくも かせのぬすめる うめのかに をらぬそてさへ うたかはれぬる | 重保 |
2056 | ももしきの かものみあれの しめのうちに ほとけのみをも なほすすくかな | 慈円 |
2057 | おひしける ねふりのもりの したにこそ めさましくさは ううへかりけれ | 俊頼(源経信男) |
2058 | くさもきも ほとけになると いふなれと をみなへしこそ うたかはれけれ | 観教 |
2059 | あきのよは つゆにおりはへ たなはたの ててもおとらぬ むしのこゑかな | 頓阿 |
2060 | これをみよ きくよりほかに このころは はななしといふ ひとはありとも | 読人不知 |
2061 | しなののや とくさにおける しらつゆは みかけるたまと みゆるなりけり | 左近(三条院女蔵人) |
2062 | さむかりし あらしもいまは おとはかり うれしさのみそ みにはしみける | 読人不知 |
2063 | しるらめや あはてひさしの まきはしら ひとまひとまに おもひたつとは | 親房(源仲房男) |
2064 | うすきぬの いかにはるとも こころよく よりあふへくも みえぬきみかな | 清輔 |
2065 | おほはらへ ゆくとはなしに こひすれは やせとほりぬる ものにそありける | 清輔 |
2066 | あつさゆみ ひきもとむへき わかれちを やといひしにも かへらさるらむ | 公雄 |
2067 | なこりをは よすからこそは なかめつれ けさをわするる ひともありけり | 修範 |
2068 | われはいさ けさわするとも おほえぬに かへすはよるの ころもなるへし | 顕昭 |
2069 | すみよしと いまはたのまし つのくにの なにはたかへる ところなりけり | 朝家 |
2070 | ちはやふる かみもなしとか いふなるを ゆふはかりたに のこらすやきみ | 胤材 |
2071 | あめふれと いのるしるしの みえたらは みつかかみとも おもふへきかな | 経衡 |
2072 | よのひとは うみのおきなと いふめれと またはたちにも たらすそありける | 能宣 |
2073 | ころもたに ふたつありせは あかはたの やまにひとつは かさましものを | 住吉明神 |
2074 | とこしへに きみもあへやも いさなとり うみのはまもの よるときときを | 玉津島明神 |
2075 | はなもさき もみちもちらす ひとえたは ふきなすかせを いかかうらみむ | 道真 |
2076 | よをまもる かみのしるしか いまもなほ しけるちえたの すきのしたかけ | 義持 |
2077 | かみちやま みねのまつかえ としふりて はかへぬいろは わかきみのため | 冬平 |
2078 | かみかせや ふたつのみやの みやはしら ひとつこころに よをまもるらし | 達智門院 |
2079 | あきらけく いはとをいてし あしたより あまてるかみの くにそさかゆる | 尊氏 |
2080 | いすすかは したついはねの みつかきの ひさしきよより みやゐすらしも | 為忠(御子左二条為藤男) |
2081 | すすかかは うかりしせせを すくしきて すむよそかみの めくみなりける | 雅家 |
2082 | かみかせや みもすそかはの みつきよみ すめるをそらと たれかいひけむ | 読人不知 |
2083 | すむはそら にこるはつちと わかれにし そのいにしへも かみそしるらむ | 義持 |
2084 | くもりなき きみかこころの かかみにそ あまてるかみは かけやとしける | 師賢(藤原師信男) |
2085 | いはしみつ みつかききよき なかれこそ うけてにこらぬ よよにしらるれ | 義教 |
2086 | きみをこそ かみもあはれと いはしみつ ほかよりいてぬ なかれとおもへは | 保季 |
2087 | かみよより かはらすすめる いはしみつ ちとせののちも くむよしもかな | 読人不知 |
2088 | やはたやま あとたれそめし しめのうちに なほよろつよと まつかせそふく | 後鳥羽院 |
2089 | あとたれて ちよともさらに いはしみつ ちかひしすゑそ いまもかはらぬ | 道助法親王 |
2090 | あさからぬ ちきりをむすふ いはしみつ たのみてもなほ あかすもあるかな | 頼政 |
2091 | きみかへむ ほとをはえこそ いはしみつ ちよもやちよも かみにまかせて | 行頼(紀) |
2092 | ことにいてて いははかしこし いはてたた たのむこころは かみにまかせむ | 静賢 |
2093 | むかしわか いのりしみちは あらねとも これもうれしな かものかはなみ | 俊成(藤原俊忠男) |
2094 | かみもみよ みたらしかはに ゆくみつの こころきよくも よをいのるかな | 雅有 |
2095 | ちはやふる かものかはなみ たちゐにも ふかきたのみを かけぬまそなき | 信実 |
2096 | きみをまもる かものかはなみ よよかけて すむみつかきも なほそひさしき | 雅世 |
2097 | きみをまもる かものやしろの みしめなは かみもちきりを なほむすふらし | 秀久 |
2098 | みちしあれは なほたのむかな いつはりを たたすまことの かみにまかせて | 茂重 |
2099 | ちはやふる かみのみむろの やへさかき ときはのかけも きみのみやみむ | 俊光 |
2100 | かみもまた あかすみよとや みしめなは なかきはるひに はなのさくらむ | 成久 |
2101 | しるやいかに をしほのやまの みねのまつ われもかみよの おなしたねとは | 実継 |
2102 | すゑたにと いひしちきりを かすかのの おとろかしてや かみにいのらむ | 為遠 |
2103 | むかしわか なをさへかけぬ みかさやま いかなるふちの したはなるらむ | 為顕 |
2104 | みかさやま およはぬふちの すゑはまて かけてそたのむ ひろきめくみを | 公保 |
2105 | かすかやま ふりさけあふく ことのはの むかしのあとを なほたのみつつ | 雅縁 |
2106 | あとたれし ほとそひさしき ひさかたの あまつこやねの かみのみやゐは | 教良 |
2107 | ももとせを はやよかへりの しもをへて たえぬよしたの かみまつりかな | 兼煕 |
2108 | やはらくる つきのかつらの ひかりには こむよのやみも なにかまよはむ | 祐盛 |
2109 | このもとに つきもひかりを やはらけて かみさひわたる みねのあきかせ | 慈円 |
2110 | しきしまの やまとしまねを ふみそめし かみよのみちそ いまもたたしき | 栄仁親王 |
2111 | やほよろつ そこらのかみの としなみに よるひるまもる きみかみよかな | 匡房 |
2112 | わかのうらに まよひやはてむ みくまのの かみのしるへの なきよなりせは | 宋助(三宝院僧正?) |
2113 | むすひおく ちきりもおいの すゑなれは またともえこそ いはしろのまつ | 種成 |
2114 | すすわけし みちをつたへて くまのやま きみをそいのる よろつよまてに | 良瑜 |
2115 | まもるらむ あらひとかみも つかへてし むかしののりの すめらきのあと | 永助法親王 |
2116 | みしめひく みわのかみやま そまきにも とらぬしるしの すきそふりぬる | 杲守 |
2117 | うきことは いろもかはらす いのりこし しるしやいつら みわのかみすき | 実忠 |
2118 | おほひえや すきたつかけを たつぬれは しるしもおなし みわのかみかき | 尭仁法親王 |
2119 | あとたれし ちかひはやまの かひあらは かへるしをりの みちはたかはし | 土御門院 |
2120 | そらにすむ ほしとなりても きみかよを ともにそまもる ななのかみかき | 経賢 |
2121 | ささなみや ねかひをみつの はまにしも あとをたれます ななのおほむかみ | 俊恵 |
2122 | やそちまて ななのやしろに つかへきて いのるもきみか みかけなりけり | 尭全 |
2123 | これもまた ちりにましはる かけなれは つきにもかみの めくみをそみる | 行雅 |
2124 | けふまては かくてくらしつ ゆくすゑを めくみひろたの かみにまかせむ | 頼実(藤原経宗男) |
2125 | わかたのむ あかたのみやの ますかかみ くもらぬかけを あふきてそまつ | 師光(中原師重男) |
2126 | すみよしの まつはためしも しるらめや ふたよのあとに かへるうらなみ | 亀山院 |
2127 | きみかため みとりかはらす としふりて みよにあひぬる すみよしのまつ | 為世(御子左藤原為氏男) |
2128 | いくとせも つもりのうらの まつかえに かみよひさしき かせのおとかな | 通成 |
2129 | あゆみをは はこはすとても このみちを まなははまもれ すみよしのかみ | 尊氏 |
2130 | さりともと いのりしことも すみよしの まつほとひさに なりにけるかな | 経嗣 |
2131 | すみのえに かみさひにける まつなれは なみもしつえに ゆふかけてみゆ | 俊頼(源経信男) |
2132 | よよかけて ふかくそたのむ すみのえの えにしありける かみにつかへて | 国道(津守国助男) |
2133 | わたつうみを あらはれいてし ちかひまて ふかくそたのむ すみよしのかみ | 雅永 |
2134 | なほまもれ わかのうらなみ かかるよに あへるやみちの かみもうれしき | 尭孝 |
2135 | われまては みよにつかへて たまつしま かひあるかみの めくみをそしる | 尭尋 |
2136 | われもみよ ひともみよまて なれきつつ ともにそみかく たまつしまひめ | 義満 |
2137 | いまここに うつすもたかき みやゐかな もとのなきさの たまつしまひめ | 雅縁 |
2138 | くもりなき みよにひかりを さしそへて なほみちてらせ たまつしまひめ | 道平 |
2139 | ささかにの くものいとすち よよかけて たえぬことはの たまつしまひめ | 為重 |
2140 | たのむかな わかふちはらの みやこより あとたれそめし たまつしまひめ | 良基(二条道平男) |