「新千載和歌集」一覧
2358件
1 | はるやたつ ゆきけのくもは まきもくの ひはらにかすみ たなひきにけり | 俊成(藤原俊忠男) |
2 | きえあへぬ いつのゆきまに はるのきて よしののやまの まつかすむらむ | 家良 |
3 | またきえぬ たかねのみゆき はるかけて かすみにけりな かつらきのやま | 実兼 |
4 | いとはやも はるきにけらし あまのはら ふりさけみれは かすみたなひく | 冬平 |
5 | あしひきの やまはかすめと いつるひの かけもくもらて はるはきにけり | 為世(御子左藤原為氏男) |
6 | はるくれは かすみのいろに そめてけり よしののやまの たきのしらいと | 為子(贈従三位) |
7 | はるきぬと みかきかはらは かすめとも なほゆきさゆる みよしののやま | 俊成(藤原俊忠男) |
8 | かすかのの ゆきまのくさの すりころも かすみのみたれ はるかせそふく | 雅経 |
9 | うちなひき さとこそかすめ をちこちの あさけのけふり はるやたつらむ | 為藤 |
10 | はるのくる かたたのうらの あさなきに みるめもしらす たつかすみかな | 基忠(鷹司兼平男) |
11 | こくふねも なみのいつくに まよふらむ かすみのおくの しほかまのうら | 為道 |
12 | たまもかる かたやいつくそ かすみたつ あさかのうらの はるのあけほの | 為相 |
13 | わたのはら かすみもいくへ たつなみの ゆたのたゆたに うらかせそふく | 道家 |
14 | いさりする よさのあまひと いてぬらし うらかせゆるく かすみわたれり | 恵慶 |
15 | にほてるや しかのうらかせ はるかけて ささなみなから たつかすみかな | 公雄 |
16 | しかのうらや はままつかえの はるのいろを そらにふかめて たつかすみかな | 尊円法親王 |
17 | いつしかと すゑのまつやま かすめるは なみとともにや はるのこゆらむ | 俊頼(源経信男) |
18 | ねのひする いつくはあれと かめのをの いはねのまつを ためしにそひく | 為家 |
19 | ここのへの かすみのうちに ひくまつは けふをやちよの ためしにもせむ | 雅実 |
20 | ねのひして ふたはのまつの ちよなから きみかやとにも うつしつるかな | 公実 |
21 | くれたけの よよにつたへて うくひすの たかきにうつる こゑそなれぬる | 冬平 |
22 | なれもまた たによりいてて きみかよに あへるをときと うくひすそなく | 良基(二条道平男) |
23 | うくひすの こゑのいろにや あさみとり かすめるそらも のとけかるらむ | 実教 |
24 | あさなあさな おのれなきてや うくひすの としたちかへる はるをしるらむ | 為氏 |
25 | はなさかぬ ときはのやまの うくひすは かすみをみてや はるをしるらむ | 能宣 |
26 | おほつかな いつこなるらむ はなさかぬ かすみのうちの うくひすのこゑ | 公任 |
27 | うくひすの おのかなくねは はるなれと ねくらのたけを うつむしらゆき | 花園院 |
28 | はるはまつ わかなつまむと しめおきし のへともみえす ゆきのふれれは | 実朝 |
29 | ふめはをし かたののわかな ゆきふかみ ききすのあとを たつねてそつむ | 安芸(郁芳門院) |
30 | ふみわけて のさはのわかな けふつまむ ゆきまをまたは ひかすへぬへし | 後光厳院 |
31 | はるあさき ゆきけのみつに そてぬれて さはたのわかな けふそつみつる | 伏見院 |
32 | いつしかと のへにこころの あくかるる はるのならひと わかなつむなり | 為遠 |
33 | きのふこそ やくとはみしか かすかのに いつしかけふは わかなつみつつ | 読人不知 |
34 | あかねさす ひるはたゆたひ うはたまの よるのいとまに つめるねせりそ | 諸兄 |
35 | あめつゆの めくみかはらて かすかのに おほくのはるの わかなつみつる | 実泰 |
36 | ふゆかれの しののをすすき うちなひき わかなつむのに はるかせそふく | 為家 |
37 | はるさめも こそみしのへの しるへかは みとりにかへる をきのやけはら | 寂蓮 |
38 | しもかれの こやのやへふき ふきかへて あしのわかはに はるかせそふく | 良経(九条兼実男) |
39 | なにはつに むかしのかせは ことなれと わかよはるへと さくやうめかえ | 後宇多院 |
40 | こころあらむ ひとのとへかし うめのはな かすみにかをる はるのやまさと | 俊成(藤原俊忠男) |
41 | うめかかの にほふかきねの あまたあれは このさとわきて とふひともなし | 公宗母 |
42 | かすめとも かやはかくるる こもりえの はつせのさとの はるのうめかえ | 有房(六条通有男) |
43 | はるかせは かすみのそらに かよひきて うめかかにほふ やとのゆふくれ | 後伏見院 |
44 | おもひやる こころをかせの たよりにて たかなほさりの うめのにほひそ | 月花門院 |
45 | ふくかせの うはのそらなる うめかかに かすみもにほふ はるのゆふくれ | 為氏 |
46 | さきそむる はなはさなから うつもれて ゆきのみにほふ うめのしたかせ | 兼氏 |
47 | あさみとり はるのそらより ちるゆきに こすゑのうめも まかひぬるかな | 読人不知 |
48 | うめかえに ゆきのふれれは いつれをか はなとはわきて はるのきつらむ | 躬恒 |
49 | ゆきとのみ あやまたれしを うめのはな くれなゐにさへ にほひぬるかな | 元輔(清原春光男) |
50 | そてふれて をらはやをらむ わきもこか すそひくにはに にほふうめかえ | 為経(甘露寺藤原資経男) |
51 | うつしても なほこそにほへ うめのはな ひとのそてより すくるはるかせ | 為世(御子左藤原為氏男) |
52 | うめかかの みにしむとこは ゆめならて ねぬよかすめる つきをみるかな | 宗尊親王 |
53 | はるのよの おとろくゆめは あともなし ねやもるつきに うめかかそする | 光厳院 |
54 | みぬほとに うつろひぬへき うめのはな ふかかりきとや のちにかたらむ | 中務 |
55 | うくひすの やとのはなたに いろこくは かせにしらせて しはしまたなむ | 実頼 |
56 | はなみにも ゆくへきものを あをやきの いとにかけつつ けふはくらしつ | 遍昭 |
57 | あをやきの まゆにこもれる いとなれは はるのくるにそ いろまさりける | 兼輔 |
58 | はるかせや やなきのかみを けつるらむ みとりのまゆも みたるはかりに | 亀山院 |
59 | さほひめの はつはなさくら かけそへて はるのいろなる あをやきのいと | 公賢 |
60 | たにかはの いはねかたしく あをやきの うちたれかみを あらふしらなみ | 良経(九条兼実男) |
61 | かせわたる きしのやなきの かたいとに むすひもとめぬ はるのあさつゆ | 為兼 |
62 | しらつゆの むすふもなかき あをやきの たまのをとけて はるかせそふく | 定為 |
63 | ちきりおけ たままくくすに かせふかは うらみもはてし はるのかりかね | 定家 |
64 | ふるさとに ゆきてうらみむ かへるかり まつらむひとを われにをしへよ | 国冬 |
65 | はることに うはのそらなる こころもて ものわすれせす かへるかりかね | 国信 |
66 | いつのまに とほさかるらむ かへるさの あとはかすみの はるのかりかね | 為世(御子左藤原為氏男) |
67 | みねこえて あきこしみちや まよふらむ かすみのきたに かりもなくなり | 土御門院 |
68 | あまさかる くもちやまよふ かりかねの きこゆるそらに かすむつきかけ | 実兼 |
69 | おほそらに かりこそむれて かへるなれ あきふるさとや こひしかるらむ | 山田 |
70 | はることに かりかへるなり ふるさとに いかなるはなの さけはなるらむ | 雅定 |
71 | はるもなほ はなまつほとの さひしさを なくさめかぬる みよしののやま | 雅有 |
72 | おもひやる こころもたえす みよしのや はなまつころの はるのあけほの | 覚助法親王 |
73 | まかふとは かつしりなから やまさくら くもをたつねて ゆかぬひそなき | 国助 |
74 | しはしなほ よそなからみむ やまさくら たつねはくもに なりもこそすれ | 為子(贈従三位) |
75 | おもかけは よそなるくもに たちなれし たかまのさくら はなさきにけり | 為家 |
76 | しからきの とやまのさくら さきにけり まきのこすゑに かかるしらくも | 経教 |
77 | さきてはや そらにそみゆる やまたかみ かすみをわくる はなのこすゑは | 為世(御子左藤原為氏男) |
78 | またれつる はななりけりな やまさくら かすみのうへに みゆるしらくも | 良平 |
79 | あしひきの とほやまさくら さきぬらし かすみてかかる みねのしらくも | 為明 |
80 | くもかかる とほやまとりの をのへより へたてぬいろの はなさきにけり | 為定(御子左二条為道男) |
81 | たかさこの まつのこのまに さくはなや をのへにたてる くもとみゆらむ | 道嗣 |
82 | つきかけの はれゆくままに さくらはな そこともいとと みえそわかれぬ | 師実 |
83 | かすかなる みかさのやまに つきはいてぬ さけるさくらの いろもみゆらむ | 人麿 |
84 | あしひきの やまさくらはな ひをへつつ かくしにほはは われこひめやも | 赤人 |
85 | さきそむる ところからにそ さくらはな あたにちるてふ なをたつなゆめ | 村上天皇 |
86 | さかぬまの くもをもかつは はなとみて さかりひさしき やまさくらかな | 兼盛 |
87 | にほはすは たれかことこと わきてしらむ はなとくもとの おなしよそめを | 隆教 |
88 | みよしのの たかねのさくら さきしより くもさへはなの かににほひつつ | 義詮 |
89 | こもりえの はつせのさくら さきしより あらはにかかる はなのしらくも | 尊氏 |
90 | おしなへて このめもはると みえしより はなになりゆく みよしののやま | 後醍醐院 |
91 | みよしのは はなよりほかの いろもなし たてるやいつこ みねのしらくも | 為藤 |
92 | はなとのみ はるはさなから みよしのの やまのさくらに かかるしらくも | 長舜 |
93 | さきぬれは くもとゆきとに うつもれて はなにはうとし みよしののやま | 寂蓮 |
94 | かせかをる はなのあたりに きてみれは くももまかはす みよしののやま | 讃岐(二条院) |
95 | はるといへは はなやかをると やまさくら みるへきひとの たつねこぬかな | 白河院 |
96 | さそへとも きみもこすゑの はなみにと ひとりそまとふ はるのひくらし | 読人不知 |
97 | はなゆゑも とふへきひとそ またれける おもひのほかに たれかたつねむ | 道玄 |
98 | たつねいる かすみもふかき はなのかを さそひていつる やまおろしのかせ | 公経(藤原実宗男) |
99 | かみなひの みむろのさくら さきそへて いくへたつたの はなのしらくも | 為定(御子左二条為道男) |
100 | はるにあふ おいきのさくら ふりぬれは あまたかさなる みゆきをそみる | 伏見院 |
101 | ももしきや はなもむかしの かをとめて ふるきこすゑに はるかせそふく | 順徳院 |
102 | ここのへに にほひかさなる さくらはな めかれぬいろの いくよへぬらむ | 為子(従二位) |
103 | よしのやま くもゐにみゆる たきのいとの たえぬやはなの さかりなるらむ | 後鳥羽院 |
104 | あらしやま これもよしのや うつすらむ さくらにかかる たきのしらいと | 後宇多院 |
105 | さきつつく おなしさくらの いろみえて たちもまかはぬ みねのしらくも | 隆教 |
106 | あさひさす こすゑははなに あらはれて とやまのさくら くももかからす | 源承 |
107 | ふくかせに にほひをそへて まよふなり はなのよそなる みねのしらくも | 基嗣 |
108 | はるかせの にほはさりせは みよしのの くもとはなとを いかてわかまし | 邦省親王 |
109 | かすみたつ みねにもをにも やまさくら にほひへたてぬ はるかせそふく | 覚助法親王 |
110 | たつねきて けふそたかまの やまさくら よそならてみる はなのしらくも | 公明 |
111 | しらくもと あたにもいはし やまさくら よそにみるなの たちもこそすれ | 兼宗 |
112 | このもとを ほかにもとはて わかやとに こころのとけき はなのころかな | 後醍醐院 |
113 | ももしきの みはしのさくら ちらぬまに あさきよめせよ とものみやつこ | 実重(三条公親男) |
114 | をるひとを わきていさめむ ここのへの みはしのはなに かせはふくとも | 為藤 |
115 | ここのへの くもゐのはるの さくらはな あきのみやひと いかてをるらむ | 後醍醐院 |
116 | たをらすは あきのみやひと いかてかは くもゐのはるの はなをみるへき | 後京極院 |
117 | たちなるる くもゐのはなを おもはすは よしののおくに はるやくらさむ | 成家 |
118 | たつねても たれかはわかむ よしのやま はなよりはなの おくのしらくも | 基家 |
119 | やまかせに はるるかすみの ひまことに もれいつるくもや さくらなるらむ | 雲雅 |
120 | いにしへの はるのかたみに なかめつる はなをいつこの かせさそふらむ | 読人不知 |
121 | かせふけは はなさくかたへ おもひやる こころをさへも ちらしつるかな | 貞文 |
122 | たをりもて やとにそかさす さくらはな こすゑはかせの うしろめたさに | 国信 |
123 | あつさゆみ はるのこころに いるものは たかまとやまの さくらなりけり | 公能 |
124 | さきしより うつろふいろの つらさまて はなをおもはぬ ときのまそなき | 為親 |
125 | いにしへの はるをそしたふ いまのよの はなになりぬる ひとのこころに | 後宇多院 |
126 | ふくかせの うらみはみにそ かへりぬる をさまれるよは はなもちらしを | 後嵯峨院 |
127 | ふくかせの をさまれるよは かきりありて ちるものとけき やまさくらかな | 俊光 |
128 | はるかせは ふくとしもなき ゆふくれに こすゑのはなも のとかにそちる | 花園院 |
129 | さくらはな ちりかひかすむ ひさかたの くもゐにかをる はるのやまかせ | 家隆 |
130 | さくらはな そらさへにほふ やまかせに うつろふくもの あともさためす | 成実(藤原親実男) |
131 | たかさこの まつのみとりは つれなくて をのへのはなの いろそうつろふ | 為兼 |
132 | にほひくる かせのたよりを しをりにて はなにこえゆく しかのやまみち | 定為 |
133 | ふきおくる はなをたよりに たつねきて つらさわするる はるのやまかせ | 雅孝 |
134 | さしもこそ いとふうきなの あらしやま はなのところと いかてなりけむ | 良基(二条道平男) |
135 | うらみはや かつちるはなの こすゑこそ やかてあらしの やとりなりけれ | 為道 |
136 | ちるかうへに またさそはれて はるかせの ふくにまかする やまさくらかな | 通顕 |
137 | いまよりは はなのたよりに ひとまたし ちれはわかるる おもひそひけり | 大輔(殷富門院) |
138 | さくらはな またみぬほとに ちりにけり のちのはるたに こころあらなむ | 義孝(藤原伊尹男) |
139 | このはるも きみをはまちつ さくらはな かせのこころの なきにやあるらむ | 延光 |
140 | あちきなく またこりすまに をしめとも うつろひまさる やまさくらかな | 公相 |
141 | むかしより かくこそひとも をしみけめ たかならはしに はなのちるらむ | 教長 |
142 | おのつから ちりやのこらむ やまさくら をしむこころを はなにしられは | 為世(御子左藤原為氏男) |
143 | みれはまた ちらぬこころを やまさくら はなにもいかて おもひしらせむ | 長舜 |
144 | ゆふたたみ たむけのやまの さくらはな ぬさもとりあへす はるかせそふく | 道家 |
145 | しらくもに まかふたかねの やまさくら ちるをははなと みるかひそなき | 国助女 |
146 | いろもかも わきそかねぬる はなさそふ あらしになひく みねのしらくも | 実性 |
147 | みよしのの よしののさくら ちりぬらし たえまかちなる みねのしらくも | 公宗(西園寺実衡男) |
148 | いまさらに ゆきとみよとや みよしのの よしののさくら はるかせそふく | 為道 |
149 | ゆきとのみ あらしのすゑに さそはれて くもにまかはぬ やまさくらかな | 経継 |
150 | かへるさを いかにせよとて やまさくら ふままくをしき ゆきとふるらむ | 実定 |
151 | このまより はなのゆきのみ ちりくるは みかさのやまの もるにやあるらむ | 読人不知 |
152 | にはたつみ このもとちかく なかれすは うたかたはなを ありとみましや | 兼輔 |
153 | とふひとも こすゑをみてや かへるらむ あはれさひしき はなのにはかな | 丹後(宜秋門院) |
154 | みやきもり なきさのかすみ たなひきて むかしもとほし しかのはなその | 定家 |
155 | ふるさとと なりにしかとも さくらさく はるやむかしの しかのはなその | 俊成女 |
156 | しかのうらや よせくるなみも しろたへに はなふきおろす ひらのやまかせ | 伏見院 |
157 | しかのうらや さくらふきこす やまかせに よるへさためぬ はなのささなみ | 有房(六条通有男) |
158 | はるかせに かすみなかれて よしのかは みつのうへゆく はなのしらなみ | 読人不知 |
159 | よしのかは おつるしらあわの きえかへり のこるもつらき はなのいろかな | 知家 |
160 | はるかせを たきついはねに せきかねて かすみにおつる はなのしらなみ | 公経(藤原実宗男) |
161 | とませかは とまらぬなみに かけてけり しらゆふたきつ はなのしからみ | 公雄 |
162 | たきつせは かすみのそこに おとたえて くもよりおつる はなのしらなみ | 基氏(足利尊氏男) |
163 | さそはれし なこりときけは ふくかせの おとこそはなの かたみなりけれ | 親源 |
164 | ひとりのみ なかむるやとに ちるはなを あふきのかせの つてにたにみよ | 瓊子内親王 |
165 | ふきまよふ あふきのかせの つてにこそ いはてかひある いろもみえけれ | 瑒子内親王 |
166 | はるのよの あらしやそらに さむからし かすみもなれぬ つきのかけかな | 為藤 |
167 | はるのよの ならひもつらし なにしかも くもらぬつきの かすみそめけむ | 法守法親王 |
168 | そことしも わかれぬそらの ひかりにて かすみににほふ はるのよのつき | 為定(御子左二条為道男) |
169 | このもとは ひかすはかりを にほひにて はなものこらぬ はるのふるさと | 定家 |
170 | はるかすみ たなひくたにに かへるなり くもよりいてし うくひすのこゑ | 後二条院 |
171 | をやまたの なはしろみつも せきわけす ゆたかなるよに まかせてそみる | 為世(御子左藤原為氏男) |
172 | せきとめぬ ゐてのしからみ なみこえて はるのわかれに なくかはつかな | 国助 |
173 | いろみえて なかれもやらす やまふきの うつろふかけや ゐてのしからみ | 国道(津守国助男) |
174 | みなそこに うつるをしらて やまふきの はなのうへこす なみかとそみる | 公清 |
175 | よしのかは はやせのなみに かけみえて はなもいはこす きしのやまふき | 冬平 |
176 | たちかへり みれともあかぬ ふちなみは すくるこころに かかるなりけり | 慈円 |
177 | ときはなる みきはのまつに かかるより はなもひさしき いけのふちなみ | 光厳院 |
178 | ふちのはな かせをさまれる むらさきの くもたちさらぬ ところとそみる | 敏行 |
179 | かすかのの ふちはちりゆく なにをかは みかりのひとの をりてかささむ | 読人不知 |
180 | ゆくふねの あとなきかたを したひても はるはとまらぬ やへのしほかせ | 達智門院 |
181 | わかれゆく はるのかすみの せきもりも すくるひかすを ととめやはする | 宣子(従三位藤原) |
182 | ちりはつる はなのあとたに さひしきを いかにせよとて はるのゆくらむ | 後光厳院 |
183 | ちるはなを まつさきたてて ひかすさへ うつりはてぬと くるるはるかな | 顕実母 |
184 | ねにかへり ふるすをいそく はなとりの おなしみちにや はるもゆくらむ | 為定(御子左二条為道男) |
185 | はなたにも ちらてわかるる はるならは いとかくけふは をしまさらまし | 朝忠 |
186 | いくかへり はるのわかれを をしみきぬ みとりのそらも あはれとはみよ | 俊成(藤原俊忠男) |
187 | たちかふる けふともいさや しらかさね きのふのはなの そめぬたもとは | 花園院 |
188 | たちかふる かとりのきぬの しらかさね かさねてもなほ うすきそてかな | 有房(六条通有男) |
189 | わかれにし はなのかとりの なつころも はるのかたみや なほのこるらむ | 経顕(藤原定資男) |
190 | はるすきて けふぬきかふる からころも みにこそなれね なつはきにけり | 為定(御子左二条為道男) |
191 | なれきつる はなのかをしき ころもてを けふたちかへて なつはきにけり | 宣子(従三位藤原) |
192 | ときすきて あをはにましる おそさくら はるはこすゑに とまるなりけり | 崇光院 |
193 | しのひねも けふよりとこそ まつへきに おもひもあへぬ ほとときすかな | 後醍醐院 |
194 | なきぬなり うつきのけふの ほとときす これやまことの はつねなるらむ | 後京極院 |
195 | ほとときす うのはなやまに やすらひて そらにしられぬ つきになくなり | 守覚法親王 |
196 | いとはやも さとなれにけり ほとときす うのはなかきに をちかへりなく | 光厳院 |
197 | たまかはの さとのかきねの うのはなは およはぬなみの こすかとそみる | 道平 |
198 | ゆふつくよ ひかりをそへて たまかはの さとのしるへと さけるうのはな | 公顕 |
199 | ひさかたの つきのかけとも みゆるかな かつらのさとに さけるうのはな | 読人不知 |
200 | あけぬとも なほかけのこせ しろたへの うのはなやまの みしかよのつき | 宗尊親王 |
201 | ことしまて よよかけきつる あふひくさ たえぬちきりは かみやうくらむ | 雅孝 |
202 | もろかつら くさのゆかりに あらねとも かけてまたるる ほとときすかな | 定家 |
203 | かみやまの もりのしたくさ ふみならし まつひかさなる ほとときすかな | 尊氏 |
204 | しのひねは ふけてやきくと ほとときす いもねぬよはを かさねてそまつ | 進子内親王 |
205 | あしひきの やまほとときす まちわひぬ かたらひなれし たのみはかりに | 国冬 |
206 | ちきるたに たのまれぬよに ほとときす うはのそらなる ねこそまたるれ | 邦長 |
207 | またてきく はつねならねは つれなきを うらみぬころの ほとときすかな | 為遠 |
208 | はつねまつ われにてしれは ほとときす ひとよりさきと えこそうらみね | 後二条院 |
209 | われならぬ ひともまちけり ほとときす としにまれなる はつねとおもへは | 後二条院 |
210 | つれなさも かはらぬころと ほとときす こそのふるこゑ なほやまたれむ | 深守法親王 |
211 | しのふらむ こころもしらす ほとときす さつきこぬまの ねこそまたるれ | 為家 |
212 | ほとときす しのひもあへす もらすなり さつきまつまの こそのふるこゑ | 後鳥羽院 |
213 | おのつから ききてもいとと しのひねの ころはまたるる ほとときすかな | 公宗(西園寺実衡男) |
214 | ほとときす なきつるかたの しのひねに こころゆるさす なほまたれつつ | 為明 |
215 | ほとときす かたらふこゑを ききしより あしのしのやに いこそねられね | 能因 |
216 | まちわひぬ やとやかへまし ほとときす おなしみやこも わきてなくなり | 惟明親王 |
217 | ほとときす やまちにたかく なくこゑを わかひとりねに きくかかひなさ | 家持 |
218 | このさとに しはしかたらへ ほとときす ほかのはつねは けふならすとも | 公継 |
219 | なきふりて のちにかたらへ ほとときす おいてきくへき はつねならすは | 冬平 |
220 | たつねいる やまのかひあれ ほとときす ききてみやこの ひとにかたらむ | 行済 |
221 | またれける けふとしりてや ほとときす やまのかひある ねをはなくらむ | 元盛 |
222 | かよひける こころありてや ほとときす またるるほとの そらになくらむ | 具行 |
223 | ほとときす くものいつくに しのひきて そらよりもらす はつねなるらむ | 為藤 |
224 | みしかよは おもひもあへす ほとときす あけゆくままに はつねなくなり | 性助法親王 |
225 | ききつやと とふひとあらは ほとときす こたふはかりの ひとこゑもかな | 隆房 |
226 | ほとときす ひとつてにのみ きくころは みのかすならぬ ねこそなかるれ | 泰時 |
227 | きくひとも われになつけそ ほとときす これそはつねと おもふはかりに | 重氏 |
228 | たかためか こころつくさて ほとときす このまのつきの よそになくらむ | 実教 |
229 | まちいつる くもまのつきに ほとときす をしむはつねも えやはしのはぬ | 花園院 |
230 | ほとときす いこまのやまや すきぬらむ へたつるくもの ほかになくなり | 道家 |
231 | したふとも しらてやなれも ほとときす かたらひすてて よそにすくらむ | 成久 |
232 | いくさとの ゆめをのこして ほとときす かたらふこゑの とほさかるらむ | 雅有 |
233 | うたたねは ゆめにやあるらむ ほとときす おとろくほとに またもきこえぬ | 顕房 |
234 | さとわかす かたらひわたれ ほとときす まつらむひとの おなしねさめに | 桓守 |
235 | しらてこそ つれなかるらめ ほとときす おのかためなる よはのねさめを | 維貞 |
236 | なれたにも かたらひすつな ほとときす ものおもふころの よはのねさめを | 為藤 |
237 | ほとときす いまやとおもふ ゆふくれを たのめてくもる むらさめのそら | 為相 |
238 | むらさめの くもまのつきを しるへにて いととまたるる ほとときすかな | 後光厳院 |
239 | なきぬへき こころのうらも むらさめの たよりまさしき ほとときすかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
240 | ほとときす こゑまつころや やまかつの わさたのさなへ うゑはしむらむ | 家良 |
241 | たみのため ときあるあめを いのるとも しらてやたこの さなへとるらむ | 後醍醐院 |
242 | おそくとき たみのさなへに みつきもの たえぬひつきの ほとそしらるる | 道平 |
243 | みなかみに たかさなへとる すゑならむ なかれてにこる たにかはのみつ | 土御門院 |
244 | ひろせかは あたりのをたに せきいれて そてつくはかり とるさなへかな | 定円(葉室光俊男) |
245 | そてのかは はなたちはなに かへりきぬ おもかけみせよ うたたねのゆめ | 為子(贈従三位) |
246 | しのふへき よよのかたみに のこしおきて にほひはふりぬ のきのたちはな | 定為 |
247 | たちはなの にほひはかりや ふるさとの のきはにくちぬ かたみなるらむ | 公雄 |
248 | そてふれし むかしのあとは しのへとも よそにみはしの のきのたちはな | 尊氏 |
249 | そてふれし ちかきまもりの いつとせも あはれむかしと にほふたちはな | 公賢 |
250 | さそなけに はなたちはなも にほふらむ むかしにかへる ももしきのには | 公秀 |
251 | かをとめて むかしにかへれ いへのかせ ふきつたへたる のきのたちはな | 実忠 |
252 | たちはなの はなのやととふ ほとときす かれなていまも むかしこふなり | 後白河院 |
253 | たかために なくやさつきの ゆふへとて やまほとときす なほまたるらむ | 定家 |
254 | きくたひに みにそしみける ほとときす こゑはいろなる ものならなくに | 忠盛 |
255 | いまははや ききふりぬへき さみたれの そらにもあかぬ ほとときすかな | 為兼 |
256 | さみたれの くもゐにたかき ほとときす つきのかつらの かけしたふらし | 順徳院 |
257 | わするなよ またこむとしも ほとときす のきのあやめの さみたれのそら | 順徳院 |
258 | さみたれに みたれてひとを おもふとて なつのよをさへ あかしかねつる | 遍昭 |
259 | かきくもり ふるさみたれの つれつれと はるるひまなき ころにもあるかな | 読人不知 |
260 | さみたれの そらかきくらす ときしもあれ なほこそさらせ ぬのひきのたき | 覚誉法親王 |
261 | つゆにたに みかさといひし みやきのの このしたくらき さみたれのころ | 宗尊親王 |
262 | さみたれは さはへのまこも いたつらに かりそめならぬ なみやこすらむ | 少将(藻壁門院) |
263 | みつこゆる いけのうきくさ ねをたえて さそはれいつる さみたれのころ | 内経 |
264 | つつゐつつ ゐつつのうへに みつこえて むすふもあさし さみたれのころ | 通親 |
265 | なかれあしの すゑはもみえす なりにけり をののみなとの さみたれのころ | 基任 |
266 | ふちはせに かはるとききし あすかかは たかいつはりそ さみたれのころ | 公朝 |
267 | さみたれに みつまさるなり あすかかは いかにふちせの またかはるらむ | 公雄 |
268 | ありてゆく みかさそたかき みなせかは なになかれたる さみたれのころ | 公脩 |
269 | さみたれに かはおとたかく なりにけり みつのみかさの まさるのみかは | 道嗣 |
270 | さみたれに たのむつなても くちはてて なみにひかるる よとのかはふね | 隆信 |
271 | ひさかたの くものなみこす たきのうへの みふねのやまの さみたれのころ | 雅経 |
272 | さみたれの くもよりうへの あまのかは いかにふりてか みつまさるらむ | 道玄 |
273 | いつみかは とほきわたりの つきかけに こゑをつくして なくほとときす | 後宇多院 |
274 | ほとときす なこりのこゑを したふまに またてそみつる いさよひのつき | 公賢 |
275 | ふりにける こゑをのこして ほとときす なほみなつきの そらになくなり | 為世(御子左藤原為氏男) |
276 | ともしする さつきのやまの あをつつら くるるよことに しかやたつらむ | 国助 |
277 | あつさゆみ いるさのやまの ゆふやみに つきよりさきと ともしをそする | 長通 |
278 | なつやまの しかのたちとに よもすから おもひをかけて あくるしののめ | 俊忠 |
279 | ともしする はやまのほくし よもすから もゆるやしかの おもひなるらむ | 伏見院 |
280 | ねにたてす もゆるほたるや おもひせく こころのたきの たまとみゆらむ | 顕実母 |
281 | よるひかる たまとそみゆる みつくらき あしへのなみに ましるほたるは | 後宇多院 |
282 | みつのおもに おのかおもひを かつみつつ かけはなれぬや ほたるなるらむ | 少将(藻壁門院) |
283 | せりつみし ひとのおもひや さはみつに もえてほたるの かけとなりけむ | 実夏 |
284 | なかれえの いせのはまをき うちそよき すすしきかせに とふほたるかな | 国冬 |
285 | くさふかき つゆよりしけく とふほたる きえぬひかりそ かせにみたるる | 小督(昭訓門院) |
286 | なつくさの ことしけくとも たまほこの みちたかはすは ひともまよはし | 義詮 |
287 | とこなつの はななかりせは やまかつの かきほにひとは たつねさらまし | 読人不知 |
288 | さととほき わかすむかたの うかひふね ほしかかはへの かかりひのかけ | 実重(三条公親男) |
289 | うふねこく よかはのなみの おとふけて うつるもすすし かかりひのかけ | 徽安門院 |
290 | おほゐかは やまもとくたる かかりひの うつりもあへす あくるみしかよ | 為氏 |
291 | あまのかは くものみをゆく つきかけは のこりてはやく あくるみしかよ | 為世(御子左藤原為氏男) |
292 | ひさかたの くものいつくの かけならて このまあけゆく みしかよのつき | 伏見院 |
293 | いつかたも やまのはとほき なかそらの くもまにあくる みしかよのつき | 冬平 |
294 | あけやすき そらにのこりて なつのよは いることしらぬ つきのかけかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
295 | なかそらに なほのこらすは みしかよを つきのとかとや おもひはてまし | 尊胤法親王 |
296 | いつくにか しはしすくさむ たかしまの かちのにかかる ゆふたちのそら | 為道 |
297 | なるかみの おとはそことも なかりけり くもれるかたや ゆふたちのそら | 氏村 |
298 | なつころも すすしくたちぬ うつせみの はかひのやまの まつのしたかせ | 経教 |
299 | ここのへの にはのくれたけ ふくかせも きよくすすしき こゑかよふなり | 行家(藤原知家男) |
300 | むすふての いしまをせはみ おくやまの いはかきしみつ あかすもあるかな | 人麿 |
301 | したくくる みつにあきこそ かよふらし むすふいつみの てさへすすしき | 中務 |
302 | やましろの ゐてのしたおひ なかきひに むすふもあかぬ たまかはのみつ | 行親 |
303 | おほゐかは またなつなから すすしきは ゐせきにあきや もりてきつらむ | 読人不知 |
304 | またきより なみのしからみ かけてけり みそきまつまの かものかはかせ | 伏見院 |
305 | みそきかは きよきなかれに うつすなり ならのみやこの ふるきためしを | 冬教 |
306 | みたらしや みそきになかす おほぬさの つひによるせは あきかせそふく | 為定(御子左二条為道男) |
307 | みそきする あさのはすゑの なひくより ひとのこころに かよふあきかせ | 俊成女 |
308 | しらてこそ あるへかりけれ あききぬと をきふくかせの おとにたてすは | 醍醐天皇 |
309 | かせわたる のきはにそよく くれたけの ひとよのうちに あきそきにける | 崇光院 |
310 | からころも つまふくかせの みにしむは うらさひしかる あきやきぬらむ | 光厳院 |
311 | けさのあさけ たもとすすしき かせたちて いとはやあきの しられぬるかな | 後伏見院 |
312 | あさまたき あきかせふけは せみのはの うすきころもそ すすしかりける | 読人不知 |
313 | このねぬる あさけのつゆに そてぬれて わかためつらき あきはきにけり | 知家 |
314 | あはれしる あきのゆふへの しらつゆは たかそてよりか おきはしめけむ | 家良 |
315 | よひよひに あきのくさはに おくつゆは たまにぬかむと とれはきえつつ | 躬恒 |
316 | しらつゆは けなはけななむ きえすとて たまにぬくへき ひともあらしを | 家持 |
317 | たかぬける たまにかあるらむ あきののの くさはのこらす むすふしらつゆ | 好忠 |
318 | つゆむすふ したくさみれは さくらあさの をふのかりふに あきはきにけり | 邦省親王 |
319 | ふきむすふ かせよりやかて みたれけり しけるあさちの あきのしらつゆ | 藤子(従三位) |
320 | おとたえす のきはのをきの そよくかな いつふくかせの なこりなるらむ | 為定(御子左二条為道男) |
321 | ふるさとは のきはのをきを かことにて ねぬよのとこに あきかせそふく | 良経(九条兼実男) |
322 | おとたつる かせのやとりと なりはてて つゆにはうとき にはのをきはら | 公清 |
323 | なほさりに ほすゑをむすふ をきのはの おともせてなと ひとのすきけむ | 大弐三位 |
324 | ほしやらぬ なみたのつゆの かすそへて ものおもふそてに あきはきにけり | 資名 |
325 | あきをまつ としのわたりは とほけれと ちきりそたえぬ かささきのはし | 光厳院 |
326 | まちわたる たえまはとほき つきひにて けふのみかよふ かささきのはし | 後伏見院 |
327 | あふせをや たとらすわたる ゆふつくよ ひかりさしそふ かささきのはし | 公脩 |
328 | あまのかは あきをちきりし ことのはや わたすもみちの はしとなるらむ | 国道(津守国助男) |
329 | わすれすよ たむけのにはの つゆとおく たまのをことの よよのしらへは | 公賢 |
330 | たなはたは われてまたあふ かかみかと あきのなぬかの つきやみるらむ | 後宇多院 |
331 | あまのはら ふりさけみれは たなはたの ほしのやとりに きりたちわたる | 経信 |
332 | あまのかは よふかくきみは わたるとも ひとしれすとは おもはさらなむ | 家持 |
333 | あまのかは こひしきときそ わたりぬる たきつなみたに そてはぬれつつ | 友則 |
334 | ふけぬるか みつかけくさの うちなひき すすしくなりぬ あまのかはかせ | 花園院 |
335 | あまのかは かはへのきりの ふかきよに つまむかへふね いまかいつらし | 花園院 |
336 | たなはたの あまのいはふね こよひこそ あきかせふきて まほにあふらめ | 顕輔 |
337 | あまのかは そのみなかみは きはむとも あふせははても あらしとそおもふ | 為藤 |
338 | かつらきの かみならねとも あまのかは あくるわひしき かささきのはし | 後嵯峨院 |
339 | あけゆけは あまのかはなみ たちかへり のちのあふせや なほちきるらむ | 実兼 |
340 | あまのかは ひとよはかりの あふせこそ つらきかみよの うらみなるらめ | 経継 |
341 | たなはたの いほはたころも まれにきて かさねもあへぬ つまやうらみむ | 後伏見院 |
342 | たなはたの いほはたころも おくつゆに ぬれてかさぬる あきはきにけり | 冬定 |
343 | たなはたの くものころもは たたひとよ かさねてうとく なるつきひかな | 為理 |
344 | たなはたは うきておもひや まさるらむ たつかはきりの けさのわかれに | 定為 |
345 | わかれちの かたみもとめす ゆふつくよ あかつきやみの ほしあひのそら | 後二条院 |
346 | としことに まつもすくすも わひしきは あきのはしめの なぬかなりけり | 和泉式部 |
347 | わかれては わひしきものを ひこほしの きのふけふこそ おもひやらるれ | 読人不知 |
348 | つゆふかき あしたのはらの はなすすき たかかへるさの たもとなるらむ | 兼氏 |
349 | ふきむすふ のへのをはなの あきかせに つゆのみたれぬ そてやなからむ | 一条(昭慶門院) |
350 | あきかせに をはななみよる わかやとそ やまさとよりも つゆけかりける | 輔仁親王 |
351 | かせはらふ うつらのとこは よさむにて つきかけさひし ふかくさのさと | 恒明親王 |
352 | あさちふの をののしのはら いろつきて つゆしもさむみ うつらなくなり | 雅孝 |
353 | とにかくに そてやすからぬ ゆふへかな なみたあらそふ あきのしらつゆ | 為道 |
354 | ゆふくれの なみたにそはぬ つゆならは あきのあはれの ほとはみてまし | 道洪 |
355 | つゆやそふ おもひやまさる わかそての なみたそたえぬ あきのゆふくれ | 定為 |
356 | うかりける たかならはしの ゆふへより あきはなみたの つゆこほるらむ | 冬教 |
357 | いひしらぬ おもひもそれと なかりけり むなしきそらの あきのゆふくれ | 為定(御子左二条為道男) |
358 | わすれすよ ふみならしてし みよしのの いはのかけちの あきのゆふくれ | 覚助法親王 |
359 | しなかとり ゐなののをささ うちなひき しのにふきしく あきのゆふかせ | 師信 |
360 | いかにせむ なけかしとても かなしさの こころにあまる あきのゆふくれ | 有忠 |
361 | ときわかぬ わかみとなにか おもひけむ なけきくははる あきのゆふくれ | 尊道法親王 |
362 | あはれしる わかこころなる ゆふくれを あきのならひと おもひけるかな | 公雄 |
363 | としことに おほみやひとの くるのへは あきのさかとや はなもみるらむ | 朱雀院 |
364 | いほしめて いまこそにはと なりにけれ やまのをのへの あきはきのはな | 後嵯峨院 |
365 | つゆわくる そてにそうつる むらさきの いろこきのへの はきかはなすり | 実俊(西園寺公宗男) |
366 | あきかせに みたれにけりな みちのくの しのふにはあらぬ はきかはなすり | 為子(贈従三位) |
367 | いくたひか さかりみすらむ みやきのの おなしふるえの あきはきのはな | 実教 |
368 | つゆなから をるへきものを みやきのの もとあらのはきに あきかせそふく | 邦省親王 |
369 | つゆなから ちくさふきしく あきかせに みたれてまさる はなのいろかな | 直義 |
370 | たとふへき かたこそなけれ わきもこか ねくたれかみの あさかほのはな | 匡房 |
371 | つゆふかき きりのまかきの あさほらけ しをれそまさる はなのいろいろ | 広義門院 |
372 | あさことに つかふるみちの ふちはかま かさねてにほふ あきのしらつゆ | 実泰 |
373 | しらつゆの おくとみしより さくはなの いろのちくさに のはなりにけり | 師賢(藤原師信男) |
374 | いつしかも ゆきてやはみむ あきののの はなのしたひも とけもしぬらむ | 惟成 |
375 | はしたかの とかりのましは ふみならし かへるのはらに いつるつきかけ | 順徳院 |
376 | あしひきの やまのはきよく そらすみて くもをはよそに いつるつきかけ | 実兼 |
377 | あしひきの やまのはたかく なりにけり あらしのよそに すめるつきかけ | 為藤 |
378 | くももなき ゆふへのやまを いつるより こよひもしるく すめるつきかな | 光厳院 |
379 | かせわたる あまつくもゐの よはのつき いつしかあきの かけやそふらむ | 為親 |
380 | ふきはらふ あらしもつきも またれけり つらきへたての むらくものそら | 伏見院 |
381 | みるままに くももかからす ひさかたの つきのかつらを はらふあきかせ | 公宗(西園寺実衡男) |
382 | ひとむらの くものあとより いてにけり かけはちとせの あきのよのつき | 慈勝 |
383 | かせわたる ゆふへのくもの たえまより やまのはなから いつるつきかけ | 盛徳 |
384 | ふきはらふ あらしにすみて やまのはの まつよりたかく いつるつきかけ | 貞時 |
385 | くもかかる をのへのまつを いてそめて みとりのそらに はるるつきかけ | 光吉 |
386 | くもはれて みとりのそらに すむつきや あまつをとめの かかみなるらむ | 行宗 |
387 | いけみつに ますみのかかみ かけそへて ちりもくもらぬ あきのよのつき | 公相 |
388 | つきやとる いはまのみつを むすふてに あきのなかはも かそへてそしる | 為家 |
389 | むかしみし くもゐはとほく へたつれと おもかけちかき もちつきのこま | 花園院 |
390 | あまのはら すめるはそらと なりにける むかしをつきの かけにみるかな | 為定(御子左二条為道男) |
391 | あきのそらに あまねきつきを あふきみて わかよをてらす かけとたのまむ | 後宇多院 |
392 | くもりなき ためしとみてそ あきのよの つきにもわきて こころととめし | 後醍醐院 |
393 | みるひとの こころもなとか すまさらむ そらにくもらぬ あきのよのつき | 後醍醐院 |
394 | ひさかたの つきのくまなき あきのよは ひとのこころも すみまさりけり | 長家 |
395 | すみなれし よよのむかしの こととはむ しはしやすらへ くものうへのつき | 後光厳院 |
396 | ふくかせも をさまれるよの くものうへに なほひかりそふ つきをみるかな | 隆博 |
397 | いくあきも なほすみまされ ひさかたの ひかりのとけき くものうへのつき | 内実 |
398 | くものうへの つきもいくよか なれぬらむ あきくるかたの とのへもるみに | 師賢(藤原師信男) |
399 | あきらけき みはしのあきの つきもみつ ちかきまもりの みにつかふとて | 冬通 |
400 | いかならむ よにもわすれし ここのへの あきのみやゐに なるるつきかけ | 為道 |
401 | つねよりも つきのひかりの さやけきは くものうへにて みれはなりけり | 重家 |
402 | くらゐやま いまいくさかを のほりてか くものうへなる つきをみるへき | 基氏(足利尊氏男) |
403 | くれぬとも おもほえぬかな くものうへに かけわきかたき あきのよのつき | 公忠(源国紀男) |
404 | うたたねに はかなくあくる あきのよと おもへはつきの ひかりなりけり | 肥後(京極前関白家) |
405 | なかきよを ねぬにあけぬと もろひとの いふはかりなる あきのつきかけ | 実氏 |
406 | ふけぬるか くもものこらぬ なかそらに あきかせなから すめるつきかけ | 冬平 |
407 | ふくからに あきのひかりの あらはれて うへやまかせに すめるつきかな | 為明 |
408 | くもはらふ のきはのやまの あきかせに ふけてこすゑの つきそはれゆく | 季雄 |
409 | はらふへき くもはあとなき つきかけに たたよさむなる あきかせそふく | 国助 |
410 | つききよみ さえてもはるる うきくもの いやとほさかり あきかせそふく | 国夏 |
411 | やまかせに くものゆききや たえぬらむ よわたるつきの かつらきのはし | 実超 |
412 | かつらきや くめちのはしは つきもなほ なかそらにこそ すみわたりけれ | 亀山院 |
413 | ひさかたの そらゆくくもの たえまより つきのみやこに あきかせそふく | 順徳院 |
414 | ふきはらふ くもまにつきの あらはれて しくれにまかふ みねのまつかせ | 為実(御子左藤原為氏男) |
415 | いろかへぬ たけのはしろく つきさえて つもらぬゆきを はらふあきかせ | 宮内卿(後鳥羽院) |
416 | くれたけの はわけのつゆに さそはれて つきもたまらぬ あきかせそふく | 道性 |
417 | あきのつき またもあひみむ わかこころ つくしなはてそ さらしなのやま | 俊成(藤原俊忠男) |
418 | あくかるる ものとしりてや あきのよの つきはこころを まつさそふらむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
419 | なほさりに さそひすてける ことのはに あくかれいてて つきをみるかな | 冷泉(花園院) |
420 | つきをみて あかぬこころに あきのよの なかきをかこつ ひとやなからむ | 為遠 |
421 | いくとせか ちちにものおもふ あきをへて つきになみたの かすつもるらむ | 兼氏 |
422 | あきのつき なかめすとても みにつもる わかおいらくの かけやしられむ | 公賢 |
423 | もろくちる おいのなみたも いとはれす そてにやとして つきをみるよは | 経顕(藤原定資男) |
424 | そてぬらす しののはくさの かりいほに つゆのやととふ あきのよのつき | 実兼 |
425 | あさちはら はらはぬにはの つゆのうへに こころのままに やとるつきかな | 後伏見院 |
426 | おくつゆの ひかりもきよき にはのおもに たましきそふる あきのよのつき | 為兼 |
427 | いくあきか ひかりをそへて おくつゆの たまきのみやに つきもすむらむ | 貞重 |
428 | なかめやる いくののすゑの はてもなし つきとつゆとの おなしひかりに | 公蔭 |
429 | すゑとほき ちくさのつゆに かけみえて のへこそつきは てりまさりけれ | 光厳院 |
430 | むさしのや くさはみなから おくつゆに すゑはるかなる つきをみるかな | 帥(鷹司院) |
431 | まねくとも よそにそつきの すきなまし をはなかそてに つゆのおかすは | 氏久 |
432 | うたたねの たまくらさむき あきかせに ゆめをのこして つきをみるかな | 宣時(北条) |
433 | いねかてに つきをみよとや あきかせの なかきよさむに ふきまさるらむ | 尚長(丹波経長男) |
434 | あまのかは つきのみふねは よきてふけ くものなみちの よはのあきかせ | 読人不知 |
435 | いつみかは かはせのなみも しつかにて とほきわたりに すめるつきかけ | 行家(藤原知家男) |
436 | こまとむる かはせにうつる かけまても ささのくまなき あきのよのつき | 為子(贈従三位) |
437 | おほゐかは さやかにうつる あきのよの つきのこほりに かかるしらなみ | 為世(御子左藤原為氏男) |
438 | あきのよの つきのこほりの なとりかは なきなあらはす なみのおとかな | 能清 |
439 | たつなみの はなかあらぬか うらかせの ふきあけにすめる あきのよのつき | 公守 |
440 | いせのうみや なみのよるよる すむつきの かけこそきよき なきさなりけれ | 義詮 |
441 | たまつしま やとかるつきの かけなから よせくるなみの あきのしほかせ | 親長 |
442 | やくしほの けふりはあれと おしてるや なにはにはるる つきのかけかな | 国量 |
443 | あまひとの うらのいそやの とまひさし ほとなきのきは つきもさはらす | 行家(藤原知家男) |
444 | ほさてこそ みるへかりけれ すまのあまの しほたれわふる そてのつきかけ | 伏見院 |
445 | わたのはら つきみつしほの いやましに ひかりそあまる すまのうらなみ | 公経(藤原実宗男) |
446 | はるかなる おきつしほせの あきのつき かけをうつして よするうらなみ | 万秋門院 |
447 | こころあらは すまのせきもり うちもねし よひよひことの あきのつきかけ | 国道(津守国助男) |
448 | すみよしの あささはみつに かけみれは そらゆくつきも くさかくれつつ | 国助 |
449 | あきのよの あかつきかたの つきみれは をはすてやまそ おもひやらるる | 信明 |
450 | あまのはら くもなきそらに うはたまの よわたるつきの いらまくもをし | 人麿 |
451 | いかなれは にしになりゆく つきかけの かたふくままに かなしかるらむ | 伊勢 |
452 | もろこしの やまひといまは をしむらむ まつらかおきの あけかたのつき | 後鳥羽院 |
453 | おしなへて やまのはみえぬ わたつうみは なみをかきりに つきそかたふく | 為親 |
454 | わすれすよ なみにかたふく つきかけも きよみかせきの ありあけのそら | 為世(御子左藤原為氏男) |
455 | ひとりわか ならはぬあきの ねさめより はしめてなかき よこそしらるれ | 読人不知 |
456 | あきかせも よさむにふきぬ さをしかの つまとふはきの はなやさくらむ | 後二条院 |
457 | いまよりや さきにほふらむ さをしかの こゑきくをのの あきはきのはな | 伏見院 |
458 | しかのねも とほさとをのの はきかはな そてにうつして かへるかりひと | 後伏見院 |
459 | あきはきの はなちるかせの さむけきに うへこそしかも つまこふらしも | 公蔭 |
460 | からころも すそののしかの つまこひに くさのたもとの つゆやそふらむ | 実忠 |
461 | きくひとの そてもつゆけき さよころも つまこひになく さをしかのこゑ | 後嵯峨院 |
462 | うらみわひ ゆふへはのへに こゑたてて こぬつまこひに しかそなくなる | 為世(御子左藤原為氏男) |
463 | やまのへの をのへのつきの ますかかみ おもかけみてや しかのなくらむ | 公明 |
464 | まつかせの たよりにつけて しられけり をのへへたつる さをしかのこゑ | 慶融 |
465 | ゆふされは きりたちくらし をくらやま やまのとかけに しかそなくなる | 実朝 |
466 | さをしかの おのかすむのに つまこめて きりのまよひに ねをやなくらむ | 成国 |
467 | はつせやま つまかくるとや きりふかき ゆつきかしたに しかのなくらむ | 内経 |
468 | あきといへは なくやをしかの つまかくす やののかみやま つゆそそむらし | 実氏 |
469 | さをしかの つまとふをかは しもかれて からぬわさたに のこるあきかせ | 行意 |
470 | あきのたの かりほのいほの をちこちに いとひもあへす しかそなくなる | 為明 |
471 | いねかてに いほもるたこの かりまくら よはにおくての つゆそひまなき | 良経(九条兼実男) |
472 | いほりさす やまたのおしね かりしほに いなはいろつく あきのむらさめ | 桓豪 |
473 | あきさむみ つゆかけしより をやまたの わさほのかつら いろつきにけり | 高広 |
474 | やまたもる かりほのいほに つゆちりて いなはふきこす あきのゆふかせ | 為兼 |
475 | うちなひく たのものほなみ ほのほのと つゆふきたてて わたるあきかせ | 為定(御子左二条為道男) |
476 | かせわたる いなはのすゑに くもはれて たのものつきの かけそくもらぬ | 俊光 |
477 | わかかとの わさたかりかね いつしかと くもゐをわたる ともよはふなり | 為氏 |
478 | こしちには ときしもあれと したふらむ くもゐのかりの あきのわかれを | 為子(贈従三位) |
479 | よさむなる あきかせふくと つけねとも そらにしりてや かりはきぬらむ | 慈道法親王 |
480 | さそはれて いまそなくなる あきかせの ふかはとまちし はつかりのこゑ | 為道 |
481 | つきをまつ ゆふへのそらの あきかせに やまのはとほき はつかりのこゑ | 隆長 |
482 | このねぬる あさけのかせは みにさむし いまやきなかむ ころもかりかね | 雅顕 |
483 | あけかたの くもゐのかりの なみたにや いととねさめの とこのつゆけさ | 公親 |
484 | なきかはす あきのねさめは むしのねも まくらのつゆも なみたなりけり | 宗秀(大江時秀男) |
485 | つゆしけき くさはのうへは しつかにて したにはむしの こゑそみたるる | 永福門院 |
486 | あたにちる つゆをなみたに かるかやの おもひみたれて むしやなくらむ | 隆朝 |
487 | よもきふの つゆのやとりを たつねても とふひとなしと むしやなくらむ | 隆淵 |
488 | あとたえて とはれぬやとの あさちふに ひとりつれなき まつむしのこゑ | 経通(一条内経男) |
489 | いくよしも あらしとそきく つゆしもの さむきゆふへの まつむしのこゑ | 宗尊親王 |
490 | はつしもの をかへのまくす うらみかね おのれかれゆく むしのこゑかな | 伏見院 |
491 | しもかれの まくすかしたの きりきりす いつまてのこる うらみなるらむ | 実兼 |
492 | あきふくる よやさむからし きりきりす たまくらちかく こゑのきこゆる | 進子内親王 |
493 | きりきりす こゑよわりゆく あさちふの をののしのはら あきそくれぬる | 顕氏(六条顕家男) |
494 | むしのねも つゆのやとりに うらむなり のもせのつきの ありあけのころ | 為世(御子左藤原為氏男) |
495 | あけやらぬ なかつきのよの あきかせに はつしもさむく すめるつきかけ | 隆教 |
496 | あきふかき こすゑのかせの おとたてて よさむにつきの かけそなりゆく | 為藤 |
497 | ひさかたの あまてるつきの かつらかは あきのこよひの なになかれつつ | 実雄 |
498 | ありあけの つきはなみまに かけみえて うらかせとほし あはちしまやま | 冬平 |
499 | ふきはらふ あなしのかせに くもはれて なこのとわたる ありあけのつき | 俊成(藤原俊忠男) |
500 | かつらきや たかまのみねに くもはれて あくるわひしき ありあけのつき | 雅経 |
501 | しもをまつ あさちかつゆに かけふけて よさむになりぬ ありあけのつき | 季雄 |
502 | なかつきの ありあけのつきの あけかたを たれまつひとの なかめわふらむ | 良経(九条兼実男) |
503 | あきのよは たれまちこひて おほともの みつのとまりに ころもうつらむ | 頓阿 |
504 | なにはひと しのひにとしも おもはしを こやによふけて うつころもかな | 一条(昭慶門院) |
505 | うらなみに なれてしほくむ さとのあまの いかにほすまか ころもうつらむ | 斉時 |
506 | もしほくむ そてのうらかせ さむけれは ほさてもあまや ころもうつらむ | 宗泰(藤原時宗男) |
507 | かはかせの よさむのころも うちすさひ つきにそあかす まきのしまひと | 為道 |
508 | つきかけの あきはよさむに なりぬとも たれかはうたむ こけのさころも | 蓮生法師 |
509 | さむしろに しもをかさねて なかつきの つきのよことに ころもうつなり | 資平 |
510 | いろかはる をののあさちの はつしもに ひとよもかれす うつころもかな | 浄弁 |
511 | やまかつの よさむのあきの つゆのぬき しものたてまて うつころもかな | 良聖 |
512 | なかきよの しものころもを うちわひて ねぬひとしるき あさちふのやと | 通光 |
513 | よそにきく きぬたのおとや うちたえて ぬるよもしらぬ ともとなるらむ | 万秋門院 |
514 | からころも うつによさむや わするらむ しもにおきゐる あきのさとひと | 覚懐 |
515 | おきてゆく ひとのかたみか からころも てもたゆきまて うちあかすらむ | 師房 |
516 | いたつらに ねさめやすらむ あきのよの なかきにつけて うつころもかな | 為藤 |
517 | はしたかの とやまのさとの あきかせに はつかりころも いまやうつらむ | 良基(二条道平男) |
518 | あけそむる とやまのくもは ひまみえて またたちのほる みねのあききり | 為氏 |
519 | たちもらす をのへのきりの たえまたに なほかけうすき ありあけのつき | 実教 |
520 | つきのこる かとたのおもの あけかたに きりのうちなる しきのはねかき | 後二条院 |
521 | おちたきつ みつのみなかみ きりこめて おとのみのこる あきのかはなみ | 定資 |
522 | かたしきの ころもてさむき かはかせに あきのよかこつ うちのはしひめ | 成賢(祝部成茂男) |
523 | をりふしは おとにもしるし わたつうみや あきなきなみの あきのうらかせ | 隆博 |
524 | あきかせも ふけてよさむの いねかてに いくたひききつ さをしかのこゑ | 覚誉法親王 |
525 | しかのすむ をのへのはきの したはより かれゆくのへも あはれとそみる | 具平親王 |
526 | すみよしの とほさとをのの まはきもて すれるころもの さかりすきゆく | 人麿 |
527 | いくたひか しもはおきけむ きくのはな やそしまなから うつろひにけり | 読人不知 |
528 | うゑてみる かひもあるかな なかつきの ためしにさける しらきくのはな | 読人不知 |
529 | かさしには をらまほしきを しらきくの はなにやとれる つゆやこほれむ | 読人不知 |
530 | ちよふへき きくのまかきに いろそへて はなゆゑかをる あきのしらつゆ | 後宇多院 |
531 | あきふかき まかきのつゆも にほふなり はなよりつたふ きくのしつくに | 為兼 |
532 | めくりあふ あきをこそまて あめつゆの めくみをうけし きくのさかつき | 実任 |
533 | なかつきや くもゐのあきの こととはむ むかしにめくれ きくのさかつき | 後宇多院 |
534 | ここのへに けふさくきくは をとめこか たちまふそての ゆきかとそみる | 実氏 |
535 | さきにほふ きくのまかきの ゆふかせに はなのかやとす そてのしらつゆ | 伏見院 |
536 | みるままに うつろひにけり まつひとの そてにまかひし にはのしらきく | 御匣(式乾門院) |
537 | ときこそあれ いろにまかへて さきにけり しもおくころの しらきくのはな | 基顕 |
538 | はつしもの おきあへぬいろも かはりけり つゆのまかきの しらきくのはな | 為世(御子左藤原為氏男) |
539 | つゆおきし まかきのきくの はなのうへに むすひかへたる けさのあさしも | 久明親王 |
540 | はつしもの もろともにこそ おきあかせ うつろふきくの うしろめたさに | 実能 |
541 | あきかせに なひくよりなほ あさちふの いろことになる けさのはつしも | 公忠(藤原実忠男) |
542 | いろかはる やまのしたしは ふみわけて しくるるくれに しかそなくなる | 永福門院 |
543 | なかつきの すゑののまはき つゆおちて あきかせさむみ をしかなくなり | 法守法親王 |
544 | もるとせし おくてのいなは かりはてて きかぬもさひし さをしかのこゑ | 頼貞 |
545 | かりのこす やまたのいほの ひまをあらみ いまいくよとか つきももるらむ | 公敏 |
546 | おしねほす あきのかりいほの とまひさし もらてしくれの すくるよそなき | 幸清 |
547 | つゆにたに いろつくやまの したもみち しくれてのちを おもひこそやれ | 寛尊法親王 |
548 | あけはまつ よものもみちも みるへきに おほつかなしや けさのあさきり | 頼通 |
549 | あききりの むらむらはるる たえまより ぬれていろこき やまのもみちは | 永福門院 |
550 | はつしもの そめぬたにこき もみちはの いろのさかりを たれにみせまし | 重之 |
551 | とやまなる まさきのかつら いろこきを みにくるひとの みえぬあきかな | 好忠 |
552 | やまひめの こころのいろも やちくさに そめてしらする みねのもみちは | 公宗母 |
553 | もみちはも ちしほにすきて たつたひめ わかゐるやまの あきやそむらむ | 為家 |
554 | たつたやま ひとむらすくる むらさめの あとはちしほの もみちしてけり | 師教(九条忠教男) |
555 | たつたやま みねのにしきも なかたえぬ まつをのこして そむるもみちは | 後醍醐院 |
556 | あきのいろに そむるもみちや たてもなく ぬきもさためぬ にしきなるらむ | 後光厳院 |
557 | しものたて つゆのぬきとも みえぬかな くれなゐふかき やまのにしきは | 忠季(藤原公蔭男) |
558 | はるあきの にしきなれとや あらしやま おなしさくらの またもみつらむ | 後宇多院 |
559 | おほゐかは しもはかつらの もみちはも ひとつあらしの やまのあきかせ | 有家(藤原重家男) |
560 | もみちはの うつろふなみの たつたかは おられぬみつの にしきとやみむ | 実重(三条公親男) |
561 | たつたやま をのへのまつの このまより みとりをわくる あきのもみちは | 為氏 |
562 | をくらやま もろきこのはの あきかせに しくれてのこる ありあけのつき | 為氏 |
563 | さらてたに もみちにあける かみなひの みむろのやまは なほしくるなり | 後嵯峨院 |
564 | ゆふつくよ をくらのみねは なのみして やまのしたてる あきのもみちは | 後醍醐院 |
565 | なかめわひぬ あきもなこりと ゆふひさす くものはたては うちしくれつつ | 後二条院 |
566 | いるつきに てりかはるへき もみちさへ かねてあらしの やまそさひしき | 惟喬親王 |
567 | いろかはる まさきのかつら くりかへし とやましくるる あきのくれかな | 為兼 |
568 | あきのいろは とやまのみねの うすもみち よしやしくれは なほそめすとも | 景綱 |
569 | はれくもり そめすはいかて いろもみむ しくれそあきの もみちなりける | 為冬 |
570 | たつたやま いかにしくれの そめわけて あをはにましる もみちなるらむ | 実躬 |
571 | つゆしくれ ふりいててそむる もみちはや からくれなゐの いろにみゆらむ | 尊氏 |
572 | しらつゆの そむるもみちの いかなれは からくれなゐに ふかくみゆらむ | 読人不知 |
573 | くれなゐの しくれなれはや いそのかみ ふるたひことに やまをそむらむ | 貫之 |
574 | ちはやふる かみよもきかぬ くれなゐに をしほのやまは もみちしにけり | 為定(御子左二条為道男) |
575 | もみちはの くれなゐふかき いろみれは みなそこまてや つゆはおくらむ | 清正 |
576 | くれてゆく あきのわかれの みちしはに こよひはかりの つゆやおくらむ | 泰綱 |
577 | わきてなほ あはれとおもへ ゆくあきの かたみにをれる みねのもみちは | 兼泰 |
578 | ゆくあきを あはれとおもふ ことのはの こころのいろそ かたみなるへき | 秀茂 |
579 | しくれよと なにいそきけむ もみちはの ちしほになれは あきそとまらぬ | 為相 |
580 | しるらめや しくれぬさきの もみちはは こころのいろの そむるちしほを | 遊義門院 |
581 | みてそしる しくれにはあらて そむときく こころのいろの ふかきもみちは | 後二条院 |
582 | このまゆく いささをかはに もみちはの ふかくもいろを うつしつるかな | 顕仲(源顕房男) |
583 | くれなゐの いろにそなみも たつたかは もみちのふちを せきかけしより | 公経(藤原実宗男) |
584 | たつたかは なかれてくたる もみちはの とまらぬものと あきそくれゆく | 清兼 |
585 | おほゐかは もみちのみふね さしはへて ふるきためしに かへるあきかな | 家隆 |
586 | もみちはの したゆくみつに かけみえて ちらぬこすゑそ ねにかへりける | 亀山院 |
587 | えたをそめ なみをもそめて もみちはの したてるやまの たきのしらいと | 実氏 |
588 | さそひゆく さほやまあらし まてしはし ははそのもみち あきふかきころ | 伏見院 |
589 | こからしの すすふくみねの ゆふしくれ そめぬいろしも みにはしみけり | 後鳥羽院 |
590 | はなすすき まねくたもとは あまたあれと あきはとまらぬ ものにそありける | 元輔(清原春光男) |
591 | あまつそら くるるをけふの わかれにて ゆくへもしらす かへるあきかな | 義詮 |
592 | いかてわれ けふのわかれに みをかへて とまるならひと あきにしらせむ | 政村 |
593 | やそちまて わかれにかへぬ いのちもて またなかつきの けふにあひぬる | 隆教 |
594 | かねてしる あきのわかれを いまさらに けふもくれぬと なにうらむらむ | 有家(藤原重家男) |
595 | おとたてて こすゑをはらふ やまかせも けさよりはけし ふゆやきぬらむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
596 | よしのかは いはとかしはの はつしくれ ときはのいろは けさもつれなし | 順徳院 |
597 | しくれする しるしもみえす かみなつき みわのすきむら おなしみとりに | 通親 |
598 | はつしくれ ふるのやまさと いかならし すむひとさへや そてのぬるらむ | 読人不知 |
599 | かせにちる もみちのいろや かみなつき からくれなゐの しくれなるらむ | 人麿 |
600 | くれなゐの ちしほのこのは そめすてて くものいつくに しくれゆくらむ | 後宇多院 |
601 | いかはかり このはのいろの まさるらむ きのふもけふも しくれするころ | 後鳥羽院 |
602 | ともすれは かきくもりつつ かみなつき なほそしくれの ひまなかりける | 相模 |
603 | やまのゐの しつくもかけも そめはてて あかすはなにの なほしくるらむ | 定家 |
604 | かみなつき くもらぬかたの そらまても かせにみたれて ふるしくれかな | 隆祐 |
605 | やまめくる あらしのおとを たよりにて くものよそまて ふるしくれかな | 為嗣 |
606 | しからきの とやまをかけて くもはらふ あらしのあとも またしくれつつ | 為親 |
607 | さためなく しくるるくもの はれまより ひかけさひしき ふゆはきにけり | 経顕(藤原定資男) |
608 | うつりゆく くもまのひかけ てりもせす くもりもはてぬ むらしくれかな | 尊守 |
609 | むらしくれ もるやいたまの ときのまも おもひさためぬ つきのかけかな | 一条(徽安門院) |
610 | うきくもの かかれるほとは いてやらて しくれをすくす やまのはのつき | 成久 |
611 | むらしくれ はれつるあとの やまかせに つゆよりもろき みねのもみちは | 為冬 |
612 | おとたにも あきにはかはる しくれかな このはふりそふ ふゆやきぬらむ | 清氏 |
613 | そめつくす やまのにしきの からころも ころもへすして ふゆはきにけり | 俊定(藤原経俊男) |
614 | いまよりの ころもてさむし あらしやま みねのこのはも もろくちるころ | 有忠 |
615 | もみちちる なからのやまに かせふけは にしきをたたむ しかのうらなみ | 範兼 |
616 | かみなつき みむろのやまの やまおろしに くれなゐくくる たつたかはなみ | 式子内親王 |
617 | ふくかせや よそのこすゑを さそふらむ まつのしたてる にはのもみちは | 光忠 |
618 | このもとに よそのもみちを さそひきて あらしそまつの いろをそへける | 世良親王 |
619 | みるままに もみちふきおろす あらしやま こすゑまはらに ふゆはきにけり | 長舜 |
620 | ちりまかふ あらしのやまの もみちはは ふもとのさとの あきにそありける | 祐家 |
621 | いにしへも あらしのやまの もみちはの ゐせきにかかる いろはみさりき | 周防内侍 |
622 | いにしへの あとをたつねて おほゐかは もみちのみふね ふなよそひせり | 経信 |
623 | このかはは わたるせもなし もみちはの なかれてふかき いろにみえつつ | 深養父 |
624 | たつたかは おちてもみつに うかふなり なになかれたる みねのもみちは | 国夏 |
625 | なかれゆく おちはなからや こほるらむ かせよりのちの ふゆのやまかは | 尊氏 |
626 | はしひめの おるやにしきと みゆるかな もみちいさよふ うちのかはなみ | 後宇多院 |
627 | かはかせの ふきあけのもみち ちりみたれ かたしきかねつ うちのはしひめ | 読人不知 |
628 | はしひめの ころもてうすき さむしろに このはふきしく うちのかはかせ | 基任 |
629 | もろくちる このはなからや すきぬらむ えたにとまらぬ かせのおとかな | 能誉 |
630 | もみちはを ふきすててゆく あらしかな おのかためとは さそはさりけり | 良教 |
631 | ふきはらふ とやまのあらし おとたてて まさきのかつら いまやちるらむ | 後京極院 |
632 | にはのおもに あきのかたみを のこしつる このはもみえす けさのあさしも | 久明親王 |
633 | はつしもの をかのかやはら いつのまに あきみしつゆの むすひかふらむ | 尊円法親王 |
634 | つゆちりし にはのあさちふ かせさえて かれはにさむき しものいろかな | 経久 |
635 | ふみかよふ たかことつても かきたえぬ しものくちはの みつくきのをか | 兼氏 |
636 | くさもきも しをれはてたる やまかせに ゆふへのくもの いろそつれなき | 秀能(藤原秀宗男) |
637 | ふくかせの おとのみあきの かたみにて しもかれはつる にはのをきはら | 実俊(西園寺公宗男) |
638 | おのつから のこるをささに しもさえて ひとついろなる のへのふゆくさ | 慈道法親王 |
639 | ささのはの みやまおろしは さえくれて ひとよのほとに むすふしもかな | 光之 |
640 | あさなあさな のこるあをはの まれにのみ なるみののへの しものしたくさ | 広房(大江広茂男) |
641 | よもすから おきそふしもの きえかてに こほりかさぬる にはのふゆくさ | 為兼 |
642 | さらてたに ふみからしてし みちのへの くさをふゆのに むすふあさしも | 後二条院 |
643 | ふゆきては あしたのはらに おくしもの さむくひことに なりまさりつつ | 後宇多院 |
644 | あさなあさな かはらぬいろを そへてけり やまちのしもに のこるしらきく | 為藤 |
645 | あきならて しもよにみゆる きくのはな ときすきにたる ここちこそせね | 冷泉院 |
646 | うへしこそ こほりとちけれ しもかれの ふゆのにつつく はらのいけみつ | 信実 |
647 | あきをへて やとりしみつの こほれるを ひかりにみかく ふゆのよのつき | 俊成女 |
648 | ちりつもる このはかくれに なりにけり ねやのいたまの ふゆのよのつき | 国助 |
649 | はつしもの おきいててみれは しろたへの ころもてさむき つきのかけかな | 道昭 |
650 | よもすから ねやへもいらぬ わかそてに なれてありあけの つきそこほれる | 後二条院 |
651 | つきさゆる をみのころもを さきたてて しもにおきふす くものうへひと | 公賢 |
652 | をみころも たつおもかけそ へたてゆく つきはそのよに めくりあへとも | 後鳥羽院 |
653 | そのままに しもふりはてて しのふかな とよのあかりの やまあゐのそて | 為定(御子左二条為道男) |
654 | くものうへの とよのあかりも あけゆけは ひかけさしそふ をみのころもて | 懐通 |
655 | みやひとの とよのあかりの ひかけくさ たもとをかけて つゆむすふなり | 邦省親王 |
656 | ふけにけり やまあゐのそてに かせさえて ひかけのいとも しもむすふまて | 公宗母/公宗(西園寺実衡男) |
657 | あまのとの あくるまてとや うたふらむ しもふかきよの あさくらのこゑ | 承覚法親王 |
658 | おきつかせ ふきあけのちとり よやさむき あけかたちかき なみになくなり | 白河院 |
659 | ふきあけの はまのまさこの しほかせに みきはのちとり あとものこらす | 実重(三条公親男) |
660 | いにしへも あとみぬわかの うらちとり いまふみそめて なをのこすかな | 宗氏 |
661 | きみかよに あつむるわかの うらちとり あとつけそめし あとをわするな | 道意(西園寺実兼男) |
662 | あつめこし よよのあととて はまちとり わかなもかくる わかのうらなみ | 後光厳院 |
663 | わかのうらの ゆふなみちとり たちかへり こころをよせし かたになくなり | 賢俊 |
664 | きつつなけ わかすむかたの ともちとり あしやのさとの よはのかりねに | 丹後(宜秋門院) |
665 | ともちとり いさかたらはむ をふのうらに なれしむかしの かたみたになし | 公雄 |
666 | しほかせに こゑもうらみて あまのすむ さとのしるへと なくちとりかな | 雲禅 |
667 | なみこさぬ うらのひかたの しほかれに こころとたちて なくちとりかな | 貞重 |
668 | さよちとり そらにこそなけ しほのやま さしてのいそに なみやこすらむ | 忠房親王 |
669 | しほかせに ゆふなみたかく こゑたてて みなとはるかに ちとりなくなり | 隆教 |
670 | いせのうみの をののみなとの いりしほに なかれてとほく なくちとりかな | 為重 |
671 | なにはかた しほひのかたや さむからし みなとにかへる ともちとりかな | 雅孝 |
672 | ありあけの つきかけさむみ なにはかた おきのしらすに ちとりなくなり | 俊恵 |
673 | うちわたす おほかはのへの せをひろみ およはぬこゑに ちとりなくなり | 行意 |
674 | さよふけて かよふちとりの こゑすなり たかすむとこの うらちなるらむ | 為子(贈従三位) |
675 | こゑたえす きこえそわたる ふせのうみに なくやちとりの ありかよひつつ | 為藤 |
676 | なるみかた しほひはるかに ありかよふ あとのみみえて たつちとりかな | 為明 |
677 | おほよとの うらみてかへる なみにしも こゑたてそへて ゆくちとりかな | 為定(御子左二条為道男) |
678 | よをさむみ つはさにしもや おくのうみの かはらのちとり ふけてなくなり | 為相 |
679 | ふゆのいけの こほりになるる みつとりは うはけのしもや いとはさるらむ | 後醍醐院 |
680 | よもすから はらひもあへぬ みつとりの はかひのしもに こほるつきかけ | 為道 |
681 | よとともに つかはぬをしや わひぬれは さそふみつにも うきてゆくらむ | 信専 |
682 | いけみつに むすふこほりの ひまみえて うちいつるなみや にほのかよひち | 通相 |
683 | のとかにや ひをもよるらむ もののふの やそうちかはの なみたたぬよは | 覚円 |
684 | おちたきつ たきのしらいと くりためて いはまにむすふ うすこほりかな | 実継 |
685 | なにはえの こほりにたてる みをつくし とけぬおもひに さてやくちなむ | 兼氏 |
686 | おきつかせ ふきあけのはまの しほひかた まさこみたれて あられふるらし | 道家 |
687 | いせのあまの ひろはぬたまや みたるらむ しほひのかたに あられふるなり | 源恵 |
688 | さゆるひは かせもあられの おとすなり ぬきあへぬたまの をののしのはら | 祐夏(鴨祐雄男) |
689 | ふきしをる かせもひとつに おとさえて ならのはなから ふるあられかな | 実重(三条公親男) |
690 | をささはら ましるをはなの しもかれに おともかはりて ふるあられかな | 一条(昭慶門院) |
691 | けさのあさけ さむきあらちの やまおろしに はつゆきふりぬ のへのあさちふ | 伏見院 |
692 | くれたけの はわけのかせは はらへとも つもりにけりな ゆきのしたをれ | 雅朝 |
693 | ひさかたの そらにつもると みゆるかな こたかきみねの まつのしらゆき | 為世(御子左藤原為氏男) |
694 | いそへなる まつのしつえに ふるゆきの けぬともみえす かかるしらなみ | 後二条院 |
695 | とけやらぬ いけのみきはの あさこほり こほれるほとに つもるゆきかな | 永福門院 |
696 | むらむらに こほれるくもは そらさえて つきかけみかく ききのしらゆき | 花園院 |
697 | ゆふまくれ そらもひとつに さえぬれは ゆきこそつきの ひかりなりけれ | 為嗣 |
698 | さえわたる くもゐのつきも かけそへて ここのへふかく つもるしらゆき | 師信 |
699 | みちしあらは わかよもなとか しらゆきの ふりにしあとに かへらさるへき | 後光厳院 |
700 | あさなあさな つかへていそく みやひとの あとをのみみる にはのしらゆき | 後醍醐院 |
701 | しらゆきの いやかたまれる にはのおもに はらひかねたる とものみやつこ | 後嵯峨院 |
702 | とはれしな いつくをみちと まとふまて われさへみつる にはのしらゆき | 慈伝 |
703 | とふひとの あとさへやかて うつもれて かこつかたなき にはのしらゆき | 道我 |
704 | うつもれて あるにもあらす としをふる やととしりてや ゆきつもるらむ | 是則 |
705 | ふみわくる あとこそなけれ こころたに かよはぬやとの にはのしらゆき | 能清 |
706 | ふみわけむ にはにはあとの をしけれは ゆきよりほかの みちやたつねむ | 義行 |
707 | われよりも さきたつひとや まよふらむ あとさたまらぬ のへのしらゆき | 実教 |
708 | ふるゆきに をののやまさと あともなし けふりやけさの しるへなるらむ | 上総(堀河院中宮) |
709 | ふりつもる ゆきにひかりを さきたてて やまのはのほる ありあけのつき | 忠季(藤原公蔭男) |
710 | ふゆこもる よしののたけに ふるゆきを たれありあけの つきとたにみむ | 覚助法親王 |
711 | はなをみし おもかけさらて よしのやま つきにみかける みねのしらゆき | 公敏 |
712 | なへてさく はなかとそみる よしのやま こすゑをわかす ふれるしらゆき | 俊定(藤原経俊男) |
713 | みとりなる こけのむすきも しろたへに ゆきふりにける あまのかくやま | 定為 |
714 | やたののの あさちをさむみ ゆきちりて あらちのみねに かかるうきくも | 重綱(藤原) |
715 | あらちやま あさたつくもの さゆるより やたのをかけて ふれるしらゆき | 尊氏 |
716 | けぬかうへに めつらしけなく つもるらし ふしのたかねの けさのしらゆき | 公宗母 |
717 | はしたかの をのへのゆきの あけほのに ましはをはらふ そてのさむけさ | 資明 |
718 | はしたかの をのへにすすの きこゆるは やまかたつきて とりやたつらむ | 教定(藤原教頼男) |
719 | すすのねは よそにもしるし はしたかの しらふにゆきは ふりまかへとも | 忠季(藤原公蔭男) |
720 | はしたかの をふさのすすの おとにきく かりはのみゆき あとはふりつつ | 公賢 |
721 | かりくらす かたののみのの ゆきのうちに かへるさおくる やまのはのつき | 忠房親王 |
722 | はしたかの のもりのかかみ かけをみて とほやまとりも ねをやなくらむ | 国冬 |
723 | みかりする かりはのしみつ こほりけり これやのもりの かかみなるらむ | 読人不知 |
724 | かりくらす とたちのたかの をしへくさ あすもやおなし あとをたつねむ | 公脩 |
725 | かりくらす すすのしのはら かせたちて かへささむけく あられふるなり | 行朝 |
726 | くれてゆく としとともには かへりなて おいこそつらく みにとまりけれ | 成久 |
727 | ゆきのうちに くれゆくとしを かそふれは これそつもりて おいとなるもの | 公蔭 |
728 | はかなくも やそちにむかふ としのくれ なけくへきみに なにいそくらむ | 玄円 |
729 | おいのさか またこえぬへき としのくれ いそかぬしもそ くるしかりける | 尊氏 |
730 | をしめとも むそちにちかき おいのなみ たちもかへらて としそくれぬる | 禅隆 |
731 | はつせかは なかるるとしを せきかねて いまはたおいの なみそかすそふ | 範憲 |
732 | なにはかた かへらぬなみに としくれて いまはたおなし はるそまたるる | 冬平 |
733 | はなをまつ はるはとなりに なりにけり ふるさとちかき みよしののやま | 家隆 |
734 | おもひいてよ くもゐのつきは へたつとも かたみにそふる かけははなれし | 上東門院 |
735 | あさゆふに なれみしことを おもひいてよ ふきあけのはまの かせにつけても | 円融院 |
736 | うちつけに おもひいつやと ふるさとの しのふくさして すれるなりけり | 敦忠 |
737 | あるほとは うきをみつつも なくさめつ かけはなれなは いかかしのはむ | 和泉式部 |
738 | わかるへき みちやはつらき おほかたの よのなかはかり うきものはなし | 道済 |
739 | たくへやる わかたましひを いかにして はるけきそらに もてはなるらむ | 伊尹 |
740 | あつらへて わするなとおもふ こころこそ わかみをわくる かたみなりけれ | 貫之 |
741 | くさまくら たひのやとりの つゆけくは はらふはかりの かせもふかなむ | 道長 |
742 | ほとふへき たひにはあらねと くさまくら なみたのつゆの かわくよそなき | 紀式部 |
743 | きみかゆく ふなちにそふる あふきには こころにかなふ かせもふかなむ | 中務 |
744 | おきつなみ たちわかるとも おとにきく なかゐのうらに ふなととめすな | 崇徳院 |
745 | たけくまの まつはいくよか へにけると としをかそへて かへりあはなむ | 師輔 |
746 | みやこひと まつとしきかは ことつてよ ひとりいなはの みねのあらしに | 伏見院 |
747 | ことつてむ みやこのかたへ ゆくつきに このしたくらく いまそまとふと | 実方 |
748 | にしへゆく つきのつねより をしきかな くものうへをも わかるとおもへは | 公任 |
749 | われひとり かしらにしもの つもらすは けふのわかれを をしまさらまし | 忠通 |
750 | よのつねに ゆきてはかへる みちならて なにとなりぬる わかれなるらむ | 為継 |
751 | たのめおく かことはかりに あつまちの みちのはてまて おもひこそやれ | 宗基 |
752 | おもひやる こころはかりは かよふらむ かすみへたつる せきちなりとも | 紀伊(祐子内親王家) |
753 | ふるさとを おもひいてつつ あきかせに きよみかせきを こえむとすらむ | 能因 |
754 | こえぬまの せきとはならて あふさかは すきゆくひとの へたてなりけり | 宗遠 |
755 | かへるへき みにしあらねは これやこの ゆくをかきりの あふさかのせき | 具行 |
756 | いきうしと おもひなからも ひとやりの みちにはさこそ とまらさりけめ | 観意 |
757 | たつねくる ふるさとひとの かへるさは わかこころさへ とまらさりけり | 雅顕 |
758 | おもひたつ きひのなかやま とほくとも ほそたにかはの おとつれはせよ | 資連 |
759 | ゆくすゑに かへるやまちの なかりせは なにをわかれの なくさめにせむ | 禅心 |
760 | ふるさとと おもふあつまの かへるさも みやこわかれは そてやしをれむ | 読人不知 |
761 | わたつうみの ちひろのかみに たむけする ぬさのおひかせ やますふかなむ | 貫之 |
762 | かせあらき むしあけのせとの ゆふやみに ともよひかはす よはのふなひと | 後嵯峨院 |
763 | うなはらや かせにたゆたふ あまをふね ゆくへあやふき なみのうへかな | 後伏見院 |
764 | もろひとは いそにうちよる しらなみの あきとともにや たちかへるらむ | 一条院 |
765 | しらなみを わけてそわたる のりのふね さしけむひとの あとをたつねて | 成尋 |
766 | おひかせに やまもととほく こきいてて ほのかになりぬ あけのそほふね | 頼春 |
767 | まつらかた こはよにしらぬ うきねかな そてもまくらも なみはかけつつ | 隆信 |
768 | うきねする とこのうらかせ おとふけて なみのまくらに つきそかたふく | 賢俊 |
769 | はるかなる おきのこしまの たひねにも こころにかかる しかのうらなみ | 定宗(法印円宗寺) |
770 | たひねする とこのうらかせ さむきよは みやこにかよふ ゆめそすくなき | 治部卿(瓊子内親王家) |
771 | さらにいま みやこもこひし あしからの せきのやへやま なほへたてつつ | 国量 |
772 | みやこおもふ すまのせきちの かちまくら ゆめをはとほす なみのまもかな | 宗昭 |
773 | なみかけぬ すまのうへのの つゆにたに なほしほたるる たひころもかな | 浄阿 |
774 | たひひとは さそいそくらむ なるみかた しほひのかたの みちにまかせて | 為氏 |
775 | ととめすは さてやすきまし きよみかた つきみよとてそ せきはもるらむ | 為子(贈従三位) |
776 | ゆきとまる ひとしなけれは あふさかの せきのとさしも なのみなりけり | 覚信 |
777 | あつまちの せきはいかなる とさしにて またふるさとに かへらさるらむ | 如雄 |
778 | くわうたいに みしはみしかは みさりしを ききてそみつる しらかはのせき | 証空 |
779 | いととなほ かすめはとほし やまのはは さらてもみえぬ むさしののはら | 知行(源義行男) |
780 | めくりあはむ そらゆくつきの ゆくすゑも またはるかなる むさしののはら | 定家 |
781 | くさまくら おなしたひねの かはらねは ひかすわするる むさしののはら | 為理 |
782 | はてしらぬ みのたくひかと むさしのを わけまよふにも ぬるるそてかな | 雅家 |
783 | ぬれてほす かきりそしらぬ むさしのや わけゆくすゑの そてのゆふつゆ | 定資 |
784 | ふるさとの すみうかりしに あくかれて いつちともなき たひのそらかな | 道命 |
785 | つきをみて なにはのうさも なくさむは こやふるさとの あきのおもかけ | 為明女 |
786 | あはれけに ならはぬとこの たひねかな みやこににたる つきはすめとも | 尊円法親王 |
787 | たひねする くさのまくらの よなよなは つゆにかたしく そてのつきかけ | 基氏(足利尊氏男) |
788 | こえすくる たかねのこのま いてそめて むかふすそのに つきそさきたつ | 宗秀(大江時秀男) |
789 | みやこいてし ありあけのつきの いくめくり おなしたもとに したひきぬらむ | 公雄 |
790 | たひねする ころものせきを もるものは はるはるきぬる なみたなりけり | 国助 |
791 | たひころも はるはるきても へたてぬは みやこにかよふ こころなりけり | 道誓 |
792 | たひころも なれはまさらぬ みちなれは はるはるきても ふみまよひつつ | 為定(御子左二条為道男) |
793 | おもひやれ みはななそちの そてのしもに おきかさねたる よはのたひねを | 雅朝 |
794 | ゆきくれぬ ふしうしとても いかかせむ ゐなのささはら ひとよはかりは | 公忠(藤原実忠男) |
795 | はかなくて いくよになりぬ つゆむすふ くさのまくらの かかるかりねも | 公宗女 |
796 | みやこおもふ なみたのたまも ととまらす ゆふつゆもろき のへのあらしに | 後伏見院 |
797 | いまそしる なれぬかりねの とこまても くさはにあまる つゆのめくみを | 覚助法親王 |
798 | いつはりの ひとのことのは ちりはてて みやこにいそく みちそうれしき | 成茂 |
799 | わすれすよ こころつくしに たちかへり ふたたひみてし はこさきのまつ | 頼氏(藤原頼広男) |
800 | たまくしけ ふたとせにはや なりにけり あけくれたひの なけきせしまに | 基任 |
801 | あきののに やとりをすれは きりきりす かたしくそての したになくなり | 兼昌 |
802 | ゆきくるる のはらのすゑも はるはると なほさととほく たつけふりかな | 泰宗 |
803 | いしふまぬ あそのかはらに ゆきくれて みかほのさきに けふやとまらむ | 蓮生法師 |
804 | いはねふむ やまのたつきの ゆふされは しはすりころも うちしをれつつ | 惟明親王 |
805 | あかしかた やまとしまねも みえさりき かきくもりにし そてのなみたに | 土御門院 |
806 | たれにかも やとりをとはむ まつちやま ゆふこえゆけは あふひともなし | 定宗(藤原家親男) |
807 | こえゆけは ひとかたならす かすむなり ふたむらやまの はるのあけほの | 行朝 |
808 | こえかぬる たかしのやまは あけやらて きりのうへなる みねのよこくも | 行済 |
809 | くれかかる ふもとのきりを わけすきて のほれははるる やまのはのつき | 覚助法親王 |
810 | あらちやま あすはゆききも たえぬへし けふこそわけめ みねのしらゆき | 国助 |
811 | ゆきつもる かひのしらねを よそにみて はるかにこゆる さやのなかやま | 茂重 |
812 | あつまちの さやのなかやま こえていなは いととみやこや とほさかりなむ | 実朝 |
813 | あはれなり これやかきりの たひならむ わかよもふけぬ さよのなかやま | 信生 |
814 | おもひいてて さらにそまよふ たらちねの あるよにこえし さやのなかやま | 頼康 |
815 | ひかすゆく くさのまくらを かそふれは つゆおきそふる さよのなかやま | 俊成(藤原俊忠男) |
816 | ふきはらふ とこのやまかせ さむしろに ころもてうすし あきのよのつき | 定家 |
817 | あらしふく たかねのくもを かたしきて ゆめちもとほし うつのやまこえ | 忠良 |
818 | みやこいてし ひかすおもへは ふしのねも ふもとよりこそ たちのほりけれ | 為家 |
819 | とにかくに ゆかはやとおもふ みちになほ まとへはこそは とほさかるらめ | 慈円 |
820 | むつのみち みつのさかひに まよひきて なかきねふりの さめぬかなしさ | 法守法親王 |
821 | むつのみち よつのすかたに さすらひて はしめもはても しらぬかなしさ | 澄覚法親王 |
822 | たつねいる みちとはきけと のりのかと ひらけぬものは こころなりけり | 実兼 |
823 | をしへおく そのしなしなの のりのかと ひらくるみちは ひとつなりけり | 後伏見院 |
824 | まよひこし うきよのいへを はなれてそ いまはたのりの かとにいりぬる | 読人不知 |
825 | よのなかは ちくさのはなの いろいろも こころのねより なるとこそきけ | 清輔 |
826 | いまそしる ふゆこもりせる くさもきも はなにさくへき たねしありとは | 有長 |
827 | いまこそは おもひとかるれ ちとせまて もとめしのりの はなのしたひも | 実超 |
828 | みよしのの くもをはなそと ききしより ほかにうつらぬ わかこころかな | 道我 |
829 | やまさくら にほひをかせに まかせてそ はなのさかりを よそにしらする | 実性 |
830 | さきそむる のりのをしへの はなにこそ よものこすゑの はるもみえけれ | 為世(御子左藤原為氏男) |
831 | あらしふく はるのはやしの あさほらけ はなにつねなき よはしられつつ | 為子(従二位) |
832 | かれはてし つるのはやしの かたみとや のりのことのは ひろひおきけむ | 寛耀 |
833 | あめかせも けふのためとや のこしけむ のりのむしろに はなそちりしく | 雅有 |
834 | くもらすよ はなのかけみる ますかかみ こころのみつの なみもたたねは | 良覚 |
835 | ますかかみ うつれるかけを そのままに ありとみるこそ まことなりけれ | 後宇多院 |
836 | ますかかみ みかきてうつる かけもなほ おもへはかりの いろにそありける | 桓守 |
837 | いまそしる よよをこころに てらしつつ ひとをかかみと いひしまことを | 了然 |
838 | よのつねの ひかりならねは ますかかみ そこまてすめる さとりをそしる | 禅助 |
839 | すききつる なこりはいとと ますかかみ ありとしもなき ゆめのおもかけ | 西花門院 |
840 | ななそちの すきにしかたは ゆめそとも しるこそけふの うつつなりけれ | 忠源 |
841 | いつかけに なかきねふりの ゆめさめて これそまことの うつつとおもはむ | 頼仲 |
842 | さめやらて さしもねふりの なかきよに あはれうきよの ゆめそみしかき | 覚懐 |
843 | いつまてか むなしきゆかに ねふりきて まよひのうちの ゆめをのみみむ | 実衡女 |
844 | まよひこし うきよのゆめを ぬるかうちに みはててさむる あかつきもかな | 昌義 |
845 | おろかにて まよひいてにし すゑにこそ やかてまことの みちはありけれ | 宗秀(藤原宗泰男) |
846 | くやしくも もとのわかみを へたてきて こころのほかに まよひけるかな | 恵鎮 |
847 | まよひそめし こころのすゑに ひかれきて もとのさとりに かへりかねぬる | 伏見院 |
848 | こころより ほかにさとりを もとむるや うきよをすてぬ まよひなるらむ | 為理 |
849 | たつぬれは そこともみえす ははききの ありとはかりに まよひけるかな | 覚実 |
850 | いかにして いひあらはさむ のりのみち とにもかくにも たかふことのは | 顕遍 |
851 | ことのはに とまるこころの さはりこそ まことののりの へたてなりけれ | 只帰 |
852 | ありなしの ふたつのみちに ととまらぬ のりやまことの すかたなるらむ | 法守法親王 |
853 | ひとかたに をしへさためぬ ことわりを おのれとしるや みのりなるらむ | 尊氏 |
854 | ふるさとに かへるはやすき ことわりを しらてやよよに まよひきにけむ | 澄俊 |
855 | いかにせむ まことのみちに いるみそと おもひいつれは またわすれつつ | 慈円 |
856 | ききわくる こころのうちの まことこそ をしへによらぬ さとりなりけれ | 桓覚 |
857 | のりをおもふ こころのやまし ふかけれは よのつねならぬ とりもなくなり | 忠平 |
858 | おほそらに さとりのくもや みちぬらむ よもにみのりの あめそあまねき | 定為 |
859 | をしへおく つゆのかことを たよりにて ひとつくさはに やとるつきかけ | 蓮生法師 |
860 | ありてよの はてはむなしき なかそらに ひとつかけなる つきをみるかな | 憲実 |
861 | みつのおもに うつるもおなし かけなから ひとつそらにそ つきはすみける | 朝円 |
862 | みつのおもに うつれるつきの ひかりこそ みるにはみえて とれはとられね | 後宇多院 |
863 | たえすくむ あかゐのみつの そこすみて こころにはるる ありあけのつき | 覚助法親王 |
864 | わしのやま くもらぬつきを たのむかな としへしのりの みつくきのあと | 為家 |
865 | いくあきか たかねのつきに ちきるらむ わしのみやまの くもちたつねて | 成運 |
866 | つきかけの かさなるやまに いりぬれは いまはたとへし あふきをそおもふ | 基俊 |
867 | こころから こころのつきの すみかねて いくよのやみに まよひきぬらむ | 宗尋 |
868 | くらきより くらきにまよふ こころをも はなれぬつきを まつそはかなき | 直義 |
869 | いつまてか わかみひとつの いてかてに ふるさとかすむ つきをみるへき | 為藤 |
870 | むらくもも しはしそおほふ あまつそら つひにはつきの すまぬものかは | 道玄 |
871 | はれくもる おもひをすてて みるときや こころのつきは さやけかるらむ | 和氏 |
872 | ひとりすむ こころのつきを たつぬれは よのうきくもは めにもかからす | 基世女 |
873 | しむけつの すむにむみやうの くもはれて けたつのかとに まつかせそふく | 高弁 |
874 | ふかきよの くもまにひとり すむつきの かけふきおくれ みねのまつかせ | 慶政 |
875 | たつねこし つきのゆくへや これならむ きのふのゆめの うきくものそら | 乗伊 |
876 | いとふへき こころのくもも なかりけり そむくやまちの あきのよのつき | 欣子内親王 |
877 | やまのはに まよふとみえし くもなから よもにへたてぬ つきのかけかな | 良憲 |
878 | うきくもの こころにたにも かからすは のとかにつきの かけはみてまし | 慈慶 |
879 | たつぬへき かたこそなけれ むねのうちの つきのみやこに いつもすむみは | 後宇多院 |
880 | なへてよの こひのけふりに たちかはれ むねのうちなる ふしのしはやま | 尊円法親王 |
881 | みたたのむ こころのうちに へたてなき ほとけはさらに みをもはなれす | 耀空 |
882 | ひとこゑに みつのこころの ありとたに たのまぬほとや なほまよひけむ | 基忠(鷹司兼平男) |
883 | ひとたひも そのなをききて たのむこそ うへなきみちの しるへなりけれ | 為氏 |
884 | なのりする くもゐのこゑは ほとときす つきみよとての しるへなりけり | 兼氏 |
885 | にしへゆく みちのしるへは なかなかに たたおろかなる こころなりけり | 如空 |
886 | はかなくそ かたふくつきを をしみける さこそはにしへ ゆかまほしけれ | 頼実(藤原経宗男) |
887 | にしへゆく つきにちきりを むすひても こころにかかる むらさきのくも | 性助法親王 |
888 | おろかなる みはしもなから むらさきの くものむかへを またぬひはなし | 浄阿 |
889 | うまれては まつおもひいてむ ふるさとに ちきりしともの ふかきこころを | 源空 |
890 | みせはやと はなのなかはを のこしても たれふるさとに われをまつらむ | 漸空 |
891 | ちかひおく おなしはちすの うてなこそ のこるうきみの たのみなりけれ | 定為 |
892 | つゆのみの おきところとて たのむかな さとりひらけし はなのうてなを | 行済 |
893 | なにしおはは いつつのさはり あるものを うらやましくも のほるはなかな | 和泉式部 |
894 | たのむそよ いつつのさはり ふかくとも すてぬほとけの ちかひひとつを | 徽安門院 |
895 | よにこゆる ちかひのうみの みをつくし たつるしるしは いつもくちせし | 邦長 |
896 | いまはまた ちかひのうみの わたしもり くるしきなみに ひとはしつめし | 為家 |
897 | いたつらに くるしきうみに しつみなは のりのうききに またもあはめやも | 花園院 |
898 | かすならぬ せきのふちかは こくふねの のりのためにや よにつかへまし | 雲禅 |
899 | こきよする たよりならては わたしふね のりうけかたき わかみなりけり | 景綱 |
900 | しはしなほ ふねさしとめよ わたしもり のりおくれたる ひともこそあれ | 広房(大江広茂男) |
901 | いかにして のりのみふねの つなてなは しつまぬかたに こころひかまし | 長験 |
902 | たえぬへき のりのなかれの ともちとり さほのかはらに なくなくそきく | 覚円 |
903 | めくりあふ けふのみのりの むしろにも あらましかはの むかしをそおもふ | 光厳院 |
904 | あまかけり さこそあはれと おもひけめ あととふやとの のりのむしろに | 内侍(永福門院) |
905 | いまそきく しかなくのへに きりはれて もとこしみちも へたてなしとは | 覚誉法親王 |
906 | しつかなる ところはやすく ありぬへし こころすまさむ かたのなきかな | 源信 |
907 | わかこころ あれのみまさる はるこまは のりのをしへに あふかひそなき | 尊円法親王 |
908 | さとひとの こころもしらす かくとたに いはてはをらし やまふきのはな | 為定(御子左二条為道男) |
909 | よしあしと ひとにかたるな なにはかた ことうらにすむ あまのしわさを | 玄円 |
910 | しらなみも よせつるかたに かへるなり ひとをなにはの あしとおもふな | 為世(御子左藤原為氏男) |
911 | つのくにや なにはにおふる よしあしは いふひとからの ことのはそかし | 高倉(八条院) |
912 | いさきよき こころひとつに つたへきて よそにふるさぬ のりのことのは | 慈勝 |
913 | そのままの こころのほかに ことのはも なきこそのりの しるへなりけれ | 忠性 |
914 | またひとも しらしとそおもふ おとはかは せきいるるみつの ふかきこころは | 道玄 |
915 | そこきよき わかたにかはの すゑうけて こころのみつの なとにこるらむ | 尊玄 |
916 | すすきけむ ひとのこころを みわかはの よきよなかれに くみてしるかな | 実寿 |
917 | つたへきて よよにたえぬや やまかはの なかれひさしき みのりなるらむ | 尋源 |
918 | いかるかや とみのをかはの なかれこそ たえぬみのりの はしめなりけれ | 良聖 |
919 | にこりにも しまぬはちすの あはれなと ひとのこころに ひらけさるらむ | 尊道法親王 |
920 | かくはかり うきよのなかの にこりにも しまぬはむねの はちすなりけり | 読人不知 |
921 | ななとせの つきひにみかく はちすはの つゆのしらたま ひかりそふらし | 公賢 |
922 | たまかくる ころものうらを わすれすは もとよりみかく こころならまし | 禅隆 |
923 | なみかくる ころものうらを きてみれは もにあらはれて たまそよりくる | 成運 |
924 | くもらしと みかくこころの たまかしは もにあらはれて よをいのるかな | 尊円法親王 |
925 | あらはれぬ ころものうらの たまかしは いかなるえにか しつみそめけむ | 寂真 |
926 | たけのはに かけしころもの なこりには とらふすのへも むつましきかな | 宣旨(六条院) |
927 | ゆきのうちに おもひそいつる みにかへて なかはききけむ のりのことのは | 桓豪 |
928 | ききのこす そのことのはの すゑのつゆ もとめしひとや よをもすてけむ | 円胤 |
929 | ちきりおきし よよのむかしの ことのはに のこさすみかく あきのしらつゆ | 公経(藤原実宗男) |
930 | こをおもふ こころをもなほ わするるは いかなるやみに まよふなるらむ | 久明親王 |
931 | まとふかき のりのともしひ おもひきや たけのそのふを てらすへしとは | 栄運 |
932 | こころさし きみにかかくる ともしひの おなしひかりに あふかうれしさ | 紫式部 |
933 | いにしへの ちきりもうれし きみかため おなしひかりに かけをならへて | 伊勢大輔 |
934 | たちならふ かけやなからむ よろつよの のちまててらす のりのともしひ | 覚空 |
935 | かかけおく のりのともしひ きえぬまに あかつきちかく なるかうれしさ | 寛尊法親王 |
936 | かねのおとは あけぬときけと たかのやま なほはるかなる あかつきのそら | 宗尊親王 |
937 | いまもなほ たみのかまとの けふりまて まもりそすらむ わかくにのため | 後宇多院 |
938 | ちはやふる ひらののまつも けふこそは はなさくはるの ためしなるらめ | 読人不知 |
939 | ちはやふる かみのすこもに しもさえし そのあかつきは いまもわすれす | 後二条院 |
940 | とりかさす ひかけのかつら くりかへし ちよとそうたふ かみのみまへに | 順徳院 |
941 | かみよより ちきりありてや やまあゐに すれるころもの いろとなるらむ | 定家 |
942 | あまのとの あけしむかしを うつしきて かみよにかへす あさくらのこゑ | 伏見院 |
943 | あめつちの ひらけしときの あしかひや かみのななよの はしめなりけむ | 定為 |
944 | あまのとの あけしつきひも かはらぬは かみよなからの ひかりなりけり | 後醍醐院 |
945 | あまのはら あけしいはとの かみちやま ひつきくもらぬ よにこそありけれ | 慈道法親王 |
946 | あまのはら いはとをあけし かみよより いまもたえせぬ いとたけのこゑ | 盛徳 |
947 | くもらしな ますみのかかみ かけそへて いはとをいてし つきのひかりは | 祐親 |
948 | わかたのむ かみちのやまを いつるより みをはなるへき つきのかけかは | 氏忠 |
949 | いくあきを おくりむかへて かみちやま つきもあまてる ひかりなるらむ | 氏之 |
950 | かみちやま うちとのみやの ゆふかつら いくよをかけて きみまもるらむ | 為子(従二位) |
951 | きみかよに まためくりあふ をくるまの にしきそかみの たむけなりける | 匡遠 |
952 | すすかやま いさせきこえて おもふこと なりもならすも かみにいのらむ | 朝村 |
953 | ふりはつる みをはやなから いすすかは このせにかけて なほいのるかな | 読人不知 |
954 | すすかかは やそせのなみの たちゐにも わかみのための よをはいのらす | 崇光院 |
955 | かみかせや みもすそかはの たまかしは しつむみくつと なりやはてなむ | 資茂 |
956 | みなかみは ふかきかみちの やまそとも みもすそかはの なかれにそしる | 守藤 |
957 | これやこの あまてるかみの あめつちを まもるしるしの ちきのかたそき | 常良 |
958 | さかえゆく みよのためしは いにしへに ありきあらすも かみそしるらむ | 顕実母 |
959 | おのつから かみはしるらむ いはたかは いはねとふかく たのむこころを | 良瑜 |
960 | みことのり うけてつたへし わかこころ くもらぬほとは かみそしるらむ | 良実 |
961 | あまくたる わけいかつちの かみよより くもらぬそらそ いまものとけき | 隆長 |
962 | ちはやふる かみのちかひも いたつらに ならしとはかり みにたのむかな | 顕氏(細川頼貞男) |
963 | うきをなほ はくくむかみの ちかひこそ みのことわりの たのみなりけれ | 兼氏 |
964 | うちたのむ かみのなもをし いかてわれ さてはてにきと ひとにきかれし | 長明 |
965 | わかたのむ みたらしかはの たえはこそ しつみはてぬと みをはおもはめ | 家教 |
966 | いまもなほ たのみそわたる むかしわか みをたてそめし かものかはなみ | 為定(御子左二条為道男) |
967 | としをへて おひそふまつの かすかすに わかかみやまの かけそさかゆく | 教久 |
968 | ひとすちに いのれはきみか みゆきをも みつはのさかき われそとりさす | 信久 |
969 | としをへて かはらぬいろの さかきはに つもるみゆきは かみそうくらむ | 氏久 |
970 | けさもまた いのるこころの あとみえて たのみをかくる ゆきのしらゆふ | 亀山院 |
971 | はらはても かへりたちなむ をみころも かみのめくみに かかるしらゆき | 読人不知 |
972 | わすれしな かものかはなみ かへりたつ くもゐにたかき あさくらのこゑ | 雅顕 |
973 | あかつきの ほしのひかりも ほのかにて なこりをしたふ あさくらのこゑ | 実泰 |
974 | よろつとせ ちとせとうたふ こゑすなり かみもひさしく よをまもるらし | 公賢 |
975 | ひきかへて なりゆくよこそ かなしけれ むかしのことの しらへならねは | 氏久 |
976 | あめつゆも もらぬみかさの やまなれと たのむにつけて そてはぬれつつ | 実重(三条公親男) |
977 | かみのます みかさのやまの つきかけの ゆふかけてしも さしのほるかな | 忠通 |
978 | たれゆゑに ふたたひてらす つきひとも おもひしらぬを かみやうらみむ | 祐春 |
979 | ふるさとの かすかののへの くさもきも ふたたひはるに あふとしらなむ | 躬恒 |
980 | かすかやま いかにさかえて ふちなみの こすゑにかへる ほとはしられむ | 為定(御子左二条為道男) |
981 | たちよらは つかさつかさも こころせよ ふちのとりゐの はなのしたかけ | 後醍醐院 |
982 | もろひとも けふふみわけて かすかのや みちあるみよに かみまつるなり | 尊氏 |
983 | かみまつる そのをりをりに たちなれて みしよこひしき かすかののはら | 兵衛督(花園院) |
984 | さをしかの おきふしわかす つかへきて かすかののへに あきもへにけり | 良基(二条道平男) |
985 | あとたれし そのいにしへの ことのはを おもへはみをも なほたのむかな | 祐世(中臣祐賢男) |
986 | さりともと のちのよまても たのむかな みにあまりぬる かみのめくみを | 良信 |
987 | ひとよまつ ちよのすゑはの おいきまて こたかくなりぬ としもくらゐも | 為長(菅原長守男) |
988 | かみかきに われこそいそけ さかきはの ゆふつけとりの こゑをまちえて | 国冬 |
989 | おこたらす いのるもみよの ためなれは きみとかみとに みはつかへつつ | 国夏 |
990 | ふりにける あとをたつねて すみのえの みゆきかさなる けふにもあるかな | 為兼 |
991 | きみかよに ゆきあひのしもの としふりて ちたひもつくれ ちきのかたそき | 尊円法親王 |
992 | つかへても ひさしくなりぬ みつかきの ふたたひかはる みよにあひつつ | 国平 |
993 | よとともに さかゆへしとや みつかきに いはひそめけむ しきしまのみち | 為明 |
994 | すみよしの まつのことのは かはらすは かみよにかへれ しきしまのみち | 長秀 |
995 | かみかきや ぬさとくたけて ふるゆきの つもれはまつに かくるしらゆふ | 国夏 |
996 | ちはやふる かみのそのふの ゆふたすき かけていくよの すゑまもるらむ | 顕詮 |
997 | ももとせを やたひおくりし かみよより ふりてひさしき しかのはままつ | 成繁 |
998 | よるなみの いつつのいろは みとりなる まつにそのこる しかのからさき | 慈勝 |
999 | あとたれし かみのみゆきの いにしへを おもへはとほき からさきのまつ | 慈道法親王 |
1000 | たくひなき かけとたのみて としもへぬ このひともとの しかのはままつ | 覚為 |
1001 | たのむそよ ななのやしろの かすかすに さのみはかみも すてしとおもへは | 慈順 |
1002 | もらさしな わかかみかきの みしめなは はへてもあまる よものめくみは | 慈伝 |
1003 | やまさくら さきそふころの かみかきは そのやへかきの くもかとそみる | 和氏 |
1004 | かみかきに わかみやそちの しもふりて おいのかけそふ ふゆのよのつき | 国長 |
1005 | わきてなほ たのむこころも ふかきかな あとたれそめし ゆきのしらやま | 道玄 |
1006 | きみかよを いかにいのりて みるゆめも たかはぬかみの めくみなりけむ | 尊什 |
1007 | かくてよに すむかひあらは いはしみつ こころのにこる なをもなかさし | 清氏 |
1008 | ひとよりも わかひとなれは いはしみつ きよきなかれの すゑまもるらむ | 尊氏 |
1009 | おとにのみ あやなくひとを ききそめて それとたにみぬ こひそくるしき | 元方 |
1010 | したひもの とくるはかりを たのみにて たれともしらぬ こひもするかな | 躬恒 |
1011 | ひとしれす おもふこころの しるけれは ゆふともとけよ きみかしたひも | 馬内侍 |
1012 | こひしきを ひとにはいはて ひとしれす よひよひことに おもひいつるかな | 実頼 |
1013 | われひとり おもへはくるし かきりなき こころをいてや かけてしらせむ | 高明 |
1014 | むさしあふみ ふみたにもみぬ ものゆゑに なににこころを かけはしめけむ | 崇徳院 |
1015 | うらわかみ ねよけにみゆる わかくさを ひとのむすはむ ことをしそおもふ | 業平 |
1016 | はつくさの なとめつらしき ことのはそ うらなくひとを おもひけるかな | 読人不知 |
1017 | いもかかと ゆきすきかねて くさむすふ かせふきとくな あはむひまてに | 読人不知 |
1018 | あさはのに たつみわこすけ ねふかめて たれゆゑにかは わかこひさらむ | 人麿 |
1019 | こひわひぬ あふよもかたし おくやまの いはもとこすけ ねのみなかれて | 家良 |
1020 | はかなしや そてのみぬれて いけみつの またいひいてぬ たのみはかりは | 読人不知 |
1021 | いつしかと はつやまあゐの いろにいてて おもひそめつる ほとをみせはや | 為子(贈従三位) |
1022 | たれゆゑに おもひいりにし こひちとて ひとのこころの かよはさるらむ | 師賢(藤原師信男) |
1023 | おもひいる こころそまよふ いきうしと いひてかへらむ こひちならねは | 為遠 |
1024 | おもひたつ こひちのすゑの しるへとは まよふこころを いかかたのまむ | 玄勝 |
1025 | こひのやま いりてくるしき みちそとは ふみそめてこそ おもひしりぬれ | 有忠 |
1026 | うちつけに まよふこころと きくからに なくさめやすく おもほゆるかな | 監命婦 |
1027 | よしさらは いははやとおもふ をりをりや しのふこころの あまりなるらむ | 冬平 |
1028 | しらせはや とはかりものを おもふこそ ならはぬこひの はしめなりけれ | 少将内侍(後深草院) |
1029 | けふこそは しらせそめつれ こひしさを さてのみやはと おもふあまりに | 成通 |
1030 | いはてたた おもひやるまて しらせはや ひとしれすのみ こふるこころを | 隆源(藤原通宗男) |
1031 | いひそめて こころかはらは なかなかに ちきらぬさきそ こひしかるへき | 為世(御子左藤原為氏男) |
1032 | きみとわれ いかなることを ちきりけむ むかしのよこそ しらまほしけれ | 読人不知 |
1033 | きみゆゑや はしめもはても かきりなき うきよをめくる みともなりけむ | 式子内親王 |
1034 | かかりける むくひそつらき あふことの なきをちきりに おもひなしても | 伏見院 |
1035 | いかなりし かせのたよりに ききそめて みにしむこひの つまとなるらむ | 俊成女 |
1036 | いかにせむ それとはかりの おとはして めにみぬかせの こころつくしを | 邦省親王 |
1037 | おもふとも しらしなひとめ もるやまの したふくかせの いろしみえねは | 秀能(藤原秀宗男) |
1038 | しるへとは たのますなから おもひやる そなたのかせの つてそまたるる | 尊胤法親王 |
1039 | たちかへり われさへたとる こころかな なにをしるへに おもひそむらむ | 道性 |
1040 | たよりにも あらぬおもひを しるへとて こころとまよふ こひのみちかな | 兼朝 |
1041 | おのつから ひともをしへぬ おもひにて まよひそむるや こひちなるらむ | 尊氏 |
1042 | そことたに をしへぬものを いつかたに まよふこころの われさそふらむ | 為道 |
1043 | いくたひか ふみまとふらむ みわのやま すきあるかとは みゆるものから | 読人不知 |
1044 | なにゆゑと おもひもわかす あくかるる こころやこひの はしめなるらむ | 資季 |
1045 | かこつへき たよりたになく くるしきは そらにしめゆふ おもひなりけり | 為明 |
1046 | とへかしな しのふのつゆの きえかへり かきりしられぬ したのみたれを | 光之 |
1047 | つらからむ こころのおくは みてもうし よしやしのふの やまのかよひち | 親子(典侍親子朝臣) |
1048 | うかりける しのふのやまの しるへかな かよはぬなかに まよふちきりは | 後醍醐院 |
1049 | しらせはや しのふのうらの うけのをの おもひたゆたふ こころなかさを | 恒明親王 |
1050 | いかにせむ しのふのうらの おきつなみ かけてもそての いろにいてなは | 隆教 |
1051 | しられしな よそのうらちを こくふねの ほのみしなみを そてにかくとは | 伏見院 |
1052 | うきなから よるへをそまつ なにはえの あしわけをふね よそにこかれて | 為親 |
1053 | あしまなき なみたのそての みなとにも さはるはひとの よるへなりけり | 国道(津守国助男) |
1054 | なみかくる いそまのあまよ こととはむ なれもみるめに そてはぬるやと | 公明 |
1055 | いたつらに いくとしつきか ふりぬらむ もらすひまなき そてのなみたは | 実衡 |
1056 | つつむとも しのふにたへぬ なみたとて おさふるそての いろやかはらむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1057 | つひにさて うきよかたりと なりやせむ せかるるそての なみたならねは | 達智門院 |
1058 | ひとしれぬ こころのとふも うきものを うたてなみたの そてにもるらむ | 兵衛督(達智門院) |
1059 | くちぬへき そてにまかせて すくすかな いまはこころに あまるなみたを | 為親 |
1060 | からころも みよりあまれる なみたこそ つつむそてにも たまらさりけれ | 素暹 |
1061 | としふれと ひとのこころは つれなくて なみたはいろの かはりぬるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
1062 | せきかねて あまるなみたの くれなゐに たもとさへこそ いろかはりけれ | 久良親王 |
1063 | せきかねし なみたのはてや くれなゐの うすはなそめの いろにいつらむ | 宗尊親王 |
1064 | あさはかに うつりにけりな くれなゐの うすはなそめの ころもへすして | 定為 |
1065 | からころも またみになれぬ としをへて なみたのいろや ちしほなるらむ | 尊氏 |
1066 | こひしさを けにいかさまに いひいてむ なみたならては ことのはもなし | 通重 |
1067 | わかおもふ こころのすゑを もらさねは なみたはかりと そてやしるらむ | 資名 |
1068 | せきかへし つつめはそてに もりかねて さすかひとめを しるなみたかな | 玄円 |
1069 | ひとすちに こころなきみと おもへとも うきをはそてに しるなみたかな | 為兼 |
1070 | つつみきて としつきつもる なみたのみ たへぬおもひを ひとやしるらむ | 直氏 |
1071 | おもふにも まけぬなみたそ ふりにける しのふることの こころなかさに | 為道 |
1072 | しのはすは ほさてもそてを みすへきに しほりそかぬる よはのさころも | 俊成(藤原俊忠男) |
1073 | せくとたに みえしとおもひし わかそての なみたをよにも もらしつるかな | 為冬 |
1074 | せきかぬる そてのなみたを ひととはは ころものうらの たまとこたへむ | 慈道法親王 |
1075 | いまははや そてにそつつむ おもひせく こころのうちの たきのしらたま | 為定(御子左二条為道男) |
1076 | かたしきの そてにせかれぬ たきつせの なかにそよとは ありとしもなき | 慈伝 |
1077 | いはておもふ こころのうちの しからみに せきあへぬものは なみたなりけり | 範隆 |
1078 | ひとめせく そてのしからみ くちぬまに なみたのふちは みくさゐにけり | 実重(三条公親男) |
1079 | なみたかは なかれあふせも まつへきに なにそはありて そてのしからみ | 光頼 |
1080 | なににまた せきてととめむ なみたかは うくはかりなる そてのしからみ | 高広 |
1081 | なみたかは そてのしからみ せきかねて やとれるつきも かけそなかるる | 善算 |
1082 | なみたかは せかはとたのむ かひもなし いつよりそての いろにいてけむ | 光吉 |
1083 | ひとしれす いつしかおつる なみたかは わたるとなしに そてぬらすらむ | 氏胤 |
1084 | よしさらは つつむもくるし なみたかは あふせにかへて なをなかすとも | 基氏(足利尊氏男) |
1085 | かねてより おもひしことの くやしきは うきなをなかす なみたなりけり | 兼氏 |
1086 | しのふれは そらになみたも かきくれぬ こひしきひとや いつこなるらむ | 兼家 |
1087 | ひとしれす こころのうちの くるしきは おもひしことの たかふなりけり | 宇多天皇 |
1088 | ひとしれぬ こころのうちの いつはりを たかまこととか おもひはつへき | 読人不知 |
1089 | さすかまた ひとにはひとも もらさしと つつむはかりを たのむなかかな | 通顕 |
1090 | しられしと つつむにしけき ひとめこそ かよふこころの せきとなりけれ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1091 | せきもりの まとろむよはは あまたあれと こころのかよふ みちやなからむ | 按察(鷹司院) |
1092 | おとにきく よもきかしまに よるなみの またみぬなかに たつうきなかな | 実教 |
1093 | まつかえの たかしのはまの おきつなみ およはぬいろに かけてこひつつ | 為定(御子左二条為道男) |
1094 | おきつなみ よするたかしの はままつの ねにはなけとも ひとそつれなき | 盛徳 |
1095 | いせのうみの あまのうけなは うきしつみ おもふとたにも しるひともかな | 公賢 |
1096 | しるやいかに いはうつなみの はやくより たつはうきなの かくれなきみを | 師久 |
1097 | はやきせの いはまのなみの わきかへり くるしやこころ したむせひつつ | 越前(嘉陽門院) |
1098 | ともすれは いはまつたひに ゆくみつの ととこほりても ぬるるそてかな | 為藤 |
1099 | いはかねの こりしくやまを わけかねて ねにはなくとも いろにいてめや | 読人不知 |
1100 | いかにして いはうつなみの やちかへり くたくとたにも ひとにしらせむ | 読人不知 |
1101 | うらちかく なみのうちよる さされいしの なかのおもひと しるやしらすや | 伊勢 |
1102 | せめてたた きえぬとたにも しらせはや したのおもひに くゆるけふりを | 伏見院 |
1103 | こひしなむ おもひのけふり せめてたた あふにかへたる なにたにもたて | 行輔 |
1104 | ゆふけふり そらにたつなの うきにたに かへぬおもひは なほむせひつつ | 宰相(瑒子内親王家) |
1105 | しるらめや あまのとまやの ゆふけふり たつなにそての しほたるるとは | 宗明 |
1106 | あふことは なたのしほやの ゆふけふり なひかぬさきに たつうきなかな | 実継 |
1107 | つのくにの なにはたてしと あしひたく けふりはしたに くゆりわひつつ | 忠季(藤原公蔭男) |
1108 | ひとしれす ほのめかしても かひなきは おもはぬかたの あまのいさりひ | 実直母 |
1109 | しらせはや あまのしのひの したもえに たつとはみえぬ むなしけふりを | 行春(紀) |
1110 | たきすさふ わかしたもえの けふりこそ ひとめにたたぬ おもひなりけれ | 忠貞 |
1111 | いかにせむ わかみこかれて したもえの けふりのすゑは ゆくかたもなし | 雅冬 |
1112 | いかかせむ いはねはむねの ゆふけふり こころひとつに くゆるおもひを | 為道 |
1113 | すくもたく にひしまもりか ゆふけふり きえたにあへす みをこかしつつ | 国冬 |
1114 | もしほやく あまのたくひの したにのみ もえつつからき われにやはあらぬ | 元真 |
1115 | いかにせむ あこきかうらに そてぬれて つむやしほきの からきおもひを | 公敏 |
1116 | あまのたく もしほのけふり たつそらも なくなくからき みのおもひかな | 公賢 |
1117 | あまひとの もしほのけふり なひくやと おもふかたより かせもふかなむ | 花園院 |
1118 | うきなのみ をしまのあまの ゆふけふり たてしとすれは うらかせそふく | 有光 |
1119 | ふしのねに ならぬおもひの もえそめて わかためつらく たつけふりかな | 国助 |
1120 | したもえの わかみよりこそ たてすとも ふしのけふりの たくひとはしれ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1121 | ときしらぬ わかしたもえの おもひかな ふしのけふりの たくひはかりに | 道嗣 |
1122 | しのひかね こころのそらに たつけふり みせはやふしの やまにまかへて | 良経(九条兼実男) |
1123 | たちのほる ふしのけふりの ゆくへとも こころそらなる みのおもひかな | 為定(御子左二条為道男) |
1124 | たちまかふ かたこそなけれ ふしのねや たえぬおもひに くゆるけふりは | 伏見院 |
1125 | よもすから こひのけふりに むせひつつ ふしのねたくも くゆるころかな | 基俊 |
1126 | としをへて もえつつとはに おもへとや ふしのねたくも つれなかるらむ | 具氏 |
1127 | もゆれとも しるひとなきは としへつる おもひのうちの おもひなりけり | 公任 |
1128 | しらせはや にひくはまゆの かきこもり いふせきまてに しのふこころを | 顕仲(藤原資仲男) |
1129 | しられしな おやのかふこの ひくまゆの こころにこむる おもひありとは | 為定(御子左二条為道男) |
1130 | ひとしれぬ こころのうちの みなかみに せくやなみたの おとなしのたき | 為信 |
1131 | やまかはの たきつこころを せきかねて ひとのきかくに なけきつるかな | 読人不知 |
1132 | たにかはの みかけにおふる やますけの やますもひとに こひわたるかな | 人麿 |
1133 | ひとしれす ものおもふときは なにはなる あしのしたねそ したになかるる | 貫之 |
1134 | ほにはいてし あしのふしはの したみたれ いりえのなみに くちははつとも | 雅経 |
1135 | かくれぬの そこのしたくさ みかくれて しられぬこひは わひしかりけり | 仲平 |
1136 | みかくれに かくるはかりの したくさは なかからしとも おもほゆるかな | 伊勢 |
1137 | おもひあれは なみたにそては くちはてぬ むくらのやとに なにをしかまし | 実重(三条公親男) |
1138 | もらすなよ つゆのよすかの そてのつき くさはのほかに やとりありとは | 浄弁 |
1139 | つきたにも しのへはしらし わかそてに かかるなみたの やとりありとは | 俊光女 |
1140 | せきわふる なみたをたにも もらさすは いくよもやとれ そてのつきかけ | 経有(飛鳥井雅孝男) |
1141 | ひととはは つきゆゑおつる ならひそと こたへやせまし そてのなみたを | 義詮 |
1142 | つきみれは ねられぬよはと いひなして なみたはかりを なほつつむかな | 長綱(菅原茂長男) |
1143 | ひとしれぬ よはのおもひの かよはすは おなしねさめの つきをみましや | 遊義門院 |
1144 | くもゐにて なかむとおもへと わかそてに やとれるつきを きみやみるらむ | 出羽弁 |
1145 | いつなれし おもかけとてか よはのつき なかむるそてに まつうかふらむ | 兼行女 |
1146 | そらにまた さそひなそへそ よはのつき ひとのこころの あくかるるみを | 為藤 |
1147 | よなよなの つきもなみたに くもりにき かけたにみせぬ ひとをこふとて | 定家 |
1148 | あはれなと つきのかつらの よそにのみ てにもとられぬ かけをこふらむ | 公雄 |
1149 | わかこひは むらくものそらに ゆくつきの あひみかたくも なりまさるかな | 光厳院 |
1150 | ゆきかへり あまとふくもの たよりにも わかおもふひとの ことはかよはす | 光厳院 |
1151 | しきたへの まくらをまきて いもとわれ ぬるよはなしに としそへにける | 人麿 |
1152 | ゆめをみて かひなきことの わひしきは さむるうつつの こひにそありける | 貫之 |
1153 | こひしさに おもひみたれて ねぬるよの ふかきゆめちを うつつともかな | 素性 |
1154 | ゆめよりも さめてののちの わひしきは つらきうつつに まとふなりけり | 読人不知 |
1155 | おもひわひ しはしもねはや ゆめのうちに みゆれはあひぬ みねはわすれぬ | 小町 |
1156 | おもひねの ゆめはしはしの ちきりにて さめてののちの なくさめそなき | 覚助法親王 |
1157 | ひとりねに あふとみえつる おもかけの さむるゆめちを したにわひつつ | 基氏(足利尊氏男) |
1158 | おもひねの こころかはらぬ ゆめならは ひともやこよひ あふとみるらむ | 実教 |
1159 | ゆめちにも あふとしみえは かたいとの よるたにやすく ねなましものを | 具行 |
1160 | ぬるかうちに せめてはみえよ せきもりの ありともきかぬ ゆめのかよひち | 善成 |
1161 | うつつには またこえもみす おもひねの ゆめちはかりの あふさかのせき | 為世(御子左藤原為氏男) |
1162 | ゆめちには うつつはかりの せきやなき こゆとそみつる あふさかのやま | 為子(贈従三位) |
1163 | いかにねて みえつるゆめの おもかけそ さしもゆるさぬ なかのちきりに | 実衡女 |
1164 | いかにせむ ぬるかうちにも せきすゑて ゆるさぬよはの ゆめのかよひち | 盛経(藤原盛継男) |
1165 | うきひとの こころのせきに うちもねて ゆめちをさへそ ゆるささりける | 公宗三女 |
1166 | ひとりねは いかにふすゐの とこなれは ゆめちもやすく かよはさるらむ | 尊氏 |
1167 | いまはたた おやのいさめし うたたねの ゆめちにたにも あひみてしかな | 大輔(殷富門院) |
1168 | なけきわひ くらせるよひも いかならむ なくさむほとの ゆめしみえすは | 通藤女 |
1169 | はかなしや まつほとふけて ねぬるよの こころにかくる ゆめのうきはし | 読人不知 |
1170 | おのつから ひとめをしのふ かよひちや よひよひことの ゆめのうきはし | 経平(藤原家基男) |
1171 | そのままに おもひたえても ありなまし みはてぬよはの ゆめのうきはし | 実俊(西園寺公宗男) |
1172 | はかなくも なほさめやらて したふかな みはてさりつる ゆめのなこりを | 恒明親王 |
1173 | あふとみて さむるうつつの つらさにも こりすやゆめを なほたのむらむ | 宣時(北条) |
1174 | おもひねの ゆめのまくらに ちきりしも さめてはもとの つらさなりけり | 時村 |
1175 | おきもせす ねもせてあかす とこのうへに ゆめともなしの ひとのおもかけ | 公蔭 |
1176 | たのましよ ゆめのたたちの とこのやま いさやわすれぬ ちきりなりとも | 藤経(源) |
1177 | しきたへの とこのみをなる なみたかは まくらなかれて みるゆめもなし | 為家 |
1178 | せきあへぬ なみたそつもる うはたまの よはのまくらも うきぬはかりに | 性厳 |
1179 | しきたへの まくらをくくる なみたにそ うきねはしつる こひのしけさに | 読人不知 |
1180 | しのひつつ なかきよすから こひわひて なみたのふちに うかひてそぬる | 兼通 |
1181 | うかひても きみはねにけり いかなれは つゆとおきゐて ぬれしたもとそ | 侍従(本院) |
1182 | おもひかね いろにいてにし ことのはの さていたつらに くちはてねとや | 長通 |
1183 | あたなりと かねておもへは ことのはの くちもくちすも わくかたそなき | 読人不知 |
1184 | おもふこと あとなきなみに こくふねの うきしつみても こひわたるかな | 覚助法親王 |
1185 | いたつらに あはてのうらに よるへなき わかみそいまは あまのすてふね | 為世(御子左藤原為氏男) |
1186 | うきしつみ われそこかかる もかりふね ひとはこころも よせぬみきはに | 為子(従二位) |
1187 | もかみかは しはしとたのむ ちきりたに なほいなふねの とほさかりつつ | 祐夏(鴨祐雄男) |
1188 | ひたひとの まきなかすてふ にふのかは ことはかよへと ふねそかよはぬ | 読人不知 |
1189 | いかにせむ にふのかはなみ よるたにも かよはぬふねの うきななかさは | 兼康 |
1190 | わたのはら なみちにとほく ゆくふねの ほにあらはれて こひやわたらむ | 頼春 |
1191 | しらせはや まほにかけつつ ゆくふねの ひとかたにのみ かよふこころを | 公順 |
1192 | おほふねの まほのてなはの かせをいたみ ひくかたしけき ひとにこひつつ | 為明 |
1193 | あふことの なきさのをふね いつかたに しはしこころの とまりさためむ | 為相 |
1194 | いかにせむ ゆふなみあるる みなとふね おもひよるへき たよりたになし | 清綱 |
1195 | おもふこと みなとにちかふ はやふねの とまりもあへぬ こひもするかな | 信実 |
1196 | きふねかは たまちるなみの くたけつつ おもふこころを あはれとはみよ | 尊氏 |
1197 | いたつらに みさへなかるる なみたかは あふせやなほも たのみなるらむ | 資栄 |
1198 | ものおもへは そてになかるる なみたかは いかなるみをに あふせなりけむ | 西行 |
1199 | ききしより そてのみぬるる おとはかは いつをあふせと こひわたるらむ | 読人不知 |
1200 | にこるせは しはしはかりそ みつしあらは すみなむとこそ たのみわたらめ | 篁 |
1201 | かせふけは きしのまにまに うちよする なみのまもなく おもほゆるかな | 醍醐天皇 |
1202 | おほうみに たつらむなみの かすしらす きみにこふらく やむときもなし | 読人不知 |
1203 | わたつうみの うみにいてたる しかまかは たえむひにこそ わかこひやまめ | 読人不知 |
1204 | たこのうらの なみのぬれきぬ ほしわひて たえぬひもなく たつうきなかな | 実教 |
1205 | いそなつむ なこのあまひと こととはむ ほすにかわかぬ そてはありやと | 顕昭 |
1206 | しらせはや かりそめなりし みるめより たえすそかかる そてのうらなみ | 公忠(藤原実忠男) |
1207 | しられしな みなそこふかき なひきもの なひかぬひとに われみたるとは | 公蔭 |
1208 | むらさきの なたかのうらの なひきもの こころはいもに よりにしものを | 読人不知 |
1209 | わたつうみの みるめはたれか かりそめし よのひとことに なしといはする | 小町 |
1210 | かたいとの くるすのをのの ひとすちに あふへきふしや おもひたえなむ | 兼盛 |
1211 | くりかへし つらくてへぬる としのをに なみたのたまを ぬかぬひそなき | 兼実 |
1212 | みをくたく なみたのたまの ををたえて わかかたいとの あはてくるしき | 後宇多院 |
1213 | ふくかせに わかみをなさは たますたれ ひまもとめつつ いるへきものを | 業平 |
1214 | わかなみた かかれとしても くろかみの なかくやひとに みたれそめにし | 近衛(今出河院) |
1215 | よよかけて なにむすひけむ したひもの とけぬにしるき なかのちきりを | 顕実母 |
1216 | むすひけむ ちきりはしらす したひもの とけてくやしき なけきをやせむ | 永福門院 |
1217 | いにしへの しつはたおひの いくかへり わかかたこひの すゑにむすはむ | 順徳院 |
1218 | つひにさて つれなかるへき ちきりかと ゆくすゑをたに いかてしらまし | 後醍醐院 |
1219 | あはれなと むくひあるへき のちのよの みをもおもはて つれなかるらむ | 為子(贈従三位) |
1220 | みをすてむ のちのよまても かなしきは ひとをうらむる むくひなりけり | 冬平 |
1221 | のちのよの たのみになして こひしなむ いきてまつへき ちきりならすは | 為氏 |
1222 | いもにこひ わかのうらまつ うらみても つれなきいろに としそへにける | 土御門院 |
1223 | あふことを いつしかとのみ まつかせの おとにしられて こひわたるかな | 躬恒 |
1224 | なみのよる いはねにたてる そなれまつ またねもいらて こひあかしつる | 基俊 |
1225 | わかこひは おほろのしみつ いはこえて せきやるかたも なきこころかな | 俊頼(源経信男) |
1226 | いととしく たのまるるかな もかみかは しはしはかりの いなとみつれは | 相如(藤原相信男) |
1227 | わきもこか みもすそかはの きしにおふる きみをみつのの かしはとをしれ | 輔親 |
1228 | さかきはを さしはへいのる しるしあらは ゆふかけてとふ ひともあらなむ | 読人不知 |
1229 | さほすきて ならのたむけに おくぬさは いもにあひみむ しるしなりけり | 聖武天皇 |
1230 | あひみむと おもふこころは まつらなる かかみのかみや そらにしるらむ | 紫式部 |
1231 | みくさゐる のもりのかかみ みすもあらす みもせぬこひに ぬるるそてかな | 盛徳 |
1232 | わかなかは のもりのかかみ みくさゐて よそなからみし おもかけもなし | 経教 |
1233 | やまとりの をろのかかみの かけはあれと へたつるなかは みるかひもなし | 冬通 |
1234 | なみたさへ へたつるなかの おもかけや とほやまとりの かかみなるらむ | 為定(御子左二条為道男) |
1235 | みちのくの まののかやはら とほけれと おもかけにして みゆといふものを | 笠女郎 |
1236 | おもへとも おもひもかねつ あしひきの やまとりのをの なかきこよひを | 人麿 |
1237 | おとにきく なるとのうらに かつきする あまよわひしき めをみするかな | 忠見 |
1238 | ひとりぬる とこのやまかせ ふけぬとも あはてむなしき わかなもらすな | 貞資(藤原) |
1239 | あふことに かへてはなにか をしからむ なきにたつこそ うきななりけれ | 行春(二階堂時春男) |
1240 | うきみよに あらむかきりは しのふとも きえなむのちは ひとやもらさむ | 少将(邦省親王家) |
1241 | さてもよに あらはやきかむ こひしなむ のちはあはれと ひとのいふとも | 冬平 |
1242 | こひしなむ のちたにせめて あはれしれ なきをはひとの いとふものかは | 国道(津守国助男) |
1243 | しのふるも なけくもはての いかならむ わかみひとつの こころくらへは | 公守 |
1244 | なにゆゑか もらしそめけむ なかなかに さらすはひとの うきもしられし | 通顕 |
1245 | たかもらす なみたなるらむ しきたへの まくらにたにも しのふおもひを | 頼隆 |
1246 | せきかねて いかにねしよの なみたより まくらにこひの しられそめけむ | 基任 |
1247 | しるといふ まくらさへこそ くちにけれ せめてもしのふ としのへぬれは | 国助 |
1248 | ひとりぬる とこくちめやも あやむしろ をになるまてに きみをしまたむ | 読人不知 |
1249 | あやむしろ をになるまての としつきも くちぬはひとの ちきりなりけり | 後醍醐院 |
1250 | ひとりぬる わかたまくらを ひるはほし よるはぬらして いくよへぬらむ | 読人不知 |
1251 | ひとりのみ かたしくそての たまくらに よかれぬものは なみたなりけり | 高倉(安嘉門院) |
1252 | しきたへの まくらまてこそ かたからめ ことのはをたに かはささるらむ | 国冬 |
1253 | からころも かへすたのみも なみたかは まくらなかるる よはそかなしき | 隆博 |
1254 | たれにかは みはならはしと かこたまし わかたまくらの よはのあきかせ | 道洪 |
1255 | いもにこひ よさむなるみの いねかてに さもふきまさる かせのおとかな | 光俊(葉室光親男) |
1256 | いかにせむ なほこりすまの うらかせに くゆるけふりの むすほほれつつ | 後鳥羽院 |
1257 | あまひとの たくものけふり なひくとも ことうらかせを いかかたのまむ | 為氏 |
1258 | ことうらに けふりのすゑは なひくとも もしほたれつる かたをわするな | 御匣(式乾門院) |
1259 | そらにたに なひくとみえよ したむせふ おもひのけふり たちものほらは | 為遠 |
1260 | したにのみ こかれつるかな けふりたち もゆとはみえぬ おもひなれとも | 読人不知 |
1261 | つれなさを おもひきえにし むくひとて よよのけふりに またやこかれむ | 為家 |
1262 | われゆゑの けふりのすゑと しらすとも きえなむくもの あとをたにとへ | 経尹(世尊寺経朝男) |
1263 | きえはつる ゆくへともみよ おもひわひ かへぬいのちの むなしけふりを | 定為 |
1264 | いのらすよ なほなからへて あふことに かへぬいのちの つれなかれとは | 和義 |
1265 | いのちこそ けにつれなくは をしからね あふにかふへき みともおもはて | 為藤 |
1266 | あふことに かへはなこりや をしからむ つらきときこそ しぬへかりけれ | 国量 |
1267 | こひしねと するわさしるき つれなさに まさりてうきは いのちなりけり | 兼氏 |
1268 | こひしねと つらきもしらす なからへて いのちをひとに またれけるかな | 為定(御子左二条為道男) |
1269 | ひとはなほ いとひやすらむ おなしよの たのみはかりに かかるいのちを | 実衡女 |
1270 | おなしよに いきてたのみは なけれとも あるをちきりと おもふはかりそ | 俊阿 |
1271 | をしからぬ いのちはかりは なからへて いつをかきりの おもひなるらむ | 教定(飛鳥井雅経男) |
1272 | うきひとの つらさはいつを たのめとて あふまてをしむ いのちなるらむ | 光正 |
1273 | つれなさの かきりはいつを たのみにて あふにかへむと みををしむらむ | 知行(源義行男) |
1274 | おのつから あふにかふへき いのちかと うきにたへたる みをたのむかな | 行氏(祝部行言男) |
1275 | さりともと おもふにいける いのちかな こころよわくは けなましものを | 季広 |
1276 | おなしよに あらはといひし ことのはや うきにとしふる いのちなるらむ | 経方 |
1277 | こひしぬと いひてもさのみ なからへは なにをかのちの ことのはにせむ | 師賢(藤原師信男) |
1278 | あふまてと をしむいのちも いかならむ ゆくすゑしらぬ なかのちきりは | 道平 |
1279 | いつまてか ひとのつらさに なからへむ なほたまのをの おもひよわらて | 公雄 |
1280 | あふことの なきをちきりに なからへて いのちのかきり ものおもへとや | 俊光 |
1281 | こひしなむ みをはおもはす おなしよに あはぬためしの なこそをしけれ | 寂昌 |
1282 | あふとみる ゆめをたのみに こひしなは うつつにかへぬ なこそをしけれ | 為実(御子左藤原為氏男) |
1283 | なからへは おろかなるにも なりぬへし おもふとみせて こひやしなまし | 為道 |
1284 | あらさらむ のちのなまては おもはねは うきおなしよに なきみともかな | 為相 |
1285 | みしひとの そてにうかれし わかたまの やかてむなしき みとやなりなむ | 良経(九条兼実男) |
1286 | あやにくに きえぬうきなや ととまらむ あとなきくもに みはたくふとも | 後伏見院 |
1287 | かひなしや そらにしめゆふ ちきりにて みをうきくもの おもひきえなは | 能信(藤原道長男) |
1288 | あまつそら かせにまかせて ゆくくもの さてうきなから なかやたえなむ | 宗秀(藤原宗泰男) |
1289 | わかこひは ゆくへもしらす あらしふく ゆふへのくもの そらにきえつつ | 実氏 |
1290 | ふきまよふ あらしのそらの うきくもの ゆきあふへくも なきちきりかな | 為定(御子左二条為道男) |
1291 | あしひきの やまのはとほき あまくもの かかるかたなき みのちきりかな | 良基(二条道平男) |
1292 | あまくもの やへかさなれる そらなれや こひもうらみも はれぬこころは | 一条(徽安門院) |
1293 | よそにこそ やへのしらくも おもひしか おもはぬなかに はやたちにけり | 小町 |
1294 | かはくちの せきのあらかき いかなれは よるのかよひを ゆるささるらむ | 読人不知 |
1295 | こえわふる あふさかよりも おとにきく なこそはたかき せきとしらなむ | 道綱母 |
1296 | みにたえぬ おもひをすまの せきすゑて ひとにこころを なとととむらむ | 定家 |
1297 | むなしくて つきひはこえつ あふことを へたつるせきの なかのかよひち | 為道 |
1298 | こえてのち またつらくとも あふさかの せきちのとりを きくよはもかな | 尊氏 |
1299 | せきもりの こころもしらぬ あふさかを わかかよひちと おもひけるかな | 長舜 |
1300 | うちもねぬ わかかよひちの せきもりは たたうきひとの こころなりけり | 良冬 |
1301 | わすれしと おもふにそへて こひしきは こころにかなふ こころなりけり | 範永 |
1302 | わかこころ われにしたかふ ものならは つらきひとをは こひすそあらまし | 花園院 |
1303 | つらきをは しりてそいはぬ しかりとて おもひたゆへき こころならねは | 能宣 |
1304 | いとはるる みとしりなから いかなれは つらきにつけて こひしかるらむ | 実泰 |
1305 | みのほとを おもひしれとや いとふらむ うきにつけても こひしきものを | 寂蓮 |
1306 | さのみやは つらきけしきを みしまえの いりえのこもの みたれはつへき | 顕昭 |
1307 | ひにそへて おもひそしけき おほあらきの うきたのもりや わかみなるらむ | 高倉(八条院) |
1308 | こひしさの たたひとみちに なりゆけは うきにもすきて ものそかなしき | 光厳院 |
1309 | おもはぬを おもふはなにの むくひそと しらぬよにまて うきちきりかな | 俊光女 |
1310 | さきのよの むくひもかなし うきひとに われいかはかり つれなかりけむ | 高秀 |
1311 | つらきにも うきにもひとの わすられぬ こころやなにの むくひなるらむ | 兵衛督(達智門院) |
1312 | つらきをは よよのむくひに かこちても こひしきことそ なくさめもなき | 儀子内親王 |
1313 | いへはえに こかるるむねの あはてのみ おもひくらせる けふのほそぬの | 隆教 |
1314 | おのつから あひみるよはの あらはこそ つもるまくらの ちりもはらはめ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1315 | しきたへの まくらのちりは はらふとも なほひとりねの かすやつもらむ | 読人不知 |
1316 | なみたかは そてにかけつつ しからみの せかぬあふせも なとよとむらむ | 経賢 |
1317 | みつくきの あとはたえせぬ なかかはに いつまてよとむ あふせなるらむ | 実夏 |
1318 | いもせやま わからぬなかの よしのかは たかためかはる こひのふちせそ | 行念 |
1319 | たのむへき かたこそなけれ やまのゐの そこのこころを くみてしるにも | 寿成門院 |
1320 | あさからす ちきれはとても たのまめや わかこころたに かはりゆくよに | 内侍(永福門院) |
1321 | あつさゆみ ひくてあまたに なりぬとも もとのこころを わすれすもかな | 実顕 |
1322 | いつはりの なきよなりとも うきひとの こころかはらは えやはたのまむ | 基名 |
1323 | たのみつつ またこそなけけ いつはりの あるよもしらぬ こころつからに | 為道 |
1324 | あまくもの そらたのめなる いつはりを あるものとたに しるひとやなき | 宇多天皇 |
1325 | ひくかたの こころにまけて たのむかな しらぬちきりの よよのかねこと | 花園院 |
1326 | かはるへき ひとのちきりの ゆくすゑも かねてしらぬや たのみなるらむ | 藤子(従三位) |
1327 | きくたひに こりすそなほも たのまるる うきにはなれし ちきりなれとも | 後二条院 |
1328 | たのますは ちきりのすゑも つらからし なとうたかはぬ こころなりけむ | 後醍醐院 |
1329 | ゆくすゑの こころつくしに なりにけり さすかたのみを かくるちきりは | 為藤 |
1330 | いつまての いのちとてかは ゆくすゑを たのむはかりは ちきりおくらむ | 遠村 |
1331 | ことのはに なほこそまよへ いつはりと おもひもはてぬ こころよわさは | 澄基 |
1332 | のちのよと いひしはかりや いつはりを またみにしらぬ たのみなるらむ | 読人不知 |
1333 | いまこむと ちきりたにおけ かたいとの あひもあはすも たまのをにせむ | 氏光 |
1334 | むすひおく ちきりもふかし いもせやま なかなるかはの たきのしらいと | 彦良 |
1335 | おもひかは うたかたなみの きえかへり むすふちきりは ゆくへたになし | 親行(源光行男) |
1336 | むすひける ちきりそつらき ともかくも ひとをはいまは いはしろのまつ | 登蓮 |
1337 | こりすまに さのみなふきそ いまこむと いひてむなしき にはのまつかせ | 為氏 |
1338 | ききなれし こころつくしも いまはみの ゆふへをよそに まつかせそふく | 兼綱(藤原光業男) |
1339 | いまはたた またしとたにも おもははや こぬをならひの ゆふくれのそら | 為道 |
1340 | たのめても こぬよむなしく あけゆくや うきいつはりの かきりなるらむ | 冬通 |
1341 | いつはりも さのみはいかか たのむへき これやまつよの かきりなるらむ | 為子(贈従三位) |
1342 | さのみよも つれなからしと いつはりの つもるにつけて なほそまたるる | 成任 |
1343 | いつはりと おもひなからも おこたらす まつよのかすの つもりぬるかな | 雄舜 |
1344 | つらかりし ももよのかすは わすられて なほたのまるる しちのはしかき | 公守 |
1345 | いつはりの かすさへみえて かなしきは こぬよつもれる しちのはしかき | 為名 |
1346 | たのめぬを こぬよのかすと いひなして わかいつはりに またやかこたむ | 忠有 |
1347 | まちわふる わかこころより つれなしと ちきらぬひとに うきなたつらむ | 万代(後醍醐院女蔵人) |
1348 | たのめつつ こぬいつはりを かこたすは またさりけりと ひとやおもはむ | 読人不知 |
1349 | またすしも あるへきものか いつはりに ひとこそいひし ゆふへなりとも | 栄子内親王 |
1350 | とはすとも せめてたのめぬ くれならは かはるこころは しられさらまし | 聖統 |
1351 | ちきりしを いつはりとたに おもはすは せめてしはしも たのまれなまし | 為嗣 |
1352 | まつほとも なくさみなまし いつはりと おもはてたのむ ちきりなりせは | 邦省親王 |
1353 | おのつから いつはりならて くるものと おもひさたむる ゆふくれもかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
1354 | いつはりは わかみのよそに あるよとて たのむるなかの かはらすもかな | 隆淵 |
1355 | いつはりと おもはてひとの またるるは いかにたのめし ゆふへなるらむ | 藤子(従三位) |
1356 | たのめても くるよひかたき ささかにの いとのみたれて ものをこそおもへ | 実明女 |
1357 | たのむへき ならひはしらぬ ゆふくれも こころにかかる ささかにのいと | 通相 |
1358 | なほさりの ことのはまてそ たのまるる つらきをたにも したふみなれは | 清氏 |
1359 | いつはりと おもひもわかぬ こころにて ふけゆくさへそ しられさりける | 家信 |
1360 | まちわひて ふくるもつらし なかなかに こぬよはひとの ちきらすもかな | 秀経 |
1361 | いまこむと たのめぬよはも またるるは つきこそひとの ちきりなりけれ | 高広 |
1362 | とはぬまに こよひのつきも かたふきぬ なにをかことに なしてまたまし | 法守法親王 |
1363 | まきのとを あけなからにて あけぬれは たのめぬつきの かけそもりこし | 紀伊(祐子内親王家) |
1364 | さのみまた ねられぬままに つきもみし まつよふけぬと ひともこそしれ | 為重/為量 |
1365 | ありあけの つきのかたみも またしらす つれなきはうき ひとのこころに | 実氏 |
1366 | うきひとの わかおもかけと いひおかは こぬよのつきも なくさみなまし | 為相 |
1367 | たのめおく たたそのままの ことのはを うきにはなさぬ ちきりともかな | 師信 |
1368 | ききわひぬ おなしゆふへの いつはりに つらさかはらぬ いりあひのかね | 公明 |
1369 | おのつから まつらむとたに おもひいてよ いつはりなから わすれはてすは | 実前 |
1370 | みちのへの くさをふゆのに ふみからし われたちまつと いもにつけこせ | 読人不知 |
1371 | まちわひぬ みをうきくさの うきなから あふせにさそふ みつのたよりを | 盛実 |
1372 | はかなくも かすかくみつの あはれとは おもはぬなかに あふせまつらむ | 実家女 |
1373 | いせのうみの あまのたくなは わかかたに こころひかねは くるよはもなし | 道政 |
1374 | そてにこそ なみたのあめは ふるものを なとまつよひの またさはるらむ | 公宗女 |
1375 | いつはりの ことのはことに おけはこそ なみたのつゆも たまとみゆらめ | 元可 |
1376 | きぬきぬの よそのなみたに くらへはや わかまちよわる よはのたもとを | 道良女 |
1377 | さよころも かさねてかへる きみなれは うらなくきたる うれしけもなし | 相模 |
1378 | こひこひて まちみるかひも なよたけの いたつらふしに あけぬこのよは | 光厳院 |
1379 | たつたやま ゆふつけとりの なくなくそ とこはくさはの つゆときえにし | 定為 |
1380 | とりのねに さきたつそての なみたかな あかつきまたて したふわかれは | 貞俊(平時俊男) |
1381 | ききあへぬ ゆふつけとりの はつこゑに まつしたはれて ぬるるそてかな | 為藤 |
1382 | けさよりは わかいつはりに なりはてて なきなそとたに えやはいはるる | 孝行 |
1383 | こひころも へたてしなかを かこつまに いまたにとけぬ よはのしたひも | 頼之 |
1384 | したひもの とけてもとけぬ こころこそ ありしよりなほ むすほほれけれ | 進子内親王 |
1385 | したひもの またとけすはと おもふにそ むすふもつらき ちきりなりける | 為子(贈従三位) |
1386 | いかにせむ われにこころを おきつもの なひきもはてす つらきちきりを | 後光厳院 |
1387 | さもこそは みのならはしの かけならめ あふよもそてに くもるつきかな | 為定(御子左二条為道男) |
1388 | いしかはや はなたのおひの とけやらて あふせにもなほ ぬるるそてかな | 国冬 |
1389 | あひみての のちもこころを つくすこそ なほうちとけぬ ちきりなりけれ | 貞重 |
1390 | あひみても またゆくすゑの なけかれて たえぬおもひそ みにしられける | 道嗣 |
1391 | おのつから けふまちえても いかかせむ またゆくすゑの ゆふくれのそら | 為世(御子左藤原為氏男) |
1392 | としつきの つらさはゆめに なしはてて こよひをなかき うつつともかな | 能誉 |
1393 | うつつとも のちにやしらむ またなれぬ こよひはゆめと たとるこころに | 信詮 |
1394 | ひとめよく ゆめのたたちの ちきりたに うつつにまさる みのおもひかな | 実氏 |
1395 | あちきなく ひとよのゆめの ちきりゆゑ さめぬおもひの よをやつくさむ | 伏見院 |
1396 | むらとりの うきなやそらに たちにけむ たまえのあしの かりねはかりに | 但馬(藻壁門院) |
1397 | よにもれむ のちのうきなを なけくこそ あふよもたえぬ おもひなりけれ | 瓊子内親王 |
1398 | なかれての そのよかたりの なとりかは かりのあふせに みをはしつめし | 花園院 |
1399 | しつむへき みをはおもはす なみたかは なかれてのちの なこそをしけれ | 崇光院 |
1400 | おもひかは みわたにかかる うもれきの なかれてさへの なこそをしけれ | 為氏 |
1401 | したにこそ かよひしものを いかにして にほのうきすの うきなたつらむ | 尊道法親王 |
1402 | いまはたた かこつかたなき うきなかな あふにしかへて すてしみなれは | 宣子(従三位藤原) |
1403 | あやなくも もりけるそての なみたかな あふをかきりと しのひやはせし | 経久 |
1404 | よかたりを おもふもかなし あふことに みをはかへつる こよひなれとも | 公宗母 |
1405 | あかなくの けさのなこりの なくさめに しらぬひとまを またたのめぬる | 花園院 |
1406 | いかかせむ またよはふかき かねのおとに なこりつきせぬ あかつきのそら | 為兼 |
1407 | うきひとも さすかいそかぬ わかれちに こころをつくる かねのおとかな | 氏綱 |
1408 | うきひとの いそくわかれに なさしとや われさへとりの ねにかこつらむ | 崇明門院 |
1409 | いつしかと まちけるひとに ひとこゑも きかするとりの うきわかれかな | 和泉式部 |
1410 | したひもを ゆふつけとりの こゑたてて けさのわかれに われそなきぬる | 読人不知 |
1411 | とりのねの ふたたひつらき わかれかな またねのゆめの さむるなこりに | 蓮智 |
1412 | たちかへり またもとへかし わかれちの のちもよふかき ありあけのそら | 直義 |
1413 | きぬきぬの あかぬわかれに またねして ゆめのなこりを なけきそへつる | 公雄 |
1414 | ととまらぬ わかかよひちの かなしきに あかつきはかり せきもりもかな | 宗尊親王 |
1415 | こえしたた ゆくもかへるも ととまらぬ わかれのみちの あふさかのせき | 為定(御子左二条為道男) |
1416 | かへるさは もるひとそなき あふさかも こえしまてこそ せきちなりけれ | 照覚 |
1417 | こえてのち ものおもひける あふさかは せきもるかみや ゆるささるらむ | 讃岐(二条院) |
1418 | かひなしや うらしまのこか たまくしけ やかてあけゆく よはのちきりは | 為明 |
1419 | つきくさに すれるころもの つゆとおきて かへるけささへ こひしきやなそ | 基俊 |
1420 | きみかきる みかさのやまに ゐるくもの たてはわかるる こひもするかな | 人麿 |
1421 | しらまゆみ いまはるやまに ゆくくもの ゆきやわかれむ こひしきものを | 赤人 |
1422 | またいつと たのめぬつきの ありあけに みのうきくもそ みねにわかるる | 後宇多院 |
1423 | あかつきの わかれはいまた ならはねは うしともしらす ありあけのそら | 実孝 |
1424 | あけぬとは なといそくらむ わかれちの なみたにくるる きぬきぬのそら | 経通(一条内経男) |
1425 | われのみと なみたにくれて したふかな たかためつらき わかれならねは | 公宗母 |
1426 | しらせはや なこりはなほも ありあけの つきぬこころに あまるなみたを | 成光(祝部成国男) |
1427 | しるといへは たまくらならぬ まくらこそ わかれてのちの なみたなりけれ | 実教 |
1428 | おきわかれ なこりをしたふ かへるさの そてをはなれぬ ありあけのつき | 泰宗 |
1429 | おもかけの みにそふけさの なこりこそ わすれかたみの つらさなりけれ | 基嗣 |
1430 | いさやまた めくりあふへき わかれとも たのまぬなかに のこるおもかけ | 基家 |
1431 | ひとはなほ これそこのよの わかれとも しらすちきりし ほとのはかなさ | 宣政門院 |
1432 | さらにけさ むすほほれゆく をくるまの にしきのひもそ とけてかひなき | 為子(従二位) |
1433 | ならひにき あかぬわかれの あかつきも かかるなこりは なかりしものを | 実定 |
1434 | これそけに たくひはしらぬ いにしへの あかぬわかれは みをもうらみき | 小侍従(太皇太后宮) |
1435 | ふみかよふ みちもかりはの おのれのみ こひはまされる なけきをそする | 定家 |
1436 | みかりのの かりそめひとを ならしはに われそふみみし みちはくやしき | 読人不知 |
1437 | さのみやは けささへきみを うらむへき おきてきつるは ひとのとかかは | 俊恵 |
1438 | こひしさに わかみそはやく きえぬへき なにあさつゆの おきてきつらむ | 顕季 |
1439 | あたなりや けなはけぬへき きぬきぬの そてのなみたの つゆのかたみは | 行乗 |
1440 | たちかへる あしたのはらに おくつゆは そてのわかれの なみたなりけり | 公賢 |
1441 | やすらひに なほいてやらぬ まきのとを おしあけかたの そてそつゆけき | 教実 |
1442 | くものうへを いてやらさりし あかつきの つきのかけこそ わすれかたけれ | 二条院 |
1443 | あかさりし きみかなこりに ひさかたの つきをいるまて なかめつるかな | 基俊 |
1444 | ちとせまて ちきることたに あるものを けふをくらすか ひさしきやなそ | 頼宗 |
1445 | いもかあたり つきてもみむと やまとなる おほしまみねに いへゐせましを | 天智天皇 |
1446 | みよしのの やまよりおつる たきつせの はやくなりせは まちもしてまし | 元良親王 |
1447 | おきつかせ ふけひのうらに たつなみの なこりにさへや われはしつまむ | 宗于 |
1448 | かせふけは さこそはたゆれ たゆれとも またかきつけつ ささかにのいと | 顕輔 |
1449 | いくそたひ ひとのときけむ したひもを まれにむすひて あはれとそおもふ | 頼忠 |
1450 | つらからぬ みのならはしと なりにけり とすれはつもる なかのとしつき | 為明 |
1451 | あらはれは いかにせむとか ひとしれぬ わかかよひちの かすつもるらむ | 後二条院 |
1452 | あふことの まれなるいろや あらはれむ もりいててそむる そてのなみたに | 定家 |
1453 | さためなき ひとのちきりの うきぬなは くるにつけても そてはぬれつつ | 深守法親王 |
1454 | たえねたた かけひのみつの おとつれよ なかなかそては ぬるるものゆゑ | 全仁親王 |
1455 | つれなくて またみるかけの かなしきは おなしわかれの ありあけのつき | 通顕 |
1456 | たちかへり つらきへたてに まよふかな こえしやいつこ あふさかのせき | 媋子内親王 |
1457 | あふさかは へたてぬせきと みしものを いまさらなにの ひとめよくらむ | 顕実母 |
1458 | わすれしと いまさらきくも つらきかな もとはいかなる こころなりけむ | 国冬 |
1459 | それとたに わすれやすらむ いまさらに かよふこころは ゆめにみゆとも | 定家 |
1460 | よにしらぬ こころひとつに ありしよの ゆめのなこりを たれにとはまし | 公顕 |
1461 | たちかへり うきをうつつと おもふにも なほありしよの ゆめそわすれぬ | 為親 |
1462 | あふことは ゆめよりほかの みちもなし いかにみしよか うつつなりけむ | 雅有 |
1463 | わすれすと いひしはゆめに なりはてて つらきうつつそ あるかひもなき | 為教 |
1464 | うつつとも わかぬそのよの おもかけを なほこひわたる ゆめのうきはし | 通相 |
1465 | おもかけは みしをかきりの とたえにて あふよむなしき ゆめのうきはし | 伏見院 |
1466 | ひとよみし ゆめのうきはし そのままに あたにやかへる こひちなるらむ | 公清 |
1467 | とたえとも いはむかたなき ちきりかな ひとよをかけし ゆめのうきはし | 長秀 |
1468 | しきたへの まくらなかるる なみたかは みをはやなから みるゆめそなき | 有長 |
1469 | うつつとて なにおもかけの のこるらむ みしよはゆめの ちきりなりしを | 景綱 |
1470 | われなから なれしやゆめと たとるよの ねさめにうかふ おもかけもうし | 政範 |
1471 | あふまてと いひしいのちの なからへて かはるつらさを またやなけかむ | 良信 |
1472 | きぬきぬの そてのわかれに いまこむと いひしちきりや いのちなるらむ | 泰光(安倍有弘男) |
1473 | しらさりき いまはといひし あかつきを やかてまことの ことのはそとは | 隆信 |
1474 | かねてより ありはつましき ちきりそと おもひなからも なれしくやしさ | 宣政門院 |
1475 | かねてより おもひしことの かはらぬは ほとなくひとの つらきなりけり | 小式部内侍 |
1476 | おなしよに いまはなきみと しらせはや いとふこころも くるしかるらむ | 為子(贈従三位) |
1477 | あすかかは わたらぬなかと なりにけり たのめしせせの かはるつらさに | 季雄 |
1478 | たちかへり よとむをしらて おもひかは わたりそめぬと なにたのみけむ | 隆長 |
1479 | みしままに めくりもあはて しまつたふ あしはやをふね とほさかりつつ | 為定(御子左二条為道男) |
1480 | みつしほの なみのしたくさ いやましに みらくそひとの とほさかりゆく | 為家 |
1481 | うとくなる ちきりをなかの へたてにて かよひしみちも とほさかりつつ | 孝朝 |
1482 | たのむそよ あすはのみやに さすしはの しはしかほとも みねはこひしき | 定為 |
1483 | たのめとや くるをもいまは またぬみの ころもにかかる ささかにのいと | 尊胤法親王 |
1484 | いかてかく たえけるなかそ たまかつら なかきよをこそ かけしちきりに | 公宗母 |
1485 | たえすこそ こころにかかれ たまかつら はふきあまたの ひとのつらさは | 覚助法親王 |
1486 | ちきりのみ あさきのはしら くちはてぬ うかりしふしや かきりなりけむ | 伊俊 |
1487 | おもひいてて うきふしなから しのふかな よなよなわけし みちのささはら | 義詮 |
1488 | はるかすみ のへにたつらむと おもふにも おほつかなさを へたてつるかな | 三条院 |
1489 | いつしかと まつにおとせぬ うくひすの こころのうちの ねたくもあるかな | 村上天皇 |
1490 | つれつれと おもひやりつつ うくひすの ほのかにききし こゑそこひしき | 読人不知 |
1491 | こひしくは みやこのまつに うくひすの なきてそきなむ はなはちるとも | 小馬命婦(藤原棟町女) |
1492 | うめのはな かをしるへにて ひとしれす おもふことをも かすめつるかな | 済時 |
1493 | しるへする はなのちりなは ひとしれす とふたよりもや たえむとすらむ | 読人不知 |
1494 | はるさめの よにふるそらも おもほえす くもゐなからに ひとこふるみは | 読人不知 |
1495 | かすみしく のをなつかしみ はるこまの あるともひとの みゆるころかな | 小町 |
1496 | なつころも かふるにつけて つらきかな うすきこころは かたみとおもへは | 花山院 |
1497 | うのはなの かきねかくれの ほとときす わかしのひねと いつれほとへぬ | 実方 |
1498 | ひとしれぬ かきねかくれの ほとときす ことかたらひて なかぬよそなき | 読人不知 |
1499 | いまこむと たのめしひとは つれなくて よそにかたらふ ほとときすかな | 為教 |
1500 | いとまなみ きまさぬきみに ほとときす われかくこふと ゆきてつけこせ | 坂上郎女 |
1501 | さみたれに みたれてものを おもふには なつのよをさへ あかしかねつる | 躬恒 |
1502 | うらみすよ なつのにしける くすかつら したのみたれは くるしけれとも | 成良 |
1503 | なつやまの しけみかしたの おもひくさ つゆしらさりつ こころかくとは | 小大進(花園左大臣家) |
1504 | ひとしれぬ みをうつせみの こかくれて しのへはそてに あまるつゆかな | 順徳院 |
1505 | あさちふの をののしのはら つゆなから たかあきかせに みたれそめけむ | 道助法親王 |
1506 | いとはるる みをあきかせの ふきしより くさはのつゆそ おくかたもなき | 永福門院 |
1507 | かせさやく をささかうへの つゆよりも こぬよのとこに われそけぬへき | 進子内親王 |
1508 | こころをは つれなきひとに とめおかむ みこそくさはの つゆときゆとも | 実定 |
1509 | うちとけて きみはねぬらむ われはしも つゆとおきゐて おもひあかしつ | 貞文 |
1510 | ことのはの かれそめしより わすらるる みをしらつゆの きえかへりつつ | 常顕 |
1511 | ゆふされは をきふきむすふ かせのおとに ふりにしこひを おもひいてつつ | 嘉言 |
1512 | こころのみ くもゐのほとも かよひつつ こひこそわたれ かささきのはし | 伊勢 |
1513 | ひこほしの かさしのたまの つまこひに みたれにけらし このかはのせに | 読人不知 |
1514 | あまのかは ふみみることの はるけきは わたらぬせとも なるにやあるらむ | 斎宮女御 |
1515 | あまのかは かはへのきりの なかわけて ほのかにみえし つきのこひしさ | 兼盛 |
1516 | あすかかは かはよとさらす たつきりの おもひすくへき こひならなくに | 赤人 |
1517 | たのますよ またあふことも かたのなる あまのかはらの とほきわたりは | 新少将(芬陀利花院前関白内大臣家) |
1518 | さためなく まねきつるかな はなすすき ほにいててむすふ ひともこそあれ | 定頼 |
1519 | おしなへて なひかぬのへの はなすすき ほにはいつとも たれかむすはむ | 兵衛内侍(源隆俊女) |
1520 | しのひあへす ほのめかすたに あるものを やかてもまねく はなすすきかな | 成仲 |
1521 | しのひねの なみたやとさむ はなすすき あきおくつゆは ひともとかめし | 隆氏 |
1522 | たのましな あきのさかりの はなすすき おもふこころは かせによすとも | 為家 |
1523 | こぬひとの つらさをそへて こよひしも よさむにふきぬ ねやのあきかせ | 行家(藤原知家男) |
1524 | おもひあまり とははやよはの きりきりす たかまくらにも つゆやかかると | 隆親(藤原隆衡男) |
1525 | ふたはより おもひしものを をみなへし ひとのかきほに おひにけるかな | 敦忠 |
1526 | おもかけも かよへはこそは かよふらめ うきひとさそへ あきのよのつき | 道意(西園寺実兼男) |
1527 | あきはなほ くすのうらかせ うらみても とはすかれにし ひとそこひしき | 良経(九条兼実男) |
1528 | つらしとは うつろふをたに みしものを かれはてぬるか にはのしらきく | 隆博 |
1529 | たのまれぬ こころのいろと うらみこし ことのはにさへ あきかせそふく | 良兼 |
1530 | あふことは かたやまかけの まきのはの つれなきいろに しくれそめつつ | 実兼 |
1531 | いかにして そてのなみたの はつしほに そむるこころの ふかさみえまし | 定為 |
1532 | またなれぬ そてのなみたの はつしくれ なにゆゑとたに とふひともなし | 雅孝 |
1533 | こからしの かせふきたたは いととしく しくるるひとも ありとしらなむ | 具平親王 |
1534 | かみなつき しくれとのみや おもふらむ あまつそらにて わふるなみたを | 高明 |
1535 | いかにせむ しけきひとめを もるやまの したはのこらす しくれゆくころ | 俊成女 |
1536 | いもせやま へたつるくもの ゆふしくれ たかうきなかの なみたなるらむ | 基世 |
1537 | しられしな ひとのこころの うきくもは わかそてはれぬ しくれなりとも | 尊氏 |
1538 | くれなゐに かたしくそては なりにけり なみたやよはの しくれなるらむ | 別当(皇嘉門院) |
1539 | みつくきの をかのくさねの かりまくら しもこそむすへ いもとねぬよは | 有房(六条通有男) |
1540 | しもむすふ もすのくさくき たつねきて かれゆくひとの ちきりしれとや | 実教 |
1541 | かひなしや をしへしままの ことのはも いまはかれのの もすのくさくき | 邦省親王 |
1542 | からころも たかしたひもを ゆふはかは とけてねぬよの こほりしくらむ | 道家 |
1543 | みつとりの たつなはかりを ちきりにて つかはぬをしの ねこそなかるれ | 後醍醐院 |
1544 | いひいてぬ おもひはつらし にほとりの すむいけみつの そこにふかめて | 実夏 |
1545 | かくてなほ よにすみかまの はてもうし けたぬおもひの けふりくらへは | 甲斐(安嘉門院) |
1546 | とふひとの あとみしことは むかしにて おなしよにふる ゆきもうらめし | 為子(贈従三位) |
1547 | かきたえて ひともこすゑの なけきこそ はてはあはての もりとなりけれ | 紫式部 |
1548 | ことのねも なけきくははる ちきりとて をたえのはしの なかもたえにき | 定家 |
1549 | ききわたる そのなもつらし あふことの なとてをたえの はしとなるらむ | 為氏 |
1550 | あふことは やかてをたえの はしはしら うきなをたつる はてそかなしき | 資宣 |
1551 | わたさはと たのみしまてを ちきりにて みもなかそらに くめのいははし | 為重/為量 |
1552 | いまこむと いひしなからの はしはしら またもかよはぬ なのみふりつつ | 為家 |
1553 | むくひあらは たかちきりにか なかつきの ありあけのつきを ひとりみるらむ | 具行 |
1554 | おもはすよ まためくりあふ つきをみて かはるちきりを かこつへしとは | 後醍醐院 |
1555 | おもひわひ いくよのそらに かこつらむ ちきらぬつきの わすれかたみを | 忠経 |
1556 | いととなと こひしかるらむ つきをみて うきをわするる ひともあるよに | 実教 |
1557 | ちきりしは むかしかたりの としつきに ものわすれせて こひしかるらむ | 読人不知 |
1558 | なほさりの ことのはまても わすれぬは したふこころの あまりなりけり | 公茂 |
1559 | わすれくさ おふなるのへの かれしより のちをたのまむ ことのはもなし | 心阿 |
1560 | すみよしの きしにはあらて わすれくさ いつよりひとの うきにおふらむ | 読人不知 |
1561 | かれねたた よしすみよしの きしもせぬ つらさはかりの くさのなもうし | 為相 |
1562 | つれもなき ひとのこころの たねしあれは うゑぬにおふる こひわすれくさ | 後二条院 |
1563 | わすれくさ たれたねまきて しけるらむ ひとをしのふの おなしのきはに | 内経 |
1564 | うきひとと おもふたにこそ こひしけれ うらやましくも わすれぬるかな | 三河(法性寺入道前関白家) |
1565 | われはかり ものはなけかし うきひとに わすらるるみも わすれましかは | 師教(九条忠教男) |
1566 | わすられて よになからふる つらさこそ わかためならぬ いのちなりけれ | 読人不知 |
1567 | かひなしや あまりあたなる ちきりにて わすらるるなの たたぬはかりは | 為実(御子左藤原為氏男) |
1568 | ひとりねの まくらにつもる ちりよりそ わすらるるなも よそにたつらむ | 和義 |
1569 | いたつらに はらはぬとこの ちりよりや やかてうらみも つもりはつらむ | 雲雅 |
1570 | みるもうし ありしよとこの すかまくら なかくやひとに おきわかれけむ | 光俊(葉室光親男) |
1571 | しるしらす なにかはいはむ まくらたに わするはかりに ふるきちきりを | 為定(御子左二条為道男) |
1572 | いかにうき よよのちきりの のこりきて いまもつらさに むすほほるらむ | 為道 |
1573 | みをさらぬ おもひやなほも つらからむ たえてよそなる ひとのちきりに | 読人不知 |
1574 | あれにけり こころもしらぬ せきすゑて おやのいさめし ひとのかよひち | 下野(後鳥羽院) |
1575 | うつつとも おもはてこえし あふさかは かへらぬゆめの せきちなりけり | 祖月 |
1576 | あふことは いかにねしよを かきりにて ゆめにもひとの かよひたえけむ | 権大納言典侍(後醍醐院) |
1577 | はかなくそ ありしわかれの あかつきも これをかきりと おもはさりける | 為兼 |
1578 | いまはよに なしともきかは おもひしれ これをかきりに うらみけりとは | 頓阿 |
1579 | ささかにの くもてにさこそ とはすとも かくかきたえむ ものとやはみし | 大弐(二条太皇大后宮) |
1580 | つらしとも うらみしまての ゆふくれは おもひよわらぬ むかしなりけり | 伏見院 |
1581 | よしさらは おもひいてしと おもへとも なみたはたえぬ そてのうへかな | 為方 |
1582 | ありしよの なこりはかりも かなしきに またあひみむと おもはすもかな | 為子(贈従三位) |
1583 | つらかりし たたそのままの ちきりにて あはすはみをも うらみさらまし | 藤茂 |
1584 | あひみしを はかなきゆめに なしはてて またしのはれぬ こころともかな | 実夏 |
1585 | かくはかり うらむとたにも しらせぬや しのふるなかの つらきなるらむ | 義詮 |
1586 | ことのはも およはさりける うらみとは いはぬにつけて おもひしるらむ | 則祐 |
1587 | はしたかの とかへるやまの くすのはの ひとかたならす うらみつるかな | 家隆 |
1588 | をちこちの かせのすゑなる くすかつら いつかたよりか おもひたえけむ | 隆博 |
1589 | かれはつる まくすかはらの あきかせを うらむとはかり おもひけるかな | 公守 |
1590 | つらしとて うらみしなかの ことのはも かれぬるのちは いふかひそなき | 素暹 |
1591 | しられしな かはるちきりの すゑのまつ そてになみこす うらみありとは | 行元 |
1592 | いまはまた いつはりにたに たのめぬや かはるこころの まことなるらむ | 行氏(平胤行男) |
1593 | おのつから おもひやしると うらみしは なほみをたのむ こころなりけり | 経深 |
1594 | いはぬより やかてこころに うかふこそ うらみなれたる なみたなりけれ | 成国 |
1595 | としふれは なみたはかりそ いろかはる つらさはおなし こころなれとも | 実忠 |
1596 | うつりゆく ひとのつらさの ますかかみ かたみはかりの かけものこらす | 後光厳院 |
1597 | おもかけの なにのこるらむ ますかかみ うつれはかはる ひとのちきりに | 義詮 |
1598 | おもかけの うかふもかなし もろともに なかめしよはの つきそとおもへは | 春日(進子内親王家) |
1599 | わすらるる わかおもかけは そはすとも なれこしままの つきはみるらむ | 広房(大江広茂男) |
1600 | おもかけは かはらぬなかの ありあけに いまはたなにか つれなかるらむ | 頼康 |
1601 | おもかけも わするはかりの としつきを うきみにそへて なけかるるかな | 瑒子内親王 |
1602 | わすれしよ われたにひとの おもかけを みにそへてこそ かたみともせめ | 実俊母 |
1603 | おもかけを ゑにかきとめて みにそへむ まことすくなき かたみなりとも | 公雄 |
1604 | みしひとは おもかけちかき おなしよに むかしかたりの ゆめそはかなき | 光厳院 |
1605 | としへても うきおもかけの わすれぬや こころにのこる うらみなるらむ | 惟継 |
1606 | わすれかね なほしたはるる おもかけは うきとしつきも へたてさりけり | 常元 |
1607 | ちきりしは みないつはりの むかしにて うきをかたみと のこるおもかけ | 宗氏 |
1608 | われはかり さてもいかにと したへとも おもかけなから とほさかりつつ | 実泰 |
1609 | あかさりし おもかけはかり うつしても ちきりはさてや やまのゐのみつ | 左京大夫(永陽門院) |
1610 | あかさりし ちきりはさてや やまのゐの むすふともなく かけはなれつつ | 光厳院 |
1611 | うきなかは あささはをのの かきつはた うつろふままに へたてはてつつ | 実遠(藤原公冬男) |
1612 | ちきりさへ あささはみつの くさかくれ たえゆくなかに ぬるるそてかな | 円伊 |
1613 | むかしみし のなかのみつを たつねきて さらにそてをも ぬらしつるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
1614 | そのままに またかけもみぬ わすれみつ そてにはふかき なかれとそなる | 為相 |
1615 | つきひのみ なかれもゆくか なみたかは よとみはてたる なかのあふせに | 為遠 |
1616 | なみたかは たえぬおもひの ふちはあれと あふせはかりの なとかはるらむ | 能誉 |
1617 | そのままに あふせはたえて なとりかは うきなはかりそ あらはれにける | 経定女 |
1618 | あらはれて くやしきものは なとりかは たえけるなかの せせのうもれき | 為子(贈従三位) |
1619 | うかりける さののなかかは さのみなと あふせたえても こひわたるらむ | 為兼 |
1620 | いまたにも こころかよはぬ なかかはの すゑにあふせを いかかたのまむ | 雅久 |
1621 | みなせかは あふせはよそに ありてゆく なかれのすゑを いかかたのまむ | 小督(瓊子内親王家) |
1622 | わかかたの よるへはたえて あらいその ほかゆくふねに うらかせそふく | 良基(二条道平男) |
1623 | かはふねの はやせにむかふ つなよわみ こころはひけと たえぬへきかな | 時光 |
1624 | おなしえの あしわけをふね おしかへし さのみはいかか うきにこかれむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1625 | くちのこる あしまのをふね いつまてか さはるにかこつ ちきりなりけむ | 頓阿 |
1626 | いかにせむ あこきかうらの うらみても たひかさなれは かはるちきりを | 冬平 |
1627 | よそになる わかみをうらの おきつなみ しはしもそてに かけぬまそなき | 為成(冷泉為相男) |
1628 | うらみむと いふひとあらは あまのすむ さとのしるへも なしとこたへよ | 右京大夫(正親町院) |
1629 | をふのうらの うらみてのみそ よをはふる あふことなしに なれるみなれは | 国基 |
1630 | いせのうみの あさみつしほの つらけれは かつきわひぬと あまもいふなり | 左近(三条院女蔵人) |
1631 | いまそしる なひくけふりも しほたるる みにはよそなる ならひありとは | 師教(九条忠教男) |
1632 | なひきこし けふりはよそに なりはてて わかみのかたに うらかせそふく | 道教 |
1633 | うらみても なほこそかへせ さよころも こひしきかたの こころよわさに | 顕実母 |
1634 | すまのあまの しほやきころも それよりも うらむるそては なほそかわかぬ | 後伏見院 |
1635 | ひとこころ なににたとへて うらみまし きのふにかはる けふのつらさを | 後伏見院 |
1636 | かつはこひ かつはうらみて みひとつに ちたひこころの かはるころかな | 実泰 |
1637 | まれにても あひみはとこそ おもひしに たえぬはひとの うらみなりけり | 雅有 |
1638 | ひたすらに うらみてもまた いかならむ つらきかきりの なからましかは | 為明 |
1639 | よしさらは つらきひとゆゑ くたしてむ みをうらみても ぬれぬそてかは | 寂蓮 |
1640 | なにはかた たつそなくめる これやこの たみののしまの わたりなるらむ | 師頼 |
1641 | しろたへの つるのけころも きてみれは たみののしまに なみそかけける | 実雄 |
1642 | うなはらや おきこきくれは ゆふしほの ひかたのうらに たつわたるみゆ | 伏見院 |
1643 | やまちかみ おりゐるくもと まなつるの たてるかはへを ひとやみるらむ | 是則 |
1644 | かみさふる いはねこりしき みよしのの みつわけやまを みれはかなしも | 読人不知 |
1645 | みよしのは はなともいはし あさほらけ まきたつそまの よこくものそら | 忠良 |
1646 | くもはなほ ふもとにみえて たちのほる けふりそたかき ふしのしはやま | 有忠 |
1647 | つのくにの むこのおくなる ありまやま ありともみえす くもそたなひく | 基氏(藤原基家男) |
1648 | おくやまの いはねのまつの かけよりや こけのみとりも ときはなるらむ | 肥後(京極前関白家) |
1649 | あらいその はままつかえに ふくかせは よせくるなみの おともわかれす | 忠季(藤原公蔭男) |
1650 | たちかへり まつもかひあれ すみよしの きしかたしたふ あとのしらなみ | 秀経 |
1651 | きよみかた せきよりほかも いほはらの まつこそうらの へたてなりけれ | 有光 |
1652 | いくよかは つもれるとしも おほともの みつのはままつ ふりまさるらむ | 邦省親王 |
1653 | ともすれは しほみつはまの あしのねの しつみてからく おいぬへきかな | 俊成(藤原俊忠男) |
1654 | ささらなみ ひまなくきしを あらふなり なきさきよくは きてもみよとや | 黒主 |
1655 | ゆきてこそ みるへかりけれ くれかかる おきつなみまの うらのはつしま | 国冬 |
1656 | いりひさす しほせもとほし わたつうみや とよはたくもの すゑのしらなみ | 経宣 |
1657 | たましまや ゆふなみたかく なりにけり このかはかみに あらしふくらし | 雲雅 |
1658 | ねをたえて みつにうきたる うきくさは いけのふかさを たのむなりけり | 伊勢 |
1659 | もろひとに たまものすらし たつはるの はしめのけふの とよのあかりは | 後醍醐院 |
1660 | をさまれる みよのしるしも おほきみの すすめてまうす はるはきにけり | 道平 |
1661 | のとかにも なりにけるかな きみかよに あはすはいかて はるをしらまし | 為藤 |
1662 | やまのはも かすめはとほし みひとつに へたつるはると なにおもひけむ | 実教 |
1663 | いまもなほ わかたつそまの あさかすみ よにおほふへき そてかとそみる | 尊円法親王 |
1664 | いさけふは ねのひのまつを ひきつれて おいきのちよを ともにいのらむ | 堀河(待賢門院) |
1665 | いのるとも おいきのまつは くちはてて いかてかちよを すくへかるらむ | 顕仲(源顕房男) |
1666 | きくことを いとひてもまた なれにけり むそちのはるの うくひすのこゑ | 邦祐 |
1667 | いとせめて なほものうきは はるをへて おいそのもりの うくひすのこゑ | 為家 |
1668 | ときしあれは たによりいつる うくひすに よをたすくへき ひとをとははや | 後宇多院 |
1669 | しもかれの くさはみなから もえにけり はるのひかりの やふしわかねは | 師継 |
1670 | はるさめの ふるののゆきは きえぬらむ ぬるともけふや わかなつままし | 実性 |
1671 | やまのはの ありあけのつきも ひとつにて かすみのうへに のこるしらゆき | 民部卿典侍(後堀河院) |
1672 | ねやちかき のきはのうめの はなのかに ゆめちをかけて にほふはるかせ | 慈順 |
1673 | たかさとの かきねもおなし にほひにて ぬしさたまらぬ うめのしたかせ | 宗秀(藤原宗泰男) |
1674 | くちのこる おいきのやなき よよをへて きみにつかふる やとそふりぬる | 雅孝 |
1675 | はるさめに あれたるやとの ひましけみ とかむはかりの そてそぬれける | 重之女 |
1676 | としをふる もりのかしはき このあめに もれぬめくみの はるをしらはや | 為氏 |
1677 | さりともと たのみをかけよ はるさめに もれぬめくみは きみにまかせて | 兼平 |
1678 | いのるそよ おとろのみちの はるさめに ふりにしよよの おなしめくみを | 為道 |
1679 | ひはりなく のへのおとろの みちわけて あかるをともと きくはるもかな | 為藤 |
1680 | やきすてし けふりのすゑの たちかへり はるもえいつる のへのさわらひ | 亀山院 |
1681 | わかそてに おいのなみたの かからすは かすむはかりの つきはみてまし | 雅孝 |
1682 | いまはみに くもりはてぬと かなしきは おいのなみたの はるのよのつき | 長舜 |
1683 | はれかたき みのおもひこそ かなしけれ かすめるつきも あきはまつらむ | 宗尊親王 |
1684 | めくりあふ はるやむかしの もとのみと つきたにしらし すみそめのそて | 向阿 |
1685 | おいぬれは つきやあらぬと おもふまて もとみしよりも かすむかけかな | 成国 |
1686 | おもひいてて つきやあらぬと なかむれは なみたそかすむ ふるさとのそら | 家経(一条実経男) |
1687 | かすむよの つきをつらしと おもふこそ はるしらぬみの こころなりけれ | 隆朝 |
1688 | かりかへる みねのかすみの はれすのみ うらみつきせぬ はるのよのつき | 後鳥羽院 |
1689 | さひしさは はるもかはらぬ やまさとに ひとめをそへて はなそまたるる | 公宗(西園寺実衡男) |
1690 | をりしもあれ こころつくしに またれすは ことしはかりの はなはみてまし | 藤子(従三位) |
1691 | さけはちる あたしこころの はなをしも まつにいのちの かかりぬるかな | 仲実 |
1692 | みこそかく はるのめくみの よそならめ はなさへときを しらぬやとかな | 宗秀(藤原宗泰男) |
1693 | やまふかみ はなみかてらに たつねはや うきよのかるる すみかありやと | 祥子内親王 |
1694 | たつねいる みちはまことの みちならて はなにそみつる みよしののおく | 維貞 |
1695 | はなにのみ なほわけいれは よしのやま またあとうつむ みねのしらくも | 景綱 |
1696 | このもとを たつねきてたに やまさくら はなとはみえぬ みねのしらくも | 則祐 |
1697 | みむろやま はなさきぬらし さかきはの はるさすえたに かかるしらゆふ | 行親 |
1698 | ひさかたの くもゐのとかに いつるひの ひかりににほふ やまさくらかな | 兼好 |
1699 | いつくより いかにうゑける たねならむ うきよにあまる はなのいろかな | 内侍(永福門院) |
1700 | よのうさも みてそわするる やまさくら わかためとてや はなはさくらむ | 慈勝 |
1701 | かせさそふ かけのいほりの やまさくら なほうきときそ はなにしらるる | 定為 |
1702 | いそかれぬ はなのころこそ あはれなれ なけきのもとに はるはへぬれと | 土御門院 |
1703 | たちなれて おもへはこひし ここのへの みゆきのにはの はなのしたかけ | 忠定(藤原兼宗男) |
1704 | かりそめの みゆきなからも このやとの はなにくもゐの なをやのこさむ | 成国 |
1705 | くちのこる おいきのはなを みるにこそ わかななそちの はるもしらるれ | 静伊 |
1706 | としをふる わかなみたにそ おもひしる はなもおいきや もろくちるらむ | 宰相典侍(後宇多院) |
1707 | まてしはし おいきのはなに こととはむ へにけむとしは たれかまさると | 道因 |
1708 | たをりても よしやかささし さくらはな むそちのおいの かくれなきみは | 実重(三条公親男) |
1709 | はることの はなにこころを うつしきて はてはおいぬる みをなけくかな | 実聡 |
1710 | はなにたに あはてやとこそ おもひしか いまはいのちに まかせてをみむ | 赤染衛門 |
1711 | ととめえぬ よはひをはなに たくへても ことしやかきり はるのやまかせ | 覚助法親王 |
1712 | ちれはとて はなはなけきの いろもなし わかためにうき はるのやまかせ | 夢窓 |
1713 | いととまた はなのあたなや ふりなまし ちらぬさくらの いろをみせすは | 為継 |
1714 | よはにみし ひとをもたれと しらせねは のきはのはなを けさそうらむる | 為世(御子左藤原為氏男) |
1715 | しられしと おもひてとひし よはなれは のきはのはなの とかやなからむ | 尊氏 |
1716 | うかりける はなのあたなる なをたてて ちるはならひと かせやふくらむ | 房観 |
1717 | やまさとは とはれしにはも あとたえて ちりしくはなに はるかせそふく | 頓阿 |
1718 | ちれはこそ はなをあらしも さそふらめ おもへはつらき やまさくらかな | 長有 |
1719 | さほひめの はるのかさしの はなかつら いまはたゆとや かせにちるらむ | 保能 |
1720 | いりあひの かねにあらしの おとそへて けふをかきりと はなやちるらむ | 泰宗 |
1721 | よしのやま ちりぬるはなの かたみさへ あとなきくもに はるかせそふく | 頼重 |
1722 | ちるはなの あとにはくもも のこるなり はるのわかれそ かたみたになき | 宗氏 |
1723 | きえかての はなのゆきふむ あさとてに くもはきのふの はるのよのゆめ | 為成(冷泉為相男) |
1724 | あらをたに まかするみつも ゆたかなる たみのこころは にこらすもかな | 惟継 |
1725 | せきいれて いくかになりぬ をやまたの なはしろみつは みくさゐにけり | 敦有 |
1726 | みのよそに おもひなせとも ゆくはるの なこりはなほそ ものわすれせぬ | 為家 |
1727 | かすならぬ みやまかくれの おそさくら はなたにさかは ときすきぬとも | 高宗 |
1728 | つれなくて さてしもやまし ほとときす いまこそきかぬ はつねなりとも | 泰宗 |
1729 | ほとときす まつもかきりの ありあけに しのひもはてぬ はつねなくなり | 時俊 |
1730 | まちわふる こころをしらて ほとときす ひとのためにや はつねなくらむ | 遠衡 |
1731 | さらてたに いそくやまちの ゆくすゑに なきぬとつくる ほとときすかな | 行朝 |
1732 | まちわひて かへるやまちの ひとこゑに またたつねいる ほとときすかな | 能喜 |
1733 | うきよには われすみわひぬ ほとときす いてけむやまの おくををしへよ | 公蔭 |
1734 | ほとときす やまふかかりし なこりとや いててもくもの ほかになくらむ | 行尹 |
1735 | そらにのみ なほおとつれて ほとときす わかゐるやまの くもになくなり | 行親 |
1736 | わかことく ものやおもふと とふへきに なきてすきぬる ほとときすかな | 隆弁 |
1737 | ほとときす かたらひすてて うたてなと おいのねさめの よをのこすらむ | 秀房 |
1738 | おなしえに なきつつをりし ほとときす こゑはかはらぬ ものとしらすや | 敦道親王 |
1739 | よよかけて なほこそたのめ あやめくさ またひくひとの みにしなけれは | 為定(御子左二条為道男) |
1740 | おもふかひ なきみこもりの あやめくさ ひくとはなにの いろにみゆらむ | 清氏 |
1741 | たれになほ しのふのやまの ほとときす こころのおくの ことかたるらむ | 頼遠 |
1742 | ほとときす してのやまちの くらきより いかてさつきの やみにきつらむ | 忠通 |
1743 | ほとときす なくねもしけき なつやまの このまのつきそ あきにまされる | 行能 |
1744 | なつくさの しけみをすてて のかれいる やまちのこけも つゆけかりけり | 光厳院 |
1745 | ここのへの むかしかたりも かなしきに にほひなそへそ のきのたちはな | 宣政門院 |
1746 | うふねさす よかはのたなは うちはへて ひとすちならす ものそかなしき | 俊頼(源経信男) |
1747 | きみかよに こころのやみの はれゆくや まとのほたるの ひかりなるらむ | 光吉 |
1748 | いまもなほ ひかりなきみの くやしきは むかしあつめぬ ほたるなりけり | 実教 |
1749 | いとひても なほいけるよは うつせみの みをかへなから ねこそなかるれ | 行顕 |
1750 | たにかせに くもこそのほれ しなのちや きそのみさかの ゆふたちのそら | 千恵 |
1751 | おとつるる をきのはよりも ふくかせの すすしきにこそ あきはしらるれ | 経季 |
1752 | そてのうへに けさしもつゆの おきそふは こけのころもに あきやたつらむ | 実兼 |
1753 | いかにして あやなくそての しをるらむ みもせぬいろの あきのはつかせ | 経継 |
1754 | ききおきし ことのはことに わすれぬは にはのをしへの あきのしらつゆ | 為世(御子左藤原為氏男) |
1755 | ききあかす なみたのつゆも ととまらす おいのねさめの をきのうはかせ | 家隆 |
1756 | ふかくさの さとはむかしの あさちはら おきそふつゆに うつらなくなり | 守誉 |
1757 | みにしめし あきのゆふへの なかめより ものおもふわれと なりにけるかな | 土御門院 |
1758 | おもふこと むなしきそらの あきかせに ことしはいたく ぬるるそてかな | 宗尊親王 |
1759 | なにゆゑに さのみこころを くたくそと おもふもかなし あきのゆふくれ | 秀長(藤原季弘男) |
1760 | さひしさは たかよそめにも しりぬらむ わかゐるやまの あきのゆふくれ | 為相 |
1761 | なかめわひぬ うきはならひと なくさむる ひとたにあれな あきのゆふくれ | 基任 |
1762 | はなすすき まねくかたには ととまらて なほわけまよふ のへのゆふくれ | 長舜 |
1763 | かれはてむ のちこそうけれ はなすすき まねくにたにも とふひとはなし | 実任 |
1764 | かせかよふ にはのをすすき つゆちりて やとりかねたる つきのかけかな | 為連 |
1765 | みをかくす むくらのやとは あるしから おもひありとや むしもなくらむ | 基任 |
1766 | われはかり なみたはあらし きりきりす おなしねさめに ねをはなくとも | 為氏 |
1767 | きりきりす すきにしあきや しのふらむ ふるきまくらの したになくなり | 土御門院 |
1768 | みをあきの つもれはおいと しりなから なほやまのはの つきそまたるる | 静仁法親王 |
1769 | いたつらに わかみのかけそ ふりまさる つかへしあきを つきにこふとて | 為氏 |
1770 | おのつから ひともとひこぬ ふるさとは つきもわかみも すむかひそなき | 永福門院 |
1771 | このよには またなくさめも なきものを われをはしるや あきのよのつき | 俊成(藤原俊忠男) |
1772 | いかにせむ なくさめかぬる あきのよの つきにはなれぬ おいのなみたを | 教定(飛鳥井雅経男) |
1773 | いたつらに あきのよなよな つきみしも なすことなくて みそおいにける | 為定(御子左二条為道男) |
1774 | おいかよは みにそふあきの なみたとも そてによかれぬ つきやみるらむ | 行氏(平胤行男) |
1775 | いろまさる ことしのあきの すみそめに つきもむかしの そてとやはみる | 実超 |
1776 | よよのあとを わすれすてらせ みつくきの をかのあさちの あきのよのつき | 行忠(藤原) |
1777 | わかのうらに またこのあきも なをかけて むよまておなし つきをみるかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
1778 | いにしへを おもひつつけて なかむれは かみよにかへる あきのよのつき | 実氏 |
1779 | みるままに よのうきことも わすられて あきのこころそ つきにはれゆく | 朝棟 |
1780 | ここのへの くものうへにし よころへて あきのとのゐは つきになれつつ | 説房 |
1781 | おもひきや なかはのつきに てなれても みをてらすへき ひかりありとは | 隆淵 |
1782 | いまははや こころにかかる くももなし つきをみやこの そらとおもへは | 尊氏 |
1783 | ふるさとと おもふはかりそ なにはかた むかしにかはる つきのかけかは | 長舜 |
1784 | おもひしる ひとにみせはや やまさとの あきのよふかき ありあけのつき | 孝標女 |
1785 | つきたにも すまぬみやまの あきならは ひとりそなかき よをあかさまし | 治部卿(瓊子内親王家) |
1786 | つきのいる あとはをくらの やまかけに ひとりさやけき さをしかのこゑ | 弁教 |
1787 | うかりける あきのをしかの つまこひも あらはれそめて ねにやなくらむ | 氏村 |
1788 | をしかなく やたののすすき ほにいてて まねけとつまは つれなかりけり | 基夏 |
1789 | いねかてに もるをはしらて をやまたの よるをひとまと しかやなくらむ | 善了 |
1790 | おもひある やとはむくらの ふかきよに ねもせぬものと うつころもかな | 近衛(今出河院) |
1791 | つゆしもの をかへのまくす うらみわひ かれゆくあきに うつらなくなり | 氏経 |
1792 | はらひかね わかもとゆひも しもふりぬ まかきのきくの うへとみしまに | 実雄 |
1793 | あさことに わかもとゆひに おくしもの しろきをみれは あきそくれゆく | 経継 |
1794 | くれてゆく あきのゆふへの つゆけさは わかそてよりそ おもひしらるる | 良宋 |
1795 | たつたやま しくれのあめの たてぬきに そめしもみちや にしきなるらむ | 元妙 |
1796 | さてもまた いつまてなにを まつむしの あきはつるよに ねをはなくらむ | 俊光 |
1797 | しぬはかり なほをしむかな このあきや あきにわかるる かきりなるらむ | 小弁 |
1798 | かきりあれは あきのひかすを そへてたに ひとよになりぬ なかつきのそら | 顕氏(細川頼貞男) |
1799 | さためなき ものとはきかす むらしくれ よなよなおなし ねさめをそとふ | 基明 |
1800 | やまめくる しくれよやよや こととはむ うきみよにふる みちはいかにと | 祐守 |
1801 | はつしくれ またこのふゆも めくりきて ふりゆくみこそ さらにしらるれ | 澄覚法親王 |
1802 | ひのひかり いてそふけふの しらるるは いつれのかたの やまへなるらむ | 朱雀院 |
1803 | しらくもの おりゐるかたや しくるらむ おなしみやまの ふもとなからに | 太皇太后宮(醍醐天皇皇后穏子?) |
1804 | かきくらし しくるるくもも すきぬなり これもさためぬ よのならひかな | 後宇多院 |
1805 | しくれふる このてかしはの ふたおもて とてもかくても ぬるるそてかな | 土御門院 |
1806 | わかそての なみたはかりや かみなつき よそにはすきぬ しくれなるらむ | 隆淵 |
1807 | よこくもや わかるるあとに かへるらむ とやまのあさけ しくれふるなり | 秀長(藤原季弘男) |
1808 | さそはるる あらしまちえて かみなつき ふるはこのはの しくれなりけり | 師親 |
1809 | なにはえや ゆふしもさむく かせさえて かれはさひしき あしのむらたち | 貞宗 |
1810 | あきはてし ひとめよりまつ かれそめて みさへふりぬる しものしたくさ | 承覚法親王 |
1811 | われすめは ひとめもかれす やまさとに なほききすてぬ あさまつりこと | 後宇多院 |
1812 | しるひとは しけきころたに かたかりし みやまかくれの しものしたくさ | 読人不知 |
1813 | かれのこる しものしたくさ ありとたに ひとにしられぬ うきみなりけり | 長舜 |
1814 | なれにける かかみのかけも あはれなり おきそふしもの いろをかさねて | 隆教 |
1815 | わかのうらや おもひしよりも はまちとり あとつけそふる たひそかさなる | 冬平 |
1816 | たつねゆく わかのうらちの はまちとり あとあるかたに みちしるへせよ | 淑氏 |
1817 | たちかへり あとをつけても はまちとり こしかたしたふ わかのうらなみ | 道性 |
1818 | わかのうらや みちふみまよふ さよちとり あとつけむとは おもはさりしを | 尊円法親王 |
1819 | わかのうらに ありとしられは はまちとり かよはぬかたは あとつけすとも | 道順 |
1820 | こころをも あともととめす あくかれて あはれうきみの ともちとりかな | 公順 |
1821 | さよちとり なにはのあしの かりのよに なにをうらみて ねをはなくらむ | 覚助法親王 |
1822 | みつのうへに にほのうきすの うきなから すめはすまるる あはれよのなか | 光厳院 |
1823 | はかなしや かせにたたよふ なみのうへに にほのうきすの さてもよにふる | 式子内親王 |
1824 | にほとりは こほれるなみに よかれして つきはかりすむ にはのいけみつ | 善源 |
1825 | かりにたに ひとこそとはね はしたかの とやまのいほの ゆきのあけほの | 雅朝 |
1826 | たえぬへき みちをそおもふ しらゆきの みさへうきよに ふりもはてなは | 道昭 |
1827 | しらさりき かしらのゆきの それなから このやまさとに ふりはてむとは | 実経 |
1828 | かせませに みゆきふりしく やまさとの あさのさころも いかにさゆらむ | 泰時 |
1829 | おもへたた さらてもさゆる やまおろしに ゆきをかさぬる あさのころもて | 基綱(藤原基清男) |
1830 | ふりすてて いりにしやまの ゆきみても あとはいかにと おもひこそやれ | 氏久 |
1831 | たまさかに ふるたにさひし よのつねの ゆきのみやまを おもひこそやれ | 千観 |
1832 | うらかせに わかこけころも ほしわひて みにふりつもる よはのゆきかな | 増基 |
1833 | むかしおもふ みはかすならて しらゆきの ふりぬとたにも しるひとそなき | 俊顕 |
1834 | きえかへり ひかりなきみを なけくまに あつめしゆきは としつもりつつ | 善成 |
1835 | うつもるる みをはおもはす しらゆきの ふりぬるあとの をしくもあるかな | 有光 |
1836 | とへかしな あとあるみちは うつもれて ゆきにもふかく つもるうらみを | 為氏 |
1837 | ふみわけて なほもつかへよ しらゆきの あとあるみちは うもれはてしを | 実雄 |
1838 | つきにみし とよのあかりの をみころも ころもむかしに へたてきにけり | 光厳院 |
1839 | けふりたつ をののすみかま われなれや なけきをつみて したにもゆらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
1840 | あすしらぬ よにすみかまの いつまてか みねのけふりを よそにみるへき | 寂蓮/寂超 |
1841 | としなみは かへらぬものと くれぬなり むかしをいまに おもひなせとも | 宣政門院 |
1842 | いまさらに としのくれこそ かなしけれ すくるはいつも ひかすなれとも | 国助 |
1843 | たらちねの おいのかすのみ いとはれて わかみをしらぬ としのくれかな | 久世 |
1844 | ゆくとしの かさなるおいを みにしれは むかしいそきし はるもまたれす | 藤清 |
1845 | つひにまた おいとなるてふ ならひにて つもらぬとしの くれもかなしき | 冬平 |
1846 | をしめとも くるるはやすく ゆくとしの なとひとことの みにとまるらむ | 後宇多院 |
1847 | なかきよも ひとりおきゐて まとろまぬ おいのともとは つきをみるかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
1848 | いつまての やととかつきの さたむらむ むそちにかかる そてのなみたを | 雅有 |
1849 | いにしへの ひとはみきはに かけたえて つきのみすめる ひろさはのいけ | 頼政 |
1850 | ひさかたの つきのかつらの かちをたえ ふけてとわたる あまのかはふね | 公明 |
1851 | ふけゆけは なほすみまさる こころかな しつかにつきを みるへかりけり | 了雲 |
1852 | はれくもり つきもしくれも もるいほの あはれをよその ひとにみせはや | 惟方 |
1853 | あれにけり たれとすみこし かけならむ あはれいくよの よもきふのつき | 実兼 |
1854 | みねのつき くもゐもとほく なりにけり うきよいとひし なかめせしまに | 後宇多院 |
1855 | みるままに すきにしかたの わすれぬは つきやむかしの しるへなるらむ | 為教 |
1856 | つきかけは かはらぬものを いかなれは みるひとはかり おいとなるらむ | 棟国 |
1857 | ひさかたの つきにむかしの こととはむ さらてはのこる おもかけもなし | 定煕 |
1858 | つきそすむ かよひしみちは あとたえて つゆのそこなる よもきふのやと | 茂重 |
1859 | とはれすは ひとりみやまの つきかけを さひしとたにも たれにかたらむ | 秀房 |
1860 | やまさとの あきにかこちし さひしさを みやこのつきに なかめわひつつ | 邦世親王 |
1861 | をしむへき みをたにすてし やまのはに いるとてつきを なにしたふらむ | 定宗(法印円宗寺) |
1862 | ふたつなき こころたゆまて あふきみる つきのしもにそ みはふりにける | 覚助法親王 |
1863 | わかこころ きみそしるらむ よをいのる ほかにはまたも おもひなしとは | 慈道法親王 |
1864 | くるとあくと きみをそいのる あらましに おもひしよりも みはつかへつつ | 宗宣(北条宣時男) |
1865 | いつまてか やなきのかとの ちりをうけて みをたてぬよに なほつかへまし | 禅休 |
1866 | みそちまて たたいたつらに すきのかと いててつかへむ ことをしそおもふ | 慈慶 |
1867 | へたてなく このきみまても つかへきて いつよをへぬる やとのくれたけ | 公賢 |
1868 | ここのへの みかきのたけに なれしよは うきふししらぬ むかしなりけり | 基忠(鷹司兼平男) |
1869 | ここのよの きみにつかへて としもへぬ おいをうきみの おもひてにして | 道昭 |
1870 | かくしつつ つもるむそちの おいのさか さかしきみちに なほそつかふる | 経顕(藤原定資男) |
1871 | たえすこそ つかへしものを わかみよに なとよとむらむ せきのふちかは | 為世(御子左藤原為氏男) |
1872 | つかへねは すむかひもなき よのなかに しつみてわたる せきのふちかは | 読人不知 |
1873 | たのむそよ せきのふちかは すゑまてと おもふこころを きみにふかめて | 内実 |
1874 | わすれしな よよにもこえて きみにわか つかふるみちの せきのふちかは | 道嗣 |
1875 | ちはやふる かみよのちきり たえもせす いまもつかへて としそへにける | 道平 |
1876 | つかへきて ひとつなかれの たえせねは にこらしとおもふ わかこころかな | 宣明 |
1877 | なかれをは さすかくみても すきにけり みなかみふかき さほのかはなみ | 経通(一条内経男) |
1878 | さほかはの ふかきなかれと おもふにも おいのなみこそ みにしられけれ | 基忠(鷹司兼平男) |
1879 | みかくれぬ なのみなかれて さほかはの せにたつとしも なきみなりけり | 良基(二条道平男) |
1880 | さすかわか なはかくれぬの うきぬなは うきなからのみ よにもふるかな | 公忠(藤原実忠男) |
1881 | みさひゐる あささはぬまの みくりなは くるしきよには すまれやはする | 読人不知 |
1882 | たつねきて かけをこそみれ おほはらの おほろのしみつ すまはすむやと | 定為 |
1883 | まちえたる くもゐのつきも やとらねは おほろのしみつ すむかひそなき | 寂然 |
1884 | かせわたる よかはのすきの したかけに こころのみつを てにむすふかな | 公澄 |
1885 | にこりなき よかはのみつの すゑうけて すますこころを たれにしらせむ | 雲禅 |
1886 | あらましの すゑとほりける やまみつの こころすまては すむかひもなし | 光厳院 |
1887 | いささらは ゆくへもしらす あくかれむ あとととむれは かなしかりけり | 右京大夫(建礼門院) |
1888 | ともかくも わかみひとつは なしつへし のこらむなこそ うしろめたけれ | 道命 |
1889 | あけはまた こひのけふりに たちやせむ うらしまのこか はこならねとも | 慈円 |
1890 | かはりなむ よにはいかてか すまふへき おもひやれとも ゆかぬこころを | 定方 |
1891 | とにかくに こころもとけぬ よのうさの ためしそつらき いはしろのまつ | 隆教 |
1892 | ふちしろの みさかのまつの このまより ゆふひにみゆる あはちしまやま | 公蔭 |
1893 | のきちかき まつのあらしの たゆむまも まくらにひひく たきのおとかな | 実俊(西園寺公宗男) |
1894 | ひとしれす こころをとめし まつかせの こゑをきくにも ぬるるそてかな | 後京極院 |
1895 | いまはとて ひきわかれぬる ことのをに なみたのつゆの かかるころかな | 宣政門院 |
1896 | われみても まとのくれたけ ふりにけり しらぬむかしを いくよへぬらむ | 静仁法親王 |
1897 | うゑおきて こころむなしき わかともに なかきよちきる まとのくれたけ | 公賢 |
1898 | うきふしは みにつもれとも くれたけの よをかこつへき ことのはそなき | 邦長 |
1899 | さとつつき たけのそのふの ちかけれは うきふししけき よをやかこたむ | 小宰相(土御門院) |
1900 | さかえゆく たけのそのふの なかりせは いかなるかけに みをかくさまし | 浄弁 |
1901 | くれたけの そのふのみちや まよはまし かしこききみか みよにあはすは | 忠房親王 |
1902 | のきちかき たけのそのふの よよのかせ つらなるえたに ふきそつたへむ | 尊胤法親王 |
1903 | つたへきて よよにかはらぬ たけのその みにうきふしを のこさすもかな | 承覚法親王 |
1904 | たらちねの あとにのこりて ふえたけの よにはしられぬ ねこそなかるれ | 業清(藤原) |
1905 | ふえたけの ふたつのみちを つたへても あとにかはらぬ ひとふしそなき | 祐殖 |
1906 | きみにわれ みつはくむまて つかへきぬ ひとりふたつの みちをきはめて | 為世(御子左藤原為氏男) |
1907 | いへのかせ たえすつたへて あめのした なへてあふくと きくそかしこき | 覚誉法親王 |
1908 | あふくひと あるにそまよふ いへのかせ ふきつたへたる かひもなきよは | 為定(御子左二条為道男) |
1909 | なはかりを かるのいちひと あとはあれと うるとしもなき みちをたてつつ | 為藤 |
1910 | たらちねの あらはといとと かきくれて なみたにまよふ しきしまのみち | 隆教 |
1911 | もののふの これやかきりの をりをりも わすられさりし しきしまのみち | 和氏 |
1912 | しきしまの みちのおくなる あさかやま ふかきこころを いかてしらまし | 栄海 |
1913 | ふみわけし そのいにしへの あとはあれと いまさらまよふ しきしまのみち | 知長 |
1914 | しきしまや たたしきみちに かへるやま ありてそよよの あともさかゆく | 読人不知 |
1915 | おもひきや わかたつそまの あとうけて よたひかさなる なをとめむとは | 尊胤法親王 |
1916 | おもはすよ ななよのあとを ななそちの おいかみにしも つたふへしとは | 澄俊 |
1917 | ななそちの おいのさかまて あひそへる おやのまもりに みをもたてつつ | 実継 |
1918 | わかきみの めくみそそらに しられける またたちのほる くものうへひと | 師宗 |
1919 | おひはつる おとろのみちの したくさは はるのめくみに あふかひもなし | 資明 |
1920 | おもひしれ めくみをたのむ はるにたに あはぬおとろの みちのしたくさ | 為定(御子左二条為道男) |
1921 | おもはしと おもふものから まつやまの すゑこすなみに ぬれつつそふる | 朝光 |
1922 | くらゐやま まよはぬひとの あとみても いまひとさかを なほおもふかな | 宗経(平経親男) |
1923 | くらゐやま のほりもやらて いそかれぬ いそちのさかを こえむとすらむ | 公蔭 |
1924 | いととしく おいのさかそふ くらゐやま くるしきみちと のほりかねつつ | 為定(御子左二条為道男) |
1925 | のほりえぬ このひとさかは たらちねの いさめしみちや ふみたかへけむ | 為明 |
1926 | たらちねの いさめしすゑも かはらねは いまひとさかの みちはまよはし | 後光厳院 |
1927 | くらゐやま のほりはてても みねにおふる まつにこころを なほのこすかな | 有房(六条通有男) |
1928 | いかてわれ くらゐのやまに いほしめて のほりはてなは みをかくさまし | 基成 |
1929 | おろかなる こころのうちの あらましを みのなくさめと おもふはかなさ | 忠景 |
1930 | みをすてて いつすみなれし やまなれは よのうきたひに おもひいつらむ | 読人不知 |
1931 | やまさとに のかれもいらし よのなかの うきこそいとふ たよりなりけれ | 周嗣 |
1932 | いほしめて すむとはひとに みえすとも こころのうちの やまかけもかな | 四条(安嘉門院) |
1933 | よのなかを いとははいまそ いとふへき うらみなきみを おもひいてにして | 宗宣(北条宣時男) |
1934 | いまははや みにまつことの すきぬれは こころにたのむ ゆくすゑもなし | 寛尊法親王 |
1935 | なにゆゑに そむかさるらむ まつことの みにありてたに いとはれしよを | 実重(三条公親男) |
1936 | すてぬよは うきものとかつ しりなから なにさすらふる わかみなるらむ | 公宗女 |
1937 | つれなしや さてもほとなき よのなかの うけくにあかて すてぬこころは | 知行(大江範能男) |
1938 | そむくへき こころはなほも つれなくて うきよをしるは なみたなりけり | 良宋 |
1939 | そむかては さてはつましき よのなかに いつをまつとて つれなかるらむ | 氏村 |
1940 | ありへはと たのみしことそ おろかなる すてぬにつけて うかりけるよを | 観意 |
1941 | よのなかの うきをいとはぬ ならひこそ わかみのよその こころなりけれ | 禅助 |
1942 | ゆくすゑを しらぬはかりを たのみにて さためなきよに みをやまかせむ | 実性 |
1943 | うきよとも なかなかいはし ひたすらに かすならぬみは あるにまかせて | 宋親 |
1944 | かすならぬ みはなかなかに うきことを ならひになして なけかすもかな | 直頼 |
1945 | なれぬれは いまさらならぬ おもひにて みのうきほとは そてもぬらさす | 法守法親王 |
1946 | をしからぬ いのちつれなく なからへて なほもうきみの はてやしられむ | 冬平 |
1947 | みにたえぬ わかなもよしや なかそらに うかへるくもの ありてなけれは | 光庭 |
1948 | なみのうへに よるへをたとる うきみるの うきことしらて すくすよもかな | 為成(冷泉為相男) |
1949 | いとへたた なにはのあしの かりのよに こころとむへき ひとふしもなし | 仲顕 |
1950 | あらはるる なにはのあしの ことのはも おなしいりえに またやしつまむ | 隆祐 |
1951 | おほつかな よしとはいかか なにはかた ならはさりける うらみをそする | 頼朝 |
1952 | わかのうらや みちをたつねて まなつるの まなふるあとに まよはすもかな | 頼時 |
1953 | わかのうらや みきはのたつの こゑはかり みはしもなから きこえあけつつ | 国夏 |
1954 | わかのうらや いりえのあしの しものつる かかるひかりに あはむとやみし | 家隆 |
1955 | としふりて よをうみわたる あしたつの なほたちましる わかのうらなみ | 花園院 |
1956 | あしたつの ねにのみなきて としもへぬ あはれとおもへ わかのうらひと | 実甚 |
1957 | こをおもふ なみたくらへは よるのつる われおとらめや ねにたてすとも | 実忠 |
1958 | みのほとに のこるうらみは なけれとも よるなくつるに ねをそそへける | 氏久 |
1959 | おもひやれ こをおもふつるの ひとつかひ おなしねになく よるのこころは | 基任 |
1960 | つきみても なくさみなまし なそもかく こころのやみに こをおもふらむ | 経継 |
1961 | たらちねの ありてみしよは へたつれと わすれぬかけそ つきにこひしき | 為氏 |
1962 | そむきけむ おなのいさめの かなしきに はるるはかりの みちをみせはや | 為家 |
1963 | うきみしも なにのこるらむ たらちねの あととてしのふ ひともなきよに | 道意(西園寺実兼男) |
1964 | うれしきに まつむかしこそ こひしけれ ははそのもりを みるにつけても | 永縁 |
1965 | すゑとほき わかはのくさの みとりより にはのをしへの あとそたかはぬ | 定家 |
1966 | わかくさの すゑたのもしき かけそとも にはのをしへを しるひとそしる | 師重(中原師尚男) |
1967 | つたへこし わかみちしはの ふゆかれに まよはむあとの なこそつらけれ | 信実 |
1968 | みつくきの をかへのささの ひとふしを このよにのこす ことのはもかな | 信良 |
1969 | もしほくさ かきおくふての あとみても なほわかみちに まよふはかなさ | 長衡 |
1970 | かきつくる むかしのあとを みるたひに およはぬみこそ ねはなかれけれ | 公有 |
1971 | いまよりは いへのかせにそ つたふへき なをかけそむる わかのうらなみ | 行氏(祝部行言男) |
1972 | としへぬる まつはしるらむ むかしより ふきつたへたる わかのうらかせ | 宋縁 |
1973 | ことのはの つもらはなをや かけまくも かしこきみよの わかのうらまつ | 読人不知 |
1974 | いまそしる あつめしたまの かすかすに みをてらすへき ひかりありとは | 為定(御子左二条為道男) |
1975 | かすかすに あつむるたまの くもらねは これもわかよの ひかりとそなる | 後醍醐院 |
1976 | たまならぬ もくつなからも わかのうらに きみみかかはと かきあつめつる | 達智門院 |
1977 | たまよする なみものとけき みよなれは かせもたたしき わかのうらまつ | 一条(徽安門院) |
1978 | たまもなほ ひかりそへとて いにしへの あとにそかへす わかのうらなみ | 尊氏 |
1979 | わかのうらの なみにおもはぬ こころより そふへきたまの ひかりをそみる | 為定(御子左二条為道男) |
1980 | わかのうらや うきひとなみの みもつらし みかきしたまの あとのもくつは | 後伏見院 |
1981 | ひかりなき たににすむみの かなしきは いくたひたまの かすにもれけむ | 信専 |
1982 | なをかけし あとをたつねて もしほくさ またももらすな わかのうらなみ | 示証 |
1983 | わかのうらに たたよふなみの なはかりを かけてうきみの あるかひそなき | 為子(従二位) |
1984 | なをかけて あるかひもかな わかのうらに としふるおいの なみのうたかた | 為氏 |
1985 | よつのうみ すみかたきよの おもひてに ふるきにかへれ わかのうらなみ | 光厳院 |
1986 | わかかたに わかのうらかせ ふきしより もくつもなみの たよりをそまつ | 尊氏 |
1987 | わかこころ なくさむほとの ことのはも なほよりかぬる わかのうらなみ | 尊氏 |
1988 | わかのうらや そのひとなみに なからへて もれぬめくみの みにあまりぬる | 顕実母 |
1989 | いかにせむ わかのうらわの みをつくし みをたてなから あさきこころを | 浄弁 |
1990 | かすならぬ わかみのほとに こえてけり こころをかけし わかのうらなみ | 光吉 |
1991 | わかのうらに かよふはかりの みちはあれと むかしのあとに ふみまよふかな | 雅顕 |
1992 | わかのうらや あとつけそめし はまちとり いまはよそなる ねをのみそなく | 行乗 |
1993 | わかのうらに たゆたふふねの つなてなは ひくひとあらは みちもまよはし | 性遵 |
1994 | わかのうらや むかしのなみの あとにしも みのうきふねの なとまよふらむ | 実清 |
1995 | あけなから かさねてけりな からにしき たつしらなみの あとをたつねて | 経国 |
1996 | しらなみの あとをたつねし うれしさは あけのたもとに あらはれにけり | 秀能(藤原秀宗男) |
1997 | わたつうみの かさしのはなは きにもあらす くさにもあらぬ おきつしらなみ | 杲守 |
1998 | ひとときの はなのさきしは ゆめなれや はるのほかなる たにのうもれき | 公清 |
1999 | なけきこる をののひひきの きこえぬは やまのやまひこ いつちいぬらむ | 興風 |
2000 | かはかみの にふのそまひと こころせよ みしかききをも すてぬならひを | 師賢(藤原師信男) |
2001 | うきなから ひとのためそと おもはすは なにをよにふる なくさめにせむ | 直義 |
2002 | とにかくに よのひとことの なけかれて こころのうちの やすきまそなき | 義詮 |
2003 | よのなかの ひとのうれへの あるにこそ おろかなるみの ほとはしらるれ | 義詮 |
2004 | みにかへて おもふとたにも しらせはや たみのこころの をさめかたさを | 後醍醐院 |
2005 | なほさりに おもふゆゑかと たちかへり をさまらぬよを こころにそとふ | 後光厳院 |
2006 | よをすくふ こころのうちの なほさりに たみのうれへを なすそかなしき | 伏見院 |
2007 | なかむれは そこはかとなく そてぬれぬ むなしきそらの よものあらしに | 後鳥羽院 |
2008 | こきいてし むなしきふねの よるへなみ あるにまかせて よをわたるかな | 後宇多院 |
2009 | いまはわれ むなしきふねの つなかれぬ こころにのする ひとこともなし | 花園院 |
2010 | くもをふむ みねのかけはし それよりも うきよをわたる みちそあやふき | 花園院 |
2011 | いたつらに やすくもすくる つきひかな いつをまつへき いのちならぬに | 談天門院 |
2012 | とにかくに やすかりぬへき みひとつを なとかこころに まかせさるらむ | 定資 |
2013 | せきいるる かひなからまし おとはかは こころをくみて ひとのしらすは | 通俊 |
2014 | くものうへを こふるなみたの くれなゐに そめつるいろを きみにくらへむ | 後嵯峨院 |
2015 | ひとはいさ しをれはてぬる わかそてに くらふはかりの いろはあらしを | 実経 |
2016 | ひたちなる をののみまきの つゆくさの うつしはこまの おくにそありける | 朝光 |
2017 | ここのへや ちかきまもりの まとゐして なのるをきけは よはふけにけり | 後醍醐院 |
2018 | しはしまて うちたれかみの さしくしを さしわすれたる ときのまはかり | 少将内侍(後深草院) |
2019 | さしくしの さしあふほとの ときのまは うちたれかみも われそみたるる | 弁内侍(後深草院) |
2020 | くもゐにて みるにつけても よはのつき いてつるかたを あふかさらめや | 保能 |
2021 | ますかかみ かはらぬかけも あるものを いかにうつろふ ひとのこころそ | 光行 |
2022 | はなにそめ もみちにそめて まことなき こころのいろの あたしよのなか | 宗秀(藤原宗泰男) |
2023 | のちのよも かくやなけかむ みのうさに なほのかれえぬ こころなりせは | 信快 |
2024 | いくほとと おもひなからも なけくこそ うきよをしらぬ こころなりけれ | 一条(徽安門院) |
2025 | いまさらに うきをうしとて おとろくも よのことわりを しらぬなりけり | 五条(宣光門院) |
2026 | かすならぬ みにもなみたの こほるるや いはきのやまの しつくなるらむ | 四条(安嘉門院) |
2027 | このもとは つひのすみかと ききしかと いきてはよもと おもひしものを | 行尊 |
2028 | みとせへし たきのしらいと いかなれは おもふすちなく そてぬらすらむ | 慶融 |
2029 | やまさとを さひしとなにか おもふらむ かかれとてこそ すみそめのそて | 能信(藤原道長男) |
2030 | そてのいろの かはるときけは たひころも たちかへりても なほそつゆけき | 直義 |
2031 | そむきても なほよのなかに すみそめの ゆふへのそては なみたなりけり | 宗行 |
2032 | そむきても よにすみそめの ころもかは かはるしるしの なきわかみかな | 読人不知 |
2033 | のかれても おなしうきよと きくものを いかなるやまに みをかくさまし | 是法 |
2034 | あつさゆみ もとのすかたは ひきかへぬ いるへきやまの かくれかもかな | 信武 |
2035 | おきところ なきにつけても なけくみは すててそいとと うきよなりける | 定顕(叡山横川宝蔵坊) |
2036 | よのなかの けにうきときは みひとつを かくすはかりの かけたにもなし | 道我 |
2037 | をりをりの こころやすめし しはのとに あけくれいまは みをかくすかな | 公清 |
2038 | たつねくる ひともおとせぬ しはのとに あけくれきくは みねのまつかせ | 花園院 |
2039 | あはれしれ むかしはしらす ともとみて われもふりぬる やとのまつかえ | 公宗母 |
2040 | やまさとの のきはにちかき しひしはの しひてうきよに いつまてかへむ | 永福門院 |
2041 | かすかすに かたえかれぬる ひとつまつ いつまてとてか くちのこるらむ | 永福門院 |
2042 | くちのこる ひときのまつの かけをこそ かれゆくえたも なほたのみけれ | 道意(西園寺実兼男) |
2043 | ふるさとの のきはのこまつ としふとも たれかはいへの かせをつたへむ | 読人不知 |
2044 | いにしへの なからのはしも つのくにの なにはくちせす なほのこりけり | 国夏 |
2045 | よをうしと おもはさりけむ むかしこそ このころよりも はかなかりけれ | 雅成親王 |
2046 | のかるるも やすきうきよを いたつらに すくしきにける みのむかしかな | 桓瑜 |
2047 | おもひきや みしよのことを いきてなほ むかしのゆめに かたるへしとは | 円忠 |
2048 | あたにのみ おもふいのちの ありすきて うきよのゆめを みるそかなしき | 宰相典侍(後宇多院) |
2049 | おもはすよ をしからぬみの いのちのみ ありへてかかる うきめみむとは | 藤子(従三位) |
2050 | そてさえて ぬるよのとこも さむしろに ゆめをはかなみ まつかせそふく | 家長(源時長男) |
2051 | いくよかは みはてぬゆめの さめぬらむ まつのとたたく みねのあらしに | 為世(御子左藤原為氏男) |
2052 | よをのこす まくらのうへの かねのおとに いそちのゆめそ あはれみしかき | 花園院 |
2053 | むかしこそ しのふにかよふ ゆめならめ ゆくすゑまては いかてみゆらむ | 基嗣 |
2054 | あたなれと わかおもふままに みるゆめの なこりはしはし わすれさりけり | 遠衡 |
2055 | うつつかと さめてもなほそ たとらるる さたかにみつる ゆめのなこりは | 実性 |
2056 | こころなき ねふりのうちに まよひきて ゆめとはなにの みゆるなるらむ | 大弐(安嘉門院) |
2057 | うつつそと おもふまよひの こころにて たのむかゆめの あたしよのなか | 為道 |
2058 | ゆめをのみ あたなるものと おもふこそ うつつをたのむ まよひなりけれ | 覚実 |
2059 | ぬるかうちの ゆめてふものそ うかりける さめてうつつの まことなけれは | 広茂 |
2060 | なけきわひ しひてゆめかと たとれとも さむるよなきは うつつなりけり | 瓊子内親王 |
2061 | ゆめのよを よそになしては おとろけと こころのさむる あかつきそなき | 雅成親王 |
2062 | あしひきの やまたにさせる ささのいほ よをかさぬれは ふしなれにけり | 恒雲法親王 |
2063 | あつまちの おくてのやまた かりにのみ おもひしいほも すみなれにけり | 為顕 |
2064 | われかくて いなはもるみと なりぬるを かりのやととや ひとのみるらむ | 基任 |
2065 | くれたけの ふしみのたゐの かりのよに おもひしらてや もりあかすらむ | 読人不知 |
2066 | よもすから たえすなるこの おとすなり やまたのいほを かせやもるらむ | 行胤 |
2067 | あきはつる ひたのかけなは たえしより やまたのいほに くるひともなし | 兼空 |
2068 | ひくひとの なきにつけても ひたすらに みをあきはつる をたのかりいほ | 慈快 |
2069 | かすならぬ やまたのひつち つれもなく あきはてしよに なにのこるらむ | 兼氏 |
2070 | おいてよに あるかひもなき ひつちたの しもをいたたく みとそなりぬる | 資明 |
2071 | うしとたに いふはさらなり いさらかは いさやいかなる わかみなるらむ | 長能 |
2072 | のほりえぬ ひとせによとむ かはふねの ひくひとなくは さてやくちなむ | 実教 |
2073 | やまかはの いしまつたひに ゆくみつの やすくはすきぬ このよなりけり | 祐臣 |
2074 | かすならぬ みくさかくれの わすれみつ ひとりすめとも しるひともなし | 義貞 |
2075 | みこもりの ふるえのなみに くちはてて しほたにささぬ あまのすてふね | 国夏 |
2076 | つきかけの よるさすほかは みなとえに ゆくかたもなき あまのすてふね | 為世(御子左藤原為氏男) |
2077 | なけくそよ あさきせわたる かはふねの さしもうきよに ととこほるみを | 惟継 |
2078 | ととまらぬ つきひはかりに まかせきて たたとにかくに よをわたるかな | 頼貞 |
2079 | うたてなと かへりみさりし やとにしも とめぬこころの いてかてにする | 為明 |
2080 | かそふれは いそちもすきぬ いそのかみ ふるかひもなき うきよなからに | 有範 |
2081 | うきなから そむきもはてぬ あらましに いくたひおなし よをいとふらむ | 源意(藤原源守男) |
2082 | うきをしる こころこそなほ かひなけれ いとふままにも そむかれぬよに | 近衛(今出河院) |
2083 | うきなから あれはあるよの ならひこそ いまはわかみに おもひしらるれ | 良冬 |
2084 | ありてみの ことわりもなし うきよとは いとひてのちそ いふへかりける | 為成(冷泉為相男) |
2085 | よをもいとふ またうきよにも いとはれて とまるこころの なきそかなしき | 慈円 |
2086 | よをいとふ こころはかりや かたからむ すめはすみける やまのおくかな | 道順 |
2087 | いそかるる みやまのおくの ならはしに さひしかれとや とふひとのなき | 為道女 |
2088 | さひしさも うきよよりはと なくさめて こころそとまる やまさとのいほ | 道賢 |
2089 | かくてしも こころとまらは やまさとも うきよいとはぬ すみかならまし | 為信 |
2090 | おのつから ひとにそむける こころもて つひにうきよの ちりをいてぬる | 花園院 |
2091 | あしひきの やまをうきよの へたてにて ちりのさかひに あとはたえにき | 花園院 |
2092 | ありあけの つきこそありけれ みやまへに われのみひとり すむかとおもへは | 花園院 |
2093 | よのうきめ みえぬかきりも やまさとは すみなれてこそ おもひしりぬれ | 読人不知 |
2094 | おなしよを こころひとつに すみかへて すつれはやすき わかみなりけり | 読人不知 |
2095 | かすならぬ みのおもひては やまさとの ひとめまれなる すまひなりけり | 忠性 |
2096 | いまさらに くやしかりけり やまさとに すまてうきよを なになけきけむ | 尊海 |
2097 | いかはかり なほやまふかく のかれまし すむにかひある こころなりせは | 尊道法親王 |
2098 | こころあらは すててののちも すつへきは うきかうへにも うきよなりけり | 読人不知 |
2099 | いかはかり うきよなれはか かすならぬ わかみにたにも なほいとふらむ | 読人不知 |
2100 | いまさらに すつとはいはし かくてよに あるかひもなき おなしうきみを | 実性 |
2101 | すててこそ おなしやまちに いりにけれ こころこころの うきよなりしを | 栄宝 |
2102 | かくれかを なにもとめけむ ひととはぬ こころのおくそ すみよかりける | 読人不知 |
2103 | よをいとふ こころのおくを ひととはは うきことしけき やととこたへむ | 基久 |
2104 | すめはまた うきよなりけり よそなから おもひしままの やまさともかな | 兼好 |
2105 | なれなはと なにおもひけむ やまさとは すむにつけてそ さひしかりける | 実泰 |
2106 | やまさとは あらましまての すみかにて こころとまらぬ みねのまつかせ | 寿暁 |
2107 | ゆくすゑは わかあらましも あるものを むかしをこふる なくさめそなき | 冬平 |
2108 | せをはやみ ゆくみつよりも とめかたく すきしむかしそ なほしのはるる | 崇光院 |
2109 | こしかたを しのふなみたの たまくしけ ふたたひあはぬ ときそかなしき | 永福門院 |
2110 | みしことの さたかならぬは かきくらす なみたにしのふ むかしなりけり | 実教 |
2111 | とにかくに おもひつつけて ねをそなく ひとにいふへき むかしならねは | 為家 |
2112 | ことにいてて こひしとまては いはねとも むかしおもへは ぬるるそてかな | 読人不知 |
2113 | そてぬらす おいのねさめの なみたかは そのみなかみは むかしなりけり | 秀行 |
2114 | こしかたを おもひいてすは あかつきの ねさめのとこや さひしからまし | 読人不知 |
2115 | うきみにも わすれすしのふ むかしかな おもひいつるを おもひてにして | 国道(津守国助男) |
2116 | なにゆゑに すきしむかしを しのふそと こころにとへは おもひてもなし | 宣時(北条) |
2117 | おもひいての なきみのはても なへてよの ならひにしのふ むかしなりけり | 政村 |
2118 | たちかへり わかいにしへの こひしきや ありしよりけに うきみなるらむ | 長舜 |
2119 | わかためは いつよりのちの うきよとて あはれむかしの こひしかるらむ | 実伊 |
2120 | いまさらに こひしきやなそ いにしへも みはかすならぬ なけきをそせし | 基祐 |
2121 | はかなくて いそちのとしも すきにけり よにすみわふる なけきせしまに | 祐光 |
2122 | ななそちに すきにしかたを かそふれは のこるひかすの ほとそすくなき | 氏久 |
2123 | かへりこぬ むかしのみこそ しのはるれ おいのかすそふ みをおもふにも | 延全 |
2124 | いたつらに なすことなくて すきにけり おもへはをしき みのむかしかな | 寛胤法親王 |
2125 | としつきの つもるへたても なきものは おもかけにそふ むかしなりけり | 雅孝 |
2126 | あやにくに しのはるるみの むかしかな ものわすれする おいのこころに | 公雄 |
2127 | としたかく なりにしのちは おいかみに こゆへきさかそ のこらさりける | 桓守 |
2128 | さのみやは いにしへとても しのはれむ おいてなみたの もろきなりけり | 国助 |
2129 | とほさかる むかしをたれに かたらまし おいにはむかふ ともたにもなし | 実承 |
2130 | のちのよを ちかくなりぬと おとろくや さすかにおいの しるしなるらむ | 公朝 |
2131 | みかのはら たひのやとりに たまほこの みちのゆきあひに あまくもの | 読人不知 |
2132 | やまのへの あともつたへぬ みなれとも そのひとかすに いりしより | 公能 |
2133 | いにしへの みやまのてらに むすこけを うちはらふにそ むかしにかへる | 慈円 |
2134 | やまふきの やへのはなたに よのつねの さくなむさくと おもひけるかな | 長能 |
2135 | さくはなの はかなかるかや にほひつつ ひとのこころを あたになすらむ | 忠岑 |
2136 | くりかへし まかきのうちに はなつめは いとまかりにも ありとやはみる | 恵慶 |
2137 | わさとこそ くりはなつめれ まかりきに はひまつはるる あをつつらをは | 読人不知 |
2138 | もしほくさ かきしくあまの とこをみて くらさはやとと たのむはかなさ | 国助 |
2139 | いかなれは ゆるきのもりの むらさきの けさしもことに たちさわくらむ | 覚性法親王 |
2140 | くらゐやま そのしなことに あかりしや うしとおもはぬ むかしなりけむ | 道平 |
2141 | つまこふる あきにしなれは さをしかの うらかなしくも きこゆなるかな | 隆信 |
2142 | ちるまては きつつたにみむ はるさめに われをぬらすな うめのはなかさ | 頼基(大中臣輔道男) |
2143 | うめかえに こけのころもの そてふれて はなのなをさへ をるわかみかな | 良暹 |
2144 | たちぬはぬ かすみのころも はるきては はなのにしきを おりかさねつつ | 知家 |
2145 | やましろの みつのみくさに つなかれて こまものうけに みゆるたひかな | 西行 |
2146 | なはしろに こころのたねを まきそへて なくやかはつの やまとことのは | 国冬 |
2147 | としなみの なかはをこよひ こゆるわに すかぬきかけて ななそちはへぬ | 公賢 |
2148 | やまさとに たたかりそめの すすきかき ふちするひとの なきわかみかな | 信実 |
2149 | つゆふかき をはなかそてを ひかへつつ なくなくあきを ととめつるかな | 基俊 |
2150 | もみちはの えたにかかれる みのむしは しくれふるとも ぬれしとやおもふ | 頼基(大中臣輔道男) |
2151 | いかなれは しめちかはらの ふゆくさの さしもなくては かれはてにけむ | 読人不知 |
2152 | しのひこし ゆふくれなゐの ままならて くやしやなにの あくにあひけむ | 小侍従(太皇太后宮) |
2153 | わかことく おくのこほりの えひすかけ とにもかくにも ひきちかへつつ | 為家 |
2154 | ひきひきに ひとはたかせの のほりふね つなてこさるる みをいかにせむ | 仲綱 |
2155 | なけきつむ ちからくるまの わをよわみ たちめくるへき ここちこそせね | 俊頼(源経信男) |
2156 | たらちねの おやをはすてて こはいかに ひとのこをのみ おもふわかこそ | 伊勢大輔 |
2157 | ひとのこの おやになりてそ わかおやの おもひはいとと おもひしらるる | 康資王母 |
2158 | やはらくる ひかりもちりに ましるらむ あさきよめすな かみのみやつこ | 遠久 |
2159 | きみかため いのちかひにそ われはゆく つるのこほりに ちよはうるなり | 忠岑 |
2160 | はやせかは うかふみなわの きえかへり ほとなきよをも なほなけくかな | 定家 |
2161 | わかみをは うかへるくもに なせれはそ つくかたもなく はかなかりける | 千里 |
2162 | そほちつつ ものおもふひとの ゆくみちは なかるるみつそ しるへなりける | 朝忠 |
2163 | みつせかは あささのほとも しらせしと おもひしわれや まつわたりなむ | 道綱母 |
2164 | みつせかは われよりさきに わたりなは みきはにわふる みとやなりなむ | 読人不知 |
2165 | いもせかは かへらぬみつの わかれちは ききわたるにも そてそぬれける | 清輔 |
2166 | ききわたる そてたにぬるる なかかはの みつのこころを くみてしらなむ | 実定 |
2167 | みなひとの つひにゆくなる みつせかは そのせにかくる しからみそなき | 光俊(葉室光親男) |
2168 | かひなしや なにそはありて つひにゆく ひとをはとめぬ ふはのせきもり | 惟賢 |
2169 | かはりても ゆくへきつひの みちならは わかなきあとを けふやとはれむ | 恵鎮 |
2170 | いまはとて いさめおきてし ことのはの つゆもかわかぬ しひしはのそて | 為明 |
2171 | しひしはに かへぬをなけく なみたもて ふかくそそての いろをそめつる | 久明親王 |
2172 | きたりとは きくらむものを ふちころも かけてあはれと いふひとのなき | 仲文 |
2173 | なにかこの ほとなきそてを ぬらすらむ かすみのころも なへてきるよに | 紫式部 |
2174 | みるからに たもとそぬるる さくらはな そらよりほかの つゆやおくらむ | 実資 |
2175 | たつねきて むかしをとへは やまさとの はなのしつくも なみたなりけり | 為氏 |
2176 | おもひきや はるのみやひと なのみして はなよりさきに ちらむものとは | 行尊 |
2177 | わすれしな こそのたもとの あめやくさ けふまてなかき ねをかけむとは | 了然 |
2178 | むかしおもふ なみたをそてに かけそへて けふのあやめの ねこそつきせね | 通重 |
2179 | あらさらむ そてのいろにも わするなよ はなたちはなの なれしにほひを | 弁内侍(後深草院) |
2180 | いにしへに なれしにほひを おもひいてて わかそてふれむ はなややつれむ | 師継 |
2181 | いまそしる ありしかたみの はなそとも おくるるそてに とまるにほひを | 公雄 |
2182 | としことに ききしくもゐの ほとときす このさつきこそ かきりなりけれ | 為経(甘露寺藤原資経男) |
2183 | つてにきく ことそかなしき してのやま かへらぬみちの うきにつけても | 為信 |
2184 | いかにして ひとやりならぬ みちにしも かへるかたなき わかれなるらむ | 読人不知 |
2185 | かへるへき みちしなけれは くらゐやま のほるをみても ぬるるそてかな | 義詮 |
2186 | わひつつも きえにしやとに すむよりは いててかへりし みちそかなしき | 師輔 |
2187 | かりのよを そむきしかひも なきひとは ゆめかうつつか えこそさためね | 斎宮女御 |
2188 | さためなき ひとのうきよも よそならし かせのすゑなる のへのしらつゆ | 為家 |
2189 | よのなかを なににたとへむ あかねさす あさひまつまの はきのうへのつゆ | 順 |
2190 | たのむへき すゑはのつゆを さきたてて のこるわかみそ おきところなき | 有長 |
2191 | いろかはる そてにはつゆの いかならむ おもひやるたに けぬへきものを | 選子内親王 |
2192 | はかなくて わかれしあきの ゆふつゆは おもひいてても きえぬへきかな | 基平(近衛兼経男) |
2193 | おもひいつや みしよのさかの はるかすみ ことしのあきの そてのつゆにも | 禅助 |
2194 | おもひいつる むかしのあきの めくりきて なきかけうかふ そてのつきかな | 経行 |
2195 | めくりあふ かけはむかしの かたみそと おもへはつきの そてぬらすらむ | 為氏 |
2196 | おもひきや なれてみしよの あきのつき ことしなみたに くもるへしとは | 万代(後醍醐院女蔵人) |
2197 | きみまさぬ やとにはつきそ ひとりすむ ふるきみやひと たちもとまらて | 道長 |
2198 | いにしとし こよひのつきを みしときに いとかくものを おもひやはせし | 行成 |
2199 | くものうへは かはりにけりと きくものを みしよににたる よはのつきかな | 俊成(藤原俊忠男) |
2200 | いかてわれ こよひのつきを みにそへて してのやまちの ひとをてらさむ | 西行 |
2201 | よもすから おもかけみせて くもりしは つきもおもひの ほとやしりけむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
2202 | あふきみし つきもかくるる あきなれは ことわりしれと くもるかけかな | 万秋門院 |
2203 | ひかりなき よはことわりの あきのつき なみたそへてや なほくもるらむ | 宰相典侍(後宇多院) |
2204 | おもへたた てるひもくれて さかのやま まよふこころの はれぬやみちを | 道我 |
2205 | さかのやま てるひのかけの くれしより おなしこころの やみにまよひき | 為世(御子左藤原為氏男) |
2206 | うかりける このよのさかの あきのくれ つゆもしくれも みにやそふらむ | 定為 |
2207 | おもひやれ つゆもしくれも ふりまさる このよのさかの あきのあはれを | 為藤 |
2208 | たまとみし つゆさへもろき ならひにて よのさかとこそ むしもなくなれ | 忠源 |
2209 | くさのかけ こけのしたにも よそにみは われゆゑなほや つゆこほるらむ | 兼氏 |
2210 | ふるさとの くさのかけにも てらしみは なほいろそへよ ことのはのつゆ | 定為 |
2211 | なへてよの ひとよりものを おもへはや かりのなみたの そてにつゆけき | 花山院 |
2212 | そてふりし はるのにはとも みえぬかな なみたしくるる あきのゆふくれ | 兵衛(上西門院) |
2213 | おくりおきて かへりしのへの あさつゆを そてにうつすは なみたなりけり | 西行 |
2214 | なきひとの ととまるこけの したよりも かへるたもとは なほやつゆけき | 覚円 |
2215 | いつくにか きみをおきては かへりけむ そこはかとたに おもほえぬかな | 頼宗 |
2216 | いまはまた われもなくねを そふるかな つるのはやしの あかつきのそら | 読人不知 |
2217 | おもへたた またあふなかの わかれたに うきはならひの あかつきのそら | 長経 |
2218 | かたみとて あるもはかなき おもかけの さらぬわかれに ねはなかれつつ | 宗成 |
2219 | ありはてぬ ならひはさそと しりなから わかれにたへぬ わかなみたかな | 良空 |
2220 | はなのいろも うきよにかふる すみそめの そてやなみたに なほしつくらむ | 家隆 |
2221 | うれしさを つつむとききし そてのうへに なけくなみたの かからすもかな | 覚誉法親王 |
2222 | うれしさを つつみしそても なみたにて なけきそおいの みにあまりぬる | 公秀 |
2223 | さきたつに かへぬいのちの なからへて なそややそちに あまりかなしき | 栄運 |
2224 | おもひきや むそちあまりの さかこえて このわかれちに まよふへしとは | 冬信女 |
2225 | すみなれし ふるさとひとも なきとこに かたしくそては つゆもかわかす | 長家 |
2226 | かへるへき ときにはなりぬ みやこにて たかたもとをか まくらにをせむ | 旅人 |
2227 | ふゆかれの ははそのこのは ちりしより そてのしくれは いまもかわかす | 真昭 |
2228 | あとしたふ なみたのそての くれなゐに あらそひおつる みねのもみちは | 為成(冷泉為相男) |
2229 | おもひやれ あととふしもの ふりすのみ ひとりぬれそふ こけのたもとを | 光厳院 |
2230 | つららゐし そてのなみたの そのままに はやななとせの しもそかさなる | 覚誉法親王 |
2231 | きみをまた うつつにみめや あふことの かたみにもらぬ みつはありとも | 元良親王 |
2232 | ほともなく くもとなりぬる きみなれと むかしのゆめの ここちこそすれ | 後朱雀院 |
2233 | ふかくさの のへのけふりと なりにせは いつれのくもを わきてとはまし | 道綱母 |
2234 | なきひとの うはのそらなる かたみかな けふりとなりし ゆふくれのくも | 頼重 |
2235 | なきひとの よはのけふりの ゆくへとて くもとみなから あはれとやみむ | 淑文 |
2236 | とりへやま みねにたえせぬ うきくもや おくれさきたつ けふりなるらむ | 兵衛督(達智門院) |
2237 | きえはてし けふりのすゑの おもかけも たちそふきりの ふかくさのやま | 伏見院 |
2238 | あふことの かきりのたひの わかれには してのやまちそ つゆけかるへき | 天暦贈太皇太后宮 |
2239 | きみのみや つゆけかるへき してのやま おくれしとおもふ わかそてをみよ | 村上天皇 |
2240 | さきたたは いかにとおもふ をりをりそ うきわかれちは なくさまれける | 澄覚法親王 |
2241 | さきたたし おくれしとこそ おもひしか ちきりしかひも なきわかれかな | 頼時 |
2242 | さきたつと いふもはかなし いつまてか むなしきあとに みをのこすへき | 読人不知 |
2243 | したふへき かたこそしらね ととまらぬ みちとてひとの いつちゆくらむ | 深守法親王 |
2244 | なきひとの ゆくへやさても しらるると まことのみちに たつねいるかな | 顕覚 |
2245 | たちそひて くもにゆくへき みちならは けふりとならむ みをもをしまし | 行経 |
2246 | しるへせは おなしみちにも ともなはて うきよにのこる われそかなしき | 双救 |
2247 | なをとめて くちぬためしの ことのはは なきあとにこそ いろまさりけれ | 成茂 |
2248 | なきあとの やみのうつつに ひかすへて またみぬゆめや とほさかるらむ | 行氏(祝部行言男) |
2249 | おもへたた ゆめもさたかに みえわかて まかふこころの やみのうつつを | 忠長 |
2250 | ゆめにたに またみることは かたをかの あはれおやなき みとそなりぬる | 基隆(藤原基成男) |
2251 | なけきわひ うちぬるひまも あらはこそ なきおもかけを ゆめにたにみめ | 行済 |
2252 | まほろしに かよふはかりの みちもかな まとろむほとの ひまはなくとも | 源承 |
2253 | まとろまて みしよのゆめも それなから またなかつきも めくりきにけり | 道覚法親王 |
2254 | わかれにし あきはほとなく めくりきて ときしもあれと さそしたふらむ | 為定(御子左二条為道男) |
2255 | めくりあふ あきこそいとと かなしけれ あるをみしよは とほさかりつつ | 兼好 |
2256 | とほさかる つきひにつけて いかはかり なきおもかけの こひしかるらむ | 為氏 |
2257 | とほさかる つきひそいとと なけかるる なきおもかけは みにとまれとも | 行済 |
2258 | のちしのふ ときさへあきの ゆふくれを いかにととめし かたみなるらむ | 実氏 |
2259 | おもひいてて しのふまてこそ かたくとも みしひととはむ かすにもらすな | 宣時(北条) |
2260 | おもひいつる ことをあまたに かなしきは なれこしひとの わかれなりけり | 行氏(平胤行男) |
2261 | つゆをたに いまはかたみと おもひおきし むかしおほえて そてやぬるらむ | 西音 |
2262 | いまもなほ むかしわすれぬ かたみとや あたにこほるる なみたなるらむ | 秀茂 |
2263 | わかみよに なからむのちの かたみとは おもひもいれす かきやおきけむ | 法守法親王 |
2264 | あるよにも なしとこたへし いつはりの やかてまことに なるそかなしき | 基政(藤原基綱男) |
2265 | みしひとの なきかうちには かそふとも あらましかはと たれかしのはむ | 長舜 |
2266 | ありしにも あらぬすかたの いつれをか またうけかへて みをくたくらむ | 行蓮 |
2267 | かくしつつ よよのむくひの つきせすは うけかたきみの またやしつまむ | 為道女 |
2268 | うかりける よよのむくひも こりはてて うけかたきみを またなしつめそ | 顕実母 |
2269 | あしたつの むれゐるさはの さされいしは ちよのかすとも おもほゆるかな | 読人不知 |
2270 | ちとせふと わかきくなへに あしたつの なきわたるなる こゑのはるけさ | 貫之 |
2271 | むしろたの いつぬきかはの しきなみに むれゐるたつの よろつよのこゑ | 良経(九条兼実男) |
2272 | ひなつるの しろたへころも けふよりは ちとせのあきに たちやかさねむ | 枇杷皇太后宮 |
2273 | すたちにし つるのけころも ほともなく またこのちよを きくそうれしき | 長家 |
2274 | ちとせふる くもゐにきたる つるのこの すたちはしむる けころもそこれ | 周防内侍 |
2275 | ちよふへき くもゐをさして すたちゆく つるのけころも みるそうれしき | 顕季 |
2276 | きみかよの ちとせのかすを よはふなり くもゐにたかき つるのもろこゑ | 道煕法親王 |
2277 | あまころも たみののしまの ゆふしほに ちとせをさして たつそなくなる | 為氏 |
2278 | ちとせまて ゆくすゑとほき つるのこを そたててもなほ きみそみるへき | 隆弁 |
2279 | ちとせとも かきらぬものを つるのこの なほつるのこの かすをしらねは | 重時 |
2280 | ももしきや おひそふたけの かすことに かはらぬちよの いろそみえける | 尊氏 |
2281 | よろつよも いろはかはらし このきみと あふけはたかき そののくれたけ | 貞時 |
2282 | きみかため ちよのためしを もとめこの かさしにをりし にはのくれたけ | 実任 |
2283 | ここのへに ふたよかさねて かはたけの おなしみかけに あへるかしこさ | 実継 |
2284 | あさみとり よものこすゑの めもはるに さまさまみゆる ちよのかけかな | 通具 |
2285 | われにひく まつのためしの あるへくは ちよのねのひの はるはるもみむ | 兼家 |
2286 | ちよとのみ ねのひのまつに ちきるかな あかぬこころの ひくにまかせて | 兼氏 |
2287 | きみかひく ねのひのけふを かそふれは ゑにかくまつの おひかはるまて | 道信 |
2288 | ちとせふる ときはのまつも あまたたひ きみかみよには おひかはりなむ | 道済 |
2289 | ももとせに ちかつくつゑの よよのあとに こえてもみゆる おいのさかかな | 後鳥羽院 |
2290 | あらたまる うつゑをつきて ちとせふる きみかねのひの まつをこそみれ | 師実 |
2291 | いろかへぬ まつのちとせの ありかすに はるをかさねて きみそみるへき | 兼経 |
2292 | わかきみの めくみをそへて ちきるらし まつのときはの ゆくすゑのはる | 為量 |
2293 | すゑとほき きみかみかきを ためしにて こたかきまつも いくちよかへむ | 隆朝 |
2294 | くもゐまて のとけかるへき ためしとは かねてもしるし ちよのはつはる | 実兼 |
2295 | いろかへぬ まつのちとせを とりそへて わかゆくすゑも よろつよのはる | 後光厳院 |
2296 | かきりなき よはひはいまた ここのそち なほちよとほき はるにもあるかな | 伏見院 |
2297 | うくひすの かはらぬこゑや きみかよに よろつかへりの はるをかさねむ | 為兼 |
2298 | たちかへる みよのはるとや うくひすの はなになくねも のとけかるらむ | 宰相典侍(後宇多院) |
2299 | いさけふは ころもてぬれて ふるゆきの あはつのをのに わかなつみてむ | 為家 |
2300 | はるのひの なにおふやまの みねはれて くもらぬかけは よろつよのため | 基忠(鷹司兼平男) |
2301 | うめかえの はなはひさしき にほひにて くもゐのはるそ かせものとけき | 家定 |
2302 | こころこそ まつひらけぬれ きみかよに あへるわかみは はなならねとも | 道平 |
2303 | たちかへり みたひときしる ためしあれと やよにつかへて はなはみさりき | 冬平 |
2304 | ももしきに やちよかさねて さくらはな にほはむはるそ かきりしられぬ | 読人不知 |
2305 | いにしへの くもゐのさくら いまさらに さきつつみよの はるやしるらむ | 万代(後醍醐院女蔵人) |
2306 | はなのいろは ちとせをかねて いにしへの ためしにまさる はるにもあるかな | 為道 |
2307 | うつろはぬ はこやのやまの はなのいろに けふここのへの はるをそへつつ | 為実(御子左藤原為氏男) |
2308 | きみみよと さししかさしは ちりもせす うつろひもせす のとけからなむ | 伊尹 |
2309 | ここのそち みちぬるはるの ときにあひて はなのこころも ひらけそふらむ | 為兼 |
2310 | またれつる こころひらけて おそさくら にほひひさしき いろそことなる | 後醍醐院 |
2311 | いまそけに こころひらけて きみかよに はなもかひある いろをそへける | 達智門院 |
2312 | そこふかく ひけとたえせぬ あやめくさ ちとせをまつの ねにやくらへむ | 上東門院 |
2313 | なかきよの ためしにひけは あやめくさ おなしよとのも わかれさりけり | 枇杷皇太后宮 |
2314 | おりたちて ひけるあやめの ねをみてそ けふよりなかき ためしをもしる | 道長 |
2315 | さなへとる けふしもあめの ふることは よのうるふへき しるしなりけり | 忠通 |
2316 | ゆくすゑは なほひさかたの あまのかは ちよのはしめの あきにあひつつ | 万秋門院 |
2317 | よろつよの まつにかかれる あきのつき ひさしきかけを みよとなるへし | 高光 |
2318 | いくかへり すまむとすらむ いけみつは うつれるつきの かけものとけし | 忠実 |
2319 | めくりあはむ ちとせのあきの ゆくすゑを つきにそちきる くものうへひと | 為兼 |
2320 | かけなひく ひかりをそへて このやとの つきもむかしを うつすとそみる | 公直母 |
2321 | あきふかき やまたのなるこ おしなへて をさまれるよの ためしにそひく | 俊成(藤原俊忠男) |
2322 | やまみつに おいせぬちよを せきとめて おのれうつろふ しらきくのはな | 定家 |
2323 | いくちよと あきのかきりも しらきくの はなにそたのむ きみかめくみを | 新大納言(昭訓門院) |
2324 | をさまれる みよのみつきと よるひをを おほみやひとに けふたまふなり | 邦省親王 |
2325 | しらかはの たえぬなかれを たつねきて よろつよちきる ともちとりかな | 覚助法親王 |
2326 | はなのやま あとをたつぬる ゆきのいろに としふるみちの ひかりをそみる | 定家 |
2327 | けさはまた くもゐのゆきを ふみわけて ふりにしよよの あとをしるかな | 兼胤 |
2328 | をさまれる よのことわさを ためしにて いまやむかしの あとにさかえむ | 師光(中原師重男) |
2329 | きみかよは むかしにかへる としつきを かそへてやかて ありかすにせむ | 慈勝 |
2330 | いまよりの ちとせののちの ちとせをも きみそかそへて ありかすにせむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
2331 | けふやさは のこりおほかる よろつよの かすしりそむる はしめなるらむ | 能信(藤原道長男) |
2332 | おいのさか たかきよはひを かそへても のこるちとせは きみのまにまに | 為氏 |
2333 | たえせしな のちのさかのの すゑとほく とみのをかはの なかれあまたに | 亀山院 |
2334 | まつかえの みとりのかけを いけみつに うつせはきみか ちよそかさなる | 資明 |
2335 | まつにさく はなのかかみも くもりなく とかへりまてと すめるいけみつ | 為明 |
2336 | うつろはぬ まつにつけてや はしたての ひさしきよをは かそへわたらむ | 読人不知 |
2337 | きみかよは なかゐのうらの さされいしの いはねのやまと なりはつるまて | 顕綱 |
2338 | いのりこし わかたつそまの やまたかみ ちとせのさかも きみそこゆへき | 良聖 |
2339 | ちはやふる かみちのやまの あさひかけ なほきみかよに くもりあらすな | 実氏 |
2340 | よよをへて すみにしやまの まつのかせ ちとせのこゑや ゆつりおきけむ | 後京極院 |
2341 | ゆくすゑを ゆつりおきける まつのかせ つたへむちよの こゑそしらるる | 達智門院 |
2342 | きみかよを とふひとあらは いつるひの ひかりをさして そらにこたへむ | 公経(藤原実宗男) |
2343 | きみかため いろやまさらむ もみちはを みにしるあきは ときならすとも | 基忠(鷹司兼平男) |
2344 | われかくて きみかななよに あふさかの せきしまさしき みちそしらるる | 基忠(鷹司兼平男) |
2345 | いつかたも せきのとささぬ みよにあひて いまわかみちそ すゑとほりぬる | 為世(御子左藤原為氏男) |
2346 | ふるあめの めくみにかかる からころも たちゐにみよを なほいのるかな | 朝尹 |
2347 | よろつよも つきせさるへき わかきみを はるかにたのむ みこそおいぬれ | 隆信 |
2348 | ななそちの けふのためとや むかしより やしろのかすを さためおきけむ | 後嵯峨院 |
2349 | あしはらや たたしきくにの かせとして やまとことはの すゑもみたれす | 花園院 |
2350 | わたのはら もろこしまても ゆくふねに なみしつかなる よとはしるらむ | 尊円法親王 |
2351 | うなはらや なみにたたよふ あしかひの かひあるくにと なれるかしこさ | 国冬 |
2352 | あしはらの くにつかみわさ しけけれは とこよにきみか みよそさかゆく | 朝棟 |
2353 | うこきなき やまとしまねの ときはきも くにををさめし かみやうゑけむ | 兼直 |
2354 | かみやまの みねにおふてふ たまつはき やちよはきみの ためといのらむ | 経久 |
2355 | くものうへに よろつよとのみ きこゆるは たかくらやまの こゑにそありける | 読人不知 |
2356 | いはねやま やまあゐにすれる をみころも たもとゆたかに たつそうれしき | 匡房 |
2357 | いろかへぬ くろかみやまの やまかつら かくてやひさに つかへまつらむ | 行家(藤原知家男) |
2358 | いにしへに ややたちまさる みたからの にひゐのさとは にきはひにけり | 俊光 |