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「新千載和歌集」一覧

2358件


1はるやたつ ゆきけのくもは まきもくの ひはらにかすみ たなひきにけり俊成(藤原俊忠男)
2きえあへぬ いつのゆきまに はるのきて よしののやまの まつかすむらむ家良
3またきえぬ たかねのみゆき はるかけて かすみにけりな かつらきのやま実兼
4いとはやも はるきにけらし あまのはら ふりさけみれは かすみたなひく冬平
5あしひきの やまはかすめと いつるひの かけもくもらて はるはきにけり為世(御子左藤原為氏男)
6はるくれは かすみのいろに そめてけり よしののやまの たきのしらいと為子(贈従三位)
7はるきぬと みかきかはらは かすめとも なほゆきさゆる みよしののやま俊成(藤原俊忠男)
8かすかのの ゆきまのくさの すりころも かすみのみたれ はるかせそふく雅経
9うちなひき さとこそかすめ をちこちの あさけのけふり はるやたつらむ為藤
10はるのくる かたたのうらの あさなきに みるめもしらす たつかすみかな基忠(鷹司兼平男)
11こくふねも なみのいつくに まよふらむ かすみのおくの しほかまのうら為道
12たまもかる かたやいつくそ かすみたつ あさかのうらの はるのあけほの為相
13わたのはら かすみもいくへ たつなみの ゆたのたゆたに うらかせそふく道家
14いさりする よさのあまひと いてぬらし うらかせゆるく かすみわたれり恵慶
15にほてるや しかのうらかせ はるかけて ささなみなから たつかすみかな公雄
16しかのうらや はままつかえの はるのいろを そらにふかめて たつかすみかな尊円法親王
17いつしかと すゑのまつやま かすめるは なみとともにや はるのこゆらむ俊頼(源経信男)
18ねのひする いつくはあれと かめのをの いはねのまつを ためしにそひく為家
19ここのへの かすみのうちに ひくまつは けふをやちよの ためしにもせむ雅実
20ねのひして ふたはのまつの ちよなから きみかやとにも うつしつるかな公実
21くれたけの よよにつたへて うくひすの たかきにうつる こゑそなれぬる冬平
22なれもまた たによりいてて きみかよに あへるをときと うくひすそなく良基(二条道平男)
23うくひすの こゑのいろにや あさみとり かすめるそらも のとけかるらむ実教
24あさなあさな おのれなきてや うくひすの としたちかへる はるをしるらむ為氏
25はなさかぬ ときはのやまの うくひすは かすみをみてや はるをしるらむ能宣
26おほつかな いつこなるらむ はなさかぬ かすみのうちの うくひすのこゑ公任
27うくひすの おのかなくねは はるなれと ねくらのたけを うつむしらゆき花園院
28はるはまつ わかなつまむと しめおきし のへともみえす ゆきのふれれは実朝
29ふめはをし かたののわかな ゆきふかみ ききすのあとを たつねてそつむ安芸(郁芳門院)
30ふみわけて のさはのわかな けふつまむ ゆきまをまたは ひかすへぬへし後光厳院
31はるあさき ゆきけのみつに そてぬれて さはたのわかな けふそつみつる伏見院
32いつしかと のへにこころの あくかるる はるのならひと わかなつむなり為遠
33きのふこそ やくとはみしか かすかのに いつしかけふは わかなつみつつ読人不知
34あかねさす ひるはたゆたひ うはたまの よるのいとまに つめるねせりそ諸兄
35あめつゆの めくみかはらて かすかのに おほくのはるの わかなつみつる実泰
36ふゆかれの しののをすすき うちなひき わかなつむのに はるかせそふく為家
37はるさめも こそみしのへの しるへかは みとりにかへる をきのやけはら寂蓮
38しもかれの こやのやへふき ふきかへて あしのわかはに はるかせそふく良経(九条兼実男)
39なにはつに むかしのかせは ことなれと わかよはるへと さくやうめかえ後宇多院
40こころあらむ ひとのとへかし うめのはな かすみにかをる はるのやまさと俊成(藤原俊忠男)
41うめかかの にほふかきねの あまたあれは このさとわきて とふひともなし公宗母
42かすめとも かやはかくるる こもりえの はつせのさとの はるのうめかえ有房(六条通有男)
43はるかせは かすみのそらに かよひきて うめかかにほふ やとのゆふくれ後伏見院
44おもひやる こころをかせの たよりにて たかなほさりの うめのにほひそ月花門院
45ふくかせの うはのそらなる うめかかに かすみもにほふ はるのゆふくれ為氏
46さきそむる はなはさなから うつもれて ゆきのみにほふ うめのしたかせ兼氏
47あさみとり はるのそらより ちるゆきに こすゑのうめも まかひぬるかな読人不知
48うめかえに ゆきのふれれは いつれをか はなとはわきて はるのきつらむ躬恒
49ゆきとのみ あやまたれしを うめのはな くれなゐにさへ にほひぬるかな元輔(清原春光男)
50そてふれて をらはやをらむ わきもこか すそひくにはに にほふうめかえ為経(甘露寺藤原資経男)
51うつしても なほこそにほへ うめのはな ひとのそてより すくるはるかせ為世(御子左藤原為氏男)
52うめかかの みにしむとこは ゆめならて ねぬよかすめる つきをみるかな宗尊親王
53はるのよの おとろくゆめは あともなし ねやもるつきに うめかかそする光厳院
54みぬほとに うつろひぬへき うめのはな ふかかりきとや のちにかたらむ中務
55うくひすの やとのはなたに いろこくは かせにしらせて しはしまたなむ実頼
56はなみにも ゆくへきものを あをやきの いとにかけつつ けふはくらしつ遍昭
57あをやきの まゆにこもれる いとなれは はるのくるにそ いろまさりける兼輔
58はるかせや やなきのかみを けつるらむ みとりのまゆも みたるはかりに亀山院
59さほひめの はつはなさくら かけそへて はるのいろなる あをやきのいと公賢
60たにかはの いはねかたしく あをやきの うちたれかみを あらふしらなみ良経(九条兼実男)
61かせわたる きしのやなきの かたいとに むすひもとめぬ はるのあさつゆ為兼
62しらつゆの むすふもなかき あをやきの たまのをとけて はるかせそふく定為
63ちきりおけ たままくくすに かせふかは うらみもはてし はるのかりかね定家
64ふるさとに ゆきてうらみむ かへるかり まつらむひとを われにをしへよ国冬
65はることに うはのそらなる こころもて ものわすれせす かへるかりかね国信
66いつのまに とほさかるらむ かへるさの あとはかすみの はるのかりかね為世(御子左藤原為氏男)
67みねこえて あきこしみちや まよふらむ かすみのきたに かりもなくなり土御門院
68あまさかる くもちやまよふ かりかねの きこゆるそらに かすむつきかけ実兼
69おほそらに かりこそむれて かへるなれ あきふるさとや こひしかるらむ山田
70はることに かりかへるなり ふるさとに いかなるはなの さけはなるらむ雅定
71はるもなほ はなまつほとの さひしさを なくさめかぬる みよしののやま雅有
72おもひやる こころもたえす みよしのや はなまつころの はるのあけほの覚助法親王
73まかふとは かつしりなから やまさくら くもをたつねて ゆかぬひそなき国助
74しはしなほ よそなからみむ やまさくら たつねはくもに なりもこそすれ為子(贈従三位)
75おもかけは よそなるくもに たちなれし たかまのさくら はなさきにけり為家
76しからきの とやまのさくら さきにけり まきのこすゑに かかるしらくも経教
77さきてはや そらにそみゆる やまたかみ かすみをわくる はなのこすゑは為世(御子左藤原為氏男)
78またれつる はななりけりな やまさくら かすみのうへに みゆるしらくも良平
79あしひきの とほやまさくら さきぬらし かすみてかかる みねのしらくも為明
80くもかかる とほやまとりの をのへより へたてぬいろの はなさきにけり為定(御子左二条為道男)
81たかさこの まつのこのまに さくはなや をのへにたてる くもとみゆらむ道嗣
82つきかけの はれゆくままに さくらはな そこともいとと みえそわかれぬ師実
83かすかなる みかさのやまに つきはいてぬ さけるさくらの いろもみゆらむ人麿
84あしひきの やまさくらはな ひをへつつ かくしにほはは われこひめやも赤人
85さきそむる ところからにそ さくらはな あたにちるてふ なをたつなゆめ村上天皇
86さかぬまの くもをもかつは はなとみて さかりひさしき やまさくらかな兼盛
87にほはすは たれかことこと わきてしらむ はなとくもとの おなしよそめを隆教
88みよしのの たかねのさくら さきしより くもさへはなの かににほひつつ義詮
89こもりえの はつせのさくら さきしより あらはにかかる はなのしらくも尊氏
90おしなへて このめもはると みえしより はなになりゆく みよしののやま後醍醐院
91みよしのは はなよりほかの いろもなし たてるやいつこ みねのしらくも為藤
92はなとのみ はるはさなから みよしのの やまのさくらに かかるしらくも長舜
93さきぬれは くもとゆきとに うつもれて はなにはうとし みよしののやま寂蓮
94かせかをる はなのあたりに きてみれは くももまかはす みよしののやま讃岐(二条院)
95はるといへは はなやかをると やまさくら みるへきひとの たつねこぬかな白河院
96さそへとも きみもこすゑの はなみにと ひとりそまとふ はるのひくらし読人不知
97はなゆゑも とふへきひとそ またれける おもひのほかに たれかたつねむ道玄
98たつねいる かすみもふかき はなのかを さそひていつる やまおろしのかせ公経(藤原実宗男)
99かみなひの みむろのさくら さきそへて いくへたつたの はなのしらくも為定(御子左二条為道男)
100はるにあふ おいきのさくら ふりぬれは あまたかさなる みゆきをそみる伏見院
101ももしきや はなもむかしの かをとめて ふるきこすゑに はるかせそふく順徳院
102ここのへに にほひかさなる さくらはな めかれぬいろの いくよへぬらむ為子(従二位)
103よしのやま くもゐにみゆる たきのいとの たえぬやはなの さかりなるらむ後鳥羽院
104あらしやま これもよしのや うつすらむ さくらにかかる たきのしらいと後宇多院
105さきつつく おなしさくらの いろみえて たちもまかはぬ みねのしらくも隆教
106あさひさす こすゑははなに あらはれて とやまのさくら くももかからす源承
107ふくかせに にほひをそへて まよふなり はなのよそなる みねのしらくも基嗣
108はるかせの にほはさりせは みよしのの くもとはなとを いかてわかまし邦省親王
109かすみたつ みねにもをにも やまさくら にほひへたてぬ はるかせそふく覚助法親王
110たつねきて けふそたかまの やまさくら よそならてみる はなのしらくも公明
111しらくもと あたにもいはし やまさくら よそにみるなの たちもこそすれ兼宗
112このもとを ほかにもとはて わかやとに こころのとけき はなのころかな後醍醐院
113ももしきの みはしのさくら ちらぬまに あさきよめせよ とものみやつこ実重(三条公親男)
114をるひとを わきていさめむ ここのへの みはしのはなに かせはふくとも為藤
115ここのへの くもゐのはるの さくらはな あきのみやひと いかてをるらむ後醍醐院
116たをらすは あきのみやひと いかてかは くもゐのはるの はなをみるへき後京極院
117たちなるる くもゐのはなを おもはすは よしののおくに はるやくらさむ成家
118たつねても たれかはわかむ よしのやま はなよりはなの おくのしらくも基家
119やまかせに はるるかすみの ひまことに もれいつるくもや さくらなるらむ雲雅
120いにしへの はるのかたみに なかめつる はなをいつこの かせさそふらむ読人不知
121かせふけは はなさくかたへ おもひやる こころをさへも ちらしつるかな貞文
122たをりもて やとにそかさす さくらはな こすゑはかせの うしろめたさに国信
123あつさゆみ はるのこころに いるものは たかまとやまの さくらなりけり公能
124さきしより うつろふいろの つらさまて はなをおもはぬ ときのまそなき為親
125いにしへの はるをそしたふ いまのよの はなになりぬる ひとのこころに後宇多院
126ふくかせの うらみはみにそ かへりぬる をさまれるよは はなもちらしを後嵯峨院
127ふくかせの をさまれるよは かきりありて ちるものとけき やまさくらかな俊光
128はるかせは ふくとしもなき ゆふくれに こすゑのはなも のとかにそちる花園院
129さくらはな ちりかひかすむ ひさかたの くもゐにかをる はるのやまかせ家隆
130さくらはな そらさへにほふ やまかせに うつろふくもの あともさためす成実(藤原親実男)
131たかさこの まつのみとりは つれなくて をのへのはなの いろそうつろふ為兼
132にほひくる かせのたよりを しをりにて はなにこえゆく しかのやまみち定為
133ふきおくる はなをたよりに たつねきて つらさわするる はるのやまかせ雅孝
134さしもこそ いとふうきなの あらしやま はなのところと いかてなりけむ良基(二条道平男)
135うらみはや かつちるはなの こすゑこそ やかてあらしの やとりなりけれ為道
136ちるかうへに またさそはれて はるかせの ふくにまかする やまさくらかな通顕
137いまよりは はなのたよりに ひとまたし ちれはわかるる おもひそひけり大輔(殷富門院)
138さくらはな またみぬほとに ちりにけり のちのはるたに こころあらなむ義孝(藤原伊尹男)
139このはるも きみをはまちつ さくらはな かせのこころの なきにやあるらむ延光
140あちきなく またこりすまに をしめとも うつろひまさる やまさくらかな公相
141むかしより かくこそひとも をしみけめ たかならはしに はなのちるらむ教長
142おのつから ちりやのこらむ やまさくら をしむこころを はなにしられは為世(御子左藤原為氏男)
143みれはまた ちらぬこころを やまさくら はなにもいかて おもひしらせむ長舜
144ゆふたたみ たむけのやまの さくらはな ぬさもとりあへす はるかせそふく道家
145しらくもに まかふたかねの やまさくら ちるをははなと みるかひそなき国助女
146いろもかも わきそかねぬる はなさそふ あらしになひく みねのしらくも実性
147みよしのの よしののさくら ちりぬらし たえまかちなる みねのしらくも公宗(西園寺実衡男)
148いまさらに ゆきとみよとや みよしのの よしののさくら はるかせそふく為道
149ゆきとのみ あらしのすゑに さそはれて くもにまかはぬ やまさくらかな経継
150かへるさを いかにせよとて やまさくら ふままくをしき ゆきとふるらむ実定
151このまより はなのゆきのみ ちりくるは みかさのやまの もるにやあるらむ読人不知
152にはたつみ このもとちかく なかれすは うたかたはなを ありとみましや兼輔
153とふひとも こすゑをみてや かへるらむ あはれさひしき はなのにはかな丹後(宜秋門院)
154みやきもり なきさのかすみ たなひきて むかしもとほし しかのはなその定家
155ふるさとと なりにしかとも さくらさく はるやむかしの しかのはなその俊成女
156しかのうらや よせくるなみも しろたへに はなふきおろす ひらのやまかせ伏見院
157しかのうらや さくらふきこす やまかせに よるへさためぬ はなのささなみ有房(六条通有男)
158はるかせに かすみなかれて よしのかは みつのうへゆく はなのしらなみ読人不知
159よしのかは おつるしらあわの きえかへり のこるもつらき はなのいろかな知家
160はるかせを たきついはねに せきかねて かすみにおつる はなのしらなみ公経(藤原実宗男)
161とませかは とまらぬなみに かけてけり しらゆふたきつ はなのしからみ公雄
162たきつせは かすみのそこに おとたえて くもよりおつる はなのしらなみ基氏(足利尊氏男)
163さそはれし なこりときけは ふくかせの おとこそはなの かたみなりけれ親源
164ひとりのみ なかむるやとに ちるはなを あふきのかせの つてにたにみよ瓊子内親王
165ふきまよふ あふきのかせの つてにこそ いはてかひある いろもみえけれ■子内親王
166はるのよの あらしやそらに さむからし かすみもなれぬ つきのかけかな為藤
167はるのよの ならひもつらし なにしかも くもらぬつきの かすみそめけむ法守法親王
168そことしも わかれぬそらの ひかりにて かすみににほふ はるのよのつき為定(御子左二条為道男)
169このもとは ひかすはかりを にほひにて はなものこらぬ はるのふるさと定家
170はるかすみ たなひくたにに かへるなり くもよりいてし うくひすのこゑ後二条院
171をやまたの なはしろみつも せきわけす ゆたかなるよに まかせてそみる為世(御子左藤原為氏男)
172せきとめぬ ゐてのしからみ なみこえて はるのわかれに なくかはつかな国助
173いろみえて なかれもやらす やまふきの うつろふかけや ゐてのしからみ国道(津守国助男)
174みなそこに うつるをしらて やまふきの はなのうへこす なみかとそみる公清
175よしのかは はやせのなみに かけみえて はなもいはこす きしのやまふき冬平
176たちかへり みれともあかぬ ふちなみは すくるこころに かかるなりけり慈円
177ときはなる みきはのまつに かかるより はなもひさしき いけのふちなみ光厳院
178ふちのはな かせをさまれる むらさきの くもたちさらぬ ところとそみる敏行
179かすかのの ふちはちりゆく なにをかは みかりのひとの をりてかささむ読人不知
180ゆくふねの あとなきかたを したひても はるはとまらぬ やへのしほかせ達智門院
181わかれゆく はるのかすみの せきもりも すくるひかすを ととめやはする宣子(従三位藤原)
182ちりはつる はなのあとたに さひしきを いかにせよとて はるのゆくらむ後光厳院
183ちるはなを まつさきたてて ひかすさへ うつりはてぬと くるるはるかな顕実母
184ねにかへり ふるすをいそく はなとりの おなしみちにや はるもゆくらむ為定(御子左二条為道男)
185はなたにも ちらてわかるる はるならは いとかくけふは をしまさらまし朝忠
186いくかへり はるのわかれを をしみきぬ みとりのそらも あはれとはみよ俊成(藤原俊忠男)
187たちかふる けふともいさや しらかさね きのふのはなの そめぬたもとは花園院
188たちかふる かとりのきぬの しらかさね かさねてもなほ うすきそてかな有房(六条通有男)
189わかれにし はなのかとりの なつころも はるのかたみや なほのこるらむ経顕(藤原定資男)
190はるすきて けふぬきかふる からころも みにこそなれね なつはきにけり為定(御子左二条為道男)
191なれきつる はなのかをしき ころもてを けふたちかへて なつはきにけり宣子(従三位藤原)
192ときすきて あをはにましる おそさくら はるはこすゑに とまるなりけり崇光院
193しのひねも けふよりとこそ まつへきに おもひもあへぬ ほとときすかな後醍醐院
194なきぬなり うつきのけふの ほとときす これやまことの はつねなるらむ後京極院
195ほとときす うのはなやまに やすらひて そらにしられぬ つきになくなり守覚法親王
196いとはやも さとなれにけり ほとときす うのはなかきに をちかへりなく光厳院
197たまかはの さとのかきねの うのはなは およはぬなみの こすかとそみる道平
198ゆふつくよ ひかりをそへて たまかはの さとのしるへと さけるうのはな公顕
199ひさかたの つきのかけとも みゆるかな かつらのさとに さけるうのはな読人不知
200あけぬとも なほかけのこせ しろたへの うのはなやまの みしかよのつき宗尊親王
201ことしまて よよかけきつる あふひくさ たえぬちきりは かみやうくらむ雅孝
202もろかつら くさのゆかりに あらねとも かけてまたるる ほとときすかな定家
203かみやまの もりのしたくさ ふみならし まつひかさなる ほとときすかな尊氏
204しのひねは ふけてやきくと ほとときす いもねぬよはを かさねてそまつ進子内親王
205あしひきの やまほとときす まちわひぬ かたらひなれし たのみはかりに国冬
206ちきるたに たのまれぬよに ほとときす うはのそらなる ねこそまたるれ邦長
207またてきく はつねならねは つれなきを うらみぬころの ほとときすかな為遠
208はつねまつ われにてしれは ほとときす ひとよりさきと えこそうらみね後二条院
209われならぬ ひともまちけり ほとときす としにまれなる はつねとおもへは後二条院
210つれなさも かはらぬころと ほとときす こそのふるこゑ なほやまたれむ深守法親王
211しのふらむ こころもしらす ほとときす さつきこぬまの ねこそまたるれ為家
212ほとときす しのひもあへす もらすなり さつきまつまの こそのふるこゑ後鳥羽院
213おのつから ききてもいとと しのひねの ころはまたるる ほとときすかな公宗(西園寺実衡男)
214ほとときす なきつるかたの しのひねに こころゆるさす なほまたれつつ為明
215ほとときす かたらふこゑを ききしより あしのしのやに いこそねられね能因
216まちわひぬ やとやかへまし ほとときす おなしみやこも わきてなくなり惟明親王
217ほとときす やまちにたかく なくこゑを わかひとりねに きくかかひなさ家持
218このさとに しはしかたらへ ほとときす ほかのはつねは けふならすとも公継
219なきふりて のちにかたらへ ほとときす おいてきくへき はつねならすは冬平
220たつねいる やまのかひあれ ほとときす ききてみやこの ひとにかたらむ行済
221またれける けふとしりてや ほとときす やまのかひある ねをはなくらむ元盛
222かよひける こころありてや ほとときす またるるほとの そらになくらむ具行
223ほとときす くものいつくに しのひきて そらよりもらす はつねなるらむ為藤
224みしかよは おもひもあへす ほとときす あけゆくままに はつねなくなり性助法親王
225ききつやと とふひとあらは ほとときす こたふはかりの ひとこゑもかな隆房
226ほとときす ひとつてにのみ きくころは みのかすならぬ ねこそなかるれ泰時
227きくひとも われになつけそ ほとときす これそはつねと おもふはかりに重氏
228たかためか こころつくさて ほとときす このまのつきの よそになくらむ実教
229まちいつる くもまのつきに ほとときす をしむはつねも えやはしのはぬ花園院
230ほとときす いこまのやまや すきぬらむ へたつるくもの ほかになくなり道家
231したふとも しらてやなれも ほとときす かたらひすてて よそにすくらむ成久
232いくさとの ゆめをのこして ほとときす かたらふこゑの とほさかるらむ雅有
233うたたねは ゆめにやあるらむ ほとときす おとろくほとに またもきこえぬ顕房
234さとわかす かたらひわたれ ほとときす まつらむひとの おなしねさめに桓守
235しらてこそ つれなかるらめ ほとときす おのかためなる よはのねさめを維貞
236なれたにも かたらひすつな ほとときす ものおもふころの よはのねさめを為藤
237ほとときす いまやとおもふ ゆふくれを たのめてくもる むらさめのそら為相
238むらさめの くもまのつきを しるへにて いととまたるる ほとときすかな後光厳院
239なきぬへき こころのうらも むらさめの たよりまさしき ほとときすかな為世(御子左藤原為氏男)
240ほとときす こゑまつころや やまかつの わさたのさなへ うゑはしむらむ家良
241たみのため ときあるあめを いのるとも しらてやたこの さなへとるらむ後醍醐院
242おそくとき たみのさなへに みつきもの たえぬひつきの ほとそしらるる道平
243みなかみに たかさなへとる すゑならむ なかれてにこる たにかはのみつ土御門院
244ひろせかは あたりのをたに せきいれて そてつくはかり とるさなへかな定円(葉室光俊男)
245そてのかは はなたちはなに かへりきぬ おもかけみせよ うたたねのゆめ為子(贈従三位)
246しのふへき よよのかたみに のこしおきて にほひはふりぬ のきのたちはな定為
247たちはなの にほひはかりや ふるさとの のきはにくちぬ かたみなるらむ公雄
248そてふれし むかしのあとは しのへとも よそにみはしの のきのたちはな尊氏
249そてふれし ちかきまもりの いつとせも あはれむかしと にほふたちはな公賢
250さそなけに はなたちはなも にほふらむ むかしにかへる ももしきのには公秀
251かをとめて むかしにかへれ いへのかせ ふきつたへたる のきのたちはな実忠
252たちはなの はなのやととふ ほとときす かれなていまも むかしこふなり後白河院
253たかために なくやさつきの ゆふへとて やまほとときす なほまたるらむ定家
254きくたひに みにそしみける ほとときす こゑはいろなる ものならなくに忠盛
255いまははや ききふりぬへき さみたれの そらにもあかぬ ほとときすかな為兼
256さみたれの くもゐにたかき ほとときす つきのかつらの かけしたふらし順徳院
257わするなよ またこむとしも ほとときす のきのあやめの さみたれのそら順徳院
258さみたれに みたれてひとを おもふとて なつのよをさへ あかしかねつる遍昭
259かきくもり ふるさみたれの つれつれと はるるひまなき ころにもあるかな読人不知
260さみたれの そらかきくらす ときしもあれ なほこそさらせ ぬのひきのたき覚誉法親王
261つゆにたに みかさといひし みやきのの このしたくらき さみたれのころ宗尊親王
262さみたれは さはへのまこも いたつらに かりそめならぬ なみやこすらむ少将(藻壁門院)
263みつこゆる いけのうきくさ ねをたえて さそはれいつる さみたれのころ内経
264つつゐつつ ゐつつのうへに みつこえて むすふもあさし さみたれのころ通親
265なかれあしの すゑはもみえす なりにけり をののみなとの さみたれのころ基任
266ふちはせに かはるとききし あすかかは たかいつはりそ さみたれのころ公朝
267さみたれに みつまさるなり あすかかは いかにふちせの またかはるらむ公雄
268ありてゆく みかさそたかき みなせかは なになかれたる さみたれのころ公脩
269さみたれに かはおとたかく なりにけり みつのみかさの まさるのみかは道嗣
270さみたれに たのむつなても くちはてて なみにひかるる よとのかはふね隆信
271ひさかたの くものなみこす たきのうへの みふねのやまの さみたれのころ雅経
272さみたれの くもよりうへの あまのかは いかにふりてか みつまさるらむ道玄
273いつみかは とほきわたりの つきかけに こゑをつくして なくほとときす後宇多院
274ほとときす なこりのこゑを したふまに またてそみつる いさよひのつき公賢
275ふりにける こゑをのこして ほとときす なほみなつきの そらになくなり為世(御子左藤原為氏男)
276ともしする さつきのやまの あをつつら くるるよことに しかやたつらむ国助
277あつさゆみ いるさのやまの ゆふやみに つきよりさきと ともしをそする長通
278なつやまの しかのたちとに よもすから おもひをかけて あくるしののめ俊忠
279ともしする はやまのほくし よもすから もゆるやしかの おもひなるらむ伏見院
280ねにたてす もゆるほたるや おもひせく こころのたきの たまとみゆらむ顕実母
281よるひかる たまとそみゆる みつくらき あしへのなみに ましるほたるは後宇多院
282みつのおもに おのかおもひを かつみつつ かけはなれぬや ほたるなるらむ少将(藻壁門院)
283せりつみし ひとのおもひや さはみつに もえてほたるの かけとなりけむ実夏
284なかれえの いせのはまをき うちそよき すすしきかせに とふほたるかな国冬
285くさふかき つゆよりしけく とふほたる きえぬひかりそ かせにみたるる小督(昭訓門院)
286なつくさの ことしけくとも たまほこの みちたかはすは ひともまよはし義詮
287とこなつの はななかりせは やまかつの かきほにひとは たつねさらまし読人不知
288さととほき わかすむかたの うかひふね ほしかかはへの かかりひのかけ実重(三条公親男)
289うふねこく よかはのなみの おとふけて うつるもすすし かかりひのかけ徽安門院
290おほゐかは やまもとくたる かかりひの うつりもあへす あくるみしかよ為氏
291あまのかは くものみをゆく つきかけは のこりてはやく あくるみしかよ為世(御子左藤原為氏男)
292ひさかたの くものいつくの かけならて このまあけゆく みしかよのつき伏見院
293いつかたも やまのはとほき なかそらの くもまにあくる みしかよのつき冬平
294あけやすき そらにのこりて なつのよは いることしらぬ つきのかけかな為世(御子左藤原為氏男)
295なかそらに なほのこらすは みしかよを つきのとかとや おもひはてまし尊胤法親王
296いつくにか しはしすくさむ たかしまの かちのにかかる ゆふたちのそら為道
297なるかみの おとはそことも なかりけり くもれるかたや ゆふたちのそら氏村
298なつころも すすしくたちぬ うつせみの はかひのやまの まつのしたかせ経教
299ここのへの にはのくれたけ ふくかせも きよくすすしき こゑかよふなり行家(藤原知家男)
300むすふての いしまをせはみ おくやまの いはかきしみつ あかすもあるかな人麿
301したくくる みつにあきこそ かよふらし むすふいつみの てさへすすしき中務
302やましろの ゐてのしたおひ なかきひに むすふもあかぬ たまかはのみつ行親
303おほゐかは またなつなから すすしきは ゐせきにあきや もりてきつらむ読人不知
304またきより なみのしからみ かけてけり みそきまつまの かものかはかせ伏見院
305みそきかは きよきなかれに うつすなり ならのみやこの ふるきためしを冬教
306みたらしや みそきになかす おほぬさの つひによるせは あきかせそふく為定(御子左二条為道男)
307みそきする あさのはすゑの なひくより ひとのこころに かよふあきかせ俊成女
308しらてこそ あるへかりけれ あききぬと をきふくかせの おとにたてすは醍醐天皇
309かせわたる のきはにそよく くれたけの ひとよのうちに あきそきにける崇光院
310からころも つまふくかせの みにしむは うらさひしかる あきやきぬらむ光厳院
311けさのあさけ たもとすすしき かせたちて いとはやあきの しられぬるかな後伏見院
312あさまたき あきかせふけは せみのはの うすきころもそ すすしかりける読人不知
313このねぬる あさけのつゆに そてぬれて わかためつらき あきはきにけり知家
314あはれしる あきのゆふへの しらつゆは たかそてよりか おきはしめけむ家良
315よひよひに あきのくさはに おくつゆは たまにぬかむと とれはきえつつ躬恒
316しらつゆは けなはけななむ きえすとて たまにぬくへき ひともあらしを家持
317たかぬける たまにかあるらむ あきののの くさはのこらす むすふしらつゆ好忠
318つゆむすふ したくさみれは さくらあさの をふのかりふに あきはきにけり邦省親王
319ふきむすふ かせよりやかて みたれけり しけるあさちの あきのしらつゆ藤子(従三位)
320おとたえす のきはのをきの そよくかな いつふくかせの なこりなるらむ為定(御子左二条為道男)
321ふるさとは のきはのをきを かことにて ねぬよのとこに あきかせそふく良経(九条兼実男)
322おとたつる かせのやとりと なりはてて つゆにはうとき にはのをきはら公清
323なほさりに ほすゑをむすふ をきのはの おともせてなと ひとのすきけむ大弐三位
324ほしやらぬ なみたのつゆの かすそへて ものおもふそてに あきはきにけり資名
325あきをまつ としのわたりは とほけれと ちきりそたえぬ かささきのはし光厳院
326まちわたる たえまはとほき つきひにて けふのみかよふ かささきのはし後伏見院
327あふせをや たとらすわたる ゆふつくよ ひかりさしそふ かささきのはし公脩
328あまのかは あきをちきりし ことのはや わたすもみちの はしとなるらむ国道(津守国助男)
329わすれすよ たむけのにはの つゆとおく たまのをことの よよのしらへは公賢
330たなはたは われてまたあふ かかみかと あきのなぬかの つきやみるらむ後宇多院
331あまのはら ふりさけみれは たなはたの ほしのやとりに きりたちわたる経信
332あまのかは よふかくきみは わたるとも ひとしれすとは おもはさらなむ家持
333あまのかは こひしきときそ わたりぬる たきつなみたに そてはぬれつつ友則
334ふけぬるか みつかけくさの うちなひき すすしくなりぬ あまのかはかせ花園院
335あまのかは かはへのきりの ふかきよに つまむかへふね いまかいつらし花園院
336たなはたの あまのいはふね こよひこそ あきかせふきて まほにあふらめ顕輔
337あまのかは そのみなかみは きはむとも あふせははても あらしとそおもふ為藤
338かつらきの かみならねとも あまのかは あくるわひしき かささきのはし後嵯峨院
339あけゆけは あまのかはなみ たちかへり のちのあふせや なほちきるらむ実兼
340あまのかは ひとよはかりの あふせこそ つらきかみよの うらみなるらめ経継
341たなはたの いほはたころも まれにきて かさねもあへぬ つまやうらみむ後伏見院
342たなはたの いほはたころも おくつゆに ぬれてかさぬる あきはきにけり冬定
343たなはたの くものころもは たたひとよ かさねてうとく なるつきひかな為理
344たなはたは うきておもひや まさるらむ たつかはきりの けさのわかれに定為
345わかれちの かたみもとめす ゆふつくよ あかつきやみの ほしあひのそら後二条院
346としことに まつもすくすも わひしきは あきのはしめの なぬかなりけり和泉式部
347わかれては わひしきものを ひこほしの きのふけふこそ おもひやらるれ読人不知
348つゆふかき あしたのはらの はなすすき たかかへるさの たもとなるらむ兼氏
349ふきむすふ のへのをはなの あきかせに つゆのみたれぬ そてやなからむ一条(昭慶門院)
350あきかせに をはななみよる わかやとそ やまさとよりも つゆけかりける輔仁親王
351かせはらふ うつらのとこは よさむにて つきかけさひし ふかくさのさと恒明親王
352あさちふの をののしのはら いろつきて つゆしもさむみ うつらなくなり雅孝
353とにかくに そてやすからぬ ゆふへかな なみたあらそふ あきのしらつゆ為道
354ゆふくれの なみたにそはぬ つゆならは あきのあはれの ほとはみてまし道洪
355つゆやそふ おもひやまさる わかそての なみたそたえぬ あきのゆふくれ定為
356うかりける たかならはしの ゆふへより あきはなみたの つゆこほるらむ冬教
357いひしらぬ おもひもそれと なかりけり むなしきそらの あきのゆふくれ為定(御子左二条為道男)
358わすれすよ ふみならしてし みよしのの いはのかけちの あきのゆふくれ覚助法親王
359しなかとり ゐなののをささ うちなひき しのにふきしく あきのゆふかせ師信
360いかにせむ なけかしとても かなしさの こころにあまる あきのゆふくれ有忠
361ときわかぬ わかみとなにか おもひけむ なけきくははる あきのゆふくれ尊道法親王
362あはれしる わかこころなる ゆふくれを あきのならひと おもひけるかな公雄
363としことに おほみやひとの くるのへは あきのさかとや はなもみるらむ朱雀院
364いほしめて いまこそにはと なりにけれ やまのをのへの あきはきのはな後嵯峨院
365つゆわくる そてにそうつる むらさきの いろこきのへの はきかはなすり実俊(西園寺公宗男)
366あきかせに みたれにけりな みちのくの しのふにはあらぬ はきかはなすり為子(贈従三位)
367いくたひか さかりみすらむ みやきのの おなしふるえの あきはきのはな実教
368つゆなから をるへきものを みやきのの もとあらのはきに あきかせそふく邦省親王
369つゆなから ちくさふきしく あきかせに みたれてまさる はなのいろかな直義
370たとふへき かたこそなけれ わきもこか ねくたれかみの あさかほのはな匡房
371つゆふかき きりのまかきの あさほらけ しをれそまさる はなのいろいろ広義門院
372あさことに つかふるみちの ふちはかま かさねてにほふ あきのしらつゆ実泰
373しらつゆの おくとみしより さくはなの いろのちくさに のはなりにけり師賢(藤原師信男)
374いつしかも ゆきてやはみむ あきののの はなのしたひも とけもしぬらむ惟成
375はしたかの とかりのましは ふみならし かへるのはらに いつるつきかけ順徳院
376あしひきの やまのはきよく そらすみて くもをはよそに いつるつきかけ実兼
377あしひきの やまのはたかく なりにけり あらしのよそに すめるつきかけ為藤
378くももなき ゆふへのやまを いつるより こよひもしるく すめるつきかな光厳院
379かせわたる あまつくもゐの よはのつき いつしかあきの かけやそふらむ為親
380ふきはらふ あらしもつきも またれけり つらきへたての むらくものそら伏見院
381みるままに くももかからす ひさかたの つきのかつらを はらふあきかせ公宗(西園寺実衡男)
382ひとむらの くものあとより いてにけり かけはちとせの あきのよのつき慈勝
383かせわたる ゆふへのくもの たえまより やまのはなから いつるつきかけ盛徳
384ふきはらふ あらしにすみて やまのはの まつよりたかく いつるつきかけ貞時
385くもかかる をのへのまつを いてそめて みとりのそらに はるるつきかけ光吉
386くもはれて みとりのそらに すむつきや あまつをとめの かかみなるらむ行宗
387いけみつに ますみのかかみ かけそへて ちりもくもらぬ あきのよのつき公相
388つきやとる いはまのみつを むすふてに あきのなかはも かそへてそしる為家
389むかしみし くもゐはとほく へたつれと おもかけちかき もちつきのこま花園院
390あまのはら すめるはそらと なりにける むかしをつきの かけにみるかな為定(御子左二条為道男)
391あきのそらに あまねきつきを あふきみて わかよをてらす かけとたのまむ後宇多院
392くもりなき ためしとみてそ あきのよの つきにもわきて こころととめし後醍醐院
393みるひとの こころもなとか すまさらむ そらにくもらぬ あきのよのつき後醍醐院
394ひさかたの つきのくまなき あきのよは ひとのこころも すみまさりけり長家
395すみなれし よよのむかしの こととはむ しはしやすらへ くものうへのつき後光厳院
396ふくかせも をさまれるよの くものうへに なほひかりそふ つきをみるかな隆博
397いくあきも なほすみまされ ひさかたの ひかりのとけき くものうへのつき内実
398くものうへの つきもいくよか なれぬらむ あきくるかたの とのへもるみに師賢(藤原師信男)
399あきらけき みはしのあきの つきもみつ ちかきまもりの みにつかふとて冬通
400いかならむ よにもわすれし ここのへの あきのみやゐに なるるつきかけ為道
401つねよりも つきのひかりの さやけきは くものうへにて みれはなりけり重家
402くらゐやま いまいくさかを のほりてか くものうへなる つきをみるへき基氏(足利尊氏男)
403くれぬとも おもほえぬかな くものうへに かけわきかたき あきのよのつき公忠(源国紀男)
404うたたねに はかなくあくる あきのよと おもへはつきの ひかりなりけり肥後(京極前関白家)
405なかきよを ねぬにあけぬと もろひとの いふはかりなる あきのつきかけ実氏
406ふけぬるか くもものこらぬ なかそらに あきかせなから すめるつきかけ冬平
407ふくからに あきのひかりの あらはれて うへやまかせに すめるつきかな為明
408くもはらふ のきはのやまの あきかせに ふけてこすゑの つきそはれゆく季雄
409はらふへき くもはあとなき つきかけに たたよさむなる あきかせそふく国助
410つききよみ さえてもはるる うきくもの いやとほさかり あきかせそふく国夏
411やまかせに くものゆききや たえぬらむ よわたるつきの かつらきのはし実超
412かつらきや くめちのはしは つきもなほ なかそらにこそ すみわたりけれ亀山院
413ひさかたの そらゆくくもの たえまより つきのみやこに あきかせそふく順徳院
414ふきはらふ くもまにつきの あらはれて しくれにまかふ みねのまつかせ為実(御子左藤原為氏男)
415いろかへぬ たけのはしろく つきさえて つもらぬゆきを はらふあきかせ宮内卿(後鳥羽院)
416くれたけの はわけのつゆに さそはれて つきもたまらぬ あきかせそふく道性
417あきのつき またもあひみむ わかこころ つくしなはてそ さらしなのやま俊成(藤原俊忠男)
418あくかるる ものとしりてや あきのよの つきはこころを まつさそふらむ為世(御子左藤原為氏男)
419なほさりに さそひすてける ことのはに あくかれいてて つきをみるかな冷泉(花園院)
420つきをみて あかぬこころに あきのよの なかきをかこつ ひとやなからむ為遠
421いくとせか ちちにものおもふ あきをへて つきになみたの かすつもるらむ兼氏
422あきのつき なかめすとても みにつもる わかおいらくの かけやしられむ公賢
423もろくちる おいのなみたも いとはれす そてにやとして つきをみるよは経顕(藤原定資男)
424そてぬらす しののはくさの かりいほに つゆのやととふ あきのよのつき実兼
425あさちはら はらはぬにはの つゆのうへに こころのままに やとるつきかな後伏見院
426おくつゆの ひかりもきよき にはのおもに たましきそふる あきのよのつき為兼
427いくあきか ひかりをそへて おくつゆの たまきのみやに つきもすむらむ貞重
428なかめやる いくののすゑの はてもなし つきとつゆとの おなしひかりに公蔭
429すゑとほき ちくさのつゆに かけみえて のへこそつきは てりまさりけれ光厳院
430むさしのや くさはみなから おくつゆに すゑはるかなる つきをみるかな帥(鷹司院)
431まねくとも よそにそつきの すきなまし をはなかそてに つゆのおかすは氏久
432うたたねの たまくらさむき あきかせに ゆめをのこして つきをみるかな宣時(北条)
433いねかてに つきをみよとや あきかせの なかきよさむに ふきまさるらむ尚長(丹波経長男)
434あまのかは つきのみふねは よきてふけ くものなみちの よはのあきかせ読人不知
435いつみかは かはせのなみも しつかにて とほきわたりに すめるつきかけ行家(藤原知家男)
436こまとむる かはせにうつる かけまても ささのくまなき あきのよのつき為子(贈従三位)
437おほゐかは さやかにうつる あきのよの つきのこほりに かかるしらなみ為世(御子左藤原為氏男)
438あきのよの つきのこほりの なとりかは なきなあらはす なみのおとかな能清
439たつなみの はなかあらぬか うらかせの ふきあけにすめる あきのよのつき公守
440いせのうみや なみのよるよる すむつきの かけこそきよき なきさなりけれ義詮
441たまつしま やとかるつきの かけなから よせくるなみの あきのしほかせ親長
442やくしほの けふりはあれと おしてるや なにはにはるる つきのかけかな国量
443あまひとの うらのいそやの とまひさし ほとなきのきは つきもさはらす行家(藤原知家男)
444ほさてこそ みるへかりけれ すまのあまの しほたれわふる そてのつきかけ伏見院
445わたのはら つきみつしほの いやましに ひかりそあまる すまのうらなみ公経(藤原実宗男)
446はるかなる おきつしほせの あきのつき かけをうつして よするうらなみ万秋門院
447こころあらは すまのせきもり うちもねし よひよひことの あきのつきかけ国道(津守国助男)
448すみよしの あささはみつに かけみれは そらゆくつきも くさかくれつつ国助
449あきのよの あかつきかたの つきみれは をはすてやまそ おもひやらるる信明
450あまのはら くもなきそらに うはたまの よわたるつきの いらまくもをし人麿
451いかなれは にしになりゆく つきかけの かたふくままに かなしかるらむ伊勢
452もろこしの やまひといまは をしむらむ まつらかおきの あけかたのつき後鳥羽院
453おしなへて やまのはみえぬ わたつうみは なみをかきりに つきそかたふく為親
454わすれすよ なみにかたふく つきかけも きよみかせきの ありあけのそら為世(御子左藤原為氏男)
455ひとりわか ならはぬあきの ねさめより はしめてなかき よこそしらるれ読人不知
456あきかせも よさむにふきぬ さをしかの つまとふはきの はなやさくらむ後二条院
457いまよりや さきにほふらむ さをしかの こゑきくをのの あきはきのはな伏見院
458しかのねも とほさとをのの はきかはな そてにうつして かへるかりひと後伏見院
459あきはきの はなちるかせの さむけきに うへこそしかも つまこふらしも公蔭
460からころも すそののしかの つまこひに くさのたもとの つゆやそふらむ実忠
461きくひとの そてもつゆけき さよころも つまこひになく さをしかのこゑ後嵯峨院
462うらみわひ ゆふへはのへに こゑたてて こぬつまこひに しかそなくなる為世(御子左藤原為氏男)
463やまのへの をのへのつきの ますかかみ おもかけみてや しかのなくらむ公明
464まつかせの たよりにつけて しられけり をのへへたつる さをしかのこゑ慶融
465ゆふされは きりたちくらし をくらやま やまのとかけに しかそなくなる実朝
466さをしかの おのかすむのに つまこめて きりのまよひに ねをやなくらむ成国
467はつせやま つまかくるとや きりふかき ゆつきかしたに しかのなくらむ内経
468あきといへは なくやをしかの つまかくす やののかみやま つゆそそむらし実氏
469さをしかの つまとふをかは しもかれて からぬわさたに のこるあきかせ行意
470あきのたの かりほのいほの をちこちに いとひもあへす しかそなくなる為明
471いねかてに いほもるたこの かりまくら よはにおくての つゆそひまなき良経(九条兼実男)
472いほりさす やまたのおしね かりしほに いなはいろつく あきのむらさめ桓豪
473あきさむみ つゆかけしより をやまたの わさほのかつら いろつきにけり高広
474やまたもる かりほのいほに つゆちりて いなはふきこす あきのゆふかせ為兼
475うちなひく たのものほなみ ほのほのと つゆふきたてて わたるあきかせ為定(御子左二条為道男)
476かせわたる いなはのすゑに くもはれて たのものつきの かけそくもらぬ俊光
477わかかとの わさたかりかね いつしかと くもゐをわたる ともよはふなり為氏
478こしちには ときしもあれと したふらむ くもゐのかりの あきのわかれを為子(贈従三位)
479よさむなる あきかせふくと つけねとも そらにしりてや かりはきぬらむ慈道法親王
480さそはれて いまそなくなる あきかせの ふかはとまちし はつかりのこゑ為道
481つきをまつ ゆふへのそらの あきかせに やまのはとほき はつかりのこゑ隆長
482このねぬる あさけのかせは みにさむし いまやきなかむ ころもかりかね雅顕
483あけかたの くもゐのかりの なみたにや いととねさめの とこのつゆけさ公親
484なきかはす あきのねさめは むしのねも まくらのつゆも なみたなりけり宗秀(大江時秀男)
485つゆしけき くさはのうへは しつかにて したにはむしの こゑそみたるる永福門院
486あたにちる つゆをなみたに かるかやの おもひみたれて むしやなくらむ隆朝
487よもきふの つゆのやとりを たつねても とふひとなしと むしやなくらむ隆淵
488あとたえて とはれぬやとの あさちふに ひとりつれなき まつむしのこゑ経通(一条内経男)
489いくよしも あらしとそきく つゆしもの さむきゆふへの まつむしのこゑ宗尊親王
490はつしもの をかへのまくす うらみかね おのれかれゆく むしのこゑかな伏見院
491しもかれの まくすかしたの きりきりす いつまてのこる うらみなるらむ実兼
492あきふくる よやさむからし きりきりす たまくらちかく こゑのきこゆる進子内親王
493きりきりす こゑよわりゆく あさちふの をののしのはら あきそくれぬる顕氏(六条顕家男)
494むしのねも つゆのやとりに うらむなり のもせのつきの ありあけのころ為世(御子左藤原為氏男)
495あけやらぬ なかつきのよの あきかせに はつしもさむく すめるつきかけ隆教
496あきふかき こすゑのかせの おとたてて よさむにつきの かけそなりゆく為藤
497ひさかたの あまてるつきの かつらかは あきのこよひの なになかれつつ実雄
498ありあけの つきはなみまに かけみえて うらかせとほし あはちしまやま冬平
499ふきはらふ あなしのかせに くもはれて なこのとわたる ありあけのつき俊成(藤原俊忠男)
500かつらきや たかまのみねに くもはれて あくるわひしき ありあけのつき雅経
501しもをまつ あさちかつゆに かけふけて よさむになりぬ ありあけのつき季雄
502なかつきの ありあけのつきの あけかたを たれまつひとの なかめわふらむ良経(九条兼実男)
503あきのよは たれまちこひて おほともの みつのとまりに ころもうつらむ頓阿
504なにはひと しのひにとしも おもはしを こやによふけて うつころもかな一条(昭慶門院)
505うらなみに なれてしほくむ さとのあまの いかにほすまか ころもうつらむ斉時
506もしほくむ そてのうらかせ さむけれは ほさてもあまや ころもうつらむ宗泰(藤原時宗男)
507かはかせの よさむのころも うちすさひ つきにそあかす まきのしまひと為道
508つきかけの あきはよさむに なりぬとも たれかはうたむ こけのさころも蓮生法師
509さむしろに しもをかさねて なかつきの つきのよことに ころもうつなり資平
510いろかはる をののあさちの はつしもに ひとよもかれす うつころもかな浄弁
511やまかつの よさむのあきの つゆのぬき しものたてまて うつころもかな良聖
512なかきよの しものころもを うちわひて ねぬひとしるき あさちふのやと通光
513よそにきく きぬたのおとや うちたえて ぬるよもしらぬ ともとなるらむ万秋門院
514からころも うつによさむや わするらむ しもにおきゐる あきのさとひと覚懐
515おきてゆく ひとのかたみか からころも てもたゆきまて うちあかすらむ師房
516いたつらに ねさめやすらむ あきのよの なかきにつけて うつころもかな為藤
517はしたかの とやまのさとの あきかせに はつかりころも いまやうつらむ良基(二条道平男)
518あけそむる とやまのくもは ひまみえて またたちのほる みねのあききり為氏
519たちもらす をのへのきりの たえまたに なほかけうすき ありあけのつき実教
520つきのこる かとたのおもの あけかたに きりのうちなる しきのはねかき後二条院
521おちたきつ みつのみなかみ きりこめて おとのみのこる あきのかはなみ定資
522かたしきの ころもてさむき かはかせに あきのよかこつ うちのはしひめ成賢(祝部成茂男)
523をりふしは おとにもしるし わたつうみや あきなきなみの あきのうらかせ隆博
524あきかせも ふけてよさむの いねかてに いくたひききつ さをしかのこゑ覚誉法親王
525しかのすむ をのへのはきの したはより かれゆくのへも あはれとそみる具平親王
526すみよしの とほさとをのの まはきもて すれるころもの さかりすきゆく人麿
527いくたひか しもはおきけむ きくのはな やそしまなから うつろひにけり読人不知
528うゑてみる かひもあるかな なかつきの ためしにさける しらきくのはな読人不知
529かさしには をらまほしきを しらきくの はなにやとれる つゆやこほれむ読人不知
530ちよふへき きくのまかきに いろそへて はなゆゑかをる あきのしらつゆ後宇多院
531あきふかき まかきのつゆも にほふなり はなよりつたふ きくのしつくに為兼
532めくりあふ あきをこそまて あめつゆの めくみをうけし きくのさかつき実任
533なかつきや くもゐのあきの こととはむ むかしにめくれ きくのさかつき後宇多院
534ここのへに けふさくきくは をとめこか たちまふそての ゆきかとそみる実氏
535さきにほふ きくのまかきの ゆふかせに はなのかやとす そてのしらつゆ伏見院
536みるままに うつろひにけり まつひとの そてにまかひし にはのしらきく御匣(式乾門院)
537ときこそあれ いろにまかへて さきにけり しもおくころの しらきくのはな基顕
538はつしもの おきあへぬいろも かはりけり つゆのまかきの しらきくのはな為世(御子左藤原為氏男)
539つゆおきし まかきのきくの はなのうへに むすひかへたる けさのあさしも久明親王
540はつしもの もろともにこそ おきあかせ うつろふきくの うしろめたさに実能
541あきかせに なひくよりなほ あさちふの いろことになる けさのはつしも公忠(藤原実忠男)
542いろかはる やまのしたしは ふみわけて しくるるくれに しかそなくなる永福門院
543なかつきの すゑののまはき つゆおちて あきかせさむみ をしかなくなり法守法親王
544もるとせし おくてのいなは かりはてて きかぬもさひし さをしかのこゑ頼貞
545かりのこす やまたのいほの ひまをあらみ いまいくよとか つきももるらむ公敏
546おしねほす あきのかりいほの とまひさし もらてしくれの すくるよそなき幸清
547つゆにたに いろつくやまの したもみち しくれてのちを おもひこそやれ寛尊法親王
548あけはまつ よものもみちも みるへきに おほつかなしや けさのあさきり頼通
549あききりの むらむらはるる たえまより ぬれていろこき やまのもみちは永福門院
550はつしもの そめぬたにこき もみちはの いろのさかりを たれにみせまし重之
551とやまなる まさきのかつら いろこきを みにくるひとの みえぬあきかな好忠
552やまひめの こころのいろも やちくさに そめてしらする みねのもみちは公宗母
553もみちはも ちしほにすきて たつたひめ わかゐるやまの あきやそむらむ為家
554たつたやま ひとむらすくる むらさめの あとはちしほの もみちしてけり師教(九条忠教男)
555たつたやま みねのにしきも なかたえぬ まつをのこして そむるもみちは後醍醐院
556あきのいろに そむるもみちや たてもなく ぬきもさためぬ にしきなるらむ後光厳院
557しものたて つゆのぬきとも みえぬかな くれなゐふかき やまのにしきは忠季(藤原公蔭男)
558はるあきの にしきなれとや あらしやま おなしさくらの またもみつらむ後宇多院
559おほゐかは しもはかつらの もみちはも ひとつあらしの やまのあきかせ有家(藤原重家男)
560もみちはの うつろふなみの たつたかは おられぬみつの にしきとやみむ実重(三条公親男)
561たつたやま をのへのまつの このまより みとりをわくる あきのもみちは為氏
562をくらやま もろきこのはの あきかせに しくれてのこる ありあけのつき為氏
563さらてたに もみちにあける かみなひの みむろのやまは なほしくるなり後嵯峨院
564ゆふつくよ をくらのみねは なのみして やまのしたてる あきのもみちは後醍醐院
565なかめわひぬ あきもなこりと ゆふひさす くものはたては うちしくれつつ後二条院
566いるつきに てりかはるへき もみちさへ かねてあらしの やまそさひしき惟喬親王
567いろかはる まさきのかつら くりかへし とやましくるる あきのくれかな為兼
568あきのいろは とやまのみねの うすもみち よしやしくれは なほそめすとも景綱
569はれくもり そめすはいかて いろもみむ しくれそあきの もみちなりける為冬
570たつたやま いかにしくれの そめわけて あをはにましる もみちなるらむ実躬
571つゆしくれ ふりいててそむる もみちはや からくれなゐの いろにみゆらむ尊氏
572しらつゆの そむるもみちの いかなれは からくれなゐに ふかくみゆらむ読人不知
573くれなゐの しくれなれはや いそのかみ ふるたひことに やまをそむらむ貫之
574ちはやふる かみよもきかぬ くれなゐに をしほのやまは もみちしにけり為定(御子左二条為道男)
575もみちはの くれなゐふかき いろみれは みなそこまてや つゆはおくらむ清正
576くれてゆく あきのわかれの みちしはに こよひはかりの つゆやおくらむ泰綱
577わきてなほ あはれとおもへ ゆくあきの かたみにをれる みねのもみちは兼泰
578ゆくあきを あはれとおもふ ことのはの こころのいろそ かたみなるへき秀茂
579しくれよと なにいそきけむ もみちはの ちしほになれは あきそとまらぬ為相
580しるらめや しくれぬさきの もみちはは こころのいろの そむるちしほを遊義門院
581みてそしる しくれにはあらて そむときく こころのいろの ふかきもみちは後二条院
582このまゆく いささをかはに もみちはの ふかくもいろを うつしつるかな顕仲(源顕房男)
583くれなゐの いろにそなみも たつたかは もみちのふちを せきかけしより公経(藤原実宗男)
584たつたかは なかれてくたる もみちはの とまらぬものと あきそくれゆく清兼
585おほゐかは もみちのみふね さしはへて ふるきためしに かへるあきかな家隆
586もみちはの したゆくみつに かけみえて ちらぬこすゑそ ねにかへりける亀山院
587えたをそめ なみをもそめて もみちはの したてるやまの たきのしらいと実氏
588さそひゆく さほやまあらし まてしはし ははそのもみち あきふかきころ伏見院
589こからしの すすふくみねの ゆふしくれ そめぬいろしも みにはしみけり後鳥羽院
590はなすすき まねくたもとは あまたあれと あきはとまらぬ ものにそありける元輔(清原春光男)
591あまつそら くるるをけふの わかれにて ゆくへもしらす かへるあきかな義詮
592いかてわれ けふのわかれに みをかへて とまるならひと あきにしらせむ政村
593やそちまて わかれにかへぬ いのちもて またなかつきの けふにあひぬる隆教
594かねてしる あきのわかれを いまさらに けふもくれぬと なにうらむらむ有家(藤原重家男)
595おとたてて こすゑをはらふ やまかせも けさよりはけし ふゆやきぬらむ為世(御子左藤原為氏男)
596よしのかは いはとかしはの はつしくれ ときはのいろは けさもつれなし順徳院
597しくれする しるしもみえす かみなつき みわのすきむら おなしみとりに通親
598はつしくれ ふるのやまさと いかならし すむひとさへや そてのぬるらむ読人不知
599かせにちる もみちのいろや かみなつき からくれなゐの しくれなるらむ人麿
600くれなゐの ちしほのこのは そめすてて くものいつくに しくれゆくらむ後宇多院
601いかはかり このはのいろの まさるらむ きのふもけふも しくれするころ後鳥羽院
602ともすれは かきくもりつつ かみなつき なほそしくれの ひまなかりける相模
603やまのゐの しつくもかけも そめはてて あかすはなにの なほしくるらむ定家
604かみなつき くもらぬかたの そらまても かせにみたれて ふるしくれかな隆祐
605やまめくる あらしのおとを たよりにて くものよそまて ふるしくれかな為嗣
606しからきの とやまをかけて くもはらふ あらしのあとも またしくれつつ為親
607さためなく しくるるくもの はれまより ひかけさひしき ふゆはきにけり経顕(藤原定資男)
608うつりゆく くもまのひかけ てりもせす くもりもはてぬ むらしくれかな尊守
609むらしくれ もるやいたまの ときのまも おもひさためぬ つきのかけかな一条(徽安門院)
610うきくもの かかれるほとは いてやらて しくれをすくす やまのはのつき成久
611むらしくれ はれつるあとの やまかせに つゆよりもろき みねのもみちは為冬
612おとたにも あきにはかはる しくれかな このはふりそふ ふゆやきぬらむ清氏
613そめつくす やまのにしきの からころも ころもへすして ふゆはきにけり俊定(藤原経俊男)
614いまよりの ころもてさむし あらしやま みねのこのはも もろくちるころ有忠
615もみちちる なからのやまに かせふけは にしきをたたむ しかのうらなみ範兼
616かみなつき みむろのやまの やまおろしに くれなゐくくる たつたかはなみ式子内親王
617ふくかせや よそのこすゑを さそふらむ まつのしたてる にはのもみちは光忠
618このもとに よそのもみちを さそひきて あらしそまつの いろをそへける世良親王
619みるままに もみちふきおろす あらしやま こすゑまはらに ふゆはきにけり長舜
620ちりまかふ あらしのやまの もみちはは ふもとのさとの あきにそありける祐家
621いにしへも あらしのやまの もみちはの ゐせきにかかる いろはみさりき周防内侍
622いにしへの あとをたつねて おほゐかは もみちのみふね ふなよそひせり経信
623このかはは わたるせもなし もみちはの なかれてふかき いろにみえつつ深養父
624たつたかは おちてもみつに うかふなり なになかれたる みねのもみちは国夏
625なかれゆく おちはなからや こほるらむ かせよりのちの ふゆのやまかは尊氏
626はしひめの おるやにしきと みゆるかな もみちいさよふ うちのかはなみ後宇多院
627かはかせの ふきあけのもみち ちりみたれ かたしきかねつ うちのはしひめ読人不知
628はしひめの ころもてうすき さむしろに このはふきしく うちのかはかせ基任
629もろくちる このはなからや すきぬらむ えたにとまらぬ かせのおとかな能誉
630もみちはを ふきすててゆく あらしかな おのかためとは さそはさりけり良教
631ふきはらふ とやまのあらし おとたてて まさきのかつら いまやちるらむ後京極院
632にはのおもに あきのかたみを のこしつる このはもみえす けさのあさしも久明親王
633はつしもの をかのかやはら いつのまに あきみしつゆの むすひかふらむ尊円法親王
634つゆちりし にはのあさちふ かせさえて かれはにさむき しものいろかな経久
635ふみかよふ たかことつても かきたえぬ しものくちはの みつくきのをか兼氏
636くさもきも しをれはてたる やまかせに ゆふへのくもの いろそつれなき秀能(藤原秀宗男)
637ふくかせの おとのみあきの かたみにて しもかれはつる にはのをきはら実俊(西園寺公宗男)
638おのつから のこるをささに しもさえて ひとついろなる のへのふゆくさ慈道法親王
639ささのはの みやまおろしは さえくれて ひとよのほとに むすふしもかな光之
640あさなあさな のこるあをはの まれにのみ なるみののへの しものしたくさ広房(大江広茂男)
641よもすから おきそふしもの きえかてに こほりかさぬる にはのふゆくさ為兼
642さらてたに ふみからしてし みちのへの くさをふゆのに むすふあさしも後二条院
643ふゆきては あしたのはらに おくしもの さむくひことに なりまさりつつ後宇多院
644あさなあさな かはらぬいろを そへてけり やまちのしもに のこるしらきく為藤
645あきならて しもよにみゆる きくのはな ときすきにたる ここちこそせね冷泉院
646うへしこそ こほりとちけれ しもかれの ふゆのにつつく はらのいけみつ信実
647あきをへて やとりしみつの こほれるを ひかりにみかく ふゆのよのつき俊成女
648ちりつもる このはかくれに なりにけり ねやのいたまの ふゆのよのつき国助
649はつしもの おきいててみれは しろたへの ころもてさむき つきのかけかな道昭
650よもすから ねやへもいらぬ わかそてに なれてありあけの つきそこほれる後二条院
651つきさゆる をみのころもを さきたてて しもにおきふす くものうへひと公賢
652をみころも たつおもかけそ へたてゆく つきはそのよに めくりあへとも後鳥羽院
653そのままに しもふりはてて しのふかな とよのあかりの やまあゐのそて為定(御子左二条為道男)
654くものうへの とよのあかりも あけゆけは ひかけさしそふ をみのころもて懐通
655みやひとの とよのあかりの ひかけくさ たもとをかけて つゆむすふなり邦省親王
656ふけにけり やまあゐのそてに かせさえて ひかけのいとも しもむすふまて公宗母/公宗(西園寺実衡男)
657あまのとの あくるまてとや うたふらむ しもふかきよの あさくらのこゑ承覚法親王
658おきつかせ ふきあけのちとり よやさむき あけかたちかき なみになくなり白河院
659ふきあけの はまのまさこの しほかせに みきはのちとり あとものこらす実重(三条公親男)
660いにしへも あとみぬわかの うらちとり いまふみそめて なをのこすかな宗氏
661きみかよに あつむるわかの うらちとり あとつけそめし あとをわするな道意(西園寺実兼男)
662あつめこし よよのあととて はまちとり わかなもかくる わかのうらなみ後光厳院
663わかのうらの ゆふなみちとり たちかへり こころをよせし かたになくなり賢俊
664きつつなけ わかすむかたの ともちとり あしやのさとの よはのかりねに丹後(宜秋門院)
665ともちとり いさかたらはむ をふのうらに なれしむかしの かたみたになし公雄
666しほかせに こゑもうらみて あまのすむ さとのしるへと なくちとりかな雲禅
667なみこさぬ うらのひかたの しほかれに こころとたちて なくちとりかな貞重
668さよちとり そらにこそなけ しほのやま さしてのいそに なみやこすらむ忠房親王
669しほかせに ゆふなみたかく こゑたてて みなとはるかに ちとりなくなり隆教
670いせのうみの をののみなとの いりしほに なかれてとほく なくちとりかな為重
671なにはかた しほひのかたや さむからし みなとにかへる ともちとりかな雅孝
672ありあけの つきかけさむみ なにはかた おきのしらすに ちとりなくなり俊恵
673うちわたす おほかはのへの せをひろみ およはぬこゑに ちとりなくなり行意
674さよふけて かよふちとりの こゑすなり たかすむとこの うらちなるらむ為子(贈従三位)
675こゑたえす きこえそわたる ふせのうみに なくやちとりの ありかよひつつ為藤
676なるみかた しほひはるかに ありかよふ あとのみみえて たつちとりかな為明
677おほよとの うらみてかへる なみにしも こゑたてそへて ゆくちとりかな為定(御子左二条為道男)
678よをさむみ つはさにしもや おくのうみの かはらのちとり ふけてなくなり為相
679ふゆのいけの こほりになるる みつとりは うはけのしもや いとはさるらむ後醍醐院
680よもすから はらひもあへぬ みつとりの はかひのしもに こほるつきかけ為道
681よとともに つかはぬをしや わひぬれは さそふみつにも うきてゆくらむ信専
682いけみつに むすふこほりの ひまみえて うちいつるなみや にほのかよひち通相
683のとかにや ひをもよるらむ もののふの やそうちかはの なみたたぬよは覚円
684おちたきつ たきのしらいと くりためて いはまにむすふ うすこほりかな実継
685なにはえの こほりにたてる みをつくし とけぬおもひに さてやくちなむ兼氏
686おきつかせ ふきあけのはまの しほひかた まさこみたれて あられふるらし道家
687いせのあまの ひろはぬたまや みたるらむ しほひのかたに あられふるなり源恵
688さゆるひは かせもあられの おとすなり ぬきあへぬたまの をののしのはら祐夏(鴨祐雄男)
689ふきしをる かせもひとつに おとさえて ならのはなから ふるあられかな実重(三条公親男)
690をささはら ましるをはなの しもかれに おともかはりて ふるあられかな一条(昭慶門院)
691けさのあさけ さむきあらちの やまおろしに はつゆきふりぬ のへのあさちふ伏見院
692くれたけの はわけのかせは はらへとも つもりにけりな ゆきのしたをれ雅朝
693ひさかたの そらにつもると みゆるかな こたかきみねの まつのしらゆき為世(御子左藤原為氏男)
694いそへなる まつのしつえに ふるゆきの けぬともみえす かかるしらなみ後二条院
695とけやらぬ いけのみきはの あさこほり こほれるほとに つもるゆきかな永福門院
696むらむらに こほれるくもは そらさえて つきかけみかく ききのしらゆき花園院
697ゆふまくれ そらもひとつに さえぬれは ゆきこそつきの ひかりなりけれ為嗣
698さえわたる くもゐのつきも かけそへて ここのへふかく つもるしらゆき師信
699みちしあらは わかよもなとか しらゆきの ふりにしあとに かへらさるへき後光厳院
700あさなあさな つかへていそく みやひとの あとをのみみる にはのしらゆき後醍醐院
701しらゆきの いやかたまれる にはのおもに はらひかねたる とものみやつこ後嵯峨院
702とはれしな いつくをみちと まとふまて われさへみつる にはのしらゆき慈伝
703とふひとの あとさへやかて うつもれて かこつかたなき にはのしらゆき道我
704うつもれて あるにもあらす としをふる やととしりてや ゆきつもるらむ是則
705ふみわくる あとこそなけれ こころたに かよはぬやとの にはのしらゆき能清
706ふみわけむ にはにはあとの をしけれは ゆきよりほかの みちやたつねむ義行
707われよりも さきたつひとや まよふらむ あとさたまらぬ のへのしらゆき実教
708ふるゆきに をののやまさと あともなし けふりやけさの しるへなるらむ上総(堀河院中宮)
709ふりつもる ゆきにひかりを さきたてて やまのはのほる ありあけのつき忠季(藤原公蔭男)
710ふゆこもる よしののたけに ふるゆきを たれありあけの つきとたにみむ覚助法親王
711はなをみし おもかけさらて よしのやま つきにみかける みねのしらゆき公敏
712なへてさく はなかとそみる よしのやま こすゑをわかす ふれるしらゆき俊定(藤原経俊男)
713みとりなる こけのむすきも しろたへに ゆきふりにける あまのかくやま定為
714やたののの あさちをさむみ ゆきちりて あらちのみねに かかるうきくも重綱(藤原)
715あらちやま あさたつくもの さゆるより やたのをかけて ふれるしらゆき尊氏
716けぬかうへに めつらしけなく つもるらし ふしのたかねの けさのしらゆき公宗母
717はしたかの をのへのゆきの あけほのに ましはをはらふ そてのさむけさ資明
718はしたかの をのへにすすの きこゆるは やまかたつきて とりやたつらむ教定(藤原教頼男)
719すすのねは よそにもしるし はしたかの しらふにゆきは ふりまかへとも忠季(藤原公蔭男)
720はしたかの をふさのすすの おとにきく かりはのみゆき あとはふりつつ公賢
721かりくらす かたののみのの ゆきのうちに かへるさおくる やまのはのつき忠房親王
722はしたかの のもりのかかみ かけをみて とほやまとりも ねをやなくらむ国冬
723みかりする かりはのしみつ こほりけり これやのもりの かかみなるらむ読人不知
724かりくらす とたちのたかの をしへくさ あすもやおなし あとをたつねむ公脩
725かりくらす すすのしのはら かせたちて かへささむけく あられふるなり行朝
726くれてゆく としとともには かへりなて おいこそつらく みにとまりけれ成久
727ゆきのうちに くれゆくとしを かそふれは これそつもりて おいとなるもの公蔭
728はかなくも やそちにむかふ としのくれ なけくへきみに なにいそくらむ玄円
729おいのさか またこえぬへき としのくれ いそかぬしもそ くるしかりける尊氏
730をしめとも むそちにちかき おいのなみ たちもかへらて としそくれぬる禅隆
731はつせかは なかるるとしを せきかねて いまはたおいの なみそかすそふ範憲
732なにはかた かへらぬなみに としくれて いまはたおなし はるそまたるる冬平
733はなをまつ はるはとなりに なりにけり ふるさとちかき みよしののやま家隆
734おもひいてよ くもゐのつきは へたつとも かたみにそふる かけははなれし上東門院
735あさゆふに なれみしことを おもひいてよ ふきあけのはまの かせにつけても円融院
736うちつけに おもひいつやと ふるさとの しのふくさして すれるなりけり敦忠
737あるほとは うきをみつつも なくさめつ かけはなれなは いかかしのはむ和泉式部
738わかるへき みちやはつらき おほかたの よのなかはかり うきものはなし道済
739たくへやる わかたましひを いかにして はるけきそらに もてはなるらむ伊尹
740あつらへて わするなとおもふ こころこそ わかみをわくる かたみなりけれ貫之
741くさまくら たひのやとりの つゆけくは はらふはかりの かせもふかなむ道長
742ほとふへき たひにはあらねと くさまくら なみたのつゆの かわくよそなき紀式部
743きみかゆく ふなちにそふる あふきには こころにかなふ かせもふかなむ中務
744おきつなみ たちわかるとも おとにきく なかゐのうらに ふなととめすな崇徳院
745たけくまの まつはいくよか へにけると としをかそへて かへりあはなむ師輔
746みやこひと まつとしきかは ことつてよ ひとりいなはの みねのあらしに伏見院
747ことつてむ みやこのかたへ ゆくつきに このしたくらく いまそまとふと実方
748にしへゆく つきのつねより をしきかな くものうへをも わかるとおもへは公任
749われひとり かしらにしもの つもらすは けふのわかれを をしまさらまし忠通
750よのつねに ゆきてはかへる みちならて なにとなりぬる わかれなるらむ為継
751たのめおく かことはかりに あつまちの みちのはてまて おもひこそやれ宗基
752おもひやる こころはかりは かよふらむ かすみへたつる せきちなりとも紀伊(祐子内親王家)
753ふるさとを おもひいてつつ あきかせに きよみかせきを こえむとすらむ能因
754こえぬまの せきとはならて あふさかは すきゆくひとの へたてなりけり宗遠
755かへるへき みにしあらねは これやこの ゆくをかきりの あふさかのせき具行
756いきうしと おもひなからも ひとやりの みちにはさこそ とまらさりけめ観意
757たつねくる ふるさとひとの かへるさは わかこころさへ とまらさりけり雅顕
758おもひたつ きひのなかやま とほくとも ほそたにかはの おとつれはせよ資連
759ゆくすゑに かへるやまちの なかりせは なにをわかれの なくさめにせむ禅心
760ふるさとと おもふあつまの かへるさも みやこわかれは そてやしをれむ読人不知
761わたつうみの ちひろのかみに たむけする ぬさのおひかせ やますふかなむ貫之
762かせあらき むしあけのせとの ゆふやみに ともよひかはす よはのふなひと後嵯峨院
763うなはらや かせにたゆたふ あまをふね ゆくへあやふき なみのうへかな後伏見院
764もろひとは いそにうちよる しらなみの あきとともにや たちかへるらむ一条院
765しらなみを わけてそわたる のりのふね さしけむひとの あとをたつねて成尋
766おひかせに やまもととほく こきいてて ほのかになりぬ あけのそほふね頼春
767まつらかた こはよにしらぬ うきねかな そてもまくらも なみはかけつつ隆信
768うきねする とこのうらかせ おとふけて なみのまくらに つきそかたふく賢俊
769はるかなる おきのこしまの たひねにも こころにかかる しかのうらなみ定宗(法印円宗寺)
770たひねする とこのうらかせ さむきよは みやこにかよふ ゆめそすくなき治部卿(瓊子内親王家)
771さらにいま みやこもこひし あしからの せきのやへやま なほへたてつつ国量
772みやこおもふ すまのせきちの かちまくら ゆめをはとほす なみのまもかな宗昭
773なみかけぬ すまのうへのの つゆにたに なほしほたるる たひころもかな浄阿
774たひひとは さそいそくらむ なるみかた しほひのかたの みちにまかせて為氏
775ととめすは さてやすきまし きよみかた つきみよとてそ せきはもるらむ為子(贈従三位)
776ゆきとまる ひとしなけれは あふさかの せきのとさしも なのみなりけり覚信
777あつまちの せきはいかなる とさしにて またふるさとに かへらさるらむ如雄
778くわうたいに みしはみしかは みさりしを ききてそみつる しらかはのせき証空
779いととなほ かすめはとほし やまのはは さらてもみえぬ むさしののはら知行(源義行男)
780めくりあはむ そらゆくつきの ゆくすゑも またはるかなる むさしののはら定家
781くさまくら おなしたひねの かはらねは ひかすわするる むさしののはら為理
782はてしらぬ みのたくひかと むさしのを わけまよふにも ぬるるそてかな雅家
783ぬれてほす かきりそしらぬ むさしのや わけゆくすゑの そてのゆふつゆ定資
784ふるさとの すみうかりしに あくかれて いつちともなき たひのそらかな道命
785つきをみて なにはのうさも なくさむは こやふるさとの あきのおもかけ為明女
786あはれけに ならはぬとこの たひねかな みやこににたる つきはすめとも尊円法親王
787たひねする くさのまくらの よなよなは つゆにかたしく そてのつきかけ基氏(足利尊氏男)
788こえすくる たかねのこのま いてそめて むかふすそのに つきそさきたつ宗秀(大江時秀男)
789みやこいてし ありあけのつきの いくめくり おなしたもとに したひきぬらむ公雄
790たひねする ころものせきを もるものは はるはるきぬる なみたなりけり国助
791たひころも はるはるきても へたてぬは みやこにかよふ こころなりけり道誓
792たひころも なれはまさらぬ みちなれは はるはるきても ふみまよひつつ為定(御子左二条為道男)
793おもひやれ みはななそちの そてのしもに おきかさねたる よはのたひねを雅朝
794ゆきくれぬ ふしうしとても いかかせむ ゐなのささはら ひとよはかりは公忠(藤原実忠男)
795はかなくて いくよになりぬ つゆむすふ くさのまくらの かかるかりねも公宗女
796みやこおもふ なみたのたまも ととまらす ゆふつゆもろき のへのあらしに後伏見院
797いまそしる なれぬかりねの とこまても くさはにあまる つゆのめくみを覚助法親王
798いつはりの ひとのことのは ちりはてて みやこにいそく みちそうれしき成茂
799わすれすよ こころつくしに たちかへり ふたたひみてし はこさきのまつ頼氏(藤原頼広男)
800たまくしけ ふたとせにはや なりにけり あけくれたひの なけきせしまに基任
801あきののに やとりをすれは きりきりす かたしくそての したになくなり兼昌
802ゆきくるる のはらのすゑも はるはると なほさととほく たつけふりかな泰宗
803いしふまぬ あそのかはらに ゆきくれて みかほのさきに けふやとまらむ蓮生法師
804いはねふむ やまのたつきの ゆふされは しはすりころも うちしをれつつ惟明親王
805あかしかた やまとしまねも みえさりき かきくもりにし そてのなみたに土御門院
806たれにかも やとりをとはむ まつちやま ゆふこえゆけは あふひともなし定宗(藤原家親男)
807こえゆけは ひとかたならす かすむなり ふたむらやまの はるのあけほの行朝
808こえかぬる たかしのやまは あけやらて きりのうへなる みねのよこくも行済
809くれかかる ふもとのきりを わけすきて のほれははるる やまのはのつき覚助法親王
810あらちやま あすはゆききも たえぬへし けふこそわけめ みねのしらゆき国助
811ゆきつもる かひのしらねを よそにみて はるかにこゆる さやのなかやま茂重
812あつまちの さやのなかやま こえていなは いととみやこや とほさかりなむ実朝
813あはれなり これやかきりの たひならむ わかよもふけぬ さよのなかやま信生
814おもひいてて さらにそまよふ たらちねの あるよにこえし さやのなかやま頼康
815ひかすゆく くさのまくらを かそふれは つゆおきそふる さよのなかやま俊成(藤原俊忠男)
816ふきはらふ とこのやまかせ さむしろに ころもてうすし あきのよのつき定家
817あらしふく たかねのくもを かたしきて ゆめちもとほし うつのやまこえ忠良
818みやこいてし ひかすおもへは ふしのねも ふもとよりこそ たちのほりけれ為家
819とにかくに ゆかはやとおもふ みちになほ まとへはこそは とほさかるらめ慈円
820むつのみち みつのさかひに まよひきて なかきねふりの さめぬかなしさ法守法親王
821むつのみち よつのすかたに さすらひて はしめもはても しらぬかなしさ澄覚法親王
822たつねいる みちとはきけと のりのかと ひらけぬものは こころなりけり実兼
823をしへおく そのしなしなの のりのかと ひらくるみちは ひとつなりけり後伏見院
824まよひこし うきよのいへを はなれてそ いまはたのりの かとにいりぬる読人不知
825よのなかは ちくさのはなの いろいろも こころのねより なるとこそきけ清輔
826いまそしる ふゆこもりせる くさもきも はなにさくへき たねしありとは有長
827いまこそは おもひとかるれ ちとせまて もとめしのりの はなのしたひも実超
828みよしのの くもをはなそと ききしより ほかにうつらぬ わかこころかな道我
829やまさくら にほひをかせに まかせてそ はなのさかりを よそにしらする実性
830さきそむる のりのをしへの はなにこそ よものこすゑの はるもみえけれ為世(御子左藤原為氏男)
831あらしふく はるのはやしの あさほらけ はなにつねなき よはしられつつ為子(従二位)
832かれはてし つるのはやしの かたみとや のりのことのは ひろひおきけむ寛耀
833あめかせも けふのためとや のこしけむ のりのむしろに はなそちりしく雅有
834くもらすよ はなのかけみる ますかかみ こころのみつの なみもたたねは良覚
835ますかかみ うつれるかけを そのままに ありとみるこそ まことなりけれ後宇多院
836ますかかみ みかきてうつる かけもなほ おもへはかりの いろにそありける桓守
837いまそしる よよをこころに てらしつつ ひとをかかみと いひしまことを了然
838よのつねの ひかりならねは ますかかみ そこまてすめる さとりをそしる禅助
839すききつる なこりはいとと ますかかみ ありとしもなき ゆめのおもかけ西花門院
840ななそちの すきにしかたは ゆめそとも しるこそけふの うつつなりけれ忠源
841いつかけに なかきねふりの ゆめさめて これそまことの うつつとおもはむ頼仲
842さめやらて さしもねふりの なかきよに あはれうきよの ゆめそみしかき覚懐
843いつまてか むなしきゆかに ねふりきて まよひのうちの ゆめをのみみむ実衡女
844まよひこし うきよのゆめを ぬるかうちに みはててさむる あかつきもかな昌義
845おろかにて まよひいてにし すゑにこそ やかてまことの みちはありけれ宗秀(藤原宗泰男)
846くやしくも もとのわかみを へたてきて こころのほかに まよひけるかな恵鎮
847まよひそめし こころのすゑに ひかれきて もとのさとりに かへりかねぬる伏見院
848こころより ほかにさとりを もとむるや うきよをすてぬ まよひなるらむ為理
849たつぬれは そこともみえす ははききの ありとはかりに まよひけるかな覚実
850いかにして いひあらはさむ のりのみち とにもかくにも たかふことのは顕遍
851ことのはに とまるこころの さはりこそ まことののりの へたてなりけれ只帰
852ありなしの ふたつのみちに ととまらぬ のりやまことの すかたなるらむ法守法親王
853ひとかたに をしへさためぬ ことわりを おのれとしるや みのりなるらむ尊氏
854ふるさとに かへるはやすき ことわりを しらてやよよに まよひきにけむ澄俊
855いかにせむ まことのみちに いるみそと おもひいつれは またわすれつつ慈円
856ききわくる こころのうちの まことこそ をしへによらぬ さとりなりけれ桓覚
857のりをおもふ こころのやまし ふかけれは よのつねならぬ とりもなくなり忠平
858おほそらに さとりのくもや みちぬらむ よもにみのりの あめそあまねき定為
859をしへおく つゆのかことを たよりにて ひとつくさはに やとるつきかけ蓮生法師
860ありてよの はてはむなしき なかそらに ひとつかけなる つきをみるかな憲実
861みつのおもに うつるもおなし かけなから ひとつそらにそ つきはすみける朝円
862みつのおもに うつれるつきの ひかりこそ みるにはみえて とれはとられね後宇多院
863たえすくむ あかゐのみつの そこすみて こころにはるる ありあけのつき覚助法親王
864わしのやま くもらぬつきを たのむかな としへしのりの みつくきのあと為家
865いくあきか たかねのつきに ちきるらむ わしのみやまの くもちたつねて成運
866つきかけの かさなるやまに いりぬれは いまはたとへし あふきをそおもふ基俊
867こころから こころのつきの すみかねて いくよのやみに まよひきぬらむ宗尋
868くらきより くらきにまよふ こころをも はなれぬつきを まつそはかなき直義
869いつまてか わかみひとつの いてかてに ふるさとかすむ つきをみるへき為藤
870むらくもも しはしそおほふ あまつそら つひにはつきの すまぬものかは道玄
871はれくもる おもひをすてて みるときや こころのつきは さやけかるらむ和氏
872ひとりすむ こころのつきを たつぬれは よのうきくもは めにもかからす基世女
873しむけつの すむにむみやうの くもはれて けたつのかとに まつかせそふく高弁
874ふかきよの くもまにひとり すむつきの かけふきおくれ みねのまつかせ慶政
875たつねこし つきのゆくへや これならむ きのふのゆめの うきくものそら乗伊
876いとふへき こころのくもも なかりけり そむくやまちの あきのよのつき欣子内親王
877やまのはに まよふとみえし くもなから よもにへたてぬ つきのかけかな良憲
878うきくもの こころにたにも かからすは のとかにつきの かけはみてまし慈慶
879たつぬへき かたこそなけれ むねのうちの つきのみやこに いつもすむみは後宇多院
880なへてよの こひのけふりに たちかはれ むねのうちなる ふしのしはやま尊円法親王
881みたたのむ こころのうちに へたてなき ほとけはさらに みをもはなれす耀空
882ひとこゑに みつのこころの ありとたに たのまぬほとや なほまよひけむ基忠(鷹司兼平男)
883ひとたひも そのなをききて たのむこそ うへなきみちの しるへなりけれ為氏
884なのりする くもゐのこゑは ほとときす つきみよとての しるへなりけり兼氏
885にしへゆく みちのしるへは なかなかに たたおろかなる こころなりけり如空
886はかなくそ かたふくつきを をしみける さこそはにしへ ゆかまほしけれ頼実(藤原経宗男)
887にしへゆく つきにちきりを むすひても こころにかかる むらさきのくも性助法親王
888おろかなる みはしもなから むらさきの くものむかへを またぬひはなし浄阿
889うまれては まつおもひいてむ ふるさとに ちきりしともの ふかきこころを源空
890みせはやと はなのなかはを のこしても たれふるさとに われをまつらむ漸空
891ちかひおく おなしはちすの うてなこそ のこるうきみの たのみなりけれ定為
892つゆのみの おきところとて たのむかな さとりひらけし はなのうてなを行済
893なにしおはは いつつのさはり あるものを うらやましくも のほるはなかな和泉式部
894たのむそよ いつつのさはり ふかくとも すてぬほとけの ちかひひとつを徽安門院
895よにこゆる ちかひのうみの みをつくし たつるしるしは いつもくちせし邦長
896いまはまた ちかひのうみの わたしもり くるしきなみに ひとはしつめし為家
897いたつらに くるしきうみに しつみなは のりのうききに またもあはめやも花園院
898かすならぬ せきのふちかは こくふねの のりのためにや よにつかへまし雲禅
899こきよする たよりならては わたしふね のりうけかたき わかみなりけり景綱
900しはしなほ ふねさしとめよ わたしもり のりおくれたる ひともこそあれ広房(大江広茂男)
901いかにして のりのみふねの つなてなは しつまぬかたに こころひかまし長験
902たえぬへき のりのなかれの ともちとり さほのかはらに なくなくそきく覚円
903めくりあふ けふのみのりの むしろにも あらましかはの むかしをそおもふ光厳院
904あまかけり さこそあはれと おもひけめ あととふやとの のりのむしろに内侍(永福門院)
905いまそきく しかなくのへに きりはれて もとこしみちも へたてなしとは覚誉法親王
906しつかなる ところはやすく ありぬへし こころすまさむ かたのなきかな源信
907わかこころ あれのみまさる はるこまは のりのをしへに あふかひそなき尊円法親王
908さとひとの こころもしらす かくとたに いはてはをらし やまふきのはな為定(御子左二条為道男)
909よしあしと ひとにかたるな なにはかた ことうらにすむ あまのしわさを玄円
910しらなみも よせつるかたに かへるなり ひとをなにはの あしとおもふな為世(御子左藤原為氏男)
911つのくにや なにはにおふる よしあしは いふひとからの ことのはそかし高倉(八条院)
912いさきよき こころひとつに つたへきて よそにふるさぬ のりのことのは慈勝
913そのままの こころのほかに ことのはも なきこそのりの しるへなりけれ忠性
914またひとも しらしとそおもふ おとはかは せきいるるみつの ふかきこころは道玄
915そこきよき わかたにかはの すゑうけて こころのみつの なとにこるらむ尊玄
916すすきけむ ひとのこころを みわかはの よきよなかれに くみてしるかな実寿
917つたへきて よよにたえぬや やまかはの なかれひさしき みのりなるらむ尋源
918いかるかや とみのをかはの なかれこそ たえぬみのりの はしめなりけれ良聖
919にこりにも しまぬはちすの あはれなと ひとのこころに ひらけさるらむ尊道法親王
920かくはかり うきよのなかの にこりにも しまぬはむねの はちすなりけり読人不知
921ななとせの つきひにみかく はちすはの つゆのしらたま ひかりそふらし公賢
922たまかくる ころものうらを わすれすは もとよりみかく こころならまし禅隆
923なみかくる ころものうらを きてみれは もにあらはれて たまそよりくる成運
924くもらしと みかくこころの たまかしは もにあらはれて よをいのるかな尊円法親王
925あらはれぬ ころものうらの たまかしは いかなるえにか しつみそめけむ寂真
926たけのはに かけしころもの なこりには とらふすのへも むつましきかな宣旨(六条院)
927ゆきのうちに おもひそいつる みにかへて なかはききけむ のりのことのは桓豪
928ききのこす そのことのはの すゑのつゆ もとめしひとや よをもすてけむ円胤
929ちきりおきし よよのむかしの ことのはに のこさすみかく あきのしらつゆ公経(藤原実宗男)
930こをおもふ こころをもなほ わするるは いかなるやみに まよふなるらむ久明親王
931まとふかき のりのともしひ おもひきや たけのそのふを てらすへしとは栄運
932こころさし きみにかかくる ともしひの おなしひかりに あふかうれしさ紫式部
933いにしへの ちきりもうれし きみかため おなしひかりに かけをならへて伊勢大輔
934たちならふ かけやなからむ よろつよの のちまててらす のりのともしひ覚空
935かかけおく のりのともしひ きえぬまに あかつきちかく なるかうれしさ寛尊法親王
936かねのおとは あけぬときけと たかのやま なほはるかなる あかつきのそら宗尊親王
937いまもなほ たみのかまとの けふりまて まもりそすらむ わかくにのため後宇多院
938ちはやふる ひらののまつも けふこそは はなさくはるの ためしなるらめ読人不知
939ちはやふる かみのすこもに しもさえし そのあかつきは いまもわすれす後二条院
940とりかさす ひかけのかつら くりかへし ちよとそうたふ かみのみまへに順徳院
941かみよより ちきりありてや やまあゐに すれるころもの いろとなるらむ定家
942あまのとの あけしむかしを うつしきて かみよにかへす あさくらのこゑ伏見院
943あめつちの ひらけしときの あしかひや かみのななよの はしめなりけむ定為
944あまのとの あけしつきひも かはらぬは かみよなからの ひかりなりけり後醍醐院
945あまのはら あけしいはとの かみちやま ひつきくもらぬ よにこそありけれ慈道法親王
946あまのはら いはとをあけし かみよより いまもたえせぬ いとたけのこゑ盛徳
947くもらしな ますみのかかみ かけそへて いはとをいてし つきのひかりは祐親
948わかたのむ かみちのやまを いつるより みをはなるへき つきのかけかは氏忠
949いくあきを おくりむかへて かみちやま つきもあまてる ひかりなるらむ氏之
950かみちやま うちとのみやの ゆふかつら いくよをかけて きみまもるらむ為子(従二位)
951きみかよに まためくりあふ をくるまの にしきそかみの たむけなりける匡遠
952すすかやま いさせきこえて おもふこと なりもならすも かみにいのらむ朝村
953ふりはつる みをはやなから いすすかは このせにかけて なほいのるかな読人不知
954すすかかは やそせのなみの たちゐにも わかみのための よをはいのらす崇光院
955かみかせや みもすそかはの たまかしは しつむみくつと なりやはてなむ資茂
956みなかみは ふかきかみちの やまそとも みもすそかはの なかれにそしる守藤
957これやこの あまてるかみの あめつちを まもるしるしの ちきのかたそき常良
958さかえゆく みよのためしは いにしへに ありきあらすも かみそしるらむ顕実母
959おのつから かみはしるらむ いはたかは いはねとふかく たのむこころを良瑜
960みことのり うけてつたへし わかこころ くもらぬほとは かみそしるらむ良実
961あまくたる わけいかつちの かみよより くもらぬそらそ いまものとけき隆長
962ちはやふる かみのちかひも いたつらに ならしとはかり みにたのむかな顕氏(細川頼貞男)
963うきをなほ はくくむかみの ちかひこそ みのことわりの たのみなりけれ兼氏
964うちたのむ かみのなもをし いかてわれ さてはてにきと ひとにきかれし長明
965わかたのむ みたらしかはの たえはこそ しつみはてぬと みをはおもはめ家教
966いまもなほ たのみそわたる むかしわか みをたてそめし かものかはなみ為定(御子左二条為道男)
967としをへて おひそふまつの かすかすに わかかみやまの かけそさかゆく教久
968ひとすちに いのれはきみか みゆきをも みつはのさかき われそとりさす信久
969としをへて かはらぬいろの さかきはに つもるみゆきは かみそうくらむ氏久
970けさもまた いのるこころの あとみえて たのみをかくる ゆきのしらゆふ亀山院
971はらはても かへりたちなむ をみころも かみのめくみに かかるしらゆき読人不知
972わすれしな かものかはなみ かへりたつ くもゐにたかき あさくらのこゑ雅顕
973あかつきの ほしのひかりも ほのかにて なこりをしたふ あさくらのこゑ実泰
974よろつとせ ちとせとうたふ こゑすなり かみもひさしく よをまもるらし公賢
975ひきかへて なりゆくよこそ かなしけれ むかしのことの しらへならねは氏久
976あめつゆも もらぬみかさの やまなれと たのむにつけて そてはぬれつつ実重(三条公親男)
977かみのます みかさのやまの つきかけの ゆふかけてしも さしのほるかな忠通
978たれゆゑに ふたたひてらす つきひとも おもひしらぬを かみやうらみむ祐春
979ふるさとの かすかののへの くさもきも ふたたひはるに あふとしらなむ躬恒
980かすかやま いかにさかえて ふちなみの こすゑにかへる ほとはしられむ為定(御子左二条為道男)
981たちよらは つかさつかさも こころせよ ふちのとりゐの はなのしたかけ後醍醐院
982もろひとも けふふみわけて かすかのや みちあるみよに かみまつるなり尊氏
983かみまつる そのをりをりに たちなれて みしよこひしき かすかののはら兵衛督(花園院)
984さをしかの おきふしわかす つかへきて かすかののへに あきもへにけり良基(二条道平男)
985あとたれし そのいにしへの ことのはを おもへはみをも なほたのむかな祐世(中臣祐賢男)
986さりともと のちのよまても たのむかな みにあまりぬる かみのめくみを良信
987ひとよまつ ちよのすゑはの おいきまて こたかくなりぬ としもくらゐも為長(菅原長守男)
988かみかきに われこそいそけ さかきはの ゆふつけとりの こゑをまちえて国冬
989おこたらす いのるもみよの ためなれは きみとかみとに みはつかへつつ国夏
990ふりにける あとをたつねて すみのえの みゆきかさなる けふにもあるかな為兼
991きみかよに ゆきあひのしもの としふりて ちたひもつくれ ちきのかたそき尊円法親王
992つかへても ひさしくなりぬ みつかきの ふたたひかはる みよにあひつつ国平
993よとともに さかゆへしとや みつかきに いはひそめけむ しきしまのみち為明
994すみよしの まつのことのは かはらすは かみよにかへれ しきしまのみち長秀
995かみかきや ぬさとくたけて ふるゆきの つもれはまつに かくるしらゆふ国夏
996ちはやふる かみのそのふの ゆふたすき かけていくよの すゑまもるらむ顕詮
997ももとせを やたひおくりし かみよより ふりてひさしき しかのはままつ成繁
998よるなみの いつつのいろは みとりなる まつにそのこる しかのからさき慈勝
999あとたれし かみのみゆきの いにしへを おもへはとほき からさきのまつ慈道法親王
1000たくひなき かけとたのみて としもへぬ このひともとの しかのはままつ覚為
1001たのむそよ ななのやしろの かすかすに さのみはかみも すてしとおもへは慈順
1002もらさしな わかかみかきの みしめなは はへてもあまる よものめくみは慈伝
1003やまさくら さきそふころの かみかきは そのやへかきの くもかとそみる和氏
1004かみかきに わかみやそちの しもふりて おいのかけそふ ふゆのよのつき国長
1005わきてなほ たのむこころも ふかきかな あとたれそめし ゆきのしらやま道玄
1006きみかよを いかにいのりて みるゆめも たかはぬかみの めくみなりけむ尊什
1007かくてよに すむかひあらは いはしみつ こころのにこる なをもなかさし清氏
1008ひとよりも わかひとなれは いはしみつ きよきなかれの すゑまもるらむ尊氏
1009おとにのみ あやなくひとを ききそめて それとたにみぬ こひそくるしき元方
1010したひもの とくるはかりを たのみにて たれともしらぬ こひもするかな躬恒
1011ひとしれす おもふこころの しるけれは ゆふともとけよ きみかしたひも馬内侍
1012こひしきを ひとにはいはて ひとしれす よひよひことに おもひいつるかな実頼
1013われひとり おもへはくるし かきりなき こころをいてや かけてしらせむ高明
1014むさしあふみ ふみたにもみぬ ものゆゑに なににこころを かけはしめけむ崇徳院
1015うらわかみ ねよけにみゆる わかくさを ひとのむすはむ ことをしそおもふ業平
1016はつくさの なとめつらしき ことのはそ うらなくひとを おもひけるかな読人不知
1017いもかかと ゆきすきかねて くさむすふ かせふきとくな あはむひまてに読人不知
1018あさはのに たつみわこすけ ねふかめて たれゆゑにかは わかこひさらむ人麿
1019こひわひぬ あふよもかたし おくやまの いはもとこすけ ねのみなかれて家良
1020はかなしや そてのみぬれて いけみつの またいひいてぬ たのみはかりは読人不知
1021いつしかと はつやまあゐの いろにいてて おもひそめつる ほとをみせはや為子(贈従三位)
1022たれゆゑに おもひいりにし こひちとて ひとのこころの かよはさるらむ師賢(藤原師信男)
1023おもひいる こころそまよふ いきうしと いひてかへらむ こひちならねは為遠
1024おもひたつ こひちのすゑの しるへとは まよふこころを いかかたのまむ玄勝
1025こひのやま いりてくるしき みちそとは ふみそめてこそ おもひしりぬれ有忠
1026うちつけに まよふこころと きくからに なくさめやすく おもほゆるかな監命婦
1027よしさらは いははやとおもふ をりをりや しのふこころの あまりなるらむ冬平
1028しらせはや とはかりものを おもふこそ ならはぬこひの はしめなりけれ少将内侍(後深草院)
1029けふこそは しらせそめつれ こひしさを さてのみやはと おもふあまりに成通
1030いはてたた おもひやるまて しらせはや ひとしれすのみ こふるこころを隆源(藤原通宗男)
1031いひそめて こころかはらは なかなかに ちきらぬさきそ こひしかるへき為世(御子左藤原為氏男)
1032きみとわれ いかなることを ちきりけむ むかしのよこそ しらまほしけれ読人不知
1033きみゆゑや はしめもはても かきりなき うきよをめくる みともなりけむ式子内親王
1034かかりける むくひそつらき あふことの なきをちきりに おもひなしても伏見院
1035いかなりし かせのたよりに ききそめて みにしむこひの つまとなるらむ俊成女
1036いかにせむ それとはかりの おとはして めにみぬかせの こころつくしを邦省親王
1037おもふとも しらしなひとめ もるやまの したふくかせの いろしみえねは秀能(藤原秀宗男)
1038しるへとは たのますなから おもひやる そなたのかせの つてそまたるる尊胤法親王
1039たちかへり われさへたとる こころかな なにをしるへに おもひそむらむ道性
1040たよりにも あらぬおもひを しるへとて こころとまよふ こひのみちかな兼朝
1041おのつから ひともをしへぬ おもひにて まよひそむるや こひちなるらむ尊氏
1042そことたに をしへぬものを いつかたに まよふこころの われさそふらむ為道
1043いくたひか ふみまとふらむ みわのやま すきあるかとは みゆるものから読人不知
1044なにゆゑと おもひもわかす あくかるる こころやこひの はしめなるらむ資季
1045かこつへき たよりたになく くるしきは そらにしめゆふ おもひなりけり為明
1046とへかしな しのふのつゆの きえかへり かきりしられぬ したのみたれを光之
1047つらからむ こころのおくは みてもうし よしやしのふの やまのかよひち親子(典侍親子朝臣)
1048うかりける しのふのやまの しるへかな かよはぬなかに まよふちきりは後醍醐院
1049しらせはや しのふのうらの うけのをの おもひたゆたふ こころなかさを恒明親王
1050いかにせむ しのふのうらの おきつなみ かけてもそての いろにいてなは隆教
1051しられしな よそのうらちを こくふねの ほのみしなみを そてにかくとは伏見院
1052うきなから よるへをそまつ なにはえの あしわけをふね よそにこかれて為親
1053あしまなき なみたのそての みなとにも さはるはひとの よるへなりけり国道(津守国助男)
1054なみかくる いそまのあまよ こととはむ なれもみるめに そてはぬるやと公明
1055いたつらに いくとしつきか ふりぬらむ もらすひまなき そてのなみたは実衡
1056つつむとも しのふにたへぬ なみたとて おさふるそての いろやかはらむ為世(御子左藤原為氏男)
1057つひにさて うきよかたりと なりやせむ せかるるそての なみたならねは達智門院
1058ひとしれぬ こころのとふも うきものを うたてなみたの そてにもるらむ兵衛督(達智門院)
1059くちぬへき そてにまかせて すくすかな いまはこころに あまるなみたを為親
1060からころも みよりあまれる なみたこそ つつむそてにも たまらさりけれ素暹
1061としふれと ひとのこころは つれなくて なみたはいろの かはりぬるかな俊成(藤原俊忠男)
1062せきかねて あまるなみたの くれなゐに たもとさへこそ いろかはりけれ久良親王
1063せきかねし なみたのはてや くれなゐの うすはなそめの いろにいつらむ宗尊親王
1064あさはかに うつりにけりな くれなゐの うすはなそめの ころもへすして定為
1065からころも またみになれぬ としをへて なみたのいろや ちしほなるらむ尊氏
1066こひしさを けにいかさまに いひいてむ なみたならては ことのはもなし通重
1067わかおもふ こころのすゑを もらさねは なみたはかりと そてやしるらむ資名
1068せきかへし つつめはそてに もりかねて さすかひとめを しるなみたかな玄円
1069ひとすちに こころなきみと おもへとも うきをはそてに しるなみたかな為兼
1070つつみきて としつきつもる なみたのみ たへぬおもひを ひとやしるらむ直氏
1071おもふにも まけぬなみたそ ふりにける しのふることの こころなかさに為道
1072しのはすは ほさてもそてを みすへきに しほりそかぬる よはのさころも俊成(藤原俊忠男)
1073せくとたに みえしとおもひし わかそての なみたをよにも もらしつるかな為冬
1074せきかぬる そてのなみたを ひととはは ころものうらの たまとこたへむ慈道法親王
1075いまははや そてにそつつむ おもひせく こころのうちの たきのしらたま為定(御子左二条為道男)
1076かたしきの そてにせかれぬ たきつせの なかにそよとは ありとしもなき慈伝
1077いはておもふ こころのうちの しからみに せきあへぬものは なみたなりけり範隆
1078ひとめせく そてのしからみ くちぬまに なみたのふちは みくさゐにけり実重(三条公親男)
1079なみたかは なかれあふせも まつへきに なにそはありて そてのしからみ光頼
1080なににまた せきてととめむ なみたかは うくはかりなる そてのしからみ高広
1081なみたかは そてのしからみ せきかねて やとれるつきも かけそなかるる善算
1082なみたかは せかはとたのむ かひもなし いつよりそての いろにいてけむ光吉
1083ひとしれす いつしかおつる なみたかは わたるとなしに そてぬらすらむ氏胤
1084よしさらは つつむもくるし なみたかは あふせにかへて なをなかすとも基氏(足利尊氏男)
1085かねてより おもひしことの くやしきは うきなをなかす なみたなりけり兼氏
1086しのふれは そらになみたも かきくれぬ こひしきひとや いつこなるらむ兼家
1087ひとしれす こころのうちの くるしきは おもひしことの たかふなりけり宇多天皇
1088ひとしれぬ こころのうちの いつはりを たかまこととか おもひはつへき読人不知
1089さすかまた ひとにはひとも もらさしと つつむはかりを たのむなかかな通顕
1090しられしと つつむにしけき ひとめこそ かよふこころの せきとなりけれ為世(御子左藤原為氏男)
1091せきもりの まとろむよはは あまたあれと こころのかよふ みちやなからむ按察(鷹司院)
1092おとにきく よもきかしまに よるなみの またみぬなかに たつうきなかな実教
1093まつかえの たかしのはまの おきつなみ およはぬいろに かけてこひつつ為定(御子左二条為道男)
1094おきつなみ よするたかしの はままつの ねにはなけとも ひとそつれなき盛徳
1095いせのうみの あまのうけなは うきしつみ おもふとたにも しるひともかな公賢
1096しるやいかに いはうつなみの はやくより たつはうきなの かくれなきみを師久
1097はやきせの いはまのなみの わきかへり くるしやこころ したむせひつつ越前(嘉陽門院)
1098ともすれは いはまつたひに ゆくみつの ととこほりても ぬるるそてかな為藤
1099いはかねの こりしくやまを わけかねて ねにはなくとも いろにいてめや読人不知
1100いかにして いはうつなみの やちかへり くたくとたにも ひとにしらせむ読人不知
1101うらちかく なみのうちよる さされいしの なかのおもひと しるやしらすや伊勢
1102せめてたた きえぬとたにも しらせはや したのおもひに くゆるけふりを伏見院
1103こひしなむ おもひのけふり せめてたた あふにかへたる なにたにもたて行輔
1104ゆふけふり そらにたつなの うきにたに かへぬおもひは なほむせひつつ宰相(■子内親王家)
1105しるらめや あまのとまやの ゆふけふり たつなにそての しほたるるとは宗明
1106あふことは なたのしほやの ゆふけふり なひかぬさきに たつうきなかな実継
1107つのくにの なにはたてしと あしひたく けふりはしたに くゆりわひつつ忠季(藤原公蔭男)
1108ひとしれす ほのめかしても かひなきは おもはぬかたの あまのいさりひ実直母
1109しらせはや あまのしのひの したもえに たつとはみえぬ むなしけふりを行春(紀)
1110たきすさふ わかしたもえの けふりこそ ひとめにたたぬ おもひなりけれ忠貞
1111いかにせむ わかみこかれて したもえの けふりのすゑは ゆくかたもなし雅冬
1112いかかせむ いはねはむねの ゆふけふり こころひとつに くゆるおもひを為道
1113すくもたく にひしまもりか ゆふけふり きえたにあへす みをこかしつつ国冬
1114もしほやく あまのたくひの したにのみ もえつつからき われにやはあらぬ元真
1115いかにせむ あこきかうらに そてぬれて つむやしほきの からきおもひを公敏
1116あまのたく もしほのけふり たつそらも なくなくからき みのおもひかな公賢
1117あまひとの もしほのけふり なひくやと おもふかたより かせもふかなむ花園院
1118うきなのみ をしまのあまの ゆふけふり たてしとすれは うらかせそふく有光
1119ふしのねに ならぬおもひの もえそめて わかためつらく たつけふりかな国助
1120したもえの わかみよりこそ たてすとも ふしのけふりの たくひとはしれ為世(御子左藤原為氏男)
1121ときしらぬ わかしたもえの おもひかな ふしのけふりの たくひはかりに道嗣
1122しのひかね こころのそらに たつけふり みせはやふしの やまにまかへて良経(九条兼実男)
1123たちのほる ふしのけふりの ゆくへとも こころそらなる みのおもひかな為定(御子左二条為道男)
1124たちまかふ かたこそなけれ ふしのねや たえぬおもひに くゆるけふりは伏見院
1125よもすから こひのけふりに むせひつつ ふしのねたくも くゆるころかな基俊
1126としをへて もえつつとはに おもへとや ふしのねたくも つれなかるらむ具氏
1127もゆれとも しるひとなきは としへつる おもひのうちの おもひなりけり公任
1128しらせはや にひくはまゆの かきこもり いふせきまてに しのふこころを顕仲(藤原資仲男)
1129しられしな おやのかふこの ひくまゆの こころにこむる おもひありとは為定(御子左二条為道男)
1130ひとしれぬ こころのうちの みなかみに せくやなみたの おとなしのたき為信
1131やまかはの たきつこころを せきかねて ひとのきかくに なけきつるかな読人不知
1132たにかはの みかけにおふる やますけの やますもひとに こひわたるかな人麿
1133ひとしれす ものおもふときは なにはなる あしのしたねそ したになかるる貫之
1134ほにはいてし あしのふしはの したみたれ いりえのなみに くちははつとも雅経
1135かくれぬの そこのしたくさ みかくれて しられぬこひは わひしかりけり仲平
1136みかくれに かくるはかりの したくさは なかからしとも おもほゆるかな伊勢
1137おもひあれは なみたにそては くちはてぬ むくらのやとに なにをしかまし実重(三条公親男)
1138もらすなよ つゆのよすかの そてのつき くさはのほかに やとりありとは浄弁
1139つきたにも しのへはしらし わかそてに かかるなみたの やとりありとは俊光女
1140せきわふる なみたをたにも もらさすは いくよもやとれ そてのつきかけ経有(飛鳥井雅孝男)
1141ひととはは つきゆゑおつる ならひそと こたへやせまし そてのなみたを義詮
1142つきみれは ねられぬよはと いひなして なみたはかりを なほつつむかな長綱(菅原茂長男)
1143ひとしれぬ よはのおもひの かよはすは おなしねさめの つきをみましや遊義門院
1144くもゐにて なかむとおもへと わかそてに やとれるつきを きみやみるらむ出羽弁
1145いつなれし おもかけとてか よはのつき なかむるそてに まつうかふらむ兼行女
1146そらにまた さそひなそへそ よはのつき ひとのこころの あくかるるみを為藤
1147よなよなの つきもなみたに くもりにき かけたにみせぬ ひとをこふとて定家
1148あはれなと つきのかつらの よそにのみ てにもとられぬ かけをこふらむ公雄
1149わかこひは むらくものそらに ゆくつきの あひみかたくも なりまさるかな光厳院
1150ゆきかへり あまとふくもの たよりにも わかおもふひとの ことはかよはす光厳院
1151しきたへの まくらをまきて いもとわれ ぬるよはなしに としそへにける人麿
1152ゆめをみて かひなきことの わひしきは さむるうつつの こひにそありける貫之
1153こひしさに おもひみたれて ねぬるよの ふかきゆめちを うつつともかな素性
1154ゆめよりも さめてののちの わひしきは つらきうつつに まとふなりけり読人不知
1155おもひわひ しはしもねはや ゆめのうちに みゆれはあひぬ みねはわすれぬ小町
1156おもひねの ゆめはしはしの ちきりにて さめてののちの なくさめそなき覚助法親王
1157ひとりねに あふとみえつる おもかけの さむるゆめちを したにわひつつ基氏(足利尊氏男)
1158おもひねの こころかはらぬ ゆめならは ひともやこよひ あふとみるらむ実教
1159ゆめちにも あふとしみえは かたいとの よるたにやすく ねなましものを具行
1160ぬるかうちに せめてはみえよ せきもりの ありともきかぬ ゆめのかよひち善成
1161うつつには またこえもみす おもひねの ゆめちはかりの あふさかのせき為世(御子左藤原為氏男)
1162ゆめちには うつつはかりの せきやなき こゆとそみつる あふさかのやま為子(贈従三位)
1163いかにねて みえつるゆめの おもかけそ さしもゆるさぬ なかのちきりに実衡女
1164いかにせむ ぬるかうちにも せきすゑて ゆるさぬよはの ゆめのかよひち盛経(藤原盛継男)
1165うきひとの こころのせきに うちもねて ゆめちをさへそ ゆるささりける公宗三女
1166ひとりねは いかにふすゐの とこなれは ゆめちもやすく かよはさるらむ尊氏
1167いまはたた おやのいさめし うたたねの ゆめちにたにも あひみてしかな大輔(殷富門院)
1168なけきわひ くらせるよひも いかならむ なくさむほとの ゆめしみえすは通藤女
1169はかなしや まつほとふけて ねぬるよの こころにかくる ゆめのうきはし読人不知
1170おのつから ひとめをしのふ かよひちや よひよひことの ゆめのうきはし経平(藤原家基男)
1171そのままに おもひたえても ありなまし みはてぬよはの ゆめのうきはし実俊(西園寺公宗男)
1172はかなくも なほさめやらて したふかな みはてさりつる ゆめのなこりを恒明親王
1173あふとみて さむるうつつの つらさにも こりすやゆめを なほたのむらむ宣時(北条)
1174おもひねの ゆめのまくらに ちきりしも さめてはもとの つらさなりけり時村
1175おきもせす ねもせてあかす とこのうへに ゆめともなしの ひとのおもかけ公蔭
1176たのましよ ゆめのたたちの とこのやま いさやわすれぬ ちきりなりとも藤経(源)
1177しきたへの とこのみをなる なみたかは まくらなかれて みるゆめもなし為家
1178せきあへぬ なみたそつもる うはたまの よはのまくらも うきぬはかりに性厳
1179しきたへの まくらをくくる なみたにそ うきねはしつる こひのしけさに読人不知
1180しのひつつ なかきよすから こひわひて なみたのふちに うかひてそぬる兼通
1181うかひても きみはねにけり いかなれは つゆとおきゐて ぬれしたもとそ侍従(本院)
1182おもひかね いろにいてにし ことのはの さていたつらに くちはてねとや長通
1183あたなりと かねておもへは ことのはの くちもくちすも わくかたそなき読人不知
1184おもふこと あとなきなみに こくふねの うきしつみても こひわたるかな覚助法親王
1185いたつらに あはてのうらに よるへなき わかみそいまは あまのすてふね為世(御子左藤原為氏男)
1186うきしつみ われそこかかる もかりふね ひとはこころも よせぬみきはに為子(従二位)
1187もかみかは しはしとたのむ ちきりたに なほいなふねの とほさかりつつ祐夏(鴨祐雄男)
1188ひたひとの まきなかすてふ にふのかは ことはかよへと ふねそかよはぬ読人不知
1189いかにせむ にふのかはなみ よるたにも かよはぬふねの うきななかさは兼康
1190わたのはら なみちにとほく ゆくふねの ほにあらはれて こひやわたらむ頼春
1191しらせはや まほにかけつつ ゆくふねの ひとかたにのみ かよふこころを公順
1192おほふねの まほのてなはの かせをいたみ ひくかたしけき ひとにこひつつ為明
1193あふことの なきさのをふね いつかたに しはしこころの とまりさためむ為相
1194いかにせむ ゆふなみあるる みなとふね おもひよるへき たよりたになし清綱
1195おもふこと みなとにちかふ はやふねの とまりもあへぬ こひもするかな信実
1196きふねかは たまちるなみの くたけつつ おもふこころを あはれとはみよ尊氏
1197いたつらに みさへなかるる なみたかは あふせやなほも たのみなるらむ資栄
1198ものおもへは そてになかるる なみたかは いかなるみをに あふせなりけむ西行
1199ききしより そてのみぬるる おとはかは いつをあふせと こひわたるらむ読人不知
1200にこるせは しはしはかりそ みつしあらは すみなむとこそ たのみわたらめ
1201かせふけは きしのまにまに うちよする なみのまもなく おもほゆるかな醍醐天皇
1202おほうみに たつらむなみの かすしらす きみにこふらく やむときもなし読人不知
1203わたつうみの うみにいてたる しかまかは たえむひにこそ わかこひやまめ読人不知
1204たこのうらの なみのぬれきぬ ほしわひて たえぬひもなく たつうきなかな実教
1205いそなつむ なこのあまひと こととはむ ほすにかわかぬ そてはありやと顕昭
1206しらせはや かりそめなりし みるめより たえすそかかる そてのうらなみ公忠(藤原実忠男)
1207しられしな みなそこふかき なひきもの なひかぬひとに われみたるとは公蔭
1208むらさきの なたかのうらの なひきもの こころはいもに よりにしものを読人不知
1209わたつうみの みるめはたれか かりそめし よのひとことに なしといはする小町
1210かたいとの くるすのをのの ひとすちに あふへきふしや おもひたえなむ兼盛
1211くりかへし つらくてへぬる としのをに なみたのたまを ぬかぬひそなき兼実
1212みをくたく なみたのたまの ををたえて わかかたいとの あはてくるしき後宇多院
1213ふくかせに わかみをなさは たますたれ ひまもとめつつ いるへきものを業平
1214わかなみた かかれとしても くろかみの なかくやひとに みたれそめにし近衛(今出河院)
1215よよかけて なにむすひけむ したひもの とけぬにしるき なかのちきりを顕実母
1216むすひけむ ちきりはしらす したひもの とけてくやしき なけきをやせむ永福門院
1217いにしへの しつはたおひの いくかへり わかかたこひの すゑにむすはむ順徳院
1218つひにさて つれなかるへき ちきりかと ゆくすゑをたに いかてしらまし後醍醐院
1219あはれなと むくひあるへき のちのよの みをもおもはて つれなかるらむ為子(贈従三位)
1220みをすてむ のちのよまても かなしきは ひとをうらむる むくひなりけり冬平
1221のちのよの たのみになして こひしなむ いきてまつへき ちきりならすは為氏
1222いもにこひ わかのうらまつ うらみても つれなきいろに としそへにける土御門院
1223あふことを いつしかとのみ まつかせの おとにしられて こひわたるかな躬恒
1224なみのよる いはねにたてる そなれまつ またねもいらて こひあかしつる基俊
1225わかこひは おほろのしみつ いはこえて せきやるかたも なきこころかな俊頼(源経信男)
1226いととしく たのまるるかな もかみかは しはしはかりの いなとみつれは相如(藤原相信男)
1227わきもこか みもすそかはの きしにおふる きみをみつのの かしはとをしれ輔親
1228さかきはを さしはへいのる しるしあらは ゆふかけてとふ ひともあらなむ読人不知
1229さほすきて ならのたむけに おくぬさは いもにあひみむ しるしなりけり聖武天皇
1230あひみむと おもふこころは まつらなる かかみのかみや そらにしるらむ紫式部
1231みくさゐる のもりのかかみ みすもあらす みもせぬこひに ぬるるそてかな盛徳
1232わかなかは のもりのかかみ みくさゐて よそなからみし おもかけもなし経教
1233やまとりの をろのかかみの かけはあれと へたつるなかは みるかひもなし冬通
1234なみたさへ へたつるなかの おもかけや とほやまとりの かかみなるらむ為定(御子左二条為道男)
1235みちのくの まののかやはら とほけれと おもかけにして みゆといふものを笠女郎
1236おもへとも おもひもかねつ あしひきの やまとりのをの なかきこよひを人麿
1237おとにきく なるとのうらに かつきする あまよわひしき めをみするかな忠見
1238ひとりぬる とこのやまかせ ふけぬとも あはてむなしき わかなもらすな貞資(藤原)
1239あふことに かへてはなにか をしからむ なきにたつこそ うきななりけれ行春(二階堂時春男)
1240うきみよに あらむかきりは しのふとも きえなむのちは ひとやもらさむ少将(邦省親王家)
1241さてもよに あらはやきかむ こひしなむ のちはあはれと ひとのいふとも冬平
1242こひしなむ のちたにせめて あはれしれ なきをはひとの いとふものかは国道(津守国助男)
1243しのふるも なけくもはての いかならむ わかみひとつの こころくらへは公守
1244なにゆゑか もらしそめけむ なかなかに さらすはひとの うきもしられし通顕
1245たかもらす なみたなるらむ しきたへの まくらにたにも しのふおもひを頼隆
1246せきかねて いかにねしよの なみたより まくらにこひの しられそめけむ基任
1247しるといふ まくらさへこそ くちにけれ せめてもしのふ としのへぬれは国助
1248ひとりぬる とこくちめやも あやむしろ をになるまてに きみをしまたむ読人不知
1249あやむしろ をになるまての としつきも くちぬはひとの ちきりなりけり後醍醐院
1250ひとりぬる わかたまくらを ひるはほし よるはぬらして いくよへぬらむ読人不知
1251ひとりのみ かたしくそての たまくらに よかれぬものは なみたなりけり高倉(安嘉門院)
1252しきたへの まくらまてこそ かたからめ ことのはをたに かはささるらむ国冬
1253からころも かへすたのみも なみたかは まくらなかるる よはそかなしき隆博
1254たれにかは みはならはしと かこたまし わかたまくらの よはのあきかせ道洪
1255いもにこひ よさむなるみの いねかてに さもふきまさる かせのおとかな光俊(葉室光親男)
1256いかにせむ なほこりすまの うらかせに くゆるけふりの むすほほれつつ後鳥羽院
1257あまひとの たくものけふり なひくとも ことうらかせを いかかたのまむ為氏
1258ことうらに けふりのすゑは なひくとも もしほたれつる かたをわするな御匣(式乾門院)
1259そらにたに なひくとみえよ したむせふ おもひのけふり たちものほらは為遠
1260したにのみ こかれつるかな けふりたち もゆとはみえぬ おもひなれとも読人不知
1261つれなさを おもひきえにし むくひとて よよのけふりに またやこかれむ為家
1262われゆゑの けふりのすゑと しらすとも きえなむくもの あとをたにとへ経尹(世尊寺経朝男)
1263きえはつる ゆくへともみよ おもひわひ かへぬいのちの むなしけふりを定為
1264いのらすよ なほなからへて あふことに かへぬいのちの つれなかれとは和義
1265いのちこそ けにつれなくは をしからね あふにかふへき みともおもはて為藤
1266あふことに かへはなこりや をしからむ つらきときこそ しぬへかりけれ国量
1267こひしねと するわさしるき つれなさに まさりてうきは いのちなりけり兼氏
1268こひしねと つらきもしらす なからへて いのちをひとに またれけるかな為定(御子左二条為道男)
1269ひとはなほ いとひやすらむ おなしよの たのみはかりに かかるいのちを実衡女
1270おなしよに いきてたのみは なけれとも あるをちきりと おもふはかりそ俊阿
1271をしからぬ いのちはかりは なからへて いつをかきりの おもひなるらむ教定(飛鳥井雅経男)
1272うきひとの つらさはいつを たのめとて あふまてをしむ いのちなるらむ光正
1273つれなさの かきりはいつを たのみにて あふにかへむと みををしむらむ知行(源義行男)
1274おのつから あふにかふへき いのちかと うきにたへたる みをたのむかな行氏(祝部行言男)
1275さりともと おもふにいける いのちかな こころよわくは けなましものを季広
1276おなしよに あらはといひし ことのはや うきにとしふる いのちなるらむ経方
1277こひしぬと いひてもさのみ なからへは なにをかのちの ことのはにせむ師賢(藤原師信男)
1278あふまてと をしむいのちも いかならむ ゆくすゑしらぬ なかのちきりは道平
1279いつまてか ひとのつらさに なからへむ なほたまのをの おもひよわらて公雄
1280あふことの なきをちきりに なからへて いのちのかきり ものおもへとや俊光
1281こひしなむ みをはおもはす おなしよに あはぬためしの なこそをしけれ寂昌
1282あふとみる ゆめをたのみに こひしなは うつつにかへぬ なこそをしけれ為実(御子左藤原為氏男)
1283なからへは おろかなるにも なりぬへし おもふとみせて こひやしなまし為道
1284あらさらむ のちのなまては おもはねは うきおなしよに なきみともかな為相
1285みしひとの そてにうかれし わかたまの やかてむなしき みとやなりなむ良経(九条兼実男)
1286あやにくに きえぬうきなや ととまらむ あとなきくもに みはたくふとも後伏見院
1287かひなしや そらにしめゆふ ちきりにて みをうきくもの おもひきえなは能信(藤原道長男)
1288あまつそら かせにまかせて ゆくくもの さてうきなから なかやたえなむ宗秀(藤原宗泰男)
1289わかこひは ゆくへもしらす あらしふく ゆふへのくもの そらにきえつつ実氏
1290ふきまよふ あらしのそらの うきくもの ゆきあふへくも なきちきりかな為定(御子左二条為道男)
1291あしひきの やまのはとほき あまくもの かかるかたなき みのちきりかな良基(二条道平男)
1292あまくもの やへかさなれる そらなれや こひもうらみも はれぬこころは一条(徽安門院)
1293よそにこそ やへのしらくも おもひしか おもはぬなかに はやたちにけり小町
1294かはくちの せきのあらかき いかなれは よるのかよひを ゆるささるらむ読人不知
1295こえわふる あふさかよりも おとにきく なこそはたかき せきとしらなむ道綱母
1296みにたえぬ おもひをすまの せきすゑて ひとにこころを なとととむらむ定家
1297むなしくて つきひはこえつ あふことを へたつるせきの なかのかよひち為道
1298こえてのち またつらくとも あふさかの せきちのとりを きくよはもかな尊氏
1299せきもりの こころもしらぬ あふさかを わかかよひちと おもひけるかな長舜
1300うちもねぬ わかかよひちの せきもりは たたうきひとの こころなりけり良冬
1301わすれしと おもふにそへて こひしきは こころにかなふ こころなりけり範永
1302わかこころ われにしたかふ ものならは つらきひとをは こひすそあらまし花園院
1303つらきをは しりてそいはぬ しかりとて おもひたゆへき こころならねは能宣
1304いとはるる みとしりなから いかなれは つらきにつけて こひしかるらむ実泰
1305みのほとを おもひしれとや いとふらむ うきにつけても こひしきものを寂蓮
1306さのみやは つらきけしきを みしまえの いりえのこもの みたれはつへき顕昭
1307ひにそへて おもひそしけき おほあらきの うきたのもりや わかみなるらむ高倉(八条院)
1308こひしさの たたひとみちに なりゆけは うきにもすきて ものそかなしき光厳院
1309おもはぬを おもふはなにの むくひそと しらぬよにまて うきちきりかな俊光女
1310さきのよの むくひもかなし うきひとに われいかはかり つれなかりけむ高秀
1311つらきにも うきにもひとの わすられぬ こころやなにの むくひなるらむ兵衛督(達智門院)
1312つらきをは よよのむくひに かこちても こひしきことそ なくさめもなき儀子内親王
1313いへはえに こかるるむねの あはてのみ おもひくらせる けふのほそぬの隆教
1314おのつから あひみるよはの あらはこそ つもるまくらの ちりもはらはめ為世(御子左藤原為氏男)
1315しきたへの まくらのちりは はらふとも なほひとりねの かすやつもらむ読人不知
1316なみたかは そてにかけつつ しからみの せかぬあふせも なとよとむらむ経賢
1317みつくきの あとはたえせぬ なかかはに いつまてよとむ あふせなるらむ実夏
1318いもせやま わからぬなかの よしのかは たかためかはる こひのふちせそ行念
1319たのむへき かたこそなけれ やまのゐの そこのこころを くみてしるにも寿成門院
1320あさからす ちきれはとても たのまめや わかこころたに かはりゆくよに内侍(永福門院)
1321あつさゆみ ひくてあまたに なりぬとも もとのこころを わすれすもかな実顕
1322いつはりの なきよなりとも うきひとの こころかはらは えやはたのまむ基名
1323たのみつつ またこそなけけ いつはりの あるよもしらぬ こころつからに為道
1324あまくもの そらたのめなる いつはりを あるものとたに しるひとやなき宇多天皇
1325ひくかたの こころにまけて たのむかな しらぬちきりの よよのかねこと花園院
1326かはるへき ひとのちきりの ゆくすゑも かねてしらぬや たのみなるらむ藤子(従三位)
1327きくたひに こりすそなほも たのまるる うきにはなれし ちきりなれとも後二条院
1328たのますは ちきりのすゑも つらからし なとうたかはぬ こころなりけむ後醍醐院
1329ゆくすゑの こころつくしに なりにけり さすかたのみを かくるちきりは為藤
1330いつまての いのちとてかは ゆくすゑを たのむはかりは ちきりおくらむ遠村
1331ことのはに なほこそまよへ いつはりと おもひもはてぬ こころよわさは澄基
1332のちのよと いひしはかりや いつはりを またみにしらぬ たのみなるらむ読人不知
1333いまこむと ちきりたにおけ かたいとの あひもあはすも たまのをにせむ氏光
1334むすひおく ちきりもふかし いもせやま なかなるかはの たきのしらいと彦良
1335おもひかは うたかたなみの きえかへり むすふちきりは ゆくへたになし親行(源光行男)
1336むすひける ちきりそつらき ともかくも ひとをはいまは いはしろのまつ登蓮
1337こりすまに さのみなふきそ いまこむと いひてむなしき にはのまつかせ為氏
1338ききなれし こころつくしも いまはみの ゆふへをよそに まつかせそふく兼綱(藤原光業男)
1339いまはたた またしとたにも おもははや こぬをならひの ゆふくれのそら為道
1340たのめても こぬよむなしく あけゆくや うきいつはりの かきりなるらむ冬通
1341いつはりも さのみはいかか たのむへき これやまつよの かきりなるらむ為子(贈従三位)
1342さのみよも つれなからしと いつはりの つもるにつけて なほそまたるる成任
1343いつはりと おもひなからも おこたらす まつよのかすの つもりぬるかな雄舜
1344つらかりし ももよのかすは わすられて なほたのまるる しちのはしかき公守
1345いつはりの かすさへみえて かなしきは こぬよつもれる しちのはしかき為名
1346たのめぬを こぬよのかすと いひなして わかいつはりに またやかこたむ忠有
1347まちわふる わかこころより つれなしと ちきらぬひとに うきなたつらむ万代(後醍醐院女蔵人)
1348たのめつつ こぬいつはりを かこたすは またさりけりと ひとやおもはむ読人不知
1349またすしも あるへきものか いつはりに ひとこそいひし ゆふへなりとも栄子内親王
1350とはすとも せめてたのめぬ くれならは かはるこころは しられさらまし聖統
1351ちきりしを いつはりとたに おもはすは せめてしはしも たのまれなまし為嗣
1352まつほとも なくさみなまし いつはりと おもはてたのむ ちきりなりせは邦省親王
1353おのつから いつはりならて くるものと おもひさたむる ゆふくれもかな為世(御子左藤原為氏男)
1354いつはりは わかみのよそに あるよとて たのむるなかの かはらすもかな隆淵
1355いつはりと おもはてひとの またるるは いかにたのめし ゆふへなるらむ藤子(従三位)
1356たのめても くるよひかたき ささかにの いとのみたれて ものをこそおもへ実明女
1357たのむへき ならひはしらぬ ゆふくれも こころにかかる ささかにのいと通相
1358なほさりの ことのはまてそ たのまるる つらきをたにも したふみなれは清氏
1359いつはりと おもひもわかぬ こころにて ふけゆくさへそ しられさりける家信
1360まちわひて ふくるもつらし なかなかに こぬよはひとの ちきらすもかな秀経
1361いまこむと たのめぬよはも またるるは つきこそひとの ちきりなりけれ高広
1362とはぬまに こよひのつきも かたふきぬ なにをかことに なしてまたまし法守法親王
1363まきのとを あけなからにて あけぬれは たのめぬつきの かけそもりこし紀伊(祐子内親王家)
1364さのみまた ねられぬままに つきもみし まつよふけぬと ひともこそしれ為重/為量
1365ありあけの つきのかたみも またしらす つれなきはうき ひとのこころに実氏
1366うきひとの わかおもかけと いひおかは こぬよのつきも なくさみなまし為相
1367たのめおく たたそのままの ことのはを うきにはなさぬ ちきりともかな師信
1368ききわひぬ おなしゆふへの いつはりに つらさかはらぬ いりあひのかね公明
1369おのつから まつらむとたに おもひいてよ いつはりなから わすれはてすは実前
1370みちのへの くさをふゆのに ふみからし われたちまつと いもにつけこせ読人不知
1371まちわひぬ みをうきくさの うきなから あふせにさそふ みつのたよりを盛実
1372はかなくも かすかくみつの あはれとは おもはぬなかに あふせまつらむ実家女
1373いせのうみの あまのたくなは わかかたに こころひかねは くるよはもなし道政
1374そてにこそ なみたのあめは ふるものを なとまつよひの またさはるらむ公宗女
1375いつはりの ことのはことに おけはこそ なみたのつゆも たまとみゆらめ元可
1376きぬきぬの よそのなみたに くらへはや わかまちよわる よはのたもとを道良女
1377さよころも かさねてかへる きみなれは うらなくきたる うれしけもなし相模
1378こひこひて まちみるかひも なよたけの いたつらふしに あけぬこのよは光厳院
1379たつたやま ゆふつけとりの なくなくそ とこはくさはの つゆときえにし定為
1380とりのねに さきたつそての なみたかな あかつきまたて したふわかれは貞俊(平時俊男)
1381ききあへぬ ゆふつけとりの はつこゑに まつしたはれて ぬるるそてかな為藤
1382けさよりは わかいつはりに なりはてて なきなそとたに えやはいはるる孝行
1383こひころも へたてしなかを かこつまに いまたにとけぬ よはのしたひも頼之
1384したひもの とけてもとけぬ こころこそ ありしよりなほ むすほほれけれ進子内親王
1385したひもの またとけすはと おもふにそ むすふもつらき ちきりなりける為子(贈従三位)
1386いかにせむ われにこころを おきつもの なひきもはてす つらきちきりを後光厳院
1387さもこそは みのならはしの かけならめ あふよもそてに くもるつきかな為定(御子左二条為道男)
1388いしかはや はなたのおひの とけやらて あふせにもなほ ぬるるそてかな国冬
1389あひみての のちもこころを つくすこそ なほうちとけぬ ちきりなりけれ貞重
1390あひみても またゆくすゑの なけかれて たえぬおもひそ みにしられける道嗣
1391おのつから けふまちえても いかかせむ またゆくすゑの ゆふくれのそら為世(御子左藤原為氏男)
1392としつきの つらさはゆめに なしはてて こよひをなかき うつつともかな能誉
1393うつつとも のちにやしらむ またなれぬ こよひはゆめと たとるこころに信詮
1394ひとめよく ゆめのたたちの ちきりたに うつつにまさる みのおもひかな実氏
1395あちきなく ひとよのゆめの ちきりゆゑ さめぬおもひの よをやつくさむ伏見院
1396むらとりの うきなやそらに たちにけむ たまえのあしの かりねはかりに但馬(藻壁門院)
1397よにもれむ のちのうきなを なけくこそ あふよもたえぬ おもひなりけれ瓊子内親王
1398なかれての そのよかたりの なとりかは かりのあふせに みをはしつめし花園院
1399しつむへき みをはおもはす なみたかは なかれてのちの なこそをしけれ崇光院
1400おもひかは みわたにかかる うもれきの なかれてさへの なこそをしけれ為氏
1401したにこそ かよひしものを いかにして にほのうきすの うきなたつらむ尊道法親王
1402いまはたた かこつかたなき うきなかな あふにしかへて すてしみなれは宣子(従三位藤原)
1403あやなくも もりけるそての なみたかな あふをかきりと しのひやはせし経久
1404よかたりを おもふもかなし あふことに みをはかへつる こよひなれとも公宗母
1405あかなくの けさのなこりの なくさめに しらぬひとまを またたのめぬる花園院
1406いかかせむ またよはふかき かねのおとに なこりつきせぬ あかつきのそら為兼
1407うきひとも さすかいそかぬ わかれちに こころをつくる かねのおとかな氏綱
1408うきひとの いそくわかれに なさしとや われさへとりの ねにかこつらむ崇明門院
1409いつしかと まちけるひとに ひとこゑも きかするとりの うきわかれかな和泉式部
1410したひもを ゆふつけとりの こゑたてて けさのわかれに われそなきぬる読人不知
1411とりのねの ふたたひつらき わかれかな またねのゆめの さむるなこりに蓮智
1412たちかへり またもとへかし わかれちの のちもよふかき ありあけのそら直義
1413きぬきぬの あかぬわかれに またねして ゆめのなこりを なけきそへつる公雄
1414ととまらぬ わかかよひちの かなしきに あかつきはかり せきもりもかな宗尊親王
1415こえしたた ゆくもかへるも ととまらぬ わかれのみちの あふさかのせき為定(御子左二条為道男)
1416かへるさは もるひとそなき あふさかも こえしまてこそ せきちなりけれ照覚
1417こえてのち ものおもひける あふさかは せきもるかみや ゆるささるらむ讃岐(二条院)
1418かひなしや うらしまのこか たまくしけ やかてあけゆく よはのちきりは為明
1419つきくさに すれるころもの つゆとおきて かへるけささへ こひしきやなそ基俊
1420きみかきる みかさのやまに ゐるくもの たてはわかるる こひもするかな人麿
1421しらまゆみ いまはるやまに ゆくくもの ゆきやわかれむ こひしきものを赤人
1422またいつと たのめぬつきの ありあけに みのうきくもそ みねにわかるる後宇多院
1423あかつきの わかれはいまた ならはねは うしともしらす ありあけのそら実孝
1424あけぬとは なといそくらむ わかれちの なみたにくるる きぬきぬのそら経通(一条内経男)
1425われのみと なみたにくれて したふかな たかためつらき わかれならねは公宗母
1426しらせはや なこりはなほも ありあけの つきぬこころに あまるなみたを成光(祝部成国男)
1427しるといへは たまくらならぬ まくらこそ わかれてのちの なみたなりけれ実教
1428おきわかれ なこりをしたふ かへるさの そてをはなれぬ ありあけのつき泰宗
1429おもかけの みにそふけさの なこりこそ わすれかたみの つらさなりけれ基嗣
1430いさやまた めくりあふへき わかれとも たのまぬなかに のこるおもかけ基家
1431ひとはなほ これそこのよの わかれとも しらすちきりし ほとのはかなさ宣政門院
1432さらにけさ むすほほれゆく をくるまの にしきのひもそ とけてかひなき為子(従二位)
1433ならひにき あかぬわかれの あかつきも かかるなこりは なかりしものを実定
1434これそけに たくひはしらぬ いにしへの あかぬわかれは みをもうらみき小侍従(太皇太后宮)
1435ふみかよふ みちもかりはの おのれのみ こひはまされる なけきをそする定家
1436みかりのの かりそめひとを ならしはに われそふみみし みちはくやしき読人不知
1437さのみやは けささへきみを うらむへき おきてきつるは ひとのとかかは俊恵
1438こひしさに わかみそはやく きえぬへき なにあさつゆの おきてきつらむ顕季
1439あたなりや けなはけぬへき きぬきぬの そてのなみたの つゆのかたみは行乗
1440たちかへる あしたのはらに おくつゆは そてのわかれの なみたなりけり公賢
1441やすらひに なほいてやらぬ まきのとを おしあけかたの そてそつゆけき教実
1442くものうへを いてやらさりし あかつきの つきのかけこそ わすれかたけれ二条院
1443あかさりし きみかなこりに ひさかたの つきをいるまて なかめつるかな基俊
1444ちとせまて ちきることたに あるものを けふをくらすか ひさしきやなそ頼宗
1445いもかあたり つきてもみむと やまとなる おほしまみねに いへゐせましを天智天皇
1446みよしのの やまよりおつる たきつせの はやくなりせは まちもしてまし元良親王
1447おきつかせ ふけひのうらに たつなみの なこりにさへや われはしつまむ宗于
1448かせふけは さこそはたゆれ たゆれとも またかきつけつ ささかにのいと顕輔
1449いくそたひ ひとのときけむ したひもを まれにむすひて あはれとそおもふ頼忠
1450つらからぬ みのならはしと なりにけり とすれはつもる なかのとしつき為明
1451あらはれは いかにせむとか ひとしれぬ わかかよひちの かすつもるらむ後二条院
1452あふことの まれなるいろや あらはれむ もりいててそむる そてのなみたに定家
1453さためなき ひとのちきりの うきぬなは くるにつけても そてはぬれつつ深守法親王
1454たえねたた かけひのみつの おとつれよ なかなかそては ぬるるものゆゑ全仁親王
1455つれなくて またみるかけの かなしきは おなしわかれの ありあけのつき通顕
1456たちかへり つらきへたてに まよふかな こえしやいつこ あふさかのせき■子内親王
1457あふさかは へたてぬせきと みしものを いまさらなにの ひとめよくらむ顕実母
1458わすれしと いまさらきくも つらきかな もとはいかなる こころなりけむ国冬
1459それとたに わすれやすらむ いまさらに かよふこころは ゆめにみゆとも定家
1460よにしらぬ こころひとつに ありしよの ゆめのなこりを たれにとはまし公顕
1461たちかへり うきをうつつと おもふにも なほありしよの ゆめそわすれぬ為親
1462あふことは ゆめよりほかの みちもなし いかにみしよか うつつなりけむ雅有
1463わすれすと いひしはゆめに なりはてて つらきうつつそ あるかひもなき為教
1464うつつとも わかぬそのよの おもかけを なほこひわたる ゆめのうきはし通相
1465おもかけは みしをかきりの とたえにて あふよむなしき ゆめのうきはし伏見院
1466ひとよみし ゆめのうきはし そのままに あたにやかへる こひちなるらむ公清
1467とたえとも いはむかたなき ちきりかな ひとよをかけし ゆめのうきはし長秀
1468しきたへの まくらなかるる なみたかは みをはやなから みるゆめそなき有長
1469うつつとて なにおもかけの のこるらむ みしよはゆめの ちきりなりしを景綱
1470われなから なれしやゆめと たとるよの ねさめにうかふ おもかけもうし政範
1471あふまてと いひしいのちの なからへて かはるつらさを またやなけかむ良信
1472きぬきぬの そてのわかれに いまこむと いひしちきりや いのちなるらむ泰光(安倍有弘男)
1473しらさりき いまはといひし あかつきを やかてまことの ことのはそとは隆信
1474かねてより ありはつましき ちきりそと おもひなからも なれしくやしさ宣政門院
1475かねてより おもひしことの かはらぬは ほとなくひとの つらきなりけり小式部内侍
1476おなしよに いまはなきみと しらせはや いとふこころも くるしかるらむ為子(贈従三位)
1477あすかかは わたらぬなかと なりにけり たのめしせせの かはるつらさに季雄
1478たちかへり よとむをしらて おもひかは わたりそめぬと なにたのみけむ隆長
1479みしままに めくりもあはて しまつたふ あしはやをふね とほさかりつつ為定(御子左二条為道男)
1480みつしほの なみのしたくさ いやましに みらくそひとの とほさかりゆく為家
1481うとくなる ちきりをなかの へたてにて かよひしみちも とほさかりつつ孝朝
1482たのむそよ あすはのみやに さすしはの しはしかほとも みねはこひしき定為
1483たのめとや くるをもいまは またぬみの ころもにかかる ささかにのいと尊胤法親王
1484いかてかく たえけるなかそ たまかつら なかきよをこそ かけしちきりに公宗母
1485たえすこそ こころにかかれ たまかつら はふきあまたの ひとのつらさは覚助法親王
1486ちきりのみ あさきのはしら くちはてぬ うかりしふしや かきりなりけむ伊俊
1487おもひいてて うきふしなから しのふかな よなよなわけし みちのささはら義詮
1488はるかすみ のへにたつらむと おもふにも おほつかなさを へたてつるかな三条院
1489いつしかと まつにおとせぬ うくひすの こころのうちの ねたくもあるかな村上天皇
1490つれつれと おもひやりつつ うくひすの ほのかにききし こゑそこひしき読人不知
1491こひしくは みやこのまつに うくひすの なきてそきなむ はなはちるとも小馬命婦(藤原棟町女)
1492うめのはな かをしるへにて ひとしれす おもふことをも かすめつるかな済時
1493しるへする はなのちりなは ひとしれす とふたよりもや たえむとすらむ読人不知
1494はるさめの よにふるそらも おもほえす くもゐなからに ひとこふるみは読人不知
1495かすみしく のをなつかしみ はるこまの あるともひとの みゆるころかな小町
1496なつころも かふるにつけて つらきかな うすきこころは かたみとおもへは花山院
1497うのはなの かきねかくれの ほとときす わかしのひねと いつれほとへぬ実方
1498ひとしれぬ かきねかくれの ほとときす ことかたらひて なかぬよそなき読人不知
1499いまこむと たのめしひとは つれなくて よそにかたらふ ほとときすかな為教
1500いとまなみ きまさぬきみに ほとときす われかくこふと ゆきてつけこせ坂上郎女
1501さみたれに みたれてものを おもふには なつのよをさへ あかしかねつる躬恒
1502うらみすよ なつのにしける くすかつら したのみたれは くるしけれとも成良
1503なつやまの しけみかしたの おもひくさ つゆしらさりつ こころかくとは小大進(花園左大臣家)
1504ひとしれぬ みをうつせみの こかくれて しのへはそてに あまるつゆかな順徳院
1505あさちふの をののしのはら つゆなから たかあきかせに みたれそめけむ道助法親王
1506いとはるる みをあきかせの ふきしより くさはのつゆそ おくかたもなき永福門院
1507かせさやく をささかうへの つゆよりも こぬよのとこに われそけぬへき進子内親王
1508こころをは つれなきひとに とめおかむ みこそくさはの つゆときゆとも実定
1509うちとけて きみはねぬらむ われはしも つゆとおきゐて おもひあかしつ貞文
1510ことのはの かれそめしより わすらるる みをしらつゆの きえかへりつつ常顕
1511ゆふされは をきふきむすふ かせのおとに ふりにしこひを おもひいてつつ嘉言
1512こころのみ くもゐのほとも かよひつつ こひこそわたれ かささきのはし伊勢
1513ひこほしの かさしのたまの つまこひに みたれにけらし このかはのせに読人不知
1514あまのかは ふみみることの はるけきは わたらぬせとも なるにやあるらむ斎宮女御
1515あまのかは かはへのきりの なかわけて ほのかにみえし つきのこひしさ兼盛
1516あすかかは かはよとさらす たつきりの おもひすくへき こひならなくに赤人
1517たのますよ またあふことも かたのなる あまのかはらの とほきわたりは新少将(芬陀利花院前関白内大臣家)
1518さためなく まねきつるかな はなすすき ほにいててむすふ ひともこそあれ定頼
1519おしなへて なひかぬのへの はなすすき ほにはいつとも たれかむすはむ兵衛内侍(源隆俊女)
1520しのひあへす ほのめかすたに あるものを やかてもまねく はなすすきかな成仲
1521しのひねの なみたやとさむ はなすすき あきおくつゆは ひともとかめし隆氏
1522たのましな あきのさかりの はなすすき おもふこころは かせによすとも為家
1523こぬひとの つらさをそへて こよひしも よさむにふきぬ ねやのあきかせ行家(藤原知家男)
1524おもひあまり とははやよはの きりきりす たかまくらにも つゆやかかると隆親(藤原隆衡男)
1525ふたはより おもひしものを をみなへし ひとのかきほに おひにけるかな敦忠
1526おもかけも かよへはこそは かよふらめ うきひとさそへ あきのよのつき道意(西園寺実兼男)
1527あきはなほ くすのうらかせ うらみても とはすかれにし ひとそこひしき良経(九条兼実男)
1528つらしとは うつろふをたに みしものを かれはてぬるか にはのしらきく隆博
1529たのまれぬ こころのいろと うらみこし ことのはにさへ あきかせそふく良兼
1530あふことは かたやまかけの まきのはの つれなきいろに しくれそめつつ実兼
1531いかにして そてのなみたの はつしほに そむるこころの ふかさみえまし定為
1532またなれぬ そてのなみたの はつしくれ なにゆゑとたに とふひともなし雅孝
1533こからしの かせふきたたは いととしく しくるるひとも ありとしらなむ具平親王
1534かみなつき しくれとのみや おもふらむ あまつそらにて わふるなみたを高明
1535いかにせむ しけきひとめを もるやまの したはのこらす しくれゆくころ俊成女
1536いもせやま へたつるくもの ゆふしくれ たかうきなかの なみたなるらむ基世
1537しられしな ひとのこころの うきくもは わかそてはれぬ しくれなりとも尊氏
1538くれなゐに かたしくそては なりにけり なみたやよはの しくれなるらむ別当(皇嘉門院)
1539みつくきの をかのくさねの かりまくら しもこそむすへ いもとねぬよは有房(六条通有男)
1540しもむすふ もすのくさくき たつねきて かれゆくひとの ちきりしれとや実教
1541かひなしや をしへしままの ことのはも いまはかれのの もすのくさくき邦省親王
1542からころも たかしたひもを ゆふはかは とけてねぬよの こほりしくらむ道家
1543みつとりの たつなはかりを ちきりにて つかはぬをしの ねこそなかるれ後醍醐院
1544いひいてぬ おもひはつらし にほとりの すむいけみつの そこにふかめて実夏
1545かくてなほ よにすみかまの はてもうし けたぬおもひの けふりくらへは甲斐(安嘉門院)
1546とふひとの あとみしことは むかしにて おなしよにふる ゆきもうらめし為子(贈従三位)
1547かきたえて ひともこすゑの なけきこそ はてはあはての もりとなりけれ紫式部
1548ことのねも なけきくははる ちきりとて をたえのはしの なかもたえにき定家
1549ききわたる そのなもつらし あふことの なとてをたえの はしとなるらむ為氏
1550あふことは やかてをたえの はしはしら うきなをたつる はてそかなしき資宣
1551わたさはと たのみしまてを ちきりにて みもなかそらに くめのいははし為重/為量
1552いまこむと いひしなからの はしはしら またもかよはぬ なのみふりつつ為家
1553むくひあらは たかちきりにか なかつきの ありあけのつきを ひとりみるらむ具行
1554おもはすよ まためくりあふ つきをみて かはるちきりを かこつへしとは後醍醐院
1555おもひわひ いくよのそらに かこつらむ ちきらぬつきの わすれかたみを忠経
1556いととなと こひしかるらむ つきをみて うきをわするる ひともあるよに実教
1557ちきりしは むかしかたりの としつきに ものわすれせて こひしかるらむ読人不知
1558なほさりの ことのはまても わすれぬは したふこころの あまりなりけり公茂
1559わすれくさ おふなるのへの かれしより のちをたのまむ ことのはもなし心阿
1560すみよしの きしにはあらて わすれくさ いつよりひとの うきにおふらむ読人不知
1561かれねたた よしすみよしの きしもせぬ つらさはかりの くさのなもうし為相
1562つれもなき ひとのこころの たねしあれは うゑぬにおふる こひわすれくさ後二条院
1563わすれくさ たれたねまきて しけるらむ ひとをしのふの おなしのきはに内経
1564うきひとと おもふたにこそ こひしけれ うらやましくも わすれぬるかな三河(法性寺入道前関白家)
1565われはかり ものはなけかし うきひとに わすらるるみも わすれましかは師教(九条忠教男)
1566わすられて よになからふる つらさこそ わかためならぬ いのちなりけれ読人不知
1567かひなしや あまりあたなる ちきりにて わすらるるなの たたぬはかりは為実(御子左藤原為氏男)
1568ひとりねの まくらにつもる ちりよりそ わすらるるなも よそにたつらむ和義
1569いたつらに はらはぬとこの ちりよりや やかてうらみも つもりはつらむ雲雅
1570みるもうし ありしよとこの すかまくら なかくやひとに おきわかれけむ光俊(葉室光親男)
1571しるしらす なにかはいはむ まくらたに わするはかりに ふるきちきりを為定(御子左二条為道男)
1572いかにうき よよのちきりの のこりきて いまもつらさに むすほほるらむ為道
1573みをさらぬ おもひやなほも つらからむ たえてよそなる ひとのちきりに読人不知
1574あれにけり こころもしらぬ せきすゑて おやのいさめし ひとのかよひち下野(後鳥羽院)
1575うつつとも おもはてこえし あふさかは かへらぬゆめの せきちなりけり祖月
1576あふことは いかにねしよを かきりにて ゆめにもひとの かよひたえけむ権大納言典侍(後醍醐院)
1577はかなくそ ありしわかれの あかつきも これをかきりと おもはさりける為兼
1578いまはよに なしともきかは おもひしれ これをかきりに うらみけりとは頓阿
1579ささかにの くもてにさこそ とはすとも かくかきたえむ ものとやはみし大弐(二条太皇大后宮)
1580つらしとも うらみしまての ゆふくれは おもひよわらぬ むかしなりけり伏見院
1581よしさらは おもひいてしと おもへとも なみたはたえぬ そてのうへかな為方
1582ありしよの なこりはかりも かなしきに またあひみむと おもはすもかな為子(贈従三位)
1583つらかりし たたそのままの ちきりにて あはすはみをも うらみさらまし藤茂
1584あひみしを はかなきゆめに なしはてて またしのはれぬ こころともかな実夏
1585かくはかり うらむとたにも しらせぬや しのふるなかの つらきなるらむ義詮
1586ことのはも およはさりける うらみとは いはぬにつけて おもひしるらむ則祐
1587はしたかの とかへるやまの くすのはの ひとかたならす うらみつるかな家隆
1588をちこちの かせのすゑなる くすかつら いつかたよりか おもひたえけむ隆博
1589かれはつる まくすかはらの あきかせを うらむとはかり おもひけるかな公守
1590つらしとて うらみしなかの ことのはも かれぬるのちは いふかひそなき素暹
1591しられしな かはるちきりの すゑのまつ そてになみこす うらみありとは行元
1592いまはまた いつはりにたに たのめぬや かはるこころの まことなるらむ行氏(平胤行男)
1593おのつから おもひやしると うらみしは なほみをたのむ こころなりけり経深
1594いはぬより やかてこころに うかふこそ うらみなれたる なみたなりけれ成国
1595としふれは なみたはかりそ いろかはる つらさはおなし こころなれとも実忠
1596うつりゆく ひとのつらさの ますかかみ かたみはかりの かけものこらす後光厳院
1597おもかけの なにのこるらむ ますかかみ うつれはかはる ひとのちきりに義詮
1598おもかけの うかふもかなし もろともに なかめしよはの つきそとおもへは春日(進子内親王家)
1599わすらるる わかおもかけは そはすとも なれこしままの つきはみるらむ広房(大江広茂男)
1600おもかけは かはらぬなかの ありあけに いまはたなにか つれなかるらむ頼康
1601おもかけも わするはかりの としつきを うきみにそへて なけかるるかな■子内親王
1602わすれしよ われたにひとの おもかけを みにそへてこそ かたみともせめ実俊母
1603おもかけを ゑにかきとめて みにそへむ まことすくなき かたみなりとも公雄
1604みしひとは おもかけちかき おなしよに むかしかたりの ゆめそはかなき光厳院
1605としへても うきおもかけの わすれぬや こころにのこる うらみなるらむ惟継
1606わすれかね なほしたはるる おもかけは うきとしつきも へたてさりけり常元
1607ちきりしは みないつはりの むかしにて うきをかたみと のこるおもかけ宗氏
1608われはかり さてもいかにと したへとも おもかけなから とほさかりつつ実泰
1609あかさりし おもかけはかり うつしても ちきりはさてや やまのゐのみつ左京大夫(永陽門院)
1610あかさりし ちきりはさてや やまのゐの むすふともなく かけはなれつつ光厳院
1611うきなかは あささはをのの かきつはた うつろふままに へたてはてつつ実遠(藤原公冬男)
1612ちきりさへ あささはみつの くさかくれ たえゆくなかに ぬるるそてかな円伊
1613むかしみし のなかのみつを たつねきて さらにそてをも ぬらしつるかな俊成(藤原俊忠男)
1614そのままに またかけもみぬ わすれみつ そてにはふかき なかれとそなる為相
1615つきひのみ なかれもゆくか なみたかは よとみはてたる なかのあふせに為遠
1616なみたかは たえぬおもひの ふちはあれと あふせはかりの なとかはるらむ能誉
1617そのままに あふせはたえて なとりかは うきなはかりそ あらはれにける経定女
1618あらはれて くやしきものは なとりかは たえけるなかの せせのうもれき為子(贈従三位)
1619うかりける さののなかかは さのみなと あふせたえても こひわたるらむ為兼
1620いまたにも こころかよはぬ なかかはの すゑにあふせを いかかたのまむ雅久
1621みなせかは あふせはよそに ありてゆく なかれのすゑを いかかたのまむ小督(瓊子内親王家)
1622わかかたの よるへはたえて あらいその ほかゆくふねに うらかせそふく良基(二条道平男)
1623かはふねの はやせにむかふ つなよわみ こころはひけと たえぬへきかな時光
1624おなしえの あしわけをふね おしかへし さのみはいかか うきにこかれむ為世(御子左藤原為氏男)
1625くちのこる あしまのをふね いつまてか さはるにかこつ ちきりなりけむ頓阿
1626いかにせむ あこきかうらの うらみても たひかさなれは かはるちきりを冬平
1627よそになる わかみをうらの おきつなみ しはしもそてに かけぬまそなき為成(冷泉為相男)
1628うらみむと いふひとあらは あまのすむ さとのしるへも なしとこたへよ右京大夫(正親町院)
1629をふのうらの うらみてのみそ よをはふる あふことなしに なれるみなれは国基
1630いせのうみの あさみつしほの つらけれは かつきわひぬと あまもいふなり左近(三条院女蔵人)
1631いまそしる なひくけふりも しほたるる みにはよそなる ならひありとは師教(九条忠教男)
1632なひきこし けふりはよそに なりはてて わかみのかたに うらかせそふく道教
1633うらみても なほこそかへせ さよころも こひしきかたの こころよわさに顕実母
1634すまのあまの しほやきころも それよりも うらむるそては なほそかわかぬ後伏見院
1635ひとこころ なににたとへて うらみまし きのふにかはる けふのつらさを後伏見院
1636かつはこひ かつはうらみて みひとつに ちたひこころの かはるころかな実泰
1637まれにても あひみはとこそ おもひしに たえぬはひとの うらみなりけり雅有
1638ひたすらに うらみてもまた いかならむ つらきかきりの なからましかは為明
1639よしさらは つらきひとゆゑ くたしてむ みをうらみても ぬれぬそてかは寂蓮
1640なにはかた たつそなくめる これやこの たみののしまの わたりなるらむ師頼
1641しろたへの つるのけころも きてみれは たみののしまに なみそかけける実雄
1642うなはらや おきこきくれは ゆふしほの ひかたのうらに たつわたるみゆ伏見院
1643やまちかみ おりゐるくもと まなつるの たてるかはへを ひとやみるらむ是則
1644かみさふる いはねこりしき みよしのの みつわけやまを みれはかなしも読人不知
1645みよしのは はなともいはし あさほらけ まきたつそまの よこくものそら忠良
1646くもはなほ ふもとにみえて たちのほる けふりそたかき ふしのしはやま有忠
1647つのくにの むこのおくなる ありまやま ありともみえす くもそたなひく基氏(藤原基家男)
1648おくやまの いはねのまつの かけよりや こけのみとりも ときはなるらむ肥後(京極前関白家)
1649あらいその はままつかえに ふくかせは よせくるなみの おともわかれす忠季(藤原公蔭男)
1650たちかへり まつもかひあれ すみよしの きしかたしたふ あとのしらなみ秀経
1651きよみかた せきよりほかも いほはらの まつこそうらの へたてなりけれ有光
1652いくよかは つもれるとしも おほともの みつのはままつ ふりまさるらむ邦省親王
1653ともすれは しほみつはまの あしのねの しつみてからく おいぬへきかな俊成(藤原俊忠男)
1654ささらなみ ひまなくきしを あらふなり なきさきよくは きてもみよとや黒主
1655ゆきてこそ みるへかりけれ くれかかる おきつなみまの うらのはつしま国冬
1656いりひさす しほせもとほし わたつうみや とよはたくもの すゑのしらなみ経宣
1657たましまや ゆふなみたかく なりにけり このかはかみに あらしふくらし雲雅
1658ねをたえて みつにうきたる うきくさは いけのふかさを たのむなりけり伊勢
1659もろひとに たまものすらし たつはるの はしめのけふの とよのあかりは後醍醐院
1660をさまれる みよのしるしも おほきみの すすめてまうす はるはきにけり道平
1661のとかにも なりにけるかな きみかよに あはすはいかて はるをしらまし為藤
1662やまのはも かすめはとほし みひとつに へたつるはると なにおもひけむ実教
1663いまもなほ わかたつそまの あさかすみ よにおほふへき そてかとそみる尊円法親王
1664いさけふは ねのひのまつを ひきつれて おいきのちよを ともにいのらむ堀河(待賢門院)
1665いのるとも おいきのまつは くちはてて いかてかちよを すくへかるらむ顕仲(源顕房男)
1666きくことを いとひてもまた なれにけり むそちのはるの うくひすのこゑ邦祐
1667いとせめて なほものうきは はるをへて おいそのもりの うくひすのこゑ為家
1668ときしあれは たによりいつる うくひすに よをたすくへき ひとをとははや後宇多院
1669しもかれの くさはみなから もえにけり はるのひかりの やふしわかねは師継
1670はるさめの ふるののゆきは きえぬらむ ぬるともけふや わかなつままし実性
1671やまのはの ありあけのつきも ひとつにて かすみのうへに のこるしらゆき民部卿典侍(後堀河院)
1672ねやちかき のきはのうめの はなのかに ゆめちをかけて にほふはるかせ慈順
1673たかさとの かきねもおなし にほひにて ぬしさたまらぬ うめのしたかせ宗秀(藤原宗泰男)
1674くちのこる おいきのやなき よよをへて きみにつかふる やとそふりぬる雅孝
1675はるさめに あれたるやとの ひましけみ とかむはかりの そてそぬれける重之女
1676としをふる もりのかしはき このあめに もれぬめくみの はるをしらはや為氏
1677さりともと たのみをかけよ はるさめに もれぬめくみは きみにまかせて兼平
1678いのるそよ おとろのみちの はるさめに ふりにしよよの おなしめくみを為道
1679ひはりなく のへのおとろの みちわけて あかるをともと きくはるもかな為藤
1680やきすてし けふりのすゑの たちかへり はるもえいつる のへのさわらひ亀山院
1681わかそてに おいのなみたの かからすは かすむはかりの つきはみてまし雅孝
1682いまはみに くもりはてぬと かなしきは おいのなみたの はるのよのつき長舜
1683はれかたき みのおもひこそ かなしけれ かすめるつきも あきはまつらむ宗尊親王
1684めくりあふ はるやむかしの もとのみと つきたにしらし すみそめのそて向阿
1685おいぬれは つきやあらぬと おもふまて もとみしよりも かすむかけかな成国
1686おもひいてて つきやあらぬと なかむれは なみたそかすむ ふるさとのそら家経(一条実経男)
1687かすむよの つきをつらしと おもふこそ はるしらぬみの こころなりけれ隆朝
1688かりかへる みねのかすみの はれすのみ うらみつきせぬ はるのよのつき後鳥羽院
1689さひしさは はるもかはらぬ やまさとに ひとめをそへて はなそまたるる公宗(西園寺実衡男)
1690をりしもあれ こころつくしに またれすは ことしはかりの はなはみてまし藤子(従三位)
1691さけはちる あたしこころの はなをしも まつにいのちの かかりぬるかな仲実
1692みこそかく はるのめくみの よそならめ はなさへときを しらぬやとかな宗秀(藤原宗泰男)
1693やまふかみ はなみかてらに たつねはや うきよのかるる すみかありやと祥子内親王
1694たつねいる みちはまことの みちならて はなにそみつる みよしののおく維貞
1695はなにのみ なほわけいれは よしのやま またあとうつむ みねのしらくも景綱
1696このもとを たつねきてたに やまさくら はなとはみえぬ みねのしらくも則祐
1697みむろやま はなさきぬらし さかきはの はるさすえたに かかるしらゆふ行親
1698ひさかたの くもゐのとかに いつるひの ひかりににほふ やまさくらかな兼好
1699いつくより いかにうゑける たねならむ うきよにあまる はなのいろかな内侍(永福門院)
1700よのうさも みてそわするる やまさくら わかためとてや はなはさくらむ慈勝
1701かせさそふ かけのいほりの やまさくら なほうきときそ はなにしらるる定為
1702いそかれぬ はなのころこそ あはれなれ なけきのもとに はるはへぬれと土御門院
1703たちなれて おもへはこひし ここのへの みゆきのにはの はなのしたかけ忠定(藤原兼宗男)
1704かりそめの みゆきなからも このやとの はなにくもゐの なをやのこさむ成国
1705くちのこる おいきのはなを みるにこそ わかななそちの はるもしらるれ静伊
1706としをふる わかなみたにそ おもひしる はなもおいきや もろくちるらむ宰相典侍(後宇多院)
1707まてしはし おいきのはなに こととはむ へにけむとしは たれかまさると道因
1708たをりても よしやかささし さくらはな むそちのおいの かくれなきみは実重(三条公親男)
1709はることの はなにこころを うつしきて はてはおいぬる みをなけくかな実聡
1710はなにたに あはてやとこそ おもひしか いまはいのちに まかせてをみむ赤染衛門
1711ととめえぬ よはひをはなに たくへても ことしやかきり はるのやまかせ覚助法親王
1712ちれはとて はなはなけきの いろもなし わかためにうき はるのやまかせ夢窓
1713いととまた はなのあたなや ふりなまし ちらぬさくらの いろをみせすは為継
1714よはにみし ひとをもたれと しらせねは のきはのはなを けさそうらむる為世(御子左藤原為氏男)
1715しられしと おもひてとひし よはなれは のきはのはなの とかやなからむ尊氏
1716うかりける はなのあたなる なをたてて ちるはならひと かせやふくらむ房観
1717やまさとは とはれしにはも あとたえて ちりしくはなに はるかせそふく頓阿
1718ちれはこそ はなをあらしも さそふらめ おもへはつらき やまさくらかな長有
1719さほひめの はるのかさしの はなかつら いまはたゆとや かせにちるらむ保能
1720いりあひの かねにあらしの おとそへて けふをかきりと はなやちるらむ泰宗
1721よしのやま ちりぬるはなの かたみさへ あとなきくもに はるかせそふく頼重
1722ちるはなの あとにはくもも のこるなり はるのわかれそ かたみたになき宗氏
1723きえかての はなのゆきふむ あさとてに くもはきのふの はるのよのゆめ為成(冷泉為相男)
1724あらをたに まかするみつも ゆたかなる たみのこころは にこらすもかな惟継
1725せきいれて いくかになりぬ をやまたの なはしろみつは みくさゐにけり敦有
1726みのよそに おもひなせとも ゆくはるの なこりはなほそ ものわすれせぬ為家
1727かすならぬ みやまかくれの おそさくら はなたにさかは ときすきぬとも高宗
1728つれなくて さてしもやまし ほとときす いまこそきかぬ はつねなりとも泰宗
1729ほとときす まつもかきりの ありあけに しのひもはてぬ はつねなくなり時俊
1730まちわふる こころをしらて ほとときす ひとのためにや はつねなくらむ遠衡
1731さらてたに いそくやまちの ゆくすゑに なきぬとつくる ほとときすかな行朝
1732まちわひて かへるやまちの ひとこゑに またたつねいる ほとときすかな能喜
1733うきよには われすみわひぬ ほとときす いてけむやまの おくををしへよ公蔭
1734ほとときす やまふかかりし なこりとや いててもくもの ほかになくらむ行尹
1735そらにのみ なほおとつれて ほとときす わかゐるやまの くもになくなり行親
1736わかことく ものやおもふと とふへきに なきてすきぬる ほとときすかな隆弁
1737ほとときす かたらひすてて うたてなと おいのねさめの よをのこすらむ秀房
1738おなしえに なきつつをりし ほとときす こゑはかはらぬ ものとしらすや敦道親王
1739よよかけて なほこそたのめ あやめくさ またひくひとの みにしなけれは為定(御子左二条為道男)
1740おもふかひ なきみこもりの あやめくさ ひくとはなにの いろにみゆらむ清氏
1741たれになほ しのふのやまの ほとときす こころのおくの ことかたるらむ頼遠
1742ほとときす してのやまちの くらきより いかてさつきの やみにきつらむ忠通
1743ほとときす なくねもしけき なつやまの このまのつきそ あきにまされる行能
1744なつくさの しけみをすてて のかれいる やまちのこけも つゆけかりけり光厳院
1745ここのへの むかしかたりも かなしきに にほひなそへそ のきのたちはな宣政門院
1746うふねさす よかはのたなは うちはへて ひとすちならす ものそかなしき俊頼(源経信男)
1747きみかよに こころのやみの はれゆくや まとのほたるの ひかりなるらむ光吉
1748いまもなほ ひかりなきみの くやしきは むかしあつめぬ ほたるなりけり実教
1749いとひても なほいけるよは うつせみの みをかへなから ねこそなかるれ行顕
1750たにかせに くもこそのほれ しなのちや きそのみさかの ゆふたちのそら千恵
1751おとつるる をきのはよりも ふくかせの すすしきにこそ あきはしらるれ経季
1752そてのうへに けさしもつゆの おきそふは こけのころもに あきやたつらむ実兼
1753いかにして あやなくそての しをるらむ みもせぬいろの あきのはつかせ経継
1754ききおきし ことのはことに わすれぬは にはのをしへの あきのしらつゆ為世(御子左藤原為氏男)
1755ききあかす なみたのつゆも ととまらす おいのねさめの をきのうはかせ家隆
1756ふかくさの さとはむかしの あさちはら おきそふつゆに うつらなくなり守誉
1757みにしめし あきのゆふへの なかめより ものおもふわれと なりにけるかな土御門院
1758おもふこと むなしきそらの あきかせに ことしはいたく ぬるるそてかな宗尊親王
1759なにゆゑに さのみこころを くたくそと おもふもかなし あきのゆふくれ秀長(藤原季弘男)
1760さひしさは たかよそめにも しりぬらむ わかゐるやまの あきのゆふくれ為相
1761なかめわひぬ うきはならひと なくさむる ひとたにあれな あきのゆふくれ基任
1762はなすすき まねくかたには ととまらて なほわけまよふ のへのゆふくれ長舜
1763かれはてむ のちこそうけれ はなすすき まねくにたにも とふひとはなし実任
1764かせかよふ にはのをすすき つゆちりて やとりかねたる つきのかけかな為連
1765みをかくす むくらのやとは あるしから おもひありとや むしもなくらむ基任
1766われはかり なみたはあらし きりきりす おなしねさめに ねをはなくとも為氏
1767きりきりす すきにしあきや しのふらむ ふるきまくらの したになくなり土御門院
1768みをあきの つもれはおいと しりなから なほやまのはの つきそまたるる静仁法親王
1769いたつらに わかみのかけそ ふりまさる つかへしあきを つきにこふとて為氏
1770おのつから ひともとひこぬ ふるさとは つきもわかみも すむかひそなき永福門院
1771このよには またなくさめも なきものを われをはしるや あきのよのつき俊成(藤原俊忠男)
1772いかにせむ なくさめかぬる あきのよの つきにはなれぬ おいのなみたを教定(飛鳥井雅経男)
1773いたつらに あきのよなよな つきみしも なすことなくて みそおいにける為定(御子左二条為道男)
1774おいかよは みにそふあきの なみたとも そてによかれぬ つきやみるらむ行氏(平胤行男)
1775いろまさる ことしのあきの すみそめに つきもむかしの そてとやはみる実超
1776よよのあとを わすれすてらせ みつくきの をかのあさちの あきのよのつき行忠(藤原)
1777わかのうらに またこのあきも なをかけて むよまておなし つきをみるかな為世(御子左藤原為氏男)
1778いにしへを おもひつつけて なかむれは かみよにかへる あきのよのつき実氏
1779みるままに よのうきことも わすられて あきのこころそ つきにはれゆく朝棟
1780ここのへの くものうへにし よころへて あきのとのゐは つきになれつつ説房
1781おもひきや なかはのつきに てなれても みをてらすへき ひかりありとは隆淵
1782いまははや こころにかかる くももなし つきをみやこの そらとおもへは尊氏
1783ふるさとと おもふはかりそ なにはかた むかしにかはる つきのかけかは長舜
1784おもひしる ひとにみせはや やまさとの あきのよふかき ありあけのつき孝標女
1785つきたにも すまぬみやまの あきならは ひとりそなかき よをあかさまし治部卿(瓊子内親王家)
1786つきのいる あとはをくらの やまかけに ひとりさやけき さをしかのこゑ弁教
1787うかりける あきのをしかの つまこひも あらはれそめて ねにやなくらむ氏村
1788をしかなく やたののすすき ほにいてて まねけとつまは つれなかりけり基夏
1789いねかてに もるをはしらて をやまたの よるをひとまと しかやなくらむ善了
1790おもひある やとはむくらの ふかきよに ねもせぬものと うつころもかな近衛(今出河院)
1791つゆしもの をかへのまくす うらみわひ かれゆくあきに うつらなくなり氏経
1792はらひかね わかもとゆひも しもふりぬ まかきのきくの うへとみしまに実雄
1793あさことに わかもとゆひに おくしもの しろきをみれは あきそくれゆく経継
1794くれてゆく あきのゆふへの つゆけさは わかそてよりそ おもひしらるる良宋
1795たつたやま しくれのあめの たてぬきに そめしもみちや にしきなるらむ元妙
1796さてもまた いつまてなにを まつむしの あきはつるよに ねをはなくらむ俊光
1797しぬはかり なほをしむかな このあきや あきにわかるる かきりなるらむ小弁
1798かきりあれは あきのひかすを そへてたに ひとよになりぬ なかつきのそら顕氏(細川頼貞男)
1799さためなき ものとはきかす むらしくれ よなよなおなし ねさめをそとふ基明
1800やまめくる しくれよやよや こととはむ うきみよにふる みちはいかにと祐守
1801はつしくれ またこのふゆも めくりきて ふりゆくみこそ さらにしらるれ澄覚法親王
1802ひのひかり いてそふけふの しらるるは いつれのかたの やまへなるらむ朱雀院
1803しらくもの おりゐるかたや しくるらむ おなしみやまの ふもとなからに太皇太后宮(醍醐天皇皇后穏子?)
1804かきくらし しくるるくもも すきぬなり これもさためぬ よのならひかな後宇多院
1805しくれふる このてかしはの ふたおもて とてもかくても ぬるるそてかな土御門院
1806わかそての なみたはかりや かみなつき よそにはすきぬ しくれなるらむ隆淵
1807よこくもや わかるるあとに かへるらむ とやまのあさけ しくれふるなり秀長(藤原季弘男)
1808さそはるる あらしまちえて かみなつき ふるはこのはの しくれなりけり師親
1809なにはえや ゆふしもさむく かせさえて かれはさひしき あしのむらたち貞宗
1810あきはてし ひとめよりまつ かれそめて みさへふりぬる しものしたくさ承覚法親王
1811われすめは ひとめもかれす やまさとに なほききすてぬ あさまつりこと後宇多院
1812しるひとは しけきころたに かたかりし みやまかくれの しものしたくさ読人不知
1813かれのこる しものしたくさ ありとたに ひとにしられぬ うきみなりけり長舜
1814なれにける かかみのかけも あはれなり おきそふしもの いろをかさねて隆教
1815わかのうらや おもひしよりも はまちとり あとつけそふる たひそかさなる冬平
1816たつねゆく わかのうらちの はまちとり あとあるかたに みちしるへせよ淑氏
1817たちかへり あとをつけても はまちとり こしかたしたふ わかのうらなみ道性
1818わかのうらや みちふみまよふ さよちとり あとつけむとは おもはさりしを尊円法親王
1819わかのうらに ありとしられは はまちとり かよはぬかたは あとつけすとも道順
1820こころをも あともととめす あくかれて あはれうきみの ともちとりかな公順
1821さよちとり なにはのあしの かりのよに なにをうらみて ねをはなくらむ覚助法親王
1822みつのうへに にほのうきすの うきなから すめはすまるる あはれよのなか光厳院
1823はかなしや かせにたたよふ なみのうへに にほのうきすの さてもよにふる式子内親王
1824にほとりは こほれるなみに よかれして つきはかりすむ にはのいけみつ善源
1825かりにたに ひとこそとはね はしたかの とやまのいほの ゆきのあけほの雅朝
1826たえぬへき みちをそおもふ しらゆきの みさへうきよに ふりもはてなは道昭
1827しらさりき かしらのゆきの それなから このやまさとに ふりはてむとは実経
1828かせませに みゆきふりしく やまさとの あさのさころも いかにさゆらむ泰時
1829おもへたた さらてもさゆる やまおろしに ゆきをかさぬる あさのころもて基綱(藤原基清男)
1830ふりすてて いりにしやまの ゆきみても あとはいかにと おもひこそやれ氏久
1831たまさかに ふるたにさひし よのつねの ゆきのみやまを おもひこそやれ千観
1832うらかせに わかこけころも ほしわひて みにふりつもる よはのゆきかな増基
1833むかしおもふ みはかすならて しらゆきの ふりぬとたにも しるひとそなき俊顕
1834きえかへり ひかりなきみを なけくまに あつめしゆきは としつもりつつ善成
1835うつもるる みをはおもはす しらゆきの ふりぬるあとの をしくもあるかな有光
1836とへかしな あとあるみちは うつもれて ゆきにもふかく つもるうらみを為氏
1837ふみわけて なほもつかへよ しらゆきの あとあるみちは うもれはてしを実雄
1838つきにみし とよのあかりの をみころも ころもむかしに へたてきにけり光厳院
1839けふりたつ をののすみかま われなれや なけきをつみて したにもゆらむ俊成(藤原俊忠男)
1840あすしらぬ よにすみかまの いつまてか みねのけふりを よそにみるへき寂蓮/寂超
1841としなみは かへらぬものと くれぬなり むかしをいまに おもひなせとも宣政門院
1842いまさらに としのくれこそ かなしけれ すくるはいつも ひかすなれとも国助
1843たらちねの おいのかすのみ いとはれて わかみをしらぬ としのくれかな久世
1844ゆくとしの かさなるおいを みにしれは むかしいそきし はるもまたれす藤清
1845つひにまた おいとなるてふ ならひにて つもらぬとしの くれもかなしき冬平
1846をしめとも くるるはやすく ゆくとしの なとひとことの みにとまるらむ後宇多院
1847なかきよも ひとりおきゐて まとろまぬ おいのともとは つきをみるかな為世(御子左藤原為氏男)
1848いつまての やととかつきの さたむらむ むそちにかかる そてのなみたを雅有
1849いにしへの ひとはみきはに かけたえて つきのみすめる ひろさはのいけ頼政
1850ひさかたの つきのかつらの かちをたえ ふけてとわたる あまのかはふね公明
1851ふけゆけは なほすみまさる こころかな しつかにつきを みるへかりけり了雲
1852はれくもり つきもしくれも もるいほの あはれをよその ひとにみせはや惟方
1853あれにけり たれとすみこし かけならむ あはれいくよの よもきふのつき実兼
1854みねのつき くもゐもとほく なりにけり うきよいとひし なかめせしまに後宇多院
1855みるままに すきにしかたの わすれぬは つきやむかしの しるへなるらむ為教
1856つきかけは かはらぬものを いかなれは みるひとはかり おいとなるらむ棟国
1857ひさかたの つきにむかしの こととはむ さらてはのこる おもかけもなし定煕
1858つきそすむ かよひしみちは あとたえて つゆのそこなる よもきふのやと茂重
1859とはれすは ひとりみやまの つきかけを さひしとたにも たれにかたらむ秀房
1860やまさとの あきにかこちし さひしさを みやこのつきに なかめわひつつ邦世親王
1861をしむへき みをたにすてし やまのはに いるとてつきを なにしたふらむ定宗(法印円宗寺)
1862ふたつなき こころたゆまて あふきみる つきのしもにそ みはふりにける覚助法親王
1863わかこころ きみそしるらむ よをいのる ほかにはまたも おもひなしとは慈道法親王
1864くるとあくと きみをそいのる あらましに おもひしよりも みはつかへつつ宗宣(北条宣時男)
1865いつまてか やなきのかとの ちりをうけて みをたてぬよに なほつかへまし禅休
1866みそちまて たたいたつらに すきのかと いててつかへむ ことをしそおもふ慈慶
1867へたてなく このきみまても つかへきて いつよをへぬる やとのくれたけ公賢
1868ここのへの みかきのたけに なれしよは うきふししらぬ むかしなりけり基忠(鷹司兼平男)
1869ここのよの きみにつかへて としもへぬ おいをうきみの おもひてにして道昭
1870かくしつつ つもるむそちの おいのさか さかしきみちに なほそつかふる経顕(藤原定資男)
1871たえすこそ つかへしものを わかみよに なとよとむらむ せきのふちかは為世(御子左藤原為氏男)
1872つかへねは すむかひもなき よのなかに しつみてわたる せきのふちかは読人不知
1873たのむそよ せきのふちかは すゑまてと おもふこころを きみにふかめて内実
1874わすれしな よよにもこえて きみにわか つかふるみちの せきのふちかは道嗣
1875ちはやふる かみよのちきり たえもせす いまもつかへて としそへにける道平
1876つかへきて ひとつなかれの たえせねは にこらしとおもふ わかこころかな宣明
1877なかれをは さすかくみても すきにけり みなかみふかき さほのかはなみ経通(一条内経男)
1878さほかはの ふかきなかれと おもふにも おいのなみこそ みにしられけれ基忠(鷹司兼平男)
1879みかくれぬ なのみなかれて さほかはの せにたつとしも なきみなりけり良基(二条道平男)
1880さすかわか なはかくれぬの うきぬなは うきなからのみ よにもふるかな公忠(藤原実忠男)
1881みさひゐる あささはぬまの みくりなは くるしきよには すまれやはする読人不知
1882たつねきて かけをこそみれ おほはらの おほろのしみつ すまはすむやと定為
1883まちえたる くもゐのつきも やとらねは おほろのしみつ すむかひそなき寂然
1884かせわたる よかはのすきの したかけに こころのみつを てにむすふかな公澄
1885にこりなき よかはのみつの すゑうけて すますこころを たれにしらせむ雲禅
1886あらましの すゑとほりける やまみつの こころすまては すむかひもなし光厳院
1887いささらは ゆくへもしらす あくかれむ あとととむれは かなしかりけり右京大夫(建礼門院)
1888ともかくも わかみひとつは なしつへし のこらむなこそ うしろめたけれ道命
1889あけはまた こひのけふりに たちやせむ うらしまのこか はこならねとも慈円
1890かはりなむ よにはいかてか すまふへき おもひやれとも ゆかぬこころを定方
1891とにかくに こころもとけぬ よのうさの ためしそつらき いはしろのまつ隆教
1892ふちしろの みさかのまつの このまより ゆふひにみゆる あはちしまやま公蔭
1893のきちかき まつのあらしの たゆむまも まくらにひひく たきのおとかな実俊(西園寺公宗男)
1894ひとしれす こころをとめし まつかせの こゑをきくにも ぬるるそてかな後京極院
1895いまはとて ひきわかれぬる ことのをに なみたのつゆの かかるころかな宣政門院
1896われみても まとのくれたけ ふりにけり しらぬむかしを いくよへぬらむ静仁法親王
1897うゑおきて こころむなしき わかともに なかきよちきる まとのくれたけ公賢
1898うきふしは みにつもれとも くれたけの よをかこつへき ことのはそなき邦長
1899さとつつき たけのそのふの ちかけれは うきふししけき よをやかこたむ小宰相(土御門院)
1900さかえゆく たけのそのふの なかりせは いかなるかけに みをかくさまし浄弁
1901くれたけの そのふのみちや まよはまし かしこききみか みよにあはすは忠房親王
1902のきちかき たけのそのふの よよのかせ つらなるえたに ふきそつたへむ尊胤法親王
1903つたへきて よよにかはらぬ たけのその みにうきふしを のこさすもかな承覚法親王
1904たらちねの あとにのこりて ふえたけの よにはしられぬ ねこそなかるれ業清(藤原)
1905ふえたけの ふたつのみちを つたへても あとにかはらぬ ひとふしそなき祐殖
1906きみにわれ みつはくむまて つかへきぬ ひとりふたつの みちをきはめて為世(御子左藤原為氏男)
1907いへのかせ たえすつたへて あめのした なへてあふくと きくそかしこき覚誉法親王
1908あふくひと あるにそまよふ いへのかせ ふきつたへたる かひもなきよは為定(御子左二条為道男)
1909なはかりを かるのいちひと あとはあれと うるとしもなき みちをたてつつ為藤
1910たらちねの あらはといとと かきくれて なみたにまよふ しきしまのみち隆教
1911もののふの これやかきりの をりをりも わすられさりし しきしまのみち和氏
1912しきしまの みちのおくなる あさかやま ふかきこころを いかてしらまし栄海
1913ふみわけし そのいにしへの あとはあれと いまさらまよふ しきしまのみち知長
1914しきしまや たたしきみちに かへるやま ありてそよよの あともさかゆく読人不知
1915おもひきや わかたつそまの あとうけて よたひかさなる なをとめむとは尊胤法親王
1916おもはすよ ななよのあとを ななそちの おいかみにしも つたふへしとは澄俊
1917ななそちの おいのさかまて あひそへる おやのまもりに みをもたてつつ実継
1918わかきみの めくみそそらに しられける またたちのほる くものうへひと師宗
1919おひはつる おとろのみちの したくさは はるのめくみに あふかひもなし資明
1920おもひしれ めくみをたのむ はるにたに あはぬおとろの みちのしたくさ為定(御子左二条為道男)
1921おもはしと おもふものから まつやまの すゑこすなみに ぬれつつそふる朝光
1922くらゐやま まよはぬひとの あとみても いまひとさかを なほおもふかな宗経(平経親男)
1923くらゐやま のほりもやらて いそかれぬ いそちのさかを こえむとすらむ公蔭
1924いととしく おいのさかそふ くらゐやま くるしきみちと のほりかねつつ為定(御子左二条為道男)
1925のほりえぬ このひとさかは たらちねの いさめしみちや ふみたかへけむ為明
1926たらちねの いさめしすゑも かはらねは いまひとさかの みちはまよはし後光厳院
1927くらゐやま のほりはてても みねにおふる まつにこころを なほのこすかな有房(六条通有男)
1928いかてわれ くらゐのやまに いほしめて のほりはてなは みをかくさまし基成
1929おろかなる こころのうちの あらましを みのなくさめと おもふはかなさ忠景
1930みをすてて いつすみなれし やまなれは よのうきたひに おもひいつらむ読人不知
1931やまさとに のかれもいらし よのなかの うきこそいとふ たよりなりけれ周嗣
1932いほしめて すむとはひとに みえすとも こころのうちの やまかけもかな四条(安嘉門院)
1933よのなかを いとははいまそ いとふへき うらみなきみを おもひいてにして宗宣(北条宣時男)
1934いまははや みにまつことの すきぬれは こころにたのむ ゆくすゑもなし寛尊法親王
1935なにゆゑに そむかさるらむ まつことの みにありてたに いとはれしよを実重(三条公親男)
1936すてぬよは うきものとかつ しりなから なにさすらふる わかみなるらむ公宗女
1937つれなしや さてもほとなき よのなかの うけくにあかて すてぬこころは知行(大江範能男)
1938そむくへき こころはなほも つれなくて うきよをしるは なみたなりけり良宋
1939そむかては さてはつましき よのなかに いつをまつとて つれなかるらむ氏村
1940ありへはと たのみしことそ おろかなる すてぬにつけて うかりけるよを観意
1941よのなかの うきをいとはぬ ならひこそ わかみのよその こころなりけれ禅助
1942ゆくすゑを しらぬはかりを たのみにて さためなきよに みをやまかせむ実性
1943うきよとも なかなかいはし ひたすらに かすならぬみは あるにまかせて宋親
1944かすならぬ みはなかなかに うきことを ならひになして なけかすもかな直頼
1945なれぬれは いまさらならぬ おもひにて みのうきほとは そてもぬらさす法守法親王
1946をしからぬ いのちつれなく なからへて なほもうきみの はてやしられむ冬平
1947みにたえぬ わかなもよしや なかそらに うかへるくもの ありてなけれは光庭
1948なみのうへに よるへをたとる うきみるの うきことしらて すくすよもかな為成(冷泉為相男)
1949いとへたた なにはのあしの かりのよに こころとむへき ひとふしもなし仲顕
1950あらはるる なにはのあしの ことのはも おなしいりえに またやしつまむ隆祐
1951おほつかな よしとはいかか なにはかた ならはさりける うらみをそする頼朝
1952わかのうらや みちをたつねて まなつるの まなふるあとに まよはすもかな頼時
1953わかのうらや みきはのたつの こゑはかり みはしもなから きこえあけつつ国夏
1954わかのうらや いりえのあしの しものつる かかるひかりに あはむとやみし家隆
1955としふりて よをうみわたる あしたつの なほたちましる わかのうらなみ花園院
1956あしたつの ねにのみなきて としもへぬ あはれとおもへ わかのうらひと実甚
1957こをおもふ なみたくらへは よるのつる われおとらめや ねにたてすとも実忠
1958みのほとに のこるうらみは なけれとも よるなくつるに ねをそそへける氏久
1959おもひやれ こをおもふつるの ひとつかひ おなしねになく よるのこころは基任
1960つきみても なくさみなまし なそもかく こころのやみに こをおもふらむ経継
1961たらちねの ありてみしよは へたつれと わすれぬかけそ つきにこひしき為氏
1962そむきけむ おなのいさめの かなしきに はるるはかりの みちをみせはや為家
1963うきみしも なにのこるらむ たらちねの あととてしのふ ひともなきよに道意(西園寺実兼男)
1964うれしきに まつむかしこそ こひしけれ ははそのもりを みるにつけても永縁
1965すゑとほき わかはのくさの みとりより にはのをしへの あとそたかはぬ定家
1966わかくさの すゑたのもしき かけそとも にはのをしへを しるひとそしる師重(中原師尚男)
1967つたへこし わかみちしはの ふゆかれに まよはむあとの なこそつらけれ信実
1968みつくきの をかへのささの ひとふしを このよにのこす ことのはもかな信良
1969もしほくさ かきおくふての あとみても なほわかみちに まよふはかなさ長衡
1970かきつくる むかしのあとを みるたひに およはぬみこそ ねはなかれけれ公有
1971いまよりは いへのかせにそ つたふへき なをかけそむる わかのうらなみ行氏(祝部行言男)
1972としへぬる まつはしるらむ むかしより ふきつたへたる わかのうらかせ宋縁
1973ことのはの つもらはなをや かけまくも かしこきみよの わかのうらまつ読人不知
1974いまそしる あつめしたまの かすかすに みをてらすへき ひかりありとは為定(御子左二条為道男)
1975かすかすに あつむるたまの くもらねは これもわかよの ひかりとそなる後醍醐院
1976たまならぬ もくつなからも わかのうらに きみみかかはと かきあつめつる達智門院
1977たまよする なみものとけき みよなれは かせもたたしき わかのうらまつ一条(徽安門院)
1978たまもなほ ひかりそへとて いにしへの あとにそかへす わかのうらなみ尊氏
1979わかのうらの なみにおもはぬ こころより そふへきたまの ひかりをそみる為定(御子左二条為道男)
1980わかのうらや うきひとなみの みもつらし みかきしたまの あとのもくつは後伏見院
1981ひかりなき たににすむみの かなしきは いくたひたまの かすにもれけむ信専
1982なをかけし あとをたつねて もしほくさ またももらすな わかのうらなみ示証
1983わかのうらに たたよふなみの なはかりを かけてうきみの あるかひそなき為子(従二位)
1984なをかけて あるかひもかな わかのうらに としふるおいの なみのうたかた為氏
1985よつのうみ すみかたきよの おもひてに ふるきにかへれ わかのうらなみ光厳院
1986わかかたに わかのうらかせ ふきしより もくつもなみの たよりをそまつ尊氏
1987わかこころ なくさむほとの ことのはも なほよりかぬる わかのうらなみ尊氏
1988わかのうらや そのひとなみに なからへて もれぬめくみの みにあまりぬる顕実母
1989いかにせむ わかのうらわの みをつくし みをたてなから あさきこころを浄弁
1990かすならぬ わかみのほとに こえてけり こころをかけし わかのうらなみ光吉
1991わかのうらに かよふはかりの みちはあれと むかしのあとに ふみまよふかな雅顕
1992わかのうらや あとつけそめし はまちとり いまはよそなる ねをのみそなく行乗
1993わかのうらに たゆたふふねの つなてなは ひくひとあらは みちもまよはし性遵
1994わかのうらや むかしのなみの あとにしも みのうきふねの なとまよふらむ実清
1995あけなから かさねてけりな からにしき たつしらなみの あとをたつねて経国
1996しらなみの あとをたつねし うれしさは あけのたもとに あらはれにけり秀能(藤原秀宗男)
1997わたつうみの かさしのはなは きにもあらす くさにもあらぬ おきつしらなみ杲守
1998ひとときの はなのさきしは ゆめなれや はるのほかなる たにのうもれき公清
1999なけきこる をののひひきの きこえぬは やまのやまひこ いつちいぬらむ興風
2000かはかみの にふのそまひと こころせよ みしかききをも すてぬならひを師賢(藤原師信男)
2001うきなから ひとのためそと おもはすは なにをよにふる なくさめにせむ直義
2002とにかくに よのひとことの なけかれて こころのうちの やすきまそなき義詮
2003よのなかの ひとのうれへの あるにこそ おろかなるみの ほとはしらるれ義詮
2004みにかへて おもふとたにも しらせはや たみのこころの をさめかたさを後醍醐院
2005なほさりに おもふゆゑかと たちかへり をさまらぬよを こころにそとふ後光厳院
2006よをすくふ こころのうちの なほさりに たみのうれへを なすそかなしき伏見院
2007なかむれは そこはかとなく そてぬれぬ むなしきそらの よものあらしに後鳥羽院
2008こきいてし むなしきふねの よるへなみ あるにまかせて よをわたるかな後宇多院
2009いまはわれ むなしきふねの つなかれぬ こころにのする ひとこともなし花園院
2010くもをふむ みねのかけはし それよりも うきよをわたる みちそあやふき花園院
2011いたつらに やすくもすくる つきひかな いつをまつへき いのちならぬに談天門院
2012とにかくに やすかりぬへき みひとつを なとかこころに まかせさるらむ定資
2013せきいるる かひなからまし おとはかは こころをくみて ひとのしらすは通俊
2014くものうへを こふるなみたの くれなゐに そめつるいろを きみにくらへむ後嵯峨院
2015ひとはいさ しをれはてぬる わかそてに くらふはかりの いろはあらしを実経
2016ひたちなる をののみまきの つゆくさの うつしはこまの おくにそありける朝光
2017ここのへや ちかきまもりの まとゐして なのるをきけは よはふけにけり後醍醐院
2018しはしまて うちたれかみの さしくしを さしわすれたる ときのまはかり少将内侍(後深草院)
2019さしくしの さしあふほとの ときのまは うちたれかみも われそみたるる弁内侍(後深草院)
2020くもゐにて みるにつけても よはのつき いてつるかたを あふかさらめや保能
2021ますかかみ かはらぬかけも あるものを いかにうつろふ ひとのこころそ光行
2022はなにそめ もみちにそめて まことなき こころのいろの あたしよのなか宗秀(藤原宗泰男)
2023のちのよも かくやなけかむ みのうさに なほのかれえぬ こころなりせは信快
2024いくほとと おもひなからも なけくこそ うきよをしらぬ こころなりけれ一条(徽安門院)
2025いまさらに うきをうしとて おとろくも よのことわりを しらぬなりけり五条(宣光門院)
2026かすならぬ みにもなみたの こほるるや いはきのやまの しつくなるらむ四条(安嘉門院)
2027このもとは つひのすみかと ききしかと いきてはよもと おもひしものを行尊
2028みとせへし たきのしらいと いかなれは おもふすちなく そてぬらすらむ慶融
2029やまさとを さひしとなにか おもふらむ かかれとてこそ すみそめのそて能信(藤原道長男)
2030そてのいろの かはるときけは たひころも たちかへりても なほそつゆけき直義
2031そむきても なほよのなかに すみそめの ゆふへのそては なみたなりけり宗行
2032そむきても よにすみそめの ころもかは かはるしるしの なきわかみかな読人不知
2033のかれても おなしうきよと きくものを いかなるやまに みをかくさまし是法
2034あつさゆみ もとのすかたは ひきかへぬ いるへきやまの かくれかもかな信武
2035おきところ なきにつけても なけくみは すててそいとと うきよなりける定顕(叡山横川宝蔵坊)
2036よのなかの けにうきときは みひとつを かくすはかりの かけたにもなし道我
2037をりをりの こころやすめし しはのとに あけくれいまは みをかくすかな公清
2038たつねくる ひともおとせぬ しはのとに あけくれきくは みねのまつかせ花園院
2039あはれしれ むかしはしらす ともとみて われもふりぬる やとのまつかえ公宗母
2040やまさとの のきはにちかき しひしはの しひてうきよに いつまてかへむ永福門院
2041かすかすに かたえかれぬる ひとつまつ いつまてとてか くちのこるらむ永福門院
2042くちのこる ひときのまつの かけをこそ かれゆくえたも なほたのみけれ道意(西園寺実兼男)
2043ふるさとの のきはのこまつ としふとも たれかはいへの かせをつたへむ読人不知
2044いにしへの なからのはしも つのくにの なにはくちせす なほのこりけり国夏
2045よをうしと おもはさりけむ むかしこそ このころよりも はかなかりけれ雅成親王
2046のかるるも やすきうきよを いたつらに すくしきにける みのむかしかな桓瑜
2047おもひきや みしよのことを いきてなほ むかしのゆめに かたるへしとは円忠
2048あたにのみ おもふいのちの ありすきて うきよのゆめを みるそかなしき宰相典侍(後宇多院)
2049おもはすよ をしからぬみの いのちのみ ありへてかかる うきめみむとは藤子(従三位)
2050そてさえて ぬるよのとこも さむしろに ゆめをはかなみ まつかせそふく家長(源時長男)
2051いくよかは みはてぬゆめの さめぬらむ まつのとたたく みねのあらしに為世(御子左藤原為氏男)
2052よをのこす まくらのうへの かねのおとに いそちのゆめそ あはれみしかき花園院
2053むかしこそ しのふにかよふ ゆめならめ ゆくすゑまては いかてみゆらむ基嗣
2054あたなれと わかおもふままに みるゆめの なこりはしはし わすれさりけり遠衡
2055うつつかと さめてもなほそ たとらるる さたかにみつる ゆめのなこりは実性
2056こころなき ねふりのうちに まよひきて ゆめとはなにの みゆるなるらむ大弐(安嘉門院)
2057うつつそと おもふまよひの こころにて たのむかゆめの あたしよのなか為道
2058ゆめをのみ あたなるものと おもふこそ うつつをたのむ まよひなりけれ覚実
2059ぬるかうちの ゆめてふものそ うかりける さめてうつつの まことなけれは広茂
2060なけきわひ しひてゆめかと たとれとも さむるよなきは うつつなりけり瓊子内親王
2061ゆめのよを よそになしては おとろけと こころのさむる あかつきそなき雅成親王
2062あしひきの やまたにさせる ささのいほ よをかさぬれは ふしなれにけり恒雲法親王
2063あつまちの おくてのやまた かりにのみ おもひしいほも すみなれにけり為顕
2064われかくて いなはもるみと なりぬるを かりのやととや ひとのみるらむ基任
2065くれたけの ふしみのたゐの かりのよに おもひしらてや もりあかすらむ読人不知
2066よもすから たえすなるこの おとすなり やまたのいほを かせやもるらむ行胤
2067あきはつる ひたのかけなは たえしより やまたのいほに くるひともなし兼空
2068ひくひとの なきにつけても ひたすらに みをあきはつる をたのかりいほ慈快
2069かすならぬ やまたのひつち つれもなく あきはてしよに なにのこるらむ兼氏
2070おいてよに あるかひもなき ひつちたの しもをいたたく みとそなりぬる資明
2071うしとたに いふはさらなり いさらかは いさやいかなる わかみなるらむ長能
2072のほりえぬ ひとせによとむ かはふねの ひくひとなくは さてやくちなむ実教
2073やまかはの いしまつたひに ゆくみつの やすくはすきぬ このよなりけり祐臣
2074かすならぬ みくさかくれの わすれみつ ひとりすめとも しるひともなし義貞
2075みこもりの ふるえのなみに くちはてて しほたにささぬ あまのすてふね国夏
2076つきかけの よるさすほかは みなとえに ゆくかたもなき あまのすてふね為世(御子左藤原為氏男)
2077なけくそよ あさきせわたる かはふねの さしもうきよに ととこほるみを惟継
2078ととまらぬ つきひはかりに まかせきて たたとにかくに よをわたるかな頼貞
2079うたてなと かへりみさりし やとにしも とめぬこころの いてかてにする為明
2080かそふれは いそちもすきぬ いそのかみ ふるかひもなき うきよなからに有範
2081うきなから そむきもはてぬ あらましに いくたひおなし よをいとふらむ源意(藤原源守男)
2082うきをしる こころこそなほ かひなけれ いとふままにも そむかれぬよに近衛(今出河院)
2083うきなから あれはあるよの ならひこそ いまはわかみに おもひしらるれ良冬
2084ありてみの ことわりもなし うきよとは いとひてのちそ いふへかりける為成(冷泉為相男)
2085よをもいとふ またうきよにも いとはれて とまるこころの なきそかなしき慈円
2086よをいとふ こころはかりや かたからむ すめはすみける やまのおくかな道順
2087いそかるる みやまのおくの ならはしに さひしかれとや とふひとのなき為道女
2088さひしさも うきよよりはと なくさめて こころそとまる やまさとのいほ道賢
2089かくてしも こころとまらは やまさとも うきよいとはぬ すみかならまし為信
2090おのつから ひとにそむける こころもて つひにうきよの ちりをいてぬる花園院
2091あしひきの やまをうきよの へたてにて ちりのさかひに あとはたえにき花園院
2092ありあけの つきこそありけれ みやまへに われのみひとり すむかとおもへは花園院
2093よのうきめ みえぬかきりも やまさとは すみなれてこそ おもひしりぬれ読人不知
2094おなしよを こころひとつに すみかへて すつれはやすき わかみなりけり読人不知
2095かすならぬ みのおもひては やまさとの ひとめまれなる すまひなりけり忠性
2096いまさらに くやしかりけり やまさとに すまてうきよを なになけきけむ尊海
2097いかはかり なほやまふかく のかれまし すむにかひある こころなりせは尊道法親王
2098こころあらは すててののちも すつへきは うきかうへにも うきよなりけり読人不知
2099いかはかり うきよなれはか かすならぬ わかみにたにも なほいとふらむ読人不知
2100いまさらに すつとはいはし かくてよに あるかひもなき おなしうきみを実性
2101すててこそ おなしやまちに いりにけれ こころこころの うきよなりしを栄宝
2102かくれかを なにもとめけむ ひととはぬ こころのおくそ すみよかりける読人不知
2103よをいとふ こころのおくを ひととはは うきことしけき やととこたへむ基久
2104すめはまた うきよなりけり よそなから おもひしままの やまさともかな兼好
2105なれなはと なにおもひけむ やまさとは すむにつけてそ さひしかりける実泰
2106やまさとは あらましまての すみかにて こころとまらぬ みねのまつかせ寿暁
2107ゆくすゑは わかあらましも あるものを むかしをこふる なくさめそなき冬平
2108せをはやみ ゆくみつよりも とめかたく すきしむかしそ なほしのはるる崇光院
2109こしかたを しのふなみたの たまくしけ ふたたひあはぬ ときそかなしき永福門院
2110みしことの さたかならぬは かきくらす なみたにしのふ むかしなりけり実教
2111とにかくに おもひつつけて ねをそなく ひとにいふへき むかしならねは為家
2112ことにいてて こひしとまては いはねとも むかしおもへは ぬるるそてかな読人不知
2113そてぬらす おいのねさめの なみたかは そのみなかみは むかしなりけり秀行
2114こしかたを おもひいてすは あかつきの ねさめのとこや さひしからまし読人不知
2115うきみにも わすれすしのふ むかしかな おもひいつるを おもひてにして国道(津守国助男)
2116なにゆゑに すきしむかしを しのふそと こころにとへは おもひてもなし宣時(北条)
2117おもひいての なきみのはても なへてよの ならひにしのふ むかしなりけり政村
2118たちかへり わかいにしへの こひしきや ありしよりけに うきみなるらむ長舜
2119わかためは いつよりのちの うきよとて あはれむかしの こひしかるらむ実伊
2120いまさらに こひしきやなそ いにしへも みはかすならぬ なけきをそせし基祐
2121はかなくて いそちのとしも すきにけり よにすみわふる なけきせしまに祐光
2122ななそちに すきにしかたを かそふれは のこるひかすの ほとそすくなき氏久
2123かへりこぬ むかしのみこそ しのはるれ おいのかすそふ みをおもふにも延全
2124いたつらに なすことなくて すきにけり おもへはをしき みのむかしかな寛胤法親王
2125としつきの つもるへたても なきものは おもかけにそふ むかしなりけり雅孝
2126あやにくに しのはるるみの むかしかな ものわすれする おいのこころに公雄
2127としたかく なりにしのちは おいかみに こゆへきさかそ のこらさりける桓守
2128さのみやは いにしへとても しのはれむ おいてなみたの もろきなりけり国助
2129とほさかる むかしをたれに かたらまし おいにはむかふ ともたにもなし実承
2130のちのよを ちかくなりぬと おとろくや さすかにおいの しるしなるらむ公朝
2131みかのはら たひのやとりに たまほこの みちのゆきあひに あまくもの読人不知
2132やまのへの あともつたへぬ みなれとも そのひとかすに いりしより公能
2133いにしへの みやまのてらに むすこけを うちはらふにそ むかしにかへる慈円
2134やまふきの やへのはなたに よのつねの さくなむさくと おもひけるかな長能
2135さくはなの はかなかるかや にほひつつ ひとのこころを あたになすらむ忠岑
2136くりかへし まかきのうちに はなつめは いとまかりにも ありとやはみる恵慶
2137わさとこそ くりはなつめれ まかりきに はひまつはるる あをつつらをは読人不知
2138もしほくさ かきしくあまの とこをみて くらさはやとと たのむはかなさ国助
2139いかなれは ゆるきのもりの むらさきの けさしもことに たちさわくらむ覚性法親王
2140くらゐやま そのしなことに あかりしや うしとおもはぬ むかしなりけむ道平
2141つまこふる あきにしなれは さをしかの うらかなしくも きこゆなるかな隆信
2142ちるまては きつつたにみむ はるさめに われをぬらすな うめのはなかさ頼基(大中臣輔道男)
2143うめかえに こけのころもの そてふれて はなのなをさへ をるわかみかな良暹
2144たちぬはぬ かすみのころも はるきては はなのにしきを おりかさねつつ知家
2145やましろの みつのみくさに つなかれて こまものうけに みゆるたひかな西行
2146なはしろに こころのたねを まきそへて なくやかはつの やまとことのは国冬
2147としなみの なかはをこよひ こゆるわに すかぬきかけて ななそちはへぬ公賢
2148やまさとに たたかりそめの すすきかき ふちするひとの なきわかみかな信実
2149つゆふかき をはなかそてを ひかへつつ なくなくあきを ととめつるかな基俊
2150もみちはの えたにかかれる みのむしは しくれふるとも ぬれしとやおもふ頼基(大中臣輔道男)
2151いかなれは しめちかはらの ふゆくさの さしもなくては かれはてにけむ読人不知
2152しのひこし ゆふくれなゐの ままならて くやしやなにの あくにあひけむ小侍従(太皇太后宮)
2153わかことく おくのこほりの えひすかけ とにもかくにも ひきちかへつつ為家
2154ひきひきに ひとはたかせの のほりふね つなてこさるる みをいかにせむ仲綱
2155なけきつむ ちからくるまの わをよわみ たちめくるへき ここちこそせね俊頼(源経信男)
2156たらちねの おやをはすてて こはいかに ひとのこをのみ おもふわかこそ伊勢大輔
2157ひとのこの おやになりてそ わかおやの おもひはいとと おもひしらるる康資王母
2158やはらくる ひかりもちりに ましるらむ あさきよめすな かみのみやつこ遠久
2159きみかため いのちかひにそ われはゆく つるのこほりに ちよはうるなり忠岑
2160はやせかは うかふみなわの きえかへり ほとなきよをも なほなけくかな定家
2161わかみをは うかへるくもに なせれはそ つくかたもなく はかなかりける千里
2162そほちつつ ものおもふひとの ゆくみちは なかるるみつそ しるへなりける朝忠
2163みつせかは あささのほとも しらせしと おもひしわれや まつわたりなむ道綱母
2164みつせかは われよりさきに わたりなは みきはにわふる みとやなりなむ読人不知
2165いもせかは かへらぬみつの わかれちは ききわたるにも そてそぬれける清輔
2166ききわたる そてたにぬるる なかかはの みつのこころを くみてしらなむ実定
2167みなひとの つひにゆくなる みつせかは そのせにかくる しからみそなき光俊(葉室光親男)
2168かひなしや なにそはありて つひにゆく ひとをはとめぬ ふはのせきもり惟賢
2169かはりても ゆくへきつひの みちならは わかなきあとを けふやとはれむ恵鎮
2170いまはとて いさめおきてし ことのはの つゆもかわかぬ しひしはのそて為明
2171しひしはに かへぬをなけく なみたもて ふかくそそての いろをそめつる久明親王
2172きたりとは きくらむものを ふちころも かけてあはれと いふひとのなき仲文
2173なにかこの ほとなきそてを ぬらすらむ かすみのころも なへてきるよに紫式部
2174みるからに たもとそぬるる さくらはな そらよりほかの つゆやおくらむ実資
2175たつねきて むかしをとへは やまさとの はなのしつくも なみたなりけり為氏
2176おもひきや はるのみやひと なのみして はなよりさきに ちらむものとは行尊
2177わすれしな こそのたもとの あめやくさ けふまてなかき ねをかけむとは了然
2178むかしおもふ なみたをそてに かけそへて けふのあやめの ねこそつきせね通重
2179あらさらむ そてのいろにも わするなよ はなたちはなの なれしにほひを弁内侍(後深草院)
2180いにしへに なれしにほひを おもひいてて わかそてふれむ はなややつれむ師継
2181いまそしる ありしかたみの はなそとも おくるるそてに とまるにほひを公雄
2182としことに ききしくもゐの ほとときす このさつきこそ かきりなりけれ為経(甘露寺藤原資経男)
2183つてにきく ことそかなしき してのやま かへらぬみちの うきにつけても為信
2184いかにして ひとやりならぬ みちにしも かへるかたなき わかれなるらむ読人不知
2185かへるへき みちしなけれは くらゐやま のほるをみても ぬるるそてかな義詮
2186わひつつも きえにしやとに すむよりは いててかへりし みちそかなしき師輔
2187かりのよを そむきしかひも なきひとは ゆめかうつつか えこそさためね斎宮女御
2188さためなき ひとのうきよも よそならし かせのすゑなる のへのしらつゆ為家
2189よのなかを なににたとへむ あかねさす あさひまつまの はきのうへのつゆ
2190たのむへき すゑはのつゆを さきたてて のこるわかみそ おきところなき有長
2191いろかはる そてにはつゆの いかならむ おもひやるたに けぬへきものを選子内親王
2192はかなくて わかれしあきの ゆふつゆは おもひいてても きえぬへきかな基平(近衛兼経男)
2193おもひいつや みしよのさかの はるかすみ ことしのあきの そてのつゆにも禅助
2194おもひいつる むかしのあきの めくりきて なきかけうかふ そてのつきかな経行
2195めくりあふ かけはむかしの かたみそと おもへはつきの そてぬらすらむ為氏
2196おもひきや なれてみしよの あきのつき ことしなみたに くもるへしとは万代(後醍醐院女蔵人)
2197きみまさぬ やとにはつきそ ひとりすむ ふるきみやひと たちもとまらて道長
2198いにしとし こよひのつきを みしときに いとかくものを おもひやはせし行成
2199くものうへは かはりにけりと きくものを みしよににたる よはのつきかな俊成(藤原俊忠男)
2200いかてわれ こよひのつきを みにそへて してのやまちの ひとをてらさむ西行
2201よもすから おもかけみせて くもりしは つきもおもひの ほとやしりけむ為世(御子左藤原為氏男)
2202あふきみし つきもかくるる あきなれは ことわりしれと くもるかけかな万秋門院
2203ひかりなき よはことわりの あきのつき なみたそへてや なほくもるらむ宰相典侍(後宇多院)
2204おもへたた てるひもくれて さかのやま まよふこころの はれぬやみちを道我
2205さかのやま てるひのかけの くれしより おなしこころの やみにまよひき為世(御子左藤原為氏男)
2206うかりける このよのさかの あきのくれ つゆもしくれも みにやそふらむ定為
2207おもひやれ つゆもしくれも ふりまさる このよのさかの あきのあはれを為藤
2208たまとみし つゆさへもろき ならひにて よのさかとこそ むしもなくなれ忠源
2209くさのかけ こけのしたにも よそにみは われゆゑなほや つゆこほるらむ兼氏
2210ふるさとの くさのかけにも てらしみは なほいろそへよ ことのはのつゆ定為
2211なへてよの ひとよりものを おもへはや かりのなみたの そてにつゆけき花山院
2212そてふりし はるのにはとも みえぬかな なみたしくるる あきのゆふくれ兵衛(上西門院)
2213おくりおきて かへりしのへの あさつゆを そてにうつすは なみたなりけり西行
2214なきひとの ととまるこけの したよりも かへるたもとは なほやつゆけき覚円
2215いつくにか きみをおきては かへりけむ そこはかとたに おもほえぬかな頼宗
2216いまはまた われもなくねを そふるかな つるのはやしの あかつきのそら読人不知
2217おもへたた またあふなかの わかれたに うきはならひの あかつきのそら長経
2218かたみとて あるもはかなき おもかけの さらぬわかれに ねはなかれつつ宗成
2219ありはてぬ ならひはさそと しりなから わかれにたへぬ わかなみたかな良空
2220はなのいろも うきよにかふる すみそめの そてやなみたに なほしつくらむ家隆
2221うれしさを つつむとききし そてのうへに なけくなみたの かからすもかな覚誉法親王
2222うれしさを つつみしそても なみたにて なけきそおいの みにあまりぬる公秀
2223さきたつに かへぬいのちの なからへて なそややそちに あまりかなしき栄運
2224おもひきや むそちあまりの さかこえて このわかれちに まよふへしとは冬信女
2225すみなれし ふるさとひとも なきとこに かたしくそては つゆもかわかす長家
2226かへるへき ときにはなりぬ みやこにて たかたもとをか まくらにをせむ旅人
2227ふゆかれの ははそのこのは ちりしより そてのしくれは いまもかわかす真昭
2228あとしたふ なみたのそての くれなゐに あらそひおつる みねのもみちは為成(冷泉為相男)
2229おもひやれ あととふしもの ふりすのみ ひとりぬれそふ こけのたもとを光厳院
2230つららゐし そてのなみたの そのままに はやななとせの しもそかさなる覚誉法親王
2231きみをまた うつつにみめや あふことの かたみにもらぬ みつはありとも元良親王
2232ほともなく くもとなりぬる きみなれと むかしのゆめの ここちこそすれ後朱雀院
2233ふかくさの のへのけふりと なりにせは いつれのくもを わきてとはまし道綱母
2234なきひとの うはのそらなる かたみかな けふりとなりし ゆふくれのくも頼重
2235なきひとの よはのけふりの ゆくへとて くもとみなから あはれとやみむ淑文
2236とりへやま みねにたえせぬ うきくもや おくれさきたつ けふりなるらむ兵衛督(達智門院)
2237きえはてし けふりのすゑの おもかけも たちそふきりの ふかくさのやま伏見院
2238あふことの かきりのたひの わかれには してのやまちそ つゆけかるへき天暦贈太皇太后宮
2239きみのみや つゆけかるへき してのやま おくれしとおもふ わかそてをみよ村上天皇
2240さきたたは いかにとおもふ をりをりそ うきわかれちは なくさまれける澄覚法親王
2241さきたたし おくれしとこそ おもひしか ちきりしかひも なきわかれかな頼時
2242さきたつと いふもはかなし いつまてか むなしきあとに みをのこすへき読人不知
2243したふへき かたこそしらね ととまらぬ みちとてひとの いつちゆくらむ深守法親王
2244なきひとの ゆくへやさても しらるると まことのみちに たつねいるかな顕覚
2245たちそひて くもにゆくへき みちならは けふりとならむ みをもをしまし行経
2246しるへせは おなしみちにも ともなはて うきよにのこる われそかなしき双救
2247なをとめて くちぬためしの ことのはは なきあとにこそ いろまさりけれ成茂
2248なきあとの やみのうつつに ひかすへて またみぬゆめや とほさかるらむ行氏(祝部行言男)
2249おもへたた ゆめもさたかに みえわかて まかふこころの やみのうつつを忠長
2250ゆめにたに またみることは かたをかの あはれおやなき みとそなりぬる基隆(藤原基成男)
2251なけきわひ うちぬるひまも あらはこそ なきおもかけを ゆめにたにみめ行済
2252まほろしに かよふはかりの みちもかな まとろむほとの ひまはなくとも源承
2253まとろまて みしよのゆめも それなから またなかつきも めくりきにけり道覚法親王
2254わかれにし あきはほとなく めくりきて ときしもあれと さそしたふらむ為定(御子左二条為道男)
2255めくりあふ あきこそいとと かなしけれ あるをみしよは とほさかりつつ兼好
2256とほさかる つきひにつけて いかはかり なきおもかけの こひしかるらむ為氏
2257とほさかる つきひそいとと なけかるる なきおもかけは みにとまれとも行済
2258のちしのふ ときさへあきの ゆふくれを いかにととめし かたみなるらむ実氏
2259おもひいてて しのふまてこそ かたくとも みしひととはむ かすにもらすな宣時(北条)
2260おもひいつる ことをあまたに かなしきは なれこしひとの わかれなりけり行氏(平胤行男)
2261つゆをたに いまはかたみと おもひおきし むかしおほえて そてやぬるらむ西音
2262いまもなほ むかしわすれぬ かたみとや あたにこほるる なみたなるらむ秀茂
2263わかみよに なからむのちの かたみとは おもひもいれす かきやおきけむ法守法親王
2264あるよにも なしとこたへし いつはりの やかてまことに なるそかなしき基政(藤原基綱男)
2265みしひとの なきかうちには かそふとも あらましかはと たれかしのはむ長舜
2266ありしにも あらぬすかたの いつれをか またうけかへて みをくたくらむ行蓮
2267かくしつつ よよのむくひの つきせすは うけかたきみの またやしつまむ為道女
2268うかりける よよのむくひも こりはてて うけかたきみを またなしつめそ顕実母
2269あしたつの むれゐるさはの さされいしは ちよのかすとも おもほゆるかな読人不知
2270ちとせふと わかきくなへに あしたつの なきわたるなる こゑのはるけさ貫之
2271むしろたの いつぬきかはの しきなみに むれゐるたつの よろつよのこゑ良経(九条兼実男)
2272ひなつるの しろたへころも けふよりは ちとせのあきに たちやかさねむ枇杷皇太后宮
2273すたちにし つるのけころも ほともなく またこのちよを きくそうれしき長家
2274ちとせふる くもゐにきたる つるのこの すたちはしむる けころもそこれ周防内侍
2275ちよふへき くもゐをさして すたちゆく つるのけころも みるそうれしき顕季
2276きみかよの ちとせのかすを よはふなり くもゐにたかき つるのもろこゑ道煕法親王
2277あまころも たみののしまの ゆふしほに ちとせをさして たつそなくなる為氏
2278ちとせまて ゆくすゑとほき つるのこを そたててもなほ きみそみるへき隆弁
2279ちとせとも かきらぬものを つるのこの なほつるのこの かすをしらねは重時
2280ももしきや おひそふたけの かすことに かはらぬちよの いろそみえける尊氏
2281よろつよも いろはかはらし このきみと あふけはたかき そののくれたけ貞時
2282きみかため ちよのためしを もとめこの かさしにをりし にはのくれたけ実任
2283ここのへに ふたよかさねて かはたけの おなしみかけに あへるかしこさ実継
2284あさみとり よものこすゑの めもはるに さまさまみゆる ちよのかけかな通具
2285われにひく まつのためしの あるへくは ちよのねのひの はるはるもみむ兼家
2286ちよとのみ ねのひのまつに ちきるかな あかぬこころの ひくにまかせて兼氏
2287きみかひく ねのひのけふを かそふれは ゑにかくまつの おひかはるまて道信
2288ちとせふる ときはのまつも あまたたひ きみかみよには おひかはりなむ道済
2289ももとせに ちかつくつゑの よよのあとに こえてもみゆる おいのさかかな後鳥羽院
2290あらたまる うつゑをつきて ちとせふる きみかねのひの まつをこそみれ師実
2291いろかへぬ まつのちとせの ありかすに はるをかさねて きみそみるへき兼経
2292わかきみの めくみをそへて ちきるらし まつのときはの ゆくすゑのはる為量
2293すゑとほき きみかみかきを ためしにて こたかきまつも いくちよかへむ隆朝
2294くもゐまて のとけかるへき ためしとは かねてもしるし ちよのはつはる実兼
2295いろかへぬ まつのちとせを とりそへて わかゆくすゑも よろつよのはる後光厳院
2296かきりなき よはひはいまた ここのそち なほちよとほき はるにもあるかな伏見院
2297うくひすの かはらぬこゑや きみかよに よろつかへりの はるをかさねむ為兼
2298たちかへる みよのはるとや うくひすの はなになくねも のとけかるらむ宰相典侍(後宇多院)
2299いさけふは ころもてぬれて ふるゆきの あはつのをのに わかなつみてむ為家
2300はるのひの なにおふやまの みねはれて くもらぬかけは よろつよのため基忠(鷹司兼平男)
2301うめかえの はなはひさしき にほひにて くもゐのはるそ かせものとけき家定
2302こころこそ まつひらけぬれ きみかよに あへるわかみは はなならねとも道平
2303たちかへり みたひときしる ためしあれと やよにつかへて はなはみさりき冬平
2304ももしきに やちよかさねて さくらはな にほはむはるそ かきりしられぬ読人不知
2305いにしへの くもゐのさくら いまさらに さきつつみよの はるやしるらむ万代(後醍醐院女蔵人)
2306はなのいろは ちとせをかねて いにしへの ためしにまさる はるにもあるかな為道
2307うつろはぬ はこやのやまの はなのいろに けふここのへの はるをそへつつ為実(御子左藤原為氏男)
2308きみみよと さししかさしは ちりもせす うつろひもせす のとけからなむ伊尹
2309ここのそち みちぬるはるの ときにあひて はなのこころも ひらけそふらむ為兼
2310またれつる こころひらけて おそさくら にほひひさしき いろそことなる後醍醐院
2311いまそけに こころひらけて きみかよに はなもかひある いろをそへける達智門院
2312そこふかく ひけとたえせぬ あやめくさ ちとせをまつの ねにやくらへむ上東門院
2313なかきよの ためしにひけは あやめくさ おなしよとのも わかれさりけり枇杷皇太后宮
2314おりたちて ひけるあやめの ねをみてそ けふよりなかき ためしをもしる道長
2315さなへとる けふしもあめの ふることは よのうるふへき しるしなりけり忠通
2316ゆくすゑは なほひさかたの あまのかは ちよのはしめの あきにあひつつ万秋門院
2317よろつよの まつにかかれる あきのつき ひさしきかけを みよとなるへし高光
2318いくかへり すまむとすらむ いけみつは うつれるつきの かけものとけし忠実
2319めくりあはむ ちとせのあきの ゆくすゑを つきにそちきる くものうへひと為兼
2320かけなひく ひかりをそへて このやとの つきもむかしを うつすとそみる公直母
2321あきふかき やまたのなるこ おしなへて をさまれるよの ためしにそひく俊成(藤原俊忠男)
2322やまみつに おいせぬちよを せきとめて おのれうつろふ しらきくのはな定家
2323いくちよと あきのかきりも しらきくの はなにそたのむ きみかめくみを新大納言(昭訓門院)
2324をさまれる みよのみつきと よるひをを おほみやひとに けふたまふなり邦省親王
2325しらかはの たえぬなかれを たつねきて よろつよちきる ともちとりかな覚助法親王
2326はなのやま あとをたつぬる ゆきのいろに としふるみちの ひかりをそみる定家
2327けさはまた くもゐのゆきを ふみわけて ふりにしよよの あとをしるかな兼胤
2328をさまれる よのことわさを ためしにて いまやむかしの あとにさかえむ師光(中原師重男)
2329きみかよは むかしにかへる としつきを かそへてやかて ありかすにせむ慈勝
2330いまよりの ちとせののちの ちとせをも きみそかそへて ありかすにせむ為世(御子左藤原為氏男)
2331けふやさは のこりおほかる よろつよの かすしりそむる はしめなるらむ能信(藤原道長男)
2332おいのさか たかきよはひを かそへても のこるちとせは きみのまにまに為氏
2333たえせしな のちのさかのの すゑとほく とみのをかはの なかれあまたに亀山院
2334まつかえの みとりのかけを いけみつに うつせはきみか ちよそかさなる資明
2335まつにさく はなのかかみも くもりなく とかへりまてと すめるいけみつ為明
2336うつろはぬ まつにつけてや はしたての ひさしきよをは かそへわたらむ読人不知
2337きみかよは なかゐのうらの さされいしの いはねのやまと なりはつるまて顕綱
2338いのりこし わかたつそまの やまたかみ ちとせのさかも きみそこゆへき良聖
2339ちはやふる かみちのやまの あさひかけ なほきみかよに くもりあらすな実氏
2340よよをへて すみにしやまの まつのかせ ちとせのこゑや ゆつりおきけむ後京極院
2341ゆくすゑを ゆつりおきける まつのかせ つたへむちよの こゑそしらるる達智門院
2342きみかよを とふひとあらは いつるひの ひかりをさして そらにこたへむ公経(藤原実宗男)
2343きみかため いろやまさらむ もみちはを みにしるあきは ときならすとも基忠(鷹司兼平男)
2344われかくて きみかななよに あふさかの せきしまさしき みちそしらるる基忠(鷹司兼平男)
2345いつかたも せきのとささぬ みよにあひて いまわかみちそ すゑとほりぬる為世(御子左藤原為氏男)
2346ふるあめの めくみにかかる からころも たちゐにみよを なほいのるかな朝尹
2347よろつよも つきせさるへき わかきみを はるかにたのむ みこそおいぬれ隆信
2348ななそちの けふのためとや むかしより やしろのかすを さためおきけむ後嵯峨院
2349あしはらや たたしきくにの かせとして やまとことはの すゑもみたれす花園院
2350わたのはら もろこしまても ゆくふねに なみしつかなる よとはしるらむ尊円法親王
2351うなはらや なみにたたよふ あしかひの かひあるくにと なれるかしこさ国冬
2352あしはらの くにつかみわさ しけけれは とこよにきみか みよそさかゆく朝棟
2353うこきなき やまとしまねの ときはきも くにををさめし かみやうゑけむ兼直
2354かみやまの みねにおふてふ たまつはき やちよはきみの ためといのらむ経久
2355くものうへに よろつよとのみ きこゆるは たかくらやまの こゑにそありける読人不知
2356いはねやま やまあゐにすれる をみころも たもとゆたかに たつそうれしき匡房
2357いろかへぬ くろかみやまの やまかつら かくてやひさに つかへまつらむ行家(藤原知家男)
2358いにしへに ややたちまさる みたからの にひゐのさとは にきはひにけり俊光